法制審議会第142回会議 議事録 第1 日 時 平成16年2月10日(火) 自 午後1時30分        至 午後3時55分 第2 場 所 法務省大会議室 第3 議 題 諮問第52号,諮問第62号,諮問第65号について答申案の決定          保証制度の見直しに関する諮問第66号について          国際的な扶養の実現に関する諮問第67号について          人名用漢字の見直しに関する諮問第68号について          凶悪・重大犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第69号について 第4 議 事 (次のとおり)           議    事 (開会宣言の後,法務大臣あいさつを法務副大臣が代読した。)  法制審議会第142回会議の開催に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。  委員及び幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。  当審議会におきましては,皆様方の御尽力により,既に多くの重要な案件につきまして御答申をいただき,また,現在でも多数の諮問事項につきまして調査審議をいただいているところでございます。この機会に,皆様方の御労苦に対しまして心から厚く御礼を申し上げさせていただきます。  さて,本日御審議をお願いする議題のうち,第1と第2は既に諮問がなされている事項についてでございます。  まず第1は,民事訴訟法及び人事訴訟手続法に関する諮問第52号と,民事執行制度に関する諮問第62号でございます。  諮問第52号の諮問事項につきましては,これまでに「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱」及び「人事訴訟法案要綱」の答申をいただいておりますが,その後も民事訴訟法の改正に関しましては,民事訴訟・民事執行法部会におきまして調査審議が続けられてまいりました。また,諮問第62号の諮問事項につきましても,同部会におきまして調査審議が続けられてまいりました。その結果,民事訴訟手続等におきます申立て等を電子情報処理組織を用いて行うことを可能とするとともに,簡易裁判所におきます少額訴訟に関する債権執行制度の創設等を内容とします民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案が決定され,本日,報告されるものと承知しております。  第2は,不動産登記法の見直しに関する諮問第65号でございます。  この諮問事項につきましては,不動産登記法部会におきまして,オンラインによる不動産登記申請手続を導入するための調査審議が続けられてまいりましたが,本日,その結果が報告されるものと承知いたしております。  現在の我が国におきます社会・経済情勢等にかんがみますと,以上の二つの事項については早急に改善をする必要があると思われますので,速やかに御答申をいただきたいと存じます。  次に,新たに四つの事項につきまして御検討をお願いしたいと存じます。  まず,第3の保証制度の見直しに関する諮問第66号についてでございます。  中小企業等が借入れを行う際に,会社の代表者等が締結します保証契約の内容について,法律上特段の制限が設けられていないために,特に金額や期間に制限がない包括根保証につきましては,保証人が極めて厳しい責任を負うこととなる場合があるという指摘がされております。そこで,保証契約の内容を適正化し,保証人となる者に適切な保護を与えるという観点から,保証制度の見直しにつきまして御検討をお願いを申し上げるものでございます。  第4は,国際的な扶養の実現に関する諮問第67号についてでございます。  現在,ヘーグ国際私法会議におきまして,扶養義務の準拠法,外国でされた扶養義務に関します裁判の承認及び執行並びに扶養料取立てのための行政上の国際共助といった諸要素を包括する新たな条約の作成について審議が進められております。そこで,この新条約に盛り込むべき内容につきまして御検討をお願いするものでございます。  第5は,人名用漢字の見直しに関する諮問第68号についでございます。  人名用漢字につきましては,戸籍法第50条第2項の委任を受けた戸籍法施行規則第60条において定められているところでございますが,社会情勢の変化等に伴い,人名用漢字の拡大についての要望が多数寄せられていることにかんがみまして,人名用漢字の見直しについて御検討をお願いするものでございます。  最後になりますが,第6は,凶悪・重大犯罪に対処するための刑事法の整備に関します諮問第69号についてでございます。  近年,人の生命や身体等に重大な危害を及ぼす凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向が続いております。この種の犯罪につきまして,刑法等の規定が,近年の犯罪情勢や国民の規範意識に合致しているのかとの指摘もありますことから,早急に,刑事の実体法及び手続法の見直しをする必要があると思われますので,そのための御検討をお願いするものでございます。  これらの議題につきまして,どうぞよろしく御審議をお願いいたします。 (法務副大臣の退席後,委員の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた。) ● 先ほどの法務大臣のあいさつにもございましたように,本日の議題は,1 民事訴訟法及び人事訴訟手続法に関する諮問第52号,民事執行制度に関する諮問第62号について,2 不動産登記法の見直しに関する諮問第65号について,3 保証制度の見直しに関する諮問第66号について,4 国際的な扶養の実現に関する諮問第67号について,5 人名用漢字の見直しに関する諮問第68号について,6 凶悪・重大犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第69号についてでございます。   以上の審議事項につきまして御審議いただきたいと存じますが,まず議題の1及び2について御審議をいただき,休憩を挟みまして,議題の3から6を御審議いただきたいと考えております。そのように議事を進めさせていただきたいと存じております。   本日は,何分にも内容が盛りだくさんでございますので,十分に御審議いただくことは当然のことでございますけれども,委員・幹事の皆様には,議事の進行にも御協力いただきまして,各要綱の決定を行いたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。   それでは,審議に入らせていただきます。   本日の第1の議題であります民事訴訟法及び人事訴訟手続法に関する諮問第52号,民事執行制度に関する諮問第62号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず,民事訴訟・民事執行法部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもあります○○部会長から御報告をお願いいたしたいと思います。 ● 民事訴訟・民事執行法部会の部会長を務めさせていただいております○○でございます。   諮問第52号及び第62号につきまして,1月30日に開催されました民事訴訟・民事執行法部会第12回会議におきまして,「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案」を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の概要につきまして御報告させていただきたいと思います。   まず,要綱案の決定に至る審議の経過につきまして御報告いたします。   諮問第52号は,平成13年6月,これは司法制度改革審議会からの最終意見書が出された直後でございますけれども,平成13年6月にその諮問が発せられました。その内容は,「民事裁判を充実・迅速化し,専門的知見を要する事件への対応を強化するとともに,家庭裁判所・簡易裁判所の機能の充実を図ることにより,民事司法制度をより国民に利用しやすくするという観点から,民事訴訟法及び人事訴訟手続法を改正する必要があると思われるので,それぞれについて要綱を示されたい。」,こういう内容のものでございました。   この諮問を受けまして,平成13年9月以降,新たに設置されました民事・人事訴訟法部会において調査審議を行い,その結果を昨年2月に開催されました当法制審議会総会に報告いたしまして,それが「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱」,及び「人事訴訟法案要綱」として採択されましたことは,御存じのとおりでございます。   この両法案は,直ちに法務大臣に答申されまして,これに基づく「民事訴訟法等の一部を改正する法律」と,それから「人事訴訟法」という二つの法律が昨年7月に成立し,本年4月1日から施行される予定になっておりますことは,御存じのとおりかと存じます。   しかしながら,この諮問第52号につきましては,民事訴訟法の改正に関して,なお時間をかけてもう少し調査審議すべきであるとして残された事項がありましたことから,引き続きましてこの民事・人事訴訟法部会におきまして調査審議を継続することとされました。   他方,諮問第62号でございますが,これは平成15年3月に発せられたものでございます。   その内容は,「民事執行手続を一層,適正かつ迅速なものとすることにより,円滑な権利の実現を図るとの観点から,民事執行制度の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」という,こういう内容のものでございました。   この諮問につきましては,諮問第52号と合わせまして民事・人事訴訟法部会で調査審議するのが適当であるということにされ,部会の名称を審議事項に即しまして,「民事訴訟・民事執行法部会」と改めることとされました。前の部会は,「民事・人事訴訟法部会」でございましたけれども,人事訴訟法が既に法律として制定されましたので,今度は「民事訴訟・民事執行法部会」というふうに,部会の名称を変えさせていただいたわけでございます。   この民事訴訟・民事執行法部会では,昨年,平成15年4月から6回にわたって審議を行いまして,昨年の9月には,「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱中間試案」というものを取りまとめまして,法務省におきましてこれを昨年の9月から10月にかけまして,いわゆるパブリックコメントの手続に付しました。そのパブリックコメントで寄せられた意見の結果を踏まえまして更に審議を進め,本年に入りまして,去る1月30日の第12回の部会の会議におきまして,「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案」を決定するに至ったわけでございます。これが,お手元にあります法制審議会第142回会議資料「民1」という資料でございます。   この要綱案は,今御説明申し上げましたとおり,諮問第52号に対する積み残し部分に対するお答えであるとともに,諮問第62号に対するものでございます。   以上が,この要綱案の決定に至る審議の過程でございます。   それでは,引き続きまして,この資料に基づきまして,この要綱案の概要につきまして御説明申し上げたいと思います。   この「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案」は,第一の「民事訴訟法関係」と,第二の「民事執行法関係」の二つに分かれておりますが,順次,主要な項目につきまして御説明いたします。   まず,第一の「民事訴訟法関係」でございますが,1ページの第一の「一 民事訴訟手続等の申立て等のオンライン化」でございます。これは,近時の社会のIT化に対応いたしまして,当事者等の利便をより高めるという観点から,法令上書面によってすることとされている申立てのうちで,最高裁判所規則で定めるものについてはインターネットを利用して申立てを行うことを認めるものでございます。   