法制審議会第144回会議 議事録 第1 日 時 平成17年2月9日(水) 自 午後1時30分   至 午後4時50分 第2 場 所 法務省大会議室 第3 議 題 諮問第41号,諮問第56号,諮問第71号,諮問第72号について答申案の決定          監獄法の改正についての報告 第4 議 事 (次のとおり) 議    事  (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。)   法制審議会第144回会議の開催に当たり,一言ごあいさつ申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。   当審議会におきましては,皆様の御尽力により,既に多くの重要な案件について御答申をいただき,また,現在も多数の諮問事項について調査審議をいただいているところでございます。この機会に,皆様方の御労苦に対し厚く御礼を申し上げます。   さて,本日御審議をお願いする議題第1から第4は,既に諮問がされている事項についてでございます。   まず,第1は,破産,和議,会社更生等の制度に関する諮問第41号です。   この諮問事項につきましては,これまで「民事再生手続(仮称)に関する要綱」,「個人債務者の民事再生手続に関する要綱」,「国際倒産法制に関する要綱」,「会社更生法改正要綱」及び「破産法等の見直しに関する要綱」の答申をいただいておりますが,その後も,倒産法部会におきまして調査審議が続けられてまいりました。その結果,特別清算の制度について,協定の可決要件を緩和するなどの見直しを行うこと,会社の整理の制度について,これを廃止することなどを内容とする「特別清算等の見直しに関する要綱案」が決定され,本日報告されるものと承知しております。   第2は,会社法制の現代化に関する諮問第56号です。   この諮問事項につきましては,会社法(現代化関係)部会におきまして調査審議が続けられてまいりました。その結果,商法第二編,有限会社法,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等に規定されていた会社法制について,これを一本化して再編成するとともに,最低資本金制度の撤廃,機関設置等における定款自治の拡大,合併等の組織再編成制度の柔軟化,新たな会社類型の新設等を行うことなどを内容とする「会社法制の現代化に関する要綱案」が決定され,本日報告されるものと承知しております。   現在の我が国を取り巻く社会・経済情勢にかんがみますと,以上の二つの事項については経済関連の基本法整備として早急に措置を講ずる必要があると思われますので,速やかに御答申をいただきたいと存じます。   第3は,人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備についての諮問第71号でございます。   この諮問事項につきましては,刑事法(人身の自由を侵害する犯罪関係)部会において議論がなされ,本日,その結果が報告されるものと承知いたしております。深刻な人権侵害である人身取引につきましては,国連の「国際組織犯罪防止条約・補足人身取引議定書」が,その犯罪化等を要請しております。我が国も,同議定書の早期締結を目指すなど,この問題に政府をあげて取り組んでいるところでございます。   また,近年における長期間にわたる監禁事案や,悪質な幼児略取・誘拐事案の発生などの,人身の自由を侵害する犯罪の実情等にもかんがみますれば,これら犯罪に適切に対処するため,早急に,刑法等の整備が必要と思われますので,速やかに御答申いただきたいと存じております。   最後に第4は,少年の保護事件に係る調査手続等の整備に関する諮問第72号であります。   この諮問事項につきましては,少年法(触法少年事件・保護処分関係)部会において議論がなされ,本日,その結果が報告されるものと承知しております。この少年非行の現状にかんがみ,これに適切に対処するため,早急に,少年の保護事件に係る調査手続の整備,14歳未満の少年の保護処分の多様化及び保護観察に付された者に対する指導を一層効果的にするための措置等の整備を行う必要があると思われますので,速やかに御答申をいただきたいと存じます。   それでは,これらの議題につきまして,どうぞよろしく御審議をお願いいたします。  (法務大臣の退席後,委員・幹事の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた。) ● 先ほどの法務大臣あいさつにもございましたように,本日の審議事項は,1特別清算等の見直しに関する諮問第41号について,2会社法制の現代化に関する諮問第56号について,3人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備に関する諮問第71号について,4少年の保護事件に係る調査手続等の整備に関する諮問第72号について,でございます。   以上の審議事項につきまして御審議いただきたいと存じますが,まず議題の1及び2について御審議をいただき,休憩を挟みまして議題の3及び4を御審議いただくという順に議事を進めてまいりたいと存じております。   また,すべての議題が終わりました後,受刑者の処遇を中心とする法案について御報告がございます。   本日は,何分にも内容が盛りだくさんでございますので,十分に御審議いただくのは当然でございますけれども,委員・幹事の皆様には議事の進行にも御協力いただきまして,各要綱の決定を行いたいと思っておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。   それでは,審議に入らせていただきます。   本日の第1の議題であります特別清算等の見直しに関する諮問第41号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず,倒産法部会における審議の経過及び結果につきまして,○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 倒産法の部会長をいたしております○○でございます。   諮問第41号につきまして,昨年11月26日に開催されました倒産法部会第40回会議におきまして,特別清算等の見直しに関する要綱案を決定いたしましたので,その審議の経過等,及び要綱案の概要につきまして,御報告申し上げます。   まず,要綱案の決定に至る審議の経過等につきまして御報告いたします。   諮問第41号は,平成8年10月に発せられたものでごさいまして,「破産,和議,会社更生等に関する制度を改善する必要があるとすれば,その要綱を示されたい」という,倒産法制全般の見直しに関する包括的な諮問でございました。   この諮問を受けまして,倒産法部会では精力的に審議を行い,審議の成果を得られたテーマから順次その成果を総会に御報告してまいりました。そして,平成11年以降,総会における要綱の採択,法務大臣に対する答申を経まして,先ほどの法務大臣のごあいさつにもございましたように,民事再生法,個人再生手続の創設を内容とする民事再生法の一部改正法,新しい会社更生法,新しい破産法等,多数の関係法律が成立し,いずれも既に施行されていることは御案内のとおりでございます。   残されました課題は,株式会社のみを適用対象とする会社の整理及び特別清算の見直しでございます。   倒産法部会では,部会のもとに特別清算分科会を設けまして,まずこの分科会で見直しのたたき台と申しますか,素案を作成する作業を行い,この作業の結果を踏まえて部会における審議を行いました。   そして,昨年7月16日には,それまでの審議の成果として,特別清算等の見直しに関する要綱試案の取りまとめを行い,7月23日に公表いたしまして,8月末までの1か月余りにわたり意見照会をいたしました。   その上で,意見照会の結果も踏まえまして更に審議を続け,昨年11月26日の第40回会議におきまして,特別清算等の見直しに関する要綱案を決定するに至ったわけでございます。   以上が要綱案の決定に至る審議の経過でございます。   次に,要綱案の主な要点に絞りまして,その概要を御説明申し上げます。   要綱案は,「第1部 特別清算」,「第2部 その他」とに分かれております。   まず,「第1部 特別清算」では,株式会社についての厳格な清算手続である特別清算を取り上げまして,手続の迅速化,合理化,手続の公平性,透明性の確保の観点から,手続全体にわたって見直しをするものとしております。   個別の要点の御説明に入りますと,まず冒頭1ページ,「第1 管轄」の「2 管轄の特例」でございますが,これは親法人とその子会社,いわゆる孫会社,連結子会社につき,管轄の特例を設けまして,子会社等の特別清算手続と親法人ないし親会社の倒産手続との一体的処理を可能とするものでございます。その際,親法人等についての手続は,特別清算に限らず,破産,民事再生,又は会社更生という異種の倒産処理手続が係属する場合も含めて,一体的処理ができるように規律するものでございます。   次に,5ページの「第7 特別清算開始の効力」の中の「1 効力を受ける債権の範囲」でございますが,現在の通説的な見解に従いまして,共益的債権でございます特別清算のために生じた債権,及び特別清算の手続の費用の請求権が手続の効力を受けないということを明確化いたしますとともに,新たに一般の先取特権,その他一般の優先権がある債権についても手続の効力を受けないこととしております。これにより,特別清算の手続の公平性を確保しつつ,その迅速化を図るものでございます。   ここで申します「一般の優先権ある債権」には,いわゆる労働債権,つまり雇用関係に基づき労働者の有する債権も含まれておりまして,これらは特別清算の効力を受けずに,手続外で優先的に弁済を受けることができるとされているところでございます。   次に,7ページのその前のページから始まります「第8 清算人」の「4 清算人の行為の制限」でございますが,(注1)にございますとおり,現行法上合理的に機能していないという指摘がございます監査委員の同意の制度,及び債権者集会の決議の制度というものを廃止いたしまして,その上で,現行の特別清算における裁判所の許可の制度のみを存続させ,その際,裁判所の裁量により一定の事項について許可を要しないとすることができるものとする等の見直しを行っております。また,裁判所の許可にかわる同意権限を,監督委員という新設の機関に付与することができるものといたしてございます。   次に,8ページ,一番上の(注3)の2及び3は,営業譲渡についての裁判所の許可に関し,特別の定めを設けるものであります。   まず,(注3)の2は,裁判所が営業の全部又は重要な一部の譲渡等につき許可をする際の債権者の意見聴取につきまして定めるものでありまして,清算人は,営業の譲渡等の許可の申立てをする場合には,あらかじめ債権者の意見聴取を行った上で,その内容を報告しなければならないとするものであります。   また,同じく(注3)の3は,裁判所の営業譲渡等について,労働者の利害に配慮をするという観点から,労働組合等の意見聴取の制度を設けるものとしているところでございます。   次は,少し飛びますが12ページの中ほど,前のページから始まっております「第11 裁判所の処分等」の「2 会社の役員の責任の免除の取消し」でございますが,これは現行の特別清算におきましては,裁判所の職権による処分の一つとして認められております役員等の責任の免除の取消しの制度を見直しまして,破産手続等における否認の制度を参考として,役員の責任の免除の取消権という実体上の権利を会社に付与するものであります。これによりまして,責任免除の取消しの適否について,訴訟手続で争うことができることとなりまして,免除の取消しを受ける役員の手続保障を強化するものであります。それとあわせまして,責任の免除の取消しについての審理と,損害賠償責任の査定についての審理との一体化も可能となるものでございます。   次は,13ページの「第12 協定」の「4 協定の可決要件」でございますが,②の議決権額要件につきまして,現行の特別清算の議決権の総額の4分の3以上という要件を緩和いたしまして,3分の2以上へと変えております。これによりまして,特別清算をより利用しやすくするものでございます。   なお,このように協定の可決要件を緩和する場合には,労働債権等の一般の先取特権その他一般の優先権がある債権を有する債権者の保護が問題となりますが,既に御説明いたしましたとおり,これらの債権につきましては,特別清算開始の効力を受けないと,したがってまた協定の効力も受けないということにいたしまして,その保護を図っているところでございます。   次は,14ページでございますが,「第13 特別清算の終了」の「2 破産手続開始による特別清算の終了」の「(1) 職権による破産手続開始の決定」では,債権者の利益保護の観点から,新たに「特別清算によることが債権者の一般の利益に反するとき」という,--③でございますけれども--この場合にも,職権による破産手続開始を義務づけるということにいたしております。また,裁判所は,協定が否決されたとき,又は協定不認可の決定が確定したときは,職権で破産手続開始の決定をすることができるものといたしております。   以上が第1部関連でございます。   次に,「第2部 その他」の第1は「会社の整理」でございますけれども,会社の整理は民事再生法の施行後は株式会社のみを対象とする再建手続である会社の整理手続の存在意義は失われたという指摘がなされていることを踏まえまして,会社の整理の制度を廃止するものといたしております。   最後に,「第2 その他」におきましては,次に御審議いただく会社法制の現代化に伴い,所要の規定を整備するとともに,その他所要の規定を整備するものとしております。   以上,簡単でございますが要綱案の主要な項目につきまして御説明を申し上げました。   これをもって,諮問第41号に対する最終報告とさせていただきます。よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告,及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。--御質問,ございませんでしょうか。   では,次に御意見を伺いたいと存じます。   御意見もございませんようですので,それでは原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしいでしょうか。   特に御異議がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   それでは,倒産法部会から報告されました「特別清算等の見直しに関する要綱案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のために,反対の方はいらっしゃいますでしょうか。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告いたします。   原案に賛成の委員は19名でございます。   議長を除くただいまの出席委員も19名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,倒産法部会から報告されました「特別清算等の見直しに関する要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。   したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。   なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければと存じます。   続きまして,本日の第2の議題であります会社法制の現代化に関する諮問第56号につきまして,御審議をお願いしたいと存じます。   まず,会社法(現代化関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもいらっしゃいます○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 会社法(現代化関係)部会長の○○でございます。   諮問第56号につきましては,昨年12月8日開催の会社法(現代化関係)部会第32回会議におきまして,会社法制の現代化に関する要綱案を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の概要につきまして御報告申し上げます。   