法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第32回会議 議事録 第1 日 時  平成23年1月14日(金)  自 午後1時30分                        至 午後4時08分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○伊藤部会長 予定の時刻でございますので,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第32回会議を開催いたします。   御多忙の中,お集まりいただきましてありがとうございます。   まず,配布資料について事務当局から説明をお願いします。 ○川尻関係官 本日の部会のために配布しました資料は,事前に送付いたしました部会資料36と37,それから,本日,席上に配布いたしました38になります。内容につきましては,後ほど御説明いたします。 ○伊藤部会長 早速ですけれども,審議に入りたいと存じます。   まず,事務当局から部会資料36の第3,家事審判に関する手続(各則)の8,親権に関する審判事件から10,扶養に関する審判事件まで説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,御説明いたします。   8の親権に関する審判事件でございますが,(前注)にありますとおり,まず,従前の中間試案から利益相反の場合の子に関する特別代理人の選任と第三者が子に与えた財産の管理に関する処分について,規律場所を変更しています。(1)の管轄,(2)手続行為能力,(3)陳述の聴取は中間試案と同様でございます。   審判の告知ですが,子に知らせることの例外については,「子にあっては,子の年齢及び発達程度その他一切の事情を考慮して子の福祉を害すると認める場合を除くものとする。」としたほかは,中間試案と同様であります。また,中間試案において検討することとされていました親権者となるべき者の指定,親権者の指定又は変更,親権又は管理権を辞するについての許可及び親権又は管理権を回復するについての許可の審判の子に対する告知については,法的には即時抗告権を保障するなどの意味はなく,裁判所の適切な裁量に委ねるために,その旨の規律は置かないということにしております。   (5)の引渡命令等は中間試案と同じであります。   (6)即時抗告のうち,①の2と3に記載しています親権又は管理権喪失の申立てを却下する審判及び親権又は管理権喪失の審判を取り消す審判に対する子の即時抗告権についてでございますが,この点につきましては,今般,検討されております民法の改正において,子に親権又は管理権喪失の申立権を付与されるということになりました場合には,それと併せて認めるということになろうかと思います。   ただし,民法の改正については昨年末に児童虐待防止関連親権制度部会におきまして,子に親権又は管理権喪失の申立権を付与するということを内容といたします児童虐待防止法のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案が取りまとめられているところでございますが,現時点では法制審議会総会の審議が未了であり,子に親権又は管理権喪失の申立権を付与されることを所与の前提として,本部会における要綱案の取りまとめということはできませんので,ここでは内容的にそのような御了解を得たものとして,最終的に要綱案においてどのような取扱いにするのかについては,なお検討させていただきたいと存じます。   次に,①の4,5,6では,親権者となるべき者の指定又は親権者の指定若しくは変更の審判又はその申立てを却下する審判に対する子の即時抗告権を認められることにしています。また,①の7ですかね,養子の離縁後に親権者となるべき者の指定の申立てを却下する審判に対しては,申立人に父及び母に加えて,養子の離縁後に親権者となるべき者の指定の審判に対し,即時抗告権がある養子の監護者も即時抗告をすることができることとしています。①については,そのほかは中間試案と同様でございます。   続きまして②ですが,2の親権又は管理権喪失の審判取消しの審判に対する即時抗告権の起算点については,ここは先ほどの子に即時抗告権を認めるかどうかによって変わってくるので,先ほどの点と併せて要綱案における扱いについては,検討させていただきたいと思います。また,中間試案第4の8(6)エ②においては,親権又は管理権喪失の審判取消しの申立てを却下する審判に対する審判の告知を受けた子による即時抗告権の期間を,申立人が審判の告知を受けた日から進行するとしていましたが,親権又は管理権喪失の審判取消しの申立てを却下する審判が子に対し告知されるのは,子が申立人である場合でございますので,従前の規律は置かないとしたいと考えております。   (7)の財産管理人の権限等に関する規定の準用は,中間試案と同じであります。   (8)の親権喪失又は管理権喪失の審判事件を本案とする保全処分ですが,ここは保全処分の申立人について,本案の家事審判の申立てをした者に限定したほかは中間試案と同じです。ただ,④では,職務の執行を停止される者に対し,保全処分の告知をすることができない場合を想定しまして,職務執行を停止する審判の効力について特則を置くこととしましたが,今,お示ししています部会資料の案ですと,原則どおり,職務の執行を停止される者に対し,保全処分の告知がされた場合に,その時点で保全効力が生じないということになってしまいますので,④については部会資料に記載した規律を変更して,このような場合,職務執行を停止する審判が職務執行を停止される者に対し告知された場合にも,その効力が生ずるとすることに変更させていただければと存じます。   次が(9)の親権者の指定又は変更の審判事件を本案とする保全処分ですが,①及び②において保全処分の申立人を本案の家事審判の申立てをした者に限定しています。また,③において原則として15歳以上の子の陳述を聴取しなければならないものとしつつ,親権者の職務執行を停止する審判については,緊急性が高い事案が多いこと等を踏まえ,必ず子の陳述を聴くこととはせず,裁判所の裁量に委ねることとし,特段の規律を置かないということにしております。また,④では職務の執行を停止する審判の効力について特則を置くこととしていますが,その内容は先ほど訂正したのと同じ趣旨の訂正をしたいと存じます。   なお,前回の御議論で家事調停の申立てがある段階で保全処分をすることができることになるとの結論になりましたので,最終的な要綱案では①及び②については,その旨を前提とした書き振りに変更する予定でございます。以上のほかは,保全処分については中間試案と同様です。   次に,未成年後見に関する審判事件ですが,まず,(前注)のとおり,未成年被後見人に関する特別代理人の選任と,第三者が未成年被後見人に与えた財産の管理に関する処分については,規律する場所を変更しております。   次に,管轄については中間試案と同じでございます。   また,次の(2)の手続行為能力は,養子の離縁後に未成年後見人となるべき者の指定の審判事件を付加したほかは,中間試案と同じです。   (3)陳述の聴取等は中間試案と同じですが,中間試案において検討するものとしていた未成年後見人及び未成年後見監督人の選任及び解任の審判を,未成年被後見人に対し告知することについては,法的に即時抗告権を保障するなどの意味がなく,裁判所の適切な裁量に委ねるため,その旨の規律を置かないということとしています。   (4)の即時抗告は中間試案と同じであります。   (5)の成年後見に関する審判事件の規定の準用ですが,取下げ制限については中間試案第4の9(5)甲案と同じです。また,取下げ制限を受ける者については,申立てをする義務のある者に限定しないものとしています。未成年後見に対する指示及び未成年後見人の調査については,中間試案第4の9(6)と同じであります。   (6)の未成年後見人又は未成年後見監督人の解任の審判事件を本案とする保全処分は,中間試案と同じでございます。 ○松田関係官 では,次に10,扶養に関する審判事件についてですが,(1)管轄は中間試案と同じです。   (2)陳述の聴取は,中間試案では申立てに理由がないとして却下する場合も含め,審判する際には原則的に陳述を聴取することとしておりましたが,扶養義務の設定の審判事件及びその取消しの審判事件を別表第一の審判事件としたことに伴い,同種の事件の規律との平仄から申立てを認容する場合,すなわち,設定の審判及び取消しの審判をする場合に,陳述を聴取することに変更しております。   (3)給付命令等は,基本的には中間試案と同じですが,扶養の程度等を定め,又は変更する場合の必要な事項の指示については,規律自体は維持することを前提に,法律事項ではないと考えられますため,ここでは記載しておりません。   (4)即時抗告は,1から5までは中間試案と同じです。6については中間試案では申立人のみを即時抗告権者としておりましたが,別表第二に掲げる事項についての審判事件については,申立人だけでなく相手方にも審判を得る利益が一般的にあると解されますことから,現行家事審判規則97条の規律を維持し,即時抗告権者を当事者に変更しております。   (5)扶養に関する審判事件を本案とする審判前の保全処分は,扶養に関する審判事件の係属を要件とすることとし,保全処分の申立人を本案の申立てをした者に限定することとしておりますが,本案係属要件につきましては,部会資料35において検討しましたとおり,調停の申立てがあれば足りる規律とすることにしますので,その旨の規律を加える修正をさせていただきたいと存じます。 ○伊藤部会長 それでは,順次,審議をお願いしたいと存じます。形式の整備に類することはございますが,この辺りはそれほど御意見もないかと思いますので,実質に関わることを中心に,審議をお願いしたいと存じます。   まず,8,親権に関する審判事件の関係で(4)の審判の告知の辺りでしょうか。それから,あと,(6)の即時抗告についての説明がございました。特に民法の改正案との関係での説明が補充されておりますけれども,取りあえず,(1)の管轄から(6)の即時抗告の辺りまでで何か御質問,御意見がございましたらお願いしたいと存じます。   いかがでしょうか。特段の御発言がなければ先に進みたいと思いますが,よろしいですか。   そういたしましたら,次の(7)の財産管理人の権限等に関する規定の準用の辺りから,親権喪失又は管理権喪失の審判事件を本案とする保全処分,本案の申立てを前提としているということ,それから,(9)の保全処分に関しても,子の陳述を聴くことを必要的とはしていない,合理的裁量に委ねるという辺りのことでしょうか。そうしましたら,(7)の辺りから(9)の辺りまではいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   特段の御発言がなければ取りあえず先に進みたいと思いますが,そういたしましたら,9,未成年後見に関する審判事件,これも(前注)にある形式の整備などはございますが,(2)の手続行為能力,それから,陳述の聴取等,取下げ制限に関する(5)の辺りについての補足説明がございましたが,この9,未成年後見に関する審判事件に関してはいかがでしょうか。これも御了解いただいたものとしてよろしいですか。   それでは,10の扶養に関する審判事件で,これは(2)の陳述の聴取に関して補足説明,4ページの一番上の辺り,扶養義務の設定又はその取消しの審判をする場合に,陳述を聴かなければならないものとするという規律への変更,給付命令等に関しての説明がございましたし,あと,即時抗告権者に関して一部変更したという辺りでしょうか。