法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会           第2回会議 議事録 第1 日 時  平成23年7月25日(月) 自 午後1時30分                       至 午後6時04分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○髙橋部会長 ハーグ条約部会の第2回会議を開催いたします。   では,審議に入る前に配布資料の説明をお願いいたします。 ○佐野関係官 本日は三つ,配布資料がございます。一つ目としましては部会資料2としまして,事前にお送りしました「ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備に関する検討事項(1)」というものでございます。あと,二つは本日,机上にお配りいたしておりますが,参考資料8,『「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)(アンケート調査の結果について)』と題するもので,前回の第1回目の部会の中で言及のあった外務省が実施したハーグ条約に関するアンケート結果の資料でございます。もう一つは参考資料9としまして,「国際的な子の奪取に関するハーグ条約関係裁判例についての委嘱調査報告書」というもので,これは外務省が日弁連に委託をして,各国の裁判例を分析したかなり大部な報告書になります。なお,参考資料9につきましては,一部,訂正がございますので,1枚紙が併せて机上に配布されているかと思いますので御覧いただければと思います。 ○髙橋部会長 本日は部会資料2に基づいて御議論いただく予定でおります。5時半まで時間を取っていただいておりますので,途中,3時過ぎ,区切りのいいところで休憩を取る予定にしております。   審議はある程度,論点をまとめて行いたいと思いますので,まず,部会資料2の第1の1,判断機関から,4,移送までについて事務当局の説明をお願いいたします。 ○佐藤関係官 第1,子の返還手続関係の1,判断機関は,子の返還手続の判断主体を司法当局とすることを提案するものです。条約上,子の返還の判断を司法当局あるいは行政当局のいずれが行うかは締約国の判断に委ねられていますが,子を他国に返還するという重大な効果を伴うこと,諸外国でも例外なく司法当局によっていることなどから,司法当局によるとすることが望ましいと考えられます。   2の採用する手続は,子の返還のための手続を非訟手続によるものとすることを提案するものです。本手続はプライバシー保護の観点からも,公開の法廷での審理に親しむものとは言えないこと,迅速な審理を実現するためにも厳格な証明を必要的としないことが望ましいという意味において,非訟手続で行うことが相当と考えられます。   3,管轄の(1)は,土地管轄について子の所在地を基準とし,職分管轄を家庭裁判所とすることを提案するものです。職分管轄については,典型的には家庭内で起こった紛争を発端とするという事件の性質上,家庭裁判所の判断になじみ,家庭裁判所に蓄積された事件処理のノウハウや家庭裁判所調査官の活用が考えられることからも,家庭裁判所の職分管轄とするのが望ましいのではないかと考えます。   土地管轄については相手方の住所地とすることも考えられますが,子の返還を求める手続であるという性質からは,その実効性を担保しつつ,適切な資料の収集を容易にするためにも,子が実際に所在する場所を基準とするのが相当であると考えられます。他の家事事件を見ましても,子の監護に関する処分の審判事件は,子の所在地を基準に管轄が定められています。更に複数の子が別々の場所にいる場合等に,併合管轄を認めることが考えられるため,この点についても併せて検討していただきたく思います。   (注)ですが,子の所在が不明の場合にも,適法な申立てができるものとするか,中央当局の子の所在の発見義務との関係で,どのように考えるべきかを検討していただくものです。   3の(2)は,管轄の集中について,その要否及び具体的な集中の程度を検討するものです。本手続は本条約及び担保法の枠組みや外国法制,中央当局との関係等が絡むなど,他の事件にはない特殊性を有します。それゆえに,それほど膨大な事件数が想定されない中,経験を重ねることによって,ノウハウの蓄積と裁判官及び弁護士の専門性の向上を図るという要請があること,適切な事件処理のために判断機関と中央当局との連携を強化する必要があること,外国から出頭することが想定される申立人の負担にもある程度,配慮すべきであるとも言えることなどから,一定の裁判所でのみ事件の処理ができるよう,土地管轄を集中するのが望ましいと言えます。   一方で,過度な管轄の集中は,日本全国に住所を有し得る相手方の出頭を困難にするという問題があるとも言えます。諸外国においては管轄を集中する傾向にあり,フランスやドイツ,イギリス等でも程度に差はあれ,管轄が集中されています。我が国で管轄を集中させる場合の具体的な案としては,【A案】のように東京のみの専属管轄とすること,【B案】のように大阪を加えて知的財産権に係る訴訟と同様,2庁制とすること,【C案】のようにそれ以上の管轄,例えば8高裁所在地の裁判所とすることなどが考えられます。   なお,管轄の集中を考える上では,予想される事件数がどの程度になるかが参考になるかと思われます。そこで,部会資料の4ページにおいて,外国から指摘を受けた我が国国民による子の連れ去りの延べ件数及び1年間にアメリカから我が国へ連れ去られた事案の件数を御紹介しています。これらと外国における事件数を併せ考えますと,我が国では年間数十件規模の申立て件数になるのではないかと予想されます。   3の(3)は,合意管轄や応訴管轄の要否を検討するものです。子の所在地を基準に管轄を決め,かつ管轄を集中させる必要があるとすれば,一般的には合意管轄や応訴管轄によって当事者の自由に管轄を広げることを認めるのは相当でないと言えます。もっとも,例えば3の(1)で【B案】を採った場合に,東京ではなく大阪を選択するなど専属管轄のある複数の裁判所から選択した一つの裁判所を管轄裁判所とする合意をしたときは,その合意に拘束力を認める余地があるとも考えられます。なお,家事事件手続法は第66条で,子の監護に関する事件を含む相手方のある事件で合意管轄を導入しています。   4,移送では,民事訴訟法に倣って管轄違いによる移送,遅滞を避けるための裁量移送,申立て及び相手方の同意による移送の規定等を設けることの要否を検討するものです。移送の規律の定め方は管轄の定め方とも関係しますが,例えば専属管轄を設けたとすると,専属管轄外の裁判所に申し立てられた場合の管轄違いによる移送や,3の(1)で【B案】又は【C案】を採った場合に,専属管轄のある裁判所に申し立てられたものの,他の専属管轄のある裁判所のほうが当事者あるいは円滑な進行のために都合がよい場合の裁量移送や同意に基づく移送等を観念することができ,これらを認めるかどうかが問題となります。 ○髙橋部会長 1から4で一つのまとまりといたしますが,それでは,どこからでも御意見,御質問があればお願いいたします。 ○磯谷幹事 磯谷でございます。今の論点につきまして,私ども日弁連のほうでも議論をいたしました。必ずしもまとまっているわけではございませんけれども,少し御紹介をしたいと思います。   まず,最初の判断機関の点につきましては,やはり司法が行うということが望ましいだろうということでございました。そこについては特に争いはございませんでした。   二つ目の採用手続につきまして,つまり訴訟か非訟かというところですけれども,恐らく多くのメンバーは非訟手続のほうが望ましいであろうと,事案の筋からしてそうだろうという意見でございましたが,一方で,訴訟か非訟かというところはいろいろと解釈といいますか,議論があるところだと聞いておりますけれども,性質的には訴訟と考えるべきではないかという意見もございました。特段,こだわることではございませんけれども,非訟でいいだということについて,法務省のほうからもう少し御説明を頂ければと思います。   管轄については,まず,子どもの所在地を基準にすることは賛成でございますが,具体的な集中については大変議論がございました。最も多かったのは,高裁所在地8庁を基準にして,もう少し多いほうがいいという意見もあれば,もう少し絞ったほうがいいという意見もございまして,法務省のお示しいただいた【A案】,【B案】を支持する意見は今のところはございませんでした。ただ,議論の中身としては法務省のほうでまとめていただいたところにある意味,尽きるのかなと思っております。専門性の維持という要請,そして一方で,やはり相手方の利便の問題というところが主な検討要素だったと思っております。この管轄については,日弁連としては非常にデリケートな問題と考えておりまして,もう少し会内でもしっかり議論をする必要があると考えております。 ○髙橋部会長 非訟事件というところですが,部会資料の2ページにそれなりの説明はあるわけですが,何か付け加えてというか,あるいはこの説明では足りないというか,どのあたりが足りないということになるのでしょうか。訴訟事件にしたところで公開停止ということは可能ですので,御説明をお願いいたします。 ○磯谷幹事 このあたりは解釈論といいますか,そのあたりの違いなのかなと思っております。恐らく非訟が適当であると考えられるいろいろな要素,正にここに挙げていただいたものから,これは非訟が適当だというふうな考え方が当然あると思いますけれども,一方で,訴訟の性質論と申しますか,実態的な権利義務を確定することを目的とするというふうなところから,本件は要件もある意味,かっちりと定められていて,その中で証拠で認定して結論を出していくという性質から,訴訟事件として考えるべきではないかという意見もあったということでございます。 ○髙橋部会長 事務当局として何か付け加えることは。 ○金子幹事 訴訟か非訟かという深遠な問題があるわけですが,訴訟手続を採らなければ違憲になるかというレベルでは,そうはしなくても大丈夫だろうということでありまして,そうすると,手続として訴訟手続を採るか,非訟手続を採るかという選択肢が出てくると思います。その場合に何をもって訴訟手続を採ったか,非訟手続を採ったかということについては,いろいろな御意見があると思うのですが,ここでは差し当たり,公開,非公開の問題と,それから事実認定の手法について一応取り上げています。これらの点は,個別には別途,後から検討していただくことになっていますので,そこからもう一度,振り返っていただいてもいいのかもしれません。 ○髙橋部会長 非訟事件の問題を更に取り上げていただいても結構ですが,磯谷幹事からも御指摘のように管轄の集中のところが大きな問題だと思われます。 ○棚村委員 私もかねてから管轄の集中は非常に大事だなと思っています。それから事件数等の分布等も見ますと,具体的な資料というと最高裁にちょっとお尋ねしましたら,渉外事件が年間7,500件,婚姻関係事件が約2,000件ぐらいございまして,やはり東京とか大阪とか名古屋が多いのですけれども,福岡とか仙台,広島とか,そういうのも百件単位で分布しておりますし,それからハーグ条約で実際に問題になって,そして訴訟が起こされて報道されたり,そういう新聞等で取り上げられたケースを見ますと,やはり東京,大阪,東京近郊でも埼玉とか横浜とか,そういうところもありますし,福岡とか,そういう地域にも割合と分布しているわけです。   つまり,国際結婚のカップルの出身地というのが大都会に集中しているわけではありませんから,当事者の負担とか,いろいろ考えると高裁の所在地で,しかも,今,渉外事件をかなり扱っているところに一つぐらいは,是非,置いていただけると利用者や,それから訴えられたほうの子どもの様子なんかを現地で,どういうところで生活しているかということを分かるような形で裁判官なりが判断をするというような点でも,八つ程度を目安に余り厳格に固定するつもりはありませんけれども,少なくとも高裁の所在地の管轄の本庁のある家庭裁判所あたりを基準に置くということが専門性とか,今後の展開の上でも現在の利用者とか,特にインカミングの人たちも多分,アウトゴーイングなんかもよいように思います。多分,大谷先生なんかはお詳しいと思いますから,全国に分布している人たちの利用の便ということも,少し考えてはどうかなと考えています。 ○髙橋部会長 管轄の集中について,日弁連の多数意見も棚村委員も部会資料でいいますと【C案】ぐらいまでですかね,高裁所在地八つぐらいはという御意見ですが,いかがでしょうか。 ○大谷委員 日弁連内での意見については,磯谷幹事のほうから御報告いただきましたので,ここでは私個人の意見を申し上げたいと思いますが,私は事務局のほうで御用意いただきました案の【B案】と【C案】の中間案を個人的にはよいのではないかと考えております。具体的には,東京,大阪に加えて,福岡,札幌の4か所程度というのはいかがかと。   東京,大阪というのは先ほど御説明にもございましたとおり,知財高裁という一つのモデルがございますし,【C案】は高裁所在地8庁という具体的な根拠がございまして,それに比べて4か所というのはいかにも根拠がないのですけれども,ただし,東京と大阪以外に棚村委員がおっしゃいましたように,実際にはインカミングで帰ってくる方というのは実家に戻られるケースが比較的多く,その場合,九州でも幾つかの案件をこれまでにも何件か聞いておりますし,実際,北海道で業務をしている弁護士からは,札幌でも比較的事件が多いのだということを聞いております。   それ以外の高裁所在地はいいのかということになりますが,裁判所へのアクセスもありますが,4か所程度あれば何らかそれから漏れてしまう地域につきましては,相手方の不便というのは一定程度ございますが,そのうちのどこかに新幹線なり,飛行機でアクセスができるということ及び今後のほかの論点に関わってきますが,相手方本人が実際に裁判所に審理のために出頭すべき回数というのがどの程度になるのか,あるいは電話会議,テレビ会議等で最寄りの裁判所からのアクセスが可能かといったことも勘案して考えますと,4か所程度でもよいのではないかと考えます。   また,実際には相手方のアクセスという観点を考えますと,物理的なアクセスもさることながら,ハーグ条約にある程度,精通した弁護士に依頼をして,しっかりと攻撃・防御をしてもらうということも重要な視点かと思っておりまして,そのことを考えますと,実際,私ども弁護士の側でもどういう体制になるか,対応が可能か,今後の課題ですが,なかなか全国で同じようにこうした特殊な事件を扱う弁護士が養成できるか,対応可能な体制になるかというと,非常に難しい問題だと思っておりまして,その観点からも4か所程度あればよいのではないかというのが私個人の意見でございます。 ○鶴岡委員 外務省,鶴岡でございます。私ども外務省としてということで申し上げる見解ではございませんが,まず,実際に司法の判断を得るときに司法側の知識,専門的知見が非常に重要であることは言うまでもないと思います。現在,各国で行われている慣行といたしましては,担当裁判官が十分な自信がないような場合には,他国の経験豊かな裁判官の意見を求めることも行われているようでございまして,そういった裁判官のネットワークを通じた一貫性及び整合性のある各国におけるハーグ条約の実施ということも,ハーグ条約を普遍的に実施していく上で重要な要素だと理解されていると思います。   そういったことを考えますと,司法側の専門的な知見の蓄積と連携の強化という観点から,余り多くの司法関係者がこの件に関与することが妥当かどうか,これは当然,件数との関係もございまして,司法の資源をどこまで投入するかということと関係してくると思いますけれども,やはりこれから始めるという私どもの国の体制から考えますと,ある程度,限定された場所と人数あるいは専門家の育成という観点から,余り大きく広げる場合にはかえって条約実施の体制が十分立ち上がらないおそれもあろうかと思います。【A案】,【B案】,【C案】のどの案が具体的にいいのかということを私のほうから申し上げる考えはございませんけれども,この点を一つ考慮材料として入れていただければと思います。   もう一つは具体的な事案が生じている場合,今,ハーグ条約締結未満の状況の下で,資料に示してあります事例が数として上がってきておりますが,そのような事例に到達する前に解決されたり,あるいは表面化しない事例も数多くあるものと,これは想像するしかありませんけれども,考えられます。それはどうやって対処されているかといえば,民間の調停委員であるとか,あるいは仲裁のような形で司法に到達する前に物事が処理をされるということ,例えば面接交渉が成立をすることによって,返還などの要求を求めるまでもない解決も可能,すなわち,司法未満の解決事例もハーグ条約が成立をし,国内法の整備が進めば進むほど,より一層,一つの実際上の解決手段として,更に普遍的に確立していくのではないかと想像されます。すなわち,それを超えた場合には司法にいくしかないということが明確になることによって,司法未満の解決の可能性も考えようによっては高まるのではないかと思います。   そこで,どういうところでそういった解決がより効率的になされるのか,あるいは実際上,可能になるかといえば,やはり東京,大阪の経験豊かな調停委員ないし弁護士のおられるところが,そういった司法に到達する前の解決について,大きな役割を果たしているのではないかと思います。仮に,それが実を結ばずに司法に移るということになった場合,管轄場所がそれまでの間に慣れ親しんだ場所からまた変わるということも,当事者にとって利便の問題もあるものの,それまでの担当の弁護士の方々と違う方が今度は扱わなければならないのかというようなことが,管轄の観点から決まっていくというのもいかがかと。   これは,もし複数を決めた場合に選ぶこともできるという道を開くことによって是正する部分もあるかもしれませんが,他方において,実際,司法以前に関与していた人の経験を生かすということが,実は解決を促す上で有益な要素にもなり得ると思いますので,そういう点から申し上げると,私の個人の意見でありますけれども,【C案】のような8か所まで広げることが本当に適当であるかということについては,若干の疑問を持たざるを得ないと思います。   先ほど大谷弁護士からは,いずれでもない案について一つ提案がございましたが,考え方としては私は,今,申し上げた司法における専門的な知見の蓄積,それから国際的なネットワークへの関与の日本側裁判官の関与を確実にしていくこと,二つ目の司法未満の解決を試みたいときに,そこで蓄積されてきた経験というものも,やむを得ず司法に移行した場合に効果的に活用できるような道を開くという点からも,先ほどの大谷弁護士の言われたような考え方というのは,極めて妥当ではないかと思います。 ○棚村委員 私も本当に八つにこだわっているわけではありません。海外でもドイツなんかでも22ですかね,それからフランスなんかも35の控訴院管区の第1審裁判所の家事事件の裁判官ですけれども,それが一つずつやると。20年,30年,実績があるところと,これから始めようというところは,当然,体制も違いますから,鶴岡委員がおっしゃるような形も考慮しなければなりません。ただ,先ほどちょっと7,500件と言ったのは渉外家事事件全体が年間,そういう状態で,婚姻関係の事件は各家庭裁判所ごとにデータがありまして,東京が1,197件で大体半分ぐらいですけれども,大阪が三百数十件,名古屋が二百数十件,それからやはり広島とか福岡とか,そういうところは結構,百件を超えており,そういう形で一番少ないのは高松とか札幌あたりは十数件にとどまっているのですけれども,少なくとも渉外関係の事件だけをとっても,裁判官自体が全く取り上げていないということはほとんどないと思います。   それから,高裁のところにむしろ私は鶴岡委員と違った意見だというのは,今の渉外関係の事件の処理自体が増えてきて,ある程度の経験とか,それから若い方は語学力も海外でのいろいろな経験も積まれる方も,調査官も裁判官も増えてきておりますので,恐らくそういう意味では,数十件程度のシミュレーションだとしても,高裁の本庁が所在するところの家庭裁判所あたりに一つくらい置くような目標でよいのではないか。もちろん,決して四つということについて,東京,大阪とか,名古屋とか札幌とか,そういうところに限定をすることに反対するわけではありませんが。   ただ,合意管轄とか,今後のいろいろなことを考えると,何かある地域だけ限定的にピックアップする理由とかというものがやはり問題になってくると思いますので,リソースの問題は確かに私自身もそう潤沢ではないし,万全な体制ではないし,弁護士さんの利用等もあると思いますけれども,少なくとも婚姻関係の今の事件の家庭裁判所で扱われている量とかを見ますと,2,000件ちょっとぐらいの中で半分ぐらいが東京で,あと,かなり分布をしているわけです。こういう状況の中で多分,グローバル化が恐らくそういうような形で進んでいる中で余りに限定しすぎることはないように思われます。イギリスなんかの例を聞いても,ロンドンのハイコートに行っているのですが,控訴院のほうでも調停もやっていますし,正に任意の解決のためのリソースみたいなものとか,弁護士のネットワークとか,そういう紹介するようなことも広まっていくということを考えると,最初から余り限定をしなくてもいいのかなという考えは持っています。ただ,四つということについて反対をするつもりはもちろんございません。 ○相原委員 まず,最初に確認させていただきたいのですが,この議論というのは,今日,かなりのところまで頂いた資料を基に進め,また,何回か,この管轄を含めて議論する場があるという理解でよろしいでしょうか。 ○髙橋部会長 それは,もちろん。 ○相原委員 先ほど日弁連の意見で申し上げ,それから大谷委員も申し上げましたが,日弁連内ではやはり議論がいろいろあります。先ほどおっしゃったように二つにできるだけ集中して,専門性,迅速性を重視すべきだという意見とともに,日弁連の中には各地の地域で個別の事件の相談を受けて,それに対応したいという思いを持っている弁護士がいるのもまた事実でございます。ただ,先ほどいろいろ御指摘がありましたように,非常に特殊な事案であるし,件数の問題もあるかと思いますし,また,更にはこれから御議論いただく具体的なスキームといいますか,実際,何をどの程度,審議するのかと。そういう点が非常に関係してくるかなと思います。   つまり,どのぐらいの短期間に例えば子どもの意見聴取等に関しても,それをどれぐらい重視してきちっと取り上げるのかとか,そこら辺のイメージがなかなかできていないものですから,他の項目の検討のあとに,管轄の検討が,最後に戻ってくるところというような感じもいたしております。日弁連の中ではかなりできるだけ当事者の便宜も考えるべきであろうという意見も非常に強うございますので,そこら辺のところは,是非,御配慮いただきたいです。具体的なイメージ,具体的な事件の進め方という検討の後に,最後にまた戻ってくるのかなという,日弁連内もこれからまだ議論を尽くさなければいけないと,そういう状況にあることをもう一度,御紹介させていただきます。 ○磯谷幹事 私は先ほど鶴岡委員のおっしゃったことについて,一応,念のため,反論というほどでもございませんが,コメントを申し上げたいと思います。   