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トップページ > 政策・施策 > 国民の基本的な権利の実現 > 人権擁護局フロントページ > 人権に関する資料など > 平成21年度 人権教育及び人権啓発施策 > 第1章 平成21年度に講じた人権教育・啓発に関する施策

第1章 平成21年度に講じた人権教育・啓発に関する施策

第1節 人権一般の普遍的な視点からの取組

1 人権教育

 人権教育とは,「人権尊重の精神の涵(かん)養を目的とする教育活動」であり,生涯学習の視点に立って,幼児期からの発達段階を踏まえ,地域の実情等に応じて,学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ,実施している。

(1)学校教育

 文部科学省では,平成20年及び平成21年に改訂した新学習指導要領において,「豊かな心」の育成や「確かな学力」などからなる「生きる力」を,一層はぐくむこととしている。

 「豊かな心」の育成に関しては,道徳の時間で,善悪の判断などの内容を充実するとともに,体験活動等を生かすなどの充実を図っており,また,子どもたちが身に付ける道徳の内容を分かりやすく表した「心のノート」を小・中学生に配布した。

 また,豊かな人間性や社会性をはぐくむ観点から,「豊かな体験活動推進事業」や,学校教育における人権教育を推進するための「人権教育総合推進地域事業」,「人権教育研究指定校事業」,「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」等を実施した。

 一方,子どもたちの人権尊重という観点からは,子どもたちが安心して学べる環境づくりが重要であり,いじめ,暴力行為,不登校など,児童生徒の問題行動等は,引き続き教育上の大きな課題である。

 文部科学省では,児童生徒が適切な教育相談を受けることができるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の活用などによる相談体制の整備を支援している。また,問題行動を起こす児童生徒に対しては,十分な教育的配慮の下,出席停止や懲戒も含めた適切な措置を講じることにより,毅然とした対応の充実を図るよう指導を行っているほか,未然防止,早期発見・早期対応,関係機関との連携等の体制を整備して,個々の児童生徒を支援するためのモデル的な取組を推進している。

(2)社会教育

 社会教育においては,生涯にわたる学習活動を通じて,人権尊重の精神を基本に置いた様々な事業が展開されている。

 また,公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座の開設や世代の異なる人たちや障害のある人,外国人等との交流活動など,人権に関する多様な学習機会が提供されている。

 さらに,社会教育における人権教育の指導者として,中核的な役割を担う社会教育主事の養成講習や現職の社会教育主事等を対象にした様々な研修により,指導者の育成 及び資質の向上が図られている。

2 人権啓発

 人権啓発とは,「国民の間に人権尊重の理念を普及させ,及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」を意味し,「国民が,その発達段階に応じ,人権尊重の理念に対する理解を深め,これを体得することができるよう」にすることを旨としている。

(1)人権啓発の実施主体

 人権擁護事務として人権啓発を担当する国の機関としては,法務省の人権擁護機関があり,また,法務省以外の関係各府省庁においても,その所掌事務との関連で,人権にかかわる各種の啓発活動を行っているほか,地方公共団体や公益法人,民間団体,企業等においても,人権にかかわる様々な活動が展開されている。

(2)法務省の人権擁護機関が行う啓発活動

ア 平成21年度啓発活動重点目標

 その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘案して,年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め,共通の目標の下に組織を挙げて啓発活動を展開している。

 平成21年度は,啓発活動重点目標を「みんなで築こう 人権の世紀 ~考えよう 相手の気持ち 育てよう 思いやりの心~」と定め,21世紀が「人権の世紀」であることを改めて思い起こし,国民一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し,すべての人々が相互に共存し得る平和で豊かな社会の実現に向けた啓発活動を展開した。

イ 第61回人権週間

 毎年12月4日から世界人権デーの12月10日までを「人権週間」と定め,関係諸機関及び諸団体の協力の下に,広く国民に人権尊重思想の高揚を呼びかける大規模な啓発活動を展開している。

 平成21年度の第61回人権週間においては,関係機関の協力の下,啓発活動重点目標をはじめ,「女性の人権を守ろう」,「子どもの人権を守ろう」,「高齢者を大切にする心を育てよう」,「障害のある人の完全参加と平等を実現しよう」などの強調事項を掲げ,全国各地において,講演会,シンポジウム,座談会等の開催,人権相談所の開設などを行ったほか,テレビ・ラジオなどのマスメディアを活用した集中的な啓発活動を行った。

ウ 人権擁護委員の日

 法務省及び全国人権擁護委員連合会は,昭和57年度から,人権擁護委員法が施行された6月1日を「人権擁護委員の日」と定め,この「人権擁護委員の日」を中心として,広く国民に人権擁護委員制度の周知に努めるとともに,人権尊重思想の普及高揚を呼びかけている。

 平成21年度においても,全国各地で,街頭での啓発活動を行ったり,人権擁護委員等が,各地域のテレビ番組に出演し,人権擁護委員の活動について紹介するなど,マスメディアを活用した人権擁護委員制度についての広報に努めた。

 また,6月1日を中心に全国2,620か所において,全国一斉「人権擁護委員の日」特設人権相談所を開設した。

エ 全国中学生人権作文コンテスト

 次代を担う中学生が,人権問題についての作文を書くことによって,豊かな人権感覚を身に付けることを目的とする「全国中学生人権作文コンテスト」を実施している。平成21年度で29回目を迎えた。

 平成21年度は,6,624校から,日常の家庭生活,学校生活等の中で得た体験を基に,基本的人権を守ることの重要性についての考えをまとめた883,746編という多数の作文の応募があり,内閣総理大臣賞(石川県羽咋市立羽咋中学校1年藤岡はるかさん「笑顔のために」),法務大臣賞(新潟県新潟市立早通中学校1年長濱愛香さん「生きる権利」),文部科学大臣奨励賞(徳島県藍住町立藍住東中学校2年米澤拓也さん「今日もどこかで…」)ほか85編を表彰した。多くの中学生が,人権について理解を深め,豊かな人権感覚を身に付けるよい機会となっている。

オ 人権の花運動

 人権の花運動は,配布された花の種子,球根等を,児童が協力して育てることによって,生命の尊さを実感する中で,豊かな心をはぐくみ,やさしさと思いやりの心を体得することを目的とした活動であり,全国の人権擁護委員が中心となって主に小学生を対象とした啓発活動として実施している。

 平成21年度は,小学校2,962校のほか,435の中学校・幼稚園・保育所等広範囲に行われた。

カ 人権啓発フェスティバル

 人権啓発フェスティバルは,シンポジウム,啓発資料展,啓発映画上映,コンサートなどの各種の人権啓発活動を同じ時間,空間を活用して一体的,総合的に行うことにより,より多くの人々が参加することのできる総合的な啓発事業として実施している。

 平成21年度は,フェスティバルの統一テーマを啓発活動重点目標と同じ「みんなで築こう 人権の世紀 ~考えよう 相手の気持ち 育てよう 思いやりの心~」と定め,岐阜県岐阜市(9月19日及び20日,長良川国際会議場)と,宮城県仙台市(10月3日及び4日,夢メッセみやぎ)で開催し,両会場合わせて63,600人もの多数の参加者があった。

キ 人権擁護功労賞

 人権擁護委員の活動等を通じてかかわりのある企業や特定非営利活動法人等の団体及び個人の中から,人権擁護上,顕著な功績があったと認められた者に対し, 法務大臣と全国人権擁護委員連合会長が表彰を行っている。

 平成21年度の受賞者は次のとおりである。 

 法務大臣表彰               株式会社神戸新聞社
 全国人権擁護委員連合会長表彰   株式会社そごう・西武 西武池袋本店,グループ女綱(なづな) 
                         ~ストップDVとやま~
 全国人権擁護委員連合会長感謝状  株式会社愛媛新聞社,南海放送株式会社,株式会社テレビ愛媛,
                         株式会社あいテレビ,株式会社愛媛朝日テレビ,日本放送協会松山放送局
                         (以上6社共同受賞)
                         大分県立宇佐産業科学高等学校

(3)公益法人,地方公共団体へ委託して行う啓発活動

ア (財)人権教育啓発推進センターが行う啓発活動(人権啓発活動中央委託事業)
(ア) (財)人権教育啓発推進センター

 (財)人権教育啓発推進センターは,ナショナルセンターとしての役割を果たすべく人権に関する総合的な教育・啓発及び広報を行うとともに,人権教育・啓発についての調査,研究等を行っている。

(イ) 平成21年度に(財)人権教育啓発推進センターへ委託した啓発活動

 人権啓発教材の作成,人権啓発ビデオの制作

 人権啓発フェスティバルにおけるシンポジウム等の開催

 人権啓発指導者養成研修会の実施

 データベース運営及び活用

 人権ライブラリーの運営等

イ 地方公共団体が行う啓発活動(人権啓発活動地方委託事業)
(ア) 人権啓発活動地方委託事業

 都道府県及び政令指定都市等を委託先とし,すべての人権課題を対象とした幅広い啓発活動の実施を委託する事業である。

(イ) 平成21年度に行った委託事業

講演会・研修会,資料作成,放送番組,新聞広告,地域人権啓発活動活性化事業の実施等

(ウ) 地域人権啓発活動活性化事業

 法務省の人権擁護機関,都道府県,市区町村,公益法人等,人権啓発活動を実施する主体間の横断的なネットワークである「人権啓発活動ネットワーク協議会」との連携の下に実施される人権啓発活動地方委託事業を特に「地域人権啓発活動活性化事業」と称し,住民に親しみやすくかつ参加しやすい要素を取り入れつつ,地域に密着した多種多様な人権啓発活動を実施している。

(4)小規模事業者の産業にかかわりの深い業種等に対する啓発活動

 経済産業省では,産業界・経済界向けに,平成21年度は,企業の社会的責任の観点から企業活動における様々な人権問題等に関する講演会やシンポジウムを全国で開催し,経済界の役職員等の人権意識の涵(かん)養を図った(開催回数:57回,総参加人数:7,308人)。

