第5 Q&A
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| 債権の譲渡を第三者に対抗するためには,確定日付ある証書による債務者への通知又は債務者の承諾が必要です(民法第467条)。しかし,多数の債権を一括して譲渡するような場合には,個々の債務者ごとに通知・承諾の手続をとることは,手続・費用の負担を考慮すると,実務的には困難な場合があります。 そこで,法人がする金銭債権の譲渡等については,登記をすることによって第三者対抗要件を具備するものとして,民法の規定の特例として創設されたのが,債権譲渡登記制度です。 国の公示制度である債権譲渡登記を利用することで,債権譲渡の第三者対抗要件を簡便に具備することができることになり,企業が保有する債権の流動化が図られ,資金調達等を円滑に行うことができるものと考えられます。 なお,債務者に対しては,債権譲渡登記をしたたけでは対抗することはできず,登記をしたことを証する登記事項証明書の交付を伴う通知をすることにより,債権譲渡の事実を主張することができます。 |
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| 原債権者の商号・名称及び本店・主たる事務所は,譲渡に係る債権の発生の時における商号・名称及び本店・主たる事務所を記録することとなります(動産・債権譲渡登記規則第9条第1項第2号及び第3号)。 この場合には,譲渡に係る債権の内容を確認するための資料としては,契約書,債務者に対する請求書の控え等が考えられるところですが,これらの資料には,当然ながら,譲渡債権の発生の時における商号・名称及び本店・主たる事務所が記載されているでしょうから,原債権者の表示も,それらの資料を参考にして記録することとなるのが通常と考えられます。 |
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| 債権譲渡登記の申請の時においては,譲渡に係る債権の発生の時における債務者である法務太郎が死亡しており,法務一郎が当該債務を相続しているというのですから,譲渡債権の債務者として法務一郎を記録して,債権譲渡登記の申請をすることになると考えられます。 なお,第三者において当該債権に係る契約の同一性を容易に判断できるようにするため,債権個別事項の「債権発生原因」欄に「平成○年○月○日付け(亡)法務太郎と締結した○○契約」等と記録することが考えられます。 |
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| 「債権個別事項ファイル」(CREDIT.xml)の「備考」欄には,他の項目に記録すべき事項以外のものであって,債権を特定するために有益な事項を記録することができますので(動産・債権譲渡登記規則第12条第2項),債権譲渡登記申請に当たって提出する申請データとして作成する「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄及び「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「備考」欄に譲渡金額を記録するという方法を採ることが考えられます。 既発生の債権に係る債権譲渡登記の場合には,「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「譲渡時債権額」欄に,譲渡債権の「譲渡の時における債権額」を記録することとされています(動産・債権譲渡登記規則第9条第1項第6号)。このため,本件のように,債権の一部を譲渡する場合であっても,「譲渡時債権額」欄には「5000000」と記録することとなります。このような場合において,譲渡金額が300万円であることを登記事項証明書等において公示するためには,「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄に「譲渡総額300万円(債権通番1の譲渡額300万円)」と記録する方法や,「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「備考」欄に「譲渡額300万円」と記録する方法が考えられます。 なお,数個の債権に係る登記事項を一括して証明する登記事項証明書(登記事項証明書(一括))には,「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄に記録された事項は記載されますが,「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「備考」欄に記録された事項は記載されませんので,注意する必要があります。 |
