本文へ
文字の大きさを変更する
標準に戻す
拡大する
色変更・音声読み上げ・ルビ振りを行うアクセシビリティツールを利用するかたはこちら
トップページ
サイトマップ
業務支障情報
ENGLISH
詳細検索
トップページ > 白書・統計・研究 > 白書 > 人権教育・啓発白書 > 平成29年版人権教育・啓発白書

平成29年版人権教育・啓発白書

第1章 平成28年度に講じた人権教育・啓発に関する施策

第1節 人権一般の普遍的な視点からの取組

1 人権教育
 人権教育とは,「人権尊重の精神の涵(かん)養を目的とする教育活動」(人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号。以下「人権教育・啓発推進法」という。)第2条)であり,生涯学習の視点に立って,幼児期からの発達段階を踏まえ,地域の実情等に応じて,学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ実施している。

⑴ 学校教育
ア 人権教育の推進
 文部科学省では,学校,家庭,地域社会が一体となった総合的な取組や,学校における人権教育の指導方法の改善充実について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究推進事業(平成28年度実績:44地域,107校)」,学校における人権教育の在り方等について調査研究を行う「学校における人権教育の在り方等に関する調査研究」等を実施し,人権教育の推進に努めている。
各学校における取組例
 〈事例1〉小学校の例
主題:「人権を大切にする豊かな人間関係づくりと,確かな学力を育む人権教育の推進」
具体的取組:
○学校生活における,他者への配慮のある関わり方の例を,高学年の児童が「劇」として演じ,低学年の児童に見せる教育活動等の実施。
○人権教育による個々の児童や学級全体の変容の把握(年2回のアンケートの実施)。
 〈事例2〉中学校の例
主題:「一人一人の思いやりの心とコミュニケーション能力を育む人権教育の推進」
具体的取組:
○研修等を通じた,人権教育の目的・目標に係る教職員の共通理解の促進。
○様々な主題に係る人権教育の計画的な推進(11月の「いじめ防止強化月間」における小・中連携の「いじめ防止子ども会議」,12月の「命と人権を考える月間」における拉致問題を扱った「人権講話」等の教育活動を実施)。

 人権教育に関する指導方法等については,平成16年6月には「第1次とりまとめ」,平成18年1月には「第2次とりまとめ」,平成20年3月には「第3次とりまとめ」を公表した。文部科学省では,この第3次とりまとめを全国の国公私立学校や教育委員会等に配布するなど調査研究の成果普及に努めている。
 また,人権教育の全国的な推進を図るため,平成23年度から,各都道府県教育委員会を通じた学校における人権教育の特色ある実践事例の収集,公表を行うとともに(平成23年度版は64事例,平成24年度版は61事例,平成25年度版は57事例,平成26年度版は54事例,平成27年度版は49事例),平成26年度に文部科学省ホームページ掲載用の人権教育の理解促進を図るための動画を作成した。
 さらに,平成22年度から毎年,「人権教育担当指導主事連絡協議会」を開催し,人権教育の推進に関する情報交換や協議を行うとともに,「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号。以下「児童の権利条約」という。)等について周知を図っている。
イ 道徳教育の推進
 文部科学省では,従来より学習指導要領の「道徳」において,誰に対しても差別や偏見を持たず,公正,公平にすることや,法や決まりを守り,自他の権利を大切にすること等についても指導内容として示すなど,人権教育にも資するような指導の充実に努めている。
 こうした道徳教育の一層の充実を図るため,道徳教育用教材「私たちの道徳」を全国の小・中学生に配布するとともに,平成27年3月27日に,平成30年度から小学校,平成31年度から中学校において道徳を「特別の教科」に位置づけるため,学習指導要領の一部改正等を行った。
 さらに,学校・地域の実情等に応じた多様な道徳教育を支援するため,全国的な事例収集と情報提供,特色ある道徳教育や教材活用等,地方公共団体による多様な事業への支援を行っている。
 加えて,幼児期における教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な役割を果たすことから,各幼稚園において,道徳性の芽生えを培う指導の充実が図られるよう,教育課程の研究の成果の普及に努めている。
ウ 地域や学校における奉仕活動・体験活動の推進
 子どもの社会性や豊かな人間性を育む観点から,机上の知育だけではなく,具体的な体験や事物との関わりを通じた様々な体験活動を積極的に推進することは極めて重要なことである。文部科学省では,豊かな人間性や社会性を育むために,児童生徒の健全育成を目的とした様々な創意工夫のある長期宿泊体験の取組として「健全育成のための体験活動推進事業」を実施している。
エ 教員の資質向上等
 教員の資質能力については,養成・採用・研修の各段階を通じてその向上を図っており,各都道府県教育委員会等が実施している教諭等に対する採用後1年間の初任者研修や,在職期間が原則として10年に達した者に対する10年経験者研修では,人権教育に関する内容が扱われるなど,人権尊重意識を高めるための取組を行っている。

⑵ 社会教育
 社会教育においては,生涯にわたる学習活動を通じて,人権尊重の精神を基本に置いた事業を展開している。
 文部科学省では,社会教育において中核的な役割を担う社会教育主事の養成講習や,現職の社会教育主事等を対象にした研修等において,人権問題等の現代的課題を取り上げ,指導者の育成及び資質の向上を図っており,公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座が開設され,世代の異なる人たちや障害のある人,外国人等との交流活動等,人権に関する多様な学習機会が提供されている。

2 人権啓発
 人権啓発とは,「国民の間に人権尊重の理念を普及させ,及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」を意味し,「国民が,その発達段階に応じ,人権尊重の理念に対する理解を深め,これを体得することができるよう」にすることを旨としている(人権教育・啓発推進法第2条,第3条)。
 人権啓発は,広く国民の間に,人権尊重思想の普及高揚を図ることを目的に行われる研修,情報提供,広報活動等で人権教育を除くものであるが,その目的とするところは,国民の一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し,これを前提として他人の人権にも十分に配慮した行動をとることができるようにすることにある。すなわち,「人権とは何か」,「人権の尊重とはどういうことか」,「人権を侵害された場合に,これを排除し,救済するための制度がどのようになっているか」等について国民が正しい認識を持ち,それらの認識が日常生活の中で,その態度面,行動面等において確実に根付くことによって,人権侵害の生じない社会の実現を図ることが人権啓発の目的である。

⑴ 人権啓発の実施主体
 人権啓発を担当する国の機関として,法務省の人権擁護機関(注)がある。また,法務省以外の関係各府省庁においても,その所掌事務との関連で,人権に関わる各種の啓発活動を行っているほか,地方公共団体や公益法人,民間団体,企業等においても,人権に関わる様々な活動を展開している。
(注)「法務省の人権擁護機関」
 法務省人権擁護局及びその下部機関である法務局・地方法務局の人権擁護部門のほか,「人権擁護委員法」(昭和24年法律第139号)に基づき,法務大臣が委嘱する人権擁護委員及びその組織体を含む全体を法務省の人権擁護機関という。
 なお,人権擁護委員は,法務大臣が委嘱した民間の人たちであり,法務局・地方法務局等と連携しながら,全国各地で人権啓発を含む人権擁護活動を行っている。人権擁護委員制度は,様々な分野の人たちが,地域の中で人権尊重思想を広め,住民の人権が侵害されないよう配慮し,人権を擁護していくことが望ましいという考えから創設されたものであり,諸外国にも例を見ないものである。

⑵ 法務省の人権擁護機関が行う啓発活動
ア 平成28年度啓発活動重点目標
 その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘案して,年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め,共通の目標の下に組織を挙げて啓発活動を展開している。
 平成28年度は,啓発活動重点目標を「みんなで築こう 人権の世紀 ~考えよう 相手の気持ち 未来へつなげよう 違いを認め合う心~」と定め,21世紀が「人権の世紀」であることを改めて思い起こし,一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し,これを前提として他人の人権にも十分配慮した行動をとることができるよう,相手の気持ちを考えることの大切さを一人一人の心に訴えるとともに,東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年に向けて,違いを認め合う心を育み,これを未来へつなげていくための啓発活動を展開した。
 平成28年度においては,関係機関の協力の下,啓発活動重点目標を始め,次の17の項目を強調事項として掲げた。法務省の人権擁護機関は,これらの重点目標等を踏まえながら,全国各地において,講演会,シンポジウム,座談会等を開催したほか,テレビ・ラジオ等のマスメディアを活用した啓発活動を行った。
(1) 女性の人権を守ろう
(2) 子どもの人権を守ろう
(3) 高齢者の人権を守ろう
(4) 障害を理由とする偏見や差別をなくそう
(5) 同和問題に関する偏見や差別をなくそう
(6) アイヌの人々に対する理解を深めよう
(7) 外国人の人権を尊重しよう
(8) HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見や差別をなくそう
(9) 刑を終えて出所した人に対する偏見や差別をなくそう
(10) 犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう
(11) インターネットを悪用した人権侵害をなくそう
(12) 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
(13) ホームレスに対する偏見や差別をなくそう
(14) 性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう
(15) 性同一性障害を理由とする偏見や差別をなくそう
(16) 人身取引をなくそう
(17) 東日本大震災に起因する偏見や差別をなくそう
イ 第68回人権週間
 毎年12月4日から10日(世界人権宣言が採択された人権デー)までの1週間を「人権週間」と定め,関係諸機関及び諸団体の協力の下に,世界人権宣言の意義を訴えるとともに人権尊重思想の普及高揚を呼び掛ける集中的な啓発活動を展開している。
ウ 人権擁護委員の日
 人権擁護委員法が施行された6月1日を「人権擁護委員の日」と定め,国民に人権擁護委員制度の周知を図るとともに,人権尊重思想の普及高揚に努めている。
 平成28年度においても,全国各地で,街頭での啓発活動を行うほか,人権擁護委員等が各地域のテレビ番組に出演し,人権擁護委員の活動について紹介するなど,マスメディアを活用して人権擁護委員制度等の広報に努めた。
 また,6月1日を中心に全国2,670か所において,全国一斉に人権擁護委員の日特設人権相談所(注)を開設した。
(注)「特設人権相談所」は,法務局長又は地方法務局長と人権擁護委員協議会長が,協議の上,日時及び場所を定めて開設する相談所をいい,土曜日,日曜日又は祝日に法務局・地方法務局及びその支局で開設するものや,デパート,公民館,福祉施設等で開設するものがある。
エ 全国中学生人権作文コンテスト
 次代を担う中学生を対象に,人権問題についての作文を書くことによって,人権尊重の重要性,必要性についての理解を深めるとともに豊かな人権感覚を身に付けること,及び入賞作品を国民に周知広報することによって,広く一般に人権尊重意識を根付かせることを目的として,毎年,「全国中学生人権作文コンテスト」を実施している。
 36回目を迎えた平成28年度は,7,338校から,日常の家庭生活,学校生活等の中で得た体験を基に,基本的人権を守ることの重要性についての考えをまとめた97万2,553編の応募があった。多くの中学生が,人権について理解を深め,豊かな人権感覚を身に付けるよい機会となっている。中央大会では,次の各大臣賞のほか103編を表彰した。
内閣総理大臣賞 北海道・旭川市立永山中学校2年 紙谷桃歌さん
 「日本のいじめ対策は間違っている」
法務大臣賞 福岡県・久留米市立田主丸中学校3年 栗木乃愛さん
 「CHILD LABOUR」
文部科学大臣賞 宮城県・栗原市立若柳中学校3年 星日菜さん
 「輝く未来を生きるために」
 なお,内閣総理大臣賞等の主な入賞作品については,「第36回全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集」として冊子に編集し,中学校,市区町村,図書館等に配布するとともに,法務省ホームページに掲載して,人権啓発の資料として幅広く活用している。
 また,法務省において平成29年1月6日に中央大会表彰式を行うとともに,法務局・地方法務局において人権週間を中心として地方大会表彰式を開催し,作品の内容を周知した。
 さらに,優秀作品を世界に発信することを目的として,第36回大会の優秀作品3作品について,英語に翻訳の上,コンテストの紹介文と共に法務省ホームページ(英語版)に掲載した。
オ 人権教室
 「人権教室」は,いじめ等について考える機会を作ることによって,子どもたちが相手への思いやりの心や生命の尊さを体得してもらうこと等を目的とし,全国の人権擁護委員が中心となって実施している啓発活動である。
 この活動の一つとして,主に小学生を対象に,「人権の花運動」(10頁参照)における学校訪問や総合的な学習の時間等を利用して,アニメーション形式による人権啓発ビデオや紙芝居・絵本等,子どもたちが興味を持ちやすいように工夫した教材を活用することにより,人権尊重思想について子どもたちに分かりやすく理解してもらう内容となるように努めている。また,近年は,中・高・大学生や,企業研修等において大人を対象としても実施している。
 平成28年度は,小学校のほか,中学校,幼稚園,保育所等において,2万1,960回,93万8,766人を対象に広範囲に行われた。

人権教室実施状況 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度
実施回数 15,863 16,163 19,871 20,946 21,960
参加者数 630,879 650,493 796,748 856,935 938,766

(法務省人権擁護局の資料による)

カ 人権擁護功労賞
 人権擁護委員の活動等を通じて関わりのある企業や特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)等の団体及び個人の中から,人権擁護上,顕著な功績があったと認められた者に対し,法務大臣と全国人権擁護委員連合会会長が表彰を行っている。
 平成28年度の受賞者は,次のとおりである。
法務大臣表彰状 株式会社熊本日日新聞社(熊本県熊本市)
法務大臣表彰状(ユニバーサル社会賞) 根木慎志(奈良県)
 東京国際空港ターミナル株式会社(東京都大田区)
 日本空港ビルデング株式会社(東京都大田区)
 劇団 千の舞い座(徳島県阿波市)
全国人権擁護委員連合会会長表彰状 大阪サッカークラブ株式会社 セレッソ大阪(大阪府大阪市)
 株式会社ガンバ大阪(大阪府吹田市)
法務大臣感謝状 福岡プロバスケットボールクラブ株式会社 ライジングゼファーフクオカ(福岡県福岡市)
全国人権擁護委員連合会会長感謝状 大和田りつこ(東京都)
 岡崎裕美(千葉県)

⑶ 法務省が公益法人,地方公共団体へ委託して行う啓発活動
ア 公益財団法人人権教育啓発推進センターが行う啓発活動(人権啓発活動中央委託事業)
(ア) 公益財団法人人権教育啓発推進センター
 公益財団法人人権教育啓発推進センター(以下「人権教育啓発推進センター」という。)は,人権教育・啓発活動の中核となるナショナルセンターとしての役割を果たすべく,人権に関する総合的な教育・啓発及び広報を行うとともに,人権教育・啓発についての調査,研究等を行っている。
(イ) 平成28年度に人権教育啓発推進センターへ委託した啓発活動
(1) 人権啓発冊子の作成
  ・「ともに生きる時代へ 高齢社会と人権」(高齢者に関する人権問題を解説するとともに,高齢者が生き生きと暮らせる社会の在り方等について,人々の気付きを促すことを目的とした冊子)
(2) 人権啓発教材の作成
  ・「ずっとともだちでいたいから」(幼児及び小学校低学年の児童を対象とした,いじめ問題に関する参加型の紙芝居)
(3) 人権啓発ビデオの制作
  ・「わたしたちが伝えたい,大切なこと~アニメで見る全国中学生人権作文コンテスト入賞作品~」(近年の全国中学生人権作文コンテスト入賞作品から(1)外国人問題,(2)障害者スポーツ,(3)障害者理解を題材とする3作品をアニメ映像化したDVD)
  ・「外国人と人権~違いを認め,共に生きる~」(外国人の人権に関する理解や関心を深めることを目的とするDVD)
  ・「インターネットと人権~加害者にも被害者にもならないために~」(主として中高生やその保護者を対象とした,インターネット上における人権尊重やその安全な利用に関する理解や関心を深めることを目的とするDVD)
(4) 人権シンポジウムの開催
  ・平成28年9月10日 仙台市
  テーマ「震災と人権~東北の「みらい」を見据えて~若者たちが発信する復興支援~」
  ・平成28年11月11日 東京都中央区
  テーマ「性的マイノリティ(LGBT)と人権―多様な性のあり方について考える―」
  ・平成29年1月28日 名古屋市
  テーマ「震災と高齢者―高齢者の人権に配慮した防災・復興の形とは―」
(5) ハンセン病に関する「親と子のシンポジウム」の開催(平成28年7月21日 香川県高松)(48頁参照)
(6) 地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識やスキルを習得させることを目的とした「人権啓発指導者養成研修会」の実施(3回)(77頁参照)
(7) 人権週間を中心に,年間を通じて人権啓発活動の意義を周知するため,全国規模での広報を実施
(8) 「人権ライブラリー」(ホームページhttp://www.jinken-library.jp/)の運営等
(9) 「人権に関する国家公務員等研修会」の開催(2回)(71頁参照)
イ 地方公共団体が行う啓発活動(人権啓発活動地方委託事業)
(ア) 人権啓発活動地方委託事業
 人権啓発活動地方委託事業(以下「地方委託事業」という。)は,都道府県及び政令指定都市等を委託先とし,全ての人権課題を対象とした幅広い啓発活動の実施を委託する事業であり,講演会,研修会,資料作成,スポットCM,インターネットバナー広告,新聞広告,地域総合情報誌広告掲載等を実施している(詳細は,http://www.moj.go.jp/content/001198587.pdf)。
(イ) 地域人権啓発活動活性化事業
 法務省の人権擁護機関,都道府県,市区町村,公益法人等の人権啓発活動を実施する主体間の横断的なネットワークである「人権啓発活動ネットワーク協議会」(75頁参照)との連携の下に実施される地方委託事業を特に「地域人権啓発活動活性化事業」と称している。平成28年度は,同事業として,住民に親しみやすく,かつ,参加しやすい要素を取り入れながら,人権の花運動(注),スポーツ組織と連携・協力した啓発活動(76頁参照),人権ユニバーサル事業等の地域に密着した多種多様な人権啓発活動を実施した。
(注)人権の花運動は,児童が協力して花の種子,球根等を育てることによって,生命の尊さを実感し,その中で,豊かな心を育み,優しさと思いやりの心を体得することを目的とし,全国の人権擁護委員が中心となって実施している,主に小学生を対象とした啓発活動である。
 この活動では,育てた花を父母や社会福祉施設に届けたり,写生会,鑑賞会を開催したりすることにより,一層の人権尊重思想の普及高揚を図っている。
 平成28年度は,小学校3,295校のほか,528の中学校・幼稚園・保育所等において,48万1,863人を対象に広範囲に行われた。

人権の花運動実施状況 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度
参加学校(団体)数 3,844 3,845 3,816 3,669 3,823
参加者数 518,530 526,129 483,788 470,540 481,863

(法務省人権擁護局の資料による)
                                            
⑷ 中小企業・小規模事業者の産業に関わりの深い業種等に対する啓発活動
 経済産業省では,産業界向けに,平成28年度は,企業の社会的責任の観点から,企業活動における様々な人権問題等に関する講演会やシンポジウムを全国で開催し,経済界の役職員等の人権意識の涵養を図った(開催回数:83回,総参加人数:8,862人)。
 また,併せて,企業の社会的責任や情報モラルに係る啓発活動の参考となるべきパンフレットを経済団体や企業等に配布した。

⑸ 国際的な取組に関する啓発活動
 平成28年12月13日及び14日,我が国が国内外で取り組んでいる「女性が輝く社会」の実現を更に推進するため,国際女性会議WAW!(World Assembly for Women: WAW!2016)が東京都港区において開催され,国内外から93人の女性分野で活躍するリーダーらが参加し,約800人が傍聴した。また,WAW!をより大きなムーブメントとするために,昨年に引き続きWAW!本番の前後約4ヶ月間を「シャイン・ウィークス」として,公式サイドイベントを国内外より募集した。期間中,145件のイベントが登録され,在外公館や民間企業,各種団体等が各地で様々なイベントを開催した(15頁参照)。
 また,外務省では,外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html)において,世界人権宣言,主要人権条約,人権関連文書,国連における人権保護・促進メカニズム等に関する情報を提供している。