 また,併せて,企業の社会的責任に係る啓発活動の参考となるべきパンフレット及び情報モラル啓発ビデオを経済団体や企業等に配布した。

(5)国際協力

 外務省では,平成21年8月,東京都において,人権・人道分野の国際法に関する一般的な知識の普及,理解の促進等,人権意識の向上を図る目的で,国際法模擬裁判「2009年アジア・カップ」を開催した。

第2節 人権課題に対する取組

1 女性

(1)男女共同参画の視点に立った様々な社会制度の見直し,広報・啓発活動の推進

ア 内閣府では,男女共同参画に関する施策についての苦情の処理や人権が侵害された場合における被害者の救済に関する取組を推進するため,男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会において,国及び都道府県,政令指定都市における苦情処理状況の調査・検討を行った。また,苦情解決に当たっての視点・方法論,苦情への対応事例等を紹介する「苦情処理ガイドブック」を改訂し,関係機関等に配布し,行政相談委員及び人権擁護委員並びに都道府県,政令指定都市担当者を対象とする研修を実施した。

 そのほか,我が国の男女共同参画に関する取組を広く知らせるため,男女共同参画の総合情報誌「共同参画」の発行,ホームページ及び情報メール等,充実した情報を迅速に提供する体制の整備など,多様な媒体を通じた広報・啓発活動を推進している。

イ 男女共同参画推進本部決定により,毎年6月23日から29日までの1週間を「男女共同参画週間」としている。平成21年度は,「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」の開催や,「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰」及び「女性のチャレンジ賞」等の表彰を実施したほか,ポスター等の配布,政府広報を活用した広報・啓発活動を行った。

ウ 厚生労働省では,6月の「男女雇用機会均等月間」等の機会をとらえ,女性労働者の能力発揮を促進するための企業の自主的かつ積極的な取組(ポジティブ・アクション)の推進を図るため,啓発活動を実施した。

 また,「女性と仕事の未来館」において,女性の能力発揮のためのセミナーや相談,働く女性に関する情報の提供等各種支援事業を実施した。

(2)法令・条約等の周知

ア 内閣府では,国内における男女共同参画社会の実現に向けた取組を行うに当たって,報告会,刊行物やホームページ等を通じ,男女共同参画に関連の深い各種の条約や,国際会議における議論等,女性の地位向上のための国際的規範や基準,取組の指針等の広報に努めた。

 平成21年度は,女子差別撤廃条約採択30周年を記念し,ポスターや記念行事等を通して条約に関する周知を図った。また,平成22年3月に開催された「第54回国連婦人の地位委員会」に係る会議の概要等について,ホームページ掲載等により周知を図った。

イ 外務省では,女子差別撤廃条約関連文書や女性の地位向上に関する会議等の関連文書を,外務省のホームページに掲載し,広くその内容の周知に努めた。

(3)女性に対する偏見・差別意識解消を目指した啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,女性の人権擁護を訴えるため,「女性の人権を守ろう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,女性の人権問題をテーマとした講演会や座談会の開催,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(4)男女平等を推進する教育・学習,女性の生涯学習機会の充実

 文部科学省では,男女共同参画社会の形成のため,学校教育において,児童生徒の発達段階に応じて,社会科,家庭科,道徳,特別活動等を通じて,男女の平等や男女相互の理解と協力の重要性について指導を行った。

 また,社会教育において,女性が社会で活躍するに当たって,多様な選択肢の存在や,ワーク・ライフ・バランスに関する情報を提供することにより,女性が自己の可能性やライフステージ別の自己イメージを若い時期から持てるよう,ライフプランニングに関する意識形成等を促すための事業を行った。

 そのほか,「人権教育推進のための調査研究事業」により女性の人権をテーマとする講演会や女性に関する学級・講座等を開設する地方公共団体を積極的に支援しており,平成21年度においては,7都府県でこの調査事業を実施し,31か所でこの事業を活用して女性の人権に関する事業が実施された。

 独立行政法人国立女性教育会館は,国内外の女性関連施設等と連携し,女性教育指導者等に対する研修,専門的な調査研究及び女性と家族に関する情報収集・提供の充実を図り,女性教育に関する我が国唯一のナショナルセンターとして,国内はもとより世界とりわけアジア地域における女性教育の人材育成の拠点としての役割を果たしている。

(5)雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のための啓発等

 厚生労働省では,労働者が性別により差別されることなく,かつ,働く女性が母性を尊重されつつ,その能力を十分発揮することができる雇用環境を整備するため,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)の周知徹底に努めるとともに,企業に対する指導を積極的に実施することにより,同法の履行確保を図った。

 また,男女均等取扱い等に関する労働者と事業主との間の紛争については,都道府県労働局長による助言,指導,勧告及び機会均等調停会議による調停を積極的に運用し,円滑かつ迅速にその解決を図った。さらに,実質的な男女均等を確保するために,男女労働者間で格差が大きい企業に対して,女性の職域の拡大,管理職への登用等に向け,積極的取組を行うよう促した。

 加えて,職場におけるセクシュアルハラスメントは,労働者の個人としての尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であるとともに,労働者の能力の有効な発揮を妨げるものであるため,事業主に対してセクシュアルハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じるよう指導を行った。

(6)農山漁村の女性の地位向上のための啓発等

 農林水産省では,農山漁村にややもすれば残存している固定的役割分担意識の是正など,あらゆる場における意識と行動の変革を進めるために,3月10日を「農山漁村女性の日」とし,全国記念行事等を実施し,男女共同参画に関する気運の醸成に努めた。

平成21年度は,全国記念行事として,平成22年3月10日に東京都渋谷区の日本青年館において,「第23回農山漁村女性の日記念の集い」を開催し,約800人の参加者があった。

(7)女性の人権問題に関する適切な対応及び啓発の推進

 男女共同参画推進本部決定により,毎年11月12日から11月25日(女性に対する暴力撤廃国際日)までの2週間を「女性に対する暴力をなくす運動」期間とし,同期間中,関係団体との連携・協力の下,社会の意識啓発等,女性に対する暴力に関する取組を一層強化している。

 また,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(平成13年法律第31号)等に基づき,関係府省庁,地方公共団体等は,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を積極的に推進している。

ア 内閣府では,全国の配偶者暴力相談支援センター等の相談員や相談員を管理する立場にある職員を対象に,相談業務の質の向上を図ることを目的とした「配偶者からの暴力被害者支援セミナー」を開催した。

 また,全国の配偶者暴力相談支援センター等に,配偶者からの暴力に関する専門的な知識や経験を有する者を派遣して助言や指導を行い,相談業務の充実を支援した。

 平成21年度においては,「女性に対する暴力をなくす運動」期間中に,民間団体と連携し,全国共通DV相談電話窓口を開設した。

 そのほか,配偶者からの暴力について相談できる窓口を知らない被害者を相談機関につなぐため,自動音声で最寄りの配偶者暴力相談支援センター等の相談窓口を案内する「DV相談ナビ」(ナビダイヤル0570-0-55210(全国共通))により,案内された相談窓口に被害者が直接相談できる転送サービスを開始し,相談体制の一層の強化を図った。

イ 法務省の人権擁護機関では,専用相談電話「女性の人権ホットライン」(ナビダイヤル0570-070-810(全国共通))を全国の法務局・地方法務局に設置して相談体制の一層の強化を図った。

 平成21年度においては,「女性に対する暴力をなくす運動」期間中の11月15日(日)から21日(土)までの7日間を,全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,様々な人権問題に悩む女性からの電話相談に応じた。

 また,配偶者暴力相談支援センターなど関係機関との連携を一層強化し,被害の救済及び予防に努めている。

2 子ども

(1)子どもが人権享有主体として最大限尊重されるような社会の実現を目指した啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,21世紀の社会を担う子どもたちの人権を守るため,「子どもの人権を守ろう」を年間強調事項として掲げ,子どもの人権専門委員が中心となって,学校における総合的な学習の時間等を利用し,子どもたちが「いじめ」について考える機会をつくる「人権教室」や「人権の花運動」を実施するなど1年を通して各種人権啓発活動を実施している。

(2)学校教育及び社会教育における人権教育の推進

 文部科学省では,学校,家庭,地域社会が一体となって教育上の総合的な取組を推進する「人権教育総合推進地域事業」,学校における人権教育について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究指定校事業」,人権教育に関する事業等の実践・成果を踏まえ,学校における人権教育に関する指導方法の在り方等について調査研究を行う「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」等を実施し,人権教育の推進に努めている。

 「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」においては,平成15年度以降,学校における人権教育の指導方法等の在り方について調査研究会議を開催して検討を行い,平成16年6月には「第1次とりまとめ」,平成18年1月には「第2次とりまとめ」の公表を行っている。さらに,同会議では,その後も全国の学校の指導者等が第2次とりまとめで示した理論への理解を深め,実践につなげていけるよう一層の検討を進め,平成20年3月には「第3次とりまとめ」をまとめた。文部科学省においてはこの「第3次とりまとめ」を全国の国公私立学校や教育委員会等に配布するなど調査研究の普及に努めている。

 平成20年度及び平成21年度においては,「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」による三次にわたる「とりまとめ」が,教育委員会・学校の人権教育の充実に向けた取組においてどのように活用されているかを検証することを目的とした調査を実施し,その分析を行った。

 平成21年度においては,社会教育における人権教育を一層推進するため,人権に関する学習機会の充実方策等についての実践的な調査研究を行うとともに,その成果の普及を図る「人権教育推進のための調査研究事業」を10都府県と5団体で実施し,40か所でこの事業を活用して子どもの人権に関する事業が実施された。

(3)道徳教育の推進

 文部科学省では,道徳教育の一層の充実を図るため,子どもたちが身に付ける道徳の内容を分かりやすく表し,道徳的価値について,自ら考えるきっかけとし,理解を深めていくことができる教材として「心のノート」を作成し,小・中学生に配布した。

