法制審議会会社法制部会           第15回会議 議事録 第1 日 時  平成23年11月16日(水) 自 午後1時30分                        至 午後3時42分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  会社法制の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                議    事 ○岩原部会長 それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会会社法制部会第15回会議を開会いたします。本日も,お忙しい中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。   まず,事務当局から配布資料の説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 御説明いたします。配布資料目録と部会資料16を事前にお配りしております。部会資料の内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。   また,詳細は後ほど御説明させていただきますけれども,多重代表訴訟のB案の(注)にあります,多重代表訴訟の制度を創設しないこととした場合における新たな規律に関しまして,委員,幹事の皆様には御意見をお寄せいただくことをお願いしたところでございますけれども,多くの御提案を頂戴いたしました。この場をお借りいたしまして,御礼申し上げます。どうもありがとうございました。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。御意見をお寄せくださいました委員,幹事の皆様には,私からも御礼を申し上げます。   それでは,本日の議論をお願いしたいと存じますが,まず,部会資料16の中間試案の第1次案につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 まず,総論的なところを御説明させていただきます。部会資料16の中間試案の第1次案は,前回と前々回の御議論を踏まえまして,中間試案のたたき台を修正して作成したものでございます。また,部会資料16の25ページ,「第3部 その他」の「第3 その他」につきましては,技術的・細目的事項で見直すべきもののうち,中間試案に載せてパブリック・コメントの手続に付すのが適当であると考えられる事項を追加して記載させていただいております。   本日は,主に,修正箇所のうち,内容を実質的に変更するなどした箇所及び今申し上げました第3部の「第3 その他」を中心に御審議いただければと思います。 ○岩原部会長 ありがとうございます。よろしゅうございましょうか。   それでは,第1部の第1の「1 社外取締役の選任の義務付け」から御審議をお願いしたいと存じます。事務当局から説明をお願いいたします。 ○塚本関係官 それでは,第1部の第1の「1 社外取締役の選任の義務付け」について御説明いたします。従前の案では,社外取締役の選任を義務付ける株式会社について,公開会社であり,かつ,大会社である監査役会設置会社を更に限定する趣旨で,A案に(注)を付して,金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならないものに限定することについて,なお検討することとしていました。これに対しては,当部会において,公開会社であり,かつ,大会社である監査役会設置会社と有価証券報告書を提出しなければならない株式会社とでは,社外取締役の選任を義務付ける趣旨が異なり得るため,別々の案として掲げるべきであるとの御指摘を頂きました。   この点につきまして,公開会社であり,かつ,大会社である監査役会設置会社は,株主構成が頻繁に変動する可能性があることや,その規模に鑑みて影響力が大きいことから,社外取締役による業務執行者の監督の必要性が高いと言い得る上,その規模から,社外取締役の人材確保に伴うコストを負担する能力があると言えると考えられます。そこで,A案は,このような観点から,社外取締役の選任を義務付ける株式会社を,公開会社であり,かつ,大会社である監査役会設置会社としています。他方で,金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社は,不特定多数の株主が存在することから,株主による業務執行者の監督が期待しづらく,社外取締役による監督の必要性が高いと言い得ると考えられます。そこで,B案は,このような観点から,社外取締役の選任を義務付ける株式会社を,有価証券報告書を提出しなければならない株式会社としています。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。部会資料16におきましては,前々回の会議における御議論を踏まえまして,A案の(注)にあったものをB案という形で独立の案として掲げるように変更しております。いかがでございましょうか。何か御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,この問題につきましては,このような形で中間試案にさせていただきたいと思います。次に,第1の「2 監査・監督委員会設置会社制度」に移らせていただきたいと思います。事務当局から説明をお願いいたします。 ○塚本関係官 それでは,「2 監査・監督委員会設置会社制度」について御説明いたします。監査・監督委員会設置会社制度は,新設の機関設計であることから,2の冒頭において,中間試案の内容として,当該制度の目的・趣旨を記載するようにいたしました。監査・監督委員会設置会社制度は,経営の決定への関与が経営に対する監督において重要な意義を有するという観点から,経営評価機能や利益相反の監督機能といった社外取締役の監督機能を活用するため,監査役会設置会社及び委員会設置会社とは異なる第三の類型の機関設計として創設するものでございます。そして,この制度は,2の冒頭にございますとおり,取締役会の監督機能の充実という観点から,自ら業務執行をしない社外取締役を複数置くことで,業務執行と監督の分離を図りつつ,そのような社外取締役が,監査を担うとともに,経営者の選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を果たすことを意図しています。   その他の実質的な内容の変更点について御説明いたしますと,まず,監査・監督委員会の構成・権限等については,常勤の監査・監督委員の選定を義務付けるかどうかという点を変更しています。従前の案におきましては,監査・監督委員会は,取締役から構成されることから,委員会設置会社の監査委員会と同様に,いわゆる内部統制システムを利用して組織的な監査を行うことが想定されることを踏まえ,常勤の監査・監督委員を選定することを義務付けないものとしていました。他方で,当部会では,監査役又は委員会設置会社の監査委員につき,常勤者が監査において重要な役割を果たしているとの実務における認識を背景に,常勤の監査・監督委員の選定を義務付けるべきであるとの指摘がされています。常勤の監査・監督委員の選定の義務付けの当否については,委員会設置会社の監査委員会が常勤の監査委員の選定を義務付けられていないこととの整合性等も踏まえ,更に検討する必要があることから,(2)⑤の(注)のとおり,なお検討することとしています。   なお,当部会においては,監査役会設置会社を参考にして,監査・監督委員の半数以上を社外取締役とするとともに,常勤の監査・監督委員の選定を義務付け,かつ,監査・監督委員が監査役と同様の権限を有するものとすべきであるとの指摘がされています。このような機関設計は,監査役会設置会社の監査役に取締役会における議決権行使を認めることと実質的に異ならないとも言えるため,新たな機関設計として監査・監督委員会設置会社を認めるのではなく,監査役が取締役会において議決権を行使することができる旨を定款で定めることができるものとすることも考えられます。   次に,「(3) 監査・監督委員会の経営者からの独立性を確保するための仕組み」については,従前は,株主総会選任型のA案と取締役会選定型のB案の両論を併記していましたが,監査・監督委員について,監査役と同等の独立性を確保するという観点から,株主総会選任型のみを掲げるように変更しています。   最後に,「(4) 監査・監督委員会設置会社の取締役会における業務執行の決定」については,前々回の会議でほぼ御異論がなかった部分を本文に掲げることとして,まず,監査・監督委員会設置会社の取締役会は,現行法の下で特別取締役による決議が認められている事項と同様に,重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財の決定を取締役に委任することができるものとしています。他方で,特別取締役による決議を認めるためには,取締役のうち一人以上が社外取締役であることを要するのに対して,監査・監督委員会設置会社には少なくとも2名の社外取締役が置かれることから,(注1)は,この点を踏まえ,会社法第362条第4項第3号から第5号までに掲げる事項の決定の委任を認めることについて,なお検討することとしています。また,(注2)は,ここに掲げております「ア」や「イ」にあるような一定の要件を満たした場合には,重要な財産の処分及び譲受け等以外の重要な業務執行の決定の取締役への委任も認める余地があると考えられることから,この点について,なお検討することとしています。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。監査・監督委員会設置会社制度につきましては,前々回の会議におきまして,様々な御意見を頂いたところであります。部会資料16におきましては,それを踏まえまして,常勤の監査・監督委員の選定の義務付けについて,なお検討するというように変更するなどの修正を行っております。この案につきまして,御意見を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○三原幹事 この書き振りのところを中心に御説明というか,お願いです。なぜそういう書き振りをお願いするかという文脈と背景も含めて御説明させていただきたいと思います。2ページ目の⑤の下にあります(注)のところにある常勤のところは,場所としましては,元々③にありました常勤者の記述が今回消えておりますけれども,この(注)自体を②の後ろに置いていただく書き振りでお願いできないかという点でございます。もしかしたら,この(注)は,この(2)全体に関する(注)なのかもしれませんが,場合によっては,⑤の(注)のような形にも見えます。元々ありました③のところで,構成員がどういうような資格で,どういう位置付けになるかという組成そのものがこの②と③でありますので,③が消えた入れ替えとしては,この③のある場所に,(注)の常勤の記載を移動していただけないかというお願いです。どうしてこういうことを申し上げるかというと,事務当局の御説明は,委員会設置会社との整合性ということでしたが,監査・監督委員会設置会社の場合には,結局,委員会設置会社との整合性というのは三つの委員会が一つになりますから,その代替として常勤者が必要になるという整合性の見方があり得ると思いますし,監査役会設置会社から移行する場合には,監査役会設置会社における常勤監査役に代わる制度として常勤者があるとの見方があり得ますので,整合性としてはいずれの考え方もあり得ると思います。やはり,構成としては,この③の消えたところに移動していただくのがよろしいのではないかという意見でございます。よろしくお願いします。 ○塚本関係官 常勤者の(注)につきましては,(2)の(注)ではなく,内部統制システムの整備について決定するという⑤の(注)として記載しております。ただ今三原幹事から御指摘を頂きましたように,監査・監督委員会のメンバーに関するものでございますので,もう少し上のほうに書くということも考えられますが,先ほど申し上げましたように,飽くまでも,取締役が監査をするということで,委員会設置会社を参考にして,内部統制システムの整備についての決定を義務付けるものとして,その上で,常勤者がなお必要かということについて,委員会設置会社の規律も踏まえて更に検討する必要があると考えられます。