法制審議会                 第164回会議 議事録 第1 日 時  平成23年2月15日(火)  自 午後1時30分                        至 午後3時07分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   1 非訟事件手続法及び家事審判手続法の改正に関する諮問第87号について   2 児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する諮問第90号について 第4 議 事 (次のとおり)              議     事 (開会宣言の後,法務大臣から次のように挨拶があった。) ○江田法務大臣 法制審議会第164回会議の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところ,本会議に御出席いただき,誠にありがとうございます。また,この機会に,法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対し,厚く御礼を申し上げます。   さて,本日は二つの議題について御審議いただく予定でございます。   議題の第一は,平成21年2月に諮問された非訟事件手続法及び家事審判法の改正に関する諮問第87号についてであります。これについては,非訟事件手続法・家事審判法部会において調査審議が行われました結果,非訟事件手続法及び家事審判法の見直しに関する要綱案が取りまとめられ,本日,部会長から報告されるものと承知しております。   議題の第二は,平成22年2月に諮問された児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する諮問第90号についてであります。これについては,児童虐待防止関連親権制度部会において調査審議が行われた結果,児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案が取りまとめられ,本日,部会長から報告されるものと承知しております。これらの諮問事項については,いずれも早急に所要の法整備を図り,適切な措置を講ずる必要があるものと思われますので,委員の皆様方には,御審議の上,できる限り速やかに御答申を頂きますよう,どうぞよろしくお願いします。 (委員の異動について紹介した後,会長に野村豊弘委員が互選・指名された。) ○野村会長 ただいま会長に御推薦いただきました野村でございます。こういう役目は苦手にしておりまして,個人的には,余りふさわしくないと思うのですけれども,先ほどありましたようにこれまでいろいろ部会長等もやってまいりましたこともあり,お引き受けしたいと思います。そこで,これから会長としていろいろお役に立ちたいと思いますので,どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。   それでは,本日の審議に入ります前に,本日の会議における議事録の作成方法についてお諮りしたいと存じます。   本日の会議における議事録の作成方法につきましては,審議の内容等に鑑みて,会長の私といたしましては,前回同様,発言者名を明らかにした議事録を作成することにしたいと思いますが,いかがでしょうか。   それでは,御異議ございませんようですので,本日の会議につきましては,発言者名を明らかにして議事録を作成するということにしたいと思います。   それでは本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣の挨拶にもございましたように,本日の議題は二つございます。第一の議題であります非訟事件手続法及び家事審判法の見直しに関する諮問第87号の御審議をお願いしたいと存じます。   まず非訟事件手続法・家事審判法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました伊藤委員から御報告をお願いいたします。 ○伊藤委員 御紹介いただきました伊藤眞でございます。諮問第87号につきまして,本年1月28日に開催されました非訟事件手続法・家事審判法部会におきまして,非訟事件手続法及び家事審判法の見直しに関する要綱案を決定いたしましたので,部会の審議の経過及び要綱案の概要につきまして御報告申し上げます。   初めに,要綱案の決定に至る審議の経過につきまして御報告いたします。   諮問案第87号は,平成21年2月4日に発せられたものでございまして,その内容は,非訟事件手続法及び家事審判法の現代化を図る上で留意すべき事項につき御意見を承りたいというものでございます。   非訟事件手続法は,その第一編総則の規定が多くの非訟事件に適用又は準用されているという意味で,非訟事件の手続を定める基本法ともいうべき法律でございます。しかし,この法律は明治31年に制定されて以来,抜本的な見直しがされておらず,第一編及び第二編が片仮名・文語体の表記のままになっております。そのほか,その内容も,今日の他の民事関係の手続を定めている法令と比較いたしますと,当事者の手続保障を図るための規定であるとか手続法の基本として備えるべき規定が十分とは言えないものとなっております。   また,家事審判法でございますが,これは家庭裁判所における家事審判及び家事調停の手続を定める法律でございますが,同じく家庭をめぐる紛争を扱う人事訴訟手続につきましては,平成15年に人事訴訟法が制定されて,その手続が改められたのに対しまして,家事審判法は昭和22年の制定以来,全体についての見直しがされないまま今日に至っております。そのため,家族をめぐる事件の複雑化,多様化といった現在の状況に対応するための手続保障に関する規定等が十分とは言えないものになっているわけであります。   そこで,当部会といたしまして,非訟事件手続法及び家事審判法を,国民にとって利用しやすく,現代社会に適合した内容のものとするため,現代化を図る上で留意すべき事項につきまして調査審議を進めていくことといたしまして,平成21年3月に第1回部会を開催して審議を始め,22年8月には中間試案を取りまとめ,公表いたしました。   その後,中間試案に対して寄せられた御意見を踏まえて更に審議を進め,本年1月28日の第33回部会におきましてこの要綱案の取りまとめに至ったものでございます。   以上が要綱案の決定に至る審議の経過でございます。   次に,要綱案の内容につきまして概要を御説明申し上げます。時間の都合上,主要な点に絞って説明をさせていただければと存じます。   「非訟事件手続法及び家事審判法の見直しに関する要綱案」を御覧ください。   要綱案の中心は,1ページ以下の第1部「非訟事件手続法の見直し」と,29ページ以下の第2部「家事審判法の見直し」であります。   そこで,まず第1部についてですが,1ページの「第1 総則」,「1 通則」の(1)におきまして,手続の基本原則としての「裁判所及び当事者の責務」についての記述を設けることとされております。   1ページの「2 非訟事件の手続の総則」に進みますと,まず,2ページの(2)「裁判所職員の除斥及び忌避」では,新たに忌避制度を導入することとしています。現行法には除斥制度はありますが,忌避制度はございません。しかし,部会では,非訟事件の裁判の公正さを確保し,もって裁判に対する信頼を維持するためには,裁判の公正を妨げる事情がある裁判官を手続事件に関与させないこととする制度といたしまして,忌避の制度を導入する必要があるものとされました。もっとも,このような制度が濫用的に用いられますと,非訟事件手続における迅速処理の要請に反することになりますので,忌避を申し立てられた裁判官が自ら濫用的な忌避を却下することができるものとしております。   引き続きまして,6ページの(4)の「参加」でございますが,現行法では,裁判によって影響を受ける者の手続上の地位や,その権能が法律上明確に定まっておりませんので,この要綱案では,その点を明確にするために,新たに参加制度を設けまして,参加をする資格や参加した者の権限の定めを盛り込んでおります。   さらに,9ページの(7)「イ 調書の作成等」と「ウ 記録の閲覧等」に関しましては,現行法では調書を作成すべき場合が極めて限定されております。