 また,幼児期における教育は,人格形成の基礎を培う重要な役割を果たすことから,幼稚園が,道徳性の芽生えを養うことの充実を図っていくための実践的な研究を進めている。

(4)地域や学校における奉仕活動・体験活動の推進

 子どもの社会性や豊かな人間性をはぐくむ観点から,机上の知育だけではなく,具体的な体験や事物とのかかわりを通じた,様々な体験活動を積極的に推進することは極めて重要なことである。文部科学省では,平成14年度から,全国の学校における体験活動の展開を図る「豊かな体験活動推進事業」を実施している。

(5)いじめ・暴力行為・不登校等に対する取組の推進

 文部科学省では,いじめ,暴力行為,不登校など,問題を抱える児童生徒が適切な相談等を受けることができるよう,児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有するスクールカウンセラーを配置するとともに,社会福祉等の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャルワーカーを配置するなど,教育相談体制の整備を支援している。また,これらの生徒指導上の課題について,「いじめ対策緊急支援総合事業」及び「問題を抱える子ども等の自立支援事業」等を実施し,外部の専門家等からなる「学校問題解決支援チーム」や関係機関等と連携した「サポートチーム」,学校外の公的機関である「教育支援センター(適応指導教室)」等を有効活用し,児童生徒の問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応につながる効果的な取組や関係機関等と連携したモデル的な取組を推進している。

 なお,いじめについては,認知件数が依然として相当数に上っているなど,憂慮すべき状況にあり,文部科学省では,いじめは決して許されないが,どの子どもにもどの学校でも起こり得るものであること,いじめが生じた際には問題を隠さず,学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していくべきこと,問題行動に対しては,懲戒・出席停止を含め,毅然とした対応をとること等について引き続き指導を行い,学校等における対応の徹底を図っている。

 さらに,平成22年1月に「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」を設置して「子どもを見守り育てるネットワーク推進宣言」を採択し,関係機関や民間団体が連携し,子どもを対象とした相談体制の充実や学校・地域における子どもの居場所づくり等の取組を推進している。

 厚生労働省では,ひきこもり等の児童について,教育分野との連携を図りつつ児童相談所や児童養護施設等の機能を十分活用するとともに,家庭環境・養護問題の調整,解決に取り組んでいる。

(6)家庭教育に対する支援の充実

 文部科学省では,家庭の教育力の向上を図るため,「家庭教育支援チーム」の組織や,地域人材の養成,学校をはじめとした多くの親が集まる様々な場を活用した学習機会の提供等,地域の主体的かつ持続可能な取組への支援を実施した。また,家庭教育に無関心な親や仕事で忙しい親など待ち受け型の講座等では支援が行き届きにくい親への対応として,家庭教育支援チームが家庭や企業を訪問して支援を行うなど効果的な手法の開発を実施した。

(7)児童虐待等子どもの健全育成上重大な問題に対する取組

 児童虐待への対応については,平成12年11月,「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号。以下,「児童虐待防止法」という。)が施行されたが,その後,平成16年には,児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ,制度的な対応について充実が図られてきたところである。しかしながら,子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件が跡を絶たず,依然として,社会全体で取り組むべき重要な課題となっている。平成19年には,再度の法改正が行われ,平成20年4月に施行された。また,平成20年11月,新たな子育て支援サービスの創設,虐待を受けた子ども等に対する家庭的環境における養育の充実等の措置を講ずる「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平成20年法律第85号)が成立し,一部を除き平成21年4月から施行された。

ア 厚生労働省では,平成16年から11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け,児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るため,その期間中,関係府省庁や地方公共団体,関係団体等と連携した集中的な広報・啓発活動を実施している。平成21年度においては,月間標語の公募・決定,全国フォーラムの開催(11月14日~15日・新潟県妙高市),広報用ポスター・チラシの作成・配布及び政府公報を活用した各種媒体(テレビ,新聞,雑誌等)による広報啓発等を実施した。また,児童虐待防止の啓発を図ることを目的に,民間団体(特定非営利活動法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン・キャンペーン」について後援を行っている。

イ 文部科学省では,都道府県等を通じて,学校教育関係者や社会教育関係者に対して,児童虐待の防止に向けた取組の推進に関する通知を発出するとともに,各種会議等を通じて早期発見努力義務及び通告義務等について周知の徹底を図っている。

 また,国内・諸外国の先進的取組等を新たに収集・分析することなどにより,各学校・教育委員会における児童虐待防止に向けた取組の充実を図る「学校等における児童虐  待防止に向けた取組に関する調査研究」を平成17年度及び平成18年度に実施するとともに,児童が適切な相談を受けることができるよう,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの活用等,教育相談体制の整備を支援している。

 このほか,学校等における児童虐待防止のための取組の一層の充実を図るため,平成21年5月に,教職員用研修教材「児童虐待防止と学校」(CD-ROM)を都道府県等を通じて,学校教育関係者に配付し,学校等における児童虐待の早期発見・通告,関係機関との連携,虐待を受けた子どもへの対応等について,教職員の意識啓発と対応スキルの向上を図っている。

 さらに,平成22年3月,文部科学省と厚生労働省は,学校等と児童相談所等の相互の連携を強化するため,学校等から児童相談所等への児童の出欠状況等の定期的な情報提供の実施方法等に関して「児童虐待防止法」第13条の3の規定に沿った基本的な考え方を示す「学校及び保育所から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供に関する指針」を策定し,都道府県・指定都市の教育委員会,福祉部門等あてに通知した。

ウ 児童虐待による死亡事例等の検証は,事件の再発防止と対策を講ずる上での課題を抽出するために重要な意義を持つことから,社会保障審議会児童部会の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」において,平成16年から実施されており,これまで5次にわたる報告が取りまとめられている。

 このほか,「日本虐待・思春期問題情報研修センター」では,児童相談所等関係機関の職員を対象とした研修,専門情報の収集・提供等を行っている。

エ 外務省では,内閣府をはじめとする関係省庁と協力して,平成6年に締結した「児童の権利に関する条約」と併せ同条約の選択議定書の実施に努めており,条文を外務省ホームページに掲載している。また,平成22年3月には「児童の権利条約に関するシンポジウム~今後の課題」を開催し,同条約の実施促進に向けた議論を行った。

(8)「人権を大切にする心を育てる」保育の推進

 厚生労働省では,保育所において,保育所保育指針に基づき,児童の最善の利益を考慮するよう啓発を行うとともに,「人権を大切にする心を育てる」保育の推進を図り,児童の心身の発達,家庭や地域の実情等に応じた適切な保育の実施を推進している。

(9)子どもの人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,専用相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル0120-007-110(全国共通))を設置し,子どもが相談しやすい体制をとっている。とりわけ,平成21年6月28日(日)から7月4日(土)までの7日間を全国一斉「子どもの人権110番」強化週間とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,子どもや保護者等から多くの電話相談に応じた。また,法務省のホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口(SOS-eメール)」を開設したり,「子どもの人権SOSミニレター」(便せん兼封筒)を全国の小・中学校の児童・生徒に配布するなど,子どもたちがより相談しやすい体制を整備している。

 また,子どもの人権が侵害されている疑いのある事案を認知した場合には,人権侵犯事件として積極的に調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行い,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

 なお,児童虐待については,国民すべてに児童虐待についての通告義務が存在することなどの周知を含む人権啓発活動の充実に努めるとともに,児童虐待事案を認知した場合には,児童相談所等へ通告するとともに,人権擁護機関の立場からも,虐待を受けた児童の人権救済を図っている。

(10)教職員の資質向上等

 教職員の資質能力については,養成・採用・研修の各段階を通じてその向上を図っており,各都道府県教育委員会等が実施している教諭等に対する採用後1年間の初任者研修や在職期間が10年に達した者に対する10年経験者研修では,人権教育に関する内容が扱われるなど,人権尊重意識を高めるための取組が行われている。

3 高齢者

(1)高齢者についての理解を深め,高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を目指した啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,「高齢者を大切にする心を育てよう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会や座談会の開催,テレビ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(2)高齢者福祉に関する普及・啓発

 厚生労働省では,平成21年9月15日から21日までの7日間を「老人の日・老人週間」と定め「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに,老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」という趣旨にふさわしい行事が実施されるよう,関係団体等に対する支援,協力,奨励等を都道府県にお願いするとともに,「みんなで築こう活力ある長寿社会」を標語とする「平成21年『老人の日・老人週間』キャンペーン要綱」を内閣府のほか,全国社会福祉協議会など9団体とともに定め,その取組を支援した。

(3)学校教育における高齢者・福祉に関する教育の推進

 文部科学省では,学校教育において,高齢者との交流やボランティア活動等を推進し,高齢者への理解や福祉の重要性について指導している。

(4)高齢者の学習機会の促進

 平成13年に策定された高齢社会対策大綱においては,生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価される生涯学習社会の形成を目指すこととしている。

 文部科学省では,「人権教育推進のための調査研究事業」により,高齢者を対象とした学級・講座等を開設する地方公共団体を支援しており,平成21年度においては,5都府県と1団体でこの事業実施し,29か所でこの事業を活用して高齢者の人権に関する事業が実施された。

(5)世代間交流の機会の充実

 内閣府では,高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため,7月に東京都千代田区,10月に福岡県福岡市において「高齢社会フォーラム」を開催するなどの事業を実施した。

(6)ボランティア活動など,高齢者の社会参加の促進

ア 内閣府では,年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を毎年広く紹介しており,平成21年度においては,個人47名及び33団体を選考し,「高齢社会フォーラム」等を通じて,社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。

イ 農林水産省では,高齢化が進行している農山漁村において,高齢者が健康でいきいきと活躍できる環境づくりに向け,生産・加工や生活支援活動等を積極的に進めている高齢者の表彰及び交流集会を,平成21年11月5日から6日まで東京都港区の品川プリンスホテルにおいて開催した。

(7)高齢者の雇用・多様な就業機会確保のための啓発活動

 平成16年12月,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(平成16年法律第103号)が施行され,労働者の募集・採用に当たって,事業主が65歳未満の上限年齢を設定する場合に,その理由の明示が義務付けられた。厚生労働省では,官民の職業紹介機関の窓口の活用,地域の経済団体への働きかけ等により,その積極的な周知・広報を図り理解の徹底に努めた。

