法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会           第1回会議 議事録 第1 日 時  平成23年7月13日(水) 自 午後3時00分                       至 午後6時08分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○金子幹事 それでは,予定した時刻が参りましたので,法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会の第1回会議を開会したいと思います。   本日は御多用中,また,大変お暑い中,御出席を賜りましてありがとうございます。私は法務省大臣官房参事官の金子と申します。部会長の選出があるまでしばらくの間,議事の進行を務めさせていただきます。   まず,法制審議会及び部会について若干,御説明を申し上げます。法制審議会は法務大臣の諮問機関でございますが,その根拠法令である法制審議会令によりますと,法制審議会に部会を置くことができるということになっております。このハーグ条約(子の手続返還関係)部会は,先月6日に開催されました法制審議会第165回会議におきまして,法務大臣から国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約,これはまだ仮称ですけれども,を実施するための子の返還手続等の整備に関する諮問がされまして,これを受けまして,この調査審議をするために設置することが決定されたものでございます。法制審議会に諮問された事項は,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約を締結するに当たって,同条約を実施するための子の返還手続等を整備する必要があると思われるので,その要綱を示されたいというものでございます。   それでは,審議に先立ちまして臨時委員の原民事局長より,一言,御挨拶を申し上げます。 ○原委員 民事局長の原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。事務当局を代表いたしまして,一言,御挨拶を申し上げます。   皆様にはそれぞれ御多用の中,ハーグ条約(子の返還手続関係)部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございました。   最近,新聞等におきまして,国際結婚の破綻後に父母の一方が他方の了解を得ずに,子を外国から日本に連れ帰った,あるいは子を日本から外国に連れ去られたという事案についての報道が増えておりまして,国際的にも注目を集めるようになっております。このような国際的な子の連れ去りあるいは連れ帰りの事案において,子をそれまで生活した国に迅速に戻すための国際協力の仕組みを定めている条約がハーグ国際私法会議によって策定された,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約,いわゆるハーグ条約でございます。   ハーグ条約は現在,締約国が85か国に上っておりまして,G8諸国中でハーグ条約を締結していない国は日本とロシアのみとなっている状況でございます。このような中,本年5月20日,政府としてハーグ条約の締結に向けた準備を進めること,そのため,ハーグ条約を実施するために必要となる法律案を作成することが閣議了解されました。   ハーグ条約を締結して我が国において実施するためには,国内法において子の返還等を援助する中央当局の任務等を定めるほか,子を返還するための司法手続等を定めることが必要となりますが,政府内においては,中央当局の任務等に関する法律案の検討は中央当局を担う外務省において行い,子を返還するための司法手続に関する法律案の検討は,法務省において行うこととされました。そこで,法務省において検討を行うこととされた子の返還のための司法手続等の整備について,法制審議会で御検討いただくべく,今回の諮問をさせていただいた次第でございます。   皆様には,これまでにはない新たな裁判手続についての御検討をお願いすることになりますが,ハーグ条約の規定を踏まえたよりよき裁判手続の整備のために,御協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願いいたします。    (委員等の自己紹介につき省略)    (部会長に髙橋委員が互選され,法制審議会会長から部会長に指名された。) ○髙橋部会長 髙橋宏志です。もともと非力でございますが,加えまして子どもの奪取返還の問題につきまして,特に研究をしているわけではございません。ますます力不足を感じますけれども,互選していただきましたので力の及ぶ限り,部会長の務めを果たしたいと思っております。内容の濃い要綱案が出来上がればよいと思っております。皆様方の御支援,御鞭撻のほどをお願い申し上げます。   それでは,最初に議事録についてお諮りを申し上げます。議事録の公開に当たって発言者の氏名をどうするかということです。まず,現在の法制審議会での議事録の公開方法について,事務局から説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,法制審議会の議事録における,発言者名の取扱いについて御説明いたします。法制審議会の部会での議事録における発言者名の取扱いにつきましては,本年6月6日に開催されました法制審議会の総会におきまして,次のような決定がなされています。すなわち,部会における議事録につきましては,発言者名を記載したものを作成いたします。そして,作成した議事録につきましては,法務省のホームページで公開することになりますが,公開に当たっては,原則として発言者名等を明らかにした議事録を公開することといたします。ただし,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに部会長において部会委員の意見を聴いた上で,審議事項の内容等のほか,発言者等の権利利益を保護するため当該氏名を公にしないことの必要性,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無を考慮して,発言者名等を公開するのは相当でないと認める場合には,議事録の公開に当たって,発言者名等を明らかにしないこととすることができるというものでございます。   したがいまして,当部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものを作成することになりますが,部会長から皆様に御意見をお聴きし,ただいま申し上げたような諸要素を考慮して発言者名等を公表するのが相当でないと認められる場合には,これを明らかにしないこととすることができることとなります。 ○髙橋部会長 ただいま,顕名の議事録を作成するものの,審議事項の内容,発言者等の権利利益を保護するため氏名を公にしないことの必要性,率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無を考慮した上で,場合により発言者名等を明らかにしないで公開することができるということでございましたが,何かこの点につきましてまずは御質問があればお願いいたします。特に質問はございませんでしょうか。   それでは,部会委員の意見を聴いた上でということですので,何か御意見があればお願いいたします。   それでは,僭越ですが,私から提案させていただきますが,私としては,原則として発言者名を明らかにした議事録を公開することとしてはどうかと考えますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   では,当部会におきましては,原則として発言者名を明らかにした議事録を公開するということにいたします。   では,配布資料の説明を事務局からお願いいたします。 ○佐野関係官 では,私から簡単に確認だけさせていただければと思います。配布資料としましては事前にお送りしました資料と,本日,机上配布させていただいた資料がございます。事前にお送りさせていただきました資料につきまして,部会資料1は,「ハーグ条約の締結に当たっての具体的な検討課題」と題するものです。   また,参考資料としましては,外務省から提供いただきました現段階の訳文を法務省において条約の英文と対比しました参考資料1,すなわち「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」と題するもの,参考資料2としまして,外務省で作成いただき,後ほど御説明いただくことになっております「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」と題するもの,参考資料3としまして,「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結に向けた準備について」と題するもの,参考資料4としまして,「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律骨子案」という政府部内で検討された資料になります。また,本日,席上配布しております資料としましては,参考資料5としまして,現九州大学教授の西谷祐子先生に調査研究を委託しておりました「「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」の調査研究報告書」,かなり分厚いものになります。参考資料6と7につきましては,日弁連の委員のほうから御提供いただきましたもので,6が「ハーグ条約「担保法」検討のための基本的視点」と題するもの,7が,「各国担保法検討一覧」になっております。参考資料6,7につきましては,後ほど改めましてまた日弁連の委員,幹事の方から御説明を頂ければと考えております。   あと,もう一点,机上に置いております六法全書に下に,今国会で成立しました家事事件手続法と非訟事件手続法の抜粋を配布しているかと思います。まだ,今国会で成立したばかりで六法には載っておりませんので,審議の便のために,毎回,部会のごとにこういう形で席上に配布させていただこうと思っておりますので,お帰りの際は机上に置いたまま,御退席いただければと思います。よろしくお願いします。 ○髙橋部会長 配布資料の関係はよろしいでしょうか。   では,本日に審議に入ります。   まず,事務当局に今回の諮問に至った経緯,先ほども若干,説明がございましたが,更に詳しく説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,今回の諮問に至る経緯につきまして,政府部内の検討状況も踏まえ,御説明いたします。ハーグ条約につきましては,政府部内におきまして本年1月から4月まで合計7回にわたり,関係する府省庁の副大臣出席の下,ハーグ条約に関する副大臣会議が開催されました。この会議ではハーグ条約の構造や考え方を理解するところから始まりまして,諸外国における運用やこれまでの判例等について意見交換を行いながら問題点の整理,それから仮に我が国がハーグ条約を締結するとした場合の措置等につきまして,検討が行われてまいりました。なお,その過程では日弁連から専門的な意見が述べられたほか,ハーグ条約の締結に賛成,反対の双方の立場の方々からもヒアリングが行われました。   こうした検討の結果,関係府省庁の間で,仮に我が国においてハーグ条約を締結した場合に必要となる国内担保法の骨子案が取りまとめられました。その骨子案が事前に送付いたしました参考資料4になります。この骨子案では中央当局の任務のほか,当部会の審議の対象であります子の返還の手続や子の返還事由,返還拒否事由などハーグ条約を実施する場合の主要な論点が盛り込まれております。   その後,本年5月19日に関係閣僚会議が開催され,副大臣会議で取りまとめられた先ほどの骨子案を踏まえ,我が国としてハーグ条約を締結するとの方針のほか,今後の法律案作成に当たっての留意点などを記載した条約実施に関する法律案作成の際の了解事項が取りまとめられました。その了解事項が事前にお送りしました参考資料3の別紙になります。そして,本年5月20日の閣議におきまして政府としてハーグ条約の締結に向けた準備を進めること,ハーグ条約を実施するために必要となる法律案を作成することのほか,法律案の作成に当たっては,関係閣僚会議で了承された法律案作成の際の了解事項に基づくこととすることが閣議で了解されました。その閣議了解が事前にお送りしました参考資料3でございます。   以上のように,政府としましてハーグ条約を締結するために必要となる法律案を作成することとなったことから,法務省におきましてはハーグ条約を実施するための子の返還手続等を整備すべく,早速,先月6日の法制審議会総会に諮問させていただいた次第でございます。なお,ハーグ条約の実施に当たっては,子の返還のための裁判手続等の整備のほか,中央当局の任務,権限等についての立案も必要になります。これにつきましては冒頭,民事局長からの挨拶にもございましたとおり,政府内で中央当局を担うこととされた外務省において作業が進められる予定でございます。   もっとも子の返還手続の検討に当たりましては,中央当局の任務,権限についての検討と関係する箇所もあろうかと思われます。そのため,当部会の議論におきましては基本的には中央当局の任務,権限に関する固有の問題については審議の対象とはしませんが,子の返還の手続に関係する場面におきましては,中央当局の役割について議論が及ぶこともあろうかと考えているところでございます。 ○髙橋部会長 ただいまの事務当局の説明につきまして,質問がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審理に入ってまいりたいと存じますが,本日,予定しているところは,まず,外務省からハーグ条約の概要について御説明を頂きたいと思っております。その後,事務当局から当部会で検討すべき論点につきまして説明をしてもらいます。その上で,今日は当部会の審議の対象でありますところの子どもの返還手続関係につきまして,フリーディスカッションをしたいと存じます。時間は午後6時ぐらいまでをお取り願っていると承知しております。   では,まず,外務省の辻阪幹事からハーグ条約の概要につきまして,説明をお願いいたします。 ○辻阪幹事 外務省の辻阪です。よろしくお願いします。   外務省の関係は参考資料1と参考資料2でございます。参考資料1は先ほど御説明がありましたとおり,ハーグ条約の英文と和文でございますが,和文につきましては仮訳ということで,最終的な和文はこれとは若干異なった形になるかもしれませんが,作業用ということで,本日,お配りしております。   それでは,参考資料2に沿いまして御説明いたします。   まず,1ページ目ですが,これも冒頭,御説明がございましたが,ハーグ条約,正式名称は,これも仮称ではございますが,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約でございます。1980年にハーグ国際私法会議において採択されまして,1983年に発効しております。今年7月現在では締約国は85か国ございます。   この資料の一番最後のページ,6ページに締約国一覧ということで85か国を載せておりますが,これを見ていただくと分かりますとおり,カナダ,アメリカ,それから中南米,それから欧州のほとんどが入っております。G8の中で入っていないのは先ほども御説明がありましたとおり,ロシアと日本だけということですが,ロシアは年内にも発効するということを聞いております。また,アジアですが,これは香港,マカオ,シンガポール,スリランカ,タイということで,アジアはまだ限られた国しか入っておりません。