しかし,手続の記録化というのは,その閲覧の機会の付与と併せまして,当事者に対する手続保障の基礎をなすものでございますので,この要綱案では,期日における手続について,原則として調書を作成しなければならないものといたしまして,記録の閲覧等に関しましても,当事者から閲覧等の請求があった場合には,裁判所は原則として記録の閲覧等を許可するものとしております。   次に,10ページの「エ 非訟事件の手続における専門委員」でございますが,非訟事件の中にも株式の価額の算定を要する事件などのように,事件を処理するのに専門的な知見を必要とするものがございます。このような事件の審理を円滑かつ迅速に進めるために,中立の立場にある専門家を手続に継続的に関与させ,当事者の主張又は提出した資料について意見を聴取したり,和解に関与させたりすることを可能にする専門委員制度を導入するものとしております。   12ページ以下の「3 第一審裁判所における非訟事件の手続」に進みます。   まず,14ページ「ウ 音声の送受信による通話の方法による手続」でございますが,これはいわゆる電話会議システム,テレビ会議システムを非訟事件の手続に導入しようというものでございます。遠方に居住している当事者等が裁判所に出頭することが事情によっては過大な負担になる,それによって手続が遅れることにもなるということを考慮いたしまして,当事者の便宜や迅速な処理のための方策として検討したものでございます。   14ページの(3)「事実の調査及び証拠調べ」でございますが,「ア」の①では,証拠調べに当事者の申立権を認めることとしております。非訟事件の手続における職権探知主義の原則を維持しつつ,当事者に裁判資料の収集の場面における主体性を認める趣旨でございます。   15ページの「エ 事実の調査の通知」の部分でございますが,非訟事件の手続におきましては,裁判所が職権により事実の調査を行いますが,その結果が当事者による非訟事件の手続の追行に重要な影響を生じるものと認められる場合は,事実の調査を行った旨を当事者及び利害関係参加人に告げることによりまして,記録の閲覧等のきっかけを与え,反論の機会を保障するということにしております。   19ページの「ウ 和解」の部分ですけれども,現行法には和解に関する規定がありません。しかし,話合いによる解決により親しむ事件につきましては,和解により事件を終了させることができるようにすることが有用であると考えられますので,和解に関する規律を置くものとしています。   19ページの「4 不服申立て」では,抗告審に関する手続についての規律を整理しています。第一審の判断に対して不服申立てがされた場合には,第一審の当事者に準備をする機会を与えるために,原則として抗告状を送付するということにしています。また,抗告裁判所が原決定を取り消す場合には,反論の機会を保障する必要があるために,当事者等の陳述を聴かなければならないものとしております。   次に,第2部「家事審判法の見直し」の部分に進みます。   最初に,第2部の構成について御説明申し上げますと,29ページ以下の「第1 総則」で家事審判及び家事調停に共通する手続を,そして39ページ以下で「家事審判の手続」を扱っています。このうち,63ページ以下では事件類型ごとに検討しておりますけれども,事件類型はこの要綱案の最後に別表がございますが,別表のとおり,全部で100以上ございます。これらを別表第1の事件と別表第2の事件に分けました。別表第1の事件は家事調停をすることができない事件,別表第2に掲げる事項は家事調停をすることができる事件でございます。最後に,103ページ以下で「家事調停に関する手続」を扱っています。   以上が第2部の構成でございます。   そこで,29ページ以下の「第1 総則」の部分は,既に御説明申し上げました非訟事件手続法の見直しと主要部分において同様でございますので,説明を省略いたします。   次に,家事審判に関する部分のうち,42ページの(ケ)「記録の閲覧等」でございますが,家事審判事件におきましても,当事者にとって資料の提出や収集された裁判資料への反論など,必要な手続追行の機会を保障するために,記録の閲覧は言わば手続保障の根幹をなすものと考えられます。そこで,原則として記録の閲覧等を許可するものとしております。もっとも家事審判事件におきましては,未成年者の利益,個人のプライバシー等を保護する必要が特に高いという事情がございます。   そこで,④にありますとおり,閲覧,謄写を不許可にする場合といたしまして,未成年者の利益を害するおそれがあると認められるとき等を列挙した上で,更に,事件の性質,審理の状況,記録の内容等に照らして,当該当事者に記録の閲覧等を許可することを不適当とする特別の事情があると認められる場合を挙げまして,家事事件特有の事情に配慮しております。   48ページの「オ 家事審判の手続における子の意思の把握等」では,親子に関する家事審判の手続や親権に関する家事審判の手続におきましては,これにより重大な影響を受ける未成年である子の意思を把握し,その意思を考慮した上で審判を行うことを法律上宣明することにしております。   なお,家庭裁判所が扱う事件の中には,民法上行為能力が制限されている子供であっても,意思能力があれば手続に関与することができるものがあると考えられていますが,どのような事件がそれに当たるのかは現在必ずしも明確ではございません。そこでこの要綱案ではその点を明確にいたしました。63ページ以下の事件類型ごとの記載にしばしば登場いたします「手続行為能力」という項目にある記載がそれに当たります。   もっとも,意思能力がある子供が手続に関与することができると申しましても,子供が自らの判断で手続に関与することは困難なことが多いと思われます。少々戻りますけれども,40ページにございます「利害関係参加」の制度を使いまして,裁判所が事案によりましては子の心情を汲んで,子を手続に参加させた上で,35ページにございます5(2)「裁判長による手続代理人の選任等」によりまして,弁護士を代理人としてつけることとしております。   次に,48ページ末からの「カ 家事調停をすることができる事項についての家事審判の手続の特則」の部分でございますが,財産の分与,遺産の分割のように紛争性の高い,先ほど申しました別表第2に掲げる事項についての審判事件につきましては,別表第1に掲げる事件以上に当事者の適切かつ十分な主張,反論の機会を保障する必要がございますので,家庭裁判所といたしましては,原則として審判をする前に当事者の陳述を聴取する必要があるものとしております。   陳述聴取の方法といたしましては,書面の照会でございますとか家庭裁判所調査官によることでも足りますけれども,当事者が裁判官の面前で直接陳述したいということを望めば,そのようにしなければならないものとしています。   さらに,当事者に裁判資料の提出期限及び審判の基礎となる裁判資料の範囲を明らかにするため,裁判長は,原則として相当の猶予期間を置いて審理を終結する日を定めなければならないものとしています。   53ページの(2)「不服申立て」では,抗告審の手続を明確にすることとしておりますが,この点は非訟事件手続におけるものとほぼ同様でございます。   次に,63ページ「2 家事審判事件」でございますが,以後104ページまでは事件類型ごとの規律を記載しています。ここでは,これまでは家事審判規則で定めておりました管轄,陳述調書の対象者,即時抗告権者につきましても法律事項とすることを念頭に盛り込んでございます。   次に,103ページの第3「家事調停に関する手続」に進みます。   ここでは108ページの(3)の「家事調停の手続」の「ア」で,調停の手続において,電話会議やテレビ会議システムを利用できるようにしています。また,113ページの「ア 付調停」の③では,高等裁判所でも調停をすることができるようにしています。これまでは,事件が高等裁判所で扱われているときに,当事者間で協議ができても,調停成立によって事件を終了させることができないために,家庭裁判所の調停に付して,家庭裁判所で調停を成立させています。しかし,このような方法は迂遠でございますので,高等裁判所において調停を成立させることができるようにしたものでございます。   116ページの「3 調停に代わる審判」の部分では,現在離婚調停等限られた事件にしか使うことができない調停に代わる審判を,調停ができる事件全般についてできるようにしています。