法制審議会民法(債権関係)部会 第26回会議 議事録 第1 日 時  平成23年4月12日(火)自 午後1時04分                      至 午後4時50分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法(債権関係)の改正について 第4 議 事 (次のとおり) 議      事 ○鎌田部会長 予定していた時刻になりましたので,法制審議会民法(債権関係)部会の第26回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   御存じのように東日本大震災で多くの方々がお亡くなりになり,また,現在もなお被災された方々が困難な状況の中で過ごされております。この場をお借りして,お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに,被災者の方々に心よりお見舞を申し上げたいと思います。     (関係官の自己紹介につき省略)   本日の審議に入ります前に,3月29日に予定されていた会議の開催が中止に至った経緯について,事務当局に説明してもらいます。 ○筒井幹事 今回の第26回会議は,本来であれば3月29日に開催し,中間的な論点整理案について御審議の上,その部会決定をしていただくことを予定しておりました。しかし,この度の大震災に関わる諸事情,取り分け今後の見通しを考えることが難しい状況にありましたことから,予定どおりに開催することは相当でないと判断し,その日の会議を中止することといたしました。その結果,本日の会議ではヒアリングを行うという当初の予定を変更し,3月29日に予定されていた議事について御審議いただきたいと思います。部会メンバーの皆様には,審議日程の変更に御理解を賜りましたことに御礼を申し上げます。 ○鎌田部会長 では,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○筒井幹事 事前送付資料として,部会資料26をお届けいたしました。これはたたき台の(1)と(2)の再改訂をしたものである前半部分と,たたき台の(3)と(4)を改訂したものである後半部分とを合体させたものです。これまでの会議での御議論をできる限り反映させるように努めたつもりですが,必ずしもここに反映されていない御意見については,繰り返し申し上げているように,補足説明における議事の概況等において紹介しようと考えております。よろしくお願いいたします。   また,机上には2点の配布物があります。いずれも委員等提供資料ですが,中井康之委員の御紹介で大阪弁護士会「民法(債権法)改正の論点と実務〈上〉」を御提供いただいております。また,岡正晶委員の御紹介で第一東京弁護士会「民法(債権法)改正の検討事項に関する当会の意見(3)」を御提供いただいております。 ○鎌田部会長 それでは,本日の審議に入ります。   本日の進行予定といたしましては,まず,部会資料26のうち「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理のたたき台(3)」と同(4)の改訂部分であります「第29 無効及び取消し」以降を御審議いただき,その後,同(1)と同(2)の再改訂部分である「第1 履行請求権等」から「第28 不当条項規制」までを御審議いただきます。   まず,部会資料26の90ページから95ページまでの「第29 無効及び取消し」について御意見をお伺いいたします。 ○村上委員 94ページの4,「(1)追認の要件」について申し上げます。第23回の会議でも少し申し上げましたけれども,取消権を行使することができることを知っていることを要件とするということが妥当かどうかということにつきまして,実務上,困難な問題を生じさせることにならないのかどうか,各界の御意見も伺った上で検討したほうが良いだろうと思いますので,現段階では方向を打ち出さないで,これこれの考え方の当否について検討してはどうかという程度にとどめるほうが望ましいのではないだろうかと,再度,意見を申し述べたいと思います。 ○鎌田部会長 関連した御発言はございますか。 ○笹井関係官 追認の要件につきましては,大審院の判例でも,取り消すことができることを追認権者が知っているということが必要であるとしたものもございまして,学説上もそれほど異論がないところと思われるため,こういう表現になっているわけですけれども,最終的には部会で決定されることですので,ほかの委員,幹事の先生方の御意見がございましたらお伺いしたいと思います。 ○鎌田部会長 この点に関する御意見はございますか。 ○笹井関係官 御意見がないようでしたら,御指摘を踏まえて検討するということにさせていただきます。 ○鎌田部会長 ほかにございますか。 ○中井委員 資料26の91ページ,「(3)複数の法律行為の無効」の部分ですが,2行目の「判例上,ある法律行為が無効である場合に同一当事者間の他の法律行為も無効になるとされた例もあり」という御指摘の部分ですが,「判例上」が最高裁判例に限っているのかもしれませんが,近時,平成21年2月19日,名古屋高裁で,いわゆるデート商法による宝飾品の購入者が既払の割賦金の返還をあっせん業者に求めることができるとされた事例で,宝飾品等の契約が無効である場合に,クレジット契約も効力を失うとする判断が示されています。この「判例」が高裁判例も含めた趣旨であるとするならば,2行目の最後の「同一当事者間の」という7文字を削除してもよいのではないかと思います。その下のところで同一当事者間の場合と他の当事者間の場合と両方が提起されておりますので,2行目においても「同一当事者間の」という部分を削除してもよいのではないかと思います。御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 この点に関しまして,ほかに御意見はございますか。 ○岡田委員 相談員の場合,やはり三者契約ないしは最近,四者契約が増えているので,是非,今の中井委員の意見を尊重していただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ここは論点を提示する前置きの部分で,そうだからこそ中井委員のような御指摘も出てくるということかもしれませんので,少し検討させていただき……。 ○内田委員 言葉の使い方として,原則的には「判例上」というときは最上級審を意味していて,そうでない下級審の場合には「裁判例」という言い方をしていると思います。ですから,ここは高裁判決があるというだけであれば,判例上でもいいのかなと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 「判例・裁判例において」という形の記述にして広げるということも含めて,少し事務当局で検討させていただいてよろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ○中田委員 92ページの下から5行目です。(イ)のところですけれども,返還請求権の範囲について「無効な法律行為が双務契約又は有償契約以外の法律行為である場合」と書いてあります。そうすると,単独行為などもここで含まれてしまう表現になっているのではないかと思います。もともとは片務契約,無償契約を想定している部分だと思うんですが,ちょっと表現が広くなっているかなと思いましたので,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 関連した御発言はございますか。   それでは,検討させていただきます。   ほかによろしいでしょうか。   よろしければ,部会資料26の95ページから102ページまでの「第30 代理」について御意見をお伺いいたします。 ○岡本委員 96ページの「代理人の行為能力」のところなんですけれども,今までの部会でちょっと発言した事項でなくて,新たな意見になってしまってちょっと申し訳ないところではあるんですけれども,法定代理人が制限行為能力者である場合に,代理権の範囲を制限するという提案につきまして,取引の相手方のほうから見ますと,必ずしも代理権の制限の有無あるいはその内容というのは,よく分からないということもあるのではないかと思われまして,そういった取引の安全の観点からすると,問題も生じ得ると思われるところなものですから,実務の観点からそういった点が懸念されるということで,慎重な検討をお願いしたいという意見がございました。言ってみれば静的安全と動的安全がトレードオフの関係になるといったところなんですけれども,ゴシックでなくても結構でございますので,できればそういった意見があることを反映いただければ有り難いと思います。 ○鎌田部会長 分かりました。少なくとも議事の概況等には反映をさせていただくことといたします。   ほかにはいかがでしょうか。 ○奈須野関係官 101ページの「授権」のうちの処分授権の説明が「委託販売の法律構成として実際上も重要であるとの指摘がある」と記載されており,処分授権の説明ではないように見えます。この点については,以前の部会において処分授権についての適切な説明に変更するようにお願いしたはずなので,もう一度,見直してもらいたいと思っています。 ○鎌田部会長 そこは少し検討させていただくということでよろしいですか。 ○山本(敬)幹事 同じく「授権」の部分について,少し修正をお願いできればと思います。  これは,第23回会議のときに私から修正をお願いした点なのですが,101ページの下から2行目に「その概念が必ずしも明確でないという指摘がある」というのは,概念そのものが不明確なのではなくて,部会資料に挙げられた概念図が不正確で誤解を招くところがあったのが原因だと申し上げました。したがって,下から2行目の「その概念が必ずしも明確でないという指摘があることにも留意しつつ」という表現は,穏当ではないように思いますので,削除の方向で考えていただければと思います。   その上で問題になるのは,次の102ページの概念図です。こちらは,実際に修正していただいたのですが,率直に申し上げますと,まだ誤解を招くようになっているのではないかと思います。  まず,上の授権者からすぐ下の被授権者のところが,前は「授権」だったのが「処分授権」に変えられていますが,この部分はこれで結構だと思います。  次に,上の授権者から斜め右下の相手方のところですが,ここでは,前は「権利の移転等の法律効果」とされていたのが「処分の効果(権利の移転等)」とされているのも,基本的には良いと思います。ただ,「権利の移転等」といいますと,「等」ということで何を指しているのか,誤解が生じる余地もあります。むしろ,端的に「権利の移転・設定」というように書いておくほうが間違いがないと思います。   問題は,下の被授権者から右の相手方のところが,前は「法律行為」だったのが「処分行為」に改められているところです。きっとかなり考えられて改められたのだろうと思いますが,「処分行為」といいますと,何か物権行為に当たるようなものを思わせてしまうのではないかと思います。しかし,授権では,被授権者と相手方との間で,例えば売買契約が行われるわけです。何も物権行為に限るわけではありません。むしろ,債権的な効果は被授権者と相手方との間に発生するところにこそ,授権の本来の意味があるわけです。つまり,被授権者は売主としての債務を相手方に対して負いますし,相手方は買主としての債務を被授権者に対して負います。したがって,ここはやはり,「処分行為」ではなくて,元の「法律行為」に戻すほうが適当ではないかと思います。  そして,第23回会議のときも申し上げたことですけれども,誤解を招かないようにするためには,この「法律行為」の下に,「権利の移転・設定を除く法律効果」と書いておくほうが良いのではないかと思います。   以上,何度も申し訳ありませんが,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 この図を分かりやすくするのはなかなか難しくて……。 ○山本(敬)幹事 以上のようにしてはどうかという提案です。 ○鎌田部会長 分かりました。処分行為という語も,物権行為というよりも,この三者が処分の授権・行為・効果という関係で結び付けられているということで,このように工夫したのですが,御意見を参考にして検討させていただきます。 ○山本(敬)幹事 処分の面だけを取りますと正確なのですけれども,他の効果がどうなるのかということがこれを見ても分からないのが,恐らく誤解を招く要因ではないかと思いました。 ○鎌田部会長 分かりました。101ページの本文のほうはどうですか。 ○中井委員  本文に関して事前に検討したわけではないのですが,今の山本幹事の御説明を聴くにつけ,授権の概念の中身について,一弁護士である私はきちっと理解できていないということをこの場で認識させていただきました。とするならば,この概念について明確でないと思われている方は,少なからず存在するのではないかと思いますので,この本文一文は残しておいていただくほうがいいのではないか。   今のような山本敬三幹事の理解が全ての法律家に一般であれば概念の不明確さはないと思いますが,その効果について分属するような御説明だとすれば,その点について概念の不明確さがあるのではないか,あるいは概念としては明らかなのかもしれませんけれども,言葉自体からそのような効果を直ちに理解できるわけではありません。いずれにせよ,この一文は残しておいていただけないか。議論の概況の中で補うのであれば,それに異議あるものでもございませんが,御配慮いただければと思います。 ○鎌田部会長 概念自体の不明確さなのか,概念が理解しやすいかどうかという次元の問題なのか,議論の余地もあろうかと思いますので,その辺りを少し事務当局で工夫させていただくということでよろしいでしょうか。 ○道垣内幹事 授権に関して私に強い見解があるわけではありません。ただ,部会での議論なのか,それとも,今までの学説上の議論なのかはよく分かりませんけれども,概念の不明確さとか分かりやすさという問題のほかに,このような説明をしなければならないのかという概念の有用性に対する疑問が,一定程度,存在してきたのではないかと思います。したがって,このようなまとめをしたときに,概念が明確になり分かりやすくすればいいというだけではなく,授権者から相手方に例えば所有権が直接に移転するというのではなく,授権者から被授権者に対して移転して,被授権者から相手方に対して移転すると考えても,可能ではないかという意見はあるのだろうと思います。したがって,できれば,明確ではないというだけではなく,有用性についても議論があるということを付け加えるべきではないかと思います。ただ,今の段階で文章を直してくれというのも困難を強いることになるかもしれませんので,議事のところにでもお書きいただければと思います。 ○鎌田部会長 おっしゃられた点は,学説上は従来からそういう議論があるところでもありますので,その点も含めて本文及び議事の概況等の記述の仕方を事務当局にお任せいただければと思いますが,よろしいでしょうか。 ○内田委員 これまでの審議では取次とか問屋との関係が曖昧になるという指摘があり,それを踏まえてこのゴシックが書かれています。ですから,道垣内幹事が言われたような問題意識の指摘は既にされていたと思います。それを表現するのに,概念が明確ではないという言い方がいいのかどうかは,御指摘を踏まえて検討したいと思います。 ○鎌田部会長 では,よろしくお願いします。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料26の102ページから103ページまでの「第31 条件及び期限」について御意見をお伺いいたします。   