(8)高齢者の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,常設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において,高齢者に対する虐待等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行うとともに,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

 また,高齢者施設等の社会福祉施設において,入所者及びその家族が気軽に相談できるよう,特設の相談所を開設し,相談を受けた。さらに,平成21年9月6日(日)から12日(土)までの7日間を全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,高齢者等から多くの電話相談に応じた。

4 障害のある人

(1)共生社会を実現するための啓発・広報活動

 障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し,支え合う「共生社会」の理念の普及を図るため,毎年12月3日から9日までの「障害者週間」を中心に,全国で官民にわたって多彩な行事を集中的に開催するなど,積極的な啓発・広報活動を行っている。

 内閣府では,障害者週間に当たり,テレビ放送,新聞,ポスター等の多様な媒体による広報活動を実施したほか,障害者週間行事として,各地で週間を通して各種の行事を実施した。

 12月3日に東京都港区で開催された「障害者週間の集い」において,「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰等を行った。また,「地域全体で障害のある子どもを育むために」をテーマとしたシンポジウムのほか,障害のある人に関する様々なテーマについて関係団体等がセミナー等を開催した。

 12月5日に大分県との共催により「障害者への差別禁止と権利条約」をテーマにしたシンポジウムを大分市において,12月6日に北海道との共催により「障害者が暮らしやすい地域づくりと権利条約」をテーマにしたシンポジウムを札幌市において,それぞれ開催した。このほか,障害者週間のポスター等のパネル展等を全国6箇所で実施した(詳細は,障害者白書に記載)。

(2)障害のある人に対する偏見や差別を解消し,障害のある人の自立と完全参加を目指した啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,「障害のある人の完全参加と平等を実現しよう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会や座談会の開催,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

また,厚生労働省では,身体障害者補助犬法の趣旨及び補助犬の役割等についての一層の周知を目的として,ポスター,パンフレット,ステッカー等の作成・配布や,ホームページの開設,政府広報等の啓発活動を行っている。

(3)特別支援学校等における教育の充実及び障害のある人に対する理解を深める教育の推進

 文部科学省では,学校教育において,障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加を目指し,特別支援教育の充実を図るとともに,障害のある人に対する理解を深める教育の充実に努めている。平成20年7月から開催している調査研究協力者会議において,21年8月に入試における配慮・支援,キャリア教育・就労支援等の高等学校における特別支援教育の推進・充実に関する報告書をとりまとめた。さらに,22年3月には,特別支援教育の更なる充実を図るための検討の方向性及び課題を整理した審議経過報告をとりまとめた(詳細は文部科学白書に記載)。

 また,発達障害を含め,障害のある幼児児童生徒を支援するため,全都道府県に委嘱して実施する「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」等の施策を通じて,特別支援教育の体制整備を推進している。

 さらに,「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第80号。平成19年4月施行)により,従来の盲・聾・養護学校の制度は,複数の障害種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換され,また,小・中学校等においても特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。これらの制度改正と併せて,平成21年度においても,公立小・中学校における学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)等発達障害のある児童生徒に対する通級指導を充実するための定数改善を行ったほか,公立幼稚園,公立小・中学校に在籍する障害のある児童生徒に対して様々な支援を行う「特別支援教育支援員」を配置できるよう必要な支援を講じている。

 これに加え,小・中・高等学校等における学校教育諸活動全体を通じて,思いやりの心や奉仕の精神を育てる指導を行うほか,障害のある子どもと障害のない子どもとの交流及び共同学習の実施,学校教育関係者及び保護者等に対する啓発活動の実施等,障害のある人に対する理解を深める教育の充実に努めている(詳細は障害者白書に記載)。

 また,社会教育では,平成21年度に7都府県と3団体で人権課題に対する取組を推進することを目的とした「人権教育推進のための調査研究事業」を実施し,33か所で障害者の人権に関する事業が実施された。

(4)障害のある人の雇用の促進,障害のある人の職業能力の向上等

 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において,9月を障害者雇用支援月間として設定し,障害者ワークフェアの開催,ポスターや新聞等による啓発活動を行うことにより,国民とりわけ事業主に対して障害者雇用に関する理解を促した。

 また,障害のある人の職業的自立の意義を喚起するとともに,事業主及び社会一般の理解と認識を深めること等を目的に,平成21年10月30日から3日間,茨城県ひたちなか市において「第31回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)」が開催された。

(5)精神障害者に対する偏見・差別の是正のための啓発活動

 厚生労働省においては,平成16年9月,概ね10年間の精神保健医療福祉改革の具体的方向性を明らかにする「精神保健医療福祉の改革ビジョン」をとりまとめ,精神疾患に関する国民各層の意識の変革を進めている。具体的には,国民各層が精神疾患を正しく理解し,新しい一歩を踏み出すための指針である「こころのバリアフリー宣言」や,地域住民等に対して精神保健福祉に関する知識の普及等を行う精神保健福祉普及運動等を活用して,精神疾患についての正しい理解が広まるよう,情報発信を行っている。

 平成21年10月5日から11日までの間,「ふれあう心 あふれる笑顔 一人ひとりが主役,これまでも,これからも」をメインテーマとして,第57回精神保健福祉普及運動が実施された。

 また,期間中の10月9日に,第57回精神保健福祉全国大会を秋田県秋田市において開催した。

(6)障害のある人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,常設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において,障害のある人に対する差別,虐待等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行うとともに,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

 また,知的障害者更生施設等の社会福祉施設において,入所者及びその家族が気軽に相談できるよう,特設人権相談所を開設し,相談を受けた。さらに,平成21年9月6日(日)から12日(土)までの7日間を全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,障害者等から多くの電話相談に応じた。

(7)発達障害者への支援

ア 平成17年4月から施行されている発達障害者支援法を踏まえ,厚生労働省では,「発達障害者支援センター運営事業」,「発達障害者支援体制整備事業」,「発達障害者支援開発事業」及び「発達障害研修事業」を実施することで,地域における発達障害者に対する支援を促進している。

 また,「発達障害者情報センター」を平成20年3月に厚生労働省内に設置し(同年10月に国立障害者リハビリテーションセンターに移管),発達障害者やその家族,一般国民に対し,インターネットを通じて,発達障害に係る生活支援や社会参加,普及啓発等のための情報提供を行っている。

イ 文部科学省では,小・中学校の通常の学級に在籍するLD・ADHDの児童生徒に対する教育的支援を適切に行うため,平成18年4月からLD・ADHDの児童生徒を通級指導の対象としている。

 また,発達障害のある幼児児童生徒への特別支援教育を推進するため,乳幼児期から就労に至るまで一貫した支援体制の整備を総合的に図るための事業を全都道府県に委嘱しているほか,幼児期や高等学校段階におけるモデル事業を実施している。さらに,(独)国立特別支援教育総合研究所に設置されている「発達障害教育情報センター」において,主にインターネットを通じて,発達障害についての正しい理解啓発や各種情報提供等の充実を図っている(詳細は障害者白書に記載)。

5 同和問題

(1)同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育・啓発

 法務省の人権擁護機関では,同和問題に関する差別意識の解消のため,「部落差別をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会や座談会の開催,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(2)学校教育・社会教育を通じた同和問題の解決に向けた取組

 文部科学省では,学校教育における人権教育関係事業として「人権教育総合推進地域事業」,「人権教育研究指定校事業」を実施し,同和問題に関する差別意識の解消を図っている。

 また,社会教育では,平成21年度において,6都府県で「人権教育総合推進のための調査研究事業」を実施し,31か所でこの事業を活用して同和問題に関する事業が実施された。

(3)公正な採用選考システムの確立

 厚生労働省の職業安定機関では,企業の採用選考に当たって,人権に配慮し,応募者の適性・能力のみによって採否を決める公正な採用選考システムの確立が図られるよう,雇用主に対して,以下の啓発に取り組んだ。

ア 日本経済団体連合会,日本民間放送連盟など経済・事業別団体104団体に対して,文書により,公正な採用選考の確保について傘下企業への指導を要請

イ 公正な採用選考についてのガイドブック,ポスター,カレンダー等,各種啓発資料を作成し,事業所に配布

ウ 中学校,高等学校,大学等の卒業予定者に係る採用選考開始日に合わせて,新聞広報等各種広報媒体を通じた啓発活動を実施

エ 事業所における公正な採用選考システムの確立について,中心的な役割を果たす「公正採用選考人権啓発推進員」を,一定規模以上の事業所に配置するとともに,各労働局及び公共職業安定所が,同推進員に対して研修会を開催(全国で649回)

オ 従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対する研修会を開催(全国で391回)

(4)農漁協等関係農林漁業団体職員に対する啓発活動

 農林水産省では,農林漁業や農山漁村に起因する同和問題をはじめとした広範な人権問題に関する啓発活動を積極的に推進するため,都道府県を通じて農漁協等関係農林漁業団体の職員に対する研修等を実施するとともに,全国農林漁業団体が当該職員等を対象に行う同様の研修等に対する支援を実施した。

(5)隣保館における活動の推進

 隣保館においては,生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を実施しており,厚生労働省ではこうした事業に対し支援を行った。

(6)えせ同和行為の排除に向けた取組

 法務省では,同和問題を口実にして企業や官公署などに不当な利益や義務なきことを求める「えせ同和行為」を排除するため,全省庁の参加する「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設置し,政府一体となってえせ同和行為の排除の取組を行っている。

 また,えせ同和行為の実態を把握するため,昭和62年以降9回にわたりアンケート調査を実施している(平成21年1月に実施した調査結果の概要はこちら)。

 さらに,地方においても全国50の法務局・地方法務局を事務局として組織されている「えせ同和行為対策関係機関連絡会」に,平成22年4月現在で1,179の国の機関,地方自治体,弁護士会等が参加し,随時,情報交換のための会議を開くなど,様々な取組を展開している。