次に,2ページの中ほどの「二 督促手続のオンライン化」でございます。この督促手続と申しますのは,金銭等の給付を目的とする請求につきまして,債権者が簡易かつ迅速に債務名義--債務名義と申しますのは,強制執行の基本となる文書でございますが,債権者が簡易かつ迅速に債務名義を取得することができる手続でございます。この手続につきましては,2ページの後ろから2行目の2にありますように,支払督促自体を電子データによって作成するという手続全体のオンライン化を図ることとしております。   この支払督促と申しますのは,書記官が債務者に対して書面を発送いたしまして,支払えということを督促するという書記官の処分でありますが,この支払督促自体を電子データによって作成する等,その手続全体のオンライン化を図ることとしているというのがその内容でございます。   さらに,4ページの中ほどの「三 その他」でございますが,「管轄の合意」と書いてあるところでございます。管轄の合意について,ここでは電子データによってもすることができるということにしてございます。現行法では,管轄の合意は民事訴訟法によりまして書面でしなければならないというふうに定められておりますが,近年盛んに行われておりますところの電子商取引において,管轄合意の部分のみは書面でしなければならないとすることは大変不便でございますので,ここにありますように電子データによる合意も認めることとしたものでございます。   なお,民事訴訟法の関係では,このほかに,ここには書いていない事項といたしまして,公務文書の文書提出命令の制度,特に一般的な文書提出義務の対象外とされております刑事事件関係書類等を対象とする文書提出命令制度の見直しの要否についても,部会としては慎重に審議を行いました。その結果,部会では刑事事件関係書類等については刑事関係の法令で独自の開示制度が設けられていること。第2に,それらの制度において開示が求められた場合には,その大部分が現在までのところ開示されていること。第3に,今回の審議の結果を踏まえて,その開示の範囲を運用上更に拡張することが具体的に検討されていること。これらのことを考慮いたしまして,今回は法律上の手当てをする必要がないということとされました。   次に,4ページの中ほどでございますが,第二の「民事執行法関係」につきまして御説明を申し上げます。   まず,4ページの「一 少額訴訟債権執行制度」でございます。   少額訴訟は,御存じのとおり簡易裁判所におきまして原則として1日で審理を終え,即日判決を言い渡すという制度でございまして,これは平成8年の制度発足以来,大変好評裏に推移しております。そして,先ほどお話しいたしました昨年7月の民事訴訟法の改正によりまして,この制度を利用することができる事件の訴額の上限額を,30万円から60万円までの金銭債権についてこの少額訴訟制度を利用できるというふうに改正がされたところでございます。   ところが,この少額訴訟手続で得られました判決等を債務名義として強制執行を行うということになりますと,これは普通の,といいますか,地方裁判所まで行かなければならないということになりまして,利用者にとりましては,少額訴訟は非常に便利であるけれども,判決をもらって強制執行するときにまた今度は別の裁判所に行ってやらなければいけないという不満の声が聞こえてまいりました。そこで,この少額訴訟手続で得られました判決等の債務名義に基づく強制執行手続を,身近な簡易裁判所で引き続いて行うことができるようにすれば,判決から執行段階まで一貫した手続として利便性を一層高めることができるというふうに考えられます。そこで,この要綱案では,少額訴訟に係る債務名義につきまして,簡易裁判所における債権執行手続を創設することといたしまして,通常の地方裁判所における債権執行手続のほか,この手続をも利用することができるものとしてございます。   債権執行と申しますのは,債務者が第三債務者に対して持っている金銭債権を差し押さえて,第三債務者から取り立てるというのが債権執行でございます。少額債権については,そういう範囲でこの利便性を高めようとするのがこの要綱案でございます。   続きまして,少し飛びますが8ページの「二 1 最低売却価額」について御説明をいたします。   最低売却価額は,不動産競売におきまして,これ未満の入札を認めない価額でございます。この価額は,不動産鑑定士等の専門家の評価に基づいて裁判所が定めているものでございます。この最低売却価額という制度は,不当な安値での落札を防止し,その不動産の所有者の権利を守る,あるいはその不動産の売却価額から,代金から弁済を受ける債権者の利益を守るという目的を持っている制度でございます。   ところが,近時,この最低売却価額が定められているために,入札者があらわれない,買い手があらわれないで売却に時間がかかってしまう事例があるという指摘がございます。そこでこの要綱案では,不動産の評価には事柄の性質上当然一定の幅を伴うという事情をも考慮いたしまして,現在の「最低売却価額」を「売却基準価額」に変えまして,この売却基準価額を2割下回る価額の範囲内,2割下回る価額以上の額ならば入札を認めるというふうにしようというのがこの要綱案でございます。   次に,また飛びまして11ページでございます。11ページの「五 扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制」について御説明いたします。これは,新聞等で既に報ぜられておりまして注目されている点でございます。   間接強制は,裁判所が債務者に対し,例えば債務を履行しない場合には1か月当たり金銭幾ら幾らを支払えというような決定をすることによりまして,債務者に心理的強制を加えて履行を強制するという方法,これが間接強制でございます。   この間接強制につきましては,従来,間接強制の補充性ということが言われてきました。つまり,直接強制の方法で強制執行ができる場合には直接強制でいける,代替執行の方法でできるものは代替執行をすべきである,それができないもの,具体的には非代替的な作為義務と不作為義務についてだけ間接強制が許されてきたわけでございます。   しかしこれも,昨年の民事執行法の改正,これはこの法制審議会の下の担保・執行法制部会からの答申がございまして,民事執行法の改正によりまして特定物の引渡しや代替的作為義務についても間接強制を認めることとされ,その間接強制の適用範囲が拡充されたところでございます。しかし,この改正後もなお金銭債権の強制的実現のためには,この方法,間接強制による強制執行は認められておりません。そこで,例えば金銭債務に基づきまして給料の差押え等の直接強制の方法しか利用することができないわけであります。   そこで,今回の要綱案では,金銭債務のうちで特に履行の必要性が極めて高い,例えば扶養義務等に基づくもの,典型的には離婚後の養育費の支払い等の債務,これは金額的には月5万円とか10万円とか,そういう額でございますけれども,これを直接強制というような方法でやるのは極めて困難といいますか,手間ばかりかかってなかなか実現ができない,しかもこれは定期的なものでございますから,間接強制という方法が適当ではないかということで,そういう扶養義務等に基づく権利の実現の円滑化を図るという観点から,直接強制のほかに間接強制の方法によることも認めることとしております。   以上で,諮問第52号と第62号に対する関係での要綱案の説明をさせていただきましたけれども,引き続きまして,諮問事項ではございませんけれども,民事手続法の一つでございます公示催告手続ニ関スル法律の改正の検討につきまして,御報告させていただきたいと思います。資料といたしましては,右上に「参考」という判こが押してある資料が2点あると思います。これに基づきまして若干お時間をちょうだいしたいと思います。   この公示催告手続ニ関スル法律といいますのは,明治23年に制定されました旧民事訴訟法の中で,唯一残された部分でございます。すなわち,公示催告手続は,もともとこの旧民事訴訟法の第7編に規定が置かれておりましたわけですけれども,その後民事執行法,民事保全法,民事訴訟法,仲裁法と,次々と旧民事訴訟法中に規定が置かれていた手続が新しい単行法として独立してしまった結果,現在は公示催告手続に関する第7編のみが残され,名称も「公示催告手続ニ関スル法律」と改められて現在に至っているものでございます。   このような経緯で,この法律は片仮名・文語体のままですので,これを平仮名・口語体の表記に改めるとともに,その内容も現在の社会情勢に見合ったものに見直すことが求められております。   法務省では,昨年来,この法律の改正を検討しており,その骨子につきまして去る1月30日の民事訴訟・民事執行法部会において報告がされました。その内容が,今お手元にございますこの「公示催告手続の見直しに関する取りまとめ」という資料でございます。   この法律は,今御説明したとおり,旧民事訴訟法の一部でございますので,法務省による改正の検討の主要な内容につきまして,部会長の私の方から総会に御報告申し上げたいというふうに思います。   公示催告手続は,これは主として手形や小切手等を喪失した場合に利用される手続でございます。手形や小切手,広く「有価証券」と申しますが,この有価証券と申しますのは,債権者の債務者に対して持っている,例えば1,000万円を支払えという債権が,その有価証券という紙片に離れ難くくっついているもの,これが有価証券でございまして,債権者が債務者に対しましてその権利を行使したり,あるいはそれを第三者に譲渡したりする場合には,必ずその紙,有価証券を呈示し,あるいはそれを交付しなければ権利の行使も譲渡もできないものでございます。   そういたしますと,その手形や小切手をなくしてしまった場合には,これは大変困った事態になるわけであります。これに対処するのが公示催告手続でございまして,手形等を喪失した者からの申立てによりまして,裁判所が一定の期間,権利の届出の催告をし,その間にだれからも権利の申出がなされないときには,除権判決,その手形から権利を剥奪するという除権判決をするわけでございます。この除権判決がなされますと,その手形は無効になる--無効になるといいますのは,有価証券はただの紙に戻るわけであります。権利と紙とが分離されるわけでございます。そういたしますと,その手形等を喪失した者は,その手形等を所持していなくても自分の権利を証明して権利の行使ができるようになるという制度がこの公示催告という制度でございます。   今回の法務省の見直しの主たる内容は次の2点でございます。   第1点は,資料の2ページの下から2行目にあります,公示催告の公告の期間でございますが,現行法ではこの手形等を無効にするために行う公示催告の期間,権利を持っている者は届け出なさいという公示催告の期間は6か月以上とされておりますが,現実の手形の支払期日の状況等に照らしますと,これは幾ら何でも長過ぎるという指摘がございますので,これを2か月以上としてございます。   第2点は,資料の3ページの中ほどから少し下の除権判決の裁判でございます。現行法では,除権判決をするためには口頭弁論の期日を開いて申立人の出頭を求めるなど,重厚な手続を要することとされておりますが,この手続を判決手続から決定手続に改めることによりまして,手続の効率化,迅速化を図ることにしております。   以上,簡単でございますが,要綱案の概要の御説明をするとともに,公示催告手続の見直しにつきましても御報告申し上げました。要綱案につきまして,よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● 大変基本的な質問でお許しください。   1号目の1ページ目から2ページ目にかけまして,インターネットにおいて氏名,名称,それから判この問題のところで記載がございますが,2ページ目の第1行目,「氏名又は名称を明らかにする措置をもって」というこの表現は,具体的にはどういうふうに理解をしたらよろしいのでしょうか。 ● これは,いわゆる電子署名でございます。「電子署名」という言葉の方が分かりがいいわけですけれども,法律に書くときにはこういう形になるだろうというようなこともありまして,いささかちょっと持って回った言い方になっていますが,俗に言う,現在もう既に使われ始めている電子署名を用いるという趣旨でございます。 ● もう1点,お教えいただけますか。   日本における判この文化という,印鑑証明に基づきまして,大体この形で電子的なメディアに移り変わっていくときに,もう民事訴訟法においては,今回は申立ての手続ではございますけれども,大体において電子署名という形と印鑑が同じような意味を持ってくるというふうにとらえておけばよろしいですか。それとも,判この持っている意味というのが,日本の法体系の中で変わってくる,モーメンタムに入ったということに理解をしてよろしいのか……。 ● こういう裁判手続の申立てに限らず,強制執行手続の申立てもそうですけれども,もともとは署名捺印というのが日本の伝統的なやり方ですが,それが行政手続も含めてオンライン化していくと,必然的に電子署名とそれに対する証明書という形に印鑑証明というようなものが置き換わっていきます。ですから,そういう社会全体の流れにこの手続の世界も今回対応していく。ですから,今後はこういう方向にどんどん進むというのは御指摘のとおりだと思います。   ただ,民事訴訟の世界でいいますと,もともと判こだけじゃなくて署名というものも,法律の民事訴訟法の世界では判こか自署か,記名だと押印がなくてはいけませんが,あと自署するという,サインですね,これももともと同じような効力を持つものとして許容されていましたので,判こが署名になるというと随分劇的な変化のようですが,もともと署名も許されていた,それが今度は電子署名という形に置き換わっていくということになるのだろうと思います。 ● どうもありがとうございました。 ● ほかに,御質問ございませんでしょうか。 ● 1ページの2のところに,例えば「申立書が当該裁判所に対して到着した」とか,あるいは3ページに,「裁判所の方から債権者に対して告知をしたときに,債権者に到達した」という,その到達したということは,送った側はどういうふうにして確認できるのか,あるいは受け取った側が送った側に受け取りましたということをちゃんと言い返すのか,その辺のところはここは明示されていないのですが,どういうふうに考えておられるのでしょうか。 ● 今の一般的な紙ベースの世界での手続でも,もちろん通知をする,あるいは送ったときに,裁判所に着いたかどうかということを,裁判所の方が着きましたということを一々言ってくるわけではありません。ただ,インターネットを経由した場合には,通信が成功したかどうかは発信者の側で一般的に,よく電子的なメールのやりとりでも分かるようになっていますね。だから,そういう一般的なシステムと同じように,発信者の側も正常に通信が成功したかどうかは分かるということにはなりますので,むしろ今の手紙で出す場合には,着いたかどうか,いつ着いたか正確には分からないということが,より分かる方向に変わるということだろうと思います。 ● 受信者が受け取ったときに,受け取ったファイルを開いたなら開いたということが送った側に自動的にフィードバックされるような場合とされない場合があるわけですが,フィードバックされるやり方で取り扱うということですか。 ● ここで申し上げているのは,着いたときにすぐ開くかどうかは,確かに事務が忙しければ少し時間がたつこともありますね,裁判所の側で。ですが,法律上重要なことは,本当に何時何分に着いたのかどうかということですので,着いたということが返ってくるだけであっても,それで目的は十分達するわけです。それを開くのが,例えば翌日の執務時間になってから開くということも,もちろんそれはあるでしょうけれども,法律上意味を持つのは裁判所に何日の何時何分に着いたかということですので,そこはその情報さえ返ってくれば,あるいはそこさえ確実であれば,法律的な問題はないだろうと思っています。 ● ほかに御質問,ございませんでしょうか。   御質問がございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと思いますが,何か御意見ございますでしょうか。   特に御意見がないようでございますので,では原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしいでしょうか。   この点について御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   それでは,民事訴訟・民事執行法部会から報告されました「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案」のとおり,答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 全員のようですが,念のため,反対の方の挙手をお願いいたします。      (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   原案に賛成の委員は17名でございます。反対の委員はおられません。   議長を除くただいまの出席委員は17名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,民事訴訟・民事執行法部会から報告されました「民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。   したがいまして,本日御審議いただき,採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。   なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。   続きまして,本日の第2の議題であります不動産登記法の見直しに関する諮問第65号につきまして,御審議をお願いいたしたいと思います。   まず,不動産登記法部会における審議の経過及び結果につきまして,○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 不動産登記法部会の部会長を務めさせていただきました○○でございます。   諮問第65号につきまして,昨年11月26日に開催されました不動産登記法部会第3回会議におきまして,諮問で示されました不動産登記法の改正についての要綱(骨子)のとおりの方針により,不動産登記法及び関連法令の改正を行うべきことを部会の意見とする旨,全会一致で決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱(骨子)の概要につきまして御報告申し上げます。   まず,要綱(骨子)の決定に至る審議の経過について御報告いたします。   諮問第65号は,「不動産登記制度を情報処理技術の進歩その他の社会の変化に適合する制度とする観点から,不動産登記法について,電子情報処理組織を使用する方法による申請手続の導入等の改正をするとともに,その現代語化を図る必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。」という内容でございました。   この諮問を受けまして,不動産登記法部会におきまして,法務大臣から示されました要綱(骨子)につきまして調査審議を行い,昨年,11月26日の第3回会議において,部会としてこの要綱(骨子)の方針でよいとの決定をするに至ったわけでございます。   次に,要綱(骨子)の概要について御説明申し上げます。お手元の資料「民2」というものでございます。   要綱(骨子)は,三つの部分に分かれておりまして,第一はオンライン申請制度の導入に関するものでございます。第二は,5ページからになりますが,不動産登記法の現代化のほか,オンライン申請制度の導入以外の不動産登記制度の整備に関するものでございます。第三は,新制度の実施時期に関するものであります。   以下,主要な項目について御説明申し上げます。   まず,第一の一では,オンライン申請を従来の書面の提出による申請方法と併存して認めることといたしております。また,(注)におきまして現行法の採用する共同申請構造を引き続き維持することを明らかにしております。   第一の二では,出頭主義を廃止することにいたしております。現行制度の下では,権利に関する登記は,当事者が登記所に出頭して申請しなければならないとされております。これを,オンライン申請におきましては廃止するのは当然のことでございます。さらに,このオンラインによる申請だけではなく,書面の提出による申請の場合についても出頭主義を廃止するということがこの趣旨でございます。   第一の三では,第一の一で述べましたように,オンライン申請及び窓口申請という二つの申請方法が併存することになりますが,いずれの申請も登記所における受付の順序によって処理することといたしております。   なお,(注1)及び(注2)におきまして,前後が不明の申請は,同時にされたものとみなすこととし,オンライン申請と窓口申請は同一の受付システムによって処理することといたしております。   次に,第一の四から七まではいずれも当事者本人が申請していることを確認するための手続に関するものであります。   まず,(前注)では,オンライン申請における一般的な本人確認手段であります電子署名及び電子証明書に加えまして,登記手続独自の措置として,これから申し上げます本人確認手続を採るという趣旨でございます。   次に,第一の四の1では,登記済証の提出に代わる本人確認制度として,登記識別情報の制度を導入することといたしております。現行法上は,登記が完了したときは,申請書の副本等に登記済みの印を押して登記名義人に渡しております。これを「登記済証」と呼んでおります。世間一般では,「権利証」という名前で親しまれているものでございます。この登記済証は,その登記名義人が次に登記の申請をするときに添付書面として提出しなければならないこととされております。これによって,この申請人が本人であるといいますか,登記名義人その人であるということが確認されるわけであります。そういう意味での本人確認手段としての役割を果たしております。   新制度の導入後は,登記済証と同様の役割を果たすものとして,登記名義人を識別するための情報を登記名義人に通知し,その登記名義人が次に登記の申請をするときにその情報を提供しなければならないものとするという趣旨でございます。この登記識別情報は,英数字その他の符号からなる情報,パスワードのようなものになります。登記完了時に登記名義人となった申請人にのみ通知されるものであります。   第一の四の2では,登記識別情報の失効の制度を設けています。   第一の四の3では,登記識別情報の有効性確認の制度を設けることといたしております。   なお,第一の四の(注1)では,申請人が当初から登記識別情報の通知を希望しないときは,最初からこれを発行しないとする,いわゆる不発行の制度を認めることといたしております。   (注2)では,登記識別情報を失念したり失効させた場合にも,その再通知は行わないこととしております。法務省民事局が行った意見照会の結果でも,再通知を行うべきではないとする意見が多数でありました。また,部会においても登記識別情報を登記済証に代わる本人確認手段として位置付けるのであれば,登記手続の際に申請人に一度だけ通知されるところにその意義があるとの意見が多数でございました。   次に,(注3)では,新制度においても登記識別情報の通知とは別に,登記が完了した旨を申請人に通知する制度を設けることとしております。登記が完了したこと自体は,登記されることによって公開されることになりますが,現行制度の下では,申請人は,登記完了時に登記済証を登記が完了したことを示すものとして受け取るわけでございます。そこで,部会においては,登記完了時に登記完了証を出すような制度にすべきであるということで意見が一致いたしました。   次に,第一の五及び六は,登記識別情報の提供がない場合における本人確認手続について記載しております。   まず,第一の五の1では,登記識別情報を提供してすべき登記の申請において,登記識別情報を失念したり失効させたために,その提供をすることができない場合には,登記官が,事前通知の手続により本人確認を行うこととしております。