法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第21回会議 議事録 第1 日 時  平成22年5月28日(金)  自 午後1時31分                        至 午後5時02分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○伊藤部会長 予定の時刻でございますので,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第21回会議を開会いたします。   御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございます。   早速ですが,配布されている資料につきまして,事務当局からの説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 第21回会議のために配布しました資料は,事務当局で作成した部会資料21−1及び21−2と,杉井委員,栗林委員,増田幹事より御提出いただいた「子どもの代理人制度(仮称)の必要性に関する報告」と題する冊子になります。部会資料21−1及び21−2につきましては,この後,御説明いたします。 ○伊藤部会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。   前回は,部会資料20の第2の2,(7)裁判まで終わりましたので,本日は(8)裁判の取消し又は変更から審議を行いたいと思います。   そこで,事務当局から,裁判の取消し又は変更から,第3の審判前の保全処分に関する手続までの説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 それでは,説明いたします。   (8)裁判の取消し又は変更のア,審判の取消し又は変更の本文@については,第12回部会では弊害を危惧する御意見もありましたが,現行の取消し又は変更の制度をなくすことには,公益的及び公権的な見地から慎重にすべきであるとの御意見もありましたことを踏まえて,現行の取消し又は変更の制度を維持する方向で提案させていただくものでございます。   本文Bは,当事者及び審判を受けるべき者の利益を考慮し,取消し又は変更をする場合には,当事者及び審判を受けるべき者の陳述を聞かなければならないものとすることについて検討することを提案するものでございます。   イ,審判以外の裁判の取消し又は変更の(ア)家事審判事件の手続の指揮に関する裁判については,これまで特段の異論はございませんでした。   (イ)審判の取消し又は変更の準用については,アの審判の取消し又は変更の規律の準用について,その必要性を含めて検討する趣旨で亀甲括弧としております。   (9)取下げによる手続の終結,ア,取下げの要件,(ア)終局審判前の申立ての取下げの要件では,甲案が任意に申立てを取り下げられるものとすることを,乙案が,調停をすることができる事項についての家事審判事件において,相手方が本案について陳述した後にあっては,相手方の同意を得なければ取下げの効力は生じないものとすることを提案しております。   (イ)終局審判後確定前の申立ての取下げの要件では,終局審判後は原則として申立てを取り下げることができないものとしつつ,その例外として,甲案では,調停をすることができる事項についての審判事件において,相手方の同意がある場合を,乙案では,裁判所の許可を得た場合を提案しております。   また,(注)では,それぞれ民事訴訟法第261条第4項及び第5項と同様の取下げの同意の擬制並びに第263条後段と同様の取下げの擬制の規律を設けることについて,併せて検討することとしております。   イ,取下げの方式及びウ,取下げの効果は,口頭で取下げを行うことができる場合を期日一般に広げましたほかは,従前の部会資料から変更はございません。   3,不服申立て等の(1)審判に対する不服申立てのア,不服申立ての対象については,これまで特段の御異論はございませんでした。   イ,抗告審の手続について,性質に反しない限り民事訴訟法と同様の規律を置くものとすることを提案しております。   なお,不利益変更禁止の原則及び附帯抗告の制度については,第12回部会において,不利益変更禁止の原則を適用しないということの意味に関して御議論がございましたが,不利益変更禁止の原則を適用しないこと及び附帯抗告の制度は設けないことについては,特段の御異論はございませんでしたので,ここでは,不利益変更禁止の原則と,それと関連する附帯抗告については,規律を置かない方向で整理しております。   御意見の一致がなかった点又は新たに提案をしている点は,(カ),(キ)及び(チ)でございます。   (カ)抗告があったことの通知のa,調停をすることができない事項についての家事審判事件については,第12回部会での御議論を踏まえて,甲案及び乙案の両案を提案するものでございます。   なお,甲案の原審の審判を取り消す場合の表現に関しては,前回の部会で表現振りを検討してほしいとの御意見がありましたことを踏まえて,より適切な表現とすることが可能か検討したいと考えております。また,抗告があったことの通知を抗告状の送付により行うと限定することについては,(注)でなお検討するものとしております。   b,調停をすることができる事項についての家事審判事件については,第12回部会での御意見等を踏まえて,抗告が不適法又は理由がないことが明らかである場合を除き,抗告状の写しを遅滞なく当事者及び参加人に送付することを原則とするものとして提案しております。   (キ)必要的審尋のa,調停をすることができない事項についての家事審判事件については,原審の審判を取り消す場合にのみ必要的審尋の規律を置くことに関しては,第12回部会においても特段の御異論はございませんでした。   なお,「原審の審判を取り消す場合」との表現については,(カ)のaと同様に,更に検討することとしたいと考えております。また,必要的審尋の対象については,当事者として参加した者や審判を受ける者についても,陳述聴取の機会を与える必要があると考えられることから,これらのものにも必要的審尋の対象を広げて提案しております。   b,調停をすることができる事項についての家事審判事件については,第12回部会において,第一審と抗告審とが同じ手続構造である以上,第一審と同様の規律とすべきであるとの御意見や,抗告審では迅速性の要請が強い事件が多いため,第一審の規律と同様とすると迅速性の要請に反することになるとの御意見があったことを踏まえ,甲案及び乙案の両案を提案しております。   また,当事者の陳述聴取の手段として,審問期日によるべきことに限定するか否かについては,なお検討するものとしております。   (チ)原審の管轄違いを理由とする移送については,第12回部会で,抗告審において管轄違いを問題とする余地を残すのが相当ではないかとの御意見があったことを踏まえて,民事訴訟法第309条と同様の規律を置くものとすることを提案しております。   なお,補足説明では分かりにくいところがございましたが,この規律の対象としては,管轄があると思って第一審として終局判断をしたところ,実際には管轄がなかったという場合のみを前提に考えております。自庁処理をした場合には,自庁処理をした裁判所に管轄が発生し,管轄違いを問題とする余地はなくなると解されますので,ここには含まれないことになります。また,管轄違いと判断したときに,第一審の審判の取消しを必要的なものとするか否かについては,家事審判の迅速性の要請等を踏まえて,なお検討することとしております。   ウ,即時抗告の(ア)即時抗告については,これまで特段の御異論はございませんでした。   (イ)家庭裁判所による更正については,第12回部会での御議論を踏まえて,現在,解釈上認められるとされる再度の考案の制度をすべての家事審判事件において維持するものとする甲案と,調停をすることができない事項についての家事審判事件においてのみ維持するものとする乙案とを提案するものでございます。   エ,特別抗告及びオ,許可抗告については,これまで特段の御異論はございませんでした。   (2)審判以外の裁判に対する不服申立てについては,審判と審判以外の裁判とを区別して規律することとしたものでございます。   このうち,ア,不服申立ての対象及びイ,即時抗告期間については,いずれも部会資料10から実質的な変更はなく,これまで特段の御異論はございませんでした。   ウ,即時抗告に伴う執行停止については,審判以外の裁判に対する即時抗告は,執行停止の効力を有しないことを明確にする趣旨で提案するものでございます。   エ,抗告審の手続,即時抗告,特別抗告及び許可抗告の規律の準用については,審判以外の裁判に関する抗告審の手続等について,3(1)イ,ウ(イ),エ及びオの審判の規律を準用するものとすることを提案しておりますが,非訟事件手続に関し,前回の部会で御指摘いただいたのと同様に,(1)のイの(カ)の抗告があったことの通知や,イの(キ)の必要的審尋については,審判以外の裁判に対する不服申立ての手続としては相当ではないと考えられますので,これらの規律は準用から除く方向で考えたいと思います。   4,再審の(1)審判に対する再審については,これまで規律内容については特段の御異論はございませんでした。基本的には民事訴訟法の再審の規定に準ずる規律をしておりますが,クのAについては,再審開始の裁判により影響を受ける可能性のある再審開始の対象となる審判の当事者及び裁判を受ける者を審尋の対象とすることとしております。   また,アの@のjにつきましては,前回の部会で頂きました御指摘や御意見を踏まえて,訴訟の場合とは異なる裁判の抵触であることを表す表現振りを検討してまいりたいと考えております。   (2)審判以外の裁判に対する再審では,審判以外の事件を完結する裁判に対して再審を認めるものとすることを提案しております。   第3,審判前の保全処分に関する手続の1,通則,(1)担保では,民事保全法第4条を準用する家事審判法第15条の3第7項の規律を維持するものとすることを提案しております。   (2)記録の閲覧では,第2の1(6)が適用されることを前提として,民事保全法第5条を参考に,裁判所が密行性がないと判断し,審判を受ける者に対して呼出しや書面照会等を送付するなど,保全処分事件が係属したことを通知するまで又は保全処分の審判を告知するまでは,当事者から請求があっても,裁判所はその裁量により,記録の閲覧を許可するかどうかを判断することができるものとすることを提案しております。   2,保全処分の(1)管轄及び保全処分の要件では,両用の御意見が出されましたので,両論を併記しております。   (2)審理手続では,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   なお,ウ,審判の(ウ)審判の効力及び執行の@では,「審判を受ける者に告知する」を誤って「審判を受ける者又は申立人に告知する」と記載しておりますので,ここにつきましては,「審判を受ける者に告知する」に改めさせていただければと存じます。   (3)即時抗告では,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   なお,イの即時抗告に伴う執行停止では,その要件について,民事保全に比して,家事審判の執行停止の要件を緩和する合理的な理由があるとは思えないことから,現行,家事審判規則からその表現を改めております。   3,保全処分の取消しでは,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,大変多岐にわたる問題が含まれておりますけれども,しかし大体,従前,御異論がなかったものについてはその方向で整理し,また,考え方の違いがあるものについては,それぞれの考え方を併記ないしなお検討する必要がある問題については注でその旨を掲げるというようなことになっておりますので,順次御確認の上で必要な審議をしていただきたいと存じます。   まず,資料29ページの一番下の辺りの(8)裁判の取消し又は変更でございますけれども,先ほど川尻さんからの補足の説明がございましたように,今,こういう制度を維持するということで@の辺りは書かれております。それから,Bについてはなお検討するということで,現在の段階では必ずしも方向を定めてはいないということでしょうか。取りあえず,(8)の裁判の取消し又は変更のアの審判の取消し又は変更,それからイ,(8)全体に関して,何か御意見,御質問があればお願いいたします。 ○増田幹事 非訟のときにも申し上げましたけれども,裁判所が自らした審判を取り消すというのは,非常に違和感のある規定です。さらに,家事固有の問題について考えれば,非訟はいろいろな手続が今後も新たに創設される可能性があるし,今ある非訟手続ですら様々な種類のものが予定されているのに対して,家事審判は,少なくとも対象となる事項が限定されており,こういう規定が必要な場面というのは非常に限定されていると思いますので,一度個別にチェックしていただいて,必要なものにだけこういった規定を入れたほうがよいのではないかと思っております。 ○伊藤部会長 それでは,今の増田幹事からの御発言に関して,何か事務当局で説明がございますか。 ○松田関係官 非訟事件手続法の現行の19条をどう考えるかということだと思うのですけれども,19条が適用される場面というのは,基本的に,裁判をした当時,そもそも不当だったことについて,事後的に取消し,変更を行うという場面が大部分だとは思うのです。ただ,非訟の後見的,公益的な見地から,裁判をした後の事情変更によって不当になったという場合も,非訟法19条の対象になるという考え方もあるところでございまして,実際,そういう考え方で適用されている場面もあると認識しております。増田幹事から御指摘がありましたように,家事審判に関しましては,事後的な事情変更によって取消しができるということは,個別の規定で置いているものも多くございますけれども,それ以外,個別の規定を置いていないものについて,すべて拾い切ることができるかどうかというところもございますので,こういった一般的な規定も置いておく必要はあるのではないかと,事務当局としては考えているところでございます。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。こういうものが現実に発動されるということは,おっしゃるようにそうはないし,また余り好ましくないのかもしれませんが,場合によっては必要になる場面が個別にはあり,かつそれを,今説明がございましたように,全部個別に書くということが果たしてどうかということ,それもこの場でもそういう御意見があったように思いますので,中間の取りまとめとしては,一応こういうふうに書かせていただいて,また議論をするということでいかがでしょうか。 ○三木委員 記憶が定かではないので違っているかもしれませんけれども,確か議論の中で,再審との比較等においても,期間制限を置いたらどうかという議論があったかのように記憶しております。