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ミャンマー不動産制度共同研究を実施しました

法務総合研究所国際協力部では,平成29年(2017年)8月21日から同月25日までの間,ミャンマー不動産制度共同研究を実施しました。

共同研究を行うことになったいきさつ

ミャンマーの不動産に関する法制度,つまり,不動産登記などの制度は,歴史的な経緯もあり,非常に複雑だと言われています。イギリスによる統治,独立後の50年にわたる軍政を経て,結局,土地に関する問題が整理されることなく現在に至っています。今でも19世紀に作られた法律が使われていることもあって,ミャンマーの不動産制度がどうなっているかを理解することはかなり難しいという状況です。

一方,ミャンマーは,人口が5000万人を超えているなど有望なマーケットになっています。そこで,日本の会社を含むたくさんの外国会社が,ミャンマーに進出しようとしていますし,実際に進出しています。こうした投資をする場合,ある会社は工場を建てようとするでしょうし,別の会社は市内に事務所を借りたいと思うかもしれません。いずれにせよ,土地や建物といった不動産は,外国企業がミャンマーに進出する際に必ず利用しなければならないものです。ですから,ミャンマーの不動産制度を理解することは,こうした会社の進出にとって重要なことだと言えるでしょう。

そして,日本の会社がミャンマーに進出することは,日本にとっても,ミャンマーにとっても利益になることです。ミャンマーの不動産法制を調査・研究することは,そうした両国の利益につながるものと考えて,今回の共同研究を実施することにしました。

研究員

今回の共同研究では,ミャンマーで不動産登記等に関わっているミャンマー連邦建設省,農業畜産灌漑省,内務省,ヤンゴン市開発委員会,マンダレー市開発委員会,法務長官府から,それぞれの職員合計14名が来日しました。来日した職員は,ミャンマーでの不動産登記等の法律・手続について,知識・経験とも豊富な実務家でした。

共同研究の内容

今回の共同研究では,日本における不動産登記や土地の管理に関する実務,不動産制度が経済に与える影響などについて,各分野の専門家から説明をしていただきました。

日本で不動産登記の実務を担っている東京法務局,日本司法書士会連合会,日本土地家屋調査士会連合会を訪問して,不動産登記の実務を担う専門家の皆様から講義をしていただきました。

日本司法書士会連合会・山内鉄夫副会長の講義風景の写真

日本司法書士会連合会・山内鉄夫副会長の講義風景

東京大学の平野温郎教授,登記を担当している法務省民事局の担当官,国土交通省土地建設産業局の担当官など,各分野の専門家からも説明をしていただきました。

東京大学・平野温郎教授の講義風景の写真

東京大学・平野温郎教授の講義風景

加えて,日本最大の法律事務所の1つである森・濱田松本法律事務所を訪問し,同法律事務所ミャンマー事務所共同代表の武川丈士,眞鍋佳奈両弁護士から,日本とミャンマーの土地制度の比較や,土地制度が整備された場合の経済的な影響などについても説明していただきました。

ミャンマーから来た研究員は,それぞれの講義について熱心に説明に聞き入っていましたし,講師に対して活発に質問するなど,積極的に知識を身に付けようとしていました。

また,法務省法務総合研究所の佐久間達哉所長との意見交換会も実施し,研究員との間でミャンマーにおける問題を共有し,また,研究員からは日本からの支援に期待しているとの言葉もありました。

佐久間達哉所長を囲んで~赤れんが庁舎をバックに~集合写真

佐久間達哉所長を囲んで~赤れんが庁舎をバックに~

今後の研究

今回の共同研究を通じて,ミャンマーの研究員に対して,日本の不動産制度を知っていただくとともに,分かりやすい不動産制度が経済発展にとって重要であることを理解していただきました。研究員は,今回の共同研究が非常に有意義であったとの感想を述べており,不動産制度の共同研究に意欲を見せていました。今後は,今回来日した研究員の協力を得つつ,ミャンマーにおいて,ミャンマーの不動産制度について調査・研究を進めていくことにしています。