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平成27年版人権教育・啓発白書

第1章 平成26年度に講じた人権教育・啓発に関する施策

第1節 人権一般の普遍的な視点からの取組

1 人権教育
 人権教育とは,「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」(人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号。以下「人権教育・啓発推進法」という。)第2条)であり,生涯学習の視点に立って,幼児期からの発達段階を踏まえ,地域の実情等に応じて,学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ実施している。

(1) 学校教育
ア 人権教育の推進
 文部科学省では,学校,家庭,地域社会が一体となった総合的な取組や,学校における人権教育の指導方法の改善充実について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究推進事業」,人権教育に関する事業等の実践・成果を踏まえ,学校における人権教育に関する指導方法の在り方等について調査研究を行う「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」等を実施し,人権教育の推進に努めている。
 人権教育に関する指導方法等に関する調査研究においては,平成15年度以降,学校における人権教育の指導方法等の在り方について調査研究会議を開催して検討を行い,平成16年6月には「第1次とりまとめ」,平成18年1月には「第2次とりまとめ」,平成20年3月には「第3次とりまとめ」を公表した。文部科学省では,この第3次とりまとめを全国の国公私立学校や教育委員会等に配布するなど調査研究の成果普及に努めている。
 そして,平成24年度には,各教育委員会・学校におけるそれまでの三次にわたる「とりまとめ」の取組状況に関する調査を実施し,平成25年10月にその結果を公表した。
 その調査結果からは,各教育委員会・学校における人権教育の取組については,平成20年度に実施した前回調査同様,おおむねその定着が図られており,また,一部の教育委員会においては積極的かつ継続的に人権教育の取組を推進しているが,前回の結果と比べて,大きな進展が見られるという状況にまでは至っていないとの分析が示されるなど,人権教育の充実を進めるに当たって,改善を図るべき課題が存在することも明らかとなった。
 文部科学省では,更に人権教育の全国的な推進を図るため,平成23年度から,各都道府県教育委員会を通じた学校における人権教育の特色ある実践事例の収集,公表を行うとともに(平成23年度版は64事例,平成24年度版は61事例,平成25年度版は57事例),平成26年度に文部科学省ホームページ掲載用の人権教育の理解促進を図るための動画を作成した。
 また,平成22年度から毎年,「人権教育担当指導主事連絡協議会」を開催し,人権教育の推進に関する情報交換や協議を行うとともに,「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号。以下「児童の権利条約」という。)等について周知を図っている。
イ 道徳教育の推進
 文部科学省では,従来より学習指導要領の「道徳」において,誰に対しても差別や偏見を持たず,公正,公平にすることや,法や決まりを守り,自他の権利を大切にすること等についても指導内容として示すなど,人権教育にも資するような指導の充実に努めている。
 こうした道徳教育の一層の充実を図るため,「心のノート」を全面改訂して作成した道徳教育用教材「私たちの道徳」を全国の小・中学生に配布するとともに,教育再生実行会議の第一次提言等を踏まえ,道徳に係る教育課程の改善等について「中央教育審議会」において議論を行い,平成26年10月21日に「道徳に係る教育課程の改善等について」(答申)が取りまとめられた。答申においては,道徳の時間を「特別の教科 道徳」(仮称)として位置づけることなどが提言されており,文部科学省では,答申の内容を踏まえ,平成27年3月27日に,平成30年度から小学校,平成31年度から中学校において道徳を「特別の教科」に位置づけるため,学習指導要領の一部改正等を行った。
 さらに,学校・地域の実情等に応じた多様な道徳教育を支援するため,全国的な事例収集と情報提供,特色ある道徳教育や教材活用等,地方公共団体による多様な事業への支援を行っている。
 加えて,幼児期における教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な役割を果たすことから,各幼稚園において,道徳性の芽生えを培う指導の充実が図られるよう,その実践の成果の普及に努めている。
ウ 地域や学校における奉仕活動・体験活動の推進
 子どもの社会性や豊かな人間性を育む観点から,机上の知育だけではなく,具体的な体験や事物との関わりを通じた様々な体験活動を積極的に推進することは極めて重要なことである。文部科学省では,豊かな人間性や社会性を育むために児童生徒の健全育成を目的とした様々な創意工夫のある長期宿泊体験の取組として「健全育成のための体験活動推進事業」を実施している。
エ 教員の資質向上等
 教員の資質能力については,養成・採用・研修の各段階を通じてその向上を図っており,各都道府県教育委員会等が実施している教諭等に対する採用後1年間の初任者研修や在職期間が原則として10年に達した者に対する10年経験者研修では,人権教育に関する内容が扱われるなど,人権尊重意識を高めるための取組を行っている。

(2) 社会教育
 社会教育においては,生涯にわたる学習活動を通じて,人権尊重の精神を基本に置いた様々な事業を展開している。
 文部科学省では,地域におけるきずなづくりや地域コミュニティの再生のため,人権等に関わる地域の様々な現代的課題について,公民館等を中心に様々な主体が連携・協働して解決を図る取組を支援する「公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラム」を実施した。
 また,公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座の開設や世代の異なる人たちや障害のある人,外国人等との交流活動等,人権に関する多様な学習機会を提供した。
 さらに,社会教育において中核的な役割を担う社会教育主事の養成講習や,現職の社会教育主事等を対象にした様々な研修により,指導者の育成及び資質の向上を図っている。

2 人権啓発
 人権啓発とは,「国民の間に人権尊重の理念を普及させ,及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」を意味し,「国民が,その発達段階に応じ,人権尊重の理念に対する理解を深め,これを体得することができるよう」にすることを旨としている(人権教育・啓発推進法第2条,第3条)。
 人権啓発は,広く国民の間に,人権尊重思想の普及高揚を図ることを目的に行われる研修,情報提供,広報活動等で人権教育を除くものであるが,その目的とするところは,国民の一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し,これを前提として他人の人権にも十分に配慮した行動をとることができるようにすることにある。すなわち,「人権とは何か」,「人権の尊重とはどういうことか」,「人権を侵害された場合に,これを排除し,救済するための制度がどのようになっているか」等について国民が正しい認識を持ち,それらの認識が日常生活の中で,その態度面,行動面等において確実に根付くことによって,人権侵害の生じない社会の実現を図ることが人権啓発の目的である。

(1) 人権啓発の実施主体
 人権啓発を担当する国の機関として,法務省の人権擁護機関(注)がある。また,法務省以外の関係各府省庁においても,その所掌事務との関連で,人権に関わる各種の啓発活動を行っているほか,地方公共団体や公益法人,民間団体,企業等においても,人権に関わる様々な活動を展開している。
(注)「法務省の人権擁護機関」
 法務省人権擁護局及びその下部機関である法務局・地方法務局の人権擁護部門のほか,「人権擁護委員法」(昭和24年法律第139号)に基づき,法務大臣が委嘱する人権擁護委員及びその組織体を含む全体を法務省の人権擁護機関という。
 なお,人権擁護委員は,法務大臣が委嘱した民間の人たちであり,法務局・地方法務局等と連携しながら,全国各地で人権啓発を含む人権擁護活動を行っている。人権擁護委員制度は,様々な分野の人たちが,地域の中で人権尊重思想を広め,住民の人権が侵害されないよう配慮し,人権を擁護していくことが望ましいという考えから創設されたものであり,諸外国にも例を見ないものである。

(2) 法務省の人権擁護機関が行う啓発活動
ア 平成26年度啓発活動重点目標
 その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘案して,年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め,共通の目標の下に組織を挙げて啓発活動を展開している。
 平成26年度は,啓発活動重点目標を「みんなで築こう 人権の世紀 ~考えよう 相手の気持ち 育てよう 思いやりの心~」と定め,21世紀が「人権の世紀」であることを改めて思い起こし,国民一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し,全ての人々が相互に共存し得る平和で豊かな社会の実現に向けた啓発活動を展開した。
 平成26年度においては,関係機関の協力の下,啓発活動重点目標を始め,次の17の項目を強調事項として掲げた。法務省の人権擁護機関は,これらの重点目標を踏まえながら,全国各地において,講演会,シンポジウム,座談会等を開催したほか,テレビ・ラジオ等のマスメディアを活用した啓発活動を行った。
(1) 女性の人権を守ろう
(2) 子どもの人権を守ろう
(3) 高齢者を大切にする心を育てよう
(4) 障害のある人の自立と社会参加を進めよう
(5) 同和問題に関する偏見や差別をなくそう
(6) アイヌの人々に対する理解を深めよう
(7) 外国人の人権を尊重しよう
(8) HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見をなくそう
(9) 刑を終えて出所した人に対する偏見をなくそう
(10) 犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう
(11) インターネットを悪用した人権侵害をなくそう
(12) 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
(13) ホームレスに対する偏見をなくそう
(14) 性的指向を理由とする差別をなくそう
(15) 性同一性障害を理由とする差別をなくそう
(16) 人身取引をなくそう
(17) 東日本大震災に起因する人権問題に取り組もうイ 第66回人権週間
 毎年12月4日から10日(世界人権宣言が採択された人権デー)までの1週間を「人権週間」と定め,関係諸機関及び諸団体の協力の下に,広く国民に人権尊重思想の高揚を呼び掛ける大規模な啓発活動を展開している。
ウ 人権擁護委員の日
 人権擁護委員法が施行された6月1日を「人権擁護委員の日」と定め,広く国民に人権擁護委員制度の周知を図るとともに,人権尊重思想の普及高揚に努めている。
 平成26年度においても,全国各地で,街頭での啓発活動を行ったり,人権擁護委員等が各地域のテレビ番組に出演し,人権擁護委員の活動について紹介するなど,マスメディアを活用して人権擁護委員制度の広報に努めた。
 また,6月1日を中心に全国2,631か所において,全国一斉に人権擁護委員の日特設の人権相談所(注)を開設した。
(注)「特設の人権相談所」は,法務局長又は地方法務局長と人権擁護委員協議会長が,協議の上,日時及び場所を定めて開設する相談所をいい,土曜日,日曜日又は祝日に法務局・地方法務局及びその支局で開設するものや,デパート,公民館,福祉施設等で開設するものがある。エ 全国中学生人権作文コンテスト
 次代を担う中学生を対象に,人権問題についての作文を書くことによって,人権尊重の重要性,必要性についての理解を深めるとともに豊かな人権感覚を身に付けること,及び入賞作品を国民に周知広報することによって,広く一般に人権尊重意識を根付かせることを目的として,毎年,「全国中学生人権作文コンテスト」を実施している。
 34回目を迎えた平成26年度は,7,083校から,日常の家庭生活,学校生活等の中で得た体験を基に,基本的人権を守ることの重要性についての考えをまとめた95万3,211編という過去最高となる多数の作文の応募があり,多くの中学生が,人権について理解を深め,豊かな人権感覚を身に付けるよい機会となっている。中央大会では,次の各大臣賞のほか101編を表彰した。
 内閣総理大臣賞 佐賀県・佐賀県立武雄青陵中学校1年平木洵太さん
  被害者と加害者 それぞれの立場
 法務大臣賞 福岡県・久留米市立田主丸中学校3年行徳美那さん
  戦争を次世代へ伝えて
 文部科学大臣賞 茨城県・日立市立久慈中学校1年 五来拓斗さん
  きれいな心のままで
 なお,内閣総理大臣賞等の主な入賞作品については,「第34回全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集」として冊子に編集し,中学校,市区町村,図書館等に配布するとともに,法務省ホームページに掲載して,人権啓発の資料として幅広く活用している。
 また,法務省において平成26年12月25日に中央大会表彰式を,法務局・地方法務局において人権週間を中心として地方大会表彰式を開催し,作品の内容を周知した。
 さらに,平成26年度においては,優秀作品を世界に発信することを目的に新たな試みとして,第34回大会の優秀作品3作品について,英語に翻訳の上,コンテストの紹介文と共に法務省ホームページ(英語版)に掲載した。加えて,人権啓発ビデオ「未来を拓く5つの扉~全国中学生人権作文コンテスト入賞作品朗読集~」を作成し,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
オ 人権教室
 「人権教室」は,いじめ等の人権問題について考える機会を作ることによって,相手への思いやりの心や生命の尊さを体得してもらうこと等を目的とし,全国の人権擁護委員が中心となって実施している啓発活動である。
 この活動では,主に小学生を対象に,「人権の花運動」(10頁参照)における学校訪問や総合的な学習の時間等を利用して,アニメーション形式による人権啓発ビデオや紙芝居・絵本等,子どもたちが興味を持ちやすいように工夫した教材を活用することにより,人権尊重思想について子どもたちに分かりやすく理解してもらう内容となるように努めている。また,近年は,中高大学生や,企業研修等において大人を対象としても実施している。
 平成26年度は,小学校のほか,中学校,幼稚園,保育所等において,1万9,871回,79万6,748人を対象に広範囲に行われた。
カ 人権擁護功労賞
 人権擁護委員の活動等を通じて関わりのある企業や特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)等の団体及び個人の中から,人権擁護上,顕著な功績があったと認められた者に対し,法務大臣と全国人権擁護委員連合会長が表彰を行っている。
 平成26年度の受賞者は,次のとおりである。
法務大臣表彰 株式会社名鉄百貨店(名古屋市)
 大分県立宇佐産業科学高等学校(大分県宇佐市)
全国人権擁護委員連合会長表彰 株式会社阪神タイガース(兵庫県西宮市)
 株式会社ニューメディア函館センター(北海道函館市)
法務大臣感謝状 株式会社山梨日日新聞社(山梨県甲府市)
 株式会社南日本新聞社(鹿児島市)

(3) 法務省が公益法人,地方公共団体へ委託して行う啓発活動
ア 公益財団法人人権教育啓発推進センターが行う啓発活動(人権啓発活動中央委託事業)
(ア) 公益財団法人人権教育啓発推進センター
 公益財団法人人権教育啓発推進センター(以下「人権教育啓発推進センター」という。)は,人権教育・啓発活動の中核となるナショナルセンターとしての役割を果たすべく,人権に関する総合的な教育・啓発及び広報を行うとともに,人権教育・啓発についての調査,研究等を行っている。
(イ) 平成26年度に人権教育啓発推進センターへ委託した啓発活動
(1) 人権啓発教材の作成
・「人権アーカイブ・シリーズ『同和問題~過去からの証言,未来への提言~』(人権教育・啓発担当者向け・証言集及びビデオ)/『同和問題 未来に向けて』(一般向け・ビデオ)」(人権教育・啓発担当者及び一般国民を対象とした,同和問題をテーマにした証言集及びDVD)
・「人権啓発ワークショップ事例集『ワークショップをはじめよう』~参加型の人権教室」(人権擁護委員や人権啓発担当職員を対象とした,ワークショップ形式による人権教室等の研修を中高生向けに実施する方法を解説したテキスト)この行強制追い込みしてます
(2) 人権啓発ビデオの制作
・「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」(性的マイノリティをテーマとしたDVD)
(3) 人権シンポジウムの開催
・平成26年9月27日 福島県いわき市
 テーマ「震災と人権~真の心の復興・生活再建を目指して~」
・平成26年11月15日 大阪市
 テーマ「外国人と人権~違いを認め,共に生きる~」
・平成27年1月10日 東京都千代田区
 テーマ「震災と人権~被災者の方々の心に寄り添う復興のために~」
(4) 地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識やスキルを習得させることを目的とした「人権啓発指導者養成研修会」の実施(3回)(70頁参照)
(5) 人権週間を中心に,年間を通じて人権啓発活動の意義を周知するため,全国規模での広報を実施
(6) 「人権ライブラリー」(ホームページhttp://www.jinken-library.jp/)の運営等
(7) 「人権に関する国家公務員等研修会」の開催(2回)(64頁参照)
(8) 人権啓発活動地方委託事業における効果検証に関する調査研究
イ 地方公共団体が行う啓発活動(人権啓発活動地方委託事業)
(ア) 人権啓発活動地方委託事業
 都道府県及び政令指定都市等を委託先とし,全ての人権課題を対象とした幅広い啓発活動の実施を委託する事業である。
(イ) 平成26年度に行った委託事業
 講演会,研修会,資料作成,スポットCM,インターネットバナー広告,新聞広告,地域総合情報誌広告掲載,地域人権啓発活動活性化事業等を実施した(詳細は,http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00011.html)。
(ウ) 地域人権啓発活動活性化事業
 法務省の人権擁護機関,都道府県,市区町村,公益法人等の人権啓発活動を実施する主体間の横断的なネットワークである「人権啓発活動ネットワーク協議会」(69頁参照)との連携の下に実施される人権啓発活動地方委託事業を特に「地域人権啓発活動活性化事業」と称している。同事業として,住民に親しみやすく,かつ,参加しやすい要素を取り入れながら,人権の花運動(注),Jリーグ等スポーツ組織と連携・協力した啓発活動(69頁参照),交通広告等の地域に密着した多種多様な人権啓発活動を実施した。
(注)人権の花運動は,児童が協力して花の種子,球根等を育てることによって,生命の尊さを実感する中で,豊かな心を育み,優しさと思いやりの心を体得することを目的とし,全国の人権擁護委員が中心となって実施している,主に小学生を対象とした啓発活動である。この行強制追い込みしてます
 この活動では,育てた花を父母や社会福祉施設に届けたり,写生会,鑑賞会を開催したりすることにより,一層の人権尊重思想の普及高揚を図っている。
 平成26年度は,小学校3,270校のほか,546の中学校・幼稚園・保育所等において,48万3,788人を対象に広範囲に行われた。

(4) 中小企業・小規模事業者の産業に関わりの深い業種等に対する啓発活動
 経済産業省では,産業界・経済界向けに,平成26年度は,企業の社会的責任の観点から,企業活動における様々な人権問題等に関する講演会やシンポジウムを全国で開催し,経済界の役職員等の人権意識の涵養を図った(開催回数:75回,総参加人数:9,497人)。
 また,併せて,企業の社会的責任や情報モラルに係る啓発活動の参考となるべきパンフレットを経済団体や企業等に配布した。

