法制審議会                 第165回会議 議事録 第1 日 時  平成23年6月6日(月)   自 午後4時00分                        至 午後5時23分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題   1 新たな時代の刑事司法制度の在り方に関する諮問第92号について   2 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」を実施するための子の返還手続等の整備に関する諮問第93号について 第4 議 事 (次のとおり)              議     事 (開会宣言の後,法務大臣から次のように挨拶があった。) ○江田法務大臣 法務大臣の江田五月でございます。今日は法制審議会の先生方にはこうしてお忙しいところをお集まりいただきまして,大変ありがとうございます。   法制審議会第165回会議の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところ本会議に御出席いただき,誠にありがとうございます。またこの機会に,法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対し,厚く御礼を申し上げます。   さて,本日新たに御検討をお願いしたい議題の一つ目は,本年5月18日に諮問いたしました諮問第92号についてであります。既に野村会長に諮問書をお渡しをして諮問させていただいておりますが,21世紀を迎え,一連の刑事司法制度改革により,裁判員制度が導入されるなど,我が国の刑事司法制度は大きな変革を遂げつつあるところです。もっとも,近年の情勢を見ますと,例えば,昨年無罪判決が下されました厚生労働省元局長に対する無罪事件においては,現在の刑事司法制度の構造を背景として検察官に取調べや供述調書を偏重する風潮があったのではないかという指摘がなされております。この問題につきましては,本年3月まで私の下で開催された検察の在り方検討会議においても熱心な御議論を頂いて,その結果,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,制度としての取調べの可視化を含む,新たな刑事司法制度を構築するための検討を直ちに開始するよう御提言を頂いたところでございまして,この提言も踏まえ,今回の諮問に至ったというものでございます。   当審議会においては,取調べの可視化について新たな時代の刑事司法制度の下における具体的な制度設計を速やかに行っていただくことを含め,時代に即した刑事司法制度を構築するための幅広い御審議を賜りたいと考えております。取調べの可視化につきましては,法務省内に政務三役を中心とする勉強会を設けて,調査・検討を続けてきたところであり,今後できるだけ早い時期にその検討の結果を取りまとめ,実現を図るということにしております。この結果については法制審議会にもお示しをし,それをも踏まえた御審議をお願いをしたいと考えております。また,現在検察当局では,検討会議の御提言や私の指示を受けて,特捜部等において取調べの全過程の録音・録画を含む,被疑者取調べの録音・録画の試行が開始されております。さらに,国家公安委員会委員長の研究会においては,取調べの可視化や,捜査手法の在り方に関する検討が進められていると聴いておりますので,これらの試行や検討の状況等につきましても十分に踏まえた御審議を頂きたいと存じます。   本日,新たに御検討をお願いしたい議題の二つ目,これは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」,仮称でございますが,いわゆるハーグ条約,これを実施するための子の返還手続等の整備に関する諮問第93号についてであります。ハーグ条約は婚姻関係の破たん後に父母の一方が他方の了解を得ずに子を国外に連れ去ったというような事案において,子をそれまで生活していた国に迅速に戻すための国際協力の仕組み等を定めるものでございます。このハーグ条約につきましては,本年5月20日,条約の締結に向けた準備を進めることとする旨の閣議了解がされました。この閣議了解を受けましてハーグ条約締結の準備を進める必要があるわけですが,ハーグ条約締結のためには,子を返還するための裁判手続を定めることが必要となります。そこで,ハーグ条約を実施するために必要となる子を返還するための裁判手続の整備について,閣議了解がされた趣旨を踏まえ,できるだけ早期に答申を頂けますよう御審議をお願いするものでございます。   それでは,これらの議題についての御審議をどうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。どうぞよろしくお願いします。 (法務大臣の退出後,委員の異動紹介があり,引き続き,本日の議題につき次のように審議が進められた。) ○野村会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。まず議題に先立ちまして,今般政府において審議会の議事録の作成についてガイドラインが決まったと伺っておりますので,これを踏まえ事務当局から法制審議会の議事録作成方法などについて説明をお願いいたします。 ○関関係官 まず議事録作成方法の変更について説明いたします。   法制審議会議事録につきましては,平成20年3月開催の第156回会議におきまして,委員の御協議に基づき作成方法が決定されました。この決定により,総会につきましては,原則として発言者名を明らかにした議事録を作成することとし,例外的に審議事項の内容,部会の検討状況や報告内容といった諸要素を考慮して,発言者名を明らかにしない議事録を作成することができるとされ,他方,部会につきましては,諮問事項ごとに先ほどの諸要素を考慮して,発言者名を明らかにした議事録を作成するかどうか判断することとされました。   以後,この決定に基づく運用がなされておりましたが,本年4月1日に公文書管理法が施行されたことに伴い,「行政文書の管理に関するガイドライン」が内閣総理大臣決定され,審議会の議事録につきましては,発言者名を記載した議事録を作成する必要があるとされました。このような経緯やガイドラインの趣旨からいたしますと,今後は,法制審議会総会・部会のいずれにつきましても,発言者名を記載した議事録を作成するべきものと考えられます。   そこで,今後は,法制審議会総会・部会のいずれにつきましても,このような発言者名を記載した議事録を作成することとさせていただきたいと存じますが,これを前提として,さらに,今回の会議におきましては,この作成した議事録の公開方法,具体的には法務省のホームページへの掲載方法についてお諮りしたく存じます。   今,お話ししたとおり,今後作成される議事録は全て発言者名が記載されることとなりますが,ガイドラインでは議事録をそのまま公開することまでは必要とされておらず,今国会に提出された情報公開法等の一部改正法案におきましても,審議会における発言者名や発言者を特定できる情報については発言者の権利・利益を保護するため,氏名を公にしないことが必要であると認められる場合,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合には,不開示情報に該当する場合があり得るとされています。   