法制審議会会社法制部会           第16回会議 議事録 第1 日 時  平成23年12月7日(水) 自 午後1時30分                       至 午後2時10分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  会社法制の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                議    事 ○岩原部会長 それでは,予定した時間がまいりましたので,法制審議会会社法制部会第16回会議を開会いたします。本日も,お忙しい中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。   まず,事務当局から配布資料の説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 御説明いたします。配布資料目録と部会資料17を事前にお配りしております。部会資料の内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。   なお,先々週の土曜日に,一部の報道で,政府が社外取締役の選任を義務付ける方針を固めたというような報道がされておりましたけれども,法務省としては,そのような方針を固めたという事実は全くございません。私どもも,取材された際は,この部会における御議論では,御意見の対立が非常に激しい論点であるということを申し上げているところでございます。それにもかかわらず,あのような記事が出て,私どもも,土曜の朝一番であの記事を見て非常に驚いたというものでございますので,念のため御報告させていただく次第でございます。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。それでは,本日の御議論をお願いしたいと存じます。本日は,まず,中間試案の取りまとめをお願いして,その取りまとめの後に,中間試案の補足説明について特段の御意見があれば承りたいと考えております。そこで,まず,部会資料17について,前回の会議と同様に,部会資料16の内容を実質的に変更するなどした点を中心に御審議をお願いしたいと思います。   まず,部会資料17の第1部の第1の「2 監査・監督委員会設置会社制度」から御審議をお願いいたします。事務当局から説明をお願いいたします。 ○塚本関係官 それでは,第1の「2 監査・監督委員会設置会社制度」について,前回からの変更点を御説明いたします。部会資料17の2ページの「(2) 監査・監督委員会の構成・権限等」の⑤の(注)につきまして,仮に常勤の監査・監督委員の選定を義務付けるものとした場合に,その選定者が明らかでないとの御指摘があったことを踏まえまして,監査・監督委員会が常勤の監査・監督委員を選定する旨を明示いたしました。 ○岩原部会長 ありがとうございます。この修正につきまして,御意見ございますでしょうか。 ○三原幹事 御修正いただきまして,ありがとうございました。異論ございません。 ○岩原部会長 ほかに何かございますでしょうか。   よろしいですか。それでは,この点は御了解いただいたものと扱わせていただきます。次に,第1の「3 社外取締役及び社外監査役に関する規律」に移らせていただきます。事務当局から説明をお願いいたします。 ○塚本関係官 それでは,部会資料17の4ページの第1の「3 社外取締役及び社外監査役に関する規律」につきまして,前回からの変更点を御説明いたします。当部会におきまして,社外取締役及び社外監査役の要件に,株式会社の重要な取引先の関係者でないものであることを追加すべきであるとの御指摘がございましたが,これに対しては,一律の基準でその範囲を定めることは適切でないとの御指摘もございました。この点について,当部会におけるこのような議論の状況を中間試案の本体に反映するのが適切であるという御指摘があったことを踏まえ,(1)のA案において,社外取締役等の要件に重要な取引先の関係者でないものであることを追加するものとするかどうかについて,なお検討する旨の(注2)を追加いたしました。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。部会資料17では,前回の会議で頂きました御意見を踏まえ,(1)のA案に(注2)を追加しております。この点について,御意見,御発言ございますでしょうか。 ○静委員 ありがとうございます。この(注2)を試案に盛り込んでいただきまして,事務当局の皆様に感謝をしたいと思います。今朝新聞を見てみましたら,アメリカで,エンロン,ワールドコム事件が起きたときにガバナンス改革を指導されたSECのブリーデン元委員長という方がオリンパス事件に関し,一企業の問題としないで,日本としてどう対応するのか,世界にメッセージを送る必要があるというコメントを寄せておられました。