法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会           第11回会議 議事録 第1 日 時  平成24年1月16日(月) 自 午後1時32分                       至 午後5時11分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○髙橋部会長 それでは,第11回目のハーグ条約部会を開催いたします。       (委員の異動の紹介につき省略)   それでは,配布資料の説明を事務当局から。 ○佐野関係官 本日の配布資料ですが,まず,部会資料としましては,資料番号13の要綱案のたたき台(その2)と,資料番号14の要綱案のたたき台の補足説明になります。また,参考資料としましては,後に外務省から御説明いただきます第5回の懇談会の概要の資料である資料番号20を配布しております。御確認ください。 ○髙橋部会長 審議に入りますが,その前に,私どもの部会と部会の間に外務省において開催された懇談会がございますが,その結果につきまして,外務省のほうから概要の説明をお願いしたいと思います。 ○辻阪幹事 参考資料20ですが,12月7日に第5回の懇談会を開催いたしました。このときは残っていた論点について議論を行いました。それを踏まえて,最終的な懇談会の論点ペーパーを現在取りまとめ中で,若干時間が掛かっておりますが,今週中にでも外務省のホームページにて公表したいと思っております。それを基に,法案の作成ですとか今後の政省令ガイドライン作成の指針としていきたいと思っています。   懇談会自体は第5回会合をもって終了としておりますが,委員の先生方からも話がありましたけれども,今後とも委員の方々のアドバイスをもらいながら,外務省として進めていきたいと考えております。   もう1か月も前ですので,状況が変わっているところがございますので,2点だけ簡単に,議論された点を御説明したいと思います。   資料の1ページ目に議事要旨の国内における子の所在の確知というところですが,パブリックコメントにおきましても,公的機関だけではなくて,民間の団体からも子どもの所在に関する情報提供をもらうという規定になっておりましたが,パブリックコメントにおいては,公的機関についてのみ情報提供を求められた場合は遅滞なく外務大臣に提供しなければならないということで,折り返し規定は公的団体だけに入れておりました。しかし,中央当局が情報を外に出す場合を非常に限定的にするということなのであれば,民間団体に対しても同じような折り返し規定を入れてもいいのではないかという点が議論になり,その下の辺りですけれども,民間のDVシェルターですとか私立学校についても,情報提供を求めるべきではないかという議論が行われました。これを踏まえて,そのような民間の団体についても情報提供を求めるという方向で,現在,法案の作成を検討しております。   2点目が,次のページの(ウ)のところですが,裁判手続のための相手方の氏名の開示について,中央当局が集めた情報を第三者に提供する場合は,非常に限定的にしていますけれども,その中の一つとして,申請者が裁判手続を起こしたいといった場合に,誰を相手に裁判を起こしていいのか分からないことが考えられますので,裁判手続の誰を相手方にするのかということをLBPに開示するという例外を置いています。   この点に関しては,個別にそのような名前をLBPに対して開示したということを相手方に伝えるかどうかということが論点になっていましたが,個別に,これからLBPに開示しますですとか,LBPに開示しましたという形で相手方に対して説明するのではなくて,申請者から申請書が来て,中央当局が相手方と接触する段階で,今後起こり得る手続や段取りを説明していく中で,申請者が訴訟を提起する際には相手方氏名を開示するということも情報提供することになりました。   取り急ぎ以上でございます。 ○髙橋部会長 ただいまの説明につきまして質問があおりでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,部会資料の検討のほうに移ります。   本日は,最初に部会資料14に基づきまして個別の論点について検討した後,部会資料13に戻りまして,要綱案の取りまとめに向けた検討を行うというふうに予定しております。   では,部会資料14につきまして,事務当局からの説明をお願いします。 ○佐藤関係官 では,出国禁止命令について御説明いたします。   前回の部会において,予防的な措置としての出国禁止命令及びその履行を確保するための手段としての旅券提出命令について御議論いただきましたので,それを踏まえて具体的な要綱の形にいたしました。   まず,(1)の「出国禁止命令及び旅券提出命令」に関し,(注1)にも記載のある出国禁止命令と旅券提出命令の関係について御説明いたします。   出国禁止命令は,子の連れ去り防止のために必要があるときに,当事者の申立てにより発せられるものですが,旅券提出命令は,出国禁止命令が発せられることを前提に,その実効性を担保するために発せられる附帯的な裁判であるとしております。旅券提出命令も申立てによることとなりますが,附帯申立てであり,出国禁止命令と別個独立の申立てとして扱われるものではありません。   旅券提出命令を発する要件は,②に「出国禁止命令申立事件の相手方が,子が名義人となっている旅券を所持すると認めるときは」とあるとおり,子が名義人となっている旅券の所持となります。出国禁止命令を発する場合,基本的にはその実効性を担保する手段が必要であることから,旅券の所持が認められる限りは,他に必要性等を考慮することなく,旅券提出命令も発することを前提としております。   なお,旅券には日本旅券のほか外国旅券も含みます。   また,旅券提出命令が発せられた場合のその効力ですが,主たる裁判である出国禁止命令のそれに従うことになります。そのため,出国禁止命令が失効,取消し,取下げ等によって消滅した場合は,旅券提出命令もその基礎を失い,消滅することになります。   なお,外国旅券の中には,親の旅券に子が併記されている旅券もありますが,このような場合は,当該旅券の名義人は子ではなく親であることから,子が名義人となっている旅券の所持という要件を満たさず,旅券提出命令は出せないことになります。   次に,どのような場合に出国禁止命令の申立てができるかについて,まず出国禁止命令の申立ては,子の変更の申立てがあった後にできるものとしております。出国禁止命令は子が連れ去られるおそれなどを要件に認められるもので,抽象的には子の連れ去り後は常におそれがあるとも言えそうですが,子を監護する者,典型的にはTP,連れ去り親のようなものを想定していますが,子を監護する者が子を連れ去るおそれが類型的に高まるのは,自己に対して返還申立てがあったことを知った後であって,返還申立てをしていない段階では,一般的に連れ去りの危険が高いとは言えません。また,連れ去られたほうの親,LBPによる連れ去りのおそれについても,それが高まるのは,子の返還申立事件の手続の係属中に子に接触する機会が与えられた場合であると言えます。出国禁止命令は,間接的とはいえ子の海外渡航の自由を制限するものであり,謙抑的見地からも,余りに抽象的なおそれで発令することは問題であり,上記のような必要性が高まった場面において認めるのが相当であると考えられます。また,いつ返還の申立てがされるか分からず,それゆえ,いつまで命令が係属するのか見込みが立たない状況で認めるべきではないとも言えます。そこで,子の返還申立てがあったことを要件としております。   なお,出国禁止命令は,子の返還申立てがされた場合のみ利用可能であり,管轄は,子の返還申立事件が係属している裁判所とすることとしております。これは,子の返還申立事件の係属している裁判所であれば,審理に必要な資料が容易に得られ,簡易迅速に処理すべき要請にかなうことを踏まえたものです。   このことから明らかなとおり,子の面会交流等を求める家事審判又は家事調停の申立てがされた場合は対象としておりません。面会交流等を求める家事事件は,迅速に処理されることが想定される子の返還申立事件とは異なって,長期間にわたることが考えられ,この間,子をずっと出国させてはならないとすると制約が大きく,また,子の返還申立事件とは異なり,子が出国したことが却下要件とされているものではないことから,必要性も大きくないということによります。   続いて,出国禁止命令の当事者についてですが,出国禁止命令は,子の返還申立事件の一方の当事者が申立人となり,他方の相手方に対して申し立てるということができます。出国禁止命令は,子ではなく相手方を名宛人とし,子を出国させることを禁止する命令であり,それに伴う旅券提出命令も,名宛人は子ではなく相手方となります。   出国禁止命令の発令要件についてですが,①において,「子の連れ去りによる害悪の発生を防止し,子の返還を実現するため必要があるとき」としております。この要件を充足するかどうかの判断においては,相手方によって子が連れ去られるおそれがあるか否かが判断されることになります。それを基礎付ける事情としては,相手方に連れ去りの動機があるかどうか,連れ去ることが困難な状況にあるか等の事情が考慮されることになります。もっとも,子の返還申立事件の係属中は,一般的に連れ去りの動機が認められると言えることから,子の年齢が低ければ連れ去りは困難ではないと考えられますし,実際には連れ去りが困難な特段な事情が認められるかどうかを審査し,そのような事情が認められない限り,出国禁止命令を発令するという運用になるものと想定されます。   子が連れ去られてしまえば,条約の目的が果たせなくなる一方で,出国禁止命令が子の返還申立事件の手続係属中の暫定的な処分であること,また短期間で簡易な発令が必要であること,取消し等の救済手段を事後的に設けていることから,このような運用が正当化できるものと考えられます。   次に,3ページの(注3)に詳細を記載しました④の「出国禁止命令の失効」についての規律ですが,子の返還申立てについての終局決定,これは認容及び却下の双方を含むものですが,この終局決定が確定した後は,その効力を失うものとしております。子の返還の申立てが却下され,その裁判が確定した場合は,もはや出国禁止命令を維持する必要はないと言えます。   これに対し,子の返還を命ずる決定が確定した場合は,子を監護している者による連れ去りのおそれが存続しているとも考えられます。しかし,返還命令がされた場合,通常は相手方により自ら子を連れ帰る等の方法で返還することが想定されており,それを可能とするためにも,出国禁止命令や旅券提出命令を解く必要があります。そこで,子の返還申立てについての終局決定の確定により,出国禁止命令はその効力を失うものとしております。   続いて,3ページ終わりの「(2)出国禁止命令の申立て等」についてですが,出国禁止命令の審理も基本的に当事者の対立構造にあり,また迅速な裁判を実現するためにも,まずは当事者に積極的な主張や資料の提出をさせるのが相当です。そこで,申立人は資料を提出しなければならないとし,裁判所が後見的機能として必要があると認めた場合に,補充的に職権で調査及び証拠調べをするものとしております。   なお,旅券所持の事実についても同様に,まずは当事者がそれについての資料を提出して立証すべきものとしております。   次に,③の取下げについては,暫定的な裁判であることから,命令があった後であっても取り下げることができることとし,この場合,相手方の同意は不要としております。   (3)の「陳述の聴取」,5ページの部分ですが,これについては,手続保障の観点から,基本的に相手方の陳述の聴取を要するものとしつつ,密行性の要請が高い場合には,これを要することなく発令できるものとしております。   (4)の「記録の閲覧等」については,出国禁止命令申立事件においては,(3)に記載しているように,相手方の陳述を聴取することなく密行的に行うことがあり得ることから,密行性を保っている間は,相当と認めるときに限って閲覧等を許可するものとするものです。   続いて,(5)の「出国禁止命令の告知及び効力」については,出国禁止命令及びそれに伴う旅券提出命令は,それを受ける者に告知することによって効力を生ずるものとしております。   次に,「(6)即時抗告」については,出国禁止命令は発せられたものの,旅券の所持が認められず旅券提出命令が却下された場合,申立人は旅券提出命令却下の裁判に不服を申し立てることができます。この場合,(注)にも記載しておりますように,出国禁止命令の申立てを含めて事件全体が移審しますが,審理の対象は旅券提出命令申立て部分に限られるということになります。   続いて,(7)の「即時抗告に伴う執行停止」については,即時抗告に執行停止効を認めないものとしつつ,子が出国できないことにより償うことができないような損害を生ずるおそれがある場合等に,裁判で執行を停止することができるものとしております。   (8)の「出国禁止命令の取消し」は,事情変更等による取消しを認めるものです。事情変更とは,例えば子が修学旅行のため海外に行く必要がある場合などを想定しています。出国の必要性があり,確実な帰国が見込まれるのであれば,出国禁止命令発令時とは異なる状況があると言えることから,取消しを相当とすべき場合が考えられます。   なお,このような場合に,取消しまでしなくても,例えば執行停止や一時的な取消しでも足りるとの考え方もあり得ますが,執行停止については,出国禁止命令が存続していながら出国を認めるとするのは相当ではないと言えますし,また,即時抗告や取消し等の不服申立てに伴わず執行停止の裁判を行うというのは,既存の制度との関係でも問題があります。また,一時的な取消しというのも不安定な法律状態を作ることになり,相当ではありません。このような場合には,一度取り消し,子の帰国後,なお必要があれば,申立てを受けて再度命令を出すものとするのが相当であると整理しております。   続いて,(11)の「過料の裁判」について若干説明いたしますが,旅券提出命令に違反した場合,20万円以下の過料に処するものとしております。なお,出国禁止命令違反に対しては過料の対象とならず,また,出国禁止命令及び旅券提出命令について,民事執行法上の強制執行することは想定しておりません。   最後に,(12)の「その他の手続についての規律」ですが,出国禁止命令申立事件の手続について,基本的に子の返還申立事件の手続と同様の規律によることとしております。   除外している規律としては,(注)にも記載したとおり,一つ目,申立書の写しの送付,二つ目として審理の終結,3番目として裁判日の指定,四つ目として和解及び5番目として審理の状況についての説明に関する規律です。これらは,必要がないか又は性質上なじまないと考えられることから除外しております。   出国禁止命令については以上になります。 ○髙橋部会長 それでは,出国禁止命令につきまして,どの部分からでも結構ですので,御審議をお願いいたします。 ○山本(克)委員 2点ほどお伺いしたいと思うのですが,まず,1ページの1(1)の①の発令要件なのですが,「子の連れ去りによる害悪の発生を防止し」,「,」になって「子の返還を実現するため必要があるときは」となっているんですが,この「,」が一体どういう意味なのか。つまり,「かつ」という趣旨を含んでいるのか,それとももうちょっと別の意味があるのか,どちらなのでしょうか。 ○佐藤関係官 基本的には,害悪の発生を防止し,それによって子の返還を実現すると,重畳的に重なる部分が出てくるかと思っておりますので,厳密に言えば,「防止し,かつ」になるのかなと思うのですが,一方だけの目的で防止すべき場合もあるかもしれないので,そこは整理がし切れていないというところはあります。 ○山本(克)委員 それともう1点は,8ページの(9)の即時抗告等ですが,取消しの申立てを却下する裁判に対して即時抗告をすることができるというのが,果たして適切なのかどうかという気がしなくはないのですが,即時抗告があると記録が全部高裁に行きますね。