 都道府県警察においても関係機関と連携して,違法行為の取締り等,えせ同和行為の排除対策を推進している。

 経済産業省は,えせ同和行為に関するリーフレットを作成し,配布した。また,産業界・経済界向けにえせ同和行為対策セミナーを開催した。

(7)同和問題をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,同和問題をめぐる人権侵害事案に対し,人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ,その被害の救済及び予防を図っている。とりわけ結婚差別,差別発言等を人権擁護上看過できない事象としてとらえ,行為者や関係者に対して人権尊重の意識を啓発することによって,自発的・自主的に人権侵害の事態を改善,停止,回復させ,あるいは,将来再びそのような事態が発生しないよう注意を喚起している。

 また,インターネット上で,特定の地域を同和地区であるとするなどの差別を助長する書き込み等がされているのを認知した場合は,その情報の削除をプロバイダ等に要請するなど適切な対応に努めている。

6 アイヌの人々

 平成20年6月に,国会において「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が衆・参両院で全会一致で採択されたことを受け,同年7月,政府は,内閣官房長官の下に「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の開催を決定した。同懇談会は,アイヌの人々の現状等についての話を具体的に聞きながら審議を進め,平成21年7月に報告書をまとめ,政府に提出した(有識者懇談会の開催経過・報告書はこちら)

 政府は,同報告書を踏まえ,平成21年8月,内閣官房に「アイヌ総合政策室」を設置し,平成22年1月,アイヌの人々の意見等を踏まえつつ総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進するため,内閣官房長官が座長となり,政府,有識者及びアイヌの人々からなる「アイヌ政策推進会議」を開催するなど,アイヌ政策の総合的な企画・立案・推進に取り組んでいる。

 今後は,アイヌの人々や有識者の意見を聞きながら,有識者懇談会報告書の提言の具体化に取り組んでいくこととしている。

(1)アイヌ文化の振興,アイヌの伝統及び文化に関する普及啓発

 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成9年法律第52号)に基づき,(財)アイヌ文化振興・研究推進機構が行う事業に対して助成等を行った。

(2)アイヌ文化財の保護に関する助成

 文化庁は,文化財保護法(昭和25年法律第214号)に基づき,アイヌの有形の民俗文化財及び無形の民俗文化財について,北海道教育委員会が行う調査事業,伝承・活用等に係る経費について補助を行った。

(3)アイヌの人々に対する偏見・差別を解消し,アイヌの人々の尊厳を尊重する社会の実現を目指した啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,アイヌの人々に対する偏見や差別をなくし,アイヌの人々に対する理解と認識を深めるよう,「アイヌの人々に対する理解を深めよう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会の開催,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を行っている。

(4)学校教育におけるアイヌの人々に関する学習の推進

 中学校学習指導要領において,社会科で鎖国下の対外関係に関する学習で北方との交易をしていたアイヌについても取り上げることとしているなど,アイヌの人々に関する教育が行われている。

(5)各高等教育機関等におけるアイヌ語等に関する取組への配慮

 北海道の大学を中心に,アイヌに関する授業科目が開設されるなど,アイヌに関する教育・研究が行われている。

(6)生活館における活動の推進

 生活館においては,地域住民に対し,生活上の各種相談をはじめ,アイヌの人々に対する理解を深めるための広報・啓発活動等を総合的に実施しており,厚生労働省では,こうした事業に対し支援を行った。

(7)アイヌの人々の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

法 務省の人権擁護機関では,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において,アイヌの人々に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行うとともに,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

(8)農林漁業経営の近代化を通じた生活向上・啓発活動等の推進

 アイヌ住民の居住地区においては,農林漁業経営の近代化を通じて,アイヌ農林漁家に対する理解の増進や地域住民が一体となった生活向上・啓発活動等が行われており,農林水産省では,こうした取組に対し支援を行った。

7 外国人

(1)外国人に対する偏見・差別を解消し,国際化時代にふさわしい人権意識の育成を目指した啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,国民のすべてが国内・国外を問わず,あらゆる人権問題について理解と認識を深め,真に国際化時代にふさわしい人権意識をはぐくむため,「外国人の人権を尊重しよう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会や座談会の開催,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(2)学校等における国際理解教育及び外国人児童生徒教育の推進

 文部科学省では,平成19年度から,国際理解を深め,地球的な視野に立って主体的に行動することができる人材を育成するための「国際教育推進プラン」を実施し,学校が大学や特定非営利活動法人等と協力して地域の特色をいかしたモデルカリキュラムの開発等を行う取組を支援し,成果の普及に努めている。

 また,近年増加傾向にある公立小・中・高等学校における日本語指導の必要な外国人児童生徒の教育を支援するため,日本語指導等に対応するための教員の加配を行うとともに,外国人の子どもに対する就学促進や学校への受入体制の整備等を行う「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」等の取組を実施している。

 さらに,景気後退によって,ブラジル人学校等に通学しているブラジル人などの子どもの就学が困難になりつつある状況を受けて,平成21年3月27日に,平成21年度以降に講ずる施策を中心に取りまとめた「定住外国人の子どもに対する緊急支援(第2次)~定住外国人子ども緊急支援プラン~」を公表した。また,不就学・自宅待機となっているブラジル人等の子どもに対して,日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための場を設け,主に公立学校への円滑な転入が出来るようにする「定住外国人の子どもの就学支援事業」を,緊急措置として3年間の予定で国際移住機関(IOM)において実施することとした。平成21年度は32団体34件が事業を実施している。

(3)外国人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において,外国人であることを理由とした差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められた場合は,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行うとともに,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

 なお,外国人からの人権相談については,英語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京,大阪,名古屋,広島,福岡,高松の各法務局と神戸,松山の各地方法務局において,それぞれ曜日を指定して開設し,相談に応じている。

8 エイズウイルス(HIV)感染者・ハンセン病患者等

(1)HIV感染者等

ア エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるよう,「HIV感染者等に対する偏見をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会や座談会の開催,テレビ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

 厚生労働省では,12月1日の「世界エイズデー」に向けてキャンペーンイベントを実施した。また,エイズに関する電話相談事業の実施等,HIV/AIDSに対する正しい知識の普及啓発活動に努めている。

イ 学校教育におけるエイズ教育等の推進

 文部科学省では,学校教育において,エイズ教育の推進を通じて,エイズ患者やHIV感染者に対する偏見や差別をなくすとともに,教材作成や教職員の研修を推進した。

ウ HIV感染者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法省の人権擁護機関では,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談などで,HIV感染者等に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行うとともに,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行い,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

(2)ハンセン病患者・元患者等

ア ハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動

 厚生労働省では,ハンセン病に対する正しい知識の普及のため,様々な普及啓発活動を行っている。平成21年10月に,ハンセン病を正しく理解するための中学生向けパンフレット及び指導者向け教本「ハンセン病の向こう側」を作成し,配布した。

 また,平成22年2月13日に香川県高松市で法務省等と連携し,ハンセン病問題に対する正しい知識の普及・啓発を目的をした「第9回ハンセン病問題に関するシンポジウム」を実施した。

 さらに,平成21年度より新たに,ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律(平成13年法律第63号)の施行日である6月22日を「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」と定め,同日に東京都千代田区で厚生労働省主催で追悼,慰霊及び名誉回復の行事を実施した。

 法務省の人権擁護機関では,ハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるよう,「ハンセン病患者等に対する偏見をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,各種啓発活動を実施している。

 その一環として,平成21年8月22日に香川県高松市で,同月30日に沖縄県那覇市で,中学生等をパネリストとした,ハンセン病に関する「夏休み親と子のシンポジウム」をそれぞれ厚生労働省等と連携して開催するとともに,インターネットバナー広告を実施したり,全国版の小学生新聞・中学生新聞に啓発広告を掲載した。

イ ハンセン病患者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,ハンセン病患者等に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行うとともに,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

ウ 国連における取組

 我が国は国連人権理事会にハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくすための決議を提出するなど,国際社会に対し積極的な働きかけを行っている。

9 刑を終えて出所した人

 法務省では,犯罪や非行を防止し,犯罪をした人や非行のある少年の改善更生を支えるため,地域住民の理解と参加を得て,第59回“社会を明るくする運動”を実施する中で,刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し,これらの人の社会復帰に資するための啓発活動を実施した。

 同運動においては,ミニ集会・住民集会の開催のほか,講演会・弁論大会等を行い,小・中学生を対象とした作文コンテストでは191,993点の応募があった。

 法務省の人権擁護機関では,刑を終えて出所した人に対する偏見をなくし,理解を深めるよう,「刑を終えて出所した人に対する偏見をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会の開催,雑誌等による広報等啓発活動を実施している。

 また,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,刑を終えて出所した人に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行うとともに,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行い,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な措置を講じている。

10 犯罪被害者等

(1)犯罪被害者等の人権に関する啓発・広報

ア 内閣府では,毎年11月25日から12月1日までの間を「犯罪被害者週間」とし,犯罪被害者等に関する国民の理解を深めるための啓発事業を集中的に実施している。平成21年度の同週間においては,内閣府主催の「犯罪被害者週間」国民のつどい中央大会及び地方公共団体等との共催の地方大会(北海道・神奈川県・奈良県・沖縄県)を開催し,基調講演やパネルディスカッション等を行って犯罪被害者等に係る様々なテーマについて議論した。

 また,平成21年度の標語募集においては,愛知県の中学生が応募した「考えよう 命の重み もう一度」を最優秀作品とし,上記中央大会において内閣府特命担当大臣(犯罪被害者等施策担当)から表彰を行い,その標語をポスターなどに使用した。その他,関係機関・団体と協力し,各種啓発事業を実施している(詳細は「犯罪被害者白書」に記載)。

イ 法務省では,犯罪被害者保護・支援のための制度を広く国民に紹介し,その周知を図るために「犯罪被害者の方々へ」と題するパンフレットを作成し,全国の検察庁及び各都道府県警察等において犯罪被害者等に配布しているほか,同パンフレットを法務省ホームページ及び検察庁ホームページに掲載し,情報提供を行っている。

