| 平成14年版「内外情勢の回顧と展望」全文 |
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| 第2 国内関係 概 況 〈平成13年の国内情勢を回顧して〉 21世紀最初の年である平成13年は,政治的には,森首相の退陣(4月)を受けて誕生した小泉政権にとって,最重要課題である「聖域なき構造改革」の推進や,米国同時多発テロ事件(9月)をめぐる米国などによるタリバン攻撃への自衛隊の後方支援及び危機管理への対応などが重要な課題となった。 小泉政権は,構造改革に対する取組においては,不良債権処理や特殊法人の民営化など7つの改革プログラムを盛り込んだ「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針)を打ち出す(6月)とともに,全国各地でタウンミーティングを開催したり,メールマガジンを発行するなどして国民との対話に努めた。第19回参議院議員通常選挙(7月)で勝利して以降は,国民の高い支持を背景に,構造改革の実施に向けた具体的計画の策定などに積極的に取り組んだ。 米国同時多発テロ事件をめぐっては,米国などによるタリバン攻撃への後方支援やテロ根絶に向けた法整備などに努め,「テロ対策特別措置法」を成立させて(10月)以降は,自衛隊による米軍への物資輸送を行うなど,テロ対策を積極的に推進した。 経済的には,失業者が増大し,株価が低迷するなど,景気は一段と悪化の様相を強め,加えて,米国同時多発テロ事件が景気悪化に拍車をかけたことが特徴的であった。一方,社会的には,大阪の小学校で多くの児童が殺傷された事件や弘前市の消費者金融会社で起こった強盗放火殺人事件などの凶悪事件を始め,在日外国人による犯罪の増加など,我が国の「安全神話」の崩壊を象徴するような深刻な事件が相次いだ。 このような政治・経済・社会情勢の下,オウム真理教,過激派,共産党,右翼などの団体はそれぞれ活発な動きをみせた。 オウム真理教は,観察処分取消訴訟で請求棄却判決(6月)を受け,控訴は断念したものの,残り1年余と迫った観察処分の期間更新の回避などを企図して,あらゆる機会を通じて麻原彰晃の影響力を否定するとともに,施設の公開やホームページの作成などにより,組織の閉鎖性・危険性の払拭に努めた。しかし,麻原彰晃が伝授した修行方法を相次いで復活させたり,教団施設に対する立入検査においては,検査対象物を組織的に隠匿したと思われる事案が確認されるなど,麻原彰晃を絶対視する教団の体質や閉鎖的かつ欺瞞的な体質に変化は見られなかった。 過激派は,平成14年4月供用開始予定の成田暫定平行滑走路建設問題で,航空機離発着の障害となる「立ち木」の伐採(6月)やテスト飛行などに強く反発し,より一層,反対運動を活発化させたほか,組織の基盤強化に努めながら,教科書問題を始め,米国同時多発テロ事件をめぐる米国などによるタリバン攻撃や我が国の対応をとらえ,活発な抗議・要請活動を展開した。 共産党は,参議院選挙で3議席を失い,態勢の立て直しを迫られる中,教科書問題や雇用・医療制度改革問題,米国同時多発テロ事件をめぐる我が国の対応などを取り上げて,党の独自性をアピールしながら,政府・与党に対する追及・批判を強めた。 右翼諸団体は,教科書問題や首相の靖国神社参拝をめぐる内外の批判に強く反発したほか,北朝鮮へのコメ支援を始めとする政府の対北朝鮮外交や韓国船による北方四島周辺海域でのサンマ漁などを強く批判した。 〈不安定要因を抱える平成14年の国内公安情勢〉 平成14年の我が国は,政治的には,「聖域なき構造改革」の具体化や有事法制整備の動きなどをめぐって活発な論戦が展開され,情況によっては,政局が流動化することが予想されるほか,経済的には,“痛みを伴う”各種構造改革の効果が上がらなければ,更に景気が悪化することも懸念され,国民の生活や将来への不安感・閉そく感が募るものとみられる。 こうした情勢の下,オウム真理教は,観察処分の期間更新を回避すると同時に地域住民らの不安を解消するため,組織の透明性,安全性を積極的にアピールする一方,裏面では,上祐史浩による指導体制固めを行いながら,麻原彰晃の説く教義に沿って,布教・宣伝活動や資金獲得活動を活発化するものとみられ,厳重な監視が必要である。また,過激派などの諸団体も,米国同時多発テロ事件に関する自衛隊の後方支援の状況や有事法制整備の動きなど内外の諸情勢をとらえ,テロ・ゲリラも辞さない活発な反対活動を展開するものとみられ,十分な警戒が必要である。 |
1 オウム真理教に対して観察処分を実施
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| 〈団体規制法に基づく「観察処分」の執行状況〉 オウム真理教(教団)は,公安調査庁による観察処分が執行される中,千葉県・流山施設(5月),埼玉県・南越谷施設(9月)などから退去する一方,平成12年末に確保した東京都・南烏山施設の拠点化を進めると同時に,新たに東京都・六木施設(1月),徳島県・徳島施設(6月)をそれぞれ確保するなど組織態勢の強化を図った。この間,公安調査庁は,教団の活動状況を明らかにするため,警察の協力を得て,特に必要があると認められる教団施設に対して,立入検査を実施した。平成13年1月から11月までの立入検査は10回を数えた。この結果,立入検査を受けた教団施設は,平成12年2月の第1回以降,16都府県延べ61か所に達した。他方,教団に対する観察処分の執行に伴い,公安調査庁長官への3か月ごとに報告義務が課せられている組織現状に関する報告書(教団報告書)の提出は,平成13年において4回を数え,平成12年3月に第1回の教団報告書が提出されて以来,合計8回に達した。 公安調査庁は,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法)第32条に基づき,関係自治体の請求を受けて,平成13年1月から11月末までの間,5都県13市区町(合計18自治体)に対し,観察処分に基づく教団報告書の内容や立入検査で明らかになった事項を延べ39回にわたり提供した。