特にないようでしたら,103ページの「第32 期間の計算」について御意見をお伺いいたします。   では,引き続き部会資料26の103ページから109ページまでの「第33 消滅時効」について御意見をお伺いいたします。 ○岡本委員 二点申し上げたいと思います。   一点目は105ページの生命,身体等の侵害による損害賠償請求権のところなんですけれども,ここでは「債権一般の原則的な時効期間の見直しにかかわらず,現在の不法行為による損害賠償請求権よりも時効期間を長期とする特則を設ける方向で,更に検討してはどうか」という記載になっていますけれども,方向性を示すことができる程度にコンセンサスがあったのかどうかという点がちょっとやや疑問にも思えますものですから,議事録の御確認を念のためにしていただければと思います。それが一点目です。   二点目なんですけれども,二点目は106ページの上のほうですけれども,「預金債権等に関して,債権に関する証拠の作成・保存が債務者に義務付けられていることや,預けておくこと自体も……権利行使と見ることができることをなどを理由に,起算点に関する例外的な取扱いを設けるべきであるとする考え方について,預金債権等に限ってそのような法的義務が課されていることはないとの指摘があることも踏まえ」というふうな記載がありまして,ここの記載の「預金債権等に限ってそのような法的義務が課されていることはないとの指摘」,これは恐らく部会の議論で私の指摘を反映していただいた部分かと思いまして,そういう意味では大変有り難いなと思うんですけれども,ちょっと不正確な点があるようにも思われまして,ここの「預金債権等に限って」の「限って」の意味が,うちの子に限ってそんな悪いことはしないという,そういった「限って」の意味であればいいんですけれども,恐らくここの記載はそうではなくて,預金債権等にはそういった義務が課されているんだけれども,そういった義務が課されているのは,預金債権等に限らないという意味で記載されているんだと思いますし,多分,そう読めるんだと思います。   ところが,私が申し上げたかったのはそういうことではなくて,預金債権等について起算点に関する例外的な取扱いを設けるべきというふうな考え方,これについては恐らく銀行等にはもともと預金債権等に関して記録の作成・保存の義務が課されているということからしまして,銀行等に預金債権等の弁済の証拠の保存の必要性から解放する必要性はない,あるいはその必要性は薄いという考え方が理由の一つになっているのではないかなと思っているんですけれども,債権に関する記録の作成・保存の義務というのと,それから,弁済の証拠を保存すべき義務,これは違っているのではないかというふうなことでございまして,前者のほうの義務があるからといって,後者の義務があるということにはならないと。銀行は確かに前者のほうの義務,記録の作成・保存の義務,こちらのほうは委任の受任者としての立場,あるいは預金保険法の関係でそういった義務を負っているということはあるわけですけれども,記録の作成・保存の義務はそうだといっても,弁済の証拠を保存すべき義務,こちらのほうまで負っているというわけではないんだろうということが一つです。   それから,もう一つは受任者として報告に応じる必要がある,その限度では記録の作成・保存をする必要がある,あるいは預金保険法上,預金保険機構からの資料の提出の求めに対して,これに応じる必要がある限度で記録を作成・保存する義務があると。これはそうなんですけれども,例えば受任者としての義務ということでしたらば銀行に限らず,委任契約に伴って受任者が債務を負担する場合一般についても言えることなのではないかと思われまして,そういったものについても起算点の特則を設けるということなんだろうかというところが私の話の趣旨でございまして,できればそこら辺の趣旨が分かるような記載にしていただけると有り難いなと思います。 ○亀井関係官 一つ確認したいのですが,御指摘の箇所は第12回会議において預金をしていること自体が権利行使であると考えられることなどを理由に,預金債権の時効の起算点について特則を設けるべきではないかという考え方が示され,これに対して預金だけを特別扱いする理由はどこにあるのかという御指摘があったと記憶をしています。   特則を設けるべき理由についてですが,時効の制度趣旨を弁済の証拠の保存からの解放とした上で,預金の消滅時効に関する起算点について,その趣旨が当てはまらないことから特則を設けるべきであるということを書いているわけではありません。それを前提として,どのような修正をしたらよいのか御意見があればお伺いをさせていただけないでしょうか。ここでは,預金債権等の消滅時効の起算点について特則を設けるべきではないかという御意見が強くこの部会で示されたことと,それに対して,それは預金だけ特別に扱う理由があるのかという疑問が呈されたことを本文に表す必要があると考えております。   ○岡本委員 恐らく債権に関する証拠の作成・保存の義務,ここが曖昧といえば曖昧な記載になっていることが一つの原因なのでないかというふうな気もするんですけれども,恐らく特則を設けるべきであるということの理由として,銀行については債権に関する証拠の作成・保存が義務付けられていること,これを理由として挙げている趣旨というのは,恐らくですけれども,消滅時効の存在意義について弁済の証拠の保存の義務から債務者を解放すること,そこに一つの存在意義があるということがあって初めて,こういう議論になってくるのではないかと考えておりまして,そうであるとすると,必ずしも銀行としてはそういった弁済の証拠の作成・保存が義務付けられているわけではないから,こういった議論については前提を欠くのではないか,そういう意見なわけでございます。したがいまして,要するに何を義務付けられているか,ここについてはっきりさせれば,ある程度,整理ができるのではないかなと思っているところです。 ○筒井幹事 ただいま岡本委員から御説明がありましたところは,本文レベルで書き方を修正する余地があるかどうか,今一度考えてみようと思います。   もう一つ,先ほどの岡本委員の発言のうち生命,身体の侵害についての損害賠償請求権の特則のほうで,部会資料26の105ページ,エの第二パラグラフだと思いますが,この点について様々な意見があったのはそのとおりなのですが,否定的な意見の多くは,研究者グループからの改正提案では,特則の対象とされている範囲が広すぎるのではないか,あるいは曖昧ではないかといったところに向けられた批判であったと受け止めました。そこで,特則を設けることについてはそれほど異論がないと理解して,その方向で更に検討してはどうかと記載した上で,第2文を付け加えまして,その際,特則の対象範囲や期間については様々な留意事項を考慮して,更に検討してはどうかという形で,二段階で整理いたしました。それであれば岡本委員が御指摘になったような趣旨も反映されているように思いますが,いかがでしょうか。 ○岡本委員 生命,身体の侵害による損害賠償請求権,こちらのほうは今のお話でそれで結構かと思います。   時効期間の起算点のほうは,こちらはちょっと私が見るところでは,このゴシックの書き方だとむしろ誤解を生じせしめてしまうのではないかというふうなぐらいにも思っておりますので,特に銀行がそういう義務を負っているんだというふうな書きぶりになっているように見えるところがあるものですから,ここはちょっと是非お願いできたらと思うんですが。 ○奈須野関係官 生命,身体等の侵害による損害賠償請求権について「現在の不法行為による損害賠償請求権よりも時効期間を長期とする特則を設ける方向」という記載については,特則として起算点を変えることと長期とすることの両方が考えられますが,長期にすると決めてしまうことは慎重な検討が必要だと思います。被害者にとって,確かに長期に保護されたほうが望ましいことに疑いはありません。しかし,加害者にとって,賠償すべき額がいつまでも定まらないと法律関係が安定せず,会社を清算する,又は倒産させるということはある種,経済合理的な行動になり得ますので,結果として被害者の救済に資さないという場合があり得ると思います。   これは今回の震災を考えると,私どもの前にある現実的な問題だと思います。現在,手元に具体的な考えはないものの,いずれにせよ,こうした論点をどのように考えるのが良いかということを国民に対して提起するのが望ましいと思います。一方,具体的な方向性を決め打ちすることについては,慎重に対応するのが良いと思います。 ○野村委員 今の点なのですけれども,この議論になったときに念頭に置いていたのは,どちらかというと遅発性の原子力損害みたいなもので,かなり長期間がたってから結果が発生するという場合で,そういった場合もあり得るのでということで,先ほど筒井さんから御説明があったように,特則の対象範囲と期間についてという形で分けて書かれていますので,このままでいいのではないかと私は思っています。 ○新谷委員 今,遅発性という話がありましたが,私のほうからは第12回会議において,労働災害,特にじん肺とかアスベストのような,非常に長期間経過してから発病する事例を挙げた上で,この特則を設けることについて,是非,進めるべきであるということを発言し,更に23回会議でも同じ趣旨の発言をしています。時効期間を長期とする特則を設けることについては,この審議会の中でおおむね方向が定まっていると思いますので,このままでよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 それでは,ただいまの御議論の状況を踏まえて,事務当局で更に検討させていただきます。   ほかの点はいかがでしょうか。 ○中田委員 107ページの2行目です。時効の中断事由について,前回の議論を踏まえて文章を工夫していただいたのですが,ここの「④民事執行については,債権を認めた執行手続の終了の時から」という記載のうち「債権を認めた執行手続の終了」というのは一読すると分かりにくいのではないかと思います。例えば「その債権の存在を認めた執行手続の終了の時」とか,あるいは「執行手続がその債権の存在を認めた上で終了した時」とか,もう少し分かりやすく工夫したらいいかと思いました。 ○筒井幹事 具体的な修正案を挙げていただきましたので,よく考えてみようと思います。現在の記載は,具体的な立法提案の表現をそのまま引用したつもりでしたが,どうも異なっているようですので,今一度,御提案いただいた文言などを検討してみようと思います。 ○山本(和)幹事 ほかの点でよろしいでしょうか。108ページの(5)のアのところなんですけれども,ここでは債権の一部について訴えが提起された場合と民事執行の申立てがされた場合が並列で書かれているんですが,この両者ではやや問題状況が違うように思っておりまして,その後に書かれているのは,基本的にはいわゆる狭義の一部請求というか,一部について訴えが提起された場合のことを判例などとの関わりで,あるいは明示されなかったときの取扱いということで書かれているように思います。また,立法提案でも恐らく立法提案の中で具体的に意識されていたのは,この狭義の一部請求の話で,民事執行の申立てについては当部会で確か御指摘があって,ここに加えられたものではないかと理解しておりますが,そうだとするとちょっと書き分けて,前段は狭義の一部請求に絞って書いて,それで後段で民事執行の申立てについても同様に取り扱うことについて検討したらどうかみたいな書き方で,両方が違うということを読む人に意識してもらって,答えていただくほうが建設的になるのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。その点はそのように処理させていただくことでよろしいですね。 ○中井委員 103ページ,1(1)の「原則的な時効期間について」,4行目から「実際に原則的な時効期間が適用されている債権の種類は,貸付債権……や不当利得返還債権などが主要な例となる」と,限定された書き方になっているかと思いますが,金銭債権については短期消滅時効制度の対象になるものや商事消滅時効の対象になるものが多いわけですけれども,それ以外には債務不履行に基づく損害賠償請求権が実務上,非常に多く一般民事時効の対象になるのではないかと思いますし,金銭債権以外であれば商事消滅時効の適用対象外のものについても一般民事時効ではないのか,例示としてこの二つだけというのはどうか,もう少し幅広にお書きいただけないかと思います。 ○鎌田部会長 この点に関して関連する御意見はございますか。   よろしいですか,御意見を踏まえて検討するということにします。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,次に部会資料26の109ページから110ページまで,「第34 契約各則-共通論点」について御意見をお伺いいたします。   では,次に部会資料26の110ページの「第35 売買-総則」について御意見をお伺いします。   よろしければ,部会資料26の111ページから116ページまでの「第36 売買-売買の効力(担保責任)」について御意見をお伺いします。 ○村上委員 112ページの1,「(4)代金減額請求権」についてなんですけれども,損害賠償請求権のほかに代金減額請求権を認めるということにした場合に,両方を認めることによって理論上あるいは実務上,何か混乱が生じるおそれはないだろうかということが多少危惧されるということを第23回会議で申し上げたかと思います。できましたら,現段階ではまだ方向を打ち出すことはせず,中立的な書き方にしていただいたほうが望ましいのではないだろうかと思っています。 ○鎌田部会長 この点に関連する御意見はいかがでしょうか。ランク付けに関しましては,できるだけ委員,幹事の皆様の御意見を踏まえて,この場で決めておいたほうが良いと思います。   ほかに御意見がないというのは,原案を支持する意見のほうが多いということでしょうか。それでは,そのように受け止めさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○中井委員 111ページの「「瑕疵」の意義」の部分ですが,(2)の①ですが,前回,相当程度,ここで議論された結果,このような形で集約されているのかと思います。ただ,従前,議論されていた抹消されている部分ですけれども,その種類のものとして通常有すべき品質,性能を欠いているという要素について,今回の本文の中では全く削除されているわけです。今ある立法提案が契約責任説の立場から,契約において予定されている性質を欠いているとする具体的提案があるので,それに対応する形での記述になっているという理解はするわけですけれども,「予定されている性質」の正に「予定された」と書かれていること自体から,単純に合意された性質というところよりは,一定,客観性を持たせた言葉が使われているのかと思うわけです。   実際,当事者が合意した品質,性能という場合もあるでしょうし,当事者が合意していない場合は,具体的状況の中において,その契約の趣旨や目的に照らして,その種類のものとして通常有する品質や性能があるべきところ,それを欠いている状態という理解があるのではないか。先般の最高裁の土壌汚染に関する判例を見ましても,契約当時における化学物質に対するリスクについての一般的理解が前提となって,瑕疵の判断がなされているのではないかと思うわけです。   