韓国においては締結のための手続を進めているということを聞いております。   前のページに戻っていただきまして,1ページ目の2の条約の概要というところですが,監護権の侵害を伴う国境を越えた子の移動は,子どもの利益に反するという考え方,そして監護権の所在を決着するための本案手続は,子どもがずっと住んでいた国で行われるべきだという考え方によりまして,子どもを元いた国に戻すという国際協力の枠組みを定めたのがハーグ条約でございます。   例えばアメリカ人の父親と日本人の母親,そして子どもがいてアメリカで住んでいたような場合,父と母が何らかの事情により関係が悪くなり,母が子を連れて日本に帰ってきてしまったというようなケースを想像していただきますと,父親の了解なしに日本に帰ってきてしまったということで,監護権の侵害を伴う国境を越えた子どもの移動があったということで,そのような場合は子どもは今まで住んでいた生活からいきなり切り離されて,友人ですとか親族との接触も絶たれ,異なる文化環境の中に置かれるということで,子どもの利益に反するという考え方から,まずは子どもを一回,子どもが今まで住んでいた国に戻して,そこで子どもの今後の監護権について決着をさせることが,子どもの利益にかなっているという考え方をこの条約は採っております。   具体的な条約が想定している手続の流れにつきましては,3ページ目のフローチャートを見ていただければと思います。左側にA国人親となっていますが,これが例えば先ほどの例ではアメリカに取り残された父親だと思っていただければと思います。この人が子どもを返してくれという申請を自分が住んでいる国の中央当局又は子どもが連れ去られてしまった国,先ほどの例ですと日本ですけれども,日本の中央当局,どちらでもいいのですが,に対して子どもを返してくれという申請をします。   それを受けた中央当局が申請書類に不備がないか確認をし,それに問題がないということであれば,まず,子どもがどこにいるかということを探す作業をします。子どもを探すに当たっては,右側の緑色の囲いの中にありますように,例えば住民票の関係ですとか,就学情報ですとか,社会給付金情報など,そのようなものを使いまして,子どもがどこにいるのかということを探します。   子どもの場所の特定が終わった後で,今度は任意に子どもを返す,若しくは友好的な問題の解決が図られるように,中央当局は日本に連れ帰ってきた方の親との連絡調整を行いながら,友好的解決の促進のために支援を行います。   ただ,それでもなお,うまくいかないという場合は司法手続に移っていくわけで,そこから下,4の裁判所と書いてありますけれども,司法当局において返還拒否,子どもを返したほうがいいのかどうかという判断をすることになります。この条約は基本的に,原則としては返すということになっておりますが,幾つか後ほど御説明しますが,返還拒否事由というのが規定されております。   裁判所が返すという決定をした場合,今度は子どもが安全に元いた国に帰れるように支援を行うというのが中央当局の任務になります。この部会での議論というのは,正に裁判所のところの司法手続部分ということで,ここについて議論を行っていくものと理解しておりますが,先ほども御説明がありましたとおり,国内担保法を作るに当たりましては,中央当局の任務の部分というのもございまして,中央当局は外務省が担うことになっておりますので,この部分につきましては外務省で法案作成作業を進めたいと思っております。外務省には法制審のような審議会はございませんが,透明な形で中央当局の任務につきましても議論を行えるような形で,外部の専門家を入れた懇談会を立ち上げ,議論を進めたいと考えております。   1ページに戻っていただきまして,2ページ目のところで条約の主な規定の抜粋がございます。これの4を見ていただきたいのですが,先ほど原則として子どもを返すと申し上げましたが,4のところにありますとおり,締約国は次のような場合を除いて返還命令を出すということで,4に掲げられているような場合は返還命令を出さなくてもよいとなっております。   (1)は連れ去りから1年以上経過して,子どもが新しい環境に適応しているような場合,それから(2)は申請者,これは連れ去られた方の,残された方の親ですが,その親が監護の権利を現実には行使していなかった,面倒を見ていなかったような場合,それから(3)は,申請者が事前の同意又は事後の黙認をしていた場合,日本に行ってもいいよとか,日本に行くということを認めていたような場合,(4)は返還により子が身体的若しくは精神的な害を受け,又は他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある場合,これはなかなか解釈が難しく,判例にもいろいろな見解があり,日本でもハーグ条約の締結に反対する方からは,これが非常に不明確ではないかというような御指摘も受けている条文でございます。(5)は子が返還を拒み,当該子の意見を考慮するのに十分な年齢,成熟度に達しているような場合,それから(6)は要請を受けた国,これは残されたほうの親が住んでいた国ですけれども,そこの国の人権や基本的自由の保護に関する基本原則により,返還が認められないような場合,このような場合は返還しなくてもよいとなっております。   そのついでに,その下の5というところを御説明しますけれども,締約国の司法当局は迅速な返還手続を行う。要するに,早く子どもを元いた国に戻して,その国において子どもの監護を決定するということが条約の趣旨でございますので,6週間以内に返すか,返さないかということを決定できない場合は,遅延理由を明らかにしなければならないとなっております。   (2)のところですけれども,監護の権利に関する判断の禁止ということで,子どもが現に所在する国の裁判所,連れ帰ってきた子どもがいる国の裁判所は,本件について申請が出ている間は,監護の権利の本案については決定をしないということが規定されております。   もう一点,(3)として,中央当局は接触の権利の行使を確保するため,適当な措置を採るとありますが,いわゆるこれは面会交流でございまして,返還請求を求めることができるだけではなくて,ハーグ条約におきましては子どもと会いたいという申請を中央当局に対して出すことができます。   もう一点,ここには記述がないのですけれども,参考資料1の英文和訳の対照表の35条,10ページを見ていただきたいのですが,35条1項というところで,この条約は締約国間において,この条約が当該締約国について効力を生じた後に行われた不法な連れ去り,又は留置についてのみ適用するということでございますので,返還請求につきましては,条約の発効後に生じたものが対象となるということでございます。   続きまして,先ほどの参考資料2に戻りまして4ページ目,事務局統計資料1というところを御覧ください。それでは,実際にどれぐらい申請が出ていて,司法判断に至っているのはどの程度かということの数字でございます。2008年のデータが一番新しく出た数字でございますが,2008年は締約国全体で一番下に書いてありますけれども,1,903件の申請がございました。そのうち司法判断に至ったものが上から三番目,司法判断による返還命令というところから,七番目の司法判断による面会交流命令というところまででございまして,ここを合わせますと全体で835件,全体の44%になります。下から2行目に全体の49%と書いてありますけれども,これは誤りで44%でございます。ですので,申請が出たうちの44%については司法判断にいっているけれども,それ以外については申請が却下されたり,取り下げられたり,合意が成立したりというような場合だと思っていただければと思います。   司法判断が出た場合でございますが,赤の部分の三つのところですけれども,司法判断による命令で同意があった場合,なかった場合,同意が分からなかった場合ということで,いずれにしろ,司法判断により返還しろという決定が出たものが司法判断全体のうちの61%でございます。司法判断により返還拒否となったものがこのところだと15%,286件となっておりまして,司法判断による面会交流命令が2%になっていますので,司法判断がなされたというものは一番下の行にありますが,司法判断がなされたもののうち返還命令となったのが61%,返還拒否が34%,面会交流命令が5%ということですので,返還と返還拒否の割合が大体6対4ぐらいというのが現在の状況でございます。   次のページを見ていただきますと,事務局統計資料2となりまして,これは実際に各国においてどのくらいの割合で返還命令と返還拒否が出たのかということを示しております。これは国によって事案の数が非常に少ないので,これをもってなかなか言いにくい部分もありますし,また,年によっても来る案件が違いますので,一概には言えないかと思いますが,例えばイギリスの場合ですと86%が返還で,14%が返還拒否ということで,原則返還というこの条約を非常に忠実に実施しているということが言えるかと思います。それに対して例えばアメリカですと大体8対2ぐらいという状況でございます。例えばフランスですと真ん中からちょっと下ですが,返還が52%,返還拒否が48%ということでございます。   次に,(2)のところですが,先ほど6週間以内ということで,迅速な返還が求められているということを申しましたが,実際,どのくらいの時間が掛かっているのかということですけれども,2008年の統計,一番左側ですが,返還拒否の場合はやはり非常に日数が掛かっていて,大体300日ということで,だんだん,これは延びる傾向にあるということでございます。 ○髙橋部会長 ありがとうございました。   ただいまの説明につきまして,質問がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,先ほど申しましたように,次は関係官から当部会で検討すべき論点についての説明をお願いいたします。 ○佐野関係官 それでは,部会資料1に沿いまして,フリーディスカッションの前に部会資料1の内容を簡単に御説明させていただければと思います。   今回の部会資料1は,ハーグ条約を実施するために必要となる法律案のうち,当部会での審議対象であります子の返還手続関係の部分について,今後,順次,この部会で議論を行う予定の論点について羅列したものであります。具体的には,一定の方向性を示していたり,特に問題となる点を記載しております。ここに記載しております論点というのは,おおむね民事訴訟法であるとか,新たに成立しました家事事件手続法の流れに沿って記載し,また,ハーグ条約特有の問題点,論点等も記載しております。詳細は資料を御覧いただければ十分かと思いますけれども,今回は第1回目の議論ということもありますので,具体的なハーグ条約の子の返還手続の流れのイメージをお持ちいただくために,主要な論点について簡単に御説明だけさせていただきます。   まず,基本的には第1の1に記載しておりますとおり,判断機関は裁判所,返還の際に採用する手続としましては,非訟事件の手続によるものがよろしいのではないかと考えております。また,3の管轄に記載のとおり,裁判は子の住所地を管轄する家庭裁判所での審理が最も適切であって,また,迅速かつ専門的な判断も要求されますので,ある程度,管轄の集中というものを認めるのが望ましいのではないかと考えられます。   その上で少し飛んでいただきまして,7の当事者適格としましては,諸外国では中央当局が子の返還の申立人となる国もあるようですけれども,ここでは例えば子を連れ去られた親が申立人になり,また,一方で子を連れ帰った親が相手方になるのが望ましいのではないかと考えられます。   下にいきまして,10の代理人につきましては,ここは他の手続と同様に原則弁護士代理を採用するのが望ましいのではないかと思われます。また,12の公開・非公開につきましては,子の返還の問題というのは基本的に家庭の問題ですので,ここでは非公開の審理とするのが相当ではないかと考えられます。   更に,具体的な審理におきましては19の証明責任に記載のとおり,子の返還の手続というのは先ほど申し上げましたように,非訟事件の手続によるのが相当ではないかと考えられますけれども,条約等の規定にも照らし,申立人と相手方に各々証明責任を認めるのが相当ではないかと思われます。   これと関連しまして次のページの20の裁判資料の収集方法の記載のとおり,基本的にはその資料というのも当事者が収集すべきものではないかとも考えられます。ただ,ここでちょっと議論があると思うんですけれども,元の国に返還されることになる子の意見聴取等を始め,家庭裁判所調査官の関与というものも,やはり重要な場面が多々見受けられるのではないかと思われますので,必要に応じて裁判所による事実の調査あるいは職権証拠調べを認めることも,相当ではないかと考えられるところであります。   加えまして,裁判資料の収集におきましては,例えば外国から日本に子どもを連れ帰ってきた親が元の国にある証拠を適切に収集して,それを裁判所に提出するというのはなかなか困難な場面もあるのではないかと思われるところですので,ここでは中央当局による具体的な協力・調査というところも,ある程度期待されるのではないかと思われます。   その他,部会資料1の25の第11条以下は,ハーグ条約に特有の条約の規定を国内法においてどのように担保すべきかという論点を記載している次第です。   次のページの30の裁判のところですけれども,ハーグ条約に基づく子の返還の裁判におきましては,どのような主文が考えられるかということがまずもって問題ですけれども,ハーグ条約というのはそもそも子を元の国,常居所地国に返還することを義務としているにすぎず,具体的に子を連れ去られた親,すなわち申立人に返還することは,必ずしも要求されているものではないと言われております。そのため我が国の裁判所において,どのような主文を命じることが相当かということは,具体的な法律に何からの形で明記するかどうかは別にして,今後,議論の必要があるのではないかと思われます。   この主文と関連しまして,最後のページ,34の子の返還の強制執行の箇所については,どのような方法が考えられるかということが改めて問題になるのですけれども,部会資料1では間接強制によるのが相当ではないかという提案をしているところであります。   以上が裁判手続の流れに即しました簡単な論点の説明ですけれども,第2の子の返還事由,返還拒否事由についても国内法において規定することが予定されておりまして,具体的には条約の12条及び13条を踏まえて検討する必要があろうかと思います。ここで留意点としましては,特に返還拒否事由の関係ですけれども,返還拒否事由を定める条約13条の規定は抽象的でありまして,どのような場合に具体的に返還拒否できるのかというのが,なかなか明らかではないというような問題点があると思われますので,当事者の予測可能性を確保するであるとか,裁判規範の明確性という観点,そういう要請からある程度,条約の枠内でできる限り具体的に子の返還拒否事由を明記する方向で議論が進んでいけばよろしいのではないかと考えております。   一番最後,第3の面会交流関係ですけれども,ハーグ条約につきましては子の返還以外にも国境を越える面会交流についても条約第21条でうたわれているところですけれども,条約上,このような面会交流に関しては,特に新たな裁判手続を設ける必要はないのではないかと考えられているようでありますが,今後,議論の対象になるのかなと考えております。   以上が簡単な説明ですけれども,部会資料1に記載している以外の論点につきましても,順次,必要があれば細かい論点も含め,検討の対象にしていく予定ですので,今後のフリーディスカッションにおいて,こういう論点もあるのではないかという御指摘も,積極的に御提示いただければと考えております。 ○髙橋部会長 御質問,御意見もおありになろうかと思いますが,それは適宜,フリーディスカッションの中でということといたしますが,フリーディスカッションに入る前に,先ほども言及がございましたが,日弁連の磯谷幹事から,本日,机上に配布しております参考資料6ですか,説明をされたいということですので,説明をお願いいたします。 ○磯谷幹事 発言の機会を頂きましてありがとうございます。   日弁連の大谷委員,相原委員,そして私,磯谷のほうから一つは参考資料6で配布をしていただいておりますハーグ条約「担保法」検討のための基本的視点,それから,もう一つは参考資料7で配布していただいております各国担保法検討一覧というものを配布をさせていただきました。私は参考資料6の方について御説明を申し上げまして,参考資料7につきましては後ほど大谷委員のほうから御説明をお願いしたいと思っております。   参考資料6のほうですけれども,今回,担保法の検討に当たりまして,私たちなりにどういう視点でこの担保法を検討していったらいいかということを考えまして,基本的視点というものをまとめてみました。これは私ども日弁連の委員,幹事が留意をするということの趣旨もございますけれども,是非,この部会の議論におきましても,留意をしていただく必要があるのではないかというふうな期待も持ってございます。   中身について簡単に御説明させていただきます。まず,最初は一つ目の視点は条約の目的や基本的枠組みに十分留意をすることというものでございます。当然といえば当然ですけれども,やはり担保法である以上,このところをきちんと踏まえる必要があるのだろうと思っております。具体的には(a)から(c)までに挙げましたが,国境を越えた不法な連れ去り又は留置を抑止するものであること,それから特に子どもを返還をすべきときには迅速に返還命令に至るべきこと,そして返還命令が発令された以上は,実効的であるべきことというところに留意する必要があると考えております。   二つ目の視点は,子どもの最善の利益を尊重することということでございます。どちらの親と生活することが望ましいかなどの監護権の決定につきましては,原則として子どもの常居所地国の手続によって判断されるべきというところでありますけれども,しかし,返還命令を発すること自体が,あるいは執行すること自体が子どもの最善の利益を害するという場合があると考えておりまして,そういった場合には返還命令を発するべきではないし,執行も行うべきではない。例えば抗弁事由などについても,このような視点から解釈あるいは運用されるべきだと考えております。   第3のところに書きました子どもの最善の利益の内容についての考え方ですけれども,少し理解しにくいかもしれませんが,具体的には例えば現在,DVが家庭にあるという場合に,それが子どもの心理に多大な悪影響を与えるというところは,恐らく異論がないところでありまして,我が国の児童虐待防止法の中でも,そういった規定を設けているところでもございます。こういったところも子どもの最善の利益を考えていく上では考慮しなければならないだろう。それから例えばきょうだいを分離することが,これもまた子どもにとって大変つらい扱いになるだろうとも考えられまして,そういった分離を避ける形で諸外国でも運用する例もあるやに伺っております。こういうふうに子どもの最善の利益というところは,様々な心理学的な問題あるいはほかの部分での法解釈等も含めて,考えていく必要があるというものでございます。   三つ目の視点は,子どもを含む全ての当事者に対して適正手続を保障することということでありますけれども,特に基本的には日本にいないと思われます,子を連れ去られて残された親,それから子どもの適正手続には十分配慮する必要があるのではないかと思っております。   四つ目の視点は,全ての段階において合意に基づく解決を模索するということで,やはり何といっても家族でありますので,仮に返還命令が認められ,あるいは却下された後でも,特別の事情がない限りは子どもが両方の親と交流できることが望ましいのだろうと思っております。そういうことを考えますと,可能な限り合意に基づく解決に至ることが望ましいと考えており,そういった制度設計をする必要があるのではないかということでございます。   五つ目は運用に関してでありまして,担保法そのものについてではございませんけれども,国際人権法を尊重した運用が必要ではないかという視点でございます。   以上,私のほうから説明をさせていただきました。ありがとうございました。 ○大谷委員 続きまして,私のほうから本日,机上配布していただきました参考資料7,各国担保法検討一覧について,簡単に御説明させていただきます。中身についての説明は省かせていただき,これがどういう資料かという説明だけにとどめさせていただきます。   この担保法検討一覧は,日弁連において英語で比較的入手が容易であった12か国,カナダにつきましては3州のいわゆる担保法を集めまして,それを左の項目に従いまして,それぞれ規定が置かれているか,置かれている場合には括弧内で条文と,場合によってはその内容を取りまとめたものでございます。   各国の運用状況につきましては,例えば2003年にロー教授が幾つかの国についてカントリーレポートを作成・発表されていましたり,あるいは本年6月に開かれました締約国会合特別委員会のために,ハーグ国際私法会議事務局から各国に照会されましたカントリープロファイル等にもっと詳しいものがございますが,この担保法検討一覧は飽くまで担保法の中の規定振りについて取りまとめたものでございます。   また,各国の担保法の中には,例えば既存の民事訴訟法あるいは家事手続法をある部分については準用し,その特別規定を置いているということが明記されているものもございますが,そうした規定がないところに関しましては,実際には民事訴訟法が適用されているというところもございまして,それらが担保法の規定からは直接には読み取れないものもございますので,中には規定なしとありますが,その国の手続法が扱われているというものもございまして,この担保法検討一覧だけを見まして,全てが分かるという形にはなっていない点については御留意の上,御参考にしていただけばと存じます。 ○髙橋部会長 ありがとうございます。   それでは,フリーディスカッションに移りますので,委員,幹事,どなたからでも,あるいはどこからでも,自由に御発言をしていただければと存じますが,いかがでしょうか。 ○相原委員 日弁連から参っております相原と申します。今,大谷委員と磯谷幹事から紹介していただきましたが,日弁連では2年前からハーグ条約に関するワーキンググループを作りまして,鋭意,研究しておりますが,率直に申し上げまして,なかなか実態が分からないまま,ここに至っているというのが率直なところでございます。   先ほど外務省からも御説明がありましたが,今後のことを考える場合に,実際の本当の意味でのデータが必要と思います。この件は非常にマスコミや国民的関心も高いところであり,それから具体的な問題事例ももちろんあるのですが,一体,現状はどうなのだろうということがなかなか把握できないまま,日本の中でのことが意外と分からないまま,本日に至っております。   それで,最初に個人的な意見になりますが,日弁連内では委員会の意見書もまとめておりますが,全国的な観点からいきますと,非常にハーグ条約に対して厳しい危惧する意見というのも強くございまして,一方で,条約の中立的な立場で尊重して粛々と考えるべきであるという意見と非常に拮抗しております。その中で条約を締結するとすれば,どういうふうなものが十分であり,必要であるかということを検討する場所として,こちらがあると理解していますが,今後の中でできれば可能な限りデータ的なもの,若しくは実態を把握しつつ,ある程度,信頼性を勝ち取ることが必要であり,是非,各訴訟法の先生,国際私法の御専門の各専門家が多数,御参集してくださっていらっしゃいますので期待したいなと思っております。   ちょっと口火として日弁連を代表して最初に申し上げさせていただきました。 ○髙橋部会長 ほかの御意見は。 ○犬伏委員 質問ということでよろしいでしょうか。まだ,問題をよく理解していない部分がありますけれども,先ほど事務局から説明がありました資料の関係で,一つ確認させていただきます。参考資料4ということで法律骨子案というものをお示しいただいて,そして部会資料1で具体的な検討課題ということが出ておりますが,これの関係というのはどう認識しておいたらいいのでしょうか。いろいろ検討課題というものが示されて,先ほどここで大体決まっているというか,方向性がある項目,例えば裁判手続によるとか,司法手続というようなお答えは得たのですが,最初の参考資料4というものにもかなり詳細な,特に中央当局の部分はこちらでは検討されないということですので,こういったところまで大体のところは決まっているのか,確認をよろしくお願いします。 ○佐野関係官 今の御質問に対してですけれども,参考資料4というのは副大臣会議において,ある程度,関係府省庁が集まって検討されたものという位置付けでして,必ずしも法制審がこれを前提として,ここから一歩も出ずに議論するということは予定しておりません。関係府省庁なりでこういう方向が考えられるのではないかという一定の成果も示しただけということで,もちろん,この議論を参照しつつ法制審でも積極的に議論していただければと考えております。 ○髙橋部会長 プリミティブなことですが,参考資料と部会資料の違いですが,部会資料のほうが我々として正に我々の資料だと,こちらは飽くまで参考だということですかね。   御発言が少ないですので,犬伏委員と多分,私も方向性が似ている疑問というか,どう考えたらいいのかなと思っているのですが,日本の中央当局,日本の外務省はどれぐらいのことまでやってくれるのですか。任意の返還について促すというようなことなのですが,何でもかんでも裁判手続にというのは有り難いことではありますが,実際上は裁判所もそれだけのキャパシティがあるかということになりますので,任意に何らかの措置でいければ,それにこしたことはないのですが,しかし,まだ,その辺は詰めていないということでしょうか。差し支えない範囲で結構ですが。 ○辻阪幹事 今,御指摘の点は正に今後の議論の中でどれだけのことができるのか,例えば外部に委託するとしたらどういう形が可能なのかということも含めて,検討していきたいと思っております。 ○犬伏委員 質問ばかりしてすみません。中央当局が前にあって,いろいろ作業をされるということで,資料の中のフローチャートでは,要するにここで法制審は司法手続について検討作業を行うということで,フローチャートの真ん中部分に該当しますが,その場合に申請がまず中央当局において審査されていったときに,審査で却下した場合は上がってこないという理解でしょうけども,審査で受理する,といったときにも別に司法手続にストレートに上がっていくわけではなくて,やはり,当事者が申立てをするという手続というふうに理解すればいいわけですね。   最初の中央当局への申請というものと裁判所への申請というのはやはり別と考えて,恐らくは司法手続きまで進むと思いますが,これはストレートな流れではなくてという理解ですね。ですから,一応,1,2,3という流れと4というのは,基本的に4にいくということ自体は,多いだろうとはいえ,申請に基づいて上がっていくという理解ということですね。 ○佐野関係官 一点だけ補足いたしますと,諸外国におきましては中央当局に申請がされれば,そのまま,それを自動的に中央当局が裁判の申立人となって,自動的にやっていただける国も,例えばオーストラリア等ではあると思うのですけれども,日本の場合は中央当局が裁判の申立人になることも理論的には考えられるのですけれども,裁判手続の,当事者としては連れ去った親,連れ去られた親が,相手方,申立人になって裁判を進めていくのがよろしいのではないかと,今の段階では思われるところです。 ○棚村委員 先ほど日弁連の相原先生がちょっと御質問されたのですけれども,日本の実情といいましたときに,昨年ですか,外務省が一応,アンケートをされて,ちょっと微妙でしたけれども,賛否両論,いろいろあって,サンプル数もそれほど多いとはもちろん言いませんけれども,現在,問題になっているのも大体200件前後ですよね。インカミングとアウトゴーイングもありますけれども,大体,そういうような形で,実態をむしろこの部会か何かで何かヒアリングするとか,そういうことを考えたら,それを踏まえてということなのか,それとも一応,外務省のアンケートもありますので,それから私たちも法務省に頼まれて面会交流についてのアンケートしている中に,若干,海外から連れ帰ってきた人とか,それから日本に探しに来られている人たちも若干はまじっているのですね。そういう一応の実情みたいなのはかなり調査が実は困難だったり,インターネットで何かやりますと,いろいろな形のが来ますので,ヒアリングの方法等はなかなか難しいのかなということなので,今まであるものを前提として審議を進めていくということではどうなのでしょうか。 ○相原委員 今まであるのでしかしようがないのかなと思いつつ,ちょっと,今,大谷弁護士,磯谷弁護士等に中心になってもらって,全国の弁護士に聴いてみようかなというような状況を対応しつつあります。あと,出てくる管轄とか集中とかの問題のときに,一体,何件ぐらいを想定していくのだろうかとか,実態はどうなのだろうとかということをやはり実務家の立場としては知りたいなと思います。それから専門性を持ったそれなりの代理人を要請するだとかということも必要になるでしょうし,また,裁判所も多分,専門性を持った裁判官にいてもらわなければいけないであろうというようなことがありましたので,大体,どのぐらいの件数を想定していくのかが,制度作りにはかなり関係が出てくるのかなと思っております。したがいまして,可能な限り,何かそういう資料が出てくればなと思っております。 ○金子幹事 棚村委員が御指摘のとおり,今,国内で利用できる資料があるとすれば,できるだけ,この部会の中に反映させるというのが一つの方法として考えられると思うので,法務省が持っている資料のみならず,いろいろな各府省庁が持っているものがあれば,あるいは先生方のお手元にあるものでも利用できるものは利用したいと思っているところであります。   それから,件数は実際に,これを動かしてみなければ分からないので,飽くまで予想にしかならないのですが,過去,外国との関係で子の連れ去りの問題が表になっている件数というのは,各国別に既にデータがあります。全体で合わせて200とかいう数字だと思うので,それは累積件数なんだと思うのですが,年間,どのくらいかというのは,おおよその数字は出るわけで,数件とか,何百件でないことは間違いがなくて,恐らく数十件というオーダーの中にあるという大まかなことは予測がつくわけです。管轄の集中としてどの程度の裁判所が担当するのがいいかとかいうあたりの議論のときには,もう少しデータを出しながら御議論いただくということは,今後,考えていきたいと思っております。 ○辻阪幹事 すみません,若干,補足説明させていただきます。先ほど棚村委員がおっしゃったアンケートなのですけれども,これは去年の5月から11月まで,外務省のホームページにおいて,子の移動に関する問題の当事者となった国民に対して,アンケート調査をホームページを通じて実施をしたというものでございます。これは回答件数がそれほど多くはなくて64件しかなかったのですが,その中で事案別に見ると,子どもを連れ去った案件が18件,連れ去られた案件が19件,子どもを連れての移動制限を受けているケースが27件という結果でございました。また,国別で見るとアメリカが26件,オーストラリア9件,カナダ7件というようなアンケートの結果がございます。