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トップページ > 政策・施策 > 国民の基本的な権利の実現 > 人権擁護(人権相談,調査救済,人権啓発等) > 第2章 平成19年度に講じた人権教育・啓発に関する施策

第2章 平成19年度に講じた人権教育・啓発に関する施策

第1節 人権一般の普遍的な視点からの取組


1 人権教育

  人権教育とは,「人権尊重の精神の涵(かん)養を目的とする教育活動」であり,生涯学習の視点に立って,幼児期からの発達段階を踏まえ,地域の実情等に応じて,学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ,実施していくこととなる。

(1)学校教育

○ 文部科学省では,現行学習指導要領を実施していく上で,「豊かな心」の育成や「確かな学力」の向上を大きな柱として施策を推進してきている。 
  「豊かな心」の育成に関しては,道徳について,善悪の判断などの内容を充実するとともに,体験活動等をいかすなどの充実を図っており,また,子どもたちが身に付ける道徳の内容を分かりやすく表した「心のノート」をすべての小・中学生に配布している。 また,豊かな人間性や社会性をはぐくむ観点から,「豊かな体験活動推進事業」や,学校教育における人権教育を推進するための「人権教育総合推進地域事業」,「人権教育研究指定校事業」,「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」等を実施している。
  一方,子どもたちの人権尊重という観点からは,子どもたちが安心して学べる環境づくりが重要であり,いじめ,暴力行為,不登校など,児童生徒の問題行動等は,引き続き教育上の大きな課題である。文部科学省では,子どもたちが抱える悩みや不安を受け止めることができるよう24時間電話相談窓口の整備や,スクールカウンセラーの配置など教育相談体制の充実を図っている。また,問題行動を起こす児童生徒に対しては,十分な教育的配慮の下,出席停止や懲戒も含めた適切な措置を講じることにより,毅然とした対応の充実を図るよう指導を行ったほか,早期発見・早期対応,関係機関との連携などの体制を整備して,個々の児童生徒を支援するためのモデル的な取組を推進している。

(2)社会教育

○ 社会教育においては,生涯にわたる学習活動を通じて,人権尊重の精神を基本に置いた様々な事業が展開されている。
  また,公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座の開設や世代の異なる人たちや障害のある人,外国人等との交流等の活動など,人権に関する多様な学習機会が提供されている。
  さらに,社会教育における人権教育の指導者として中核的な役割を担う社会教育主事の養成講習や現職の社会教育主事等を対象にした様々な研修により,指導者の育成及び資質の向上が図られている。

2 人権啓発

  人権啓発とは,「国民の間に人権尊重の理念を普及させ,及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」を意味し,「国民が,その発達段階に応じ,人権尊重の理念に対する理解を深め,これを体得することができるよう」にすることを旨としている。

(1)人権啓発の実施主体

  人権擁護事務として人権啓発を担当する国の機関としては,法務省の人権擁護機関があり,また,法務省以外の関係各府省庁においても,その所掌事務との関連で,人権にかかわる各種の啓発活動を行っているほか,地方公共団体や公益法人,民間団体,企業等においても,人権にかかわる様々な活動が展開されている。

(2)法務省の人権擁護機関が行う啓発活動

○ 平成19年度啓発活動重点目標

  その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘案して,年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め,共通の目標の下に組織を挙げて啓発活動を展開している。
  平成19年度の啓発活動重点目標は,「育てよう 一人一人の 人権意識」,サブテーマを「-思いやりの心・かけがえのない命を大切に-」と定め,国民一人一人が主体的に豊かな人権意識を育て,生命の尊さ・大切さや,他人との共生・共感の大切さを心から実感できるような啓発活動を展開した。

○ 第59回人権週間

  毎年12月4日から12月10日までを「人権週間」と定め,関係諸機関及び諸団体の協力の下に,広く国民に人権尊重思想の高揚を呼びかける大規模な啓発活動を展開している。
  平成19年度の第59回人権週間においては,関係機関の協力の下,啓発活動重点目標をはじめ,「女性の人権を守ろう」,「子どもの人権を守ろう」,「高齢者を大切にする心を育てよう」,「HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見をなくそう」などの強調事項を掲げ,全国各地において,講演会,シンポジウム,座談会等の開催,人権相談所の開設などを行ったほか,テレビ・ラジオなどのマスメディアを活用した集中的な啓発活動を行った。

○ 全国中学生人権作文コンテスト

  次代を担う中学生が,人権問題についての作文を書くことによって,豊かな人権感覚を身に付けることを目的とする「全国中学生人権作文コンテスト」を実施しており,平成19年度で27回目を迎えている。
  平成19年度は,7,235校から,日常の家庭生活,学校生活等の中で得た体験を基に,基本的人権を守ることの重要性についての考えをまとめた84万1,558編という多数の作文の応募があった。多くの中学生に,人権について理解を深め,豊かな人権感覚を身に付けてもらうよい機会となっている。 

○ 人権の花運動

  人権の花運動は,花の種子,球根などを,児童が協力し合って育てることを通じて,協力,感謝することの大切さを生きた教育として学び,生命の尊さを実感する中で,人権尊重思想をはぐくみ情操をより豊かなものにすることを目的とした活動であり,主に小学生を対象とした啓発活動として実施している。
  平成19年度は,小学校2,686校のほか,417の中学校・幼稚園・保育所等広範囲に行われた。

○ 人権啓発フェスティバル

  人権啓発フェスティバルは,シンポジウム,啓発資料展,啓発映画上映,コンサートなどの各種イベントを同じ時間,空間を活用して一体的,総合的に行うことにより,より多くの人々が参加できる総合的な啓発事業として実施している。
  平成19年度は,フェスティバルの統一テーマを「育てよう 一人一人の 人権意識-思いやりの心・かけがえのない命を大切に-」と定め,福島県,和歌山県で開催し,両会場合わせて10万4,500人を超える多数の参加者があった。

(3)公益法人,地方公共団体へ委託して行う啓発活動

ア(財)人権教育啓発推進センターが行う啓発活動(人権啓発活動中央委託事業)

○ (財)人権教育啓発推進センター

(財)人権教育啓発推進センター(以下「人権センター」という。)は,人権に関する総合的な教育・啓発及び広報を行うとともに,人権教育・啓発についての調査,研究等を行っている。

○ 平成19年度に人権センターへ委託した啓発活動

  • 人権啓発教材の作成,人権啓発ビデオの制作
  • 人権啓発フェスティバルにおけるシンポジウム等の開催
  • 人権啓発指導者養成研修会の実施
  • 新聞による広報
  • データベース運営・活用
  • 人権ライブラリーの運営等

イ 地方公共団体が行う啓発活動(人権啓発活動地方委託事業)

○ 人権啓発活動地方委託事業

  都道府県及び政令指定都市を委託先とし,あらゆる人権問題を視野に入れた幅広い啓発活動の実施を委託する事業である。

○ 平成19年度に行った委託事業

  講演会・研修会,資料作成,放送番組,新聞広告,地域人権啓発活動活性化事業の実施等

○ 地域人権啓発活動活性化事業

  法務省の人権擁護機関,都道府県,市区町村,公益法人等,人権啓発活動を実施する主体間の横断的なネットワークである「人権啓発活動ネットワーク協議会」との連携の下に実施される人権啓発活動地方委託事業を特に「地域人権啓発活動活性化事業」と称し,住民に親しみやすくかつ参加しやすい要素を取り入れつつ,地域に密着した多様な人権啓発活動を実施することとしている。

(4)国際協力

○ 外務省では,平成19年8月,東京において,人権・人道分野の国際法に関する一般的な知識の普及,理解の増進等,人権意識の向上を図る目的で,国際法模擬裁判「2007年アジア・カップ」を開催した。