これまで法制審議会の議事録については,審議事項の内容,部会の検討状況や報告内容といった諸要素を考慮して,発言者名を明らかにした議事録を作成するかどうか御判断いただいてきたところでありますが,今般お諮りする議事録の公開方法につきましても,従前と同様の諸要素を踏まえ,かつ情報公開法の一部改正法案における不開示事由をも考慮して,法制審議会において,発言者名及び発言中の発言者を特定できる情報の公開の可否を決することとしてはいかがかと存じます。   具体的に申し上げますと,まず,総会については,原則として発言者名を明らかにした議事録をインターネット上に公開することとし,ただし,会長におきまして,委員の意見を聴き,審議事項の内容,部会の検討状況や報告内容のほか,発言者等の権利・利益を保護するため当該氏名を公にしないことの必要性,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無を考慮し,発言者名等を公開するのは相当でないと認める場合には,これを明らかにしないことができることとしてはいかがかと存じます。   また,部会につきましても,原則として発言者名を明らかにした議事録を公開することとしつつ,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,ただいま申し上げたところに準じて,発言者名等を公表するのが相当でないと認める場合には,これを明らかにしないことができることとされてはいかがかと存じます。   事務方からは以上でございます。 ○野村会長 ありがとうございました。それでは,ただいまの事務当局の説明につきまして,御質問及び御意見を承りたいと思いますが,まず御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。   特に御質問はよろしいですか。それでは御質問がないようでしたら,続きまして御意見があればお伺いしたいと思います。特に御意見もよろしいでしょうか。   それでしたら法制審議会における議事録の公開については,ただいま事務当局から示されたとおりの取扱いにするということでよろしいでしょうか。 (「異議なし」との声あり)   それでは,そのように決定させていただきます。本日の会議における議事録の公開方法につきましては審議の最後にお諮りいたします。   それでは,本日の議題に入りたいと思います。まず5月18日付けで諮問がありました新たな時代の刑事司法制度の在り方に関する諮問第92号の審議をお願いしたいと存じます。初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○加藤参事官 諮問第92号を朗読いたします。   近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み,時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや,被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について御意見を承りたい。 ○野村会長 続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○西川幹事 法務省刑事局長の西川でございます。   諮問第92号につきまして,諮問に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   まず,諮問に至る経緯でございますが,既に御承知のように,法務省におきましては,大阪地方検察庁における一連の事態の発生を受け,昨年10月,外部の有識者からなる検察の在り方検討会議を設け,検察に対する信頼の回復を図るべく,幅広い観点から検察の在り方について御議論を頂きました。その結果,本年3月31日,「検察の再生に向けて」と題する提言がなされたところでございます。この提言におきましては,被疑者の取調べの録音・録画について,検察の運用及び法制度の整備を通じて,今後より一層その範囲を拡大すべきであるが,制度としての取調べの可視化の具体的方策については,国民の声と関係機関を含む専門家の知見等を反映した検討ができる場において,関連する諸課題と併せて検討を進めることを期待したいとされました。   他方で,今般の一連の事態の原因について考えてみると,検察において,我が国の刑事司法制度特有の構造をも背景として,取調べ及び供述調書を偏重する風潮があった点に本質的・根源的な問題があるとの指摘がなされ,今後,国民の安全・安心を守りつつ,冤罪を生まない捜査・公判を行っていくためには,追及的な取調べによらずに供述や客観的証拠を収集できる仕組みを整備し,取調べや供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方から脱却する必要があるとされたところです。そして,そのような見直しを進め,制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するため,直ちに,国民の声と関係機関を含む専門家の知見等を反映しつつ,十分な検討を行う場を設け,検討を開始するべきであるとの提言をいただきました。   この提言を受け,法務大臣は,本年4月8日,「検察の再生に向けての取組」を公表し,現在の刑事司法制度が抱える問題点に加えて,取調べの録音・録画の拡大と法制化に伴う問題点に正面から取り組み,多岐にわたる諸課題を検討して新たな刑事司法制度を構築していくため,法制審議会に対し所要の諮問を発する準備を開始する旨を明らかにし,本年5月18日,この諮問に及んだものであります。   次に,諮問の趣旨等について御説明をいたします。今般の諮問は,近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み,時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方についての御意見を幅広く承りたいというものであります。今後の御審議に当たりましては,刑事司法制度に関わる事項に関し,幅広い観点からの御議論をお願いいたしたいと存じておりますが,諮問におきましては,検察の在り方検討会議における議論の経過に鑑み,当審議会において特に御議論を頂きたい事項として主なものを二点挙げております。   その一は,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しであります。この点に関し,検察の在り方検討会議の提言においては,新たな時代の捜査・公判への移行のため必要となるものの例として,供述人に真実の供述をする誘因を与える仕組みや,虚偽供述に対する制裁を設けてより的確に供述証拠を収集できるようにすること,客観的な証拠をより広範に収集する仕組みを設けること,実体法の見直しを行うことなどが議論されたところであります。また,平成22年2月から,国家公安委員会委員長におかれましても,外部有識者からなる「捜査手法,取調べの高度化を図るための研究会」を開催されており,新たな捜査手法等について議論がなされているところでもあります。当審議会におかれましては,これらの議論をも踏まえ,捜査・公判の在り方を見直すため必要となる制度等につき幅広く御議論を頂きたいと存じます。   その二は,被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入であります。検察当局においては,裁判員制度対象事件について取調べの録音・録画を実施し,また,特別捜査部が取り扱ういわゆる独自捜査事件についても取調べの録音・録画の試行を開始しているほか,特別刑事部が取り扱う独自捜査事件における被疑者の取調べ及び知的障害によりコミュニケーション能力に問題のある被疑者等の取調べについても,録音・録画を試行するため,その方法について検討するなどしているところです。