一つは裁判官ネットワークのお話ですけれども,確かにそういったものが諸外国で活用されていることは理解をしておりますが,これの実際の活用,特に日本でどうしていくのかというところは,これからまた先の課題だと思っております。少なくとも先ほどのちょっとおっしゃった,裁判官がなかなか経験がないので,ほかの国の裁判官に例えばこのケースはどうしたというふうな質問をするということは,多分,想定はできないのかなと思っておりまして,より一般的な情報を得るということになるかなと。そうすると,そういった一般的な情報はひょっとすると中央当局を介しても収集することはできるのかもしれないと考えると,裁判官ネットワークを否定するつもりではありませんが,それほど,それに重きを置く必要があるのかとも思っております。   二つ目は,司法に来る前の解決の中でADRなどを使うと。その地と管轄とが離れるものはいかがなものかというお話がございました。確かに代理人をADRのときに付けますと,恐らくその後の裁判でも同じ代理人を付けるということになると思いますので,その点はおっしゃるとおりかもしれないと思いましたが,一方で,ADRなどで話し合われた内容が何か裁判のほうで使われるということはないのではないか。恐らくADRのほうでは事案を簡単に把握した上で説得したり,あるいは安心して子を返すための段取りであるとか,あるいは逆に返すのではなく何か面会交流などで収まるかとか,そういった調整が恐らくメインになるのであって,その後の裁判手続で証拠に基づいて抗弁事由が立つかどうかとか,そういったものとは随分内容も違うと思いますので,そういう意味では二つ目のお話についても,管轄を定める上でそれほど大きな影響はないのかなと考えております。 ○山本(克)委員 【A案】に賛成される方が一人もおられませんので,私はちょっと【A案】について賛成意見を述べてみたいと思います。資料に上がっておりませんが,外国倒産処理手続の承認援助に関する法律という法律がございまして,そこでは外国倒産処理手続の承認援助事件につきましては,東京地裁の専属管轄とするという形で管轄集中が行われており,かつ,その便宜,そうするといろいろと不便なことが出てくることに対応するために,職権で各地の地方裁判所に移送できるという規定の組合せを行っております。   この手続は相手方のある手続ではありませんので,直ちに,今日,議論しているような子の返還手続に応用できるというわけではないかと思いますけれども,しかし,この承認援助法を立案した段階では二つのことが大きく議論されたと思うのです。一つは裁判官と弁護士の専門性ということ,もう一つはそれとともに申し立ててくる人間にとっての管轄の簡明さということが管轄集中の理由であったと記憶しております。   しかし,それではいろいろと不便が生ずるので移送で対応すると,こういう形ではありますので,相手方の不便があるのであれば移送するという選択肢を考えた上で,まず,入口の裁判所をどこにするのかということを考えれば,よろしいのではないのかなという気がしております。そういう点では,中央当局が行政との連携あるいは在外公館との連携も必要になるかもしれませんので,取りあえず東京家裁に管轄を専属的に集中させておいて,あとは子の意見聴取であるとか,あるいは例外事由の審理にとって必要な場合には移送するというような形で組むということも,私は考えられてしかるべきなのではないのかなという気がしております。 ○横山委員 私は,さしてこの点について勉強しているわけではありませんけれども,スペシャルコミッション,要するにこの条約の履行状況をレビューする委員会に一度,学会のメンバーとして行ったことがあるのですが,やはり矢面に立つのは中央当局の個々の外務省の人たちで,とにかく遅いと,非常に厳しい批判を浴びるので,その光景を見ておりますと,私はどうしても外務省の方の中央当局のメンバーの方に同情せざるを得ない。中央当局のメンバーがどのくらいの任務をこなさなければいけないのかということと,やはり,この問題は少し絡まっていて,中央当局がどんなに頑張っても申立てを当事者がしたときに,裁判官が一からこの条約はどんな条約というふうな状況でやり始めると,まず,遅い返還につながってしまうというのがどうも多くの国で経験していることなので,できるだけ少数のほうがよろしいと,【C案】でも多いぐらいではないかなと正直に言って思います。   棚村委員がおっしゃった地方にも渉外事件はあるではないかと。田舎のほうの渉外事件はパターンがはっきり言って決まっているような,中国,フィリピンの女性と日本人の男,父というパターンがかなり多いわけで,パターンでいくとアウトゴーイングになる可能性のほうが多いパターンだろうと,インカミングでな奪取ではない。今,ここで問題になっているのはインカミングのほうであるということを考えると,もうちょっと中身を見てみないといけないのではないか。やはり東京というのが多いのではないか。あとは移送で対処すると,今,山本克己委員がおっしゃったのですけれども,もっと絞らないと絶対に遅くなってしまうなと私は観察します。 ○山本(克)委員 一点,先ほど言い落としましたが,子の監護に関する準拠法が外国法である場合については,在日の各国の大使館から情報を得るという必要もあろうかと思いますので,それも先ほど東京に集中したほうがいいという理由になるかと思います。落としましたので追加させていただきます。 ○大谷委員 今,山本委員と横山委員から,集中させた上で移送による対処の仕方があるのではないかと御発言されたことに関して,私に何かもし誤解があれば先生方から教えていただきたいのですが,今,まだ,4までいっておりませんが,移送についてどのような規律を設けるかとあります。私は移送は例えば【C案】をとって8庁になった場合,若しくは私は4庁という意見を申し上げていますが,その中での移送ということはあり得るけれども,いわゆるハーグ案件を扱うべく専門的な研修を受けておられる裁判官のいらっしゃらない裁判所に移送するということはかえって遅滞を招き,専門性の点で問題は生じはしないかと考えております。その意味からは,相手方の出頭の不便等は電話会議やテレビ会議等あるいは出頭の回数を減らすことによる対応はあり得ても,集中させた管轄裁判所以外の裁判所に移送するということは,余り好ましくないのではないか。それを前提として集中をどの程度にすべきかということを議論したほうがよいのではないかと考えております。 ○山本(克)委員 今の点でございますけれども,外国倒産処理手続の承認援助に関する法律が予定している移送先は,全国の全ての地方裁判所ということになっておりますが,今,議論している手続については必ずしもそれにこだわる必要はなくて,今,大谷委員から御提案いただいた四つの家庭裁判所であるとか,あるいは八つの家庭裁判所に限って移送先をという形の制度設計もあり得るところだと思いますので,必ずしも大谷委員のおっしゃっていることと私の申し上げていることが,全く水と油ということではないと思っております。 ○棚村委員 先ほど相原委員も言っていたように,手続全体をどう設計するかということとも関わりますので,管轄だけを取り出してやっても余り意味がないと思います。ただ,子どもの住所地を管轄にするというのは,正にお子さんの問題をそこに住んでいるところで,どんなふうに暮らしているかを含めて,適切に判断をできる場所ということで一つの基準になっているのだと思います。そうなると,道垣内委員もこの間も言っていましたけれども,誰と暮らすかはゆっくり元の居住国に帰っていただいて決めればいい。ところが,ここは,今,暮らしている状態でお子さんが,今,どういう様子かということで,もし意向もあれば,心情とか意向なんかもきちっと配慮してやろうという手続ですから,そうすると,やはり住んでいるところというのが基本になると思います。   ところが,日本は小さいとか狭いとかいうことで,東京1か所でいいのではないかということよりは,少し分散させて対応する能力があるところは,東京とか大阪とか,名古屋とか福岡,札幌あたりでよいと思いますので,そんな方向でお子さんのことについてきちっと把握できて,調査官を使って調査をさせるという話がありましたけれども,任意の返還をどう構成していくかとか,調停みたいな手続をどう絡ませていくかということとの関係でも,最後に判断をしなければいけないというときには,やはりチームプレーになると思います。そうすると,裁判官と調査官というものも役割分担しながら,いろいろな形でお子さんと関われるということですと,管轄権の集中とはいっても,1か所というのはなかなか困難ではなかろうかと考えます。 ○髙橋部会長 御指摘のように手続全体につき,専門的な知見の集積とありますが,どのぐらいの専門性がこの手続全体として要求されるのかというようなことにも関連しますので,今日はもちろん詰め切れませんが,合意管轄,応訴管轄は応用問題でしょう。今日は特に深くやらなくてもいいかと思いますが,移送もそうかもしれません。前回,頂いた資料によると申立人側はともかく,相手方側のほうの代理人弁護士が精通していないので,事件が遅れたというのが何か国かの報告の中にありますので,それなりの専門性は確かにあるのかなとは思います。管轄の集中に関して,更に御発言したいという方がいらっしゃいましたら。 ○鶴岡委員 度々申し訳ありません。先ほど横山委員が指摘をされました中央当局の役割との関係で一点だけ申し上げたいと思いますが,何にせよ,今回,この条約の実施体制,これから初めて立ち上げるものですから,実際,先ほどほかの方からも全体像が見えないと,一つ一つを議論するのはなかなか難しいというのは,全く妥当な問題提起だと思いますけれども,我々外務省として,今後,中央当局を担当するということになっておりまして,この場で中央当局の任務について議論することは想定されていないものですから,これは別途,私どものほうで懇談会を立ち上げまして,そちらにもちろん日弁連などからもお入りいただいて議論を進めてまいりますが,中央当局が任務を全うするということは,この条約の実施のためには最もと言っていいほど重要なことではないかと思っております。   しかし,例えば正直に申し上げて,外務省員,八つの高裁所在地と言われて,言える人はほとんどいません。私どもはそういったことを仕事としておりません。したがって,中央当局を担当するところが連絡先として考えるところは,基本的には一つにしておかないと,まず,電話番号から分からないという極めて実務的なことなのですけれども,そういったことが非常に事態を遅延させていく,そういうおそれは私は御指摘を申し上げざるを得ませんので,その点の中央当局との連携を考えた場合,それから場合によっては中央当局が支援することが全般的に求められておりますので,各地で行われている司法手続に中央当局の支援というのはどう与えられていくのだろうかと。これが幾つも同時並行で例えば日本全国で行われている場合に,中央当局は大体三,四人から六人ぐらいでやろうと思っているところですから,とても現実的な任務にならなくなる。   そういった物理的な事情といいますか,能力の中で,効率的に作業ができるということから言えば,全く外務省の中央当局の都合だけで言えば,東京以外は考えられないと言ってもいいぐらいなのですね。外務省は東京以外に正に常駐の事務所を制度上,持っていないわけです。臨時に作っているところはございますけれども。したがって,全国でこの作業が行われるということになった場合に,中央当局の任務のほうを今度は逆に,それを前提に考えなければいけないということにもなるわけでございまして,それがこの場でなく私どものほうで行います懇談会のほうに影響してまいりますので,是非,その点を一つこちらの場でも念頭に置いていただければと思います。 ○髙橋部会長 今日は第一読会ですので,先ほど申しましたが,合意管轄とあるいは移送と特になければ次の5番から8番に移りたいと思いますが,では,説明を。 ○佐藤関係官 5の裁判所の構成については,一人制とすることを提案するものです。手続保障を図りつつ,迅速な処理を実現する観点からは,裁定合議の余地を認めた上で一人制とするのが相当と考えられます。なお,家事事件で活用されている参与員の利用についても問題となりますが,家事事件に一般の常識を取り入れるという参与員制度の趣旨は,規定された要件に該当する事情があるか否かによって判断する子の返還事件にはなじまないものと考えます。   6の除斥及び忌避は,除斥及び忌避について家事事件手続法と同様の規律を設けることを提案するものです。忌避については迅速な手続を実現する観点から,家事事件手続法において認められることとなった簡易却下制度を本手続でも認めるのが相当と考えられます。   7の当事者適格(1)は,申立人を監護権を侵害して子が連れ去られたか,又は拘束されていると主張するものとすることを提案するものです。諸外国では中央当局が申立人となる例もありますが,本条約の対象事件は基本的に子の返還を求めるものと,現に子を監護する者との間の紛争として捉えることができ,子の返還を求める者に手続上の主体的な役割を担わせるのが相当と考えられること,中央当局が申立人となることは行政の中立性との関係で問題があることなどから,中央当局が申立人となるのは相当でないと考えます。   7の(2)は,相手方を現に子を監護している者とすることを提案するものです。典型的には子を連れ去った親を相手方として申し立てることが想定されますが,子の返還を求める手続である以上,これを実現し得る者,すなわち現に子を監護していると申立人が主張する者を相手方とするのが実効的であり,相当と考えられます。なお,現に子を監護しているといっても,子を連れ去った親の手足として祖父母が監護している場合には,親のみを相手方とすればよいのか,祖父母も含めて相手方とすべきかなど,なお検討すべき問題が残っているように思います。また,(注2)にあるとおり,子を連れ去った者を相手方として申し立てたところ,現に子を監護している者が第三者であったことが判明した場合や,審理の途中で子を監護している者が当初の相手方から第三者に替わった場合に,連れ去った親に対する申立てをどのように扱うべきかが問題となります。   7の(3)は,返還を求められている子自身は,当然には手続上の当事者となるものではないとすることを提案するものです。子を当然に当事者として巻き込むことは,子の福祉の観点から必ずしも相当とは言えないこと,子の手続保障については,子の意見聴取の機会を別の方法により確保することも考えられることから,子を当然に手続上の当事者として扱う必要はないと言えます。なお,子の参加については9の(3)で検討を予定しております。   8,当事者能力及び手続行為能力の(1)は,当事者能力について権利能力があれば足りるとする民事訴訟法及び家事事件手続法と同様の規律を設けることを提案するものです。   同(2)は,申立人,相手方及び何らかの形で参加を認める場合の子の手続行為能力について,民法上の行為能力が必要であるとするか,意思能力があれば足りるとするかの検討をお願いするものです。我が国では親権や監護権の行使には,民法上の行為能力が必要と一般に考えられておりますので,本条約に基づき,子の返還を求めるのも親権や監護権行使の一環であると考えれば,手続行為能力としても行為能力まで要するとするのが相当です。これに対し,子の返還手続は飽くまで常居所地国において監護権者を決めるための準備手続にすぎないと考え,日本で言う親権者指定の手続と同様,意思能力さえあれば足りるとすることもできると思われます。 ○髙橋部会長 ここも特に限定いたしませんので,どこからでも。 ○磯谷幹事 この点につきましても,私のほうから日弁連での議論の状況について簡単に御紹介したいと思います。   まず,裁判所の構成ですけれども,法定合議とすべきというところまで議論を詰めているわけではございませんが,やはり子どもを国境を越えて外国に送るというふうな決定をするという,これは非常に重い決定なのだろうとも考えられますので,基本的には合議でなされることが望ましいのではないかという意見でございます。   それから,除斥,忌避については法務省の御説明どおりで結構だと思います。   当事者適格につきまして申立人ですけれども,これは法務省のおっしゃるとおりの申立人ということで,中央当局はならないということで特に議論はございません。ただ,相手方のほうにつきましては,確かにその後の命令の実効といいますか,それから執行ということを考えますと,やはり現に子どもを監護している者というのが相手方というのが妥当だという意見もございましたが,一方で,連れ去った親を相手方にするのが望ましいという意見もございました。このあたりは率直に申し上げて,ちょっと時間的にも余り詰めきれてございませんけれども,そういった意見があったということを御紹介いたします。   それから,子ども自身については手続上,当事者にはならないということで結構だと考えております。ただ,子どもが返還に異議を述べている場合に,一審で返還命令が出た場合に,子どもが不服申立てをする余地を認めるかどうかというところは,ちょっとまだ,十分議論する必要があるのではないかと考えております。   当事者能力等につきましても特段,意見はございません。 ○髙橋部会長 ありがとうございます。 ○棚村委員 原則,合議制ということでしょうか,先ほどの御意見は。 ○磯谷幹事 いや,そうではありません。 ○棚村委員 そうですか。慎重を期するというのと,それから迅速な返還の手続を実現するというのがあるのと,それから裁判官は,今,かなり裁定合議制みたいな形で何か難しい事件で問題がありそうなものについては,そういう体制を採れるようにしていれば,原則,お一人でむしろできるのではないかと考えてはおります。 ○磯谷幹事 先ほど申し上げましたように,法定合議にするかどうかというところまでは詰め切ってございません。ただ,やはり合議制の一つのメリットというのは複数の裁判官が担当するということで,例えばそういった経験を更にほかの裁判官,若い裁判官も持つという意味でも,また,メリットがあるのではないかとも考えておりまして,そういう意味で,基本的には合議でなされることが望ましいのではないかと,このぐらいの考え方でございます。 ○佐野関係官 一点,よろしいでしょうか。磯谷幹事のほうから7の当事者適格の(2)の相手方について,基本的には現に子を監護している者がいいのではないかという意見がありつつも,一方で,子を連れ去った者を相手方にするべきという意見が日弁連の中であったというお話があったかと思いますが,その背景というか,具体的に相手方を子を連れ去った者にするメリットというか,そのようなご意見の背景を具体的にお聴かせ願えればと思うのですけれども。 ○大谷委員 大谷のほうから補足させていただきます。議論としてあったのは,ちょっと日弁連内の議論も若干錯綜していたような感じがございますが,実効性の点から,例えば祖父母が実際には監護していると,相手方である親は返してもいいと思っているというような状況を考えますと,やはり子を現実に監護している者を相手方とする必要があるといった意見があった他方で,その議論をしているときに,議論の中で子どもを現に監護している,言わば違法状態の当事者になっている者が相手方になるべきだというような意見が議論の中でちょっと若干出まして,そこは飽くまで国境を越えた子の移動若しくは不法な留置ということが条約の対象であって,35条の議論と絡んでくると思うのですけれども,一旦,国境を越えた子の連れ去りがあった後の子を確保している状態を,必ずしも違法ということで条約は見ていないということの議論と整理をしながら,相手方を誰にすべきかということは,返還命令の実効性あるいは条約の目的ということとの関連で整理しながら議論をしないと,この条約の性質に対する理解について誤解を招きかねないという点で議論があったということでございまして,必ずしも例えば子の連れ去りをした,あるいは留置をしている者だけを相手にすべきだという意見があったというわけではございませんので,議論の中でそういった条約の性質との関係で,整理をしながら議論する必要があるという意見があったという説明とさせていただきたいと思います。 ○佐野関係官 個人的な感想ですけれども,条約というのは具体的に不法な連れ去りかどうか,そういうことはあるとして,実際に子を常居所地国に返還するためのシステムを定めるものですので,基本的には現に子どもを監護している者というのを相手方にしないと,返還の執行等の実効性の観点からも,今は全然面倒を見ていないけれども,一応,連れ去りを不法にしていましたという者を相手方とするだけでは足りないと。では,その上で両方を相手方にするよと,そういうことも考えられるのかどうか分かりませんけれども,その辺の整理というのは今後,必要になるのかなという気はしました。 ○磯谷幹事 今の点は率直に申し上げて,それ以上,特に意見はございませんが,個人的に非常に気になっているのは法務省からも御指摘がありましたように,最初,ある方が子どもを監護していたけれども,途中で替わったりするとか,それから申立人のほうは連れ去ったのは誰か分かるけれど,現在誰が監護しているのかは分からないとか,そのようなケースというのは十分想定されると思うんですね。そうすると,申立人のほうからすると,一体,誰を相手にして申立てをすればいいのか分からないということになるんだと思います。   このあたりを例えば中央当局が事前に所在確認をする中で,一体,誰がどのような監護をしているのか確認をしていただいて,それについて何らかの方法で裁判所に情報を提供されるとか,あるいは,これは中央当局が行うということは難しいかもしれませんが,最初の段階で当事者を恒定するといいますか,ちょっと保全的なところですけれども,そういった形で特定できないか。そうしないと,申立人としては非常に不安だろうと考えております。この点はとても気になっているところでございます。 ○棚村委員 私自身は,現に監護をしているという場合の概念ですけれども,それを少し広くとる必要があると思います。というのは,親権を持っていないというか,監護権を侵害して違法な連れ去りをした人がほかの人に,祖父母とか,近い人であればいいですけれども,そうでない人に預ける場合もあります。そうすると,現に監護しているということの意味が実質的にそれをコントロールしたり,支配して影響を与える地位にある可能性を持つ者はあるわけです。   それから,もう一つ,中央当局が所在を確認するというのですが,正に中央当局で今後,どういう連携とか,役割を果たせるかということを詰めていかなければいけないのですけれども,事前に例えば海外では要するに保全の手続みたいな中に子どもの所在についての情報の確認とか,あるいはそれを提供させるような措置を採る,裁判所が採るというところもあります。   もちろん,中央当局も探しますけれども,そういうことを考えると,例えばノイリンガーの事件も2005年から所在が発見されるまで,中央当局も努力したのですけれども,インターポールというのですか,国際刑事警察機構の力を借りて,ようやくローザンヌにいたというのを約1年後に発見しています,早川委員もこの間,おっしゃっていました。そういうような状況で所在を確定するとか,確認するとか,特定するというのは非常に困難なケースがあるし,監護の現状を把握するというのもなかなか表向きと実質が違っていたり,転々としたりということはあるわけです。   そういうことを考えると,やはり連れ去った親も含めて,現に監護をしている人という範囲をある程度,広げていく必要があるのではないかなというふうに思います。