第2節 人権課題に対する取組

1 女性
 男女平等の理念は,憲法に明記されており,法制上も「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律」(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)等において,男女平等の原則が確立されている。しかし,現実には今なお,「男は仕事,女は家庭」といった男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており,家庭や職場において様々な男女差別が生じている。
 また,性犯罪,配偶者等からの暴力,職場等におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の問題も近年多く発生している。
 我が国が締約国となっている「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(昭和60年条約第7号。以下「女子差別撤廃条約」という。)は,男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として,女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念とし,締約国に対し,政治的及び公的活動並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適切な措置をとることを求めている。
 国内においては,平成11年6月に施行された「男女共同参画社会基本法」(平成11年法律第78号)に基づき「男女共同参画基本計画」を策定しており,平成27年12月には,現行の「第4次男女共同参画基本計画」を策定した。女性に対する暴力等への取組については,平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)が施行されて以降,同法に基づき,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策を推進している。また,平成27年8月には,「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)が成立し,平成28年4月1日から全面施行された。これまで女性の活躍推進に向けた取組は各事業主の自主性に委ねられていたが,この法律では,国,地方公共団体,常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に対して,女性の活躍状況の把握・課題分析,数値目標を掲げた行動計画の策定,女性の活躍状況に関する情報の公表等を義務付けた。
 女性にのみ6か月の再婚禁止期間を定める民法の規定について,最高裁判所は,平成27年12月に言い渡した判決において,再婚禁止期間のうち100日を超える部分は憲法に違反するとの判断を示した。これを受けて,政府は,再婚禁止期間を100日に短縮する等の措置を講ずることを内容とする法律案を平成28年3月に国会に提出し,同法律案は平成28年6月に成立・施行された。
 なお,法務省は,改正法の施行日と同日付けで,前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過していない女性を当事者とする婚姻の届出について,改正後の民法第733条第2項が規定する「女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合」又は「女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合」に該当するとした医師の証明書を提出した場合には,その他の実質的要件を満たしていれば,これを受理する取扱いとする文書を法務局に発出し,併せて市区町村に周知した。
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じており,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。法務省の人権擁護機関が女性に対する暴行・虐待に関して,新規に救済手続を開始した人権侵犯事件の数は,次のとおりである。 

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
女性に対する暴行・虐待 2,832 2,408 2,043 1,884 1,776

(法務省人権擁護局の資料による)
                                              
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 男女共同参画の視点に立った様々な社会制度の見直し,広報・啓発活動の推進
ア 内閣府では,行政相談委員及び人権擁護委員並びに都道府県,政令指定都市担当者(合計104人)を対象に,男女共同参画に関する諸課題について理解を深め,苦情の処理に係る知識・技能の向上を図ることを目的とする苦情処理研修を実施した。
   そのほか,我が国の男女共同参画に関する取組を広く知らせるため,男女共同参画の総合情報誌「共同参画」を発行しているほか,ホームページ,メールマガジン,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)サイト(Facebook)を活用して,充実した情報を迅速に提供する体制の整備を図るなど,多様な媒体を通じた広報・啓発活動を推進している。さらに,配偶者からの暴力の被害者支援に役立つ法令,制度及び関係機関についての情報等を収集し,内閣府のホームページを通じ,外国語版も含め提供している。
   女性活躍推進法に基づいた行動計画の策定率は国・都道府県・市区町村において100%となっている。また,平成28年9月には,同法に基づく国及び地方公共団体の取組を中心に,一覧化して掲載した「女性活躍推進法「見える化」サイト」を開設した。さらに,同法に基づき,地方公共団体が策定する地域の女性の職業生活における活躍についての推進計画による取組について,地域女性活躍推進交付金等により支援を行った。
イ 男女共同参画推進本部決定により,毎年6月23日から29日までの1週間を「男女共同参画週間」としている。平成28年度も例年と同じく,「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」を開催するとともに,「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰」及び「女性のチャレンジ賞」等の表彰を実施した。
   また,女性が活躍できる職場環境の整備を推進するため,役員・管理職への女性の登用に関する方針,取組及び実績並びにそれらの情報開示において顕著な功績があった企業を表彰する「女性が輝く先進企業表彰」を平成26年度から実施している。平成28年度の表彰は平成28年12月に実施した。
ウ 厚生労働省では,ポジティブアクション(男女労働者間に事実上生じている格差を解消するための企業の自主的かつ積極的な取組)の推進を図るため,「均等・両立推進企業表彰」を平成28年12月に実施するなど,あらゆる機会を捉えて広報・啓発活動を実施した(17頁参照)。
   また,平成28年4月に全面施行された女性活躍推進法について,企業等が女性活躍に向けた取組を積極的に実施するよう支援するとともに,同法に基づく情報を公表する場として「女性の活躍推進企業データベース」を運用し,その活用を促した。
エ 経済産業省では,「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」により,女性を始めとする多様な人材の能力を活かした企業の先進事例を発信することで,企業の取組を後押ししている(詳細は,「男女共同参画白書」に記載。)。
オ 平成28年12月13日及び14日,我が国が国内外で取り組んでいる「女性が輝く社会」の実現を更に推進するため,国際女性会議WAW!(World Assembly for Women:WAW!2016)が東京都港区において開催され,インスタグラム社COOであるマーニー・レヴィーン氏を始めとする93人の女性分野で活躍するリーダー等を招き,約800人の聴衆が参加した。3回目の開催となる平成28年は,「WAW!for Action」をテーマに掲げ,「女性活躍推進法」の完全施行や「持続可能な開発目標(SDGs)」の策定等を踏まえ,国内外における女性活躍推進に向けた動きを行動に移していくための議論が行われた。STEM(科学,技術,工学,数学)分野における女性活躍や女性の健康等の様々な分野の課題について,各界のトップリーダーから若者まで幅広い層からの参加を得た議論が行われた。参加者のアイディアや提案は「WAW!To Do 2016」として取りまとめ,国連文書(番号:A/71/829)として発出した。さらに,WAW!をより大きなムーブメントとするために,平成27年に引き続き会議の前後(平成28年10月1日から平成29年1月31日)を「シャイン・ウィークス」として,公式サイドイベントを国内外より募集した。期間中145のイベントが登録され,在外公館や民間企業,各種団体等が各地で様々なイベントを開催した(12頁参照)。

⑵ 法令・条約等の周知
ア 内閣府では,国内における男女共同参画社会の実現に向けた取組を行うに当たって,報告会,刊行物や内閣府男女共同参画局ホームページ(http://www.gender.go.jp/)等を通じ,男女共同参画に関連の深い各種の条約や,国際会議における議論等,女性の地位向上のための国際的規範や基準,取組の指針等の広報に努めている。
   平成28年度は,「男女共同参画推進連携会議企画委員会」の主催による情報・意見交換会として,国連女子差別撤廃委員会より発出された女子差別撤廃条約実施状況第7回及び第8回報告に関する最終見解や,第60回国連女性の地位委員会,W20,G7伊勢志摩サミット等について「聞く会」を開催した。さらに,平成28年6月に開催されたAPEC女性と経済フォーラムや平成29年3月に開催された第61回国連女性の地位委員会等の国際会議の概要について,内閣府男女共同参画局ホームページへの掲載等を行った。
イ 外務省では,女子差別撤廃条約関連文書や女性の地位向上に関する会議等の関連文書を,外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/women/index.html)に掲載し,広くその内容の周知に努めている。

⑶ 女性に対する偏見・差別意識解消を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,女性に対する偏見や差別意識を解消し,固定的な性別役割分担意識を払拭することを目指して,「女性の人権を守ろう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
 また,ドメスティックバイオレンス防止をテーマとした人権啓発ビデオ「虐待防止シリーズ ドメスティック・バイオレンス」や「デートDVって何?~対等な関係を築くために~」を,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 さらに,セクシュアルハラスメントを題材とした腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「みこさんの本音」及びタレントの麻尋えりか氏によるスポット映像「セクハラ・パワハラ」篇及び「ハラスメント・DV」篇をYouTube法務省チャンネルで配信している。

⑷ 男女平等を推進する教育・学習,女性の生涯学習機会の充実
 文部科学省では,男女共同参画社会の形成のため,学校教育において,児童生徒の発達の段階に応じて,社会科,家庭科,道徳,特別活動等を通じて,男女の平等や男女相互の理解と協力等についての指導が充実されるよう,学習指導要領の一層の周知・徹底を行った。
 また,学びを通じた女性の社会参画を促進するため,一旦離職した地域の女性が学びとその実践を通して,起業や再就職,地域活動への参画などに取り組んでいる個人・団体等の取組事例の収集と普及のための「女性の学び応援フェスタ」を青森と東京で開催した。
 独立行政法人国立女性教育会館は,男女共同参画社会の形成を目指し,地方公共団体,男女共同参画センター,女性団体等における男女共同参画を推進する研修や専門的な調査研究,情報の収集・提供を行っている。

⑸ 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のための取組
 厚生労働省では,労働者が性別により差別されることなく,また,働く女性が母性を尊重されつつ,その能力を十分発揮することができる雇用環境を整備するため,男女雇用機会均等法に沿った男女均等取扱いがされるよう,周知徹底及び指導を行うとともに,事業主と労働者の間に紛争が生じた場合には,円滑かつ迅速な解決を図られるよう援助を行っている。
 また,実質的な男女労働者間の均等を確保するためには,男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指すための企業の自主的かつ積極的な取組(ポジティブアクション)が不可欠である。このため,企業が具体的な取組を行うことができるよう,必要な助言及び情報提供を積極的に行うとともに,ポジティブアクションを推進している企業を公募し表彰する「均等・両立推進企業表彰」の実施等により,一層の促進を図った。
 さらに,妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは,女性労働者の尊厳を傷つける社会的に許されない行為であるとともに継続就業を妨げるものであるため,法違反の事実が認められる企業に対しては,迅速かつ適正な指導を行った。
 なお,事業主による妊娠,出産,育児休業・介護休業の取得等を理由とする不利益取扱いは,既に男女雇用機会均等法等で禁止されているが,近年,上司・同僚からの嫌がらせ等も問題となっている。そのため,上司・同僚からの言動により,妊娠・出産,育児休業・介護休業の取得等をした労働者の就業環境が害されることのないよう,男女雇用機会均等法及び「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)が改正され,事業主に対し,妊娠・出産,育児休業等に関するハラスメントの防止措置を講ずることが新たに義務づけられた。ハラスメント防止措置が適切に講じられるよう,都道府県労働局において説明会及びハラスメント対応特別相談窓口を開設し,改正法の周知を図った。

⑹ 農山漁村の女性の地位向上のための啓発等
 女性は,農業就業人口の約半数を占め,農山漁村・農林水産業の担い手として重要な役割を果たしているが,地域の方針決定の場における参画は十分進んでいない状況にある。このため,女性の役割を適正に評価し,その能力が発揮されるよう,農林水産省としても意識啓発に努めており,関係団体による積極的な取組を促した。この結果,農業委員会において,女性農業委員の割合が7.4%(前年7.3%)(農林水産省調べ),農業協同組合において,女性役員の割合が7.5%(前年度7.2%)(JA全国農業協同組合中央会調べ)に上昇した。
 今後,更なる女性の参画を促進するため,平成27年12月に閣議決定した第4次男女共同参画基本計画では,農業委員及び農業協同組合の役員に占める女性の割合を,平成32年度までにそれぞれ30%及び15%とする目標を設定した。
 また,平成27年8月に成立した「農業協同組合法等の一部を改正する等の法律」(平成27年法律第63号)による改正後の「農業委員会等に関する法律」(昭和26年法律第88号)及び「農業協同組合法」(昭和22年法律第132号)において,農業委員会の委員や農業協同組合の役員について,年齢及び性別に著しい偏りが生じないように配慮しなければならないこととされた。
 このほか,農業経営において女性の活躍を更に促進するため,地域の中心となる経営体や地域農業の在り方等を定める「人・農地プラン」の策定に当たり,市町村による検討会のメンバーに女性農業者がおおむね3割以上参画することを要件とした。
 さらに,農山漁村女性の役割を正しく理解・評価し,女性の能力の一層の活用を促進するために制定した「農山漁村女性の日」(毎年3月10日)にちなんで,3月上旬に地方公共団体,農林水産関係女性団体等による会議等が開催されるとともに,「農山漁村男女共同参画優良活動表彰」や「農山漁村女性・シニア活動表彰」を行うなど,男女共同参画に関する気運の醸成に努めた。

⑺ 女性の人権問題に関する適切な対応及び啓発の推進
 男女共同参画推進本部決定により,毎年11月12日から25日(女性に対する暴力撤廃国際日)までの2週間を「女性に対する暴力をなくす運動」期間とし,同期間中,地方公共団体,女性団体その他の関係団体との連携・協力の下,社会の意識啓発等,女性に対する暴力に関する取組を一層強化している。
ア 内閣府では,性犯罪被害者等が,安心して必要な相談・支援を受けられる環境を整備するために,地方公共団体の職員や性犯罪被害者等の支援を行う支援員を対象とした研修を行う「性犯罪被害者等支援体制整備促進事業」を実施し,好事例を紹介するなどした。
   また,地方公共団体による性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの開設・運営等の取組を促進するため,性犯罪被害者等支援を実施する地方公共団体の様々な取組を実証的に調査研究する事業を実施しており,平成28年度は21団体の取組を対象に調査研究を行った。
   さらに,官民の配偶者暴力被害者支援の関係者(配偶者暴力相談支援センター長,相談員及び地方公共団体の職員)を対象としたワークショップ等を行う「女性に対する暴力被害者のための官官・官民連携促進事業」を実施し,地域において関係者が連携した事例や先進的な取組の共有・意見交換等を通じ,配偶者暴力相談支援センターにおける相談対応の質の向上及び被害者支援の充実を図るための都道府県と市町村・行政と民間の更なる連携の促進等を行った。
   また,配偶者からの暴力について相談できる窓口を知らない被害者を相談機関につなぐため,発信地等の情報から最寄りの配偶者暴力相談支援センター等の相談機関の窓口に自動転送する「DV相談ナビ」(ナビダイヤル0570-0-55210(全国共通))を実施している。
   さらに,平成28年度は,女性に対する暴力をなくす運動において,啓発用ポスター及びリーフレットの作成や,運動のシンボルであるパープルリボンにちなんで,東京タワー,東京スカイツリー等をパープルにライトアップするなど,広く国民に対して暴力根絶を呼び掛けた。
   加えて,女性に対する暴力の加害者及び被害者となることを防止する観点から,若年層に対する効果的な予防啓発を行うため,若年層に対して教育・啓発の機会を持つ教育機関の教職員,地方公共団体において予防啓発事業を担当している行政職員,予防啓発事業を行っている民間団体等を対象として研修を実施した。
   このほか,いわゆるアダルトビデオ出演強要問題や「JKビジネス」問題等の若年層の女性に対する性的な暴力については,平成29年3月に設置された男女共同参画担当大臣を議長とする「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する関係府省対策会議」において,同月末,4月を「AV出演強要・『JKビジネス』等被害防止月間」と位置付け,政府一体となって,必要な取組を緊急かつ集中的に実施することを内容とする緊急対策を取りまとめた。

  平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度
配偶者暴力相談支援センター
における相談件数
82,099 89,490 99,961 102,963 111,630

(内閣府の資料による)
                                                      
イ 法務省の人権擁護機関では,専用相談電話「女性の人権ホットライン」(ナビダイヤル0570-070-810(全国共通))を全国の法務局・地方法務局に設置して相談体制の一層の強化を図っている。
   平成28年度は,女性に対する暴力をなくす運動期間中の平成28年11月14日から20日までの1週間を,「全国一斉『女性の人権ホットライン』強化週間」とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,様々な人権問題に悩む女性からの電話相談に応じた。
   また,配偶者暴力相談支援センター等関係機関との連携を一層強化し,被害の救済及び予防に努めている。 

  平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
女性の人権ホットライン相談件数 21,720 21,119 21,033 21,123 19,306

(法務省人権擁護局の資料による) 
                                             
2 子ども
 我が国が締約国となっている児童の権利条約では,締約国は,適当かつ積極的な方法で同条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する旨(第42条)を規定している。
 文部科学省が各都道府県教育委員会等を通じて行った平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(確定値)の結果では,暴力行為の発生件数は5万6,806件と依然として憂慮すべき状況が見られ,また,いじめの認知件数は22万5,132件であり,いじめによる重大な被害が生じた事案も引き続き発生しているなど,教育上の大きな課題となっている。
 また,平成28年に警察がいじめに起因する事件で検挙・補導した人員は,267人(対前年比19.3%減)であった。内訳としては,小学生44人(同8.3%減),中学生174人(同15.5%減),高校生49人(同36.4%減)となっている。
 さらに,法務省の人権擁護機関が調査・処理を行う人権侵犯事件においても,平成28年には,学校におけるいじめ事案が3,371件,教育職員による体罰に関する事案が448件,児童に対する暴行・虐待事案が586件と高水準で推移しており,こうした人権侵害による被害の予防・救済のための取組等が課題となっている。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
学校におけるいじめ 3,988 4,034 3,763 3,883 3,371
教育職員による体罰 370 887 574 494 448
児童に対する暴行・虐待 873 911 802 699 586

(法務省人権擁護局の資料による)
                                              
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 子どもが人権享有主体として最大限尊重されるような社会の実現を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,子どもが基本的人権の享有主体として最大限に尊重されるような社会の実現を目指して,「子どもの人権を守ろう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等のほか,人権擁護委員が中心となって,人権教室(8頁参照),人権の花運動(10頁参照),スポーツ組織と連携・協力した啓発活動(76頁参照)等,各種啓発活動を実施している。
 また,児童虐待防止をテーマとした人権啓発ビデオ「虐待防止シリーズ 児童虐待」を,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。

⑵ 学校教育及び社会教育における人権教育の推進
ア 文部科学省では,現行学習指導要領において,「確かな学力」,「豊かな心」,「健やかな体」(知・徳・体)のバランスのとれた「生きる力」を,一層育むことを目指している。
   「豊かな心」の育成に関しては,道徳の時間で,善悪の判断等の内容を充実するとともに,体験活動等をいかすなどの充実を図っている。
   また,豊かな人間性や社会性を育む観点から,健全育成のための体験活動推進事業や,学校教育における人権教育を推進するための人権教育研究推進事業,学校における人権教育の在り方等に関する調査研究等を実施した(2頁参照)。
   社会教育においては,専門職員である社会教育主事の養成講習や,現職の社会教育主事等を対象にした様々な研修等において,人権問題等の現代的課題を取り上げ,指導者の育成及び資質の向上を図っている。
イ 厚生労働省では,毎年5月5日から11日までの1週間を「児童福祉週間」と定め,「子どもや家庭,子どもの健やかな成長について国民全体で考える」ことを目的に,国,地方公共団体,関係団体,企業,地域社会等が連携して,全国で様々な行事,取組を行っている。
   平成28年度は,児童福祉週間の標語を全国公募し,最優秀作品として選定された「その笑顔 未来を照らす 道しるべ」を児童福祉週間の象徴として,児童福祉の理念の普及・啓発を図った。

