法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第20回会議 議事録 第1 日 時  平成22年5月14日(金)  自 午後1時32分                        至 午後5時35分 第2 場 所  法務省20階 第1会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○伊藤部会長 それでは,予定の時刻でございますので,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第20回会議を開会いたします。   御多忙のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   それでは,配布資料につきまして,事務当局からの説明をお願いします。 ○川尻関係官 第20回会議のために配布しました資料は,事務当局で作成した部会資料20−1及び20−2と,杉井委員,栗林委員,増田幹事より御提出いただきました「「子ども代理人」に関する提案」と題する書面になります。内容につきましては,この後,御説明いたします。   以上です。 ○伊藤部会長 早速でございますが,本日の審議に入りたいと存じます。   前回は,部会資料19まで終わりましたので,本日は部会資料20,「家事審判手続に関する中間とりまとめのためのたたき台」に基づく審議を行いたいと存じます。   そこで,事務当局から第1,総則の1,趣旨から7,裁判所職員の除斥及び忌避までの説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   まず初めに,今回の部会資料20では,非訟事件手続と同趣旨の規律や,民事訴訟法と同趣旨の規律についてもある程度書き下ろしておりますが,これは規律の内容を明らかにした上で御検討をお願いすべきであると考えたからでありまして,最終的な法文におきまして,非訟事件手続法を適用又は準用するのかどうか,また,民事訴訟法を準用するのかということまで考慮しているものではございませんので,その点には御留意いただきたいと存じます。   まず,第1の総則の1の趣旨でございますが,これはこの要綱試案に基づく法律の適用範囲を明らかにするというものでございます。2の目的では,これまでの部会では取り上げておりませんでしたが,現行家事審判法第1条の規律を原則として維持しつつ,表現について修正しております。   3,裁判所及び当事者の責務では,非訟事件手続と同様の規律を提案させていただいております。   4の最高裁判所規則では,現行家事審判法第8条の規律を維持することを提案しております。   5の家事審判官では,家事審判法2条の規律を維持することを提案しております。   6,管轄のうち,(1)から(4)までは非訟事件手続と同様の規律を,(5)では家事審判規則第4条第2項の規律を原則として維持しつつ,当事者に管轄裁判所に移送することについて申立権を付与することを提案しております。   これらの点については,これまで特段御異論はございませんでした。なお,外国の社団又は財団の住所による土地管轄が定まる場合につきましては,民事訴訟法第4条第5項を参考として,主たる事務所等の有無にかかわらず,日本における主たる事務所等により,土地管轄が定まると改めております。また,自庁処理,再移送の要件について遅滞を避けるためなどの事由を例示するかどうかについては,非訟事件における議論を踏まえ,なお検討することとしております。   7の裁判所職員の除斥及び忌避のうち,裁判官及び裁判所書記官については非訟事件手続と同様の規律を,参与員については家事審判法第4条の規律を原則として維持することを提案しております。家事調停委員及び家庭裁判所調査官については,御意見が分かれましたので,三案併記ということにさせていただいております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,順次御審議をお願いしたいと思います。   まず,第1,総則の関係ですが,趣旨,目的,それから裁判所及び当事者の責務,この辺りに関しての御意見はございますでしょうか。 ○増田幹事 非訟のときも申し上げたことですけれども,3の裁判所及び当事者の責務については訴訟と違って憲法32条の縛りがありませんので,不当に裁判手続を拒否するということがないようにという注意喚起だけ,補足説明のところにでも書いていただければ有り難いです。 ○伊藤部会長 分かりました。よろしいですね。   ほかにいかがでしょうか。 ○山本幹事 二点ですが,一点目はどこにあれするのが適当かよく分からないのですが,この要綱試案に基づく法律の題名のことなのですが,この部会でもどういう法律名にするかということについての若干の御議論もあったような気がしますので,パブリックコメントで一般の御意見を伺うというのがよろしいのかなということが第一点です。   もう一点は,2の目的のところなのですけれども,二つのことなのですが,一つは最後のほうの「迅速,適正かつ実効的な解決」という言葉の並びの問題ですが,迅速,適正という順番になっておるんですが,3のところの裁判所及び当事者の責務のところは,「公正かつ迅速」となっておりまして,私の承知している限りでは,民事訴訟法をつくるときかなり議論をされて,この言葉の並び等にも配慮をされてこういうことになったのかなと思われますので,この迅速と適正の順番について,目的のところは,あるいは逆でもいいのかなと思ったということです。   それからもう一つ,その前のところの「事件の実情に即した」という文言なのですが,これはこの文全体が労働審判法の条文にかなり近いように承知をしておるのですが,同じ事件に即したというか,民事調停法でも使われていると思うんですが,民事調停とか労働審判のように,必ずしも法規範に適応されない,とらわれない形で行われるものについては,この事件の実情に即したというのはすっとくるのですけれども,ですから家事調停はそれでよいのかなと思うのですけれども,家事審判のことも考えると,ちょっとこの文言に私自身はやや違和感を覚えるところがございます。 ○伊藤部会長 分かりました。   山本和彦幹事から三点ほどの指摘がございまして,順次,御意見を伺いたいと思いますが,まずこの出来上がるべき法律の題名といいますか,名前,これについては最終的にはいろいろな要素を考慮しながら事務当局に苦労をいただかなければいけないとは思いますが,いろいろなアイデアがあるかと思いますので,パブリックコメントで意見を寄せていただくこと自体は,むしろそれが参考として役に立つのではないかと思いますが,いかがでしょうか。   事務当局も,それでよろしいですか。 ○金子幹事 はい。 ○伊藤部会長 それでは,ちょっと聞き方は考えてもらうことにいたしますが,実質については今申しましたように,その点についても何かいい名称があればというようなことで意見を伺うことにいたします。   二番目ですが,目的の関係で二点の指摘がございました。一つは迅速,適正かつ実効的な解決というところでは,迅速が一番最初に来るのは,ちょっと手続法の理念からしてどうかというような御指摘でしたが,この点は事務当局は何か追加的な説明はございますか。 ○金子幹事 参考にしたのは労働審判法ということで,山本幹事御指摘のとおりでございます。それは三番目の事件の実情に即したというところも同じで,話合いの部分と,それから審判の部分とを両方含む手続という意味で,似ているものを考えてそれを参考に作ってみたのですが,労働審判法のほうは,特に迅速性を重視したという説明が可能かと思いますので,委員御指摘のとおり,適正,迅速の並びのほうが望ましいということであれば,パブリックコメントにかける段階から,この二つの順番を入れ換えるということを検討したいと思います。   それから事件の実情に即したという部分についても,少し検討をさせていただければと思います。 ○伊藤部会長 今,金子さんから一応考え方の説明,それから検討の余地についての追加的なお話がありましたが,何かこの点に関して他の委員,幹事の方から御意見等はございますか。 ○豊澤委員 迅速,適正のところなのですけれども,労働審判は,3か月以内に3回以内の期日で決着を目指すもので,話合いがつかずに決定が出た後,異議が出れば訴訟に移行するという仕組みの手続であり,そこでは迅速性が特に重視されていると思いますが,こちらはそれとはやはりちょっと違うだろうと思います。適正,迅速の順番の方が耳になじむような気がいたします。 ○伊藤部会長 分かりました。ありがとうございます。   他にいかがでしょうか。   それでは,迅速と適正の順番に関しては,今の御意見を踏まえて事務当局で検討してもらうことにして,事件の実情に即しての部分に関して,何かほかに御意見ございますか。   これも調停を含んでいるものですから,ちょっとどういう形での表現が一番適切かというのは難しいところかと思いますけれども,それでは検討してもらうことにいたしましょう。   それから,4,最高裁規則,5,家事審判官,この辺りは特段御意見ございますか。   よろしければ,6,管轄のところで,外国の社団等についての追加的な説明は先ほど脇村さんからあったとおりで,従来の非訟も含めた審議の内容を反映して,こういう形で取りまとめがなされておりますが,管轄の関係で何か御質問,御意見等はありますでしょうか。 ○増田幹事 これも非訟のときに申し上げたことですが,(5)のイの管轄権を有する家庭裁判所による移送のところでの当事者の意見聴取というのは,これは規則事項で入れるという前提でよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 現段階で規則事項で入れると決定されているものではございません。パブコメにかける際にどうするのかという点については,パブコメ自体に書くのか,あるいは補足に書くのか,あるいは規則事項が明らかなので何も書かないのかについては,他の事項との整合性を踏まえて検討させていただきたいとは思います。 ○伊藤部会長 よろしいですか。 ○増田幹事 規則事項ではありますけれども,手続を進める上では重要なことなので,できれば補足説明に少し触れておいていただければと思います。 ○伊藤部会長 それは,よろしいですね。 ○脇村関係官 はい,検討させていただきます。 ○伊藤部会長 少なくとも補足説明に何らかの形で触れるということは。 ○山本幹事 これは,私も以前に申し上げたことで,さしてこだわるものではないのですが,依然としてこの(5)のアのAの要件と,イの要件が異なっているということが気になるのですが,例えば,まず当事者は最初に管轄外の家庭裁判所に申立てて,その裁判所は特に必要があるとまでは認めないので,自庁処理はしないで管轄裁判所に移送したと。その後,しかし管轄裁判所は,元の裁判所のほうが事件を処理するために相当であると認めて,元の裁判所に移送するということがこの規律ではあり得る。要するに二つの要件がずれているので,そういうことが起こり得るように思われるのですが,それはそれでよいということなのでしょうか。しょうがないということなのでしょうか。 ○脇村関係官 そのようなケースを想定してここをこのようにしているものではありません。そういったことは普通起きないだろうと思っております。管轄裁判所に申立てがあったケースと,管轄裁判所外の裁判所に申立てたケースについて,要件が同じでいいのかというのも,これまたなかなか,それはそうではないのではないかと思っておりまして,現状はこうなっているというところでございます。 ○山本幹事 前も議論したところだと思うのですが,結局その判断をする裁判所を重視するのか,要するに管轄がない裁判所にどういう要件の下で審理をすることを認めるというとらえ方をするのか,それだと要件が一致すべきではないかということになるわけなので,そこの観点の違いかなと思いますので,最終的にはこだわるものではございません。 ○伊藤部会長 分かりました。どういう形になるかはあれですが,ただいまの御意見については,また検討の材料にさせていただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そういたしましたら,7の裁判所の職員の除斥及び忌避に関して,これも先ほど説明があったとおりで,(8)の家事調停委員への準用,それから(10)家裁調査官への準用に関しては,それぞれ異なった内容の考え方を案として併記してあると,こんな状況でございますが,何かこの点に関しての御意見はございますか。 ○山田幹事 質問のたぐいになるかと思うのですが,この補足説明の9ページの(10)で,調査官への準用というところがございますが,この説明の中で下から4行目,「調査官に除斥又は忌避事由がある場合には,当事者において合意をしないことができる」という説明があるんですが,これは審判のことはどのようにお考えなのでしょうか。 ○伊藤部会長 補足説明の9ページの(10)の下から5行目から下から4行目に関するところですね。 ○脇村関係官 調査官のところでは家事調停もあると思っていたものですから,こんな書き方になっていますが,確かに審判ではこのような表現は不適切ですので,今後,補足説明を書く際には注意させていただきたいと思います。 ○山田幹事 結構です。 ○伊藤部会長 どうも御指摘ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしければ先に進みたいと存じますが,そうしますと,8の当事者能力及び手続行為能力から,12の手続費用まで説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 御説明させていただきます。   8,当事者能力及び手続行為能力のうち,(1)と(2)のアからウまでについては,非訟事件手続と同様の規律を提案しております。(2)のエですが,意思能力があれば手続行為能力を有するものがだれであるのかについては,今後提案させていただきます各則において提案するということを前提としております。   (3),(4),(6)については,非訟事件手続と同様の規律を提案しております。   (5)法定代理権の消滅の通知については,原則として民法に従うことを前提に調停をすることができる事項については特則を置くことに特段の御異論はございませんでした。   9,参加については,非訟事件手続と同様の規律を提案しております。   10,脱退については,原則については御異論はございませんでした。調停をすることができる事項についての家事事件については意見が分かれましたので,両論併記しております。   11,任意代理人については,原則として非訟事件手続と同様の規律を提案しております。ただし,(2)の任意代理権のうち,特別授権事項については家事事件手続に即して修正を施しているほか,(6)の任意代理権の不消滅では,遺産分割事件において破産管財人がいわゆる訴訟担当として活動すべきとの意見が出されたことを踏まえまして,訴訟担当を前提とした規律を置くことを検討することを提案しているところでございます。   また,(7)の任意代理権の消滅の通知については,原則として民法に従うことを前提に調停をすることができる事項については特則を置くことに特段御異論はありませんでしたので,非訟事件手続の規律と提案の形としております。   12,手続費用の(1)手続費用の負担については,家事審判手続の費用を審判費用と家事調停手続の費用を調停費用と呼び,更にこれらを併せて手続費用と呼ぶこととして用語の整理をしておりますが,基本的な方向性については13回部会においても特段の御異論はございませんでした。なお,本文Aについては13回部会での御指摘を踏まえて,非訟事件における規律と同様,手続費用を負担させることができる者を一定の範囲に限定しております。   (2)手続費用の負担の裁判ですが,甲案及び乙案の本文@については,付調停にした際の調停費用も手続費用に含まれることを明らかにしておりますほかは,基本的には部会資料19から変更はなく,第7回部会では甲案を支持する御意見が比較的多いようでしたが,乙案を支持する御意見もありましたことを踏まえて,甲案及び乙案を併記する形となっております。本文Aは,上級の裁判所,手続費用の負担裁判について,本文@の甲案及び乙案に合わせた提案をしております。   (3)調停が成立した場合の負担について,本文@は第17回部会において特段の御異論はございませんでした。本文Aは,訴訟か調停をされた家事調停事件について調停が成立した場合に当該訴訟に掛かる費用の負担について特別な定めをしなかったときは,民事訴訟法第68条に倣い当該訴訟に掛かる費用を各自の負担とすることにつき,なお検討するものとすることを提案しております。   第17回部会においても,実質的に民事訴訟法第68条の和解と同様に扱うのが相当であるとの御意見が多数を占めておりましたが,訴訟に掛かる費用という別個の手続法規に基づく手続の費用についての規律を家事審判法で定めることの相当性については,なお検討する必要があると思いますので,亀甲括弧としております。   (4)費用額の確定手続については,民事訴訟法第71条と同様の規律を置くことを提案するものであり,第13回部会においても特に御異論はございませんでしたが,Dの異議の申立ての執行停止の効力については,Fの異議申立てについての裁判に対する即時抗告に執行停止の効力がないこととの均衡を欠くと思われますので,改めて検討したいと思います。   (5)費用の強制執行についても,これまで特段の御異論はございませんでした。   (6)調停の場合の費用額の確定手続は,民事訴訟法第72条と同様の規律を置くことを提案するものであり,第13回部会においても,特に御異論はございませんでした。   (7)家事事件が審判及び調停によらないで完結した場合等の取扱いについては(2)の甲案及び乙案にそれぞれ対応するものであり,甲案の本文@は,申立てによってのみ負担の裁判をするとの規律に変更しております。また本文@の,合意に相当する審判又は調停にかわる審判が確定しなかった場合を含むについては,これらの審判に関する規律を整理した後に改めて検討する趣旨で亀甲括弧としております。   (8)費用額の確定処分の更正については,民事訴訟法第74条と同様の規律を置くことを提案するものであり,第13回部会においても特段の御異論はございませんでした。   (9)費用の立替えについても,これまで特段の異論はございませんでした。   (10)手続上の救助については,アの本文@の濫申立て防止の要件の表現を部会資料10から若干変更しております。その内容としては救助を求める手続行為が誠実にされるものでないと認められる場合には救助の裁判をすることはできないとする趣旨ですが,このたたき台の表現振りではなお不十分な部分があるように思われますので,表現振りについては今後若干の修正をさせていただく必要があると事務当局としては考えております。   イについては,民事訴訟法と同様の規律を置くことを提案しておりますが,このうち,民事訴訟法第83条第1項第3号の手続費用の担保の免除の効果と同様の規律を設け,必要性ついてはなお検討するものとしております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,6ページの8,当事者能力及び手続行為能力の辺りから,順次まいりたいと思いますが,当事者能力はよろしいでしょうか。(1)のところですね。   それから(2)の手続行為能力及び法定代理で,先ほど7ページのエの手続行為能力の特則の(ア)の@に関して,別に定める者の趣旨に関しては,説明があったとおりですが,この手続行為能力及び法定代理全体に関して,適宜御発言をお願いできればと思います。 ○道垣内委員 ちょっと飛んで,エの(ア)の@なんですが,「意思能力を有する限り」というのは念のために書いてあるということなのですよね。つまり何を言いたいかというと,多分ここで書かれるというのは,例えば認知に関して制限行為能力者であっても当事者となれるという話なのだろうと思うのですけれども,制限行為能力者であろうがなかろうが,意思能力がない人はできないわけですよね。もちろんパブコメ等にするためにこれを書いておくというのは分かるのですが,法律としてこのようなことが書かれると,制限行為能力者でない場合には意思能力がなくてもよいのかという感じがしますので,若干気になるところです。念のためであるということならば全然異論はございません。 ○脇村関係官 最終的な法文には,人訴法も参考にした上で書くことになると思いますが,ので,道垣内委員の御指摘を踏まえて書き方について今後検討させていただきたいと思います。この部会資料は,飽くまで,読んだ人が分かりやすいという趣旨で書いているものでございます。 ○伊藤部会長 御指摘ありがとうございました。 ○増田幹事 二点質問があります。先ほどエの(ア)の@の別に定める者というのは各論で定めるということですが,具体的にはどのようなものを念頭に置いておられるのかというのが一点目です。   もう一点は,エの(ア)のA,Bの適用範囲なのですけれども,それが(2)のア,イと関連してまいりまして,今言われた人訴法の13条の2項,3項の場合は,人訴法には(2)のイに該当する民訴の規定の適用が排除されているので,それはそれで一貫して理解できるんですけれども,この場合に具体的に言うと,意思能力のある未成年者が手続行為をするときには,そのどちらの規定が適用されるのかというのが分かりにくいように思いますので,その点明らかにしていただければと思います。 ○脇村関係官 どういったものを想定しているかというものでございますが,これまでも一読では提示させていただいておりますが,例えば成年後見開始事件における被後見人となるような人でありますとか,民法上,制限行為能力者であっても意思能力があれば申立てができるとされているものを想定しております。   ただ,具体的にどのような事件でというものについては,次回以降,具体的な形で示させていただければと考えているところでございます。   次に,法定代理人との関係ということでございますが,想定しておりましたのは法定代理人がいるような場合であったとしても,自ら参加なり申立てをしたケースについては,このA以降の規定で,代理人を付することはできるということを想定しておりまして,法定代理人と並存することもあると考えております。ただ,それは制限行為能力者が自らしたときについても,法定代理人ができるとしていることから派生する問題であると考えております。 ○伊藤部会長 よろしいですか。   ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 既存の解釈について私が不勉強で大変恐縮なのですけれども,任意後見人というのはどういう位置付けになっているのでしょうか。 ○脇村関係官 任意後見人については,ちょっと検討させていただきます。 ○道垣内委員 任意後見契約に関するものにおいて,家事審判事項のようなものがそもそも任意後見の代理権の内容になり得るかという問題も多分あるのだと思いますが,私自身が不勉強で申し訳ありません。何か意見があるわけではなくて大変恐縮なんですが,ちょっと気になったものですから。 ○伊藤部会長 分かりました。   ほかにはございませんか。 ○山本幹事 9ページの一番上の(5)のところなのですが,ここに書かれていることは特に異論はないのですけれども,調停をすることができない事項についての点なのですけれども,その非訟事件のほうは,私はそのときは欠席をしておったのですが,伺うところによると,その通知を求めるべきだという御意見が相当数あったようなということをお伺いしたものですから,このパブリックコメントをする際に,それを完全に落としてしまっていいのかどうか,非訟の場合とそろえるべきではないかという見方もあり得るところかなと思うのですが。 ○伊藤部会長 分かりました。そこはいかがですか。 ○脇村関係官 原案といいますのは,一読でこれで御異論がございませんでしたので,このような形にさせていただいておりまして,恐らくこのような形にした一つの理由としては,家事の場合には実体的真実といいますか,民法上の法定代理人が原則どおりきちんとすべきだというお考えが強くからかったからであると考えております。他方で恐らく非訟のほうで,今,山本幹事の御指摘のあったとおり,調停できない事件,相手方がない事件について,裁判所に対して通知するかどうか,通知すべきだという意見が強かったのは,手続の安定を重視した結果であります。非訟と同じように,最終的にどうなるか分かりませんけれども,パブコメとしてかけたほうがいいのではないかということであれば,両論にするということも十分あると思います。 ○伊藤部会長 山本幹事自身の御意見として,少なくともパブリックコメントの対象としては,今おっしゃったようなことを掲げたほうがよろしいという御意見ですか。 ○山本幹事 ええ,そうですね。そういうように考えられる方もかなりいそうな感じがするものですから。 ○伊藤部会長 分かりました。   いかがでしょうか。最終的にどちらの方向に行くかは別ですけれども,調停をすることができる事項に当たらない事件に関しても,考え方を掲げたほうがいいのではないかという御指摘がございましたが。 ○古谷幹事 両論併記ということについてはそれで結構かと思うのですけれども,やはり甲類などの場合は,本人を保護するという点からいいますと,法的安定性というのも分かりますが,どちらを優先するかという問題がございますので,非訟の場合とはまた少し違う議論があるのかなということを感じました。 ○伊藤部会長 そういう御意見があることも間違いないと思いますので,それでは他方それとは別の考え方もありますので,そうしましょうか。選択,異なった考え方を示して,広く御意見を伺うということにいたしましょう。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   9の参加の関係ではどうでしょうか。 ○増田幹事 利害関係参加人の地位のところ,これは内容的には非訟と同じになっているのですが,非訟の場合にはその権利を害される者については即時抗告権が別途独立に発生しますが,家事審判の場合は即時抗告権者というのは別途個別に法定されておりますので,利害関係参加人がその地位に基づいて即時抗告できる道を開いておくべきではないかとも思うのですが,その点はいかがでしょうか。 ○脇村関係官 提案させていただいている趣旨というのは,ちょっと書き方があれなのですけれども,利害関係参加人が法定の即時抗告権者に当たるケースについては,当然即時抗告できると。ただ,即時抗告権者に当たっていない者については,利害関係参加人だからといって当然に即時抗告できないというのを書きたかったものでございますので,もしそういうことで御異論がないのであれば,そういったのがより分かるような形で修文させていただければと思うのですけれども,そういう御趣旨でよろしいでしょうか。 ○増田幹事 多分,私の言っているのとは,実質が違うのだと思うのですね。非訟のときには利害関係人の地位に基づく即時抗告権がなくても別のところで救われるのですが,家事の方で具体的に例を言いますと,財産分与の当事者に破産管財人がなれないと考えた場合,その破産管財人が利害関係人として参加しているという状況では,即時抗告権は認められるべきだと思うので,利害関係人独自の即時抗告権というのは,非訟の場合と違ってこちらのほうでは考えてもいいのではないかということなのです。 ○脇村関係官 そういうことでありますと,恐らくどういう検討の仕方かというところで,増田幹事がおっしゃっているのでは,そもそも即時抗告権者として掲げるべき者としてだれをすべきかというところで検討したほうがいいのではないかという気がするのですけれども,恐らく今,増田幹事がおっしゃっていたような問題というのは,そもそも即時抗告権者としてそういったものを入れるべきかどうかということが問題であって,一般論としてすべてにおいてそうだという問題ではないのではないかという気がしたんですけれども,どうでしょうか。 ○増田幹事 個々の事件の中で利害関係人もできるというようなことを入れるということになるのですかね。 ○脇村関係官 一読でも,財産分与における即時抗告権者を夫婦だけにするのか,利害関係者も含めるのかどうかという御議論がありましたので,増田幹事の御意見を踏まえると,例えば財産分与については利害関係人を即時抗告権者に加えると。場合によっては参加した利害関係人に限定するという方法もあるのかもしれませんけれども。そういったものを別途検討するのがふさわしいのではないかなと。それが結果的にどうなるかは別として,そうではないかと思うのですけれども。 ○増田幹事 そうすると,その検討過程について,補足説明のところで別途,即時抗告権者については各論において検討するということを書いておいていただけますか。 ○脇村関係官 いずれにしても,次回以降,各論についてはもう一度,即時抗告権者がだれかも含めて御提案させていただきますので,最終的にそれを踏まえた上で,補足説明等では今の御意見も踏まえて書かせていただければと思います。 ○増田幹事 それで結構です。 ○伊藤部会長 分かりました。ありがとうございました。   ほかにいかがですか。もしよろしければ,次の脱退に関しては甲案,乙案,(2)のところで併記がございますが,これは従来の審議の経緯を踏まえたものということですが,何か脱退に関して御意見ございますか。  よろしいでしょうか。そうしましたら,次の11,任意代理人でありますけれども,先ほどの脇村さんの説明で,11ページの(6)任意代理権の不消滅のA,亀甲部分ですね。これが破産管財人などとの関係での,そういったことを意識した事項であるということと,それから(7)の任意代理権の消滅の通知の辺りについても若干のことがございますが,どの点についてでも結構ですが,任意代理人の関係でお願いいたします。 ○道垣内委員 補足説明において,「異論が今までなかった」と書かれているところで発言させていただくのは大変恐縮なのですが,先ほど私が任意後見人について発言いたしましたのは,実はここを読んでいるときに,若干分からないところがあったというのが原因になっています。と申しますのは,11の(1)の@の家裁の許可を得て,任意代理人とするという場合の許可の仕方なのですが,つまり弁護士が任意代理人になるという場合を考えますと, (2)のBによって制限ができなく,また,(3)の個別代理の問題が出てきて,そうやるときには,各人が代理権を制限のないかたちで有することとなり,異なる定めも効力が生じない,こういうことになるわけです。これに対して,弁護士以外の任意代理人を裁判所が許可をするという場合を考えますと,そのときには,本人と当該任意代理人との間の代理権の授与契約,ないしは任意後見契約というものがあるときにのみ,それを許可するという形になるのではないかと思います。その意味で,(2)のBに規定されている「制限することができない」ことは,弁護士でない任意代理人については別であるというのはよく分かりますが,(3)のAのルールが適用されるというのは,それでよいのかというのが私には若干疑問です。つまり職務分掌をした形の任意代理契約を任意代理人と締結して,それを裁判所が認めたというときに,その職務分掌の効力は(3)のAの異なる定めであって効力を生じないとはならないのではないかということです。つまり,そうすると,本人と任意代理人とのやっている代理権の授与契約の中身を裁判所が勝手に改変して拡大しているということになるのではないかという気がして,ひょっとして(3)の@,Aの辺りのところにも,弁護士でない任意代理人については特則を定めるという必要があるのではないかという気がしたのです。   非常にマニアックな,ありそうもない事例でございまして恐縮なのですが,論理的にはそうなるのではないかなという気がしたものですから,ちょっと一言,発言をさせていただきました。 ○金子幹事 これは民事訴訟法の問題だと思うので専門の方に教えていただいたほうがいいかと思うのですが,今の簡裁代理でも似たような現象は起きるはずですが,恐らく代理権の範囲を分掌するとか制限するということは想定していないようにも思うのですが,民事訴訟法上も,その辺はいかがでしょう。その手続の安定の観点で,そのようなことになっているように思っていましたが,いかがでしょうか。 ○伊藤部会長 検討はしてもらいますが,何か今その点に関して御発言があれば,お願いいたします。   道垣内委員の御発言の趣旨は,結局そういう職務分掌があるような任意代理人について許可を裁判所がしたというときに,(3)のAで,その職務分掌の定めというのがその効力を生じないという結果に,このAの結果としてそうなるんだけれども,それはおかしいのではないかと,そういうことでしたか。 ○道垣内委員 そういうことなのですが,実は任意後見契約に関する法律というのを作ったときに,その補充性の原則という議論がされまして,従来ですとその要件があれば,保佐も含む法定後見が発動するというのは必然的であるというのが判例だったわけですけれども,しかしながら任意後見契約がされている場合には,仮に法定後見の要件が満たされていたとしても,必要がある場合に限って,後見開始の審判等をすると任意後見契約に関する法律10条1項でなったわけなのです。   そうなりますと,そのような形で,自分で選んで,自分でアレンジをしているということを重んじるという制度を作り,そのときにはアレンジされた範囲でのみ権限を有する任意後見人というのが登場するという制度を一方で作りながら,他方でそのアレンジメントを制約するという形にするというのは,法体系の内部で何か価値判断が不整合になっているのではないかという気が若干したのです。非常にありそうもない事例について言っていて大変恐縮なんですけれども,ちょっと御検討いただければと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。何かほかの委員,幹事の方で,今の点に関して御発言ございますか。 ○三木委員 道垣内委員の御発言をきちんと理解しているかどうか自信がないので,勘違いの上での発言であれば,直ちに訂正していただきたいのですけれども,これは司法契約ではなくて訴訟契約になると思うのですね。したがって,司法契約の特則あるいは異なる規律と言ってもいいのかもしれませんが,働くということで,もともと訴訟契約の段階で当事者と代理人の間で,三者間かもしれませんが,その職務分掌の合意をする,その合意自体が裁判所の許可うんぬんの以前に無効な合意というか,法的には強行法規の適用という形で,職務分掌の合意をしても全体の合意,全体というか,分掌をされていない合意としてしか扱われない。これは,理由はもちろん先ほど事務局から御説明あったように手続の安定のためで,分掌をされていると相手方や裁判長に必ずしも分からないとか,あるいは後にいろいろと混乱が生じますので,それを許していないということですので,私は任意後見のときの議論の詳細は存じませんけれども,そういう議論があったとしても,こちらはこれで整合しているのかなと思っておりました。 ○道垣内委員 それで整合させるということならば,私はそれ自体には異論はないのですけれども,その場合には,任意後見人というものは,例えばある種の事柄について任意代理権を与えられても,その事柄について後見人とは異なる立場に立つということになります。通常の法定後見人ですと,そのまま訴訟能力といいますか,訴訟上の代理権限を行使して訴訟行為ができるわけですが,任意後見契約というのは飽くまで実体的な権利義務関係に伴うものだけをやって,訴訟行為の代理というのは本質的には含んでいないと解することになる。そうして初めて別種のものになるということではないかと思うのです。   私は任意後見契約がする法律について,今現在,立法過程とかその通常の解釈というのを全部暗記した上で発言をしているのではないのですけれども,少なくとも,本日の資料は,任意後見契約に関する法律に基づく任意後見人とか,任意後見契約に関する一定の理解というものを前提にしたものになっている。そして,それはそういう理解なのですよということであれば,私は,そうですかということなのです。全くもって最終的にどうしてくれというわけではないのですが,何となく気になりますものですから発言させていただきました。 ○伊藤部会長 では,その点は事務当局で検討してもらうことにしましょう。しかるべき段階で今の問題提起に対して御説明をするような機会があればと思います。   ほかにいかがでしょうか。任意代理人の関係で,何かございませんか。 ○金子幹事 先ほどの議論で,任意代理人の(7)についても両案併記ということになるというのが,今日の議論の流れからするとそうなるのではないかと思うので,その点,御了解いただければと思うのですが。 ○伊藤部会長 先ほど,法定代理権の消滅の通知について,パブリックコメントに付する形を付け加えるというのか,議論をしてそういうことになりましたが,それとの対比で11ページの(7)に関しても,ここはこう書いてございますけれども,二つの考え方を併記して意見を伺うということに,そちらとの関係ではそれが自然かなという気がいたしますが,それでよろしいでしょうか。 ○山本幹事 そういうことになるのかなと思いました。 ○伊藤部会長 では,その点はそのようにさせていただきます。   もしよろしければ,12の手続費用の関係で,(1)の手続費用,概念に関しては用語の整理をしたというようなこと,それから(2)の手続費用の負担の裁判に関しては,甲案,乙案の併記ということですよね。そして,費用額の確定手続に関しては,先ほどの脇村さんの説明でDの異議の申立ての執行停止項と,それからFの即時抗告との関係についてどうおっしゃったのか,正確にもう一度そこを説明していただくと。 ○脇村関係官 (4)の費用額の確定手続についてですが,今回,家事全般について原則としては即時抗告に執行停止効はないという前提で記載をしているのですけれども,そうすると(7)の即時抗告については執行停止効がないことになります。一方,Dの異議の申立てには執行停止効があると。そうすると平仄といいますか,ちょっと合っていないのではないか。   もともとここは民訴法をそのまま引っ張ってきているもので,民訴法というのは執行停止効は原則あるという前提で書いているものですから,そうすると,民訴法が確定して初めて手続,最終的にいけるというのに対して,今のままですと7だけは確定する前にできてしまうことになりますので,ちょっとそこは当方のほうの検討不十分なところではなかったかと思っておりますので,もう一度検討させていただいた上で改めて提示させていただければと考えております。 ○伊藤部会長 分かりました。というような趣旨なのですが,何か今の脇村さんの発言に関して,御指摘等ございますか。   よろしいでしょうか。   それでは,今発言があったとおりで,もう一度検討して,しかるべき形に直すということもあり得べしということにさせていただきます。   ということで,手続費用に関して,あと若干の手続上の9条の付与に関しても先ほど補足的な説明がございましたが,手続費用全般に関して,どの点でも結構ですので,御発言があればお願いいたします。   特別ございませんか。何か特にこちらから確認しておかなければいけないことは,ないですか。   それでは,よろしければ先に進みたいと思いますが,今度は13の審理手続から,17の子の意見表明までの説明をお願いします。 ○川尻関係官 13,審理手続の(1)本人出頭主義は補佐人に関する規律を任意代理人の項目に移しましたほかは,従前の部会資料から変更はございません。   (2)手続の非公開は,家事審判規則第6条の規律を維持するもので,従前の部会資料から変更はございません。   (3)期日及び期間から(6)手続の中止までについては,これまでこのような規律を設けることに特段の異論はございませんでした。   14,裁判資料の(1)職権探知主義では,当事者に証拠調べにつき申出権を認めることとしております。   (2)当事者の役割は,部会資料9から表現に修正を加えた上で,この旨の規律を置く方向で検討することとしております。   (3)疎明及び(4)事実の調査は,従前の部会資料から変更はございません。なお,(4)事実の調査のエ,事実の調査の嘱託の本文@については,従前の部会において「相当と認めるときは」という文言が必要ではないかとの御意見がございましたので,この点は引き続き検討してまいりたいと存じます。   (5)証拠調べでは,これまでの議論を踏まえまして,民事訴訟法第202条等が定める尋問の順序に関する規定について注記し,また真実擬制に関する規定に代えて,過料等に関する規律を整備することとしております。   なお,証拠調べにおける即時抗告につきましては,民事訴訟法と平仄を合わせて執行停止の効力を有するものとすることを提案しております。   15,家庭裁判所調査官及び16,裁判所技官は,家事審判規則第7条の4,第7条の5,及び第7条の7の規律を維持するものとしております。   17,子の意見表明ですが,部会においては子が影響を受ける事件において,子の年齢等に応じて子の意思表明権を確保し,その意思を考慮して審判等を行わなければならないことを前提に,一定の事件においては15歳以上の子から陳述を聴取しなければならないものとし,15歳未満の子については,その子の年齢や発達程度等に考慮した適切な方法により子の意思を把握し,その意思を子の年齢等に応じて審判等において考慮すべきであるという点では,おおむね意見の一致が見られました。そこで,ここでは15歳以上の子について必ずその陳述を聞かなければならない事件については各則において手当をすることを前提に,まず裁判所は子が影響を受ける事件においては,子の年齢等に応じた適切な方法により子の意思を把握し,その年齢及び発育,発達程度に応じて,その意思を考慮しなければならないものとすることを提案しております。   以上です。 ○伊藤部会長 そういたしますと,これも順次まいりたいと思いますが,まず15ページの審理手続(1),(2),(3),(6)までですね。審理手続全体に関して,何か御意見等ございますか。 ○増田幹事 (1)のAの「やむを得ない事由」なんですが,ほかの法律用語との比較から考えると,やはりやむを得ない事由というのはかなり制限的なものであると思います。今さらこれを変えてくれとは言いませんが,現行運用を追認する形で現行法どおりとしたという趣旨の文言を補足説明で入れていただきたいと考えております。 ○川尻関係官 現行の運用に変更を及ぼすことを意図しているものではないということは,何らかの形で補足説明にあらわれるようにしたいと存じます。 ○伊藤部会長 それでよろしいでしょうか。   ほかには,いかがでしょう。   特にございませんか。でしたら14の裁判資料に進みたいと思いますが,(1)の職権探知主義の関係で証拠調べに関する申出権を認めているというようなこと,それから(2)の当事者の役割に関して表題についての表現を改めているとか,そういったことが最初の部分にございますが。それから先ほどの補足的説明がございました18ページのエの事実の調査の嘱託の@で,これは検討するということでしたけれども,相当と認めるときというような要件を設けるかどうかというようなことについての説明がございましたが,そういったあたり,あるいはそれ以外のことでも結構ですので,何か御発言はございますか。 ○山本幹事 後のほうの(5)の証拠調べのところでもよろしいでしょうか。 ○伊藤部会長 はい,お願いします。 ○山本幹事 19ページのウの当事者本人の出頭命令のところのAのところなのですけれども,ここで出頭だけを書かれているということのあれなんですけれども,民事訴訟法では当事者が正当な理由なく宣誓を拒絶したとか,あるいは陳述を拒絶したという場合も,証人尋問200条とか201条とかの規定で,192条とか193条のような制裁が科されるという規定があり,208条では当事者尋問の場合には出頭のほか,陳述拒絶とか宣誓拒絶等についても真実擬制があると思うのですが,これとパラレルにしようと思うならば,出頭以外の陳述拒絶かつ宣誓拒絶等にも制裁を科すということは考えられるように思うのですが,ここで出頭に限定されている理由はどういうことだったでしょうか。 ○川尻関係官 実は山本幹事が今御指摘いただいた点は,内部で検討したときに一度問題となりまして,民訴並びでもよいのではないかということも検討したのですけれども,人事訴訟法のほうと比較をしてみますと,人事訴訟法21条で準用されているのが民訴法192条から194条までとなっておりまして,そことの対比で,結局はこの部会資料で示させていただいた範囲でということになりました。ただ,今御指摘あった点は正しくそのとおりでございますので,いかがいたしましょうかというところではあるのですけれども。 ○山本幹事 それは私も人訴がなぜそうなったのか,人訴は私も法制審に入っていたような気もするのですが,どうしてそうなっていたのかちょっと記憶が定かではないんですが,ただ今回,文書提出命令のその下のところは,これは人訴にない規定ですよね。だから私の理解は,これは人訴も全く同じ問題のような気がして,そうであるとすれば,ここも含めて人訴のほうと横並びになるのが普通なのかな。つまり,真実擬制全体を証人尋問とか文書提出命令の場合は,第三者に対する提出命令とそろえるような方向で,やはり真実擬制の制裁が働かない以上は,それとは別の制裁を用意するという趣旨でこの提案はできているのかなと思いまして,そうすれば当事者の場合も単に出頭させるだけではなくて,それで出頭はさせても陳述を拒絶されると何の意味もないわけですので,そこはやはり何らかの制裁は必要だというのが全体,整合的かなと思ったのですけれども。 ○金子幹事 検討させていただきますが,この場で検討の素材として参考にさせていただければと思うので,御意見いただければ有り難いと思います。 ○伊藤部会長 山本幹事からは,真実擬制に代えてその実効性を担保する措置ということであれば,宣誓とか陳述とかいうことについても考えなければいけないのではないか。そして人訴との関係に関して,必ずしもそれに絶対的に拘束といいますか,そろえるべき必然性があるとも思われないというようなことでの御発言ございましたが,ただいまの点,もし何か他の委員,幹事から。 ○長委員 家事審判手続において,人証調べをするという場合には,証人または当事者本人に宣誓をしてもらうということに実務的な意味があろうかと思っています。そういうことからすると,今の山本幹事の御発言というのは示唆するところが大きいと思いました。結論はにわかに申し上げられませんけれども,そういう実情にはあります。 ○伊藤部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○三木委員 結論的には私も山本幹事のおっしゃるような方向が本来在るべきではないかと思います。私も人事訴訟法制定のときの幹事でしたが,私の記憶がただないだけの可能性もありますが,私自身のおぼろな記憶では,この点を特に法制審の場で,特に出頭だけに限るうんぬんというような議論をした記憶がございません。繰り返しますけれども,私が忘れているだけということもありますが,恐らく,その記憶が正しければ,その後に法制審を離れた後に,事務当局での立案作業の中で何かそういう処置がされたのかなという気がいたします。   ということからすると,むしろ人事訴訟法のほうをこの度の議論に合わせるべきかなという気がして,もちろん,できるできないという問題は当然あろうかと思いますが,私は,そういったできるできないということに関する技術的なことは存じませんけれども,法律を新しく改正したりすると関連法令の関係する部分についても修正するということがありますので,その範囲に収まるかどうかという問題はちょっと分かりませんが,むしろ私としては,人事訴訟法のほうがこれでいいのかという気がしております。 ○伊藤部会長 分かりました。   そういたしましたら,人訴のことは当部会でということではありませんが,必ずしもそれに絶対的に拘束されないで実質を検討してみる必要があるという御指摘のように思いましたので,それに沿って事務当局で更に検討してもらうことにいたしましょう。   ありがとうございました。   ほかには14の関係ではいかがでしょうか。18ページのエの事実の調査の嘱託の@については,先ほど川尻さんから説明があったようなことで検討するということでよろしいですね。相当と認めるときというものを果たして入れる意味があるかどうか,あるいはそれが合理性があるかどうかというようなことですが。   他にはいかがでしょう。よろしければ,15の家庭裁判所調査官及び16の裁判所技官の関係では何か御発言ございますか。   もしございませんようでしたら。はい,分かりました。   そうしましたら,15,16については特段の御意見はございませんようですので,17の子の意見表明に関して,趣旨については先ほど説明ございましたが,本文とそれから注の関係を含めて,御意見を承りたいと存じます。 ○杉井委員 この本文あるいは補足説明について,特に異論があるわけではありません。こういうようなことが盛り込まれるということは,大変喜ばしいことだと思っております。   ただ,幾らこういう規定があったとしても,現実に子どもがこういったいろいろな意見表明をする,あるいは子の意思が考慮されるというためには,やはりそのための制度が必要だと思います。そういう意味で,私ども弁護士会の委員が前から言っておりますように,子どもの代理人ということについて是非パブコメにも入れ込んでいただいて,多くの人の意見をちょうだいしたいと思っております。   それで,今日配っていただきました「「子ども代理人」に関する提案」というもののペーパーに基づいて,ちょっと意見を申し上げたいと思いますが。 ○伊藤部会長 御意見承りますが,そうしますと,この17に書いてある@,A,それから注の部分,これについては今,御発言がございましたが,方向としてはこういうことで結構であると承ってよろしいですか。 ○杉井委員 それは結構です。 ○伊藤部会長 では,取りあえずここに記載されていることに関して,何かそれ自体について更に御意見はございますでしょうか。   もし,中間取りまとめとして提示すべきことで,内容としてここに書かれているようなことでよろしいということであれば,それを踏まえて更に今お話がございました杉井委員,その他の方からの御提案の説明をお願いしたいと思います。 ○杉井委員 今日お配りしたペーパーに基づいて,この具体的な制度設計について考えているところを述べたいと思います。   従来,子ども代理人と言っていたので,仮称ということで「「子ども代理人」に関する提案」としておりますが,いろいろ私どもが検討した中で,代理人というのがふさわしいかどうか。この目的,役割ということから考えたら代理人という言葉はむしろふさわしくないのではないかという考えもありまして,今回の提案としては「子ども手続保護人」,(これも飽くまでも仮称でございますが−−)と考えております。   (1)がその趣旨ですけれども,家庭裁判所が調停又は審判の結果について,子が利害関係を有する場合において,当事者又は子の申立て,あるいは職権で子どもの手続保護人を選任することができるというものです。飽くまでも原則は,「できる」という任意規定でございます。しかし,その目的としてここに盛り込んでおりますのが,子が意見を表明するためというのが一つの柱です。その他,子の最善の利益,子の福祉を図るため必要があるとき,そういうときに裁判所が子ども手続保護人を選任することができるという提案です。   子が意見を表明するためということになりますと,もちろんこれは子どもの権利条約の子どもの意見表明権に基づくものですけれども,諸外国の例もずっと見ておりますと,子ども自身の主観的利益あるいは主観的意思,子どもがこう言っている,こういう意見を持っているという,それをできるだけ手続に反映させる,これが大きな一つの柱ではございます。けれども,実際には子どもが意見を年齢その他によって表明できないということもあるわけで,あるいはまた子どもの意見が表明されたとしても,ただそれをストレートに,それだけを手続に反映させるということでいいのだろうかと考えられます。やはり子どもの最善の利益を考える子どもの福祉を図る,それが目的となるだろうと考えました。   例えばドイツなどの場合も,当初は子の主観的利益というのが強調されておりましたが,現在ではやはり子の最善の利益の実現を図るということで位置付けられています。オーストラリアでも,当初は代理人という言葉が使われていたようですが,現在では子どものための独立弁護士という言い方になっておりますので,単なる代理人ではないということを強調をしたいと思います。   ただ,子の最善の利益を図るということになりますと,これまでの議論の中にもございましたけれども,現在の調査官とどう違うのかと。調査官で足りるのではないかというふうな御意見があるかと思います。しかし,考えてみますと,調査官というのは飽くまでも,その事件あるいはその紛争をどう解決するか,その解決という中で申立人の主張が認められるかどうか,そういうことを判断する資料を得るために裁判官からの調査命令を受けて調査するわけです。そういった意味では飽くまでも子どもの意向調査ということであっても,それは子どもを調査の客体として考えているという制度だと思うんですね。それに対して,やはり子ども自身も家裁の手続に参加する権利主体と見た場合には,裁判所,あるいは親と独立した,調査官とは別な制度として子どもの手続保護人というのが必要ではないかと考えました。   もちろん調査官制度というのも,私どもは大変評価しておりますし,それがないほうがいいなんていうことは考えておりませんが,やはり調査官制度と並んで子ども手続保護人というものも新しく創設して,両方が補う形で手続を行うのか,本当の意味で子どもの最善の利益が図れるのではないかと考えます。   (2)は今言いましたように,原則的には裁判所が選任することができるという,できる規定ですが,(2)については必要的選任,こういう場合には選任しなければいけないということで@からBを掲げました。基本的には,これは子どもと親つまり,法定代理人との利益が著しく相反するとか,あるいは親権,監護権の喪失その他に関して,本当は子ども自身が大変な影響を被るのだけれども,なかなかそれがこの手続の中で独立の地位が与えられず,子どもの意見が反映されず,子どもの福祉が図れないということになってしまいがちな事件ですので,これは必要的と考えました。   それから三番目は,では子どもの手続保護人は何ができるかということですが,飽くまでもこれはこういった家事審判や家事調停などの手続保護人と考えておりまして,手続については子どもが当事者として,あるいは利害関係人として参加できる,そういう手続について原則的には手続行為すべてができると。ただし,申立ての取下げ及び即時抗告の取下げ,これはやはり本人の子ども自身の意思ということもありますので,この限りではないといたしました。   