法制審議会会社法制部会           第1回会議 議事録 第1 日 時  平成22年4月28日(水)  自 午後1時34分                        至 午後4時59分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  会社法制の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○河合幹事 それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会会社法制部会の第1回会議を開催いたします。   本日は,御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。   私は,法務省民事局で参事官をしております河合と申します。どうぞよろしくお願いいたします。部会長の選出があるまで,私のほうで議事の進行を務めさせていただきます。   議事に入ります前に,法制審議会及び部会について若干御説明を申し上げます。   法制審議会は法務大臣の諮問機関でございます。その根拠法令である法制審議会令によれば,法制審議会に部会を置くことができることとなっております。会社法制部会は,2月24日に開催されました法制審議会第162回会議におきまして,法務大臣から会社法制の見直しに関する諮問第91号がされ,これを受けまして,その調査・審議のために設置することが決定されたものでございます。法制審議会に諮問された事項は,「会社法制について,会社が社会的,経済的に重要な役割を果たしていることに照らして会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から,企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものでございます。   審議に先立ちまして,まず,臨時委員の原民事局長から一言ごあいさつ申し上げます。 ○原委員 民事局長の原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   会社法制部会の第1回会議の開催に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。   皆様には,それぞれ御多用の中,会社法制部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございました。   御承知のとおり,会社法は,平成17年に複数の法律に散在していた規律を一つの法律に統合した上で,それらの規律を体系的に見直すことにより,単行法として制定されたものでございます。会社法は,平成18年5月に施行されましたので,施行後4年が経過しようとしておりまして,実務に定着してきているものと考えております。   しかし,近時,経営者から影響を受けない外部者による経営の監督の必要性や監査役の機能強化など,経営者である取締役の業務執行に対する監督や監査の在り方を見直すべきではないかなどといった,企業統治の在り方に関する指摘がされております。   また,会社法制につきましては,従来から課題として指摘されているものとして,親子会社に関する規律の見直しがございます。この親子会社に関する規律につきましては,会社法におきましても既に一部が実現しておりますけれども,国会におきまして,その検討を求める附帯決議が複数されておりますことから分かりますように,より体系的な整備の必要性が継続的に指摘されているところでございます。   このほか,最近の社会経済情勢の変化等に対応するため,会社法制における各種制度の見直しをする必要もございます。そこで,これらの点につきまして,法制審議会で御検討いただくべく,今回の諮問がされるに至った次第でございます。   委員,幹事の皆様方には,こうした会社法制の見直しに向けた御検討をこれからお願いすることになりますが,より望ましい会社法制の構築のために御協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願いいたします。    (委員等の自己紹介につき省略)    (部会長に岩原委員が互選され,法制審議会会長から部会長に指名された。) ○岩原部会長 ただいま部会長に御指名いただきました岩原でございます。私のような者に部会長の重責が務まるか大変心もとなく感じますが,皆様方のお力添えを賜りまして重責を果たしたいと存じますので,何とぞよろしくお願い申し上げます。   それでは,配布されております資料について事務当局から御説明を頂きたいと思います。 ○河合幹事 それでは御説明いたします。   配布資料目録,部会資料1,参考資料1及び2を事前に配布させていただきました。そのほか,お手元には参考資料3から5までのほか,諮問事項,「会社法制部会の日程(予定)」,八丁地委員から御提出のあった御意見を配布させていただいております。御確認ください。   まず,部会資料1は「会社法制の見直しについて」という題のものでございます。   次に,参考資料1は「企業統治の在り方についての最近における主な指摘」,参考資料2は「親子会社に関する規律についての主な指摘」です。   部会資料1と参考資料1及び2は,事務当局において作成したものでございます。   参考資料3は「金融審議会 金融分科会 我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ報告〜上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて〜」でございます。参考資料4は,経済産業省における企業統治研究会の報告書です。参考資料3及び4は,各省庁における研究会等で,関係省庁で連携をとりつつ進められた研究の成果を取りまとめたものであり,企業統治の在り方や親子会社に関する規律に関する指摘や提言を含むものでありますから,参考資料として配布しております。   また,参考資料5は,民主党の公開プロジェクトチーム,「公開会社法(仮称)制定に向けて」でございます。法務大臣が,諮問に先立つ1月5日の記者会見において,直接この案をたたき台として法制審議会にお諮りすることはいささか適切ではないが,いろいろな議論の一つの材料にはしていただけるのではないかとの発言をしているところでもありますので,参考資料として配布させていただいております。   また,八丁地委員の御意見につきましては後ほど御紹介させていただきたいと思います。   配布資料の説明は,以上でございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。   審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者の取扱いについてお諮りしたいと思います。   まず,現在の法制審議会の部会における議事録の作成方法について,事務当局から御説明いただきたいと思います。 ○河合幹事 それでは,法制審議会の部会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについて御説明いたします。   法制審議会の部会での議事録における発言者名の取扱いにつきましては,平成20年3月26日に開催されました法制審議会の総会におきまして,次のような決定がされております。すなわち,それぞれ諮問に係る審議事項ごとに,部会長において,部会委員の意見を聞いた上で,審議事項の内容,発言者名を明らかにすることによって自由な議論が妨げられるおそれの程度,審議過程の透明化という公益的要請等を考慮し,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという範囲で,議事録を顕名とするというものでございます。   したがいまして,当部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものとすることでよいかどうかということを,まず御検討いただく必要があるものと存じます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   それでは,ただいまの事務当局からの御説明につきまして,まず皆様方から御意見がございましたら御発言を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○神田委員 私は,審議過程の透明化を図るというのは大事な観点だと思いますので,その観点から,発言者の名前を明らかにすることが望ましいと思います。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,ただいま神田委員から,議事録の作成に当たっては発言者を明らかにすることは望ましいという御意見がございました。それ以外の御意見は特になかったかと存じます。部会長の私といたしましても,当部会につきまして,審議事項の内容等にかんがみ,発言者名を明らかにした議事録を作成することが適切ではないかと存じますが,いかがでございましょうか。   よろしゅうございましょうか。   それでは,当部会につきましては,発言者名を明らかにした議事録を作成するということにさせていただきたいと存じます。   それでは,次に,審議スケジュールにつきまして事務当局から御説明をお願いしたいと思います。 ○河合幹事 それでは,審議スケジュールにつき御説明いたします。   企業統治の在り方や親子会社に関する規律につきましては,会社法制における重要な課題であると考えておりますが,各界各層からの指摘も様々でありますし,方向性が定まっているというものでもございません。事務当局におきましても,論点を整理したものを現在,持ち合わせているというわけではございませんので,事務当局といたしましては,審議の前提といたしまして,まず論点の洗い出し作業から開始するのが必要であると考えております。   そこで,まず本日は,論点の洗い出しの観点からフリートーキングをしていただきたいと思います。そして,論点の洗い出しが終了しました後に論点の整理をさせていただき,第一読会に入っていきたいと考えております。したがいまして,当面の審議スケジュールにつきましては,本日の審議結果を踏まえ,本日の最後に改めて事務当局から御提案させていただきたいと考えております。   なお,当部会の日程ですが,平成23年3月までの日程の予定につきまして,席上にお配りしております「会社法制部会日程(予定)」を御覧いただけますでしょうか。現在のところ,本年度は御覧の日程を予定として掲げておりますが,実際にこれらの日に開催するかどうかといった今後の進行につきましては,今後当部会における審議の状況も踏まえながら,改めて御提案させていただきたいと思っております。 ○岩原部会長 それでは,今お話がございましたように,今後の審議スケジュールにつきましては本日の最後にお諮りするということにさせていただきまして,本日はフリートーキングをしていただくということにさせていただきたいと存じます。よろしゅうございましょうか。   それでは,本日のフリートーキングの審議に入りたいと思います。   まず先に,配布資料に基づきまして事務当局から御説明を頂きたいと思います。 ○内田関係官 それでは,配布資料に基づいて御説明をいたします。   部会資料1は,フリートーキングを進めていただくに当たっての観点や検討項目を諮問内容に沿って整理したものです。参考資料1及び2は,企業統治の在り方や親子会社に関する規律についての各界各層からの様々な指摘のうち主なものや,国会の附帯決議を,事務当局にて取りまとめたものとなっております。今回,参考資料3から5までとして配布させていただいたもの以外にも,各界各層から多数の指摘や提言がされているものと承知しております。参考資料1及び2は,そのような指摘や提言も含め,事務当局にて幅広く様々な指摘を取り上げて作成したものとなっております。   それでは,部会資料1の御説明に移らせていただきます。   まず,1の「見直しの観点」という項目がございますが,そちらでは今回の会社法制の見直しの観点を改めて記載しております。諮問事項のとおり,今回の会社法制の見直しについては,会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から検討を行うこととされており,これを確認する意味で,部会資料の冒頭に記載させていただいたものです。本日の会議では,そのような観点から,会社法制の見直しについてどのように考えるべきか,御議論いただければと存じます。その際,「会社を取り巻く幅広い利害関係者」や「一層の信頼を確保」といった点について,様々な受け止め方があるかもしれませんので,これらの点について御議論いただくべき点がありましたら,御発言を賜れればと存じます。   今回の諮問において,具体的な見直し項目に挙げられているものとして,まず,2の「企業統治の在り方」がございます。企業統治の在り方につきましては,最近,各界各層から様々な指摘等がされております。   そこで,まずは一つ目の「・」にありますように,参考資料1に記載した指摘その他の様々な指摘について,どのように考えるか,例えば,それぞれの指摘について,それらが正当なものといえるかどうか,また,どの程度の重要性を有するものといえるかなどといった点を含めて,御意見を頂ければと存じます。   また,御議論を進めていただくに当たっては,二つ目の「・」にありますとおり,それぞれの指摘がされている背景はどこにあり,それぞれの指摘の背後に現行の会社法制における企業統治の在り方についての問題があるとすれば,その問題の原因は何であるかといった点にさかのぼって部会内で十分な意見交換を行い,問題意識を共有していただくことが有用ではないかと考えております。   それらを踏まえて,三つ目の「・」にありますように,企業統治の在り方に関する会社法制の見直しについてどのように考えるべきか,見直しの要否,範囲,方向性等を含めて御意見を頂ければと存じます。   続きまして,今回の諮問において具体的な見直し項目に挙げられているものとしては,次に「親子会社に関する規律」があります。これを3に挙げておりますが,親子会社に関する規律につきましても,各界各層から様々な指摘がされていることに加え,国会でもいわゆる企業結合法制について検討を行うべき旨の附帯決議がされるなど,会社法制における重要な課題と認識されてきたところでございます。   部会資料1では,学説等での整理も参考としつつ,3の(1)で親会社株主の保護,(2)で子会社の少数株主・債権者の保護,(3)で企業結合の形成過程等に関する規律と,大きく三つのカテゴリーに分けております。それぞれのカテゴリーごとに,参考資料2に取り上げた指摘その他の様々な指摘を踏まえ,現行の会社法制をどのように考えるか,例えば,親会社株主や子会社の少数株主・債権者といった結合企業を取り巻く利害関係者の保護という観点から,現行の会社法制は十分なものと評価することができるのかなどといった点を含めて,御議論を賜れればと存じます。その上で,親子会社に関する規律についての現行の会社法制の見直しに関してどのように考えるべきか,見直しの要否,範囲,方向性等を含めて御議論いただければと存じます。   以上に加えまして,部会資料1の最後に,4の「その他」という項目を設けております。2や3で御議論いただく内容のほか,会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から,その他会社法制の見直しについて検討すべき事項があるかどうか,御意見を頂ければと存じます。   このような見直しの観点から,一般的な御意見でも,個別の条文や論点についての御意見でも,まずは幅広く御意見を頂くことができればと考えております。   続きまして,お手元の参考資料1及び2について御説明申し上げます。   部会資料1の御説明に際しても申し上げましたとおり,参考資料1は企業統治の在り方について,また参考資料2は親子会社に関する規律について,それぞれ各界各層からの主な指摘や国会の附帯決議を取りまとめたものとなっております。参考資料1及び2の作成に当たっては,幅広く多様な立場からの様々な指摘を取り上げるよう心掛けたつもりでありますが,資料作成に当たり,いかなる指摘を取り上げるべきか,また,取り上げた指摘をどう位置付けるかなどの点について,何ら特別な意図を込めたものではなく,ここに取り上げた指摘が特に重要であるといった含意を持つものではありません。また,ここに取り上げたもののほかには検討すべき点はないという趣旨でもありませんので,参考資料1及び2に記載した指摘以外であっても,議論すべき点があれば,広く御指摘,御意見を賜れればと存じます。   なお,参考資料1及び2には,各指摘ごとに通し番号を付しておりますが,これは,御議論に際して,いずれかの指摘について御意見,御発言を頂く際などに,どの指摘についての御意見,御発言かを特定しやすいように,便宜的に番号を付したものにすぎません。この通し番号には,指摘の重要性などにより順序付けをする趣旨はなく,番号の付け方には何らの含意もありません。特定の指摘について御発言を頂く際には,例えば,指摘3とか,指摘29というようにおっしゃっていただければ分かりやすいのではないかと存じます。   次に,参考資料1の内容について簡単に御説明します。   第1では,各界各層からの主な指摘を取りまとめています。   まず,総論的事項に関する指摘として,現行法制における企業統治の在り方について問題があるとする指摘1及び指摘2のほか,一律に論ずることには困難な面があるとする指摘3などがございます。   1ページ目の中ほどからは,各論的な指摘を取り上げております。   最初に,指摘4から指摘7までにおいては,社外取締役の選任を義務付けることの当否など,社外取締役の監督機能等に関する指摘を取り上げています。   1ページ目の終わりからは,監査役の監査機能等についての指摘を取り上げております。指摘8から指摘12までのような監査役の監査機能の問題点や,その限界に関する指摘,それから指摘13のような,むしろ実務的な対応によるべき旨を指摘するものがあります。また,指摘14や指摘15のような,会計監査人の選任議案や報酬の決定を監査役の権限とすることの当否についての指摘,また,指摘16や指摘17のような監査役の一部を従業員代表から選出することの当否についての指摘を取り上げております。   また,2ページ目の後半からは,指摘18から指摘20までとして,社外取締役・社外監査役が独立性を備えることを求めることの当否に関する指摘を取り上げております。   さらに,指摘21のように,既存株主の株式の大幅な希釈化等を伴うような大規模な第三者割当増資についての指摘や,指摘22のような,会社の在り方に対する従業員の意見反映に関する指摘もされており,これらを「その他」ということで3ページにまとめております。   最後に,3ページの中ほどからは,企業統治の在り方にかかわる国会の附帯決議を第2として抜粋しておりますので,御参照ください。   