この結果,平成12年2月25日付けで栃木県及び大田原市へ提供して以来,関係自治体への調査結果の提供は,全国7都府県23市区町村の合計30自治体に及び,その延べ回数は111回に達した。 〈教団の欺瞞的体質を再確認〉 立入検査が実施された施設では,検査対象となった複数の部屋の天井や二重底に改造された流し台などから,パソコンや文書などが発見されたり,麻原彰晃こと松本智津夫が予言した終末思想をけん伝する内容のビデオテープやイニシエーション(秘儀伝授)に参加した信徒の「誓約書」も多数発見・確認された。さらに,教義を見直すなどとして,教団が8月に回収を指示した麻原の説法集「尊師ファイナルスピーチ」についても,その後,立入検査が実施された多くの教団施設において,従前同様に保管され,多数の出家信徒が使用している実態などが確認された。このように,立入検査によって,教団の変わらない欺瞞的体質の実態が再確認された。 〈観察処分の取消しを求めた訴訟で教団が敗訴〉 教団が公安審査委員会を被告として提訴した(平成12年2月8日)観察処分取消訴訟については,6月13日,東京地方裁判所において,教団側の訴えを棄却する判決が言い渡され,また,同じく観察処分の執行停止を求めた申立ても却下された。この判決を受けて,村岡達子,荒木浩ら教団幹部は,報道関係者に対し,控訴する意向を明らかにしていたが,控訴期限前日である6月26日に至り,上祐史浩らが記者会見して,判決は「教団改革を継続し,一般社会の理解が得られるよう努力を促したもの」であり,その内容には「教義の変更を含む教団改革への取組が認定されるなど教団側の主張が受け入れられた部分がある」などと一方的な論理を主張し,最終的に控訴を断念した。 教団に対する観察処分の執行状況などを総合的に勘案すると,@全体として教団の活動に対する抑止効果が認められたこと,A関係自治体が教団の実態を把握し,適切な地方行政を行うことに寄与していること,B観察処分の監視効果などが教団を被害者補償に応じる方向に仕向けた側面があること,など同処分の実質的効果があったものと考えられる。 |
2 観察処分下で組織の延命を画策するオウム真理教
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| 〈東京都・南烏山施設に枢要部署を配置し,中央集権の指導体制を構築〉 オウム真理教(教団)は,平成12年末に確保した東京都・南烏山施設(マンション3棟)の拡充・枢要拠点化を図り,同13年1月25日に上祐史浩を入居させたのを手始めに,幹部信徒らを次々と住み込ませるとともに,「法務部」,「経理部」,「広報部」などの中央部署を同施設に移転し,事実上,教団本部として運用を開始した。 教団は,上祐が南烏山施設に入居して以降,毎月定期的に全国各支部の責任者らを同施設に招集して「リーダーミーティング」と称する会議を開催し,上祐が組織運営・活動方針などについて,直接,指示・伝達するなど,中央集権による指導体制を構築した。 また,上祐は,5月の連休以降,出家信徒の修行場である埼玉県・八潮大瀬施設を始めとする首都圏の主要施設や,名古屋,大阪,京都などの各支部施設を訪問して説法会を開催するなど,信徒に対する指導を強化し,組織の引き締めを図っている。 さらに,上祐は,6月30日,全出家信徒に対し,「アレフテレビ放送」(インターネットを利用して複数の施設に映像・音声を一斉送信するシステム)を通じ,@出所翌日(平成11年12月30日)に返上した「正大師」の称号及びその地位を象徴するエメラルドグリーンの「クルタ」(出家信徒の服)を再び使用すること,A「麻原に次ぐ成就者」として修行担当リーダーの役割を果たしていくことを宣言した。 〈表向き麻原の絶対性を否定,改革の指針を発表し危険性払拭をアピール〉 教団は,団体規制法に基づく観察処分(平成15年1月までの3年間)の期間更新を回避する一環として,5月22日,南烏山施設を報道関係者や住民代表に公開するとともに,「宗教団体・アレフ南烏山活動規定」を発表し,麻原を教義の解釈者と位置付けた上,「事件・犯罪を肯定するような絶対視・神格化は行わない」,「写真を施設内の祭壇に備え付けたり,壁に張り付けたりしない」などと訴え,麻原と一定の距離を置くことを強調した。その後,支部施設や中央部署が使用する施設など,全国11施設を断続的に公開した。 また,教団は,6月13日,東京地裁に提訴した観察処分取消請求が棄却されたことに関し,同月26日,記者会見を行い,「本判決は,教団改革を継続し,一般社会の理解が得られるよう努力を促したものと理解した」として,控訴を断念する旨明らかにするとともに,組織活動に関する情報公開を進めていくことを表明した。さらに,8月24日,「地域社会の教団に対する不安や不信を根本的に解消していく」として,@麻原公判傍聴の自粛,A麻原の説法全集「尊師ファイナルスピーチ」の回収,B自治体・地域住民に対する定期的な施設公開・情報提供,の3点を柱とする「2001年度教団改革の指針」を発表した。しかし,指針を発表したものの,麻原公判の傍聴を希望する信徒は,平成13年前半の平均動員数(約10人)に比して2倍以上(約25人)に増え,改めて麻原の影響力の大きさを裏付ける結果となった。また,教団は,“開かれた教団”のイメージづくりに努め,9月1日,上祐が「宗教団体・アレフ並びに個人の正確な情報を開示する」として,ホームページ「上祐史浩オフィシャル・ウェブサイト」を公開したのを皮切りに,全国12支部など(名古屋,東京,京都,水戸,船橋,大阪,福岡,金沢,横浜,仙台/札幌,長野,徳島)のほか,荒木浩らも順次ホームページを開設し,出家信徒の経歴や連絡先,生活状況を公開した。 しかし,自治体や施設周辺の住民らは,あらかじめ日時を指定した教団の“施設公開”に疑問を呈するなど,依然として教団に対する不信感・不安感を根強く持っており,教団進出に反対する住民団体などは,11月末時点で,平成12年末より23多い411組織に及んでいる。 |
3 オウム真理教が麻原絶対を堅持し信徒の引き締め・教化を図る