⑶ いじめ・暴力行為等に対する取組の推進
ア いじめの問題は依然として大きな社会問題となっている。こうした状況の中,平成25年6月の「いじめ防止対策推進法」(平成25年法律第71号)の成立を受け(詳細は,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1337219.htm),文部科学省では,同年10月11日,「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下「国のいじめ防止基本方針」という。)を策定した(詳細は,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1340464.htm)。
 また,文部科学省では,「いじめの防止等に関する普及啓発協議会」を開催するなど,いじめ防止対策推進法及び国のいじめ防止基本方針の周知徹底を図ることに取り組んでいる。
   このほか,教育再生実行会議の第一次提言及びいじめ防止対策推進法を踏まえ,いじめの未然防止,早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため,平成25年度から「いじめ対策等総合推進事業」を実施している。
   また,国のいじめ防止基本方針に基づき,文部科学省の「いじめ防止対策協議会」において,法の施行状況の検証を行い,平成28年11月に「いじめ防止対策推進法の施行状況に関する議論のとりまとめ」の提言を受けた。この提言を踏まえ,平成29年3月に国のいじめ防止基本方針を改定した。なお,当該基本方針においては,学校や学校の設置者が法務省の人権擁護機関との連携を図ることや,平素から,関係機関の担当者の窓口交換や連絡会議の開催等の体制整備を図るなどの情報共有体制を構築していくことが必要である旨記載している。このほか,平成29年1月,子ども自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成するとともに,全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため,「全国いじめ問題子供サミット」を開催した。
イ 文部科学省では,暴力行為について,未然防止と早期発見・早期対応に教職員が一体となって取り組むことや家庭・地域社会等の理解を得て地域ぐるみでの取組を推進すること,暴力行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対して,警察等の関係機関と連携した取組を推進し,き然とした指導を粘り強く行うなどの的確な対応をとることを学校,教育委員会等に要請した。
ウ また,文部科学省では,いじめ,暴力行為等,問題を抱える児童生徒が適切な相談等を受けることができるよう,児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有するスクールカウンセラーを配置するとともに,福祉の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャルワーカーを配置するなど,学校内の教育相談体制の整備を支援している。さらに,平成28年度は,「いじめ対策等生徒指導推進事業」において,児童生徒の問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応につながる効果的な取組の実践等について調査研究を行った。
エ 加えて,文部科学省では,夜間・休日を含め24時間いつでも子どものSOSを受け止めることができるよう,「24時間子供SOSダイヤル」を整備している。なお,平成28年度からは同ダイヤルが無料化され,電話番号が「0120-0-78310」に改められている。
オ 警察では,少年相談活動やスクールサポーターの学校への訪問活動等により,いじめの早期把握に努めるとともに,把握したいじめの重大性及び緊急性,被害少年及びその保護者等の意向,学校等の対応状況等を踏まえ,警察として必要な対応をとっていくこととしており,いじめ防止対策推進法の趣旨も踏まえつつ,学校等と緊密に連携しながら,的確な対応を推進している。
   また,校内暴力についても,学校等との情報交換により早期把握に努め,悪質な事案に対し厳正に対処するなど,内容に応じた適切な措置と再発の防止に努めている。
カ 法務省の人権擁護機関では,いじめ等の子どもの人権問題に対応するため,専用相談電話等により,いじめの被害者等からの相談を受け付けている。
   また,いじめ等の子どもの人権問題に関する意識を啓発するため,インターネット広告を実施したほか,啓発冊子「『いじめ』 させない 見逃さない」を作成し,全国の法務局・地方法務局に配布の上,各種啓発活動で活用している。
   平成28年度は,幼児及び小学校低学年の児童を対象とした,いじめ問題に関する参加型の紙芝居「ずっとともだちでいたいから」を作成し,全国の法務局・地方法務局,都道府県及び市区町村に配布した。
キ 厚生労働省では,ひきこもり等の児童について,「ひきこもり地域支援センター」を一次相談窓口として,教育分野との連携を図りつつ,児童相談所や児童養護施設等の機能を十分活用するとともに,家庭環境・養護問題の調整,解決に取り組んでいる。

⑷ 体罰の問題に対する取組の推進
 体罰は,「学校教育法」(昭和22年法律第26号)第11条で禁止されており,児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え,力による解決の志向を助長し,いじめや暴力行為等の土壌を生むおそれがあり,いかなる場合でも決して許されない。文部科学省では,平成25年3月に,懲戒と体罰の区別について現場の教員が理解しやすい丁寧な説明を行うことを目的として,体罰と判断される行為や認められる懲戒等の具体例や,部活動指導に当たっての留意事項を示した通知を発出したり,同年5月に運動部活動での体罰等の根絶及び効果的な指導に向けた「運動部活動での指導のガイドライン」を公表したりするなど,体罰の防止に関する取組について示してきた。
 また,体罰根絶のためには実態把握に努めることが重要と考えており,平成28年12月には,国公私立学校における体罰の実態についてまとめた調査結果を公表した。この結果では,体罰により懲戒処分等を受けた者は890人で,前年度の1,126人から,236人減少している。

⑸ 家庭教育に対する支援の充実
 文部科学省では,全ての親が安心して家庭教育を行えるよう,家庭教育支援チームの組織化や,家庭教育支援員の配置等による,身近な地域における保護者への学習機会の提供や相談対応等の家庭教育を支援する活動を実施している。
 また,地域住民,学校,行政,NPO,企業等の協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため,効果的な取組事例等を活用した,全国的な研究協議を行っている。平成28年度は,東京都渋谷区において研究協議会を開催し,全国的な啓発を行った。
 さらに,「地域人材の活用や学校等との連携による訪問型家庭教育支援事業」を地方公共団体に委託して実施し,家庭教育支援チーム等による訪問型の家庭教育支援体制の構築を図ったほか,「家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会」において,全ての保護者が充実した家庭教育を行うことができるようにするための具体的な推進方策について検討し,報告書を取りまとめた。

⑹ 児童虐待等子どもの健全育成上重大な問題に対する取組
ア 児童虐待への対応については,平成12年11月に施行された「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)及び「児童福祉法」(昭和22年法律第164号)の累次の改正や,「民法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第61号)による親権の停止制度の新設等により,制度的な充実が図られてきた。
   この間,全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増加し,平成27年度には児童虐待防止法制定直前の約8.9倍に当たる10万3,286件となっている。子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件も後を絶たず,児童虐待の防止は社会全体で取り組むべき重要な課題である。
   このような状況を踏まえ,児童虐待について,発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化等を図るため,平成27年12月,第4回子どもの貧困対策会議において,「すくすくサポート・プロジェクト」「(児童虐待防止対策強化プロジェクト」及び「ひとり親・多子世帯等自立支援プロジェクト」の愛称」)が決定され,平成28年3月には,社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会において,報告(提言)がとりまとめられた。
   これらを踏まえ,初めて子どもを権利の主体として法律に位置付けるなど児童福祉法の理念を明確化するとともに,子育て世代包括支援センターの全国展開,市町村及び児童相談所の体制の強化,里親委託の推進等の所要の措置を講ずる「児童福祉法等の一部を改正する法律」が同年5月に成立,6月に公布された。
イ また,市町村に設置される要保護児童対策地域協議会は,虐待を受けている子ども等の早期発見や適切な保護を図るため,児童相談所,学校・教育委員会,警察等の関係機関が要保護児童等に関する情報共有や支援内容の協議を行うこととしており,その結果を踏まえ,適切な連携の下で対応している。同協議会は,平成28年4月現在,99.2%の市町村で設置されている。
ウ いわゆる児童ポルノについては,平成26年6月,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平成11年法律第52号)が一部改正され,法律名が「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に改められ,自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノ又はその電磁的記録を所持,保管する行為や,ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造する行為を処罰する罰則が新設された。同改正法は,同年7月に施行され,自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する規定については,平成27年7月から適用が開始された。
エ 厚生労働省は内閣府と共に,児童虐待に対する社会的関心の喚起を図るため,平成16年から毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け,関係府省庁や地方公共団体,関係団体等と連携した集中的な広報・啓発活動を実施している。
   平成28年度は,「さしのべて あなたのその手 いちはやく」を月間標語として決定し,児童虐待防止対策協議会の開催(11月10日),福井県福井市における子どもの虐待防止推進全国フォーラムの開催(11月19日),広報用ポスター,リーフレット等の作成・配布,政府広報(新聞,BSテレビ番組等)の活用等により,児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることを周知・啓発した。また,児童虐待防止の啓発を図ることを目的に民間団体(認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している。
   児童虐待を受けたと思われる子どもを見つけたときなどに,ためらわずに児童相談所に通告・相談ができるように,児童相談所全国共通ダイヤルについて,平成27年7月1日から,これまでの10桁番号から3桁番号「189(いちはやく)」に変更し,運用を開始した。さらに,平成28年4月に,音声ガイダンスの内容を見直し,児童相談所につながるまでの平均時間を約70秒から約30秒へ短縮している。
   このほか,「社会保障審議会児童部会」の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」においては,児童虐待による死亡事例等について,分析,検証し,事例から明らかになった問題点・課題の具体的な対応策について提言として取りまとめを行っており,平成28年9月には,「子どもの虐待による死亡時事例等検証結果等について(第12次報告)」を取りまとめた。
   第12次報告においては,心中以外の虐待死(43例・44人)では,0歳児死亡が最も多く(約6割),うち月齢0か月が約半数を占めること,実母が抱える問題として「望まない妊娠/計画していない妊娠」,「妊婦検診未受診」が高い割合を占めること,心理的虐待による死亡事例が初めて発生したこと等が特徴として見られた。
オ 文部科学省では,都道府県等を通じて,学校教育関係者や社会教育関係者に対して,児童虐待の防止に向けた取組の推進に関する通知を発出するとともに,各種会議等を通じて早期発見努力義務及び通告義務等について周知の徹底を図っている。
   また,児童生徒が適切な相談を受けることができるよう,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの活用等,教育相談体制の整備を支援している。
カ 警察では,児童虐待について,児童の安全確認及び安全確保を最優先とした対応を徹底している。具体的には,児童の安全の直接確認,的確な事件化,児童の保護や児童相談所への通告を行うなどの関係機関との緊密な連携を図っている。
   また,児童ポルノ事犯については,低年齢児童を狙ったグループ等に対する取締りを強化するとともに,児童の被害の継続・拡大を防ぐため,流通・閲覧防止対策や被害児童の早期発見及び支援に向けた取組を推進している。
   さらに,警察庁では,警察庁ホームページにおいて,「NO‼ 児童ポルノ」と題して,児童ポルノ事犯の検挙・被害状況,被害防止対策,児童ポルノ被害の深刻さ等について掲載するほか,平成27年7月から罰則が適用されることとなった「自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪」についても周知を行い,児童ポルノ排除対策に関する国民の理解の増進を図っている。

⑺ 条約の周知
 外務省では,内閣府を始めとする関係府省庁と協力して,平成6年に締結した児童の権利条約と併せ同条約の選択議定書の実施に努めており,条文を外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html)に掲載し,その内容の周知に努めている。
 文部科学省では,平成22年度から毎年開催する人権教育担当指導主事連絡協議会等において,同条約等の周知を図っている。

⑻ 「人権を大切にする心を育てる」保育の推進
 厚生労働省では,保育所等において,保育所保育指針に基づき,児童の最善の利益を考慮するよう啓発を行うとともに,「人権を大切にする心を育てる」保育の推進を図り,児童の心身の発達,家庭や地域の実情等に応じた適切な保育の実施を推進している。

⑼ 子どもの人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,(1)専用相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル0120-007-110(全国共通))を設置し,子どもが相談しやすい体制をとっている。取り分け,平成28年6月27日から7月3日までの1週間を「全国一斉『子どもの人権110番』強化週間」とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設した。また,(2)法務省ホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口(SOS-eメール)」(http://www.jinken.go.jp/)を開設している。さらに,(3)「子どもの人権SOSミニレター」(便箋兼封筒)を全国の小・中学校の児童生徒に配布するなど,子どもたちがより相談しやすい体制を整備している。
 そして,子どもの人権が侵害されている疑いのある事案を認知した場合には,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 なお,児童虐待については,国民全てに児童虐待についての通告義務が存在すること等の周知を含む啓発活動の充実に努めている。人権侵犯事件の関係では,子どもの人権SOSミニレター等で寄せられた虐待に関する相談に対して,児童相談所等への情報提供や被害者との面談を早期に行うことにより,被害者の速やかな保護,被害者の家庭環境の改善,見守り体制の構築を図るなどして,虐待を受けた児童の人権救済を図っている。
 また,児童買春,児童ポルノによる被害等の人権問題についても,人権相談に応じており,人権相談等で,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

  平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
子どもの人権110番相談件数 28,384 28,847 25,711 25,195 23,317

 

  平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度
子どもの人権SOSミニレター
相談件数
21,544 19,774 21,578 19,107 16,845

(法務省人権擁護局の資料による)
                                               
 子どもの人権110番を端緒に人権侵犯事件として立件し救済措置を講じた具体例は,以下のとおりである。

事例(母親の子に対する虐待)
 中学生から,母親から暴力や暴言を受けているとして,「子どもの人権110番」に相談がされた事案である。
 法務局が中学生から事情を詳しく聴取し,中学生が虐待を受けている疑いがあることが認められたため,即日,中学生が在籍する中学校に対し情報提供を行った上で中学生の見守りを依頼するとともに,児童相談所に対しても情報提供を行い,その日のうちに中学生に対する見守り体制が構築されるに至った。(措置:「援助」)

3 高齢者
 我が国は,平均寿命の大幅な伸びや少子化等を背景として,人口のほぼ4人に1人が65歳以上の高齢者となっている。
 このような中,介護者による身体的・心理的虐待や,高齢者の家族等による本人の財産の無断処分等の経済的虐待といった高齢者の人権問題が大きな社会問題となっている。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 高齢者についての理解を深め,高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,高齢者の人権について国民の認識と理解を深めるとともに,高齢者も社会の重要な一員として生き生きと暮らせる社会の実現を目指して,「高齢者の人権を守ろう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
 平成28年度は,啓発冊子「ともに生きる時代へ 高齢社会と人権」を作成し,全国の法務局・地方法務局,都道府県及び市区町村に配布した。
 また,高齢者虐待防止等をテーマとした人権啓発ビデオ「虐待防止シリーズ 高齢者虐待」を,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 さらに,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「高齢者を大切にしよう」をYouTube法務省チャンネルで配信している。

⑵ 高齢者福祉に関する普及・啓発
 厚生労働省では,平成28年9月15日から21日までの1週間を「老人の日・老人週間」と定め,「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに,老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」という趣旨にふさわしい行事が実施されるよう,関係団体等に対する支援,協力,奨励等を都道府県等に依頼した。また,内閣府,消防庁,全国社会福祉協議会等の主唱12団体は,「みんなで築こう安心と活力ある健康長寿社会」を標語とする「平成28年『老人の日・老人週間』キャンペーン要綱」を定め,その取組を支援した。

⑶ 学校教育における高齢者・福祉に関する教育の推進
 学校教育においては,学習指導要領に基づき,児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため,ボランティア等の社会奉仕に関わる体験活動や,高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実が図られている。

⑷ 高齢者の学習機会の充実
 平成24年に策定された「高齢社会対策大綱」においては,高齢者を含めた全ての人々が生涯にわたって学習活動を行うことができるよう,学校や社会における多様な学習機会の提供を図るとともに,その成果の適切な評価の促進を図ることとしており,社会教育施設等においては,高齢者等を対象とした学習機会の提供が行われている。
 また,文部科学省では,高齢者が生涯学習を通じて地域づくりに主体的に参画することを促進するため,平成28年10月に島根県雲南市,及び北海道平取町,11月に愛媛県新居浜市,12月に東京都文京区において,高齢者の生涯学習に関する研究成果や各地域の先進的な取組事例等を活用した研究協議を行う「長寿社会における生涯学習政策フォーラム」を開催した。

⑸ 世代間交流の機会の充実
 内閣府では,高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため,平成28年7月に東京都千代田区,同年10月に山口県下関市において,「高齢社会フォーラム」を開催するなどの事業を実施した。

⑹ ボランティア活動等,高齢者の社会参加の促進
 内閣府では,年齢に捉われず,自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を毎年広く紹介しており,平成28年度は,個人55人及び55団体を選考し,高齢社会フォーラム等を通じて,社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。

⑺ 高齢者の雇用・多様な就業機会確保のための啓発活動
 厚生労働省では,求人の募集・採用に当たっては,年齢ではなく求職者一人一人の経験や適性,能力等を判断するべきであるとの趣旨から,現在,「雇用対策法」(昭和41年法律第132号)により,ハローワークを始め,求人広告,民間の職業紹介会社,インターネット等,全ての求人募集において,厚生労働省令が定める例外事由に該当する場合を除いては,求人の年齢制限を原則禁止し,年齢に関わりなく応募の機会が開かれるよう努めている。
 また,60歳以上の高齢者に限定して募集採用する場合には,厚生労働省令が定める例外事由として,年齢制限をすることを許容し,高齢者の雇用を促進することとしている。

⑻ 高齢者の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局において人権相談に応じており,全国共通人権相談ダイヤル「みんなの人権110番」(ナビダイヤル0570-003-110(全国共通))を設置している。また,高齢者に接する機会が多い社会福祉事業従事者等に対し,人権相談を広報するためのリーフレットを配布したほか,老人福祉施設等の社会福祉施設において,入所者及びその家族が気軽に相談できるよう,特設の人権相談所を開設するなどして,相談体制の一層の強化を図っている。さらに,平成28年9月5日から11日までの1週間を「全国一斉『高齢者・障害者の人権あんしん相談』強化週間」とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,多くの高齢者等からの電話相談に応じた。人権相談等で,高齢者に対する虐待等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
高齢者に対する暴行・虐待 482 454 488 440 437
高齢者福祉施設における人権侵犯 44 77 81 82 57

(法務省人権擁護局の資料による)

4 障害のある人
 障害のある人を含む全ての人々にとって住みよい平等な社会づくりを進めていくためには,国や地方公共団体が障害のある人に対する各種施策を実施していくだけでなく,社会の全ての人々が障害のある人について十分に理解し,必要な配慮をしていくことが求められている。
 我が国では,全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため,平成25年9月に閣議決定した「障害者基本計画(第3次)」に基づき,障害のある人の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図っている。
 平成28年4月には障害者差別解消法が施行され,各行政機関等や事業者において,不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供をはじめとする障害を理由とする差別の解消に向けた取組が行われている。
 また,平成25年度からは,障害者差別解消法の理解促進と円滑な施行を目指すとともに,各地域における取組の促進と気運の醸成を図ることを目的とした「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム」を開催している(平成28年度は全国15か所で開催)。
 平成28年7月26日には,相模原市の障害者支援施設において死者19名,負傷者26名という痛ましい殺傷事件が生じたことから,同年8月8日に厚生労働省に事件の検証及び再発防止策検討チームが設置され,同チームによる報告書が同年12月8日に公表されるとともに,同月9日に開催された「障害者施設における殺傷事件への対応に関する関係閣僚会議」に提出された。
 ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議においては,平成28年2月から,様々な種別の障害のある方々や有識者等からの意見を取り入れつつ,東京大会を契機として,障害者差別解消法の理念を踏まえ,全ての人々が,障害のある人に対する差別を行わないよう徹底することをはじめとした「心のバリアフリー」やユニバーサルデザインの街づくりを推進するための施策について総合的に検討を行ってきた。そして,平成29年2月,障害者団体の出席を得て,ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議を開催し,「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決定したところである。
 同行動計画において「心のバリアフリー」については,学習指導要領改訂を通じ,すべての子ども達に「心のバリアフリー」の指導が実施されるよう取り組むほか,接遇を行う業界(交通,観光,流通,外食等)における全国共通の接遇マニュアルの策定・普及,全国で障害者等へのサポートを行いたい人々が統一のマークを着用し,そのマインドを見える化する仕組みの創設などの施策を行うこととした。また,地域の人権擁護委員をはじめとする法務省の人権擁護機関を「心のバリアフリー」の相談窓口として活用することや,人権擁護委員等の研修において「心のバリアフリー」に関する説明を行うこと等の取組を盛り込んだところである。
 今後,これらの施策を確実に実施していくとともに,障害当事者等を過半とする評価会議を毎年開催し,施策の実施状況を確認・評価し,その結果を踏まえて関係府省等が施策を改善することにより,実行性を担保していくこととしている。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 共生社会を実現するための啓発・広報等
 障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し,支え合う「共生社会」の理念の普及を図るため,毎年12月3日から9日までの「障害者週間」を中心に,全国で官民にわたって多彩な行事を集中的に開催するなど,積極的な啓発・広報活動を行っている。
 内閣府では,障害者週間に当たり,テレビ,ラジオ,ポスター,インターネットテキスト広告,SNS(Twitter)等の多様な媒体による広報活動を実施したほか,障害者週間行事として,週間を通して各種の行事を実施した(詳細は「障害者白書」に記載)。
 障害者週間事業の一環として,平成28年12月2日に東京都千代田区において開催した「障害者フォーラム2016」では,全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰等を実施した。また,平成28年7月に神奈川県相模原市で発生した障害者支援施設の事件も踏まえ,「真の共生社会とは何か,あらためて問う」をテーマに記念シンポジウムを開催し,全ての命と尊厳の尊重の大切さについて議論を深めるとともに,政府広報を活用した動画番組を作成した。さらに,障害者週間のポスターの優秀作品の原画展を東京都千代田区で開催した。なお,「障害者フォーラム2016」の開催に当たっては,聴覚障害等の出席者のために手話通訳者や要約筆記者を会場に配置し,視覚障害の出席者へ点字版資料の配布を行った。加えて,内閣府ホームページからインターネットによる動画配信を行い,障害者施策の推進について国民への周知を図った。