 また,刑事裁判・少年審判終了後の更生保護における犯罪被害者等のための制度について,リーフレットを配布するなどの広報を実施した。

 さらに,法務省の人権擁護機関では,犯罪被害者やその家族の人権問題に対する配慮と保護を図るため,「犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう」を年間強調事項に掲げ,1年を通して全国各地で,講演会,座談会等の開催,新聞等による広報,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。

ウ 警察庁では,パンフレット「警察による犯罪被害者支援」,「犯罪被害給付制度のご案内」,啓発用ビデオ「再び平穏な暮らしへ~犯罪被害給付制度の拡充~」等を作成し,様々な機会に活用するとともに,犯罪被害者支援広報用ホームぺージ(日本語版), (英語版)の開設や,警察庁広報重点として「被害者支援活動の周知と参加の促進及び犯罪被害給付制度の周知徹底」を設定するなど,広報・啓発を実施した。

 犯罪被害者等への支援活動を行う「特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク」に加盟している民間被害者支援団体は,警察等の関係機関との連携を図りながら,被害者支援に関する広報啓発,電話・面接相談,ボランティア相談員の養成及び研修等の活動を行っている。

(2)犯罪被害者等に対し援助を行う者等に対する教育訓練

ア 検察職員

 検察職員に対しては,犯罪被害者保護を目的とした諸制度について,各種研修や日常業務における上司による指導等を通じて周知し,適正に運用するよう努めている。

イ 警察職員

 警察においては,被害者に接する個々の警察職員が犯罪被害者等の立場に立った適切な支援,対応を行うためには,職員への教育が極めて重要であるとの認識の下,被害者支援の意義や各種施策の概要,犯罪被害者等の立場,心情への配慮や具体的な対応の在り方等についての教育を実施している。

ウ 保護観察官

 保護観察官については,犯罪被害者等に対して適切な対応を行うことができるようにする観点から,また,保護観察対象者に対して犯罪被害者等の状況や心情について十分理解させ,そのしょく罪意識の涵(かん)養を図る観点等から,保護観察官を対象にした各種研修において,犯罪被害者等が置かれている状況等や刑事政策における被害者支援の必要性等をテーマとして,犯罪被害当事者や民間ボランティアの方々等による講義等を実施している。

エ 民間の被害者支援団体のボランティア等

 民間の被害者支援団体の一員として被害者支援を行うボランティア等に対して,各都道府県警察は,警察職員を講師として派遣する,被害者支援教育用DVDを活用するなどにより団体と連携し,より効果的な教育訓練を行うよう努めている。

(3)犯罪被害者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

 法務省の人権擁護機関では,常設・特設の人権相談所において相談を受けるとともに,人権相談等で,犯罪被害者等に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,関係機関と連携・協力して当該事案に即した適切な措置を講じている。

11 インターネットによる人権侵害

(1)個人のプライバシーや名誉に関する正しい知識を深めるための啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,「インターネットを悪用した人権侵害は止めよう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会等の開催,ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布等の啓発活動を実施している。

 また,子ども向けのインターネットに関する人権啓発教材「知ってる!?ケータイやインターネットも使い方ひとつで…」を配布しているほか,主要ブログサイトに人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたインターネットバナー広告を掲載した。

(2)インターネットをめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

ア 総務省では,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号。以下「プロバイダ責任制限法」という。)の適切な運用に努めてきたところ,平成18年8月に取りまとめられた「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書」を受け,同年11月に電気通信事業者団体において,インターネット上で人権侵害情報等の違法・有害情報への自主的な対応を促進するために「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」が策定された。

 また,平成21年8月から,これらの取組について実際に削除を行うプロバイダ等を支援するため,プロバイダ責任制限法や各種ガイドライン等の相談を受け付ける違法・有害情報相談センターを設置している。

イ 法務省の人権擁護機関では,日本国憲法の保障する表現の自由に十分配慮しつつ,一般に許される限度を超えた他人の人権を侵害する書き込み等の悪質な事案に対して,発信者が判明する場合には,同人に対する啓発を通じて侵害状況の排除に努め,また,発信者が特定できない場合には,法務省の人権擁護機関による削除要請について明文で規定した「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」を活用して,当該情報の削除をプロバイダ等に求めるとともに,ガイドラインの対象ではない差別助長行為についても,適宜の方法で削除を求めるなど,適切な対応に努めている。

(3)インターネットなどを介したいじめ等への対応

 文部科学省においては,児童生徒の情報活用能力を育成するための情報教育を各学校段階を通して体系的な実施を図る中で情報モラル教育を推進するとともに,学校における情報モラル教育の一層の推進を図るため,地域に専門家を派遣する事業や,教員等に対して情報モラルに関する専門的な研修を実施した。

 なお,学校における携帯電話の取扱いに関して,小中学校では原則持込禁止とすべきなどの指針に沿って,学校,教育委員会において指導方針を定め,児童生徒への指導を行うよう平成21年1月に通知を発出して周知した。

 また,保護者等に対する啓発を図るため,有害情報に係る犯罪・被害,トラブル等における対応に関する映像資料を作成し活用すること,携帯電話利用に係る親子のルールづくり等に関するリーフレットの作成・配布,インターネットの安心・安全な利用のための啓発講座の全国実施に取り組んでいる。

12 北朝鮮当局によって拉致された被害者等

 北朝鮮当局による拉致は,我が国に対する主権侵害であるとともに重大な人権侵害である。

 拉致問題に関する啓発については,拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律(平成18年法律第96号。以下「北朝鮮人権法」という。)において,政府及び地方公共団体が拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものと定めている。また,拉致問題の解決には,国内世論及び国際世論の後押しが重要であるとの観点から,政府は,拉致問題に関する国内外の理解促進に努めている。

 平成21年度においては,拉致問題対策本部を中心とした関係省庁や地方公共団体において,以下のとおり具体的施策を実施した。

(1)北朝鮮人権侵害問題啓発週間における取組

 北朝鮮人権法は,12月10日から16日までを北朝鮮人権侵害問題啓発週間と定めており,12月12日に政府主催行事として,拉致問題対策本部と法務省の共催による「拉致問題講演会」を開催したほか,同週間の周知を目的としたインターネットバナー広告及び交通広告の実施,関係省庁,地方公共団体と連携したポスターの掲出等,同週間にふさわしい活動に取り組んだ。

(2)広報媒体の活用

 拉致問題対策本部は,啓発用パンフレット・DVDの頒布,インターネットにおける配信,拉致問題パネルの貸出し,国内の学校における映画「ABDUCTION」及びアニメ「めぐみ」の上映会の開催,民間団体からのアイディアを活用した広報,等を実施した。

(3)地方公共団体・民間団体との協力

 拉致問題対策本部は,地方公共団体及び民間団体との共催等による啓発行事を地方都市(札幌市,高松市,鯖江市,大阪市)において開催した。

(4)海外に向けた情報発信

 中井拉致問題担当大臣は,訪日した国連関係者のムンタボーン北朝鮮人権状況特別報告者及びサルキン国連人権理事会強制的失踪作業部会議長等と拉致問題について意見交換を行った。また,海外の報道関係者・専門家を本国での記事執筆を目的として日本に招聘し,拉致問題への理解を深める機会を提供するとともに,これら招聘者や在京外国プレス等に対するニュースレターの配信を実施した。

(5)北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めるための啓発活動

法務省の人権擁護機関では,「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会の開催,テレビ・ラジオ放送,新聞・広報紙による広報等の啓発活動を実施している。

(6)国連における取組

 我が国は,EUと共同で北朝鮮人権状況決議を国連総会及び人権理事会に提出し,同決議が採択され,拉致問題を含む北朝鮮の人権状況改善を求める国際社会としてのメッセージを発出した。

13 その他の人権課題

(1)性的指向(異性愛,同性愛,両性愛)を理由とする偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動

 法務省の人権擁護機関では,「性的指向を理由とする差別をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会等の開催,雑誌等による広報,啓発冊子等の配布等の啓発活動を実施している。

 また,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において性的指向に関する嫌がらせ等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,関係機関と連携・協力して当該事案に即した適切な措置を講じている。

(2)ホームレスの人権及びホームレスの自立の支援等

 政府は,平成14年7月に制定された,「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(平成14年法律第105号)により,平成15年7月,ホームレスの自立の支援等に関する基本方針を策定し,平成20年7月に見直しを行った。

 法務省の人権擁護機関では,「ホームレスに対する偏見をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,各種啓発活動を実施している。

 また,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等においてホームレスに関する嫌がらせ等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,関係機関と連携・協力して当該事案に即した適切な措置を講じている。

(3)性同一性障害者の人権

 法務省の人権擁護機関では,「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,雑誌等による広報等の啓発活動を実施している。

 また,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において性同一性障害者に関する嫌がらせ等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,関係機関と連携・協力して当該事案に即した適切な措置を講じている。

(4)人身取引(トラフィッキング)事犯への適切な対応

ア 我が国の人身取引をめぐる近年の情勢を踏まえ,人身取引に係る懸案に適切に対処し,政府一体となった人身取引対策を引き続き推進していくため,平成21年12月22日に開催された犯罪対策閣僚会議第14回会合において,人身取引対策行動計画2009を決定した。

イ 法務省の人権擁護機関では,「人身取引をなくそう」を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,雑誌等による広報,啓発冊子等の配布等の啓発活動を実施している。

 また,常設・特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等において,人身取引の疑いのある事実を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵犯の事実が認められれば,関係機関と連携・協力して当該事案に即した適切な措置を講じている。

ウ 外務省では,犯罪組織等による被害者の我が国への送り込みを防止する観点から,在外公館等における査証審査を厳格化するとともに,ホームページ上で「人身取引対策に伴う査証審査厳格化措置」についての広報活動を実施している。

エ 内閣府では,女性に対する暴力をなくしていくという観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施した。

オ 警察庁では,「コンタクトポイント連絡会議」を開催し,関係国の在日大使館,国際機関,NGO等と人身取引被害者の発見,保護についての情報交換や意見交換を行うとともに,人身取引被害の警察等への連絡を呼び掛けるリーフレットを9か国語で作成し,被害者等の目に触れやすいところで配布している。