これによりまして,例えば遺産分割調停の手続には必ずしも協力的でない当事者がいても,裁判所から提示された調停案としての調停に代わる審判にあえて積極的に異議を唱えることまではしないというような場合には,遺産分割調停を成立させることが可能になります。   以上,簡単ではございますが,要綱案の概要につきまして説明をさせていただきました。   全体といたしますと,非訟事件手続法及び家事審判法につきまして,裁判によって影響を受ける者の手続保障を図りながら,当事者,国民にとって利用しやすい制度にするという所期の目的に沿った内容になっているのではないかと考えておる次第でございます。   御審議のほどをよろしくお願い申し上げます。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして御質問及び御意見を承りたいと思いますが,まず御質問がございましたら承りたいと思います。 ○戸松委員 大変詳細な御検討をなさっていて,敬意を表します。特に家事審判法は従来より大変詳しくなっていまして,それは,御報告の中にもございましたけれども,従来の家事審判規則を法律事項にしたから詳しくなったということです。ところで,そもそも議論の出発のときに,規則でいいのではないか,今回の検討の目的は現代化ということだそうですけれども,規則を更に詳細に直していけば,その目的は達成できるのではないか,こういう御意見はなかったのでしょうか。   私の理解では,最高裁判所の規則制定権に委ねて全然おかしくないというふうに思っていますし,現状のように,国会の法律制定能力が極めて低いときに,こういう法律を提案して成功するのかどうか,こういう懸念があります。この点,憲法はうまいことを考えておりまして,裁判所の規則制定権に委ねていけば,現状に合った手続ルールがどんどん変えられるようになっています。こういうことが考えられるのに,これは危ない橋を渡ったというか,御苦労なさったのが報われないことになるのではないか,こういうふうに思っているのですが,その辺はいかがでしょうか。 ○伊藤委員 御質問ありがとうございます。   御指摘の問題は,家事審判法と家事審判規則に限らず,民事手続に関する規律全般に共通するものかと思いますが,近年の民事手続法に関する基本的な考え方といたしまして,当事者の手続上の権利義務に重大な影響を及ぼす事項でございますとか,あるいは手続の大綱となる事柄に関しては,これを法律で定め,その余のものについては,細目にわたる事項を含めまして最高裁判所規則で定めるというものかと思います。   今回の調査審議におきましても,このような考え方を踏まえて検討を行いました。先ほどの報告にも若干触れたところでございますけれども,現在の家事審判規則が定めておりますものの中で,管轄裁判所を定める規律でございますとか,その他当事者の手続上の権利義務に重大な影響を及ぼすものについては,法律で定めるのが適当であろうということで今回の要綱案を取りまとめた次第でございます。 ○野村会長 よろしいでしょうか。   それではほかに。 ○水野委員 私もこの要綱案には全面的に賛成でありまして,短期間の間にこういったものをまとめられた部会に敬意を表したいと思います。   質問は,今回,非訟事件手続法に専門委員という新たな制度が設けられました。それで,専門委員というのは一体どういう役割を果たすのかなと思うわけでありますが,先ほどの伊藤部会長の御説明によりますと,例えば株価算定の事案について判断するのだということでありました。これは従前は,裁判所が選任する鑑定人の鑑定あるいは当事者が私的な鑑定書を出すとか,鑑定という形でやっておりまして,裁判所の鑑定ですと,当然,当事者が鑑定費用を出して,当事者の費用負担で鑑定をしております。   ところが先ほどの御説明だと,どうも鑑定料を払わなくても,裁判所の専門委員が当初からずっと関与して,それで最終的に株価の鑑定的な意見書を出してもらえるのかなとお聴きしたのですけれども,そういうことになるのかどうか。   さらに,その株価の算定以外にどういった場面でこの専門委員というのが役割を果たすと想定されておられるのか。そういった点についてできれば御説明いただきたいと思います。 ○伊藤委員 水野委員の一番最後の部分に関してまず申し上げますと,確かに株式の買取価格の決定が,典型的なものとして想定されております。しかし,そのほかに,例えば信託受益権の価額の決定なども,同様に,専門的知見を要する非訟事件として想定されるのではないかと思います。もっとも,そのあたりについては,私より詳しい知見をお持ちの方がおいでになると思いますから,適宜補充をしていただければよろしいかと思いますが,部会における議論の素材として中心になりましたのはそういったところかと思います。   次に,御指摘の前半部分の鑑定との関係ですが,確かに現在の手続の中では鑑定の方法によって専門家の意見を聴取した上で裁判所が判断をすることが行われております。しかし,鑑定人に対して鑑定を命ずるためには,何を鑑定事項とするかということを定める必要がございまして,それ自体が専門的知見を有する者の意見なしには困難である場合が存在するように聴いております。また,鑑定は,厳格な手続であるために,裁判所が機動的に専門的な知見を利用しつつ手続を運営するという側面についてみれば,十全の役割を果たすとは言えなかったように思うわけでございまして,今般,専門委員の制度を適切に運用することによって,鑑定制度が持つ限界を補いつつ,適正,かつ,迅速な裁判を可能にするという目的で,新たな制度を提案している次第でございます。 ○野村会長 よろしいでしょうか。   ほかに御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,御質問がないということでしたら,次に御意見を伺いたいと思いますが,何か御意見はございますでしょうか。 ○八丁地委員 今回の要綱案に関します経済界の見解を申し上げます。今回の要綱案は手続保障の充実を図ること及び国民にとってより分かりやすい制度とするという見直しの目的に合致する改正となっておりまして,取りまとめに異論は全くございません。   昨年8月にパブリックコメントに付されておりますけれども,その際にも,経済界からも意見を幾つか出させていただきました。特に非訟事件手続につきましては,簡易かつ迅速な解決を実現するという点と,それから当事者の手続保障とのバランスを取っていただきたいという意見をお伝え申し上げましたけれども,こうした要望も踏まえた取りまとめをしていただきまして,大変感謝をいたしております。ありがとうございました。 ○野村会長 ほかに御意見いかがでしょうか。 ○水野委員 先ほど申し上げましたように,私もこの要綱案に全面的に賛成でございます。   1点だけ,ちょっと補足的に意見を申し上げておきたいと思うのですけれども,それは,相手方のある非訟事件に関する特例の要否という点でございます。   この点につきましては,第26回の部会の最後に,少しの時間で議論されておるようです。このときには特例を設けるということにむしろ賛成の意見のほうが多かったと見ております。そのときは時間切れだったので,恐らく第27回以降でもっと詳細な議論をされたのだと思いますけれども,私のところには26回目しか議事録が来ておりませんので,どういう議論をされたのかはつまびらかではありません。   一方,パブリックコメントでは,弁護士会は特例を設けることについて賛成で,裁判所の多数は反対だということでありまして,これは裁判所と弁護士の立場を反映している。つまり裁判所からすると,職権主義で,公平にやるのだからいいではないかということではないかと。しかし,当事者の弁護士からしますと,相手方がある事件については手続的保障をきちっとしていただきたいという要望が強かったのではないかと考えております。   大阪弁護士会の意見などは,そういった特則を置かないと今回の改正の意義が根本的に問われることになると,そこまで言っておられまして,かなり大きな問題ではなかったのかという気がいたします。   ただ,今回の改正法では,そういった相手方のある事件かどうかということがそもそも争いになったりするといったことがあって,その点は見送られたと理解しておりまして,それはそれで了とするわけでありますけれども,ただ非訟事件,借地非訟とかあるいは労働審判のように,個別法で手続を定めているものがあるわけでありまして,法務当局におかれましては,これはこれとして必要な部門については個別法でそういった手続を整備していくということを今後の課題として御検討いただきたいということをお願いをしておきたいと思います。 ○野村会長 ありがとうございました。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ○岩原委員 ただいまの水野委員の御発言にも関連するのですけれども,非訟事件手続に関する要綱案が対象としておりますのは,非訟事件手続法の第一編総則と第二編民事非訟事件に関する規定の見直しでございます。会社非訟事件につきましては,平成17年の会社法の立法により,会社法の868条以下に規定されたことから要綱案の中では直接取り上げられてないわけであります。しかし,会社法立法に伴いまして,株式買取請求権の行使等に係る株式価格決定等の会社非訟事件が大変激増しておりまして,その性格も本案化するなど,性格が複雑になっているということもありまして,そういった事件固有の手続的な問題も起きていると承知しております。非訟事件手続法・家事審判法部会におきましては,会社非訟事件の問題についても検討がなされたと伺っております。   そこで,そのような会社非訟事件に関する部会の成果を何らかの形で速やかに制度化していただけるようお願い申し上げたいと思います。 ○野村会長 どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○武井委員 経済界を代表いたしまして一言申し上げます。   今回取りまとめいただきました要綱案ですが,最初のお話にもありましたとおり,非訟事件手続,それから家事事件手続,双方にわたりまして,手続保障が拡充されるとともに,手続をより利用しやすくするための制度が幾つか手当てされております。そういう意味で,大変結構な要綱案としての取りまとめであると受けとめており,経済界といたしましても,また私も,全く異論はございません。   具体例で申しますと,既に訴訟では利用されている電話会議あるいはテレビ会議システムの導入によりまして,裁判所はもとより,特に当事者にとりまして利便性が向上するかと思いますので,期待いたしております。また,非訟事件手続に創設されることとなる専門委員制度,これもやはり複雑で専門的な知見を要します事案におきましては,今後有効に利用されるものと期待できるのではないかと考えています。   今回大変短い時間の中で,33回という大変精力的な部会の開催を経て取りまとめていただいた要綱案であると受け止めており,高く評価しています。今後,円滑に施行されますよう,国民各層への十分な周知徹底を,御当局に是非お願い申し上げたいと思います。   ありがとうございました。 ○野村会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,幾つか今後の課題についての御意見も含めて御意見を頂きましたけれども,原案につきまして採決に移りたいと思います。よろしいでしょうか。   それではそのように取り計らわせていただきます。   諮問第87号につきまして,非訟事件手続法・家事審判法部会から報告されました非訟事件手続法及び家事審判法の見直しに関する要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。念のため反対の方も挙手をお願いいたします。いらっしゃいませんでしょうか。よろしいでしょうか。 ○関司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は15名でございますところ,全員賛成ということでございまして,15名賛成ということでございます。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   採決の結果,全員賛成ということで,賛成者多数でございますので,非訟事件手続法・家事審判法部会から報告されました非訟事件手続法及び家事審判手続法の見直しに関する要綱案は,原案のとおり採択されたものと認めます。採択されました審議結果報告につきましては,本会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   伊藤部会長にはどうも御苦労様でした。ありがとうございます。   引き続きまして,第二の議題であります児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する諮問第90号の御審議をお願いしたいと存じます。   児童虐待防止関連親権制度部会におきましては,私が部会長を務めておりましたので,審議の経過及び結果につきましては私から御報告させていただきます。   それでは,児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案を御覧いただきたいと思うのですけれども,まず御報告をしたいと思います。   諮問第90号につきまして,昨年12月15日に開催されました児童虐待防止関連親権制度部会第10回会議におきまして,児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案を決定いたしましたので,当部会における審議の経過及び要綱案の概要につきまして御報告をいたします。   まず,審議の経過でございます。諮問第90号の内容は,「児童虐待の防止等を図り,児童の権利利益を擁護する観点から民法の親権に関する規定について見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものであり,この諮問を受け,平成22年2月に法制審議会第161回会議において,児童虐待防止関連親権制度部会が設置されました。   皆様御案内のとおり,近年,児童虐待は深刻な社会問題となっており,児童虐待を行う親に対しては,必要に応じて適切に親権を制限すべき場合があるとの指摘がされるようになってきております。   民法上このような場合に対処するための制度として,親権喪失制度がございますが,現行の親権喪失制度については,期限を設けずに親権全部を喪失させる制度であることから,利用しにくい面があるなどの指摘がされているところでございます。   この点に関しては,平成19年に成立した児童虐待防止法及び児童福祉法の一部を改正する法律の附則に検討条項が設けられており,政府は,この改正法が施行された平成20年4月1日から3年以内,すなわち本年4月までに,児童虐待の防止を図るなどの観点から,親権に係る制度の見直しについて検討を行い,必要な措置を講ずるものとされております。こうした中で,法務大臣から,先ほど申し上げた諮問がされたところでございます。   当部会では,平成22年3月から調査審議を開始し,7月に児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案を取りまとめました。これにつきましては,昨年10月の総会でも御報告いたしましたとおり,事務当局において約1か月間パブリックコメントの手続を行いました。   その後,中間試案に対して寄せられた意見も踏まえて更に調査審議を重ね,昨年12月15日に開催された第10回会議におきまして,児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案の決定をいたしました。   以上が要綱案の決定に至る審議の経過でございます。   次に,要綱案の内容につきまして,その概要を御説明いたします。   要綱案は,1ページの第1「親権の効力」,第2「親権の喪失等」,2ページの第3「未成年後見」,3ページの第4「その他」という4つの項目で構成されております。   まず,要綱案第1「親権の効力」の「1 監護及び教育の権利義務」ですが,親権の行使は子の利益のためにされる必要があることはこれまでも当然のことと解されておりましたところ,この点をより明確に示すために,民法の身上監護の規定に「子の利益のために」という文言を加えることにしております。   次に,「2 懲戒」ですが,現行の民法第822条は,親権を行う者は必要な範囲内でその子を懲戒することができるものとしており,必要な範囲内に文言上何らの限定も加えられておりません。本来懲戒として許されない児童虐待について,懲戒権を口実にこれを正当化しようとする親がいることに鑑み,懲戒は飽くまでも子の利益のための監護教育に必要な範囲内であるべきことを明確化することとしております。   