法制審議会第141回会議 議事録 第1 日 時   平成15年9月10日(水) 自 午後1時33分                        至 午後4時38分 第2 場 所   法務省大会議室 第3 議 題   諮問第41号,諮問第55号,諮問第63号について答申案の決定          動産・債権譲渡の公示制度の整備に関する諮問第64号について          不動産登記法の見直しに関する諮問第65号について 第4 議 事   (次のとおり)               議         事  (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。)  法制審議会の第141回会議の開催に当たりまして,一言ごあいさつ申し上げます。  委員及び幹事の皆様方におかれましては,公私ともに大変御多用のところを御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。  この審議会におきましては,皆様の御尽力によりまして,既に多くの重要な案件について御答申をいただきまして,また現在も多数の諮問事項について調査・審議をいただいているところでございまして,心から厚く御礼を申し上げます。  さて,本日御審議をお願いする議題のうち,第1から第3までは既に諮問がされている事項についてでございます。  まず第1は,破産,和議,会社更生等の制度に関する諮問第41号でございます。  この諮問事項につきましては,これまでに「民事再生手続に関する要綱」,「個人債務者の民事再生手続に関する要綱」,「国際倒産法制に関する要綱」及び「会社更生法改正要綱」を御答申いただいておりますが,その後も倒産法部会におきまして調査審議が続けられてまいりました。その結果,この度,破産手続に関しまして,その迅速化及び合理化を図るとともに,その実効性及び公正さを確保し,あわせて権利関係の調整に関する規律を現代の経済社会に適合したものにするための多数の改正事項を取り上げた「破産法等の見直しに関する要綱案」が決定されまして,本日,報告されるものと承知しております。  第2は,株券不発行制度及び電子公告制度の導入に関する諮問第55号でございます。  この諮問事項につきましては,会社法(株券の不発行等関係)部会におきまして調査審議が続けられてまいりましたが,その結果,公開会社か否かを問わず,株券,新株予約権証券等を発行しないこととすることを認めるとともに,公開会社の株式や,新株予約権等の適正・迅速な移転を可能とするための新たな振替制度を設けることなどを内容とします「株券不発行制度の導入に関する要綱案」と,株式会社がインターネットを利用して電子公告を行うことを認め,電子公告の内容を定めるとともに,合併や資本減少等の際の債権者保護手続につきまして,官報公告と電子公告等とを併用することによりまして,個別催告の省略を認めることなどを内容とする,「電子公告制度の導入に関する要綱案」とが決定されまして,本日,報告されるものと承知しております。  第3は,ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第63号でございます。  この諮問事項につきましては,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会におきまして議論がなされまして,本日,その結果が報告されるものと承知しております。  現在の我が国における社会経済情勢等にかんがみますと,以上の三つの事項については早急に改善をする必要があると思われますので,速やかに御答申をいただけるよう,よろしくお願い申し上げます。  次に,新たに二つの事項について検討をお願いしたいと存じます。  まず,第4の動産譲渡・債権譲渡の公示制度に関する諮問第64号についてでございます。  担保の目的で動産を譲渡する場合の公示制度につきましては,現行の制度は第三者から見て譲渡の有無が分かりにくいなどの問題があるとの指摘がなされておりまして,また担保の目的で債権を譲渡する場合の公示制度につきましても,改善の必要があるとの指摘がされております。そこで,動産担保及び債権担保の実効性をより一層高めるという観点から,動産譲渡及び債権譲渡を公示する制度の整備を行う必要がありますので,そのための御検討をお願いするものでございます。  第5は,不動産登記の見直しに関する諮問第65号についてでございます。  不動産登記制度につきましては,行政機関に対する申請手続の電子化という政府の方針に沿いまして,登記の正確性を確保しながら,国民の利便性の向上を図るために,オンラインによる申請手続を導入するとともに,明治32年に制定されました不動産登記法を,国民にとって分かりやすい平仮名の口語体に改め,社会の変化を踏まえた制度とする必要があると存じます。そこで,不動産登記法の見直しについて御検討をお願いするというものでございます。  それでは,これらの議題につきまして,大変たくさんございますけれども,どうぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。ありがとうございました。  (法務大臣の退席後,本日の議題について次のように審議が進められた。) ● 先ほどの法務大臣あいさつにもございましたように,本日は破産,和議,会社更生等の制度に関する諮問第41号について,これが1番目でございます。2番目,株券不発行制度及び電子公告制度の導入に関する諮問第55号について。3番目,ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第63号について。4番目,動産・債権譲渡の公示制度の整備に関する諮問第64号について。5番目,不動産登記法の見直しに関する諮問第65号についてでございます。  以上の審議事項につきまして御審議いただきたいと存じますが,まず議題の1及び2について御審議をいただき,休憩を挟みまして議題の3から5を御審議いただきたいと思っております。この順序で議事を進めてまいりたいと思いますので,よろしくお願いいたします。  本日は,何分にも内容が盛りだくさんでございますので,もちろん十分に御審議いただかなくてはならないのでございますが,委員・幹事の皆様には,議事の進行にも御協力いただきまして,各要綱の決定を行いたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。  それでは,審議に入らせていただきます。  本日の第1の議題であります破産,和議,会社更生等の制度に関する諮問第41号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,倒産法部会における審議の経過及び結果につきまして,○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 倒産法部会長をいたしております○○でございます。  倒産法制の全面的見直しに関する諮問第41号につきまして,本年7月25日に開催されました倒産法部会第34回会議におきまして,倒産法等の見直しに関する要綱案を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の概要につきまして御報告申し上げます。  まず,審議の経過等でございますが,要綱案の決定に至る審議の経過について御報告をいたします。  諮問第41号は,平成8年10月に発せられたものでごさいまして,破産,和議,会社更生等に関する制度を改善する必要があるとすれば,その要綱を示されたいという,倒産法制全般の見直しに関する包括的な諮問でございました。  当時の状況を御説明申し上げますと,平成8年当時は,法的倒産処理手続といたしまして,破産,和議,会社更生,会社整理及び特別清算という,制定時期も立法の思想及び背景も異なる五つの法制が存在しておりました。これらにつきましては,かねてより倒産法制全体の観点から見直しをすべきであるとの指摘がされておりましたが,更に個人破産事件の激増,大規模倒産事件や国際倒産事件の増加という状況のもとで,立法による手当ての必要性が強く意識されるに至りました。加えて,社会経済構造の変化に応じた倒産法制の見直しは世界的な潮流でもございまして,このような状況を受けて諮問第41号が発せられたわけでございます。  以来,倒産法部会におきましては,平成13年1月の新法制審議会への移行を挟みまして,諮問第41号についての審議を継続して行い,順次,その結果を旧法制審議会の総会及び新法制審議会の総会に御報告してまいりました。その審議の結果をもとといたしまして,ただいまの法務大臣のお言葉の中にもございましたように,平成11年8月には民事再生手続に関する要綱が,また平成12年9月には,個人債務者の民事再生手続に関する要綱及び国際倒産法制に関する要綱が,更に昨年9月には,会社更生法改正要綱がそれぞれ総会において採択され,法務大臣に対する答申が行われました。これに基づきまして,民事再生法,外国倒産処理手続の承認援助に関する法律,新会社更生法等の関係法律が成立し,既に施行されていることは御案内のとおりでございます。  一連の倒産法制の見直しの作業におきまして,残る主要な課題は,清算型の倒産処理手続の基本となります破産手続,及び各倒産処理手続における共通の問題でございます倒産実体法の見直しでございます。倒産法部会では,この点につきまして会社更生手続の見直しと並行して取り組むことといたしまして,平成13年1月の会議において,部会の中に破産法分科会を設ける旨を決定しまして,同年5月から平成14年8月までの間,計15回にわたって同分科会において審議を行い,平成14年9月からは倒産法部会において審議を行ってまいりました。  平成14年9月27日には,それまでの審議の結果を反映いたしました中間的な成果といたしまして,「破産法等の見直しに関する中間試案」というものを取りまとめをいたしまして,同年10月4日に事務当局より公表いたしまして,10月,11月の約2か月間にわたり,一般及び関係各界に対する意見照会を行いました。  その後,倒産法部会では,意見照会の期間中も倒産手続相互の移行の問題など,それまで必ずしも十分に検討がされなかった事項を中心に審議を行い,更に平成14年12月からは意見照会の結果を踏まえて,更に精力的に審議を続け,その結果,本年7月25日,第34回会議におきまして「破産法等の見直しに関する要綱案」を決定するに至ったわけでございます。  以上が,要綱案の決定に至る審議の経過等でございます。  次に,要綱案の概要について御説明申し上げます。  要綱案は,まず破産手続の根幹をなします「第一部 破産手続」,それから個人に関する事項を扱います「第二部 個人の破産手続の特則及び免責手続等」,それから法的倒産による権利義務関係の変容等を扱う「第三部 倒産実体法」,倒産犯罪や倒産処理手続相互の関係等を扱う「第四部 その他」の四つの部からなっております。以下,要綱案の記載の順序に即しまして,その具体的な内容を御説明申し上げます。  要綱案は,御覧のとおり78ページからなる大変大部なものでございますので,重点的に主要な項目に限りまして御説明をさせていただきます。御質問等がございましたら,後ほどお答え申し上げます。  まず,第1部の「破産手続」でございますが,ここでは主に手続の合理化,迅速化,公正さの確保の観点から,破産手続全体にわたり見直しをいたしております。  冒頭の1ページに「第一 総則」とございますが,その総則の「一 管轄の特例」では,親法人とその子会社,それからいわゆる孫会社,法人とその代表者等の関係にあるものにつきまして,管轄の特例を設けまして,その一体的処理を可能とするものでございます。これは,破産事件に限らず,再生事件又は更生事件という異なる種類の倒産処理手続が係属する場合も含めて,その一体的処理を可能とする管轄を定めているものでございます。  次は,6ページでございますが,「六 事件に関する文書の閲覧等」とございますが,ここでは利害関係人の手続関与を実質的に保障するとともに,手続の透明性を確保するため,事件に関する文書の閲覧等の請求,閲覧等の時期的制限,支障部分の閲覧等の制限の規定を設けるものでございます。  同じ6ページの「第二 破産手続開始の申立て」というところでございますが,その「一 破産手続開始の申立書の審査」は,破産手続開始の申立書の不備の補正を命ずる権限等を裁判所書記官に付与することといたしまして,その上で,補正を命ずるその書記官の処分に対する異議の申立ての制度を設け,その異議に対する判断を裁判所が行うということにするものでございます。  続いて8ページ,二の「破産手続の費用」でございますが,破産手続の費用の予納義務と国庫からの仮支弁の制度を見直すものでございます。現行法では,申立人が債権者にあらざるときは,国庫仮支弁をするということに一律にいたしておりますけれども,国庫仮支弁につきましては,破産手続の有する公益的要素にかんがみまして,申立人の資力等の事情を総合的に判断して,特に必要と認められる場合にできるものというふうに改めております。  続いて,9ページの「第三 保全処分」でございますが,ここでは保全処分は手続の公正さを確保すべく,保全処分の充実を図るものでございます。  破産手続開始前の保全処分は,債務者の財産の逸失の防止や債権者間の公平の確保の観点から,有益かつ重要なものでございますので,各種の保全処分につきまして明文を設け,規定を整備するものでございます。具体的には,民事再生法及び会社更生法と同様に,強制執行等の中止命令,包括的禁止命令,弁済禁止の保全処分,保全管理命令という各制度を整備することといたしております。  また,少し飛びますが,12ページには,四といたしまして,「否認権のための保全処分」というものを設けておりますが,ここでは新たに破産法上の保全処分として否認権を保全するための保全処分の制度を設けました。その際,破産管財人による手続の続行と,担保の変換の制度を整備いたしまして,他方で保全処分の相手方の利益の保護に適切に配慮しながら,否認権の実効性の確保を図るということにいたしております。  次は15ページでございますが,「第四 破産手続開始の効果」の中の「二 破産者の説明義務等」とございますが,これは破産者等の説明義務を強化するものでごさいまして,手続の公正さの確保に資するものでございます。具体的には,「1 破産者の説明義務」におきまして,説明義務を負う主体の範囲を明確にいたしますとともに,従業者につきましてはいろいろな場合がございますので,その地位に照らして特にその利益に配慮する必要があると考えられますところから,裁判所の許可を要するということにいたしております。裁判所の許可がある場合に限って従業者にも説明義務を認める,そういうことでございます。  次に,2といたしまして,「破産者の重要財産開示義務」を定めておりますが,ここにおきましては,破産手続が開始した場合,不動産等の重要な財産に関しまして,その内容を記載した書面を裁判所に遅滞なく提出する重要財産開示義務というものを創設いたしております。破産者が,これらの義務に違反いたしますと,免責不許可事由に該当いたしますほか,罰則の適用があり,これらを通じまして説明義務の実効性の確保を図る仕組みとなっております。  さらに,それに続いて「3 物件検査権等」というものがございますが,これは子会社等に対して業務及び財産の状況について報告を求め,その帳簿等の物件を検査する権限を破産管財人に認めるものでございます。  続いて19ページ,「第七 債権者集会」というところでございますが,これは債権者集会制度の合理化を図るものでございます。現行法では,債権者集会というのは必置の機関でございまして,更に第1回債権者集会では,必ず決議をしなければいけない事項等が定められておりますが,それを合理化しよう,こういうものでございます。  まず,19ページの「一 債権者集会の招集」では,債権者集会をその目的に応じて整理いたしまして,事件の規模や性質に応じた柔軟な処理を可能とするために,債権者集会の招集が相当でないと裁判所が認めるときは,債権者集会期日を開かないことができるものといたしております。そして,債権者集会期日を開かない場合の対応といたしまして,債権者集会における決議を要する事項があるときは,裁判所は,当該事項を決議に付さなければならないものとするとともに,23ページの方に四の「議決権の行使方法」というものを定めておりますが,そこにおきまして書面投票等の制度を設けて,これで期日における決議にかえることもできるということにいたしているわけでございます。  