(5) 国際的な取組に関する啓発活動
 外務省では,その時々の課題に応じて人権啓発のためのパンフレットを作成している。平成26年度は,平成26年1月に我が国が締結した「障害者の権利に関する条約」(平成26年条約第1号。以下「障害者権利条約」という。)の周知のための広報パンフレット及び国内外における女性政策の周知のための広報パンフレットを作成した。前者については,全国の地方公共団体や関係団体等を中心に配布し,後者については,平成26年度に続き平成27年度も開催予定の「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(World Assembly for Women in Tokyo)」(13頁参照)等で関係者や関係機関に配布する予定である。

第2節 人権課題に対する取組

1 女性
 男女平等の理念は,憲法に明記されており,法制上も「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律」(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)等において,男女平等の原則が確立されている。しかし,現実には今なお,「男は仕事,女は家庭」といった男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており,家庭や職場において様々な男女差別が生じている。
 また,性犯罪,配偶者等からの暴力,職場等におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(いわゆるマタニティハラスメント)等の問題も近年多く発生している。
 我が国が締約国となっている「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(昭和60年条約第7号。以下「女子差別撤廃条約」という。)は,男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として,女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念とし,締約国に対し,政治的及び公的活動並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適切な措置をとることを求めている。
 国内においては,平成11年6月に「男女共同参画社会基本法」(平成11年法律第78号)が施行され,同法に基づき平成12年12月に「男女共同参画基本計画」が策定され,平成17年12月の基本計画(第2次)を経て,平成22年12月に第3次基本計画が策定された。女性に対する暴力等への取組については,平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)が,施行されて以降,3次にわたり改正がされ,平成25年には,生活の本拠を共にする交際相手からの暴力及びその被害者に対する準用を内容とする改正が行われ,平成26年1月に施行されている。
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じており,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。法務省の人権擁護機関が女性に対する暴行・虐待に関して,新規に救済手続を開始した人権侵犯事件の数は,次のとおりである。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 男女共同参画の視点に立った様々な社会制度の見直し,広報・啓発活動の推進
ア 内閣府では,「男女共同参画会議監視専門調査会」において,男女共同参画に関する施策についての苦情等の処理状況の調査・検討を行った。また,「苦情処理ガイドブック」を改訂し,関係機関等に配布するとともに,行政相談委員及び人権擁護委員並びに都道府県,政令指定都市担当者(合計116人)を対象に,男女共同参画に関する諸課題について理解を深め,苦情の処理に係る知識・技能の向上を図ることを目的とする苦情処理研修を実施した(詳細は,「男女共同参画白書」に記載)。
 そのほか,我が国の男女共同参画に関する取組を広く知らせるため,男女共同参画の総合情報誌「共同参画」を発行しているほか,ホームページ,メールマガジン,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)サイト(Facebook,Ameba)等を活用して,充実した情報を迅速に提供する体制の整備を図るなど,多様な媒体を通じた広報・啓発活動を推進している。
イ 男女共同参画推進本部決定により,毎年6月23日から29日までの1週間を「男女共同参画週間」としている。平成26年度は,「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」,「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰」及び「女性のチャレンジ賞」等の表彰を実施した。
 また,女性が活躍できる職場環境の整備を推進するため,役員・管理職への女性の登用に関する方針,取組及び実績並びにそれらの情報開示において顕著な功績があった企業を表彰する「女性が輝く先進企業表彰」を平成27年1月に実施した。
ウ 厚生労働省では,ポジティブアクション(男女労働者間に事実上生じている格差を解消するための企業の自主的かつ積極的な取組)の推進を図るため,6月の「男女雇用機会均等月間」を始め,あらゆる機会を捉えて広報・啓発活動を実施した(15頁参照)。
エ 経済産業省では,東京証券取引所と共同で,「女性活躍推進」に優れた上場企業を,「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として選定し,平成27年3月に40社を発表した。また,女性を始めとした,多様な人材の能力を最大限発揮させることにより,イノベーションの創出,生産性向上等の成果を上げている企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として選定し,同月に52社(大企業28社,中小企業24社)を表彰した。上記の取組を通じて,女性の活用に積極的な企業の裾野を広げるための広報・啓発活動を推進している。
オ 外務省では,「すべての女性が輝く社会」を実現するための取組の一環として,平成26年9月12日から13日までにかけて,東京で「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(World Assembly for Women in Tokyo (WAW!2014))」を開催した。同シンポジウムでは,クリスティーヌ・ラガルド「国際通貨基金(IMF)」専務理事やムランボ=ヌクカ「UN Women」事務局長を始め,世界各国及び日本各地から女性分野で活躍するトップリーダー約100名が出席し,女性が直面する経済及びグローバルな課題に関し議論を行い,我が国及び世界における女性の活躍促進のための12の提言「WAW! To Do」を発出した。
カ さらに,政府は,女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し,もって豊かで活力ある社会を実現するため,女性の職業生活における活躍の推進について,その基本原則を定め,並びに国,地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに,基本方針及び事業主の行動計画の策定,女性の職業選択に資する情報の公表,女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定める「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を国会に提出した。

(2) 法令・条約等の周知
ア 内閣府では,国内における男女共同参画社会の実現に向けた取組を行うに当たって,報告会,刊行物や内閣府男女共同参画局ホームページ(http://www.gender.go.jp/)等を通じ,男女共同参画に関連の深い各種の条約や,国際会議における議論等,女性の地位向上のための国際的規範や基準,取組の指針等の広報に努めている。
 平成26年度は,「男女共同参画推進連携会議企画委員会」の主催により,平成27年に「第4回世界女性会議」における「北京宣言」及び「行動綱領」の採択から20年,我が国の女子差別撤廃条約批准から30年を迎えるに当たり,関連するテーマについての聞く会(情報・意見交換会)を計4回実施した。また,平成26年5月に開催された「APEC女性と経済フォーラム」や平成27年3月に開催された「第59回国連婦人の地位委員会」等の国際会議の概要について,同ホームページへの掲載等を行った。
イ 外務省では,女子差別撤廃条約関連文書や女性の地位向上に関する会議等の関連文書を,外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/women/index.html)に掲載し,広くその内容の周知に努めている。

(3) 女性に対する偏見・差別意識解消を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,「女性の人権を守ろう」を年間強調事項の一つとして掲げ,女性の人権問題をテーマとした講演会や座談会の開催,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。
 また,ドメスティックバイオレンス防止をテーマとした人権啓発ビデオ「虐待防止シリーズ ドメスティック・バイオレンス」や「デートDVって何?~対等な関係を築くために~」を,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 さらに,セクシュアルハラスメントを題材とした腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「みこさんの本音」をYouTube法務省チャンネルで配信している。

(4) 男女平等を推進する教育・学習,女性の生涯学習機会の充実
 文部科学省では,男女共同参画社会の形成のため,学校教育において,児童生徒の発達の段階に応じて,社会科,家庭科,道徳,特別活動等を通じて,男女の平等や男女相互の理解と協力等についての指導が充実されるよう,学習指導要領の一層の周知・徹底を行った。
 また,女性が,結婚,妊娠,出産といったライフイベントを視野に入れて自らの人生設計を行えるよう,ホームページで女性のライフプランニング支援に関する情報提供を行うとともに,働き方や子育てへの参画等について多様な選択を学ぶ機会となるよう学生を対象としたワークショップを行った。
 独立行政法人国立女性教育会館は,男女共同参画社会の形成を目指し,女性教育指導者等や企業・大学等における男女共同参画担当者等に対する研修や専門的な調査研究,情報の収集・提供を行っている。

(5) 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のための取組
 厚生労働省では,労働者が性別により差別されることなく,また,働く女性が母性を尊重されつつ,その能力を十分発揮することができる雇用環境を整備するため,男女雇用機会均等法に沿った男女均等取扱いが徹底されるよう周知啓発,指導を行うとともに,事業主と労働者の間に紛争が生じた場合には,円滑かつ迅速な解決を図られるよう援助を行っている。なお,間接差別について,転勤要件を設定することが禁止される労働者の対象を従来の「総合職」から「全ての労働者」に拡大し,「募集,採用」に加え,「昇進,職種の変更」に際しても転勤要件の設定を禁止すること等を内容とする改正男女雇用機会均等法施行規則等(平成25年12月成立)を平成26年7月から施行するとともに,改正内容について周知徹底を図った。
 また,実質的な男女労働者間の均等を確保するためには,男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指すための企業の自主的かつ積極的な取組(ポジティブアクション)が不可欠である。このため,企業が具体的な取組を行うことができるよう,必要な助言及び情報提供を積極的に行い,その一層の促進を図った。具体的には,個別の企業を訪問し,ポジティブアクションの取組やポジティブアクション情報ポータルサイトを活用した女性の活躍状況の情報開示についての働きかけを実施するとともに,ポジティブアクションに積極的に取り組む企業に対する助成金制度の実施,「均等・両立推進企業表彰」の実施,経営者団体等と連携した「企業経営と女性の活躍推進を考えるフォーラム」の開催等を実施した。
 さらに,妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは,女性労働者の尊厳を傷つける社会的に許されない行為であるとともに継続就業を妨げるものであるため,法違反の事実が認められる企業に対しては,迅速かつ適正な指導を行った。

(6) 農山漁村の女性の地位向上のための啓発等
 女性は,農業就業人口の約半数を占め,農山漁村・農林水産業の担い手として重要な役割を果たしているが,地域の方針決定の場における参画は十分進んでいない状況にある。このため,女性の役割を適正に評価し,その能力が発揮されるよう,農林水産省としても意識啓発に努めており,関係団体による積極的な取組を促した。この結果,農業委員会において,女性農業委員の割合が7.2%(前年6.3%)(全国農業会議所調べ),農業協同組合において,女性役員の割合が6.9%(前年度6.0%)(JA全国農業協同組合中央会調べ)に上昇した。

 また,農業経営において女性の活躍を更に促進するため,地域の中心となる経営体や地域農業の在り方等を定める「人・農地プラン」の策定に当たり,市町村による検討会のメンバーに女性がおおむね3割以上参画することを要件とした。
 さらに,農山漁村女性の役割を正しく理解・評価し,女性の能力の一層の活用を促進するために制定した「農山漁村女性の日」(毎年3月10日)にちなんで,3月上旬に各女性関連団体による会議等が開催されるとともに,「農山漁村男女共同参画優良活動表彰」を行うなど,男女共同参画に関する気運の醸成に努めた。

(7) 女性の人権問題に関する適切な対応及び啓発の推進
 男女共同参画推進本部決定により,毎年11月12日から25日(女性に対する暴力撤廃国際日)までの2週間を「女性に対する暴力をなくす運動」期間とし,同期間中,関係団体との連携・協力の下,社会の意識啓発等,女性に対する暴力に関する取組を一層強化している。
 また,配偶者暴力防止法等に基づき,関係府省庁,地方公共団体等は,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を積極的に推進している。
ア 内閣府では,性犯罪被害者が,安心して必要な相談・支援を受けられる環境を整備するために,地方公共団体の職員や男女共同参画センター等の相談員を対象とした研修を行う「配偶者からの暴力等被害者支援強化促進事業」を実施するとともに,地方公共団体における性犯罪被害者等への支援に関する取組を促進するため,性犯罪被害者等支援を実施する地方公共団体の様々な取組を実証的に調査研究する「性犯罪被害者等のための総合支援に関する実証的調査研究」を実施した。
 また,官民の配偶者暴力被害者支援の関係者(配偶者暴力相談支援センター長,相談員及び地方公共団体の職員)を対象としたワークショップを行う「女性に対する暴力被害者のための官官・官民連携促進事業」を実施し,地域において関係者が連携した事例や先進的な取組の共有・意見交換等を通じ,官官・官民の更なる連携強化等を図った。
 そのほか,配偶者からの暴力について相談できる窓口を知らない被害者を相談機関につなぐため,自動音声で最寄りの配偶者暴力相談支援センター等の相談窓口を案内する「DV相談ナビ」(ナビダイヤル0570―0―55210(全国共通))を実施している。
 平成26年度は,女性に対する暴力をなくす運動において,啓発用ポスター及びリーフレットの作成や,運動のシンボルであるパープルリボンにちなんで,東京タワー等をパープルにライトアップするなど,広く国民に対して暴力根絶を呼び掛けた。
 また,女性に対する暴力の加害者及び被害者となることを防止する観点から,若年層に対する効果的な予防啓発を行うため,若年層に対して教育・啓発の機会を持つ者や予防啓発活動に関心のある学生等に対して研修を実施した。
イ 法務省の人権擁護機関では,専用相談電話「女性の人権ホットライン」(ナビダイヤル0570―070―810(全国共通))を全国の法務局・地方法務局に設置して相談体制の一層の強化を図っている。
 平成26年度は,女性に対する暴力をなくす運動期間中の平成26年11月17日から23日までの1週間を,「全国一斉『女性の人権ホットライン』強化週間」とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,様々な人権問題に悩む女性からの電話相談に応じた。
 また,配偶者暴力相談支援センター等関係機関との連携を一層強化し,被害の救済及び予防に努めている。

2 子ども
 我が国は,平成26年4月に児童の権利条約締結から20周年を迎えた。同条約では,締約国は,適当かつ積極的な方法で同条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する旨(第42条)を規定している。
 文部科学省が各都道府県教育委員会等を通じて行った平成25年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査の結果では,暴力行為の発生件数は5万9,345件,いじめの認知件数は18万5,803件と依然として憂慮すべき状況が見られ,教育上の大きな課題となっている。
 また,平成26年に警察がいじめに起因する事件で検挙・補導した人員は,456人(対前年比37.0%減)であった。内訳としては,小学生69人(15.1%),中学生301人(66.0%),高校生86人(18.9%)となっている。
 さらに,法務省の人権擁護機関が調査・処理を行う人権侵犯事件においても,平成26年には,学校におけるいじめ事案が3,763件,教育職員による体罰に関する事案が574件,児童に対する暴行・虐待事案が802件と高水準で推移しており,こうした人権侵害による被害の予防・救済のための取組等が課題となっている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 子どもが人権享有主体として最大限尊重されるような社会の実現を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,21世紀の社会を担う子どもたちの人権を守るため,「子どもの人権を守ろう」を年間強調事項の一つとして掲げ,積極的に様々な取組を実施している。人権擁護委員が中心となって,学校における総合的な学習の時間等を利用し,子どもたちが「いじめ」について考える機会をつくる人権教室(7頁参照),人権の花運動(10頁参照)を実施するほか,Jリーグ等スポーツ組織と連携・協力した啓発活動(69頁参照)を実施するなど,各種啓発活動を実施している。
 また,児童虐待防止をテーマとした人権啓発ビデオ「虐待防止シリーズ 児童虐待」を,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 さらに,「子どもの人権SOSミニレター」(便箋兼封筒)の周知を図る目的で,腹話術師のいっこく堂氏による同題名のスポット映像をYouTube法務省チャンネルで配信している。

(2) 学校教育及び社会教育における人権教育の推進
ア 文部科学省では,平成20年及び平成21年に改訂した学習指導要領において,「豊かな心」の育成や「確かな学力」等から成る「生きる力」を,一層育むこととしている。
 「豊かな心」の育成に関しては,道徳の時間で,善悪の判断等の内容を充実するとともに,体験活動等をいかすなどの充実を図っている。
 また,豊かな人間性や社会性を育む観点から,健全育成のための体験活動推進事業や,学校教育における人権教育を推進するための人権教育研究推進事業,人権教育に関する指導方法等に関する調査研究等を実施した。
 さらに,地域におけるきずなづくりや地域コミュニティの再生のため,人権等の地域の様々な現代的課題について,公民館等を中心に様々な主体が連携・協働して解決を図る取組を支援する「公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラム」を実施し,この中で,課題解決のための学習会の開催等の子どもの人権に関する取組についても実施した。
イ 厚生労働省では,毎年5月5日から11日までの1週間を「児童福祉週間」と定め,「子どもや家庭,子どもの健やかな成長について国民全体で考える」ことを目的に,国,地方公共団体,関係団体,企業,地域社会等が連携して,全国で様々な行事,取組を行っている。
 平成26年度は,児童福祉週間の標語を全国公募し,最優秀作品として選定された「そのいっぽ みらいにつづく ゆめのみち」を児童福祉週間の象徴として,児童福祉の理念の普及・啓発を図った。

