法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第22回会議 議事録 第1 日 時  平成22年6月11日(金)  自 午後1時31分                        至 午後5時31分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○伊藤部会長 予定の時刻でございますので,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第22回会議を開会いたします。   御多用のところ,ありがとうございます。   それでは,配布資料につきまして事務当局からの説明をお願いします。 ○脇村関係官 本日,配布しております資料は,事前に送付しております資料番号22−1及び22−2の家事審判手続に関する中間とりまとめのためのたたき台(3)と,本日,席上で配布しております部会資料23,家事審判手続に関する中間とりまとめのためのたたき台(4)でございます。なお,資料22−1につきましては,一部,追加部分がございまして,これについては席上で配布させていただいております。内容につきましては後ほど説明させていただきます。 ○伊藤部会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。   前回は,部会資料21の家事審判手続に関する中間とりまとめのためのたたき台(2)まで終わりましたので,本日は,まず部会資料22の家事審判手続に関する中間とりまとめのためのたたき台(3)に基づいて審議をしたいと存じます。そこで,事務当局から第5,家事調停に関する手続の1,家事調停事件の範囲から6,付調停までについての説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   1の家事調停事件の範囲では,家事調停事件の範囲につきまして,現行の規律を原則として維持しつつ,扶養義務の設定及びその取消し並びに相続人の廃除については,調停事件の対象としないということとしております。   第15回部会においては,親権又は管理権の喪失の宣告及び推定相続人の廃除及びその取消しについては,調停を成立させることにより手続を終了させることができないとしても,話合いにより事案を解決するために,調停手続を活用することができるようにすべきとの意見がありましたが,調停を成立させることができない事件について,調停手続を利用することができるものとすることは,調停手続の性格をあいまいにすることになり,相当でないと考えられることや,話合いの機会を持つことが時期の解決のために有効な場合には,審判手続の中で話合いをしたり,別途,親子関係調整又は親族関係調整の調停事件の申立てを促し,その中で話合いを行えば足りると考えられますことから,ここでは特段の手当てをしないこととしております。   また,夫婦財産契約による管理者の変更及び共有財産の分割の事件を調停をすることのできない事件とするかどうかにつきましては,前回の御議論を踏まえまして,なお,検討することということにさせていただいております。   2の調停機関では,現行法の記述を原則的に維持し,調停委員会が調停手続を原則として行うということ等を提案しており,これまで特段の御異論はございませんでした。   3の調停委員会の(1)では,調停委員会の構成等について,現行法の記述を維持することを提案しております。(2)では,調停委員会が調停手続を行う際の調停委員会の権限について提案しております。これまでの部会資料では各項目ごとに記載をしておりましたが,ここでは一括して記載をすることにさせていただいております。(3)では,調停委員会が調停手続を行う際の家事審判官の権限について提案をしております。(4)は,家事調停委員の権限について,現行法の記述を維持することを提案するものでございます。   4の家事調停委員では,家事調停委員の任命等について,現行法の記述を維持することを提案しており,これまで特段の御異論はございませんでした。   5の調停前置主義では,現行法の規律を維持することを提案しており,特段の御異論はございませんでした。   6の付調停では,現行法の技術を原則として維持しつつ,調停に付した裁判所は自ら調停することができるようすること等を提案しております。   第15回部会においては,地方裁判所及び簡易裁判所においても,自ら家事調停ができるようにすることについても検討する必要があるとの御意見がございましたが,地方裁判所及び家庭裁判所とは別に,家事事件を取り扱うにふさわしい機能等を有する家庭裁判所を設け,そこに家事事件を取り扱わせていることからしますと,地方裁判所及び簡易裁判所において家事調停の目的である事項について,家事調停を成立させることができると考えることは,相当ではないと思われますので,地方裁判所及び簡易裁判所における家事調停については認めないということにしております。 ○伊藤部会長 それでは,順次,審議をお願いしたいと思います。   まず,第5の1でございますが,家事調停事件の範囲に関して,ここに関しましてはただいま脇村さんから補足的な説明がございました第15回部会の関係で,親権又は管理権の喪失の宣告及び推定相続人の廃除及びその取消しに関する議論がございましたが,考え方としては,そういったものを家事調停事件の範囲としないということにしているという説明がございました。その辺りにあるいは御意見があるかと思いますので,まず,1の家事調停事件の範囲についてはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。もちろん,先ほどの説明やそれから補足説明にもございますように,実際上,いろいろ話合いをするという余地があることは当然のことで,まず,そのための仕組みもないわけではありませんが,正面からやはり調停事件の範囲に含めるというのは,なかなか難しいように思います,というのが先ほどの説明でしたが,そういうことで御了解いただけますでしょうか。もしよろしければ,御了解いただいたことにさせていただきます。   次に,2の調停機関,3の調停委員会の辺り,あるいは4の家事調停委員まで含めて,何か御意見,御質問等はございますか。 ○山本幹事 細かい書き振りのような話で恐縮なのですが,2ページの(3)のイのCのところなのですが,これは現行法でもこのようになっていると承知はしているのですが,「家庭裁判所調査官による事実の調査を相当する場合を除き,相当であると認めるときは」という,この書き振りが,これは恐らく条文としては調査官に事実の調査をさせても,裁判所書記官に事実の調査をさせても,いずれも相当であるという場合があり得ることを前提としているような書き振りのような気がするのですが,何となく調査官による事実の調査が相当であれば,それは調査官にやらせるべきで,書記官にやらせるのは必ずしも相当でないような気もするようなこともございまして,恐らく気持ちとしてはまず調査官による調査をやるべきだという気持ちは分かる感じもするのですが,ちょっとこの書き振りがどうかなという印象を持ちました。 ○伊藤部会長 その点,何か事務当局検討をしていることがあればお話しください。 ○脇村関係官 今,山本幹事がおっしゃったように,原則としては家庭裁判所においてはできれば調査官調査というのが原則だということを表すために,現行の規則はこうなっているといるところでございます。御指摘を踏まえて,少し検討させていただければと思います。 ○伊藤部会長 よろしいでしょうか。表現がどうなるかということもありますが,なるべくでしたら,分かりやすい方がいいことに決まっておりますので,少し検討してもらうことにいたしましょう。   ほかにいかがでしょうか。2ないし4,家事調停委員までのところですが,よろしいでしょうか。   そういたしましたら,5の調停前置主義については何か御意見等はございますか。   特段ございませんようでしたら,6の付調停で,先ほど脇村さんからの補足的な説明は,地裁,簡裁の自庁調停に関する点についての説明がございましたが,その点でも結構ですし,また,他の点でも結構ですが,付調停に関しては何か御意見はございますか。 ○山本幹事 度々恐縮です。6のAのところなのですが,前回も私は発言したような記憶があるのですけれども,現状は相当であると認めるときは,いつでも家事調停に付することができるということになっているのですが,当事者の手続選択権といいますか,そういうものとの関係で,やはり最低限,当事者の意見を聴くというのがあってもいいのかなと思っております。恐らく趣旨としては,あるいはそれは規則事項であるという御判断なのかなという気もするのですけれども,民事訴訟法でも争点整理の弁論事務手続に付したり,あるいは書面による準備手続に付したりする場合には,当事者の意見を聴いて事件を付することができるというようなことになっておりまして,調停前置主義に反して申し立ててきたような@の場合は,それは当然,当事者の意見を聴かずにできるということでよろしいかと思うのですけれども,Aのような任意的に付するような場合には,やはり当事者の意見を聴くというのがあってもよろしいかなと思っております。 ○伊藤部会長 ただいまの山本幹事の御意見に関してはいかがでしょうか。 ○古谷幹事 今の手続選択権という観点からの御意見は,もっともとも思うのですけれども,一方で運用の問題としまして,申立て後,すぐに調停に付するようなケースも結構ございまして,そのときに必ず意見聴取するという規律になりますと,やはりやりにくいと思います。一律に意見聴取するという形になると,実務的には少し難しいところがあると思っております。 ○伊藤部会長 ただいまの古谷幹事からの御発言ですと,調停に付する手続段階に様々な段階があることを考えると,当事者の意見を聴くことを義務付ける規律を設けることが,かえって円滑な運用を妨げるのではないかという御趣旨かと思いますが,他の委員,幹事の方の御意見はいかがでしょうか。 ○岡崎幹事 民事調停と家事調停で同様の規定をするかどうかというのは,また,別問題かもしれないので,これから申し上げることはやや筋違いかもしれないのですが,民事調停を所管している私どもの立場からしても,事前の意見聴取というのは,ちょっと重過ぎるのではないかと考えております。例えば,今,訴訟を民事調停に付する運用を全国的に行っているものの一つとして,過払金事件を調停に付するという運用がございます。これは,第1回期日を指定するときに,原告側には事実上,調停に付することについての意見を聴取することになると思うのですけれども,他方で被告側の業者に対して,その段階で意見を聴取するというのは,実際上,なかなか困難であると。   業者の側は非常に大量の事件を抱えておりまして,書記官から連絡をしようにも,そう簡単にはつかまらなかったりとか,あるいは事実上,放置されてしまったりだとかということで,第1回期日を指定する段階で被告側の意見を聴取するというのは,実際上,難しいと思われます。こういうような過払いの事件というのは民事調停の中でもやや特殊な類型で,通常,付調停にしても調停期日は一回で終わることが多いわけなのですが,そのような非常に簡易な調停の活用の仕方というものもある中で,一つ一つ意見聴取を義務付けていくというのは,やや重過ぎるのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 分かりました。   他の方はいかがでしょうか。ただいま,山本幹事の御意見に対してはやや,古谷幹事,岡崎幹事からは趣旨は理解できるけれども,手続の円滑な運用という点からすると,問題があるというような御指摘がございましたが。 ○山本幹事 特段,他の委員,幹事からの御賛同がなければ,固執するつもりはもちろんありませんが,ただ,今のお話はもしあれであれば,第1回の期日,相手方に通知がされる前の段階では申立人の意見を聴いて,それで付調停にするということでも足りるのかなと。つまり,相手方の手続選択権というのは,一回やれば,その後は何か生じるような気がするのですけれども,申立て段階でいきなり調停を申し立てられれば,相手方はそれに応じるということですので,その段階では申立人の意見を聴くということでもよろしいかなと思いました。 ○杉井委員 私もそれほどこだわるものではないですが,申立代理人の立場としてはやはり調停に付するなら調停にしたいのだけれども,という連絡を頂きたいなと思うのですね。実際,行ってみたら調停だったというような,そういうことではやはり困るので,事実上,本当にそう連絡を頂いているとは思うのですけれども,だとしたら,申立人の意見聴取というのはあってもいいのかなという気がいたします。 ○増田幹事 似たような話なのですけれども,もともと調停ができる事件をあえて審判から申し立てている場合には,申立人の意思としては審判手続を求めていることが明瞭なわけなので,それに反して調停に付するということであれば,やはり意見聴取があった方がいいのではないかと考えます。 ○岡崎幹事 今の両先生方の御意見も理屈としては大変よく分かるところでございます。実際問題としても原告側が調停手続に了解もしていないのに,調停ができるということはなかなか難しいものですから,先ほど過払いの運用の例を挙げたときにも申し上げましたとおり,裁判所から原告側には調停に付することについての意見を求めるという扱いが大部分であろうかと思ってはおります。ただ,例えば過払いの場合でも,訴訟にするか,調停にするかの優劣を検討しないまま,訴訟が通例であるということで訴訟に持ってこられるケースというのも多いと考えておりまして,意見聴取を必ずしなければいけないというのはどうかと。運用としては意見聴取をすることになるのだろうなとは思いますけれども,それを条文上,必ずしなければならないと規定するところまでしなければいけないのかは,十分,検討する必要があろうかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。   それぞれ,結論においては若干違う内容ですが,合理的な根拠を示していただいた御意見ですので,検討していただくということでよろしいですか。ありがとうございました。それでは,その点は事務当局にただいまの二様の御意見を踏まえて,検討してもらうことにしましょう。   付調停の関係はほかにはございませんか。   もしよろしければ,7,調停手続の(1)管轄から(9)調書の作成まで,説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 それでは,説明いたします。   7,調停手続の(1)管轄については,本日,席上配布いたしました部会資料22−1(追加)のとおり変更させていただきたいと存じます。提案しております規律は,原則として現行の規律を維持するものであります。ただし,イのAは現行家事審判規則第129条の2第2項の規律に相当するものですが,同項は土地管轄権を有する地裁,簡裁に対する移送と,土地管轄権を有しない地裁,簡裁に対する移送について,その要件を同一としておりましたが,両者は要件を異にするべきであると考えましたので,そこは区別することとしております。   (2)手続指揮権は,調停委員会における家事調停手続の手続指揮権について,現行法の規律を維持することを提案しており,これまで特段の御異論はありませんでした。   (3)電話会議システム等のア,期日における手続の本文@は,証拠調べにおいては民事訴訟法第204条等の特則が適用されて,この規律が適用されない旨を明記しましたほかは,従前の部会資料から変更はございません。本文Aは,期日への出頭について民事訴訟法第170条第4項と同様の規律を置くものとすることを提案しております。   イ,期日における調停の成立では,民事訴訟法第37条第3項の趣旨を踏まえて,離婚,離縁又は親権者の指定若しくは変更に関する事件の調停は,成立させることができないものとしつつ,従前の部会において調停を成立させることができる事件の範囲については,多様な御意見がありましたことから,注においてこの点を更に検討することとしております。   なお,この部会資料の本文では,合意に相当する審判における当事者間の合意について,電話会議システム等を用いた期日でも,合意をし得ることを前提としておりますが,もしこの点につき何か御意見がございましたら,頂戴できればと考えております。   (4)家事調停事件の申立てのア,申立ての方式は従前の部会資料から変更はございません。   イ,併合申立てでは,これまでの議論を踏まえまして,併合申立てについての規律を置くものとする甲案と,置かないものとする乙案の両論を併記しております。   ウ,裁判長の申立書審査権では,家事審判手続と同様の規律を置くものとしつつ,呼出費用の予納がない場合についても,注において更に検討することとしております。   エ,申立ての却下は,従前の部会資料から変更はございません。   オ,申立書の写しの送付等では,基本的には家事審判手続と同様の規律としつつ,家事調停手続の期日を経ないで調停をしないものとして手続を終了させる場合には,申立書の写しを送付する必要はないと考えられますので,その旨,規律することとしております。   カ,申立ての変更では,審判事項に係る調停事件において,審判に移行する対象となる事件を明らかにしておく必要がありますことから,民事訴訟法第143条を参考に規律を置くものとすることを提案しております。   (5)中断及び(6)受継のア,法令により手続を続行する資格のある者がある場合は,従前の部会資料から変更はございません。   イ,法令により手続を続行する資格のある者はないが,別に申立権者がある場合については,調停手続の個別性等の観点から,このような規律を置くことは相当ではないとの御意見がありましたことから,特段の規律は置かないものとしております。   (7)中止から(9)調書の作成までは,現行法の規律を維持するものとすることを提案しており,これまで特段の御異論はありませんでした。 ○伊藤部会長 それでは,まず,7,調停手続の(1)の管轄ですが,今,御説明がありましたように,本日,お手元にお配りした,こういった内容のものに置き換えていただくということですが,何か(1)管轄等に関して御意見等はございますか。 ○山本幹事 質問なのですが,(1)のAなのですけれども,遺産分割の調停事件が高等裁判所に係属しているときに,寄与分を定める調停事件の申立てがあるというようなシチュエーションですが。 ○伊藤部会長 ここはどうでしょうか。 ○松田関係官 抗告審の段階で寄与分の申立てがあった場合ということですね。 ○山本幹事 そうです。 ○松田関係官 そういう場合もあり得ると思いますので,確かに家庭裁判所だけに限ってしまうとまずいかなと思いますので,もう少し検討させていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 どうも御指摘をありがとうございました。   ほかにはいかがですか。 ○増田幹事 ここは,従前,申立人の住所地でもできるようにした方がいいのではないかとか,あるいは審判の管轄のある場所ではできてもおかしくはないのではないかというお話をしていたかと思いますが,一応,(3)の電話会議システム等の活用が入っていますので,問題は少なくなったように思います。また,(3)のところでは若干,意見を述べたいと思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。   そうしましたら,(1)管轄等について御審議をいただいたことにして,電話会議にいく前に(2)の手続指揮権についてはよろしゅうございますね。   そうしましたら,(3)の電話会議システム等で,先ほどの説明では証拠調べの期日を除くということとか,それから,特に23条審判の場合の電話による合意に関してはどうかというような問題の提起がございましたが,その辺りでも結構です。それから,増田幹事は先ほど御発言があると承りましたので,もし,よろしければどうぞお願いします。 ○増田幹事 (3)のイですが,離婚,離縁又は親権者の指定等,いわゆる身分行為については調停の成立ができないということですが,例えば受諾書面だとか代理人の場合に認めないというのとは問題が違いまして,身分行為意思と当該身分行為との同時存在というのを満たすことができ得る場合だと考えております。本人確認と真意の確認が担保されるのであれば,特に調停の成立を妨げるようなことはないのではないかと思います。ですから,例えば前に話題に出ましたような遠隔地の場合に自分の住所地の裁判所に出向いて,テレビ会議で成立をさせるなどの運用までできないと決めつける話でもないだろうと思います。別案を加えていただければと思います。 ○伊藤部会長 増田幹事から本人確認,意思確認のことについての十分な注意を払えば,一律にこういったものを電話会議システムの対象から除外する合理的理由はないのではないかという旨の御指摘がございましたが,いかがでしょうか。 ○古谷幹事 今の増田幹事からの御発言にも関係するのですけれども,本人の真意の確認が確保できればいいというのは,原理的にはそのとおりかも分かりませんけれども,環境整備が十分にあって初めて成り立つというところもあります。人訴法37条もその辺りを踏まえてのことと思うので,調停ができるという形にすることにつきましては反対でございます。   それから,もう一点,先ほど23条審判の関係でも利用できるという考えはどうかという御提案がございましたけれども,この点につきましても同様の理由から消極に考えるべきではないかと考えております。真意の確認は,本当に慎重にされるべきだということが一点と,23条審判におきましては,実際上,事実の調査を行うことがありまして,その際には,実際に当事者に出てきていただいて行うことが合理的であると思いますので,消極の意見でございます。 ○伊藤部会長 古谷幹事の御意見ですと,23条審判の基礎となる合意に関しても,この電話会議システムの利用では問題があると。それから,増田幹事の御提案に関しても問題があるので消極だという御意見がございましたが,いかがでしょうか。 ○三木委員 やや話がずれるようで恐縮なのですが,私は純粋にテクノロジーの問題ですが,電話会議でなければいかんという規律を今度の改正でも維持することの合理性がよく分からないというところがあります。それは今の真意確認とも関係するのですが,民事訴訟法の平成8年改正のときには,電話会議システムしか現実性が高くなかったのに対して,現在,急速に映像の送受信と音声の送受信を合わせたものは,容易に構築できるようになってきているような気がしまして,こういう場面でも何と呼ぶのか,正確な名称は知りませんが,テレビ会議システム的なものをまず考えられないかというのが素朴な疑問です。   もし,それが可能だとしたら,もちろん,直接,出頭してもらって,面前でやるのと100%同じかどうかは御異論があるかもしれませんが,ただ,私の体験とかでは非常に高性能といっても,最近,それほどお金は掛からないようですけれども,それで映像でやった場合には,出頭してもらったのと同じ程度の真意確認というか,臨場感といいますかがあるような気がしますので,その辺,直接,御質問に答えておりませんが,少し何かお考えを聴かせていただければと思います。 ○伊藤部会長 今の三木委員の発言に関しては,事務当局は何かありますか,特にテレビ会議について。 ○川尻関係官 今,提案している仕組みというのは,電話会議システム等ということで,いわゆるテレビ会議システムも含んだものとして提案をしております。 ○三木委員 そうであれば,私のイメージかもしれませんけれども,ただ,頭に電話会議と出ていますから,多くの方が電話会議をメーンにイメージして,議論されているのではないかと考えたわけです。実は私の想像ですけれども,電話会議というのを表に出さずにテレビ会議を出した方が,それであれば分かりやすいような気もしますが,それはともかく,テレビ会議的なものでも真意確認等の関係で駄目だということの御論拠があれば,お聴かせいただければと思います。 ○古谷幹事 テレビ会議の制度にもよる話かと思いまして,例えば何かスカイプみたいなものであれば,後ろの画像に映らないところにだれかがいたりとか,そのようなこともあるのかも分かりませんので,状況によるのかなとは思います。 ○三木委員 この問題では余り私もこだわったり,何か強い意見を言うつもりはないのですが,現在,企業とか,あるいは少なくとも日本はよく知りませんが,外国の一部の官庁とか,極めて重大な企業の政策を決定したりとか,かなり重要性の高い会議あるいは大勢がかかわる会議でもテレビ会議で行われているので,テレビ会議だから簡単なことしかできないというのは,徐々に世界の常識からは外れてきているという気がして,そんな大上段の議論,しかも法律論ではないことを言うつもりはないのですが,御検討いただいて,これから制定して運用していく法律ですので,多少,20世紀につくられた現行民事訴訟法の発想を乗り越えていく必要もあろうかと思いますが。 ○菅野委員 今のお話で思い至ったのですけれども,一般的にだれが話すかが決まっていて,その会議に参加する人も皆それぞれ決まっている場合,あるいは一定の組織の中で会議をするという場合,そういう場合に非常に重要なことでも,テレビ会議なり電話会議でいろいろ行うことができるということと,全く別に初対面であり,あるいは敵対同士であり,全然別々の人たちがそれぞれの機器の前で話している場合とでは,事柄の重要性の問題ではなくて,何か局面が全然違うような意識が実務家としてはあるのですね。正にこの人が本当にその人なのかどうかというような問題は,これが会社の例えば取締役会とか契約交渉等を行っているときには,普通は余り起きないことですね。あるいはその人が本当に一人で自分の意思でその場に来て,きちんとしゃべっているのかどうか,それとも実は横なり何なりに別の人がいて,何か押さえ付けているのかとか,そういう懸念も,通常の会議と非訟手続とでは全然別で,大分,事柄の重要性ということとは,危ぐしているところの問題状況が違うような気がいたします。余計なことかもしれませんけれども,その点も御考慮の上,御検討くだされば幸いと思います。 ○古谷幹事 ビジネスの局面と身分関係の局面というのは,やはり違うのではないかという感覚も持ちました。私が古い人間なのかも分かりません。 ○増田幹事 私も菅野委員,古谷幹事の御懸念というのは分からないわけではないです。ですから,私が想定している場面というのも,基本的に代理人の付いている事件で,遠隔地の裁判所に出頭してという場面を想定しておりますので,そこは運用でカバーするということであって,一律に否定されてしまうと,そういう運用もできなくなるということを申し上げているつもりです。 ○伊藤部会長 分かりました。よろしいですか。   事柄の重要性から見て,また,裁判官あるいは調停委員会の面前で手続が実施されるというものと比較すると,言わば手続の精度が電話であれ,テレビであれ,若干低くなるということは否定できないと思いますので,しかし,そのことを前提にしても,先ほどの増田幹事の御発言にあったように,一律に対象としないとしておくのがいいのか,それとも何らかの運用の可能性を残すような形にしておくのがいいのか,そういうことを含めて,事務当局になお検討してもらうことにいたしましょう。ありがとうございました。 ○道垣内委員 文章の読み方なのですけれども,電話会議システム等のアの@のところなのです。すなわち,「調停委員会及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話することができる」というのは,三つの局がすべて同時にオンになっているということを前提にしているのでしょうか。民事訴訟法の場合には,三つの局の全部が同時にオンになっているということが必要なのかもしれませんけれども,調停の場合に一方だけを呼び出すという手続をするとき,同一期日内でも両当事者を分けて手続を行うというときに,この文章では必ずしもそうは読めないのではないかという気がするのです。民訴の条文と若干変える必要があるのか,ないのかというのをお伺いできればと思うのですが。 ○伊藤部会長 今の道垣内委員の御指摘の点はいかがでしょうか。確かに調停手続の特質のようなものはあるかもしれませんね。では,そこは検討してもらうことにいたしましょう。ありがとうございました。おっしゃる趣旨は十分理解していると思いますので。 ○川尻関係官 一点,確認したいのですけれども,従前,期日におけるイの方,調停の成立の場面では非常に御意見がバリエーション豊かに分かれておりまして,増田幹事がおっしゃられるとおり,全部できてよいのではないかという御意見と,それから,やはり人訴の規定があるので,その並びになるのではないかという御意見と,それから,全部駄目なのではないかというような御意見もあったかと記憶しております。ただ,今回お話を伺っておりますと,今述べました最初の二つの考え方というのは拝聴いたしましたが,一番最後の全部駄目なのではないかというような御意見はございませんでした。そこは,いかがでしょうか。中間試案をかける段階において,そこも含めてなお検討するという形にした方がよいのか,あるいは,それは落としてしまってもよろしいでしょうか。 ○伊藤部会長 私の印象でも,川尻さんがおっしゃった全部駄目という第三の立場の御意見はなかったように思いますが,そういう確認でよろしいですか。もちろん,そういう御意見があれば。 ○高田(裕)委員 中間試案の段階では,その可能性もお聴きになっていただいた方がよろしいのではないかと思います。先ほどの論点にかかわりますけれども,いわゆるテレビ会議システムか,電話会議システムかによっても違うような印象もございますが,真意確認が調停の成立において核心部分であるとすれば,なお,そうした規律の可能性は否定できないと思いますので,私自身はパブリックコメントの段階では,なお残していただいた方がよろしいのではないかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○金子幹事 もう一点だけ確認させてください。いわゆる23条審判における合意については,古谷幹事の方から恐らくイの離婚,離縁等の方と同様の趣旨で合意の成立を電話会議システムあるいはテレビ会議システムで確認することについては,消極の意見があったのですが,その点についてはほかの方が特に言及されなかったのをどのように受け取ったらいいのかということで,もし御意見があれば伺いたいと思います。古谷幹事と同様の意見というものありましょうし,これよりは少し緩やかに,ほかに事実の調査の機会があること,むしろ事実の調査をするということをもって,少し合意のところはゆるやかに考えるという考えも,あるいはあるかもしれないので,その辺の御意見を伺えればと思います。 ○伊藤部会長 では,先ほどの高田委員の御発言はそういうことでよろしいですね。それに付け加えまして,ただいま金子幹事から発言がございました,いわゆる23条審判の基礎となる合意について,それを電話会議システム等で調達する余地を認めておくのがいいのか,それとも,それは一般的に排除する方がいいのか,先ほどの古谷幹事からの御発言との関係で,もし,ほかの委員,幹事で御発言があればお願いしたいと思います。 ○杉井委員 私はやはり23条審判の場合にも,テレビ会議システム等が利用できるということでいいのではないかと思うのですね。それで,まず,23条審判のとき,結構,例えば親子関係や何かで,その親子でだれが親かということは,それ自体は非常にシリアスな問題ですが,意外と23条審判でまとまる場合というのは,当事者同士では結構はっきりしているのですよね,だれが親かということは。   でも,しかし,形式的にどうしても審判というものがなければ,戸籍の方が受け付けてくれないということで申し立てる場合が結構あるわけで,そういうときに相手方とされた人がわざわざ裁判所まで出向くということは非常に苦痛だし,行きたくないとかという,そういうふうな意向が出されることも多いわけで,そして特に遠隔地の場合,そういったときにこの電話会議システム等を利用できるということであれば,やはり当事者のあれにもかなうし,迅速な解決ということにつながると思いますので,私はその点,賛成です。 ○伊藤部会長 およそ一般的に排除してしまうことは,不適当であるという杉井委員の御発言がございましたが,いかがでしょうか。 ○長委員 23条審判をする事件は,合意が成立し,かつ事実関係が確認できることが必要になるわけですけれども,事実関係の確認については,調停委員会が直接,容易に調べることができるような場合に限って手続を進めるということが,恐らく基本になってくるのではないかと思います。確かに遠隔地の方の場合についてどうするかという問題はあるのですけれども,直接,おいでいただいて,事実関係について心証を形成できることが23条手続を採る基盤のようになっていると考えたときには,合意自体をどうするかという問題と事実の調べをどうするかという二つの問題があるのですけれども,一体として考えますと,当事者の方が来ないまま,この手続で完結させるというのは,考えにくいかなという印象を持ちます。 ○伊藤部会長 もちろん,調停委員会として相当と認めるような事案に限られるわけですが,やはりそれでもなかなかそういうことは想定しにくいということでしょうかね。 ○長委員 調停委員会としては直接,お会いしてお聴きするということができますと,安心して結論が出せるというように判断するのではないかと思うのですね。おいでにならないということになれば,テレビ会議システムで調べるというのではなくて,やはり調査官調査なり,少し重い手続を採らざるを得ないことになりますので,そういう点からすると,少し難しい点があるかなという印象を持ちます。 ○伊藤部会長 これも両様の御意見があるようですが,他の委員,幹事の方はいかがですか。 ○山田幹事 実務上,テレビ会議システムを使った場合に,どの程度,心証が取れるのかということがなおリアルには分かっていないもので,余り自信はないのですけれども,ただ,これがもし適用されるとしましても,今,御指摘がありましたように相当と認める場合に限定をされるということと,民事訴訟法でも証拠調べの際に,テレビ会議システムを使っているということですので,一定の蓋然性があるだろうということを前提といたしますと,排除するということは必要ないのではないかと思います。今後はテレビ会議システムの精度が上がっていくということも期待できるところですし,ということを考えますと,少なくとも排除はしない方がいいのではないかというのが私の現在の意見です。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○豊澤委員 離婚,離縁という当事者が合意でできる事項であっても,その合意の成立は電話会議システムではできないとされており,その並びで考えられていると思います。