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電子情報処理組織を使用する方法による申請の導入等に伴う不動産登記法の改正に関する担当者骨子案の補足説明

第1  はじめに

 ( 骨子案の構成)
 1  法務省民事局においては,平成16年度中に不動産登記制度に電子情報処理組織を使用する方法による申請(以下「オンライン申請」という。)を導入することを前提として,不動産登記制度の見直し作業を行っている。その一環として,不動産登記申請のオンライン化を推進するための法制面及び技術面の調査研究を実施するため,財団法人民事法務協会に設けられたオンライン登記申請制度研究会において,その成果を取りまとめたオンライン登記申請制度研究会最終報告書(以下「研究会報告書」という。)(注)について,本年4月1日に公表し,一般に意見を募集した。
 骨子案の第1は,オンライン申請の導入に伴う検討事項に関するものであり,研究会報告書及びこれに対する意見募集の結果を踏まえ,法務省民事局の担当者において作成したものである。次に,骨子案の第2は,現代語化その他の事項に関するものであり,法務省民事局の担当者として,オンライン申請の導入に伴う今回の法令の改正において,併せて取り上げることを検討中の事項を列挙したものである。

  (注 )研究会報告書については,法務省のホームページ(/content/000002064.pdf)を参照されたい。

 ( 不動産登記申請のオンライン化を行う理由)
 2  行政手続の申請手続の電子化は,「行政情報化推進基本計画」(平成6年12月25日閣議決定。平成9年12月20日改訂)をはじめとして,従来からの政府の方針として推進されてきた。特に「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)においては,電子政府を実現するための政府認証基盤の整備が掲げられ,平成13年1月22日の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部のe-Japan戦略では,「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になる」という目標を実現するため,「2003年までに,国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」こととされている。

 3  このような政府の方針に沿い,不動産登記制度についてオンライン申請を導入する趣旨は,これにより,登記事務の簡素化・効率化と国民の負担軽減を実現し,国民の利便性の向上を図るところにある。上記e-Japan戦略においても,電子政府の実現に当たっては,「行政の既存業務をそのままオンライン化するのではなく,IT化に向けた中長期にわたる計画的投資を行うとともに,業務改革,省庁横断的な類似業務・事業の整理及び制度・法令の見直し等を実施し,行政の簡素化・効率化,国民・事業者の負担の軽減を実現することが必要である」(II.重点政策分野 3.電子政府の実現(1)基本的考え方)こととされている。したがって,不動産登記制度にオンライン申請を導入するに当たっても,これにより,オンライン申請の一般的メリット(登記所の窓口に行かずに即時に申請行為が可能であること)を実現することはもちろん,オンライン以外の方法により行われる申請を含め,不動産登記の手続全般について見直し,登記事務の簡素化・効率化及び利用者の負担軽減を図る必要がある。

第2  オンライン申請と窓口申請との関係

 ( 二つの申請方法の併存)
 4  登記事務の効率化という観点からは,複数の申請方法を併存させるよりも,オンライン申請に一本化する方が望ましい。複数の申請方法が併存するときは,各別の申請方法によりされた申請の受付の前後を確定するための仕組みが必要になるほか,複数の事務処理の手順が存在することになり,登記事務が複雑化するからである。しかし,オンライン申請を導入する趣旨は,国民にとって利便性を高めるためであり,多数の国民が利用する不動産登記手続について,その申請方法をオンライン申請に一本化し,申請書を管轄登記所に提出する方法による申請(以下「窓口申請」という。)を認めない制度とすることは,現時点では考えられない。したがって,オンライン申請のほか,窓口申請も併存して認めることとし,両者が併存することを前提とした制度とすべきである。そこで,骨子案においては,オンライン申請は,窓口申請と併存して,認めるものとしている(骨子案第1-1)。

 ( オンライン申請と窓口申請の受付)
 5  登記は,登記官が申請を受け付けると,受付の処理をし(不動産登記法第47条第1項参照),その受付の順序に従い実行する(同法第48条参照)。権利に関する登記は,登記の前後によって,登記された権利の順位が決まる構造になっている(同法第6条参照)。表示に関する登記においても,申請の受付順序に従い,登記を実行するという原則が適用される(同法第48条参照)。このように登記が受付の順序に従って処理されるというのは登記制度の原則である。オンライン申請と窓口申請を併存させる場合においても,この原則を維持すべきである。すなわち,申請方法のいかんを問わず,申請情報又は申請書がそれぞれ登記官に到達した時点で,受付が行われ,それぞれ受け付けされた順序で登記が実行されるべきである。このような制度的要請を実現し,両者の受付の時間的先後を明確にするため,オンライン申請を導入する場合には,オンライン申請と窓口申請とは,同一の受付システムにより受付処理がされるようなシステムの構築をするのが相当である。

 6  以上の考え方に基づき,骨子案においては,オンライン申請と窓口申請とは,いずれも受付の順序に従って処理するものとし,両者の前後は,各申請の受付の時点の先後によるものとしている(骨子案第1-2)。

  (注 )オンライン申請は,「法務省オンライン申請システム」に送信され,「オンライン登記申請配信・受付管理システム」を経由して,「登記所システム」に配信され申請の受付がされる。オンライン申請においては,登記所の開庁時間にかかわりなく,「法務省オンライン申請システム」に対する送信を行うことが可能であるが,登記所の閉庁時間後に「オンライン登記申請配信・受付管理システム」に配信された申請についての,「登記所システム」における受付の処理は,開庁時間の開始時に行われる。この場合において,オンライン申請は,開庁時間の開始直後においてされた窓口申請に先だって受付がされることになる。

第3  申請構造の見直し

 ( 出頭主義の廃止)
 7  オンライン申請は,申請人が登記所に赴くことなく申請を可能とする制度である。既に,「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成14年法律第152号)による改正後の不動産登記法第26条第1項の規定においては,オンライン申請の場合においては,出頭主義の適用が排除されている(注)。そこで,窓口申請においても,権利に関する登記について,この原則の適用を引き続き維持すべきかが問題となる。

  (注 )「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(平成14年法律第151号)の制定に伴い,技術的見地から必要最小限の改正がされたものであり,具体的なオンライン申請の導入については,現在検討中の不動産登記法等の改正によることになる。

 8  不動産登記法が,権利に関する登記の申請について当事者又はその代理人が登記所に出頭してしなければならないという出頭主義を採用した理由として,対面により申請人が本人であることを確認することが挙げられることがある(ただし,現行法の立法過程において,出頭主義が導入された理由は必ずしも明らかでない。)。また,郵送申請を認めると受付順位の決定に不便を来すことや,即日補正の便宜を図ることが出頭主義の根拠とされることもある。

 9  しかし,登記の真実性を確保するための本人確認は,出頭主義を維持すること以外の方法によっても可能である。また,受付順位の決定については,後記68のとおり,同一の不動産について前後が明らかでない数個の申請についての規律を設けることを前提にすると,順位の決定に不便を来すとはいえない(注)。さらに,補正の問題は,出頭主義を採るか否かにかかわらず,制度の運用の問題として考慮すべき問題である。そこで,オンライン申請の導入を契機に,申請人の負担を軽減する趣旨から,申請方式の問題としては,出頭主義を廃止することが相当である。