世界が注目している中で,その重要な役割がこの部分を含むこの部会の議論に期待されているのではないかと思いますので,パブリック・コメントが終わった後の議論が実りあるものになるように期待したいと思います。 ○岩原部会長 ほかにございますでしょうか。 ○杉村委員 今の点に関しまして,前回の議論を反映してパブリック・コメントに付すということの説明は分かりました。他方で,従来から指摘されております懸念事項,特に取締役会の決議が無効となってしまうという極めて大きな弊害が生じかねないという点につきましては,部会でも議論されてきたと思います。そして,経済界だけではなく,その他の委員,幹事の方からも,一律の基準を定めることの困難性について指摘があったところだと思います。そのような点を踏まえ,一旦は,中間試案の中に記載するのは難しいのではないかということで,中間試案には記載しないこととしたという議論の経緯があったと理解をしております。したがいまして,今回,(注)を付記されたということではございますが,これまでの経緯を引き続き十分に踏まえて検討いただきたいと存じます。 ○伊藤(雅)委員 基本的にB案に賛成なんですけれども,A案のイについて,前回,株式会社のその他の使用人という記載が広過ぎるのではないかということを申し上げました。中間試案の補足説明に,この点について記載をしていただけないか,意見を申し上げたいと思います。前回,私から,「その他の重要な使用人」という記述はどうかというふうに申し上げたんですけれども,その範囲が不明確だからといって,過度に広範囲な規制にすべきではないと考えております。そのような指摘があったことを中間試案の補足説明に記載して,パブリック・コメントの参考にしていただけたらなと思いますので,よろしくお願いします。 ○塚本関係官 「重要な」という要件が明確ではないという点は,前回の会議で申し上げたとおりですが,使用人の親族でないものであることを社外取締役等の要件に追加するというときに,その趣旨との関係で,重要な使用人の親族かどうかというところで区切ればそれでいいのかという問題があると思います。 ○伊藤(雅)委員 例えば,今回修正された,株式会社の「重要な」取引先という,こういう記載もあって,その辺も絡めてどうかななんて考えております。 ○坂本幹事 取引先との比較という御指摘ですが,取引先の場合に,「重要な」という要件が入っているのは,取引先の有する影響力ということを考えて,これが要件として入っていると思います。それでは,使用人の場合に,なぜ使用人の親族だと「社外」の要件を満たさないと考えるのかというところにつきましては,使用人の親族だと取締役に対するチェックを期待できないということにその趣旨があるということからすると,その点は,重要かどうかというところで分かれてくるというものでもないだろうと考えられます。逆に言えば,地位が下になればなるほど,上の言うことを聞いてしまうという恐れもあるわけでございまして,そういうことからすると,使用人について,重要性という基準で切るということが果たして適当なのかというところもあろうかと思います。御指摘いただいたような御意見がおありであれば,それはもちろんパブリック・コメントの手続でお寄せいただければと存じますので,そういう形で取り扱わせていただければと思います。 ○岩原部会長 ほかにございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは,この点も御了承いただいたものと扱わせていただきます。   部会資料16からの実質的な変更点は以上でございます。ただ今御審議いただいた事項以外は,基本的に,前回の部会におきまして,おおむね御異論がなかったところでございまして,実質的な内容の変更はございません。部会資料17の中間試案の案の全般につきまして,何か特段の御意見ございますでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは,中間試案につきましては,部会資料17の内容で取りまとめることとさせていただきたいと存じますが,よろしゅうございましょうか。   どうもありがとうございます。御異論がないようでございますので,部会資料17の内容で中間試案の取りまとめをさせていただきます。どうもありがとうございます。   中間試案の内容の確定に当たりまして,実質的な内容の変更にわたらない細かい表現や字句等を変更することにつきましては,大変恐縮でございますが,部会長の私と事務当局に一任させていただくということで御了承を賜りたいと存じますが,よろしゅうございましょうか。   どうもありがとうございます。