23条審判の対象となっておりますのは,それ以外の言わば当事者の処分を許さない身分関係であり,これを人訴の簡易版で行うということになりますけれども,審判が出れば確定判決と同じ対世的な効力を持つということで,ここでの合意はこうした身分関係について重大な効力を持つ審判をする前提となっています。この辺りのところが,裁判所あるいは調停委員会からすると,養育費のようなお金に係る調停等とは大分違うと感じられると思います。逆に,離婚,離縁等のように当事者の任意の処分が可能な身分行為とも,やはり違うところがあるのではないか。その辺の実務的な感覚みたいなものが背後にあるのではないかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。これも結局は23条審判というものの本質的なところに関する考え方に左右されるのかと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか。それでは,あとはそういった辺りも踏まえまして,事務当局で検討してもらうことにいたしましょう。   それから,それ以降,(4)家事調停事件の申立てから,先ほど説明がございました7ページの調書の作成の辺りまでで,何か御意見がございましたらお願いします。 ○古谷幹事 5ページのウの裁判長の申立書審査権のBの下にある注でございますけれども,呼出費用の予納がない場合の規律につきましては,実際,手当てがされないと進行に困難が生じますので,規律を置くことに対しては賛成でございます。それから,申立書の送付費用の関係で,この予納がない場合についても,同じような問題が生ずるかと思いますので,この点についても手当てを検討いただければと考えております。 ○伊藤部会長 分かりました。   ただいまの古谷幹事からの御発言に関しては,何か他の委員,幹事で御意見等はありますか。そうしましたら,その点はよろしいですね,事務当局で検討してもらうということで。 ○増田幹事 しつこいようですけれども,DV保護命令若しくはDV保護措置に関する住所不明の当事者の呼出し等をどうするかという点については,ここになるのか,あるいは調査のところになるのか分からないけれども,何からの形で引き続き御検討をお願いしたいと思います。 ○川尻関係官 確かに,当事者が調べてもどうしても調べられないというような状態になっていて,かつ,そこを調べれば出てくるはずなんだというようなことが具体的に分かっていれば,裁判所の方も,事案に応じて調べるということはあろうかと思います。ただ,DV事案のようなもので,明らかに現在も暴力を振るっている夫の方から,妻の所在を捜したいという濫用的な意図が透けて見えるような申立てがあった場合には,裁判所の方としても,捜すわけにはいかないのではないかと思いますので,なかなか明文の規律としては,想定することは難しいと考えているのですけれども。 ○増田幹事 私が申し上げているのは「できる」とする規定なのです。ですから,裁量により,要するに代理人がついて本当にまじめに紛争解決を求めている場合にそういう手段を設けるということです。法律で手段を設けることによって,裁判所が探索することも合法化されるし,的外れな非難は招かない。嘱託された先の方でも裁判所が聴いてくるということは,法令に基づく照会だから,それに対して答える義務が発生し,答えたところで責任は発生しないと。そういう形にするということであって,何でもかんでも照会しろとか,しなければならないと言っているつもりは全くないわけですね。ですから,そこは裁判所の裁量が働く余地をつくっていただきたいということです。引き続き御検討で結構です。 ○長委員 前回にそういうことが問題になりまして,少し考えてみたのですけれども,仮にDVの事案で,ある市役所ないし区役所にその当事者の住民票があるとします。それを弁護士さんが把握をなさって,しかしながら,被害者であるという当事者の方から非公開の申出があったので開示できていないという例をお考えになっていらっしゃるのですね。   そこまで把握された場合には,裁判所が探索的に進めるというのではなく,その事案について申立人と裁判所とが協力し合って解決できるような方向に進めていくということは,考えられるところだと思います。実際の場合でも,裁判所だけで何かをするということは無理なので,当事者がそれなりの調査義務を果たして,裁判所にかなりの手掛かりを与えていただいた場合には,裁判所も協力して解決したという例があります。   ただし,その場合に裁判所に調査義務があるということを条文化するのは非常に難しいことだと思います。何よりも申立人の調査が前提になります。実務では,それなしに照会等をするということはしていないと思います。協力をし合ってやっていくということであれば,運用の問題としてあり得ることですし,現実の実務でも積み重ねているところだと思うのですが,条文化するということに関しては,いろいろな事例に応じて進めていかなければいけないものですから,適当ではないと考えています。 ○伊藤部会長 この問題は従来からいろいろな形で議論をしていて,なかなか恐らく増田幹事あるいは長委員が想定されているようなある種の事件については,そういう形での解決が望ましいし,また,すべきだという認識は違いがないとは思うのですが,そういったことを基礎にして,場合によっては規則にそういう法的な規律を設けるかどうかというところは,なかなか意見が従来からまとまらないところなのですけれども,いかがでしょうか。 ○増田幹事 今,長委員が言われたことと私の考え方は,さして遠くはないのだろうと思います。しかし,立法の一番のメリットとしては,やはり照会を受けた側が安心して裁判所に回答をすることができるという辺りかと思います。特に家事審判事件,家事調停事件について,ほかの事件と違って進めることができるだろうと思う積極的な理由は,記録の閲覧・謄写がフリーではないところにもあります。民事訴訟とか民事調停ですと,相手方が必ず記録を閲覧・謄写することができますので,見られては困るということがあると思いますが,ここでは恐らく閲覧・謄写の例外規定の適用があるので,進められる余地があるのではないかと思っております。 ○伊藤部会長 そうしましたら,なかなか結論は出ない問題ですし,増田幹事自身も引き続き検討するということでお願いしたいという趣旨の御発言ですので,もうちょっと検討を続けてもらいましょう。 ○古谷幹事 今の問題と若干ずれるのですけれども,増田幹事はDVで相手方の所在不明というケースだったのですが,それとは異なり,取りあえず申立てはしたけれども,その後,相手方の所在地が分からなくて,相手方の住所を調べる努力なりを余りしないというケースも実際にはございます。そういった場合に,調停ですと調停しないという措置によって対応することも可能ですが,審判ですと事件がそのままになってしまうことがあります。そのような,不熱心当事者という言い方ができるかも分かりませんけれども,そのような場合の手当てについても御検討いただければと思っております。 ○金子幹事 先ほどおっしゃった増田幹事の例と少し事案によってはかぶるのかなと思いますが,事案によってはというのは現象面というか,形式面ではなかなか区別がつかない場合があるのかもしれない。それで,個別のケースによって,申立人から事情を聴いてみなければ申立書一通からでは分からないわけで,住所の記載が不十分,あるいは,一回,送ってみたら,返ってきてしまったけれども,その後,何ら手当てをしてくれないという場合があろうかと思うのですね。審判の場合に特に問題になるという御指摘だったかと思うので,その辺は先ほどの増田幹事の方の御指摘と併せて検討させていただこうかと思います。 ○伊藤部会長 それでは,そのようにいたします。   ほかにいかがでしょうか。 ○三木委員 細かいというか,技術的なところですし,私が御説明を聞き逃したのかもしれませんが,申立ての方式のところで,申立ての趣旨及び原因としている理由を御説明いただければと思います。要するに原因というのは,余り調停ではこれまで使ってこなかったかと思いますので,その確認だけです。 ○川尻関係官 家事審判法の方に合わせたという限りではあるのですが,要は二つそろって調停の対象というものがある程度,明確になっていれば足りると考えております。 ○三木委員 これでもいいのかもしれませんが,従来,調停は原因という堅いものではなくて,何か実情とか,そういうもので民事調停もそういう規律になっていますし,あるいは家事審判規則の2条等も含めて,そういう考え方もあろうかなと思ったものですから,原因でなければいけないと考えられたのか,理由が何かあるのかなと思ったもので伺います。 ○川尻関係官 今般,申立書の審査と却下制度を入れました関係で,ここで言っているのは実情を書いていなければ駄目だというわけではございませんで,特定するに足りるものが書いてあれば,申立書の審査のところでは足りていますという趣旨で,このような書き方にしております。 ○三木委員 こだわるというか,もともとが当初,申したように言葉遣いの問題にかなり近いものですから,ですけれども,申立ての趣旨・原因というのは,少なくともこれまでかなり特定の意味で理解されてきましたので,調停の申立てが幾ら審査があるとはいっても,審査対象としてこの表現振りがやや違和感があったということですので,これでいいのかもしれませんし,あるいは御検討いただく方がいいのかもしれません。ちょっとお考えいただければと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。   事務当局が考えている内容は,今,川尻さんから説明があったとおりですが,御指摘の点は表現の問題として検討してもらうことにいたしましょう。 ○古谷幹事 6ページのカの申立ての変更のAの関係でございます。「申立ての趣旨又は原因の変更は,書面でしなければならない」とありまして,原則的には手続の明確化という点からいうと,これでよいかと思うのですけれども,実際問題としましては,乙類調停などが不成立になるという場合に,争点について当事者から確認をとった上で調書に記載するという運用がございまして,実際,それはそれで合理的なやり方とも思います。他方,書面に限るとなりますと,当事者が本人である場合は,手続が停滞して,かえって当事者に負担を掛けることにもなると思いますので,期日調書で取った場合には,口頭でもできるような規律を御検討いただければと思います。 ○伊藤部会長 その点はよろしいですね,事務当局で検討してもらうことで。ありがとうございました。   ほかにはいかがですか。よろしければ先に進みましょうか。   7,調停手続の(10)意見の聴取の嘱託から,(18)家事審判官又は裁判官だけで家事調停手続を行う場合まで,説明をお願いします。 ○川尻関係官 (10)意見の聴取の嘱託から(12)家事調停委員の専門的意見の聴取までは,現行法の規律を維持するものをすることを提案しており,これまで特段の御異論はありませんでした。   (13)調停の成立のア,調停の成立と効力は現行法の規律を維持するものとすること,イ,調停の一部成立は家事審判手続と同様の規律を置くものとすること,ウ,調停調書の更正は,民事訴訟法第257条の同様の規律を置くものとすることをそれぞれ提案しております。エ,調停の脱漏については,調停手続では脱漏という概念を観念することは困難との御意見がございましたことから,特段の規律は置かないものとしております。オ,調停条項案の書面による受諾では,第16回部会での議論を踏まえて,本文@にて遺産の分割に関する事件以外の事件においても,調停条項案の書面による受諾をすることができるものとしつつ,本文Aにて離婚等に関する事件においては,合意を成立させることができないものとし,また,注1において他に合意を成立させることができない事件の有無等についても検討することとしております。なお,注2において調停条項案提示の方式等については,現行法の規律を維持するものとしております。   (14)調停の不成立では,基本的には現行法の規律を維持するものとしつつ,審判事項に係る調停事件についても,調停に代わる審判をすることができるものとしましたことから,本文Aにおいて,この点に関する規律を加えることを提案しております。また,調停手続が審判に移行した際には,調停手続における資料が当然には審判手続における資料とはなるものではないことと,調停事件が係属していた家庭裁判所が当該審判事件につき,管轄を有していない場合には,自庁処理によらない限り,管轄が生じないものとすることを注記しております。   (15)調停をしない場合は,従前の部会資料から変更はございません。なお,第17回部会での議論を踏まえて,調停をしないこととする判断には不服を申し立てることができないものとすること,また,調停をしない場合に訴え提起の擬制については,明文の規律は置かないものとすることを前提としております。   (16)取下げによる手続の終結のア,取下げの要件では,申立人は家事調停事件が終了するまでの間,申立ての全部又は一部を取り下げることができるものとすること,イ,取下げの方式及び効果では,家事審判手続と同様の規律とすることを提案しております。なお,調停の不成立,調停をしない場合及び申立ての取下げにより調停事件が終了した場合においては,当事者にその旨を知らせる必要がありますことから,注において原則として当事者に通知するものとすることとしております。   (17)調停前の仮の措置では,原則として現行法の規律を維持することを提案しており,これまで特段の御異論はありませんでした。   (18)家事審判官又は裁判官だけで家事調停手続を行う場合のア及びイでは,合議体により調停手続を行うことを許容することに御異論がなかったことから,合議体により調停手続を行うことができることを前提に,手続指揮権及び受命裁判官について手当てすることを提案するとともに,ウ及びエにおいて,家事審判又は裁判官だけで家事調停手続を行う場合に,書記官による事実の調査等について,現行法の規律を維持するものとすることを提案しております。 ○伊藤部会長 それでは,順次,まいりたいと思いますが,まず,7ページの(10)意見の聴取の嘱託から(12)の家事調停委員の専門的意見の聴取の辺りまでは,何か御意見はございますか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,8ページ,(13)調停の成立のところで先ほど説明がございましたのでは,エの調停の脱漏については従前の議論の経緯を踏まえて,特段の規律を置かないということ,それから,オ,調停条項案の書面による受諾のところでは,@で対象となる事件の範囲を広げて,Aでは,こういったものについては除外するということで,その関係での注1があるというような説明がございましたが,(13)調停の成立に関してはいかがでしょうか。特段の御意見はございませんか。   もしよろしければ,(14)の調停の不成立にまいりましょうか。先ほどの説明では,(14)のAの関係での審判事項に係る調停事件についての説明と,それから,注のところに関して若干,補足的説明がございましたが,調停の不成立に関してはいかがでしょうか。 ○増田幹事 注のところの調停手続が審判手続に移行した場合に,調停手続における資料が当然に審判手続における資料となるものでないということを担保するような規定はどこかに入るのでしょうか。 ○川尻関係官 恐らく現行も審判手続に移行した場合には,事実の調査をした上でそれが資料となるというようなことを考えていると思っておりましたので,特段,今回の改正でそこを明文化するということまでは,想定はしておりませんでした。 ○増田幹事 そうすると,調停事件の記録の取扱いに関する規定をどこかに置かれるということもないのでしょうか。 ○川尻関係官 今,おっしゃいましたのは,記録の取扱いというのは裁判所の中でどのように整理されるのかというお話でしょうか。 ○増田幹事 現行法のもとでは恐らく調停事件の記録があって,審判事件の表紙がついて,そのまま審判事件に移るのだろうと思うのです。現実に審判事件の記録を目にするとそうなっています。ただ,新しい案だと審判事件に移行したときに,申立書もなく,調停記録も移行しないわけですから,審判事件の記録というのはないのでしょうね。あるいは調停申立書だけが移行するのかもしれないのですけれども,審判を担当する家事審判官が事実の調査をしますということで,調停記録を取り寄せて,それを調べる,こういうことになるのだろうと思うのですけれども,その辺りについて何か規定が置かれないのかどうかということなのです。 ○金子幹事 記録の作り方は恐らく家庭裁判所の方にお任せする話かと思いますが,今までの御議論を踏まえて事務当局が考えているのは,結局,調停と審判は別の手続ということを明確にする必要がありますので,調停の記録というものと審判の記録は観念的には別物になるはずです。調停記録中にあったものが審判移行した後,事実の調査を全部すれば,それは調停の記録であるものが同時に審判の記録にもなるはずです。そのときに,どう記録を作るのかというのは家裁の,あるいは最高裁の方で御検討いただく問題かとも思いますが,例えば調停記録の中に,これは審判でも調べましたということが分かれば,それでいいのだろうと思います。