可能であれば,次回,これを配布させていただきたいと思います。   あと,もう一点ですが,各国から大体200件ぐらいという話がございましたが,現段階ではアメリカからは100件,イギリスからは38件,カナダから37件,フランスから30件の,これは政府レベルでこういう問題があるので何とかしてほしいと言われている数字がこのような数字でございます。ただ,これが全体像なのかというのは,詳細は当然,把握できない,相手の言い値の数字でございます。簡単ですが,補足でございます。 ○棚村委員 私もこの問題に関心を持っていますので,大体,渉外関係の子の監護に関する処分事件,面会交流とか監護者の指定,子どもの引渡しとか,それから人身保護法の子の引渡しも若干ありますので,そういう司法統計を集めると,大体,海外の方で渉外関係でどういう申立てが何件来ているかというのは分かると思うのですね。それで,表をいろいろ作っていただきましたので,私もちょっと関心を持っているのですけれども,例えばイギリスなんかですと,パネル・オブ・ソリスターズというスペシャリストソリスターズというのがいて,子の連れ去り問題について27名ですかね,いらっしゃって,個人で開業しているのだけれども,中央当局からそこに問題が起きると代理人として推薦をされたリストの中に入って,トレーニングを受けているわけです。   イギリスの件数とか,そういうものの,司法当局の構想をやっていくときも,どのくらいの人を張り付けて,どんな作業量があって,どれくらいになるかというのは恐らくシュミレーションが必要になってくると思います。ですから,相原先生が言ったような形で,今,ある資料や既存のものの中でおおよその予測とか,シュミレーションしながら制度設計をやって,私自身が考えているのはハーグの理念というのですか,ただ,これも80年に作られていて,ちょっと大人の側の争いという側面が強く,親同士の紛争の解決ということに少しシフトしていたような部分もありますので,今,特別委員会とか,いろいろなところで言われているのは子どもの声とか,子どもの立場を尊重するような形というのが出されています。そんなことも海外の動きとか,ハーグの常設事務局から出されているいろいろな資料とか,そういうものも参考にしながら日本の現状のリソースとか,それからパワーというものを前提としながら,できるだけ効率的でやはり実現可能な制度の設計とか,手続の在り方というのを模索するというのがいいと思っています。   それぞれの立場で非常に激しい対立があるような問題ですから,子どもの最善の利益といっても,それぞれの親が全く違った形で主張するというような状況の中で制度設計をして,実効的な手続を日本に合ったものを作っていくということがやはり大事なことかなと思っています。だから,ちょっと繰り返しますけれども,いろいろな資料とか,いろいろなデータとかを可能な限りは海外のものも含めていろいろ参酌しながら,日本の今のマンパワーとか,リソースの中でできるだけいいものを作っていくというような視点が本当にいいのかなと思っています。   それで,事務局のほうで出していただいた検討課題というのは,かなり僕は網羅されているのではないかなと思っています。ただ,先ほどピックアップしていただいたようないろいろなところ,例えば家庭裁判所が管轄する場合でも,管轄の集中というのをどの範囲でやるか,一方ではやはり専門性とか経験の蓄積とか,それから迅速な処理をする場合には,かなりそういう意味では専門性の高い裁判官で,しかもきちっとしたいろいろなネットワークを構築できるような形が望ましいのですけれども,イギリスみたいに一元化してロンドン,例えばハイコートだとかなり高いサービスとか質は確保できるのですけれども,今度は利便性みたいな問題があって,ですから,これも恐らくいろいろな人の関係とか,どれくらいの人材が確保できるとか,いろいろなロケーションの問題もあると思いますけれども,やはり,大体,僕は論点のところを見せていただいて,それで海外ともちょっと比較したり,日本の家裁の実務ですか,そのときに日本の家裁の実務がかなりのレベルで,例えば調査官なんかも子どもの問題についての調査とか調整という技法を蓄積しております。   ですから,そういうものをうまく活用しながら,一番いい解決に導き,いい解決というのは判断をしなければいけないという場合と,合意を形成の援助をする場合とどう振り分けるか。ハーグ条約の特別委員会の最近の6月に出されたものを見ていても,やはり合意による解決というようなことについて,それから子どもの声をどういうふうにやるか,それからDVとかファミリーバイオレンスの位置付け,これは返還の拒否の事由の規定の仕方ということにも関わると思いますし,それから調停みたいな解決の具体的手続をどう取り込んでいくか。   中央当局のところでも任意の返還をやる場合に,海外だと事実上,中央当局が関与することによってメディエーション的なものをやりながら,任意返還に結び付けている場合もあるようです。ところが,外務省の場合にはそういう人の確保というのはなかなか難しいと思いますから,かなりそういう意味では返還の手続の中で調停的な合意の形成,合意を尊重すると,今度は迅速な返還という目的と衝突したりすることがあります。したがって,それぞれ各国が,悩みながらやっておられるようなので,海外でのそういう蓄積とか経験とか裁判例みたいなのも参考にさせていただいて制度設計をするといいのではないかと思います。   ○大谷委員 本日,配布いただいております部会資料1で挙げていただきました検討課題のほかに,もしも何かあればということを先ほどおっしゃっていただきましたので,日弁連でこれまでいろいろ検討している各国の担保法ですとか,あるいは運用状況の中から気が付いた検討課題,あるいは実務の中でこうしたことが実際に運用が開始された場合を考え,論点として検討しておく必要があるのではないかと思われる点で,気付いた点を何点か申し上げたいのですが,よろしいでしょうか。   今から申し上げます検討課題は,必ずしも担保法の中に書き込む必要があるかどうかということより,少し広いかと存じます。また,この部会への諮問が子の返還手続等を整備する必要があると思われるのでということで,専らいわゆるインカミングのケースにおける返還手続が念頭に置かれているように先ほどから伺っておりますが,若干,今から挙げるものの中にはアウトゴーイングケースとの関連も多少ございますので,それを最初に前提としてお断りした上で申し上げたいと思います。    一点目は,証拠資料の提出に訳文の添付を常に必要とするかどうか。これは迅速性の関連及び裁判費用に関わってくる検討課題,専ら実務的な検討課題かと存じます。現在,渉外関係の家事手続では,例えば外国の法令若しくは外国で作成された外国語による資料,証拠を提出する場合には,事実上,当事者が全ての訳文の提出を求められております。条文の根拠はないのではないかと思いますが,間違っておりましたら,先生方,専門家がたくさんいらっしゃるので御指摘いただきたいのですが,これが特にハーグの返還手続では外国語による,外国語の法令のほうはある程度,整備されてすぐに使えるもの,これも今後,整備の必要という検討課題かと思いますが,共通に使える訳文が出てくるのではないか,あるいは必要かと思いますが,個々の事件の証拠資料の関係で訳文が常に必要となりますと,それに時間を要するほか,費用がかなり莫大なものになります。外国語の資料提出には常に全て訳文が必要となりますと,それを誰が最終的に負担するのかということとも関連しまして,担保法に規定するかどうかは別としましては,実際にどのような運用にするのかという点が第一点でございます。   第二点目ですが,これも今の外国語に関連しますので続けて申し上げます。子の意見聴取ですが,管轄を家庭裁判所として子の意見聴取を専ら調査官にしていただくということを想定した場合,子どもの年齢にもよりますが,日本語による会話ができたとしても,ある一定年齢の子どもの場合は,常居所地国での言語による意思表明のほうが容易であり,また,それを好む場合があります。子の真意を聴取しようと思いますと,外国語による聴取のほうが望ましい場合が出てくるかと想定されますが,そのような場合に通訳を入れて調査をするのか,若しくは調査官の中にそうした外国語による直接の聴取をしていただける方というのを専門に置いていただくといった配慮,若しくはそうした場合は調査官以外の方による意見聴取を行うのかといったことも,これもかなり実務上の検討課題かと思いますが,言葉,言語に関わる項目として一緒に挙げさせていただきます。   三番目に,証拠の関係であるいは手続の関係で,外国にいる当事者若しくは証人について証拠調べのために,外国とをつなぐテレビ会議や電話会議というものの利用が可能かどうか。これは外国での返還手続では現実に実施されております。現在,日本の新しい家事事件手続法では国内の場合はテレビ会議の導入が今度なされることになりましたが,外国との接続というのは現在,日本にはそのような制度はないと承知しております。したがって,現実的にかなり難しいということを理解しながら申し上げますが,そうしたことが必要かどうか,あるいは可能かどうかということも一応検討課題として挙げさせていただきたいと思います。   それから,冒頭に申し上げました検討課題が主にインカミングケースに関わるものが多い中,アウトゴーイングケースの関係でと申し上げましたのが次の検討課題です。条約の担保法ということからしますと,条約を実施するために何が必要かという観点から言いますと,条約に書かれている条文の実施ということには必ずしも直接に関わらないのですが,各国の返還手続におきましては返還命令を出すに際し,申立人にアンダーテーキングをさせる,あるいはその内容を返還に先立ち,返還先の常居所地国の裁判所においてミラーオーダーとすることを求める実務が幾つかの国でございます。   日本から子どもが他の締約国に連れ去られ,そこで返還手続が行われ,日本に返還するに当たり,日本にいる残された親が返還手続の相手方としてそのようなことを求められた場合,現在,日本の法制度あるいは実務の中で,ここが非常に難しい現状がございます。現在,日本はハーグ条約の締約国にはなっておりませんが,実際にはこのようなミラーオーダーを求められるケースというのが現在,増えてきておりまして,大変に実務上,困難を感じております。日本が仮にハーグ条約を締結した場合,当然,アウトゴーイングケースについて日本にいる残された親としては,条約の構造の中で子の返還が求められると,今以上には容易になるということを期待するものかと思われますが,そうした場合に日本側の現在の家事実務,法制度の運用のために,その条件がクリアできず,返還命令がなされても現実には子の返還がされないといったような事態が想定されることから,この点もこの部会の中の検討課題として御検討いただければ有り難いと考えております。 ○髙橋部会長 ありがとうございました。 ○金子幹事 今の大谷委員からの御指摘ですが,事務当局のほうでも議題とするかどうか,改めて検討させていただきます。いずれも返還手続を全体としてどのようなものとして作り上げていくかというところと関係するようにも思います。例えば申立人を原則として裁判所のほうが呼出しをして,期日を開いて対審的に手続を進めると発想するということであれば,テレビ会議ということになるかもしれません。大きくは非公開の手続ということで非訟の手続ということを原則とすることを考えつつも,出頭をどうするのかとか,あるいはどういう方法で双方の主張を出していただくのか,あるいは裁判所のほうが職権で聴取していくのかというあたりと密接に関係するような問題であろうと思います。   それから,訳文につきまして日本の裁判所がそれを裁判資料とする以上は,裁判所に提出する段階で恐らく訳文をつけていただくという運用は,裁判所法との関係でもなかなか動かしづらいのではないかという気がしていますが,そうしますと,誰がどのような形で訳文を作るかという問題が当然出てくるように思います。中央当局間の協力で得られる資料も,裁判資料として有用なものというのが当然入ってくるわけで,中央当局間の資料につきましては留保をつけたとしても,英語で出すというところまでであって,英語から日本語というのは誰かがしなければいけないということになります。そこが今後,考えなければいけない問題なのかなという気がします。当事者がやるのか,あるいは中央当局に集められたものを何らかの形で日本語訳するというような仕組みを何らかの形で作るか,そのあたりが問題になるような気がしています。   子の意見聴取についても御指摘がありましたが,これはちょっと家庭裁判所のほうのリソースとの関係もあって,担保法に入れられる問題なのかどうかという気がちょっとしますが,家裁調査官が子に対して調査するときまで日本語でなければいけないということは恐らくないので,能力がある家庭裁判所の調査官が常居所地国の言語で調査をして,それを日本語として調査報告書を作る分には,裁判所法との関係ではないような気もしていますが,この辺は民訴の先生から,御知見を頂かなければいけないと思います。宣誓をした通訳を入れるというところまで,家裁の調査官がする調査に要るのかどうかというのはちょっと判断しかねますが,いずれにしても確かにそうような問題があるような気がしました。   アウトゴーイングケースで日本にいる親が子どもの返還を求められる場合に,常居所地国の裁判所からミラーオーダーを求められる,ミラーオーダーを日本の裁判所が出せないがゆえに,子の返還のために不利に働き得るという場面は想定されるわけですが,これも今後の課題と思いますが,外国の裁判が効力を有するための要件との関係で問題があるという感じがしているのと,それからミラーオーダーを出す根拠は,条約上,直ちには出てこないと思いますし,何からの国内法の根拠がないと,裁判規範がないということになるので,かなりハードルが高いような感触を持っております。この辺も皆さんの御意見を頂ければと思います。いずれにしても,もう少し整理をして,どのような形で議論の俎上に載せるのがいいのか,あるいは運用の問題として,ここで議論するのが相当でないのかというあたりも含めて,もう少し検討させていただきます。 ○朝倉幹事 今の大谷委員の話の関係で,まず,訳文の関係では,今,金子幹事がおっしゃられたのと同じだと思いますが,裁判所法74条によれば,裁判所では日本語を用いるとされています。また,ハーグ条約の場合にどうなるのか分かりませんが,私の所管している民事裁判でいいますと,民事訴訟規則138条によれば,訳文を添付することとされています。したがって,今の国内の運用は,便宜上,裁判官が頼んでいるものではなく,法的根拠があるものと認識をしております。   この点については,実際問題,私でも英語を訳文なしで読むことはできるのですが,私が分かればいいという問題ではなくて,相手方にも分からなければなりませんし,不服申立てがあって抗告審や上告審にいったときにも,それらの担当裁判官にも分からなければなりません。そうすると,外国語で資料,証拠を提出するほうがいいかどうかについては,手続保障の観点等も含めて,よく考える必要があるのではないか思います。   もう一点,外国と結んで行うテレビ会議,電話会議の関係でございますが,私は家庭裁判所の手続は所管しておりませんけれども,同じ問題が民事訴訟でも起きます。これは,外国において尋問の一部がされるということになりますので,外務省が専門かもしれませんが,主権の問題が生ずるということになろうかと思います。したがって,現在は,国際司法共助でやらないとできないということになっており,その観点からすると,条約で規定するのであればともかく,外国にいる人とテレビ会議,電話会議で結んで尋問できると規定することは,国際法との関係で難しいのではないかと思います。