(3) いじめ・暴力行為・不登校等に対する取組の推進
ア いじめの問題は依然として大きな社会問題となっている。こうした状況の中,平成25年6月,第183回国会において「いじめ防止対策推進法」(平成25年法律第71号)が成立し,同年9月28日に施行された(詳細は,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1337219.htm)。同法の成立を受け,文部科学省では,同年10月11日,「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下「国のいじめ防止基本方針」という。)を策定した(詳細は,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1340464.htm)。
 文部科学省では,「いじめの防止等に関する普及啓発協議会」を開催するなど,いじめ防止対策推進法及び国のいじめ防止基本方針の周知徹底を図ることに取り組んでいる。
 また,教育再生実行会議の第一次提言及びいじめ防止対策推進法を踏まえ,いじめの未然防止,早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため,平成25年度から「いじめ対策等総合推進事業」を実施している。
 さらに,平成26年6月,国のいじめ防止基本方針に基づき,法に基づく取組状況の把握と検証を的確に行うとともに,いじめの問題を含めた生徒指導上の諸問題に関して,より実効的な対策を講じるため,「いじめ防止対策協議会」を設置した。また,平成27年1月,子ども自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成するとともに,全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため,「全国いじめ問題子供サミット」を開催した。
イ 文部科学省では,暴力行為については,平成23年7月,「暴力行為のない学校づくり研究会」において検討された,教育現場における暴力行為への効果的な対応の在り方に関する報告書を取りまとめ,学校及び教育委員会に配布し,同報告書を活用した効果的な指導を要請した。
ウ また,文部科学省では,いじめ,暴力行為,不登校等,問題を抱える児童生徒が適切な相談等を受けることができるよう,児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有するスクールカウンセラーを配置するとともに,教育分野に加え,社会福祉等の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャルワーカーを配置するなど,学校内の教育相談体制の整備を支援している。さらに,平成26年度は,いじめ問題を始め,暴力行為,不登校等の様々な課題を抱える子どもへの支援,子どもの社会性の育成等について,「いじめ対策等生徒指導推進事業」において,児童生徒の問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応につながる効果的な取組の実践等について調査研究を行った。
エ 加えて,平成27年2月に川崎市で発生した中学1年生殺害事件の検証を行うとともに,これを踏まえた再発防止策を検討するため,丹羽文部科学副大臣を主査とし,関係府省庁と連携の上,「川崎市における中学1年生殺人事件に係るタスクフォース」を立ち上げ,「川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応方策」を取りまとめた。文部科学省では,対応方策を基に,(1)学校や教育委員会における組織的な対応,(2)警察を始めとする関係機関との連携,(3)課題を抱える家庭への支援の充実,(4)子どものSOSを受け止める取組の充実といった取組等を進めるよう全国の教育委員会等に要請した。
オ 警察では,少年相談活動やスクールサポーターの学校への訪問活動等により,いじめの早期把握に努めるとともに,把握したいじめの重大性及び緊急性,被害少年及びその保護者等の意向,学校等の対応状況等を踏まえ,警察として必要な対応をとっていくこととしており,いじめ防止対策推進法の趣旨も踏まえつつ,学校等と緊密に連携しながら,的確な対応を推進している。
 また,校内暴力についても,学校等との情報交換により早期把握に努め,悪質な事案に対し厳正に対処するなど,内容に応じた適切な措置と再発の防止に努めている。
カ 法務省の人権擁護機関では,いじめ等の子どもの人権問題に対応するため,専用相談電話等により,いじめの被害者等からの相談を受け付けている。
キ 厚生労働省では,ひきこもり等の児童について,教育分野との連携を図りつつ,児童相談所や児童養護施設等の機能を十分活用するとともに,家庭環境・養護問題の調整,解決に取り組んでいる。
ク 内閣府では,平成26年度の政府広報により,中高生を主な訴求対象として,子どもの自殺予防に関し,命の大切さや友達から相談された際の行動指針について,イベント(全国5会場),クリアファイル配布,政府広報オンライン特集ページメッセージ動画,行動指針コンテンツ,インターネット,雑誌等を活用した重点的な広報を実施した。

(4) 体罰の問題に対する取組の推進
 体罰は,「学校教育法」(昭和22年法律第26号)第11条で禁止されており,児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え,力による解決の志向を助長し,いじめや暴力行為等の土壌を生むおそれがあり,いかなる場合でも決して許されない。文部科学省では,平成25年3月に,懲戒と体罰の区別について現場の教員が理解しやすい丁寧な説明を行うことを目的として,体罰と判断される行為や認められる懲戒等の具体例を示したり,部活動指導に当たっての留意事項を示した初等中等教育局長及びスポーツ・青少年局長通知「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」を発出したり,同年5月に運動部活動での体罰等の根絶及び効果的な指導に向けた「運動部活動での指導のガイドライン」を公表したりするなど,体罰の防止に関する取組について示してきた。
 また,体罰根絶のためには実態把握に努めることが重要と考えており,平成27年1月には,国公私立学校における体罰の実態についてまとめた調査結果を公表した。

(5) 家庭教育に対する支援の充実
 身近な地域において,全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう,家庭教育支援チームの組織化等による相談対応,保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供等の家庭教育を支援する活動を実施している。
 また,地域住民,学校,行政,NPO,企業等の協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため,効果的な取組事例等を活用した,全国的な研究協議を行っている。平成26年度は,東京都において研究協議会を開催し,全国的な啓発を行った。
 さらに,家庭訪問等により,個別に情報提供や相談を行い,学びの場や地域社会への参加を促す「家庭教育支援における訪問型アウトリーチ支援手法」の実証研究を行い,問題を抱え孤立した家庭に対する新たな支援手法の開発を図った。そのほか,家庭教育支援チームによる支援を更に普及するため,家庭教育支援チームの登録制度の弾力化やロゴマークの作成を行った。

(6) 児童虐待等子どもの健全育成上重大な問題に対する取組
 児童虐待への対応については,平成12年11月に施行された「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)及び「児童福祉法」(昭和22年法律第164号)の累次の改正や,「民法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第61号)による親権の停止制度の新設等により,制度的な充実が図られてきた。
 この間,全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増加し,平成25年度には児童虐待防止法制定直前の約6.3倍に当たる7万3,802件となっている。子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件も後を絶たず,虐待による死亡事件も毎年100件前後発生・表面化する中で,児童虐待の防止は社会全体で取り組むべき重要な課題である。
 このような状況を踏まえ,平成26年8月29日に関係府省庁による「児童虐待防止対策に関する副大臣等会議」が開催され,同年12月26日の同会議において,居住実態が把握できない児童への取組と併せて,児童虐待を未然に防ぐとともに,虐待を受けたとしても重篤化する前に迅速に発見し,的確に対応するための対応策について,以下の5項目を柱として取りまとめた。
 (1) 妊娠期からの切れ目ない支援のあり方
 (2) 初期対応の迅速化や的確な対応のための関係機関の連携強化
 (3) 要保護児童対策地域協議会の機能強化
 (4) 児童相談所が,虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制整備
 (5) 緊急時における安全確認,安全確保の迅速な実施
 いわゆる児童ポルノについては,平成26年6月,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が一部改正され,法律名が「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に改められ,自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノ又はその電磁的記録を所持,保管する行為や,ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造する行為を処罰する罰則が新設された。
ア 厚生労働省は内閣府と共に,平成16年から毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置づけ,児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図っており,関係府省庁や地方公共団体,関係団体等と連携した集中的な広報・啓発活動を実施している。
 平成26年度は,月間標語の公募・決定,「子どもの虐待防止推進全国フォーラム」の開催(11月24日。和歌山市),広報用ポスター,リーフレットや児童相談所全国共通ダイヤル紹介しおりの作成・配布をするとともに,政府広報では各種媒体(ラジオ,インターネットテレビ等)により,児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることを周知・啓発した。
 また,児童相談所全国共通ダイヤル(0570―064―000)について,覚えやすい3桁番号にすることで,より広く一般に周知し,児童虐待を受けたと思われる子どもを見つけたとき等に,ためらわずに児童相談所に通告・相談ができるように,平成27年7月1日から,これまでの10桁番号から3桁番号(189)に変更し,運用を開始する。
 さらに,政府広報により,子どもを持つ親等の若年層を主な訴求対象として,児童虐待は社会全体で解決すべき問題であること,及び妊娠前からの切れ目のない相談と支援について,ラジオ,ポスター,チラシ,政府広報オンライン特集ページ等を活用した重点的な広報を実施した。
 このほか,児童虐待防止の啓発を図ることを目的に民間団体(認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している。
 また,厚生労働省では,「社会保障審議会児童部会」の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」において児童虐待による死亡事例等を分析,検証し,事例から明らかになった問題点や課題の具体的な対応策を提言として取りまとめており,平成26年9月には第10次報告を取りまとめ,公表している。
イ 文部科学省では,都道府県等を通じて,学校教育関係者や社会教育関係者に対して,児童虐待の防止に向けた取組の推進に関する通知を発出するとともに,各種会議等を通じて早期発見努力義務及び通告義務等について周知の徹底を図っている。
 また,児童生徒が適切な相談を受けることができるよう,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの活用等,教育相談体制の整備を支援している。
ウ 警察庁では,警察庁ホームページにおいて,「NO!!児童ポルノ」と題して,児童ポルノの定義,被害防止対策,検挙・被害状況,児童ポルノ被害の深刻さ等について掲載し,児童ポルノ排除対策に関する国民の理解の増進を図っている。

(7) 条約の周知
 外務省では,内閣府を始めとする関係府省庁と協力して,平成6年に締結した児童の権利条約と併せ同条約の選択議定書の実施に努めており,条文を外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html)に掲載し,その内容の周知に努めている。
 文部科学省では,平成22年度から毎年開催する「人権教育担当指導主事連絡協議会」等において,同条約等の周知を図っている。
(8) 「人権を大切にする心を育てる」保育の推進
 厚生労働省では,保育所において,保育所保育指針に基づき,児童の最善の利益を考慮するよう啓発を行うとともに,「人権を大切にする心を育てる」保育の推進を図り,児童の心身の発達,家庭や地域の実情等に応じた適切な保育の実施を推進している。

(9) 子どもの人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,(1)専用相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル0120―007―110(全国共通))を設置し,子どもが相談しやすい体制をとっている。取り分け,平成26年6月23日から29日までの1週間を「全国一斉『子どもの人権110番』強化週間」とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設した。また,(2)法務省ホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口(SOS-eメール)」(http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html)を開設している。さらに,(3)子どもの人権SOSミニレターを全国の小・中学校の児童生徒に配布するなど,子どもたちがより相談しやすい体制を整備している。
 そして,子どもの人権が侵害されている疑いのある事案を認知した場合には,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 なお,児童虐待については,国民全てに児童虐待についての通告義務が存在すること等の周知を含む啓発活動の充実に努めるとともに,人権侵犯事件の関係では,子どもの人権SOSミニレター等で寄せられた虐待に関する相談に対して,児童相談所等への情報提供や被害者との面談を早期に行うことにより,被害者を速やかに保護させ,あるいは被害者の家庭環境の改善を図るなど,関係機関と協力し,人権侵害の防止の観点から見守り体制を構築している。また,児童虐待事案を認知した場合には,児童相談所等へ通告するとともに,人権擁護機関の立場からも,虐待を受けた児童の人権救済を図っている。
 また,児童買春,児童ポルノによる被害等の人権問題についても,人権相談に応じており,人権相談等で,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

 子どもの人権110番を端緒に人権侵犯事件として立件し救済措置を講じた具体例は,以下のとおりである。
事例(中学校における体罰)
 中学校の生徒が,学校の教員から体罰を受け,その後不登校状態になったとして,親から法務局の相談電話「子どもの人権110番」に相談がされた事案である。
 法務局の同席の下,学校側と生徒の親との間の話合いの場が設けられ,その場において学校側が行き過ぎた指導があったことを認めるとともに,再発防止のため教職員の管理監督に注意する旨約束し,生徒の不登校状態解消に向けた支援策を講ずることとされ,両者の関係が改善された。(措置:「調整」)

3 高齢者
 我が国は,平均寿命の大幅な伸びや少子化等を背景として,人口のほぼ4人に1人が65歳以上の高齢者となっている。
 このような中,介護者による身体的・心理的虐待や,高齢者の家族等による本人の財産の無断処分等の経済的虐待といった高齢者の人権問題が大きな社会問題となっている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 高齢者についての理解を深め,高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,「高齢者を大切にする心を育てよう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会や座談会の開催,テレビ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。
 また,高齢者虐待防止等をテーマとした人権啓発ビデオ「虐待防止シリーズ 高齢者虐待」を,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 さらに,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「高齢者を大切にしよう」をYouTube法務省チャンネルで配信している。

(2) 高齢者福祉に関する普及・啓発
 厚生労働省では,平成26年9月15日から21日までの1週間を「老人の日・老人週間」と定め,「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに,老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」という趣旨にふさわしい行事が実施されるよう,関係団体等に対する支援,協力,奨励等を都道府県等に依頼した。また,内閣府,消防庁,全国社会福祉協議会等の主唱12団体は,「みんなで築こう安心と活力ある健康長寿社会」を標語とする「平成26年『老人の日・老人週間』キャンペーン要綱」を定め,その取組を支援した。

(3) 学校教育における高齢者・福祉に関する教育の推進
 学校教育においては,学習指導要領に基づき,児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため,ボランティア等の社会奉仕に関わる体験活動や,高齢者との交流活動等を含む体験活動の充実が図られている。

(4) 高齢者の学習機会の充実
 平成24年に策定された高齢社会対策大綱においては,高齢者を含めた全ての人々が生涯にわたって学習活動を行うことができるよう,学校や社会における多様な学習機会の提供を図るとともに,その成果の適切な評価の促進を図ることとしており,社会教育施設等においては,高齢者等を対象とした学習機会の提供が行われている。
 また,文部科学省では,高齢者が生涯学習を通じて地域づくりに主体的に参画することを促進するため,平成26年6月に三重県四日市市,同年11月に東京都千代田区において,高齢者の生涯学習に関する研究成果や各地域の先進的な取組事例等を活用した研究協議を行う「長寿社会における生涯学習政策フォーラム」を開催した。

(5) 世代間交流の機会の充実
 内閣府では,高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため,平成26年7月に東京都千代田区,同年10月に神戸市において「高齢社会フォーラム」を開催するなどの事業を実施した。

(6) ボランティア活動等,高齢者の社会参加の促進
 内閣府では,年齢に捉われず,自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレスライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を毎年広く紹介しており,平成26年度は,個人65名及び55団体を選考し,高齢社会フォーラム等を通じて,社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。

(7) 高齢者の雇用・多様な就業機会確保のための啓発活動
 厚生労働省では,求人の募集・採用に当たっては,年齢ではなく求職者一人一人の経験や適性,能力等を判断するべきであるとの趣旨から,現在,「雇用対策法」(昭和41年法律第132号)により,ハローワークを始め,求人広告,民間の職業紹介会社,インターネット等全ての求人募集において,厚生労働省令が定める例外事由に該当する場合を除いては,求人の年齢制限を原則禁止し,年齢に関わりなく応募の機会が開かれるよう努めている。
 また,60歳以上の高齢者に限定して募集採用する場合には,厚生労働省令が定める例外事由として,年齢制限をすることを許容し,高齢者の雇用を促進することとしている。

(8) 高齢者の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局において人権相談に応じており,全国共通人権相談ダイヤル「みんなの人権110番」(ナビダイヤル0570―003―110(全国共通))を設置している。また,高齢者に接する機会が多い社会福祉事業従事者等に対し,人権相談を広報するためのリーフレットを配布したほか,高齢者施設等の社会福祉施設において,入所者及びその家族が気軽に相談できるよう,特設の人権相談所を開設するなどして,相談体制の一層の強化を図っている。さらに,平成26年9月8日から14日までの1週間を「全国一斉『高齢者・障害者の人権あんしん相談』強化週間」とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,多くの高齢者等からの電話相談に応じた。人権相談等で,高齢者に対する虐待等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

4 障害のある人
 障害のある人を含む全ての人々にとって住みよい平等な社会づくりを進めていくためには,国や地方公共団体が障害のある人に対する各種施策を実施していくだけでなく,社会の全ての人々が障害のある人について十分に理解し,必要な配慮をしていくことが求められている。
 我が国では,「障害のある人も地域の中で普通の暮らしができる社会に」という「ノーマライゼーション」を基本理念の一つとする障害者施策を進めてきた。
 平成14年12月には「障害者基本計画(第2次)」を閣議決定し,これに基づき,同年,更には平成19年に「重点施策実施5か年計画」を策定してきたところ,平成25年9月に「障害者基本計画(第3次)」を閣議決定し,障害のある人の自立と社会参加の支援のための総合的かつ計画的な施策の一層の推進を図ることとしている。
 また,全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障害者差別の解消を推進することを目的とした「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)が平成25年6月に成立した。同法に基づく,政府における施策の基本的な方向等を示す「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」については,「障害者政策委員会」でのヒアリング,議論等を経て平成27年2月に閣議決定したほか,全国8か所で「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム」を開催し,各地における取組の促進と気運の醸成を図るなど,引き続き平成28年4月の法施行に向けた取組を進めている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 共生社会を実現するための啓発・広報等
 障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し,支え合う「共生社会」の理念の普及を図るため,毎年12月3日から9日までの「障害者週間」を中心に,全国で官民にわたって多彩な行事を集中的に開催するなど,積極的な啓発・広報活動を行っている。
 内閣府では,障害者週間に当たり,ラジオ放送,新聞,ポスター等の多様な媒体による広報活動を実施したほか,障害者週間行事として,週間を通して各種の行事を実施した。
 平成26年12月3日に東京都千代田区で開催された「障害者フォーラム2014」において,全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰等を行った。このほか,障害者週間のポスターの優秀作品の原画展を東京都千代田区で開催した(詳細は,「障害者白書」に記載)。また,障害者フォーラム2014の開催に当たり,聴覚障害等の出席者のために手話通訳者や要約筆記者を会場に配置した。また,視覚障害の出席者へ点字版資料の配布を行った。さらに,内閣府ホームページからのインターネットを介し動画配信を行い,障害者施策の推進について国民への周知を図った。なお,動画配信に当たっては,字幕を付すなど障害のある人に対しても正確かつ迅速な情報の発信がなされるよう配慮している。

(2) 障害のある人に対する偏見・差別を解消し,障害のある人の自立と完全参加を目指した啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では,「障害のある人の自立と社会参加を進めよう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会や座談会の開催,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。
 また,平成22年度から,啓発冊子「人権の擁護」,「全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集」に,平成25年度から,「人権擁護委員 あなたの街の相談パートナー」に音声コードを導入し,視覚障害のある人が利用することができるよう工夫を施している。
 さらに,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「暮らしやすい社会に」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
イ 厚生労働省では,「身体障害者補助犬法」(平成14年法律第49号)の趣旨及び補助犬の役割等についての一層の周知を目的として,ポスター,パンフレット,ステッカー等の作成・配布や,ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/hojyoken/)の開設を行っている。