次に,参考資料2の内容について御説明申し上げます。   第1の各界各層からの主な指摘については,部会資料1と同様,1で親会社株主の保護,2で子会社の少数株主・債権者の保護,3で企業結合の形成過程等に関する規律ということで,大きく三つのカテゴリーに分けております。   まず1では,親会社株主の保護についての指摘を取り上げています。総論的事項としては,指摘23のように,親会社株主による子会社に対する監督権限が十分でないといった指摘や,指摘24のように,親会社株主等の保護について過剰な措置を講ずることはグループ経営によるメリットを減殺するといった指摘があります。また,親会社株主の保護のための方策として,例えば指摘25などのように,親会社株主に子会社役員に対する代表訴訟,いわゆる多重代表訴訟などの提起を認めるべきであるとする指摘や,指摘28や指摘29のような子会社に関する意思決定を親会社株主総会の権限にすることの当否に関する指摘がございます。   次に,2ページに入りますが,2では,子会社の少数株主・債権者の保護についての指摘をまとめています。指摘30や指摘31のように,子会社の少数株主を保護する必要性に関する指摘等があり,子会社の少数株主や債権者の保護のため,例えば指摘32から指摘34までのように,支配株主の責任を法定すべきであるなどの指摘がされています。一方,指摘35のように,親子会社間の利益衝突への対処は市場にゆだねるべきであるといった指摘もあります。   続いて,2ページ後半の3では,企業結合の形成過程等に関する規律についての指摘を取り上げております。特に,現金を対価として行う少数株主の締め出し,いわゆるキャッシュアウトについて,指摘36から指摘38までのように,少数株主の保護の観点からの指摘や,その制度化を求める指摘がされています。その他,指摘39以下のように,株式の併合にまつわる問題点についての指摘や,企業買収の差止め制度の導入を検討すべきであるとの指摘,企業再編時における労働者保護の制度等に関する指摘等がされております。   最後に,3ページから,第2として,親子会社に関する規律について過去にされた国会の附帯決議を取り上げております。1にありますとおり,平成17年の会社法制定時に,「親子会社関係に係る取締役等の責任の在り方等,いわゆる企業結合法制について,検討を行うこと」という附帯決議が衆参両院の法務委員会でされるなど,国会において附帯決議が複数されております。   その他,参考資料3から5までとして,金融審スタディグループ報告,企業統治研究会報告書等を配布させていただいております。これらは,参考資料1及び2で取り上げた指摘にも触れている部分がございますが,内容について説明することは控えさせていただきます。本日の会議には,金融庁から三井幹事が,経済産業省から奈須野幹事が出席されていますので,報告に至った議論の背景等について,補足として必要な範囲で,フリートーキングに入る前に,それぞれ御説明をお願いできればと存じます。   簡単ではございますが,配布資料の御説明は以上です。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。   ただいまお話がございましたように,引き続きまして三井幹事から,金融審スタディグループ報告についての御説明をお願いしたいと存じます。 ○三井幹事 それでは,参考資料3の「金融審議会 金融分科会 我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ報告」をお手元に御準備いただければと思います。   メンバー名簿をめくっていただきますと,1ページ目の「はじめに」のところに,議論の背景がございます。   取り分けここで焦点を当てていますのは,上場企業ないし公開企業でございまして,たくさんの株主が存在する会社や,取引所に上場され,株主たる地位が日々売買の対象となっている会社が念頭にございます。上場会社は非公開の会社と違いまして,所有者たる株主の地位が,小額・画一化された形で日々取引所で売買されており,また,その所有権者たる株主が外国人である比率も昨今大変高まっております。株主が会社と長期間に渡り関係を有し,かつ,会社と比較的近い関係を有している閉鎖会社あるいは非上場会社と異なり,上場企業や公開企業については,会社と株主の関係が比較的疎遠であるかと思います。それから,株主たる地位が変わることから,株主全体としてどういう集団になっているかをとらえた上で,会社との緊張関係を考える必要があり,こういったことから,ガバナンスについても一般の会社に比べて高度なものが求められるのではないかといった議論がございました。そういったことが「はじめに」のところに書かれております。   また,2000年前後,会計不祥事あるいは様々な製品・サービスの分野での不祥事などもあり,コーポレート・ガバナンスについての議論が非常に高まったといったことも歴史的な背景としてございます。   2ページ目に記載されていますけれども,一昨年の10月から去年の6月にかけて,こういった市場の観点,あるいは上場会社を主に念頭に置いて,様々な角度からコーポレート・ガバナンスについての議論が行われました。   最初のセクション「市場における資金調達等をめぐる問題」は,ファイナンスに関するものでございます。企業の経営のために必要な資金を機動的に調達する観点から,会社法上は,柔軟な資金調達・ファイナンスが認められておりますけれども,支配権が移転したり,既存株主の権利が大幅に希釈化されるようなファイナンスについて,例えば第三者割当増資や一定の種類株,あるいはデットとエクイティーを組み合わせたような商品を使って,やや問題のあるファイナンスも散見されるところでございまして,こうしたものへの対処をどうするかという点が論点となりました。   6ページの「キャッシュアウト」ですが,現在,3分の2以上の議決権を取得しますと,全部取得条項付種類株式などを使ってキャッシュアウトが比較的容易にできるわけでございます。ただ,そのプロセスを見ますと,キャッシュアウトされる少数株主の権利が必ずしも十分に保護されていないのではないかといった問題意識がございまして,この点について会社法に関する「法制面での検討を期待したい」という意見がたくさん出され,その旨「キャッシュアウト」の項目の下から3行に記載されてございます。   6ページの「グループ化」では,こうした点について,取引所ルールあるいは金融商品取引法上の法定ディスクロージャー制度においても,様々な手当てをしてきたところでございますけれども,今回諮問の対象になっています企業集団法制についての検討も強く期待されるということを記載しております。   7ページの「子会社上場」について,これも主として取引所ルールに関するものですけれども,取り分け親会社が存在する子会社が上場している場合には,その子会社の一般株主の地位は極めて脆弱であり,そういった点について現在のままでいいのかと,こういう観点から,取引所ルール,あるいは金商法上の様々な市場ルールの観点からの議論もあったわけでございます。会社法上も,こういった点についてどうお考えいただけるであろうかといった論点がございます。   8ページの「ガバナンス機構をめぐる問題」でございます。ここは正に権限分配など会社法制にもかかわるところでございます。金融審議会は飽くまで市場ルールの議論を主たる目的とする場であり,会社法について詳細な議論をしたわけではございませんが,議論のプロセスでは,取引所ルールないしは金融商品取引法上の様々な規制,あるいはそれ以外の自主ルールにとどまらず,会社のガバナンス構造についてはかなり強い意見が出されました。   その中でも,取り分けマーケットないし投資家の視点から強く出された意見としては,外部者の立場,更に言えば投資家の立場,広い意味での資金提供者の立場に立って,会社の経営活動を外部から監視,チェックするというモニタリングモデルに基づいた監視機能を果たすべき,独立した立場の取締役というものがもっとたくさんいてもいいのではないかと,こういう問題意識がございました。先般の会社法改正において,委員会設置会社の制度が確立しているわけですけれども,東京証券取引所に上場されている企業数で見ても委員会設置会社の比率が極めて低いということでありますし,また,外国人投資家に限らず,国内の投資家からも,このガバナンス構造については,外部の人,社外の人,あるいは独立した役員が少なく,会社とのコミュニケーションあるいは株主の声が反映しにくいという強い意見が議論の場では出されました。   取引所あるいは金融庁では,そういった声を受けまして,取引所においても様々な独立取締役のディスクロージャー制度を整備していただきましたし,独立役員の届出制度を整備していただきましたし,金融庁も先般,3月末にこのガバナンス体制についての詳細な開示ルールを整備いたしましたけれども,なお一層,この点についての御検討を賜れれば有り難いという意見がたくさん出されているわけでございます。具体的には11ページ,12ページに詳しく書かれてございます。   もう一つ重要な問題として,2000年前後に国内外で多くの不正会計事件が起きたことを受け,証券当局の国際的なフォーラムであるIOSCOというものがありますが,ここでも外部監査人の独立性が強調されています。会社の財務諸表のディスクロージャーについて,独立した立場の外部監査人,日本でいうと公認会計士,監査法人でございますが,そういった外部独立監査人による適正なチェックが非常に重要でございます。我が国においても制度整備がなされているわけでございますが,外部監査人の選任が会社の経営陣によって行われ,かつ,会社から報酬が払われているということについて,インセンティブ構造がねじれているのではないかという問題意識がございます。   会計不正を受けた日本版の金融制度改革といいますか,会計制度についての改善,公認会計士法の改正や金商法の改正の中でも,このインセンティブのねじれという問題は大きくクローズアップされました。具体的に申し上げますと,現在は,マネジメントレベルの方々,取締役会において外部監査人,監査法人の選任,それから報酬の決定が行われています。これについて,国際的なスタンダードでいいますと,会社のマネジメントから独立した立場の方が決めることになっています。独立取締役ないし監査役,特に社外の監査役が中心となって決定する,こういったものが必要ではないかということで,監査役設置会社が大勢である日本の実態の下では,監査役会に外部監査人の選任権と報酬決定権を移してはどうかという提案でございます。   金融審議会では,このスタディグループ報告に先立ち,公認会計士制度部会報告でもそういうことが提言されていますが,ここでもなお一層この検討をお願いしたいということでございまして,是非とも会社法の議論の際には,この点について前向きな御検討をお願いできれば有り難いと思います。   17ページを御覧いただきたいと存じます。これは議決権の行使をめぐる様々な点について記述しているくだりでございまして,その中に「(7)有価証券報告書・内部統制報告書の株主総会への提出」がございます。会社法上,事業報告・計算書類という形で株主に様々な会社の経営実態,財務報告,経営成果についての報告がなされています。同時に,有価証券報告書という金融商品取引法の制度で,EDINETという公的な電子開示システムを通じ,同様のテーストでより詳細な情報がパブリックに開示されています。   先ほど申しましたように,上場会社は所有者たる株主が時々刻々とマーケットで取引されて変わり続けるという性格を持ったものでございますので,果たしてこの開示制度,取り分け有価証券報告書・内部統制報告書という金商法上の開示制度が,会社の株主に対する説明資料である事業報告と計算書類と完全に分かれたままでよいのかという問題提起がございました。むしろ,内部統制報告書のように会社の内部のガバナンスに立ち入った報告書を作る時代になっていることから,有価証券報告書と内部統制報告書,金商法ではこれらを一体として作成することになっていますけれども,これらについて株主にきっちり説明すべきではないかと,こういう強い議論があったわけでございます。   現在,これについて会社法制と金商法制は別建てになっておりますので,取りあえず現在の枠組みでできることということで,金融庁のほうでルールを改正し,有価証券報告書などは株主総会の前に提出できるように手当てをしたところでございます。金商法上の報告書制度と,会社法上の株主に対する説明について,できるだけそごがないようにということで実務上の手当てはなされてきているわけですけれども,この点について法制上どのようにお考えいただけるであろうかといった点が問題提起としてはございます。   仮定の話としまして,株主に提供される何らかの株主総会提出資料に非常に目新しいことが書いてあった場合には,恐らく今は東京証券取引所のTDnetにおいてタイムリー・ディスクロージャーがされます。そして,そういったことは6月末に提出される有価証券報告書にも記載されます。場合によっては監査が行われた形で開示されるということで,実務上は連携がとれていますが,先ほど申しましたように,株主たる地位は時々刻々と入れ替わり,潜在的な投資家,株主がいるという実態を踏まえますと,会社の内部者である現在の株主と潜在的な株主である投資家との間で,できるだけ情報の格差が生じないようにしていくことを考えることは十分にあり得ると考えています。   18ページから19ページにかけては,今まで各論に結びつけて申し上げていましたが,上場会社法制ないし公開会社法制について金融審議会で議論があったものを,非常に手短ではございますけれども,まとめたものでございます。   18ページのXの「上場会社等のコーポレート・ガバナンスに係る規律付けの手法」の第1パラグラフでは,先ほど申しましたように,上場会社のコーポレート・ガバナンスは一般の会社に比べて高度なものが必要であるという総論でございます。第2パラグラフでは,資本市場の機能の十全な発揮を図るという観点から,この公開会社法制的なものを議論するという立場でございまして,取り分け後段でございますけれども「資本市場の主役が本来,究極的な投資者である個人=市民であるとすれば,株式会社制度の濫用等から市民社会を守るという面でも重要な意義を持つ」,こういった議論が主軸にございます。   もちろん,この点については,第3パラグラフにおいて,「なお克服するべき課題がある」との記載があり,また現在でも,先ほど申しましたように,実務的には金融商品取引法と会社法で様々な調整を試みております。取り分けディスクロージャーなどでは,現に前回の会社法の改正でもいろいろな御配慮を賜ったところでございますが,この18ページの一番下の2行でございますけれども,細かいところを見てまいりますと,「必ずしもうまくかみ合っていない部分」があるということで,次のページの頭ですけれども,「規律の重複やすき間を生む結果となっているのではないかとの指摘」もございます。こうしたことから,まず,マーケット関係者でできることといいますと,会社法をベースとしつつも,そこから一歩踏み込んで,上場会社にフィットしたガバナンスを取引所のルールで決めていく,ないしは,金融庁所管の法定開示制度の中で,上場会社を念頭に置いたガバナンスの開示ルールを定めていくといったことが,市場に近いところとしては採るべき方策として考えられるということが書かれております。   以上が金融審議会スタディグループ報告の説明でございます。ありがとうございました。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   それでは,引き続きまして奈須野幹事から,企業統治研究会報告書につきまして御説明いただきたいと存じます。 ○奈須野幹事 経済産業省の奈須野でございます。よろしくお願いします。   資料は,お手元に冊子で配布してございます「企業統治研究会報告書」に基づきまして御説明申し上げます。   立ち上げの背景でございますけれども,そもそもは買収防衛との関係で議論が始まりまして,特に買収防衛策など利益相反の疑いのある行為を行うときに,諮問機関として,企業においては特別委員会を任意に設置して議論するということが行われるようになっております。その際に,経営陣からの独立性の担保と責任の明確化の観点から,こういった特別委員会は社外取締役を中心とする構成とすべきではないか,つまり,取締役の中に社外者を必ず入れるべきではないか,という主張がなされたことが発端でございます。また,同時に,日本の取締役会の特徴として,均質なバックグラウンドを持つ社内の出身者だけで構成されていて,そのことが諸外国と比較しても,株主に対するアカウンタビリティーと申しましょうか,透明性が欠如しているのではないかと,こういうような批判がなされるようになったことが挙げられております。   こういうことを受けまして,経済産業省では,特に少数株主保護の観点から,内外で議論のありました論点,一つは取締役及び監査役,つまり役員の社外性・独立性の問題,それから,社外独立取締役の導入の要否について議論すべく,一昨年12月に企業統治研究会を開催した次第でございます。企業統治研究会は,法務省,それから金融庁,それから東京証券取引所の協力を頂きまして,それから,事業会社の経営者,機関投資家,あるいは学識経験者などで構成されまして,毎回厳しい,激しい議論のやり取りを経た結果,昨年6月に報告書を取りまとめております。それがお手元の報告書でございます。   まず,一つ目に,企業統治研究会で扱った論点のうち,社外役員の独立性の問題について御説明したいと思います。   現行の会社法におきましては,社外役員について,当該企業及びその子会社の業務執行役員・執行役・使用人でないという「社外性」を要求しているということでして,諸外国のように一般的な「経営陣との間で利害関係を有していない」という「独立性」までは要求しておりません。資料では60ページにございますけれども,日本の場合は,このように単に社外であればよいということでございまして,利害関係の独立性までは要求しておりません。そこで,現在の取締役・監査役の社外性の要件を独立性の要件に置き換えるべきだという主張がなされていたわけでございます。   この点につきましては,企業の企業価値向上の実際に多大な利益を,利害関係を有する人,つまりこういう人は独立性を有しない人なんですけれども,例えば親会社やメインバンク出身の人が考えられるわけですけれども,そういう利害関係者のほうが当該企業に関する知見があって,監視へのインセンティブが大きく,企業価値向上の観点からは企業統治の実効性確保が図りやすいという側面があるというような主張がございました。一方で,敵対的買収などの利益相反が生じやすい局面では,一般株主の保護あるいは資本市場に対する信認,信頼,透明性ということを得る観点から,独立性に意義があると,こういう議論もあったわけでございます。   この点,企業統治研究会では,企業統治の実効性と独立性についてはトレードオフの関係があって,最適な企業の統治構造は企業によって異なり,最終的には,個々の企業と一般株主・投資家との対話や合意形成の中で,どのような体制を採っていくか決定されるべきであるといたしました。   