法制審議会第139回会議 議事録 第1 日 時  平成15年2月5日(水   自 午後12時20分                      至 午後3時25分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  1 担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号及び民事執行制度の見直しに関する諮問第53号について  2 民事訴訟法及び人事訴訟手続法の改正に関する諮問52号について  3 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴う罰則等の整備に関する諮問第58号について  4 強制執行を妨害する犯罪等に対する罰則の整備に関する諮問第59号について  5 日本国外において日本国民が被害者となった犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第60号について  6 国際私法の現代化に関する諮問第61号について 第4 議 事  (次のとおり)               議         事  (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。) ● 法制審議会の第139回会議の開催に当たり,一言ごあいさつ申し上げます。  委員及び幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。  当審議会におきましては,皆様の御尽力により,既に多くの重要な案件について御答申をいただき,また,現在も多数の諮問事項について調査審議をいただいているところでございます。この機会に,皆様方の御労苦に対し厚く御礼を申し上げます。  さて,本日御審議をお願いする議題の第1は,担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号及び民事執行制度の見直しに関する諮問第53号です。  これらの諮問事項につきましては,担保・執行法制部会におきまして調査審議が行われてきましたが,その結果,雇人給料の先取特権の範囲の拡大,短期賃貸借制度の見直し等の民法の担保物権に関する規定の合理化,民事執行法上の保全処分の要件の緩和等の執行妨害対策の強化,扶養等の義務に係る金銭債権についての弁済期到来前の差押えの許容等の強制執行の実効性の確保策など,多数の改正事項を取り上げた「担保・執行法制の見直しに関する要綱案」が決定され,本日報告されるものと承知しております。  現在の我が国における社会・経済情勢にかんがみますと,これらの担保・執行法制の改善を早急に実現する必要がありますので,通常国会に所要の法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第2は,民事訴訟法及び人事訴訟手続法の改正に関する諮問第52号です。  この諮問事項につきましては,民事・人事訴訟法部会におきまして,調査審議が続けられてまいりましたが,その結果,民事訴訟の充実・迅速化等の観点から,計画審理の推進を図ることを始めとして,多数の改正事項を取り上げた「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」が,また,家庭裁判所の機能の充実の観点から,人事訴訟の家庭裁判所への移管を始めとして,多数の改正事項を取り上げた「人事訴訟法案要綱案」が決定され,本日報告されるものと承知しております。  現在の社会の複雑化・多様化等にかんがみますと,早急に,民事司法の機能を充実し,国民により利用しやすいものとする必要がありますので,通常国会に所要の法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第3は,国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴う罰則等の整備に関する諮問第58号です。  この諮問事項につきましては,刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会において議論がなされ,本日その結果が報告されるものと承知しております。  グローバリゼーションの進展に伴い,近年急速に複雑化,深刻化している国際的な組織犯罪に効果的に対処するためには,国際的な組織犯罪の防止,捜査及び訴追に関する国際的な法的枠組みを創設する「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を早急に締結する必要があると考えられますので,通常国会に所要の法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第4は,強制執行を妨害する犯罪等に対する罰則の整備に関する諮問第59号です。  この諮問事項につきましては,刑事法(強制執行妨害犯罪等処罰関係)部会において議論がなされ,本日その結果が報告されるものと承知しております。  近年,暴力団その他の反社会的勢力等による悪質・執ような強制執行妨害事案が跡を絶たず,不良債権の迅速・適正な処理が求められる中で,この種事犯に対し,事案の実態に即した処分と科刑が可能になるよう,罰則を整備することが喫緊の課題でありますので,通常国会に所要の法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第5は,日本国外において日本国民が被害者となった犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第60号です。  この諮問事項につきましては,刑事法(国民に対する重大な犯罪に係る国外犯処罰規定整備関係)部会において議論がなされ,本日その結果が報告されるものと承知しております。  近時の日本国外における日本国民の犯罪被害の増加にかんがみ,日本国外において日本国民が重大な犯罪の被害を受けた場合に,適切な処罰がなされるようにするため,我が国の刑法を適用できるようにする必要があると考えられますので,通常国会に所要の法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第6は,国際私法の現代化に関する諮問第61号です。  