(3) 特別支援教育の充実及び障害のある人に対する理解を深める教育の推進
 文部科学省では,障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加を目指し,特別支援教育の充実を図るとともに,障害のある人に対する理解を深める教育の充実に努めている。
 近年では,特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化が見られること,小・中学校においても発達障害等のある児童生徒への適切な指導及び必要な支援が求められること等から,「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第80号)により,従来の盲・聾・養護学校の制度は,複数の障害種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換され,また,小・中学校等においても特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。
 また,文部科学省では,障害者権利条約において提唱されているインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として,特別支援教育の専門支援人材の配置・活用等を推進しつつ,早期からの教育相談・支援体制の構築,幼・小・中・高等学校等における合理的配慮の充実,インクルーシブ教育システム構築に関するデータベースの整備,合理的配慮の関連知識の習得及び情報共有を図るためのセミナーの開催,医療的ケアのための看護師配置,就学奨励費の支給対象の拡大を行う「インクルーシブ教育システム構築事業」や,発達障害のある児童生徒への早期支援,教員の発達障害に関する正しい理解を図る「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援・教職員の専門性向上事業」等を実施している。あわせて,特別支援教育への対応のための教職員定数の改善や,障害のある幼児児童生徒に対して様々な支援を行う「特別支援教育支援員」の配置に係る地方財政措置,障害のある子どもと障害のない子どもとの交流及び共同学習の推進等に取り組んでいる(詳細は,「文部科学白書」及び「障害者白書」に記載)。

(4) 障害のある人の雇用の促進等
 障害のある人の雇用については,平成26年6月1日現在における民間企業の雇用障害者数が43万1,225.5人(前年比5.4%増)(重度身体障害者及び重度知的障害者については1人を2人に相当するものとして計上し,短時間労働者については1人を0.5人に相当するものとして計上している。)と11年連続で過去最高を更新し,一層進展している。障害者雇用の取組としては,各種支援策を講じるとともに,毎年9月を「障害者雇用支援月間」として設定し,障害者雇用優良事業所等に対する厚生労働大臣表彰等の啓発活動等を実施し,広く国民に対し障害者雇用の機運の醸成を図っている。
 また,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構においても,障害のある人の職業的自立の意義を喚起するとともに,事業主及び社会一般の理解と認識を深め,障害者雇用の促進を図ることを目的に,平成26年11月21日から3日間,名古屋市において「第35回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)」を開催するとともに,その一環として障害者雇用事業所等による展示や障害者就労支援機器の紹介等を行う障害者ワークフェアを開催した。

(5) 精神障害者に対する偏見・差別の是正のための啓発活動
 厚生労働省では,こころの健康や病気,支援サービスに関する総合サイトである「みんなのメンタルヘルス」や若者を支えるメンタルヘルスサイトである「こころもメンテしよう」,地域住民等に対して精神保健福祉に関する知識の普及等を行う「精神保健福祉普及運動」等を活用して,精神疾患についての正しい理解が広まるよう,情報発信を行っている。平成26年度は,平成26年10月27日から11月2日までの間,「第62回精神保健福祉普及運動」を実施し,各地方公共団体において普及啓発のための講演会等の開催,パンフレットの配布等により,全国的かつ集中的な広報活動を実施した。

(6) 障害のある人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局において,人権相談に応じており,全国共通人権相談ダイヤル「みんなの人権110番」(ナビダイヤル0570―003―110(全国共通))を設置している。また,障害のある人に接する機会が多い社会福祉事業従事者や特別支援学校高等部卒業予定者等に対し,人権相談を広報するためのリーフレットを配布したほか,障害者支援施設等の社会福祉施設において,入所者及びその家族が気軽に相談できるよう,特設の人権相談所を開設するなどして,相談体制の一層の強化を図っている。さらに,平成26年9月8日から14日までの1週間を全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間とし,平日の相談受付時間を延長するとともに,土曜日・日曜日も開設し,多くの障害のある人等からの電話相談に応じた。人権相談等で,障害のある人に対する差別,虐待等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

(7) 障害者虐待防止の取組
 平成24年10月に施行された「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成23年法律第79号)では,地方公共団体は障害者虐待の通報・届出窓口として「市町村障害者虐待防止センター」や「都道府県障害者権利擁護センター」としての機能を果たすこととされており,各センターでは障害者虐待の通報・届出の受理に加え,相談や指導・助言を行うほか,国民の理解の促進を図るため,障害者虐待防止の広報・啓発等を行っている。
 厚生労働省では,地方公共団体が関係機関との連携の下で,障害者虐待の未然防止や早期発見,迅速な対応等を行えるよう「地域生活支援事業」における障害者虐待防止対策支援等の施策を通じて,地域における関係機関等の協力体制の整備や支援体制の強化を図っている。

(8) 発達障害者への支援
ア 厚生労働省では,平成19年12月に,毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が国連で採択されたことを受け,一般社団法人日本自閉症協会との共催でシンポジウムを開催するなど,自閉症を始めとした発達障害に関する正しい知識の浸透を図っている。全国各地においても,「世界自閉症啓発デー」や4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」(関係団体等が提唱)において,様々な啓発活動が実施されている。
 また,「発達障害情報・支援センター」を設置し,発達障害者支援に関する調査・研究及びウェブサイト等を通じた支援手法の普及や国民の理解の促進を図っている。
イ 文部科学省が平成24年に実施した調査によれば,公立小・中学校の通常の学級に在籍する児童生徒のうち,発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする者(知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒)が6.5%の割合で在籍していると推計された。文部科学省では,同調査等を踏まえて,平成25年度から,発達障害のある幼児児童生徒に対する支援を充実させるため,発達障害に関する教職員の専門性向上のための事業を実施し,平成26年度からは,発達障害の可能性のある児童生徒を早期に支援するための事業,高等学校等における発達障害のある生徒のキャリア教育・就労支援の充実事業及び個々の能力・才能を伸ばす教育課程の編成に関する研究事業等を実施している。

(9) 障害者権利条約の締結及び周知
 我が国は,平成26年1月20日に障害者権利条約を締結した。この条約の主な内容は,(1)一般原則(障害者の尊厳,自律及び自立の尊重,無差別,社会への完全かつ効果的な参加及び包容等),(2)一般的義務(合理的配慮の否定を含む障害に基づくあらゆる差別の禁止等),(3)障害者の権利実現のための措置(身体の自由等の自由権的権利及び教育,労働等の社会権的権利について締約国がとるべき措置等),(4)条約の実施のための仕組み(条約の実施及び監視のための国内の枠組みの設置,条約に基づき設置されている「障害者権利委員会」における各締約国からの報告の検討等)となっている。締約国は,この条約が自国について発効後2年以内に,条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告を障害者権利委員会に提出することとなっており,今後,我が国でも,障害当事者の意見も聞きながら,報告の作成に取り組んでいくこととなる。
 また,この条約の実施のためには,障害のある人に関する社会全体の意識が向上することが重要であり,外務省としては,今後とも,関係府省庁とも連携し,条約の概要や意義等について,障害当事者を含む国民全体に対し,分かりやすく,利用しやすい様式で広報していく。

5 同和問題
 同和問題は,日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別により,日本国民の一部の人々が,長い間,経済的,社会的,文化的に低い状態に置かれることを強いられ,日常生活の上で差別を受けるなどしている,我が国固有の人権問題である。
 この問題の解決を図るため,国は,地方公共団体と共に,昭和44年から33年間,特別措置法に基づき,地域改善対策を行ってきた。その結果,同和地区の劣悪な環境に対する物的な基盤整備は着実に成果を上げ,一般地区との格差は大きく改善された。
 しかしながら,結婚における差別,差別発言,差別落書き等の事案は依然として存在している。また,いわゆる「えせ同和行為」等の事案も依然として起こっており,同和問題の解決を阻む大きな要因になっている。現在,同和問題については,各般の一般対策によって的確に対応していくものとされている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育・啓発
 法務省の人権擁護機関では,同和問題に関する差別意識の解消のため,「同和問題に関する偏見や差別をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会や研修会の開催,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。
 平成26年度は,同和問題をテーマにした人権啓発教材「人権アーカイブ・シリーズ『同和問題~過去からの証言,未来への提言~』(人権教育・啓発担当者向け・証言集及びビデオ)/『同和問題 未来に向けて』(一般向け・ビデオ)」を作成し,完成披露試写会と監修者対談を行った。同教材は,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。

(2) 学校教育・社会教育を通じた同和問題の解決に向けた取組
 文部科学省では,学校教育における人権教育関係事業として人権教育研究推進事業を実施し,同和問題に関する差別意識の解消を図っている。
 また,社会教育では,「公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラム」の中で人権教育に関する取組を実施し,その中で,学習や交流の場を提供するなど同和問題に関する内容についても実施した。

(3) 公正な採用選考システムの確立
 厚生労働省では,企業の採用選考に当たって,人権に配慮し,応募者の適性・能力のみによって採否を決める公正な採用選考システムの確立が図られるよう,雇用主に対して,以下の啓発に取り組んだ。
(1) 日本経済団体連合会,日本民間放送連盟等の経済・事業別団体106団体に対して,文書により,公正な採用選考の確保について傘下企業への指導を要請
(2) 公正な採用選考についてのガイドブック,ポスター,カレンダー等,各種啓発資料を作成し,事業所に配布
(3) 中学校,高等学校,大学等の卒業予定者に係る採用選考に合わせて,新聞広報等を通じた啓発活動を実施
(4) 事業所における公正な採用選考システムの確立について,中心的な役割を果たす「公正採用選考人権啓発推進員」を,一定規模以上の事業所に配置するとともに,各労働局及び公共職業安定所が,同推進員に対して研修会を開催
(5) 従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対する研修会を開催

(4) 農漁協等関係農林漁業団体職員に対する啓発活動
 農林水産省では,農林漁業や農山漁村に起因する同和問題を始めとした広範な人権問題に関する啓発活動を積極的に推進するため,都道府県を通じて農漁協等関係農林漁業団体の職員に対する研修等を実施するとともに,全国農林漁業団体が当該職員等を対象に行う同様の研修等に対する支援を実施した。

(5) 隣保館における活動の推進
 厚生労働者では,生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を実施している隣保館の事業に対し支援を行っている。

(6) えせ同和行為の排除に向けた取組
 政府は,同和問題を口実にして企業や官公署等に不当な利益や義務なきことを求める「えせ同和行為」を排除するため,全府省庁の参加する「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設置し,政府一体となってえせ同和行為の排除の取組を行っている。
ア 法務省では,えせ同和行為の実態を把握するため,昭和62年以降10回にわたりアンケート調査を実施している(平成25年の調査結果の概要は,http://www.jinken.or.jp/jinken-info/research2013)。
 また,地方においても,全国50の法務局・地方法務局を事務局として組織されている「えせ同和行為対策関係機関連絡会」に,平成27年4月現在で1,096の国の機関,地方公共団体,弁護士会等が参加し,随時,情報交換のための会議を開くなど,様々な取組を展開している。
イ 都道府県警察においても関係機関と連携して,違法行為の取締り等,えせ同和行為の排除対策を推進している。
ウ 経済産業省では,産業界・経済界向けにえせ同和行為対策セミナーを開催するとともに,えせ同和行為に関するリーフレットを作成し,配布した。

(7) 同和問題をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,同和問題をめぐる人権侵害事案に対し,人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ,その被害の救済及び予防を図っている。取り分け結婚差別,差別発言等を人権擁護上看過できない事象として捉え,行為者や関係者に対して人権尊重の意識を啓発することによって,自発的・自主的に人権侵害の事態を改善,停止,回復させ,あるいは,将来再びそのような事態が発生しないよう注意を喚起している。
 また,インターネット上で,不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘するなどの内容の情報を認知した場合は,その情報の削除をプロバイダ等に要請するなど適切な対応に努めている。

6 アイヌの人々
 アイヌの人々は,固有の言語や伝統的な儀式・祭事,多くの口承文学(ユーカラ)等,独自の豊かな文化を持っているが,近世以降のいわゆる同化政策等により,今日では,その文化の十分な保存・伝承が図られているとは言い難い状況にある。特に,アイヌ語を理解し,アイヌの伝統等を担う人々の高齢化が進み,これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつある。
 また,アイヌの人々に対する理解が十分ではないため,就職や結婚等における偏見や差別が依然として存在している。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) アイヌの人々に関する総合的な政策の推進
 政府は,国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(平成19年9月)や衆参両院の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」(平成20年6月)を受けて内閣官房長官が開催した「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」による報告(平成21年7月)を踏まえ,総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進するため,内閣官房長官が座長となり,政府,有識者及びアイヌの人々から成る「アイヌ政策推進会議」を開催している(推進会議等の開催経過は,http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/index.html)。
 同会議における了承を得て,平成26年6月13日に「アイヌ文化の復興等を推進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針について」が閣議決定された。

(2) アイヌ文化の振興,アイヌの伝統及び文化に関する普及啓発
 文化庁や国土交通省等では,「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(平成9年法律第52号)に基づき,公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構が行う事業に対して助成等を行った。
 また,アイヌ語の保存・継承に資するアーカイブ作成のために,文化庁では,「アイヌ語の保存・継承に必要なアーカイブ化に関する調査研究」を平成25年度に引き続いて実施し,2年間にわたる調査研究の成果についての報告会を,平成27年1月に札幌市で,同年2月に北海道沙流郡平取町で開催した。1行あき

(3) アイヌ関係の文化財の保護等に関する取組
 文化庁では,「文化財保護法」(昭和25年法律第214号)に基づき,アイヌの有形及び無形の民俗文化財について,北海道教育委員会が行う調査事業,伝承・活用等に係る経費について補助を行った。

(4) アイヌの人々に対する偏見・差別を解消し,アイヌの人々の尊厳を尊重する社会の実現を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,アイヌの人々に対する偏見・差別をなくし,アイヌの人々に対する理解と認識を深めるよう,「アイヌの人々に対する理解を深めよう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。また,アイヌの人々に対する国民の理解を促すよう,インターネットバナー広告を実施した。

(5) 学校教育におけるアイヌの人々に関する学習の推進
 学校教育においては,中学校学習指導要領において,社会科の鎖国下の対外関係に関する学習で北方との交易をしていたアイヌについて取り扱うこととしているなど,アイヌの人々に関する教育を行っている。

(6) 各高等教育機関等におけるアイヌ語等に関する取組への配慮
 北海道の大学を中心に,アイヌに関する授業科目が開設されるなど,アイヌに関する教育・研究を行っている。

(7) 生活館における活動の推進
 厚生労働省では,地域住民に対し,生活上の各種相談を始め,アイヌの人々に対する理解を深めるための広報・啓発活動等を総合的に実施している生活館の事業に対し支援を行っている。

(8) アイヌの人々の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,アイヌの人々に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

(9) 農林漁業経営の近代化を通じた理解の増進
 歴史的な特殊事情等により,アイヌ住民居住地区における農林漁業は,他の地区に比べて経営規模が零細で生産性が低く,所得及び生活水準に格差がみられる。このため,農林水産省では,アイヌ住民居住地区において,地域住民が一体となって行う農林漁業経営の近代化を支援しており,このような取組を通じて,アイヌ農林漁家に対する理解の増進が図られている。

7 外国人
 我が国に入国する外国人は増加しており,平成26年には約1,415万人(再入国者を含む。)と過去最高となっている。こうした中,言語,宗教,習慣等の違いから,外国人をめぐって様々な人権問題が発生している。例えば,家主や仲介業者の意向により,外国人にはアパートやマンションに入居させないという差別的取扱いがされたり,理容店において外国人であることを理由に理容サービスの提供を拒否されたり,あるいは,外国人について根拠のないうわさが広まったりといった事案が生じている。
 また,特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチであるとして社会的に関心を集めている。このヘイトスピーチが,マスメディアやインターネット等で大きく報道されるなど,更に社会的な関心が高まっている上,平成26年7月の「自由権規約委員会」による日本政府報告審査における最終見解及び同年8月の「人種差別撤廃委員会」による同審査における最終見解で,政府に対してヘイトスピーチへの対処が勧告された上,与党を始めとする各党や国会の審議においても,ヘイトスピーチに関する議論が活発となった。
 平成26年5月現在,我が国の公立の小・中・高等学校等に在籍する外国人児童生徒の数は7万3,289人(文部科学省「学校基本調査」,毎年実施)であるが,このうち日本語指導が必要な児童生徒の数は,2万9,198人(同「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」,隔年実施)となっており,平成24年度調査より2,185人(約8.1%)増加している。我が国では,外国人については就学義務は課されていないが,外国人がその保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には,無償で受け入れていて,教科書の無償給与や就学援助を含め,日本人と同一の教育を受ける機会を保障しており,外国人の子どもがより公立学校に就学しやすい体制整備を図るための取組を進めている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 外国人に対する偏見・差別を解消し,国際化時代にふさわしい人権意識の育成を目指した啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,国民の全てが国内・国外を問わず,あらゆる人権問題について理解と認識を深め,真に国際化時代にふさわしい人権意識を育むとともに,外国人に対する偏見・差別を解消することを目指して,「外国人の人権を尊重しよう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会や研修会の開催,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。
 その一環として,ポスター及びリーフレットを配布したほか,各法務局・地方法務局が実施する,民間企業を対象とした研修や中高生を対象とした人権教室において,「外国人の人権」に関する説明の機会を増やすなどした。
 また,平成26年11月15日には,「外国人の人権」をテーマにしたシンポジウムを開催し(9頁参照),平成27年1月13日には,「多文化共生」をテーマにして人権に関する国家公務員等研修会を開催したほか(64頁参照),地方公務員を対象とする人権啓発指導者養成研修会において「外国人の人権」をテーマとする講義を設ける(70頁参照)などの取組を実施した。
 さらに,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「こころも国際化しませんか?」をYouTube法務省チャンネルで配信している。