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| 投資事業有限責任組合契約に関する法律第2条第2項に規定する投資事業有限責任組合は,法人格を有せず,私法上の権利義務の主体となることはありませんので,当該組合が登記名義人となることはできません。したがって,譲受人としての表示については,当該債権の共有者たる組合員全員を表示するか,組合員からの受託者としての地位において一部の業務執行者の名義によって,債権譲渡登記を申請することになります。 ただし,債権譲渡登記においては,債権譲渡登記申請に当たって提出する申請データとして作成する「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」中の「備考」欄(「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」中の「備考」欄ではないので,注意してください。)に,譲渡に係る債権を特定するために有益な事項を記録することができ,当該事項は債権譲渡登記ファイルに記録され,登記事項証明書及び登記事項概要証明書にも記載されます。そこで,この有益事項として,例えば,「本件債権は,譲受人△△及び□□が組合員である○○投資事業有限責任組合(事務所:東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)の組合財産として譲り受けた共有債権である。」,あるいは,「譲受人△△は○○投資事業有限責任組合(事務所:東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)の無限責任組合員であり,同組合が組合財産として譲り受けた債権につき,組合員からの受託により同譲受人の名義で登記するものである。」等と記録して,債権譲渡登記を申請することが可能です。 |
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| 一般的に,コンピュータで使用するデータについて,特定のプログラムを使用してパスワードを設定することは可能です。しかし,そのパスワードを解除するためには,当該特定のプログラムが必要となり,また,パスワードを設定するためのプログラムは,多数存在しています。 一方,債権譲渡登記システムでは,動産・債権譲渡登記令第7条第1項の規定により提出された申請磁気ディスク(フロッピーディスク等)に記録されている申請データを用いて自動的に処理をしているところ,提出された申請データにパスワードが設定されていた場合には,当該パスワードを解除するためのプログラムを使用することができないため,申請データのパスワードを解除することもできず,その結果,登記申請の受付処理ができないこととなります。 したがって,申請データにパスワードを設定して債権譲渡登記所に提出することは,できません。 |
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| 債権譲渡登記の申請をする場合には,登記すべき事項(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第8条第2項第1号から第5号までに定める事項。ただし,同法第8条第2項第1号のうち,同法第7条第2項7号及び8号に係る部分を除く。)を法務省令で定める構造の申請磁気ディスクに記録して提出する必要があります(動産・債権譲渡登記令第7条第1項)。 債権譲渡登記所に提出された申請磁気ディスクに記録された事項は,債権譲渡登記システムで自動的に読み込まれるので,その内容に誤りがあったとしても,他に却下事由(本店・商号が添付書類と一致しない等)がない場合には,そのまま債権譲渡登記ファイルに記録されることになります。 また,仮に申請データに誤りがあることに登記官が気付いたとしても,登記官自らがデータを修正することは,できません。 したがって,提出された申請データに誤りがあった場合において,取下書が添付されているときは,一旦当該登記申請を取り下げ,これを修正した上で,再度申請していただくことになります。また,郵送による申請の場合において,同様に取下書が添付されているときは,債権譲渡登記所において当該申請の取下げの手続をした後,登記申請書及び申請磁気ディスクを申請人に返送しますので,申請人において申請データを修正し,再度申請をしていただくことになります。 以上を御理解いただき,作成された申請データについては,法務省のホームページで公開している申請データチェックツールにより事前にチェックするとともに,データの内容を印刷するなどして,入力内容を確認した上で,誤りのないように提出していただきますようお願いします。 |
