法制度整備支援の海外現場から 「アジアのため,日本のため」

制度づくり,人材育成に協力しています!

私は元々裁判官なのですが,2010年4月に,法務省の組織である法務総合研究所の国際協力部へ出向してきました。ここでの仕事は,法律分野における国際協力でして,カンボジア,インドネシア,ベトナム,ラオスなど,様々な国の法律作りや,裁判官,検察官,弁護士といった法律専門家の育成をお手伝いしています。

日本がこういう分野で国際貢献をしていることを,皆様御存じだったでしょうか。

(政府インターネットテレビの「国際協力・交流」でも紹介されています。)


一般に国際協力,ODAといった言葉からは,橋や道路といった何か形あるものを作るイメージを連想するかもしれません。しかし,私たちの支援が対象としているのは,「人」です。法律を作るのも「人」,法律を使うのも「人」。私たちの国際協力は,常に生の人間を相手にし,一緒に何かを作り上げていくことの連続です。そういった意味で,「顔の見える国際協力」ということができると思います。

国難のときに思う

2011年3月11日の地震以後,日本は国難のときを迎えています。私自身,日本がこれだけ大変なときに,国際協力をやっていてよいものか,本気で悩みました。そのような中,カンボジア,インドネシア,ベトナム,ラオスなど「顔の見える」相手国の人々から,お見舞いの暖かいメッセージや寄付金などがたくさん寄せられてきたのです(ベトナム司法省での,義捐金集めの公式式典については,JICAウェブサイトにも掲載されています)。

「顔の見える」人たちの思いを受け,今自分が行っていることは,相手国にとってはもちろん,日本にとっても大きな財産になっているのだと改めて実感し,悩みを振り切ることができたように思います。


2010年10月,カンボジアの若手裁判官の人たちを対象に,模擬裁判などの研修会を実施したことがありました。このときに彼らが言っていた言葉は,今になって余計に心に染みます。

「自分はまだまだ未熟だが,ここまで育ててくれた日本の皆さんの思いに応えたい。」「今回学んだことをカンボジアで広く伝えていく。そのことだけが,自分たちができる日本の皆さんへの恩返しなのだと思う。」


情けは人のためならず。

目立ちにくい分野かもしれませんが,国や社会の根幹をなす制度作りや人材育成に貢献するこの仕事に,今後も誇りを持ち続けたいと思います。

インドネシアにて,インドネシア最高裁判事と共に(左端がトゥンパ最高裁長官,右から2番目が筆者)
カンボジア本邦研修「白熱の模擬裁判」


(法務総合研究所国際協力部教官 松川 充康)

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お答えします 「施設整備の仕事について」

お答えします


Q:法務省の官房施設課では,どのような仕事をしているのですか?

:法務省は,刑務所,拘置所,少年院,少年鑑別所,入国者収容所などの収容施設や,検察庁,法務局などの官署施設を所管していますが,施設課は,これらの施設を整備(建築)するに当たっての企画・立案,設計,工事監理などを担当しています。

中でも,刑務所,拘置所,少年院などの収容施設(矯正建築)の整備は,国内で唯一,施設課が担当しており,矯正建築に関する技術や経験を豊富に有していることから,これらの分野における海外への技術協力や国際会議を通じた交流なども行っています。


Q:具体的には,どのような国際協力や国際会議を行っているのですか?

:国際協力の分野では,これまで,約20年にわたりタイ王国などに対する技術支援を行ってきました。タイ王国には,施設課の技術協力により建てられた少年院があります。また,これまで,タイ王国との間で,矯正建築に関する最新技術の情報共有と技術協力を図ることを目的として,2回にわたり国際会議を開催してきましたが,その重要性を考慮し,今後は,タイ王国以外のアジア各国にも参加を呼びかけることとし,平成24年1月には,他のアジア各国も交えた国際会議を開催する予定です。


Q:施設課では,どのような職種の人達が働いているのですか?

:事務官だけではなく,一級建築士などの専門的知識を有した多くの技術職(建築担当・電気設備担当・機械設備担当)の職員が働いています。

矯正建築は,罪を犯した人を強制的に収容し社会復帰のための教育等を行う特殊な施設ですが,そこで展開される教育活動等は,建築空間と一体として機能するという関係にあり,建築空間のしつらえの適否が教育効果に大きく影響を及ぼすことから,その空間造りは大変やりがいのある奧の深い研究テーマと言えます。

このように,施設課は,国民が安心して暮らせる社会を実現するために,建築技術の専門家集団として,日々,様々な課題に取り組んでいます。


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