そこで,5ページ目のところに結論の部分が書いてあります。要するに一般株主の保護のため,一般株主と利益相反が生じるおそれのない取締役又は監査役が,独立役員として最低1名存在するということを求めることで結論付けております。   ここで,社外役員と独立役員の関係について私見を申し添えたいと思います。   今申し上げたとおり,独立でない社外者,例えば大株主であるとか,取引先であるとか,債権者であるとかメインバンク,こういったものが想定されますけれども,そういった人たちの知見と監督へのインセンティブの関係から,こうした人はコーポレート・ガバナンス向上に資する可能性はそれなりに高いと考えております。一方で,独立役員も株主へのアカウンタビリティー向上の点から重要であるということでございます。したがいまして,社外役員と独立役員は互いに役割が異なるということでございまして,片方が片方に置き換わるというようなものではないと考えております。近年,グループ経営ということが盛んになっておりますけれども,そうなりますと,こういうグループ経営におきましては社外者の役割あるいは一般株主に対する責任から,例えば大株主といったものの役割というのはますます高まっているということであろうかと思います。したがいまして,今後の議論でございますけれども,会社法の社外性の要件というのは独立性の要件に取って代わるべきものではなくて,独立性とはまた別の概念として残されるべきではないのかなというような感想を持っております。   次に,独立取締役の要否について御説明させていただきたいと思います。   内外の機関投資家からは,社外取締役の導入−社外監査役ではなくて社外取締役の導入−について要望がございました。企業統治研究会の審議におきましては,監査役は企業価値,株主価値の向上の観点から意見を述べることはでき,したがって,実質的には取締役も監査役もモニタリング機能には決定的な違いはないんだということで,社外取締役の導入は義務付けるべきではないというような意見がございました。一方で,制度上は取締役と監査役の役割機能は全然違うということで,現在の監査役制度では不十分だという意見もございました。   ここで,結論としては,6ページになりますけれども,企業統治研究会では,監査役会設置会社において,社外独立取締役を自主的に設置するというような自主的な対応は意義があるということであろうけれども,形式的に社外取締役を導入しろと画一的にするということは,企業独自の統治構造を最適なものとする上で,かえって妨げなのではないかという観点から,現時点では社外取締役の設置を義務付けることはしないで,社外取締役を設置するか,そうでなければ企業独自の方法をとって企業統治体制を整備・実行し,その旨を開示させるということといたした次第でございます。   次に,この企業統治研究会のエンフォースメントでございますが,法律で義務付けるということはいたしませんで,かといって任意のものとすることもいたしませんで,証券取引所において枠組みを定めるということを提言いたしました。これを受けまして,独立役員を1名以上確保すること,それから企業統治に関する開示情報を充実させることについて,東京証券取引所では昨年12月22日,大証では昨年12月25日に上場規程などを改正して,昨年12月30日より新しい規則を施行しているという次第でございます。   現在でございますけれども,こういった上場規則の改正を経まして,各上場企業は今年の株主総会に向けて独立役員の確保に努めているところでございます。ただ,東証のデータによれば,今年の3月末時点で1割強の企業が独立役員を1名も確保できていないという現状でございます。非常に難航しているということかと存じます。   その背景ということで,私なりの感想と,今後の議論に当たりましての問題提起を開示させていただきたいと思います。   59ページのところにございますけれども,日本の社外性の要件は,現在・過去に当該企業・子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でないということが要件となっております。ただ,これは経営陣との間に利害関係を有していないという独立の観点からは緩いわけですけれども,過去に一度でも該当すれば一切社外性がないということでございまして,過去要件の観点からは非常に厳しいものとなっております。この社外性の過去要件に引っ張られまして,独立役員の要件におきましても同様の厳しい過去要件が適用されることになっております。つまり,独立役員というのは社外役員としての資格を満たすものであるということが前提になっているわけでございます。   ここで,60ページのところに各国比較があるわけですけれども,諸外国を見ますと,過去要件につきましては,3年から5年のクーリング期間,冷却期間を経れば社外性・独立性が認められるということで,日本の「過去一度も」という要件は国際的に見ても非常に厳しい要件となっております。   そこで,東証や大証によって規定されている独立性の要件がプリンシプル・ベースで,数値基準が示されていないということで,一方で,この過去要件というのは非常に厳しいために,業界団体の中では自主ルールによって,このプリンシプル・ベースの部分をかなり緩めに定義して適用しているという事態が生じていて,これが今後の独立役員制度の信認を得ていく上でちょっとネックになるのではないかということでございます。ちょっと反省でございます。   こういった過去要件の問題を含みます社外性・独立性の要件,あるいはこういった役員を導入することを義務付けるかどうかということについては,今後の会社法の議論の中で重要な論点となると思いますので,是非議論させていただきたいと思っております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。   また,本日は御欠席の八丁地委員から書面にて御意見を頂いておりますので,事務当局から紹介していただきたいと存じます。 ○大野関係官 それでは,八丁地委員から提出されました御意見を朗読させていただきます。   会社法制部会第1回会合につきまして,やむを得ず欠席させていただくことになり,申し訳ありません。出席に代えまして,以下のとおり意見を提出いたします。   平成18年に新会社法が施行されてから約4年しか経過しておらず,実務もようやく定着してきたところである。この間に見直しが必要とされるほどの環境変化や問題が生じているのかどうかを見極める必要がある。   様々な見直しの提案が出されているが,それらの提案の背景にある考え方について,その原因や事実関係にまでさかのぼって確認した上で,その問題解決のために会社法制の見直しで対応する必要があるのか,他の法制や手法で対応すべき問題なのかといった整理をすべきである。   そのような整理を行った上で,会社法制の見直しが必要であるという方向性が出た課題については,日本の社会や風土に適合した会社法制を実現するために,実際に会社法に基づいて事業を行っている経営者を初めとする企業関係者の意見を十分に聞き取って検討を進めていただきたい。   見直しが実務に与える影響について精査し,会社法制が日本企業の競争力強化や効率性向上を促進し,決してそれらの足かせとならないように,十分配慮すべきである。   企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を含め,経済界としての会社法制の見直しに関する考え方について,会社法制部会の場において,改めて御説明する機会を是非設けていただきたい。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   それでは,フリートーキングに移りたいと思います。まずは便宜上,テーマを二つに分けまして,部会資料1の1の見直しの観点及び2の企業統治の在り方のあたりまで御意見を頂きたいと思います。   ただ,その前に,石井委員におかれましては,本日所用により間もなく退席される御予定と伺っておりますので,石井委員から御退席の前に御意見を頂きたいと思います。   企業統治の在り方,親子会社に関する規律,その他のいずれでも結構でございますので,御意見がございましたら御発言をお願いします。 ○石井委員 ありがとうございます。   私は,日本商工会議所の推薦で本部会の委員を拝命させていただきました。ありがとうございます。したがいまして,ちょっと商工会議所の概要を事前に御説明させていただきたい。   御存じかと思いますが,商工会議所は,商工会議所法というものに基づいて設立されました地域経済総合団体でございます。業種,規模を超えた会員組織でありまして,大企業から中小,小規模企業まで加入しておる団体でございます。目的は,商工業の総合的な発展を図ったり,社会一般の福祉の増進に資するということを目的といたしまして,地域の実態に即した活動を展開しております。全国に515の商工会議所がございまして,それぞれの地域の発展のために,会員数は約135万社の会員数を擁する,主に中小企業でございますが,擁しておる団体でございます。   私は,その商工会議所で経済法規委員長を務めておりまして,長年の間,いろいろ企業を取り巻く法律について御提言させていただいております。昨年では,法制審議会成年年齢部会に参画させていただいて,いろいろと御協力させていただきました。また,地域経済では中野支部会長として,地域のまちづくりや産業活性化に努めてまいっております。   そして,先ほど申しましたように,商工会議所の会員はほとんどが中小企業なんでございますが,いずれにしても,日本の産業の99.7%というのは中小企業が占めておるわけでございますし,雇用の7割というのは中小企業が占めておりまして,大変,日本経済の原動力になるところでございます。そういう意味で,中小企業の立場から,見直しの方向性についてと企業統治の在り方について,初回でございますので簡単に私の御意見を述べさせていただきたいと思います。   現在の日本の経済状況,大変厳しゅうございます。国際競争で,今必ずしも優位ではございません。どっちかというと負けておる,そんな状況でございます。それから,経済も立ち直ったといってもまだまだ,一部の大企業が海外で利益を出しているという程度で,実感がない景気状況でございます。特に中小企業は完全に活力を失っておりますし,非常に厳しい状況にあるということを是非御理解いただきたいと思います。   そういう中で,この会社法の見直しでございますが,当然経営の透明性を高めるという理念はもちろん賛成でございます。しかし,経営者の今の私の心情から申しますと,まず,是非やっていただきたいのはデフレの克服でございますし,景気低迷からの早期の脱却ですね。これを何とかしていただきたいと,そういうのが最優先課題であると,こう思っておるわけでございまして,そういう意味で,この見直しというものが何ゆえ必要なのかと,あるいはその目的をよく議論していただきたいということで申し上げたいと思います。   それから,今回の会社法の見直しによりまして,規制が例えば強化されるとか,経済活動が制限されるということになると,今大変厳しい経済情勢でございますから,企業の競争力や活力がダウンしてしまうと,こういうことが危惧されるわけでございますので,その辺の方向性も十分検討していただくことが重要ではないかなと思っております。   次に,企業統治の在り方でございますが,先ほどいろいろお話があったように,投資家の信頼を得るというのは大事でございますし,企業が持続可能な成長を遂げていくということでは,企業統治というのは最低条件として必要でありますので,ガバナンスの整備というものをこれから進めていくということは当然でございます。ただ,それが余り行き過ぎますと経済活動まで萎縮させてしまうということがないように,ひとつ是非御議論していただければ有り難いなということを思っております。   それから,特に中小企業というのは,御存じかと思いますがスピード判断というかスピード経営というか,それが取り柄でございますので,経済活動と企業の健全な発展を促す企業統治というものは必要とは十分存じ上げておりますけれども,それが強化され過ぎますと,経営の素早い意思決定が阻害されるおそれがあるのではないかなということを心配しております。   最後に,会社法の現在の問題点というものを十分に検討していただいて,日本の企業にとって競争力強化,あるいは活力強化,こういうものにつながる会社法の見直しとなるような議論をしていただければ幸いでございます。   私のほうから以上,説明させていただいて,ありがとうございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。   それでは,部会資料1の1の「見直しの観点」及び2の「企業統治の在り方」のあたりまでにつきまして,どなたからでも結構でございますので,御自由に御発言を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○逢見委員 それでは,まず,見直しの観点と企業統治の在り方について,私どもの問題意識を申し上げます。   まず,今回,企業統治の在り方について,多様な利害関係者にも配慮しつつという諮問がございますが,企業というのは株主と経営者の関係だけではなくて,従業員とかあるいは顧客とか取引先,地域社会,様々なステークホルダーがあるわけでございます。こうした多様なステークホルダーの利益にも配慮した企業統治の在り方ということが必要でありますので,今回の見直しにおいては,そのような観点を入れる必要があるのではないかと思っております。   それから,取締役や監査役の社外性とか独立性が論点になっておりますが,これは実質的にだれが選任しているかといえば,議案の提出権を持っているのは経営者でありまして,経営者が実際には選任して,それを株主総会で承認を得ているということであります。そういう意味では,独立とか中立とかいうことを言っても,選任権がどこにあるかと,だれが選任しているかということを考えると,そこまで見直さなければ,独立性・中立性といったことが単なる言葉だけの問題に終わってしまうのではないかと思います。   そういった点で,従業員というのは,ステークホルダーの中では非常に企業と密接なつながりがございまして,また,企業の付加価値創造でも重要な役割を果たしているわけです。また,もし企業が,経営が悪化するとか不祥事が起きるとかいう場合には,従業員は非常に大きな,雇用とか労働条件の面で大きな影響を被る。そういう意味で,企業の状況に非常に強い関心を持っております。こうした点で,利害関係者の中で従業員というのは公平・公正な監査活動が期待できるのではないかと思います。こうした点については,参考資料1の指摘16のところにそうしたものが書かれてございますけれども,こうした点を検討すべきであると思います。   それから,監査役の機能強化という観点でいえば,監査役の権限の範囲については見直しが必要であると思います。   併せまして,企業統治とのかかわりの中で,会社法で従業員が使用人と呼ばれているわけです。使用人というのは会社の従属物というイメージが非常に強くて,ただ単に使用人と呼ばれているというだけではなくて,それが法の解釈にも影響を与えているのではないかと。例えば,職務発明などについては,使用人が発明したものは会社に所属して当然である,その対価も,使用人に対しては大した対価を払わなくてもいいのではないかという解釈がまかり通ってきた。最近変わっていますけれども,例えばそういうところに影響を与えているのではないか。企業統治についても,使用人が統治にかかわるというと,何で使用人がそういうものにかかわる必要があるんだという議論になりかねないので,この使用人という言葉についても見直すべきではないかと思っております。   ただ,これだけの時間ではまだ言い切れないところもございますので,できれば次回にでも,私どもの問題意識をもう少し詳しく開陳する時間を与えていただければ有り難いと思っております。 ○岩原部会長 それでは,次回にでもまた御発言いただきたいと思います。   ほかに。 ○上村委員 今,このタイミングで,2年間かどうか分かりませんけれども,かなりの時間をかけて会社法の見直しをするということの意義ですが,日本は証券市場を使いまくってバブルが発生して,それが崩壊しました。このときの日本のバブルの発生と崩壊はかなりの大きなものだったんですけれども,国際社会は全く同情一つしてくれずに日本だけが非常に困難な目に遭っていたと思います。そして,そうした事態に何とか対応している間に,今度はグローバルな金融危機に遭いまして,二重の打撃を受けている状況だと思います。しかし全体としてこうした日本の状況をもたらしたものは,経済政策だとか,産業政策とか,金融政策とかいろいろな理由があるでしょうけれども,私は,株式会社という制度が証券市場を使うことの意味を知らなかったことが大きいと思います。株式会社制度は証券市場を使いこなすための制度として150年ぐらいかけて生成されてきたものでありますから,証券市場と本気で向かい合うとどこも大抵,アメリカもそうですし,ヨーロッパもそうですし,大体痛い目に遭っています。こういうことに慣れていない非西欧国家日本で,しかも貧しい時代に証券市場は意識しませんでしたからやむを得なかったと思いますけれども,やはり証券市場を本気で使いこなすということは,資本市場の論理と,それを支えるガバナンスの論理との双方が不可欠ですが,そういう問題について準備なしにこの世界に突入した,そのことが現在の困難の大きな原因の一つだと思います。   そういう意味では,今この段階で,やはり証券市場というものと四つにがっぷり取り組んで,そのための運営だとか仕組みのノウハウを一気に自家薬籠中のものにして,そして,それを本格的に,20年,30年耐え得る制度にしていく,それを今やることで,それを前提にして,本当の意味での成長戦略というのが可能なのではないかと思います。ルールは決してアクセルを踏ませないためにあるわけではなくて,高性能なブレーキがあれば思い切りアクセルは踏めるということですので,やはりそうしたバランスの取れた安定的な仕組みを構築する,そういうタイミングが今のこの時期だと思います。そういう意味では,今までの発想のパラダイムを大きく転換するような,そういう発想で会社法制の見直しがなされるべきではないかと思います。今こういう形で始まっておりますけれども,この2年間の間に,また大きな状況の変化も出てくるのではないかという,そういう感じもしております。   そこで,この法務大臣の諮問ですけれども,岩原部会長がおっしゃいましたように,1と2ということでございますが,4も同じだと思います。つまり,4のその他というのは「会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点」と書いてあるわけですね。この幅広い利害関係者の中に,先ほど三井幹事からの御報告もありましたけれども,ここに投資家がいないということはあり得ないわけであります。