仮になかったとした場合にはこの場で提案しますけれども,やはり無制限にというのがやや気になりますので,パブリックコメントを出す中にも,再審とのバランスにおいても,一定の期間制限を置くかどうかについて,なお検討するとかというようなものを設けてはどうかというのが手を挙げた趣旨です。 ○金子幹事 そこは検討させていただきます。再審の場合は,基となる裁判自体に問題があったという場面で期間制限があると思うのですけれども,ここで,事情変更の場合も取り消すということを考えますと,いつまでの事情変更を取消しの対象とすることを検討することになるという意味で,少し事情を異にする面があると思うのです。それでも,原裁判後,事情変更が生ずるとしても,余り先のものは法的安定性の観点から相当ではないとも思われますので,少し検討させていただきたいと思います。   もともと事情変更が予定されているようなものは,裁判の性質上,事情変更によって基礎となる事情が変わった場合には,裁判内容も変わってしかるべきであるという性格のものについては,基本的には新たな申立てができるように個別に手当てができているとは思うのですが,もう一度,その点も含めて検討してみたいと思います。 ○三木委員 今,金子幹事がおっしゃった事情変更のこと,私ももちろん考慮した上で申し上げております。   二つありまして,一つは,原裁判に何かしら問題があった場合と事情変更を同じ条文で規定して,かつ,いろいろな期間制限とかの処理を後者の事情変更にすべて引き寄せて一括処理するというのがいいかどうかという問題は,一方であろうかと思います。   他方で,そうではないとしても,事情変更といっても,原裁判からかなり時間がたった場合には別途新たな裁判をするとか,事情変更で処理するというのが,そもそも期間経過とともに不適切になっていくのだろうと思います。   ですから,事情変更といっても,では未来無制限かと,そういうことではないということも含めた上での発言です。 ○伊藤部会長 分かりました。先ほどの増田幹事の発言の趣旨とも関連するかと思いますので,金子幹事から発言がございましたように,検討させていただくことにいたしましょう。   Bの,取消し,変更する場合には当事者及び審判を受ける者の陳述を聴かなければいけないものとすることについて,なお検討すると書いてございますが,この点に関して何か御発言はございますか。   それでは,こういうことにさせていただいて,(8)の取消し,変更の関係はよろしいでしょうか。   よろしければ,(9)取下げによる手続の終結,これも先ほど川尻さんから説明がございましたように,アの終局審判前の取下げと,イの終局審判後確定前の取下げと分けて,またそれぞれについて,ここで出された御意見を踏まえて複数の考え方が提示され,かつ,31ページの(注1),(注2)のところで検討すべき問題の指摘がございますが,こういった辺りに関して何か御発言はございますか。 ○山本幹事 (イ)の終局審判後確定前の取下げのところですけれども,現在,甲案,乙案と分かれているのですが,もう少しその間にも選択肢があり得るのではないかということでの発言をさせていただきたいのですが,私はどちらかというと甲案の,特に調停することができる事項については相手方の同意がある場合ということで,よいのではないかと思っておるのですが,補足説明を見ますと,甲案についての批判として,調停をすることができない事項については,これでは取り下げることができなくなるということを危惧する御意見があるということがございました。もしそうであるとすれば,調停ができない事項については,乙案的な,裁判所の許可を得て取り下げるという処理をするというようなことでもよろしいのかなと私自身は思っておりまして,そういう意味では,乙案の本文と甲案のただし書を組み合わせたような選択肢というのも,論理的にはあり得るような気がいたします。   ということですので,そういうこともあるということが分かるような形でパブコメにしていただければ有り難いと思っております。 ○伊藤部会長 この点はいかがでしょうか。 ○川尻関係官 確かに今御指摘がありましたような規律の仕方も可能と考えられますので,何らかの形で,そのような考え方もあるということを示したいと思っております。 ○伊藤部会長 それが,案を併記するのか注になるのか,どういう形になるのかは検討させていただきたいと思いますが,御指摘の点,今,川尻さんから発言があったような形での検討をさせていただければと存じます。   ほかにございますか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,31ページの3の不服申立て等で,(1)の審判に対する不服申立ての関係で,まず,先ほどの説明で不利益変更禁止の原則や附帯抗告に関する規律については,それを設けないという形で整理したという点ですとか,32ページの(カ)の抗告があったことの通知,これもaとbと両方ございますが,aのほうについては,甲案,乙案という形での考え方の併記がございます。まず32ページの(カ)の辺りのところまでで,何か御発言はございますか。 ○鈴木委員 (カ)のところでございますが,この案ですと,aの調停をすることができない事項については甲案,乙案とあって,調停をすることができる事項についての家事審判事件では一つの案だけを提示しているということですが,以前にもお話ししましたけれども,現状の家事抗告では,婚姻費用分担と養育費支払というのが多数を占めておりまして,この種の事件というのは,金額的には大きくないのでございます。月々5,000円ぐらいの差について争っている事件も多いのです。   ただ,正に生活に直結するものですから,迅速さというのがかなり切実な問題でございます。多数の事件についてそういう状況にございまして,一方で,先ほど事情変更という話がありましたけれども,この種事件というのは,事情が変わればまた新たな申立てで金額を変更することが可能という意味で,ある意味では暫定的な判断ということもございます。この種事件につきまして,原則的に相手方に通知をする,あるいは抗告状の写しを送ると。そうしますと,どうしてもある程度反応を待つことになる。さらに,それに対して反論が出てきた場合に,原審維持,つまり反論に沿った線で結論を出すとなると,それでは抗告人のほうに再反論の機会を与えなければいけないのではないか。あるいはイニシアチブをとっている抗告人に,ラストワードというのでしょうか,最後の意見を述べる機会を与えなければいけないとなりますと,結局,反論,再反論ということまでやって,月単位で処理が延びてしまいます。   その面で,bの案でももちろん例外処理というのがあるのですけれども,先ほど言いましたように,実態としてはかなりの割合を占めておりますこの事件について,しかも原審維持が,この前の議論ですと8割ぐらいというお話があったと思うのですけれども,そういう状況で,例外処理に期待する,それは例外でやればいいのではないかというのは,現場としては若干抵抗感があるのではないかという気がいたしますので,bについても,案として,甲案的なものを一つの案として出していただければという気がいたします。 ○伊藤部会長 ただいま鈴木委員から,bについて,aの甲案と同様に,取り消す場合にはということですけれども,そうではない場合には必要ないのではないかという考え方も掲げてはどうかという御発言がございました。これについてはいかがでしょうか。あるいは事務当局から何か発言があれば。 ○松田関係官 確認させていただきたいのですが,抗告審のほうではほとんど棄却ということでよろしいですか。 ○鈴木委員 私の経験ですと,数の上では抗告棄却で終わるのが圧倒的に多い。この前議論したときに,どなたかから,婚姻費用とか養育費に限定したことではなかったと思いますけれども,家事抗告の結論が,8割方は抗告棄却で終わっているとの御紹介があったと思います。ただ,その8割という中にも,相手方の意見を聞いた上で原審維持というのはありますので,8割が何も聞かないで終わっているということではないと思います。   残念ながらきっちりした統計がないものですから,数字に基づいて議論はできないのですが,ただ言えますのは,最近の家事抗告でこの種の事件がかなりの割合を占めているということです。先日,新聞報道でも,養育費の事件が増えているというのが出ておりました。私は記事で読んだだけで,今,家事抗告を担当しておりませんので,正に今の状況というのは,必ずしも知っているわけではありませんけれども,相当の割合をそれが占めているというのは間違いないところだと思います。 ○松田関係官 そうしますと,被抗告人に全く何も知らせないで棄却するものもあるということだと思うのですが,それらがすべてを,(カ)bの「抗告に理由がないことが明らかな場合」に当たるとは考えにくいというのが実態ということでしょうか。 ○鈴木委員 それがかなりを占めてくるというのは,明文上の原則はこっちだと言われてしまうと,かなり抵抗感があるのではないかなというところです。実際に大多数の裁判官がそう思うかどうかというのは自信がありませんし,この規定はそういう趣旨だと言っていただければ,それはそれでいいということになるということかもしれません。 ○増田幹事 不利益変更の禁止原則とか附帯抗告が入らないということであれば,抗告をしていない者に対して利益な変更がなされる可能性もあるわけです。そういうことになりますと,どうしても甲案というのはリンクしない。bに甲案的なものを入れますと,それにはリンクしないのではないかと思います。利益変更になる可能性があるのですから,抗告をしない者についても常に何らかの主張立証の機会を与えるべきであろうかと思います。それは後の(キ)のところにもつながってくる問題です。 ○伊藤部会長 今の段階でどちらかに決めるということではなくて,パブリックコメントでどういう聞き方をするかということですから,鈴木委員の御発言のような考え方を,最終的にこの部会でどうなるかは別にして,掲げるということはあり得ることだと思いますが,ほかの委員,幹事の方,増田幹事は消極のようでございますけれども,御発言はございますか。 ○金子幹事 パブリックコメントにする前提として,抗告審の構造にかかわる問題なので,この場でお聞きしておいたほうがいいかなと思いまして,発言させていただきます。調停をすることができる事項についての審判について,抗告審での終結概念の問題というのもあろうかと思いまして,通知がないままに終結というのがちょっとどうなのか。そうすると,そういう場合は終結概念というのを外してしまうのかという問題もあろうかと思います。   それから,先ほど既払いの発生等の問題が出ていたと思うのですが,既払いは抗告審で判断すべきことではないかと素朴に思っていたのですが,それをやっていると実務では回らないということなのか,その辺りもお伺いできればと思います。 ○鈴木委員 既払いと申しますと,例えば養育費を既にこれだけ払っていると。それをどこまで見るかという話がありまして,むしろ抗告審が長くかかればかかるほど,また払ったよ,また払ったよという話も出てくるのですが,そういう問題ですか,今おっしゃったのは。 ○金子幹事 一審で命じられた内容か,そのとおりかどうかはともかくとして,その間,任意で払うということがあるかと思うのです。一応,続審であることを考えると,終結概念を入れて,そこまでの既払いというのを二審の決定に反映させるというのが本来の筋ではないかと思っていたので,相手方に通知して,この程度は既に払っていますというような主張を待って,その上で二審としての判断を下すと。いつまでかということについては,終結概念を入れることによってカバーするというふうに,訴訟的に考えていたのですが,それでは実務的に立ち行かないということであれば,考えなければいけないと思います。 ○鈴木委員 今までは終結概念ということがありませんし,また,既判力という問題も考えないものですから,月々支払われるべき性格のものに,そのために時間を掛けるよりは,もし既払いがあれば後で調整してくださいということで,判断時の資料で処理するというのが一般的だろうと思います。時間が延びますと,かえってその問題が,既払い額が増えるということがありますし,また逆に,請求しているほうから見ますと,むしろ今まで払ってくれていたのに,こうなってから従前の額も払ってくれないと,早く払ってくれというような,要するに裁判所の結論が出ないから払ってくれなくなってしまったというのもございまして,ともかく早く結論を欲しいというふうに言ってくるケースも結構あるのでございます。   既払いの関係で言いますと,従前の扱いとしては,既判力の問題が生じないから,ともかく早く結論を出すのが先決だという考えで処理していると思います。 ○伊藤部会長 それでは,鈴木委員の御発言の趣旨,先ほど松田さんからの説明もございましたが,bの中でも抗告に理由がないことが明らかであるとか,ただし書であるとか,そういうことで対処できないわけでもないようですが,しかし鈴木委員のおっしゃる御趣旨も分かりますので,事務当局でもう少し検討してもらいましょう。   それから,(キ)の必要的審尋,これも甲案,乙案の考え方が併記されているところでございますが,この辺りについては何か御発言ございますか。 ○増田幹事 すみません。その前に,(カ)のbについて,別の話です。ただし書についてですが,今,ただし書の御趣旨を御説明いただきましたが,これは第一審の場合には,家事審判事件が円満な解決を志向する手続であるということを配慮して入れているものだというふうに理解していたのですが,抗告審になってまでこんなことを入れる必要があるのかどうかというのは,今一度御検討いただければと思います。 ○脇村関係官 増田幹事がおっしゃるように,いったん話合いもできず審判が出てまでという御趣旨だと思うのですけれども,我々としては,審判が出た後でも,高裁において話合いをする余地もあると考えており,なお円満な可能性はあるのではないかと思って検討していたところでございますので,幹事の御趣旨も踏まえてもう一度検討させていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 それでは,そうさせていただきます。   必要的審尋の,特にbの調停をすることができる事項についての甲乙両案の併記の辺りは,これでよろしいでしょうか。   特に御意見がなければ,(ク)以下のところで,先ほど補足的説明がございましたのは,34ページの(チ)原審の管轄違いを理由とする移送に関して,自庁処理との関係での補足的な説明がございましたが,その辺りに関してはいかがですか。何か御意見等ございますか。 ○山本幹事 先ほどの川尻さんの説明の確認なのですが,原審では自庁処理がされたということが明示されなくて,管轄違いの裁判所が判断をしているという場合には,黙示に自庁処理がされたのではないかというようなことは考えずに,基本的にはそれは管轄違いとして扱うという理解でよろしいでしょうか。 ○松田関係官 現在は,特に明示的に自庁処理決定をせずに自庁処理をしている運用もあるのではないかと思いますので,そうしますと,現状では,必ずしも明示的な決定がない,イコール自庁処理と認識せずにやっていたということではないと思います。 ○山本幹事 それがどうやって抗告審で分かるのかなという,皆さん御疑問なのではないかと思いますが。 ○金子幹事 移送と自庁処理が裏腹だという御説明を今までしてきています。移送するということと自庁処理をしないということ,自庁処理をするということは移送しないということで,裏腹という説明をさせていただいていますので,その実が担保されないといけないと思いますので,その辺は,あるいは実務の工夫の問題なのかもしれませんが,少し検討させていただければと思います。 ○伊藤部会長 そういうことでよろしいでしょうか。いつもここは何となくすっきりしないところで,かといって,(チ)で書いてあるような趣旨を,先ほどの説明のようなことで理解するとすれば,やはりその辺りはもうちょっと整理をしなければいけないと思いますので,今,金子さんから発言がございましたので,もうちょっと検討してもらいましょう。 ○三木委員 今のパブリックコメントにどうかけるかという点については,その扱いで結構かと思います。   その後,将来の話,パブリックコメント後にこの部会が再開された後の話ですが,そのときに,今やり取りされた議論,すなわち,そもそも黙示の,今までの実務はともかくとして,今後,こうやって規定が整備された後に,黙示の自庁処理決定というものが,そもそも認められるのかどうかということ自体をきちんと明示的に議論する機会を設けていただきたい。私が覚えていたら提案しますけれども,恐らく忘れていますので,それを事務局にお願いしたい。 ○伊藤部会長 分かりました。先ほど金子さんからも発言がございましたように,自庁処理の概念というのを整理してということは必要になると思いますので,是非またその段階での審議をお願いしたいと思います。   ほかにはいかがでしょうか。即時抗告のほうへいってよろしいですか。ウの即時抗告ですと,先ほど補足的な説明がございましたのは,35ページの(イ)の,いわゆる再度の考案で甲案,乙案という二つの考え方が提示されておりますが,この辺りに関して何か御発言はございますか。 ○増田幹事 ここは民訴法第333条参照となっておりますけれども,家事審判では終局裁判に対する再度の考案ということになっており,民訴法とは適用場面が異なると思いますので,そこのところを補足説明で結構ですので,明示しておいていただければと思います。 ○金子幹事 何らかの形で分かるようにしたいと思います。 ○伊藤部会長 それでは,そのようにさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。   そういたしましたら,エの特別抗告,それからオの許可抗告の辺りも含めまして,何か御質問,御意見等ございますか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,38ページの4の再審でございますが,先ほどの川尻さんの説明では,再審事由のところですね,39ページのjの審判の抵触という表現についての検討の必要があるという補足がございましたが,再審全体に関して,どの点でも結構ですが,御意見はございますでしょうか。 ○田(昌)委員 再審のところではなくて,ちょっと戻ってしまいますが,38ページの(2)のアの(イ)の裁判所書記官の処分に対する不服申立てのところで1点確認したいことがあります。裁判所書記官の所属する裁判所が書記官の処分に対する異議申立てについて裁判をした場合に,Aで,その裁判に対しては即時抗告をすることができると書いてありますが,民事訴訟法ですと,こういう場合は個別に即時抗告ができる旨規定しているのではないかと思いますので,ここでも,(ア)の原則ではないですが,特別の定めがある場合に即時抗告ができるというように扱うべきなのではないでしょうか。 ○脇村関係官 民事訴訟においては,原則として通常抗告ができることを前提に,即時抗告について特別な定めがあるというふうになっていると理解しておりますが,ここでこのような形にしておりますのは,今回,非訟事件手続,家事事件手続全般について通常抗告をすべて廃止し,即時抗告に変えるという前提に立って作っているからです。 ○田(昌)委員 了解いたしました。 ○伊藤部会長 そうしましたら,再審まではよろしいでしょうか。   よろしければ,41ページの第3,審判前の保全処分に関する手続(総則)というところですが,先ほどの説明は,42ページの(1)管轄及び保全処分の要件の甲案,乙案という考え方の併記の辺りでしょうか。文言の修正は43ページのところにございましたが,内容的にはそのようなところでしょうか。何か保全処分の関係での御発言はございますか。 ○増田幹事 保全処分の(1)のところで,乙案を採る場合には,審判申立て命令というのか,起訴命令に相当する制度は置くということを前提にするということだと思うのですが,その辺はどこかで明確にされるのでしょうか。 ○脇村関係官 御指摘のとおり,いずれにしても本案の申立てはしていただかないといけませんので,そのような形になるとは思うのですが,具体的にどのような仕組みにするのかについてまで,まだ煮詰まっておりませんので,今回,中間試案では,そういったものが必要だということはどこかに明記させていただきますが,具体的な提案とまではいかないのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 増田幹事,よろしいですか。その点の指摘はするということですが。 ○増田幹事 はい。   それともう一つですけれども,仮差押え,仮処分はともかくとして,財産の管理者の選任の保全処分についてですが,私は一般論としては乙案を言っていたのですが,ここまで射程には入れていませんでした。財産の管理者の選任は,甲案のほうが望ましいのではないかと思っているのですが,いかがでしょうか。 ○脇村関係官 増田幹事のおっしゃっているとおりとは思うのですけれども,現時点において,うまく切り分けるだけの案も持ち合わせがないものですから,その点も補足説明で書きつつ,御意見をいただいた上で,更に詳細を詰めていけばと考えていたものです。 ○伊藤部会長 それでは,補足説明で何らかの形でその点は触れることがあり得べしということで,最終的にはいずれかの考え方によるかが決まった時点で,その内容についても,より立ち入って検討するということにさせていただきましょう。   ほかに,保全処分の関係で御発言はございますか。   もしよろしければ先に進みたいと思いますが,次に部会資料21の家事審判手続に関する中間とりまとめのためのたたき台(2)についての議論をお願いしたいと思います。   まず,事務当局から,第4,家事審判及び審判前の保全処分に関する手続(各則)の1の成年後見に関する審判事件から,3の補助に関する審判事件までの説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,説明させていただきます。   まず,部会資料21全体でございますが,これまで部会資料11,12,13では,関連する事件がありましても,それぞれの事件ごとに管轄等を記載しておりましたが,本資料では,関連する事件はできるだけ一括して書くという方針の下でまとめさせていただいているところでございます。   まず初めに,1の成年後見に関する審判事件の(1)管轄でございますが,ここでは,後見開始時の家事審判事件については,現行家事審判規則第22条の規律を維持し,その余の事件については,原則として,後見開始等の審判をした家庭裁判所に管轄があるということを提案させていただいております。この点につきましては,これまで特段の御異論はございませんでした。   (2)手続行為能力では,民法上制限行為能力者であっても,家事審判事件の申立てを行うことが予定されている者については,意思能力がある限り手続行為能力を有するものとするということを提案しております。   (3)精神状況に関する意見聴取等では,甲案と乙案で意見が分かれておりますので,両論併記にしております。   (4)陳述聴取等では,陳述聴取の対象者を提案しており,これまで特段の御異論はありませんでした。   (5)審判の告知のア,成年被後見人に対する告知〔通知〕では,後見開始の審判を成年被後見人に知らせることについて,甲案と乙案を支持する意見が出されたことから,両論併記としております。   成年被後見人に知らせることをどのように表現するのかについては,これまでの部会資料では,「通知」ということで表現しておりましたが,ここでは,御異論もございましたので,「告知」とさせていただいております。また,成年後見人等の選任及び解任については,なお検討することとしております。   イの審判を受ける者以外の者に対する告知については,部会資料11から変更はなく,特段の御異論はございませんでした。   (6)の即時抗告については,成年後見開始の審判事件において,成年被後見人の即時抗告期間の起算点を,成年後見人に選任される者に対する告知があった日とすることをより明確にしたほかは,部会資料11から特に変更はございません。   (7)の成年後見に関する審判事件における申立ての取下げ制限においては,成年後見開始の審判事件及び成年後見人が欠けた場合の成年後見人選任の審判事件について,いずれも御意見が分かれておりましたので,両論併記することとしております。   (8)の成年後見人等に対する指示及び成年後見の調査については,現行法の規律を維持するものとするということを提案しております。   (9)の審判前の保全処分のアの成年後見開始の審判事件を本案とする保全処分については,部会資料13から原則として変更はございません。ただし,後見命令の審判の告知については,成年後見開始の審判の告知と同様の規律になると存じますので,その点,明記しております。   成年後見人又は成年後見監督人の解任の審判事件を本案とする保全処分についても,部会資料13から原則として変更はございません。ただし,審判の告知及び効力発生時期については,部会でも御議論がありましたので,なお検討することとしております。   次に,2の保佐に関する審判事件ですが,(1)管轄,(2)手続行為能力及び(3)精神状況に関する意見聴取等については,成年後見に関する審判事件と同様の理由から,同様の提案を行っているところでございます。   (4)の陳述聴取等については,部会資料11から変更はなく,特段の御異論はございませんでした。   (5)の審判の告知については,保佐人等の選任及び解任の審判を被保佐人に告知すべきか否かを除き,部会資料11から変更はなく,特段の御異論はございませんでした。保佐人等の選任及び解任については,なお検討することとしております。   (6)即時抗告については,保佐人の同意を得なければならない行為の定めの審判の申立てを却下する審判及び保佐人の同意に代わる許可の申立てを却下する審判を除き,部会資料11から変更はございません。   部会資料11では,保佐人の同意を得なければならない行為の定めの審判の申立てを却下する審判に対して,即時抗告を認めることを提案しておりましたが,申立てを却下する審判は,被保佐人の行為能力を制限するものではないことなどを踏まえて,即時抗告を認めないものとすることに変更しております。   また,部会資料11では,保佐人の同意に代わる許可の審判について即時抗告を認めておりませんでしたが,被保佐人の意思の尊重の観点からは,保佐人の同意に代わる許可の申立てを却下する審判についても,なお検討する必要があるのではないかと考え,そのような形にさせていただいております。   (7)の保佐に関する審判事件における申立ての取下げ制限及び(8)の保佐人等に対する指示及び保佐の調査については,成年後見人と同様でございます。   (9)の審判前の保全処分については,保全命令の審判の告知及び効力発生時期を除くほかは,成年後見と同様でございます。保全命令の審判の告知及び効力発生時期については,部会でも御議論がありましたので,なお検討することとしております。   3の補助に関する審判事件については,原則として,保佐に関する審判事件と同様の理由から,同様の提案を行っているところでございます。   以上です。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,順次まいりたいと思いますが,まず1ページの1,成年後見に関する審判事件で,ただいま,従来の審議の中で異なる考え方が提示されたものについては,甲案,乙案の併記があるという辺りですが,3ページの審判の告知等に関しても,そういうことで甲案,乙案ということですが,通知という概念から告知という概念に置き換えているという辺りについての説明がございました。あとは,4ページの申立ての取下げで,甲案,乙案という辺りですか。   そういたしましたら,1の成年後見に関する審判事件に関して,どの点でも結構でございますので,発言をお願いいたします。 ○山本幹事 申し訳ありませんが,総論的なところでお伺いしたいのですけれども,この21−1の文書は,その多くのところが,民法何条に基づく何とかかんとかの審判をする場合について,これこれという規律の仕方になっているわけなのですが,家事審判の場合に,準拠法が日本法でないような手続がなされる場合もあると思うのですけれども,そのような場合について,これらの規律が適用になるというふうに事務当局としては理解されているのかどうかということをまず確認させていただければと思います。 ○金子幹事 現行家事審判法の9条が,民法何条の規定によるという書き振りをしていますので,同じように,どの民法の条文に基づく審判かということを明示するにはこの方式がいいだろうということで,この方式を採っているわけです。   準拠法が外国法になりながら,家事審判で対応するという場面が当然あるわけで,そのような事件の手続は,日本の制度上一番近い場面に引き寄せて,似たようなところに引き寄せて運用されているというのだろうと,その点を変えるつもりはないので,あとは,その点をどのように法律上の条文で担保するのかという問題があろうかと思います。 ○山本幹事 そういうことで結構だと思うのですが,パブコメの中で,どこかの補足説明の隅っこのほうでもよろしいかと思うのですが,その趣旨を書いていただければ,あるいは国際私法の先生方で何か意見を言いたいと思っておられる方もいらっしゃるかもしれませんので,御配慮いただければと思います。 ○伊藤部会長 よろしいですね。御指摘どうもありがとうございました。  成年後見に関する審判事件に関する記載内容について,いかがでしょうか。 ○古谷幹事 3ページの審判の告知等のアの部分の(注)でございますけれども,これは,成年被後見人となるべき者,あるいは被後見人に対して直接告知をするということについての検討ということですが,この点につきましては,即時抗告権を担保するという構造にはなっていないという説明ができると思いますので,特にそのような必要はないと考えております。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。それでは,これは今の御意見を踏まえてということで,よろしいですね。   ほかにいかがでしょうか。   