それから,審判前の保全処分に関する本案係属要件と,調停の申立てがあれば足りることになるので,それは補うことになるという説明がございましたが,この辺りはいかがですか。よろしいでしょうか。   もし特段,御発言がなければ先に進みたいと存じますが,そうしましたら,今度は11の推定相続人の廃除に関する審判事件から,18,遺言に関する審判事件までの説明をお願いいたします。 ○松田関係官 では,まず,11,推定相続人の廃除に関する審判事件についてですが,(1)推定相続人の廃除の審判事件及び推定相続人の廃除の取消しの審判事件のうち,①から③まで及び⑥は中間試案と同じです。④は廃除を求められた推定相続人の陳述聴取を審問の期日で行わなければならない規律を新たに加えております。なお,部会資料36の11(1)の説明には,「廃除を求められた被相続人」と記載してありますが,「被相続人」は「推定相続人」の誤りでございますので,訂正させていただきます。⑤は,中間試案ではなお検討するものとされておりました推定相続人の廃除に関する審判事件の手続について,別表第二に掲げる事項についての審判事件の特則を準用するものとすることとしております。   (2)遺産の管理に関する処分の審判事件は,中間試案と実質的に同じですが,①では推定相続人の廃除の審判事件等が係属していない場合の管轄を補足する修正をしており,③では処分の審判の取消しを要する場合について,具体的に記載する修正をしております。また,部会資料34-1の③では,亀甲括弧を付して家庭裁判所としていますが,推定相続人の廃除の審判事件等が高等裁判所に係属しているときは,高等裁判所が遺産の管理に関する処分の審判事件の管轄裁判所となりますので,ここでは裁判所と記載することとしたいと考えております。   12,相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件は,②において引渡しを命ずる対象者が当事者であることを明示しましたほかは中間試案と同じです。   13,遺産の分割に関する審判事件について,(1)管轄及び(2)手続の併合等は中間試案と同じです。(3)寄与分を定める処分の申立ての期間の指定は中間試案と同じです。亀甲括弧を付して「〔家庭〕裁判所」と記載しておりますが,ここでも遺産の分割の審判事件が抗告裁判所に係属しているときに,寄与分を定める処分の申立てがあった場合には,高等裁判所が第一審裁判所としてこれを扱うことになりますので,ここでも裁判所と記載することとしたいと考えております。   (4)遺産の換価処分は,中間試案においてなお検討するものとされておりました,利害関係人の即時抗告権や換価処分の取消しの申立権をいずれも認めないこととしたほかは中間試案と同じです。   (5)申立ての取下げの制限に関する規律の準用は,遺産の分割の審判事件では申立人だけでなく,相手方にも審判を得ることに強い利益があるものと認められることから,新たに申立ての取下げの特則として相手方の同意を要するとする規律を追加したものです。   (6)遺産の分割の方法及び(7)給付命令は,中間試案と実質的に同じですが,給付命令については裁判所が給付を命ずることができる対象は,当事者に限定されるものと解されますことから,その旨を明確にするために,「当事者に対し」との文言を加える修正をしております。   (8)遺産の分割禁止の審判の取消し又は変更は中間試案と同じですが,遺産の分割禁止の審判は別表第二に掲げる事項についての審判事件としていることとの平仄から,その審判を取り消し,又は変更する審判も別表第二に掲げる事項についての審判事件とみなして,その手続は別表第二に掲げる事項についての審判事件に関する手続を定める規定によるものとしたいと考えております。   (9)即時抗告は,利害関係人を即時抗告権者に含めないこととしたほかは中間試案と同じです。なお,中間試案でなお検討するものとしておりました職権探知主義の規律の適用の限定や不熱心当事者への対応等のための規律については,実務上の工夫を超えて法制度化するにふさわしい適切な規律が見出し難いことから,現時点では特段の規律を置かないものとしております。   (10)遺産の分割の審判事件を本案とする審判前の保全処分は,いずれも本案係属を要件とし,保全処分の申立権者については職権による保全処分を認める①につきましては,本案の申立人及び相手方に限定しないこととし,他方,職権による保全処分を認めていない②については,本案の申立人又は相手方に限定することとしております。なお,本案係属要件については部会資料35における検討を踏まえて,調停の申立てがあれば足りる旨の規律を追加する修正をさせていただきます。 ○川尻関係官 14,相続の承認及び放棄に関する審判事件は,④において限定承認又は放棄の取消しの申述における手続行為能力について,意思能力があれば足りるとする特則を置くこととした点を除いて,中間試案と同じです。なお,部会資料34-1の記載からは漏れておりますが,申述を受理するときは申述書にその旨を記載する旨を定めた現行家事審判規則第115条第1項についても,規律を置くことを予定しております。   補足説明は,限定承認の申述を受理した際に家庭裁判所が職権で選任する相続財産の管理人の権限等について提案するものです。この管理人の権限等については,民法第936条第3項において準用する同法第926条第1項及び第2項が定めていますが,これとは別に現行家事審判法第16条が家庭裁判所が選任した財産の管理者の権限等について定めており,この両者の準用条文が異なっておりますことから,現行法において両者の関係が問題となっておりました。   この点につきましては,部会資料に記載しました理由により民法の規定を優先させて,今回の改正では,限定承認の申述を受理した際に家庭裁判所が職権で選任する相続財産の管理人について,他の財産の管理人に準用される1(9)の規律は準用しないこととしております。なお,相続財産の管理人の改任については,裁判の取消し又は変更の規律で対応することができると考えられます。   15,相続財産の分離に関する審判事件は中間試案と同じです。   16,相続人の不存在に関する審判事件は,(1)管轄のⅱについて抗告裁判所が相続財産の管理人の選任の審判をした場合の規律を加えましたほかは,中間試案と同じです。   17,遺留分に関する審判事件は中間試案と同じです。   18,遺言に関する審判事件,(1)管轄は中間試案第4の16(1)と同じです。   (2)陳述の聴取等は,負担付遺贈に係る遺言の取消しの審判について,受益者の陳述も聴くこととしましたほかは,中間試案第4の16(2)と同じです。   (3)調書の作成は,中間試案第4の16(6)と同じです。   (4)申立ての取下げの制限の特則では,制限を置くものとする中間試案第4の16(5)の甲案を採用しております。   (5)審判の告知は,負担付遺贈に係る遺言の取消しの審判について,受益者にも告知するものとしましたほかは,中間試案第4の16(3)と同じです。   (6)即時抗告は,申立人に即時抗告を認める必要がない点を明文で規律しましたほかは,中間試案第4の16(4)と同じです。   (7)遺言執行者の解任の審判前の保全処分では,遺言執行者の解任という効果の重大性に鑑み,申立権者を本案の申立てをした者に限るものとしております。なお,部会資料34-1には記載しておりませんが,既に親権喪失の審判事件を本案とする保全処分の効力発生に関し御説明したのと同じ趣旨で,①の職務執行停止又は職務代行者選任の保全処分の効力については,同じ類型の他の保全処分と同様に,職務の執行を停止される遺言執行者に告知できないことにより,いつまでも審判の効力が生じないという問題が生じ得ると思われますことから,職務の執行を停止される遺言執行者のほか,他の遺言執行者又は選任される職務代行者に告知することによっても,審判の効力を生ずるものとすることでどうかと考えております。 ○伊藤部会長 それでは,11の推定相続人の廃除に関する審判事件から,順次,お願いしたいと思いますが,まず,11の関係では(1)の④の辺りですか,④,⑤の関係で事件の性質を踏まえて,このような④及び⑤のような規律を設けるという辺りのこと,そのほかは,それほど実質的なものではないと思いますが,11,廃除に関する審判事件に関してはいかがでしょうか。特段,御意見等はございませんか。   よろしければ,御了解いただいたものとして,次,12ですが,12の関係は②で当事者ということが明示されている辺りでしょうか。何か御意見はございますか。   よろしければ,次の13,遺産の分割に関する審判事件で,「家庭裁判所」を「裁判所」ということに改めるなどのことがありまして,ほかには申立ての取下げ,13の(5)のところですが,申立ての取下げの制限に関する規律を準用し,相手方の同意を要するということを明らかにしているなどの点かと思いますが,ほかの点も含めまして,何か御発言はございますでしょうか。 ○増田幹事 (9)の即時抗告権者についての表現ですが,相続人というよりは当事者とするのが適当ではないかと考えます。これは二つの場面で問題になりまして,一つは破産管財人に当事者適格を認めることが前提となったことによって,破産管財人は相続人ではないけれども,当事者になるということと,もう一つは相続分を譲渡したり,相続分を放棄したりして,途中で手続から抜ける人が出ることがありますが,その人たちは相続人ではありますが,審判が出たときには手続当事者ではないということになります。もちろん,こういう人には即時抗告権を認める必要はないだろうと思います。このように相続人と当事者とで範囲がずれることがありますので,当事者とされたほうが適切かと思います。 ○伊藤部会長 遺産の分割に関して法律上の利害関係を認められる者としての破産管財人,それから,逆に放棄等によってそれを失った者についてのことを考えると,この表現ではない表現のほうが適切ではないかと,そういう趣旨の御指摘だと思いますが,今の点は事務当局で何か説明はございますか。 ○松田関係官 現行の家事審判規則でも,遺産分割の審判の即時抗告権者は「相続人」という表現で規律されておりますところ,増田幹事がおっしゃられたまず一点目の破産管財人の関係については,現行の家事審判規則で相続人と規定されているので破産管財人が当事者でなく即時抗告権者でもないと,そういうような解釈がされているわけではないと思われますので,相続人と書いてあるからといって破産管財人が排除されることになるわけではないと考えられますし,また,「当事者」と規定しなければ破産管財人などの立場の人が読めないとしてしまいますと,ほかの規律でも「夫」とか「妻」とか,そういう具体的な言葉で規定されていたときに,そういった破産管財人的な地位の人がそこに読み込めなくなってしまうということになってしまって,ほかへのこのような影響が考えられますので,破産管財人を読み込むために相続人を当事者にするということはちょっと慎重に検討しなければいけないかなと考えております。   あと,二点目の相続分を譲渡して当事者の地位から脱退した相続人が即時抗告権者に含まれていなくてもよいのではないかということですが,確かに実質的な判断としては,そういうことで即時抗告をしたとしても理由なしとしてすぐ却下されたり,棄却されたりという判断がされるのではないかと思うのですけれども,相続分譲渡などもめぐって,その点について当事者としての適格を有するかどうかといったところも含めて争いがあるような場合に,相続分譲渡したから当事者ではないと明確に整理できるかどうかについては曖昧な部分もあるのかなと思われますので,ここでは「相続人」と従来どおりの規律を維持し,あとは事案に応じた解釈なり,何なりで対応する余地を残すほうがいいのかなと今は考えております。 ○伊藤部会長 増田幹事,いかがでしょうか。 ○増田幹事 すみません,ちょっと今の後のほうの説明もよく分からなかったのですが,相続分の譲渡や放棄があったかどうかについて争いがある場合は,当事者として残っているということが前提で,明らかに争いがない場合に手続からの排除ということになったかと理解しています。このように手続から離脱した人がいる場合に,もちろん,その人には即時抗告権がないという解釈になるのでしょうけれども,そこは明確にするためということであれば,ほかにも即時抗告権者は当事者と書いてあるところもありますので,ここは当事者にしたほうが明確ではないかと,思います。御検討いただければと思います。 ○伊藤部会長 よろしいですね。それでは,いずれも実質に関しては認識の違いがないと思いますので,最も適切な表現で他の部分との関係なども考慮して,事務当局で検討してもらうことにいたしましょう。   あとは,例えば(10)の関係で,審判前の保全処分で本案係属の要件,それから,職権による保全処分が認められている場合と認められていない場合での区別などについての説明がございましたが,ほかの13に関する関係では何か御意見はございますか。   よろしければ,14,相続の承認及び放棄に関する審判事件に進みたいと思いますが,先ほどの説明では④の関係で,意思能力を有する者に関しての規律を置くことにしているという辺りのことでしょうか。それから,補足説明のところで限定承認の申述を受理した際に,裁判所が選任する相続財産の管理人の法的な権限等に関する民法や家事審判法の規律の関係を全体として考慮して,結局,補足説明の一番下の辺りにありますように,他の財産の管理人に準用される1(9)の規律は,こちらには準用しないと,こうしておりますけれども,この辺りはいかがでしょうか。   特段,御異論がなければ御了解いただいたものといたします。   次に,15,相続財産の分離に関する審判事件の関係では特段のことはないように思いますが,何か御意見があればお願いします。よろしいですか。   そうしましたら,16,相続人の不存在に関する審判事件で,管轄に関して規律の追加の説明がございました。16の相続人の不存在に関する審判事件に関してはいかがでしょうか。よろしいですか。   では,次の17の遺留分に関する審判事件,これも特別の補足はなかったように思いますが,いかがでしょうか。   よろしければ,次の18,遺言に関する審判事件で,陳述の聴取等のところで受益者の陳述の聴取をすることにしたということと,それから,取下げの制限,家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができないということ,それから,審判の告知の関係で,これも受益者に告知することにしたということ,それから,即時抗告に関して少し整理がしてある辺りでしょうか。何か18の遺言に関する審判事件全体に関して御発言があればお願いいたします。   よろしければ,御了解いただいたものとして先に進ませていただきます。   それでは,次に第4,家事調停に関する手続の1,総則,(1)通則から(3)家事調停の申立てまでについての説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   第4,家事調停に関する手続の1,総則,(1)通則,ア,調停事項でございますが,この点につきましては夫婦財産契約による管理者の変更及び共有財産の分割について,家事調停を行うことができないものとしたほかは,中間試案と同じでございます。イの管轄等からクの家事調停官の権限等につきましては中間試案と同じですが,クの家事調停官の権限等の②の表現については,中間試案から一部表現を改めております。   (2)家事調停の手続,ア,手続行為能力は中間試案と同じでございます。なお,部会資料34-1にはちょっと記載が落ちておりますが,家事審判事件と同様,夫婦間の協力扶助に関する処分の調停事件及び子の監護に関する処分の調停事件については,財産上の給付を求める処分の調停事件を除外するとさせていただきたいと存じます。   イの記録の閲覧等は,③を除き中間試案と同じでございます。なお,②につきましては,中間試案では全体に亀甲括弧を付しておりましたが,家事審判手続と異なる家事調停手続の機能を踏まえますと,裁判所にある程度,広い裁量を認めるのが相当と考えられますことから,この規律を維持することとし,亀甲括弧を外しております。③につきましては,中間試案でなお検討するものとされておりました,合意に相当する審判の対象となる事件についての当事者による記録の閲覧等の規律について,家事審判手続における記録の閲覧等の規律と同じ規律を置くものとしております。   ウの家事審判の手続の規律の準用ですが,部会資料34-1においては第2の1(3)ア,第2の1(3)エから(4)カまで,第2の1(4)クと記載している部分,しておりましたが,補足説明の米印にありますように,第2の1(3)ア,エ及びオ,(4)アからキまで及びケの誤りであるので,訂正させていただきたいと存じます。   内容については手続の非公開,期日及び期間,手続の併合等は中間試案と同じです。当事者参加は中間試案と同じですが,利害関係参加及び手続からの排除については,家事審判手続と同様ということにしております。法令により手続を続行すべき者による受継を置くこと,他の申立権者による受継は置かないことについては,中間試案と同じでございます。また,送達及び中止,本人出頭主義,音声の送受信による通話の方法による手続は中間試案と同じでございます。家事事件の手続の期日における措置は,中間試案第1の11(7)その他の(注)に記載していた通訳人の立会い等を具体化したものでございます。事実の調査及び証拠調べは中間試案第1の12と同じでございます。また,申立ての変更については実は後で出てきます第2の1の(2)イの審判の規律と,申立ての変更については第2の1(2)イの審判の規律とすること,同じにしておりましたが,次の(3)ア⑥においても重複して書いてしまっていましたので,最終的な要綱案では表現について片方だけにするということで修正したいと存じます。 ○川尻関係官 (3)家事調停の申立て,ア,家事調停の申立ては,併合申立てについて中間試案の甲案を採用し,これができるものとしましたほかは中間試案と実質的に同じです。なお,2の申立ての理由について労働審判法第5条における申立ての理由は,労働審判規則第9条第2項において申立てを理由付ける具体的な事実を含むと規定されておりますが,記載の不備を理由として申立てが不適法却下となるのは,申立てを特定するのに必要な事実の記載を欠き,審判の対象が特定されていない場合であり,申立てを特定するのに必要な事実の記載があれば,申立てを理由付ける具体的な事実の記載を欠いていても,これをもって却下することはできないと解されております。そうしますと,②ⅱの申立ての理由も,趣旨と併せて調停を求める事項が特定されていれば足りるものとして整理しておりますので,部会資料では引き続き検討するとしておりますが,申立ての理由としたいと考えております。   イ,家事調停の申立書の写しの送付等の①は,中間試案第5の7(4)オと同じです。②は中間試案第5の7(4)ウの(注)の規律を具体化したものでして,申立書の写しの送付等ができない場合等について規律しております。   ウ,呼出費用の予納がない場合の申立ての却下に関する規律の準用ですが,家事審判の手続においては規律を置かないこと,呼出費用の予納がない場合は調停の不成立又は調停をしない場合で対応することができますことから,呼出費用の予納がない場合の申立て却下の規律は置かないものとすることを提案しております。   エ,調停前置主義ですが,中間試案においては調停前置主義違反を理由として調停に付した場合においても,訴訟が係属している家庭裁判所又は高等裁判所が自ら処理することができるものとしておりましたが,調停前置主義違反を理由として調停に付したような場合について,あえてこのようなことを認める必要はないことから,ここでは,このようなことを想定していないことを前提に記載をしております。そのほかは中間試案と同じです。 ○伊藤部会長 それでは,順次,審議をお願いしたいと存じます。   まず,第4の1の総則の(1)通則の関係で調停事項に関して,今,説明がございましたような変更がございました。(1)の関係で,何か御発言はございますか。   よろしければ,(2)の家事調停の手続の関係で手続行為能力に関して,財産上の給付を求める処分の調停事件を除外するということにしている辺り,それから,イの記録の閲覧等の関係で,②,③の辺りでの補足的な説明がございました。(2)の家事調停の手続で,ア,手続行為能力,記録の閲覧等に関してはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,次に(3)家事調停の申立てで②のⅱ,申立ての趣旨及び理由のその理由ということの意味に関して,かねてから御指摘のあった労働審判法の文言との関係での説明があり,しかし,特定するという意味での理由であるということで,ここでの表現を維持したいというような説明がありました。それから,あとはウの呼出費用の予納がない場合の措置に関して却下の規定は置かないですとか,それから,調停前置主義との関係での説明がございましたが,(3)の家事調停の申立てに掲げられている内容に関してはいかがでしょうか。 ○三木委員 ②のⅱの申立ての趣旨及び理由という表現の問題なのか,実質の問題なのか,両方だろうと思いますが,後者の理由というところについてです。家事調停においても申立書において申立て事項をある意味で特定しなければいけないということ自体は,私も疑問を持つものではありませんが,その特定の程度,抽象性とか概括性ということは審判とは違うと思います。もちろん,まして訴訟とは違うと思います。その意味からいくと,理由という表現もそうですし,それに持たせようとしている実質においても,やや硬直に過ぎるのではないかという気がします。現行の民事調停規則や家事審判規則の表現振りはもっと緩やかな表現になっていまして,その種のもののほうが適切ではないかという気がいたします。   それから,その点と関連するのですが,併せて家事調停においても訴訟審判と同様に,訴訟でいえば訴状却下に当たる規律,申立て却下になると思いますけれども,が採用されているという理解ですが,この点についても私は疑問があります。もともと申し上げるまでもなく,訴訟においても訴状却下の規律については,少なくとも一部の学説には疑義のあるところで,諸外国に類例も見ませんし,一部の学説の分析によると訴訟においても本来,形式的な審査にすぎないはずのものが実質的な訴訟要件審査に使われているという批判は,絶えないところであります。その意味では,審判においても申立書却下の規律を設けたのは,私個人はやや疑問もありましたが,ただ,審判は裁判ですので,そこでは特に発言はしなかったのですけれども,調停において申立書却下の規律を置くという仕組みは,いかがなものかと思います。   ADRの理論においては,仲裁は訴訟並みであるけれども,調停については申立ての特定は緩やかでよいし,ある程度,申立て事項が不明確な場合でも受け付けて,話合いの中で明らかにしていけばいいというような理解が現在のADR法学説では,私の理解では一般ではないかと思います。そういったところからやや疑問を持っております。 ○伊藤部会長 分かりました。