それに返還命令を出さないと,出したけれども,実際には当事者が違うということになってしまうと実効性がありませんので,連れ去った親とプラス現に,今,監護をしているという人を確認した上で,そこを相手にしていくということで,少し広く見ないと,今,現状を転々と変えたような場合も想定すると,それを実質的に支配をしている人まで含めて入れてはどうかなという考えです。 ○山本(克)委員 今の棚村先生の御意見は,連れ去った人と現に監護しているほうの両方を相手方としなければならないという御趣旨でしょうか。 ○棚村委員 いや,しなければならないというよりも,概念を少し広げて,できれば連れ去った人も含めて相手にしておいたほうがいいのではないか。つまり,情報もその方が持っている場合もかなりありますから。 ○山本(克)委員 誰を相手方にするかということが非常に分かりにくいと,結局,その入口段階で時間を費やして,迅速処理ができないという可能性もありますので,できるだけ一義的なほうが望ましいのだろうという気はしていますが,現に監護している者という概念が一義的かどうかというと疑問の余地がございますが,あとは何か強制参加の制度を設けるなどして,相手方として職権で強制参加させるというような形で処理して,入口段階では余り複数の者を相手にしなければならないという手続は組まないほうがよろしいかと思います。 ○棚村委員 人身保護法の拘束者というのは,一緒に住んでいる場合もありますけれども,現に拘束をしているという概念の中には,ほとんど親に,祖父母に預けっぱなしで面倒を見ていない人も含まれたりしています。だから,拘束とか監護というものをどう把握するかということを検討していただければ,誰を当事者にすべきかということについては,それで明確化できるようには思います。余り多くは広げられないように思うのですが,実際の人身保護の手続を見ますと,拘束者の側は祖父母も相手になっている場合があります,面倒を実際に見ているということで。それから,しない場合ももちろんありますけれども,危ない場合は一緒にやっている場合もあります。 ○髙橋部会長 この辺は少し手続法の技術的な工夫も必要かとも思いますので,今日のところはこの程度にいたしましょう。ただ,14ページですと,2ですが,相手方について,現に子を監護していると申立人が主張する者(団体,機関を含む)と,団体,機関を含むとそこまでくると,いずれにせよ,技術的にもう少し詰める必要があります。先ほどの当事者の変更のようなところも,あるいはイギリスの例も出ておりますが,今,山本委員からも御指摘がありましたが,参加等と関連いたします。そこで,よろしければ参加のほうに入って,また,ここに戻ってくるのは構わないということで,説明は参加と代理人をお願いいたします。 ○佐藤関係官 9の参加の(1)ですが,当事者参加について何らかの規律を設ける必要があるか,もし家事事件手続法同様に利害関係人に参加を認めることができるとした場合に,どのような者に利害関係人として参加を認めることが相当か,検討いただくものです。参加が想定される例としては,別途,検討項目を設けている中央当局や子のほか,16歳を超えるなどの理由で返還申立ての対象となっていない兄弟姉妹や,事実上,子の養育に携わっている親族等が挙げられます。   9の(2)では,当事者参加について中央当局の参加の要否を検討するものです。中央当局は条約上の協力義務の履行として,望ましい場合に常居所地国の中央当局との間で子の社会的背景に関する情報を交換することが予定されていますが,その結果,得られた情報を始めとする各種情報については,裁判資料としても有用なものがあると考えられます。このような事情を踏まえ,中央当局が裁判手続に主体的に参加できる規定を設けるのがよいか,裁判への協力といっても資料提供にとどまることから,一般的な協力義務を課したり,裁判所から中央当局への調査嘱託等の規定を設けて対応するにとどめるのがよいか,検討が必要であると言えます。   9の(3)は,子の参加について検討いただくものです。子の参加を認めれば子が紛争に巻き込まれ,子の福祉の観点から好ましくないなどの問題がある一方,年齢等によっては参加を認め,主体的な地位を与えたほうが子の利益にかなうとも言えます。参加を認める場合,家事事件手続法に倣って裁判所の許可の下に参加を認めることが考えられますが,本手続において要件及び手続についてどのように考えたらよいか,御検討をお願いします。また,子の参加との関係では子に代理人を付すかどうかが問題となりますが,これについては次項で検討課題としております。   併せて10の代理人のところも説明いたします。   10の代理人の(1)は,代理人を弁護士に限ること,弁護士強制は認めないこと,許可代理についてどのように考えるかの検討をお願いするものです。まず,弁護士代理については事件屋の介入を排除する等の観点から,原則として弁護士に限るとする点に異論はないと思われますが,家事事件手続法で認められている許可代理の制度を本手続のような専門的知見を要する手続で認めるかどうかは,検討の必要があると思われます。   また,弁護士強制については,子の返還事件が特殊な渉外手続であり,これまでの渉外事件の経験を考慮すべきこと,手続外での和解を含めた迅速かつ適切な事件処理を実現するためにも,専門的知見と習熟が必要であるという観点に立つと,弁護士強制を認めることも考えられます。しかしながら,費用等の支援の制度を設けないまま弁護士強制とすれば,申立てをちゅうちょさせる原因となること,他の渉外事件の均衡等を考慮しても弁護士強制とするだけの合理的理由が乏しいこと,申立てに当たっては中央当局の援助も期待できることなどを併せ考えると,弁護士強制を認めるだけの合理性に乏しいとも言えそうです。   10の(2)は,裁判長により代理人の選任を認めるかどうかを検討するものです。具体的な活用場面としては,8の(2)で手続行為能力について,意思能力があれば足りるとした場合に実際には手続遂行が困難であることから,裁判長が代理人を選任することが考えられます。 ○髙橋部会長 代理人のところはちょっと違いますので,先ほどの当事者適格の議論と絡めて,参加のところにとりあえず限定いたしますが,いかがでしょうか。 ○磯谷幹事 参加の点につきましては,まず,中央当局の参加については特に必要ないだろうというのが私どもの議論でございました。一方,子どもの参加については,基本的に利害関係人として参加する道を認めるのが望ましいであろうということでしたけれども,先ほども御紹介しましたように子どもが異議を述べていた場合で,一審で返還命令が出た場合に,子どもを連れ去ってきた親は諦めてしまったとしても,子ども自身が不服申立てをする余地を認める必要があるのではないかという意見もございました。ただ,それに対しては連れてきたのが親なわけですから,親が諦めてしまえばしようがないのではないかという意見もございますし,そのあたりは引き続き検討する必要があるだろうというふうなところで終わってございます。 ○村上幹事 中央当局の参加についてなんですが,先ほどのちょっと戻ってしまうのですが,中央当局を申立人とするかとか,中央当局を申立人の代理人とするかということとも関係してくるのですが,そもそも確認なのですが,これから作ろうとしている我が国の手続で,中央当局というのは裁判所や当事者との関係で,どういう立場に位置付けられるのかと。   といいますのは,国によっては申立人が中央当局になったり,代理人になったりということで,どちらかというと申立人のために動いているというか,そういう印象も持ち得るかと思うのですけれども,一方で,裁判手続が始まる前に任意の返還が可能かどうかということを模索したりとか,あるいは裁判命令が出た後でも,執行の段階で中央当局が積極的に関与していって,子の利益にとって一番ベストな方法を模索していくという立場で,要は子の利益を最大に考えて中立的に動いていくということも考えられるかと思うのですけれども,その辺の基本方針というのはどういうことになっているのか。例えば資料を提出するときに,もし中立的な立場で動くのであれば,やはり当事者に資料を渡すのではなくて,裁判所に直接,提出するというほうが自然なような気もするのですけれども,その辺はいかがなのでしょうか。 ○髙橋部会長 先ほどの御指摘にもありましたが,中央当局がどのようなものになるかは,こことは別のところで議論されているわけですが,何か情報として出せるものがあれば。 ○金子幹事 先ほどの7の(1)の,中央当局が申立人とならないことでよいかということの御審議で,この点は磯谷幹事からはならなくてよいという御意見を賜りましたが,ほかの方々から特に反対がありませんでした。事務当局としては申立人にならないという方向でこの資料は作っています。今,おっしゃったとおり,中央当局の役割が申立人の代理人ということになると,他方で,いろいろな資料を提出するという場面と立場がアンビバレントになりかねないという問題もあって,なかなかやりづらいのではないかと。   13ページの下から4行目ぐらいに,オランダはどうも現行の申立人代理人というような立場を見直すという動きがあるようです。やはりオーストラリアがそういう立場を採っているようですが,我々として理解しがたいところもあって,中央当局は言わば中立的な立場ということでよろしいのではないかと思っております。あとはせいぜい参加かという話になっていって,それが9の(2)のほうへつながるということで,申立人になるということであれば,あるいは申立人代理人になるということであれば,恐らく参加という話は論理的に成り立たなくなってくると,こういうことかと思います。 ○髙橋部会長 まだ,余りクリアなイメージにならないかもしれませんが。 ○村上幹事 別に中央当局が申立人にならないということに異論があるわけではなくて,むしろ中立性という立場を明確にしていって,そういうことを考えて参加のことも決めていったほうがいいのかなと思っただけです。 ○髙橋部会長 参加は,家事事件手続法も引用されていますが,職権での強制参加まで家事事件はあるようですけれども,そこまで含めて検討すべきなのでしょう。 ○大谷委員 9の(2)の中央当局の参加を認めるべきかにつきましては,日弁連内で議論しましたときにも,実際,参加の必要性といいますか,参加をさせることによって具体的に何がどう違ってくるのかというのが,余り分からなかったというのが実情でございます。例えば括弧内に中央当局が当事者に手交し,当事者が裁判所に提出するのか,中央当局が直接,裁判所に提出するのかという形で論点をお出しいただいているのかと存じますが,例えば裁判所から,中央当局から文書を取り寄せて出させるというか,取り寄せるということであればそれはそれで可能であって,参加が必ずしも必要ではないのではないかという理解でこの論点を検討していたのですが,そうであれば参加まで必要ないのではないか。   それから,先ほど簡単に申立人に中央当局がならないのでよいのではないかということで,全く議論がなかったかのように御報告したのですが,中に一つだけ,こういう御意見があったので御紹介いたしますが,中央当局が申立人になると,前回も若干,問題提起させていただきました様々な資料の翻訳費用ですとか,あるいは弁護士費用の点が国の予算で出ることになり,我々としては有り難いという側面がないわけではないと。   ただ,実際,そういう制度を採っているのはオーストラリアのみで,オランダは申立人は飽くまで親であって,中央当局は代理人という制度と理解しておりますし,これも批判があるところで,やはり先ほどから出ておりますように中央当局がまるで申立人側に利するような仕組みというのは,いかがなものかといった様々な観点を考えると,やはり申立人は中央当局ではなくて,監護権を侵害されたと主張している者ということでよいのではないかということで落ち着いたという経緯がございます。そうだとすると,文書提出との関係であれば,正に先ほどの私の理解でもし間違いないのであれば,あえて参加を認める必要まではないのではないか。このような理解で議論しておりました。 ○棚村委員 私も前から日本の中央当局の役割というのは,基本的には子どもの迅速な返還という奪取された子どもの返還と。それに対して子どもの利益ということを考えて,当事者に支援をしたり,援助の申請に応じるわけですので,飽くまでも紛争の中身は私人間の奪取をめぐる子の返還問題なものですから,そこに必要以上に何か力関係のバランスが崩れるというのはやはり問題ではないか。ただ,子どものために中央当局が何がしか様々な形で,結果的には当事者に対する支援にもつながっていく場合がありますけれども,そのポイントが必ずあって,所在の特定とか,任意の返還とか,安全な返還とか,それから司法当局とか行政当局について様々な情報の提供とか,そういうポイント,ポイントで必要とされている支援を必要な範囲でやっていく。だから,訴訟という,こういう返還の手続の中には申立人の代理人になるとか,それから参加をするという正式な形で利害関係があるので,加わるということについてはやはり慎重であるべきだと考えています。   ただ,問題は,結局,そういう協力をしたり,資料提供したり,いろいろしていくプロセスの中で,何らかの形で情報の共有化をするために,何かちょっとオブザーバー的な参加みたいなものが任意で可能であれば,通常の当事者とは違って,ある意味,責任を持っている行政機関として,何らかの形で情報の共有化みたいな形の参加というのはあり得ないのかというのは,むしろお聴きしたいぐらいです。ただ,問題は法的に対立している当事者の中に入っていくというのは,ちょっとどうかなと思っています。 ○金子幹事 少し補足させていただきます。ここで参加というのが用語が民事訴訟法上で言う参加というものに当たるかどうかということ自体が,ちょっと問題があるのかもしれません。ここで考えていたのは中立性を維持しつつ参加するということで,申立人,相手方の一方に参加するということをイメージしていたのではなくて,もう少し第三者的立場での参加というものを観念できたとして,そのような形で手続に関与することについてはどうか,そうではなく,手続の外にいて協力するという形にとどまることでいいのかという問題意識だったということで,補足させていただきます。 ○髙橋部会長 今,立法論をやっているところですが,立法論をやり出せば,いろいろ諸外国に面白い参加制度があるわけですが,子どもの参加のほうはいかがでしょうか。これは子どもが参加する,先ほど来の議論ですと,このままでは当事者にならないのですが,参加するという道を用意するか,参加できるぐらいでいいのか,それすら必要ないか,あるいは参加しなければならないなら,初めから当事者でしょうが。 ○棚村委員 恐らく家事事件手続法でも相当議論された話題だと承知しております。ただ,基本的に子ども自身に実体法上,何らかの申立権とか,当事者としてイニシアチブを手続においても取れるというようなことになってくると,本格的に手続上もきちっと代理人を付けて,発言権とか,意思とか心情みたいなものを積極的に,現行でも規定があるわけですけれども,一方で,当事者を参加させると,絶えず親同士で争っている中で子どもがそこにロイヤルティーコンフリクトみたいな形で巻き込まれるので,適切ではないという御意見がかなりあると思います。   ただ,私自身が見ていると,やはり現在の状況の中でも既に巻き込まれていますので,子どもの意思とか立場を例えば10歳とか,一定の年齢になったら,自分の問題について親が争い合っているわけですから,子ども自身にもそれなりの判断能力や判断をする意思を形成する力を持っているのであれば,そこに加わるということは,特に暴力とか,いろいろなひどい状況になっているときなんかは,子ども自身の通報とか,子どもの110番とか,児相なんかでもやっているホットラインなんかに入ってくるときもあるわけですから尊重されるべきです。   ですから,子ども自身が意思をきちっと表明できないような年齢の場合には難しいと思いますけれども,ある程度,10歳以上になってきて判断や自分の意向というものを伝えられるようになったときに,やはり参加という制度があると私はほかの国でも,それからハーグの6月1日から10日までの特別委員会なんかでも子どもの声を反映させるということと,子どもの代理人みたいな制度については,これからも改めて強調されていくべきだということを勧告とか,結論の中で述べておりますので,日本もそういう形で子ども自身の,児童の権利条約の意見表明権という12条もございますし,手続上も子どもを一人前の大人として,主体として扱っていくという方向は,是非,検討いただけるといいかなと思います。 ○古谷幹事 子の参加につきましては,家事事件手続法のときも議論があったように記憶しておりまして,今,何人かの委員の先生から御指摘がありましたように,基本的には主体性を認めるという議論があったと思います。本件の場合は迅速に子どもを返す,返さないの判断をするというファクターがございますので,子の参加を認めることが案によってはかえって迅速性に反して,子どもの利益,福祉を害するという事態もあり得ると思われますので,その点は何らかの形で手当てを検討する必要があると考えております。 ○髙橋部会長 ここは,まだありますか。 ○道垣内委員 この論点に限った話ではなくて,かつ私も国際法とか,そういうのを勉強したのが30年ぐらい前になりますのでよく分からないのですけれども,今までの議論の中でも現在のハーグ条約の改定を目指したり,ないしは運用状況について議論をしたりする会議における方向性とか,あるいはそのときに,こういう方向で直す必要があるのではないかという意見が出ているといった話について,何回も皆さんの中から発言されたのですけれども,それと現在,存在している条約について,それを履行する国内法手続を設けるということとの関係が私はよく分からないままなのですね。   つまり,例えば私の理解しているところの現行のハーグ条約というのは,子どもが連れ去られたという際に,もちろん,幾つかの例外の事由というのはあるわけですけれども,とにもかくにも戻そうというところに発端があるのだと思います。それに対して子どもの意見をていねいに聴きましょうというのが,少なくとも現行のハーグ条約との関係で取り入れることが国内法的に可能なことなのかというのが,ちょっと私にはよく理解できないところがあります。全般としてどういう態度でこの法制審議会の議論をしていけばよいのか,ハーグ条約に関して,現在,いろいろ出ている議論をどのように取り入れて考えていけばいいのかについて,前回からどう考えるべきなのだろうかというのが分からないままでおりますものですから,お教えいただければと思います。 ○佐野関係官 一言,よろしいでしょうか。ハーグ条約というのは子の返還手続と中央当局の部分から各々構成されていると思いますけれども,正直なところ,子の返還手続に関するところについてはほとんど条文がございませんで,あったとしても本当に抽象的なものにとどまる中,各国がどのようなことを国内法で設けるか,比較的,広範な裁量に委ねられていると思っております。   先月の6月の会合の中で,そのような広範な裁量が認められているハーグ条約を前提にして,今,各国としては制度設計を作るかどうかは別にして,より望ましい運用の観点から,例えば子どもの意見を尊重しましょう,子どもの参加を認めましょう,子どもの代理人制度というのもいいのではないですかというような,今の現行のハーグ条約を前提として,それプラスアルファ,こういうような運用あるいは制度設計が望ましいですねという議論をやっているので,今のハーグ条約の下で,必ずしもこの法制審議会において国内法を我が国としてこういうことがいいのではないか,更によりよいハーグ条約の実施のために,運用のためにという議論をすることは必ずしも排除されていなく,むしろ歓迎すべき点だと認識しております。 ○早川委員 道垣内さんの御疑問は重要な御指摘で,確かにそのとおりなのですが,子どもの意見の点に限って言うと,一応,条約自体にも手掛かりはあるのですね。それは13条2項でして,これを国内担保法のなかにどのように取り込むかをこれから考えることになろうかと思います。今,佐野関係官がおっしゃったように,どの程度,あるいはどうやってこれを国内法において実質のあるものにしていくかという議論が必要で,それを考える際には,各国での議論の動向も,参考になるだろうと思います。 ○髙橋部会長 道垣内委員が御指摘の点は念頭に置いて,これからも考えなければいけませんが,取りあえず進みましょう。 ○大谷委員 棚村委員が既に御指摘くださったので重ねてになって恐縮ですが,日弁連としましては,ハーグ条約の運用,実施に当たっては,そのための担保法策定におきましては,日本が締約国になっております子どもの権利条約にかなったものとなるようにということを,日弁連の意見の大きな一つの柱としております。御案内のとおり,ハーグ条約は1980年に採択されて,83年に発効しておりますが,その後に子どもの権利条約が1989年に採択をされ,現在,その締約国は192か国,ほぼ世界の全ての国が当事国になっております。   その中で,その12条で子どもが意見を聴かれる権利というのは,子どもにとって重大な影響を及ぼすような物事の決定に当たっては,子どもに決めさせるということはございませんが,子どもの意見を聴取するということ,また,それを子ども本人ができない場合には代理人を通じて,そのような機会を与えるということが子どもの権利条約で認められている子どもの権利でございまして,正に子どもが元の常居所国に返還されるかどうかということは,子にとっての重大な事項の決定であると。そのことからハーグ条約の締約国におきましても,子どもの権利条約12条の精神を取り入れて,実務上,運用したり,あるいは担保法において子どもに代理人を付けるという制度を設けたりしているところと理解しております。したがって,ハーグ条約の条文に必ずしもないものについて,最近の動向ということで取り入れることがよいかどうかという議論に加えて,その根底にある法的な根拠としては,子どもの権利条約上の義務を締約国として果たしていく,それを念頭に置きながら担保法を作っていくということがあるのではないかと思います。 ○髙橋部会長 代理のほうですが,弁護士代理はいいとして,許可代理,弁護士強制について,特に御意見があればということでは。 ○磯谷幹事 代理につきましては,まず,いずれも代理人は弁護士に限るべきということについては特に異論はございませんでした。申立人について弁護士強制をするかという点については慎重論もございましたが,一方で,積極論もございました。やはり外国に申立人がいるということになりますと,なかなか代理人が付かないと連絡もままならないし,更には送達についてもなかなか迅速にすることが難しいのではないかとも考えられます。一方で,強制する場合の費用などについては,現在は法テラス,いわゆる日本司法支援センターは使えないとは思っておりますけれども,そこは手当てをして使えるようにすべきなんだろうと考えておりまして,そうすると,特段,弁護士を強制するとしても不当ではないのかなと考えております。ということで,日弁連としては今のところまだ両論,消極的な意見と積極的な意見があるということでございます。相手方につきましては,特段,強制する必要はないだろうと考えております。 ○髙橋部会長 実際にどうなるかということと,法律上,強制するかということは別であり,強制するかということは費用にも関係しますので,費用の部分を含め13まで説明をお願いいたします。 ○佐藤関係官 11の裁判費用の(1)は,裁判費用について当事者に必要な費用の概算額を予納させることを原則とし,証拠調べ等の費用については国庫において立て替えることもできるとすることを提案するものです。