それでは,以上で,中間試案は確定させていただきましたが,次に,中間試案の補足説明に関しまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 本日は,中間試案をお取りまとめいただきまして,また,これまで16回,折り返し地点というにはまだまだ早いかもしれませんけれども,長時間にわたりまして御議論いただきまして,どうもありがとうございました。引き続きよろしくお願い申し上げます。   以前にも御案内申し上げましたとおり,中間試案をパブリック・コメントの手続に付すに当たりましては,私ども民事局参事官室の責任で中間試案の補足説明を作成させていただいて,これを併せて公表させていただく予定でございます。この補足説明につきましては,これまでの審議におきまして,補足説明で触れるということを申し上げました事項につきましては触れさせていただくつもりでおりますが,補足説明に盛り込むべき内容等ついて,特段の御指摘等がございましたら,本日お寄せいただければと思っております。今日頂きました御指摘等も踏まえまして,補足説明の完成に向けて作業を続けてまいりたいと思っております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。中間試案の補足説明につきまして,本日この場で特に御発言になりたいという御意見がございましたら,御発言を頂きたいと存じますが,いかがでございましょうか。 ○太田委員 2点ございます。1点目は,社外監査役の要件につきまして,少し意見を申し上げたいと思います。結論から申し上げますと,親会社の社外監査役が子会社の社外監査役を兼務すること,これを否定する理由は必ずしもないのではないかという意見であります。親会社の社外監査役が子会社の社外監査役を兼務することによって,親会社の社外監査役が子会社の経営の実態をより近く,かつ,より深く理解することができるというふうに,私ども,常々思っております。一方,社外監査役は,執行から明らかに独立した存在であるということですから,社外監査役としてその職責に沿って業務を行っている限りは利益相反になるというような恐れもございませんので,兼務させることによる弊害はないのではないかと思います。したがいまして,特に,今回,中間試案に沿って一定の方向性で社外監査役の要件が見直される場合,親会社の職員が子会社の社外監査役にはなれないということに仮になる場合においては,子会社の社外監査役の選択肢が従来よりも大きく狭まることになります。そのように決定されればやむを得ませんが,その制度設計の自由度という観点から見ますと,親会社の社外監査役という選択肢も更に否定することはないのではないか。つまり,子会社の社外監査役として起用できるオプションが残してあっても別にまずくはないのではないか。そのように思いますので,補足説明のところで,社外監査役に関する,親会社の社外監査役が子会社の社外監査役を兼ねるということについての自由度を必ずしも狭めないと,そういう選択肢もあるというような丁寧な補足説明がなされるべきではないかという点が1点目の指摘であります。   もう一つ,会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定についての項目ですが,会社法制部会の第2回の会議の場においても,参考人ではありましたけれども,公認会計士協会さんからの意見表明等々もございました。なおかつ,平成19年6月の附帯決議の項目,これは,公認会計士法の改正に伴っての議論であるというようなことから考えますと,むしろ私どもの監査の実務という観点からの意見ですが,外部監査人の監査の効率性を高めていくという観点から見れば,パブリック・コメントに付す中で,そういう職業的な専門家の意見としても,これをサポートしていくという意見があることを補足説明の中に触れていただいてもよろしいのではないかと。   以上の2点でございます。 ○塚本関係官 ただ今頂いた1点目の御指摘につきましては,社外監査役の要件の見直しのうち,社外監査役の要件に,親会社の監査役ないしは社外監査役でないものであることを追加するという点に関して,それはいかがなものか,という御指摘であるといたしましたら,現行法の規律を見直さないというB案に含まれるものであると思われます。したがいまして,補足説明では,社外取締役の要件だけでなく,社外監査役の要件についても,これを見直すというA案とこれを見直さないというB案の両論があるということを明示する方向で検討させていただきたいと思います。 ○坂本幹事 2点目について,公認会計士協会様がヒアリングの際にそのような御発言をされておられるということは承知しておりますけれども,基本的には,補足説明では誰がどういう意見を言っているかということは一切触れないというスタンスでやらせていただきたいと思います。