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法制度整備支援の現場から
~国際協力部教官として感じること~

「法制度整備支援」とは,「法」やその周辺の制度を作ったり,それらに関わる法律家を育てたりするお手伝いをするというものです。私は,平成27年4月から法務総合研究所国際協力部の教官として,当部の他の教官や国際協力専門官と一緒に,東南アジアを中心とした国々の法制度整備支援に携わっています。

私たちが関わる「法」とは,社会のルールであると言えます。どのような「法」や制度を作ったらよいか,と考えるときには,その社会がこれまでどのような状況にあり,今どのような状況にあるか,そこで暮らす人々がどのような価値観を大切にしているか,ということを考えないわけにはいかず,相手方と自分たちとの「違い」を意識せざるを得ません。私たち教官の仕事の一つは,その「違い」を理解しようとすることだと思っています。異なる社会を理解することは簡単ではありませんが,そのために,書物から学ぶだけではなく,相手国の法律家が来日して研修を受ける際や,こちらが現地に行ってセミナーや調査を行う際に,自分の目と耳で直接にいろいろと見聞きすることを大切にしています。

一方で,「法」は,それを解釈して適用することによって,そこで暮らす人々が安心して日常生活を送ることができるよう,いわば当たり前の社会を実現するために必要なものであると言えます。私自身もこれまで,そのような社会を実現したいという考えで仕事をしてきたつもりですが,相手国の法律家と接していますと,より強く,より具体的にそのように考えていることに気付かされます。いろいろな違いはありますが,より良い社会を実現したいとの考えは,裁判官,検察官,弁護士,大学教授,司法省職員など全ての法律家にとって,万国共通の「想い」であるように思います。

対面する相手との「違い」を尊重しつつ,より良い社会を実現するという共通の「想い」を実感しながら,同じ法律家として一緒に仕事ができることが,国際協力部の教官として法制度整備支援の仕事をする醍醐味であると感じています。

第7回(平成27年9月)カンボジア本邦研修の様子

第7回(平成27年9月)カンボジア本邦研修

カンボジア現地セミナー(平成28年1月)の様子

カンボジア現地セミナー(平成28年1月)

(法務総合研究所国際協力部教官 湯川亮)