第2節 人権課題に対する取組

1 女性

【平成19年度に講じた施策】

○ 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

  「男女共同参画基本計画(第2次)」(平成17年12月閣議決定)においては,政策・方針決定過程への女性の参画の拡大は重点分野の一つとして挙げられ,「2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が,少なくとも30%程度になるよう期待する」との目標及びその定期的なフォローアップを行う旨が明記されている。このため,平成19年2月に決定された男女共同参画会議の意見に基づき,フォローアップを実施した。
  国の審議会等委員への女性の参画の促進については,平成18年4月に男女共同参画推進本部が決定した目標の達成を目指している。平成19年9月30日現在の調査では,国の審議会等における女性委員の割合は32.3%,女性の専門委員等の割合は13.9%となっている。
  女性国家公務員の採用・登用等の促進については,男女共同参画基本計画(第2次)及び人事院が策定した「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき,各府省庁が「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し,取組を進めている。

○ 男女共同参画の視点に立った様々な社会制度の見直し,広報・啓発活動の推進

・ 内閣府では,男女共同参画に関する施策についての苦情の処理や人権が侵害された場合における被害者の救済に関する取組を推進するため,監視・影響調査専門調査会において,国及び都道府県,政令指定都市における苦情処理状況の調査・検討を行った。また,苦情解決に当たっての視点・方法論,苦情事例等を紹介する「苦情処理ガイドブック」を改訂し,関係機関等に配布し,行政相談委員及び人権擁護委員並びに都道府県担当者等を対象とする研修を実施した。
  そのほか,我が国の男女共同参画に関する取組を広く知らせるため,男女共同参画の総合情報誌「共同参画21」,「男女共同参画推進本部ニュース」の発行,ホームページ及び情報メール等,充実した情報を迅速に提供する体制の整備など,多様な媒体を通じた広報・啓発活動を推進している。
  さらに,多くの女性が夢と希望を持って様々な分野でチャレンジできるよう内閣府ホームページ「チャレンジ・サイト」において,起業,キャリアアップなど様々な分野で活躍している女性の事例を紹介するとともに,平成17年度から,女性の進出割合の低い理工系分野への女子高校生等の進路選択を支援するため,「チャレンジ・キャンペーンサイト」を開設している。

・ 男女共同参画推進本部では,毎年6月23日から29日までの1週間を「男女共同参画週間」とし,平成19年度は,「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」の開催や,「男女共同参画社会づくり功労者表彰」及び「女性のチャレンジ賞」等の表彰を実施したほか,ポスター等の配布,政府広報を活用した広報・啓発活動を行った。

・ 厚生労働省では,「男女雇用機会均等月間」等の機会をとらえ,女性労働者の能力発揮を促進するための企業の積極的な取組(ポジティブ・アクション)の推進を図るため,啓発活動を実施した。
  また,「女性と仕事の未来館」において,女性の能力発揮のためのセミナーや相談,働く女性に関する情報の提供等各種支援事業を実施した。

○ 法令・条約等の周知

・ 内閣府では,国内における男女共同参画社会の実現に向けた取組を行うに当たって,報告会,刊行物やホームページ等を通じ,男女共同参画に関連の深い各種の条約や,国際会議における議論等,女性の地位向上のための国際的規範や基準,取組の指針等の広報に努めている。平成19年度は,平成19年12月に開催された「第2回東アジア男女共同参画担当大臣会合」や平成20年2月から3月に開催された「第52回国連婦人の地位委員会」に係る会議の概要等について,ホームページ掲載等により周知を図っている。
  また,世界的な視野に立った男女共同参画社会の促進を図るため,我が国と共通の課題を持つ諸外国の有識者を招へいし,シンポジウムを開催した。

・ 外務省では,女子差別撤廃条約関連文書や女性の地位向上に関する会議等の関連文書を,外務省のホームページに掲載し,広くその内容の周知に努めている。

○ 女性に対する偏見・差別意識解消を目指した啓発活動

  法務省の人権擁護機関では,女性の人権擁護を訴えるため,「女性の人権を守ろう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を中心に年間を通じて全国各地で,女性の人権問題をテーマとした講演会や座談会の開催,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を行っている。
  また,平成19年4月11日など計8回,CS放送スカイパーフェクトTV!にて,男女共同参画について子どもの視点から描いた「翔太のあした」を放送した。

○ 男女平等教育の推進,女性の生涯学習機会の充実

  文部科学省では,男女共同参画社会の形成のため,学校教育において,児童生徒の発達段階に応じて,社会科,家庭科,道徳,特別活動等を通じて,男女の平等や男女相互の理解と協力の重要性について指導を行っている。
  また,社会教育において,女性のライフプランニングに資する学習の在り方などについて社会教育施設等で活用可能な学習プログラムの開発に向けた調査を行うとともに,「再チャレンジのための学習支援システムの構築」事業において,出産・育児後の女性を対象とした学習機会の提供等を実施した。
  そのほか,「人権教育推進のための調査研究事業」により女性の人権をテーマとする講演会や女性に関する学級・講座等を開設する地方公共団体を積極的に支援しており,平成19年度においては,15都府県と4団体でこの調査事業を実施し,29カ所でこの事業を活用して女性の人権に関する事業が実施された。

○ 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のための啓発等

  労働者が性別により差別されることなく,かつ,母性を尊重されつつ,その能力を十分発揮することができる雇用環境の整備のため,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律等の改正が行われ,平成19年4月から施行されている。厚生労働省では,改正男女雇用機会均等法の履行確保を図るため,企業の雇用管理の実態を把握するとともに,指導を積極的に実施した。
  また,男女均等取扱いに関する労働者と事業主との間の紛争について,都道府県労働局長の助言,指導,勧告及び機会均等調停会議の調停により,解決の援助を行ったほか,実質的な男女均等を確保するために,男女労働者間で格差が大きい企業に対して,女性の職域の拡大,管理職への登用等に向け,積極的取組を行うよう促した。
  さらに,同業他社と比較したその企業の女性の活躍状況や取組内容についての診断を受けられるベンチマーク事業を実施した。
  加えて,男女雇用機会均等法では,職場におけるセクシュアル・ハラスメント対策について,事業主に対して雇用管理上の措置義務を課していることから,実効あるセクシュアル・ハラスメント対策を講じるよう徹底を図るとともに,必要な措置を講じていない企業に対しては指導を行った。

○ 農山漁村の女性の地位向上・方針決定への参画促進のための啓発   等

  農林水産省では,3月10日を「農山漁村女性の日」とし,全国記念行事等を実施した。

○ 女性に対する暴力等への適切な取組,女性の人権問題に関する適切な対応及び啓発の推進

・ 検察当局その他の関係機関では,刑法,ストーカー規制法等の処罰規定の的確な運用に努めている。

・ 警察では,女性警察職員が相談や被害の届出を受理する相談窓口として,女性相談交番や鉄道警察隊における女性被害相談所の整備を図ったほか,被害者からの事情聴取に直接携わる警察職員について,被害者の心情や精神状態に十分配慮した対応を確保するため,警察学校,職場等における各種事案の特性に応じた教育,訓練を実施した。
  また,地方検察庁,弁護士会,医師会,臨床心理士会,知事部局や市の担当部,県や市の相談機関等による「被害者支援連絡協議会」を全都道府県に設置し,この協議会の下,各機関・団体等の緊密な連携と協力により,被害者のニーズに対応した支援活動を推進した。
  そのほか,警察では,各都道府県警察本部に「性犯罪捜査指導官」及び「性犯罪捜査指導係」を設置し,性犯罪捜査員等として女性警察職員の指定を進めている。また,「性犯罪110番」等の相談専用電話や相談室の設置,証拠採取に必要な用具や性犯罪被害者の衣類を預かる際の着替え等をまとめた「性犯罪捜査証拠採取セット」の整備等の施策を推進している。
  加えて,ストーカー規制法に基づく「援助」を的確に実施するとともに,ストーカー規制法その他の刑罰法令抵触しない事案についても,防犯指導,関係機関の教示や必要に応じた相手方に対する指導警告など,被害者の立場に立った対応に努めている。

○ 配偶者からの暴力への対策の推進

・ 配偶者暴力防止法等に基づき,関係府省,地方公共団体等は,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を積極的に推進している。

・ 内閣府では,全国の配偶者暴力相談支援センター等の相談員や相談員を管理する立場にある職員を対象に,相談業務の質の向上を図ることを目的とした「配偶者からの暴力被害者支援セミナー」を開催した。
  また,全国の配偶者暴力相談支援センター等に,配偶者からの暴力に関する専門的な知識や経験を有する者を派遣して助言や指導を行い,相談業務の充実を支援した。