警察当局においても,裁判員制度対象事件について被疑者取調べの録音・録画の試行を行っているものと承知しております。また,法務省におきましては,平成21年10月から,政務三役を中心とする取調べの可視化に関する省内勉強会等を開き,この問題に関する議論・検討を進めております。国家公安委員会委員長主催の研究会においても,取調べの可視化が検討課題の一つとなっているものと承知しております。当審議会におかれましては,検察の在り方検討会議における議論の内容を参考にしつつ,法務省等において調査・検討が行われていることを踏まえ,被疑者取調べの録音・録画の在り方に関し,御議論を頂きたいと考えております。   諮問の趣旨は以上のとおりです。十分な御議論の上,できる限り速やかに御意見を賜りますようお願いいたします。 ○加藤参事官 引き続きまして,刑事局参事官加藤より配布資料の御説明をさせていただきます。   刑1番から刑6番の資料につき,御説明いたします。資料刑1は,先ほど朗読いたしました諮問第92号でございます。   次の資料刑2は,「検察の再生に向けて」と題する検察の在り方検討会議の提言でございます。その提言内容は,検察官の使命・役割と倫理,検察官の人事・教育,検察の組織とチェック体制等に及ぶ広範なものとなっておりますが,今般の諮問と直接関係がございますのは,その28ページ,「3 新たな刑事司法制度の構築に向けた検討を開始する必要性」の部分でございます。   まず,28ページの枠囲いの部分を御覧いただきますと,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するため,直ちに国民の声と関係機関を含む専門家の知見等を反映しつつ,十分な検討を行う場を設け,検討を開始するべきであるとの提言がなされています。   また,次の30ページ(2)の第二段落を御覧いただきますと,いわゆる取調べの可視化の問題に関して,検察における運用の範囲を超えた捜査手続全体に及ぶ広がりを持つ問題である上,現下の我が国における刑事手続に関する論点の中でも最も重要なものの一つであると考えられることから,新たな検討の場において関連する諸課題と併せて十分な検討がなされなくてはならないとの記載があり,更に31ページを御覧いただきますと,その(3)には,参考人取調べの可視化,証拠開示制度等に関し,いずれも刑事手続の在り方に大きな影響を与えるものであることから,ここでは本検討会議における議論の状況を記載し,新たな検討の場において関連する課題として議論・検討されることを期待したいとの記載があります。これらの部分で言及されております新たな検討の場というのが当審議会ということになります。   次に資料刑3は,資料刑2の提言を受けまして,本年4月8日に法務大臣が公表した「検察の再生に向けての取組」でございます。その3ページの2のところでありますが,法務省が検討を推進すべき事項のうち,(2)とあります「提言の第4 『検察における捜査・公判の在り方』関連」の部分を御覧いただきますと,その「特に留意すべき事項」のところに,現在の刑事司法制度が抱える問題点に加えて,取調べの録音・録画の拡大と法制化に伴う問題点に正面から取り組み,多岐にわたる諸課題を検討して新たな刑事司法制度を構築していくため,直ちに,法制審議会に対し,所要の諮問を発する準備を開始することとされております。これを受けて,今般の諮問第92号が発せられたものでございます。   次に資料刑4の1は,最高検察庁が昨年12月24日に公表いたしました「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点について」と題する検証結果報告書でございまして,資料刑4の2はその概要版でございます。この検証は,最高検において,いわゆる厚労省元局長無罪事件の捜査・公判活動等の経過及び問題点並びに3名の検事による証拠隠滅及び犯人隠避事件の経緯を明らかにするとともに,可能な限りそれらの背景事情も明らかにし,再発防止策を講じるために行われたものでございます。資料刑4の1の36ページ以下を御覧いただきますと,その部分に一連の事態の再発防止を図るための方策が列挙されておりまして,②の特捜部が担当する身柄事件における取調べの録音・録画の試行を開始することを含め,12項目にわたる施策が示されております。   さらに,資料刑5は,法務省におきまして昨年6月に取りまとめられました取調べの可視化に関する省内勉強会の中間報告書でございます。その12ページを御覧いただきますと,「第4 今後の取組方針」というところがございます。その「2 検討の方向性」を御覧いただきますと,まず(1)として,実務に即した現実的な形での取調べの可視化を実現するため,その対象とする事件や範囲について検討を行うとされており,更に次の13ページに移っていただきますと,(2)とありますところの冒頭で,録音・録画が捜査・公判の機能や被害者を初めとする事件関係者に与える影響や有用性についても調査・検討の上,その具体的な在り方についての検討を進めるとされております。また,省内勉強会としては,その次の14ページの(3)にありますとおり,国内外における調査を実施した上,平成23年6月以降,すなわち今月以降のできる限り早い時期に,省内勉強会としての検討の成果について取りまとめを行うこととしているものであります。   最後に資料刑6でございますが,こちらは国家公安委員会委員長が主催する「捜査手法,取調べの高度化を図るための研究会」の中間報告書でございます。同研究会におかれては,昨年2月以降,本年3月までに13回の会議を重ね,本年4月,その結果や検討課題について中間報告書を取りまとめられたものです。同研究会においては,中間報告書38ページの「第4 今後の検討課題」にありますとおり,今後,諸外国に関する調査結果等を踏まえて,取調べの可視化を含む取調べや捜査手法の在り方について,更に検討を進めていくとされております。   以上が配布資料の説明でございました。 ○野村会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいま説明のありました諮問第92号につきまして,御質問がございましたら承りたいと思いますが。 ○西田委員 この諮問によりますと,供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しから来て,次に被疑者の取調べ状況の録音・録画による可視化など,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について御意見を,ということですが,この供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しということと,被疑者の取調べの可視化ということは,イコールなのか,それとも捜査・公判の在り方の見直しの中には可視化のほかに例えば司法取引ですとか,おとり捜査ですとか,いわゆる新たな捜査手法というようなものも併せて考えるという趣旨を含んでいるのかというのが第一点です。   第二点は刑事の実体法についても御意見を承りたいという部分は,これは例えば先ほどちょっと御説明の中にありましたけれども,被疑者が虚偽供述をした場合,現行法上は自己の刑事事件について虚偽供述しても,他人の刑事事件についてしか証拠隠滅は成立しないわけですけれども,それを部分的にせよ供述調書を書かされる限りにおいては,被疑者についても自己の刑事事件についてもこれを証拠偽造とか証拠隠滅等に問うという趣旨であるのか。   