とすれば,「契約において予定された性質」という,この「予定された」という言葉の中に,単に当事者が合意した性質だけではなくて,そのような客観的な要素が組み込まれ,従来のその種類のものとして通常有すべき品質,性能を欠いているという要素が一つの判断材料になっているということを記載するほうが,実態に即しているのではないか。対案の整理が十分できておりませんけれども,検討いただけないでしょうか。 ○潮見幹事 私はこの原案のとおりでいいと思います。むしろ,今,中井委員がおっしゃられたことは契約において予定された性質というものを一体,どういう意味で捉えていったらいいのかということで,これについては恐らくそれぞれのお立場によってニュアンスがあるような理解がされるかもしれません。そのようなことは別に交付される説明のほうで落とし込んで,そこで分かりやすくといいましょうか,いろいろな考え方というものがあるとすれば,それを書いていただければいいのではないかと思います。ちなみに,先ほど中井委員がおっしゃられた最高裁の判決については,むしろ,原案のような形で置いておかれたほうが説明もつきやすいのではないかと思うところもあります。 ○鎌田部会長 契約責任説からの意見は書いてあるけれども,今,一般に言われているような瑕疵の定義がここに書かれていないではないかとか,そういう御趣旨ですか。 ○中井委員 二つありまして,一つは一般的な理解が最初に記載されて,それに対する具体的な立法提案として記載されるという流れがあっていいと。そうではなくて,この立法提案から始まるとしても,潮見幹事がおっしゃった中に含まれてしまうのかもしれませんが,「契約において予定された性質」という,この「予定された」中に,そういう要素が考慮されているんだということの記載があったほうがいいのではないかと考えた,その二点でございます。ただ,潮見幹事から「予定された」という性質の中身について本文で書くのではなくて,議論の概況等の中で適切に説明するというほうが分かりやすい,誤解を招かなくてもよい,ないしは議論が混乱しなくてもよいという考え方についても理解できるのですが,弁護士会の関係委員会から複数,本来的な通常有すべき性質,品質を欠いているという文言について,本文に残しておくべきではないかという意見があったものですから御紹介をした次第です, ○道垣内幹事 瑕疵担保の法的性質について,法定責任説と呼ばれるものと契約責任説と呼ばれるものとがあるというのはそのとおりですが,瑕疵の定義についての客観的瑕疵概念と主観的瑕疵概念につきましては,例えばその双方を考慮するという説は,法的性質論についていずれを採る立場にも,その説の支持者が存在しているわけです。そして,そのことに加えて,「契約において予定されていた性質」という言葉が,明示に合意された性質というだけではなくて,シチュエーションを考えて当該目的物にどのようなものが期待されていると客観的に判断されるのかを含めて考えるものとして使われているのだとしますと,そのことをこの場でおっしゃった方が仮にたまたま契約責任説を主張されているのだとしましても,特に契約責任説に立脚することを必須とする発言だと理解する必要はないように思います。そうすると,資料における「瑕疵担保の法的性質を契約責任とする立場から」という限定は不要なのではないでしょうか。そして,このように,契約責任説からの見解であるということを強く書くがゆえに,「契約において予定された性質」という言葉は狭く読まざるを得ないのではないかといった意見が出てくるのではないかという気がするのですが,いかがでしょうか。 ○内田委員 瑕疵担保の性質について契約責任ではないという考え方は部会では出なかったと思います。飽くまで契約上の責任であるという前提で,むしろ,契約責任であるからどうだというような演繹的な議論ではなくて,具体的な効果に即して議論すべきだという意見が出されたように記憶しております。ですから,この点はそれほど異論はないのではないかと思うのですが,契約の捉え方が狭いと異論が出てくるということなのかもしれません。瑕疵の定義に関しては,中井委員が御指摘されました通常有すべき品質,性質を欠いているという表現が前回の資料には出ていて,それについて非常に強い異論が出されたために,全てそれを削除したという経緯があります。したがって,資料を作った事務当局としては,では,どう書けばいいのだろうと思ってしまいますので,こう書けばみんなが一致するという案を示していただければ有り難く思います。 ○道垣内幹事 「瑕疵担保責任の法的性質を契約責任とする立場から」という部分を削除するということで皆さんの合意が得られるのではないかという趣旨の発言です。つまり,この場で契約上の責任であるということに異論はなかったと思われるとしましても,ある種の法律を作るときに,契約責任であるということを明記をするということになるのかというと,それはならないわけで,内田さんが同時におっしゃったように具体的にどういう責任をどういう場合に負うのかということを規定をしていくということになるわけです。そうであるならば,「契約責任とする立場から」と書くことにさほど意味があるとは思えませんし,先ほどの繰り返しになりますが,法定責任であるという立場からも客観的な面と主観的な面と双方を考慮して,瑕疵というのを決めるという見解が強く主張されていたわけでして,それ自体が変わってくるわけではないといたしますと,別段,ここで契約責任とする立場ですよということを強く書く必要はないのではないだろうか,要らぬ議論を引き起こすだけではないだろうか,という気がいたします。 ○松岡委員 今の道垣内幹事の御意見の前半には賛成で,瑕疵担保責任の性質論と瑕疵の定義は必ずしも連動するものではないというのはそのとおりです。しかし,この資料の整理の仕方では(1)のところで,やはり瑕疵担保責任を契約責任と構成して規定を整備することは適切かという点の検討と併せてという形で整理され,方向性が示されているわけですから,(2)のところだけ契約責任の観点からというのを削るのでは,(1)と(2)の平仄が取れなくなってしまうのではないかという疑念が出てきます。 ○道垣内幹事 それは逆ではないでしょうか。つまり,(1)において契約責任として整備することが適切かどうかという点も検討対象になっているというときに,ある一定の瑕疵の定義というものが契約責任であるという立場からだけ出てくるかのように書くほうが私はミスリーディングであると思うのであって,松岡委員とは私は逆に削ったほうが(1)との間でも平仄が合っているのではないかと思います。 ○内田委員 中井委員からの問題提起は,別にその点にあったのではなくて,瑕疵について通常有すべき品質,性質を欠いているという理解がやはり実務家の中にあるので,それを文章の中に反映するようにしてほしいということだったと思います。それを反映することは,そういう考え方もあると書けば済むのですが,それで合意が形成できるのであれば,それでもいいかなと思います。 ○道垣内幹事 契約責任とする立場から,契約において予定された性質を欠いていることとするのが適切であるという意見が,当該物が通常有している性質というものを考慮しないという説であるならば,両者の見解は対立するものとして書くというのが妥当であるということになると思います。しかしながら,潮見幹事が途中で発言されたように,契約において予定されていた性質というものを判断するときには,決して明示に合意された性質というだけではなくて,やはり,当該物が通常有している性質というものを当該契約の目的との関係で考えながら,合意内容といいますか,予定された性質というのを確定していくわけですから,私は決して対立しているものではないと思うのです。   そうすると,これに対してこういう意見もあったという追加的な書き方をすることが,現在書かれている意見と中井委員がおっしゃった意見との間に対立関係にあるかのような誤解をかえって生じさせるのではないかというのが私の懸念です。ですから,中井先生がおっしゃったことを踏まえて,「予定された性質」とは,必ずしも当事者が明示に合意をしたもののみを指しているわけではないということが明らかになるという形での修整のほうが妥当なのではないか。他の領域でも,債務不履行に関してもそうですけれども,「合意された内容」などと申しますと,契約で明示に規定してあることだけを指すのだといった一定の誤解もあるわけです。このような誤解が全体として存在するということを踏まえて考えますと,あえて,ここで「契約責任とする立場から」ということを書く必要はないのではないかと私は思います。 ○潮見幹事 私はこのままでやはりいいと思います。それを申し上げたいために発言をするのではなくて,客観的瑕疵,主観的瑕疵ということの意味をどういう観点から捉えるのかということに関して,以前,瑕疵担保の議論があったときに若干発言をしたのですが,まだここの部分に尾を引いているのではないかという印象を受けました。   主観的瑕疵,客観的瑕疵という捉え方としては,この前のときの最終的な整理のところで山本敬三幹事だったかと思いますが,御発言になったところですが,一方において瑕疵というものを判断するときに,当該契約に基づいてどのような性質のものが約定されているのか,あるいは契約の内容になっているのかという観点から捉えていくもの,これが主観的瑕疵と言われている考え方であろうと思います。他方,客観的瑕疵と言われているのは,そうした契約というものを離れてといいますか,契約を観念せずに,当該対象物それ自体を出発点として,それで,その物についての性質というものはどのようなものであって,それに対してそれが欠けていれば,それは瑕疵だというような形で判断をしていくというものでして,この対立軸の中で,主観的瑕疵と客観的瑕疵というものが考えられていたのではなかろうかと思います。   その場合,今,申し上げた整理でいうというところの瑕疵の捉え方として,契約責任という観点から瑕疵を捉えたならば,主観的瑕疵という観点に進んでいくということはあり得るけれども,客観的瑕疵という方向に瑕疵の概念が進むというのはあり得ない。   他方,直前の中井委員の御発言につながることですけれども,瑕疵を考えるときに物の客観的な性質を考慮に入れることができるのか,それとも,いわゆる当事者の内心的な意思,まさに主観を考慮に入れて考えていくべきであって,そのようなものの物理的・客観的な性状などということについては考える必要はないと捉えていくのかという観点から,主観的瑕疵,客観的瑕疵という言葉も使い得るのです。現に,そういう観点から主観的瑕疵,客観的瑕疵という言葉をお使いになっておられる方もいらっしゃると思います。   後者のような捉え方をすると,契約責任説からいっても主観的瑕疵もあり,客観的瑕疵もあり,法定責任説からいって主観的瑕疵,客観的瑕疵というのもまたあるわけです。   こうしたことを考えていきますと,もし仮に瑕疵担保責任の法的性質を契約責任とする立場から本文の表現を残すならば,前者の意味での主観的瑕疵,客観的瑕疵概念に依拠して,契約において予定された性質を欠いていることとすることが適切であると結ぶほうが誤解がなく,その上で,後者の意味での主観的瑕疵,客観的瑕疵については,契約において予定された性質とはどのように決まっていくのかという観点を基礎に据えた上で,これは長くなるでしょうから,説明のほうに落とし込んだほうがいいのではないかと思ったわけです。   なお,瑕疵担保責任の法的性質を契約責任とする立場からという表現を仮に除いた場合には,契約において予定された性質を欠いていることということが一体,何を含意して,どういう観点からこれを捉えているのかということがかえって曖昧になるのではないかという感じがいたしました。そういうことから考えますと,契約責任とする立場からと書いてある文章を残しておいて,あとは説明に落とし,その上でもし仮に法定責任説がいいという,そういう意見が理論的に納得のいく理由付けとともにパブリックコメント等で示され,それが多いようであれば,そうしたら,そういう観点から瑕疵をどう捉えていったらいいのかということを意見の中で書けるような余地を残しておけば良いのではないのかと思います。 ○山野目幹事 いずれにしても,(2)①の論点は更に検討してはどうかというランク付けにすることについては御異論を見受けないわけでございますから,今,論議になっているところは,事務当局のほうにおいて引き続き推敲いただくという取扱いで良いものであると一般論として考えます。その上で,私自身の感じ方を申し上げますと,今のままの記述でよろしいのではないかと考えます。前記(1)を引用して「瑕疵担保責任の法的性質を契約責任とする立場から」という部分について,今,申し上げたようにそのままでも良いのではないかと感ずる内容的な理由は,(1)との関係でここの記述が意味を持つものであるということがありますし,その点について先ほど松岡委員がおっしゃったことに同調いたします。   それから,手続論として申し上げますと,ここは全部,何々の意見があった,という部会の議事の概要を紹介している部分でございますから,やはり,このような形での意見があったのは事実でございまして,そのように記載していただくことがよろしいと感じます。その上で中井委員が御心配になったこと,道垣内幹事がお気遣いになったことについては,いずれも議事の概況等で,ややつまびらかに説明していただくことがよろしいのではないかと感じます。 ○鎌田部会長 本文は基本的にこの形を維持して,議事の概況等にただいま御議論いただいたような点を反映させるということでよろしいでしょうか,中井委員。 ○中井委員 はい。 ○鎌田部会長 それでは,そのようにさせていただきます。   次に,部会資料26の116ページから119ページまでの「第37 売買-売買の効力(担保責任以外)」について御意見をお伺いいたします。   よろしければ,次に部会資料26の119ページ,「第38 売買-買戻し,特殊の売買」について御意見をお伺いします。「買戻し,特殊の売買」について御意見はいかがでしょうか。   よろしければ,部会資料26の119ページから120ページまで,「第39 交換」について御意見をお伺いします。   次に,部会資料26の120ページから123ページまでの「第40 贈与」について御意見をお伺いいたします。よろしいですか。   では,部会資料26の123ページから126ページまで,「第41 消費貸借」について御意見をお伺いします。 ○中田委員 123ページの「1 消費貸借の成立」の(1)と(3)についてです。(1)の最後のパラグラフで「借主の借りる債務を観念することができるのかどうか」という表現があり,それから,(3)の一番最後の行から124ページにわたってですけれども,「借主がどのような債務から解放されることを想定しているのか」という表現があります。これらの債務という言葉を義務に変えるほうがいいのではないかと思います。   23回の会議で,借りる債務についてのやり取りがあったのは事実なんですけれども,これはもともとも資料の誤記に端を発する議論であったわけです。改めて検討してみますと,諾成的消費貸借で貸主の貸す債務についての議論はかなりあるのに対し,借主の義務についての議論は従来少なかったのですが,最近では検討が進められているようです。その際に,借主の義務については履行請求権を伴う債権に対応する意味での債務ではなくて,信義則上の受領義務の性質を持つものであるというような指摘もあるわけです。そうしますと,今後,この問題を更に検討していく際には,債務であるということを当然の前提とするのではなくて,より広く義務としておいて,更に検討することにするというほうが妥当ではないかと思いますので,この二箇所については借りる義務としてはどうかと思います。 ○鎌田部会長 ただいまの御意見について関連する御発言はございますか。