・ 警察では,配偶者暴力防止法に基づき裁判所から保護命令を発した旨の通知を受けたときは,配偶者暴力相談支援センターと連携し,被害者の安全の確保を図るとともに,被害者に防犯上の留意事項を教示するなど,事案に応じて必要な措置を講じるとともに,保護命令違反を認めた場合には厳正に対処している。
  また,「配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための警察本部長等による援助に関する規則」に基づき,被害者から援助の申出を受けた場合には,必要な援助を実施している。

・ 厚生労働省では,婦人相談所等において,被害者の心のケア,関係機関との調整を行うためのネットワークの整備等を実施してきたところであるが,平成19年度においては,新たに婦人相談所一時保護所に被害者に同伴する児童の対応等を行う指導員を配置したり,婦人保護施設に配置されている心理療法担当職員の常勤化を図ることにより,被害者の保護,自立支援等,援助体制の一層の充実を図っている。

○ 女性の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

  法務省の人権擁護機関では,専用相談電話「女性の人権ホットライン」を全国の法務局・地方法務局の本局に設置して相談体制の一層の強化を図っている。

○ 女性の人権擁護にかかわる国際協力

  我が国は,国連婦人開発基金(UNIFEM)に対し,平成19年度においては,約7,786万円を拠出したほか,国連開発計画(UNDP)の下の「パートナーシップ基金」に約2億5,569万5,000円を拠出し,国際的取組に協力している。

2 子ども

【平成19年度に講じた施策】

○ 子どもが人権享有主体として最大限尊重されるような社会の実現を目指した啓発活動

  法務省の人権擁護機関では,21世紀の社会を担う子どもたちの人権を守るため,「人権の花運動」における学校訪問や総合的な学習の時間等を利用し,子どもたちが「いじめ」について考える機会をつくる啓発活動として,「人権教室」や「人権出前講座」を実施した。

○ 学校教育及び社会教育における人権教育の推進

  文部科学省では,学校,家庭,地域社会が一体となって教育上の総合的な取組を推進する「人権教育総合推進地域事業」,学校における人権教育について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究指定校事業」,人権教育に関する事業等の実践・成果を踏まえ,学校における人権教育に関する指導方法の在り方等について調査研究を行う「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」等を実施し,人権教育の推進に努めている。
  「人権教育に関する指導方法等に関する調査研究」においては,平成16年6月に「人権教育の指導方法等の在り方について(第1次とりまとめ)」を,平成18年1月に「同(第2次とりまとめ)」を公表し,さらに,第2次とりまとめで示した指導の工夫・改善方法等について,より一層の理解に資するよう掲載事例等の充実を図り,平成20年3月に「同(第3次とりまとめ)」をまとめた。
  さらに,平成16年度から,社会教育における人権教育を一層推進するため,人権に関する学習機会の充実方策等についての実践的な調査研究を行うとともに,その成果の普及を図る「人権教育推進のための調査研究事業」を実施している。

○ 道徳教育の推進

  文部科学省では,道徳教育の一層の充実を図るため,子どもたちが身に付ける道徳の内容を分かりやすく表し,道徳的価値について,自ら考えるきっかけとし,理解を深めていくことができる教材として「心のノート」を作成し,すべての小・中学生に配布するとともに,各学校において,「心のノート」が積極的に活用されるよう,教師用指導の手引きを教職員に配布している。
  また,幼児期における教育は,人間形成の基礎を培う重要な役割を果たすことから,幼稚園が,道徳性の芽生えを培うことを目標の一つとして掲げ,その充実を図っていくための実践的な研究を進めている。

○ いじめ・暴力行為・不登校等の問題への対応

  いじめにより児童生徒が自らその命を絶つという痛ましい事件が相次いで発生したことをきっかけに,いじめ問題が大きな社会問題となり,文部科学省では,平成18年10月に,いじめは決して許されないが,どの子どもにもどの学校でも起こり得るものであること,いじめが生じた際には問題を隠さず,学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していくべきことなどについて通知を発出し,その徹底を求めた。
  また,いじめに関する取組事例集の作成・配布や生徒指導上の諸問題に関する調査の見直しを行うとともに,平成19年2月には,問題行動に対しては,懲戒・出席停止を含め,毅然とした対応をとるよう通知を発出した。
  平成18年11月以降,子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議を設置して審議等を進めてきたが,インターネットや携帯電話を利用した新しい形のいじめが大きな問題となったことを受け,平成19年9月からは,「ネット上のいじめ」の防止等に向けて有効な取組の検討を行い,平成19年12月には,保護者向けの喫緊の課題の提案を行った。
  さらに,児童生徒のいじめなどの問題に適切に対処するため,「心の専門家」である臨床心理士などをスクールカウンセラーとして配置するとともに,児童が悩み等を気軽に相談できる相手として,公立小学校に教職経験者や民生・児童委員など地域の人材を「子どもと親の相談員」として配置し,平成17年度からは,小学校における生徒指導体制の充実と関係機関との連携強化を図るため「生徒指導推進協力員」を配置している。
  暴力行為や不登校等については,「問題を抱える子ども等の自立支援事業」を実施し,問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応など児童生徒の支援を行うため,サポートチームなど関係機関とのネットワークを活用した取組や教育支援センターを活用した取組などを支援している。また,「不登校への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業」において,不登校児童生徒に多様な支援を行うため,NPO等の学校外の機関等に対して,不登校児童生徒の実態に応じた効果的な活動プログラムの開発などを委託している。さらに,児童生徒の問題行動等に対する地域における関係機関相互の緊密な行動連携の円滑な実施を図るため,関係機関等の関係者が集まり,情報交換や意見交換等を行っている。

○ 家庭教育に対する支援の充実

  文部科学省では,子育てのヒント集である「家庭教育手帳」を作成・配布するとともに,行政と子育て支援団体等が連携して子育て講座の開設等を行う「家庭教育支援総合推進事業」や,携帯電話やパソコンを活用した子育て相談・情報提供等を行う「ITを活用した次世代型家庭教育支援手法開発事業」を実施した。また,子どもの望ましい基本的生活習慣を育成し,生活リズムを向上させる「早寝早起き朝ごはん」国民運動の全国各地域における取組が図られるよう,普及啓発や先進的な実践活動等の効果について調査研究を行った。

○ 児童虐待等子どもの健全育成上重大な問題に対する取組

・ 児童虐待への対応については,平成16年に児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ,制度的な対応について充実が図られてきたところである。しかしながら,子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件が跡を絶たず,社会全体で早急に解決すべき重要な課題となっていたところ,平成16年の改正児童虐待防止法附則の見直し規定を踏まえ,平成19年に再度の法改正が行われた。

・ 検察当局その他の関係機関では,刑法の処罰規定の的確な運用に努めている。

・ 厚生労働省では,児童虐待の問題について,発生予防に関して「育児支援家庭訪問事業」の推進,早期発見・早期対応に関しては,市町村における要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)の設置促進及び機能強化を図るとともに,保護・自立支援に関しては家庭支援専門相談員の配置,里親への委託を推進するための支援体制の充実,児童養護施設等を退所する子どもが安心して就職やアパート等の賃貸ができるよう,身元保証人を確保するための「身元保証人確保対策事業」を実施している。

・ 文部科学省では,都道府県等を通じて,学校教育関係者や社会教育関係者に対して,児童虐待の防止に向けた取組の推進に関する通知を発出するとともに,各種会議等を通じて早期発見努力義務及び通告義務等について周知の徹底を図っている。
  また,国内・諸外国の先進的取組等を新たに収集・分析することなどにより,各学校・教育委員会における児童虐待防止に向けた取組の充実を図る「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を平成17年度から実施している。

・ 警察では,児童相談所等の関係機関との適切な連携と役割分担の下で,少年サポートセンターを中心に,児童虐待の被害を受けた児童に対する支援体制の充実を図っており,児童に対するカウンセリング,保護者に対する助言・指導等の支援を実施している。