現行制度におきましても,登記済証を提出せずに所有権に関する登記の申請があった場合について同様の事前通知手続がありますが,新制度の下では,所有権以外の権利に関する登記申請の場合も含めまして,登記識別情報の提供がない場合には,事前通知手続によることを原則とするということでございます。   第一の五の2は,所有権に関する登記につきましては,申請がされた日の前一定期間内に,登記名義人の住所に変更があった場合には,変更前の住所にも通知を発送し,返信の有無を確認することによりまして,実務上見られます住所移転を利用した成りすましによる不正な申請に対処しようとするためのものでございます。   なお,(注)におきましては,申請人の負担軽減の見地から,保証書の制度を廃止することといたしております。   ところで,登記の申請の実態は,その9割以上が司法書士,土地家屋調査士などのいわゆる資格者が代理して行っているのが現実でございます。第一の六では,このような実態を踏まえまして,資格者である代理人が当事者本人を確認した旨の情報を提供した場合には,登記官がこれを審査し,その情報の内容を相当と認めたときは,事前通知の手続を省略することができることとしております。これは,資格者である代理人には,業法上不正な登記申請がされないように注意する義務があると解されますので,資格者が行った本人確認について登記官の審査を条件に,登記申請上の本人確認手続の一つとして位置付けるということでございます。   なお,(注)は,この事前通知の手続の省略が,資格者代理人が権利者側だけを代理している場合,登記義務者側だけを代理している場合,双方を代理している場合,そのいずれの場合にも適用があるという趣旨でございます。   第一の七では,登記の正確性を担保するために,本人に成りすました登記申請であるという疑いがあって,それに相当な理由があるときは,登記官は,申請人又は代理人に出頭を求め,本人確認をすべきことといたしております。   第一の八は,登記原因の証明の問題でございます。登記原因と申しますのは,売買や贈与など,登記の原因となった事実又は法律行為を指しますが,現行制度では,登記原因を証明する書面を必ず添付しなければならないというわけではなく,申請書の副本,すなわち申請書の写しでもよい場合がございます。この現行制度につきましては,登記の正確性確保の観点からは不十分であるとの批判がございました。そこで,登記の正確性を一層向上させるという観点から,登記申請の際には登記原因を証する情報を必ず提供しなければならないということといたしております。   次に,第一の九は,本来登記の申請は,申請段階ですべての添付書類をそろえて申請するのが原則ですが,表示に関する登記につきましては,登記官に実質的審査権が認められていることなどから,原則を緩和して,オンライン申請について後で登記官が原本確認をするということを条件に,申請の段階では添付情報の写しを送信してもよいこととするという趣旨でございます。   次に,第一の十は,従来の書面の提出による申請においても,電磁的記録の添付を認める趣旨でございます。   また,第一の十一では,登記事項証明書の送付はオンラインによっても請求することができることといたしております。   以上が申請手続の見直しに関する部分でございます。   次に,第二の「現代語化その他の改正」に移らせていただきます。   第二の一では,今回の改正により法文を現代語化するとともに,法律事項を整理することといたしております。   (注)におきましては,法律事項とするのが相当であると思われる基本的な事項を掲げております。   次に,第二の二は,登記簿,地図等の電磁的記録化ということでございます。登記簿につきましては,現在でも電磁的記録で作成することができる制度になっておりますが,制度上は紙の登記簿に対する例外とされています。そこで,電磁的記録を本則とするということでございます。また,地図等につきましては,今回の改正により電磁的記録に記録することができるという制度にするということでございます。   第二の三では,不動産の特定を容易にするために,不動産を特定するための番号を登記事項とすることにいたしております。   第二の四では,現行の予告登記の制度が執行妨害等の目的で濫用されているとの批判があることを踏まえまして,この制度を廃止することといたしております。   第二の五では,登記官が過誤による登記を職権で更正する手続及び登記完了後にされた審査請求に理由がある場合の是正手続について,合理化を図ることとしております。   次に,第三の「新制度の実施」について御説明いたします。   その要点を申し上げますと,新たにシステムを導入していく必要がある制度,すなわちオンライン申請の制度や登記識別情報の制度等は,個別にオンライン指定を受けた登記所から実施していく必要がありますが,それ以外のもの,例えば出頭主義の廃止,事前通知制度,資格者代理人による本人確認制度,登記官による本人確認調査及び登記原因証明情報の提供の必須化につきましては,一律に実施するということでございます。   なお,これまでの登記済証につきましては,オンライン指定を受けた登記所以外の登記所では,指定される日までは従来どおり登記済証を提出して申請することができます。また,オンライン指定がされた後におきましても,一斉に登記済証を無効にして登記識別情報に切り替えるわけではなく,従前の登記済証を提出して申請をしていただいた上で,その登記の完了時には新たな登記名義人に登記識別情報を通知するという形で,徐々に登記済証から登記識別情報に切り替えていくことにいたしております。   以上,簡単ではございますが,要綱(骨子)のうち主要な項目について御説明申し上げました。よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● 現代語化ということが書いてございますが,先ほどの民事訴訟法の方では「オンライン化」とか「コンピュータ」という言葉が使ってあったのですが,こちらでは文面では漢字の「電子計算機」とか「電子情報処理組織を使用する方法により」とかなっているのですけれども,法律によって言葉遣いというのは全然別でいいのですか。 ● そんなことはないと思います。関係官から……。 ● 今の御指摘の点ですが,実際には同じものは同じ表現になります。これは,要綱を作るときの多少のポリシーの違いがありまして,法律上は「電子情報処理組織」という言葉でネットワークなりコンピュータ組織をあらわすということは,どの法律でも同じでございます。ただ要綱の分かりやすさとか,審議の具合などで,法律の条文を非常に意識して作る場合と,分かりやすさを重視して,もっと実質で書いてしまっている場合と,要綱によって,正直申し上げて違う部会で議論していることもありまして多少ばらつきがありまして,同じことが違う言い方になっていると。   先ほどの御指摘の電子署名などというのは,こちらの方では書いてあって,向こうでは書いていないとか,多少ばらつきがあるのはそのとおりですが,法律になるときには同じものは同じになります。 ● 片仮名じゃない方を使うわけ。 ● 法律の用語として,なかなか一般になじんでいる「コンピュータ」とか「システム」とか,そういうことが使えるかというと,ほかのこれまでの法律ではそれをなるべく漢字に置き換えるという方向で法文をつくっているので,それと合わせる形でこういう漢語になると思います。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● 意見のところで申し上げようと思ったのですけれども,1ページ目の登記所の使用に係るパソコンのことを電子計算機とは,これはちょっとこれから直すのであれば,明らかにもう計算機ではございませんので,ちょっと恥ずかしいかなという気がいたしますので,漢字でありましたらば違う言葉に……。   それからパスワード,御説明ではパスワードという形で御説明をいただいたのですけれども,これはやはり表記が,ああ,明治の人はこういうふうに書いてくれたのだというのにひれ伏す時代ではないので,やはり平成の時代に新たに書き加えていくのであれば,勇気を持って,こだわらずに進めていただければと思います。 ● 御意見を伺ったわけでございますが,御質問でも御意見でも結構でございますから,御発言お願いいたします。 ● 登記申請の電子化に伴って,現在行われている登記申請と,負担において国民がどの程度負担増になるのかならないのかというのが一つ。   それから,権利証に対する意識というのは非常に強いと思うのですね,そこらあたりの払拭の仕方をどういうふうにお考えになっているかという2点でございます。 ● 負担の点では,特に負担が増すということはないだろうとは思っております。もちろん,オンライン申請をするにはオンラインの設備がないと困るという点はございますが,従来どおりの紙ベースでの申請ももちろん可能になっておりますし,既に利用できるそういう設備があれば,特段新たな負担ということはないようには思っております。   それから,登記済証,権利証のことでございますが,これは確かに紙ベースで処理をしておりますので,申請してきた書類に登記官が印を押して返却する,そのことによって登記が済んだということを証明すると同時に,次の登記のときにそれを提出していただいて本人確認をする,そういうことで国民の方々も登記済証と非常に大切にしていただいているわけです。これを,電子的処理を中心にいたしますと,紙がなくなりますので,従来どおりの権利証,登記済証というものは,これは今後はなくなるわけでございますが,それに代わりまして,多分もう既に説明してあると思いますが,情報としていわばパスワード的なものをお渡しして,それを持っていただく。本人確認としてはそれを使っていただく。ですから,それが他人に使われないようにしっかり持っていただければ,従来の登記済証を持っているのと基本的には同じ機能を果たすということになります。   また,登記が終了したという機能については,登記完了証というものを国民の方々に出すことによって,これははっきり了知していただけるような仕組みにします。ですから,登記済証そのものはなくなりますが,従来登記済証が果たしていた役割は,それぞれ形を変えて維持をするということで,今回の仕組みはできております。 ● お尋ねですけれども,第一の十一で,登記事項証明書等の送付は,これがいわばネットワークを通じてできるという,この場合のいわば同一性というか,送付請求者の身元の確認というのは,どういうふうにしてされるのか。どこでも起こる問題ですので,一般的なやり方はあることは分かっているのですけれども,非常に犯罪に使われやすいものですから,そこのところ,もしお分かりであれば教えていただきたいと思います。 ● これについては,窓口としては法務省の汎用受付を使いますので,そこで一般的にとられている確認方法,電子署名ということになろうかと思いますが,それによるということになります。 ● よろしゅうございますか。 ● はい。 ● ほかに御意見ございますか。 ● 意見なのか質問なのか感想なのか,よく分かりませんが。 ● 両方一緒でも結構でございます。 ● 電子政府というのは,政府の決定ですからやむを得ないといえばそうなのですけれども,何だか心配だなと,本当にいいのかなという気がとてもするのです。   例えば,銀行の預金の引き落としなんかで,印章をパソコンでつくった,印章があるからいいのだというのが銀行の言い訳になっているのですけれども,だれがどう考えたって印肉で押印したのとパソコンでコピーしてつくったのとは,見て分かるはずなんですよ。それなのに裁判で通ってしまうのですね。   ところが,銀行の人に,分かりますでしょうと聞いたら,それは分かりますと言うのです。だって,全然違いますもの。書面に印鑑で押したというのと,パソコンでつくっちゃったというのは,紙の手触りというか,印肉使っていればなぞれば出てきますし,その感触というのでしょうか,そういうのがあると思うのです。   それで,例えばこの登記に関しては,日本では下がったとはいえ土地というのは国民の資産としては非常に大きなものでして,いろいろ,今,○○委員から御指摘があったように犯罪の対象にもなってきたわけです。