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法制度整備支援の現場から

みなさんは,「法整備支援」と聞くと,どのようなことを思い浮かべますか。法整備支援というと,法律を作ることを支援する(立法支援)と思われる方が多いかもしれません。確かに,立法支援は法整備支援の重要な内容ではありますが,それは法整備支援の内容の一部に過ぎません。いくらいい法律を作ったとしても,それを正しく使うことのできる人材がいなければ,法律は絵に描いた餅になってしまいます。したがって,法律家を育てることも,立法支援と同じぐらい重要な法整備支援の内容なのです。

私が現在赴任しているカンボジアでは,10年ほど前に日本の支援で民法及び民事訴訟法が完成しましたが,過去の悲惨な歴史も相まって,現時点でもそれらの法律を正しく使うことのできる人材が少ないのが現実です。そこで,昨年4月より,独立行政法人国際協力機構(JICA)の「民法・民事訴訟法運用改善プロジェクト」として,法律家が法律を正しく運用する力をつけるための支援が行われています。具体的には,裁判書面(訴状,答弁書,準備書面及び判決書)のサンプル作成並びに判決書公開につき,裁判官,弁護士,大学教授等から構成される各ワーキンググループを設置し,メンバー間で議論しながら書式を作成したり,判決書公開のプロセスを考えたりしています。このような方法を採ることにより,ワーキンググループでの議論を通してメンバーの法的知識を向上させるだけでなく,書式例や判決書の公表を通してカンボジアの法律家全体の法的知識を向上させることが期待できます。

また,よい法律家を育てる前提として,大学等での法学教育も重要です。プロジェクトオフィスでは,名古屋大学日本法教育研究センター(名古屋大学がカンボジア王立法律経済大学内に開設している,日本語と日本法を教える機関。詳細はhttp://cjl.law.nagoya-u.ac.jp/を参照して下さい。)で学ぶ学生たちを毎年インターン生として受け入れています。さらに,インターン生の一部は卒業後プロジェクトオフィスで働いています。これにより,法律家の卵である学生たちがカンボジアの民法・民事訴訟法やそれらと共通点の多い日本法に対する理解を深めるためのお手伝いをしています。

(カンボジア長期専門家 前田 優太)

名古屋大学日本法教育研究センターからのインターン生との写真

名古屋大学日本法教育研究センターからのインターン生と

ワーキンググループの様子

ワーキンググループの様子