・ 児童虐待による死亡事例等の検証は,事件の再発防止と対策を構築する上での課題を抽出するために重要な意義を持つことから,平成16年10月に社会保障審議会児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」を設置して,全国の事例を専門的かつ多角的な角度から分析・検証を行うこととし,平成19年6月にはその検証結果の第3次報告が取りまとめられた。

・ 関係機関等の幅広い協力体制を構築するため,国レベルにおいては,関係する府省庁及び関係団体等から構成する「児童虐待防止対策協議会」を設置しているほか,児童福祉法の改正により,地方公共団体に要保護児童の状況把握や情報交換のための要保護児童対策地域協議会の設置を努力義務化する規定が盛り込まれた。
  このほか,「子どもの虹情報研修センター」では,児童相談所等関係機関の職員を対象とした研修,専門情報の収集・提供などを行っている。

○ 少年に対する犯罪の取締り,被害少年への適切な対応

・ 少年の福祉を害する犯罪については,児童買春・児童ポルノ禁止法とともに刑法,児童福祉法,児童虐待防止法等を的確に運用している。

・ 警察では,被害少年の保護について,少年補導職員等の専門的知識を有する者が配置されている少年サポートセンターが中心となって個々の被害少年の特性を踏まえたカウンセリングや保護者に対する助言・指導等のきめ細かな継続的支援を行っている。
  また,第一線における被害者支援を充実したものとするため「指定被害者支援要員制度」を各都道府県の実情に応じて運用しており,被害少年に対しても本制度による取扱いをしている。

○ 子どもの人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

  法務省の人権擁護機関では,フリーダイヤルの専用相談電話「子どもの人権110番」を設置し,子どもが相談しやすい体制をとっている。とりわけ,平成19年9月17日から23日までを全国一斉「子どもの人権110番」強化週間とし,相談時間を拡大して子どもや保護者等から多くの相談に応じた。また,法務省のホームページ上に子ども用のインターネットによる人権相談受付窓口を設けたほか,「子どもの人権SOSミニレター」を全国の小・中学生に配布するなど,子どもたちがより相談しやすい体制を整備している。これらの相談については,子どもの人権にかかわる問題を専門に扱う「子どもの人権専門委員」をはじめとする人権擁護委員が中心となり応じている。

○ 学校における危機管理と安全対策

  文部科学省では,平成14年度から,学校安全の充実に総合的に取り組む「子ども安心プロジェクト」を実施している。
  また,政府全体としても,子どもの安全対策を推進するために,「犯罪から子どもを守るための対策」(平成17年12月(平成18年12月及び平成19年12月改訂))を取りまとめたほか,子どもを非行や犯罪被害から守るための対策に関する関係省庁プロジェクトチームにおいて「子ども安全・安心加速化プラン」(平成18年6月)を取りまとめ,政府全体として子どもの安全確保に取り組んでいる。
  これらも踏まえ,学校やスクールガード(学校安全ボランティア)に対して,巡回・警備のポイントや改善すべき点等を指導するスクールガード・リーダーの全国展開を図るとともに,子どもが自ら危険を予測し危険を回避する能力を身に付けることができるよう防犯教室の開催支援などを行った。

○ 教職員の資質向上等 

  教職員の資質能力については,養成・採用・研修の各段階を通じてその向上を図っている。各都道府県教育委員会等で実施している教諭等に対する採用後1年間の初任者研修や在職期間が10年に達した者に対する10年経験者研修においては,人権教育に関する研修を扱うなど,人権尊重意識を高めるための取組が行われている。

3 高齢者
 
【平成19年度に講じた施策】

○ 高齢者福祉に関する普及・啓発

  厚生労働省では,平成19年9月15日から21日までの7日間を「老人の日・老人週間」と定め「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに,老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」という趣旨にふさわしい行事が実施されるよう,関係団体等に対する支援,協力,奨励等を都道府県にお願いするとともに,「みんなで築こう活力ある長寿社会」を標語とする「平成19年『老人の日・老人週間』キャンペーン要綱」を内閣府のほか,全国社会福祉協議会など9団体とともに定め,その取組を支援した。

○ 学校教育における高齢者・福祉に関する教育の推進

  文部科学省では,学校教育において,高齢者との交流やボランティア活動等を推進し,高齢者等への理解や福祉の重要性について指導している。

○ 高齢者の学習機会の促進,世代間交流の機会の充実

・ 高齢社会対策大綱においては,生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価される生涯学習社会の形成を目指すこととしている。

・ 文部科学省では,「人権教育推進のための調査研究事業」により,高齢者を対象とした学級・講座等を開設する地方公共団体を支援しており,平成19年度においては,15府県と4団体でこの事業実施し,21カ所でこの事業を活用して高齢者の人権に関する事業が実施された。

・ 内閣府では,高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため,沖縄県において「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」を開催するなどの事業を実施した。

○ ボランティア活動など,高齢者の社会参加の促進

・ 内閣府では,「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」等を通じて,社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施し,また,平成19年7月には,高齢社会の構成員それぞれが果たすべき役割等の追求を目的として高齢社会研究セミナーを開催した。

・ 農林水産省では,高齢化が進行している農山漁村において,高齢者がその知識と技能をいかしつつ,農業生産や地域社会等において生きがいを持って活動できるよう環境づくりを進めるとともに,安心して住み続けられるよう支援している。

○ 高齢者の雇用・多様な就業機会確保のための啓発活動

  平成16年12月,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律が施行され,労働者の募集・採用に当たって,事業主が65歳未満の上限年齢を設定する場合に,その理由の明示が義務付けられた。厚生労働省では,官民の職業紹介機関の窓口の活用,地域の経済団体への働きかけ等により,その積極的な周知・広報を図り理解の徹底に努めた。

○ 高齢者虐待等に対する取組

  高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律が平成18年4月1日から施行され,同法の規定に基づき,住民に最も身近な市町村等において,家庭内及び施設等で虐待を受けた高齢者に対する保護,養護者に対する支援のための措置等が講じられている。

4 障害のある人

【平成19年度に講じた施策】

○ 共生社会を実現するための啓発・広報活動

  障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し,支え合う「共生社会」の理念の普及を図るため,毎年12月3日から9日までの「障害者週間」を中心に,全国で官民にわたって多彩な行事を集中的に開催するなど,積極的な啓発・広報活動を行っている。
  内閣府では,「心の輪を広げる障害者理解促進事業」として,「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の募集・表彰事業を実施するとともに,障害者週間行事として,東京,大阪において,アジア太平洋における日本の障害者支援活動についてのシンポジウムや障害のある人に関する様々なテーマについて,「障害者週間連続セミナー」を開催した。また,宮城において,障害のある人も共に楽しめるスポーツの紹介等を行う,ユニバーサル・スポーツフェスタ2007を開催した。

○ 特別支援学校等における教育の充実及び障害のある人に対する理 解を深める教育の推進

  文部科学省では,学校教育において,障害のある児童生徒の自立と社会参加を目指し,特別支援教育の充実を図るとともに,障害のある人に対する理解を深める教育の充実に努めている。
  また,発達障害を含め,障害のある幼児児童生徒を支援するため,全都道府県に委嘱して実施する「特別支援教育体制推進事業」等の施策を通じて,特別支援教育の体制整備を推進している。
  さらに,「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成18年6月成立,平成19年4月施行)により,従来の盲・聾・養護学校の制度は,複数の障害種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換され,また,小・中学校等においても特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。これらの制度改正と併せて,平成18年度に引き続き平成19年度においても,公立小・中学校におけるLD・ADHD児への通級指導を充実するための定数改善を行ったほか,平成19年度からは,小・中学校に在籍する障害のある児童生徒に対して様々な支援を行う外部人材を「特別支援教育支援員」として,その配置に必要となる経費について市町村を対象に新たに地方財政措置されている。
  これに加え,小・中・高等学校等における学校教育諸活動全体を通じて,福祉の重要性について理解させる指導を行うほか,特別支援学校と小・中学校等や地域との交流及び共同学習を実施するなど障害のある人に対する理解を深める教育の充実に努めている。