では,御提案に従って義務と書き換えるということでよろしいですね。そのようにさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。   次に,部会資料26の126ページから132ページまでの「第42 賃貸借」について御意見をお伺いします。 ○中田委員 たびたび申し訳ありません。129ページの下のほう,「5 賃借人の義務」の「(1)賃料の支払義務」についてなんですが,前回も申し上げたんですけれども,ここで示されている増減額請求権は任意規定であることを前提とするものであるわけです。ただ,それを本文で書くことは適当ではないという事務局の御判断で入れられなかったのだと思いますが,それはそれで結構なんですけれども,しかし,議事の概況の中では任意規定としての提案であるということは,残しておいていただいたほうがいいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですね。   ほかにいかがでしょうか。 ○奈須野関係官 三点あります。一点目は130ページの(2)の「目的物の一部が利用できない場合の賃料の減額等」のうち,「その理由を問わず(賃借人に帰責事由がある場合も含めて)」という記載についてです。この記載は,最初の段落と二つ目の段落にあります。これは賃借人に帰責事由があっても損害賠償のときに調整されるという御趣旨だと思います。しかし,この括弧の記載があえて本文中に書かれると,以前の部会の議事のときにも申し上げましたが,自分の都合でビデオを見ることができなかったときに賃料をまけろといった,およそ世の中で認められそうもない主張を容認しているかのような誤解を受けかねません。したがって,この括弧の記載を議事の概要に移すなど,少し表現を工夫してもらって,変な提案ではないと見られるようにしたほうが良いと思います。   二点目は同じく「目的物の一部が利用できない場合の賃料の減額等」についてです。議事の概況に,「阪神・淡路大震災のような大きな災害において建物の機能に重大な欠損が生じ,賃借人の使用収益に耐えない状態になったような場合」について,滅失かどうかということでいろいろ議論が分かれるということで,「建物の機能が失われたことに着眼した規定を設けることも検討する意義がある」という記載があります。この記載は本文に書いても良いと思います。賃料減額事由は,滅失の場合ではなく,もう少し広目に捉えられることが論点としてあると思いました。   三点目は131ページのアの「用法違反による賃借人の損害賠償請求権についての期間制限」についてです。132ページの上から3行目に「賃借人が目的物の返還を受けた時を消滅時効の起算点(客観的起算点)としたり」という記載があり,イの「賃借人の費用償還請求権についての期間制限」の2行目に「民法上の他の費用償還請求権の取扱いとの平仄などの観点から,これを廃止して債権の消滅時効一般に委ねる」という記載があります。この両者は似たようなことを書いている一方,書き下し方が微妙に変わっているので,読み手がどうしてこのような書き換え方をしたのかということが分かるように本分を修正してもらうか,あるいは議事の概況等の中に,ここではこういうところが論点になるからこうする,こちらではこういう論点だからこうなるという説明のほうが,読み手にとって分かりやすいと思いました。 ○鎌田部会長 まず,第一点とされました130ページの括弧書き,「(賃借人に帰責事由がある場合も含めて)」という点,ここの部分を本文からは削除すべきであるという御提案ですけれども,この点についての御意見をお伺いします。 ○中田委員 私は元のままでよろしいのではないかと思います。先ほどビデオを借りてきたけれども,見られなかったという例を挙げられましたけれども,これは賃貸人としては使用収益が可能な状態に置いたんだけれども,借主のほうがそれを利用しなかったということであり,ちょっと場面が違っているのではないかと思います。むしろ,学説で正に対立のあることを表そうとしているものですので,元のでいいのではないかと思います。ただ,今,気が付いたんですが,御指摘の括弧書きのあるその前の行のところに「目的物の一部の利用が利用できなくなった」というのは,表現が乱れているなとは思いました。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○亀井関係官 今の点ですけれども,第15回会議において,部会資料16-2第2,3(3)イの「利用できなくなった理由を問わず」との記載について御議論いただき,賃借人の帰責事由によって目的物が利用できなくなった場合に賃料が減額されることが妥当なのかについて議論になりました。そこでの議論を踏まえて,この括弧書きを追加した経緯があります。   ここで書かれている提案は,賃料は目的物の利用の対価なのだから目的物が利用できない以上賃料も生じないのではないか,というものですが,この提案の立場からも,賃借人の帰責事由によって目的物が利用できなくなった場合には,賃借人は賃貸人に対して損害賠償をしなければならないということは前提とされているのだと思います。したがって,結論として,賃借人が賃貸人に対して支払わなければならない金額に変わりはないのだと思います。そういった提案を表そうとして,この括弧書きを追加したのですが,括弧書きを書くことによって何か結論が不当なことを導こうとしているのではないかという誤解を受けるのではないかというのが,今の奈須野関係官の御指摘であったと思います。それに対して,括弧書きを書くことで賃料に関する考え方の対立点がよく表すことができるというのが中田委員の御指摘だと思います。この部会の中でこの括弧書きを削るかどうかというのを今,御議論いただけたらと思います。 ○山野目幹事 中田委員の御意見に賛成です。括弧書きをむしろ置いておいたほうが議事の概況等を更に参照してもらって,ここでの議論の奥行きが明らかになるのではないかと考える次第です。奈須野関係官の挙げられた例を最初に伺って,僕はちょっと何をおっしゃっているのか分からなかったのですが,ビデオが賃借物なんですよね。それで,ビデオを見なかったという事例ですから,その評価は中田委員がおっしゃったとおりであろうと感じます。 ○鎌田部会長 この括弧書きがあるから,「この考え方について……」という次の文章がより生きてくるという,そういう関係に立っているんだろうと思うのです。一つの考え方の提示であるのだから,その考え方の一番特徴的な部分をあえて明示するというのが現在の案ですので,それを前提にするということでよろしいでしょうか。   ほかに賃貸借に関して,奈須野関係官の挙げられた第三の点についての御意見,132ページのアとイの関係は,もともとちょっと分かりにくい部分があるのかもしれないので,両者の違いを,とりわけ消滅時効との関係で扱い方がなぜ違うのかという,そこをもっと分かりやすくするようにという,こういう御意見だったでしょうか。ここも冗長にならないでうまく表現できるかどうかについて,少し事務当局で検討させていただくということでよろしいでしょうか。 ○深山幹事 127ページにございます3の(2)の第二文になるんでしょうか,「また」以下のところで,「また,判例は,賃貸人たる地位を旧所有者に留保する旨の合意があったとしても,前記特段の事情には当たらず」うんぬんというところです。これは前回も私を含めて何人かの方から発言があって,判例の趣旨を正確に伝えていないのではないかという指摘があり,それを踏まえて修文していただいたかと思いますが,特段の事情に当たらないという表現ぶりについては,確か,直ちには当たらないという言い方になっていたかと思います。直ちには特段の事情には当たらないという判例の読み方は複数あり得るのかもしれませんが,ここまで修文していただいたのであれば,「直ちには」という文言も入れた上で,その考え方を明文化するかどうかと問うていただきたいと思います。   第一文もそうですけれども,判例法理を明文化するかどうかということが検討課題になっていて,第二文のところも「このことを条文上明記するかどうか」という問題提起になっております。つまり,判例を明文化するかといったときに,明文化するかどうかも一つの論点ですけれども,そもそも判例が,どういう趣旨で,どういう判断をしているのかということが問題になりますし,読み方が複数あるんだとしたら,どう読むかということによって明文の仕方が当然違ってきます。   私の理解としては,そもそもこれは第一文の①にあるように,特段の事情がない限り承継するという議論ですから,一定の特段の事情があれば承継しないということを想定した議論であるはずです。どういう場合に承継しないような特段の事情があるのかについては,少なくともこの判例の事案のような,こういう合意があっただけでは特段の事情には当たらないということは,判例が示しているわけですけれども,なお一定の場合には特段の事情があることが前提ですので,そういうことを踏まえますと,この判例を引用するのであれば,「直ちには」という一言にはそれなりの意味があるんだろうと私は理解をしておりますので,検討していただければと思います。 ○鎌田部会長 この点は判例の原文を参照して,御趣旨に沿った形での修文を事務当局のほうで検討させていただきます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○亀井関係官 もう一つ,先ほど奈須野関係官から御指摘いただいた滅失概念の見直しについて本文に書くべきではないかという点について御意見はいかがでしょうか。 ○鎌田部会長 すみません,第二点に関する御意見をお伺いするのを忘れて,欠落させてしまいまして失礼しました。何か特に委員,幹事の方からほかに御意見はございますでしょうか。 ○岡委員 弁護士会は今,東日本大震災の件でマンパワーとか,精神的なところで,時間とか労力を相当取られておりまして,なかなか本バックアップのほうに集中できない状況にございます。その中で,今,この賃借物の滅失による賃貸借契約の終了という論点は,大きな法律相談事項として出てきておりますので,そういう意味で重要性が現在あると思いますので,議事の要領の中にある議論を本文のほうに上げてくれるのが可能であれば,時宜に適した論点だろうと思います。 ○鎌田部会長 そこは対応可能ですか。 ○亀井関係官 もともと,これは山野目幹事の御発言を受けての記載ですが,山野目幹事の御意見はいかがでしょうか。 ○山野目幹事 本文に置くか,議事の概況等に置くかについて特段の所見を有しません。ただいま岡委員のおっしゃったこともごもっともであると感じますが,これから入れようとするといろいろ文章の構成に工夫を要する部分があるかもしれません。お任せを申し上げたいと考えます。 ○鎌田部会長 それでは,事務当局で検討させていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○鹿野幹事 先ほど深山幹事がおっしゃったことに関連して申し上げたいと思います。まず,判例法理について127ページの(2)のところで詳しく記載してくださったことについては,前回の発言を取り上げていただき御礼を申し上げます。ただし,特段の事情には当たらないという文の前に「直ちには」を付け加えるべきではないかという深山幹事の御発言がありましたし,私もこの御意見に賛成したいと思います。また,その点に加え,これは前にも申し上げたところですが,その一つ上の行の「賃貸人たる地位を旧所有者に留保する旨の合意」というところに,旧所有者と新所有者との間の合意ということを明確に記載していただいたほうが良いと思います。要するに,三者間の合意ではなく,二者つまり旧所有者と新所有者の二者の間でたとえこのような留保合意があったとしても,直ちに特段の事情があるとは認められないということだと思いますので,その点を明確に記載していただければと思います。 ○鎌田部会長 そこもよろしいですね。   ほかにはよろしいですか。   よろしければ,部会資料26の132ページから133ページまでの「第43 使用貸借」について御意見をお伺いします。 ○岡委員 43,「使用貸借」の1の「成立要件」のところですが,最後のランク付けが「設ける方向で」となっておりますけれども,弁護士会の意見として,今回,ある程度,意見が出たのは,まだそこまではいっていないのではないかと,緩和を図る方策を設けることの当否について,更に検討してはどうかと,このランクに落としてほしいという意見がございました。 ○鎌田部会長 この点について,委員,幹事の御意見をお伺いします。   これも先ほどの例でいくと,岡委員に対するサポートがないと……。 ○中井委員 かつて,この点については議論がなかったことはどうも確かなようで,さっと流れていたんですけれども,今回,弁護士会のほうで各単位会の意見集約の作業をしている中で,現段階で,大阪,横浜,兵庫県,東京弁護士会の四会から,なお慎重な意見が出たものですから今の岡委員の発言になりました。確かに使用貸借でも合理的な取引関係において,合意の拘束力を認めるという考え方がここで紹介されて,一般的にそれで特段の異議はなかったのですが,無償のものについて拘束力を認めることに,なお疑問を挟む意見が出てきたものですから,少し時宜に後れているかもしれませんが,申し上げさせていただいた次第です。 ○鎌田部会長 他の委員,幹事の御意見をお伺いします。   圧倒的多数は,このままでいいという御意見をお持ちだと理解いたしましたので,申し訳ありませんけれども,この点はこのままで整理させていただきます。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしければ,部会資料26の133ページから134ページまでの「第44 役務提供型の典型契約(雇用,請負,委任,寄託)総論」について御意見をお伺いします。   特にないようでしたら,部会資料26の134ページから141ページまでの「第45 請負」について御意見をお伺いします。 ○奈須野関係官 二点あります。   一点目は「報酬の支払時期」についてです。135ページの3(1)の「報酬の支払時期」の4行目に「履行として認容するのと同時に支払わなければならない」と書いてあります。また,同じ段落の下から2行目に「同時に支払わなければならない」とあります。これらの記載の趣旨が強行規定であれば,これで良いのかもしれません。しかし,もし任意規定という趣旨であれば,117ページの2(2)の「代金の支払場所」の4行目及び5行目に「支払わなければならない」という表現を任意規定であるという趣旨が分かるような書き方に見直す方向で,更に検討してはどうかと記載されていますので,この記載に合わせるのであれば,「同時に支払わなければならない」という記載が任意規定であるということが分かるようにしたほうが良いと思います。   二点目は,139ページの6の「注文者の任意解除権」の(1)「注文者の任意解除権に対する制約」についてです。ここに「一定の類型の契約においては注文者の任意解除権を制限する規定を新たに設けるかどうかについて,検討してはどうか」という記載があります。確かに一定の類型の契約ではこのようなニーズがあると以前の部会の場では思いました。しかし,改めて読み直してみると,一体,一定の契約とは何かという疑問が湧いてきたので,議事の概況を見たところ,具体的には書いていないので疑問が深まっています。したがって,もしこの点のアイデアがあれば議事の概況に例示が必要だと思いました。 ○鎌田部会長 二点目は「について,検討してはどうか」ですから,部会審議の場で出された意見ですね。事務当局では具体例を例示することができないということでございます。この点について何か御意見があれば。   