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法制度整備支援の現場から
~人と人とをつなぐ法制度整備支援~

ベトナム法制度整備支援にとって,2016年は特別な年であることをご存じでしょうか?

ベトナムに対する法制度整備支援は,市場経済化に向けたベトナムからの支援要請をきっかけとして,1996年に独立行政法人国際協力機構(JICA)による法整備支援プロジェクトがスタートし,武藤司郎弁護士が初代長期専門家としてハノイに派遣されました。今年,2016年はベトナム法整備支援プロジェクト開始から20年という節目の年です。

2000年からは法務省からも長期専門家が派遣され,これまでに法務省から派遣された長期専門家(検事・裁判官出身)は,私を含め18名を数え,同プロジェクトにおいて,民法,民事訴訟法などの重要法令の制定,人材育成及び実務改善など,多くの成果を残してきました。

そのほかにも,プロジェクトに関わった多くのベトナム司法関係機関職員が,その後各機関の幹部となり日本と強い信頼関係で結ばれているのも,目には見えない大きな成果です。実際に,今年4月に就任したレ・タイン・ロン司法大臣は,武藤弁護士が赴任した当時は,司法省国際協力局の一職員だったそうです。また,長期専門家がこの20年途切れることなくベトナムに駐在し,ベトナムの皆さんと一緒に悩み考える経験があったからこそ,私たちに対しても,長年の友人のように接してくれるのだと思います。

私が,現在,ベトナムで長期専門家として活動するだけではなく,友人として食事に招待していただいたり,冗談を言い合ったりすることができるのは,このように先輩専門家が築いてきた長年の信頼関係の積み重ねの上にあるということを日々実感しています。

私が法制度整備支援を志したのは,司法修習生当時の武藤弁護士の講義がきっかけなのですが,今は自分が長期専門家として,ここベトナムの地で武藤弁護士とご一緒させていただく機会があるのも不思議な縁を感じます。

法制度整備支援は,いつかは終わりを迎え,支援をした法律もその後ベトナムの皆さんの手で変わっていくものですが,このような人と人とのつながりは変わることなく,人の心の中に残り続けると信じています。このような目に見えない「成果」も,法制度整備支援の魅力の一つです。

(ベトナム長期派遣専門家 川西 一)

ロン司法大臣(右から5人目)就任時の記念撮影の様子

ロン司法大臣(右から5人目)就任時の記念撮影

武藤弁護士(左)との打合せの様子

武藤弁護士(左)との打合せ