この諮問事項は,明治31年に制定されて以来,婚姻及び親子に関する部分を除き,本格的な見直しが行われていない「法例」の中の国際私法に関する規定につき,諸外国の制度と調和し,現在の国際社会に対応したものとなるよう見直しを行うとともに,国民に分かりやすい平仮名・口語体に改める必要があることから,そのために留意すべき事項について御検討をお願いするものです。  それでは,これらの課題につきまして,どうぞよろしく御審議をお願いいたします。  (委員の異動について紹介した後,会長に鳥居淳子委員が互選・指名された。) ● 委員の皆様の御意思に基づき,法務大臣から御指名を受けましたので,会長の職を引き受けさせていただきたいと思います。  会長職をお引き受けするに当たりまして,一言ごあいさつ申し上げます。  申し上げるまでもなく,現在,我が国の社会は国際化,情報化,技術革新等の様々な要因により,複雑・多様化しており,こうした状況に対応するための法整備が急がれております。当審議会が,法案提出のための重要な役割を担っておりますところの我が国の法制の根幹となるべき部分につきましても,全面的見直しが要請されており,近年,重要な法改正,立法が相次いで行われておりますことは,皆様御承知のとおりでございます。  このような時期に,当審議会の会長という重責を担うことになりましたことに誠に身が引き締まるのを覚えております。本当に非力でございますが,組織改革後の新しい法制審議会の初代会長であられた竹下前会長がお示しになられました道筋に従って,全力を尽くしてこの大任を全うしたいと願っております。皆様,何とぞお力添えを賜りますよう,切にお願い申し上げます。  簡単ではございますが,ごあいさつとさせていただきます。  それでは,審議に入らせていただきたいと思います。  先ほどの法務大臣のごあいさつにもございましたように,本日は六つの議題がございます。  1 担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号及び民事執行制度の見直しに関する諮問第53号について,2 民事訴訟法及び人事訴訟手続法の改正に関する諮問第52号について,3 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴う罰則等の整備に関する諮問第58号について,4 強制執行を妨害する犯罪等に対する罰則の整備に関する諮問第59号について,5 日本国外において日本国民が被害者となった犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第60号について,6 国際私法の現代化に関する諮問第61号についてでございます。  以上の審議事項につきまして御審議いただきたいと存じますが,まず議題の1から4まで御審議いただき,休憩を挟みまして議題の5及び6を御審議いただくという順序で議事を進めてまいりたいと存じます。  本日は,何分にも内容が盛りだくさんでございますので,十分に御審議いただくことは当然ではございますけれども,委員・幹事の皆様には,議事の進行にも御協力をいただき,各要綱の決定を行いたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。  では,審議に入らせていただきます。  本日の第1の議題であります担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号及び民事執行制度の見直しに関する諮問第53号につきまして御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,担保・執行法制部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもあります○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 担保・執行法制部会長の○○でございます。  諮問第49号及び第53号につきまして,本年1月28日,担保・執行法制部会の第20回会議におきまして,「担保・執行法制の見直しに関する要綱案」を決定いたしましたので,その審議の経過,及び要綱案の概要につきまして,御報告申し上げます。  まず,要綱案の決定に至る審議の経過等につきまして御報告いたします。  諮問第49号は,「社会・経済情勢の変化への対応等の観点から,抵当権その他の担保権及びその実行としての執行手続等に関する法制の見直し等を行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものでございます。  経済取引の発展に伴い,担保制度の重要性はますます高まっておりますが,近時の社会・経済情勢の変化は著しく,担保に関する法制度につきましても複雑化,多様化した現代の経済取引の実務に適用し得るよう,その早急な見直しが求められるに至っております。そこで,平成13年2月にこの諮問がなされたわけでございます。そして,その調査審議を行うため,担保・執行法制部会が設置されまして,同年5月から,同部会における具体的な検討作業が開始されました。  その後,同年6月に司法制度改革審議会が取りまとめた意見書において,民事司法制度の改革の一環として,民事執行制度の強化という問題が取り上げられ,強制執行の制度に関して権利実現の実効性を確保するという観点から,新たな方策を導入すべきであるとの提言がされました。これを受けまして,同月,「権利実現の実効性をより一層高めるという観点から,民事執行制度の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」という諮問第53号が新たに発せられました。この諮問につきましても,担保・執行法制部会において調査審議が行われることとなったものでございます。  同部会では,これらの二つの諮問につきまして審議が続けられ,平成14年3月には,これまでの審議の経過を反映した「担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案」が取りまとめられ,関係団体等に対する意見照会及び一般からの意見募集の手続が実施されました。