また,第822条のうち,懲戒場に関する部分については,現在このような施設が存在しないこともあり,削除することとしております。   ところで,民法第822条の規定については,懲戒権を児童虐待を正当化する口実とさせないために,これを全部削除すべきであるという意見も強く主張されているところです。当部会においても,この規定を是非残さなければならないとするような意見があったわけではなく,むしろ本来的には削除するのが相当であるとの意見もありました。しかし,当部会としては,審議の結果,懲戒権の規定の取扱いは,将来親権制度全般を見直す際にきちっと整理した上で検討したほうが望ましいこと,民法第822条を全部削除することによって,本来できるしつけができなくなるという誤った受け止め方がされないかなどといった,現在ある規定を削除することによる社会的影響についての懸念もあり得ること,懲戒については様々な考え方があり得ることなどに鑑み,現段階では懲戒の範囲につき文言上明確に限定を付すのが適当ではないかということでこのような取りまとめとなったところです。   次に,要綱案第2の「親権の喪失等」ですが,ここでは親権の停止制度を新設すること,現行の親権喪失及び管理権喪失の要件を見直すことなどを内容としております。   親権の停止制度は,要綱案第2の2のとおり,父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは,所定の請求権者の申立てにより,家庭裁判所があらかじめ2年を超えない範囲で,期間を定めて親権停止の審判をすることができるというものです。   先に述べましたとおり,現行の親権喪失制度については,期限を設けずに親権全部を喪失させる制度であることから,利用しにくい面があるなどの指摘もあったところであり,必要に応じて適切に親権を制限するために,親権喪失の場合より要件,効果が比較的軽く,しかも親権が停止される期間があらかじめ限られている親権の停止制度を設けることとしたものです。   親権喪失の要件の見直しについては,要綱案第2の1に記載しております。現行の民法において,親権喪失の原因は,「父又は母が,親権を濫用し,又は著しく不行跡である」といったように,親の態様に注目した要件となっておりますが,要綱案では,「親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」といったように,子の利益に着目した要件とすることとしております。   管理権喪失の要件の見直しについては,要綱案第2の3に記載しております。現行の民法において,管理権喪失の原因は,「親権を行う父又は母が,管理が失当であったことによってその子の財産を危うくしたとき」とされていますが,要綱案では,「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」としております。これは,子の財産を危うくしたときに限らず,例えば子が第三者と契約をする際に,親が合理的な理由なくこれに同意せず,それによって子の利益が害されていると評価することができるような場合にも,管理権喪失の審判をすることができるようにするためです。   親権喪失及び管理権喪失の請求権者について,現行の民法では,子の親族及び検察官に限られていますが,要綱案ではこれに子,未成年後見人及び未成年後見監督人を追加することとし,今回新たに設ける親権停止の審判の請求権者もこれらと同じ並びとすることとしております。   子を請求権者に加えるかについては,当部会でも議論のあったところですが,事案によっては子自らに請求権があれば,適切かつ迅速に子の利益を保護することができるような事案もあるということで,虐待を受けた子供たちの支援をされている委員,幹事から,これを認めるべきとの強い御意見がありました。また,パブリックコメントにおいてもこれに賛成する意見が多く寄せられたところですので,これらの御意見を踏まえ,子にも請求権を認めることとしたものです。   要綱案第3「未成年後見」の説明に移ります。   現行の民法において,未成年後見人は自然人のみしかなれず,しかも一人しかなれないとされております。しかし,適切な未成年後見人を見つけにくいという指摘を受けて,少しでもそのような状態を緩和するために,複数の未成年後見人の選任を認めるとともに,法人の未成年後見人を選任することができることとしております。   要綱案第3の1は,未成年後見人は一人であるという民法842条を削除するものです。そして,要綱案第3の2①で,未成年後見人を追加的に選任することができることとしております。   さらに,未成年後見人が複数いる場合の権限行使の在り方については,要綱案第3の3のように整理しております。すなわち,未成年後見人が数人いる場合には共同してその権限を行使することとし,未成年後見人が数人いる場合には,家庭裁判所がその一部の者について,財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができることとし,財産に関する権限については,家庭裁判所が権限の単独行使又は分掌を認めることができることとしております。   また,要綱案第3の2②では,複数または法人の未成年後見人の選任を可能とすることに伴い,未成年後見人として適格性を有する者が選任されるようにするための制度的担保として,家庭裁判所が未成年後見人を選任する場合の考慮要素を列挙することとしています。括弧書きの中で法人を未成年後見人として選任する場合の考慮要素を書くことによって,法人を未成年後見人に選任することができることを明らかにしています。   次に,要綱案第4「その他」の1では,今回,親権の停止制度を新設するに当たっての派生論点を取り扱っております。民法第797条は,15歳未満の子を養子とする縁組をするときは,その子の法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることとしております。父母の親権が停止されている場合は,未成年後見人が子の法定代理人となります。そうすると,親が親権を停止されている間は,その親の関与なくして15歳未満の子を養子とする縁組をすることができることになります。そして,養子縁組が成立した場合,養親が親権者となりますので,親権の停止期間が満了しても,もはやその実親は子に対し親権を行使することができなくなります。しかし,親権の停止制度は,あらかじめ停止期間を明示することにより,親に改善意欲を持たせ,親子の再統合を図るという趣旨も持つ制度であるところ,親権の停止期間中に自分の関与なく子について縁組がされるというのでは,その趣旨が没却されるおそれがあるため,要綱案では,親権を停止されている親については,子を養子とする縁組についての同意権者と位置付け,その同意なくしてされた縁組については取り消すことができることとしております。   また,要綱案第4の2で,「関連する規定について,所要の整備を行う」とありますが,今回の改正に伴い,家事審判法や戸籍法等の改正も必要となるため,そのことを念頭に置いております。   以上,簡単ではございますが要綱案の概要につきまして御説明をさせていただきました。よろしく御審議のほど,お願いを申し上げます。   それでは,ただいまの報告及び要綱案の全般的な点につきまして御質問,御意見を承りたいと思いますが,まず御質問がございましたら承りたいと思います。 ○吉田委員 今の御説明の中で,懲戒権についていろいろ議論があった中で,全体的な親権の見直しを中で考えていきましょうという御説明があったと思うのですが,これは,例えば今後の法務省の中での新たな諮問であったり,あるいは国会にこれを法律として出した段階で,附則あるいは附帯決議等々でこういう見直しも考えましょうということを具体的に盛り込まれるのでしょうか。 ○野村会長 部会での議論は,今後のことにつきましてそこまでの議論はもちろんしておりませんで,ただ今回の諮問の大枠というのが児童虐待防止という観点から親権制度について見直すということです。懲戒権については,見直すとすればもっと根本的な議論が必要ではないかということで,今回はこのような形で懲戒権について必要な範囲内というところを明確にしたということです。このような答申の内容そのものは特に現在の懲戒権の範囲を動かすというようなことではなくて,従来,ともすれば誤解されがちなところを,そのような誤解がされないように明確にするということで,今回のような案になっているということです。