そういう点を書き始めると切りがないというのと,また,どなたの御意見かということを補足説明で示すというのが適当なのかということもございますので,それを示すというのは適当ではないと考えております。 ○太田委員 私が申し上げようとしたのは,日本公認会計士協会の主張がどうであるということを必ずしも紹介,そういう道筋でなくても全く構わないわけですが,実際に外部監査人の会計監査,あるいはそこを含めて監査役の業務監査,その一環の中で,これからの連携も求められているというような観点から,別な言い方をすれば監査実務の効率性向上という観点から,そういう指摘があったというような書き振りはできないものかという意見です。御判断は,お任せいたします。 ○岩原部会長 御要望としては承りましたが,恐らく,補足説明の中では,公認会計士協会から御意見として頂いたことなどは,実質的には反映される形で書かれるものと承知しております。よろしいでしょうか。 ○太田委員 結構です。 ○静委員 2点ほど申し上げたいと思います。一つは,株式併合によって生じた端数となる株式の買取請求権についてでございます。端数となる株式の買取請求をすることができる株主の範囲を反対株主に限らない案を中間試案に盛り込んでいただきたいということを部会でお願いしていましたが,前回の会議での事務当局からの説明からしますと,その点は,試案の本体には入れないものの,補足説明には入れていただけるものと理解しております。株主の範囲を反対株主に限らない案を御提案した理由は,株式併合に反対しなかった株主は,また,モックの株主と同じように,株式だけを奪われて現金は貰えないという目に遭いかねないという点にあります。補足説明では,私が申し上げたような理由も御紹介いただければ,広くアイデアとか意見とかを頂けるようになると思いますので,そういう工夫をすることをお考えいただきたいと思います。   もう1点,似たような話なんですが,第2部の「第3 キャッシュ・アウト」の「3 その他の事項」につきまして,これまで,私は,キャッシュ・アウトのための対象会社の株主総会決議について,10分の9以上の賛成を要するものと,決議要件を加重すべきであるという意見を申し上げてきましたが,前回の会議での事務当局からの説明からしますと,この点も,補足説明には入れていただけると理解しています。これにつきましても,何でそれが駄目かという理由付けを紹介するだけですと,アイデアを頂くとか,意見を頂くというのはなかなか難しいのではないかと思います。この部会では,ほかの委員の方や幹事の方から,マジョリティー・オブ・マイノリティーの仕組みを導入するといったこともあるのではないかというようなアイデアも出していただきましたので,例えばそうした案を紹介していただくことで,広くアイデアとか,意見とかを頂けるようにしていただけないかというお願いでございます。   以上,2点でございます。 ○中東幹事 今の静委員の御意見に賛成でございます。取り分け,後者については,私も前々回の部会で発言させていただいたところでございまして,いかに採用しにくいかということだけですと,株主総会決議の加重は端から考えないという結論になったような書き振りにも読めることになってしまいます。やはり,いろいろなアイデアも出されており,また,広く皆さんから意見を募りたいという形で是非書いていただくようにお願いしたいと思います。 ○岩原部会長 それでは,今頂きました御意見を踏まえて,補足説明の内容について検討いただくということにさせていただきたいと思います。ほかに何かございますでしょうか。 ○杉村委員 3点お話しさせていただきます。まず1点目は,多重代表訴訟に関するB案の(注)についてでございます。B案の(注)に関しましては,前回の部会でも御確認いただきましたが,第一読会でも,第二読会でも議論を尽くしたものではなく,コンセプト・ベースの例示だという理解でおります。そういう意味では,仮に部会で議論をしていれば,いろいろな意見があったはずでありまして,例えば,アについては,親会社の責任というのは,株主としての権限に基づく責任が中心であるとか,あるいは,イについては,必要な措置には,人事異動や報酬の返上といった,その他事実上の措置で手当てをすることも含まれるはずだとか,意見が出されたはずであります。もし部会での議論を経ていれば,補足説明にはこうしたいろいろな意見が記載されたであろうと思いますが,実際にはそのような議論を経ていませんので,補足説明には特段の記載はされないということになろうかと思います。他方,補足説明を御覧になった方が,部会ではさしたる議論がなく,このように取りまとめられたと誤解をされても困りますので,議論をまだ尽くしていないということが分かるように補足説明に書いていただきたいと思います。「なお検討する」とはいっても,ほかの「なお検討する」という箇所とは大きな違いがあると思いますので,「なお検討する」というだけではなく,議論が未了であるという状態が分かるような形にしていただきたいと存じます。   