  (注 )官公署の嘱託による登記については,権利に関する登記であっても,出頭主義は厳格に適用されていないのが現状である。

 10 以上のような考え方に基づき,骨子案は,権利に関する登記の申請における出頭主義の制度を廃止するものとしている(骨子案第1-3)。結果として,窓口申請には,当事者又は代理人が登記所に出頭して申請書を提出する現行の方法のほか,使者が登記所に出頭して申請書を提出する方法又は郵送等により申請書を送付する方法(注)等が含まれることになる。

  (注 )研究会報告書第3補足説明(4)においては,郵送申請を認めるかという論点について,両論が併記されていたが,骨子案は,出頭主義を廃止した結果,窓口申請の一つとして郵送申請も認められることになるという立場を採るものであり,郵送申請を独自の申請方式とする考え方は採っていない。したがって,窓口申請の受付の問題としては,登記所の窓口に到達した時点で順次受付をするという立場(研究会報告書第3補足説明(14)の乙2説)を採ることになる。

 ( 共同申請主義)
 11 次に,権利に関する登記の申請は,現行法上,登記権利者と登記義務者との共同申請によることとされている(不動産登記法第26条)。この共同申請主義の根拠は,次のとおりと考えられる。すなわち,民法第177条が登記を物権変動の対抗要件と位置づけていることから,登記を申請するのか否かは,原則として当事者の自由といえる。したがって,登記権利者について,自ら関与せず登記が申請されるのは望ましくない。一方,登記名義人である登記義務者が自ら不利益を受ける登記について,登記申請人となって申請していることにより,登記の真実性を確保することができる。

 12 このような根拠からすると,登記権利者が申請人になることは当然としても,真実性の担保の根幹にあるのは,登記義務者が当該登記申請について承諾しているということにあるはずである。したがって,この承諾が手続上明らかである限り,登記義務者を申請人とする論理的必然性はない。そこで,オンライン申請を導入するに当たり,登記権利者が登記義務者の承諾を得て単独申請をするという構造にするという考え方もあり得る。

 13 しかし,権利に関する登記において,登記により利益を受ける者と不利益を受ける者が共同で申請するという構造は,現行制度の基本的な仕組みである。共同申請構造は,出頭主義のもとでは,登記の申請をするためには登記権利者と登記義務者の双方が登記所に出頭しなければならないことを意味するが,出頭主義を廃止するのであれば,登記権利者及び登記義務者は,申請書又は申請情報に記名押印又は電子署名をしなければならないとしても,登記所に出頭する負担を負うことがなくなる。他方,単独申請構造のもとで登記義務者の承諾について押印や電子署名等が必要になることには変わりはない。そうであれば,出頭主義を廃止することを前提にすると,オンライン申請の導入によって,共同申請構造自体を変更する積極的な理由はない。

 14 以上のような考え方に基づき,骨子案においては,権利に関する登記における共同申請主義は維持するものとしている(骨子案第1-4)。なお,表示に関する登記については,出頭主義は採られておらず,共同申請構造も採られていないので,申請構造について現行制度から変更はない。

第4  申請人の本人確認

(電子署名と電子証明書)
 15 一般に,窓口申請においては,申請書に申請人が行った署名や印鑑(申請書又は委任状に押印された印影をいう。以下同じ。)により,その作成者を確認することができる。なぜなら,書面による手続においては,情報の作成者を示す情報とその本体となる情報とが一つの紙という媒体に不可分の形で固定され,同時に提供されるからである。オンライン申請には,窓口申請のような固定された媒体は存在しない。しかし,オンライン申請においても,窓口申請と同様に,申請情報の作成者を確認するための一般的な仕組みが必要であることはいうまでもない。現時点において,オンラインにおける本人の認証のために利用可能な制度としては,政府及び地方公共団体レベルにおいては,「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(平成14年法律第153号)に基づく公的個人認証制度や,「商業登記法」(昭和38年法律第125号)に基づく印鑑提出者の電子署名の認証制度がある。また,「電子署名及び認証業務に関する法律」(平成12年法律第102号)に基づく主務大臣の認定を受けた認証業務による認証の制度もある。不動産登記のオンライン申請制度の導入に当たっては,政府認証基盤の枠組みの中で,これらの制度を利用することが前提になる。

 16 そこで,骨子案においても,不動産登記申請のオンライン化にあっては,申請人を確認するため,電子署名及び電子証明書を利用することを前提としている(骨子案第1-5の前注)。

 ( 登記済証の存在意義)
 17 ところで,不動産登記申請の手続の特色の一つは,一般的な本人確認手段である印鑑及び印鑑証明書のほか,登記義務者である申請人を確認する登記手続固有の手段として,登記済証が用いられていることである。すなわち,登記済証は,登記完了時に登記権利者に交付される書面(不動産登記法第60条第1項)であり,登記記録上の登記名義人が登記義務者として申請人となるという申請構造のもとでは,登記義務者として申請人となる者は,過去に登記権利者として登記を受け,その際,登記済証を取得しているはずである。これを前提に,登記済証は,登記申請の原則的な添付書面とされている(同法第35条第1項第3号)。そして,現行制度上,登記済証は,登記義務者の印鑑及び印鑑証明書に加えて要求される(所有権の登記名義人が登記義務者となる申請の場合)ことがあるほか,登記済証があるときは印鑑及び印鑑証明書は不要とされる(所有権以外の権利の登記名義人が登記義務者となる申請の場合)という形で,登記手続固有の本人確認手段となっている。

 18 このような登記済証の提出は,あくまでも本人確認の手段であるから,登記済証の提出がない場合であっても,他の方法で本人確認をすることができれば,登記申請の手続としてはそれで足りるはずである。現行法上も,登記済証の提出がないときは,印鑑及び印鑑証明書並びに保証書の提出に加え,所有権に関する登記については事前通知の手続を経ることによって登記申請が認められている。オンライン申請においては,登記済証という書面自体を利用することはできなくなるから,オンライン申請の導入を契機に,登記申請手続上の本人確認手段としての登記済証を廃止することも考えられる(登記済証の登記完了を通知する機能については,別に通知制度を設ければよい。)。

 19 しかし,仮に,すべての登記の申請について,印鑑及び印鑑証明書又は電子署名及び電子証明書だけで登記義務者の本人確認をすることとすると,少なくとも,所有権の登記名義人が登記義務者となる申請については,現行制度よりも,本人確認の水準が下がることになる。また,所有権に関する登記の申請について,仮に常に事前通知の手続を経ることとすると,現在よりも登記完了までに時間を要することになり,取引の迅速性を害するおそれがある。さらに,現実の社会において,登記済証が登記申請手続上の本人確認手段という制度上の存在意義にとどまらず,不動産取引当事者間において登記申請に必要な書類と引換えに代金決済をする場面で重要な役割を果たしていることも無視することはできない。したがって,オンライン申請導入後においても,登記済証の制度を完全に廃止するのではなく,登記済証の本人確認機能を代替することができる登記手続固有の制度を設けることとするのが相当である。