三木委員がおっしゃった後段のほうについては,私も調停という手続の性質を踏まえれば,そういう運用が望ましいというふうな感覚は持っておりますけれども,法的な規律としてこういうものが必要か,必要でないかということになると,ちょっと,その話とは多少,次元が違うという気もいたしますが,どうぞ,他の委員,幹事の方でも何か,ただいまの三木委員の御発言に関して,更に御発言があればお願いいたします。あるいは理由という文言を使うことに,更に事務当局で補足的な説明があれば。 ○川尻関係官 初めの理由という言葉を選択した理由なのですが,三木委員が御指摘のとおり,審判のときに求められる審判物の特定という意味と,それから,調停のときに求められる特定というのは相対的な概念であって,恐らく両者は全く一緒ではなく,調停のときにはより緩やかな特定で足りると考えることができると思います。   それを前提に,では,審判のところと,ここの調停のところで違う言葉を使うということを選択してしまうと,今度は三木委員の後段のところの御指摘にも関わってくるのですが,申立書却下の規律を入れている関係で,審判の場合は実質的な意味としては特定ということなのですが,理由が入っていなければ申立書却下の規律が該当する。片や,こちらは仮に実情とか,何かほかの言葉を選択すると仮定しまして,そうすると,そういった実情のようなものを書いていないと却下なのかというように,逆に今度は捉えられてしまうのではないかと考えまして,いずれも言い表したいことは特定で,その特定というのは相対的なものですけれども,そういった特定されていれば足りるということであれば,同じ理由という言葉を使っておいたほうがいいのではないかと考えて,調停のほうにおいても,このような理由という言葉を合わせて選択しております。   二点目の申立書却下の規律を調停で入れるかという点は,事務当局としても検討した点でして,要らないのではないかというような考え方も十分あるかと存じます。ただ,今回,入れるという選択をしましたのは,審判のところでは申立書却下の規律がありますので,裁判長は補正命令を出した上で,その補正命令に応じない場合に初めて却下できるという規律になると思います。   これとの対比で,同じ法律の中に規律されることとなる調停に,もし申立書却下の規律がないということになりますと,例えば申立書に本当に何も書いていないような場合に,不適法却下という判断になるわけですが,そうすると,調停の場合は,補正命令を発した上で補正命令に従わない場合は却下になりますよという手続が,一つ飛んでしまうということになるのではないかと考えられるわけです。同じことをしているのに,審判では補正命令を出して,それに従わなかった場合には却下,片や,そういうある種手続保障的なステップが入るのに対して,調停の場合は文言上はそれが一切見えず,あたかも直ちに不適法却下をすることができるかのように読めてしまうのは,逆に問題ではないかと考えましたので,審判のほうの規律とそろえて,こちらも申立書の却下の規律を導入したほうがよいのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 三木委員,いかがですか。 ○三木委員 最後の御説明の部分ですが,申立書の記載がかなり特定性が低い場合であっても,特に代理人がついていなくて素人の場合なども考えると,ある程度,全く調停事項とは言えないことが明らかであるとか,特定の度合いが著しく低いというような場合は別として,ある程度の不特定のものは,むしろ,補正というよりも受け付けてやって,その中で真意を正していくと,その調停手続を進めた結果,どうもこれは調停にはなじまないとか,本来の調停事項ではないなということになれば,その段階で手続を終了すればいいということで,今の御説明はかなり厳格に補正とか却下を運用するという前提のようにも聞こえますが,私自身はむしろある程度,広く受け付けてやればいいという前提で考えているので,そういう運用でいいのかなという気はいたしてはおります。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。私自身,解釈,例えば特定の程度ということについても,当然,手続の特質を考慮した判断がされるべきでありましょうし,また,最終的に却下ということがあるにしても,当然,そこには合理的運用というのが在るべきものですので,そういう意味では,三木委員の御指摘は誠にごもっともだと思いますが,規律としてこういうものを置いて,合理的解釈あるいは合理的運用は言わば当然のことだと思いますので,そのようにしていただくということで,もし,他の委員,幹事の方に御了解いただけるのであれば,三木委員の御発言もそういう趣旨でいかしていただければと思いますが,どうでしょうか。 ○長委員 恐らく実務の運用としても,三木委員が指摘されるようなことは十分考慮した上で,調停の進行を考えることになると思います。それでも申立ての趣旨で求めているものが明確でないという場合に,もし,この規定があれば却下で処理することも可能になってくるのではないか。もちろん,別な規定で処理していくということも考えられなくはないのですけれども,いろいろな段階がありますので,その選択肢の一つとして,これを使っていくということはあり得ることだろうと思います。そこのところは規定ができた場合には,実務のほうでは慎重運用するための考え方というのを少しまとめていくことが必要かと思いますけれども,選択肢としてこういうものがあっても,それなりの位置付けの下に使われることになるのではないかという気がいたします。 ○伊藤部会長 ということで,三木委員,そういうことで御意見の趣旨を皆さんに共有していただいたとして,御了解いただければと思います。   それでは,ほかにこの(3)の関係で御発言はございますか。   それでは,次に進みまして,(4)調停委員会による家事調停の手続等から,(8)受託裁判所における事実の調査まで,説明をお願いいたします。 ○川尻関係官 (4)調停委員会による家事調停の手続等,ア,家事調停の手続の指揮は,中間試案第5の7(2)と同じです。   イ,調停委員会及び調停委員会を組織する裁判官の権限の①では,中間試案第5の3(2)に,部会資料32にて検討した調停委員会の権限としてすべきものとされた事項(受継に関する判断,代理人の許可及び許可取消し,電話会議システム等を用いた手続の実施)に加えまして,更に申立ての変更についても実際に調停を行う調停委員会の権限とするのが相当と考えられますことから,これを加えております。②は中間試案第5の3(3)アと同じです。   ウ,裁判官等による事実の調査及び証拠調べから,ク,調書の作成までは中間試案と同じです。   ケ,調停前の措置ですが,中間試案では命じた処分を取り消すことができることも特に明示しておりましたが,取消処分も結局,①によりできる「必要であると認める処分」の一種なので,ここでは明示しないこととしました。また,補足説明からは抜けておりますが,中間試案では,調停前の措置は告知により効果が生ずるとしていましたが,調停前の措置は執行力もなく,審判ではないものと整理したため,緻密な規律は相当ではなく,また,過料の制裁を科するための要件である措置に従わないときと認定するためには,措置を受けた者がそのことの通知を受けることが前提になるので,あえて規律を置くまでもないと考えたものです。そのほかは中間試案と同じですが,表現振りについては調整しております。   コ,調停をしない場合の事件の終了は,中間試案第5の7(14)と同じです。   サ,調停不成立の場合の事件の終了は,合意に相当する審判及び調停に代わる審判に関する規律を切り離して別途規律することとしましたほかは,中間試案第5の7(13)と実質的に同じです。   シ,裁判官のみでする調停手続ですが,部会資料34-1の第4の1(4)シでは,裁判官のみで家事調停の手続を行う場合については,第2の1(1)エからコまで,(3)及び(4)(キを除く),(7)ケからまでの規律を準用するものとするとしておりましたが,補足説明のとおりに訂正したいと存じます。形式的な誤りでありまして,内容については中間試案と同じです。   (5)調停の成立,ア,調停の成立及び効力の①から③までは中間試案第5の7(12)ア及びイと同じです。④は電話会議システム等を用いた期日においては,離婚又は離縁の調停事件について,調停を成立させることができないこととしたものです。なお,従前,御議論いただきました親権者の指定若しくは変更又は監護者の指定若しくは変更につきましては,法律上,一律に除外するまでの必要はないと考えられますことから,除外するものとはしておりません。このことは,ウ,調停条項案の書面による受諾の部分でも同じであります。   イ,調停調書の更正に関する家事審判の手続の規定の準用ですが,準用関係に誤りがありますことから,部会資料36に記載の中間試案と同じ内容の規律に訂正したいと存じます。   ウ,調停条項案の書面による受諾の①は中間試案第5の7(12)エと同じで,②は離婚又は離縁の調停事件について,調停条項案の書面による受諾により調停を成立させることができないこととしております。   (6)家事調停の申立ての取下げは,中間試案第5の7(15)と同じです。   (7)付調停及び訴訟事件又は審判事件の手続の中止等は,ア,付調停において調停に付する際に当事者から意見を聴くこととしましたほかは,中間試案から変更はございません。   (8)受託裁判所における事実の調査は,中間試案第5の7(10)②と同じです。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,まず,(4)の調停委員会による家事調停の手続等の関係で,表現を改めたとか,訂正をしたとか,そういうこととは思いますが,ケの調停前の措置に関して,先ほど説明がありましたような,これもそれほど実質に変更を加えるというものではないかもしれませんが,修正がございました。(4)の調停委員会による家事調停の手続等の関係はいかがでしょうか。 ○山本幹事 細かいところですが,81ページのケの調停前の措置の④のところで,この調停委員会が法律上の制裁を告知しなければならないということなのですけれども,ちょっと分からなかったのですが,ここの②で急迫の事情がある場合には,調停委員会を組織する裁判官も調停前の措置をすることができることになっているのですが,②によって裁判官が調停前の措置をする場合に,④の規定がかぶるのかどうかということですが,卒然と読むとかぶらないようにも思えるのですが,実質からすれば,やはり裁判官がやる場合も法律上の制裁を告知したほうがよいような気がするのですが。 ○伊藤部会長 分かりました。その点はいかがでしょうか。 ○脇村関係官 今,御指摘いただきまして,実質において山本幹事がおっしゃるように,そのとおりだと思いますので,ちょっと書き方等も含めて修正する方向で検討させていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしければ,次の(5)調停の成立に進みたいと思います。まず,アのところで電話会議システム等を用いた期日では,離婚又は離縁の調停は成立させられないということで,それに対して親権者の指定若しくは変更等に関しては,除外はしないという辺りでしょうか。ほかにも訂正等はございますが,(5)はいかがでしょうか。 ○山本幹事 これも細かいことなのですが,82ページのイの調停調書の更正についてなのですが,もともとの要綱案の案では審判のところが準用されていて,そこの規律だと更正決定について,裁判書を作成するという規定があるように思ったのですが,中間試案に戻したことによって裁判書を作成するという部分が落ちてしまったような気がするのですが,実質としては更正決定ですので,裁判書を作成したほうがよいだろうという気はするのですが,それを規律に表したほうがよいかなという気もするのですけれども。 ○伊藤部会長 その点は事務当局で。 ○川尻関係官 御指摘のとおりかと思います。当初は調停の場合は決定書の作成まで必ずしも求められるものではないとも思いまして,審判とは違う形にしておりましたけれども,確かに両者の間にそれほど違いがあるのかといえば,ないとも考えられますので,ここは御指摘を踏まえてそろえる方向で検討したいと考えております。 ○伊藤部会長 どうも御指摘をありがとうございました。   ほかには(5)の関係ではいかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,(6)家事調停の申立ての取下げについては,特段のことはないようですが,いかがでしょうか。   それでは,(7)の関係で,付調停に関してアの調停に付する際に当事者から意見を聴くという辺りのことですけれども,その点についての説明がございましたが,(7)の辺りはどうでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,次の(8)受託裁判所における事実の調査の関係では何か御発言はございますか。   よろしければ,2の合意に相当する審判から,第5,罰則まで,説明をお願いします。 ○松田関係官 2,合意に相当する審判の(1)合意に相当する審判の対象及び要件のうち,①及び②は中間試案と同じです。   ③は,合意に相当する審判が重要な身分関係の形成又は存否の確認を対象とするものであることを踏まえまして,当事者の真意をより慎重に確認する必要があることから,電話会議システム等を用いた期日においては,①ⅰの合意をすることができないものとしております。また,これに加え,(5)ウ①の調停条項案の書面による受託と同様の方法によっても,①ⅰの合意をすることができないものとするのが相当と考えられますことから,部会資料34-1には記載はありませんが,その旨を追加する修正をさせていただきたいと存じます。   ④は,中間試案においてはなお検討するものとされておりました身分関係の当事者の一方を死亡等により欠いている場合の規律について,裁判所による慎重な事実認定を要するものとするのが相当と考えられますことから,この場合には合意に相当する審判をすることができない旨の規律を新たに追加しております。   ⑤は,①ⅰの当事者間の合意を裁判所が正当と認めない場合の手続について,総則における調停の不成立の場合の規律(1(4)サ①)を準用することとしておりますが,これに加えまして,この規律により家事調停事件を終了させた後の当事者への通知と,通知を受けた日から2週間以内の訴えの提起があった場合には,調停の申立てのときに訴えの提起があったものとするサ②の規律についても,準用する必要がありますことから,サ②の規律も準用に加える修正をさせていただきたいと存じます。   (2)合意に相当する審判に関する手続は中間試案と同じです。   (3)異議の申立てのうち,④は中間試案の(注)においてなお検討するものとされておりました異議申立権の放棄の規律について,これを置くこととしたものであり,そのほかの規律は中間試案と同じです。   (4)異議の申立てに対する裁判は中間試案と同じです。なお,⑦の規律の前提として当事者に通知することが必要になりますので,その旨の規律を加える修正をさせていただきたいと存じます。   (5)合意に相当する審判の効力は中間試案と同じです。   (6)婚姻の取消しについての合意に相当する審判の特則は,中間試案第5の8(6)の甲案の規律を採用したものです。   (7)嫡出否認の調停の特則は,中間試案においてなお検討するものとしておりました嫡出否認の調停中に夫が死亡した場合の手当てについて,人事訴訟法第41条第1項の規律に倣い,同項所定の者について,夫の死亡の日から1年間,提訴の機会を確保する趣旨の規律を新たに置くものです。なお,部会資料では,「人事訴訟法第41条第1項の規定により,嫡出否認の訴えを提起することができないときは」としておりますが,人事訴訟法第41条第1項の規定により提訴できる場合であっても,(7)の規律の適用対象として調停の申立てのときにその訴えの提起があったものとみなす意味はあると考えられますので,その場合についてもこの規律の適用対象とする修正をしたいと考えております。   次に,3,調停に代わる審判の(1)調停に代わる審判の対象及び要件についてですが,中間試案と実質的に同じですが,離婚の調停に代わる審判をする場合の親権者の指定については,民法上,当然であることから,規律から落としております。調停に代わる審判の対象については中間試案を維持し,別表第二に掲げる事項についての家事調停事件についても,調停に代わる審判をすることができるものとしております。また,中間試案ではなお検討するものされておりました親権者の指定をする際の15歳以上の子の陳述聴取については,調停に代わる審判の性質等を踏まえますと,事案の内容を問うことなく一律に15歳以上の子の陳述聴取を必要的なものとするよりも,事案に応じた裁判所の適切な裁量に委ねることとするのが相当であると考えられますので,特に規律は置かないこととしております。   (2)調停に代わる審判に関する手続のうち,①は中間試案とおおむね同じですが,中間試案においてなお検討するものとされておりました審判の脱漏の規律の準用につきましては,確かに調停手続においては脱漏に関する規律が置かれていないこととの平仄が問題となり得ますが,審判である以上は少なくとも費用負担の裁判の脱漏などは具体的に観念することができ,あえて脱漏の規律を明文で準用除外するまでの必要性はないと考えられますことから,脱漏の記述も含めて審判の規律を準用することとするのが相当と考えられます。   ②は,中間試案においてなお検討するものとされておりました民事訴訟法上のいわゆる裁定和解の制度について,離婚及び離縁の調停事件を除き,導入することとするものです。具体的な規律としましては民事訴訟法265条の規定に倣い,「当事者が調停に代わる審判に服する旨の共同の申出を書面で提出したときは,(3)①の規律を適用しない」「当事者は,調停に代わる審判の告知前に限り,共同の申出を撤回することができる。この場合においては,相手方の同意を得ることを要しない」との規律を置くこととしたいと考えております。   ③は,家事調停の申立ては事件が終了するまで,その一部又は全部を取り下げることができるのが原則であるところ,調停に代わる審判がされた後に申立ての一部が取り下げられると,調停に代わる審判の全体につき,効力が生じることを前提に異議の申立てをしなかった他の当事者が不測の不利益を被るおそれがあるようなことも考えられますことから,調停手続における取下げの特則として,調停に代わる審判がされた後は,家事調停の申立てを取り下げることはできないとの規律を置くことを考えております。このような特則を置くこととしましても,調停に代わる審判の効力の維持を望まない申立人は,(3)の異議の申立てにより調停に代わる審判の効力を失わせることができますので,特に問題はないものと考えられます。   (3)異議の申立て及びこれに対する裁判は中間試案と同じですが,⑦及び⑧の前提となる通知についての規律を追加する修正をしたいと考えております。なお,中間試案においてなお検討するものとされておりました子の異議申立権につきましては,調停に代わる審判の性質等を考慮し,これを認めないこととしております。   (4)調停に代わる審判の効力は中間試案と実質的に同じですが,調停に代わる審判の当事者への告知についてはその性質上,公示送達の方法によるのは相当でないと考えられますことから,これを除外する規律としております。なお,規律の仕方としましては端的に公示送達の方法で告知することができない旨の規律を置いた上で,当事者が所在不明で告知することができない場合の手当てとして,告知することができないときは調停に代わる審判を取り消さなければならない旨の規律を置くこととしたいと考えております。   4,不服申立て等は,家事調停の手続においてされた申立て却下,移送の裁判など,裁判に対する不服申立てと再審の規律について,特別の定めがある場合を除き,家事審判手続における不服申立て及び再審の規律を準用することとしております。   5,履行の確保では,調停又は調停に代わる審判において定められた義務の履行と調停前の措置として命ぜられた事項の履行とについては,家事審判の手続における義務の履行状況の調査及び履行の勧告の規律を準用し,調停又は調停に代わる審判において定められた義務の履行については,家事審判の手続における義務履行の命令の規律を準用することとしております。   次に,第5,罰則の1,不出頭等に対する過料等及び2,過料の裁判の執行等のいずれも中間試案と同じです。なお,1の②につき,調停前の措置の不服従に対する過料の制裁につきましては,従前から現行家事審判法28条2項の規律を維持する規律とすることを提案しておりましたので,現行の規律と異なる1の②の「調停前の措置として必要な事項を命ぜられた者」との記載は誤りでございますので,「調停前の措置として必要な事項を命ぜられた当事者又は利害関係参加人」と訂正させていただきたいと存じます。 ○伊藤部会長 それでは,順次,審議をお願いいたします。   まず,2,合意に相当する審判の(1)審判の対象及び要件の関係で,③の電話会議システムの場合には合意をすることができないですとか,それから,④の当事者の一方が死亡した場合の扱いですとか,この辺りが実質としては中心になるかと思いますが,(1)の審判の対象及び要件に関してはいかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,(2)合意に相当する審判に関する手続,そして(3)異議の申立て,(4)異議の申立てに対する裁判の関係,(4)の辺りまではどうでしょうか。若干,異議申立権の放棄などに関しても補足的説明がございましたが,(2)ないし(4)の事項に関して何か御発言があればお願いいたします。   よろしければ,(5)合意に相当する審判の効力の関係はよろしいですよね。   それから,(6)婚姻の取消しについての合意に相当する審判の特則,(7)の嫡出否認の調停の特則,若干,(7)に関しては人訴の規定との関係で修正するという趣旨の補足的説明がございましたが,(7)の辺りまではいかがでしょうか。   よろしければ御了解いただいたものとして,次の3,調停に代わる審判の辺りで,これもまず(1)の調停に代わる審判では,民法の規定との関係での修正,①に関する部分ですかね,という説明がありまして,それから,補足説明でいいますと15ページの(1)の第2段落の部分でしょうか,親権者の指定の裁判をする場合における15歳以上の子の必要的陳述聴取に関して,審判の性質を考えると法律上,必要的なものとするよりは,裁判所の適切な判断に委ねるのが合理的であるので,規律を置かないというようなことがありましたが,(1)の調停に代わる審判の(1)の関係では何か御発言はございますか。   よろしければ,調停に代わる審判に関する手続で,①のところでは脱漏に関する規律を準用するですとか,それから,②のところで民訴法265条と類似の規律を置くですとか,それから,③の部分で取下げについての制限をするという辺りがございましたが,(2)の部分はいかがでしょうか。 ○三木委員 質問で,しかも余り実質に関係のない質問ではありますが,先ほどの脱漏の規定の準用の御説明ですが,私自身,余り脱漏を詳しく勉強した記憶がないので,よく分かっていないだけかもしれませんが,訴訟費用の裁判をしなかったというのは民訴の258条の脱漏概念の問題なのでしょうか。ちょっと説明の問題だけで御提案の実質をどうとかいうほどの趣旨ではないのですが,ちょっと教えていただければと思います。 ○伊藤部会長 これは民訴の先生も多いことですから,その委員,幹事の方に御説明いただいたほうがいいのかもしれませんが,事務当局では何か説明はございますか。 ○松田関係官 裁判するときは費用の負担の裁判を原則的にしなければならないという規律に今回しましたので,しなければならない費用負担の裁判をせずにいたときは,脱漏ということで民訴法258条2項に当てはまるのかなと考えていた程度でございます。 ○増田幹事 単に質問なのですけれども,調停に代わる審判の(2)の③では取下げが絶対的禁止になっております。ここで相手方の同意にかからしめるという方法もあるかと思いますけれども,あえて絶対的禁止にされた理由をお伺いしたいと思います。 ○伊藤部会長 その前に,先ほどの三木委員の御発言に関する部分で,ちょっと概念が確かに通常の意味の脱漏と若干違うかなという気はしますが,その点は御了解いただければと思いますので。 ○三木委員 内容がどうこうということではないのですけれども,訴訟費用の裁判の点だけが問題で,仮に脱漏の規律も準用するのだという趣旨であれば,後で論理的な説明ができているのかどうかが疑問で,私もわざわざ括弧書きで準用除外しろというほど強い意思はないですけれども,ただ,理論的に脱漏概念が当てはまらないのであれば,抜くことにならざるを得ないかなということを確認はしておいたほうがいいかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○金子幹事 今,脱漏の例として当局から手続費用の負担の定めが含まれていない場合の一つの例として説明しましたが,それ以外にも,子どもがいる場合は親権者の指定を併せてこの中でするという規律を作っているわけで,一緒にしなければいけないものを落としていれば,その部分をしなければいけないということにもなるでしょうから,本案的審判中にも,その一部について審判をし漏らしたという事態もあるのではないかと思います。その意味でも,このような脱漏の規律を準用しておく意味はあるのではないかと思っています。 ○三木委員 適切な例を挙げていただければそれで結構ですので。 ○伊藤部会長 分かりました。では,そこは今の御発言を踏まえて説明をすることにいたしましょう。   そこで,もう一度,増田幹事の御発言に戻りまして,亀甲の③の部分ですけれども,同意がある場合にはいいというようなことも,考え方としてはあり得るのではないかという御指摘ですが,この点は事務当局では何かありますか。 ○松田関係官 申立てを全面的に全部取り下げる場合は異議と変わりませんので,特にそれほど問題にならないとは思うのですけれども,申立てを一部取り下げた場合に,残った部分だけ調停に代わる審判の効力が維持されるのかというところは,どういう解釈するのかという問題になるかと思いますけれども,仮に一部効力が維持されるということになると,相手方に不測の不利益を及ぼすおそれがあると考え,取下げ制限という規律を入れさせていただいたところです。それに対して増田幹事のほうから,相手方の同意があればいいのではないかという御意見がございましたけれども,この調停に代わる審判というのは,本来は調停,話合いでやる手続の中で,当事者間で合意が成立しないので裁判所が調停案の提示のような,調停に代わる審判をして,当事者がそれを受けるかどうかという,簡明な制度にしたほうがいいかなと考えておりまして,当事者間で合意がないことが前提ではありますので,その後,一部取り下げて,それに対して相手方の同意があれば,その一部だけについて効力が生じるというような複雑な規律にすることは,この制度上,余り相当でないのかなと考えております。一部取下げに同意するというような状況があるのであれば,改めて当事者間で調停なりを成立させるということでもいいように思いますので,規律の明確さ,単純さということから同意というのは今回,要求しないで,一律的な規律にしたというようなところでございます。 ○伊藤部会長 増田幹事,いかがでしょうか。 ○増田幹事 特に内容的に異論があるわけではありませんので,それで結構です。 ○伊藤部会長 分かりました。   そういたしましたら,次の(3)異議の申立て及びこれに対する裁判の関係で,この辺りは何かございますか,子の異議の申立権についての説明がございましたが。   よろしければ,(4)調停に代わる審判の効力で公示送達である場合を除くということですけれども,この辺りもよろしいでしょうか。   そうしましたら,あと,一括ということでもないのですが,4の不服申立て等,5,履行の確保,それから,第5の罰則の関係で何か御発言がございましたらお願いします。 ○道垣内委員 誠に申し訳ないのですが,少し遡って一点だけ伺わせていただければと思います。2の「合意に相当する審判」の(6)の「婚姻の取消しについての合意に相当する審判の特則」というところの②なのですが,この規律は,結局,子の親権者の指定が元夫か,元妻か分かりませんが,いずれかについて行われたときに,裁判所の目から見て,それが不相当であると考えられたら,合意に相当する審判はできないという結論をもたらすわけですね。   しかし,取消し事由自体の存在が明らかになっており,それについて当事者間で争いがないときに,なぜ合意に相当する審判はしないという結論を採ることになるのか少しよく分からないのです。というのは,合意に相当する審判ではなくて通常の手続でなされたときを考えますと,取消し事由があって取り消されるという際に,そのときにおける親権者の指定についての当事者の意向が裁判所の目から見て妥当でないという理由で,取消し事由があるにもかかわらず取り消さないという選択は,裁判所にはできないような気がするのです。私が勘違いをしているのでしょうか。 ○伊藤部会長 では,その点を説明していただけますか。金子幹事,お願いします。 ○金子幹事 道垣内委員のおっしゃるとおりだと思います。つまり,子どもの親権者の指定の部分では,言わば要件が付加されている形になっていまして,当初,合意に相当する審判の合意と,それからの対象と親権者の指定を切り離すという判断もあったのですが,ただ,いずれにしても審判である以上,親権者の適切性を裁判所が判断するということになると思うのです。今回,合意に相当する審判においては,子の親権者の指定が合意の中に取り込まれたにせよ,その合意が裁判所から見て本来在るべき裁判所の姿から見たときの本来の親権者と逆の合意であるような場合には,やはり,親権者の指定は相当でないということで,合意に相当する審判をすることが正当でないというほうの要件にかけて,それを認めないと,こういうような構造になるのだと思います。 ○脇村関係官 従前からここは議論のあったところで,道垣内委員がおっしゃるように,もともとは合意を付加することについて確か主に議論があって,そこでは私の記憶では論理的には分けて審判は別々ということも考えられるところ,やはり,紛争がない夫婦間でいいのですかね,夫婦間で親権者の指定についても含めて紛争がないケースについて,初めて簡易な手続でやろうということから取消し事由だけではなく,子どもの親権者の指定について含めて合意が必要だということで,そういう結論になったと思います。   その上で,今,道垣内委員がおっしゃるように合意はあるのだけれども,片方だけ否定するということが論理的にあり得るのではないかということだと思うのですけれども,論理的にはおっしゃるように合意を付加したとしても,相当性については別々に判断をし,場合によっては親権者の指定についての合意が相当でないというときには,それについて付加して判断することを前提に取消し事由,あるいは別途することを前提に取消しについてだけ判断することを政策的なこととして,そういう判断をすることは,道垣内委員がおっしゃるように十分理はあるところだと思うのですけれども,ただ,そこまでしてやる必要があるのかということと,やはり,もともと出発点というのは子の取消しに関する合意に相当する審判については一括して処理しようと。それはやはり論理的には道垣内委員がおっしゃるように別々なものだと私も思いますが,指定の判断と取消しの判断を区々としてやるのはよくない。   更に言うと,合意がないときにやるのはよくないということから,一括して判断するということにした結果,結論的には取消し事由について合意があり,かつ,それが相当であったとしても親権者指定の合意がない,あるいは親権者指定の合意があっても,それが正当でないときについては,一括してできないということにさせていただいたところでございます。恐らくそのような事例は余りないとは思うのですけれども,それを想定してケースを別々にするというのは,やはり,全体の大きな感じからいくと,ちょっと複雑かなという気はしているところでございます。 ○伊藤部会長 道垣内委員,いかがでしょうか。 ○道垣内委員 いま一歩,分からないのですが,結構です。もう少し考えます。 ○伊藤部会長 十分,御意見のような考え方があるとは思いますけれども,今,金子幹事,脇村関係官から説明がありましたように,合意に相当する審判というものの意義付けといいますか,それを踏まえて,こういう形でということですので,いろいろな選択肢はもちろんあり得るものだとは思いますけれども,御了解いただけば有り難いと思います。   ほかには今までの説明があった部分,全体の関係で何か御発言はございますか。 ○畑幹事 従来,考えてこなかったところなので,よく分からないのですが,調停に代わる審判の効力について公示送達を除くというところで,大筋でそうかなと思うのですが,労働審判法を今,見ると,公示送達での送達はできないという規定なのです。ところが,今日の資料の87ページだと,公示送達はするけれども,その場合は効力が生じないという書き方になっていて,何かちょっと奇妙な気もするのですが,いかがでしょうか。 ○松田関係官 部会資料では畑幹事がおっしゃるとおり複雑な書き方になってしまっておりまして,やはり,そのような規律の仕方は相当でないと考えられますので,端的に公示送達で告知できないというふうな規律に変更したいと考えております。 ○伊藤部会長 ということでよろしいでしょうか。御指摘をありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。   もし,よろしければ,この部分は御了解いただいたものといたしまして,それでは,ここで休憩を取ることにいたします。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは,再開したいと存じます。   部会資料37の第1,非訟事件手続及び家事事件手続に関する要綱案(案)について(共通)の1,除斥及び忌避,及び2,終局決定(審判)の取消し又は変更の規律の抗告審への準用についての説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   まず,第1の1の除斥,忌避の(1)の非訟事件に関してでございますが,今回,裁判所書記官についてどの記述が準用されるのかを明確にすることとしたいと考えておりますことから,部会資料33において記載していた記述を変更したいと存じます。   