平成17年5月20日
法務省人権擁護局
平成16年中の「人権侵犯事件」の状況について(概要)
〜人権侵害に対する法務省の人権擁護機関の取組〜

 法務省の人権擁護機関(以下,「人権擁護機関」という。)は,人権侵犯事件調査処理規程に基づき,人権侵害を受けた者からの申告等を端緒に人権侵害の被害の救済に努めている。昨年3月,多様化する人権侵犯事件に対応し,被害者の実効的救済を図ることを目的に人権侵犯事件調査処理規程の全面改正(以下,改正後の現行人権侵犯事件調査処理規程を「改正処理規程」という。)を行った(注)。
 改正処理規程を導入した平成16年暦年の人権侵犯事件の取組状況は,以下のとおりである。
 (注)  ただし,改正処理規程の施行日は平成16年4月1日である。

 平成16年中に取り扱った人権侵犯事件数の増加状況(図1
 (1)  平成16年は,開始件数,処理件数ともに平成15年を約20%上回る大幅な増加となり,過去最大の件数となった。
 すなわち,平成16年中に,新規に救済手続を開始した人権侵犯事件数は22,877件であり,対前年比で4,091件(21.8%)増加した。このうち,公務員・教育職員等による人権侵犯に係るものは2,070件で,対前年比で310件(17.6%)増加し,私人間の侵犯に係るものは20,807件で,対前年比で3,781件(22.2%)増加した。
 また,処理した件数は22,379件であり,対前年比で3,736件(20.0%)増加した。このうち,公務員・教育職員等による人権侵犯事件数は1,934件で,対前年比で329件(20.5%)増加し,私人間による人権侵犯事件数は20,445件で,対前年比で3,407件(20.0%)増加した。
 これを処理区分別にみるには,改正処理規程の施行前後で処理区分に変更があるため,改正処理規程施行前後で同一処理内容の処理については改正後の処理区分で表示すると,「援助」(法律上の助言や関係機関への紹介)が20,614件(92.1%)で最も多く,「説示」(反省を促し善処を求めるため事理を説示)が183件(0.8%),「措置猶予」(事案の軽重や反省の程度,懲戒の有無等を考慮して措置を講じない)が140件(0.6%)となっているほか,改正処理規程施行後に新設された措置である「要請」(被害の救済のための実効的な対応ができる者に対し必要な措置を執るよう求める)が148件(0.7%),「調整」(相手方との話合いを仲介)が143件(0.6%),及び「啓発」が92件(0.4%)であるほか,特に重大・悪質な事案に関し文書をもって是正を求める「勧告」が1件,刑事訴訟法の規定に基づく「告発」が1件となっている。
 このほか,「侵犯事実不存在」が523件(2.3%),「侵犯事実不明確」が368件(1.6%)となっている(注)。
    (注)  改正処理規程施行前の「処置猶予」は施行後の「措置猶予」に,同様に「非該当」は「侵犯事実不存在」に相当するので,合わせて計上した。
 なお,改正処理規程施行前の「排除措置」(人権侵害状態の事実上の排除を図る)は,施行後の「援助」,「調整」,「要請」のいずれかに相当することとなるが,本資料においては,この分は計上していない。
 (2)  救済手続の開始件数が上記のとおり大幅な増加を示した最大の要因は,いわゆる「オレオレ詐欺」,「架空請求」などの「振り込め詐欺」に係る事件の急増にある。同事件は,平成15年の135件から同16年の3,454件に増加,同年新規救済手続開始総件数の約15%を占めるにまで至り,これにより,統計項目である「強制・強要」事案及び「住居・生活の安全関係」事案が著しい伸びを示すこととなった(注)。
 その他の類型についても,特に,「プライバシー関係(1,267件から1,496件への増加)」,「差別待遇(739件から1,068件への増加)」事案の増加が顕著である。
    (注)  被害申告の態様によって,「強制・強要」事案と「住居・生活の安全関係」事案の統計上の区分が異なる。