条約は第26条第2項で,締約国に対して申立てに掛かる一切の費用の徴収を禁止していますが,第42条の留保を付することにより,裁判に掛かる費用等について,自国の法律に関する援助等の制度によって,負担する限りで負担すればよいことになります。諸外国では第42条の留保を付する例が多く,我が国でも留保を付することを前提に,最終的な裁判費用は別途定められることとしつつ,他の手続同様に費用の概算額を申立人に予納させることが円滑な手続実施の観点から望ましいと言えます。なお,条約は第22条で費用の支払を保証するために担保を要求することを禁じていますが,ここで言う担保とは手続費用の負担に関する判決や決定の履行を確保することを目的とするものであって,裁判手続の費用を予納させることはこれには当たらないと解されます。   11の(2)は,条約第25条が締約国の国民は本条約の適用に関係のある事項に関し,手続を利用する他の締約国において,その国民及び常居所を有する者と同一の条件で法律に関する援助及び助言を受けることができるとしていることを受けて,国内法においても何らかの規律を設けることが必要か否かの検討をお願いするものです。具体的には家事事件手続法と同様に,民事訴訟法上の訴訟救助に倣った手続救助の規定を設け,裁判費用について支払いを猶予することが考えられます。なお,我が国で裁判手続費用として扱われているもの以外の経費,例えば弁護士費用については,諸外国ではこれをも手続救助の対象とする例がありますが,我が国では手続救助の対象とはならず,本部会が直接審議の対象とはしない他の関係法令整備の問題になるものと思われます。   11の(3)は,手続費用の最終的な負担について,家事事件手続法に倣って負担の裁判は必ずすることとし,具体的な負担額の決定については,負担額確定の手続によるとすることを提案するものです。   11の(4)では,子の所在を特定するための経費,代理人費用,子の返還のための経費等について,条約第26条4項が司法当局が相手方に対して支払を命ずることができると規定しているため,この規定を担保する特則を設けるべきか否かについて検討をお願いするものです。諸外国においては担保法に規定がある国もありますが,我が国においては裁判手続外で発生した費用についてまで,同じ手続内で負担の判断をするということは,通常,行っておらず,このような費用について裁判所が本手続内で適切に判断できるかどうか疑問があること,条約上も支払を命ずることができるとするにとどまっており,命ずることの義務付けまではされていないことなどから,特段の規定を設けないこととするのが相当ではないかと思われます。   12の公開・非公開は,本手続を非公開とすることを提案するものです。裁判の対象が子の返還に関わるものであり,家族,親族のプライバシーに関わる事項が多く含まれると考えられること,子が審問を受けることも想定されることから,原則として非公開とするのが相当と言えます。   13,裁判記録の閲覧等では,裁判記録の閲覧について家事事件手続法に倣い,当事者及び利害関係人であることを疎明した者が,家庭裁判所の許可を得て閲覧することができるとすることを提案するものです。本手続ではプライバシー保護の要請が高く,また,適切な資料収集を図る観点からも,みだりに公開されないという保障があることが望ましいと言えます。そこで,記録の閲覧を裁判所の許可に係らせつつ,当事者と第三者とで要件を異にするのが相当と思われます。なお,この点についてはそもそも申立人,相手方から提出された資料等をどのように扱うかという21の審理手続における議論が影響するものと思われ,また,審理手続のイメージができた後で,戻って議論するということも考えられます。 ○髙橋部会長 それでは,費用,公開・非公開,裁判記録のところでいかがでしょうか。 ○磯谷幹事 まず,裁判費用につきまして日弁連内の議論ですけれども,実はなかなままだ煮詰まってございません。やはり,いわゆる裁判費用以外にも様々な費用が想定されるところですけれども,それについてもう少し細かい検討が必要だという認識でございます。ただ,一つは弁護士費用につきましては,やはりそれぞれが負担をするという考え方でよろしいのではないかという点と,それから申立人の弁護士費用について先ほどちょっと触れましたけれども,日本司法支援センターの仕組みを利用できるようにする必要があるというふうなところでは,おおむね一致を見ているというところでございます。   公開・非公開につきましては,先ほどの訴訟か非訟かというふうな議論がございましたが,恐らく大方はやはり非公開が望ましいのであろうという立場と認識しております。   裁判記録の閲覧等につきましても,やはり家事事件手続法の規定に沿った処理がされるのが望ましいのではないかと考えております。 ○髙橋部会長 費用とか記録とかというところは,後ほどの審理の中身がある程度,固まりませんと具体的な議論がしにくいところでもあります。費用とか記録とかは実際上は大きな影響があるわけですが,現段階で特にこの点を指摘したという御意見があればお伺いいたします。 ○辻阪幹事 26ページの下の部分,11の裁判費用(2)の25条の部分なのですけれども,25条は締約国の国民又は常居所を有する者と同一の条件で法律に関する援助,助言を与えることができるということで,この補足説明の後段部分で手続救助の対象とならない部分については,法テラスの利用も考えられるということで,ここの部分は先ほどの御説明では当部会の対象ではないというお話だったのですが,この25条の担保については必ずしも中央当局が求められている部分,中央当局が担保しなければならないと求められている部分ではないところ,例えば総合法律支援法の改正であるとか,新法において規定するなど,いろいろな方策が考えられると思いますが,そのような方策についても,この部会での議論の対象ではないという理解でよろしいかという点だけ確認させていただければと思います。 ○佐野関係官 今回の諮問対象は飽くまでも裁判手続ですので,その前の法テラスであるとか,総合法律支援法というのは直接対象にはならず,最終的な答申の段階では出てこない話であると思います。これを我が国政府としてどのように担保するかというのは,今後,政府部内でもちろん検討すべき課題であると思いますので,関係部局等を通じて適切な調整を行う必要があるとは思います。今回は,一応,費用ということで広範な観点からの多角的な検討を一読の段階でしていただくのが適当と思いましたので,このようなことも25条の話としてレジュメには記載させていただいているところであります。 ○大谷委員 今の御説明を伺いますと,更に部会の審議対象から外れると言われそうなのを承知で申し上げるのですが,こういう問題点がありますということの御紹介と,どこかの場で御議論いただきたいという観点で申し上げます。   今,御指摘のありました弁護士費用の点は,インカミングのケースで日本において日本の裁判所で返還手続を行う場合に,外国に居住している外国人の申立人の弁護士費用をどうすべきかという場面の話と思いますが,逆のアウトゴーイングのケースをちょっとお考えいただきたいのですが,日本人が日本にいて他国の返還手続における申立人になっている場合,国によりましては例えばイギリスがよい例ですが,非常に早い審理でかなり本格的な審理がなされ,そこで申立人側が提出を求められる,あるいは相手方からの抗弁に対して反論をする必要に迫られるという場面がございます。現在,日本はハーグ条約に入っておりませんので,本格的な意味でのハーグ返還手続というものに日本人が当事者となる例というのは余りございませんが,イギリスではハーグ締約国以外の国からイギリスへの連れ去りに対して,かなりハーグ返還手続に似たような審理で返還の審理をしております。   そうした裁判に実際に日本人申立人の代理人として,日本側で支援したことがある経験から申し上げますと非常に大変で,申立人に対して何らかの弁護士の支援がないと,なかなか現実には裁判において不利な状況になるという現実がございます。当然,返還手続が行われている国において代理人を選任する,その代理人の支援を受けるということはございますが,求められているものは日本国内において陳述書を作成したり,証拠を収集して提出すると。迅速な裁判を理解して,言葉の問題もございますので,日本の現地においての支援というのも必要になってくると。   当然,お金が掛かりますので,全てのハーグ返還手続で申立人が,ハーグ返還手続が行われている国における代理人と,それから自分がいる常居所国における現地の代理人と,二重で抱えるという例が一般的とは申しませんが,そのような必要が出てくることも考えられることから,現在の総合法律支援法では日本に住む日本人の場合,居住要件や国籍要件の点では充足しておりますが,外国における裁判手続というのが援助の対象になっておりませんので,今後,そのような点もどうするかということも,実務の問題としては検討の必要があるのではないかと考えております。 ○髙橋部会長 では,少し頑張りまして,送達と手続のところまでいって,それで休憩ということにさせていただこうと思いますが,まず,説明をお願いいたします。 ○松田関係官 では,説明させていただきます。   まず,14の送達では,送達に関する特則の要否,特に公示送達をどのように扱うかについて検討することを提案しております。本手続において送達をする場合の具体的な手続につきましては,国内に住居所を有する者に対して送達をする場合には,民事訴訟法第5章第4節に規定する送達に関する規律に倣うのが相当であると考えられます。もっとも送達に関する規律のうち,公示送達については本手続は飽くまで返還命令発令後,直ちに現実に子を常居所地国に返還することを目的としている以上,例えば相手方の所在が不明であるときに,返還を命ずる裁判書を相手方に公示送達によって送達しても,本手続の目的を達成することができないから意味がないと考えるのであれば,公示送達についての規律を設ける必要性はないと考えることになると思います。   しかし,現実の執行可能性がなければ,返還を命ずる裁判をする利益が全くないと言えるのかどうかという点につきましては疑問の余地がありますし,現実に送達できないとしましても発令要件を満たす限り,返還命令自体は発令し,子の返還の実現に備えることが有用であると考えれば,公示送達の規律を設ける必要があると考えることになると解されます。また,相手方の住居所等が不明で,通知等ができない状態が申立て段階から続いている場合,実質的な審理が開始された途中から生じた場合,終局決定後に生じた場合とで異なる規律を設ける必要があるかという点も問題となり得ると思われます。なお,相手方に送達をした結果,相手方及び子の転居が判明したというような場合には,子の返還のための手続が係属している途中であっても,中央当局は条約第7条第2項aにより,子の所在を発見すべき義務を負っていますので,中央当局において子の所在を調査した上,その結果を踏まえて裁判手続を進める必要があると考えられます。   次に,15の手続の併合・分離では,家事事件手続法第35条と同様の規律を設けることを提案しております。例えば親以外の第三者が子を連れ去り,監護権者である両親が別々に申立てをした場合には,これらの手続を併合して進めるのが相当な場合が多いと考えられますし,また,例えば複数の子について返還の申立てをしたところ,そのうちの一人が16歳に達していることが判明した場合には,手続を分離して当該子に対する申立てを却下するのが相当であると考えられますので,このような場合もあり得ることを考慮し,家事事件手続法第35条と同様に,裁判所が職権で手続を併合又は分離することができるものとする必要があると考えられます。   次に,16の手続の中断・受継では,どのような内容の規律を設けるかについて検討することを提案しております。当事者の死亡,訴訟能力の喪失,法定代理人の死亡など民事訴訟法等に規定する中断・受継事由は,本手続においても発生することが想定されますので,本手続においても中断・受継の規律を設ける必要があるかどうか,設けるとして他の申立権者による受継を認めるかどうかを検討する必要があります。   なお,中断につきましては家事事件手続法では裁判所が第三者から事情を聴取するなど,当事者が関与しなくても行い得る手続は進めておくのが相当である場合も想定されますことから,民事訴訟と異なり,当事者の死亡等によっては手続は中断しない規律となっています。また,他の申立権者による受継については,本手続においても例えば第三者が子を連れ去り,監護権を有する一方の親が申立人となった場合において,その申立人が死亡したときに他方の親に受継させるということが考えられます。   続きまして,17の手続の中止では,手続の中止についてどのような規律を設けるかを検討することを提案しております。なお,監護権に関する本案の手続の中止については,28において別途検討することにしておりますので,ここでは本手続の中止についての規律を検討する趣旨です。天災その他の裁判所が職務を行うことができない事由や,当事者の不定期間の故障など民事訴訟法に定められた中止事由は,本手続においても発生することが想定されますので,中止の規律を設ける必要があると考えられます。   また,本条約第12条第3項において子が他の国に連れ出されたと信ずるに足りる理由がある場合には,返還のための手続を中止し,又は却下することができる旨,規定しておりますので,これを中止事由として規律を設けることも考えられますが,返還の対象となる子が日本国内にいない場合には,基本的には返還の申立てを却下すべきことになると解されますので,このような申立て却下との関係や手続を再開する余地があるのかどうかについても,併せて検討する必要があると思われます。   なお,(注1)に記載しておりますように,子が他の国に連れ出されたと信ずるに足りる理由があるというためには,裁判所に出国記録等の資料を提出する必要があると考えられますので,そのための中央当局との連携が必要になると考えられます。また,(注2)では手続開始後に出国記録等から子が他の国に連れ出された形跡は認められないものの,国内における子の所在が不明となった場合の取扱いについても検討を要するものとしていますが,14の送達でも触れましたように,子の返還のための手続が係属している間も,中央当局は子の所在を発見すべき義務を条約上,負っていると解されますので,中央当局において所在調査の上,その結果を踏まえて裁判手続を進めることになると考えられます。 ○髙橋部会長 送達,特に公示送達は資料の2ページの一番下の(注),子が所在不明の場合に申し立てられたときにどう考えるかということと関連してくるところでもあります。 ○磯谷幹事 まず,送達につきましては,一応,手続の最初から相手方ないし子どもの所在が分からないという段階で,公示送達をして手続を進めるというのはやはり問題であろうという意見,しかし,途中で,この途中というのがどのぐらいの段階かというのはなかなか分かれるところでしたけれども,途中で行方が分からなくなったという場合には,やはり公示送達で最終的な結論まで,つまり,命令までいく余地というのは残しておく必要があるという意見がございました。ただ,最初から所在が分からないときにどうするのかというところは非常に難しい問題で,私どもの中でもまだ結論は出てございません。   それから,手続の併合・分離につきましては,特に法務省のおまとめ等に異論はございません。   中断・受継につきましては,これについても特段,何か意見があるわけではございませんが,いろいろなケースを想定すると,やはり死亡したときに誰が引き継ぐのが望ましいのかとか,そのあたりがちょっとなかなかバラエティがあるような議論になっておりまして,この点もまだまとまってはおりません。   それから,中止については特段,意見はございません。やはり,途中で子どもの所在が不明になったときにどうするかという問題は,本当に難しい問題だという程度の認識でございます。 ○髙橋部会長 いかがでしょうか。これも一応,国内手続ですが,日本にいることは1か月前に日本に帰ってきたことは入国記録で分かり,その後,出国記録がないから日本にはいるのだろうけれども,どこにいるのか分からないという場合,中央当局がいろいろ調べてもまだ分からないという,そういう場合を前提にしての議論ですが。 ○磯谷幹事 まだ,私の意見というほどでもないのですけれども,この手続は申立ての理由がまずは立ちますと,あとは抗弁が立つかどうかということになってくるわけで,しかし,抗弁がはっきりしないということであれば,本来であれば命令が出るのかなと思われるわけで,そうすると,例えば最初から子どもあるいは相手方の行方が分からないという場合に,まず,命令は出しておいて,そして,その後,発見されたときに,そのときの事情で何か取り消したりとか,そういった規律を設けることが可能なのかどうかというところは,少し個人的には思っているところでございます。 ○辻阪幹事 すみません,38ページの下のところの(注1)と(注2)でございますが,裁判所に出国記録等の資料の提出が必要となると考えられるところ,中央当局との連携が必要になると思われるという点で,中央当局の任務につきましては,今後,外務省の懇談会においてどれだけ中央当局に権限を付与できるかということを,議論していくことになるとは思いますので,今の段階で確たることは申し上げられませんが,ここは中央当局と連携するのではなくて裁判所が直接,出国記録の提出を求めるということも考えられるのではないかと思っております。(注2)はそれとも関係してくるのですが,正に中央当局がどれだけ子どもを捜す能力があるのかということなのですけれども,裁判中にいなくなってしまうような極めて困難なケースにおいても,中央当局がどこまでその任務を担えるかということとも関係がありますので,ここは外務省における議論とも連携して考えていきたいと思っております。 ○棚村委員 今のと少し関連するのですが,先ほども出ていました中央当局の任務と役割ということとの関係で,所在を発見するために努力するわけですけれども,できない場合が,今度,公示送達とか,そういうことと関係すると思います。海外等を見ていますと,やはり一番大きな違いは共同親権になっていたりして,監護権を侵害をされると,例えば面会交流も権利性みたいなのがはっきりしていますから,そういうものを妨害されたり,侵害をされて連れ去られるというと犯罪になることが多い。犯罪になると,当然,捜査の対象になるし,警察なんかが非常に迅速に動いて協力をしてもらえる体制が採れる。   ところが,そこが日本ではかなりいろいろな意味で里帰りとか,緊急避難的な連れ帰りというような評価みたいなのが一方にある中で,所在の明らかでないのがどれくらいあるかというと,ハーグの報告書なんかや実績なんかを見ても,かなり成果は上げているのですけれども,実際に却下されたり,そういう申請が認められなかったときに,よその国にも行っていることがはっきりしているものはいいのですけれども,国内の中でも広い国もあるし,狭いところもある,かなりそういう意味では所在が分からないので,援助ができないというケースもかなり出ている。そのときに最終的に中央当局がどういう役割を果たして,裁判所がどういう役割を果たすかというときに公示送達みたいなのが出てきて,恐らくそれでも判断をしなければいけないと裁判所は考えるか,一番最初のときに豊澤委員とちょっと考えが違うようでしたけれども,現にいる子どもの所在をきちっと把握した上で,そして迅速に返還をするというのが目的ですから,そうすると,そういう意味で公示送達みたいなものは,余りほかの海外でも例をそう聞きません。ただ,制度としてぎりぎりのところで残しておくというか,置いておく必要はやはりないのかと言われると,少し考慮する必要はあるかもしれない,普通は余り使われないというのがドイツなんかの例でも出てきていますけれども,公示送達みたいな形だと失踪宣告とか,そういうある意味では相手方がなくて,しかも子どもの所在が,返してもらうことが目的の条約でなければ公示送達みたいな制度というのはあるでしょうし,最終的には所在が確認できないときにも,ある一定の司法判断は返還の手続はしなければいけないぎりぎりのところはあるのかなということで,前回は公示送達は一切必要ないのではないかなということで疑問を呈したけれども,ぎりぎりのところで中央当局もそれからいろいろなところもなかなか所在をきちっと把握できない,あるいは転々と移動してしまうと,そういうときに最終手段というか,余り使うことはないと思いますけれども,手続としてはあり得るのかなという感じは持っている,この間の意見を少し変えるような感じになります。 ○磯谷幹事 今の点に関連して,この問題に限らないのですけれども,私の個人の意見ですが,やはり逃げていれば何とかなるというような余地は,できる限り残さないほうがいいと思うんですね。私自身は子どもが非常にきちんとした生活,根付いた生活ではなくて,一方の親とともに隠れたような生活を長期間にするというのは,やはり子どもの福祉にとって非常によくないことだと思います。まだ,0歳,1歳,2歳といったような乳児のあたりであれば格別,それ以上の年齢になってくると,子どもにとって社会的な生活を営むことが非常に重要です。そういう点からすると,とにかく逃げていれば何とかなるというような余地はできるだけ避けて残さないようにして,そして,隠れているのではなく,むしろきちんと出てきて主張すべきことは主張するんだという制度に是非する必要があると思います。これは意見でございます。 ○佐野関係官 二読に向けての個人的な感想になりますけれども,そもそも入国記録はあるけれども,出国記録はないという段階で,裁判所にそのような申立てを公示送達を認めてまでする必要があるのかという点につきまして,そのような申立てについては中央当局の段階でそもそも却下するのかどうかという点も含めて,今後,議論する必要があるのかなと個人的には思いました。 ○大谷委員 悩ましくて私自身も自分の中でも余り考えがまとまっていないので,今,二読に向けてとおっしゃったので,また,二読のときまでに整理しておきたいと思いますが,ただ,今,おっしゃった入国記録はあるが,出国記録はないと,すなわち,日本国内にいることは明らかであるという場合に,中央当局の段階で却下を認める制度を設けるかということについては,私は消極意見です。理由はやはり条約上,中央当局は子の所在発見の義務がありまして,それは必ずしも結果の義務ではない,相当な方法で国内法の中でなすべきこと,できることをするということだとは思いますが,しかしながら,一応,所在発見のために努力する義務はある中で,国内にいることが分かっているのに,その段階で却下をしてしまうということは,非常に日本国として条約上の義務を果たしていないと,他国から見られる可能性があるのではないかというのが理由です。   アメリカなどの場合,国土が広大なのでなかなか見つからないのだということをおっしゃって,そのかわり,中央当局においてケースをクローズしないと,オープンにしておくといったような御説明をされますが,中央当局から次の段階の裁判の申立てが子の所在が全く分からない状態でできるかどうかということは,なお,自分自身もまだ悩んでおりますけれども,中央当局による行政的な処分としての却下としないほうがよいのではないかと思います。