三井幹事は潜在株主とおっしゃいましたけれども,買おうかなと思っている投資家は,潜在株主というマークがついているわけではありませんで,だれだか分からない人ですね。不特定多数のすべての人に対して,開示も,会計も,監査も,ガバナンス,それから内部統制も,全部やらなければいけない。そういう責任を負っているのが資本市場のルールが適用される会社だと思います。ですから,そういう意味では,資本市場との関係で株式会社の在り方を見直していくといいましょうか。つまり,投資家を想定したガバナンスですね。これは現実にすべての公開会社は皆現にやっているわけですね。みんな有報を作っておりますし,タイムリー・ディスクロージャーをやっていますし,金商法の内部統制をやっていますし,金商法の監査・会計をやっているわけです。   ですから,現にやっているそういう状況にふさわしいものとして株式会社制度を思い切って確立していく,そういうタイミングではないかと思います。そうでないと,やはり欧米に追い付いて,かつ,それを追い越していくような,そういうパワフルな制度設計はできないのではないかと,非常に心配をしているのです。   余り時間とってはいけませんけれども,例えば先ほど有報の総会前開示とありましたけれども,有報は,そういう意味では会社法の既に対象になっていますし,総会前ということになれば,これは当然ながら質問権の対象にもなるし,説明義務の対象にもなるわけです。現在でも当然ではありますが、それは更に明確なのですね。しかし,有報は会社法が把握しているけど,半期報告書は違うとか,臨時報告書は違うということはないわけでして,当然皆入ってくるわけですね。そのルールは,会社法の制度になっていると言っても,内閣府令で金融庁がどんどん作っていってしまうわけです。しかし籍は会社法にもあるという形になっているわけですから,そこはやはり本格的に調整していく,そういうことが必要なのではないかと思っております。   法務大臣は,今後更に追加諮問があり得ると明言されておりますが,これは金商法との調整というものがあり得るということを意味していると思いますし,それから,参議院の本会議では内閣総理大臣が縦割りは駄目だということをおっしゃっておりますし,仙谷国家戦略大臣も政府一丸となってやるような大きな問題だという位置付けで論じられております。   もとより,私が危惧しておりますのは,会社法というのは本当の意味で基本法ですから,それが何か国家戦略とかなんとかという形で,政治や政策にゆがめられるようなことがあってはむしろいけないと強く思っております。しかし,金商法との関係という,この部分は政治や政策の話を超えた会社法の基本原理そのものでありますから,ここをきちっとやることによって,むしろ,いろいろな政治や政策によってゆがめられない,そういう会社法をきちっと先取りしておくことが必要なのではないかと思っているところであります。   しゃべり出すと長そうなので,この辺にしておきます。どうも失礼いたしました。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   ほかに御意見,いかがでしょうか。 ○静委員 それでは,岩原部会長の指示どおりの切り方になっているか分からないのですけれども,私は法律家ではなくて実務家でございますので,そういう観点から,現時点での問題意識を最初に申し上げさせていただきたいと思います。   10年以上前からだと思いますけれども,いわゆる新規産業の育成が大事だということが叫ばれ出しまして,東証でもマザーズという新興企業向けの市場を開設したのは御存じのとおりだと思います。同じような目的で,会社法制でも企業活動の自由度を高めるという改正がどんどん進んできたと記憶しておりまして,その集大成が今の会社法ではないかと思っております。   先ほど今の会社法が施行されたのは,平成18年という御案内がありましたけれども,ちょうどそのころから私どもでは上場制度の総合的な整備というものを始めております。当時は,主に新興企業向け市場の上場会社の中に,会社法制を言わば濫用したと言われる会社が現れてまいりまして,市場の秩序を乱したり,あるいは株主・投資家の権利や利益をないがしろにしたと言われるような例が幾つも現れてきたということで,市場開設者として,再発防止のためにできる限りのことはしたいという意識で始めたということでございます。そこで,神田委員にお願いいたしまして有識者による懇談会を作っていただきまして,そこでの議論を基にしまして,これまで4年にわたって上場制度の整備をやってきたわけでございますけれども,4年間を振り返ってみますと,気が付くのは,今の会社法を所与の条件とした場合に,どうやったら市場の秩序が守れるのかとか,どうやったら株主や投資家の権利や利益を守れるのかというのが,結果としてみれば最大のテーマであったといってよいと思っております。   この4年間の中でも,今回この審議会で取り上げられると伺っておりますいわゆるコーポレート・ガバナンスの問題というのは,特に最近2年ほど私どももずっと興味を持って,実際の施策に取り組んできたところは,先ほどから金融庁さん,経済産業省さんの御指摘のあったとおりでございます。   その成果は幾つかあるのですが,少しだけ紹介させていただきますと,第三者割当ての関係というのがございます。第三者割当て,つい最近まで上場会社の増資の主流だったわけですけれども,先ほどもお話がありましたとおり,既存株主の持分を確実に希釈化する手法にもかかわらず,基本的に会社法では取締役会決議だけで実施できるという仕組みでございまして,投資家からは大分悲鳴が上がっていたという状況がございます。私どもでは,その規模に制約を設けるとか,あるいは株主の納得性を高めていただくために,総会決議あるいは第三者意見の入手といったことを手続的に要求するなどして,上場ルールを守っていただくというような形の一定の制約を設けております。   それから,もう一つは株式併合。先ほど出ていましたキャッシュアウトの問題とも関係するんですが,こちらもその議論の成果でございまして,中には株式併合と第三者割当てを組み合わせることで発行済みの何十倍もの新株発行を企てて,併合だけでも8割の株主の権利を奪ってしまい,しかも,その売却代金すら結果として支払われなかったといったような事件も,上場会社で現に起こっておりました。そこで,株主の地位を不当に奪うような株式併合については,やはり上場ルールで一定の制限を設けるということをやってきております。   今申し上げました第三者割当てにつきましても,それから株式併合につきましても,私どもといたしましては,ガバナンスの一番基本のところにある株主や投資家の権利や利益を守るための制度整備という意識で進めてきたわけでございます。一方で,大体ガバナンスの問題といいますと,本丸は違うところで,ガバナンスの仕組みだと言われておりますけれども,こちらのほうも金融審議会さんのスタディグループですとか,あるいは経済産業省さんの研究会の提言を受けて制度整備を進めております。例えば,よく皆さん御存じのところでは,すべての上場会社に,なぜ今のガバナンス体制をとっているのかという理由の説明を求めたり,あるいは,先ほども御紹介ありましたが,社外取締役か社外監査役の中から一人,独立役員と言っておりますけれども,独立した方を確保してくださいということをルールで決めたりということをやってきたわけでございます。   内外の投資家の評価は,まだ第一歩だという評価が多いんですけれども,しかしながら,今回の一歩は重要な一歩だという評価の声も聞いております。   一方,やはり先ほども御紹介ありましたように約1割の会社が今独立役員を確保できていないというようなことがあり,上場会社の皆さんからは,一部,どうしたらいいんだという混乱がある会社もあるようですけれども,概ね今までよりもずっと深い理解を頂いて,今後はしっかりと機能してくれることを私どもとしては期待しているということでございます。   東証といたしましては,まず今ある制度をきちっと定着させた上で,今後も更に環境整備を積極的に進めていきたいと思っておるわけでございますけれども,一つだけ申し上げたいと思いましたことは,私どもの上場ルールでの対応というのは,法律での対応と比べた場合に,大変速くできるとか,その割には効果が強いとかという意味では,大変良いところがあるんですけれども,冷静な目で見ますと,制度的に結構な限界もあるということでございます。つまり,法律でなければできないこともあると思います。   なぜかといいますと,上場ルールの場合は,やはり違反しても違法になるわけではなくて,多分法律上は東証と交わしている上場契約に違反しているだけという形になるということだからだと思います。したがいまして,上場会社の中に,契約違反だから違約金をよこせと東証に言われるなら払ってもいいとか,あるいは,上場廃止になっても,どうせ非公開化する予定だったから構わないというようなことを仮に考える方がいらっしゃった場合には,上場ルールというのはなかなか守られないと。これはすべての上場ルールに共通していることです。   それから,第三者割当てにかけている手続上の制約のようなものについて申し上げますと,上場ルールを守らなかったからといっても違法になるわけではありません。したがいまして,法律上の効力がなくなるわけでもなければ,株主が差止めをできるとか,損害賠償請求できるということも,多分できないんだろうと思います。したがいまして,脱法的な行為に今上場ルールでふたをしている部分があります。先ほど申し上げましたような併合を使った授権枠の拡大などはきっとそれに近いだろうと思うのですが,そういうようなものについては,上場ルールで何とかしているから大丈夫だと思わないほうがいいんではないかと思うところもございます。したがいまして,必要があるかないかということを見分けて,必要に応じて法令で手当てをすることも検討していくことが必要ではないかと思っております。   さらに,独立役員のように上場ルールだけで独自に定義を決めているような制度につきましては,一般株主の利益を代弁して取締役会その他で御発言いただくという,大事な役目を持っていただいて,そういう役割を負っていただくということを期待しているわけでございますけれども,その方の法律上の権限や責任はどうなんだという話になりますと,やはり通常の社外取締役,社外監査役と変わらないということになるんだろうと思われます。考えてみますと,特に監査役の方の場合には,そういう権限が本当にあるのかというようなことを仮に言われたら発言しにくくなるとかいうことも起こりかねないと思うわけでございますし,しっかりとこれが機能していくためには,必要に応じて,今できている仕組みを追認する形でもいいと思いますので,法令で定義だとか権限だとか責任というものを明確化していくというようなことも検討することは望ましいのではないかと思っております。   いずれにいたしましても,私どもといたしましては,この場での今後の審議が市場秩序の維持に役立つようなものになること,あるいは株主や投資家の権利や利益がしっかりと守られるものになること,最終的には,それを通じて国民経済が豊かになっていくことということに役立てば一番だと思っておりますし,そういう気持ちで今回は審議に参加させていただきたいと考えておる次第でございます。   先のことを申しますと,その意味で気になるのは取締役会の構成の問題ですとか,あるいは後のほうの課題になるんでしょうか,上場子会社の少数株主保護の問題とかというあたりについて,強く関心を持っておるところでございます。これらにつきましては,是非おいおい機会を頂戴しまして,私どもでつかんでいる上場会社の実態などにつきまして説明させていただきたいと思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。   冒頭で長々と恐縮でございますけれども,よろしくお願いします。 ○岩原部会長 ありがとうございます。是非今後,積極的にそういう点,御発言いただけたらと思います。   ほかに。 ○築舘委員 本日の参考資料1の指摘8以下に,監査役の監査機能等についてという問題提起,問いかけ等があるわけでありますが,監査役制度につきましては,これまで度重なる法改正が行われてきたと。そういうことにもかかわらず有効に機能していないのではないかと,あるいは,しているのかという,そういうたぐいの御意見,御批判があることは私どもも承知しているわけでございます。   一方におきまして,監査役自身はどうかということなんですが,法に決められておりますように,コーポレート・ガバナンスの一翼を担うという位置付けのもとで,取締役の職務執行の監査を通じて企業不祥事を未然に防止していきたいと。そういう気持ちで,自らの監査活動を経営の現場においても行って,企業活動の現場においても行っていると,そういうことであります。   こういう外部からの評価と,それから監査役自身の気持ちといいますか志のギャップがどういうところから生じてきているのかということをちょっと考えますと,監査役の宿命として,日々の活動といいますか,そういうものが株主その他の第三者にはなかなか見えにくい,そういう宿命があるのかなと思います。   それから一方では,これは若干の反省も込めてなんですが,不祥事が発生したような際に,監査役がきちんと説明責任を果たしていないのではないかという,そういうような批判もあるというようなことで,監査役監査の方法や結果,それに関する開示が十分ではないという現実問題にも一因があるのかなとも考えたりしているわけであります。   それから,会社規模,業種,業態,経営トップの姿勢等によりまして,監査役の監査環境というのは実は千差万別であります。その中で,立法趣旨にのっとって堂々と監査活動を行っている監査役も大勢います。そういう一方で,残念ながら必ずしも十分な職責を果たしていないと思われるような監査役もいるわけです。そういうようなことで,この監査役の実態というのは相当幅の広い分布になっているのではないかというのが私の状況認識であります。   こういう点から考えますと,まずは監査役としての職責というものを果たしていくために,監査役自身が自己研鑽を重ねていくこと,そして継続的な努力を行っていくということは当然のことでありますが,不可欠なことであります。そして,更に言えば,監査役制度全体の実効性を確保していくためには,個々の監査役が置かれた個別事情,つまり,それぞれの監査環境にかかわらないで一定のレベルの役割を監査役として果たしていくためのサポートを制度的に担保していただくことも重要なことなのではないかと実感しているところでございます。   確かに振り返ってみますと,監査役制度につきましては,これまで度重なる制度改正が行われてきたわけであります。しかし,監査役実務に照らし合わせますと,個々の監査役の監査環境には左右されずに監査役が監査活動の一層の実効性を確保していくために,法制度を改正する余地がまだあるのではないかと思っております。   そういう中で,今,監査役として,監査役協会という場なんですが,どういうようなことを,具体的な課題として考えているかということを申し上げますと,3点ございます。1点目は,正に今日の大きなテーマであります内部統制システム関連でございます。そして二つ目として,会計監査人の選任議案及び監査報酬関連でございます。これが2点目。3点目としては,株主と経営者との利害調整関連。この三つでございます。   1点目の内部統制システム関連でありますが,現行会社法上は,内部統制システムについて申しますと,その整備に係る取締役会決議の内容の概要が事業報告の記載事項とされているわけでございます。そして株主にも開示されていると。   しかし,昨今,もう会社法がスタートしてから数年たつわけですが,今現在,株主の関心はどういうところにあるかというと,むしろ取締役会で決議した基本方針,それは当然のことであって,それが次のステップとして適切に運用が行われているのかどうかというところに関心が移っているのではないかと思うわけでございます。したがいまして,こうした内部統制システムの運用状況や結果につきまして,経営者は事業報告において開示を行い,そして私ども監査役も監査意見として監査役監査報告に記載することが,経営者と監査役の双方が内部統制システムに対して各々の説明責任を果たすことになるんだろうと思うわけであります。現行法制の下でも禁じられているわけではありませんから,経営執行部と監査役にその意思があれば,それを実践していくことは可能であります。やればいいではないかということになるわけですが,しかし,実態はどうかといいますと,事業報告及び監査役監査報告ともに,内部統制システムの運用状況や結果にまで言及している例は,まだごく低い比率にとどまっております。   したがいまして,内部統制システムの運用状況と,その評価結果についてまで事業報告や監査役監査報告に記載することを確実にしていくためには,法令の改正というものも視野に入ってくるのではないかと考えている次第でございます。   私どもが課題として考えている第2点目でありますが,いわゆるインセンティブのねじれの問題でございます。この場でも既に何人かの方から言及がございました。結論から申し上げれば,現行法上の会計監査人の監査報酬及び選任議案に関する監査役の同意権を決定権とする制度改正が望ましいと私どもは考えております。   私ども監査役協会が実施したアンケート調査によりますと,現行の同意権についても,この同意権というのは拒否権まで伴っている同意権でありますので,法制度上は非常に強い同意権になるわけですが,これについても,その法の趣旨どおりに職責を果たしている監査役がいる一方で,少なからずの監査役が同意権の権限とは程遠い実務実態にあるということも明らかになってきております。この問題につきましては,現行法制下における監査役監査活動の,言わばベストプラクティスを通じまして,同意権行使の役割を果たすように,私ども協会としても現役の監査役に対する理解活動を推進していく予定でございますが,しかし監査役がより主体的に活動することを制度的に担保するためには,決定権の付与が効果的であると考えるに至ったところでございます。当然のことでありますが,それを支える条件としては,監査役のうち少なくとも1名は,財務及び会計に関する相当程度の知見を有する者が望ましいというようなことも考えております。   私どもが考えている課題,主要論点の3点目は,株主と経営者との利害調整であります。   ただいま静委員からもお話がありましたけれども,第三者割当てにつきましては,株主と経営執行者の利益相反があり得るテーマといたしまして,協会としてもこれまでずっと議論をしてきたところでありますが,そういう過程の中で,一方でといいましょうか,昨年8月には東証さんの上場規制改定によりまして,上場会社においては一定の第三者割当てについては監査役の意見が求められることになりました。こういうことで,不適切な第三者割当ての抑制に向けて監査役の役割が明示されることになったと考えております。このような上場規制の導入というのは,買収防衛策の問題と同じように,株主の利益を大きく毀損する可能性がある経営執行部の業務に対して,監査役が一層明確な形でその役割を担うことが要請されているのではないかと私どもとしては認識しているわけであります。   