加藤保之所長インタビュー

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加藤 保之 大阪医療刑務所長

採用年月日 平成14年10月1日
勤続年数  14年1月(平成28年11月1日現在)略歴
昭和53年 3月 大阪市立大学医学部卒業
昭和59年 3月 大阪市立大学大学院医学研究科博士課程修了
昭和59年 4月 大阪市立大学医学部助手
平成10年 4月 大阪市立大学医学部老年医学研究部門腫瘍分野助教授
平成14年10月 大阪医療刑務所医療部長に採用
平成22年 4月 大阪医療刑務所長

矯正医官となった経緯

 昭和53年に大阪市立大学医学部を卒業し,医師免許取得後はいずれかの医局に入り,臨床研修することが当時は一般的だった。面白そうだったので第一外科に入局した。外科医としてのワーキングハビットを徹底的に叩き込まれた。大学院に進み,修了後,昭和59年に大学教員(助手)となり,教育,研究,臨床に盆も正月もない忙しい毎日を過ごした。平成10年に大阪市立大学医学部老年医学研究部門腫瘍分野助教授を拝命した。胃癌・乳癌を中心に高齢者の癌についての臨床・研究に従事していた。
 医局に入局した当時右も左も分からない研修医を助手として手を取り,足を取り指導いただいた先輩が大阪医療刑務所長でおられ,平成14年夏に,医療部長が退職するので来ないかと声を掛けていただいた。年齢的にも50歳を過ぎ,このままがむしゃらに仕事を続けていくのがきつくなっていたところでもあり,思い切って転職に踏み切った。
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矯正医官に求める人物像

 刑務所は治安最後の砦として国民の安心安全な社会を実現することに寄与している。矯正職員の一員として,国に貢献しているのだとの愛国心と責任感が必要だと思う。
 医療経験が豊富で,人間愛にあふれ,バランス感覚に優れ,寛容な人物。ボランティア精神があり,苦労を厭わない性格の人。正義感があり,チャレンジ精神が旺盛な人。

矯正医官のやりがい

 矯正医官としてのやりがいをあえて探すとなると,矯正医療は様々なシチュエーションがあり,教科書はなく,失敗を重ねつつ場数を踏みながら経験し,そこから解答を得られることが多いこと。矯正医官としてのやりがいはこれらの複雑な応用問題を解くことを楽しめるかどうかだと思う。一般的な意味でのやりがいは少ないのが実際で,給与は民間病院に比べ低い。医療者は患者さんに感謝の言葉を言ってもらうために働いているわけではないが,退院時に一言「ありがとうございました」と言われると,今まで一所懸命に働いてきた苦労が吹っ飛ぶ。受刑者の中には,権利意識が強くて,やってもらって当たり前,何もしてくれないと不満を述べる人が多く,感謝の言葉を述べることは少ない。もっとも感謝の気持ちを持っておれば最初から刑務所に来ないだろうとも思う。
 医療の基本となるのは患者―医療者間の信頼関係に基づく医療であるが,患者である受刑者と国の職員である医療者との間に信頼関係を築くことは難しい,信頼関係のない中で医療を行うことは医療者にとって大変ストレスのあることである。
 ここに来るまでは多くの指導医,専門医などの資格を持っていて,若い先生からは「そんなにたくさんの専門医を持っていて,先生はいったい何が専門ですか」と尋ねられることがあった。従前,公務員は兼業が制限されていたため,5年ごとの資格更新に必要な症例を経験できず,ほとんどを手放してしまったが,今は「矯正医官特例法」ができて専門医更新に必要な症例を社会で経験できる道が開かれている。
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医師である施設長としての心構え

 医療専門施設の施設長は医療のみに目を向けていては立ち行かない。刑務所としての責務を果たすとともに病院としての機能を発揮しなければならない。法律においても刑事収容施設法,医療法に準拠した運営が科せられる。矯正施設の医療は公安職,医療職など多職種の連携の中でチーム医療として運営されている。それぞれ職域における風土や伝統が異なり,考え方に違いがある。職域間の隙間になっているところは自分の領域でないとどちらからも手を出さないことがあるが,両方でオーバーラップしつつ隙間を埋めて行く必要がある。互いの立場を理解し,尊重しつつ,風通しの良い,働きやすい職場づくりが求められる。
 優秀な職員が多いので職員が失敗を恐れずチャレンジできるようにし,仕事は任せる。失敗したらその責任は施設長が全てとる覚悟を持って事に当たる。
上級官庁である矯正管区,矯正局との連携を図り,施設の問題点を明らかにし,人的・物的要望を行い,円滑な施設運営が図れるように努める。矯正医療の崩壊のおそれは深刻であり,このインターネット広報も一つであるが,医師確保に向けた様々な広報等を積極的に行っている。
 矯正行政全般に目を向け,その中で医療刑務所の果たすべき役割を自覚し,全国の刑事施設と連絡を密にし,その責務を果たす。
 現在,政府を挙げて取り組んでいる刑務所出所者の再犯防止のためには,刑事司法制度の流れの中で,検察庁,裁判所,更生保護官署などとの連携を更に密にして行く必要がある。また,施設運営に協力いただいている刑事施設委員会,篤志面接委員,教誨師の方々に対して,誠意をもって接して行かねばならない。
 以上のような広い視野を持ち,全体を掌握しつつ細部にまで行き届いた目配りが必要である。

その他

 長らく医療部長として働く中で,刑務所の中で医療を行う意味について自問する日々が続いた。平成22年に施設長を拝命したときに職員から意見を求め「大阪医療刑務所の理念」を制定した。進むべき方向性を見失いそうになればそこに立ち返る指標となった。
 以下にその理念を述べる。
1 わたしたちは,矯正職員としての使命を全うし,安心安全な社会を実現するため,国民に奉仕します。
2 わたしたちは,刑事施設内の病気を有する被収容者を受け入れることで,刑事施設を支援します。
3 わたしたちは,被収容者の病気回復を図りつつ,規律維持を徹底し,社会復帰を手助けします。
4 わたしたちは,当面する困難な状況を乗り越え,寛恕の精神を養い,人間としての成長を目指します。
5 わたしたちは,職員一丸となり,矯正医療の更なる発展に貢献します。

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