法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会           第9回会議 議事録 第1 日 時  平成22年11月19日(金)  自 午後1時30分                         至 午後4時08分 第2 場 所  最高検察庁大会議室 第3 議 題  民法(親権関係)の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○大村部会長代理 それでは,定刻になりましたので,法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会第9回会議を開催いたします。   本日は野村部会長が欠席でございますので,私,大村が代わりまして司会進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。   まず最初に,事務当局のほうから配布資料の確認をお願いいたします。 ○森田関係官 本日は,部会資料として,部会資料10「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案(第1次案)」を事前にお送りさせていただいております。   それから,参考資料13,14-1,14-2ですけれども,社会保障審議会の専門委員会の審議状況に関する参考資料をお送りさせていただいております。また,本日,席上配布させていただいておりますのは,平湯委員,山田委員,磯谷幹事から提供していただきました参考資料15でございます。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   それでは,審議に入らせていただきます。   まず最初に,社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会の審議状況につきまして,これは杉上幹事ですか。 ○杉上幹事 私のほうから,社会保障審議会のほうの検討状況について御報告したいと思います。   まず,参考資料13でございますけれども,これまでの審議内容,それから今後の予定を書かせていただいております。第1回から第4回で一巡の議論をやりまして,第5回,第6回と論点ごとの議論の2回目を行いました。今回,後ほど,この第5回と第6回の資料に基づきまして若干説明したいと思っております。   また,第7回,第8回と日程を決めておりまして,報告書の取りまとめに向けた御議論を頂く予定としております。   それでは,参考資料14-1でございます。第5回の論点ペーパーということでございます。1点目は施設入所等の措置が採られている場合の施設長等の権限と親権の関係ということでございます。資料のつくりは,(1)でこれまでの議論,それから次のページ,(2)検討の方向性,(3)考えられる制度設計ということで,今まで審議会の中で出た意見につきまして,事務局で検討の素材となるような形で整理したものでございます。   3ページをお開けいただきたいと思います。(3)のところでございますが,施設長等が,児童の福祉のために監護,教育,懲戒に関する措置を行う場合においては,親権者の意向に優先して当該措置を採ることが可能である旨を規定してはどうかとなっております。これまでも,優先関係が明確でないため,トラブル等があるというようなことであります。その際,親権者と意見の異なる場合等について,第三者の機関といいますか,意見を聴くような機関を設けてはどうかと,こういうようなことになっております。おおむね方向性としては御理解いただいていると思っておりますが,施設長ではなく,児童相談所に権限を持たせたほうがいいのではないかというような意見,あるいは施設長等に持たすにしても,もう少し環境整備を進める必要があるのではないかというような御意見を頂いているところでございます。   2点目でございます。6ページに飛びます。一時保護中の児童相談所長の権限と親権の関係についてということでございます。施設入所,里親については,先ほど申したとおり,必要な措置を採ることができるとなっているわけでございますけれども,一時保護中の場合については規定がございません。これについて,(3)に書いてありますとおり,1の(3)と,同じような仕組みを入れてはどうかというようなことで御議論を頂いたところでございます。大きな御異論はないと理解しております。   3点目でございます。7ページ,一時保護の見直しについてということでございます。(3)のところでございますけれども,現行,児童福祉法33条において,一時保護は2か月を超えてはならないとされているわけであります。ただ,児童相談所長は,必要と認めるときについては,引き続き保護を行うことができるというようなことになっているわけでございますけれども,行政の判断で長期の一時保護が可能という制度をどう考えるというようなことで御議論いただきました。なかなか正直なところ,現在の児童相談所あるいは司法の体制の中において変更することが困難ではないかと。ただ,その際,手続保障の観点から,例えば第三者機関である児童福祉審議会の意見を聴くというような仕組みを入れてはどうかというふうな方向で御議論いただいたところでございます。   4点目でございます。保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方についてでございます。この論点につきましては,司法と行政の役割分担がある中でなかなか難しいのではないかというような前提があります。家庭裁判所が,事案に応じて,勧告の内容を保護者に対して伝達することの当否について優先的に検討してはどうか,運用面での対応について,しっかり検討したほうがよいのではないかと,そういう議論になっているわけであります。以上が第5回のペーパーでございます。   続きまして,参考資料14-2の第6回,残った論点について御議論いただいたものであります。これにつきましては,今週の月曜日に行ったところであります。1点目,里親等委託中及び一時保護中の親権者等がいない児童等の取扱いについてということでございます。御承知のとおり,施設入所の場合は,親権者,未成年後見人がいない場合は施設長が親権を行うというような規定が児童福祉法の中で設けられているところでございますが,里親等委託中及び一時保護中については,そういった規定がないということでございます。そうした中で,3ページでございますが,考えられる制度設計としまして,同じように親権を行う者,未成年後見人があるに至るまでの間について,児童相談所長が親権を行う仕組みを設けることとしてはどうかというようなことでございます。この場合については児童相談所長が親権を行う仕組みとしているわけでありますけれども,施設の場合についても児童相談所長に変更したほうがいいのではないかというような御議論がありました。   2点目でございます。施設入所等の措置及び一時保護が行われていない親権者等がいない児童等の取扱いでございます。これにつきましては,4ページになりますけれども,現在のところ,現行の仕組みの中,33条の8において,最終的には,児童相談所長が家庭裁判所に未成年後見人の請求をして,見付かるまでの間,親権を行うということになっているわけでございますけれども,考え得る対応策としてはこうした仕組みの徹底を図るべきではないかというようなこと,あるいは本部会において御議論いただいていますとおり,法人あるいは複数後見人というような仕組み等の新しい制度とあいまって,未成年者であっても,親権を行う者及び未成年後見人のない者について,その保護が欠けることのないように検討してはどうかと。この際,環境整備というような形で,適正に児童相談所長が引き受ける,あるいはその法人等が引き受ける制度についても,引き続き検討するというふうなことになっているわけであります。   最後の論点,5ページでございますけれども,接近禁止命令の在り方ということでございます。これにつきましては,次のページ,6ページの最後のところでございます。いろいろ考える対応策のところ,書かせていただいておりますけれども,簡単に御説明申し上げますと,いわゆる在宅ケース,場合によってはシェルターあるいは年長児童において独り暮らしをしていると,そういったようなケースに接近禁止命令を掛けるというようなことは,まず1点目は制度化としては難しいのではないかというような意見がある一方で,そういっても必要性がある児童がいることは間違いないのであって,何らかの手当てが必要というような意見があったところでございまして,ここの点については次回等について,引き続き御議論していただくというようなことになるかと思っております。   簡単ではございますが,社会保障審議会の審議状況について御説明申し上げました。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   今の御報告に対して何か質問等ございますでしょうか。   よろしゅうございますでしょうか。幾つかまだ未定の点は残っているということですけれども,取りまとめに向かって審議のほうは詰まってきているという状況だと理解いたしました。   それでは,次の本日の中心の案件でございますが,児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案(第1次案)について御検討をお願いいたします。この第1次案,できれば本日一通り御検討いただきたいと思っておりますので,御協力を頂ければ幸いに存じます。   最初に,全体の構成等につきまして事務当局の飛澤さんのほうから御説明を頂きます。 ○飛澤幹事 それでは,私のほうから部会資料10としてお配りしております要綱案の第1次案の全体の構成等についてごく簡単に御説明申し上げます。要綱案は,御覧のとおり,第1から第4までの四つのまとまりで,そのまとまりの中で基本的には条文の順序で記載しているといった構成となっております。   また,この要綱案(第1次案)では,これまで必ずしも議論が十分でなかった論点は今回は注の形で記載しておりますが,本日の御議論を踏まえて,具体的な記述として,次回,ゴシック部分に反映することとしたいと考えております。   なお,第1の2の懲戒のところでございますが,これにつきましては,前回の会議では,懲戒場の部分を削除することを前提に事務当局でなお検討するということになっておりました。しかし,大変申し訳ございませんが,事務当局として今回まだ具体的提案をできる状態まで検討が進んでおりません。その関係で,今回はペンディングという形で,次回に御提案させていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。   全体の構成等については以上でございます。 ○大村部会長代理 ありがとうございます。   懲戒のところはペンディングということなんですけれども,あとはこの資料のとおりということですが,何か御質問等ございますでしょうか。   それでは,本論のほうに進ませていただきたいと思います。   まず,第1の親権の効力,そのうちの監護及び教育の権利義務のところについて,事務当局のほうから御説明を頂きます。 ○森田関係官 第1の1では,子の監護及び教育の権利義務を取り上げております。この点につきましては,結論として大きな御異論はなかったところですので,前回の部会資料9から実質的な変更はございません。親権が子の利益のために行われなければならないことは,現行法においても,その理念とされていると考えられますが,児童虐待の防止の観点から,民法においてその理念を明確にするため,身上監護権の総則的規定といわれている第820条に「子の利益のために」との文言を挿入することとしております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 ありがとうございます。   以上でございますけど,いかがでございましょうか。   では,この点については特に御異論がないということで先に進ませていただいてよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   それでは,第1の2の懲戒は,ペンディング,次回送りということにいたしまして,その次の第2,親権の喪失及び一時的制限等でございますが,まず最初に前注の部分について森田さんのほうからお願いします。 ○森田関係官 第2では,親権の喪失及び一時的制限等を取り上げております。   まず,前注に記載しておりますとおり,この要綱案の第1次案では,親権制限の全体的な枠組みとしては,中間試案における甲1案を採用し,同意に代わる許可の制度は採用しないことを提案しております。乙案や丙案については,様々,御議論を頂き,積極的な御意見もちょうだいしているところです。しかし,乙案につきましては,監護権の全体の制限をしたからといって,必ずしも安定的に子を監護することができるとは限らないといった問題や,現実に,監護権を適切に行使することはできないが管理権については適切に行使することができる親権者というのは余り想定されないといった問題が指摘されてきております。   また,丙案につきましても,親権の一部に限って制限するだけでは,子の利益の観点から不十分であり,制限する親権を一部に限ることによってかえって子の安定的な監護を害するおそれがあるといった問題や,現行民法における分類から離れて親権の一部を特定するため,審理が長期化するおそれがあるほか,個別具体的な場面において親権のうちの何が制限されているのかが判然としないおそれがあるといった問題が指摘されてきております。   このように,乙案や丙案については,解消されない問題が残る中で,なおこれらの案を採用するだけの必要性は見いだせないのではないかと考えております。   なお,施設入所中や里親委託中の児童などについては,先ほど杉上幹事から御説明があったとおり,児童福祉法において施設長や里親等の権限が親権に優先することを明確にする手当てを行うという方向で検討が進んでおりますので,これにより民法上の親権制限を利用せずとも対応が可能であるという事案が多くなるのではないかと考えております。   