したがいまして,会社法の中でも,買収防衛策の導入の場合と同様に,第三者割当てに該当する場合も事業報告の記載と同時に監査役監査報告の開示事項とするようなこと,また,株主の利益が害されるおそれがあるような場合には,監査役が一定の役割を果たせるような法整備,こういうことについても検討すべき課題ではないかと考えているところでございます。   実はもう少し,アンケートその他のデータ等もありまして,詳しく私どもの今考えている状況とか,あるいは気持ちを御説明したいと思っておりまして,何人かの方から既に要望が出ておりますが,私もこの後どこかのタイミングで,もう少し時間を頂いて御説明させていただくチャンスを頂ければと思います。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。そのようにしていきたいと存じております。 ○濱口委員 私は特に上場日本株への投資家の立場での意見ということですが,細かい論点はいろいろ資料にございますので,今後の御議論をされる御参考までに,今まで投資家がどういう状況に置かれてきたかということを簡単に御案内して状況認識をしていただければと思います。その状況というのは日本株への投資の成果でございますが,これはマスコミ等で十分に論じられていますが,非常に厳しいということです。   よくバブル後は上がらなくても仕方なかっただろうという議論もありますが,例えば,バブル前の1980年から2009年度まで,約30年間の日本株の代表的な指数であるTOPIXの複利の利回りというのは,3%台半ばです。これに対して,主要な先進国の外国株での利回りというのは大体8%前後。この8%といいますのは,1980年ですから円が200円から今の100円に落ちてきた,この円高のマイナスを加味しても8%ある。その円高の要素というのは,投資家がヘッジしようと思えばできたわけで,現地通貨で見ますと,海外の市場というのは10%を超えるリターンがあった。30年間で年率4%から5%のリターンの差が出ているということです。これをバブル後の過去20年,1990年からと直近の10年で見ますと,御案内のように,もう大変な様相です。過去20年ですと年率でマイナス3%,過去10年ですと年率でマイナス4%。つまり,それだけの損失だということです。年率ですから,例えば内外の差で5%の10年といいますと50%です。これが20年ですと100%以上,30年ですと,3倍以上の差が出ている。日本株への年金基金の典型的な配分というのは大体2割から3割ですけれども,過去20年は明確な,絶対的な損害を年金基金は被っていたという,非常に厳しい現実がございます。   これは相対的な,海外との比較ですが,実は国内の円の債券との比較で申し上げても,例えば円の債券に過去30年間投資してきますと,これも年率の複利で5%のリターンがあった。したがって,先ほどの3%台半ばというのは,その円の債券のリターンをも下回っている。20年でも債券は4%ありました。   これは,基本的にはもう資本市場が前提にしている想定,環境とは全く違うわけで,リスクを取ってきた株主が,リスクを取っていない債券投資家に対して大幅に下回るリターンしか得られなかった。これは,主要国ではもちろん最低でございますし,相当に異常な状態であるという認識が必要かなと思っています。   現実に,年金基金の立場で申し上げますと,過去,2000年以降,約500ほどの年金基金が解散しております。昨年,一昨年の厳しさもあって,今若干市場は戻っていますが,更に解散が増えるかも分からない。現実にはその解散の中で年金の受給者の年金が削減されておりますし,喪失されているという厳しい現実がございます。   これは上場株のリターンということですが,一般に言われているように株のリターンは本当の長期ではいわゆるROEに連動するだろうというデータでの検証もございますが,これも御案内のように,日本企業のROEというのは,いろいろ変動がありますけれども,長い目で見て大体5%前後を推移してきているのに対して,海外の主要国の企業のROEというのは,ざっくり言いますと15%前後です。したがって,ROEで10%近い差が出てきている。実はこの差が,先ほど30年の数字を申し上げましたけれども,上場株式のリターンにおおよその差として現れていると言えるかもしれません。   こういう状況は,もちろん日本の置かれているマクロの環境,金利が低いとか,この辺の影響ももちろんございますが,とてもそれだけで説明できるレベルではないということでして,今回の諮問で,「会社を取り巻く幅広い利害関係者の一層の信頼を確保する観点」とございますが,あえて申し上げると,その会社を取り巻く利害関係者の一員である株主の利益が恐らく最も軽視されてきた,最も犠牲にされてきたと言っても過言ではないのではないかと思います。少なくとも国際的な比較の尺度でいいますと,最も軽視された株主は日本株への投資家であると言ってもいいのではないかと思います。   これが非常に厳しい投資家をめぐる環境ですが,具体論はまた次回以降,何らかの機会でお話しできるかと思いますけれども,会社法との関係でいいますと,基本的には企業のガバナンスを規定する法律であるということであれば,そのガバナンスの役割は,会社のいわゆる健全性と,もう一つの大きな柱である効率性を規定する仕組みであろうと思われますが,よく言われているように,日本の企業の場合には,その効率性の追求,若しくはその監視機能が,やはりどこかで欠点があるのではないかということが,先ほど申し上げたようなROEなり株式のリターンの悪化の背景にあるとも考えられます。   それと,最近,外国人株主の日本への投資も多いわけですけれども,その外国人株主の観点ということも,これだけグローバル化が進んできていますので,競争力を維持するという点でも,決して無視できないと思います。   そういう観点からしますと,ここでいろいろ具体論で指摘されておりますけれども,やはり独立した社外取締役の機能,位置付け,それから,恐らくその機能を強化する対応策というものが十分更に議論されるべきかと思います。今まで経産省なり,金融庁の場でいろいろ議論されてきたようでして,その中で経営者側からは幾つかの異論も出てきているようですので,是非,この会は2年間やるということになれば,十分に経営者側の意見も聞きながら,現場の状況も十分にしんしゃくしながら,本当に日本の,大げさに言えば株式市場の衰退の岐路に立っているかも分からないというぐらいの危機的な認識を持って,コンセンサスを得ていくような議論ができればいいのかなと期待します。   あと,特にここには出ていなかったかも分からないですけれども,いわゆる株式持合いについては,金融庁のペーパーのほうで少し触れられていますけれども,これはやはり日本の株式市場の形骸化といいますか,正に議決権の空洞化の問題に直結することでもありますし,企業買収,いい意味での企業買収は機能していないという原因にもなっていると思いますので,これについて,会社法の観点から,具体的に法律的にどういう手当てができるのか,何らかの対応ができないのかどうかというのも一つの議論のテーマになるのではないかと思っています。   最後になりましたが,一応投資家の代表ということで言われましたが,ほかの委員の方を見ていますと,私一人しかいないみたいですね。これは明らかに不足していると思いますので,是非第三者の意見を聞かれる場を設けていただきたい。例えば先ほど言いました外国人投資家の意見を聞くということであれば,いわゆる議決権の行使の助言をしている,具体的にはリスクメトリックスという会社がございますが,その辺の方に外国人投資家の観点から意見を言っていただくのはいかがでしょう。それとあと,いわゆる投資信託若しくは投資顧問会社の代表のような方ですね。投資顧問業界から,個人投資家を含めた,若しくは年金基金以外の機関投資家の意見として言っていただくということも大事かと思います。日本の機関投資家ですと生命保険会社も非常に重要な位置付けがありますので,生保協会なんかからも何か意見を聞かれれば参考になるかなと思います。   あと,最後ですが,私のほうは,その辺のガバナンスについてはいろいろ提言してきていますので,その一つの表れとしてコーポレート・ガバナンス原則というものを公表しておりまして,それに基づいて株主議決権の行使の基準というものを公表し,現にそれで議決権を行使しておりますので,その辺の内容について,もし御参考になるということであれば,この場で御紹介するということもやらせていただいてもいいかなと思っています。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   非常に根本的な問題をいろいろ御指摘いただきました。大体各界を代表される方々の御意見は伺ったと思いますので,ここでお休みを頂きまして,その後は,そのような各御発言を受けまして,研究者の方やその他の方からそれに対する御意見を伺いたいと思っております。よろしくお願いいたします。   それではここで休憩にしたいと思います。           (休     憩) ○岩原部会長 それでは,そろそろ休憩の時間が過ぎますので,議論を再開させていただきたいと思います。   どなたからでも結構でございますので,フリートーキングの御発言を頂きたいと思います。 ○奈須野幹事 それでは,私からは,お題が見直しの観点と企業統治の在り方ということでございますので,まずは見直しの観点について所見を述べたいと思います。   平成18年の会社法の施行から4年経過したわけでございますけれども,この間の,やはり大きな出来事というのは金融危機,国際的な金融危機があって,そこからの回復が日本が一番遅いというような事実かと思います。先ほど濱口委員から御発言がありましたように,そのことは株式市場における株価あるいはROEの世界に出ているわけですけれども,その背景はやはり,日本の国内に多数の企業がひしめき合っていて,国内予選で疲弊していることかと思います。そういう中で,中国であるとか,アジアであるとか,国際市場に打って出ようとしていても出ることができず,日本国内で予選敗退と,こういうことになっているのが原因ではないのかなと思っております。   もう一つは,昨今の企業のビジネスモデルの変化として,自社の経営資源だけではなくて,他社の経営資源を活用し取り入れて,あるいは要らないものは捨てていくと,このようなオープンなビジネスモデルというのが主流になってきているということかなと思います。そういうことに対する日本企業の取組というのもやはり遅れていて,このことが日本企業の低収益,株価の安さ,そういうことにもつながっているのではないのかなと思っております。   そこで,今回,会社法制の見直しを行うということでございますので,やはり基本的な視点として,こういった現在の日本経済の問題点に対して,この会社法制はどのような解を与えていくのかということについての視点が欠かせないと考えております。そのことは,別の言葉で言えば,先ほどの上村委員の成長戦略ということでございますけれども,現政権として成長戦略を考えていこうと,こういう立場でございますので,やはりこの会社法制の見直しについても成長戦略の観点からどういうことができるのかという視点が重要でございます。企業がやりたいことがやりにくくなっている,あるいはできなくなっていることが,会社法制に原因があるとして,それはどのようにすれば解除することができるのかということは,やはり見ていかなければいけないのかなと思います。   会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保するということも,そういったことから理解すべきであって,今後の日本経済の成長,日本の将来にとって禍根を残すことのないよう,この成長戦略としてどのように考えていけるのかということは欠かせないと考えております。これは1点目でございます。   この具体的なアイデア,提案については,また次回以降,いずれかの回におきまして,経済産業省としての具体的な提案をしていきたいと思っておりますので,お時間を頂きたいと思います。それに先立ちまして,その考え方の一端を御紹介いたしたいと思います。   企業統治の在り方の部分でございます。   企業統治の在り方については,先ほど,企業統治研究会の報告で示しましたとおり,様々な議論がなされております。そういう観点から,やはり重要なのは,様々な危機,変化の中で,柔軟な軌道修正,変更が可能なようなガバナンスを達成するということかと思います。つまり,変化に対応できるようなガバナンスをいかに作っていくかということだと思います。   そういう観点で現在の日本企業の現状ということを見れば,同様のバックグラウンドを持った同様の役員がマネジメントを構成しているということで,やはりそういう点については柔軟性がないというように見られても仕方がないというようなところがあるかと思います。そういうことの背景には,もちろん企業のプリファレンスというか行動というものもあるわけですけれども,一方で,会社法制のルールというものが企業の実際のニーズと適合していないために,結果的にそうなっているというような側面もあるのではないのかなと思います。例えば委員会設置会社ということを考えてみましても,委員会設置会社の考え方自身は経営の執行と監督を分離していくという非常に優れた発想に基づくものですけれども,実際の企業のニーズとは十分にマッチしていない。そのため,この仕組みは活用されていないというようなことになっているわけでございます。   そういったことを考えますと,ガバナンスの強化といったものも,一律に何か規制を強化するだけではなくて,企業のやりたいことが採りやすい,企業のやりたい機関設計ができやすい仕組みというものもまた考えて,企業の経営と執行の分離というものも達成しやすい,あるいは合理的な簡素な意思決定メカニズムが導入されると,そういったことも考えていっていただきたいなと考えております。   いずれにしろ,具体的な提案についてはまた後日させていただきたいと思いますので,今日は考え方だけ提示させていただきたいと思います。 ○岩原部会長 ほかに何かございますか。 ○安達委員 私は,ベンチャーキャピタル事業といいまして,先ほど濱口委員から,投資家の立場の方が,委員がいないとおっしゃっていましたけれども,実は私もですね,投資家の立場でありまして,ただ,違いは上場株か未上場というところ,ベンチャーですから当然未上場になりますけれども。   それで,当然,日本の国で仕事をしているわけですので,会社法も含むすべての法律の適用は,上場であれ,非上場でも受けるわけですけれども,実際には,私ども,ベンチャー企業に投資した後,いろいろな活動した上で成長戦略に乗せて,それから上場を目指すということで,実際にはこういうガバナンスも含む等々の話は,やはり上場審査の手前で実際には起こるということかと思いますけれども。   当然,事業ですから,人・物・金とよく言いますけれども,私が一番思っていますのは,実はお金は日本で当然あります。ただ,ちょっと偏在していますけどね。ちょっと一部偏っていると思いますけれども。やはり一番足りないのは人材。人が活用されていないということで,ベンチャーは一般に,いつも孤軍奮闘ですね,もともと人が足りませんので。それを助ける立場でベンチャーキャピタルとして,お金も出しますけれども,人の面でも支援するということで,当然,将来,国際的にも競争に勝てるような企業を目指すということで,上場もワンステップですけれども,当然,人材という意味で,コーポレート・ガバナンスを含む,いかに日本人,優秀な人材はたくさんいると思うんですけれども,その人たちが新しい産業の役に立つような企業に,ベンチャーに,なかなかやはり人が集まってこないというのが私の一番問題意識でございます。これ,会社法制の見直しだけで済む話ではないとは思いますけれども,ただ,会社法制の見直しも含めて,人材のいかし方,活用をベンチャー企業にも向けてもらえる何か方策ができればなと,私は非常に強く思っております。   それで,特に日本は技術力,これはもう,この10年か20年か,失われた20年間ではありますけれども,日本の技術力,テクノロジーはやはりすごいと思います。今もアメリカからも一定の評価は当然受けていますし,アジアからはもっと,日本の技術力はやはりすごいんだなと,まだまだ当然のことながら受けています。これが実際にはいかされていないと,うまくそれを仕組みとしていかせていないというのが一番大きな問題かと思っています。   それで,上場がすべてではないんですけれども,東証さんもいらっしゃいますけれども,99年ですか,新興市場のマザーズが嚆矢となってできまして,おかげさまでいろいろなベンチャー企業も上場もし,立派な会社もできたんですけれども,一方では幾つか問題点も出てきまして,残念ながら,ちょっと不祥事とかいろいろありました関係で,やや新興市場におけるベンチャー企業のステータスがちょっと今,この数年間落ちているのではないかと私は思っていますけれども,もちろん我々ベンチャーキャピタルの責任もあると思います。ただなかなか,この数年間で金融商品取引法等もありまして,かなりベンチャーに無理を強いられていることも事実ですね。その人材面にしろ,上場に向けた審査過程におけるいろいろなプロセス,非常にコストがかかっていますので,この辺をどうするかということは大きな問題になっております。   先ほど,確か上村委員ですか,おっしゃっていましたブレーキとアクセルという話があったと思うんですけれども,残念ながら,我々,アクセルを踏みながらブレーキも必要に応じて踏んでいるつもりなんですけれども,日本全体,ちょっと起業を,新しい企業を,イノベーションを起こす企業を育てるようなアクセルを踏む人が非常に少なくなったということですね。昨今,事業仕分けでも,かなりブレーキばかり踏んで,なかなかアクセルのところへ行っていませんので,ここでもう一つ,更に一段と法整備は必要だと私は思いますけれども,ニューテクノロジー,イノベーションを起こす起業の意欲をそぐような方向性だけは是非避けていただきたいなと私は強く思っています。   ただ,一方では,欧米の企業に勝てるだけのテクノロジーの,ベンチャー企業が活躍するために,人材も不足していますけれども,やはりまだまだ足りないことがたくさんあると思います。ですから,経営者ひとりで孤軍奮闘してもいけませんので,それをサポートする仕組みとして,独立した社外取締役なんていうのも一つの例ですけれども,単にお飾りでいるだけではなくて,やはりそれだけの見識を持った方が経営者をアドバイスできると,又はリードできるというような人材を輩出するような仕組みというのは是非必要ですから,これは会社法制の見直しも含めて,その人材力の活用というのは大きなテーマと思っていますので,是非これはよろしくお願いしたいと思っています。   それから,先ほどから,いろいろな委員の方もおっしゃっていましたけれども,やはり過去,未上場企業ということで,かなり乱暴な第三者割当増資も含め,いろいろなことが起こったことも事実ですね。