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| 〈ソフト開発などで得た資金を修行機器の開発・製作に投入〉 オウム真理教(教団)は,「人権活動家」を役員とするパソコンショップの営業に加え,高度なパソコン技能を有する出家信徒を複数のグループに編成し,個人又は事業体名を用いるなどして,下請けあるいは孫請けにより,一般企業からソフト開発業務を受注し,多額の資金を獲得した。 また,教団は,在家信徒を対象として開催した「5月連休集中セミナー」(5月3〜6日)や「夏季集中セミナー」(8月12〜15日)などにおいて,数十万円もの高額な布施を徴する「イニシエーション」(秘儀伝授)を実施するなどして,資金確保に努めた。 こうして得られた資金の一部は,平成12年に引き続き,「科学と宗教を合一したサイバー教団化」構想の実現に向けて“ハイテク修行機器”の開発・製作に投入されたものとみられ,教団は,コンピュータグラフィックスにより麻原の姿を立体的に映像化した新たな修行用ビデオ(「ヒナヤーナ・ツァンダリー・イニシエーション3D」など)を制作したり,麻原のエネルギーを電流に変えて体内に注入するとする儀式(「火のイニシエーション」)で使用する装置を改良するなどしたほか,8月には,麻原と同じ瞑想状態を創出できるとするヘッドギア「PSI」用基板の軽量・小型化を図った。 〈麻原が伝授した修行方法を相次いで復活させ,信徒教化を企図〉 教団は,3月,向こう1年余の基本目標として,麻原が説いた「煩悩(けがれ)を遮断した世界・空間」の形成を意味する「聖なるサンガ(出家集団)」の再生を打ち出し,かつて麻原が伝授した「イニシエーション」を相次いで復活させて信徒の引き締めを図った。 まず,出家信徒に対しては,7月以降,平成2年に麻原の指導の下で実施された「『懺悔の詞章』思念不変連続セミナー」と称する集中修行を断続的に開催したほか,教団施設内に「ビデオ教学ルーム」と称する個室を設置し,麻原の説法ビデオなどを常時視聴できる環境を整えた。 一方,在家信徒に対しては,かつて麻原が伝授した「イニシエーション」を復活させて,「5月連休集中セミナー」で「断(チュウ)の瞑想」を,「夏季集中セミナー」で「低級霊域破壊マンダラ供養」をそれぞれ実施したほか,12月の「年末年始集中セミナー」で麻原逮捕(平成7年5月16日)以後中断されてきた「シャクティーパット」を再開するため,「イニシエーション」の希望者を募るなど,対外的な“麻原外し”の姿勢とは裏腹に,麻原を“絶対帰依”の対象とする組織体質を露呈した。 なお,教団は,麻原の説法を編纂した教学用教本として,出家信徒向けに修行の心得やポイントなどに関する説法を取りまとめた「サマナ用教学システム」(4月)を,全信徒向けに「科学と宗教の合一」などに関する説法を取りまとめた「アレフ教学システム−アクエリアスの時代」(8月)を刊行した。 〈信徒獲得に向けた勧誘活動の取組を強化〉 教団は,平成13年を「未来教団の土台を固める勝負の年」と位置付け,組織拡大に向け,教団名を秘した勧誘活動を巧みに展開した。すなわち,出家信徒に専門知識・技能を修得させ,若者に関心の高い占いやダイエットをテーマとした勧誘用ホームページを開設させたり,全国の主要都市にヨーガ教室を設置し,電子メールやカウンセリングで親交を深めるなどして,「宗教団体・アレフ」への入会を働き掛けたほか,かつて教団が刊行した麻原の著書から麻原に関する記述や写真を削除した新たな書籍(8冊)を発刊し,これを勧誘活動に活用した。 その一方で,教団は,9月以降,上祐の顔写真やホームページのアドレスを記載した宣伝用のビラや名刺を作成し,各地の繁華街や大学周辺の住宅街を中心に配布・投函するなど,「休眠」宣言(平成11年9月29日)以来約2年振りに街頭での宣伝活動も再開した。このほか,幹部信徒らが元信徒宅を訪問して,上祐の説法会への参加を勧誘するなどして,復帰工作を活発化させた。 〈観察処分の期間更新回避に向けた動向に注目〉 教団は,観察処分の期間更新を回避するため,今後も引き続き,施設公開はもとより,ホームページ,マスコミなどあらゆるメディアを利用して“開かれた教団”,“麻原からの自立”をアピールし,自己に有利な世論形成に努めるものとみられる。また,組織基盤の拡充・強化に向け,布教・宣伝活動を始め資金獲得活動に,更に拍車を掛けることが予想される。 |
4 21世紀を迎え組織と活動の活性化に努める過激派
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| 〈中核派は全国大会を開催し組織拡大に向けて結束を強化〉 革共同中核派は,年頭アピールで「21世紀の早い段階で共産主義革命を実現させるため,労働者党建設の飛躍的前進をやり遂げる」と主張し,組織拡大重視の方針を改めて示した。8月には,20年振りに開催したとする第6回全国大会において,組織建設重視の基本方針について全党的に意思統一したこと及び指導体制の改編を盛り込んだ新規約を決定したことを機関紙「前進」に公表した。また,6月の東京都議選では,杉並区選挙区に候補者を擁立し,年前半の「最大決戦」と位置付け,全国から活動家を動員して選挙を戦ったが,同派の候補者は,最下位当選者に約1万票及ばない9,450票を獲得したにとどまり落選した。 労働戦線では,JR不採用問題に関する「四党合意」をめぐり,国労執行部に反発する「解雇撤回・地元JR復帰を闘う国労闘争団」と連帯する集会を各地で開催して同闘争団の支援に努める一方,郵政事業庁による郵便事業新生ビジョン(案)を「大量首切り計画である」とけん伝し,郵政労働者に対する働き掛けを強めた。また,学生戦線では,中核派拠点大学を中心に国立大学独立行政法人化反対闘争などを展開し,6月には広島大学学生自治会の結成にこぎ着けた。 このほか,介護保険制度に反対する全国ネットワーク組織を立ち上げたり,中核派主導の「とめよう戦争への道!百万人署名運動」を前面に押し立てて「米国のテロ報復戦争反対」の緊急署名活動を実施するなど,年間を通じて多彩な活動に取り組んだ。同派は,引き続き,組織拡大に向けて様々な活動を繰り広げ,労働者や学生の取り込みを図っていくものとみられる。 