CONTENTS

平成27年版犯罪白書について

平成27年版犯罪白書の写真

○犯罪白書とは?

犯罪白書は,犯罪の動向や犯罪者の処遇の状況について,統計資料に基づいて説明しているものです。昭和35年から毎年発刊されており,犯罪対策を検討するための基礎的な資料としての役割を担っています。

○犯罪情勢は?

刑法犯の認知件数(警察が被害届などを受けて犯罪の発生を把握した件数)は,平成14年に戦後最多の約369万4,000件を記録しましたが,その後は12年連続で減少し,平成26年は約176万3,000件であり,平成14年から半減しました。

1図 刑法犯 認知件数・検挙率の推移

平成26年に一般刑法犯(刑法犯全体から自動車運転過失致死傷等を除いたもの)で検挙された者の人員は,戦後最少の約25万2,000人でしたが,そのうち,65歳以上の高齢者が18.8%を占めており,高齢化が進んでいます。

2図 一般刑法犯 検挙人員の年齢層別構成比の推移

○再犯の現状は?

刑務所を仮釈放により出所した者の約3割,満期釈放により出所した者の約5割が,出所してから5年以内に刑務所に戻っています。そこで,近年,再犯防止が犯罪対策を検討する上での重要なテーマとなっており,犯罪対策閣僚会議(首相官邸ホームページ)においても,平成24年7月に「再犯防止に向けた総合対策(法務省ホームページ)」が策定されるなど,効果的な再犯防止対策を推進するための取組が実施されています。

3図 出所受刑者の出所事由別5年以内累積再入率

刑務所を出所してから2年以内に刑務所に戻っている者の割合を見ると,平成25年に仮釈放又は満期釈放で刑務所を出所した者のうち18.1%が2年以内に刑務所に戻っていますが,その割合は,平成18年以降,わずかながら低下傾向にあります。

4図 出所受刑者の出所事由別2年以内累積再入率の推移

○今回の特集は?

犯罪白書では毎年特集を組んでおり,今回は性犯罪に着目しました。性犯罪は,国民が身近に不安を感じる,社会的関心の高い犯罪の一つであり,「再犯防止に向けた総合対策」においても,「性犯罪者に対する指導及び支援」が再犯防止の重点施策として掲げられていることから,「性犯罪者の実態と再犯防止」と題した特集としています。

性犯罪の動向分析や,法務総合研究所が行った特別調査の結果から,性犯罪者による再犯を防止するためには,性犯罪者の個々の問題性に応じた働き掛けが必要であると考えられ,特に,可塑性のある少年・若年者や,犯罪傾向の進んでいない刑務所初入者に対する重点的な指導が重要と考えられます。

○もっと犯罪白書の内容を知りたい場合は?

法務省のホームページで閲覧できるほか,官報販売所などで購入できます。

東京ルールズを広めよう ~25周年セミナーから~

「東京ルールズ」って何?

「東京ルールズ」という言葉を聞いたことがありますか? 日本語なのに複数形「ズ」に気付いた方,さすがです。英語の世界,それも「国連」の刑事司法分野でのルールです。正式名称は「非拘禁措置に関する国連最低基準規則」。漢字が並んで難しそうですが,そうでもありません。犯罪者を刑務所に入れるより,地域の中で再び罪を犯さないように指導しながら,立ち直ってもらい,そうすることで責任を取ってもらおうというものです。もちろん,逮捕するより在宅捜査,身柄拘束を続けるより保釈という判決前の段階も含まれます。そういう取組を促進するための世界共通の基準を示した国連の規則です。

いつ,どうやってできたの?

東京ルールズは1990年に国連総会で採択されました。東京ルールズと名付けられたのは,東京都府中市にある国連アジア極東犯罪防止研修所(略称「アジ研」)の研修の一環として最初の案が作られたからです。

その後25年間にわたって,世界の国々が法律を作るための参考とされてきました。なぜかと言うと,多くの国では刑務所・拘置所が定員オーバー(過剰収容)に悩まされているからです。それは人権上も人道的にも好ましくありませんし,犯罪者が立ち直り,社会で暮らせるようにしよう,こういう考えが背景にあるからです。

25周年セミナーで何をしたの?

2015年は東京ルールズ制定から25周年でした。これを記念して9月7日から3日間,アジ研でセミナーが開催されたのです。

参加者は,日本の刑事司法実務家やアジ研教官,第161回国際研修員,国連薬物犯罪事務所(UNODC)や国連ヨーロッパ犯罪防止研究所(HEUNI),韓国刑事政策研究院(KIC),北京師範大学刑事法律科学研究院(CCLS),タイ法務研究所(TIJ)の多くの専門家です。

そこでは,逮捕から起訴,裁判,刑の執行に至る手続において,非拘禁措置(社会の中で指導・監督しつつ立ち直りを援助すること)を更に活用するための意義と方策を議論しました。また,非拘禁措置がどのように利用されているかを世界各国の状況を見ながら一緒に考え,難しい点や直さなければならない点を見つけ出し,東京ルールズを更に広めていこうと確認したのです。そのほか,「非拘禁措置の実践に当たっての多機関連携と市民参加」や「東京ルールズの実務上の課題と将来像」といった観点から活発な議論が交わされました。

今後はどうなるの?

東京ルールズについては,これからも,

  1. ① 犯罪者の処遇における経済性,効率性の向上
  2. ② 人権に配慮した社会内処遇の活用
  3. ③ 効果的な再犯防止対策

といった観点から,非拘禁措置の活用を進めていくことが重要です。

これを活用すれば,過剰収容に悩む国々にとって役立ちます。また,犯罪者の立ち直りと社会復帰に重点を置いた社会内処遇の積極的な活用にも道を開くと言えるでしょう。

アジ研教官によるワークショップの様子

アジ研教官によるワークショップ

議場の様子イメージ

議場の様子