したがいまして,②の(注)という形で書くと,そういった論点との関係が分かりにくくなることが懸念されます。 ○三原幹事 実は,これは,⑤の(注)なのか(2)全体の(注)なのか,これが分からなくて,善意に解釈して全体の(注)と思ったのですが,⑤の(注)になりますと,実はより問題が大きくなりまして,⑤のところは,取締役会で決定する形になっておりますので,元々⑤では株主総会選任型に集約されたわけですが,今回の提案で⑤の(注)という形になりますと,あたかも取締役会で常勤者かどうかを決めるという構成を想定しているように見えますので,常勤者義務付けの根拠が,取締役会で決めるのか株主総会で決めるのかというと,このままでは株主総会ではなく取締役会で常勤者を決めるような印象を受ける可能性がありますので,⑤の(注)ということでありましたら,なおさらのこと,元々の③の場所に移していただけないかということをお願い申し上げたいと思います。 ○坂本幹事 常勤者を誰が決めるのかということと,⑤の(注)であることとは,論理的には全然関係ないということで,⑤の(注)に置かせていただいております。今,塚本から説明させていただいたように,これは,単に監査・監督委員会の構成をどうするのかという話だけではなく,監査・監督委員会による監査の在り方というものをどう見ていくのかということにも関わってくる問題であると考えておりますので,⑤の(注)という形にさせていただいているところでございます。したがって,逆に,構成のみの問題として書いてしまうと,若干ミスリードになってしまうのかなと考えております。 ○三原幹事 ミスリードするという認識は,私にはございませんで,できましたら③で常勤者を義務付けるものとするという構成でお聞きいただきたいというのが,第一読会,第二読会で御提案申し上げてきた意見でございます。今回は,聞き振りということだけの問題ですので,そういう意味では,やはり③に代わる場所に入れていただきたいというこのお願いは現在も維持したいと思いますので,是非,御検討をお願いしたいと思います。 ○藤田幹事 今の点とも多少関係するのですが,それ以外の点も含めて,補足説明にこういうことを書いてほしいという点も併せて,今意見を申し上げてよろしいでしょうか。  まず,全体の感想として,前回の部会資料に比べますと格段に良くなっており,基本的にこれでいいと思います。格段に良くなっているというのは失礼な言い方かもしれませんが,部会資料16によると,そこで提言されている制度が,要するに取締役会メンバーによる監査・監督という新しいモデルであり,一方で,監査役ほど徹底した業務執行からの分離はない代わり,他方で,業務執行者への選定・解職への関与が可能だというメリットもある,だから,そういう新しいガバナンス・メカニズム,従来の監査役会設置会社に代わるメカニズムとして位置付け,制度間競争―恐らく委員会設置会社の場合よりも更に意味のある競争―を活性化するというものだという形で提示されている。そう読めますし,またそういう提示の仕方のほうがいいと思います。選任の仕方等についても,監査役設置会社,委員会設置会社とのアナロジーからするとどういう形になるといった並列的な提示ではなくて,むしろ端的に経営者からの独立を確保するために最低何が必要かという直截な問いを立てて,それに対して答えるという形になっている。こういう問題の立て方と答え方のほうがずっと分かりやすいから,全体として非常に見通しが良くなったという点で,良かったと思います。これまでも,どういうコンセプトの制度かを積極的に説明するような提示の仕方をするようにずっとお願いしてきたつもりだったのですけれども,それに沿った提案の形をしていただいているということで有り難く思います。   ただ,今回の提案で含まれている幾つかの論点で,今回提案されているモデルの性格に関わりそうな疑問が何点かございますので,確認的にお伺いしたいことと思います。分かる範囲でお答えいただくか,あるいは補足説明等で明らかにしていただければという要望であります。どうも前回の議論を聞いて,監査・監督委員会設置会社については,部会内で同床異夢的なまま議論を進めてきてしまったのではないかという反省がないわけではございませんで,今回の中間試案の段階では,できるだけそういうところが少なくなるようにしたいと思うからであります。  そこでまず一つ目は,今回の新しい提案の部分ではないので恐縮なのですが,2(1)④において,会社の規模にかかわらず会計監査人を置かなくてはならないとしている点であります。これまで漠然と,何か当然の前提のように思ってきた点ですが,恐らく委員会設置会社がそうなっていることからきている考え方なのだと想像します。しかし,ここはやはり何らかの説明を頂きたいところだと思います。この新しい形態の性格にも関わる気がするからです。元々,委員会設置会社―当時は「委員会等設置会社」と呼んでおりましたが―を導入した当初は,商法特例法上の大会社に限定されていましたので,会計監査人を置くことは当然だったのですけれども,その後,会社法でその限定が外れてからは,なぜ会計監査人が強制されるのかという説明の仕方が難しくなってきているところがあります。委員会設置会社の場合,剰余金の分配に関する決定権限とかいろいろなところで監査役設置会社と差異があるので,どこにポイントを置いて見るのかという話が,はっきりしなくなってきているところがあります。そして仮に監査・監督委員会設置会社においても常に会計監査人を置くことを要求するということをしますと,どうも今回の改正後の会社法では,取締役会メンバーによる監査・監督というシステムを採る会社形態―委員会設置会社と監査・監督委員会設置会社がそれに当たりますが―においては,外部監査が必須であるといったルールができた,実は元々そうだったのかもしれないのですけれども,少なくともそういうルールの存在がより明示的になるわけであります。そうなりますと,それはなぜなのかということの説明が必要となりそうです。委員会設置会社について,一部の文献では,取締役会メンバーによる業務執行の監査・監督の場合,専ら内部統制システムによることになる,したがって,企業財務報告の信頼性を確保する仕組みがないと,実効的にワークしないという説明をされておりますが,もしそういう説明に乗っかるのであれば,新しい監査・監督委員会も同じような性格を持っている,その監査・監督の在り方が似たような性格を持っているから,そういう理屈から会計監査人の強制設置に結び付くのだという方向になっていきます。こういう理解でこの提案はされているのか,あるいはまたちょっと別の考慮から会計監査人を要求しているのか,このあたりは,何らかの説明を,せめて補足説明の中では言っておいていただかないとまずいという気がします。これは,会計監査人が要るか要らないかという論点それ自体というよりは,新しい機関構成の性格に関わるがゆえに,重要なことではないかと思っております。   2番目は,常勤の義務付けの議論でございます。この提案への賛否は,私は,ここでは申し上げません。ここでは案の提示の仕方に限定して申し上げます。提案には(注)が付されており,「なお検討する」ということですので,仮に義務付けるとした場合,これがこの制度の性格付けにもやはり影響を持ってきます。そこで,その選択の影響については,補足説明で丁寧に説明していただければと思います。つまり,先ほどの御説明にもありましたけれども,現在,委員会設置会社で常勤の監査・監督委員の選定の義務付けがないのは,委員会設置会社では内部統制システムを用いた業務執行の監督・監査を前提としており,それは,常勤者がいなくてもワークするからだと説明されています。この説明を前提とした場合,監査・監督委員設置会社において常勤の監査・監督委員を要求しますと,それについての説明は二つしかなくて,この新しい監査・監督委員会設置会社においては,委員会設置会社とは異なって,内部統制システムを用いた業務執行の監査は前提としていない,監査役による監査に近いイメージなんだというふうな説明をするか,そうでなければ,そもそも内部統制システムを用いた業務執行の監査であっても常勤者は本来必要だという前提を採るか,いずれかを採らないと説明できないことになります。もし前者を採るのであれば,これはこの新しい形態の会社の性格付けについてインパクトのある理解ということになります。先ほどの会計監査人の設置強制の根拠とも関わってくるかもしれません。これに対して,後者だとしますと,この新しい制度の性格付けにはほとんどインパクトはないのですが,委員会設置会社のルールを見直さなければいけないということを言外に含む提案ということになってきます。中間試案の本文でこういったことまで書き込むことは必要がないとは思いますけれども,このあたりの論理関係というのはどこかで明示しておいていただいたほうがよいと思います。というのも,今申し上げた点は,余り意識されないことが多い前提なので,明示しておかないと,単純に,監査の実効性を上げるため,実効性を確保するためといった表向きのところだけがクローズアップされてしまい,他の制度との間の整合性が見失われる可能性がありそうですので,分かる形にして提示いただければと思います。先ほどから指摘のあった,部会資料16で⑤に(注)が付いているのは,恐らく,今申し上げた論理関係を意識してのことだと思います。私は,場所がここがいいかどうかにはそれほど強くこだわりません。ただ,いずれにせよ,補足説明では,仮にここで義務付けると,それがどんなインプリケーションを持つかについて,取り分け(注)を③に書くとしたら,書いていただくことが必要だと思います。   最後に,(4)の業務執行の決定の取締役への委任についてですが,これは,正直言って議論の筋が分かりにくいです。筋が分からないというのは,結論がおかしいという意味ではなくて,考え方の筋が見えにくい気がします。つまり,監査・監督委員会設置会社においては,会計監査人を設置した監査役会設置会社にはできないような権限委譲がなぜ可能になるのかということについて,何らかの説明が必要になるはずです。こういう新しい会社形態に少しでも魅力を与えたいとか,利用の便を高めるとか,そういう配慮はあるのかもしれませんが,こういったことは飽くまでルールを作る動機にすぎず,それ自体では説明にはなっていない。ですから,何か書かれる必要があると思います。抽象的に申し上げますが,二つぐらいの方向がありそうです。一つの考え方は,監査・監督委員会設置会社の方が,会計監査人を設置した監査役会設置会社よりも何らかの意味でガバナンスが強化されている,そういう形態だという前提を置いて,そこから権限移譲を認めるという筋です。ただ,そうなると,それ以前に書かれている機関構成その他が,そういう強化されたガバナンスという発想を反映しているかどうかということが多少気になるところではあります。もし監査・監督委員会ではガバナンスが強化されているというのとは別の観点から説明するのであれば,それはどういう説明なのか,どこかで書いていただく必要があると思います。補足説明なのか,あるいは,かなり重要な前提ですので,ひょっとすると本文かもしれませんけれども。もし,またこの点について何か現在共有されている理解があるようでしたら,説明していただければと思います。実は,この点がはっきりしないと,(注2)のような点を考える手掛かりもないということになってしまいます。   一部,質問も含まれていましたが,もし現段階で説明があるなら,この場でお伺いできることはお伺いできればと思いますし,せめて補足説明を作成される際には,何らかのことを書いていただければと思います。 ○塚本関係官 ただ今藤田幹事から御指摘を頂きました,まず,この案では会計監査人の設置を義務付けているという点につきましては,補足説明のほうで説明をしたいと思っております。一つは,御指摘を頂きました財務報告の信頼性の確保ということもあるかと思います。また,監査役会設置会社につきましては,様々なタイプの会社にオールラウンドに対応できるようなものとして設けられているという側面があるかと思いますが,それに対して,監査・監督委員会設置会社につきましては,特に社外取締役による監督を必要とするという観点から,比較的規模が大きいというか,上場会社ですとか,そういったところを念頭に置いているというようなところもありまして,委員会設置会社との平仄を考えて,会計監査人の設置を義務付けるものとして書いています。   