今後の方向についてはむしろこれは事務当局の方からお答えいただければよろしいのかと思います。 ○原幹事 少し付言させていただきますと,今吉田委員から御指摘がありましたとおり,この法律案を国会で審議をしていただく際に,附帯決議がされるなり,附則で親権制度についても抜本的な見直しをしなさい,そういうことが規定される可能性はあります。そうなりますと,当然事務当局としてはそれに向けた検討を進めなければいけませんけれども,そういうことにならなくても,民法の親族法については全面的な見直しをすべきだという議論がこれから起こり得ると思いますので,そういった中で懲戒権の規定についても見直していくのが相当ではないか,こういうことでございます。 ○野村会長 よろしいでしょうか。   ほかに御質問はございますでしょうか。特によろしいでしょうか。   それでは,御質問がないということでしたら,次に,御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○水野委員 私はこの要綱案に全面的に賛成でございます。その上で幾つか補足的に意見を申し上げたいと思います。   まず第1点は,親権の関係であります。従来,親権制限制度がありましたけれども,児童虐待防止にはほとんど機能してこなかったのではないか。そして,そういう中で児童虐待の相談件数は年々増加の一途をたどっているというのが我々弁護士の実感であります。そういう意味では,この親権制限制度の改正というのは一刻の猶予も許さない焦眉の課題であるというふうに認識しておりまして,是非この国会でこの要綱案に基づく法案を成立させていただきたいと思っております。   ただ,その上で,親権制度の根本的な見直しという野村会長の御説明もございましたけれども,その点で一つは,親権という用語が適当なのか,私は疑問に思っているのです。御承知のように,子供の権利条約では,子供の権利主体性が確認されているわけでありまして,親権というのは,要は保護,養育の義務を遂行するという,誰からも妨害されないでそういう義務を遂行するという意味での権利あるいは権限でありまして,権利と義務というよりも,義務と権利と言い換えろという意見もあるわけであります。そういう意味からしますと,親権という用語自体を見直すということを検討すべきではないのかと思っております。   それから,懲戒権の問題が出ましたけれども,日弁連は懲戒権のこの規定は全部削除すべきだという意見を申し上げておりました。それは,そういった教育的な見地からの言わば叱責だとか,あるいは懲戒類似の行為が一切できないという意味で申し上げているのではなくて,そういうことはこの民法の規定がなくても当然できるではないかということを前提にしているわけです。むしろこういう懲戒権という規定があることによって,先ほども野村会長からの御説明もありましたように,児童虐待の口実に使われているのが現実だと。今回の改正で懲戒の要件を一部,本来在るべき姿に変えるということでありますけれども,しかし,虐待をする人は,その要請に合致しているのだという口実でやるだろうとも思うわけです。   そういう意味では,今すぐ全面削除というのは,いろいろと配慮すべきことがあるのかも分かりませんが,将来の課題としては,懲戒権というものは,本来,規定から削除すべきではないのかと考えている次第であります。   もう一点は,未成年者後見人の環境整備という点であります。今回の改正で未成年後見人が拡大されまして,法人後見,複数後見が認められるようになりました。これは大変結構なことだと思います。   ただ,御案内のように未成年者後見人の責任の問題がございます。これは監督義務者責任を負うということになるわけでありまして,その点で,未成年者後見人のなり手がなかなか得にくいのではないかという懸念もあるわけです。   そういう意味からしますと,未成年者後見人の監督義務者責任を何らかの形で軽減するといいますか,あるいは保険制度みたいなものを設けてカバーするといいますか,そういった点の環境整備が必要ではないかということを是非お考えいただきたいと思います。   それからもう一つは,未成年後見人の報酬の問題でありまして,この報酬がきちっと支払われることになるのかどうか。そういった報酬はなかなか支払われないようなケースも出てくるのではないかという懸念がございます。   しかし,だからといってその人に未成年者後見人の必要性がないとはもちろん言えないわけでありまして,そういう意味からいたしますと,やなり何らかの法的なサポートがその面でも必要なのではないかと思うわけであります。未成年者後見人制度の見直しとともに,そういった環境整備も是非当局の方では御配慮いただきたいと思います。   それから,これは老婆心かも分かりませんが,法人が後見監督人になる,これはこれで,社会福祉法人だとかいろいろな法人がなるという点ではいいと思いますが,ただ変な法人がそういったところに入ってくるといったことも懸念がないわけではない。だからそういう点についても十分な御配慮を頂きたいと思います。   冒頭の江田法務大臣の御挨拶にもありましたように,特にこの法律案は是非今国会で通すように御尽力を頂きたいということをお願いしておきたいと思います。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ○吉田委員 今水野先生がおっしゃったこと,全く同感なんですが,これは非常に大きなステップで,是非今国会で成立するべきだということで,同じ立場です。   ただ一方で,これは大きなステップですが,完結したものではない,まだまだこれからプロセスがあり得ること,つまり今先生が何点か御指摘されましたけれども,実際に未成年後見人の問題でうまく運用できるのかどうか。これは実施の運用の問題だと思いますけれども,あるいは監督人制度がうまく動くのかどうか。あるいはこれによって実際に,先ほど懲戒権の問題を全体的に見直していくという話がありましたが,本当に子供を守れるのかどうか。そういう視点は十分検証して,制度をまたトレースしながら見直していくのだという視点をしっかりしてもらいたい。   これはもちろん,確か厚労省のほうでこの前報告してまとまったと思いますが,子供の財産権の問題であるとか,そういう点についても運用の中で見直していくべきであると思いますので,そこら辺もよく考慮してやっていただきたいと思います。 ○野村会長 どうもありがとうございます。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ○今田委員 委員の先生方からの御指摘で十分かと思いますけれども,あえて一言だけ。   この懲戒権のことですが,部会の議論では,多くの委員の方が削除という意見であったというのが資料にありますし,パブリックコメントでもたくさん意見が寄せられていて,全て見直し及び削除という御意見でした。ここでの委員の先生方も,御指摘は大方削除というか,全面的な見直しという方向であるのに,なぜこういう形で決着したかということについて,少し理解をしづらいというのが正直なところです。   部会では徹底的に議論されて,入念な検討がされた結論であるということで,この案について私は賛成したいと思いますが,今後の問題として,委員の先生方もおっしゃっているように,全面的に今後検討するということだけではやはり少し弱いのではないか。具体的に今後どうするかということについても,もう一歩踏み出したプレゼンスがこの度の発表に期待されているのではないかと思います。難しいかもしれませんが,何が問題なのか,なぜ一歩踏み出せないのかについて理解できるように,どういう議論がされたのか,教えてもらえれば有り難いです。   法制審議会の総会でこういう整理がされたということを形として残すという意味でも,御説明いただけたらと思います。全面的に検討しなければ見直し及び削除は困難だという御議論だったということは分かるのですが,何がそれほど困難な問題なのか,なぜ直したほうがいいという意見が多いにもかかわらずこういう決着だったのかについて,もう少し分かりやすい御説明をしていただけたらと思います。 ○野村会長 お答えしたいと思います。懲戒権の規定については,確かにこういう児童虐待の根拠になっている,自分の行為を正当化するために親権者が使っているということで削除すべきだという強い意見もありました。