次に,同意に代わる許可の制度についても同様になお解消されない問題が残るものと考えております。すなわち,同意に代わる許可をするだけでは未成年者の保護のためにも不十分であるし,取引の相手方にも不測の不利益を与えるおそれがあるということなどです。ただ,前回の会議で具体的な制度設計の御提案があり,これに基づき,かなり詰めた御議論を頂きましたが,前回の御議論も踏まえますと,同意に代わる許可の制度を設けない場合にどのような対応が考えられるかという点について,次のような整理をすることができるのではないかと考えております。すなわち,同意に代わる許可を設けるべきとの御意見は,年長の未成年者が自立するのに必要な契約行為をしなければならないときに,迅速に対応できるようにすべきということだと思います。もっとも,親権者に同意権があるにもかかわらず,その意に反して契約することを認めるということなので,事案としては,親権の一時的制限の原因があるか,それに準じるような場合が想定されています。また,契約の相手方としては,ある程度未成年者の自立に協力してくれるような善意の方が想定されているものと認識しております。   そこで,現行法及びこの要綱案(第1次案)で提案している内容の改正が行われた場合に現実にどのような対応が考えられるかということを検討しますと,まず第1には民法第20条第2項の規定を活用することが考えられます。すなわち,協力してくれるような相手方との間で親権者の同意なく契約をした上で,相手方から親権者に追認するかどうか確答すべき旨の催告をしてもらうことが考えられます。親権者から追認する旨の確答があるか,又は期間内に親権者から確答がなければ,契約は完全に有効なものとなります。親権者から追認しない旨の確答があった場合や契約の相手方に先ほどのような対応まではしてもらえない場合には,親権の一時的制限や管理権の喪失の申立てにより対応することになります。   これまで,年長の未成年者の自立の問題について,親権喪失で対応するというのは現実に難しい面があったのだろうと思いますが,今般,一時的制限制度が創設されたり,管理権喪失の原因の見直しが行われたりすれば,このような親権制限による対応が現実的にもやりやすくなると考えています。   なお,この方法については,親権制限の審判が確定して,未成年後見人が選任されるまで時間が掛かるということや,未成年後見人の引受け手が確保しにくいとの懸念があるように思います。ただ,緊急の場合には,親権の一時的制限や管理権の喪失を本案として,職務執行停止及び職務代行者選任の保全処分を得られれば,これにより迅速な対応が可能であろうと思われます。   また,審判前の保全処分として,職務代行者に選任された者は,親権制限の本案の審判が確定するまでその地位にあるということで,職務の期間が限られますので,未成年後見人ほどの負担感はないのではないかと考えております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございます。   この第2の項目の中身につきましては,後で四つの論点に分けて御審議を頂きますが,この前注の部分は,その前提,大枠になる部分で,中身でとらえていないものについて,なぜそれが入ってないのかという説明に当たる部分かと思います。この点につきまして御意見等はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,中身のほうに入らせていただきますが,まず1の親権の喪失について,事務当局のほうの御説明をお願いいたします。 ○森田関係官 第2の1では親権の喪失を取り上げております。   まず,親権の喪失の原因につきましては,虐待等を条文上,掲げるかどうかについて両論の御意見があったところですが,具体的な場合を掲げて原因を規定したほうが,親権が喪失される場合がより明確になり,相当であることなどから,中間試案におけるB案を前提に提案しております。   なお,中間試案のB案では,現行法の下でも管理権の濫用があった場合には親権喪失の原因になると考えられていることから,財産の管理に関する不正な行為というものも掲げていましたが,今回これは掲げないこととしています。財産の管理に問題がある場合に管理権喪失にとどまらず親権喪失まで至る例は余り多くないと思われますし,児童虐待の防止という観点からの見直しであるということを踏まえましても,財産の管理に関するものをあえて掲げる必要はなく,このような場合は,その他,父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適切であった場合に含まれるという整理が相当ではないかと考えております。   次に,ただし書で2年以内に親権喪失の原因が消滅する見込みがあるときは,親権の喪失をすることはできないものとすることを提案しています。「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があった場合,その他…子の利益を著しく害するとき」という親権の喪失の原因が認められる場合でも,例えば医療ネグレクトの事案のように,2年以内の短期間のうちに原因が消滅すると見込まれる事案もあり得るところです。このような事案において,2年を超えない範囲内で親権を制限する制度があるのに,親権を喪失させることは過剰な制限になりますので,親権の喪失の原因が認められても,2年以内に原因が消滅する見込みがあるときは親権の喪失をすることはできないものとして,親権の一時的制限により必要な期間のみ親権を制限すべきものとする趣旨です。   親権の喪失の請求権者には,現行法の子の親族及び検察官のほか,未成年後見人を加えております。これは,親権の一時的制限がされて,未成年後見人が選任されている場合に,必要があるときは,未成年後見人が親権の喪失の申立てをすることができるようにする必要があるためです。   請求権者に子を加えるかどうかについては,なお御意見が分かれているところですので,改めて御議論いただければと考えております。この点に関連して,現在,児童相談所長は親権の喪失について請求権が付与されていますが,今回の見直しと併せて,親権の一時的制限,管理権の喪失,取消しのそれぞれの請求権を認めるのが相当と思われますので,児童福祉法において,そのような手当てがされることを想定しております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   請求権者に未成年後見人を付け加えるという点ですとか,あるいはただし書を付け加えて,一時的制限との切り分けを明らかにするというようなことがございますけれども,それとは別に亀甲になっております請求権者の範囲をどうするかという問題がございます。これにつきましては,平湯委員ほか,3人の委員,幹事の方々から資料が出ているという御紹介は先ほどございました。これにつきまして何かございましたら。 ○磯谷幹事 今回,子供に親権制限の申立権を与えるかというところ,前回議論になりましたが,その議論を我々なりに整理するとともに,やはり申立権を与える必要があるという立場から意見を書かせていただきました。今日の議論の参考にしていただければと考えております。   既に事前にメールでお送りは頂いておりますけれども,基本的に当日配布ということもございますので,今日,簡単に内容を御紹介させていただきます。まず,最初の1のところは必要性について述べております。恐らく必要性がないのではという意見のポイントは,児童相談所長が適切に権限を行使すれば足りるということだと思いますけれども,実際に児童相談所長がそのような権限を行使するということはなかなか難しい面があるということが述べられております。   まず,一つ目は,要するに年長の子供が,例えば自立をする過程で親権制限の必要が出てきたというような場合に,これから児童相談所にお願いをして申立てをしていただくということになりますと,まず児童相談所も当然ながら調査が必要になり,そして裁判も行うということになるわけですけれども,それ自体相当時間が掛かりますし,また現状,児童相談所の特に28条の実務などを見ていても相当の負担感がある。一方で,もう御承知のとおり,児童虐待,今でもまだ非常に増えておりまして,特に幼い子供たちが命を落とすという事件が増えておるわけでございますけれども,やはり児童相談所としてはどうしてもそういった年少のお子さんに相当の時間と労力を費やさざるを得ないということで,年長の子供についてはどうしても後回しになってしまう傾向があると考えております。   水野委員が司法インフラというお話をしばしばなさいますが,若干もじって言わせていただきますと,児相インフラも非常にまだぜい弱なところがございます。劇的に拡充がされればともかくとして,現状を見る限り,この年長者の子供たちへのサポートというのはなかなか困難であろうと考えているのが1点でございます。   二つ目は,特にこれも年長の子供たちに見られることですけれども,それまでの経過から児童相談所となかなかうまくいかない子供たちというのもおります。そういった子供たちが児童相談所に頼らなければ道が開けないというふうなことになってしまいますと,実際上選択の幅が狭められるということになります。   子供たちの現状を示す上で,シェルターについて少し御紹介をさせていただいております。現在,弁護士などがかかわって子供のためのシェルターというのが全国で4か所設置されておりまして,また近々にもう1か所設置されるように伺っておりますけれども,そこでは,もちろん18歳,19歳の子供たちはおりますが,18歳未満の,つまり本来であれば相談所が一時保護が可能な子供たちも,なおこのシェルターに入ってきているという現実がございます。例えば東京のカリヨン子どもセンターに2008年度に入居した子供というのが31名おりますけれども,18歳未満が20名というふうなことになっておりまして,これだけの子供たちがシェルターを利用せざるを得ない状況になっている。そして,これは全体の数字の中でありますけれども,利用する子供たちの86%がやはり虐待があるという報告もなされておりますし,また課題としてシェルターを退去した後の行き場がないという問題が指摘されておりますけれども,これもまた親に頼れないという現実を示すものだと思っております。   このような点から,やはり児童相談所になかなか頼れない子供たち,難しい子供たちというのも少なくないということを考えますと,やはり申立権を子供にも与える必要があるということになろうかと思います。   三つ目は,これは私も含めて多くの児童相談所をサポートしている弁護士が感じるところでありますけれども,児童相談所も行政機関ということで,却下の可能性が多少なりともある場合,申立てを非常にちゅうちょすることが多いという現実がございます。28条の申立ても統計上も却下率というのが非常に低いというところも,一つはやはり児童相談所が,微妙なケースは控えたり,残念なことですけれども,子供を家に帰してしまったりというふうなこともある。そういう現状も見ますと,裁判所から見れば本来なら親権制限が適当だと思われるケースであっても,児童相談所の判断でそれを見合わせるということが生じてしまうおそれがある。そして,その結果の不利益というのは,実は児童相談所にではなくて専ら子供にあるという現状も考えますと,またやはり子供に申立権を認める必要があると考えられるわけです。これが1のところで記載をされております。   2のところは,子供に申立権を与えた場合の懸念について,この審議会の中で御指摘があった部分あるいはパブリックコメントの中で御指摘があった部分について,すべてではないかもしれませんが,主立ったところについてお答えをしております。   まず一つは,子供に大きな精神的負担を課すことになるのではないかという御懸念があります。これももちろんそういった面も否定はできないわけですけれども,実際の受け止め方は,子供のパーソナリティーによるところも大きいというのが実感でございますし,また深刻な性的な虐待のケースにおいては,子供が親に対する刑事処分を求めての告訴をするという事例もございます。こういうふうなことも考えますと,そういった精神的負担を超えてでも,子供がアクションを起こしたいということがやはりあると考えております。   二つ目は,子供に申立権を与えて,子供が申立てをすると親子関係を決定的に損なってしまうのではないかというふうな御懸念であります。これもまた決して理由のないところだとは思っておりませんけれども,しかし実際に28条のケースであっても,子供が親と決別したいのだという意向が児童相談所ないし裁判所から親に伝えられるということはございます。そういう場合には,やはり同じ問題が生じてくるのだと思いますし,一方では,そういったことがあったとしても,本当に親子関係が決定的に損なわれるのかということは実はよく分からない。むしろ,それによって親が本当の問題に気付いて,そこから親子関係の修復が図れるということもあるかもしれません。親子関係というのは非常に多様でございますけれども,余り断定して親子関係が修復できなくなると言い切ってしまうのはいかがなものなのかと考えております。   三つ目は,いわゆる濫用的な申立て,つまり例えば親族などから圧力を掛けられて子供が申立てをするというおそれが生じるという御懸念であります。これにつきましては,確かに完全にその問題をなくすことはなかなか難しいのかなとも思っております。ただ,一つは申立てを受理した裁判所が適切なインテークをされることで,ある程度,問題は回避できるだろうと思われることと,あるいはそういった問題が生じるとしても,なお子供の申立権を認める必要性は否定はできないだろうと考えておるところであります。   そのほか,最後のところに触れましたけれども,子供に申立権を認めると,児童相談所がそちらを頼って,必要な申立てをしなくなるのではないかという懸念もございますが,こういったようなことについては,厚生労働省の通知などによって,例えば児童相談所は子供が申立権を付与されたことを理由に子供の福祉にとって必要な申立てを控えることはあってはならないといったような趣旨を明確にすることによって回避ができるだろうと考えておる次第でございます。   