電子政府というのでしたらば,例えば書類の保存が,役所が火事になったというときなくなっちゃったのだけれども,電子だからほかに保存しておくことは容易なわけですね,そういう形で電子政府というのが構築されればいいのですけれども,今のところは単なる書類が電子的な手続にかわっているということでしかないのですね。そうすると,せっかく今まで書面で蓄積されてきた犯罪予防措置というのは,全部きかなくなるわけでありまして,しかも日本の場合には地籍調査が秀吉の検地以来まともに行われていないということがありまして,それこそIT化ですから衛星を使ってきちんとそれを整えるということができるわけです。地籍調査が不十分なのに,こうやって登記の部分だけどんどんハイテク化していくということの問題というのでしょうか。だから,先ほどの書面を電子的に保存するというのが容易になったということを使っていただくと同時に,さっきどなたかがおっしゃった本人確認を電子的に,簡単に,もうちょっといろいろな角度からするという方法だってあるわけですね,そういう形で利用していただくというのでしょうか,そういうことはできないのだろうかと。それが本来の電子政府のありようのような気がするのですけれども,今のところは違うなというふうに思うのです。   この不動産の登記というのはなかなか難しいところがありまして,だからパスワードなり何なりをICカードやなんかで,それをしまっておけばいいじゃないかというのですけれども,それで本当に片づく問題なのかどうか,とても不安があるのです。   というだけのことなのですけれども。単なる感想で申し訳ないのですけれども,地籍調査が不十分だということは霞が関の周知の事実ですよね。それなのに,部分的に末端のところでこういうふうにどんどんハイテク化していくことの不都合というのでしょうか,そういう問題もどこかで考えながら,法改正していただきたいなと思っただけなのです。 ● まず,電子政府,コンピュータ化の問題ですが,これは確かにコンピュータ化をいたしますと,情報の移動あるいはコピーが非常に容易になります。また,なかなか処理が目に見えないということから,利用する立場で何となく不安を感ずるというのは,多分広く国民一般もそういう不安感を持っているのではないかと思っています。ただ,効率的な処理ということを考えますと,これからの日本にとって電子化というのは,これは避けて通れない。その中で,いかにして国民に安心してもらえるかという,そういう保安の面を非常に重視していく,それが電子化に伴ったセキュリティーの重視ということだろうと思います。   例えば,ただいま御指摘いただきました情報を複数箇所で保存する,電子化すれば容易になるという,それは正に登記のコンピュータ化のときにはやっておりまして,各登記所で持つと同時に,都道府県単位のバックアップセンターで持つ,更にそれを登記センター,船橋にありますが,そこで持つという,三階層でそれぞれ情報を持って,どこかが地震等でやられても情報が必ず残るようにと,こういうことは正に電子化すると可能になるわけでございます。そういう意味で,電子化には不安もつきまといますが,やはり将来を考えれば,その方向でできる限り安全性を確保しつつ,国民に安心してもらえるようなシステムをつくっていくということがなすべきことだろうと思っています。   登記識別情報にいたしましても,そういう意味でいいますと,現在の登記済証,権利証を,これはもちろん国民の方々信頼していますが,実は今の登記の仕組みですと本物の登記済証を見なくても,登記内容を見るだけで偽造することが可能なのです。しかも,その偽造に,ただいま印鑑の例が出ましたように,パソコン等を使いまして非常に精巧な偽物ができます。これは,現に年に何回か登記官が注意して発見しておりますけれども,今後ますますそういう偽造手段が巧妙化してまいりますと,人間の目で発見するというのはなかなか困難になります。そういうことを考えますと,登記識別情報は,その本物そのものを見ない限りは絶対偽造ができない。そういう意味で,ある意味では安全性は非常に高まる。ただし,見せてしまうと,これはコピーが容易ですから,そういう意味の二律背反的なところはございますけれども,現在の登記済証と比べて,我々が今考えている登記識別情報が,安全性において劣るということはない,使い方さえ間違えなければより安全になります。ですから,私どもとしては,やはりそういう国民の方々の不安を解消するようなそういう安全な仕組みをつくって,そのことをできるだけ広く理解してもらう,それと同時に,やはり効率的な行政のために電子化を推し進めていくということがとるべき道ではないか,こう思ってこの法改正に臨んでいるわけでございます。   それから,地籍の整備が非常に遅れているというのは全く御指摘のとおりです。これは全国でもやっと半分程度で,残りの半分はできておりません。ただ,この地籍の整備といいますのは,いわゆる地図と違いまして,境界を一本一本確定していかなければいけない。したがって,いわゆる地図でありますと航空写真とか衛星写真を使って非常に正確なものが迅速にできるようになっておりますが,その中に境界を一本一本書き込んでいくというのは,結局当事者が立会いをして確認をしていくという,非常に人手のかかる作業です。   これも,幸い都市再生本部で,今後10年で都市部について整備をするという方向を打ち出していただきましたので,私どもとしても地図を非常に重視して今後やっていきたいと思いますが,そういった成果もまたコンピュータ化をいたしまして,登記簿のいわゆる権利の登記をコンピュータ化したものと連動して利用できるようにということが,都市再生本部の地図整備の方向性としても打ち出されております。したがって,今後はそういった土地に関するもろもろの情報をいずれも電子化をいたしまして,それを容易に加工できる,あるいはそれぞれの省庁がお互いにそういう情報を交換して,より効率的な土地に関する行政を総合的に進めていく,こういう時代になろうかと思っておりますので,そういう意味でもこちらの方のコンピュータ化もやはり進めたい,地図も進めたい,正に両方やりたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。 ● ただいまの御説明で,御了解いただけましたでしょうか。 ● よく分かった部分もたくさんありまして,ありがとうございました。   小さく,二,三質問を重ねてもいいですか。 ● 今度は質問でございますね。 ● 防犯という点でいいますと,例えば盗まれたというときにすぐ届けておけば,それはもうすぐ措置がとられるとか,あるいは紛争中の土地であるかどうかとか,そういうことも電子処理は可能なわけですね,ですからそういう体制をとっていただいているのかどうか。   それからもう一つは,コンピュータのバックアップ体制ですけれども,例えば東京証券取引所なんかはバックアップコンピュータは同じ場所に並べて置いてあるのです。しかも,ソフトは同じなんですね。だから,シャットダウンしたときに一緒にシャットダウンしてしまって,何のためなんだと。それこそ,アブラムシでも入って物理的にシャットダウンしたときにしか対応できないようなバックアップ体制なのです。   聞くところによりますと,そういうバックアップをとっているところは結構多いということですので,政府の場合はいかがかなということをお尋ねさせていただきたいと思います。 ● 例えば,書類を盗まれた,あるいは偽造されたおそれがあるというような申出があれば,現在でも登記所の方でそれをチェックしてやるような仕組みはしておりますし,今後ともそういった通報を事前にいただければ,こちらはこちらでチェックできるような体制をとっていくというつもりでおります。   それからバックアップでございますが,これは確かに同じところに置いてもなかなか難しいということがございますが,一つはデータを先ほど申し上げましたように複数箇所でクロスして持つようにして,一か所が全滅してもデータは確実に残るようにということがございます。   それから,機器そのものが倒れてしまいますと,これはどうしようもないわけですけれども,一応遠隔的な操作をして,例えば今登記所で使っているコンピュータがダウンしたときに,バックアップセンターにあります別の箇所のコンピュータから端末機を操作して機能を立ち上げるというような仕組みは,現在もとっておりますし,そういった万一に備えた体制は今後も十分考えてやっていきたいと思っております。 ● 関東と近畿にあるかとか,そういうことですか。 ● データはそういう形で一か所に集めずに,例えば,東京がやられてもほかに必ず残るようにという形で持つように考えておりますので。 ● 分かりました。ありがとうございました。 ● ほかに,御意見ございませんでしょうか。   ほかに御意見もございませんようですので,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。   この点について御異議がないようでございますので,そのようにさせていただきます。   それでは,不動産登記法部会から報告されました要綱(骨子)のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のために,一応反対の方の挙手をお願いいたします。 (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   原案に賛成の委員は16名でございます。反対の委員はおられません。   議長を除くただいまの出席委員は16名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,不動産登記法部会から報告されました要綱(骨子)は,原案のとおり採択されたものと認めます。   したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対しまして答申することといたします。どうもありがとうございました。   なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただきますよう,よろしくお願いいたします。   ここで,休憩をとりたいと思います。よろしくお願いいたします。             (休     憩) ● それでは,審議を再開したいと思います。   本日の第3の議題であります「保証制度の見直しに関する諮問第66号」,第4の議題であります「子等に対する扶養の国際的な実現に関する条約案に関する諮問第67号」,及び第5の議題であります「人名用漢字の見直しに関する諮問第68号」につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● 諮問第六十六号を朗読させていただきます。    諮問第六十六号     保証人が過大な責任を負いがちな保証契約について,その内容を適正化するという観点から,根保証契約を締結する場合に限度額や期間を定めるものとすることなど,保証制度について見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。 ● 諮問第六十七号を朗読させていただきます。    諮問第六十七号     ヘーグ国際私法会議において作成のための審議が行われている国際的な扶養の実現に関する条約に盛り込まれるべき内容について,御意見を承りたい。 ● 諮問第六十八号を朗読させていただきます。    諮問第六十八号     子の名に用いることのできる漢字(人名用漢字)の範囲の見直し(拡大)について,御意見を承りたい。   以上でございます。 ● 続きまして,これらの諮問の内容の諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明していただきます。 ● それでは,私の方から三本の諮問事項につきまして御説明申し上げます。   初めに,保証制度の見直しに関する諮問第六十六号について,御説明申し上げます。   これまで,自己資本に乏しい中小企業等が,資金調達のために借入れを行う場合には,経営者や役員,その親族,知人等が保証人になるよう債権者から求められる場合が多いと言われております。   