そしてまた子どもの手続保護人の役割ですけれども,結局,子どもに対してその手続に関する必要な情報をきちんと提供する。今どういう手続がなされ,どういう段階であるかということをきちんと説明するということ。そういう中で,子どもの年齢や発達程度を考慮して,子の意見表明を援助する。現実にきちんと意見表明ができる子の場合には,それをきちんと手続に反映するということももちろんですけれども,なかなか意見表明できない場合に,いろいろな形でそれを援助するということです。それから,結果的にその手続がどうなったかという結果,そして何でそういう結果になったかということについて説明する。子どもの意見の表明がどのように反映されたかどうか,あるいは結果的には先ほど言ったように,子の福祉という点で客観的な目で子の最善の利益という点から,子の意見表明だけを重視できない結果になったとしても,それについての説明をする,そういう役割と義務があるだろうと思います。   五番目はこういった手続保護人の役割に付随して,こういったいろいろな関係者に対して報告を求めたり,あるいはその他,書類を提出してもらったり,その他の物件を検査することができるということです。   それから六番目,費用についてですが,現段階では原則的には当事者負担ということです。しかし,これは手続費用に当たるだろうと思いますので,この手続費用については基本的には当事者の予納ということが求められるとは思いますが,しかし法テラス等の法律援助の対象にもなると思います。そういう場合には資力のない親,あるいは子ども自身が子ども手続保護人の選任の申立てをしたような場合には,法テラスの法律援助が受けられて実質的な負担がなくて済むというふうな形で制度設計できるのではないかと考えました。   以上が私どもの提案の骨子です。せっかく新しく家事審判手続に関する法改正がされるのですので,今後,本当に50年,60年先を見据えた子どもの権利を保障する制度という意味で,こういった子ども手続保護人の創設を是非,中間報告の中に入れていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 栗林委員,増田幹事,何か補足して御発言いただくことはありますか。 ○増田幹事 以前から子ども代理人に関する提案を出すということを予告しておりましたが,具体的なイメージとしてどういうものかということは余り明らかではなかっただろうと思いますので,こういった形で,選任及びその権限,その職責とか,あるいはその権限に基づいて実際上行うことなどを列挙してみました。   法的性質としては,法定訴訟担当−−「訴訟」担当という言葉が適切かどうかは別として,代理人ではなくて訴訟担当であるということで構成しております。   それから,裁判所調査官との違いといたしまして,先ほど杉井委員が言われたような,目的が審判の目的ということに限定されていないことと,公平中立性というのが厳密には求められていないつまり,両当事者から公平中立であるという必要まではないことです。それから,実際上の機能として,調停促進の機能というのが諸外国の例から見ても大きいと考えられる。子どもとの関係の問題というのは親子関係の新たな構築ということになりますので,審判で終わりではなくて,その後のことを考えますと調停による解決が最も望ましい。その調停での解決を促進するというのが,実際上の大きな機能だと考えて作っているということです。 ○伊藤部会長 ただいまの,このたたき台のほうの17の子の意見表明に関係はいたしますが,今御紹介ございましたように,それより更に広い範囲での事項に係る御提案かと思いますが,この場で全体について自由に御議論いただければと思います。   ただ,時間の区切りの関係で,ここでいったん休憩をして,再開後にただいまの御提案,全般に関しての御議論をお願いしたいと思います。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは,再開いたします。   先ほど御紹介ございました子ども手続保護人制度について,全般に関してまず自由な御意見,御質問等で議論をお願いできればと存じます。 ○鶴岡委員 杉井委員,増田幹事の御説明で,大変イメージが鮮明になりました。   お伺いしたいことが一つあるのですが,それは子の手続保護人にどのような人を選任していくのかということですね。弁護士さんに限るのか,それとも少し幅広く専門家,親子関係,あるいは発達心理等の専門家も含めて考えておられるのかということであります。ちょっと付け加えさせていただきますと,これは私の意見ですけれども,子の最善の利益を図るということと,子の意見を表明させる,あるいは意見を聴取するということは,必ずしもイコールではないと思っております。   そしてこの間をつなぐために,例えば子の非常に強い不安とか,心理的な葛藤,あるいは発達段階に配慮して,例えば,あえて子に意見を聞かないという選択も含めた高い専門性とか,あるいは技法が必要になるのではないかと思います。その場合に,そういう専門性をどう担保するか,どのように養成するか,先ほど最初に御質問いたしましたように,弁護士に限るのか,もう少し幅の広い資格というものを考えておられるのか,そこを教えていただければと思います。 ○杉井委員 私どもも最初考えたときは弁護士に限ると考えていたわけです。特に子の手続保護人なので,こういう調停や審判の手続について,やはり法的な知識がなければいけないということで弁護士に限定すると考えていたんですが,鶴岡委員がおっしゃったように,確かに本当に子どもの気持ちをどう把握していくかということは,これは本当に心理カウンセラー的な高い技法というのが必要であるということもよく承知しておりまして,ですから,もし弁護士であれば弁護士会できっとしたこういった専門性を身に着ける研修を義務付けると。そういう研修を受けた者でなければ資格がないというふうな形にするべきだと思っております。   ただ,それを今の段階で弁護士だけに限るというのは,やはり,逆に言うとまた狭過ぎるかなという議論もいたしまして,今も申し上げたように,むしろ心理カウンセラーとか,あるいは社会福祉士の方で,またその心理カウンセラー的な高い専門性を身に付けられた方であればふさわしい方もいるのではないかということで,今日,今の段階の提案では弁護士に限定するとは考えておりません。ただ,例えばオーストラリアなんかを見ますと,やはり弁護士ですし,諸外国の場合には弁護士に限定されているのが多いように見受けられます。 ○増田幹事 法律で弁護士に限定するかどうかというのは非常に難しいことだろうと思いました。多種多様の意見が弁護士の中にもございます。ただ,手続行為をするということが基本的な権限でありますので,子ども手続保護人自体には弁護士が相当であろうと考えます。ただ,いわゆる専門性につきまして,弁護士では賄い切れない部分があると思いますので,今言われたカウンセラーなどを補助者として使うということも想定の範囲には入っております。   例えば破産管財人だとか監督委員なんかでも法律の中に弁護士に限るという条文はどこにもないのですね。しかし,法的手続に主体的にかかわるものについては,書かなくても基本的には弁護士になるのではないかという想定のもとに考えてはおります。 ○伊藤部会長 鶴岡委員,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   どうぞ,その他の委員の方。どの点でも結構ですから。 ○古谷幹事 多分,論点は多岐にわたると思いますけれども,子の意見表明との関係で,一点申し上げたいと思います。   先ほど裁判所の調査官の調査の関係で,調査というのは結局,審判のために行うものなので非常に制限がある,限界があるという御発言があったと思うのですけれども,確かに審判のためにやっているのはそのとおりでございますけれども,その審判というのも結局,条文上,子の利益のために何が最善かというのを考えてやるわけなので,法の仕切りとしては子の利益を考えた調査というのをするべきだとなっておりますし,現場の調査官もそれを考えてやっていると思いますので,その上でまた別に心理カウンセラーだとか,ほかの専門職をかませるというような実益があるのかという疑問がございます。 ○脇村関係官 ちょっと質問になるのですけれども,ここでは子どもというところで特に年齢とか何も,20歳未満すべて入ると思うんですけれども,20歳未満であれば18歳と10歳,5歳とでは全然状況が違うと思うんですけれども,例えば18歳ぐらいであれば言いたいこと言える状況であるし,他方で5歳であれば,口頭では言うのはなかなか難しいと思うのですが,その点は区別せず一律にということになるのでしょうか。 ○杉井委員 確かにおっしゃるとおり,年齢によって全然,子の意見表明ができる年齢とできない年齢といろいろだと思うのです。もちろん子の意見表明ができる年齢の子どもたちについては,例えば先ほどの手続行為能力のところでありましたように,意思能力さえあれば,子どもであっても独自の申立てができるということであれば,本人自身が子ども手続保護人の申立てをするということも十分可能かと思うのですね。   ただ,やはり先ほど言われた5歳とか,あるいは場合によっては0歳ということもあり得ると思うし,そういうときには本人の申立てということはもちろん考えられませんが,裁判所のほうが職権で,このケースについてはやはり子ども手続保護人を選任したほうがいいというふうな判断をすれば選任できるという形になるのだろうと思うのです。それを例えば15歳で限るとか,法律上15歳以上の者という形で限定するのは,逆に言うと子どもの最善の利益を図るというこの趣旨からして,ふさわしくないのではないかと考えています。 ○脇村関係官 もう一つ教えていただきたい点としては,ここで調停と審判を区別することなく一律的と扱っているのですが,他方で調停と審判では大分イメージしてくる手続が異なってくると思うんですけれども,今の御提案ですと,例えば調停で選任するといったときに,その手続保護人というのは具体的にはどういう感じで審理に携わっていくものなのですか。 ○杉井委員 やはり調停の期日には出頭します。でも調停期日に出頭するに当たっては,事前に子ども自身に面接をして,そして子どもが意見を表明できればその意見も聴取し,しかし同時に今こういう段階だよと,調停でこういうことが話し合われていますよという現状についてもきちんと説明して,報告をする。そしてまた子どもの意見を聞いた上で,調停期日に出頭して,口頭で保護人としての意見や主張をきちんと表明するということもあるでしょうし,場合によっては,最近調停でも結構,書面を出すということもありますよね。書面として提出するということもあるのだろうと思うのですけれども。 ○増田幹事 今,杉井委員が裁判所の調停手続への関与という形で言われましたが,恐らくは実際にこういう子ども手続保護人が選任されれば,調停外での両当事者の説得だとかいうことも,かなり行われるのではないかということが期待されます。 ○道垣内委員 杉井委員の御説明を十分に私が理解できていなくて,聞き逃した点も多々あるのではないかと心配しているのですけれども,伺っておりますと,要するに子の意見を表明することを援助するわけではないですね。つまり,子の最善の利益を図るべく,0歳の子どもについてもその人が自分で考えるということであって,別に子どもが子どもの意見を表明しやすくするという制度ではないような気がするんですが,そうすると(4)にお書きのような,子の意見の表明を援助するとともに手続の経過を説明するというのではないのではないかという気がするんですが。 ○杉井委員 それは年齢によって違うのではないでしょうか。本当にそういう小さい子どもの場合には,むしろその子の最善の利益が何なのかということを客観的な立場で考え,それを裁判所のほうに主張を立証していくということが主になるでしょうし。 ○増田幹事 子の意見表明というのは,子の最善の利益の一要素であると考えております。ですから,子の意見の表明援助というのは重要な役割です。ただし,子の意見が常に正しいというわけでもないし,子ども手続保護人の立場で,その子の意見はこうだけれども,実際に子の最善の利益は別のところにあるというような主張をすることもまたできると考えております。具体的に子の意見表明と,その最善の利益をどう調和させるかというのは,杉井先生が言われたように,子の年齢とか発達の程度によっても変わると思います。先ほどの質問に少しかかわるのですが,子の年齢で切るというのは非常に難しい,つまり,発達の程度というのは必ずしも子の年齢に比例しないので,年齢で例えば8歳で切るとかいうようなことを法文に書くということが非常に難しいのではないかという配慮もあって,年齢はあえて書かないということにしました。 ○伊藤部会長 道垣内委員,何か今の点,よろしいですか。 ○道垣内委員 もちろん結構でして,その提案の文言は真意がそこにあればそれで全然結構なのです。しかし,文言としては意見表明というのが結構表に出てしまっているような気がするのです。今日のたたき台においては,例えば1項で家裁の調査官の調査等が子の意思を把握するということになって,裁判所はその意思を考慮しながら全体の利益を考えて判断を下すというふうな分かれをしているのに対して,一方で,取り分け(4)のところでは子の意見の表明の援助というのが表に出ていながら,他方で,実際には子の利益を独自の立場で判断をするということになっておりますので,その文言と提案されようとしている内容との間に若干齟齬があるのではないかという気がしましたものですから,確認をさせていただいた次第です。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○長委員 先ほどの御発言の中で,子ども手続代理人は調停の中でどんな活動をするんですかという質問があり,その回答として,調停外で説得活動をすることがあるというお話でした。しかし,調停手続が係属しているときの調停行為は,当事者と調停委員会が行うものであると思います。さきほどの子ども手続保護人が説得活動をするというのが,よく分からなかったんです。子どもの意思をどう反映させるかという点では,それが調停手続の中に出てきて,それを考慮しながら進めていくということはもちろんあると思うんですが,子ども手続保護人の説得活動の意味が分かりにくいと思います。 ○増田幹事 調停手続に普通に両当事者に代理人がいる場合においても,調停期日だけ両当事者代理人は活動しているわけではないわけで,調停外においても説得活動や両当事者代理人同士の協議などを行っているわけです。それでもって調停の成立へ向けて努力しているところですが,やはり代理人同士の話合いの中では,両当事者それぞれの相対立する利害を背負っておりますので,なかなか解決しないこともある。そこで第三者的に子どもの意見がこうだと,あるいは子どもの利益というのはこうだというようなことを意見を述べる,基本的には弁護士を想定しておりますけれども,そういう弁護士が調停外の協議に加わるというようなことがあれば,それが調停の成立を促進する大きな要素になるということを申し上げたわけです。 ○長委員 日本の家事調停の場合には,裁判所が子どもの利益の観点から後見的な考慮をしながら進めていくというのが調停の手続になっているわけであります。調停期日外において現実に行われている両当事者間の交渉というのは,私は調停手続そのものでないのだろうと思います。調停手続外で行われている私法上の行為が,調停手続の中に取り込まれるということはもちろんありますけれども,調停手続そのものを考えるのであれば,調停活動は調停委員会がやはり行うべきで,子どもの最善の利益を判断するのは,調停委員会なり裁判所でないと,子の利益は守られないのではないかとも思います。手続外での行為をしてはいけないとは申し上げないんですけれども,何が最善の利益かということを最終的に判断するところがやはり関与していませんと,私はどうも今おっしゃった手続の構造というのがもう一つよく理解できないのです。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○杉井委員 もちろん,最終的には調停の場合には調停委員会が当事者の合意の下で調停成立ということになっていくわけです。ですからもちろん調停委員会の役割,あるいは調停期日の重要性というのは当然のことであるし,それに向けての調停外の活動,弁護士,代理人が付いた場合に,それに向けての調停期日に向けての弁護士,代理人の活動だと私もそれはとらえています。だから,調停外の活動が主だというようなことは,決して考えておりません。   しかし,現実に我々代理人としていろいろ活動している中では,調停の期日だけではなかなか本音が出し合えない,話が煮詰まらないということがたくさんあります。そういうときに,やはり次の調停期日の前に,一応代理人同士で会って,お互いに意見をぶつけ合って次の期日に臨むということもよくあることでして,子どもの手続保護人の場合にも,そういう形で期日前に,あるいは期日外に一定のこの当事者,関係者と接触をし,あるいはもちろん一番大事なのは,子どもと会っていろいろな話をして,子ども自身の意向というのをきちんと確認して,そして調停期日に臨むということになろうかと思うんですね。   ですから,先ほど増田委員が言われた調停外での活動について,これは調停外の活動が主なんだという意味でおっしゃったのではないと。飽くまでも,もちろん調停期日での調停成立に向けての活動の一環だというふうなとらえ方をしておりますが。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○三木委員 御質問というか,疑問なのですが,今出ている調停外の活動うんぬんとかいうことと密接に関連するんですが,従来の子ども代理人という手続上の代理人という位置付けだとそれなりに是非は別として理解できていたんですが,本日の御説明で法定訴訟担当だとおっしゃったこととの関係がよく理解できないということで御質問させていただくわけです。   法定訴訟担当というのは,例えば破産管財人なり債権者代位権なりを考えた場合に分かるように,もともとその基礎は手続法上の問題ではなくて,実体法上の問題に発するわけですね。