ただ,他方で,これを削除したときにどういう影響が出るのかということも考えております。削除するとむしろしつけができなくなるという,そういう誤った受け止め方が逆になされる,そういう社会的な影響も考慮に入れております。   それで,親の子に対するしつけの在り方ということについては,いろいろな意見があって,単にこの822条を削除するということで国民的な理解が得られるのかという点もなかなか明確な答えが出せないところです。他方で,この規定を削除したら,懲戒権が自分にあるのだから,これは懲戒権の範囲内ですというようなエクスキューズをする親がなくなるかというと,必ずしもそうとはいえなくて,やはりしつけならしつけということでやっているのですというような言い訳が出てくるということで,むしろ現在,これを削除するよりも,822条について誤解をなくすという方向で取りあえず今回の改正では考えるというほうが適当であるというのが部会としての最終的な結論ということです。先ほど申し上げましたように,この要綱案の中で監護教育のために必要な範囲内で懲戒をすることができるということを明文化することによって,そういうところを明確にしたということで,将来的に,先ほども申し上げましたように多くの委員や幹事は懲戒権の規定は削除したほうがいいという方向は考えておりますし,私自身もそのほうがいいのではないかと思っています。しかしながら,この段階で一気に削除というのはやや現実的に難しいのではないかというのが全体の部会としての最終的な判断ということでございます。 ○岩間委員 今の件について私のほうからも少しだけ意見を述べさせていただきますと,実際今未成年の子供を二人育てている親として,懲戒権という言葉はこの件に関わるまで,聞いたことがありませんでした。それが多分世の母親の現状だろうと思います。   懲戒権という権利があることによって何らかの法律的な意味があるのでしょうか。つまり私は懲戒権を侵害されたといって訴えるとか,そういう想定できるような,法律的にこの権利があると規定されていることによって生じ得る法的な問題,例えば養育権であれば子供がそれをしてもらってないということは法律上の争点になり得ると思うのですけれども,懲戒権というのが実際法律上の争点になるというようなことは想定できるのでしょうか。 ○野村会長 そのようなことは,事実上ちょっと難しいかなと思いますけれども,民法の規定では,一応親権のところは権利と義務という形で書き分けられているわけです。先ほど水野委員からの御意見にもありましたけれども,本来民法では,権利義務というのは財産法上のことが中心になって考えられておりまして,そういう意味での権利概念あるいは義務概念を親権のところに当てはめるというのがなかなか難しくて,多くの場合に,むしろ,親権というのは権利というよりも義務ではないかということです。例えば820条で,「子の利益のために子の監護及び権利を有し,義務を負う。」という規定にしようという案なのですけれども,これは現在の条文が先に権利を書き,後に義務を書くという形になっているので,それに従っています。しかし,むしろこれを逆転して,義務を先にして権利を後に書いたほうが親権の性格に一番よく合うのではないかという意見も出ているところです。   いずれにしろ,明治以来の日本がヨーロッパの法制度を入れるときにいろいろな言葉を作ってきたわけですけれども,ここでも,権利あるいは義務という言葉を使っておりますけれども,財産法上の権利義務とはかなり違うというところがあります。ですから例えば金銭の支払義務を怠っているときに,お金を払えというような義務と同じように履行を請求するというようなことも,そう単純に全て認められるというわけでは必ずしもありませんので,そこはちょっと切り離して考えていただいたほうがよろしいのではないかと思います。   つまり,親の側から書いているときに権利と書き,子の側から書いているときに義務という形で民法の条文は作られているということで,その実質的な内容については,財産法上の権利義務と完全にパラレルで考えるとやや誤解を生じやすいのかなと思っております。   余り明確なお答えになってないかもしれませんが,以上です。 ○川端委員 今の懲戒権の問題ですが,これについては中間報告のときにも私は刑事法の立場からお伺いさせていただきました。   刑法上,法令行為ないし法令に基づく行為として違法性が阻却される場面が多々出てきますが,懲戒権はその一つの役割を果たしてきております。懲戒権規定を削除した場合,違法性阻却の範囲に影響があるかどうかということをお伺いしたわけですが,その際には監護の権利で賄い得るから懲戒権を削除しても差し支えないという御意見が部会でかなり強かったということでした。そうであれば,刑事法上もそれで従来どおりの線でいけるであろうと思って,あえてその点については反対しなかったのです。今回こういう形で積極的に廃止すべきだという意見があった場合に,それを廃止したときに監護権という言葉で,従来の刑事法上の取扱いが説明付くのかどうかという点については,新たな観点から議論が必要になろうかと思います。   今いろいろ御質問がありましたが,これは民事法だけの問題ではなくて,監護義務は,例えば作為義務の根拠になるとか,いろいろな場面で犯罪の成否に関わってくる要素でもございますので,この監護義務という言葉で従来の線が賄えるかどうかについては,部会でも議論があったと思うのですが,それを踏まえた上でなお残すということになったのかどうかについて御説明をお願い致します。 ○野村会長 私から刑事法の解釈を申し上げるべき立場にありませんけれども,部会としては特にこれを削ったら刑事法にどういう影響が出るかというようなことを直接的に検討はしておりませんが,基本的に今回は懲戒権に関する規定そのものは残すということで,ただその中身を明確化するということですので,実質的な範囲が変わるものではないという考え方でおりますので,その民法の考え方が変わらなければ,恐らく現在の刑事法の解釈においても,現在の考え方に変更がない,影響がないということではないかと考えております。 ○川端委員 それを踏まえました上で,懲戒権の規定を削除するかどうかが大きな争点になっているわけですが,児童虐待を防止するという観点から,懲戒権という言葉がかなり悪用あるいは濫用されて,虐待を助長していくという可能性があるとするならば,これを削除しても従来どおりの刑事法の分野の処理が可能であると考えておりますので,削除しても差し支えないというのが私の意見でございます。 ○野村会長 ほかに御意見いかがでしょう。 ○戸松委員 民事,刑事と来てしまったものですから,法律の分野争いではないのですけれども,憲法学者が一言言わないといけないような雰囲気です。  児童虐待防止のための親権などと言ったときに,今水野委員が言いましたように権利か義務か,あるいは,義務のほうが先ではないかという議論が生じます。しかし,これは親の責任,責務の問題なのではないでしょうか。特に児童虐待との関係で親の責任をどう考えるか,こういう観点から議論していくと,もう既に部会でいろいろ議論されていますけれども,倫理的な問題が出てきて,法制度になじまないことになってくる。そこでいろいろ御苦労されているところだと思いますけれども,そういう要素があるのですから,むしろこれは,社会に起きているいろいろな問題を,法務省管轄だけのことではなくて,いろいろな観点から考えていかなくてはいけない問題ではないかと思っております。ただ一言,これだけを申し上げたいと思います。 ○安倍委員 この懲戒権という言葉をどうするかということで議論されているわけですが,一つには,虐待という実態を見た場合に,この懲戒権という権利が付与されているから虐待を容易にさせているかというと,私,家庭裁判所に縁が深い人間ではございますけれども,虐待の実態はそういう問題ではないのではないかなと思います。もちろん懲戒権があるんだと弁解する方がおられることも確かだと思いますけれども,虐待をするかどうか,虐待に至るかどうかというプロセスを考えると,この権利があるがゆえに虐待に至るという問題ではないのが実態ではないかなと考えております。   いま一つは,この懲戒権という言葉を削るかどうかということについては,私は非常に慎重であるべきだと考えております。大変大きな問題につながってくると思うのです。