法制審議会 第147回会議 議事録 第1 日 時  平成17年10月6日(木)  自 午後1時34分                        至 午後3時49分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題   1 犯人から財産犯等の犯罪収益をはく奪しこれを被害回復に充てるための法整備に関す    る諮問第73号について   2 戸籍の在り方に関する諮問第74号について   3 罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する諮問第75号について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事  (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。)   法制審議会第147回会議の開催に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。   当審議会におきましては,皆様方の御尽力により,既に多くの重要な案件につきまして御答申をいただき,また,現在も多数の諮問事項について調査審議をいただいているところでございます。この機会に,皆様方の御労苦に対し厚く御礼を申し上げます。   さて,本日御審議をお願いする議題の第1は,既に諮問がされている事項についてでございます。   この諮問事項につきましては,刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会におきまして,本年9月,「犯人からの財産犯等の犯罪収益をはく奪し,これを被害回復に充てるための法整備に関する要綱(骨子)案」が決定され,本日報告がされるものと承知いたしております。   犯人からの犯罪収益のはく奪と財産犯等の被害者の財産的被害の回復を一層充実させるために早急な法整備が必要であると考えておりますので,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。   次に,新たに2つの事項につきまして,御検討をお願いしたいと存じております。   まず,議題の第2は,戸籍の公開の在り方に関する諮問第74号についてでございます。   戸籍は日本国民の身分関係を登録・公証する制度でありますが,戸籍の公開の仕組みにつきましては,昭和51年に改正されまして以来,その見直しがなされないまま現在に至っております。しかし,本年4月から個人情報の保護に関する法律等が施行されるなど,個人に関する情報の保護に対する国民の意識が高まっており,戸籍の公開の在り方につきましても,見直しを行うことが必要となっております。そこで,個人に関する情報を保護する観点から,戸籍及び除かれた戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができる場合を制限するとともに,当該交付請求に際しましては,本人確認を行うなど,戸籍公開制度の在り方について御検討をお願いし,併せて,戸籍に真実でない記載がされるのを防止するため,戸籍の届出をする者の本人確認を行うことにつきましても,御検討をお願いするものでございます。   最後になりますが,第3は,罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する諮問第75号でございます。   財産犯の一部や公務執行妨害罪に選択刑として罰金刑を導入することなどにつきましては,平成16年の第161回国会も含め,かねて国会から検討のお求めがあり,法務省におきましても,検討を継続しておりましたところ,最近の公務執行妨害罪や窃盗罪,特に万引き事犯の検挙件数の増加傾向は極めて顕著となっております。また,これに加えまして,業務上過失致死傷罪の罰金刑につきまして,法定刑の上限である50万円が科せられる事件の割合が増加しております。   そこで,これらの各罪等に適切に対処するため,早急に,罰金刑を新設するなどその法定刑を改正するとともに,財産刑に関する手続規定を整備することが必要と思われますので,そのための御検討をお願いするものでございます。   それでは,これらの議題につきまして,どうぞよろしく御審議をお願いしたいと思います。  (法務大臣の退席後,委員・幹事の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた。)   先ほどの法務大臣あいさつにもございましたように,本日は,  1 犯人から財産犯等の犯罪収益をはく奪しこれを被害回復に充てるための法整備に関する 諮問第73号について  2 戸籍の公開の在り方に関する諮問第74号について  3 罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する諮問第75号について   以上の審議事項につきまして御審議いただきたいと存じます。   委員,幹事の皆様には,十分に御審議いただくことは当然でございますが,議事の進行にも御協力いただき,各審議事項の決定を行いたいと思っておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。   それでは,審議に入らせていただきます。   本日の第1の議題であります,犯人から財産犯等の犯罪収益をはく奪しこれを被害回復に充てるための法整備に関する諮問第73号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず,刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもいらっしゃいます○○部会長から御報告をお願いいたしたいと思います。 ● 刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会長の○○でございます。私から,当部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。   諮問第73号は,犯罪収益のはく奪及び犯罪の被害者の保護を一層充実させるため,犯人から財産犯等の犯罪収益をはく奪することを可能にするとともに,これを被害者の被害回復に充てるための法整備をする必要があると思われるので,要綱(骨子)について意見を求めるというものでございました。犯罪被害者に国が金銭を支給する制度としては,現在,「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」により,人の生命・身体を害する犯罪行為による被害について,その遺族や被害者に対して国が給付金を支給するという制度が存在しますが,同諮問は,詐欺,窃盗,出資法違反などといった財産犯等により生じた財産的な被害について,これにより犯人が得た犯罪収益をはく奪した上で,これを用いて,被害者の被害回復を図ることとするものでありました。   本審議会は,7月21日に開催の第145回会議におきまして,同諮問について,まず部会に検討させる旨の決定をされましたところ,これを受けまして,刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会が設けられ,部会では8月3日,9月5日と9月13日の3回にわたって審議をいたしました。部会におきましては,諮問に付された要綱(骨子)について審議が進められ,これを一部修正の上,全会一致により,本日,配布資料刑1としてお手元に配布しました要綱(骨子)のとおり法整備をすることが相当であるとの結論に達しました。   それでは,刑事法部会における議論の概要につきまして,御説明申し上げます。議論の概要と併せて部会における修正点を御説明させていただきたいと存じますので,配布資料のうち,要綱(骨子)の後に添付されている要綱(骨子)新旧対照表も御参照いただければと思います。   今回の制度の骨子は,現行の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律,いわゆる「組織的犯罪処罰法」において,犯罪被害財産,すなわち詐欺,窃盗,出資法違反等のいわゆる財産犯等の犯罪行為により被害者から得た財産については,没収・追徴が禁止されているところ,そのような財産犯等が組織的な態様で行われたり,犯罪被害財産がマネー・ローンダリング行為により隠匿等がなされた場合には,その禁止を解除し,没収・追徴を可能とした上で,没収・追徴した財産を被害者の救済という政策的な観点から,当該財産犯等の被害者に支給するというものでございました。   その具体的内容は,おおむね第145回会議において刑事局長から説明があったとおりでございますので,以下,部会での議論の概要を御説明いたします。   まず,要綱(骨子)第一について御説明いたします。   ただいま少し触れましたように,犯罪被害財産につきましては,被害者の犯人に対する損害賠償請求権などの私法上の請求権の実現を優先させるため,組織的犯罪処罰法第13条第2項において,同条第1項により任意的に没収すべきこととされている財産につき,「犯罪被害財産であるときは,これを没収することができない。」と規定され,また,同法第16条第1項ただし書において,没収すべき財産の任意的追徴を定めている同項本文の規定を受けて,「当該財産が犯罪被害財産であるときは,この限りでない。」と規定され,その没収・追徴が禁止されております。しかし,そのような財産犯等の犯罪行為が組織的な態様で行われた場合や,マネー・ローンダリング行為により犯罪被害財産の隠匿等をして,その追求を困難にさせたような場合には,被害者はそのような請求権の行使をためらったり,適切な者にこれを行使することが困難な状況に置かれることとなり,そのため,犯人に対する損害賠償請求権などが十分に行使されず,結果として,犯人に不法な利益を保有させることにもなりかねません。   諮問に付された要綱(骨子)の第一は,こうした点にかんがみ,主に組織犯罪やマネー・ローンダリング行為が行われた場合を想定して,「犯罪の性質又は犯罪被害財産の管理若しくは処分の状況に照らし当該犯罪の被害を受けた者が犯人に対する損害賠償請求権その他の請求権を行使することが困難であると認められるとき」に,犯罪被害財産の没収・追徴の禁止を解除することとするものでありました。   この要綱(骨子)第一につきましては,部会において,まず,そもそも犯罪被害財産の没収・追徴の禁止を解除することを,主にそのような組織犯罪やマネー・ローンダリング行為が行われた場合に限ることとすることの当否が議論されました。   この点につきましては、もとより,犯罪被害財産の没収・追徴を全面的に可能にするという考え方もあり得ないわけではないものの,現行法が犯罪被害財産の没収・追徴を禁止しているのは,被害者の私法上の請求権の実現を優先させるとともに,あらゆる犯罪被害財産を没収・追徴して被害回復に充てることとすると,かえって民事手続による迅速・直截的な被害回復が妨げられたり,民事上の権利関係が事実上捜査や公判での審理の対象となることにより,本来は民事でなされるべき私権の実現が刑事手続への負担に転嫁することにもなりかねないという考慮に基づくものであると考えられることなどにかんがみ,やはり,組織犯罪やマネー・ローンダリング行為が行われた場合のように,被害者による私法上の請求権の行使を困難にするような事情がある場合について,犯罪被害財産の没収・追徴の禁止を解除し,これにより現在生じている問題に適切に対処することとするのが適当である旨の意見が示され,結局,諮問に付された要綱(骨子)の原案の基本的な考え方が維持されることになりました。   また,そのような被害者による私法上の請求権行使の困難性を判断するに当たっては,犯罪の性質や犯罪被害財産の管理又は処分の状況だけでなく,例えば,現に犯人が被害弁償を行っているとか,被害者が犯人に対して民事訴訟を提起しているといった事情がある場合には,被害者の民事上の被害回復を優先させるため,犯罪被害財産の没収・追徴を控える必要があると考えられることから,こうした事情を犯罪被害財産の没収・追徴をする際の法律上の要件とする必要があるのではないかということが議論されました。   