しかし,保証契約の内容については,法律上特段の制限が設けられていないことから,保証金額や保証期間に制限を加えず,継続的に発生する一切の債権を保証の対象とする包括根保証契約が締結されることが多く,そのため,債務者が債務不履行や倒産に至れば,保証人が経済的破たんに至るといった苛酷な事態を招くことも珍しくないとの指摘がされています。   この点に関しまして,内閣府に設置された経済財政諮問会議は,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」の中で,起業の促進・廃業における障害除去という目的実現の観点から,個人保証の在り方の検討,見直しを進めることを求めております。   これを受けて,関係省庁において,金融実務上の改善策や,無保証の政策金融の拡充等が検討・実施されてきたところですが,企業倒産が多発する現下の経済情勢を踏まえますと,保証契約の内容を適正化するためのより直接的な措置を講ずる必要があると指摘されております。   このような情勢にかんがみれば,保証契約,特に根保証契約の内容を適正化するための措置を早急に講ずるべきであり,諮問記載の事項につきまして,本審議会の御意見を伺う必要があると考えます。   続きまして,国際的な扶養の実現に関する諮問第六十七号について御説明申し上げます。   国際的な婚姻の解消等の事情により,扶養義務者とその配偶者,子等の扶養権利者が異なる国に居住する事例がふえてきております。このような場合には,国際的な扶養を実効的に実現することが扶養権利者の保護のために必要となりますが,そのためには,扶養義務の準拠法,外国でされた扶養義務に関する判決の承認及び執行,扶養料取立てに関する行政上の国際共助などについてのルールを定めることが有益であると考えられます。   これらの事項については,ヘーグ国際私法会議及び国際連合の作成に係る合計5本の条約が発効しておりますが,ヘーグ国際私法会議においては,現在これらの諸条約の問題点を踏まえて,これらの諸事項を包括した新たな条約を作成するための審議を行っており,早ければ数年内に新条約が採択される見込みであります。   我が国は,既存の諸条約のうち,扶養義務の準拠法に関する二つの条約を批准しており,また国内においては実効的な扶養料取立てのための民事執行制度の整備を進めているところでございますが,新条約の内容は,我が国の法制にも影響を与えるものと考えられます。   このような内外の情勢にかんがみますと,我が国としても新条約の作成に積極的に取り組む必要があると考えられますので,諮問事項につきまして本審議会の御意見を伺う必要があると考えます。   続きまして,人名用漢字の見直しに関する諮問第六十八号について御説明申し上げます。   現在,人名用漢字として用いることのできる漢字は,戸籍法第50条第2項の委任を受けた戸籍法施行規則第60条において,常用漢字表に掲げる漢字1,945字と,それ以外の漢字で人名にふさわしいものとして人名用漢字別表に掲げる漢字285字の,合計2,230字とされております。   この人名用漢字に関する最近の改正は,平成2年3月1日,当時の民事行政審議会の答申に基づいて行われましたが,それ以降,相当の期間が経過し,その間の社会情勢の変化に伴い,人名用漢字の拡大についての要望が多数寄せられております。また,先般,人名用漢字以外の字を用いた出生届の受理を命じた原審の判断を是認する最高裁決定が出たところであります。このような状況にかんがみますと,人名用漢字の見直しにつきまして,本審議会の御意見を伺う必要があると考えます。   以上でございます。 ● それでは,ただいま説明がありました諮問第六十六号,第六十七号及び第六十八号につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたしたいと思います。 ● これは,今お尋ねするというのは適当ではないという気がして,部会等でいずれ御審議をなされることかと思うのですけれども,保証の制限の話ですが,大変常識的に考えられるのは,最初の締結の時点では白地にしておいて,後で実際に必要が起きたときにそこを補充するというようなやり方みたいなものが出てくると,恐らく尻抜けになってしまうのではなかろうかと。そういう場合をどうするのか,そういうのはもともと無効と考えるのかとか,そういう問題,できればもし部会での御審議ということなれば,御検討いただきたいと思います。 ● ただいまのような御指摘も踏まえて,部会で御審議願いたいと考えております。 ● ほかに,御質問ございませんでしょうか。   御質問がないようでございますので,次に諮問第六十六号,第六十七号及び第六十八号の審議の進め方について,御意見がございましたら承りたいと思います。 ● 諮問の第六十六号,六十七号,六十八号,これらはいずれも専門的,技術的な事項が含まれていると思われます。特に,前二者,六十六号,六十七号はそうではないかと私には思われます。   したがいまして,それぞれの諮問につきまして新たに部会を設置しまして調査審議をするという,従来のやり方が適切ではないかと思われます。そして,その結果の報告を受けまして,更に総会で審議,決定をする,それが適当ではないかと考えますが,いかがでございましょうか。 ● ただいま,○○委員から部会設置等の御提案がございましたが,これにつきまして御意見ございませんでしょうか。--御異議ございませんでしょうか。   御異議がございませんようでございますので,諮問第六十六号,第六十七号及び第六十八号につきましては,新たに部会を設けて調査審議することに決定いたします。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事の指名に関しましては,会長に御一任願いたいと存じますが,御異議ございませんでしょうか。   それでは,この点は会長に御一任願うということにいたしたいと思います。   次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第六十六号につきましては「保証制度部会」,諮問第六十七号につきましては「国際扶養条約部会」,諮問第六十八号につきましては「人名用漢字部会」と呼ぶことにいたしたいと思いますが,何か御意見ございますか。--よろしゅうございますでしょうか。   御異議がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   総会委員として諮問事項の中身について,ほかに何か御意見ございましたら御発言をお願いしたいと思います。   それでは,諮問第六十六号,第六十七号及び第六十八号につきましては,部会で御審議いただき,それに基づいて,総会において更に御審議を願うということにいたしたいと思います。   続きまして,本日の最後の議題であります「凶悪・重大犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第六十九号」につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。   まず初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● 諮問第六十九号を朗読させていただきます。    諮問第六十九号     近年における凶悪・重大犯罪の実情等にかんがみ,この種の犯罪に対処するため,早急に,刑事の実体法及び手続法を整備する必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。   別紙     要綱(骨子)   第一 有期の懲役及び禁錮の法定刑の上限の改正等    一 有期の懲役及び禁錮は,一月以上二十年以下とするものとすること。    二 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができるものとすること。    三1 死刑を減軽して有期の懲役又は禁錮により処断する場合においては三十年にまで至ることができるものとすること。    2 無期の懲役又は禁錮を減軽する場合においても1と同様とすること。   第二 強制わいせつ,強姦及び強姦致死傷の各罪等の法定刑の改正等    一 強制わいせつ及び準強制わいせつの各罪(刑法第百七十六条及び第百七十八条中第百七十六条の罪に関係する部分)の法定刑を六月以上十年以下の懲役とすること。    二 強姦及び準強姦の各罪(同法第百七十七条及び第百七十八条中第百七十七条の罪に関係する部分)の法定刑を三年以上の有期懲役とすること。    三 強姦致死傷の罪(同法第百八十一条中第百七十七条の罪及び第百七十八条(第百七十七条の罪に関係する部分)の罪に関係する部分)の法定刑を無期又は五年以上の懲役とすること。    四 二人以上の者が現場において共同して強姦又は準強姦の罪を犯したときは,四年以上の有期懲役に処し,よって女子を死傷させたときは,無期又は六年以上の懲役に処するものとすること。   第三 殺人の罪等の法定刑の改正    一 殺人の罪(刑法第百九十九条)の法定刑を死刑又は無期若しくは五年以上の懲役とすること。    二 組織的な殺人の罪(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三条第一項第三号及び同条第二項中第一項第三号の罪に関係する部分)の法定刑を死刑又は無期若しくは六年以上の懲役とすること。 第四 傷害又は傷害致死の各罪等の法定刑の改正    一 傷害の罪(刑法第二百四条)の法定刑を十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金とすること。   二 傷害致死の罪(同法第二百五条)の法定刑を三年以上の有期懲役とすること。    三 危険運転致傷の罪(同法第二百八条の二)の法定刑を十五年以下の懲役とすること。    四 暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第一項の罪及び同法第一条ノ三の罪(刑法第二百四条の罪に関係する部分)の法定刑を一年以上十五年以下の懲役とすること。   第五 公訴時効期間の改正     死刑又は無期若しくは長期十五年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪について,時効は,次の期間を経過することによって完成するものとすること。    1 死刑に当たる罪については,二十五年  2 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については,十五年    3 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については,十年   以上でございます。 ● 続きまして,これらの諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして事務当局から説明していただきます。 ● それでは,諮問第六十九号につきまして,私の方から,まず提案に至りました理由等を御説明申し上げます。   近年,刑法犯の認知件数が増加を続けておりまして,昨年は,その増加の主な要因になっていました窃盗の認知件数が減少に転じましたことから,刑法犯全体の増勢にも歯止めがかかりましたが,人の生命や身体等に重大な危害を及ぼす凶悪犯罪を中心とする重大犯罪の増加傾向は,依然として続いております。   昨年12月に,犯罪対策閣僚会議が取りまとめました「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」におきましては,当面取り組むべき五つの重点課題の一つとして,「治安回復のための基盤整備」が挙げられており,その中で凶悪犯罪等に関する罰則を整備することが求められているのでありますが,それも我が国の治安が危険水域にあり,国民の体感治安も悪化しているとの現状認識に基づくものと思われます。   行動計画では,凶悪犯罪等に関する罰則の整備を求める具体的内容として,凶悪犯罪の法定刑の引上げや,現在20年とされている有期刑の上限の引上げなどを挙げているところでございますが,特に凶悪犯罪を中心とする重大犯罪について,刑法や刑事訴訟法において定められている有期刑の法定刑や,公訴時効期間の在り方等が現在の国民の規範意識に合致しているのかという問題は,かねてから指摘されていたところでもございます。   