それから,決定の権限の委任につきましても,補足説明で触れたいとは思いますけれども,一つは,従前から,自己監査の問題が指摘されてきたところでありまして,それへの対応という観点から,委任の範囲を,監査役設置会社よりも一定程度広く認めてもいいのではないかという発想がありまして,この(4)を記載しています。 ○杉村委員 監査・監督委員会設置会社制度に関しましては,一定の考え方に基づき前々回からまとめ直したという説明でありますけれども,(3)の監査・監督委員の選定の箇所では,B案が消えております。これについては,なお意見を申し上げたいと思います。先ほどの説明の中では,監査役の場合と同等の独立性を確保するためとの説明がありましたが,選定の方法に関しまして,この部会で議論が収束しているという認識は必ずしも持っておりません。中間試案として出すという現段階におきましては,選定のパターンとして,取締役会選定型というのも一つの大きな論点であろうと思います。これは,独立性の確保という視点だけではなくて,構成や権限にも関わる問題として,パブコメで検討すべき事項かもしれません。この段階では,取締役会選定型の案を付記しておいたほうがいいのではないかということを申し上げたいと思います。 ○上村委員 先ほど議論がありました内部統制との関係ですけれども,補足説明のところにありますように,株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制イコール,内部統制システムを前提とした組織的監査というと,どうしても,私なんかは,公認会計士の,いわゆる監査論で言うところの内部統制を前提とした組織的な監査,あるいはシステム監査といいましょうか,そういうイメージで考えてしまうんですけれども,会社法で業務の適正に関する体制というのは,それとイコールではないだろうと思うんですね。ですから,要するに公認会計士の監査にとって必要な前提となる内部統制と,それを前提とした組織的監査,システム監査というのは,常勤監査役の監査と直結する理論的関係があるのかどうかは疑問もありますのでここは説明の問題にすぎないかもしれませんが,会社法で言う業務の適正に関する体制と,これが何かイコールで書かれているような印象を受けるので,そこは,もうちょっと説明があったほうがいいのではないかと思います。常勤といっても,公認会計士監査と同じではないはずで,言わばガバナンスの話が中心ですので,公認会計士監査の結果の相当性に関する意見を述べるから組織的な期中監査をするのだというイメージで理解されているのかなと受け止めてしまいそうです。この辺,ちょっと説明が要るのかなという感じがいたします。 ○塚本関係官 部会資料16の補足説明で,「いわゆる内部統制システム」と書いていますのは,会社法362条等で書いてあります,業務の適正を確保するための体制と同じでして,会計監査のためだけの内部統制システムとは異なるものとして書いています。 ○前田委員 4ページの(4)の(注1)と(注2)の整理の仕方として,やや細かな点なのですけれども,ここでは,決定を取締役に委任できるかどうかという問題について,(注1)では,362条4項3号から5号までの事項が採り上げられ,(注2)では,362条4項以外の事項が採り上げられています。しかし,会社法が取締役会で決定せよと定めている事項は,特に362条4項の一般的な規定の中で定められているか,それとも,362条4項以外の規定で個別具体的に定められているかで,質的な違いはないのではないか,少なくとも,取締役に委任していいかどうかの判断に当たって,特に区別する理由はないのではないかと思います。つまり,現在の(注2)で扱われている362条4項以外の事項であっても,社外取締役が2名以上いるということを考慮いたしますと,決定の迅速性の要請などを考慮して,委任を認めていいものがあるようにも思われますし,他方で,現在の(注1)で扱われている362条4項の3号から5号までの事項であっても,一定の要件を満たして初めて委任を認めていいものがあるようにも思われます。ですから,案の出し方としては,今の(注1),(注2)のような区分,つまり,362条4項で定められているか,それとも,個別規定で定められているかという区分はやめにして,一般的に,本文ア,イ以外にも取締役に委任できる事項があるかどうか,更には,(注2)のような一定の要件を満たした上で委任できる事項があるかどうかについて,なお検討するという形にしていただくほうが,理論的にはよりすっきりするように思います。 ○坂本幹事 確かに,今,前田委員が御提案になったような考え方も,論理的にあり得るものと思っております。他方で,今,正に前田委員のほうから御指摘いただいたとおり,社外取締役が一人ではなく二人以上いるという前提を考えたときに,362条4項の3号から5号までという定型的に切り出されているものにつきましては,あらかじめ特に具体的な要件を加重することなく委任を認めるという選択肢もあり得るのではないかということで,部会資料16のようにさせていただいております。その他の重要な事項ということになってくるといろいろなものが入ってくるので,あらかじめ定型的に判断していくことができないということもございますので,これは別個,(注2)というふうに切り分けて書かせていただいているところでございます。 ○太田委員 先ほど来議論がありました常勤者の配置の必要性につきまして,前回,私ども監査役協会の立場から意見を申し上げたとおりですので,それは繰り返しません。私は,今回のこの部会資料16を拝見したときに,補足説明が大変丁寧に書かれておりますし,取り分け,その構成,権限等に関しまして,5ページ目に書かれてあるこの説明内容が頭の中に,まず入ってきました。先ほどの藤田幹事の御指摘も,考えればそうかなとは思いますが,要は,実際にワークする仕組みというものをどういうふうに構築するかということに,一番重きを置くべきではないかというふうに思います。何故ならば,5ページの上段にもありますように,第1類型,第2類型,いずれかからの移行ということでは必ずしもなくて,新たなる第3類型を設けるんだという論の立て方でありますから,これが独立的に,入れる場所の是非は余り気にならないというのが実感です。常勤者の義務付けについては,またなお検討するという書き振りで構わないと,率直に思いました。これは,感想ということですので,更にお詰めいただければよろしいかと思います。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。ほかにございますでしょうか。いろいろ御意見を頂いたわけでございますが,藤田幹事が御指摘になったような,常勤の意義付けとか,その意味するところ,そういうような問題について,なお補足説明等でより明確にする努力をするということは,事務当局にお願いしたいと思います。また,常勤の義務付けについて書く場所に関し,三原幹事から御意見を頂きましたが,ほかの方は,どうでしょうか。現在の案のような書き方ではまずいというような御意見はほかにございますでしょうか。   特にそういう御意見がなければ,基本的にはこのような形にさせていただいて,ただ,三原幹事の御趣旨がよく反映されるような形で,補足説明等に書かせていただきたいと思います。ほかに,杉村委員から御指摘があった点など,特に御意見はありませんか。 ○坂本幹事 杉村委員から御指摘があったところにつきましては,議論の経過からして,総会選任型のほうが賛成が多かったのではないかということで,取締役会選定型を削らせていただいております。そのような御指摘があったということは,現にこの部会でも御議論いただいたところでございますので,補足説明の中で,そういう御指摘があった,こういうことを議論して,結果こうなっているということを記載させていただければと思っておるところでございます。 ○岩原部会長 そのようなことで,よろしゅうございましょうか。   それでは,今申し上げましたような補足説明等における書き振りを更に工夫していただくということを前提に,このような形でパブリック・コメントの手続に掛けるということを御了承いただけますでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきたいと存じます。それでは,次に進ませていただきたいと存じます。第1の「3 社外取締役及び社外監査役に関する規律」に移らせていただきます。(1)から(3)まで一括して,事務当局から御説明をお願いしたいと存じます。 ○塚本関係官 それでは,「3 社外取締役及び社外監査役に関する規律」について御説明いたします。まず,「(1) 社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い」については,社外取締役等の要件に,取締役等の近親者でないものであることを追加するという,①及び②のそれぞれイにおいて,当部会における御指摘を踏まえ,血族及び姻族の範囲を2親等内に変更しています。また,②の社外監査役の要件の見直しについては,その内容を分かりやすくするために,書き下すように変更しています。   なお,当部会においては,「(2) 社外取締役等の要件に係る対象期間の限定」及び「(3) 取締役及び監査役の責任の一部免除」について,(1)のA案のような見直しをすることを条件とする必要はないとの御指摘を頂きましたが,企業統治の在り方の見直しという法制審議会に対する諮問の趣旨等も踏まえまして,この点は,変更しておりません。 ○岩原部会長 ありがとうございました。部会資料16におきましては,前々回の会議で頂きました御意見を踏まえ,社外取締役等の要件に関し,取締役等の近親者の範囲を変更するなどの修正を行っております。このような案につきまして,御意見を頂ければと思います。 ○静委員 3の(1)について申し上げます。部会資料16では,A案・B案ということで,親会社関係者を除外するという案と,現行のままという案と,この二つの案が挙げられています。前々回,私のほうでは,重要な取引先ですとか,相互派遣の関係にある人を除外するという案もいかがかということを申し上げたわけでございますけれども,昨今の状況に鑑みまして,やはりそういう案を入れることをもう一度御検討いただきたい。何でそういう案が入らなかったのかということにつきましては,事務当局の御説明で,具体的に「主要な」というのはどういうレベルなのかがよく分からず,具体案がないと載せられないという御説明を頂いたと思いますけれども,この部会の中でも,中東幹事や岩原部会長からは,具体案がなくとも,それはパブコメで具体案を募るということでもいいのではないかというような御発言も頂いたと記憶しておりますが,結局そのことは聞き入れてはいただけなかったようで,部会資料16には入っておりません。しかし,最近大きな問題になっている上場会社で起きた一連の不祥事を見ますと,大分,会社法改正を取り巻く状況も変わってきているのではないかと思われます。このまま,この試案を世に出していいかどうかということを,もう一度,部会としては真剣に検討すべきではないかと私は思います。どういうことかと申しますと,例えば今話題になっている内視鏡会社の例で申し上げますと,社外取締役は3人いらっしゃいます。いらっしゃいますが,一人は会社から広告をたくさん出してもらっている新聞社の元役員の方でございます。もう一人は,会社から寄附金を受け取っておられる公益法人の代表者の方でございます。最後の一人は,こちらは会社と長年の取引がある証券会社の元社員ということで,皆,誰が見てもすぐ分かるような単純な取引関係がある人か,取引先の関係者であった人ばかりでございます。社外監査役もお二方いらっしゃいますけれども,そのうちのお一方は,ほかの上場会社との間で相互派遣の形になっている方ということでございます。こういう事件が起こって,誰も止める人がいなかったということが問題になっているときに,親会社関係者のことは社外性の要件で考えるけれども,取引先関係者ですとか相互派遣については一切考慮しないというような試案を出した場合に,この部会は何か寝ぼけているのではないかと言われてしまうようなことを,懸念しておるということでございます。したがいまして,重要な取引先関係者ですとか相互派遣の関係にある者を除外するという案を一つ加えていただけないかどうかということでございまして,その範囲につきましては,御提案いただきましたように,重要な取引先関係者の範囲をどうするかという問題については,今後検討するという書き方でもよろしいかと思っておりますので,是非,一度御検討いただきたいと思います。 ○伊藤(雅)委員 (1)に関して,私ども,原則的にB案の賛成にある立場なんですけれども,あえてA案についてコメントさせていただきたいと思います。社外取締役,社外監査役の要件に挙がっておりますアとイ,これを試案としてセットで提案する必然性が必ずしもないのではないかという提案があったかと思います。まず,アなんですけれども,親会社の取締役や使用人などは社外取締役として選任できないという規定は,必須だとは思いません。親会社の取締役や使用人が,社外取締役で有効に機能することもあるのではないかと思います。例えば,そんなことから,A´案というものを作って,イだけを記載したものを中間試案に載せることはできないでしょうか。イについても意見を述べさせていただきますと,取締役,執行役,支配人などの重要な使用人の血族うんぬん,これが社外取締役・監査役になれないのは仕方ないと思います。その他の使用人の2親等以内というものが,これも3親等以内から緩和されたのですけれども,実際問題として,その範囲が広過ぎると,イメージとしては,社員がいると,その兄弟うんぬんを全部調べなければならない。要は,だから全社員が当然対象になりますよね。それを分かって2親等という判断をされたんでしょうけれども,社外取締役,それから,社外監査役が十分にガバナンスにおいてその役割を発揮するには,その人なりの資質が重要であり,重要でない使用人の血族うんぬんを排除するという必要はないと思います。この部分につきましては,「その他の重要な使用人」というような記載を検討していただけないかなと思います。よろしくお願いいたします。 ○坂本幹事 今の伊藤委員からの御指摘の点ですけれども,アとイが論理的にセットになっているということではないということは,御指摘のとおりだとは思っております。他方で,ここで社外取締役等の要件を厳しくしていくという議論の中で,このようにセットで御議論いただいておりますし,パブリック・コメントに掛けるに当たりまして,アは駄目だけどイは賛成という御意見であれば,当然そのような形で御意見をお寄せいただくことは可能です。したがって,かえって,案をアとイで分けることにしてしまいますと,ちょっと視点がぼやけるというところもございますので,これは,このままにさせていただき,一方は賛成,一方は反対ということであれば,そのような形で御意見を寄せていただければと思っておる次第でございます。   もう一点,「重要な使用人」というところでございますけれども,そもそも重要性とは何ぞやという,また別の論点で議論したような話になるというところもございますし,仮にそういう御意見があれば,それはそれで御意見を寄せていただくことはもちろん可能ですので,その重要性というのは何ぞやというところも含めて,御意見があればパブリック・コメントで寄せていただければと思う次第でございます。この部会では,これまで一般的に使用人という形で御議論いただいているところでございますので,中間試案としては,こういう形でお示しさせていただければと思います。 ○伊藤(雅)委員 「重要な」というと,例えば部長さんとか,そういうイメージです。 ○上村委員 先ほどの静委員の提案に,全面的に賛成です。今の状況を踏まえて,最後の段階で法制審がそれに対応しようと努めたという姿を示すべきだと思います。ただ,オリンパスに社外取締役がいなかったというと,そうは私は思っていませんで,社長が社外取締役だったのですね。あれが最も代表的な,典型的な社外取締役の機能であって,ですから,日本人の社外取締役をきちんと作るためにも,今おっしゃったようなことをきちんと考慮すべきだと思います。 ○太田委員 先ほど来,名前の挙がっております特定の会社の論議を余り意識し過ぎるのもいかがなものかなと,率直に思います。いまだ,実際に何が真実で何が真実でないのか分からない中で,この会社法制部会が流されてはいけないのではないかと考えます。会社の情報開示によれば,第三者委員会の設置を,11月1日に行い,その最終的な判断というか,調査を委ねたことが報じられていますから,その最終報告書の公表を待って,具体的な検証を重ね,そこからガバナンスの強化や,社外取締役あるいは社外監査役の機能だとか,取締役会は本当にどのように機能していたのかとか,そういうところに慎重に論及していくことが望ましいと思われます。たまたまタイミングはこういうことですから,私も大変気にはなりますが,事実に即した対応が必要だということを申し上げたい。なお,本題に戻って意見を申し述べますが,7ページの②にあります社外監査役の要件つきましては,第一読会から私の前任の委員が,社外取締役の要件とこの社外監査役の要件は,基本的にセットで議論されるべきものだ,こういう主張をしております。   それに,もう一点。②の社外監査役の要件のアの項目ですけれども,先般も簡単に御説明したかと思いますが,監査役協会の加盟会社から言いますと,約4割がやはり親会社を持っているという事実があります。したがって,こういう書き方で悪いという意味ではありませんが,非常にそういう意味では影響が実は大きいという事を改めて申し上げておきたいと思います。社外要件をこれによって,従来基準では駄目だという方向に行った場合なんですが,影響が非常に大きいものですから,現実にこれを回していくときにどんなふうに変わるのだろうかというところを,大変危惧しております。これは,危惧しているということで今申し上げるまでしかありません。反対とかそういうことではありませんが,大変影響が大きいということを是非,御認識いただきたい。 ○上村委員 これは,今問題になっているのは,私は,特異な例外的な事件だとは全く思っておりません。多くの人の,こういう問題に関心のある方,新聞にも載っていましたけれども,同じようなことが幾らでもあっても全然不思議と思わないと答えている人が極めて多い。それから,私も全然不思議だと思いません。それはなぜかというと,やはり本気でガバナンスの問題に日本の経済界が取り組んでこなかったからだと思います。ですから,何が起きてもおかしくないというところに来ているので,これは,第三者委員会の判断を待たないと,我々がそういう提案もできないということにはならないと思います。これで決定しようというわけではないですね。そういうことの提案もできないということではないのではないかと私は思います。 ○杉村委員 先ほど来出ています個社の問題に関しましては,太田委員がおっしゃったのと全く同感であります。会社法制という全体に影響を与える議論に直ちに反映させるかということにつきましては,少し慎重に考える必要があると思います。   その上で,先ほど静委員から改めて御提案があったことについてですけれども,重要な取引先につきましては,規範としての範囲の明確性という観点から問題があり,不明確なものを定めることは支障が大きいのではないかという懸念を改めて表明させていただきたいと思います。 ○田中幹事 主要な取引先に関していろいろな見解が出ましたけれども,私も,やはり,主要な取引先についても,その関係者でなかったということを社外取締役の要件に含めることについて,なお検討するという一文を設けて,広く各界の意見を聞くということでいいのではないかと思います。確かに,特定の会社の事件に振り回されてはいけないというのはそのとおりではあります。ただ,もしも今までこういう問題が一度もどこでも議論されたことがなかったとすれば,ただこの事件だけそういう問題があったからといって規制を掛けるべきだというのは短絡的だ,という反論はできると思いますが,これは,そういう問題ではなくて,むしろ従前から,主要な取引先を社外取締役にしておくと問題があるということは,もうほとんど世界中で言われていることで,そのことを裏付けるような事件が起きたということですから,やはり受け止め方が大分違ってくるのではないかなと思っております。要件が不明確になりやすいという点については,例えばニューヨーク証券取引所の規則とか,あれは,金額とパーセンテージの二つの要件を一応設けておりますので,そういったところも参考にするといいと思います。何も検討しないで,単に要件の設定が難しいからやめましたというのは,外から見ていてとても印象が悪いのではないかなというふうに正直私も懸念しておりまして,別にここに入れたからすぐに新たな規制を設けるということではないのですから,取りあえず問題点を部会として認識しているということで,引き続き検討という一文を設けるということでいいのではないかと私は考えております。 ○岩原部会長 ほかに何かございますか。この問題について意見が分かれましたが,何か事務当局からありますか。 ○坂本幹事 田中幹事のほうから御指摘がございましたとおり,ニューヨーク証券取引所の規則でこれを定めてあるということはもちろん承知しておるところです。他方で,現在,この二つの案を挙げさせていただいているのは,そういうソフトローの世界と会社法の世界,そのすみ分けをどのようにしていくのかということも考えて,会社法でやる以上,その要件を満たさなければ違法ということになってしまいますので,ある程度明確なルールで決めていく必要があるということで,こういう形にさせていただいておるという次第でございます。そのような観点からの御意見があれば,頂戴できればと存じますが,いかがでございますでしょうか。 ○岩原部会長 今,坂本幹事が提起されましたようなことにつき,御意見はございますでしょうか。つまり,ソフトローというか,証券取引所のルールと会社法とで,どういう役割分担をしたらいいかということを考慮に入れた上で,どうしたらいいかということですね。何か御意見はございますでしょうか。 ○上村委員 ソフトローは,東大の先生がおられるので私が申し上げるようなことはないんですけれども,少なくともアメリカで,ニューヨーク証券取引所で,ガバナンスについてある程度取り上げざるを得ないのは,アメリカに,連邦会社法がないからであって,州の会社法しかないわけですよね。ですから,それに代わるものが連邦証券法に書いてあったり,取引所の規則に書いてあって,そこで統一してくるということですから,実質的には会社法なので,それを我々が受け入れるに際しては会社法としてきちっと受け入れるというのは自然なことだと思います。それから,アメリカの州法でも,独立性について規定を設けている州が幾つかあったかと思います。日本は会社法で書けるものをあえて証券取引所ルールにする必要性は基本的に乏しいと思います。 ○田中幹事 ある事柄をソフトローで規律するかハードローで規律するかということについては,少なくともこの問題については,余り発達した議論はないと思うんですね。社外取締役なども,韓国みたいにハードローで強制しているところもありますし,また,ソフトローだといっても,ニューヨーク証券取引所に上場している企業にとっては,守らなければならない規則という点では法律も上場規則も余り関係ないのではないかなという印象もあります。それから,上場規則といっても,SECという公的機関の承認が要るわけですから,ある種ハードローに近い部分もあります。とはいえ,法律で定めるか規則で定めるかといったときに,法令で定める場合には,違反したという判断が明確になるような基準でなければならないという,恐らくその部分が最も重要な観点だと思いまして,そういう面で言うと,単に「主要」とか「重要な」というだけですと,なかなか難しい問題があるということはあるかもしれませんが,ただその一方で,現行法においても,子会社とか,関連会社という基準について,最終的には実質判断を要するような基準になっております。ですから,重要性プラス数値基準というようなそういった要件で,つまり,一般的な「主要」あるいは「重要」という基準と,セーフハーバーかあるいは推定規定か分かりませんけれども,売上金額がこれぐらいで,あるいは売上高に占める割合がこれぐらいというような数値基準を並列的に設けるというようなルールであれば,それを法律に設けてはならないと考える理由は必ずしもないのではないかと考えています。 ○中原幹事 田中幹事や坂本幹事のおっしゃったことに関連しまして,会社法にその要件として設けた場合と取引所規則に要件として設けた場合との違いは,取締役会のある決議が,その社外取締役に係る要件が欠缺したことによって無効になってしまうのかどうかということがかなり大きく絡んでくるかと思いますので,坂本幹事のおっしゃったことについては傾聴すべきものがあるのではないかと思います。