私も家庭裁判所で少年審判をやったり家事事件をやったりして感じることですが,この経験をもって全てだというわけではありませんけれども,やはり親御さんが子供に対して何を伝えるかということについて,今どのような実態にあるか,社会全体の実態をしっかり踏まえる必要があるだろうと感じております。   非行少年の親御さんを見ると,放任という言葉がよく言われましたけれども,子供に対して何を自分が伝えるべきか,つまり社会に出ていくに当たって,成人になるに当たって親がどのような意識を子供に伝授するかということについて自覚のない親御さんが残念ながら少なからずおられるわけです。また,離婚問題を扱っていても,親御さんの自分の利益は考えるけれども子供さんのことは余り考えてない親御さんも少なからずおられる。   こういった中で,ある意味では子供さんたちが翻弄されている面があるのかなということを感じておりまして,今少し大人社会が子供に対して,これから社会の担い手として育っていってもらうべき人たちに対して何を伝えるべきか,何を伝えてはいけないのか,どう対応すべきかということを,やはり大人社会全体の問題として考えていく必要があるのではないだろうかということを感じております。そのような意味での幅広い議論をしていく中で,この言葉をどうするかを考えていく必要があるのではないかと考えているところでございます。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ○今田委員 安倍委員の御意見は正にそのとおりだと思います。子供にどう伝えるかということが重要であり,だからこそそれを表現する言葉として懲戒という言葉はふさわしくないのではないかと私は理解します。大人が社会の規範を子供に教え,子供を育み育てる言葉として,ソーシャリゼーション,社会化という言葉がありますが,教育とか社会化とかしつけとか,そういう言葉が正に安倍委員がおっしゃった,次代の若者を育てていく言葉としてふさわしいのではないかと思います。 ○野村会長 ほかに。 ○吉田委員 私も懲戒権,今いろいろ皆さんがおっしゃったとおり,法律として必要なのかということは非常に疑問なんですが,ただ一方で,恐らくこれを取りまとめられた部会の中でも頭の中にあったと思うのですが,これを法律として出した場合に,懲戒権を削除した,これに焦点が集まった場合に,私とすればこの法律を早急に成文化するべきだと思いますけれども,その場合,いろいろ国会内で議論が出る可能性がある。そういうことを考えれば,今回についていえば,いろいろこういう問題があるということは明記しつつ,あるいは国会もこういうことがあるのですよということはいいながら,ただ懲戒権の問題で親権停止の問題というのが遅れないようにということはやはり大事ではないかな。   いろいろ懲戒権の問題になると今言ったように幅広い問題がありますので,そこの議論で親権停止の問題,いわゆる児童虐待の問題が遅れることがあってはいけないということからすれば,今回こういう配慮をされて議論をこれから委ねるという判断についても一定の理解はできるのではないかなと思います。 ○水野委員 私も吉田委員の意見に全面的に賛成であります。野村会長が先ほど御説明されましたように,この懲戒権の規定が児童虐待の口実に使われている,あるいは誘発しているということも事実でしょうし,安倍委員がおっしゃったように,そういうところと関係ないところで虐待が起きているということも一面事実だと思うのです。今すぐにこの懲戒権の規定を全面的に削除するかどうかということをここで議論をしますと,なかなか決着がつかないだろうと思います。ですから,この問題については,部会でそういう結論をお出しになった,これについては更に根本的な,私に言わせると親権の名称も含めて,根本的な議論を今後していただくということを前提にしまして,今回のこの要綱案については,この法制審の総会でできれば全員一致で通して,そして今国会で立法化を図っていただく,そういう方向で是非進めていただきたいと希望いたします。 ○野村会長 ほかにいかがでしょうか。 ○山根委員 私も今のお二人の御意見に賛成です。まず大前提として,最も尊重すべきことの確認ということで,「子の利益のために」という言葉が入ったということはとてもいいことだと思っています。尊重すべき対象を確認するということでいいことだと思っています。   それと,これからの議論というか,先ほどから出ているように,大人社会全体の議論であり,また地域社会がどういうふうに子育てを担っていくかとか,そういった議論にも発展していくものと思います。また,先ほど来御意見も出ていましたけれども,この未成年後見人の選任ということで今回幅が広がるということで,それも賛成ですけれども,同時に後見人の確保とか育成とか開拓とか,そういったところを積極的に進めていく必要ということを強く思っています。   同じ似たような問題として,保護司であるとか民生委員であるとか,そういった地域のなり手の問題というのがいろいろと耳に入ってくるところですので,関係機関とも連携を取って進めていただければと思っています。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   ほかに御意見いかがでしょうか。   それではこの要綱案をどのようにするかですけれども,修正という御意見もありましたけれども,原案について採決をするということでよろしいでしょうか。特に修正を御提案されるということはよろしいでしょうか。   それではそのようにさせていただきますが,まず原案について賛成の方,挙手をお願いいたします。それでは念のために反対の方,よろしいでしょうか。 ○関司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は15名でございますところ,全員賛成ということでございました。 ○野村会長 それでは,採決の結果,全員賛成でございましたので,児童虐待防止関連親権制度部会から報告されました児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案は,原案のとおり採択されたものと認めます。   採択されました審議結果報告につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   以上で本日の予定は終了となりますが,ほかにこの機会に御発言ございましたらお願いいたします。 ○水野委員 私は3月で任期満了で退任いたしますので,一言希望を申し上げておきたいと思います。   それは,行政事件訴訟法の見直しの問題でありまして,御案内のように行政事件訴訟法は平成16年に抜本的な改正がされました。その附則で5年後の見直しというのが書いてあるわけです。17年4月1日の施行でありますから,5年たっておるわけでありまして,今回の改正でいろいろと最高裁の判例を含めて行政訴訟が進展したという部分もございますけれども,改正法ではまだまだ不十分な点,あるいは改正法の使いにくい点だとか,そういった点も明らかになってきております。法務当局におかれましては,行政事件訴訟法の見直しの点について是非御尽力を頂きたいということを最後の希望として申し上げておきたいと思います。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,ほかに御発言もないようでございますので,本日はこれで終了といたします。   なお,本日の会議の内容につきましては,後日御発言を頂いた委員の皆様には議事録案をメール等で送付させていただき,御発言の内容を確認していただいた上で,法務省のホームページに公開したいと思います。よろしくお願いいたします。   それでは,最後に事務当局から事務連絡がございましたらお願いいたします。 ○後藤関係官 次回の総会の開催予定について御説明申し上げます。   法制審議会は2月と9月に開催するのが通例となっておりますが,次回の総会につきましては現在のところ,例年どおり9月上旬に審議をお願い申し上げる予定でございます。具体的な日程につきましては後日改めて御相談させていただきますので,御多忙のところと存じますが,今後の御予定について御配慮いただきますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   本日はお忙しいところをお集まりいただきまして,熱心な御議論をいただき,誠にありがとうございました。   それでは,これで本日の会議を終了いたします。 -了-