 ( 登記識別情報)
 20 以上に述べた考え方に基づき,オンライン申請後における不動産登記手続に固有の本人確認手段を検討すると,登記済証と同様,前回の登記申請において登記所が通知した登記名義人固有の識別情報(登記識別情報)を,当該登記名義人が登記義務者として申請する次回の登記申請において提供することを原則とするという方式を採用するのが最も適当である。なぜなら,前回の登記時点で取得した情報を適切に保管する限りは,その情報は登記名義人しか知り得ない情報であるから,当該情報の提供は,登記済証の提出と同様,登記申請手続において,登記名義人が申請をしていることを推認するための手段となり得るからである。すなわち,登記識別情報は,登記事項かつ登記名義人ごとに構成される情報であり,登記名義人のみに通知され,登記所の電子情報処理組織において当該登記事項かつ登記名義人と連動して管理されるものということになる。

 21 このような登記識別情報の本質は,観念的な情報そのものであり,登記済証が,特定物としての物理的存在であったのとは異なる。仮に,ある特定物の固有の属性情報を登記識別情報として考えてみたとしても,それがオンラインで送信されることを前提とする以上,原理的には,媒体とは切り離された情報そのものが登記識別情報とならざるを得ない。また,登記識別情報を紙などの特定の物理的媒体に固定して通知する方法には,それに要する費用の問題を除外して考えても,次のような問題がある。
 (1) オンライン申請があったときも,オンラインで通知することができない。
 (2) オンライン申請により利用した後の媒体は,もはや登記申請に利用できないのに,外観は登記申請の前と後で変わりがないから,取引社会に混乱を招くおそれがある。
 (3) 情報を媒体に埋め込む方法による場合でも,適切に保管しない限り,情報のみを盗み取られるおそれがある(情報を埋め込む方法として二次元バーコードを利用する場合でも,複写機で複写することにより情報のみを盗み取ることが可能である。)。
 (4) 特定の媒体に固定する場合には,媒体自体の存続期間によって媒体の切替えという問題が生じるが,切替時に情報が不正に取得される可能性がある。
 (5) 情報通信技術の進展状況からすると,特定の媒体に依拠する方法が将来にわたって利用可能であるとの保証がない。

 これに対し,特定の媒体に固定せず,情報それ自体を利用する方法は,オンラインで通知が可能であり,特定の媒体がないので(2)のような混乱を生じるおそれもなく,(4)のような媒体の切替えという問題も制度上は存在せず,将来にわたって利用することが可能である。

 22 以上のような考え方に基づき,骨子案においては,登記名義人になった者を識別するための情報である登記識別情報を通知し(その内容としては,例えば,登記事項かつ登記名義人ごとに英数字(AからZまで及び0から9まで)等の組合せによる登記識別記号とすることが考えられる。),その者が次回の登記の申請人として登記の申請をするときには,その者を識別するための情報として,登記所に登記識別情報を提供することを原則とすることとしている(骨子案第1-5-(1))。

 ( 登記識別情報の管理)
 23 登記識別情報は,登記所の電子情報処理組織において作成管理されるものであるから,その導入に当たっては,登記所側において,システム的にも人的にも,その情報の管理を厳重に行うことが大前提となる。また,登記名義人に対し通知された登記識別情報は,当該登記名義人が適切に管理することによって,初めて登記申請手続において,当該登記名義人を識別する情報としての意義を持つ(登記名義人は,登記識別情報の保管方法について,自ら最も適切な方法を選択し,保管することができる。)。そこで,登記識別情報の導入に当たっては,これを登記名義人に対し通知する際,その制度上の意義及び情報そのものとして適切に保管すべきことを,登記所として周知徹底するための方策を採る必要がある。なお,登記名義人が登記識別情報を保管する負担を望まない場合には,後記のとおり,登記識別情報の失効制度を利用することも可能である。

 ( 登記識別情報の通知方法)
 24 登記識別情報の通知は,通知の確実性の観点から,オンライン申請による手続にあっては暗号化技術を利用する方法により通知し,窓口申請による手続にあっては窓口において本人確認をした上で登記識別情報の内容を記載した書面を交付する方法によって行う。暗号化技術を利用する方法としては,例えば,オンライン申請をする際,登記権利者側があらかじめ暗号通信用に公開鍵と秘密鍵を作成し,作成した公開鍵に電子署名をした上,申請情報とともに登記所に送信しておく方法が考えられる。この場合には,登記識別情報は,登記所に送信された公開鍵により暗号化されて通知されるので,通知を受けた者は,自己の秘密鍵により復号化することになる(したがって,通知を受けた者は,公開鍵で暗号化された登記識別情報とこれを復号化する秘密鍵とを別々に保管することによって,保管の安全を期すことが可能となる。)。なお,オンライン申請による手続にあっても,登記識別情報の内容を記載した書面による通知を申請人が要望する場合には,これを交付する方法による通知も検討する必要がある。

 ( 登記識別情報の通知の内容)
 25 登記識別情報の通知の内容としては,例えば,次のようなものが考えられる。
登記識別情報通知書
 ( 登記識別情報の提供を要する申請)
 26 登記識別情報の提供を要する申請は,権利に関する登記を登記権利者及び登記義務者が共同して行う場合のほか,現行法において登記名義人の登記済証の提出を要する申請(不動産登記法第81条ノ2第2項等)と同様とすべきである。したがって,表示に関する登記の申請についても,所有権の登記がある土地の合筆の登記等には,登記名義人の登記識別情報の提供を要することになる。

 ( 登記識別情報の失効請求)
 27 登記識別情報は,情報それ自体であるから,登記済証のように,登記名義人が物理的に廃棄することはできない。また,登記識別情報は,登記申請を行うための申請人を確認するための原則的手段であるが,後記37のとおりの代替手段があるので,唯一の手段ではない。したがって,情報を盗み取られた可能性がある場合その他登記名義人が希望する場合には,これを利用した不正な登記申請を防止するために,登記識別情報を失効させる方法が申請人の負担軽減の観点から便宜である。

 28 そこで,骨子案においても,登記名義人の請求により,登記識別情報を失効させる制度を設けるものとしている(骨子案第1-5-(2))。この請求は,登記識別情報を失念した場合やこれを記録した媒体を紛失した場合等にも利用されるので,登記識別情報の提供を要件としないものとする。もっとも,登記名義人(又はその代理人)以外の者からの請求は認めるべきではないので,登記名義人による請求であることを,オンラインによる請求であれば電子署名及び電子証明書,請求書による請求であれば印鑑証明付きの印鑑で確認することとする。

 29 なお,有効な登記識別情報の提供をして登記申請がされた場合において,その後に登記識別情報の失効請求がされたとしても,申請時点において申請人となるべき者が申請したものと認められる以上,登記申請の要件を欠くことにはならない。このような場合において,申請が却下されることがあるとすれば,他の情報と併せて,申請人となるべき者以外の者による申請であることが積極的に認められるときだけである。