○ 障害のある人の雇用の促進,障害のある人の職業能力の向上等

  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において,9月を障害者雇用支援月間として設定し,障害者ワークフェアの開催,ポスターや新聞等による啓発活動を行うことにより,国民とりわけ事業主に対して障害者雇用に関する理解を促した。
  また,障害のある人の職業的自立の意義を喚起するとともに,事業主及び社会一般の理解と認識を深めること等を目的に,平成19年11月14日から5日間,静岡県静岡市において「第7回国際アビリンピック」が開催された。

○ 精神障害者に対する偏見・差別の是正のための啓発活動

  平成19年10月22日から28日までの間,「活かそう!誰もがあたりまえの地域生活~くらし・つどい・まなび・はたらきの場から始めよう~」をメインテーマとして,地域社会における精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的として,第55回精神保健福祉普及運動が実施された。
  厚生労働省では,期間中の10月26日に,第55回精神保健福祉全国大会を開催した。
  また,平成14年12月に厚生労働大臣を本部長として「精神保健福祉対策本部」を設置し,同本部は,平成15年5月に今後厚生労働省として取り組むべき施策の方向性について,普及啓発(精神疾患及び精神障害者に対する理解の促進)等を柱とする中間報告を取りまとめた。これを受け「心の健康問題の正しい理解のための普及啓発検討会」において,施策の具体的方向性について議論が進められ,平成16年3月,国民各層が精神疾患を正しく理解し,新しい一歩を踏み出すための指針「こころのバリアフリー宣言」及び指針の内容を踏まえた社会の各主体別取組の方向性が取りまとめられた。現在,普及啓発の取組が国民的な運動となるよう広く呼びかけるとともに,精神保健福祉普及運動を中心として広く情報発信を行っている。

○ 障害のある人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

  法務省の人権擁護機関では,常設の人権相談所において相談を受けるとともに,人権相談などで,障害のある人に対する差別,虐待等人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,その結果,人権侵害の事実が認められれば,行為者に対し人権尊重思想の啓発を行い,その排除や再発防止のために事案に応じた適切な処置を講じている。

○ 発達障害者への支援

  平成17年4月から施行されている発達障害者支援法を踏まえ,厚生労働省では,「発達障害者支援センター運営事業」,「発達障害者支援体制整備事業」,「発達障害者支援開発事業」及び「発達障害研修事業」を実施することで,地域における発達障害者に対する支援を普及している。
  文部科学省では,小・中学校の通常の学級に在籍するLD・ADHDの児童生徒に対する教育的支援を適切に行うため,平成18年4月からLD・ADHDの児童生徒を通級による指導の対象としている。
  また,発達障害のある幼児児童生徒への特別支援教育を推進するため,乳幼児期から就労に至るまで一貫した支援体制の整備を総合的に図るための事業を全都道府県に委嘱しているほか,幼児期や高等学校段階におけるモデル事業を実施している。

5 同和問題

【平成19年度に講じた施策】

○ 学校教育・社会教育を通じた同和問題の解決に向けた取組

  文部科学省では,学校教育における人権教育関係事業として「人権教育総合推進地域事業」,「人権教育研究指定校事業」を実施している。
  そのほか,社会教育では,「人権教育推進のための調査研究事業」を実施した。

○ 公正な採用選考システムの確立

  厚生労働省の職業安定機関では,企業の採用選考に当たって,人権に配慮し,応募者の適性・能力のみによって採否を決める公正な採用選考システムの確立が図られるよう,雇用主に対して啓発に取り組んだ。

○ 小規模事業者の産業にかかわりの深い業種等に対する啓発事業

  経済産業省では,産業界・経済界向けに,企業の社会的責任の観点から企業活動における様々な人権問題等に関する講演会やシンポジウムを全国で開催し,経済界の役職員等の人権意識の涵養を図った(開催回数:58回,総参加人数:7,827人)。

○ 隣保館における活動の推進

  隣保館においては,生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を実施しており,厚生労働省ではこうした事業に対し支援を行った。

○ えせ同和行為の排除に向けた取組

  全省庁の参加する「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設置し,政府一体となってえせ同和行為の排除の取組を行っている。
  また,地方においても全国50の法務局・地方法務局を事務局として組織されている「えせ同和行為対策関係機関連絡会」に,国の機関,地方自治体等が参加し,随時,情報交換のための会議を開くなど,様々な取組を展開している。

○ 同和問題をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

  法務省の人権擁護機関では,同和問題をめぐる人権侵害事案に対し,人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ,その被害の救済及び予防を図っており,とりわけ結婚差別,差別発言などの差別事件を人権擁護上看過できない事象としてとらえ,行為者等に対して人権尊重の意識を啓発することによって,自発的・自主的に人権侵害の事態を改善させ,あるいは,将来再びそのような事態が発生しないよう注意を喚起している。

6 アイヌの人々

【平成19年度に講じた施策】

○ アイヌ文化の振興,アイヌの伝統及び文化に関する普及啓発

  アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律に基づき,(財)アイヌ文化振興・研究推進機構が行う事業に対して助成等を行った。

○ 各高等教育機関等におけるアイヌ語等に関する取組への配慮

  北海道の大学を中心に,アイヌに関する授業科目が開設されるなど,アイヌに関する教育・研究が行われている。

○ 生活館における活動の推進

  生活館においては,地域住民に対し,生活上の各種相談をはじめ,アイヌの人々に対する理解を深めるための広報・啓発活動等を総合的に実施しており,厚生労働省では,こうした事業に対し支援を行った。

7 外国人

【平成19年度に講じた施策】

○ 外国人に対する偏見・差別を解消し,国際化時代にふさわしい人権意識の育成を目指した啓発活動

  法務省の人権擁護機関では,「外国人の人権を尊重しよう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を中心に年間を通じて全国各地で,講演会や座談会の開催,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

○ 学校教育における国際理解教育等の推進

  文部科学省では,平成18年度から,「国際教育推進プラン」を実施し,学校が大学や特定非営利活動法人等と協力して地域の特色をいかしたモデルカリキュラムの開発等を行う実践研究に取り組んでいる。
  また,近年増加傾向にある日本語指導の必要な外国人児童生徒の教育を支援するため,日本語指導等に対応するための教員の加配を行うとともに,外国人の子どもに対する就学促進や学校への受け入れ体制の整備等を行う「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」等の取組を実施している。

○ 外国人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

  法務省の人権擁護機関では,英語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を東京,大阪等の法務局に開設している。

8 エイズウイルス(HIV)感染者・ハンセン病患者等

(1)HIV感染者等

【平成19年度に講じた施策】

○ エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動

  厚生労働省では,12月1日の「世界エイズデー」に向けてキャンペーンイベントを実施した。また,エイズに関する電話相談事業の実施等,HIV/AIDSに対する正しい知識の普及啓発活動に努めている。

○ 学校教育におけるエイズ教育等の推進

  文部科学省では,学校教育において,エイズ教育の推進を通じて,エイズ患者やHIV感染者に対する偏見や差別をなくすとともに,教材作成や教職員の研修を推進した。

(2)ハンセン病患者・元患者等

【平成19年度に講じた施策】

○ ハンセン病患者等に対する偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動

・ 厚生労働省では,毎年6月下旬に「ハンセン病を正しく理解する週間」を,都道府県,社会福祉法人ふれあい福祉協会と実施している。平成19年度は,6月24日から30日を当該週間としてハンセン病の正しい理解を促進し,偏見・差別の解消に努めた。
  また,ハンセン病に対する正しい知識の普及のため,様々な普及啓発活動を行っている。
  さらに,平成19年7月には,全国の中学生に対し,ハンセン病を正しく理解するためのパンフレット「わたしたちにできること」を配布し,平成19年12月には沖縄,平成20年1月には北海道において法務省等と連携し,ハンセン病問題に対する正しい知識の普及・啓発を目的としたシンポジウムを実施した。
  加えて,平成19年4月1日に,国立ハンセン病資料館を再オープンし,ハンセン病患者・元患者の名誉回復及びハンセン病に関する正しい知識の普及啓発を図っている。