特に御発言がなければ,次の7ページの2の保佐に関する審判事件で,10ページの保佐人の同意を得なければならない行為の定めの審判事件に関する辺りで,先ほど補足的な説明がございましたが,保佐に関する審判事件全体に関して,どの点でも結構ですので,御質問,御意見をお願いいたします。 ○古谷幹事 10ページの下から3行目の(注)でございます。保佐人の同意に代わる許可の申立てを却下する審判に対する即時抗告,これは今回新しい御提案かと思うのですけれども,この点につきましては,監督処分全般につきまして,民法上,家裁の判断が最終的な判断という構造になっていると考えられますので,この点については,即時抗告を認めるのはいかがかという意見でございます。 ○金子幹事 今の点は,これまで,提起されていなかった問題ですので,パブコメの先の話になるかもしれませんが,今日,どなたか御意見があれば,伺っておければと思っています。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。金子さんからそういう要望がございましたが,先ほどの古谷幹事の御発言に関してでも結構ですし,(注)の部分に関して,どなたか御意見はございませんか。山本和彦幹事,いかがでしょうか。 ○山本幹事 私は,事務当局のもともとのあれで,確かに保佐人が濫用的な形で同意をしないということがあった場合に,被保佐人の行為の自由という観点からすれば,抗告まで認めるということもあり得るのかなと漠然と思っていただけです。 ○伊藤部会長 分かりました。それでは,この点はそのようなことで,検討を続けていただくことにしましょう。   ほかにはよろしいでしょうか。   そうしましたら,12ページの補助に関する審判事件,内容は今までのことの並びのようなことが多いと思いますが,どなたか御発言はございますか。ここに記載されているようなことでよろしいということであれば,先に進みたいと思いますが。   そうしましたら,次に4の失踪宣告に関する審判事件から,6の婚姻に関する審判事件までの説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 それでは,説明させていただきます。   4の失踪宣告に関する審判事件の(1)管轄は,部会資料11から変更しているものではございません。   (2)の手続行為能力については,失踪宣告が不在者等の身分関係についても影響を与えることを考慮して,なお検討するものということにしております。   (3)審判の告知のア,失踪の宣告をする審判については,失踪の宣告をする審判を不在者の相続人に対して告知することについては,意見が分かれましたので,なお検討することとしております。   イの失踪宣告を取り消す審判については,失踪宣告を取り消す審判を失踪者の相続人に対し告知することについて意見が分かれておりましたので,この点はなお検討することとしております。   (4)の即時抗告については,部会資料11から変更はなく,特段の御異論はございませんでした。   (5)公示催告手続については,原則として現行法の規律を維持しつつ,公示催告期間を短縮することを提案しております。   5の財産管理に関する審判事件の(1)管轄について,本文@,A及びEからGまでは,従前の部会資料から変更はございません。   本文Bに関する部分において,現行法は,後見人を同じくする数人の被後見人についてはその一人の被後見人の住所地の家庭裁判所に申立てを行うことができるとしておりますが,それに当然管轄が生じるとするだけの理由はないと考えられますことから,規律は置かないものというふうに変更しております。   また,本文Cでは,現行の規律を維持することも考えられますが,他方で,成年後見開始の審判をした家庭裁判所の管轄とすることも考えられますので,亀甲括弧に入れております。   本文Dでは,現行の規律に代えて,基本的には推定相続人の廃除又は廃除の取消しの審判事件が係属している家庭裁判所の管轄とすることを提案しております。   (2)手続行為能力は,従前の部会資料から変更はなく,部会においても特段の御異論はございませんでした。   (3)相続人全員の限定承認と管理人の選任では,現行家事審判規則第116条の規律を維持することを提案しております。   (4)審判の告知では,各種の相続財産管理人を選任したときには,相続人等に告知しなければならないものとするかどうかについて,両論の御意見がございましたので,たたき台においても両論併記するものとしております。   (5)財産管理者等の権限等では,基本的には,現行家事審判規則第32条第1項及び第33条から第36条までと,現行家事審判法第16条の規律を維持することを提案しております。   裁判所が選任した者が自由に辞任することができるとすることは相当ではないと考えられておりますので,ここでは辞任に関する規律は廃除することとしております。   (6)処分の取消しは,原則として現行家事審判規則第37条の規律を維持しつつ,財産を管理することが相当でないときも処分の取消し事由とすることを提案しております。   これまでの部会資料と違いまして,財産の管理に関する規律をまとめましたことから,すべての場合に適用可能なように,表現に若干の修正を加えております。   6の婚姻に関する審判事件の対象となる審判事件ですが,対象となる事件は別表6記載のとおりでございますが,このうち民法第758条第2項及び第3項の規定に基づく夫婦の財産管理者の変更及び共有財産の分割の請求については,民法第758条第1項の規定が,当事者による夫婦財産契約の変更を許容していないということとの整合性から,これまでの整理を変更し,調停をすることができない事項についての審判事件とするということを前提として記載をしているところでございます。   それを前提にいたしまして,まず(1)の管轄でございますが,@については,第14回部会での議論を踏まえ,現行の規律を維持して相手方の住所地とする甲案と,人事訴訟における管轄と同様に,夫又は妻の住所地とする乙案の両案を併記した提案としております。A及びBについては,いずれも従前の部会資料から変更はございません。   (2)手続行為能力では,@については部会資料8から変更はなく,Aは,子の監護に関する処分の審判事件における子の手続能力について提案するものでございます。   (3)参加については,(2)Aのとおり,子の手続能力を認めた場合には,子は,裁判所の許可を得て利害関係人として手続に参加することが可能となりますが,これに加えまして,子が利害関係人として手続に当然に参加することができるものとすることについて,なお検討することとしております。   (4)陳述聴取について,@は,夫婦財産契約による管理者の変更及び共有財産の分割の審判事件を,調停をすることができない事項についての審判事件と整理した場合には,申立人でない他方配偶者は,当然には審判手続に関与しないこととなりますため,その他方配偶者の手続保障を図るため,その者に対する必要的陳述聴取の規律を置くことを提案するものでございます。   Aは,15歳以上の子の陳述聴取については,従前の部会資料のとおりでございますが,15歳未満の子の陳述聴取については,第13回部会での議論を踏まえて,総則に定める子の意見表明に関する規律に沿った陳述聴取等の方法により,その意思を把握するものとすることに変更しているところでございます。   (5)共有財産の分割の処分は,現行の規律を維持するものとすることを提案するものであり,部会において特段の異論はございませんでした。   なお,現行家事審判規則第48条第3項と同様の利害関係人に対する公告・参加の規律を維持するか否かについては,遺産分割の審判事件における利害関係人の地位の検討と併せてなお検討するものとしております。   (6)給付命令等については,アからエまでいずれも現行と同様の規律を維持するものとすることを提案するものであり,第14回部会において特段の異論はございませんでした。   なお,ウについては,第14回部会での御意見を踏まえ,「子の監護について必要な事項の例示」として「面会交流の方法」を明示するか否かについて,(注)においてなお検討するものとしております。   (7)即時抗告について,アからウまでは,従前の部会資料から基本的に変更はございません。   なお,アの夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助についての審判に対する即時抗告権者については,第15回部会での議論の結果を踏まえ,現行の規律を変更して,利害関係人を含めないことにしております。   また,イの(注)は,第14回部会での御意見を踏まえ,子の即時抗告権について,子に対する審判告知の規律と併せて検討するものとしております。   エは,部会資料11では,即時抗告権者,利害関係人を含め,現行の規律を維持するものとすることを提案しておりましたが,利害関係人に即時抗告権を認めるべき具体的な必要性を直ちに想定できないことから,当事者にのみ即時抗告権を認めるものとすることに変更しております。   (8)その他の(注1)は,夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助についての審判,婚姻費用の分担の審判,監護に関する処分の審判について,事情変更による審判の変更又は取消しをすることができることを前提に,この点についての明文の規定は特に設けないものとする方向での検討を提案するものでございます。   (注2)は,第14回部会及び第15回部会での議論を踏まえ,婚姻費用の分担や監護費用の分担又は財産分与に関する審判事件において,収入や保有資産の開示義務等,必要な財産資料の開示の制度を設けることの当否及びその内容については,なお検討するものとしております。   (9)審判前の保全処分については,アからウ,ウ(ア)まで,本案事件の係属を保全処分の要件とするか否かの点を除き,現行の規律を維持するものとするものであり,部会資料13から変更はございません。   なお,ウの(イ)は,子の監護に関する審判事件を本案とする仮の地位を定める仮処分をする際の子の陳述聴取の規定について,第13回部会における議論の結果を踏まえて,子が15歳未満であるときについては,総則に定める子の意見表明に関する規律に沿った陳述聴取の方法によりその意思を把握するものとすることを提案しております。   以上です。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,順次まいりたいと思いますが,まず17ページになりますが,4の失踪宣告に関する審判事件の関係では,ただいまの説明で,17ページの(2)の(注),(3)の@の(注),それから(3)のAの(注)の辺りについて,若干,従来のこの部会での御意見を踏まえて検討事項を掲げたという説明がございましたが,失踪宣告に関する審判事件については,いかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,18ページの5の財産の管理に関する審判事件で,補足的な説明の関係では,(1)の管轄のBないしDの辺りについての説明がございました。今の点,あるいはその他の点でも結構ですので,財産に関する審判事件全体に関しての御発言をお願いいたします。 ○古谷幹事 19ページの下のほうの(4)審判の告知でございますけれども,この管理人の選任の審判に関する告知について,管理人の行う業務というのは,基本的には現状維持的なもので,暫定的な処分にとどまるということが,ここに掲げられているすべてに妥当することと思います。そうであるとすると,特にここで掲げられている場合につきまして告知の必要はないと考えております。 ○伊藤部会長 19ページの一番下の(注)の部分に関して,検討するということになっていますが,それに関する御意見として,告知をするという規律の必要はないという御発言がございましたが,ほかの方で今の点に関連して御意見はございますか。よろしいでしょうか。 ○増田幹事 念のためですが,古谷幹事の御発言は,(注)としても置く必要もないというお話なのでしょうか。注として聞くことはいいということですね。 ○伊藤部会長 私は,なお検討することの材料としての御発言というふうに承りましたが,いかがでしょうか。 ○古谷幹事 それで結構でございます。 ○伊藤部会長 よろしいでしょうか。そうしましたら,21ページの6の婚姻に関する審判事件で,先ほどの説明で,基本的なこととの関係では,夫婦財産契約による管理者の変更,共有財産の分割に関する審判事件の基本的な考え方として,民法758条1項との関係で,調停をすることができない事件という性格付けに基づいて,個別の規律に関する考え方を整理しているというようなことが基本的な事項としてございました。   そうしましたら,これはいろいろありますので,まず今の基本的な考え方や,21ページの(1)の管轄,ここには甲案,乙案が従来の議論の経緯を踏まえて併記されております。それから手続行為能力,それから参加ですね,その辺りに関してはいかがでしょうか。 ○畑幹事 実体法の解釈がよく分からないということなのですが,今の性格付けの話で,共有財産を分割するというのも,夫婦間の合意ではできないという御理解でしょうか。民法の解釈がどうなっているのか教えていただければと思います。 ○松田関係官 事務当局としてもまだ検討中のところではあるのですが,現行の家事審判規則に基づく整理としましては,夫婦の財産契約に基づく管理者の変更,あとそれに附帯する分割の許可は協議ではできないと考えることになろうかと思いますが,具体的な分割の処分については,協議が許容されるのかどうかが民法の規定によっても必ずしも明らかではなく,検討しているところでございます。 ○伊藤部会長 ただいまの点,畑幹事,いかがですか。 ○畑幹事 民法の解釈ですので,私に定見があるというわけではないのですが,直感的には,例えば財産が当初どういうふうに帰属するかという意味での夫婦の財産関係というのは,勝手に変更はできないということですが,いったん帰属して共有になった後,それをどうするかというのは,個人の勝手ではないかという気がいたしますけれども,民法の先生方にも教えていただければと思います。 ○道垣内委員 問題にされているシチュエーションがよく分からないのですが,ある財産に関して,妻と夫との間の帰属割合というものを夫婦財産契約で定めているとき,それを,例えば現物分割ないしは売却して価格による分割をするということを考える。そして,それは自由ではないか。そういうお話なのですか。 ○畑幹事 恐らくそういうことだと思います。 ○道垣内委員 それについてもできないというのが前提なのですか,事務局案は。 ○川尻関係官 これは非常に悩ましいところでして,758条2項のほうは,当事者が勝手に変更することはできないということを前提にしている仕切りになりますので,それは調停をすることができない事項として整理したほうがいいというのがそもそもの出発点でございます。ところが,ここの3項のほうに,共有財産については,前項の請求とともにその分割を請求することができるとなっておりまして,今御指摘ありましたとおり,共有財産の分割については,当事者が任意でできてもよいのではないかという考え方もあり得るのではないかと思われるのですけれども,ではここが,調停ができる事項とできない事項に分けてしまって,ばらばらになってしまってもいいのかと。