また,今回の第6回の特別委員会での結論及び勧告の中でも,中央当局の限りで行政的に却下をするのは,例えば子どもが16歳以上であるとか,締約国でない国からの条約発効前の事案についての申立てであるとか,かなり司法的な判断を必要としない,客観的に一義的なものに限るべきであると,ちょっと表現は正しくないかと思いますが,そのような趣旨の結論もあったかと思いますので,その観点からも以上のような意見を持っております。 ○豊澤委員 援助申請を受けた中央当局が子どもの所在を捜した結果,国内での所在が分からないといった場合であっても,申立人が直接,日本の裁判所に対して取りあえず期間的な問題などから直接返還命令の申立てをすることは妨げられないわけで,そういった場合にその後,公示送達で手続を進めることにするのか,あるいはそうではない仕組みにするのかは,別途御議論いただきたいと思いますが,そういった場合に日本の裁判所で,仮に複数の裁判所が管轄を有するとした場合には,どこで申立てを受けるのかというところは,やはり入口の問題として定めを置く必要があるのではないかと思います。   その後の手続がどうなるかについて,最初から公示送達で手続を進めるような仕組みにするのかどうかは,申立人側の利益と相手方や子どもの利益の衡量であるとか,管轄の定め方の問題とか,様々な利益を考慮して御議論いただきたいと思いますので,裁判所の方からなかなか実質的な話はできませんけれども,その点をどのような仕組みにするかにかかわらず,相手方所在不明の場合の入口の裁判所をどこにするかについては定めが要ると思われるので,申し上げておきます。 ○髙橋部会長 最終的な条文がどうなるかはともかく,この問題は部会なりの考え方は固めておく必要があろうかと思います。教室設例で恐縮ですけれども,日本にいることははっきりしているのだけれども,どこにいるのかは分からない。申立人のほうは公示送達の申立てまでしてきてしまったときに,返還申立てをはねていいのかということですね。部会資料36ページのドイツの例が出てきていて,不勉強で分からないのですが,子どもが失踪していれば返還命令を出さないとありますが事実上,出さないのか,何か法令上の根拠があって出さないのか,どうも資料からはよく分かりませんが,何か法令上,根拠を置くとすればどういう規定でしょうか,半永久的に中止しておくというようなことですかね。 ○佐藤関係官 ドイツの担保法と呼ばれているものを調べた限りでは,直接,このような場合に命令を出してはいけないというような規定そのものはなかったのです。そういうことからしますと,推測としては,意味がないので,運用上していないということが大きいのではないかと,司法当局の任務とも関係するかと思いますが,捜すということが前提になっているのではないかと思われます。 ○髙橋部会長 そういう運用がいいのかどうかはまた別問題になろうかと思いますが。 ○棚村委員 海外となかなか比較できない事情は共同親権とか,そもそも監護の仕組みと,それから刑事手続が結構,先行するのですね。刑罰とか,犯罪という扱いになってきますから,そういう意味での捜査の対象になったり,それから強制力も非常に強い,情報収集の力も,ネットワークも使えるということになります。それで,そういうところでもなかなか見つからないようなことも国土とか,そういう状況によって起こるわけです。ですから,そういう意味では,子どもの現実の返還ということを目的とするところで,ある意味では中央当局が非常に努力をし,所在を発見しようとするけれども,見つからないケース。だから,行政上の援助とか支援,情報提供とか,そういう可能な限りのものは却下するべきではないと思っているのですね,所在が見つからないからというので。   ただ,問題は司法手続として所在が捕まらないときに,申立ての問題もありますけれども,仮に住所とか,あるいは連絡先みたいなものが手掛かりみたいなのはできた場合と,できない場合があります。そういうときに,所在についての手掛かりもないのに申立てが認められるか,認めた後,手続をどう進めるか。手続を進めた後で最終的に審理にも影響が多分,出てくると思いますから,公示送達でやるかというのはやはり僕はぎりぎりのところでの手段や制度として置くべきであって,最終的には子どもの現実の返還ということが目的の条約ですから,ほかの海外でも公示送達でもって判断をし,命令が出たというのは大谷委員のほうが詳しいかもしれませんけれども,僕が探している限りでも時間がかかって発見をされなかったケースというのは,むしろ手続がそのまま進行しているものというのは,余り見たことがありません。   むしろ取り下げたり,あるいはいろいろなことが解決して取り下げたものと,それから,そうでなくて日本でもありますが,合意ができて取り下げているものと両方あるのだと思います。むしろ,そういうような形で,所在が確認をできないということについて,手続をそういう形だけ進めていくものを置いても,実質は余り意味がないのではないかと思っています。 ○髙橋部会長 それはそうだろうと思います。 ○棚村委員 ただ,制度として置いておくということはあり得ると思う。それから行政上の中央当局の役割の問題ですけれども,所在が見つからないから却下をするというのはやはり問題だと思います。申請自体は受け付けて,要件を満たしていれば,そして,所在はできるだけ捜すということは必要だと思います。 ○髙橋部会長 第一読会ですので,このあたりで。中断・受継,中止は相対的には最後に検討すればいいかと思いますが,この段階で特に強く何か御意見はございますか。   それでは,この段階で休憩を入れます。           (休     憩) ○髙橋部会長 再開いたしますが,この部会全体のスケジュールがタイトで,パブコメ等もございますので,恐縮ですが,今日の資料は全部やるというつもりでおります。5時半まではお時間を頂いておりますので,場合によってはちょっと延びるかもしれませんが,再開させていただきます。   送達のところで,古谷幹事,お願いいたします。 ○古谷幹事 件数としてはそれほどないかと思いますが,申立人が代理人を選任しなかった場合の送達が一応問題になり得るかと思われます。多くの場合は代理人が付くことが想定されているかと思いますが,代理人の付いていない外国にいる申立人本人に対して書面を送付,送達するということになりますと,かなり時間が掛かるという問題がございますので,送達場所として中央当局を届け出るとかいった手当てを御検討いただきたいと思います。 ○髙橋部会長 国によっては送達だけで1年半掛かるということも聞いたことがございますが,現在もそうかどうか知りませんが,御指摘をありがとうございました。   それでは,18から21まで手続関係ですが,説明をまずお願いいたします。 ○松田関係官 では,説明させていただきます。   まず,18の申立ての方式等では,子の返還の申立ては日本語で記載した申立書を裁判所に提出することにより行うことを前提に,申立書の必要的記載事項を家事事件手続法に倣い,当事者及び法定代理人,申立ての趣旨及び理由することを提案するとともに,申立書に記載すべき他の事項や添付すべき書類についてどのように考えるか,申立書却下の制度を導入するかどうかについて検討することを提案するものです。   まず,(1)の申立ての趣旨についてですが,これは裁判の主文と関係しますので,30で予定しております主文の検討の際に,併せて検討することとしたいと考えております。   (2)では,相手方の住所地及び子の住所地を必要的記載事項とするか否かについて検討することを提案するものです。子の返還の申立てにおいては,相手方の特定ですとか申立書の送達または送付,管轄の判断等のために相手方及び子の住所地を申立書に記載すべきものとするのが相当であるとも考えられますが,このうち子につきましては,手続の当事者でないものとすれば,子を特定することができ,かつ管轄を判断することができる程度の情報が記載されていれば足り,子の住所地を必要的記載事項とするまでの必要はないと考えることもできると思われます。また,先ほどの公示送達の規律をどのようにするかとも一部,関わるかと思われます。   仮に相手方及び子の住所地を必要的記載事項とした場合であっても,例えばDV事案において中央当局が子及び相手方の所在を発見したものの,子又は相手方の安全のために,その住所地を申立人に知らせることが相当でないときは,裁判所が中央当局を通じて相手方及び子の所在地を確知している限り,申立書に相手方及び子の所在地の記載がなくとも,申立書の記載要件を満たすものとして扱う必要があると考えられます。   さらに(3)では,申立書に不備がある場合,例えば申立ての趣旨が特定されないまま申立てがされた場合は,家事事件手続法第49条第4項等の規律と同様に,補正を命じた上で申立人がこれに従わないときは,申立書を却下しなければならないとする規律を置くことが考えられますが,このような規律を置くことの要否及び適否について検討することを提案しております。   次に,19の証明責任では,子の返還手続の審理において子の返還事由については申立人に証明責任を負わせ,子の返還拒否事由については相手方に証明責任を負わせるものとすることを提案しております。本手続は,基本的には子を連れ去られた者と子を連れ去った者の二者間の手続であることに加え,特に返還拒否事由について定める条約第12条第2項及び第13条第1項では,当事者による証明を前提とした文言になっていることを考え合わせますと,子の返還事由については申立人に,子の返還拒否事由については相手方に,それぞれ証明責任を認めるのが相当であると考えられます。   もっとも,ここで申立人又は相手方に証明責任を認めるということは,裁判所が職権で資料を収集することを禁ずる趣旨ではなく,職権探知により収集された資料を含め,裁判所が自由な心証に基づき裁判資料を検討評価しても,なお,事実が証明されたとは判断できない場合に,当該事実がなかったものとされる不利益を受けるという,いわゆる客観的証明責任を負わせる趣旨と解することが可能であり,また,相当であると考えられます。なお,条約第13条第2項は,子が返還されることを拒み,かつ,その意見を考慮に入れることが適当である年齢及び成熟度に達している場合には,子の返還を拒否することができる旨を規定するのみで,その文言上は特に当事者による証明について言及されていませんが,この場合の返還拒否事由についても,子の返還の申立てに対する抗弁事由として,相手方に証明責任を負わせるのが相当であると考えられます。   次に,20の裁判資料の収集方法では,裁判資料の収集方法についての検討を提案するものです。本手続を非訟手続と考えた場合には,裁判資料の収集方法についても家事事件手続法の規律と同様に,事実の調査として裁判所が職権で自由な方式により機動的に収集することができるとするのが,特に迅速処理の要請が高い本手続に合致していると考えられます。もっとも,その場合でも家事事件手続法の規律と同様に,当事者には証拠調べの申立権を付与し,証拠調べの方法によって裁判資料を提出する機会を与えることが考えらます。   また,本手続の裁判資料の収集方法について,一般的には,今,申したような規律にしたとしましても,例えば子の返還事由や返還拒否事由といった当事者が証明責任を負う事実を根拠付ける資料については,家事事件手続法第106条第2項に規定する審判前の保全処分の手続における裁判資料の収集についての規律に倣いまして,証明責任を負う当事者に証明義務を負わせ,裁判所はその後見的機能として必要があると認めるときに,補充的に職権で事実の調査及び証拠調べをすることができるものとする規律とすることも考えられます。   他方で,非訟手続によりながらも,子の返還事由と返還拒否事由についての審理については,証明責任を観念することになる以上,それらの事由に関する裁判資料の収集についても,原則として民事訴訟法の証拠調べの構造を採用して,厳格な証明を要するものとすることも考えられますが,このような規律とした場合には例えば一方当事者から提出された資料は,他方当事者に送付しなければ裁判資料とすることができないこととなるなど,裁判資料の収集手続に様々な制限等が加わることになり,手続が遅滞する可能性が高いと考えられますので,迅速処理の要請とどのように調整させていくかが問題になると思われます。   次に,21,審理手続では,本手続における具体的な審理手続について検討することを提案しております。本手続の審理手続につきましては,本手続による子の返還申立て事件を紛争性のある申立人及び相手方間の対立構造の非訟事件と捉えますと,基本的には同様に紛争性のある対立構造の性質を有する家事事件手続法別表第二の審判事件,すなわち,相手方のある紛争性の高い事件の手続の特則,具体的には家事事件手続法第67条から第72条までの規律を参考に,当事者の手続保障を図ることを検討することが考えられます。もっとも,本手続では通常,申立人が日本国外にいることや迅速処理の要請が極めて高いことなどを考慮しますと,当事者の手続保障をどの程度,配慮すべきかについては,別途,検討を要するものと解されますので,本手続に特有のこれらの諸要素をも考慮した上で,規律の内容を定めていく必要があると思われます。   具体的な審理手続としましては,まず,レジュメの①では通訳人の立会い等の措置,疎明,家庭裁判所調査官による事実の調査,家庭裁判所調査官の期日への立会い,裁判所技官による診断,他の家庭裁判所への事実の調査の嘱託,官庁,公署等への調査の嘱託等については,家事事件手続法第55条,第57条から第62条までと同様の規律を設けることとすることを提案しております。   ②は,申立書を相手方に送付しなければならないものとする規律を設けるべきかどうか,検討することを提案するものです。なお,家事事件手続法第67条では,調停をすることができる事項についての審判事件,現行家事審判法ではいわゆる乙類審判事件と言われているものですが,これについて申立書の写しを相手方に送付しなければならないものとしつつ,申立書の記載内容から,これをそのまま送付すると手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは,申立てがあったことを通知することをもって送付に代えることができるものとする規律を設けています。また,同条では住所不明等の理由で申立書の写しを送付できない場合には補正を命じ,これに応じないときは申立書を却下しなければならないものとしていますが,申立書の写しの送付は公示送達の方法によってもすることができることを前提としております。   ③は,一方当事者から提出された資料を他方当事者に送付するものとすべきか否かについて検討することを提案するものです。先ほどの20の裁判資料の収集方法として,ここで厳格な証明を基本とする規律とした場合には,裁判資料は原則として当事者に送付すべきことになると解されますが,自由な証明を基本とする規律とした場合においても,当事者の反論,反証の機会を保証するため,原則として裁判資料を当事者に送付するものとする旨の規律を置くことも考えられます。もっとも,迅速処理の要請が高いことを考慮しますと,当事者の手続保障は⑧において,事実の調査の通知の規律を設けることで足りると解するのが相当であるとも考えらます。   次に④では,家事事件手続法第54条及び第64条第1項の規律と同様に,電話会議システム又はテレビ会議システムを利用して手続を行うことができるものとするか否かについて検討することを提案するものです。当事者や代理人が日本国内にいるときは,電話会議システム等を活用することができるものとすることが当事者等の負担を軽減し,かつ迅速処理の要請にも沿い,合理的と考えられますが,他方で,国際回線による電話会議システム又はテレビ会議システムの利用は通訳人の問題があるほか,日本国外にいる申立人に対して,電話会議システム又はテレビ会議システムの方法で,裁判所の手続上の行為の効力を直接に及ぼすことについて主権侵害等の問題が生じないか,検討する必要があると考えられます。   ⑤では,家事事件手続法第68条の規律に倣い,原則として少なくとも一度は当事者の陳述を聴取しなければならない規律とすべきかどうか,また,この場合に陳述聴取を審問の期日においてすることを求める権利を当事者に認めるかどうかについて検討することを提案するものです。なお,家事事件手続法における陳述聴取とは,言語的表現による認識や意向を聴取する手続を意味するものでありまして,裁判官が審問期日において口頭で聴取する場合だけでなく,裁判所が書面により照会する場合や家庭裁判所調査官が調査として聴取する場合をも含むことを想定しております。本手続における陳述聴取につきましても,基本的には同様の概念であると整理してよいのではないかと考えられます。   ⑥は,本手続における証拠調べの規律の内容について検討することを提案するものです。具体的には家事事件手続法の規律と同様に,当事者に証拠調べの申立権を認めることとするかどうか,文書提出命令の規律を設けることとするかどうか,また,設けるとして,これに従わない場合の制裁をどうするか,すなわち家事事件手続法と同様に過料の制裁を科すこととしてよいかどうか,又は民事訴訟法と同様の真実擬制の規律を認める余地があるかどうか当について,検討を要するものと考えております。   ⑦では,審問の期日の立会権の要否について検討することを提案するものです。具体的には家事事件手続法第69条では,審問の期日を開いて当事者の陳述聴取をするときは,他の当事者にその立会権を認めつつ,その他の当事者が立ち会うことにより,陳述聴取に支障を生ずるおそれがあると認められるときはこの限りでないとして,立会権の例外を認める規律としておりますが,本手続の審問の期日についても家事事件手続法と同様に,審問の期日で当事者の陳述聴取をするときは,他方当事者に立会権を認めるものとするかどうか,また,その立会権に例外を認める必要があるかどうかについて検討することを提案しております。   ⑧では③と関連しますが,事実の調査の通知について手続保障の観点からどのような規律を設けるのが相当かを検討することを提案するものです。なお,家事事件手続法第70条では,当事者が事実の調査の結果について閲覧謄写等の機会を保証し,もって,その結果に適切な対応を採ることができるようにするため,裁判所は事実の調査をしたときは特に必要がないと認めるときを除き,その旨を当事者に通知しなければならないものとしています。本手続においても,③のような裁判資料を当事者に送付するものとする規律までは設けないものの,当事者の手続保障の観点から,家事事件手続法第70条と同様の規律を設ける必要があるとも考えらます。   ⑨では,本手続に家事事件手続法第71条の同様に審理を終結し,それを当事者に告知するものとする規律を設けるべきか否かについて検討することを提案しております。なお,家事事件手続法第71条で審理終結の制度を導入しました趣旨は,当事者に裁判資料の提出期限及び審判の規則での裁判資料の範囲を明らかにし,十分に攻撃・防御を尽くさせることができるようにするためです。   最後に⑩ですが,家事事件手続法第72条と同様に裁判をする日を定めることとする必要があるかどうかについて検討することを提案するものですが,本手続における迅速処理の要請を踏まえれば,⑨の審理終結の規律を設けることとした場合には,審理終結後は可及的速やかに子の返還についての裁判をする必要があると言えますから,裁判する日を定めなければならないとする規律をあえて設ける必要はないとも解されるように思われます。 ○髙橋部会長 手続の内容のほうに入ってまいりましたが,どこからでも御自由に。 ○磯谷幹事 まず,申立書の方式などですけれども,具体的にどういうふうな書面にするのか,あるいは添付書類をどうするのかといったところについては,ちょっと日弁連内でもまだ検討中でございます。ただ,恐らく大きな何か争点になるものではないだろうと認識をしております。相手方の住所地等の記載ですけれども,原則としては当然,記載をすることになりますが,仮に記載がない場合には裁判所が中央当局に確認をして,中央当局で把握をしているということであれば,申立書の記載の要件を満たすということで,手続を進めてよいのではないかと考えております。その他補正命令等についても特に意見はございません。   それから,証明責任につきましては,法務省の御説明のとおりで基本的には結構ではないかと考えております。   実は今回,日弁連で事前に議論ができたのはここまででございまして,時間切れで,ここから先はまだ十分な議論ができてございません。適宜,3人の委員,幹事で意見は申し上げますが,日弁連としては引き続き議論して,また,御意見を申し上げていきたいと思っております。 ○長嶺委員 どこからでもよろしいということでしたので,審理手続の中の電話会議,テレビ会議システムの件です。第1回目のときにも若干,議論がございましたけれども,国際法を見ている立場から申し上げますと,釈迦に説法のお話ではございますけれども,権力的な作用を伴う手続を外国において行うこと,このテレビ会議システムがそういうことになるとすれば,相手国の同意なしにこれを行うということは,違法性の高い権力的な作用ということになります。家事事件手続法第54条の規定も基本的に想定しているのは国内における手続であろうと思いますので,申立人が外国におる場合にどう使うかということに関しては,相当注意を払って考えていく必要があるのではないかということを指摘させていただきます。 ○大谷委員 まず,申立ての方式で記載事項ですが,日弁連内でも十分に検討できているわけではないのですけれども,一点,気付いた点を申し上げます。この条約の対象となる子どもが16歳未満ということになっておりまして,16歳以上の子についての返還申立てが来た場合には,そもそも中央当局でその段階で却下されることになる取扱いと理解しておりますが,その時点では16歳未満であったために裁判所に申し立てられたと。途中で16歳に達したときには,その時点で手続は終了するという扱いになろう,終了というのがどういう形の終了か分かりませんけれども,と理解しております。そうしますと,子どもの生年月日というのは非常に重要でして,その点を場合によっては申立書の必要的記載事項にすることも検討の余地があるのではないか,また,添付書類として,日本であれば当然,戸籍謄本で明確に子どもの生年月日が確認できますが,子の出生証明書等の公的な書類の添付を必ず求めるということも検討の余地があるのではないかと考えます。   二番目に,40ページの18の(2)の相手方の住所及び子の所在地が必要的記載事項かという点に関しましては,先ほど磯谷幹事が御説明くださったように,特定はできているけれども,開示されていないような場合に,それを記載しないことでの申立てというのも許すべきと考えております。その場合に先ほどの管轄の話に少し戻りますが,申立人としてはそのような場合にどこに申し立てるのかということについて,東京だけが専属管轄であれば東京なのですが,2庁以上になった場合には先ほどどなたからも御指摘がありましたように,その場合は霞が関ということで東京家裁にする等の規定を設けて,入口のところで迷わないような仕組みが必要ではないかと考えております。   それから,電話会議,テレビ会議ですが,前回も国際法の先生方がいらっしゃり,私自身も国際法をずっと専攻してきている者として,そういう御意見が当然あるのを分かりながら申し上げたのですが,主権侵害ということに関しまして,日本ではというか,世界的にか分かりませんけれども,そのようにもちろん議論されておりますが,現実にはこうしたことが行われていると,各国の裁判手続において日本にいる当事者ないし証人に対し,テレビ会議や電話会議を通じて尋問,審問を行うということが現実に行われている現在,日本のほうから他国の主権を侵害するのではないかということだけで,この議論を片付けてよいものかということは,非常に実務の観点からは疑問に思っております。   