この点につきましては,犯罪被害財産の没収・追徴の当否は,刑事裁判において判断されるものであるところ,民事上の被害回復措置の状況のように,刑事裁判における審理の対象となることが当然に予定されているものではない事項を没収・追徴の要件とすることには困難があるのではないかとの意見が示されたほか、民事手続との関係に関しては,被害者自らが犯人の財産について仮差押え等の手続をとっておけば,当該手続の前に没収保全がなされていない限り裁判所は没収の裁判をすることができなくなり,また,追徴の裁判があっても,その被害者は国と同等の立場で当該財産から債権回収を図ることができることとなっているなど,一定の調整がなされている上,仮に没収保全が被害者の仮差押え等に先行することになったとしても,被害者は私法上の請求権を自ら実現することが原則であり,実際に被害回復措置が採られている状況を検察官において把握した場合には,没収・追徴の求刑を裁量的に控えるという形で民事上の措置に配慮することも可能であって,それが制度的にも無理のないものではないか,との意見が示され,結局,民事上の被害回復措置の状況を請求権行使の困難性の判断に当たっての考慮要素とはしませんでした。   なお,以上の議論を前提とした上で,要綱(骨子)第一の原案は,文言上は「犯罪の性質又は犯罪被害財産の管理若しくは処分の状況に照らし」とされているだけであり,組織犯罪やマネー・ローンダリング行為を主な対象としていることが必ずしも一義的に明確であるとはいえませんでしたので,第一の一の1にイ,ロ及びハを設け,犯罪被害財産の没収が可能となる場合をより具体的に明らかに規定するための修正が行われました。   このうち,イは,犯罪被害財産の没収を可能とする場合のうち,犯罪の性質に照らし被害者の請求権行使が困難であると認められる場合の規定ですが,その内容をより具体的に明らかにするため,前段において,組織的犯罪について規定する組織的犯罪処罰法第3条等の規定を参考として,犯罪被害財産を得る原因となった犯罪行為が組織的な態様で行われるなどした場合を例示として挙げることとされました。   また,ロ及びハは,原案では,「犯罪被害財産の管理若しくは処分の状況に照らし」被害者の請求権行使が困難であると認められる場合としていた部分でありますが,犯罪被害財産についてマネー・ローンダリング行為が行われた場合を指すものであることをより明確にするため,犯罪収益等の仮装・隠匿罪について規定する組織的犯罪処罰法第10条及び犯罪収益等収受罪について規定する同法第11条の規定を参考にしつつ,ロ及びハとして,類型化されたものです。   さらに,以上の修正に併せて,若干の技術的な修正が行われておりますが,実質的な修正ではございませんので,御説明を省略させていただきます。   次に,要綱(骨子)原案においては,被害者に支給される金銭は単に「給付金」とされていましたが,本制度において支給される金銭は,元々は被害者に由来する財産であり,その被害の回復に充てるものであることにかんがみ,そのような趣旨の給付金であることを明らかにすることがより適切であると考えられたことから,その名称が「被害回復給付金」に改められました。   次に,要綱(骨子)第二について御説明いたします。   要綱(骨子)第二は,被害回復給付金の支給手続に関する規定でありますが、部会におきましては,まず,要綱(骨子)原案の第二の一の2が,没収・追徴の理由とされた事実に係る財産犯等の犯罪行為の被害者に加え,「これと一連の犯行として行われた」財産犯等の犯罪行為の被害者についても,被害回復給付金の支給を申請することができる者としていることの当否が議論となりました。   この点につきましては,検察官の起訴においては,社会的に見れば一連の犯行と認められる事実の中から,証拠の内容等を踏まえて,一定の絞り込みがなされることもあり,このような考慮により刑事裁判においては認定されるに至らなかった事実の被害者についても,刑事裁判において認定された事実の被害者と同等の立場にあった者と評価することができ,救済の対象とすることが合理的であると考えること,他方,救済対象を広げすぎますと,この支給手続は限られた財産を原資とするものであるため,被害者の救済の実効性に乏しくなりかねず,また,その資格の審査に相当な時間と手間を要して,迅速かつ確実に支給を実施することが困難になること,などを考慮すると,やはり「一連の犯行として行われた」財産犯等の犯罪行為の被害者を支給の申請をすることができる者とすることに合理性があるなどの意見が示され,結局,要綱(骨子)の原案の基本的な考え方が維持されることになりました。   次に,被害回復給付金の支給の対象となる犯罪行為の範囲を設定するに当たっての検察官の裁量と,これを踏まえた要綱(骨子)の規定振りについて議論が行われました。   この点につきましては,被害回復給付金の支給の対象となる犯罪行為の範囲は,基本的には,捜査の結果や有罪認定に用いられた資料に基づいて,おのずと一定の範囲が画される性質のものであると考えられるものの,最終的には,社会事象として見て一連の犯行といえるものであるかどうかという評価にゆだねられる余地を否定しきれないことから,一定程度の検察官の合理的な裁量が認められることになるのではないかとの意見が示され,このような理解自体については特段の異論はございませんでした。   部会での議論では,そのような考え方を前提としつつも,要綱(骨子)原案の第二の一の2のように検察官の手続を中心とした書き方とすると,検察官の裁量が必要以上に広範囲に認められるように見えてしまうのではないかとの意見が出されました。   この点につきましては,そのような意見を受けて,原案では要綱(骨子)第二の二の1に置いておりました被害回復給付金の支給を申請することができる者を定める規定を第二の一の2に移動し,いかなる犯罪行為の被害者がこれに該当するかをまず明らかにするとともに,その後に第二の一の3として,当該犯罪行為の範囲を検察官が定めるべきこと,またその際に考慮すべき事情を規定し,当該犯罪行為の範囲が検察官の自由な裁量に基づいて定められるわけではないことを明らかにするように改められたところでございます。   なお,以上の修正に併せて,更に何点か修正を行っておりますが,形式的・細目的な修正でありますので,説明を省略させていただきたいと思います。   次に部会での議論におきましては,犯罪被害者には国に対し被害回復給付金の支給を求める権利があり,国にはこれを支給する責務があることを明記すべきであるとの意見も出されました。   この意見は,そのような権利を明記することにより,国が把握していない被害者の所在を可能な限り確認して申請を促していくべきであるという考え方や,支給手続の終了後に資金に残余がある場合には,新たに判明した被害者にも被害回復給付金を支給すべきことが根拠付けられるのではないかという考え方に基づくものでありますが,この点については,被害回復給付金の支給を申請することができる者の範囲は,本制度における救済の対象とするのが相当であるか否かという観点から政策的に画されたものであり,そのような範囲の者に限って他の被害者にはない権利を有すると説明することは困難なのではないか,また,新たな被害者が判明した場合の措置などの問題は,抽象的な権利の有無とは別に検討されるべき問題であり,むしろそのような権利があるものと構成すると,支給手続終了後に資金に残余がなくても,申請期間後に現れた被害者のために手続をやり直すべきであるということにもなってしまうのではないか,などといった反論が出され,結局,そのような抽象的な権利を明記するという考え方は,採用されるには至りませんでした。   国が被害者の所在を可能な限り確認して申請を促していくべきであるという考え方に関連しては,要綱(骨子)原案の第二の三の2,修正案では第二の二の2の公私の団体等への照会権限を行使する要件について,原案のように「裁定を行うため」に必要な場合だけでなく,被害者の所在確認を積極的に行うために必要がある場合にも行使できるような要件に改めるべきであるとの意見も出されました。   国がそのような活動を行うべきとの考え方については,行政効率の観点からしても疑問がある上,場合によっては,申請の意思を有していない被害者の個人情報を国が不必要に把握し,その私生活の平穏を害することとなるのは適当でないと考えられることから,本制度において,国がそのような活動を行うことを当然に予定しているものと理解するべきではなく,被害者への周知は,基本的には広報活動の充実によって行われるべきであるとの反論もあり,結局,そのような考え方自体は採用されるには至りませんでしたが,他方,照会権限については,例えば,いわゆるヤミ金融事件において,立件されなかった余罪の事実に係る店舗の所在地などを貸金業登録事実の照会により把握するなど,被害回復給付金の支給の対象とすべき一連の犯行として行われた対象犯罪行為の範囲を定めて公告するに当たり,照会権限を活用すべき場合や,知れている被害者の転居先を調査するなどの場合に行使されることも想定されることから,照会権限を行使し得る要件をより適切なものとするため,要綱(骨子)原案の「1の裁定を行うため」という文言を,「支給手続の事務を行うため」という文言に改めることとされました。   なお,本審議会の委員から,被害者の申請に資するよう消費生活センターなどに情報の提供をすることについて御意見をお寄せいただいたことから,部会でもその内容を紹介したところ,その御意見を引用しつつ,制度の運用上,そのような形で被害者への周知を図ることも考えられるなどといった議論もありましたので,併せて御報告させていただきます。   また,支給手続の終了後に給付資金に残余がある場合には,新たに判明した被害者にも被害回復給付金を支給すべきであるという意見につきましては,本制度においては,手続の当初から,事案の規模や給付資金の額などの事情に応じ,想定し得る被害者が申請を行うのに十分な長さの申請期間を定めることを予定してはいるものの,定められた申請期間内に申請をした者に被害回復給付金を支給してなお給付資金に相当の残余が生じるという場合には,当該給付資金の残額の限度で,当該申請期間内に申請をすることができなかった者にも,例外的に被害回復給付金を支給することができるようにすることには,犯罪被害者の救済の観点から一定の合理性が認められるのではないかとの考え方に基づき,当該意見を採用することとなりました。   要綱(骨子)の修正案の欄の第二の三の4を御覧いただきたいと思いますが,その採用により,当初の手続における被害回復給付金の支給により給付資金に残余が生ずる場合には,当該給付資金の残額から,当初定められた申請期間内に申請をしなかった者に対する被害回復給付金の支給を可能とする手続を設けるものとする旨が追加されることになりました。   なお,この点に関連して,給付資金の残額が一般会計の歳入に繰り入れられた後であっても,当該残額の範囲内で,新たに判明した被害者に対して被害回復給付金を支給することとすべきであるとの意見も出されましたが,この点については,いったん一般会計に繰り入れられた財産からの支出は,改めて歳出予算として措置することになるところ,その場合には,申請に遅れた被害者の財産的被害の回復という施策が当然にその他の種々の被害者を救済するための施策に優先するということにはならないのではないかといった反論もあり,採用されるには至りませんでした。   また,被害回復給付金の支給を申請することができる額について,要綱(骨子)原案の第二の二の2は,対象犯罪行為により失った財産の価額とされておりますが,部会においては,これに加えて,申請手続のために要した弁護士費用や精神的被害を根拠とする慰謝料をも申請し得ることとすべきであるとの意見が出されました。   この点につきましては,本制度が財産犯等の犯罪行為により犯人が被害者から得た財産を没収・追徴して財源にするものであることからすれば,被害者が失った財産に相当するものを支給するという考え方が基本的には妥当なのではないか,また,本制度のように複数の被害者に対する支給が想定されている制度においては,慰謝料のように個別の主観的事情に応じて異なるものを対象とするのには馴染まないのではないか,といった反論もあり,採用されるには至りませんでした。   