しかしそもそもこの条文自体は,一緒にできることが前提となっておりますので,そこを分けてしまうのもちょっと問題ですねということを考えておりまして,今,一応,二つはセットで考えたほうがいいのではないかということを前提に今回の御提案をした次第です。ただ,御指摘がありました点は悩ましい点ですので,引き続き検討させていただければと存じます。 ○道垣内委員 758条2項というのは,夫婦間の共有財産であり,かつ他の一方が管理権を有しているということを前提にしていますので,そのときには任意の分割請求というのが排除されるというのは十分にあり得ると思うのです。   ただ,しかし,夫婦財産契約によって夫婦共有財産になっているが,管理権者が単独になっているというものではないものについては,別段,自由なのではないかという気がしますが,普段考えていない問題を,ここで考えながらしゃべると失敗しそうなので,やめておきます。 ○畑幹事 私も全く自信がないまま発言をしてしまって恐縮なのですが,説明の仕方として,やはり何か問題があるかもしれないというような手掛かりは,残しておくほうがよいのではないかという気がいたします。 ○伊藤部会長 分かりました。民法の先生方には是非教えていただきたいと思いますが,今日の段階では,今申しました民法758条自体の考え方について,必ずしも十分詰められていないところがあり,それが中間の取りまとめを公表する段階までに全部整理ができればいいですが,仮にできないような場合であれば,その点についてなおいろいろ問題が残されているという指摘が出てくるような形で,取りあえずの整理をするということでよろしいですか。というところは基本的なところで難しいところですが,ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 調べろと言われたのは私かもしれませんので,私も調べますが,補足説明とかで書くとしたときに,恐らく,この問題を触り始めると,夫婦財産契約のない場合のときの夫婦の共有財産の分割請求というのが,例えばそれが登記として共有になっている場合と,夫の名義になっているけれども潜在的には共有であるというふうな場合があって,それを財産分与の手続によらないで,婚姻関係の継続中に分割請求できるのかという問題が絡んでくるような気がいたしますので,根は結構深いところがあります。調べるのは調べますけれども,いろいろなニュアンスの付いた説明にどうしてもなってしまうという感じがいたします。 ○伊藤部会長 決して道垣内委員に責任を押し付けるという意味ではありませんので,是非御教示いただければ有り難いと思います。   ほかに,(2),(3)参加も含めて,参加に関しては,先ほど許可参加と権利参加の関係について,(注)のところですね,子の参加形態に関する補足的な説明がございましたが,その辺りまで,よろしいですか。   それから,陳述聴取に関しては,@のところで,ただいまの議論との関係がありますけれども,申立人以外の夫又は妻の陳述を聞かなければならないものとするということの意味について,先ほど補足的な説明がございました。それから,Aの15歳未満の子の場合に関して,これも総則との関係での説明がございましたが,その辺りはよろしいでしょうか。 ○増田幹事 手続行為能力のところに戻っていいですか。子の手続行為能力で,一般的に「財産上の給付を求める審判事件については,この限りでない」となっていますけれども,養育費について,本当にそれでいいのかどうかという疑問がありまして,注ぐらいに入れておいていただけないかと思います。   想定例として,両親の間では養育費の請求は行わないという合意がなされているが,別れて暮らしている人はお金持ちで自分のところは非常に貧乏だという場合に,子の立場から養育費を請求できないのかどうかという疑問があります。実体法上は養育費を請求できるということになっているわけなのですけれども,そこで手続行為能力がないと親権者を通じてしか請求できないとすると,事実上は,放棄している親権者が子を代理して請求するということは考えにくいわけですので,その場合に,子自身が養育費を現実に請求できる余地があってもいいのではないかと思いますので,注記で結構ですので,そこへ入れていただけないかと思います。 ○伊藤部会長 今の点は,事務当局で何か発言があれば。 ○脇村関係官 1点確認したいところがありまして,今,養育費を請求できるというお話があったと思うのですけれども,ここで問題となっている民法766条の処分の請求権を子自身が民法上請求できるというか,そういう処分を求めることが予定されている前提という御趣旨なのでしょうか。 ○増田幹事 扶養のところなのですかね。後に出てきますけれども,扶養のところも同じように手続行為能力の特則はないので,どちらかだと思います。今のような事例のことをどこかに書いていただければ有り難いです。 ○金子幹事 事務当局としては,今の6の婚姻に関する審判事件のところでは,夫婦間のことを当事者とすることを考えていたのですね。増田幹事から御指摘いただいた趣旨は,事務当局案を前提としますと,恐らく11の扶養のところで問題が顕在化するのだろうと思います。この場合は,子どもが扶養義務のある親に請求できるということが明らかかと思います。その場合の手続において,意思能力で足りるのかどうかということが正面から問われるところかと思いますので,扶養のところに,補足説明か注記かは検討させていただきますが,そのような指摘があった旨を付記するということではいかがでしょうか。 ○増田幹事 今の点については,そういうことで結構です。 ○伊藤部会長 それでは,その点はそのような処理にさせていただきましょう。 ○増田幹事 次は陳述聴取のところなのですけれども,15歳未満の子につきましては,先ほどお話がありましたように,総則の子の意見表明のところに関わってくるということですけれども,総則のところの「子の意思を把握するように努めなければならないものとする」ということが,どれほど強い義務として裁判所に求められるのかという点にも関わる問題ではあるのですが,できれば各則のところにも注で,15歳未満の子について陳述聴取を必要とすべきかどうかとか,あるいは,15歳未満の子について,年齢や心身の発達の程度に応じて陳述を聞かなければならないものとするかどうかについては,なお検討するくらいのところを入れていただけないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ○脇村関係官 15歳未満についてどうするかについては,これまで様々な議論がございまして,総論としては,相当なときには聞かないといけないと。ただ,聞かないときでも適切に子の意思等を把握しないといけないというところで,そういった趣旨を踏まえて総論で書かせていただいたところでございまして,結局,その表れがあそこだと思っているものですから,提案としては,もう既にあそこで一つしていると考えているところです。   ただ,一つ気になっているところは,陳述聴取のところで15歳未満はこの限りでないと書いていることの意味を,15歳未満は何もしなくていいのだという誤解をされて,パブリックコメントで意見を言われるというのは,それは当部会としての総意に反するのではないかという点は危惧しておりまして,注か補足説明で,15歳未満については総論において対応するということを前提にしているという点を付記することもいいのではないかと思っているのですけれども。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。今,説明があったように,そういう誤解が生じるということは好ましくないので,その点は明らかにすると。ただ,総則との関係で,それはやはり説明,注にとどめるべきではないかということですが,そういうことで御了解いただければと思います。ありがとうございます。   それでは,22ページの(4)の陳述聴取のところでいったん区切って,ここで休憩を取りたいと思います。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは再開いたします。   22ページの(4)の陳述聴取のところまで審議を終えていただきましたので,(5)の共有財産の分割の処分からですが,先ほどの説明との関係では,23ページの(6)給付命令等のウの(注),「子の監護についての必要な事項」の例示として「面会交流の方法」を明示するか否かについての検討という辺りですか。それから,(7)の即時抗告に関しては,24ページのエのところで,系譜,祭具等に関するものに関して利害関係人を除いたとか,その上のイの(注)のところ,子の即時抗告権については,なお検討するという辺り。そして,(8)のその他の(注1),(注2)に関して先ほど説明がございましたが,(5)からそれ以降の部分に関しては,何か御指摘や御意見はございますでしょうか。 ○増田幹事 これも余りこだわる話ではないのですが,(6)の給付命令等のイの,取り分けcに関してなのですが,財産分与についてですが,審判の中で,債務負担を命ずることができるものとするというような考え方はどうかぐらいの話がないかなと。遺産分割のところには債務負担のほうも入っておりますので,注にでも分かるように,そういうことができないかどうかというのを聞いていただければと思います。 ○伊藤部会長 23ページのイのcに関する御指摘ですね。今の点はいかがでしょうか。 ○脇村関係官 (6)のイの趣旨というのは,例えば財産分与の内容として,ある財産をある人に分与して所有権を移すと定めたときに,その所有権はあなたのものですよというだけではなくて,それも引き渡せということも言えるという規定だと思っているのです。増田幹事のおっしゃっているのは,そもそも処分として債務負担をさせることができるのではないかということだとすれば,ここで言っている附帯というか,考えていることとは違うのではないかという気がするのです。そもそも財産分与として債務を負担させるかどうかの問題であれば,正に民法の問題かもしれないのですけれども。 ○増田幹事 債務を負担させて,担保物件を分与するというようなものが認められるかどうかなのですね。やはり民法の問題ですかね。今は債権者に対してそれが効力を持つかどうか,それはまた別の話として,当事者間では,住宅ローンを一方に負担させて,その家を負担した者に分与するということを考えたのですが,民法の話だったら仕方ないですね。 ○伊藤部会長 よろしいでしょうか。実体法の問題とは思いますが,もしあれでしたら,また何かの機会に御発言いただければと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○道垣内委員 この資料の作り方なのですが,23ページに「イ」と書いてあって,その下に,「夫婦財産契約による管理者の変更又は共有財産の分割の処分の審判事件等」と書いてあり,その中にa,b,cがあるのですよね。したがって,財産分与についての審判とか,婚費分担の審判というのは,イの見出しに含まれる。こういう作りなのですね。 ○脇村関係官 はい。 ○道垣内委員 下のほうの具体例としての婚費分担処分とか財産分与審判とかは,実際に幾らでもたくさんありそうなものなのですが,見出しは「夫婦財産契約による管理者の変更又は共有財産の分割の処分の審判事件」というわけで,実際にはほとんどありそうもないものになっているのでありまして,これは何のために書いてあるのだろうかというふうに,私は一瞬びっくりしてしまったのです。 ○脇村関係官 結局,イのa,b,c,1個1個書いたほうが,それはそれで分かりやすかったのですけれども,同じことの繰り返しなので,合体させるときに,一番最初にきたものを書いて「等」にしたということでして,同じことなのですけれども,確かに今見て,一番大事そうなのが後ろにきているので書き方を検討させていただきたいと思っております。 ○伊藤部会長 先ほどもちょっとお話が出ましたけれども,確かにこれを見ると,イの見出しだけ見て,これは余り大したことないというので見逃してしまう可能性もありますから,書き方については,今の御指摘を踏まえて検討してもらいましょう。 ○道垣内委員 それと,エに書いてあるのは,シチュエーションとしてはどのような場合を念頭に置いて書いてあるものなのでしょうか。 ○伊藤部会長 系譜のところですか。 ○道垣内委員 はい。 ○脇村関係官 祭具の所有者というか,祭具承継者を決めるときに,決めた人が実際には祭具等を持っていない,ほかの御親族とかが持っているときに,併せて引き渡せということを附帯的に命じることができるということを想定しているものです。 ○道垣内委員 しかし,それは6の婚姻に関する審判事件というものの一種なのですか。 ○金子幹事 ここで婚姻に関する審判事件として分類しているのは,後ろの別表を見ていただくと,6として掲げたもの,これが婚姻に関する審判事件としてこの資料で対象としている事件の全部です。項目によって,このうち幾つか当てはまるものがあるものを項目ごとに抜き出しているということで,婚姻に関する審判事件と言えば,この類型の事件を含めて書いているということになります。そういう前提で,なおこれを婚姻に関する審判事件に含めるのはおかしいということはあるかもしれませんが,我々の認識はそういうことで作ってあります。 ○道垣内委員 論理は分かりました。すみませんでした。 ○金子幹事 この別表の趣旨は,1,2,3,4とずっと並んでいる成年後見に関する審判事件というものがどういうものかということを表すとともに,それぞれの事件について「審判を受けるべきもの」というのが正しいのかもしれませんが,それがだれかということ,両方を表しているという趣旨の表でございます。 ○道垣内委員 では関連して,769条の離婚に伴う復氏の際に,祭祀承継者になっている人を変えるというときには,ポテンシャルな別の祭祀承継者というのが手続上存在して,かつ,今現在,だれかが祭祀承継者になっているということになりますと,その人が,必然的かどうか分からないですけれども,手続に含まれている形になりますので,その人に対して引渡しを命じることができるというふうになりますね。これはそうですが,897条が原則型として定めている相続の際の祭祀承継者の決定のときには,祭祀,系譜,祭具,墳墓の占有者がどこかにいて,その人が手続上,当然に絡んできて,その人に対して引渡しを命じるということになるのかというのが,私はピンとこなかったのです。   資料では,婚姻に関する審判のところにこれを分類しており,婚姻のときのシチュエーションを考えると何となくよく分かるのですけれども,それ以外のところの祭祀承継の話も含んだときに,こう言えるのかなというのが若干気になって,私がシチュエーションをよく理解できていないだけかもしれないですが。 ○脇村関係官 繰り返しになるかもしれませんけれども,ここで想定している相続のケースを例に挙げますと,御親族であるA,B,C,D,Eの中がいて,結果,Aさんが審判によって承継者に指定されましたというときに,今言いましたA,B,C,D,Eの中のDさんが祭祀を持っているというときがあると思うのです。