まず,要綱案の決定に至る審議の経過につきまして御報告申し上げたいと思います。   諮問第56号は,「会社法制に関する商法,有限会社法等の現代化を図る上で留意すべき事項につき,御意見を承りたい」というものでございます。   会社法制を規定いたします現行商法典は,明治32年に制定された法律でありまして,片仮名の文語体で表記されておりますほか,現在は使われていない用語が多く用いられており,そのために利用者に分かりやすい平仮名の口語体に改めるべきであるという指摘がかねてよりなされておりました。   また,会社法制につきましては,商法本体に合名会社,合資会社,株式会社についての規定が置かれ,有限会社については個別の単行法が設けられているほか,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律において,大規模会社や小規模会社について商法の特例規定が置かれているために,利用者にとって分かりにくいものになっているという指摘がありました。   さらに,近時,経済情勢の変化の早さに対応いたしまして,短期間に多数回にわたり商法等の改正が行われたため,会社法制全体の整合性を図るという観点から,これを全面的に見直す必要があるという指摘も強まっておりました。そこで,平成14年2月に,この諮問がされ,その調査審議を行うため,会社法(現代化関係)部会が設置されたものでございます。   会社法(現代化関係)部会におきましては,平成14年9月から,具体的な検討作業を開始し,平成15年10月には,それまでの審議の中間的な成果として,会社法制の現代化に関する要綱試案を取りまとめました。   この要綱試案につきましては,約1か月間にわたり,関係各界に対する意見照会手続,及びパブリックコメントの募集手続が実施され,合計1,700件余りの意見が寄せられました。   その後,これらの意見をも踏まえまして,会社法(現代化関係)部会において更に審議を進めた結果,昨年12月8日開催の第32回会議におきまして,会社法制の現代化に関する要綱案の決定を見るに至ったものでございます。   続きまして,要綱案の概要につきまして御説明いたします。   初めに,会社法制の現代化の基本方針につきまして御説明いたします。   これについては,お手元の資料の1ページ,「第1部 基本方針」の「第1 会社法制の現代語化」及び「第2 実質改正」に掲げられておりますとおり,会社に関して規定している商法第2編,有限会社法等についてのいわゆる現代語化を行うとともに,会社に関する諸制度間の規律の不均衡の是正,最近の社会経済情勢の変化に対応するための各種制度の見直し等,現代化というにふさわしい内容の実質的な改正をも行うものとしております。   現代語化につきましては,片仮名・文語体で表記されている規定の平仮名・口語体化,用語の整理,解釈等の明確化のための規定の整備を行うとともに,商法第2編,有限会社法等の各規定を一つの法典として分かりやすく再編成することとしております。   また,実質改正に係る事項は,会社法制全体についての見直しを行っていることから,極めて多岐にわたっており,御覧いただきますとおり要綱案も相当分厚いものになっております。事項の中には,技術的な見直しを行うにとどまるものもあり,その軽重は様々でありますので,時間の関係上,現行の会社法制の実質につき重要な変更を加えようとするものを中心に,事項を絞って御説明したいと思います。   特に重要なものは,有限会社制度の廃止,及び株式譲渡制限会社に関する規定の大幅な見直し,新たな会社類型である合同会社制度の創設,株式会社における新たな機関である会計参与の制度の創設,組織再編行為に係る規定の柔軟化,剰余金分配に係る規制の柔軟化等を挙げることができます。   第2部では,株式会社に関する改正事項を取り上げております。多数の項目がありますが,ただいま申し上げましたとおり,主要なものにつきまして順次簡潔に御説明いたしたいと思います。   「第1 総論」についてですが,現行の株式会社,有限会社に関してはいずれもその大多数が中小規模の会社であり,どちらの会社類型を選択しているかにかかわらず,それらの会社の実態に大差がないという実情にかんがみ,両会社類型を統合して一つの会社類型,すなわち「株式会社」として規律するものとしています。その前提として,株式会社については機関に係る規律を中心に,定款自治の範囲を拡大し,その規律の内容を多様化,柔軟化し,現行の有限会社とほぼ同様の規律のもとで株式会社を設立・運営することもできるようにすることといたしております。   また,これに伴い,現行の有限会社制度については廃止することになりますが,既に設立されている有限会社につきましては,その商号中に「有限会社」の文字を使用することを含め,基本的に従前の規律が維持されるとともに,当該有限会社がその選択によって新法の規律の全面的な適用を受ける株式会社に移行するための措置をも講ずることといたしております。   2ページ,「第2 設立等関係」についてでありますが,株式会社の設立につきましては,その手続の一層の簡素合理化を図ることとしています。   まず,最低資本金制度についてですが,現行法では株式会社につき1,000万円,有限会社につき300万円の最低資本金額が定められており,資本の額をそれよりも低額とする株式会社,有限会社の設立は認められないものとされておりますが,このような現行の最低資本金制度については,債権者保護の観点から必ずしも意義が大きくない一方で,昨今の経済情勢の中では起業の妨げとなっている面が大きいという指摘が強まっているところでありまして,要綱案では,この制度の有している複数の機能,すなわち設立時における払込価額規制としての機能,剰余金分配規制としての機能,表示規制としての機能,ごとに見直しを行うこととしています。このうち,設立時における払込価額規制という面につきましては,1の(1)②にありますとおり,株式会社の設立時に払い込むべき金銭等の額に係る規制を設けないものとすることといたしております。   なお,剰余金分配規制という面については,30ページ,第6の2の(2)にありますとおり,債権者保護の観点から,資本金の額のいかんにかかわらず,純資産額が300万円未満の場合には,剰余金があってもこれを株主に分配することができないものとし,表示規制の面については,32ページ,第6,5の(2)にありますとおり,会社成立後に資本金として表示することができる額に係る下限規制を設けないものとすることといたしております。   次に,4ページ,「第3 機関関係」についてでありますが,「1 株式会社の機関設計」では,現行の株式会社,有限会社の両会社類型を統合することの前提として,株式譲渡制限会社においては,取締役会を設置することを要しないものとすることを認めるなど,株式譲渡制限の定めの有無,会社の規模,すなわち大会社か否かに応じまして,規律の大幅な柔軟化を図り,所定の原則のもとで会社が自由にその機関設計を行うことができるようにすることといたしております。その結果,株式譲渡制限会社でない大会社における機関の在り方は,現行と特に変わりはありませんが,その余の株式会社,特に株式譲渡制限会社の中小会社につきましては,現行よりも選択することができる機関設計が大幅に増え,それぞれの会社の実情に応じた機関の在り方を選択することができるようになります。   6ページ,「3 取締役・取締役会」では,「(3) 取締役の任期」の項目が,株式会社と有限会社とを一つの会社類型として統合することとするに当たり,特に争点となった問題の一つです。   現行法では,株式会社の取締役の任期は,委員会等設置会社の場合を除き基本的に2年とされているのに対し,有限会社の取締役の任期については特に規制がございません。この点について,要綱試案では,委員会等設置会社を除く株式譲渡制限会社のうち,取締役会が設置されるものについてはその法定の任期を伸長する方向で検討することとし,取締役会が設置されないものについては,有限会社の取締役の任期と同様に,法律上は規制を設けないものとすることとしておりましたが,要綱案では,取締役会の設置の有無により規制を異ならせることとはせず,委員会等設置会社を除く株式会社の取締役の任期について,一律に原則2年とし,その上で,株式譲渡制限会社については,定款でその任期を最長10年まで伸長することができるものとしております。   7ページ,「(5) 内部統制システムの構築に関する決定・開示」では,株式会社の業務の適正さを確保する体制の構築の重要性にかんがみ,内部統制システムの構築の基本方針を取締役会の専決事項とし,その決議の概要を営業報告書の記載事項とするとともに,大会社についてはその構築の基本方針の決定を義務づけるものとしております。   「(6) 取締役会の書面決議」では,取締役会の意思決定を機動的かつ適切に行えるようにするため,その決議の目的である事項につき,各取締役が同意をし,かつ,業務監査権限を有する監査役が置かれている会社にあっては,各監査役が特に意見を述べることがないという場合において,定款の定めにより,これを許容することとしています。   なお,監査役会及び委員会等設置会社の各委員会については,基本的に書面決議は認めないことといたしております。   8ページ,「(8) 取締役の責任」では,会社に対する各種の責任の在り方について,無過失責任規定の見直し等を行い,委員会等設置会社とそれ以外の会社との間における規律の調整を図ることといたしております。   なお,この取締役の責任につきましては,30ページの第6,3のところに違法な剰余金分配に関する無過失責任の廃止の事項がございます。   次に,10ページの「(9) 株主代表訴訟」についてでありますが,要綱試案では,その見直しに要否につき,なお検討することとし,見直しに係る具体的な意見,指摘を掲げるにとどまっていたところでありましたが,要綱案では,原告株主が自己又は他人の不正な利益を図る等の目的を有する場合など,代表訴訟の制度趣旨に反する一定の場合には,株主代表訴訟に係る訴えを提起することができないものとし,株主からの提訴請求に応じなかった会社につき,その株主等からの請求により,不提訴理由を通知しなければならないこととするとともに,係属中の株主代表訴訟の原告が株式交換等によりその会社の株主たる地位を失う場合であっても,一定の場合には原告適格を失わないものとする手当てをすることにしております。   11ページ,「4 監査役」についてですが,「(1) 監査役の権限」については,現行法では株式会社の小会社及び有限会社における監査役の権限が会計監査権限のみに限られておりますところ,要綱試案では,会社の規模等のいかんにかかわらず,一律に業務監査権限とする方向で検討することにしておりましたが,要綱案では,一定の株式譲渡制限会社においては定款をもってその監査役の権限を会計監査権限のみに限定することができるものとし,その一方で,業務監査権限を有する監査役又は監査委員会が設置されない会社にあっては,株主が業務監査権限を有する監査役に準じた監督是正権限を直接有するものとすることといたしております。   「(2) 補欠監査役等」につきましては,その予選,すなわち任期途中での定員割れに即応するために,あらかじめ後任候補者を選任しておくことは,定款に定めがなくても可能であり,その予選の効力は,選任後最初に到来する定時総会の時までとすること等を明確化するものといたしております。   12ページ,「5 会計参与」は,その名称は仮称でありますけれども,要綱試案の取りまとめ後に新たに検討され,追加された項目です。   要綱案におきましては,会計参与は,株式会社における新たな機関であり,公認会計士,税理士等が株主総会により選任され,取締役と共同して計算書類を作成するとともに,その計算書類を取締役とは別に保存し,株主,会社債権者に対して開示すること等をその職務とするものといたしております。主として中小規模の会社における計算書類の正確性の確保に資することが期待される制度として,要綱案に掲げることとなったものであります。   13ページ,「6 会計監査人」についてでありますが,現行法では大会社の株式会社については,その設置が強制され,中会社については任意にその設置をすることができるのに対し,小会社につきましてはその設置を行うことができないものとされておりますけれども,この点につきまして,要綱案では,現行の小会社の範囲の会社であっても,定款で会計監査人を任意に設置することができるものとするほか,会計監査人の株式会社に対する責任について,社外取締役と同様の,いわゆる一部免除制度を導入するとともに,株主代表訴訟の対象とするものとしています。また,会計監査人が計算書類につき不適法意見を述べる等の場合には,決算公告においてその旨を明示しなければならないものとすることとしております。   15ページ,「第4 株式・新株予約権・新株予約権付社債関係」では,株式・新株予約権・新株予約権付社債について様々な技術的な改善等を図ることとしております。   まず,「1 株式の譲渡制限制度」では,定款自治の範囲を拡大し,一部の種類の株式の譲渡についてのみ承認を要するものとすることや,相続,合併等の事由による株式の移転についても,実質的に譲渡承認の対象とすることなどができるようにするものとしています。   16ページ,「2 自己株式の取得」では,まず自己株式につき配当請求権その他の自益権を認めないものとするほか,株式の消却を自己株式についてのみ概念することとし,自己株式以外の消却については,会社がその株式を取得した上で消却するものとして整理することとしております。   18ページ,「3 新株発行等」では,譲渡制限株式会社における新株発行手続につき,第三者に対する発行決議と有利発行決議との統合を図るほか,自己株式の市場取引による売却について,定款の定めに従い,特定の取得事由により取得した株式数を限度として,これを認めることとし,会社に対する金銭債権の現物出資については,履行期が到来しているものは,その債権額以下で出資をする場合に限り,検査役の調査を不要とし,自己株式の処分に際して金銭以外の財産が給付される場合については,新株発行と同様の取扱いをするものとしております。   20ページ,「4 種類株式」では,法定種類株主総会に関して,これまでの改正により多様化された種類株式の利用可能性を高めるため,商法345条1項の規定により,種類株主総会の決議が必要となる場合を限定するとともに,ある種類株式につき,あらかじめ定款をもって同法346条の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定めることができるものとすることにしております。   少し飛びまして,26ページの「第5 社債関係」におきましては,社債制度全般にわたり規律の合理化を図ることとしております。   「1 社債総則」では,株式会社は,その機関設計のいかんにかかわらず,社債を発行することができるものとし,また,その余の類型の会社についても,株式会社の社債に係る規定と同様の規定を設けるものとしております。   また,取締役会を設置した株式会社について,社債の発行に係る取締役会の決議においてその決定を代表取締役に委任することができる事項の明確化を図ることとしています。   29ページに移りまして,「第6 計算関係」につきましては,まず株主に対する会社財産の払戻し行為,すなわち現行の利益の配当,中間配当,資本又は準備金の減少に伴う払戻し,自己株式の有償取得等に対して,統一的な財源規制をかけるものとし,分配限度額の算定方法等につき合理化を図ることとしています。   また,31ページですが,剰余金の分配に係る回数制限をなくし,株主総会の決議によっていつでも剰余金の分配の決定をすることができるようにするほか,現物配当に係る規定を整備することとしております。   さらに,現行法では委員会等設置会社においては取締役会限りで利益処分ができることとされているのに対し,その余の一般の株式会社における利益処分は,定時株主総会の決議をもって行うこととされておりますが,要綱案では,委員会等設置会社以外の会社であっても,取締役会,監査役会及び会計監査人が設置され,かつ,取締役の任期を1年とするものにあっては,定款で定めることにより,委員会等設置会社と同様に,取締役会限りで剰余金の分配を決定することができるものとすることとしています。   その他,計算に関しては,33ページですが,決算公告について,規模や機関設計のいかんにかかわらず,株式会社についてはその義務づけを維持するものといたしております。   