そこで,凶悪犯罪を中心とします重大犯罪に対し,近時の犯罪情勢及び国民の規範意識の動向を踏まえました上で,事案の実態に即した対処が可能になるよう,刑事の実体法及び手続法について,早急に所要の法整備を行う必要があると考え,この諮問第六十九号に及んだものでございます。   次に,諮問の内容について御説明申し上げます。   まず,要綱(骨子)第一についてでございますが,これは凶悪犯罪その他の重大犯罪について問題になることが多い有期の懲役又は禁錮の法定刑や処断刑の上限等を見直そうとするものでございます。   現在の刑法第12条第1項及び第13条第1項では,有期の懲役や禁錮の上限は15年とされており,第14条では,これに累犯や併合罪の加重をする場合には,20年にまで上げることができることとされておりますが,この15年や20年という期間につきましては,明治40年に現行刑法が施行された時から変更が加えられておりません。しかし,その後の約100年の間に,一方では罪を犯して刑に処せられる者,他方では犯罪の被害者やその遺族を含めた国民一般の平均寿命が大幅に延びたことなどもあり,この15年や20年という期間をもって有期刑に処する場合の限界とするのは,国民の刑罰観に係る規範意識に合致していないのではないか,また無期刑に処する場合との差が大き過ぎるのではないかとの指摘がなされており,実際にもこのような法定刑や処断刑の上限に近い有期刑は,凶悪犯罪その他の重大犯罪について適用されているものと考えられますが,こうした実態に照らしても,現在においては,15年や20年という期間が短期に失するのではないかとの指摘には,相当な理由があるものと思われます。   そこで,要綱(骨子)第一におきましては,まずその一及び二としまして,有期刑に係る法定刑の上限を現在の15年から20年に,処断刑の上限を20年から30年に引き上げることとしております。この20年と30年という点につきましては,法定刑の上限から更に加重する場合における加重規定の在り方から見た法定刑の上限と処断刑の上限とのバランスを考慮するとともに,処断刑の上限を30年とする点において,有期刑については刑期の3分の1を,無期刑については10年を経過することによって,仮出獄資格を与えるとする刑法第28条との整合性から,有期刑について仮出獄資格を与えられるまでの服役期間が,無期刑におけるそれを超えることがないようにと考えたことによるものでもあります。   また,有期刑と無期刑との間において,過大な差を設けるべきではないとの考えからは,有期刑を加重する場合のみならず,未遂減軽,自首減軽その他の法律上の減軽や,酌量減軽により,無期刑から有期刑に減軽する場合,更には死刑から無期刑を超えまして有期刑で処断しようとする場合にも当てはまるものと考えられますことから,要綱(骨子)第一の三は,そのような考え方を採用したものでございます。   次に,要綱(骨子)第二についてですが,これは刑法犯の中で暴力的な性犯罪というべき強制わいせつ,強姦及び強姦致死傷の各罪について,その法定刑を引き上げるとともに,強姦及び強姦致死傷について,その加重処罰類型を新設しようとするものであります。   暴力的な性犯罪のうち,強姦罪として処罰される行為は,男性の女性に対する姦淫行為であると解されておりますことから,それ以外に人の性的自由を侵害する行為は,すべて強制わいせつ罪として処罰されることになりますが,姦淫行為に至らないものでありましても,いわゆる性交類似行為など,暴力的に敢行された場合には,重大な侵害をもたらすものもこれに含まれることになり,その点において,現在の強制わいせつ罪の法定刑の上限が懲役7年とされていますのは,現在のこの種事犯に対する国民の規範意識に照らせば,低きに失すると思われますことから,要綱(骨子)第二の一におきましては,これを10年に引き上げることとしております。   強姦罪と強姦致死傷罪につきましても,現在その法定刑の下限がそれぞれ懲役2年,懲役3年とされている点におきまして,暴力的性犯罪に関する現在の国民の規範意識と合致していないと指摘されております。また,強姦の中でも,二人以上の者が現場において共同して犯したもの,すなわちいわゆる輪姦形態のものにつきましては,その重大さから一般に強姦罪が親告罪とされている中で,その例外とされているところでございますが,法定刑の上では,一般の強姦と同様に取り扱われております。このような問題点を踏まえ,要綱(骨子)の第二の二から四までは,準強姦に係るものを含めまして,強姦罪及び強姦致死傷罪の法定刑の下限を引き上げるとともに,新たに輪姦形態のものに係る強姦と強姦致死傷の加重処罰類型を設けることとするものでございます。   これらの中で,最も重大と思われるのは,輪姦形態による強姦致死傷罪であろうと思われますが,この場合におきましても,前科等のない犯人が被害者に対して最善の慰藉の措置を尽くすなどしたにもかかわらず,酌量減軽をしても,およそ執行猶予を付し得ないものとすることには問題があると思われますことから,その法定刑の下限を酌量減軽した場合において執行猶予を付すことができる限界である懲役6年とし,それに応じて,強姦罪,強姦致死傷罪,輪姦形態による強姦罪の法定刑の下限を,それぞれ懲役3年,懲役5年,懲役4年としております。   次に,要綱(骨子)第三についてでございますが,これは殺人罪等について,その法定刑を見直そうとするものでございます。   殺人は,凶悪犯罪の典型と言うべきものですが,人の生命の重要性に関する認識が一層高まっている現在の国民の規範意識に照らせば,その法定刑の下限が,酌量減軽をしなくとも執行猶予を付すことができる懲役3年とされていますのは,低きに失すると思われるところであり,今回の諮問において,強姦罪の法定刑の下限を懲役3年に引き上げようとしています点を含めて,他の凶悪犯罪の法定刑とのバランスにおいても問題があるものと思われますことから,要綱(骨子)第三におきましては,その一として,殺人罪の法定刑の下限を懲役5年に引き上げますとともに,これに伴って,その二として,現在法定刑の下限が懲役5年とされております組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律所定の組織的な殺人罪につきましても,これを6年に引き上げることとしているものでございます。   次に,要綱(骨子)第四についてでございますが,これは傷害罪や傷害致死罪等について,その法定刑を見直そうとするものでございます。   近年,殺意までは認められないものの,人の身体に対して激烈な暴行を加え,その結果,特に最近における医療技術の急速な進歩等により被害者が一命は取りとめたものの,いわゆる植物人間その他重篤な傷害の結果が発生したという事例も見受けられます。このような事案については,傷害罪として刑事責任を問うほかないものと思われますが,現在,その法定刑の上限が懲役10年とされていますことにつきましては,このような発生した結果の重大性という点などに照らしても,問題があるものと思われます。今回の諮問におきましては,有期刑の上限を15年から20年に引き上げようとしていますことから,要綱(骨子)第四は,その一として,傷害罪の法定刑の上限を懲役15年にまで引き上げることとしています。   それとともに,1万円未満の財産的制裁としての科料は,現在におきましては,故意の行為により人の身体を侵害する罪の法定刑としては相当でないものと思われますことから,現在の傷害罪の法定刑中,科料を削除することとしております。   一方,傷害罪は,傷害の結果に関する故意を伴わない場合における暴行罪の結果的加重犯としても成立しますことから,法定刑中に罰金が存することには,なお合理性があると考えられますが,現在,その上限が過失傷害罪と同じ30万円とされている点につきましては,問題があるものと思われますので,これを50万円に引き上げることとしております。   この傷害罪における重大な結果発生の可能性と,それに見合った法定刑を規定すべきであるとの考え方は,同じく故意の行為により人を傷害する罪としての危険運転致傷罪や,暴力行為等処罰に関する法律所定のいわゆる加重傷害罪,すなわち傷害の故意をもって銃砲又は刀剣を用いて人を傷害する罪や,常習的傷害罪の場合にも当てはまるものと思われますことから,要綱(骨子)第四は,その三及び四として,これらの罪の法定刑の上限を傷害罪の場合と同様に,懲役10年から懲役15年に引き上げることとしております。   さらに,傷害罪を犯し,その結果として人を死亡させた場合には,傷害致死罪が成立しますところ,現在,その法定刑は強姦罪と同じ2年以上の有期懲役とされております。この点につきましても,傷害致死罪は故意の犯罪行為により人を死亡させる罪の典型として強い非難に値する罪でありますことから,現在の国民の規範意識に合致していないとの指摘がなされているところであり,今回の諮問において,強姦罪や殺人罪の法定刑の下限を引き上げることとしており,同じ凶悪犯罪の中での法定刑のバランスを図る必要もありますことから,要綱(骨子)第四の二では,傷害致死罪の法定刑の下限を懲役2年から懲役3年に引き上げることとしております。   最後に,要綱(骨子)第五は,法定刑の重い重大な犯罪について,公訴時効期間を延ばそうとするものでございます。   公訴時効制度の制度趣旨の説明といたしましては,時の経過とともに犯罪に対する被害者や社会からの処罰感情等が希薄化することなどを根拠とする実体法的な考え方や,証拠が散逸し訴追が困難になることなどを根拠とする訴訟法的な考え方などが唱えられているところでございますが,被害者やその遺族を含む国民の平均年齢の延びや,犯罪に関する情報をめぐる近年の状況の中で,被害者や社会からの処罰感情等が時の経過によって希薄化する度合いは低下していると考えられるのに加え,新たな捜査技術の開発等により,犯罪発生後相当期間を経過しても有力な証拠を得ることが可能になっていることなどもあり,特に重大犯罪については,最長でも15年という公訴時効期間は短期に失するのではないかと思われるところでございます。   そこで,要綱(骨子)第五におきましては,法定刑が重い罪について,有罪裁判確定後における刑罰権を消滅せしめる制度である刑の時効の期間との整合性をも念頭に置きつつ,公訴時効期間を延長することとしたものでございます。そこで,法定刑中に死刑の定めがある罪につきましては,現在の15年から25年に,法定刑中の最も重い刑が無期の懲役又は禁錮である罪につきましては,現在の10年から15年に,公訴時効期間を延ばすこととしております。   また,要綱(骨子)第一の一において,有期刑の法定刑の上限を15年から20年に引き上げるものとしていますことから,法定刑中で最も重い刑がこの15年から20年の有期刑になるものにつきましては,現行の刑事訴訟法において10年以上の懲役又は禁錮の定めがある罪の公訴時効期間が7年とされていますが,その上に,新たに10年という公訴時効期間のランクを設けることとするものでございます。   要綱(骨子)の概要は,以上のとおりでございます。十分御議論の上,できるだけ速やかに御意見を賜りますよう,お願いいたします。 ● 引き続きまして,配布資料の説明をさせていただきます。   本日,諮問第六十九号に関する御審議の参考にしていただくために,席上に配布資料3点を御用意させていただいておりますので,その内容等につきまして御説明申し上げます。   番号刑1は,先ほど朗読いたしました諮問第六十九号でございます。   番号刑2は,昨年12月18日に,犯罪対策閣僚会議が策定しました「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」からの抜粋でございます。この行動計画で挙げられている重点課題の一つであります「治安回復のための基盤整備」の項目中で,「凶悪犯罪等に関する罰則整備」が取り上げられており,「凶悪犯罪の法定刑の引上げ,現在20年とされている有期刑の上限の引上げ等を含めた,凶悪犯罪等に関する罰則の整備について検討する。」との施策が示されています。   番号刑3は,諮問第六十九号に関連する基礎的な統計資料でございます。   表紙をめくっていただきまして,1ページ目は生命表による我が国の男女別平均寿命の推移を表にしたものです。   