・ 法務省の人権擁護機関では,平成19年7月に,中学生等をパネリストとした,ハンセン病に関する「夏休み親と子のシンポジウム」を鹿児島市で開催するとともに,全国版の小学生新聞・中学生新聞に啓発広告を掲載した。
  また,法務省では,ドキュメンタリービデオ「未来への道標(みちしるべ)」や「未来への一歩~ハンセン病を知っていますか~」,アニメーションビデオ「未来への虹」をシンポジウムや研修会等で上映したほか,貸出しも行っている。

9 刑を終えて出所した人

【平成19年度に講じた施策】

○ 法務省では,第57回“社会を明るくする運動”を実施する中で,刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し,これらの人の社会復帰に資するための啓発活動を実施した。

10 犯罪被害者等

 【平成19年度に講じた施策】

○ 犯罪被害者等のための施策の総合的な取組

  平成17年4月,犯罪被害者等基本法が施行され,同月,基本法に基づき,内閣官房長官を会長とする犯罪被害者等施策推進会議が内閣府に設置された。また,同年12月,犯罪被害者等のための施策の大綱等を定めた「犯罪被害者等基本計画」を閣議決定した。
  基本計画策定後の平成18年4月,同推進会議における基本計画の効果的な推進,並びに犯罪被害者等のための施策の実施状況の検証,評価及び監視を補佐するため,推進会議の下に,基本計画推進専門委員等会議が設置された。現在,同基本計画に基づき,犯罪被害者等のための施策の着実な実施を図っている。

○ 犯罪被害者等の権利保護等に関する取組

・ 検察では,現行法によって与えられた権限を適切に行使して事案の真相を解明する中で,犯罪被害者やその親族等の苦痛,悲嘆や怒りに十分耳を傾けて適正な事件処理を行うとともに,公判においても,被害者感情を含む事案の全ぼうについて効果的な立証活動を行うことに努めてきた。
  また,全国の検察庁において,犯罪被害者等に事件の処理結果等に関する情報を提供する被害者等通知制度を実施してきたところ,平成19年12月からは,検察庁,刑事施設,少年院及び保護観察所等が連携し,被害者等からの希望に応じて,刑事裁判確定後の加害者及び保護処分を受けた加害者の処遇状況に関する事項,仮釈放・仮退院審理に関する事項等の通知を実施している。そのほか,犯罪被害者が同じ犯人から再び被害を受けることを防止し,その保護を図るため,受刑者の釈放予定に関する情報を通知する制度を実施している。
  さらに,犯罪被害者の方々からの様々な相談への対応などの支援活動を行う「被害者支援員」を全国の地方検察庁に配置するとともに,検察庁へ気軽に相談や問い合わせを行えるように専用電話として「被害者ホットライン」を設けるなどしている。

・ 警察では,犯罪被害者等と密接な関係を有しており,被害の回復・軽減,再発防止等について犯罪被害者等から大きな期待を寄せられていることから,指定被害者支援要員制度やカウンセリング体制の整備など犯罪被害者等の視点に立った各種施策を推進している。
  また,犯罪被害者等が同じ加害者から再び危害を受けることを防止するため,再被害防止要綱を制定し,法務関係機関との連携強化を図るなど,再被害防止のための施策を強化している。

○ 犯罪被害者等の人権に関する啓発・広報

・ 内閣府では,毎年11月25日から12月1日までの間を「犯罪被害者週間」とし,国民が犯罪等による被害について考える機会を設けている。平成19年度の同週間においては,内閣府主催の「犯罪被害者週間」国民のつどい中央大会及び内閣府・地方公共団体共催の地方大会(熊本県・茨城県・愛知県・北海道)を開催し,今後の犯罪被害者等支援のあるべき姿について議論した。併せて,犯罪被害者週間と国民のつどいの普及・広報のためのポスターの作成や政府広報を利用した広報を行った。また,文部科学省の協力を得て,青少年の犯罪被害者等への理解の増進を図るための教材を作成し,各都道府県・政令指定都市の教育委員会に配布した。

・ 法務省では,犯罪被害者保護のための制度を広く国民に紹介し,その周知を図るために「犯罪被害者の方々へ」と題するパンフレットを作成し,全国の検察庁及び各都道府県警察等において犯罪被害者等に配布している。これに加えて,犯罪被害者等の保護・支援のための新たな制度を紹介した「犯罪被害者の方々への更なる支援」と題するパンフレットを作成し,同様に犯罪被害者等に配布している。

・ 警察庁では,パンフレット「警察による犯罪被害者支援」,「犯罪被害給付制度のご案内」,啓発用ビデオ「手を携える人たち-犯罪被害者の支援と連携-」等を作成し,様々な機会に活用するとともに,犯罪被害者対策広報用ホームぺージ(日本語版,英語版)の開設や,警察庁広報重点として「被害者支援活動の周知と参加の促進及び犯罪被害給付制度の周知徹底」を設定するなど,広報・啓発を実施した。

・ 犯罪被害者等への支援活動を行う「特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク」に加盟している民間被害者支援団体は,警察等の関係機関との連携を図りながら,被害者支援に関する広報啓発,電話・面接相談,ボランティア相談員の養成及び研修などの活動を行っている。

11 インターネットによる人権侵害

【平成19年度に講じた施策】

○ 個人のプライバシーや名誉に関する正しい知識を深めるための啓発活動

  法務省の人権擁護機関では,平成14年度から「インターネットを悪用した人権侵害は止めよう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を中心に全国各地で,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

○ インターネットをめぐる人権侵害事案に対する適切な対応

・ 総務省では,プロバイダ責任制限法の適正な運用に努めてきたところ,平成18年8月に取りまとめられた「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書」を受け,同年11月に電気通信事業者団体において,インターネット上で人権侵害情報等の違法・有害情報への自主的な対応を促進するために「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」が策定された。
  総務省では,これらの取組について実際に削除を行うブロバイダに周知を図るため,平成19年11月に事業者団体と共同で事業者向け説明会を全国4か所で開催するなど,各種ガイドライン等の普及・促進に努めている。

・ 法務省の人権擁護機関による削除要請について明文で規定した「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」を活用して,当該情報の削除をプロバイダ等に求めるとともに,ガイドラインの対象ではない差別助長行為についても,適宜な方法で削除を求めるなど,適切な対応に努めている。

○ インターネットなどを介したいじめへの対応

  文部科学省においては,児童生徒の情報活用能力を育成するための情報教育を各学校段階を通して体系的な実施を図る中で,情報モラル教育を推進するとともに,インターネットなどを使ったいじめへの対応策を検討するため,有識者会議を開催し,平成19年12月には,特に保護者に向けた「『ネット上のいじめ問題』に対する喫緊の提案」を行った。さらに,保護者等に対する啓発を図るため,有害情報に係る犯罪・被害,トラブルの事例に関する映像資料を作成し活用すること,携帯電話利用に係る親子のルールづくり等に関する調査研究に取り組んでいる。

12 北朝鮮当局によって拉致された被害者等

  政府は,早期の問題解決のため,「対話と圧力」の基本的考え方の下,引き続き粘り強い外交努力を継続しているところであり,また,拉致被害者と認定されている17名以外にも,北朝鮮による拉致の可能性が排除できない人が存在しているとの認識に基づき,「特定失踪者」問題等も含め,広く国内外で北朝鮮による日本人拉致問題について情報収集を行っている。

○ 国内における取組

  日本政府としては,いまだ安否が確認されていない被害者等に関する安否情報の収集,被害者家族への関連情報の提供,家族からの相談への対応等のほか,平成15年1月1日に施行された拉致被害者等支援法及び政府の総合的支援策に基づき,帰国した拉致被害者等に拉致被害者等給付金を支給するとともに,関係地方自治体と連携・協力して社会適応等に関する指導・生活相談,地域交流事業,社会体験研修等の「帰国被害者等自立・社会適応促進事業」の実施に取り組んできた。
  また,平成18年9月の安倍政権の発足に伴い,同月29日,拉致問題対策本部が設置されるとともに,専任の事務局も整備された。同本部は同年10月16日に第1回会合を開催し,「拉致問題における今後の対応方針」を決定した。また,同本部で設置された関係省庁対策会議の第1回会合が同年11月7日に開催され,今後の重点分野が特定されるとともに,広報分科会,法執行分科会及び情報分科会が設置された。
  (注)これらの分科会に加え,平成19年12月28日,拉致被害者の認定に関する関係省庁連絡会議を拉致問題対策本部に統合する形で認定分科会が設置された。
  平成19年9月に発足した福田政権においても,上記体制の下で,拉致問題の解決に向けた総合的な取組を実施している。
  拉致問題に関する広報・啓発については,平成18年6月23日に施行された,拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律において政府及び地方公共団体の責務と定められた。特に,同法は12月10日から16日までを北朝鮮人権侵害問題啓発週間と定めており,平成19年度においては,拉致問題対策本部,法務省及び外務省が連携し,国内外の有識者を招いた「国際シンポジウム」や著名なアーティストが参加した「拉致問題を考えるみんなの集い」を開催するとともに,関係省庁,地方公共団体においても,ポスターの掲出,チラシ等の配布,メディアによる周知・広報等,同週間にふさわしい活動等に取り組んだ。

