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「再犯防止に向けた総合対策」
~社会における「居場所」と「出番」を作る~

社会における「居場所」と「出番」の創出について

再犯防止に関する連載の第3回目として,「再犯防止に向けた総合対策」の4本柱の2つ目である,「社会における『居場所』と『出番』を作る」を紹介します。

なお,再犯防止対策を推進する必要性については,第44号の特集記事をご参照下さい。

これから紹介するように,誰もが「居場所」と「出番」のある社会を実現し,刑務所出所者等の社会復帰を促進し,孤立化や社会不適応に起因する再犯を防止することは,安全・安心な社会の実現に繋がります。

住居の確保

■刑務所満期出所者の帰住先の有無(H24)■

刑務所満期出所者の帰住先の有無のグラフ。帰住先なしが6,995人、帰住先ありが5,768人。

刑務所出所者等の多くは,出所後帰る所(帰住先)がありません。そして,帰住先のない者の半数以上が,1年未満で再犯に及んでいます(第44号特集記事参照)。こうした行き場のない者の住居を確保するため,刑務所出所者等に一時的に宿泊場所や食事を提供する施設(更生保護施設・自立準備ホーム)等の受け皿の機能強化や開拓を進めます。また,刑務所出所者等が自力で住居を確保できるよう生活指導を強化するとともに,住居確保のための知識・情報の提供もします。

更生保護施設(外観)の画像

更生保護施設(外観)

更生保護施設(居室)の画像

更生保護施設(居室)

就労の確保

■刑務所再入所者に占める無職者の割合(H24)■

刑務所再入所者に占める無職者の割合のグラフ。無職者71.7%、有職者28.3%。

平成24年は,刑務所に再び収容されることとなった者(再入所者)の約7割が無職者でした。このように,仕事の有無と再犯は関連しており(第44号特集記事も参照),刑務所出所者等の就労支援が課題となっています。そのため,刑務所等収容中から出所後を見据えて職業訓練を行ったり,実際に刑務所出所者等の雇用先となる協力雇用主の開拓はもちろん,協力雇用主へのサポートも重要な再犯防止対策として進めていきます。

■協力雇用主数の推移(H22-26)■

協力雇用主数の推移のグラフ。平成22年協力雇用主数8,549社に対し、対象者を雇用したのは314社。平成26年協力雇用主12,603社に対し、対象を雇用したのは742社。

職業訓練(ホームヘルパー科)の画像

職業訓練(ホームヘルパー科)

職業訓練(フォークリフト運転科)の画像

職業訓練(フォークリフト運転科)

社会貢献活動による善良な社会の一員としての意識のかん養

社会貢献活動の様子の画像

社会貢献活動の様子
(デイサービス施設における昼食の準備の手伝い)

社会貢献活動の様子の画像

社会貢献活動の様子
(河川敷における清掃活動)

刑務所出所者等に地域社会の利益の増進に寄与する活動(社会貢献活動)を行わせることは,自分も人の役に立つことができるという意識(自己有用感)を得させて改善更生への意欲を向上させたり,他者を尊重し社会のルールを守ることの大切さに気付かせるなど,再犯を防止する上で重要な意義を持ちます。そのため,地域の関係機関・団体の協力を得ながら,引き続き,社会貢献活動の取組を推進します。


犯罪被害者の視点を取り入れた指導,支援等の実施

生命のメッセージ展の画像

生命のメッセージ展

被害者担当の保護観察官に対する研修の様子の画像

被害者担当の保護観察官に対する研修の様子
(犯罪被害者による講義)

刑務所出所者等が社会復帰を果たす上で,自らの犯罪・非行と向き合い,被害者の気持ちを理解させ,真摯な謝罪や被害の弁償を行うことは重要な意義を持ちます。そのため,犯罪被害者の体験や気持ちを伝えたりする被害者の視点を取り入れた指導を実施します。

また,これらの指導結果を踏まえ,犯罪被害者との関係を修復する取組の導入も検討します。 


満期釈放者等に対する支援の充実・強化

■出所事由別再入状況(H20)■

出所事由別再入状況のグラフ。5年以内に再入所する割合は、仮釈放者が28.9%で満期釈放者が50.8%。

■受刑者の帰住先別構成比(H24)■

帰住先別構成比のグラフ。帰住先不明等の割合が、仮釈放者が1.0%に対し、満期釈放者は49.7%。

満期釈放者は,刑務所等を出た後,その過半数が5年以内に再入所している状況にあり,社会内での支援が必要です。

そこで,このような満期釈放者が支援を受けられる機会や場所を充実させていきます。また,そうした機会や場所について出所前に受刑者等に情報を与え指導することにも取り組まなければなりません。

さらに,満期釈放者の支援だけでなく,少年院を出院した少年が法務教官に相談できる仕組みや保護観察を終了した者が保護司等に相談できる仕組み等の相談できる場所や機会を確保し,社会的に孤立させないことは,再犯を防止するための重要課題となっています。

まとめ

以上のように,「居場所」や「出番」を作るには,住居支援や就労支援をはじめ,幅広い指導や支援が必要です。 政府では,再犯防止対策を一層推進するために,各施策の効果等も随時把握しながら,関係機関や民間の支援団体等と連携して取り組んでいきます。

なお,次回の「あかれんが」では,総合対策の3つ目の柱となる,「再犯の実態や対策の効果等を調査・分析し,更に効果的な対策を検討・実施する」を紹介する予定です。