カ 独立行政法人国立女性教育会館では,人身取引に関する調査研究を実施するとともに,会館にて作成した啓発パネル及びリーフレットの活用を通じて,全国での教育・啓発に努めている。

第3節 人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等

1 研修

(1)検察職員

 検察職員に対しては,各種研修において人権等に関する講義を実施しているほか,日常業務における上司による指導等を通じ,基本的人権を尊重した検察活動の徹底を図っている。

 平成21年度は,各種研修において,人権をめぐる諸問題や国際人権関係条約に関する講義を実施した。

(2)矯正施設職員

 平成15年12月に行刑改革会議から示された「行刑改革会議提言~国民に理解され,支えられる刑務所へ~」を踏まえ,監獄法改正をはじめとした一連の改革を行ってきた。現行の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(平成17年法律第50号)では,刑務官に対し,被収容者の人権に関する理解を深めさせるための研修及び訓練を行うこととされており,同法の精神等に基づき研修や訓練を実施し,人権意識の向上に努めているところである。

 刑務官を含め,矯正施設の職員については,被収容者の人権の尊重を図る観点から,矯正研修所及び同支所(全国8か所)において,新採用職員,幹部職員等に対し,被収容者の権利保障・国際準則等に係る研修,人権啓発,個人情報の保護等に係る研修を実施している。

 平成21年度は,初任研修課程及び任用研修課程等の研修において,憲法,成人矯正法,少年院法のほか,被収容者の人権に関する条約,犯罪被害者の人権,セクシュアル・ハラスメント等について,研修を実施した。

 また,専門研修課程において,刑事施設の処遇部門に勤務する主任矯正処遇官等92人に対し,民間プログラムによる行動科学的な視点を取り入れた研修を行うとともに,参加した研修員を講師として所属する刑事施設や少年院においても自庁研修を実施したほか,各矯正施設においては,事例研究・ロールプレイング等の実務に即した自庁研修を行うなど,職員の人権意識の改革に努めている。

(3)更生保護官署関係職員

 更生保護官署関係職員に対しては,保護観察官を対象とした研修において,人権に関する講義を継続して実施している。平成21年度は254人に対して,人権に関する講義を実施した。

 また,社会復帰調整官を対象とした研修において,医療観察対象者の人権尊重等の観点から,平成21年度に41人に対して,精神障害者の人権等に関する講義を実施した。

 保護観察所が実施している保護司に対する各種研修においても,保護観察等の処遇の場面で個人情報の取扱いに配慮するよう啓発に努めている。

(4)入国管理関係職員

 入国管理局関係職員研修において,基本的人権の尊重,人権擁護の現状及び人身取引関係の講義を実施している。平成21年度は合計677人が受講した。

(5)教員・社会教育関係職員

 独立行政法人教員研修センター及び各都道府県等において,人権尊重意識を高めるための研修を実施している。

 また,社会教育主事講習において,人権問題を取り上げ,人権問題に関する正しい知識を持った社会教育主事の要請を図っている。

 平成21年度は,全国14か所(計15講習)の国立大学等に社会教育主事講習を委嘱し,全国で675人が修了した。

 さらに,人権に関する学習活動を推進するための指導者研修会等を実施する都道府県に対し支援を行う「人権教育推進のための調査研究事業」により,指導者の資質向上を目指した。

 なお,地方公共団体の社会教育における人権教育担当者が参集し,人権教育の推進方策及び今後の課題について研究協議を行う全国研修会を,国立教育政策研究所社会教育実践研究センターで開催した(平成22年2月25日~26日)。

(6)医療関係者

 厚生労働省では,医療関係者の養成課程において,人の尊厳を幅広く理解するための授業を教育内容に含めることを求めるなど,患者の人権を十分に尊重するという意識・態度の育成を図った。

(7)福祉関係職員

 厚生労働省では,全国主任児童委員研修会等を開催し,地域住民や関係機関との連携について考えるシンポジウム等を実施し,人権の尊重等についての理解を深めている。

 また,児童福祉関係施設において子どもの人権を尊重した処遇を充実させるため,国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所において研修を行った。

 平成21年度は合計981人が受講した。

(8)海上保安官

 海上保安庁では,海上保安大学校等における,初任者教育及び職員に対する再研修において,人権に関する教育を行っている。

(9)労働行政関係職員

 厚生労働省では,職員の職位に応じて行われる中央研修において,同和問題等を中心とする人権の講義を実施している。平成21年度は,1,621人が受講した。

(10)消防職員

 消防庁消防大学校では,消防事務に従事する職員,消防職員・消防団員に対し,人権教育を実施している。

 平成21年度における人権教育については,幹部科(272名),上級幹部科(42名)及び予防科(96名)において,人権擁護をめぐる国内外の諸問題及び男女共同参画について講義を実施した。

(11)警察職員

 警察では,職務倫理に関する教育を最重点項目に掲げ,各級警察学校及び警察署等の職場において,人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」に重点を置いた教育を行ったほか,基本的人権に配慮した適正な職務執行ができるよう,必要な知識・技能を修得させるための各種教育を行った。

 警察庁においては,平成20年1月に策定した「警察捜査における取調べ適正化指針」に基づき,被疑者取調べ監督制度を適切に運用するほか,適正捜査に関する教養の充実を図る一環として,警察大学校において「取調べ専科」を新設するなど,具体的事例に基づいた実践的な教養の実施,指導的立場にある警察官に対する教養の充実等,各種施策を着実に実施している。平成21年度は,合計49名が受講した。

(12)自衛官

 防衛省では,防衛大学校や防衛医科大学校等において,民主主義,基本的人権の尊重等の憲法の理念等について教育を実施した。

 また,自衛隊の各種学校等では,自衛隊法に規定する「服務の本旨」にのっとり,人格の尊重等を基本とする精神教育を実施した。

(13)公務員

ア 法務省では,中央省庁等の職員を対象とする「人権に関する国家公務員等研修会」を開催している。平成21年度は,9月16日に「インターネット社会の人権課題」(講師・杉井鏡生氏,参加者385人),平成22年2月17日に「アイヌ民族の歴史と人権」(講師・本田優子氏,参加者420人)の2回開催した。

 また,都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識を習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している。平成21年度は,9月2日から同月4日までの3日間(東京会場:参加者68人),9月28日から同月30日までの3日間(京都会場:参加者101人),10月14日から同月16日までの3日間(福岡会場:参加者63人)の3回開催した。

イ 人事院では,全府省庁の職員を対象に実施している役職段階別研修等において,女性,高齢者,障害のある人等の人権課題を幅広くカリキュラムに取り入れた研修を行った。平成21年度に人事院が実施した研修のうち,人権を取り扱ったものは,46コースで,参加者数は2,155人であった。また,以上に加えて新たな取組として,平成21年度下半期より,若手・中堅職員を対象とする役職段階別研修において,法務省が作成した啓発冊子「人権の擁護」を配布するとともに,その際,人権一般に対する認識を更に深める指導を行うこととした。

ウ 外務省では,新入職員等を対象とした各種研修の中で,人権問題や人権外交等に関する講義を,また,在外公館に勤務する予定の各府省庁職員を対象とした研修の中で,外交と人権に関する講義を行った。

エ 自治大学校では,地方公共団体の幹部となる地方公務員の政策形成能力等を総合的に養成することを目的に高度な研修を行っているが,平成21年度の人権教育については,4課程の課目の中で実施した。

2 国の他の機関との協力

 裁判官の研修を実施している司法研修所では,裁判官に対する研修の際に人権問題に関する各種講義を設定している。

 なお,上記研修を実施するに当たり,法務省等から講師を派遣するなどの協力を行った事例もある。

第4節 総合的かつ効果的な推進体制等

1 実施主体の強化及び周知度の向上

(1)実施主体の強化

 政府は,人権擁護推進審議会の人権救済制度の在り方に関する答申及び人権擁護委員制度の改革についての答申を踏まえ,人権委員会の設置等,人権啓発の総合的かつ効果的な推進が可能となるような新たな制度の構築に向けた検討を進め,平成14年3月に「人権擁護法案」を国会に提出したが,同法案は,平成15年10月10日,第157回臨時国会において,衆議院解散に伴い廃案となった。

 現在,法務省において,新たな人権救済制度の創設について検討を行っているところである。

(2)周知度の向上

 平成21年度において,法務省では,法務省の人権擁護機関の周知を図るなどの目的のため,啓発冊子「人権の擁護」,人権擁護委員制度周知用冊子「人権擁護委員—その活動と役割—」,を作成し,人権週間,人権擁護委員の日を中心に講演会等の各種の啓発活動で使用している。

2 実施主体間の連携

(1)人権教育・啓発に関する中央省庁連絡協議会

 平成12年9月25日,関係省庁事務次官等申合せにより,各府省庁等の教育・啓発活動について情報を交換し,連絡するための場として,人権教育・啓発中央省庁連絡協議会が設置された。

 平成21年度は,幹事会を2回開催し,啓発活動等についての情報交換を行うとともに,人権教育・啓発推進法に基づく年次報告についての協議も行われた。

(2)人権啓発活動ネットワーク協議会

 法務省では,平成12年9月までに,「人権啓発活動都道府県ネットワーク協議会」を都道府県単位(北海道にあっては,法務局及び地方法務局の管轄区域単位)に設置し,さらに,平成20年3月までに市町村及び人権擁護委員協議会等を構成員とする「人権啓発活動地域ネットワーク協議会」を全国193か所に設置した。このネットワークを利用して,国,地方公共団体,人権擁護委員組織体及びその他の人権啓発の実施主体が,それぞれの役割に応じて相互に連携協力することにより,各種の人権啓発活動を効率的かつ効果的に実施している。

(3)文部科学省と法務省の連携

 文部科学省では,従来から人権教育に関する会議・研修の場において,法務省・法務局等の人権啓発の担当官による講義等を適宜実施している。

 そのほか,法務省の主催する全国中学生人権作文コンテストの優秀作品の作品集について,教育委員会等を通じて,学校における活用を依頼した。さらに,「子どもの人権SOSミニレター」や「子どもの人権110番」等,法務省における相談事業の学校現場への周知に必要な協力を行った。