つまり,例えば破産管財人にしても別に訴訟活動だけをやるわけではなくて,訴訟外で実体上の地位を与えられて,いろいろなことをやって,その一環として訴訟もやると。あるいは債権者代位権者にしても別に訴訟だけをやる必要はないわけで,代位権自体は実体法上の権限なわけですね。そうすると,これが訴訟担当だというのだとすると,技術的なことをまず申せば,それは家事審判法に置く問題なのかどうかと。何かしらの実体法に置くべき話のような気がするわけですね。つまり,審判や調停だけの話ではないということに理論的にはなるはずなのですね。そこをどうお考えなのかと。この制度がいいとか悪いとかいう以前に,これを手続法の問題としてとらえておられるのか。そうだとすると,その訴訟担当という御説明とは整合しないように思います。   また,先ほどの年齢との関係ですが,確かに乳幼児とかを考えると,訴訟担当とおっしゃる心は何となく分かるのですが,他方で意見表明能力のある年齢を考えると,やはりそれは一種の代理でないと,訴訟担当というのは手続上の本人性を子どもから奪うというか,与えないわけですから,20歳未満あるいは18歳未満であれば,高年齢であっても訴訟担当だというのがよく理解できないところがある。諸外国に日本と同じような手続担当という概念がない国もあると思いますが,参考にされた国は,そもそも代理なのか手続担当なのか,その辺もちょっと教えていただければと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○増田幹事 すみません,非常に難しい問題ですね。代理人というと,やはり本人の意思というものがないと,代理人の概念に当てはまらないように思ったので,手続担当と申し上げたのですが,確かに高年齢の子どものことを考えると代理でもいいのではないかと。ただ,代理だとやはり本人の意思が中心になって,本当に子どもの意思を主張することが子の最善の利益につながるという年齢になってしまえば,むしろこの制度よりも任意代理人でいけるのではないかと思うわけですよね。ですから,そこまでいかないほうの前提にすると,どうしても代理人という概念には抵抗があると。そこは,もう少し勉強させていただきますが。   それで,ドイツの場合には従前よく分からないという疑問があって,一番新しい非訟事件手続法では代理人ではないということが明言されたと聞いています。オーストラリアでも代理人ではないと言われています。手続担当という概念がそれらの国にあるのかどうかというのは,ドイツにはあるでしょうけれども,そう言われているのかどうかまではちょっとよく分かりません。高田先生がおられたら伺いたかったんですけれども。 ○伊藤部会長 別に本日,何か結論を出すとか,そういう性質の問題ではないと思いますので,まだ今後も議論が続くということを前提に,どうぞ御自由に御発言ください。 ○菅野委員 杉井委員ほか,弁護士の方はこの問題について非常に詳しい検討と,それから今までの仕事上での御経験があるのだと思いますので私などが話すのも何か変な気もするんですけれども,ずっと本を読ませていただきまして,今まで自分がぶつかったときのエピソードとでも言ったらいいんでしょうか,ちょっとその関係で思ったことがありましたので,二,三話させていただきます。   私は個人的というか,法律家としては親と子どもの立場というのは非常に違う,独立だという意識を非常に強く持っております。   ただ,そういうことなのですけれども,苦い経験もやはり幾つもしておりまして,あるときに子どもさんの意見を一応確認して,それを基として御両親に親権,監護権の問題でどうかと,よくあることと言えばよくあることなんでしょうけれども,一方の親のところで,その後暮らすことになったと。数か月ぐらいで実はそこからいなくなった。遠隔地まで一人で行ってしまった。それで片方の親元へ戻ろうとしました。双方やはり傷があったんだと思いますけれども,要するに自分を選ばなかった子どもを許せないということらしく,今度は受入れを拒否してしまった。子どもの取り合いだったのだけれども,今度は拒否。今度は逆に押し付け合いになったわけですね。第二段階の紛争が起きたと。やはりあのときにそういう子どもの意思を表に出してしまったということが,非常にその後,いろいろなことで問題になってしまったんだろうという,お子さんが非常にかわいそうな状況になったことが一つございます。   また逆に,もうちょっとそれより小さいお子さんのときに,それは多分,慎重な手続で進んでいたのだと思うのですけれども,片方の親のほうと是非一緒にいたいんだというのを兄弟そろって言われておりまして,それはそれでそういうことなんだろうと思っていたんですけれども,ある期日のときに,裁判官も立ち会ってくれと言われて入りましたら,だれも来ないのですね。片方しか来ない。子どもが実際に今育っているところのいるほうの親御さんが来ない。連絡したら,自分は仕事で忙しいから,子ども2人だけやったと。自分は出てこないと。その子どもが今度,行方が分からないわけですね。裁判所の職員として探して,大騒ぎをして,最終的に発見した。   そのときに,調査官の人が後でそう聞いた。結局おなかがすいているように見えたのでしょうね。聞いたら,子どもさんは「いや,食べてきました」と言ったのですけれども,やはり小さいほうの子どもさんが話しやすかったようで,実は食べていないということを確認して,結局,食事を取れるかどうかみたいなことで,ぽんと意見が変わって,そのときに調査官の人が,子どもさんというのは結局少し大きくなっても,しょせん朝御飯を食べさせてくれた人,あるいはそれを食べられなくなるかどうかということを非常に考えるのだと。非常にそういう即物的な面もあると。   言わんとしたかったのは,単純に意見を聞くということは本当に難しいのだなというのをいろいろなところで見聞きしております。かつ,その意見をではどう手続に乗せるかということも非常に難しいことだと思いますし,非常に難しい。更に言えば,意見とか意思とはあるのかという問題もあります。  別な普通の損害賠償訴訟で,子どもさん同士のけがの事案ですが,最近の事件ではないので紹介をしますけれども,小学生ぐらいですと普通は証人尋問とか,そういう法廷でしないというのですけれども,少し持論があったのでやってしまったのですね。法廷に呼びまして,当事者双方もそれを非常に希望したので呼んだのですけれども,非常にしっかりした子どもだとも聞いていましたし,陳述書みたいなものも持っていましたし,大丈夫と思ったんですけれども,実際にやってみると,なかなかしっかりした方で,理路整然と答えた。反対尋問を今度しますと,理路整然とその反対尋問をした人のとおりに言うのですね。先ほどと全然逆ではないかと。もう一回今度こっち側で聞くと,またやはり理路整然と同じように,「そのとおりです」と。これは非常に迎合されるというのか,そういうことをこれぐらいの年齢,これぐらいの年齢で,二回経験して,それ以降,子どもさんのいわゆる証人尋問というのは,よほど慎重にやらないとこれは難しいということを思いました。   そんなことを考えている中で思ったのは,こういう子ども手続保護人という制度を検討されるのだとすれば,まず子の意見表明を援助しというところのポジション,それをメーンにするのか,そこをどういう位置付けにするのか,幾つかの機能があるのでその中の一つですということで済むんだろうかという問題が非常に気になったというのが一つと,それと,では,そういうときも先ほどからお話があるように18歳の子どもと,16歳の子どもと,l2のときはどうなんだ,あるいは6歳のときはどうなんだと,何か全然別議論になるような気がしまして,更に検討されるんだと本当に慎重に御検討していただければありがたいという気がいたしました。   個人的な話をしてすみませんでした。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。 ○長谷部委員 先ほど調査官調査との関係について御説明いただきまして,アプローチといいますか,着眼点が違うように理解したのですけれども,ただ実際上その子どもと面接するということになりますと,調査官調査との重複あるいは競合ということも生ずるのではないかなと感じたのでお伺いしたいのですが,諸外国の場合は調査官制度がそもそもないところで,こういった制度をつくっておりますので,調査の競合といったことはあまり考えなくてもよいのかもしれないのですけれども,我が国の場合,既存の調査官調査との役割分担が問題になると思います。例えばこの(5)によりますと「法定代理人その他子を監護する者の立会いなく子と面接することができる」と書いてあるのですが,それは調査官と一緒に子と面接して,それぞれの立場から調査するというようなことはあり得るのか,その辺りはいかがでしょうか。 ○杉井委員 確かに競合する場面というのもあるのだろうと思うのですね。ただ,いずれにしても調査官の調査というのは,大体一回ですよね。一回か,どんな回数あっても二回くらいしか子どもに面接はしないで,そういう中での調査結果ですね。   しかし子どもの手続保護人という考え方は,やはり先ほどの体験談がありましたけれども,確かに子どもとは一回会って聞いても,そのときそのときで言うことが違ったりしますよね。だから,子どもの手続保護人として選任される者は調停手続の間じゅう,あるいは審判手続の間じゅう,その間,本当に何回も子どもに会いながら,あるいは子どもといろいろな形で接触しながら子どもの意思を確認していくという役割なんだろうと思うんですね。だから,それはたまたま調査官の調査と重なる,競合する場面があっても,あるいは長谷部委員がおっしゃったように,場合によっては一緒にということもあり得るかもしれないけれども,それ以外の場面で,子どもの手続保護人の役割としては別にあるのだろうと思うんです。   それともう一つは,私も実際体験したことですけれども,ちょっと大きい子については調査官調査は裁判所に来てくださいと言われるのですが,子どもってなかなか裁判所に行きたがらないし,現実に私の体験した事件では,親は「行きなさいよ」と言って,行っていたと思っていたら結局,裁判所に来なかったという事例もあるし,なかなかやはり裁判所というだけで拒否してしまうという子どもも現実にいるわけですね。子どもの手続保護人の場合には,むしろ保護人のほうが子どものところに出向いて,そして何回も接触する中で,子どもの意見や意向をやはり確かめながらやっていくというところに特徴があるのだろうと思います。 ○増田幹事 諸外国には裁判所調査官はないという点についての回答なのですけれども,確かに裁判所調査官というのはないですね。しかし,ドイツでは少年局という行政機関が裁判所からの嘱託に基づいて調査をしておりますし,オーストラリアではファミリーコンサルタントという専門家の調査が入りますし,アメリカの州においても外部の専門家に裁判所が委託して調査をするということがありますので,日本でいう家庭裁判所調査官はいませんけれども,そういう類似の制度があって,それとこういう,いわゆる子ども手続保護人の制度というのは両立しているということを申し上げておきたいと思います。 ○山本幹事 まだ十分理解できていないと思うのですが,この(3)の規定で,手続保護人が「当事者としてすることができる手続行為をすることができる」という規定や,あるいは先ほどの,これは一種の訴訟担当であるというようなお話からすると,私はこの場合に子どもがその当事者あるいは利害関係人として参加することができるような場合において,この手続保護人が子どもに代わって当事者あるいは参加人として手続に関与する,そういう場面を想定していると,この保護人というのはそういう手続上の地位に立つものだという,その前提理解は合っているんでしょうか。 ○増田幹事 はい,そのとおりです。少し事件類型での限定をしていないところがありますが,これはその諸外国の例とまた手続が違いまして,諸外国の場合には今は婚姻事件と親子事件とは分離されるというのが現在の流行になっています。ですから,親子事件と限定ができるんですけれども,日本の場合にはそこがまだ未分離になっているので,あえて明文で限定をしなかったということがありますので,その点は御理解ください。 ○山本幹事 よく分かりました。そういう理解だとすると,これは先ほどの三木委員の疑問と重なるかもしれませんが,訴訟担当と言われることの意義ですけれども,現在の原案でも,ある程度この御提案の趣旨をカバーできる部分というか,重なる部分があるような感じがするのですが,意思能力がある子どもについては,先ほど来,出ていますように,その子ども自身が手続に参加することができるということになっているとすれば,その子が任意代理人として弁護士を選任をして,自分の利益の保護をしてもらうということを図るということはありそうな感じがして,その場合,代理人は当然,子の最善の利益を図っていくことが必要なのかなと思うんですが,その場合にも先ほどの杉井委員のお話だと,子どもはその手続保護人の選任も申立てることができると伺ったのですけれども,その子どもがそれを選択することができるということの意味が必ずしも私には十分理解できていないということです。   それから,意思能力がない場合は,現在の制度は恐らく法定代理人がその子どもが参加する,法定代理人が代理するということになるのかなと思ったのですが,法定代理人が何らかの理由でその子を代理するのにふさわしくない,この(2)とかがあるいは典型的な場合なのかもしれませんが,そういうような場合には,現在のあれでは特別代理人という制度があると思うんですが,現在の特別代理人の要件はあるいは狭過ぎるということなのかもしれませんが,そうであるとすれば,子についてはもう少しこれを広げるというような形で考えるということもあるいはあるのかなと思うのですが,そういったような今考えられるような制度と,この御提案の制度とで,どこがどう出入りがあるのかということは,まだ私には十分理解できていないということです。もし,お答えがいただければと思いますが。 ○伊藤部会長 分かりました。今の点,何か。 ○増田幹事 まず,任意代理人の話なのですけれども,任意代理人というのはまず基本的に最善の利益というものではなくて,恐らくはその当事者,選任した者の意向に従って動くのではないかと思います。   それと,子どもが任意代理人を選任できる場合,自ら主体的に選任できる場合というのは,事実上は非常に限られるのではないかと思います。この子ども手続保護人の意義は,やはり裁判所がこれは必要だなと,当事者のやり方を見ていると,ちょっと子どもの意見も聞いてみたいとか,当事者の言っていることから言えば,どっちも何か子どもの最善の利益に沿うとは思えないなというようなときに裁判所が選任できるというところに大きな意義があるのではないかと思っております。   確かに特別代理人は,似ているといえば似ているのですけれども,現行の特別代理人の運用は,だれもいないから仕方がなくてある人を選任して,手続でどうしても必要な部分をやらせるといったところだと思うんですよね。確かに,その特別代理人の運用を変えればいいのではないかと言われれば,それはそうなのですが,しかし,現段階のイメージは少し違います。 ○山本幹事 前者の点につきましては,意思能力があって手続行為能力があっても行為能力を制限を受けた者については,必要があると認めるときは裁判長が弁護士を代理人に選任することができるという規定が提案されていますよね。そういう形で対応ができるような気もいたしましたが。 ○伊藤部会長 もし何か,今の点は。   それでは,今,御発言の部分も含めまして,非常に議論の内容からも分かりますように多岐にわたる点についての提案,提言かと思いますし,もちろん,今の山本幹事からの発言にもありましたように,現在ある制度との関係をどう考えるべきかというようなこともあります。   この提案及び本日の御発言を踏まえて,一度事務当局でここで考えられているような事項に関するたたき台のようなものを遅くならない時期に用意してもらって,それを踏まえて,もう一度,御議論をいただくということでいかがでしょうか。 ○三木委員 もちろん,それで結構ですけれども,もう一度,この御提案の趣旨を確認したいのですけれども,先ほどのやや繰り返しになりますけれども,訴訟担当的なものをイメージされているということの意味ですね。文字どおりの意味であれば,それは手続法上の制度を作りたいというよりも,実体法上の子どもの利益を代理する特別の地位のある保護人というようなものを実体的に作って,その者が訴訟外でもいろいろな活動をもちろんできる,その一環として訴訟活動もできるというのが現在の担当者だと思うので,そういうものを考えておられるのか,飽くまでも手続上,審判と調停の手続上の一種の代理人を考えて,ただ,その代理人というのが,やや通常イメージされる任意代理人とは違って子どもの保護ということにも配慮できる代理人,それを何と呼ぶかというのは別です。呼び名は別として,そういった手続上のものに限ってというか,手続上の地位を考えて,その者がもちろん手続上の立場がある人が,もちろんその手続上の地位の行使の一環として訴訟外の何か裁判手続外の交渉事とかをするということもあり得るという意味なのか,どちらが主でどちらが従なのかという点だけ確認をさせていただきたい。 ○杉井委員 私のイメージとしては,むしろ後者のイメージだったのですけれどもね。ばっちりその訴訟担当というふうなイメージではなかったのですが。増田先生。 ○増田幹事 現在,提案しているのは後者です。つまり,理想論として発展形を考えれば,前者に行ってもいいのだろうと思っています。ただ,家事審判法の改正ですから,前者のものを実現することは,この部会での議論として無理だろうと思っています。 ○伊藤部会長 新しい視点からの御提案ですから,従来,確立された概念との関係でどう整理するかというのはなかなか難しいところがあるかとは思いますが,今の三木委員からの御指摘も踏まえて,先ほど申しましたように,事務当局で議論及び提案を反映した,あるいは整理したものを作ってもらって,そこでもう一度審議をお願いするということにいたしましょう。   ということで,今日の段階はこの程度でよろしいでしょうか。ありがとうございました。   そうしましたら先に進みたいと思います。