(2) ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動として,これまでの「外国人の人権」をテーマにした啓発に加え,各種媒体により,こうしたヘイトスピーチがあってはならないということを理解しやすい形で表した,より効果的な啓発と共に,ヘイトスピーチによる被害等の人権に関する問題の相談窓口の周知広報にも積極的に取り組んでいる。
 具体的には,「ヘイトスピーチ,許さない。」をメインコピーとし,平成26年11月24日に朝日新聞に広告を掲載したことを始め,法務省ホームページに特設ページを新設し,同年12月及び平成27年2月にインターネット広告,同年1月にポスター及びリーフレットの作成配布,同年2月にスポット映像のYouTube法務省チャンネルでの配信,同年3月にデジタルサイネージ(電子広告)等の駅構内広告を実施した。
 これらの啓発活動と合わせて,ヘイトスピーチによる被害等の人権に関する問題の相談窓口を分かりやすく周知するなどしている。
(参考)ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動に関する上川法務大臣発言(平成27年1月16日閣議後記者会見(抜粋))
  「近年,特定の民族や国籍の人々を排斥する言動がいわゆるヘイトスピーチであるとして社会的な関心を集めているところでございます。こうした言動につきましては,人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく,人としての尊厳を傷つけたり,差別意識を生じさせかねないものであるということで,あってはならないことであると考えております。法務省の人権擁護機関といたしましては,これまでの『外国人の人権』をテーマにした啓発に加えまして,現在,各種媒体により,こうしたヘイトスピーチがあってはならないということを,御理解いただきやすい形で表しました,より効果的な啓発活動に積極的に取り組むとともに,ヘイトスピーチによります被害などの人権に関する問題の相談窓口につきましても周知広報に積極的に取り組んでいるところです。
 その一環といたしまして,既に『ヘイトスピーチ,許さない。』と題した新聞広告による啓発を行っております。また第二として,法務省のホームページでの『ヘイトスピーチ,許さない。』と題したバナーやページの新設をいたしました。第三として,法務省のホームページにリンクしたインターネット広告による啓発につきましても取り組んでおります。これらと合わせまして,相談窓口の周知広報を実施してきたところでございますが,このたび,新たなポスターを作成いたしましたので御紹介いたします。
 本ポスターのデザインは,黄色を背景に,黒文字で『ヘイトスピーチ,許さない。』という明確なメッセージを伝えるものでありまして,私どもの断固たる姿勢をアピールするものです。このポスターにつきましては,来週中に配布を開始した上で,法務省を始めとする中央省庁及びその出先機関,自治体,公共機関等での掲示を予定しているところであります。また,今後,このデザインを活用いたしまして,リーフレットや交通広告,あるいはスポット映像によります啓発なども予定しているところです。」

(3) 学校等における国際理解教育及び外国人の子どもの教育の推進
 国際社会においては,子どもたちが広い視野を持って異文化を理解し,習慣や文化の異なる人々と共に生きていくための資質や能力を育成することが重要である。こうした観点から,現在,各学校において,社会科等の各教科,道徳,特別活動や総合的な学習の時間等を通じて国際理解教育が行われている。
 文部科学省では,毎年,全国の都道府県・指定都市教育委員会担当者を集めた連絡協議会を開催しており,教育を取り巻く現状を知るとともに,取組の進んだ学校の実践事例を共有するなど,国際理解教育の推進に努めている。
 また,外国人児童生徒等教育の充実のために,以下の施策を進めている。
 (1) 日本語指導等を行う教員を配置するための加配定数の措置
 (2) 独立行政法人教員研修センターにおける日本語指導者等に対する研修の実施
 (3) 各地方公共団体が行う地域人材との連携による,公立学校への受入促進・日本語指導の充実・支援体制の整備に係る取組等を支援する事業の実施
 (4) 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施について,学校教育法施行規則の一部を改正し,平成26年1月14日公布,同年4月1日から施行
 さらに,地域において,家庭環境,国籍,言語等の多様な背景事情から,学校への就学に至っていない外国人の子どもも存在するため,不就学・自宅待機となっている外国人の子どもの就学を促進するよう,学校外における日本語指導や教科指導等の支援体制の充実に努めている。

(4) 外国人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,外国人であることを理由とした差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 なお,外国人からの人権相談については,英語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京,大阪,名古屋,広島,福岡,高松の各法務局と神戸,松山の各地方法務局において,それぞれ曜日を指定して開設し,相談に応じている。
 法務省入国管理局では,外国人技能実習制度に関し,技能実習生の人権を侵害する行為等の不正行為を行った実習実施機関等に対して,その旨を通知し,5年間の受入停止措置を講じており,不正行為を通知した事例については,法務省ホームページに公表し,不正行為を防止するための啓発に努めている。

8 HIV感染者・ハンセン病患者等
 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やハンセン病等の感染症に対する正しい知識と理解は,いまだ十分とはいえない状況にある。これらの感染症にかかった患者・回復者等が,周囲の人々の誤った知識や偏見等により,日常生活,職場,医療現場等で差別やプライバシー侵害等を受ける問題が起きている。
 平成15年11月に起きた熊本県内のホテルのハンセン病療養所入所者に対する宿泊拒否事件を始め,今なお誤った認識や偏見が存在している。このような偏見や差別の解消を更に推し進めるため,「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(平成20年法律第82号)が平成21年4月から施行されている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) HIV感染者等
ア エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動
(ア) 法務省の人権擁護機関では,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるよう,「HIV感染者等に対する偏見をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。
(イ) 厚生労働省では,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別の解消及びエイズのまん延防止のため,12月1日の「世界エイズデー」に向けてのキャンペーンイベントとして,平成26年11月16日に福岡県糟屋郡粕屋町において,同月29日に東京都新宿区において,「RED RIBBON LIVE 2014」を実施し,専門家や著名人によるトークライブイベントを行った。また,エイズに関する電話相談事業を実施する等,HIV・エイズに関する正しい知識の普及啓発活動に努めている。
イ 学校教育におけるエイズ教育等の推進
 文部科学省では,学校教育において,エイズ教育の推進を通じて,エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくすとともに,教材作成や教職員の研修を推進した。
ウ HIV感染者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,HIV感染者等に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

(2) ハンセン病患者・元患者等
ア ハンセン病患者・元患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動
(ア) 厚生労働省では,ハンセン病に対する正しい知識の普及のため,様々な普及啓発活動を行っている。平成21年度から「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」(平成13年法律第63号)の施行日である6月22日を「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」と定め,平成26年6月20日に東京都千代田区において厚生労働省の主催により,法務省等の関係機関の出席を得て,追悼,慰霊及び名誉回復の行事を実施した。
 また,平成27年3月に,ハンセン病を正しく理解するための中学生向けパンフレット及び指導者向け教本「ハンセン病の向こう側」を作成し,全国の中学校,教育委員会等に配布した。
 さらに,平成27年1月31日に熊本市で,法務省等と連携し,ハンセン病問題に対する正しい知識の普及啓発を目的とした「第14回ハンセン病問題に関するシンポジウム」を実施した。
(イ) 法務省の人権擁護機関では,ハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるよう,「ハンセン病患者等に対する偏見をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,各種啓発活動を実施している。
 その一環として,中学生等をパネリストとした,「ハンセン病に関する『親と子のシンポジウム』」を,平成26年7月26日に岡山市で厚生労働省等と連携して開催したほか,インターネットバナー広告の掲載や,全国版の小・中学生新聞への啓発広告の掲載を実施した。
 また,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「正しい知識が差別をなくす」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
イ ハンセン病患者・元患者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,ハンセン病患者等に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
ウ 国連における取組
 我が国は,ハンセン病患者,回復者,その家族等に対する偏見・差別の解消に向けて,国際社会において主導的な役割を果たしてきている。具体的には,平成20年,平成21年,平成22年と3年連続で「人権理事会」に,さらに,平成22年には国連総会に,ハンセン病に関する誤った認識や誤解に基づく偏見・差別をなくすための決議(ハンセン病差別撤廃決議)案を主提案国として提出し,いずれも全会一致で採択された。

9 刑を終えて出所した人
 刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見・差別は根強く,就職に際しての差別や住居の確保の困難等,社会復帰を目指す人たちにとって,現実は極めて厳しい状況にある。刑を終えて出所した人等が,地域社会の一員として円滑な社会生活を営むためには,本人の強い更生意欲と併せて,家族はもとより,職場,地域社会の理解と協力が必要である。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。
(1) 法務省では,犯罪をした人や非行のある少年の改善更生について国民の理解・協力を促進し,犯罪や非行のない地域社会を築くため,地域住民の理解と参加を得て,「“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~」を実施している。具体的には,刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し,これらの人の円滑な社会復帰を促すため広報啓発イベント,作文コンテスト,ミニ集会,住民集会,講演会,弁論大会等の啓発活動を行っている。
 平成26年度は,平成26年7月1日,広報啓発イベント「おかえりフェスティバル」を東京都中央区で実施し,本運動のフラッグアーティストである音楽家の谷村新司氏や谷垣法務大臣(当時)等が,更生保護への理解と協力を呼び掛けた。このほか,更生保護を支えるボランティアの活動を紹介する「更生保護公開インタビュー」,保護観察対象者が生産した野菜等を販売する「更生保護マルシェ」,警視庁音楽隊や高校ビッグバンド部による「おかえり演奏会」等のユニークなコンテンツにより,フェスティバルに参加した方々に,犯罪や非行からの立ち直りを支える様々な取組を知ってもらうことができた。
 また,平成26年度の第64回の運動における作文コンテストでは,過去最高の29万90点の応募があり,作文を書くことを通じて,次代を担う全国の小・中学生に,日常の家庭生活や学校生活の中で体験したことを基に,犯罪や非行のない地域社会づくりや犯罪や非行等に関して考えてもらうきっかけとなった。
 さらに,平成26年12月に犯罪対策閣僚会議で決定された「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」を受けて,犯罪対策閣僚会議を構成する全ての中央省庁を本運動の中央推進委員会構成団体とするなど,構成団体を大幅に拡大し127団体とした上で,第65回の運動方針を決定する中央推進委員会会議を首相官邸で開催した。同会議においては,(1)出所者等の事情を理解した上で雇用する企業の数を増やすこと,及び,(2)帰るべき場所がないまま刑務所から社会に戻る人の数を減らすこと,を重点事項として設定したほか,安倍内閣総理大臣から国民に向けて本運動への理解と協力を求めるメッセージが出された。第65回における本運動では,同メッセージを用いるなどして,本運動を政府全体の取組として充実強化していくこととしている。
 犯罪や非行のない,全ての国民が安全で安心して暮らせる幸福な社会の実現を願うシンボルマークである「幸福の黄色い羽根」の定着も図りながら,犯罪や非行をした人の立ち直り支援に対する国民の理解・協力を促進し,犯罪や非行のない明るい社会を築くため,様々な機関・団体と広く連携しながら,地域に根ざした国民運動として一層の推進を図っている。
(2) 法務省の人権擁護機関では,刑を終えて出所した人に対する偏見をなくし,理解を深めるよう,「刑を終えて出所した人に対する偏見をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
 また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,刑を終えて出所した人に対する差別等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

10 犯罪被害者等
 犯罪被害者やその家族は,犯罪そのものやその後遺症によって精神的,経済的に苦しんでいるにもかかわらず,追い打ちを掛けるように,興味本位のうわさや心ない中傷等により名誉が傷つけられたり,私生活の平穏が脅かされたりするなどの問題が指摘されている。
 こうした犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会を実現させるため,平成16年12月に「犯罪被害者等基本法」(平成16年法律第161号)が成立した。同法に基づき,平成23年3月に閣議決定された第2次犯罪被害者等基本計画では,四つの基本方針(注1)の下,五つの重点課題(注2)ごとに241の具体的施策が掲げられ,現在,関係府省庁において同計画に基づく施策が進められている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。
(注1)「四つの基本方針」
 (1)尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること,(2)個々の事情に応じて適切に行われること,(3)途切れることなく行われること,(4)国民の総意を形成しながら展開されること
(注2)「五つの重点課題」
 (1)損害回復・経済的支援等への取組,(2)精神的・身体的被害の回復・防止への取組,(3)刑事手続への関与拡充への取組,(4)支援のための体制整備への取組,(5)国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

(1) 犯罪被害者等の人権に関する啓発・広報
ア 内閣府では,毎年11月25日から12月1日までの1週間を「犯罪被害者週間」とし,犯罪被害者等に関する国民の理解を深めるための啓発事業を集中的に実施している。
 平成26年度は,内閣府主催の犯罪被害者週間中央イベント及び地方公共団体等との共催の地方大会(埼玉県,熊本県)を開催し,基調講演やパネルディスカッション等を行った。中央イベントでは犯罪被害者等基本法制定10年を振り返り,今後の課題を考える基調講演,ドメスティックバイオレンス等の女性の被害者,子どもや障害のある人等,自ら声を上げにくい被害者の支援について考えるパネルディスカッションを行った。
 また,平成26年度の都道府県・政令指定都市等における犯罪被害者週間関連行事について,全国の開催情報を集約した上で,内閣府ホームページ等を活用し,全国的に取組がなされていることを広報した(詳細は,「犯罪被害者白書」に記載)。
イ 法務省では,犯罪被害者保護・支援のための制度を広く国民に紹介し,その周知を図るために「犯罪被害者の方々へ」と題するパンフレットを作成し,全国の検察庁及び各都道府県警察等において犯罪被害者等に配布しているほか,同パンフレットを法務省ホームページ及び検察庁ホームページに掲載し,情報提供を行っている。
 また,刑事裁判・少年審判終了後の更生保護における犯罪被害者等のための制度について,リーフレットを配布するなどの広報を実施している。
 さらに,法務省の人権擁護機関では,犯罪被害者やその家族の人権問題に対する配慮と保護を図るため,「犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
ウ 警察庁では,パンフレット「警察による犯罪被害者支援」,「犯罪被害給付制度のご案内」等の作成及び犯罪被害者支援広報用ホームぺージ(http://www.npa.go.jp/higaisya/home.htm)の開設を行うとともに,警察庁広報重点として「犯罪被害者支援活動の周知と参加の促進及び犯罪被害給付制度の周知徹底」を設定した。都道府県警察では,中学生・高校生を対象に,犯罪被害者本人や遺族が直接語りかける「命の大切さを学ぶ教室」を実施するとともに,受講した中学生・高校生参加による,命の大切さや犯罪被害者支援をテーマとする作文コンクールを実施したほか,大学生を対象にした犯罪被害者支援に関する講義を行うなど,広報・啓発を実施した。
 このほか,犯罪被害者等への支援活動を行う「認定NPO法人全国被害者支援ネットワーク」に加盟している民間被害者支援団体等の関係機関・団体との連携を図りながら,犯罪被害者支援に関する広報・啓発等の活動を行っている。

(2) 犯罪被害者等に対し援助を行う者等に対する教育訓練
ア 検察職員
 検察職員に対しては,犯罪被害者保護を目的とした諸制度について,各種研修や日常業務における上司による指導等を通じて周知し,適正に運用するよう努めている。
イ 警察職員
 警察では,犯罪被害者等の立場に立った適切な支援,対応を行うためには,職員に対する教育が極めて重要との認識の下,犯罪被害者支援の意義や各種施策の概要,犯罪被害者等の心情への配慮や具体的な対応の在り方等を理解させるための教育を積極的に実施している。
ウ 保護観察官
 保護観察官を対象にした各種研修において,犯罪被害者等に対して適切な対応を行うことができるようにする観点から,また,保護観察対象者に対して犯罪被害者等の状況や心情について十分理解させ,その贖罪意識の涵養を図る観点から,犯罪被害者等が置かれている状況や刑事政策における被害者支援の必要性等をテーマとして,犯罪被害当事者や民間の犯罪被害者支援団体の関係者等による講義を実施している。
エ 民間の犯罪被害者支援団体のボランティア等
 警察では,民間の犯罪被害者支援団体の一員として犯罪被害者支援を行うボランティア等に対して,警察職員を講師として派遣するほか,被害者支援教育用DVDの活用等により,一層効果的な教育訓練を行うよう努めている。

(3) 犯罪被害者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
 法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,犯罪被害者等に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

11 インターネットによる人権侵害
 インターネットの普及に伴い,その匿名性,情報発信の容易さから,個人の名誉やプライバシーを侵害したり,差別を助長する表現を掲載したりするなど,人権に関わる様々な問題が発生している。そのため,一般のインターネット利用者等に対して,個人の名誉やプライバシーに関する正しい理解を深めるための啓発活動を推進していくことが必要である。
 また,いわゆるリベンジポルノに関し,平成26年11月,私的に撮影された性的画像を公表する行為や公表目的で提供する行為に対する罰則,画像の削除に係る「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号。以下「プロバイダ責任制限法」という。)の特例及び被害者に対する支援体制の整備等を内容とする私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律が成立し,一部を除いて同月27日に施行された(罰則部分は同年12月17日,プロバイダ責任制限法の特例部分は同月27日施行。)。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 個人のプライバシーや名誉に関する正しい知識を深めるための啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,「インターネットを悪用した人権侵害をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
 また,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)サイトやブログサイトに,人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたインターネットバナー広告を掲載した。
 さらに,腹話術師のいっこく堂氏による人権啓発スポット映像「心ない書き込み」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
 加えて,「インターネットと人権」をテーマにした啓発教材「あなたは大丈夫?考えよう!インターネットと人権」を作成し,全国の法務局・地方法務局,都道府県及び政令指定都市に配布の上,各種啓発活動で活用している。
 警察では,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の施行を踏まえ,私事性的画像記録等に係る事案の現状・対策,早期相談の重要性,削除申出方法等,被害防止のための広報啓発活動をより一層推進している。
 例えば,警察庁では,「リベンジポルノの危険」等をテーマとした「平成26年度スマートフォンに係るサイバー犯罪被害防止用DVD『taps』」(公益財団法人警察協会制作)を監修したところ,都道府県警察等に対して,警察や民間事業者等が主催する研修会の機会を利用した講演等の各種啓発活動において,これを活用させる予定である。