 ( 登記識別情報の有効証明)
 30 登記識別情報は,登記所側の保有する登記識別情報に関する情報と照合して,初めて有効性を確認することができるものであるから,当事者は,その内容を見ただけでは,有効性を確認することができない。しかも,登記識別情報は,その内容を本人以外の者に開示すると,登記名義人を識別する機能が失われる。他方,上記のとおり,現在の不動産取引において,登記申請に必要な書類と引換えに代金決済を行うことが多く,この場合には,登記済証の外観からその有効性を推知しているものと思われる(ただし,最近,複写機の発達により,精巧な偽造の登記済証が作出される事例も散見される。)。このような実務を考慮し,登記申請を行おうとする登記名義人の請求に基づき,登記申請前に,特定の登記事項及び登記名義人との関係において,提供した登記識別情報が有効である旨の証明を行う(この場合にも,登記識別情報の内容は,有効証明の内容として開示されない。)制度を設けることにより,不動産取引における利用者の利便性を図ることとする。

 ( 登記識別情報の有効証明の請求手続)
 31 このような登記識別情報の有効証明は,この制度を利用して不正に登記識別情報を取得させることがないようにするため,当該登記識別情報を有する登記名義人(又はその代理人)に請求者を限定すべきである。そのため,証明請求には,当該登記名義人が有効性の証明を求める登記識別情報の提供が必要となるほか,オンラインによる請求であれば請求情報(又は委任による代理人については委任情報)に電子署名をし,併せて電子証明書の提供を要し,請求書による請求であれば請求書(又は委任による代理人については委任情報)に印鑑証明付きの印鑑を要するものとする。登記識別情報の有効証明は,登記名義人の便宜のために認めるものであるから,その実費等を手数料として徴収する。

 32 以上のような考え方に基づき,骨子案は,登記名義人又はその代理人は,手数料を納付して,その登記識別情報が有効である旨の証明を請求することができるものとしている(骨子案第1-5-(3))。

 ( 登記識別情報の有効証明の内容)
 33 登記識別情報の有効証明内容としては,例えば,次のようなものが考えられる。
登記識別情報有効証明
 ( 登記識別情報の再通知を行わない理由)
 34 現行の登記済証は,再発行が認められていない。そもそも,登記済証が,登記手続固有の本人確認手段として意義を有するのは,登記権利者として登記を受けた者が登記義務者として次回の登記申請をするという手続構造のもとで,登記済証が「前の登記手続の際にのみ発行される。」という他の身分証明書類にはない固有の論理的属性を有することにより,登記済証を提出した者が「前の登記手続の登記権利者であったこと」を直接証明する証拠としての機能を有するからである。登記済証の再発行を認めるということは,登記済証を一般の身分証明書類と同様のものとすることに等しい。再発行や新規発行により,登記済証はその固有の属性を失い,何らかの方法で本人確認さえすることができれば常に発行されるものになるからである。また,登記済証を再発行することは,不正取得の可能性を作るおそれもある。登記済証がなくても,登記申請は可能であり,登記の申請があった際に必要な本人確認を行えば足りる。

 35 上記の点は,登記識別情報についても妥当する。すなわち,登記識別情報は,前回の登記申請時に登記名義人になった申請人に通知される情報であり,それ以外の場面で取得することはできないという点に一般の身分証明とは異なる独自の存在意義がある。確かに,登記識別情報の再通知を認めれば,あらかじめ再通知を得ておくことにより,事前通知の手続を経ることなく,登記申請をすることができるというメリットはある。しかし,他方で,これを認めた場合の不正取得のリスクを考えるならば,現行制度上登記済証の再発行が認められていないにもかかわらず,あえて(成りすまし事件発生のリスクを犯し)登記識別情報の再通知や新規通知の制度を新たに設ける必要はない。

 36 以上のような考え方に基づき,骨子案においては,登記識別情報の再通知は,行わない(注)こととしている(骨子案第1-5-(3)注)。

  (注 )研究会報告書第3補足説明(29)においては,登記識別記号の再発行を認めるかについて,両論が併記されていた。骨子案は,再発行を認めないという立場を採るものである。したがって,新規発行に関する研究会報告書第3補足説明(30)についても,骨子案は消極の立場を採る。

 ( 登記識別情報を提供できない申請における本人確認)
 37 登記識別情報の提供を要する申請において,登記識別情報を提供することができない場合には,登記識別情報の提供に代わる本人確認手段を講ずる必要がある。この場合の本人確認手段は,以下に述べるとおり,登記名義人に対し,登記申請手続とは別の郵送という手段により,登記申請があった旨及び登記申請に間違いがない場合にはその旨の申出をすべき旨の通知をし,その申出がある場合に限り登記をする制度(以下「事前通知制度」という。)によることとする(注)。

  (注 )骨子案の立場は,所有権に関する登記の申請について,事前通知を行うが,対面審査を義務付けない立場である。研究会報告書第3,5においては,所有権に関する登記の申請にあっては,事前通知と対面審査を義務付けるべきであるとの提言がされている。しかし,研究会報告書においても,申請人の本人性に具体的な疑義が生じていない場合についても,必ず対面審査を義務付けることは,申請人の負担が重いとの指摘があった(研究会報告書第3補足説明(37))。
 なお,受付順位の確保については,本人からの申出時ではなく,当初の申請の受付時点とする(研究会報告書第3補足説明(36)参照)。

 ( 現行の事前通知制度の問題点と保証書の廃止)
 38 現行制度においては,所有権に関する登記(所有権の登記がある土地の合筆等表示に関する登記にあって所有権の登記がされる場合も同様である。以下同じ。)の申請にあっては保証書の提出及び事前通知制度により,所有権に関する登記以外の登記の申請にあっては保証書の提出により,登記済証に代替する制度を採用している(不動産登記法第44条,第44条ノ2,第81条ノ2第3項等)。しかし,保証書の制度については,その有用性には疑問も呈されており,匿名性の高い現代社会においては,将来的にわたり,有効に機能していくとは思われない。また,所有権に関する登記の申請における事前通知においても,原則として普通郵便により送付される上,登記名義人に成りすまして申請された住所移転についての登記名義人の表示の変更登記がされた場合には,変更後の住所に通知されるため,保証書を利用した不正登記申請事案が少なからず発生していた。

 39 そこで,骨子案においては,これらの問題点を踏まえ,保証書制度を廃止する(骨子案第1-6なお書き)こととするが,同時に,事前通知制度を充実させた制度を用いるものとしている(骨子案第1-6前段)。

 ( 事前通知制度の内容)
 40 具体的には,事前通知は,本人が確実に受領することができる方法により通知するとともに,所有権に関する登記の申請については,当該登記申請の受付前の一定期間内(例えば6か月。その期間については,不正事案の実態を踏まえる必要があるので,現在検討中である。)の申請に基づき登記名義人の住所について表示の変更の登記がされていた場合には,変更前の登記記録上の住所地に対しても登記申請があった旨を通知することとする。

 41 なお,事前通知の名あて人は,登記名義人本人になるのが原則である。もっとも,法定代理人によって申請している場合にはその法定代理人になるし,登記名義人が法人の場合には,代表者又は法令の規定により法人を代理することができる者(支配人等)によって申請しているときにはその者になる。