第2,家事審判に関する手続(総則)の1の通則に関して,説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 第2,家事審判に関する手続の1,通則,(1)家事審判の対象となる事項については,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   (2)参与員のうち,アについては,家事審判法第3条第1項の規律を維持するものとすることを提案しております。イについてですが,部会でいろいろな御意見があったところでして,これらの御意見を踏まえて,本文@では紛争性が高くない甲類審判事件に限り,かつ意見を述べる前提として提出資料の内容を明確化するために必要な限度で参与員が提出資料についての説明を求めることができるものとすることを提案し,本文Aでは,当事者等の手続保障の観点から,本文@により聴取した結果を書面で行わなければならないものとすることを提案しております。ウでは,家事審判法第10条及び第10条の2の規律を維持するものとすることを提案しております。   (3)中断及び(4)受継については,従前の部会資料から実質的な変更はございません。なお,(4)受継のアでは,Bにおいて申出を却下した裁判に対しては即時抗告をすることができるものとする規律を加えております。また,イの受継の申出が可能な期間につきましては,これまでの議論を踏まえて1か月以内としております。   (5)調書の作成等では,@の本文で期日については調書を作成しなければならないものとしつつ,ただし書において審問の期日については調書の作成を省略することができるとする甲案,経過の要領をもって代えることができるとする乙案,このような例外の規律は設けないものとする丙案の3案を併記しております。また,作成の対象となる調書等の具体的内容を注記いたしました。   Aでは,事実の探知についてはその要旨を記録上,明らかにしなければならないものとしております。   (6)記録の閲覧等,ア,記録の閲覧等の要件等では,基本的には部会資料から変更はございませんが,Bでは家事審判事件の多種多様性等を考慮して,また事案ごとにある程度柔軟な対応ができるようにする必要があるといった観点から,「その他相当でないと認められるとき」という例外の規律を維持することとしております。   イ,即時抗告では,甲案が当事者の即時抗告権,裁判所の簡易却下制度及びこれに対する即時抗告権を,乙案が当事者の即時抗告権と裁判所の簡易却下制度を,丙案がこれらの規律は設けないものとすることを,それぞれ提案しております。   (7)検察官に対する通知では,非訟事件手続と同様の規律を提案しております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,順次まいりたいと思いますが,まず1の通則(1)家事審判の対象となる事項,ここは何か御意見ございますか。   よろしければ(2)の参与員に関して,特にイの参与員による説明の聴取で,具体的には21ページの@のところで,内容はただいま川尻さんから説明があったとおりでございますが,この辺りに関してはいかがでしょうか。 ○増田幹事 現在,後見において行われている運用を明文化して参与員の独立の権限とするというお考えであろうということは理解できるのですが,これをあえて法律で明文化したほうがいいのかどうか,それは運用する家庭裁判所のほうからも余り明文化しないほうがいいのではないのかなとは思うのですが,いかがなものでしょうか。 ○伊藤部会長 この@について,こういう内容であればそれを明文の形で規定することがどれだけの意味があるかというようなことの御指摘ですが,今の点,増田幹事の御発言に関してはいかがでしょうか。 ○古谷幹事 今の増田幹事からの御指摘の関係で,このイの@というところは,要は説明を受けることができるというふうな内容でございまして,事実の調査とか,そういったものとは別のものとして考えられていると思います。   こういった規定をわざわざ置く必要があるのかという点につきましては,確かにその権限としてはそれほど大きなわけではないかと思います。ただ,他方これまでの議論を拝見をしておりますと,原則としては審判官が意見の聴取にせよ,事情の聴取にせよ,それらをするのが基本的には好ましい。それは直接性の要請というのがあって,それを後退させる以上は何らかのやはり根拠がいるのではないかというような議論もあったと思います。そういう点からいいますと,この規定により,一方で権限を定めると同時に,参与員が行えることの限界も画するという意味があろうかと思います。やれることとやれないことをはっきり仕分けをするというふうな意味で,こういった規定を置く意味があろうかと考えております。 ○伊藤部会長 ということで,古谷幹事からはこういう内容を規定化することについての,積極的な御意見がございましたが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 古谷幹事その他,裁判所の方にお伺いしたいのですけれども,規定をつくることで,かえって融通がきかないとか,窮屈になるとかいうことはないですか。 ○古谷幹事 今まではっきりしていない点もあったかと思いますので,その点,はっきり規定するというのはあることかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○杉井委員 質問ですけれども,この説明を受けることというのは,事実の調査ではないというお話でしたよね。そうしたら何なんでしょうか。 ○古谷幹事 出てきたその資料なり書面なりについて証拠説明なり何なりを求めるというのと同じようなことであるという理解です。新たな情報を何か収集する,獲得するというふうな手続のものとは別と考えております。   ただ,その際に,それをきっかけとして,新たにまた事実の調査をしましょうということはあり得ると思うので,事実の調査の端緒になるということは十分あり得ることと思います。そういった場合には別途,審判官のほうで事実の調査なりをすることになろうかと思います。 ○増田幹事 これは本来はやはり家事審判官がやるべき仕事なんだろうと思うんですね。これは民事訴訟における釈明のようなものだと思います。それをたくさんあってさばけないから,言わば下請け的に,補助者という形で参与員にやってもらっているというのが現状だと思います。その現状を否定するつもりはないんですけれども,それは審判官の権限の範囲内で補助をしてもらうと,前さばきみたいなものをしてもらうというようなことで,余りこれは法律に書くような話ではないのではないかとは思っていて,一般の方に意見を聞くような性質のものでもなさそうな気が私はしているのですが。 ○伊藤部会長 そこは御意見が対立しているところなのですが,内容的にこういうことがいけないという趣旨の御発言ではないと思いますので,どうでしょうか。一応,内容は掲げて意見を聞いて,またその上で考えるということで,よろしいのではないでしょうか。 ○山本関係官 3月まで現場で参与員が関与する事件を取り扱っていた経験に基づきまして申し上げたいと思います。   先ほど,説明の聴取は審判官が本来やるべき仕事なのではないかというような御指摘がございましたが,例えば,氏の変更あるいは名の変更の許可の事件など,かなり抽象的な要件が定められているところで,資料は一応出ているんだけれども,これは実際どうしたらいいのかというところについて,正に一般国民の良識に基づいた意見を求めるというのが参与制度の趣旨ではないかと思われるところであります。   では,そのために何で参与員が自分で説明を聞くのかというところになってくるわけなんですけれども,参与員の方々が意見を述べるに際して,記録を読まれたときに,どういうところに引っ掛かるか,あるいは問題意識を持たれるかというのは,これは実は参与員によってもかなり違うところがあって,審判官が自分で記録を読むのとも全く違った観点から御意見をいただけるというところがございます。   その御意見を述べていただく前提として,審判官なり書記官が説明を聞いて参与員に伝えるということになると,必ずしもその参与員の問題意識に答えられるかどうかというところだろうと思われるところであります。   そういった観点から,参与員がそれぞれ関心を持たれる,あるいは問題意識を持たれるところについて御自分で説明を聞かれて,それを踏まえて意見を述べられるということは,制度の趣旨から非常に素直に出てくるところではないかなと思われまして,実際としても,そういったことで気づかないところで御意見をいただくという例がかなり多うございましたので,御紹介したいと思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。 ○山本幹事 私もこの制度の趣旨,今ここで整理されているものの認識としては山本関係官が言われたのと同じ印象を持っておりまして,つまり参与員が適切な意見を述べるために,申立人にその資料の内容について明らかにしてもらうとか,追加的な説明を求めるというような趣旨で,飽くまでも参与員が意見を述べる準備活動の話を書いているのかなという印象を持っております。   似たようなものとして,私が知る限りでは,専門委員に対して説明を求める際に,何らかのその準備活動が必要な場合に裁判所が指示をしてその準備活動をさせるという,民事訴訟規則の34条の6という条文があります。私のイメージはこれの,そういうような制度なのかなということです。それが先ほど古谷さんが言われたように,事実の調査の端緒になるということはあり得るとしても,それ自体は事実の調査ではないということかなと。   したがって,このAで参与員が提出する裁判所への報告書というのは,基本的には裁判所の心証には影響しないような,その聴取内容それ自体は影響しないという前提の制度になっているように認識をしております。もしそうだとすれば,果たしてこういう書面で裁判所にこの結果を報告させるというのが必要なのかどうかというのは,ちょっと疑問に思うところもあるところでありますけれども,そういうような理解をすれば,こういう制度があること自体はおかしなことではないような気はするということです。 ○伊藤部会長 分かりました。参与員がここに書かれているような活動をすること自体に反対とか,そういう御意見ではないと思いますので,そういう実態を踏まえて,こういう形で法の規律を設けることを問うことがどうかという点についての御意見が分かれているように思いますので,できたら取りまとめとしてはこういうことで,恐らくここでもいろいろな御意見があるわけですから,パブリックコメントの中でもわざわざこういうものを設ける必要はないとか,そういう意見が出てくることもあり得ると思いますので,またその段階で内容の議論はもう一度したらいかがでしょうか。 ○金子幹事 今日のお話を伺っていて,改めてこの案自体が必ずしも論理的に整理されていないという気がしてきたのですが,イの@の本文までは,言わばその規定がなくても当然,参与員というものの性質から出てくるものかなという気が改めてしたのですが,なお明文化する意味があるかどうかという観点から御議論いただいていたと思うのですが,少しこのような文言に至った事情も併せて説明しますと,成年後見における活用が念頭にあり過ぎたのか,ただし書が入っているんですが,先ほどの議論からすると,別に調停をすることができる事項についても同じような理屈が当てはまるように思えて,また,山本幹事のほうから御指摘あったとおり,Aで書面で報告するということの性質を@との本文との関係をどう理論的に説明するのかというあたりが,必ずしも十分そしゃくしないままになってしまったなという印象を改めて持ちました。   一読のときに,かなり御意見があったものですから,できるだけ盛り込めるものはという思いがあって,こんな形になってしまったのですが,少しその辺り整理する必要があるような気も事務当局としてもしているのですが,整理した上で,なお今はただし書があったり,Aがあったりすることで@を置く意味が言わばあるようなことも少し考えていたのですが,例えば今のような議論で,ただし書に限る必要はない,あるいはそういうことであればAは特に書面の報告ということは要らないのではないかということになって,@の本文だけを残すということになると,なおさらその意味をどう考えるかというようなことにもなりそうなので,少し事務当局のほうでも,この辺りを考えさせていただければと思っております。 ○伊藤部会長 分かりました。それでは,今,金子さんから申出があったような形で,もう一回,検討しましょう。 ○三木委員 この規定に関しては,様々議論があって,それについて,私の見たところ表現振りがどうかという問題は別にして,少なくとも私なり,あるいはほかの学者委員が言ったことを反映させるべく,御努力いただいたと思います。   それで,今の金子さんのおっしゃったように見直されるのはもちろん結構なのですが,そのときに私が個人的に見直しの際にお願いしたいのは以下の点です。   ただし書を外すうんぬんということも考慮するとおっしゃいましたが,私はむしろこのただし書は,ただし書として置くかどうかは別として,ここは意味があるところで,私も申したと思いますけれども,要するに現在の運用で,甲類的な事件で一定の機能を果たしているし,それほど現実の弊害がないということは,皆さんある程度理解していると。ただ,やはり争訟性のある事件とか相手方のある事件とかで,これを正面からやられると,やはり直接主義との関係でいかがなものかということですので,私は表現振りとか規定振りは別にして,調停できる事項についてはこれは使わないというのは,何らかの形で残していただかないと,そもそもこういう規定を置こうと議論した意味がなくなってくるのですね。   他方で先ほどあったように,氏の変更とか名の変更のような事件で,現実に今運用をされているのがこの@の本文で現れているところで,この規定の仕方は,それをどう書くかというのは非常に難しいので御苦労が現れているのだと思います。この規定振りでいいかどうかは別にして,しかしこの範囲では法制審でいいという結論になったということを,何かの形でやはり条文化するという規定を置いたほうがいいだろうと思います。   Aの点は,私も山本幹事と同意見で,これを置くといかにも下請けですという感じになってしまうので,例えば全く外すのも結構ですけれども,聴取した結果を報告するからおかしいので,聴取した結果を踏まえた意見を書面で出すのだったら別に構わないわけですよね。参与人は,もともと意見を述べるための立場にあるわけですから。ですから,この辺も何か内容がどうというよりも規定振りだと思うので,規定振りがそういった誤解を招かないようにということで残すということで,私は御検討をいただきたいと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。それでは,ただいまの三木委員の御発言も踏まえまして,もう一度内容についての検討を事務当局にお願いすることにいたしましょう。   それから,あと先ほどの説明があったところでは,(4)の受継のアのB,申出を却下する裁判に対する即時抗告,それからイの@,22ページの第一段落の終わりの辺りの一月以内にうんぬんという辺り,受継に関しては何か御発言ございますか。 ○山本幹事 今,付け加えられたというこのアのBなんですが,これ自体は異論ないのですけれども,この対象が@の申出を却下する場合で,Aの申立てを却下する場合は入っていないということについてなのですが,民事訴訟だと本人から受継の申立てをする場合も相手方から申立てる場合も,通常抗告の対象になっていると思うんですけれども,この場合も相手方当事者の立場から見れば,相手方が括弧付きの受継をしていないために,その当事者が関与する手続が進められなくて手続が前に進まなくて困るというような場合はありそうな感じがして,申立てが却下された場合には何か即時抗告を認めてもいいような感じもするのですけれども。 ○伊藤部会長 はい,分かりました。 ○脇村関係官 受継のところで議論したかどうかというのは,やや記憶があれなのですけれども,ここで引込型の申出について却下について即時抗告を外しましたのは,裁判所と引き込もうとした人の間で意見が分かれた場合に,実体法上の問題を理由として申立て却下というのがほとんどだと思うんですけれども,その判断の是非については,別途訴訟のほうで検討すべきではないのかと思っているところでございます。   もう一つ考えておりましたのは,結局ある意味で本案の先取り的なところもございますので,これだけ独立して,抗告審で争わせることで本当にいいのかどうかというのはやや疑問があるところでございまして,家事において一読でもそういった点から独立して設けなくてもいいのではないかというところで,こう部会資料としてもさせていただいているところではあるのですけれども。 ○山本幹事 分かるような気もしますけれども,同じことは@でも言えそうな感じがして,訴訟で決着を着けろという争いがあるのではですね。ということがありそうな感じがするので,取りあえず手続を進めるについては簡易な手続でその判断をしてもらって,取りあえず進めるということはあってよさそうな感じもするのですけれども,しかし,それにこだわるものではありません。 ○伊藤部会長 その引込みということをどれだけ重視するかという問題かという気もしますが,どうでしょうか。 ○山本幹事 必ずしも納得したわけではありませんが,特に結構です。 ○伊藤部会長 分かりました。ほかに受継の関係はいかがでしょうか。   よろしければ,5の調書の作成等で,これは以前からの議論の内容を反映して,22ページの(5)ですが,甲案,乙案,丙案という形での考え方が併記してあります。何か関連して御発言ございますか。   よろしければ,こういう形で広く御意見を伺うということにいたしましょう。   それから6の記録の閲覧等で,これは先ほど補足的な説明がございましたが,23ページのBの辺りですよね。特にBの一番最後の「その他相当でないと認められているときは」という例外を設けることについて,一応そういうものを維持するというのはここでの原案でございますが,こういった点について何か御発言ございますか。 ○増田幹事 この点について,前回の議論では,「その他相当でないと認めるとき」というのに,具体的にどういうものが当たるかというものは挙がらなかったと記憶しております。具体的な事例が今のところ想定できないのであれば,そういうものは入れるべきではないのではないかという意見が多数であったように思っているんですが,そうであれば,「その他相当でないと認めるとき」は,あるものとないものと両論併記という形にしていただければと思います。 ○伊藤部会長 これはどうですか。 ○川尻関係官 前回,何か具体的な例がありますでしょうかということで,その例を踏まえた上でというふうな御指摘がありました。補足説明のほうでは夫婦同居,協力に関する審判事件で,病身の親族がいるという事情があった場合には,その親族の方の個人的な氏名であるとか,病名までは開示する必要がないのではないかということを具体例として挙げさせていただきました。   やはり,一応事件の多種多様性というところと,それから当事者は家事審判の場合,利害関係人として幅広く参加することが予定されているということがございますので,果たして絞り切って,その他相当であると認められるときというような例外を一切設けないで本当によいのかというところはためらわれるところがございますので,今回このような形で御提案をした次第です。   ただ,増田幹事が従前から御指摘あるところですので,補足説明の中でそのような御意見がありましたというところは明確にしたいと存じますけれども,それではいかがでしょうか。 ○増田幹事 前回の認識として,私は多数説だったと思うんですね。それと,どうも37ページの,これは本当に開示すべきでない話なのでしょうかね。夫婦間の事件で,当事者というのはその夫婦ですよね。それで,夫婦の一方に病気の親族がいて,その人の看病をしなければいけないから同居はできないという主張が出て,それについての書証が出たりするのでしょうけれども,これは本来,開示すべき話ではないかと思いますし,ほかの要件に当たらないかということももう少し御検討をされたほうがよろしいかと思いますが。 ○伊藤部会長 前回,どちらが多数であったかという認識が若干違うようなところもありますが,どうぞ他の委員,幹事の方で今の点について,若干,前回の繰返しになるのかもしれませんが意見を述べていただいて,その上でどういう形にするかを決めましょう。 ○古谷幹事 この補足説明の具体的な事例につきましては,確かに微妙な判断とは思いますけれども,開示しないほうがいいという判断は十分あり得ると考えております。   あとは,先ほど川尻関係官からお話がありましたように,何分,本当に多種多様な事件がございまして,こういった包括的な条項を設けないというのに対しては,やはりためらいがあるというのが率直なところでございます。 ○杉井委員 37ページの事例については,私は例えばこの親族の氏名はやはり開示を本来すべきではないかと思うのですね。そして,ただ具体的な病名までは開示する必要がないということはあると思うのですが,それはむしろこのBの本文で,第三者の私生活についての重大な秘密とか,あるいはその者の名誉を著しく害するおそれがあるとか,ここら辺にこのただし書で具体的に列挙されているところでクリアできるのではないかと思うのですね。   それなのに「その他相当でないと認められるとき」という一般条項を入れてしまうと,これはかなりこの閲覧,複製が制限されるのではないかという危惧を持ちますので,私としてはやはり,甲乙両案を併記していただきたいと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。いかがでしょうか。   二つの考え方があることは,これは皆さん共通の認識で,それを案の併記という形で明らかにするのか,一応考え方としてはこれを本文に書いて,補足説明で,しかし今,増田幹事や杉井委員からおっしゃられたような意見もあるのでということを説明として付け加えるのか,そこが最終的には判断の分かれるところかと思いますが。 ○三木委員 どちらが多数かは覚えておりませんが,これについて懸念を表明したのは何も弁護士の委員,幹事の方だけではなくて,研究者からも懸念が出たと思います。あるいはこの「相当でない」という文言を入れることを積極的に支持されたのは裁判所の関係の方だけだったように思います。しかも事は当事者の問題で,これは当事者の手続保障に直接的にかかわる問題ですので,少なくとも両論併記というか,甲案,乙案というような形ではっきりと対立があるということ,あるいは懸念が示されていることが分かるようにすべきだろうと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○長委員 ただいま前回の認識をお話しになられましたが,私の記憶によれば,裁判所関係者だけではなかったと思います。確かに懸念が示されたということはそのとおりでございますので,その説明が記載されるのは差し支えないと思います。 ○道垣内委員 両論併記には全く私は異論はないのですけれども,両論併記のときに,Bのところから,その他相当でないと認められるというのを削除するというのを,もう一つの案にするというのは問題ではないかと思います。   先ほど,病名までは明らかにする必要はないのではないかと杉井委員がおっしゃったのですが,Bの文章が三つの「とき」ででき上がっている点が重要です。「成年に達しない者の利益を害する」,「私生活,業務の平穏を害するおそれがある」というのは独立ですが,「重大な秘密」については,「より」という言葉によって,「社会生活を営むのに著しい支障を生じ,又は名誉を著しく害するおそれ」に結びついているのです。つまり,「社会生活を営むのに著しい支障を生じ,又は名誉を著しく害するおそれ」というのが要件なんですね。しかるに,「病気であること」を「名誉を害する」と考えるのはかなり問題がある話ですので,この中に読み込めるとは考えてはいけないんだろうと思います。   したがって,その他相当でないという一般条項を置かないで,より明確に非開示の場合を明らかにすべきであるという意見があるということは十分に納得でき,私は両論併記自体には反対ではありませんけれども,このままの形でその他相当でないというのを認められるときというのを削除するのをもう一案にすべきではないと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○金子幹事 その趣旨において両論併記というか,今,道垣内委員からお話があったようなことではどうかなとは今ちょっと思っているのですが,結局その他相当でないというのを全部削除して,ここの今の非常に限定的な場合以外は開示なんだという案と,それからその他相当でないというように受けるという案,その対立構造というよりは,恐らくその他相当でないというのが広過ぎるとか,そういうような御意見もあってしかるべきなんだろうとは思うんですね。   それで,今のような二案のどっちかというようなことをメーンにするような案は,事務当局というのは避けたほうがいいかなという感触を持ちましたが,いかがでしょうか。 ○伊藤部会長 それは確かに両論併記といっても,その両論のもう一つのほうの書き方がなかなか難しいという御指摘はごもっともですが,しかし,補足説明で違う意見があるという程度ではというのも,複数の委員,幹事から御意見が出ましたので,もうちょっと検討していただけますか。 ○長谷部委員 私も,前の議論のときに,その他相当でないと認められるときというのではちょっと広いのではないかと,何か具体的ないい例があったらお探しくださいとお願いしたのを覚えております。この例が説得力がないと言うつもりはないのですけれども,幾つかいろいろな例が出てきて,それではやはり,その他相当でないと認められるときというのを入れておいたほうがよいのだということなのであれば,それは研究者の立場からいっても,それほど異論はないと思うのですけれども,実際そういう例があるのかどうかということについて,ちょっと懸念があるということだったものですから,意見照会のときには,例えばどういう例があるのかを聞いていただくということではいかがでしょうか。 ○道垣内委員 私はどちらの味方でもないのですけれども,例があれば,その例を一般化した文言として「とき」というのを付け加えればいいのではないかということになるのだろうと思うんですね。例が挙がれば,その他相当でないと認められるときというのを残せばよいということにはならないので,やはり両論併記ということ自体は,長谷部さんがおっしゃったような理由ではなくならないのではないかと思います。 ○三木委員 研究者や弁護士の方々の間でもニュアンスが違うのかもしれませんが,私は要するに一般条項を置くのが望ましくないという立場で,要するに当事者が自分の事件についての記録が見られないという場合ですから,それは限定列挙で在るべきだということで,少なくとも限定列挙なのか包括条項が置けるのかという形は,少なくとも分かるように聞いてもらいたい。 ○伊藤部会長 分かりました。   では,そういうことでよろしいですね。趣旨,議論,それぞれの方々のおっしゃる趣旨は,事務当局で十分理解していると思いますので,それを踏まえて,仮に実質的な意味で二つの考え方があり得るということを広く理解していただくために,どういう表現がいいのかについて検討してもらいましょう。   ほかに,記録の閲覧等のところで,何か御意見ございますか。   検察官に対する通知はよろしいですね。特段御意見ございませんか。   それでは,次に事務当局から2,家庭裁判所の手続,24ページのところですが,そこからの説明をお願いします。 ○川尻関係官 2,家庭裁判所の手続,(1)合意管轄については,これまで両論の御意見がありましたので,両論併記にしております。   (2)家事審判事件の申立て,ア,申立ての方式では,民事訴訟法第133条と同様の規律を設けるものとしております。イ,併合申立てでは,一定の要件の下では併合申立てをすることができるものとする甲案と,明文の規律までは設けないものとする乙案を併記しております。ウ,裁判長の申立書審査権では,民事訴訟法137条と同様の規律を設けるものとしております。申立ての変更は,従前の部会資料から変更はございません。   (3)裁判長の手続指揮権から,(5)電話会議システム等までは,これまでこれらの規律が適用となる対象を審問期日としておりましたが,特に審問期日に限定する理由はございませんので,期日一般に適用される規律に修正いたしましたほかは,従前の部会資料から変更はございません。ただし,証人尋問等を電話会議システムを利用して行うことは想定しておりません。   (6)調停をすることができる事項についての家事審判事件の特則,ア,申立書の送付では,原則として申立書を送付するものとすることを提案しております。   イ,必要的審尋では,甲案が必要的に陳述を聴取するものとすることを,乙案が原則として当事者の陳述を聞く審問期日を開くものとすることを提案しております。   ウ,審問への立会いでは,原則として当事者は期日に立会うことができるものとしつつ,注においてその例外の規律につき更に検討するものとしております。   エ,事実の調査の告知は,従前の部会資料から変更はありません。なお,注において,調停をすることができない事項についての家事審判事件における不意打ち防止に関する規律について,これまで御指摘があったことを踏まえて,なお検討することとし,その一例として案を掲げております。   オ,当事者照会制度では,当該制度を導入すべきであるとの御意見と導入に慎重な御意見の両様がございましたので,この点,更に検討することとしております。   カ,審理の終結は,従前の部会資料から変更はございません。   キ,審判日では審判を2か月以内にするものとする甲案と,当事者に審判の予定時期を告知するものとする乙案を併記しております。   (7)裁判のア,審判,(ア)終局審判については,これまで特段の異論はございませんでした。   (イ)中間審判については,第12回部会において中間審判をしても既判力もなく,紛争の早期解決に必ずしも結び付かないといった御意見がございましたが,国際裁判管轄など適法要件に関する問題について争いがあるような場合のほか,前提問題についても中間審判をする意味はあると考えられるとの御意見もあったことを踏まえて,中間審判をすることができるものとすることを提案しております。   (ウ)自由心証主義から,(キ)審判書までについては,これまで特段の異論はございませんでした。   (ク)終局審判の脱漏については,民事訴訟法第258条の規定を踏まえて提案するものであり,これまで特段の異論はございませんでした。本文A及びBの亀甲括弧は,手続費用の負担の裁判について,先ほど御検討いただきましたとおり甲乙両案があることを受けたものでございます。   (ケ)更正裁判の本文Bについては,民事訴訟では更正決定の申立てを不適法として却下した決定に対して通常抗告が許されると一般に解されている−−これは民事訴訟法第328条第1項になりますけれども−−このことと,それから家事事件手続では,即時抗告のみすることができると整理したことを踏まえて,不適法として更正決定の申立てを却下した決定に対しては即時抗告をすることができるものとすることを,部会資料10から新たに提案しております。   (コ)法令違反を理由とする変更の審判については,手続経済や抗告審の負担軽減の観点から,民事訴訟法第256条の規定と同様,家事事件手続においても審判に法令の違反があることを発見したときは,最初の告知の日から一週間以内に限り変更の審判をすることができるとすることを,新たに提案するものでございます。   (サ)終局審判の効力及び(シ)戸籍の記載等の嘱託については,これまで特段の異論はございませんでした。   イ,審判以外の裁判の(ア)審判の準用については,審判以外の裁判について中間判決と審判方式を除き審判の規律を準用するものとすることを提案するものでございますが,審判以外の裁判に対する即時抗告は執行停止の効力を有しないものとしております関係で,ア,(オ)ただし書部分の準用も相当ではないと考えられますことから,アの(イ)及び(カ)に加えて,(オ)ただし書も除外するものとする提案に訂正させていただきたいと存じます。(イ)判事補の権限は,現行法の規律を維持することを提案するものでございます。   (8)裁判の取消し又は変更の,ア,審判の取消し又は変更,本文@については,第12回部会では弊害を危惧する御意見もありましたが,現行の取消し又は変更の制度をなくすことには公益的及び公権的な見地から慎重にすべきであるとの御意見もありましたことを踏まえて,現行の取消し又は変更の制度を維持する方向で提案させていただくものでございます。   本文Bは,当事者及び審判を受けるべき者の利益を考慮し,取消し又は変更をする場合には当事者及び審判を受けるべき者の陳述を聞かなければならないものとすることについて,検討することを提案するものでございます。   イ,審判以外の裁判の取消し又は変更の(ア)家事審判事件の手続の指揮に関する裁判については,これまで特段の異論はございませんでした。(イ)審判の取消し又は変更の準用については,アの審判の取消し又は変更の規律の準用について,その必要性を含めて検討する趣旨で亀甲括弧としております。   (9)取下げによる手続の終結のア,取下げの要件,(ア)終局審判前の申立ての取下げの要件では,甲案が任意に申立てを取下げられるものとすることを,乙案が調停をすることができる事項についての家事審判事件において,相手方が本案について陳述した後にあっては相手方の同意を得なければ取下げの効力は生じないものとすることを提案しております。   (イ)終局審判後確定前の申立ての取下げの要件では,終局審判後は原則として申立てを取下げることができないものとしつつ,その例外として甲案では調停をすることができる事項についての審判事件において相手方の同意がある場合を,乙案では裁判所の許可を得た場合を提案しております。また,注ではそれぞれ民事訴訟法第261条第4項及び第5項と同様の取下げの同意の擬制,並びに第263条後段と同様の取下げの擬制の規律を設けることについて,併せて検討することとしております。   イ,取下げの方式及びウ,取下げの効果は,口頭で取下げを行うことができる場合を期日一般に広げましたほかは,従前の部会資料から変更はございません。   以上です。 ○伊藤部会長 多様な問題,多様な事項が含まれておりますけれども,補足的な説明がただいまありました点を中心に,審議をいただければと思います。   まず,24ページの(1)合意管轄で,甲案,乙案というもので従来の審議内容を踏まえた考え方が提示されておりますが,この辺りはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら(2)家事審判事件の申立てで,アの申立ての方式は特段従来は御意見はなかったかと思いますが,イの併合申立てについての甲案,乙案という両案の併記がございますが,この辺りはいかがでしょう。これでよろしいでしょうか。   そうしましたら,次のウの裁判長の申立書審査権,それから申立ての変更の辺りもよろしいですか。 ○増田幹事 アとウに絡む話なのですけれども,以前のときにDV保護命令,あるいはDV保護措置などで,当事者の住所,連絡先が不明の場合の措置について御検討をお願いしていたんですが,そういう場合,すなわち当事者の責めに帰すべき事由がなくて,相手方の住所,連絡先が分からないというような場合の救済方法として,調査の嘱託だとか家庭裁判所調査官による事実の調査の対象となることを,どこかに明文化していただきたいと思っています。   ここに入れるのか調査のところに入れるのかというのは,ちょっと別なのですけれども,そういうことをどこかで入れることを検討いただきたいと思っています。一般民事と違って,家事では先ほどのような閲覧制限規定がありまして,DV事件というのは恐らくは閲覧制限要件に当たると思うので,家事審判法ではそういった規定を入れやすいと思っておりまして,入れることに支障はないと思っております。 ○金子幹事 前回,増田幹事が同じような御提案をいただいていたのですが,そのときに議論はあったかと思うのですが,相手方当事者の所在の探知というのですか,探すことが裁判所の仕事,あるいは調査官の仕事とすることがどうかということのコンセンサスがあって,それで,ではその場合の規律はどうしようかという話になるものと承知していました。しかし,前段のところが必ずしも議論が十分でなかったと記憶していますので,それで今回は特に取上げておらなかったのですが,もし御意見いただけるのであれば少しこの場でいただいておいたほうがいいかなと思ったのですが。 ○伊藤部会長 はい,分かりました。