(4)要保護児童対策地域協議会

 児童虐待については,福祉関係者のみならず,医療,保健,教育,警察,司法,さらにはNPOなど地域の関係機関や地域住民の幅広い協力体制の構築が不可欠であることから,市町村における「子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)」の設置促進及び機能強化を図っている。

3 担当者の育成

(1)人権啓発指導者養成研修会

 法務省では,地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識を習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している。

 平成21年度は,9月2日から4日までの3日間(東京会場:参加者68人),9月28日から30日までの3日間(京都会場:101人),10月14日から16日まで3日間(福岡会場:63人)の3回開催した。

(2)人権擁護事務担当職員,人権擁護委員に対する研修

 法務省では,法務局・地方法務局の人権擁護課長,支局長等を対象に専門科研修などを実施し,人権擁護行政に携わる職員の養成をしている。

 人権擁護委員に対しては,新任委員に対する委嘱時研修をはじめとする各種研修を通じて,人権擁護委員として職務遂行に必要な知識及び技能の習得を図っている。また,同和問題講習会,男女共同参画問題研修も実施している。

(3)公正採用選考人権啓発推進員に対する研修

 厚生労働省では,「公正採用選考人権啓発推進員」に対し,研修会を開催し(全国で649回),また,従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対し,「事業所における公正な採用選考システムの確立」について研修会を開催(全国で391回)した。

4 内容・手法に関する調査・研究

 法務省では,これまで,広く国民を対象として,人権に対する理解を深めてもらうために各種啓発活動を行い,その事業の種類・内容に応じて,アンケート調査等により,その効果を測定・検証している。人権啓発活動の効果測定方法や検証方法については,いまだ確立した手法がなく,必ずしも体系的なものではなかったことから,人権啓発活動について,その効果を測定し,検証する方法を確立する等のため調査・研究を行った。

5 (財)人権教育啓発推進センターの充実

 (財)人権教育啓発推進センターは,民間団体としての特質をいかした人権教育・啓発活動を総合的に行うナショナルセンターとしての役割を果たすため,法務省や地方公共団体からの委託事業のほか,情報誌「アイユ」の刊行,人権啓発ポスターの作成,各種人権啓発パンフレットの制作,自治体・企業等を対象とした研修の受託業務等センター独自の事業を行っている。平成21年度は,人権講座を9回開催したほかセミナーを4会場で開催した。

 また,同センターでは,地方公共団体,各種研究団体等で制作した書籍・図画・ビデオ等を収集・購入し,同センター内に設置した「人権ライブラリー」において,これら書籍・図画・ビデオ等を広く一般の人々に提供等を行っている。

(1)データベース運営・活用

 国及び地方公共団体等から提供された人権教育・啓発に関する各種情報・資料等を収集・整理し,人権関係情報データベースに登録すると同時に,これをデータ化して蓄積し,それを利用者が検索するという形で情報提供を行っている。これらのデータベースは,だれでも自由に利用することができ,人権センターのホームページを通じて必要な情報が取り出せる。

 平成21年度に収集・登録されたものは,出版物2,432件,講演会2,595件,テレビ・ラジオ放送173件,その他の各種事業1,636件であった。

(2)人権ライブラリーの運営

 地方公共団体,各種研究団体等で制作した人権に関する書籍・図画・ビデオ等を収集・購入し,同センター内に設置した「人権ライブラリー」において,これら書籍・図画・ビデオ等を広く一般の人々に提供した。

6 マスメディアの活用等

(1)マスメディアの活用

ア テレビ,ラジオ等の活用
(ア) 全国一斉「子ども人権110番」強化週間に関する広報

 政府広報オンライン「月間・週間記事」や地方自治体の広報誌に記事を掲載

(イ) 全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間に関する広報

 政府広報オンライン「行事カレンダー」や地方自治体の広報誌に記事を掲載

(ウ) 全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間に関する広報

 政府広報オンライン「お役立ち記事」や地方自治体の広報誌に記事を掲載

(エ) 第61回人権週間に関する啓発広報
(a) 大型ビジョン放映(羽田空港フューチャービジョン等)(平成21年11月27日~12月10日)

 

(b) ラジオスポットCM(平成21年12月4日~10日,全国FM放送協議会(FEN)38局)

 

(c) インターネットバナー広告(平成21年12月2日~10日)

 

(d) 政府広報テレビ番組「キク!みる!」及び「『ご存知ですか』~くらしナビ最前線~」で「人権週間」をテーマに放送(平成21年11月27日,同年12月3日)

 

(オ) HIV感染者・ハンセン病患者等の人権に関する啓発広報

 ハンセン病に関する「夏休み親と子のシンポジウム」等のインターネットバナー広告を掲載(平成21年8月9日~8月30日)

(カ) インターネットによる人権侵害に関する啓発
(a) 政府広報テレビ番組「中西哲生のJust Japan」で「インターネットを悪用した人権侵害」をテーマに放送(平成21年7月11日)

 

(b) 主要ブログサイトに人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたインターネットバナー広告を掲載(平成21年11月から平成22年3月)

 

(キ) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報

 Yahoo! JAPANニュース面において,同週間の周知を目的としたインターネットバナー広告を掲載(平成21年11月30日から12月13日)

イ 新聞紙,雑誌の活用
(ア) 「障害者雇用の促進」に関する広報

 障害者雇用支援月間に関する啓発広報(平成21年8月30日)

(イ) 「公正な採用選考システムの確立」に関する公告

 公正な採用選考に関する啓発広告を全国紙(5紙)及び地方紙(44紙)に掲載(平成21年5月8日ほか)

(ウ) 全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間に関する広報

 全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間の広報記事を内閣府広報誌「共同参画」10月号に掲載するとともに,周知広告を全国紙(4紙)及び地方紙(67紙)に掲載(平成21年11月)

(エ) 全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間に関する広報

 全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間の周知広告を全国紙(3紙)及び地方紙(3紙)に掲載(平成21年9月)

(オ) 全国中学生人権作文コンテストに関する啓発広報

 全国中学生人権作文コンテストに関する啓発広報を地方紙(52紙)に掲載(平成21年11月1日~12月12日)

(カ) 第61回人権週間に関する啓発広報

 平成21年12月3日から4日に地方紙(52紙)に啓発広告を掲載した。

 また,全国版の小学生新聞(同年12月4日)・中学生新聞(同年12月6日)に啓発広告を掲載した。

 さらに,人権週間特集記事及び啓発広告を読売新聞(同年12月6日)に掲載した。

(キ) ハンセン病患者等の人権に関する啓発広報

 全国版の小学生新聞(平成21年9月25日,10月16日)・中学生新聞(平成21年9月27日,10月18日)にハンセン病に関する「夏休み親と子のシンポジウム」の記事等を掲載した。

(2)民間のアイディアの活用

 法務省では,(財)人権教育啓発推進センターに対し,啓発活動の推進に効果的な人権啓発教材の作成,人権啓発ビデオの制作,人権啓発フェスティバルにおけるシンポジウム等の開催等各種の人権啓発活動事業を委託するとともに,ポスター等の作成に当たっては,民間の制作会社の意見を採り入れるなどしている。

 また,地方公共団体等を対象とする人権啓発指導者養成研修や法務局・地方法務局の人権担当者に対する研修等において,民間から各人権課題に関する専門家など講師に招き,啓発活動に関する助言等を行っている。

(3)国民の積極的参加意識の醸成

ア 人権啓発フェスティバルの開催

 人権啓発フェスティバルは,市民参加型の方式を取り入れつつ,各種の内容,態様の人権啓発活動を一体的・総合的に実施することにより,幅広い層の地域住民の参加を促し,効果的に人権尊重思想の普及高揚を図ることを目的として,毎年2か所において開催している。

 平成21年度は,岐阜県岐阜市,宮城県仙台市で開催し,両会場合わせて63,600人を超える多数の参加者があった(P5参照)。

イ 全国中学生人権作文コンテスト

 法務省の人権擁護機関では,次代を担う中学生が,人権問題についての作文を書くことによって,豊かな人権感覚を身に付けることを目的に,「全国中学生作文コンテスト」を実施している。平成21年度で29回目を迎え,6,624校が参加し,883,746編という多数の応募があった(P4参照)。

ウ 「世界エイズデー」ポスターコンクールの実施

 厚生労働省では,HIV/AIDSの正しい知識の普及啓発を目的として「世界エイズデー」ポスターコンクールを実施した。小学生の部57点,中学生の部143点,高校生の部93点,一般の部82点の応募があった。

 最優秀作品は,世界エイズデーの普及啓発用ポスターに使用され,全国各地に掲示され,エイズについて理解を深めてもらうよい機会となっている。

7 インターネット等IT関連技術の活用

(1)法務省では,法務省のホームページにおいて,各種人権関係情報を掲載するとともに,広く国民に対して,多種多様の人権関係情報を提供した。

 

 また,人権教育・啓発に関する情報に対して,多くの人々が容易に接し,活用することができるよう,人権啓発活動ネットワーク協議会のホームページを開設している。

「人権教育・啓発に関する基本計画」については,法務省及び文部科学省のホームページに全文を掲載し,内容の周知を図っている。

 さらに,平成21年度は,ハンセン病「夏休み親と子のシンポジウム」,人権週間及び北朝鮮人権侵害問題啓発週間について,同週間の周知を目的としたインターネットバナー広告を掲載したほか,主要ブログサイトに人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたインターネットバナー広告を掲載した。


(2)厚生労働省では,厚生労働省のホームページにおいて,高齢者,障害のある人,HIV感染者,ハンセン病患者・元患者等に関する施策についての情報及び資料を掲載して,それぞれの施策の普及を図り,国民的理解を深めるよう努めている。

 

(3)外務省では,外務省のホームページにおいて,世界人権宣言,主要人権条約,人権関連文書等に関する情報を提供している。

 


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