 ( 資格者代理人による本人確認の制度的位置づけ)
 42 現在,登記の申請は,多くの場合において,登記の申請の代理を業とすることができる者(司法書士,土地家屋調査士及び弁護士。以下「資格者」という。)が申請人の代理人として行っているのが現実である。一般に,資格者は,品位保持義務を負い,登記申請を代理するときには,不実な登記を出現させないようにするという職責上の具体的な義務を負っている(司法書士法第2条,土地家屋調査士法第1条の2,弁護士法第1条及び第2条)。したがって,資格者が登記権利者側を代理する場合において,登記義務者について本人確認をすることは,依頼者に対する契約上の義務であると同時に,不実な登記の防止という職責上の義務である。また,資格者が登記義務者側を代理する場合にも,登記義務者として委任しようとする者が本人であることを確認をした上で,受任すべきことは,同様に職責上の義務である。登記申請に当たり,必ず資格者に申請代理を委任することを要求する資格者代理強制主義は,立法論として採ることはできないが,以上のような登記申請の現実と資格者の職責を前提とすると,資格者が代理人として行う登記申請の場合に,当該資格者が行った本人確認の結果について,制度上,一定の位置づけを与えることが考えられる(資格者の行った本人確認の結果を制度上認めたものとしては,韓国に例がある。)。現実の登記の申請の多くが資格者代理人によってされていることを踏まえると,資格者代理人による本人確認情報に制度上の地位を認めることは,申請人にとっても便宜にかなうと思われる。

 43 そこで,骨子案においては,資格者が代理人として登記申請をしている場合において,登記名義人を確認したことについて具体的な情報を提供したときは,登記官は,事前通知の手続を経ることなく,当該情報を審査した結果に基づいて本人確認をすることができるものとしている(骨子案第1-6後段)。これは,資格者代理人によって具体的に本人確認がされ,その旨の情報の提供があった場合において,当該情報を信頼することができると認められるときは,登記官は,改めて事前通知(その実質は,登記官による書面質問制度である。)によって本人を確認する必要はないという趣旨である(ただし,所有権に関する登記における前住所への通知は,申請人として申請している者が登記名義人に成りすまして事前通知を不正に受領した場合においても,真の登記名義人に登記申請の事実を知らせ,登記所にその旨の申出をする機会を付与するものであるから,資格者代理人による情報の提供がある場合でも,省略することはできないと考えられる。)。したがって,資格者代理人による本人の確認に関する情報は,現行の保証書のように,単に登記名義人を確認した結果ではなく,登記名義人を確認した方法(面識を有している者か。面識を生じた経過は何か。面識を有しない場合に確認に使用した資料等は何か等)を具体的に明らかにして提供する必要がある。

 44 このように,資格者代理人による本人確認情報に特別の地位を認めるのは,これらの者がその資格に由来する職責上の義務を負い,具体的に代理行為をするに当たり本人確認を正確に行うべき立場にあることを根拠とするものであるから,資格者が提供した情報に虚偽の情報が含まれているときは,当該資格者に対し,懲戒や刑罰などの制裁が課せられるべきことは当然である。

 45 なお,申請情報又は委任情報を記載又は記録した書面又は電磁的記録に公証人その他認証権限を有する公務員(領事等)の認証を受けた場合も,登記官が認証に付された情報の内容を適切であると認めるときは,同様に,事前通知による本人確認手続を経ることを要しないと考えられる。

 ( 登記官の本人確認の審査権限)
 46 権利に関する登記の申請があった場合において,登記官の審査は,一般に,大量な登記事務を迅速かつ円滑に処理するため,申請人から提供された情報のみを対象として行うことになっている。登記官による申請人の本人確認の審査についても,申請人から提供された電子署名及び電子証明書又は印鑑証明付きの印鑑,登記識別情報又はこれに代替する事前通知等によって行うのが原則である。

 47 しかし,現行制度上,出頭した申請人が登記名義人でないことが明らかであれば,当事者が出頭していないことを理由に申請を却下すべきものとされている。この場合の審査は,申請人として出頭した者が本人であるか否かを対面で確認する対人審査である。したがって,現行制度においても,理論上,申請人の本人確認については,登記官は,単に申請人から提供された申請書及び添付書面を対象とする審査以外に,対人審査をすることが認められていることになる。出頭主義を廃止した場合においては,出頭した者が申請人本人であるかを確認するという手続はなくなるから,登記官がおよそ対人審査をする余地がなくなるのかどうかが問題となる。しかし,例えば,申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があるときにおいても,なお登記官は申請人から提供された情報のみによってしか審査できないという原則を形式的に適用し,登記を実行することが相当でないことは明らかである。

 48 そこで,骨子案においては,出頭主義の廃止に伴い,登記官による申請人となるべき者が申請人として申請していることを審査するための権限の内容を明確化することとしている(骨子案第1-7前段)。また,この権限の行使の要件としては,申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる理由があるだけでなく,その理由が相当であることを要求している。これは,申請人の本人確認は,申請人から提供された電子署名及び電子証明書又は印鑑証明付きの印鑑,登記識別情報又はこれに代替する事前通知等によって行うのが原則であるから,登記官の対人審査権は,これらの提供された情報及び手続によって申請人となるべき者が申請人として申請しているという外形がある場合においても,なお,疑うに足りる相当な事情があるという場合に行使する限定的な権限であるという趣旨である。

 ( 具体例)
 49 実際上,この審査権限を発動する場合としては,次のような場合が考えられる。

   (1) ある登記事項及び登記名義人について,誤った登記識別情報を提供した登記申請や有効証明請求が多数回された後,申請があった場合
   (2) 誤った登記識別情報を提供してされた申請が却下される前に,正しい登記識別情報に補正された場合
   (3) 真実の登記名義人と称する者が自らの身分を明らかにする資料を提供した上,第三者による不正な登記申請がされた旨主張し,これを裏付ける資料(被害届等)を提供した場合
   (4) 所有権に関する登記申請について,転送不要で発送した登記記録上の前住所への通知が登記所に返送されなかった場合

 ( 権限の内容)
 50 この審査権限の行使は,申請人又はその代理人に対し,出頭を求め質問をし,又は必要な情報の提供を求めることに限られる。また,この権限は,申請人として申請している者が本人であること(法定代理人の場合には法定代理人本人であること)を確認するために認められるものであるので,登記申請時の申請意思の有効性やその翻意の有無等を対象とするものでないのも当然である。

 51 この審査の結果,申請を却下するのは,登記官において申請の権限を有しない者の申請であるとの認定をすることができる場合に限られる(なお,オンライン申請制度の導入及び出頭主義の廃止に伴い,「当事者カ出頭セサルトキ」(不動産登記法第49条第3号)に代わり,「事件が申請の権限を有しない者の申請によるとき」(商業登記法第24条第4号参照)を却下事由とすることが考えられる。)。

 ( 審査の嘱託)
 52 この審査のために当事者の出頭が必要であると認められる場合において,当事者が遠隔地に居住しているとき等は,当事者に管轄登記所まで出頭を求めることは,相当でない。そこで,申請人の負担軽減の観点から,骨子案では,最寄りの登記所において審査を受けられるようにするため,登記官は,他の登記所の登記官にこの審査を嘱託できるものとしている(骨子案第1-7後段)。