〈革マル派はJR内同派組織の奮起を促す〉 革共同革マル派は,5月,6月に「反安保・改憲阻止」を,10月,11月には米国同時多発テロ事件に伴う「自衛隊の参戦阻止」をそれぞれスローガンに掲げ,東京,大阪を始め全国主要都市において,学者・文化人・市民運動家らを呼び掛け人とした「労・学・市民連帯集会」を開催するなど,「反戦・反ファシズム統一戦線」の構築を目指した運動を引き続き活発に展開した。また,同派は,8月,埼玉県鶴ヶ島市に所在する直営教育関連会社(平成12年設立)の社屋を改築し,その大部分を同社を含む近隣の直営企業3社の社員居住施設とするなど,同地域一帯の中枢拠点化に向けた動きを一段と強めた。 一方,革マル派の労働戦線をめぐっては,4月,平成12年に発生したJR総連傘下の「JR九州労」組合員大量脱退やJR総連関係者「拉致」問題に関する見解を取りまとめた書籍「連合型労働運動に抗して」を出版し,改めて両事案へのJR総連の対応を批判すると同時に,JR東日本などが完全民営化に伴い合理化を強めてくると主張し,JR内の同派活動家に対して「JR労働運動の戦闘的再生とJR内党組織の再確立のために奮闘せよ」などと呼び掛けて奮起を促した。 こうした中,6月には,東京都世田谷区内の革マル派アジトが警察により摘発され,指名手配中の活動家ら2人が逮捕されたほか,警察官の個人データが記録されたフロッピーディスクなど約170点が押収されるなど,改めて同派の非公然活動の一端が浮き彫りとなった。同派は,引き続き,非公然・非合法活動を展開しつつ,大衆運動の高揚とJRを始めとする労働戦線での勢力拡大に努め,組織の基盤強化を図っていくものとみられる。 〈解放派の主流派・反主流派は拠点校の“奪還”“死守”に奔走〉 革労協解放派は,主流派・反主流派とも,相互に「解体・せん滅戦を貫徹する」との方針を堅持しつつ,平成12年秋から同13年7月にかけ相次いで釈放され復帰した活動家を軸として,疲弊した組織の再建・強化に力を注いだ。 主流派は,九州大学において,平成12年以来中核派が握っていた学生自治会の主導権と反主流派が掌握していた学生サークルの主導権の奪還に向けた取組を強め,大学構内及びその周辺で中核派や反主流派との衝突・対峙を繰り返した。また,2月に非公然活動家ら4人が逮捕されたことなどによって弱体化した非公然組織・革命軍の立て直しに努めた。このほか,機関紙販売・財政活動の強化方針を打ち出して,読者の拡大に努めるとともにシンパ層に対するカンパ要請活動を積極的に展開した。 一方,反主流派は,8月,分裂後初めて全国反戦集会を開催して活動家の結束に努めたほか,拠点校・明治大学において大学当局が同派主導の学生自治会や生協の正常化措置を講じていることに強く反発し,「生協への業務妨害」を理由に訴訟を提起するなど大学側の動きを牽制した。こうした中,同大学の施設・関係者宅に対する放火未遂事件(6月)及び放火事件(11月)も発生した。また,同派は,5月に主流派活動家1人を殺害する内ゲバ事件を,さらに8月には「新しい歴史教科書をつくる会」事務所に対する放火ゲリラ事件を引き起こし,武装闘争を基軸とする危険な体質を改めて示した。反主流派は,今後も不法事案を引き起こすおそれが強く,その動向には注意を要する。 〈共産同戦旗派,JRCLなどは「反グローバリズム」運動の強化を指向〉 共産同戦旗派と共産同全国委員会主導のアジア共同行動日本連絡会議は,5月,「反帝・反グローバリズム国際統一戦線の構築」を掲げ,世界40か国で活動している「国際人民闘争連盟」(ILPS,本部・オランダ)への加盟を決定し,11月には,米国の反戦団体代表らを招いて反戦集会を開催した。また,JRCLは,12月,「反グローバリズム」運動に取り組んでいる「市民支援のための金融取引課税運動」(ATTAC,本部・フランス)の日本支部を結成した。JRCLなど各派は,これらの団体が海外で実施する大衆行動に積極的に参加して関係強化に努めながら,「反グローバリズム」運動への取組を本格化させるものとみられる。 一方,ブントは,環境保護団体を名乗り,2月と5月の2回,高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の見学会を実施したほか,9月には,「JCO臨界事故2周年東京集会」に活動家を派遣するなど,引き続き,反原発運動を重視してこれに取り組んだ。また,5月には,活動家が旅行社の観光ツアーを利用して中国・三峡ダムの建設工事現場を視察し,工事に伴う環境破壊の様子をブントのホームページを通じて紹介した上で「脱ダム」を強く訴えるなど,新たに「脱ダム」運動への取組を開始した。“環境派”を自任するブントは,今後も地域に根ざした環境保護運動に取り組む中で,勢力拡大に力を注いでいくものとみられる。 |
5 過激派は成田暫定平行滑走路完成,習熟飛行に反発
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| 〈成田情勢は「暫定平行滑走路供用開始」に向け緊迫化〉 成田空港の暫定平行滑走路建設をめぐっては,4月に反対派農民が居住する東峰地区で県道小見川線の付け替え道路が開通し,6月には航空機離着陸の障害となる東峰神社の立ち木が伐採されるなど,全工区で工事が順調に進展した。これを受けて,空港公団は9月,「10月末完成,平成14年4月18日供用開始」の方針を発表した。暫定平行滑走路は,10月31日に完成し,国土交通省が,航空無線や灯火施設などの精度を調べる検査飛行を実施した。 暫定平行滑走路の完成という大きな節目に際して,反対同盟北原派,熱田派の両派は,「東峰神社立ち木の抜き打ち伐採に続くテスト飛行は,騒音で住民を追い出そうとする国土交通省−空港公団の策動」と反発し,特に,北原派は,10月に開催した「成田現地全国集会」において,平成14年4月の供用開始までの“半年間決戦”を宣言し,成田闘争への支援強化を呼び掛けた。また,中核派もこの集会で,北原派の闘争宣言に対し支持を表明する一方,米国同時多発テロ事件に絡めて,「成田をアフガン人民虐殺の出撃基地にしてはならない」などと訴え,成田闘争を反戦闘争と結び付けて取り組む方針を打ち出した。 