やむを得ないということで御容認いただけますでしょうか。 ○笹井関係官 ここは部会の場で示された問題意識を踏まえたものですが,請負人側が弱い立場にあるような,労働契約に類似するような役務提供型の契約については,注文者が任意には解除できないという御意見だったと思います。具体的にどういうものであるのかは,発言者の方に挙げていただいたほうが良いかと思うんですが,ないようでしたらどうしましょうか。 ○中井委員 今,笹井関係官がおっしゃられたように,これは確か,請負人が弱い立場,つまり,労働契約ではないけれども,労働契約類似の例えば業務委託契約的な,若しくは役務サービス提供契約的なかなり雇用に近い類型のもので,しかし,雇用とは言えないパターンというのはたくさんあろうかと思うんです。そういう一定の類型について注文者側で任意に解除できることについて,いかがなものかというような意見だったのではないか。そのような基本的な考え方については私も賛成するものですから,これは残していただきたい。ただ,本来的にそれが類似のものであっても,労働契約なら労働契約として当然に制限を受けるわけですけれども,その類型に当たらない,しかし,従属関係にあるようなものというのはやはりあると思われますので,それらを対象にこういう規定の新設は検討に値するのではないかと思いますので,残していただきたいと思います。 ○鎌田部会長 その点,もう少し分かりやすい表現,あるいは何か例示的な記載を付け加えることができるかということにつきましては,中井委員あるいは議事録を精査した上で,該当の委員,幹事からお知恵をお借りするということで整理をさせていただきます。   第一点のほうはよろしいですか。「支払わなければならない」という表現が誤解を招きやすいので見直しの方向で検討をするという提案が一方であるのに,ここでは「支払わなければならない」という表現を使うことはいかがなものかという,そういうことでしたね。 ○内田委員 これは「とする考え方が提示されている」と書いてありますように,提案されている考え方を紹介しているのであって,最終的にこういう条文を作るべきだという話ではありませんので,紹介の限りではこれでいいのではないかと思います。 ○奈須野関係官 提案されている方が強行規定という趣旨で提案されているのか,支払うものとするというような趣旨で提案されているかということをお尋ねしています。 ○内田委員 任意規定だと思いますけれども。 ○奈須野関係官 では,「支払うものとする」という書き方が適切だと思います。 ○内田委員 それは,提案がこうなっているのに文章を変えたほうがいいということですか。 ○奈須野関係官 はい。紛れがないほうが良いと思います。 ○鎌田部会長 内容をそんたくして誤解が生じないような工夫を少し検討させてください。   ほかにはいかがでしょうか。 ○中田委員 139ページの「(6)土地工作物に関する性質保証期間」の本文の5行目ですけれども,「注文者は引渡しからその期間中に明らかになった瑕疵について担保責任を負う」と書いてあるんですが,「引渡しから」というのが文章として理解しにくい感じがします。また,立法提案を見ますと,受領の日からというようになっているのではないかと思います。ということで,この「引渡しから」というのをむしろ削除してしまっていいのではないかと思いました。いずれにしてもこのままの表現ですと,文章自体としても不明瞭だと思いました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。ここは「引渡しから」を削除するという処理にさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○松岡委員 誤解でなければよろしいのですが,今の箇所は「注文者は」でよろしいのでしょうか。担保責任を負うのは請負人であるはずなので,違和感を感じます。 ○鎌田部会長 「請負人は」ですね。ありがとうございました。   それでは,部会資料26の141ページから148ページまでの「第46 委任」について御意見をお伺いいたします。 ○新谷委員 146ページの「準委任」の一番下の行に「そこで,役務提供型契約の受皿的な規定……等を設けることを前提として」からつながって「とする考え方があるが」という記載があります。このような書きぶりでは,読み手に役務提供型契約の受皿規定を設けることがあたかも決まっているというような誤解を与えかねないと思いますので,書きぶりを工夫していただきたいと思います。 ○鎌田部会長 では,そこは事務当局で工夫をさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○岡本委員 141ページの「受任者の指図遵守義務」のところなんですけれども,指図遵守義務の原則につきまして,例外を適切に規定することは困難ではないかと。例外を適切に規定することが困難だとすれば,原則についても規定しないで善管注意義務の解釈に委ねたほうが良いと,こういった意見を前に申し上げておりまして,ゴシックでなくても結構ですので,そういった意見があったことが分かるような記載をしていただけると有り難いというのが一点です。   それから,ゴシックのほうにつきましても,条文上,明記する方向でというような方向性の記載がされておるんですけれども,そういう意見でございますものですから,方向性を出すのはいかがかなと思いまして,これも前に申し上げたところではございますけれども,プレーンな記載にできないかどうか,その点,ちょっと御議論いただければと思います。 ○鎌田部会長 これも方向性を明示するかどうかというポイントに係るものですので,ほかの委員,幹事の御意見をお伺いします。 ○高須幹事 今の点につきましては,私も基本的にはここは非常にデリケートな条文だろうと思っております。善管注意義務の内容として,従来,認識されているという問題と,それを指図遵守義務という形で明文化するという問題と,やはり,それなりの意味合いの違いが出てくるのではないかと思っておりますので,指図遵守義務を明文化する場合には,その例外を適切に書くのが大切だろうと思います。ここはそういう意味で岡本委員と同じような意見でございますので,一体的な関係にあるというようなことが分かるような説明というか,そういう意見があったということの説明は是非とも書いていただきたいと思います。   それから,「明示する方向で」のところですが,前の原案はむしろもっと強く,「明示してはどうか」という表現だったところをこのように御修正いただいたと理解しております。少なくとも今回の表現に変わったということでは,私の意見をお聴き入れいただいたものですから,更に更にということになるかどうかまでは,ここではほかの方の御意見に従いたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかの御意見はいかがでしょうか。   岡本委員も例外がうまく規定できないのならやめるべきだという,そういう……。 ○岡本委員 それもそうでございますし,恐らくできないのではないかということもございまして。 ○鎌田部会長 この「方向で」というのは,少し強過ぎるのでないかという御意見について同調される方は,ほかにはいかがでしょうか。 ○岡委員 発言しないと原案賛成になってしまいそうなので,私もこの「方向」はないほうがいいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○道垣内幹事 例外が明瞭に規定できなければ原則が規定できないということの理由が私には全然分かりませんが,これだけ多数の方が反対をされているのですから緩めること自体には賛成です。しかし,前提の理論は分かりません。 ○鎌田部会長 分かりました。   それでは,ここはもともとの案からいくと二段階,格下げということになりますけれども,「更に検討する」の前にある「方向で」を削除する形で整理をさせていただきます。   ほかに「委任」に関して御意見はいかがでしょうか。 ○中田委員 恐らく誤記ではないかと思われる点だけなんですけれども,「委任契約の任意解除権」に関する部分ですが,146ページの上から3行目でございます。①で「委任が受任者の利益だけでなく委任者の利益をも目的とする」とありますが,これは「委任者の利益だけでなく受任者の利益をも目的とする」ではないのかなと思いました。それから,その次の行に「解除によって委任者が被った損害」とあるんですが,これも「解除によって受任者が被った損害」ではないかと思うんですが,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 大変失礼しました。ありがとうございます。 ○山本(敬)幹事 同じく誤記ではないかということですが,141ページから142ページにかけての「受任者の忠実義務」について,142ページの最後から4行目で,「このような指摘も踏まえ,善管注意義務に関する明文の規定を設けるという考え方の当否について」というのは,忠実義務ではないかと思います。 ○鎌田部会長  ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料26の148ページから151ページまでの「第47 準委任に代わる役務提供型契約の受皿規定」について御意見をお伺いいたします。   特にないようでしたら,部会資料26の151ページから154ページまでの「第48 雇用」について御意見をお伺いします。 ○新谷委員 二点ありまして,いずれも152ページの「報酬に関する規律」のところです。   一点目は(1)「具体的な報酬請求権の発生時期」のノーワーク・ノーペイの原則の取扱いの記述の部分です。ノーワーク・ノーペイの原則を「条文上明確にするかどうかについて」という部分について,「判例・通説上認められているところ」と記載されておりますが,これには違和感があります。24回会議のときも発言いたしましたが,労働法の分野では,これを批判する有力説があります。また,ノーワーク・ノーペイの原則を条文上明確にすることについては,第17回会議において私以外の委員からも明文化することについて反対意見が出ております。   本来,賃金の請求権というのは基本的には当事者間の合意によって確定され,ノーワーク・ノーペイの原則は,契約解釈の原則にとどまると思います。にもかかわらず,「判例・通説上認められているところ」と出てくると,どうしても我々のような,民法を使う側からすると,これが何か優先的に見えてしまうということがあります。この点については,「実務上は合意によりノーワーク・ノーペイの原則とは異なる運用が……指摘等に留意しつつ」という記載もありますが,24回会議で,山川幹事からも賃金請求権が発生する場合等の扱いについて言及を頂いていますので,それを酌み取って書きぶりを工夫していただきたいのが一点です。   二点目は「民法第536条第2項」の取扱いについてですが,2行目から3行目にかけて,「民法第536条第2項を雇用契約に関しては,労務を履行していない部分について具体的な報酬請求権を発生させるという意味に解釈しているが,このような解釈を条文の文言から読み取ることは容易でないという問題点が指摘されている」という記載があります。この「指摘されている」というところですが,このような指摘をしているのは一部の学説ではないかと思っておりまして,これが広く一般に労働法学会の中で指摘されているということではないと思います。そういった意味で,表現から受ける印象の問題ではありますが,「問題点が指摘されている」という部分については,「問題点を指摘する意見がある」としたほうが,より実感に近い感じがいたしますので,書きぶりについて御検討いただければと思います。 ○松尾関係官 ただいま新谷委員から二点,御指摘いただいた点のうち,まず,最初に御指摘いただいた「2(1)ノーワーク・ノーペイの原則」について申し上げます。これは前回,新谷委員からの御発言を踏まえて修文した結果,現在の案になっているのですが,新谷委員の前回の御意見には二つの内容があったと受け止めています。まず,一つはノーワーク・ノーペイという原則があるとしても合意があればそれが優先するということを明らかにすべきだという点があったと思います。そのことは下から3行目からの「実務上は合意によりノーワーク・ノーペイの原則とは異なる運用がされる場合がある」という部分の「合意により」との記載を書き加えることで,合意が優先するということを明らかにしたつもりです。つまり,新谷委員の御意見のうち,実質的な内容については,反映させられているのではないかと考えている次第です。   新谷委員の御意見のもう一つの内容として,ノーワーク・ノーペイの原則をそもそも判例・通説と表現することが適切かという点があったと思います。確かに判例・通説というのは評価を伴う言葉ですので慎重に使う必要があるとは思いますが,他方で,この部会でも中間的な論点整理をパブコメに付するに当たって,何が問題になっているのかというのを具体的に明らかにすべきだという御指摘を度々頂いており,その観点から,判例・通説の明文化であれば,そのことを明確にすべきだというような御意見があったと思います。ですので,前回新谷委員からの御意見はありましたが,なおここは判例・通説と表現することが良いのではないかと考えて原案を維持しました。しかし,ここは改めて委員,幹事の皆様の御意見を伺った上で,修文の必要があれば修文したいと考えております。   また,2の(2)で「問題点が指摘されている」という部分について,「指摘する意見がある」と修正すべきだという御意見は,重ねての御指摘ということなので,できれば御趣旨を踏まえて修正したいとは思います。しかし,前回か前々回の会議で,記載されている意見が部会外で出たものか,それとも部会で出たものかについて明らかにすべきだという御意見があったと記憶しており,この観点から,「指摘されている」という記載と「指摘する意見がある」という記載の使い分けはどうなっているのかということが問題となると思います。ですので,全体の平仄を見ながら,どう修正すべきか判断させていただければと思います。 ○山川幹事 まず,152ページ2の(1)で,新谷委員の懸念されているのは,多分,原則という言葉が,言ってみればかなり強行法規的なイメージを持ってとられかねないという点があるのかなと思います。624条が任意規定である点については,先ほど松尾関係官の御指摘のように,合意によって賃金債権を発生させ得るということが書いてありますので,そうした懸念に対応する方法としては,例えばですけれども,原則という表現を取扱いに変えて,ただ,ノーワーク・ノーペイの原則という表現は一般に使われているものですから,例えばですけれども,いわゆるノーワーク・ノーペイの原則というような形で表記してはいかがかと思います。今思い付いたことですので,そこはお任せします。   それから,(2)について「指摘されている」というのは,これも表現の問題で,私はどちらでもよろしいかと思います。536条2項の書きぶりが失わないという表現になっているものですから,やや報酬請求権についての発生根拠としては明確でないということは,少なくとも自分の教科書では書いているんですけれども,余り多数ではないかもしれないので,意見ということでも結構かと思います。   それから,ちょっと追加でよろしいでしょうか。同じく(2)なんですけれども,後段,二段落目の①の部分で,この内容自体についての問題ではないんですけれども,一点,整合性を考慮すべき判例があることを,不明にしてこれまで思い付きませんでした。