更には,戦後我が国の刑事訴訟手続がアメリカ法化されたことに伴い,一時期極めて多数の方が議論なさいましたいわゆる刑法の客観化,推定規定などを設けることによって主観的要素の立証における検察官の立証の負担軽減を図るという,そういう趣旨も含んでいるのか,以上三点お伺いいたします。 ○西川幹事 御質問のうち,まず第一点目でございますけれども,これは新たな刑事司法制度を構築するためという項目の中で,特に御審議をいただきたい事項として,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しと,被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入の二つを特に挙げさせていただいたというものでございまして,イコールということではございません。取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しという中においては,提言等の中に記載がありますとおり,例えば客観的な証拠をより効率的に収集する方法はないか,それから供述を得るために何らかのインセンティブを与える方法はないかとか,そういうことも併せて御議論いただければと考えているところでございます。   それから第二点,実体法についてはどうかということですが,これも提言の中に出てくるわけでございますけれども,現在の刑事裁判が特に供述調書を重視しているという理由の一つとして,刑罰法規の中に相当主観的要素が加わっていると。そのため,例えば被疑者の供述等に頼らざるを得ない部分が相当あるのではないかというような指摘もありましたので,もしそのような点についても御意見を頂けるということであれば御意見を頂きたいと,こういう趣旨でございます。   その虚偽供述をした場合にどういう処罰が必要であるかとか,そういう議論も,その中で御議論を頂きたいと考えているということでございます。 ○西田委員 被疑者自身が犯罪主体となる場合は。 ○西川幹事 その辺まで含むかどうかということについても,今後,必要な御議論をしていただきたいと考えているということでございます。 ○野村会長 よろしいでしょうか。ほかに御質問がおありでしょうか。   特に御質問がないようでしたら,次の諮問に移りまして,その後で御審議をお願いするということにしたいと思いますけれども,新たな諮問事項であります「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」を実施するための子の返還手続等の整備に関する諮問第93号の御審議をお願いしたいと存じます。   初めに事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○飛澤参事官 民事局で参事官をしております飛澤でございます。   それでは,諮問第93号を朗読させていていただきます。   諮問第93号「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」を締結するに当たって,同条約を実施するための子の返還手続等を整備する必要があると思われるので,その要綱を示されたい。 ○野村会長 それでは,続きましてこの諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○原幹事 民事局長の原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   諮問第93号につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約,いわゆるハーグ条約は,婚姻関係の破たん後に父母の一方が他方の了解を得ずに子を国外に連れ去った場合などの国際的な子の連れ去りの事案において,子をそれまで生活していた国に迅速に戻すための国際協力の仕組み等を定めた条約でございます。   まず,ハーグ条約の仕組みを簡単に御説明いたします。例えば父母の一方が外国から日本に子を連れ帰ったケースを取り上げますと,子を連れ去られたと主張する他方の親は,ハーグ条約上,子の返還の援助等を行うために指定されている自らの国の中央当局,あるいは日本の中央当局に対し,子の返還を求める援助の申請を行うことになります。この申請がありますと,日本の中央当局は子の返還を求める親のために子の所在を発見し,当事者間での任意の解決に向けた様々な援助を行い,更には裁判手続を含めた国内法制について必要な情報の提供等を行うことになります。そして当事者間での任意の解決ができないときは,子の返還を求める親は日本の裁判所において子の返還を求める裁判を行うことになります。この裁判においては,ハーグ条約が規定する子の返還拒否事由に当たらない限り,子の返還が命じられることになります。   以上御説明しました外国から日本に子を連れ帰ったケースとは逆のケース,すなわち日本から外国に子を連れ去られたケースにおいては,当該外国の中央当局が子の返還を求める親のために様々な援助を行い,当該外国において子の返還の裁判が行われまして,やはりハーグ条約が規定する子の返還拒否事由に当たらない限り,子の返還が命じられるということになります。   このようにハーグ条約は原則として子をそれまで生活していた国に迅速に戻すこととしておりますが,これは両親が国境を越えて子を奪い合う状況は子にとって有害でありますので,子の利益を最重要に考えて,子の連れ去りを防止するとともに,子の親権は子がそれまで生活していた国で決定することが望ましいという考えに基づくものであると言われております。   ハーグ条約は1980年にハーグ国際司法会議において採択され,1983年に発効しております。本年5月現在,ハーグ条約の締約国は84か国に上っておりまして,G8諸国中,ハーグ条約を締結していない国は日本とロシアのみとなっている状況にあります。このような状況を踏まえまして,本年1月,政府内にハーグ条約の関係府省庁の副大臣を構成員とする会議が設置されまして,本年4月までの間の合計7回にわたる会合が持たれました。この副大臣会議においては,ハーグ条約の締結の可否を含め,子の福祉の観点から何が最善であるかが検討され,当事者からのヒアリングに加えまして,論点の整理や意見交換が行われました。その後,本年5月19日,関係閣僚会議が開催され,ハーグ条約の締結の方針が合意され,今後の法律案の作成に当たり,子の返還等を援助する中央当局の任務等を定めること,その中央当局は外務省に設置すること,及び子の返還のための裁判手続を申請することや,子の返還拒否事由を定めるに当たっての留意点などを記載した了解事項が取りまとめられました。そして翌5月20日,政府としてハーグ条約の締結に向けた準備を進めること,ハーグ条約を実施するために必要となる法律案を作成すること,法律案の作成に当たっては関係閣僚会議で取りまとめられました了解事項に基づくことが閣議了解された次第でございます。   本日,席上に配布させていただきました民2という資料番号が付された資料が今御説明いたしました5月20日の閣議了解でございます。ハーグ条約を我が国において実施するためには,国内法において子の返還等を援助する中央当局の任務等を定めるほか,子を返還するための裁判手続等を定めることが必要となりますが,政府におきましては関係閣僚会議における了解事項を受けまして,中央当局の任務等に関する法律案の検討は中央当局を担う外務省において行い,子を返還するための裁判手続等に関する法律案の検討は法務省において行うこととされました。   