その間,家庭裁判所の手続はストップしてしまうということが,そう頻繁にあることが,果たして制度趣旨からしていいのかどうかという気がしなくはないのですね。出国禁止命令自体に対する即時抗告,これは認めないと移動の自由を制限しますので,その最初の裁判に対する即時抗告は認めざるを得ないとは思うのですが,取消しの申立てに対する即時抗告を認めることによって,引き延ばしというものの道具にされはしないかというのを少し懸念するところです。むしろこういうことは,実情は裁判所の方のほうがよく御存じでしょう。もっと容易に推測されると思いますので,その辺りの御意見も伺ってみたい。 ○佐藤関係官 今御指摘いただいた最初の点についてですが,家庭裁判所の手続がストップしてしまうかという点については,出国禁止命令の申立てがされても,子の返還申立事件の手続には影響がないものとして,そのまま手続は進行します。 ○山本(克)委員 基本は別つづりになっていくということ。 ○佐藤関係官 はい。そのような整理をしております。 ○山本(克)委員 それなら了解です。 ○相原委員 出国禁止命令申立ての場合の審理につきまして,4ページのところに,「申立人にその立証の責任を負わせるのが相当である」とされて,更にその下に,資料提出義務を負わせる,そして,後見的機能として裁判所が補充的に職権で事実の調査をすることができるというふうに御提案いただいているところなのですが,具体的には,先ほどの申立ての要件との関係になるかと思うのですが,申立人は具体的にはどういう資料を提出することがあると考え,それがあれば出国禁止命令が出ると考えておられるのか。具体的にお考えになっているところを教えていただければと思います。 ○佐藤関係官 先ほど,申立ての要件及び判断の方法について若干御説明したところと重なる部分ができてしまうかもしれませんが,例えば,子の返還申立事件の申立人が,子の返還申立事件の相手方に対して申し立てる場合であれば,その相手方が子どもを連れて出国するようなことが可能な状況があるかどうか,そのおそれがあるかどうかということが問題になります。恐らく,積極的に連れ出すおそれがあるというところを立証するのは,もちろんそれができれば,それに関する資料を提出するということになるのですが,なかなか難しいということもありますことと,一度連れ去った親で子どもを取られたくないという心境にあると考えら得ることからすると,また連れ出すおそれというのは抽象的には認められると言えるのではないかと思います。そのことからすると,連れ出すことが困難だという事情は特になく,連れ出すおそれがないとは言えないというところを積極的に立証していくということが想定されるのではないかと思っております。   逆の場合も同様に,LBPを相手方として申し立てる場合については,やはりLBPについても,抽象的には子どもを連れていきたいという動機が認められるものですから,そういうことは全く考えられない,例えば場所も分かっていなくて,手続上で子に会う機会もなく,連れ出すということは無理なのではないかというような事情があるのかどうか,その点について資料を提出していくということが想定されるのではないかと思われます。 ○大谷委員 山本委員が質問されて事務当局のほうでお答えになりました点ですが,1ページ目の出国禁止命令の申立要件ですが,今御説明があった,正にTPのほうから申立ての場合などを考えましても,また,今日の説明資料の中の2ページの(注2)の1行目を見ましても,子の連れ去りによる害悪の発生の防止と子の返還を実現するための必要とは,私はむしろ,「又は」と読むのかと理解をしておりました。後ろのほうの「子の返還の実現」は,LBPからの申立ての場合にはよく当てはまるのですけれども,TPのほうからの申立ての場合には,必ずしも子の返還の実現,手続を最後まできちっとやるということをもって子の返還の実現と読むのなら別なのですが,結論はまだ出ていない,どうなるか分からないという中での保全的なものですから,「又は」ではないかという意見と,もう一度確認をお願いしたいと思います。 ○佐藤関係官 TPの側の申立てというのも認めておりますので,その点については,子の返還を実現するためというのは当てはまらないということから,「又は」という整理でよろしいのではないかと思います。 ○山本(克)委員 同じ点を重ねてで申し訳ないですが,そのように考えた場合に,申立人によって発令要件を変えるという選択肢もあるような気がしたのです。つまり,もうお分かりのように,LBPが申し立てるときは後者で,TPが申し立てるときは前者だという仕切りはまずいのでしょうか。それが可能なら非常に分かりやすいような気がするのですけれども。 ○佐藤関係官 検討したいと思います。ありがとうございます。 ○山本(克)委員 再三発言して恐縮ですが,もう1点お伺いしたいのですが,1ページの1(1)①で「家庭裁判所」と表記している趣旨は,先ほどお伺いしたときに,私は最初に発言したときは誤解していたようなのですけれども,この趣旨は,出国禁止命令事件というのは別事件であって,必ずしも返還事件を担当している裁判機関としての裁判所が担当する必要はないということを含んでいるということまで。 ○佐藤関係官 理論的にはそうなるかと思います。ここで「家庭裁判所」としているのは,家庭裁判所及び高等裁判所にこの手続を認め,最高裁判所には認めないという整理をしていることとの関係で,「家庭裁判所」と表記しているという点もございます。 ○山本(和)委員 別の点でよろしいでしょうか。まず原案は,出国禁止命令と旅券提出命令,旅券提出命令が従属的だということはそのとおりだと思うのですが,かなり一体的に捉えているような感じがするのですけれども,出国禁止命令が一旦出た後,例えば,相手方が旅券を所持することになったような場合に,事後的に追加的に旅券提出命令を発令するということはないのか。あるいは,最初は出国禁止命令と旅券提出命令を一体として発令された後,相手方が旅券の所持を失ったような場合に,旅券提出命令だけを取り消すということはあり得ないのか,その辺りはいかがでしょうか。 ○佐藤関係官 基本的に一体として捉えて対応できるのではないかということで整理しているのですが,御指摘いただいたような場合に,切り離して認める必要があるのかどうかという点については,詰めて検討する必要があるかと思います。 ○金子幹事 元々,出国禁止命令の発令の要件の中に出国のおそれというのが入ってくると思うのですけれども,そのときに旅券の所持も入ってくると考えておりました。ただ,別の事情で旅券の提出ができないような場合には,出国禁止命令のみを発令する意味もあるだろうということを考えて,出国禁止命令だけ発令する余地は考えていたのですね。したがって,旅券を所持していないという事情の下では,出国禁止命令を出していいのかという問題にもなると考えたので,それで,所持があるという事情の下では一体的にしか考えていませんでした。   それで,何らかの事情で出国禁止命令だけを出さざるを得ないという場合に,その後に旅券の所持がされて,旅券提出命令もすべき事情が出たという場合については,考えが及んでいなかったので,もう少し検討させていただきます。 ○髙橋部会長 他にいかがでしょうか。 ○磯谷幹事 聞き逃したかもしれません。申し訳ございません。この出国禁止命令については,旅券提出命令に発展する以外に実効性を担保する措置はあるのでしょうか。つまり,入管行政のほうには具体的な出国禁止措置など何か対応を採っていただくことが想定されているのかどうかということ。   それから,過料に関して,出国禁止命令に従わない場合は過料の対象とならないというふうに一律なさっているわけで,確かに,出ていってしまえば,それは何ともやりようがないというところもあるのかもしれませんけれども,例外的ではあるかもしれませんが,例えば,相手方は引き続き日本国内に残っているけれども子どものみ出国させられるということも,あり得なくはないのかなとも思いまして,そうすると,一律過料を課さないという作りがよろしいのか。あるいは,過料を課す余地を残しておきながら,実際,実効性がないときはしようがないのだという割り切りをするのが望ましいのか。この辺りは,制度としては両方あり得るのかなと思うのですけれども,御提案のように一律,過料の制裁をなくすほうを選択された事情を,もう少し御説明いただければと思います。 ○佐藤関係官 まず,最初に御指摘いただきました入管行政による規制については,予定しておりません。   次に,出国禁止命令の違反についての過料ですけれども,基本的には出国禁止命令に違反した場合は,海外にいるということが想定されるということと,出国禁止命令の担保手段としては,旅券提出命令及びその違反に対する過料を設けているということから,一律に対象とはしないということで整理をいたしたところです。 ○髙橋部会長 他にいかがでしょうか。 ○磯谷幹事 ちょっと検討不足かもしれませんが,出国禁止命令の失効の部分ですけれども,基本的には,返還申立ての終局決定が確定したときにその効力を失うということになっていまして,そうすると,返還命令が認められた場合でも確定すれば出国禁止命令は失効するということになりますね。例えば,相手方のほうが引き続き旅券を任意に出していない状況下で,確定すると,返還命令の執行を回避するために子を第三国に連れ去る動機は一層高まるのではないか。そういう状況下で出国禁止命令を失効させてしまうのは,やや適当ではないのではないかとも思われるのですけれども,特にこの命令は,名宛人がはっきり,それぞれ別々になっているようですから,相手方を名宛人とするものだけ残しておくということもあり得るのかなと思ったのですが,この辺りはいかがでしょうか。 ○佐藤関係官 その点については検討したところですけれども,子の返還命令が出たという段階で,基本的に相手方が子どもを連れ帰る等の方法で自ら返還するということが想定されておりますことから,出国禁止命令ですとか旅券提出命令というものを存続させておくということは,その履行を不可能にしてしまうという問題もありまして,ここは返還命令又は却下の命令が確定するまでというところで区切りを付けるという整理をいたしました。 ○磯谷幹事 任意の出国をする場合には,出国禁止命令の取消しによって対応するということも考えられるのかと思うのですが,この辺りはいかがでしょうか。 ○佐藤関係官 そこは難しいところですけれども,結局その場合も,そのとおり連れて帰ることに期待するほかないという状況に変わりないわけで,そのために取消しによって対応するとするのがいいのかどうかという問題もあるかと思います。 ○大谷委員 全く新しい制度で,随分難しい問題がいろいろあるところ,御苦労していろいろ御提案くださっている中で,また難しいことを言って恐縮ですが,今の話を聴いていまして,思い付きですが,こういうことは可能性がないのだろうかということで発言するのですが,例えば,TPに対して子の出国禁止命令が掛かっているときに子の返還命令を出すという場合なのですけれども,任意に連れ帰るときは,出国禁止命令の違反にならないような形で,返還命令を出すときに併せてそこの手当てをするということは,技術的に難しいのでしょうか。   今,自分の中でも十分整理ができないで,アイデアとして申し上げているだけなので,今すぐここで,できるとかできないとかのお答えがなくても結構なのですが,そういうことを御検討されて難しかったということがありましたら,教えてください。 ○佐藤関係官 すみません。そちらの御提案ですと,旅券の部分はどうなるという御提案になりますか。 ○大谷委員 そうですね。出国のほうだけだったら,何か自分で手当てできるのかなと思ったのですけれども,旅券のほうがそれだけでは駄目ということですね。 ○佐藤関係官 結局,旅券を返していいか返してはいけないかという話になると思うのですけれども,今の主文だけですとちょっと難しいような気がします。 ○磯谷幹事 本当に難しい問題だと思います。TPが任意の返還を促されるべき立場にあることは,手続の最初から最後まで同じであるわけで,そうするとTPが子をその常居所地国へ連れ帰ることについては,本来的には出国禁止命令の対象にはならないのではないかと思われるのですね。常居所地国以外のところに連れていくことが禁止されるべきことなのだろうと思うのです。   そう考えると,理想論としては,TPが本当に子を常居所地国に連れ帰ることが間違いない状況であれば,旅券のほうも返していいのかなとも思うのです。それは取消しとかそういうことではなくて,元々この命令というのは,常居所地国以外のところに子どもを連れ去ることが問題だと言っているわけですから,出国禁止命令の効果をもう少し限定した上で,それに見合うような形で旅券提出命令というものを作れないかなとも思うわけです。   ただ,そうは言っても難しい問題ですし,そこまで詰めるのは大変かなという気もしております。 ○金子幹事 任意に返す意思があるかどうかは,いずれにしても誰かが認定しなければならないという問題があるので,出国禁止命令を発令するときに対処することは非常に難しいのと,任意で返すということであれば話合いができるのでしょうから,出国禁止命令を放置せず,申立人に取り下げてもらうなりの何か措置を採ってもらい,出国禁止命令の効力を失わせるというのが現実的ではないでしょうか。出国禁止命令の申立てを一方でしつつ,任意に履行するという場合には,出国禁止命令が掛からないという枠組みを作るよりは,返還命令の申立てや出国禁止命令の申立てを取り下げることで対応してもらうということでいいのではないかという気がしています。 ○磯谷幹事 御提案の出国禁止命令は,一見,子を常居所地国に連れ帰ること自体も禁止するような形になるので,形式的に過剰な制限ではないかと言われるおそれがないかなという懸念を感じているところです。作り方としてはとても難しいというのは,今の金子幹事のお話を聴いていてもよく分かりますが,その点がどうしても懸念としてあったものですから,発言をいたしました。 ○大谷委員 今の最後の常居所地国に帰す場合まで係ることについて,過剰という意見が出るかということに関しての意見ですが,確かにそこだけ見ると過剰な気はしないではないのですが,他方で,先ほど金子幹事がおっしゃったように,任意で返還するという場合には,恐らく話合いでできるから,申立て自体を取り下げてもらうことで,そこは手当てができるのではないかということに加えて,これは相手国によりますが,常居所地国によっては,国外への子の連れ去り自体が犯罪になっている国は少なからずありまして,そういうところに子どもを連れて帰る場合に,任意に話し合って,その辺りの懸念もなくしてから帰るということはあるのでしょうけれども,LBPが知らない間に,とにかく子どもを連れて帰ってしまうと。帰ったからいいだろうという形で一方的に帰るということは,今度は想定がし難いのかなと。   そういう意味では,運用の話になってしまいますけれども,常居所地国に帰る場合については,先ほど金子幹事がお話しされましたように,そこは話合いで申立てを取り下げて,そういう形でまず出国禁止を解いて帰るということで,実務上手当てをするということでよいのかなと。そのように考えると,最初に申し上げましたように,そこだけ見ると過剰な気はしますけれども,実際問題としては,そういう問題は起きないのかなと思いました。 ○髙橋部会長 他に,出国禁止命令等につきましていかがでしょうか。   それでは,また後に再び議論することは差し支えございませんが,議事としては次に進ませていただきます。   次が資料14の「執行手続」,ここから説明をお願いいたします。 ○佐藤関係官 では,資料14の「2 執行手続」について御説明いたします。前回の部会資料からの変更点を中心に説明させていただきます。   まず,(1)の「子の返還を命ずる決定の強制執行」の部分ですが,これは,子の返還を命ずる決定の強制執行についての総則的な規律となります。   まず,具体的な規律の説明に入ります前に,(注1)として記載しました子の返還を命ずる決定の強制執行の法的性質について説明いたします。   