以上のほか,要綱(骨子)の第二につきましては,支給手続の事務のうち一定のものを弁護士に行わせることができることとする旨を定めた要綱(骨子)の原案の四の1,修正案では三の一の規定が修正され,弁護士に行わせることができる事務が,原案では「裁定その他一定の事務」とされていたのに対し,修正案では「裁定のための審査その他一定の事務」に改められ,被害回復給付金の裁定そのものについては,検察官が自ら行わなければならない事務とされました。   これは,被害回復給付金の裁定は,被害者に対するその支給の可否等を決定するものであり,国に帰属する財産の支出の可否等を決定するという性質をも有する重要な公権力の行使に当たる行政作用であることなどが考慮されたことなどに基づくものです。   なお,不服申立制度につきましては,要綱(骨子)では,不服申立制度を設ける旨の規定を置いているのみでありますが,部会におきましては,基本的には,行政事件訴訟によって行われるべきであること,また,そのことを前提とした上で,被害回復給付金の迅速な支給に資するような解決が可能になる仕組みを検討すべきであるとの意見が示されたことにつきましても併せて御報告させていただきます。   以上のほか,要綱(骨子)そのものに関する議論ではありませんが,部会においては,犯罪被害者の救済のためには,本制度とは別に,犯罪被害者による民事上の被害回復を容易にするための施策を検討すべきこととする意見や,支給手続終了後に給付資金に残余が生じた際には,当該残余の額を基金として犯罪被害者のための施策に充てることを検討すべきこととする意見があったものの,いずれの点についても,政府の関係機関にまたがる多角的な見地からの検討が必要な問題であり,本部会における検討には馴染まないのではないかとの指摘もあり,部会においては本格的な検討を行うには至りませんでしたが,そのような意見があったことを併せて御報告させていただきます。   概略,以上のような審議に基づき,諮問第73号については,要綱(骨子)のような法整備を行うことが相当である旨が決定されました。   部会において,以上のような修正がなされましたのは,部会委員による多くの貴重な意見の表明と具体的な提案がなされたためであり,その結果として,全会一致により決定がなされることとなりました。   以上で,当部会における審議の経過及び結果の報告を終わります。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの○○部会長の御報告及び報告案の全般的な点につきまして,まず,御質問がございましたら御発言をいただきたいと思います。   はい,どうぞ。 ● 私は民事手続法をやっておりますので,この部会で扱う刑事手続等から見ますと門外漢でありまして,誤解もあるかと思いますが,御質問をさせていただきたいと思います。   財産犯についての犯罪被害財産については,これまで,今御報告にありましたように組織犯罪処罰法の13条,あるいは16条によって,没収あるいは追徴ができないというふうにされていたものを,今度はこれを没収し追徴し,それを犯罪被害者の被害を回復するために支給するという全体のスキームは,民事手続から見ましても,被害者の救済という点で,大変全体的なスキームは結構ではないかというふうに思っております。   その上で,少し細かなことを質問させていただきます。   部会長の報告で先ほど,支給金に対する権利性ということの関係でございますが,これは生命・身体を侵害された場合の給付金の支給などとはかなり違った手続であろうというふうに考えております。そちらの方は,国庫から税金で払われるものであるのに対しまして,こちらは元々犯罪被害者が拠出--だまし取られた財産を支払の原資とするものでありますから,かなり権利性といいますか--権利というと難しいのですが,生命・身体等の場合の被害者救済とは異なる性質のものではないかというふうに考えております。そこで,民事救済と民事の損害賠償請求権とこの手続による支給金との関係,という観点から御質問させていただきたいわけでございますけれども。   先ほどの犯罪被害者等給付金の支給に関する法律の8条によりますと,この支給金を受けた場合には損害賠償請求権は減額されるという規定がございます。そして,国庫が犯人に対する損害賠償請求権を取得するんだということになっていると。多分それはこちらの方も同じだと,私は思っているのですが,そういたしますと,逆に,先に民事救済手続で救済が一部受けられたというと,その分は減額して請求するのかどうかということです。   具体的には,例えば,この要綱案の第二の一の5でございますけれども,そこで被害回復給付金の支給を申請することができる額が対象犯罪行為によって失った財産の価額と書いてありますが,失った財産,例えば500万円だまし取られたというのが失った財産だと思いますが,その被害者が民事救済手続で,例えば損賠賠償で仮差押え,あるいは何かで200万円救済を受けたとすると,この失った財産の価額というのはその分は当然減額されて残りだけ請求するのだと,これをこの文章からは読み取れますが,そういう解釈でよろしいのかと。つまり民事救済と刑事救済は二重で行使できるわけではなくて,被害者の救済としては両方が補完的なものであるという解釈でよろしいのかどうか,ということを確かめておきたいと思います。   第2点でございますが,被害者の方が,犯人が持っている財産に対して仮差押えをするということが考えられると思います。犯罪被害財産は必ずしも金銭ではなくて,それが形を変えて金塊になっていたり銀行預金になっていたり,場合によっては不動産に形を変えているということもあるだろうと思うんです。その場合に被害者が民事上の救済として仮差押えをかけたというと,先ほどの御説明で,そういうものが先行している場合には検察官は裁量的にそういうものを没収しないというようなお話でございました。それは確かにこの組織的犯罪処罰法の37条とか40条で,仮差押えと没収保全との関係からみますと,先に差押えをしている--差押え先着主義といいますか、民事手続で先に手をつければ刑事手続は引っ込むと。刑事手続が先行していれば民事手続は引っ込めというような思想のようでございますので,本件の場合も,被害者がそういうことをするかどうかはともかく,民事の仮差押えで財産を先に押さえてしまったというと、多分この刑事手続の方は没収はしないんだろうと思うんですね。   それを前提として,その場合に,被害の額が500万円であると。しかし,犯罪被害財産は1億円の不動産であるというふうにしますと,それはもちろん1億円の不動産でも500万円の被害額で押さえられるわけですが,その分は全然没収しないのか,それとも部分的な没収というのか,あるいは追徴というのか,その辺のところをちょっとお伺いさせていただければという,これは刑事の没収や追徴のことを知らない者からの素朴な質問ということでお考えいただければと思います。   それから第3点は,これも先ほど御説明が既にあったところですが,このスキームは,被害者に公告をしたり知れたる債権者に通知をしたりして,被害額は幾らかということを届けさせることを前提として,その債権を検察官が裁定して債権額に応じて割合的に弁済をすると,そういう意味では割合,破産法,破産手続などに近い手続だと思います。   そういたしますと,検察官の裁定に対する,今,部会長が最後にお話になった不服申立手続ということが問題になると思うんですね。先ほどの御説明では,それは行政事件訴訟手続,行政事件訴訟にもう行ってしまうのだということでございますけれども,立法に当たって少しお考えいただく余地があればということで申し上げているわけですが,これが全く,まあ見舞金を払うというような制度であれば,それはその債権額が幾らかということは余り考慮しなくてもいいんですが,権利性が高いといいますか,自分の被害はこれこれだということをみんなが届け出て、それの債権額の割合に応じて支払っていくということになりますと、かなり債権額が幾らだということが争われる可能性があると思います。その争われた場合に常に個別的に,行政事件訴訟手続があるからそっちに行けというふうに言ってしまっていいのかどうかということでございます。   先般できました破産法の改正の場合にはそういうふうに債権の確定手続については,全部,債権確定手続ということで,訴訟でやれというふうに構築したことが非常に煩雑になるということで,破産手続きの中で統一的にそれを,破産管財人がいますから管財人が全体的に査定をいたしまして,それに異議がある者だけ文句を言うという手続を今度導入したと。   これについてそういう手続ができるかどうか,検察官が主宰する手続ですから,そういうことができるかどうかはわかりませんけれども,簡易に迅速に債権を確定する手続というのは考えられれば,立法に当たってお考えいただければというふうに思っております。   それが質問でございます。   それから,最後に要望みたいなものですけれども,恐らく検察官がこういう手続をするということは本邦始まって以来のことではないかと思います。今までは配当手続はみんな裁判所でやっていたのに,検察官がやるということになると思います。弁護士さんが関与するのも裁定というところは関与しないで,裁定のための調査だけはすると。最後の裁定は検察官がなさるということになったということを,今伺いましたけれども,そうしますと,これは,かなり破産手続などを考えますと,手続的な規定を最高裁判所規則などでかなり細かく規定していると。それと同じようなものを,こちらはどういうふうになるのでしょうか,法律の中では書けなくても省令とか何とかいう形で,かなり手続を明確化していただくことが被害者にとっても,あるいはこの手続に関与する弁護士さんにとっても,手続の透明性,迅速性に役立つものではないかというふうに思っておりますので,もし立法に当たってそういうことが御考慮いただければというふうに思います。   最後は要望でございます。ちょっと長くなりまして申しわけありません。 ● 御意見ありがとうございました。   最後の御意見の点につきましては,今後,立案当局が十分その御意見を考慮して行うものと了解しております。   それから御質問については,まず最初の,本手続における支給の額と民事上の請求権の額との関係というのは,この手続によって支給を受けた場合には,それだけ民事上の請求額は減額されるということになると思います。   それから権利性の問題を言われましたが,それは,権利とは何かという問題でございまして,これは今報告いたしましたように,部会でもかなり審議が行われたところですけれども,この制度は,要するに犯罪被害財産について没収・追徴を可能として,それを原資として,その刑事事件で認定された事実の被害者以外の者にも,一定の者についてもこれを支給するということで,これは政策的な制度だというふうに理解すべきものだと思います。したがって,その範囲をどうするかということは,ひとつの政策的な判断だということですので,そういうことを考えますと,繰り返しになりますが,権利とは何かという問題にもなりますけれども,いわゆる民事的な意味での権利ということで考えるのは適当でないというのが,部会の考えでございました。   それから2番目の御質問は,没収・追徴と,民事の差押えとの関係ということですけれども,仮差押えの方が先行しますと,後で没収保全をかけても最終的には民事が優先するということになると了解しております。逆に没収保全が先行した場合には,その後に仮差押えをした場合でも,実務上は検察官が没収・追徴の求刑を裁量的に控えるということも可能であり,この制度自身は,基本的なところは被害者の私法上の請求権を自ら実現するということが原則であり,それに加えて,このような制度を設けるということになっておりますので,おのずと結論はそういうことになるかと了解しております。   それから3番目の不服申立てにつきましては,これは今報告したとおりでございますけれども,それについては当然,立案に当たっては迅速,簡便な方法ということを考えているものと思います。これは立案過程にかかわるものですので,私からこれ以上申し上げるのが適当かどうか分かりませんので,取りあえずこのようなお答えをさせていただきたいと思います。いずれにしても,要綱(骨子)は制度の骨格だけを定めているもので,これから具体的な手続については,かなりの立案作業が必要だろうと思います。 ● 私の方から,若干つけ加えて御説明させていただきますと,まず第1点の,今回の給付金と損賠賠償請求権との関係につきましては,やはり二重で取得ができるという形になるのは結論としておかしいということになるわけでございまして,既に損賠賠償請求権の行使によって給付を受けている場合には,その分この給付金の方については減額され,また,逆に給付金の方が先に支給されれば,その後の損賠賠償請求権というのはその分減縮されるというふうな関係にあるものと考えておりまして,最終的な立法の中で,そういうことが分かるような形で規定ができるように工夫したいというふうに考えております。   それから,2点目の仮差押えとこちらの没収・追徴との関係につきましては,部会長の御説明のとおりでございますし,基本的にはこの処罰法の中で調整がされているところに従って行われるわけでございますけれども,同じ対象財産について競合するということですので,どちらかをある程度優先せざるを得ないという関係にあるものと思われます。先ほど挙げられた例で申しますと,結局同じ財産について先に仮差押えなり差押えがされるということになると,後から刑事手続がそれをひっくり返すというのは,なかなか難しいというふうに考えられますが,あるとすれば,例えば預金債権のようなものであれば,その仮差押えなり差押えが一部についてなされていて,なお残高に余裕があるという場合には,それについてなお刑事手続が没収なり没収保全という形で及ぶことは,当然あるだろうというふうに思っておりますし,また,追徴ということになれば,追徴保全というのは正に仮差押えでございますので,両者が競合してその中で給付の割合が決められるということはあるんだろうというふうに思っております。   それから,不服申立ての関係につきましては,御指摘のとおりすべて訴訟で決めるということでは,なかなか迅速性に欠けるということであると思われます。その前段階といたしまして,検察官,検察庁の方で異議なり何なりの不服を受けて,そこで再度判断をするという形で,一次的な解決を図るという手続も十分合理性があると思われます。立法の段階でそういうことについても検討いたしたいというふうに思っております。   それから最後の,具体的な手続の詳細ルールにつきまして,検察官あるいは弁護士さんの方で行うことについて透明性を確保するという観点も含めまして,必要な形で規範を定めるということについても,前向きに検討させていただきたいというふうに思っております。 ● どうもありがとうございました。   ○○委員,よろしゅうございますでしょうか。   では,ほかに御質問ございませんか。   どうぞ。 ● 質問ではなくて……。 ● 御意見でございますか。はい,結構でございます。どうぞ。 ● この案自体は,私は,非常に迅速に適切な検討がなされたということで,賛成なんでございますが,先ほど部会長の報告の中で最後に言われていた,部会の権限を超える事項であるので,なお部会としては検討できないというふうにされた点について,この機会に,やはり政府当局の方で,なお検討していただきたいという御要望を申し上げたいと思います。   この新しい制度によっても,犯罪が非常に多数の機会に多種多様な方法によって行われて,被害者が多数になっているという場合には,当然そのすべてが起訴されるわけでもありませんし,また,組織犯罪あるいはマネー・ローンダリングでない場合であっても,民事上の手続で被害者が被害の回復を求めるということが事実上困難な現実があるというのは,弁護士としては認識せざるを得ないわけです。   ですから,今後,民事上の被害回復が期待されている部分はあるわけですけれども,そのような被害回復の手段がより容易にとれるような制度というものを,なお検討していただきたいというのが要望したいことの1点です。   それから,被害者が支給を請求する機会が2回設けられておりますけれども,実際問題として,この問題のきっかけになった五菱会グループの事件でも,そもそも被害にあった店舗がそのグループに属しているかどうかがはっきりしないとか,あるいは日時が経過しているのでもう証拠が手元にないとかということで,結局,支給を請求できない被害者というのが相当出るのではないかというふうに予想されているわけです。そのことはこの判決文で,100ドル紙幣が1万7,000枚,それと銀行に51億円の財産があるということで没収・追徴が請求されたのが,一審で拒絶されているわけですけれども,そのような巨額の財産の集積があったにもかかわらず,被害回復を請求している民事訴訟の請求額は全部合わせても,まだ数億にしかならないという現実から見れば,この制度でも本来この制度の枠内にありながらこの制度でも給付を請求できない被害者が残るということを示しているのではないかと思います。   その場合に,この制度ですと,残ったものは一般会計に繰り入れるということになるわけですが,それが本当に適切であるのかどうかというのは,やはり制度の趣旨からいって,私自身としては抵抗を感じるところがあるわけです。   そうするとやはり,これはまあもっと将来の課題ということになると思いますけれども,一種の基金制度を設けて,そういう支給請求の残額がある場合には基金に繰り入れて,その基金から広く犯罪被害者の保護を図るといった制度も,やはり検討するに値するのではないかと思います。   以上2点を,なお今後の検討課題としていただきたいということを要望しております。 ● 御意見ありがとうございました。   この場は,私自身の意見を申す場ではないとは思いますが,この今回の要綱(骨子)の制度は,ともかくこのような制度を新しくつくるということが一番の重点でございまして,これでは十分でないというような御意見もあるかと思います。それについては今後の課題として,なるべく犯罪被害者の救済に資するような制度ができることを,私自身も望んでおります。これは,私の個人的な意見でございますが,御意見どうもありがとうございました。 ● よろしゅうございますか。   ほかに,御質問でも御意見でも。   どうぞ。 ● 最近,消費者被害といいますか,契約被害,これもかなり詐欺的というよりも詐欺だと断定できるような,そういう被害が大変増えているんです。新聞等で詐欺罪の疑いがあるということで逮捕されたとか,そういう報道がされますと,消費者というのは,逮捕されたんだから自分たちの被害は救済されると,いわゆる民事と刑事の違いというのが全然分からなくて,何でそんな悪いことをしたのに私たちのお金は返ってこないのという,そういう質問をぶつけられるんですね。それを,私たちがいかに言っても,それはもう理解してもらえないし,ましてや民事訴訟というふうになりますと,合計額,被害の総額は大変な金額--最近はもう億というのが普通になっていますけれども,ところが個々の被害というのは,大変それに比べると小さいわけです。そうすると,その方々が個別に訴訟を起こすということは,これはまたできないこと。弁護団とか何かができればそちらに入ってということなんですが,これも本当に一部なんですね。   そういうことを考えますと,今回のこの法律ができることによって救済されるということができると。しかも,先ほどおっしゃいました手続の開始ですか,その辺の情報を消費生活センターにも流していただけるような,そういう検討もしていただいたということに関しては,大変,私たちとしては助かります。   それと,公権によって,そういう隠し財産とかそういうものを見つけ出していただけるということは,やはり個別の弁護士さんにお願いして訴訟を起こすよりは,随分没収される金額が大きいのではないかということでは,ぜひとも,より効果が上がるような,検察官の方々の尽力に期待したいというふうに思います。   あと,組織犯罪というのがもうひとつ私たちはわからないので,例えば消費者被害の場合に,どのレベルが組織的なのか。今日ですか,朝日新聞にリフォームの件で社長が指示していたというのがありましたけれども,そういうのは組織犯罪といえるのか。まして今回,富士見市の案件などは何十社とこう,グループ会社みたいな感じなんですよね。そういうものは完全に組織といえるのか,その辺がもうひとつわからないんですが,できましたらその組織犯罪というのを,これは刑法なので拡大というのはできないかもしれませんけれども,より広く実態に即したような,そういう解釈をお願いできればなというふうに思うんですが。   よろしくお願いいたします。 ● 御意見ありがとうございました。   お答えするのは最後の点だと思いますけれども,どの程度のものが組織犯罪かということなのですが,この要綱(骨子)の第一の一の1のイを御覧いただきたいのですが,その最初の方は,いわゆる組織的犯罪処罰法を参考にしつつ組織犯罪が規定されているわけですけれども,最後の方に「その他犯罪の性質に照らし」云々という規定がございます。これは,必ずしも組織犯罪といい難いものでも,それに準ずるようなものもこれに含ませるという文言というふうに私どもは考えておりますので,以下は立案に当たっての問題等となると思いますけれども,この要綱(骨子)につきましても,そのような枠は一定程度設けているということでございます。 ● ありがとうございました。   今のお話で結構でございますか。はい,どうもありがとうございました。   ほかに御意見ございますか。   どうぞ,○○委員。 ● 時間がなくなっているのに私が発言して恐縮ですが,私は民法の専門家でありまして,刑法については全く門外漢でございますが,先ほどの○○委員の御意見にちょっと触発されまして,意見を申し上げてみたいと思います。特に事前に考えてきたわけではありませんので思いつき程度のことでございますが,この考え方の基本はどこにあるのかという点について御質問をしたいと思います。   と申しますのは,○○委員の御質問は,民事の救済とこの制度とが競合する場合はどういうふうになるのかというふうに問題を問うておられたわけですが,この要綱(骨子)の基本的な考え方は,本来民事の請求権が優先するという大前提の上で,しかしそれが被害者にとって困難な場合にはこういう制度を設けるという,そういう建前ではないかと思います。   そうしますと,この第一の一の1のイで,被害の回復に関して請求権を行使することが困難であるというのが,これがそもそも請求権行使の実体的な要件であって,これ以外に困難でなければすべてこの制度から落ちるというふうに考えることもできる。つまり先ほど○○委員が御質問されましたように,特定の財産について民事の仮差押えが行われている場合には,既にこの要件が失われているのではなかろうか,そういうふうに考えますと,このロとハというのは,実は行使することが困難であるということの具体的内容の例示なのではないかというふうに考えることもできるのではないか。つまり,請求権が成立するための基本的な要件は,およそ請求権行使が困難であるということなのか,それともそうではなくて民事の請求権と競合するということもあり得るという前提でできているのか,その点の基本的な考え方はどうなっているのか,ちょっとお伺いをしたいと思います。 ● 繰り返しになりますけれども,被害者の私法上の請求権を自ら実現することが原則であるということでこの制度が成り立っているわけです。それで,この第一の一の1のイはこの文言のような意味で請求権を行使することが困難であると認められるときということになります。イについてはいわゆる組織犯罪として行われた,あるいはそれに準ずるものであると。それからロ,ハは,いわゆるマネー・ローンダリングの場合で,資金がそのマネー・ローンダリング行為によって隠されてしまったような場合,これは追求が困難であるからということでロ,ハが定められているわけです。   それから民事上の請求権との競合の問題は,この手続が行われても民事訴訟を提起することは問題ないと思いますので,あとは法解釈上どちらがその優劣を決することになるか,あるいはただ今申しましたように,一定の場合には検察官の配慮が行われる場合もあるという形で解決されるのだというふうに了解しております。 ● どうぞ。 ● 先生の御指摘の問題は,先ほど部会長が御報告された中でも触れられているところかと思いますけれども,今,部会長が正におっしゃったように,民事的な手続で被害回復がなされるというのは元々の原則といいますか,今回の処罰法で没収・追徴を制限していたことも,元々そういう発想にあるわけでございます。   