法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会           第6回会議 議事録 第1 日 時  平成22年7月23日(金)   自 午後1時30分                         至 午後4時04分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法(親権関係)の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                               議     事 ○野村部会長 それでは,定刻がまいりまして,ほぼ御出席予定の方もおそろいでございますので,第6回の法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会を開催いたします。   まず,配布資料の確認を事務当局からお願いします。 ○森田関係官 本日使用します資料は,部会資料6「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案(案)」です。それから,本日席上で参考資料11を配布させていただいております。参考資料11は,前回の会議で御要望のあったものですが,本年5月に行われました児童の権利委員会による我が国に対する審査に係る最終見解です。先日,外務省のホームページに仮訳が掲載されまして,そこから体罰に関連する部分を抜粋しておりますので,御参照ください。 ○野村部会長 それでは,本日の議題に入りたいと思いますけれども,前回,一通り御意見を頂きまして,それを踏まえて本日の資料としてお配りしておりまして,前回と同様,全体の構成等について,まず御議論を頂きまして,その後,本文について御議論をお願いしたいと思います。   最初に,全体の構成等についてということでお願いいたします。 ○飛澤幹事 それでは最初に,私のほうから全体の構成について御説明申し上げます。   お手元には,部会資料6としての中間試案(案)と,そのうち本文部分だけを抜粋した本文抜粋版の二つの資料があると思います。その双方を御覧いただきながらお聴きください。   前回の部会での御指摘を踏まえまして,部会資料6を作成いたしました。   この部会資料6の1ページ目の冒頭にあります(前注)で記しておりますとおり,この資料に記載されております参照条文や補足説明は,この部会用に記載したものでございまして,中間試案では本文部分のみを公表することとなります。そのイメージをつかんでいただくために,本文抜粋版というものも今回併せて配布させていただいております。   なお,前回も申し上げましたとおり,中間試案をパブリック・コメントに付す際には,私どもにおきまして,これまでの議論を踏まえた補足説明を別途作成し,併せて公表いたします。内容的には,この部会資料6の補足説明に記載されていることが基本となりますけれども,表現振り等については更に検討していく予定でおります。   本文部分の全体の構成については,前回同様3部構成ということになっております。大きな変更点は2点ございまして,それについて,これから簡単に御説明申し上げます。その他にも変更点はございますけれども,それは各論の中で適宜言及させていただきたいと思っております。   まず,変更の第1点目ですが,この中間試案をパブリック・コメントに付した場合に,読者の理解の一助とするために,第1から第3までのそれぞれ冒頭部分に,現行法に関する簡単な説明などを付加しております。本文抜粋版のほうで御覧いただければ,第1の関係は1ページ目,第2の関係は7ページ目,それから第3の関係は8ページ目に,それぞれ今申し上げたとおりの現行制度についての簡単な説明が記載されておるところでございます。   次に,全体を通じての変更点の2点目は,親権監督人の制度を掲載しないこととしたという点でございます。   これは,前回の部会でも少し御議論いただいたところでございますけれども,親権監督人の制度を福祉的な制度と位置付けるのか,あるいは親権制限の一つとして位置付けるのか,仮に前者と位置付けた場合に,福祉に関する公的な制度との関係はどうなるのか,また,仮に後者と位置付けた場合に,他の親権の制限制度との関係をどのように考えるのかなどといった点については,この部会においてもまだちょっと方向性が見いだせない状況ではないかという感触を持っております。   こういった状況の中でパブリック・コメントに付しましても,いささか何を聴きたいのかが明確にならない点がやはり残ってしまうということで,ややもすると混乱を生ずるおそれもあるのではないかということで,この度の中間試案の案からは削除した次第でございます。   なお,前回,喪失という用語を維持するか否かについては,更に検討する必要があるという指摘を受けましたが,この中間試案の案における用語法については,法文案を作成するに当たって,更に検討されることが予定されており,その点について,部会資料6の2ページ目の下のほうにあります(注)で記載させていただいております。   全体の構成の関係の説明は以上でございます。 ○野村部会長 それでは,ただいまの御説明に従って,全体の構成等について御意見を頂きたいと思いますが。いかがでしょうか。 ○平湯委員 全体の構成,コンポジションという意味では了解いたしましたが,今の御説明の中にあったパブリック・コメントに際しては,この資料6の補足説明はそのままは載せないけれども,それに代わるといいますか,説明を付するというお話でしたけれども,その付するものについては,イメージとしてはどのくらいのものを考えるのか。今の補足説明とどのぐらい違ってくるのか,ちょっとお尋ねしたいと思います。 ○飛澤幹事 すみません,分量のほうは,まだちょっとまとめてみていないので分からないのですが,内容的には,補足説明でかなり詳しく書いているつもりですので,さらに,これに新たな点を付加したりするということはないかと思います。ただ,表現の分かりやすさの問題とか,あるいは構成の問題等がありますので,そういった点はなお修正していく必要はあるかと思っております。 ○平湯委員 例えば,一部制限あたりに,あるいはその関連する同意に代わる審判のあたりとか,あの辺になると,補足説明の中では消極意見と積極意見が,かなりアンバランスなところもあると指摘されたと思うのですが,そのアンバランスのままで短くなるようなことになると,またそのアンバランスの問題というのは解消しないようにも思いますし,その辺は一つ懸念として持っております。   それから,もう一つ,いわゆる事例一覧がずっと議論の対象に,参考になってきたわけですけれども,それは補足説明の一部にもなっていなかったのでしょうか。なっているのでしたでしょうか。 ○飛澤幹事 事例一覧ですけれども,これは,当然補足説明の一部として付けて,皆様の参照の便宜に付する予定です。 ○平湯委員 ですから,補足説明の一部には入ると思うのですが,パブコメ用の説明にも入るということですね。 ○飛澤幹事 はい,そうです。 ○平湯委員 では,その今の後のほうは了解しましたので,前のほうもパブコメに付する資料ですので,積極意見,消極意見が両方ある場合に,それのバランスを一つ御検討いただきながら,お願いしたいと思います。 ○飛澤幹事 部会での議論を踏まえて考えさせていただきます。基本は,先ほどから申し上げておりますとおり,現在補足説明に入っている内容がベースになるということでございます。 ○野村部会長 ほかに御意見,御発言ございますでしょうか。   それでは,全体の構成等については,一応基本的にこの本日お出ししているものでよろしいということで,御了承いただきたいと思います。   では次に,具体的な中身に入って御議論をお願いしたいと思いますが,まず最初に,第1,親権制限に係る制度の見直し,その1ですね,親権の制限の全体的な制度の枠組みという部分について,事務当局からまず御説明を頂いてと思いますのでお願いいたします。 ○森田関係官 まず,第1,親権制限に係る制度の見直しの冒頭の説明部分では,親権の内容として監護権と管理権とがあることを簡単に記載し,現行の親権制限の制度及び未成年後見制度の概要について記載しています。その上で,現行の親権喪失制度について指摘されている問題点を記載しています。   次に,第1の1,親権の制限の全体的な制度の枠組みでは,(1)で親権の全部の喪失制度のほか,親権の全部の一時的制限制度を設けるものとした上で,(2)で親権の一部制限制度について甲1案から丙案までの5案を併記して,なお検討するものとしています。   前回の部会資料5−1及び5−2では,立法技術的な違いにすぎないようなものも含めて10通りの選択肢を提示していましたが,その点を合理化し,5案に絞りました。   具体的には,第1に,親権の全部についての一時的制限制度を設けない案を掲載しないこととしました。立法技術的な問題はさておき,少なくとも親権全部について一時的制限をすることができるようにするということで,部会としてのコンセンサスがあると思いますので,(1)でその点を明らかにしたという趣旨です。   第2に,管理権について,一時的制限制度と喪失制度の両方を設ける案も掲載しないこととしました。これは,前回の部会での御議論を踏まえ,管理権について喪失制度と一時的制限制度の両方の制度を設けたとしても,制度が過度に複雑となり,実務において両者を適切に使い分けるのが困難になるだけであると考えたことによるものです。   前回の会議と同様,このような形で中間試案として公表することについて御確認を頂いた上で,現時点での御意見もちょうだいできればと存じます。特に,管理権を喪失とするか一時的制限にするかについては,まだ議論が十分ではないと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○野村部会長 それでは,バリエーションはかなり単純化しましたので,特にその点について御意見を頂ければと思います。それと関連して,管理権の喪失と考えるか一時的制限と考えるか,どちらがいいのかという問題についても,併せて御発言いただければと思います。 ○平湯委員 この整理していただいた中で,身上監護権のみの喪失というのが,この中間試案にも盛り込まれないということになっているわけですが,この点についてはやはり設けるべきであるという意見を申し上げておきたいと思います。これは,パブコメの後にも更に検討が続けられるものとして,引き続きその点は意見として留保しておきたいと思います。 ○飛澤幹事 今の御意見ですけれども,部会のほうで従前もちょっと議論になったところかと思いますが,身上監護権を喪失させて管理権だけを残す現実的な必要性というのはどこら辺にあるのかという議論をさせていただいたときに,なかなかそういう場面は想定しにくいのではないかという意見が出ていたかと思います。そうだとすると,身上監護権の喪失を設ける必要はなく,ただ,一時的制限のほうはあり得るのかなということで,そういう整理の下に監護権については一時的制限だけ設け,喪失については落としました。今,監護権の喪失も含めるべきという御意見を頂きましたが,何か具体的な必要性があるという御趣旨なのでしょうか。 ○平湯委員 この身上監護権のみの喪失というのは,ある時期まではこの部会の論点の一つとしてかなり議論もされて,そこで今おっしゃったように管理権のみを残すという,積極的に管理権を残すというほうを考えると,それはその残す必要がある場合はどのぐらいあるのだろうかという形で議論をされたのは,私も承知しております。   ただ,親権全部の喪失でなしに,身上監護権のみの喪失ということの積極的なメリットとしては,やはり身上監護権の喪失が問題になっている事案であっても,全部の喪失でなしに身上監護権の喪失という形で制限をしていくという,そういう趣旨にもなるわけですけれども,具体的にどのような場合があり得るかというと,これは前からやはり指摘もされている民法766条のような,そういう場面というのを想定したときに,幾分かでも親権の全部の喪失よりは身上監護権のみの喪失をという形で実現したほうがよいケースもあり得ると。どのくらい多いかという数的なものは別として,そういう場面というのがあるということは言えると思うのですね。   加えまして,親権の一部の制限という場合に,日弁連の意見でも述べているところですけれども,この後で出てくる丙案のようなものが望ましいと考えておりますけれども,一部の区切り方として,一番ある意味では大きくなる部分のくくり方である身上監護権,これでも一部の制限としては,なお積極的な意味があるという評価は日弁連としてもしているところです。