⑵ 障害を理由とする偏見・差別の解消を目指した啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では,「障害を理由とする偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   また,啓発冊子「いっしょに学ぼう!障害のある人の人権~パラリンピックへ向けて~」を全国の法務局・地方法務局,都道府県及び市区町村に配布したほか,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「暮らしやすい社会に」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
   さらに,平成28年度は,近年の全国中学生人権作文コンテスト入賞作品から障害者スポーツ及び障害者理解を題材とする2作品を含む人権啓発ビデオ「わたしたちが伝えたい,大切なこと~アニメで見る全国中学生人権作文コンテスト入賞作品~」を作成した。
   加えて,平成22年度から,啓発冊子「人権の擁護」をはじめとする各種啓発資料に順次音声コードを導入し,視覚障害のある人が利用することができるよう工夫を施している。
イ 厚生労働省では,「身体障害者補助犬法」(平成14年法律第49号)の趣旨及び補助犬の役割等についての一層の周知を目的として,ポスター,パンフレット,ステッカー等の作成・配布や,ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/hojyoken/)の開設を行っている。

⑶ 特別支援教育の充実及び障害のある人に対する理解を深める教育の推進
 文部科学省では,障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加を目指し,特別支援教育の充実を図るとともに,障害のある人に対する理解を深める教育の充実に努めている。
 「障害者の権利に関する条約」(平成26年条約第1号。以下「障害者権利条約」という。)を踏まえた特別支援教育推進のための取組として,医療的ケアのための看護師や,理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)など特別支援教育専門家等の配置を推進しつつ,医療・保健・福祉・労働等との連携を強化し活用するための協議会設置など,特別支援教育の体制整備に要する経費の一部を補助する事業や,発達障害の可能性のある児童生徒等への支援体制の整備に関する事業,教員の専門性の向上に向けた事業等を実施している。あわせて,平成30年度からの高等学校における通級による指導の制度化に向けた省令等の改正や,小・中学校における障害に応じた特別の指導(通級による指導)を担当する教員の定数について,平成29年度から基礎定数による措置を開始するなど,特別支援教育への対応のための教職員定数の改善や,障害のある幼児児童生徒に対して様々な支援を行う「特別支援教育支援員」の配置に係る地方財政措置,障害のある子どもと障害のない子どもとの交流及び共同学習の推進等に取り組んでいる(詳細は,「文部科学白書」及び「障害者白書」に記載)。
 また,障害のある人が,そのすべてのライフステージにおいて豊かで充実した生活を送れるようにすることが重要であることから,文部科学省では,省をあげて障害者施策の企画立案を進めていくため,「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置するとともに,平成29年度から生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」を新設することとした。
 今後,障害のある人の生涯を通じた多様な学習活動の充実に向けて,関係省庁等と連携した進学・就職を含む切れ目ない支援体制の整備,障害のある子どもの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する特別支援教育,障害者スポーツや障害者の文化芸術活動の振興等の施策を横断的かつ総合的に推進していく。

⑷ 障害のある人の雇用の促進等
 障害のある人の雇用については,平成28年6月1日現在における民間企業の雇用障害者数が47万4,374.0人(前年比4.7%増)(重度身体障害者及び重度知的障害者については1人を2人に相当するものとして計上し,短時間労働者については1人を0.5人に相当するものとして計上している。)と13年連続で過去最高を更新し,一層進展している。障害者雇用の取組としては,各種支援策を講じるとともに,毎年9月を「障害者雇用支援月間」として設定し,障害者雇用優良事業所等に対する厚生労働大臣表彰等の啓発活動等を実施し,広く国民に対し障害者雇用の機運の醸成を図っている。これに加え,平成28年4月に施行された「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(平成28年法律第46号)」に基づく雇用分野における障害のある人に対する差別の禁止,合理的配慮の提供義務等について,周知・啓発を行った。
 また,障害のある人の職業的自立の意義を喚起するとともに,事業主及び社会一般の理解と認識を深め,障害者雇用の促進を図ることを目的として,「全国障害者技能競技大会」(アビリンピック)を開催している。直近では,平成28年10月28日から30日に第36回大会が山形県と独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の共催により開催された。

⑸ 精神障害者に対する偏見・差別の是正のための啓発活動
 厚生労働省では,こころの健康や病気,支援サービスに関する総合サイトである「みんなのメンタルヘルス」や若者を支えるメンタルヘルスサイトである「こころもメンテしよう」,地域住民等に対して精神保健福祉に関する知識の普及等を行う「精神保健福祉普及運動」等を活用して,精神疾患についての正しい理解が広まるよう,情報発信を行っている。平成28年度は,平成28年10月10日から10月16日までの間,「第64回精神保健福祉普及運動」を実施し,各地方公共団体において普及啓発のための講演会等の開催,パンフレットの配布等により,全国的かつ集中的な広報活動を実施した。

⑹ 障害のある人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局において,人権相談に応じており,全国共通人権相談ダイヤル「みんなの人権110番」(ナビダイヤル0570-003-110(全国共通))を設置している。また,障害のある人に接する機会が多い社会福祉事業従事者や特別支援学校高等部卒業予定者等に対し,人権相談を広報するためのリーフレットを配布したほか,障害者支援施設等の社会福祉施設において,入所者及びその家族が気軽に相談できるよう,特設の人権相談所を開設するなどして,相談体制の一層の強化を図っている。さらに,平成28年9月5日から11日までの1週間を全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,多くの障害のある人等からの電話相談に応じた。人権相談等で,障害のある人に対する差別,虐待等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
障害者に対する差別待遇 259 217 263 265 286
障害者福祉施設における人権侵犯 82 60 93 77 63

(法務省人権擁護局の資料による)   
                                            
⑺ 障害者虐待防止の取組
 平成24年10月に施行された「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成23年法律第79号)では,地方公共団体は障害者虐待の通報・届出窓口として「市町村障害者虐待防止センター」や「都道府県障害者権利擁護センター」としての機能を果たすこととされており,各センターでは,障害者虐待の通報・届出の受理に加え,相談や指導・助言を行うほか,国民の理解の促進を図るため,障害者虐待防止の広報・啓発等を行っている。
 厚生労働省では,地方公共団体が関係機関との連携の下で,障害者虐待の未然防止や早期発見,迅速な対応等を行えるよう「地域生活支援事業」における障害者虐待防止対策支援等の施策を通じて,地域における関係機関等の協力体制の整備や支援体制の強化を図っている。
 また,障害者虐待防止の一層の広報・啓発を目的としてパンフレットを作成し,ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000121196.pdf)で公開している。

⑻ 発達障害者への支援
ア 厚生労働省では,平成19年12月に,毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が国連で採択されたことを受け,一般社団法人日本自閉症協会との共催でシンポジウムを開催するなど,自閉症を始めとした発達障害に関する正しい知識の浸透を図っている。全国各地においても,世界自閉症啓発デーや4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」(関係団体等が提唱)において,様々な啓発活動が実施されている。
   また,「発達障害情報・支援センター」を設置し,発達障害者支援に関する調査・研究及びウェブサイト等を通じた支援手法の普及や国民の理解の促進を図っている。
   近年の共生社会の実現に向けた新たな取組が進められている状況に鑑み,発達障害児者の支援をより一層充実させるための所要の処置を講じる「発達障害者支援法の一部を改正する法律」(平成16年法律第167号)が平成28年5月25日に成立した。本改正により,国及び地方公共団体がライフステージを通じた切れ目のない支援を実施することや,家族なども含めたきめ細やかな支援を推進し,発達障害児者及びその家族が身近な場所で支援が受けられる体制を構築することなどが定められた。
イ 発達障害の可能性のある児童生徒の多くは通常の学級に在籍しているため,早期に発見し,切れ目ない支援を行うことが大切であるとともに,全ての教職員が発達障害に関する一定の知識・技能を有していることが必要とされている。
   文部科学省では,発達障害の可能性のある児童生徒を支援するため,平成28年度から,学校と福祉機関との連携支援,支援内容の共有方法に関する調査研究事業,障害に応じた特別の指導(通級による指導)の担当教員に対する研修体制を構築し,必要な指導方法を研究する事業を新たに実施している。
   また,平成29年3月には,教育委員会や学校,保護者等に向けた「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」を策定し,公表した。

⑼ 障害者権利条約の締結及び周知
 我が国は,平成26年1月20日に障害者権利条約を締結した。この条約の主な内容は,条約の原則(無差別,平等,社会への包容等),政治的権利,教育・労働・雇用に関する権利,社会的な保障,文化的な生活・スポーツへの参加,国際協力等,幅広ものとなっている。締約国は,この条約が自国について発効後2年以内に,条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告を障害者権利委員会に提出することとなっており,平成28年6月,我が国も,障害当事者から構成される「障害者政策委員会」での議論の内容も盛り込み,パブリックコメントを実施した上で,第1回政府報告を作成し,提出した。
 また,この条約の実施のためには,障害のある人に関する社会全体の意識が向上することが重要であり,外務省としては,今後とも,関係府省庁とも連携し,条約の概要や意義等について,障害当事者を含む国民全体に対し,分かりやすく,利用しやすい様式で広報していく。

5 同和問題(部落差別)
 同和問題は,日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別により,日本国民の一部の人々が,長い間,経済的,社会的,文化的に低い状態に置かれることを強いられ,同和地区と呼ばれる地域の出身者であることなどを理由に結婚を反対されたり,就職などの日常生活の上で差別を受けるなどしている,我が国固有の人権問題である。
 この問題の解決を図るため,国は,地方公共団体と共に,昭和44年から33年間,特別措置法に基づき,地域改善対策を行ってきた。その結果,同和地区の劣悪な環境に対する物的な基盤整備は着実に成果を上げ,一般地区との格差は大きく改善された。
 しかしながら,インターネット上の差別書き込み等の事案は依然として存在している。また,いわゆる「えせ同和行為」等の事案も依然として起こっており,同和問題の解決を阻む要因になっている。
 平成28年12月9日,部落差別解消推進法が成立し,同月16日に施行された。同和問題(部落差別)については,同法及び附帯決議の趣旨を踏まえつつ,的確に対応していくこととなる。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 同和問題(部落差別)に関する差別意識の解消に向けた教育・啓発
 法務省の人権擁護機関では,同和問題(部落差別)に関する差別意識の解消のため,「同和問題に関する偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
 また,同和問題(部落差別)をテーマにした人権啓発教材「人権アーカイブ・シリーズ『同和問題~過去からの証言,未来への提言~』(人権教育・啓発担当者向け・証言集及びビデオ)/『同和問題 未来に向けて』(一般向け・ビデオ)」を法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 さらに,タレントの麻尋えりか氏によるスポット映像「出身地等の差別」篇をYouTube法務省チャンネルで配信している。
 加えて,部落差別解消推進法に関する通知を法務局・地方法務局及び地方公共団体に発出し,同法の施行及び理解促進のための周知を図った。

⑵ 学校教育・社会教育を通じた同和問題(部落差別)の解決に向けた取組
 文部科学省では,学校教育における人権教育関係事業として人権教育研究推進事業を実施し,同和問題(部落差別)に関する差別意識の解消を図っている。
 また,社会教育では,専門職員である社会教育主事の資格付与のための講習や社会教育専門職員を対象とした研修において,人権教育に関するプログラムを実施しており,人権教育の着実な推進を図っている。
 さらに,部落差別解消推進法に関する通知を教育委員会等に発出し,同法の施行及び理解促進のための周知を図った。

⑶ 公正な採用選考システムの確立
 厚生労働省では,企業の採用選考に当たって,人権に配慮し,応募者の適性・能力のみによって採否を決める公正な採用選考システムの確立が図られるよう,雇用主に対して,以下の啓発に取り組んだ。
 (1) 日本経済団体連合会,日本民間放送連盟等の経済・事業別団体448団体に対して,文書により,部落差別解消推進法成立の周知及び公正な採用選考の確保について傘下企業への指導を要請
 (2) 公正な採用選考についてのガイドブック,ポスター,カレンダー等,各種啓発資料を作成し,事業所に配布
 (3) 中学校,高等学校,大学等の卒業予定者に係る採用選考に合わせて,新聞広報等を通じた啓発活動を実施
 (4) 事業所における公正な採用選考システムの確立について,中心的な役割を果たす「公正採用選考人権啓発推進員」を,一定規模以上の事業所に配置するとともに,各労働局及び公共職業安定所が,同推進員に対して研修会を開催
 (5) 従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対する研修会を開催

⑷ 農漁協等関係農林漁業団体職員に対する啓発活動
 農林水産省では,農林漁業や農山漁村に起因する同和問題(部落差別)を始めとした広範な人権問題に関する啓発活動を積極的に推進するため,都道府県を通じて農漁協等関係農林漁業団体の職員に対する研修等を実施するとともに,全国農林漁業団体が当該職員等を対象に行う同様の研修等に対する支援を実施した。

⑸ 隣保館における活動の推進
 厚生労働省では,生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を実施している隣保館の事業に対し支援を行っている。

⑹ えせ同和行為の排除に向けた取組
 政府は,同和問題を口実にして企業や官公署等に不当な利益や義務なきことを求めるえせ同和行為を排除するため,関係府省庁の参加する「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設置し,政府一体となってえせ同和行為の排除の取組を行っている。
ア 法務省では,えせ同和行為の実態を把握するため,昭和62年以降10回にわたりアンケート調査を実施している(平成25年の調査結果の概要は,http://www.jinken.or.jp/jinken-info/research2013)。
   また,地方においても,全国50の法務局・地方法務局を事務局として組織されている「えせ同和行為対策関係機関連絡会」に,平成29年4月現在で1,109の国の機関,地方公共団体,弁護士会等が参加し,随時,情報交換のための会議を開くなど,様々な取組を展開している。
イ 都道府県警察においても関係機関と連携して,違法行為の取締り等,えせ同和行為の排除対策を推進している。

  平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度
えせ同和行為に関する
相談件数
42 45 32 18 25

 

要求の内容 物品 示談金 融資 寄付金 賛助金 契約 下請 講演会 その他 合計
平成28年度 6 0 0 3 8 0 1 1 6 25
平成27年度 10 1 0 3 1 1 0 0 2 18
平成26年度 28 0 0 1 0 0 0 0 3 32
平成25年度 27 0 0 5 0 1 3 0 9 45
平成24年度 30 1 0 0 1 0 1 0 9 42

(法務省人権擁護局の資料による)
                                            
ウ 経済産業省では,産業界向けに「えせ同和行為対策セミナー」を開催するとともに,えせ同和行為に関するリーフレットを作成し,配布した。

⑺ 同和問題(部落差別)をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,同和問題(部落差別)をめぐる人権侵害事案に対し,人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ,その被害の救済及び予防を図っている。取り分け結婚差別,差別発言等を人権擁護上看過できない事象として捉え,行為者や関係者に対して人権尊重の意識を啓発することによって,自発的・自主的に人権侵害の事態を改善,停止,回復させ,あるいは,将来再びそのような事態が発生しないよう注意を喚起している。
 また,インターネット上で,不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘するなどの内容の情報を認知した場合は,その情報の削除をプロバイダ等に要請するなど適切な対応に努めている。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
同和問題に関する事件侵犯 110 85 117 93 78

(法務省人権擁護局の資料による)
                                               
6 アイヌの人々
 アイヌの人々は,固有の言語や伝統的な儀式・祭事,多くの口承文学(ユーカラ)等,独自の豊かな文化を持っているが,近世以降のいわゆる同化政策等により,今日では,その文化の十分な保存・伝承が図られているとは言い難い状況にある。特に,アイヌ語を理解し,アイヌの伝統等を担う人々の高齢化が進み,これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつある。
 また,アイヌの人々に対する理解が十分ではないため,就職や結婚等における偏見や差別が依然として存在している。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ アイヌの人々に関する総合的な政策の推進
 政府は,国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(平成19年9月)や衆参両院の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」(平成20年6月)を受けて内閣官房長官が開催した「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」による報告(平成21年7月)を踏まえ,総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進するため,内閣官房長官が座長となり,政府,有識者及びアイヌの人々から成る「アイヌ政策推進会議」を開催している(推進会議等の開催経過は,http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/index.html)。
 アイヌ政策の「扇の要」として位置付けられ,アイヌ文化の復興等に関するナショナルセンターとなる「民族共生象徴空間」については,平成28年7月に基本構想を改定するなど,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に合わせた一般公開に向け,「国立アイヌ民族博物館」,「国立民族共生公園」及び「慰霊施設」の整備等を進めている。

⑵ アイヌ文化の振興,アイヌの伝統及び文化に関する普及啓発
 文化庁や国土交通省等では,「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(平成9年法律第52号)に基づき,公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構が行う事業に対して助成等を行った。
 また,アイヌ語の保存・継承に資するアーカイブ作成のために,文化庁では,平成27年度に引き続き平成28年度も「アイヌ語のアーカイブ作成支援事業」及び「アイヌ語の保存・継承に必要なアーカイブ化事業〈アナログ音声資料のデジタル化〉」を実施している。あわせて,ユネスコが消滅の危機にあるとした,アイヌ語を含む我が国の言語・方言の置かれている危機的な状況等を周知して危機的な状況の改善に資するために,「危機的な状況にある言語・方言サミット」を平成27年度の沖縄県那覇市に続き,平成28年度は鹿児島県与論町で開催した。
 なお,この与論町での「危機的な状況にある言語・方言サミット」は,「東京2020公認文化オリンピアード」として認証された。

⑶ アイヌ関係の文化財の保護等に関する取組
 文化庁では,「文化財保護法」(昭和25年法律第214号)に基づき,アイヌの有形及び無形の民俗文化財について,北海道教育委員会が行う調査事業,伝承・活用等に係る経費について補助を行った。

⑷ アイヌの人々に対する偏見・差別を解消し,アイヌの人々の尊厳を尊重する社会の実現を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,アイヌの人々に対する偏見・差別をなくし,アイヌの人々に対する理解と認識を深めるよう,「アイヌの人々に対する理解を深めよう」を強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等,各種啓発活動を実施している。また,アイヌの人々に対する国民の理解を促すよう,インターネットバナー広告を実施した。

⑸ 学校教育におけるアイヌの人々に関する学習の推進
 学校教育においては,中学校学習指導要領において,社会科の鎖国下の対外関係に関する学習で北方との交易をしていたアイヌについて取り扱うこととしているなど,アイヌの人々に関する教育を行っている。

⑹ 各高等教育機関等におけるアイヌ語等に関する取組への配慮
 北海道の大学を中心に,アイヌに関する授業科目が開設されるなど,アイヌに関する教育・研究を行っている。

⑺ 生活館における活動の推進
 厚生労働省では,地域住民に対し,生活上の各種相談を始め,アイヌの人々に対する理解を深めるための広報・啓発活動等を総合的に実施している生活館の事業に対し支援を行っている。

⑻ アイヌの人々の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,アイヌの人々に対する差別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講ずることとしている。

⑼ 農林漁業経営の近代化を通じた理解の増進
 歴史的な特殊事情等により,アイヌ住民居住地区における農林漁業は,他の地区に比べて経営規模が零細で生産性が低く,所得及び生活水準に格差がみられる。このため,農林水産省では,アイヌ住民居住地区において,地域住民が一体となって行う農林漁業経営の近代化を支援しており,このような取組を通じて,アイヌ農林漁家に対する理解の増進が図られている。