前回の部会において,民事執行法が適用されるのか,それとも準用するのかという点について検討することとしておりましたが,子の返還を命ずる決定によって形成される司法上の権利義務関係も,子の返還命令の実現方法として,民事執行によるものとしない理由はなく,民事執行法の適用はあるものと考えております。そのため,本要綱案に民事執行法の特則に当たる規律を置いているか,若しくは明示的に民事執行法と同様の規律は置かないこととしているものを除いては,民事執行法の適用,規律が用いられることになります。   具体的には,民事執行法上の総則規定のうち,部会資料の(注1)にも記載いたしましたが,本要綱案に特則部分を記載している民事執行法第6条,第25条を用いないことを明示している第17条,性質上適用が考えられない第24条などを除いては,基本的に適用はあるものと考えております。   なお,部会資料においては,子の返還の授権による執行,これは前回の部会においては,代替執行,類似執行と称していたものですが,これについて,民事執行法第171条の規定の特則に当たり,そのため第171条の適用はないものと記載しておりました。   しかしながら,その後整理したところ,そもそも子の返還の授権による執行は,民事執行法第171条第1項で,民法第414条第2項本文に規定する請求に係る強制執行は,執行裁判所が民法の規定に従い決定をする方法に従うとされているところの代替執行そのものでありまして,その際の手続ですとか実施者の権限について特則を設けているにすぎません。また,総則的な規律である14の(1)に定めている具体的な規律は,民事執行法第171条の適用によっても同じ規律が導け,特則にはなっておりません。そのため,次回の部会までには,第171条の適用があることを前提に,(1)について記載を改めることを考えております。   もっとも,これによって,部会資料14に記載いたしました具体的な規律に変更があるものではありませんので,部会資料を前提に御議論いただければと思います。   (1)のうち,③の子の返還を命ずる決定の強制執行は,返還命令の正本に基づいて行う旨記載し,(注2)を付した部分ですが,これは間接強制の申立て及び子の返還の授権による執行の申立てのいずれについても適用される規律であり,これによって確定した決定の正本さえあれば,単純執行文の付与等の特別の手続を要することなく執行の申立てをすることができることになります。この規律を入れたことにより,前回の資料にペンディングの「P」を付して記載しておりました子の返還を命ずる終局決定は,執行力ある債務名義と同一の効力を有するという規律は不要となりましたので,今回の要綱案には記載しておりません。   次に,(2)の「間接強制前置」の部分ですが,確定から2週間経過後に代替執行の申立てが可能となることを基本とするという点は,前回の案から変更ございませんが,確定から2週間経過した時点において,間接強制決定において定められた猶予期間が経過していない場合は,間接強制決定において定めた期間を経過した時点を基準とすることとしております。   間接強制前置とする趣旨は,まずは心理的強制を課すという点にあるところ,長期の猶予期間が定められた事例では,その期間が経過し,強制金支払義務が生じたところで初めて心理的強制が課されるものと考えられます。   また,間接強制決定をした場合に,強制金支払義務がいつまで存続するのか,子の返還の授権による執行によって影響を受けるのかという点が問題となることから,(注)においてその関係について整理して記載しております。   子の返還の授権による執行の申立てがされ,授権決定がされたとしても,債務者の返還義務が消滅するものではありませんので,強制金支払義務の発生は存続するものと考えられます。他方,子の返還の授権による執行の実施がされた場合は,作為義務は消滅するものと観念できますので,強制金の支払義務も消滅すると,請求異議等の訴えによる救済を待たずに当然に消滅するものと考えられます。   もっとも,強制金決定の効力の消滅時期については,疑義があるとすれば,強制金決定にその終期を記載することにより,無用な紛争を回避するための運用上の工夫も考えられるように思われますので,その点も含めて(注)に記載しております。   次に,(3)の返還実施者の指定については,特段の変更はございません。   なお,申立てと決定のイメージについてですが,例えば,申立てにおいては,「債権者は債務者の費用で子を○○国へ返還することができるとの裁判を求める。」とすることが考えられます。執行官の指定は必ずされる裁判ですので,申立てにおいてその記載をすることが必要的とは言えないものと考えております。   このような申立てに対し,債権者を返還実施者として指定する場合の授権決定の考えられる例としては,第一項として,「債権者は債務者の費用で子を○○国へ返還することができる」とし,第二項として,「債権者の申立てを受けた執行官は,債務者の費用で債務者の子に対する監護を解くことができる」などとすることが考えられます。また,費用前払の申立てが併せてされていた場合は,それについても裁判がされるということになるかと思います。   次に,(4)の「返還実施者の権限」については,前回の部会においてお示しした案から記述を変更し,「子を返還するために必要な交通機関を利用させること」の記載を落としております。このような行為も常居所地国に子を返還するために必要な監護の一つとして行うことができるので,特段,このような具体的な規律は不要であるという考え方に基づいております。   また,返還実施者の権限に関しては,前回部会で御指摘いただいた民事執行法第6条第2項と同じ規律を設けるかどうかという点が問題になりますが,執行官は,解放実施においてのみ関与し,返還実施については関与しないものと整理し,民事執行法第6条第2項と同様の規律を設けることはしておりません。   返還実施場面での公的な補助は,後に説明いたします(7)によることになります。   (5)の「執行官の権限」ですが,前回の案からおおむね変更はございませんが,執行官が解放実施時に返還実施者を債務者らと面会させたり,実施場所に立ち入らせたりすることがあること,及び現場の秩序を維持するために,③として,「返還実施者に対し,必要な指示をすることができるもの」としております。   次に,(6)の「子に対する監護を解くために必要な処分の実施の場所」ですが,前回部会でお示しした「子が債務者に監護されている」という記載は,その概念が曖昧であるとの御指摘があったことを考慮しまして,「子が債務者と共にいる場合」に行うものと明示いたしました。これにより,たとえ債務者の住居で行う場合であっても,債務者が子と共にいることが必要であるということになります。   続いて,(7)の「中央当局の協力」ですが,中央当局が立会いその他の必要な協力をすることができるものとしております。   なお,解放実施者である執行官が中央当局に協力を求めたい場合,官庁等に対する援助請求について定めた民事執行法第18条により,官庁である中央当局に対して援助の請求をすることができます。これに対し,授権を受けた債権者又は返還実施者にはこのような権限はございませんので,中央当局に対しその職権の発動を求めることになるかと思われます。現実には,返還実施者が執行官らと実施について打合せを行う際に,中央当局に連絡を取ってその協力を求めることになるのではないかと思われます。   (8)の「執行事件の記録の閲覧等」については,民事執行法第17条によるのではなく,子の返還申立事件の手続と同様な規律によることとしております。   以上になります。 ○髙橋部会長 執行手続,かなり整理されてまいりましたが,どこからでも御審議をお願いいたします。 ○山本(和)委員 2点のコメントですが,まず,1ページの(1)の①のところで,これは先ほどの議論で,また整理されるということかもしれませんし,文言上の問題なのですが,「民事執行法第172条の規定により行う」というところなのですけれども,これを見ると,第172条は直接適用されるような形の書きぶりになっております。ただ,先ほどお話もあったように,代替的作為義務というふうに位置付けるのだとすれば,第172条の直接適用ではなくて,民事執行法で言えば第173条を介して第172条の方法によるということになると思いますので,明確にするには,第172条に規定する方法により行うという形になるのではないか,そのほうが理論的に紛れがなくなるような気がいたしますので,そこを検討いただきたいというのが1点です。   それからもう1点は,3ページの(注)のところで,先ほどの授権による執行というのと間接強制の関係なのですけれども,授権決定がされた後も強制金支払義務が存続することになるということで,結論的に私も賛成なのですけれども,この問題は民事執行法自体にも同じ問題があって,代替執行と間接強制の関係について,かなり有力な見解は,授権決定がされた後は間接強制金の支払義務はなくなるという解釈,具体的なお名前を出すとあれですが,中野先生などはそのような見解を採られていて,民事執行法のときも立案担当者はこういう説明をしていたと思うのですけれども,どうもそういう見解が有力になっているので,民事執行法にも波及することなので難しいのかもしれませんけれども,紛れをなくすためには明確にしたほうがいいような気がしていると。ただ,民事執行法との関係で難しいのかもしれませんが,一応その点コメントです。 ○相原委員 子に対する監護を解くための処分の場合に,「子が債務者と共にいる場合に行わなければならないものとする。」というところ,前回等の御議論を経てこういう書き方になったのかと理解しております。   その上でなのですが,実務家といいますか,どちらかの代理になるという観点から考えてしまうのですが,「子が債務者と共にいる場合」というのは,解釈として,部屋が別とかそういうのではなくて,とにかくそこに,一つの相対するところに同時にいるということが必要であるという理解でよろしいのでしょうかというのが1点。   それから,子が債務者と共にいないような状況で連れ帰る,執行官がいるとすればそういう状況はないのかなとは思うのですが,万が一,誤解したりして,債務者でない人が同席していて,債務者がいなかったような場合には,それは一種の違法みたいな,返還自体が効力を失うという理解でよろしいのでしょうか。   それから3点目,債務者が故意にといいますか,もしいなければいけないという条文化がされたとすれば,別居するみたいなことになるとすれば,またその監護者が違うというところまでいってしまうのでしょうか。そこまで想定しなくてもいいというところなのでしょうか。   幾つか疑問がありましたので教えてください。 ○佐藤関係官 まず1点目の,共にいる場合の概念ですけれども,これは事実的なものと捉えていまして,先ほど御指摘いただいたように,同じその場にいるということを想定しております。   次に,共にいると言えないような場合に実施してしまったという場合の効力については,違法ということにはなるのでしょうが,それにより全体が無効になるかどうかというのは,解釈というか,認定によるということになるかとは思います。   最後に,債務者が執行から逃れるために逃げているような場合,子どもを隠しているような場合については,特段,法律上の対処方法というのはないのですが,通常の場合と同様,何とか手掛かりを探し出して行えるように努力するということに尽きるのかなと思います。 ○相原委員 いや,子どもはそこにいるんだけれども債務者だけがいないと。つまり,この条文が担保法で規定された場合,債務者と一緒でないといけないとなると,子どもはそこで学校になりなんなりに普通どおり生活するけれども,債務者だけがいないという場合,新たな監護者が出てくるという事態になるということなのでしょうかということです。 ○佐藤関係官 子どもが全く一人でいる場合がずっと続くというのは,なかなか想定できないので,監護している者が誰かいれば,その人がいる状況で行うということになると思います。 ○相原委員 債務者が代わるということですか。 ○佐藤関係官 状況によるかと思いますが,本当に一緒にいるということがないように,その人は違う場所に隠れてしまって,別の人が監護を始めてしまっているというような状況が作られているのであれば,その人を相手方として執行できるかという問題に,その者を承継を受けた者として執行できるかという問題になるかと思います。 ○磯谷幹事 今も話題になった実施の場所との関係で,前回も懸念は申し上げたところでありますが,児童相談所で一時保護等にも関係してきた立場から言えば,債務者が子どもと共にいる場合でなければ執行ができないというのは,正に修羅場を招くようにしているとしか考えられないと思います。   懸念をするのは,その前に,債務者に対して威力を用いることが子の心身に悪影響を及ぼすおそれのある場合,債務者に対しても威力を用いることができないという規定を設けることになっていますが,例えば債務者が非常に抵抗する,執行に至っているという事案では債務者はほとんど抵抗するのだろうと思うのですけれども,ともかく債務者が激しく抵抗すると,それを排除することが子どもの心身に悪影響を及ぼさないのかと言われれば,これを否定することは難しく,そうすると事実上威力を用いることはできないのではないか。仮にそうだとすれば,結果的には頑張って抵抗したほうが勝ちということになるのではないか。執行の実効性を著しくそぐことになるのではないかと懸念するわけです。   そして,仮に現実にそういったケースが出てきた場合に,外国から見ると,なぜ法律でわざわざ債務者がいないと執行できないという規律を設けたのか,本当に日本は返還の執行をやるつもりがあるのかという批判をされたときに,どう答えるのかという点にも懸念を感じるところです。 ○金子幹事 この部分はいろいろ御意見があろうかと思います。理屈というよりは,一つの価値判断なのかなという感じはします。   元々,債務者が自らいろいろ段取りをして帰っていただく,自主的に裁判所の判断に従って返還してもらうというのを一番理想形としていることは間違いがなくて,前回議論があったとは思うのですけれども,いない場で,債務者が知らないような形で子どもを海外まで出してしまうということがいいのかという問題提起もあり,そこの場にいて説得という機会も設けつつ執行するというのがいいのではないかという考え方に立っているわけです。事務当局としては,この間までの意見も踏まえて,その方がいいのではないかという価値判断に立っているということです。 ○朝倉幹事 ここのところはいろいろな考え方があるところだろうと思うのですけれども,結論から言えば,私は,今,金子幹事がおっしゃったことに賛成でございます。   現実に,今,国内事案の執行でどうなっているかということを御参考までに申し上げますと,児童虐待防止の場合と違って,基本的には債務者の自宅で執行することが多く,かつ債務者がその場にいることが多いというのが実態でございます。したがって,債務者がいないところに不意打ち的に,例えば通学路で子どもを確保するといったようなことは,全くないというわけではありませんけれども,基本的には例外のほうに属するだろうと思います。   その場合に,子どもがひどく抵抗して執行することができない場合があるのではないかと言われれば,そういう場合がないわけではないのですが,多くの場合には,執行官が赴いて債務者を説得すると,最初は抵抗していても,最後は子どもを渡すというケースもそれなりにあって,現状で,国内事案の執行では,子どもが見つからないために執行できない場合も含めますと,成功率は50%ぐらいということになってまいりますから,子どもがそこにいるという場合であれば,成功率はもっと高くなっているというのが実態でございます。   これがハーグ事案の執行の場合に,どのぐらい taking parents が国内事案の執行以上に抵抗するのかどうかと言われたら,やっていないので分かりませんが,少なくとも現状,国内事案の執行の状況を見ながら合理的に推測すると,これでもできるのではないかと私は思うところでございます。   