次は,22ページの「(四)」,「二 必要的決議事項の取扱い」では,債権者集会の決議事項につきまして,不換価財産の処分の決議,営業の廃止又は継続についての決議,高価品の保管方法についての決議の制度を,いずれも廃止いたしまして,裁判所の許可や管財人の裁判所への届出で対応するというような形に,合理化の観点から見直しをいたしているところでございます。  続いて23ページの「第八 債権者委員会」でございますが,これは破産債権者をもって構成する委員会がある場合に,その破産手続への関与を認めるものでありまして,破産債権者の意思を破産手続に反映させるために,会社更生手続におけるのと同様の制度を導入するものでございます。  次は,24ページの「第十 破産債権の届出,調査及び確定」というところでございます。つまり,破産者に対して債権を持った者を一定の期間内に届出させて,それを管財人及び他の債権者が調査をして,本当に届出どおりの債権があるかどうかを確定するという,そういう一連の手続でございますけれども,それに関する部分でございます。  そのうちの「一 破産債権の届出」というのは,届出関係の規定を整備するものでございます。  25ページに「二 破産債権の調査」というのがございますが,その中の「1 債権調査の方法」では,民事再生法及び会社更生法と同様に,書面による債権調査の方法というものを導入いたしまして,債権調査手続の合理化及び迅速化を図っております。もっとも,破産手続におきましては,再建型の倒産処理手続とは異なりまして,多数の不法行為債権が届け出られた場合など,一定期間内に破産管財人が調査をして認否を行うということが容易ではなく,手続の迅速化の観点からも期日における債権調査による方が適切であると考えられる事案もございます。そこで,現行法上の期日における債権調査の方法も,その書面による調査の方法と併存させることといたしまして,裁判所は,必要があると認めるときは,この期日による債権調査の方法を採用することができるものといたしております。  次は27ページでございますが,「四 破産債権の確定」でございますけれども,そのうちの「1 決定による債権確定手続」,及び「2 債権確定手続の申立期間等」は,民事再生法及び会社更生法と同様に,第一次的には決定手続による債権確定の手続を導入するものでごさいまして,債権確定手続の簡素・合理化を図るものでございます。  次は,28ページの「第十一 労働組合等の手続関与権等」は,昨今の倒産事件における労働者の地位等を考慮いたしまして,労働債権者等に関して特に配慮をするものでございます。  まず,労働組合等に対する情報提供を充実させる等の観点から,破産手続開始決定の際の公告すべき事項,及び債権者集会の期日は労働組合等にも通知をするということにいたしまして,また営業譲渡の許可に当たりましては,裁判所は,労働組合等の意見を聞かなければならないということにいたしております。また,労働債権の場合には,その届出等に必要な情報が専ら破産者たる使用者の手元にしかないという状況も少なくないことから,破産管財人にこの面での情報提供努力義務というものを新たに課すことといたしております。  なお,未払賃金債権,退職債権の破産手続上の取扱いにつきましては,後に述べるとおりでございます。  次は29ページ,「第十二 破産財団」の中の「一 破産財団の管理」でございますが,ここでは一方で財産の総額が少額である場合には,貸借対照表の作成,提出を要しないとすることができるものとするほか,裁判所の許可を要する一定の事項について,裁判所が包括的に許可不要とすることができるものとするなど,破産財団の管理に関してその簡素化及び合理化を図っております。他方で,破産者に対する引渡命令の制度の導入,法人の役員等の責任に基づく損害賠償請求権の査定の制度の導入によりまして,破産財団の確保及び拡充のための手当てをするとともに,手続の公正さを確保することといたしております。  次は,32ページの「二 破産財団の換価」の中の「3 破産管財人による任意売却と担保権の消滅」でございますが,ここでは破産財団の換価方法の多様化,ひいては財団の価値の増殖を図りますために,破産管財人が別除権である担保権の目的財産を任意に売却する場合に,当該目的財産上の担保権を消滅させ,また任意売却により取得できる金銭の一部を担保権者への配当に充てずに,破産財団に組み入れることを可能とする制度を設けております。この部分は,全く新しい制度でございまして,審議の過程でもいろいろ議論があったところでございますので,大変要綱案が詳しくなっております。現行法では,担保権の目的である財産を破産管財人が換価をするときには競売の申立てをするというのが原則でありまして,そうでなければ担保権付きのまま任意売却をするということが認められておりますけれども,実務では任意売却をすると同時に担保権を消滅させるということにいたしまして,しかもその売却した不動産の対価である売却代金の一部を,一般債権者のために破産財団に組み入れるというようなことを認めております。これはしかし,規定がない取扱いでございますので,それをはっきり規定の上で取り込もうというのがここの部分でございます。  そういうわけで,これは破産管財人の申立てに基づく裁判所の許可により担保権を消滅させる制度でございまして,その裁判所の許可によって担保権を消滅させるということ自体は類似の制度が既に民事再生法及び会社更生法にございますが,清算型手続である破産手続におきましては,目的財産の保持のためではなくて,任意売却という換価のための制度としている点,また売得金の一部の組入れによる財団の増殖を認めることとしている点に特色がございます。  担保権を消滅させる制度でございますので,担保権者の利益に対する配慮が重要となってまいりますが,この点は申立ての要件といたしまして,まず担保権者の利益を不当に害することとなる場合には,そもそもこのように任意売却をして担保権を消滅させるという,そういう許可の申立てができないものというふうにいたしておりますし,また第2に,売得金の一部組入れを行う場合には,破産管財人は,事前に担保権者と協議をしなければならないというものといたしております。また,破産管財人の申立てに対する担保権者の一種の対抗措置として,担保権者に担保権の実行の機会を保障し,かつ,自己又は第三者によるより高額での買受けの制度を設けるなどいたしまして,担保権者が不当な不利益をこうむることのないように配慮いたしております。つまり,一定の金額で不動産を任意売却をいたしまして,その売却代金の一部を担保権者に渡すのではなくて,破産財団に組み入れて一般債権者の配当の原資にするということでございますので,それが担保権者の利益を害すると思えば,担保権者は,自ら競売を申し立てることもできるし,あるいは管財人が任意売却をしようと思っている価格よりも,より高額で買うという買受人を探してくる,あるいは担保権者が自ら高額で買うというような,そういう方法を認めて,担保権者の利益を守るということにしているわけでございまして,全体の仕組みとしては,結局担保権者の意思に反して担保権を消滅させながら任意売却をして,しかもその代金の一部を破産財団に組み入れるというようなことがないように,それが全体として見れば担保権者の意思に沿ったものであるということになるような仕組みにしているわけでございます。  このほか,38ページに「4 民事執行手続による換価」というものを定めておりますが,ここにおきましては,破産管財人が強制執行等の手続によって別除権である担保の目的財産を換価する場合には,いわゆる剰余主義の適用がないということを明らかにいたしております。  少し飛びますが,39ページの「第十三 配当手続」でございますけれども,ここでは公告等の見直しや中間配当の配当率の許可の制度を廃止いたしまして,また1,000円に満たない少額の配当となる債権者については,そのような少額の配当の場合にも,配当を受領する意思があるということが事前に裁判所への届出によって示されていないときには配当しないものとする,少額配当に関する特則を導入するなど,配当手続の簡素・合理化を図る一連の手続を設けております。  また,新たに配当原資が1,000万円に満たない場合の簡易な配当手続,破産債権者の全員が異議を述べない場合等の簡易な配当手続というものを導入いたしまして,事件の性質に応じた弾力的な処理を可能といたしております。  さらに,配当に関しましては,40ページの「六 別除権者の配当参加」におきまして,現行法上の別除権の放棄による配当手続参加の要件を民事再生法に倣って明確にし,根抵当権につきましては,極度額を超える部分の配当手続参加を容易にする方策を整備いたしております。  次は,47ページの「第十七 大規模破産事件」でございますが,ここでは債権者が多数の破産事件について,管轄及び通知の特則を設けるものでございます。具体的には,専門的,集中的な処理体制を有する裁判所での事件処理の必要にかんがみまして,債権者数が500人以上の場合には,通常の管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所,また1,000人以上の場合には,東京地方裁判所及び大阪地方裁判所を管轄裁判所に加えております。また,知れたる破産債権者が1,000人以上の事件につきましては,通知についても簡素・合理化を図ることができるものといたしております。  以上が第一部でございますが,続きまして49ページ以下が「第二部 個人の破産手続の特則及び免責手続等」でございますので,それについて御説明申し上げます。  そのうちの「第一 個人の破産手続に関する特則」の「一 自由財産」は,破産財団に属せず,破産者の手元に残るいわゆる自由財産の範囲につきまして見直しをするものでごさいまして,破産者の経済生活の再建の基礎を提供する観点から,現行法よりもその範囲を拡張いたしております。特に,金銭の額につきましては,民事執行法が平成15年の改正によりまして標準的な世帯の生計費の2か月分相当額を差押禁止財産といたしておりますところ,破産法の方では,3か月分相当の自由財産とすることといたしております。また,あわせて破産者の生活の状況や将来の収入の見込みなどを総合的に勘案いたしまして,裁判所が自由財産の範囲を拡張することができるという制度を導入いたしております。  次に,50ページからは「第二 免責手続等」でございますが,その「一 免責の申立て」では,債務者が破産手続開始の申立てをした場合には,反対の意思が表示されない限り,同時に免責許可の申立てがあったものとみなしまして,破産手続と免責手続の一体化を図っております。  次に,52ページの「三 免責手続中の個別執行禁止効」は,免責手続の事実を確保するために,破産手続の終了後も免責許可の申立てについての裁判が確定するまでは,強制執行等を禁止し,中止することとするものでございます。  続いて53ページの「四 免責の裁判」では,免責不許可事由が存在する場合でも,裁判所の裁量により免責許可決定をすることができるという,裁量免責の制度を法文上明らかにすることといたしております。  また,免責不許可事由につきましても,免責の調査に対する破産者の協力義務違反を加えること等の見直しを図ることといたしております。  次に,54ページの「五 非免責債権」でございますが,その中の「1 破産手続における非免責債権」は,その要保護性の高さに着目いたしまして,破産者が故意又は重過失に基づく生命・身体侵害の不法行為による損害賠償請求権と,破産者が養育者又は扶養義務者として負担すべき,いわゆる扶養料債権を破産手続における非免責債権に加えるものでございます。  また,55ページの「2 個人再生手続における非免責債権」は,破産法そのものではございませんが,破産法におきまして免責が問題となる場面に対応いたしまして,個人再生手続におきましても非免責債権に対応する制度を導入するということをあわせて定めているものでございます。  なお,第一及び第二に関連する事項といたしましては,55ページの(後注)というところで,個人再生手続開始の要件となる再生債権の総額の上限を,現行法の3,000万円から5,000万円へと引き上げまして,破産を回避して再建型手続を利用することができるように,その利用適格を広げております。  次に,57ページ以下が「第三部 倒産実体法」でございますので,これにつきまして御説明申し上げます。  第一が「法律行為に関する倒産手続の効力」でございますが,これは各種の契約関係についての見直しでございます。  まず「一 賃貸借契約等」の「1 賃借人の破産」では,賃借権の適切な保護,及び財団の充実確保の観点から,民法第621条で認められております賃借人が破産した場合の賃貸人の側からの解約申入れを廃止いたしまして,その場合の法律関係を破産法の一般原則によるものといたしております。  他方,58ページの「3 賃貸人の破産」の「(一) 破産管財人の解除権」は,逆に,賃貸人が破産をした場合に,賃借権が対抗力を備えているときは,破産管財人に認められております契約解除権をこの場合には認めないとするものでございます。  同様の保護を要するということは,同じく対抗力を備えた契約上の利用権一般に妥当いたしますので,賃借権にとどまらず,使用及び収益を目的とする権利一般の規律といたしております。これによりまして,いわゆるライセンス契約におけるライセンサーの破産の場合のライセンシーの権利の保護につきましても,この範囲で一定の対応が図られることになります。  次は58ページの「(二) 賃料債権の処分及び賃料の前払いの取扱い」は,将来にわたる賃料債権の譲渡等の効力につきまして,破産法を始めとする倒産処理手続法において,その効力が制約されていることがこのような取引の障害となっているという指摘もございますことから,法的倒産の場面において賃料債権の譲渡について特別の制約は設けないといたすものでございます。  それから,(三)の「賃料債権を受働債権とする相殺の取扱い」の「(1) 破産手続」は,(二)で賃料債権の処分等の効力と同様に賃料債権を受働債権とする相殺を制限することは十分な理由がないと考えられますことから,そのような制限を設けないこととするものでございます。  なお,現行法は,敷金がある場合には,相殺の制限を緩和する取扱いといたしておりますが,敷金がある場合への配慮といたしましては,賃料債権の弁済の際に,弁済額の寄託を請求することができるということで対応できることになります。  一方,59ページの「(2) 再生手続及び更生手続」は,これはその表題からお分かりのとおり,破産手続ではなくて,同様の問題を再生手続,更生手続についても解決しようということでございまして,これらの手続におきましては,事業の再建の見地から賃料債務を受働債権とする相殺についての特別の取扱いをなお残すものといたしておりますが,その規律の内容につきましては,手続開始後に弁済期の到来する賃料債権について,その相殺可能な賃料債務の範囲を開始時の賃料の6か月分に限定してその範囲を明らかにし,また相殺を利用できない敷金返還請求権を有する賃借人の存在に配慮いたしまして,その相殺可能な賃料の範囲で相殺に供さない部分につきましては,弁済期に弁済をした場合に,その弁済額を限度として敷金返還請求権を共益債権とするということによって,その保護を図ることといたしております。  次に,60ページの「三 相場がある商品の取引」は,現行法上は取引所の相場がある商品の売買についての規律となっておりますのを,「取引所の相場その他の市場の相場がある商品の取引に係る契約」というものへ拡大いたしまして,他方でデリバティブ取引等に見られますいわゆる一括清算ネッティング条項の破産手続における効力を確認する規定を設けまして,これらの取引への対応を図るものでございます。  次に61ページ,「第二 各種債権の優先順位」の「一 租税債権」の中の「1 破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権」,及び62ページの「二 労働債権」の「1 破産手続開始前の未払の給料債権及び退職手当の請求権」は,それぞれ租税債権及び労働債権の優先順位を見直すものでございます。  