それは昭和62年4月2日の最高裁判例でありまして,いわゆる中間利益の控除の問題で,536条2項の条文上は償還請求権になっていますので,恐らく賃金債権と償還請求権の相殺という発想だと思うんですけれども,その判例のポイントは,中間利益は労基法26条に定められている平均賃金の6割を下回って賃金債権から控除することはできないということです。したがって,最高裁判例で中間利益の控除に関する限度を設けているものがあることについても,留意すべきであることになると思うのですが,本文自体には現在の判例・通説等と書いてありますので異議はございませんが,もし可能でしたら議論の概況等で,そのような判決との整合性にも留意すべきであるという点をお書きいただければと思います。 ○鎌田部会長 分かりました。最後の点はよろしいですね。   第一の点については,山川幹事から御指摘いただいた点を参考にして,修文を試みるということにさせていただきます。   152ページの2(2)にある536条2項の「問題点が指摘されている」というところは,うまい工夫ができれば改良を試みるということにさせていただきます。ただ,こう書いてあることから,あり得ない誤った解釈をしているというふうな読み方のおそれがあるということも,新谷委員の御懸念の中にあるのかもしれませんが,結論はいいんだけれども,条文がそれに即応していないところをどう埋めるかというのがここ全体の書き方の趣旨だということなので,その趣旨に合ったような表現が工夫できれば,そういう形に改良を施したいと思いますのでよろしくお願いします。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしければ,次に部会資料26の154ページから161ページまでの「第49 寄託」について御意見をお伺いいたします。 ○奈須野関係官 三点あります。   一点目は,155ページの2の「受寄者の自己執行義務」の(1)「再寄託の要件」についてです。「再寄託の要件を「受寄者に受託物の保管を期待することが相当でないとき」にも拡張するかどうかについて」「復委任の要件を拡張する考え方を前提として」と書いてあります。確かに復委任の要件を拡張する考え方と再寄託の要件を拡張する考え方は親和的ではあります。しかし,論理必然的ではありません。私は前者の復委任の要件を拡張する考え方はいかがなものかとは思っています。一方,後者の再寄託の要件を拡張する考え方については,実務上そのようなことが多いものですからあり得ると思っています。したがって,「復委任の要件を拡張する考え方を前提として」という記載はなくても良いと思いました。   二点目は,156ページの5の「寄託者の義務」の(1)「寄託者の損害賠償責任について」です。現行の委託者の無過失責任を定めた規定がおかしいのではないかという立法論的な批判から,当該規定を改めるべきだということについて,「取引実務の観点からは現在の規定が合理的であって見直しの必要がないとの意見がある一方で,たとえ無過失責任が原則とされても必要に応じて寄託者の責任を軽減する特約を締結できるから不都合はないとの意見もある」と記載されています。確かに以前の部会ではそのような反論もあったと思います。しかし,特約のことを言い始めたら切りがない,あるいは,立法論的な批判に基づいて変な法律ができても,実務は特約で対処すればいいのではないかという何か上からの目線による記載にも見えるので,違和感があります。もう少し適切な反論を選んだほうが良いと思います。   三点目は,前回の部会でも申し上げたので詳しくは申し上げませんが,157ページの(2)「寄託者の報酬支払義務」についてです。「①保管義務を履行しなければ,報酬請求権は具体的に発生しないという原則」と記載されています。しかし,寄託を諾成契約として改めた場合においては,この考え方が引き続き原則としての価値判断を含んだものとして位置付けられるものではないと思っています。先ほどのノーワーク・ノーペイの議論から類比すると,「保管義務を履行しなければ,報酬請求権は具体的に発生しないという取扱い」など,価値判断を除いた書きぶりが良いと思います。 ○鎌田部会長 これらの点について何か御意見はございますか。 ○松尾関係官 今,奈須野関係官から御指摘いただいた点のうち,まず,最初の点で,2の「(1)再寄託の要件」の中で,「復委任の要件を拡張する考え方を前提として」という記載は不要ではないかという御指摘ですが,ここは再寄託の要件を拡張するという立法提案が復委任の要件を拡張するということも前提としているということの紹介なので,削除するのは適当ではないのかなと思います。奈須野関係官の御意見は,両者を整合させないという考え方があり得るのではないかという別の御意見があったと受け止めて,議事の概況に書くか,本文に書くかについて,事務当局で検討させていただくということでよろしいでしょうか。   あと,第二点目ですけれども,「特約を締結できるから不都合はないとの意見もある」という部分を削除すべきだという御趣旨ですか。 ○奈須野関係官 もう少し上からの目線を感じないような表現があるのではないかという趣旨です。 ○松尾関係官 この御意見を出して下さった委員の先生から,何か補足する意見を頂ければと思いますが,この御意見は要するに,デフォルトルールとしては見直すことが適当であるということを前提としていると思いますので,そのことを端的に書いたほうがいいのかなと考えました。   また,157ページの5の(2)で,「報酬請求権は具体的に発生しないという原則」という記載が適当ではないのではないかという点については,例えば「原則」を「取扱い」と改めて,ノーワーク・ノーペイの原則の論点の記載と平仄を合わせるという工夫がよろしければ,検討させていただきたいですし,あるいは,議事の概況で何か補足することも考えさせていただければとは思います。 ○鎌田部会長 第一点目は,むしろ,御指摘のあった2の(1)の第二文についての問題というよりも,第一文について再寄託の要件と復委任の要件は同じでなくていいという御意見があったと,議事の概況の中にそういう趣旨をちょっと入れさせていただくということでよろしいですね。   第二点目の「5 寄託者の義務」の「(1) 寄託者の損害賠償責任」に関する指摘については,こういう意見があったということですので,事務当局のほうで書き換えることはなかなか難しいところがありますので,御発言の方と必要に応じて調整させていただくということにさせていただきます。   157ページの「(2) 寄託者の報酬支払義務」のほう,これもちょっとこちらのほうで工夫が可能かどうかを検討させていただくということでよろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,次に部会資料26の161ページから164ページまでの「第50 組合」について御意見をお伺いします。 ○山本(和)幹事 164ページの(2)の「組合の清算」のところですけれども,組合契約の無効・取消し訴訟の認容判決が確定したことを清算原因として規定するという考え方が提示されており,それについては「他の清算原因との平仄が取れていないという指摘がある」という紹介で,この御議論はそのとおりと思うんですけれども,私の理解では恐らくこの考え方というのは,持分会社やあるいは一般社団・財団法人の清算の規定とパラレルな形で規定をしようという御趣旨かと思います。それらの法律においては,ただ,設立無効あるいは設立の取消しの判決というのが形成判決として構成されているので,このような平仄が合わないという問題が生じていない,つまり,判決の確定によって初めて無効・取消しの効果が生じるという規律になっているのかなという,それを前提にしているのかなと思っています。   ですから,そういう意味では(2)の一番最初のところでは,1の(2)に関する規定の整備として無効・取消しの将来効のことだけが書かれていますけれども,これとともに無効・取消しが訴えによってしか主張できないというような規律を設ければ,このような平仄が取れないという批判は生じなくなると思うのですが,そこまでやるのかどうかというのは一つの問題かなと思いますけれども,私はちょっとこの部分についての議事について十分確認していないんですが,もしそういうような議論が今までなかったのだとしたら,そういうようなこともあり得るというようなことを少し議事の概要か何かに書いていただければ有り難いかなと思いました。 ○鎌田部会長 その点はよろしいですね。   ほかにはいかがでしょうか。   では,次に部会資料26の164ページから165ページまでの「第51 終身定期金」について御意見をお伺いします。   特になければ,部会資料26の165ページから166ページまでの「第52 和解」について御意見をお伺いします。 ○中田委員 前回,御指摘すべきだったんですが,今回,見直してみて気がついた点が一つございます。それは和解と錯誤に関する部分でして,165ページの一番最後の行から166ページの1行目にかけての部分です。無効主張が制限されるのが和解契約の性質から導かれる錯誤の特則であるという指摘があると,そういった指摘を踏まえてという部分ですけれども,その次,「錯誤による和解の無効を主張することができる範囲の特則を条文上明確にすべきかどうか」というところの特則という言葉がやや不正確になるのではないかということです。   錯誤の主張が制限されるのは,争いの対象となっている部分が真実と違っていても蒸し返さないという和解の性質上,その部分についてはむしろ錯誤がないんだという考え方も有力でありまして,その考え方を採ると,錯誤の特則というわけではないということになるかと思います。ただ,その考え方を採る場合でも,どういった場合に和解無効の主張ができるのかを明文化するということは,これはこれで選択肢としてはあり得ると思いますので,そういった考え方を含めて検討するためには,166ページの1行目の「範囲の特則」という部分の「の特則」という三文字を削除するほうがいいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 分かりました。「の特則」の三文字を削除させていただきます。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料26の166ページから167ページまでの「第53 新種の契約」について御意見をお伺いします。 ○中井委員 167ページの「2 ファイナンス・リース」のところですが,典型契約として規定する必要があるとする意見の一つの理由として3行目ですが,「ユーザーを保護する必要性の高い類型のリースがあること」が挙げられているわけです。恐らくユーザーを保護する必要性の高い類型のリースというのは,前の部会の議論で出てきた小口リースないし提携リース等を指しているのかと思いますが,仮にほかの方が発言しているなら,また,異なった御意見かもしれませんが,私がこれに関連して発言した趣旨は,こういうことがあるから典型契約として規定する必要性があるという趣旨で発言したものではないので,もう一度,申し上げておきたいと思います。   現在の使われているリース契約の内容をそのまま典型契約として規定した場合に,現在,生じている問題に十分配慮する必要があり,仮に配慮するとすれば,現在,使われている一般的契約内容とは異なった様々な手当てが必要にならざるを得ないという問題点を指摘したわけであって,そういう保護する必要性があるから,だから,典型契約として規定して,積極的に何らかの規定を設けていきましょうという前向きの意見ではなかったわけです。したがって,このことを必要性のある意見の一つとして掲げるについてはいかがなものかと思いますので,改めて御検討いただきたいと思います。 ○鎌田部会長 この点について。 ○亀井関係官 御指摘の箇所については,中井委員の発言を反映させたつもりで記載を加えた箇所です。したがって,もし中井委員の御趣旨と違った形で文章が書かれているのであれば,修正をしなければならないと思います。 ○鎌田部会長 では,今,中井先生がおっしゃったような趣旨を踏まえて,典型契約として規定する必要性の理由としてでなくて,そういう規定をするのなら,こういう点についても配慮しなければいけないという方向で,この部分を整理させていただくということにします。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは,次に部会資料26の167ページから170ページまでの「第54 債権の目的」について御意見をお伺いします。 ○潮見幹事 二点,お願いがあります。   一点目は167ページの2,それから(1)の見出しです。「特定物の引渡しの場合の注意義務」となっていて「特定物の引渡しの場合の注意義務」,(1)も同じですね。これを保存義務としていただくことは可能でしょうか。ここで問題になっているのは保存義務であり,その内容とか程度が善管注意かどうかが次にくるわけですので,(2)のほうも保存義務とやっているものですから,こちらも併せて保存義務としていただけないかというのが一点です。   それから,二点目は少し内容に関わり,また,もう少し早く言うべきだったのかもしれません。168ページの4(1)の三段落目に「さらに,判例が認める変更権」ということで,括弧書きで変更権の説明がございます。変更権は御案内のとおり,信義則に基づいて個別具体的に,この場合については変更権があり,この場合についてはなしというような形で判断がされているわけでありますし,そもそも判例が果たしてこういう特段の事情がない限り変更することができる権利という意味で変更権を認めているとは,少なくとも私は思ってはいません。ですので,せめてこの括弧書きはやめていただきたいと思います。「判例が認める」というのも,これも強いかなというところもあるのですが,認めていると一般的に言われていますから,こちらのほうはこれでもいいのかもしれません。 ○鎌田部会長 この点について,御意見,御発言を頂きます。   第一点目は,167ページの2のタイトルと2の(1)のタイトルの両方を併せて「注意義務」を「保存義務」にということですけれども,よろしいですか。中身も保存義務についての記述になっていますので,本文との不整合は生じないと思いますが,現行400条の条文,タイトルとの関係もありますので,御趣旨を踏まえて調整させてください。   第二点目の変更権の括弧書きについては,括弧書き全体を外してしまうということですが,ここはどうですかね,括弧書き全体を外してしまうのか,あるいは今までのいろいろな判例,学説に表れたところに合わせて少し調整を考えるぐらいでしょうか。 ○内田委員 こういう新しい概念を使ったときには,説明を入れるようにという御要望があって,それで,ここは括弧書きが入っているのですけれども,全く取ってしまうと,今度はよく分からないという意見が出てきそうです。潮見先生の御意見の趣旨を反映できるような形で,できれば括弧をもう少し穏当な内容にした上で残してはどうかと思います。 ○潮見幹事 別にお任せいたしますが,若干,危惧がありましたのはやはり判例が認めるという修飾語が付いていますから,これを一般人が見た場合に,判例がこういうふうな形で変更権を定義しているんだと受け止められると,困ります。これが本当に判例法理なのかということなのですが,このことを置いておくとしても,現在の学説の説く変更権の捉え方とは違うと思いますので,そこだけ御留意いただければと思います。 ○鎌田部会長 それでは,少し検討させていただくということで御了解ください。   ほかにいかがでしょうか。 ○中井委員 169ページの「法定利率」のところで,変動利率制という言葉が使われているのですが,この言葉については,誤解を生じるのではないかという指摘があります。