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記者が行く!刑務所で医療用ガウンなどの製作を始めました
~新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて~

記 者:

皆さま,こんにちは!

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い,マスクや防護服,医療用ガウンが不足しています。

森法務大臣は,記者会見(令和2年4月24日)において,各地の刑務所で医療用ガウンや布マスクの製作を始めたことを紹介しました。そして,法務省として,関係省庁等が行う新型コロナウイルス感染症対策にも,積極的に助力していくとお話しになりました。

そこで,今回は,刑務所で製作している医療用ガウンや布マスクについて取材したいと思います。

今日は,矯正局成人矯正課作業係の担当者に,法務省の中庭でお話を伺いました。青空の下での取材はとても気持ちがいいものです。法務省赤れんが棟のサツキツツジが満開で見頃でした。

法務省赤れんが棟のサツキツツジ(5月下旬取材当時)

法務省赤れんが棟のサツキツツジ
(5月下旬取材当時)

どこでどのくらい生産しているの?
記 者:

受刑者が刑務作業として,医療用ガウンや布マスクの生産を始めたことに驚きました。ぜひ詳しく教えてください。

担当者:

医療用ガウンは,府中刑務所や横浜刑務所など,全国42か所の刑務所(支所を含む。)で,本年5月から製作を始めました。生産量は,本年10月末までに約120万着の予定です。

布マスクは,それより早く,本年1月に民間企業からの依頼を受けたのがきっかけです。まず,加古川刑務所や高知刑務所で製作を始め,3月と4月に入って大阪刑務所や岩国刑務所など,19か所まで増えました。生産量は,1か月約12万枚(5月末現在)です。

どうして大量に生産できるの?
記 者:

大量ですね!新しく始めたとのことですが,それほどの量を製作できるのは,どうしてですか。

担当者:

刑務所では,元々いろいろな衣類や小物などの縫製作業をしてきました。そこで培った技術や知識などが,今回の製作に生かされています。

技術を生かして医療用ガウンを縫製します

技術を生かして医療用ガウンを縫製します

布マスクを一つ一つ丁寧に縫製します

布マスクを一つ一つ丁寧に縫製します

生産にあたって気を付けていることは?
記 者:

生産にあたって,気を付けていることはありますか。

担当者:

何よりもいち早く,医療の最前線に届ける必要があります。また,医療関係者を感染から守るものとして,高い品質の保持に万全を期す必要もあります。

そこで,受刑者には,迅速かつ慎重な作業を行うよう指導しています。

また,衛生管理も重要です。受刑者には,マスクの着用,うがいや手洗いを励行させています。

衛生面に配慮して作業に当たります

受刑者はどのように感じているの?
記 者:

徹底した感染症対策を取っていますね。ところで,受刑者の方の意欲などはいかがですか。

担当者:

新型コロナウイルス感染症が広がる中で,受刑者は,家族や社会に何もできないもどかしさを感じています。今回の医療用ガウン等の縫製作業を通じて,社会に貢献できることにやりがいを感じ,毎日一生懸命,作業に取り組んでいます。

例えば,どのように作業を行えば,高品質の物をより早く製作できるか,自分たちで工夫したり,提案したりするなど,とても意欲的です。

完成した医療用ガウン

完成した医療用ガウン

布マスクの裁断作業に取り組んでいます

布マスクの裁断作業に取り組んでいます

納品先の反応は?
記 者:

医療用ガウンや布マスクを納めた自治体や民間企業からは,どのような声が届けられていますか。

担当者:

刑務所には,児童から感謝の寄せ書きが送られてきました。また,医療機関関係者の方々から,感謝や激励のお手紙をいただきました。こうした感想に触れると,受刑者もよりやりがいを持って,取り組むことができます。

受刑者の改善更生に役立つの?
記 者:

このように社会貢献につながる作業に携わることは,受刑者にとってどのような効果があるのですか。

担当者:

感謝や激励の言葉を直接いただくと,とても嬉しいものです。このような言葉を通じて,受刑者は社会に貢献していることを実感できます。

そして,自分にできることは何かを考えたり,もっと頑張らなければと前向きになったりします。自分たちは社会の一員なのだという気持ちを持つことは,改善更生や円滑な社会復帰においてとても大切です。今後も社会に貢献しているという実感を大切に指導していきたいと考えています。

矯正展はどうなるの?
記 者:

たくさんの質問に,ご丁寧に説明いただきありがとうございました。医療用ガウンの製作の様子と受刑者にとっての意義をよく理解できました。

最後に,刑務作業と言えば,「社会を明るくする運動」の行事の一環として,毎年,刑務所作業製品の展示・即売会が各地で行われています。

新型コロナウイルス感染症拡大を防ぐために,新たな生活様式が求められる中,今年の矯正展はどのようになりますか。

担当者:

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて,「第62回全国矯正展(全国刑務所作業製品展示即売会)」はやむなく開催を中止しました。

矯正展は,刑務作業の現状とその意義を広く紹介し,矯正行政に対する国民のご理解を得ることを目的として行われています。

秋以降の矯正展等の開催については,情勢を踏まえて検討していきたいと考えています。

さまざまな刑務作業品

さまざまな刑務作業品

第61回全国矯正展の会場の様子

第61回全国矯正展の会場の様子
(令和元年6月実施)

編集後記

毎年,1年に1回開催される全国矯正展を,楽しみにしていた方々も大勢おられたと思います。新型コロナウイルスが1日も早く終息して,各地の矯正展が開催できることを心より願っています。

令和元年に開催された「第61回全国矯正展(全国刑務所作業製品展示即売会)」の実施内容については,法務省だより「あかれんが 65号」の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。

さて,本日の取材はいかがでしたか?

刑事施設では,新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しながら,新型コロナウイルス感染症と第一線で闘う医療従事者等のための医療用ガウンと,マスクを製作している取組の重要性を改めて感じました。大変,有意義な取材でした。

また,刑事施設(刑務所,少年刑務所及び拘置所を総称した呼称)のことをもっとお知りになりたい方は,下記のパンフレットのURLをクリック,又はQRコードを読み取って,ご覧になってください。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。それでは,「記者が行く!」次号でまたお会いしましょう!