引き続いてそういう評価をしておりますので,ここで改めてといいますか,念のためといいますか,そういう見方がやはりあるのだということを申し上げておきたいという趣旨です。 ○大村委員 今の平湯委員の御発言と関連いたしますけれども,今回は選択肢として5案にまとめられたということで,資料6の一番後ろの別表を拝見しますと,前回の資料の別表に比べまして随分簡略化されて,分かりやすくなったのではないかと思います。前回は,たくさんの選択肢があり過ぎて,意見を聴かれるほうも困惑するのではないかという意見が,私も含めて何人かの委員の方からあったかと思います。   それで,このように整理をしていただいたということだと思いますが,平湯委員のほうからは,これでは絞り過ぎではないかという御発言だったかと思います。委員御指摘のような考え方はあり得るのかもしれませんけれども,そうなりますと,前回の案から消していただいたほかの選択肢についても考え方としてはあり得るであろうということになりまして,多くのものがまた復活するということにもなってくるかと思います。   そこで,御提案ですけれども,今回の整理としては,これでやっていただいて,今,平湯委員がおっしゃったように,ここに掲げられているのとは違う考え方については,何か積極的な意見があったら,それについてもコメントしてほしいという形の記載をどこかに付け加えていただくということではいかがかと思います。そのように提案をさせていただきます。 ○野村部会長 平湯委員の御意見は,丙案とは別にその身上監護について全部喪失するという案を残すべきではないかという,そういう御趣旨でしょうか。 ○平湯委員 そこはちょっとこちら,私も迷うところなのですが,丙案の中にもそういうものとして考えるべきだとは思っております,少なくともですね。 ○野村部会長 理論的には丙案で処理も可能なわけですね,今お考えのような制限の方法は。 ○平湯委員 ですので,少なくともパブコメに付するときに,今,大村委員のおっしゃったような形で意見を問うということでもよろしいかと思うのです。 ○野村部会長 そうしますと,これはどのように取り扱いましょうか。(注)みたいな形で書くということでしょうか。ほかの考え方もあり得るということで,特にそのほかの考え方について何か御意見があれば出していただくというような趣旨のことを書き加えるということでよろしいでしょうか。 ○平湯委員 パブコメについてはですね。丙案の一部になるというのが,この丙案の,後で出てくるかと思いますけれども,丙案の書き方としては,ちょっと言葉,文言的に無理がありますので。 ○野村部会長 そうかもしれませんね。 ○平湯委員 本当は別項目が望ましいとは思いますけれども。補足意見です。 ○野村部会長 (注)という性格に合わないのではないかということで,むしろ補足説明の中で,身上監護権の全部の喪失というような案も含めて,ここで一応整理した五つ以外にもあり得るということを明記し,それについての意見ももしあれば出せるような形で,補足説明にちょっと付け加えるということでよろしいでしょうか。 ○平湯委員 はい。 ○野村部会長 それでは,そのようにさせていただきたいと思います。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ○垣内幹事 私は今の中間試案のまとめ方については,ただいまの御議論のとおりで異存ございませんが,1点お伺いしたい点がございます。と申しますのは,監護権の制限と,それから財産管理権の制限との関係に関しまして,先ほども御発言がありましたように,また,部会資料6の11ページのbというところで御説明いただいていますけれども,監護権を適切に行使することはできないが,管理権については適切に行使することができる親権者というのは,余り想定されないという説明がされております。私自身は,これはそのとおりではないかと考えているところでございますが,以前提出いただいている西谷先生のドイツ法に関する報告書を拝見いたしますと,この報告書の28ページの第3段落のところですが,ドイツにおける考え方としましては,親の身上監護権を取り上げても,財産管理権を残し得る場合は少なくないというような記述がそこでなされておりまして,これは民法の先生にお伺いするのが適当なのかもしれませんけれども,どういう趣旨でドイツでこういうことが言われているのかというのは,もし確認が可能であれば確認しておくほうが適切であるのかなという気がいたしておりますので,その点について少し発言をさせていただきました。 ○野村部会長 この場で何か御発言ございますか。ちょっと事務当局のほうで預からせていただいてからにしたいと思います。 ○磯谷幹事 先ほど管理権の全部喪失あるいは一時的な制限,どちらが有用かというか,どちらを残すかというような点についての御質問もございました。ちょっとそれを広げて,要するに監護権も含めて,やはり一時制限を残すのかどうかといった問題があると思います。   率直に言って,これは今ここでなかなか議論するのが難しいのは,特に児童相談所の仕事の観点からいいますと,児童福祉法47条2項が今社会保障審議会のほうで改正について議論をされていますけれども,そこで,その身上監護に関する部分について,当然に制限するというようなことが一つ言われておりますが,それが実際そうなるのか,あるいはその管理権のほうについても及ぶのかとか,あるいは身上監護についてフルにカバーされるのか,そうでもないのかとか,そのあたりによって,機動的に親権の中の監護権,若しくは管理権を一時的に制限する必要性の程度というのが変わってくるかなというのが一つございます。   それから,もう一つは,親権そのものの全体の一時的な制限というのが,どれぐらい現実問題として柔軟に適用されるのかというところにもよってくると思いますので,率直に申し上げて,今どれか一つ絞るというのは,なかなか議論がしにくいかなというのが私の感想でございます。 ○野村部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。   それでは,いろいろ御意見を頂きましたけれども,1については,一応先ほどの補足説明で多少考えるというところを除きまして,一応原案どおりということでよろしいでしょうか。 ○水野委員 先ほどの事務当局からの御説明で,管理権の喪失と管理権の一時的制限については,この部会でも余り議論がされていなかったのでという御発言がありましたけれども,それはここから先にまだ議論があるのでしょうか。それとも,今この全体的な枠の中で議論をすることになるのでしょうか。 ○野村部会長 ここで御意見を伺いたいということです。この中間整理そのものの中に反映させるということではなくて,今後の議論を進めていく上で,この場で御意見いただければということでございます。 ○水野委員 それでは,特に深く考えたわけではございませんが,先ほどの議論とも少し重なってくると思いますので申し上げます。つまり,管理権と身上監護権をどのように考えるかということですが,私も,先ほど御説明がありましたように,監護権を奪いながら管理権だけ残すというのは,なかなかイメージが付きにくいところがございます。成年後見の場合でも,自分の財産管理をする能力と自分の身上について決定する能力ですと,身上について決定する能力のほうがはるかに最後まで自分に残ることになりますから,それが奪われるような場合に財産管理能力が残ることは考えられません。もちろん成年後見とは場面も性質も違いますが,でも,親権者につきましても,子供の財産管理をする能力と子供を自分の手で育てる,身上監護権を持って育てることを比較しますと,その身上監護権のほうがより人格権的な内容が強くて,親の親権としては最後まで残るべきもののような気がいたします。   そうすると,それだけに,できるだけ早く戻して親子統合することを目指しながら介入をすることになりますと,身上監護権についての一時的制限は,これは必須であろうとは思いますが,一方,財産管理権のほうの一時的制限につきましては,どうもこれはそれほど必要性がある場面をうまく考え付くことができません。   もし財産管理権を与えることが危ない親であった場合には,一時的制限ではなくて管理権を喪失させておいて,そして,それが何らかの親の身体的な事情などで管理権はなくなったけれども,やがてそれが復したということであるのであれば,そのときは喪失を取り消すという形で対応すればいいように思いまして,管理権についてあらかじめ期限を切った一時的な制限というイメージをすることがなかなか難しいので,もしよりシンプルにするとすれば,これも管理権の喪失のみという形で,更に短くしてしまえる気がいたします。 ○磯谷幹事 今の水野先生の御発言に絡むのですけれども,先ほど申し上げたように児童福祉法47条2項がどういう形になるのかというところに,やはり私としては非常に関心がありまして,と申しますのは,そちらのほうで身上監護について事実上親権が制限されるとなると,あと財産管理について止めればいいということであれば,一時的な形で財産管理を止めて,そして児童福祉法の世界では一応今2年ごとの更新というような形になっていますので,それと合わせた形で運用することが可能なのかなとも思うのです。   親権全体の一時制限ということもあり得るでしょうけれども,児童福祉法のほうで,もう監護権部分は事実上止まっているのだ,ここをどう考えるかというところもあるのですけれども,仮にそういう話になると,何か二重の形で制限を掛けるような形にもなりかねない。ですから,そちらのほうの制度設計とやはりちょっと絡んでくるので,私としては,まだ管理権の一時的制限は要らないということはちょっと言えないと思っています。 ○野村部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。 ○窪田委員 ちょっと違う方向から問題提起といいますか,御質問になるのですが,どの案を残す,残さないということではなくて,全体の構成にも関係してくるのかなと思いますので,発言させていただきます。財産管理権のほうが制限されるような場合,それが一時的なものであったとしても未成年後見で受けるという仕組みは,現行法との関係でも比較的分かりやすいのだろうと思うのですが,身上監護権については,喪失というのを案としては残さないとしても可能性としては残る,あるいは一時的に制限するといった選択肢を残す場合に,それをどこで受けるのかということが,少し気になります。後ろのほうの未成年後見の部分についての説明を見ると,法人の話と複数の話は書いているのですが,身上監護権の制限を具体的に意識しての言及はないように思われます。   財産管理権が親権者にない場合に後見人が必要だというのは,現行法にもあるところで,比較的分かりやすいのですが,他方,財産管理権は親権者が持っており,身上監護権だけを失っている,あるいは一時的に制限されるという場合,どうなるのでしょうか。後ろのほうを見ると,一部制限された場合には未成年後見が始まるというような趣旨が書かれているのですが,これは多分,現行法を前提としてのものだろうと思います。この部分について,特に今まで議論は尽くしてきていないと思いますので,書くことは難しいのだろうと思うのですが,その点は少し意識しておかないと,最終的に制度を組み立てるときに漏れが出るのではないのかなという点が気になりました。これはむしろ御検討いただければという趣旨で申し上げました。 ○森田関係官 部会資料6では,2ページの(注)の3段目で,今,窪田委員から御指摘があったような点について記載しているつもりです。例えば,身上監護権だけを制限するような制度を設けたとき,また丙案であれば,よりいろいろなパターンが想定されるかとは思うのですが,そのような場合にも,基本的には現行法の管理権喪失や親権喪失と同じように,その結果として親権の全部又は一部を行う者がいなくなった場合には,未成年後見が開始して,その部分についての未成年後見人を選任するというのが,現行法からの連続性からすると自然ではないかということです。御指摘のとおり,これまで,余り明示的に部会でも議論にはなってこなかったのですけれども,一応そういう前提では書かせていただいております。   ただ,こう整理するしかないというか,こういう整理が現行法からの連続性を維持する整理かなと思っているのですけれども,もしそれについて何か御意見があれば御議論いただいたほうが,今,先生から御指摘があったようなこともありますので。 ○野村部会長 よろしいでしょうか。   では,1については以上で,次に,2の親権の制限の具体的な制度設計,その(1)親権の制限の原因というところを御説明お願いいたします。 ○森田関係官 2の親権の制限の具体的な制度設計の(1)では,親権の制限の原因を取り上げております。アは親権の喪失の原因で,A案からC案までの実質につきましては,部会資料5−1から特に変更はありません。   表現振りにつきましては,前回の御議論を踏まえ,B案の時制を一致させました。すなわち部会資料5−1では,「父又は母による虐待等があった場合その他親権の行使が著しく困難又は不適切である場合」と,時制が統一されていなかったので,その点を「困難又は不適切であった場合」としました。それとの並びでC案も同じ文言にしています。併せてイの親権の一時的制限の原因,ウの監護権の一時的制限の原因,エの管理権の喪失の原因のうちのB案及びオの管理権の一時的制限の原因につきましても,「不適切であった場合」と過去形にしています。   イの親権の一時的制限の原因,ウの監護権の一時的制限の原因につきましては,今申しました表現の点以外に変更はございません。   エの管理権の喪失の原因につきましては,部会資料5−1では,管理権の行使が不適切であることによって,子の財産以外の利益が害されているような場合にも,管理権の喪失や一時的制限をすることができるように,その原因を見直すことを提案しておりましたが,そのような見直しの必要性や相当性について慎重な御意見もありましたので,現行の原因を維持するA案と見直しを行うB案とを併記し,なお検討するものとしています。   他方,オの管理権の一時的制限の原因につきましては,エのB案と同じ原因にするという案のみを記載しています。これは,管理権について喪失ではなく一時的制限にしようとする考え方は,施設入所中等の事案も想定して管理権の一時的制限を利用しようとする考え方ですので,管理権について一時的制限としつつ,現行の管理権喪失の原因と同様にするという考え方はないだろうということで,エのB案の原因と同じにすることとしています。   これら親権の制限の原因につきましても,このような形で中間試案として公表することについて御確認を頂いた上で,現時点での御意見もちょうだいできればと存じます。   例えば,アの親権の喪失の原因について,特にA案を採る場合に問題が顕在化するのかと思いますが,現行法の「著しい不行跡」に相当する文言を残すべきかどうかについて御意見を頂ければと存じます。また,先ほど御説明させていただきましたとおり,管理権の喪失の原因につきましては,今回改めて整理をし直しましたので,そのあたりについて御議論いただければと存じます。 ○野村部会長 それでは,いかがでしょうか,御意見,御発言をお願いしたいと思います。 ○大村委員 必ずしも十分についていけなかったのですけれども,現行法の「著しい不行跡」を残すべきかどうかという点について意見をということだったかと理解しました。これはこの資料との関係でいうと,どういう問題提起になりますか。 ○森田関係官 直接今回御意見を頂いて,何か反映するというところまでは難しいとは思うのですけれども,前回いろいろ御意見が出ていましたので,今後の議論のために何か御意見があればということでございます。 ○大村委員 私は,個人的には,「著しい不行跡」というのは歴史的に見て,今日では必ずしも適切でない状況を想定した文言だと思います。仮に,現在この規定で賄っているようなことをどこかで読む必要があるというのならば,文言は変えたほうがいいのではないかと考えております。 ○野村部会長 今,裁判所で,具体的にどういう場合にこの「著しい不行跡」という判断をされているのか,あるいは全くそういうのはないのか,その辺,ある程度分かれば,御説明いただければと思うのですけれども。 ○古谷幹事 従前,その不行跡というのは,配偶者,特に妻のほうに何か必ずしも相当でないような行為があったときに使っていたということは承知しておるのですけれども,現時点でどういった形で一般的に使われているかというのは,必ずしも把握しておりません。 ○野村部会長 中間試案のほうについてはいかがでしょうか。特に,この前回の議論を踏まえて文言を改めたところについて,御意見がおありでしょうか。 ○平湯委員 時制を整理していただいた点は,非常にすっきりしてよかったと思います。 ○垣内幹事 時制を整理していただいた点は,確かにその文法的にはすっきりしたように思うのですが,例えばC案を拝見したとき,その前段のほうで「著しく困難又は不適切であった場合」というように過去形になっておりまして,後段のほうは「子の利益を著しく害するとき」と,これは後の御説明などとの対応で申しますと,その前段のほうは基本的には親権者の適格性等のことを念頭に置いてこういうことを規定していて,後段のほうは子の利益の問題を書いているということになるのですが,それとともに,過去,現在,未来という時間軸が,その前段は少なくとも文法上過去のことについて言っていて,後段,子の利益に関しては将来の予測が入ってくるというように,幾つかの軸が前段と後半でずれてくるということになっているのですが,果たして例えばC案のような規定を置くというときに,前段が過去形で後段がこういう現在形というのが適切なのかどうかというのは,少しよく分からないような感じもいたします。その点,例えば同じ資料の28ページのほうで,これは別の問題,同意に代わる許可との関係の説明ですけれども,こちらのほうでは,3のところの試案のところですが,「父又は母による親権の行使が困難又は不適切であって父又は母に親権を行わせることが子の利益を害する場合において」となっておりまして,これであればすっきりはするなという感じがしております。   ただ,C案に関してはそうですし,A案の場合にも,これは過去形ということに当然なると思うのですけれども,問題は,前回,不整合ではないかという御指摘のあったB案の関係で,ここについては,確かに文法上整合性をどう取るかという問題もあるのですが,それとともに,一方では,A案のように過去の事実に着目して,ある種の制裁として喪失を考えるということと,それから親権者の現在の適格性あるいは子の利益ということを加味して判断するということとが混在しているために,こういうことになっているのであるように思いますので―ですから整理が難しいのだと思いますが―機械的にすべて前段を過去形に直すということが最も適切であるのかについて疑問の余地がないわけではないように感じられましたので,もし何かまた御検討いただける点があれば御検討をお願いしたいと思います。 ○平湯委員 この新しいA案,B案,C案の三つをどういうふうに統一的に理解するかということで申し上げますと,これは「場合」,要するにいずれも前段に相当する部分ですね。これは「あった場合」ということで,過去形でかつ「場合」という言葉で表しているわけですけれども,これは基本的には親権者の適格性の言わば徴憑であると。過去にこういうことがあったではないかということを踏まえて,後段が実は中心的な要件になると。つまり,親権を行わせることが子の利益を著しく害するかどうかを判断する上で,徴憑として過去の事実も述べていると,こういうふうに考える。特にA案については,今おっしゃられた御意見のように制裁と考えると,こっちのほうがむしろ要件になるのかもしれませんですね,前段のほうが。   だけど,整理していくと,実はいずれも共通の後段の部分が要件であって,前段としてどういうものを重視するかというのは,それは徴憑としてどの程度,どう重視するかというのが違っていると,こういうふうに私は理解をいたします。 ○森田関係官 B案において時制を合わせたときに,A案,C案をどういうふうにするかというのは確かに悩んだところではございまして,垣内先生から御指摘いただいたようなこともちょっと不安は何となく感じていたところを,垣内先生に的確に整理をしていただいたということはあるのですが,他方で,平湯先生から御指摘いただいたとおり,どの案を採っても過去の行為から現在の適格性等を推定するというか,一つの徴憑というふうにも位置付けることができるように思います。   例えば,最終的に,C案を採る場合において,どういうふうにするかということだけを考えると,今,垣内先生から御提案いただいたように,同意に代わる許可のところで表しているような表現振りのほうが分かりやすくなるのかもしれないなという気はするのですけれども,差し当たり,中間試案の段階でA案からC案まで,どこが違うのかということを一覧的に分かりやすくするためには,若干の問題はなお残るかもしれませんが,このような表現で統一したほうがいいのかなという気もしますが,いかがでしょうか。 ○窪田委員 基本的にはC案に関しては,「著しく困難又は不適切である」というのは,かなり一般的な話をしていますので,時制はどちらでもいいのかなという感じもします。ただ,B案のほうでは,同じような言葉が出てくる前に,これこれの場合その他という形になっておりますので,やはり過去の一定の出来事を捕まえるという意味で,実は同じ言葉が使われていても,随分位置付けが違うように思います。   その点を踏まえての意見なのですが,中間試案という形でやるときに,このA案,B案,C案という形で前半部分だけ出て,「以下A,B,C案共通」というのは,この議論の経緯を知っている人から見ると,なるほど違いを浮き立たせて分かりやすいなということになるのかもしれませんが,一般的に見るとかえって分かりにくいのかなという気もします。結構いろいろな場面で複層的に場合分けがなされていますので,場合によっては「以下A案,B案,C案共通」の部分を,それぞれA案,B案,C案の中に組み込んでしまって示して,C案に関しては,場合によっては「適切であった場合」というのを「不適切な場合」というように,時制がないような形に示すという方法もあるのかなと思います。ただ,今からこんなことを申し上げてもお困りになるかもしれません。 ○森田関係官 表現振りということでお任せいただければ,ちょっと一度つくってみてといった面もあると思うので,そういうことで御理解いただけるのであれば,少し事務当局で作業をやってみて,いいものを選びたいと思いますが。 ○平湯委員 今の後段の共通部分を組み込んで簡明にするということは賛成ですし,技術的には行数が少し増えるだけで全然面倒くさくはないと思うのですね。もう一つ,時制の点をちょっとこだわっているようですけれども,このアのA案,B案,C案を統一的に理解したとして,先ほどのお話にも出てきました28ページの同意に代わる許可のところでは,この言わば前段に当たる部分と後段に当たる部分が最初の1行半で両方出てくる。   これは,どう読むかということをちょっと日弁連の中でも議論をしたのですが,同意に代わる許可の制度のところで最初に書いてある「父又は母による親権の行使が困難又は不適切であって」と書いてあるところまでは,実はこれは不適切であったと読むべきなのではないかと。それで,「父又は母に親権を行わせることが子の利益を害する場合において」,これは先ほどのA案,B案,C案の後段と同じで,つまり現在から将来をうかがうわけですが,この言わばA案,B案,C案の前段に当たる部分と後段に当たる部分を,これは1行半でまとめて書いてしまったので,その時制がちょっとあいまいなんだけれども,書かれた趣旨は恐らく同じなのではないかと。   そうすると,では同じで,ほかがどうなるのかということになるのですが,この同意に代わる許可の制度では,更に意味があるのが3行目から4行目にかけた部分,つまり,法律行為について「父又は母が未成年者の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないとき」と,これがこの同意に代わる許可の制度のポイントなのであって,ある意味では要件が,A案,B案,C案の制限のところよりも制限が加重されている面があるんだろうと。   もちろん別のメリットがあって,この同意に代わる許可の制度というのが提案されているわけですので,特に後見人がいなくていいとか,そういうメリットもあって提案されているわけですけれども,今の要件についていえば,私が申し上げたように読むことによってA案,B案,C案の読み方と共通するのではないかと,こういうふうに理解しております。 ○大村委員 私は,最終的には,表現振りは事務当局のほうで今の御意見を踏まえて御検討いただければよいのではないかと思います。