租税債権につきましては,現行法上全額が財団債権とされておりますところを,その範囲を破産手続開始のときにおいて納期限が到来していないもの,又は納期限から1年を経過していないものに限定をいたしまして,それ以外は優先的破産債権とするものといたしております。これは,現行法の全額財団債権とするという取扱いが,破産財団を圧迫し,破産手続廃止の増加を招来しているという指摘を踏まえたものでございまして,滞納処分による自力執行の可能な租税債権の特色に照らしまして,納期限から1年内に滞納処分に着手せずにいた場合には,破産手続の開始によって優先的破産債権となるという取扱いとするものでございます。  労働債権につきましては,その要保護性にかんがみまして,破産手続開始前3か月間に生じた給料債権,それから退職前3か月の給料に相当する額の退職手当の請求権は,財団債権とすることといたしております。労働債権につきましては,更に63ページの「2 労働債権に対する弁済の許可」におきまして,優先的破産債権の部分につきましても,生活の維持に困難を生ずるおそれがある場合には,いわば配当の前払いといたしまして,裁判所が弁済を許可できることといたしまして,その生活保障に配慮いたしております。  次に,64ページの「三 その他の各種債権」の「2 約定劣後債権」は,実務上,資金調達手法の多様化と自己資本規制等の達成のために用いられておりますいわゆる劣後ローン等につきまして,その法的安定性を確保するため,法的倒産処理手続におきまして,その効力を直截に認め,優先順位や議決権の扱いに関しまして,各手続に応じて当該合意に即した処理を行うこととするものでございます。  65ページの「3 財団不足になった場合における財団債権の取扱い」は,破産財団が財団債権の総額を弁済するのに不足するということが間々ございますが,そういうことが明らかになった場合の財団債権間の優先順位につきまして,裁判上の費用の請求権,及び破産財団の管理,換価,配当に関する費用の請求権が,他の財団債権に優先することといたし,他の財団債権の間では未払債権額の割合に応じた平等弁済とすることにいたしまして,現在の三段階の優先順位関係を二段階にするということにいたしております。  次は,66ページの「4 財団債権に基づく強制執行等の禁止等」は,このように財団債権の総額を弁済することができない事態が起こり得る中で,財団債権者間の平等の確保が問題となることや,管財事務の遂行の便宜の観点などから,財団債権に基づく強制執行等も破産手続開始後はすることができず,既になされているものは破産財団に対しては効力を失うということにいたしております。  次に,67ページの「第四 否認権」の「一 否認権の要件」では,破産財団の拡充と債権者間の公平を図るという否認制度の趣旨の実効性の確保,予測可能性の確保,取引に対する不当な萎縮効果の除去という観点から見直しをいたしております。  まず,現行法上,否認の要件が錯綜しておりますところを,債務超過時に債務者の財産の絶対的な減少をもたらす財産減少行為である狭義の詐害行為と,いわゆる危機時期に一部の債権者に対してのみ弁済等を行う偏頗行為とを区別いたしまして,この区分に応じて否認の要件を整序いたしております。  この中で,68ページの2は,偏頗行為に関する否認の要件を定めるものでございますが,そこでは偏頗行為の否認が債権者間の平等を害する行為を問題とするものであり,それが問題となるのは,債務者が実質的に破たんしている段階であることから,一方で弁済等の行為が偏頗行為否認の対象となる時期を一般的,継続的に弁済期にある債務を弁済できない状態を示すところの支払不能で画しまして,かつ支払不能又は破産手続開始の申立ての後にされたものでなければ,義務ある弁済等の行為については偏頗行為否認ができないということを明らかにし,また偏頗行為否認は,既存の債務についての弁済等の行為を問題とするものですので,これを明文化いたしまして,貸付け等と同時に,又は先行して,担保の供与がなされるいわゆる同時交換的行為は,この対象とならないことを明らかにし,取引の法的安定性を確保することといたしております。  68ページの末行から,「3 適正価格による不動産等の処分に関する否認の要件」というものを定めておりますが,これは判例・学説上いろいろ問題のあったところでございますので,適正な価格で財産を処分する行為が否認の対象となる場面を,不動産を換価しやすい金銭にかえるなど,その行為を通じた財産の性質の変更によって破産者が隠匿等をするおそれを現に生じさせるものであり,かつ,破産者が対価として取得する金銭等を転得する等の意思を有しており,相手方もそのような意思を知っていたという場合に限定することといたしまして,適正価格での財産処分に対する不当な萎縮的効果を除去することをいたしております。  次に,70ページの「三 詐害行為の否認の効果」は,絶対的な財産減少行為であります狭義の詐害行為が否認された場合の効果につきまして,破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存せず,反対給付によって生じた利益も現存しない場合の相手方の価額償還請求権につきまして,現行法が一律に破産債権といたしておりますところを,破産者が行為の当時,反対給付として取得する財産について隠匿等をする意思を有し,かつ,相手方が,破産者がそのような意思を有していることを知っていたときに限って破産債権とすることにいたしまして,それ以外の場合には財団債権とすることにいたして,否認リスクの縮減を図っております。また,狭義の詐害行為が否認された場合の効果に関しましては,財団の換価の便宜という観点から,現物の返還と金銭による差額償還とを管財人が選択できるということにいたしております。  71ページの四の「否認権の行使方法」は,民事再生法や会社更生法と同様に,否認の請求という決定手続で否認ができるという制度を導入するものでございます。  72ページの「第六 相殺権」の中の「一 相殺禁止の範囲の見直し」では,現行法が相殺の禁止に関しまして,支払の停止又は破産手続開始の申立後の行為のみを問題としておりますところを,債権者間の平等の確保は支払の停止以前の実質的な破たん状態において問題となるということにかんがみまして,そのような状態をあらわします支払不能の状態でされた行為につきまして,相殺制限の対象とするということにいたしております。その場合,他方で相殺に対する合理的な期待の保護と,それに依拠した取引の安定を確保するという必要がございますので,債務負担行為につきましては,そのような禁止の対象となる支払不能時の行為を契約により負担する債務を専ら相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を締結し,又は他者の破産者に対する債務を引き受けたことによって債務を負担する行為に限定しております。また,否認の場合と同様,いわゆる同時交換的な行為につきましては,債権者間の平等を害するものとは解されませんので,取引の安定性への配慮から,それが相殺禁止の対象とならないということを明文化いたしております。  最後に,74ページの「第四部 その他」でございますが,75ページの「第一 倒産犯罪」は,倒産犯罪につきましても現在の社会経済に適合した在り方が求められますので,そのように改めるものでございます。具体的には,詐欺破産行為に関しまして,債権者を害する目的で行われた不利益な財産処分,又は不利益な債務負担行為につきましては,情を知って相手方となった者も含め,破産手続開始決定の確定後処罰するものとすること,債権者を害する目的で行われた義務に属しない偏頗行為について,破産手続開始決定の確定後処罰するものとすること,重要財産開示義務の創設,説明義務の強化,物件調査権の導入等とあわせまして,それらに関する義務違反行為に対し罰則を整備すること,破産管財人等の職務執行の妨害行為を処罰対象とすること,また不正な手段によって破産手続外で,破産者又はその親族等に破産債権を弁済させ又は保証をさせる目的で面会を強請し,又は強談・威迫の行為をした者,往々マスコミ等で取り上げられておりますが,そういう行為を処罰するということにすること,等でございます。  なお,77ページ「第二 倒産処理手続相互の関係」は,各種の倒産処理手続の間での移行に関する規定を整備するものでございます。  最後に,78ページの「第三 その他」におきましては,その他所要の規定を整備するとともに,この改正に伴い,民事再生法,会社更生法,その他の法令に所要の改正を加えるものといたしております。  以上,大変時間をとりまして恐縮でございますけれども,要綱案の概要といたしまして,主な項目につきまして御説明を申し上げました。よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● それでは,ただいまの○○部会長の御報告,及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● 明治時代からの流れをチェックなさって,大変な御努力とエネルギーにまず感服いたしましたことと,それから部会長に,この努力に対して本当にお疲れさまでしたとまず申し上げたいと思います。  それから,お教えいただきたい点が1点ございます。  平成14年9月27日に中間報告を発表していただいた後,一般からのいろいろな意見,ヒアリングの過程で出てきた主なポイントがどの辺にあったかというのを1点,2点ほどお教えいただければと思いますが。 ● 中間報告に対する意見照会をいたしましたところ,寄せられた意見で主なものは何であったかということでございますが,寄せられた意見は大変多岐にわたってございまして,手続問題,それから実体関係の問題,様々ございましたが,主な問題といたしましては,一つは労働組合,労働者の保護の問題がございました。それから,先ほど申しました担保権の取扱いの問題,とりわけ破産管財人によって担保の目的物を任意売却いたします場合に,担保権者の利益をどのように保護するかという問題,それから倒産実体法の方の問題といたしましては,租税債権,労働債権の順位の問題,それから典型的な問題である否認権,相殺禁止の問題等が主なものでございました。  否認権,相殺禁止の拡張をいたしますと,破産宣告があるまでは通常の取引として売買契約をする,あるいは債権者が弁済を受ける,それが後から否認をされてしまって,要するに効力を取り消されてもとに戻さなければいけないということになりますし,とりわけ金融機関等で通常の取引の過程で決済として相殺等を行っているというのが,後からそれは相殺禁止に触れるということになって,その効力を否定されるというようなことになりますので,破産手続の側から見ますと債権者間の平等を害する行為,あるいは破産財団を減少させる行為はなるべく取り消して,債権者にできるだけ公平でかつ多くの配当をしなければいけないということになるわけでございますけれども,他方,実際にその取引をした取引の相手方からいいますと,取引の安定性といいますか,後からひっくり返されることがない,安心して取引ができるということについての利益というものがございますので,そこらをどう調整するかというあたりが非常に重要な問題として議論されました。  ちょっと,御質問の趣旨に沿っているかどうか分かりませんが,以上です。 ● とりわけ個人における破産,それから大規模な破産,それから連結ベースの決算ですとか,会計システムの変更に伴って親会社・子会社,それから管轄の問題,それが本当に一般の庶民,生活者にとっても大変具体的なマターになってきているので,そのあたりの中間報告を受けてのヒアリングでどういう意見が上がってきたのかというのが知りたかったのと,それがどのように反映されていったのか,今のお答えを伺っておりまして,とりわけ担保権者の利益の部分についてはかなり詳しく注釈なども加えてくださったので,よく分かりました。ありがとうございました。  多分,今日のこの総会を受けての会見ですとか,一般の方たちに法制審議会そのものが私は,私も全くの素人でございますので,生活者として本当に時代の流れに沿って,そしてどこに軸足を置いて,これだけの平成8年からに至ります7年の歳月の中で,こういうふうに変えていったのだというところが一般の人に分かりやすい形で出ていくとうれしいなと思ったものですから,お伺いをさせていただきました。大変よく分かりました。ありがとうございました。 ● それでは,ただいま具体的に御指摘いただいた点について,補足的に申し上げたいと思います。  まず,個人の問題でございますが,これは大別すると二通りございまして,一般の労働者のような,あるいは消費者のような個人の生活を一体破産手続との関係でどのように確保していくか,あるいはフレッシュスタートを可能にするためにどういう配慮が必要か,これは先ほど申し上げた説明ではいわゆる自由財産の範囲の問題になるわけでございまして,これまでは通常の社会生活に必要な給料の1か月分しか現金は財団に組み込まれないのですね,自由財産にならない,こういうことになっていたわけでございますけれども,それを3か月分に広げるということにいたしました。  さらに,今度は品物,動産等でございますけれども,これも強制執行法上差押禁止になっているものは破産になりましても破産財団に組み込まれないで,自由に個人が使える,こういうことになっているわけでございますけれども,それも今の日本の生活,一般の市民の生活レベルというものから考えますと,ぎりぎりのところまで財団に組み込まれてしまうというのが果たして適当なのかどうか,それからそれぞれの人によっていろいろ事情が違いますので,そこで個別のケースごとに裁判所が破産財団から外して,自由財産を拡張できるという,そういう制度を設けました。  それからもう一つは,しばしば言われますのは,事業経営者で会社とそれから代表者など,代表者は会社が倒産をして多くの場合個人保証等をしているために,代表者個人も破産宣告を受けるというような場合がある,そういう場合についても配慮が必要じゃないかというので,これもいろいろ議論をいたしましたけれども,結局,余りに代表者についてだけ特別の取扱いをいたしますと,今度は融資を受けるときに融資が受けられない,個人保証をしてもらっても結局最後には非常に限定されてしまうということになると,かえって全体として見ると代表者の利益になるかどうか分からないということで,いろいろ議論はいたしましたけれども,結局は先ほどの3か月分の現金は残すということで,これは1か月分の生計に必要な範囲を幾らにするかというのは政令の問題で,現在は21万円ということになっておりますけれども,これが仮に30万円にふえれば,ほぼ100万円近くの現金が残るということになりますので,そういう形で保護をするということにいたしております。  それから,親子会社等の問題でございますが,これは直接的には一緒に親子会社,あるいは連結子会社でも同様でございますけれども,実際の企業体としては一体を成している,実際に企業の再建を図るというような場合には,親会社は残して子会社は清算をするとか,いろいろそういう総体として一つの裁判所で処理をするということが必要になりますので,委員から御指摘がございましたように,管轄をかなり広げまして,先ほどの説明のように破産事件同士ではなくて,一方親会社は会社更生をやっている,子会社については破産の申立てをするというときでも,同じ裁判所でやれるようにというような,そういう配慮をいたしております。  総じて,私どもこの倒産法部会での審議をいたしておりますときには,今回の破産に限らず,昔は企業の倒産というと何か偶発的に,たまたま経営に失敗した,あるいは放漫経営をしていた経営者が倒産に陥る,その企業が倒産する,こういうもので,本来のノーマルな経済からいうとやや異質のものと,こう考えられていたわけですけれども,現在はそうではなくて,こういう自由市場経済のもとでは,常にそういう問題が起こってくる。倒産になっても,フレッシュスタートできるものであれば再建できるようにしなければいけない。それから,破産というふうに言っても,それぞれの企業の一部門については十分社会的な価値があるというものもございますので,そういうものはなるべく生かせるように,破産の場合にも営業譲渡を早くできるような手当てを設けるとか,そういうような考え方で全体として議論をしてまいりました。そういうつもりでございます。 ● ありがとうございました。 ● ほかに御質問ございませんでしょうか。  