生命表は,現在は,厚生労働省が5年ごとの国勢調査の結果に基づいて作成しているものですが,明治24年から31年までの期間を調査対象期間とする第1回生命表から,最近の平成12年国勢調査の結果に基づく第19回生命表までの間における男女別の平均寿命,すなわち0歳における平均余命の実数と,各生命表のうち,現行刑法が施行されました明治40年に最も近い期間を調査対象期間とします第3回生命表における平均寿命を100とした指数とを表にしたものです。この第3回生命表と,第19回生命表との間においては,男性の平均寿命は75.64%の,女性の平均寿命は89.13%の延びを示しております。   2ページ目は,通常第一審において無期刑又は15年超20年以下という現行刑法のもとでは最長期に当たります有期刑の言渡しを受けた人数の推移をグラフにして,あわせてその実数を書き込んだものです。   司法統計年報において,最近の数値が得られます平成14年におきましては,無期刑の言渡しを受けた人数は98人になっていますが,これは昭和34年の100人以来の高い値でありますことから,この昭和34年から平成14年までの数字をグラフ化しました。この間,無期刑の言渡しを受けた人数は,昭和50年代を中心としていったん減少し,その後再度増加に転じていますが,一方,長期の有期刑の言渡しを受けた人数は増加傾向を続けており,特にその傾向が近年顕著であることが御理解いただけるかと存じます。   3ページ目は,諮問第六十九号において法定刑の見直し対象とされております各罪種ごとに,最近10年間における認知件数の推移を表にしたものであり,あわせて道路上の交通事故に係る業務上過失致死傷等を除いた,いわゆる一般刑法犯,及び窃盗につきましても,認知件数の推移を示し,以上のそれぞれの罪種につきまして,最初の年に当たります平成6年の認知件数を100とする指数の推移も示してあります。   なお,平成15年の認知件数は速報値によるものであります。   この表に示しました各罪種のすべてにつきまして,その認知件数には増加傾向が認められるところであり,平成15年は,一般刑法犯の認知件数の8割前後を占めます窃盗の認知件数が減少したこともあり,一般刑法犯全体の認知件数も8年ぶりに減少しましたが,今回の諮問に関係します強制わいせつ,強姦,殺人及び傷害の各罪種につきましては,昨年も認知件数は増加しております。   4ページ目は,強制わいせつ,強姦,強姦致死傷,殺人,傷害及び傷害致死の各罪名別に,資料が得られます平成14年までの最近5年間の通常第一審における懲役刑の科刑状況の推移を表にして示したものです。平成14年において,強姦と傷害致死につき15年超20年以下の範囲での,強制わいせつにつき10年超15年以下の範囲での,また傷害につき7年超10年以下の範囲での懲役刑がそれぞれ言い渡されておりますほか,殺人につきましては,15年超20年以下の範囲での懲役刑の言渡しを受けた人数が増加傾向にあることが御理解いただけるかと存じます。   以上,簡単でございますが配布資料の説明をさせていただきました。 ● それでは,ただいま説明がありました諮問第六十九号につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。   御質問がないようでございますので,次に諮問第六十九号の審議の進め方につきまして,御意見がございましたら承りたいと存じます。 ● この諮問六十九号は,現在の我が国の犯罪情勢,あるいは刑罰の在り方に対する国民の認識等を反映したものだと思いますが,この諮問には法定刑等にかかわります数値も含んだ要綱(骨子)が付されておりまして,こうした点は専門的,技術的な点でありますので,そうした観点から慎重な審議・調査が必要と思われますので,専門の部会におきまして審議・調査していただいて,総会でその結果に基づいて更に審議するという方法がよろしいのではないかと存じますが,いかがでしょうか。 ● 私も,ただいま○○委員から御提案がありました,部会を設置して審議するということが適当だと存じます。内容といたしまして,刑罰体系の考え方にも相当大きく影響することでもございますし,時効制度の在り方,更には捜査・公判を含む刑事司法の実務にも影響するところがいろいろ出てくる問題でございますので,やはり様々な観点から,部会で御審議をいただくということが適当であろうと思います。   なお,現時点で申し上げることは必ずしも適切ではないようにも思いますけれども,この機会に2点ばかり申し上げたいと思います。   第1点は,凶悪犯罪の抑止ということにつきましては,刑罰の強化ということだけではなく,様々な観点からの検討が必要でございます。ここで(抄)として配られておりますが,この行動計画も実はそれ以外のいろいろな施策というのが本来含まれているわけで,その全体像の中でどう考えるのかということは大変大事なことだろうと思うわけでございます。特に,長期的に見た場合は社会全体としての取組みが必要で,いろいろな分野の態様が,これは本当に推進されないと,刑事司法だけで対応するということはなかなか難しい面があるということも事実だと思います。私たちといたしましても,そういうような対応の推進に必要な関係機関,地方公共団体も含みますけれども,そういうところに対する協力も積極的にやっていきたいと考えております。   第2点といたしまして,法定刑など,刑が引き上げられますと,刑期が延びるということも当然一般的には予想されるわけです。しかし,現在の社会で非常に変化が早い中で,刑期が延びますと受刑者の社会復帰というのが非常に難しくなる面が出てくることは間違いないわけで,現在既にそういう問題が起きているという人もいますけれども,矯正保護御当局におきましても,過剰収容などで大変ではありますけれども,やはり刑期が仮に延びるとすれば,その場合の社会復帰の在り方ということについても,一層充実を図っていただきたいなという気がしているわけです。   もちろん,私たちといたしましても,本当にめり張りのきいた科刑といいますか,寛厳よろしきを得た科刑といいますか,そういうことの実現には努めてまいりたいとは思いますが,その点も御配慮をいただければと思っております。 ● 今,委員の御指摘のとおりでございまして,昨年末に政府の方で決定しました行動計画も,治安回復のための行動計画としてまず視点を三つ掲げております。その一つが,「国民が自らの安全を確保するための活動の支援」でございまして,もう一つは「犯罪の生じにくい社会環境の整備」という視点でございます。要するに自らの安全は自ら守るということを国民の皆様に御理解いただき,共同社会,コミュニティーというものの確保というものをまず訴えてその支援を図っていくということが大前提で,その視点に加えてという形で,各種犯罪対策ということで各関係行政機関にいろいろな施策を講ぜよということが,行動計画の考え方でございます。   今,委員からの御指摘にありましたように,各関係行政機関,行政機関にとどまらず社会全体の問題として,犯罪の対策に当たっていかなければならない,刑罰法令で法定刑を引き上げるだけが治安対策の問題ではないということは,そのとおりでございます。我々も,それを肝に銘じつつ,今後とも施策に当たっていきたいというふうに考えているところでございます。   また,受刑者の問題につきましては,これは私が答えるのが適当かどうか,いささか自信がございませんけれども,我が国の行刑というものは,根本的な理念は矯正でありまして,いわば犯罪を犯した者に刑罰を加えて,それを反省してもらった上で更生の機会を与えて更生させて,社会に復帰させるということが我が国の行刑の基本でございます。刑期が長くなりましても,その矯正の基本というものを忘れずに,法務省といたしましても取り組んでいくべきことは当然でございまして,先般法務省内に置かれました行刑改革会議の提言におきましても,様々なそういった点のアドバイスをいただいているところでございまして,法務省としてもそれに沿って行刑施策を進めていきたいというふうに考えているところでございます。 ● ただいま,○○委員から部会設置等の御提案がございまして,部会設置について御賛成の上で○○委員から御意見をちょうだいいたしまして,また○○幹事からも御説明等いただいたわけでございますが,ほかに何か御質問,御意見ございますでしょうか。 ● 非常に大変な作業だと思うのですが,なるべく部会で意見を一致させてきてほしいというように……。ここでまた意見いろいろ出ると思うのですけれども,この問題はやはり部会の中で十分練って,意見をなるべく一致させて上げてきてほしいなと思います。 ● ほかに。--よろしゅうございますでしょうか。   では,御異議がないようでございますので,諮問第六十九号につきましては新たに部会を設けて調査審議するということに決定いたします。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員,及び幹事の指名に関しましては,会長に御一任願いたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。--それでは,この点は会長に御一任願うということにいたします。   次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第六十九号につきましては「刑事法(凶悪・重大犯罪関係)部会」と呼ぶことといたしたいと存じますが,いかがでございましょうか。--よろしゅうございますか。   御異議がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   総会委員として,諮問事項の中身について,そのほかに御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思いますが,いかがでございましょうか。   それでは,諮問第六十九号につきましては,部会で御審議いただき,それに基づいて総会において更に御審議を願うということにしたいと存じます。   これで本日の審議は終了いたしました。ほかに,この機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたします。本日の議題以外のことでも結構でございます。 ● 前回,破産法改正の要綱案がここで認められておるわけですけれども,今後の破産法改正関係についてはどういうような進展をされて,施行期日も大体いつごろを予定されているか,ちょっとお伺いしたいと思いますが。 ● 破産法の要綱案に基づく破産法案及びその関連法の整備をする整備法案は,現在の予定ですと今月13日に閣議決定をして,国会に提出するスケジュールで準備が進んでおります。もう少しで国会に法案として提出されると。   国会に提出された後の国会の審議は,これは御案内のとおり司法制度改革の関係の多数の法案がこの国会,法務関係で出るということもありますし,法務省も多数の法案を出す予定になっていますので,いつ,どういう形で成立するかというのをこの段階で見通すことは難しいのですけれども,担当する我々としては,何としても早い成立を目指して努力をするつもりでおります。   施行ですけれども,これは非常に利用件数も多い手続の全面改正法案ですので,関係方面への周知や準備の期間が相当必要になります。法律上は公布の日から1年以内の政令で定める日というふうになっているわけですが,この国会で首尾よく成立した場合には,1年以内の切りのいいところということで,成立の日も分かっていないので余り確定的に申し上げられませんが,ごくごく順調にいけば,一番早ければ来年の1月というあたりで施行になる可能性があるということ,あるいはそれが少しずついろいろな事情で成立の日との関係で後ろにずれることはあり得ますが,成立したからといってすぐ施行できるというわけにはまいらない。この辺は,委員も御案内のとおりでございます。 ● ほかにございませんでしょうか。   ございませんようでございますので,それでは今日の審議はここまでということにさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。   どうも大変熱心な御審議をいただきましてありがとうございました。