このような次第で我が国がハーグ条約を締結するに当たりましては,法務省において子の返還のための裁判手続や子の返還要件又は返還拒否要件など,ハーグ条約を実施するための子の返還手続等を整備する必要がございますので,諮問記載の事項について法制審議会の意見を求めるものでございます。   諮問第93号の趣旨等は以上のとおりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○野村会長 それでは,ただいま説明のありました諮問第93号につきまして,まず御質問がございましたらお願いいたします。 ○西田委員 今ひとつ理解が行き届かないところがございますが,これは連れ去られたほうの親が連れ戻すための手続を定め,それを援助する,それに裁判所が関与すると,こういう制度だと理解してよろしゅうございましょうか。 ○原幹事 そのとおりでございます。 ○西田委員 我が国の刑法典では,226条で所在国外移送目的の略取・誘拐罪というのがございます。そうすると外国から日本人が外国の方と結婚してできた子供を無理やり日本に連れ帰った,あるいは日本で日本人と外国の方が結婚してできて,もう離婚している。でも親権は日本人である妻にある。その子供を無理やりヨーロッパに連れ帰ったというような場合は,この所在国外移送目的拐取罪が日本国民以外の国外犯も,刑法3条及び3条の2で処罰されているわけですけれども,もし子の連れ去りがこの刑事罰に当たると,日本に裁判管轄権があるという場合に,その処罰の問題あるいは刑事裁判権の発動の問題と,今度のハーグ条約による子の連れ戻しの援助の制度とはどういう関係に立ちますでしょうか。 ○原幹事 このハーグ条約は条約のタイトルに,民事上の側面に関する条約ということで,飽くまで民事上,子供をできるだけ早く元の生活していた国に戻すということでの行政官あるいは裁判所も関与することがありますが,国際的な協力の仕組みを作るという,そういう条約でございまして,子の国際的な連れ去りの事案に対して,刑事上どう対処するかというのはまた別の問題だと整理されております。 ○西田委員 しかし刑事上,その連れ去り行為が犯罪行為に当たるという場合に,なお子供の福祉を優先して引渡しを認めると。しかし,もともとの行為は所在国外移送目的の略取・誘拐に当たるというときに,例えば犯罪人引渡しの要求とかそういうことはしない。もう要するにこれは民事だけの問題で,刑事とは全く連動しないと。しかし,こういう事案が裁判所に申し立てられた場合に,これは検察としてはどのような対応をなさるおつもりでいらっしゃいますか。 ○甲斐関係官 突然の話でございますが,今,御指摘がありましたように,子供をその所在場所から親なりが連れ去るという場合にどうなるかという場合でございますけれども,少なくともその平穏な状況から,ある意味無理やりに連れ去るということであれば,今,先生がおっしゃったように誘拐罪に該当する場合があり得ると思われます。もちろんそれは日本で誰かが連れ去ったという場合もあり得るでありましょうし,それが外国で行われた,例えばアメリカで行われたという場合には,アメリカの犯罪にも該当するという場合もあろうかと思います。   問題は,ではどうなるのかということでございますけれども,やはり刑法なり刑事訴訟法は,その犯罪を犯した人を処罰するかどうかというのが究極の目的,第一の目的でありますから,それを連れ帰ったお父さんだかお母さんだか分かりませんが,その人が処罰されるのかどうかという問題になります。その限りにおいては,連れて帰った子供がどうなるかというのは刑事法の射程には入ってこないということになるわけです。同じようにアメリカでそういう行為が行われたとして,親がアメリカから子供を連れて日本に帰ってきたという場合に,アメリカで逮捕状が出るという場合ももちろんあり得るわけでございます。日本に対して犯罪人引渡しをしてもらいたいという要請もあり得ることではありますけれども,この場合の引渡しの対象というのは,子どもではなくてその犯罪を犯した親であるということになります。したがいまして,日本がそれに仮に応じたとして,連れ帰った親を引き渡したとしても,子供はその手続の対象に入ってこないということになります。今,御議論いただいている問題というのはむしろ親の処罰ではなくて,子供自体をどうするかという話になろうかと思いますので,そこは少し次元が違うことであろうと思います。ただ,そういった刑事手続がその子供の引渡しに対してどういう影響を及ぼし得るのかという点は,また別途の課題として御議論いただくということになろうかと思います。 ○西田委員 そこのところは一応分かるのですが,例えばこの裁判で拒絶事由がないかどうか審理するというときに,連れてきた親もそこに出てくると。あるいはフランスならフランスに連れていってしまったというときに戻せという,そのフランスから日本に取り戻すというときに,日本の裁判所がやるのではなくて,その場合はフランスでやるわけですよね。そうすると要するに私の言いたいことは,一応これは民事の手続で子供をどの環境に置くのが最適であるかということで,原則は元に戻しなさいと。ただ,拒絶事由があるかどうかはちゃんとジュデシィアルレビューをしなさいと,そういうものだと。これはよく分かるのでありますが,連れ去った親が刑事被告人になって処罰されるような状況があれば,それは当然いい環境ではないということになってしまうのではないかという疑問ですね。 ○原幹事 今,西田委員がおっしゃられたようなことは,ハーグ条約の締結に対して慎重な意見の中でも言われておりまして,例えばアメリカから我が国に子供を連れ帰ってきたというケースですと,アメリカにおいては誘拐罪に当たるということで逮捕状が出ているケースもあるようでございます。そういったケースにおいて果たして子供をアメリカに帰すことがこの条約自体が念頭に置いている子の福祉,子の利益にかなうのかどうか。そういった観点から返還拒否事由ももう少し具体的に書けないかと,そういう議論がございますので,今後の条約の国内法の検討の過程でそういった御懸念についても十分審議をしていただければ有り難いと考えております。 ○野村会長 よろしいでしょうか。ほかに。 ○櫻田委員 私も同じような観点なんですけれども,例えば子の所在調査というのがございますね。そのときに警察の協力を得るといたしますと,それは犯罪行為でなくても調査をすると,そういうことになるわけですか。 ○原幹事 子の所在を調査するというのはまず一番最初にしなければならないことですが,その子の所在をどういう我が国の国内機関を使ってやるかというのは,これからの中央当局の任務を定め,それを関係府省庁でどうやってやるかという議論の中で決まってまいりますので,現段階において警察が乗り出してやるという,そこまで決まっているわけではございません。 ○櫻田委員 そう申しますのは,私も経験した事例でございますけれども,母親が子供を連れて帰ってきたと。そこで父親は突然のことで分からないので,これは誘拐だということで,ICPOを通じて所在調査をした。ところが日本の警察はそれは犯罪ではないので,そういうのは受けられないといってやらなかったので,自分で私立探偵を雇って所在を突きとめた。ですから,その辺がうまくいくのかどうかちょっと心配になったものですからお伺いいたしました。 ○野村会長 ほかに何か御質問ございますか。 ○山根委員 この条約の締結については賛否あるようなんですけれども,虐待の被害に配慮するための例外規定という日本なりの規定というのが認められて尊重されることというのが大前提だろうと思っています。