○ 国際場裡における取組

  日本政府は,国連をはじめとする多国間の国際場裡においてもこの問題を取り上げており,平成15年以降,3年連続で国連人権委員会において,我が国が共同提案国となった北朝鮮人権状況決議が採択された。この決議は,平成17年以降は国連総会本会議において採択されている。一連の決議は,外国人拉致問題を含む北朝鮮の人権状況に深刻な懸念を表明するとともに,北朝鮮に対し,拉致問題の早期解決を含む人権状況の改善及び国連の北朝鮮人権状況特別報告者への協力等を要請している。また,我が国の働きかけにより,国連安全保障理事会で採択された決議第1718号は,前文において,拉致問題を念頭に,「人道上の懸念」に北朝鮮が対応することの重要性を強調している。平成19年3月に開催された第4回人権理事会においては,浜田政務官(当時)が拉致問題を含む我が国の人権外交に関するステートメントを行ったほか,会期中にジュネーブにおいて映画「めぐみ」上映会及び拉致問題写真展を開催した。
  また,平成20年1月,ムンタボーン国連北朝鮮人権状況特別報告者が来日し,日本政府関係者や拉致被害者家族と意見交換を行い,拉致問題を含む北朝鮮の人権状況の調査を行った。
  さらに,G8サミット,アジア太平洋経済協力会議(APEC)等の首脳会談や外相会談の際にも拉致問題の解決に向けて理解と協力を求めており,これに対し各国から理解と支持が示されるなど,拉致問題の解決に向けた国際的な連携は着実に進んでいる。

13 その他の人権課題

(1)矯正施設における被収容者の人権

○ 法務省では,平成17年,刑事施設に収容されている受刑者等の人権を尊重しつつ,改善更生及び社会復帰を図るための処遇について定めた,刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案を第162回通常国会に提出した。同年5月,同法律は成立し,平成18年5月から施行された。
  また,残された未決拘禁者の処遇等を内容とする刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案を第164回通常国会に提出し,平成18年6月,同法律は成立し,平成19年6月から施行された。
  この一部改正法の施行をもって,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」は,「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」との題名に改められ,約100年ぶりに監獄法の全面改正が完了した。

(2)性的指向(異性愛,同性愛,両性愛)を理由とする偏見・差別をなくし,理解を深めるための啓発活動

○ 法務省の人権擁護機関では,「性的指向を理由とする差別をなくそう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を中心に全国各地で,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(3)ホームレスの人権及びホームレスの自立の支援等

○ 国は,平成14年7月に制定された,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法により,平成15年7月,ホームレスの自立の支援等に関する基本方針を策定した。
  法務省の人権擁護機関では,平成16年度から「ホームレスに対する偏見をなくそう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を中心として全国各地で,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(4)性同一性障害者の人権

○ 性同一性障害については,我が国では,日本精神神経学会がまとめたガイドラインに基づいて,診断と治療が行われており,治療は,近年,正当な医療行為として認知されるようになっている。
  社会生活上の不利益を解消して人権を擁護する等の観点から,性同一性障害であって一定の条件を満たすものについては,性別の取扱いの変更について審判を受けることができることとする,性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が平成16年7月16日から施行された。
  また,戸籍法施行規則の一部を改正する省令が平成16年7月16日から施行され,性別の取扱いの変更について家庭裁判所の審判があった場合には,同裁判所からの嘱託により父母との続柄欄を更正することができるようになった。
  法務省の人権擁護機関では,平成16年度から「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」を人権週間の強調事項として掲げ,人権週間を中心に全国各地で,テレビ・ラジオ放送,新聞・雑誌等による広報,啓発冊子等の配布,各種イベントにおける啓発活動を実施している。

(5)人身取引(トラフィッキング)事犯の適切な対応

・ 政府は,平成16年4月5日,内閣に,「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置した。同会議は,同年12月7日,人身取引の撲滅・防止,人身取引被害者の保護等を主眼とする「人身取引対策行動計画」を取りまとめた。同計画は全閣僚を構成員とする犯罪対策閣僚会議に報告され,政府全体として着実に実施していくことが確認された。
  また,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」の早期締結を目指し,平成17年6月に同議定書の締結につき国会の承認を得るとともに,近年の人身取引の実情等にもかんがみ,刑法等の一部改正する法律案を第162回通常国会に提出した。同法案は同国会で可決・成立し,平成17年7月12日から施行された。

・ 警察では,関係機関,NGO等や被害者の国籍国の大使館等と情報交換を活発に行うなど緊密に連携しつつ,人身取引事犯の取締りと被害者の保護を強力に推進している。

・ 法務省では,人身取引の被害者の可能性がある外国人に対して,その者の立場に十分配慮しながら速やかな手続を行い,特に被害者が女性の場合には,女性の担当官が柔和な対応で不安感を払拭するなどして事情聴取を行い,警察等の関係各機関,NGOなどとも連携して,出入国管理及び難民認定法に規定する人身取引等の定義に基づき,被害者の該当性の判断を行っている。
  また,人身取引の被害者が不法滞在者であって,退去強制手続を受ける場合には,事実上,収容を行わずに速やかに手続を進め,原則,在留特別許可し,被害者の保護を図るなど適切に対応している。
  さらに,人身取引は基本的人権を侵害する深刻な問題であることを周知し,人権尊重思想の普及・高揚を図るため啓発冊子やチラシの配布等の啓発活動を実施している。

・ 外務省では,犯罪組織等による被害者の我が国への送り込みを防止する観点から,在外公館等において,被害者の査証審査を厳格化するとともに,「人身取引対策に伴う査証審査厳格化措置」についての広報活動を実施した。また,2004年から政府協議調査団を関係国に派遣し,先方政府,関係機関及びNGOと効果的な協力体制につき協議を行っており,平成19年1月にはカンボジア,ラオスを訪問した。そのほか,国際機関を通じた人身取引対策への資金援助を行うなど,人身取引根絶のための国際協力を積極的に推進している。

・ 内閣府では,女性に対する暴力をなくしていく観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

・ 厚生労働省では,国籍,年齢を問わず,警察等関係機関との連携により,人身取引被害者の適切な保護に努め,また,被害者が児童の場合は児童相談所と連携して,適切な支援の措置を講ずることとしている。
  また,婦人相談所においては,併設する一時保護所もしくは一時保護委託先において,心身ともに傷ついている被害者に対し,医師の診察や医療機関受診における医療費の補助等による健康支援や心理療法担当職員によるカウンセリング等の心理的ケア等の支援を行っている。

第3節 人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等

1 研修

○ 検察職員

  基本的人権を尊重した検察活動を徹底するため,検察官及び検察事務官に対し各種研修において人権教育を実施している。
  平成19年度は,検事一般研修等において,人権をめぐる諸問題や国際人権関係条約に関する講義を行うなど,検察職員に対し,より一層適正な捜査・公判の徹底を図っている。

○ 矯正施設・更生保護官署関係職員等

・ 矯正施設の職員については,矯正研修所及び同支所において,新採用職員,幹部職員等に対し,被収容者の権利保障・国際準則等に係る研修,人権啓発等に係る研修を実施している。
  平成19年度は,民間プログラムによる研修を行うとともに,初任研修課程等の研修において,被収容者の人権に関する条約,犯罪被害者の人権,セクシュアル・ハラスメント等について研修を実施した。