御質問がございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと存じますが,御意見はございませんか。 ● 労働組合等の手続関与等の問題について,全体的には明確に手続関与等の問題は表記をしていただき,通知,意見聴取について義務として出していただくことについては,これは評価をしたいと思いますが,ただ労働債権者に対する部分が,これは情報提供の努力義務ということにとどまってしまったと,極めて残念だったと思います。努力義務規定よりは,義務規定というふうにしていただきたかったのですが,一つはそこにとどまったということの理由と,それからこのことに対しては非常に思いが残っているということを申し上げておきたいと思います。 ● これは,実は委員の一部からは団交応諾義務のような形のものを設けるのが適当ではないかというような御意見もございました。そういうことについても私どもいろいろ議論をいたしましたけれども,破産法の場合には,結局法律に従って財産を清算して,債権者に平等に弁済をするという,かなり管財人としてするべきことが決まっておりますので,団交に応諾して一体何ができるか,裁量的な余地が非常に狭いということと,それから団交に応じないということになると,これは不当労働行為になるかならないかというのは労働法の問題で,ちょっとこちらの破産法の問題にはならない。したがって,そういう角度から問題をとらえるよりも,実際に労働者が労働債権があるはずなんだけれども,それについての資料,賃金台帳その他は全部会社の方にあって,債権届出をしようにもそれができないと,むしろ労働者としての権利を認めてもらって,それを行使するのに必要な情報を提供してもらうということの方がよろしいのではないかというふうに意見がだんだん収束してまいりまして,そこでこういう形になったわけでございます。  そこで御質問の,なぜ努力義務にとどまったのかという点でございますけれども,これはやはり,実際に管財実務をやっておりますといろいろなケースが出てくる,それで労働者というふうに一口に言いましてもいろいろな方がおられるので,どんな場合にも情報開示しろというふうに言われたときに,法的な義務として全部開示しなければならないということになると,やはり管財人としては業務の執行に遺漏なきを期し難いという場合もあり得るというので,それで実際には運用の上では誠実な労働者に対しては--誠実な労働者というか,通常の労働者に対しては,管財人としては誠実に対応するということ,これは当然だということで,ぎりぎり法的義務,それに違反をしたら管財人として責任を追及されるというところまで決めてしまうと,管財人としてはやはり業務執行をなかなか迅速・適正にやりにくい面があるという御意見もございましたので,そこでぎりぎりの一種の妥協点として努力義務ということにおさまったわけでございますので,運用面では決して支障があるようなことにはならないと思いますので,何とか御理解をいただければと思います。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● 経過としては分かります。それで,思いが残っているという部分を是非受けとめていただきたいと思います。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。  ほかに御意見がございませんのでしたら,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしいでしょうか。  では,御意見がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,倒産法部会から報告されました破産法等の見直しに関する要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,反対の方の挙手をお願いいたします。             (反 対 者 挙 手) ● 労働債権が優先されていないということを今お聞きいたしまして,それが大きな問題かなと思いましたので反対意見とさせていただきました。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は11名でございます。反対の委員は2名でございます。  議長を除くただいまの出席委員は,13名でございます。 ● 採決の結果,賛成者多数でございますので,倒産法部会から報告されました破産法等の見直しに関する要綱案は,原案のとおり採択されたものと認めます。  したがいまして,本日御審議いただき,採択されました要綱案につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することにいたします。どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。 ● なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶりなどにつきましては事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。  続きまして,本日の第2の議題であります株券不発行制度及び電子公告制度の導入に関する諮問第55号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,会社法(株券の不発行等関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもあります○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 会社法(株券の不発行等関係)部会の部会長をいたしております○○でございます。  諮問第55号につき,本年7月30日,会社法(株券の不発行等関係)部会の第12回会議におきまして,株券不発行制度の導入に関する要綱案と,電子公告制度の導入に関する要綱案を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の内容について御報告申し上げます。  まず,要綱案の決定に至る審議の経過等につき,御報告いたします。  諮問第55号は,   会社の選択により株券を発行しないことができるものとすること,株式会社の行う公告を電子的に行うことができるものとすることについて,改正の要否,及び改正を要するとした場合には,その要綱を示されたい。  というものであります。  株券不発行制度と電子公告制度を導入することは,平成13年4月に,当時の会社法部会が取りまとめた商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案に盛り込まれておりましたが,諸般の事情により,これらの制度の導入については,平成14年2月13日に当審議会で答申された「商法等の一部を改正する法律案要綱」には盛り込まれなかったことから,同日,この諮問第55号がされたものであります。  この諮問を受けて,当審議会に会社法(株券の不発行等関係)部会が設けられました。同部会では,株券不発行制度と電子公告制度をどのような内容のものとして導入するかについての検討を進め,本年3月26日に「株券不発行制度及び電子公告制度の導入に関する要綱中間試案」を取りまとめ,事務当局である法務省民事局参事官室においてこれを公表し,パブリックコメントの手続を実施いたしました。  その後,同部会では,中間試案に対して寄せられた多数の意見をも踏まえて更に検討を続け,その結果,本年7月30日に開催された第12回会議におきまして,この二つの要綱案を決定するに至ったものであります。  次に,要綱案の概要を御説明いたします。  まず,株券不発行制度の導入に関する要綱案について御説明いたします。  現行商法は,株式会社に株券の発行を義務づけておりますが,株式の移転がほとんどない譲渡制限会社の場合には,そもそも株券を発行する必要性が少ないため,株券を発行していない会社が多く,かねてより株券の不発行制度の導入を求める要望が強く出されておりました。また,公開会社に対しても必ず株券を発行しなければならないとすることは,会社にとってその経費等の負担が大きいほか,近年は株券自体が株式市場において迅速かつ安全に,大量の取引を決済することの障害になっているとの指摘がなされております。  その一方で,公開会社の株式につきましても,投資家や株主が株券を交付して譲渡することはまれであり,多くの投資家が証券会社に株券を保護預かりに出したり,株券保管振替制度を利用することによって,現実に手元に株券を保有せず,株券の交付や移転なしに株式の譲渡を行っているのが実情であります。そこで,この要綱案におきましては,公開会社であるか否かを問わず,株主の請求を受けても株券の発行を行わないという完全な形での株券不発行制度を採用することができるようにした上で,公開会社のように,頻繁に株式の取引が行われる会社について,株式を円滑かつ安全に譲渡するための制度として,新たな振替制度を設けることとし,更に株券の不発行制度を設けることに伴い,新株引受権,新株予約権及び新株予約権付社債についてもそれぞれの権利の特質に応じた証券の不発行制度及び振替制度を設けることにしております。  まず,1ページ目の「第1 商法の改正関係」の「1 株券の不発行の定め等」で,株式会社は,定款に株券を発行しない旨の定めを設けることができるようにするとともに,既存の会社がこの定款の定めを設けた場合について,株主や質権者などの利害関係者の正当な利益を害することがないようにしながら,株券廃止会社へ移行するための手続を定めております。  次に,2ページ目の「2 株式の譲渡方法及び名義書換」におきましては,新しい振替制度を利用する会社以外の株券廃止会社における株式の譲渡の方法について,有限会社の場合と同様に,意思表示のみによって株式を譲渡することができるが,株主名簿の名義書換をしなければ,会社以外の第三者にも株式の移転を対抗することができないものとしております。また,株券がない状況のもとで,適正に名義書換が行われるようにするために,名義書換えの要件を定めるとともに,株主が株主としての地位を有することについての株券にかわる確実な証拠を取得することができるようにするため,株券廃止会社の株主に,会社に対する株主名簿の記載事項の証明書の交付請求権を認めることにしております。  次に,同じく2ページ目の「3 譲渡制限会社における株券発行時期の特例等」におきまして,譲渡制限会社は,株主の請求がない限り,株券を発行することを要しないものとしております。これは,株券を発行していない状況にある譲渡制限会社が,株券廃止会社になるための定款変更その他の諸手続を講じなければ違法状態から脱却することができないとすることは,譲渡制限会社の大半が小規模な会社であることにかんがみますと,負担が重すぎる面がある一方,株式の流通性が乏しい譲渡制限会社においては,株券の必要性が低いことによるものであります。  次に,3ページ目の「4 株券の不発行に関する特例等」におきましては,株券廃止会社のような株券を1枚も発行していない会社につき,株券提出のための公告制度を廃止する等,株主その他利害関係者への情報開示の方法を合理化するとともに,現在の社会経済情勢において,必要性がなくなった株主名簿の閉鎖期間制度を,株券廃止会社か否かにかかわらず,全面的に廃止することとし,また新株発行の際に,新株引受人は,払込期日当日に株主となるものとしております。  次に,4ページ以下の「第2 株式の振替制度関係」におきましては,公開会社等の株式を株券なしに適正かつ迅速に流通させるための新たな振替制度の要件を定めております。この新たな振替制度を利用する会社におきましては,すべての株主は,証券会社,銀行等の口座管理機関から口座の開設を受け,銀行預金の場合と同じように口座への記載によって株式を保有し,口座振替の手続をすることによって株式を移転することになります。  この新たな振替制度は,昨年の社債等の振替に関する法律の改正で設けられた社債や国債等の振替制度に似通ったものでありまして,現行の保管振替制度とは異なり,口座管理機関について多階層構造を採用し,また,過大記載に基づいて善意取得が発生した場合に,消却義務を負う機関を,過大記載をした振替機関等に限定することによって,社債や国債等の振替制度と統一的な証券決済制度を構築し,我が国の株式決済制度を利用者にとっても便利で,先進諸外国と遜色のないものにしようとするものであります。  ところで,この新たな振替制度は,社債や国債等の振替制度と似通ったものであると申しましたが,株式は,社債や国債のような金銭債権とは異なる社員権という複雑な権利でありますので,この要綱案では,株式特有の手当ても講ずることとしております。  まず,8ページから9ページにかけての「8 株主名簿の名義書換手続に関する商法の特例」におきまして,株主名簿の名義書換は,振替機関が行う総株主通知のみに基づいてのみ行い,現行の株券保管振替制度が採用している株主名簿と実質株主名簿という二重の帳簿制度は採用しないこととする一方で,9ページから10ページにかけての「9 単独株主権・少数株主権の行使方法」におきまして,代表訴訟の提起や会計帳簿等の閲覧等の請求,臨時株主総会の招集請求といった,期中における株主権の行使を可能にするために,個別株主通知の制度を設け,株主名簿の記載に基づくのではなく,個別株主通知に基づいて単独株主権・少数株主権を行使するものとしております。  なお,現行の商法のもとにおきましては,株式を担保に供したことを発行会社に知られないで,株式を担保に供する方法として,株券を担保権者に交付するのみで株主名簿には担保権者の氏名等を記載しないという,いわゆる略式質や,略式譲渡担保が広く利用されておりますところ,このような株式担保における匿名性を新たな振替制度のもとにおいても確保するため,総株主通知や個別株主通知をする際には,略式質権者等の指名等を通知しないといった手当てをすることにしております。  次に,振替口座簿に記載されている株式の総数が,過大記載によって発行済株式総数を超えるという事態が生じた場合の対応につき,8ページの「7 消却義務の不履行の場合等における商法の特例」の(1)におきまして,過大記載の結果,会社に対抗することができる株式数が1株未満又は1単位未満となった株主が,議決権がゼロになるのではなく,端数の議決権の行使が認められることとするとともに,このような事態が万が一にも発生することを防止するため,7ページの「6 振替機関等の消却義務の不履行の場合における取扱い」の(2)におきまして,総株主通知後2週間以内に消却義務が履行された場合には,過大記載は生じなかったものとみなすこととし,また,当該消却義務の履行を容易にするために,8ページの「7 消却義務の不履行の場合等における商法の特例」の(2)におきまして,発行会社が消却義務を負う振替機関等に対して,自己株式を簡便な手続で譲渡することができるようにしております。  次に,10ページ以下の「第3 保振制度利用会社の株式振替制度利用会社への一斉移行」におきまして,現行の保管振替制度の対象株券を発行している公開会社等は,一定の日に,全社一斉に新たな振替制度の利用会社に移行するものとしております。これは,既存の公開会社についても,要綱案の第1の1のように,各社の定款変更によって個別に株券廃止会社,振替制度利用会社に移行するという方式を採用いたしますと,現在の株券保管振替制度と新たな振替制度という二種類のシステムを構築し,かつ,併存的に運営することが不可避となって,膨大な社会的不経済が生ずる上,二種類のシステムが混在する状態では,証券決済の合理化,迅速化を図るという目的を達成することができないこと等の理由によるものであります。  なお,一斉移行日は,この要綱案に基づく改正商法の施行後5年以内の政令で定める日としておりますが,これは,新たな振替制度は巨大なコンピュータネットワーク・システムであり,これを構築して運用を開始するまでには相当の期間を要すると見込まれるためであります。  最後に,11ページ以下の「第4 新株引受権・新株予約権及び新株予約権付社債の証券不発行制度」におきましては,まず,新株予約権について,株券廃止会社は新株予約権証券を発行することができないものとするとともに,株式振替制度利用会社は,新株予約権の発行決議ごとに,当該新株予約権について振替制度を利用するか,これを利用しないで新株予約権原簿の名義書換による現時点の方法を採用するかを選択することとしております。  