それができるのであれば,私どもも普段から苦労していないという感想です。 ○大谷委員 先ほど金子幹事が整理してくださいましたように,果たして運用的なこともここで議論するのが適切かどうか分かりませんので,余り入り込むのはよくないと思いながら,ただ,実務をやっている中で気付いている点をちょっと申し上げておきたいと思います。訳文につきまして,裁判所法が日本語で行うと規定しているのは承知しております。また,手続保障の観点も重要かと思います。ただ,現実に例えばある証拠を出そうとしますと,こちらで重要な部分だけ抄訳として出そうとしましても,よく裁判官からとにかく全部出してくださいと,そうでないと,省略されている部分に何が書かれているか分からないのでと言われることがあり,大変な労力,時間と費用が掛かっております。そうしたことがこの手続の迅速性や想定される外国語が普通に証拠として出てくることとの関連で,何らかの配慮ができるかどうかという観点かと考えております。   また,外国にいる当事者,証人のテレビ会議,電話会議による尋問ですが,これも主権の問題があることを前提の上,各国ではそれが実際に行われ,私などもよく呼ばれ,主権の問題が気になりながら当事者のために必要なので,参加しているという現状がございます。そういう片面的な現状がある中,日本でどのように考えていくのかということを御検討いただければ有り難いと思っております。 ○棚村委員 多分,今後の議論になると思いますけれども,翻訳とか,そういうもので僕も時々,家庭裁判所で参与員をやっているのですが,私の場合には参与員の仕事ってほとんど意見を言うのではなくて,外国の判例とか法令を翻訳したものをお伝えするというのが結構多いのですね,渉外関係の事件ですと。今後,やはり外務省とか法務省とか,裁判所のほうでもそうですけれども,研究者で研究をしておられる方たちの力も借りて,何かアドバイザリーグループではないですけれども,そういうものを作って,民事法務協会が最近,前はそういうことで外国の法令とか,そういうものの翻訳作業みたいなのを一生懸命やられていたんですけれども,事業仕分けとか,いろいろな理由で厳しい状況になっています。   先生方の言うのはよく分かるんですけれども,翻訳を個人の責任でさせると適正手続等の関係等も本当にお金の問題でもつぶれていくのではないかというのは分かるんですけれども,でも,かといって,それをみんな外務省とか法務省とか,そういうところにお願いをするということになると,今,言ったように財政状況が非常に逼迫していますから,そうなると,やはり,そこでの研究分野で特に研究しておられる方たちとか,いろいろな人,若い人たちでも結構,海外での生活経験とか,専門性を持っている人たちがいますので,そういう人を日弁連なんかでも僕はむしろ育てていただいて,私たちも入っていって,それで,そういう外国の判例とか,法令の状況みたいなものを研究をしたり,蓄積していくような形で,そういう資料としても提供できるような形にしていくというようなことも大切な感じがします。   ちょっと,今の返還手続の中で,証拠として出すときにどうするという問題はもちろんあると思います。証拠の制限をやっている国も結構あります。文書が原則で,それで,口頭のものはよほど必要がない限りはやらないということで,迅速な処理のための一つのやり方として,オーストラリアなんかもそうですがね。ですから,そういう意味では,どのくらいの手続を設けて,どのくらいの証拠と,それからどの程度の調べをして判断すべきかというのは,正にここでの議論になると重要な点です。   返還の手続のイメージというのが皆さんで共有できるようになると,もっと議論が進んでいくと思いますけれども,ただ,法令とか,そういうものに関していうと,法令の内容までは何とか,今,たどり着くことが多いのですけれども,判例とか実務という話になると,本当にかなり専門的に研究をしている人たちでないと,なかなか実情を知らないということですので,何かそういうものを作っていくような研究会みたいな形でもいいですし,そういうグループみたいなのを作っていくというので,バックアップしていくというのも必要な感じがします。 ○横山委員 フリーディスカッションということで,一応,これからの審議するときに,バックグラウンド的な情報として,頭に入れておいたほうが個人的にはいいと思っておるのですが,結局,迅速に子どもを返還できないかなりのパーセントは最初に子どもの所在が分からないということだと思うのですけれども,やはり警察の力で捜索をしないと分からないということです。先ほど外務省の方の返還申請を受けた後の主な流れということで,中央当局が警察庁に対して協力依頼をすると,できるという仕組みの概念図が示されましたけれども,連れ去られた子どもを捜索するということについては,警察庁の協力は得られるということを前提として,これから議論をしていけばよろしいのでしょうか。   それと,もう一つ,厚労省についても協力依頼というのが出て,日本の場合には児童福祉施設による一時的な子どもの保護というような事態に対して,保護の必要性があるだろうと思うのですが,こういうふうなことについても厚労省の協力が得られると,連れ去られた子について,この条約のもとで子どもの保護を行うということを期待できるという前提で,物を考えてよろしいのでしょうか。 ○辻阪幹事 ただいま御指摘いただいた件ですけれども,まず,警察に関してですが,もちろん,この話はしております。ただ,警察の強制力を使った形での捜査を行うのかということに関しては,今の段階では普通の行方不明捜査のような形で登録するということを考えておりまして,正にどこまで何をやるのかということを含めて,各国の事情も見ながら,今後,外務省のほうで行う懇談会においても,その点も含めて検討していきたいと思っております。   次に,厚生労働省関係の話ですが,これも話はしておりますが,実際,どこまで,どのような協力が得られるのか,何ができるのかということにつきましても,並行して関係省庁と調整を行っていきたいと思っております。 ○棚村委員 横山先生のちょうど外務省の中央当局の役割,そういうところとも関わりますので,やはり所在の確認とか特定というのは一番重要な仕事で,いろいろなところで例えば学校とか幼稚園とか保育園とか,そういうところの情報をどういうふうに取るかというのは,やはり個人情報の保護の問題等の関係で,どういうような協定とかルールや手続をやっていくかというのが各国,みんな,苦労して,警察がかなり大きな力を発揮したりするみたいです。ただ,児童手当とか,そういうものがあれば,そういうものが支給されているかどうかとか,学校とか保育園とか,それから,今,言った警察とか,いろいろなところの自治体の情報とかをどういうふうに集めた上でチェックしていくか。   アメリカなんかですと,失踪児童の全米の情報センターみたいなのがあって,随分前から誘拐とか連れ去りみたいなことが起こっていますから,そういう関係でもって民間のNGOみたいなところで,そういうところが人探し,行方不明者の捜索みたいなことをいろいろなことをやっていたりするということで,日本なんかそういうのがなかなか,今,ありませんから,関係機関がどういうネットワークを作って,その情報について提供を受けられるかというのが正に中央当局の非常に重要なところになると思います。   場合によっては保全処分ではないですけれども,返還のために必要な手続だということで,裁判所に,この情報についての許可とか,そういう提供を受けるための提供の許可を保全処分で受けておくというやり方をしている国もあります。ですから,全部,中央当局がやらなければいけないということになると大変なことですけれども,関係機関とのネットワークを作りながら,子どもの居所を探すということなのだと思います。ただ,国によってだと思いますけれども,日本の場合には全く居所が分からないという,手掛かりが全くつかめないという方が少ないような気がするのですけれども,転々とされればちょっと無理かと思いますけれども,定住してある程度,余り落ち着いてしまうと1年が経過してしまいますから,厳しくなるかもしれません。 ○村上幹事 質問と意見と両方あるのですが,先ほど外務省の方から参考資料2の4ページで,司法判断による返還命令で,同意あり,同意なし,同意の有無不明というので三つに分けて説明があったと思うのですけれども,同意ありというのは返還命令が出た後に,任意に命令に従ったという意味での同意ありという意味なのでしょうか。要は強制執行が必要なかったという意味での同意ありという意味なのかのいうのがまず一つ質問です。 ○髙橋部会長 それはいかがでしょうか。 ○辻阪幹事 すみません,ちょっとお時間を頂けますか。 ○髙橋部会長 私は分かりませんけれども,外国の手続だと「同意に基づく裁判」でしょう,多分。 ○棚村委員 かなりあります。むしろ,争わないというだけで,オーダーはやはり出さなければいけない。返還することについて,いいですよということを言われて合意ができても決定を出す。 ○村上幹事 裁判上の和解みたいな。 ○髙橋部会長 和解を裁判の形ですると。 ○棚村委員 離婚でもそうです。離婚は認めているのだけれども,一応,決定や判決という形で出す。 ○横山委員 資料の出どころは恐らくパーマネントビューローが用意したデータに基づいて,厳密にテクニカルな意味で同意とかという言葉は使っておりませんので。 ○髙橋部会長 でも,イメージとしては多分,そんなものでしょう。 ○村上幹事 分かりました。   意見といいますか,ちょっと思い付きですけれども,検討課題のほうで強制執行についても具体的な規律を設けるかどうかということが上がっていたのですけれども,実際に規律を設ける仕方といいますか,どの程度,この手続に特化して具体的な規律を設けようと考えているのか,例えば間接強制によることでよいかということで,現行の民事執行法の下での間接強制によるというだけの規律を設けるという意味なのか,それとももうちょっと柔軟な手続といいますか,というのは,日弁連の基本的視点というところでも,執行するだけで子の利益に反することもあるだろうから,そういう場合にはやはり返還命令を出すべきではないし,執行もするべきではないという御意見だったので,強制執行の方法がそれほど柔軟ではないから,執行すると子の利益に反するということになってしまうと,ちょっと,それは条約の趣旨には反するのかなという気もするので,具体的にどういう規律を設けるかというのは,まだ,全然,思い付きなので考えてはいないのですけれども,この手続に特化して強制執行についてどの程度,具体的な規律を設けようと考えていらっしゃるのか,ちょっとお伺いしたいと思いました。 ○金子幹事 強制執行の問題,これ自体,非常に難しい問題で,これから皆様に御意見を伺いながらと思っているのですが,まず,主文との関係でどう考えるのかという問題もあって,国内の例えば子の引渡しのケースは,引渡しがされないことで間接強制のほうにつなげていくという実務があるのですが,これは一方親が他方の親に子を引き渡せという主文があるので,それがされないときは金銭を義務の履行しない者が履行を求めた者に支払えという命令を別途出すという仕組みを採っているわけですが,ハーグ条約で命じられるのが場合によっては相手方の申立人である親に返せという主文も可能と言われていますが,条約で求められている最低限は,その国に戻せということになります。そのような主文での間接強制は,一体,どういうものかというところも,一度,考えなければいけないと思っていまして,そんなことを考えますと,今の既存の制度で一応,何とかならないかということは思いつつも,そのままストレートに当てはまるようなもので済むのかという問題もありそうです。   実は諸外国,これは友好的解決というところとも関係するのですが,本当に強制執行までしているという例はかなり少ないようにも聞いていて,一つは途中で何らかの合意に至って強制執行が不要になるという場合と,返還命令が出た後でも何らかの形で,協力によって安全に国に返すという方法が採られている実務がかなりあるようにも聞いていて,このあたりは今度は中央当局間の協力の問題とか,あるいは場合によっては裁判官同士のネットワークとか,そのあたりをどう組むかとも関係しそうなのですね。ただ,いずれにしても,最後はどういう形の強制が考えられるかということは,どうしても議論が避けられないと思います。 ○朝倉幹事 執行の関係ですが,例えば,アメリカ国内でアメリカ人のお父さんがいて,日本人のお母さんが同じアメリカ国内で子どもと一緒に住んでいたところ,お母さんが裁判所の許可を得ずに日本に子どもを連れて帰ってしまったという事案を想定します。そうすると,監護権の問題に関する本案の裁判については,アメリカの裁判所できちんと判断をして,そこで子どもの処遇を決めるべきだから,きちんと子どもをアメリカに返して,アメリカの裁判所で判断できるようにしましょうというのが,この条約の基本だと思います。   そうしますと,子どもは,アメリカではお母さんと一緒に住んでいて,それで良かったわけですので,返還に当たって,何もお父さんに引き渡さなくてもいいわけです。逆に言えば,元に戻すという意味では,お母さんが子どもを連れてアメリカに戻すということが,条約で求められている本質的なものだろうと思います。そうしますと,お父さんにまで引き渡すということになると,アメリカ国内にいればお父さんに引き渡す必要はなかったのに,そこまで日本の裁判所が命じるのかと,こういうことになるわけです。したがって,条約上,お母さんには子どもをアメリカに連れて帰る義務があるということになると,これは,いわゆる為す債務であり,かつ,それはお母さんしかできませんから,これは画家が絵を描く債務と同じで,基本的に非代替的作為義務と整理されるだろうと思います。   そうしますと,今までの執行の概念でいきますと,その人にやっていただかなければならず,ほかの人が代わりにやるわけにはいきませんから,その人がやるまでその人に制裁を加えることになると思います。日本の民事執行法では,これは,間接強制という形で組まれていて,それと同じように考えるのであれば,例えば,一日何万円支払えという形になると思います。   これが英米法の国ですと,連れて帰らない場合には裁判所の判断に従わないわけですから,司法の権威に対する侮辱ということで法廷侮辱となり,民事制裁を行う,場合によっては子どもを帰すまでお母さんの身柄を拘束すると,そういうこともあるだろうと思います。日本の場合には,大陸法系であったため,間接強制でやってきたということだろうと思います。そういう意味では,先ほど若干,国内の子の引渡しの話が出ましたが,条約上の返還は,国内の子の引渡しとは本来的に違うといえます。国内の場合には,お父さんに引き渡せということが本質で,お父さんに引き渡すのであれば引き渡さなければいけません。なお,先ほど間接強制の話がありましたが,意思能力のない小さな子どもの場合には,執行裁判所の判断若しくは執行官の判断ではありますが,最近の実務では直接強制がされることが多いようです。 ○髙橋部会長 今の御説明だと,検討するまでもなく結論が出ているようですが,筋はそうだけれどもということで検討課題になっているのでしょう。村上幹事の御発言も,そういうご趣旨でしょう。最終的に法律でどう書くか,あるいは規則になるのか,規則にも書かないのかはまた別問題だろうと思います。こちらからも問題を出させていただきますと,合意による解決が大事だと日弁連もおっしゃいましたが,民訴学者の頭ですと,すぐ調停との絡みということになるのですが,その辺はどうお考えでしょうか。調停前置にするかどうかと,ストレートに聴くとそんな話になるのですが,どんなイメージでお考えなのでしょうか。 ○磯谷幹事 まだ,私どもも,今日,基本的な視点ということでは御説明しましたが,具体的な中身については本当にこれから詰めていくところを考えています。