法制審議会民法(債権関係)部会           第24回会議 議事録 第1 日 時  平成23年2月22日(火)自 午後1時00分                      至 午後5時52分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法(債権関係)の改正について 第4 議 事 (次のとおり)                議     事 ○鎌田部会長 予定した時刻になりましたので,法制審議会民法(債権関係)部会の第24回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。    (関係官の自己紹介につき省略)   では,配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いします。 ○筒井幹事 事前送付資料として,部会資料24をお届けいたしました。また,本日は前回の積み残しを御審議いただく関係で,配布済みの部会資料23も使わせていただきます。   この機会に,「中間的な論点整理」の公表に際して,事務当局の責任で同時に公表する予定の「中間的な論点整理 補足説明」という文書のスタイルについての現時点での作成イメージをお伝えしようと思います。「中間的な論点整理」そのものと「補足説明」とは,別の文書になるわけですけれども,「補足説明」におきましては,「中間的な論点整理」の内容を一項目ずつ引用した上で,それについて「議事の概況等」を補足的に記載するスタイルを採ることを考えております。この「議事の概況等」は,これまでも説明してまいりましたとおり,詳細な議事録を逐一読み返していただかなくても,これまでの議事の様子をある程度は把握していただけるようにすることを目的とするものでありますので,「補足説明」という文書の体裁上も,中間的な論点整理における各項目とこの「議事の概況等」を容易に関連付けて読んでいただくことができるようにしたいと考えております。こういった文書を今後作成する予定であるということを,改めて紹介せていただきました。 ○鎌田部会長 何か特に御発言ございますでしょうか。   それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   本日の進行予定といたしましては,休憩前に部会資料23の「第42 賃貸借」と部会資料24の「第47 準委任に代わる役務提供型契約の受皿規定」までを御審議いただき,その後,部会資料24の残りを全て御審議いただくことを予定いたしております。   前回申し上げましたように,今日積み残しができますと少し厄介なことになりますので,多少時間を超えることがあっても,本日の予定は全部消化したいと考えているところでございますので,よろしく御協力のほどお願いいたします。   それでは,まず部会資料23の33ページから39ページまでの,「第42 賃貸借」について御意見をお願いいたします。   どこからでも結構です。 ○岡委員 二点申し上げます。   34ページの上から3行目の①の判決の紹介のところですが,上から3行目の「賃借人と旧所有者との間の賃貸借関係は当然に承継され」と書かれていますが,その前に,「特段の事情がある場合を除き」という,判例にもこのようなくだりがあったと思いますので,これを入れてほしいという意見がございました。   二番目に,35ページの上から2行目の「方向で」というところでございますが,未払賃料があれば当然充当されるという判例通説があることは承知しておりますけれども,実際の実務では当然充当させない取扱いも結構ありますので,この「方向で」というのは取っていただきたいという意見がございました。   その二点でございます。 ○鹿野幹事 今,岡委員がおっしゃった一点目と関わるところですが,34ページの判例の記述について,少し気になるところがございました。まず,特段の事情ということについては岡委員が御指摘されたとおりです。それに加えて,その3,4行下の,「また,賃貸人たる地位を旧所有者に留保する旨の合意があった場合に」から始まる文章ですが,これは飽くまでも,新旧所有者間において,従前の賃貸人たる地位を旧所有者に留保する旨の合意があった場合を指しているのだろうと思います。これと異なり三者間の合意があった場合については,このような判例法理は恐らく妥当しないと思いますので,誰の間での合意なのかという点を明らかにする必要があると思います。   それからもう一つ。同じ文章で,判例がその合意の効力を否定しているという書き方になっているのですが,この書き方でよいのかということも気になるところでございます。判例は,新旧所有者間においてこのような留保合意があった場合でも,直ちには,先ほど岡委員がおっしゃったところの「特段の事情」があるとは言えないとし,したがって,そのような合意があったとしても,新所有者に賃貸人の地位が承継されるとしたまでです。その判例を指して,合意の効力を否定しているという書き方をするのは,若干不正確であるように思います。 ○鎌田部会長 その点については,少し検討をさせていただきます。 ○深山幹事 一点目は,今,鹿野先生から御指摘のあった点について,私もこの判例の書きぶりについては正確ではないと思いますので,御再考いただければと思います。   また,賃貸人の地位を留保する旨の合意があった場合に関連する問題として,この判例等では,賃貸人たる地位といいますか,賃貸借関係そのものを問題にしているわけですが,それに付随して敷金返還請求権の帰すうも連動してくるかと思います。これは(4)のところでも独自には取り上げているんですが,(2)のような合意があった場合に,その賃貸借関係自体の承継の問題と,敷金関係といいますか,敷金返還請求権の承継の問題というのは一応分けて考えられると思います。つまり,敷金返還請求権だけが新所有者に移転するということはまずないと思いますが,逆に,敷金返還請求権だけが残るということは論理的にはあるといえます。そういう意味で,当然に連動して,賃貸人の地位が移転するときには敷金返還請求権も移転する,逆に移転しないときは移転しないというふうになるのか,その帰すうが分かれる場合があり得るのか,そういう帰すうが分かれるような合意をした場合に,それは有効なのかという点についても検討していただければと考えます。   それともう一点,この敷金返還請求権の承継に関する(4)のところなんですけれども,敷金に関しての定義や,敷金をめぐる法律関係については,やはり何らかの明文規定を置くべきではないかという意見が部会の議論の中で出ました。そのことを受けて,「検討してはどうか。」となっておりますが,私の印象では,そこには余り異論がなかったようなので,ここは,「これらの規定を設ける方向で検討してはどうか。」というふうに,方向性を出していただいてもよろしいのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○大島委員 違うところでもよろしいですか。   38ページの7の「賃貸借の終了」の「(2)賃貸借終了時の原状回復」についてですけれども,原状回復義務の規定を整備することについては,ある程度のコンセンサスがあるという方向で進めていただいてよろしいのではないかと思います。   ただし,「賃借物に附属させた物がある場合と賃借物が損傷した場合の区別に留意し,後者(賃借物の損傷)に関しては原状回復の範囲に通常損耗の部分が含まれないことを条文上明記することについて,更に検討してはどうか。」との記載により,改正の目的はある程度認識共有されるものと考えられますが,実務に携わる者といたしましては,この「原状回復」という用語自体が適当なのかどうかという観点も,論点に加えていただくことを御検討いただけないかと思います。 ○中田委員 いずれも表現だけのことですけれども,三点ございます。   33ページの「2 賃貸借の存続期間」ですけれども,2行目に,「著しく長期の賃貸借を」とあって,3行目に,「長期間に渡り」とあるのですが,やや平仄が合わないような感じがいたします。後のほうも,著しく長期間になるのかなと思いました。   二点目は,35ページの「(5)動産賃貸借と第三者との関係」についてです。この表現ですと,「不動産に関する民法第605条のような規定がないことを踏まえ,(中略)新たな規定を設ける」とも読めまして,動産賃貸借についても対抗要件制度を設けるという趣旨のようにも読めてしまう可能性があるのですが,多分そういう趣旨ではないと思います。605条のような制度がないことを前提にして,動産賃貸借と第三者との関係を規律するという御趣旨だと思いますけれども,一応は議論のあったところですので,どちらかを示すのであれば,明確にしたほうがいいと思いました。   それから三点目は,36ページの5,「(1)賃料の支払義務(事情変更による増減額請求権)」の部分です。この事情変更による増減額請求権については,恐らくは任期規定として置くというものだと思うのですけれども,ここで借地借家法や農地法を参照しつつとあるものですから,これだけを見ると強行規定性のあるものではないかという印象を与えるおそれがあると思います。そこで2行目の,賃料の増減額請求権の規定とある,その規定の部分を,規定(任意規定)というようにしたほうが紛れがないのではないかと思います。 ○山本(敬)幹事 37ページの6の「(2)適法な転貸借がされた場合の賃貸人と転借人との関係」についてですが,第1段落で,「①転借人は,原賃貸借によって賃借人に与えられた権限の範囲内で,転貸借に基づく権限を与えられ,その限度で賃貸人に対して使用収益の権限を対抗することができること」などを「明文化すべきであるという考え方」があるのに対して,「転借人が賃貸人に対して直接に義務を負うことの意味をより精査する必要があること」等の指摘を踏まえつつ,「規定のあり方について,更に検討してはどうか」とされています。   これは,結論としてはそのとおりなのですが,これだけでは,なぜ最初の数行に書かれた考え方に問題があるのかということがはっきりしないと思います。例えば,①に書かれたことを明文化するとなぜ問題かといいますと,転貸借に基づく権限は,飽くまでも転貸人と転借人の間で締結される転貸借契約に基づく賃借権であって,転借人がこれに基づいて使用収益させることを求めることができる相手は,転貸人です。適法な転貸借の場合でも,転借人は,原賃貸人に対して,目的物を使用収益させることを求める権利は認められません。したがって,①のように,転借人が「転貸借に基づく権限を与えられ,その限度で賃貸人に対して使用収益の権限を対抗することができる」ということはできないと思います。それが問題だということがもう少しはっきり分かるようになっていることが望ましいと思います。   そこで,この上から6行目から7行目にかけての「このような考え方については」の後に,例えばですが,「転借人は賃貸人に対して目的物を使用収益する権限が認められるわけではないことを前提として」というような表現を入れて,その上で,「転借人が賃貸人に対して直接に義務を負うということの意味をより精査する必要があること」と続けてはどうかと思います。表現についてはお任せいたしますけれども,趣旨は以上のとおりです。 ○山野目幹事 中田委員が第二点で指摘なさった動産賃貸借と第三者との関係について,同委員の意見に同調します。 ○鎌田部会長 それぞれ事務当局で検討させていただきます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしければ,部会資料23についての御意見を伺うのは全て終わったということにさせていただきます。   部会資料24の1ページ,「第44 役務提供型の典型契約(雇用,請負,委任,寄託)総論」について御意見をお伺いいたします。 ○佐成委員 修正提案として頂いたものがありますので,御検討いただければと思います。   これの一番最後のところですけれども,2段落目の「役務提供型の典型契約全体に関して,弱い立場にある役務提供者をどのように保護するか」という,その後に,「役務の提供者,受領者が法人か個人か等の属性」を考慮要素として加えてほしいという修正提案がありましたので,御検討いただければと思います。 ○筒井幹事 本日御欠席の松本委員から事前に発言メモが提出されていますので,読み上げる形で紹介いたします。「第44 役務提供型の典型契約」のところです。   ここの第2パラグラフで,「弱い立場の役務の提供者をどのように保護するか」と記述されているが,消費者契約を考えると,同様に「弱い立場の役務受領者をどのように保護するか」という点も考慮すべきである。したがって,両方を記述するか,あるいはいずれも記述しないかが,公平と思われる。 ○新谷委員 同じく,私も修正の提案をさせていただきたいと思います。   第16回の部会において,役務提供型契約については,労働契約や消費者契約,事業者間契約が混在しており,役務提供者が弱い立場にあって,その保護について配慮すべき場合があるということを申し上げていました。この点については今回の部会資料の2段落目のほうで反映していただいたと思って感謝しています。   そのときに実はもう一点,雇用以外の類型でも,労働関係法規の適用対象となる労働契約があることを念頭に置いた,慎重な議論をお願いしたいということを申し上げています。これについて,2段落目の下から3行目の,「あることを踏まえ」の後に,「また,雇用以外の類型にも労働関係法規の適用される労働契約があるとの指摘にも配慮して」という文言を入れることを,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 本文と議事の概況等と,どちらで記述するのが適当かというような点も含めて,事務当局で検討させていただければと思います。   ほかに御意見,いかがでしょうか。   よろしければ,部会資料24の1ページから8ページまでの「第45 請負」のうち,まず,「1 請負の意義(民法第632条)」から「4 完成した建物の所有権の帰属」までについて御意見をお伺いします。 ○松岡委員 4の完成した建物の所有権の帰属については,私や山野目幹事の発言をこういう形で取り入れていただいて,大変感謝いたします。   ただ,4ページの冒頭の「このような見解の対立を立法的に解決するため」というのは,一面では確かにそのとおりですけれども,立法の目的は,直接的には意見の対立を解消することにあるのではなく,そういう誤解を招かないように,「権利関係をより明確に規定するため」などの表現を採っていただいたほうが適切ではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○新谷委員 2ページの,3の報酬に関する規律の(1)の報酬の支払時期についてです。第1段落の5行目から7行目にかけて,「請負人の保護に欠けることがないか」という記載をしていただいていますが,一巡目のときに御指摘申し上げたのは,個人自らが有償で役務を提供するような弱い立場にある請負人の保護についてです。ですから,「請負人の保護」の前に「弱い立場にある」といったような文言を入れたほうが,内容が正確になると思いますので,御指摘を申し上げたいと思います。   次に,(2)の3ページの部分です。この部分について,一巡目の論議の際には,現行法よりも請負人の権利が後退するようなことについては反対であるという意見が多かったと思いますが,今回頂いたこのたたき台の中では,このような論議の点が余り反映されていないのではないかと思います。   特に民法536条の2項の扱いについては,これを改めることを前提にするような記述があるように思います。請負に関しては,現行の536条の2項を残すという選択肢もあり得るということから,この3ページ目の2行目から始まる部分について,「現行法の536条2項による権利を後退させるべきではないという意見もある」という記述を加えることも,是非御検討いただきたいと思っています。   また,5行目のところで,「その場合の」ということで,具体的な規定内容についての御提起がありますが,ここの部分についても,「請負に関し536条2項の規定を残すか,又はこれを改めるとすれば」といったような記述を追記することについて,御検討いただきたいと思っています。 ○笹井関係官 今の新谷委員の御意見は,536条2項を残すか改めるかという論点を記載すべきではないかという御提案ですが,536条2項については,反対給付を受ける権利が消えるかどうかという形で問題を扱っており,このような処理が,完成させなければ報酬債権が発生しない請負という契約について妥当するかという問題もあります。また,確かに536条2項に基づく請負人の権利を後退させるべきではないという御意見が17回会議のときにございましたけれども,536条2項に基づく権利がどういうものなのかということについては,必ずしも統一的な理解がされていないのではないかと思っております。   そういう意味で,こちらに記載しましたのは,どういう場合にどのような範囲の報酬を請求することができるのかを端的に議論しましょうという問題提起をしておりまして,ニュートラルな書き方をしているという認識でございます。536条2項を残すかどうかという形で議論をしますと,そもそもその問題の所在がどこにあるのかが不明確になるのではないかということで,こういう書き方になっているわけでございます。 ○新谷委員 私の指摘した内容について,指摘の一つとして,皆さんも含めた御検討の中で,536条2項の取扱いをどうされるのかということを,是非御検討いただきたいと思っています。 ○鎌田部会長 536条2項それ自体に関するものと,請負の場合に同条の趣旨をどう生かすかということと,二つ論点があると思うのですが,ここでは後者に関連して,新谷委員の御発言の御趣旨をどう請負の場合に適合した形で表現するかということで,工夫をさせていただくということでよろしいでしょうか。   ほかにはいかがでしょうか。 ○中井委員 2ページの3の(1)のところです。これは,支払時期について,目的物の引渡しという考え方に対して,意思的な要素を入れることであろうかと思いますけれども,そういう提案に対して二つの問題点がここで挙げられています。審議のときにも御指摘したかと思いますけれども,取引慣行との関係で,まず事実の確認をする必要があるだろうということから,取引慣行との整合性ないし取引実務に与える影響,こういったものに対する配慮なり留意が必要だろうと思いますので,そういう御指摘を加えていただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○中田委員 二点ございます。いずれも既に発言があったことと関連いたします。   第一点は,ただいまの中井委員の御発言との関連ですけれども,私も,実務との関係というのが重要だと思いますが,実務との整合性と言うと,何か既に違いがあるということが前提になっているかのようにも見えますので,もう少しニュートラルに,請負工事における実態にも留意しつつとか,その程度でよろしいのではないかと思います。 ○中井委員 はい,異存ございません。 ○中田委員 もう一点は,松岡委員から御指摘のありました3ページの「4 完成した建物の所有権の帰属」についてですが,「注文者に原始的に帰属するとの見解が支配的である」というふうになっておりますけれども,これは有力な反対説といいますか,請負人帰属説もございますので,これは「多数である」程度かなと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,4ページ以下の「5 瑕疵担保責任」について御意見をお伺いいたします。 ○高須幹事 全く表現だけの問題でございまして,4ページから5ページにちょうど移るところです。「解除することができる旨を明文化する考え方が示されているが,どうか。」ということなのですが,たたき台の検討の一番最初のときの御説明で,3種類の書き方があって,「どうか。」と付ける場合は一番強く方向性を打ち出す場合だということがあったと思います。ここは多分そういう趣旨ではなく,「考え方が示されているが,これらの考え方について更に検討してはどうか」という御趣旨だと思っておりますので,もしそうであればそのようにしていただいたほうが,よろしいかと思っております。 ○筒井幹事 高須幹事から御発言がありましたところは,本日御欠席の松本委員からも同種の指摘を頂いております。御指摘のあった部分で書こうとしていることは,松本委員や高須幹事から御紹介があったとおりですので,そのような方向で修正を考えたいと思います。 ○鹿野幹事 今御指摘のあった5の(3)の文章についてですが,これも判例の整理の仕方について,少し指摘をさせていただきたいと思います。   この(3)の3行目からのところで,「しかし」から始まる文章には,「建築請負契約の目的物である建物に重大な瑕疵がある場合において」と書かれています。しかし,ここでの重大な瑕疵というのは,単に大きいということではなく,飽くまでも,重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合,つまり,建て替えざるを得なくするほどの重大な瑕疵を指しており,「建て替えざるを得ない」ということが判例法理にとっては重要なのだろうと思います。パブコメにかける文章としては,その点を明確にしたほうがよろしいと思います。しかも,634条の1項では,重要な瑕疵というような概念も出てくるわけですから,それとの違いを明らかにするという意味も含めて,「建て替えざるを得ない」という文言をここに付け加えていただくほうがよいのではないかと思います。   それからもう一つ,その文章に続いて,「建物の建替えを前提とする救済を認めた」とされている点についてです。この表現は,それ自体が誤りだというわけではないのですけれども,具体的には,建て替え費用相当額の損害賠償という救済を与えたわけでして,その点をもう少し正確にというか具体的に書かれたほうが,読んでいるほうからは分かりやすいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 もっと言えば,解除することができないということと建替費用の賠償を命ずることとの関係自体も,法律専門家以外の方から見たらよく分からないところがあるかもしれないので,それらを短く表現するとして,何が一番適当かについては,御指摘も踏まえて,少し事務当局で検討させていただきます。 ○大島委員 5ページの「(5)請負人の担保責任の存続期間」の第2パラグラフには,合理的な期間内に瑕疵を通知しなければならないとする考え方と併せて,具体的な期間を定める考え方についても紹介がされております。この記載ぶりでよろしいかとも思うのですが,中小企業の実務から見ますと,「合理的な期間内に」という考え方が取引にどのような影響を与えるか,懸念されるところです。我々の議論の中では,「合理的な期間内に」という規定の仕方では不明確ではないかと指摘する意見が強くございました。つきましては,本文にこうした懸念についてもより具体的な記述をしていただけないか,御検討いただければと思います。 ○中井委員 5ページの(6)です。性質保証期間についての問いになっているわけですけれども,担保責任との違いについて,一言説明があってもいいと思います。これは当該期間,一定の品質ないし性能のあることを保証する,そういう内容だろうと思いますので,適切に表現した説明があったほうが分かりやすいのではないか。   二点目は,その次のページの(7)ですが,ここでは二つのパラグラフに分かれて書かれているんですけれども,その書き方の順序です。現在は「知りながら告げなかった事実について」ですが,それを拡張するとすれば,「知りながら告げなかった事実」に加えて「知らなかったことに重過失がある事実」,つまり第2パラグラフが続いたほうが分かりやすいのではないか。それに加えて,第1パラグラフの後段,故意又は重大な義務違反がある場合としてはどうでしょうか。ここは「注文者」となっていますけれども,これは「請負人」ということでよろしいのでしょうか。 ○笹井関係官 今御指摘のありました箇所は,「請負人」の誤りです。申し訳ございません。 ○鎌田部会長 ほかの点については,事務当局で引き取って検討するということでよろしいですか。 ○住本関係官 住宅局の住本でございます。初めてなものですから,ちょっと失礼,分からないこと一点,639条の瑕疵担保期間の存続期間の上限のところが全く触れられていないんですが,これは以前に審議がされているかもしれませんが。   実は我々,住宅品確法,住宅品質確保促進法におきまして10年の瑕疵担保期間を,10年上限を20年に長期化しております。ここにつきましても,その20年という上限という立法をした以降におきましても,現在,住宅の実務におきましては,30年や50年といったような保証,若しくは瑕疵担保期間か分からないというような期間が契約書上設定されております。我々としては,瑕疵担保期間の上限は20年であると,要は特別法で延長したところまであるということで整理,理解をしているのでございますが,639条について全く触れられていないというのは,10年間の規定はいじらないということの理解でよろしいのでございましょうか。 ○筒井幹事 民法第639条については,この規定自体を修正するような立法提案が特段示されておらず,この部会においても特にこの規定についての発言がこれまでなかったので,現状では取り上げられていないということです。よろしいでしょうか。 ○住本関係官 結構です。 ○鎌田部会長 ほかに,いかがでしょうか。   それでは,「6 注文者の任意解除権(民法第641条)」から「8 下請負」までについて御意見をお伺いします。 ○岡委員 表現だけです。7ページの8の(2)の「下請負人の直接請求権」の下から4行目のところでございますが,「複数次にわたって」下請負がされた場合の適切な処理が指摘されておりますけれども,同時に多数の業者に下請がなされた場合も実務上指摘されておりますので,「複数次にわたって」の前に,「多数の業者に,又は複数次にわたって」と書いていただいたほうが分かりやすいかと思いました。 ○鎌田部会長 ほかには,よろしいですか。 ○中田委員 6ページの7,破産手続との関係についてです。   解除は破産手続開始が仕事完成前であった場合に限るという限定なのですけれども,これは642条の趣旨や仕事完成という概念の検討など,更に吟味が必要な点だと思います。   ところが,この項の7ページ,最後のところでは,「このような限定があることを条文上明記することの当否について」となっておりまして,限定はもう当然のことであるかのようにも読めます。そこはまだここで十分議論もしておりませんから,「このような限定をすることの当否」あたりでいいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○深山幹事 今御指摘のあった7の注文者破産のところについて,「検討してはどうか。」とされている項目は,請負の定義について,引渡しを観念するものに請負というものを限定的に考えるということをベースにしている議論なのかなというふうに,従前,私自身は理解をしていたんですが,ここの整理の仕方だと,必ずしも請負の意義を,引渡しを観念するものに限定するかしないかにかかわらず,こういう問題を検討してはどうかというようにも読めます。その点は,請負についての一定の考え方が前提になっているのであれば,そのことを明記した上で,こういう考え方を採った場合に,この点はどうかという書き方になるんだと思いますので,ちょっとそこは趣旨を確認させてください。 ○笹井関係官 そこは,7の2行目,後ろのほうに「仕事完成後の法律関係は売買契約と同様の規律が妥当するという考え方に従えば」というところで限定をしていたつもりだったんですけれども,これだけでは不十分ということですか。 ○深山幹事 ええ。つまり,仮に請負というものを引渡しを観念するものに限らなくても,ある段階まで仕事の完成に向けて履行がなされれば,あとは引き渡すだけという状態にり,そうなってからは,確かに売買と同じ状態にはなるわけです。そういう意味で言うと,履行状態が一定の段階までいくと,あとは売買と同じ規律が妥当するような状態になるというのは,請負の概念を広く取っても狭く取ってもあり得るんだと思うんです。売買と同様の規律が妥当するという考え方を採るかどうかということ自体が問題となるところでしょうけれども,仮にそういう立場に立ったとして,そのこととは別に,請負の範囲を広めに捉えるか狭めに捉えるかという問題が,やはりなお残るのではないかということです。 ○笹井関係官 私の理解が間違っているかもしれませんけれども,現在示されている,引渡しを要するものに請負を限定するという提案は,仕事完成後の法律関係が売買と同様になるという考え方と結び付いているというか,そういう立場から提案されていると理解しております。私としては,請負は引渡しを要するものに限定するという考え方を採った場合に,というつもりで,この一文を入れたわけです。   ただ,分かりにくいという御指摘であれば,少しその辺の表現は工夫したいと思いますが。 ○深山幹事 分かりにくいというよりも,問題の提起の仕方が,請負の概念について,引渡しを観念するものに限るという立場を採ることを前提にした問題提起なのか,その考え方を採るか採らないかにかかわらずの問題提起なのか。私の記憶では,山本和彦先生は,請負についてこういう考え方が示されていますがということにも言及されつつ,この問題提起をされたようには記憶しているんですが。聴き方としては両方あり得て,請負についての一定の考え方を前提にしている場合と,していなくてもこの問題提起は成り立つと思うので,そういうことを御質問しました。 ○笹井関係官 記載の意図としては,請負について,引渡しを要するものに限定するという考え方を前提とすると,この論点が出てくるのではないかというつもり書いたということでございます。 ○沖野幹事 今の御議論に関しまして,私自身は次のように理解をしております。   注文者についての破産手続の開始による解除において,一定の場合には売買と類似の関係が生じるというのは,確かに引渡しを想定しているような場合であるということになります。   そこから先,深山幹事の御指摘の,そのことは請負の概念において,引渡しを観念できるものに請負自体を限定するということとつながっているのかという点ですが,深山幹事の御指摘のようにそれは必然的につながっているわけではなくて,引渡しを観念できるものもあれば観念できないものもあるという請負の概念を採っても,この問題提起は妥当すると思われます。請負の概念は「1」で検討するべきものだけれども,いずれの立場を採っても,引渡しが観念される類型は含まれるわけで,そのような類型において,――引渡しを観念できないものは請負の概念から排除するとなればそのような類型しかないわけですけれども,そうでない考え方を採ってもその類型においてはやはり,請負人が仕事を完成したけれども引渡しが未了であるという場合にはこの請負人の解除権は否定されるべきであるといえます。そうしますと,あえて,請負の概念についての一つの態度決定が当然にここの前提になっているということではむしろないのではないかと理解しております。   642条について申しますと,文言上ははっきりとはしていませんが,もともと,双方未履行双務契約の解除ということが前提であり,引渡しを観念しない類型で仕事が完成していれば,請負人の側で双務契約の中核的な債務は全て履行済みですので,双方未履行には該当せず,解除権は出てこないと考えられるわけですから,その観点からもここでの提案と請負概念に引渡しを観念しない類型を含む考え方を採ることとは別に矛盾はしないと思うのです。   請負の観念についてどちらかを採らないとこの問題が出てこないというわけではなく,かつ,そもそも請負の定義をどうするかというのは,それ自体として一つの問題ですので,その問題から当然に出てくる問題ではない,どちらの考え方から当然に出てくる問題では必ずしもないということを考えるならば,この7の論点は,請負について引渡しを観念するものに限るということを前提にしないほうがよく,いずれであってもこの問題は出てくるという整理にしたほうがよろしいのではないでしょうか。   そうした場合に,書き方ですが,疑義がないようにということからすると,むしろ「前記1参照」というようなことは書かなくてもいいのではないかと思います。表現の工夫の仕方はいろいろあると思いますけれども,表現の点で,独立した問題であることを反映させるような形に改めたほうがよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかには,よろしいですか。   それでは,部会資料24の8ページから13ページまでの「第46 委任」のうち,まず,「1 受任者の義務に関する規定」及び「2 委任者の義務に関する規定」について御意見をお伺いいたします。 ○高須幹事 冒頭の受任者の義務に関する規定の(1)のところでございます。   指図遵守義務についての書きぶりでございますが,頂いた資料では,指図遵守義務を明文化することについては「どうか。」という形で強く方針を打ち出した上で,その例外については「更に検討してはどうか。」と,こういうことになっております。   17回の議論のときに私も発言したわけですが,そのときも思いましたのは,例外をうまく書くということが指図遵守義務を立法化する上での一つの重要なポイントになるのだろうという点です。例外をうまく書けずに,ただ指図遵守義務だけを規定しますと,これは委任を受けることをなりわいとする者にとっては非常に厳しい義務を明文で課されることになる。弁護士だけと言うつもりは全くありませんが,公認会計士さんとか税理士さんとか,やはり依頼者との間で一定の緊張関係を持ちながら仕事をせねばならないという立場の職業の者にとっては,指図遵守義務だけが規定されていますという事態は,かなり難しい業務遂行を迫られることになると思いますので,この冒頭のところを「どうか。」とまで書くのは少し行き過ぎと考えます。今回はまだ慎重にしていただいて,例えばでございますが,よくBランクというんでしょうか,「方向でどうか。」のほうに落とすというようなことを考えてはどうかと思います。   取りあえず私なりに考えてみましたのは,(1)の本文3行目,「事務を処理しなければならないものと解されていることから,」まではそのままにしていただいて,その後のところですが,「例外的に指図に従わないことが認められる場合があるとの指摘に留意しつつ,これを条文上明示する方向で更に検討してはどうか。」と。この程度に収めていただいたほうが良いと考える次第でございます。 ○山本(敬)幹事 1の「受任者の義務に関する規定」の「(3)受任者の自己執行義務」についてですが,9ページの3行目で,「復委任を使用した-というのは少し妙な表現ですが-受任者の責任については,民法第105条第1項のように一律に復受任者の選任・監督についての責任のみを負うとするのではなく,履行補助者を使用した債務者の責任と同様の規律を設ける方向で,更に検討してはどうか」とされています。   この点については,結論として,現在の105条1項は問題であって,履行補助者責任に関する一般原則と区別する必要はないという意見を,私も第17回会議のときに申し上げましたけれども,その際には,この問題は「履行補助者責任に関する一般原則に委ねることとして,ここには特に規定しないという方向もあるのではないか」という意見を申し上げました。そうしますと,この9ページのように「履行補助者を使用した債務者の責任と同様の規律を設ける方向」というのは少し踏み込み過ぎのように思いますので,例えば「履行補助者を使用した債務者の責任と同様に扱う方向で」という程度にしていただけないかと思います。 ○岡本委員 まず,8ページの「受任者の指図遵守義務」についてでございますけれども,この点については,先ほどの高須幹事の御意見とほぼ同様でございまして,例外が適切に規定できるかには疑問もあるところでございまして,仮に例外が適切に規定できないとしましたらば,原則についてもあえて条文を設けないで,今までどおり善管注意義務の解釈に委ねるといったほうが妥当であるという考え方も十分あるところだと思いますので,先ほど高須幹事は「方向で」まで段階を落とすというお話でしたけれども,むしろ2段落目と同じように,方向性を全く示さないで,プレーンな記載にしてもいいのかなというふうに考えます。   それから二点目ですけれども,次の受任者の忠実義務のところです。受任者の忠実義務につきましては部会の議論で,委任の趣旨とか内容によっては忠実義務の現れ方にも濃淡があるということで,あえて規定しないで委任の趣旨とか善管注意義務の解釈に委ねたほうが柔軟でいい,そういった反対意見を述べさせていただいたところなんですけれども,こういった意見につきましても,善管注意義務との関係等に留意しながらという記載に反映はされているのかなとは思うんですけれども,ぱっと見たところ,反映の仕方として分かりにくいなと思いまして,できますれば,反対意見の内容ももう少し具体的に示していただいて,そのような意見にも留意しながらとか,そういった形で,若干分量は増えるかもしれないですけれども,積極論,消極論を公平に記載するという観点からすれば,そうしていただいたほうがいいのかなと思いました。 ○岡委員 二点だけ,簡単に。   8ページの1の(1)のタイトルですが,「指図遵守義務」というタイトルは不穏当で,部会資料と同じように,「善管注意義務」のタイトルのほうがよろしいという意見でございます。括弧書きの644条の前に,こういう言葉が突然出てくると非常に驚く弁護士が多くございました。   9ページの上から6行目の「方向で」という言葉については,山本敬三先生と同じように削除してほしいとの意見が弁護士会で多く出ました。 ○加納関係官 10ページの2の「委任者の義務に関する規定」の中の(2)の「受任者が受けた損害の賠償義務」のところですけれども,ここに書いていること自体に特段異論があるというわけではないのですが,ちょっと先走って恐縮ですけれども,21ページの5の「寄託者の義務」というところで,この650条3項との均衡という関係で議論がされています。その中で,いろいろな規定の見直し方というのがうたわれているわけですけれども,一番最後のところで,「例外的に」ということで,「受寄者が事業者で,寄託者が消費者である場合に限定して,」免責されることというようなのがあります。また先走って恐縮ですけれども,42ページの一番最後のところの消費者契約の特則というところで,どういうものをピックアップしていくかということが書かれている中で,今の寄託者の損害賠償責任に関する消費者契約の特則というのが挙げられています。   今回この資料を頂きまして,この最後の特に42ページのところはどういうのがあるかという観点で,私どものほうでもチェックをしてみたんですが,その中で,この民法661条の寄託者の損害賠償責任ということについて,これがあるということで,これが650条3項との均衡という観点で議論されているのだとすると,650条3項のほうでも,例えばですが,消費者が委任者である場合の損害賠償の範囲をどうするかということが,本当はあってもいいのかなという気がいたしました。これは部会では申し上げていない意見で,大変恐縮なんですけれども,全体を眺めると,そういう形で思いましたので,意見としては,最後の42ページの「消費者契約の特則」のところでそれを付加したらどうかという形で止めさせていただこうと思いますけれども,この650条3項のところで,前倒しになりますけれども,申し上げたいと思います。 ○筒井幹事 加納関係官から御発言いただいた点ですけれども,論点項目の配列の問題については,これまでのたたき台では,昨年1年間を掛けて議論してきたその順番を維持して並べております。しかし,取り上げていなかった論点を最後の方で拾い上げたこともありますので,最終的に論点整理の御決定を頂く際には少し順番を入れ替えたほうがよいのではないかという考えを今の時点でも持っております。   論点の配列が分かりにくいという問題意識には,きっと様々な方向のものがあって,加納関係官から御指摘があったような消費者・事業者に関する規定についても,後ろにまとめて置いておくのか,関連する個別の項目に織り込んだほうがいいのかなど,いろいろ御意見があり得ると思います。ですので,私の方からもまた改めて問題提起をさせていただこうと思っておりますけれども,必要に応じて御発言いただければ幸いだと思っております。 ○笹井関係官 先ほどの岡委員の御指摘ですけれども,「指図遵守義務」という文言が不適当ではないかという御指摘だったと思うんですが,ちょっとその趣旨がよく分からなかったものですから。   確かに部会資料17-1では「善管注意義務」と書いていたんですけれども,善管注意義務というと非常に幅広いものを指しておりまして,中身をより適切に表現するには「指図遵守義務」と書いたほうが適切ではないかということで変えた次第ですが,そのどういうところが不適当かということです。 ○岡委員 善管注意義務の内容の一つとして,指図遵守義務という問題提起がされていると理解しています。しかしこのような見出しにしてしまうと善管注意義務をなくして,指図遵守義務だけに取り替えてしまうのかという誤解を招きやすいと,そういう理由でございます。 ○鎌田部会長 逆に,この1の(1)のタイトルのうち「(民法第644条)」という部分がなければまだいいとも言えますね。その下に善管注意義務と指図遵守義務の関係は文章で書いてありますから,括弧して民法第644条というふうに書いてあることが御指摘のような誤解を招く原因かと思いますので,その辺のところを少し工夫させていただきます。 ○中田委員 二点あります。   第一点,今のタイトルの点なんですけれども,指図遵守義務自体について疑義があるかのような御発言もあったかと思いますが,指図遵守義務があること自体については多分異論がないと思います。善管注意義務の一つの内容にすぎないということで。そうだとしますと,指図遵守義務が善管注意義務の一内容であるということが本文にありますけれども,それを最初から分かるようにするのもいいのかなという気もします。ただ,そこは中を見ればいいだけのことですから,こだわりません。   もう一点は,その次の忠実義務です。(2)の5行目に「善管注意義務とは別に,任意規定として」という言葉が入っております。ただ,この「任意規定として」というのが,やや印象が強いのではないかと思います。   信託法改正の際も,受託者の忠実義務の任意規定化が検討されましたが,忠実義務を全面的に免除するということまでは認められていないわけでありまして,もし忠実義務を全面的に免除するというと,それはもはや信託ではないとか,あるいは,そのような特約については錯誤無効であるとかというようなことになっていたと思います。   ところが,ここで「任意規定として」と書きますと,忠実義務を全面的になくすという特約も有効であるかのようにも読め,更には,そうだとすると,善管注意義務についてもそれは任意規定であって,全面的になくすることができるのかというような問題も出てくるかもしれません。そこで,この「任意規定として」という言葉はむしろ取ってしまって,留意点の中に,この義務を減免する特約の効力にも留意しながらといいますか,留意事項の中にそれを入れておいたほうが穏当ではないかと思います。 ○新谷委員 同じく受任者の忠実義務のところです。   17回部会において,委任の力関係に着目して,役務の提供先が優越的地位にある場合,弱い立場にある役務の提供者に関して,受任者に忠実義務を課せば役務提供先がより一層優越的地位を強めて,不当な結果を招来しかねないということを御指摘申し上げました。   留意事項の中に,弱い立場にある役務提供者に忠実義務を課すことの妥当性といったような文言を入れることを,是非御検討いただければと思っています。 ○野村委員 先ほどからところどころで,契約当事者の一方が弱い立場にある場合ということについての発言がいろいろありました。そこの文言を直せということではないのですけれども,民法でどこまで規定するのが妥当かを考える必要があるように思います。将来的に,カテゴリカリーに片一方が弱いというのであれば,それを民法の中に反映させればいいと思うのですけれども,弱い立場にある者とそうでない者があるというときに,どこまで民法として弱者保護の規定を入れるのかというのを,どこかでまとめて,抽象的に議論したほうが全体としての統一性が取れるのではないかと思いましたので,発言しました。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○笹井関係官 今の新谷委員の御意見ですが,ちょっと趣旨がよく分からなかったんですが,弱い立場にある受任者には忠実義務を負わせるべきではないという,そういう御意見があるということでよろしいですか。 ○新谷委員 忠実義務については,明文化することによって,優越的地位にある者が,これを濫用することにより,現状よりも更に不当な結果を招く可能性があるということについて,今後の検討において,このようなケースについても是非留意をしていただくように,どこかに留意事項として記載をしていただきたいという趣旨です。 ○笹井関係官 今おっしゃったように,忠実義務を規定すると受任者の地位が現状より後退するという御指摘だと思うんですが,現行法上も受任者は忠実義務を負っているのではないかと思うのですが。 ○鎌田部会長 法的に後退するというよりも,それを濫用する危険が増すという,そういう形での影響にも配慮するよという御趣旨ですね。 ○新谷委員 はい。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   よろしければ,14ページから15ページにかけての,「3 報酬に関する規律」及び「4 委任の終了に関する規定」について,御意見をお伺いいたします。 ○松岡委員 10ページ,11ページにかけて,報酬の支払方式の中の「成果完成型」という表現が(2)と(3)に出てきますし,さらに,同じ表現が14ページ,15ページの報酬に関する規律という役務一般の受皿規定のところにも出てきます。   ちょっと気になるのは,特に「成果完成型」という表現が委任のところに使われますと,請負との関係が少し混乱するのではないかという気がいたします。ここでおっしゃりたいのは,成果があってそれに報酬を支払うという話ではなくて,やるべきことを取りあえずやったら,成果があろうがなかろうが,まとめて払う場合と,そのやるべきことを少しずつ積み重ねていって,そのたびに払う方法と,要するに二通りの対価支払のパターンがあるということであって,成果の有無は直接は関係がないのではないかという感じがいたしております。私の誤解かもしれませんが,御検討いただければと思います。 ○笹井関係官 例えば弁護士さんに訴訟委任をした場合に,成功報酬を支払うというような場合は成果に対して支払がされるのではないかと思います。それは請負ではなくて委任と理解されているので,そのような契約を意識していたのですが,整理をしたほうがよいかもしれません。 ○深山幹事 今の議論に関係して。私は,その報酬の支払方式のところで,成果完成型というのは,松岡先生御指摘のとおり,請負との関係もあって,必ずしも適切ではないのではないかなと思っております。   その理由の一つとして,成果完成型という言い方は,一定の業務が功を奏したといいますか,100%功を奏したことに限らないのかもしれませんけれども,一定程度であれ,その結果の出来高を見ているんだと思うんです。履行割合型のほうは,もちろんそれとぴったり一致する場合もあるんでしょうけれども,やるべきことは全てやったけれども結果が出ないという場合もあるわけで,どうもこの二つをパラレルにすると,同じ物差しではないような気がします。   つまり,成果完成型のほうは飽くまで結果に対して,全部なり一部なりできたかという結果のほうを見ているし,履行割合型のほうはアクションのほうを見ていて,業務として100やるうちの50やったのか,70やったのかというのを見ていて,一致する場合もあるけれども,一致しない場合もあるのではないか。ということを考えると,やはりこのパラレルの言葉の並べ方というのは,もう少し工夫していただいたほうがよろしいのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 中身のほうの工夫なのか,名前,名付けの工夫なのか。