第5  表示に関する登記の申請における添付情報

 ( 添付書面の原本とオンライン申請)
 53 現行法上,登記の申請書には,添付書面として各種の書面を提出する必要がある。一般に書面は,原本とその写しが区別され,ある事項を証明するために書面を提出する場合には,原本を提出するのが原則と解されている。なぜなら,写しである書面は写しの作成者の意思が介在するから,原本である書面に比べて証明力が劣ると考えられるからである。
 一方,オンライン申請においては,申請情報と併せて提供すべき情報(添付情報)が,書面によって作成されていたときは,当該書面そのものをオンラインで送信することは不可能であるから,オンラインにより送信することができるのは,書面の写しに相当する情報でしかないことになる。この場合にも,問題は提供される情報の証明力にあるから,写しに相当する情報であっても,もとの書面の作成者自身が写しである情報の内容を確認し,電子署名及び電子証明書を付したものであれば,オンライン申請における添付情報として,原本である書面そのものが提出された場合と同程度の証明力を認めることは可能であると考えられる。

 ( 表示に関する登記の申請の添付書面)
 54 ところで,表示に関する登記の申請には,現行法上,申請人の所有権を証する書面等図面以外の添付書面を申請書に添付しなければならない場合がある(不動産登記法第80条第2項等)。この場合において,所有権を証する書面として要求される書面には,例えば,建築基準法第6条の規定による確認及び同法第7条の規定による検査のあったことを証する書面,建築請負人又は敷地所有者の証明書,固定資産税の納付証明書等が含まれており,作成者が多岐にわたるのが通常である。これらの書面をオンライン申請に用いるに当たり,上記の考え方を適用すると,相当量の書面を電子化して,写しに相当する情報を作成し,かつ,もとの書面の作成者の電子署名及び電子証明書を付さなければならないことになる。これは,申請人にとっても負担となり,事実上,オンライン申請の利用を否定することにもなりかねない。

 ( 表示に関する登記の申請構造とオンライン申請における原本の提出方法)
 55 そもそも,表示に関する登記においては,権利に関する登記とは異なり,登記官の審査は申請人から提供された情報を対象とするものに限られておらず,登記官が実地に調査することによって,その真実性を担保する仕組みを採用している(不動産登記法第50条,第49条第10号)。申請人の所有権を証明する必要がある申請の場合についても同様である。このように,表示に関する登記の申請においては登記官の調査によって最終的な真実性を担保する構造になっている。これを踏まえると,表示に関する登記の申請をオンラインで行う場合には,上記の観点から,申請情報と併せて提供すべき添付情報の要件を緩和することが考えられる。

 56 すなわち,申請人又はその代理人が,原本である書面の内容と相違ない旨を明らかにして当該書面の写しに相当する情報を提供するときは,もとの書面の作成者の電子署名及び電子証明書を一律に要求するまでの必要はない。登記官は,常に,調査権の行使として,その原本である書面の提示を申請人又はその代理人に求め,写しの正確性と原本の内容を確認することができるからであり,また,確認すべきものだからである(ちなみに,表示に関する登記の申請の大部分は,資格者代理人(土地家屋調査士)によって行われているのが実態であるから,原本である書面の写しに相当する情報の作成及び原本である書面の保管と提示は,資格者代理人によってされることが多いと思われる。)。

 57 以上のような考え方に基づき,骨子案においては,表示に関する登記の申請を電子情報処理組織を使用する方法により行う場合において,添付情報の内容となるべき情報が書面で作成されているときには,申請人又はその代理人が原本の内容と相違ない旨明らかにした原本の写しに相当する情報を添付情報として認めるものとし,この場合においては,登記官が,調査権の行使により,原本の提示を求め,写しの正確性と原本の内容を確認するものとしている(骨子案第1-8)。

第6  権利に関する登記の申請における登記原因証明情報の提供

 ( 登記原因の真実性の確保の必要性)
 58 登記された不動産について新たに取引を行おうとする者は,登記上の登記名義人が真実の権利者であるか否か等(第三者が不正に成りすまして登記を申請した場合でないかどうか,真正な登記名義人の申請により所有権移転の登記申請をしたものの,原因契約に無効原因があったかどうか等)を調査するのが通常である。このような調査を行う際には,登記上の記録をまず参考にすることが想定される。登記原因の記載はそのような調査の手掛かりになる。したがって,登記は,権利変動の過程及び態様について,できるだけ正確に公示していることが望ましいことはいうまでもない。
 また,登記原因によっては,登記の効力に差異があることがある。例えば,相続による所有権移転の登記は,対抗力を有しない。したがって,この観点からも,権利変動の態様を正確に公示する必要がある。

 ( 現行制度)
 59 現行制度は,登記の申請には,「登記原因ヲ証スル書面」(以下「登記原因証書」という。)の提出を必要としている(不動産登記法第35条第1項第2号)。登記原因証書には,登記原因の確認資料として用いる機能のほか,これを利用して登記済証を作成するという機能がある。登記原因証書が最初から存在しない,又は提出することができないときは,その提出を要せず,登記済証作成用に申請書副本を提出する必要があるとされている(同法第40条)。

 ( 登記原因証明情報の提供の必要性)
 60 登記事務の効率化や申請人の負担軽減の観点からすると,オンライン申請制度の導入にあっては,現行制度が申請書副本による代替制度を認めている以上,登記原因の確認は共同申請構造における申請人の誠実性に依拠し,登記原因を確認する具体的な資料の提供は不要とすべきであるという考え方もあり得る。しかし,現行制度が申請書副本による代替を認めているのは,登記原因証書によって登記済証を作成するという機能に着目しているからである。登記済証に代えて登記識別情報を通知する制度のもとでは,登記原因証書の登記済証作成機能を考慮する必要はない。むしろ,上記のとおり,登記原因の真実性を確保することは,不動産取引にかかわる国民一般の利益のために必要な要請である。現行制度については,登記名義人の真実性に比べ,登記原因の真実性の程度は劣り,後に取引を行う者にとっては,不動産の権利関係を調査する際に支障があるとの指摘もある。そこで,新制度においては,登記申請に当たり登記原因を確認する具体的な資料の提供を必要とする制度とすることとする。

 61 もっとも,登記申請に必ず契約書又は電子契約書を添付しなければならないと義務付けることは,民法で採用している意思主義(民法第176条)との整合性のほか,申請人に加重な負担をかけ,不動産取引の迅速かつ円滑を図るという不動産登記制度の趣旨にも反するおそれがある。そこで,登記申請には,権利変動の原因となる具体的な法律要件事実に関する情報を必ず提供させることより,登記原因の真実性を確保するとともに,いわゆる処分証書に限定しないことにより,申請人の負担との調和を図ることとする。骨子案の立場も,このような考え方を前提にしている(骨子案第1-9)。

 ( 登記原因証明情報の内容等)
 62 登記原因証明情報の内容は,これにより登記原因となった物権変動の存在等を確認することができるものである必要がある。したがって,登記原因証明情報は,物権変動の要件事実に該当する具体的事実がその内容となるものでなければならない。