それでは,その点,内容について,今,増田幹事からの意見がございました点について,いかがでしょうか。 ○古谷幹事 今,御指摘のございました相手方の所在の探知につきまして,それを裁判所が調査する,それを職権調査事項というのか,あるいは探知事項というのかは別として,そう考える法的根拠というのが余りよく分からないというのが一つございます。また,実際問題としまして,それを調査するような調査機関というのを持ち合わせているわけでもございませんので,それはかなり過大な負担を裁判所にかけるものになるのではないかとも思います。 ○増田幹事 前に申し上げましたけれども,いわゆるシェルターなどに嘱託をかけるとか,あるいは裁判所からだったら住民票が出る場合もあるだろうと思いますし,幾つかそういう類型的に考えられる調査をするというだけのことでございまして,特にとことん調査しろというつもりはこちらもございません。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか,ほかの委員,幹事の方。   ある種の事件においてそういう必要があるということも分かりますし,また,他方,裁判所の在り方という点からのそれについての問題の指摘も分かるので,どなたか御意見をお願いします。 ○脇村関係官 増田先生がおっしゃっているのは,調査嘱託とかを所在が分からないときにはしないといけないということですよね。それは一般の調査嘱託の規定とはまた別に置く必要があるということなんですか。 ○増田幹事 ですから,別に置く必要はないのですけれども,それがその調査の対象であるかどうかということが明確でないものですから,それは先ほどの裁判所の役割論とかかわるのかもしれないのですが,何か明文がないと裁判所は動いてくれないというのが実情だということです。   裁判所の役割論との関係ですけれども,少なくとも家事事件については住所が不特定であっても,住所・連絡先が分からなくても,相手方は特定できるわけなのです。民事訴訟の場合は,同姓同名の人もおりますから,当事者として特定できないけれども,家事事件だったら離婚だとか,あるいは面会交流だとか,養育費だとか,そういう話になりますから,これは特定できるわけなのですね。特定できる以上は,それは申立てとしては適法だとして受けて,かつその住所なども調査すべきではないかと。これは現行法の解釈でもそうだと思っているのですが,そうはなかなか調査をしていただけない実情があるものですから,この辺りで何か注意的にでも明文化していただきたいなというのが希望でございます。 ○脇村関係官 まず,住所を書いていなくて特定したケースが適法かどうかというそもそも論については,恐らく今の提案でも多分それを当然前提にしているのではないかと思うのですけれども,そうすると,ここで当事者と書いていますので,特定された上で申立てがあれば,当然それは適法な申立てとして受理をして,あとはどう手続を進めるかだと思うのですけれども,そのときに何か要るんですか。 ○金子幹事 現住所が分からないような場合,民事訴訟であれば公示送達なりして手続を進めてしまうという選択肢があって,私も申立て自体は特定していれば適法だとは思っているのですが,その後は職権進行,職権探知のもとで,その申立てに対してその事案の解決という裁判所の役割を果たす際に,相手方の居場所を発見し,その相手方を手続に関与させるということの役割を裁判所が必ず負っているというところのコンセンサスが得られるかということで考えていまして,私も不適法とは考えてはいなかったのですが,それは職権探知だから住所まで探さなければいないというところとは,すぐにはつながらないような気もしています。もう少し例えば別の方法で探してきて,改めて申立てをしてくださいということもあり得るような気もしますし,ちょっとその辺が現場の御意見等もいただければと思いますし,なおかつ,少しそこは運用の問題ではないかなという感じもしているものですから,適法,不適法の問題であれば別なのですけれども,そこは運用の問題のような感じがしていまして,そのようなところまで,そういうことができるということを明文化する,あるいはそれに向けた意見聴取をパブリックコメントでするということはどうかなとは今でも思っていますが。 ○伊藤部会長 そうしましたら今,運用の話ということが出ましたが,いかがでしょうか。 ○長委員 正に運用の問題であると思います。お互いに協力して進めていかないと,うまくいかないところだと思います。先ほどのように明文をもって裁判所だけの義務というのが適当かどうかにわかに申し上げられませんので,金子幹事も,今後,更に検討したいというお話ですので,その中でどうするのか検討していきたいと思いますけれども,今の段階で少なくとも直ちにそういうものをパブリックコメントの中に入れるということにはならず,やはりもう少し検討させていただくことになると思います。 ○菅野委員 ちょっと勘違いかもしれませんけれども,裁判所に対する中立性ということについてのやはり懸念とか関心というのは,当事者は強いんだということをときどき感じます。特に年々それは強くなっているのだということを感じることがあります。   当事者から,何でこれは分かったんだというようなことを言われることというのがあるんですね。実際に,やっていて。実はそれは郵便局なり何なりが単にいっただけとか,こちらは何も知らないことでもそういうことを言われることもあります。そういうときに,規定上も裁判所がそういうことをするという建前にしてしまうということが,そういう裁判所にとってはある意味で,うちは中立なのですということだけを言わば錦の御旗にして手続を進めているところが非常にございますので,やはり慎重にその場その事件ごとにいろいろ考えていかないといけないのだろうと思うのです。   もし義務規定みたいな形で設けるのだとすると,そういう全体の立場とか仕組みと非常に矛盾してしまうような気がいたしますし,また市民の目から見た場合にどう見られるのだろうかという気も,少し危惧するところでございます。 ○増田幹事 既に問題がかなり顕在化しているものについて,先送りするのはどうかと思います。それと,今の菅野委員の御意見ですけれども,法律で定めて裁判所の権限としてしまえば,それは中立にやっているという,法に定めたとおりやっているということが常に言えるわけだと思いますので,中立が疑われる可能性はないのではないかと考えます。   必ずしも本文に入れていただかなくても,注でも構わないので,何らかの形でとにかくそういう場合の救済規定を置くということを,是非入れていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。なかなか難しい問題ではあると思いますが,御意見の内容はよく分かりましたので検討してもらうことにいたしたいと思いますが,増田幹事の有力な主張と,それに対する疑問という形で審議が進んでいますけれども,ほかの委員,幹事の方でどなたか御意見ございませんか。 ○三木委員 意見ではない,実務に対する確認のための質問ですけれども,実際にそういう規定がない現状で,あるいは今後規定を置かない場合には,そういうことを代理人の方がおっしゃっても,裁判所はそういうことはできないという対応になるのでしょうか。 ○伊藤部会長 どうでしょうか。もし今の三木委員からの質問に関して,裁判所の委員,幹事の方で何かございましたらお願いします。 ○長委員 仮定の質問なので,なかなか答えにくいところですけれども,とにかく協力し合って解明していくということはすると,そのような努力をしていくとは思います。ただ,それがお申し出のような形で条文化されていくべきものなのかどうかというのは,また別問題だと思います。 ○三木委員 そういう現実が分からないと意見の言いようがないものですから伺っているので,おっしゃるように仮定ですけれども,これまでにはそういう申出はなかったということなのか,そういう経験がないということなのかというのが一つと,それから,仮定だから答えにくいというのはおっしゃるとおりですけれども,もしそういうことがあったらやれる可能性がゼロではないということなのかどうかぐらいは答えられるのかどうか,ちょっと教えていただければと思います。 ○長委員 運用でいろいろ工夫の上処理されているところだと思います。今日直ちにここでお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 では,増田幹事の問題提起も,運用の問題ではあるんだけれども,なかなかしかし,そういう形での運用にはなっていないという事実認識が基礎にあるように思いますので,その辺りのことも含めて検討してもらうことにいたしましょう。それでよろしいですね。   あとはこの関係では,電話会議システム,それから6の調停をすることができる事項についての家事審判事件の特則で申立書の送付,それから必要的審尋に関する甲案,乙案,そして審問への立会い,その辺りが先ほど何点か補足的な説明がございましたが,この辺りについてはいかがでしょうか。 ○増田幹事 これは純粋に質問なのですけれども,26ページの必要的審尋に関する乙案のただし書の場合は,具体的にはどんな場合のことを想定されているんでしょうか。 ○伊藤部会長 26ページの乙案のただし書の部分ですね。申立ての目的を達することができない事情の例ですね。 ○川尻関係官 これは前回,ここの部分のただし書が緊急を要する場合にはこの限りでないというような形で提案いたしましたところ,それでは狭過ぎるのではないかというような御意見が多数ございましたので,その点を踏まえて変更したものになります。ですから,緊急を要する場合のほかに,例えば当事者双方に激しい対立があり,会わせること自体危険性が高くて,もう審判の期日を開くことは相当ではないというような言わば極限的な状態にはなるんですけれども,そういったぎりぎりの場合を想定して,このような文言にしております。 ○伊藤部会長 増田幹事,いかがですか。 ○増田幹事 その点について,補足説明のところに書いていただければと思います。 ○伊藤部会長 今,川尻さんが発言されたような内容をということですか。 ○増田幹事 そうですね。そういうことであれば,それは書いていただければと思います。 ○金子幹事 今の文言そのものになるかどうかは別にして,どういうことを想定しているかというようなことを,ある程度盛り込むことを検討したいと思います。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,26ページのエの事実の調査の告知に関して,先ほど注に関しての言及がございましたが,調停をすることができない事項についての審判事件に関して,こういう形でなお検討すると,この辺りよろしいですか。   そうしましたら,当事者照会についても,するかどうかについて,なお検討するということですが,これもこういう形でよろしいでしょうか。 ○古谷幹事 当事者照会を検討することとするということについて異論はないのですけれども,実際は代理人が付くケースが非常に少なく,そういった場合,合理的な理由のない感情に走った照会が頻発されるのではないかというところがございます。裁判所の手続に乗る前の当事者の役割というのは,やはり民事訴訟の場合とかなり違う状況があるのではないかと思うので,基本的には慎重に考えていただきたいという意見でございます。 ○伊藤部会長 補足説明に記載されているようなことの関係ですね。分かりました。   そうしましたら,次にカの審理の終結に関してはよろしいでしょうか。   それに引き続きまして,27ページのキの審判日で,これも意見が分かれているところですので,それを反映して甲案,乙案という形での両論が併記してありますが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 前回力説したので繰り返しませんが,特定日を決めるという案を丙案として是非入れていただきたい。ついでに言いますと,乙案の「審判の予定時期」というのは,調べてみたけれども,他の法律ではどうもそういう例がなさそうなんです。予定時期というのは,多分今月中にやりますとか,そういうことだと思うんですけれども,そういう例がないようなので,むしろ乙案を特定日にかえていただいたほうがいいのかなと思っているのですけれども,それにはこだわりません。丙案として是非入れていただきたいと思います。 ○金子幹事 乙案の注みたいな形でもよろしいですか。乙案の予定時期について,特定の審判日を告知するものとする意見があったということでよろしいでしょうか。ちょっと甲乙丙という並びとは少し。甲案とはちょっと性質を異にするものがあるものですから,乙案の中の一つということが分かる趣旨でよろしいでしょうか。 ○増田幹事 そうですね,乙案の注でも。 ○道垣内委員 増田幹事が力説されたとおっしゃったのですが,その力説の内容について私は完全に理解できていないのかもしれません。つまり,増田幹事がおっしゃったことは,審理終結時点で審判予定日を告知しなければならないということなのか,それとも,審判がなされる日についてあらかじめきちんと教えてほしいというだけなのか。審理の終結時に裁判所が予定日を決めてしまうというのと,ある種の審判をするときの何週間前には必ず審判予定日を言えというのとでは,裁判所の負担が大分違うような気がするのですが,審理終結時点でやらなければいけないのかどうかということについて,若干お教えいただきたいと思います。 ○増田幹事 審理終結時に言うことについて,それほど負担なのかというのがどうも理解に苦しむところです。というのは,訴訟の判決文を書くというのは審判を書くよりもっと難しいはずなのに,終結のときには判決日を告知しているというのが一般的なので,そこは理解に苦しむんですけれども,それはそうとして,少なくともその予定日を事前に何日か前には明らかにするというという趣旨です。 ○道垣内委員 いや,別に私に何も意見もないのですが,そうすると書き方が,そのポイントはどこにあるのか。審理終結という概念自体は問題かもしれませんけれども,告知するといっても,いつ告知するのかという問題があるわけで,審判日までの間にきちんとした猶予を与えてほしいという案として考えるのか,それともかなり早い時期にきちんと教えてほしいという話と考えるのかで,乙案の注記にせよ丙案にせよ,書き方が変わってくるのではないかなと思ったものですから,確認をさせていただいただけです。 ○川尻関係官 ここで御提案しています案は,必ずしも弁論終結時に,そのときに直ちに何日ですとかいつごろですというようなことを告知するということまでは−−もちろんそうしていただいても全く構わないわけなのですけれども,そういったことを条件としているものではございませんで,終結後にお伝えしても構わないと考えております。 ○道垣内委員 それでコンセンサスがあって誤解がないのならば,私には何ら異論はありません。 ○伊藤部会長 そうしましたら,先ほどの審判日については,乙案の注という形で表記させていただくことにいたしましょう。 ○古谷幹事 これは一点確認なのですけれども,審判日の概念については審判書作成日,あるいは審判書を渡せる日とか,その辺りはどのように考えておけばよろしいか,御説明をいただければと思います。 ○川尻関係官 審判日には,ある程度,客観的に明確なものでなければならないと考えておりますので,従前も審判の作成日付を念頭に置いて考えておりました。 ○伊藤部会長 よろしいですか。   そうしましたら,ほぼ予定の時間なのですが,27ページの7,裁判のところで,先ほど何点かの補足的な説明がございまして,それから29ページのイの(ア)のように,ここでの記述を修正する旨の説明があったところもあります。それから29ページの上のほうの,これは更正審判についてのBとか,それからその下の(コ)の辺りに,その規定との関係で考え方を明らかにしたという部分がございますが,7の裁判の中で何か御意見,御質問等ございますでしょうか。 ○山本幹事 自由心証主義のところなのですが,従前の審判手続の全趣旨を手続の全趣旨に修正したということですが,ちょっと先ほど聞き落とした場所なのですが,修正の理由は何なのでしょうか。 ○伊藤部会長 27ページの一番下のところですね。 ○山本幹事 はい。 ○伊藤部会長 「手続の全趣旨」というのがちょっと文言が変わっているという指摘ですが。 ○脇村関係官 趣旨としては,審判手続の全趣旨という点で間違いないですけれども。 ○山本幹事 分かればいいですが,気になるのは,家事調停から家事審判に連続しているときに,この手続の全趣旨と書いた場合に,その調停で行われたことが含まれるというような誤解を招かないといいなと。そういう意味では前の審判手続のほうがはっきりしていたのかなという印象を持ったものですから。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○脇村関係官 確かに,修正してしまっている結果,そう読める可能性もあるので,この辺は今後検討したいと思いますけれども,我々としては少なくとも家事審判と家事調停は完全に別手続だという前提意識の下に作っておりましたので,今後その意識をより強くしていきたいと思います。 ○伊藤部会長 では,ただいまの点はそういう御指摘を踏まえて,誤解のないようにということで,今後の検討作業を進めていきたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。   そういたしましたら,7の裁判の関係まで審議を終えたということでよろしゅうございますか。特に御意見,御質問がなければそういうことで,8以降は次回に回したいと存じます。それでよろしいですね。   それでは,次回の日程について,事務当局からの連絡をお願いします。 ○金子幹事 次回は5月28日金曜日,午後1時30分から,場所はこの場所,法務省第1会議室であります。   予定ですが,今回の部会資料20を終えまして,来週の金曜日発送を予定しております部会資料のほうに入っていただければと思います。次の部会資料というのは,家事審判の各則の部分になります。でき次第お送りしますので,よろしくお願いします。 ○伊藤部会長 では,よろしいですか。   それでは,本日の部会はこれで終了させていただきます。長時間,熱心な御審議をいただきまして,ありがとうございます。また次回,どうぞよろしくお願いいたします。 −了−