変動利率制という場合は,例えば短期プライムレートに変動して一つの契約で発生した債権について,時々刻々若しくは期間に応じて変動していく,そういう制度自体を指しているような誤解を受けかねません。法定利率を変動させるという提案は,単純に変動制を提案しているのだろうと思います。   その変動制の中身として幾つかのパターンがあり得る,利率を一定の期間ごとに変更して,そこで発生した債権については,その後,同じ金利で固定される,若しくは期間ごとに区切って,利率が変動していくこともあり得るのかもしれませんが,まずは法定利率について現在の固定制ではなくて変動制を採用する。言葉としては変動利率制ではなくて,変動制を採用するという言葉で通した上で,次にその変動制の中身について議論することになる。そういう言葉遣いのほうがいいのではないかと,金融に詳しい弁護士から指摘を受けましたので,御検討いただければと思います。 ○鎌田部会長 分かりました。その点はよろしいですね。   では,部会資料26の170ページから172ページまでの「第55 事情変更の原則」について御意見をお伺いします。   ないようでしたら,部会資料26の172ページから173ページまでの「第56 不安の抗弁権」について御意見をお伺いします。   では,引き続き部会資料26の173ページから174ページまで,「第57 賠償額の予定(民法第420条,第421条)」について御意見をお伺いします。 ○中井委員 173ページ,第57の①の一番下から3行目ですけれども,「後者については」の「後者」というのはこれでよろしいんでしょうか。つまり,「効果については,合理的な額まで減額を認める考え方のほか,著しく過大な部分のみを無効とすべきであるという意見があるが,後者については……裁判所に可能か疑問であるとの指摘」,議事録を確認しないままですけれども,合理的な額まで減額するという考え方について,合理的な額を裁判所が判断するのは難しいという理解かと思ったんですが,念のため,御確認いただければと思いますが。 ○鎌田部会長 実損額,合理的な額は超えているけれども,著しく過大ではないというようなところに線を引くことが可能かどうかという趣旨だとしたら,「後者」になるんだと思うんですけれども。 ○内田委員 出た意見というのは,著しく過大な部分だけを判断するのは難しいというものです。もう少し分かりやすいように表現を工夫する余地はあるかと思いますけれども。 ○中井委員 議事録でそうなっていれば,そのとおりなんだろうと思いますけれども……。 ○野村委員 予定された損害賠償額が実際の損害額に比して過大にすぎない場合には,この規定は働かないわけですよね。予定された賠償額が著しく過大な場合に,初めてこのような規定によって賠償額が修正されことになるのです。だから,著しく過大な場合に,裁判官がその額を修正するときに,合理的な額まで戻るのではなくて,許される範囲内で過大なところまで戻るという解釈を採るとすると,それはなかなか難しいのではないかということになるのではないでしょうか。多分,そういう趣旨で書かれているのだと思いますけれども。 ○鎌田部会長 少し分かりやすい形に直す……。 ○中井委員 ここでの新たな意見になるかもしれません。一般論として裁判所が判断する仕方として,抽象的に合理的な金額を裁判所が判断してくださいよと言われたときの裁判所の判断と,著しく不合理な部分のみ,過大な部分のみ無効として,一定減額するという判断,どちらが難しいかと聞かれたときに,抽象的に合理的な金額を判断してくださいねと丸投げされるのは裁判所としては困るのかなと,こう感じたものですから申し上げた次第です。かつての議論とそこが食い違っているのであれば,議事録をもう一度,御確認いただければと思いますが,そういう意見もあるということをここで重ねて申し上げておきます。 ○鎌田部会長 裁判所にとって実務上難しいかどうかということと併せて,例えば実損300万のところを1,000万という予定賠償額は著しく過大であるとして,実損まで下げるというのは下げる権限に合理的根拠があるんだけれども,過大ではあるけど著しく過大ではない800万まで下げるというのはどういう権限に基づいて,そんなことができるのかという意味での難しさも,ここでは語っているのではないかと思ったんですけれども,これももともとの御発言の趣旨を踏まえた上で分かりやすい表現ができれば,そのように改めさせていただくようにします。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは,次に部会資料26の174ページから175ページまでの「第58 契約の解釈」について御意見をお伺いします。   ないようでしたら,部会資料26の175ページから177ページまでの「第59 第三者のためにする契約」について御意見をお伺いいたします。   次に,177ページから178ページまでの「第60 継続的契約」について御意見をお伺いします。 ○青山関係官 177ページの第60の1の最後の4行を今回,加えていただいたと思うのですが,具体的には「継続的契約の定義に該当し得る契約類型(消費貸借,使用貸借,賃貸借,雇用,委任等々)との規定の関係を整理する必要」との記述は,これまでの議論を踏まえて加筆いただいたとものと思います。これは継続的契約という新しい類型を考える際の根本的な論点ですので,加えていただいて有り難いと思っておりますが,ほかの契約との関係に留意するというこれまでの議論の中では,私などが主張した労働契約との関係については,法令の規定のみならず,判例法理との関係が非常に問題となるという点を何度か申し上げたかと思います。しかしながら,この原文では「規定」のみ挙げられているため,例えば「規定や判例法理」と加えていただければ有り難いと思っております。これは期間の定めのある労働契約の終了について確立した判例法理がございますので,それも十分留意しながら議論すべきだという趣旨で再度申し上げるものです。 ○鎌田部会長 よろしいですか。では,御趣旨に応じた修正を検討させていただきます。 ○中田委員 今の御指摘の部分なんですけれども,規定だけではなくて判例についても言及するというのは賛成です。ただ,その前の部分で,契約類型の後に括弧書きで具体的な契約類型を列挙しているのは,むしろ削除したほうがいいのではないかと思います。   理由は二つありまして,一つはその前に継続的契約の定義に該当し得るとあるんですが,継続的契約の定義については何ら言及していないにもかかわらず,個々の契約類型がそれに該当するかどうかということに触れているのはちょっと分かりにくい。もう一つは,列挙されている契約類型の中で,例えば消費貸借については返済すべき金額の総額が決まっていて,それを分割返済しているときに,それが継続的契約なのかという問題があったり,委任においてもごく短期間な委任の場合にどうかとか,あるいは逆にここに書いていない請負は入らないのか,請負でも入るようなタイプのものがあるのではないかという問題があったりすると思います。このように,ここに列挙することによって,かえって混乱を招くのではないかと思います。そこで,もう少し抽象化して,「関連する典型契約の規定や判例との関係を整理する必要がある」ぐらいでいいのかなと思います。   この1についてもう一点,別の点もあるんですが,併せて言ってよろしいでしょうか。前半の部分で「継続的契約一般に妥当する規定を設ける」という辺りなんですが,期間について全く言及がされていないというのがやや分かりにくいのではないかと思います。継続的契約は,ある期間にわたるものであるので,様々な問題が出てくるという部分があると思います。そこで,前回,私は「契約期間の定めの有無を考慮しつつ」というような表現を御提案しました。それにはこだわりませんけれども,何らかの形で期間についての言及をしていただくほうが良く,それは外延を明らかにするという意味があるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 今の御指摘の点については,事務当局のほうで検討をさせていただいて,適宜の対応を考えたいと思います。青山関係官の御意見と中井委員の御意見の両方を踏まえて検討したいと思いますけれども,青山関係官,何か補足はございますか。よろしいでしょうか。 ○青山関係官 はい。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○奈須野関係官 原則的な扱いに対して例外を設ける場合には,まず,原則を書いてもらうことが,原則と例外をひっくり返そうという立法提案ではないという趣旨を明確にする上で必要であると以前の部会でも申し上げたと思います。この点,177ページの(2)の「期間の定めのある継続的契約の終了」において,「期間の定めのある継続的契約に関し,」「更新の申出を拒絶することができないとする規定を設ける」と,最初に例外が書いてあります。このため,あたかも原則と例外をひっくり返そうという提案ではないかという誤読を招きかねません。したがって,この記載は,例えば,「期間の定めのある継続的契約は,期間の到来によって更新の申出を拒絶することができるのが原則であるが,更新を拒絶することが信義則上,相当でないと認められるときは」などと,最初に原則を確認してもらったほうが誤解を招かないと思います。 ○鎌田部会長 その点も少し工夫をできれば,工夫をしてみます。 ○川嶋関係官 今の点についてですが,「期間の定めのある継続的契約」という表現そのものによって,何が原則であるかは明らかなのではないかとも思うのですけれど,いかがでしょうか。誤解を招くおそれはありますでしょうか。 ○鎌田部会長 「信義則上相当でないと認められる」というのも,法律家から見れば極めて例外的な場合というのが一目瞭然ではあるんですけれども。 ○奈須野関係官 部会では,期間の定めのある継続的契約について,更新の申出を拒絶することができないとなった場合の扱いがどうなるのかということについて,様々な議論があった経緯もあります。したがって,まずは自明とはいえ,自明な原則を書くことに特段,支障はないと思います。 ○鎌田部会長 少し検討させていただきます。 ○中田委員 原則を書くときに,更新拒絶ができるのが原則だという書き方はちょっと変で,期間の定めがある場合には,期間の満了によって終了するのが原則だということになるのではないでしょうか。 ○鎌田部会長 ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,部会資料26の178ページから179ページまでの「第61 法定債権に関する規定に与える影響」について御意見をお伺いします。   ないようでしたら,179ページから183ページまでの「第62 消費者・事業者に関する規定」について御意見をお伺いします。 ○鹿野幹事 細かなところですが,一点,申し上げたいと思います。179ページの下のほうの(2)と(3)のところですが,これが,(2)か(3)かの選択というだけではなくて,(2)と(3)の並存という考え方があり得るということが示されるように,表現ぶりを工夫していただければと思います。   と申しますのも,(2)の格差のある契約に関する理念的な規定を置くという意見が出てきた経緯としましては,まず,消費者契約に関する規律につき,これを民法に導入するとしても,具体的な規定だけではなくて,やはり,理念規定が必要だという意見が,私も含め複数名から出されまして,その上で更に,消費者契約に関する理念規定だけではなくて,より一般的に格差のある契約に関する理念規定も置くべきだという意見が出されたものと認識しています。つまり,消費者契約は構造的格差のある典型的な場合だが,消費者,事業者間だけではなくて,ほかにも格差のある契約が存在しているのであり,そもそも格差がある契約についてどのような基本的な考え方を採るのか,その解釈理念も示すべきだ,という形で出てきた問題提起だったと思います。ここに書かれた文章の表現によりますと,(2)か(3)かのいずれかという選択肢のようにも読めてしまいそうですが,むしろ,議論の流れからすると(2)と(3)を併せて導入するという趣旨が強かったと思います。   もちろん,抽象的な可能性としては,(2)のような一般的な理念規定だけを置くという方法と,(3)のような消費者・事業者に関する規定だけを置くという方法と,これらを併せて置くという方法が考えられるとは思うのですが,いずれにしても(2)と(3)を併せて設けるという選択肢があることにつき,若干表現を工夫して表していただければと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですか。では,事務当局に工夫をお願いすることとさせていただきます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○青山関係官 すみません,少し余計なお節介かもしれませんが,今の御意見を聴き思いましたのは,すごく技術的な話ですが,この文章をよく見ると(1)(2)(3)は見出しがなく,突然,文章から始まっていますが,これは直さなければならないと思いますが,その際,例えば,(2)(3)を,①,②みたいな並びで整理する,その際今の御意見も取り入れるのならば,平仄が合うのではないかと思いました。余計なことですみません。 ○筒井幹事 御指摘いただきましたように,符号の付け方について不統一なところがあるのは全くそのとおりですので,今後の事務的な作業としてその統一を図っていきたいと思います。それとの関連で,先ほどの鹿野幹事の御指摘の点についても,何か工夫ができそうであれば,そういった対応も考えたいと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   それでは,次に部会資料26の183ページから184ページまでの「第63 規定の配置」について御意見をお伺いいたします。 ○筒井幹事 「規定の配置」ではないのですが,一番最後の項目ですので,以前に出された御意見で,その他検討すべき課題としてどのようなものがあるかといったバスケット的な項目を設けるという御提案について,発言します。この御提案について検討してみたのですけれども,現在並べられている項目は,いずれも具体的な一定の考え方なり,論点なりを紹介して,それについて検討してはどうかといった文脈になっておりますので,ここに並ぶものとしては書きにくいように思います。しかし,ここに具体的に挙げられていない論点も,パブリックコメントとしては是非出してほしい,それが正にパブリックコメントの手続を行うことの趣旨そのものでもあると思います。そこで,今申し上げたようなことは,補足説明の前半の総論的事項の記載の中で,特に強調して紹介すべきものであろうと思います。そういう形で記載させていただくこととし,具体的な論点項目の一つとしては立てないという案で,現在の案を御提示させていただいております。 ○鎌田部会長 それでは,第63に加えて,ただいまの筒井幹事の御説明につきましても,御意見があればお伺いいたします。よろしいでしょうか。 ○中井委員 是非,強調して紹介していただきたいと思います。 ○鎌田部会長 それでは,ここで休憩を取らせていただきまして,休憩の後に第1に戻って,残りを全部,今日中に何としてでも処理をさせていただければと考えているところでございます。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開いたします。   部会資料26のうち,「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理のたたき台(1)」と同(2)の再改訂部分について御審議いただきます。