条約があるからということで安易な返還などが行われないように,そのための事項というものは盛り込んでほしいと思っています。   それから質問なんですけれども,日本では離婚のときに盛んに親権をどちらが持つかというのが議論になると思っているんですが,その親権の持ち方とかそのあたりのことはこの条約では出てこない別な論点だとは伺っているんですが,その親権の在り方とかその議論は別なところで議論がされるというか,進んでいるのでしょうか。 ○原幹事 ハーグ条約を締結するに当たって,例えば我が国の親権の制度を見直す必要があるかといいますと,それはないという前提でございます。この条約は各国の国内法が異なるということを前提にした上で,できるだけ迅速に子を戻すための協力関係を創設するだけのものでございまして,例えば条約のテキストを皆さんにお配りしてございませんけれども,子の連れ去り等が不法になるケースはどういう場合かといいますと,これは共同の監護権あるいは単独の監護権を侵害する場合だという定義を置いておりますので,我が国のような単独親権・監護権の国も,それから共同の監護権・親権の国も両方入れる条約になっております。今後,我が国が共同親権あるいは共同監護権の制度に変更するかどうかについては,別のフォーラムでまた検討していただくのは適切だろうと考えております。 ○野村会長 ほかに御質問ございませんでしょうか。 ○櫻田委員 私,条約の締結,批准と申しますか,そういう方向で検討をされるということは大変結構なことだと思っておりますけれども,一番大事なのはやっぱり子供の人権の問題だと思うんです。それは親の都合であちこちやられるということですので,そういう観点から法整備もお願いしたいと思います。具体的に申しますと,例えばそういう手続が踏まれますときに子供に独立の代理人をつけてほしいと思います。だからそういう観点からも御検討をお願いしたい。条約の批准だけではなくて,そういう観点からも御検討をお願いしたいと思います。 ○野村会長 それは御意見として伺っておくということでよろしいですね。   ほかに御質問ございませんでしょうか。   それでは,いろいろ御質問いただきましたけれども,ほかにないようでしたらこの諮問第92号及び第93号の審議の進め方について,御意見があれば承りたいと思います。 ○戸松委員 この二つとも従来どおりに部会を設けてやるのが必要ではないかと思います。非常に専門性が高い問題でありますし,それから速やかに結論を得たいということでありますので,部会を設けて検討をお願いするのが相当であると思っております。しかし,諮問92号については通例の従来行われてきたような特定の事項についての諮問ではなく,むしろ刑事司法制度全般の在り方に関わること,先ほどから説明がありますようにそのいうものでありますので,刑事司法制度の実情も踏まえまして多岐にわたる事項について幅広い調査・審議を行う必要があるのではないかと思われますし,先ほど事務局のほうから指摘されたことですが,検察の在り方検討会議の提言の28ページのところにもありますように,国民の声と関係機関を含む専門家の知見うんぬんと,幅広い意見が反映する必要があるとされておりますので,そのことも踏まえますと,専門的見地から行われてきた従前の刑事法関係の部会とは違うやり方がいいのではないかと思います。   ただ,こういう特別な部会といって,いったいそれはどういうものか,私長く委員をやっていますけれども,特別な部会は持っていたことがないような気もしますし,従来の部会と比べると特別と言えば特別な部会ですので,明確には示さないのですが,今言ったような趣旨のことを踏まえた部会をやる必要があるのではないかと思います。ただ,その場合にも検察の在り方検討会議が,せっかく精力的におやりになっておりますから,そこでやられたことを繰り返すような無駄なことをやらずに,なるべく効率よく,そのためにはこの検討会議にいらっしゃった方も含めた委員の構成がいいのかと思いますけれども,それは事務局に検討をお願いします。   要するに92号は93号とは違う,もう少し違う編成の部会としたほうがいいという意見を申し上げたいと思います。 ○野村会長 どうもありがとうございます。   それでは,戸松委員から部会設置等の御提案がございましたけれども,これについて御意見いかがでしょうか。 ○佐々木委員 部会設置は賛成なんですけれども,スケジュール観,いつまでにやるのかということによって,今御提案も出た,特別な部会での今までと違った進め方について,ではこの期間はこういう人たちに幅広く意見を求めようとか,ここはぎゅっと一度中間報告を法制審議会の総会で検討し,また部会に戻して,またそれを国民に聞いてみようというような,幾つかのプロセスを決めることができるだろうと思います。今までの方法ですとどちらかというとある程度議論が進んだところで報告が来て,そこから考えるということでしたが,今回はどのぐらいの期間か分かりませんが,まず全体的に仮のゴールなのか中間ゴールなのか分かりませんが,決めていただいて,その中でどんな手法,あるいは幅広い意見の組み合わせが拾い上げられるのか,また法制審議会本会でもその御意見を伺いながら意見出しができるのかということが考えられるかと思います。ですから部会という方法については当然賛成でございますけれども,是非それが決まった暁には,もう少し詳細のスケジュール観と手法の検討というのも提案させていただける機会があればいいなと思っております。 ○野村会長 ただいまの御意見は,部会と総会とのやり取りをということですね。 ○佐々木委員 はい。実はすごく昔,この審議会の委員に就任させていただきましたときに,全てが部会でいろいろと審議されて,ここで最後に,「~ということになりました,よろしいですか」と問われても,またそこで「よろしくない」と私が仮に手を挙げてよろしくないと意見を言っても,もう既にそれは大変長い間,専門家の方が相談された後だったということが多々ありまして,それではこの総会の意味,委員でいる私たちの役割は何なんですかということを質問させていただき,中間報告をしていただき,一応部会の方々に総会の委員として意見なり違う考え方を御質問させていただく機会を持たせていただきたいと,お願いしました。何となくもう決まったもので「専門家が決めたことですから」となると,私のように法の素人としては,最後にちょっと意見を言っても終わってしまうと。   今回は大変重要なものですし,やはり専門家からしますとこういう事情がある,ああいう事情があるとたくさん分かっていらっしゃるので,余計に思考に制限が掛かると思われますが,これをやはり今の時代に合ったという意味では多くの国民が参加する形で考えて,そこに専門家と国民の意見というものが混ぜ合うといいなと思っております。となりますと,部会と総会の関係だけでなく,一般の方々の意見をどう取り込むかというプロセスについても,少し今までと違った柔軟な仕組みが必要かと思われますので,そうなりますと全体の期間,スケジュール観というものの中でどんなふうに仕組んでいくかとか,組み立てていくかということをまず決めないといけないのではないかなと思っております。 ○野村会長 ただ,これまでも最近の部会では,ある程度まとまったところで,多くの場合,ここに一度報告していただいて,そこで総会の委員の御意見を伺うということをやっておりますので,この問題も恐らくそういうことで進んでいくのではないかと思います。