名付けでしたら,名案があればお出しいただけたらと思います。 ○中田委員 恐らく,その中身と名付けと両方,密接に関係していると思います。これは既存の立法提案についてどう考えるかという文脈ですので,その名称を変えてしまうと,その中身との不一致も出てきて,かえって混乱を招くのではないでしょうか。   委任においても,先ほど笹井関係官から御指摘のありましたように,成功報酬のように成果完成型というのもあるわけですので,これはこれで書いておいて,もし必要があれば補足説明等で対処していただくというのでよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 成功報酬が典型なら,成功報酬型と言ったほうが分かりやすいかもしれないという気もしますけれども,少し考えさせていただきます。   ほかに,いかがでしょうか。 ○新谷委員 11ページの(4)の「委任事務の処理が不可能になった場合の報酬請求権」についてです。先ほど請負の項でも発言をさせていただきましたが,委任事務の処理が不可能になった場合の報酬請求権に関して,現行法よりも受任者の権利が後退するということについて,非常に懸念を持っています。ですから,委任に関して536条の2項を残すことについて今後の検討の対象とするために,どこかに記述を入れることについての検討を是非お願いできないかと思っています。 ○山本(敬)幹事 先ほどの点と少し関わるのですが,11ページの(4)の「委任事務の処理が不可能になった場合の報酬請求権」についてですが,下から一つ目の段落で,「また,判例は,請負契約について,仕事の完成は不可能になった場合であっても,既に行われた仕事の成果が可分であり,かつ,注文者が既履行部分の給付を受けることに利益を有するときは,特段の事情のない限り,既履行部分について請負契約を解除することはできず,請負人は既履行部分について報酬を請求することができるとしているが,このような判例法理は委任契約についても同様に妥当すると考えられる」としています。   しかし,この判例は,請負のように,仕事が完成して初めて報酬を請求できるというタイプの契約を前提にしたものだと思います。つまり,仕事が完成しないと報酬は請求できないからこそ,途中で仕事の完成が不可能になったときは,報酬は請求できない。だから,仕事の成果が可分であるだけでは報酬は請求できない。更に注文者が既履行部分の給付を受けることに利益を有するときに限って報酬請求を認めると理解できます。   そうしますと,この判例法理を委任契約全般に及ぼすことはできないと考えられます。  実際,部会資料17-2の44ページの説明を見ますと,「このような考え方は成果完成型の報酬支払方式を採る委任にも妥当する」と書かれています。したがって,ここでも,先ほどと関連するのですが,例えば,「委任の報酬の支払方式を成果完成型と履行割合型に分類して規律する立場から,成果完成型の委任契約についてはこのような判例法理が同様に妥当する」というような表現にしておく必要があると思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○山本(和)幹事 12ページの4も対象に入っているんでしょうか。4の(3)のところですけれども,表現ぶりだけのことですけれども,最後のところで,この653条2号について,「このような規律を維持すべきかどうかについて,検討してはどうか。」という問い掛けになっております。   選択肢としては,653条2号を維持するということと,維持しないということは結局,これを削除して,全面的に破産法の双方未履行の双務契約の規律に譲るということかと思いますが,そういう選択肢もあると思いますけれども。さらに,請負並みというか,委任者が破産した場合に受任者の側から解除権を認めるという選択肢も,その限りで民法に規律を残すという考え方もありそうな感じがして。そのあたりの選択肢,もし書けるようであれば書いていただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   ないようでしたら,「5 準委任(民法第652条)」及び「6 特殊の委任」,部会資料24の12ページから13ページにかけてでございますけれども,この部分についての御意見をお伺いします。 ○山本(敬)幹事 13ページの(3)の「他人の名で契約をした者の履行保証責任」についてですけれども,ここでは,「無権代理人が,相手方に対し,本人から追認を取得することを保証したときは,当該無権代理人は当該行為について本人から追認を取得する義務を負うことを条文上明示すべきであるとの考え方がある」として,「このような考え方の当否について,更に検討してはどうか」とされています。   この点については,第17回会議のときに,無権代理人が本人から追認を取得する義務を負うのは,無権代理人がこのように保証した場合に限られない。むしろ,無権代理人が無権代理であることを知らなかった場合でも,後で無権代理であることが判明したときは,無権代理人は常に本人から追認を取得する義務を負うのではないのか。したがって,ここでこのような保証の場合について特に規定すると,それ以外の場合はそのような義務を負わないのではないかという疑義が生じることになるという問題を指摘いたしました。   これは,規定がなくても同様の結論を導くことはできるとか,規定を設ける必要はないという意見とはやはり異なると思いますので,このような問題点も明記しておいていただければと思います。 ○松岡委員 今の山本敬三幹事の御発言と同旨です。ここのタイトルの誤字は直していただきたいと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですね。 ○笹井関係官 先ほどの山本敬三幹事の御意見についてですが,ちょっと私の理解が十分ではないのだと思うんですが,先生がおっしゃったことは,規定がなくても当然ではないかということではないのですか。 ○山本(敬)幹事 むしろ,このような規定を置くと,こうした履行保証をしたときに限り追認を取得する義務があるかのように読まれるおそれが出てくる。そうではなく,それ以外の場合も含めて,追認を取得する義務があるということではないのか。そうすると,むしろこのような規定は設けないほうが望ましいのではないかという趣旨です。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○笹井関係官 はい。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   それでは,先に進ませていただきます。部会資料24の13ページから16ページまでの「第47 準委任に代わる役務提供型契約の受皿規定」のうち,まず,「1 新たな受皿規定の要否」から「3 役務受領者の義務に関する規律」までについて御意見を伺います。 ○大島委員 13ページの,「新たな受皿規定の要否」についてでございますけれども,中小企業においては契約書を作成しない取引も少なからずございますので,民法のデフォルトルールが適用される局面は少なくないと思います。   規定化については,各界からの意見を聴き,特に実務を踏まえた検討をすべきと申し上げてまいりました。14ページの第1パラグラフの下から4行目に「これらを踏まえ」という文言がございますが,この表現では,実務を踏まえたというような意味合いが弱いのではないかと思います。つきましては,省庁から公表されている役務提供型契約のトラブル事例なども参考になるかと思いますので,「取引実態も踏まえながら」という文言に置き換えるなど,より具体的な明示をしていただければと思います。 ○新谷委員 14ページの3行目から4行目にかけて,「準委任の規定がいわば受皿としての役割を果たしてきたとされているが」という記述があります。役務提供型契約のうち典型契約に該当しないケースについては,準委任がその受皿としての役割を果たしてきたというのは確かだと思いますが,全てがその準委任に該当するというわけではなく,従来は,混合契約や,無名契約として扱われるケースもあったと思います。これは第一巡目の議論の際にも指摘を申し上げたところです。   そのため,ここの書きぶりについては,「役割を果たしてきたとされているが」という記載を,「役割を果たしてきたとの見解もあるが」という書きぶりに修正することについて,御検討を頂きたいと思っています。 ○筒井幹事 本日御欠席の松本委員から発言メモが提出されておりますので,読み上げます。14ページの,「2 役務提供者の義務に関する規律」の部分です。   第2パラグラフの「例えば,」以下の文章,「契約で定めた目的又は結果を実現する合意がされた場合には役務提供者はその目的又は結果を実現する義務を負い,このような合意がない場合には契約で定めた目的又は結果の実現に向けて善管注意義務を負うことを規定すべきであるなどの考え方」は,請負の定義を変えて,成果の引渡しを伴わないものを請負から排除するとの立法提案(第45の1)を採用した場合に初めて問題となる事柄であるから,「請負の規律対象を成果の引渡しが観念できる類型に限定するという考え方を採った場合には,」という文言を「例えば,」の次に挿入するべきである。 ○大村幹事 違う点ですけれども,よろしいですか。   14ページの,先ほども話題になった1の受皿規定の要否というところですけれども,ここの部分と12ページの5の準委任の規定の部分との連絡を図っていただいたほうがいいのではないかと思います。   12ページの5のところでは,準委任の規定の適用範囲を限定すべきではないかという考え方を,どう考えるかということが指摘されているわけですけれども,この考え方というのを,14ページの先ほど新谷委員から御指摘があった「いわば受皿としての役割を果たしてきたとされているが」の後のどこかにリファーする形で,組み込んでいただくのがよいのではないかと思います。 ○中田委員 先ほど新谷委員から,準委任の規定が受皿となっているという見解もあるがというような,修正の御提案がございましたけれども,ただ,一般にはやはり,準委任が広く受皿になっているというのは,これは学説・判例の共通の理解ではないかと思いますので,そのような見解があるというのは,やや過小評価ではないでしょうか。 ○内田委員 新谷委員の御趣旨を踏まえると,準委任のほかに無名契約とか混合契約として対応されていた場合もあるということが分かるように書ければいいのではないかと思います。 ○笹井関係官 先ほどの大村幹事の御指摘の御趣旨を確認させていただきたいんですけれども,これも私の理解が誤っているのかもしれませんが,示されている立法提案や法制審での審議を私なりに理解したところでは,新しいサービス等に対応するために準委任に代わる受皿規定を設けると,その新たな規定との関係で準委任の範囲を調整しないといけないという考え方が示されているのではないかなと理解しておりまして,むしろ第47のほうが論理的に先行しているのではないかと考えておりました。   そういう意味では,第47の中に準委任についてリファーをするという場合に,どういった形でリファーをしたらよいのかということについて,もし御示唆があれば御教示いただきたいのですが。 ○大村幹事 どちらが先なのかは分かりませんけれども,沿革的には準委任の規定の適用範囲は狭かったのだという理解も学説上示されているところだろうと思います。それを出発点とすると,12ページの5のほうが先で,そして14ページのほうが後だということになると思いますけれども,14ページのほうで現状から出発して考えるのならば,12ページのほうが調整の対象になるという考え方ももちろん成り立つと思います。   いずれにしても,どこかで連絡をつけていただいて,これらが関連しているということを示していただければと思います。 ○山川幹事 別の点ですが,よろしいでしょうか。   14ページの1の第1段落の最後の部分,「更に検討してはどうか。」の前ですが,この部分の議論の際に,先ほど来問題になっております雇用類似の役務提供契約の扱いについて,いろいろ議論がなされたと思いますが,16ページの8にもちょっと書いてあるんですが,議事概況等を見ても,どちらかというとこちらでの議論が多かったように思います。そこで,「更に検討しては」の前に,例えば,「役務受領者の立場が強い場合と,雇用類似の役務提供契約のように役務提供者の立場が弱い場合とは一律に扱えないのではないのかという指摘があることも留意しつつ,」などのような形で,先ほど松本委員が書面提出されたものと一部似たような意味を含みますけれども,両者を一律に扱えないことに留意するということを,ここにも入れてはいかがかと思います。   もう一つは,これは補足説明レベルの問題ですが,雇用類似の役務提供契約というのは一体何を指すのか。議事概況の中には,他の契約形式を採っていてもというふうにありますけれども,恐らく,現行法の下での雇用契約についても,形式ではなくて,実質に照らして該当性を判断するというのが一般的な見解ではないかと思いますので。雇用類似というのは,ここでは,雇用に該当しなくても,それに類似するという意味だと思います。補足説明のどこかで,例えば,他の契約類型に該当しても,とか,あるいは,雇用契約そのものには該当しなくてもという形になるかもしれませんが,そのような形で,雇用類似の役務提供型契約の意味が分かるような箇所があったほうがよろしいのかなと思います。 ○青山関係官 今の山川幹事の御意見には賛同いたします。   別の話ですけれども,第47の「2 役務提供者の義務に関する規律」,14ページですけれども,この項目を部会で議論したときに,今出た雇用類似の場合などは,裁量権がある委任などと違って,役務提供者が使用従属に属している場合ですので,善管注意義務などを課すというのは,現行よりも義務が重くなるということで,懸念の意見を申し上げたかと思います。   そういうことについては,この今回の中間整理たたき台でも,1パラ目の2行目の,多様な役務提供者の義務の内容を適切に規定できるかについても,のような箇所で恐らく表現されているのだと思うのですけれども,2パラ目にいくと,結果実現義務か,善管注意義務かで検討するようなニュアンスになってしまっているように読めますので,そのような,善管注意義務というより重い義務を課してしまっていいのかという疑問の意味を込める意味でも,例えばなんですけれども,せめても最後の,善管注意義務を負うことを規定すべきとの考え方の次に,「考え方の当否」ぐらい入れていただくと,少しニュートラルになるのかなと思いました。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   それでは,部会資料24の14ページ以下ですが,「4 報酬に関する規律」から最後の「8 役務提供型契約に関する規定の編成方式」までについて御意見をお伺いします。 ○奈須野関係官 4の報酬に関する規律のうち,(2)の報酬の支払時期ですが,この文章の中では,報酬は後払いが原則であるとする立場からの立法提案が紹介されています。しかし,部会の場では私から,世の中には報酬が前払のものが結構多く,クリーニング屋であるとか,英会話教室であるとか,エステティックサロンであるとか,こういったものは大抵前払のサービスであると紹介しました。こういったものについては,役務の提供が不可能になった場合の報酬請求権の扱いについてよく紛争になるので,報酬が前払である場合の規律について定める必要があるのではないかと申し上げましたので,この点も確認いただければと思います。 ○笹井関係官 今の奈須野関係官の御意見についてですが,御趣旨は,一定のサービス契約については前払にするということなのか,一般的に前払にするということなのか,あるいは,給付保持力まであるものとして前払してしまうということなのか,ちょっとその辺を確認させていただきたいのですが。 ○奈須野関係官 実態として前払によって行われている役務提供が多くあり,事業者が途中で倒産し,あるいは注文者が成果に満足しなかったことにより契約が解除されたとき,その報酬請求権がどこまで認められるかについては,頻繁に紛争となっています。そこで前払を行った場合において,それが解除された場合の取扱いについて,新たな規定を設けて明確化するニーズがあるのではないかということを指摘するものです。   デフォルトを変えて,報酬を前払とすることを定めてほしいということを言っているわけではありません。 ○笹井関係官 そうだとすると,むしろ(3)に関連するということでしょうか。つまり,前に払ってしまっても,結局報酬請求権が発生しなければ返さないといけないというのは,(3)からの論理的帰結なのかなというふうな感じがしまして。 ○奈須野関係官 はい。そこは(2)で書くか,(3)であるかは,整理の問題かと思います。   前払のものもあり得るということが書かれていないと,読んだ人に,前払の場合の取扱いがどうなるのか,倒産したり解除されたときに受け取った報酬を全額返金しなければならないのかという疑問が湧いてくるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 分かりました。少し検討させていただくことにします。 ○筒井幹事 本日御欠席の松本委員の発言メモを読み上げます。16ページ,「5 任意解除権に関する規律」の部分です。   第2パラグラフにおいて,役務提供者による任意解除権を認めるかどうかについてのみ,「役務提供者を長期間役務提供契約に拘束することの妥当性などに留意しながら」との留意事項を記述しているが,この点は役務受領者についても同様である(取り分け消費者契約の場合)。したがって,16ページ本文1行目の「役務受領者による任意解除権を認めるかどうかについて,」の次に,「役務受領者を長期間役務提供契約に拘束することの妥当性,」を補い,「その理論的な根拠」を「任意解除権の理論的な根拠」に変更すべきである。 ○新谷委員 今の松本先生の御指摘の部分に重なりますので,5の任意解除権に関する規律について先に申し上げます。   17回の論議のときに,役務の提供者が個人で自ら有償で労務を供給するケースについて,受領者側の任意解除権の行使については,不当な結果を招く可能性があるということを御指摘申し上げています。そのため,この部分の最初のパラグラフのところに,役務提供者が弱い立場にある場合の役務受領者による優越的地位を利用した解除権濫用のおそれといった表現を盛り込んでいただけないか,御検討いただければと思っています。   また,先ほどの松本先生の御指摘のあった,第2パラグラフの1行目の「役務提供者を長期間役務提供に拘束することの妥当性」という記載がありますが,これについては,現在の表現のままだと役務提供者一般についての意見というふうに見られかねないと思いますので,「役務提供者」の前に,「役務提供者が自ら有償で労務を供給する個人である場合」といったただし書を付けたほうが,より鮮明になるのではないかと思っておりますので,御検討をいただきたいと思います。   加えて,15ページの4の(3)の,役務提供の履行が不可能になった場合の報酬請求権の部分については,536条の2項の取扱いについて,請負,委任のところでも申し上げたのと同様の記述について,御検討をお願いしたいと思います。 ○大村幹事 16ページの一番下の8についてなんですけれども,まず,3行目の冒頭の「受皿契約」というのは多分「受皿規定」の誤記なのではないかと思いますので,御確認をいただきたいと思います。   その上で,これも前の部分との対応関係についてですけれども,ここで受皿規定の置き方として,限定的な典型契約を設ける方式,それから,より抽象度の高いものを設ける方式,この二番目のものが中二階的な規定を設けるというものに対応するのかも知れませんが,それから,三番目に総則を置くというような考え方が示されているかと思います。   いずれにせよ三つの考え方がここに示されているわけですが,この部分と,資料の冒頭1ページの,44の最初のパラグラフの終わりの部分の対応関係が,ちょっと分かりにくいように思います。44の最初のパラグラフの終わりの文章は,「このような問題に対応するため,役務提供型に属する新たな典型契約を設ける考え方や,役務提供型の契約に適用される総則的な規定を設ける考え方が示されているほか」とありまして,「このような考え方を採用する場合には,これに伴って既存の典型契約の機能分担の見直しが必要になることもあり得る。」となっています。   先ほどここをやったときに,機能分担の見直しとは何を言うのかよく分からなかったのですけれども,代替案がなかったので黙っていたのですけれども,この機能分担の見直しということが,総則,各則というのとは違う,中二階的な規定を設けるというようなことを想定しておっしゃっているのならば,この16の8との連絡を付けていただきたいと思います。   他方,そうではなくて,先ほどちょっと話題にもなりましたけれども,14ページの一番上の部分の役務提供型の契約について,各典型契約類型の適用範囲が変わってくるという話がございます。この部分を1ページが指しているのならば,ここをリファーしていただきたい。あるいは,そのほかのものを指しているのならば,そのことをもう少し分かりやすく書いていただきたいというのが御要望です。 ○笹井関係官 ここは,何かを指しているかというより,いろいろな考え方があって,新しいサービス契約等にどのように対応していくかによって変わってくるだろうと思います。例えば別の典型契約を作るのであれば,今その典型契約を含んでいるとされる既存の典型契約の範囲が変わってくるでしょうし,あるいは総則的な規定を設けるのであれば,それと整合を図るために既存の典型契約の範囲が変わってくるかもしれないし,いろいろな可能性を含めて見直しが必要になることもあり得るという趣旨で記載いたしました。ただ,今の御指摘を踏まえて,少し表現を工夫したいと思います。 ○佐成委員 同じ16ページ,8のところの編成方式について,修正の御意見を頂いておりますので,御検討いただければと思います。   一番最後のところ,「これらの編成の方式については,規定の具体的な内容,雇用類似の役務提供型契約の扱いなどに留意しながら,更に検討してはどうか。」となっていますが,今,大村幹事がおっしゃったようなところとも関連するかもしれませんけれども,「既存の典型契約との適用関係」ということを留意事項として加えていただきたいということでございます。 ○青山関係官 報酬について,ちょっと戻って恐縮なのですが,(1)の「報酬の支払方式」で,委任のときにも先ほど議論があった,報酬方式の分類の件です。成果完成型と履行割合型に分けるとあります。   特にこの役務提供など雇用に近いものもあり得るものになると,後者の履行割合型についての捉え方について,部会でも意見を申し上げていました。すなわち,初めから仕事を決めて契約する委任などと違って,役務の提供そのものを契約の内容とする労務履行型,雇用類似型の場合の契約については,初めから一定量の仕事などを決めているわけではございませんので,労働力の履行,提供そのものが履行なのであり,その履行の割合というのはなかなか観念できないのではないのかという意見は申し上げたところです。   1の定義のところ,「役務提供そのものに対して報酬が支払われるもの」という説明はいいと思うのですけれども,そうなると履行割合型という表現が何となく違う。必ずしも割合という観念されない場合を考えると,いいのかなと思っておるのですけれども。先ほど,これはもともと立法提案にあったワーディングということで話もありましたので,私のほうでもこの表現を変えるべきというのかはちゅうちょしているところですが,仮に何か対案を出せということであれば,例えば「役務提供型」なのか,「役務対価型」なのか,そのような感じかなと思って考えておりました。   そういうふうに考えると,(3)の「役務提供の履行が不可能な場合の報酬請求権」の2パラのほうでも,①に,多分,履行割合型を想定した,「履行不能の原因が役務受領者に生じた事由であるときは既に履行した役務の割合に」,これも割合と使っていて,ちょっと気になるのですけれども。