取引所に御尽力を賜りまして,独立役員の要件について,当該会社を主要な取引先とする会社の業務執行者でないこと等を要求しつつも,それを踏まえてもなお独立役員と指定するときはその理由を開示しなさいということで現在の取引所規則ができていると思いますところ,そもそもこうした要件を設けなければならない必要があるかは十分に議論をしていかなければならないことは前提の上ですが,もし仮に会社法で何らか規定を設けるという話になったとした場合には,取引所規則で採用されたアプローチと同様のアプローチを採用することで事務当局が御説明になってこられた懸念に応えていく方法もあり得るのではないかと思います。 ○岩原部会長 よろしいですか。   かなり多くの委員,幹事の方から,中間試案そのものの中に,社外性の要件について主要な取引先についての言及をすべきだという御意見を頂きましたが,それに対する消極的な御意見も頂きました。両方の御意見を頂いたわけであります。中間試案の本体の中に,なお検討するという形で書くのか,あるいは補足説明の中で,こういうかなり強い意見があったというような形で書くか,何らかの形での言及は多分必要だろうと思います。その上で,中間試案そのものの中に書くか,書くとして,先ほど田中幹事がおっしゃったような,なお検討するというような形で書くのか,あるいは,本体には書かずに,補足説明の中でそのようなかなりの御意見があったという形で書くか,そこら辺のところは,今日かなり多くの方から御意見があり,また,意見も分かれておりますところ,中間試案の最終決定は次回ですので,それまでに,事務当局によく検討していただき,更に御意見を賜った各委員,幹事の方の御意見も伺って,次回,最終的な形を御提案させていただくということでよろしいでしょうか。 ○坂本幹事 岩原部会長からおまとめいただいたとおり,元々は,そのような御指摘があったことは補足説明には書かせていただく予定ではおりました。今日の御議論を踏まえて,ただ今岩原部会長から御示唆いただいたように,どういう形でお示しするかということにつきましては,検討させていただきたいと思っております。 ○岩原部会長 そのようなことで,よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきたいと思います。次に,「第2 監査役の監査機能」につきましては,前々回の会議におきまして特段の御異論がなかったところでございまして,変更はございませんので,特に今日ここで特段の御意見がなければ,先に進めさせていただきたいと存じますが,よろしゅうございましょうか。 ○栗田幹事 これは,お願いなのですが,中間試案をパブリック・コメントに付されるときに,何らかの補足説明がこれに付いてくるのだと思います。この論点,特に第2の1につきましては,余りマスコミなどでも取り上げられないテーマではあるのですが,重要な論点だと考えておりまして,しかも,この点は,本部会に係る以前から議論・検討がなされてきたテーマでもあります。そこで,補足説明では,検討経緯ですとか,なぜこういう提案がなされているのか,あるいは,なぜA案・B案に分かれているのかなど,詳細に説明していただければと思います。例えば,趣旨については,会計監査人の経営者からの独立性を制度的に担保する必要があり,それによって会計不祥事とか粉飾決算の防止につながるというようなこと,あるいは,A案・B案に分かれている点につきましては,取締役の業務執行権との関連があるが,ただ,一方で,監査役には,既に会計監査人の選任議案の提出については,同意権とか提案請求権があるというようなことをきちんと書いていただければ有り難いと考えております。 ○岩原部会長 当然そのような説明はされると思いますし,正にこの問題も今回の事件でクローズアップされている論点の一つでもございますし,当然,社会に対する責任としても,きちんとそういう説明がなされるものと理解しております。そういうことで,中間試案としては,こういう形で出すということで,よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきたいと思います。第3の「1 支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等」でございます。(1)と(2)を一括して,事務当局から説明をしていただきたいと存じます。 ○内田関係官 それでは,「第3 資金調達の場面における企業統治の在り方」のうち「1 支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等」について,前回からの変更部分を御説明いたします。まず,「(1) 株主総会の決議の要否」につきましては,柱書において,規律の対象となる募集株式の発行等の範囲を画する議決権数を総株主の議決権の過半数としておりますけれども,この点については,規律の対象を広げ,総株主の議決権の3分の1を基準とすべきであるとの御指摘がありました。他方で,過半数という基準を維持すべきであるとの御指摘もありましたので,柱書は原案を維持した上で,(注1)として,規律の対象を広げるかどうかについては,なお検討する旨の注記を加えております。また,(注2)として,第三者割当てによる募集新株予約権の発行等の取扱いについては,なお検討する旨の注記を加えております。これは,募集株式の発行等について規律を設けても,募集新株予約権の発行等について何らの規律も設けないとすると,募集新株予約権の発行等をした上で,その引受人が直ちに新株予約権を行使することなどにより,容易に規律が潜脱されるおそれがあると考えられるため,何らかの手当てが必要ではないかという問題意識によるものでございます。具体的にどのような手当てをするかは,技術的に検討を要する点もございますので,ここでは,なお検討する旨の注記としております。   次に,「(2) 情報開示の充実」につきましては,(注1)のイとエを,意見の対象を明示しない形に改めております。支配株主の異動に関する情報開示の充実を図るという趣旨を踏まえますと,ここでの情報開示の主眼は,募集株式の発行等の結果として生ずる支配株主の異動の当否に関する判断や意見ということになると考えられますが,前回の案にありました必要性,相当性でありますとか適法性という文言が,このような観点から果たして適切なものと言えるかどうか議論の余地もあると考えられることから,差し当たり,このような修正をした次第でございます。特に,エの監査役等の意見の対象につきましては,当部会においても議論があったところであり,第三者割当てによる募集株式の発行等が,資金調達,業務提携等に関する高度な経営判断を伴う側面を有することも踏まえて,監査役などの職務との関係で検討を要するところかと考えております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。(1)におきまして,(注1)及び(注2)が追加されております。ただ今御説明いただきましたような(2)の変更点を併せまして,皆様の御意見を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。   よろしいですか。特に御意見ございませんか。それでは,特に御意見はございませんようですので,このような形でパブリック・コメントの手続に付させていただきたいと存じます。次に,第3の「2 株式の併合」の「(1) 端数となる株式の買取請求」に移らせていただきます。事務当局から説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,「2 株式の併合」の「(1) 端数となる株式の買取請求」につきまして,前回からの変更部分を御説明します。まず,①の(注2)につきましては,前回の案における表現では,ある株主が有する端数となる株式のうち買取請求がされる部分とされない部分に分かれる余地がある,すなわち,一部のみの買取請求の余地があるかのような誤解を招くおそれがあるのではないかと思われたため,そのような誤解を避け,一部のみの買取請求は認めないという(注1)の趣旨をより明確にするために,表現を修正しております。実質的な内容には,変更はございません。なお,端数となる株式の買取請求をすることができる株主の範囲につきましては,反対株主に限るべきではないとの御指摘もありましたので,議論の状況を踏まえて,そのような御指摘もあったことについて,補足説明に記載させていただくことを考えております。   また,⑪につきましては,事後開示の書面等の閲覧等の請求権者に,効力発生日に当該株式会社の株主であった者を追加しております。これは,株式交換完全子会社の事後開示手続に関する会社法791条4項を参考にしたものでございまして,株式の併合によって株式を失った者にも閲覧等の請求を認める趣旨です。部会資料16の20ページ,第2部第3の2(1)②の冒頭の部分では,全部取得条項付種類株式の取得についての事後開示手続において,「取得日に当該株式会社の株主であった者」を閲覧権者に含めるものとしておりまして,この点について前回の御議論で異論がなかったため,株式の併合についての事後開示手続においても,これと平仄を合わせるものとしたものでございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,この点について御意見を頂きたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ○静委員 私は,この前から,買取請求を認める範囲を反対株主に限定することについては異議があると申し上げてきましたが,これについては補足説明にお書きいただけるということでしたので,どうぞよろしくお願い申し上げます。その上で,意見を1点だけ申し上げますと,買取請求を何で反対株主に限るのかという理由について,前回この部会で御説明いただいたところでは,余りに投資家保護が緩いということで使われていないこの株式併合をキャッシュ・アウトに使えるようにするためだ,そのために会社の負担を減らす必要があるので,だから,買取請求を反対株主に限るのだというふうに御説明いただいたと記憶しておりますけれども,その旨を是非,本文の(注)の中で明確にしていただきたいと思います。私としては,モックの事件の反省から,二度と投資家を泣かせたくないということで,買取請求権を認めることを提案したわけでございまして,株式併合のような特別決議程度の要件でキャッシュ・アウトをできるようにすることは,私の本意ではございません。最近も私のところへ投資家が来て,特別決議でキャッシュ・アウトが可能な制度は何とかならないかということを盛んに言って行ったというぐらいでございます。したがいまして,別の意図でこういうことをされるということであれば,そういう意図でやるんだということをはっきり書いて,世間に問うていただきたいと思います。 ○内田関係官 御指摘の点は,反対株主に限っている趣旨の説明ということになりますので,正に補足説明の中で御説明をさせていただくことが適切かと考えております。キャッシュ・アウトに使えるということにつきましては,前回の会議での静委員からの御指摘も踏まえまして,部会資料16の20ページ,第2部第3の3の(注)という形で,キャッシュ・アウトのところにも,株式の併合における端数となる株式の買取請求についてクロス・リファレンスを入れさせていただいておりまして,補足説明の中でも,その点を意識して丁寧な説明を心掛けたいと考えております。 ○岩原部会長 ほかに何か,御意見はございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,静委員の御趣旨はよく分かりましたので,補足説明の中で十分それは御説明していただくということで扱わせていただきたいと存じます。それでは,次に行きたいと思います。次の「(2) 発行可能株式総数に関する規律」,さらに,「3 仮装払込みによる募集株式の発行等」及び「4 新株予約権無償割当てに関する割当通知」につきましては,前々回の会議におきまして特段の御異論がなかったところと理解しております。実質的な変更はございませんので,もし今日,特別の御意見がなければ先に進めさせていただきたいと存じますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,そのように取り扱わせていただきます。