他方で,新株引受権と新株予約権付社債につきましては,株式振替制度利用会社のみが一般の社債の場合と同様に,これらの権利の発行決議ごとに振替制度を利用して証券を発行しないこととするかどうかを決定することとしております。  次に,電子公告制度の導入に関する要綱案について御説明いたします。  現行商法上,株式会社の公告の方法は,官報と時事に関する日刊新聞紙に限定されていますが,インターネットが広く普及した高度情報化社会である現代においては,インターネットを利用した電子的な方法によって公告を行うことを認める方が,公告をする会社にとって簡便かつ低廉で,公告を閲覧する利害関係者にとっても周知性の高い公告を実現することができるものと考えられます。そこで,この要綱案では,まず1ページ目の「第1 株式会社についての電子公告制度の導入」におきまして,官報及び日刊新聞紙と並ぶ第三の選択肢として,電子公告という方法によることも許容することとし,電子公告の具体的な方法や手続を定めております。  その要点を申し上げますと,まず,公告の方法としては,電子公告を採用した会社は,公告すべき内容をあらかじめ登記した自社又は他社のホームページに,公告事項に応じて一定期間継続して掲載しなければならないことにしておりますが,ホームページのサーバが故障したり,ハッカーによる公告内容の書換などによって公告が中断した場合に,それがたとえ短期間であったとしても,公告をやり直さなければならなくなるとしますと,公告をしようとする会社にとってリスクが大きくなり過ぎてしまいますことから,公告の中断が生じた時間の合計が,公告内容を掲載すべき期間の10分の1以下である場合には,公告を実施した会社が悪意重過失であったときを除き,速やかに公告中断の事実を当初の公告に付加して公告した場合には,公告の中断があったことは公告を無効とはしないものとしております。  また,電子公告の場合には,官報公告や新聞公告とは異なり,公告が適法に行われたか否かを後に検証することが極めて困難であるという問題がありますことから,この問題を解消するため,電子公告を行う会社は,調査機関の調査を受けなければならないものとするとともに,調査機関が調査を行ったすべての日時において公告内容が公告ホームページに掲載されていた旨の記載がある調査結果の報告書を添付すれば,当該公告に関する登記が受理されるようにしております。  なお,調査機関は民間にできることは民間へとの考え方に基づき,登録制として,適格性を有するものであれば,広く調査機関として参入することができるようにしております。  さらに,各会社のホームページに個別にアクセスしなければ公告の存否,内容を確認することができないという電子公告の問題点を解消するために,法務省において公告リンク集ホームページを開設するものとしております。  次に,3ページから4ページにかけての「第2 貸借対照表等の公開の方法の見直し」ですが,いわゆる決算公告については,平成13年の商法改正により,既に公告に代わる電磁的公示が認められておりますことから,電子公告をする場合にも公告期間を5年間とし,調査機関の調査を受けることを要しないものとする等,電磁的公示の方法と同様の取扱いをすることとするとともに,電子公告の方法を採用しない会社が,決算公告に代えて電磁的公示を行うことを引き続き認め,また,決算公告用の公告ホームページのアドレスを,他の公告事項の公告ホームページとは異なるアドレスとすることも認めるものとしております。  次に,4ページ目の「第3 株式会社の各種債権者保護手続における個別催告の省略等」におきましては,合併,会社分割,資本減少,準備金減少の各債権者保護手続について,官報公告と新聞公告,又は電子公告のいずれかを併用した場合には,原則として個別催告を省略することができるものとしております。現行商法は,株式会社の各種債権者保護手続においては,官報公告のほか,知れたる債権者に対する個別催告を原則的に要求しておりますが,この個別催告には多大の費用と手間がかかることや,先進諸外国で我が国のように広く個別催告を要求している国はないことから,官報公告につき,従前の紙による公告に加えて,国立印刷局のホームページにおいても,電子官報という形で同時に公告が実施されるようになって,官報公告の周知機能が高まっていることも考慮して,電子公告制度の導入に伴い,会社の負担を軽減することとしたものであります。  さらに,この要綱案の第4におきまして,有限会社の各種債権者保護手続についても株式会社の場合と同様の個別催告の省略等を認めることとし,また第5におきまして,合名会社,合資会社が合併する際の債権者保護手続につきまして,合併後に無限責任社員がいなくなる場合には,現行法どおり個別催告の省略を認めないが,それ以外の場合には株式会社の合併における債権者保護手続と同様の取扱いをするものとしております。  以上,簡単ではございますが,二つの要綱案の概要を説明させていただきました。よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● 審議につきましては,まず株券不発行制度の導入に関する要綱案について御審議をお願いいたしまして,その後に電子公告制度の導入に関する要綱案について御審議をお願いいたしたいと存じます。  それでは,ただいまの○○部会長の株券不発行制度の導入に関する要綱案に関する御報告,及び同要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。 ● 株券不発行制度というのは,お聞きするところによりますと,経済界と証券界からコスト削減というような観点から要望があったというふうにお聞きしておりまして,そういう意味では非常に結構な制度であるというふうに思うのですね。ただし,理念的にはそうなんですけれども,現実問題として,何か問題が生じないかなということを若干心配しておりまして,それで教えていただきたいことがあるのです。  一つは,個人情報保護の観点からでございますけれども,なぜそういう懸念を私がするかといいますと,例えば特定口座というのが証券会社にできているのですけれども,これは株式のキャピタルゲイン課税が申告分離一本に変わったのに伴って,個人の納税の事務の煩瑣を助けようということから証券界と金融庁が一致してつくった制度ではございますけれども,実質的には何の役にも立っていないわけです。どうしてかというと,一社に取引を限定していないと,納税事務が完了しないのですね。複数以上の証券会社を使いなさい,手数料を競争させなさい,それが金融ビッグバンであるというふうに監督当局はおっしゃってきたにもかかわらず,一社に絞らないと納税事務が代行されないような形になっているわけでございます。しかも,A社で利益が出ている場合,B社にどんな損失が出ていようが,A社の分は納税されてしまうということでありまして,それを避けようとすると,自分で確定申告せざるを得ないということになるわけですね。そういう観点からまいりまして,特定口座に関しては,納税代行をしてもらう口座と,それは自分でしますから計算だけしてくださいねという口座と,二通りできているのです。  問題は,ここで計算だけしてねという口座を選びますと,すべての投資家の取引が所轄の税務署に全部報告されるのです。どういうイメージかと申しますと,皆さん方は銀行に口座をお持ちと思うのですけれども,すべての資金の出し入れが,即,国税庁といいますか,税務署に報告されるという仕組みに今なっているのです。  これでも実は改良されておりまして,以前は特定口座発足の当時は,すべての特定口座の取引がすべて税務署に報告されるという形になっているのです。つまり,脱税したいとか,そういう希望を持たない投資家であっても,取引の全容を知られるというのは非常に嫌うのですね。それが投資家心理というものでございますけれども,そのところをわきまえない制度ができてしまったのはなぜかといいますと,実は個人投資家が中小証券を主として使うというのは,その方が親切だということがあったわけですけれども,そこで大証券がお客の囲い込みを図ったのです。中小証券は,今非常に傷んでいるので,コンピュータシステムを作るゆとりがないのですよ。そういう個人の納税代行のプログラムを作るというのは莫大な費用がかかりまして,これを機会に,納税事務の代行と,一社に絞れということにしたらば,中堅・中小から個人顧客が大証券に来るのではないかという大証券の思惑と金融庁の思惑が一致してできたのが特定口座なんです。  話が長くなって大変恐縮なんですけれども,ここで分かることは,国民の資産把握のいろいろな制度改正が分からないところで着々進んでいるということでありまして,実は景気対策等の一環としても出されました相続税の非課税枠の拡大というふうに盛んに言われましたけれども--相続ではありません,贈与税の非課税枠の拡大ということが盛んに言われましたけれども,実は贈与税の非課税枠はちっとも拡大していないのですね。現実問題としては,相続の非課税枠の先取りでしかないのです。その先取りをいたしますと,現行で認められております年間110万円まで非課税で贈与できるというその枠が使えなくなるのです。しかも,手続上の不備があると,その権利さえすべて奪われるという非常におかしなことが生じておりまして,これもやはり国民の資産把握のステップの一つかなというふうに私は感じているわけです。  そういう流れの中で考えますと,今起きていることを私なりの観点から見ますと,日本には非常に巨大な権限の役所がありまして,財政から国家財産,あるいは国税,金融ということを全部お持ちになっておりまして,しかも実は,保管振替決済機関というのは日本に既にあるわけですけれども,そこはその巨大な役所の天下り機関となっているわけですよ。現実問題としては,具体的な仕事は何らしていないにもかかわらず,各証券会社のコンピュータをつなぐというだけのことでそういう機構が今存在しているということなのです。  こういうことを踏まえて今度のことを考えますと,ここから質問なんでございますが,申し訳ございません,長くなりまして,そういう個人情報の保護という観点からいかなる措置をお考えいただいているか,つまり,イメージとしてで結構ですけれども,そういうものを念頭に置いてこういう制度をお考えいただいたかどうかということを,まずお聞きしたいのです。  それから,振替機関というのが今現在はそういう国税当局直轄の機関になっているということを考えますと,ほかの国は一体どうなっているのかなと。ほかの国も振替機関をつくっていて,こういう機能を持っている,株券不発行とか証券不発行ということを進めているわけでございますけれども,その場合,日本みたいな巨大な官庁があって,それを全部把握するという形にはなっていないはずなんでございます。そういうときに,どういう法人組織でしているのかどうか,複数あるのかどうか,その個人情報の保護というのは一体どういう形になっているのかとか,それから事務局にお聞きしましたところ,一つではなくて二つなんだと,民間企業にやらせるのだから問題ないのだということなんですけれども,今現在日本に存在している保振も,形は民間なんです。だけど実体はそうではないということもございまして,だから効率と競合する要素というのがあるわけですよ。つまり,競争させてしまえば,機関が分かれることによって非効率になってしまうという部分もございまして,その点についてはどういうふうに御配慮いただいたのか。つまり,全体としての振替機関のイメージというものをどういうふうにお考えいただいたのかということを,是非教えていただきたいのです。  特に外国ではどうなっているかということを知りたいわけでありまして,そういう情報保護の観点から特に何か問題が生じていないかどうかということも,あわせて教えていただければ有り難いと思っております。 ● ○○委員の御指摘の点は,この制度ができると現在とどこが違ってくるかといいますと,おっしゃった点は現在でも証券会社の口座等を調べれば分かってしまうわけですね,おっしゃったように。ですから,どこが違ってくるかと申しますと,株券をうちに持ち帰って,どこかうちの中にあれしておけば見つからないということ,そういう方法ができなくなると,株式を持っておりますと全部口座に登録されてしまう。そこが違ってきます。  しかし,その点につきましては,先ほど申しましたように3月に意見照会いたしましたけれども,その点が全部そういうふうに把握されてしまうから反対であるというような御意見はなかったというふうに記憶しております。 ● 私は事務局に申し上げてあったのですけれども。 ● 迅速な決済等を実現し,投資家に安心感を与え,それによって資金を呼び込むということの方がよりメリットがあるというふうに,多くの方はお考えなのではないかと思っております。  それから,外国についてどうかという点でありますけれども,私の認識しております限りでは,株券を,先ほど申しましたように証券会社から保護預かりもしないで持って帰ってしまうということが日本ほど多い国はないというふうに思っております。そもそもフランスは徹底しておりまして,公開会社以外でも株券というものは一切ないという制度になっておりますし,それからドイツ等も,これはもうほとんど銀行が株券を預かっているというシステムであります。個人が家に株券を持って帰るということは,日本の今までのような形をとられている国は,むしろ非常に少ないのじゃないかと私は認識しております。 ● おっしゃるとおりで非常に勉強になりましたけれども,ただし,それと同様に,国税から金融検査まですべて一手に握っている巨大な官庁がないということも事実なんですね。非常に重大な事実であると思います。  それから,今現在,証券会社間の株券の振替で何らかの事故が生じているかというと,ほとんどございません。仮に事故があったといたしましても,それは証券会社の責任において処理させられているということが現状でありまして,投資家がそのことによって,例えば振替が完了しないとクリアリングが完了しないというようなことで不便を感じているかというと,それはアンケート調査していただければ分かりますが,一切ないと言ってもよろしいかと思います。  私は勝手なボランティア活動で女性投資家の会というのを立ち上げまして,数千の投資家を相手にしてまいりましたけれども,そういう不安というのは一度も出たことがないのですね。だから,そういうことからいきますと,例えば住基ネットやなんかであれだけ大騒ぎして,パートでさえ知っているような情報で騒いでいるわけですよ。あれは地方自治体の現場でICカードを使い始めたら様々な事態が生じると思うのですけれども,たかが住所・氏名・生年月日ですか,あの程度のことでこんなに大騒ぎしているにもかかわらず,例えば医療保険の保険証に高齢者の場合1割負担の人か,つまり所得のプライバシーを明かしてしまうようなことに関しては,マスコミも有識者も一切騒がない。特定口座の,こういう税務当局に取引の一切合切が即通知されるというような仕組みに関しても,どなたも騒がない。そういうことに関して証券界も実業界も,実は御存知ないのじゃないかなと。  今,非常に経済が悪い中で,目先のコスト削減というところに皆さんの思いが行っているのではないかと私は思うのです。ですけれども,○○委員が御説明くださったように,証券市場の活性化というのは非常に大事ですし,投資家が安心して市場に来られることによって市場がより活性化されるという思いからお考えいただいたということは重々承知で,大変有り難いことと,私が感謝するのも変なのですけれども思うわけでございますが,その点からいいますと,逆にこうやって資産を把握されるということを嫌って,投資家が離散してしまうという懸念の方が,私は非常に大きいと感じております。  実は,この件に関しては既に何回か,私のところでやりました勉強会で女性投資家から意見聴取を行っているのです。冗談じゃないという結果でございました。特定口座の実体については,実はマスコミは何も論じておりませんで,そういうことに関しては。それも私が女性投資家の会のメンバーに知らせましたところ,私の会員はほとんど投資家の特定口座には契約しておりません。そんなのだったのねということになっているわけです。