33ページ,「第7 組織再編行為関係」につきましては,まず「1 対価柔軟化」にありますとおり,組織再編行為の合理化,柔軟化の一環として,いわゆる合併等対価の柔軟化を図ることとし,吸収合併等の場合において消滅会社の株主等に対し,存続会社等の株式ではなく,金銭その他の財産を交付することを認めることといたしております。   また,34ページ「2 簡易組織再編行為」では,その要件の基準を5%から20%に緩和するとともに,反対株主の異議要件につき見直しを行うこととしています。   「3 略式組織再編行為」では,支配関係のある会社間,すなわち支配会社が被支配会社の9割以上の議決権を保有している状態にある場合の当該会社間で組織再編行為を行う場合において,被支配会社における株主総会決議を要しないものとする簡易手続を設けるとともに,その場合の被支配会社の株主には差止請求権を認めることといたしております。   37ページ,「第8 清算関係」につきましては,清算手続への裁判所の関与に関する規定の見直し,清算中の株式会社における機関の在り方の合理化,明確化等を図ることといたしております。   次に38ページ,第3部でありますが,「第1 総論」におきましては,次に述べますような新しい会社類型として,仮称でありますが「合同会社」というものを創設するとともに,それと合名会社・合資会社等については,共通の内部規律等につき,同一の規定を適用する形で整理することといたしております。   39ページ,「第2 合同会社関係」では,出資者の有限責任が確保されているという面では株式会社に類似し,会社の内部関係については合名会社・合資会社と同様の組合的規律が適用されるというような特徴を有する新たな会社の規律として,定款の変更,社員,業務の執行,計算,退社等に係る規定の整備を図ることとしております。   具体的には,定款変更には原則として社員全員の一致を要し,社員一人のみの設立,存続も許容し,出資については全額払込主義をとり,社員は会社の債務につき責任を負わず,社員は原則として業務を執行する権限を有し,業務を執行する社員が法人である場合には,自然人たる職務執行者の選任を要し,株主代表訴訟に準じた業務執行者に対する責任追及の制度を設け,債権者には貸借対照表等の閲覧等の請求権を保障し,分配に係る財源規制等を設け,退社に伴う持分の払戻しについての規律を整備する,などとしています。   41ページ以降,「第3 合資会社関係」,「第4 合名会社関係」では,社員一人のみの合名会社の設立,存続を認め,会社が無限責任社員となることを許容する等の規定の整備を行うこととしています。   次に,44ページ,「第4部 その他」でありますが,「第1 商号・登記等」では,会社に係る現行の商法19条及び商業登記法27条による,いわゆる類似商号規制を廃止し,それに伴う規定の整備を図ることとしています。   また,支店の所在地における登記の位置づけを見直し,その登記事項を限定する等の措置を講ずることとしています。   次に,45ページ,「第2 外国会社」に関しては,いわゆる擬似外国会社について,日本における取引を継続して行うことができないものとし,その違反者に対する責任規定の整備等を図るなどとしています。   最後に,1か所訂正させていただきたい箇所がございます。   前に戻りまして,6ページ,第2部,第3の「3 取締役・取締役会」の「(1) 取締役の資格」の「② 欠格事由」のイに,「破産の宣告を受け」とありますが,これを「破産手続開始の決定を受け」と改めさせていただきたいと思います。この会社法制の現代化に関する要綱案の決定後の本年1月1日から新たな破産法が施行され,従来「破産宣告」と称されていた破産手続を開始する裁判が,新たに「破産手続開始の決定」と称されることになりましたので,それに従った表現の訂正をさせていただく趣旨であります。   以上,簡単ではございますが,要綱案の概要につきまして御説明させていただきました。よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告,及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら承りたいと思います。   御質問がないようでございますので,次に御意見の方を伺いたいと存じますが,御意見ございませんでしょうか。 ● ただいま,要綱案についての詳細な御説明を承りましたが,要綱案全体のタイトルは「会社法制の現代化」でありますところ,その基本方針の第1は「会社法制の現代語化」となっております。無論,現代化と現代語化で使い分けておられるわけですけれども,少し紛らわしい感じがしないでもありません。古い法律の文体等を変える問題につきましては,ちょうど10年前に刑法でやった例がございますけれども,その際は法務大臣からの諮問自体が「表記の平易化」という言い方で改正を求められました。ちょうど同じころに,日本弁護士連合会でも同じ問題について関心を示しておられて,日弁連の案では「現代用語化」という言葉が使われていたかと思います。そういうことをちょっと御参考までに申し上げるわけですけれども,この「現代語化」というのを何か置き換える余地はないかということを意見として申し上げたいと思います。 ● ちょっとこの辺,私,どういうふうに言葉が今まで使われてきたかは詳細には存じないのですけれども,刑法の場合とちょっと違うかなと思いますのは,この「第1 会社法制の現代語化」,1,2,3とありますが,3にありますように法典の形自体を変えますので,それも……。刑法の場合は,恐らくそういうことはなかったのではないかと思います。   ちょっとこの辺が違うのかなと思いますが,これは技術的な問題ですので,むしろ法務省当局にお答えいただいた方がいいのではないかと思いますが。 ● 今,御指摘のとおり,片仮名の法律を国民に分かりやすい普通の平仮名・口語化をしていくということは,前回に御議論があった民法であれ,今回の会社法制であれ,一貫して民事関係あるいは刑事関係で法務省の立法の一つの方向性として逐次実現しているところです。そのような作業,つまり片仮名・文語体のものを平仮名・口語体の用語に置き換えるという作業は,それ自体をとらえてもいろいろな言い方があると思います。「現代語化」というのも一つの言い方でしょうし,「平仮名・口語化」,あるいは「平易化」という言い方もあると思います。   ただ,それぞれの法分野でそのような作業を行うときに,あわせて実質改正を行う場合が多くあります。今回の会社法制については,極めて多岐にわたる実質改正と,それから法典の形を大きく変えるという改正もあわせてしております。   というようなことで,表記を単純に置き換えるという作業をどう呼ぶかという呼び方も,何が適切かについていろいろと御意見は分かれると思いますし,そのときにされる実質改正の内容が,それぞれ異なったものがあわせてされたときに,全体の作業をどう呼ぶかということについてもいろいろな選択肢があると思います。   確かに最近は,特に民事関係,民事局の法案では「現代語化」あるいは「現代化」という言葉はよく使っていますが,これが一般の用語としてなじみがあるかといわれますと,確かにそうでもない,もっといろいろな言い方があるのではないかと思いますし,法務省の所管法令は片仮名・文語体の法律がまだまだありますし,各方面からこういうものは逐次分かりやすい言葉に置き換えるべきだということを言われておりますので,今後ともこの種の改正作業は続くと思いますが,その際にはどういう言い方でその作業を言っていくのがいいのか,必ずしも「現代語化」とか「現代化」という最近の言い方にとらわれることなく,今の御指摘も踏まえて考えていきたいと思います。 ● 私の説明が十分でなくて,理解していただけなかった部分があったのかもしれないと思いますけれども,私は「会社法制の現代化」という言葉には全く異論がありません。ただその中に,表記を改めるといういわば形式的な部分と,実質的な内容の改正にわたる部分,両方を含んでいる,その前者について「現代語化」という言葉で言いあらわすのが適切かという点だけを疑問にしたわけでございます。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 先ほどの質問のところで述べた方がよかったのかなと思っておりますが,意見ではないのですけれども。 ● 構いません。どうぞ。 ● 教えていただきたいことなのですが。最近,商法は非常に改正が盛んに行われているわけですね。それで,今度会社法ということで取り出して現代化するとかというようなことなのですが,例えば資本金の最低限度額の撤廃とか,そういうようなことで,先ほどの御説明ですと債権者保護の立場からもそんなにそれを撤廃しても問題はないというような御説明があったかと思うのですけれども,最近の商法の改正で,一本何か筋が通っているところがあるとするならば,それは資金調達の容易性というか,そういうことを中心に考えていらっしゃって,債権者保護については剰余金の分配のこの規制をかけることで十分であるというふうに考えていらっしゃるのかどうなのか,そこのところだけ教えていただきたいと思います。 ● 現在の商法の改正が,会社債権者保護をどう考えているかという御指摘だと思いますけれども,もちろん,有限責任の会社である以上,会社債権者の保護は会社法の重要な事柄であると考えております。   その場合に,最低資本金について会社債権者保護にどれほど役に立つかということをどう評価するかという問題でありますが,この点については部会でも両論ございました。1,000万・300万でも何らかの役には立っているという御意見と,いや,そんなものは役に立っていないという御意見とあったわけです。結論は,先ほど申したようなところですけれども。   私がこの点についてどう考えているかと申しますと,会社法でどの程度厳重な債権者保護をしなければいけないかというのは,これは一方で起業の容易化というのがありますから程度問題なのでありますけれども,基本的にはその措置を置くことによって利益を受けるものも中小企業であり,それから不利益を受けるのも中小企業であると思っております。つまり,倒産するというのは圧倒的に中小企業が多いわけでありますし,中小企業が倒産したときに誰が損害を受けるかといいますと,大企業はそもそも中小企業に対していろいろ契約上の制約等を課せますので,会社法で,つまり強行規定で保護してもらう必要はない。他方,消費者も,中小企業に対して債権を持っているという消費者はほとんどいないはずでありまして,したがって中小企業が倒産したときに損害を受けるのは,結局のところやはり納入業者等取引先である中小企業なんですね。会社法の保護を必要としているのは。ですから,結局どの程度の会社債権者保護手続を置くべきかということは,これは基本的には中小企業自身が決めることであろうというふうに考えております。   平成2年の改正のときには,結局そちらの議論が,最低資本金ならばのむと,計算書類に対する簡易な監査とかそういうものは受け入れられない,あるいは計算書類の登記所公開なども反対ということでありました。今回は,ディスクロージャーの方は,これはいっときにばっとするというわけにはいかなくても,徐々に改善を図っていく,それに対して,やはり最低資本金による会社債権者保護というのは余り役にも立っていないし,起業の妨げになるからやめてほしいというのが中小企業の関係者の意見だったと思います。それで,結局結論的にはこのようなことになったということでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● はい。 ● ほかに,御質問でも結構でございますが,ございませんでしょうか。   御意見がほかにないようでございますので,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。   特に御異議がないようでございますので,そのようにさせていただきます。   それでは,会社法(現代化関係)部会から報告されました会社法制の現代化に関する要綱案のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のために,反対の方の挙手をお願いいたします。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   原案に賛成の委員は19名でございます。   議長を除くただいまの出席委員も19名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,会社法(現代化関係)部会から報告されました会社法制の現代化に関する要綱案は,原案のとおり採択されたものと認めます。   したがいまして,本日御審議いただき,採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。   なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただければと存じますのでよろしくお願いいたします。   順調に審議が進んでおりますが,ここで冒頭に申し上げましたように休憩をとらせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。             (休     憩) ● 審議を再開いたします。   続きまして,本日の第3の議題であります人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備に関する諮問第71号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず,刑事法(人身の自由を侵害する犯罪関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 部会長の○○でございます。私から,審議の経過及び結果を御報告申し上げます。   諮問第71号でございますが,これは「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人,特に女性及び児童の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」を締結するとともに,近年におきます人身の自由を侵害する犯罪等の実情に対処するために,早急に,罰則を整備する必要があると思われますところから,要綱(骨子)についての意見を求めるというものでございましたが,本審議会は,昨年9月8日開催の第143回会議におきまして,まず部会に検討させる旨の決定をされました。   これを受けまして,刑事法(人身の自由を侵害する犯罪関係)部会で4回にわたって審議をいたしました結果,諮問に付されました要綱(骨子)のとおりに刑法等を改正することが相当である旨を決定いたしました。   要綱(骨子)第一及び第三のうち,法定刑の引上げに関する部分につきましては,いずれも賛成多数によりまして,またそれ以外のものにつきましては,修正文案が出されたものもありましたが,最終的にはすべて全会一致でただいま申し上げました結論に達したものでごさいまして,その要綱(骨子)は,配布資料刑1としてお手元に配布しているものでございます。   それでは,刑事法部会におきます議論の概要につきまして,ただいまの配布資料に即して御説明を申し上げます。   まず,要綱第一でございますが,これは近年,逮捕・監禁事案の認知件数が増加を続けておりまして,その中には極めて長期の監禁事案など,現行の罰則では適正に対処することが困難なものがございます。また,暴力団員等により組織的に行われます悪質な事犯に対しては,より厳しい態度で臨む必要がありますことから,刑法第220条の逮捕及び監禁の罪の法定刑の上限を5年から懲役7年に引き上げて,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第3条第1項第4号等の組織的な逮捕及び監禁の罪の法定刑の上限につきましても,懲役7年から懲役10年に引き上げることを内容とするものでございます。   部会での議論では,逮捕・監禁罪の第一審の科刑状況は,現行の法定刑の上限に張り付いているとはいえないのではないか,そのような傾向が認められないのに法定刑を引き上げる必要は果たしてあるのだろうか,あるいは,突出した長期監禁事案を取り上げて議論するのは妥当かといった論点につきましての検討が行われたところでございます。   