ですから,これは東証さんの一つのルールも,ガイドラインも作られていますので,これは非常に助かっておりますけれども,今回,この会社法制見直しということで,第三者割当増資も含む株式の見直しと言うのですかね,これも大きなテーマだと思っていますので,ベンチャーキャピタルの立場から,こういう面での意見も今回是非述べさせてもらいたいと思っています。私は,法律そのものの専門家ではありませんですけれども,ベンチャーを約10年間,年間で1,000人ぐらいの経営者とお会いして,ですから,重なっているという部分はありますけれども,累計約1万社の経営者の人を見ていますので,そういう観点から,いろいろな意見を聞いていますので,是非それをこの場で皆さんに御参考にしていただいて,何かにいかしていただきたいと思っていますので,是非今回よろしくお願いしたいと思っています。 ○岩原部会長 いかがでしょうか,ほかに。 ○前田委員 企業統治の在り方について,感想のようなことだけ申し上げさせていただきます。   企業統治の在り方について,委員会設置会社の制度は,よく練られた,すぐれた制度だと思うのですけれども,平成14年改正当時に言われておりましたような従来型との制度間競争は,残念ながら,現状を見ればもう期待はできないのではないかというように思われます。かといって,法律の力で委員会設置会社の利用を促進するのは難しいと思いますので,結局のところ,企業統治の在り方としては,監査役会設置会社を前提とした改善策を考えていかざるを得ないというのが現実的な対応であろうと思います。   そして,監査役会設置会社での改善策となりますと,既に多々御指摘が出ていますように,社外取締役制度の利用が検討すべき重要な課題の一つになると思います。社外取締役の設置強制にまで進むべきかどうかは,本当に大きな問題で,簡単に結論は出せない問題だとは思うのですけれども,ポイントになるのは,結局は監査役会設置会社の社外取締役には何を期待すべきかということだと思います。つまり,社外の者の目を入れるというだけであるならば,権限は少し違いましても,社外監査役でほぼ足りるはずです。そして,そのことは平成5年改正のときにいったん決着しているはずです。そうではなくて,監査役会設置会社でもモニタリング型の取締役会を目指すのがいいのであれば,相当数の社外取締役の設置を強制し,あるいは誘導するという手当てを考えざるを得ないのかというように思います。すなわち,現状を見ますと,委員会設置会社が使われないことを前提に,もう一度,平成14年改正当時の議論,あるいは更に平成5年改正当時の議論まで視野に入れた慎重な検討が必要になるのではないかというように思います。   あと,監査役のほうについては,先ほど築舘委員のほうから,内部統制システムとの関係で,内部統制システムに対する監査についての問題点の御指摘があったところでございますけれども,監査役については,やはり独立性とともに監査体制の整備が重要であるということはよく言われてきたところだと思います。そして,監査の体制としては,内部統制システムといかにうまく連携できるかということが鍵になってくるのだろうと思います。この連携についても,随分これまで指摘はされてきたとは思うのですけれども,余り進んでいないのではないか。それがなぜなのか,兼任禁止規定が障害になっているわけでもないと思うのですけれども,その連携が進むように,何か法律の力でできることはないのかということは,検討してみる価値はある事項ではないかというような感想を持っています。 ○三井幹事 先ほど,スタディグループ報告書の紹介をさせていただいたときには,意見を差し控えさせていただいたので,その続きを少し申し述べさせていただきたいと思います。   今回の諮問には「幅広い関係者から一層の信頼を確保する」という言葉がありまして,そのとおりになっているか,自信はないですが,株主あるいは投資家の目線で見るという場合,株主は金持ちで従業員や一般社会とは違う存在であり,株主ばかり優遇してはいけない,という見方があるとすると,これは,昨今,長期投資の機関投資家が大きな役割を果たしている世界のお金の流れ,マネーフローの現実を見失うおそれがあるのではないかという指摘がございます。   先ほどのスタディグループは,日本の成長を支えるリスクマネーが企業にしっかり供給され,あるいは資金を提供している国民貯蓄が最も効率的に運用され,実際に市場が市場として機能するようにしていく,こういう視点で議論を始めたものであります。その意味では,規制を強化するというより,どうすれば日本が成長できるかという観点から議論が始まったものであり,その冒頭の議論は3年ぐらい前ですが,そこでの問題意識は,日本のお金,国民が持っている現金が預貯金の形で非常に利回りの低い形で貯蓄されている。それが海外を通ってリスクマネーの形で世界に投資をされている。リスクマネーになった時点で,リスクマネーを提供している人は大きなリターンを稼ぐために大きなリスクを負うことになりますが,リスクマネーの提供元となっている日本の国民貯蓄は極めて低いリターンを甘受させられている。   先ほど濱口委員から御紹介がありましたように,日本の企業へ投資した場合,長期間,極めて低いリターンしか得られない状況であったと思います。GPIFの平均的なリターンは,高いときでも3%と言われています。3%で30年間回したときに,例えば年金額が年間で二,三十万円もらえるような掛金を想定した場合,簡単な複利計算をしますと,欧米の年金基金が享受しているような十数%のリターンを稼ぐようになると,その年金受給額は日本のような20万円とか30万円ではなくて,数百万円の金額になって戻ってくるということになります。そのような意味では,将来年をとってもらえる年金額や高齢者になってからの生活水準は,日本のキャピタルマーケットがどうなっているかによって,実は大きく左右される結果になり得るということです。   日本はずっと円高が進んできましたので,外国人投資家から見ると,日本株に投資をして為替の円の値上がりによってリターンを稼いでいたところはあり,日本株に投資するインセンティブがあったかもしれません。日本の年金の掛金,あるいは我々の貯蓄がどうなっているかというと,円高が進んでいますから,先ほど濱口委員のおっしゃったとおり,国内の企業に投資をすれば極めて低い利回りしか得られず,将来の年金も少ない。海外の企業に投資をすれば,その国の通貨建てでは高いリターンが稼げますけれども,為替のヘッジを上手にしないと円高により損失が出る。要するに,投資先の為替はどんどん下がっていく関係にあり,日本国民一般として富が得られず成長できない。海外の従業員は,年金で実は大きなリターンを稼いでいる。このような不均衡があるということが,3年前,このマーケットをしっかり機能させる必要があるという議論の原点でした。   ということでございまして,実は投資家というもの,あるいは上村委員が先ほどおっしゃったように,投資家というのはもう少し広く定義をすべきであると思います。潜在的な投資家だけではなくて,もっと広く市民と考えるべきだとおっしゃいましたけれども,非常に現実をついた御指摘だと思いまして,この広い利害関係者という中には,実は投資家といったときに我々の老後の生活も入っていると,こういう視点が要るのはないかと思います。   やや総論的な話になりましたが,もう一つ,ミクロな話になって大変恐縮ですが,先ほど,投資家の立場の方が委員として少ないという御指摘がありましたが,金融庁がこれまで審議会などで議論したときも,なかなかそういった声が日本の政策形成プロセスに反映されないという御議論を多々賜っております。投資家サイドあるいは投資家としての行動を助言するNPOとかいったものがグローバルに発達しており,日本の年金基金や日本の機関投資家にアドバイスもしていますし,あるいはアジア・日本という連合体で行動している人たちもいます。そういった方々の意見陳述を聴取する機会を是非お諮りいただければ有り難いと思います。   それと並んで,公認会計士,監査法人は,会社の機関として位置付けられています。監査人は二つのステータスがあって,会社法上の会社の機関としての会計監査人であると同時に,金融商品取引法上は外部監査人,独立監査人として有価証券報告書における財務諸表の適正性を担保する役割を担っております。金商法と会社法のダブルステータスをどうするかという大きな問題はもちろんあるわけですが,会社法上,会社の機関として重要な役割を果たしている会計監査人は,実際には公認会計士の資格がないとできない機関でございます。ただ,残念ながら,この会社法制部会にはメンバーとして入っておられません。是非,会社の機関として会社のガバナンスに重要な役割を果たしている監査法人ないし公認会計士からの御意見もお聞きいただきたいと思います。具体的には,先ほど監査役協会の築舘委員から御発言がありましたように,会社法上の会計監査人の選任議案,報酬決定議案について,その決定権限を取締役会から監査役会に移すべきではないか,こういう御提言があります。これは,金融審議会も実は同様な立場にあると考えております。   経済界の方からは多分反対意見が出てくると思うのですが,会社から選任される立場であり,かつ,公益のために会社と衝突して監査をする立場の方々の声も,是非聞いていただければ有り難いと思います。 ○中東幹事 三井幹事がおっしゃられた投資のインセンティブという要素に対してどう考えていくのかは,大事だと思います。その点で,前田委員がおっしゃいました点には,私も基本的に賛成でございます。  その際には,部会資料1の「企業統治の在り方」の二つ目の「・」にもありますように,どういった背景でこういった問題が生じているのかということを確認することが大切であると思います。具体的には監査役の権限を強化するという選択肢があるわけですが,他方で,独立性をどう確保するのかということがあり,これはやはりセットの問題であると本来思っております。先ほどの築舘委員のお話を伺っていると,どうも実態において不安になる面もあり,ただ,制度的にバックアップできるものが構築できるかもしれないということで,そこら辺,やはり連携して考えなければいけないのではないかと思っております。その点に関して,指摘12にございますが,内外投資家にとって監査役設置会社の仕組みが分かりにくいということで,随分前からこれは言われていたと思います。ただ,他の国を見ましても,欧州の共同決定でもそうですが,ガバナンスの制度そのものが分かりにくい,あるいは,どれだけリスクがあるのか,どれくらいガバナンスが経営の効率性を促進するかということについて,分かりにくいガバナンス構造は,日本以外にもあると思います。にもかかわらず,どうして監査役設置会社についてはここら辺が外国には分かってもらえないのかということは不思議な感じがします。もしお分かりになればお教えいただきたいと思います。   それとの関係では,指摘5にございますが,現に委員会設置会社の形態を採っている企業は少ない。説明はしづらいけれども監査役設置会社を続けていらっしゃるということになります。そうなると監査役設置会社という形態で十分に対応できているのかもしれず,実際のところ,どれほど困っているのか理解が難しい気がいたします。ここら辺について,実態はどうなのかについてお教えいただければ幸いです。 ○岩原部会長 さて,実態を説明ということになると。 ○静委員 私は,その話は何度か外国人の方から直接聞いたことがございまして,日本の監査役制度というのもなかなか,権限のある独立性の高い,いい制度なんだという話を,先ほどからちょっと出ていますけれども,アジアを拠点にしている海外の機関投資家の方々が白書の形でまとめて私どもに持ってきたとき,したことがございます。監査役という言葉を聞いたことがないということよりも,やはり,決定的におっしゃるのは,人事権がないではないかと,経営者,つまり社長を首にする権利がない人が社長を監督できるという理屈が分からないと,どうもそこのところが一番根本的な議論として彼らは思っていて,それが分からないのだということを何度も繰り返しおっしゃっていたので,恐らくそれが一番中核的な原因ではないかと思いますけれども。 ○築舘委員 私も監査役制度について海外の投資家と会話をしたことは,そう多くはないんですが,一つは,今,静委員がおっしゃられたことはやはり言いますね。   もう一つは,欧米の投資家の人たちは,やはり自分たちの国といいますか,ホームグラウンドにない制度についての関心というか,そういうものが非常にやはり薄くて,それなりに機能はしているのかもしれないけれども,ああそうですかという感じで,なかなか関心を持ってもらうことが難しかったという,そういう個人的な経験が何度かございます。 ○三井幹事 監査役を英語に訳したときに,スーパーバイザリーボードのメンバーと訳すケースと,インターナル・オーディターであると訳す場合と,2種類あろうかと思います。   まず,前者のほうでいいますと,スーパーバイザリーボードですから,ドイツ型の監査役会をイメージされる外国人はいるようでございます。実際に私どもにそう聞いてきた外国人の方もいらっしゃいます。先ほど御指摘があったとおり,人事権,いわゆる取締役社長や会長に相当する人をオーバーライドする権限がなく,実質的なパワーを持っていないということから,よく分からない制度という印象を与えるということだろうと思います。   もう少し実態に近いのがインターナル・オーディターということになると思いますが,これは日本語で言うと,監査役というよりはむしろ内部統制部門的なニュアンスがあるもので,社長直属で社内に目を光らせているお目付役といった意味だと解されるのだろうと思います。   このようなことを海外の機関投資家などが金融庁を訪問した際に言われまして,日本の監査役というものが,イメージとしてわくような英語になりにくい。それから,実際に監視しているのであれば,モニタリングボードなりモニタリングモデルとして,社長をオーバーライドするような権力なり権限を行使してほしいけれども,そうなっていない。したがって,もう少し分かりやすさみたいなものを名称も含めて機関設計や,権限,責任の分配などにおいて追求するということが一つのアイデアとしてあるかもしれません。 ○田中幹事 先ほど来,実務家の方から会社法制に期待する御意見をたくさん伺って,大変勉強させていただいたんですが,その中で,会社法制が果たしてどこまでその御期待にこたえられるかということを,研究者としても真剣に考えなくてはいけないと思います。会社法というのは,現在及び将来の株主と経営者,それから,それ以外のステークホルダーを含める場合もあり得るわけですが,そういった人たちの権利義務関係を調整するという法律で,例えば成長性の高い企業に補助金をあげるとか,そういう物資がないといいますか資源がないものですから,そういった法律で,どこまでのことができるかということを考える必要があると思います。余りにも大きなことをやろうとか,そういうことを研究者が思ってしまうと,それは例えば,いつまでも経済が低迷している限り,もっと株主の権利を強化しなくちゃいけないとか,あるいはその逆に,もっと規制を緩和しなくちゃいけないとか,そうなっていくので,法制としてどこまでできて,どこまでのことを議論すべきかということを考えていかなくてはならないのではないかと思います。   それで,具体的に,この審議会で私自身が何を期待しているかということを3点ほどお話ししたいと思います。   1点は,先ほど来議論されている機関設計,特に監査役会と委員会設置会社との関係であります。   私はアメリカの会社法を中心に今まで研究してきたんですが,アメリカで監査役あるいは監査役会に対応する機関は監査委員会,つまり,取締役会の一応下に置かれて,取締役の中から監査委員に選定された人によって運営されている監査委員会であるわけです。これと監査役制度との違いを考えると,結局,業務執行には従事しないけれども,取締役会の一員として業務上の重要な決定には関与する,特に人事の決定にも関与するという,そういう監査委員がいるという監査委員会の制度と,そのような決定にも関与しない,業務執行の決定からも中立であって,決定の適法性をも外側から監視するという監査役設置会社の違いがあるわけです。私の直感的な印象は,この二つは客観的には甲乙つけがたいシステムであって,アプリオリにはどっちがよりいいかは分からないと思うんですね。そうなると,委員会設置会社を選択肢として認めてきたというこれまでの会社法制の文脈からいえば,選択を認めるという方向になるのではないかと思っています。   現行制度の一つの問題点は,監査委員会設置会社という形での選択がないということでありまして,監査委員会を置く場合には,指名委員会と報酬委員会という全く性質の異なる制度とセットで選択しなくてはならないということであります。こういう問題意識は,全く私のオリジナルではありませんで,既に委員会設置会社ができたころから実務家の中では議論されているところですが,監査委員会設置会社という選択肢を認めるべきではないかと。これは,指名委員会,報酬委員会とセットではありませんので,基本的には執行役という制度はなくていい。取締役の中から取締役会で業務執行をする取締役を選ぶと,そういう制度でいいのではないかと思います。違いは,監査役の代わりに監査委員ですから,それは取締役会に入ってくるということであります。   こういう制度を作っても,従来型の委員会設置会社は選択肢で残るわけですから,選択肢がますます増えてますます分かりにくくなるようなリスクもあるかもしれないんですが,少なくとも欧米の投資家から見れば,監査委員会設置会社のほうが分かりやすいことは確かでして,これによって,社外監査役を入れつつ,しかも社外取締役を入れてくれという要求にもこたえなくてはならないというような難しい状況を緩和すると,そういう選択肢を認めるという効果はあるのではないかと思っています。これが第1点目です。   それから,2点目は,私が特にこの部会で議論していただきたいと思うのは,株主の権利とか権限というのがどこまでの範囲で認められるべきかということを,何らかの原則をもって考えられるような場にできないかと思っています。   この点は,よく日本の会社法というのは,法制度上は,株主の権利が強い,特に株主総会の権限なんかはアメリカよりも多いんだということを言われることがあります。確かにそれは当たっている面もあるんですけれども,恐らく実際に株式に投資している投資家の目から見ると,どこが株主の権利が強いのかよく分からないということはあると思うんです。これは,株主総会の権限を強めても,例えば第三者割当増資とか株式持合いというのが全く制約なくできるとすると,株主構成を経営陣の意向で変更できますから,株主に与えられた強い権限は実は経営陣の権限になってしまうという部分もあると思います。   これはちょっとやや状況をネガティブにとらえ過ぎているのかもしれませんが,そういう問題意識からすれば,例えば株主の権利として,支配にかかわる決定には関与できるようにすると。支配にかかわる決定は,第三者割当増資であれ組織再編であれ,かかわるようにするということが,一つの選択肢として考えられるのではないかと思っています。   