以上のようなところで,今日,意見を述べさせていただきました。また御議論にしていただければと思います。   以上でございます。ありがとうございました。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   子供に申立権を与えるかどうか,いろいろな御意見があるわけですけれども,今の磯谷幹事の御発言は,申立権を与えた場合の懸念についても理解を示されつつ,しかしそれを上回る必要性があるのではないかという御趣旨だったかと思います。この点につきまして,委員,幹事の皆さんの御感想,御感触はいかがでございましょうか。何か御意見がございましたら是非お願いいたします。 ○松原委員 私は,神奈川のほうで子供のシェルターにかかわっておりますので,今,磯谷幹事がおっしゃったような具体的な事例で,子供が申立権を持つことの必要性を感じております。ただ,この審議会の中では,虐待以外の一般的な親子関係のところに裁判所が踏み込めるかというの,確か携帯電話を持つ持たないというような話も出たかと思いますが,その点について,最後のほうで磯谷幹事が,それは裁判所のインテークで十分回避できるのではないかという御発言があって,そういう虐待以外でいろいろ想定されるケースについては,これは司法のほうで少し前処理をしていただけるようなことができれば,虐待への対応ということで,是非この子供の申立てということを織り込んでいただきたいと思います。 ○大村部会長代理 今のような御意見がございますけれども,ほかにいかがでございましょうか。 ○中島委員 私も,現場に少しかかわっている立場で,特に重篤な性的虐待のケースなど,親子関係の回復は簡単には見込めなくて,なおかつお子さんが自分のこれからの自立のために親とのかかわりを断って,自分の力で生きていきたいというケースには申立権を認めていただきたいと思います。現場の職員が見ていて見兼ねるケースというのがございますので,そういう子供たちを救うためにこれは是非入れていただきたいと思います。 ○大村部会長代理 松原委員も中島委員も,必要な場合というのがあるのではないかということで,それ以外の場合については適切な運用でという御趣旨だったかと思いますが,ほかにいかがでございましょう。 ○長委員 今のお二方にお尋ねしたいのですけれども,その場合に,子供の年齢といいますか,あるいは発達状況といいますか,その点についてはどんなふうに考えたらよろしいのでしょうか。 ○松原委員 私自身,これは,民法にそのまま直接反映できるかどうか分からないのですが,日本も批准しております子どもの権利条約の意見表明権の中には,子供の年齢と発達に応じ,という意見表明権の裏側の条件が付いておりますので,このことを勘案して何らかの要件を定めればいいのかなと思っております。具体的に何歳とかというのは,その子供の権利条約でも書かれておりませんので,むしろそういう抽象的な年齢と発達に応じてできるみたいな形にする手もあるのかもしれませんが,それは,私,立法の専門家ではありませんので,そのことを勘案していただければというところにとどめておきたいと思います。 ○大村部会長代理 具体的な線引きはしないけれども,しかるべき線はあるであろうと,そういう御趣旨ですね。 ○小池幹事 長委員と全く同じ質問になってしまうのですけれども,年齢の線を引かないと,意思能力というあいまいな概念で処理をすることになると思うので,もしやるのであれば年齢で線を引いたほうがいいとは思います。 ○大村部会長代理 そのほかいかがでしょうか。 ○久保野幹事 今,年齢のことが問題になっておりますけれども,以前にも同じような趣旨のことを発言させていただきましたが,主に想定されているのが年長の未成年者のように思いまして,そしてどちらかというと,場合によってはもう十分に自立の能力や意思があるので,親権から解放してしまっていいのではないかといったような場面と重なりがあるように思って伺っています。   どちらかというと,子供の申立権を入れることにはなお慎重であるべきではないかという発言でございますけれども,そのように親権から解放するという制度は,それはそれであり得るものと思います。親権の解放だとしますと,それは正に子供が保護を要しないほどの状態に至っているから個別に親権から解放するのだということになって,それはそれでそういう制度は必要なのかもしれないという感じがお話を伺っていていたします。   ただ,それに対しまして,喪失という制度は,全体として子供の利益のために,だれかがまだ子供の利益を守る必要性というのが依然としてあるということを前提としている制度なのだろうと思うのです。子供の利益を守るというのは本来は親権者なのだけれども,それが適切に行われないときにだれがどうやっていくかということについて,喪失の制度の場合には,だれがどうやって守っていくかということが,なお問題になるということがこの制度の特徴かと思います。そう考えましたときに,申立権者が親族や検察官や児相となっているということは,本人の責任ではなく,だれか周りの者が,なお子供の利益を守る必要性があるということを踏まえつつ動くということ,最終的には親族や社会や国家が子供の利益のために責任を負うのだという理念的なものがここに込められているとも理解できるように思います。そうだとしますと,児童相談所の申立てが働かない場合があるのではないかという必要性の話を確かにと思って伺いましたけれども,それが働かない,うまくいかないから,では本人にというのはどうかという感じが依然としていたします。   親権者がうまくいかなければ,代わりに社会が守ろうという制度がもともとある中で,社会のほうがうまく働かない。では,本人が自分の利益をまずは自分で守るために立ち上がりましょうと。その力があればさせてしまっていいとも思うのですけれども,ただそこには何かもう少し慎重であるべきことが残るような気がいたします。   この観点は,平湯委員ほか3名の先生方のこの御意見の中でももちろん,子供自身に自分でやれと言っているわけではないというのは出てまいりまして,弁護士さん等がなさっているシェルターが力になったりしているというお話ですので,そうだとしますと,そのような弁護士さんが申立権があれば一番いいのかという気もする,それもいい選択肢なのではないかという気もするのですけれども,そこまでしないとしましても,検察官が条文上入っていますので,ここでいきなり本人にいくのではなくて,やはり社会・国家が守るという制度になっているのだと。だから,検察官に申立権が実際にありますし,それを活用していこうではないかということを確認し,促進していくということをなお考えてもいいのではないかと思います。   喪失と一時制限の申立権者を違えるという可能性はないのかということもなお考えておりまして,これだけの必要性のお話も伺いますと,一時的制限には入れるということもあり得るのではないかと,ちょっとまだその議論の中に入っていないかもしれませんけれども,喪失についてはなお慎重に考えるべきだということで,長くなりましたけれども,以上です。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。 ○窪田委員 前回と申し上げたことと重なってしまいますので,今日は発言しないでおこうかなと思いましたが,今の久保野さんの御発言との関係で,幾つか私自身は少し視点の違うことを考えておりましたので発言をさせていただきたいと思います。   まず,必要性に関しましては,松原委員,中島委員からもサポートがありましたので,それ自体については補足することはありません。ただ,こうした必要性があるということに対して,検察官の仕組みがあるではないかとか,児相長の申立てもあるのではないか,これを活用していこうというのは理念として分かるのですが,それが機能しない場合があるということに対して,やはりそっちで対応しましょうというのだと,多分,水掛け論になってしまうのだろうという気がいたします。   また,基本的な部分として気になるのは,これらの申立権に関しては,申立てが義務付けられているわけではないという点です。基本的には検察官の請求等というのも義務付けられているわけではないわけですから,一定の裁量的な判断を経るという点で,先ほどの必要性に対して対応することができるのだろうかという感じがいたしました。   それから,長委員の御発言,それから小池幹事の御発言についても,制度をつくる上では,年齢の部分がはっきりしていないと運用することが難しいというのは,確かだろうと思います。ただその際の出発点といいますか,その部分で,あるいは,基本的な出発点が異なるのかなと思いましたのは,私自身は前回も申し上げたとおり,必要性があるから当事者に,子に申立権を認めようというのではなく,むしろ子が当該法律関係の直接の当事者であるという点を出発点として考えておりました。そうすると,そこに,本来,申立権があるというのがむしろ基本であって,それが,もちろん様々な理由によって後見的な配慮等々から修正されるということがあったとしても,それがないというところから出発して,こういう場合には特別に認めましょうという性格のものではないのではないのかと思っております。もちろん,正しくそうした後見的な配慮から一定の年齢制限が設けられるとしても,そうした年齢制限がうまく設けられないのだったら,やはり申立権自体がないのだというところがデフォルトになるのではないのではないかという気がいたしております。   それから,もう一点,これを最後にしたいと思いますが,先ほど久保野幹事から,一定の年長少年に関しては,十分に成熟しているのであれば,親権から解放するという意味での正しくこういう申立てはあるかもしれないけれどもというお話でしたが,先ほどのお話を伺っている限りでは,また私自身も前提としていた部分というのは,必ずしも親権とか後見の仕組みから解放されるほどに成熟しているというのではないもう少し下の年齢において,正しく問題があるのではないかなと感じております。中島委員から御指摘があった恐らく性的虐待の問題というのはその典型例なのだろうと思うのですが,とてもまだ独立してやっていけるほどでの年齢ではないけれども,正しくそうした状況にあるという年齢層です。しかし,ある意味で犯罪等の評価というのも出てくるような問題ですから,周りもある種の慎重さをもって対応するということになろうかと思います。そうした場合に,当事者自身がそれを申し立てることはできないということについては,そこまで頑張る必要があるのかなという気がします。もちろん,ここの仕組みというのは,申し立てた上で基本的には親権者が親権喪失という形になれば後見で受けるということを前提としていますので,それを前提として考えるということでよいのではないかなと思っております。   非常に抽象的になりましたが,以上です。 ○大村部会長代理 ありがとうございました。 ○平湯委員 今,窪田委員からかなり補足していただいたと思っています。親権喪失の対象になる,この制度の念頭に置いている子供というのは,正に自立,完全までできないけれども,周りのサポートが適切であれば,その自立の意欲も持っている,そういう子供を念頭に置いているのだと思うのですね。その場合の適切なサポートというのは,親では駄目で,親では残念ながらそれが果たせない,社会の用意した後見人を付ける必要がある,そういう子供が念頭に置かれるべきだと思います。   そういう意味で,子供というのは,絶えず成長の過程にあって,その過程過程で,大人にも近づき,あるいはまだ低年齢の子供にも近い,そういう要素を持っているというのは,これは当然前提にされてしかるべきだろうと思います。そういう意味から年齢についても,私どもの3名の意見というのは,年齢制限を一切設けないということまで申し上げているつもりではありません。そこも含めて御議論いただきたいという趣旨であります。 ○大村部会長代理 ありがとうございます。   いろいろな御意見がございましたけれども,ここに出ている選択肢とは違う選択肢としては,久保野幹事のほうから親権の喪失の場合と一時制限の場合を区別するということも考えられるのではないかという中間的な御提案がございました。親権解放というのを考えたらどうかという御提案もありましたけれども,それはあり得るかもしれないけれどもということだったと思います。確かに,それ自体が,今ここで考えるのにはちょっと大きな問題だろうと思います。   しかし,中間案は取り得るかもしれない,可能性としてはあるのかもしれないと思って伺いました。   それと,これも御指摘があった点ですけれども,いずれにしても,本人が全く申立てができないような年齢の子供である場合には,だれかが申立てをする必要があるわけでして,磯谷さんのほうから児相インフラというお話がありましたけれども,やはり何らかの形で本人以外の人たちがサポートをするということは,子の申立権を認めるにせよ認めないにせよ,必要なことなのだろう思って伺いましたが,ほかにいかがでございましょうか。 ○森田関係官 すみません。1点,年齢制限の件につきましては,およそあり得ないと言うつもりもないのですけれども,民法の中で,そういう形で年齢を区切っている,すなわち家庭裁判所に何らか審判を求めるというような適格性のところで年齢で区切っているものはございませんので,そういうことを新しくするのがどうかということについては,少し体系的にも考える必要があるのかなと思っているのが1点です。   それからもう一つは,情報提供の趣旨でございますが,現在,法制審では,別途,家事審判法の見直しの調査審議もされておりまます。これは親権喪失の話に限ったことではございませんが,いわゆる民法上の制限行為能力者が,家事審判上の当事者になった場合の手当てとして,人事訴訟法13条2項から4項までを参考にして,その並びの規定を家事審判法にも置いてはどうかという方向で議論が進んでいると承知をしております。