そういった場合については,指定というのは飽くまで指定ですので,引き渡せということは言えない,民法上は予定されていないはずだと思うのですけれども,もしそれで,先ほどの附帯処分を付けないとどうなるかというと,指定はできると,指定されて終わりと。もしそれで渡さなければ,それは別途,正に民事訴訟なりで引渡し請求をすることになるということになると思うのですが,そういったものを一括して,指定したときには併せて引渡しも命じることができるとしているのが部会資料の趣旨です。 ○道垣内委員 分かりました。私が,全体をよく理解できていないのに発言していたということがよく分かるのですけれども,よく理解できないのは私のせいだけなのだろうかということが問題で,つまり,確かに別表の中の6の婚姻に関する審判事件のところで,系譜,祭具及び墳墓の所有権の承継者の指定に関する審判事件というところには,897条は上がっていないわけですね。   しかしながら,通常,系譜,祭具及び墳墓の所有権の承継者の指定という言葉というのは,ここに言う原則系のところの897条を指している言葉であって,離縁とか離婚のときの承継者の変更のことを一般に指している言葉ではないのではないかという気がするのです。にもかかわらず,変更の手続のときにこういう一般的な文言を使うことによって,誤解が生じる余地があるのではないかという気がいたしますので,準用によってこのように変更する場合については,もうちょっと言葉について,場合によっては,これは相続のときの承継者の指定の話ではないというのが分かるような言葉にしていただいたほうがよろしいのではないかという気がいたします。 ○伊藤部会長 分かりました。いいですね。 ○金子幹事 分かりました。12の相続に関する審判事件の1項目がそれに当たるのですが,こちらのほうをむしろ,祭具,墳墓等をきちんと書いて,6のほうの事件について書くときは,離婚又は離縁の復氏に伴うとか,そういうような形で分かるように記載しようと思います。 ○伊藤部会長 では,そのようにお願いします。   ほかにいかがでしょうか。(6),(7),(8)まで,ほかに御意見はございませんか。   よろしければ,24ページの(9)審判前の保全処分に関しては,何か御意見はございますか。 ○畑幹事 25ページの上から2行目の亀甲括弧ですが,前提として,本案の申立てを要求するかどうかというところが一つの分かれ目としてあり,本案の申立てを要求するとした場合に,その申立てをした者に限定するという話だと思うのですが,これは前からそういう話でしたでしょうか。ちょっと記憶がはっきりしないのですが。 ○金子幹事 「当該申立てをした者の」ということ自体が,決めていないという趣旨でブラケットに入れていまして,つまり前半の「本案の申立てがあった場合において」ということをとった場合は,自動的に後ろもとれるという趣旨ではなくて,前半のブラケットがとれて,本案の申立てを前提とした場合でも,本案の申立てをした者に限るか,本案の申立てをした者でない者が保全の申立てをできるかという点についても,なお検討という趣旨のブラケットで,ちょっと分かりにくくなっているのですが,そこは決めているわけではありません。現行法も,ある一定の類型の仮処分については,本案の申立人と違う第三者が保全処分の申立てができるという類型がありますので,そのようなものとして御理解いただければと思います。 ○畑幹事 資料の趣旨は分かりましたが,そういう問題として議論はしていましたでしょうか。ちょっと記憶がなかったのですが。 ○脇村関係官 前回の部会資料13においても,「申立てをした者の」というところについては,亀甲括弧をした上で提案させていただいておりまして,その点については補足説明等において,例えば後見開始の審判前の保全処分などでは,現行法では申立権者を限定していないけれども,限定することを提案するというようなことを説明させていただいたところです。ただ,特段の御意見は出なかったと記憶しております。 ○畑幹事 分かりました。内容については後で議論させていただければと思います。 ○伊藤部会長 後でまた是非意見をお願いいたします。趣旨はそういうことのようです。   よろしければ先に参りましょうか。7の親子関係の審判事件から,8の親権に関する審判事件までの説明をお願いいたします。 ○松田関係官 では説明させていただきます。   まず,7,親子関係の審判事件についてですが,(1)子の氏の変更についての審判事件につきましては,部会資料11から変更はございません。   なお,手続行為能力につきましては,民法第791条第1項及び第3項が,15歳以上の場合には子が自ら申立てを行い,15歳未満の場合には子の意思能力の有無に関係なく法定代理人が申立てを行うものとしていますことから,子が15歳以上の場合には,意思能力を有する限り手続行為能力を有するものとしております。   (2)養子をするについての許可の審判事件のア,管轄につきましては,現行法の規律を維持するものとしております。   イ,手続行為能力につきましては,養子は,15歳以上の場合には養子縁組を締結でき,15歳未満の場合には,意思能力の有無に関係なく養子縁組を締結することができないことから,15歳以上の子には手続行為能力を認めることとしております。   ウ,参加におきましては,子の権利参加について検討することとしております。   エでは,陳述聴取の提案をしております。   オの審判の告知では,御意見が分かれておりましたので,両論を併記しております。   なお,15歳未満の養子につきましては,民法上,養子に代わり親権者等の法定代理人が子の利益を保護することが予定されておりますことから,乙案では,子が15歳未満の場合には,親権者等の法定代理人が審判の告知を受けることを提案しております。   カ,即時抗告におきましては,(注)で,申立て却下の審判について,養子に即時抗告を認めるべきか否か検討することとしております。   次に,(3)死後離縁をするについての許可の審判事件につきましては,管轄及び即時抗告については現行法の規律を維持し,手続行為能力につきましては養子をするについての許可の審判事件と同様の提案をしておりまして,養子の代襲者への通知等につきましては,両論がございましたので,両論併記としております。   (4)特別養子縁組に関する審判事件では,ア,管轄において,現行法の規律を維持することを提案しております。   イ,手続行為能力では,原則として,意思能力を有する限り手続行為能力を有するものとしておりますが,現行民法を前提としますと,養子縁組の成立の審判事件において,養子となるべき者が意思能力を有することはおよそ考えらませんので,養子となるべき者については手続行為能力を認めないこととしております。   ウ,陳述聴取では,父母に対し,親権を行う者についても陳述聴取をすることを提案しております。   エの審判の告知の(ア)特別養子縁組の成立では,養子の実父母に対し,親権を行う者についても審判の告知をすべきとしたほかは,部会資料11から変更はございません。   なお,30ページの1行目に「父母の未成年後見人」と記載がありますけれども,これは「父母の後見人」の誤りでございますので,この場をお借りしまして訂正させていただきます。   それからまた,第14回部会では,養子に対しても告知をすべきとの意見もありまして,(注)ではその点を検討することとしておりますが,特別養子縁組が設けられている目的からしますと,特別養子縁組をしたことを養子に知らせることは相当でないと考えられて,中間試案において掲げるべきでないとも考えられますので,亀甲括弧としております。この点につきましては,掲げるべきかどうか含めて御検討いただければと存じます。   次に,(イ)特別養子縁組の離縁では,原則として,部会資料11から変更はございませんが,養子に対する審判の告知の例外については,今後とも検討する趣旨で亀甲括弧を付しております。   オ,即時抗告では,特別養子縁組の成立について,現行法の規律を原則として維持することを提案しております。   特別養子縁組の離縁については,原則として,現行法の規律を維持しつつ,申立て却下の審判に対する即時抗告の即時抗告権者については,なお検討することとしております。   カ,特別養子縁組成立の審判事件を本案とする保全処分及びキ,特別養子縁組の離縁の審判事件を本案とする保全処分につきましては,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   次に,8,親権に関する審判事件の(1)管轄では,親権等の喪失を含め,子の住所地の家庭裁判所の管轄とするものとすることを提案しております。   (2)手続行為能力では,子は意思能力を有する限り手続行為能力を有することを,また,一定の事件におきましては,父及び母並びに養親は,意思能力を有する限り手続行為能力を有することを,それぞれ提案しております。   なお,32ページのイのところの「夫及び妻」とありますのは,「父及び母」の誤りでございますので,申し訳ございませんが,この場をお借りしまして訂正させていただきます。   また,意思能力を有する限り,父母が未成年者であっても協議で親権者の指定をすることができるとの見解が有力でありますことから,部会資料8を変更しまして,親権者の指定及び変更,親権等の喪失,親権等の辞任,親権等の喪失の取消し,親権等の回復についても,意思能力を有する限り父母に手続行為能力を有するものとすることに変更して,提案させていただいております。   (3)参加では,子は,特則を設けなくとも裁判所の許可を受けて手続に参加できますが,他方で,親権に関する審判事件におきましては,裁判所の許可を受けることなく,当然に手続に参加することができるものとすべきとの見解も考えられますことから,ここでは,この点は検討することを提案しております。   (4)陳述聴取では,各審判事件の陳述聴取について提案しております。   (5)審判の告知では,これまで異論のなかった親権又は管理権の喪失の宣告の審判,親権又は管理権の喪失の宣告の取消しについて提案をし,争いがありました親権者となるべき者の指定,親権者の指定又は変更,親権又は管理権を辞するについての許可及び親権又は管理権を回復するについての許可の審判を子に告知することにつきましては,(注)におきまして検討することとして提案しております。   (6)引渡命令等につきましては,扶養料の支払を除き,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   (7)即時抗告では,これまで御異論のなかった点につきましてはそのまま提案しておりますほかは,争いがありました子の即時抗告権につきましては,それぞれなお検討することとしております。   (8)親権又は管理権の喪失の宣告の特則では,親権又は管理権喪失宣告について,家事調停をすることができるかどうかに関係なく,この事件については,調停をすることができる事項についての審判事件に適用される規律を適用するかどうかを検討することを提案しております。   (9)子を懲戒場に入れる許可等に関する事項の指示等では,現行の規律を維持するものとすることを提案しております。   (10)審判前の保全処分では,原則として現行法の規律を維持するものとするほか,親権者の指定又は変更の審判事件を本案とする保全処分において,仮の地位を定める処分をする際に子の陳述を聞かなければならないものとすることをイ(イ)において提案しております。   なお,親権者の指定又は変更の審判事件を本案とする保全処分として,仮差押えをすることができるかどうかについては,なお検討することとしております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,まず7の親子関係の審判事件で,(1)の子の氏の変更事件辺りですが,ただいまの説明との関係では,イの手続行為能力で,子が15歳未満であるときはこの限りでないという規律の趣旨とか,ウの参加の(注)の辺りですね。それから,審判の告知の甲案,乙案の辺りでしょうか。それから即時抗告の(注),そして28ページのウ,養子の代襲者への通知等で,これは従来からの議論を整理したところということになりますが,(1),(2),(3)の辺りまでで何か御発言がございますか。特別ございませんか。   そうしましたら,ここに掲げられているようなことで御了解いただいたということにしたいと思いますが,(4)の特別養子縁組に関する審判事件の関係で,特に御意見を伺いたいという,今,事務当局からの説明がございましたのは,30ページの亀甲括弧に入っている(注)の養子となるべき者に対する審判の告知,これをパブリックコメントの対象に含めるかどうかという辺りに関しては,特に要望がございましたが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 先ほど松田関係官からは,子に知らせないことが前提の手続という御説明がございましたが,その前提について,昨日,実は弁護士会のほうでいろいろと聞いてみたところ,現在は各施設は養子になることを子供に十分に説明しているという取扱いが一般的であると聞きましたので,少し前提が異なっているように思います。結論的には,注に入れていただいて問題はないと思います。 ○伊藤部会長 ただいまの増田幹事からの発言に関して,他の委員,幹事の方,いかがでしょうか。 ○鶴岡委員 私は現在の運用をよく知らないですけれども,子どもが小さくても,施設の職員が特別養子になるということを事前に伝えているのが一般的な扱いということなのでしょうか。 ○増田幹事 私,直接は全く知りません。すみません。そういうことを子どもの権利に詳しい弁護士のほうから聞いたということです。 ○鶴岡委員 私が承知している資料は,やや古い2002年の調査ですけれども,子どもが何歳のときに特別養子の親が真実告知をしたかについては,4歳,5歳,6歳,7歳と,子どもの様子を見て伝えているという親が非常に多いし,これは対象者が120件の調査ですが,全体の中では真実告知をしていない親が7割ぐらいあるという情報もあります。現在の運用は私もよく承知していないのですが,こういうことが法制審で議論されているということ自体が,当事者に非常に不安感を与えるおそれもあるのではないかと思います。 ○増田幹事 現時点では,私自身が確信を持っておりませんので,取りあえず注のほうには入れておいていただきたいというだけのことでございます。 ○伊藤部会長 注として残すこと自体が不適当だという御意見が多ければですが,今伺っている限りでは,注として,なお検討事項として広くそれを問うこと自体までがということはないのですかね。 ○鶴岡委員 先ほどの松田関係官の御説明をふえんしていただければよろしいのではないかと思います。 ○伊藤部会長 そうですか。なかなか難しい問題ですが,適切な形で補足の説明なども考えていただければ,注としてはよろしいですか。どなたか御発言があれば。 ○金子幹事 特別養子縁組を入れたときに戸籍法の手当てをしまして,いったん子どものための新戸籍をつくって,そこから養親の戸籍に入れるという手当てをして,なるべく外からは分からないようにするということで,あとは養親とお子さんとの間の親子関係というのですか,状況を見て親御さんのほうが判断するという建前で,この特別養子縁組をつくっていると理解しています。   