・ 更生保護官署関係職員に対しては,新任保護観察官を対象とした保護観察官中等科研修等において,人権に関する講義を継続して実施しているほか,犯罪被害者に関する情報の秘匿等,犯罪被害者に対する人権の配慮という観点からの講義も実施している。

○ 入国管理関係職員

  入国管理局関係職員研修において,基本的人権の尊重,人権擁護の現状及び人身取引関係の講義を実施している。

○ 教職員・社会教育関係職員

  独立行政法人教員研修センター及び各都道府県等において,人権尊重意識を高めるための研修を実施している。
  また,社会教育主事講習において,人権問題を取り上げている。

○ 医療関係者

  厚生労働省では,医療関係者の養成課程において,人の尊厳を幅広く理解するための授業を教育内容に含めることを求めるなど,患者の人権を十分に尊重するという意識・態度の育成を図った。

○ 福祉関係職員

  厚生労働省では,民生委員・児童委員リーダー研修会等において,民生委員・児童委員の人権の尊重等についての理解を深めている。
  また,全国主任児童委員研修会を開催し,地域住民や関係機関との連携について考えるシンポジウム等を実施した。
  さらに,児童福祉関係施設において子どもの人権を尊重した処遇を充実させるため,国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所において研修を行った。
  厚生労働省委託の社会福祉研修では,社会福祉研修実施機関で実施される研修において,人権教育・啓発に関するプログラムを組んで実施している。

○ 海上保安官

  海上保安庁では,海上保安大学校等における,初任者教育及び職員に対する再研修において,人権に関する教育を行っている。

○ 労働行政関係職員

  厚生労働省では,職員の職位に応じて行われる中央研修において,同和問題等を中心とする人権の講義を実施している。

○ 消防職員

  消防庁消防大学校では,消防事務に従事する職員,消防職員・消防団員に対し,人権教育を実施している。

○ 警察職員

  警察では,職務倫理に関する教育を最重点項目に掲げ,各級警察学校及び警察署等の職場において,人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」に重点を置いた教育を行ったほか,基本的人権に配慮した適正な職務執行ができるよう,必要な知識・技能を修得させるための各種教育を行った。
  警察庁においては,平成20年1月「警察捜査における取り調べ適正化指針」を策定した。同指針に基づき,取調べの監督制度を確立するほか,具体的事例に基づいた実践的な教養の実施,指導的立場にある警察官に対する教養の充実等,各種施策を迅速かつ着実に実施していくこととしている。

○ 自衛官

  防衛省では,防衛大学校や防衛医科大学校等において,民主主義,基本的人権の尊重等の憲法の理念等について教育を実施した。
  また,自衛隊の各種学校等では,自衛隊法に規定する「服務の本旨」にのっとり,人格の尊重等を基本とする精神教育を実施した。

○ 公務員

・ 法務省では,中央省庁等の職員を対象とする人権に関する国家公務員等研修会を開催している。
  また,都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識を習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を実施している。

・ 人事院では,全府省庁の職員を対象に実施している職位階層別研修において,女性,高齢者,障害のある人等の人権課題を幅広くカリキュラムに取り入れるとともに,特定のテーマを取り扱う研修として,女性,高齢者,障害のある人などの人権課題を取り上げた研修も行った。

2 国の他の機関との協力

○ 裁判官の研修を実施している司法研修所では,裁判官に対する研修の際に人権問題に関する各種講義を設定している。
  なお,上記研修を実施するに当たり,法務省等から講師を派遣するなどの協力を行った事例もある。

第4節 総合的かつ効果的な推進体制等

1 実施主体の強化及び周知度の向上

○ 政府は,人権擁護推進審議会の人権救済制度の在り方に関する答申及び人権擁護委員制度の改革についての答申を踏まえ,人権委員会の設置等,人権啓発の総合的かつ効果的な推進が可能となるような新たな制度の構築に向けた検討を進め,平成14年3月に「人権擁護法案」を国会に提出したが,同法案は,平成15年10月10日,第157回臨時国会において,衆議院解散に伴い廃案となった。
  現在,法務省において,引き続き検討を行っているところである。

2 実施主体間の連携 

○ 人権教育・啓発に関する中央省庁連絡協議会

  平成12年9月25日,関係省庁事務次官等申合せにより,各府省庁等の教育・啓発活動について情報を交換し,連絡するための場として,人権教育・啓発中央省庁連絡協議会が設置された。
   平成19年度は,幹事会を2回開催し,共同実施の可能な啓発活動,共同利用の可能な啓発物品等についての情報交換を行った。

○ 人権啓発活動ネットワーク協議会

   法務省では,平成12年9月までに,「人権啓発活動都道府県ネットワーク協議会」を全法務局・地方法務局(50局)において構築し,さらに,平成20年3月までに市町村及び人権擁護委員協議会等を構成員とする「人権啓発活動地域ネットワーク協議会」を全国193か所に設置した。

3 担当者の育成

○ 人権啓発指導者養成研修会

   法務省では,地方公共団体等の人権啓発行政に携わる職員を対象にして,その指導者として必要な知識を習得させることを目的として委託事業で,人権啓発指導者養成研修会を実施した。

○ 人権擁護事務担当職員,人権擁護委員に対する研修

   法務省では,法務局・地方法務局の人権擁護課長,支局長などを対象に専門科研修などを実施し,人権擁護行政に携わる職員の養成をしている。
   人権擁護委員に対しては,新任委員研修をはじめとする各種研修を通じて,人権擁護委員として職務遂行に必要な知識及び技能の習得を図っている。また,同和問題講習会,男女共同参画問題研修も実施している。

○ 公正採用選考人権啓発推進員に対する研修

   厚生労働省では,「公正採用選考人権啓発推進員」に対し,研修会を開催し(全国で927回),また,従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対し,「事業所における公正な採用選考システムの確立」について研修会を開催した(全国で476回)。

4 文献・資料等の整備・充実

   人権センターでは,地方公共団体,各種研究団体等で制作した書籍・図画・ビデオ等を収集・購入し,同センター内に設置した「人権ライブラリー」において,これら書籍・図画・ビデオ等を広く一般の人々に提供している。

5 人権センターの充実

   人権センターは,民間団体としての特質をいかした人権教育・啓発活動を総合的に行うナショナルセンターとしての役割を果たすため,法務省からの委託事業のほか,情報誌「アイユ」の刊行,人権啓発ポスターの作成等センター独自の事業を行っている。

6 マスメディアの活用等

○ テレビ,ラジオ等の活用
  • 政府広報番組を活用した啓発活動
  • CS放送における人権啓発ビデオの放映
  • HIV感染者・ハンセン病患者等に関する広報
  • インターネットバーナー広告の掲載

○ 新聞紙,雑誌の活用
  • 「高齢者雇用の促進」,「障害者雇用の促進」及び「公正な採用 選考システムの確立」に関する啓発広告
  • 全国中学生人権作文コンテストに関する啓発広告
  • 人権週間に関する啓発広告
  • HIV感染者等の人権に関する啓発広告

7 インターネット等IT関連技術の活用

○ 法務省では,法務省のホームページ(http://www.moj.go.jp/)において,各種人権関係情報を掲載するとともに,広く国民に対して,多種多様の人権関係情報を提供した。
   また,人権教育・啓発に関する情報に対して,多くの人々が容易に接し,活用することができるよう,人権啓発活動ネットワーク協議会のホームページ(http://www.jinken.go.jp/)を開設している。
    「人権教育・啓発に関する基本計画」については,法務省及び文部科学省のホームページ(http://www.mext.go.jp/)に全文を掲載し,内容の周知を図っている。
   さらに,平成19年度は,ハンセン病「夏休み親と子のシンポジウム」,人権週間及び北朝鮮人権侵害問題啓発週間について,インターネットバナー広告を掲載し,周知を図った

○ 厚生労働省では,厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)において,それぞれの施策についての情報及び資料を掲載して,それぞれの施策の普及を図り,国民的理解を深めるよう努めている。

○ 外務省では,外務省のホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/)において,世界人権宣言,主要人権条約,人権関連文書等に関する情報を提供している。
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