具体的には,子供が申立人として家事事件の申立てをした場合には,家庭裁判所において,子の申立てにより,又は職権も含めて,弁護士を子の代理人にすることができるという方向で検討がされていると聞いておりますので,家庭裁判所に子供自身から申立てがあった場合には,仮にここで子供に申立権を認めた場合ですけれども,そちらのほうの議論として弁護士さんを裁判所のほうから職権で付けることができるというような制度を設ける方向で議論が進んでいるということでございます。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   御指摘のように,例えば後見開始の審判というのを御覧いただきますと,申立人として本人というのが挙がっているわけですね。精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く状況にある人が,申立人として出てくることはあるというのが現行の考え方で,そのときにはその申立てを見て判断するということを現にやっておられるのだろうと思いながら今の御発言を伺いました。   御意見を頂いた委員,幹事の方のうち,久保野幹事は慎重にという御意見でしたけれども,他の委員,幹事の方は,どちらかというと積極的に考えたらいいのではないか,年齢の点はともかくとしてということだったかと思います。そして,その年齢の点については森田さんのほうから線引きは難しいとの御指摘がありました。 ○古谷幹事 年齢の点ですけれども,かなり年齢のいった子についてはそういうニーズがあるという話があって,意思能力あるなしは別としまして,一方で子供に対して非常に酷な状況というのもあり得るということであれば,やはりある程度線引きというのは制度としては検討の余地はあるのかと思います。やや乱暴な話ですけれども,例えば養子縁組の場合ですと,15歳というのを一つの区切りとしているわけです。養子縁組の場合は当事者間で合意できる話ですので,構造的に違うのですけれども,少なくともそこで考えられている趣旨は,およそ妥当しないかと言えばそんなことはないと思われますので,ここは検討の余地があろうという意見でございます。 ○豊澤委員 今の関係で若干補足しておきますと,現行の民法の立て付けを見ますと,特別養子縁組の離縁では,申立人である子に年齢制限が掛かっていませんが,この特別養子縁組の離縁というのは,養親の元から離れて実親の元へ戻るというものであり,また,親権制限の取消しについても,これにより実親の権限が復活することになります。そういう意味で実親の元へ戻っていくほうについては子の申立権について何ら年齢制限は入っていないわけです。他方で,普通養子縁組では15歳以上の子は自ら縁組をすることができることとされており,子が自らのイニシアチブで実親の元から離脱する場合については15歳で仕切りが入っているわけです。そういう意味では,実親の元から離脱するのに,あるいはそこへ戻るのかというところで,民法自体の中に線引きがあるようにも見えるものですから,法制上難しいというのはよく分かりますけれども,なお検討の余地があるのではないかと考えているわけです。 ○大村部会長代理 今,線引きが何とか考えられないかという御議論が出ております。   申立権と実質のほうの年齢制限とちょっと性質が違うところもあって,難しいところもあるかもしれませんけれども,しかし実質を考えたときに年齢で線を引いたほうがよいのではないかという御意見だったかと思います。 ○水野委員 今までにお話ししたことと異なる新しいことを申し上げることができませんので,発言を控えておりましたけれども,先ほど久保野幹事が言われた御意見に,私も賛成でございます。つまり,これまでも申してまいりましたけれども,子供に社会の後見人を付けて,そして子供を救わねばならないということについては,全く3人の先生方の御意見と同様なのですが,それが子供の申立権を認めることには直結しないであろうと思います。   子供自身が例えば,性的虐待のような場合に,自分が申し立てて親権喪失を勝ち取るということによる精神的な回復というような要素をお考えであるようですが,そのようにうまくいく場合のほかに,まずくいく場合というのもあるであろうと思います。   子の奪い合い紛争で,子のそばにいる親がこの申立権を武器に使って,相手にダメージを与えようとする可能性もあります。全く根も葉もなければ,裁判所が適切なインテークを行うことで申し立てただけに終わるとはいえ,それでもそういう申立てがあるだけでも,弊害はあります。それにそう簡単に分かるものでもありません。DVは支配を目的とするといいますが,特に物理的な殴るけるという暴力ではなくて,分かりにくい精神的暴力による支配の場合には,父親が母子関係を破壊することが典型的な症状として現れてきます。母子関係の破壊のコントロールを受けた子供は,母親に対して否定的な感情を持つものですが,そのような子供が,父親に示唆されて,母親の親権喪失申立てをすることもあり得ます。DV支配下にある被害者は,そのストレスから子供に当たってしまうことも少なくありませんが,それを虐待だと主張されると,見抜くのは難しいかもしれません。その子が将来成人して精神的な支配から回復をしたときに,そういう過去に大きな罪悪感を持つこともあるだろうと思います。そして,裁判所が適切に見抜けるかというと,私は,限界があるだろうと思います。離婚事件でも,モラルハラスメントを全く理解しないような判決が出ております。裁判官も,そういうDVなどの精神的な支配の構造というものについては素人ですし,限られた裁判の時間で,そういう構造を見抜くことも難しいであろうと思います。離婚事件の判決でも,子供は中立で客観的な判断をするという前提で,子供の証言で間違うこともあります。支配の構造のある家庭の中で育った子供の判断力というのは,非常に危ういところがございます。   子供に自分で自分の親に駄目出しをさせる道を開くよりは,むしろやはり社会が子供を守ってあげるほうが筋ではないでしょうか。これは,親権争いのときに,子供の意見を聴いて親を選ばせてはいけないというのと同じ発想です。親権争いで,子の親権者は,子の意見で決まるのではなく,裁判所が決めるのだという立場を採らないといけないように,親権喪失も,第三者である社会が決めてあげるという立場を採らないと,その子に大変なスティグマを残してしまいかねません。両親間の争いに巻き込まれるというリスクの大きさと比べますと,児童相談所がしかるべき提訴をしてくれなくて,その子が自ら出ていかなくてはならないというリスクと,どちらが大きいでしょうか。私は前者のほうが非常に危ぐするところです。やはりこういう場合は,検察官なり児相なりにきちんと提訴をしてもらう道を社会的に構築していくほうが筋であろうと思います。 ○平湯委員 水野先生の御懸念でありますけれども,確かに親と離れたことによって,それによるマイナス影響というのがゼロではないというのは,親子分離の28条もそうですし,一時保護もそうであります。そういう部分が残ることを踏まえつつ,しかしこの親元で養育したのでは,あるいはこの親の親権の下で本来子供に必要であった養育にプラスであるべき養育が子供に対して提供できないと,そういう全体的な仕組みで考える必要があろうかと思います,これは釈迦に説法かもしれませんが。   それから,現に前にも申し上げた,水野委員が意見書を書いてくださったケース,このことをまた申し上げるのは大変恐縮でございますけれども,正にその子供は社会に支えられて自分が申立てをした。最終的には検察官の別申立てが親権喪失という同じ結果を生じたわけでありますけれども,正に申し立てるときに,子供本人が申し立てるということ,それしか方法がない状況の中で頑張って実現して,その後御心配のようなことはなしにいまだに弁護団,当時の代理人団といいますか,いろいろな時候のあいさつとか,そんなこともしてきてくれるような,私たちからすると,周りが支えて,本人が申し立てたことによって,そして結果,実現したことによって,その子は自立することができたと思っております。   最初に申し上げたように,必ずしもそうでもないという事例がゼロだとは言いませんけれども,それは,申立権を認めることだけによって解消されるのではなくて,申立権を認めて実現し,その行動を社会が支えることによって自立が果たされるのだと理解しております。 ○大村部会長代理 この議論はなかなか意見のまとまらない議論で,今も,窪田委員,磯谷幹事からも手が挙がっているのですけれども,おおむね皆さんの御議論というか論点は出ているように思います。本日は,その間にあって,中間的な解決というか,あるいは年齢制限をしたらいかがというような意見も出ております。次回,ペンディングになっております懲戒の問題を扱わなければいけないということになりますので,併せましてこの申立人の件,中間的な案も含めて,どのあたりの案が考えられるかということを事務当局で再度検討させていただくということでいかがでございましょうか。   これでおしまいということではなくて,再度検討すると,持ち越しにするということでいかがございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,今の点については様々な御意見を頂きましたが,親権の喪失につきましてほかの点はいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。それでは,今の点だけをペンディングということにいたしまして先に進ませていただきたいと存じます。   次が2の親権の一時的制限という点でございます。これにつきまして事務当局から御説明をお願いします。 ○森田関係官 第2の2では親権の一時的制限を取り上げております。   一時的制限の原因につきましては,御異論がなかったところでして中間試案から変更ございません。請求権者につきましては,親権の喪失と同様にすることを前提としております。期間の定め方につきましては,原則2年とする考え方も有力でしたが,前回同様,上限2年とすることを提案させていただいております。原因が消滅すると見込まれる時期を超えて親権を制限するのは適当でないというのが原則的な考え方であるとすると,家庭裁判所において原因が消滅すると見込まれる時期を考慮して,それが2年以内に認められるときは,その時点まで親権を制限するというのが制度趣旨に合致すると考えられますので,そのような考え方に基づき,改めてこのような提案をさせていただいております。   次に,(注)では15歳未満の子の養子縁組に関する規律を取り上げております。   15歳未満の子の養子縁組については,法定代理人が代諾することとされておりますので,親権の喪失や一時的制限の結果として,親権を行う者がない場合には,未成年後見人が代諾権者となります。もっとも,今般,親子の再統合に資するということで一時的制限制度を導入するという創設の趣旨などに照らせば,一時的制限をされている父母の同意なく,養子縁組をしてしまうことは相当ではないと考えられます。そこで,親権の一時的制限がされている父母については,現行法における監護者に指定された父母の取扱いと同様に,養子縁組の場合についての同意権者とし,同意なくされた養子縁組は取り消すことができるものとすることを提案しております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございます。   ゴシックの部分につきましては,更に細かい意見の分かれはあるかと思いますけれども,前回同様の御提案ということでございます。   これに付け加えまして(注)で,これは,前回,最後に久保野幹事が御指摘になった点かと思いますけれども,養子縁組の代諾をどうするかという問題について一定の考え方が示されております。ゴシックの部分でももちろん結構ですが,初めて話題になります(注)の部分も含めまして御意見を頂ければと思います。 ○小池幹事 ちょっと趣旨の確認ですけれども,一時制限を受けた場合にその部分を埋めるために未成年後見人が就いて,その未成年後見人の権限として代諾権も当然付いていると,削れないというのが前提なわけですね。一時的制限の制度趣旨からすると,余りマッチしていないような気はするのですけれども。 ○大村部会長代理 事務当局,その点はそういう趣旨ですか。 ○森田関係官 すみません,御質問の趣旨を理解できなかったのですけれども,そもそも代諾権自体を父母のほうに残していいのではないかという御趣旨でしょうか。 ○小池幹事 親権自体は停止されてしまうので,残っているけれども,使えない。未成年後見人のほうは,その権限はないということでもいいのかなとちょっと思ったものですから。 ○森田関係官 そもそも,養子縁組をする人がいなくなるということですか。 ○小池幹事 そうなりますね,一時的制限の場合は。 ○森田関係官 結論から申しますと,一時的制限中でも養子縁組をしてもいいということは,正に停止された父母がそれを認めるのであれば,いい場合ということはあり得ると思いますので,だれかはできるようにしたほうがよく,そこをそもそもできないようにするというのは少し現実に合わないのかなとは思っております。逆に親権の一時的制限をされた父母を代諾権者にまで引き上げるかというと,それも基本的には親権を行わずに養育監護等していない人ということになりますので,そこまでというのもどうかなということで,基本的には現行の法定代理人というのは飽くまでも未成年後見人ということになりますので,代諾権者についてはそのまま維持し,父母には同意権のみがあると,逆に言えば拒否できるという限度で認めてはどうかという御提案でございます。 ○大村部会長代理 未成年後見人の代諾権は,結論としてはあるという前提で,しかし同意権を持つ人間が一人増える,一時停止の場合には全く親権を喪失しているのと同視するのではなくて,監護権を持っている親と言わば同じ状態に置かれるという理解かと思いますが,いかがでございましょうか。 ○久保野幹事 今の理論的なところはちょっとまだ整理がついてないのですけれども,その基本的な判断として,こういう場面での養子の必要性があるであろうと,それができなくなるのは相当ではないという御判断の基礎といいますか,あるいは現場の方の御意見を伺ったほうがいいのかもしれないのですけれども,どういう場面を想定して,どちらの構成がいいのかを考えたらいいのかというのがぴんとこないところがございまして,もし,ございましたらお教えいただければと思います。 ○森田関係官 すみません。これを考えたときには,だれも養子縁組ができないということを想定していなかったので,何ともちょっと申し上げにくいところはあるのですけれども。 ○大村部会長代理 多分,実際の問題としては養子縁組は非常にしにくい状態になるのだろうと思いますけれども,全く養子縁組ができないという制度をつくるのかという問題だと思って伺いました。単純に現行の制度に乗せますと,未成年後見人が選任されれば,その人が代諾権を持つ。しかし,選任されなければ代諾権を持っている人がいないという状態になるわけなのですけれども,代諾権を持つ人がいて,では一時制限された人はどうなるのかということで,それは全く関係ないのだと仕切るのか,それとも一時制限は喪失ではないので一定の関与は残るのだとしておくか。   一定の関与が残るのだということにすると,その親の同意が得られませんと,養子縁組はできないということになりますので,実際上,養子縁組は非常に難しいけれども,観念上は同意が整えば養子縁組ができるというようにしておいたほうがよくはないか,そういう整理かと思って伺いました。 ○松原委員 現場で言いますと,精神疾患のある母親で,子供は育てたいと,しかし専門家から見ていて,それは無理だと判断していても,引き取りたいといったときに,今,場合によると28条という形を採ります。病気は寛解する可能性がありますので,そういうときにその可能性がなおありながら,養子縁組がされてしまうというのはかなり母親にとってはつらいかなと思っていますし,その母親の予後にとっても非常によくないだろうと,こんなようなケースがあるのかなと。直近でそういうようなことで,児童福祉施設である母子生活支援施設の廊下で座り込んで「子供を引き取りたいよ」と言っていて2時間動かないお母さんを見てきたばかりですので,あり得るかなという気がしております。 ○磯谷幹事 逆に,一時制限の間で養子縁組をするケースというのもあり得るとは思っています。   というのは,例えば一時制限をしたことによって,率直に言って親としては,やはりこれはうまくいかないなと考えて,そしてその中で,例えばおじいちゃん,おばあちゃんや,あるいは親族と養子縁組をしてはどうですかと,その説得にうまく応じてくれたということになれば,これは一時制限の間に子供を養子縁組して,最終的にそこでケースクローズということは,これまたあり得ることだと思いますので,ですから全く養子縁組ができなくなるというのはやはりちょっと困るかなと思います。 ○松原委員 ここの案のように,追認していただくというか,それがあれば私は事務当局の案でいいかなと。 ○磯谷幹事 私も結構だと思っています。 ○松原委員 ちょっと違う観点でよろしいですか。   原則2年にしないで,それぞれの期間を置いていいだろうということで,短い期間を想定した場合に,今でもなかなか制度的に未成年後見人って見付かりにくいので,その場合に,例えば一定の医療行為等を目的にして,一時制限を掛けたときに,すぐ未成年後見人が見付からないときに,子供が施設に入所していれば施設長,していなければ児相長がそれの代行ということで施設等の応諾をすると,そういう考え方でよろしいのですね。 ○森田関係官 実務としてはそういうことになるのでないかと思います。何ら行政上の措置が採られてない子の扱いについては,先ほどお話があったとおりですけれども,現行法でも,児童相談所長から未成年後見人の請求があれば,見付かるまでの間は児童相談所長が親権を行うということになっていますので,何らかの形で児童相談所長にそういう権限を行使してもらうという形で乗せられると理解しています。 ○大村部会長代理 ほかにいかがでしょうか。 ○吉田委員 今のお話で前から気になっていたところですけれども,一時制限をして施設にいる場合には施設長,そうでない場合に,今お話があったように児童相談所長ということですが,この一時制限についての保全というのは制度としては考えられないのですか。そこまでは予定していないのですか。 ○森田関係官 保全処分自体は親権喪失と同じ並びで設けることになろうかと思っておりますので,それももちろん使えると考えております。 ○吉田委員 ということは,それも制度としてあるということですね。 ○森田関係官 はい。ただ,先ほどの御質問は,多分,一時的制限の審判は確定したのだけれども,未成年後見人が見付からないという状況を想定しておられたと思うので,それはもう保全処分の世界から外れてしまうのでということでお答えした次第でございます。 ○吉田委員 それから,もう一つ,先ほどの同意のところに戻りますけれども,一時制限されている親権者に同意権を付与するというとき,これは現行法でも同じかもしれませんけれども,例えばこの場合の同意権の濫用,要は正当な理由のない同意拒否ですよね。実際に,先ほど磯谷幹事からお話がありましたような,やはり措置中に養子縁組というのがどうしてもこの場合は望ましいのだという,正に子の利益のために養子縁組をしたいというときの同意拒否については通常の親権制限と同じ方法を採る。でも,もう既に一時制限をされていますよね。 ○森田関係官 親権の一時的制限がされている間にも,なお親権喪失はできるという整理でいいのではないかと思っていまして,仮に養子縁組をしないといけないというときには親権喪失を使うかどうか検討することになろうと思います。その要件に該当していないのに,養子縁組をするのはよくないというのが制度設計になりますので,この提案でいけば,親権喪失の要件まで該当するような場合には,それの手続を別途採った上で,同意権がなくなるということで整理できるのではないかと考えております。 ○吉田委員 そうすると,子供の養子縁組の必要性よりも同意権のほうを優先させるということになりますよね。 ○森田関係官 一時的制限の原因しか認められていない事案においてはそういうことになろうかと思います。 ○吉田委員 単に縁組の同意拒否という観点からすれば,先ほどの要件で見ると,親権喪失という,著しくというそのあたりの判断になるかどうか大変厳しいところかと思いますが,ちょっと疑問に残るところです。結構です。 ○大村部会長代理 一般に平場で考えたときに,この子は養子にやったほうがいいという場合はもちろんあるわけなのですけれども,親権者がいる以上は,親権者が同意しなければ,それは実現しないわけですね。ですから,一時制限の場合には,むしろそちらに近い状況だと事務当局のほうは整理されているということだろうと思います。いかがでございましょうか。   この代諾という制度は,この制度自体が果たしてこのままでいいのかというような問題もある制度だろうと思います。明治時代につくられたときにも非常に激しい議論があった制度です。その後,監護権を持つ者の同意を加えるという形で制度が変遷してきているわけですけれども,今回,仮に一時制限中の親に同意権を与えるということになると,またこの制度が動いていくということになります。本来的に,代諾制度そのものに立ち返って,これがよいかどうかということは検討するべき事柄だろうと思いますけれども,現在の検討課題との関係で言うと,このようなところで調整をするというのが事務当局の考えだろうと思います。   法理論上いろいろな御意見もあり得るだろうと思いますけれども,何かここで御指摘があれば承っておきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○窪田委員 先ほど小池幹事から出た疑問というのは,実は私も送っていただいた資料を最初に拝見したときに感じたところで,うまく現行法の仕組みとの関係で整合がつくのかなと思いました。ただ,何度か考えている中で,先ほど事務当局から御説明があったところということになると思いますけれども,結局,親権喪失の場合と違って,親権の一時停止というのは,潜在的な親権は残っているのだというとらえ方で見ていかざるを得ないのだろうなという気がしております。ただ,その上で法定代理人がいる以上は,法定代理人が代諾権者となって,更に同意を得るという何か2段階の仕組みというのが両立するのかと言われると,多分,論理的には少し難しい部分もあるのだろうと思いますが,事実的に見てそうなのだろうなと思います。   親権喪失に当たらないような場合には困るではないかということに関しても,これは大村委員から御説明があったとおりで,現行の普通養子制度というのも,子供のためになるかどうかというのは,最後の家庭裁判所の判断のところでは出てくるとしても,それ以前の段階ではやはり出てこないわけですから,これは致し方がないということなのだろうと思います。   そういう意味で,何も付け加えるものはございませんでしたけれども,事務当局の御提案でよろしいのではないかと思います。 ○大村部会長代理 ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この2の親権の一時的制限については,この原案で御異論がなかったということで進めさせていただきたいと存じます。   それでは,3の管理権の喪失に進ませていただきたいと存じます。事務当局のほうの説明をお願いいたします。 ○森田関係官 第2の3では管理権の喪失を取り上げております。   管理権喪失の原因につきましては,現行の管理が失当であったことによって,その子の財産を危うくしたときという場合以外にも,管理権の行使が不適切であることで,管理権の喪失をすべき場合があるということですので,親権の一時的制限の原因に平仄を合わせる形で「父又は母による管理権の行使が困難又は不適切であった場合において,その父又は母に管理権を行わせることが子の利益を害するとき」としております。   請求権者につきましては,親権の喪失や一時的制限の場合と異なり,親権の一時的制限中に未成年後見人が管理権の喪失を請求するような場合は余り想定されないと考えられることから,未成年後見人は入れないこととしております。   引き続き,4も併せて御説明させていただきますが,4では,親権の喪失若しくは一時的制限又は管理権の喪失の審判について,その原因が消滅したときは本人又はその親族の請求によって,その取消しをすることができるものとしております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 ありがとうございます。   それでは,3と4,まとめまして御意見を頂ければと思います。申立権者に子を入れるかどうかというのは,先ほどの議論の繰り返しでもあるわけですけれども,ここに何か固有の御指摘があれば。 ○磯谷幹事 私のほうも,少しまだ十分,整理ができていないのですが,今の未成年後見人を外すということについて,例えば親権の一時的な制限をやって,そしていろいろと調整の中で子供が家に帰れることになったと。そこで,子供を家に帰す。したがって,一時的制限はそこで終わるわけですけれども,一方で,その過程で財産管理について非常にまだ課題があるという場合に,例えば財産管理権についてのみ,喪失の申立てを未成年後見人が行うということはあり得るのではないかなと思うのですけれども,いかがでしょうか。 ○森田関係官 少し検討をさせていただきたいと思うのですが,一時的制限,その期間の満了近くになって,身上監護の部分は戻しても大丈夫だけれども,なお管理権は制限しておいたほうがいいという場合が想定され,そういう場合には未成年後見人の請求を認めてもよいのではないかと,そういう御趣旨ですよね。少し検討させていただければと思います。 ○大村部会長代理 申立権者の件は先ほどペンディングにいたしましたので,今の点も含めて次回に再整理ということにさせていただきたいと思いますけれども,ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この4まで終わったということにさせていただきまして,未成年後見人とその他が残っておりますけれども,ちょうど4項目のうちの半分まで来ましたので,ここで少し休憩させていただきたいと思います。           (休     憩) ○大村部会長代理 それでは,再開させていただきたいと存じます。   第3の未成年後見からでございますけれども,まず最初に未成年後見人の人数につきまして事務当局のほうから説明をお願いいたします。 ○森田関係官 第3では未成年後見制度を取り上げており,1では未成年後見人の人数について取り上げております。(1)では,未成年後見人は一人でなければならないと規定している第842条の規定を削除するものとし,複数の未成年後見人を許容するものとしております。前回の会議で,身上監護については一人に限るのが相当であるとの御意見もあったところですが,祖父母やおじ,おばが二人で未成年後見人になる場合等を想定すると,身上監護だからといって一人でなければならないものとするまでの必要はないとの御意見も有力でしたので,ここでは身上監護を含めて複数の未成年後見人を許容することを提案しております。その上で,(2)において複数の未成年後見人の権限の行使等に関する規律を設けるものとし,(注)で具体的な規律の在り方を提案しております。   すなわち,複数の未成年後見人が選任されているときは原則として共同してその権限を行使するものとするが,家庭裁判所が,一部の未成年後見人について,財産に関する権限のみを行使すべきことを定め,又は財産に関する権限について,それぞれ単独で,若しくは事務を分掌して行使すべきことを定めることができるものとすることとしております。これによると,身上監護に関する権利義務を有する未成年後見人が複数の場合,当該権利義務は常に共同で行使されることになりますが,財産に関する権限を有する未成年後見人が複数の場合の当該権限については,共同行使,単独行使又は事務分掌による行使のいずれもあり得ることとなります。   