CONTENTS

スリランカに対する支援について
~第1回スリランカ本邦研修を実施しました~

1 研修実施の背景

法務総合研究所国際協力部(ICD)では,アジア諸国に対し,法律の起草や改正,法律の運用,司法関連の人材育成などの法整備支援を実施しており,これまでの支援対象国はのべ10か国以上に及びます。

このICDの支援対象国に,本年度から新たにスリランカ民主社会主義共和国が加わりました。

スリランカはインドの南東に位置する島国で,2009年まで民族紛争に起因する内戦が続いていましたが,現在は平和を取り戻し,内戦の戦後処理を含めた健全な社会制度の再建が課題となっています。

この健全な社会制度の再建の一つとして,社会正義を実現する裁判所の機能改善が挙げられます。

現在,スリランカの裁判所では,様々な原因により訴訟が遅延し,大量の事件が処理されないまま溜まっている状態で,重大犯罪者が適切に処罰されないなどの問題が生じています。

また,刑事裁判(司法)の健全化は,内戦に乗じてなされた様々な犯罪行為を適正に処理する上でも非常に重要な意味を持ちます。

そこで,ICDでは,JICAがスリランカに対して実施する2年間の国別研修に協力し,「刑事司法実務改善 ~刑事訴訟の遅延解消に向けて 」というテーマを掲げて1回目の本邦研修を実施することとしました。

2 研修内容

第1回本邦研修は,令和2年1月26日から同年2月8日まで実施されました(移動日含む)。

スリランカからは検事,裁判官,警察官など刑事司法に携わる多様な機関から合計11名の研修員が派遣され,日本側の講師やICD教官らと活発な議論を交わしながら研修が進められました。

今回の研修では,日本の刑事司法制度や刑事司法の現場での考え方をスリランカ側に紹介し,質疑応答や議論を通じて,スリランカでの訴訟遅延の原因を見出していくことに重点が置かれました。

スリランカと日本では,バックボーンとなる法制度自体が異なっているため,日本での訴訟遅延への対策が直ちにスリランカでも有効な対策として用いることができるわけではありません。

しかし,充実した議論を通して,研修員自身がスリランカの問題点や対応策について深い検討をすることができ,研修終了時のアンケートでは全ての研修員から,今回の研修について,非常に高い評価を得ることができました。

ICDとしては,今後もスリランカとの関係強化及び法分野での支援に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

研修参加者による発表の画像

研修参加者による発表

第1回スリランカ本邦研修の集合写真(法務本省にて)の画像

第1回スリランカ本邦研修の集合写真(法務本省にて)