それから三番目は,これは私個人が,もし,―規制強化というのはなかなか今は抵抗が強いのかもしれませんが―規制強化として考えられるとすれば,株主の権利として,株主自身に不利益が及ぶ行為について,差止めの請求が起こせるようにするということが重要ではないかと思います。   日本の会社法は,基本的に株主主権で,会社は株主の利益のために運営されなければならないと言っておきながら,株主は,確かに会社の不利益になる取締役の決定については会社法360条に基づき差止めの請求を起こす権利は持っていますが,取締役の決定によって株主自身に直接不利益が及ぶ決定,例えばスクイーズアウトで,安い値段で買いたたかれるという場合には,これは会社の不利益にならないので,非常に差止め請求に乗りにくいということがあります。   こういった問題が幾つか存在していますので,こういったことについて,直接一般的な株主による差止め請求という制度を作るのか,それとも,これまで指摘されていたような,組織再編について差止めの請求権を設けるという個別規定を設けるかは別としまして,そういった新たな差止め請求の創設ということも議論する余地があるのではないかと思っております。   長くなって申し訳ありませんが,以上であります。 ○岩原部会長 まだまだ御議論はあると思いますけれども,もう一つの論点がございまして,親子会社に関する規律についても本日御意見いただきたいと思いますので,そちらのほうに関する御意見を頂ければと存じますが,いかがでしょうか。これも非常に大きい問題なのですが。 ○奈須野幹事 今日は,親子会社に関する規律ということで,いろいろな親会社株主の保護,子会社少数株主・債権者保護,企業結合形成過程に関する規律と御紹介いただいていて,これはこれで必要ではあろうかとは思われるわけですけれども,そもそも現行の会社法自身が単体の会社というものを前提として設計されていて,複数の企業がグループとして企業を経営しているという実態をあまり想定していないわけでして,そういうグループ経営の実態と会社法の不都合と申しましょうか,例えば親会社と子会社があって,本当は親会社が全部見て責任を持っているはずなのに,それぞれの会社で特定の機関を設定しなければいけないというようなことによってグループ経営がうまく進んでいないという問題があると思われ,そこの部分はどうなるんだという問題意識がございます。つまり,まずはグループ経営の実態と会社法の不整合を直して,会社がグループとして経営していくことを円滑にできるようにするというような仕組みを整え,その上で,親会社株主の保護とか子会社少数株主・債権者の保護とか,何か問題が生じるようであれば導入するということで,こういった規制まず先にありきというようなことを考えるようでは,やはり先ほど申し上げたような企業の活力を損なうというようなことになりかねないと私どもは危惧しております。 ○岩原部会長 ほかに何か。 ○逢見委員 親子会社に関する規律について,従業員という観点から申し上げたいと思うんですが,ビジネスモデルが,いわゆる従来の日本的経営のモデルと大分変わってきたんだろうと思います。特にバブル崩壊後ですね。   従来の日本的経営モデルでいうと,衰退する事業があれば,その衰退する事業とともに新しい事業に展開して,その中で雇用を守りつつ新しい事業に適合させていくと。従業員は広域の配転にも応じながら,そして新しい事業に適応するように,自ら一生懸命訓練して,そして新事業を守り立てていくと。ですから,形は紡績会社であっても,実際やっていることは非繊維のことをたくさんやっているとかで,そういう形で企業は生き残ってきている。   しかし,企業のルールも変わって,純粋持株会社を認め,それから株式公開による企業の買収・交換も容易にし,そして会社分割法制も入れという形で,そして選択と集中という形で,企業が自ら持っている事業を譲渡したり,あるいはほかのところから買ってくるということを容易にするルールがなされ,実際,企業行動もそうなってきている。そういう中で,ホールディングカンパニーが事業会社を束ねて,その中で企業の再編なども容易にやるようになってきているというのが実態になっているんだろうと思います。   そういう中で,実は従業員がそういうことに関して発言する機会がほとんど保障されていない。これは指摘42のところにも入っておりますが,唯一会社分割のときの雇用契約の承継については,労働法の中で,それに合わせて作ったわけですけれども,そのときの国会の審議の中でも,確かに会社分割についての雇用契約の承継についてはルールはできたけれども,ほかの事業の再編等について全くそのルールがないではないかというのがあって,残念ながら,しかし労働法の中ではその後そうした新しいルールを作る動きになっていないんですが,株式を多数持っているということは,会社を買っているだけではなくて,支配していることになるわけです。そういう親子関係の中で,会社を支配することの責任ということが会社法の中にきちんと書かれていないということが,従業員がそうしたことに発言できないという背景にあるのではないかと思います。   それから,従業員の発言については労働法でやればいいかという議論もあるかと思うんですけれども,労働法の中では朝日放送事件が引き合いに出されまして,親会社であっても,それが実質的に従業員の雇用や労働条件に関与している場合には使用者としての責任は存在するということ,それがあるからいいんだというのが結論でありまして,結局ケース・バイ・ケースで考えるしかないということなんですが,実際に,完全に子会社を支配している親会社というのは,実質的に支配しているかどうかではなくて,まず会社法上,そういった子会社についての責任の中に雇用についての責任が存在し,また,その従業員に対する使用者責任が存在するというようなことが,やはり会社法の中にも規定されるべきであると思います。   それから,事業がいつもいい状態だけではなくて,事業が傾くと,経営が悪化するというようなときに,従業員にとってはやはり非常にそのことが心配になるわけですが,適切な情報開示がないし,それから,それを再編するに当たって,労働条件の見直しとか,雇用についての削減とか,いわゆるリストラと言われるものがあるわけですけれども,そういうことに対してもう全く受け身でしかない。企業価値を作っていく源泉が人にあるということであるとすれば,やはりそういうことについてもステークホルダーの一員として,企業の重要な構成員としての観点から,その関係の規定を与えるべきである。   倒産法制では,10年ほど前に一連の改正がございまして,民事再生法とか会社更生法の見直しがあった中で,従業員の関与の度合いが非常に深まりました。しかし,法律を通さないいろいろな事業の再編,あるいは再建という点については,会社法で何もルールがないということもあって,しかも,債権者としては発言できるけれども,そうではない者について十分な発言の場が与えられていないということで。事業再生に向けて,例えば産業再生機構の法律を作ったり,あるいは今行われている企業再生支援機構,こういう法律を作るときに,そこに雇用への配慮とか従業員の発言の権限とかということを個別に入れることによって,そういうことで担保してきているという個別の対応でしかないわけですが,しかし,そういう手続を通さないで労使間でやって,事業を再建したりという努力をしているときに,やはりそういう部分について,もっと従業員が関与できるような規定を設ける。そのことが,むしろ企業の再生ということに資するものになるのではないかと思っております。 ○野村幹事 皆様には釈迦に説法というような話になってしまうかもしれませんが,今日は1回目ということなので,お許しいただければと思います。先ほど,田中幹事のほうからもお話があったのですが,ここで議論する際に一番大事なことは,会社法というのはどういう法律なのかということをきっちり確認することではないかと思います。つまり,会社法という法律には何ができるのかということをよく考えながら,どの問題を拾っていくのが合理的なのかをしっかり議論することが必要なのではないかなと思います。   そもそも会社法という法律は,私的利益の調整には非常に役立つわけでありますが,行為を取り締まるのにはふさわしくない面があります。それはなぜかというと,会社法の場合には,利害関係人の誰かが訴えて初めて適用されるわけで,逆に言えば誰も訴えなかった場合には,いくら会社法に違反するような行為がなされたとしても,そのまま放っておかれることになるからです。ですから,国家権力が特定の利害関係人を保護するために後見的に介入する必要があるとしても,そうした局面では会社法はほとんど役に立たないというわけです。したがって,特定のステークホルダーに過度に期待を持たせるような形の法改正というのは,かなり困難であるということを確認しておく必要があると思います。   金商法と会社法と,それから,今日先ほども出てきていましたけれどもソフトローと呼ばれるものの三つは,それぞれのやはり特徴がありますし,得手不得手がありますから,それぞれの得手不得手をよく考えた上で,そのうち会社法が担うのはどこにあるのかを,よく考える必要があるのではないかと思います。   現在は,会社法がうまく機能していなかった部分について,ソフトローがその役割を担っている場合があるわけですね。そうした規律の中には,むしろ法律に格上げしてもらわないと上手くいかないものがあるという御指摘は,先ほど静委員のほうからもありましたが,それはごもっともな話だと思います。例えば取引所のルールとして,希釈化率が25%以上になったら株主総会の決議を取るべきだというものが設けられています。会社法上,株主総会は法定決議事項か定款で定めた決議事項以外は決議できないことになっていますので,一体この決議は何物なんだということになってしまいます。また,そうだからといって,もう一つの手段としてルール化されている第三者委員会による評価で乗り切ろうとしても,実務が十分に確立しておらず,いい加減な報告書も散見されるといった話が出てくる。したがって,やはりここは会社法の出番,立法上の課題として,議論しなければならないだろうと思います。   それから,やはり行政取締法規として存在している金融商品取引法でなければできない部分というのも当然あるわけですね。それはやはり一般投資家というのがすべての国民を含むんだという,三井幹事の先ほどおっしゃった非常に重たい御発言がありますけれども,そうした投資家を,国家が言わば後見的に保護しようということになれば,国家権力が何らかの形で介入していったりとか,あるいは場合によっては課徴金等によってエンフォースするということが必要になってくるわけです。そうした手段にふさわしい問題は一体どこにあって,それはだれが担うべき問題なのかということをよく整理した上で,会社法の改正をしっかりやっていくことが必要なのではないかなと,そんなふうに思います。これが第1点目です。   それから,もう一つの点は,どうしても今回の議論になりますと,ドイツには例えば共同決定法があるではないですかと,あるいは,ドイツにはコンツェルン法がありますと,アメリカだったら例えば多重代表訴訟があるでしょうという,こういう比較法がどんどん出てくるわけなんですが,これは表層的に比較しても意味がないわけでありまして,それぞれの制度が,その本国においてどういう機能を担っていて,どう評価されているのかということをやはりしっかり議論した上で,それを参考にするということは必要だと思います。よその国にあるから,これは必ずやるべきだというような,そんな単純な議論には当然ならないと思いますので,是非そこをしっかり考えていただければと思います。   そして何より,先ほど上村委員からも,会社法というのはやはり基本法であるので,それが政策によってゆがめられるということは決して望ましいことではないという御発言があったと思いますが,私もそれに強く同調しているところがありまして,基本法としての会社法は何をやるべきなのかということもよく考えた上で,しっかりした議論ができればなと考えている次第であります。 ○岩原部会長 ほかに,この親子会社関係等について。あるいは,その他についての御意見でも結構ですが,いかがでしょうか。親子会社関係あるいはその他について,何か。 ○榎本委員 私は,企業をある意味ちょっと離れた形で,個々の企業を見ているという立場で,ちょっとお話しさせていただければと思うんですけれども,私がそういう形で見ている範囲では,先ほど築舘委員がおっしゃったように,監査役の方は非常によく勉強して,新しい制度も勉強されて,内部統制も充実させるということで努力されておりますし,企業統治ということに関しても皆さん意識が高いなとは思っております。   その中で,やはり取締役会というのがガバナンスの一つの大きなことでありますので,その中の取締役,監査役というのはどう在るべきかという中で見ますと,これは飽くまでも私の個人的な感じ,感想ということで申し上げますと,社外監査役ということと社外取締役ということでは,やはり発言における力が違ってくる。それはやはり最終決定権があるかないか,1票があるかないかということがあると思いますし,その中で,独立取締役というのが置いてある企業とない企業,確かに一流企業では社外取締役がいないという会社はたくさんありますし,そこでのガバナンスというのはきちっとしていますけれども,上場はしているけれどもなかなかそういう十分なガバナンスができていない会社というのはまだまだありますので,そういう意味では独立した取締役というのが,やはり必要性があるのではないかなと見ているわけです。   東証の独立役員に期待される役割というのを見ましても,そこで要求されている企業価値を向上するための行動ということは,やはりこれ,取締役という立場に結びついてくるんだろうとは思いますし,その辺から見ますと,監査役ということ以外に,独立取締役ということを考えていく必要はあるのではなかろうかなとは思っております。   確かに,社外監査役で十分見識ある意見等があるということもあるでしょうけれども,そういう場合は社外取締役のほうに移るということもあり得るでしょうから,それも含めて,やはり今後のガバナンスというのを見たときは考えたほうがいいのではないかと。株主総会なんかでも,一般株主また外国人投資家等を含めて,やはりまず,独立役員がいるのかとか,社外取締役が何人いるのかとか,いないのかとか,投資家の目から見ると,まずそこが一つの大きなガバナンスということで見えてくるのではなかろうかなと感じておりまして,親子会社のほうに入ってから後出しみたいで申し訳なかったんですけれども,ちょっとそんな感じをしておりますので,今日はフリートークということで,私の感想だけですけれども,ちょっと申し上げさせていただきました。 ○岩原部会長 どうぞ構わずに,最初のガバナンスの問題から,全体について御意見いただければと思いますが,いかがでしょうか。まだ若干時間ございますので,どうぞ。 ○荒谷委員 見直しの観点として,会社を取り巻く幅広い利害関係者からの信頼を確保するという非常に抽象的な書き方がされていることもありますが,今までの皆様の御意見をいろいろ伺っておりますと,どうも会社法を改正するに当たって,従来の会社法をそのまま基本路線としていくのか,それにプラスアルファをするのか,それとも全く新しい概念を持ち込もうとしているのか,そのよるべき立場によって少しずつ温度差があるような気がいたしました。   したがいまして,会社法の改正を見直すに当たりまして,野村幹事もおっしゃっておりましたけれども,どのようなスタンスで会社法の在り方を考えるのかということについて一応のコンセンサスのようなものを得た上でなければ,恐らく議論の集約はできないのではないかなという気がいたします。特にガバナンスについては,会社の規模や上場しているか否かなどによってその在り方も違ってくると思いますし,また,独立取締役,社外取締役等も独立性ですとか社外性という言葉だけがどちらかというと独り歩きをしている感は否めず,今後は,実態に合った形での議論が必要になってくるような気がいたします。そういった意味でも,ある程度のコンセンサスを得た上でないと議論がかみ合わないまま進むのではないかなという感想を抱きました。   それから,もう1点,最近,組織再編等に関連しまして,公開買付けで大量の株式を取得した後,総会の3分の2を得た上で強制的にキャッシュアウトするということが行われておりますが,その価格決定をめぐって裁判所の判断は分かれており,いろいろ議論を呼んでいるところですので,この機会に,この価格決定をめぐる問題や少数株主保護の問題について一度議論をしていただければと思います。 ○岩原部会長 今御指摘いただきましたキャッシュアウトをめぐっては,既に金融審議会のスタディグループのほうで取り上げられたようないろいろな問題が発生していて,証券取引所としては独自の,できるだけの対応をされているところですけれども,なおそれで十分なのかということを先ほど静委員が御指摘になったところです。   会社法の立法によって,大きく会社法が自由度を高めたところから,ある意味でいろいろな問題も生じているところもあるわけでして,そういう会社法のもとで生じている具体的な問題について,この会社法制部会ができるだけの対応をしていくということも考えるべきかと思います。これは私の個人の考えですけれども,諮問事項の「その他」の一つとして,現実に起きている,会社法の必ずしも十全でない部分をカバーしていくということも,多分この会社法制部会の一つの役割かなという感じがいたします。   いかがでしょうか,皆様のほうから。 ○三原幹事 本日の見直しの観点で,諮問91号にあります「幅広い利害関係者」ということで,関係者の皆様から本日,様々なお話を頂きまして,私も大変勉強になりました。   私ども弁護士は,様々な形で,例えば先ほどありましたような上場前の会社,それから上場している会社,上場廃止になってしまったような会社,場合によっては倒産手続,あるいは先ほど話題に出た差止めをするときの代理人であったり,差止めを受ける場合にディフェンドする側で代理人になったりという形で,様々な形で,言ってみれば会社法を通じ,又はソフトローを通じた法の支配に貢献したいと思っている実務家です。そういう意味での,法曹の中の特に弁護士は,在野法曹としての実務家としての部分を担っているわけでございます。その際に,やはり私どもとしては,この利害関係者間の問題意識,実務に根づいた問題意識をよくお聞きした上で,これに対してどういう体制が良いのかを考えてまいりたいと思います。   それから,二番目にあります企業統治の在り方からする指摘,又は背景,問題,原因といったことも,これは我々が考えている,いわゆる立法事実論という話でございまして,どういう事実があって,その事実はどういうような原因に基づくもので,したがって,どういう形で法制度を改正していけばいいのか。その場合には,これは場合によっては会社法の制度の中で構築するべき問題か,又はそうでないのかという,先ほどの議論の繰り返しでございますけれども,そういったことも含めて会社法で対応すれば一番いいのか,それともそれ以外の法制,特に金商法,又はソフトローと言われている東証規則等に基づく対応が良いのか,そういった点も考えたいと思います。   