以上を前提に,未成年後見人が複数の場合における権限の行使の在り方としては,運用上,主に別図で示したような場合が考えられます。別図のイメージ①は単に未成年後見人を二人選任した場合です。この場合,二人の未成年後見人が身上監護及び財産管理の全部について共同行使をすることとなります。   イメージ②は,未成年後見人を二人選任した上で,一人の未成年後見人について財産に関する権限のみを行使すべきことを定めた場合です。この場合,身上監護については一人の未成年後見人が単独で行使し,財産管理について二人の未成年後見人が共同で権限を行使することとなります。ただし,財産管理については単独行使の定めもすることができますので,その場合には財産管理について二人の未成年後見人が各自単独で権限を行使できることとなります。   イメージ③は,未成年後見人を二人選任した上で,一人の未成年後見人について財産に関する権限のみを行使すべきことを定めるとともに,財産管理について事務分掌の定めをした場合です。この場合,身上監護については一人の未成年後見人が単独で行使し,財産管理について二人の未成年後見人が事務を分掌して権限を行使することとなります。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   複数未成年後見人の権限の行使等に関する規律を設けるということで,今回,(注)の部分が新たに出ております。そこに説明がございますけれども,併せて別図というのも御覧いただきたいということであったかと思います。イメージ①は全体について複数後見人になっている場合,②が財産管理についてのみ複数後見人になっている場合,③がその財産管理について複数後見人になっており事務を分掌している場合という例でございます。いかがでございましょうか。   ちょっと確認ですけれども,①の場合に財産管理について単独行使ということはあり得るのでしょうか。 ○森田関係官 ①の場合でも,財産管理の部分について単独行使ないし事務分掌の定めにすることも否定する趣旨ではございませんが,身上監護について共同で行使してもらうべく複数の未成年後見人を選んだ場合に,財産管理についてそれ以外の定めをする場合が具体的に現実に想定されるかというと,余りないのかなという印象でおりました。 ○大村部会長代理 分かりました。複数後見人のときには共同で権限を行使する。二人の意思表示がそろって初めて行為ができるというのが原則だけれども,財産管理については,単独行使,それぞれが単独で権限を行使できるという選択があり得るとともに,事務を分掌する,ある事柄については一方が行い,他の事柄については他方が行うというような定め方もできるということかと思います。いかがでございましょうか。   これも(注)という形で初めて出るものですので,何か御意見・御指摘があれば頂きたいと思いますが,特にございませんでしょうか。   それでは,イタリックの部分も含めまして,これでよろしいということで,先に進ませていただきましてよいでしょうか。ありがとうございます。それでは,先に進ませていただきます。   次が未成年後見の2でございますが,未成年後見人の選任についてでございます。事務当局のほうから御説明を頂きます。 ○森田関係官 2では未成年後見人の選任について取り上げております。   (1)では複数の未成年後見人を許容するのに伴い,未成年後見人選任の請求権者若しくは既に選任されている未成年後見人の請求又は職権で未成年後見人の追加選任を認めることとしております。(2)では,法人を未成年後見人に選任することを許容することを前提に,個人の場合も含め,未成年後見人選任の際の考慮事項を定めるものとしております。考慮事項につきましては,基本的に成年後見人について規定している現行の第843条第2項と同様のものを掲げておりますが,成年後見の場合と比べて被後見人の年齢がより重要な要素となるように思われたことから,これを明記することを提案しております。   なお,(第3の後注)では,未成年後見監督人についても,未成年後見人と同様の手当てをすることとしております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございます。(後注)の「同様の手当て」の中身は。 ○森田関係官 基本的に複数選んだ場合の権限行使の在り方についても,未成年後見の場合と一緒ということなどでした。形式的には準用の形になるのだろうと思っていますが。 ○大村部会長代理 この未成年後見人の選任につきましてはいかがでしょうか。既に一人ある場合にも,必要があると認めるときには選任することができるということと,それから判断要素として,年齢というのを付け加えたらどうかという御提案でありますけれども。   よろしいでしょうか。それでは,先に進ませていただきます。どうもありがとうございました。   最後は第4,その他,所要の規定を整備するものとするという話ですが,これにつきまして御説明を頂きます。 ○森田関係官 第4では,その他,所要の規定を整備するものとしております。   民法の改正に伴い,家事審判法や戸籍法等についても所要の整備をする必要がありますので,そのことを記載している趣旨です。具体的には,家事審判法に家事審判事項を追加するなど,形式的な整備になるということで,このような表現をしております。   以上でございます。 ○大村部会長代理 ありがとうございます。この点はよろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。では,この点は,所要の規定を整備するということで取りまとめさせていただきます。   先ほど後半と申し上げたのですけれども,未成年後見とその他が意外にあっさり終わりまして,もう少し時間的な余裕がございます。先ほど,申立権者のところを議論を少し制約してしまいましたけれども,様々な御意見がございまして,それは,意見分布は大体分かったわけですけれども,途中で久保野幹事から御提案があった,親権の喪失と親権の一時的制限とを分けたらどうかという中間的な御提案がございました。年齢で区切るというのが一つの中間案でございますけれども,喪失と一時的制限で区切るというのもまた別の中間案ということになるかと思います。この中間案について,委員,幹事の先生方の御感触をもう少し伺えればと思うのですが,いかがでございましょうか。   具体的には,一時的制限のほうにのみ入れるということになるのだろうと思いますが。 ○小池幹事 ちょっと疑問というか,子供にとって喪失よりは一時的制限のほうが申立てしやすいということはあるのだろうかと。むしろ逆のほうが言いやすいのか,ちょっとこれ,感触は分からないので,磯谷幹事あたりに感触をお伺いしたいのですけれども。 ○磯谷幹事 まず,結論的に言えば,やはり両方あるほうが望ましいと思います。   まず,一時的制限は必要だと思いますのは,何といっても今回の改正の眼目は,期間を区切ることによって,要件的にも活用しやすい親権制限,機動的に活用しやすい親権制限というのを入れたということになりますので,これを子供については使わせないという理屈はなかなか成り立たないし,また実際上も,やはり機動的に親権が止められるというのは必要だろうと思っております。   一方で,親権喪失については,特に年長の子供については,もうこれから親権をまた回復させてということが実際上は見込まれないケース,成年まで2年を切っていれば,逆に言えば一時的制限でも足りるのかもしれませんけれども,例えば17だとか16だとかということで,しかし一方ではもうこれまでの長い経過から見て到底親が適切に権限行使できるようになるとは思えないというケースもある。そういうふうなケースについて,もうはなから喪失の道は認めないで一時制限のみに一本化するというのも,これもまたいき過ぎではないか。最終的にはいろいろなケースがあり得ますので,やはり両方について認めていただくというのが有り難いかなと思っております。 ○大村部会長代理 小池幹事の御質問との関係で言うと,一時的制限についてもそれは必要な場合がある,そういうことですね。   ほかにいかがでしょうか。   それから,磯谷幹事の御指摘にありましたけれども,18歳になっていれば,残り2年なので一時的制限でも目的は達成されるということは,確かに結果としてはあるわけですね。ほかの皆さんの御意見はいかがでございましょうか。 ○吉田委員 私も喪失について子を含めるというのに賛成であります。   前回,質問の形で出させていただきましたけれども,代理人制度が検討されているというところが大きいと思うのです。申立てについて,またそのプロセスの中で子供に対する非常に大きな心理的なプレッシャーはあると思うのですけれども,それこそ代理人制度を活用するということによって,そうした子供の利益を守るということが制度の趣旨ではないかとも考えられますので,それと合わせるという運用で子供の申立権を認めるということは必ずしも不適切ではないだろうと思います。 ○大村部会長代理 ありがとうございます。   そのほかの先生方,いかがでしょうか。 ○磯谷幹事 次回,申し上げようかと思っていたのですが,仮に子供の申立権を認めた場合,やはり子供の心理とか,そういったところに十分配慮するというのは,これは関係者にとって当然ですし,特に恐らく子供はこういう親権喪失だとか制限だとかということを知りませんので,結局そこを紹介し,また提案していくのは弁護士だと思うのですね。そういう意味では,弁護士がきちんと子供のことを考えて,子供の心理なんかもよく考えた上で適切な方法を進めていく,活動していくということは重要なのだろうと思います。   残念ながら,私,弁護士会の中の立場で,何かここで弁護士会を代表してお約束できるわけではないのですけれども,しかしアメリカではどうも弁護士会のほうで子供の代理人をする場合の綱領といいますかガイドラインといいますか,そういったものも設けているように伺っておりますので,やはり弁護士会がきちんと子供のことにかかわる弁護士について,行動規範といいますか,そういったところを明らかにしていくというのはとても重要なことだと思うのですね。逆に,そういう形で何とか御理解を頂いて,いろいろな,先ほどの厚労省のほうで,児童相談所が子供の申立権に甘えて適切な対応を採らないということはないようにするという,そういう厚労省の通知ということも御提案申し上げましたけれども,様々なそういったことを整備する中で,やはりこの申立権というものが,きちんと機能していくように配慮するということで何とか御理解いただけないかなと考えております。 ○垣内幹事 必ずしも久保野幹事の中間案についてということではないのですけれども,よろしいでしょうか。   子供に申立権を認めるかというのは非常に悩ましい問題だと,私自身,感じておりまして,一方で必要性というのは磯谷幹事その他の御意見にありますように否定し難いところがあるように思われますし,他方,子供自身に申立てをさせるということが,子供に一体どのような影響を及ぼすのか,悪い影響を及ぼすのではないかという特に水野委員その他の先生方から言われている御懸念も非常によく理解できるところなのですが,子供に申立てをさせることの悪影響というものの内実というものを考えてみますと,いずれにせよ,仮に例えば児童相談所長が申立てをするという場合でありましても,その手続によって子供が何らの影響も受けないということは考えにくいわけでして,子供は最重要の利害関係人として何らかの形で手続の影響を受けざるを得ません。   そうしますと,一つは,申立人というところに子供が名前を出すという,子供の名で申立てをするということの象徴的な意味をどうとらえるのかということが一つあるのですが,その点は,先ほど森田関係官のほうから御紹介のあった代理人,弁護士を選任するというような規律をしたときに,実質的には,例えば児童相談所長がやっている場合とそれほど大きな差を生じるのかというと,やや疑問なところもあるように感じております。   他方,もう一つ重要なポイントとしましては,申立てをするかどうかの最終決定をだれがするかということで,子供にぽんと申立権を与えるということになりますと,これは子供自身が最終的に判断をすることになる。しかし,そのような判断を子供にさせるということが非常に問題なのではないか,ということがもう一つの問題としてあるのだろうと理解しております。   この問題に関してですけれども,こうした問題を緩和する一つの方法としまして,私自身,十分に検討ができているわけではないのですが,例えば現行法で,局面が全く異なるのですけれども,民法の826条では利益相反行為について特別代理人の選任をまず家庭裁判所に請求するということになっておりますが,考えてみますと,子供自身が自分を保護してくれるべき親権者の親権の喪失を申し立てるというのが,子供自身の利益になるのか,それとも不利益になるのかというのは,これは非常に難しい問題でありまして,その意味で,この親権喪失の申立てというのも,ある種,子供にとって利益相反的な側面を持つような感じもいたします。そのように考えましたときに,申立権を子供に認めるという前提に立った上で,申立てをするには初めに家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならないとし,その上で,特別代理人が親権喪失の申立てをするのかどうかの最終的な判断をする,というような枠組みを考えることというのはできないだろうかということを少し考えておりまして,十分に検討ができているわけでは全くないのですが,一つの方法として,今更の御提案で大変恐縮なのですけれども,もし御検討の余地があるようであれば,こうした方法についても御検討の対象に加えていただければ有り難いと考えております。   以上です。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございます。   久保野幹事がおっしゃったのは,喪失と一時的制限で分けて考えられないかという中間的な提案だったわけですが,垣内幹事のおっしゃるのは,申立権を認めつつ,直ちにそれで申立てがされるというのではなくて,間に何かクッションを挟んで,実質的な判断を子供だけに負わせないような仕組みを考えることができないかという御趣旨かと思います。