まず,補足説明にまいりますけれども,民事訴訟法の解釈としても裁判所書記官についての除斥又は忌避についての裁判は,合議体によらずに単独体で裁判ができると解釈されているようでございますので,今回の規律を準用するに当たりまして,ウの②の規律,合議体にてやらないといけないという規律を除外するということにいたしました。更に民事訴訟法の解釈としても裁判所書記官の除斥又は忌避があっても,他の裁判所書記官を立ち会わせて訴訟を進行することは差し支えないと解されていることから,エの②においてこの点を明確化するとともに,エの①でウの規律を準用するに当たりまして,④の手続の停止に関する規律を準用しないといたしました。   続きまして,家事事件における除斥及び忌避についてですが,裁判官及び裁判所書記官について,いわゆる簡易却下の主体というものに調停委員会を組織します裁判官も追加いたしました。   次に,調停官については,そもそも家事調停官には除斥とか忌避についての裁判をすることはできませんので,除斥又は忌避については裁判をすることができることを前提とするウの③の規律を準用する必要はないと考えておりましたので,従前は(3)③の規律を準用していなかったのですが,あえて除外すると家事調停官が裁判に関与することができると,ほかのことも考えまして,(4)①において(3)③の規律を準用することといたしました。   それで,次に裁判所書記官については,非訟事件における裁判所書記官と同様の理由から,裁判所書記官についての除斥又は忌避についての裁判は,合議体によらずに単独体で裁判をすることができることし,また,他の裁判所書記官を立ち会わせて,手続を進行できることを明確にしました。   また,部会資料34-2では,(3)③の規律を準用か除外していたのですけれども,裁判所書記官が自らの除斥又は忌避の裁判について職務を行うことは相当でないので,そのことを表すために,ウの③の規律を準用するということにいたしました。 ○松田関係官 では,続きまして,2,終局決定(審判)の取消し又は変更の規律の抗告審への準用についてですが,ここでは取消し又は変更の規律が抗告審に準用されることを前提に,第一審裁判所又は家庭裁判所の終局決定又は審判であるとした場合に,即時抗告をすることができるものは取消し又は変更の対象とならないことを明確にするために,実際の規定についてはその旨の読替え規定を置くこととすることを提案するものでございます。   取消し又は変更の制度は,非訟事件の合目的的,後見的な性質に由来するものであると考えられまして,具体的な手続としましては当初から不当であった場合も事情変更により不当となった場合のいずれも,同一の事件の手続が継続しているものとして行われるものであり,別個の新しい手続によるものではないと言えます。抗告裁判所の裁判が第一審裁判所の裁判であれば,即時抗告をすることができないものについては,第一審裁判所の裁判の場合と同様に取消し又は変更の対象とすべきであると考えれば,このような場合の取消し又は変更の手続も抗告裁判所において,従前の事件と同一の手続として行われるべきものと考えられると思われます。   裁判後の事情変更により裁判が不当になった場合については,新たな事情を加味した判断になる点で,新たな判断という要素が入ることは否定はできませんけれども,飽くまで取消し又は変更の規律によってするものである以上,抗告裁判所の裁判についての取消し又は変更についてのみ,別個の新たな手続でするとの規律を置くことは困難であると考えられ,また,このような規律を置くことは民法等に根拠規定があるか,これを類推適用することができる場合にのみ,事情変更に基づく取消し又は変更を別事件として行うことができるものとしている制度全体の枠組みとも相いれないものと考えられます。   また,抗告裁判所による取消し又は変更の裁判に対して,即時抗告をすることができない点につきましては,そもそも別事件として行うものでない以上,審級の利益について必ずしも通常の裁判と同様に考慮すべき必要があるとまでは言えないとも考えられ,また,取消し又は変更の裁判をする際には,当事者等の陳述聴取が必要的とされており,一定の手続保障がされていることを踏まえるとやむを得ないものとも考えられ,審級の利益を考慮すべき場合には,差戻しをする等の運用で対処することができるのではないかと考えられます。 ○伊藤部会長 それでは,まず,非訟事件手続及びこの要綱案(案)の共通の部分の除斥及び忌避で(1)の関係ですけれども,裁判所書記官に関しまして単独体で裁判をできるということを明らかにするための規律の準用規定の除外,それから,他の裁判所書記官を立ち会わせて手続を進行させるということを明らかにするための規律の除外,この辺りはいかがでしょうか。今のエの関係で,書記官に関する取扱いに関してはよろしいでしょうか。   そうしましたら,次に家事事件における除斥及び忌避についてですけれども,これですと,除斥又は忌避の裁判及び執行の停止の関係での⑥の調停委員会を組織する裁判官というのが入っているという辺りのことでしょうか,それから,家事調停官への準用に関して,(4)の①の関係で若干の説明がございましたが,(2),(3),(4)の辺りはいかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,(6),(7),(7)の③の関係で7ページの1ないし3に関する説明がございましたが,この関係でも何か御指摘等はございますか。   よろしければ,次の2の終局決定(審判)の取消し又は変更の規律の抗告審への準用について,内容的には先ほど松田関係官から説明があったとおりの考え方でございますけれども,この点に関してはいかがでしょうか。 ○三木委員 御説明に必ずしも納得はしておりませんが,仮に御説明の立場を採るとした場合でも,最後のところに書いておられる審級の利益が明らかに問題になるような場合というか,考えるべき場合には差戻しの運用というのが必要だと思うのですが,その場合にちょっと私もよく分からないまましゃべるのですけれども,この事情変更による取消しの裁判というのは,何も規定を置かない状態で抗告審の裁判と読めるのでしょうか。   つまり,差戻しというのはその手続が当然,原審を踏まえた上級審の裁判であることが前提ですよね。見方によってはこの裁判自体はそういう表現が適切かどうかは分からないけれども,要は一審目の裁判という感じもするわけですね。なので,そうなのかどうか分かりませんが,そうであれば,特別に差戻しができるという明文規定を置く必要がありますし,あるいはそうではない可能性があるのかもしれませんが,疑義を避けるために,必要的差戻しというのは重いかもしれませんが,任意的差戻しか,差戻しという表現がいいかどうかもちょっと分かりませんけれども,要するに,その種の明文規定を置かなくて対応できるのかというのをちょっと確認したいと思います。 ○松田関係官 ただいまの補足説明でも説明させていただきましたが,取消し,変更の手続自体は別個の新しい事件として行うのではなくて,その事件のもともとの原裁判の継続として行うということであれば,不服申立てがされて抗告審に係っているという,その構造も維持されたままと考えることができれば,特に規定を置かずに差戻しということも考える余地はあるのかなと思いまして,このように書かせていただいたところです。 ○三木委員 重ねてちょっと申し上げて,依然として私もよく分からないまま申し上げるのですけれども,再審であれば原審の復活ということになるので,それが上級審での再審であれば,そういう説明が自然にできるのでしょうが,こちらのほうは必ずそういう説明ができるかどうか,なお,やや私には疑義の余地がある気がして,もちろん,やや規定を置くというのはうっとうしい感じがすることは分かっておるのですが,その種の明文規定を置くということも考えられるかなと漠然と思っております。 ○山本幹事 私はやや今の事務当局の御説明とこの手続構造の理解が違ったのですが,私自身は,これは保全処分の場合の保全取消しと同じようなものかなと理解をしておりまして,そうだとすれば,差戻しというのは基本的にはあり得ないと思っています。ここの括弧書きの趣旨は,私は変更,取消しの対象となる元の裁判について,将来,そういうことが起こるかもしれないから,そうなった場合の審級の利益を考えて,差戻しをするというような運用も考えられるという,保全の場合にも即時抗告審が保全処分を出す場合には,そういうような運用のそういうことも言われていると思いますので,そのような趣旨かなと理解をしておったのですが,いずれにしろ,確かに審級の利益は問題になると思いますが,保全の局面においては即時抗告審が高等裁判所である場合に,そこで保全処分がされて,それに対する保全取消し,事情変更による保全取消しの申立てがあった場合には,その裁判に対してはもちろん最高裁判所に対して保全抗告はできなくなってしまうわけですけれども,それは,ここで書かれているような理由でやむを得ないと理解されておりますので,それと同じでやむを得ないという説明なのかなというような,私自身はそういう理解をして,これでいいのかなと思っておりました。 ○三木委員 ちょっと私はその説明が正しいかどうか,はやや今の段階では納得しかねるところがあって,やはり,保全は権利の最終確定ではありませんが,こちらはもちろん本体の裁判ですので,同じ説明ができるという気は私にはいたしません。 ○伊藤部会長 先ほどの山本幹事の指摘に関して,何か事務当局から補足的な説明はありますか。 ○脇村関係官 もともとこの議論は,今で言う19条取消しの議論の延長で,また,今回,事由あるいは期間を制限しようということであったと思います。もともと19条取消しについては,今,当局から説明させていただいたとおり,恐らく別の事件として捉えるのではなくて,飽くまで従前の手続を利用し,従前の手続の中で,その延長線上で手続的なものとして取消し,変更するということで考えておりましたので,そういった意味では,今,山本幹事がおっしゃっていた保全の取消しとは,事務当局は少なくとも違うものとして考えていたものと考えております。そういった意味では,どちらかといいますと三木委員のおっしゃっていたほうに近いと理解しておりました。   その上で,先ほど松田関係官からも話がありましたとおり,手続内手続といいますか,従前の手続を利用するということで,そういった延長から抗告裁判所が抗告審として判断したときに,抗告審としての判断を取消しとかするのは,恐らく抗告審でしかあり得ないだろうと。取消し,変更という以上は,従前,抗告裁判所が抗告裁判所としてできた裁判をすることができると考えておりましたので,そうしますと,余り例はないと思いますけれども,従前の抗告裁判所では差戻しの決定ができたわけですから,以前に出した決定を取り消した上で,もう一度,抗告裁判所としてやる差戻しということも考えていたので,このような記載になっていたところでございます。そういった意味で,あと,別途,規定が要るかと言われますと,なくても大丈夫ではないかという気はしているのですが,どうでしょうかね。 ○金子幹事 最後の括弧内が誤解を招いてしまったようで本当はなかったほうがよかったかもしれないと思っているのですが,ただ,今,脇村関係官のほうから話があったとおり,高裁のした裁判を取り消す主体についてはこれは高裁ということしかないのではないかと思っていまして,これは当初の取消しの対象となる裁判が不当である場合のみならず,事情変更の場合であっても,それを下級裁が取り消すということの不自然さがどうしても残ると思いますので,それと,当初の裁判の言わば見直し,延長線上にあるものとして考えることから,高等裁判所がするというのがやはり筋ではないかということなのですが。 ○伊藤部会長 どうでしょうか。