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法務史料展示室・メッセージギャラリーにおける明治150年関連施策を振り返って

1 経緯

平成30年は明治元年から起算して満150年という節目の年であり,「明治の精神に学び,更に飛躍する国へ向けた施策」として,明治期の若者や女性,外国人などの活躍に光を当てて改めて評価するとともに,当時の技術や文化に触れる機会を充実させることで日本の強みを再認識するような,今後の更なる発展を目指すきっかけとなる施策を推進し,また,明治にゆかりのある建築物を公開することなどがそれぞれ示されました。

法務史料展示室・メッセージギャラリーのある赤れんが棟は,明治政府が諸外国との条例改正に先立ち,近代国家としての体制を整えるため官庁集中計画により竣工された西洋風の建築物のうち唯一現存する建物であること,また,法務図書館には明治期の歴史的価値のある貴重な史料が数多く所蔵されているところ,これまで常設展示されていない史料も数多くあることから,一般公開している法務史料展示室・メッセージギャラリーにおいて明治150年の特集展示を開催し,明治期の若者や女性,外国人などの活躍に光を当てて改めて評価するような記念講演会等を実施することに決まりました。

2 特集展示に向けての準備

明治150年特集展示と記念講演会について,どのような内容で実施するのかについては,法務史料展示室の開室前から監修をいただいている慶應義塾大学霞信彦名誉教授の協力なしには決定できません。
 そこで,霞名誉教授に相談させていただいたところ,快く引き受けていただくことができ,実際に特集展示や講演会を開催するためのプロジェクトチームが司法法制部内に発足し,開催に向けて始動しました。
 特集展示の開催日は平成30年7月2日,記念講演会等は毎年10月に法務省で開催している法の日フェスタで開催することにそれぞれ決まり,その開催に向け,限られた時間の中で,展示内容や講演内容の決定・展示スペースの確保・予算の要求・名誉教授との打合せ・展示パネル等の製作設置作業の調達・展示パネル等の製作設置業者との打合せ及び設置作業・特集展示開催に当たってのチラシの作成や広報を実施して準備を行いました。

3 明治150年特集展示の開催

様々な準備を行い,予定していた開催日である平成30年7月2日に無事に開催することができました。
特集展示の内容は
 (1) 明治28年に竣工した赤れんが棟の建築史料の展示
 (2) 我が国の司法制度の基盤形成に大きく貢献した先人の紹介
 (3) 明治期に編さんされた法典等の新たな貴重な史料の展示
であり,(1)建築史料の展示では,竣工当時から現存する赤れんが壁を唯一むき出しにして展示し,また,赤れんがの製造や赤れんが棟の建築技法の紹介をしており,(2)先人の紹介では,司法制度の基盤形成に大きく貢献した先人の功績などをパネル9枚にわたって紹介し,(3)新たな貴重な史料の展示では,監修いただいた霞名誉教授らに「法曹」「民事法」「刑事法」の3つのテーマに関する法務図書館が所蔵する貴重書を選定していただき,その解説を執筆いただいた上でパネルを作製して貴重書とともに展示を行っています。
 開催日には,当時の法務大臣の上川陽子大臣が視察に訪れ,特集展示を監修いただいた霞名誉教授による展示解説を聞きながら,熱心に展示史料をご覧いただきました。
 また,開催を始めた時期が7月の暑い季節でしたが,広報等の影響か,夏場でも多くの方に法務史料展示室を利用していただきました。

特集展示の様子

(特集展示の様子)

上川法務大臣(当時)の視察の様子

(上川法務大臣(当時)の視察の様子)

4 法の日フェスタにおける記念講演会等の準備

特集展示の開催が無事に終わり,一息つけるかと思われましたが,10月6日の法の日フェスタの足音がすぐ後ろに聞こえてきていました…。
 法の日フェスタで開催するイベントの内容については,記念講演会の実施は決まっていましたが,その他のイベントの最終決裁を経ておらず,内容の企画をすることから始まりました。
 記念講演会については法務史料展示室の監修・協力をいただいている霞名誉教授から承諾をいただいており,法務史料展示室・メッセージギャラリーに展示している貴重な史料に関しての記念講演を行ってもらうことから,講演会後に霞名誉教授もしくは門下生に法務史料展示室・メッセージギャラリーの史料説明会を行ってもらうことを霞名誉教授に提案して了承していただきました。
 また,記念講演会や展示史料説明会の内容は子供には難しいことから,以前から案として上がっていた赤れんが棟見学ツアーの参加者を親子とすることで決定し,見学ツアー後にツアーから出題するクイズ大会を実施することとしました。

イベント内容が決まってからは,イベントの流れや内容の詳細を検討し,イベントに必要なものを用意し,イベントのチラシの作成,イベントの事前申込の受付など,特集展示の準備と同様,様々な準備を行い,また,イベントを実施するにあたって協力してくれる職員との打合せも実施しました。

5 法の日フェスタにおける明治150年記念講演会等の実施

明治150年関連施策のイベントのタイムスケジュールは,午前に赤れんが棟見学ツアーとクイズ大会,午後から記念講演会と展示史料説明会を実施することとなっていました。
 どちらのイベントも事前予約制としていましたが,当日でも若干の枠があったことから,法の日フェスタに来ていただいた入場者を勧誘するなどして参加率が95%となり,多くの方に参加していただけました。

赤れんが棟見学ツアーでは,参加者は,普段歩くことのできない赤れんが棟の周囲や廊下を歩きながら赤れんが棟の建築の説明を聞き,記念講演会と展示史料説明会では,日本法制史研究者の講演や解説を直接聞くというとても貴重な体験をしていただけたと思います。

参加者全員に対しては,赤れんが棟のペーパークラフトをプレゼントし,大好評でしたし,赤れんが棟見学ツアーとクイズ大会,記念講演会と展示史料説明会のいずれも大きな混乱や事故もなく,無事に終了することができました。

赤れんが棟見学ツアーの様子

(赤れんが棟見学ツアーの様子)

クイズ大会の様子

(クイズ大会の様子)

展示資料説明会の様子

(展示史料説明会の様子)

記念講演会の様子

(記念講演会の様子)

6 おわりに

明治150年関連施策において特集展示と法の日フェスタでのイベントを無事に開催することができたことは,大変うれしく思っています。
 無事に開催できたのも,現在の司法法制部の職員だけでなく,準備・企画段階から携わっていただいた職員はもちろんのこと,法務史料展示室・メッセージギャラリーを監修いただいている霞名誉教授,その門下生の先生方の御協力があったからこそと思っております。
 また,明治150年関連施策に注力したことで,普段,法務図書館や法務史料展示室・メッセージギャラリーの管理運営業務をしていただいている外部委託の職員の皆さんに対して,御迷惑をかけてしまったことと思います。
 今回,皆さんに協力していただいて明治150年関連施策を滞りなく実施できました。
 この場を借りて,関わっていただいた全ての方々に御礼申し上げます。

(司法法制課展示企画係 平井)