あともう一つは,先ほど金子幹事がおっしゃったように,ハーグ事案の執行のように,外国に子どもを返還するため,場合によっては相手方の親と子どもが今生の別れになってしまうかもしれないというときに,相手方の親が全くいないところで子どもを連れて行く場合と,相手方の親が全くいないところで国内の別のところに子どもを連れて行くが,その親とはまた会えるかもしれないという場合では,状況が大分違うようには思います。 ○髙橋部会長 他にいかがでしょうか。 ○竹下関係官 2点ばかり申し上げたいと思います。   1点は,私が前に申し上げたので,事務当局のほうでいろいろ御苦労いただいて,子の返還を命ずる決定が確定した場合の効力について,執行力ある債務名義と同一の効力という表現は避けるということで,工夫をしていただいたのですけれども,和解の効力とか調停の効力のほうでは,確定した返還を命ずる決定と同一の効力を有すると書いてあるので,そうすると,確定した返還を命ずる決定の効力というものを何か書いておかないと,その正本に基づいて強制執行ができますというだけで足りるかどうかということがちょっと疑問に思いますので,もう一工夫,何かしていただければ大変有り難いと思います,せっかく苦労していただいたのに。だから,元へ戻ってしまうのはどうかという気はするのですけれども,確定した返還を命ずる決定の効力としては,その取消しも認めていることとの関係で,確定判決と同一の効力というのは難しいとは思うのですけれども,民事執行法第22条の各号のどれかに当たるような表現で,一般的な効力を書いていただければ,そのほうがいいのではないかという気がいたします。それが1点です。   それからもう1点は,先ほど山本和彦委員から問題提起がありました,間接強制と,代替執行との関係で,確かに代替執行のほうを使ったときには,間接強制のほうは効力を失うという考え方はあると思いますけれども,実質的に考えて,ここで今問題になっている案件の場合を考えますと,代替執行で確実に債務の内容を実現できるというのであれば,間接強制から代替執行に移ったら,間接強制のほうは効力がなくなってもいいのではないかと思うのですけれども,今お話があったように,代替執行の手続を踏んでも,本当に債務の本旨に従った内容が実現できるかどうか,かなり難しい案件ですので,実質的に考えると,少なくともこの種の案件の場合には,間接強制の効力はなお続いていくというほうがよろしいのではないか。   しかし,どこかで切らないといけないことは間違いありませんから,どこかで,(注)に書いてあるように,初めから,代替執行に切り換わった後一定の期間は効力があるというふうにするか,あるいは債務の実現ができるまではずっと続いていって,最後は請求異議の訴えで執行の不許を求めるということになるのか。いずれにせよ,当然に代替執行が始まったら間接強制のほうは効力を失ってしまうというのは,この種の事案については適当ではないのではないかと思います。 ○髙橋部会長 ありがとうございました。 ○佐藤関係官 今御指摘いただいた1点目の効力の点なのですけれども,その点については,この部会資料作成後にいろいろ検討いたしました。元々和解ですとか調停のところで,「子の返還を命ずる決定と同一の効力を有する」という記載を入れたのは,子の返還を命ずる決定と同様の執行の対象となるように,同じように扱えるようにしたいというところにありましたので,そういう効果が導けるように,執行手続の中の規律の「子の返還を命ずる決定の正本に基づいて実施する」という部分に,子の返還を命ずる決定にはこれと同一の効力を有するものを含むという記載を入れまして,これによってこれと同一の効力を有するものとされている和解調書ですとか調停調書の正本に基づいても実施することができるという仕組みにすることを考えております。 ○竹下関係官 分かりました。 ○髙橋部会長 それでは,3の「家事事件手続の特則」,こちらの説明を。 ○佐藤関係官 では,家事事件手続の特則について説明いたします。   ここでは,中央当局により面会その他の交流に関する援助を受けた者が,子との面会その他の交流を求めて家事審判や家事調停を申し立てる場合の家事事件手続法の特則を定めております。   まず,(1)の「管轄の特則」ですが,申立人が中央当局による面会交流援助を受けて面会交流の申立てをする場合,子の返還申立てと同様,中央当局の援助によって子の所在を確知しても,それがどこであるかは知らされないまま申立てをするということが想定されます。このような場合に,住所の記載のない申立てを受けた裁判所が管轄権を有しないとして,本来の管轄地である子の住所地に移送すると,それによって相手方の住所が明らかとなるおそれがあり,相当ではないと言えます。   また,面会交流等の申立てが,子の返還申立事件が係属している場合や子の返還申立事件において返還が認められなかった場合にされることも想定されますが,裁判資料は子の返還申立事件の資料と共通することも多いと考えられることからすると,子の返還申立事件と同じ裁判所が扱うことができるものとするのが合理的です。   そこで,中央当局による援助を受けた上で,これらの事件を申し立てる場合は,家事事件手続法の規律に従い,管轄権を有する子の住所地の裁判所のほか,子とは限らないですか,子の返還申立てがされた場合に,管轄権を有するのと同じ家庭裁判所にも管轄権を認めることとしております。   家事事件手続法上の管轄と特則によって認められる管轄に優劣の関係はございませんので,住所が分かっていれば,住所地によって定まる家事事件手続法上の管轄裁判所に申立てをすることもできますし,東京又は大阪家庭裁判所に申立てをすることもできるということになります。   次に,(2)の「記録の閲覧等の特則」ですが,中央当局による面会交流等の援助を受けた者が面会交流等の家事審判の申立てをする場合に,申立人は相手方の住所を知らない場合があるという子の返還申立事件の同様の特殊性から,記録の閲覧等については,家事事件手続法の特則として,子の返還申立事件の手続における記録の閲覧等と同様の規律を用いることとし,住所等表示部分を原則として開示しないものとしております。 ○髙橋部会長 管轄の特則と住所の開示をしないという点ですが,いかがでしょうか。 ○大谷委員 質問ですが,今の3の(1)①の1行目の終わりから2行目ですけれども,民法第766条第2項は分かるのですけれども,ここで第3項が出てくるのは,どのような場合が想定されていますでしょうか。 ○佐藤関係官 既に日本で子の監護に関する事項,面会交流等について定めがある場合に,それを変更するという裁判をすることもあり得るかとは思われますので,第3項も入れております。 ○大谷委員 私が何か勘違いしているのかもしれないですけれども,面会交流の何も取決めがなくて,これから申し立てるという場合と,その定めがあって変更があるということですよね。今,古いのを見ているのかもしれない。新しいので第2項,第3項でいいと。 ○佐藤関係官 はい。 ○髙橋部会長 他にいかがでしょうか。これはこういうものでよろしいでしょうか。 ○大谷委員 1点だけ。技術的なことなので,多分,法制局とかで最後を詰められるのかもしれないですが,外務省のほうの懇談会では,条約第21条関係は接触の権利の援助申請ということで,言葉を使っていたと思うのですけれども,最終的にはそこは,接触だとか面会交流とか,統一されるということでしょうか。 ○佐藤関係官 いずれ統一することを考えております。 ○髙橋部会長 それでは,ここで休憩を設けます。           (休     憩) ○髙橋部会長 再開いたします。   それでは,部会資料13に戻りまして,要綱案たたき台の審議に移ります。   ある程度まとめて御説明いただいて審議ということになりますが,最初の説明をお願いします。 ○佐野関係官 では,部会資料13の説明に移りたいと思います。   まず始めに,部会資料13の構成について御説明いたします。   この要綱案としましては,まず第1で子の返還に関する事件について規律しております。ここで「子の返還に関する事件」といいますのは,子の返還の申立事件と出国禁止命令申立事件を指しております。後に述べますように,子の返還命令の執行の手続や子の返還申立事件が調停に付された場合の手続は,各々民事執行法であるとか家事事件手続法が適用されまして,その特則のみをこの要綱案の中に規律するという考え方を採用しており,第2以下でこれらについては別途規律することにしております。   まず,第1の子の返還に関する事件におきましては,具体的に冒頭の1の「返還事由等」におきまして,子の返還事由,返還拒否事由などの規範的なものを記載した上で,2の「子の返還に関する事件の通則」におきましては,子の返還に関する事件手続全体に共通するもの,通則を規定しております。   また,3の「子の返還申立事件の手続」では,4の出国禁止命令等以外の手続について規律しまして,順に(1)で総則,(2)におきまして第一審の手続,3ページの(3)で不服申立て,次のページ,(4)で終局決定の変更,(5)再審,(6)履行の確保を順に記載しております。4ページの「4 出国禁止命令等」におきましては,先ほど説明しましたとおり,必要に応じて子の返還に関する事件の手続,すなわち,3の規律を準用し,具体的な規律を置いております。   次に,5ページの第2では条約に基づく子の返還の執行,すなわち強制執行について,民事執行法が適用されることを前提としまして執行手続の特則を規律しており,また,第3では,条約に基づく子の返還の調停及び条約に基づく面会交流の取決めを求める審判について,家事事件手続法が適用されることを前提として家事事件手続法の特則を規律しております。第4では過料についての規律,第5ではその他の規律を雑則として設けております。   以上がこの要綱案のたたき台の構成になります。   これを前提としまして,具体的な要綱案を記載しております資料の内容ですけれども,前回と前々回でたたき台(その1)を検討いたしましたので,ここでは主に,前回からの資料の変更点と,この資料を作成して委員,幹事の皆様にお送りした後に,事務当局において検討を進めました結果,お手元の部会資料13から更に変更すべきであると考えている点を中心に御説明したいと思います。   まず,子の参加についてでございます。9ページの「エ(イ)子の参加」になりますけれども,ここでは,⑤では,冒頭に「④の規律により」と記載しておりますが,このままですと,即時抗告ができるのは,④により参加の申立てが却下された場合に限定されてしまいまして,そもそもの①の申出が不適法却下された場合,例えば,裁判所が参加の申出をした子についての認定を誤って申出を却下してしまった場合などに即時抗告ができないことになってしまいますため,⑤にあります「④の規律により」の文言は削除する予定でおります。   次に,13ページに移りまして,「キ(ウ)記録の閲覧等」の箇所ですけれども,相手方又は子の住所又は居所の閲覧等に関する不開示の除外事由であります14ページの④のⅱにつきましては,前回の部会におきまして二つの案を提案しておりましたが,相手方の住所等を知る必要性が具体化した時点で開示を認めるべきなどの部会での議論を踏まえまして,開示時期の遅いほうの案であります,子の返還を命ずる裁判が確定した後において,申立人が強制執行をするために必要があるときという規律を置くことといたしました。この場合の「強制執行をするために必要があるとき」というのは,個別具体的な事案ごとに判断が変わるというよりは,強制執行の類型ごとに定型的に判断できる場合がほとんどであろうというふうに考えております。   同じく14ページの⑤では,ブラケットを付している「事件の性質」という文言を考慮要素として追加することを予定しております。この文言は,家事事件手続法第47条第4項に倣ったものですけれども,第47条第4項が事件類型が多数あることを想定して「事件の性質」という文言を入れてあるということから考え,ハーグの手続の規律としてはそのような文言は不要であると考えていたところですけれども,条約に基づく子の返還手続という事件の性質も当然に考慮要素になるものと考えれば,あえてこの文言を除外することもないと考えられますので,現在ではこの文言を入れてはどうかと考えております。   以上が記録の閲覧等についての変更点等になります。   次に,16ページに移りまして,他の申立権者等による受継の箇所です。(キ)ですけれども,この規律のうち,①と②につきましては特段の変更点はありませんけれども,③は,前回までに亀甲括弧に付してなお検討することとしておりましたが,相手方が一人の手続において相手方が死亡した場合について,二当事者対立構造の一方当事者が欠けることになりますから,当然に手続が終了するとの考えを前提にしまして,相手方の死亡後一定期間は手続を終了させずに,申立てにより又は職権で,新たに子を監護している者を相手方として手続を続行することができるものとする規律を設けることにしております。   なお,その期間につきましては,申立人の利益を考慮しまして3か月とすることを提案しておりますが,この期間について,3か月では長い,あるいは短いという御意見がありましたら,併せてお伺いできればと考えております。   以上,まとまりとしましてはここで一旦区切りたいと思います。 ○髙橋部会長 第1の3の(1)の終わりまでということですが,説明のない部分でも結構でございます。どこからでも御審議をお願いいたします。 ○山本(和)委員 説明がなかった部分ですが,10ページの手続代理人及び補佐人の(ウ)の手続代理人の代理権の範囲の部分の②で,特別委任事項が列挙されているのですが,2点あるのですが,私の読み方があれなのかもしれませんが,ⅲとⅳは両方とも取下げのことを書いているようなのですけれども,即時抗告とかそれ自体については書かれていないような気もするのですけれども,私の読み方が悪いのかもしれませんが,即時抗告等について,当然,特別委任事項になるのかなと思うのですけれども。 ○佐野関係官 ここは家事事件手続法第24条第2項と全くパラレルに,このⅲとⅳは書いたつもりなのですけれども,もう一度検討したいと思います。 ○髙橋部会長 取下げはあるけれども,前のほうがないということですね。 ○山本(和)委員 そういうことですね。 ○髙橋部会長 文言はもう一回確認しておきます。 ○山本(和)委員 それから,ⅵには旅券提出命令の申立てというのがあるのですけれども,出国禁止命令はどうなのかというのがよく分からなかったのですけれども。 ○佐野関係官 文言としては出国禁止命令に統一する予定です。 ○山本(和)委員 分かりました。 ○村上幹事 同じく手続代理人の規定についてですが,(ア)の①で許可代理を家庭裁判所においては認めるということなのですが,これは出国禁止命令とか執行手続についても,一般に許可代理人ができるという前提でよろしいのでしょうか。 ○佐野関係官 全体の構成からしまして,出国禁止命令におきましては第一審の手続の規律が適用されますので,許可代理の規律も出国禁止命令が適用されるのですけれども,執行等につきましては,民事執行法等が適用されるという扱いにしておりますので,この要綱案の子の返還に関する事件の規律ではなく,民事訴訟法の規定が適用されます。結果,民事訴訟法には簡易裁判所における許可代理の規定しかありません。 ○村上幹事 ただし③で代理権が制限されることもあるということですか。(ウ)の③です。これはまた違うのですか。例えば出国禁止命令について,家裁が,それについては許可代理人にさせるのはどうかという場合には,許可をその限りで取り消すということもあり得るのでしょうか。どういう人が許可代理人になるかがイメージができないので,余り使われないのかもしれないですけれども。 ○佐野関係官 (ウ)の③の規律というのは,許可代理のところとは別の立て付けというか制度で,これは民訴法にもあると思うのですけれども。   (ウ)の③,確かに許可代理とは連続性がある規定というふうに思えるのですけれども,御質問の趣旨は,出国禁止命令,子の返還手続に応じて個別に許可を与えるということでしょうか。 ○村上幹事 そういうことも前提になるのかなと,(ウ)の③の規定を考えると。