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会社法制の現代化に関する要綱試案に関する意見募集の結果について

第1 意見数・・・・・1745通

 

第2 意見の概要

 1 会社法制の現代語化(試案第1部・1)

   会社に関して規定する商法第2編,有限会社法,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等について,片仮名文語体で表記されている規定の平仮名口語体化を図ること,用語の整理及び解釈等の明確化を図ること,これらの規定を一つの法典(会社法(仮称))としてまとめ,分かりやすく再編成することについては,解釈の明確化等について慎重な意見を述べるものが少数あったが,多数は賛成意見であった。

 

 2 総則関係(試案第2部)

   会社の商号に関して,商法19条及び商業登記法27条によるいわゆる類似商号規制を廃止し,「会社の目的」として定款に記載することができる内容の柔軟化を可能とする提案については,賛成意見が多数を占めた。また,商法20条の見直しについては,賛否は分かれたものの,同条を削除するという案に賛成する意見が多数であった。

 

 3 合名会社・合資会社関係(試案第3部)

   合名会社・合資会社の両会社類型を一つの会社類型として規律する方向で検討することについては,賛成意見が多数を占めたが,別々のままでも不都合ではないなどの反対意見や,合名会社・合資会社については廃止も含めて存在意義を検討すべきであるとする意見もあった。また,無限責任社員1人のみの合名会社の設立・存続を許容するとの提案については,弊害を生むおそれがあるなどの反対意見を述べるものもあったが,賛成意見が多数を占めた。会社が無限責任社員となることができないものとする規制を廃止する方向で検討するとの提案については,ガバナンス等に関する規定が整備されていない大規模な人的会社を作ることが容易になるとして反対する意見もあったが,賛成意見が多数を占めた。

 

 4 株式会社・有限会社関係(試案第4部)

 (1)株式会社と有限会社の規律の一体化(試案第4部・第1)

   株式会社と有限会社の規律の一体化を図り,両会社類型を1つの会社類型として規律する方向で検討するとの提案については,賛成意見が多数を占めた。賛成意見の中には,現行制度で可能な事項が制限されたり,いたずらに新たなコスト負担が増加したりしないように留意すべきであるとするものや,両会社類型を一つの会社類型として規律するに際しては有限会社を廃止して株式会社制度に吸収すべきであるとするものなどがあった。反対意見としては,現行の有限会社制度の持つ柔軟さや閉鎖企業としての特色が減殺されかねないとするものなどがあった。

 

 (2)設立関係

   ア 最低資本金制度(試案第4部・第2・1)

   試案では,最低資本金制度について,設立時における払込価格規制としての機能に関しては,払い込むべき金銭等の価額について,株式会社について現行の有限会社と同額の300万円とする案(a案),株式会社・有限会社について300万円よりもさらに引き下げた額(例えば100万円,10万円等)とする案(b案),設立時に払い込むべき金銭等の額については規制を設けないとする案(c案)という3案が掲げられていたが,これについては,a案を支持する意見とc案を支持する意見とが多数を占めた。a案を支持する意見の中には,詐欺的な会社の設立防止を理由とするものや平成2年に制度の見直しがされたことを考慮すると時期尚早であるとするものがあった。c案を支持する意見の中には,創業・起業を増やし自由な経済活動を活発化させる必要があるとするものや,設立時に必要な資本の額は事業の規模や性格,関係者の求める信用力などによって様々であることを指摘するものなどがあった。また,a案からc案までのいずれかの案で見直しを行うこと自体について反対ないしは疑問を述べる意見も複数寄せられた。
 また,b案又はc案を採った場合でも,剰余金分配規制としての機能につき,純資産額が一定の金額未満の場合には剰余金があっても株主に分配することができないものとするとの提案に対しては,賛成意見が多数を占めた。また,会社の成立後に資本として表示することができる額について下限規制を設けないものとするとの提案についても,賛成意見が多数を占めた。

 

   イ 現物出資等に係る検査役の調査(試案第4部・第2・5,6)