こうした論点につきまして,実際の裁判では,法定刑が示す違法性評価の尺度の中で,想定し得る限り最も高度の違法性を有していると判断される事案に対して,初めて法定刑の上限ないしこれに極めて接近した量刑が科されるものでありまして,そのような量刑が多数なされる,いわゆる「上限に張り付く」という事態は本来は生じにくいものであるという意見や,先般の9年間以上にわたります女性監禁事件以外にも,その後,共犯者間で同事件を引き合いに出しながら犯行に至った女児監禁等事件,あるいは一度に多人数の女児を監禁し,大きな精神的ショックを与えるなどした悪質重大な事件が発生するなど,現行の法定刑では違法性の評価ないしは犯罪抑止力が不十分な場合が容易に想定され,今回の法定刑の引上げには,十分な合理性と必要性があるという意見が示されました。また,逮捕・監禁罪は,一時的に被害者の自由を侵害するにとどまらず,被害者の人生を変え,将来を奪うという意味で大変大きな法益侵害のポテンシャルを含んだ犯罪と考えられまして,国民感情に照らせば,今回の法定刑の引上げは,むしろ最低限というべき抑制的なものとして,十分理由があるという意見等も出されまして,結局要綱(骨子)第一につきましては,賛成多数で諮問内容どおりの法改正を行うべきであるとの意見が採択された次第でございます。   次に,要綱(骨子)第二は,人身買受けの罪を新設しようとするものでございます。   人身買受行為につきましては,人を不法に支配する手段として買受代金を負担しているため,被害者の自由をより強く拘束しようとする動機が働きまして,被害者に対する更なる法益侵害の危険性も大きいと思われます上に,要綱(骨子)第四において処罰の対象といたします人身売渡行為との必要的共犯(対向犯)の関係に立つところ,人身売買の一方の当事者であります買受人のみをあえて不可罰とすべき理由はないと考えられますことから,人身買受行為自体を処罰の対象といたしまして,その法定刑を,3月以上5年以下の懲役とすることを内容とするものでございます。   部会の議論では,要綱(骨子)第三から第六までとも共通する論点といたしまして,まず「人を買う」,あるいは「売る」とか,「人の売買」という用語は,買った後の処分は買い主の自由であるという感じがあり,民法上の売買と刑法にいう人身の売買は意味が違うと言われても,国民には理解し難いので,この用語を人に対して用いるのは相当ではないのではないか等の論点について検討が行われたところでございます。   この「売買」等の用語の点につきましては,諮問原案の「人を買い受けた者」の語を「金銭若しくは利益を与えて,人に対する不法な支配の移転を受けた者」又は「有償で,人に対する不法な支配の移転を受けた者」のいずれかに改めて,「人を売り渡した者」の語や,あるいは「売買した者」及び「売買された者」の語についても,これらと同様に改めるべきであるとする修正案も出されました。   この点については,現行刑法第226条で,既に「売買」という言葉が用いられているほか,この用語を変えるといたしまして,処罰できる範囲をより適切ないしは現行と同程度に明確に限定できる用語は見いだし難いので,現行のままでよいのではないか,また,借金の「カタ」として,有償で人の支配を取得する行為を「人身売買」と称するという意識は,一般国民にもあるのではないかといった意見等が出されました。加えて,条文上の用語として「人に対する不法な支配」という新しい言葉を用いることといたしますと,「不法な」とは何か,あるいは「支配」とは何かといった新たな解釈論の混乱を招きかねないといった意見も出されまして,これらの修正案はいずれも採用されませんでした。なお,これらの修正案の否決につきましては,この後報告いたします要綱(骨子)第三から第六までについても,同様でございました。   これらの議論等を経た上で,結局要綱(骨子)第二につきましては,「売買」という用語に関する修正案が否決された後,全員賛成で,諮問内容どおりの法改正を行うべきであるとの議決に至った次第でございます。   次に,要綱(骨子)第三でございますが,近年,認知件数が増加しております略取・誘拐事案の相当数におきまして,未成年者が対象とされ,これによる被害者やその親族の苦痛,社会不安には極めて重いものがあって,しかも,この種事案では,営利やわいせつ等の目的が認められなくとも,弱者である未成年者の心身に重大な危害が及ぶ危険性が大であることや,あるいは未成年者買受行為につき,同様に未成年者保護の観点から,対象が成人である場合よりも重く処罰する必要があることなどにかんがみまして,刑法第224条の未成年者略取及び誘拐の罪に加えて,未成年者買受けの罪を新たに設けて,これらの罪の法定刑の上限を,現行の罪の懲役5年よりも重い懲役7年とすることを内容とするものでございます。   部会における議論では,未成年者略取・誘拐罪の第一審の科刑状況を見ましても,最近5年間では,最高で,新生児を略取して6日後に発覚したという事案につきまして,懲役3年の実刑が言い渡された例があるのみであって,そのほかにそれより略取後の期間が長い事案は明らかになっておらず,単なる抽象的な不安だけでは,法定刑引上げの根拠としては不十分ではないのかといった論点につきまして,検討が行われました。   この点につきましては,低年齢の児童の行方不明事案は数多く発生しており,中には捜査機関等の懸命の努力にもかかわらず,長期間未解決のものもあるのは周知のとおりでありまして,周辺の児童を連れ去ろうとするなどのいわゆる不審者情報等と併せ考えますと,これが犯罪によるものとして近隣住民や社会全体が不安に思うのも当然であり,略取後の期間が長い事案が存在するとは言えないのではないかといった指摘は当たらないという意見が示されました。また,逮捕・監禁罪についてと同様に,そもそも,法定刑の上限を科すべき事案が頻発するという事態は本来生じにくいなどの意見や,逮捕・監禁罪と未成年者略取・誘拐罪は,法定刑が同一で,類似した保護法益に対して同様の法的評価が与えられているのであるから,前者の法定刑を引き上げるのであれば,後者の法定刑も引き上げるべきであるといった意見等も示されまして,結局,要綱(骨子)第三につきましては,未成年者買受罪の新設については全会一致で,法定刑の引上げにつきましては賛成多数によりまして,諮問内容どおりの法改正を行うべきであるとの議決に至った次第でございます。   次に,要綱(骨子)第四でございますが,人身取引議定書が,犯罪化すべき「人身取引」を性的搾取,強制労働,臓器摘出等の「搾取の目的」で,暴力・脅迫,欺もう,金銭の授受等の「手段」を用いて,人を「採用し,運搬し,移送し,蔵匿し又は収受すること」などと定義しておりますところ,このうち臓器摘出目的による行為や金銭の授受等の手段による行為につきましては,現行刑法では処罰できない面があることなどから,同議定書の要請を満たすために,刑法第225条の営利目的等略取及び誘拐の罪につきまして,目的要件として臓器摘出目的を含む「生命若しくは身体に対する加害の目的」を加え,また,これらの目的による人身買受行為や,売買代金の取得を伴い常に営利目的があるものと理解される人身売渡行為一般を,新たな処罰対象といたしまして,その法定刑を,現行の罪と同じ1年以上10年以下の懲役とすることを内容とするものでございます。   部会での議論では,人身取引議定書の要請を満たすというのであれば,「営利,わいせつ,結婚の目的」,これを「わいせつ,結婚,営利若しくは売春をさせその他わいせつな業務につかせる目的」といったように具体的に改めて,「生命若しくは身体に対する加害の目的」は,「臓器摘出の目的」に限定すべきではないかといった修正案が出たところでございます。   これらの目的要件に関する修正案につきましては,「売春をさせその他わいせつな業務につかせる目的」というのは,現行の「営利,わいせつの目的」のいずれか又は双方に含まれていると理解されるので,この修正文によって実質的に加わるものは何もないのではないか,「臓器摘出の目的」の「臓器」の範囲について,刑法上の概念といわゆる臓器移植法上の概念との関係が明らかではないのではないかなどの疑問が出されまして,いずれも採用されず,結局,要綱(骨子)第四につきましては,修正案が否決の後,全員賛成で,諮問内容どおりの法改正を行うべきであるとの意見が取りまとめられた次第でございます。   次に,要綱(骨子)第五は,現行刑法第226条の国外移送目的略取等の罪が,日本国外に移送する目的での略取等を処罰対象としているところ,その構成要件を,「日本国外移送」というものから「所在国外移送」に拡大して,法定刑を,現行の罪と同じ2年以上の有期懲役とすることを内容とするものでございます。すなわち,人をその所在する国から国外に移送する行為は,元の所在地に戻るのを困難にし,生活・行動様式が異なる地での行動を余儀なくさせることになることなどから,国内での移送にとどまる場合よりも重く処罰すべきものと思われ,このことは,日本国内からの国外移送に限るものではなくて,また実際問題としましても,我が国をめぐる人身取引として指摘があるのは海外から我が国への移送がほとんどであるほか,日本人が海外旅行先で他人の支配下に置かれ,第三国に移送されるといった事案も想定されますので,これらの事案にも適切に対処できるように法整備を行おうとするものでございます。   部会での議論では,構成要件を「日本国外」から「所在国外」に拡大するのは,改正刑法草案の「居住国外」と比較して処罰範囲が広がり過ぎるのではないか,また,法定刑につき,「所在国外」移送等の当罰性は低くて,現行法と同じ「2年以上の有期懲役」では重過ぎるのではないかなどの論点について検討がなされた次第でございます。   これらの点につきましては,改正刑法草案が議論された時代と現在とを比較しますと,日本国民の出国者数が飛躍的に増加したのに伴い,日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う事案も大きく増加しており,先般,国民が被害者となった場合の国外犯処罰を規定した刑法第3条の2が新設されるに至ったのも,このような情勢の推移についての国会ひいては国民の理解を前提とするものでごさいまして,これらにかんがみますと,所在国移送等を処罰する必要性は大きいとの意見が出されたところでございます。また,所在国からの国外移送等は,地理等に不案内な被害者の弱みを利用し,あるいは関係者も少ないなどのため事件の発覚やその後の捜査活動も困難にする可能性が高いなどの点におきまして,居住国からの移送等以外の悪質性を有する場合さえあると考えられるほか,そもそも現行の国外移送目的略取等の罪についても,居住を要件としてはおらず,日本国内を旅行中の外国人に対する行為にも適用されるのでありまして,これらにかんがみますと,所在国外移送目的略取等の罪については,現行の国外移送目的略取等と同じ法定刑とするのが相当であるという意見も示されまして,結局,要綱(骨子)第五につきましては,全員賛成で,諮問内容どおりの法改正を行うべきであるという結論に至った次第でございます。   最後に,要綱(骨子)第六でございますが,このうち三は,現行刑法第227条第3項が,営利・わいせつの目的で被拐取者・被売買者を収受する行為を処罰対象としているところ,人身取引議定書が,臓器摘出目的を含む「搾取の目的」で行われる被支配者の「運搬」,「移送」,「蔵匿」及び「収受」の処罰を義務付けているのに対応するものであります。また,実質的にも,これらの行為は,被拐取者等の自由の侵害状態を継続させ,その発見や支配状態からの離脱を困難にすることから,処罰の必要性が認められることにかんがみまして,目的要件として,臓器摘出目的を含む「生命若しくは身体に対する加害の目的」を加えるほか,処罰対象行為といたしまして,被拐取者や被売買者の「引渡し」,「輸送」及び「蔵匿」を加えることを内容とするものでありまして,その余の一及び二は,いわゆる本犯者を幇助する目的でこれらの行為に及んだ者も処罰できるよう,必要な法整備を行うことを内容とするものでございます。   部会での議論では,現行の刑法では,第227条第1項及び第2項で収受,蔵匿及び隠避を処罰の対象とし,同条第3項では収受のみを処罰の対象としており,この違いの理由につきまして,前者は事後従犯的な罪であるが,後者の方は独立罪であると説明する学説もありますが,今回の諮問で,第3項の処罰対象行為に蔵匿を加えているのは,第1項・第2項と第3項との関係についての考え方を変えるものなのかという論点につきまして検討が行われた次第でございます。   この点につきましては,同条第1項及び第2項は,事後従犯的な行為を処罰する趣旨の規定であり,第3項は,そのような意味での本犯の存在を前提とすることなく,自らの営利等の目的で被略取者等を「収受」する行為を処罰する趣旨の規定であると一般に解されているところ,今回の諮問は,これを変更するものではなくて,ただ,人身取引議定書の要請に対応すべきことや,近年の人身売買の実態に照らせば自らの営利等の目的で「蔵匿」行為等に及ぶケースも想定されることから,所要の法整備を行うものであるとの意見が示されまして,結局,要綱(骨子)第六につきましては,全員賛成で,諮問内容どおりの法改正を行うべきであるとの結論に達した次第でございます。   概略,以上のような審議に基づきまして,諮問第71号につきましては,要綱(骨子)のように刑法等を改正することが相当である旨の決定がなされた次第でございます。   以上で当部会におきます審議の経過及び結果の御報告を終わりますが,よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。   御質問,ございませんでしょうか。   御質問がございませんようですので,次に御意見を伺いたいと存じます。 ● 私は,人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備全体についてはおおむね賛成なのでございますけれども,一部積極的に賛成できない部分がありますので意見を述べたいと思います。   意見を述べるに当たり,時間の制約もあることですので,実は日本弁護士連合会がこの点に関する意見書を作成しておりまして,これと私の意見が共通するところがあって,これを引用しながら述べたいと思いますので,委員・幹事・関係官の方にこの意見書を配布するよう,許可をお願いしたいのですが。 ● はい。 ● では,配布をお願いします。   私が特に意見を述べたいのは,この日本弁護士連合会の意見書にもありますけれども,「意見の趣旨」の1及び3の前の文,一文目でございますけれども,逮捕及び監禁罪の上限を5年から7年に引き上げること,それから未成年者略取及び誘拐の罪の上限を5年から7年に引き上げることについては,積極的に賛成できないということであります。   その理由は,この意見書にも書かれておりますけれども,現在の量刑の状況が一番の問題でありまして,これは平成11年から15年の統計を見ますと,先ほど紹介もありましたけれども,例えば逮捕・監禁についていえば1年以上2年未満の刑に処せられているのが圧倒的で,しかも執行猶予が付されている数の方が多いという事実がございます。   それから,未成年者略取誘拐,これはもともと大変件数が少ない犯罪なのですけれども,同様に1年以上2年未満の刑に処せられているものがほとんどであって,しかも執行猶予が付されているものが非常に多いという実情があるわけでございます。   このような状況で,あえて法定刑の上限を引き上げるということについては,その必要性について納得し難いものがあるというのが私の意見でございます。   なお,日弁連の意見書では,ほかにも「買い受けた者」等の用語についての意見が述べられておりますけれども,用語については専門の部会で,この日弁連の意見について検討の上,一致が見られたということでありますので,あえて私がその点について意見を述べることはないと考えております。   以上が私の意見でございます。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。 ● 私は,全く法的にほかのものの年数がどうかということとはちょっと違う立場から,子供のいる母親として,この答申を拝見させていただいたときの率直な感じ方としては,逆に私は3か月から5年とか7年というのは非常に短いと感じました。   そして,もちろん御説明を受ける中で,それはいろいろな罪が積み重なっていくともっと長くなるのですよということも説明を受けたのですけれども,例えば人を--子供でなくても大人でも誘拐し,例えば連れ回したと,何もしないで何日か後に解放したという場合には,どういうふうに考えるかというと,その間の自由が束縛されることなどを考えると,そもそもそこにわいせつなりほかのものがプラスされなくても,誘拐をしたという事実だけでも十分に重い罪であるというふうな認識がないと,多分誘拐する目的には金銭がまつわるだろうとか,例えばわいせつ行為がまつわるだろうというようなことでプラスされるという考え方でなく,人をそもそも誘拐する,監禁するということ自体が大きな罪であるというふうに世の中が変わっていく必要があるのではないかと考える中で,これは意見なので印象を申し上げると,私からすると,せっかく作る法律であればもう少し幅を持たせて,その中で一つ一つのケースが考えられるというふうになっていったらいいなというふうに感じましたので,一応発言させていただきます。 ● そういたしますと,この7年でも少し低過ぎると,もう少し上げろという御意見でございますか。 ● はい,そうです。 ● 御意見が対立しているようでございますが,ほかに御意見ございませんでしょうか。 ● 私も,今,○○委員からの意見に賛成でございまして,日本弁護士連合会からこういう意見書が出たということで愕然として拝見をさせていただきました。   それで,判決が一,二年で,しかも執行猶予がついているような現状だから,何でこんなわざわざ上げるのという感覚というのは,多分これだけ余りに安易に幼い命がねらわれ,そして弱き者が痛めつけられていることに対して,もっと注目を浴びたかったから妹も殺害してやろうというような形という中で,そういう個々の例を持ち出すまでもなく,これはパニッシュメントをきつくすれば社会がおびえてそういうことはやめようという,この社会づくりというのも文明国としては非常に悲しいことではありますが,私も一人の娘を持つ親としては,この社会がどんどん怖くなって,非常に幼い者たち,弱き者たちが危険な目にさらされているときに,少なくともパニッシュメントのアナウンスメント効果,しかもこのタイミングで,毎日のように幼い命,あるいは,今,女の子という形になっておりますが,実は男の子たちが非常に危険にさらされているということも私は実態として存じ上げておりますけれども,刑期を3か月から7年,これは法曹界の中で比較優位の問題としては殺人の量刑と比べるとかなり重いものだということも存じておりますけれども,これは社会が今雪崩を打ってそっちの悪いパラダイムの方になっていくときに法改正をするタイミングであるとするならば,私は一市民として,一人の母親として,○○委員と同じように,多分これも御議論が尽くされたことだとは思いますが,7年というのは,これでは法改正をして,それが庶民に与えていくアナウンスメントとしては余りにも低いのではないかという感想を持ちました。 ● 今,お二方から,むしろ低いのではないかという御意見が出ておりますが,この点に関連いたしまして,ほかに御意見ございますでしょうか。   では,そのほかの点について御意見ございませんでしょうか。   いろいろ御意見のあるところでございますが,ほかに御意見がございませんようですので,一応原案について採決をさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   では,御意見がないようでございますのでそのようにさせていただきます。   それでは,刑事法(人身の自由を侵害する犯罪関係)部会から報告されました要綱(骨子)のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対の方の挙手をお願いいたします。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   原案に賛成の委員は18名でございます。   議長を除くただいまの出席委員は19名でございます。 ● 採決の結果,賛成者多数でございますので,刑事法(人身の自由を侵害する犯罪関係)部会から報告されました要綱(骨子)は,原案のとおり採択されたものと認めます。   したがいまして,本日,御審議いただき採択されました要綱(骨子)につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。   なお,要綱(骨子)を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただきたいと存じますのでよろしくお願いいたします。   続きまして,本日の最後の議題であります少年の保護事件に係る調査手続等の整備に関する諮問第72号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず,少年法(触法少年事件・保護処分関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもいらっしゃいます○○部会長から御報告をお願いいたしたいと思います。 ● 少年法部会長の○○でございます。私から,同部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。   諮問第72号は,近年,少年人口に占める刑法犯の検挙人員が増加し,強盗等の凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している上,いわゆる触法少年による凶悪重大な事件も発生するなど,少年非行は深刻な状況にあり,このような現状に適切に対処するためには,少年法等を早期に整備する必要があると思われることから,要綱(骨子)について意見を求めるというものでございましたが,本審議会は,昨年9月8日開催の第143回会議におきまして,まず部会に検討させる旨の決定をされました。これを受けまして,少年法(触法少年事件・保護処分関係)部会が設けられ,部会では,10月8日から本年1月21日までの6回にわたって審議をいたしました。諮問に付された要綱(骨子)に加え,これと関連する公的付添人制度についても議論を行うこととされまして,それぞれの論点について審議が進められました。その結果,諮問第72号については,諮問に付された要綱(骨子)を一部修正した上,少年法等を改正することが相当である旨決定いたしますとともに,附帯決議で示されましたように,公的付添人制度を導入することが相当である旨決定いたしました。   要綱(骨子)第一,第二,及び第三の一につきましては,いずれも賛成多数により,要綱(骨子)第三の二及び附帯決議につきましては全員賛成で,ただいま申し上げた結論に達したものでありまして,その要綱(骨子)及び附帯決議は,配布資料刑2として,お手元に配布してあるものでございます。   それでは,少年法部会における議論の概要につきまして御説明申し上げます。   まず,要綱(骨子)第一ですが,これは,少年法第3条第1項第2号に掲げる14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年,いわゆる触法少年,及び少年法第3条第1項第3号イないしニに掲げる事由があって,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年,いわゆるぐ犯少年の事件について,警察の調査権限を明確化するものです。   少年保護事件において,事案の真相を解明することは,非行のない少年を誤って処分しないためにも,また,非行のある少年について,個々の少年が抱える問題に即して適切な保護を施し,その健全な育成を図るためにも不可欠であり,かつ,被害者を含む国民の少年保護手続に対する信頼を維持するという観点からも極めて重要であります。しかしながら,触法少年及びぐ犯少年に係る事件に関して警察が任意で行う調査について,これらは従前から実際に行われてきたものですが,法律上の根拠が明確でないため,円滑な調査に困難が伴い,事案の解明等が十分にできない場合があるという指摘がなされてきました。そこで,これらの問題に対処するため,警察官の調査権限及びその手続を明確にすることといたしました。   まず,要綱(骨子)第一の一は,触法少年及びぐ犯少年に係る事件に関する警察官の一般的調査権限を明文で規定することとするものです。平成15年12月に青少年育成推進本部が策定した「青少年育成施策大綱」等においては,触法少年に係る事件の調査についてのみ法整備を検討することが示されていたため,部会においては,ぐ犯少年についても調査権限を規定する必要があるか疑問が提起されたほか,警察に調査権限を認めることにより,児童相談所等による調査に支障を来すのではないかといった意見が出されました。しかしながら,ぐ犯少年の事件についても,いわゆるぐ犯事由の存在やぐ犯性を基礎付ける事実を認定するに足りる資料が必要であり,調査権限を明確化する必要性は触法少年と何ら変わるものではないとの意見や,任意で行われる警察の調査の内容は,権限を明文で規定したとしても,これまでと変わるものではなく,調査の目的や主体の違いなどにより運用において適切に調整されるとの意見が出され,結局,要綱(骨子)のとおりとなりました。   要綱(骨子)第一の二は,警察官は,警察官ではない一定の警察職員に,触法少年及びぐ犯少年の事件について調査をさせることができることとするものです。ここで言う一定の警察職員とは,具体的には心理学等の専門的な知識・技能を有する少年補導職員を指しますが,当初の要綱(骨子)においては,ぐ犯少年に係る事件のみ少年補導職員に調査をさせることができることとされておりました。これは,一般に,少年補導職員の活動分野が少年補導を中心とし,これら少年補導の活動の延長としてぐ犯が明らかになる場合が多いことによるものでしたが,部会における審議の過程において,実際には,触法少年に係る事件の調査についても少年補導職員が主要な役割を果たしている場合があることが紹介され,また14歳未満の少年に対する調査に際して配慮する必要性がある以上,少年補導職員の専門的な知識・技能を活用すべきとの指摘がなされたことを受けて,事務当局から修正案が提示されるに至りました。しかし,触法少年に係る事件の調査のうち要綱(骨子)第一の五の強制処分等については,適正手続が特に要請されることから,このような手続については,十分な知識と経験を有する警察官のみが行うことができることとしております。   要綱(骨子)第一の三及び四は,警察官が公務所等への照会をすることができること,及び少年又は少年以外の者を呼び出し,質問することができることを明示するものです。これらは,任意に行うことができる調査ではありますが,警察官が行うことができる調査として明確にしておくことが適当であるため,特に規定することとされたものです。   要綱(骨子)第一の一ないし三は,事務当局が提示した第一の二に関する修正を施したものが一括して採決に付され,賛成多数により要綱(骨子)のとおり法改正を行うべきであるとの議決に至りました。   要綱(骨子)第一の四に関しては,部会において,特に触法少年との関係で,被暗示性が高い等の特性を有する14歳未満の低年齢の少年が対象となるほか,本人の刑事責任を追及する犯罪捜査とは異なることにかんがみれば,少年の呼出しや質問を含む調査全般について,その心身の発達の程度に即した方法や情操の保護等に対する配慮が必要である旨の指摘が多くなされ,それ自体は,部会における共通の認識となりました。さらに,今回,警察への調査権限を法律で明示することとのバランスから,法律に配慮規定を置くべきであるとする意見が一部の委員等から強く出されましたが,少年法第1条は,「少年の健全な育成」を期することを目的として掲げており,これは,少年法に携わる者すべての関係者が少年へ配慮すべきことを含んでいると理解されること,この調査についてのみ法律に配慮規定を置くことは,例えば犯罪少年に対する捜査における配慮の必要性との関係で問題を生じかねないことなどを理由に,法律に配慮規定を置くべきではなく,警察官の行政規範として国家公安委員会規則等に置くべきであるとの反対意見が出され,警察関係者からも,将来,国家公安委員会規則及び通達で警察官等の活動の基準を定めるに際しては,少年の特性に十分配慮した内容を盛り込む方向で検討したい旨の意見が出されました。結局,この点について具体的な修正提案はなされず,ただ,部会の審議の最終段階において,要綱(骨子)第一の四の末尾に「ただし,14歳未満の少年に面接する場合においては,特にやむを得ない場合を除き,保護者その他適切な者を立ち会わせるものとすること。」との文言を挿入すべきであるとの修正提案がなされるに至りましたが,採決の結果否決され,引き続き行われた採決において,賛成多数により,要綱(骨子)第一の四については,諮問内容のとおり法改正をすべきであるとの結論に至りました。   要綱(骨子)第一の五は,触法少年に係る事件において,押収,捜索,検証及び鑑定の嘱託といった強制処分等ができることとし,その手続においては,刑事訴訟法の規定を準用することとするものです。部会の審議においては,そもそもこのような規定が必要であるかという疑問のほか,これらの処分ができる範囲を一定の重大犯罪に相当する事件に限定すべきとの意見が出されましたが,事案の真相解明のために客観的・物的証拠を収集する必要性は高く,重大犯罪に相当する行為に限定する必要はない,比較的軽微な事件であっても,凶器や被害品等を押収する必要性は高い,令状主義が働く以上,強制処分の理由や必要性については裁判所の合理的裁量に任せるべきであるなどの意見が出され,結局,賛成多数により,諮問内容のとおりの法改正を行うべきとの議決に至りました。   次に,要綱(骨子)第一の六の1ですが,これは,警察官が調査の結果,少年の行為が少年法第22条の2第1項に掲げる罪,すなわち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪や,死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る刑罰法令に触れるものである疑いがあると思料するとき,又は,児童福祉機関において児童福祉法第27条第1項第4号所定の家庭裁判所送致の措置をとるべきものと思料するときに,調査に係る書類とともに,事件を児童相談所長に送致する制度を設けることとするものです。   現在,触法少年及び14歳に満たないぐ犯少年については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り家庭裁判所の審判に付することができるいわゆる児童福祉機関先議の原則がとられているため,警察官は,これらの少年を発見した場合,児童福祉法第25条の要件,すなわち児童に保護者がないこと,又は児童を保護者に監護させることが不適当であると認められることを満たすことを前提に,児童福祉機関に通告することとされています。しかし,この「通告」は,一般人と同じ立場で児童福祉機関に職権発動を促すに過ぎない行為であるため,調査を行った事件を確実に児童福祉機関に係属させるため,「送致」という制度を設けることとしたものです。   なお,証拠物については,その取扱いになれた警察において保管することが適当と考えられるため,要綱(骨子)第一の六の2において,事件を児童相談所長に送致した場合であっても,証拠物は引き続き警察において保管し,事件が都道府県知事又は児童相談所長から家庭裁判所に送致された場合に,直接警察から家庭裁判所に送付されることとしました。   要綱(骨子)第一の七は,警察官が,少年法第22条の2第1項に掲げる重大な罪に係る刑罰法令に触れるものである疑いがあると思料して児童福祉機関に送致した少年については,児童福祉機関は,原則として児童福祉法第27条第1項第4号所定の家庭裁判所送致の措置を採らなければならないこととし,ただし,その必要がないと認められるときは,この限りでないとするものです。重大犯罪に相当する行為を行った少年の事件は,一般に,家庭裁判所において非行事実を認定した上で適切な保護を施す必要性が特に高いと考えられる一方,少年の年齢や心身発達の程度,事案の内容及びその解明の程度等に照らし,家庭裁判所の審判を経るまでもなく,児童福祉法上の措置を採るべきことが明らかなものもあるので,原則として,家庭裁判所送致を規定した上で,例外を認めることとしました。部会においては,原則家庭裁判所送致の制度は,児童福祉機関先議という理念を否定することになるのではないか,仮に原則家庭裁判所送致を認めるとしても,その範囲を更に絞るべきではないかとの意見が出されましたが,本制度においても,児童福祉機関がまず児童福祉法上の措置等の要否を判断した上で,家庭裁判所への送致を決定することになるので,児童福祉機関先議という理念を否定することにはならない,原則家庭裁判所送致の範囲は重大犯罪に相当する行為に限定している上,ただし書により,個々の事案に応じた柔軟な対応をとることが可能であるので,更に絞る必要はないといった反論が出されました。