でも,こういうものが適切な,該当する場合もあるので,これが全体不適当ということはなかなか言えないのですけれども,何か表現の工夫はできないかなということで,ちょっとすみません,ここは対案はないのですけれども,気になったので,申し上げるだけ申し上げておきます。 ○山本(敬)幹事 念のための指摘なのですが,15ページの(3)の「役務提供の履行が不可能になった場合の報酬請求権」についてですが,下から一つ目の段落で,請負の判例法理が役務提供契約についても同様に妥当するということが書かれています。この点は,先ほど委任について指摘させていただいたことと同じことが妥当しますので,こちらも同様の修正をお願いいたします。 ○岡本委員 16ページの「任意解除権に関する規律」の第2パラグラフ。先ほど新谷委員のほうから,ここの記載については,役務提供者が自ら役務を提供する個人である場合に限定したほうが明確になるのでないか,そういった趣旨のお話があったかと思うんですけれども,役務提供者を長期間役務提供に拘束することが妥当でない場合というのは,個人である場合以外にもあり得るんだろうと思いますので,ここは個人に限定しないほうがよろしいのではないかと,そういう意見でございます。 ○筒井幹事 先ほどの新谷委員の意見と,それからただいまの岡本委員の意見とは,同じ方向のものだと思いますので,両方の意見があり得ることをくみ取って表現する方向で,検討させていただきます。 ○中田委員 16ページの8の「役務提供型契約に関する規定の編成方式」です。   先ほど大村幹事から,3種類の方式が示されていて,二番目のが中二階型だという御理解が示されたのですけれども,私は,三番目が中二階型かなというふうに理解しておりました。   その理解に立った上でなんですけれども,その三番目について,「無名契約としての役務提供型契約にも適用する」と書いているのですが,この無名契約という趣旨がよく分かりませんでした。ここで考えられているのは,役務提供契約自体を総則性を持つ一つの典型契約とするものだとしますと,それに含まれるものは無名契約ではないということになるのではないかと思います。そうしますと,ここは単純に,「これをその他の役務提供契約にも適用する方式」というように改めたほうが分かりやすいのではないかと思います。 ○大村幹事 御説明を伺って,中田委員の御理解のほうがよろしいのかもしれないと思いましたけれども,私は,御指摘の最後の部分の書きぶりから,この最後の部分が総則的な規定を置くということなのかと思っていたしました。   いずれにしても,考え方がどういうことになっているのかを整理していただければと思います。 ○内田委員 ここの無名契約というのは,現行法の下で無名契約として処理されているものにという趣旨です。 ○中田委員 分かりました。 ○内田委員 あと,この三つのカテゴリーの中のどれが中二階かというのは,中田委員のおっしゃったとおりだと思います。 ○中田委員 私の趣旨も,今,内田委員のおっしゃったようなことでして,その他の役務提供契約というのは,雇用,請負,委任,寄託以外のという趣旨ですので,それは同じことになると思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,部会資料24の17ページ及び18ページの「第48 雇用」について御意見をお伺いいたします。 ○新谷委員 総論の第1パラグラフの最後のところに,「雇用に関する規定は労働契約についての一般的な規定として」という記載があります。一巡目の論議のときにも申し上げましたが,労働契約については,契約形式が請負であろうが委任であろうが,就労の実態において,使用されて労働し賃金が支払われると認められれば,労働契約に当たるというのが通説だと考えています。そのため,雇用に関する規定を労働契約についての一般的な規定と規律されると,現在の運用と違うことになりかねないと思いますので,「労働契約についての一般的な規定」という部分については削除していただければと思います。   また,「報酬に関する規律」の(1)の,ノーワーク・ノーペイの部分について,これも17回の会議の際に,実際の運用においては,例えば育児や介護の休業の場合等々,現実にはノーワークになっていても報酬が全額支払われるケースがあるといった実態を御紹介する中で,ノーワーク・ノーペイについて明文化することについての懸念を申し上げたところです。たたき台では2行目で,ノーワーク・ノーペイの原則が判例・通説上認められているという書きぶりになっています。確かに最高裁の判例はありますが,通説上も認められるというところについては,労働法学会には一部有力な反対説もあると承知していますので,ここのところについてはもう一度確認をしていただければと思います。   同じく(2)の「労務が履行されなかった場合の報酬請求権」について,536条2項の関係で,雇用契約に関する記述をしていただきましたが,4行目に「このような解釈を条文の文言から読み取ることは容易でないという問題点が指摘されている。」という記述があります。この指摘についても,特に労働法学会での現在の学説の中身がどうなっているのかということを,検証していただきたいと思いますので,事務当局のほうで御対応をお願いしたいと思っています。 ○山川幹事 まず,今,新谷委員の御指摘になった17ページの2の「報酬に関する規律」ですが,通説とは何を言うかというのは難しい面がありますけれども,一応624条に該当するような取扱い,あるいは,労務を履行しなければ報酬請求権は発生しないということ自体は認められているように思います。ただ,先ほど新谷委員の挙げられた家族手当や,退職金などもそうかもしれませんけれども,合意によって賃金を発生させることはもちろんできるとされています。そういうことも排除するような意味でのノーワーク・ノーペイの原則は存在しないということも,またかなり一般的に認められていますので,例えばですけれども,合意により,あるいはそれ以外の発生根拠もあるかもしれませんので,合意等により報酬請求権が発生する場合は格別,といったような書きぶりですと,現在の一般的理解に一致するのではないかと思います。   あと,もともと発言しようと思っていた点でありますけれども,17ページの1の,こちらは論点整理の文言の問題なんですが,一つは,「将来的には民法の雇用契約の規定と労働契約法の関係の在り方が検討課題となり得るが,」とあります。この具体的な意味は,恐らくは,以前発言させていただいたところでもありますが,将来的には両法の統合が問題になるということではなかろうかと思います。しかし,この点は,そもそもこの審議会だけで決定できるものではありませんので,補足説明などにおいて,例えば,双方の統合が問題となり得る,あるいは検討課題となり得るという意見もあったといったことを,問題の背景が分かるように書いていただければと思います。   もう一つ,この17ページの1の第1パラグラフ目ですけれども,当面,雇用に関する規定は民法に置くという点で,表現ぶりも若干検討を要しますが,一つは,では,そうすると2以降の検討課題はどう位置付けられるのかという問題が生じてしまいます。当面は基本的にはそのままだけれども,一部手直しをすることがあるかもしれないというスタンスかと思いますので,例えばですけれども,「引き続き民法に置く」というところについて,「引き続き民法に置き,民法固有の規律事項について当面改正を要する事項があるかどうか,更に検討してはどうか。」ということで,2以降とのつながりができるようにしてはどうかと思います。   実は,日弁連の労働法制委員会で若干お話をする機会があったのですが,例えば民法627条3項のような規定を年俸制の場合に適用すると,3か月前に解雇予告が必要となったり,あるいは労働者側が辞職する場合は3か月前までに辞めると言わないといけなくなったりするという点など,いろいろな問題点も指摘を受けました。それらの問題点自体は,論点整理に盛り込むというより,多分パブリックコメント等で出てくると思いますが,当面の間検討すべき事項というのは一体何なのかという点について,更に議論が出てくる可能性があると思いますので,そのことを示すため,あるいは2項との関係を明確にするためにも,当面の検討事項,改正を要する事項についての検討を引き続き行うという点をお書きいただいてはどうかと思います。   すみません,ちょっと長くなりますけれども,あとは17ページの2の(2)ですけれども,先ほど若干御指摘がありましたが,最後の行,「現在の判例・通説との連続性」という書きぶりについて,これは,17回目のときではなかったかもしれませんが,労務提供が不能になった場合の536条2項の適用については,この条項だけではなくて,受領拒絶の効果ですとか,それから前回問題になりました履行の提供の問題といった,いろいろな論点が絡み合っているものですから,単純に,この条項に関する判例・通説とは言い切れない部分があるかと思います。そこで,例えばですけれども,「現在の判例・通説及び労務受領が拒否された場合の一般的な取扱いとの連続性」ということで,もうちょっとふわっとした,現在の取扱いとの整合性がとれるような形ではどうかと思います。   あとは,これは補足説明の問題ですが,義務違反という要件の書き方については,いろいろな議論があって,起因する事由というような提案もありますが,ここでは労基法26条の解釈との整合性が問題になるということも,補足説明で分かるようにしていただければと思います。あと,若干発言したところですが,例えば「合理的とは言えない理由により」といった,ほかの書きぶりもあるのではないかということも,もし可能であれば,補足説明の中で示していただければと思います。 ○青山関係官 1の「総論」ですが,先ほど新谷委員が言われたのと同じ部分,こちらも気になったことがあります。最後の,「雇用に関する規定は,労働契約についての基本的な一般規定として」という部分。新谷委員は削除をという御意見でしたけれども,当方もまず,もともとの17-2の部会資料とかにもなかったし,そういうワーディングにするとの議論がなかったから,不思議に思いました。もともとの部会資料の詳細版では,労働契約の基本的な補充規範としての意義を有しているという表現がありましたが,確かにそれは労働契約法から見た言い方,つまり,労働契約法という特別法があるので,それが適用されない場合の一般規定という意味で書いているのだなとも思います。このため,補充規範という表現がいいか分かりませんけれども,こういうふうに書き換えてしまうと,本来,労働契約法という特別法がまず優先適用されるという部分がちょっと見えにくいなと思って気になりましたので,当方としては,基本的な補充規範とか基礎的な補充規範というような表現のほうがふさわしいと思うのですけれども,表現を変えられた事務局の御意向もあると思うので,何かあればお聴きしたいと思いました。   あともう一点ですが,報酬のところです。報酬の2の(2)の「労務が履行されなかった場合の報酬請求権」の最後の2パラ目の「また」以降の3行目は,先ほど私が言った,その履行の中途というのが,割合というのが観念し難いという話と多少関連するのですけれども,多分それはある程度認識していただいた上で,恐らく期間で報酬を定めた場合に,その途中で終了した場合に,その期間で定めたものの計算によって,既に仕事をした期間分の報酬が決まるという趣旨で書かれたのだと思うのですけれども,それはよく考えると当たり前の話なので,何かわざわざ規定する必要があるのかなということは前の部会でも申し上げました。こういう規定がそもそも必要かという意見があったということも付記していただくと議論が反映されるかなと思いますが,補足説明レベルかもしれませんので,申し上げるだけ申し上げておきます。 ○内田委員 先ほど新谷委員のほうから御指摘があり,また今,青山関係官からも御指摘のあった17ページの「1 総論」の「基本的な一般規定として」というところですが,削除すべきであるという御趣旨がちょっとよく聴き取れませんでした。,一般規定というのは,今,青山関係官もおっしゃいましたように,一般法と特別法の関係にあって,特別規定に対して一般規定という趣旨で書かれているのだと思います。   労働契約と雇用契約の範囲については,いろいろな考え方はあると思いますけれども,労働契約法ができた後は,一般に労働法学界でも,範囲はほぼ重なる,あるいは完全に重なると考えられていると思いますので,重なった領域について一般法と特別法の関係にある。その一般法について「基本的な」と書いたのは,やはり労働契約法の重要性に鑑みて,一般法としても,どこまで適用されるかというのは労働契約法の趣旨に照らして判断されるのであろうということで,やや控え目な趣旨で書かれていると理解しております。そうすると,基本的な一般規定として民法に規定を置くというのは,御趣旨からすると,何ら問題ないように思えるのですけれども,どういうところに問題があるのでしょうか。 ○新谷委員 内田委員の御説明で,よく分かる部分もあるのですが,雇用に関する部分を労働契約についての一般的な規定とされたときに,法形式的には請負とか委任になっているけれども,実際は労働契約としての保護の対象になるという契約が,反対解釈として,雇用契約ではないから,という運用をされかねない懸念があります。その懸念から,一般的規定としての記述を削除していただきたいという趣旨です。 ○内田委員 民法学の解釈としては,契約書に請負と書こうが委任と書こうが,実質が雇用であれば雇用と性質決定されますので,その意味でも,労働契約と雇用契約とで,契約の性質決定という点での食い違いはないのではないかというのが私の理解です。 ○山川幹事 今の雇用契約と労働契約については,私も内田委員と同じような理解で,それ以外に,雇用に当たらない場合をどうするかが,役務提供契約を検討する場合に問題になります。その問題のほか,基本的とか一般的という表現が,法技術的な意味で使うのか,あるいは価値判断的な意味で使うのかの問題が多分ありそうな感じがします。内田委員の御説明は特別法,一般法の関係についての法技術的な意味での表現であるというふうに理解いたしておりますので,もし可能であれば,法技術的に,そういう関係にあるという趣旨がよく分かるような形の表現ぶりにしていただければと思います。 ○松尾関係官 先ほど新谷委員から,2の(2)について御発言いただいたことについて,確認をさせていただければと思います。具体的には,4行目以降の「このような解釈を条文の文言から読み取ることは容易ではないという問題点が指摘されている。」という記載について,労働法学説の現状を確認されたいという御発言がありました。   ここの部分の原案の趣旨は,先ほども議論の中で出たかとは思いますが,民法536条2項の条文が,既に発生している債権が消滅するというような書きぶりになっていて,その文言から報酬請求権の発生を根拠付けるというのが難しいのではないかという,そもそもの問題意識のことを書いているわけです。つまり,報酬請求権の発生根拠が何かという学説上の争いの前提ともいうべきことを書いているものであり,民法536条2項により,報酬請求権の発生を根拠付けることがおかしいと言っているわけではありません。   ですので,御指摘の部分は,学説上の見解の対立とは必ずしも関係がない記載であると考えているのですが,学説の状況を確認されたいということの趣旨について,もし可能であれば,何かふえんしていただければ大変助かります。 ○新谷委員 申し上げたとおり,学説の中でも,その解釈や通説がどのような扱いになっているか等について,御検討を頂きたいということです。 ○鎌田部会長 条文の文言と実際の運用との間にずれがあるという趣旨で書いてあるのですけれども,読み方によると,この条文からそんな結論,解釈は出てきっこないではないかというふうに読まれるような表現になっているという御懸念ではないかと思いますので,その辺は表現の工夫で対応させていただければと思います。 ○青山関係官 戻ってすみません。先ほど労働契約の基本的な一般規定という御説明,技術的には非常によく分かりました。私の立場では分かります。   ただ,山川幹事もおっしゃったように,一般の方が見られたときに語感の問題もちょっとあるので,少しパブリックコメントにかける案としては,補充の説明が必要かと思いました。 ○鎌田部会長 その辺も,表現の問題として検討をさせていただきたいと思います。 ○佐成委員 別のところで,18ページの4の(2)のところですけれども,民法第629条第2項の規定の要否というところで,この末尾が「方向で,更に検討してはどうか。」というふうになっていて,多分この部会での審議では特段の意見がなく,十分議論が尽くされていないということで,こういう扱いになっているのだと思うのですけれども,もし異論がないようであれば,「してはどうか。」というふうにレベルを上げるというのも一つの選択肢ではないかと思います。内部で検討したとき,そういう意見がございましたので,御検討いただければと思います。 ○山川幹事 今の点ですけれども,確かにこの点を取り上げた際には議論がなくて,特に維持すべきであるという意見ではないんですけれども,何分実態が分からないという面がありますので,「方向で」よりも更に強くするというのは,個人的にはどうかと思っております。 ○岡委員 弁護士会では,今の点については,「方向で」ということにすら反対意見がございましたので,御紹介申し上げます。   それからもう一つ,意見を申し上げます。17ページの2の(2)のところで,雇用については,スペシャリストの弁護士がいます。,そのような弁護士から見ますと,3ページ,11ページ,15ページの,請負,委任,その他の契約のところでは,その場合の具体的な規定の内容としては,例えば①,②のような考え方があると。この当否について云々と,と書かれているのに,雇用だけには書かれていません。ここは,雇用にも同じように書いてほしいとの意見がございました。536条2項を維持する説と,義務違反という言葉を使う説と,起因するという言葉を使う説と,雇用だけは何か三つ並列のようでございますが,よろしくお願いします。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   よろしいようでしたら,次に,部会資料24の19ページから25ページまでの「第49 寄託」について御意見をお伺いいたします。 ○奈須野関係官 二つあります。一つは「5 寄託者の義務」の「(1) 寄託者の損害賠償責任」についてです。現行の責任の分配の規定は,寄託により,物の所有権をその物を必要として価値を認める人に所有しやすくすることで,売買取引を促進する,ある種の合理的な仕組みとして機能しており,このことに問題があると言う人は,受寄者を含めて,余りいないように思えます。しかるに,(1)の第1段落では,研究者からの立法論的な批判を一方的に主張しており,公平感を欠く記述に思われます。学説として,現行の規定が理論的におかしいという御意見もあろうかと思いますが,立法論的な批判に基づき,学説に合わせて実態を変えるということであれば,そのメリットと,取引慣行や実務に与えるデメリットをきちんと評価した上で,どちらがいいかを決める必要があると思います。そのような趣旨で,記述に公平感を出していただきたいと思っております。このことは部会でも申し上げたかと思います。   もう一つは(2)の「寄託者の報酬支払義務」についてです。寄託の諾成契約化に反対という趣旨ではないのですが,要物性を見直すことのメリットは,役務提供開始の時点ではなく,契約時点から報酬を請求することができるという,取引実態に合わせた規定になるという点にあると思います。そうすると,この①で書かれている「保管義務を履行しなければ,報酬請求権は具体的に発生しないという原則」というくだりについては,もちろんこういう考え方はあろうかと思いますが,要物性を見直したことによって,「原則」とする理論的前提を失うと思います。したがって,このくだりは「保管義務を履行しなければ,報酬請求権は具体的に発生しないという考え方」といった書き方になるのではないかと思います。   そのときに,一番下の2行で,「請負や委任など他の役務提供型典型契約に関する規律との整合性」とありますが,他の典型契約との整合性を考えると,むしろ,例えば過去のこの部会で,消費貸借を要物契約から諾成契約に改めた場合に,いつから金利が発生するのかという議論があったかと思いますが,寄託についてもこれと同じような議論が発生するのではないでしょうか。受寄者としては,契約した以上は保管のためのスペースをあけて,保安要員を確保しておく必要があり,機会費用がかかっているわけですから,常識的には一定の報酬を請求できるものとするというのが合理的に思えるわけで,現実にもあるのですが,そのような規定をすることが,消費貸借との整合性の観点からも論点になるかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○山本(和)幹事 1の(2)のところですけれども,今の奈須野関係官と同じように,消費貸借との整合性のような議論なんですが,消費貸借のところで今回の提案で,目的物を引き渡す前に契約の一方当事者が破産した場合には,消費貸借は失効するということを検討してはどうかという提案があったと思いますけれども,寄託についても同じことが問題としてはあり得るのかなと思っております。現在,消費寄託については消費貸借の規定が一般的に準用されていて,恐らく消費貸借の予約の一方当事者が破産した場合の規律は消費寄託の予約についても準用されているのではないかと思いますけれども,消費貸借のほうでは,それが一般化されるというふうに理解しておりますけれども,そうであるとすれば,寄託についても同様のことが検討の対象にはなり得るのかなと思います。 ○中田委員 先ほどの奈須野関係官の御指摘なのですけれども,寄託契約というのは,性質は役務提供契約ではないかと思います。場所を提供するというのではなくて,保管するという役務を提供する。そうだとしますと,やはり原則は保管をしたことに対して対価が発生するということで,ただ例外があり得るということだと思います。スペースを空けておく必要があるではないかということですけれども,例えば1か月先から2週間預かるというときは,その預かるまでの1か月というのはほかの目的のために使うことができるわけですので,常にその分の保管料が発生するというわけでもないのではないかと思います。 ○岡本委員 特殊の寄託のほうにいってもよろしいでしょうか。   部会資料23ページ,流動性預金口座のところなんですけれども,流動性預金口座について規定を設けることにつきましては,部会の議論でも申し上げたんですけれども,部会資料17のほうで記載された提案内容そのものについては,それほど違和感があるわけではないんですけれども,そもそも流動性預金という,言ってみれば狭いカテゴリーの取引につきまして,民法に殊更規定を設けるといったところの違和感がちょっとどうしても残っているということがございまして,一方では規律を設ける意味はあるという反対意見も頂いているところではありますけれども,少なくともそういった対立点というか論点というか,そういったものがあることが分かるような,そういった記載を置けないかというところが一点でございます。   それから,二点目なんですけれども,もう少し後にいきまして,「流動性預金口座に係る預金契約の法的性質に関する規律の要否」,25ページですね。これにつきましては,部会の議論で,流動性預金口座に委任の規定が適用される場面というのは様々であって,場面ごとに規定を書き分けるというのはなかなか困難だと。委任の規定を適用するというだけ概括的に規定する場合には,規定を置く意味が果たしてあるのかという反対意見を述べさせていただいておりまして,そういった概括的規定を置くと規律が硬直的になって,かえって有害であるというふうな危惧もあるものですから,公平な記載という観点からは,そういう反対意見があることも分かるような記載にならないかと思います。 ○筒井幹事 御欠席の松本委員の発言メモを読み上げます。24ページ,「10 特殊の寄託―流動性預金口座」の部分です。   「(1)流動性預金口座への振込みによる金銭債務の履行に関する規律の要否」における「金銭債務」は,恐らく振込依頼人が受取人に対して負っているところの,24ページの図の「対価の支払」債務(振込みのいわゆる原因債務)のことであると思われる。   