2点目は,親会社の責任に関する箇所ですが,経済界の立場であるB案を採る意見の中心となることの一つは,子会社の株主は,まず子会社の取締役の責任を追及することで解決を図るべきだという考え方でございますので,補足説明では,こうした点にも御配慮いただきたいと存じます。   3点目は,金商法の規制に違反した者による議決権行使の差止請求の件です。経済界の意見としましては,制度創設自体に反対するものではないということですが,制度を創設する場合であっても,実務への十分な配慮というのは繰り返しお願いをしてきた経緯があると認識しております。現在の取りまとめ案では,基本的には株主と株主の間の仕組みという整理になっているかと思いますが,議決権停止ということで,会社側に実務的な影響が生じることですので,そのあたりの御配慮をお願いしたところです。今後,詳細に制度を詰めていく中でも,更にいろいろな実務上の懸念が出てくると思いますので,こうした点への配慮を是非補足説明に記載していただければと思います。例えば,会社側が議決権停止をどうやって知ることができるかなど,実務に配慮した手当ては必要ではないかと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ○塚本関係官 1点目の多重代表訴訟のB案の(注)についての御指摘は,ほかの「なお検討する」という箇所とはレベル感が違うのではないかということかと思いますが,検討させていただきたいと思います。 ○内田関係官 2点目の,子会社の取締役への責任追及ができるではないかという点につきましては,そういった御指摘があることは承知しておりますので,今の御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思います。   3点目につきましては,具体的にどのような制度にするのかということを考える上では,株主総会の実務に混乱をもたらさないようにする必要があるということを意識して補足説明を書かせていただければと思います。差止請求が認められたということを会社がどうやって知るのかという点につきましても,どのようにして会社に差止請求の効力を及ぼすのかという議論として,補足説明の中で触れることになるのかなと,今のところは考えている次第です。 ○岩原部会長 どうもありがとうございます。杉村委員,よろしいでしょうか。 ○杉村委員 3点目について,中間試案の本体でも,(注)が1から4まで付されており,なお検討する事項がありますので,それらを含めて検討を進める中で,また実務へのいろいろな影響等があれば,是非申し上げたいですし,御配慮をお願いしたいと思います。 ○岩原部会長 ほかに何か御指摘いただくことはございますでしょうか。 ○藤田幹事 いささか細かなことかもしれませんが,多重代表訴訟の件で,1点補足説明で多少明示的に書いたほうがいいかもしれないと思う点を付け加えさせていただきます。中間試案本文で言うと,第2部第1の「1 多重代表訴訟」の①あたりに関係することです。そこでも,「株式会社の親会社(株式会社であるものに限る。)」という括弧書きがわざわざ付せられていたりすることから分かるように,要するに,試案は,「親会社」というのは株式会社,つまり日本の会社でなくてはならず,「子会社」―中間のものはいいんですけれども,最終的な責任追及の対象となる取締役の所属する子会社―も日本の会社であることを前提にしていると理解できます。その点について,渉外的な適用関係を意識した説明を補足説明ではっきり書かれたほうが,要らない誤解に基づく懸念を防ぐという意味ではいいのではないかと思います。国際私法的な話については,多重代表訴訟の国際私法の扱いは難しいので,深入りする必要はないというか,そもそも触れる必要はないと思うのですけれども,実質法としては,渉外的適用範囲についてどういうふうな立場を採っているのかということを明示したほうがいいと思います。現在の提案によって改正される日本法の内容は,飽くまで,親会社,被告が属する子会社の双方が日本の会社の場合にしかこのタイプの責任追及は認めない趣旨であるということを,はっきりどこかで補足説明の中で書いていただいたほうがいいと思います。結果としてどうなるかというと,仮に外国の裁判所に訴訟を提起されて,外国法が準拠法になるとされれば,外国法の内容に従って判断されることになり,中間試案の限定は効いてきません。しかし,これは現行法であっても同じことで,外国法が準拠法とされた結果子会社役員の責任追及が認められる可能性は全く否定できないわけですので,仕方がないことです。次に仮に日本法が準拠法とされたら,適用されるべき日本法の内容は,日本の会社同士の間でのみ多重代表訴訟を認めるというルールである,したがって,少なくとも外国の裁判所が正しく日本法を適用してくれる限りは,外国の裁判所でも,訴えることはできない―却下になるのか,棄却になるのかといったあたりは,その国の制度次第でしょうが―となるはずです。