弁護士でない許可代理人については。 ○佐野関係官 個別に事件に応じて,そういうことかなと思います。 ○山本(克)委員 ちょっと今のはどうなのかなと思いましたが,11ページの(ウ)の③は,当事者間の委任の内容の問題ですので,許可そのものとは無関係だと。もちろん,委任の内容を前提として許可するかどうかを決めるはずだろうと思いますが,当事者間の問題と裁判所の許可の問題というのは区別されていると思います。 ○髙橋部会長 御指摘ありがとうございます。また少し詰めてみます。 ○大谷委員 2点あります。   1点目は返還拒否事由で,2ページ目の②,例の条約第13条第1項bの関係ですが,②の中のⅰでは,常居所地国に子を返還した場合に子が暴力を受けるおそれのところに,「申立人から」という言葉が入っていまして,ⅱのほうには,相手方が暴力を受ける,誰からというのが特定がありません。それで,これは何か違いを意識されているのかという質問です。   諸外国の判例を読んでみますと,子どもが申立人から暴力を受けるおそれというのを主張される場合がもちろん多いのですけれども,実際には,申立人と同居している離婚後のパートナーからの暴力とかが主張されている場合もありまして,私は,特に違いを意識されていないのであれば,ⅰのほうも「申立人から」を外す方向で統一するほうがよいのではないかという意見です。   それからもう1点は,御説明の最後にありました相手方の死亡の場合の手続の受継です。これは余り長く置きますと,その間,手続がストップしてよくないと思う反面,申立人に代理人が付いていない場合,できるだけそのような事態がないようにしたいと思いますけれども,そうは言いながらそういう場合もあるかもしれない。かつ,相手方の住所が知れていない場合のことを考えますと,場合によっては,3か月で,子を監護している者を特定して,受継の申立てをするというのが容易ではない可能性があるのではないかと思っています。   意見としては,この「3月」をもっと長くすべきとまでは実は余り思っていませんで,ただしそのような場合に,もう一度申立てができるわけですから,そういう救済手段はあるのですけれども,そのときに,例の1年の期間制限の関係では,最初に申し立てたときになされているということで,これは法文に書くことではなくて解釈の範囲かなと思っているのですけれども,そこは最初の申立てのところで見ないと,申立人に不利益になる可能性があるかなと思っています。   「3月」をもう少し長くすべきというところまで意見を述べるつもりはないのですが,もう一つ前提として,相手方の住所等が分からない場合があることを考えますと,ここは死亡した日が起算点になっていますけれども,実際の手続をイメージしますと,裁判所のほうでそういうことが分かったら,すぐに申立人のほうに知らせるという運用なのだろうと期待して,それであれば死亡の日からでいいと思うのですが,本当は死亡したことを知った日からとかのほうが,手続の公正とかを考えるといいのかなという,細かい点ですので余り大差はないと思いますが,ちょっと気になりましたので申し上げます。 ○佐野関係官 1点目の条約第13条第1項bの関係ですけれども,②のⅰとⅱで誰からの暴力かという点の明示が不統一になっている状況ですので,これはどちらかに統一しようと考えるところです。その上で,御意見としましては,「申立人から」と文言をⅰからは取ったほうがいいのではないかということだったのですけれども,そもそも②というのは,条約第13条第1項bをある程度具体化し,典型的な場面を挙げることによって,当事者の予測可能性や裁判規範性を高めるという趣旨で設けた関係上,ⅰのほうで「申立人から」というのを抜いてしまいますと,ある意味,それでⅰが抽象化されてしまうという可能性もありますので,そうすると,条約第13条第1項bと②のⅰでどれだけ違うのかという話にもなるので,典型的な場面を挙げるということで,ⅰとⅱの両方に「申立人から」というのを入れるほうがいいのではないかと,事務当局としては今のところ考えている次第です。 ○大谷委員 今の御説明は分かりました。そうすると,両方に「申立人から」が入るとして,申立人から以外の者も当然これは入るという,読み方として読めるということでよろしいですよね。 ○佐野関係官 このⅰにストライクで入ってくるというわけではありませんけれども,「次に掲げる事情その他一切の事情を考慮するものとする。」ですので,入ってきます。 ○大谷委員 ありがとうございます。 ○松田関係官 受継の件ですけれども,3か月としたときに,相手方が,新たに監護する者が見つからなかった場合ということで,御指摘の点ですけれども,余りここの期間を長くするのは相当でないと考えておりまして,他方,3か月の起算点を何らかの工夫ができるかというところですが,申立人が知ったときとなると起算点として明確でないのかなとも思っていて,裁判所が確知したときということでできるかどうかは,なお検討してみたいと思いますけれども,期間も含めてなお検討させていただきたいと思います。 ○大谷委員 これもかなり運用の話に入り込んでしまうのですけれども,今の受継のところですが,例えば,相手方が亡くなられたということで,御両親とか親戚に引き取られるのではないか。ただし,元々相手方の住所を申立人が分かっていないという場合ですが,具体的には,裁判所のほうでそういう事情を確知されて,申立人側に伝えることになると思うのですが,その際,子どもさんがその後どこにいらっしゃるかということを,申立人としては改めて中央当局に確知をお願いするということになるのか,この段階では裁判所の手続に載っているので,裁判所のほうである程度,相手方側のほうでどうなっているかということを,例えば代理人など付いていれば。ただ,代理も終了するんですよね。そうすると,申立人としては,もう一度元に戻って,中央当局経由でというか,中央当局にお願いしてそこは調べてもらうという,そういう流れになるということでしょうか。 ○松田関係官 基本的には,中央当局にもう一度,援助申請で子の所在プラス新たに監護している人の所在を確知してもらうことになるのではないかと考えておりました。 ○髙橋部会長 他にいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 言葉遣いだけの問題ですけれども,16ページの受継のところの,「死亡によってその手続を続行することができない」というのが①,③にあるのですが,「死亡した場合」では駄目なのか。家事事件手続法は,死亡,資格喪失その他の事由によってその手続を続行することができないというので,死亡は続行できない場合の一例示でしかないので,続行できないというのは要ると思うのですけれども,ここは,死亡したら続行できないのは当然なので,死亡によって続行できないというのは,屋上屋を課すような感じがします。 ○松田関係官 ここで「死亡によってその手続を続行することができない」としました趣旨は,申立人なり相手方なりが複数いる場合にそのうちの一人が死亡したときはそのままその手続は続いていくことになると考えておりまして,他方,申立人なり相手方なりが一人だった場合は,その申立人又は相手方が死亡すると当事者がいなくなってしまい手続を続行することができない,この点を表したいと思って,こういう表現にしております。 ○山本(克)委員 そうですか。しかし,必要的共同訴訟的な規律をしないのであれば,当該当事者との関係では手続は続行できないということになるはずなので,そういう考え方は別の理屈に立っているような気がしますけれども。 ○松田関係官 分かりました。検討したいと思います。ありがとうございます。 ○髙橋部会長 先に進んでよろしいでしょうか。   それでは,17ページの(2)からですね。説明をお願いします。 ○松田関係官 では,(2)について全体的な説明をさせていただきます。   まず,17ページの「(ア)申立ての方式等」のうち,②,申立書の必要的記載事項についてですが,前回までの部会の議論を踏まえまして,返還を求める子のみならず,返還先である常居所地国の特定は,申立ての対象を特定するための本質的事項であると考えられますことから,申立ての趣旨は,これらを特定して記載しなければならないという規律を設けております。   なお,②のうちⅲですが,子の返還申立事件の手続による旨を申立書に記載することを要求することで,他の申立てとの区別を一見して明らかにする趣旨のものです。返還を求める子及び返還先の国を特定してすれば,一般的にはこの手続を求めていることが明らかと言えますが,なお他の手続ではないことが分かりにくい場合もあり得ることを想定したものです。   もっとも,ⅲを必要的記載事項としたとしても,ⅱの申立ての趣旨や,申立書の最後に記載されるいわゆる「よって書き」によって,この手続による旨が実質において明らかになっていればよいと考えています。この点について御意見があればお聞かせいただきたいと思います。   次に,その下にあります申立ての変更についてですが,申立ての変更の規律を置くことについては,前回ペンディングとなっていましたが,常居所地国の変更という場合が想定されるという部会での議論を踏まえまして,この規律を置くこととしております。   次に,19ページのウの「事実の調査及び証拠調べ」のうちの「(ア)事実の調査及び証拠調べ等」では,②の規律について,その実質,つまり,①の職権探知主義を原則としつつも,子の返還事由及び返還拒否事由の資料収集については,それぞれ客観的証明責任を負う当事者が第一次的に資料を提出すべきものとし,ただ,裁判所も,子の利益など必要に応じて職権で補助的に事実の調査及び証拠調べをするという実質については,これまで特に異論がなかったものと承知しておりますが,この点について改めて確認させていただきたいと存じます。   そして,そのような実質であるという前提で,これを明文の規律として設けるか否かにつきましては,従前の部会では賛成,反対の双方の御意見を頂いていたところです。   規律を設けるべきとの御意見としましては,子の返還事由及び返還拒否事由の規律は,飽くまで客観的証明責任を規律しているだけであり,職権探知主義を原則とする本手続において,当事者がまず第一次的に資料を提出すべきであるという考え方を採るのであれば,明文でその旨,規律すべきであるとの御意見を頂いておりまして,他方,設けるべきでないとの御意見としましては,返還事由及び返還拒否事由が定められていることから,②の規律の実質があることは,明文でこれを設けなくても明らかであって,明文で設けると,かえって子の福祉に配慮した職権探知主義が薄らぐ懸念があるとか,また,人事訴訟事件や相手方のある家事審判事件でも,資料の提出に関して同様の要請があると考えられるところを,この手続にのみ②のような規律を設けることの説明が特に必要なのではないかといった御意見を頂いていたところと承知しております。   このうち,②の規律を設けることによって,子の福祉に配慮した職権探知主義が薄らぐ懸念があるとの御指摘につきましては,②の冒頭で「①の規律にかかわらず」としている現在の案でも,②の後段のほうで手当てをしておりまして,子の福祉に配慮した職権探知主義が確保されるような書きぶりとすることは可能であると考えられますし,また,人事訴訟事件や相手方のある家事審判事件との場合の相違につきましては,人事訴訟手続については,職権探知主義は飽くまで当事者主義の原則の下,当事者が主体的に主張立証活動を行うことを前提とするものであるとの整理がされておりますが,これはやはり民事訴訟の一類型であるということが影響しているものと考えられますし,相手方のある家事審判事件につきましては,本手続のように,申立てを認める要件とこれを退ける要件とが明確に規律されておらず,かつ,相手方のある家事審判事件の中でも,遺産分割や財産分与など専ら当事者に主張立証活動をしてもらう必要がある類型の事件や,他方で,親権者の変更など,裁判所が後見的な見地から当事者の主張立証活動を補充すべきことが想定される類型の事件など,様々な類型のものがあり,一律に規律を設けるのが困難である一方,本手続は事件類型が一つであって,申立てを認める要件及び退ける要件が明確に規律されて,証明責任の分配も明らかである点で,職権探知主義を原則とする資料収集場面における当事者の位置付けについて規律することが可能であるという相違があると言えるのではないかと思われます。   返還事由及び返還拒否事由が明確に規律されていることによって,資料収集場面における当事者の役割が直ちに導かれるかという点については,この部会におきましても見解が必ずしも一致していないというところですので,外国人の当事者も多く予想される本手続の規律としては,分かりやすさの観点から,②のような規律を設けて実質を明らかにするのが,やはり相当ではないかと思われますし,この点を規律の上でも明確にしておくことが迅速な審理にも資することになるのではないかと考えられますので,②の規律は明文で設けることとするのが相当ではないかと考えておりますが,この点につきましては,なお御意見が分かれるところではないかと思いますので,改めて御意見を頂ければと存じます。   なお,②の規律は,法律の規定とした場合にも,「提出するものとする」とすることを考えておりますので,要綱案の記載としましては,「提出するものとするものとする」ということになるかと思います。   なお,前回までの案では,亀甲括弧を付しまして記載しておりました③の,部会資料13にはないのですが,③として,「当事者は,適切かつ迅速な審理及び裁判の実現のため,事実の調査及び証拠調べに協力するものとする」とする規律につきましては,②のとおり,子の返還事由及び返還拒否事由については,第一次的に当事者が資料を提出すべき地位にあるとの実質を前提とすれば,事実の調査及び証拠調べ全体につき当事者が協力すべきことは,2ページの2(1)の規律とあいまって,当然導かれるものと考えられますし,②の規律を明文で記載した場合に,これに加えて,当事者は事実の調査及び証拠調べに協力するといった規律を別途設けるのは,かえって分かりづらくなると思われますので,ここでは削除しておりますが,この点についても御意見がありましたらお伺いしたいと存じます。   次に,20ページの(エ)の「家庭裁判所調査官の期日への立会い等」についてですが,前回の部会で,家事事件手続法第59条第3項及び第4項と同様に,家庭裁判所調査官に社会福祉機関との連絡その他の措置を採らせることができる旨の規律を設けるべきとの御意見も頂いておりましたが,家事事件手続法第59条第3項は,家事審判事件の処理に関し,上記のような,今申し上げたような措置を採らせることができる旨,定めておりますところ,本手続では,審理の主たる対象が子の返還事由及び返還拒否事由に限定されておりまして,事件の処理に関して,子の家庭環境その他の環境の調整を行う必要が生じる場合は想定されないと考えられますので,前回までの案と同様に,これらの規律は置かないこととしております。   なお,調停に付された場合には,家事事件手続法の適用を受けることになりますので,環境調整のために家庭裁判所調査官が活動するということが想定されます。   次に,21ページの(キ)の「調査の嘱託等」では,前回までの案と同様に,亀甲括弧を付して「〔中央当局を含む〕」としておりますが,条約第7条第2項dに規定する中央当局間の情報交換に基づく調査等を中央当局に対して嘱託することができることについては,部会においても異論等はなく,条約に基づく子の返還に関する中央当局の位置付けからしますと,本手続における資料の収集の場面での中央当局の関わり方を要綱上も明確にしておく必要があると思われますので,中央当局を明記することとしたいと考えております。   (コ)の「証拠調べ」では,過料の裁判の執行について,「第4 罰則」の「1 過料の裁判の執行等」において独自の規律を設け,民事訴訟法第189条と同様の規律を設けるものとはしないことに変更しております。   