〈反対派は共闘組織の拡大や新たな支援者の掘り起こしに力を注ぐ〉 暫定平行滑走路完成までの間,反対同盟北原派,熱田派の両派は,「土地収用法改悪阻止」,「環境破壊阻止」などをスローガンに掲げ国会闘争や現地闘争に取り組み,成田と住民運動の共闘関係の構築に努めた。北原派は,3月,公共事業に必要な土地収用手続きの迅速化を図るための「土地収用法改正案」が通常国会に上程されると,これを「公共事業に反対する住民運動の禁圧」法案であると決め付け,直ちに国会に対する抗議行動などを展開した。さらに,同月に開催した全国集会において,東峰神社の立ち木伐採が夏から秋に行われると予想し,この時期を闘争の山場と位置付け,「立ち木伐採と建設工事の実力阻止」を宣言するとともに,各地の反戦・反基地団体に対して,反対同盟への支援強化を呼び掛けた。しかし,空港公団が,6月16日,東峰神社の立ち木を伐採したものの,当日は,反対派農民と一部の過激派活動家らが,伐採現場付近で緊急抗議行動を実施したにとどまり,大きな混乱はなかった。 また,中核派は,7月以降,ほぼ毎月実施される北原派主催の成田現地闘争と併行して,北原派幹部を講師とする三里塚支援集会を各地で開催し,これまで三里塚現地集会に参加したことのない労働者や大学の新入生に動員を働き掛けるなど,成田闘争への新たな支援者の掘り起こしに力を注いだ。 一方,熱田派とJRCLなど支援の過激各派は,6月の「東峰神社立ち木伐採緊急抗議行動」など現地抗議行動に取り組むとともに,滑走路建設による環境破壊問題に絡め,各地の自然保護・トラスト運動団体に共闘を呼び掛けた。 〈過激派は「実力阻止」を呼号,テロ・ゲリラの発生が懸念〉 平成13年11月末までに発生した成田関連のテロ・ゲリラ事件は3件であり,いずれも中核派が犯行を認めた。同派は,1月,空港公団幹部宅を,また,4月と10月にはそれぞれ千葉県幹部宅を狙ったゲリラ事件を引き起こした。同派が千葉県幹部に対するゲリラ事件をじゃっ起したのは,約3年振りのことであるが,これは,4月に就任した堂本暁子千葉県知事が就任あいさつの中で,成田空港の早期整備を進めると受け取られるような発言をしたことや,昭和63年の「千葉県収用委員会会長襲撃事件」(中核派が犯行を自認)以来,収用委員全員が辞任したまま機能していない収用委員会の再建に積極的な姿勢を示したことに反発したものである。 中核派は,「10・2千葉県幹部宅車両爆発事件」の犯行声明において,「成田の完全空港化を策動する者は容赦しない」などと,今後もテロ・ゲリラを継続していくことを表明した。また,革労協解放派・主流派及び反主流派も,機関紙で「革命軍のゲリラ戦を先頭に空港廃港を勝ち取る」などと主張していることから,今後,これらのゲリラ指向セクトが,「テスト飛行−暫定滑走路供用阻止」を掲げ,国土交通省,空港公団及び千葉県の関係者や関連施設などを狙ったテロ・ゲリラ事件を引き起こすことが懸念される。 |
6 「柔軟」姿勢に軌道修正を加えた共産党
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| 〈ソフトな装いが野党の間で党の存在感を埋没させる事態を招来〉 共産党は,これまで,政策の提起や国会対応などを通じ,ひたすら「現実的・柔軟」といわれる活動を進めてきた。しかし,平成12年の衆議院議員総選挙で議席を後退させたのに加え,「しんぶん赤旗」部数が200万部の大台を割り込むという低迷状態に陥り,平成13年に入ると,この事態の打開策を模索した。その中で,他の政党との協調姿勢を後退させて党の独自性を浮き立たせる政策宣伝を強めたり,「闘う党」をつくり上げる必要性を強調するなど,従来のような「柔軟」姿勢で臨むだけでなく,これに軌道修正を加える動きも見せた。 〈野党共闘を最重視する姿勢を後退させて,党の独自性をアピール〉 共産党は,年初から,7月の第19回参議院議員通常選挙に向けた党の宣伝と支持者の拡大に力を入れた。特に,党の宣伝では,他の野党に対する批判を抑えるなどしたため,野党の間で埋没したとする総選挙の敗因分析を踏まえ,「消費税率の3%への引き下げ」を強調するなど,他の政党との政策的相違を際立たせ,共産党の独自色を鮮明にする宣伝活動を推進した。さらに,5月に開催した第2回中央委員会総会では,他の野党に対する政策論争や批判を積極的に行う方針を確認した。しかし,小泉内閣が発足して国民の高い支持を得るという“逆風”が吹いたため,これに対処することを最優先の課題にせざるを得なかった。党支持者の獲得も進展せず,結局,共産党は,参議院選挙の前哨戦と位置付けた6月の東京都議選に続き,参議院選挙でも議席及び得票を後退させた。 〈「リストラ反対運動」などを提示し,「闘う党」づくりを強調〉 こうした事態を踏まえて,共産党は,参議院選挙後,党の存在感をアピールすることに一層力を注ぎ,7月,8月には,「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)が編纂した歴史教科書の採択問題や小泉首相の靖国神社参拝問題を取り上げ,「侵略戦争を美化するものである」として,政府を批判・追及する運動に取り組んだ。9月以降は,米国同時多発テロ事件を受け,政府が打ち出した自衛隊の海外派遣を骨子とする対応策に対し,「平和憲法をじゅうりんしている」として,これに反対する運動を国会内外で展開した。さらに,10月に開催した第3回中央委員会総会では,@テロ対策特別措置法に反対する闘い,Aリストラに反対する闘い,B「医療改悪」に反対する闘い,の3点で国民的大運動を起こしていく方針を決定するとともに,共産党がこれらの「闘いの組織者」になる必要があると強調し,全党の奮起を促した。これは,各種選挙における党議席の後退や党勢の停滞に加え,他の野党との関係にも軋みが生じ,政権参加への展望が遠ざかる中にあって,前記歴史教科書の採択をごく一部の学校にとどめるなど,運動の成果に一定の手ごたえを得たことで,各種大衆運動の活発化を図り,失われた党の勢いを盛り返す狙いによるものと考えられる。 