それから,調停の記録の中に事実の調査をしないものがあれば,調停記録ではあるけれども,審判の記録にはならないというものが観念的には出てくるはずです。   当然,閲覧・謄写の要件も変わってくるということになれば,調停記録を見る場合と審判記録を見る場合は,何が審判記録で何が調停記録だということが区別できていなければいけないはずです。そのようなものだということで,法律で予定しているところは何らかの形で説明をするという意味で,今回の注もこう書かせていただいておりますが,中間試案ではその限度で明示しようという趣旨で注に入れています。ただ,誤解のないようにするのは責務かと思っていますが,それを規定に表すのはちょっと難しいかなと思っています。 ○豊澤委員 金子幹事から御説明があったとおり,調停記録の編成の在り方,調停から審判に移行したときに,どの部分を事実の調査の対象として審判記録とし,そうでない部分と区別するのか等については,裁判所の通達等を定める際に,改正法の趣旨に適合するような形での検討を進めてまいりたいと思いますので,お任せいただきたいと思います。 ○伊藤部会長 ということで,今,金子さんから説明があったような基本的考え方は,恐らくここで共有できていると思いますので,あとはそれを記録のつづり方等の実務上のものとして,うまく反映するようにしていただくということで,増田幹事,いかがでしょうか。 ○増田幹事 結構です。もともとつづり方の話をしたつもりはないのですけれども。 ○伊藤部会長 基本的な調停の資料と審判の資料との考え方については,先ほど金子さんから説明してもらったとおりで,恐らくその点に関して,ここでの認識の一致はできていると思いますので,そう御了解いただければと思います。   ほかにいかがですか。よろしいでしょうか。 ○畑幹事 (15)の調停をしない場合ですが,ここでも以前の議論を十分に思い出せないのですが,訴えの提起が擬制されるかどうかということが補足説明の16ページにございます。これによると,個別の事案ごとに判断するのが相当であるとの意見が大勢を占めたということのようなのですが,事案ごとに訴えの提起が擬制されたり,されなかったりということは,何か実務的にも困らないのかなという気が,今,読むとするのですが,この辺りはいかがでしょうか。 ○伊藤部会長 補足説明の16ページの一番上の段落の「また」うんぬんに関して,畑幹事からの質問がございましたが,ここはいかがですか。 ○川尻関係官 ここはいろいろと学説の解釈があるところでして,規律がない以上は移行しないんだという考え方もありましょうし,あるいは事案によっては移行することを認めてもよいという考え方もありまして,その事案によってはという学説の内容も,いろいろあるという状況になっております。それゆえ,ここで決めてしまうのも難しいところがありまして,前回の御議論を踏まえて,このようなとりまとめにいたしました。それで,あいまいなので困るのではないでしょうかという御指摘は,そのとおりだとは思いますが,ただ規律を置きますのも,なかなか難しいところがございます。 ○豊澤委員 調停をしない措置で終わらせる事件というのは,実態をいえば,中身はわけが分からないというのが実際としてあります。そのような調停事件について訴訟が提起されたといえるかどうかは,受訴裁判所が訴訟と調停の中身を見て,実質的なつながりがあれば類推適用等で救ってやるというように,個別に判断をすることになるものと思われます。そういう意味では,ケース・バイ・ケースの受訴裁判所の判断にゆだねざるを得ないという実態があるからこそ,こういうような形で明確な規定を置くのは難しいということになるのではないかと思います。 ○畑幹事 私も,ここで一律に結論を出すというのは難しいということは,以前から感じているところでありますが,個別の事案ごとということが正面から説明に出てくるのは,何かちょっと違和感があるということでございます。説明するとすれば,例えば,解釈にゆだねざるを得ない,といったことでしょうか。中身は余り変わらないのかもしれませんが,表現を御検討いただければと思います。 ○伊藤部会長 確かに畑幹事の問題意識は分かりますので,実態を踏まえて,どういう表現が一番,ここでの議論の趣旨を反映しているのかというのは,もうちょっと,いいですか,考えていただくことにして。 ○金子幹事 先ほど豊澤委員が説明していただいたとおりのことを考えていたので,そのように説明振りも工夫したいと思います。解釈にゆだねるといいますと,理論的に調停しない措置をした場合に移るのか,移らないのかについて,解釈にゆだねると受け取られる余地が出るように思うので,それで個別の事案によって,先ほど豊澤委員が御説明になったような趣旨で説明したつもりでしたが,もう少し工夫したいと思います。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。(18)までのところでいずれの点でも結構ですが,先ほどは(16)の注ですか,10ページになりますけれども,(18)までよろしいですか。   それでは,ここで休憩を取ることにいたしましょう。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは,再開いたします。   引き続きまして,8,合意に相当する審判についての説明をお願いします。 ○松田関係官 では,8,合意に相当する審判の(1)合意に相当する審判の対象事件及び要件のア,合意に相当する審判では,まず,前注2に記載しましたとおり,家事審判官又は裁判官のみで調停を行う場合に,家事調停委員の意見を聞くことなく,合意に相当する審判をすることができることを前提としておりまして,これに合わせて文言の修正もしております。   次に,合意に相当する審判の対象事件についてですが,合意に相当する審判の制度の趣旨からしますと,人事訴訟手続と合意に相当する審判の手続とで,対象を別にすべき合理的な理由は見いだし難いと考えられますことから,人事訴訟法第2条に定める人事に関する事件から,離婚の訴えと離縁の訴えを除いたものとすることを提案しております。   もっとも,人事訴訟法第2条の本文に規定されております「その他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え」につきましては,そもそも,その対象が明らかでなく,対象となり得るものにつきましても,身分関係の当事者の範囲が必ずしも明らかでないことなどの問題がございますことから,注1においてなお検討するものとしております。   また,合意に相当する審判の要件としましては,現行の規律と同様に当事者間に申立ての趣旨どおりの審判を受けることについての合意が成立することと,申立てに係る無効等の原因の有無について争いがないことを要するものとしております。もっとも,イのとおり,合意に相当する審判の手続上の当事者を原則として人事訴訟の手続上の当事者とした場合には,第三者が身分関係の当事者双方を相手方として申立てをしたようなときは,身分関係の当事者でない者が手続上の当事者に含まれることになりますが,このような者についても,申立てに係る無効等の原因の有無について争いがないことを要するものとするかにつきましては,注2においてなお検討するものとしております。   次に,イ,当事者では,合意に相当する審判の対象事件は,原則として人事訴訟で原告適格のある者が人事訴訟で被告とすべきとされている者を相手方として,調停を申し立てるものとすることを提案しております。   もっとも検察官につきましては,公益の代表者である検察官に調停という話合いの場で,一定の合意をするか否かの判断を求めることは相当でないと考えられますことから,注1のとおり,検察官を相手方に調停を申し立てることも,検察官が調停を申し立てることもできないこととしております。   また,注2に関しましては人事訴訟法第12条の規定によれば,身分関係の当事者は生存している限り,原則としてすべて手続上の当事者になることが予定されていると解されますが,例えば民法773条の規定による父を定める申立てを母の前配偶者が母の配偶者を相手にする場合などにつきましては,子が身分関係の当事者であるのに手続上の当事者になっていないという考え方を採るのであれば,子を手続上の当事者に含める必要があるのではないかということも問題となり得ると考えられます。しかし,そもそも,これらの事件における子や法定代理人の地位につきましては,見解が分かれているところであり,また,仮に子が身分関係の当事者であると考えたとしましても,原因関係について知る者ではないことや,合意に相当する審判では裁判所が事実の調査を行った上で,合意の正当性を判断するものとされていることなどを考え合わせますと,子を必ず手続上の当事者としなければならないとする必要性まではないと解されますことから,このような事件の手続上の当事者につきましては,特段の手当てはしないこととしております。   さらに注3についてですが,人事訴訟手続では身分関係の当事者の一方が死亡した場合でも,第三者は身分関係の当事者の他の一方を被告として,訴えを提起することができるとされていますが,原因となる事実の有無を直接知る身分関係の当事者の一方がいない場合にも,合意に相当する審判をすることができることとするか否かにつきましては,第17回部会におきましても意見が分かれておりましたため,人事訴訟法第28条と同様の事件係属の通知の要否と併せて,なお検討するものとしております。   (2)審判及び(3)申立ての取下げにつきましては,基本的に部会資料から変更はなく,第17回部会においても特段の異論はございませんでした。   (4)不服申立てのア,異議申立権者及び異議申立ての理由の本文@は,第17回部会の御意見を踏まえて,部会資料16での提案を維持しております。   イ,異議申立ての方式の本文@は,手続費用の負担の裁判のみを不服としてされた不適法な異議の申立てを排除するため,異議の対象を申立書に明記にするべきものとすることを新たに提案しております。   ウ,異議申立期間のAは,第17回部会での御意見を踏まえ,当事者が審判の告知を受けた日を異議申立期間の始期としております。なお,第17回部会におきましては,異議申立権の放棄について議論がございましたが,民事訴訟手続における公訴権の放棄と同様に,異議申立権の放棄は事前にできないことを前提としますと,利害関係人にも異議申立権を認めている合意に相当する審判の手続において,異議申立権の放棄を認める規律を置くことの必要性に疑問も生じ得ますので,注においてはなお検討するものとしております。   エ,異議申立て対する裁判は,部会資料16から変更はなく,第17回部会において特段の異論はございませんでした。   (5)確定した合意に相当する審判の効力は,現行の規律を維持するものであり,部会資料16から変更はなく,第17回部会において特段の異論はございませんでした。   (6)婚姻の取消しについての合意に相当する審判における親権者の指定については,甲案は合意に相当する審判の特則として,婚姻の取消しに加え,親権者の指定についても当事者間の合意がなければ,婚姻の取消しについての合意に相当する審判をすることができないとするものであり,乙案は親権者の指定についての合意の成否にかかわらず,婚姻の取消しについて当事者間に合意が成立し,当該合意を正当と認めることができれば,裁判所は子の親権者の指定とともに,婚姻の取消しの合意に相当する審判をしなければならないとするものでございます。第17回部会におきましては,甲案を支持する御意見と乙案を支持する御意見とがそれぞれございましたことを踏まえまして,両案併記して提案しております。   なお,乙案を採用した場合の異議申立ての規律につきましては,注1に記載しましたとおり,当事者は理由なく異議の申立てができ,適法な異議の申立てがあれば婚姻取消しを含めた審判が全体として効力を失うものとすることが考えられます。また,子が15歳以上であるときに,子の陳述を聞かなければならないものとするか否かにつきましては,注2においてなお検討するものとしております。更に注3につきましては,第17回部会において,婚姻取消しに伴う付随処分として親権者の指定がされる場合に,当事者が裁判所に判断を任せるという意思を表示したときは,親権者の指定についてのみ異議申立権の事前放棄を認めるような仕組みを設けることができないかとの御意見がありましたことを踏まえまして,親権者の指定に関して民事訴訟法265条のいわゆる裁定和解のような規律を置くことについて,その必要性,相当性を含めて,なお検討するものとしております。 ○伊藤部会長 それでは,8の合意に相当する審判についての審議をお願いしたいと思いますが,まず,11ページの前注1の言葉の用語についてはともかくとして,前注2の家事審判官又は裁判官のみでする調停も許容するという,この点はよろしいですね。   それから,(1)の合意に相当する審判の対象事件及び要件ですが,内容についての説明は先ほどございましたが,特に注1,注2でなお検討するということが書かれておりますが,なお検討することに関連して何か御意見など,今の段階でございますか。それでは,この点は引き続き検討するということでよろしいでしょうか。   それから,イの当事者に関しても注1は検察官の関係,それから,注2は先ほど父を定める訴えに関しての説明がございまして,特に子をどのように扱うかという問題の指摘がございましたが,イの当事者の特に注2の関係で何か,これはこういうことを前提としているということですが,御意見等はございますでしょうか。 ○畑幹事 注2の方ですが,例は余りないのでしょうが,父を定める申立てに関する子でありますとか,認知における子というのは,特段の手当てはしないということで放置していいかどうかという点には,やはりちょっと疑問があるかと思います。それぞれ補足説明にもありますように,難しい問題を抱えておりますし,人事訴訟法との並びでありますとか,あるいは民法の解釈でありますとか,難しいことは承知しておりますが,だから,特段の手当てはしないということでいいかどうかという点には,若干疑問がありまして,何かもう少し問題提起ぐらいはできないものかなという気はいたします。 ○伊藤部会長 検討すべき問題があることは認識して,しかし,その検討の結果としてはこうであるというのを今,畑幹事も言及されましたが,補足説明に書かれている内容ですよね。それに加えてどういうことになりますか,もし,更に何か問題の指摘をするとすれば。 ○畑幹事 いい考えがあるわけではないのですが,何か手当てをするかどうかについて,なお検討する,とすることが例えば考えられるかと思いますが。 ○松田関係官 少し確認させていただきたいのですが,特段の手当てをしないという趣旨は,合意に相当する審判の手続において当事者とあえて扱わなくてもいい,つまり,人訴では当事者にならないのですけれども,そこに特別な規定を置いて子を当事者にするとの手当てまではしなくてもいいという趣旨でございまして,事実の調査の対象には通常されると考えられるのですが,畑幹事の御意見の御趣旨は,事実の調査の対象では足りなくて当事者にすべきだということでございましょうか。 ○畑幹事 当事者とするということと実際上は事実の調査の対象になるだろうということの間には,様々なことが考えられると思いますので,そういうことも含めて検討できないだろうかという趣旨であります。 ○伊藤部会長 ただいまの畑幹事からの問題提起に関してはいかがですか。合意に相当する審判の手続における当事者とはしない。それから,事実の調査の対象にはなり得る。その間の,今,畑幹事のおっしゃったことで,その中間的な取扱いについて,例えばこういうことが考えられるということがあればですけれども,どうでしょうかね。 ○山本幹事 よく分からない。畑さんに教えていただきたいのですが,その中間的なものという,今のあれだと子どもが仮に意思能力を持っているような場合には,利害関係人になって異議を申し立てるということはできるという理解でいいのでしょうか。 ○松田関係官 そういうことになると思います。 ○山本幹事 同意までが必要だという,もし,それが気に食わないなら異議を言えばいいような気もするのですが,そういうあれではやはり十分ではないのですか。 ○畑幹事 ですから,例えば異議を述べる機会を確実に保障するために通知をするとか,そういうことが考えられるのではないかという趣旨です。 ○伊藤部会長 それでは,ちょっと具体的にどういう形があり得るか,余り私自身もまだ分かっていないところがありますが,今の点を踏まえて事務当局で検討していただくことにしましょう。   ほかにいかがでしょうか。今の点はよろしいですか。当事者の関係で特にございませんか。 ○古谷幹事 今の当事者の関係での注3でございますけれども,23条審判をどうとらえるかということで,非常に難しい問題だと思うのですけれども,基本的には実体法説的な考え方をある程度,取り込む必要があるのではないかと考えておりまして,そういう発想からしますと,注3のケースにおきましては合意に相当する審判ができるということについては反対でございます。   さかのぼってしまって恐縮なのですが,アの合意に相当する審判の注2でございますが,これも同様の発想から,注2の3行目,原因の有無について争わないことが必要であるか否かということについては,不要でよいのではないかという意見でございます。