また,重大事件について,家庭裁判所による的確な事実認定等の道を確保することは,被害者の納得を得るためにも重要である上,被害者等による記録の閲覧・謄写,被害者等の申出による意見の聴取及び被害者等に対する審判結果等の通知といった少年審判手続における被害者への配慮規定が活用できることとなり,被害者保護にも資するとの意見も出されました。   要綱(骨子)第一の六及び七は,一括して採決に付され,賛成多数により,諮問内容のとおり法改正を行うべきとの議決とされました。   その他,部会では,要綱(骨子)第一に関して,少年の身柄確保の在り方についての議論が行われました。現在,触法少年やぐ犯少年で,児童福祉法第25条の要保護児童に該当するものは,必要があるときは,同法第33条の規定に基づき児童相談所長による一時保護が加えられており,警察は,一時保護の期間を利用し,児童相談所長の了解を得て,少年から事情を聞くなどして事案の解明を図っているところですが,一部の重大事件などでは,児童相談所に併設された一時保護所の体制が十分でなく,児童相談所が少年を一時保護することなく直ちに家庭裁判所に送致するため,警察において少年から事情を聴取する時間が確保されないなどの事情により,事案の真相解明が十分にされないまま事件が家庭裁判所に送致されているとして,一時保護の在り方の見直しを求める意見が出されました。しかしながら,触法少年及びぐ犯少年について現在行われている一時保護の運用以外の方法を認めることには異論が出されたほか,厚生労働省からは,警察による調査の結果は,児童に対してより良い措置を行うという観点から児童相談所にとっても有益な資料であるので,一時保護の期間を含め警察への協力を行うことを考えており,一時保護調査の重要性等について児童相談所を所管する都道府県等に周知していく旨の発言がなされたこともあり,今回は,この点につき新たな提案はなされませんでした。なお,児童相談所における一時保護の在り方については,様々な意見が委員等から出されましたが,一時保護所の充実・強化が必要であるという範囲では,意見の一致を見ました。部会長としては,部会における審議を踏まえ,一時保護所の充実・強化が図られることを強く期待するところです。   次に,要綱(骨子)第二ですが,要綱(骨子)第二の二は,現在,被収容者の年齢の下限が14歳と規定されている少年院法の下限を削除するとするもので,第二の一は,これを受けて,14歳に満たない少年については,特に必要と認める場合に限り,少年院送致の保護処分をすることができるとするものです。   すなわち,少年法は,家庭裁判所が行い得る保護処分として,保護観察,児童自立支援施設等送致及び少年院送致を規定していますが,現在,少年院法第2条は,少年院の被収容者を14歳以上と定めているため,家庭裁判所は,保護処分時に14歳に満たない少年について,少年院送致の保護処分を選択することはできません。しかしながら,14歳未満の少年であっても,凶悪な事件を起こしたり,悪質な非行を繰り返すなど,深刻な問題を抱える少年については,早期に矯正教育を授けることがその健全な育成を図る上で必要かつ相当と認められる場合があると考えられるため,年齢のみによるのではなく,個々の少年が抱える問題に即して最も適切な処遇を選択できる仕組みとするため,少年院のうち心身に著しい故障のない年少者を収容することとされている初等少年院及び心身に著しい故障のある者を収容することとされている医療少年院について規定されている被収容者年齢の下限である14歳という年齢を削除することとする一方,これまで,14歳未満の少年の施設内処遇は,児童福祉施設で行ってきたことにかんがみれば,今後もこれを原則とし,少年院に送致するのは,他の処分によっては保護処分の目的を達し得ない特別の必要性がある場合に限って例外的に許されるとするのが適当であると考えられるので,家庭裁判所は,特に必要と認められる場合に限り,少年院送致の保護処分をすることができることとするものです。   部会においては,まず14歳未満の少年について,身柄の拘束を伴う少年院送致は適当ではないのではないかとの意見が出されましたが,児童自立支援施設においても強制的措置による自由の制限は行われているのであるから少年院送致とさほど変わるものではなく,どちらが少年の保護育成にとって適切かを考慮すべきである,本来開放的な処遇をすることを前提として作られている児童自立支援施設において,強制的措置により長期間行動の自由を制限することは,家庭裁判所の現場に戸惑いがあるなどといった反論が出されました。   また,被収容者の年齢の下限を削除するのではなく,14歳より低い年齢を設定すべきではないかとの意見が出されましたが,そもそも年齢によって処遇を一律に区別するのは適当ではなく,家庭裁判所の合理的な裁量に任せるべきである,またいかなる年齢が下限として適当かを定めることは困難であるとの反論が出され,実際,具体的な年齢を明示しての修正提案もなされませんでした。   結局,要綱(骨子)第二の一及び二は,一括して採決に付され,賛成多数により,諮問内容のとおりの法改正をすべきとの意見になりました。   次に,要綱(骨子)第三の一は,保護観察における指導を一層効果的にするための措置に関するものです。   すなわち,保護観察は,犯罪者予防更生法第34条第1項等に規定されているとおり,遵守事項を遵守するように指導監督することを主たる内容とし,そのため,保護観察官及び保護司が少年と接触を保つことが保護観察の不可欠の前提となっているところ,実際には,保護観察官や保護司による再三の指導等に反して遵守事項の不遵守を繰り返し,あるいは保護観察官等が接触することすらできない状態を惹起するなど,社会内処遇としての保護観察が実質的に機能し得なくなっている事例も少なくなく,また,現在,このような状況に有効に対処できる法的枠組は必ずしも十分とは言えないことにかんがみ,まず,要綱(骨子)第三の一の1で,少年に自発的に行状を改める機会を与えるため,遵守事項を遵守しない少年に対し,保護観察所の長が警告を発することができることとし,要綱(骨子)第三の一の2及び3において,それにもかかわらず,なお遵守事項を遵守しなかった場合には,このような保護観察中の新たな事由の発生という事態をとらえて,保護観察所の長の申請により,家庭裁判所において,遵守事項の重大な違反の有無及び保護観察における指導監督によって本人の改善更生を図ることができるか否か,すなわち,現状のまま保護観察を継続することによって,当該保護観察に付されている少年の要保護性を解消できる状況にあるか否かを判断し,これができないと認める場合には,保護観察以外の保護処分である児童自立支援施設等送致又は少年院送致の決定をすることができることとするものです。   なお,保護観察を受けている者の中には20歳を超えている者もいるところ,これらの者の収容期間について規定するのが要綱(骨子)第三の一の4で,これらの手続について,少年の保護事件と基本的に同様とするのが要綱(骨子)第三の一の5です。   要綱(骨子)第三の一に関しては,部会において,同一の非行事実について二重に保護処分を行うことになるのではないか,犯罪者予防更生法第42条に規定するぐ犯通告制度とは別に本制度を設ける必要があるのかといった意見が出されました。これに対しては,遵守事項違反が繰り返される場合には,保護観察によって改善・更生を図ることができない要保護性の変化を強くうかがわせるところ,このような保護観察中に生じた新たな事由に着目し,かつ,実際に保護観察によっては本人の改善・更生を図ることができないか否かを家庭裁判所によって判断した上で新たな保護処分をするものであり,同一の事由について保護処分に付するものではなく,少年の地位の安定は図られている,また,ぐ犯事由が遵守事項違反のすべてを含み得るものではなく,保護観察を有効に機能させるためには,遵守事項を遵守しない場合の措置について示し,遵守事項の遵守に向けた動機付けを与える必要があるので,ぐ犯通告制度によって十分に対応することは困難であり,新たに制度的な措置が必要であるとの意見が出されました。   このような議論を経て,要綱(骨子)第三の一は,一括して採決に付され,結局,賛成多数により,諮問内容のとおり法改正を行うべきであるとの結論に至りました。   要綱(骨子)第三の二は,保護観察所及び少年院の長が,少年の保護者に対し指導・助言その他適当な措置をとることができることとするものです。   少年の非行の背景には,保護者の側にも問題がある場合が多いことが指摘されており,少年の健全な育成を図るためには,少年の保護者にその責任を自覚させ,少年の改善更生に向けた努力をさせることが重要であるとの観点から,平成12年の少年法改正において,家庭裁判所や家庭裁判所調査官による保護者に対する措置についての規定が置かれました。この趣旨は,家庭裁判所における手続の間だけではなく,保護処分の執行段階においても当てはまるものであり,かつ,保護者に対して引き続き適切な指導等を行うことで,一層の効果が期待できるところ,保護観察所及び少年院においては,従前から,このような指導等を行っているものの,明文の規定を設けることで,各執行機関においてより積極的に措置を行うことが期待されることから,今回,規定することとするものです。   要綱(骨子)第三の二も,一括して採決に付され,全員賛成で,諮問内容のとおり法改正を行うべきとの意見にまとまりました。   最後に,附帯決議ですが,これは,公的付添人制度の導入に関するもので,具体的には,少年法第22条の2第1項に掲げる罪の事件について,観護措置がとられている場合に,家庭裁判所が,職権で,少年に弁護士である付添人を付することができる制度を導入すべきであるとするものです。   公的付添人制度は,少年審判の段階で,少年に対し,公費で弁護士である付添人を付する制度ですが,現在,少年審判への検察官関与決定がなされた場合で,少年に弁護士付添人がないときに限り,必要的に弁護士付添人が選任されることとされています。しかしながら,重大事件については,少年院送致や刑事処分を前提とする検察官送致の決定がなされることが予想されるとともに,社会的影響の大きいことから,より適切な処遇選択が要請されるところ,そのためには,法律の専門家である弁護士付添人を付して,少年の行状や環境等に関する資料の収集や環境調整のために積極的に活動してもらうことが適当な場合があり,その要請は,少年の身柄が拘束されている場合には,より高いということができるため,附帯決議のとおりの制度を導入する必要性が指摘されました。   今回の諮問の中には,14歳未満の触法少年に関する保護処分の在り方の見直し等,本制度に関連する内容も含まれていたことから,部会において,本制度についても審議したところ,委員等の賛成が得られるとともに,本制度は当初の諮問には含まれていないものの,法制審議会が諮問に対する答申の内容を決定するに際し,立案に際して含めるべき事項として附帯決議にすることが適当であるとの意見が出されたため,要綱(骨子)の採択に引き続き,附帯決議とすることについて採決を行ったところ,全員賛成でこれを附帯決議とすることが決定されました。   概略以上のような審議に基づき,諮問第72号については,要綱(骨子)及び附帯決議のように少年法等を改正することが相当である旨部会の意見が決定されました。   以上で,当部会における審議の経過及び結果の報告を終わります。よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告,並びに要綱(骨子)及び附帯決議の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。 ● 部会長の御報告を承っておりまして,1点,質問したいところがございます。   要綱(骨子)の第二ですけれども,これの一はいわゆる触法少年について,一定の要件を満たしたときに少年院送致ができるということであり,二は初等少年院,医療少年院について14歳という年齢の制限を外すということですが,この順序ですけれども,先ほど御説明の中にも,先に二を説明されて,これを受けて一の改正を行うということであったと思いますが,その方が事柄の実質に即しているのではないかと。つまり,第二においては,年齢下限の削除の方が先に来て,家庭裁判所の権限に関する規定がその後に来るのが論理的ではなかろうかという気がいたしますが,あるいは部会がこの順序を採用されたのは,一は少年法の問題であり,二は少年院法の問題であるので,少年法を先に出したというお考えかなとも思いますが,その点をお尋ねしてよろしゅうございますか。 ● 御指摘,ありがとうございます。   御指摘のとおりと私は了解しておりますが,事務当局の方から何かありましたらお願いいたします。 ● ただいまの部分につきましては,当初の諮問どおりで部会で御決定をいただいたところでございますが,ここで挙がっております初等少年院,医療少年院,いずれも家庭裁判所におきます保護処分としての少年院送致が行われた少年を収容して執行する施設ということになるわけでございまして,その意味で,まずもって保護処分--現行の少年院法によりますと,保護処分の少年院送致についての年齢の制限というのは一切出てはおりませんが--14歳未満の少年につきまして少年院送致の保護処分という決定をしていただく際には,これは例外的なものであるという,そういうことを少年法上明らかにさせていただくと,その結果として決定されました少年院送致につきまして,執行する少年院法の施設の方では年齢は設けない,家庭裁判所の少年院送致決定に従って執行するという順序になろうかと思っております。そのために,この順序に並んでいるということでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。   ほかに御質問ございませんでしょうか。   御質問がないようでございますので,次に御意見を伺いたいと存じます。 ● 私も,この触法少年あるいはぐ犯少年の扱いについて,手直しが必要であるということはそのとおりだと思いますし,特にこの要綱でいうと,第三の「二 保護者に対する措置」というようなものは,非常に適切な改正であるとは思いますけれども,積極的には賛成しかねる改正もあるので,その点について意見を述べたいと思います。   具体的には,要綱(骨子)の第一の四でございますけれども,ここで,「警察官は少年又は少年以外の者を呼び出し,質問することができるものとすること」ということが,触法少年及びぐ犯少年に係る事件の調査で認められるわけであります。しかしながら,触法少年というのは,14歳未満の非常に心理的にもあるいは大脳の生理学的にも未発達な,幼い子供でありますから,この調査には子供の福祉や心理についての専門性を持つ者が当たる必要があるのではないかと思います。先ほどの御説明でも,そのような専門性を持つ職員に調査をさせることができるものとする修正をしたということがございますけれども,この第一の四においては,警察官が触法少年の犯した刑罰に触れる行為について調査をする場合の質問権を定めるということでございますから,やはり必ずしもそのような子供の福祉や心理についての専門性を持つ警察官が当たるという保証はないということになるのではないかと思います。   そうであるとすれば,やはりこの少年法の根本的な精神である少年の健全な育成という観点からは,少年の発達状況に応じた適切な配慮が事件の調査においても当然なされるべきでありまして,この点が少年法1条の一般的な規定だけではなくて,ここで新たに定められる警察官の「少年又は少年以外の者を呼び出し,質問する」というこの調査権について,そういう権限に付随する制約として,法律上定められるべきではないかと思います。先ほどの御説明では,内部での規則あるいは通達によって適切な配慮を行うということではございましたけれども,法律でこのような権限を明示する以上,それに伴わせるべき制約も,やはり同様に法律で書くべきではないかというふうに思います。   また,実際の調査に当たってのそのような配慮を行う具体的な担保としては,事情聴取に際して保護者あるいは保護者に委任された弁護士,あるいは専門家である児童福祉司といった人たちの立会いを認める規定にするべきではなかったかと思います。少年は,被暗示性も高く,最高裁判所で虚偽自白が認定された草加事件のように,14歳以上の少年についてさえ切替尋問のような不適切な取調べによる冤罪事件が現実に起こってきたというその事実を,やはりここでは直視するべきではないかと思います。   もう一つ,積極的に賛成し難い点として,要綱(骨子)第二の「十四歳未満の少年の保護処分の見直し」がございます。   もちろん,14歳という年齢で機械的に保護処分の内容を限定する論理必然性はないということはそのとおりかもしれませんけれども,例えばここで14歳という年齢制限を,下限を一切削除することになりますと,もちろん「特に必要と認める場合」という限定はついておりますけれども,例えば小学生が少年院に送致されるという事態が可能になるわけでございます。