〈「党勢拡大の大運動」を設定し,停滞する現状の打開を目指す〉 また,共産党は,第3回中央委員会総会で,党勢の拡大・強化も不可欠であるとして,同総会以降,平成14年4月末までを「党員・読者拡大の大運動」期間に設定し,伸び悩んでいる党員数及び「しんぶん赤旗」読者数の拡大に乗り出した。 この「大運動」では,党員の高齢化の進行を打破するために,青年党員の獲得を重視し,米国同時多発テロ事件や就職問題など,青年層の関心事項を取り上げた宣伝・対話活動を進める中で,入党や「しんぶん赤旗」購読を呼び掛けた。しかし,党勢拡大の取組は進展せず,党員数は約39万人と横ばいで推移し,「しんぶん赤旗」部数は年初時の約198万部から約190万部(12月1日現在)に落ち込んだ。 〈労働者の間で「反政府」気運を醸成し,党の影響力浸透を図る構え〉 共産党は,引き続き,雇用問題や医療制度改革問題などを取り上げて政府の施策に反対する運動を進めるものとみられる。特に,雇用不安を抱える労働者への働き掛けを強めて,「反政府・反企業」の気運醸成に努め,労働戦線における党の影響力拡大に臨むものと予想される。また,党綱領を改定すると表明してきたものの,当面は,党の態勢固めを優先させるものと推察される。 |
7 第19回参議院議員通常選挙をめぐる諸団体の動向
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| 〈共産党は改選8議席から5議席に減少〉 7月の参議院選挙では,小泉内閣が掲げる「構造改革」をめぐり,有権者がどのような判断を下すのか,その結果,自民,公明,保守の与党3党が参議院の過半数維持に必要な63議席を獲得できるのかが注目された。 選挙の結果,与党3党は78議席を獲得し,非改選議席と合わせて139議席となり,参議院における安定多数(129議席)を上回った。一方,野党は,それぞれ改選議席に対し,民主党が4議席増の26議席,自由党が3議席増の6議席を獲得したものの,共産党は3議席減の5議席,社民党は4議席減の3議席を獲得したにとどまった。 〈無党派層などの支持を獲得できず〉 共産党は,いずれの世論調査でも,8割前後の高い内閣支持率を示す「小泉人気」を追い風とする自民党に対抗するため,「構造改革」に真正面から反対する立場で,「改革は国民に激痛を押し付けるものである」といった批判を繰り返した。また,「消費税率の3%への引き下げ」を始めとする政策を掲げ,自民党政治を変える「改革の党」であると有権者にアピールした。しかし,「小泉人気」に圧倒され,それまで共産党に投票していた無党派層の支持をつなぎ止めることはできなかった。このほか,共産党の議席後退には,@平成12年から続く「反共攻撃」の影響で有権者間に強まった党の路線や体質に対する不信感を払拭できなかったこと,A党員の高齢化や青年党員の減少に加え,「反共攻撃」への対応に追われ,支持拡大活動が低調に終わったこと,などの事情も絡んでいたものと指摘できる。 〈国政選挙での連敗を受けて,態勢の立て直しに着手〉 共産党の議席後退は,平成12年の総選挙(26→20議席)に続くものであり,事態の打開に向けて,共産党は,8月上旬,態勢の立て直しなどについて,党の内外から意見を聴取するという従来にない手立てを講じた。その結果,多くの意見が選挙戦を闘う前提となる党組織の強化や有権者との結び付きを深める必要性を訴えたものであったとして,10月に開催した第3回中央委員会総会では,党員・「しんぶん赤旗」読者の拡大や大衆運動の活発化によって,党の態勢立て直しを図る方針を打ち出した。また,現職議員を落選させた反省を踏まえ,重要な候補者の当選を確実にする方策を採るとの方針も決定した。 これまで,共産党は,他の野党との連合政権づくり,あるいは民主連合政府の樹立に意欲を示してきた。しかし,政権参加への展望が遠のきつつある状況の下,当面は党組織の拡大・強化に本格的に取り組んでいくものと予想される。 〈中核派は“沖縄候補”の支援で沖縄基地闘争の高揚を図る〉 今回の参議院選挙において,革共同中核派は,米軍普天間飛行場の名護移設反対などを選挙スローガンに掲げた社民党や新社会党などの“沖縄候補”を支援する旨を機関紙「前進」(6月18日付け)で明らかにし,これら候補者に対する支援活動を通じて,沖縄における基地闘争の盛り上げと反戦・反基地団体への勢力浸透を目指した。しかし,候補者側の「過激派とは一線を画したい」との意向に配慮して前面には立たず,自派傘下の大衆団体内での支持票固めに徹するにとどまった。 このほか,中核派主導の「とめよう戦争への道!百万人署名運動」の呼び掛け人に名を連ねる新社会党関係者からの要請に応えて,一部の地方組織では,自派系労組に票集めを指示するなどの支援活動に取り組んだ。 中核派は,今後も,労組,市民団体への自派の影響力拡大と国会議員との関係構築を図るため,国政選挙での野党候補者支援に取り組むものとみられる。 〈右翼団体は選挙運動で憲法改正などを強調〉 右翼団体関係では,維新政党・新風など4団体が比例区に2人,選挙区に11人の独自候補を擁立し,憲法改正や永住外国人地方選挙権付与法案の破棄などを訴えた。しかし,それぞれ独自の戦いに終始し,全員落選した。この間,共産党参議院議員の応援演説を妨害した右翼団体構成員が公職選挙法違反で逮捕される事案も発生した。 |
8 教科書問題で諸勢力が様々な活動を展開