ところが,寄託は基本的に同図の受取人(流動性預金口座開設者)と被仕向銀行(流動性預金口座開設銀行)との関係に関する規律であり,この場合に,口座開設者以外の第三者による振込入金によっても預金債権が成立することまでが明らかになればよい。誤振込みの場合の効果について,ここに規律するべきか,それとも次の「(2)資金移動取引についての規定の要否」で規律すべきかについては,議論の余地がある。   他方,原因債務の弁済の効果が生ずるかどうかは振込依頼者と受取人との間の問題であるから,規定するとすれば,むしろ債権総論の「弁済」のところに置くべきであると思われる。 ○山本(敬)幹事 寄託のほうに戻ってよろしいでしょうか。   20ページの2の(2)「適法に再寄託が行われた場合の法律関係」についてですが,第1段落の4行目で,復代理に関する「105条を準用している点を見直し,受寄者は,自ら寄託物を保管する場合と同様の責任を負うこととし,例外的に,寄託者の指名に従って再受寄者を選択した場合に限って同法第105条第2項ただし書を準用することとする方向で,更に検討してはどうか」とされています。この点については,第18回会議のときに,特に意見が出されなかったために,「方向」とされているのだと思いますけれども,私もその時に何も申し上げませんでしたので,やや時宜に遅れているのですが,やはり問題がありますので,ここで指摘をさせていただければと思います。   まず,この考え方は,先ほどの委任の場合とは異なる規定を置くことを前提にしていますが,この点は少なくとも検討を要するところです。つまり,「委任の場合と区別すべきかどうかという点について留意しつつ」,更に検討ということにすべきではないかと思います。   次に,この考え方は,復代理に関する105条を維持することを前提にしていますが,この点は当然とは言えないと思います。といいますのは,先ほど委任のところで,少なくとも現在の105条1項,つまり選任・監督上の責任に限るという規定は適当ではない,履行補助者責任に関する一般原則に委ねるか,少なくともそれと同じ規律に改めるべきだということが提案されていました。仮にそれによるとしますと,復代理に関する105条は維持されないことになると思いますし,いずれにしても,この規定は削除して,一般原則に委ねるか,委任のところに規定することになる可能性があります。そうしますと,105条2項も,これは1項を受けた規定ですので,ここで「105条2項ただし書を準用することとする方向」というわけにはいかなくなります。したがって,仮にこの考え方をここに書くとしましても,このように105条2項ただし書準用というのではなく,準用の具体的な内容を書くべきだと思います。   更に言いますと,その際,現在の105条2項は,1項で選任・監督についての責任に限られるとした上で,2項本文で,本人が復代理人を指名したときは,選任・監督についての責任も負わない。ただ,2項ただし書で,不適任又は不誠実であることを代理人が知りながら,本人に通知又は解任を怠ったときは,責任を負うと定めています。ここで,原則として「受寄者は,自ら寄託物を保管する場合と同様の責任を負う」としますと,現行法でいえば,帰責事由の不存在に相当するものがあると言えて初めて,受寄者は免責されることになります。この提案は,その例外として,更に,寄託者が再受寄者を指名したときで,その再受寄者が不適任であることを寄託者が知らなかった場合,あるいは,知っていたけれども不適任であることを寄託者に通知した,若しくは,その再受寄者を解任した場合は免責されるということになるのではないかと思います。そのような理解でよいかどうかも含めて,御検討いただければと思います。   長くなって恐縮なのですが,さらに,「特殊の寄託」の10の(2),24ページの「資金移動についての規定の要否」についてですが,25ページの最後の3行で,留意事項として,「指図という法的概念との関係や,規定を設ける場合に新たな典型契約として位置付けるべきかどうかという点」が挙げられています。このうち,「指図という法的概念との関係」は,第18回会議のときに指摘させていただいたことに対応しているのだと思いますけれども,第18回会議ではもう少し踏み込んで,こうした「資金移動取引についての規定」を定めるのであれば,その前提として,指図という法的概念というよりは,法律行為ないしは法的制度の意味を明確化し,それを踏まえて規定すべきだということを申し上げました。これは,指図というような経済社会で極めて重要な意味を持つ法制度が民法の中で取り上げられていないのは問題ではないかという問題提起のつもりでして,何とかそれが分かるような表現にできないものかと思います。 ○油布関係官 流動性預金口座のところでございます。   二つございまして,一点目は,岡本委員が先ほどおっしゃった,そもそも民法に規定するようなことかどうか,という論点を記載すべきではないかということを支持したいと思います。やはりこれ自体,大きな論点としてパブリック・コメントに付して御意見を聴くべきではないかと。同様な御意見は,第18回のときにも複数あったように記憶しております。   二点目は,ちょっと細かい話なんですが,24ページの記述の方法でございますが,(1)のところの第2パラグラフです。「仮に規定を設ける場合には,具体的に以下の①②のような内容の規定を設けるべきであるとの考え方の当否について,特に②では」,とあり,これこれという指摘や,他方,これこれという指摘もあることにも留意しつつ,「更に検討してはどうか。」と記載されていますが,ここであえて「特に②では」というふうに言う必要はないというか,むしろ言わないほうがいいのではないかという気がしております。当時の議論は確かに皆さん,私も含めて,この「②については」ということでいろいろな御意見が述べられたんですけれども,それは,そもそもそのときのお題が「②債務の履行」に関するお尋ねであったからであります。②というのは,論理的には①が成り立って初めて成り立つものでございまして,ここに記述されているような,「そもそも入金記帳がされなかったらどうするんだ」とか,他方で,「ほかに適当な効力発生時点があるのか」という意見は,どちらかというと①のほうに該当するものではないかと思います。「特に②では」というふうに限定しないで意見を問うたほうが混乱を招かないのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○村上委員 1の(1)の寄託の「要物性の見直し」についてです。寄託のうち,消費寄託については,消費貸借との関係を考慮する必要があるだろうと思います。   そこで,部会資料23の30ページ,消費貸借について記載された部分と見比べてみますと,消費貸借の要物性の見直しに関しては,方向を示さない形で,「諾成契約として規定するかどうかについて」という記載になっているのに対して,寄託については,「諾成契約として規定を改める方向で」というように,方向が打ち出されております。寄託についても方向を打ち出さないことにするか,あるいは,例えば「消費貸借との平仄を考慮しつつ」というような表現を加えるか,いずれかの措置をとるのが適当かと思います。 ○鎌田部会長 ほかに,いかがでしょうか。   寄託関係について他の御意見,特にないようであれば,ここで休憩を取らせていただきます。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開をさせていただきます。   部会資料24の25ページから28ページまでの,「第50 組合」について御意見をお伺いいたします。 ○岡本委員 26ページの「組合の財産関係」についてなんですけれども,今の民法では677条のところで,組合の債務者はその債務と組合員に対する債権とを相殺することができないという規定を設けておるんですけれども,部会の議論の際に,信託法22条に規定するみたいな例外の規定を設けることができないかといったことをお話しさせていただいておりまして,これがちょっと反映されていないようなものですから,差し支えなければ反映していただけないかと思います。 ○奈須野関係官 同じく組合の財産関係についてです。第1パラグラフの最後のところで,「現在の通説的な理解に基づき,組合の債権及び債務について規定を明確化する方向で,更に検討してはどうか。」とあります。後段の「規定を明確化するという方向」には異論はないのですが,「現在の通説的な理解に基づき」という箇所の「通説的な理解」の指し示す内容については,部会の場では,組合財産とその組合員との関係について予備的なものにするという御提案があって,これについては反対意見が多かったように記憶しています。そこで,この「現在の通説的な理解」の指し示す内容について,この部会の中で反対が多かったはずのものが,依然として少なくとも学問的には「通説的な理解」だと言われてしまうと困るので,この「現在の通説的な理解に基づき」という部分を削除いただくか,あるいは,「方向で,更に検討してはどうか。」と方向性のレベルを下げるかを検討いただけると有り難いと思います。 ○亀井関係官 今の奈須野関係官の御指摘についてですが,資料においては,現在の通説的な理解の内容を「具体的には」の①から③に書いておりまして,内容を明確に記載しているつもりであります。奈須野関係官の御懸念が,その①から③について何か違和感があるというお話なのか,それとも,①から③についての違和感ではなく,この議論をした第18回会議において奈須野関係官から反対の意見が示された一部の学者が提案している考え方が含まれ得るような書き方になっているので,それを懸念しているということなのか,どちらなのでしょうか。もし,後者であるとすれば,審議状況の解説において,奈須野関係官が反対された考え方は論点として取り上げなかった旨の説明をすることとしてはどうかと思います。 ○奈須野関係官 趣旨はお察しのとおりですので,誤解がないような書きぶりとしていただければと思っております。我々としては,学問的な考え方から,このような内容の規定がふさわしいという理解の仕方よりも,むしろ実務的な,税務・会計的な事情から理解しています。そのため,実務,税務・会計的な理解に基づくものと学問的な理解に基づくものとで差異があるときに,学問的な理解が「通説」として優先するということになるのは困るという思いがあります。 ○鎌田部会長 では,少し工夫ができれば工夫をするということで,お願いします。   ほかにはいかがでしょうか。   特に御意見がないようでしたら,部会資料24の28ページから30ページまで,「第51 終身定期金」及び「第52 和解」について,一括して御意見をお伺いいたします。 ○佐成委員 まず,終身定期金についてですけれども,部会では,産業界には実用の点で必要性がないという意見が多数であったことと,ただ,絶対反対,絶対廃止しろという,そこまでの強い意見はなかったということを御報告させていただきました。それで,そうしたことなども踏まえて,こういう形になっているのだろうと思います。ただ,内部に持ち帰って,この表現をメンバーにお見せしましたところ,「その存在意義にふさわしい規定内容とするための必要な見直しを行う」という形で,見直しを行うというところまで踏み込んで方向性を出されているので,もしそうだとすると,基本的には業法等で手当てされているとはいえ,その中身が現行の取扱いにもしかすると何か影響を及ぼすのではないかという懸念が表明されまして,ここはレベルをちょっと下げていただき,「更に検討してはどうか。」ということにしていただきたいという意見でございます。御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 見直しの中身については,例示的ではありますけれども,第2段落に書いてあるような内容ということでして。 ○佐成委員 そうですね。それは承知しているのですが,既に特別法で手当てされているとはいえ,その先が見えない,それによって,もしかしたら何かよからぬ影響を及ぼすのではないかという懸念を強く表明される業界の方もいらっしゃいまして,それで,現時点ではレベルを下げていただきたいというのが産業界の意見でございます。 ○山野目幹事 ただいまの佐成委員の御意見を私なりに理解しますと,必ず見直しを行うということが方向になっているという部分について,御懸念をお示しになったものと受け止めました。   私の意見としては,「削除するのではなく」というところは依然として方向の扱いで維持していただきたいというふうに望むものであります。少し御紹介をしておきますけれども,過般の審議の際に申し上げませんでしたけれども,終身定期金の契約を開始するに当たり不動産を拠出する事例について,終身定期金契約を登記原因として所有権の移転の登記をすることを認めるとした登記先例がございます。民事局長回答の昭和60年4月17日でございます。そんなに古いものではありません。なぜにともすると終身定期金はどうでもよいという感覚で見られるのか,私は不思議でございまして,「削除するのではなく」というところは是非方向感を持って見ていただきたいということを,意見として申し上げておきます。 ○鎌田部会長 存続と見直しとの関係について,少し表現を工夫ができれば,工夫をさせていただければと思います。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは,部会資料24の30ページから31ページまでの,「第53 新種の契約」について御意見をお伺いいたします。 ○佐成委員 すみません,和解のところです。30ページの(2)の「人身損害についての和解の特則」ですけれども,部会で私のほうから,このような特則を置くことに対する実務上の懸念としまして,このような規定を置くと,加害者は被害がどんなに軽微であっても責任を認めることに相当慎重になって,被害者救済の迅速性等が阻害されるおそれがあるのではないかという懸念を指摘しております。この点について,補足説明でも結構なので,実務サイドの意見として,被害者救済の遅延等の懸念が指摘されたという点を注記していただければ有り難いと思います。 ○鎌田部会長 終身定期金,和解についてほかに御意見あれば,お出しいただけますでしょうか。   それでは,新種の契約の御意見をお伺いします。 ○筒井幹事 本日御欠席の松本委員の発言メモを読み上げます。「第53 新種の契約」のうち,「2 ファイナンス・リース」,31ページの部分でございます。   ファイナンス・リースを典型契約として民法に規定することの是非について,賛否両論が記述されているが,そもそも,税制や会計原則の変更といった法律外在的要因によって容易に利用されなくなるような取引類型を民法の典型契約として規定することが,典型契約の趣旨にとってふさわしいのかどうかという根本的疑問が記述されていない。そういう御意見であります。 ○中田委員 私も,ファイナンス・リースについて一点ございます。31ページの1行目から2行目にかけて,ファイナンス・リースを典型契約として規定する必要の理由として,現代社会において重要な取引形態として位置付けられ,これこれの独自性を有していると,こうつながっているんですけれども,これだと何か一つの理由のように見えてしまうのではないかと思います。これは恐らく二つあって,重要な取引形態として位置付けられていること,それから,契約としての独自性を有していること,これを書き分けたほうがよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかに,いかがでしょうか。 ○中井委員 ファイナンス・リースに関する事柄です。これも本文と補足説明との関係がありますので,補足説明のほうでも御記載いただけるのかもしれませんけれども,消費者保護委員会から出ている意見として,リースの中で,小口リースないしは提携リースにおいては相当のトラブルが発生していて,その結果として,ユーザー保護の必要性が言われています。そういう問題点のあることに留意して考えるべきだということを御記載いただきたいと思います。 ○佐成委員 同じくファイナンス・リースのところですけれども,平成16年の破産法改正に際して,ファイナンス・リース契約の実体法上の性質が明確化されていないということで,倒産法改正ではファイナンス・リース契約に関する改正が見送られたという経緯があります。仮に今回,民法改正でこの点を明確にするということになりますと,単に賃貸借等との関連性という債権法的側面だけはなくて,担保権として,権利質だとか所有権留保との関連性という物権法的な側面にも議論が及ぶ可能性があります。したがって,当部会の諮問範囲との関係にも留意して議論をする必要があるのではないかと思われますので,簡単で結構ですので,補足説明でそのあたりを指摘していただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。   よろしければ,部会資料24の31ページから34ページまでの,「第54 債権の目的」について御意見をお伺いいたします。 ○高須幹事 2の「特定物の引渡しの場合の注意義務」,400条のところでございますが,400条の規定をどのようにするかのところで,2の3行のところが,契約で定められた品質・性能を問えば足りるんだという意見があって,その次のところで,4行目になりますが,任意規定として存置する意義があるとする意見もあったというところで,これは弁護士会の中での議論でございましたが,唐突に「任意規定として存置する意義があるとする意見」とだけ出ると,その根拠がやはり分からないと。補足説明には書かれるんだろうと思いますので,それを見ろということでもとは思いますが,ここには一応,後のほうの32ページの3のところの品質のところでは,なぜ任意規定かというところについては本文の中で,「契約解釈が困難な事例もあるため,任意規定として存置すべきであるという意見があった」という表現もありますので,この2のところも同じ表現を用いていただいて,要は契約の解釈に解消し切れるのか否かという点の意見の対立というか,考え方の違いがあったということが明確になるような形で記載いただければ有り難いと,このように思っております。 ○筒井幹事 本日御欠席の松本委員の発言メモを読み上げます。「1 債権の目的」,31ページのところです。   「民法典において原則的な事項をどの程度まで明文化すべきであるかという観点から,・・・更に検討してはどうか。」と記述されているが,このような観点からの検討が必要な箇所は,現在の399条に限らないだろう。既になされている改正提案についても,このような観点からの精査の必要なものが多々あることは,今までの議論において何度も指摘されている。したがって,債権法改正に共通の論点として,どこかに(例えば第63の次にでも)掲げるべきであると思われる。こういう意見です。 ○筒井幹事 引き続いて発言いたしますが,私の意見を申し上げますと,全体的な検討事項や留意事項については,議事の概況等において取り上げるのは大変有益だと思いますが,論点の一つとして取り上げるとなると,適当ではないと思います。 ○鎌田部会長 具体的な改正提案を審議する上でも,抽象的な原理のみを議論しても余り最終的な提案内容に反映ができませんので,必要があれば,むしろ関連する場所全てで,その都度議論するというほうが妥当だろうと思います。   ほかの点で結構ですが。 ○大村幹事 債権の目的全般でよろしかったでしょうか。   33ページの中間利息控除についてですけれども,先ほど中田委員がおっしゃったような文章の書き方に関わることですが,この33ページの下から4行目,「中間利息控除だけでなく賠償額の算定方法全体の問題と捉えるべきであり,将来の請求権の現在価額への換算という問題との関係にも留意する必要があるなどという」となっているのですが,この「べきであり」の前の話と後の話が多分独立のことなのではないかと思います。「べきであり」の前のほうは損害賠償法の全体の中で考え直すべきだという話であり,「べきであり」の後は他の法律で行われている請求権の現在価という問題との関連を考えるべきだと話だと思いますので,切り離して,二つの意見としていただいたほうが適切かと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○中井委員 本文と補足説明との関係については,最終的には事務当局にお任せしたいと思いますけれども,本文にあったほうがいいなと意見が出たものについて発言させていただいたという趣旨で,それをしんしゃくして最終的に文章を決めていただければと思います。   33ページの5の(2),細かな表現ですけれども,下から4行目,「金銭債務の遅延損害金を算定する利率を法定利率よりも高くする」の次,「必要性の有無」と書かれているんですけれども,これは,こういう政策を採るかということですから,「当否」ではないのかと思います。   34ページの「(4)利息の定義」の部分です。ここで問題提起することについて異存ありませんが,前回,消費貸借の関係で利息の定義について申し上げたわけですけれども,仮にここでこのような問題提起があるとしても,消費貸借の関係で元本に対する利用の対価としての利息ということと関連付けて考えることが容易か,分かりやすいかということから考えますと,消費貸借のところにおいても,利息とはどういう形で定義するのが好ましいのかという問題提起をしていただくほうがよろしいのではないか。その上で,ここでも改めて問題提起をしていただくということで,御検討賜ればと思います。 ○岡本委員 33ページからの法定利率のところなんですけれども,変動利率制への見直しの要否につきましては,部会の議論で,商事法定利率についても平仄取って見直しを検討すべきだということを申し上げておりまして,そういった商事法定利率への言及がないんですけれども,これ,商事については触れないということなのかどうか,ちょっとそこが気になりました。   それからあと,一読の議論の最後のところで,中井委員から,利息について見直すのであれば,民法だけでなくて利息制限法なども併せて見直す必要があるのではないかといった趣旨の御指摘があったかと思うんですけれども,利息制限法だけでなくて,出資法などもこれに含まれるのではないかと思うんですが,併せて見直すべきという意見に賛成ですので,その論点についても,先ほどの商事法定利率と同様の意見でございます。 ○筒井幹事 ただいまの御意見のうちの利息制限法への影響というのは,法定利率について変動制を採るとしたときに,利息制限法についても同様の規律にするかどうかという意味での影響だと思います。しかし,それは関連規定についての所要の整備よりも更に踏み込んだ話なので,この部会における審議対象にはならないであろうと思います。ただ,他の法律への影響があり得るという御指摘があったことを議事の概況等に残しておくことは有益ではないかと思いますので,そういった整理をさせていただければと思います。 ○鎌田部会長 よろしいでしょうか。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは,部会資料24の34ページから36ページまで,「第55 事情変更の原則」について御意見をお伺いします。 ○新谷委員 「1 事情変更の原則の明文化の要否」についてです。   第19回の部会の際に,採用の内々定の取消しに関する事案等も御紹介し,事情変更の原則を主張するのは使用者・事業主の場合が非常に多く,それが適用されると労働者側が不利益を被るケースがあるということを申し上げて,これを民法の規定として盛り込むことについては反対であるという発言をさせていただきました。仮に事情変更の原則を民法に盛り込むということを検討されるに際しても,労働契約に適用されないように,慎重に検討いただきたいということを申し上げています。   そのため,できれば,労働契約の取扱いについて,労働契約の変更・終了に際しては,現在の判例法理よりも労働者に不利益になるおそれがあることから,労働契約に適用しないことを明らかにしてほしい旨の意見があったといったように,懸念についての意見も是非記述を頂ければ幸いです。 ○中井委員 3の「効果論」,(1)ですけれども,分かりやすさの観点というか,書く順序なんですけれども,事情変更の原則の効果として,第一に考えるのは,履行の強制を阻止できることではないか。それがあって,次に,事情が変更になって契約内容の合理性が担保されないところから,契約内容についての変更の交渉請求をする,交渉義務がある。そして,そのような義務に拘束されることからの解放という意味での解除がある。それに対して,解除ではなくて,裁判所による契約内容の変更があるのではないか。ここに記載されている順序が分かりやすいのかどうかについて,もう一度御検討いただけないか。一つ目が履行強制の阻止できるかどうか。二つ目と三つ目は,合意に向けた再交渉若しくは合意による契約改訂ができない場合の解除。最終的には裁判所が登場してくる契約改訂。どこまでのことを射程として考えられるのかというのが分かりやすいのではないかと思います。 ○深山幹事 今の中井先生の指摘の補足のようなことなんですが,この効果論の記述の中で,「解除を認める意見がある一方で」の後に「債務不履行解除による処理に委ねる余地があり,」とあって,更に続いて「履行の強制を阻止できる旨を」というふうに,こう続けて書かれているんですが,この「債務不履行解除による処理に委ねる余地があり,」というのがここに入ってくることによって非常に分かりにくくなっているような気がします。議事の概況のほうはもう少し詳しく,分けて書かれるのだろうと思うのですが,ちょっと違うことを,違う角度からの記述をここに挟み込んでいるような印象があります。むしろ先ほどの中井先生の御指摘のように,考えられる効果論としては,解除,それから契約改訂,それから単なる履行を強制されないという効果が考えられるとシンプルに並べて,その周辺的な議論として,議事の概況のほうにもう少し詳しく書くということはあってしかるべきだと思うんですが,ここの債務不履行解除の記述をここに挟み込むことに違和感を感じましたので,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 少し分かりやすくするように,工夫を検討してもらいます。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは,次に部会資料24の36ページから37ページ,「第56 不安の抗弁権」について御意見をお伺いします。 ○中井委員 これも3の「効果論」のところです。解除の問題から入っているわけですけれども,本来的な効果として何かというと,履行拒絶ができ,履行拒絶をしても,それが債務不履行にはならないということ。そういう効果をそもそも認めるのか。その上で更に解除うんぬんという議論ではないかと思います。不安の抗弁を認めるとしたときの効果について,原則的なところからお尋ねいただくほうがよろしいのではないかと思います。 ○山本(敬)幹事 二点申し上げたいことがあります。   まず,1の「不安の抗弁権の明文化の要否」ですが,次の2の「要件論」のところで,不安の抗弁権の適用範囲その他の要件に関して,先履行の合意がある場合に限るかどうかについて,賛否両論があるとされています。そうしますと,1のほうでも,上から4行目から5行目で,不安の抗弁権を明文化することに賛成する理由として,「反対給付を受けられない具体的なおそれがあるにも関わらず,先履行義務を履行させることは先履行義務者に酷であること」が挙げられていますが,これも,先履行義務に限らない形でニュートラルに書くか,あるいは両論があることが分かるように書くか,工夫をしていただければと思います。   もう一点は,3の「効果論」のところです。ここでは,「担保提供の請求等を経た上での解除を認める考え方」に関して,「債務不履行解除等の他の手段により対応可能である」という指摘があるとされています。このような指摘は,第19回の会議そのものでは特に出ていなかったと思いますので,恐らく,部会資料19-2の31ページで,「理論的には,反対給付の危殆化と担保給付等の拒絶という事実から,履行期前の履行拒絶に準する状態が生じているため,解除権が認められるなどと説明するものがある」と書かれているのを受けたのではないかと思います。しかし,不安の抗弁権の場合は,履行期前に担保提供しないと言っているだけで,将来の履行を確定的に拒絶するというわけではありませんので,履行期前の履行拒絶に関する規定を置くとしても,そこに含まれるとは簡単には言えないように思います。少なくとも,「他の手段により対応可能である」というのは言い過ぎだと思いますし,今挙げた部会資料での見解は,要するに,現行法のように規定がない中でも何とか解除権を認めようという解釈提案でして,だから不安の抗弁権について規定は要らないという提案ではないと思います。したがって,この「他の手段により対応可能であるという指摘」は,実際にはされていないのではないかと思いますので,これはもう,異論がなければ削除してもよいのではないかと思う次第です。 ○鎌田部会長 多分こういう「指摘」の記載は,必ずしもこの場で発言されたものだけでなくて,部会資料の中に書かれているものも,これまでの整理の中で出てきていたと思いますので,その辺との関連と,今御指摘になった内容とを踏まえて,再検討させていただくようにいたします。   ほかにはいかがでしょうか。   ないようでしたら,部会資料24の37ページ,「第57 賠償額の予定(民法第420条,第421条)」について御意見をお伺いいたします。 ○能見委員 賠償額の予定ですけれども,私は,これを議論したときに出席しておりませんでしたし,また,どんな議論があったかも議事録を確かめておりませんので,今日申し上げることは,もし今まで全く議論がされていないことであって,ここに論点として追加するのが不適当であれば追加しなくても結構ですが,ここで扱われている賠償額の予定の問題点というのが,過大又は過小な賠償額の予定ということで,論点がかなり限定されているように思いまして,賠償額の予定自体はもっといろいろな問題点が本当はあると思います。   例えば,余り実務的には問題になっていないかもしれませんけれども,一つは,賠償額予定が適用される要件に関して,債務不履行の帰責事由などがなくても賠償額の予定は発動されるのかとか,言い換えれば,賠償額の予定条項がある場合には帰責事由がないという反証はできないのかということが問題となります。また,賠償額の予定として合意された額自体は別に過大とか過小ということがなく不都合ではないけれども,例えば債権者のほうに過失があるために,過失相殺などがなされて本来であれば賠償額の減額が生じるような場合にも,賠償額の予定があるときは合意した予定額がそのまま適用されるのか,あるいは過失相殺ということで減額できるのかとか。何かそういう幾つかの論点があるので,それも併せて検討できるような文章がここに追加できればと思います。 ○鎌田部会長 御提案としては,帰責事由がない場合にどうかというのと,過失相殺の対象になるような場合はどうかというものと,その二つでよろしいですか。 ○能見委員 具体的には,その二つで結構です。 ○新谷委員 賠償額の予定について,裁判所がその額を増減することができる旨を明文化するという考え方については,賛成するということで,19回会議の際に発言メモを提出させていただきました。労働基準法の中では賠償額の予定の禁止は16条で明定されていますが,労働基準法が適用されない労働契約や,労働契約以外でも当事者間の力関係が対等でない契約において,優越的地位にある当事者が相手方の賠償額の予定をなすことについて規制をするということ,優越的地位にある当事者が自己の賠償額について過度に低く賠償予定を設定することについて規制をするということについて,発言をさせていただいたと思います。   たたき台の中には明文化に肯定的な意見があったということで紹介されているものがありますが,もし可能であれば,今申し上げたような内容をどこかに記載することについて,是非御検討をお願いしたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○中井委員 部会の審議では,賠償額が不当に過大な場合と賠償額が不当に過小な場合を区別して,それなりに議論し,効果についても見解が分かれているかと思うんです。真ん中辺りで,過大な場合と過小な場合で問題状況が異なって,異なる規律という説明にはなっていますけれども,過大な場合で問題を論じて,次に過小な場合について論じる,それが分かりやすいのではないかという意見がございました。 ○鎌田部会長 はい,分かりました。   ほかにはよろしいですか。   よろしければ,部会資料24の37ページから38ページまで,「第58 契約の解釈」について御意見をお伺いします。 ○佐成委員 第19回の部会で,私のほうから経済界の意見を紹介させていただいたのですけれども,そのときに,こういう抽象的で一般的なものをあえて明文化する必要性が基本的には存在しないという意見が多数で,条文化してくれという意見は一切なかったという御指摘をさせていただきました。時間がかなり限られた中で,押し詰まった最後のほうに付加的に申し上げて,しかも論点が,条項使用者不利の原則のところに移ってから,その一番最後のところで付加的に申し上げたのですけれども,そのとき申し上げた趣旨は,この論点1と論点2について,つまり契約の解釈に関する原則を明文化することの要否と,それから,契約の解釈に関する基本原則について包括的に申し上げた趣旨でございまして,実際,今回,内部で検討したときも,やはり異論が出まして,この「方向で」というのは,ちょっとレベルを下げていただきたいということでございます。現段階では,まだそこまで経済界としても容認し難いという意見がありましたものですから,1,2について,方向性を出さずに,「更に検討してはどうか。」というレベルに落としていただけないかということを御検討いただきたいということでございます。 ○村上委員 私も,第19回の部会で,論点1と論点2について,事案の特質に照らした柔軟な解釈をすることが困難になるおそれがあることや,定める原則の内容次第では錯誤等との関係で問題があることなどを,申し上げました。また,佐成委員から今御発言のような御指摘がございましたし,岡委員からも同様に,幾つか問題があるという御指摘がございました。したがって,論点1と論点2については方向を打ち出さない記載をするのが望ましいのではないかと思います。 ○奈須野関係官 「条項使用者不利の原則」の後段の部分で,「予見不可能な事象についてのリスクを一方的に条項使用者に負担させることにならないかなどの指摘がある」とあるのは,確かにこのような議論があったかと思いますが,私が申し上げたのは,この条項使用者不利の原則を導入すると条項使用者がかわいそうだという趣旨ではありません。条項使用者不利の原則が導入されると,条項使用者にとっては敗訴確率の上昇が見込まれますので,合理的な事業者であれば,その上昇分と一定の訴訟提起確率を見込んで,利得が最大になるよう不当条項を増やすという戦略を採ることがゲーム理論からの均衡解であると考えられます。そうだとすると,条項使用者不利の原則を導入することによって,結論として,裁判に訴えることのできる者はよいけれども,それができない者は泣き寝入りを強いられ,社会全体の効用が下がるのではないかという趣旨のことを申し上げたものです。書きぶりの問題ではありますが,必ずしも条項使用者がかわいそうだというだけの話ではないということで,書きぶりを工夫していただければと思います。 ○新谷委員 同じく「条項使用者不利の原則」のところですが,約款の不当条項規制の論議をした第11回のときに,労働の分野では労働組合が条項使用者になる場合があるという指摘をさせていただき,労働分野について適用を検討する場合には,この原則は使用者が条項使用者である場合に限定してほしいという意見を申し上げています。   この点について我々の意図を工夫して盛り込んでいただけないか,御検討をお願いいたします。 ○佐成委員 「条項使用者不利の原則」のところで,今,奈須野関係官がおっしゃったところですけれども,これは私が申し上げた点かなと思いますので,奈須野関係官がおっしゃった分とは別に,これは,もし残すのであれば残しといていただくか,あるいは補足説明のほうに入れていただくか,どちらかでお願いしたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○筒井幹事 契約の解釈に関して,「規定する方向で」という書き方が2か所ある点について,佐成委員と村上委員から御異論があるという御発言がありましたので,見直そうと思っております。これは,恐らく一読のときの議論の時間が十分でなかったことが影響していると思いますが,佐成委員は,そのときは個別の論点のところで御懸念を表明されていたところ,契約の解釈に関する規定の新設という項目全体について改めて御懸念を表明されるということだと思います。 ○佐成委員 そういうことです,はい。 ○筒井幹事 それから村上委員の以前の御発言も,個別の解釈準則について御異論があることは理解できたのですが,契約の解釈に関する原則の明文化,あるいは基本原則を定めるということについても,御異論があるという御趣旨でしょうか。 ○村上委員 検討すべき問題があるだろうという趣旨で申し上げたつもりでおりました。 ○中井委員 今の問題に関連して,弁護士会で昨日議論した中でも,この1の方向性については,Cタイプに落とすべきだという意見が多かったことを御紹介しておきます。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○山野目幹事 3の「条項使用者不利の原則」について,佐成委員と奈須野関係官がおっしゃったこと,それぞれは理解することができますし,そういう御指摘を補足説明などで反映していただくこと自体はよろしいというふうに考えますけれども,同時にまた,部会資料19に基づく論議をした際に,条項使用者不利の原則というものは,これ自体が何か孤立独走して採用され運用されるというものではなくて,ここの整理でいいますと,この2の論点で提示されております契約解釈に関する基本原則が,あらかじめ明文の規定で置かれているか,あるいは,そうではないけれども前提とされているかはともかくとして,そういったものを踏まえながら,それを補完するものとして用いられるということについても指摘され,確認されていたと考えます。   ですから,社会的効用が下がるとか,一方当事者に不利になるとかいうような御指摘は理解しつつも,そういう因果律と言いますか,因果関係そのものが,いつもそうなってしまうというふうにパブリックコメントに応ずる方々に伝わってしまうような補足説明の記載ですと,またかえって問題があるというふうにも感じますから,そのあたりについては論点2と3との有機的な関係に留意しつつ,補足説明を補っていただければ有り難いというふうに考えるものでございます。 ○沖野幹事 今の山野目幹事の御発言に全面的に賛成しつつ,補足的にその際の対応に関してですが,補足説明で補うのか,それともこのゴチックの本文で補うのか,両方の対応があろうかと思います。仮にゴチックの本文のほうで補うということにいたしますと,今,2と3の関連ということが指摘されたわけですが,例えば,一つの考え方なのですけれども,3の最初のところで,「条項の意味が多義的である場合には」と書かれているのですが,およそ最初から複数の解釈が可能である場合ということではないので,「契約の解釈に関する基本原則を経てなお多義的である場合には」といった表現にすることで,原則の内容自体,最初から全てこれでいくということではないということを,原則の内容自体がそうであるということを明らかにしていただくか,あるいは,その原則の内容は現在の記載のままにした上で,しかし,その原則の内容が正に補充的なといいますか,今申し上げたような場面が限定されるものであることを確認しつつ,しかし懸念が表明されていますから,それらについても留意しつつというような形の記載とするか,いずれかの形で本文に入れるということも検討していただいてはいかがでしょうか。 ○岡田委員 条項使用者不利の原則に関しては,消費者にとって基本的な部分だけでもいいですから民法に入れてほしいということが一つと,その前の2の契約の解釈に関する基本原則ですが,消費生活センターでは,正にここの部分の仕事をしておりまして,なかなか意思が合致しているかしていないか,その辺が曖昧なケースのほうが多いのが現状です。この2の38ページの上から3行目,「当事者が当該事情の下において」,つまり意思が合致していないような場合に関して,「合理的に考えるならば」という文章があります。この合理的ということに関してパブリックコメントでは補足説明があるかと思うんですが,相談員の立場からしますと,大変関心があるものですから,できるだけ分かりやすく説明していただきたいと思います。 ○山本(敬)幹事 先ほど沖野幹事が言われたこととやや似た指摘なのですけれども,2の部分の,38ページの第2段落の「また」以下で,補充に関する指摘があります。これは,「当事者が表示していない事項について補充する必要がある場合は」というように書かれています。これは分かりやすく書かれたということだと思いますが,「当事者が表示していない事項」というよりは,それより前に書かれた解釈準則によっても契約内容が明らかにならない部分ということではないかと思います。このあたりも,部会資料のほうで書かれていることなどを踏まえて,もう一度御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかに御意見,いかがでしょうか。   それでは,部会資料24の38ページから39ページまで,「第59 第三者のためにする契約」について御意見をお伺いします。 ○中井委員 ここは「方向」というBタイプが,3,4の(1)と4の(2)ですけれども,果たして方向ということで合意ができていたのか疑問です。   また,4の(1)についてですけれども,要約者が約諾者に対して受益者への履行を請求することができるとした場合,幾つかの問題点が指摘されていたかと思います。つまり,この判決の既判力や執行力はどうなるのか,受益者からの固有の請求権との関係はどうなるのか,二重訴訟の関係などですけれども,補足説明で説明が入るのかもしれませんが,本文に示しておく必要があるのではないか。そうすると,これもBタイプまでの合意があったのか疑問がありますので,御検討,御確認いただければと思います。 ○中田委員 38ページの1の「受益の意思の表示を不要とする類型の創設等(民法第537条)」についてですけれども,受益の意思の表示が不要であっても,受益者の放棄は認めるということが前提になっていると思うんですが,その放棄について,本文か,あるいは補足説明かで触れておいたほうが,誤解を招かないのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。   よろしければ,部会資料24の40ページから41ページまでの,「第60 継続的契約」について御意見をお伺いします。 ○鹿野幹事 2の(3)の「継続的契約の解除」について,二点申し上げたいと思います。   まず第一点ですが,ここでは信頼関係破壊による解除のことが書かれていますが,部会での議論では,やむを得ない事由による解除を認めるべきではないか,それについての検討をすべきでないかという意見も出されたのではないかと思います。この点については恐らく,この文章の中の「事情変更の原則との関係に留意しつつ」という記述に盛り込まれているという御趣旨なのではないかと思いますが,この部会で議論をしていたメンバーはその趣旨が分かるとしても,恐らくパブコメにかけた場合には,その趣旨は,これでは伝わらないのではないかと思います。そこで,この点をもう少し分かりやすく書いていただければと思います。   それから第二点は,先ほど,今回の部会資料の16ページについて,松本恒雄委員から御指摘があった点とも関連するところです。つまり,継続的契約,特に継続的役務提供契約が消費者契約である場合について,消費者からの将来に向けた任意解除を認めるべきだという意見が部会で出されたのではないかと思います。これは現在の法律でいいますと,特定商取引法の特定継続的役務提供における,いわゆる中途解約権,これを言わば一般化するような形の規定を民法に置くことを意味し,それについて検討するべきだという意見だと思います。これは,先ほどの役務提供のところに書くべきことなのか,それとも継続的契約のところに書くべきことなのかという点については,検討を要しますが,いずれにしても,その点についての記述を加えていただければと思います。 ○高須幹事 2の(1)の「期間の定めのない継続的契約の終了」のところでございますが,頂戴した資料ですと,合理的な期間を置いて解約の申入れをすればとよいということで,そういう一つの考え方でほぼ説明をされておるのですけれども,部会資料には,もともとは下級審判例ではあるのですが,より厳格な要件を必要とし,重大な事情がないと解除あるいは解約ができない場合があるという裁判例があるというのも指摘されていて,その判例をどう読むかというようなところで一定の考え方が示されていたということでございますから,必ずしもこの合理的な期間を置いて解約の申し入れをすることだけでいいのかどうかは,もう少し考える余地があるのではないかと思っております。   20回会議のときの議事ですが,私も必ずしもそういう割り切りだけでいいのかどうかは少し疑問があるということも発言させていただいておりますので,基本的には今回の記述は,更に検討ですから,これでいいんですけれども,異なる意見もあったとか,より慎重に考えるというような,判例という言葉を使うかどうかも下級審判例ですので,お任せしますが,そういうのも留意しつつというような表現を一言,置いていただいたほうがよろしいのではないかと思います。 ○中田委員 ただいまのお二人の御意見にも反映されておりますけれども,継続的契約でどのようなものをイメージするかというのが,かなりばらばらのような気がします。   40ページの1の「規定の要否等」のところで,冒頭に「契約関係の維持についての当事者の期待を保護しようとする傾向がある」とうたっておられるわけなんですけれども,これはある類型についての記述になるのではないかと思います。確かにそういった傾向を示す裁判例もあるんですけれども,他方で,今,鹿野幹事のおっしゃいましたように,継続的契約の中には拘束からの離脱の保障が求められるというようなタイプもあります。いろいろなものがあるんですけれども,全体を通じて一番基礎的な部分として,継続的契約の解消に関する規律を,まずは期間の定めの有無に応じて整理してみるという第一段階があって,その上で更に継続性の保護や離脱の保障の保護などの観点からの議論が重なってくるのではないかなと思います。それを区別しておいたほうが,議論が混乱しないし,また,意見が出やすいのではないかと思います。   したがいまして,「1 規定の要否等」の書き方なんですけれども,例えば次のような文章を考えてみました。   「継続的契約について,その解消をめぐる問題が多いことから,主として解消の場面の規律という観点から,裁判例の分析等を通じて,継続的契約一般に妥当する規定を,契約期間の定めの有無を考慮しつつ,設けるべきであるとの考え方がある。」   一例ですけれども,御検討いただければと思います。 ○新谷委員 今の中田先生の御意見とも関係しますが,2の(2)の「期間の定めのある契約の終了」の場面についてです。   労働契約も継続的契約の類型に入るわけですが,20回の会議の際に,今回提起されている期間の定めある継続的契約に関し,更新を拒絶することが信義則上相当ではないと認められるときは更新を拒絶することができないということについて,労働者側からの更新拒絶については,契約の当事者が生身の人間ですので,不当に長期間拘束されるおそれがあるという懸念や,憲法上の職業選択の自由との関係はどう考えるかという懸念を申し上げたところです。   その辺の懸念をどのように反映させるのかという点を,工夫いただけませんでしょうか。 ○中井委員 この継続的契約について,何を想定しているかということについて,やはり各委員の中に認識の違いがあるのではないか。   