今のこの問題は,裁判所が特別養子縁組が成立したということをお子さんに伝えるかという問題ですが,現状の特別養子縁組制度の戸籍法の手当ても含めた制度とは少し合わないという感じがしまして,これを問うこと自体はどうかという感じを私は持っています。 ○伊藤部会長 事務当局の問題意識はそういうことですが,どうでしょうか。 ○長委員 金子幹事がおっしゃった点は,御説明を聞きながら私も違和感を感じていたところです。特別養子縁組制度の本来の趣旨は先ほど御説明があったようなことですから,要するに特別養子になる子には伝えない,分からないような形で守っていくというところが出発点だったように思ったものですから,慎重な検討が必要だなという印象を私は抱きました。 ○古谷幹事 今の長委員と基本的には同じで,裁判所から告知をするというのは制度趣旨にそぐわないということで,違和感が非常に強いので,注として載せるのもどうかという意見を持っております。 ○伊藤部会長 養親が養子に対して告知するということと,ここで掲げられている裁判所が審判の告知をするというのは,ちょっと性質の違った問題ではあるのですね。恐らく消極の方は,先ほど金子幹事が説明されたよう制度の趣旨からして,裁判所が告知するということを検討すること自体がどうかということかと思うのですが,もうちょっとほかの方の御意見も伺いたいと思います。 ○小池幹事 質問なのですけれども,これを注で残した場合に,告知をするという法制度ができ上がる可能性も出てくるのですよね。真実告知の問題は恐らく実体的な問題で,子の出自を知る権利をどう保障するかとか,そういう話と絡んできますので,手続法で一方的に決められてしまうのは,先ほどから制度設計の問題と関わっているということが出てきましたけれども,正に本質的なところを手続法で決めてしまうというのはどうかという気がしますので,真実告知は,養親の方がどう伝えるかというところに取りあえず実体法では今任せていますから,デリケートな問題を手続法が決めるのはよくないということで,私は,注として載せるのも要らないのではないかという意見に賛成です。 ○小田幹事 注として載せるかどうかというのが議論の中心だということは理解しております。他方で,親から告知をするということは,先ほどから鶴岡委員がお話になっているように,時期だけでなくて内容についてもいろいろな工夫がされていると思うのですが,裁判所から告知するとなったときに,その内容は何かという議論は,多分,今まで余りされていないような気がするのです。   通常の場合,裁判の告知と言えば,決定書を送って,要するに主文だけでなくて,そこには,当事者名から,こういう経緯からというのが全部分かるものですね。他方で,特別養子の場合の子どもに対する告知は,年齢からしても,決定書を渡しても多分分からない。そうすると,そこで想定されている裁判所からの告知というのは,時期などの相当性だけでなくて内容もどうなるのだろうかと。私はもともと否定的なところもありますから,考えてはおりませんが,そういう点も含めて議論する必要があるのではないかという気がいたします。 ○伊藤部会長 実質に関しては,今,小田幹事からの御指摘の点が当然中心になると思いますが,当面の問題は,注を掲げること自体が,言わば特別養子縁組制度の本旨を理解していないということにつながりかねないというような問題意識かと思うのですけれども,いかがでしょうか。ほかの方で。 ○増田幹事 私が聞いた施設の取扱いが一部の施設なのかどうか,それは分からないけれども,そういうことを原則として伝える施設があるということは,きちんと伝えなければ,その後の親子関係の形成などがうまくいかないのではないかという基本的な認識があるのではないかと思うのです。   反対される方の言われることは私もよく分かりますが,それは注に対する答えであって,注に入れてはいけないという理由にはなっていないのではないかと思います。 ○伊藤部会長 山田幹事,いかがですか。なかなか難しいところではあろうと思うのですが,注として掲げること自体の妥当性の問題ですね。 ○山田幹事 極めて難しい問題で,どうお答えしていいか分からないというのが正直なところです。ただ,特別養子であって,戸籍上,他者からは分からないというシステムにしているのは確かだと思いますが,それと個人が自己の出自を知る権利というのは,先ほどの小池幹事の御指摘とは趣旨を異にするかと思いますが,なお別途の議論があり得るところであり,かつ,裁判という他者がそれを決めるという場合において,当事者がその情報を全く知らないというのも,どうかという余地はあり得ると思いますので,少なくとも注に載せるということについては,私は差し当たりは積極的に考えたいと思います。 ○道垣内委員 これまで,ほかの箇所でも「意思能力を有する限り」というのがよく出てきたのですけれども,これはどのくらいの年齢を考えているのでしょうか。告知はただ単にするだけだからと言えばそれまでなのですけれども,意思能力のない人に対して告知をしてもさほど意味はないとしますと,ここの規律は,原則として6歳未満である人に対して告知をするということに法的な意味を認めるという意味を持つような気がして,ほかのところの意思能力等の解釈に影響してくるのかなという気が若干するのです。6歳の判断能力,知的能力を考えたときには,ほかのところでは意思能力がないとされているのではないかという気がするものですから,若干気になりました。   難しい議論ではなくて,法技術的に,ここを書くということには別個の意味が出てくるのではないかという気が若干するものですから,気になったので発言しました。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。御意見はありますか。   異なる立場からの御意見も大体出されたように思いますので,今日の審議状況を踏まえまして,事務当局にどのような形にするか検討してもらうことにいたしましょう。   ほかに特別養子縁組の関係ではいかがですか。保全処分も含めまして何か御発言はございますか。   よろしければ,次の8,親権に関する審判事件で,先ほどの事務当局の説明ですと,手続行為能力に関して若干補足的な説明がありました。それから参加のところですね。それから,33ページの(注)の辺りでしょうか。そして,34ページの(7)即時抗告のアの(注),それからイの(注),ウの(注),いずれも同様の内容のものですけれども,補足的な説明がございましたが,その辺り,あるいはほかの点でも結構ですので,何か御意見はございますか。よろしいですか。   あとは,35ページの(8)親権又は管理権喪失宣告の特則の(注),それから36ページのイの(イ)陳述聴取,この辺りに関して若干の説明があったように記憶しますが,8全体に関していかがでしょうか。このような内容でよろしいでしょうか。   特別御意見がなければ先に進みたいと思いますが,9の未成年後見に関する審判事件から,11の扶養に関する審判事件までの説明をお願いします。 ○松田関係官 では説明いたします。   まず,9,未成年後見に関する審判事件につきましては,(1)の管轄では,未成年後見人の解任を含め,未成年被後見人の住所地の家庭裁判所の管轄とするものとすることを提案しております。   (2)手続行為能力のアでは,民法上,未成年被後見人が申立てを行うことができるものとされている事件では,意思能力を有する限り未成年被後見人が手続行為能力を有するものとすることを提案しているほか,(注)では,その余の事件においても,未成年被後見人が意思能力を有する限り手続行為能力を有するものとすることについて,検討することを提案しております。   イでは,意思能力を有する養親は,未成年後見人となるべき者を選任する事件において,手続行為能力を有するものとすることを提案しており,これまで御異論はございませんでした。   (3)参加では,特則を設けなくとも,裁判所の許可を受けて未成年被後見人は手続に参加することができますが,他方で,未成年後見に関する審判事件において,裁判所の許可を受けることなく,当然に手続に参加することができるものとすべきことも考えられますことから,ここではこの点を検討することを提案しております。   (4)陳述聴取等では,各審判事件における陳述聴取等を提案しております。   (5)審判の告知では,争いがありました未成年後見人等の選任のほか,この選任と同様に検討すべきであると考えられる未成年後見人等の解任につきましても,なお検討することとしております。   (6)即時抗告では,各審判事件の即時抗告について提案しておりまして,これまで特段の御異論はございませんでした。   (7)未成年後見に関する審判事件における申立ての取下げ制限では,御意見が分かれておりますので,両論を併記する形で提案しております。   (8)未成年後見人等に対する指示及び未成年後見の調査,(9)未成年被後見人又は子を懲戒場に入れる許可等に関する事項の指示等では,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。   (10)未成年後見人又は未成年後見監督人の解任の審判事件を本案とする保全処分では,成年後見人等の解任の審判事件を本案とする保全処分と同様の規律を提案しております。   続きまして,10の特別代理人選任に関する審判事件につきましては,(1)の管轄では,@,Aの嫡出否認の訴え及び親権者・未成年後見人の特別代理人につきましては,現行法の規律を維持することを提案するものでありまして,Bの成年後見人の特別代理人につきましては,現行法の規律を維持することを前提としつつも,なお検討することとしております。   (2)手続行為能力では,意思能力を有する限り嫡出否認の訴えを提起できる夫は,嫡出否認の訴えの特別代理人の選任について,また,意思能力を有する限り申立てをすることができる子,被後見人は,親権者,後見人の特別代理人の選任について,それぞれ意思能力を有する限り手続行為能力を有するものとすることを提案しております。   (3)の即時抗告では,嫡出否認の訴えの特別代理人について,家事審判事件における特別代理人と同様,その申立てを却下する審判について即時抗告をすることができるものとすることを提案しております。   次に,11の扶養に関する審判事件についてですが,(1)の管轄から(5)の審判前の保全処分まで,いずれも従前の部会資料から基本的に変更はございません。   なお,(2)の陳述聴取につきましては,扶養義務の設定及びその設定審判の取消しの審判事件を,いずれも調停をすることができない事項の審判事件と整理しましたことにより,扶養義務者となるべき者や扶養権利者がそれぞれ当然には当事者にならなくなりましたため,これらの者に対する陳述聴取の規律を手当てする趣旨でございます。   また,(4)即時抗告の即時抗告権者につきましては,第15回部会での議論の結果を踏まえまして,現行の規律を変更して,利害関係人を含めないこととしております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは順次まいりたいと思いますが,9の未成年後見に関する審判事件で何点かの補足的な説明がございましたが,37ページの(3)参加,許可参加を超えて,更に参加できる機会を保障するかというような辺りでしょうか。それから,38ページの(5)審判の告知の(注),それから(7)の,これは従来からの議論を整理した結果ですが,甲案,乙案で取下げの制限を設けるかどうかという辺りですが,9の未成年後見に関する審判事件に関して,どの点からでも結構ですので御意見をお願いいたします。   ございませんか。特別の御意見がなければ,ここに掲げられているようなことで取りまとめをしたいと思いますが,よろしいでしょうか。   よろしければ,次の10の特別代理人選任に関する審判事件で,先ほどの説明ですと,(1)管轄のBのところの亀甲括弧の関係などでしょうか。   よろしければ先へ進みますが,11の扶養に関する審判事件で,先ほどの補足的な説明ですと,(2)陳述聴取の@で,扶養義務者となるべき者の陳述を聞かなければならないという規律の趣旨が,扶養義務の設定の審判事件の性質決定との関係でこういう規律を設けているということ,あるいは即時抗告権者の範囲から利害関係人を除いているとか,そういった辺りについての補足的説明がございましたが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 先ほど申し上げた手続行為能力の問題を入れていただければと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。そこはよろしいですね。 ○金子幹事 はい。 ○伊藤部会長 それでは,その点はそのようにいたします。   それでは,よろしいですか。   次に,12,相続に関する審判事件から,14,遺産の分割に関する審判事件までの説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 それでは説明いたします。   12,相続に関する審判事件の(1)管轄は,従前の部会資料から変更はございません。   (2)手続行為能力では,相続の限定承認又は放棄の取消しの申述の受理に関する審判事件においては,実体法上,未成年者等も単独で確定的に取消権を行使し得ると解されていることから,民法の行為能力に関する規定を適用せず,意思能力がある限りこれを行うことができるものとすることについて検討することとしております。   (3)申述は,従前の部会資料から変更はございません。   (4)相続財産の分離の陳述聴取では,相続財産の分離を命ずる審判により特別清算の手続が始まり,相続人に与える影響が大きいと考えられることから,その陳述を聞くものとする甲案と,民法上,分離の要件としてその必要性が求められるかどうかについては争いがあることから,必要性を求めるかのようにとられる可能性のある規律を置くことは相当ではないとして,特段の規律は置かないものとする乙案とを併記することを提案しております。   (5)相続の限定承認及びその取消し並びに相続の放棄及びその取消しの申述受理及び受理の告知及び(6)引渡命令は,従前の部会資料から変更はございません。   (7)即時抗告では,イにおいて,部会における御意見を踏まえて,即時抗告権者の範囲について更に検討することとしているほかは,従前の部会資料から変更はございません。   13,推定相続人の廃除に関する事件について,(1)管轄,(2)手続行為能力及び(4)即時抗告は,従前の部会資料から変更はございません。   (3)陳述聴取については,推定相続人廃除の審判の効果の重大性にかんがみ,廃除を求められた推定相続人に対する手続保障の一つとして,当該推定相続人に対する必要的陳述聴取の規律を置くことを提案するものであり,この点について,部会資料12から変更はございませんが,第15回部会での議論の結果を踏まえると,廃除を求められた推定相続人に対する手続保障として,陳述聴取に加えて,家事審判に関する手続(総則)中の調停をすることができる事項についての審判事件の特則のような規律を置くことが相当と解されることから,その具体的内容については,(注)において,なお検討するものとしております。   