   事後設立に係る検査役の調査制度について,これを廃止するとの提案については,賛否が分かれた。反対意見の中には,現物出資規制の潜脱防止としての制度の意義を強調するものが多かった。
 また,現物出資・財産引受けに係る検査役の調査の制度について,設立時の少額特例の要件の緩和を図るとの提案については,賛成意見が多数を占めた。検査役の調査を要しない有価証券の範囲を「取引所の相場のある有価証券」から「市場価格のある有価証券」に拡大するとの提案についても,賛成意見を述べるものが多数であった。また,会社に対する金銭債権(履行期限が到来しているものに限る)を当該債権額以下で出資をする場合には,検査役の調査を要しないものとするとの提案については,賛成意見を述べるものが多数を占めたが,反対意見を述べるものもあり,その理由としては過大評価となるおそれを指摘するものがあった。

 

 (3)機関関係

   ア 株主総会・社員総会(試案第4部・第4・1)

   招集地に関する商法233条を削除するとの提案については,賛成意見が多数を占めたが,経営陣による濫用のおそれを指摘する反対意見もあった。有限会社に議決権の不統一行使,代理人の数の制限を認めるとの提案については,賛成意見が多数を占めたが,3日前までの議決権不統一行使の通知義務については,これを廃止すべきであるとする意見と維持すべきであるとする意見とに分かれた。

 

   イ 取締役の資格(試案第4部・第4・2)

   破産の宣告を受け復権していないことを取締役の欠格事由から外すとの提案については,意見が分かれた。反対意見の中には,自己の財産の管理処分権を有しない者が会社財産の管理処分権を有するのは不適切であるとするものが多かった。

 

   ウ 取締役の任期(試案第4部・第4・3)

   譲渡制限株式会社(委員会等設置会社及び取締役会が設置されないものを除く)の取締役の任期を延長するという提案については,意見が分かれたが,賛成意見が多数を占めた。反対意見の中には,譲渡制限株式会社でも取締役会を設置したものについては所有と経営とが一致していないことがあり,任期延長は適切でないとするものなどがあった。

 

   エ 取締役会の書面決議(試案第4部・第4・5)

   取締役会の書面決議を一定の場合に認めるものとするとの提案については,意見が分かれたが,賛成意見が多かった。反対意見は,取締役会を形骸化させるおそれがあるとするものなどであった。

 

   オ 取締役の責任(試案第4部・第4・7)

   任務懈怠責任について商法266条2項,3項に相当する規定を設けないこととする提案については,意見が分かれたが,賛成意見が多数を占めた。なお,商法266条2項に相当する規定を設けないことには賛成するが,同条3項に相当する規定は設けるべきであるとの意見もあった。
 違法な剰余金の分配についての責任を過失責任化するとの提案については,賛成意見が多数を占めた。剰余金の分配額に係る弁済責任を負うべき者の範囲については,分配をした取締役に加え,取締役会の決議に賛成した取締役も含めるとする提案に賛成する意見が多数を占めた。
 期末のてん補責任を負うべき場合を一定の場合に限定する提案については,意見が分かれた。厳格に過ぎれば機動的な配当・経営を損なうなどとして賛成する意見もあったが,過失責任である以上,期末の資産の時価評価の切下げ等に伴って生ずる欠損についての予測は過失の存否の問題として処理することが可能となるため,現行制度を改める必要性に欠けるなどとする反対意見もあった。
 また,利益相反に係る責任の過失責任化するとの提案については,賛成意見が多数を占めた。

 

   カ 会計監査人(試案第4部・第4・11)

   大規模な有限会社にも会計監査人の設置を強制する方向で検討するとの提案については,1団体を除きすべて賛成意見であった。
 現行の小会社の範囲の会社であっても,会計監査人を任意に設置することができることとするとの提案については,意見が分かれた。反対意見の理由としては,ベンチャー企業のニーズを背景として検討を行うことは圧倒的多数の中小企業の実態を無視しているなどとするものが多かった。
 会計監査人の会社に対する責任を株主代表訴訟の対象とすることについて意見を述べたもののうち,反対意見を述べるものは1団体であり,その他はすべて賛成意見であった。会計監査人の会社に対する責任について,いわゆる一部免除制度を導入することについては,意見が分かれた。反対意見の理由は,会計監査人は責任追及の訴訟の中又は訴訟外で和解等において責任額の減額を求めることができるので,一部免除制度は不要であるとするものなどであった。