 事件種類別にみた新規救済手続開始事件数の動向について(図2
 (1)  強制・強要事案及び,住居生活の安全関係事案
 振り込め詐欺に係る事件の急増により顕著な伸びを示した。
 平成16年中における「強制・強要」事案は6,162件と,全統計項目上最も多く,対前年比33.0%の伸びを示し,全事件数に占める割合も平成15年の約25%から平成16年には約27%を占めるに至っている。なお,本事案の32.7%を振り込め詐欺事件が占めている。
 平成16年中における「住居・生活の安全関係」事案は,4,562件で,対前年比37.0%の大幅な伸びを示し,本事案の全事件数に占める割合は昨年の約17.7%から平成16年には約20%を占めるに至っている。なお,本事案の31.5%を振り込め詐欺事件が占めている。
 (2)  暴行・虐待事案(図3
 平成16年中における「暴行・虐待」事案は5,135件(対前年比0.8%増)で,昨年とほぼ同件数ではあるが,平成14年以降3年連続して5,000件の大台を超え,依然として高い水準で推移している。
 暴行・虐待の被害申告等があった事案のうち,4,395件(85.6%)もの事案が,女性,児童及び高齢者といった社会的弱者を被害者とするもので,引き続き積極的な取組を必要とする分野であることを示している。(別紙事例1
 (3)  プライバシー関係事案
 平成16年中における「プライバシー関係」事案は1,496件,対前年比18.1%の伸びを示している。
 特にインターネットによるプライバシー侵害の事案の増加(91件から199件)が顕著であり,5年前(平成11年)の11.7倍の件数となるなど,急伸している(図7)。同事案が増加しているのは,インターネットが普及したことに加え,a.人権侵犯事件調査処理規程の改正により,「インターネットによる名誉毀損,プライバシー侵害」を特別事件と位置付け,積極的な取組を行っているところ,顕著な取組事例(別紙事例4)が広く報道されたこと,b.プロバイダ等で構成される「プロバイダ責任制限法ガイドライン等協議会」が,業界の自主的ガイドライン「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」を改定し,人権擁護機関が行う削除要請への対応指針を盛り込んだことにより,人権擁護機関の取組への社会的信認が高まったことなども影響していると考えられる。
 (4)  差別待遇(図8
 平成16年中における「差別待遇」事案は,1,068件と対前年比約44.5%の伸びを示しており,5年前の平成11年と比べると約3.3倍の伸びとなっている。
 平成16年中における取組例としては,JR東海が一律にハンドル形電動車いすの乗り入れを拒否していたことにつき「勧告」し,その後速やかに是正された事案(別紙事例5)や,旅館が,障害者団体の宿泊利用の条件として,合理的理由もなく,旅館内で事故が発生した場合でも,旅館は一切責任を負わないことを承諾する旨の誓約書の差し入れを求めたことにつき「説示」を行った事案(別紙事例6)などがある。

 改正処理規程導入による変化
 (1)  新たに設けた救済措置の状況(図910
   ア  改正内容
 改正処理規程では,新たな救済措置として,当事者間の話合いを仲介する「調整」及び被害の救済のために実効的な対応をすることができる者に対して必要な措置を執るよう求める「要請」の各措置を新設し,救済手法を充実させた。
   イ  実績
 平成16年4月から12月に,「調整」による救済を行ったものが143件,「要請」による救済を行ったものが148件に上り,相当数の実績を上げている。
 「調整」の措置が執られた事件としては,近隣間のトラブルを始めとする「住居・生活の安全関係」事件が36%を占め,続いて暴行虐待や差別待遇(別紙事例7)に関するものが12%を占めている。
 「要請」の措置が執られた事件は,インターネット上の人権侵害情報の書込みに対し,プロバイダ等に対し,削除を要請したもの(別紙事例8)が35%を占めている。
 (2)  特別事件の動向(図11
   ア  改正内容
 改正処理規程では,一定の重要・困難な事件である特別事件について,法務局長又は地方法務局長が事件処理を行うに当たって,すべて人権擁護局長まで報告を行い,承認等を受けることとするとともに,その類型についても,最近の人権侵害の実情に合うよう,セクシュアル・ハラスメント,児童虐待,ドメスティック・バイオレンス,高齢者虐待,障害者虐待,インターネットに関するものを新たに加えて整理し,一層充実した救済を図ることとした。
   イ  実績
 平成16年4月から12月に,新規に救済手続を開始した特別事件数は730件,対前年同時期比277件増と大幅な伸びを示し,これに応じて救済活動の充実が図られた。
 (3)  共同調査
   ア  改正内容
 改正処理規程では,複雑困難な事案に迅速・適切に対処するため,人権擁護局と法務局,地方法務局との共同調査に関する規定を新設した。
   イ  実績
 平成16年4月から12月までの間,人権擁護局と(地方)法務局との共同調査を開始した事件は5件あった。取組例としては,JR東海が,ハンドル型電動車いすを利用する障害者に対し,一律に鉄道施設の利用を拒否していたことにつき「勧告」を行い,その後速やかに是正された事案(別紙事例5)や,社会福祉施設における虐待事案に対し,調査・告発等を行った事案(ただし,当該事案の事件処理は平成17年に行った。)などがある。
 また,法務局と管内地方法務局との共同調査を開始した事件は12件あり,児童虐待事案などで調査を行った。

 添付資料
 (1)  人権侵犯事件統計資料(平成16年1月〜 3月)(別添1
     ※  改正処理規程施行前
 (2)  人権侵犯事件統計資料(平成16年4月〜12月)(別添2
     ※  改正処理規程施行後
 (3)  女性の人権ホットライン統計資料(別添3
 (4)  子どもの人権110番統計資料(別添4

 
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