7 外国人
 我が国に入国する外国人は増加しており,平成28年には約2,322万人(再入国者を含む。)と過去最高となっている。こうした中,言語,宗教,習慣等の違いから,外国人をめぐって様々な人権問題が発生している。
 この点,法務省が,今後の外国人に係る人権擁護施策の基礎資料とすることを目的として,人権教育啓発推進センターに委託した外国人住民調査によると,住居を探すなど,社会生活上の様々な場面で,外国人であることを理由とした差別を受けたなどと感じる外国人が少なくないことが判明した(調査結果の概要は,http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00101.html)。
 また,引き続き,特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチであるとして社会的に関心を集めている状況にある。
 平成28年5月現在,我が国の公立の小・中・高等学校等に在籍する外国人児童生徒の数は8万119人(文部科学省「学校基本調査」,毎年実施)である。平成26年5月現在,日本語指導が必要な児童生徒の数は,2万9,198人(同「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」,隔年実施)となっており,平成24年度調査より2,185人(約8.1%)増加している。我が国では,外国人がその保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には,無償で受け入れていて,教科書の無償給与や就学援助を含め,日本人と同一の教育を受ける機会を保障しており,外国人の子どもがより公立学校に就学しやすい体制整備を図るための取組を進めている。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 外国人に対する偏見・差別を解消し,国際化時代にふさわしい人権意識の育成を目指した啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では,外国人に対する偏見・差別を解消し,国際化時代にふさわしい人権意識を育てることを目指して,「外国人の人権を尊重しよう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   平成28年度は,外国人の人権に関する理解や関心を深めることを目的とする人権啓発ビデオ「外国人と人権~違いを認め,共に生きる~」を作成した。
   また,近年の全国中学生人権作文コンテスト入賞作品から外国人問題を題材とする作品を含む人権啓発ビデオ「わたしたちが伝えたい,大切なこと~アニメで見る全国中学生人権作文コンテスト入賞作品~」を作成した。
   さらに,地方公務員を対象とする人権啓発指導者養成研修会において「外国人の人権」をテーマとする講義を設ける(77頁参照)などの取組を実施した。
   加えて,人権啓発ワークショップ事例集「『ワークショップをやってみよう』~参加型の人権教室」の視聴覚教材(アニメ)及び事例集に多文化共生をテーマとするものを取り入れた。同視聴覚教材及び腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「こころも国際化しませんか?」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
イ 文部科学省では,各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を集めた会議において,平成28年6月3日に施行されたヘイトスピーチ解消法の趣旨や不当な差別的言動を解消するための教育活動等について説明するとともに,法務省による行政説明を行うなど,同法に関する教育委員会等への通知発出を含め,各種機会を通じて周知を図っている。
   また,法務省と連携し,全国の高等学校に対して,法務省作成ポスター「ヘイトスピーチ,許さない。」の配布を行った。

⑵ ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では,ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動として,これまでの「外国人の人権」をテーマにした啓発に加え,各種媒体により,こうしたヘイトスピーチがあってはならないということを理解しやすい形で表した,より効果的な啓発と共に,ヘイトスピーチによる被害等の人権に関する問題の相談窓口の周知広報にも積極的に取り組んでいる。
   具体的には,「ヘイトスピーチ,許さない。」をメインコピーとしたポスター及びリーフレットの作成配布,インターネット広告等を実施したほか,ヘイトスピーチ解消法が施行されたことを踏まえ,上記ポスターの増刷配布,ヘイトスピーチをテーマとした一般向けの啓発冊子「私たちの身近にあるヘイトスピーチ」の作成配布等を行った。
イ 警察では,ヘイトスピーチ解消法の施行を踏まえ,警察庁から各都道府県警察に対して,警察職員に対する教養を推進するとともに,他機関から各種広報啓発活動等への協力依頼があった場合にはこれに積極的に対応するなどにより,不当な差別的言動の解消に向けた取組に寄与するよう通達を発出している。

⑶ 学校等における国際理解教育及び外国人の子どもの教育の推進
 国際社会においては,子どもたちが広い視野を持って異文化を理解し,習慣や文化の異なる人々と共に生きていくための資質や能力を育成することが重要である。こうした観点から,現在,各学校において,社会科等の各教科,道徳,特別活動や総合的な学習の時間等を通じて国際理解教育が行われている。
 文部科学省では,毎年,全国の都道府県・指定都市教育委員会担当者を集めた連絡協議会を開催しており,教育を取り巻く現状を知るとともに,取組の進んだ学校の実践事例を共有するなど,国際理解教育の推進に努めている。
 また,外国人児童生徒等教育の充実のために,以下の施策を進めている。
(1) 外国人児童生徒等教育を担当する教員の定数について,平成28年度に法律が改正され,平成29年度から基礎定数による措置を開始
(2) 独立行政法人教職員支援機構における日本語指導者等に対する研修の実施
(3) 各地方公共団体が行う地域人材との連携による,公立学校への受入促進・日本語指導の充実・支援体制の整備に係る取組等を支援する事業の実施
(4) 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施の推進(学校教育法施行規則の一部改正(平成26年1月14日公布,同年4月1日施行))
(5) 就学に課題を抱える外国人の子どもを対象とした,公立学校や外国人学校等への就学に必要な支援を学校外において実施する自治体を補助する事業の実施

⑷ 外国人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,外国人であることを理由とした差別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 また,日本語を自由に話すことの困難な外国人等からの人権相談に応じるため,相談者の発信地域に応じて東京,大阪,名古屋の各法務局に設置された専用電話に自動で接続される「外国語人権相談ダイヤル(ナビダイヤル:0570-090911(英語・全国共通),0570-050110(中国語・全国共通))」を設置している。上記法務局には,英語及び中国語の通訳が常駐しており,外国語により常時相談に応じている。
 さらに,法務省ホームページ上に「外国語インターネット人権相談受付窓口」(英語 https://www.jinken.go.jp/soudan/PC_AD/0101_en.html,中国語 https://www.jinken.go.jp/soudan/PC_AD/0101_zh.html)を開設しており,英語及び中国語による人権相談を受け付けている。
 加えて,外国人からの人権相談については,様々な外国語の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松の各法務局と神戸,松山の各地方法務局において,常時又は各指定日に開設し,相談に応じている。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
外国人に対する差別待遇 96 69 73 85 57

(法務省人権擁護局の資料による)

 法務省入国管理局では,外国人技能実習制度に関し,技能実習生の人権を侵害する行為等の不正行為を行った実習実施機関等に対して,その旨を通知し,5年間の受入停止措置を講じており,不正行為を通知した事例については,法務省ホームページに公表し,不正行為を防止するための啓発に努めている。
 また,技能実習制度の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため,厚生労働省と共に技能実習制度の見直しに係る法律案を,平成27年3月6日,第189回国会に提出し,平成28年11月16日,第192回国会において,「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(平成28年法律第89号。以下「技能実習法」という。)が成立し,同月28日に公布された。技能実習法では,制度の適正な運用を確保する措置として,技能実習計画の認定制,監理団体の許可制を導入し,技能実習生の意思に反して技能実習を強制するなどの人権侵害行為について禁止規定を設けた上で,違反に対する所要の罰則を規定している。

8 HIV感染者・ハンセン病患者等
 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やハンセン病等の感染症に対する正しい知識と理解は,いまだ十分とはいえない状況にある。これらの感染症にかかった患者・回復者等が,周囲の人々の誤った知識や偏見等により,日常生活,職場,医療現場等で差別やプライバシー侵害等を受ける問題が起きている。
 また,ハンセン病に関しては,平成15年11月に起きた熊本県内のホテルのハンセン病療養所入所者に対する宿泊拒否事件によって,誤った認識や偏見が存在していたことが明らかになった。このような偏見や差別の解消を更に推し進めるため,「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(平成20年法律第82号)が平成21年4月から施行されている。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ HIV感染者等
ア エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動
(ア) 法務省の人権擁護機関では,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるよう,「HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
(イ) 厚生労働省では,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別の解消及びエイズのまん延防止のため,12月1日の「世界エイズデー」に向けてのキャンペーンイベントとして,平成28年11月29日に東京都港区において,「RED RIBBON LIVE 2016」を実施し,専門家や著名人によるトークライブイベントを行った。また,エイズに関する電話相談事業を実施する等,HIV・エイズに関する正しい知識の普及啓発活動に努めている。
イ 学校教育におけるエイズ教育等の推進
 文部科学省では,学校教育において,エイズ教育の推進を通じて,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくすとともに,教材作成や教職員の研修を推進した。
ウ HIV感染者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,HIV感染者等に対する差別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

⑵ ハンセン病患者・元患者等
ア ハンセン病患者・元患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動
(ア) 厚生労働省では,ハンセン病に対する正しい知識の普及のため,様々な普及啓発活動を行っている。平成21年度から「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」(平成13年法律第63号)の施行日である6月22日を「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」と定め,平成28年度においては6月16日に厚生労働省において同省の主催により,法務省等の関係機関の出席を得て,追悼,慰霊及び名誉回復の行事を実施した。
   また,平成29年2月4日に神戸市において,法務省等と連携し,ハンセン病問題に対する正しい知識の普及啓発を目的とした「第16回ハンセン病問題に関するシンポジウム」を実施した。
   さらに,平成29年2月に,ハンセン病を正しく理解するための中学生向けパンフレット及び指導者向け教本「ハンセン病の向こう側」を作成し,全国の中学校,教育委員会等に配布した。
(イ) 法務省の人権擁護機関では,ハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるよう,「HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   その一環として,中学生等をパネリストとした,「ハンセン病に関する『親と子のシンポジウム』」を,平成28年7月21日に香川県高松市において,厚生労働省等と連携して開催したほか,インターネット広告の掲載や,全国版の小・中学生新聞への啓発広告の掲載を実施した。
   また,ハンセン病問題をテーマにした人権啓発教材「人権アーカイブ・シリーズ『ハンセン病問題~過去からの証言,未来への提言~』(人権教育・啓発担当者向け・証言集及びビデオ)/『家族で考えるハンセン病』(一般向け・ビデオ)」や,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「正しい知識が差別をなくす」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
イ ハンセン病患者・元患者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,ハンセン病患者等に対する差別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
ウ 国連における取組
 我が国は,ハンセン病患者,回復者,その家族等に対する偏見・差別の解消に向けて,国際社会において主導的な役割を果たしてきている。具体的には,平成20年,平成21年,平成22年と3年連続で国連人権理事会に,さらに,平成22年には国連総会に,ハンセン病に関する誤った認識や誤解に基づく偏見・差別をなくすための決議(ハンセン病差別撤廃決議)案を主提案国として提出し,いずれも全会一致で採択された。これら決議のフォローアップとして,平成27年6月,我が国は,コアグループを代表して,国連人権理事会に新たな決議を提出し,全会一致で採択された。

9 刑を終えて出所した人
 刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見・差別は根強く,就職に際しての差別や住居の確保の困難等,社会復帰を目指す人たちにとって,現実は極めて厳しい状況にある。刑を終えて出所した人等が,地域社会の一員として円滑な社会生活を営むためには,本人の強い更生意欲と併せて,家族はもとより,職場,地域社会の理解と協力が必要である。そこで,法務省では,刑を終えて出所した人に対する就労支援を重要課題の一つとして位置付け,刑を終えて出所した人を雇用してくれる協力雇用主を募集し,加えて,就労継続に必要な生活指導や助言などを行う協力雇用主に対して就労奨励金を支払うなど,再犯防止のための積極的な取組を行っている。
 また,平成28年12月14日,「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104号)が成立し,同日施行された。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 法務省では,犯罪をした人や非行のある少年の改善更生について国民の理解・協力を促進し,犯罪や非行のない地域社会を築くため,地域住民の理解と参加を得て,「“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~」を実施している。具体的には,刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し,これらの人の円滑な社会復帰を促すため広報啓発イベント,作文コンテスト,ミニ集会,住民集会,講演会,弁論大会等の啓発活動を行っている。
   平成28年度は,平成28年7月1日,2日に広報啓発イベント「立ち直りフェスティバル」を東京都・千代田区有楽町駅前広場において開催した。イベントでは同運動のフラッグアーティストである音楽家の谷村新司氏によるトークショーやタレントの鉄拳氏参加の下,同氏が本運動のために制作したパラパラマンガの上映等が行われた。このほかにも,薬物依存からの回復を支援する団体であるダルクによるエイサーライブや更生に取り組む保護観察対象者が育てた野菜の販売等のユニークなコンテンツにより,多くの来場者に,犯罪や非行からの立ち直りを支える様々な取組を知ってもらうことができた。
   また,平成28年度の第66回の運動における作文コンテストでは,過去最高の32万9,994点の応募があり,作文を書くことを通じて,次代を担う全国の小・中学生に,日常の家庭生活や学校生活の中で体験したことを基に,犯罪や非行のない地域社会づくりや犯罪や非行等に関して考えてもらうきっかけとなった。
   さらに,平成29年2月17日に首相官邸において「再犯防止推進のための国・地方・民間会合」を開催した。“社会を明るくする運動”のフラッグアーティストである谷村新司氏を始め,昨年本運動のためにパラパラマンガを制作した鉄拳氏,全国保護司連盟の野沢太三理事長,全国知事会の山田啓二会長(京都府知事)や井戸敏三兵庫県知事が参加し,それぞれの立場での立ち直り支援への取組について紹介した。その後,安倍内閣総理大臣から,犯罪や非行からの立ち直り支援に取り組む方々の御尽力に対する感謝や激励の言葉を受けた。また,この会合で安倍総理から,犯罪や非行をした人の立ち直り支援に対し国民の皆様に協力を求める「第67回“社会を明るくする運動”の推進に当たってのメッセージ」が発せられた。
   犯罪や非行のない,全ての国民が安全で安心して暮らせる幸福な社会の実現を願うシンボルマークである「幸福の黄色い羽根」の定着も図りながら,犯罪や非行をした人の立ち直り支援に対する国民の理解・協力を促進し,犯罪や非行のない明るい社会を築くため,様々な機関・団体と広く連携しながら,地域に根ざした国民運動として一層の推進を図っている。
⑵ 法務省の人権擁護機関では,刑を終えて出所した人に対する偏見・差別をなくし,社会復帰に資するよう,「刑を終えて出所した人に対する偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。平成29年2月8日に,「犯罪や非行からの立ち直り支援について」をテーマとした人権に関する国家公務員等研修会を開催した。
   また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,刑を終えた人に対する差別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
刑を終えた人に対する差別待遇 11 10 15 9 15

(法務省人権擁護局の資料による)

10 犯罪被害者等
 犯罪被害者やその家族は,犯罪そのものやその後遺症によって精神的,経済的に苦しんでいるにもかかわらず,追い打ちを掛けるように,興味本位のうわさや心ない中傷等により名誉が傷つけられたり,私生活の平穏が脅かされたりするなどの問題が指摘されている。
 こうした犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会を実現させるため,平成16年12月に「犯罪被害者等基本法」(平成16年法律第161号)が成立した。同法に基づき,平成28年4月に閣議決定された「第3次犯罪被害者等基本計画」では,四つの基本方針(注1)の下,五つの重点課題(注2)ごとに261の具体的施策が掲げられ,関係府省庁において同計画に基づく施策が進められている。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。
 (注1)「四つの基本方針」
 (1)尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること,(2)個々の事情に応じて適切に行われること,(3)途切れることなく行われること,(4)国民の総意を形成しながら展開されること
 (注2)「五つの重点課題」
 (1)損害回復・経済的支援等への取組,(2)精神的・身体的被害の回復・防止への取組,(3)刑事手続への関与拡充への取組,(4)支援のための体制整備への取組,(5)国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

⑴ 犯罪被害者等の人権に関する啓発・広報
ア 法務省では,犯罪被害者保護・支援のための制度を広く国民に紹介し,その周知を図るために「犯罪被害者の方々へ」と題するパンフレットを作成し,全国の検察庁及び各都道府県警察等において犯罪被害者等に配布しているほか,同パンフレットを法務省ホームページ及び検察庁ホームページに掲載し,情報提供を行っている。
   また,刑事裁判・少年審判終了後の更生保護における犯罪被害者等のための制度について,リーフレットを配布するなどの広報を実施している。
   さらに,法務省の人権擁護機関では,犯罪被害者やその家族の人権問題に対する配慮と保護を図るため,「犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう」を強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
イ 警察庁では,毎年11月25日から12月1日までの1週間を「犯罪被害者週間」とし,犯罪被害者等に関する国民の理解を深めるための啓発事業を集中的に実施している。平成28年度は,警察庁主催の犯罪被害者週間中央イベントを東京で開催するとともに,地方公共団体(北海道,山口県)等との共催の地方大会を札幌市及び山口市において開催し,基調講演やパネルディスカッション等を行った。中央イベントでは,性犯罪被害者支援に関する講演やパネルディスカッション等を行った。
   また,平成28年度の都道府県,政令指定都市等における犯罪被害者週間関連行事について,全国の開催情報を集約した上で,警察庁ホームページ等を活用し,全国的に取組がなされていることを広報した(詳細は,「犯罪被害者白書」に記載)。
   また,警察における犯罪被害者支援の広報・啓発として,パンフレット「警察による犯罪被害者支援」,「犯罪被害給付制度のご案内」等の作成及び犯罪被害者支援広報用ホームぺージ(http://www.npa.go.jp/higaisya/home.htm)の開設を行うとともに,毎年11月の警察庁広報重点として「犯罪被害者支援活動の周知と参加の促進及び犯罪被害給付制度の周知徹底」を設定している。都道府県警察では,中・高校生を対象に,犯罪被害者本人や遺族が直接語りかける「命の大切さを学ぶ教室」を実施するとともに,受講した中・高校生の参加による,命の大切さや犯罪被害者支援をテーマとする作文コンクールを実施したほか,大学生を対象にした犯罪被害者支援に関する講義を行うなど,広報・啓発を実施した。
   このほか,犯罪被害者等への支援活動を行う公益社団法人全国被害者支援ネットワークに加盟している民間被害者支援団体等の関係機関・団体との連携を図りながら,犯罪被害者支援に関する広報・啓発等の活動を行っている。

⑵ 犯罪被害者等に対し援助を行う者等に対する教育訓練
ア 検察職員
 検察職員に対しては,犯罪被害者保護を目的とした諸制度について,各種研修や日常業務における上司による指導等を通じて周知し,適正に運用するよう努めている。
イ 警察職員
 警察では,犯罪被害者等の立場に立った適切な支援,対応を行うためには,職員に対する教育が極めて重要との認識の下,犯罪被害者支援の意義や各種施策の概要,犯罪被害者等の心情への配慮や具体的な対応の在り方等を理解させるための教育を積極的に実施している。
ウ 保護観察官
 保護観察官を対象にした各種研修において,犯罪被害者等に対して適切な対応を行うことができるようにする観点から,また,保護観察対象者に対して犯罪被害者等の状況や心情について十分理解させ,その贖罪意識の涵養を図る観点から,犯罪被害者等が置かれている状況や刑事政策における被害者支援の必要性等をテーマとして,犯罪被害当事者や民間の犯罪被害者支援団体の関係者等による講義を実施している。
エ 民間の犯罪被害者支援団体のボランティア等
 警察では,民間の犯罪被害者支援団体の一員として犯罪被害者支援を行うボランティア等に対して,警察職員を講師として派遣するほか,被害者支援教育用DVDの活用等により,一層効果的な教育訓練を行うよう努めている。

⑶ 犯罪被害者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,犯罪被害者等に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

11 インターネットによる人権侵害
 インターネットの普及に伴い,その匿名性,情報発信の容易さから,個人の名誉やプライバシーを侵害したり,差別を助長する表現を掲載したりするなど,人権に関わる様々な問題が発生している。そのため,一般のインターネット利用者等に対して,個人の名誉やプライバシーに関する正しい理解を深めるための啓発活動を推進していくことが必要である。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 個人のプライバシーや名誉に関する正しい知識を深めるための啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では,個人のプライバシーや名誉に関する正しい理解を深めるため,「インターネットを悪用した人権侵害をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   平成28年度は,青少年を中心に深刻化するインターネットを悪用した人権侵害への取組として,全国の中学校を中心に携帯電話会社等の実施するスマホ・ケータイ安全教室と連携した人権教室を全国各地で実施した。
   また,SNSサイトやブログサイトに,人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたインターネットバナー広告を掲載した。
   さらに,啓発映像としては,人権啓発ワークショップ事例集「『ワークショップをやってみよう』~参加型の人権教室」の視聴覚教材(アニメ),腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「心ない書き込み」,タレントの麻尋えりか氏によるスポット映像「ネットによる人権侵害」に加えて,平成28年度は,インターネット上における人権尊重やその安全な利用に関する理解や関心を深めることを目的とした啓発ビデオ「インターネットと人権~加害者にも被害者にもならないために~」を作成し,YouTube法務省チャンネルで配信している。
   このほか,「インターネットと人権」をテーマにした啓発教材「あなたは大丈夫?考えよう!インターネットと人権」を全国の法務局・地方法務局に加え,全国の高等学校1年生にも配布するなど各種啓発活動で活用している。
イ 警察では,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律に基づく取締りを推進した。平成28年中には全国で同法違反により48件を検挙し,そのうち42件は,電子メールやSNS等のインターネットを利用したものであった。
   また,私事性的画像記録等に係る事案の現状・対策,早期相談の重要性,削除申出方法等,被害防止のための広報啓発活動を推進しており,例えば,警察庁では,ホームページ上に「リベンジポルノ等の被害を防止するために」と題して,具体的な被害防止対策を掲載している。
   このほか,警察庁では,「インターネット上の誹謗中傷の防止」等をテーマとした「平成28年度情報セキュリティ対策DVD『STOP TO THINK!』」(公益財団法人警察協会制作)を監修し,都道府県警察等において,警察や民間事業者等が主催する研修会の機会を利用した講演等の各種啓発活動の中で,これを活用している。
ウ 総務省では,児童や保護者を対象にインターネット・スマートフォンの安心安全な利用のための啓発を行う講座であるe-ネットキャラバンや,違法有害情報相談センターによる学校関係者向けのセミナーを通じて,安易な個人情報の投稿等によるプライバシー侵害・名誉毀損等に関する注意喚起を図っている。