委任であっても一回的ではなくて長期間の,寄託も期間のある契約だろうと思います。雇用はもちろんそうですし,役務提供契約,サービス契約を想定すれば,一回的サービスもあるかもしれませんけれども,期間を定める,若しくは期間を定めないで極めて長期なことを想定された契約もあるかもしれません。しかし,これらは,委任,雇用,寄託それぞれのところで契約解消についての定めが置かれる。それとの関係でどうなっているのかというのが,よく分からない。   それから,前の審議でも申し上げましたけれども,実務で問題になっているのは,そのような契約類型についてはそれぞれの解除に関する規定がありますから,それによってまかなえているところがあって,現実に紛争として多発しているのは,例えば代理店契約であったり,継続的な商品供給契約であったり,基本契約がある上で個別の発注があって,そこに長い取引期間を経て受注義務が発生しているような,そういう基本契約プラス個別契約類型型が,あるとき突然,基本契約が終わることによってトラブルになる。そのときに,1年,3年の予告を置く,予告を置いて契約を終了させる実務が行われている。そのとき契約終了について,どのような規律を設けるのかということをイメージすると,今紹介されていることとはかなり乖離をしているわけです。   結局,私の申し上げたような類型は対象外なのか。通常の委任・寄託・雇用や一定の期間のあるサービス提供契約的なものを想定して,ここに継続的契約として特別の,原則の定めのほかに,更に特別の契約解消に関する規定を設けるのか。そうではなくて,紛争が多発しているようなものについて,何らかの規範をここに設けようとしているのか。この提案の趣旨について,もう少しお聴かせいただければと思います。 ○川嶋関係官 第20回会議で用いた部会資料19-2に記載していたと思うのですが,賃貸借や委任などといった継続的契約の定義に該当し得る個別の規定との関係をどのように整理すべきかということ自体も,今後の検討対象になっていくのだと思います。   新谷委員からは労働契約への影響についての御懸念が示されましたけれども,継続的契約に関する立法提案は,基本的には,労働契約のルールを変えようとすることを意図するものではないのだと思います。しかし,第20回会議において山川幹事からも御指摘がありましたとおり,例えば労働契約に関する判例法理よりも継続的契約の規定のほうが優先することになってしまうことも考えられますので,そういった点については,留意していく必要があると思います。 ○青山関係官 認識は分かりましたし,理解いたしますが,そうであれば中間的整理にも,例えば「ほかの典型契約について確立している法令や裁判例との関係に留意しつつ」などの言葉を入れたほうが,より議論を実現できるかと思います。あるいは対象となる契約の範囲についても議論するという趣旨のことを入れておかないと,今でている懸念がなかなか反映されないというおそれを感じました。 ○山川幹事 私も今の青山関係官と同感です。   それから,これまで出てきた議論の中では,民法典の中でも他の典型契約との関係を考慮する必要があるという点も加わるかと思います。 ○岡田委員 ちょっとお聴きしたいのですが,前に私がお話しましたが新聞の購読契約は継続的契約にならないのでしょうか。期間を区切ってやっても,2年とか3年とかを高齢者に契約している事例が増える一方ですがそれがここで読めないとなると全く救われないなと思います。また最近は,販売契約ですが,健康食品を継続的に届けるという契約があります。それはどこかに入るのかなというふうに判断がつかないのですがその辺も是非どこかで入れていただけないのでしょうか。 ○中田委員 私の理解ですと,ここで書かれていることは一般的な考え方で,それぞれ個別の典型契約なり特別法なり法領域で規範があれば,そちらが優先する。ここでは一番ベーシックなところが書かれているのだろうと思っております。ただ,そのことをよりはっきり書いたほうがいいというのであれば,それは何らかの形で示すということは考えられると思います。   それから,岡田委員のおっしゃました具体的な例につきましては,むしろ形式を濫用しているのに対してどのように対処するかという問題で,ここで考えられている基本的なことよりも,もう少し次の段階の問題なのかなと思っております。 ○奈須野関係官 ここの部分について,多数当事者型継続的契約として,ここで事務局から提示されているのは,「当事者の一方が多数の相手方との間で同種の給付について」,「他の契約が締結されることが相互に予定されているもの」という,かなり限られた範囲の契約になります。したがいまして,中井先生が御指摘になったような代理店契約や,あるいはフランチャイズ契約は,ここでいうところの多数当事者型継続的契約ではないという理解になります。   そうすると,中井先生の問題意識のとおり,実際に紛争が起きているのはこういった類型であるのに,どうしてそれらを対象外としてこのような規定を定める必要があるのかという疑問が生じます。そうであるからこそ,この文章は,「その必要性や要件の明確性などの点問題を指摘する意見がある」との留意点があり,これはこれで,議論を反映した文章であると理解いたします。   そうではなくて,多数当事者型継続的契約について,代理店契約やフランチャイズ契約を含み得る,もう少し緩い概念として考えるのであれば,留意点としては改正の必要性ではなくて,そもそも対等な当事者が交渉して納得の上で合意したものについて,民法でそうではないという強行規定を定めることが良いのかどうかという,そもそも論の当否が問題となります。ここの記述ぶりからすると,ここはある種の限定された範囲の契約について,その必要性を議論していると理解いたします。 ○中井委員 そうすると,私の最初の質問に対しては,基本的にはそれらは対象になっていない。委任や寄託や雇用や役務提供,サービス契約に類する,ある意味で義務の内容と対価が決まって,期間の定めがあるかないか,そのような成立した契約についての終了原因の特則なりを定めようとしているのであって,現実に紛争のある,代理店契約とか継続的部品供給契約などメーカーと下請との間に長期の契約,そういうことは念頭に置いていない。そうではないんでしょうか。 ○鎌田部会長 私は,包括的に,そういうものを全部カバーしているというふうに理解していました。例えば期間の定めのない継続的契約について,賃貸借の中に解約の申入れの規定があれば,それはそちらが優先するけれども,例えば不動産賃貸借で信頼関係理論みたいなことが言われていますが,条文としては賃貸借の中には明確には存在していないので,それは,例えばここでいう2の(3)の規定が設けられれば継続的契約共通の規定としての2の(3)が不動産賃貸借にも適用になるというふうに,重層的な構造を持っているのではないかと私は理解していたんですけれども。 ○中田委員 今,奈須野関係官が多数当事者型継続的契約についての御発言をされましたのですが,それと,その基になっている一般的な継続的契約というのは,ちょっと区別して議論したほうがいいのではないかと思います。   それで,一般的な継続的契約というのは,先ほど申しましたとおり,あるいは今,部会長もおっしゃいましたとおり,最も基本的な考え方を示していて,その上で,そのバリエーションとして多数当事者型というのがあるのではないかと思います。その多数当事者型の中に代理店やフランチャイズが含まれるかどうかというと,これは適用の問題ですけれども,これは含まれるという考え方も十分あると思いますが,それを踏まえた上で,必要性や要件の明確性などの点についての問題の指摘がここで記載されているのではないかと思います。   それから,奈須野関係官が当事者の合意を覆すというような趣旨のことをおっしゃいましたけれども,ここでは合意を覆すというような効果は出ていないのではないかと思います。 ○奈須野関係官 いや,これは「合意を覆す」というような言い方ではなかったと思いますが,「合理的な理由なく差別的に取り扱ってはならないものとすべきである」という規律について,当事者がそれでいいと言っている契約を,あえて否定するのはおかしいのではないかという趣旨で申し上げたものです。 ○中田委員 それでいいというのは,合理的な理由なく差別的に取り扱ってもよいという合意があった場合という御趣旨ですか。 ○奈須野関係官 ええ。その当事者間の様々な経済状況の中で,対等な交渉の上,ある程度相互に譲り合って合意したわけですから,交渉に参加していない他人から見て合理性についてどうかというようなことがあるかもしれませんが,それはある種契約自由の範囲内ではないかと思います。 ○中井委員 私は,代理店契約も,継続的な商品・部品供給契約も,3の(2)の「多数当事者型継続的契約」とは認識しておりません。これらは純粋にここでの継続的契約なのかどうかが問われている。   基本契約を解消するとかだけでは余り意味のない話で,基本契約を存続させても個別契約を締結しなければそれでおしまいですから,受注義務があるかどうか,発注義務があるのかどうかが問題になってくる。基本契約は残っていても発注してくれなかったら結局一緒ですから,契約終了の問題だけでは解決できないというのも前回申し上げたわけです。   本件論点整理で,その問題は抜け落ちているように思います。それを取り入れるかどうかは更に御検討いただくとして。 ○中田委員 今の中井委員の御指摘については,その回のときにも申し上げたと思いますけれども,外国の立法例,立法提案の中では,例えば枠契約ということで,今のようなことについての規律を置いているのもあります。もちろんそういう規律を置くことができればよろしいと思うんですけれども,まずは一番基本的な継続的契約について考えた上で,その次の段階として,もし枠契約についての規律も置くのであれば,それはそれでいいと思います。ただ,その場合には,具体的な御提案をお出しいただいたほうがいいのではないかと思います。 ○能見委員 ちょっと言葉の使い方といいますか,この項目の表題なんですけれども,今,継続的契約というのを見ていますと,1が「規定の要否」で,2が「継続的契約の解消の場面に関する規定」ということで,その次に,3に「継続的契約に類似する制度」という言い方が,先ほどからの議論からすると,ちょっと分かりにくい。非常に広い意味では,こういう分割履行契約も,あるいは多数当事者型の,これも広い意味での継続的契約には入るんだと思いますけれども,3はある意味で特殊な継続的契約というようなニュアンスなんでしょうか。この3の位置付けが,この表題だけを見ると,ちょっと分かりにくいなと思いました。  中身としては,先ほどから中田委員,あるいは中井委員もおっしゃっているように,代理店契約のようなものは典型的な継続的な契約で,これは2のところの,1も掛かりますけれども,規定の要否,あるいは継続的契約解消の場面に関する規定が基本的には当てはまるもので問題がありません。先ほどから議論になっているのは,ここに書いてある内容でいいのかどうかという点です。この中身についてはいろいろ議論がありますが,私として確認しておきたいのは,その中身そのものではなく,どういう契約が適用されて,どういう契約が適用されないのかということについてです。今,私が申し上げたような理解でいいのかどうかということだけ確認しておきたいと思います。 ○内田委員 継続的契約の中で,中井委員がおっしゃった基本契約プラス個別の受発注があるという場合に,基本契約そのものの更新の問題はここで規律しようとしている問題だと思います。その上で,基本契約はあるけれども,実際に発注しないというような話になると,これは直接にはここでは規律していない。それは抜け落ちているとおっしゃいましたけれども,そこまでは立ち入らない規律が提案されているのではないかと私は理解をしています。ですから,もしそこに立ち入るとなれば,中田委員が言われたように,新たな提案が必要になるのではないかと思います。   それから,多数当事者型の継続的契約は,典型的にはフランチャイズを想定していると思いますが,能見委員が言われたように,フランチャイズも継続的契約の一種だと思います。ただ,ここでいう継続的契約と,それからそれに類似する制度という規定は,いずれもそれ自体は典型契約ではなくて,ある種の性質を持った典型契約に横断的に適用される共通法理という趣旨だと思います。多数当事者型継続的契約も,フランチャイズのほか,もう少し広がりのある概念として定義されていると思いますが,同様な性質があるものについて,最低限共通の法理を書こうという趣旨だと思います。 ○鎌田部会長 3の(1)の「分割履行契約」は継続的契約ではないという性格付けですね。だけど,3の(2)の多数当事者型は継続的契約だとしたら,3のタイトルはちょっと工夫の必要があるということだと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○青山関係官 「多数当事者型継続的契約」で,ちょっと別の視点の意見です。   まず,この3の(2)の最後の文章で,「必要性や要件の明確性などの点で問題を指摘する意見があることに留意しつつ,更に検討」とあったのですけれども,これを議論した部会では,要件もかなり議論になったのですけれども,差別的取扱いをしてはならないという規律に,どういう法的効果を持たせるかという指摘もあったと思うので,言葉だけなのですけれども,「要件の明確性」の次に「効果」という言葉を入れてもいいと思います。   あともう一点,要件の明確性という言葉で読めているような気もしますが,,先ほど来からの議論にもあるとおり,何がこの類型に該当するかというのは,非常に議論になったので,例えば要件の「内容」や明確性という言い方ぐらいで,しつこく書いてもいいのかなと思いました。   あともう一点,全く別の視点で,私も労働法制の観点から申しましたし,奈須野関係官からもおっしゃったと思いますが,こういう当事者間の差別的取扱いを制約するようなものは,個別の規制立法というのでしょうか,別の立法でやるべきではないかという議論も幾つか出ましたので,ほかの法令によって対処すべき問題であるとの意見もあったということを,どこかに書いておいてもよいと思いました。 ○岡本委員 先ほど中井委員からありましたように,基本的な契約と個別契約がある場合に,基本的な契約が,ここでいう継続的契約に含まれるのかどうかというふうな観点での疑問というのは,この資料を読んだところでは,確かにこの字面だけではなかなか分からないような,そういうあり得る疑問なのかなと思いまして,どこからそれが来るのかというと,その継続的契約というものについて定義がないというか,そういったところから来ているところも一部あるのではないかと思いますので,この継続的契約というのに何か,ある程度概括的にはなるのかもしれないですけれども,定義を設けるというのも一つ論点としてあり得るのではないかと思います。   それから,二点目なんですけれども,継続的契約について何らかの規定を設けるときに,主として解消の規律を設けるということを考えて,その解消の規律を設けるに当たっては,期間の定めの有無を考慮しながら設けるというふうな,先ほど中田委員がおっしゃったような考え方。これは結構なんだろうと思うんですけれども,そういうふうな形で一般に継続的契約に妥当すべき基本的な規律を設けるといったときの継続的契約の解除につきまして,先ほど鹿野幹事がおっしゃる,最初,一点目としておっしゃられた信頼関係破壊以外にも,継続的契約について解除することができる場合があるのではないか。これはそのとおりだと思いますものですから,その点については鹿野幹事の一点目の御意見に賛成したいというふうに考えます。 ○鎌田部会長 若干の論点の追加の提案ということで理解させていただきます。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料24の41ページ,「第61 法定債権に関する規定に与える影響」について御意見をお伺いいたします。 ○中田委員 法定債権という言葉になじみのない人がいるかもしれないと思います。そこで,例えば「法定債権」の後に括弧して「事務管理,不当利得,不法行為など合意ではなく法律の規定に基づく債権」というような説明を加えてはどうかと思います。ここで書くか,補足説明か,両方あり得ると思いますけれども。 ○鎌田部会長 「など」は要らないのかもしれない。要るのかな。事務管理,不当利得,不法行為以外の法定債権も考慮に入れる必要があるのかどうか。 ○中田委員 債権かどうかは別にして,債権法以外のところで発生するものも含めるかどうかという問題がありますが。 ○中井委員 この「第61 法定債権」に関する議論は余り時間を掛けなかったはずで,そのとき議論が出たのは,損害賠償の範囲との関連で不法行為の損害賠償の範囲をどうするかという議論だったと思うんです。それで,この問題提起としては,そこのところだけを指摘して終わっていますが,果たしてそれでいいのかという素朴な疑問なんです。   無効な場合,取り消した場合の原状回復義務と不当利得の関係であるとか,委任と事務管理の関係であるとか,そういう問題があることを本文に指摘すべきなのか。仮に補足説明が審議会における議論の対象のみだとすると,そのような点についての指摘もないことになりかねないので,どこまでの範囲を記載するのか。よく分からないなと思っているものですから。 ○松岡委員 今の中井委員の御指摘に合わせて申しますと,今日御欠席の松本委員が特に繰り返し,無効な契約の清算に関する規定を設ける場合に,一般不当利得の関係をどう考えるのかが重要な論点になると指摘されていますので,それは書いていただいたほうがよろしいかと思います。 ○鎌田部会長 これまでの議論の中で御指摘のような点が出ていたと思うんですけれども,整理の仕方が難しいのは,無効・取消しの場合の返還の範囲を無効・取消しのところで書いてしまえば,それに加えて直接的に不当利得をいじる必要があるかどうか,無効・取消しの場合の返還の範囲が正面から規定されないことになったら,それを不当利得のほうできちんと整備しなければいけないのではないかという,その辺の関係があるんだろうと思うんですが。補足説明のほうで,議論の経過は紹介されるということになりましょうか。 ○筒井幹事 少し補足いたしますと,中間的な論点整理の際に別文書として用意する「補足説明」の中で個別論点に触れるのは,基本的に「議事の概況等」という部分になりますので,そこではこの会議の場で議論されたことの紹介が中心になると思います。もっとも,「議事の概況等」において事務当局による若干の説明を書き足すことは当然あってよいと思いますし,それは「等」に含まれるのだと理解しておりますけれども,しかし,飽くまで基本となるのはここでの議論の状況を紹介することであると思います。   したがって,先ほど御議論がありました法定債権のところに関する記述も,御指摘がありましたことを例として取り入れるかどうかといったあたりについて,考えさせていただきたいと思いますし,また,もう少し分かりやすく表現するという趣旨での御発言もあったと思うので,それが可能かどうかについては考えさせていただこうと思います。   基本的には,論点の詳しい紹介という役割は,各項目の下にこれまでの部会資料,ここでは19-2の第8を引用しておりますけれども,この部会資料詳細版で,この論点を詳しく紹介しておりますので,そこを御覧いただくことがメインになろうかと思います。   また,この法定債権に与える影響のところは,実際には,他の項目の検討結果によって左右される論点ですので,今の段階で余り細かくいろいろなものをここに盛り込んでも,余り生産的ではないという気がしております。 ○深山幹事 第61の「法定債権に関する規定に与える影響」というのが,余りに抽象的なテーマで,ここで何を問題にしようとしているのかというのが,どうも私自身もよく分からないし,多分余り意見が出にくいのではないかなと思います。一方で,諮問の範囲が債権法のうち契約に関する規定を中心にということもあって,不法行為であるとか不当利得については直接的な検討対象の外だということもあります。もちろん解釈上も関連性はあるわけですが,立法論として,ここでどういうことについての意見を求めたり,あるいは議論をしようとしているのかが,いまひとつ抽象的に過ぎて分からないので,もう少し何か,問題点なり,検討項目として取り上げる意味合いの説明を,補足説明のほうでもいいのかもしれませんが,どちらかでしていただく必要があるのではないかなという気がいたします。 ○鎌田部会長 これまで具体的に議論の対象になったものとしては,416条と不法行為というのが,ほぼ正面から議論されたものとしては唯一,と言うと言い過ぎかもしれません,だったので,それが例示されているということだと思いますが。 ○中田委員 先ほどの筒井幹事からの御指摘もありましたけれども,部会資料の19-2の82ページ以下に幾つもの例示が挙がっているわけです。私は当然この例示を踏まえた上でここで議論していたつもりでありましたので,これをまた繰り返して議事の概況等に書くというのはちょっと重いのかなという気もします。ただ,何らかの形でこういった問題があるということが参照できれば,それで足りるのかなと思いますけれども。 ○鎌田部会長 ここでの議論を長くやっていらっしゃる人には,大体どこまでが前提になっているかということは了解されているので,今のような説明でいけると思うんですけれども,中間的な論点整理を初めて見た方が,深山幹事が言われたように,何を聴こうとしているのかについて戸惑いを覚えるようだと余り適切とは言えません。どういう問題があるのかということを分かりやすい形で,しかし余り冗長にならないで,提示ができれば,そのほうが望ましいと思いますので,少し工夫をお願いするということでよろしいでしょうか。   ほかには,この点に関して御意見,ございますでしょうか。   よろしければ,次に部会資料24の41ページから45ページまでの,「第62 消費者・事業者に関する規定」について御意見をお伺いいたします。 ○大島委員 1の「民法に消費者・事業者に関する規定を設けることの当否」でございますけれども,第20回の会議におきまして,取引について,情報や経験を有する事業者・法人と,それらを有しない消費者の間の格差が拡大しているという認識に,全面的には至っていないとの見解を申し上げたところです。   御案内のこととは存じますが,事業者と一言で申し上げましても,企業数の99.7%は中小企業が占め,そのうち87%が,製造業で従業員数20名以下,商業・サービス業で従業員数5名以下の小規模企業であるのが実態でございます。   実務家からすると,この問題を扱うならば,まずは民法に消費者・事業者に関する規定を設けることの当否を検討することが大前提であり,更なる議論が深められるべきだと思います。この前提となる議論を受けて,必要であれば特則についての検討がなされるべきだと思います。   たたき台の書き方についても,そのような視点を十分に盛り込んだ整理をしていただくことを御検討いただければと思います。 ○加納関係官 幾つか申し上げたいと思います。細かいところもあり,恐縮です。   42ページの上から5行目ぐらいで,法律の規定が複雑で分かりにくくなり実務に混乱を来すとの懸念というところ辺ですけれども,これは,仮に私が申し上げたことを踏まえてということだとしますと,私が申し上げたかったのは,要するに事業者であるとか,いろいろな経済的事業とかというふうな概念が入ってきた場合に,適用関係が今よりは若干複雑になるのではないかという趣旨のことは,可能性というのはあり得るということは申し上げましたけれども,実務に混乱をもたらすとか,そこまで強い意見までは言ったつもりはございませんので,他の委員の方でそういう意見がおありで,それを総合的に反映してこう書かれているのであれば,そこはそのとおりしていただいて結構ですけれども,私がもう一回議事録を見直した限りではそこまで,実務に混乱をもたらす,具体的にどういう混乱なんだろうかとかいうふうな議論まではなかったのかなという気がしておりますので,そこはもう一回検討していただければいいかなと思いました。   