 63 次に,その内容が真実であること(証明力)の確保についての考え方は,登記権利者と登記義務者との共同申請による場合と単独申請による場合とで,区別する必要がある。一般に,単独申請の場合には,登記の原因となる権利変動の当事者のうち一方が申請手続に関与していないのであるから,登記原因証明情報となるものは,申請人以外の者が作成した客観的な情報(公文書等)に原則として限定されるべきである。一方,共同申請の場合は,もともと登記申請の内容の真実性は,当該登記の申請によって利益を得る者と不利益を受ける者が共同で申請する仕組みにより,その限度で確保されているのにすぎないから,両当事者が物権変動の原因となる具体的な法律要件事実について合意していることを認定することができる限り,登記原因証明情報の提供があったものと認めることができると思われる(ただし,登記原因に第三者の許可や承諾を要するときは,当該第三者が作成した許可や承諾を証する情報が必要となることは,現行制度と同様である。)。

 64 例えば,売買を原因とする所有権移転の登記においては,売買契約に基づき所有権が移転したことを明らかにする売買契約の発生原因事実を内容とする情報が提供される必要がある。この場合においては,売買代金に関する情報も登記原因証明情報の一部となる(ただし,具体的な売買代金額が明らかにされていない場合であっても,当事者間に売買契約が成立したことが認められる限り,登記原因証明情報が提供されていないことを理由に登記申請を却下することはできない。)。

 ( 登記原因証明情報の開示)
 65 登記原因証明情報として提供された情報は,登記記録の附属記録として登記所に保存される(骨子案第1-10)。登記簿の附属書類は,個人情報保護の観点から,利害関係がある部分に限り閲覧が認められている(不動産登記法第21条第1項参照)ので,登記記録の附属記録として保存される登記原因証明情報の情報についても,利害関係がある者に限り,閲覧が認められるべきである。このように解しても,当該不動産について取引関係に入ろうとする者は,登記名義人の代理人として,その委任を受ければ,当該登記原因証明情報を閲覧することが可能である。

第7  その他

 ( 登記完了通知の制度)
 66 現在の登記済証は,次回の登記申請において登記名義人が申請していることを確認するために利用されるだけではなく,今回の申請人に対し,文字どおり,登記が済んだことを証明する機能を有している。すなわち,登記義務者には,申請書に添付した登記済証又は保証書を登記済証として還付し,登記権利者には,申請書に添付された登記原因証書又は申請書副本を登記済証として還付することにより,いずれの申請人も登記が完了したことを了知できる仕組みになっている(不動産登記法第60条)。したがって,オンライン登記申請制度の導入後における登記手続においても,この登記の完了の事実を証明する機能を有する登記完了通知の制度を設けるのが相当である。

 67 そこで,骨子案においては,登記完了通知の制度を設けるものとしている(骨子案第1-11)。なお,具体的な登記完了通知の方法としては,登記識別情報の通知をする場合には,登記が完了した旨の通知を兼ねることもあり得るほか,オンライン申請においては,「法務省オンライン申請システム」において処理状況を掲示する方法によることが考えられる。

 ( 同時申請のみなし制度)
 68 骨子案の立場では,権利に関する窓口申請について出頭主義を廃止する結果,窓口申請には,現行のような当事者又はその代理人が管轄登記所に出頭して申請書を提出する方法のほか,使者が管轄登記所に出頭して申請書を提出する方法や郵便等により申請書を管轄登記所に送付する方法を含むことになる。しかし,郵便等で申請書が管轄登記所に送付された場合等は,登記所窓口において,どの申請が先に登記官に到達したかが明らかでない場合がある。このような場合において,これらの申請のうち同一の不動産に関するものがあるときは,これらの申請を同時に到達したものとみなして扱うのが合理的である。

 69 そこで,骨子案では,同一の不動産に関する登記所に提供された前後が明らかでない数個の申請は,登記所に同時に提供されたものとみなす制度を設けるものとしている(骨子案第1-12)。この場合には,申請に同一の受付番号を付することになる(不動産登記法第47条第1項ただし書参照)ので,相互に矛盾する申請については,いずれの申請も却下されることになる。

 ( 登記事項証明書等のオンラインによる送付の請求)
 70 登記事項証明書等の送付について,請求書を提出する方法のほか,電子情報処理組織を使用する方法(オンライン)により請求することを認めるものとする(骨子案第1-13)。

第8  現代語化その他

 ( 現代語化等)
 71 現行の不動産登記法は,国民が広くかかわる不動産登記に関する基本的な法律であるにもかかわらず,明治32年に制定された片仮名書き・文語体の法律であり,かつ,登記技術的な事項も法律事項とされているなど,一般に分かりにくいという指摘を受けていた。司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)は,「我が国の基本的な法令の中には,民法の一部や商法など,依然として片仮名文語体や現代社会に適応しない用語を交えたもの,枝番号や条文引用の方法が著しく煩雑で不親切なものなどがあり,法律専門家以外には容易に理解できないものになっている。分かりやすい司法を実現するためには,司法判断の基礎となる法令(ルール)の内容自体を,国民にとって分かりやすいものとしなければならない。とりわけ基本的な法令は,広く国民や内外の利用者にとって,裁判規範としてのみならず行為規範としても,可能な限り分かりやすく,一般にも参照が容易で,予測可能性が高く,内外の社会経済情勢に即した適切なものとすべきである。」と提言している(同意見書111頁)。

 72 そこで,オンライン申請の導入を契機に,不動産登記法の法文を現代語化する(骨子案第2-1)とともに,最近の立法例を参考にし,現行の不動産登記法に規定されている事項のうち,法律事項とそれ以外の事項との区分を見直すこととする。

 ( 電磁的な登記簿等の本則化)
 73 現行の不動産登記法は,昭和63年の改正法(昭和63年法律第81号)による改正により,電子情報処理組織ニ依ル登記ニ関スル特例を設け,磁気ディスクをもって調製する登記簿の制度を創設した(第4章ノ2)。本年6月1日現在,全国の722登記所のうち,410庁が移行作業を終え,不動産登記の登記事務をコンピュータで処理しており,近い将来には,すべての登記所において登記事務をコンピュータで行うことになる予定である。したがって,現代語化する不動産登記法の全面的な改正にあっては,コンピュータ登記簿を前提とする規定を本則とし,紙の登記簿を前提とする規定は設けないこととする(紙の登記簿については,現行の不動産登記法の規定を適用する。)。登記事務をコンピュータ化する結果,登記申請に共同担保目録を添付させる制度については,申請人の負担を軽減する観点から,廃止するのが相当である。

 74 また,地図についても,法務省民事局においては,平成元年における「地図整備の具体的推進方策」の構想から,地図のコンピュータ化を将来の地図整備の基軸として位置づけ,平成5年に導入された地籍調査の成果として送付される地図を管理・利用する地図管理システムをはじめとして,地図のコンピュータ処理化を推進してきた。もっとも,現在の地図管理システムは,地図の管理・書き入れを行うために,電子情報処理組織を利用するものにすぎない。現行の不動産登記法は,登記所に備え付ける法律上の「地図」が紙であることを前提として,その写しの交付制度等を設けているからである(不動産登記法第21条)。しかし,電磁的記録そのものを地図として位置づけることにより,複写,編集等が容易であるという電子データのメリットを活用することが望ましい。また,現在は,紙の地図が原本とされるため,利用者の要望にかかわらず,地図管理システムにおいて作出される地図の写しも縮尺を変えることができないなどの問題もある。そこで,登記事務の効率化及び利用者の利便性の向上の観点から,地図も電磁的記録媒体に記録することを本則とすることが相当である。建物所在図についても,電子データのメリットを活用すべきことは,地図と同様である。その結果,地図又は建物所在図情報の開示制度についても,地図又は建物所在図に記載された事項の証明書を電磁的記録から編集して出力し,交付又は送付する制度に改めることになる(地図を電磁的記録により作成するときに用いたいわゆる原図については,別途,写しの交付若しくは送付,又は閲覧の制度を設ける。)。