ですから,この場で御議論いただくこととは思わないのですけれども,是非個人情報の保護という観点を強く意識していただいて,法案を作成なさるときには,その部分をできましたらば1条入れていただけると大変うれしいなというふうに感じております。 ● その場合に,何か1条入れるということで御意見がございますか。どのような条文かということについて。 ● 情報の保護が多目的に利用されないと,つまり振替機関にある取引の情報が,そのまま今税務当局に行っているという現状をまず変えてほしいわけでございますけれども,その1条を入れていただくということはとても大事なことだと思います。  そうしますと,逆に振替機構ができるということを契機に,個人の取引情報が保護されることになるのです。今は,逆に証券会社レベルからじゃんじゃん行っちゃっているわけですね。だけど振替機構ができた暁には,その情報は一切多目的に利用してはならないというようなことを入れていただければ,投資家の保護ということになって,それは部会長の当初のお考えにも非常に沿ったことになるのではないかなというふうに考えております。 ● 今のような御意見が出ましたけれども,○○委員,いかがでございましょうか。 ● この法律は,そういう形の,税務当局との関係の投資家保護とは関係ないというふうに考えております。 ● ただし,資産形成でございますから,国民がそういう問題に非常に敏感になっているということは皆さん御承知のことだと思うのですね。ですから,是非その辺をもう一度御配慮いただければ有り難いと。  ○○委員と同じで,思いをお伝えしておきたいというふうに思います。 ● ほかに何か御意見ございますでしょうか。  御質問でも御意見でも結構でございますが,ほかにございませんか。  ございませんようでしたら,採決に移りたいと思います。  会社法(株券の不発行等関係)部会から報告されました「株券不発行制度の導入に関する要綱案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対の方。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は11名でございます。反対の委員は1名でございます。  議長を除くただいまの出席委員は,12名でございます。 ● 採決の結果,賛成者多数でございますので,会社法(株券の不発行等関係)部会から報告されました「株券不発行制度の導入に関する要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。  したがいまして,本日御審議いただき,採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱は今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。  続きまして,電子公告制度の導入に関する要綱案に関する御報告,及び同要綱案の全般的な点につきまして,まず質問がございましたら御発言をお願いいたします。  御質問ございませんですか。  では,御意見はございますでしょうか。  御意見もございませんようですので,原案につきまして採決に移りたいと存じます。  それでは,会社法(株券の不発行等関係)部会から報告されました「電子公告制度の導入に関する要綱案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対の方,挙手をお願いいたします。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は11名でございます。  議長を除くただいまの出席委員は,12名でございます。 ● 採決の結果,賛成者多数でございますので,会社法(株券の不発行等関係)部会から報告されました「電子公告制度の導入に関する要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。  したがいまして,本日御審議いただき,採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に答申することといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただければと思います。よろしくお願いいたします。  予定より時間を超過しておりますけれども,ここで10分ほど休憩をしたいと思います。再開は3時43分ごろにしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。             (休     憩) ● 再開させていただきます。  本日の第3の議題であります,ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問第63号につきまして御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもあります○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 刑事法(ハイテク犯罪関係)部会の部会長の○○でございます。私から,同部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  最初に,審議の結果について申し上げます。  部会におきましては,「諮問第63号については,要綱(骨子)のように刑事の実体法及び手続法を整備することが相当である。」という旨決定されました。  その要綱(骨子)は,お手元に配布してあるものでございますので,御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。  なお,今回の諮問は極めて多岐にわたっておりますことから,採決に当たりましては,要綱(骨子)の事項を区切って行いました。その結果,第一の一から四までと第五につきましては,私を除く出席委員17名のうち,賛成15名,反対2名の賛成多数により,その他の事項につきましては,修正提案がなされたものがありましたけれども,すべて全会一致で,ただいま申し上げましたような結論に達した次第でございます。  次に,審議の経過の概要を申し上げます。  諮問第63号は,近年におけるハイテク犯罪の実情にかんがみ,この種の犯罪に対処するとともに,欧州評議会サイバー犯罪に関する条約(仮称)を締結するため,刑事の実体法及び手続法を整備する必要があるということから,要綱(骨子)についての意見を求めるものでございましたが,当審議会が本年3月24日開催の第140回会議におきまして,まず当部会に検討させる旨の決定をなされました。これを受けまして,当部会では4月14日から8月7日までの8回にわたり,諮問に付された要綱(骨子)に沿いまして審議を進め,集中的に各論点について議論し,その要綱(骨子)を一部修正の上,意見を取りまとめたものでございます。  それでは,当部会における議論の内容につきまして,主な論点を御説明申し上げます。  まず,要綱(骨子)第一の一から四までは,人の電子計算機における実行の用に供する目的で,人の使用する電子計算機について,その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせる不正な指令に係る電磁的記録等を作成し,提供し,取得し,保管し,又は人の電子計算機においてこれを実行の用に供する罪を新設しようとするものでございます。  これは,近時,いわゆるコンピュータ・ウイルスが広範囲の電子計算機で実行されて,広く社会に被害を与え,深刻な問題になっていることにかんがみまして,このような不正行為に的確に対処するための規定を新設しようとするものであります。  審議の結果,コンピュータ・ウイルスに関する処罰規定を新設することには異論はございませんでしたが,保護法益のとらえ方,不正指令電磁的記録等の作成行為の処罰の当否など処罰すべき行為の範囲,研究等の正当な目的での作成等の行為が処罰されないことを明確にするための規定の要否,それから法定刑の当否について議論がなされました。  まず,本罪の保護法益につきましては,今日,電子計算機が社会に広く普及し,あらゆる社会生活上の活動は電子計算機による情報処理に依存し,電子計算機は極めて重要な社会的機能を有するに至っておりますが,電子計算機のプログラムは容易に広範囲の電子計算機に拡散することが可能であります。また,その機能を電子計算機の使用者が把握することは困難でありまして,プログラムの実行によってなされる電子計算機の情報処理の円滑な機能を確保するためには,電子計算機のプログラムに対する社会の信頼を保護する必要が極めて大きいということなどから,電子計算機のプログラムに対する社会の信頼という社会的法益を保護する罪として構成するのが相当であるというのが大多数の意見でございました。  また,これを前提としまして,不正指令電磁的記録の作成行為につきましては,プログラムに対する社会の信頼を害する不正指令電磁的記録を存在するに至らしめる行為でありますから,特に違法性の高いものとして,これを処罰する必要があるとされました。  この点につきましては,本罪を個々の者が使用する電子計算機の適正な機能という個人的な法益を保護法益とする罪として構成しまして,これに対する侵害が現実化していない作成行為は処罰すべきではないという意見が出されまして,それを前提にいたしまして,「刑法161条の2(電磁的記録不正作出罪),234条(威力業務妨害罪),それから,234条の2(電子計算機損壊等業務妨害罪),それから,258条(公用文書等毀棄罪)及び259条(私用文書等毀棄罪)の全部又は一部の罪を行うために使用する目的」で,不正指令電磁的記録等を「作成,提供,取得,保管することにより利用可能にした」者に限定して処罰すべきであるという修正案が出されましたけれども,先ほどのような理由に加えまして,例えば使用者の電子計算機から電子メールを勝手に送信してしまうようなウイルスや,一般の家庭で使用している電子計算機を使用不能にしてしまうようなウイルスが構成要件から外れてしまうこと,また修正案の「利用可能にした」との趣旨が,もう一つ不明であるということなどの問題点が指摘されまして,結局採用されませんでした。  次に,研究等の正当な目的で不正指令電磁的記録等を作成等する行為につきましては,犯罪が成立しない旨の確認規定を置くべきであるという修正案が出されましたが,例えば,ソフトウェアの開発会社等がセキュリティのチェックを行うためにウイルスプログラムを人の電子計算機に記録する場合には,その者の同意を得ている以上,「人の電子計算機において実行の用に供した」とは言えない,同様に,そのような目的でウイルスプログラムを作成したり,保管しましても,自己の電子計算機又は同意を得ている者の電子計算機でのみ実行させる目的である以上は,「人の電子計算機における実行の用に供する目的」,この目的に欠けるということから,いずれにおきましても,要綱(骨子)の罪の構成要件に該当せず犯罪が成立しないことは明らかであるということが確認されまして,修正案のような確認規定は不要であるとされた次第でございます。  法定刑につきましては,作成・提供・供用の罪につきましては電磁的記録不正作出・供用の罪や,電子計算機損壊等業務妨害の罪等の法定刑をも参考にいたしまして,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金といたしまして,取得・保管の罪の法定刑につきましては,供用・提供のいわば前段階の行為にとどまることを考慮いたしまして,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金とするのが相当であるとされた次第でございます。  要綱(骨子)第一の五は,電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂を処罰することとするものであります。これは,電子計算機損壊等業務妨害罪についても,今日,コンピュータ・ネットワークの発達により,遠隔から容易に行うことができ,また,広範囲に被害を及ぼし得るものとなっておりまして,電子計算機の損壊等の攻撃が加えられ,それによって実際に動作阻害といったものが発生する前であっても,これを処罰する必要性が高いという理由から,同罪の未遂罪を設けることとするものでありますが,異論はなく,全会一致でそのようにすべきであるとされた次第でございます。  次に,要綱(骨子)の第二の一についてでございますが,これは,現行刑法175条前段のわいせつ物頒布等の罪に加えまして,電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布する行為についても,処罰できるようにするものでございます。  このような行為は,わいせつ物の頒布行為と実質的には同様の行為でございますが,コンピュータ・ネットワークの普及に伴いまして,現行刑法による的確な対応に疑義が生ずるに至っていますことから,このような行為を処罰の対象として明確に規定する整備を行うものでありまして,このような整備を行うという考え方自体については,異論はございませんでした。  もっとも,「わいせつな電磁的記録の頒布」という用語につきましては,現在の刑法175条の「頒布」と意味が異なるということになって,かえって分かりにくいのではないか,そこで「わいせつな電磁的記録の公衆送信」という用語を用いることとし,更にわいせつな電磁的記録に係る罪を有体物を対象とする罪から独立させて第175条の2とするという修正案が出されました。  これに対しましては,修正案のような構成要件にいたしますと,犯罪の成立にとって相手方が受信することや,あるいは記録されることが不要となり,送信行為自体が広く含まれてしまうといった問題点が指摘され,「わいせつな電磁的記録の頒布」という用語は,有体物の頒布に準じて,「不特定又は多数の者の記録媒体にわいせつな電磁的記録を存在するに至らしめること」というように解釈することができ,そのような用語で適当であるという意見が大多数を占め,修正案は採用されなかった次第でございます。  要綱(骨子)第二の二は,第二の一の改正に伴いまして,現行刑法175条後段のわいせつ物所持の罪に加えて,わいせつな電磁的記録の保管の罪を設けるとともに,これらの罪の目的を,現行刑法175条の「販売の目的」から「有償で頒布する目的」に改めるものでございます。  これらの点につきましても異論はありませんでしたが,「一の物又は電磁的記録を所持し,又は保管した者」という表現を,「一の物を所持し,又は一の電磁的記録を保管した者」と改めることとされました。これは,当初案では「物の所持」,「電磁的記録の保管」という行為態様のほか,「物の保管」,「電磁的記録の所持」という行為態様もあるのかという誤解が生じやすいことから,そうではなくて,行為態様は「物の所持」と「電磁的記録の保管」であるということを明確にするためにこのような表現に改めたものでございます。  このほか,同条の罪は利益獲得の目的で行われるのがほとんどであるという実態にかんがみまして,懲役と罰金の併科を可能とする改正も行うこととされていますが,この点については異論はありませんでした。  要綱(骨子)の第三の一は,電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法を定めるものでありまして,差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,捜査機関等は,その差押えに代えて,差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写し,印刷し,又は移転した上で当該他の記録媒体を差し押さえることができるようにする,こういうものでございます。  また,要綱(骨子)第四は,電磁的記録を保管する者等に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録等させた上,当該記録媒体を差し押さえる,そういう「記録命令付き差押え」という制度を新たに設けるものでございます。  これらは,電磁的記録に係る記録媒体が大型のサーバであるような場合に,これを差し押さえてしまいますと,これによって被差押者の業務に著しい支障を生じさせる,こういうことを回避できるようにするとともに,電磁的記録に係る記録媒体の所在等を特定することが困難な場合,電磁的記録が複数の記録媒体に分散して保管されているような場合等におきましても,適切な証拠収集ができるようにするためのものでございます。  