⑵ インターネットをめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
ア 総務省では,プロバイダ責任制限法の適切な運用の支援に努めている。
   平成21年8月から,インターネット上の違法・有害情報へのプロバイダ等の関係者による適切な対応を支援するため,プロバイダ責任制限法や各種ガイドライン等の相談を受け付ける「違法・有害情報相談センター」を設置している。
   また,電気通信事業者団体において,プロバイダ責任制限法の円滑な運用のため,実務上の行動指針となるガイドラインを策定しているところ,同ガイドラインのうち,「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」について,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律を受け,平成26年12月に,改訂の支援を行った。
   さらに,同じく電気通信事業者団体により,インターネット上の違法・有害情報に対する適切な対応が行えるよう策定された「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項の解説」につき,平成29年3月にヘイトスピーチ解消法及び部落差別解消推進法の成立を受けた改訂が行われた際,法務省と共同で支援を行った。
イ 法務省の人権擁護機関では,インターネット上の人権侵害情報(私事性的画像記録によるものを含む。)について相談を受けた場合,プロバイダへの発信者情報開示請求や当該情報の削除依頼の方法を助言するほか,調査の結果,名誉毀損やプライバシー侵害に該当すると認められるときは,法務省の人権擁護機関による削除要請について記載したプロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドラインを活用して,当該情報の削除をプロバイダ等に求めており,また,不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で特定の地域を同和地区であるとするなどの内容の情報については,ガイドラインの対象ではないものの,適宜の方法で削除を求めるなど,適切な対応に努めている。
   いじめ防止対策推進法では,インターネットを通じていじめが行われた場合においては,児童等やその保護者が情報の削除等について法務局の協力を求めることができる旨の規定(第19条第3項)等が設けられていることから,その趣旨を踏まえて適切に対応している。

人権侵犯事件数(開始件数) 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
インターネットに関する人権侵犯 671 957 1,429 1,736 1,909

(法務省人権擁護局の資料による)
   
⑶ インターネット等を介したいじめ等への対応
 文部科学省では,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」等に基づき,フィルタリングやインターネット利用のルールに関する学習・参加型シンポジウムの開催や,普及啓発資料の配布等を通して,地域・民間団体・関係府省庁等と連携しつつ,保護者及び青少年に対する啓発や教育活動を推進している。
 また,平成26年度から引き続き,都道府県・指定都市において,ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールの取組への支援を行っている。
 さらに,学習指導要領に基づき,インターネットの適切な利用を含む,情報モラルに関する教育を推進している。

12 北朝鮮当局によって拉致された被害者等
 北朝鮮当局による日本人拉致は,我が国に対する主権侵害であるとともに重大な人権侵害である。
 拉致問題に関する啓発については,「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(平成18年法律第96号。以下「北朝鮮人権法」という。)において,政府及び地方公共団体が拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものと定められている。
 また,「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定)においては,「各人権課題に関する取組」の中の「北朝鮮当局による拉致問題等」(平成23年4月1日一部変更)で,拉致問題等についての正しい知識の普及を図り,国民の関心と認識を深めるための取組を積極的に推進するものと定められている。
 さらに,拉致問題の解決には,国内世論及び国際世論の後押しが重要であるとの観点から,政府は,拉致問題に関する国内外の理解促進に努めている。
 平成28年度の取組は,以下のとおりである。

⑴ 北朝鮮人権侵害問題啓発週間における取組
 北朝鮮人権法は,12月10日から16日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」と定めている。平成28年度は,政府主催行事として,平成28年12月10日に,拉致問題対策本部と法務省の共催,文部科学省の後援による政府主催国際シンポジウム「拉致問題をはじめとする北朝鮮の人権侵害に対する責任追及のための国際連携~一日も早い拉致被害者の救出に向けて~」を東京都千代田区において開催した。同シンポジウムでは,国内外の専門家や国連の代表者などを招き,北朝鮮の人権侵害に対する責任追及に関する国際的な取組の現状と今後の国際連携のあり方をテーマにパネルディスカッションを行い,その後,「ふるさとの風ミニコンサート」と題して,拉致被害者及び北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者の御家族や支援団体等による合唱,会場全体での合唱が行われた。
 また,同日,北朝鮮に囚われている拉致被害者の方々を励ますこと等を目的として,拉致問題対策本部事務局と民間団体との共催で,北朝鮮向け短波ラジオ放送の共同公開収録を実施し,警視庁音楽隊による演奏,ラジオ放送担当者による取組の紹介等を行った。
 『国際シンポジウム』及び『共同公開収録』の模様は,政府の北朝鮮向け短波ラジオ放送により,北朝鮮に向けて生放送されるとともに,アメリカのラジオ・フリー・アジア(RFA)及びボイス・オブ・アメリカ(VOA)との連携により,これら放送局からも中波や短波で放送された。
 このほか,平成28年12月18日に,全国人権擁護委員連合会,九州人権擁護委員連合会,法務省等の共催で,拉致被害者の蓮池薫氏,拉致被害者の市川修一氏の実兄である市川健一氏,鹿児島女子高等学校音楽部及び鹿児島市立大龍小学校金管バンドを迎えて,「拉致問題を考える講演会とコンサートの集い」を鹿児島市で開催した。
 さらに,同週間の周知を目的としたインターネットバナー広告及び交通広告の実施,全国の地方新聞52紙に啓発週間を周知する広告の掲載,ポスター及びチラシの掲出や関係府省庁,地方公共団体と連携したポスターの掲出等,同週間にふさわしい活動に取り組んだ。

⑵ 広報媒体の活用
 拉致問題対策本部は,平成28年度より新たに拉致問題啓発映像作品「~メッセージ~家族たちの思い~」を制作し,上映したほか,啓発用のポスターやパンフレットの各団体への配布,政府主催の拉致問題啓発のための舞台劇公演実施,内閣府庁舎1階の啓発コーナー「拉致問題を知るひろば」の運営,学校における映画「めぐみ─引き裂かれた家族の30年」及びアニメ「めぐみ」の上映会開催などを行った。

⑶ 地方公共団体・民間団体との協力
 拉致問題対策本部は,地方公共団体及び民間団体との共催等による啓発行事として「拉致問題を考える国民の集い」を各都市(東京都新宿区,鳥取県米子市,札幌市,長崎市,広島市)において開催したほか,地方公共団体等と共催で,映画「めぐみ─引き裂かれた家族の30年」の上映会を開催した。また,地方公共団体と共催,文部科学省の後援により,拉致問題啓発行事として,舞台劇「めぐみへの誓い─奪還─」を秋田県男鹿市,福岡市,仙台市,沖縄県浦添市,福島県白河市及び大阪市において上演した。また,映像作品「~メッセージ~家族たちの思い」を福井県敦賀市,福岡県久留米市及び埼玉県桶川市において上映した。

⑷ 学校教育における取組
 文部科学省では,各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を集めた会議において,人権教育・啓発に関する基本計画が一部変更され,各人権課題に対する取組に「北朝鮮当局による拉致問題等」が追加された趣旨を説明するとともに,拉致問題対策本部事務局による行政説明を行うなど,各種の機会を通じて周知を図っている。

⑸ 海外に向けた情報発信
 平成28年5月,拉致問題対策本部は,北朝鮮による拉致問題について国際社会の理解促進を図るとともに,一日も早い北朝鮮の人権状況の改善に向けた国際連携のあり方を探求することを目的として,米国(ワシントンDC及びニューヨーク)において,加藤拉致問題担当大臣出席の下,国際シンポジウムを開催した。ワシントンDCでは,日本政府と米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)との共催により,拉致問題を含む北朝鮮の人権問題を担当する米韓の政府代表及び拉致被害者御家族等を招き,日米韓の連携強化の重要性について議論を行った。また,ニューヨークでは,日本政府主催により,国連本部において,国連関係者,関係国政府高官,拉致被害者御家族等を招き,拉致問題を始めとする北朝鮮の人権状況の改善に向けた国連人権プロセスを活用した具体的戦略について議論を行った。
 平成28年12月,ニューヨークの国連本部において,オーストラリア,EU,我が国,韓国及び米国の共催で,パネル・ディスカッション「北朝鮮の人権状況―現状及び国際社会の取組」を開催,国連や共催国等から関係者がパネリストとして出席し,拉致問題を含む北朝鮮の人権状況や国際社会がとるべき対応等について幅広く議論を行った。我が国からは,加藤拉致問題担当大臣が日本政府を代表してパネリストとして出席し,拉致問題の深刻さや拉致被害者及びその御家族の高齢化が進む中で,拉致被害者の救出が切迫した課題であることを国際社会に訴えた。パネルでは,全ての拉致被害者の一日も早い帰国の実現を含む,北朝鮮の人権状況の改善に向けた国際連携の在り方につき,活発な議論が行われた。
 その他にも,外務省では,在外公館において,各国政府関係者,報道関係者,有識者等に対し,各種広報媒体を活用し,拉致問題についての説明・啓発を行った。

⑹ 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めるための啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,拉致問題等に対する国民各層の理解を深めるため,「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
 なお,北朝鮮人権侵害問題啓発週間における啓発活動については,前掲⑴のとおり。

⑺ 国連における取組
 平成28年3月の国連人権理事会に,我が国はEUと共同で,平成27年同様強い内容の北朝鮮人権状況決議を提出し,無投票採択された。同決議は,「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会」(COI)報告書の内容を反映させた昨年の国連総会決議を含むこれまでの関連決議の内容を反映するとともに,同月の人権理事会に提出された,国連北朝鮮人権状況特別報告者の報告書の勧告も踏まえたものになっている。具体的には,昨年同様,北朝鮮の組織的,広範かつ深刻な人権侵害を最も強い表現で非難し,国際刑事裁判所(ICC)への北朝鮮の事態の付託の検討や制裁の範囲に関する検討等を通じて,安保理が適切な行動をとることを促す国連総会決議を歓迎するとともに,国連安全保障理事会が北朝鮮の人権状況等を議論したことを歓迎しつつ,国連安全保障理事会がこの議論に継続的かつ積極的に関与することへの期待を表明している。さらに,国連人権高等弁務官に対し,北朝鮮における人権侵害に係る説明責任の問題に重点的に取り組む独立した専門家を指名するとともに,当該専門家のグループに対し,北朝鮮における人道に対する犯罪の被害者のために,正義と真実を確保するための実用的な説明責任メカニズムを勧告することを求めている。
 また,平成28年秋の国連総会には,我が国はEUと共同で,平成27年同様強い内容の決議案を提出し,平成28年12月,無投票採択された。具体的には,同決議は,平成26年2月に公表された「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書の内容を反映させた昨年の国連総会決議を基に,北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難し,北朝鮮に対し,拉致被害者の即時帰国等により,全ての人権侵害を終わらせるための措置を早急にとることを要求している。また,北朝鮮による核・ミサイル開発への資源投入が,人権・人道状況に与える影響への深刻な懸念についても表明している。さらに,国連安全保障理事会に対し,北朝鮮の事態の国際刑事裁判所(ICC)への付託の検討や制裁の範囲に関する検討等を通じ,適切な行動をとることを促している。さらに,同年12月には,国連総会本会議で北朝鮮人権状況決議が無投票採択されたことに加え,国連安全保障理事会において,平成27年に引き続き,人権状況を含む北朝鮮の状況が包括的に議論された。

13 その他の人権課題
⑴ ホームレスの人権及びホームレスの自立の支援等
ア 平成14年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(平成14年法律第105号)では,ホームレスの自立の支援等に関してはホームレスの人権に配慮することが定められている。同法は10年間の限時法として制定されたものであるが,平成24年6月にその期限が5年間延長されたところである。
   また,同法に基づき,平成25年7月にホームレスの実態に関する全国調査の結果を踏まえて策定した「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」では,ホームレス及び近隣住民の双方の人権に配慮しつつ,啓発広報活動,人権相談等の取組により,ホームレスの人権の擁護を推進することが必要であること等が盛り込まれている。
イ これらも踏まえ,法務省の人権擁護機関では,「ホームレスに対する偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,ホームレスに関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

⑵ 性的指向に関する人権
ア 性的指向とは,人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念である。同性愛者,両性愛者の人々は,正常と思われず,場合によっては職場を追われることさえある。このような性的指向を理由とする差別的取扱いについては,現在では,不当なことであるという認識が広がっているが,いまだ偏見や差別が起きている。
イ 法務省の人権擁護機関では,「性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   その一環として,性的指向をテーマとした人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
   また,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「人を好きになること」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
   さらに,平成28年11月11日には,「性的マイノリティ(LGBT)と人権」をテーマとしたシンポジウムを開催した(10頁参照)。シンポジウムの様子は,人権教育啓発推進センターの人権チャンネル(https://youtu.be/1IaNQ-Q3HrY(基調講演),https://youtu.be/xzf18bJ1rzc(基調報告))で公開している。また,地方公務員を対象とする人権啓発活動指導者養成研修会において「性的指向」をテーマとした講義を設ける(77頁参照)などの取組を実施した。
   加えて,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,性的指向に関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
ウ 文部科学省では,平成27年4月,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を通知し,学校における適切な教育相談の実施等を促している。また,平成28年4月,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」の教職員向け資料を公表し,全国の小中高等学校等に配布した。
エ 厚生労働省では,性的指向・性自認を理由としたものも含め,社会的な繋がりが希薄な方々の相談先として,24時間365日無料の電話相談窓口を各地域に設置するとともに,必要に応じて面接相談や同行支援を実施して具体的な解決に繋げる寄り添い支援を行っている。
   また,性的指向・性自認に対する不理解によりパワーハラスメントが行われうることを,事業主向けのガイドブック「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を都道府県労働局等に配布することにより周知を図っている。
   さらに,公正な採用選考についての事業主向けガイドブックに「LGBT等の性的マイノリティの方など特定の人を排除しない」旨記載しHP上にも公表している。
   加えて,男女雇用機会均等法第11条に基づく「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)を改正し,職場におけるセクシュアルハラスメントは,相手の性的指向又は性自認にかかわらず,該当することがあり得ることを明示した(平成29年1月1日施行)。

⑶ 性同一性障害者の人権
ア 性同一性障害とは,生物学的な性と性の自己意識が一致しないため,社会生活に支障がある状態であり,性同一性障害の人々は,社会の中で偏見の目にさらされ,昇進を妨げられたり,学校生活でいじめられたりするなどの差別を受けている。
イ 法務省の人権擁護機関では,「性同一性障害を理由とする偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子等の配布等,各種啓発活動を実施している。
   その一環として,性同一性障害をテーマとした人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
   また,タレントの麻尋えりか氏によるスポット映像「性同一性障害」篇を作成し,YouTube法務省チャンネルで配信している。
   さらに,平成28年11月11日には,「性的マイノリティ(LGBT)と人権」をテーマとしたシンポジウムを開催した(10頁参照)。シンポジウムの様子は,人権教育啓発推進センターの人権チャンネル(https://youtu.be/1IaNQ-Q3HrY(基調講演),https://youtu.be/xzf18bJ1rzc(基調報告))で公開している。また,地方公務員を対象とする人権啓発活動指導者養成研修会において「性同一性障害」をテーマとした講義を設ける(77頁参照)などの取組を実施した。
   加えて,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,性同一性障害者に対する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
ウ 文部科学省では,平成27年4月,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を通知し,学校における適切な教育相談の実施等を促している。また,平成28年4月,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」の教職員向け資料を公表し,全国の小中高等学校等に配布した。
エ 厚生労働省では,性的指向・性自認を理由としたものも含め,社会的な繋がりが希薄な方々の相談先として,24時間365日無料の電話相談窓口を各地域に設置するとともに,必要に応じて面接相談や同行支援を実施して具体的な解決に繋げる寄り添い支援を行っている。
   また,性的指向・性自認に対する不理解によりパワーハラスメントが行われうることを,事業主向けのガイドブック「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を都道府県労働局等に配布することにより周知を図っている。
   さらに,公正な採用選考についての事業主向けガイドブックに「LGBT等の性的マイノリティの方など特定の人を排除しない」旨記載しHP上にも公表している。
   加えて,男女雇用機会均等法第11条に基づく「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)を改正し,職場におけるセクシュアルハラスメントは,相手の性的指向又は性自認にかかわらず,該当することがあり得ることを明示した(平成29年1月1日施行)。

⑷ 人身取引(トラフィッキング)事犯への適切な対応
ア 人身取引は重大な人権侵害であり,人道的観点からも迅速・的確な対応を求められている。これは,人身取引が,その被害者に対して深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらし,その被害の回復は非常に困難だからである。
イ 政府では,平成16年4月から「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を開催するなどして関係行政機関が緊密な連携を図りつつ,「人身取引対策行動計画」(平成16年12月),「人身取引対策行動計画2009」(平成21年12月)に基づき,人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を推進してきたところ,引き続き人身取引対策に係る情勢に適切に対処し,政府一体となってより強力に,総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいくため,平成26年12月,犯罪対策閣僚会議において「人身取引対策行動計画2014」を策定するとともに,関係閣僚から成る「人身取引対策推進会議」を随時開催することとした。
   平成28年5月,人身取引対策推進会議の第2回会合を開催し,我が国における人身取引による被害の状況や,関係省庁による人身取引対策の取組状況等をまとめた年次報告「人身取引対策に関する取組について」を決定・公表するとともに,引き続き,人身取引の根絶を目指し,人身取引対策行動計画2014に基づく取組を着実に進めていくことを確認した。
   また,平成28年6月の「外国人労働者問題啓発月間」に合わせてインターネットテキスト広告により,7月30日の「人身取引反対世界デー」及び11月の「女性に対する暴力をなくす運動」期間に合わせてSNSにより,我が国における人身取引の実態,人身取引の防止・撲滅,被害者の保護に係る取組に関する広報を実施し,被害に遭っていると思われる者を把握した際の通報を呼びかけた。
ウ 法務省の人権擁護機関では,「人身取引をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等,各種啓発活動を実施している。
   また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,人身取引の疑いのある事実を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講ずることとしている。
   法務省入国管理局では,人身取引対策への取組を,「出入国管理」(出入国管理行政の現状についての報告書),入国管理局のパンフレット及びホームページに掲載しており,ホームページにおいては9言語で人身取引被害者の保護に必要な情報を提供している。
   また,毎年6月に実施する「不法就労外国人対策キャンペーン」において,不法就労防止への協力を呼び掛けるリーフレットを作成し,法務省ホームページ等に掲載するとともに,関係機関等に配布するなどの広報活動等を実施して,不法就労対策を通じた人身取引防止のための啓発活動を行っている。
エ 外務省では,被害者の我が国への入国を未然に防止する観点から,在外公館等における査証審査を厳格に行っている。また,外務省ホームページ上で「人身取引対策に伴う査証審査厳格化措置」についての広報活動を実施している。
   さらに,平成16年以降,関係省庁から構成される「人身取引対策に関する政府協議調査団」を延べ24か国・地域に派遣し,派遣先の政府関係機関,国際機関現地事務所及び現地NGOとの意見交換を通じて,人身取引の被害実態,訴追・保護への取組,課題等を双方で把握し,連携を強化している。
   加えて,我が国で認知された外国人人身取引被害者に対しては,国際移住機関(IOM)への拠出を通じ,人身取引被害者の帰国支援及び社会復帰支援事業(就労・職業支援,医療費の提供等)を行っており,平成17年5月1日以降平成29年3月末までに,計307人の被害者が同事業により母国への安全な帰国を果たした。
   そのほか,外国人被害者の相談窓口等を記載した警察庁作成の9か国語対応リーフレットを在京大使館及び各国に所在する在外公館に配布し,人身取引の啓発と被害者の認知促進に努めている。
オ 内閣府では,人身取引対策の啓発用ポスター及びリーフレットを作成し,地方公共団体,空港・港湾,大学・高等専門学校等,日本旅行業協会,IOM(国際移住機関),その他関係機関に配布し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施した。
カ 警察庁では,「コンタクトポイント連絡会議」を開催し,関係国の在日大使館,国際機関,NGO等と人身取引被害者の発見,保護についての情報交換や意見交換を行うとともに,人身取引被害の警察等への連絡を呼び掛けるリーフレットを9か国語で作成し,人身取引被害者等の目に触れやすいところで配布しているほか,人身取引事犯未然防止のための広報啓発用映像ソフトを作成し,警察庁ホームページに掲載している。
   また,警察庁の委託を受けた民間団体が市民から匿名による人身取引事犯等に関する通報を受け付ける「匿名通報事業」(http://www.tokumei24.jp/)を運用している。
キ 厚生労働省では,人身取引対策行動計画2014に基づき,婦人相談所において,国籍・年齢を問わず,人身取引被害女性の保護を行い,その宗教的生活や食生活を尊重した支援を実施している。