まして,申立人が外国にいる場合,申立人が審問される機会を保障するということは,その国にとって必ずしも不利益になることではないかもしれず,若しくはその国の同意が必要ということであれば,場合によっては一々個別の同意を取るのか,前提として一般的な何か合意をしておくのかよく分かりませんが,片面的に現在,そうした実務が国際的にある中で,日本としてどうすべきかということはやはり議論をしていただきたい,検討すべき必要があるのではないかと思います。その際,実務的に今度は通訳の点を先ほど論点として挙げられましたが,これも難しいこととはいえ,通訳を入れながらのそうしたやり方というのも現実には可能で,行われているところですので,その点は先ほどの主権侵害になるのではないかという点よりは,ハードルが低いのかなと思います。   一点,質問なのですが,申し訳ございません,審理手続のところで,②,③で送付の論点が挙げられております。先ほど14の送達の項目では送達ということで,例えばまれにではないかということでしたが,申立人に代理人が選任されていない場合の送達の問題も御指摘いただいておりましたが,これは送付だとすると必ずしも外国送達によらないことも考え得るのか,そこはやはり外国送達だとして時間がかかるので送達場所を国内の例えば中央当局にしてもらって,それにより時間短縮を目指す以外にないのか,その辺,事務当局のほうで送達の論点,14番と21番では送付というということで問題提起いただいていることとの関係を教えていただければと思います。 ○松田関係官 御質問いただいた点につきましては,家事事件手続法では送達としてしまうと時間がかかって,迅速処理の要請に応えられない場合もあるかもしれないということで,送達という方法にせずに送付としたのですけれども,今回のこの手続で申立書を相手方に届けるかどうか,そのものを届けることとする規律とするかどうか,その場合に送達という方法を採るべきか,それに限定せずに送付という方法にすべきかどうかというところも,今のところ決めているわけではなくて,ここに送付と書きましたのは,送達に限定して考えているわけではないという趣旨で書いておりますので,どちらがいいかということは,相手方に申立書を届けるとした規律とした場合に,どちらとするほうが手続が円滑に進んでいくのかということで,今後,部会で御検討いただきながら事務当局としても考えていきたいと思っているところです。 ○相原委員 最初に少し申し上げたハーグ条約のこの手続が大体,どういうものなのか,どうイメージされるのかというところで,ちょっと皆さんの御意見を伺いたいなと思います。それが今の45ページの⑤のところに少し出てくるのかなと思いますが,結局,迅速性が非常に重要な要素でありながら,一方で,日本国内での懸念といいますか,DV事案とかできちっと見てもらいたいという,そのすみ分けをどこら辺でやっていくのかというところの問題意識でございます。つまり,最初の段階で,どこかでこれはかなりスピーディにできる案件なのか,それとも問題性があって,丁寧に手続をしなければいけない,丁寧というよりも割ときちっと証明責任も含めて,相手方の抗弁とかが出てきそうな案件なのかというところのすみ分けをどこの段階するのだろうという問題意識でございます。   それで,一方では相手方の主張するものを,つまり住所とか,そういうものも含め,相手方からの当事者の抗弁なり,言い分をここの段階で聴くのでしょうか。そこのときに申立人側の手続保障というのをどこまで考えるのか,申立代理人に通知して相手方の抗弁なりに立ち会って聴くものを想定されるのだろうか,それともヒアリング的な当事者の陳述を聴取すべきかというところ,まず,申立人のを聴くのかとか,そこら辺のところのイメージが非常に重要になってくるとのかなと思っております。もし,今の段階で法務省で考えられていらっしゃることがあれば教えていただければなと思います。まず,日弁連のほうで検討する材料としてもまだ非常に錯綜している状況で,まだ検討していないという実情であることからも,可能な範囲で教えていただければなと思います。 ○松田関係官 今のところ,事務当局としても具体的な審理手続のイメージとして。想定しているものはまだございません。 ○棚村委員 ハーグの2008年の実質,それぞれの国,それから全体の返還命令が出た比率が確か61%で,返還拒否が34%ぐらいですかね。国によって若干違いがあります。それから平均の審理の日数ですけれども,これもかなり集中をして早くやるイギリスとかカナダみたいなところは,返還命令が出ているのは120日とか,100何日とかというので,3か月ぐらいでやっているところもあれば,慎重に半年ぐらい時間をかけて200何日,返還拒否が問題になるのは平均でいうと286日だったかと思いますから,1年まではいかないけれども,10か月近く掛かるケースもあると。   国によってもちろん違いますから,迅速性といったときにどういう形でやるのか,それから返還拒否みたいな抗弁事由みたいなのが出てきたときに,どれくらい時間を掛けるのか,ただ,証拠だとか,いろいろなものについては文書できちっと争点を整理をした上で,できるだけ出していただいて,直接の審問をしたり,事情を聴いたりということについては,できるだけ制限を必要な範囲で限っていくと。ですから,返還拒否の事由みたいなものが主張されたDVとか暴力とか,そういうことについては少し慎重にやる傾向はあると。   ただ,全体のイメージとしては,現在の主要締約国が主としてやっているものを少しイメージしながら,それで必要な範囲で直接,口頭証拠みたいな形のものは,この間もちょっと髙橋先生からも出ていたと思うのですけれども,やはり一回はきちっと当事者たちの話をもちろん宣誓供述書ではないですけれども,陳述書みたいな形で出してはいただいていても,何からの形で聴く必要があるし,お子さんのことも調査の結果も含めて何か聴く必要があればということで,必要最小限のそんなイメージを少ししながらやっていくと,日本の今の現状,多分,子の監護の関係の事件では私たちも最高裁の協力を得て,どのくらいの審理日数が掛かっていて,そしてどのくらい調査が入り,それからお子さんの意向とか心情の調査をやったのが何件ぐらいというのは,国内のではもちろんありますので,恐らくそんなことをベースにしながら両方のバランスを考えていくと,そう1年も2年も掛かるというのはちょっと問題だろうし,かといって,カナダとかイギリスみたいに100日とか,そういう百二,三十日というあたりでできるかどうかというのはちょっと微妙な感じですので,そんなことを僕なんかはちょっとイメージをしているのですけれども。 ○金子幹事 審理手続のイメージについてちょっと補足しますが,民事訴訟のように例えば両当事者を常に呼び出して,両方から同じ期日に双方から事情を聴きつつ進めていく,主張を伺いながら進めていくというのが一方の極にありますが,それ以外のやり方で,いわゆる非訟的にやるとなるとバリエーションが無数にあって,かなりプラクティスに委ねられる部分が多くなるのですね。最低限,例えば一回は期日において直接,裁判官に主張をする機会を設けるか,そのときには相手方がいなければできないようにするか,そういう形での整備は考えられるのですが,あとは最初は人証はやりませんとか,そういう形でもし合意が得られれば,そういう証拠制限のような形を創るということはできると思うのですが,およそ,この種のものはこういう進め方をするというところまではなかなか決めることが難しくて,それを法律的に書くということもなかなか難しいという印象を持っています。   ですから,迅速性と手続保障の兼ね合いで,最低限,こういうところは満たさなければいけないというレベルの御議論はしていただくとして,あとは例えば両代理人が日本にいるケースと,それから申立人が代理人を付けずに外国にいるケースでは進め方が違ってしかるべきで,取りあえず書面だけ出しておいて積み重なって,そこをどんどん進めておいて,一回だけ最後に日本に来てもらうとか,その辺のやり方はどっちかというと運用するサイドにある程度委ねるような形にしておいたほうが,むしろ弾力的な運用ができるのではないかという感じを持っています。 ○原幹事 二点ほどお願いします。   一点目は申立書の記載事項ですけれども,今,国内でDVの被害を受けた母子が逃げている場合に,相手方に住所を知られないために,住所を知られないための支援措置を行政側に申し出ることができることになっておりまして,その場合は行政側としても相手方に住所地を伝えないという措置を採っております。今後,中央当局の所在確認と相手方の申立人に,その情報をどこまで伝えるかという検討に懸かってくると思いますけれども,ここで必ず相手方の住所地を記載するということにはならないような形が望ましいのではないかと考えております。   あと,審理手続のところで,⑦のところで審問の期日において当事者の陳述を聴くときは,他方当事者は立会うことができるものとすべきかというところで,今,保護命令の申立てにおいてもやはりDVの被害者と加害者が直接,裁判所で会うということは非常に危ないということも言われていまして,裁判所においては期日をずらすとか,そういう対処もしていただいていると聞いておりますので,そういった運用が可能になるような書き方に是非していただきたいと考えております。 ○磯谷幹事 一つ,証明責任のところなのですけれども,先ほどの御説明で42ページの下のところでは,子どもの異議に関しても抗弁事由として,相手方に証明責任を認めるのが相当であるという御説明になっております。実質的にはこういうことなのだろうとは理解はしておりますが,一方で,条約の条文を見る限りは,13条1項bと少し書き振りも違うのかなと思っておりまして,この2項のほうにあえて証明責任を認めるというようなことを書く必要が何かあるのかどうか,そのあたりをちょっとお尋ねしたいと思います。 ○髙橋部会長 別に条文に書くかどうかはまた最後にやりますが,考え方として鶏と卵みたいなところがありまして,審理手続が分かられなければ全体の議論ができないのでしょうが,また,余り固めてしまうと実務の運用の芽を潰してしまうかもしれませんが,例えば諸外国にあるような証拠方法の制限のようなもの,日本法にいえば例えば即時に取り調べることのできるものに限定してしまうという考え方がありますけれども,今まで御議論からすると,そこまでのことはないのですかね。証拠調べに関しましては裁判所の適切な訴訟指揮で処理すればいいと。   あと,そうすると文書提出命令も出せることになりますが,そのときの規律は,これもある意味ではまたしばらく後で考えればいいといたしまして,一度は当事者の陳述を聴取すべきかという⑤,このあたりはいかがでしょうか。陳述の聴取は別に書面でもいいという前提ですが,手続保障として規定を置くかどうかは別として,この辺も了解は得られるのでしょうね。仮に審問期日において当事者の陳述を口頭で聞くときには,他方当事者を立ち会わせるかということですが,これは先ほどの事務当局の説明にもありましたように,家事事件手続法69条でもただし書がありますので,この辺,先ほどのDVとか暴力とかが予想されるときというのは,それなりに対応できると思います。   審理の終結は,終わりははっきりしてくれるほうがよいわけです。これはいつまでに書面で追加できるかということも含むでしょうし,ただ,言渡しの期日までは,告知の期日まではどうでしょうか,⑩はそれはそれとして,あと,送付とか事実の調査について,⑧は事実の調査をしましたということを通知して,その内容を知りたければ自分で記録の閲覧謄写等々をせよということですが,こういう規律,大体,家事事件手続法の規律に準じて考えております。そういたしますと,外国における電話あるいはテレビ会議システムの点は,まだ少しペンディングにさせていただいて,43ページの20の裁判資料の収集方法,これもやや理論的な問題かもしれませんが,人事訴訟型にするのか,民事訴訟手続によるのかという,このあたりはいかがでしょうか。   これも自由な証明という言葉を使うかどうかはともかく,実際にはそういうあたりだろうと思いますが,条文に自由な証明というのは多分,民事手続ではないと思いますが,条文に書くかどうかはともかく,実際上はそういうことであろうかなと思います。職権での事実の調査はできる,どこまでするかは実際に起きたときの裁判所の運用ですが,証拠調べの申立権,職権探知も念のため置いてはおく。このぐらいでしょうかね。 ○進藤関係官 裁判資料の収集方法について,先ほどの磯谷幹事からの御意見にも関連するところですが,家事事件手続法並びの規律を整備するということになると,全般的には皆さん職権探知を念頭に置かれるのだろうと思います。ただ,他方で条約上は当事者に証明責任が課されているわけですから,国内担保法においては証明義務の範囲を明記していただくなり,当事者が自ら裁判資料を提出すべきことを原則としていただくなりといった条約上求められている規律を担保できるような法整備をしていただければと思います。今後の審議の中で,自由な証明でよいのか,当事者に裁判資料を提出する機会を与えるのかという点についてもご検討いただくものと思いますが,全体として裁判所は当事者から出てきた資料に基づいて審理を進め,職権は補完的な位置付けであるということについて,その当否も含めて御議論いただければと思います。 ○髙橋部会長 職権探知だというと,裁判所は何でもやってくれると誤解する弁護士もいるということを弁護士さんから聞いたこともありますが,職権探知というのはそこまで概念上も含んでいるわけではありません。証拠調べへの協力義務というようなものを家事事件手続法はそれなりものがあるのですが,その辺もまた検討するということで,いかがでしょうか,ここのところはよろしいでしょうかね。 ○大谷委員 46ページの上の⑩審判日を定める必要ですが,是非,必要があるものとすべきとしていただきたいと。理由は,やはり当事者にしますと子どもが元の国に帰るか帰らないかという非常に緊張感のある期間でございまして,その結果がどうなるか,場合によって帰るのであれば,それに向けての準備とか,大体,審理の様子で帰ることが分かっているのであれば,それに向けて話合いをしたりとか,いろいろなことが想定されますので,やはり審判日というのを決めていただくということが,場合によっては任意での返還を促す作用もあるかもしれないという意味も込めましてお願いしたいと思います。   それから,審理手続のところで,担保法に書くということではないのですけれども,また,先ほどお話のありました,余りここでがちがちに何か書いたり,決めてしまうよりは運用にという御説明に私も賛成なのですが,その上で,ちょっと自分が持っている審理手続のイメージということで申し上げますと,やはり申立ての要件,いわゆる請求原因的なほうの要件が満たされていれば,基本的に原則,返還義務のあるという構造になっておりますので,その意味では抗弁が立つかどうかということが非常に重要でして,それをともかく早い段階で主張を促すということ,これはもう運用ないしは指揮の問題だと思いますけれども,そういう運用を是非お願いしたいと。これは担保法に書くべきという意味ではございませんが,そういう審理手続のイメージを持っておりますということで申し上げます。 ○棚村委員 恐らく審理手続で例えば中央当局が任意の返還を促すというのは,どういうふうなタイミングで,どんなふうにやるかとか,あるいは裁判所が調停みたいなのを活用するときにどうするかとか,いろいろあると思います。ただ,基本的に先ほど最高裁のほうからもおっしゃっていたように,今,家事事件全体がやはり手続保障ということと,それから当事者主義的な運用というのをずっとやってきて,そういう意味では,当事者が原則として主体的な働きをしていく。   海外との違いも対立当事者構造であり,基本的には当事者が必要な主張をし,資料も提供していくという責任を負っていくので,今回の子どもの返還についても手続上の地位ももちろん保障していくし,透明性も増してきますけれども,当事者の責任ということをある程度明らかにして,そして主体的にやり,なおかつ援助を受けるのは中央当局とかからもかなり協力,情報とか,いろいろなものももらえるわけです。ですから,司法の手続の中でも当事者が責任を持ってやっていくという基本的な,これは書くか書かないかはちょっと別だと思いますけれども,そういうような方向で必要な形でサポートを受けていくという形で確認をしていただくといいのかなと思います。つまり,当事者が何をして,ほかは何をしてくれるかということをある程度,明確にしておいたほうが手続を進める上でも,連携を取る上でもいいのかなという感じがします。   それで,今までのような職権探知とか,職権調査というような形がともするとやはり本来,当事者が果たすべき役割を代理人も含めて果たしてもらえていないというのが,僕が調停委員をやったときも経験をしましたので,やはりかなりお子さんのために争ったり,司法的な手続を開始しているわけですから,やっていただくという方向で,是非,考えていただくといいかなと思います。 ○鶴岡委員 42ページの子の返還拒否についての扱いでありますが,相手方に証明責任を認めるということ,すなわち,相手方の手元に子どもがいる状況の中で子どもは帰りたくないと言っているということを,それ以上,どう追求し,立証させるかという点でありますけれども,これは一つ大きな拒否事由になり得るということで条約の中に定めがあるわけですから,どういう審議になるか,予想できませんけれども,通常は日本に帰ってきて,日本人の親のところ,あるいは家族の中で暮らしている子どもは,もう一度,環境を激変させるような外国に戻るということについて,かなり抵抗する可能性が高いと思いますが,一方の親だけに心証を述べる場合には,当然,親の意向をしんしゃくした発言をすることが想定されますので,その証明責任を相手方に負わせて説明させるということが本当に適当なのか,どういう規定の仕方があるか,私は分かりませんけれども,条約の中に特記されている一つの返還拒否事由になり得るものであるということだけに,そもそも子に判断する能力が,年齢だけの問題ではないと思いますけれども,どう評価するかということも含めて,やや慎重な検討が必要なのではないかという点を申し上げたいと思います。 ○髙橋部会長 慎重でなければいけないのはそのとおりですけれども,最終的な客観的証明責任ですので,御指摘のことも念頭に置いて検討していこうと思います。手続の教示みたいなものは普通の民訴で申しますと,この手続は提訴予告通知があるような手続なのですね。中央当局から,向こうから来ましたよと,返せというのが来ましたよと通知するというのは,裁判上の手続が始まる前に相手方関係者は手続が始まることを分かってはいるのですよね。   ただ,棚村委員がおっしゃったように分かってはいるけれども,すぐに弁護士などのところに相談に行けばいいのですが,必ずしもそうではないというあたりが問題です。中央当局は大変でしょうけれども,手続の教示でしょうかね,放っておくと返されてしまうのですよということですよね。どこかに行って相談したほうがいいですよというところを早い段階で相手方に知らせなければなりません。そうしなければとても迅速な処理はできませんし,逆に,それができていれば相原委員が先ほど言われましたように,手続の早い段階で裁判所も審理の予定が立てられるのでしょう。 ○大谷委員 何度も申し訳ありません。21の審理手続は,日弁連内で十分な検討がまだ終わっていないのですが,②,③に関しては仮に申立書あるいは提出資料を他方当事者に送付すべきものとした場合においては,相手方に開示されたくない情報が含まれることがあることから,そのような場合には提出方法をどのようにすべきかということについて検討の必要がある。特にDV被害者が相手方になっているような場合に,所在の特定に関わるような事実その他の取扱いについて,検討が必要であるという意見がございましたので,御紹介を申し上げます。 ○髙橋部会長 申立書の段階では注意していたのですが,添付資料の中に子どもの住所が書いてあったなんてことがないではないようですので,その辺はおっしゃるとおりです。 ○古谷幹事 今の申立書の送付の関係で,公示送達とも関係するのですが,申立書の送付ができない場合,その場合についての手当てが必要と思いますので,申立書却下の制度を入れられないか,家事手続法では入っていると思いますが,その検討をしていただければと思います。 ○髙橋部会長 先ほど来の子どもの意見の聴取にも関係いたしますが,22から24,説明をお願いします。 ○佐野関係官 22番以下について簡単に御説明したいと思います。   22番の中央当局の協力・調査の箇所では,中央当局の協力・調査についてどのように考えるか検討することを提案しております。この資料の補足説明にも記載しておりますとおり,この手続におきましては常居所地国にある裁判資料についても,何らかの方法で適切に裁判の場に提出されることが望ましいものと考えられますけれども,そもそも常居所地国にある裁判資料について当事者あるいは職権としても裁判所において,適切に収集することは相当困難であろうと思われます。   そこで,このような裁判資料の収集につきましても,中央当局の協力や調査が必要であろうと考えられますけれども,まず,条約上の手掛かりとしましては条約第7条第2項dにおきまして,中央当局の任務の一つとしまして中央当局が常居所地国の中央当局との間で,子どもの社会的背景に関する情報を交換することが挙げられているかと思います。そのため,このようにして中央当局が向こうの国,常居所地国の中央当局から得た子の社会的背景に関する情報が適切に裁判資料として提出されることが望ましいものと思われます。   また,条約7条第2項dに限らずに裁判資料として提出することが適切なその他の資料についても,中央当局を通じて収集されることが役立つ,適切であろうと考えられます。なお,その際に中央当局が得た資料というものをどのようなルートで裁判資料として提出すべきかにつきましては,なお,今後の検討課題であろうと思いますけれども,例えば当事者を経由して当事者が裁判資料として提出するであるだとか,あるいは裁判所が中央当局に調査嘱託するなどして,裁判資料とすることが考えられるかと思いますので,この点についても時間があれば御議論いただければと思います。少し大きな問題としましては,実際に裁判資料として提出された場合,その資料というのはほとんどが外国語で作成されたものであろうと思いますけれども,その翻訳につきましては,誰がいつの段階で行うのが相当かについても,別途,問題になろうかと思います。   以上が22番です。   次に,23番の裁判官ネットワークの箇所ですけれども,ここでは諸外国の裁判官との連携について,どのように考えるかということを提案するものであります。現在,43か国の締約国が裁判官ネットワークなるものを形成しまして,各国,一,二名のネットワークジャッジあるいはネットワーク裁判官であるとか,リエゾンジャッジと称されるかと思いますけれども,を登録しておりまして,裁判官ネットワークが構成されていると思います。具体的な国や登録されている裁判官につきましては,ハーグ国際私法会議のホームページに公表されておりますので,お時間があれば御覧いただければと思います。   