(2) インターネットをめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
ア 総務省では,プロバイダ責任制限法の適切な運用の支援に努めている。
  平成18年8月に取りまとめられた総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書」を受け,同年11月に電気通信事業者団体において,インターネット上の人権侵害情報等の違法・有害情報に対して,適切な対応ができるよう「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」を策定した。
 また,平成21年8月から,インターネット上の違法・有害情報へのプロバイダ等の関係者による適切な対応を支援するため,プロバイダ責任制限法や各種ガイドライン等の相談を受け付ける「違法・有害情報相談センター」を設置している。
 さらに,電気通信事業者団体等において,プロバイダ責任制限法の円滑な運用のため,実務上の行動指針となるガイドラインを策定しているところ,同ガイドラインのうち,「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」について,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律を受け,平成26年12月に,改訂した。
イ 法務省の人権擁護機関では,インターネット上の人権侵害情報(私事性的画像記録によるものを含む。)について相談を受けた場合,プロバイダへの発信者情報開示請求や当該情報の削除依頼の方法を助言するほか,調査の結果,名誉毀損やプライバシー侵害に該当すると認められるときは,法務省の人権擁護機関による削除要請について記載したプロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドラインを活用して,当該情報の削除をプロバイダ等に求めており,また,不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で特定の地域を同和地区であるとするなどの内容の情報については,ガイドラインの対象ではないものの,適宜の方法で削除を求めるなど,適切な対応に努めている。
 いじめ防止対策推進法では,インターネットを通じていじめが行われた場合においては,児童等やその保護者が情報の削除等について法務局の協力を求めることができる旨の規定(第19条第3項)等が設けられていることから,その趣旨を踏まえて適切に対応している。

(3) インターネット等を介したいじめ等への対応
 文部科学省では,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」等に基づき,フィルタリングやインターネット利用のルールに関する学習・参加型シンポジウムの開催や,普及啓発資料の配布を通して,地域・民間団体・関係府省庁等と連携しつつ,保護者及び青少年に対する啓発や教育活動を推進している。
 また,平成22年度及び平成23年度に,各地方公共団体が独自に取り組み,知見が十分蓄積されていなかった学校ネットパトロールについて,その効率的・効果的な実施方法や継続的な実施の在り方について調査研究を実施し,平成24年度に,報告書を作成・公表し,教育委員会等に配布した。平成26年度には,都道府県・指定都市において,ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールの取組への支援を新たに行った。
 さらに,学習指導要領に基づき,インターネットの適切な利用を含む,情報モラルに関する教育を推進している。
 なお,平成25年9月に施行されたいじめ防止対策推進法では,インターネットを通じて行われるいじめについても明記された。

12 北朝鮮当局によって拉致された被害者等
 北朝鮮当局による日本人拉致は,我が国に対する主権侵害であるとともに重大な人権侵害である。
 拉致問題に関する啓発については,「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(平成18年法律第96号。以下「北朝鮮人権法」という。)において,政府及び地方公共団体が拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものと定められている。
 また,「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定)においては,第4章の2「各人権課題に関する取組」の中に「北朝鮮当局による拉致問題等」(平成23年4月1日一部変更)で,拉致問題等についての正しい知識の普及を図り,国民の関心と認識を深めるための取組を積極的に推進するものと定められている。
 さらに,拉致問題の解決には,国内世論及び国際世論の後押しが重要であるとの観点から,政府は,拉致問題に関する国内外の理解促進に努めている。
 平成26年度の取組は,以下のとおりである。

(1) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間における取組
 北朝鮮人権法は,12月10日から16日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」と定めており,政府主催行事として,平成26年12月8日に,拉致問題対策本部と法務省の共催,文部科学省の後援による拉致問題啓発コンサート「『ふるさとの風』コンサート」を,東京都渋谷区で開催し,多くの方に参加していただけるようコンサートの模様を全国16か所でパブリックビューイングを実施し,同月13日に,拉致問題対策本部と法務省の共催による「対北朝鮮ラジオ放送シンポジウム―北朝鮮の人権問題・拉致問題とラジオ放送の役割―」を,東京都新宿区で開催した。また,平成26年度からコンサート及びシンポジウムの模様を北朝鮮に囚われている拉致被害者の方々に向けて短波ラジオの生放送を行った。
 また,平成26年12月14日に,全国人権擁護委員連合会,人権擁護委員中部連盟,法務省等の共催で,拉致被害者の蓮池薫氏と愛知工業大学名電高等学校吹奏学部を迎えて,「拉致問題を考える講演会とコンサートの集い」を名古屋市で開催した。
 さらに,同週間の周知を目的としたインターネットバナー広告及び交通広告の実施,全国の地方新聞52紙に啓発週間を周知する広告の掲載,ポスター及びチラシの掲出や関係府省庁,地方公共団体と連携したポスターの掲出,拉致問題啓発のためのテレビスポットCM及びWebスポットCMの放映等,同週間にふさわしい活動に取り組んだ。

(2) 広報媒体の活用
 拉致問題対策本部は,啓発用ポスターのデザインを一新し,俳優の津川雅彦氏と拉致被害者の横田めぐみさんのポスターを制作し,各方面の協力を得て,約30万部を全国各地に配布,掲出したほか,政府主催での拉致問題啓発のための演劇公演の実施,「拉致問題を知るひろば」の内閣府庁舎1階への設置,そのパネルの文化祭等への貸出,政府インターネットテレビ動画「必ず取り戻す!北朝鮮による日本人拉致問題の解決へ」やDVD「拉致問題の解決に向けて」の制作・配信,学校における映画「めぐみ─引き裂かれた家族の30年」及びアニメ「めぐみ」の上映会の開催等を行った。

(3) 地方公共団体・民間団体との協力
 拉致問題対策本部は,地方公共団体及び民間団体との共催等による啓発行事として「地方版『拉致問題を考える国民の集い』」を地方都市(茨城県那珂市,栃木県宇都宮市,札幌市,石川県金沢市,秋田市,鳥取県米子市,鹿児島県鹿屋市,東京都豊島区,仙台市)において開催したほか,住民向けの啓発活動の一環として,地方公共団体等と共催で,映画「めぐみ─引き裂かれた家族の30年」の上映会を開催した。また,平成26年3月に新潟市で開催した拉致問題啓発公演「めぐみへの誓い─奪還─」を同年4月に横浜市,平成27年1月に東京都豊島区,同年2月に北海道石狩市で開催した。

(4) 学校教育における取組
 文部科学省では,各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を集めた会議において,人権教育・啓発に関する基本計画が一部変更され,各人権課題に対する取組に「北朝鮮当局による拉致問題等」が追加された趣旨を説明するとともに,拉致問題対策本部事務局による行政説明を行うなど,各種の機会を通じて周知を図っている。1行あき

(5) 海外に向けた情報発信
 平成26年6月,東京都千代田区において,拉致問題対策本部,「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」及び民間団体との共催により,「北朝鮮による国家犯罪・拉致~ある家族のアルバム」と題して,拉致問題の理解促進を図る映画の上映会と写真パネル展を行い,約80名の各国大使や国会議員が来場した。
 また,平成26年9月,スイス・ジュネーブの国連欧州本部において,拉致問題対策本部が主催して,「北朝鮮による拉致を含む人権侵害に関する国際シンポジウム」を開催し,山谷拉致問題担当大臣が基調講演を行った。同シンポジウムは,同年2月の「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」報告書の公表や同年3月の人権理事会での北朝鮮人権状況決議の採択等,国連を始めとする国際場裡において北朝鮮の人権状況を取り上げ,その改善を図ろうという気運が従来になく高まっていることから,この気運を引き続き維持するとともに,拉致問題の解決に向け,我が国が国際社会とこれまで以上に緊密な連携を図る機会とすることを目的として開催したものである。
 外務省では,平成26年9月,第69回国連総会時に米国が主催した「北朝鮮の人権問題に関するハイレベル会合」に岸田外務大臣が出席し,拉致問題の早期解決の重要性を改めて訴えた。在外公館等では,各国政府関係者,報道関係者,有識者等に対し,各種広報媒体を活用し,拉致問題についての説明・啓発を行った。また,同年11月末,ニューヨークにおいて,各国の政府関係者を招待し,映画「めぐみ─引き裂かれた家族の30年」の上映会を開催した。

(6) 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めるための啓発活動
 法務省の人権擁護機関では,「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう」を年間強調事項の一つとして掲げ,講演会の開催,新聞・広報紙による広報等の啓発活動を実施している。
 なお,北朝鮮人権侵害問題啓発週間における啓発活動については,前掲(1)のとおり。

(7) 国連における取組
 平成25年3月の人権理事会において,我が国及び欧州連合(EU)が共同で提出した北朝鮮人権状況決議によって設置が決定された北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)は,訪日調査の結果も踏まえ,平成26年3月の人権理事会に報告書を提出した。同報告書は,北朝鮮における深刻な人権侵害を包括的に詳述し,拉致問題を含むいくつかの分野における人権侵害が「人道に対する罪」に該当すると判断し,北朝鮮や国際社会等に取組を勧告している。
 この報告書を受けて,我が国は,EUと共同で,平成26年3月の人権理事会に同報告書の内容を反映した北朝鮮人権状況決議を提出し,賛成多数で採択された。
 また,平成26年12月,我が国は,EUと共同で,同報告書及び同決議の内容を踏まえた,これまで国連総会において採択された北朝鮮人権状況決議よりも強い内容の決議を,過去最多の共同提案国を得て国連総会に提出し,賛成多数で採択された。具体的には,北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難するとともに,「人道に対する罪」に言及し,さらに,「安全保障理事会」に対し,北朝鮮の人権状況の「国際刑事裁判所(ICC)」への付託の検討を含む適切な行動をとるよう促している。加えて,同月,「北朝鮮の状況」が安全保障理事会の議題として採択され,人権状況を含む北朝鮮の状況が包括的に議論された。

13 その他の人権課題
(1) ホームレスの人権及びホームレスの自立の支援等
 平成14年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(平成14年法律第105号)では,ホームレスの自立の支援等に関してはホームレスの人権に配慮することが定められている。同法は10年間の限時法として制定されたものであるが,平成24年6月にその期限が5年間延長されたところである。
 また,同法に基づき,平成25年7月にホームレスの実態に関する全国調査の結果を踏まえて策定した「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」では,ホームレス及び近隣住民の双方の人権に配慮しつつ,啓発広報活動,人権相談等の取組により,ホームレスの人権の擁護を推進することが必要であること等が盛り込まれている。
 これらも踏まえ,法務省の人権擁護機関では,「ホームレスに対する偏見をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
 また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,ホームレスに関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。

(2) 性的指向を理由とする偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動
 性的指向とは,人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念であり,同性愛者,両性愛者の人々は,正常と思われず,場合によっては職場を追われることさえある。このような性的指向を理由とする差別的取扱いについては,現在では,不当なことであるという認識が広がっているが,いまだ偏見や差別が起きている。
 法務省の人権擁護機関では,「性的指向を理由とする差別をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
 また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,性的指向に関する嫌がらせ等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 さらに,平成26年度は,性的指向をテーマとした人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を作成し,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。
 加えて,腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像「人を好きになること」を作成し,YouTube法務省チャンネルで配信している。

啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」

(3) 性同一性障害者の人権
 性同一性障害とは,生物学的な性と性の自己意識が一致しないため,社会生活に支障がある状態であり,性同一性障害の人々は,社会の中で偏見の目にさらされ,昇進を妨げられたり,学校生活でいじめられたりするなどの差別を受けている。
 法務省の人権擁護機関では,「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
 また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,性同一性障害者に関する嫌がらせ等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 さらに,平成26年度は,性同一性障害をテーマとした人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を作成し,法務局・地方法務局において貸し出しているほか,YouTube法務省チャンネルで配信している。

(4) 人身取引(トラフィッキング)事犯への適切な対応
ア 人身取引は,重大な犯罪であり,基本的人権を侵害する深刻な問題であり,性的搾取,強制労働等を目的した事案が発生している。
イ 平成21年12月,犯罪対策閣僚会議において「人身取引対策行動計画2009」を策定し,関係行政機関が緊密な連携を図りつつ,人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を推進した。
 「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」において,平成22年6月に「人身取引事案の取扱方法(被害者の認知に関する措置)」を,平成23年7月に「人身取引事案の取扱方法(被害者の保護に関する措置)」を,それぞれ申し合わせ,被害者の認知,保護に取り組んでいる。
 また,人身取引対策に関する関係省庁連絡会議は,平成26年6月,「外国人労働者問題啓発月間」に,同年11月,女性に対する暴力をなくす運動にそれぞれ合わせ,人身取引に係る政府広報を実施した。
 平成25年9月,人身取引被害の防止及び人身取引被害者の保護を一層推進するため,人身取引対策に関する関係省庁連絡会議とNGO関係者の協議の結果,人身取引と疑われる事例をNGO関係者が把握した場合には,現場レベル及び国レベルの公的機関に確実に通報することで両者の合意を得た。
 平成26年12月,引き続き人身取引対策に係る情勢に適切に対処し,政府一体となってより強力に,総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいくため,犯罪対策閣僚会議において「人身取引対策行動計画2014」を策定するとともに,関係閣僚から成る「人身取引対策推進会議」を随時開催することとした。
ウ 法務省の人権擁護機関では,「人身取引をなくそう」を年間強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。
 また,平成27年1月13日に開催した人権に関する国家公務員等研修会において,「多文化共生を考える~人身取引問題の視点から~」と題する講演及び警察庁企画の啓発映像「人身取引を撲滅するために!」の放映を実施した(64頁参照)。
 また,法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において相談に応じている。人権相談等で,人身取引の疑いのある事実を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講じている。
 法務省入国管理局では,毎年6月に行われる「不法就労外国人対策キャンペーン」において,外国人を雇用している又は雇用する予定がある事業主に対し,不法就労防止への協力を呼び掛けるリーフレットを配布するとともに,関係府省庁,地方公共団体,経済団体等に協力を依頼したり,法務省ホームページや報道記者発表に掲載したりするなどして不法就労対策を通じた人身取引防止のための啓発活動を行っている。
 また,「出入国管理」(出入国管理行政の現状についての報告書),入国管理局のパンフレット及びホームページに人身取引防止に対する取組を掲載している。

エ 外務省では,被害者の我が国への入国を未然に防止する観点から,在外公館等における査証審査を厳格に行っている。また,外務省ホームページ上で「人身取引対策に伴う査証審査厳格化措置」についての広報活動を実施している。
 さらに,平成16年以降,関係省庁から構成される「人身取引対策に関する政府協議調査団」を延べ22か国に派遣し,訪問国の政府機関,国際機関及び現地NGOと被害の実態や訴追・保護の実績,内容等について意見交換を実施し,関係諸国と協力関係を構築してきた。
 加えて,我が国で認知された外国人人身取引被害者に対しては,国際移住機関(IOM)への拠出を通じ,人身取引被害者の帰国支援及び社会復帰支援事業(就労・職業支援,医療費の提供等)を行っており,平成17年5月1日以降,平成27年3月1日までに,計258名が同事業により帰国した。
 そのほか,外国人被害者の相談窓口等を記載した警察庁作成の9か国語対応リーフレットを在京大使館及び各国に所在する在外公館に配布し,人身取引の啓発と被害者の認知促進に努めている。

オ 内閣府では,女性に対する暴力をなくしていくという観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施した。
カ 警察庁では,「コンタクトポイント連絡会議」を開催し,関係国の在日大使館,国際機関,NGO等と人身取引被害者の発見,保護についての情報交換や意見交換を行うとともに,人身取引被害の警察等への連絡を呼び掛けるリーフレットを9か国語で作成し,人身取引被害者等の目に触れやすいところで配布しているほか,人身取引事犯未然防止のための広報啓発用映像ソフトを作成し,警察庁ホームページに掲載している。
 また,警察庁の委託を受けた民間団体が市民から匿名による人身取引事犯等に関する通報を受け付ける「匿名通報ダイヤル」(http://www.tokumei24.jp/)を運用している。
キ 厚生労働省では,平成23年7月以降,都道府県の主管部局を通じ,人身取引事案の取扱方法(被害者の保護に関する措置)について,婦人相談所等への周知を図っている。

(5) 東日本大震災に伴う人権啓発
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,被災地域が東日本全域に及び,死者1
万5,891人,行方不明者2,579人,負傷者6,152人の甚大な人的被害が生じたほか,全・半壊建物は40万3,625戸にも及ぶ(平成27年4月10日警察庁緊急災害警備本部広報資料による。)未曾有の大災害である。また,地震と津波に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は,被害をより深刻なものとした。東日本大震災による避難者は,被害の大きかった岩手県,宮城県及び福島県を中心に平成27年4月16日時点で21万9,618人に及んでいる(復興庁調べ)。
 このような中,避難生活の長期化に伴うトラブルや放射線被ばくについての風評等に基づく差別的取扱い等の人権問題が発生しており,震災発生から平成26年12月末までに,法務省の人権擁護機関に寄せられた東日本大震災に関連する人権相談件数は909件,人権侵犯事件数は68件となっている。
ア 避難生活における啓発等
(ア) 法務省の人権擁護機関では,東日本大震災に伴って生起する様々な人権問題について対処するとともに,新たな人権侵害の発生を防止するため,仮設住宅等を訪問するなどして,被災者の心のケアを含めた人権相談に応じている。また,人権相談等を通じて,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には,人権侵犯事件として救済手続を開始し,被害者の救済に適切に対処している。
 また,平成26年9月27日,福島県いわき市において,人権シンポジウム「震災と人権~真の心の復興・生活再建を目指して~」を,平成27年1月10日,東京都千代田区において,同シンポジウム「震災と人権~被災者の方々の心に寄り添う復興のために~」をそれぞれ開催した(9頁参照)。シンポジウムの様子は,人権教育啓発推進センターの人権チャンネル(http://www.youtube.com/jinkenchannel)で公開している。
(イ) 内閣府では,平成25年度に引き続き,岩手県,宮城県及び福島県において,女性の悩みや女性に対する暴力等に関する相談に対応するため「東日本大震災による女性の悩み・暴力相談事業」を実施している。
イ 原発事故に伴う風評被害等
(ア) 法務省の人権擁護機関では,東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う風評に基づく差別的取扱い等,東日本大震災に伴って生起する様々な人権問題について対処するとともに,新たな人権侵害の発生を防止するため,「東日本大震災に起因する人権問題に取り組もう」を年間強調事項の一つとして掲げ,人権教室の実施,シンポジウムの開催,人権啓発デジタルコンテンツの掲載等の啓発活動を実施した。
 また,啓発活動地方委託事業においては,東日本大震災に起因する諸問題に対応するため,地方公共団体に対し東日本大震災に伴う啓発活動への取組を委託した。
(イ) 文部科学省では,平成23年6月,被災した児童生徒を受け入れる学校において,当該児童生徒に対する心のケアや,当該児童生徒を温かく迎えるための指導上の工夫,保護者・地域住民等に対する説明等が適切に行われ,いじめ等の問題を許さず,当該児童生徒の学校生活への適応が図られるよう必要な指導を行うなどの配慮を,教育委員会等に要請した。
(ウ) 経済産業省では,原子力発電所の事故に伴い,風評被害対策や放射線等に関する知識普及のため,講演会や研修会等へ放射線等に関する専門家を派遣するなど情報発信を行った。