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○豊澤委員 今の点で重複になるかもしれませんが,ちょっとお話しします。アの注2のところですけれども,身分関係の当事者,親子なり夫婦なりがいて,それが申立ての相手方になるのが一番典型的な23条の適用場面であると思います。このような場合には,身分関係の当事者が,事実関係を通常はよく知っており,かつ,戸籍上に記載されている身分関係を形成するなり,あるいはそれを否定するなりという結果についても引き受ける用意があるということで同意をしていることが,23条の基礎になっていると思います。   注2のケースで,手続上の当事者のうち身分関係の当事者でない者というのは,申立人の形でしか現れてこないのではないかと思うのです。そうだとすると,申立人は当然,身分関係の当事者,通常であれば双方を相手方として,戸籍に記載されている身分関係は実体と違うので是正してくれという形で申立てをしてくるわけです。そうすると,中身について通常,一番よく知っていて,それを引き受ける覚悟のある身分関係の当事者の二人が相手方になって,そこで納得が得られて合意が成立するのであれば,申立人の方からすれば,申立てどおりの内容の審判になるわけですから,このような場合に,身分関係の原因の有無について申立人も含めて合意が要るということにはならないのではないかと思うわけです。   それとの関係で,イの注3については,本来の申立人と相手方が身分関係の両当事者であり,その一方が亡くなっているという場合であれば,23条審判が使えないケースであるのに対し,相手方である身分関係当事者が二人いる場合に,そのうち一方が欠けても使えるようにするというのは,理論的に整合しないような気がいたします。 ○伊藤部会長 分かりました。   ただいま古谷幹事,それから豊澤委員から11ページのアの注2,それから12ページの注3,いずれもなお検討するということで掲げられておりますけれども,注2に関しては不要であるということ,それから注3に関しては,合意に相当する審判をすることができるものとする理由はないという御意見がありましたが,その点は他の委員,幹事の方,いかがでしょうか。なお検討するですから,また,検討の機会はあると思いますが,ただいまのようなお二人の委員,幹事の御意見に対して,何かほかの方で御意見はございますか。高田委員,いかがですか。 ○高田(裕)委員 難問でして,確か前回も私自身,定見がないと申しますか,悩んでいるということを申し上げたような記憶がございまして,今もなお同じ状況でございますので,繰り返しになるかもしれませんけれども,合意に相当する審判は基本的に当事者間で処分が許されない身分関係について,一定の要件を満たした場合には,判決代替の効果をもたらすということでありまして,その際,裁判所の裁判の要件として事実の調査とともにこの要件が課されているわけでして,この原因等について争いがないことという要件の趣旨をどう考えるかということにかかわっているとは思いますが,すべての当事者について,形式的当事者において原因等の事実について争いがないことということを確認した上で,初めて裁判所はその権限に基づいて審判をすることができるという議論は,成り立ち得ないわけはないような気がいたしますので,原案のような形でパブリックコメントに付すということでいかがかという印象を持ちます。 ○伊藤部会長 12ページの注3の方はいかがですか。先ほど,これも消極意見がございましたが。 ○高田(裕)委員 これも定見がございませんけれども,今の流れでいきますと,ここでも消極という意見は十分あり得ると思いますが,ただ,先ほどの議論は身分関係の当事者について,合意があれば十分かという議論であったわけですけれども,こちらは身分関係の当事者の合意が最低限必要かという問題ですので,若干,状況は違うかという印象は持ちますが。 ○伊藤部会長 おっしゃるとおりですね。そうしましたら,先ほどのお二人の意見,それから,ただいまの高田委員の御指摘を踏まえて,それも前提としてなお検討するということにいたしましょう。 ○山本幹事 この注3が残るのであればということなのですが,「事件係属の通知の要否と併せて」というのがなぜここにあるのかというが,このままだと必ずしも補足説明を見ても同じことが書かれているだけなので,なぜ事件係属の通知とこの問題は関係するかというのが,あるいは私だけなのかもしれませんが,余り自明ではないような気も。これは確認ですが,通知をして,やはり異議がある人は利害関係人として異議の申立てをする機会を確実に与えるという,先ほど畑さんが注2について言われたのと同じ趣旨であると理解してよろしいのですか。 ○松田関係官 基本的には人事訴訟法28条にある訴訟係属の通知と同様な考え方をしておりまして,身分関係の当事者の一方が死亡した後,身分関係の当事者の他の一方と第三者との間だけで手続が進んでしまうと,真実が発見されないままということもあり得るかもしれませんので,それを担保する趣旨で,少なくとも人事訴訟法28条に定める利害関係人には手続に参加する機会も与えるために事件係属の通知をすべきとも考えられるのではないかという,そういう趣旨で書かせていただいておりますので,必ずしも審判の告知の場面だけではないと考えております。 ○山本幹事 そうすると,合意にプラスする事実の調査のところで,その真実を解明することを担保するという側面もある。 ○松田関係官 この事件係属の通知によってですか。 ○山本幹事 参加して攻撃防御をすると。 ○松田関係官 真実と違うということを主張したい人は,事件係属の通知を契機に参加することができ,自分が認識している事実関係主張することもできますので,真実の解明がより担保されるのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 山本幹事,よろしいですか。 ○山本幹事 私は今の説明である程度,理解はできましたが,これだと何か分かるのかなという。 ○松田関係官 今申し上げたような趣旨を補足説明の方にもう少し詳しく書かせていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 そうですね。補足説明の方も,御指摘のように,今のような説明がこれを読んですぐ分かるかというと,ちょっと難しいような感じもいたしますので,工夫をお願いできればと思います。 ○三木委員 アの本文と注2との関係についての確認ですが,先ほどの豊澤委員と高田委員のやり取りだけを聞くと,なお検討して特に何も特段のことがなければ,特に高田委員の発言を聞くと,あたかも手続上の当事者の合意というか,争わない意思は要らなくなるように聞こえましたが,この資料自体はなお検討して特段,今,書かれているアの本文を変えなければ,手続上の当事者の争わないことというのは,必要だというつくりになっているという理解でよろしいのでしょうか, ○松田関係官 今の提案している規律ですと,そういうことになると思います。 ○三木委員 私も卒然で読むとそう読めるので,その点をちょっとパブリックコメントにかける際の前提として,現行案は身分上の当事者でなくても,手続上の当事者もまたこの要件を満たす必要があるということで本体は書かれていると,そういう理解でよろしいですよね。 ○伊藤部会長 よろしいですね。そういう趣旨だと思いますが。 ○高田(裕)委員 誤解を与えているのかもしれませんが,アの本文の書き方は別として,注2では,原因の有無についてなお検討することとしているので,原因の有無については,まだ,結論が決まっていないということを前提に話をしていたのですが。 ○三木委員 アの本文は,原因も含めて必要だというつくりになっていると私は読みましたよ。 ○高田(裕)委員 アの本文自体については,おっしゃるとおりだと思います。 ○伊藤部会長 そういう理解でと思いますが。 ○三木委員 ですから,なお検討した結果,特段のことがなければ,そういう規律になるということですね。 ○伊藤部会長 いずれにしても,そこは検討次第ですけれども。よろしいでしょうか。   そうしましたら,(2)の審判,12ページ,それから申立ての取下げ,不服申立て,若干,補足的な説明が不服申立ての辺りはありましたね。それから,13ページのウの注のところ,なお検討するという辺り,そのウの辺りまでは何かあります。 ○田(昌)委員 これは既に何度も出てきた概念ですが,(4)のAの利害関係人という概念は,補足説明の解説の方を見ますと,23ページに「合意に相当する審判において異議申立権を有する利害関係人の範囲が必ずしも明確でないことを踏まえ」とは書いてありますけれども,利害関係人自体については,現行法を前提にしているということなのでしょうが,補足説明の22ページなどを見ても必ずしもはっきりと書かれていません。したがって,他の「利害関係人」概念との異同もはっきりさせて,何らかの概念指針となるものを挙げておく必要があるのではないかと思います。 ○松田関係官 異議の申立権者としての利害関係人については,観念的には,例えば人事訴訟法28条の利害関係人と同一と考えることになるのかとも考えていたのですけれども,実際に利害関係人の範囲を確定するには,だれがその人に当たるのかということを戸籍をたどって,全部,調べなくてはいけなくなり,その結果についても本当にそれが全部なのかという疑問の余地もあるという点で,具体的には特定がなかなか難しいという趣旨で,必ずしも範囲が明らかでないと書かせていただきましたが,御指摘のとおり記載が不正確なところはあると思いますので,補足説明の方は修正させていただきたいと思います。検討させていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 よろしいですか。   そうしましたら,ほかにいかがですか。13ページのエ,異議申立てに対する裁判の辺りまではよろしいでしょうか。   それから,(5)の確定した合意に相当する審判の効力,それから,(6)のところは従前の経緯を踏まえて,先ほど来の説明がございましたように,甲案,乙案で,基本合意のみでよいとする乙案に関しては,注1のようなことが考えられるというようなこと,それから,注2のなお検討する,あるいは注3のなお検討すると,こういった辺りがございますが,この辺はいかがですか。 ○古谷幹事 乙案の注3でございますけれども,仮に乙案ということで,それを前提とするのであれば,注3で掲げられておりますような規律を導入することで,法律関係が早期に安定すると思われます。当事者がそれを望んでおり,それで安定するのであれば,望ましいことではないかと考えるので,積極の意見であります。 ○伊藤部会長 分かりました。ありがとうございます。   それでは,そういう御意見があったということを踏まえて,今後の審議を続けさせていただきたいと思いますが,ほかにはよろしいでしょうか。   そうしましたら,次の9,調停に代わる審判から12の記録の閲覧等までの説明をお願いします。 ○松田関係官 では,9,調停に代わる審判の(1)9,調停に代わる審判の対象及び要件の本文@についてですが,こちらは第17回部会の議論を踏まえまして,合意に相当する審判と同様に家事審判官又は裁判官だけでする調停につきましても,家事調停委員の意見を聞かずに調停に代わる審判をすることができるものとし,また,注1のとおり,いわゆる乙類審判事項につきましても,調停に代わる審判の対象とすることを前提としまして,提案するものでございます。これに合わせまして本文Aのほうでは,財産上の給付のほか,子の引渡しその他の給付をも命ずることができるものと変更しております。本文B及びCはいずれも部会資料から変更はなく,第17回部会において特段の異論はございませんでした。なお,親権者の指定の裁判をする際に,15歳以上の子の陳述調書を必要的なものとするかどうかにつきましては,第17回部会において御意見が分かれておりましたことから,注においてなお検討するものとしております。   (2)審判のア及びイは,基本的に部会資料16から変更はございませんが,審判の脱漏につきましては,調停に代わる審判において,審判の脱漏ということは想定されないのではないかとの御意見がありましたことを踏まえまして,審判の脱漏の規律の準用につきましては,現段階では亀甲括弧を付けております。   (3)不服申立てのア,異議申立権者等は,第17回部会で基本的には参加人を含めた当事者にのみ,異議申立権を認めることで特段の異論はございませんでした。もっとも,いわゆる乙類審判事項の調停につきましても,調停に代わる審判の対象としましたことから,当事者以外にこれらの乙類審判事件において,即時抗告権を有するとされている者についても,異議申立権を認める必要があるのではないかとも考えられますが,調停に代わる審判の性質を調停に近いものととらえますと,調停の成立に対して第三者が不服を言えない以上,調停に代わる審判に対しても,当事者以外の第三者に不服申立権を認める必要はないとも考えられますことから,部会資料16と同様に乙類審判事項も含めて,当事者にのみ異議申立権を認める提案としております。なお,17回部会におきまして,子に異議申立権を認める必要性について御指摘がありましたことを踏まえまして,注においてなお検討するものとしております。   イ,異議申立ての方式は,合意に相当する審判と同様に,異議の対象を申立書で明らかにすべきことを新たに加えて提案しております。   ウ,異議申立権の放棄では,異議申立権者が限定されていることを踏まえまして,放棄を認める規律を置くことを提案するものでございます。なお,注1記載のとおり,異議申立権の放棄は事前にすることができないことを前提としておりますが,婚姻取消しの合意に相当する審判のときと同様に,調停に代わる審判におきましても民事訴訟法265条の裁定和解と同様の規律を設けることの必要性,相当性につきましては,注2においてなお検討するものとしております。   エ,異議申立期間からカ,異議申立ての効果までは,現行の規律を維持することを提案するものでありまして,部会資料16から変更はございません。   (4)確定した調停に代わる審判の効力は,いわゆる一般調停における調停に代わる審判と,いわゆる乙類審判事項に係る調停における調停に代わる審判の効力につきまして,提案するものございます。部会資料17から実質的な変更はございません。なお,本文のただし書の調停をすることができる事項についての調停に代わる審判との表現は相当ではございませんので,適宜,改めることといたします。   10,家事調停官の(1)家事調停官の任命等及び(2)家事調停官の権限等は,いずれも現行の規律を基本的に維持するものでございまして,部会資料16から変更はなく,第17回部会においても特段の御異論はございませんでした。   11,不服申立て及び再審は,合意に相当する審判や調停に代わる審判のほか,調停の申立ての不適法却下の審判などを含めた家事調停手続全般において,家事審判手続における不服申立て及び再審の規律を準用することを提案するものでございます。   12,記録の閲覧等は,部会資料16から実質的な変更はなく,本文@,A及びBにつきましては,第17回部会においても特段の異論はございませんでした。本文Bにつきましては,第17回部会において調停手続であっても記録の閲覧制限はより限定的で在るべきとの御意見がございましたが,調停手続の性質や事案の多様性,円滑な手続遂行の必要性を踏まえますと,裁判所にある程度,広い裁量を認めた上で,事案に応じた適切な運用を図るのが相当と考えられますことから,部会資料16の提案を維持することとしております。もっとも,注に記載しましたとおり,合意に相当する審判の手続につきましては,第17回部会での御意見を踏まえまして,家事審判に関する手続における記録の閲覧等の規律と同程度の制限に限定することとするかをなお検討することとしております。 ○伊藤部会長 まず,9,調停に代わる審判の関係でありますけれども,(1)調停に代わる審判の対象及び要件の関係では,15ページの注1,注2の辺りでしょうか。(1)の審判の対象及び要件の関係で何か御意見等はございますか。 ○古谷幹事 注2の関係でございますけれども,24条審判は実質は和解案の提示と同じような機能を果たしているということからしますと,必要的に子どもの陳述を聞くというところまでは必要ではなくて,総則の規定で十分にカバーできるのではないかと考えておりますので,この注2につきましては消極でございます。 ○伊藤部会長 分かりました。注2でなお検討するものとするのに関して,古谷幹事からは消極の意見がございましたが,何かほかの委員,幹事の方で,その点についての御発言はございますか。そうしましたら,古谷幹事のただいまの御意見も踏まえまして,なお検討するということにいたしましょう。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしければ,(2)の審判に関しては,先ほどの脱漏の関係でちょっと補足的な亀甲の説明がございましたが,その程度ですよね。   それから,(3)の不服申立てに関しては,異議申立権者で第三者の異議申立権に関して,当事者に限るという考え方でいっているというようなことの説明がございましたが,(3)不服申立ての部分に関して何か御意見等はございますか。15ページの注2の民訴法265条に相当するような規律を置くことに関しての,なお検討するという辺りについても,何かこの段階での御意見がございましたらお願いします。 ○山本幹事 よく分からないところなのですが,265条の規定は調停条項案の書面による受諾に相当する264条と併せて,人事訴訟法37条の2項では離婚に係る訴訟については適用除外になっていて,先ほどの書面受諾のところは,それも一つの根拠だと思いますが,親権者指定・変更に関する事件については,適用しないという方向でお考えということだったのですけれども,この注2のところでは,そうすると何か親権者の指定等については,265条に相当する規定を置くことはどうかという感じもするのですが,その辺りはいかがなのでしょうか。 ○松田関係官 事務当局側としましては,現段階でこの裁定和解のような制度が使える事件の種別を限定しているわけではなくて,そこも含めて御検討をいただきたいという趣旨でございます。 ○山本幹事 分かりました。ただ,先ほど申し上げるべきだったのかもしれませんが,合意に相当する審判のところの乙案の注3では,親権者指定について265条に相当するものが適用になるということが,何か前提のようになっているような気もしたので,ちょっとそこが。一般にこの265条はいろいろな議論があると思いますが,講学上は一種の裁判官による仲裁であるというような説明がなされることもあり,仲裁についてはもちろん民事に関する紛争に限定されているというところがあるように思いますので,その点も併せて慎重に御検討いただければよいかなと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。   それでは,ただいま御指摘の点はそのとおりに取り扱わせていただくことにいたしまして,ほかに何か不服申立ての関係で御発言はございますか。 ○古谷幹事 二点ございまして,一つは今の注2の関係でございますけれども,この点につきましては先ほど申し上げたところとちょっとかぶりますけれども,法律関係の早期確定というふうな点から,基本的には積極で考えております。なお検討するということで,その点には異論はございません。   それから,アの異議申立権者のところで,子どもに異議申立権を認めるか否かということでございまして,これもなお検討するということで異論はございませんけれども,この点につきましても,一つは24条審判が和解案の提示類似の機能を果たしているという点と,あとは子に異議申立権を認める場合に,子どもが当事者として紛争の前面に立つ構造になるのはいかがかというふうな考慮から消極の意見でございます。 ○伊藤部会長 アの注に関しては消極の御意見,それから,ウの注2に関しては積極の御意見ということですが,何か関連しての発言はございますか。それでは,そのような御意見も踏まえて,なお検討することにさせていただきましょう。   よろしければ,(4)の確定した調停に代わる審判の効力は,文言のことは若干,発言がございましたが,内容は特に何かございますか。   よろしければ,10の家事調停官の辺りはどうでしょうか。従前から特段,何か御意見の対立があるようなことではなかったかと思いますが。   よろしければ,11の不服申立て及び再審,この辺りもよろしいでしょうか。 ○三木委員 この段階で問題にしなくてもいいのかもしれませんが,再審との関係ですが,家事審判のところの再審の規律がどうだったか,ちょっと,今,手元にないのであれですけれども,家事審判と全く同じ規律にはならないところもあるように思いますので,それは今後の実際の規定の組み方を見ないと分からないのですけれども,この書き方で特に誤解はないかと思いますが,なお丁寧に調停の再審というのが審判の再審と,準用するにしても同じ規律には必ずしもならないところがあり得るというところを注意的に書いてもいいかなという気はいたしました。 ○伊藤部会長 今の点は何かありますか。 ○松田関係官 審判手続における不服申立ての規律をすべてそのまま準用することで全く問題がないかどうかというところまでは,まだ厳密に検討はしておりませんので,検討させていただきまして,そういう部分があれば,そういった注書きのようなものを加えることも検討したいと思います。 ○三木委員 冒頭に申しましたように,今,この段階でどういうことではないですけれども,例えば判断の遺脱とか,そういうようなところは恐らく空振りになると思いますし,その他,何箇所か,裁断手続とこういう調停とでは違うところがあり得るとは思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。それでは,それは今後の検討にゆだねたいと思います。 ○山本幹事 今のやり取りは,調停自体についての再審がということを今の三木委員の御質問は前提にされていたような気もしたのですが,それはそうではない。私は何となくこの補足説明は調停自体についての再審ということは考えておられないような,この調停手続における裁判の再審だけを念頭に置いておられたような気もしたのですが。 ○松田関係官 御指摘のとおり,調停自体の再審ということではなくて,調停手続の中でされた審判等の裁判についての再審という趣旨でございます。 ○三木委員 失礼しました。付随的手続についてという意味ですか。私の方の勘違いですので。 ○脇村関係官 念頭に置いておりましたのは,ちょっと前までやっていた合意に相当する審判や調停に代わる審判を念頭には置いておりました。また,家事審判においても本体の裁判ではないものについても終局的なものについては再審を認めるという議論もありましたので,そういったものについては再審ができるという前提で考えておりました。 ○三木委員 書いている場所がそういう23条とかのところではなくて,一般的に書いているものですから,こちらも一般的に理解したということです。 ○脇村関係官 今,申しましたように,合意に相当する審判や合意に代わる審判に限るというところまでは考えていなかったものですから,ここら書いておったのですけれども,ちょっと説明不足というか,分かりにくいので,こちらの方で,書き方については,もう一度検討させていただければと思います。 ○三木委員 少しだけ申しますと,訴訟手続上の調停ですから,判決類似の効力を生じますから,本体についての再審という概念は当然あり得るわけで,そこは論理必然的でないわけではないので,この辺の議論が何を対象にしているか,そこは多少詰めて整理していただければと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。それでは,今のやり取りで確認されたことをなるべく分かりやすい形で説明していただくようにしましょう。   そうしましたら,次に12の記録の閲覧等で,先ほどの補足的な説明では18ページのBのところですかね。当事者と第三者を区別せずに,裁判所の相当と認めるという判断枠組みの中で,閲覧等を許可するというようなことですが,ただ,その点に関連する注として合意に相当する審判,これは審判の基本的な性質の考え方との関係でどうするかについてなお検討すると,こういう辺りの補足的説明がございましたが,記録の閲覧等に関して何か御発言はございますか。 ○増田幹事 今のBのところですけれども,幾ら調停であるからといって,やはり当事者の記録の閲覧・謄写等について,相当と認めるときというのは余りにもやはりルーズ過ぎるのではないかと思います。少なくとも主張書面だとか証拠資料などは相手方も見た上で,調停を進行させていくということが望ましいのではないかと思いますので,何らかの形でこの裁量を羈束する要件を定めることをなお検討していただきたいと考えております。例えば申立書の送付のところにありましたような円滑な手続の進行というような概念を入れていただくようなことを考えております。したがって,ここでは注などの形で,その点を指摘していただければと思います。 ○伊藤部会長 それでは,ただいまの御発言の趣旨を踏まえて,そういった御意見があるということが表れるような形での検討をしてもらうことにしましょう。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,次,先に進むことにいたしまして,第6の履行確保から第7の雑則の3,過料の裁判の執行等についてまで,説明をお願いします。 ○松田関係官 では,第6,履行確保の1,履行状況の調査及び履行の勧告の(1)家事審判又は審判に代わる裁判で定められた義務の履行勧告,及び(2)調停又は調停に代わる審判で定められた義務及び調停前の仮の措置として命ぜられた事項の履行勧告につきましては,部会資料17から変更はなく,第18回部会において特段の異論はございませんでした。   2,履行命令の(1)家事審判又は審判に代わる裁判で定められた義務の履行命令では,現行の規律を基本的に維持するものとすることを提案するものでございます。履行命令の対象については,第18回部会において当事者が義務履行者に対して採り得る選択肢を増やすために,面会交流等の義務につきましても,履行命令の対象とすべきであるとの御意見がありましたが,権利の強制的な実現の場面では過料の制裁よりも,間接強制による方が効果的であること自体は,部会におきましてもおおむね認識が一致していたところであり,また,面会交流等の義務の履行の確保につきましては,強制よりも家庭裁判所による調整の方が効果的な場合が多く,過料の制裁による威嚇を背景とする履行命令は,むしろ家庭裁判所による調整を困難にするおそれが高いとの御意見がありましたことを踏まえまして,履行命令の対象を広げることにつきましては,本文Aの注においてなお検討するものとしております。   (2)調停又は調停に代わる審判で定められた義務の履行命令は,現行の規律を維持するものとするものであり,部会資料17から変更はなく,第18回部会において特段の異論はございませんでした。   3,金銭の寄託の制度につきましては,制度を置かないものとすることについて,第18回部会において特段の異論はございませんでした。   第7,雑則の1から3まではいずれも現行の規律を基本的に維持するものとすることを提案するものであり,部会資料17から変更はなく,第18回部会において特段の異論はございませんでした。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,まず,18ページ,第6,履行確保に関してですが,この点は今の説明にもございましたように,特段,従来の考え方からの変更はないということですが,履行確保の1の履行状況の調査及び履行の勧告の部分,ここはよろしいでしょうか。   もしよろしければ,19ページになりますが,2の履行命令のところで,ここは,今,19ページの中ほどの注のところに関しての説明がございまして,内容は先ほどの説明のとおりですが,この辺りに関して今の段階で何か御意見がございましたらお願いします。これまでの審議の内容は紹介があったとおりですが,それを踏まえてなお検討するということでよろしいでしょうか。   そのほか,履行確保に関して何か金銭の寄託も制度は置かないということも含めまして,履行確保全体に関する御発言はございますか。 ○古谷幹事 履行命令の対象となる義務のところなのですが,面会交流とか,将来に向かっての調整が必要になってくる事件というところで,この履行命令という形で制裁を前提としているものを使いますと,かえって義務者の反発を招いて,有害になることすらあるということもありますので,この点につきましては消極の意見でございます。 ○伊藤部会長 分かりました。   ただいまの古谷幹事の御発言に関して何か他の委員,幹事の方から御発言はございますか。 ○増田幹事 古谷幹事の御意見には反対でございますが,現在注に書いてあることを注で入れることについては別に異存はございません。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,ただいまの発言も含めて,なお検討することにいたしましょう。   では,第6の履行確保に関しては以上でよろしいでしょうか。   第7の雑則に関しては,先ほどの説明のとおりですが,何か御発言はございますか。   特段のことがございませんでしたら,次に資料23の家事審判手続に関する中間とりまとめのたたき台(4)に基づいて,事務当局からの説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 御説明いたします。   部会資料23は,これまで子どもの代理人として議論をされてきたものについて取り上げたものでございます。これまでの部会では,杉井委員,栗林委員,増田幹事から具体的な提案を出していただき,御議論いただきましたが,これに対しても様々な御議論があったこともあり,現時点で部会として具体的な案を示すことは難しく,更に検討する必要があると考え,中間試案でも項目を掲げた上で,幅広く御意見を聞く方向がよいのではないかと考えております。   この問題につきましては,補足説明にも記載しましたとおり,どのような場合に選任すべきか,また,その権限,役割をどのように考えるかなどについて検討する必要があると考えておりますが,その方向がいまだ定まっておりませんので,本文ではそのような点を明示しない形で記載をしております。最終的に中間試案において,どのようなものを掲げるのかにつきましては,本日の御議論を踏まえて検討したいと考えておりますので,是非,御議論いただければと存じます。 ○伊藤部会長 従来の議論の経緯は御承知のとおりで,また,その内容の要約に関しては補足説明に記載がございますけれども,なるべくでしたら,もう少しこの点についての審議が煮詰まればと思いますので,本日はもう一度,それぞれの委員,幹事のお考えを是非幅広く承りたいと存じます。 ○杉井委員 結論的に,なお検討するという形でパブコメに載せるということ自体は反対ではありませんし,そうしていただきたいと思います。   ただ,この表題が「子の保護者」となっておりまして,保護者というと一般的に大体父母とか,そういうふうなことをイメージして,正にここに書いてある親権者等の法定代理人とは別にというのが全然生きてこないということがありますので,やはり私は「子の保護者」という用語は適切ではないと思います。むしろ,飽くまでも仮称ですから,従来的に言うならば「(仮称)子どもの代理人」ないし我々が前回に提案した「子どもの手続保護人」という言い方にしていただきたいということが一点です。   それから,いずれにしてもこの説明はやはりちょっとどういうものかというのがさっぱり分からないので,我々が提案したときの(1)というところで,子が利害関係を有する場合に,子が意見を表明するため,あるいは,その他子の最善の利益を図るために必要があるときは,法定代理人とは別に裁判所が適切な保護人を選任できるものとするとか,何か,そういうふうな文章的な工夫をしていただきたいなと思います。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。もちろん,最終的にこういう考え方をどうするかということは,今後の審議にゆだねられることになりますけれども,私どもとして何を今まで検討し,そして,何を広く意見を伺いたいのかということがなるべく分かりやすい形で提示できることは当然のことかと思いますので,杉井委員のただいまの御発言もそういう趣旨だと存じますが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 杉井委員と同意見なのですけれども,この聞き方だと,聞かれた方がどういう対象について意見を述べていいのかというのがいま一つよく分からない,具体的な像が浮かんでこないということがあります。やはり法律の問題だから,子が影響を受けるといっても,子の権利義務であるとか,あるいは法的地位が影響を受けるものであるというようなこととか,子の利益についても杉井委員が言われたように意見表明の機会など,言葉を少し補っていただければと思います。   それから,補足説明のところでも例えば法定代理人の利益が相反する,どのような事件について,あるいは例えば親権者の指定であるとか,そういった具体例を幾らか出していただければと,それから,例えばドイツだとかオーストラリアだとか,諸外国でも類似の制度があるというようなことに言及していただいてもよいかと思うのですけれども,要するに答える方が何について答えていいのかということが分かるように,お願いしたいなと思っています。 ○脇村関係官 今回,資料を作成するに当たりまして前回の御議論を踏まえつつ,子の意見表明ということで子ども代理人を主張されている方が比較的多いというのは,十分,存じてはいるのですけれども,他方で,意見表明ということのとらえ方も人によってやや違うように思いますし,また,意見表明だけなのかと。例えば子どもはこう言っているけれども,子どもにとってはこちらの方がいいんだというようなことも,主張するべきなのかどうかなどについては,まだ,本文として書くには煮詰まっていないのかなと思っておりまして,本日,できれば,是非,御議論いただければと思っているのですけれども。 ○小池幹事 補足説明の中でも手続保護人というか,子どもの代理人を入れる場合には,手続主体性を認めていくという方向性が原動力になっているというイメージがあるのですけれども,現在の制度がその主体性を無視しているかというと,必ずしもそうではないと考えていますので,印象の問題ですけれども,新しい手続保護人というのを入れると子どもの主体性を確保できて,今の調査官の後見的関与の下で子どもの意思を尊重するというスキームが主体性に配慮していないということではないというのは,ちょっとメンションをしていただいて,主体性の配慮の仕方には幅があって,現在の日本の制度は配慮はしていると,だけれども,子の手続保護人を入れる側からすると,それでは十分ではないと。   