今言ったことを逐一書く必要はないかもしれませんけれども,少なくとも渉外的適用関係に関しては,実質法の内容としてそう限定しているということ,これは,あたかも現在の組織再編の規定は両当事会社が日本法上の会社であるという限定を実質法上している,少なくとも日本法の立場としてはそういうつもりで規定されていて,したがって,組織再編の準拠法がどうなるかにかかわらず,日本法が適用される限り,そして日本法上の要件を満たしていることが効力発生のために要求される限り,組織再編の効力は認められないことになっているのと同じような状況であることは,どこまで細かく書くかどうかはともかく,明示的なメッセージを書いていただいたほうがよいと思います。どうも最近,多重代表訴訟を導入すると外国での訴訟を誘発し大変になるといった,漠然とした不安感を喚起するような意見が表明されていることもありますので,不要な誤解を防ぐ意味でも書いていただくのが有用だと思います。よろしくお願いいたします。 ○塚本関係官 御指摘ありがとうございます。中間試案では,ただ今藤田幹事がおっしゃったとおり,親子会社はいずれも,日本の会社法に基づく株式会社であることを前提としておりますが,補足説明におきまして,藤田幹事から指摘していただいたような点を書くことができるか,検討させていただきたいと思います。 ○岩原部会長 ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,ただ今頂きました御意見を踏まえまして,事務当局において,補足説明の内容を検討していただきたいと存じます。それでは,最後に,事務当局から,今後のパブリック・コメントの手続と次回の会議の予定についての御説明をお願いいたします。 ○坂本幹事 御意見どうもありがとうございました。それでは,今後の予定について御説明させていただきます。今後,本日お取りまとめいただきました中間試案をパブリック・コメントの手続に付させていただくということを予定しております。中間試案の最終の確認作業と補足説明の作成及びその後の省内の事務手続にどの程度の期間を要するかということにもよりますので,いつ開始するかということを明示的に申し上げることはできませんけれども,来週の半ば頃を目途に中間試案と補足説明を公表して,パブリック・コメントの手続を開始するという予定で作業を進めてまいりたいと考えております。   パブリック・コメントの手続の期間でございますけれども,通常30日,1か月程度ということが多いかと存じますが,今回,年末年始を間に挟むということもございますので,そのことも考慮いたしまして,一月半ほど期間を取りまして,来年1月31日までを予定して,パブリック・コメントの手続を開始させていただきたいと思います。   部会につきましては,このパブリック・コメントの手続の期間中はお休みということにさせていただきますので,12月に予定されていた残りの会議と,来年1月に予定されておりました会議は,いずれも取りやめということにさせていただきたいと思います。したがいまして,次回の会議は,来年2月22日水曜日午後1時半から,予定では5時半までとなります。場所につきましては,いつもと同じ法務省の20階第1会議室でございます。今日の会議室とは異なりますので,お間違えなきよう御注意をお願いできればと思います。   次回は,パブリック・コメントの手続終了後の開催となりますので,お寄せいただいた御意見の数にもよりますけれども,可能であればその全体について,それが難しいということであれば,少なくとも次回来年2月22日の会議に採り上げさせていただく論点につきましては,パブリック・コメントの手続の結果を御報告することができるよう,事務作業など努力してやってまいりたいと思います。また,2月22日の会議におきましては,第3読会を開始いたしまして,改めて御審議をお願いするということで考えておりますが,まずどの論点から採り上げるのかということにつきましては,これまでの御審議の状況やパブリック・コメントの手続の結果なども踏まえまして検討させていただき,また御連絡させていただければと思っております。 ○岩原部会長 どうもありがとうございました。ただ今のようなスケジュールでよろしゅうございましょうか。   御異論は無いようでございますので,そのように進めさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。   それでは,法制審議会会社法制部会第16回会議を閉会いたします。本日も,どうもありがとうございました。次回は,年明け後の2月22日となりますが,どうかよろしくお願い申し上げます。どうか良いお年をお迎えください。 -了-