このネットワークジャッジの間では,どのようなことが行われているかにつきましては,専らハーグ条約事案に関する情報交換とか,調整が行われているとのことですけれども,そもそも締約国間における情報交換や調整というものは,元来,中央当局を通じて行われることが想定されており,これまでもそのように,また,今現在もそのようにされているかと思います。ただ,実際の事件処理の遂行の過程の中で,直接,裁判官同士の間で情報交換・調整を行うほうがより迅速かつ円滑な審議に役立つのではないかという声が上がったようで,専らハーグ条約の運用面におきまして,このような裁判官ネットワークが形成されたものと聞いております。   実際に裁判官ネットワークに所属する裁判官同士の間では,例えば各国の裁判手続であるとか,国内法に関する一般的な情報交換が行われることはもとより,具体的な裁判の手続の見通し等につきまして,電話や電子メールより連絡・調整がされているようであります。ただ,例えば実際に事件を担当していない裁判官がそのようなやり取りをすることにどれだけの意味があるのかであるとか,言葉の問題をどうするのか,あるいは裁判官の情報交換によって得られた情報をどのようにして記録化するのか,あるいはその際に当事者に何らかの配慮をするのか,具体的にどこまでの内容にわたるやり取りを行うことが裁判官ネットワークで想定されているのかなど,検討する必要が今後あるものだろうと思います。   なお,諸外国の状況を見てみますと,ネットワークジャッジというものに対しては,は子の返還後に可能な保護措置であるとか,返還命令に付す条件の調整等が期待されているようですけれども,この点につきましては,専らアンダーテーキングであるとか,ミラーオーダーについて取り上げる裁判の箇所について問題になりますので,その箇所で改めて御議論いただければと思います。   以上が23番です。   もう一つ進みますと,24番の子の意見聴取の箇所ですけれども,ここではレジュメにも書いてありますとおり,裁判所は子の陳述の聴取,家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により,子の意思を把握するように努め,裁判をするに当たり,子の年齢及び発達の程度に応じて,その意思を考慮しなければならないものとする旨の規定を設けることを提案しております。ハーグ条約におきましては,子どもというのは当事者にはならないとしても,仮に,常居所地国に返還される対象ですので,その結果には一定程度,重大な利害関係を有するものですから,一般に子の返還・返還拒否事由を判断するに当たっては,子の意見というものを考慮することが適切な場合が多いであろうとは思われます。そこで,ここでは具体的には家事事件手続法第65条の規律を参考に,先ほども申し上げましたような規律を設けることが相当であろうという提案をしております。   更に進みまして,条約第13条第2項に規定される返還拒否事由,すなわち子どもが返還されることを拒んだ場合に関する返還拒否事由につきましては,規定の趣旨も踏まえて必要的に子の陳述を聴取すべきという規律を設けるかも一応問題にはなりますけれども,ここでは部会資料に記載のとおり,陳述を聴取するか,その他の方法により子の意見を把握するものとするかというものを裁判所の裁量に委ねるものとして,子の必要的な陳述聴取の規定は設けないこととするのが相当であろうと考えておりますが,この点についても御議論いただければ思います。 ○髙橋部会長 ここもどこからでも結構でございますので。 ○鶴岡委員 中央当局の協力・調査,22でございますが,まだ,私どもは懇談会発足もしておりませんで,十分な議論をしておりません。また,外務省として特段の知見があるわけでもございませんので,ここに書いてある指摘事項は,それぞれ今後,検討が必要であるという点については全く異存はございませんけれども,現時点におきまして,これらの個別の論点についてどの対応が最も望ましいかということについては,申し訳ありませんが,明らかにするだけの知見を有しておりません。御指摘を頂いて我々としても改めて懇談会の場などを通じまして,十分な見解の整理をしてまいりたいと思います。   一つ,念頭に置いておく必要がありますのは,中央当局の義務もさることながら,これから設立されるであろう中央当局の能力もございます。中央当局という場合,個別の一つの部屋に創設される事務を扱う一行政単位と考えるのか,あるいはその単位と協力するところの各所掌をそれぞれ持っている関係府省庁なども,あるいは地方公共団体,教育委員会等々,協力を私どもとしては想定しております諸団体,こういったものもあり得るわけでございまして,その調査云々の諸外国側において,我々が相手の中央当局に求めるものと,相手の中央当局から今度は日本の中央当局に対して要請されるものと,この間のバランス,これも考える必要が当然出てまいりますので,裁判との関わり合いについても,これは能力の問題もありますし,また,入手した情報の提供について,相手方の意向なども当然,考慮する必要がある。したがって,種々,論点がまだ詰まっておりませんので,今後,ここに指摘されていることも念頭に置きつつ,裁判の審理にできる限り資するような形で中央当局としては協力もし,調査についても尽力したいということで,現時点においてはとどめておきたいと思います。   23の裁判官ネットワークでありますが,ただいま,法務事務当局からの御説明がございましたとおり,条約上の明示の根拠規定が設けられているような仕組みではございませんで,条約が発効し,実際に運用される中で担当裁判官の中で,一つ立ち上げられてきた事実上の措置であると認識をしております。他方におきまして,累次のハーグ条約締約国会合などの場におきましては,このネットワークが極めて有意義であるという点が繰り返し指摘をされ,また,強調されておりまして,私どもといたしましては,この条約の一貫性,整合性,また,的確な運用という観点から見ましても,我が国がこの条約を締結した場合には,裁判官ネットワークに是非参加をし,これを適切に活用するという道が開かれることが適切であろうかと思います。   もちろん,そこで得られる情報をどう扱うかということは,我が国の司法の原則に従って判断をされるべきことだと思いますので,これが事実上の措置であるということと併せて考えた場合には,活用することが有益であると判断するかどうかは,司法当局の判断であろうかと思います。ただ,このネットワークを活用する可能性は,是非,生かしていただきたいと思います。   24の子の意見聴取でございますが,先ほども私が指摘した点でございますが,我が国の制度上,一定の事件について陳述聴取を義務付けているのは,15歳以上であるということが事務当局からも御指摘がございましたが,条約においては年齢制限を16歳未満とした上で,子どもが返還を拒否することも考慮に入れるべき事由と特記されております。したがいまして,我が国の現行の年齢についての認識を併せて考える必要が条約との整合性との観点から,どこまで必要であるかということは,それ自体,検討を要することではないかと私は思います。   この子どもの判断というものがどの段階で熟しているかというのは,なかなか判断すること自体,難しいことだと思います。例の中に出ておりますフランスにつきましては,裁判官が広範な裁量を持つというような司法に委ねる方法も一つはあろうかと思いますが,いずれにせよ,調査官その他の裁判所による意見聴取の道は,開かれていくことが適切ではないかと思います。これをどのように裁判上の証拠として採用するか,先ほどお話がございまして,その整理については今後,更に御検討いただけることを期待を申し上げたいと思います。 ○相原委員 子の意見聴取の観点なのですが,担保法の問題というよりは運用のほうになってしまうのかなとは思いますが,こちらに書かれているのが裁判所からの書面送付による照会,裁判官の口頭による,それから家庭裁判所調査官による調査という例示がされているかと思います。ただ,年齢的なものと,それから言語的なもの,この二つを考えたときにはかなり専門性の高い方が子の意見聴取をしなければいけないのではないかなと思います。そうなった場合には,子どもの心理の問題をかなり専門的に分かっている人,更に言語の問題がこれに重なるという非常に悩ましい問題が生じると思っておりますので,運用の点になるかと思いますけれども,その点での配慮が非常に重要になってくるのではないでしょうか。   それから,あと,小さい子であると半年,1年たってしまっていると,結構,日本語にも慣れてきているということは,十分,予想はされるのですが,とはいっても,やはり成育歴,成育してきた状況によっては,態度とか表情が必ずしも日本と同じような反応を示さないということもありますので,そこら辺には非常な注意が必要なのではないかなと,個人的に思っております。 ○大谷委員 まず,中央当局の協力・調査ですが,このような中央当局による協力・調査があることが望ましいと思います。ただ,その上で現実的なことを考えますと,日本側の制度設計において,できる限り,当事者による証拠の収集・提出を原則としながらも,職権調査的な部分になるのかもしれませんが,場合によっては日本の中央当局が子の常居所地国の中央当局に要請をして,資料を収集して提出するということがあればよいのですけれども,常居所地国,相手方の中央当局がそのような任務を負っているか,あるいはそこで想定されるのが例えば一般的にその国に戻った場合,子の保護の制度としてどのようなものがあるかといったようなことであれば,ある程度,資料を出していただけるのだと思いますが,例えば子の虐待の主張がなされているが,子の保護機関に相談記録があるか,あるいはDVの主張がなされているが,警察の相談記録があるかといったことを本人がなかなか収集できないので,中央当局間で協力して調査してほしいと。   例えばこのようなことの場合を考えますと,果たして逆を考えますと,日本に対してそのような要請が仮にあった場合に,インカミングもアウトゴーイングも同じ中央当局と想定しますと,外務省が警察にそのような記録の取り寄せができるのか,国内法上,どのような関係になっているかということにもよると思われます。特に日本に対するインカミングケースが多いアメリカなどを想定しますと,連邦の中央当局に対して日本の外務省から,そういう協力要請をしていただいたとしても,現実には州の中央当局に下ろされ,その中でまた更に州の中でどのような制度になっているかといったことになってくると思われます。したがって,申し上げたかったのは,もちろん,このようなことは理想的ではありますけれども,余り今後の制度設計で審理手続のイメージにおいて,これで何かが出てくるということを前提に置いたイメージを持たないほうがよいのではないかと思っております。   それから,次に子の意見聴取ですが,論点が必要的にするかどうかと,その前にできるだけ意思を考慮しなければならないとする旨の規定を設けるものとすることでどうかという,二つを挙げていただいているのですが,一つ目のことに関して,子の年齢にかかわらず,そのような考慮をできるだけすべきかということのほかに,先ほどの立証責任の,証明責任のことと関連すると思うのですが,相手方が子の返還異議の抗弁を主張していない場合であっても,子の意見聴取に努めるべきかどうかという点があるかと思います。私は今の点に関して,裁判所は子の意見聴取に努めるべきであるという規定があることが望ましいと,年齢の点だけではなくて,抗弁として主張されていない場合も念頭に置いて,そのような規定があることが好ましいと思っております。   その上で必要的なものにするかどうかについては,必要的とまでする必要はないのではないか。裁判所の裁量でよいのではないか。特に年齢について規定を置かない場合に必要的なものにしますと,一体,どこまでの範囲か,ハーグ条約について実務家が集まった会議で聴いたお話ですと,ドイツや南アフリカでは,相当,小さい子どもさんについても全て意見聴取をされているということでしたが,それが果たして逆に子どもの利益の観点から好ましいことかどうかという点があろうかと思われ,その意味では裁量的でよいのではないかと思っております。参考でブリュッセルⅡbisの規則を挙げていただいておりますが,この場合も規定そのものは子の年齢及び成熟度から不適切ではない限りといった例外についての文言も入っておりまして,必ずしも全面的に必要義務とまでの規定振りではないと理解しており,そこまでの必要規定を置いているところではないのではないかと思っております。 ○古谷幹事 まず,22番の中央当局の関係ですが,返還手続にとって何が必要で,何が重要かという観点からになりますけれども,大谷委員からも御指摘がありましたように,まず,一つは常居所地国における法律あるいは法制度についての情報,それから先ほど当局からも御説明を頂きましたけれども,返還拒否事由に関する常居所地国における情報あるいは資料,事実といった事柄は,どうしても正確に判断するために必要な情報ということになります。このあたりは,是非,中央当局に収集等をお願いしたいところであります。また,返還手続の円滑な実施という点からいきますと,裁判所が作成するような文書,資料についての中央当局における翻訳という問題も出てくると思います。   次に,裁判官ネットワークの関係ですけれども,確かに今,一種のトレンドといいますか,推奨されているような事態もあるようです。しかし,実際問題としてどういった場面で裁判官ネットワークの活用をお考えになっているのかが不明確で,活用の場面というのも様々でして,例えば国際会議に出るというレベルから,本当に個別の事案に立ち入って何かやり取りをするというあたりまでございまして,まず,どういった場面で,どういった活用を考えるのか,あるいはどういった内容の情報交換を考えるのかを整理する必要があるように思います。その局面局面において出てくる問題点というのは,やはりいろいろ違っていて,当事者の手続保障の問題,司法の機能の問題,各様であろうと思うので,活用場面等を整理した上での御議論を頂ければ有り難いと考えております。 ○髙橋部会長 翻訳の問題はまたいろいろなところで出てまいりますし,裁判官ネットワーク等はまた次回,アンダーテーキングやミラーオーダーのところでも,また,御議論いただけると思いますのでほかにいかがでしょうか,この22から24の間のところで。 ○金子幹事 先ほど証明責任のところでも御指摘いただいた13条2項を抗弁事由として捉えるかどうかという問題は,正に今,問題が顕在化したとおり,主張がなくても裁判所のほうが職権探知をして,この事由があるかどうかまで考えるかというところが非常に実務的には大きな問題があるような気がしています。この事由は,主張としては出やすいと思うのですよね。いろいろなプラクティス上も,返還拒否事由について主張しますかということまでを促すのか,裁判所は受け身でよいということも考えられます。   条約上,これをほかの明らかな抗弁事由と違う規律をしていることについて,こういう場合は拒否事由として上がっていますけれども,それが必ず拒否する側が主張し,立証しなければいけないかということまでは,ほかとの関係もあってはっきりしないところがあって,そういう問い掛けが先ほどの19の証明責任のところだったのですが,もう少し,ここのところで御意見があれば伺っておければと思います。 ○髙橋部会長 というところですが,いかがでしょうか。 ○磯谷幹事 規律をどうするかはともかくとして,実務的には調査官はまず子どもには会うという理解でよろしいですか,あるいは,それはやはり何か書いておいたほうがいいでしょうか。イメージとしては子どもを返すわけですから,基本的に調査官は子どもと会うのだろうと私としては想定をしておるのですけれども,もし,そうだとすると,その中で当然,引っ掛かってくるものがあれば,裁判所として例えば子どもを利害関係人として参加させて代理人を付けるうんぬんというふうなこともあり得るのかもしれないなと思っています。   多くのケースは,やはり親が子どもをとにかく連れてくるというふうなことが多いのだろうと想像しておるのですが,中にはひょっとすると子どものほうが帰りたいというか,そういった形で親が引っ張られることもあるのかなとも思っておりまして,そうすると,やはり実際上,拾い上げて子どもの主張をきちんと酌み上げられるシステムにしておく必要があるのではないかと思います。 ○金子幹事 結局,13条2項が一つのテーマとして,その事案において上ってこなくても,調査官が会うかどうかという問題は恐らくあって,例えばお母さんは,子どもは帰りたくないと言っていますという主張が出たときは,それが本当に子どもの真意なのかどうかを確かめるためには,調査官なりの専門家が年齢によってはきちんと聴いたほうがいいとかいう話に流れていくのですが,それが自然なことかと思うのですが,およそこういう主張がなくて申立人の主張を立証すべき事実に裁判所の審理の対象が限られているということもあるのではないかと思います。それで,この問題をこの事案について子どもの意見を聴くべき事案なのかどうかというのを,どういうきっかけで把握するかというところが恐らく問題になるのだろうと思うのですよね。   その一番大きなのがこの13条2項の裁判所は相手方から何も言われなくても,それでも子どもの意見を聴いて,子どもが帰りたくないと言っていれば,子どもはそう言っていますよと,だから,主張したらどうですかという話になるのか,そういうことがきっと問題になるのではないかと思います。しかし,子どもの意向に一切,審理の対象が及んでいなければ,子どもの意向を聴くまでもなくというのはなくはないのではないでしょうか。 ○鶴岡委員 この件は非常に難しいと思います。子どもの年齢が幾つであるかということも相当大きな考慮要素だと思いますけれども,例えば12歳という年齢を考えてみますと,小学校を卒業して中学へ入る年齢になっています。その間,ずっと外国にいた子どもが日本の学校に入ると何が起きるかと。これはもう言うまでもないことなのですね。他方,3年,4年,5年といれば,もともと姿形も日本人であればなおさらのこと日本人化します。これは私自身も経験してきていることです。しかし,当初は非常に日本社会は異質なものを受け入れません。ですから,そのあたりのことはまず帰りたいか,帰りたくないかということもありますけれども,元々は子の福祉を全うすることが条約の目的でありますので,子どもが現在,置かれている環境,それから仮に戻ったらどのような環境なるかというようなことも踏まえた上で,子どもの今の意見というものを私は聴取すべきだと思います。   それによって帰る,帰らないという意向が,今,子どもが帰還を拒否するという一言だけになっておりますが,全体の条約の趣旨は考慮に入れると書いてあるとおり,それで全てを決めるということを書いてあるわけではございませんので,他方,裁判所が最終的な返還を命じるか,あるいは返還を拒否するかという判断をする際には,やはり子どもが現在,置かれている環境についてどのような認識を持っているか,それから帰った場合に想像されるところの子どもが置かれる環境はいかなるものかなどの点について,一つの認識を持った上で判断をすることが適当ではないかと思いますので,子どもの年齢の問題はありますけれども,そういった個々の事例に応じて聴くこと,子どもと接触をして,子どもの見解を聴取するということが重要であるという点については,いずれかの形で規定の中に設けておくことが適当ではないかと思います。   義務化することは,私は適当ではないという点については,大谷委員の意見に全く賛同いたしますが,ただ,帰りたいか,帰りたくないかということだけを聴くのが子どもとの接触の目的では私はあるべきではないと思いますので,やはり裁判所として子どもの接触というものはもちろん適切なということが必要でありますけれども,基本的にはやっていただくことが全体の判断を適切なものにするためには必要ではないかと思います。実際上は非常に難しいと,どういう規定を設けるかは非常に難しいと思いますので,先ほどちょっと丸投げ風のフランスの規定に言及したのですけれども,この点,法務事務当局のほうで御工夫いただければと思います。 ○棚村委員 時間がちょっと超過するかもしれないので,すみません。金子幹事がおっしゃったように私も全体の流れからいくと,やはりお子さん自体は先ほども発言したように一定の年齢とか成熟度に応じて,それなりの心情とか意向というのを持つと思いますから,慎重にそれをチョイスする手続は整備されたほうがいいと思います。   ただ,子どもの返還をめぐって,返還拒否事由が特に争われていないときに任意の返還もかなりありますし,それから,それ自体が争われた場合と争われない場合で,争われない場合に一旦聴くか,聴かないかというのは,確か大谷委員もお分かりと思うように,オーストラリアなんかも争いが起こったときには必ずメンタルヘルスとか,児童精神医学とか,そういう何かの専門家が子どもの意見を聴取するということになるのですが,争いにならない場合というのがどのくらいになるか分かりませんけれども,そういう場合には聴く必要,つまり,義務化まではする必要はありませんし,聴かなくてもいいのではないか。つまり,大人の間できちっとできるか,子どもがある範囲の年齢の場合は,子どもの心情の調査というのは,調査官のほうも結構大変だと思います。ですから,それが必要かどうかも含めて,裁判所がある程度,裁量でもって判断をし,できるような仕組みのほうがいいのではないかと思います。   ですから,大体,抗弁事由が出てくるものの中で争いになると,子どもが拒否しているとか,異議を唱えていると,それから1年以上もたってしまっているとか,そういうのが結構あると思います,拒絶されているケースの中には。そうだとすると,それについてはほとんど何からの形で関与して確認しなければいけないだろうということにはなるので,それ以外のものについて争いがなかった場合にどうするかという,先ほどちょっとお尋ねと理解しましたので,それは全て聴くというか,子どもの意見で決めていくという必要はないのではないかと思っています。 ○長嶺委員 この部分の条約の規定は,裁判所又は行政庁が子どもの拒否ということをファインドするという言葉を使ってありますね。だから,これは子どもを慮って判断すると いうよりは,もう少し直截に子どもがどういう意思表示をするかということをファインドした場合にはと書かれています。その上で,表明された子どもの意思を100%尊重するか,そんたくするかどうかというのは,羈束的なものではなくて裁量的なものといいますか,総合的に判断をするということでしょうけれども,条約上は,そう書いてある。家事事件手続法の陳述聴取は,一つの手段として努めなければならないということで,そこは一般的に書かれている規定ですが,これをそのまま持ってくることで,十分な担保となるかどうかという点は,もう少し考えていくテーマかなという感じがしています。こうでなければいけないということを今申し上げるつもりはございません。 ○長岡幹事 補足ですけれども,たまたま手元に条約事務局がつくった注釈書みたいなものがあって,御覧になっている方は多いと思いますけれども,そこを読む限りは少なくとも抗弁事由という位置付けではどうもないような形で考えているようで,やはり子どもの福祉という観点から,今,いる国に戻るのか,常居所地国に帰るのかということについては,子どもが決定権を持つ可能性があるということを前提に,子どもにそういう意見を言う機会を与えているとどうも解されているようで,そうであれば,当然,年齢の問題がありますけれども,一定年齢以上について原則聴くということがある程度,想定されているような感じは,この注釈書を読む限りは思われます。 ○髙橋部会長 当事者が,相手方が普通でしょうけれども,当事者がその点に触れていないのに,子どもの意思がどうのこうと触れていないのに手続としてはそこへ進めるかどうかですね。しかし,だから,原則の問題になるのですかね。それにしてもいろいろまた留保条項が出てくるのでしょう。3か月の子どもの意見を聴くというのも,私はちょっと想定しにくいのですが。しかし,原則は聴くべきだという御意見と,当事者が言っていないところでも,訴訟法的には公序のような感じで整理はできますが,そこはやはり当然に審理の対象になるのだというご意見と,今日はそういう両方の御意見があったということでよろしいでしょうか。 ○大谷委員 もう一度,確認的に意見を申し上げますと,当事者が主張していない場合,つまり申立人側の主張したものだけが審議の対象になっているような場合においても,子の年齢及び成熟度によりますが,私は聴くべきであるという意見をもう一度述べます。今の部会長が整理されたこととの関係で申し上げますと,条約の読み方もさることながら,先ほど申し上げました子どもの権利条約12条の観点からすれば,やはり子がその年齢あるいは成熟度に従って,自分に関わる何らかの裁判所の決定の手続において意見を聴かれる機会を与えるという観点から,整理ができるのではないかと考えております。   また,磯谷幹事がおっしゃったこと,あるいは鶴岡委員がおっしゃったことと関連するのですが,その場合の意向調査の範囲というのは,また別問題かと思います。いわゆる日本の国内での一般の監護者指定の審判で,ある程度,子どもさんは年齢が小さくても,意向調査というよりは監護状況の調査ということで,必ず調査官が状況調査するというような本案の審理に関わるような意味での調査というのを今,念頭に置いているわけではないと理解して,今,議論しておりますので,そこはどういう聴き方をするか,何をもって意見聴取というのかというのは,また,別途,丁寧な議論が必要かと思います。 ○髙橋部会長 ほかに今日の段階で発言しておきたいということがありましたら。 ○清水委員 今の13条2項の関係では,私個人としては抗弁事由として考えているのですね。飽くまで裁判所は証明責任が当事者に課されて,それを補完的なものとして調査するという構造かなと考えているのですけれども,その点についてはどうなのでしょうか。そういう考え方でいいのか,皆さんのお考えを確認しておきたいのですけれども。 ○髙橋部会長 そこは条約上の制限があると考えるのでしょうかね。日本法でどう考えるかは我々が議論すればいいのですが,書き方が違うというようなことも含めて条約違反にまでなるか,また,ハーグの会議で批判されるのか。 ○金子幹事 例えば抗弁といったときも,最終的に証明ができない場合の立証責任の所在という意味と,それから主張が必要かという主観的な主張証明責任の問題と二つあるものですから,条約上はそこまで厳密なことまでは観念していないとは思うのですが,例えば職権探知の世界で証明責任を観念すると,最終的には例えばそれは客観的証明責任の問題と考えれば,そこは矛盾しないという説明もできるので,そういう前提の部会資料の説明になっているのですが,ただ,現実の問題としては主張もないところに,裁判所が子どもが拒否しているという事実があるかどうかというところまで慮った調査をするのかというあたりは,少しそれを抗弁と言うかどうかという問題とは,別の次元の問題としてあると思うのですが。 ○磯谷幹事 すみません,長くなって。また,今後の議論にもなるんですけれども,例えば連れ帰ってきた親がどこにいるかははっきりしているけれども,とにかく応答しないという場合にどこまでやるかという問題もあると思うんですね。もちろん,応答しないんですから,先ほどの例えば13条1項bのような抗弁は出てきていないわけですから,それはいいとしても,しかし,応答しないというのは何なのか。例えばひょっとすると親がかなり状況的に悪いのかもしれませんし,いろいろ問題を抱えているかもしれないわけですよね。   そういうときにはやはり裁判所調査官が行って,実際にどういう状況なのだろうかというところを見てあげる必要があるのではないかと思うんですが,そうすると,先ほどの子どもの異議のところで主張が出ているか,出ていないかにかかわらず,行ってみる意味というのは非常に大きいのではないかと思うので,やや少し論点が広くなってしまうかもしれませんけれども,そういう意味でも,是非,原則としてはやはり会うようにしてもらいたいなと思います。 ○髙橋部会長 よろしいでしょうか。両方の御意見があると承りました。   恐縮ですが,25から29,条約関係のところをざっと御説明を。 ○佐野関係官 25以下について簡単に御説明したいと思います。長くなります。   まず,25番の条約第11条では,まず,条約第11条第1項に関する迅速処理の要請に鑑みまして,例えば子の返還のための裁判手続が迅速に行われるよう,裁判所は手続が公正かつ迅速に行われるように努め,当事者は信義に従い,誠実に手続を追行しなければならないものとする一般的な規定を設けることを提案するものです。また,次の条約第11条第2項に関しましては,裁判手続の開始の日から6週間以内に子の返還の有無の判断がされない場合には,我が国の中央当局は司法当局に対し,遅延の理由の説明を求めることができるものとする規定を設けるほか,その際の具体的な手続についてどのように考えるか検討することを提案するものです。   初めの条約第11条第1項につきましては,ここでは返還手続が迅速に行われるべき旨を条約上は規定しておりますけれども,迅速な裁判を実現するためには,裁判所による迅速な審理はもとより,当事者による信義,誠実な手続遂行も同様に必要であると思われます。そこで,家事事件手続法第2条を参考にしまして,その旨の一般的な規定を国内法に設けるのが相当であろうと思われます。   なお,同じ条約第11条第1項に関しましては,参照条文に記載しておりませんけれども,法律事項にするかどうかは別にしまして,例えば人身保護規則第11条のように,事件受理の前後にかかわらず,他の事件に優先して,迅速にこれをしなければならないといったような優先処理の規定を設けるかどうかについても,今後,検討すべき課題であろうと思われます。また,条約第11条第1項及び第2項に関連しまして,迅速な裁判の処理のための目安となる期間,例えば6週間とかが考えられると思いますけれども,そのような期間を明示すべかどうかも問題になりますが,レジュメの補足説明に記載のとおり,そのような規定を設けることは適切ではないだろうと考えられます。   次に,条約第11条第2項に関しまして,2項は裁判手続の開始から6週間が経過した場合には,司法当局に対し,遅延の理由の説明を求めることができると規定しておりますけれども,条約第11条第2項は誰が誰に対して,直接又は間接に遅延理由の説明を求めることができるのかは網羅的に規定されておりません。しかしながら,遅延理由の説明の主体というものは,司法当局であるということは明らかであろうと思われます。それを前提にしまして,誰がどのようなルートで司法当局に遅延への説明を求めることができるのかについて,その手続的な面について,今後,検討する必要があるであろうと思われます。   以上が25番でございます。   次に26番,条約第14条ですけれども,ここでは条約第14条を担保する規定を国内法においては設けないものとすることを提案しております。具体的に条約第14条は,裁判所が裁判所が不法な連れ去りあるいは留置と言えるかどうかを判断するに当たりまして,一つ目としましては,その国で通常,必要とされる外国の法律の証明のための手続を経ることなく,常居所地国の法律を考慮できることを規定するとともに,二つ目としまして,通常,必要とされる外国の決定の考慮のための手続を経ることなく,監護権に関する司法上又は行政上の決定を考慮することができると,二つのことを規定しているかと思います。   まず,初めの条約第14条に規定される外国の法律の証明の部分ですけれども,我が国におきましては,いわゆる外国法事実説なども唱えられていましたけれども,外国法の性質を法と解する外国法法律説が支配的見解となっているか思います。その上で,補足説明は若干やや不正確なところがあったのですけれども,外国法については証明不要と解する考え方や,あるいは法としても裁判所の職権探知には限界があることから,証明が必要であるとの考え方が外国法法律説を前提としてもあるようですけれども,いずれにしましても,条約第14条は外国法の証明のために必要とされる手続によることなく,直接,外国法を考慮することができるとするにとどまっておりまして,我が国の外国法の証明の考え方と特段,抵触することはなく,規定を設けるまでもなく当然であって,条約第14条の担保規定を我が国において国内法で設ける必要はないものと思われます。   次に,条約第14条に規定する外国の決定の承認のための手続に関してですけれども,条約第14条は外国の裁判例等が不法な連れ去り又は留置の判断の証拠として提出された場合,そのような場合を想定していると思われますが,そもそも我が国におきまして証拠能力であるとか,証拠の採否の手続におきまして,外国の裁判の承認の可否が影響を及ぼすことはなく,本手続,子の返還の手続におきましても同様であると考えられます。そこで,条約の内容の規定を国内法に設けるまでもなく,このことは当然ですので,条約第14条を担保する規定を設ける必要はないものと思われます。   以上が26番の説明です。   次に27番,条約第15条ですけれども,ここではまず我が国から外国に子が連れ去られた事案を初めに念頭に置きまして,我が国におきましては子の連れ去り又は留置が不法であるとする証明を発行するための裁判手続は設けないとすることを提案しております。また,二文目としまして,外国から我が国に子が連れ去られた事案を念頭に置きまして,申立人が子が常居所を有する国の当局から子の連れ去り又は留置が不法であるとする証明を得ることができる場合には,裁判所は申立人に対し,その証明を求めることができるものとする規定を設けることを提案しております。   初めの日本から外国へ子が連れ去られた事案において,我が国として子の連れ去り又は留置が条約第3条に規定する不法なものであるとする決定書その他の証明を発行するための裁判手続を設ける必要があるかどうかにつきましては,そもそも条約第15条の規定からしまして,必ずしもこのような裁判手続を設ける必要はないものと考えられます。その上で,仮に公証機関ではない裁判所がこのような証明を行うこととする場合には,少なくとも申立人のみならず相手方の主張も踏まえて,監護権の侵害があったかどうかを審理あるいは判断できるような手続を設ける必要があるものと思いますけれども,そもそも,このような手続を設けることが条約第15条の趣旨にかなうものとは考えられず,ここでは結論として具体的にそのような手続は設けないものとすることを提案しております。   一方で,外国から日本へ子どもが連れ去られた,連れ帰られた事案におきまして,我が国の裁判所が,申立人が子が常居所を有する国の当局から,不法性に関する証明を得ることができる場合には,申立人に対し,その証明を求める場合ことができる点,これについてはその手続を具体的に明示するという観点から,その旨の規定を国内法に設けるのが相当であるのではないかと,ここでは提案しております。   以上が27番になります。   あと二つ,28番,条約第16条についてですけれども,ここでは子について親権者の指定又はその変更その他子の監護に関する事項の定めをするための裁判手続が係属しているときは,当該裁判手続においては,子の返還命令の申立てについての裁判が確定するまでの間,原則として裁判所は判断をしてはならない旨の規定を設けることを提案するとともに,そのための具体的な手続につきましてはどのようなものが考えられるか,検討することを提案しております。   条約第16条といいますのは,締約図に対し,子の監護に関する本案の裁判をすることを禁止している以上,国内担保法においても同様の規律を設ける必要があるものと考えられますけれども,具体的な判断を中止するための手続としましては,条約第16条自体が,誰が,どのようにして,どの裁判所に不法な連れ去り又は留置があったのですと通知するのかについては,何ら明確に規定しておりません。そのため,本条を担保するに当たっては,例えばハーグ条約に基づく子の返還手続の当事者自身が本案が係属する裁判所においてハーグ条約に基づく子の返還の手続が係属していることを通知するなど,具体的な仕組みについてはなお検討する必要があるものと思われます。   最後に29番,条約第17条についてですけれども,ここでは条約第17条と同旨の規定を国内担保法において設けることについて,どのように考えるかについて検討することを提案しております。条約第17条は子の返還手続が係属している国において,既に子の監護に関する決定が効力を有する場合であっても,そのことのみをもっては本条約に基づく返還を命ずることを拒絶することができないことを規定するとともに,本条約の適用に当たっては,監護に関する決定の理由については考慮することができる旨を規定しておりますが,これらの点はあえて国内担保法において明示せずとも明らかであると思われますが,一方で,条約の趣旨を明らかにする,明確にするという観点から確認的ですけれども,このような規定を設けるべきあるのではないかと考えられますので,なお,担保法の要否については検討する必要があるものと考えております。 ○髙橋部会長 それでは,条約で申しますと11条,14条,15条,16条,17条の関係ですが,どこからでも結構でございますので御意見を。 ○古谷幹事 11条の関係で,先ほど人身保護規則にあるように優先的処理の規定を設けるべきかどうかという御提案というかがあったと思うのですけれども,確かに迅速に進めるべき事案ではあるのですが,一方,家事事件では,子どもの身体とか生命に関わる保全事件とか,高度の緊急性を有する事案が係属していることもございます。したがいまして,一般的に優先的な処理の規定を置くことについては,慎重なご検討をお願いしたいと思っております。 ○大谷委員 27番の条約第15条関係につきましては,日弁連でも検討いたしましたので,議論を御紹介申し上げます。結論としては,裁判手続を設けないものとすることでどうかということに賛成という意見です。理由としましては,我が国の場合,監護権の侵害になるかどうかというのは,比較的パターン化して,あらかじめ分類して説明が可能かと思われ,個別の事案では難しいものもあるかと思いますが,なるべくそのような一般的な説明については,中央当局で御用意いただいて,アウトゴーイングケースでは中央当局から中央当局の申立書の伝達の際に添付していただく等の方法により,ある程度,対応できるのではないか。   また,御指摘のとおり,条約上も必ずしもこのような裁判手続を設けなくてはならないと義務化していないこと,更に実務的に考えますと,このような手続を設けた場合,相手方は外国にいることが想定されていまして,その手続がどのようなものになるか分かりませんが,相手方の反論の機会も踏まえるものにしたとした場合,送達をどうするのか等々,様々な問題が考えられることから,設けないことでよいのではないかという意見です。   それから,ほかの点は実は日弁連ではまだ検討ができていませんので,今から申し上げるのは個人の意見ですが,26の条約第14条関係,外国の法律の証明については事務当局からの御説明のとおりで私も異論はございません。   ②の外国の決定の承認のための手続のほうですが,現在,ハーグ条約に日本が入っていない状況で日本へのインカミングケースがあった場合に,外国で既に監護権の決定が出ているような場合は,人身保護請求の手続が利用されることが比較的多くあります。その場合に,最高裁の平成5年,6年の枠組みの中で,まず,監護権が請求者のほうにあったかどうかというところで,外国でなされた監護権の決定に関する外国裁判所の決定が,そもそも民訴118条の対象になるのか,なるとして,要件を満たすのかというところから議論が始まっております。   今回,ハーグ条約の手続においては,それは不要であるということなのですが,そのように今までの実務がなっていることとの関係で,相手方側としては,そこら辺から議論を始める可能性があるのではないか。そこは弁護士の研修の問題であって,そこは違うのです,今までと,ということを徹底すればよいということなのかもしれないのですが,そのようなところで何か主張が始まったりする可能性を考えますと,明確に規定を置いておくというのも一つの考えではないかと思う次第です。 ○横山委員 今,条約15条に対応する規定の可否という点なのですけれども,子の連れ去り又は留置が不法かどうかというのは,要するに残された親が監護者であったかどうかということなのですね。ところが日本の法の適用に関する通則法の32条というのは,単純に日本法を適用していいとなっておりません。まず,子どもの本国法を適用して,子の本国法というのが父又は母の本国,どちらにも一致しないときに初めて子の常居所地法である日本法が適用できるという仕組みになっています。国籍というものが第一的な要素に出るものですから,全て連れ去りの事案というのは恐らく多くの場合,渉外的な事案でありますものですから,子の国籍は外国籍であるということが多いという事態はしばしばあり得ると思います。   監護権の侵害があったかどうかということを判定するのは,単純に日本法を適用できないのですよね。日本法ではなくて問題となっている外国法を適用した上で,本当に監護者だったのかどうかということをチェックしないといけない。これがきちんと中央当局でできるかということ常居所が本当に日本にあるのか,あったのかどうなのか。日本国籍と外国国籍が両方あったときにどちらが本国法か,外国国籍と外国国籍とはどちらがより密接に関係する本国法として適用されるのか。これはできるのだろうかという話ですね。この問題があるために,ちょっと中央当局ではなかなか法の解釈,適用が問題になるものだから難しい。もしできるのであれば,裁判所がこの人の準拠法は何かというのを確定した上で,監護権を確定するのまでやったほうが優しいなとは思うのです。   既に監護権はこっちに与えますよという審判があるのなら問題ないのですけれども,結局,これが必要になる局面というのは何もないときなのですよね。ヨーロッパ諸国は,基本的に子どもの常居所を基準にしているから,よいけれども,日本は少々複雑なのですよね,そこのところが。   それからもう一つは条約第14条ですけれども,結論はこれで構わないと思うのですが,ちょっと理由付けの3番のところが何か一直線の理由付けではないように思います。外国判決の承認の可否は,証拠能力や採否の手続に影響を及ぼすことはない,確かにそのとおりなのですけれども,明らかに日本の公序良俗に反する外国判決があったときに,やはり影響することがあるのではないかなと思うのですよね,もう少しちょっと書き方の問題として,違った書き方があるのではないかなと思います。   どちらかというと,14条の規定というのは外国法を事実と見るイギリス法のような立場のことを考えながらやっている。それから,あとは身分関係の事案でも外国の審判を自動承認ではなくて,特別の承認手続が必要だという国の法制が意味を持たないようにするための規定なので,その意味で,日本には関係がない。日本法の観点からは関連性のない規定だということでよかったのではないかということです。 ○山本(克)委員 今の横山先生の御発言は,承認は要件の具備が必要だという御趣旨ではないのですか。 ○横山委員 ではないです。なくても考慮はできますから。要するに考慮しないこともあり得るので,考慮し得るというだけのことですから,条約の規定をどちらにとろうと条約の抵触は問題ならない。 ○髙橋部会長 ほかの点はいかがでしょうか。 ○鶴岡委員 迅速な処理の関係で25,条約第11条ですが,事務当局のほうから御説明のありました御提案で基本的によろしいかと思いますけれども,6週間という期日を書くことは別といたしまして,訓示的な意味で迅速な審議が求められるという点は,立法の工夫によって含めていただきたいと思います。6週間後に中央当局によって照会できるようになるということも併せて御提案のとおり,入れていただくことが適当ではないかと思います。どういった優先をするかということは,やはり基本的には裁判所の御判断だと思いますので,強制的,義務的な優先規定を入れることの是非については,私はそれが適当だとは思いません。ただ,それでは全く一般と同じ扱いかということになりますと,条約の要請に立法上,応えていないという批判もあり得ますので,少なくとも,そういった訓示的な規定を入れていただければ,条約との整合性に配慮した立法であるということは,明示的な説明ができるようになると思います。 ○髙橋部会長 よろしいでしょうか。 ○大谷委員 日弁連の中で出た議論で十分ちょっと整理できていないのですが,こういう観点の議論があったということだけ御紹介させていただきたいと思います。28の条約第16条の関係と,あと,本日の大分前のほうで御議論いただきました移送とか併合に関する問題認識です。つまり,条約16条では子の親権者の指定や親権者変更,監護の本案はストップしておかなくてはいけないということなのですが,現実的に本当にこういうことがあり得るのかどうか分からないのですが,出された事例としては例えばですが,残された親がハーグ条約に基づく返還手続を申し立てていると同時に,子どもとの面会交流を申し立てていると。他国ではハーグ返還手続の中で,まず,ともかく子どもに会わせなさいと。特に申立人が来た場合ですけれども,手続中においてそのような命令をする,あるいは合意で命令するというような実務があります。   日本でそのあたりをどんな仕組みにしていくのかというのは,今後の議論だと思うのですけれども,仮に返還手続が比較的時間がかかっていて,返還手続の中で面会というのがなかなか実現しないという場合に,もしかすると,別途,面会だけの申立てということがあるのかもしれない。そうすると,面会のほうについては,特別,専属,管轄の集中のことがなければ,基本的に子の所在地の家庭裁判所に係属するものと思われ,しかも,その場合に,それをストップするというような16条からは必ずしも出てこないかもしれず,そのようなときに,この二つの案件をどう扱うのかといったようなことが未整理のままの議論でしたが,ちょっと問題意識として議論の中に出てきたということだけ御紹介します。私自身もちょっと答えはありませんので,問題提起だけで終わって申し訳ありません。 ○髙橋部会長 よろしいでしょうか。時間を大幅に超過して申し訳ありません。   それでは,事務当局から次回等についての説明をお願いいたします。 ○金子幹事 次回は9月9日,午後1時30分から,場所は本日と同じく法務省地下1階大会議室で行います。会議の1週間前には資料を送付させていただきますのでよろしくお願い申し上げます。 ○磯谷幹事 今度,外務省のほうで懇談会が開かれると伺っておりますけれども,やはりここでの議論と密接に関係をいたしますので,次回,大体,どういうふうな議論だったかというところを報告していただくような機会を設けていただければと思います。 ○髙橋部会長 では,検討させていただきます。   大幅に超過して申し訳ございません。   それでは,本日,熱心な意見交換をどうもありがとうございました。 -了-