その際の御参考までに,今までの御議論を伺って私が感じたことを2点申し上げますが,1点目は,先ほどのA案,B案,C案ですけれども,共通部分を組み込むか組み込まないかは,これは見た目を考えて御検討いただければいいと思います。A案,B案,C案は実質として何を考慮すべきかということを分かりやすく対比するという点に主眼があって,時制の表現によって,何かそこに特別の意味があるというニュアンスを排除するということだと理解しております。何を取り込むかということを決めた上で,どのように考慮するかは後で判断をし,それに見合った表現振りにするということだろうと思います。現在の文章ですと,ややぎこちない感じがするかもしれませんけれども,これは要素が何なのかということを問うという趣旨だということで,それはそれでよろしいのではないかと思います。   これに対しまして,同意に代わる許可の制度のほうは,表現は圧縮された形になっているのですけれども,先ほど平湯委員のおっしゃったように,趣旨としてはA案,B案,C案と対比した形で読むことができるかと思います。ここでは,同意に代わる許可という制度を設けるか設けないかということ自体が主眼であって,それについて一定のイメージを持っていただくためにこれが書いてあるということで,必ずしも十分に詰まった形にはなっていないように思います。   ですから,これはその程度のものとして意見が問われているのだという整理で,その内容が決まった段階で表現については更に手直しをする必要があろうかと思います。現段階での提示の仕方としては,この場で出た御意見を参酌していただいて,あとは事務当局にお任せするということでよろしいのではないかと考えます。 ○野村部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。 ○古谷幹事 親権の制限の原因のA案,B案,C案の関係で,本文につきましては意見はないのですけれども,補足説明で御説明されるときに,A案,B案,C案でどういうメリットがあって,あるいはどういう問題点があるのかというのを何らかの形で書いていただくと意見を出しやすいと思います。   今のところの説明ですと,A案,B案,C案はこういう考え方だというところにとどまっておりまして,例えばA案ですと,帰責性を取り込むという話なので,質的にはっきり区分けができて,喪失と一時的制限で役割分担が期待できる,そういうメリットがあるように思います。他方,その帰責性を取り込むということ自体が制度の本質としてどうかという問題もあるわけで,その辺りのデメリットというか,批判もあると思います。以上のような内容を明示してもらう方が意見をするほうは答えやすいという印象を持っております。 ○松原委員 今更なのですけれども,前回,「悪意の遺棄」ということについて質問させていただいて,既に規定があるということで,なるほどなと思って,そこで発言はやめているのですが,先ほど部会長,大村委員,それから古谷幹事とのやり取りの中で,その「著しい不行跡」というのはどういうものがあったのかと,同じ質問で,「悪意の遺棄」というのは,実際にどういうものが現実的にあって,それが悪意があると判断,今まで判例の中でされていたかという質問をしたいのですが。 ○進藤関係官 親権喪失のどういった事案でどのような判断がなされてきたのかということを,御理解いただく資料として,この度,「家庭裁判月報」の8月号に,東京家裁の裁判官にこれまでに把握できた親権喪失事案を整理していただいたものを掲載する運びになっております。その中には,不行跡に該当するとして親権喪失が認められた事案もございます。   悪意の遺棄については,今の親権喪失の文言上規定されていないものですから,場合によっては親権の濫用の一部,遺棄若しくはネグレクト的なものとして,判断の内容になっているところはあろうかと思います。   今把握できている限りで,不行跡に該当するものとしてどういうものがあったかということを御紹介いたしますと,子供が直接被害者になっていないような事案,例えば父が第三者を殺害したであるとか,父が母を殺害したであるといったものが幾つかあります。また,親自身が何らかの犯罪を犯して刑務所に入っているというものもあります。全体的に刑事事件が絡んだもので不行跡という判断がされているものが多いように思います。   この不行跡が親権喪失の要件として規定されなくなった場合に,これまで不行跡で対応されてきた事案を今後親権喪失として取り扱っていくのかどうか,取り込んでいくのかというところについては,是非御議論いただきたいと思います。 ○松原委員 特別養子縁組の離縁の例で,この悪意の遺棄というのはあるか。私が,この質問をしている趣旨は,全体としてこういう改正をしていこうとすると,かなり親の,あるいは家族の子育ての領域に踏み込んでいくことになる。だとすると,一方でやはり親権者側を法としては一定守るような仕組みもつくらなければいけない。そのときに,その悪意のあるというような,ある種,人の主観で動きかねないような,これは法律的にはそんなことないのかもしれませんが,法律の専門家ではない私としては,そういう主観的な判断が働くようなことはなるべく排除したいなと思っていて,でも,それは私の思い過ごしかもしれないので,判例で,もしその特別養子縁組の離縁で,この悪意のある遺棄というのが事由になっていたようなものがあれば教えていただきたいのですが。 ○野村部会長 これは,普通養子縁組でも同じ言葉が使われていまして,もともと離婚のところにもありまして,ただ,通常の民法の用語は,単に何か事実を知っているということで倫理的な価値判断は含まない用語が一般的な用語法ですけれども,親族法の世界の悪意というのは,むしろ倫理的な価値判断を含んでいると通常は説明されていて,それ以上,具体的にどういう場合に悪意の遺棄に当たるかというのは,なかなかちょっと教科書なんかでは余り書かれていないかなと思うのですけれども。 ○松原委員 もしその倫理的な価値判断を含んでいるというのが通説であれば,ここでそれを採用するかどうかというのも一つの議論になるかなとは思うのですけどね。 ○大村委員 今,幾つか話が出たことについて申し上げますけれども,まず最初に,進藤さんのほうからお話があった,現在,「著しい不行跡」で処理されているものをどうするかということで,これは先ほど私が意見を申し上げたことの繰り返しですが,現在これで処理されているものがあって,これに代わる文言が必要ならば,「著しい不行跡」でない文言で,これを受けるような形をお考えいただくのがよろしいのではないかということを申し上げておきます。   それから2番目に,A案,B案で出ている「悪意の遺棄」という文言についてですけれども,現在,その「悪意の遺棄」がどういう意味で使われているのかというのは,一般論としては野村部会長がおっしゃったとおりだろうと思います。それで,特別養子の離縁については事例が少ないので,多分なかなか上がってこないと思うのですけれども,離婚原因としての悪意の遺棄というものの「悪意の」というのがどういうものであるかというのは,ある程度のものが出てくると思います。   そのときの悪意というのは,単に知っているか知らないということではないということで,それを倫理的だと先ほど表現されたのですけれども,それは遺棄がされているということについて,一定の評価を加えるということであって,社会的に見て何が望ましいかどうかとかという特定の倫理観に基づいて判断するということではありません。遺棄のうちで,許容できない程度の大きなものを切り出すために「悪意の」という言葉が使われていて,その点で財産法上の用語法とは違うということだと思います。   そこに,ではその実質をどうするかという点については,この審議会で検討した上で,悪意の遺棄というのはこういうものだという解説をするということは,考えられるのではないかと思います。 ○松原委員 是非その解説を入れていただかないと,この言葉が広く,ここは法律の専門の方が中心で議論されているので,全然ひっかからないのかもしれないですけれども,一般の人間が読んだときにかなりひっかかる。それで,結構事例的には,それこそ虐待事例の中でも子供を外にほうり出すとか,どこかに置き去りにするというようなことは一定の頻度であって,それはそれこそ親子の分離に当たらないような事例でもそういうことが起きていますので,これが拡大的に解釈をされていく懸念というのを感じる人たちもいるかもしれないので,ちょっと是非解説を加えていただきたいと思います。 ○森田関係官 正確でないという批判があり得ることを留保しつつ,何となくのイメージとしては,多分民法で「悪意の遺棄」といっているのは,児童虐待防止法2条3号のいわゆる「ネグレクト」のようなイメージではないかと思います。   また,現行法の親権喪失の原因の「親権の濫用」につきまして,積極的濫用と消極的濫用とに分けて議論される場合もありますが,その場合の積極的濫用というのは,積極的に正に加害行為,虐待のうち暴力を振るうとか,そういうことを指し,逆に消極的濫用という言葉を使うときには,ネグレクトのような場合をイメージして議論がされているようです。ここで,虐待と悪意の遺棄と並べているのも基本的にはそういうイメージでとらえていただいて,大きくは外れないのではないかというふうに思います。   それから,多分,特にA案の場合にはそうだと思うのですけれども,ここに正に悪意という言葉が入っていること自体がこのA案の特徴とも言えるわけで,逆に言うと,そういうことがよくないという御意見は,B案なりC案を採るべきだという御意見になるのかなと考えております。   また,今の悪意の遺棄というか,そういう置き去りとか放置のようなものがあっても,直ちに親子分離に至るべきでない場合もあるという御指摘につきましては,今の案の中では後段のほうで読み込むんだろうと。前段には当たるけれども,父又は母にその親権を行わせても,直ちに著しく利益を害することにはならないということで,親権喪失の原因には当たらないということで,親子分離はしないという結論になるのではないかというふうな整理ができると考えております。   それから,進藤さんから御提案のあったお話で,大村先生からは,今不行跡という言葉で受けているものがあるのであれば,それに該当する言葉を設けるほうが適切ではないかという御意見を頂きました。先ほど進藤さんが例として出されたような,今不行跡で受けている事案というのが,では今の例えばA案でもB案でもC案でもいいのですけれども,この要件の中で読み込めないのかということをまず検討すべきかなと思っております。   例えば,薬物等の常習性があって,ずっと薬物中毒みたいな形になっているというような場合に,現実の問題として,そこの薬物中毒のところだけをとらえて親権を喪失させるのか,そうではなくて,そういう事案においても,ここに今書いてあるような子の利益の観点とか,そういうところから読んでいくのか,そこを見て当たるかどうかを判断するのかということが一つの問題ではないかと思っています。 ○松原委員 今の森田さんの解説を聴いて,ますます説明を付けていただいたほうがいいと思います。一般に,児童福祉分野の人間でネグレクトが悪意のある遺棄だと受け取る人はほとんどいないと思うのですね。是非その解説を付けていただきたいと思います。むしろ実際使うケース,ネグレクトのケースの中には,そのネグレクトしている親自身を福祉的な意味合いでケアしていかなければいけないような方たちが随分入っていますので,そこで悪意のあるというのは,多分児童福祉分野の文言としてはかなりなじんでいないので,説明を付けていただかないと,かなりパブリック・コメントで,もし児童福祉分野の人間が付けるとしたら戸惑うと思いますので,是非付けてください。 ○進藤関係官 親権喪失における帰責性については,親が何か不始末をしたことへの制裁として要求するというような説明をされることもあれば,松原委員がおっしゃったように,親の側から見れば親権を制限されるということについての一定の保護といいますか,こうなったら親権を制限されるという最低限のハードルが示されたものというような理解の二つがあるのだろうと思います。後者の観点についても補足説明に十分に書いていただけないかと思います。   その趣旨としては,制裁というと,親の行為の程度が非常に悪いものでなければならないというイメージでとらえる人もいれば,保護という観点からも非常に悪いものでなければならないと考える人もいるでしょうし,その逆の考え方もあるように思うのです。実際に裁判所が運用する立場になったときに,立法趣旨として,どの程度の事案であれば親権を喪失させる結果になってよいと考えられたのか,今回の親権喪失の原因が,これまでの親権喪失で考えられてきたレベルを非常に下げて親権喪失を許すものなのか,そうでないのかといったことについて意見が出るような補足説明を付けていただけないかと思います。 ○野村部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。 ○小池幹事 ちょっとしつこいようですけれども,確認ですが,進藤さんのおっしゃった,前回も問題になったと思うのですけれども,第三者への暴力,それからほかのきょうだいへの暴力,それから覚せい剤をやっているとかというのは,A案だといけるのか。大村先生のお話ですと,A案でも,これは限定列挙の趣旨ではないと。つまり,帰責性に着眼するということなので,ここに挙げているもの以外でも帰責性の徴憑となるものがあれば,A案の文言はもうちょっと広がり得るんだと。ただ,今言った事案というのは入るのか入らないのかというと,何か微妙で入らないのかなという気もするのですね。そうするとA案というのは,現行法からするとかなり絞ることになるので,もしそうであれば,それを明示して説明に入れておいたほうが読んで分かりやすいのかなという気がしました。   ただ,ちょっと具体的な事案を念頭に置いて,入れる,入れないの議論をするのが本当に適切かどうかという問題はちょっとあるのですけれども,ちょっとそこら辺は考慮したほうがいいかなと思いました。 ○森田関係官 正に具体的な事案を念頭に置いて,入れる,入れないという議論がしにくいということがございまして,今の御議論を踏まえて,工夫できる範囲ではしたいと思うのですが,先ほどの私の発言の趣旨は,今あったような事案について本当に入らないのかどうか。今の要件で,今書いている例えばA案の要件で,例えば薬物中毒だから,このどれかの文言に当たるということはないことは間違いはないと思うのですけれども,その結果として世の中で起こっている現象として見れば,そういう事案は大体ここに当たるのではないかと。   それを今,現場の実務の審判で,たまたま審判としては不行跡という文言を使っているかもしれないですけれども,それがなくても認容ができるような事案が普通なのではないかという想像もしなくはないのです。実務や現象面を見てというアプローチからすると,そういう整理になると思うんですけれども,理念的にどういう要件を設定するかという考え方からすると,そういう薬物中毒だということから,ほかの周辺事情を考えずに,すなわち,教室事例かもしれませんが,薬物中毒でも,きちんと子育てをしている親が仮にいたとしたときに,そういう場合,全くそういう事情を検討せずに,薬物中毒だということだけで親権喪失をしていいのか,それともそういうアプローチは駄目で,薬物中毒をしているというのは一つの事情だけれども,その周辺をきっちりと見て,子供の養育状況を見て,それで問題があったら喪失をするという,そういう思考プロセスをたどるべきなのかというところが,制度設計する上での理念としては,そういう議論として整理するのがよいのではないかというようなことを考えております。ちょっとアプローチの違いがあるので,なかなかこういう事案が入るか入らないかというのは,社会現象を見たときに,そういうふうに一概に整理するのは難しいかなということを考えております。 ○磯谷幹事 今のその薬物中毒のようなお話であれば理解できますけれども,確か前回も少し触れたかもしれませんが,きょうだいに対する虐待で殺してしまったりというふうなケースがあったり,あるいは性的虐待があったりというケースがあって,しかし,別の子供に対しては特段何も問題が少なくとも顕在化していないというケースも,現場では遭遇をするわけですけれども,そういった場合ですと,この父母による親権の行使というのが,だれに対する親権の行使かというところにもよってくるのかもしれませんが,そのほかのきょうだいを殺された子供に対する親権の行使ということに限定して考えると,少なくとも表面上は余り問題がないとすると,この要件に入ってくるのかどうかというところは疑問だと。   ところが一方で,そういった状況で,引き続きその親の元で監護させるということが,子供の心理的な面での影響がどうなのかという,そういうところからすると,もちろん様々なほかの要素も考えるのかもしれませんが,親権喪失という選択もあり得るのかなというふうには思います。ですから,そのあたりも確かに盛り込めるような形で,A案にしてもB案にしてもC案にしてもということですけれども,少なくとも引き続き考える必要はあるのかなと思います。 ○久保野幹事 実質といいますよりは,先ほど来議論されているように,別の条文で「悪意の遺棄」が使われていること,あるいは従来の喪失の要件との関係の整理の必要といったこととの関係でのお願いですけれども,15ページに,特別養子縁組の同意の免除の要件としても悪意の遺棄があるということが参照条文として挙げられておりますので,現象面ではこの条文との関係が問題になることも多いのではないかと想像いたしますので,ここでの先例等々の,あるいは考え方の整理等がございましたら,併せて御検討いただければと存じます。 ○窪田委員 具体的な提案部分というよりは,補足説明の部分に関してということになりますが,先ほど小池幹事からお話がありましたように,現行法であれば,不行跡によって受けている部分との関係で,狭くなるという可能性があるということは触れていただければよろしいのかと思います。ただ,ちょっと気になりましたのは,先ほど進藤関係官から御説明があった点です。現行法には不行跡という言葉がありますので,例えば第三者に対する犯罪というのも,それで捕まえることができるということは確かだろうと思いますが,不行跡というのは,明治民法の時代からも,無制限に理解されていたわけではなく,非常に倫理に反するようなことをやっているような親は養育に適さないとか,やはり一定の意味での子の親権の行使,監護権の行使ということとの関連性は有していたのではないかと思います。その点で,不行跡という言葉によって,犯罪一般が入るというようなことでは多分なかったんだろうと思いますし,現在もそうなのではないかと思います。   ですから,その点はちょっと注意して書いていただくほうがよろしいのかなと思いました。 ○平湯委員 「悪意の遺棄」のところなんですけれども,実は松原先生の御懸念が十分分からないところがあるのですが,親族法の中では「悪意の遺棄」というのがあちこちに出てくると。大ざっぱに言えば夫婦関係にも出てくるし,親子関係にも出てくる。そこの遺棄というのが,夫婦の場合でいえば扶助義務というのでしょうか,それから親子の場合でいえば養育義務,それを怠って,「遺棄」が「怠って」に該当して,その上で,その程度がひどいと。子供の場合であれば,何週間も食べ物もろくに与えないでその子供をほっておくとか,そういうのはやはりひどい「悪意の遺棄」に入るという評価をすべきなのではないでしょうか。   その上で,後段の問題として,最終的に制限をするかどうかはケース・バイ・ケースということになる,そういう理解で,そのパブリック・コメントに当たっても,そういう「悪意の遺棄」というのが既にそういう共通した意味で使われていて,それと同じにしていいのではないかという問題意識,あるいは少なくとも同じ,そろえることになるんだという指摘があれば,パブリック・コメントを求めるときには,それでよろしいのではないかなと思うのですが,どんなものでしょうか。 ○大村委員 私は,今の点は法律論としては平湯委員と全く同じ意見です。おっしゃるとおりだと思うのですけれども,ただ,それが説明されないと分かりにくいのではないかというのが松原委員の御趣旨だったと思いますので,制度のつくりとしては平湯委員がおっしゃったような考え方でつくられているということが,皆さんにお分かりいただけるように御説明いただくということでよいかと思っております。 ○松原委員 それで結構です。例えば,そういう意味でいうと,児童福祉的には,著しい遺棄とか長期にわたる遺棄のほうが自然なのですね。悪意という言葉は,やはりすごくそこはなじまないので,是非解説を付けていただければと思います。あと,かなり倫理の話が出てきたのですが,これは個人的な意見ですが,倫理というのは,その時々で社会状況,時代で倫理そのものが変わっていく可能性があるので,余りそういうものを判断に含めていいのかなと,これは個人的な意見ですけれども,それはいろいろな御意見があっていいと思います。発言だけしておきます。 ○野村部会長 ほかにいかがでしょうか。   それでは,大分御議論いただきましたので,ここのところは一応この文言でまとめたいと思います。もともと,表現として余り熟していないというところもあり,ほかからちょっと借用しているということもあって,やや分かりにくいところはあろうかと思うのですけれども,中間試案では,このA案,B案,C案共通の後段の部分を組み込むかどうかという点については,事務当局のほうで御検討いただくことにします。それで最終的に事務当局のほうにお任せいただくということで,あと補足説明については,いろいろ御注文いただいておりまして,「悪意の遺棄」の説明のほかにも,結局A案,B案,C案がどう違うのかということが分かるような補足説明が必要ではないかということが,一番重要な点かと思います。そういう補足説明の御注文を踏まえて,一応今のようなその案の示し方については,多少事務当局にお任せいただくところはございますけれども,この2については,基本的には本日のこの案でよろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。   それでは次に,この具体的な制度設計の(2)ですね,親権の一時的制限の期間の定め方と,それから(3)親権の制限の審判の取消しという,この二つの項目について併せて御説明いただいて,それから御議論をお願いしたいと思います。 ○森田関係官 (2)の期間の定め方については,従前どおり甲案,乙案を併記し,なお検討するものとしていますが,前回の御議論を踏まえ,2点ほど変更を加えております。   1点目は,具体的な年数について,従前は1年又は2年ということにしていましたが,今回,本文では2年としつつ,1年又は3年とする見解もあるということを(注)で記載することとしております。   2点目は,前回御提案のあった上限の期間も原則的な期間も設けない考え方について,(注)3で言及しております。   (3)親権の制限の審判の取消しについては,部会資料5−1から変更ございません。 ○野村部会長 それでは,今の説明について御意見,御発言ございましたらお願いいたします。   特に年数についての,こういう(注)による表現ということで,前回から大きく変わっておりますけれども,よろしいでしょうか。 ○平湯委員 これはパブコメ用ということで,ちょっとこういう点もあったほうがベターかなと。先ほど松原先生の御発言の趣旨も,直接・間接的に踏まえましてということなのですが,A案が「制限の期間を定めてするものとする」というのが,そのだれが定めるのかというのが法律になじんでいる人には明らかなのですが,これは個々の審判で個々の裁判官が定めるんだという意味だというのも,ちょっと付け加えておいたらいかがなものでしょうか。B案の後段のほうも同じですよね。 ○野村部会長 「審判において」とか,何かそういう文言を入れるということですね。 ○平湯委員 ええ,何かそういう。「裁判官が定める」というのもあるかも分かりません。 ○野村部会長 では,これは事務当局のほうで表現は検討させていただくということにしたいと思います。入れる方向で考えたいと思いますのでよろしいでしょうか。   (2),(3)については,以上でよろしいでしょうか。   それでは,引き続きまして,(4)親権の制限又はその取消しの申立人と,それから(5)親権の一時的制限の場合の再度の親権の制限という2項目につきまして,お願いいたします。 ○森田関係官 (4)の申立人につきましても,内容的に大きな変更はございません。ただ,@の親権制限の申立人につきましては,子に申立権を認めるかどうかが論点であることが分かりやすいように表現振りを工夫いたしました。また,前回御提案のありました親権喪失では,子に申立権を認めないが,一時的制限では認めるという考え方につきまして,(注)で言及しております。   (5)では,親権の一時的制限の場合の再度の親権の制限を取り上げております。この点は,部会資料5−1では(後注)としていたのを本文に引き上げたほかは,特に変更はございませんで,規律を設けるかどうかも含めて,なお検討するものとしております。 ○野村部会長 それでは,御意見ございましたらお願いいたします。 ○磯谷幹事 (5)のほうですけれども,再度の親権の制限ということですが,ちょっとこれまでの議論の経過を十分思い出せていないのですけれども,更新にする,例えば一時制限をやった後,再度の申立てにするか更新をするかといったような議論があったと思うのですけれども,これはここに含まれるのでしょうか。 ○森田関係官 はい,含んでいる趣旨でございます。再度の申立てで足りると言い切ると,多分そもそも規律を何も設けなくてもいいのではないかという話になり,更新とかいうことを考えると一定の規律を設けないといけないということになると思うのですが,本体の部分がどういう制度になるかによって,どういうことについて規律をすべきか,また,どういう内容の規律をすべきかについて,かなり本体のもともとの親権制限のほうの制度次第かなということがありますので,この程度の表現で記載させていただいているということでございます。 ○磯谷幹事 そうすると,理解としては,とにかく一時制限をやった後,その後,また一時制限をする場合に,それを更新にするか,再度の申立てにするか,更には全部喪失にするか,それを,そうだとすると要件でどうするか。このあたりは,みんなある意味白紙という形で引き続き検討するという理解でよろしいのですね。 ○森田関係官 はい,そのとおりでございます。 ○磯谷幹事 分かりました。それはそれで結構なのですが,ちょっとこれを読んで,更新という言葉が多分全く出てきていないかと思うのですけれども,できれば,ちょっと表現は私も今具体的に思い付かないのですけれども,そういった更新だとか,そういったことも含めて検討するというような,何か更新という言葉をどこかに入れていただいたほうが,それも論点になっているということが理解しやすいのではないかと思います。正直申し上げて,ちょっと事前に拝見したところ,私自身もそこを論点として含んでいるかの,含んでいないのかというところが,やや確信が持てなかったものですから,その点,御配慮いただければと思います。 ○野村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○吉田委員 この繰り返し一時制限をやっていくということですが,今日の御説明の最初にあった喪失の場合との違いと,これはもう何回もやっていく場合と,喪失との違いというのを,もう少し分かりやすく説明できないのでしょうか。ただ,その必要性であるとか要件は変わってくると思うのですけれども,一般的に読むと結果的に同じになるんだということになりはしないだろうかという,そういう懸念はないでしょうか。 ○森田関係官 お答えになっているのか,必ずしも自信がないのですが,例えば,親権の喪失の原因について各案がありまして,例えば最初のころの部会のときに,仮にA案を採用して,帰責性なりそういう要素がないと,1回目は親権喪失はできないけれども,一時的制限が1回された後,引き続きまた直らないような場合には,期間を定めずに,帰責性がなくても制限することができるというようなことを考えてもいいのではないかというような御指摘も頂いております。   そのあたりをどういうふうに制度を違うものとしてするのかというのが,結局,その親権の喪失なり一時的制限制度なり,一部制限についてもどのようなものが入るかということ次第で,余りにもいろいろなことが想定され過ぎて,それはちょっと前が決まらないと,特定のことだけを想定して書くと,その案で決まっているのかという誤解も生じかねないので,ちょっとなかなか書き切れないというところがございまして,こういう表現になっているのですけれども,そういうことでお答えになっていますでしょうか。 ○野村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○水野委員 申立権者のことなのですが,前回も少し申し上げましたけれども,児童虐待のケースで親権制限を申し立てるのは,親族というようなプライベートな私人に頼っていたのでは駄目で,必ず公的な機関が申立権者にならないと実効的な機能を持たないわけですけれども,民法の中では親族と検察官だけということになっていて,公的な機関としては児童福祉法のほうの児相長を主に念頭に置かれているということなのでしょうけれども,民法の中に検察官だけを残すだけではどうしても足りないという気がいたします。   つまり,日本の検察官が母法のフランス法の検察官のように働いてくれるような実質的な実務の改革が行われるのであればいいのですけれども,なかなかそれは難しいように思います。具体的な提案としては,ここに裁判官の職権を加えるということをお考えいただけないかということなのです。  過去の古い親権喪失の判例を,まとめて読んだことがあるのですが,そのときには,児相長が申し立てるようなケースではなくて,親族間のトラブルがほとんどでございました。親族間のトラブルの場合に,夫婦の父方と母方の間のトラブルで,ちょっと先ほどの話題に戻ってしまいますと,例えば悪意の遺棄というケースの「悪意」が必要だというのは,古い事件ですと,母親が経済力がなくて,実際には父方に奪われたまま,なかなか取り戻すことができないでいるというようなケースで,父方のほうで母が遺棄しているからという理由で,親権まで奪おうというケースがあるわけですが,現在では母子手当などがありますので,育てようと思えば何とか母親でも育てられるのかと思うのですが,そういうケースを遺棄だとされないように,「悪意の」というのを付ける必要があるのだなどと思いながら,そういうケースを読んだ記憶があります。そういう私人間のトラブルの場合には,申し立てられた側が必ずしも問題のある親権者であるとは限らないようなケースがあるだろうと思います。   つまり,このような争いで,父方と母方とで,申し立てた側のほうがむしろ問題であるというようなケースもあり得ないわけではなくて,そういうプライベートなトラブルがあった場合には,実態を調べてみると,これはDVがあるとか,あるいは虐待があるとか,そういう問題があるということが裁判官に分かるというケースもあるのだと思うのです。離婚紛争や,子の奪い合いのような場合でも分かることがあるでしょう。   そのような場合に,すべて児相長のほうへ通達をして,知らせて,児相長からの提訴で親権の制限を加えるということではなく,裁判官がたまたま係争事件で,これは非常に深刻な児童虐待ないしDVがあるということが分かったときに,まず親権を停止することによって問題を解決していく必要があると分かる場合もあるだろうと思います。そのような意味で,裁判官の職権を一つ入れていただくと,いろいろと臨機応変に使えるように思います。   もちろん裁判官は外に出ていって,実際に虐待を調査するという立場にはありませんので,本来のメインのルートは,そういう虐待に対する行政的な救済活動と,連絡が付く形で申立権を検察官が駆使するのがあらまほしいのでありましょうけれども,それが望めない現在,安全弁として職権を入れておくことの必要性は少なくとも感じられ,そしてそれがないことの弊害というのが今あまり私には思い付きませんので,できれば職権を入れていただければと思いますが,いかがでしょうか。 ○平湯委員 私も,今の水野先生の職権を加えることについて賛成であります。基本的に,申立人に子供を加えることによって落ちがなくなるということまでは想定できないわけで,やはり公的機関の特に児童相談所の役割も大きいということにはなると思うのですが,それだけでなお足りないものがあるのではないかとずっと考えております。   ちょっと私の体験例を一つだけ申し上げたいと思うのですが,これは親子でなくて後見人が被後見人に対して虐待をしたケースで,小学校1年生という小さい子供でした。近所の人が見るに見かねて警察を呼んでも,警察が来たときにはもうやめていて,警察も動いてもらえないと。それで,児童相談所に近所の人がいろいろ言っていっても,児童相談所も,この人はなかなかやくざっぽい後見人で,復讐が,近所の人に対しても復讐的なこともやったりしていたのですが,児童相談所でもちょっともてあまして,何もまだなかなか動けないと。   そうこうしているうちに,例えばベランダから足をつかんでぶら下げるとか,そんなことまでし始めて,そこで,やむなく地域の人から連絡を受けて弁護団をつくりまして,後見人の職権による解任の請求というのをしようではないかと。要するに後見人の解任請求が職権でできるということを活用しようということになって,裁判所にその職権の発動を促す申立てということを東京家裁に出しました。家裁のほうでは受理して,まあ受理して当然なのでしょうけれども,その受理した上で早速調査に入って,児童相談所にまず詳細を聴いて,その上でいろいろ児童相談所と裁判所の間も何かやり取りがあったのだと思いますが,児童相談所がやっと一時保護をしてくれたと。その後は,施設入所までいったわけですけれども,裁判所の職権というのが実際にも威力を発揮するんだなと感じたようなケースでございました。   そういうこともあり,この親権制限のところで職権というのが付加されれば,いろいろまたプラスなのではないかなと今思っております。 ○古谷幹事 職権ということについては,一体どういうケースで職権発動が期待されるかという疑問があります。基本的に裁判所に何か通告するとか,そういう仕組みにはなっていないわけなので,情報を得られる場合が審判事件で審理していたらたまたま出てきましたとか,そういうレアなケースになるのではないかと思います。他方,後見監督の場合ですと,ある程度恒常的に裁判所が把握している場合もあり,その中で職権で介入するというのであれば,それは分かるところなのですけれども,親権制限の場合に職権を入れたらどのように機能するのか,どのようなイメージをお持ちなのかを,教えていただきたいと思いました。 ○平湯委員 ちょっと追加させていただきますが,結局児童相談所,行政機関との関係で実効性を持ってくると思っています。ドイツの例はよく紹介されますけれども,職権の発動もして,ドイツはすべて職権であると。それで,児童相談所,少年局の申立てというのは,実はこのアンルーフェンというようですけれども,発動を促すことだけしか逆に言うとできない。形はそうですけれども,中身は情報を持っているというふうな,それが理想的な職権なのではないかと。今申し上げた事例というのは,ややそれに比べると変則的で,豊岡委員がいらっしゃるので申し上げにくいのですけれども,児童相談所が動いてくれなかった過去の時代の事例なのですけれども,要するに職権という規定があり,そこに持ち込んだことによって職権機能が発揮されたと。   ですので,その両方のパターンが考えられると思うのですが,日本ではドイツのようなことはもう既に必要ない,児童相談所が基本的にやってもらえると。ただ,それでも十分やってもらえないときに,例えば一部制限でもやはり裁判所が出て職権でやっていただかないと,児童相談所だけでは足りないこともないわけではないのではないかと将来的にも思います。機能の仕方としては一通りではないだろうと思いますけれども。 ○野村部会長 進藤関係官,何かございますか。 ○進藤関係官 古谷幹事から述べられたことと重なるのですが,平湯委員がおっしゃったことというのは,裁判所が法的な権限を奪うということと,どのように子供に保護を与えるかというところの区別が明確でないように思います。裁判所が職権で権限を奪ったところで,それだけでは子供に保護を与えられるものではないわけですし,子供に保護を与えるのは,本来的には児童相談所にやっていただくべきことのように思いました。 ○豊澤委員 後見人の場合には,後見開始とともに裁判所が職権で後見人を選任し,それについて申立て若しくは職権で解任することができるという仕組みが,もともと民法上あるわけです。ところが,ここで問題になっているのは,親権の制限の話ですので,職権で親権をどうこうできるという仕組みというのは,これまでの民法の仕組みからすると随分ドラスチックな部分が出てくるのではなかろうかと思います。   通常,子供を実際に監護している者,あるいは監護すべき立場にあるにもかかわらず,それをしていない者を相手方として,親権の喪失の申立てがされます。先ほどの水野委員のお話だと,実は子供を監護していない母親を相手方として親権喪失の申立てがあったが,審理の過程で逆に子供を抱えている申立人の側の問題が大きいことが分かって,相手方が本当に子供を取り戻したいのであれば,相手方が今度は自ら申立てをするなりすれば足りることであって,そこでいきなり職権で取り上げて,申立人の親権を制限することができるというのは,手続保障的な面からも非常に問題が大きいだろうと思います。