これらの法整備を行うことにつきましては,異論はありませんでしたけれども,要綱(骨子)第四の制度につきまして,当初案の「記録命令差押え」という表現を,「記録命令付き差押え」と改めることとされました。これは,当初案では「命令」を「差し押さえる」という印象を与えるのではないかという意見が出されまして,「記録」することを「命令」した上でそれを「差し押さえる」という意味をより明確にするため,このような表現に改められたものでございます。  これらの法整備につきましては,これを行うことを前提として,三つの修正,すなわち一つは,第三又は第四の処分をすることにより差押えの目的を達することができない特別の事情がある場合に限り,電磁的記録に係る記録媒体を差し押さえることができるものとすること。二つ目,電磁的記録に係る記録媒体の差押許可状等には,差し押さえるべき電子計算機に係る記録媒体であって,電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならないとすること。三つ目,これらの処分をした場合においては,速やかに立会人に元の電磁的記録と複写した後の電磁的記録が同一である旨を記載し,署名・押印をした封印を求めなければならないものとすること。以上の3点を内容とする修正案が出されました。  しかしながら,修正案に対しましては,刑事訴訟法において証拠として取り調べるべきものは,原本であるものが原則であること,電磁的記録についても,その情報それ自体だけでなく,それが記録媒体に記録された状態を含めた全体からその真実性等が判断される場合があること,捜査機関に対しまして,捜索・差押えの現場で,差し押さえるべき記録媒体に記録されているすべての電磁的記録について,その関連性の有無を確認するように要求するのは現実的ではないということ,捜査機関が取得いたしました証拠物に変更が加えられていないかどうかということが問題となるのは,電磁的記録に限られるのではなくて,検察官は,その点に疑義がある場合には,取得した電磁的記録の保管方法,経緯等を明らかにすることによって,その同一性を疎明,立証する必要がありまして,また,それが可能であると考えられることなどが指摘されまして,採用されなかった次第でございます。  なお,要綱(骨子)第三の二は,要綱(骨子)第三の一の法整備に伴う還付についての所要の法整備を行うものでありますが,この点につきましては全く異論はございませんでした。  要綱(骨子)第五は,差し押さえるべき物が電子計算機であるときは,当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから,当該電子計算機を操作して必要な電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上,当該電子計算機又は記録媒体を差し押さえることができると,こういう規定でございますが,これは,今日コンピュータ・ネットワークが高度に発達し,遠隔の電子計算機に電磁的記録を保管することがかなり一般化していますことから,電子計算機を対象といたします差押えの範囲を実質的に電子計算機と一体的に利用されている記録媒体にまで拡大しようとするものでございます。  これにつきましては,まず憲法第35条の令状主義との関係について議論がなされました。  まず,憲法第35条第1項の押収物の特定・明示の要請については,その趣旨は,「正当な理由」の有無を裁判官に確認させ,それを令状の上に明示させて,その範囲でのみ捜索・押収を行うことを捜査機関に許すことによって,捜査機関の恣意的な捜索・押収が行われないようにするというものでございます。  要綱(骨子)では,裁判官の差押許可状に,「差し押さえるべき物」である電子計算機のほか,「当該電子計算機と電気通信回線で接続している記録媒体であって,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用していると認めるに足りる状況にあるもの」の範囲を明示しなければならないとしておりまして,これによって押収物の特定・明示の憲法の要請は満たされているということが確認された次第でございます。  また,憲法35条2項の各別の令状の要請の趣旨は,実質的には,場所や対象が別個であったり,同一の場所,対象でも機会が異なれば「正当な理由」の存否の判断も違ってくるのが通常でありますことから,それぞれにつきまして,その都度,「正当な理由」の存否を裁判官が確認した上で,捜索・押収の処分を許可することにしようとするものでありまして,場所や対象が異なっても,そのすべてについて,「正当な理由」が存在する共通の蓋然性が認められ,同一の機会に一括して処分が行える関係にある以上は,一つの令状でこれを許すことは,憲法35条2項に反するものではないと考えられます。  要綱(骨子)第五の処分の「電気通信回線で接続している記録媒体であって,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるもの」,これが案文でございますが,これは物理的には差し押さえるべき電子計算機と異なるのでありますけれども,その性質上,証拠となるべき内容が存在する蓋然性は共通に認められるということから,電子計算機の差押えが許されるときに要綱(骨子)第五の処分を許すことは,憲法35条2項に違反することにはならないということが確認された次第でございます。  さらに,要綱(骨子)第五につきましては,本処分の対象とする記録媒体を,「電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,専ら当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるもの」,このように限定すべきであるという修正案が出されたところでございます。この修正案は,差し押さえるべき電子計算機の使用者以外の者もアクセス権限を有し,無関係な電磁的記録が混在している記録領域を,本処分の対象から外そうとするもののようでありますが,これに対しましては,無関係な電磁的記録が差し押さえるべき記録媒体に混在して記録されていることがあるという利益状況は,現行制度における電子計算機の差押えの場合においても同じことでありまして,そのような場合においても差押えが認められており,その必要性も否定できないという反論がなされまして,修正案のような限定をつける理由はないというのが大方の意見であり,採用されませんでした。  次に,要綱(骨子)第六についてでございますが,これは,電磁的記録に係る記録媒体の差押え等を行うに当たっては,技術的・専門的な知識が必要な場合が多いことから,差押え等を行う者は,被処分者に対して,電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができるとするものでございます。電磁的記録に係る記録媒体の差押え等を受ける者の中には,記録媒体に記録されている電磁的記録について権限を有する者との関係で,これを開示しない義務を有する者もあることなどから,捜査機関に協力することができる法的根拠を明確にしておくことが望ましいという考え方には,異論はございませんでして,全会一致でこのような規定を設けるべきであるとされました。  なお,協力要請の内容につきましては,差し押さえるべき記録媒体や複写すべき電磁的記録が記録されているファイルを特定すること,コンピュータ・システムの構成や個々の機器の機能や操作方法について説明すること,電磁的記録が暗号化されており,かつ,当該暗号が被処分者によって複合化されることが予定されているものである場合において,暗号を複合化すること等が含まれていることが確認をされた次第でございます。  要綱(骨子)第七の一は,捜査については,電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者等に対して,その業務上記録している電気通信の通信履歴の電磁的記録のうち,必要なものを特定しまして,90日を超えない期間を定めてこれを消去しないように求めることができる,つまり保全するように求めることができるとするものでございます。  これは,通信履歴の電磁的記録が一般的に短期間で消去される場合が多いことなどから,捜査機関が差押え又は記録命令付き差押えによって取得するまでは,プロバイダ等に対してこれを消去しないように求めることができるというものでありまして,このような規定を設けることにつきましては異論はございませんでしたけれども,「ただし,差押え又は記録命令付き差押えをする必要がないと認めるに至ったときは,当該保全要請を取り消さなければならないものとすること」,これを加えて修正をすることとされました。当初案におきましても,捜査機関は,差押えや記録命令付き差押えの必要性がないと認めるに至った場合には,被申請者の負担に配慮いたしまして,その旨を通知する取扱いをすべきこととなると解されましたが,この点につきましては,要綱(骨子)案上明確にすることとした次第でございます。  また,保全要請の対象を,当初案では「業務上記録し,又は記録すべき」通信履歴の電磁的記録としていたのでございますが,この「記録すべき」というものを改めまして,「業務上記録している」通信履歴の電磁的記録に限定する修正が行われました。これは,将来記録すべき通信履歴について,保全要請を受ける事業者等の負担が不当に重くならないように配慮し,保全の必要性の判断を慎重に行うという観点から,将来記録されていくことになる記録の保全の必要性については,その将来の時点において判断するものとするのがより適当であると考えられまして,保全要請の対象を記録している通信履歴の電磁的記録に限定することとしたものでございます。  このほか,保全要請の期間の上限を30日間とすること,保全要請については書面で行うとすること,政府は保全要請の件数,差押許可状の発付に至った件数,保全要請に係る罪名,保全要請に係る通信手段の種類及び保全要請の行われた事件に関して,逮捕された人員数を国会に報告して公表しなければならないとすることを内容とする修正案も出されましたけれども,これらにつきましては,保全要請の期間の上限については実務上も90日間程度の期間とする必要があるということ,それから90日はあくまでも上限であって,個々の保全要請の実施に当たっては,事案に応じて適切な期間が定められることとなること,保全要請は通常書面で行われることになりますけれども,それはあえて法律で定める必要はないこと,保全要請は通信業者が業務上の必要性から記録している通信履歴を消去しないように求めるものにすぎなくて,罰則等の制裁もなく,その内容を捜査機関に開示させるものでもないのでありますから,通信傍受法のように国会報告・公表の規定を設けるまでのことはないとする反論がなされまして,結局採用されませんでした。  要綱(骨子)第七の二は,一の保全要請及び捜査事項照会は,その性質上,捜査の初期段階に行うことも多く,密行性が強く求められるため,これを受ける者に対して,これらの要請に関する事項の秘密保持を求めることができるとするものでございます。  この規定を設けることについては,必要性について疑問があるとする意見も出されましたけれども,その必要性を認める意見が大多数を占めました。  要綱(骨子)第八についてですが,これは不正に作られた電磁的記録等の没収についての法整備を行うものであります。  このような法整備を行うことにつきましては異論はございませんでしたが,具体的な議論の中で,電磁的記録の没収は,現行刑法において認められている文書偽造における偽造部分の没収と同様に,有体物の一部没収としてこれを行うことが可能であると解されているところ,現行の刑事訴訟法においては,その執行方法が必ずしも明らかでないということから,不正に作られた電磁的記録又は没収された電磁的記録に係る記録媒体を返還等する場合には,当該電磁的記録を消去などしなければならない旨の規定を設ける必要があること,このような規定を置くことによって,電磁的記録の没収ができるかどうかの疑義は解消されること,要綱(骨子)第三の移転の処分の場合には,移転された電磁的記録が没収の対象になることなどが確認された次第でございます。  概略以上のような審議に基づきまして,冒頭申し上げましたような結論が導かれたものでございます。  今回の部会における審議におきましては,多数回にわたり活発な議論がなされまして,結果として要綱(骨子)の多くの部分について全会一致の結論を得ることができた上,要綱(骨子)の細かい表現についても,その趣旨を明確にするよう心掛けた修正が施されるなど,実りのある審議が行われたと思っておる次第でございます。  なお,法制審議会の議事録の扱いにつきましては,法制審議会令に基づきまして,部会の議事録を含め,「発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を除いた議事録を作成して公開する」こととこれまでされておりますけれども,当部会におきまして,一部の委員から,発言者名を記載して議事録を作成してはどうかという意見が出されました。この点につきましては,発言者名を公開することによる自由闊達な議論を保障する上での不都合や,重要なのはだれが発言したかではなく,何がどのように審議されたかであるというような観点からの反対意見も出されておりましたことを付言した上で,総会で御報告申し上げる次第でございます。  以上で当部会における審議の経過及び結果の報告を終わります。よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● ただいまの○○部会長の御報告の中で,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会では,法制審議会各部会の議事録につきまして発言者が特定できるような,いわゆる顕名方式で作成すべきではないかとの意見が提起されたとの御説明がございました。そこで,質疑に先立ちまして,この点についてお諮りしたいと思います。  この部会では,さきに平成10年7月の法制審議会第124回総会において,議事録は非顕名方式で作成することが決定済みであるとして,それ以上の議論にはならなかったとのことでございますが,そのほかに先ほどの○○部会長の御報告にもございましたように,自由闊達な議論を保障するためには,顕名化は好ましくないというような,より実質的な観点からの反対論もあったということでございます。  また,前回の総会以後,この部会以外の部会では,議事録の顕名化を求める特段の御意見の提示はなかったとも事務当局から聞いております。  そこで,特に御意見などがございませんようでしたら,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会において,そのような意見があったということを総会として認識するにとどめ,部会長の報告中,要綱案の内容等に関する質疑等に移りたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。  それでは,今の○○部会長の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。 ● まず,全般的な問題として,本年8月現在でこの条約関連で締結している国というのは,アルバニア,クロアチア,エストニア,その三国だというふうに伺っていますけれども,ヨーロッパ諸国,あるいはアメリカ等のこの条約関係の国内の進捗具合,それはどういうようになっているかということをお伺いしたいと思います。それが1点でございます。  それから2点目は,これは立法技術上の問題かもしれませんけれども,第四の三,「記録命令付き差押え」の三のところですけれども,「一及び二の令状には,電磁的記録を記録させ,」と,読点があるのですけれども,この読点を外した方が何か読みやすいような感じがするので,その点について御検討いただければというのが第2点です。  第3点は,第五の一ですね,先ほど部会長から説明がございました2行目の「当該電子計算機で処理すべき」というところに,「専ら当該電子計算機で」という言葉を入れるべきであるという部会の中の意見がかなり強く主張されたというふうに伺っていますけれども,これはやはり入れるわけにはいかないのでしょうかね。