ただ,十分ではないといったときに,現在の制度が構造的に何か欠陥があるのか,あるいは制度的な限界があるのかという点は,必ずしもここでの議論では出てきていなくて,どうもこういう事件では,余りきちんと聞いていませんでしたとかいうような個別の事例の話しか出てきていないので,そこら辺をもうちょっと指摘していただけると,議論がしやすくなるのではないかと感じました。 ○伊藤部会長 今の小池幹事からの御意見に関してはいかがでしょうか。これはそれぞれのお立場があると思うのですが,子の保護者という表現はともかくとして,子どもの手続保護人ですか,そういう考えに積極的な委員,幹事の方から,従来のおっしゃられたことと重複するようなことがあるかもしれませんが,それでも結構ですので,もう一度,こういう手続主体を設けることの意味,あるいは現在ではそれが子どもの利益の保護という意味で,あるいは意見の表明という意味で,十分,機能していないことの言わば制度的な問題点などについて,補足をしていただければ有り難いと思いますが。 ○増田幹事 今の御意見に対してということではないのですけれども,というより,前にいろいろ出てきた論点がありますので,その論点を補足説明にお書きいただければどうかと思うのですが。例えば家庭裁判所調査官がいるので,役割が重複するというような御意見もありましたし,基本的に法律上の性格がどうかというような意見もありましたし,いろいろと論点が出たと思いますので,それを指摘していただければ,答えやすくなるのではないかと思います。 ○伊藤部会長 今のこの補足説明の2の3段落目ですかに指摘されていることをもうちょっと詳しくということになりますかね。家裁調査官を初めとする他の制度との関係等とか,ここではどちらかというと客観的な表現になっていますけれども,道垣内委員はいかがでしょうか。 ○道垣内委員 子の保護者か子の補助者か子の代理人か,よく分かりませんけれども,やはり具体的な内容は,書きづらい面があるのだろうと思うのです。先ほどから,例えば小池幹事が後見的役割と手続主体性との話をされましたけれども,杉井委員ほかが提案を出された際に私が発言させていただいたのは,子が意見を表明するのを手伝うという話と,子の最善の利益を図るというのが若干違うのではないか,そして,子ども代理人というと,子どもの意見を表明する話なのかと最初は思っていましたけれども,結構,独立的に子の最善の利益を図るという面が強いのではないかという話でした。そうしますと,これは実は後見的作用なのかもしれないのですね。   したがって,家裁がやっているのは後見的作用で,今回,導入が問題となっているのは手続主体性の話であるとは分けられないようなところがあるような気がしまして,様々な意見があるときに,一つの方向性だけで中間とりまとめの形でパブコメに付すというのは,やはり余り妥当ではないと思います。増田幹事がおっしゃったように論点を提示するという形で,オープンな形で聞かざるを得ないような気がするわけです。   私自身の意見も言えということでしたので,意見という形で申しますと,私自身も子どもが当事者でない事件のときに,――いえ,子どもが当事者でないかどうかも問題ですが――,子どもの意見や希望を聞くというのはもちろん大切なことだと思います。そして,民法との関連でいうと,父と母が協議で決められる内容,つまり,子どもを排して合意をすれば決められる内容について子どもが主体的に関与するというのは,実体法との齟齬があるのではないかという意見もあろうかと思うのですが,しかし,それは必ずしも絶対的な齟齬だという必要はなくて,結局,父母が話合いによって決められるという段階においては,父母に子の最善の利益というのを基本的に図らせるのだが,父母の間が破たんしている状態,これは離婚という意味ではなくて当該事象について子の最善の利益を話し合って決められるという状態がないという意味ですが,そのようなときには,家庭裁判所が出てくるわけだし,また,父母の役割というのが期待できないので,もう一人,当事者が絡むことになるというわけであり,そのこと自体は,実体法との関係で矛盾しているかといったら,そうはならないという気がします。   ただ,ちょっと要らないわき道にそれますと,例えば頂いた「家事事件における子どもの地位」という本の中で増田幹事が御論考をお書きになっているのですが,「親権は義務であるから」という理由付けは,私は「どうかな」と思います。親権は歴史的には子どもの問題に対する国家の関与を排除するという意味をも持ってきたわけであって,親の権利から親の義務にシフトしていったと単純には見ることができないのであり,それが協議によって決められるというところにも現れているのだろうと思うのです。つまり,破たんするまでは,国家の「後見的」と銘打った関与を排除できるわけでして,そのような意味は,現在でも親権にはあるのだろうと思います。   しかし,破たんしているときに子どもの意見を聞くのは大切だと思うのです。ですが,それを子ども代理人という制度で行うかどうかが問題です。子ども自体が子ども代理人を選ぶことができないというのは当然であり,かつ,父母が選ぶということもできないということになりますと,裁判所が選ぶことになります。そして,今まで出ている案としていろいろ御紹介いただいた見解においても,裁判所にリストが用意されていて,裁判所が選ぶといったことが想定されているようです。しかし,そうすると,裁判所が,例えば全然違う事件ですけれども,不動産の共有物分割において不動産鑑定士に鑑定をさせる,という場合のように,裁判所が専門家の助力を求めること一般とどこが本質的に違うのだろうかという気がします。そして,裁判所がそのようにして指名するということになりますと,今度は,家裁の調査官は裁判所に属しているので,もう一人,独立主体をつくろう,という理念とは若干齟齬してきまして,家裁の調査官には必ずしも期待できないので,もっと丁寧に話を聞ける人というのをもう一人,用意しようという制度になってしまうような気がします。それはひょっとして必要なことなのかもしれないと思うのですけれども,そうなると家裁の調査官制度の充実とか,あるいはそこに更に予算面の問題がありますけれども,予算をつけて専門家というものを多数用意するというのと,根本的にどこが違うのかというが私にはよく分からない。   当事者になるというところが違うのだというのが最後だと思うのですけれども,当事者になるということの意味が,先ほどの畑幹事のお話ではありませんけれども,必ずしも私にはよく分からないところがあります。裁判所が選んだ人が当事者になるというのも,何かちょっとよく分からないところもあるのですけれども,例えば当事者ならば当事者として発言したことは責任が出ますし,仮に私が訴訟を起こしていて,私が弁護士を頼んで,その人がいろいろな主張をしたのが私の主張になるというのは,私が選んだということによって私に帰責することができるわけです。しかし,子どもの代理人が何か発言をしたことということに子どもに責任を負わせられるかというと,負わせられないはずであって,そうなると,通常の当事者概念というのと若干ずれがあるのではないかという気がするわけです。   私は結論としては賛成でも反対でもないのですけれども,そうなったときには,結局,専門家としての調査というものを充実すべきであるという意見のコロラリーとして考えるのか,それとも,全然別個の話として考えるのかという問題があって,現在,日弁連等から出ているのが子ども代理人制度のすべてではないと思いますので,結論としては増田幹事おっしゃったように,かなり細かく論点を提示して,パブコメに付せざるを得ないのかなという気がいたします。長くなりまして申し訳ありません。 ○伊藤部会長 増田幹事,今の御発言に関して何かございますか。 ○増田幹事 私の方につきましては,ちょっと誤読かなと思っているのですけれども,権利義務の総体と考えているもので,義務だけだと書いたつもりはなく,今,言われたような歴史的な展開というところも本当は意識しております。ただ,この中間とりまとめのやり方としては道垣内委員と結論的に共通するところで,根本的なところから,いろいろな御意見がこの間,出されましたので,確かにオープンクエスチョンでもありますし,本当に論点が多様です。   先ほど意見表明といいましたが,意見表明という言葉自体,いろいろな使い方をされる方がおられまして,意見表明というからには子どもが少なくとも言葉を発して,自分はこうしたいということが言える段階からだという人もおれば,まばたきであっても手を挙げても,それは意見表明であると言われる方も中にはおられます。ですから,かなり本当にいろいろな意見が出るような形はしたいのですが,本文のところはもう少し具体像が現れるような形にしていただいて,それに対して賛成する人も反対する人も,いろいろな論点から指摘できるというものにしていただければと思います。 ○杉井委員 ですから,例えば注で意見表明権を援助するためなのか,それとも,もっと客観的に子の最善の利益を図るという,そういう目的なのかとか,そういう,今,出されているように,むしろ論点的に意見の対立が分かるような形で,あるいは代理人か,あるいは手続保護人なのかとかいう感じで,対立点が分かるような形で注をしてくださるのはいいかと思うのですね。だから,本文についても例えばいろいろ論点が対立した点が出るとすれば,例えば括弧書きである程度やるとか,一つのきれいな文章にまとめられなければ,そこの選択の余地があるような,そんな書き方をするとか,その辺は工夫していただいて結構だと思うのです。私も,ですから結論的にまだまだいろいろな御意見を伺いたいと思うので,基本的にはやはりオープンクエスチョン的なものでいいかと思うのです。ただ,いずれにしてもこの本文だと,全然,イメージがわかないという感じがしますので,もう少し工夫していただきたいと思います。 ○伊藤部会長 例えば先ほど杉井委員がおっしゃった子どもの手続保護人ですか,親権者等の法定代理人とは別の,しかもそれ自体も法定代理人ではないと。増田さんがお書きになった法定代理人ではなく法定訴訟担当とすべきであるという,何か一種の職務上の当事者のような,子どもの手続保護人というのはそういうものとして考えられているということなのですかね。 ○増田幹事 訴訟担当という言葉は前回,三木委員から痛烈な批判を受けまして,修正する必要があろうかと思いますが,独立した立場であるということを考えております。 ○伊藤部会長 そういう意味では,やはり職務上の当事者的な性格付けなのかなという気はしますけれども。 ○脇村関係官 是非,教えていただきたいということなのですけれども,これまで議論を聞いていて,最終的には子どもの手続保護人を置くかどうかの議論の前提としては,恐らく役割をどう考えるかというか,そこをまず本当はセットした上で議論しないといけないんだと思うのですけれども,人によってそこの立ち位置が違うので,なかなかあれなのかと思っているのですが,大きく分けると,一つは先ほどから出ていますように,子どもの親権者指定等において子どもに影響があるのだから,子の意見を言うということを確保するためにどうすべきかという観点から,子どもの意見表明権を充足するために家裁調査官とは別に置くべきではないかという議論が一つあって,その議論では恐らくそこは家庭裁判所調査官の役割との関係が問題となる。もう一つ考えられるのは,意見表明を重視するというよりは,そういう子どもに影響を与える事件については,子どもの権利を守るためにだれかが代わりになって権利を主張する,あるいは手続上の行為を主張する者を置くべきだという考えもあって,恐らくそこの問題としては,今度は調査官というよりも家庭裁判所というか,家事手続における裁判所の役割との関係が今度は問題になるのかなと。   特に民事訴訟のように弁論主義を採用していて,基本的には当事者が主張を立証するという構造の手続では,子どもが影響を受ける事件においては,裁判所ではなくて,だれか適切な人が代理人とか,あるいは何かになって主張を立証した上で,それを裁判所が見て判断するという構造になると思うのですけれども,家事事件では従前から御承知のとおり,正に後見的な役割を家庭裁判所が果たすと。子の親権者指定については,正に裁判所が子どもにとって最善のものを指定すると。家庭裁判所はそういう当事者に任せ切りではなくて,裁判所が頑張って資料を調べた上でやるというシステムをとっていることとの問題点が恐らくあるのかなと。   正に裁判所だけではないというか,裁判所の責任の一部を代理人の方が担って,それは協力し合うのでしょうけれども,そういった点で,そういったのが争点だろうなとは思うのですけれども,本当にその理解がいいのかどうか,あるいは今のはプロトタイプとしてそう申しただけで,意見表明権と子の利益の保障というのは,必ずしも排斥する関係ではもちろんないので,複合的ものもあるのか。できますれば,そういった,そこら辺についてまた何か御意見があれば頂ければと思うのですが。 ○増田幹事 高田裕成委員,申し訳ないのですけれども,ドイツで手続保護人制度ができて手続補佐人制度に変わって,代理人ではないということが確か明記されたと思うのですけれども,その辺りの経過をお教えいただけないでしょうか。 ○伊藤部会長 御無理なら別に後の機会でも結構です。 ○高田(裕)委員 今直ちにお答えできる準備がございませんので,後の機会にさせていただければと存じますが。 ○増田幹事 急に振ってしまったのですけれども,ドイツで最初にこの手続保護人ができたときは,子どもの主観的な意思の表明ということで,そこのところではっきり少年局の役割と区別するということを打ち出したのではないかと思っているのです。しかし,実際の運用がなされていくにつれて,それが子どもの最善の利益とそれほど違いがあるものではないということが分かってきた。ただ,独立の代理人というか,少年局という国家機関とは別の民間人がやるということに対する意義も一方で見いだされてきて,その権限が拡大してきたという経過があるようですので,また,その辺は調べたいとは思っています。   あと,オーストラリアだとかアメリカだとか,英米法系のところは最善の利益なのか,意思表明なのかというのは,余り深く考えていないのではないかとも思っているのですが,あの辺りの法の発想から考えて,そこにそれほどこちらとしてもこだわるものではないです。ですから,脇村関係官がすごく悩まれたところではありますけれども,本文でどちらかに決め打ちしていただいても構わないのかなと思っています。どちらかに決め打ちしていただいて,こういう問題もあるし,他の意見,見解もあるみたいな話でもいいのかなと思っています。 ○伊藤部会長 どうでしょうか。私は危ぐというほどではないのですが,仮に本日,ここに出ているような資料とそう大きく違わないような形でまとめた場合,従来から子ども代理人に賛成ないし反対の意見をはっきりお持ちの方は,それで,それぞれの見解を寄せると思うのですが,改めてそういうことについて問題を投げ掛けられたので考えてみようという方は,もちろん,それぞれもとの議論を勉強してということなら,それでもいいのですが,やはりもうちょっとこういう場面で親権者の指定だとか,監護者の指定だとか引渡しだとかいう場面で,従来の家裁調査官等の制度では機能しないということについて,これこれ,こういう問題の指摘があって積極の意見がある。それに対して,いやいや,そうではないよという消極の意見もあると。ある程度,そういう形で提示をしないと,広く意見が出てこないような気がして,結局は従来の賛成,反対という対立構造のままで,今後の審議を進めなければいけなくなるような懸念があるのですけれども。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○金子幹事 少しお伺いしたいのですが,前回の議論のときだったかと思うのですが,裁判所で具体的に問題となっている事件の解決の限度で子どもを代理するなり,代弁するなりという手続だけを視野に入れて考えればいいのか,もう少し広く相談に乗るといいますか,あるいは,今,お父さんとお母さんの間ではこういうことが問題になっていて,今,裁判所でこういう手続が進んでいるのだけれども,というようなもう少し日常的なかかわりといいますか,手続プロパーの問題よりは少し広い範囲でかかわるというような,その中で裁判手続にも子どもの意見を反映させていくという役割を想定するかのような意見もあったと記憶しているのですが,前者ですと少し補足にも書かせていただいたと思うのですが,特別代理の制度とか,あるいは子どもが意思表示だけでできるような場合についての裁判所が弁護士をつけることの制度を総則で入れたりとかしていたのですが,それとは別に手続プロパーのものとして入れるということの意義も考えなければいけないような気もします。   ちょっと話が散漫になってしまいましたが,まず,プロパーのものだけを考えるのか,もう少し広い活動の中で,その一環として裁判手続にかかわるという人物像を想定するのか,ここがまず何か分かれ道のような気がするので,この辺りはいかがでしょうか。そこも視野に入れて聞くとなると,大分,また,書き振りも変わってきます。