仕組み全体が,民法の従前の全体の仕組みとどう整合するのかというところで慎重な検討が要るのではないかと思います。 ○水野委員 私が先ほどの発言の中で,少し前の話題の悪意の遺棄でちょっと思い出したケースを申し上げてしまいましたので,私の発言がミスリーディングだったことをおわび申し上げます。   まず,民法の仕組みですが,私の頭の中には,その民法の仕組み自体に対する批判もございます。つまり,ドイツにしましても,フランスにしましても,子供の監護に関しては,離婚のように夫婦間がもめているような場合は,必ず裁判官のチェックが入りまして,どちらの側に子供を帰属させることが適当であるかを裁判官が判断する,スクリーニングは必ず100%かかるということになっています。   でも,日本の場合は,御存じのようにそこのところは合意ですべて流れてしまいます。DVのようなケースで,妻のほうが一刻も早く離婚したいと考えておりますと,離婚をしたくない夫から,様々な条件をかけていって,最後は裁判所までいっていても,お金はもちろん一切やらない,そして子供の親権すらおれによこせという形で,実は妻をつなぎとめようとしているケースというのもあるわけです。実際にそこでもし非常によろしくないと思われる親権についての合意があったとしても,それがたまたまもめて,家裁の門までくぐっていて,裁判官の目に触れる,裁判官に情報が入るということになっていても,もしそこで合意で決められてしまうと,裁判官としてはそれを尊重せざるを得ないというのが,日本の民法の家族法の立て方ですが,それについては私自身は非常に批判的でございます。   すべてを当事者の合意にゆだねておくというそういう仕組み自体が非常に危ないと考えておりますので,それが何らかの形で裁判官の目に触れるような事件の中で入ってきたのであれば,裁判官がそこで職権で申立てをするということが可能であるようにしておくほうがいいと思います。   つまり,そのような状態の当事者が申し立てればいいわけでと今先ほどおっしゃいましたけれども,確かにそうなのですが,その当事者が申し立てることができないような状態であるということが,家庭の中における事件の難しさであって,公的な関与が必要になってくるというゆえんなのではないかと考えております。さらに児相の現状が御存じのようにパンクしていますから,虐待状況を発見した医者が直接,裁判所に申し立てるというような道が開けてくるかもしれませんし。   以上でよろしいでしょうか。 ○吉田委員 職権による親権はく奪,結論というか,制度的にはそういう方向は大いに私は望ましいと思います。ただ,先ほど来お話がありますように,親権制限に関して,やはりその前段階での親権の適切な行使であるかどうか,今回の提案から落ちた親権監督ですけれども,そうした一定の段階というか,その前段階があって,そしてはく奪に至るのだろうと。そういう制度と併せて職権による親権はく奪と,ある意味,後見と同様の仕組みが必要になってくるのではないかということが一つ。   あと,実務上の運用からしますと,裁判所で虐待が発見されたという場合には,私が聞いているところでは,裁判所から児童相談所に対する通告がなされる,そして子供を保護する。そういう方法で行政による子供の保護がなされる。いきなり職権ということで,親権者の親権制限ということになると,その通告がなされないままになるおそれはないだろうか。そこで,子供の保護が谷間に落ちはしないだろうかということがありますので,そうした行政との裁判所の緊密な連携ということが,運用上はとても必要になるだろう。その2点がクリアされればよろしいのではないかと思います。 ○古谷幹事 離婚の場合に,親権をどういうふうに決めるかというところで,子供の保護という点からいって,現在の特に協議離婚の場合に問題があるというのは,御指摘のとおりかと思います。けれども,例えば親権の喪失までいかない,その前段階の親権の変更などにしても,基本的には親族の申立てを待って判断しているところかと思います。一番ドラスチックな親権喪失に職権を入れるとなると,制度全般の検討も必要になってこようかと思うので,少し問題が大きいという意見でございます。 ○長委員 実際の運用を考えたときにも,親権喪失事件以外の案件を担当していて,いろいろな事実が分かってくるにせよ,その家庭で行われている親子関係を詳細に把握するということは,そこに焦点を合わせて調べていかない限り,難しい面もあるのではないかと思います。それで,その片りんを発見したということをもって職権で立件するということになると,裁判所が余りにも行政的なといいますか,本来の判断をするというところから外れていくような動きをすることになってしまうということを考えますと,仮に職権で立件するという制度を取り入れるということになると,負担が重過ぎるのではないかと思います。   むしろ,今までの在り方のように,申立てを待って,そこにきちんと焦点を合わせて調べていくという構造のほうが,今の日本の家庭裁判所は動きやすいのではないか。ほかの国においては,恐らく構造が違うので,職権で発動していくということも可能だと思うのですけれども,改正に当たっては現実にそれを動かすことができるような形で,申立権者を決めていただいたほうがいいのではないかと思います。   先ほどの後見の例については,既にほかの方たちからも御指摘があったようなことで,後見と親権の喪失とは同一には論じられないのではないかという印象を持ちました。 ○大村委員 この点については,今,様々な意見が出ました。ここで何か結論が出るということではなくて,なお検討は必要なのではないかと思いますけれども,水野委員の最初の御提言は,この834条の申立権者の中には検察官というのが書き込まれている。これは公益を代表するということで,検察官の申立てあるべしということを民法は想定していたわけなのですけれども,それが実際には機能しないということで,その点の問題を指摘するという点に一つのポイントがあると思います。   それで,検察官の申立てが機能しないというときに,その機能不全を解消するためにどうするのかということで,検察官の申立てが機能するような仕組みを考えましょうというのが一つの考え方ですし,現在,児童福祉法にある規定がそれを代替しているということになっているので,それはそれでよいというのも一つの考え方でしょうし,一定の範囲で裁判官に職権によるというのも一つの考え方でしょう。複数の選択肢があるということだろうと思いますので,この「検察官の請求によって」というのが実際上機能していない点について検討を要するという,そういう考え方があったというのをどこかに書いていただくということでいかがかと思います。 ○平湯委員 この申立人をどうするかということは当然のことですけれども,喪失なり一時停止なり一部停止なり,そういう制限が,どうすればそのシステムが動き出せるか,始動できるかということになるわけですが,この件についての一つの伏線的な議論というのがあって,要するに子供に申立権を認めるべきかどうかと。これは,理念的ないろいろ御意見も出されたと思うのですが,一定の利害関係というか,非常に重大な利害関係があることは認めるけれども,本人申立てという形を,手続的な形を採ることは避けたいという,避けるべきではないかと,そういう御議論も出ていたわけで,私は,申立権を本人に認めてよろしいのではないかという意見ではありますけれども,今申し上げたような趣旨から,子供の申立権が場合によっては不適切だということであれば,それを補う,補完するものとして職権ということが機能し得るのではないかと。   それで,ドイツと違って日本は調査官もおられますし,職権の発動を促す申立てというのは,それなりにきちんと事件化された上で,本当に取り上げるに値するかどうかの調査をしていただくと。もちろんそのときに児童相談所が動いていなかったという状況がもしそのケースにあるならば,その児童相談所に対する調査もなされるでしょうし,いろいろその子供の周囲で子供をサポートする人たちもいるわけでして,親族も含めてですね。親族なんかでも,自分が怖くて申立てができないけれども,裁判所の調査に応じて,あるいは裁判所にお話しすることはできるという親も十分あり得る,親族もですね,あり得るわけですから,そういう実質的な利害と形式的な申立権をどうするかということを統合的に解決するという意味で,一つの大事な方法なのではないか,職権ということはですね,そういうふうに思っております。 ○野村部会長 そうしますと,今,平湯委員あるいは水野委員のお考えは,ここは申立人のところですけれども,これと別に,職権による親権喪失の審判の開始のようなことを別項目として出すという,そういう御意見でしょうか。この段階で,つまり中間試案の段階で出すべきだという,そういうお考えでしょうか。それとも,そこまでは考えておらず,今後の議論ということでよろしいのでしょうか。 ○水野委員 私自身は,先ほど大村委員がおまとめくださったような形の解説を付けていただければ,問題の所在ははっきりすると思いますので,結構でございます。 ○平湯委員 平湯としては,パブコメ自体の時間的な問題がおありでしょうから,引き続きの議論のほうでやっていただければ結構だと思います。 ○野村部会長 裁判官のイニシアチブで,全く何もないところで手続が開始するというケースがほかにあるのかというのは,なかなか具体例が思い浮かびませんが,もし,そのような制度を創設するとなると,相当大胆だなと思いまして,ちゅうちょを覚えます。 ○平湯委員 重ねて申し上げますけれども,何もないところにいきなり裁判所にそういうことをしてくれというのが飛び込んでくるわけではありませんので,それなりの実態があって,促したい人がいて,そこで初めて発動を,その申立てではなくて職権の発動を促す申出ということが出てくるんだと思うのですね,実際を申し上げれば。 ○野村部会長 いや,既に開始している手続の過程で,裁判官が職権でいろいろなことができるというのはたくさんあると思うのです。しかし,そもそも事件の提起そのものが裁判官の職権でというのは,ちょっとかなり制度的に大胆かなと思いました。これはもちろん僕の個人的な感想ですけれども。 ○小池幹事 ちょっと質問ですけれども,職権といったときには,何か義務で,端緒があれば必ず調査をしてということになるのか,それともある程度の資料が整わないと駄目だと。例えば,話は聴いたけれども,取りあえず児相のほうに聴いてみて,それなりの根拠が出てきたら,それで初めて動くとかいう話になるのかというのが質問の一つと,もう一つは,現在でも公的機関が介入するというのは,正に児相の所長がやれるのですよね。それが余り機能していないというのは,手続の開始の幅を広げると解決する話なのか,それとももうちょっと違う問題があって,児相がきちんと介入できるシステムになっているのだけれども,そういう問題があるから動けないという話なのか。もし後者だとすると,職権で開始するというふうにしたところで問題は解決しないと思いますので,ちょっと今の段階で職権の話を余り具体的にするのは性急かなという気がしました。 ○平湯委員 じっくり時間が必要だというのは,そのとおりだと思います。 ○野村部会長 分かりました。それでは,中間試案の段階では一応原案どおりでパブリック・コメントにかけるということにします。ただ,職権による申立てという,職権による裁判所の審判という議論については,引き続き審議会で取り上げていくということでよろしいでしょうか。   それでは,ほかの点,よろしければ,(4),(5)については以上にしたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。   それでは,休憩ということにさせていただきたいと思います。           (休     憩) ○野村部会長 それでは,再開したいと思いますが,第1の最後,3の同意に代わる許可の制度のところから再開したいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いします。 ○森田関係官 3の同意に代わる許可の制度につきましては,特に変更はございませんが,前回会議で補足説明の書き振りを含め,いろいろと御議論いただきましたので,その内容を補足説明に反映させるようにしました。なお,不十分な点もあるかもしれませんが,御確認いただければと存じます。 ○野村部会長 それでは,御意見をお願いします。 ○大村委員 これは,中身をどうするかということについては,いろいろな問題というか検討すべき事柄があろうと思います。