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| 登記が完了した後に登記事項に変更が生じたり,登記事項に誤りがあった場合であっても,一旦登記により対抗要件が備えられた事項については,変更の登記や登記の更正をすることは,できません。 また,譲渡人又は譲受人の一方又は双方の商号・名称又は本店・主たる事務所(譲受人が自然人の場合は,氏名又は住所)に変更が生じたり,誤りがあった場合であっても,対抗要件としての性質上,変更の登記や登記の更正をすることはできないこととされています。ただし,対抗要件としての効力に影響を生じさせない商号・名称又は本店・主たる事務所の変更については,登記事項概要ファイルの記録が変更されることになります(動産・債権譲渡登記規則第6条,第7条)。 なお,債権譲渡登記の後に,譲渡人又は譲受人の商号・名称又は本店・主たる事務所(譲受人が自然人の場合は,氏名又は住所)に変更が生じ,その後,延長登記又は抹消登記を申請する場合には,変更を証する証明書(履歴事項全部証明書等)を添付して申請をする必要があります(動産・債権譲渡登記規則第13条第1項第4号)。 |
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| 債権譲渡登記については,登記した事項に誤りがあった場合であっても,対抗要件としての性質上,その登記の更正をすることはできません。登記後に誤りを発見した場合には,債権譲渡登記をすべきであった債権を対象とする登記を新たに申請することになります。 また,対象である債権を誤った債権譲渡登記については,実体関係を欠くものであり,無効な登記となりますので,動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第10条第1項第1号に規定する「譲渡が効力を生じないこと」に準じて,抹消登記の申請をすることができると考えられます。 この場合の抹消登記の登記原因は,「錯誤」とし,登記原因年月日を記載しないこととして差し支えないものと考えられます。 |
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| 債権譲渡登記に関する証明書には,「登記事項証明書」,「登記事項概要証明書」及び「概要記録事項証明書」の3種類があります。このうち「登記事項証明書」及び「登記事項概要証明書」の交付の請求は,債権譲渡登記所(東京法務局民事行政部債権登録課(同法務中野庁舎所在))に対してすることになります。これらに対し,「概要記録事項証明書」の交付の請求は,債権の譲渡人である法人の本店・主たる事務所の所在地を管轄する登記所に対してするのが原則ですが,それ以外の登記所に対してすることもできます(債権譲渡登記所では,取り扱われておりません。)。 債権譲渡登記制度においては,債務者のプライバシー保護の観点等から,二段階の公示制度が設けられています。譲渡された個々の債権に関する登記事項の全部を記載した「登記事項証明書」の交付は,債権譲渡登記等の当事者,譲渡された個々の債権の債務者その他の政令に定められた利害関係を有する者のみが請求できるとされているのに対し,「登記事項概要証明書」(登記されている事項のうち,債務者名等の個々の債権を特定する事項を除いた事項を記載したもの)の交付は,何人でも請求することができます。 また,「概要記録事項証明書」の交付も,何人でも請求することができます。「概要記録事項証明書」には,同一の譲渡人に係る債権譲渡登記が全てまとめて記載されますが,「登記事項概要証明書」に記載される事項のうち,(1)譲渡人の商号・名称及び本店・主たる事務所,(2)譲受人の氏名及び住所(法人にあっては商号・名称及び本店・主たる事務所),(3)譲受人の本店・主たる事務所が外国にあるときは,日本における営業所又は事務所,(4)登記番号並びに(5)登記の年月日が記載されます。 なお,譲渡人の商号・名称及び本店・主たる事務所に変更があった場合,「概要記録事項証明書」には当該変更が反映されますが,「登記事項証明書」及び「登記事項概要証明書」には反映されません。そのため「登記事項証明書」及び「登記事項概要証明書」には,債権譲渡登記をしたときの商号・名称及び本店・主たる事務所が記載されます。 |
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| 債権の譲受人は,譲受人の立場で,自らを譲受人とする債権に係る債権譲渡登記等についての登記事項証明書の交付を請求することができるほか,当該債権について,他の者を譲受人とする債権譲渡登記がされている場合には,当該債権の譲渡につき利害関係を有する者として政令で定めるもの(譲渡に係る債権を取得した者。動産・債権譲渡登記令第15条第3号)として,登記事項証明書の交付を請求することができます(ただし,自分が譲り受けた債権と同一債権に係る部分に限られます。)。 この場合には,登記事項証明申請書の「当事者指定検索用」の様式を使用して,自分が譲り受けた債権を特定する事項(債務者に関する事項,債権の種類,債権の発生年月日等)を検索条件として請求し,当該登記事項証明書の内容を調査することにより,当該債権に係る債権譲渡登記等の有無を確認することができます。ただし,当該登記事項証明書の交付の申請書には,利害関係を有する者であることを証する書面を添付しなければなりません(動産・債権譲渡登記令第16条第4項第3号)。 |