それから,私どもとしては,どういう形の改正が必要かという議論の中に,規律対象が上場会社だけではないという,会社法の基本法としての性質がありますので,先ほど中小企業ということでお話がございましたが,会社法は上場会社以外の,むしろ数でいえば大半が上場会社でない会社を規律するわけでございますので,上場という証券市場との関係ということも重大なものでございますが,それ以外の場合の,いわゆる非上場の会社での雇用のお話ですとか経営の話,それから,活力の問題といったことも含めて,広く会社法の社会のインフラとしての体制の中で,どう考えるべきかという点も考えていきたいと思う次第です。   今後の議論の推移を計りまして,我々在野法曹にどういったことができるのかということを真剣に考えてまいりたいと思います。 ○岩原部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○野村幹事 二度目の発言になってしまいましたが,できれば労働界のほうで意見の集約をお願いしたいなと思っているところがあります。それはどういうことかといいますと,先ほど会社法のエンフォースメントの仕方にはかなり限界がありますよと申し上げたのですが,具体的に言えば,それは,ある行為が行われたときに会社法の法令に違反するようなことがあれば効力を失ってしまうというのが一つと,あとは,何らかの役割を果たすべき人がその役割を果たさなかったときに責任を課すというのが,会社法が一番得意としているエンフォースメントの仕方だと思うんです。そうなったときに,例えば労働者の代表の方がガバナンスに何らかの形で関与してくるということになってきますと,それはやはり責任を負うということを意味するということになるわけですね。   具体的に言うと,単なる経営責任ではなくて,従業員の不祥事が起こったときに,その従業員の不祥事を監視する役割は労働代表がいいんだという御発言,時々あるんですけれども,それは,ほかの監査役などよりも発見しやすいということをもし意味しているんだとしますと,それは責任を負う可能性が高くなるということを意味しているとも言えるわけですね。ほかの経営者であれば,なかなかその監視義務では及ばない,つまり,そこまで監視できないといって免れていたものを,従業員の方々の代表であるんだから,それは内輪でいろいろ画策していることを知り得た立場にあるのではないかと言われてしまうようなリスクが当然あるわけでありまして,それが会社法の一つの掟なわけですよね。会社法上何らかの発言のチャンスを得たいというその裏側で,本当にそういった責任を担いながら労働者がこの会社法というものの中に入ってきたいとお考えになっておられるのか,やや疑問です。それとも,先ほどちょっとお話があった労働契約承継法のような形の保護立法の強化ということを求めておられるのかということについて,是非とも意見の集約をお願いしたと思います。いずれにせよ,議論をしっかり切り分けていただいた上で,労働界の意見をしっかりと集約して御発言いただければ有り難いなと,そう私は思います。 ○逢見委員 次回,発言の場を頂けると思いますので,そのときにまとめてお話ししたいと思いますが,責任を伴うことを覚悟しつつ従業員選任の監査役を入れるべきだと,これは法改正によってそういうことを,会社法によってそういうことを可能にすべきだというのが私どもの立場でございます。 ○岩原部会長 ほかにございますか。   親子会社関係の問題,比較的御発言が少なかったように思います。しかし私はこれは非常に大きい問題だと思っているのですが,いかがですか。 ○三井幹事 親子上場の点は,もしかすると取引所と投資家を保護しなければいけない当局の間で若干温度差があるかもしれないと感じているところですが,広く言えば,支配株主がいて,支配株主が少数株主のために必ずしも行動していない場合,上場されている株式は少数株主権が売買されているということになるので,それだけ脆弱なものであると考えられます。   それに加えて,親子上場の場合,親会社がグループとして一体として経営していることになり,単純に個人で支配株主がいるという場合に比べて,より経営の一体性があり得るし,実態として,日本の企業を見ますと,あるのではないかと考えられます。したがって,親子上場されている場合の子会社の株式について,会社法で今のように自由なままでよいのかという問題意識は常に持っており,取引所でできるところはどこまでか,あるいは,法定開示,ディスクロージャー制度でできるところはどこまでか,といったことを常々議論していますが,会社法上の論点として,それから,もう一つは取引所の上場規則の問題として,現状のままでいいのかどうかというところは問い直すべきところがあろうかと思います。   昔の,子会社は少し独立性を持って,自らのビジネスの一部分は事業部門という形で,いわゆる単体での経営が多かった時代に今の制度は構築されていると思います。今は,例えば10年前であれば子会社は30社だったところが,今は百何十社あるいは300社あり,それは,昔は会社の中にあった一部門がすべて子会社化しているということで,それが経営の柔軟性と効率性を確保するために会社の採ってきた戦略であるという説明がよくなされています。そういうことから,会社の実態は,親会社だけ見ていても全く分からなくなりつつある状況でございまして,その裏返しとして,責任や権限を考えるときには,やはり連結ベースといいますか,グループ全体として見るべき状況になってきているだろうと思います。   したがいまして,親子上場あるいは親子関係については,もう少しそういう視点から,社会がこの10年間,取り分け会社法の柔軟化後,子会社や関連会社を使ってグループ全体として有機的に経営を行うという実態が進んできたことを踏まえて,是非お考えいただければ有り難いと思います。 ○奈須野幹事 企業結合の部分については,今回,税制改正が行われまして,連結納税制度導入以来の連結納税制度の見直しと,それから,その枠に収まらないグループ企業の企業間の資金移動の自由化と,そういうかなり,本則改正ですので,大規模な改正が行われて,そのグループ間での資金のやり取りというのはかなり自由化されることになったわけでございます。次は法律ということでございますので,世の中的には税制は整ったと,次は法律だということで,ここの部分についての法制度の整備の期待を私どもはしているというところであるということでございます。   それともう一つ,こちらは4のところの,その他のところで,お願いというか要望なんでございますけれども,部会長,それから荒谷委員のほうからも御指摘がございましたけれども,会社法施行後,今の制度は作ったのだけども余り利用されていないとか,あるいは,制度を作ったのだけどいろいろな紛争が生じてしまっているとか,組織再編,M&A関係については,なお見直すべきところがあろうかと思っております。したがいまして,荒谷委員が挙げられました買取請求権の紛争であるとかスクイーズアウト・セルアウトの手続,あるいはTOBのルール,そういった部分についても議論していただくということで,会社法制をより良いものにしていくという努力もお願いしたいと思っております。   具体的な提案については,また機会を改めてさせていただければと思っております。 ○岩原部会長 こういう企業グループの問題というのは非常に大きい問題です。海外の投資家などからは,日本での企業グループ内の取引,あるいは企業グループ間のいろいろな出資その他を含めた行動が,少数株主の利益を損なう形で行われている場合があるという指摘等も行われているようで,それがコーポレート・ガバナンス・リスクの一種であるというような指摘もされています。広い意味でのコーポレート・ガバナンスの問題としても,この際,こういう企業グループの問題について,きちんと日本がルールを作って,海外の投資家からも安心して投資してもらえるように,また,日本の株主の人たちの利益も守られ,株主以外のステークホルダーの利益もきちんと守られるというようにすることが必要ではないかと,これは個人的な意見として考えております。   ほかに。 ○中東幹事 岩原部会長がおっしゃったとおり,これらの問題は物すごく重要な問題であると思います。ようやく学界でも具体的な立法という形で議論できるまでに成熟した状態になっていると思いますし,これらの問題について御専門の委員や幹事も他にいらっしゃいますので,是非十分に審議いただきたいと思います。先ほど部会長が,発言が少ないという御趣旨のことをおっしゃいましたが,これは,参考資料2が上手に整理されていて,ここを議論するんだというのが明確になっているからではないかと思います。いずれにいたしましても,参考資料2の問題につきましては,非常に重要な問題であると認識しております旨,述べさせていただきました。 ○藤本関係官 投資家が外国人である場合ということについて,いろいろ御議論が出たと思うのですが,一方,企業結合の話で,日本企業といっても,グローバルに多様なグループを形成しているというのが実情でございます。それは,上場企業だけでもなくて,例えばベンチャー企業でも,今はグローバルにグループを形成して事業をしているというところがございます。   実は,金融庁において,コーポレート・ガバナンス関係の実務家ですとか有識者といろいろお話をしておりますと,法制審議会の場での議論で,そういう会社グループがグローバルなものだという視点が欠けることがあると良くないなというような御指摘がございましたので,そういうグローバルな視点というところからも見て御議論いただければと思います。 ○岩原部会長 ありがとうございます。   ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。 ○神作幹事 今までの御議論の中で欠けているのではないかと思われた点が1点ございますので,その点について触れさせていただきたいと思います。会社法では公開会社と非公開会社の類型化がなされているわけですけれども,そこでは全株式について譲渡制限をかけているかどうかが基準とされており,取引所に上場しているかどうかということに着目した区分,あるいはそれに応じたガバナンス・ルールの差別化はなされていないのではないかと思います。   しかし,例えば株主総会の招集通知の在り方ですとか,招集手続そのものですとか,グローバルな投資家が存在することを考慮した場合には,上場会社に固有のルールというものが会社法に設けられてもいいのではないかと思われますし,例えば東証のルール等,ソフトローを遵守しているか,していないかについて,理由を付して開示させる等,ガバナンスは,上場しているかしていないかによって非常に大きく違ってくると思います。上村委員が御指摘されたような,非常に大きな,金商法と会社法の関係のような話もありますけれども,会社法に固有の問題としても,先ほど申し上げましたようなディスクロージャーですとか,招集手続ですとか,議決権の行使ですとか,そういうレベルで上場会社と非上場会社について区分して,ルールを設定するということが検討される必要があるのではないかと思った次第でございます。   それから,結合企業については,何らかのルールが必要であるということは少なくとも学界においてはかねてから問題意識が強くもたれていたと思います。取り分け従属会社の債権者と少数派株主は害されやすい地位にあるということは,これはもう多くの方が認めておられることではないかと思います。実際に侵害されているかどうかという話は,またこれは実態の話ですのでさておいて,少なくとも理屈の上では害されやすい地位にいる。そのような害されやすい,弱い者を守るということは法の最大の役割の一つだと思いますので,こういった害されやすい者を保護するという観点からルールを作ることが必要であると思われます。   もっとも,他方で,結合企業は正に,これも三井幹事が御指摘されたように,最近は手綱を締めるグループが多いということを言われましたけれども,手綱をどの程度締めるのかどうかはこれまたグループによって非常に千差万別と申しますか多様だと思われますので,そういった企業グループの多様性を殺さないような形での規律の導入を考えるということが肝要ではないかと思っております。   取りとめのないコメントで申し訳ありませんが,私から以上でございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。   ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,今日は第1回目で,皆様にフリートーキングをしていただくということでございましたが,今後の検討の上で非常に参考になる御意見を数多く承ることができたと思います。そこで,本日はまだ始まったところですので,フリートーキングはこれぐらいまでにさせていただくことにいたしまして,本日の部会の終了の前に,今後の部会の進行について皆様に御相談をさせていただきたいと思います。   まず,その点について事務当局のほうから御説明いただきたいと思います。 ○河合幹事 本日のフリートーキングの内容を伺いますと,次回以降もやはり論点の洗い出しの作業を進めたほうがよろしいかと思います。本日御欠席の八丁地委員からも当部会において説明の機会を設けられたいとの御意見を頂いたところでございますし,本日の審議の中でも,委員,幹事の方から同様の御発言等を頂いたところでございます。   そこで,次回以降に,委員,幹事の何名かの方からまとまった御説明を頂戴し,あるいは,当部会に参加されていない方を参考人としてお招きして御報告又は御意見を伺った上で,更に部会において御議論いただきまして,論点の洗い出しを行うことを御提案したいと思います。その上で,事務当局におきまして,若干のお時間を頂戴し,論点の洗い出し作業の結果を整理しまして,第一読会に入るということにさせていただきたいと存じます。   なお,審議の期間につきまして,先ほど来,委員の中から,2年というようなお話もございましたが,法務大臣は,諮問に先立つ2月23日の記者会見において,どの程度の期間で結論を出していただくかは,必ずしも後ろを区切っているわけではありませんと発言しております。事務当局としても,十分御審理いただくことが大切だと考えており,現段階で2年というスケジュールを持ち合わせているわけではございませんので,念のため申し上げます。   その意味で,その後の中間試案の時期等や最終的な取りまとめの時期などにつきましては,当部会における審議の状況を見極めつつ,追って当部会に御提案させていただきたいと存じております。 ○岩原部会長 ありがとうございます。   次回以降の論点の洗い出し作業につきまして,ただいま河合幹事からお話しいただきましたような方向で進めるということでよろしゅうございましょうか。   それでは,そのように進めさせていただきたいと思います。   それでは,御報告又は御意見を頂戴する方を検討したいと存じます。本日のフリートーキングにおきましても既に御意見が出ておりますが,特に何かにつき御意見を頂戴するとか,こういう方から御意見を頂戴すべきではないかとか,そういう御指摘,ございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,これまでの御議論を整理いたしますと,委員,幹事の中からまとまった御説明を頂く方といたしまして,逢見委員,築舘委員,濱口委員,静委員,八丁地委員,奈須野幹事,こういった方々に御説明を頂いたらどうかと存じますが,よろしゅうございましょうか。よろしいでしょうか。   なお,参考人といたしまして,先ほどもちょっと三井幹事から御指摘がございましたけれども,日本公認会計士協会に御報告又は御意見を頂くということにさせていただいてはいかがかと思いますが,よろしゅうございましょうか。   また,公認会計士とともに,会計参与として企業統治を担っていただいております日本税理士会連合会からの御意見を伺う機会も設けることがよろしいかと存じますので,日本税理士会連合会においてそのような御希望があるかどうかということを,事務当局で当たっていただきたいと存じます。   また,濱口委員から,御報告又は御意見を頂く方として,先ほど複数の方を御推薦いただきましたが,投資家の利益を代弁する趣旨も含めまして,三井幹事の御提案のあった投資家サイドに助言をする方を参考人として,御意見を伺うということでいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただくことにいたしまして,投資家サイドに助言する方の具体的な人選につきましては,事務当局のほうで御検討いただきたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。   この御意見,御報告を頂戴する方々と,その順番については,最終的には私に御一任いただけたらと思いますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,私に御一任いただいた上で,事務当局において具体的な御検討をしていただきたいと思っておりますので,どうかよろしくお願いいたします。   今後の進行につきまして,事務当局から何か補足することがあればお願いしたいと思います。 ○河合幹事 今ほど部会長に御整理いただきました人員を考慮いたしますと,5月26日の次回と6月23日の次々回の2回に分けて,お一人当たり20分程度の御報告等を頂くのが適切かと思います。また,先ほど部会長から御指示がありました投資家サイドに助言をする人の具体的人選の検討に当たりまして,御意見等がある方がいらっしゃいましたら,5月10日くらいをめどに事務当局までお寄せいただきたいと思います。   6月23日の次々回を終えました後,事務当局において論点の洗い出し作業の結果を整理し,第一読会に入ることとさせていただきたいと存じますが,先ほど御説明しましたとおり,論点の洗い出し作業の結果の整理につきましては若干お時間を頂きたいと,このように考えております。そこで,日程案にありました7月21日の開催は見送らせていただいて,8月25日から第一読会を開始したいと存じます。また,第一読会における審議スケジュールにつきましては,8月25日の際に改めて御提案をさせていただきたいと思っております。   当面事務当局のほうで提案させていただくスケジュールとしては,以上でございます。 ○岩原部会長 ただいま事務当局から御説明を頂きましたが,そのようなことでよろしゅうございましょうか。   それでは,そのように進めさせていただきたいと思います。   それでは最後に,事務当局から次回の日程等について御説明をお願いいたします。 ○河合幹事 次回の日程は,5月26日,水曜日,本日と同じ午後1時30分から午後5時30分までの予定で,場所も本日と同じ法務省20階の第1会議室となっております。 ○岩原部会長 それでは,法制審議会会社法制部会の第1回会議を閉会させていただきたいと存じます。   本日は皆様,大変御熱心に御審議いただきまして,本当にありがとうございました。 −了−