それから専門家だけでやるということも,これも最近はかなり幅広く委員や幹事を選んでいただいておりますし,特に今回の問題は国民の声の反映をした検討が必要だということにもなっていますので,そういう委員の人選等のところでそういうことも考えさせていただくということでよろしいのではないかと思います。実際に始めてみないとなかなかこちらでスケジュールを決めてしまうというのはちょっと無理ではないかと思いますので,ただ総会との間の関係とか,あるいは幅広い意見が反映できるようにというのは,御意見としては十分に分かりますので,御意見に沿うような形でこれから進めていきたいと思います。   何か今の段階で事務局のほうからありますか。 ○西川幹事 これから諮問して御審議いただくので,日程感を示すというのは難しいと思いますが,今,会長から御説明があったとおり,今回の議論はとても幅広い議論でございますので,できるだけ専門家だけに偏らずに国民の声を反映した部会になると考えています。また,今佐々木委員のおっしゃいました,まとまった段階でのフィードバックというのは,部会の議論の中で当然考慮されると思いますので,それを引き継ぐような形で議論を進めていったらどうかなと思います。 ○野村会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見いかがでしょうか。 ○吉田委員 この諮問の中に捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,こういう部分と可視化の部分というのがあると思うんですけれども,これは我々マスコミを含めてなんですが,可視化は急ぐべきだという立場に立っているわけです。その場合,捜査の在り方の検討をした場合は,これは例えば今までの在り方の検討状況を見れば,司法取引の問題というのは非常に広範な問題を含んでいるわけですね。これは飽くまで,私も正義を実現するためにいろいろな手法を補充してあげなければいけないということは当然賛成なわけですけれども,その手法の問題と可視化が連動するがゆえに,可視化が遅れることがあってはいけないと考えています。したがって,ここの議論でこの両者がどう取り扱われるのか,ここはちょっと意見というよりは質問なんですけれども,切り離してか,飽くまでセットとして答申となるのか,そこら辺もちょっと確認しておきたいんですけれども。 ○西川幹事 この点が正に検察の在り方検討会議でも非常に大きな問題になったということで,結論だけ申し上げますと,その点についての意見は必ずしもまとまりませんでした。新たな捜査手法がなければ可視化は無理だという意見も確かにございましたし,それから必ずしもそれはセットではなく,可視化を先行させるべきだという意見もありましたし,そもそも二つは違うものなのだから別々に議論すべきであると,こういう意見もございました。結論は出ていないという段階で,この法制審議会には誠に申し訳ないのですが,どういう順番でどういうふうに議論していくのかも含めて,部会が設置されたら部会のほうで御議論いただきたいと考えているところでございます。 ○野村会長 よろしいでしょうか。ほかに御発言,御意見ございますか。ほかに特に御意見がないようですけれども,諮問第92号及び第93号につきましては,新たに部会を設けて調査・審議することとし,特に諮問第92号につきましては,これを特別部会として設けるということにいたします。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会の委員・臨時委員及び幹事に関してですが,これらにつきましては会長に御一任をいただきたいと思いますが,御異議ございませんでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○野村会長 どうもありがとうございます。それでは,この点は会長に御一任をお願いするということにいたします。   次に部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第92号につきましては,「新時代の刑事司法制度特別部会」,諮問第93号につきましては,「ハーグ条約(子の返還手続関係)部会」という名称にいたしたいと思いますが,いかがでございましょうか。           (「異議なし」の声あり) ○野村会長 どうもありがとうございました。それでは,そのように取り計らわせていただきます。   それでは,ここで資料を配っていただきます。 ○松尾関係官 諮問92号につきまして,今この新しい部会を設置して審議をしていただくということになりました。私,もちろんそれで結構だと思いますけれども,ただこの諮問92号では,新たな刑事司法制度の構築ということを目標として,取調べ,供述調書に対する過剰な依存を避けるというようなことが例示されております。しかし,私が疑問としますのは,そういうために新しい制度がどこまで必要なのかという点であります。現在の刑事訴訟法は取調べが行き過ぎにならないように,あるいは供述調書が余りにも期待され過ぎないようにという歯止めをいろいろと掛けておりました。例えば,供述調書の中心をなしているのは,検察官による取調べの面前調書,いわゆる2号書面でありますが,2号書面の利用につきましては,特に信用すべき情況があるというようなことが要件とされているわけです。この要件について,最高裁判所は,供述内容も考慮して証拠能力のあるなしを決めてよいという判例を出され,それが一つの指導的な基準になりまして,この検察官調書が非常に活用されるという事態を招いているわけであります。あるいは取調べにつきましても,特に被疑者の取調べについては,刑事訴訟法はおよそ任意性に疑いがある場合には証拠にできないということを明言しているにもかかわらず,その後の実務は,これも最高裁判所の判例を頂点といたしまして,この任意性のあるなしに対する解釈を緩めるということで今日に至っております。   もちろんこのような判例,あるいは実務の動きというのは,犯罪者は的確に処罰してもらいたいという国民的な要望を背景にしておりますので,今日まで60年間続いてきたわけでありますが,これを改めるのに必要なのは,新しい捜査手法であるのか,それとも現在の実務をもともとの法律の趣旨のとおりにきちんと実行することであるのか,その辺は最初に考慮すべき点であろうと思います。新たな捜査手法として語られている司法取引とか,あるいはおとり捜査とか,通信傍受とか,こういうものは全て過去において学界等で議論の対象になってきており,そしてそれぞれ強い批判を受けて,通信傍受だけは立法が実現しておりますが,そのほかのものは全く法律になっていないという状況であります。通信傍受に関する立法の際には,私も法制審議会に関係しておりましたが,非常に強い反対意見,通信傍受を立法化することは問題だ,憲法違反だというような御主張もあったところでありまして,今後部会で新たな捜査手法等をお考えになる際,それは過去の経緯ということも考慮していただく必要があろうと思います。   部会のスタートに先立ちまして,総会に列席した者の一人として,以上のような意見を述べさせていただきました。 ○野村会長 ただいまの御意見は,部会のほうにも伝わるように事務局でお願いいたします。   それでは,次に諮問92号を受けて設ける新時代の刑事司法制度特別部会における議事の公開の在り方についてお諮りいたします。   この特別部会につきましては,刑事司法制度全般の在り方に関わる調査・審議が行われるものであり,また広く国民の声を反映した部会とする必要があると考えられますことから,その議事についても,広く国民に開かれたものとすることも含めて検討する必要があると思われます。