このような少年については,低年齢の非行少年については,保護育成こそが大事で,擬似家庭的な施設において生活のやり直し,育ち直しをさせることが矯正上効果的であるということが言われまして,現実にも児童自立支援施設において,これまでこのような触法少年について,その矯正について効果を上げてきたという実績があると聞いております。そうであるとすれば,この14歳未満の少年の保護処分の見直しについても,このように全く年齢の下限を削除するという形ではない,もう少し抑制的な定め方というのが考えられてよかったのではないかと思います。   もちろん,具体的な年齢を決めるのが難しいというのは確かにそのとおりかもしれませんし,その点についても部会でも議論されたようでございますけれども,こういう規定を見ると,どうも厳罰主義が非行少年の処遇について導入されようとしているのではないかという感じを受けざるを得ません。   本来,生理的にも心理的にも未熟な者が,その未熟さゆえに法に触れる行為をしたものなのでありますから,それに対しては厳罰ということでは矯正もできませんし,また厳罰に処するからといってこういう人たちが法に触れることを抑止することもできないのではないかと思います。その意味で,第二の保護処分の見直しについては積極的には賛成できないということを申し上げます。   なお,公的付添人制度の導入の附帯決議には賛成でございますけれども,ここで公的付添人が認められる要件が,少年法22条の2の検察官関与の事件とされていることについては,現在導入されました被疑者国選制度とパラレルになるように,この被疑者国選制度が長期3年を超える懲役・禁錮に当たる刑について実施される平成21年までを目標として,更に拡大する方向で再検討されることを希望したいと思います。 ● 御意見,ありがとうございました。   私は,この場で私の個人的意見を申す立場にはないと思いますので,部会でどのような審議がなされたかということをなるべく客観的な形で御報告いたします。   その内容については,既に報告いたしましたけれども,特に配慮規定についての御指摘がございましたので,若干重複しますが説明させていただきますと,このような少年に対して,特に配慮が必要であるということについては,部会における共通の認識でございました。ただ,それを法律上何かの形で書くかということについて意見が分かれたわけです。   それと同時に,そのような意見が強く出されたことは事実ですが,一定の修正を行うという具体的な提案が出されたわけではありません。なぜ修正提案がなされなかったかということは,私も明確な判断ができませんけれども,一つの理由は,やはり法技術的にはなかなか難しかったからなのではないかと思います。   と申しますのは,このような少年に対する配慮というのは,必ずしも触法少年だけではなくて,犯罪少年にも必要なわけです。したがって,それを含めて配慮ということを考えなければならない。それを具体的に条文の形にするということは果たしてできるかどうかという,法技術的な面がかなり強かったのだろうと思います。そのような意味で,結局は第1条の少年の健全な育成というところにこれは集約されるのだということで今回はとどまったのだと思います。   それから,その審議の過程で,警察の関係の方から,将来,国家公安委員会規則や通達でこのようなことについて十分配慮した規定を設けるという御発言がありましたので,まずはその成り行きを見ようということも部会の雰囲気だったというように了解しております。   要綱(骨子)第二につきましては,既に御説明申し上げたことですので,一応部会長報告で尽きておると理解しております。   それから,公的付添人制度のことも含めて,この3点について事務当局の方から何かありましたらお願いいたします。 ● 先ほど,厳罰ということで,これは字義どおりではないというふうに理解させていただきたいのでございますが,あくまでここで申しておりますのは,刑事制裁なり何なりという罰ではございません。健全育成を図る上で,保護処分として何がふさわしいかということでございまして,確かに法制的に申しますと,一定の年齢を原則としつつも,その少年個々人の具体的な責任能力を見て刑罰に付するかどうかを決めているという法制もございます。しかし,日本の場合には,一律14歳未満云々とおっしゃいましたが,現実のその子の責任能力とは別の観点から,一律に刑事未成年とされているということが一方であるわけでございます。   それで,少年院収容年齢の下限を設けるかどうかということにつきましては,今申し上げましたように刑事未成年という年齢区分というのが,個々の当該少年の実際の発育程度とは別の規律でございますので,そういったことから14歳未満の少年につきましても非行の内容,背景,少年の性格,心身の発達の程度,行状,環境等を考慮いたしまして,その個々の,これは抽象的な少年ではございませんで,個々の少年の抱える問題に即して最も適切な処遇を選択できる仕組みをとるべきであると,その観点から,年齢によって一律に区別するのは適当でないというのがこの部会での御議論だったわけでございまして,また下限を設定するとした場合,これにつきましては一部の委員から10歳以上にすべきとか,そういった意見もございましたが,心身の発達の程度や矯正教育の意味を理解できる能力等は個々の少年によって様々であることからいたしますと,適当な下限を定めることが困難でありますことと,下限を明示いたしますことで,かえってその年齢まで収容が可能であるとのお考えが定着して,14歳未満の少年院送致の例外性が薄れることも懸念されるといったようなことなどから,下限は設けるべきではないということとされたものでございます。   また,児童自立支援施設につきましても,全体といたしましては機能しているということはだれも疑っておりませんで,ただ中には,やはり現場の施設の方等が御苦労なさっている例もございまして,それにいかに適切に対応すべきかというのが第二の部分でございまして,部会での審議の結果でも圧倒的多数をもって原案どおりということになったわけでございます。   公的付添人については,被疑者に対する国選弁護人の制度と同様,将来的には要件拡大という,今,委員からの御意見もございましたが,ただこれにつきましては既に法曹三者での意見交換を経た上で法制審議会の部会での附帯決議になったわけでございます。法制審議会の部会では,全く御異論のなかったところでもございます。   また,この公的付添人の要件につきましては,少年審判の構造でございますとか付添人の必要性,検察官関与が可能な事件との兼ね合い,この制度に対する国民の理解と納得などを総合的に考慮すべきでございまして,より広い要件とすることにつきましては様々な問題が生ずると思われるところでございます。 ● ただいま,○○委員と,それから部会長及び事務当局から御意見を承ったわけでございますけれども,この点につきましてほかに御意見ございますでしょうか。   ○○委員も,積極的には賛成できないという,そういう御意見と承ってよろしゅうございますでしょうか。 ● はい。 ● ほかの点につきまして,御意見ございますでしょうか。   では,ほかに御意見がないようでございますので,採決に移ってよろしゅうございますでしょうか。   採決の方法でございますが,少年法部会において付された附帯決議の内容は,諮問の際の要綱(骨子)には含まれておらず,これと関連を有する事項として部会において審議されたという経緯でございますので,要綱(骨子)とは別個に採決を行いたいと存じますが,いかがでございましょうか。--よろしゅうございますか。   御異議がないようでございますので,そのようにさせていただきます。   それでは,少年法(触法少年事件・保護処分関係)部会から報告されました要綱(骨子)のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対の方の挙手をお願いいたします。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   原案に賛成の委員は17名でございます。ちなみに,反対の委員はございませんでした。   議長を除くただいまの出席委員は18名でございます。 ● 採決の結果,賛成者多数でございますので,少年法(触法少年事件・保護処分関係)部会から報告されました要綱(骨子)のとおり,採択されたものと認めます。   次に,附帯決議につきまして採決を行います。   ただいま採択された要綱(骨子)に附帯決議を付することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,反対の方はいらっしゃいますでしょうか。      (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   附帯決議に賛成の委員は18名でございます。   議長を除くただいまの出席委員も18名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,少年法部会で付されました附帯決議のとおり,先ほど採択されました要綱(骨子)に附帯決議を付すことに決定いたしました。   したがいまして,本日,御審議いただき採決されました要綱(骨子)及び附帯決議につきましては,直ちに法務大臣に答申することといたします。   なお,ただいま採択されました要綱(骨子)及び附帯決議を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題がございますので,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただければと存じます。よろしくお願いいたします。   それでは,冒頭で御説明しましたとおり,受刑者の処遇を中心とする法案について御報告いただきたいと思います。   これは,監獄法改正にかかわるものであり,監獄法改正については既に昭和55年11月25日に開催された法制審議会第100回会議において,監獄法改正の骨子となる要綱を採択し,答申しておりますが,既に25年が経過していることもあり,御報告をいただくものでございます。 ● 法務省矯正局長の○○でございます。監獄法改正につきまして御報告をさせていただきます。   お手元に,「監獄法改正について」という袋に入りました資料がございますので,後ほど御説明の中で拝見いただきたいと思います。   監獄法は,約100年前に施行されて以来,実質的な改正がなされることなく今日に至っているため,被収容者の権利義務関係が明確でないなど,極めて不十分なものとなっております。そのため,ただいま○○委員からも御説明がございましたが,昭和55年11月に監獄法改正の骨子となる要綱の答申をいただいたところであり,法務省では,これまで三度,この要綱に基づき立案した刑事施設法案を国会に提出いたしましたが,いずれも廃案となってまいりました。   他方で,一連の名古屋刑務所における受刑者死傷事案を契機として,受刑者の処遇等を中心とする行刑運営上の問題があらわとなり,法務省では,当時の森山法務大臣の指示に基づき,行刑改革会議を立ち上げ,平成15年12月に,席上配布しております「行刑改革会議提言」をいただいたわけですが,そこでは,行刑改革の実現に不可欠なものとして,監獄法を速やかに全面的に改正することを求められております。   この提言を受けまして,法務省では,監獄法の全面改正のための作業を進めてまいりましたが,これまで監獄法の改正が実現してこなかった最大の問題の一つは,警察留置場を監獄に代用することができるとするいわゆる代用監獄の制度に関する意見の対立にあり,そのため,法務省では,警察庁及び日本弁護士連合会に呼びかけまして,昨年の7月から,三者で監獄法改正の枠組について協議を行ってまいりました。   その結果,代用監獄を廃止すべきであるとする日本弁護士連合会とはなお大きな意見の隔たりはありますが,この問題についても現実的な協議を行える環境が整いつつあると評価できる状況になったこともありまして,法務省としては,まずは受刑者の処遇を中心として監獄法の改正を行い,未決拘禁者等の処遇に関する法改正は,その後にできるだけ早期に実現するというのが,喫緊の課題である行刑改革を進める現実的な方策であると判断するに至りました。   このような次第で,法務省としては,現在開会中の国会に,色刷りの資料にありますとおり,受刑者の権利義務の明確化,受刑者の処遇の充実,受刑者の生活水準の保障,外部交通の保障・拡充,不服申立て制度の整備,行刑運営の透明性の確保など,受刑者の処遇に関する事項を中心とする,仮称でありますが「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」という題名の新法の法案を提出したいと考えております。   その内容は,もとより昭和55年の法制審議会の答申に基づいたものとすることとなりますが,行刑改革会議の提言などを踏まえ,幾つかの点で法制審議会の答申の趣旨を更に進めるなどした内容のものとしたい考えております。   法制審議会の答申には含まれてはいないなど,答申とは異なる部分につきましては,お手元に配布させていただいております「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」と題する資料にまとめておりますが,これに沿いまして,主要なものについてその要点を御説明いたします。   なお,この資料とは別に,事項ごとに法制審議会の答申,行刑改革会議の提言を記載しました対比資料も用意してございますので,御参照いただければと思います。   まず,第1の1の「被収容者の分離」についてでありますが,被収容者につきましては,性別,被収容者の法的地位,すなわち受刑者,被勾留者,死刑確定者などといった地位の別などに応じて,互いに分離することが必要であります。新法では,若干法制審議会の答申とは異なった整理を行うなどしたいと考えておりますが,もとよりこうした分離は当然のこととして規定することとなります。   次に,2の「刑事施設運営協議会」についてでありますが,行刑改革会議の提言では,行刑運営の透明性の確保などの観点から,行刑施設ごとに,その運営に関し,行刑施設の長に意見を述べる機関として,市民や専門家からなる「刑事施設視察委員会」を設置することが求められています。法制審議会の答申でも,部外者の意見聴取を活発にするため,部外者からなる会議体を設けることを求められているところでありまして,これらの提言や答申の趣旨を踏まえ,新法では,刑事施設に「刑事施設運営協議会」を設置することとするとともに,協議会が職務を行うのに必要な委員による視察,被収容者との面接の権限を規定することなどを考えているところであります。   なお,この「刑事施設運営協議会」という名称は,あくまでも現時点における仮称でありまして,適切な名称につきましては更に検討してまいりたいと考えております。   第2の「受刑者の処遇」に移りたいと思います。   1点目は,処遇の実施方策であります。   法制審議会の答申では,受刑者の処遇は,社会復帰の見込みに応じて閉鎖的な処遇環境から順次開放的な処遇環境に移行させるよう行うものとされています。これは,漸次受刑者の生活及び行動に関する自主的な決定の機会と責任の増大を図ることにより,受刑者を社会生活に円滑に移行させようとするものであります。他方,受刑者の改善更生の意欲を喚起するためには,その服役態度いかんにより,臨機に受刑者にとって魅力のある特典を付与する制度を設けることが適切であり,そのような観点から,行刑改革会議の提言は,報奨制度の導入を求めています。   そこで,新法では,(1)ですけれども,答申に沿った処遇の枠組として,処遇環境を構成する要素のうち,収容確保のための施設の施錠の程度など,規律秩序を維持するための制限を矯正処遇の効果などに応じて順次緩和することとするとともに,(2)になりますけれども,比較的短期間ごとに受刑態度を評価し,その評価に基づき,面会の回数を増加させたりする優遇措置を講ずるという方法で,受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を図ることとしたいと考えております。   次に,2の「隔離収容」についてですが,新法においては,法制審議会から答申されたところに加え,隔離が受刑者の心身に及ぼす影響に配慮し,定期的に健康状態について医師の意見を聴く義務を刑事施設の長に課することにしたいと考えております。   