もう一つの新たな中間的な解決ということで,細部は別にしまして考え方を御提案いただいたものと理解いたしました。   今の御提案も含めてで結構でございますけれども,何か御意見はありますか。 ○小池幹事 今の垣内幹事の意見に賛成なのですけれども,子供自身は飽くまでも成熟しつつある主体ということなので,自己決定が可能であっても,保護を与える必要性はあって,やはり保護と自己決定は併存するという状態は別に問題はないと思うのですね。そういう意味では,今の垣内幹事の御提案というのは,自己決定を認めつつ,何らかの保護措置も同時に掛けていくという話だと理解しましたので,実現できるのであればそういう方向で考えていただければと思います。 ○大村部会長代理 実体法の中でできるかどうかですね。 ○平湯委員 今の御提案の御趣旨というか,ねらいはよく分かるのですけれども,つまり認めつつ,しかし申立て自体のところでやはりチェックするということだろうと思うのですけれども,判断が2段階,家裁の判断が最終段階で,その手前のところでもう一つ判断チェックをつくるということは,結論的に言いますと,子供の申立権というのを認めたということにはやはりならないのではないかと思うのですね。   ただ,それは,どんな制度でも人がやることですから,利害関係の特別代理人になった人が,本当に子供の気持ちを酌んでよく話し合い,やはりやめにするという場面を考えると,それはそれで子供にとっても意味のないことではないとは思うのですが,現在の特別代理人というものをそのために使うということですと,一つにはちょっと今の民法の中では体系的な問題も多少はあるかなと,私,今研究しておりませんけれども,826条というのは財産関係ということで,扶養請求などの場合の特別代理人というのは私もしたことがあります。ぴったりしていると思うのですが,親権喪失というのを826条で考えられるのかどうかということは,まだちょっと私も疑問があります。   それからもう一つは,特別代理人の選任申立てをこれはだれができるのかというと,現行の実務では,もちろん実質的な行為能力というのを前提にしていると思いますけれども,子供本人が特別代理人の選任申立てができるというのが前提になっていて,それで裁判所に選任された特別代理人が例えば扶養請求をするという枠組みになっていると思います。そういうのを前提にしますと,その特別代理人というのが今度はだれを選ぶかというところで,例えば,これは実務ですけれども,申立人代理人が,特別代理人の選任の申立ての代理人が,裁判所に,認容の結果,特別代理人に選任されるという実務もあって,公的な物差し基準で選ばれた別の人が特別代理人になるということは,必ずしもそういう実務にはなっていないと思うのですね。   ですから,今行われている特別代理人の実務がうまくそういう何らかの予備的なチェックというのに親しむのかどうか,少し疑問に思っておりますので申し上げました。 ○大村部会長代理 どうもありがとうございました。   現行の特別代理人の制度,利益相反の制度にそのまま乗せようという御趣旨ではない御提案だと伺いました。また,現行の制度に乗せるときには,親権者が特別代理人の選任を請求するというのが基本的な仕立てになっていますので,ちょっとそのままでは難しいところがあるのかもしれませんが,考え方としては,ワンクッション置いて,子供の申立てを阻止するというよりも,子供の申立てを聴いて,その負担を一緒に背負うような人を間に挟むという御趣旨なのかと思って先ほど伺いました。 ○垣内幹事 私自身,十分に検討できているわけでは全くないのですけれども,先ほど申し上げた際のイメージとしましては,正に今,平湯委員の言われたように,実際には,もちろん特別代理人選任の請求については,これは子供が申立人となると。その際,しかし実際上,想定されるのは周りに援助している弁護士さんなり関係の方がおられて,申立代理人になることも十分あり得るでしょうし,そうした方が,裁判所の目から見て,問題ないということであれば,そうした方を特別代理人に選任した上で,その場合には,その特別代理人の判断としては,親権喪失の申立てをすべきだということに恐らくなるのだとは思いますが,そういうことをイメージとしては持っておりましたので,必ずしも関係ない第三者を選任,それは事例によってはそういうこともあり得るのかもしれませんけれども,するというのではないということと,むしろそういったサポート体制が実際上ないときに,子供が一人で意思能力があるからといって申立てをしてきたときには,裁判所としては,当然,直接の利害を持たない第三者的な方を選任することによって,きちんと申立てが理由があるのかどうかを判断してもらうというようなことが考えられるのかなというイメージを持っておりました。 ○長委員 お聴きしたばかりなので,直ちに賛成するというわけではないのですが,参考までに意見を述べますと,民法の826条の利益相反行為については,現在の運用として,確かに親権者が申立てをしまして,親権者が推薦してきた人を特別代理人に選任することが多いのです。それはなぜかといいますと,特別代理人の権限を申立て時にしっかりと確認いたしまして,裁量的な部分をかなりなくした形で特別代理人を選任しますので,濫用の危険がないので,そういう人を選任しています。御提案があった場合については,そういう問題とは違いますから,恐らく特別代理人の選任という手続が仮に入ってきた場合には,その部分でお子さんの置かれている状況であるとか意思確認であるとかというのをきちんとする必要があると思います。   周りに関係の方がおられて,その方が客観的に見て子供の利益からふさわしいのであれば,推薦されたその方を選任することはあると思いますけれども,不適当な場合には別の人を選任するということになると思います。   私は,子供に申立権を与えるという場合に,子供にいろいろな判断をさせたり,精神的な負担を掛けてしまう点が,以前から心配してきたところですが,仮に申立権を認めるという場合に,それを何らかの形で軽減しようとすると,御提案のような視点もあるかなと思って聴きました。その場合に,特に,そのお子さんの状況を把握するためには,恐らく心理的な意味での状況とか生活環境などを把握しなければいけませんので,私は,子供に申立権が与えられた場合でも,児童相談所等の行政機関が協力をする,あるいはそこがかなり大きな役割を果たしていくような仕組みというのは考えられていっていいのではないかと思います。今日のただいまの御提案について今考えたところを述べておりますので,別に固まった意見ということではないのですけれども,子供の負担を軽くし,かつ子の利益を守っていくために,子供に申立権というものを認めていくにせよ,行政機関との連携をうまくつくっていただくことが必要不可欠ではないかと考えます。 ○水野委員 ただいまの長委員の御発言と発想的には同じなのですが,子供の申立権で,もし申立権を認めるのだとすれば,児童相談所に対して子供が申し立てるという仕組みのほうが筋のように思います。児童相談所長のほうで,子供の訴えを受けて,親権の喪失を申し立てるという道はないのでしょうか。そういう形で児童相談所の判断と助力を制度的にかませるほうがまだよいように思います。   児童相談所がきちんと働いてくれない場合には,そういう申立権を認め,そして代理人としてサポートの弁護士が付かれたりしたら,それこそ,児童相談所長もしかるべく動くでしょう。もし動かなければ,動かないことについて,行政訴訟ができるという仕組みのほうが,どちらかというとまだ筋がよいように思います。それは,一つには先ほども少し申しましたが,難しい精神病理の問題が絡んでくるだろうからです。家庭内に暴力がある場合には,人格障害であるとか精神病理であるとか,私も少し本で読んだだけですが,PTSDや解離や,様々な複雑な症状を起こすようです。したがって,訓練を受けてそれらについて的確に判断をすることができる能力を持っている人々でないと,判断することが難しいのではないかと思います。   現在の児童相談所の体制がそれに十分なものであるかというと,またそこのところも非常に心もとないところは確かにあって,何しろお忙しいですし,担当者もプロフェッショナルとして訓練を受けるという仕組みにもなっていませんので,心もとないところではあるのです。例えばフランスの教育士は児童臨床心理等についての特訓を教育課程を受けていて,そういう教育士たちがたくさん児童相談所などの現場にいます。日本もそういう人材を育てて担当してもらう仕組みになるのが一番よいのですが,道ははるかに遠い状態です。相当なノウハウと知識が必要であって,弁護士がマニュアルを読んで,あるいは1回の講習を受けて対応ができるというようなものではなかろうと私は思っております。磯谷先生のようなずっとこれまで献身的に児童の問題に携わってこられた弁護士の方々であればあるいはやれるのかもしれませんが,それはごくごく例外的でしょうし,通常の法律家は,まず素人で無理でしょう。   それに比べますと,児童相談所のほうが,組織としてそういう蓄積があり訓練も積んでおりますので,まだ安心できるように思います。非常に危ないことがたくさん起こりますので,子供を守るためには,プロフェッショナルの児童臨床心理の判断力を持った人々の組織的なサポートの下で,子供の訴えを受け付けるという仕組みが望ましいでしょう。子供の申立てを認めるのであれば,やはりいったん児童相談所を経由するという仕組みのほうがよいように思います。 ○窪田委員 多分,前回と同じ話になってしまうと思うのですが,それでも念のため確認させていただきたいと思います。   児相に申し立てたところ聴いてもらえなかったというときに,行政訴訟を提起しようとするのであれば,これがいかに親権喪失に適した事案であるかということを争うことになるのだろうと思います。そうして争った上でようやく得られる結論というのは,それに従って児相は訴えなさいということであって,それから,結局同じことをもう一度やるのかと考えると,最初から認めてもいいのかなという感じはいたします。ただ,その上で,少し視点を変えてということになるのかもしれませんが,私自身は社会が子供をサポートしていくということを全然否定するつもりではなく,子供は当該法律関係の当事者なのだから当然にそれができるのだという,それだけで考えていこうというつもりは全くございません。   それから,裁判所の判断で,最終的にはそこのところで適切に判断されるのではないかという必ずしも全面的,楽観的な見方をしているわけではなくて,その点は,水野先生からも御指摘がございましたけれども,必ずしも十分に事案の細かいところを把握できないまま対応してしまうということがあり得るのではないかというのはそのとおりなのだろうと思います。ただ,同じ問題は,申立てをする児相についても,これは本来のプロであるかもしれないけれども,ほかの業務も大変に多いというような状況で,そうしたことがあり得るのではないでしょうか。   また,検察官に関して言うと,裁判官と同じで場合によっては子供のこうした問題についてプロではないということが言えるかもしれません。そうしたときに,適切ではない判断が出たときに見落としが出る,あるいは拾うことができないというのが出るというのが,やはり法制度としては必ずしも適当ではないのではないのかなということが,私自身の考えの一つの出発点になっています。   その意味では,申立権というのを実質的にどうやっていくのかということで,先ほど垣内幹事から出た御提案,具体的に言うと,子供が親権の喪失のための特別代理人の選任を求めることができるというような,多分そのように置き換えて構成すると思うのですが,それでも結構なのですが,やはり最後のところで,子供がイニシアチブを全く持てずに,そしてどの機関にも頼んでみたところ対応してくれなかったらそれでおしまいというのではない仕組みについては用意しておく必要があるのかなという気がします。 ○大村部会長代理 最終的には裁判所が判断するわけなのですけれども,その前に何か判断をするものを設けることの得失という話と,それからそういうメカニズムがあることによって,子供の請求が通っていい場合に通らない場合があり得るということをどう考えるかという御指摘だったかと思います。   慎重な判断が必要である一方で,子供のイニシアチブで申立てを認めるべき場合があるということは皆さん一致しているのだろうと思いますけれども,その上で,どういう制度を仕組むのが一番いいのかというところで,意見が対立しているということかと思います。   最初の中間案から少しずれてきておりますけれども,様々な可能性が,今,模索されているということだろうと思います。何か関連して御発言があれば伺いますが,いかがでしょうか。あるいは,事務当局のほうで,この点はどうかというようなことについて,取りまとめ案の作成に向けて,感触を伺っておきたいという点があれば御指摘を頂ければと思います。 ○飛澤幹事 関連して,先ほど年齢制限を入れるという案について,例えば15歳といったような意見も出ていたところですが,こういったそもそも年齢制限を入れるのかどうか,また,仮に入れるとして,どういった観点から入れるのかという点についてもう少し御議論いただければ有り難いと思っております。 ○大村部会長代理 では,年齢制限についていかがでしょうか。年齢制限あるべしという積極的な御意見と,年齢制限はあってもやむを得ないかもしれないという消極的な条件付の御意見と,年齢制限についてもあるのですけれども,その際どのような考え方で年齢を制限するのか。いかがでしょうか。 ○小池幹事 年齢制限を入れないとした場合には意思能力で判断をすることになって,その意思能力の判断の目安は,やはり一定年齢が目安になって,例えば十二,三歳とかという話になるのか,それとも意思能力も,先ほど水野先生もおっしゃっていましたけれども,虐待を受けているような子供の判断能力って,年齢基準では全然測れなくて,実際には相当低下している可能性があるのではないかとかいうのも出てきますよね。