やはり,調停的な手続は必要だとは思っておりますが,それを裁判所の中でやるのか,外でやるのかも含めて,まだ,議論の最中でございます。 ○髙橋部会長 ほかに,子どもの所在の特定は,一応,建前は中央当局がかなりやってくださるわけですが,しかし,入国管理か何かで日本に帰ってきていることは分かるけれども,国内でどこにいるのか分からないというときに,ここにもありますが,公示送達で裁判をするかというのが訴訟法的には問題になります。やらないという理屈のほうが難しいかもしれませんけれども,これはどうですかね。日弁連は公示送達には反対ではないということでしょうか。まだ結論を出す必要はありませんが。 ○棚村委員 送達は難しいのではないですか。欠席ということであればあり得るのですけれども,居所が分からないので公示送達というのは,失踪宣告とか,ああいうようなケースだったらいいですけれども,相手方があって,しかも子どもがいて,それについて全く資料やいろいろなものがきちんと十分でない中で,判断だけできるというようなことになりますかね。ちょっと公示送達というのは国内を前提とした事件だと,国際的な事件でこういう居所が分からないケースでできるのか,だから,僕の意見はできるだけ中央当局とか,いろいろな関係機関に連携をしてもらって,頑張ってもらって情報を集めると。それが集められないときに返還だけの申立てをできるかという問題とも結びつくように思います。   それに,要するに居所は分からないけれども,公示送達でもって判断ができるという問題も出てくるので,公示送達について本人出頭主義というのは,ガイド・ツー・グッドプラクティスの中に出てきます。本人,とにかく少なくとも子どもが所在地にいて,そこで裁判をやるのに子どもがどこにいるかとか,会えないとか,子ども自身の様子も分からないままに裁判だけをやるというのは,裁判の中身自体に問題が出てくると思うので,手続にも問題が出てくるし,ちょっと公示送達は難しいのではないでしょうか。要するに,居所が分かって協力もしないし,出頭もしないし,何も反応がなかったから,結果的には認められてしまうというのはあり得ると思ますが。   ただ,反論の場所とか,いろいろなものを作るときに,申立ての中に出てきますけれども,所在が分からないままに申立てをした場合に,どうかという問題がちょっと出てくる感じがします。それをやってしまうと,裁判所が探さなければいけないということになり。裁判所が探せなければ最終的に公示送達という,そういう流れになってくると思います。ただ,子の問題の解決とか,その性格からいって,迅速に審理を進めて早く判断をして元の居住国に戻そうというのはよく分かりますけれども,公示送達でやっていいかということについては,やはり相当疑問が残っています。 ○豊澤委員 今,棚村委員がおっしゃられたように,入国したことは確実だけれども,最初から所在が不明のままの場合というケースで公示送達を使って手続を進めていいのかというのは,確かに問題があると思います。 ○棚村委員 現地にいないと駄目ですよね。 ○豊澤委員 最初は居場所も分かっていて手続が正常に進行していたところ,その後に所在が不明になってしまった場合,申立人あるいは中央当局に子どもの所在調査をお願いしても所在不明で,ただ,出国した気配はないというような状況のときに,手続が途中で止まってしまうのか,それとも,そうやって自ら所在を隠してしまったようなケースについては,公示送達を利用するという設計も考えられないわけではないかもしれません。ただ,そういったことをして実効性があるのかという問題はもちろんありますので,検討の必要はあろうかと思います。 ○棚村委員 結局,居住国にいて現にいるということが要件ですよね,返還命令の。それがどこにいるかが分からないということは,出国記録とか,入国記録との関係では出てきますよね。それでも分からないということが起こったときに公示送達ということですか。 ○髙橋部会長 そうであれば有り難いのですが,条約との関係で,そうすると申請者は空振りになってしまうのですよね。 ○棚村委員 申請できないと思いますけれどもね。 ○髙橋部会長 そういうのは条約の関係でどうでしょうか。条約はそれは許容しているのですか。また,お調べいただければ結構ですけれども。 ○辻阪幹事 基本的には中央当局は採るべき手段を全て採れば,それでいいということになっているので,どこまでやらなければいけないとか,全部,尽くさなければ条約違反だということになるわけではございません。 ○髙橋部会長 関連して管轄というのも,民事の財産事件ですと余り深刻ではないのかもしれませんが,ここではかなり深刻で,先ほど来,専門家もいなければいけない,裁判所の専門家もそうですが,代理人のほうの専門性も恐らく要求されてきて,言葉を選ばずに言えば,どこどこ地裁何とか支部で十分できるかというと,それは難しいかもしれません。しかし,その支部,支部は正式には管轄ではないのですが,支部のところに母親と子どもがいることははっきりしているというときに,どこまで出てきなさいと言うべきなのか。管轄の原則だとそこに行くべきですよね。現に住んでいるところに,母親と子どもが住んでいるところで裁判すべきなのですが,管轄の集中をどこまでやるべきか。御案内のように特許事件ですと,東京,大阪と割り切っており,会社更生法も割り切りましたかね,財産事件ですと結構割り切れるのですが,いつも日弁連で申し訳ないのですけれども,日弁連が一番勉強されているようですので,もちろん,結論を出さなくていいのですが,弁護士界はどんな感触でいらっしゃいますか。 ○磯谷幹事 正に,今,おっしゃっていただきましたように,中でもこの点は結構割れております。ですから,現状,固まった何か方針ということを申し上げるのは難しいです。飽くまでも個人的に申し上げますと,昨年,外務省や法務省も御協力いただきまして,シンポジウムをやらせていただいた中で,やはり管轄の集中というのは非常に重要なポイントなのだろうと考えておりますので,相当集中させる必要があるのではないかとは個人的には思っておりますが,まだ,なかなか難しい問題でございます。 ○金子幹事 次回に恐らく管轄の集中のところを御議論いただくことになろうと思うんですけれども,この問題も結局,外国にいる申立人が日本にどの程度の頻度で来ることを想定する手続として組むか,それから相手方である日本人が裁判所に出頭するとして,それも一手続の中でどの程度の出頭を要するものとするのかというあたりと,かなり関係する話ではないかと思っているんですね。   例えば基本的には書面の審理をずっとやっていて,最後に両当事者に一度,裁判所に来てもらい,そこで足りない部分を双方から事情を聴いて,あるいはそこで集中的に調停なり,和解なりの道を模索するというような手続を想定すると,最終段階に一回だけ来てもらうということも考えられなくはないと思うのですよね。そうした場合の負担という意味では,さほど日本のどこであっても,例えば東京一か所に来てもらうということでも,さほどの負担にはならないのかという気もしますが,他方,基本的に何回か開いて,そのたびに来てもらうということになりますと,これはまた,双方の負担も考えなければいけないということになりますので,その辺の手続も念頭に置きながらということになってくるのかなという気がしています。 ○髙橋部会長 どうも当事者のことだけ考えていれば,普通の管轄はいいのですが,これは結局,命令が出て強制執行といっても,所詮,間接強制でしょうし,やはり元の国に帰ってもらう,元の国に帰ったところで,その国で誰か迎えに来てもらわなければいけないというように,実際上は,うまく円滑に進めるためにはいろいろな人の協力が必要で,そうすると,代理人,弁護士さんもそういうことにたけた人,検討事項に裁判官のネットワークというのがありましたが,検討事項としてはそこまでなのでしょうが,実際は弁護士さんのネットワークみたいなのも重要になってきて,そうだとすると,そういう弁護士さんが現実に一定数いるのは,例えば東京とか大阪とか,ある程度,限定されてしまうのかもしれません。そのあたりをどう考えるかなのですが,しかし,代理人がいるかいないか,たくさんいるかで管轄を考えるというのは,民訴では考えたことがないわけですので,理屈が立ちにくいのです。そのあたり,いろいろ率直に御議論いただければと思います。 ○大谷委員 先ほど金子幹事がお話されたような感想を私も同じく持っておりまして,手続がどのようなものになるかによって,実際,外国の手続を見ていますと,最後にトライアルで何日間か集中して,そこに外国からは一回行けばいいと,それまでの期日も,その国にいる当事者は出頭する場合もあるが,実際の尋問とかが行われるわけではないといったような手続が比較的多いように,私が見ている範囲では感じております。そうだとすると,本人の裁判所へのアクセスそのものは,実はそれほど問題ではないかもしれない。代理人や裁判官の専門性ということのほうが重要かもしれないとは個人的には思っております。   ただ,先ほど磯谷幹事も発言されましたように,日弁連の中では管轄の集中につきましては,連れ帰ってきた親は実家に帰ったりしますので,全国,どこにも帰る可能性があるので,余り集中させると当事者の負担になるという議論が強く,その点につきましては,今後,もし可能であれば日弁連のほうでも,実際,全国の弁護士が特にインカミングケースで相談を受けた事例がどの程度あるのかということで,全国分布あるいは件数の把握ができればとは考えております。   それから,弁護士同士のネットワークとおっしゃったことと,弁護士の専門性の件ですが,棚村委員が先ほど御紹介くださいましたように,イギリスではハーグの返還手続を専門に扱うローファーム,ソリシタのオフィスが現在,35ぐらいかと承知しておりますが,リスト化されて,その法律事務所が申立人側の代理人をすることになっております。相手方のほうにも,その情報自体はインターネットでも公開されていますので,相手方もその中から代理人を選ぶことは可能ですが,実際には相手方はイギリスの地元の各地の弁護士に頼む場合があるそうです。そうしますと,ハイコートで申立人側は常に専門家の弁護士,相手方のほうは地元の弁護士という場合もなきにしもあらず,その場合に相手方の弁護士がハーグ条約を十分に理解していないために,抗弁の出し方等が不十分であったために,簡単に負けてしまうといったようなことが起きるということをイギリスのハーグ専門弁護士から聞いたことがあります。   耳情報だけですから,どこまで一般化できるか分かりませんが,そうしたことを考えますと,特に日本での返還手続を考えますと,日本にいる相手方の裁判所への物理的なアクセスということも重要ではありますが,ただ,相手方にとってもハーグ条約を十分に理解した防御の方法がきちんとされるということを考えますと,代理人が専門的であるということも十分に重要なことでして,その場合,御指摘のありましたように,実際には全国でそういう案件を扱う精通した弁護士というのがある程度,大都市に集中して,そこから当事者に聴取に行くと,打ち合わせに行くといったことにならざるを得ないのではないかと個人的には考えております。   すみません,弁護士のネットワークのことを聞かれたのに,話があちこちにいってしまいました。弁護士のネットワークはございます。ただ,ハーグネットワーク裁判官のようなある程度,制度化といいますか,そこまではいっていませんで,本当に各国でハーグ返還手続を扱う弁護士が事実上,ネットワークをしている,若しくはそういう案件をよく扱う弁護士が入っている協会がございます。その中でお互いに連携を取り合いながらやっていると。また,アメリカなどはそうした専門弁護士が数多いわけではございませんが,ハーグ返還手続の管轄は連邦裁判所のほか,州裁判所にございますのでアメリカ全土でハーグ返還手続が行われるわけです。そうすると専門ではない弁護士が扱うことがありますので,ニューヨークやカリフォルニアにいる専門の弁護士が,ローカルの弁護士を助けながらやるといったような形の国内でのネットワークというのも事実上,生まれてきているように思います。 ○髙橋部会長 そのようなことを考える前提としてということで,先ほど金子参事官からも御指摘がありましたが,手続の全体をどうイメージするか,書面でどんどんやっていく,日本の国内手続法でいえば仮差押え,仮処分のようなことを考えるのか,あるいは人身保護法ですとあれは確か公開法廷なのですね。似たような手続だと思いますが,ただ,交互尋問ではなくていいのだと思います。そして,申立人本人も先ほどの話ですと日本に一度は来てくれるほうが有り難いということなのですが,これは,しかし,法律上,強制はできないかと思いますけれども,実際はそうしてもらうということ,つまり,書面でどんどんやっていって,最後に実質上の両当事者,父親,母親の意見聴取か,尋問のようなことをする,こんなイメージなのか,しかし,返還拒否事由はそれで済みそうなのかどうか,不法に連れ去られたというほうはそれでいきそうなのですが,返還拒否のほうは,これは私も不勉強で知りませんが,各国のイメージが何かお分かりの方がいらっしゃれば,あるいは日本での見通しをお持ちの方は御発言願えませんか。やはり,そう書面だけで返還拒否できるかなという気もしないではないのですが,棚村さん,何か情報があれば。 ○棚村委員 今,やはりDVとかファミリーバイオレンスの問題が本当に深刻になって,それにさらされている子どもの心理的なダメージとかトラウマ,そういうことについては認識が非常に深まっています。ですから,そういう意味で,ただ,宣誓供述書とか陳述書みたいな形で出てくるのですが,子どもについても一定の年齢になったら,年齢に応じた子どもの様子の調査とか,そういうものが必要になってくる。オーストラリアなんかもほとんど書面審理でやるのですけれども,お子さんについてはやはり児童精神医学みたいなのをやっている精神科とか,心理学のエキスパートとか,そういう人たちの報告書も必要だとしています。   つまり,裁判官が直接会う必要はないけれども,そういう専門家がお子さんの様子を見たり,カウンセリングをしながら確認をしたりして報告書を上げるとか,このあたりでやはり子どもの状況や心情の把握は必要になってくると思うんですね。ただ,余り口頭証拠で証人だとか,いろいろな審理・調査をやって,対審構造でやってしまうと審理はかなり時間も掛かるし,難しい。ただ,必要な範囲では本人の話とか,あるいは,ただ,DVなんかですとやはり基本的には警察だとか配偶者暴力支援センターの相談票とか,それから診断書とか,いろいろなものが出てきます。だから,多分,そういう中で御本人の話を聴いたり,お子さんの話を聴いたりで絞れるのではないかと思うのですが。   ただ,最近,ハーグで6月10日に出ているものを見ますと,かなりいろいろな形の暴力,それが取り上げられていて,それで返還の拒否が認められたケースも増えてきています。前は身体的な暴力で怪我をしたとか,骨折したとか,そういう暴力が中心だったのですけれども,心理的な形での暴力,それによるダメージみたいなものがだんだん専門家を使って,そういう証拠なり,資料が出されたときに,セカンドオピニオンではないですけれども,そういうものを裁判所のほうでやはり用意をして,どちらの言い分が正しいのかというようなことをやらなければいけない   だから,なかなか迅速な審理といいながら,実は6週間という縛りが全然守られていなくて,特に返還拒否のケースは286日平均,2008年で掛かっているわけです。そうすると,1年近く掛かってしまっている。そういう中でいかに迅速な審理というものと適正な判断をするとか,あるいは調整で合意でもって解決をするかということは,非常に対立している部分があって,調整するのが難しいのかなという感じです。