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| 〈検定に合格した「つくる会」教科書の採択は一部の学校にとどまる〉 保守系の学者・文化人で組織する「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)は,4月3日に会員が執筆に加わった中学校社会科の「新しい歴史教科書」と「新しい公民教科書」(「つくる会」教科書)が文部科学省の検定に合格したことを受け,「教科書採択の適正化を求める請願書」を各自治体の議会に提出したほか,両教科書を市販本の装丁で全国販売したり,歴史教科書の記述内容を自主訂正するなどして,教科書の採択に努めた。しかし,特に問題となった歴史教科書を採択した学校は,一部の中学校と養護・ろう学校(合計11校)にとどまった。 〈過激派は「戦争賛美の教科書」と反発し各地で採択阻止の抗議行動〉 過激派は,「つくる会」教科書を「戦争賛美の教科書」などと批判し,4月以降,同教科書の採択に反対する内外の労組,市民団体や,在日韓国人団体などと共闘し,全国各地で教育委員会や地方議会に対して,不採択とするよう要求する陳情・要請活動を展開した。 各派の主な取組では,教科書の採択審議が本格化した6月中旬,共産同戦旗派と共産同全国委員会主導のアジア共同行動日本連絡会議が,東京,大阪など全国5か所で,韓国の労組関係者や市民団体代表らを招いて採択阻止の集会を開催した。7月中旬には,中核派主導の「とめよう戦争への道!百万人署名運動」などが,「つくる会」教科書の採択方針を固めた栃木県下都賀採択地区協議会(2市8町で構成)に対し,同方針の撤回を求める要望書を提出するとともに,全国の共闘組織からの抗議電話を集中させた。また,中核派などの過激派が,7月24日,東京都杉並区役所を取り囲む「人間の鎖」抗議行動に参加するなどして,同区教育委員会に対し,「つくる会」教科書の不採択を訴えた。 このほか,JRCL,統一共産同盟の活動家が加わった市民団体が,採択の可能性が高いといわれた和歌山県下などの教育委員会に対し,採択経過・基準などを明らかにすることを求める「公開質問書」を提出したり,不採択を要請するハガキを送り付ける活動に集中的に取り組んだ。こうした中,革労協解放派・反主流派が8月7日,東京都文京区の「つくる会」事務所に対し,時限式発火物によるゲリラ事件を引き起こした。 さらに,過激派は,小泉首相の靖国神社参拝についても,「つくる会」教科書の採択阻止運動と一体のものととらえて,参拝当日(8月13日)に抗議活動を展開したほか,8月15日には,東京,大阪などに活動家ら約1,300人を動員して,「小泉首相の靖国神社参拝弾劾」などをスローガンに掲げた終戦記念日闘争を実施した。このほか,JRCL,統一共産同盟は,反戦市民団体とともに,首相の靖国神社参拝を「政教分離を定めた憲法に違反する」として,11月,国と首相,靖国神社を相手取り,大阪,松山,福岡で「違憲確認」などを求める訴訟を提起した。 過激派は,「教科書問題」を通じて培った新たな共闘関係を活用して,今後,教育改革反対,有事法制化・改憲反対闘争などの拡大に努めるものとみられる。 〈共産党は「思想闘争」として採択阻止運動を推進〉 共産党及び同党系諸団体は,「つくる会」の歴史教科書を「侵略戦争を美化して歴史をわい曲するもの」と決め付け,平成12年に引き続き,検定合格を阻止する運動に取り組むとともに,4月以降は,「危ない教科書を子供たちに渡してはならない」と主張して,同教科書の採択阻止運動を推進した。 検定合格阻止運動では,政府・文部科学省に対し,「つくる会」教科書を不合格とするよう要求すると同時に,教科書検定・採択制度の見直し運動を進める「子どもと教科書全国ネット21」(全国ネット21)の活動を側面から支援しつつ,「つくる会」歴史教科書問題に反発を強める中国,韓国の見解を「しんぶん赤旗」で紹介するなどして批判キャンペーンを展開した。他方,採択阻止運動では,特に,同教科書の採択に向けて「つくる会」の動きが活発化した7月以降,不破議長自らが同教科書を「危険なもの」と批判する論文を「しんぶん赤旗」に発表するとともに,「侵略戦争を肯定する勢力との闘いは,平和と民主主義の立場に立つ,思想闘争である」とし,全国の党組織と党員に対し,反対運動の先頭に立つよう督励した。これを受けて,党地方議員らは,全国各地の教育委員会や議会に対し,同教科書を採択しないよう求める要請行動や街頭宣伝に取り組んだ。また,同党のこうした取組を背景として「全国ネット21」は,韓国の教育運動団体などと活動交流を行う一方,国内では,旧総評系の組織を始め各種の団体と連携し,同教科書の採用を内定した地域において,教育委員会や採択審議会の委員らに対し,電話やファックスよる集中的な抗議を行うとともに,文部科学省周辺で「人間の鎖」抗議行動を実施した。 共産党は,「つくる会」教科書の採択が一部の学校にとどまったことは運動の成果であると高く評価すると同時に,新たな教科書づくりを表明した「つくる会」の動きを警戒する必要があると強調しており,今後も同会に対する批判を繰り返すとともに,政府に教科書検定・採択制度の見直しを求めて運動を継続していくものとみられる。 〈右翼諸団体は中・韓両国の修正要求などに反発し抗議・要請活動を展開〉 右翼諸団体は,「教科書問題」を最重点課題の一つとして活動に取り組み,文部科学省が検定結果を発表した前後に,中国,韓国両政府が「つくる会」教科書の検定不合格や記述内容の修正を要求したことに関し,「内政干渉である」と反発して在日中国,韓国公館に抗議するとともに,文部科学省や外務省に対して「公正な検定・採択」などを求める要請活動を展開した。また,「偏向報道が目立つ」としてマスコミ糾弾に取り組む団体もあった。 「つくる会」に反対する国内諸団体の動きが活発化して以降は,批判の矛先をこれら諸団体にも向けるようになり,6月11日,「全国ネット21」などが実施した文部科学省周辺での「人間の鎖」抗議行動及び日本教育会館での「緊急集会」に対して,25団体,約160人,33車両が出動し,会場周辺で「即刻解散」を訴える街頭宣伝やビラ配布を行った。さらに,採択手続きが終了した8月15日以降も,異例の再審議で「つくる会」教科書を不採択とした栃木県下都賀採択地区協議会に対し,抗議活動を実施した。 右翼諸団体の「教科書問題」に関する活動は一段落しているが,中国,韓国への反発が根強いことや,「つくる会」が次回検定に向けた運動を始めていることとも相まって,同問題に関する右翼諸団体の活動は,今後も機会あるごとに実施されるものとみられる。 |
9 「靖国問題」を主軸に多様な活動を展開した右翼団体