ただ,それを解除して没収・追徴を認めるという場合の要件として考えておりますのは,具体的に被害者が民事手続として,例えば差押え,仮差押えを行っているとか,あるいは弁償を受けているとか,そういう民事上の手続の進行具合,具体的な進行状況を要件にするということではなくて,あくまでも没収・追徴という刑事の事件におけます制裁の要件でございますので,犯罪の性質であるとか,あるいはその収益の管理,処分の状況といった,ある程度刑事の世界で判断が可能な要件を立てて,その没収・追徴を解除していこうというのが基本的な発想でございます。   そこで今回イ,ロ,ハという形で書きましたけれども,そのイの後段にありますように,それはその犯罪の性質に照らして請求権の行使が困難であるかどうかということを書いているわけでございますので,具体的に民事手続がとられているかどうかということとは違う次元で判断するというふうになっております。   ロ,ハというのも,犯罪の性質ではございませんけれども,得た財産についてその後の管理,処分がどうなっているかということを要件として,正にマネー・ローンダリングが行われている場合ということを書き表して,その場合にこの没収・追徴を解除していこうということでございます。   ただ,実際に民事手続と競合した場合にどうなるのかというのが,先ほどの○○委員の御指摘の問題でございました。そこはそこでまた,調整が考えられるということだというふうに思っております。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● いえ,時間がなくなるので。まだ申し上げたいことはありますが,これで結構でございます。どうもありがとうございました。 ● ほかに御意見,ございませんでしょうか。   大変御熱心な御議論をいただきまして,ありがとうございました。   それでは,ほかに御意見がないようでございますので,原案につきまして採決に移りたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。--御異議がないようでございますので,そのようにさせていただきます。   それでは,刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会から報告されました要綱(骨子)のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手)   ありがとうございました。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。   原案に賛成の委員は13名でございます。議長を除くただいまの出席委員も13名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会から報告されました,犯人から財産犯等の犯罪収益をはく奪しこれを被害回復に充てるための法整備に関する要綱案は,原案のとおり採択されたものと認めます。   したがいまして,本日御審議いただき採択されました報告につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。   どうもありがとうございました。   なお,要綱(骨子)を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり,その他につきましては事務当局に御一任いただけばと存じます。よろしくお願いいたします。 ● 続きまして,本日の第2の議題であります戸籍の公開の在り方に関する諮問第74号につきまして,御審議をお願いしたいと存じます。   事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● 諮問を朗読させていただきます。   諮問第74号   個人に関する情報を保護する観点から,戸籍及び除かれた戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができる場合を制限するとともに,当該交付請求の際に請求者の本人確認を行うものとするなど,戸籍の公開制度の在り方を見直し,併せて,戸籍に真実でない記載がされるのを防止するため,戸籍の届出をする者の本人確認を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。   別紙   要綱(骨子)   第一 戸籍の謄抄本・記載事項証明書の交付請求    一 戸籍に記載されている者等一定の者は,その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記   載した事項に関する証明書(以下「戸籍の謄抄本等」という。)の交付請求をするこ   とができるものとすること。    二 一に規定する者以外の者は,相続関係を証明する必要がある場合,官公署に提出す   る必要がある場合,戸籍の記載事項を確認するにつき正当な利害関係がある場合等に   限り,戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができるものとすること。    三 二の規定により戸籍の謄抄本等の交付請求をする場合には,二に該当することを明   らかにしなければならないものとすること。    四 戸籍の謄抄本等の交付請求をする者について,本人確認を実施するものとすること。   第二 除かれた戸籍の謄抄本・記載事項証明書の交付請求     除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書の  交付の請求についても,第一と同様とするものとすること。   第三 戸籍の届出の手続     届出によって効力を生ずべき行為について戸籍の届出をする者について,本人確認を  実施するものとすること。   第四 その他     第一から第三までのほか,所要の規定の整備を行うこと。   諮問については以上でございます。   それから,恐縮でございますが,配布資料を追加することをお許しいただきたいと存じます。配布資料として,戸籍の公開に関します戸籍法第10条及び戸籍法第12条の2を追加させていただきたくお願い申し上げます。   以上でございます。 ● 続きまして,これらの諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ● それでは諮問第74号につきまして,提案に至りました経緯,諮問の趣旨等について,私から御説明申し上げます。   我が国の戸籍は,国民の親族的身分関係を登録,公証する制度でございまして,明治以来の戸籍法に基づいて運営されてきたものでございます。社会生活におけるさまざまな場面で,この身分関係を証明するということに,非常に重要なものとして扱われているところでございます。   この制度を広く一般に公開して国民の利用に供するべきであるという観点から,この戸籍法ができました昭和22年から,戸籍を公開するという原則をとっておりまして,昭和51年にこれについて再検討された際にも,この戸籍の公開の原則というのは維持されるべきものということで,現在に至っているところでございます。   今お配りいたしました戸籍法の10条がそれを定めているわけでございますけれども,現行の戸籍法の下では,何人でも請求の事由を明らかにして戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができます。市町村長は,その請求が不当な目的によるものであるということが明らかな場合に限ってこれを拒むことができると,こういう仕組みになっているわけでございます。   ただ,戸籍に記載された本人,その配偶者,直系尊属,直系卑属,これらの方々が請求する場合のほか,国,地方公共団体の職員,弁護士等,これらの方々が職務上請求する場合には請求の事由を明らかにする必要はない,こういうことが同時に決められているわけでございます。   しかしながら,最近の情勢を見ますと,本年の4月から個人情報の保護に関する法律等が施行されるなど,個人に関する情報の保護に対する国民の関心が非常に深くなってきております。戸籍につきましても,個人に関する情報を保護すると,こういう観点からこの公開を原則としている今の制度というものを,今一度見直す必要があると考えられます。これが今回諮問をするに至りました基本的な考え方でございます。   なお,請求の事由を明らかにする必要がないとされている者が,職務上の請求でないにもかかわらず,不正に戸籍の謄抄本等の交付請求をするという事件も,残念ながら後を絶たない状況にもございます。   さらに,婚姻,養子縁組等について,当事者が知らない間に虚偽の届出がされ,戸籍に不実の記載がされるという事件--これは今の問題に直接かかわりがない事件でございますけれども,こういう事件も時に起こるということもございます。   このような状況に照らしまして,今回は戸籍による身分関係の公証の要請と個人に関する情報の保護の要請の双方を踏まえて,第三者が戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができる場合を,現在の仕組みよりも制限するということにするとともに,交付請求の際に本人確認を実施する,あるいは戸籍に不実の記載がされるのを防止するため,婚姻,養子縁組等の届出の際にも本人確認を実施すると,こういうことが必要ではなかろうかと,こう考えたわけでございます。そこで先ほど朗読いたしました諮問,こういうことにして提示をさせていただいているところでございます。   次に,諮問の全体的内容についても,議論のたたき台というべき要綱(骨子)を,先ほど示しているところでございますので,これについて個々に御説明を申し上げます。   初めに要綱(骨子)の第一でございますが,これは戸籍の謄抄本の交付請求をすることができる場合を現在よりも制限するとともに,交付請求をする者について請求者の本人確認を実施することとするものでございます。   このうち,第一の一及び二についてでございますが,戸籍には個人に関する情報が記載されていることにかんがみまして,本人等一定の者を除いて相続関係を証明する必要がある場合,官公署に提出する必要がある場合,戸籍の記載事項を確認するにつき正当な事由がある場合,これらの場合等に限って謄抄本等の交付請求をすることができるとしてはいかがかというものでございます。現行法の下では,先ほど申し上げましたとおり,何人でも,不当な目的であることが明らかでない場合でない限り交付請求をすることができますが,原則例外を逆転させるということになるわけでございます。   次に,要綱第一の三でございますが,戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができる場合を制限するということになりますと,当然,おいでになる方,請求なさる方がどういう方であるかということが問題になるわけで,本人と一定の者を除いて,その交付請求をする者は請求の事由を明らかにし,交付請求することができる場合に該当することを明らかにしなければならない請求事由を明示するということが,まず第一でございます。   続きまして,第一の四でございますけれども,戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができる場合の制限に当たりまして,本人等になりすまして交付請求を行おうとする者も出てくると,制限が尻抜けになってしまうわけでございますので,そのようなことを防止するために,戸籍の謄抄本等の交付請求に当たり本人確認を実施することにしたいというものでございます。   続きまして,要綱(骨子)の第二でございますが,これは除かれた戸籍,すなわち戸籍に載っている者全員がいなくなっている,そういう場合に戸籍を除くわけでございますが,その戸籍の謄抄本等の交付請求についても,要綱第一の戸籍の謄抄本等の交付請求の場合と同様にするというものでございます。この除かれた戸籍(除籍)の謄抄本等につきましては,現行法の下におきましても,交付請求をすることができる場合が限定されております。しかしながら,戸籍の謄抄本等についての取扱いを見直すことに伴いまして,この交付請求をするについても請求事由の明示を要しない者の範囲をより限定するとともに,やはり同じように本人確認を実施することが必要と考えられるわけでございます。このため,そのような扱いをしてはいかがかという提案でございます。   