次に,第2部に移りまして,親子会社に関する規律の第1の「1 多重代表訴訟」でございます。事務当局からの説明をお願いします。 ○塚本関係官 それでは,第2部の第1の「1 多重代表訴訟」について御説明いたします。A案における変更箇所は,趣旨を明確にするなどの観点からの変更であり,実質的な内容の変更はございません。   B案については,当部会における議論を踏まえ,新たに(注)を設けており,B案を採用して多重代表訴訟の制度を創設しないこととする場合,親会社株主の保護という観点から,親子会社に関する規律を見直すことについて,具体例を挙げた上で,なお検討することとしています。具体例につきましては,前回の会議及びその後個別に頂きました御提案を踏まえて挙げておりますが,当部会において十分な御議論をまだ頂いていないものであるため,飽くまでも例示にすぎないということで御理解いただきたいと存じます。   まず,アについてですが,当部会においては,子会社取締役の任務懈怠等により子会社に損害が生じた場合は,子会社の管理・監督に関する親会社取締役の責任を問えば足り,多重代表訴訟の制度を創設する必要はないとの指摘がされています。他方で,親会社取締役が一般的に子会社又はその取締役を管理・監督する責任を負っているかどうかという点は,現行法上明確であると必ずしも言えないとの指摘がされています。そこで,アは,会社法第362条第2項第2号等が,取締役会は,その職務として,取締役の職務の執行の監督を行うと規定していることを参考として,取締役会は,その職務として,株式会社の子会社の取締役の職務の執行の監督を行う旨の明文の規定を設けることを例として挙げています。   次に,イについてですが,子会社の取締役等の責任の原因である事実により当該子会社に損害が生じ,その結果,親会社に損害が生じている場合―このような親会社の損害としては,典型的には親会社が有する子会社株式の価値の下落が考えられますが―においては,当該親会社が当該責任を追及するための必要な措置を採れば当該子会社の損害が回復され,その結果,当該親会社の損害も回復されるという関係にあると言えるものと思われます。そこで,イは,そのような関係にあるにもかかわらず,親会社が子会社の取締役等の責任を追及するための必要な措置をあえて採らない場合は,親会社取締役は,その任務を怠ったものと推定するものとし,親会社取締役の責任を追及する親会社株主の立証責任を軽減することを例として挙げています。   ウ及びエは,親会社株主による情報収集の充実という観点からの新たな規律の具体例でございます。まず,ウは,一定の場合に,子会社の取締役等の責任の追及に係る対応及びその理由等を株主に通知することを請求する権利を親会社株主に認めるものです。また,エは,株式会社の業務の執行に関する検査役の選任申立権について定める会社法第358条を参考にして,子会社の業務及び財産の状況を調査するための検査役の選任申立権を親会社株主に認めるものでございます。   なお,情報開示の充実という観点からは,事業報告において,内部統制システム―親子会社に関する規律の関係で言えば,その中の会社法施行規則第100条第1項第5号等の「企業集団における業務の適正を確保するための体制」―の内容を開示するだけではなく,その運用状況等を開示するものとすべきであるとの指摘がされています。この点については,部会資料16の8ページの第2の「2 監査の実効性を確保するための仕組み」にございますとおり,内部統制システムの運用状況の概要等を事業報告の内容に追加するものとしており,これにより,企業集団における業務の適正を確保するための体制の運用状況として,例えば,子会社からの親会社に対する報告の状況等が開示されることになるものと思われます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。実質的な内容の変更点は,B案に(注)を追加しまして,多重代表訴訟の制度を創設しないこととする場合の,親子会社に関する新たな規律について,なお検討するとした点でございます。(注)に掲げられております具体例は,委員,幹事の皆様から頂戴した御意見を踏まえて書かせていただいております。多分いろいろ御異論,御意見があるところと思いますので,この点について,皆様の御意見を頂きたいと思います。 ○伊藤(雅)委員 B案の(注)のアとイについて意見を述べさせていただきたいと思います。企業の子会社の中にも,重要な子会社とそうでない子会社があると認識しております。その全てを親会社の取締役が監督しなければならないとなると,範囲を広げ過ぎなのではないのかなと思います。例えば,企業がスピンオフ・ベンチャーのような子会社を設立して,新しい試みをしようとすることもある。このような規定が存在すると,その挑戦的な試みが阻害されたり,グループ戦略に影響を及ぼすことが懸念されるのではないかと思います。アとイについては,慎重な取扱いをしていただけないかなという意見でございます。 ○杉村委員 A案とB案の両方について,少しずつお話ししたいと思います。まず,A案に関して,補足説明での記載のことですけれども,第二読会で海外子会社の扱いについて少し発言させていただきました際,株式会社と規定すれば海外子会社は含まれないという趣旨の説明があったと記憶しております。一方,企業の間では,海外の法廷で同様の解釈,運用がなされるのかという強い疑念が現在もあることは事実であります。補足説明におきましては,株式会社と規定することの意味合いなど海外子会社の問題について是非,説明していただければと思います。   それから,前回も申しましたが,A案の4では重要性の判断基準として5分の1ということが書いてあり,なお検討するなど,ほかの代替案について言及がありません。これに決めて出すのかということを再度意見として申し上げたいと思います。   それから,B案に関しまして,今,伊藤委員から指摘がありましたけれども,私のほうからも確認をさせていただきます。先ほどの事務当局の御説明では,(注)の具体例は飽くまで例示であると伺いましたが,今後パブコメを踏まえて,新しい提案や意見も踏まえて,先ほど御指摘がありました子会社の範囲など,そういった要件面も含めて,議論の場があるということをこの場で確認させていただきたいと思います。 ○塚本関係官 多重代表訴訟の制度を創設しないこととする場合にどのような規律を設けるべきかということは,パブリック・コメントの手続後に更に詰めて検討することになります。 ○太田委員 このB案のアのところですけれども,先ほど御説明があったように,一つの事例であるということは理解した上での質問なんですが,このアの書き振りですけれども,これは,従来から取締役会がいわゆる負っている子会社の取締役の職務執行に対する監督責任,それを明文化しただけで,新たに何か付加をしたものではないのだというふうに考えていいのかどうか,非常に微妙なところだと思うのです。先ほど幾つかの議論があるというふうにおっしゃいましたが,それによってその対応振りが相当,実は変わってくるという実務上の問題意識を持っておりますので,両方あるのは,それは分かるけれども,だから,ここで問うた場合に新たに何かが付加されると考えて,パブコメに対する何か意見を引き出そうとするのか,いや,そうではなく,今までどおりやっておればそういうことなんだということなのかによって,相当に対応振りといいますか,その辺が変わってくるように思うものですから,どう考えるべきなのかという質問です。 ○塚本関係官 ここは,一般的に,親会社取締役の子会社ないし子会社取締役に対する監視義務と言われていたところでして,その論者によっては考え方がいろいろとあるかもしれませんが,事務当局の考えとしては,例えば,親会社取締役として子会社に積極的に介入していくというような義務を新たに付加するということは意図していません。そのあたりは,補足説明で,どういったケースが監督義務の履行として考えられるかというところも,書ける範囲で書いていきたいと思っております。 ○太田委員 御案内のように,正に親会社の子会社に対する監査という観点から見ますと,必要があれば調査権という規定があるわけですが,それを更に乗り越えて監査権というのでしょうか,そういう言葉はまだなじんでいないかもしれませんが,そういうことだとすると,また全然その受け止め方なり意見の集約の方法が相当変わってくるのではないかと思うものですから,今御説明いただいたように,そういう趣旨を分かりやすく解説していただいたほうが望ましいという意見です。 ○岩原部会長 当然,趣旨の誤解のないような形で書かせていただきたいと思っております。ほかに,何か御意見はございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,特に御意見がなければ,パブリック・コメントとしてはこのような形で御意見を募らせていただいて,その上で各界からいろいろな御意見を頂いた上で,B案の各(注)のところについては,ここの場では詰めた議論はしておりませんので,そういう御意見を踏まえて,再開後の当部会で御議論をさせていただくということになるかと思います。よろしいでしょうか。   それでは,次に,第1の「2 親会社による子会社の株式等の譲渡」につきましては,前回の会議におきまして,おおむね御異論がなかったところでございまして,実質的な変更はございませんので,特段の御意見がなければ先に進ませていただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしいですか。   では,そのようにさせていただきたいと思います。では,ここで休憩に入らせていただきたいと思います。           (休     憩) ○岩原部会長 それでは,時間になりましたので,審議を再開させていただきたいと思います。「第2 子会社少数株主の保護」は,前回の会議におきまして,おおむね御異論がなかったように存じますので,変更はございませんが,「1 親会社等の責任」に関して,事務当局から若干の補足がございます。事務当局にお願いします。 ○内田関係官 「第2 子会社少数株主の保護」につきましては,特に変更しておりませんが,「1 親会社等の責任」につき,前回の御議論を踏まえて,1点補足をさせていただきます。A案を採る場合に,明文の規定に基づく親会社の責任が生ずるための要件につきましては,当部会における議論を踏まえ,①において,言わば「なかりせば基準」とでも言うべき基準を用いるものとしておりますが,この点については,独立当事者間取引基準によるべきであるとの意見もあったことや,A案のような明文の規定を設けても,その他の解釈論による責任追及に際して独立当事者間取引基準を用いる余地が否定されるわけではないことについて,より丁寧に説明する必要があるとの御指摘を頂いたところでございます。これらの点につきましては,御指摘を踏まえ,補足説明において,できる限り丁寧な説明を心掛けたいと考えております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。それでは,第2のところ,皆様の御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○杉村委員 補足説明の記載で意見があります。①は,なかりせば基準ということでございますが,アームス・レングス・ルールに照らして,グループ外との取引で問題にならないような場合は,グループ内でも該当しないということが,必ずしも①からは読み取れないような気もいたしております。その関係性について,補足説明の中で説明していただきたいと考えております。 ○内田関係官 恐らく,独立当事者間の取引では,なかりせば基準に抵触するような取引は,普通は行われないということになると思います。その意味で,交渉の経過や条件合意時における合理的な見通し等も踏まえて,独立当事者間で合意されるようなまともな条件で取引が行われたと言えるのであれば,基本的には今おっしゃったように,なかりせば基準に抵触することにはならないと思っております。御指摘を踏まえて,補足説明では,その点ができる限り分かりやすいように工夫させていただきたいと思います。 ○杉村委員 あえて申したのは,前回,原価割れの取引に関する議論がありましたけれども,アームス・レングス・ルールでも原価を下回るものが許容されるようなケースもあろうかと思いますので,その辺の関係を意識して,お願いをしたという次第でございます。 ○田中幹事 今ほどの御指摘についてですけれども,原価割れ販売であっても,例えば,新規の事業をする場合には,固定費が多額になりますので,その部分も含めれば当然,原価割れで販売せざるを得ないような状況があり得るわけで,そのような場合に,短期的には原価割れであることを承知の上で販売していても,長期的に,それらの費用は回収できることが合理的に見込まれるようなときには,子会社に不利益はないというふうに解釈されなければならないと思うんですね。そのようなことは,この試案で言うと,「一切の事情」というところで裁判所は考慮すべきことになるかと思います。私は,前回,もしかすると原価割れ販売は当然違法というふうに解釈されるようなことを申し上げたかもしれませんけれども,その点についての私の考えは今申し上げたとおりで,杉村委員と同意見ですので,原価割れ販売であっても,当然には親会社の責任が生じるものではなくて,そこは,やはり,「一切の事情」というところで適切に考慮されるはずであるということを補足説明で書かれればよろしいかと思います。 ○岩原部会長 ほかに何かございますでしょうか。 ○橋爪関係官 言わずもがなだとは思うんですけれども,補足説明の記載で1点お願いしたいことがございます。この責任の法的性格につきまして,これが不法行為責任であるのかどうかというあたりにつきまして,前回の補足説明では,不当な親会社の働き掛け等の特定を要しないというような記載がありましたけれども,あのあたりについて,できるだけ分かりやすく記載をお願いできればと思っております。よろしくお願いします。 ○岩原部会長 よろしいですか。では,御指摘を踏まえて補足説明を書かせていただきたいと思います。   ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。それでは,先に進ませていただきたいと思います。次の「2 情報開示の充実」につきましては,前回の会議におきまして,特段の御異論がなかったところと承知しております。変更はございませんので,特段の御意見が特に今日なければ,先に進めさせていただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,そのように扱わせていただきます。次に,「第3 キャッシュ・アウト」でございます。1から3までを一括して,事務当局から説明をしていただきます。 ○内田関係官 それでは,「第3 キャッシュ・アウト」について,前回からの変更部分を御説明いたします。まず,「1 特別支配株主による株式売渡請求等」につきましては,新株予約権の売渡請求を含める意味で,表題に「等」と加えたことや,③に置いておりました特別支配株主の定義を,専ら読みやすさという観点から①の(注)に移動したことなど,形式的な修正を加えております。   また,「3 その他の事項」は,前回の案では,「2 全部取得条項付種類株式の取得に関する規律」の(3)という位置付けをしていたものですが,キャッシュ・アウトに関するその他の事項という位置付けで,2とは別の項目とすることにいたしました。加えて,当部会における議論を踏まえますと,株式の併合について,端数となる株式の買取請求の制度を創設すれば,株式の併合は今後キャッシュ・アウトに用いられることもあり得ると思われます。その場合,端数となる株式の買取請求は,キャッシュ・アウトにおける少数株主の救済方法としての位置付けも有することになりますので,キャッシュ・アウトに関する事項でもあるということで,3の(注)としてクロス・リファレンスを入れております。以上のほか,キャッシュ・アウトに関して必要となる対象会社の株主総会決議について,決議要件を加重すべきであるとの御指摘もあったところですが,この点につきましては,当部会における議論の状況を踏まえ,そのような御指摘があった旨を補足説明で記載させていただくことを考えております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,1から3までにつき,一括して御意見を頂きたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ○齊藤幹事 前回申し上げるべきところを,申し上げるタイミングを逸し大変申し訳ないのですけれども,2点ほど御確認ないしお願いがございます。それは,キャッシュ・アウトの特別支配株主による株式売渡請求のところでございます。私は,この制度を使える会社の範囲を限定すべきだという立場を引き続き維持しておりますが,現提案の中では特にそのような制限が付されていないわけでございますけれども,それを前提といたしますと,無効の訴えの提訴期間を非公開会社の場合には1年にするというようなことと,不存在確認の訴えについての規定を設けるということも検討する必要があるのではないかと,こんな時期になって大変申し訳ないのですけれども,今思う次第でございます。   それから,第2点は,非常に技術的なことで,この中間試案に挙げるまでもないことではございますけれども,この制度ができたときの名義書換えの手続について,しかるべき改正がなされるものだと理解しております。特に,共同申請の例外について規定が設けられるような手当てがなされるのではないかと思いますが,その点について御確認のほどお願いいたします。 ○岩原部会長 提訴期間を1年にする,あるいは不存在確認の訴えも可能であることを明らかにするようなことを御提案いただいたわけでありますが,事務当局のほうで何かありますか。 ○内田関係官 まず,対象会社の範囲を限定すべきではないかという御指摘があったことにつきましては,補足説明で記載させていただければと考えております。無効の訴えの提訴期間を延ばすということにつきましても,今初めて御指摘を頂いたところで,まだ十分に検討はできていないところでございますけれども,対象会社の範囲を限定すべきではないかといった御指摘と共通の問題意識によるものとして,補足説明で記載させていただくことも含め,検討させていただきたいと思っております。現行法上,公開会社でない株式会社については,新株発行等の無効の訴えの提訴期間は1年とされていますが,組織再編の無効の訴えの提訴期間は6か月とされています。御指摘の点については,まだ検討が十分でない段階ではございますけれども,第一印象としては,それらの現行法の規律とのバランスにも配慮する必要があるかなと考えております。   それから,名義書換手続についての御指摘を頂きましたが,部会資料16の19ページ,1の末尾の(注)にありますとおり,株式売渡請求に関する手続の詳細につきましては,部会資料16で明記していないものも含め,所要の規定を設けることになろうかと思います。 ○岩原部会長 無効の訴えの提訴期間等の点については,事務当局のほうで検討していただきますので,よろしいでしょうか。ほかに何かございますでしょうか。 ○荒谷委員 前回の部会資料では,親会社等の責任のところに補足説明がありまして,そこで,セル・アウト制度について,否定的な書き方ではありましたが触れていたわけですけれども,そこでの議論のときに,岩原部会長から,セル・アウト制度について親会社等の責任とは別に何らかの形で問い掛けをしてほしいという私の要望と,これは,親会社等の責任のところではなく,キャッシュ・アウトのところに位置付けて整理することになるのではないかという中東幹事の御意見等も踏まえて,最終的な案を考えていただきたいとのお話だったと記憶しております。しかしながら,今回の案では,セル・アウトについてはばっさりカットされてしまっております。過去の議事録を拝見しておりましても,セル・アウトについては,キャッシュ・アウトと一緒に議論されておりますので,補足説明のところで,セル・アウト制度についても指摘があったとか,検討する余地があるとことを入れていただければと思います。 ○岩原部会長 今日は,中東幹事は御欠席ですので,中東幹事の御意見を伺うことはできませんが,事務当局のほうから,どうでしょうか。 ○内田関係官 この点につきましては,制度趣旨の整理がなかなか難しいということで,前回の部会資料15の補足説明でも書かせていただいたところでして,その点について,必ずしも部会での議論が熟するに至ったとは言えないように思われましたので,部会資料16では採り上げておりません。ただ,御指摘のとおり,部会で御議論があったことにつきましては,補足説明で,何らかの形で言及させていただければと考えております。 ○岩原部会長 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。 ○伊藤(雅)委員 以前,私から指摘させていただいた,中小企業においての株主総会決議不要型のキャッシュ・アウト制度を認めるかについて,慎重な検討が必要だと考えます。(注)でも構わないので,その旨の項目を入れていただけないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○坂本幹事 公開会社かどうかということについては,従来御指摘を頂いていましたが,それとは別に,「中小」企業というのは具体的にどういうイメージでしょうか。いわゆる非公開会社について,この制度によるキャッシュ・アウトを認めると問題があり得るという御指摘は,部会でも頂いておったかと思いますけれども,それは,会社の規模というよりも,先ほど申し上げましたような公開か非公開かという区別で対象会社を限定するといった御指摘であったものと理解しております。 ○伊藤(雅)委員 公開会社以外のところですね。売買が自由でないというような種類の会社です。 ○内田関係官 会社法上は,正に,全株式譲渡制限会社―すなわち,全株式に譲渡制限が付いているような会社―以外の会社が公開会社と定義されています。そのような意味で公開会社に当たらない会社については,先ほども御説明申し上げましたとおり,対象会社にそもそも含めるのかという御指摘を承ったところですので,そのような御指摘があったことについては,補足説明で記載させていただければと思います。 ○岩原部会長 よろしいですか。ほかに。   それでは,ないようでございますので,次に進ませていただきたいと思います。「第4 組織再編における株式買取請求等」につきまして,1から3まで一括して,事務当局から説明をお願いいたします。 ○髙木関係官 それでは,「第4 組織再編における株式買取請求等」について御説明します。この箇所は,前回の部会では特に御指摘を頂かなかったところですが,中間試案をパブリック・コメントに付す際の分かりやすさの観点から,見出しを改めています。   また,「1 買取口座の創設」の③の(注)や,「2 株式買取請求に係る株式等に係る価格決定前の支払制度」の(注1)は,これまで,当然のこととして明示しておりませんでしたが,同じく中間試案をパブリック・コメントに付す際の分かりやすさの観点から,記載を追加しております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。1及び2におきまして(注)が追加されておりますが,その他の部分は,前回の会議におきまして,皆様から特に御異論はなかったように記憶しております。このような内容で,よろしゅうございましょうか。よろしいですか。   それでは,このような内容にさせていただきたいと思います。次に,「第5 組織再編等の差止請求」及び「第6 会社分割等における債権者の保護」につきましては,前回の会議におきまして,おおむね御異論がなかったところではないかと承知しておりまして,実質的な変更はございませんので,今日特段の御意見がなければ,先に進めさせていただきたいと存じますが,いかがでございましょうか。 ○三原幹事 第6につきましては,これはこれで御議論を十分に頂いたと思いますけれども,補足説明ではどういうような御趣旨で書くかという方針が現在あるのであれば,大体こんなことを書きますと教えていただけるのであれば大変有り難いと思います。補足説明にどういうことをお書きになるかということです。前回の審議で会社分割における分配率が全体に上がるような場合は「害する」に該当するかを伺いまして,更に御研究いただけるのかどうかも含めまして,もし可能な範囲で御説明を頂けるのであれば,方向観だけでも教えていただければと思います。 ○塚本関係官 前回の会議におきまして,残存債権者を「害する」会社分割の具体例について御意見を頂きましたが,三原幹事から頂いた例をそのまま補足説明に書けるかどうかは検討が必要ですが,典型例と言えるようなものは,裁判例を踏まえて書いていきたいと考えています。 ○三原幹事 ありがとうございます。 ○岩原部会長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,次の論点に移らせていただきます。「第3部 その他」に入りまして,「第1 金融商品取引法上の規制に違反した者による議決権行使の差止請求」でございます。事務当局からの説明をお願いいたします。 ○内田関係官 それでは,第3部の「第1 金融商品取引法上の規制に違反した者による議決権行使の差止請求」について,前回からの変更部分を御説明します。第1については,(注3)を追加しております。本文の要件が満たされる場合に,株主が議決権行使の差止請求をしますと,当該株主と規制に違反した株主との間では,その効果が生ずることになりますが,その効果が当然に株式会社に及ぶかどうかは,議論の余地があるところかと存じます。差止請求があった場合に,株式会社がその効果を援用して議決権行使を拒むことができるか,あるいは,差止請求があったにもかかわらず株式会社が議決権行使を認めた場合にどうなるのか,といった点を整理する上でも,差止請求の効果が株式会社に及ぶものとするための手当てを検討する必要があると考えられますので,この点について,なお検討する旨の注記を追加した次第でございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。今,御説明がありましたように,(注)が追加されておりますが,その他の部分は,前回の会議におきまして,格段の御異論はなかったように存じております。何か特に御意見,ございますでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,このような内容でパブリック・コメントの手続に付すことにさせていただきたいと思います。次の「第2 株主名簿等の閲覧等の請求の拒絶事由」につきましては,これも,前回の会議におきまして,おおむね御異論がなかったところでございまして,そこから変更がございませんので,もし今日格別の御意見がなければ先に進めさせていただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしいですか。   それでは,そのようにさせていただきます。次の論点,「第3 その他」ということで,ここでは,今回の中間試案の第一次案で新たに加わりました,技術的・細目的事項の見直しに関するものでございます。まず,「1 募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約」につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○宮崎関係官 それでは,「第3 その他」について御説明いたします。企業統治の在り方や親子会社に関する規律等について,技術的・細目的事項等として見直しをすべきものにつきましては,事務当局において整理するようにとの御指示を頂いていたところでございます。そこで,「第3 その他」は,これまでに当部会で御議論いただいた企業統治の在り方や親子会社に関する規律等に関する論点と関係があり,また,部会においてさほど御異論がないと事務当局が考えた事項を整理して掲げ,中間試案に載せてパブリック・コメントの手続に付すことを意図したものです。   それでは,「1 募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約」について御説明いたします。会社法第204条第2項は,募集株式が譲渡制限株式である場合には,募集株式の割当てを受ける者及びその者に割り当てる募集株式の数の決定は,株主総会又は取締役会の決議によらなければならないものとしています。これは,実質的には,譲渡制限株式の譲渡承認の規律を譲渡制限株式の募集に際しても及ぼそうとする趣旨の規定です。これに対して,第205条は,募集株式を引き受けようとする者がいわゆる総数引受契約を締結する場合には,第203条及び第204条を適用しないものとしており,第204条第2項も適用されないように読める規定となっていますが,ただ今申し上げました第204条第2項の趣旨は,総数引受契約が締結される場合であっても同様に当てはまると考えられますので,募集する譲渡制限株式の割当てに関する事項の決定について,株主総会又は取締役会の決議を要するものとするのが相当であると考えられます。そこで,1は,募集株式を引き受けようとする者が総数引受契約を締結する場合であって,当該募集株式が譲渡制限株式であるときは,株式会社は,株主総会の特別決議又は取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議によって,当該契約の承認を受けなければならないものとしております。ただし,第204条第2項と同様,定款に別段の定めがある場合は,この限りでないものとしています。   また,同様の趣旨から,(注)では,募集新株予約権を引き受けようとする者が第244条に規定する総数引受契約を締結する場合であって,当該募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるとき等についても,同様の規律を設けるものとしています。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。これは,いわゆる総数引受契約を締結する場合であっても,会社法第204条第2項に規定する規律を及ぼすべきではないかという内容でございますが,いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。   それでは,そのように扱わせていただきます。次に,「2 監査役の監査の範囲に関する登記」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○宮崎関係官 それでは,「2 監査役の監査の範囲に関する登記」について御説明いたします。会社法第2条第9号は,監査役設置会社の定義について,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を除いたものとして定めています。他方で,第911条第3項第17号は,監査役設置会社であるときは,その旨及び監査役の氏名を登記事項としているところ,この場合における監査役設置会社には,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含むとしており,登記上,第2条第9号の監査役設置会社と,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社とは区別されていません。この点について,当部会において,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるかどうか,すなわち,第2条第9号の監査役設置会社に当たるかどうかによって,例えば,株式会社が第847条第1項の訴えの提起の請求を受ける場合に当該株式会社を代表する者が異なるなど,会社法上の規律が異なるため,当該定款の定めがある場合には,その旨を登記上明確にすべきであるとの指摘がされています。そこで,2は,当該定款の定めを登記事項に追加するものとしています。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。これは,登記上は,いわゆる会計限定監査役を置いている会社も含めて監査役設置会社とされているために,会社法第2条第9号で定義されております監査役設置会社であるかどうかが登記上は分からないという点を改めようというものでございます。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,そのように扱わせていただきたいと思います。次に,「3 いわゆる人的分割における準備金の計上」につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○宮崎関係官 それでは,「3 いわゆる人的分割における準備金の計上」について御説明いたします。会社法第792条第2号等は,分割会社が会社分割の効力発生日に当該会社分割の対価として交付を受けた承継会社の株式又は持分のみを配当財産として剰余金を配当する,いわゆる人的分割について,財源規制等の適用を除外していますが,剰余金の配当に際しての準備金の計上を義務付ける第445条第4項を適用除外としていません。しかし,第445条第4項が,剰余金の配当に当たって一定の金額の準備金を計上することを義務付けている趣旨は,一定の金額の利益を留保させることによって,他日の損失に備えさせることにあると考えられます。したがって,利益の有無にかかわらず剰余金の配当が行われる人的分割において,準備金の計上を義務付ける必要はないと考えられます。そこで,3は,分割会社が会社分割の対価として交付を受けた承継会社の株式又は持分のみを配当財産として剰余金の配当をする人的分割をするに当たり,第445条第4項の規定による準備金の計上を要しないものとしています。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。会社法第445条第4項は,剰余金の配当をする場合に,一定の金額を準備金として計上しなければならないと規定しているわけでありますが,いわゆる人的分割に際して剰余金の配当をする場合には,それが当てはまらないのではないかという問題でございます。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,そのように扱わせていただきます。最後に,「4 発行可能株式総数に関する規律」について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○宮崎関係官 それでは,「4 発行可能株式総数に関する規律」について御説明いたします。発行済株式の総数が発行可能株式総数の4分の1を下ることができないとする,いわゆる4倍規制の趣旨は,既存株主の持分比率の低下の限界を画することにあると考えられます。現行法において,新設合併等により株式会社を設立する場合や,公開会社でない株式会社が定款の変更により公開会社となる場合については,4倍規制に関する規定はありませんが,これらの場合にも,4倍規制の趣旨は,同様に当てはまると考えられます。そこで,当部会で御議論を頂いた株式の併合の場面と同様,これらの場合についても,4倍規制の趣旨を実効あらしめるものとするため,①及び②の規律を設けるものとしております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。新設合併等により株式会社を設立する場合や,公開会社でない株式会社が公開会社となる場合におきましても,4倍規制を及ぼす必要があるのではないかという内容でございますが,いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。   それでは,そのように中間試案の内容とさせていただきたいと思います。   本日の部会で審議していただく事項は,以上でございまして,本日の部会の終了の前に,次回の部会の予定につきまして,事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ○坂本幹事 次回は,平成23年12月7日水曜日でございます。予定としては,午後1時30分から午後5時30分までということになります。場所は,本日と同じ法務省3階の東京地検会議室でございます。   次回は,今日,中間試案の本体に加えるかどうかを検討するようにという宿題を頂いた部分が幾つかありますので,事務当局において検討させていただき,本体を修正するということであればその修正をしたものをお示しして,補足説明に記載するということであれば,その旨の御説明をさせていただくということで,できましたら,次回で中間試案の取りまとめをお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,法制審議会会社法制部会第15回会議を閉会いたします。本日も長時間にわたり熱心な審議を頂きまして,誠にありがとうございました。 -了-