考え方としては,今,金子幹事から説明があったような限度でいえば,それが一番素直というか,合理性のある考え方のように思いますけれども,ちょっと運用とか説明ということになると,いろいろ難しい問題があるのかもしれませんが,これで御了解いただけないでしょうか。理解に関してはいろいろな理解,完全に一致しているわけではないかと思いますが,そうしましたら,恐縮ですが,考え方そのものは御理解いただいているということで,最後の審級の利益うんぬんという辺りのことについては,もうちょっと,ここで言う抗告審による取消し,変更というものの持っている意味などを整理して,より正確に伝わるようにしてもらえればと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○三木委員 今のまとめで結構ですし,基本的に事務当局のようなお考えの立案で結構だと思いますけれども,解釈,運用に委ねるにせよ,規定を置くにせよ,私が考える実質的な結論としては,おっしゃるように説明としては抗告審が継続してやるという説明は可能だと思いますが,しかし,事情変更の内容にもよるのかもしれませんけれども,ある場合には,それまでの裁判では全く出てこなかったり,関係なかった事実が争点になることはあり得るわけですね。それは実質的には言わば別事件のようなものは,当然,あり得ると思いますので,その場合にはやはり別事件であれば,一審,二審が戦えるというのとやはり均衡を取る必要があるので,それを規定を置くのか,解釈でいくのか,あるいはほかの第三の道があるのか分かりませんけれども,差戻しなら差戻しはやはりできるという結論を取れる方向で御検討いただきたいと。それが私が言うような明文規定である必要は必ずしもないかもしれませんということは,私の意見としてはそうです。 ○伊藤部会長 分かりました。今,三木委員がおっしゃったような実質を仮にこれに即して規律が設けられたときの考え方として,どう表現するかについてはいろいろあると思いますので,そこは検討してもらうことにしましょう。   そうしましたら,もし,よろしければ次のところに進みたいと思いますが,第2,非訟事件手続に関する要綱案(案)について及び第3,家事事件手続に関する要綱案(案)について,それから,部会資料38の1,手続費用の負担について,説明をお願いします。 ○松田関係官 第2,1,再抗告の事由は,非訟事件手続に関する要綱案(案)では,裁判書には理由の要旨を記載すべきものとしておりますが,個別法で理由を記載しなければならないとの特則を置いているものもある関係で,再抗告の事由を「終局決定に,この法律又は他の法令で記載すべきものと定められた理由若しくはその要旨を付せず,又は理由若しくはその要旨に食い違いがあること」と修正することを提案しておりますが,この点につきましては個別の法律をここで,それにも対応できるような形で修正する趣旨でございます。   次に,2,確定した終局決定及び終局決定以外の裁判に対する再審につきましては,従前の要綱案(案)では,終局決定と終局決定以外の裁判を分けて規律しておりましたが,これを併せて規律することとしまして,また,終局決定以外の裁判の対象につきましては特に限定をしておりませんでしたが,終局的な裁判の性質を有する裁判がその対象になるとの民事訴訟法上の解釈を踏まえまして,その旨を明確にする修正を加えることを提案しております。なお,部会資料では括弧としまして「事件を終局させるものに限る」としておりますが,このような表現をしますと,終局決定と紛らわしいと考えられますので,大変恐縮なのですけれども,「事件を完結するものに限る」という表現に改めたいと考えております。   続きまして,第3,家事事件手続に関する要綱案(案)について,1,移送ですが,前回の部会での議論を踏まえまして,管轄家庭裁判所から他の管轄家庭裁判所への移送の裁判の要件を緩やかにいたしました。なお,管轄家庭裁判所から管轄家庭裁判所以外の家庭裁判所への移送については,従前のとおりです。   次に,2,参加につきましては,前回の部会での議論を踏まえ,強制参加の要件について現行家事審判法第12条と同様の「相当と認めるときは」の要件を付加することとしました。   3,原審の管轄違いを理由とする移送につきましては,従前の要綱案(案)の規律につきまして形式的な修正のほか,「特別の事情があると認めるときは」との要件を具体化しまして,「原審における審理の経過,事件の性質,抗告の理由等に照らして原審判を取り消さないことを相当とする特別の事情があると認めるときは」とすることを提案するものでございます。   続きまして,本日,席上に配布させていただきました部会資料38-1,手続費用の負担についてですが,手続費用の負担の規律につきましては,原則的に負担すべき者以外の者に,例外的に手続費用を負担させることができるものの,その対象の範囲としまして部会資料34-1の第1の6(1)②においては,当事者,利害関係人のほか,手続に参加していない裁判を受ける者となるべき者又はこれに準ずる者であって,その裁判により直接に利益を受けるものとする規律を提案しておりましたが,この規律ですと,例えば会社解散の事件における会社や成年後見人解任の事件における成年後見人,いずれも手続に参加していない場合を考えておりますけれども,このような場合などに手続費用を解任される成年後見人ですとか会社に負担させることができなくなり,実務上,支障があると考えられます。   裁判を受ける者となるべき者につきましては,その裁判により不利益を受けるような場合であれば,本案の裁判に対して即時抗告をすることができるのが通常であると考えられますので,手続費用を負担させることとしても,実質的な不都合はないものと考えることもできると解されます。そこで,裁判を受ける者となるべき者につきましては,その裁判により直接に利益を受ける者という要件を外す,こちらの部会資料38で提案しております規律に改めたいと考えております。 ○伊藤部会長 それでは,まず,第2,非訟事件手続に関する要綱案(案)についてですが,1の再抗告の事由の関係で,9ページの理由若しくはその要旨うんぬんというような形で,個別法における特則にも対応できるようにするですとか,それから,再審の対象となる裁判との関係で,その他の裁判で事件を完結するものに限ると,こういったものを再審の申立ての対象にするですとか,この辺りはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,次の第3,家事事件手続に関する要綱案(案)について,移送の要件に関して説明がございました。あと,参加等に関する説明もございましたが,第3の関係では何か御発言はございますか。 ○増田幹事 まず,1の移送の関係ですが,これについては特に反対はしませんけれども,当事者の意見を聴くという要件を規則に入れるという点を確認しておきたいと思います。   それから,参加の(2)の利害関係参加のところ,ここに書かれていることについて何か意見を述べるということではないのですが,その前の②のところでずっと亀甲括弧のままになっていた部分があったかと思いますけれども,その辺りの御検討の結果はどうなっているのか,お伺いしたいと思います。 ○脇村関係官 部会資料34-1でまいりますと,12ページですかね,クの②だと思うのですが,実質は受けるものとかに準じる者であって,補助参加なのかよりもきちんとした利益が必要ですよということでは考えているのですけれども,表現としてどうするのかについて,まだ,検討している段階ではありますが,方向としては前に増田幹事からも御指摘のあった何か直接のとか,そういった方向でどうかなとは,今,考えているところですが,これは非常に技術的なところもございまして,ほかの用語との関係をなお,今,調整しているところでございまして,方向としては先ほど言った方向では考えているところではありますし,内容としても部会の総意としては先ほど言ったような形でまとまっておりますので,最後の前の段階にはきれいな形で,きれいな用語を御提示できると自分でも信じているところでございます。 ○伊藤部会長 増田幹事,それでいいでしょうか。 ○増田幹事 了解しますが,とんでもないサプライズが出ないように,そのことだけはお願いします。 ○伊藤部会長 それはないと思いますが,それから,移送のほうの当事者の意見を聴くことについては,そういう発言を受け止めていただければ,しかるべきところで御検討をお願いしたいと思います。   ほかには第3の関係で何か御発言はございますか。 ○脇村関係官 ちょっと資料には書かなかったのですけれども,前回,畑幹事のほうから強制参加の対象を20歳以上も含めているという被後見人に限っていない点について御指摘を受けていたと承知しておりますが,検討しました結果,非訟については従前から申しているとおり,参加したければ参加を促せば足りると考えておりますし,家事については前の資料でもありましたとおり,成年被後見人等はそうはいってもなかなかできないだろうということで入れているところですが,家事について成年被後見人等について,強制参加の手当てをする際に,理屈を言えば,もともとの趣旨はそういった人を念頭には置いているのですけれども,あえて,それ以外の人について外すだけの理由もないのかなというのが一つと,あと,現行法上は強制参加の対象について年齢というか,能力で区切っていないこともあって,家事については大ざっぱかもしれませんけれども,全体について強制参加の対象にすると,成年被後見人とか未成年者だけでなくて成年者といいますか,普通の人についても促すだけでなく,強制的に参加するということにさせていただければと考えております。   説明について,前回の説明はちょっと未成年者に特化した説明でしたので,説明振りについては,今後,慎重にというか,きちんと考えていかないといけないところですが,趣旨としてはそういったことで原案を維持させていただければと考えております。 ○伊藤部会長 それでは,第3の関係はよろしいでしょうか。   そうしましたら,最後に部会資料38の手続費用の負担を命ぜられる者ですけれども,先ほど説明がございましたようなことで,ある種のものを考えると,直接に利益を受ける者でない者であっても裁判を受ける者となるべき者としての手続費用の負担を命じることが合理的な場合があるというので,この②,③というような形で改めて内容を修正することになりましたが,この点はいかがでしょうか。こういうことでよろしゅうございますか。いろいろな類型のものを考えますと,やはり,このような形が一番合理的かと思いますので,御了解いただければと思います。   ほかに審議事項全体に関しまして,何か御発言がございましたらお願いします。   もし,よろしければ,では,事務当局から次回の日程についての連絡をお願いします。 ○金子幹事 それでは,御案内いたします。   次回は平成23年1月28日,金曜日,場所はこの場所,20階の第1会議室ということでお願いしたいと思います。それから,既にこの日につきましては通常どおり,午後1時半から開始ということで御案内を差し上げていることかと思いますが,この日は最終取りまとめということもございまして,午後3時からということでしてはどうかと考えております。改めてしかるべく御案内を差し上げることになりますが,開始時間の変更の通知を差し上げることになろうと思いますが,この場にいらっしゃる方には午後3時からということで御案内を差し上げようと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○伊藤部会長 それでは,他に特段の御発言がなければ,本日の部会はこれで終了させていただきます。長時間,ありがとうございました。 -了-