「給養」については割愛させていただきまして,4の「運動」について御説明いたします。  法制審議会の答申においては,受刑者に適切な運動を行う機会を与えることが求められていますが,運動時間については法務省令に委ねることとされておりました。しかしながら,行刑改革会議の提言において,運動スペースの問題などを解決した上で,1日1時間以上確保するよう努めるべきであるとされたことを踏まえ,新法においては,基本的に,土・日を除き,毎日運動の機会を与えなければならないことを法律に規定することとしたいと考えています。   一つ飛ばして,「生活指導」について御説明いたします。現行法下では,受刑者の処遇は刑務作業が中心となっています。刑務作業は処遇の重要な内容として位置づけられるべきものでありますが,それ以外の改善指導なども,改善更生などを図る上で重要視すべきものであります。このことは,法制審議会の答申においても行刑改革会議の提言においても求められており,新法においても改善指導,教科指導を刑務作業とともに矯正処遇として位置づけることとしておりますところ,新法では,改善指導の目的を踏まえ,(2)に記載しておりますとおり,これを実施する際の留意事項として,薬物依存など改善更生や円滑な社会復帰の妨げとなる事情の改善に配慮すべきことを明記したいと考えています。   次に,「外部交通」について御説明いたします。   現行法では,受刑者の面会,信書の発受は恩恵的,制限的に認められるものとされていますが,受刑者の社会復帰を促進するためには,良好な家族的,社会的関係を維持させることが重要であり,このことは,法制審議会の答申でも行刑改革会議の提言においても前提とされているところであります。そこで,その趣旨を明らかにするために,新法においては,(1)に記載しましたとおり,適正な外部交通が受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものであることに留意しなければならないことを明記したいと考えています。   面会の相手方の範囲につきましては,受刑者が親族などと面会できるということは,法制審議会の答申に従って新法に規定いたしますが,新法では,友人・知人との面会の許容について,行刑改革会議の提言を踏まえ,答申の趣旨を更に進めて,明確に規定したいと考えています。答申においても,親族など以外の者であっても,面会の相手方として適当と認められる者も想定されることから,所長の裁量により面会を許すことができることとするものとされていますが,交友関係の維持は,矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがない限り,それ自体面会を認める理由となり得ることを明確にする規定を設けたいと考えているものであります。   次に,2ページの一番下にある「面会の立会等」と,3ページの中ほどにある「信書の検査」について,あわせて御説明いたします。法制審議会の答申では,面会の立会いや信書の検査は,これを行うことを原則とし,行わない理由があるときには,これを行わないこともできるとしています。立会いや検査を行わないこともできるとされましたのは,刑事施設を相手とする訴訟の弁護士との打合せなどの場合には,立会いなどの必要性とも比較衡量しながら,なるべく立会いなどを行わないことが望ましく,また,矯正処遇の実施の観点から,立会いなどを行わないことが適当なこともあると考えられたからでありますが,新法では,この趣旨を更に進め,立会いなどを行うことを原則とはせず,必要があると認めるときに立会いなどを行うこととするとともに,行刑改革会議の提言を踏まえ,刑事施設を相手とする訴訟の弁護士との打合せなどの場合には,原則として立会いなどを行わないことなどを規定したいと考えています。   さらに,(3)の「電話等による通信」でありますが,新法では,開放的施設において処遇を受けている受刑者などに,電話による通信を許容できるものとしたいと考えています。電話による通信については,法制審議会の答申には含まれていませんが,部会において,電話をかけることを許すことも考慮することと決議されていたところであり,行刑改革会議の提言に沿って,新法ではこれを許容することを規定したいと考えているところであります。   次に,「刑事施設の規律秩序」の維持についてでありますが,法制審議会の答申では,規律秩序は厳正に維持されなければならないとされています。ここで「厳正に」とは,確固としてといった意味合いであり,答申はその表現ぶりにおいても妥当なものと考えております。  しかしながら,他方で行刑改革会議の提言において,規律秩序を過度に維持しようとするようなことがあってはならないと強く求められておりますことから,答申の趣旨を変えるものではありませんが,新法では,「規律及び秩序は,適正に維持しなければならない」という表現ぶりにしたいと考えています。   また,答申では,刑事施設の長は,受刑者が遵守すべき事項を定めるものとされていますが,どのような事項を遵守事項として定めることとなるのか,法律上もできる限り分かりやすくすることが望ましいことは当然でありますので,新法では,遵守事項として定める事項を,他人に迷惑を及ぼす行為をしてはならないことなどと法律上列記することとしたいと考えています。   それから,拘束具につきましては,法制審議会の答申では,捕縄,手錠,拘束ベッド及び防声具の4種のものを認めるものとされています。このうち,拘束ベッドにつきましては,施用が容易なものではありませんし,他方で,現在通気性にもすぐれ,施用された者の健康を害するおそれのないような仕様の拘束衣の開発のめどがついていますので,新法では,拘束ベッドは使用できないものとし,拘束衣を使用できるものとしたいと考えています。また,防声具につきましては,運用を誤りますと窒息に至るおそれがある一方,答申をいただいた当時とは異なり,刑事施設においては保護室の整備が進み,制止に従わず大声を発し続ける者は,保護室に収容することで対処できる状況にあることから,新法においては,刑事施設における防声具の使用は認めないものとしたいと考えています。   「懲罰」につきましては,答申の趣旨の範囲内での具体的な規定内容の変更のみでありますので,説明を省略させていただきます。   次に,4ページの下の方の11の「領置」について御説明いたします。   領置につきましては,法制審議会の答申では,おおむね現行法を踏襲するものとされております。現行法では,被収容者の物品や現金は,すべて監獄の長が領置しているものとされています。例えば,受刑者が閲読することができる書籍の差入れがされますと,その書籍は,受刑者に引き渡され,受刑者が保管することになるわけですが,受刑者が保管している間も,その書籍は監獄の長が領置しているものとされているわけで,そのため,受刑者は,その書籍をいわば勝手に処分したりすることもできないものとされています。しかしながら,受刑者に引き渡された物品は,受刑者の責任において管理するものとすることが,受刑者の自主性を促進する観点からも望ましいと考えられますし,また,物理的には受刑者が保管しているものであっても,監獄の長が領置しているものとすると,物品管理簿にも記帳しておくといった必ずしも必要とは考えられない事務処理も必要となりますので,新法では,受刑者が刑事施設内で使用することができる物品は,受刑者に引き渡し,その管理に委ねることとし,それ以外の物品と現金は領置するものとすることとしたいと考えています。   最後に,不服申立てについて御説明いたします。   現行法では,監獄内の行政的救済制度として,法務大臣と巡閲官に対する情願が定められておりますが,情願は,請願の一種とされ,法務大臣,巡閲官には情願の処理,その結果の告知の義務もないと解されております。   これに対し,法制審議会の答申では,行政的救済制度の充実を図るため,刑事施設の長の処分についてその取消しなどを請求することができる,より整備された不服申立制度を創設するとともに,刑事施設の被収容者に対する取扱い全般を対象とする苦情の申出の制度を整備するものとされています。新法においても,基本的にはこの答申に沿って不服申立制度を整備したいと考えておりますが,行政改革会議の提言に沿い,近年,情願件数が急増し,速やかな処理が困難となっている状況を踏まえ,刑事施設の長の処分などについては,13の(1)にありますとおり,まず矯正管区の長に審査の申請を行うものとし,(5)にありますとおり,矯正管区の長の裁決になお不服があるときに,法務大臣に再審査の申請を行える制度とするとともに,(4)になりますけれども,迅速な処理を確保するために,矯正管区の長においても,法務大臣においても,できる限り90日以内に処理をするように努めなければならないものとしたいと考えています。   さらに,14でありますが,行刑改革会議の提言においては,職員による暴行も不服申立ての対象に含めるべきであるとされています。暴行などについては,処分の取消しなどによって救済することができませんので,処分の取消しなどを求める不服申立ての制度の対象とすることはできませんが,提言を踏まえ,職員の暴行,違法,不当な戒具の使用について,受刑者は,矯正管区の長,法務大臣にその事実の申告をできるものとし,矯正管区の長及び法務大臣は,その事実を確認した場合において,必要があると認めるときは,再発防止のため必要な措置を講じなければならないものとしたいと考えています。   なお,この事実の申告の対象としては,職員の暴行,違法,不当な戒具の使用のほか,違法,不当な保護室への収容を加えることも検討したいと考えているところであります。   以上,行刑改革会議の提言も踏まえ,現在立案作業を進めております刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案に規定したいと考えております事項であって,法制審議会の監獄法改正の骨子となる要綱には含まれていないなど,その答申と異なる部分について,その要点を御説明させていただきましたが,いずれも本質的には答申の趣旨に反するものではないと考えております。御理解を賜ればと存じます。   以上をもって,私からの報告を終わりにいたします。 ● それでは,ただいまの御報告の全般的な点につきまして,御質問を含め,御発言がございましたらお願いいたします。 ● この議題について,直接は関係ないのですけれども,国連の人権委員会でいろいろ外国の友人から聞かれることは,たった一つです。どうして日本の代表は,すぐタイムで,自分たちの協議をタイムをとって,余りにも頻繁で,ほかの外交的な代表に対して無頓着であるというのをよく聞くのですが,こういうのは一体どういうことが原因でそう頻繁に起こるのかというのが私は分かりにくくて,よく分からない。お教えいただけますか。 ● 国際会議において,しょっちゅう……。 ● いや,国連の人権委員会では。   問題は,この代用監獄とかが多分関係あるのだと思うのですよ。それでどういうふうな構成で日本政府はそこで,どういう代表が行って発言しているのか,その人はどんな人なのか。そして休憩のときには,本国に問い合わせているのか,どうしてそんなしょっちゅう--しかも長いというのですよ。だから,それどうだと思いまして。もしかしたらだれか……。 ● この点につきまして,どなたか……。 ● まず,恐らく委員のおっしゃっている人権委員会というのは,日本ではいわゆるb規約と言われている市民的及び政治的自由に関する国際規約に基づいて設置された,専門家から構成された規約人権委員会というものを指しておられるのだと思いますけれども,そこには,日本から外務省の方を代表団長といたしまして,関係する各省庁から代表が代表団としてジュネーブに参りまして,そこで専門家の委員の方と対会話をすると,コミュニケーションをとるということになっておりまして,事前に先方から質問事項を受けておりまして,それについて説明するとともに,その場で新たな質問を受けて回答するという形をとっております。   そこで,委員からタイムという話が出たのですが……。 ● ちょっと自分たちで協議する,ないしは法務省だかどこだかに連絡して,相談して立場を決めたいというために,タイムをとって休憩にしてもらうということが頻繁にあるし,余りにも何か日本政府は傲慢ではないかという声を聞いたものですから。 ● 通常,あらゆる質問に答えられるように準備をした上で臨むのですが,ただ正確性を期するために,どうしても想定していなかった質問事項があれば,それはやむを得ず本省,東京に照会するということはございます。ただ,基本的には可能な限りその場合でお答えできる答えは全部いたしまして,通常1日半ぐらい日程をとっておりますので,お昼休みの時間,それから1日目を終えて翌日の朝までという,空いた時間に東京と連絡をとったりするので,その審議の最中に度々回答を決めるための休憩時間をとるということは,私自身の経験ではなかったように思っております。少なくとも,時間は1日半ぐらいしかとられておりませんので,有効に活用するように,審議の途中で休憩をとって回答を詰めるということはなるべくやらないようにしているのが実情だと理解しております。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● どうも……。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 質問です。   電話での通信が認められるということだと思うのですけれども,「電話その他政令で定める電気通信の方法」というのは,電話以外にどういうことをさせるのかということと,その内容は,施設の長は必要があると認めた場合には,「内容を確認するため,その通信を受けさせ」と。これはつまり,録音をするとか,同じ電話を二人で聞くとか,そういう形になるのでしょうか。もしそれが電話でない通信の場合は,どうされるのでしょうか。 ● 今,私どもが具体的に考えているのは電話ですけれども,通信機器の発達その他手段の発達もありますので,それ以外のものも,可能であればそれもまた広げることも可能にするため,電話に限定していないということです。   それから,やはり,電話によって,犯罪になるようなことの会話などがなされても困りますので,これにつきましては,状況に応じて,傍受したり,あるいは記録をしたりということを可能とする必要があるということであります。 ● そうすると,どの会話が聞かれているかということは分からなくて,当人には知らされないで……。 ● 法律に規定するわけですから,それは承知の上で話してもらうということになります。 ● ですから,どれが聞かれているかは分からないけれども,どれでも刑事施設の長は権利として持っているということですね。   あと,そうすると,例えば電子メール,訪問した人がパソコンを持っていて,そこで電子メールを打つとかいうことはできるのですか。この電気通信の方法というのは。 ● それは,面会の問題ですので,別の話になると思います。 ● 面会のときにだれかが電話を持って,今,携帯電話もあったりしますけど,そういうことは許さない……。ごめんなさい,私は全く知らないので。   電話が許されるとなると,例えば面会の人が携帯電話を持っていて,だれかに電話をさせるとかということが可能になってくるのと同じようにちょっと思えたり,例えばそれが「電子通信機器」と言うと,電子メールを打つことが可能になってくるというようなことも読み取れるのかなと思って。 ● こちらで申し上げているのは,あくまでも受刑者が外との連絡といいますか,「外部交通」と言っていますけれども,それができるようにするというだけであって,持ち込んで受刑者にさせるということは,それは……。 ● その人が電話を持っていても,かけられない。 ● はい,もちろんそうです。 ● ほかに,何か御発言ございませんでしょうか。   ほかに御発言ございませんようですので,事務局において昭和55年の監獄法改正の骨子となる要綱と,ただいまの御報告の内容に沿って立案作業を進めることにつきまして,御了解をいただいたということでよろしゅうございますでしょうか。--それでは,そのように進めていただきたいと存じます。   なお,今後条文にいたします場合の表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。   これで本日の審議は終了いたしました。   ほかに,この機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたします。本日の議題以外の点でも結構でございます。   では,本日はここまでということでよろしゅうございますでしょうか。   どうも長時間の御審議,ありがとうございました。