第3節 人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等

1 研修
(1) 検察職員
 検察職員に対しては,経験年数に応じて実施する各種研修において,人権等に関する講義を実施しているほか,日常業務における上司による指導等を通じ,基本的人権を尊重した検察活動の徹底を図っている。
 平成26年度の研修としては,新任検事を対象とした「新任検事研修」や任官後おおむね3年前後の検事を対象とした「検事一般研修」等において,犯罪被害者や被疑者・被告人等の人権に関する講義及び国際人権関係条約に関する講義等を実施した。

(2) 矯正施設職員
 矯正研修所及び同支所(全国8か所)における初任研修課程及び任用研修課程等において,新採用職員,幹部職員等に対し,被収容者の権利保障・国際準則等,人権啓発,個人情報の保護,犯罪被害者の人権,セクシュアルハラスメント等に係る講義を実施しているほか,憲法,成人矯正法,少年院法(昭和23年法律第169号)等の講義においても人権に関する視点を取り入れている。
 また,平成26年度は,専門研修課程において,矯正施設で勤務し,被収容者の処遇等に従事する職員に対し,相手の立場に立ち,相手の気持ちを考えながら冷静な対応ができる能力を習得させるとの観点から,民間プログラムによる実務に即した行動科学的な視点を取り入れた研修を行った(「アンガー・マネジメント」研修:刑事施設の中間監督者及び少年鑑別所の専門官等40人,「コーチング」研修:刑事施設の中間監督者及び少年院の専門官等50人)。
 さらに,参加した研修員を講師として所属する矯正施設においても自庁研修を実施した。
 このほか,各矯正施設においては,事例研究・ロールプレイング等の実務に即した自庁研修を行うなど,職員の人権意識の向上に努めている。

(3) 更生保護官署関係職員
 更生保護官署関係職員に対しては,保護観察官を対象とした研修において,人権に関する講義を継続して実施している。平成26年度は,300人に対して,人権に関する講義を実施した。
 また,社会復帰調整官を対象とした研修において,医療観察対象者の人権尊重等の観点から,平成26年度は,57人に対して,精神障害者の人権等に関する講義を実施した。
 保護観察所が実施している保護司に対する各種研修においても,保護観察等の処遇の場面で個人情報の取扱いに配慮するよう啓発に努めている。

(4) 入国管理関係職員
 入国管理局関係職員を対象に,在職年数等に応じて実施している入国管理局関係職員研修において,基本的人権の尊重,人権擁護の現状及び人身取引関係の講義科目を設置しており,平成26年度は,501人が参加した。
 また,各地方入国管理官署の業務の中核となる職員を対象とした人権研修において,人権問題に関する知識を深め,適切な業務処理に資することを目的に,人権に関する諸条約等についての講義を実施している。
 さらに,人身取引対策及びDV事案に係る事務従事者研修において,人身取引等の被害者の保護に万全を期すことを目的に,人身取引等の被害者を認知した場合の措置方法等についての講義を実施している。
 人権研修並びに人身取引対策及びDV事案に係る事務従事者研修については,平成26年度は,合計24人が受講した。

(5) 教員・社会教育関係職員
 独立行政法人教員研修センター及び各都道府県等において,人権尊重意識を高めるための研修を実施している。
 また,社会教育主事講習において,人権問題を取り上げ,人権問題に関する正しい知識を持った社会教育主事の養成を図っている。平成26年度は,全国14か所(計15講習)の国立大学等に社会教育主事講習を委嘱し,全国で835人が修了した。

(6) 医療関係者
 厚生労働省では,医療関係者の養成課程において,人の尊厳を幅広く理解するための教育内容を含めることを求めるなど,患者等の人権を十分に尊重するという意識・態度の育成を図った。

(7) 福祉関係職員
 主任児童委員を対象に,全国主任児童委員研修会等を開催し,地域住民や関係機関との連携について考えるシンポジウム等を実施し,人権の尊重等についての理解を深めている。
 また,児童福祉関係施設における子どもの人権を尊重した処遇を充実させるため,国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所において研修を行った。平成26年度は,合計318人が受講した。1行あき

(8) 海上保安官
 海上保安庁では,海上保安大学校等における初任者教育及び職員に対する再研修において,人権に関する教育を行っている。平成26年度は,960人が受講した。

(9) 労働行政関係職員
 厚生労働省では,職員の職位に応じて行われる中央研修において,同和問題等を中心とする人権の講義を実施している。平成26年度は,811人が受講した。

(10) 消防職員
 消防庁消防大学校では,消防職員に対し,人権教育を実施している。
 平成26年度における人権教育については,幹部科(283人)及び上級幹部科(48人)において,人権に関する諸問題について講義を実施した。

(11) 警察職員
 警察では,各級警察学校及び警察署等の職場において,人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」に重点を置いた教育を行うとともに,基本的人権に配意した適正な職務執行を期する上で必要な知識・技能を修得させるための各種教育を行っている。
 また,取調べの一層の適正化を図るため,平成20年1月に策定した「警察捜査における取調べ適正化指針」(http://www.npa.go.jp/keiji/keiki/torishirabe/tekiseika_shishin.pdf)に基づき,「被疑者取調べ監督制度」を適切に運用している。

(12) 自衛官
 防衛省では,防衛大学校,防衛医科大学校,防衛研究所,統合幕僚学校,陸・海・空の各自衛隊幹部学校等の各教育課程において,自衛官になるべき者や自衛官に対して,有事における捕虜等の人権を保護するため,ジュネーヴ条約その他の国際人道法に関する教育を実施している(平成26年度の履修者は,約2万8,700人。)。このうち,防衛研究所や統合幕僚学校では,ジュネーヴ条約その他の国際人道法に精通した部外講師による講演を実施している。
 また,ジュネーヴ条約その他の捕虜等の取扱いに係る国際人道法の適切な実施を確保するため,統合国際人道業務訓練を実施しており,「武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律」(平成16年法律第117号)等に基づく業務要領について演練し,捕虜等の取扱いについての知識,技能の向上を図っている。平成26年度は,約80人が参加した。

(13) 公務員全般
ア 法務省では,中央省庁等の職員を対象とする人権に関する国家公務員等研修会を開催している。平成26年度は,東京都港区において,次のとおり2回開催し合計549人が参加した。
(1) 平成26年9月17日
 「同和問題に今何が問われているか」の講演(講師・稲積謙次郎氏,参加者281人),人権啓発ビデオ「Imagination 想う つながる 一歩ふみだす」の上映
(2) 平成27年1月13日
 「多文化共生を考える~人身取引問題の視点から~」の講演(講師・吉田容子氏,参加者268人),啓発映像「人身取引を撲滅するために!」(企画:警察庁),人権啓発ビデオ「わたしたちの声 3人の物語~『全国中学生人権作文コンテスト』入賞作品をもとに~」から「リスペクトアザース」(企画:法務省ほか)の上映
 また,都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識やスキルを習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している(70頁参照)。平成26年度は,合計211人が受講した。
イ 人事院では,新規採用職員を対象とする「初任行政研修」等の全府省庁の職員を対象に実施している役職段階別研修等において,女性,高齢者,障害のある人等の人権課題をカリキュラムに取り入れて行った。また,若手・中堅職員を対象とする役職段階別研修等において,法務省が作成した啓発冊子「人権の擁護」を配布するとともに,その際,人権一般に対する認識を更に深めるよう指導を行った。
ウ 外務省では,新入職員等を対象とした各種研修の中で,人権問題や人権外交等に関する講義を,また,在外公館に勤務する予定の各府省庁職員を対象とした研修の中で,外交と人権に関する講義を行った。平成26年度は,343人が受講した。
 また,在外公館の領事担当官及び在外公館で領事を担当する予定の赴任予定者に対し,領事初任者研修,領事中堅研修の中でハーグ条約に関する講義及び人身取引問題に関する講義を行った。平成26年度は,78人が受講した。
エ 自治大学校では,地方公共団体の幹部となる地方公務員の政策形成能力等を総合的に養成することを目的に高度な研修を行っているが,平成26年度の人権教育については,2課程の課目の中で実施した。平成26年度は,112人が受講した。

2 国の他の機関との協力
 裁判官の研修を実施している司法研修所では,裁判官に対する研修の際に人権問題に関する各種講義を設定している。平成26年度は,338人が受講した。
 なお,上記研修を実施するに当たり,法務省等から講師を派遣するなどの協力を行った事例もある。

第4節 総合的かつ効果的な推進体制等

1 実施主体の強化及び周知度の向上
(1) 実施主体の強化
 人権啓発を効果的に推進するためには,人権啓発の実施主体の体制を質・量の両面にわたって強化していく必要があるが,特に,各地域に密着した効果的な人権啓発を行うためには,全国に約1万4,000人配置されている人権擁護委員の活用が有効かつ不可欠である。
 また,複雑・多様化する人権問題に適時適切に対応し,人権擁護委員活動の一層の活性化を図るためには人権擁護委員組織体の体制を充実・強化し,人権擁護委員組織体自らが自主的かつ積極的な人権啓発活動等を推進していく体制を整備していく必要がある。
 平成25年度から,人権擁護委員が法務局・地方法務局に常駐して,人権擁護委員及び人権擁護委員組織体の活動全般に係る企画・立案,組織体の運営,法務局・地方法務局はもとより地方公共団体や学校等関係機関との連携・連絡・調整等の企画担当業務を重点的に行うための常駐方式を導入し,人権擁護委員組織体の体制の充実・強化を図っている。

(2) 周知度の向上
 法務省では,法務省の人権擁護機関の周知を図るなどの目的のため,啓発冊子「人権の擁護」及び人権擁護委員の活動と役割を分かりやすく説明した冊子並びにリーフレット「人権擁護委員 あなたの街の相談パートナー」を作成し,人権週間,人権擁護委員の日を中心とする講演会等で配布するなど,周知活動の強化を図っている。
 また,特に小学校中学年以上の児童生徒を対象に,漫画を用いて日常生活における人権に関する問題及び人権を尊重することの重要性について分かりやすく説明することを目的として,啓発冊子「マンガで考える『人権』 みんなともだち」を作成し,人権尊重思想の周知・広報に活用した。
 さらに,法務省の人権擁護機関による調査救済制度等を周知するためのリーフレット「法務局による相談・救済制度のご案内」を配布し,調査救済制度等の周知を図った。
 加えて,各種啓発活動に伴う人権相談窓口の周知や首都圏及び関西圏の電車内における人権擁護機関の周知に関するトレインチャンネル(電車車内に設置される広報用ビジョン)の放送といった周知活動にも取り組んでいる。

2 実施主体間の連携
(1) 人権教育・啓発に関する中央省庁連絡協議会
 平成12年9月25日,関係省庁事務次官等申合せにより,各府省庁等の教育・啓発活動について情報を交換し,連絡するための場として,「人権教育・啓発中央省庁連絡協議会」を設置した。
 平成26年度は,幹事会を2回開催し,啓発活動等についての情報交換を行うとともに,人権教育・啓発推進法に基づく年次報告についての協議を行った。

(2) 人権啓発活動ネットワーク協議会
 法務省では,平成12年9月までに「人権啓発活動都道府県ネットワーク協議会」を都道府県単位(北海道については,法務局及び地方法務局の管轄区域単位)に設置し,さらに,平成20年3月までに市町村及び人権擁護委員協議会等を構成員とする「人権啓発活動地域ネットワーク協議会」を全国193か所に設置した。このネットワーク協議会を利用して,国,地方公共団体,人権擁護委員組織体及びその他の人権啓発の実施主体が,それぞれの役割に応じて相互に連携・協力することにより,各種の人権啓発活動の効率的かつ効果的な実施に努めている。

(3) 文部科学省と法務省の連携
 法務省の主催する全国中学生人権作文コンテスト(6頁参照)の優秀作品の作品集について,文部科学省,法務省・法務局等が連携して,教育委員会等を通じ,学校における活用を依頼した。また,子どもの人権SOSミニレター等,法務省における相談事業について,文部科学省,法務省・法務局等が連携して学校現場への周知を行った。

(4) 要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)
 児童虐待については,福祉関係者のみならず,医療,保健,教育,警察,司法,更にはNPO等の地域の関係機関や地域住民の幅広い協力体制の構築が不可欠であることから,全国99.7%の市町村で「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」(任意設置の児童虐待防止ネットワークを含む。)を設置しており,その機能強化に努めている。

(5) スポーツ組織との連携・協力
 法務省の人権擁護機関では,いじめの防止等の人権尊重思想を若年層に普及させるため,フェアプレーの精神等をモットーとし,青少年層や地域社会において世代を超えた大きな影響力を有するJリーグ加盟チームを始めとしたスポーツ組織と連携・協力している。特にJリーグとは,従来から,スタジアムにおける各種啓発活動や人権スポーツ教室への選手派遣等,ファン・サポーターへの人権啓発において連携を図ってきたところ,平成26年度は,Jリーグ所属51クラブが実施した人権研修に対し,全国の法務局・地方法務局の人権担当職員又は人権擁護委員を派遣するなどして,協力している。

3 担当者の育成
(1) 人権啓発指導者養成研修会
 法務省では,地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識やスキルを習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している。
 平成26年度は,平成26年10月1日から3日までの3日間(名古屋会場:参加者51人),同年10月22日から24日までの3日間(東京会場:61人),同年11月10日から12日までの3日間(京都会場:99人)の3回開催した。

(2) 人権擁護事務担当職員,人権擁護委員に対する研修
 法務省では,初等科,中等科等の一般研修はもとより,人権擁護事務に従事する際の人権擁護事務担当職員実務研修,調査救済事務担当者研修を始め,法務局・地方法務局の人権擁護課長,支局長等を対象に専門科研修等を実施し,人権擁護行政に携わる職員の養成をしている。
 人権擁護委員に対しては,新任委員に対する委嘱時研修を始め,初委嘱後6か月以内の委員を対象とした第一次研修,初委嘱後2年以内の委員を対象とした第二次研修,初めて再委嘱されて1年以内の委員を対象とした第三次研修を通じて,人権擁護委員として職務遂行に必要な知識及び技能の習得を図っている。また,同和問題講習会,男女共同参画問題研修も実施している。
 平成26年度は,人権擁護委員組織体における指導者を養成するため,人権擁護委員活動及び人権擁護委員組織体の運営において中心的役割を担う立場にある人権擁護委員100人に対し,その職務の遂行に必要なマネジメント能力の向上を図るとともに,高度な人権相談技法,人権啓発手法,人権侵犯事件の処理及び最新の人権課題に関する知識等を修得させることを目的とした人権擁護委員指導者養成研修を実施した。
 このほかにも,人権擁護委員が組織する都道府県人権擁護委員連合会や人権擁護委員協議会等が中心となり,自主的に各種研修会を企画し実施している。

(3) 公正採用選考人権啓発推進員に対する研修
 厚生労働省では,「公正採用選考人権啓発推進員」に対し,研修会を開催し,また,従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対し,「事業所における公正な採用選考システムの確立」について研修会を開催した。1行あき

4 人権教育啓発推進センターの充実
 人権教育啓発推進センター(9頁参照)は,民間団体としての特質を生かした人権教育・啓発活動を総合的に行うナショナルセンターとしての役割を果たすため,法務省や地方公共団体からの委託事業のほか,情報誌「アイユ」の刊行,ホームページによる情報提供,各種人権啓発パンフレットの作成,地方公共団体・企業等を対象とした研修の受託業務等センター独自の事業を行っている。同センター主催の研修として,平成26年度は,人権講座を10回開催したほか,セミナーを7回開催した。
 その内容は,次のとおりである。

(1) 人権講座
(1) 「ネットトラブルに巻き込まれる子どもたち」(講師:大久保 貴世(一般財団法人インターネット協会主幹研究員))
(2) 「国立ハンセン病資料館見学」(ハンセン病と人権)(語り部:佐川 修(国立ハンセン病資料館運営委員,多磨全生園入所者自治会会長))
(3) 「北の大地の先住民族 アイヌ民族の歴史と文化~未来を共に生きるために~」(講師:橋垣 秀則(福岡県嘉麻市嘉穂隣保館館長))
(4) 「児童養護施設を退所する子どもたちへの支援」(講師:林 恵子(認定NPO法人ブリッジフォースマイル代表))
(5) 「BOPビジネスと人権─社会的課題の解決と企業の成長戦略の一体化をめざして」(講師:水尾 順一(駿河台大学経済経営学部教授,日本経営倫理学会副会長))
(6) 「震災と人権~震災で親を亡くした子どもたちのこころ~」(講師:八木 俊介(あしなが育英会レインボーハウスチーフディレクター))
(7) 「命のメッセージ─収容所の中で子どもたちが描いた絵が今も私たちに語りかけるもの─」(講師:野村 路子(ノンフィクション作家))
(8) 「べてるの家~精神障がい者の自立~」(講師:向谷地 生良(ソーシャルワーカー,社会福祉法人浦河べてるの家理事,北海道医療大学看護福祉学部教授))
(9) 「フラットな社会をつくる~困難を抱える若者の社会参加~」(講師:津富 宏(静岡県立大学国際関係学部教授,NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡代表,「セカンドチャンス!」代表))
(10) 「性的マイノリティの人権課題と支援のあり方」(講師:日高 庸晴(宝塚大学看護学部教授))