先ほどもちょっと触れましたように,ここでの現在の取りまとめというのは,この制度をつくるかどうかということについて大枠を示したものだと了解しておりますので,こういうものをつくるかどうかについては,なお検討するものであるということで,今回の取りまとめはよろしいのではないかと思っております。   これに伴うメリット・デメリットにつきましては,補足説明のほうに書いていただいているところでありますので,それを踏まえて更に検討するということだろうと思います。例えば,仮にこれを認めるとした場合に,申立人をどうするのかというような問題とか,要件をどのようにするのか,ここに書いてあるだけでいいのか,更に加重する必要があるのかといったような様々な問題はありますけれども,それらも踏まえて,なお検討するということがここで書かれていると理解しております。 ○野村部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。   スペース的に若干まだ御不満はおありかもしれませんけれども,それでは一応ここについてはお認めいただいたということで,次に移らせていただきたいと思います。   次は,第2,未成年後見制度の見直しということで,第2の全体について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○森田関係官 第2では,未成年後見制度の見直しについて取り上げております。   冒頭では,先ほど窪田先生から御指摘があったところですけれども,ここの冒頭の部分も,何らか第1のところで手当てをした場合も含めてという趣旨でございますが,親権の制限により,親権の全部又は一部を行う者がいなくなった場合には,未成年後見が開始することなどを説明しています。   1の法人による未成年後見,2の未成年後見人の人数のいずれにつきましても,部会資料5−1では,なお検討するものとしておりましたが,これまでの御議論等も踏まえまして,それぞれ許容する方向性を明確にしました。その上で,1の(注)では,法人の適格性を担保する方法について,2の(注)では,複数の後見人が選任された場合の権限行使の規律について,それぞれなお検討するものとしています。   特に,2の(注)の権限行使に関する規律については,成年後見制度では,複数の後見人は原則としてそれぞれ単独で本人を代表しますが,家庭裁判所が共同代表や分掌の定めをすることができるものとされています。未成年後見も同様の規律でよいのか,別の規律を考えるべきなのかなど,これまで余り議論されていない点ですので,現時点での御意見もちょうだいできればと考えております。 ○野村部会長 それでは,御意見をお願いしたいと思います。 ○吉田委員 この補足説明の1で,未成年後見人による身上監護の内容ですけれども,これは財産管理が主な職務になると考えられるというのが2段落目の下から2行目あたりに書いてあります。確かに現在,施設入所中の子供の財産管理については不明確な部分がありますから,この制度があるというのは大分仕組みとしては進歩することになると思うのですが,ただ,身上監護で間接的なものになるというのはどういう内容なのか,少し分かりにくいかと思うのです。   ですので,少しこれを具体的な例などを述べるということで,役割をもう少し明確に記述してはいかがかと思います。例えば,施設入所中の,それこそ47条2項にかかわりますけれども,その身上監護についての関与であるとか,そういうものもあり得るので,ちょっとそういう工夫が必要かと思います。 ○野村部会長 ほかに何か。よろしいでしょうか。   そうしますと,中間試案としてはこれでお認めいただいたということでよろしいのですけれども,複数後見,未成年後見人が複数という場合の権限行使の在り方について,今後の議論の課題でもあるので,今日の段階で何か御意見ございましたら,おっしゃっていただければと思います。   ここもよろしいですか,特に今日は。   それでは,これは次回以降にまたいろいろお伺いするということで次に移ります。   そうしますと,最後は,第3,その他ということで,これは,1は子の利益の観点の明確化と,それから2番目の懲戒というのがありまして,最後に(後注)というのがついているということでございますが,まず事務当局から御説明をお願いいたします。 ○森田関係官 第3は,その他の論点ということで,子の利益の観点の明確化及び懲戒の点を取り上げております。   冒頭では,民法及び児童虐待防止法における子の利益の観点や懲戒に関する規定について概要を説明しております。1の子の利益の観点の明確化について,若干表現振りを改めましたほかは,1,2とも従前同様,なお検討するものとしています。   (後注)は,部会資料5−1と変更ございませんで,家庭裁判所における手続及び戸籍の記載等に関する記述については,所要の手当てを行うものとしております。   この点に関連して,前回の会議で,親権制限に係る審判相互の関係を規律する規定を置く必要があるかどうかという点を検討すべきとの御提案を頂きました。この点は,現行法の親権喪失と管理権喪失の関係につきまして,親権喪失の申立てに対して家裁が管理権喪失の審判をすることができるか,逆に管理権喪失の申立てに対して親権喪失の審判をすることができるかという論点があり,幾つかの考え方があるようです。   すなわち,家庭裁判所は申立てに拘束され,どちらもできないという考え方,そのような申立ての拘束力はなく,どちらも可能であるとの考え方,親権喪失の申立てに対して管理権の喪失をすることは,大は小を兼ねるということで可能だが,その逆はできないという考え方などがありまして,現行法では解釈にゆだねられております。   このような問題は,親権制限に限らず,例えば成年後見,補佐,補助の関係など,家族法におけるほかの分野でも存在する問題のように思われますので,親権制限の分野に限って明文の規定を設けるのは困難ではないかというのが現時点での感触でございますが,なお検討したいと思っておりますので,現時点で御意見等があればちょうだいしたいと考えております。 ○野村部会長 それでは,ただいまの説明に基づいて,いろいろ御意見ございましたらお願いいたします。 ○大村委員 今,言及していただいた最後の点ですけれども,審判相互の関係という点について,私は前回,その点についても触れる必要はないかと申し上げました。それは今のお話の中にもあった成年後見について,例えば,後見開始の審判をするときに既に補佐人がついているとか補助人がついているというときに,前の審判をどうするのかということについて,民法19条に規定を置いたわけですけれども,今回,親権の制限について程度の異なるというか,あるいは対象の異なる複数の審判があり得るということになったときに,一つ審判がなされていて,更に別の審判を行うというときに,その審判相互の関係について19条類似の規定を置く必要はないかという,そういう趣旨でした。 ○森田関係官 失礼しました。論点を勘違いしておりました。それで,大村先生の今の御指摘の19条の関係につきましては,多分広い意味で,先ほどの(5)のところですね,制度の具体的な制度設計のところの(5)の引き続き親権を行うことができないようにする場合に,これまで一時的制限はしていて,そこから更に更新というか,改めてするとかいうことをメインに置いて考えていましたが,例えば逆に親権喪失がされていて取り消すのではなくて,期間制限をするという審判をするとか,いろいろなパターンが,これも本体のほうの制度設計次第で変わってくるかと思いますが,いずれにしましても,そういう論点ということで理解をしましたので,また引き続き検討したいと思います。 ○吉田委員 懲戒権のところですけれども,補足説明でいろいろ書いてありますけれども,今日,参考資料の11で頂いた児童の権利委員会の最終見解ですけれども,これの中身について触れるところまではスペースの関係で難しいかと思いますが,こうしたものが示されているというのを一言入れてはいかがでしょうか。やはり判断する材料として,読み手としては大変参考になると思いますので,提案をさせていただきます。 ○野村部会長 今のはよろしいでしょうか。それでは,事務当局で工夫をしていただきます。 ○平湯委員 懲戒権の関係で,補足説明を拝見した上でですけれども,積極的に懲戒権の規定を,今後も残置すべきだという意見は審議会ではなかったことになるのだと思うのですが,パブコメ用の書面でもその点を指摘していただいてはいかがと思いますが,いかがでしょうか。 ○飛澤幹事 今御指摘の点については,更にちょっと検討させていただきたいと思いますが,ただ,懲戒に関する考え方については,いろいろあるところかと思いますので,平場で聴いてみたいなという気持ちもございます。 ○野村部会長 ほかにいかがでしょうか。特によろしいでしょうか。   それでは,この部分については原案どおりということで,ただ,補足説明のところで,先ほどの児童の権利委員会のことについて言及するということで,お認めいただいたということでよろしいでしょうか。   全体で,まだ何か言い残したこととかございましたら。 ○吉田委員 これ,最初にお聴きすればよかったのかもしれませんけれども,このパブコメ用の資料で書き方ですけれども,「検討するものとする」という文言が使われている箇所と,その「検討するものとする」という文言が使われていない箇所とありますね。この使い分けというのは,「検討するものとする」というものが入っていない部分は,もうこれでいきますよということなのですか。ちょっとその読む方がどういう反応をするかというのがありますから。 ○飛澤幹事 そうですね,例えば一時的制限のところとかについては,少なくともこの部会で,制度の具体的な仕組みはともかく,設ける方向について特に御異論はなかったので,はっきり書いております。それに対して,まだやり方も含めて議論があるところについては,なお検討させてもらうといった書き方をしております。 ○吉田委員 例えば一時制限のところなんかは,大枠としてはこの一時制限という制度を設けるけれども,中身についてはまだ検討を要する部分があるという,こういう意味合いだと理解してよろしいわけですね。はい,ありがとうございます。 ○野村部会長 ほかに御発言ありませんでしょうか。   それでは,中間試案は,この本日御議論いただいたところを踏まえて,若干事務当局の中で多少検討するところは残っておりますけれども,そこにつきましては,部会長と事務当局とにお任せいただければと思いますけれども,よろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。   そうしますと,今後の進め方について,事務当局からお願いいたします。 ○飛澤幹事 本日はどうもありがとうございました。今後の予定に関して御説明申し上げます。   本日,取りまとめていただいた中間試案については,大体8月の第1週終わりごろになると思いますが,そのあたりをめどに,補足説明とともに公表して,パブリック・コメントに付したいと考えております。そして,パブリック・コメントに付す期間ですけれども,1か月強ぐらいで,大体9月10日前後ぐらいを取りあえずの締切りとしたいと,まだ,これは確定ではありませんけれども,今の段階ではそんな心積もりで考えております。   頂いた意見については,ある程度取りまとめさせていただいて,それを次回の10月1日の部会において御説明させていただきたいと考えております。   パブリック・コメントの関係の御説明は,以上でございます。次に,次回会議でございますけれども,今申し上げましたように,第7回会議は10月1日金曜日の午後1時半から,場所は同じくこの会議室で行う予定でおります。   それから,先般,当方の森田のほうから御案内のメールをお送りさせていただいたところでございますが,9月に児童養護施設を訪問する機会を設けることを予定しております。具体的な日程や訪問先は,現在調整中でございますけれども,参加の御希望のあった先生方の御都合や施設側の受入れの都合も考えまして,9月15日の水曜日,あるいは9月21日の火曜日,この2回に分けて開催したいと考えております。御希望の先生方には,どちらか都合のよい日に御参加いただきたいと思っております。更に調整の上,後日改めて御案内させていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ○野村部会長 それでは,本日の第6回の部会の会議を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 −了−