この部分につきましては,これまでに二巡にわたる審議をしておりますので,基本的には御意見は既にちょうだいしているかと思いますが,なお付け加えるべき御意見がございましたら御発言をお願いいたします。   まず,部会資料26の1ページから15ページまでの「第1 履行請求権等」から,「第6 その他の新規規定」について御審議いただきますが,それに先立ちまして事務当局から説明があるようですのでお願いいたします。 ○新井関係官 部会資料26の「第6」の表題が「その他の新規規定」となっておりますが,これが内容を反映しておらず,やや分かりにくいと思われます。そこで,例えば「債務不履行に関連する新規規定」と表題を改めることを御提案させていただきたいのですが,いかがでございましょうか。 ○鎌田部会長 ただいまの御提案について御意見がありましたらお出しください。   よろしいですか。それでは,お認めいただいたものとさせていただきます。   では,第1から第6までについて御意見をお伺いいたします。  特にございませんか。   ないようでしたら,部会資料26の15ページから40ページまで,「第7 債権者代位権」から「第10 保証債務」までについて御意見をお伺いいたします。 ○高須幹事 内容の話では全くなくて,前回の私の発言を文章化いただいたところの誤字と思われる部分の指摘でございます。40ページの「根保証」の(2)の「規律の明確化」の本文の4行目のところ,「債権譲渡があった場合に保証債務が随伴性するかどうか」というのは,多分,「随伴するかどうか」だと思いますので,指摘するまでもなかったとは思うんですが,ちょっとそれだけお願いします。 ○川嶋関係官 訂正いたします。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでございましょうか。 ○奈須野関係官 「根保証」について,当初は慎重な検討が必要と思っていました。しかし,今回の震災を踏まえると,より具体的な提案として検討する必要があると思い始めています。根保証契約の特別解約権について,これまでの議論では,一般条項的なものとして考えて,要件,効果については開かれたものにしておくという議論だったと思います。しかし,別の考え方として具体的な要件,効果を新たに設けていくということもあり得ると思っています。具体的には地震や津波などで工場や家屋が流出したときを例えば要件として,効果としては元本確定事由になるなどが考えられます。特別解約権を一般条項として規定する以外にも,このような具体的な新しい要件,効果もあり得ると思っています。この点については本文に書いてもらっても構いませんが,議事の概況等に考え方を記載してもらえれば結構です。 ○鎌田部会長 分かりました。その点はよろしいですね。   ほかに何かございますか。   それでは,次に部会資料26の40ページから69ページまで,「第11 債権譲渡」から「第19 新たな債務消滅原因に関する法的概念(決済手法の高度化・複雑化への民法上の対応)」までについて御意見をお伺いします。 ○岡本委員 64ページの「法定相殺と差押え」のところなんですけれども,この中に「無制限説により生じ得る不合理な相殺を制限するために無制限説を修正することの要否が問題となることに留意しつつ」という記載があるんですけれども,この記載ですと無制限説により不合理な相殺が生じ得るということが何か所与の前提みたいな読み方もできるかなと思いまして,できれば例えば「無制限説により生じ得る不合理な相殺を制限するために,無制限説を修正する必要があるとする考え方があることに留意しつつ」とか,そういった形,プレーンな記載にしていただけないだろうかと思います。 ○鎌田部会長 関連する御意見はございますか。   そのような形でもよろしいのではないかと思いますので,基本的にそういう方向性で検討させていただきます。   ほかにはいかがでしょうか。   特にないようでしたら,部会資料26の69ページから90ページまでの「第20 契約に関する基本原則等」から「第28 不当条項規制」までについて御意見をお伺いいたします。 ○山本(敬)幹事 第20の「契約に関する基本原則等」の69ページ,2の「契約の成立に関する一般的規定」について,少しだけ訂正をお願いできればと思います。  これは,第22回会議にときに私から修正をお願いした点と関わるのですが,69ページの下から3行目に「契約の成立に関する一般的規定を設けることとする場合の規定内容」について,「契約の核心的部分」について合意が必要であるという考え方があるとした上で,次の70ページで,「このような考え方の当否について,契約の核心的部分……の範囲を判断する基準……にも留意しながら,更に検討してはどうか」とされています。   この判断する規準について,70ページの上から3行目に括弧書きで,「(客観的に決まるか,当事者の意思や契約の性質に即して決まるか。)」と書かれていますけれども,後者のほうの「当事者の意思」はいいのですが,「契約の性質」ですと,前者の「客観的に決まる」ということと重なると思います。例えば,売買契約や賃貸借契約という「契約の性質」から,当事者の意思や認識にかかわりなく,客観的に「核心的部分」が決まるというのが,前者の考え方だと思います。  第22回会議のときに私が申し上げたのは,「当事者の意思や認識に即して」捉えるという考え方でした。つまり,当該当事者がどう考えていたか,それを相手方が認識したか,認識できたかということに従って判断するという考え方ですので,括弧内の「契約の性質」という部分は削除をして,「認識」というような表現に書き換えていただいてはどうかと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですね。ほかにはいかがでしょうか。 ○奈須野関係官 76ページの2「懸賞広告の効力・撤回」の(2)「撤回の可能な時期」における「第三者が指定行為に着手した場合には撤回することができないものとすべきである」という記載について,これは任意規定だと思われますが,いずれにせよ,どこで第三者が指定行為に着手したかどうか,懸賞広告をした者は知ることができないではないかという批判が寄せられる可能性があります。そのような無用な議論を避けるためには,例えば「第三者が指定行為に着手した旨を通知した場合には」といった,条文として実現可能な提案をされたほうが無用の議論,混乱が起きないと思います。 ○鎌田部会長 指定行為着手後通知到達までの撤回の効力という解釈問題がすぐ出てきそうな感じがします。 ○内田委員 これは,こういう理論があるので書いているわけです。奈須野関係官のような考え方は,もちろん,あり得ると思いますけれども,信頼して行為した第三者を保護するという考え方がありますので,これはこれで一つの考え方ではないかと思います。 ○奈須野関係官 ただ,懸賞広告だけをして,第三者が着手したかどうかは広告者は知る由もないわけで,知る由もないことについて撤回することができないというのは,少し酷な規定ではないかと思います。 ○内田委員 ですから,それを今後実質的に議論すればいいのであって,だからこそ,その当否について検討するという課題になっているのではないでしょうか。 ○奈須野関係官 では,例えば,「第三者が指定行為に着手した場合の撤回は実施可能であるということも踏まえつつ」,又は「第三者が指定行為に着手した場合に撤回することができないとするのは実施困難である」,若しくは「第三者が指定行為に着手したかどうかは知ることができない」など,「こうした考え方も踏まえつつ,更に検討してはどうか」として,「第三者が指定行為に着手した場合には撤回することができないものとすべきである」という考えに対する批判があるということはお書きくださるのが良いと思います。 ○内田委員 「考え方の当否について更に検討」と書いてあるのは,皆批判があるもので,中には非常に強い批判のあるものもありますけれども,常に逐一批判の内容を特記しているわけではありませんので,これも同じ扱いでいいのではないでしょうか。 ○奈須野関係官 そのような御提案のお考えがあるのだとすれば,私は先ほど申し上げた意見を持っていますので,それは本文か,議事の概況かに記載してもらいたいと思います。 ○鎌田部会長 議事の概況等で少し工夫をさせていただくようにします。   ほかにはいかがでしょうか。   本日,予定していた議事は以上のとおりでございます。ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○奈須野関係官 本文全体を通じての編集方針についての説明の文章は,中間論点整理のどこかに入りますでしょうか。例えば,「更に検討してはどうか」と,「検討してはどうか」の書き分けの説明や「判例」は最高裁判例を意味し,「裁判例」が下級審の裁判例を意味するなどの説明についてです。 ○筒井幹事 更に検討してはどうかという文末表現の意味などは,必須の記載事項であると考えておりました。判例という用語の意味まで記載することは,想定はしておりませんでしたが,御希望もあるようなので,それにも触れておいたほうがよろしいでしょうか。分かりました。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。   それでは,今後,本日の審議の結果を踏まえまして,部会資料26の「民法(債権関係)改正に関する中間的な論点整理案」を元に,事務当局において修正の作業をしてもらうこととなります。先ほど来の議論でも出てまいりましたけれども,この修正作業はかなり細かい表現ぶりに関わるものが大部分を占めておりますので,それらの点についてまた改めて会議を開いて,修正結果を確認するまでもなく,本日の会議をもって,この部会として中間的な論点整理の取りまとめを行ったこととさせていただきまして,あとの表現の修正などにつきましては,部会長である私と事務当局とに御一任いただければと思いますけれども,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。  それでは,「民法(債権関係)改正に関する中間的な論点整理」に関する今後の段取りにつきまして,事務当局から説明をお願いいたします。   ありがとうございます。それでは,民法(債権関係)改正に関する中間的な論点整理に関する今後の段取りにつきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○筒井幹事 本日,部会としての決定をしていただきました「民法(債権関係)改正に関する中間的な論点整理」につきましては,今後,事務当局においてパブリックコメントの手続を実施することにしたいと思っております。ただ,その時期につきましては,震災後の諸般の事情を考慮いたしまして,今後の情勢を見極めながら最終的に判断させていただこうと思っておりますし,その過程で必要に応じて関係者の皆様の御意見を伺ったりしながら,進めていきたいと考えております。なお,パブリックコメントの手続を実施する際には,繰り返し御説明しておりますとおり,事務当局作成の補足説明も併せて公表する予定です。   それから,この機会に補足して申し上げたいのですけれども,ただいま,この中間的な論点整理案からの修正については部会長と事務当局への御一任を頂いたわけですが,その作業の際に論点の順番などにつきましても,若干の整理をさせていただこうと考えております。具体的には,まず一つには,以前にも話題になりましたが,今回の論点整理案の第62「消費者・事業者に関する規定」についてです。現在はここで個別的な論点もまとめて記載がされていますけれども,これらをそれぞれ,その論点の内容に応じて,本来,置かれるのにふさわしいところに配置し,しかし,第62の「消費者・事業者に関する規定」という項目も残しておいて,相互に関連することが分かるような記載を付け加えようと考えております。   それから,もう一つは,昨年の審議の過程で後回しにして最後のほうで論点として取り上げたものがあります。具体的には第54の「債権の目的」,第57の「賠償額の予定」,それから,第59の「第三者のためにする契約」です。こういった論点については,現在の民法の規定が見直しの対象となっておりますので,その規定の配列に基づいて順番を入れ替えようと考えております。この程度の順番の入れ替えであれば,比較的容易に作業を行うことができますし,初めてこの中間的な論点整理をお読みいただく方にとっては,その方が理解しやすくなるのではないかと考えるからです。   それから,パブリックコメントの期間に関しては,前回の会議の際に申し上げましたとおりですが,2か月とすることを予定しております。 ○鎌田部会長 よろしいでしょうか。 ○中井委員 今の基本的な考え方でお進めいただければと思いますけれども,念のために,弁護士会としての要望を申し上げておきます。仙台弁護士会から会長声明が出ていまして,法務省に届いていると思います。また,阪神大震災を経験した大阪弁護士会と兵庫県弁護士会からも会長声明が出ていると思います。本日,中間的な論点整理が確定したということで,今後,パブリックコメントに付する手順になることは承知しております。その開始時期につきましては先ほどお話がありましたように,大震災後の諸般の事情を踏まえて御判断いただけるものと理解しておりますけれども,国民にとって大変重要な改正であるだけに,慎重に御検討いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 ほかに何かございますか。   それでは,最後に,次回の議事日程等について事務当局に説明してもらいます。 ○筒井幹事 次回会議ですが,仮置きで,5月10日,火曜日,午後1時から午後6時まで,場所は法務省20階第1会議室を予定しております。もっとも,これからの会議では,ヒアリングを実施しようと考えており,既に相当な数の関係団体などからヒアリングで意見を述べたいという連絡を頂いております。そこで,これらの団体などと日程協議をしながら,そしてまた,先ほど申しましたような震災の復興状況などを見極めながら,具体的な開催日程を決めたいと思っております。このため,現在,5月から7月までの会議開催予定日を予備日も含めて御案内しておりますが,それらについていずれも日程を確保しておいていただいた上で,実際にどのような日程でヒアリングを実施するのかについて,改めて御連絡を差し上げることにさせていただきたいと思っております。この点もよろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 ただいまの御説明は,次回は5月10日に予定されていますけれども,開催されないこともあり得るという御説明だったと理解してよろしいですね。 ○筒井幹事 そのとおりです。 ○中井委員 先ほどの私の発言で誤解のないように申し上げておきたいのは,5月,6月と期日が入っておりますけれども,これについては例えばヒアリングをするとか,部会としてできることについては審議を継続することに賛成しています。申し上げたかったことは,中間的な論点整理についてパブリックコメントとして国民に問うについて,その状況判断については慎重にしてくださいということで,5月10日のヒアリングの対象の方々が差し支えなくてお越しいただけるなら,是非,部会は活性化させていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですね。   それでは,本日の審議はこれで終了とさせていただきます。   本日は御熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-