(2) セミナー
 「参加・体験型人権教育の理論と実践方法の基礎習得」(人権教育総合マニュアル「コンパシート」を使って)(講師:福田 弘(山梨県立大学特任教授,筑波大学名誉教授))
  ※計7回開催

 また,同センターでは,地方公共団体,各種研究団体等で制作した書籍・図画・ビデオ等を収集・購入し,同センター内に設置した人権ライブラリーにおいて,これら書籍・図画・ビデオ等を広く一般の人々に貸し出すなどの提供を行っている。
 さらに,国及び地方公共団体等から提供された人権教育・啓発に関する各種情報・資料等を収集・整理し,これをデータ化して蓄積し,それを利用者が検索するという形で情報提供を行っている。これらのデータは,誰でも自由に利用することができ,人権ライブラリーのホームページ(http://www.jinken-library.jp/)を通じて必要な情報が取り出せるようになっている。
 平成26年度に収集・登録されたものは,出版物等1,572件,講演会1,923件,テレビ・ラジオ放送114件,意識・実態調査73件,その他の各種事業1,559件であった。

5 マスメディアの活用等
(1) テレビ,ラジオ等の活用
ア 女性の人権に関する広報
(ア) 女性に対する暴力をなくす運動に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で放送(平成26年11月15日,16日)
(イ) 全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成26年11月15日,16日)
イ 子どもの人権に関する広報
 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(平成26年条約第2号。ハーグ条約)の我が国の締結に関して,政府広報ラジオ番組「Weelyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成26年4月19日,20日)
ウ 高齢者・障害のある人の人権に関する広報
(ア) 全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間に関して,政府広報ラジオ番組「Weelyニッポン!!」で放送(平成26年8月30日,31日)
(イ) 障害者週間に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で放送(平成26年12月6日,7日)
(ウ) 障害のある人の人権問題に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成27年1月17日)
エ アイヌの人々の人権に関する広報
 「アイヌのための全国電話相談」に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成26年7月5日,6日)
オ 外国人の人権に関する広報
 外国人の人権に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成26年8月23日,24日)
カ HIV感染者等の人権に関する広報
 「HIV/エイズ~日本の現状~」に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で放送(平成26年11月29日,30日)
キ 第64回「社会を明るくする運動」に関する広報
 政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成26年6月28日,29日)
ク インターネットによる人権侵害事案に対する対応に関する広報
 インターネットによる人権侵害事案に対する対応に関して,政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で放送(平成26年8月16日,17日)
ケ 第66回人権週間に関する啓発広報
(ア) BSデジタル放送で,腹話術師のいっこく堂氏による人権啓発スポット映像「人権週間って何?」を放送(平成26年12月4日~10日)
(イ) 人権週間・相談窓口の周知に関して,JFN(東京FM系)38局ネット,TOKYO FMラジオ番組「やまだひさしのラジアンリミテッドF」で放送(平成26年12月6日)
コ 法務局休日相談所に関する広報
 政府広報ラジオ番組「Weeklyニッポン!!」で60秒お知らせを放送(平成26年9月27日,28日)

(2) 新聞,雑誌等の活用
ア 女性の人権に関する広報
 政府広報により,女性に対する暴力対策の突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年11月17日~23日)
イ 子どもの人権に関する広報
(ア) 政府広報により,全国一斉「子どもの人権110番」強化週間の突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年6月23日~29日)
(イ) 啓発広告を全国版の小学生新聞「毎日小学生新聞」及び同「朝日小学生新聞」に掲載(平成26年8月23日,25日)
(ウ) 啓発広告を毎日新聞「Newsがわかる」に掲載(平成26年9月13日)
(エ) 政府広報により,児童ポルノ根絶の突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年11月24日~30日)
ウ 高齢者・障害のある人の人権に関する広報
(ア) 政府広報により,「心の輪を広げる体験作文」と「障害者週間のポスター」に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」,点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成26年6月)
(イ) 政府広報により,全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」,点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成26年7月)
 同週間の突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年9月1日~7日)
(ウ) 政府広報により,障害者週間に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」,点字・大活字広報誌「ふれあいらしんばん」に収録・掲載(平成26年11月)
エ 「公正な採用選考システムの確立」に関する広報
 公正な採用選考に関する啓発広報を全国紙及び地方紙等に掲載(平成26年9月8日ほか)
オ アイヌの人々の人権に関する啓発広報
 政府広報により,アイヌのための全国電話相談に関する突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年7月8日~13日)
カ 外国人の人権に関する広報
(ア) ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動に関する広告を朝日新聞に掲載(平成26年11月24日)
(イ) 人権シンポジウム「外国人と人権~違いを認め,共に生きる~」の特集記事及び啓発広告を読売新聞に掲載(平成27年1月10日)
(ウ) 政府広報により,ヘイトスピーチに関する突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成27年3月16日~22日)
キ ハンセン病患者等の人権に関する啓発広報
 朝日小学生新聞(平成26年8月24日)及び中学生新聞「朝日中学生ウイークリー」(同日)にハンセン病に関する「親と子のシンポジウム」の記事等を掲載(45頁参照)し,朝日小学生新聞(平成27年2月21日)及び中高生新聞「朝日中高生新聞」(同月22日)に第14回ハンセン病問題に関するシンポジウムの記事等を掲載
ク 刑を終えて出所した人の人権に関する広報
 政府広報により,再犯防止対策に関する突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年5月12日~18日)
ケ 北朝鮮による日本人拉致問題に関する広報
(ア) 政府広報により,北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報を音声広報CD「明日への声」に収録(平成26年11月)
(イ) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広告を地方紙(52紙)に掲載(平成26年11月1日~12月14日)
 同週間に「ふるさとの風」コンサートに関する広告を全国紙等(70紙)に掲載(平成26年11月11日~12月16日)
(ウ) 政府広報により,北朝鮮人権侵害問題啓発週間における「ふるさとの風」コンサートの開催告知の突出し広告を全国の新聞(全国紙・ブロック紙・地方紙)に掲載(平成26年11月11日~16日)
コ 全国中学生人権作文コンテストに関する啓発広報
 全国中学生人権作文コンテストに関する記事及び啓発広告を地方紙(52紙)に掲載(平成26年11月1日~12月12日)サ 第66回人権週間に関する啓発広報
(ア) サッカー選手の澤穂希氏,女優のサヘルローズ氏と法務省人権擁護局長の鼎談記事及び同週間に関する啓発広告を朝日新聞に掲載(平成26年12月4日)
(イ) 同週間に関する啓発広告を「ビッグイシュー日本版」平成26年12月発売号に掲載
シ 東日本大震災に関する啓発広報
 人権シンポジウム「震災と人権~真の心の復興・生活再建を目指して~」の特集記事及び啓発広告を読売新聞に掲載(平成26年11月30日)

6 インターネットの活用
(1) 法務省では,法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/)において,各種人権関係情報を掲載するとともに,広く国民に対して,多種多様な人権関係情報を提供している。
 また,人権教育・啓発に関する情報に対して,多くの人々が容易に接し,活用することができるよう,人権啓発活動ネットワーク協議会(69頁参照)のホームページ(http://www.moj.go.jp/jinkennet/)を開設している。
 人権教育・啓発に関する基本計画については,法務省(http://www.moj.go.jp/JINKEN/JINKEN83/jinken83.html)及び文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/jinken/06082102/016.htm)に全文を掲載し,内容の周知を図っている。
 また,ホームページ以外でも,インターネットを活用した周知・啓発を行っている。
 平成26年度は,以下の取組を実施した。
ア インターネット広告等の実施
(ア) ハンセン病に関する正しい知識と理解を促すとともに,ハンセン病に関する「親と子のシンポジウム」を周知するバナー広告をYahoo! JAPAN等で実施(平成26年7月7日~26日)
(イ) いじめ等の子どもの人権問題対策に関するインターネット広告をYahoo! JAPAN及びGoogleで実施(平成26年8月25日~9月24日,平成27年1月5日~2月4日)
 いじめ等の子どもの人権問題に関するバナー広告をYahoo! JAPAN「Yahoo!きっず」等で実施(平成26年9月1日~10月1日)
(ウ) インターネット上における人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的としたバナー広告をYahoo! JAPAN等で実施(平成26年11月10日~12月4日)
(エ) アイヌの人々に対する国民の理解を促すバナー広告をYahoo! JAPAN等で実施(平成26年12月1日~7日)
(オ) 人権週間特設サイトを開設し,誘導広告(バナー広告)をYahoo! JAPAN「ディスプレイネットワーク」に掲載(平成26年12月1日~28日)
(カ) (オ)の特設ページにリンクしたバナー広告をYahoo! JAPAN「ネットワーク プライムディスプレイ」等で実施(平成26年12月1日~10日ほか)
(キ) 腹話術師のいっこく堂氏による人権啓発スポット映像「人権週間って何?」をYahoo! JAPAN「ネットワーク インストリームアド」に掲載(平成26年12月1日~10日)
(ク) ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動に関して,インターネットテキスト広告を朝日新聞デジタルに掲載したほか(平成26年12月1日~7日),インターネット広告をYahoo! JAPAN及びGoogleで実施(平成27年2月9日~3月8日)
(ケ) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間の周知を目的としたバナー広告をYahoo! JAPAN等で実施(平成26年12月8日~14日)
イ 人権啓発スポット映像の動画サイトにおける配信
 腹話術師のいっこく堂氏によるスポット映像全11編(人権一般,人権週間,東日本大震災,高齢者,障害のある人,女性,子ども,インターネット,外国人,ハンセン病,性的指向)をYouTube法務省チャンネルで配信している。
ウ 政府広報オンライン等の活用
(ア) 全国一斉「子どもの人権110番」強化週間の周知を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成26年6月23日~29日)
(イ) 全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間の周知を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成26年9月8日~14日)
(ウ) 再犯防止の周知を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成26年9月22日~28日)
(エ) 全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間の周知を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成26年11月17日~23日)
(オ) 政府インターネットテレビに拉致問題に関する動画及びCMを掲載(平成26年11月11日)したほか,拉致問題啓発のためのWebスポットCMをYouTube及びYahoo! JAPANで放映(同月24日~30日)
 北朝鮮人権侵害問題啓発週間の周知を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成26年12月5日~11日)
(カ) 人権に関する正しい理解を深めるとともに,相談先や救済手続を案内することを目的として,政府インターネットテレビに動画「その悩み 人権侵害かも 法務局へご相談下さい!」を掲載(平成26年11月20日)したほか,インターネットテキスト広告を実施(同年12月15日~21日)
(2) 政府広報では,上記(1)ウに加え,以下の広告・記事を掲載した。
ア 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の我が国の締結の周知を目的として,政府インターネットテレビに動画を掲載(平成26年4月3日)したほか,インターネットテキスト広告を実施(同月7日~13日)
イ 「ストップエイズ」の周知を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成26年6月2日~8日)したほか,政府広報オンライン「お役立ち情報」の記事を更新(同年11月27日)
 HIV・エイズに関する正しい知識の普及啓発を目的として,政府インターネットテレビに動画を掲載(平成26年12月11日)
ウ 人身取引の防止の周知を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成26年6月2日~8日)
エ 再犯防止の周知を目的として,政府広報オンライン「お役立ち情報」に記事を掲載(平成26年6月5日)し,政府インターネットテレビに動画を掲載(同月19日,平成27年1月9日)したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成26年6月23日~29日,平成27年1月19日~25日)
オ 児童虐待防止対策の推進を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成26年6月23日~29日)
カ 障害者週間に関する啓発を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載したほか,モバイル携帯端末サイト等による広告を実施(平成26年6月30日~7月6日)
キ 女性に対する暴力をなくす運動の周知を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載し,インターネットテキスト広告を実施(平成26年11月10日~16日)したほか,政府インターネットテレビに動画を掲載(同月20日)
ク 北朝鮮による日本人拉致問題の周知を目的として,政府インターネットテレビ動画を掲載(平成26年11月11日)したほか,インターネットテキスト広告を実施(同月24日~30日)
ケ 児童ポルノ根絶のための啓発を目的として,インターネットテキスト広告を実施(平成26年11月17日~23日)
コ DV・デートDVに関する相談窓口等の周知を目的として,政府広報オンライン「お役立ち情報」に記事を掲載(平成26年11月21日)したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成27年2月2日~8日)
サ 北朝鮮人権侵害問題啓発週間の周知を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載(平成26年11月~12月)したほか,インターネットテキスト広告を実施(同年12月8日~14日)
シ 裁判への「被害者参加制度」の周知等を目的として,政府広報オンライン「お役立ち情報」の記事を更新(平成26年5月15日)
 犯罪被害者週間の周知を目的として,政府広報オンライン「広報資料(月間・週間)」に記事を掲載したほか,インターネットテキスト広告を実施(平成27年2月2日~8日)
(3) 厚生労働省では,厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)等において,高齢者,障害のある人,HIV感染者,ハンセン病患者・元患者等に関する施策についての情報及び資料を掲載して,それぞれの施策の普及を図り,国民的理解を深めるよう努めている。
ア 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp/
イ エイズ予防情報ネットのホームページ(http://api-net.jfap.or.jp/
ウ ハンセン病に関する情報ページ(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/index.html
エ 世界エイズデーに向けたキャンペーンイベント(平成26年11月16日,29日)の模様をインターネットを通じて配信(http://redribbonlive.net/
(4) 外務省では,外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html)において,世界人権宣言,主要人権条約,人権関連文書等に関する情報を提供している。
(5) 内閣官房では,北朝鮮による拉致問題ホームページ(http://www.rachi.go.jp/)において,広く国民に対して,拉致問題の解決に向けた政府の取組に関する情報を提供している。また,12月の北朝鮮人権侵害問題啓発週間に「ふるさとの風」コンサートを開催した際には,会場の模様をインターネットでライブ配信するとともに,同ライブ配信の映像・音声を活用したパブリックビューイングを全国約16か所の会場で実施し,広く国民に対して視聴の機会を提供した。

7 交通機関の活用
(1) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間に関する啓発広報
ア 首都圏JR各線のトレインチャンネル(電車車内に設置された広報用ビジョン)(平成26年11月24日~30日)及びタクシーチャンネル(タクシー車内に設置された広報用ビジョン,都内2,500台)(同月24日~12月7日)で拉致問題啓発スポットCMを放映
イ 全国の法務局の本局所在地の主要駅を路線とするJR及び大都市圏の私鉄・地下鉄等の車内に啓発週間を周知する中吊り広告を掲出(平成26年12月1日~15日)

(2) ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動
 首都圏及び関西圏等の主要なJRの駅で「ヘイトスピーチ,許さない。」をメインコピーとしたスポット映像を活用したデジタルサイネージ(電子広告)及びポスター掲出を実施(平成27年3月9日~22日)

(3) 地方公共団体へ委託して行う啓発活動(地域人権啓発活動活性化事業)
 電車やバスの車内広告等,地域に密着した多種多様な人権啓発活動を実施

(4) 法務省の人権擁護機関による調査救済制度等に関する広報
 首都圏及び関西圏の主要駅を路線とするJR及び首都圏の一部地下鉄のトレインチャンネル(電車車内に設置された広報用ビジョン)に法務省の人権擁護機関による調査救済制度等を周知するためのスポット映像を放映(平成26年9月8日~平成27年3月8日)

8 民間のアイディアの活用
 法務省では,人権教育啓発推進センター(9頁参照)に対し,啓発活動の推進に効果的な人権啓発教材の作成,人権啓発ビデオの制作,人権シンポジウム等の開催等各種の人権啓発活動事業を委託するとともに,ポスター等の作成に当たっては,民間の制作会社の意見を取り入れるなどしている。
 また,地方公共団体等を対象とする人権啓発指導者養成研修会や法務局・地方法務局の人権担当者に対する研修等において,民間から各人権課題に関する専門家等を講師に招き,啓発活動に関する助言等を行っている。

9 国民の積極的参加意識の醸成
(1) 全国中学生人権作文コンテスト
 法務省の人権擁護機関では,次代を担う中学生が,人権問題についての作文を書くことによって,豊かな人権感覚を身に付けることを目的として,全国中学生人権作文コンテストを実施している(6頁参照)。
 多くの中学生が,人権について理解を深め,豊かな人権感覚を身に付けるよい機会となっている。

(2) 「世界エイズデー」ポスターコンクールの実施
 厚生労働省では,HIV/AIDSの正しい知識の普及啓発を目的として「『世界エイズデー』ポスターコンクール」を実施した。小学生の部38点,中学生の部262点,高校生の部260点,一般の部179点の応募があった。
 最優秀作品を世界エイズデーキャンペーンポスターのデザインに採用し,全国各地で掲示することにより,HIV・エイズについて理解を深めてもらうよい機会となっている。

(3) 大学における北朝鮮による拉致問題セミナーの開催
 拉致問題対策本部では,新潟大学と共催し,アニメ「めぐみ」や政府インターネットテレビ動画「必ず取り戻す!北朝鮮による日本人拉致問題の解決へ」の視聴により,留学生を含む大学生に拉致問題について理解を深めてもらうとともに,大学生によるグループ討議や意見交換を行った。

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