 75 なお,地積測量図や建物図面等の申請に添付すべき図面の情報は,地図又は建物所在図の書き入れ等に利用される情報であり,将来的には,電磁的記録媒体に記録された地図又は建物図面に関する情報と連携して開示することが考えられる。そこで,地積測量図等の提供が電子情報で提供されていない場合(この場合は,登記官が電子情報に変換することになる。)も含め,すべての地積測量図等の情報を,電磁的記録媒体に記録して保管するものとする。したがって,その開示方法についても,地積測量図等に記録された事項の証明書を電磁的記録から編集して出力し,交付又は送付する制度に改める。

 76 以上の観点から,骨子案においては,登記簿並びに地図及び建物所在図は,電磁的記録媒体に記録することを前提とした制度とし,これに伴う所要の改正を行うものとしている(骨子案第2-2)。

 ( 不動産特定番号)
 77 現行の不動産登記法のもとでは,申請書には,不動産の所在の郡,市,区,町村,字及び地番のほか,土地であれば地目,地積を,建物であれば建物の種類,構造及び床面積,家屋番号等の記載を登記簿と同様に正確に記載することが求められている(不動産登記法第36条)。しかし,特定の不動産に固有の不動産特定番号を登記事項とし,不動産特定番号により対象不動産を特定できるようにすることにより,申請情報作成における申請人の負担の軽減を図ることができる。登記事項証明書等の請求においても,不動産特定番号を利用することができることが利用者にとって便宜である。また,不動産特定番号を利用して登記処理事務を行うことができるようになることは,登記事務の効率化の観点からも有益である。

 78 このような趣旨から,骨子案においては,不動産特定番号を登記事項とするものとしている(骨子案第2-3)。

 ( 予告登記制度の廃止)
 79 予告登記は,登記に公信力がないことを前提として,登記原因の無効又は取消しによる登記の抹消又は回復の訴えの提起があった場合において,新たに取引に入ろうとする善意の第三者を保護しようとする制度である。しかし,予告登記には,そもそも警告的な効力しかなく,かえって執行妨害に利用されるなど濫用されているため,予告登記の制度そのものを廃止すべきであるとする見解がある。この見解は,真実,登記原因の無効又は取消しにより自己の権利の回復のために訴えを提起する者は,処分禁止の仮処分をするはずであるから,仮処分の登記(結果として第三者に対する警告ともなる。)なしに予告登記だけがされるのは,予告登記の警告的機能を濫用する目的でされる訴えによることが多いという認識を前提としていると思われる。骨子案は,この見解の立場に立つものである(骨子案第2-4)。

 ( 申請書に添付する電磁的記録)
 80 申請に添付すべき情報が当初から電磁的記録で作成されている場合があることを踏まえ,骨子案においては,窓口申請において,当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録を申請書に添付することができるものとしている(骨子案第2-5,商業登記法第19条の2参照)。

  (注 )なお,表示に関する登記の申請に添付すべき地積測量図等の図面については,前記75のとおり,登記所は電磁的記録媒体に記録して保管することになる。したがって,登記事務の効率化という観点からは,これらの図面は,窓口申請においても,電磁的記録により提出されることが望ましい。しかし,現時点において,制度として,これらの図面を電磁的記録により提出することを義務付けることは困難である。したがって,表示に関する登記の申請に添付すべき地積測量図及び建物図面等の提供方法については,当面は,他の添付情報と同様,電磁的記録で提出することも可能とする制度とした上で,将来検討すべき課題とする。

 ( 職権更正及び審査請求の手続の合理化・簡素化)
 81 現行の不動産登記法においては,登記官の錯誤・遺漏が登記官の過誤によるものである場合には,登記上利害関係を有する第三者があるときを除き,登記官は,遅滞なく(地方)法務局長の許可を得て登記の更正をしなければならない旨規定されている(不動産登記法第64条第1項)。したがって,登記上利害関係を有する第三者がある場合には,その同意があるときであっても,登記官は登記の更正をすることができず,当事者が登記の更正を申請しなければならないという負担を負っていた。しかし,登記官に第三者の同意が明らかであれば,登記官の職権更正を否定する理由はないと思われる。そこで,申請人の負担軽減の観点から,登記官の過誤による登記の錯誤又は遺漏については,登記上利害関係を有する第三者がある場合であっても,その承諾があるときは,登記官は,登記の更正をすべきものとし,職権更正の手続を合理化する必要がある。

 82 また,不動産登記法第154条第2項後段は,登記官の登記完了後は,審査請求に理由があると登記官が認める場合であっても,自ら相当な処分をすることはできず,審査請求ある旨の付記をして登記上の利害関係人に通知した上,監督法務局又は地方法務局長に事件を送付すべきことを規定している。この規定は,登記完了後は,およそ登記官が自ら相当な処分をすることができないという考え方に基づくものである。しかし,大正2年の改正法(大正2年法律第18号)による改正により,不動産登記法第64条及び第149条に相当する規定が新設され,登記完了後においても,登記官が職権で登記を更正し,又は抹消することができることとなった。したがって,大正2年改正後は,登記完了後であっても,登記官は,これらの規定に従い職権で登記を更正し,又は抹消することができることになったのであるから,当初の立法趣旨は妥当しなくなったことになる。実質論としても,審査請求がない場合において,登記官が自ら登記を更正し,又は抹消する理由があると認めたときは,職権でその旨の登記をすることができるのに対し,審査請求の結果,その審査請求に理由があると認めたときは,自ら職権で登記を更正し,又は抹消することができず,上級行政庁に事件を送付しなければならないのはバランスを欠く。最近の立法例においても,不動産登記法第154条第2項のような制限は設けられていない(商業登記法第116条,後見登記等に関する法律(平成11年法律第152号)第14条第3項,債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成10年法律第104号)第14条第3項参照)。

 83 以上の観点から,骨子案においては,登記官の過誤による登記を職権で更正する手続及び登記完了後に審査請求がされた場合において審査請求に理由があると認められるときの是正手続を簡素化して整備するものとしている(骨子案第2-6)。

 ( その他)
 84 現行の不動産登記法の規定のうち,利用されていないもの(例えば,申請書に第三者の許可,同意又は承諾を証する書面を添付すべき場合において,第三者が申請書に署名捺印したことにより,その書面に代えることができる旨の規定(不動産登記法第45条))等については,これを見直し,整理する(骨子案第2-7)。なお,根抵当権の元本の確定登記の単独申請については,担保執行法制及び倒産法制の見直しの動向を踏まえ,検討する。
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