次に,要綱(骨子)の第三でございますが,これは婚姻,養子縁組等の戸籍の届出をすることによって効力を生ずる行為,これを私どもでは「創設的届出」と呼んでございますが,その創設的届出につきまして,虚偽の届出により戸籍に不実の記載がされるということが,先ほど申しましたように間々ございます。これを防止するために,戸籍の届出をする者についても本人確認を実施してはいかがかと,このようにするものでございます。   最後に,要綱(骨子)の第四についてでございますが,これはその他の所要の規定の整備を行おうとするものでございます。具体的に申し上げますと,不正の手段により戸籍又は除かれた戸籍(除籍)の謄抄本等の交付を受けるなどした者に対して,制裁である過料が規定されているところでございますが,その金額を引き上げることにしてはいかがかと考えております。   それから,戸籍によって身分関係を証明しようとする者が,利用目的に応じて必要な事項のみが記載された証明書,こういうものを利用できるようにすることにどういう工夫があるかについても御審議をいただきたい,このように考えているところでございます。   以上のとおりでございます。十分御議論の上,できる限り速やかに御意見を賜りますよう,お願いを申し上げるところでございます。 ● 引き続きまして,配布資料について御説明申し上げます。   まず,資料番号民1は,先ほど読み上げました諮問第74号でございます。   次の資料番号民2,戸籍・除籍の謄抄本等の交付請求状況は,全国の40の市区町をサンプル対象として,平成17年3月中の戸籍・除籍の謄抄本等の請求者別交付通数について調査を行ったものでございます。   一番上の表,表1のA--中央の段でございますが,これを見ていただきますと,戸籍の謄抄本等の交付通数の合計は4,341件。請求者別の内訳は,本人,配偶者等が約83%,国,地方公共団体等が約8%,弁護士等が約8%,その他の者が約1%となっております。   次に,右側の段,表1のBを見ていただきますと,除籍の謄抄本等の交付通数の合計は1,276件。請求者別の内訳は,本人,配偶者等が約56%,国,地方公共団体等が約17%,弁護士等が約24%,その他の者が約3%となっております。   ページ中ほどにあります表2は,戸籍の謄抄本等におけるその他の者からの請求,56件の請求事由の内訳でございます。   また,その下の表3は,除籍の謄抄本等におけるその他の者からの請求,33件の請求事由の内訳でございます。   いずれも相続関係を証明する必要のある場合が大部分を占めております。   次の資料番号民3,戸籍謄本等に係る不正事件は,過去3年間に発覚した戸籍謄抄本等の不正請求事例及び職務上請求用紙の不正譲渡事例でございます。   不正請求の件数につきましては,なお調査中のものも多くあるためにこの資料には記載しておりませんが,少ないもので1件から十数件,多いもので数百件から数千件の不正請求が行われ,あるいは行われた疑いがございます。不正請求は,戸籍の謄抄本等のほか住民基本台帳の写し等についても行われておりますので,関係法務局,地方公共団体が調査を進め,調査が終了したものから順次,簡易裁判所に過料の裁判を求める通知を行っているところでございます。また,監督官庁等による業務停止等の処分も行われております。   次の,資料番号民4は,虚偽の婚姻・養子縁組届出事件でございますが,平成14年以降に報道された虚偽の婚姻届,養子縁組届出事件の事例でございます。   虚偽の届出事件には,例えば妻が知らない間に夫が勝手に離婚届を出した,というような苦情も市町村に寄せられておりますけれども,ここでは事件性があるとしてマスコミで報道されたものを御紹介しております。ここに記載されております多くの事例が,別人になりすまして借金をするために婚姻や養子縁組をして姓を変えているものでございます。   なお、2番目の事件は借金が目的ではないと思われますけれども,監禁事件として大きく報道された事件でございます。   次の資料番号民5,住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会報告書(素案)と,民6,同報告書(素案)の概要は,現在,総務省で検討されております住民基本台帳の閲覧の制限に関するものでございます。総務省では,本年5月から住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会において,住民基本台帳の閲覧の制限等についての検討を行ってきておりますが,先月の会合におきまして,住民基本台帳の閲覧制度について,何人でも閲覧を請求できるという現行の閲覧制度を廃止するとした報告書の素案を取りまとめ,現在パブリックコメント手続を実施中でございますので,御参考までに御紹介するものでございます。   それから,先ほどお配りいたしました戸籍法第10条及び第12条の2でございます。   資料の説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいま説明がありました諮問第74号につきまして,まず,御質問がございましたら御発言願いたいと思います。御質問ございませんか。   御質問がないようでございますので,続きまして,本日の最後の議題であります罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する諮問第75号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず初めに事務当局の……。 ● 会長,申しわけありません。今の件についてちょっと。 ● すみません。早く進みすぎました。 ● 戸籍の問題なんですけれども,この中の資料に住民基本台帳の閲覧制度についての報告書がございましたけれども,私は報道機関の者として,この住民基本台帳の方の問題についてこの中にもありますけれども,世論調査,あるいは学術的な調査と,そういう公益性の問題について,そういう観点からの閲覧というものは可能にしていただきたいというふうなことは,報道関係の意見としてこれは申し上げているわけで,そういうことも記述されております。   それで,もちろん個人情報保護という観点から,戸籍に関してもこうした処置がされるのは当然であろうと思いますけれども,ただ私ども報道の立場としますと,特に近年,調査報道というのが我々の報道の在り方として非常に重要なものになっているわけでして,そういう調査報道に基づく報道内容というものは,極めて大きな公益性のあるものだと考えているわけです。そこで,こういう戸籍謄本とかこういうことの閲覧というものは,報道する立場の側からしますと,特に調査報道とかそういう観点からしますと非常に重要な基礎的な作業でもあるわけです。   それで,この中にもいろいろ今後御検討されるのだろうと思いますけれども,そういうものについてどういうふうにされるのか,もし何かお考えとかそういうものがございましたら,ちょっと教えていただきたいという点です。 ● おっしゃるとおり住民基本台帳につきましては,既に先ほどの資料からお分かりになりますように議論が先行いたしております。そこについても,様々な御意見があったと思います。   この戸籍制度も,もともとは先ほども申し上げましたように,公開ということを基本原則とする制度でございまして,様々な利用がされてきたわけでございます。とりわけ,学術研究等については公開を制限する下においても,様々の形で個別にそれを開示しているというところもございます。   ただ,報道関係につきましては,これまではどういう利用がされていたのかということを明らかにする資料が,残念ながらございません。私どもも先ほどの一部の市町村における実態調査において,その点があるいは出てくるのかなと思ったわけでございますが,そこは明らかにされるほどの資料にはならなかったわけでございます。   おっしゃるとおり,報道機関としては非常に高い関心を寄せられるところでございましょうし,そのお立場というのは全く一般の方々と同視していいかということには,ひとつの大きな問題点があろうと思います。そこは十分に,今後審議をしていく中で御議論いただきたいというふうに,私どもとしても考えております。 ● よろしゅうございますでしょうか。   ほかに,御質問でもあるいは御意見,御要望でも結構でございますが。--よろしゅうございますか。   それでは,先ほど少し申し上げ始めたところでございますが,本日最後の議題であります,罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する諮問第75号につきまして,御審議をお願いしたいと存じます。   まず初めに事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● 諮問を朗読させていただきます。なお,この諮問第75号はお手元の配布資料の番号刑2となっておりますので,併せて御参照いただければと存じます。   諮問第75号   近年における公務執行妨害,業務上過失致死傷及び窃盗の各罪等の実情等にかんがみ,早急に,これらの罪につき罰金刑を新設するなどその法定刑を改正するとともに,財産刑に関する手続規定を整備する必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。   別紙   要綱(骨子)   第一 公務執行妨害,業務上過失致死傷及び窃盗の各罪等の法定刑の改正    一 公務執行妨害及び職務強要の各罪(刑法第95条第1項及び第2項)の法定刑を3   年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金とすること。    二 業務上過失致死傷及び重過失致死傷の各罪(刑法第211条第1項)の法定刑を5   年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金とすること。    三 窃盗の罪(刑法第235条)の法定刑を10年以下の懲役又は50万円以下の罰金   とすること。   第二 略式命令の限度額の引上げ     略式命令において科すことができる罰金の最高額を100万円とすること。   第三 労役場留置制度の見直し    一 罰金及び科料について,留置1日の割合に満たない金額の納付を認めることができ   るものとすること。    二 罰金又は科料の一部が納付された場合において,その残額中,留置1日の割合に満   たない端数は,これを1日として留置するものとすること。   以上でございます。 ● 続きまして,これらの諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ● 諮問第75号につきまして,まず,提案に至りました理由等を御説明申し上げます。   法務省におきましては,平成2年から平成5年にかけて開催された法制審議会刑事法部会やその下に設けられた財産刑検討小委員会において,財産刑の適用範囲などについて御審議いただき,その審議経過及び結果等を踏まえまして,かねてから,基礎的な検討を継続してまいったところでございますが,その間の平成3年に成立した「罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律」に関し,衆・参両議院の各法務委員会においてそれぞれ附帯決議がなされ,財産犯の一部や公務執行妨害罪に選択刑として罰金刑を導入することについて検討を求められておりました。   さらに、平成16年に成立した凶悪犯罪等に対処するための「刑法等の一部を改正する法律」に関しましても,衆・参両議院の各法務委員会でそれぞれ附帯決議がなされ,財産犯の一部に罰金刑を選択刑として新設することなどの検討について,政府として格段の配慮をすべきであるとされました。   一方で,公務執行妨害罪や窃盗罪,特に万引き事犯の検挙件数をみますと,最近の約10年間における増加傾向は極めて顕著でございます。   加えて,業務上過失致死傷罪の罰金刑の科刑状況をみますと,法定刑の上限である50万円が科される事件の割合が増加しております。   そこで,このような近年における犯罪の実情等にかんがみ,これに適切に対処するため,早急に罰金刑を新設するなどその法定刑を改正するとともに,財産刑に関する手続規定を整備する必要があると考え,この諮問に及んだものでございます。   