CONTENTS

法制度整備支援の現場から

日本の技術を世界で役立てる――。こういう話を聞くと,農業,工業,医療などという分野を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが,法務省も,日本の技術を世界で役立てようと,国際協力機構(JICA)や関係機関とともに「法制度整備支援」という活動をしています。

私は,今年4月からベトナム・ハノイ市に派遣されて,法制度整備支援活動に従事しています。ベトナムと日本の協力関係は約20年に及び,新しい法律の起草や裁判実務の改善に役立てるよう日本での法律実務や研究を紹介したり,法律実務を支える裁判官,検察官,弁護士等の養成や研修を実施したりして,ベトナムの改革を支えてきています。現在のプロジェクトは,今年4月から2020年3月までの活動が予定されていますが,従来からの活動に加えて,各省庁が定める規則などが,憲法や法律と矛盾しないように制定するための改善に向けた活動も行われています。

ところで,法制度整備支援活動では,いわゆる理系の技術協力以上に,どの言語(日本語?現地語?英語?)で仕事をするかが切実な問題です。法律用語は,その言葉の意味が法制度と複雑に結び付いており,そして法制度は国によってばらばらであるため,翻訳して外国語を当てるだけでは誤解を生じることがあるからです。これは英語を使っても同じです。そこで,私たちのプロジェクトでは,日本法を学んだ法科大学の講師の助言を受けながら,ベトナム語原文でベトナムの法律を理解するようにしています。言葉を学ぶことで,社会や文化の理解も進み,ベトナムでの考え方を前提に深い議論ができるようにもなりますし,何よりも,ベトナムの人たちとの信頼関係がぐっと深まります。私も当初はかなり苦労しましたが,今では,ベトナム語の家庭教師からも,法律用語だけはよく知っていると褒められる(?)ようになりました。

言葉の壁をゼロにすることは難しいですが,壁が少しずつ低くなるにしたがって新しい発見があり,次の活動への大きな励みになっています。

(ベトナム長期派遣専門家 酒井 直樹)

裁判所でのベトナム現地セミナーの様子

裁判所での現地セミナーの様子

ベトナム法令の翻訳作業中の原稿1

ベトナム法令の翻訳作業中の原稿1

ベトナム法令の翻訳作業中の原稿2

ベトナム法令の翻訳作業中の原稿2