なお,民事訴訟法第185条は,簡易裁判所又は地方裁判所に証拠調べの嘱託をすることができるものとしておりまして,本手続においても,これと同様の証拠調べの嘱託の規律を設けるものとしておりますが,事実の調査の嘱託先を家庭裁判所に限定しておりますことと同様に,証拠調べの嘱託先も家庭裁判所に限定することを前提としております。   次に,23ページの(ウ)の「終局決定の告知及び効力の発生」についてですが,子に対して終局決定を告知することがその利益を害するとして,告知しないこととする告知例外の適用対象について,前回までの案では,手続に参加した子であるか否かにより差を設けておりませんでしたが,手続に参加した子につきましては,8ページ,エ(イ)⑤にあるとおり,参加を認めるか否かの判断の段階で,既に告知の例外に当たるような子の利益を害する事情の有無が考慮されていること,手続への参加を認められていながら告知されないというのは相当でないことから,必ず告知するものとし,告知の例外の対象となる子から除外しております。   次に,25ページの「(イ)和解」についてですが,前回,どのような事項について返還手続における和解の対象者として認めるべきかという点について御議論いただきましたところ,和解できる事項としては,暫定的な取決めとは言えないようなもの,言わば本案のようなものについても,担保法に規定した場合の外からの見え方,当事者に誤解や期待を与えることによって及ぼし得る不利益等に対する懸念が多く指摘されました。   そこで,基本的には,返還申立事件の話合いによる解決の際に,類型的に取り決めることが想定される事項のうち,本来的な家事審判事項であるものについては,和解の対象とできることを明示しておく必要があるものに限るのが相当であると整理しております。   具体的には,暫定的な養育費,生活費,面会交流の定めや居住関係に関する取決めが対象となるものと考えられますが,これらについて,その可否について疑義が生じることなく和解できるようにしつつ,法文の規定に余計なものが入ることによる弊害の発生を避けるという観点から,具体的な文言については検討を要するものと考えており,要綱案のたたき台ではブラケットを付して2案を併記しております。今述べましたような考え方の実質面及び規定の置き方について御意見がございましたら,頂ければと思っております。   なお,規定ぶりの問題とは別に,子が常居所地国に帰国した後にそこで行われることが予定される本案の裁判を先取りするような内容の和解を事前にすることは,条約上問題がないとしても,和解の内容の常居所地国における効力やそれを実現するための常居所地国での手続等を考えた場合には,実際には多くの困難が伴うことから,子の返還手続の中で行われる和解は,実際には子を返還しないという前提での和解か,子が常居所地国に返還される場合であっても,常居所地国において本案裁判がされるまでの暫定的なものになることが想定されます。   (2)につきましては以上です。 ○髙橋部会長 (2)の手続ですが,いかがでしょうか。 ○大谷委員 2点あります。   1点は質問ですが,18ページ,「申立書の写しの送付等」と,22ページの「審理の終結」のところと,両方関連していますが,「申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなとき」というのが両方に出てきます。確認ですけれども,まず申立書の必要的記載事項は,17ページの(2)ア(ア)②でありまして,その規律に従っていないときは④で補正が命じられると。それにもかかわらず補正がなされないときは申立書自体が却下になるという,これは⑤です。申立書自体が却下になるという理解でおります。   そうしますと,「申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなとき」として想定されているのは,例えばですけれども,子どもが16歳以上であるとか,そういう場合ぐらいでしょうかという,他にもあるかもしれませんが。仮にそのときの手続としては,申立書自体には問題がないので受理されて,相手方には送付せず,そのまま終結して棄却するというようなことをお考えなのでしょうかというのが,確認のための質問の1点目です。   2点目は,最後に御説明のあった和解ができる事項についてで,御説明のようなお考えに基本的に賛成です。   その上で,今,ブラケットで提案いただいているような内容が,今御説明いただいたようなものとして読めるかという観点で見ますと,いずれも「子の監護に関する事項」というのが入っていますので,内容的には先ほどの御説明のようなイメージで考えていたとしても,このように書かれることで,返還先の子の終局的な監護権の決定まで含むように,見え方としては見えるのかなと思っていまして,そこは何か工夫ができないかと,今,自分でも悩んで考えておりますけれども,やはり書きぶりはもう少し何か工夫が要るような気がいたします。 ○松田関係官 では,まず1点目についてですけれども,大谷委員御指摘のとおり,17ページにあります申立書の必要的記載事項の記載がなければ,補正しても応じなければ申立書の却下になり,この記載事項が一通り書いてあっても,18ページの(ウ)①の「申立てが不適法であるとき又は理由がないことが明らかなとき」に当たれば申立てが却下されることになります。実際に不適法であるとき,(ウ)の①に当たるような場合というのは,先ほど挙げていただいたように,やはり子が16歳以上であるとか,常居所地国として返せと言っている国が条約の締約国でないですとか,そういった一見して明らかなものであって,その場合は相手方のほうに反論させる必要がありませんので,申立書の写しを送付することなく申立ての却下という終局決定をすることができるという整理でして,相手方に反論させる必要もありませんので,その後の手続を採ることがないということで,もちろん陳述聴取もしなくてもいいですし,最後の審理終結日というのも特に定めなくてもいいという整理になっております。 ○髙橋部会長 和解のほうは文言で。 ○近藤委員 和解の関係で意見を申し上げたいと思います。   実務の立場からいきますと,和解できる事項と和解できない事項というのは明確にしていただくのが大事だろうと思います。そういう点からいきますと,前者の括弧内の規定の仕方というのを実務の立場からいたしますとお願いしたいと思います。特に,先ほど御説明の中に,住居の提供という項目も掲げられておりましたけれども,この点は,夫婦間の扶助の問題に関わる問題,婚費とは区別される部分だろうと思いますので,そういう面からも,明確に前者の括弧内の規定をしていただくのが相当かと考えます。 ○髙橋部会長 そこは検討するということですか。 ○金子幹事 明確であるべきということは全く同感なのですが,婚費とか夫婦間の協力扶助というのは,民法あるいは家事事件手続法の文言を使っているので,今の家庭裁判所の家事審判の実務に親しんでいる方にとっては明確なのだろうと思います。このハーグ手続の中で何が決められるかというところを虚心坦懐に考えた場合には,婚姻費用の分担といったときに誰もが先ほどのようなことがイメージできるかというのは,また別の配慮が必要ではないかという気がしていまして,それで少し文言はなお検討したいと思っているところです。 ○山本(克)委員 何度も同じことばかり繰り返して申し訳ございませんが,19ページの「事実の調査及び証拠調べ等」の②について,私は今日の御説明を伺っても釈然としないのですが,それはともかくとして,そういう観点から質問します。   「資料」という言葉というのはどういうものを意味しているのかというのをまずお伺いしたいと思います。 ○松田関係官 確かにその点,必ずしも明確になっていないと思っておりますけれども,事務当局としましては,事実の調査の対象となる資料ですとか,証拠調べの申立てとともに提出されることになると思われます証拠となり得るものも含めて,最終的には裁判の資料になるものという意味で使っております。 ○山本(克)委員 ということは,いわゆる訴訟資料と証拠資料を区別するという訴訟法の議論における資料とは,全く意味が違うということでよろしいでしょうか。 ○松田関係官 そうですね。特に民事訴訟法とはリンクはさせていないです。 ○山本(克)委員 ということは,基本的には事実調査ないしは証拠調べの対象物であると,こういう理解で。 ○松田関係官 はい。そのように考えております。 ○山本(克)委員 それは頭が整理されました。ありがとうございました。   ②の後段の,この場合において,事実の調査及び証拠調べをすることができるというところの「できる」を,①の「しなければならない」と変えてしまうことの意味がもう一つよく分からないのですが,これはどういうことなのでしょうか。 ○松田関係官 御指摘のとおり,①との関係をもう少し整理しなければいけないと思っておりますが,当初,②で後段を記載しました趣旨としましては,当事者が事実の調査なり証拠調べの対象となるような資料を提出しない事項についてでも,家庭裁判所のほうで必要があると認めるときは,自ら資料を集める等の手当てをして認定していかなければならないというものです。 ○山本(克)委員 いや,「ならない」ではなくて「できる」なので,「ならない」には読めないわけです。ですから,②を仮に入れるとしても,「①の規律にかかわらず」という部分を削除して,そして後段を削除するという形で,趣旨は全うできるのではないでしょうか。つまり,①にかかわらずではなくて,職権探知主義だけれども資料の提出は当事者に委ねられている部分が相当あるということさえ明らかにしておけばいいわけで,仮に当事者が出さない資料によって,子の福祉の観点から返還を命じたり,あるいは返還申立てを却下するほうが適当な場合には,やはりしなければならないのではないでしょうか,証拠調べないし事実の調査を。   ですから,この全般的に反対なのですが,仮に百歩譲っても,このままでは維持できないような気がします。 ○松田関係官 御指摘ありがとうございます。確かに②の「①の規律にかかわらず」というのは,ちょっとおかしいということで検討し直し始めておりまして,実質が確保できるような書きぶりは工夫しなければいけないと思っております。 ○髙橋部会長 では,その問題がありましたので,19ページの「事実の調査及び証拠調べ」の括弧書きのところ,他に御意見を頂ければ。 ○竹下関係官 今の19ページのところでなくてよろしいでしょうか。 ○髙橋部会長 どうぞ。 ○竹下関係官 「和解」のところで,非常に細かいことなのですけれども,「和解」の①,民事訴訟法第264条及び第265条の規定と同様の規律を設けると書かれています。よく,和解との関係ではこの二つは一緒に扱われるわけですけれども,子の返還手続の場合,第264条のほうは文字どおり,遠隔の地に当事者がいる場合なので必要があるだろうと思うのですけれども,第265条と同じ定めを置くことは必要なのだろうか疑問に思います,あれば多少便利ということがあるかもしれないですが,これは当事者間に,和解の合意は成立していないのに,裁判所が言わば仲裁的に決めてしまう。しかも,同じようなことが調停の場合にも,合意に代わる審判がありますね。あちらのほうは異議が述べられる,こちらは異議が述べられない,同じような仕組みなのですけれども効果が違います。   そこで,外国の人に誤解を与えるおそれはないだろうか。それからまた,やや不透明な手続で裁判所が確定的な決定をやってしまう。本来の返還を命ずる決定とは別のものをやってしまうという手続が,外国の人から見たときに,適正な手続と受け取ってもらえないのではないかという懸念がある。それほど必要がなければ,このような規定を設ける意味は余りないというか,ないほうがいいのではないかという気がするのですが,御検討いただければ結構です。   これはいつでも,大概セットにして扱うというふうになっているのですけれども,事柄は違うので,日本人同士なら両方あっていいのだろうと思うのですけれども,外国人を相手にするときに,第265条というのはどうかなという感じがするものですから,細かいことですけれども申し上げました。 ○髙橋部会長 分かりました。 ○山本(和)委員 今の(2)の「和解」の③のところですが,効力ですけれども,「確定判決と同一の効力」ということになっているのですけれども,和解の対象事項,別表第2の事項等も含まれると。元々この事件自体は非訟事件として整理されているという観点からすると,「確定判決と同一の効力」というのはやや違和感を覚えるところがあります。家事事件手続法のほうの調停の効力では,一定のものについては「確定した審判と同一の効力」というふうに整理していると思うのですけれども,そういうことがあったほうがいいような気もしたのですけれども,いかがでしょうか。 ○佐藤関係官 その点につきましては,和解と調停で違う点があるということで,飽くまで当事者の合意に基づく和解であるという点のほうに重点を置きまして,「確定判決と同一の効力」ということで,調停と同じほうの効力にはしなかったという整理をいたしました。 ○山本(和)委員 もちろん訴訟上の和解は確定判決と同一の効力で,それは判決がある,既判力があるかどうかというのは議論があるところだとは思いますけれども,そこは理解できますが,元の手続がそもそも非訟事件で,対象事項も非訟事件の事項であるとすれば,そこで確定判決と同一の効力というのは,和解であったとしてもかなり違和感を覚えるところです。 ○髙橋部会長 御趣旨はよく分かりました。   他にいかがでしょうか。 ○大谷委員 19ページの音声の送受信による通話の方法による手続ですが,前から意見としては申し上げているところですけれども,外国にいる当事者のこの方法による手続への参加が可能かどうかということで,外国の主権の問題がずっと議論されていまして,それはその国自身がいいと言えばいいのではないかと,私は個人的に今でも思っているのですけれども,その可能性が,この条文からだけは排除されているようには読めませんが,実質には難しいとお考えなのかなと思いながら読んでおります。   今,確認したいのは,むしろ証拠調べのほうですけれども,19ページのウの①では,「(証拠調べを除く。)」になっていまして,証拠調べのほうについては,別途,21ページの(コ)で,民事訴訟法の規定が,一部を除き同じ規律を設けるとなっています。そこで,民事訴訟法の証拠調べに関する規定によりますと,外国における証拠調べの条文が第184条にあります。実際にそういった可能性がどのぐらいあるかは分かりませんが,仮に外国にいる証人等の証拠調べが万が一必要になったときには,今の原案ですと,ここは第184条が掛かってくるので,この方法によるしかできないと読むべきということになるのでしょうかという質問です。 ○松田関係官 基本的にはそうなるのかなと考えておりますけれども,それ以外のことは特に,別の規定を設けるとか,そういうことは今のところ考えておりません。 ○磯谷幹事 本筋とはややずれるかもしれませんけれども,20ページの「家庭裁判所調査官の期日への立会い等」のところで,社会福祉機関との連携については規定を設ける必要はないという御説明でございました。   私の児童虐待のことについて検証なども含めて関わってきた立場から申し上げますと,それぞれの制度,今回はハーグ条約の手続という制度,あるいは他にも,例えば捜査とか,いろいろな制度がありますけれども,その目的というところに非常にかかずらってといいますか,こだわる結果,子どもの福祉に本当に必要な情報が共有されない。その結果,結局のところ子どもの危険性を判断できずに,虐待で大きな事件になってしまったりしているという現状がありますので,目的など余りこだわらずに,本来,子どもの福祉に危険なことが発見されたら,速やかに児童相談所のほうと,通告も含めてですけれども,連携をしていただくというのが重要なのだろうと理解をしているところです。   そういう立場からしますと,家事事件手続法第59条第3項,先ほど御説明にもありましたが,「家事審判事件の処理に関し,事件の関係人の家庭環境その他の環境の調整を行うために必要があると認めるとき」という,ここのところも限定的に考えるというよりも,むしろ子どもの福祉にとって必要な対応というものはきちんと責任持ってしていただく,それぞれの立場の方がしていただくというのが重要だろうと思うわけです。   