次に諮問の内容について御説明申し上げます。   はじめに,要綱(骨子)の第一についてですが,これは,刑法第95条第1項及び第2項の公務執行妨害及び職務強要の各罪並びに刑法第235条の窃盗の罪に選択刑として罰金刑を新設するとともに,刑法第211条第1項の業務上過失致死傷及び重過失致死傷の各罪の罰金刑の上限を引き上げようとするものでございます。   公務執行妨害罪とは,暴行又は脅迫により公務員による円滑な公務を阻害する犯罪であり,その影響が我が国社会に広く及び得ることなどから,一般に違法性が高いと考えられておりますが,近年,この罪に係る検挙件数が急増するにつれ,例えば,酔余,あるいは感情の行き違い等から警察官に暴行を加えたものの,すぐに制圧・検挙されるといった比較的影響の大きくない事案も多くみられるようになりました。   また,窃盗罪につきましては,その利欲犯的性格を考えると,その責任を看過することはできませんが,例えば,万引き事犯等につきましては,その犯罪類型としての特質や偶発的に行われる場合が少なくないことなどから,被害金額が少額にとどまり,かつ,速やかに被害回復がなされるといった比較的軽微な事案もままみられるところであります。   この結果,このような事案につきましては,一方で,相応の刑罰を科し,刑罰が有する一般予防及び特別予防的効果により同種事犯の再発を防止する必要があると考えられるものの,他方で,これらの罪の法定刑がいずれも自由刑に限られていることから,現実には,起訴をすべきか否かの判断に困難を伴うものが少なくありません。   そこで,事案に対応した適正な事件処理・科刑を実現する観点から,公務執行妨害罪及びその補充的な犯罪である職務強要罪の法定刑につきましては,現行の3年以下の懲役又は禁錮のほか,選択刑として30万円以下の罰金刑を新設することとし,窃盗罪の法定刑につきましては,現行の10年以下の懲役のほか,選択刑として50万円以下の罰金刑を新設することとしております。   次に,業務上過失致死傷罪等についてですが,業務上過失致死傷罪の大部分を占める交通事犯に関しましては,その発生件数が相変わらず増加傾向にあり,死亡や重大な傷害という結果を生ずる事案も後を絶たないなどの状況が続いております。その中で,業務上過失致死傷罪における罰金刑の上限につきましては,平成3年に現行の50万円に引き上げられたものでありますが,近時の国民意識にも照らしますと,罰金刑が相当な事案の中でも,特に死亡や重大な傷害の結果が生じた事案などにおいては,この上限額では事案に応じた適正な科刑をするのが困難な場合があることは否定できません。このことは,先にも御説明申し上げたように,業務上過失致死傷罪,とりわけ致死罪に係る近時の科刑状況におきまして,罰金刑相当事案のうち,法定刑の上限である50万円が科される事件の割合が増加していることからもうかがえます。   そこで,業務上過失致死傷罪及びこれと同様過失致死傷罪の加重類型とされている重過失致死傷罪につきまして,罰金刑相当の事例の中で,事案に応じてより適正な科刑の実現が図られるよう,選択刑としての罰金刑の上限を現行の50万円から100万円に引き上げることとしております。   次に,要綱(骨子)の第二についてですが,これは,刑事訴訟法第461条以下に規定されている略式命令の限度額を引き上げるものであります。   略式命令制度については,かねてより,手続の合理化や当事者の負担の軽減等の観点から利点があると評価されているところです。その一方,近年,略式命令の限度額である50万円の罰金刑が科される者の数が増加する傾向にあります。これは,業務上過失致死傷や道路交通法違反といった,いわゆる交通事犯において顕著ですが,略式命令がなされた事件全体の動向としてもうかがうことができます。また,近年,通常の公判手続による裁判により,50万円を超える罰金刑を科された者の数も増加傾向にあります。   これらに照らしますと,50万円を超える罰金刑を科すことが相当であるものの,その手続としては略式命令制度の上記利点を生かすことが適当と考えられるのに,それが利用できない事案も増加する状況にあると思われます。   そこで,今回,業務上過失致死傷罪の罰金刑の上限の引上げ額等も考慮の上,略式命令において科すことができる罰金刑の最高額を現行の50万円から100万円に引き上げることとしています。   最後に,要綱(骨子)の第三についてですが,これは,今回の罰金刑の新設等に伴い,刑法第18条の労役場留置制度について見直しを行うものです。   罰金等は,裁判の確定,又は仮納付の裁判があれば,履行期が到来し,直ちに一括してこれを納付すべきものですが,事情によっては,検察官がその一部の納付を認めることができると解されております。しかし,現行法は,刑法第18条第8項において,罰金等の言渡しを受けた者が留置1日の割合に満たない金額を納付しようとしたときは,この金額をわずかに下回る場合であっても,収納手続をとることはできないということとしております。これは,労役場に留置する日数の計算が複雑化することを避けるためであると理解されますが,このような硬直的な扱いは刑罰の迅速かつ確実な執行,ひいてはその実効性・感銘力を阻害するものとなりかねません。   そこで,要綱(骨子)第三の一において,留置1日の割合に満たない金額の納付を認めることができるものとするとともに,要綱(骨子)第三の二において,罰金等の一部が納付された場合において,その残額中,留置1日の割合に満たない端数は,これを1日として留置するものとしております。   要綱(骨子)の概要は,以上のとおりです。十分御議論の上,できる限り速やかに御意見を賜りますようお願い申し上げます。 ● 引き続きまして,配布資料の説明をさせていただきます。   本日,諮問第75号に関する御審議の参考にしていただくために,席上に番号刑2から刑5までの資料4点を御用意させていただいておりますので,その内容等につきまして,御説明申し上げます。   まず,番号刑2は,先ほど朗読いたしました諮問第75号です。   次に,番号刑3は,平成3年の通常国会において成立した「罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律」の審議の際に,衆・参両議院それぞれの法務委員会においてなされた附帯決議の各抜粋です。いずれも,政府に対し,罰金が選択刑として定められていない財産犯及び公務執行妨害罪について,罰金刑を選択刑として導入することの検討を求めているものであります。   番号刑4は,平成16年秋の臨時国会において成立した凶悪犯罪等に対処するための「刑法等の一部を改正する法律」の審議の際に,衆・参両議院それぞれの法務委員会においてなされた附帯決議の各抜粋です。ここでは,政府に対し、近年の犯罪情勢等を踏まえ,財産犯の一部に罰金刑を選択刑として新設することなどの更なる検討が求められているところでございます。   最後に,番号刑5は,諮問第75号に関する基礎的な統計資料です。このうち,まず1ページでございますが,昭和40年から平成16年までの公務執行妨害罪による検挙件数の推移に関する一覧表です。この罪による検挙件数は,昭和44年の2,747件をピークに減少傾向にありましたところ,平成5年の963件を境に増加傾向に転じ,平成15年には過去最高の2,909件にまで至り,平成16年は更に検挙件数が増えて2,957件と,平成5年と比較して3倍以上の数に上っております。   次に2ページ目でございます。成人による窃盗罪の検挙件数の推移に関する一覧表で,うち事案が比較的軽微なため起訴するか否かの判断に困難を生じやすいいわゆる万引き事犯を内数として示したものであり,連続的な統計が得られます昭和47年から平成16年までについて作成しております。直近の平成16年では,成人による窃盗罪の総検挙件数34万8,062件のうち,万引き事犯が7万7,291件,割合にして20%強を占めているところでございます。この数も,平成5,6年と比較してほぼ倍増という急増ぶりが見てとれます。   3ページ目でございますが,平成12年から平成16年までの最近5年間における,業務上あるいは重過失致死傷罪の略式事件,すなわち略式命令がなされた事件の科刑状況について,上の段の致死罪と下の段の致傷罪に分けて,それぞれ罰金額別に分類して一覧表にしたものであります。「罰金」の欄の左端を見ていただければお分かりのとおり,これらの罪により罰金刑を科された者のうち,上限一杯の50万円の罰金に処せられた者の割合は年々増加する傾向にございまして,特に上段の表の致死罪においてその傾向が顕著であり,平成15年以降は,40%を超える高率となっております。   次に4ページ目でございますが,平成12年から平成16年までの最近5年間における略式事件の科刑状況の一覧表であり,そのうち,刑法犯に係るものと特別法犯に係るものとに分けた上で,前者については業務上あるいは重過失致死傷罪によるものとそれ以外のものを,後者については道路交通法違反の罪によるものとそれ以外のものを,それぞれ内数で示しております。   表の一番上の欄の中ほどの「50万円」と書かれている欄を上から下に見ていただければお分かりのとおり,近年,略式請求が認められる罰金額の上限である50万円の罰金に処せられた者の数が増加する傾向にあります。これは業務上過失致死傷や道路交通法違反の各罪によるものについて顕著でありますが,それ以外のものについても読みとることができます。また,特に刑法犯に係るものについてみますと,50万円の罰金に処せられた者の90%以上,平成14年以降では95%以上が業務上あるいは重過失致死傷罪によるものとなっています。   以上,簡単でございますが,配布資料の説明をさせていただきました。 ● ありがとうございました。   それでは,ただ今説明のありました諮問第75号につきまして,御質問などがございましたら御発言をお願いいたします。   はい,どうぞ。 ● ○○でございますが,今,諮問に至る経緯等について御説明を伺いました。   一点,確認的な質問をしたいと思いますけれども,窃盗事案には刑法だけではなくて特別法にも規定がございます。そうしますと,予定されている部会では,窃盗事案に対する法規制の在り方全体を前提として,この窃盗罪に罰金刑を導入することの合理性あるいは整合性,そういうことについても議論がされるという具合に理解をしておりますが,そのように理解しておいてよろしゅうございますでしょうか。 ● 法定刑は当然のことながら,法体系全体の中で検討されるべきものでございます。窃盗につきましては,今お話のありましたように刑法以外の法律でも,その特別類型がございます。そういう意味で今回の諮問事項につきましては,そういったものも含め,あるいは財産犯といった関連する犯罪も含めて,法規制の中での整合性,合理性といったものも検討していただくことになろうというふうに考えているところでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。--はい。   ほかに御質問等,ございませんでしょうか。   どうぞ。 ● 業務上過失致死傷の50万円という上限が適用される事例が増えてきた。だからそれをさらに引き上げるというのはわかりますが,なぜ100万円なのか。つまり,当然,急に飛躍的に上げるということは法的安定性を害すとか,あるいはほかのいろいろなバランスがあろうかと思いますが,100万円でいつまでもつのだろうかと。特に懲役期間との対比等を考えますと,それでいいのだろうかと。   それから窃盗につきましても,たまたま一,二,三と懲役と罰金の数字を比べますと,3年の懲役と30万円。それから5年の懲役と100万円。で,窃盗が10年の懲役と50万円と。何かこう逆転しているような印象を受けまして。この,罰金額を上げるときの上げ方というのは,どういうお考えなんだろうか。特に経済刑法の世界におきましては,独禁法で罰金1億円を5億円に上げると,5倍に引き上げるということが余り大した議論もなく,すっと,こう,最近行われたということもございます。その辺が一般刑法と経済刑法では,やはりその精緻さと乱暴さといいますか,その辺に何かお考えの差があるのか,その辺も含めまして,この罰金額をこのように原案でお書きになった背景といいますか,お伺いできればと思います。 ● 法定刑,あるいは罰金刑をどのくらいのものが相当であるのかというのは,ある意味では非常に難しい問題でございますし,まさに今後御審議いただきたい事柄でございますけれども,私どもといたしましては,特に刑法の場合は個人の行為を対象として罰則を定めているわけでございますが,その中でどのぐらいの罰金刑が相当なのかということにつきましては,いろいろ考えを巡らしたところではございます。   今,窃盗あるいは公務執行妨害とそれから業務上過失致死傷との比較の問題がございましたけれども,一般に刑法の場合は罰金刑の額がその他の行政法規と比べて,それほど高くはないというふうな感じがしております。それは今ちょっと申し上げました個人の行為を対象としているということも,もちろん関係あると思われますし,それから,特に故意犯--窃盗あるいは公務執行妨害というような故意犯でございますが,故意犯については,やはり悪質なものについては本来懲役をもって臨むということになりますので,罰金というのは,比較的軽い事案であるけれども,なお,それなりの制裁が必要であるという場合に科すべきものというふうな位置づけになるんだろうと思われます。   これに対しまして業務上過失致死傷の方は,過失犯でございまして,自分がわざとやろうとして起こしたものではなく,不注意で起こしたものでございますので,その中に,もちろん悪質なものとそうでないものとあり得るわけですが,行為に対する非難として,どちらかと言えば懲役というよりも罰金というものが,それなりに故意犯よりもウエートをもって考えられるのかなという感じがしております。   そういう意味で,過失犯の中で特に生命・身体に危険を加える業務上過失致死傷については,罰金をもって臨む場合も,それ相応の重みのあるものとして,刑法の中の罰金刑としては,やや重い類型に属するものとして,100万円という形で制裁を定めてはどうだろうかといったようなことを考えたものでございます。   刑法の中に,ほかに過失犯,まさに単純な過失致死傷というものもございますし,そのほかの過失犯について罰金刑が定められているもの--高いものも低いものもございますが,それらのバランスの中で私どもとしては,100万円を相当というふうに考えたところでございます。それに対しまして窃盗や公務執行妨害につきましては,そういう罰金刑の非難を超えて制裁を科すべき場合には,むしろ懲役をもって臨むということで,余り高い罰金は,むしろ必要ないのかなという考えで,このような額を提案させていただいたということでございます。 ● 一般刑法と経済刑法では考え方が何か変わるのかどうか,というあたりはいかがでございましょうか。 ● いわゆるほかの行政法規で罰金,あるいは懲役の法定刑をどのように考えるのかというのもなかなかまた難しい問題でございますが,それぞれやはり,行政法規の方は行政法規をもって実現する行政目的というのがございまして,そういう目的に照らしてどの程度の制裁を科して目的を実現するのか,あるいは秩序を維持するのかということで,それぞれの省庁で必要な検討の上で,罰金あるいは懲役の刑を定めているのかなというふうに思っておりますが,行政法規の場合には多くの場合,両罰規定などがございまして,法人をも対象にしているという例が多うございますので,罰金ということを考えた場合も,個人を念頭に置いている刑法とはやや違った考え方をもって刑が定められていると思われます。行政法規の場合に,それなりの高額の罰金が最近増加しているというのも,そういった法人を念頭に置いているところもあるのかなという感じがしております。 ● よろしゅうございますでしょうか。   ほかに御質問が。   はい,どうぞ。 ● 私は東アジアと東南アジアの世論調査をやっているんですけれども,その中の質問に,統計の窃盗罪の検挙とか業務上何とかとかいうものの数字を見ていて,何かこう関係があるというファインディングなんだと思うんですが,要するに質問したのは,政府に何か許可を求めたと,そうしたら返事が来ない,あなたはどうしますかというもので,五つ六つの選択肢をして,日本,韓国,中国,フィリピン,ずっとこう東南アジアもミャンマー,ベトナム,ラオス,カンボジア,インドネシアとみんな聞いたんですが。   それでどういう選択肢があるかというと,役人に賄賂をやると。それから役所の中のコネを何とか使って許可証をとっちゃうと。それから,お手紙を書いて何とかしてくれと頼むと。これはまあ普通--公民の教科書に書いてあるようなことです。4番目は,まあどうしようもないからとあきらめちゃうと。5番目はもうちょっと優等生的で,じっと来るものだと希待して待っていると。7番目は,そんなものは無視しちゃってやっちゃえというのがあって,まあ賄賂をやるとかコネは,どこまでちゃんと正直に記録されているのかわからないけれども,そういう質問をすると答えが来るわけですね。それで,そんなものは無視してやっちゃうといいますか,何をなのか,屋台を開くとか建設許可なのか何だかわからないけれども,まあそういうものに対して日本は,あんなものは無視してやっちゃうというのがアジア第2なんですよ。もう断トツに高い。これは一般的なものがあって,だから僕は科料を--科刑というんですか,そういうものによって何かデターされるような感じのものかというのがちょっとまあ。犯罪の性格は非常に違うと思うんですけれどもね。一般的にそんなものというのがあるのかなという感じが。   それから,もちろんこのような質問をしますと,それはまあアジアの半分は独裁国だからそんなのはちゃんと答えないからそうなんだ,日本は自由国だから好きなことを言っているんだという解釈もあるんですが,非常にこの,けんけんがくがくたる議論がこれについてあって,断トツに高い。一体何が日本に起こっているのかと言って,そういう何か50万だろうが100万だろうが,そんなものはひっくり返すようにもう勝手にやっちゃうという人が増えているんだと思いますよ。何かわからないけれども。それが小さなことなのか,大きなことなのか,許可を求めるとか,見ていなければなんでもやっちゃうというのが,それはパーセンテージは低いですけれども,ほかのアジアの民主国に比べても独裁国に比べても高いのです。圧倒的に高い。2番目。1番目はフィリピンですけれども。あとはみんなそんなでもない。それは,そんなことを言ったら,世論調査というのは公安とくっついていますから大体の国は。こう,たぐっていくとわかっちゃって,刑務所に行ったり税務署から取られたりということがあるということも考えて答えていると思うんですけれども,それにしても日本はすごい高いなと。   で,類似の質問というものをやった国が余りないので,日本も含めて,増加傾向にあるのか,もともと昔から日本は意外と高かったのかとか,そういうことはわからないんですが,私はこの一連の統計をみて,やっぱりそうなんだなという気は若干心の中でしていまして,刑の重さ,低さ,軽さというのは,お金とか懲役とかそういうものでデターされる種類のものじゃないのかなという感じがしているんですね。   本当に僕も,こういうものをもうちょっと体系的に比較しながら調べたらわかるかもしれないと思っているんですが,ただ,この世論調査というのは,これはちゃんとやっておりまして,学術的で,どんな独裁国でも,この質問は嫌だったら聞かないでくださいと言って,ちゃんと公安当局から許可を取って--私なんですが--やっているんですが,それを消さない国が結構独裁国でもありまして,あっちの政府も知りたいんだと思うんですよ。そういうようなコンテックスで,若干,何ともこの議論をどっちの方向に移行せよというあれは何もないんですが,ちょっと何か,やはりそうなのかなという気がしまして勝手なことを申しました。 ● 大変興味深いお話を伺ったと思いますが,この点につきまして何か御意見か何かございますか。 ● 刑罰の犯罪抑止効と国民意識みたいな問題かと思いますが,大変大きな,あるいは,ある意味では根源的な問題であろうかというふうに思います。   ただ,私ども,こういった刑法を所管する立場からしますと、刑罰にはそういった一般的な,あるいは制裁を科された者に対する抑止効果というのは,やはりあるのだろうというふうには思っております。特に今回の対象としております窃盗でありますとか,公務執行妨害などにつきましては,先ほどの説明にもありましたけれども,比較的軽微,軽い類型の事案というものがかなり多くなってきている,そういったものに対して懲役という刑ではなかなか重過ぎるかなということになりますと,そういったものに対して適当な制裁がないということで,場合によっては起訴猶予にせざるを得ない,あるいは非常に悩む,処理に窮する場面が増えてきているのだろうというふうに思っております。そういった事案に対応する適切な刑罰を科すことによって,やはりそういった事案でもきちんと制裁が科せられるということが,本人あるいは一般の方にわかっていただければ,それなりの効果があるのではないかという思いのもとに御提案させていただいておりますけれども,そういったことについても御審議いただければというふうに思っております。 ● よろしゅうございますでしょうか。   それでは,ほかに御質問,御意見がございませんようでしたら,次に諮問第74号及び第75号の審議の進め方について御意見がございましたら伺いたいと存じますが。 ● この戸籍法の見直しに関する74号と刑法の法定刑等の見直しに関する75号は,いずれも我が国の法体系に直結する極めて重要な問題を含んでいると思います。それと同時に,先ほどからの御議論にもありますように,かなり高度に専門的,あるいは技術的な点も同時に含まれているように思います。   そこで,この法制審議会自体で直接に議論をするというのではなくて,それぞれの諮問につきまして,専門の部会を設けていただき,そこで調査,検討,審議を尽くした上で,またここにその結果を上程していただいて,私どもはまたそれについて審議をさせていただくというのが適当ではないかというふうに思いますが,いかがでございますでしょうか。 ● どうもありがとうございました。   ただいま○○委員から部会設置等の御提案がございましたけれども,これにつきまして御意見ございますでしょうか。--特に御異議もないようでございますので,この諮問第74号及び第75号につきましては,新たに部会を設けて調査審議することに決定いたします。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事に関しましては,会長に御一任願いたいと存じますが,御異議ございませんでしょうか。--それでは,この点は会長に御一任願うということにいたします。   次に部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第74号につきましては「戸籍法部会」,諮問第75号につきましては「刑事法(財産刑関係)部会」と呼ぶことにいたしたいと存じますが,いかがでございましょうか。--よろしゅうございますでしょうか。では,御異議がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   総会委員として,諮問事項の中身について,ほかに何か御意見がございましたらお伺いしたいと思いますが。--よろしゅうございますでしょうか。   それでは,諮問第74号及び第75号につきましては部会で御審議いただき,それに基づいて,総会においてさらに御審議願うということにしたいと存じます。   これで本日の審議は終了いたしました。   ほかに,この機会に御発言いただけるようなことがございましたら,どうぞ御発言ください。本日の議題以外のことでも結構でございます。   それでは最後に,事務当局から,今後の日程等について御案内がございます。 ● それでは,今後の日程につきまして事務当局から御案内させていただきます。   現在のところ,次回につきましては平成18年2月8日水曜日,午後1時30分から,法務省地下1階大会議室において法制審議会総会を開催する予定としてございます。委員,幹事の皆様方におかれましては,御多忙のところとは存じますが,御出席のほど,よろしくお願いいたします。 ● ありがとうございました。   では,本日はこのあたりでということで,よろしゅうございますでしょうか。   本日は,非常に長時間にわたりまして御審議いただき,本当に恐縮に存じております。大変熱心な御議論をいただいてありがとうございました。   これにて閉会といたします。 -了-