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法制度整備支援の現場から

私は,日本の検事ですが,2016年4月に法務省からJICAの長期派遣専門家としてベトナムに派遣され,法制度整備支援の活動を行っています。ベトナムに対する法制度整備支援は,1994年に法務省が開始し,その後,1996年にJICAのプロジェクトとして行われるようになってから現在まで20年以上も続いています。その間,民法を始めとする法令の起草支援や人材育成・実務の改善支援などを行ってきました。既にたくさんの法令が制定,改正されましたので,もう日本の支援は必要ないのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし,現実には,法令は制定されても,法令間で不整合が生じていたり,適用が統一されていなかったり,実施のために必要な下位規範や制度が整っていないため使えないなど色々な問題が残っています。そこで,2015年から始まった私たちの新しいプロジェクトでは,これまでの活動に加え,法令の整合性・明確性の確保のための活動も行っています。

法令の整合性・明確性を確保するためには,法令を制定・改正する段階で事前の検討,審査をしっかり行うことが必要です。しかし,ベトナムではこれまで,事前の検討,審査を十分に行うという意識や体制が十分ではありませんでした。まずは,必要な法令を作ることを急がなくてはいけなかったという事情からある意味仕方がなかったのかもしれません。また,事前の検討,審査を行うための能力を備えた人材も不足していました。その結果,整合性や明確性に問題がある法令が存在する現状になっています。

私たちは,ベトナムの法令の整合性・明確性を確保するための効果的な活動は何かを検討しなければなりません。その際,日本と同じやり方をそっくりそのまま押し付けても上手くいきません。ベトナムの現状に合致し,日本の支援がなくなった後も続けることができる体制を構築することを目指し,ベトナム側と議論を交わしながら支援を行っています。

専門家と現地スタッフ(ハノイのプロジェクトオフィスにて)写真

専門家と現地スタッフ(ハノイのプロジェクトオフィスにて)

ホイアンの風景写真

ホイアンの風景