それでも手続法に書く必要はないのだというお考えもあるかもしれませんけれども,私としては,いずれにしても実質的に事件の処理の中で子どもの福祉を害する事情が明らかになったときには,きちんと児童福祉をつかさどる機関と連携をしていただきたい。そういう実質はきちんと担保される必要があるだろうと思っています。そういう意味で,本来は何らか規定を設けていただいたほうがいいだろうと思いますし,少なくとも従前,家事事件手続法であるような規定は設けていただいたほうがいいのだろうと考えております。   設けなくても,必ず裁判所は,そういう場合には児童相談所と連携できるのだということであれば,それはそれでいいのかもしれませんけれども,その点は是非御検討していただきたいと思います。 ○松田関係官 御趣旨は理解したつもりなのですけれども,手続法上に規律を置くとなりますと,その手続,その手続というのは,子の返還についての裁判をするための手続について規律することになりまして,裁判するために必要なものを法律上明記していくということになるかと思いますので,今回の子の返還についての裁判をするために必要な範囲でということにならざるを得ないと思っております。   御指摘のように,子の意見聴取などで調査に行ったときに,子の虐待など,そういった兆候がうかがわれるということであれば,それを児童相談所のほうに通告なりするのは,公務員の義務として当然そういうふうにすることになるのではないかと思っておりまして,本来の裁判をするのではないところで子の利益のためにすべきことというのは,規定からは外れたところで,当然その立場上することになるという整理ではないかと考えております。 ○棚村委員 前の繰り返しになって,私も磯谷幹事と全く同意見で,家庭裁判所の調査官を関与させて事実の調査をするということについては,何の問題もないと思うのですが,家事事件手続法での規律とハーグ条約の返還手続の違いというのは,もちろん理解をしているつもりです。ただ,子どものために家庭裁判所の調査官が果たす福祉的な機能,あるいは連絡調整的な機能みたいなものが家事事件手続法で規律をされていて,ハーグの返還手続の場合にはそれは全く関係ないと,一般的な公務員の義務として判断でやればいいという態度でいくのか,それとも,やはり家事事件手続法のように,子どもの問題について関わる場合には,子ども自身の代理人という制度も置いていないわけですから,ある意味では子どもの側に立って,連絡調整的な機能を果たす必要はあると思うのです。   それで,ちょっとくどくなりますけれども,前回申し上げたのと同じように調査官の関係機関との連絡調整の規律には全く賛成でして,そういう配慮を是非していただければと思います。もしできないということで,今回は見送るということであれば,今後の検討事項の中には是非入れていただくということで,議事録には,磯谷幹事もおっしゃっていたように残していただいて,子どものための手続作りということで充実整備するときには,家庭裁判所調査官の連絡調整的な機能がこの部分だけ必要ないというふうには,審理の手続の構造だけから言えないのかなというのが私の感じであります。 ○古谷幹事 この点につきまして,家事事件手続法の場合は,親権制限の事件や児童福祉法第28条の事件では,調査官による関係機関との連絡調整等があって初めて手続の目的を全うできるということがあり,そのような事件類型が含まれていると思います。   事務当局のほうから先ほど説明がありましたように,ハーグ手続の中で,家裁調査官は行うべき調査を当然行うわけで,その過程で子の福祉に関連することが出てきた場合であれば,何らかの根拠に基づいて子の福祉の観点から対応するということでそのような場合に何もしないということではないと思います。 ○棚村委員 くどくなりますけれども,釈迦に説法みたいになりますが,家庭裁判所の調査官という役割は,家庭裁判所の事件処理においては非常に重要な役割を果たしていています。調査官は,正に家庭事件の処理のための背景とか原因とか,それから関係する機関との連絡調整的な機能という重要な役割を果たしており,むしろ家裁の手続でやることの本来的な役割とか意味にもつながると思うのです。それを使う必要がない場合に使うことはないと思うのですけれども,使わなければいけない,あるいは使うことが適切だというケースはあり得ると思っていて,その可能性を一般的なものに落としていくとか,それとは違う形で区別する理由について,余り説得力を持って納得できないということです。せっかくある家庭裁判所調査官という,それから医務室の技官の診断というのですか,こういうものも有効に問題解決のために使いたいという趣旨で,立会いとか事実の調査が認められるのであれば,なぜそこだけ落ちるのかというのは,やはりしっくりしないということです。すみません。くどくなりました。 ○金子幹事 御趣旨は理解したつもりではありますが,棚村委員とは,ここの手続の中で目指す理想が少し違うのかなという気がしています。家庭の問題について家庭裁判所調査官の果たすべき調整機能というのは,一般の家事事件では重要な側面があると思うのですけれども,できるだけ早く元の国に返すという手続の中において,そういう家庭の問題での終局的解決もできればここで図ろうという発想がいいのかどうかが問われるべきであろうと思います。むしろ,迅速に処理をするという条約の趣旨にのっとってやるという意味で,あえてここで規定を置かなくてもいいのではないかという発想でおります。 ○髙橋部会長 先ほどお話がありましたが,議事録には,両方の意見がありますので。   他の点はいかがでしょうか。   少しくどいかもしれませんが,19ページの下から3行目の②です。返還事由,返還拒否事由については資料を提出するということ。これは先ほど来の御指摘のように,文言はまだ練らなければいけませんが,基本的にはこういう規定を置くという方向で考えたいと思っているのですが,いかがでしょうか。   また御審議をお願いいたしますが,不服申立てのほうに移ってよろしいでしょうか。それでは説明を。 ○松田関係官 それでは,26ページの「(3)不服申立て」以下につきまして,変更点等を中心に御説明させていただきます。   まず,26ページ,「(3)不服申立て」の「ア 終局決定に対する不服申立て」の「(ア)即時抗告」中の「b 即時抗告期間」につきましては,前回までの案を一部変更しまして,②において,当事者のほか,手続に参加した子についても,終局決定の告知を受けた日を起算点とすることとしまして,③において,手続に参加した子以外の子の即時抗告の起算点を,当事者が終局決定の告知を受けた日の最も遅い日とすることに変更しております。   本手続では,子に対する終局決定の告知については,23ページの(2)カ(ウ)①ただし書のとおり,子の利益を害すると認める場合には告知をしないとの規律を設けておりますが,手続に参加した子については全て告知がされることになりますので,その告知を起算点とするのが相当と考えられます一方で,手続に参加していない子については,子にとって,自分にまだ告知がないのが例外的に告知がされない場合に当たると判断されたためであるかどうかを認識することができず,そのため,告知されると思ってそれを待っていたところ,実は例外的に告知がされない場合に当たると判断されており,親への告知によって子の即時抗告期間が始まり,即時抗告期間が徒過してしまったという事態が生じかねず,子への告知を即時抗告の起算点とするのは相当でないと考えられますことから,手続に参加した子についてのみ,当該子が告知を受けた日を起算点とすることとしたものです。   次に,27ページのgの「即時抗告及び抗告審に関するその他の手続」の①の括弧内において,ア(ウ)②を加える修正をしております。   これは,①の括弧内には,抗告審において同様の規律を設けることとしない第一審の規律を記載しているわけですが,括弧内にア(ウ)②を記載しませんと,第一審における申立書を公示送達の方法によって送達することができない旨の規律と同様の規律を抗告審においても設けることになる結果,抗告状が公示送達の方法によって送達することができないこととなってしまいます。しかしながら,これは手続の途中で相手方が所在不明になった場合は,公示送達の方法を採ることができるとの従来からの整理に反することになりますので,そのようなことにならないように,①の括弧内において,除外する規律の中にア(ウ)②を加えることとしたものです。   また,③では,本手続において,管轄を東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所の2庁に集中することとしましたことから,民事訴訟手続における知財事件の管轄の取扱いと同様に,東京家庭裁判所及び大阪家庭裁判所以外の裁判所が第一審裁判所として子の返還申立事件を処理した場合には,抗告審において専属管轄違背を争うことができるものとし,東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所との間での管轄違いについては,抗告審においてその主張を制限することが相当であると考えられますことから,民事訴訟法第299条と同様の規律を設けることとし,更に,管轄違いを理由とする移送についての規定である民事訴訟法第309条と同様の規律も設けることとしております。   次に,31ページの「(4)終局決定の変更」についてですが,従前は「裁判の取消し又は変更」としておりましたけれども,本規律の対象となる裁判が子の返還命令に限定されておりまして,これを維持することが不当と認めるときは,当該決定を取り消して,子の返還の申立てを却下又は棄却する旨の裁判をすることとなる点で,取消しのみがされる場合が想定されず,かつ,その対象は終局決定に限定されておりますことから,「終局決定の変更」と名称を変えております。   このうち,アの「終局決定の変更」では,まず①では,「当該決定を維持する必要がなくなったと認めるとき」をこの規律による変更事由の一つとして挙げておりますが,この部分については削除するのが相当ではないかと現在考えております。   この「当該決定を維持する必要がなくなったと認めるとき」については,事務当局としましては,例えば,子の返還命令が確定した後に,当事者間で子を返還しないこととする合意が成立したような場合を念頭に,「維持する必要がなくなったと認めるとき」を事由の一つとして当初から提案の中に含めておりましたが,部会では,この規律の対象となる場面としては専ら,「当該決定を維持することを不当と認めるに至ったとき」が前提とされていたように思われますし,「維持する必要がなくなったと認めるとき」は特に必要がないのではないかという御意見も頂いていたかと承知しております。   また,「維持する必要がなくなったと認めるとき」という文言については,その対象が部会で議論していたような場合を超えて,相当広く解釈されてしまうおそれも否定できないと思われます。そして,子の返還命令が確定した後に当事者間で子を返還しないこととする合意が成立したような場合には,請求異議の訴えによる救済が可能と考えられますので,終局決定の変更の対象としなくても不都合はないと考えられるのではないかと思われます。   次に,④についてですが,子の返還命令の確定後の事情変更により当該決定を維持することが不当と認めるに至ったか否かの審査をする終局決定の変更の性質上,その手続になじまない規律もあると考えられますので,その点を明確にするために,「その性質に反しない限り」という文言を加えております。   なお,終局決定の変更の性質に反する規律としましては,17ページに記載のあります併合管轄ですとか,25ページに記載のあります審理の状況についての説明といったものが挙げられるのではないかと思われます。   さらに,⑤の規律をここでは新たに加えております。すなわち,終局決定の変更の手続は,一旦確定した従前の手続を再開して続行するものと位置付けておりまして,従前の手続において,抗告審での実質審理がされた場合には,抗告棄却により第一審の決定が確定した場合であっても,第一審の確定した決定に対して変更の申立てを認めることは相当でなく,抗告審の確定した決定に対して変更の申立てをするものとするのが相当と考えられます。   もっとも,28ページの(3)ア(ア)g②の規律により,審理の終局手続を経ることなく即時抗告を却下又は棄却したときは,抗告審での実質審理がされていないため,第一審の確定した終局決定に対して変更の申立てを認めるのが相当と言えます。   そこで,⑤では,再審における民事訴訟法第338条第3項の規律に倣いまして,抗告審において事件につき終局決定をしたときは,実質審理をせずに即時抗告を却下又は棄却したときを除き,第一審の終局決定に対して変更の申立てをすることができないものとする規律を設けております。   なお,⑤の抗告審は,民事訴訟法第338条第3項で控訴審というふうに規定されておりますのと同様に,即時抗告の抗告審の意味であり,特別抗告や許可抗告審を含んでいないと考えられますので,この点を明確にするために,必要な用語の修正を検討したいと考えております。   イの「執行停止の裁判」のところでは,再審における執行停止の裁判の規律に併せて②の規律を加えております。   (3)以降につきましては,以上です。 ○髙橋部会長 これで最後までということになりますが,どこからでも御審議をお願いいたします。 ○山本(和)委員 2点ですけれども,第1点は,即時抗告審における子の陳述の聴取というものがどうかということなのですけれども,返還を命ずる決定に対して,子に即時抗告権を与えたこととの関係なのですが,第一審で申立て却下の決定がなされて,それに対して抗告がなされて,それを変更して,最終的に子の返還を命ずる決定を抗告審でする場合に,子の意見の聴取というものが要らないのかということです。   つまり,第一審が返還を命ずる決定をした場合には,子はそれに対して即時抗告をして,必ず意見を聴いてもらう機会を与えるという趣旨だと思うのですが,この規律は。そうすると,第一審で申立て却下をして,第二審でそれを変更して返還を命ずる場合に,そのままだと子どもはどこにも意見が言えなくなってしまう可能性があるのではないかという気がするのですけれども,そうだとすると,平仄を合わせるというところからすると,そういう場合には子の意見の聴取というのは必要なのではないかという気がするということが第1点です。   それからもう1点は,これは私の読み方が浅いのかもしれないですけれども,特別抗告,許可抗告のところで,それぞれ即時抗告審の規定を準用している,例えば特別抗告だと,28ページの下から2行目辺りのところですけれども,(ア)のaの規定は準用されていないのですけれども,そうすると,子については特別抗告とか許可抗告はできないと理解していいのかどうかということですが,そういう趣旨なのかどうかということです。 ○松田関係官 まず1点目ですが,子の意見の聴取を,原審が申立てを却下した場合の抗告審ですることにしなければならないのではないかという御意見についてですが,子の返還を命ずる場合であるか否かにかかわらず,一審の場合は,基本的に返還拒否の意思ということがあるかないかということで,全くその主張がない場合に,どこまで調査するかというのはありますが,子の意思の確認というのは基本的にはされているというところで,その一審でされていた子の意見の内容を踏まえて,抗告審で,それがそのまま変わっていないと考えるか,もう一度確認したほうがいいと考えるかによって,特に規律がなくても,必要に応じて抗告審で子の意見を改めて聴くということがされるのではないかと思っておりましたが,それでは足りないという御趣旨でしょうか。 ○山本(和)委員 即時抗告をするということは,原決定に,子の意思のみならず他の事項についても,例えば常居所地国に戻った場合に,子が何か耐え難い状況に置かれるとか,そういう認定についても争う機会を与えるということだと思うのです。その認定がおかしいということですね。