このようなことからいたしますと,通例は当審議会の議事規則第3条において,審議会の議事は非公開とされ,同規則第7条第1項により部会の議事についても準用されているところでございますが,新時代の刑事司法制度特別部会における調査・審議につきましては,議事を公開することもできることとし,部会において,公開するかどうか,公開するとしてその範囲や方法を決めていただくということが相当ではないかと考えられるところでございます。   そこで,新時代の刑事司法制度特別部会における議事の公開の在り方に関し,お手元にお配りした当日配布資料3のとおり決議を行い,議事規則の規定を適用せずに部会の御判断にお任せするということを提案したいと思いますが,これについて御意見がありましたら承りたいと思います。 ○西田委員 結論は賛成ですが,規則は公開しないと書いてあるわけで,明文に反することを決めようというわけですから,手続的にはこれは,特例を認めるということを満場一致でというか,この法制審議会で規則の特例,今回に限り先例とせず特例を認めるということを議決したと理解すればよろしいのでございましょうか。 ○野村会長 そうですね。この92号の特別部会については,公開しないという原則は一応そのままにしておいて,一般的な性格を有している議事規則の改正によらないで,特別な議決の方法によるということが適当であると考えて,このような提案をさせていただいているということでございます。 ○西田委員 ということはそれをここの法制審議会でお認めすると,そういうことですね。 ○野村会長 はい。 ○佐々木委員 今おっしゃったのは,記録としてはもちろん発言した人が分かるような記録を事務局が持っていて,そしてホームページなどにどんどん公開されていく議事録は,基本的にこの部会においては基本非公開で,委員長というか議長が公開したい部分だけが公開されるけれども,後日,どなたかが裁判などを起こして,例えば審議内容を全部発言者が見たいと言われたときには見ることができるということですか。 ○野村会長 議事録は公開されますので。 ○佐々木委員 議事録は全部。 ○野村会長 発言者名も入っています。 ○佐々木委員 発言者も入って公開されると。 ○関関係官 今,御議論いただいておりますのは,会議の公開の関係でございまして,議事録とは別に会議そのものを報道陣なり一般の方々なりに公開するかどうかと。見ていただけるようにするかどうかという観点でございます。 ○佐々木委員 どうしてそれを非公開にするんですか。 ○北村委員 可視化の問題を取り上げる会議が公開されないというのは,ちょっとおかしいと思っているんですね。ですから,部会のほうに委ねるというこれの規定も私はどうなのかなと。例えばここで公開を要求するというようなことはできないんでしょうか。やっぱり,今,司法制度というのがもう地に落ちてしまっているように国民は感じていると思うんですよね。そのときに,検討するときも非公開なのかというのは私はやっぱり具合が悪いのではないかなと思うんですけれども。 ○西川幹事 刑事法関係の部会は,扱うテーマが扱うテーマでございますので,どうしても具体的な事件に話が及ぶ場合も予想されるわけで,テーマによってはプライバシーとかいろいろな問題がございます。その部分については会議を非公開にして,議事録の公開についても関係者の名前を明らかにするかどうかなどを部会で御判断いただく必要がある場合もあるものと理解しております。 ○戸松委員 私もほかの審査会などの経験からいって,公開にするということは大変いいことなんですが,ただ,自由な議論を尽くすというその段階になって,ある問題との関係では必ずしも公開が自由な議論に結び付くということにならないと思います。それをあえて公開のままやろうとすると,会議の前にひそかに取引をして答えを決めてから出てくる。そうすると議事録など公開されても一体どういう経緯でこうなったかというのが分からなくなるということもありますので,余りそこのところをきちっと決めないで特別部会のその運営に任せて,なるべく自由な討議が国民に分かるような形をお願いするという形にしておけばいいのではないかと思います。   可視化の問題については是非公開でやれと言うと,それはまた自由な議論を損なうような結果になるのではないかという気がいたします。 ○野村会長 ほかに御意見いかがでしょうか。 ○山根委員 この問題は本当に国民の大きな関心事ですので,是非積極的な情報提供というのはお願いしたいと思っています。   質問なんですけれども,もう御説明あったと思うんですけれども,この特別部会,特別というのが付くのは,ほかの部会とどこが違うのかもう一度確認させていただいてよろしいでしょうか。 ○野村会長 特に法令上の性質が普通の部会と違うということではありませんが,扱う事項の範囲が大変に広く,この公開の件もそうかもしれませんが,広く国民の意見を反映させる必要があるというようなことで,委員の人選等についても法律の専門家に偏らないようにするなど,通常とは違った扱いをするということでございます。   ほかによろしいでしょうか。   それでは,いろいろ御意見は頂きましたけれども,先ほど申し上げたように公開につきましては先ほどの案のように決定したいと思いますがよろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○野村会長 どうもありがとうございます。   それでは,諮問第92号,第93号につきましては部会で御審議を頂くこととして,部会での審議に基づいて更に御審議を願うことにいたしたいと存じます。   これで本日の予定は終了となりますが,ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたします。   特によろしいでしょうか。それでは,本日はこれで終了といたしますが,本日の会議における議事録の公開方法につきましては,審議の内容等に鑑みて,会長の私といたしましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開することにしたいと思いますが,いかがでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○野村会長 それでは,本日の会議における議事録につきましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開するということにいたします。   なお,本日の会議の内容につきましては,後日,御発言を頂いた委員の皆様には議事録案をメール等によって送付させていただき,御発言の内容を確認していただいた上で法務省のホームページに公開したいと思います。   最後に事務当局から何か事務連絡がございましたらお願いいたします。 ○関関係官 次回会議の開催予定についてでございますけれども,法制審議会は通例2月と9月に開催することとなっております。しかしながら今回6月に開催させていただいた関係で,次回の総会につきましては,9月に開催するか否かも含めまして調整を行っているところでございます。調整の結果,具体的な時期が明らかになった時点で開催日程については改めて御相談させていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。 ○野村会長 ありがとうございました。   それでは,これで本日の会議を終了いたします。本日はお忙しいところお集まりいただきまして,また熱心な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。 -了-