ただ,今,やはり返還の拒否をめぐってはファミリーバイオレンスの範囲とか,しかも目に見えないような形のものが結構増えていますので,それだけにどうやって客観的に判断をしていくかというのがなかなか難しいのではないかなと思います。 ○朝倉幹事 私どもは保護命令を所管しているものですから,御参考までに申し上げますと,日本の保護命令でも,法改正によって,直接の暴力だけでなくて精神的なものが入っており,それによって1日程度ですが,審理期間が長くなっているというところがあります。   保護命令における実際の判断の仕方は,まずは申立人から話を聴きます。保護命令の申立ての際,診断書等があれば全部出されますが,申立人が口頭で暴力を受けたと述べているのみで診断書がないものもあり,診断書があって,けがをしたのは分かっても,必ずしも殴られたかどうかは分からないというものもあります。しかも,暴力も一回限りでいいわけではなくて,継続的に毎回診断書を取っているわけでもないということになると,やはり,申立人本人の話をどうしても聴かざるを得ないところです。また,相手方も呼び出して少なくとも一回は話を聴かないといけないだろうと思います。したがって,返還命令についても,書面審理のほか,本人について一回は聴かざるを得ないのではないかと思うところでございます。保護命令では,審理にどれほど時間を掛けるかどうかというのは,正に当事者にどの程度準備をしていただけるかというところにかかっており,本件の返還命令の審理についてもそうなのかなと思います。 ○髙橋部会長 忘れてしまったのですが,人身保護法は疎明でしたかね。証明ですか。 ○棚村委員 疎明です。 ○髙橋部会長 疎明ですね。実際の運用がどうかは別として条文上は疎明ですね。子どもの返還は証明なのでしょうね。それも検討ですか。 ○金子幹事 一応,証明を原則と考えておりましたし,特に抗弁事由についてはかなり高い証明度を要求するというのが諸外国では言われております。それは原則返すという下での例外という位置付けなので,証拠の優越では足りないと言われている国もあると聞いております。 ○犬伏委員 これからの検討事項の中に入ってくると思いますが,家裁が恐らく担当するときに,調査官をどこまでお使いになれるのか,職権ということで調査官に沖縄に行けとか,札幌に行けと,東京の調査官に出張命令になるかどうかは別として,職権での事実の調査とか,職権証拠調べというようなことも恐らくこれからは考えて,どこまでということにはなろうかと思うのですけれども,本人を呼ぶとか,そういうことと絡んで,どこまで調査官調査をするのか,非訟手続ということでの証拠の問題になるのかというようなことも,これからの検討課題かと思っております。 ○豊澤委員 家裁調査官の話が出ましたので簡単に御説明しておきたいと思います。行動科学の専門家として専門的知見を駆使して状況について分析し,あるいは将来的な予測も立てるというのが本来的な役割とされています。子どもの意見の聴取とか,子どもの真意の確認とか,あるいは子どもの成熟度といった点,条約上の要件との関係でいえば,そういったところには家裁調査官の活用の余地が当然あろうかと思います。   もっとも,どの程度,どうするのかというのは非常にまた難しい問題でありまして,先ほどの御説明の中にもありましたように,条約の建前上は返還を根拠付ける事由については申立人側に,返還を拒否する事由については原則的に相手方のほうに証明責任が課されていて,第一次的には当事者から必要な資料が提出されるという枠組みになっているという理解のもとで,裁判所の職権探知をどの程度補充的なものと見るのかという仕組みの問題もあります。そういったところからすると,今,申し上げたような子どもの意向の聴取であるとか,子どもの真意とか,成熟度,こういったところは十分考えられると思いますが,それを超えて何か広く対象になるのかといえば,限界はあるのかなと思います。   また,管轄の集中との兼ね合いで申し上げれば,家裁調査官が遠くに離れている相手方あるいはその子どもの状況を出張の形で調査してくるとか,そういった運用は当然可能ですし,また,相手方との関係でいえば,最寄りの裁判所までは出てきていただく必要があるんですが,電話会議やテレビ会議等を使って手続を進めていくことも可能ではあります。   この管轄の集中の問題とか,手続をどう仕組むのかという問題につきましては,実際に6週間以内に結論が出せないという実情が外務省の資料の中にありますけれども,やはり,条約上,できるだけ迅速な判断が求められていることには変わりがないわけで,そういったことが可能となるような手続構成ないし必要な資料が裁判所に出てくるような仕組みになっていないと,結局,なかなか裁判所の判断に熟したところまでいかず時間ばかりがたってしまうということになりかねません。   時間がたっての返還命令は,子どもにとっても良くないでしょうし,時間がたった上で返還拒否ということになれば,外国からの非難を受ける可能性もあろうかと思います。迅速処理が非常に重要であるということを前提にした手続の在り方,そういったことを考えていく必要があるのではないか,基本的な視点がやはりそこらにあるのではないかと考えています。 ○清水委員 返還拒否事由の判断につきまして,当事者主義を補完するものとしての職権主義という基本構造であるとしますと,調査官を活用する場面はあるにしても,その場面というのは限定的になるのではないかと思います。現実に,外国で暮らしていた子が日本に来た場合,その子の意向調査というのは,担当調査官としては非常に難しい調査になると思われます。先ほど外国語に堪能な調査官がいるのかといったお話があったかと思いますが,実態としては通訳を介して調査するということになると思いますので,子どもの微妙な意向を調査するのは,日本の子どもの場合ですら,子どもの意向を確認するというのは難しいのですけれども,まして外国でずっと暮らしていた子についての意向確認ということになると,実際問題として今の調査官が直ちに行えるかというと,そういうものではないということはよく御理解いただきたいと思います。 ○髙橋部会長 恐らく条文上は職権主義になるのかもしれませんけれども,実態としてはそう期待できるものでもなさそうだということですね。条文上も変えることもできるかもしれませんが,ほかにもいかがでしょうか。 ○織田幹事 今更の質問になってしまうのですけれども,これから作ろうとしているこの制度の位置付けといいますか,取り分け何度か部会長のほうからも人身保護法の話が出ましたけれども,現在,渉外事件では人身保護手続によるものも若干ありますが,この制度はいわゆる並列的なものを作ろうとしているのか,それとも子の奪取の問題についてはこれで一元化しようという方向にしようとしているのか,その辺をちょっとお尋ねしたい,あるいはこれからの検討課題にする,そういうことでよろしいのかということをお尋ねしたいと思います。 ○髙橋部会長 これはどうですか。 ○金子幹事 この担保法を作ることによって,今のところ,可能な他の手段を妨げることになるとは考えていません。条約上も直接の手続を使うことを妨げるものでないという条約の文言があったと思うのですが,条約に基づく返還手続と,そのほかの返還手続は並び立つものだと理解しております。 ○髙橋部会長 法律上はそうなのでしょう。実際,特に弁護士さん,代理人が今度,どっちを使うかというのはまた別問題でしょうが。 ○道垣内委員 単なる確認です。子の意見を聴取するとか,暴力の可能性があるか否かを調査官が調査するとかといった話がありましたけれども,そこにおける子の意見というのは,例えばA国から日本に連れ帰られたというときには,日本とA国とどちらがよいかということに対する意見であることになるわけですね。つまり,この手続自体がA国に戻すという手続であるというのであるならば,お父さんがいいのか,お母さんがいいのかというのではなくて,A国がいいのか,日本がいいのかという意見であるという理解でよいのでしょうか。また,身体的若しくは精神的な害を受け,又は他の耐え難い状態に置かれることになる重大な危険があるというのは,お父さんとは限りませんが,A国のお父さんが非常にアクティブな人で,A国にいるだけで絶対に見つけて暴力を振るってくるという場合もあると思いますけれども,そうでないときには,A国にいることが危険であるかどうかであって,当該お父さんが暴力を振るうかどうかということは直接には問題にならない。お父さんに関する手続でない以上は,こういった理解でよろしいのでしょうか。 ○金子幹事 この問題については専門家がたくさんいらっしゃると思いますが,私のほうからまずお答えしたいと思います。一点目は恐らく返還拒否事由のうちの子が返還を拒みに関わる問題なので,元いた国には帰りたくないよというのが大事ということになって,お父さんと一緒に暮らすのがいいかどうかという問題ではないことは,条約上,私は明らかだと思っています。もちろん,調査官が入ることによって,これが真意かどうかというのは確認しなければいけなくて,今,一緒に住んでいる親の影響でそう言わされているのではないかとか,そのあたりは恐らく調査官の得意とする分野ではないかと思っています。   もう一つ,後半の質問ですが,これは結局,子が常居所地国に戻ったときに,どういう生活状況になるのかというのは,ある程度,想定して,例えばお父さんがかつて子に暴力を振るっていても,お父さんと一緒に暮らさなければいけないわけではないので,別の方法でお母さんとお子さんがお父さんと接触しないような形で暮らせるということが担保できれば,それは一つの返還拒否事由を否定するほうの事情になると解されているのだと思います。返還したときにどういう生活状況になるかというのを,ある程度,想定した上でこの事由に当たるかどうかというのを考えなければいけない。   ですので,それで常居所地国の情報が是非とも必要になるのですけれども,戻ったときにお母さんと暮らすのか,お母さんと暮らせなくてもきちんとした安全な施設に入れるのか,お父さんとはアクセスしないで済むのか,あるいは多少はあってもお父さんが大丈夫な人なのか,そのあたりが事実上なのか,あるいは法律上も担保できるのか,最終的には裁判所がその辺を踏まえて,要件を充足するかどうかを判断することになりますが,抽象的にはお父さんと一緒に暮らすことが危ないかどうかという問題ではなくて,その辺の周辺事情も含めて,そういう子どもが耐え難い状況に置かれるかどうか,置かれる重大な危険があるかどうかを判断するということになると思います。 ○道垣内委員 よく分かりました。それが結局,アンダーテーキングの問題にもつながってくるのだと思います。ただ,そうなると,けがをしている,骨が折れているという診断書を出したからといって,直接には証明したことにはならないということですよね。 ○金子幹事 それだけでは駄目ですね。 ○棚村委員 暴力があったか,ないかということよりも,暴力があるとか,危険性があって,子どもの生活や子どもに悪い影響が出るというか,そういうことが問題で,DVだけ主張しても,それがあっても駄目だと思います。 ○道垣内委員 悪い影響が出るか否かが,帰国することによってそうなるのかという問題ですね。そこら辺が若干,私は今までの議論の中で不分明なところがあるのではないかという気がするのですが。 ○髙橋部会長 法律家が分析するとそうなるのでしょう。御指摘のとおりだと思いますが,そこがいわく言い難いところもあるのでしょうけれども,ある程度,管轄やら調停やらの話の中で,手続のイメージも書面を中心にするけれども,まだ,決めたわけではありませんが,やはり,一回ぐらいは申立人相手方が裁判所に出てくるようなのがノーマルな形であろうというようなイメージにはなってきたかと思います。それ以外は裁判所の中でできることは限られますから専門家が会って,それを報告書なり陳述書なりにして,書面で出てくるということにはなるのでしょうが,6週間というのは民訴的に言えば訓示規定のようなものですかね。 ○横山委員 条約上は,要するに相手国からそれを超えてやったときはどういう進捗状況なんだと,そういうことを報告しなさいというだけの話なので,そこはヨーロッパとは違うところで,ブリュッセルⅡの話とは違うのです。 ○髙橋部会長 6週間というのは,それより後れたときの理由説明義務の問題だということですね。 ○大谷委員 6週間に関してですが,横山先生が御指摘くださったとおり,それができなかったときに理由の説明を求めることができるという規定になっておりますので,条約が6週間以内に決定することを義務付けているとは理解しておりません。ただ,先ほどどなたか御指摘になられましたように,子どもを返還する方向で決定が出る場合には,早くしないと子どもに更なる困難とか悪影響をもたらすというのは,各国のハーグ条約を扱っておられる裁判官が一様に口にされるところで,私も同じような感想を持っております。   そこで,自分が見ている範囲内の限られたことで恐縮ではございますが,各国のハーグ返還手続を見ておりますと,最初の早い段階で抗弁事由が立ちそうかどうかということを相手方に主張の骨子だけでもあるいは出させて,それで裁判所がその後,どう進行するかということをケースマネージしているという印象を受けています。それで,パーマネントビューローが出しています審理日数も平均日数,あるいは最長とか最短が出ていますが,返還する場合には早くということは,どこの裁判所も念頭に置いてやっておられるのではないかという印象を受けておりますので,そこはどのような手続にしていくか,最初の段階で見極めて裁判所の裁量で期日指定を進行していかれるのかということではないかなと思っております。   私自身,今,日本はハーグ条約の締約国にはなっておりませんが,例えば日本からイギリスに子どもが連れ去られますと,ハーグ返還手続に極めて似たような構造の審理手続で,日本に子どもを返すかどうかの裁判が行われます。そうした裁判に関わった経験が何度かございますが,やはり,6週間を目指してやっておられて,ただ,その中で抗弁が出てきますと,実際には審理のために裁判所が判断するに必要な主張,立証をさせて,裁判所としても納得がいくようなものがそろった中で判断しようとしますと,どうしても延びてしまうという,結果として3か月掛かったりというような経験をしておりますので,そのあたりは手続のイメージを持つときに,どのぐらいの審理期間で,どういった構造にしていくかということは,十分に検討していく必要があるのではないかと思っております。 ○髙橋部会長 訴状がいきなり来て始まるのではなくて,中央当局からの何らかの通知で始まるのですよね。多分,通知はするのでしょう。あなたに申請が来ていますというような。 ○辻阪幹事 相手方からそのような申請書が来ていますということを連絡するということになります。 ○髙橋部会長 ですから,相手方のほうもいきなり来るのではなく,裁判の前に覚悟はしているというか,予想はしているのでしょうね。ただ,本人だけですと右往左往するだけで,法律相談を受けたり,法テラスに行ったり,しかし,やはり代理人がいないとまずいでしょうね。代理人は裁判手続になってからは付添命令を制度上はできますが,中央当局の段階でも弁護士への相談を勧告はするでしょうね。でも,その辺を実務上,どう組んでいくかということでしょうか。大谷委員が御指摘のように抗弁事由をきちんと用意して,すっと出してくれれば審理は早いですけれども。 ○清水委員 この事件について迅速な審理が必要であることからしますと,やはり中央当局からの協力が不可欠ではないかと思います。一つにはいろいろな判断資料を提出していただく必要があるかと思いますが,その後,翻訳の関係も先ほど出ていましたけれども,まず,ゼロから出発するのであるとするとどうしても時間が掛かりますから,可能な部分についてはできるだけ御協力いただいて,そこの連携を取る必要があるのではないかと思います。したがいまして,そういう意味で,管轄集中にも関係してくることではありますが,中央当局との連携ということがこの事件類型の場合は,大事になってくると思います。 ○横山委員 何か裁判所や外務省に負担を掛けるのもあれですが,私はこの前の国際裁判管轄法制部会のときにこの部会は難しいと,ほかの部会とちょっと違っていて,シャドーボクシングのように外国が日本でこういう管轄権を認めると,外国の判決を認めなければいけないと,シャドーボクシングをやっているようなところで,そこがユニークなところだというような,正しくこの条約はもっと激しいので,相手次第というところだろうと思います。普通のストーリーでいくとドメスティックバイオレンスがあると,あるかないかは本当は分からない,どっちがいいのか分からない。   結局,決め手になるのは本案の常居所地国で,もともと子どもがいた国で本案の監護権に関するものをやるまでの間,きちんと母と子が一緒にその常居所地国に滞在できて,きちんと安全に本案審議できる状況に置かれるようにするということがポイントになってくるわけですけれども,返還を求めていく国,子どもの常居所地国で自由にドメスティックバイオレンスを振るう父親が子に対して,母に対してアクセスできるような状況で,そのことについて何ら常居所地国は適切な措置を採る制度もないし,採りようもないというようなことであれば,仮に本当にドメスティックバイオレンスがあるかないか分からないけれども,やはり返せないですよね。   それは間違いないことで,6週間,どうこうという話も結局は常居所地国がどんな国なのかということに懸かってきて,きちんとインフォメーションが与えられるのか。アンダーテーキングの先ほどお話が出ましたけれども,本当に守らせるような,また,担保するものもあるのかどうなのかということに懸かってくるので,全ての国との関係で6週間というのはまず考えにくいと思うのです。だから,いつもこういう話はどの外国とお話になるか,やはりかなりの部分は相手国次第によっているということになるので,余り6週間とこだわる必要はないのではないかなと思います。 ○髙橋部会長 ただ,小さい子どもというのは,数か月で常居所地国の元いた言語を操れなくなるという話も聞きますから,やはり,返すなら早いというのはそのとおりなのでしょうが,しかし,返還拒否事由が10も20も出てきたら,裁判所としても主張自体失当とはなかなか言えないでしょうし,その辺をどうイメージしながら手続を組み立てていくかでしょう。ほかにいかがでしょうか。フリーディスカッションですからどうぞ御遠慮なく。 ○棚村委員 先ほどちょっと織田先生か誰かもおっしゃっていましたけれども,今,私たちは家裁の家事事件という形での子ども,監護者の指定とか子の引渡しという,審判とか審判前の保全処分,それから人身保護法の手続,それぞれ一長一短があって,今回のハーグの条約に基づく子どもの返還というものをどうイメージするか,位置付けるかというのは,既存の制度と併存するわけですし,それを妨げないわけですけれども,最終的には影響を与えると思うのです,先生がおっしゃったように。   ただ,そういう中でほかの国も並存させて,そして影響はあるけれども,独自の新しい手続として構想するわけです。そのとき,先ほどから出てきますけれども,早い返還という条約の目的,早く返還するという部分と,それから子の利益のために返還をさせないというときの手続として,やはり,今までの家裁の手続とか人身保護手続が十分でなかった部分とか,あるいは限界があった部分とかを是正して新しいものに託すことができるのか,そうでなくて第三のものではあるけれども,一つの選択肢,こういう目的のための選択肢が増えたという形にするのか,そのあたり,多分,個別の各論を議論するときに大きな影響が出てくるように思います。   今日の自由なディスカッションというのは,基本的に今ある手続とこの新しく作る返還手続がどう違うのか,どういう部分で同じところがあるのかとか,どれを使ったほうがいいのか,選択の範囲を広げるという部分と,今まであるものについてのいろいろなそれぞれの問題点とか,そういうものをある面では補うような制度として構想するのか,最終的には裁判管轄とか,それから当事者の適格とか集中とか,いろいろなことを申立ての仕方とか,それから証拠として審理の原則がどう在るべきかというときも,今ある人身保護とか,それから正直言って人身保護もいろいろな事件があって,裁判所や裁判官やいろいろなところによって,随分,やり方とか違ったり,被拘束者の代理人もついているのですけれども,国選代理人がほとんど何のお仕事もされないということもありますから,今の実務の現状のいろいろな子の引渡しなり,返還の手続やそういうもので新たなものを構想していくのか,それとも,もう一つは先ほど言ったみたいに,今,家裁の手続がありますので,家裁の手続を別な意味で国際性と,それから,それにふさわしいスキームとして,今,家裁がやっているものをむしろ独立させるというのか,恐らくそのあたりのところでイメージがもし皆さんの中で議論してシェアできたときに,多分,各論の議論もどこかに収れんされたり,クリアになってくるのかなと思います。   だから,私なんかは人身保護もありますけれども,人身保護が結局,昭和50年代にものすごく使われました,早くて強力だということで。ところが非常応急的仮処分的な判断でやりますので,いろいろばらつきがあって,やはり,家裁がむしろ調停とか,いろいろなことで強制力が弱いとか,遅いとかということのマイナスを家裁が取り戻して保全処分とか,いろいろなことをやったり,直接強制も認めるとか,いろいろな形でもって前進したわけです。このハーグ条約というものが新たな問題や事件の解決の手段を登場させたと理解することができます。そのときに第三の類型として,全く独自のものが必要なのか,それとも,今までのもので足りないようなものについてその選択肢を多様化させるための一つとしてやるとすれば,これまでのモデルを少し改めるような形の提案というのが必要になってくる可能性があります。もちろん,ハーグ条約の目的との関係もありますから,そのあたりが多分,これからの議論の中で重要な点かなと感じました。 ○相原委員 今,棚村先生がおっしゃったこれからの問題とか,現在の仮処分とか,御指摘はそのとおりだと思います。一方で,実務家の立場で,フリーディスカッションでしたので,実際の家事事件をやっていて離婚事件をやったときには,ちょっと本当に後ろ向きの問題になってしまうのかもしれないのですけれども,現実問題として母親が子ども,特に未成年の子どもを連れて家を出るというのが当然みたいなのが日本の中の実務なわけです。   それを実際の日々の事件でやっておりますので,確かに,棚村先生がおっしゃるような問題は,本当は半分,夫側の代理人もやったりしますから本当によく分かるのですが,一方で,現実問題はそこが非常に重要なのです。日弁連の中の意見の非常に重要なところで,やはり,それに関して物すごく危機感,問題意識を持っているという人たちが非常に多くいます。直接,ハーグ条約とは関係ないと言いつつも,今のおっしゃったような問題点とか,新しい方向性が出てくるとすると,こういう問題に関しても,是非,頭に置いてほしいというようなことが非常にアピールされております。最初のフリーディスカッションですので,ちょっと念のために申し上げさせていただきます。   あと,大谷委員のほうが詳しいのですが,ちょっと聴きましたら,保護命令なんかも日本の場合は母と子どもが逃げるというのが大前提になっているのですけれども,海外の状況なんかからすると,逆にDVする夫に出ていけというのが在り方としてあるとかですそういうところの在り方自体が大分,日本の場合とは異なっており,その点はやはり忘れられてしまうと,これに対する反発がどうしても出てきてしまうということがあります。本当に十分お分かりのところを大変恐縮なのですけれども,念のために申し上げさせていただきました。 ○髙橋部会長 ほかにいかがでしょうか。技術的な側面だけでは割り切れないものが多々あるという,物の見方も両方からあるということの御指摘を伺いましたが,では,フリーディスカッションとしてはこの程度でよろしいでしょうか。 ○大谷委員 申し訳ありません,何度も。一点だけ,検討課題で申し上げるのを失念していた項目がございましたので大変恐縮ですが,他の締約国の担保法の中には,子の返還命令が出された後に何らかの事情変更,例えば子の異議の抗弁が認められなかったような事例かと思いますが,返還命令が出た後に子が強い返還に対して抵抗をしたとか,あるいは子ども自身のいろいろな福祉の関係の事情の変更かと思われますが,そうした場合に,一度,出された返還命令を取り消すという制度を設けているところがございます。そうした制度を設ける必要はないのかということも検討課題に入れていただければと思います。 ○金子幹事 今の取消しの点は検討させていただきます。 ○髙橋部会長 それでは,本日のフリーディスカッションはこの程度にいたしまして,今後のスケジュールについて事務当局からの説明をお願いいたします。 ○金子幹事 今後のスケジュールについて,若干,御説明をするとともに御意見を伺いたいと存じます。既に部会の日程につきましては事実上ではありますが,8月を除きますとほぼ月2回のペースで日程を御予定いただいているところであります。この日程を全部消化するのかどうかというあたりに御関心があるのは,委員の方々にとりましては当然なのだろうと思います。そのような意味では,この段階でいつまでに審議終了するのかと明確にできればいいのかもしれませんが,本日のところは,なお,その点については留保させていただければと思います。   といいますのも,もとより当部会におきまして必要な議論を尽くしていただくことが肝要なわけですけれども,そのためにどの程度の時間を要するのかということにつきましては,本日,検討すべき論点を提示させていただきますが,これだけでもかなりの分量がございますし,また,本日のフリーディスカッションでの御意見をお聴きしていますと,それなりの部会の回数を重ねて御議論いただく必要があることは間違いないところだろうと思います。では,それが何回あれば足りるのかということにつきましては,次回以降,論点についての個別的な検討に入っていただかないとなかなか予想が立てにくいということがございます。   それから,論点がそれぞれ相互に関係しているところがございます。今日も議論にございましたが,全体としてどういう手続にするのか,あるいは資料の収集,証拠調べ等をどういうことにするのかということと管轄が関係していたりとか,相互に関係することがございますので,検討の方式としましてはいわゆる二読方式,一つ一つの論点について結論を出して,それをフィックスのものとして次の論点に進むのではなく,ある程度,結論が出るところはそれで出しつつも,意見が分かれたようなところでは,当初は無理に結論を出すことをせず,次に進んで全体が一通り終わった後,もう一度,振り返ってみて制度を考えてみるということが必要になってくるかと思います。このような事情を考えますと,部会としての結論を出す時期については,今のところ,留保しつつ,次回以降の具体的な検討に入らせていただきたいと思いますので,それでどうでしょうか。   それから,もう一つは事柄の性質上,いずれかの段階でパブリックコメントに付すという手続が必要になると考えております。この問題については国民の皆さんの関心も非常に高いということもあり,その手続にどこかの段階で必ず付すのがいいかと事務当局としては一応考えておりますが,その時期がいつかということについても,皆さんの御意見を伺えればと思っております。一応,条約の枠組みの中での検討という,もとより限界がありますことと,それから一応の骨子案もあるという状況ではありますので,この段階でパブリックコメントにかけるということが不可能ではない状況にあろうかとも思います。他方,部会において審議するということが決まった以上は,もう少し部会での議論を反映させた形でのパブリックコメントを考えるべきだというのも,一つの考え方であろうかと思います。このあたり,御意見を伺えればと思っております。 ○髙橋部会長 審議のほうは余り具体的なことはまだ言えないということですが,後段のパブリックコメントの点はある程度,見通しをつけておかないといけませんので,いかがでしょうか。骨子案というのですか,今でも出そうと思えば出せます。しかし,かなり抽象的になるでしょう。管轄の集中はいいかとか。しかし,私どもの一読全部かどうか分かりませんが,ある程度,見えた段階で,それを反映してパブリックコメントに付すべきかどうか。今,事務当局から二つの案を出されましたが,いかがでしょうか。 ○大谷委員 パブリックコメントの時期につきまして,できれば少し検討が進んだ段階でということの選択肢に賛同いたします。理由は部会が設けられた以上,部会でのある程度の議論を反映したということも一つございますが,パブリックコメントに対して意見を寄せる側の立場からいたしましても,閣議了解事項は早い段階で公表していただいておりますが,骨子案は現在,外務省のホームページで御公表いただいていると理解しておりますけれども,その内容がかなりベースになってくることも予想されますが,本日の部会の審議でもそうですけれども,かなり,今までメディア等で報道はされていますものの,いろいろ検討して意見を出そうと思いますと,かなり意見を申し上げるほうの側にも準備が必要になってきます。そうした意味で,余り早い段階でのパブリックコメントではなくて,パブリックコメントの時期は少し先のほうが,パブリックコメントがなされるであろうことを考えなら準備をされる関係各機関,団体,利害関係のある方,当事者団体等にも開かれた手続になるのではないかと考えております。 ○髙橋部会長 御意見をありがとうございました。   それでは,当部会の希望としてはある程度,部会での審議をしてからというのが大多数の御意見だということでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それを前提にして,政府全体の方針もあろうかと思いますが,部会の希望としてはそうだということで。   では,次の日程,既にありますが。 ○金子幹事 それでは,次回の日程について御連絡いたします。次回の議事日程ですが,次回は平成23年7月25日,月曜日,午後1時30分から午後5時30分までということでお願いいたします。曜日が毎度,変わることが想定されておりますので,御留意いただければと思います。それから場所も次回は地下1階にあります大会議室を使用しますので御留意いただければと思います。   予定としましては,パブリックコメントの時期との関係もありますが,少し検討させていただいて,いずれにしても会議の1週間前には資料を送付させていただくということを今後,励行するつもりではおります。 ○髙橋部会長 なかなか言えないということは分かるつもりですが,こちらは聴きたいわけで,どのようなことをされますか。この検討課題に,大体,即してやられるのですか。順番です。 ○金子幹事 順番はこの検討課題に即してやっていくつもりでおります。一つ一つの項目について補足説明というものを用意します。それから案として幾つか考えられるものとしては,一応,当局としては案の選択肢を,全くフリーではなくて出せるものについては案の選択肢をA案,B案,あるいはA案,B案,C案とかいう形で出すことを考えたいと思いますし,あるいは方向性を示せるものと事務当局で考えるものは,こういうことではどうかというような形での問い掛けもあると思います。 ○髙橋部会長 よろしくお願いいたします。   以上で用意したのは終わりますが,時間が超過して申し訳ございませんが,何か言っておきたいということがございましたら,あるいは進行の希望でも結構ですが,よろしいでしょうか。   それでは,本日の部会はこれで終わりということにさせていただきます。今日は熱心な御審議をどうもありがとうございました。 -了-