ですからそれと同じような意味で,意思として戻りたいか戻りたくないかということにとどまらないような意見の表明権というのが認められるのではないかという趣旨です。 ○金子幹事 そうすると,一審と二審とでは違うという理解が前提になるということになりましょうか。一審でも,子どもが返還を命じられるときは,返還拒否事由が明確に主張されていれば,事実上,何らかの形で子の意見を聴くということはあるかもしれませんが,要件としては,そういうものとは別に,子の返還命令をするためには子の陳述を聴くという立て付けにはなっていないわけです。   一審の判断に対して即時抗告をするという規律を入れたことで,抗告審において子の意見を反映するという規範が生じ,即時抗告をしていればともかく,していない場合でも,それに代わるものとして最低限,陳述聴取は必要になったのではないかと,こういうふうに理解してよろしいでしょうか。 ○山本(和)委員 基本的にはそのとおりです。一審では利害関係参加をしない限りは当事者的地位が認められなくて,一種の審理の客体的なことしか認められないわけですが,当然,即時抗告をすることができるという規律を設けたことによって,正に抗告審においては,当事者的な地位を子に認める必要が生じたのではないかという認識を持っているということです。 ○金子幹事 その場合に,即時抗告をしなかったということからして,しようと思えばできたけれどもその権能を行使しなかったので,それに代わって陳述聴取をそういう場合にしなければいけないということでは,必ずしもないようにも思うのですが,その点はどうでしょうか。 ○山本(和)委員 できるのにしなかったという趣旨がよく分からないのですが,子がということですか。 ○金子幹事 子がですね。 ○山本(和)委員 第一審は申立てを却下する決定をしているわけですよね。即時抗告権はないのではないでしょうか。だから,抗告審が第一審を取り消して差し戻して,差戻審で子の返還を命ずる決定がなされれば,子どもはそれに対して即時抗告をして,即時抗告審で自分の意見を述べる機会が与えられるわけですね。そうではなくて,即時抗告審が自判をすると意見が述べられなくなるというのは,ややおかしいのではないかという気がするということです。 ○金子幹事 一審において子の返還の申立てを却下したのに対して,親のほうが即時抗告をしたというときの構造は,一審と同じということではないのですか。 ○山本(和)委員 おっしゃるとおりです。だからそこが一種不整合の状態になっているような気がして,それを子の意見を必ず聴取することによって,実質的には子に意見の陳述の機会を,一種の当事者的な地位みたいなものを与える必要があるのではないかということです。 ○髙橋部会長 問題の詳細は分かったつもりですので,即答はできませんので検討させてください。   もう一つ質問がありましたね。 ○松田関係官 もう1点の御質問ですが,例えば特別抗告のほうの,部会資料13で言いますと28ページのcの①のところで,確かに同じ規律を設けるとしているものの中に,ア(ア)のaは引用していないのですけれども,これはア(ア)のaの代わりに,特別抗告の場合は,28ページの(イ)のaの①が,「誰が」とは書いていないですけれども,どういう場合に特別抗告をすることができるのかと書いてありますので,これに加えて(ア)aと同様の規律を設けるとしてしまいますと,(イ)a①の規律とバッティングしてしまうことになるのではないかと思いまして,(ア)aのほうは同様の規律を設けるものとして引用していないという整理です。子どもが特別抗告をできるかどうかなのですが,(イ)aの①のところで,これに該当するとすれば子どももできるのではないかと考えておりまして,そのため,26ページのア(ア)のbのところでは,①を除くとしているだけで,②,③は同じ規律を設けるとしていまして,子どもについてもここでは手当てしているので,その趣旨はこれで分かるのではないかと考え,特に子について特別抗告権の有無まで書かなくてもと考えているのがここでの提案になります。 ○山本(和)委員 法制的なことなのかもしれませんが,なぜ当然そうなるのかというのがよく分かりません。即時抗告と特別抗告は別の抗告の制度だというのがこの仕切りだと思いますので,即時抗告に子ができると書いてあるからといって,当然そうなるのか。また,bの②を準用したとしても,それは読み方によっては,この部分は空振りになるだけという読み方もあり得るので,その実質であればその実質に即したように書いていただければ,後はお任せしますが。 ○髙橋部会長 ありがとうございます。 ○磯谷幹事 意味を確認したいのですが,終局決定の変更のところで,新たに入れられました32ページ上のほうの⑤ところですが,これは,例えば第一審で返還命令を出して,その後,即時抗告がなされたけれども,即時抗告審のほうもそれを維持して確定した場合に,ところがその後,この返還命令を維持することが不当ということになった場合は,どういう対応になるということでしょうか。 ○松田関係官 一審で返還命令が出て,それに対して即時抗告があって,抗告審もそれを維持した場合に,抗告審で即時抗告を受けて実質審理をして,一審の判断が妥当ということで即時抗告を棄却すると,そういう判断をした場合は,第一審の返還命令が確定することになるわけですけれども,その事後的にその返還命令が不当だということになった場合に,変更の申立てをする先は抗告審をしていた高等裁判所という整理です。抗告審がもう既に実質審理をして判断していますので,返還命令を維持することでよしという最終的な判断をしたところに対して変更の申立てをするという整理です。ただ,第一審が返還命令を出した後,即時抗告があって,その即時抗告が不適法なり理由がないことが明らかだということで,直ちに却下したり棄却したりということであったときは,抗告審で実質審理をしていないので,その場合は第一審裁判所である家庭裁判所のほうに変更の申立てをすると,そういう整理になります。 ○山本(克)委員 即時抗告審の終局決定の結論が申立ての却下だと。取り消して自判で却下なのか維持したのかはともかくとして,結論的に却下したとしますね。その場合に,それに対して許可抗告の申立てがあり,高裁が許可をしたとしますと,そのときに申立て却下の裁判はもう確定しているのですか。 ○松田関係官 許可抗告の関係では,確定遮断効はないというふうに整理していますので,抗告審で裁判をした段階で確定するのではないかと考えております。 ○山本(克)委員 確定しているということですか。 ○松田関係官 はい。 ○山本(克)委員 そうすると,今日の出国禁止命令との関係では,即時抗告審の裁判の告知があった段階で失効するということになりますね。最高裁で逆転したときに,何か妙な感じがするのですが。 ○松田関係官 確かに問題はあるようにも思われますので,どちらの方向で工夫できるかは分かりませんが,検討したいと思います。 ○髙橋部会長 不服申立てのところに限定せず,全体で結構ですが。 ○山本(克)委員 同じことばかり申し上げて申し訳ないですが,19ページの一番下のところに戻らせていただきたいのですが,①で「職権で事実の調査をし」とし,証拠調べについては「申立てにより又は職権で」となっているということは,事実の調査については申立てによる事実調査は認めないと,当事者に事実調査についての申立権はないという理解でよろしいわけですね。 ○松田関係官 現在の案ではそういう整理になっております。 ○山本(克)委員 そうした場合に,先ほどの②で,資料の中に事実調査の対象物の提出ということを入れるという意味が,もう一つよく分からないです。つまり,事実調査を職権で命じた場合に,それに協力するというのは当たり前で,こんなところに書かなくても当然のことだと思うのです。ということは,事実調査の対象物を提出するということに申立権を含んでいると考えないと,何のために規定を置いたか分からないような気がするのですが,申立権の有無と提出との関係をもう少し整理していただければと思います。 ○金子幹事 おっしゃるとおりと思っていまして,提出の意味が,裁判で心証に使えるようにするためには,当事者から提出されたものについて更に職権での事実の調査を経て,初めてそれが裁判資料になると,心証に使えるという意味での裁判資料になるという前提の下では,②でせっかく当事者が提出するという規律を入れた意味がかなり怪しくなってくると思います。この辺は少し整理が必要かと思っています。 ○山本(和)委員 39ページの最後の雑則のただし書のところですけれども,「子の返還の申立てを却下した場合は,この限りでない」ということの趣旨なのですが,文字どおり読むと,却下されたけれども,即時抗告がされている場合はこれには含まれないという,家事事件については裁判してもいいということになりそうな感じがするのですが,趣旨としてはそういうことでしょうか。それとも,申立て却下決定が確定した場合という理解でよろしいでしょうか。 ○佐野関係官 条約の趣旨から言うと,申立て却下が確定したという後者のほうかと考えております。 ○村上幹事 同じく雑則の家事事件の取扱いについて,ちょっとイメージが湧かなくて分からないところが多いのですが,まず,「通知されたとき」というのは,中央当局からの通知という趣旨でしょうかというのが1点。   それから,「裁判をしてはならない」というのは,手続自体を止めるという意味なのか,最終的な判断を下してはならないという意味なのか,どちらか。   最後に,「子の返還の申立てが相当の期間内にされない場合」という「相当の期間内」というのはどれぐらいの期間で,それを相当の期間内だと判断するのは,家事事件が係属している裁判所が勝手に判断していいものなのかどうか,その辺りがイメージがよくつかめなくて,教えていただきたい。 ○佐野関係官 条約の解釈にも関わるところもあるので,一概には言えないのですけれども,「通知されたとき」というのは,中央当局からの通知もありますし,また当事者自らが,私は連れ去られましたと通知することも,両方あり得ると思います。   二つ目の,「裁判をしてはならないものとする」というのは,最終的な決定,判断をしてはならないという意味で,審理を進めること自体は特段,条約上の文言等で否定はされていないと考えています。   三つ目の「相当の期間内にされない場合」ですけれども,これが何日かというのは言いづらいのですけれども,事案とか内容に鑑み,当事者の合理的な行動に鑑み,連れ去りがされて,中央当局からの援助等々もされた後なのに全然申立てをしていないというのは,相当な期間内にされないと認定されるのではないか。その認定の判断者としては,本案が係属している家庭裁判所ということにならざるを得ないのではないかと思います。 ○村上幹事 そうすると,連れ去りが不法かどうかというのは,家事事件が係属している裁判所が判断するということですか。中央当局から通知があったときはまだしも,当事者が,申立人とかが主張している場合は,不法の認定というのは,家事事件が係属している裁判所がするということなのでしょうか。 ○佐野関係官 他に判断できる裁判所としては,具体的な手続が想定されないので,そうならざるを得ないのではないかと思います。 ○村上幹事 もう1点,中央当局からの通知があるというのが前提での質問にはなるかと思うのですが,通知をする先というのは家事事件が係属している裁判所に限られるのですか。想定される場合としては,外国の子の監護裁判あるいは引渡しの裁判の執行判決請求訴訟が係属しているということも考えられるのかなと思うのですが,そちらについてはここでは特に規律の対象にはしないということになるのでしょうか。 ○佐野関係官 民事執行法上の訴えについてですね。 ○村上幹事 今,元々ある,子を連れ去られた親のほうが外国の裁判を日本で承認・執行してほしいという,そういう手続です。 ○大谷委員 今,通知先の裁判所はどこかという形で質問されたのですけれども,元々条約第16条の規律との関係で,条約の解釈に関わることですが,この部会の1回目ぐらいにも御議論があったのですが,私の理解では,今のような事例の場合に,今,例に挙げられたような場合に,LBPのほうはハーグ条約に基づく返還手続もできますけれども,それ以外の外国判決を持ってきて,その承認・執行という形で子の返還を求めることが制限されるわけではないので,それは条約第16条の規律にそもそも係らないと理解をしています。   ですので,ここで言っているのは,飽くまで子の親権者あるいは監護者の指定,本案を日本の裁判所ですることを止めるという,そういう場合ですから,今のような場合に,たまたま何かそういう手続があって,特に今の事例ですと,一般的にはLBPが止めたいのだと思うのですが,そういう不法な連れ去り,留置があったということが仮に通知されたとしても,通知される場面は想定しにくいのですけれども,LBPが自分でやっていますから,裁判所がそれを知ったとしても,止めなくてはいけない場合に当たらないのではないかと思っています。ただ,もう少し正確な条約の解釈があればお願いしたいのですけれども。 ○近藤委員 確認なのですけれども,先ほど,子について不法な連れ去り又は留置があったという,その判断をどこがするのかということについて,子の監護に関する処分等をやっている家庭裁判所だとおっしゃったように聞こえたのですけれども,その判断というのはどういうことを指しておられるのですか。 ○佐野関係官 ここでその内容まで,監護権侵害があったかという,具体的に不法性を認定するという趣旨ではありませんで,条約の理解というのが,不法に連れ去られ又は留置されている旨の通知を受領したということですので,そういうことの伝達があったかどうかです。 ○近藤委員 そうですよね。要するに通知があったということですよね。不法かどうかの判断ではないということでよろしいですよね。 ○佐野関係官 はい。この通知が飽くまで不法な連れ去りということをきちんと書いているものかどうかという判断という趣旨です。ちょっと誤解があったかもしれません。 ○棚村委員 先ほどの外国の判決とか決定の承認・執行とか,それから人身保護の手続という場合には,ハーグ条約第19条でもって,ここでの返還手続で,例えば本案というか,子どもがどこで暮らすかみたいなことに関わるようなことは裁判はできませんと規定され,停止するのですよといったことと,それから,第18条ではそれ以外の司法とか行政の返還手続については特に妨げないという,ハーグ条約自体は併存的な手続になっているので,例えば,奪われたほうが人身保護手続を行うとか,承認・執行を求めて訴訟するということについては,成り立ち得るのではないですか。ただ,判断が抵触することによって調整が困難な事態ということは,起こり得なくはないので,それは後で調整が必要にはなってくるかもしれませんけれども,手続上は,大谷委員が言ったように可能なのではないかと思うのです。   飽くまでもここで言う本案というのは,親権の帰属とか決定とか変更とかという本体の問題について,家事事件という形で係属した場合には,抵触しない範囲でそこでは調整をするという形なのではないかと思います。要するに,本来は元の居住国でやるべきことについては,このハーグ条約の返還手続とか関連したところではやらない。特に家庭裁判所が管轄を持つわけですから,基本的にはしない。だけれども,それ以外の裁判所での司法手続の在り方については,特に併存するという考え方が条約の一般的な考え方になるのではないかと考えているのですがいかがですか。 ○髙橋部会長 御指摘の点,少し詰めてみますが,他にいかがでしょうか。   事務局から聞いておきたいことで漏れていることはありますか。特にいいですか。   それでは,審議を終えまして,次回の予定等に入ります。 ○金子幹事 それでは,次回の日程について御連絡いたします。   次回,第12回の会議ですけれども,1月23日月曜日,1週間後です。場所はこの大会議室になります。開始の時刻ですけれども,大分宿題も頂いていますので,15時30分からということでいかがでしょうか。 ○髙橋部会長 3時半開始で,要綱案をもう一回見直して,次回が最終決定に至ることができればと思います。   それでは,本日の部会を閉会にさせていただきます。本日も熱心な御審議,どうもありがとうございました。 -了-