だから,意思能力をめぐる争いが出てくるでしょうね。だから,意思能力で考えればいいやと言って,それで話が終わるわけではないので,年齢制限で考えるのか意思能力かという2択だけ議論していても,ちょっとこのケースはうまくいかないのではないかという気がするのですけれども。 ○大村部会長代理 今のお話は,例えば15歳と線を引いても,同じ問題を生ずるということですね。 ○小池幹事 そうですね。 ○大村部会長代理 ほかにいかがでしょうか。 ○水野委員 18歳以上ということにはできないでしょうか。その可能性はないというのは,それでは中間案にならないという御趣旨でしょうか。18歳以上なら,親権解放に非常に近くなるかと思うのですが。 ○平湯委員 私としては,今,水野先生がおっしゃったように,17,18ということではないだろうと思います。主に対象にしているのが,社会の中で一人で自立していかなければならなくなった子供ということでいけば,本来,児福法が18でよかったはずなのですけれども,御存じのように中学3年生で基本的に高校に行かない限りは退去すると,養護施設を出なければならないという運用がずっと戦後長い間続いて,今,多少,改善されつつありますけれども,基本的にはそういう枠組みがあるために,自立援助ホームなどが必要になっていると。その自立援助ホームというのは,措置施設ではありませんから,施設長の権限によって親から守られるということもできないし,更にアパート暮らしをしていればむき出しのままで親の干渉にさらされるということを考えますと,やはり15歳以上ということで区切るのが,少なくとも必要性の段階としてまずは区切られるのではないかと。15歳未満の場合に必要ないとは言いませんけれども,やはり今申し上げたような養護施設とか,そういうことが考えられるのに比べれば,もう15歳を超えた子供というのは格段に不利な立場になるということを重視すべきではないかと思います。 ○大村部会長代理 御発言は,やはり15歳以上について特に必要性が大きいという御趣旨ですね。15歳未満だとなかなか判断は難しいですし,そちらのほうは,それなりのサポートシステムもあるので,相対的には必要度は低いということで,線を引くのならば15歳という御意見と承りました。 ○窪田委員 積極的に何歳という意見ではないのですけれども,先ほど古谷幹事からやはりお話があったように,養子縁組の場合の15歳というのは一つの目安になる年齢なのだろうと思います。恐らくその年齢を基準とした上で,それとここでの話がどう同じでどう違うのかというのを考えていくという形になるのだろうと思うのですが,水野委員から御指摘があったこと,それから先ほどの久保野幹事も基本的には同じスタンスだったと思うのですけれども,親権解放というような観点から考えていくと,そこで親権から解放されて自立していくという年齢ですから比較的高い年齢になるのかなと思います。その意味では18歳というのはあり得るのかもしれません。ただ,個々で問題としているケースというのは,一方で,親権を喪失させるという意味では,普通の養子縁組よりもっとはるかに大きな効果を伴っているという面はありますが,しかし養子縁組というのは,従来の親子関係は残しつつも,新しい親子関係を創設していくという創設的な意味があって,だからこそ一定の能力というのが要求されるのだという説明の仕方もあると思うのですね。他方,こちらのほうは,ある意味で今ある親権を喪失させるというだけであって,その後の制度設計についてまで子供が判断するという仕組みではないですから,その意味では逆に15歳で,もう少し低くてもいいという何か論理的な説明はあるのかなと思いながら伺っておりました。   あるとした上で,では本当に例えば12歳とか13歳にする必要があるのかということになると,先ほどの正しく必要性の問題としてあるということになれば,そこに対応していく必要があるでしょうし,必ずしもそうではないということであれば,そこのところで無理に年齢を引き下げるという必要もないのかもしれません。   あと,一般論ということになりますが,親権喪失の申立権という形で認めるのか,先ほど垣内幹事からあった親権喪失のための特別代理人の選任についての申立権というように考えるのかで,あるいはひょっとしたら年齢についても変わってくるのかなという気がいたしました。   非常に抽象的な説明で申し訳ないですが,以上のような印象を受けました。 ○大村部会長代理 窪田委員の今のお話は,養子縁組の場合と比べて,共通点,相違点を見つけてどう考えるかということで,低い年齢ももしかしたらあり得るかもしれないというお話だったと思います。   養子縁組と並びで考えるとすると,あるいは皆さんから出ている15歳という線で考えるとすると,やはり理屈は,15歳になったら自分で養子になって外に出ていくことができる,その結果として実親の親権を止められることができることになる。もちろんそれには裁判所のコントロールが掛かるけれども,そういうことができるのだとしたら親権を喪失させるということもできるのではないか。そういう理屈でしょうかね。 ○窪田委員 そのような説明になるのではないでしょうか。 ○大村部会長代理 15並びで考えると今のようなことかもしれませんし,15よりも下だということもあり得るというのが窪田さんの御意見だったと思いますけれども,ほかにいかがでしょう。 ○久保野幹事 どちらというのではないのですが,15歳よりも下だというときの考え方として,養子縁組は確かに現在の親権者から解放されて別の親権者の下にいくと。喪失の場合は解放されるだけで,あとは未成年後見で受けるということと比べたときに,養子のときは別の保護のされ方がセットになっているといえます。喪失のほうは,確かに未成年後見が開始するということにはなっているけれども,ここで問題にされているように,別の保護というのが必ずしも確保されていないわけで,保護を失うだけの制度ともいえる面があると思いまして,それが実は申立権のところで懸念していることの背景にありましたというのは補足ですが,そう考えますと,養子の年齢よりも下げるというのには慎重であっていいのではないかという観点もあり得るかと思います。 ○窪田委員 今の御説明は大変によく分かるのですけれども,先ほど申し上げた養子とどこの部分が同じで,どこが違うのかというのを考えた場合に,現にある親の親権を実質的には行使できないようにした形で,養子関係の中での親権に移るとか,非常に抽象的に言うと共通する部分もあるということなのだろうと思うのですが,普通養子で想定されているケースと,非常に正しく危機的な状況にある中で,親のこの親権を喪失させなければいけないというタイプの違いというものはあるのではないでしょうか。これは何か新しい制度設計,私はこういう親子関係がいいからこっち側に行くよとか,そういう話と違って,今あるものをとにかくやめさせるという意味で,ある種の被害者の訴え的なものというのがあるわけです。正しく被害者の申立権なのだと考えると,あとをどう受け止めるのかというのは,それこそ先ほどから出ていた社会の問題であって,まずはその部分に関して,この状況から何とかしてほしいという意味での申立権だとすると,場合によっては低い年齢というのもあり得るのではないかなというのが先ほどの私の趣旨でございました。 ○大村部会長代理 そのほか,この点について何か御意見はございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,中間的な案についても御意見を頂きまして,手続的に何かワンクッションを置くということは考えられないか,それを民法の中に敷くのか,それとも児童福祉法のほうに敷くのかという問題がありますけれども,そういう御意見と,それから年齢で制限する御意見があった。その年齢については,15歳を中心に上下,どこがあり得るのかという御議論でした。   それから,最初にありました親権の喪失と一時的制限というので区切るというのはいかがかというような中間案が出まして,委員,幹事の先生方の御感触を伺いました。一切,年齢の制限を置かないという一方の極の案と,それから子供の申立権は認めないで,他の形でカバーするという他方の極の案があるわけですけれども,こうしたものを勘案しまして,今日の御意見を踏まえて,事務当局のほうで再度整理をしていただきまして,次回,懲戒の問題と併せて御提案を頂くということにさせていただきたいと思います。それでよろしいですね。   以上,要綱案(第1次案)につきまして第1から第4まで御検討いただいたわけなのですけれども,ペンディングになっている問題を除きまして,本日の御議論に更に何か付け加えておきたいという御発言がありましたら伺いますが,いかがでしょうか。 ○磯谷幹事 すみません,私も,ちょっと前回発言したかどうか記憶がはっきりしないものですから,ひょっとしたら前回お話ししたかもしれませんが,今回この要綱案という形で整理がされましたけれども,そこに盛り込まれないいろいろな問題がやはりあると。一つは,これ,研究会の段階でもございましたけれども,今,児童福祉法の47条2項が改正されて,施設長さん,ないし児童相談所長という意見もありますが,親権者の親権に優先して権限行使するという枠組みが整理されようとしていますけれども,同時に親権の一時的制限の方法も使う余地があるという形で研究会のときに議論があったかと思います。   具体的には,医療ネグレクトで非常に重いものについて,確かに施設長さんは,親権より優先して,監護権は有するとしても,やはりなお裁判所の判断を仰ぎたいということで,親権の一時的な制限の申立てをして裁判所に判断をしていただくことが可能だと。このあたりは,正にそう在るべきだと思っておるのですけど,そういうことを想定してつくっているということが何かきちんと残らないと,やはり誤解として,いや,施設長さんはもう既に親権を上回る権限があるのだから,何で今更また親権を制限しなければいけないのかというようなお話も財産管理権を除いてはなくはないのだろうと思っています。そのあたりをどういう形で残していくのかというのが一つございます。   それからもう一つは,ここの場でも再三議論がありますが,未成年後見人の制度については,制度自体は結構なのですけれども,やはり今回,未成年後見人が適切に選ばれるということが達成されてこそ,この一時的制限なども機能するのだろう。そういう意味では未成年後見制度が本当に機能するというのが重要だと。そして,そのためには,やはり過剰な責任を軽減するための例えば保険なり,あるいは報酬なりということが必要不可欠だと思うのですね。こういったものも,しかし要綱案には盛り込まれないのはやむを得ないとしても,ここで議論がありましたというだけで推移してしまって果たしていいのかどうか,やはりきちんとこれは責任を持ってやっていただくような形で何かつなげないかと私のほうは思っております。   このあたり,事務当局のほうで何かお考えがあるのかどうかお尋ねしたいと思います。 ○大村部会長代理 何かありましたら,どうぞ。 ○飛澤幹事 ただ今,貴重な御指摘を頂いたところでございます。   まず最初の児童福祉法47条2項について御指摘のような改正がされても,なお審判による親権制限ができるのかという点については,正に申立ての利益の観点かと思いますけれども,これは基本的にできるという方向で考えておるところでございます。ただ,このことを民法の中でどう書くかというとなかなか難しいところでございますので,これを要綱として書くというのはちょっと難しいのかなと思っております。   それから,もう一つの御指摘の点,未成年後見人の機能のさせ方という点についても,正に御指摘の問題があることはそのとおりなのですけれども,ただ,他方,責任を軽減するという話になりますと,これは,一般的な不法行為法でどう考えるかという問題であり,あるいは未成年後見人を援助するというのであれば,保険制度をどうするかという,これまた,親族法と離れてしまう面があり,環境整備として本当に重要な話だと思いますけれども,ちょっと今回の要綱案に入れるのは困難なのかなと思っている次第でございます。 ○大村部会長代理 磯谷幹事も要綱案に入れろという御趣旨ではないと承りましたけれども,磯谷幹事から御指摘があったように,今の問題は,当初この問題を議論し始めるときから意識されていた問題かと思います。特に第1点の児童福祉法との関係というのは,児童福祉法等の改正と連携する形で,今回,民法の見直しを行っておりますので,制度間の関係はどうなるのかということについては,この一時的制限を説明する際にも,説明が不可欠になることなのかと思います。ですから,要綱案について説明するという観点から,説明を頂けるのではないかと思います。   それから,未成年後見人のほうについても,未成年後見人の人材を探すのが大変だということが今回の未成人後見制度の改正の出発点になっておりますので,民法で手当てをするとともに,更に条件整備がされる必要があるというのも制度の理解として説明が可能なのだろうと思います。要綱案として,それを書くのは難しいと思いますけれども,今のような形で,この要綱案について説明をしていただくということは,事務当局のほうでも御考慮いただけるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○磯谷幹事 分かりました。 ○大村部会長代理 そのほかよろしゅうございますでしょうか。   それでは,ペンディングになっている点が2点ございますけれども,他の点につきましては取りまとめをしたということで,残りの問題につきましては次回に検討をさせていただきたいと思います。   そこで,次回,第10回の日程等について事務当局のほうから御説明を頂きたいと思います。 ○飛澤幹事 次回でございますけれども,第10回会議は,来月,12月15日水曜日午後1時30分からで,場所は東京地検会議室という5階になりますので御注意ください。 ○大村部会長代理 それでは,本日はこれで閉会させていただきます。   委員,幹事の皆様方には,御多用のところをお集まりいただきまして,活発な御議論を頂きましてどうもありがとうございました。   閉会いたします。 -了-