⑸ 東日本大震災に伴う人権啓発
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,被災地域が東日本全域に及び,死者15,893人,行方不明者2,553人,負傷者6,152人の甚大な人的被害が生じたほか,全・半壊建物は401,885戸にも及ぶ(平成29年3月10日警察庁緊急災害警備本部広報資料による。)未曾有の大災害である。また,地震と津波に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は,被害をより深刻なものとした。東日本大震災による避難者は,被害の大きかった岩手県,宮城県及び福島県を中心に平成29年3月13日時点で119,163人に及んでいる(復興庁調べ)。
ア 避難生活における啓発等
(ア) 法務省の人権擁護機関では,東日本大震災に伴って生起する様々な人権問題について対処するとともに,新たな人権侵害の発生を防止するため,仮設住宅等を訪問するなどして,被災者の心のケアを含めた人権相談に応じている。また,人権相談等を通じて,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には,人権侵犯事件として救済手続を開始し,被害者の救済に適切に対処している。
   また,平成28年9月10日,仙台市において,人権シンポジウム「震災と人権~東北の「みらい」を見据えて~若者たちが発信する復興支援」を,平成29年1月28日,名古屋市において,同シンポジウム「震災と高齢者―高齢者の人権に配慮した防災・復興の形とは―」をそれぞれ開催した(10頁参照)。シンポジウムの様子は,人権教育啓発推進センターの人権チャンネル(http://www.youtube.com/jinkenchannel)で公開している。
(イ) 内閣府では,平成23年度以降,岩手県,宮城県及び福島県において,女性の悩みや女性に対する暴力等に関する相談に対応するため「東日本大震災による女性の悩み・暴力に関する相談事業」を実施している。
イ 原発事故に伴う風評被害等
(ア) 法務省の人権擁護機関では,東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う風評に基づく差別的取扱い等,東日本大震災に伴って生起する様々な人権問題について対処するとともに,新たな人権侵害の発生を防止するため,「東日本大震災に起因する偏見や差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ,人権教室の実施,シンポジウムの開催,人権啓発デジタルコンテンツの掲載等の啓発活動を実施した。
   また,地方委託事業においては,東日本大震災に起因する諸問題に対応するため,引き続き地方公共団体に対し東日本大震災に伴う啓発活動への取組を委託した。
(イ) 文部科学省では,平成23年6月,被災した児童生徒を受け入れる学校において,当該児童生徒に対する心のケアや,当該児童生徒を温かく迎えるための指導上の工夫,保護者・地域住民等に対する説明等が適切に行われ,いじめ等の問題を許さず,当該児童生徒の学校生活への適応が図られるよう必要な指導を行うなどの配慮を,教育委員会等に要請した。また,横浜市などで原子力発電所事故により避難している児童生徒がいじめに遭い,学校等が適切な対応を行わなかった事案については,横浜市などに義家文部科学副大臣を派遣して指導助言を行ったほか,平成28年12月,被災児童生徒を受け入れる学校に対して,(1)原発事故の避難者である児童生徒を含め,被災児童生徒が,いじめを受けていないかどうか確認を行うこと(2)未だ故郷に帰れず,不安の中,過ごしている被災児童生徒に対して,心のケアなど,日常的に格別の配慮を行うことなどの対応を求める通知を発出した。さらに,平成29年3月,「いじめの防止等のための基本的な方針」を改定して,原子力発電所事故の避難者である児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組むことを新たに盛り込んで,教職員に対して適切な対応を求めている。
(ウ) 経済産業省では,原子力発電所の事故に伴い,風評被害対策や放射線等に関する知識普及のため,講演会や研修会等へ放射線等に関する専門家を派遣するなど,リスクコミュニケーションの観点を踏まえた情報発信を行った。

第3節 人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等

1 研修
⑴ 検察職員
 検察職員に対しては,経験年数に応じて実施する各種研修において,人権等に関する講義を実施しているほか,日常業務における上司による指導等を通じ,基本的人権を尊重した検察活動の徹底を図っている。
 平成28年度の研修としては,新任検事を対象とした「新任検事研修」や任官後おおむね3年前後の検事を対象とした「検事一般研修」等において,犯罪被害者や被疑者・被告人等の人権に関する講義及び国際人権関係条約に関する講義等を実施した。

⑵ 矯正施設職員
 初任研修課程及び任用研修課程等において,新採用職員,幹部職員等に対し,被収容者の権利保障・国際準則等,人権啓発,個人情報の保護,犯罪被害者の人権,セクシュアルハラスメント等に係る講義を実施しているほか,憲法,成人矯正法等の講義においても人権に関する視点を取り入れている。
 また,平成28年度は,専門研修課程において,矯正施設で勤務し,被収容者の処遇等に従事する職員に対し,相手の立場に立ち,相手の気持ちを考えながら冷静な対応ができる能力を習得させるとの観点から,民間プログラムによる実務に即した行動科学的な視点を取り入れた研修を行った(「アンガー・マネジメント」研修:刑事施設の中間監督者及び少年院の専門官等34人,「コーチング」研修:刑事施設の中間監督者及び少年鑑別所の専門官等54人)。
 さらに,参加した研修員を講師として所属する矯正施設においても自庁研修を実施した。
 このほか,各矯正施設においては,事例研究,ロールプレイング等の実務に即した自庁研修を行うなど,職員の人権意識の向上に努めている。

⑶ 更生保護官署関係職員
 更生保護官署関係職員を対象として,在職年数等に応じて実施している各種研修において,保護観察官に対しては,犯罪被害者及び保護観察等対象者等の人権等に関する講義を,社会復帰調整官に対しては,犯罪被害者及び医療観察対象者等の人権等に関する講義を,それぞれ実施しており,平成28年度は延べ301人に対して,人権に関する講義を実施した。
 保護観察所が実施している保護司に対する各種研修においても,保護観察等の処遇の場面で人権や個人情報の取扱い等に配慮するよう啓発に努めている。

⑷ 入国管理関係職員
 入国管理局関係職員を対象に,在職年数等に応じて実施している入国管理局関係職員研修において,基本的人権の尊重,人権擁護の現状及び人身取引関係の講義科目を設置しており,平成28年度は,693人が参加した。
 また,各地方入国管理官署の業務の中核となる職員を対象とした人権研修において,人権問題に関する知識を深め,適切な業務処理に資することを目的に,人権に関する諸条約等についての講義を実施している。
 さらに,人身取引及び配偶者からの暴力(DV)事案を取り扱う中堅職員を対象に,これら事案に対する知識,技術及び課題等を学ぶ,人身取引対策及びDV事案に係る事務従事者研修を実施している。
 人権研修並びに人身取引対策及びDV事案に係る事務従事者研修については,平成28年度は,合計47人が受講した。

⑸ 教員・社会教育関係職員
 独立行政法人教員研修センター及び各都道府県等において,人権尊重意識を高めるための研修を実施している。
 また,社会教育主事講習において,人権問題を取り上げ,人権問題に関する正しい知識を持った社会教育主事の養成を図っている。平成28年度は,全国11か所(計12講習)の国立大学等に社会教育主事講習を委嘱した。

⑹ 医療関係者
 厚生労働省では,医療関係者の養成課程において,人の尊厳を幅広く理解するための教育内容を含めることを求めるなど,患者等の人権を十分に尊重するという意識・態度の育成を図った。

⑺ 福祉関係職員
 主任児童委員を対象に,全国主任児童委員研修会等を開催し,地域住民や関係機関との連携について考えるシンポジウム等を実施し,人権の尊重等についての理解を深めている。
 また,児童福祉関係施設における子どもの人権を尊重した処遇を充実させるため,国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所において研修を行った。
 虐待を受けた子どもの保護等に携わる者の研修の充実については,児童虐待問題や非行・暴力等の思春期問題に対応する第一線の専門的援助者の研修を行う「子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)」において,児童相談所,児童福祉施設,市町村,保健機関等の職員を対象とする各種の専門研修を行っている。

⑻ 海上保安官
 海上保安庁では,海上保安大学校等における初任者教育及び職員に対する再研修において,人権に関する教育を行っている。平成28年度は,960人が受講した。

⑼ 労働行政関係職員
 厚生労働省では,職員の職位に応じて行われる中央研修において,同和問題(部落差別)等を中心とする人権の講義を実施している。平成28年度は,982人が受講した。

⑽ 消防職員
 消防庁消防大学校では,消防職員に対し,人権教育を実施している。
 平成28年度における人権教育については,幹部科(284人)及び上級幹部科(50人)において,人権に関する諸問題について講義を実施した。

⑾ 警察職員
 警察では,各級警察学校,警察署等の職場において,人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」に重点を置いた教育を行うとともに,基本的人権に配意した適正な職務執行を期する上で必要な知識・技能を修得させるための各種教育を行っている。
 また,取調べの一層の適正化を図るため,平成20年1月に策定した「警察捜査における取調べ適正化指針」(http://www.npa.go.jp/keiji/keiki/torishirabe/tekiseika_shishin.pdf)に基づき,「被疑者取調べ監督制度」を適切に運用している。

⑿ 自衛官
 防衛省では,防衛大学校,防衛医科大学校,防衛研究所,統合幕僚学校,陸・海・空の各自衛隊幹部学校等の各教育課程において,自衛官になるべき者や自衛官に対して,有事における捕虜等の人権を保護するため,ジュネーヴ条約その他の国際人道法に関する教育を実施している。このうち,防衛研究所や統合幕僚学校では,ジュネーヴ条約その他の国際人道法に精通した部外講師による講演を実施している。平成28年度は,約2万9,800人が履修した。
 また,ジュネーヴ条約その他の捕虜等の取扱いに係る国際人道法の適切な実施を確保するため,統合国際人道業務訓練を実施しており,「武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律」(平成16年法律第117号)等に基づく業務要領について演練し,捕虜等の取扱いについての知識,技能の向上を図っている。平成28年度は,約60人が参加した。

⒀ 公務員全般
ア 法務省では,中央省庁等の職員を対象とする人権に関する国家公務員等研修会を開催している。平成28年度は,東京都港区において,次のとおり2回開催し,合計842人が参加した。
(1) 平成28年9月14日
  「オリンピック・パラリンピックと人権」の講演(講師・舛本直文氏,参加者379人),障害者スポーツ普及啓発映像「Be The HERO」(東京都作成)の上映
(2) 平成29年2月8日
 「犯罪や非行からの立ち直り支援について」のパネルディスカッション(パネリスト・横山和文氏,角谷奏子氏及び山田光夫氏,参加者463人),啓発映像「“社会を明るくする運動”(鉄拳氏によるパラパラマンガ)」(吉本興業株式会社/法務省保護局)及び「チェンジング・ハート」(更生保護法人日本更生保護協会(法務省保護局協力))の上映
 また,都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識やスキルを習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している(77頁参照)。平成28年度は,合計233人が受講した。
イ 人事院では,新規採用職員を対象とする「初任行政研修」等の全府省庁の職員を対象に実施している役職段階別研修等において,女性,高齢者,障害のある人等の人権課題をカリキュラムに取り入れて行った。また,若手・中堅職員を対象とする役職段階別研修等において,法務省が作成した啓発冊子「人権の擁護」を配布するとともに,その際,人権一般に対する認識を更に深めるよう指導を行った。
ウ 外務省では,新入職員等を対象とした各種研修の中で,人権問題や人権外交等に関する講義を,また,在外公館警備対策官として赴任する予定の他省庁等職員を対象とした研修の中で,ハーグ条約に関する講義を行った。平成28年度は,合計で226人が受講した。
   加えて,在外公館の領事担当官及び在外公館で領事を担当する予定の赴任予定者に対し,領事初任者研修の中でハーグ条約に関する講義及び人身取引問題に関する講義を,領事中堅研修の中でハーグ条約に関する講義を行った。平成28年度は,71人が受講した。
エ 自治大学校では,地方公共団体の幹部となる地方公務員の政策形成能力等を総合的に養成することを目的に高度な研修を行っているが,平成28年度の人権教育については,2課程の課目の中で実施した。平成28年度は,97人が受講した。

2 国の他の機関との協力
 裁判官の研修を実施している司法研修所では,裁判官に対する研修の際に人権問題に関する各種講義を設定している。平成28年度は,304人が受講した。
 なお,上記研修を実施するに当たり,法務省等から講師を派遣するなどの協力を行った事例もある。
 

第4節 総合的かつ効果的な推進体制等

1 実施主体の強化及び周知度の向上
⑴ 実施主体の強化
 人権啓発を効果的に推進するためには,人権啓発の実施主体の体制を質・量の両面にわたって強化していく必要があるが,特に,各地域に密着した効果的な人権啓発を行うためには,全国に約1万4,000人配置されている人権擁護委員の活用が有効かつ不可欠である。
 また,複雑・多様化する人権問題に適時適切に対応し,人権擁護委員活動の一層の活性化を図るためには人権擁護委員組織体の体制を充実・強化し,人権擁護委員組織体自らが自主的かつ積極的な人権啓発活動等を推進していく体制を整備していく必要がある。

⑵ 周知度の向上
 法務省では,法務省の人権擁護機関の周知を図るなどの目的のため,啓発冊子「人権の擁護」及び人権擁護委員の活動と役割を分かりやすく説明した冊子並びにリーフレット「人権擁護委員 あなたの街の相談パートナー」を作成し,人権週間,人権擁護委員の日を中心とする講演会等で配布するなど,周知活動の強化を図っている。
 また,特に小学校中学年以上の児童生徒を対象に,漫画を用いて日常生活における人権に関する問題及び人権を尊重することの重要性について分かりやすく説明することを目的として,啓発冊子「マンガで考える『人権』 みんなともだち」を作成し,人権尊重思想の周知・広報に活用した。
 さらに,法務省の人権擁護機関による調査救済制度等を周知するためのリーフレット「法務局による相談・救済制度のご案内」を配布し,調査救済制度等の周知を図った。
 平成28年度は,自らの差別意識について「気づき」の機会を提供し,無意識による人権侵害を減少させ,共生社会を実現することを目的とした人権意識自己診断「じんけん自己診断~こんなときどうする?」を作成し,リーフレットの配布や法務省ホームページに特設サイトを作成するなど人権尊重思想の周知・広報に活用した。

2 実施主体間の連携
⑴ 人権教育・啓発に関する中央省庁連絡協議会
 平成12年9月25日,関係省庁事務次官等申合せにより,各府省庁等の教育・啓発活動について情報を交換し,連絡するための場として,「人権教育・啓発中央省庁連絡協議会」を設置した。
 平成28年度は,幹事会を1回開催し,啓発活動の実施事業,効果検証の方法等についての情報交換を行うとともに,人権教育・啓発推進法に基づく年次報告についての協議を行った。また,ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえた人権教育・啓発活動等の取組について検討を行うため,幹事会の下にヘイトスピーチ対策専門部会を設け,意見交換を行うなど,関係機関の連携協力に努めている。

⑵ 人権啓発活動ネットワーク協議会
 法務省では,平成12年9月までに「人権啓発活動都道府県ネットワーク協議会」を都道府県単位(北海道については,法務局及び地方法務局の管轄区域単位)に設置し,さらに,平成20年3月までに市町村,人権擁護委員協議会等を構成員とする「人権啓発活動地域ネットワーク協議会」を全国193か所に設置した。このネットワーク協議会を利用して,国,地方公共団体,人権擁護委員組織体及びその他の人権啓発の実施主体が,それぞれの役割に応じて相互に連携・協力することにより,各種の人権啓発活動の効率的かつ効果的な実施に努めている。

⑶ 文部科学省と法務省の連携
 法務省の主催する全国中学生人権作文コンテスト(6頁参照)の優秀作品の作品集について,文部科学省,法務省・法務局等が連携して,教育委員会等を通じ,学校における活用を依頼した。また,子どもの人権SOSミニレター等,法務省における相談事業について,文部科学省,法務省・法務局等が連携して学校現場への周知を行った。

⑷ 児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議
 児童虐待防止対策については,これまでも関係府省庁の協力の下,政府全体として取り組んできたところであるが,児童虐待相談対応件数は過去最高を更新し,また,児童虐待事例が深刻化及び複雑化していることから,児童相談所,学校,警察等の関係機関の連携の強化をはじめ,子どもに関する他の施策とも連携した児童虐待防止対策を講ずることが求められている。
 このため,「児童虐待防止対策に関する業務の基本方針について」(平成28年3月29日閣議決定)に基づき,平成28年4月以降は,児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律を所管している厚生労働省において,児童虐待について,関係府省庁間の必要な総合調整を行うこととなった。
 これらを踏まえ,内閣府,警察庁,総務省,法務省,文部科学省をはじめとする関係府省庁と緊密に連携し,児童虐待の発生予防,発生時の迅速・的確な対応,被虐待児童への自立支援について,政府全体で強化を図り,児童虐待防止対策を一層効果的に推進していくこととしている。

⑸ スポーツ組織との連携・協力
 法務省の人権擁護機関では,いじめの防止等の人権尊重思想を若年層に普及させるため,フェアプレーの精神等をモットーとし,青少年層や地域社会において世代を超えた大きな影響力を有するJリーグ加盟クラブ,プロ野球球団等のスポーツ組織と連携・協力している。特にJリーグとは,以前から,スタジアムにおける各種啓発活動や人権スポーツ教室への選手派遣等,ファン・サポーターへの人権啓発において連携を図っている。

⑹ 民間企業と連携・協力した啓発活動
 「人権」に対しては,「敷居が高い」,「難しい」といったイメージが強いところ,法務省の人権擁護機関では,国民に,人権啓発活動への目を向けてもらうための更なる取組として,「笑い」を通じた発信力の強さを持ち,全国各地で地域に根ざした形でのスポーツ教室等に取り組んでいる民間企業と連携した人権啓発活動を実施している。
 また,青少年を中心に深刻化するインターネットを悪用した人権侵害への取組として,携帯電話会社等の実施する安全教室と連携した人権教室を実施している。
 加えて,平成28年度から「人種・障害の有無などの違いを理解し,自然に受け入れ,互いに認め合う共生社会」いわゆる「ユニバーサル社会」を実現するため,「人権ユニバーサル事業」を新設し,地方公共団体への委託により民間企業や学校,障害者団体等と連携した人権啓発活動を実施している。

3 担当者の育成
⑴ 人権啓発指導者養成研修会
 法務省では,地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識やスキルを習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している。
 平成28年度は,平成28年9月28日から30日までの3日間(大阪会場:参加者109人),同年10月26日から28日までの3日間(東京会場:81人),同年11月16日から18日までの3日間(福岡会場:43人)の3回開催した。

⑵ 人権擁護事務担当職員,人権擁護委員に対する研修
 法務省では,初等科,中等科等の一般研修はもとより,人権擁護事務に従事する際の人権擁護事務担当職員実務研修,調査救済事務担当者研修を始め,法務局・地方法務局の人権擁護課長,支局長等を対象に専門科研修等を実施し,人権擁護行政に携わる職員の養成をしている。
 人権擁護委員に対しては,新任委員に対する委嘱時研修を始め,初委嘱後6か月以内の委員を対象とした第一次研修,初委嘱後2年以内の委員を対象とした第二次研修,初めて再委嘱されて1年以内の委員を対象とした第三次研修を通じて,人権擁護委員として職務遂行に必要な知識及び技能の習得を図っている。また,同和問題講習会,男女共同参画問題研修も実施している。
 さらに,人権擁護委員組織体における指導者を養成するため,人権擁護委員活動及び人権擁護委員組織体の運営において中心的役割を担う立場にある人権擁護委員に対し,その職務の遂行に必要なマネジメント能力の向上を図るとともに,高度な人権相談技法,人権啓発手法,人権侵犯事件の処理及び最新の人権課題に関する知識等を修得させることを目的とした人権擁護委員指導者養成研修を実施している。
 このほかにも,人権擁護委員が組織する都道府県人権擁護委員連合会や人権擁護委員協議会等が中心となり,自主的に各種研修会を企画し実施している。