14,遺産の分割に関する審判事件について,(1)管轄から(3)寄与分を求める審判の申立期間の指定等まで,基本的に部会資料12から変更はございません。   なお,(1)の管轄のただし書について,遺産分割の審判事件が抗告裁判所に係属した後に,寄与分を定める審判の申立てをする場合においては,民法に定める合一処理の要請から,現に遺産分割の審判事件が係属している高等裁判所に申立てをすべきであると考えられるため,単に「裁判所」としております。   (4)遺産の分割の申立ての公告・参加については,第15回部会での議論の結果を踏まえて,(注1)のとおり,現行家事審判規則第105条に定める遺産分割の申立ての公告及び参加の制度を維持するか否かについては,利害関係人の即時抗告権と併せて,なお検討するものとしております。   また,(注2)にありますように,遺産分割の申立方法については,現行家事審判規則第104条と同様の規律を置くことを予定しております。   (5)遺産の換価処分から(8)遺産分割禁止の審判の取消し・変更まで,いずれも部会資料12から変更はございません。   (9)遺産の分割に関する審判事件の特則は,従前の部会において,遺産の分割に関する審判事件のように,公益又は第三者の利害にかかわらない事件については,職権探知主義の規律を適用しないことも考えられるとの御意見があったことや,遺産の分割に関する審判事件においては,実務上,多数の当事者のうち一部が手続進行に不熱心である結果,事件が不当に長期化するなどの問題点があると指摘されていることを踏まえて,これらの問題に対応するための特則を置くことをなお検討するものとすることを提案しております。   (10)即時抗告のうち,アの遺産分割の審判事件については,第15回部会における議論の結果を踏まえて,利害関係人に即時抗告権を認めない甲案と,利害関係人に即時抗告権を認める乙案との両案を併記して提案するものとしております。   また,イの寄与分を定める処分の審判事件については,利害関係人の即時抗告権を除き,現行の規律を維持するものとすることを提案するものであり,利害関係人の即時抗告権については,アと同様,(注)において,なお検討するものとするとしております。   (11)審判前の保全処分については,部会資料13から変更はございません。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,41ページの12,相続に関する審判事件のところからまいりたいと思いますが,42ページの(2)の手続行為能力について,実体法との関係で,意思能力を有する限り手続行為能力を有しない者もできるということについての検討が掲げられ,(4)相続財産の分離の陳述聴取に関する甲案,乙案,これも従来の議論を踏まえてということですが,12の相続に関する審判事件に関して,どの点でも結構ですが,何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   そういたしましたら,44ページになりますが,13,推定相続人の廃除に関する事件ですが,先ほど補足的な説明がございましたのは,(3)の陳述聴取で,廃除を求められた推定相続人の陳述聴取を必要的なものとするということと,さらに,それに関する注として,調停をすることができる事項についての特則のようなものを置く方向でなお検討するという辺りのことについて,補足的な説明がございましたが,13に関してはいかがでしょうか。 ○増田幹事 これは質問なのですけれども,(注)のところの手続保障の規律の具体的な内容というのは,またいずれパブコメ後に提案されるということになるのでしょうか。 ○川尻関係官 そのように考えております。 ○伊藤部会長 いかがでしょう。よろしければ,14,遺産の分割に関する審判事件に関しては,先ほど,(1)の管轄のところに出てくるただし書にある「裁判所」というものの概念の説明がございました。また,45ページの(4)遺産の分割の申立ての公告・参加に関する(注1),(注2)の趣旨についての説明がございました。それから46ページの(9),遺産の分割に関する審判事件の性質を考えると,職権探知主義ということについての合理的な範囲での限定が必要なのではないかという辺りのこと。それから,(10)即時抗告のアの甲案,乙案の併記の辺りでしょうか。どの点でも結構ですので,御意見等をお願いいたします。 ○長委員 46ページの(9)で遺産分割に関する審判事件の特則を検討していただけるという注記が入ったわけであります。少し説明させていただきたい点がありまして,遺産分割審判事件につきましては,その事件の性質にかんがみて,実務ではいろいろな工夫をしています。争点整理をしませんと適正,迅速な解決はできないのですけれども,その争点整理の際に,当事者間に合意が成立した場合には,それによって争点を整理するということを長年にわたってしてきております。   それで,この注記に書かれておりますように,今後,この点について御検討いただけるのであるとすれば,そのような実務についても,結論としてどうなるか分かりませんけれども,検討の対象にしていただければ大変有り難いと思います。 ○金子幹事 もとより,実務上の工夫ということを抜きに議論できないことと思っていまして,例えば,実務上の工夫でうまくいっているものを法制化するということは,各方面でこれまで行われてきたことかと思いますので,その辺の工夫等,御紹介いただいて,また議論させていただければと思いますし,今,実務上ないようなものでも,何か画期的な方法があれば,それは検討の対象ということになろうかと思います。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○増田幹事 私も長委員と同様,ここのところは非常に興味がありまして,今,遺産分割の審理が非常に滞っているという現実がありますので,できれば迅速に進められるような何か新しいルールを考えていきたいと思っております。もし具体的な案が今何かあれば,項目だけでも教えていただければ有り難いのですが。 ○金子幹事 今,当局としては,こういう抽象的な書き方になっているのは,これ以上の案を示してパブリックコメントにかけるほど熟しているものはないということを表しているわけですが,何かあって,補足説明にでも言及できるようなものが今日御議論いただけるなら,それは検討したいと思いますが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 いや,私も今日の段階ではそういうものは持っておりませんで,今後楽しみにしております。 ○伊藤部会長 いやいや,余り楽しみにされないで,是非御提言をお願いしたいと思います。 ○増田幹事 はい。こちらも提言を検討いたします。   それから,破産管財人の当事者適格の件が以前から議論になっておったと思いますが,弁護士会のほうでもいろいろなところで調べてみたのですが,取扱いがかなりまちまちであるという結果です。裁判所によって,あるいは裁判官によって異なる取扱いがなされているということですので,一度,法務局へ登記ができるかどうかということも含めて,統一的な取扱いができるようにしていただきたいと思っております。 ○脇村関係官 増田幹事から御指摘があった点については,破産法の解釈も含めて,今,なお検討しているところでございます。   ただ,ここで本文あるいは補足説明に書かせていただかなかったのは,いずれにしてもこれは破産法の解釈の問題であって,家事審判法の中で別途そこだけ規定を置くという問題ではないと考えていますので,パブコメにも掲げる問題ではないと考えているからであります。   ただ,いずれにしても,増田幹事のほうからそういう指摘がございましたし,こちらのほうでも,破産法の解釈も含めて検討していきたいと考えているところです。 ○増田幹事 私のほうでは,家事審判法の中で解決するかどうかということもさることながら,この問題に対して統一的な解決を是非この機会にしておきたいと思いますので,その辺はよろしくお願いします。 ○伊藤部会長 問題の重要性と解決しなければいけないという認識は共有していると思いますので,何らかの検討をしてもらえるのではないかと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それではよろしければ,15,特別縁故者に対する相続財産の分与に関する審判事件から,18,負担付遺贈に係る遺言の取消しに関する審判事件までの説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 15,特別縁故者に対する相続財産の分与に関する審判事件は,すべて従前の部会資料のとおりでして,部会においては特段の御異論はございませんでした。   16,遺言の確認及び遺言書の検認に関する審判事件では,新たに(2)において,申立ての取下げの制限につき,取下げには裁判所の許可を得なければならないものとする甲案と,特段の規律は置かないものとする乙案とを併記しましたほかは,従前の部会資料から変更はございません。   17,遺言執行者に関する審判事件も,すべて従前の部会資料のとおりでして,部会においては特段の御異論はございませんでした。   18,負担付遺贈に係る遺言の取消しに関する審判事件は,基本的には変更はございませんが,受益者につきましては,その法的地位につき解釈が分かれていますことから,(2)陳述聴取及び(3)審判の告知の対象とするかどうかについて,更に検討することとしております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,まず15の特別縁故者に対する相続財産の分与に関する審判事件で,今,川尻さんから説明があったとおり,従前の審議を踏まえて特段の変更はないということですが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,16,遺言の確認及び遺言書の検認に関する審判事件で,(2)のところに,申立ての取下げに関して特別の規律を置かないという乙案と,裁判所の許可がない限りはできないという甲案とが併記されておりますが,16に関しては何か御発言はございますか。こういうことでよろしいでしょうか。   そうしましたら,17ですが,17も川尻さんの説明どおり,特段の変更はないということですが,何か御発言はございますか。 ○長委員 さかのぼってしまって大変申し訳ないのですが,50ページの16の(2),甲案,乙案というのがあります。甲案のほうでは「裁判所の許可を得ない限り」となっていて,乙案は特別の規定を置かないわけですけれども,この説明の中には,裁判所の許可にかかわらず,裁判所の許可を得ないと申立てを取り下げることができないという案,要するに取下げは全面的にできないという案の説明は,何か入ってくる可能性というのはあるのですか。 ○川尻関係官 今の御質問は,「裁判所の許可を得ない限り」という文言を外して,すべて一律に取り下げられないものとするという案を提示していない理由についてということでしょうか。 ○長委員 そういうことも考えられるという説明がどこかで入ってくる可能性はあるのかどうかという趣旨です。 ○川尻関係官 それは想定しておりません。例えば,申立てをした後に遺言者の方が生存していることが判明した場合ですとか,遺言書が滅失してしまったような場合には,取り下げられると考えられておりますので,その点をカバーするために,許可を得ない限りという要件が入っております。ですから,全く取り下げられないという規律は考えておりません。 ○長委員 今のような場合には少なくとも取り下げられるという説明は,入ってくる可能性はありますか。というのは,許可を得ない限りという場合の許可の要件というのが,裁判実務としては関心があります。今のような例があるから裁判所の許可という要件を入れたということであれば,非常に分かりやすいものですから。 ○川尻関係官 それでは,補足説明の中で入れる方向で,検討したいと思います。 ○伊藤部会長 16,17はよろしいでしょうか。   最後の18の負担付遺贈に係る遺言の取消しに関する審判事件の関係では,先ほど説明がございましたように,受益者というものの実体法上の地位との関係での検討の必要があるということですが,18に関してはいかがでしょうか。こういうことでよろしいでしょうか。 ○道垣内委員 全く感覚的な話ですけれども,負担付遺贈があったときに,義務者,遺贈を受けた者ですが,負担の履行を強制するときの手続というのは民事訴訟法による。そして,その管轄は被告の住所地になる。しかし,それと付随するというか,連続的な,その不履行を理由とする取消しが行われると相続開始時の家庭裁判所の管轄になる。仕方がないのですかね。 ○脇村関係官 すべてのケースを一つで書くのは難しいのですけれども,家事の場合は自庁処理もありますので,場合によっては適宜対応することになると思います。 ○伊藤部会長 それでは,よろしいでしょうか。   本日,時間が予定よりも若干余裕がございますけれども,もし他に特段のことがなければ,予定した審議事項は。どうぞ,杉井委員。 ○杉井委員 もう審議には関係ないのですが,今日お配りしました「子ども代理人制度(仮称)の必要性に関する報告」という資料について,若干コメントしたいと思います。   これは,飽くまでも第一東京弁護士会の子供の代理人制度研究部会で作られたものでして,もちろん内容的に,オーストラリアの調査などについては日弁連の私どもの調査とダブるところはありますけれども,飽くまでも独自に作られた報告でございますので,必要性という点ではいろいろ検討されておりまして,私どもの議論に大変参考になると思いましたので,参考資料ということでお配りいたしました。しかし,制度設計の中身については,私たちが前に提案したものと全く同じというわけではございません。その辺りが異なる内容もあるということも十分御留意いただいて,飽くまでもこれは必要性についての参考資料ということでお配り申し上げましたので,その点,よろしくお願いしたいと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。どうもありがとうございます。   それでは,事務当局から次回の日程についての連絡をお願いします。 ○金子幹事 御連絡いたします。   次回ですが,6月11日金曜日午後1時30分からで,場所がここから変わりますので御留意いただきたいと思います。17階の法務省の高検第2会議室というところがございます。17階に上がっていただきますと矢印等で案内がされると思いますけれども,場所が変わりますので,御留意いただければと思います。   次回の予定ですが,資料をまた速やかにお送りいたしますが,家事事件関係の残り,調停を中心とした部分につきまして,次回,資料を一つ用意いたしますので,御検討いただければと思います。よろしくお願いします。 ○伊藤部会長 ということですので,また次回,よろしくお願い申し上げます。   それでは,本日の審議はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 −了−