結局は役割論,権限論ということになるのですが,正にそこにこそ意味があるかのような論調の論考も拝見したことがあるので,多分,お配りいただいたというか,最終的には私どもが資料にした中にもあったと思うので,その辺りはパブリックコメントに付すにしても,多少,もし集約ができるのであれば有り難いなと思うのですが,いかがでしょうか。 ○伊藤部会長 今の金子幹事の問題提起はいかがでしょうか。 ○増田幹事 ですから,これは家事審判法の改正なのですよね。ということは,家事審判法でできることは何かというと,やはり手続に関与することしか決められないのではないかと思っています。今,言われた手続以外での質問を受けたり,相談を受けたりというような話は,結局,運用イメージの話です。これは,家事審判法で与えられた権限を実現するために,選ばれた人がどういうことをするかという,そういう話だと思うのですよ。だから,確かに積極説としては,その像を与えていただくということは非常に有り難いことだけれども,そこまで家事審判法の改正の議論の中で言えるのかなという疑問は持っています。   ただ,特別代理人との違いということになりますと,特別代理人というのは,これは前も言いましたけれども,だれも主体に対して代理する人がいないという場合に,いないけれども,手続上,送達を受けてもらわなければ困るとか,この手続に出てきてもらわなければ困ると,そうしないと手続が進まないというときに選ぶものであって,それは子どもが主体的に手続にかかわっていくというような積極的なものとは違うのだろうと,性質的に違うのだろうと思います。 ○脇村関係官 また,議論が被るかもしれないのですけれども,結局,今の家事審判手続の構造というのは,例えば親権者指定のときに,基本的には子どもについては正に法定代理人である親権者が代理をしているのだという前提のもとに,ただ,それだけではやはり足りないですよねということで,そこは必ずしも手続当事者と扱わないけれども,実質的な影響を受けるということを考慮して,陳述聴取の規定等できちんと酌み取り判断するという構造をとっているのだと思いますが,今回の子ども代理の御議論というのは,その中でいうと陳述調書のやり方として家裁調査官がやることで足りるのかどうかという議論と併せて,正に家裁がそういう役割をするだけではなくて,要するに家裁が丸抱えしてやるだけでは足りないのだと,身近というか,裁判所が選んだ人を別に設けて,その人が資料を収集し,子どもの意見を聞いて適切に手続に反映する事が必要なんだという抽象的にはそういう御議論だと思うのですけれども,恐らくそこの議論をする際に,もしよければ家裁が丸抱えしていては駄目なのだという理由が,そういうのがあれば議論しやすくなるのかもしれないのですけれども。   ○増田幹事 私が本に書いたのは,一番大きな違いはやはり中立公平性の問題であるのではないかということです。家庭裁判所というのはやはり裁判所でして,一番,裁判所として大事なこと,国民が期待していることは,両当事者に対する中立公平性だと思います。ですから,この事件について恐らくこうなると思うとかいうような結論の見通しを子どもに話すことはできない。恐らくお母さんに育てられることと思うよと。そうしたら,お父さんにこうやって会うとかいうようなことを示したり,子どもに対してこうしたらどうかというようなアドバイスなども,ある結論を前提にすることはできないだろうと思うのですね。そこが私は,ほかの賛成論者が違うことを言うかもしれないけれども,手続保護人は両当事者に対する中立公平性を損なっても構わないと,自分の判断と子どもの意見とでいろいろ話をしながら,主張を組み立てていくことができるというところに利点があるのだろうと思っています。 ○杉井委員 先ほど金子さんが言われた子どもの手続保護人ということについて,子どものもっと日常的に相談に乗る,単なる事件手続だけではなくて日常的に相談に乗るという,もう少し広い範囲のとらえ方と権限を与えるということであれば,調査官などとは別な役割ということがあるのではないかということがありましたが,飽くまでもこれは家事手続の中での代理人ないし保護人ですから,その事件が終わってしまってから後も日常的に相談に乗るとか,それは考えていないし,あり得ないのだろうと思うのです。   ただ,調査官の場合に,これは私もいろいろ弁護士にも話を聞いていますが,特に最近では調査というのは子どもに会う機会はほとんど一回,せいぜい二回とか,そういう感じで,ほんの一回や二回限りで子どもに会って,本当に子ども自身の状態を気持ちと意見を把握できるかというと,やはりそうではないのではないかと思うのですね。もし,子ども代理人ないし手続保護人が機能するとしたら,そういうたった一回,二回の話ではなくて,もう少し事件係属の間,それはまた数か月になることもあるわけで,そういう期間中,やはりかなり頻繁に複数回数,子どもに会って,そして,また,そこの中で本当に子どもに情報提供し,そして子どもの相談に乗り,そして,そこで子どもの意思,意見を把握するという,こういうふうな役割なのだろうと思うのですね。   ですから,もちろん,これはだから飽くまでも子の一つの家裁の審判なり調停なりの手続の間だけの,飽くまでもそういう意味では,手続代理人なり手続保護人であるわけですけれども,やはり家裁の調査官よりはもう少し日常的に子どもに接しながら子どもの意見を把握し,意見表明を助けるという,そういうことになる。同時に意見表明を助けるということは,全体的に,私も意見表明権を助けるのと最善の利益を図るという客観的に見た子どもの最善の利益ということは,決して矛盾するものでないと思っておりますが,いずれにしても,そういう形で機能するのだろうと思うのです。   もちろん,私たちも裁判所の後見的役割は信頼していますし,期待するわけですけれども,やはり裁判所というのは限界があると思うのです。今も言ったように調査官にそんなもっともっと頻繁に子どもに会って,子の意見聴取や何かができるかというと,決してそうではないと思うし,そしてまた,裁判所と離れた日常の場で子どもがどういう状態であり,どういう意見を持っているかということを把握するのは,裁判所とは別な機関なり人物が必要だと思うのですね。   ですから,そういう意味の独自性,これはだから,私も何回も言っていますが,調査官が全然機能を果たしていないとか,調査官制度が駄目だとか,そういうことを言っているわけではないのです。ただ,そういう裁判所の後見的機能あるいは調査官制度にプラスした,言わば並行というか,プラスした形での制度であり,そのことで初めて子どもの権利というのが守られるのでないか。特に今,この時代,家事事件というのは非常に複雑化していますし,そういう中で,本当の意味で飽くまでも最終的には事件解決につながっていくわけです。そういう手続をいかに最終的にいい解決に導くかということではあるわけですけれども,それを助ける,そういう意味では,正に裁判所と対立するものではなくて,それを助ける制度と考えているのですけれども。 ○伊藤部会長 今,いろいろ議論があったようなことをたたき台(4)の保護者という表現はともかくとして,本文はそういうことを言いたいんだという,表現したいんだということだと思うのですよね。子が影響を受ける家事事件においてというのは,必ずしも当事者になっているというわけでもない,そういう場合に限るわけでもないけれども,しかし,何らかの形で意思,意向を尊重すべきような状況に置かれている事件であって,しかも,子の利益を保護するというのは調査官とは違って,言わば子どもの利益という地位,立場から手続上の行為をするということであり,かつ少なくとも手続の期間は継続的に関与を,裁判所との関係というよりも子どもの関係を保持するとか,恐らくそういう特質を持った地位だということだと思うのですが,そういうことをある程度,具体的な例を例示して,今,御議論があったようなことを読む方が分かるような形で記載をするということですかね。なかなか事務当局には,それこそ中立的な立場でそういうことを表現するというのは,非常に工夫を要するところだとは思うのですけれども。 ○三木委員 私は,この制度について賛成でも反対でも現時点ではありませんし,というか,どういう制度が提案されているか分からないので,賛成,反対を言えない状況ですので,今から申し上げるのはパブリックコメントにかける案の出し方ということに限っての話です。増田幹事がいみじくもおっしゃったように,どちらか,代理人なのか,代理人ではないのかというのは,決め打ちという言葉をお使いになったけれども,決め打ちをしないと恐らく何を聞かれているか,読んだ人は分からないのではないかと思います。先ほど来,増田幹事や杉井委員の御発言を伺っていると,本文としては手続上の代理人という性格のものとして,取りあえず提案して,もちろん,補足説明の中ではそれとは違う考え方もあるということはお書きになる方がいいのでしょうが,そういう形で一種の性格付けを決め打って,こういう制度はどうかということで聞くというのが一つ目の私の感想であります。   一言だけ申し上げると,これも私がきちんと考えての発言ではございませんけれども,子の最善利益を考えるというときに,代理人構成をとっても,それはある程度可能だろうと思うのです。というのは,代理人は善管注意義務なりがあるわけで,子の年齢が低くて意見表明能力が低くなればなるほど,善管注意義務が働いてくる要素がありますし,また,意見表明能力がある,ある程度の年齢の子どもであっても,善管注意義務との関係では子が勘違いしたりして発言しているものを是正するという権限もあろうかと思いますので,今,申し上げたのは余計なことかもしれませんが,とにかく代理人構成だということを本文に書いてはどうかと。   その本文で書いたことを前提に,これについては,ただ,特別代理人との関係で重複するのではないかという意見があり,他方で,そうではないという意見があるとか,手続外での権限も持った独立の子どもの保護人であるという意見もあれば,手続上に限ったものでいいという意見もあるのだとか,そう両論を書いていくというようなことで,しかし,とはいっても,まだ,私が聞いている限り,この場での議論もやや抽象的な議論が多いので,事務当局としては多少,抽象度の高い書き方になろうかとは思いますが,少なくとも本文の中で性格を決め打ちするということで,多少なりとも意見は出しやすくなるのではないかと思っております。 ○伊藤部会長 ほかに,大分,御意見を出していただきましたが,いかがでしょうか。 ○田(昌)委員 子どもの手続保護人に関する前回の議論に参加しておりませんので,手続保護人について詳しいことは存じあげないのですが,今,先生方の話をお伺いしていて,子どもの手続保護人のイメージというのが非常に分かりづらいところがあると感じました。例えば,具体的な場面で子どもが何を望んでいるかを子どもから聞いて,それを手続の場で主張していくというところに,子どもの手続保護人の役割があるのか,あるいは,それを聞いた上で,自分の専門知識やこれまでの子どもとのかかわり合いの中で,子どもが主観的に望んでいることと違っていても,それが子どもの将来にとって一番よいと考えた場合に,それを主張していく役割を担っているのか。   そういった点,一つをとってみても,今伺った話ではどちらなのかがよく分からないところがありまして,そういう状態を前提に子どもの代理人あるいは手続保護人の新設を打ち出しても,議論は非常にしにくいと思います。今,分けただけでも二つのタイプがあるわけですけれども,手続保護人に,どういうイメージ,そして,どういう役割を担わせるのかという点について基本的なモデルがあった上でないと,手続保護人制度の要否についてほかの人の意見を聞くということは難しいのではないかという気がいたします。 ○伊藤部会長 なかなか事務当局としても,どういう内容を表現するのかというのは難しいところで。 ○金子幹事 例えば調査官の違い一つをとっても,調査官が会うのが一回というのも言わば運用の世界であり,それから,先ほど増田幹事から御指摘があったとおり,こういう性格付けのものを入れたときに,その人が事件の係属期間内にどの程度,子どもに接触するのかというのも言わば運用の問題であり,その意味では調査官と質的な違いについて,御意見がいまだに頂けていないような気がしています。そうすると,どこに違いがあって調査官とは別に入れるのだという点について説明をどう書いたらいいのかなという感じがしています。   更に難しくしているのは,多分,調査官自体が子の利益といっても,もちろん,どういうことを言っていたかということも酌みつつも,最終的には子の最善の利益という客観的な子どもにとって何がベストかということを追及する職務ですので,言わば全面的に子どもの代弁的な役割も果たしていて,なおかつ客観的な利益も果たしているというような側面があるのだろうと思うのですよね。   そういう前提で子の代理人との関係を考えますと,また,ここで重複が生じるという問題があって,今の調査官ではどこが問題なのでこういう議論があると書く,そこの部分に何を盛り込んでいいのかというのが,いま一つイメージがわかないというところがあって,もちろん,例えばそういう意見があったということで書くことはできるのですが,意見があったというのは,調査官の関与が子どもの利益を適切に手続に反映するには不十分だという意見があったと書く分には書けますが,読んだ人が子どもの代理人とは,ここで何を聞かれているのかというイメージを抱けるようなものになるかということについては,なおちょっと自信がないということなのですが,ただ,もちろん,この段階ですので,また,中間試案の段階ですので,何らかの形でもう一度,7月に案をこれでどうだということでお示して,お諮りするということになるので努力はしますが,そういう何か悩みがあって,なお建設的な御意見も頂ければ有り難いなと思います。 ○増田幹事 運用論を出すかどうかで悩まれているのですか。理念形の違いがはっきりすればいいのですか。 ○金子幹事 理念形が出せれば説明は容易だと思います。なお,その理念形自体に注を付けて,理念形のAという意見があればA'があり,A''もあるというようなもので,それによって注が増えれば増えるほど,どの組合せをとるかによってぼやけてはきますが,先ほど部会長がおっしゃったとおり,どうしてこういう制度の導入を考えているのだろうという,そこの説明の段階で既に悩みが生じてしまっているわけですね,そこの説明振りにおいて。 ○増田幹事 本当に理念形でいくならば,やはり意見表明がキーワードだと思うのですけどもね。裁判所調査官は子どもの意見を酌んでくるけれども,理念形からいえば子どもは調査の客体でしょう。実務運用がそうだと言っているわけではないのですけれども。 ○伊藤部会長 一通り,事務当局にとってはなお難しいことがあると思うのですが,大体,御意見は出て,あとはそれを分かりやすい形で問題の所在等を考えていただく方向を整理して,提示するということに尽きると思うのです。なかなかこの場だけで細部にわたって,こういういき方をしたらもっとよくなるとかいうことをまとめるのは,難しい性質の問題があると思いますので,よろしいですよね,中間の段階でそれぞれ意見を寄せていただいても,委員,幹事の中から。是非,そういうこともお願いをするということで,今日の段階はこの程度にいたしましょう。   それでは,一応,本日,予定いたしました審議事項については,これで終了ということで,次回日程等の説明を金子幹事からお願いします。 ○金子幹事 御説明いたします。少し,今後の見通しも含めて御説明します。   中間試案の最終的な中間試案段階のとりまとめを7月中に終えればいいということで,次回の6月25日はそのための準備に充てさせていただき,部会としては予定しておりましたが,休会として開催しないということでいかがかと思います。それで,次回は7月9日,金曜日にお集まりいただき,そこで非訟部分についての中間とりまとめの案を御議論いただきたいと思います。それから,7月はその次が26日,この日だけはちょっと月曜日にお願いしているのですが,この日にもう一度,お集まりいただき,家事手続部分についての御議論をお願いしたいと思います。   それで,一応,とりまとめの案をパブリックコメントに付すということになりますが,ちょっとパブリックコメントに付すのに事務的な段取りもありますので,8月に入った辺りからということで考えていまして,8月はパブリックコメント中になりますので,予定していました8月の部会は,取りあえず開催しないということでいかがかと思っています。9月につきましては,パブリックコメントをいつまでにするかというところを内部検討中ですが,9月につきましてはパブリックコメントのとりまとめというところまでいかないと思いますが,しかし,なお積み残しの論点が多々ございますので,9月については予定どおり開催したいと思っております。   取りあえず,次回は7月9日ということでお願いします。場所はここではなくて,もう一度,20階の方に戻りまして,いつもの第1会議室という部屋になります。7月9日,金曜日,1時30分に20階の第1会議室にお集まりいただくということでお願いできればと思います。 ○伊藤部会長 それでは,ただいま金子幹事から御説明を申し上げましたようなことで御了解いただければ,そのように進めたいと思いますが,よろしゅうございますか。   それでは,本日の部会はこれで閉会にさせていただきます。   長時間,ありがとうございました。 −了−