それから,42ページの下の2の消費者契約の特則に関しましては,前半のほうで,委任のところで若干触れさせていただいたところですけれども,まず,寄託者の損害賠償責任に関する特則ということについて,ここについて書くのであれば,全体の平仄という関係では,委任者についても本当はあってもいいのかなという気がいたしました。改めて見直した結果,そういうふうに思ったということでございまして,部会ではそういう発言をしていなかったので,大変申し訳ありませんけれども,その点を付け加えさせていただきたいと思います。ただ,この寄託者の損害賠償責任に関して,そもそも無過失責任にするかどうかということについては,本当はいろいろな議論があり得るということだと思いますので,そこは留保というか,補足させていただきたいと思います。   それで,この消費者契約の特則に関して,本文と①から⑥というふうに,いろいろと書いていただいて,ここは私どももチェックしまして,消費者・事業者という観点で規定というのは多分このとおりだというふうに,そこはそう思います。   ただ,パブリックコメントにこれでかけたとしますと,消費者契約に関し,規定を更に充実させるべきという意見も寄せられるのではないかというふうに予想されるわけでありまして,例えば,情報提供義務でありますとか保証,それからファイナンス・リースの特別規定を今回で典型契約化するのであれば,その際のユーザーの保護であるとか,そういった観点。あるいは,先ほど松岡先生からあったと思うんですけれども,不当利得返還請求の範囲とか,様々な意見が寄せられるのではないかと予想されるわけです。   それは,ここの2の消費者契約の特則というところで書いているのは,飽くまでも消費者・事業者の概念を入れて,それで消費者契約という規定みたいなものを設けて,その場合こうだよということなので,そういう説明でいいと思うんですけれども,そこで,そういう予想される意見で何を言わんとしているかといいますと,やはり民法の在り方みたいな根本的なところで,消費者契約に限らず,現代社会の複雑化というか,多様性というか,そういうところに着目して,柔軟・適切に解決を図れるような規定にしてほしいというのが一番大きいところではないかと思います。   ちょっと若干話が抽象的になって恐縮なんですが,消費者・事業者というのは一つの切り口にすぎなくて,やはり今回の民法改正の主眼というのは,現代取引の発展に応じて民法を豊かにしていくんだと,豊かな解釈を可能としていく,そういう規定にしていくんだということだというふうに思うわけでして,その一つの切り口として消費者という概念,消費者・事業者という局面も出てくるにすぎないんだということではないかと思われます。   そうだとしますと,私なりに非常に重要だと思いますのは,その41ページの1からずっと来まして,42ページのところに書いてある,最後の「また」というところに書いてある,消費者・事業者に限らず,この格差とか非対等当事者とか,そういうところに着目した規律というところ,ここが非常に,かなり本質的で,かつ重要ではないかと思われるところであります。これに関しましては,議事録によりますと,第20回の議事録で中井先生の御発言で,ちょっと引用させていただくと,そういう現実の社会には,属性も異なる,知識・経験も異なると,情報の収集能力も異なる,交渉力も違うと,そういう多種多様な格差のある人はたくさんいるんだと。そういう人たちが契約を締結した際に,その契約に拘束される正当化根拠としてどういうものがあるのかという環境は整えなければならない。これを明示することは大変意義あることと思いますという御発言がありまして,私も大変この御発言には共感するところであります。   何が言いたいかといいますと,消費者・事業者という観点でいきますと,非生産的な議論になりがちな局面が今まであったのではないかと思われるわけですが,やはり民法そのものを発展させていくんですよと,その一つの局面としてこういうものがあるんですというものがもう少し出てもいいのかなと。典型的には,例えば不実表示につきましては消費者契約法の規定を取り込むという観点もさることながら,むしろ民法の既存の錯誤などの規定を発展させていって位置付けるというようなこともあり得るのではないかという御意見が,この部会でもあったと思いますし,割とそういう観点での認識については,この部会でもある意味共通認識ができつつあるのではないかというふうに拝察するところであります。そうしますと,この62番の1のところにも,例えば消費者に関する法理を発展させていく見地からうんぬんかんぬんという,支持する意見というのもありまして,これについては,ここは消費者政策をやる場でないんだから,いかがなものかという逆の観点の御指摘もあったと思いますが,むしろ,社会の複雑化というか,構成員の多様化とか,そういうのにも適応できるようにするのがまず主眼としてあって,その一番最後の「また」以下の段落にあるような貴重な御意見もあったということを踏まえながら,その一つの局面として,結果的に消費者に関する法理も発展していくことにもつながるというような整理のし直し方もあるのではないかと思いますので,その点,構成にも及ぶ話になって大変恐縮ですけれども,意見として申し上げたいと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。 ○新谷委員 42ページの1の規定の要否に関するところです。   20回の会議の事業者間契約に関する特則についての議論の際に,自ら労務を供給して,かつ従業員も雇っていない,見るべき資産もない役務の提供者,これは個人事業主ですが,これと大企業との間の契約が事業者間契約とされた場合に,交渉力の格差や情報量の格差が非常に大きく,優越的地位の濫用が懸念されるということを発言させていただきました。   その点について,42ページの1の最後の段落の「また」以下のところに,非対等の当事者に関する規律を設けるということが記載されていますが,格差の例として,知識と情報のみではなく,交渉力というものも格差の対象になるのではないかと思いますので,追記をしていただきたいと思います。   もう一点は,今の消費者契約法では労働契約は適用除外ということになっているのですが,民法において「消費者」「事業者」という規定を設ける場合,労働者については,どういう扱いになるのかということについて,まだ明確になっていないのではないかと思っていますので,今後の第二巡の論議の際に,労働契約上の労働者はどういう扱いにするのかということについて,議論させていただきたいと思っています。 ○鹿野幹事 三点申し上げたいと思います。   まず一点目です。1のところで「民法に消費者・事業者に関する規定を設けることの当否」という項目がありまして,2に,その特則に当たる具体的な規定として,どういうものを設けるかという項目が出てくるのですが,部会での議論では,このような具体的な規定だけではなく,そのような消費者契約に関する特別の規定を設けることの趣旨といいましょうか,あるいは理念規定と言ってもいいかもしれませんが,現在の消費者契約法の1条に置かれているような規定を盛り込むべきだという指摘があったと思います。場所としては,1と2の間だと思いますが,是非このことを盛り込んで記載していただければと思います。   それから二点目ですが,先ほど来御指摘がある1の最後の3行目のところです。最後から3行目の「また」以下のところについてですが,これについては私も,前の議論で,消費者・事業者間だけではなく,その他の当事者間でも格差がある場合についてのより一般的な規律を設けるべきではないかと申し上げました。これを記載していただいたことには感謝申し上げます。ただ,そのときにも申し上げましたが,少なくとも私は,これにつき具体的な形での一連の規定を置くというイメージではありませんでした。情報や交渉力に格差がある場合においては,その点につき劣後する者の利益に配慮しなければならないというような形での,かなり抽象度の高い理念規定を置くこと,それも,消費者契約に関する理念規定のもう一つ上位の理念的規定のようなものとして置くべきだという趣旨で申し上げたわけです。ところが,この資料のように,どういう「規律を設けるのか」と記載されると,一群の具体的規定を置くかのように誤解を招くおそれがあると思います。もしかしたら,格差契約に関する規定を設けることについて支持をしてくださったほかの委員幹事の方々は違うことをお考えなのかもしれないので,私の意見という形で発言をさせていただきました。   それから三点目ですが,これは2の消費者契約の特則の具体例についてです。ここでは,従来から議論があり,言及された特則等が挙げられているのですが,つい先ほど私が発言しましたところの,いわゆる継続的契約における消費者の解除権についても,ここに加えて挙げていただければと思います。 ○佐成委員 三点申し上げたいと思います。   二点は加納関係官がおっしゃった点についてでございますけれども,中井委員が部会で,格差契約一般といいますか,それを論ずべきだという御指摘をされたということは承知しておりまして,私自身も,格差の弊害をそのまま放置してよいとか,そのような発想にはございません。もちろん,現在,現実に存在する格差をいかに縮めていくかという問題意識については私も共感しているところなんですが,ただ,そもそも民法がそういう格差是正の機能を果たすべきなのかどうなのかというところについては,産業界一般にはやはり異論がございます。ですから,一般論として格差の是正という問題意識自体については,皆さん多分共感していると思うのですけれども,ただ,その手段として,民法という一般法を使って何かをしようとか,そこまで一致しているわけではないというところを,まず指摘したいと思います。   それから,先ほど「実務の混乱」というところで御指摘を頂いた部分なんですけれども,これは,加納関係官の御発言もそうでしょうが,私もこの点については指摘したかと思います。それは,B to BあるいはB to Cという場合分けだけではなくて,C to CだとかC to Bとかについても,場合分けして規定を整備していく必要があって,そうなると適用関係が複雑化するといった問題も発生するので,そうなると非常に実務が混乱するのではないかということを,もうここで繰り返しませんけれども,申し上げました。そういう意味では,そのような発言として,この部分を受け止めていただいても結構かなというのが二点目でございます。   それから最後は,大したことではございませんけれども,この2の「消費者契約の特則」について,ここで具体的な規定の検討例が挙がっているわけなんですけれども,特に不当条項規制とか,あるいは条項使用者不利の原則については,それらを規定として置くかどうかについてもかなり議論のあるところでございます。その議論はもっと前のほうで論点とされていて,読み手からすると関連性が少し分かりにくいので,本文に書く必要はないと思うのですけれども,補足説明か何かに書いて読み手に関連論点を分かりやすくして,それらを参照しながら検討していただけるように御配慮いただければと思います。 ○鎌田部会長 最後の点につきましては,先ほどの筒井幹事からも少し説明がありましたように,項目の組替えその他を含めて考えさせていただきます。 ○筒井幹事 本日御欠席の松本委員の発言メモを読み上げます。「第62 消費者・事業者に関する規定」のうちの1と2の部分についてです。   消費者契約法を民法に統合する場合には,消費者契約法1条に相当する解釈理念規定を民法の総則の冒頭に置くという提案が第2回会議でなされており,さらに,第20回会議においては山野目幹事から文書で同旨の具体的提案もなされている。第20回会議において,私は,更に,消費者契約法を民法に統合することなしに,消費者取引に民法を適用する場合の解釈理念規定のみを民法典に置くほうが,民法を消費者契約あるいは消費者取引に即して発展させていくためには,より適切であるという趣旨の提案もしている。したがって,1あるいは2のいずれかに,「民法総則の冒頭に,新たな解釈理念規定を置くという提案もあり,この点について,更に検討してはどうか」という文言を加えるべきと考える。 ○青山関係官 消費者・事業者に関する規定と,先ほど新谷委員がおっしゃった労働との関係は,当然整理が今後必要かと思っておりますが,12月の部会のときにも,消費者契約法で適用除外されていることについては,当時も沖野幹事のほうから,その適用除外している趣旨として,消費者契約法上の定義だと労働者は消費者となって使用者は事業者となるので消費者契約に当たるけれども,別途特有の規律を持っている労働契約については適用させるべきではないので,除外にしたという経緯を示唆いただいたところでございます。   今後の新しい民法上の規定は,新たな概念としても提供されますので,それに縛られるわけではないと思うのですが,ヒントになるかなと思いますと,ここで規律しようとするルールと労働契約が規律しようという保護のルールとはやはりずれてくるのかなというのは,当方も懸念しますし,当時もそういうことを申し上げました。   今の話は,先ほどから議論になっております第62の1の最後の3行目で反映されている気もするのですけれども,ただ,こういう懸念が起こるのは,そもそも消費者・事業者の規定を,概念を抽象的なものとして規定してしまったらそうなってしまうという弊害としてもとらえられると思います。このため,そういう懸念をもし書くとすれば,1パラ目の最後のほうの「抽象的な規定が設けられることになり本来規制されるべきではない経済活動を萎縮させる」という部分にくっつけて,これと似たような懸念であるという趣旨で,例えば,ほかの規律がなじむ類型まで規律されてしまうような懸念も加えると,その概念が抽象化であるがゆえの,何か余計なものまでカバーしてしまうといった懸念が反映されるかなと思います。 ○岡本委員 事業者間に関する特則のほうもよろしいんですよね。   事業者間に関する特則について,仮にそういった特則を設ける場合には,商行為法との関係をどう考えるかというのがまた問題になってくると思うんですけれども,その点の記載がないので,そこはどう考えたらいいのかというところをちょっと教えていただければと思います。 ○筒井幹事 例えば,どういったことでしょうか。 ○岡本委員 事業者というのと,確かに商人あるいは商行為というのとは,また概念は違ってくるのかもしれないんですけれども,重なり合ってくる部分というのもあろうかと思うんですが,そこら辺の関係はどういうふうに考えたらよろしいのかなという。 ○笹井関係官 事業者という概念を民法に設けることとし,更に事業者間の契約について何か特則を設ける場合には,その具体的な規定内容を固めていくに当たって,商行為法との関係を整理することが当然必要になってくると思います。そういう問題があるということは意識しておりますし,岡本委員のほうからそういった御発言があったということも踏まえて,議事の概況等の記載も含め,反映していきたいというふうに考えております。 ○岡本委員 分かりました。 ○山川幹事 今の事業者に関する特則で,先ほど新谷委員の御指摘がありました,事業者の中でも非常に個人で交渉力の弱い場合をどう考えるかということに関係するんですが,これは,今の御説明にも若干入っていましたけれども,「他の規定や特別法との関係にも留意しつつ」というようなことを入れていただけるとよろしいかと思います。例えば役務提供契約で雇用類似型のものについて特別の規律がなされるとしますと,恐らくそれは事業者間ではあっても,そちらの規定が優先されるというようなことが起き得るかと思います。また,例えば,特別法ですと家内労働法などがあり,家内労働者は事業者に該当すると思うんですけれども,その場合は多分家内労働法が優先すると思いますので,「他の規定や特別法との関係にも留意しつつ」というようなことを入れていただくと,すっきりするかもしれないと思います。   もう一つ,先ほど鹿野幹事のおっしゃったこととの関連で,格差の対応ということについては,いろいろな考えがあると思いますが,確かにこの42ページの最後の,規律という表現では,何か具体的な法的効果を伴ったものを典型的に想定しているようにも読めますので,例えば理念規定をも含めとか,そういう形の議論としていただいてはどうかと思います。 ○中井委員 先ほどの鹿野幹事と今の山川幹事の最後に言われた点についてですけれども,この1の最後の3行に関して,私も,基本的な理念,一般的な考え方を明示すべきだろうという意見です。それは具体的に山野目幹事の御提案されたような形が一つの選択肢で,鹿野幹事がおっしゃったように,消費者契約法1条そのままというよりは,更に上位の理念として書くというイメージを持っています。そういう形で御提案をしたつもりですので,それがここに表現されているのであれば結構ですが,鹿野幹事の御指摘のように,規律という表現から来る何か非常に狭い感覚だとすれば,それは是非御訂正していただきたい。   二点目は細かなことですが,例えばで言いますと,43ページの3の(1)の①で,これは重大な不履行解除を考えた場合の特則です。ほかにも,例えば3の(2)の④以下で,これこれを原則としつつというのは,一つの考え方を前提とした特則です。こういう場合,一つの流れでつなぐというよりは,前提について,重大な不履行解除という考え方をとった場合にこういう特則が必要ですよ,こういう考え方を採った場合に特則が必要ですよという書き方のほうが分かりやすいのではないか。分かりやすさの観点か見直していただければと思います。   それから,先ほどの筒井幹事がおっしゃったことの重複になりますが,消費者契約に関する特則,事業者間契約に関する特則も含めて,この第62でまとめて議論するのと併せて,各箇所ごとに問題点の指摘があったほうが,分かりやすいと思います。重複して提示する,リファレンスするという方向で,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがですか。   それでは,部会資料24の45ページ,「第63 規定の配置」について御意見をお伺いいたします。 ○大村幹事 63で,具体的な論点として①から⑤までのものを挙げていただいておりまして,確かにこういうことが議論になったと認識しております。   それとの関連でなのですけれども,この⑤の典型契約の配列について,ここで指摘されていることは確かに指摘されたのですが,そのほかに,継続的契約に関する規定の置き場所という問題がありまして,これについては,ここだったか,あるいは継続的契約の箇所だったかは忘れましたが,確か山本幹事が言及されていたように思いますので,どこかに盛り込んでいただく必要があるのではないかと思います。そうしませんと,継続的契約の規定はどこに置くかということを議論する機会がなくなってしまうと思います。 ○山本(敬)幹事 規定の配置について,二点申し上げたいと思っていましたが,そのうちの一点は正に今,大村幹事が御指摘されたことです。   典型契約その他の「各種の契約について通則を設けるという考え方の当否」という表現になるのかどうか分かりませんが,そういったものも挙げていただければと思います。具体的には,継続的契約等に関する規定だけでなくて,第三者のためにする契約も含めて,これらの規定をどこに置くかということが重要な検討課題になると思いますので,追加していただければということです。   それから,もう一点は,ここでは留意点として,下から3行目から,「配置の変更により現在の実務に与える影響」,「中長期的な視点に立った配置の分かりやすさの確保」と,ある意味で実践的な観点だけが挙げられています。しかし,民法典をどのように編成するかという問題は,何よりも民法の基本理念や思想に関わる根本問題につながると考えられます。したがって,ここでもやはり最初に,例えば「民法の基本理念を踏まえ」というような表現を付け加えていただければと思います。   ちなみに,これは書き方の問題として,こうなってしまうというのはよく分かるのですが,このように①から⑤を挙げますと,やはり何かこのような変更を積極的に検討しようと提案しているかのような印象が出てきてしまいます。もちろん,現行法を変えようという提案がある場合に限ってそれを挙げるという基本方針からしますと,このような書き方になってしまうというのはよく分かるのですけれども,もう少し書き方に工夫の余地はないものかと思うところです。 ○鎌田部会長 継続的契約の取扱いについては,大村幹事と山本敬三幹事とでは少しニュアンスの差があるのかもしれない。それと同時に,継続的契約の中で何が最終的に生き延びるかによっても,整理の仕方は変わりそうです。継続的契約の解消に関する規定だけが残ったら,むしろ独立に契約総則に置くより解除のところに置いたほうがずっと分かりやすくなるのかもしれません。ちょっとまだ流動的であると思いますけれども,規定の配置の問題に関わることは間違いないので,整理の仕方を,第三者のための契約やなんかと併せて契約通則にするのか,そうでないのかということも含めて,検討課題にできるような表現の仕方を工夫させてもらったほうがいいのかもしれないと思いました。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいですか。 ○中井委員 63に関することではないのですが,最後ということで,せっかく国民に対して民法改正についての論点を提示して聴くときの最後に,第64として,ほかに改正すべき点はないかというような論点提示をしないのでしょうか。 ○筒井幹事 そういう御提案があったと受け止めた上で,その取扱いについて考えてみたいと思います。ほかに改正すべき項目の有無を問い掛けるということは,正にこの中間的な論点整理を行う趣旨そのものでありますので,中井委員から御指摘があったところは,全体を通ずる精神として,当然にあるのだと思います。ただ,それをどこに書くのか,独立の一つの項目として立てるのかどうかは,やや技術的な問題もあるのではないかと受け止めましたので,その点について更に考えさせていただこうと思います。 ○鎌田部会長 ほかに御意見,いかがでしょうか。 ○内田委員 戻って恐縮ですが,63のところで,山本幹事からの御指摘で,もっとニュートラルにという御指摘だったかと思うのですが,現行法があって,現行法を変えようという提案がある場合の書き方全てに共通する問題ですけれども,現行法を維持するという考え方もあるというのを書くのかどうか,そこは難しい問題ですが,一般的には改正提案があるので,その是非について検討すると書く。特にこれは,更に検討してはどうかというカテゴリーですので,なかなかこれ以外の書き方は難しいというのが実感なのですが,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 これは,なかなか難しい。こういう考え方と,こういう考え方が示されている,それについて更に検討してはどうかというと,よりニュートラルになるのか,より誘導的になるのか,人によって受け止め方が180度違っていたりするので。これまでの方針を前提にしつつ,少し検討させていただくということでお許しいただければと思います。   ほかにはいかがでしょうか。   今日中に終われるかということを心配しておりましたけれども,6時前に一応本日予定していた項目について全て御意見を伺うことができました。ほかに特に御発言がないようでしたら,本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   最後に,次回の議事日程等について,事務当局から説明をしていただきます。 ○筒井幹事 次回の議事日程について御連絡いたします。   次回の日程は,来月3月8日,火曜日,午後1時から午後6時まで,場所は本日と同じ法務省20階第1会議室でございます。   次回の予定ですけれども,1月,2月の会議を通じて4回に分けて,たたき台の(1)から(4)までを御検討いただきましたが,そのうち次回は,たたき台の(1)と(2)の改訂版を御提示して,それについて更に御意見を伺おうと思っております。いつものように会議の1週間以上前に資料をお届けできるようにしたいと思いますので,次回もまたよろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了いたします。本日は御熱心な御審議を賜り,また円滑な進行に御協力いただきまして,誠にありがとうございました。 -了-