⑶ 公正採用選考人権啓発推進員に対する研修
 厚生労働省では,「公正採用選考人権啓発推進員」に対し,研修会を開催し,また,従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対し,「事業所における公正な採用選考システムの確立」について研修会を開催した。

4 人権教育啓発推進センターの充実
 人権教育啓発推進センター(9頁参照)は,民間団体としての特質を生かした人権教育・啓発活動を総合的に行うナショナルセンターとしての役割を果たすため,法務省,地方公共団体等からの委託事業のほか,情報誌「アイユ」の刊行,ホームページによる情報提供,各種人権啓発パンフレットの作成,地方公共団体・企業等を対象とした研修の受託業務等のセンター独自の事業を行っている。同センター主催の研修として,平成28年度は,人権講座を11回開催したほか,セミナーを13回開催した。
 その内容は,次のとおりである。

⑴ 人権講座
(1) 「国立ハンセン病資料館見学と人権の森,桜並木を巡る」(語り部:佐川 修(国立ハンセン病資料館運営委員,多磨全生園入所者自治会会長))
(2) 「アルビニズムと人権」(講師:石井 更幸(日本アルビニズムネットワークJAN))
(3) 「性的マイノリティの人権課題と最近の動向について」(講師:日高 康晴(宝塚大学看護学部教授))
(4) 「ネットいじめの現状」(講師:大久保 輝夫(子どもスマホ・ケータイ安全教室講師))
(5) 「職場におけるハラスメントの防止について」(講師:柳原 里枝子(株式会社ハートセラピー代表取締役))
(6) 「いつかは自分も……介護と仕事の両立を考える」(講師:津止 正敏(立命館大学教授))
(7) 「子どもの権利条約とわたしたち―企業,地域社会,市民ができること」(講師:吉村 祥子さん(関西学院大学国際学部教授))
(8) 「パラリンピックと義肢装具」(講師:臼井 二美男(義肢装具士))
(9) 「今日の職場と人権」(講師:熊谷 謙一(日本ILO協議会))
(10) 「福島から考えるダイバーシティ ~すべての人が生きやすい社会を目指して~」(講師:前川 直哉(一般社団法人ふくしま学びのネットワーク理事・事務局長))
(11) 「ネット依存と人権」(講師:三原 聡子(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター主任心理療法士))

⑵ セミナー
 (1) 「参加・体験型人権教育の理論と実践方法の基礎習得」(人権教育総合マニュアル「コンパシート」を使って)(講師:福田 弘(人権教育啓発推進センター上級特別研究員,筑波大学名誉教授))
    ※計8回開催
(2) 「企業向け人権研修 グループディスカッションを通して学ぶシリーズ」
第1回
      「企業の不祥事事例に学ぶ CSRとコンプライアンス経営~解説とグループディスカッション~」(講師:田中 宏司(一般社団法人経営倫理実践研究センター理事,公益財団法人人権教育啓発推進センター上級特別研究員))
第2回
      「組織を変える!“障害平等研修”」(講師:障害者平等研修ファシリテーター(特定非営利活動法人障害平等研修フォーラム))
第3回
      「高齢者介護と仕事の両立を支援する企業の取組」(講師:津止 正敏(立命館大学教授))
第4回
      「ワークライフシナジー~仕事と育児の両立について~」(講師:安藤 哲也(特定非営利活動法人ファザーリングジャパン代表))
      ※計4回開催
(3) 「会員特別セミナー インターネットと人権~いま,何が起こっているのか~」
      (講師:山中 千枝子(千斗枝グローバル教育研究所代表,公益財団法人人権教育啓発推進センター特別研究員))
 また,同センターでは,地方公共団体,各種研究団体等で制作した書籍・図画・ビデオ等を収集・購入し,同センター内に設置した人権ライブラリーにおいて,これら書籍・図画・ビデオ等を広く一般の人々に貸し出すなどの提供を行っている。
 さらに,国及び地方公共団体等から提供された人権教育・啓発に関する各種情報・資料等を収集・整理し,これをデータ化して蓄積し,それを利用者が検索するという形で情報提供を行っている。これらのデータは,誰でも自由に利用することができ,人権ライブラリーのホームページ(http://www.jinken-library.jp/)を通じて必要な情報が取り出せるようになっている。
 平成28年度に収集・登録されたものは,出版物等1,388件,講演会2,051件,テレビ・ラジオ放送115件,意識・実態調査93件,その他の各種事業1,635件であった。

5 マスメディアの活用等
⑴ テレビ,ラジオ等の活用
ア 女性の人権に関する啓発広報
 女性に対する暴力をなくす運動に関して,BSテレビ番組「霞が関からお知らせします2016」で放送(平成28年11月5日)したほか政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」内(60秒お知らせ)で放送(同月12日又は13日)
イ 子どもの人権に関する啓発広報
  (ア) 「子どもの人権110番」の周知に関して,政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」内(60秒お知らせ)で放送(平成28年4月9日又は10日)
  (イ) 児童虐待防止対策の推進に関して,BSテレビ番組「霞が関からお知らせします2016」で放送(平成28年10月29日)
  (ウ) 子どものいじめ防止に関して,政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」内(60秒お知らせ)で放送(平成29年3月11日又は12日)
ウ 高齢者・障害のある人の人権に関する啓発広報
  (ア) 高齢者・障害のある人の社会参加の促進に関連して,BSテレビ番組「霞が関からお知らせします2016」で放送(平成28年4月30日,5月7日,6月18日及び8月13日)したほか,政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」で放送(同年5月7日又は8日)
  (イ) 障害者週間に関して,BSテレビ番組「霞が関からお知らせします2016(平成28年12月3日)及び政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」で放送(同月3日又は4日)
エ 外国人の人権に関する啓発広報
 外国人の人権問題に関して,BSテレビ番組「霞が関からお知らせします2016」(平成28年9月3日)したほか政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan!!」で放送(同年10月1日又は2日)
オ HIV感染者等の人権に関する啓発広報
 HIV感染者等の人権に関して,TBSラジオ番組で放送(平成29年1月3日)
カ 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報
 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関して,政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」内(60秒お知らせ)で放送(平成28年12月10日,11日)
キ 人権週間に関する啓発広報
  (ア) BSデジタル放送で,人権啓発スポット映像を放送(平成28年12月22日,23日)
  (イ) 人権週間の周知に関して,TOKYO FMラジオ番組「高橋みなみのこれから何する?」で放送(平成28年12月8日)
ク 人権擁護委員の日に関する広報
 「人権擁護委員の日」特設人権相談所の開設に関して,政府広報ラジオ番組「秋元才加のWeekly Japan‼」内(60秒お知らせ)で放送(平成28年5月28日,29日)

⑵ 新聞,雑誌等の活用
ア 女性の人権に関する啓発広報
  (ア) 政府広報により,全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間に関する広報を音声広報CD「明日への声」に収録・掲載(平成28年9月)
  (イ) 政府広報により,女性に対する暴力をなくす運動,全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間に関する記事下広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成28年11月11日)
イ 子どもの人権に関する啓発広報
  (ア) 政府広報により,いじめ等の子どもの人権問題対策に関する周知を目的として突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成28年4月12日~17日)
  (イ) 政府広報により,児童虐待防止対策の推進に関する突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成28年10月31日~11月6日)
ウ 高齢者・障害のある人の人権に関する啓発広報
  (ア) 政府広報により,「心の輪を広げる体験作文」と「障害者週間のポスター」募集に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」及び点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成28年6月)
  (イ) 政府広報により,全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」及び点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成28年7月)
  (ウ) 政府広報により,障害者差別に関する突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成28年9月13日~18日)
  (エ) 政府広報により,障害者週間に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」及び点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成28年7月)
  (オ) 政府広報により,視覚障害者の駅での対策に関する啓発広報を音声広報CD及び点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成29年3月)
エ ハンセン病元患者等の人権に関する啓発広報
 小学生新聞「読売KODOMO新聞」(平成28年9月1日)及び中高生新聞「読売中高生新聞」(同月2日)にハンセン病に関する「親と子のシンポジウム」(高松会場)の記事等を掲載(48頁参照)し,読売KODOMO新聞(平成29年3月16日)及び読売中高生新聞(同月17日)にハンセン病問題に関するシンポジウム(神戸会場)の記事等を掲載
オ 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報
 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広告を地方紙(52紙)に掲載(平成28年11月1日~12月10日)
カ 東日本大震災に関する啓発広報
 人権シンポジウム「震災と人権~東北の「みらい」を見据えて~若者たちが発信する復興支援」の特集記事及び啓発広告を朝日新聞及び河北新報に掲載(平成28年11月5日)
キ 性的マイノリティに関する啓発広報
 人権シンポジウム「性的マイノリティ(LGBT)と人権―多様な性のあり方について考える―」の特集記事及び啓発広告を朝日新聞及び日本経済新聞に掲載(平成29年1月21日)
ク 人権週間に関する啓発広報
  (ア) 一般社団法人日本障がい者サッカー連盟会長の北澤豪氏,視覚障がい者マラソンランナーの道下美里氏と法務省人権擁護局長の鼎談記事及び同週間に関する啓発広告を朝日新聞に掲載(平成28年12月4日)
  (イ) 同週間に関する啓発広告を雑誌「AERA」,「特選街」,「文藝春秋」及び「週刊文春」平成28年12月発売号に掲載
ケ 人権相談窓口に関する広報
 政府広報により,人権問題の相談窓口に関する突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成28年11月28日~12月4日)
コ 全国中学生人権作文コンテストに関する啓発広報
 全国中学生人権作文コンテストに関する記事及び啓発広告を地方紙(52紙)に掲載(平成28年11月1日~12月10日)

6 インターネットの活用
⑴ 法務省では,法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/)及び人権擁護局ツイッター(https://mobile.twitter.com/MOJ_JINKEN)を通じて,各種人権関係情報を掲載するとともに,広く国民に対して,多種多様な人権関係情報を提供している。
   また,人権教育・啓発に関する情報に対して,多くの人々が容易に接し,活用することができるよう,人権啓発活動ネットワーク協議会(75頁参照)のホームページ(http://www.moj.go.jp/jinkennet/)を開設している。
   人権教育・啓発に関する基本計画については,法務省(http:/www.moj.go.jp/JINKEN/JINKEN83/jinken83.html)及び文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/jinken/06082102/016.htm)に全文を掲載し,内容の周知を図っている。
 また,ホームページ以外でも,インターネットを活用した周知・啓発を行っている。
 平成28年度は,以下の取組を実施した。
ア インターネット広告等の実施
(ア) 子どもの人権に関する啓発広報
   いじめ等の子どもの人権問題対策に関するインターネット広告をYahoo!JAPAN及びGoogleで実施(平成28年8月31日~9月30日,平成29年1月4日~31日)
(イ) アイヌの人々に関する啓発広報
   アイヌの人々に対する国民の理解を深めるためのインターネット広告をYahoo!JAPAN及びGoogleで実施(平成28年12月11日~20日)
(ウ) 外国人の人権に関する啓発広報
   ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動に関するインターネット広告をYahoo!JAPAN及びGoogleで実施(平成29年2月19日~3月11日)
(エ) ハンセン病に関する啓発広報
   ハンセン病に関する正しい知識と理解を促すとともに,ハンセン病に関する「親と子のシンポジウム」を周知するインターネット広告をYahoo!JAPAN及びGoogleで実施(平成28年6月30日~7月20日)
(オ) インターネットを悪用した人権侵害に関する啓発広報
   インターネット上における人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたインターネット広告をYahoo!JAPAN及びGoogleで実施(平成28年11月3日~30日)
(カ) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報
   北朝鮮人権侵害問題啓発週間の周知を目的としたインターネット広告をYahoo!JAPAN及びGoogleで実施(平成28年12月1日~10日)
(キ) 人権意識自己診断に関する広報
   自らの差別意識について「気づき」の機会を提供するために作成した「じんけん自己診断~こんなときどうする?」の周知を目的としたバナー広告をYahoo!JAPAN,Google等で実施(平成29年2月20日~3月3日)
イ 人権啓発スポット映像の動画サイトにおける配信
 腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像全11編(人権一般,人権週間,東日本大震災,高齢者,障害のある人,女性,子ども,インターネット,外国人,ハンセン病,性的指向)及びタレントの麻尋えりか氏を起用したスポット映像全6編(出身地等の差別,性同一性障害,セクハラ・パワハラ,子どもの人権110番,ネットによる人権侵害,ハラスメント・DV)をYouTube法務省チャンネルで配信している。
ウ 政府広報オンライン等の活用
(ア) 女性の人権に関する啓発広報
(1) 女性に対する暴力をなくす運動の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載し,インターネットテキスト広告を実施(平成28年5月23日~29日)したほか,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」の記事を更新(同年12月9日)
(2) 全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間の周知を目的として,政府広報オンライン「月間・週間(平成28年11月の行事概要)」に記事を掲載
(イ) 子どもの人権に関する啓発広報
(1) いじめ等の子どもの人権問題対策に関する周知を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成28年4月25日~5月1日)し,モバイル端末サイト等による広告を実施(平成29年3月27日~4月2日)したほか,ヤフーバナー広告を実施(同年3月13日~19日)
(2) 全国一斉「子どもの人権110番」強化週間の周知を目的として,政府広報オンライン「月間・週間」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成28年6月27日~7月3日)
(3) 児童ポルノの根絶を目的として,モバイル端末サイト等による広告を実施(平成28年11月14日~20日)
(4) 児童虐待防止に関する周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」の記事を更新(平成28年12月6日)したほか,政府インターネットテレビに動画を掲載(平成29年2月)
(ウ) 高齢者・障害のある人の人権に関する啓発広報
(1) 障害者雇用支援月間の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載したほか,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」の記事を更新(平成28年8月24日)
(2) 発達障害福祉月間の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載
(3) 障害のある人の社会参加の促進を目的として,政府インターネットテレビ動画 を掲載(平成28年7月21日及び8月18日)
(4) 障害者週間に関する啓発を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載し,インターネットテキスト広告を実施(平成28年11月28日~12月4日)したほか,ヤフーバナー広告を実施(同年12月1日~11日)
(5) 障害のある人の人権に関連して,インターネットテキスト広告を実施(平成28年10月10日~16日)
(6) 発達障害の理解促進・啓発に関して,インターネットテキスト広告を実施(平成28年8月29日~9月4日)し,ヤフーバナー広告を実施(平成29年3月13日~19日)したほか,モバイル端末サイト等による広告を実施(同月20日~26日)
(エ) アイヌの人々に関する啓発広報
   アイヌの人々に対する国民の理解の促進を目的として,政府インターネットテレビ動画を掲載(平成29年2月23日)
(オ) 外国人の人権に関する啓発広報
   ヘイトスピーチに関して,インターネットテキスト広告を実施(平成28年8月22日~28日)
(カ) HIV感染者等の人権に関する啓発広報
   「ストップエイズ」の周知を目的として,モバイル端末サイトによる広告を実施(平成28年6月6日~12日)したほか,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」の記事を更新(同年11月11日)
(キ) 社会を明るくする運動に関する啓発広報
   第66回「社会を明るくする運動」の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」及び「月間・週間」に記事を掲載した。
(ク) 犯罪被害者週間に関する啓発広報
   犯罪被害者週間の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載し,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」に記事を掲載(平成28年11月17日)
(ケ) インターネットを悪用した人権侵害に関する啓発広報
   インターネットを悪用した人権侵害事案への対応の周知を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成28年6月27日~7月3日)
(コ) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報
(1) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成28年12月5日~11日)
(2) 北朝鮮当局による日本人拉致問題に関して,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」の記事を更新(平成28年12月9日)
(サ) 人身取引の防止に関する啓発広報
   人身取引の防止の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報」の記事を更新(平成28年6月17日)
(シ) 人権週間に関する啓発広報
   人権週間の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載
(ス) 人権擁護委員の日に関する広報
   「人権擁護委員の日」特設人権相談所の開設の周知を目的として,政府広報オンライン「暮らしのお役立ち情報(月間・週間)」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成28年5月23日~29日)
⑵ 政府広報では,上記⑴ウに加え,以下の広告・記事を掲載した。
ア 「心の輪を広げる体験作文」と「障害者週間のポスター」に関して,インターネットテキスト広告を実施(平成28年7月4日~10日)
イ ユニバーサル社会の実現(外国人・障害者への理解)に向けて,インターネットテキスト広告を実施(平成28年9月5日~11日)
ウ 性的指向及び性同一性障害の理解促進に関して,モバイル等端末サイト等による広報を実施(平成28年10月24日~30日)
エ 同和問題(部落差別)に関して,インターネットテキスト広告を実施(平成29年3月6日~12日)
⑶ 厚生労働省では,厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)等において,高齢者,障害のある人,HIV感染者,ハンセン病元患者等に関する施策についての情報及び資料を掲載して,それぞれの施策の普及を図り,国民的理解を深めるよう努めている。
ア 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp/
イ エイズ予防情報ネットのホームページ(http://api-net.jfap.or.jp/
ウ ハンセン病に関する情報ページ(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/index.html
エ 世界エイズデーに向けたキャンペーンイベント(平成28年11月29日)の模様をインターネットを通じて配信(http://redribbonlive.net/
⑷ 外務省では,外務省ホームページ(http:/www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html)において,世界人権宣言,主要人権条約,人権関連文書等に関する情報を提供している。
⑸ 内閣官房では,北朝鮮による拉致問題ホームページ(http://www.rachi.go.jp/)において,広く国民に対して,拉致問題の解決に向けた政府の取組に関する情報を提供している。

7 交通機関の活用
⑴ 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報
 全国の法務局等の本局所在地の主要駅を路線とするJR及び大都市圏の私鉄・地下鉄等の車内に啓発週間を周知する中吊り広告を掲出(平成28年12月2日~16日)

⑵ 地方公共団体へ委託して行う啓発活動(地域人権啓発活動活性化事業)
 電車やバスの車内広告等,地域に密着した多種多様な人権啓発活動を実施

8 民間のアイディアの活用
 法務省では,人権教育啓発推進センター(9頁参照)に対し,啓発活動の推進に効果的な人権啓発教材の作成,人権啓発ビデオの制作,人権シンポジウム等の開催等各種の人権啓発活動事業を委託するとともに,ポスター等の作成に当たっては,民間の制作会社の意見を取り入れるなどしている。
 また,地方公共団体等を対象とする人権啓発指導者養成研修会や法務局・地方法務局の人権担当者に対する研修等において,民間から各人権課題に関する専門家等を講師に招き,啓発活動に関する助言等を行っている。
 加えて,平成28年度から「人種・障害の有無などの違いを理解し,自然に受け入れ,互いに認め合う共生社会」いわゆる「ユニバーサル社会」を実現するため,「人権ユニバーサル事業」を新設し,地方公共団体への委託により民間企業や学校,障害者団体等と連携した人権啓発活動を実施している。

9 国民の積極的参加意識の醸成
⑴ 全国中学生人権作文コンテスト
 法務省の人権擁護機関では,次代を担う中学生が,人権問題についての作文を書くことによって,豊かな人権感覚を身に付けることを目的として,全国中学生人権作文コンテストを実施している(6頁参照)。
 多くの中学生が,人権について理解を深め,豊かな人権感覚を身に付けるよい機会となっている。

⑵ 「世界エイズデー」ポスターコンクールの実施
 厚生労働省では,HIV/AIDSの正しい知識の普及啓発を目的として「『世界エイズデー』ポスターコンクール」を実施した。小学生の部12点,中学生の部127点,高校生の部194点,一般の部108点の応募があった。
 最優秀作品を世界エイズデーキャンペーンポスターのデザインに採用し,全国各地で掲示することにより,HIV・エイズについて理解を深めてもらうよい機会となっている。

ページトップへ