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| 右翼諸団体は,厳しい財政事情の中でも,その時々の政局をとらえては活発に政府の施策を批判する活動を展開したほか,オウム真理教南烏山施設に向けたけん銃発射事件(1月)や外務省の機密費流用問題に抗議して消火剤を散布する事件(7月)などの不法事犯も引き起こした。 〈靖国神社参拝問題などで首相を批判〉 右翼諸団体は,自民党総裁選(4月)において小泉首相が終戦記念日における靖国神社参拝に言及したことに対して,これを「天皇陛下の公式参拝」や「靖国神社の国家護持」につながるものと意義付け,参拝実現を最優先課題にして活動に取り組んだ。特に,参拝に反対する中国や韓国の動きに対しては「内政干渉である」と強く反発するとともに,国内の参拝反対派の動向や,「国立戦没者慰霊施設」建設案,A級戦犯分祠構想などについても,それを批判する街頭宣伝を中心とした活動を展開した。しかし,小泉首相が,8月13日に前倒しして参拝を実施した結果,15日の終戦記念日には,平成12年を大幅に上回る約180団体が靖国神社周辺に出動して,小泉首相を糾弾する街頭宣伝を実施したほか,参拝反対派勢力と小競り合いを引き起こすなどし,マスコミ関係者に暴行を加えた3人が逮捕された。「靖国問題」に関する首相批判の動きは,10月に首相が中国,韓国を訪問し,過去の歴史に対する“おわび”を表明したことで増幅され,「米国同時多発テロ事件に紛れて訪問し,参拝について謝罪するなど,結局は土下座外交である」などと批判を強めた。 〈コメ支援反対活動など「北朝鮮問題」に関する取組を継続〉 右翼諸団体は,いわゆる「北朝鮮問題」に関し,1月から9月まで実施された支援米の積み出しに対して,北朝鮮貨物船の寄港反対活動や港を管理する自治体に対する抗議・要請活動を断続的に展開し,3人が公務執行妨害などで逮捕された。5月には,不法入国容疑で身柄拘束した北朝鮮の金正日総書記の長男・金正男とみられる人物らを,政府が退去強制処分としたことについて,「北朝鮮にへつらう事なかれ主義,弱腰外交」,「拉致日本人の救出が念頭にない」などと批判し,成田空港周辺に押し掛けたり,政府関係機関に対して抗議活動を行った。また,10月に開催された「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」による「第3回国民大集会」に参加するなど,「北朝鮮問題」に関する取組を継続していく姿勢を示した。 〈「二島先行返還論」の浮上などで北方領土問題に関する取組が活発化〉 右翼諸団体は,4月の田中外相就任後,外務省の人事異動に絡んで北方領土問題に関する「二島先行返還論」と「四島一括返還論」の対立が大きく報道されたため,同問題への取組を強化し,政党要人を「二島先行返還論を主導している」などと批判し,8月末に設立された「北方領土返還促進根室市民会議」に対しても,同論を容認しているとして抗議活動を展開した。さらに,10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)における日露首脳会談で,小泉首相が日露平和条約締結後に歯舞・色丹両島の返還条件と国後・択捉両島の帰属問題の協議を同時進行させる,いわゆる「並行協議」を提案したことから,これを「二島先行返還論を推進するもの」として警戒心を強めた。なお,6月には,北方四島水域での韓国漁船によるサンマ漁操業が判明したことに関連して,在札幌のロシア,韓国両公館に対し抗議した。 一方,尖閣諸島問題に関しては,毎年同諸島魚釣島に上陸している団体が5月に同島の“灯台”を維持管理するため上陸したほか,5月と10月に,地方議員など数名が同諸島に上陸した。 〈「靖国問題」や外国要人来日反対などを中心に活動していく構え〉 右翼諸団体は,引き続き「靖国問題」を中心として,時局問題に関する取組を展開していく中で,「国立戦没者慰霊施設」建設反対や首相の参拝継続などを求めて活動するものとみられ,中国や韓国の要人の来往時には,両国公館への抗議行動なども予想される。また,北方領土問題については,「並行協議」の交渉の進展に応じ,政府に対する抗議・要請活動を行ったり,ロシア要人の来日反対活動も展開していくものとみられる。 |
10 社会不安を強調して勢力の伸張を図ったカルトなどの特異集団
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| 〈勧誘をめぐって暴力事件などを引き起こした事例も〉 カルトなどの特異集団は,景気や雇用の長期低迷による社会的閉そく感が強まる中,「国家や社会の破局が迫っている」などと人々の不安感をあおることによって,それぞれ集団の勢力拡張を図った。この拡張過程では,依然としてトラブルを引き起こす事例も多く,構成員の中には,強引な勧誘で暴力事件を引き起こしたり,公的機関に勤務していることを利用して勧誘を行うなどの動きも見られた。 〈「カルト対策法」反対や人クローン推進など多様な活動を展開〉 ここ数年間,カルト対策に取り組んできたフランスでは,2001年5月,解散処分や活動制限措置を盛り込んだ「カルト対策法」が成立したが,我が国においても,同法案に対する反対活動が展開され,一部の集団が3月に在日フランス大使館に対して「抗議文」を提出したのに続き,6月にも都内で集会とデモ行進を実施し,同大使館に同法の廃止を求める「抗議文」を提出するなどした。 また,6月に我が国で「クローン技術規制法」が施行されたことに関しては,人クローンの実現を公言している集団が我が国政府に対して見直しを求める「要請文」を提出したのを始め,8月に同集団の創始者が来日した際には,記者会見で「日本人を含む女性信者100人以上が代理母として登録されている」ことなどを明らかにした。 〈政治に関与することで影響力を拡大しようとする動きも〉 カルトなどの特異集団の中には,治安関係機関や中央省庁を含む公的機関の職員の勧誘に力を注いでいるものが見られ,特に,公務員勧誘のために施設を新設する動きを示す集団もあった。また,平成13年には,地方選挙に関係者を立候補させ影響力拡大を狙うものまで現れている。今後,勢力拡大と政治への関与を目指すこれら集団の動きが,社会問題化することが懸念される。 |