どうも,国会あたりに出たときに,かなり強く主張される可能性があるのじゃないかという心配があるものですから,その点について一応お伺いしておきたいと思います。 ● 第1点の詳細につきましては,事務当局が把握していると思いますので,お願いいたします。  第2,第3点につきましては,一応私の方から御説明申し上げましたので,これも補足をしていただくという意味で,事務当局から説明をお願いいたします。 ● まず,第1点目でございますが,8月現在におきまして署名国は37か国,これはG7でありますとかヨーロッパ諸国など,大多数が署名しておるわけでございますけれども,締結国は3か国にとどまっているという状況であると承知しておりますが,いずれにいたしましても,G7を始めといたしまして,各国におきましてはこの条約の締結のための法整備について積極的に検討が進められている状況にあるというふうに承知いたしております。  それから,2点目の,第四の三につきまして,読点を外してはどうかということでございますが,これはこれまでの立法技術上の観点がございますので,それを外すことによってかえって誤解が出るのかどうか,御指摘も踏まえて関係当局などと今後立案に当たりましては検討させていただきたいと思いますが,ただ原則的に動詞の後には読点を入れるということでこれまで法律ができておりまして,要綱(骨子)につきましてもその慣例に従ったということは御理解いただきたいと思います。  それから,第3点目でございますが,「専ら」の点でございます。これにつきましては,先ほど○○部会長から御報告がございましたように,刑事法部会での審議におきましては,第五の処分につきまして,その対象となる記録媒体を「専ら」差し押さえるべき電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものに限定すべきであるという修正提案がなされたわけでございます。修正提案がなされましても,最終的には全会一致というのがほとんどでございましたけれども,この「専ら」の点につきましては,最終的に多数決ということになったわけでございます。その理由といたしまして,部会長の方から概要は御報告がございましたけれども,付け加えて申し上げます。  この修正提案と申しますのは,差し押さえるべき電子計算機の使用者以外の者もアクセス権限を有しまして,無関係な電磁的記録が混在している記録領域をこの処分の対象から外そうとするものではないかと思われるのでございますけれども,記録媒体に証拠となるべき内容の電磁的記録以外の電磁的記録も混在して記録されているという点につきましては,現行制度におきまして記録媒体自体を差し押さえる場合にも当てはまることで,そのような記録媒体でございましても,その物の差押えは認められるわけでございまして,部会での審議の過程でも,その必要性も否定できないということでございました。そして,要綱(骨子)第五の処分につきまして,そのような記録媒体を対象外とすべき理由はないというふうに考えられたわけでございます。  さらに,差し押さえるべき電子計算機と電気通信回線で接続されまして,当該電子計算機からアクセスして電磁的記録を記録することなどが可能な記録媒体でありまして,当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるもの,これにつきましては差し押さえるべきコンピュータ以外のコンピュータからアクセス可能でございましても,当該コンピュータのローカルの記録媒体と,証拠となるべき内容の電磁的記録が存在する蓋然性は同等であるというべきでございますので,これに差し押さえるべきコンピュータの差押えの範囲を拡大することを認める合理性があると考えられたのであります。  他方で,仮に修正提案のような限定を付したとなりますと,例えばある被疑者が使用しておりますコンピュータを差し押さえる必要がある,そういった場合に,その被疑者とその関係者が電磁的記録の保管のために共同して利用しております記録媒体については,こういった第五の処分を行うことができないといったようなことなどにもなるわけでございまして,それは相当ではないと考えられるわけでございます。  そういった理由から,修正提案は採用されなかったものでございます。 ● ほかに,御質問ございませんか。  では,次に御意見を伺いたいと存じますが,御意見がおありになる方はどうぞ御発言ください。 ● 要望を若干申し上げさせていただきたいのですけれども。  情報通信ネットワークが経済社会活動に不可欠なインフラになりつつある,それがだんだん傾向として強まっている,こういうことでありますから,いわゆるハイテク犯罪に効果的に対処するということで,刑事法の整備が必要だということは当然だと思いますし,この点については全く異論ないわけでございますけれども,しかしながら,それによりましてサービスプロバイダなど,こういった犯罪の捜査に結局かなり協力することになります企業が,過度な負担,それからリスク,これを負うことがあってはいけないのじゃないか,こういうふうに思うわけであります。  そういった観点から,経団連の方からも意見をお出ししまして,またこういった意見を踏まえまして,先ほど○○部会長から細かに御説明いただきましたように,要綱を一部修正していただいておりますので,その点についてはお礼を申し上げたいと思うわけですけれども,要綱の第五のリモートアクセス,それから第七の令状を必要としない保全要請,これにつきましては依然として実際の運用面でいろいろと問題があるのじゃないかなということが懸念されておりまして,こうした懸念を払拭していただきたいと思いますし,捜査現場で当局と企業との間にそごが生じないように,是非いろいろとあらかじめ手立てを打っておいていただけないだろうかと。  もう少し具体的に言いますと,法律の解釈ですとか,捜査の手続などに関しまして,国会ですとか犯罪捜査規範などの公表される資料等で,こういった懸念が払拭されるように明らかにしていただきたい。こういうふうに思いますので,この点は法務省だけではないと思いますので,政府関係機関にも是非徹底を図っていただきたいなというふうにお願い申し上げておきます。以上,要望でございます。 ● ただいまの○○委員の御意見につきまして,企業側の御要望がございましたので,それを十分踏まえた上で審議をさせていただきまして,先ほど申し上げましたような修正がなされたものでございます。ただいまのご発言は,恐らくこの要綱の是非ということではなくて,今後の運用の問題としての御意見として承っておきたいと思います。 ● よろしくお願いいたします。 ● ほかに御意見ございますか。 ● 第四の「記録命令付き差押え」ということにつきましては,前回,私,「記録命令差押え」では分かりにくいのではないかというふうに申しましたところ,間に「付き」という言葉を付けて,これの方が少し分かりやすいかなというふうに思った次第でございます。  それからもう一つは,そのすぐ前の第三の二のところでございますけれども,これがそのまま条文になるのかどうかはちょっと分からない,これは刑事訴訟法かもしれませんけれども,なるとすれば,やはりちょっとこれも分かりにくいかなという気がいたしているので,これはどうなるかということなのですが。  要するに,ここでは電磁的記録を移転をさせて,その移転した記録媒体を差し押さえたと,その差押えを受けた人間と,もとの保管者とが違った場合に,還付をどうするかということを書いているようでございますけれども,これがこのまま条文になるのでしょうか。それとも,もう少し分かりやすくなるのでしょうか。その辺のところをお伺いしたいというのが質問と意見で,もし条文になるときに動かしてもいいということであれば,もうちょっと分かりやすくならないだろうかという要望でございます。 ● 条文につきましては,技術的な問題もございますので,多分法制局でいろいろ検討されると思いますので,今のような御意見を是非伝えるというふうにさせていただきたいと思います。 ● ほかに御意見ございますか。 ● もちろんのことといたしまして,これは要綱の骨子でございます。こういった内容について法整備をさせていただくということでございますので,関係いたします当局と御相談して,立法技術的な問題も含めましてきちんと対応したいというふうに考えております。 ● ○○委員,それでよろしゅうございますか。 ● はい,結構でございます。どうもありがとうございました。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。  御意見がございませんようですので,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますか。  それでは,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会から報告されました要綱(骨子)のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対はいらっしゃらないようですが,念のために反対の方,いらっしゃいますでしょうか。             (反 対 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は11名でございます。  議長を除くただいまの出席委員は,11名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,刑事法(ハイテク犯罪関係)部会から報告されました要綱(骨子)は,原案のとおり採択されたものと認めます。  したがいまして,本日,御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,先ほどのお話にも関連いたしますが,立法技術上の問題等もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければと存じます。よろしくお願いいたします。  続きまして,本日の第4の議題であります動産・債権譲渡の公示制度の整備に関する諮問第64号,及び第5の議題であります不動産登記法の見直しに関する諮問第65号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● 私どもの担当分野に関連いたします諮問を朗読させていただきます。諮問第64号でございます。  諮問第六十四号   動産担保及び債権担保の実効性をより一層高めるという観点から,動産譲渡及び債権譲渡を公示する制度の整備を早急に行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。   以上でございます。 ● 諮問第65号を朗読させていただきます。  諮問第六十五号   不動産登記制度を情報処理技術の進歩その他の社会の変化に適合する制度とする観点から,不動産登記法について,電子情報処理組織を使用する方法による申請手続の導入等の改正をするとともに,その現代語化を図る必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。  別紙要綱(骨子)については,別添のとおりでございます。 ● 続きまして,これらの諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明してもらいます。 ● それでは,まず動産債権譲渡の公示制度に関する諮問第64号について御説明申し上げます。  これまでの融資におきましては,主として不動産が担保として利用されてまいりましたが,近時,動産や債権を担保として活用する手法が注目を集めております。これらの動産担保法制及び債権担保法制について申し上げますと,担保の目的で動産を譲渡する場合の公示制度に関しては,現行ではそのような譲渡の公示は占有改定によりされることになりますが,占有改定は,外形的にその有無が判然とせず,公示として不十分であるとの指摘がございます。  また,担保目的で債権を譲渡する場合の公示制度に関しましては,債務者が特定されていない将来の債権を担保の目的で譲渡しようといたしましても,現行ではそのような債権の譲渡を公示する方法が存在しないため,不都合であるとの指摘がされております。  そこで,早急に動産譲渡及び債権譲渡を公示する制度の整備を行う必要があると考えられますことから,諮問記載の事項について,法制審議会の御意見を伺う必要があると考えております。  続きまして,不動産登記法の見直しに関する諮問第65号について御説明申し上げます。  この諮問事項の背景は,次の2点でございます。  第1は,行政機関に対する申請手続の電子化の一環といたしまして,不動産登記についても登記の正確性を確保しつつ,国民の利便性の向上を図るため,オンライン申請手続を導入する必要があるということです。  第2は,明治32年に制定された現行の不動産登記法は,片仮名・文語体の法律であるため,この機会に法律事項を整理して,現代語化するとともに,不動産登記制度を情報処理技術の進歩その他の社会の変化に適合させる必要があるということです。  ところで,不動産登記のオンラインによる申請手続は,政府の電子政府計画の中で平成16年度中に実現することになっております。また,不動産登記制度の見直しに関しては,既に法務省民事局が研究を委託した研究会の報告書や,担当者が作成した担当者骨子案を公表し,意見照会の手続を経ております。したがいまして,これまでの検討結果を踏まえて,基本的な制度設計の指針を事務当局において別紙要綱(骨子)として取りまとめ,この要綱(骨子)に基づいて立案作業を進めることについて法制審議会の御意見をいただきたいと,こういう趣旨でございます。以上でございます。 ● それでは,ただいま説明がありました諮問第64号,及び第65号につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。  御質問がないようでございますので,次に御意見がございましたら,あるいは第64号及び第65号の審議の進め方について,御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● 審議の進め方につきまして意見を申し上げます。  諮問64号にこたえて要綱を示すこと,それから65号にこたえて意見を述べるということは,いずれも専門的,技術的な事項が相当含まれておりますし,それから今後のスケジュールというところを見ましても,かなりタイトのようでございますので,従来行われておりますように,新たに部会を設置しまして調査・審議をしていただき,その結果の報告を受けてこの総会で審議することとしたらいかがかというふうに考えます。 ● ただいま○○委員から,部会設置等の御提案がございましたけれども,これにつきまして御意見はございませんでしょうか。  特に御異議もないようでございますので,諮問第64号及び第65号につきましては,新たに部会を設けて調査・審議することに決定いたします。  次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事の指名に関しましては,会長に御一任願いたいと存じますが,御異議ございませんか。             (「異議なし」と呼ぶ者あり) ● それでは,この点は会長に御一任願うことといたします。  次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第64号につきましては,動産・債権担保法制部会,諮問第65号につきましては不動産登記法部会とそれぞれ呼ぶことといたしたいと存じますが,いかがでございましょうか。  特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  諮問事項の中身について,ほかに御意見がございましたら御発言をお願いいたしたいと思います。  それでは,諮問第64号及び第65号につきましては,部会で御審議いただき,それに基づいて総会において更に御審議を願うことにいたしたいと存じます。  これで本日の審議は終了いたしました。大変長い間,長時間にわたりまして御審議いただき,ありがとうございました。  本日はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。