 

 (4)計算関係

   ア 剰余金の分配規制(試案第4部・第5・1)

   株主に対する会社財産の払戻行為(現行の利益の配当,中間配当,資本又は準備金の減少に伴う払戻し,自己株式の買受け等)等に対して横断的・統一的な財源規制をかけるとの提案については,1団体を除きすべて賛成意見であった。

 

   イ 利益処分(試案第4部・第5・4)

   委員会等設置会社,監査役設置会社の別を問わず,会計監査人を設置し,取締役会の任期を1年とする株式会社においては,一定の場合には取締役会の決議により,いつでも剰余金の分配,市場取引による自己株式の取得等を行うことができることとするとの提案については,賛成意見が多数を占めたが,利益処分については株主総会の決議事項にとどめるべきであるなどとする反対意見もあった。

 

 (5)社債・新株予約権・新株予約権付社債関係

   ア 有限会社の社債発行(試案第4部・第6・1)

   社債に関する提案のうち,有限会社による社債等の発行を認めるものとするとの提案については,賛成意見が多数を占めたが,ガバナンス機構が整備されていないなどを理由として反対意見を述べるものもあった。

 

   イ 社債の発行事項の決定(試案第4部・第6・2()

   代表取締役に対して社債の発行に係る一定の事項の決定につき授権することができることを明確化するとの提案については,賛成意見が多数を占めたが,一定の会社に限定して認めるべきであるとする意見や,代表取締役の独断専行を許すおそれがあるとして反対する意見もあった。

 

   ウ 社債管理会社(試案第4部・第6・3)

   社債管理会社の行うべき「社債ノ管理」に約定権限を含めるとの提案については,寄せられた意見のすべてが賛成意見であった。
 支払停止等の前3ヵ月間のみならず,支払の停止後の弁済の受領等も商法311条ノ2第2項の規制の対象とするとの提案についても,寄せられた意見はすべて賛成意見であった。3ヵ月の期間の延長の要否については,延長すべきでないとする意見が1団体から寄せられた。また,社債管理会社の一定の子会社等についても責任を問うものとするとの提案については,反対意見が1団体から寄せられたほかは,すべて賛成意見であった。

 

 (6)組織再編行為(第4部・第7)

   いわゆる合併対価の柔軟化の提案については,賛成意見が多数を占めた。なお,対価は国内財産に限るべきであるとする意見や,金銭を対価とすることには反対であるなど,条件付で賛成意見を述べるものもあった。反対意見は,被吸収者等を株主から排除する論理を法制度化するものであるとの理由によるものなどであった。
 簡易組織再編行為の要件を緩和するとの提案については,2団体の反対意見のほかはすべて賛成意見であった。要件の緩和の程度については,20パーセントとすべきであるとするものや,10パーセントとすべきであるとするものなどがあった。
 支配関係にある会社間の組織再編行為につき簡易な手続を創設するとの提案については,1団体が消極的意見を述べたほかは,すべて賛成意見であった。支配関係の要件としては,総株主の議決権の9割以上とするものや,3分の2以上とするものなどがあった。
 吸収合併及び吸収分割について,登記時ではなく会社間で定めた日に効力が生ずるものとするとの提案については,賛成意見が多数を占めたが,法律関係の明確化,単純化を図るべきことを理由として反対意見を述べるものもあった。

 

5 新たな会社類型(試案第6部・1)

   出資者の有限責任が確保され,会社の内部関係については組合的規律が適用されるような新たな会社類型の創設に係る提案については,その創設に賛成の意見を述べるものが多数を占めたが,安易な組織作りは会社と取引をする相手方の保護に欠けることになるなどとする反対意見又は消極的意見もあった。

 

第3 今後における意見の取扱い

   提出された意見については,今後開催される法制審議会会社法(現代化関係)部会における審議の参考資料として使用する。