その後も,これらの結果等を踏まえて更に検討が進められ,本年1月28日に開催された第20回会議におきまして,「担保・執行法制の見直しに関する要綱案」の決定をみるに至ったものでございます。  続きまして,要綱案の概要について御説明申し上げます。「民1」と題する資料をお開きいただいてお聞きいただければ有り難いと存じます。  まず,第一の「主として担保法制に関する事項」について御説明いたします。  一は,「雇人給料の先取特権」に関する見直しでございます。民法第308条及び商法第295条は,いずれも労働債権に係る先取特権に関する規定でございますが,民法第308条は,その被担保債権の範囲を最後の6か月分の給料に限定するなど,現行の民法と商法の規定の内容には不一致がございます。このような不一致を解消し,労働債権の保護を強化するという観点から,民法第308条の先取特権の被担保債権の種類及び範囲を拡大して,商法第295条におけるのと同じ内容にするものでございます。  二は,「指名債権の債権質」に関する見直しであります。一般の指名債権につきましては,必ず債権証書が存在するわけではなく,また何が債権証書に該当するかが明確でない場合もあるため,債権証書があるときはその交付を効力発生要件とする現行法の下では,質権設定の効力が生ずるかどうかについて,当事者が予測困難な危険を負担する場合があります。そこで,証券的債権以外の指名債権をもって質権の目的とする場合には,債権証書がある場合でもその交付を質権設定の効力発生要件とはしないことに改めるものでございます。  三は,「抵当権」に関する見直しでございます。  そのうち,1は,不動産の収益に対する抵当権の効力に関するものであります。抵当権等の担保権の実行方法を多様化し,その実効性をより高めるため,抵当権その他の不動産を目的とする担保権の実行の手段として,不動産競売のほかに,強制管理類似の手続を創設し,抵当権者等が不動産の賃料等の収益から優先弁済を受けられる手続を創設するものでございます。  2は滌除制度に関するものであります。滌除とは,抵当不動産の第三取得者が,その申出額を抵当権者に支払うことにより,抵当権を消滅させることができる制度でございます。現行法では,第三取得者の申出額を争う抵当権者は,抵当不動産につき,増価競売を申し立て,他により高い額での買受けを申し出る者がないときは,自ら第三取得者の申出額の1割増しの価額で抵当不動産を買い受ける義務を負うものとされております。この増価買受義務等が抵当権者に過大な負担となり,制度が濫用される原因となっている等の指摘があることから,増価買受義務を廃止するなど,抵当権者の正当な利益を保護するのに必要な見直しを行うものでございます。  3は,一括競売に関するものであります。現行法におきましては,第三者が抵当地に建物を築造した場合には,土地のみを競売するしかなく,土地の買受人が建物所有者に対する建物収去土地明渡請求等の負担を負うため,売却が困難になり,抵当権者の利益が損なわれることになるという問題が指摘されております。そこで,抵当権設定後に抵当地に建物が築造された場合には,抵当権設定者以外の者がその建物を築造した場合でも,建物所有者が抵当地について抵当権者に対抗できる権利を有するときを除きまして,土地の抵当権者が建物を一括して競売することができることとするものでございます。  4は,短期賃貸借に関するものであります。現行の短期賃貸借制度については,濫用による執行妨害事例が絶えず,賃借人保護の制度としても合理的に機能していないと指摘されていることから,これを見直し,抵当権に後れる賃貸借は,その期間の長短にかかわらず抵当権者及び競売における買受人に対抗することができないものとする一方,新たに抵当権に後れるべき賃貸借でありましても,その設定について登記がされ,かつ,これに優先するすべての抵当権者が同意をし,その同意について登記がされたときは,当該抵当権者及び競売における買受人に対抗することができるものとする制度を創設することとしております。また,競売による建物の売却により,突然に退去を求められることによる建物賃借人の不利益を緩和し,保護されるべき者に合理的な範囲で一律の保護を与えるため,抵当権者に対抗することができない賃貸借により建物を占有する者に対し,3か月間の明渡猶予期間を与えるものとしております。  5は,根抵当権に関するものであります。根抵当権の元本確定事由を明確なものとし,根抵当権により担保された債権の譲渡を円滑に行うことができるようにするため,「担保すべき元本が生じないこととなったこと」という元本確定事由は削除する一方,根抵当権者は,担保すべき元本の確定を請求することができ,それによる元本確定の登記を単独で申請することができるものとする見直しをしております。  続きまして,第二の「主として執行法制に関する事項」について御説明いたします。  まず,第二の一では,いわゆる占有屋等による不動産執行妨害への対策を取り上げております。  不動産の競売に関しては,かねてより執行妨害対策の一層の強化を求める意見があり,先に触れました司法制度改革審議会の意見書におきましても,権利実現の実効性の確保という観点から,不動産執行妨害への対策を講ずるべきであるとの指摘がされているところでございます。  このような問題意識を踏まえまして,要綱案では,1として,民事執行法上の保全処分に関する見直しを行うこととしております。その内容は,第1に保全処分の発令要件を緩和し,不動産の価額減少の程度が著しいものであることを要しないものとすること,第2に相手方を特定することが困難である場合に,相手方を特定しないで保全処分を発することができるものとすること,第3に占有移転禁止等を内容とする保全処分につき,当事者恒定効を付与すること,などでございます。  2では,競売不動産の内覧の制度を設けることとしております。これは,買受希望者が競売不動産の内部を見ることができるようにする手続を執行官が実施するというものでございます。  3では,不動産の明渡執行の実効性の向上のための方策を取り上げております。ここでは,民事保全法上の占有移転禁止の仮処分命令を発する場合や,不動産の引渡し又は明渡しの請求権についての債務名義につき承継執行文を付与する場合についても,相手方を特定することが困難であるときは,相手方を特定しないで発令等をすることができるものとしております。また,不動産の任意の明渡しを促すための実務慣行である明渡しの催告というものを法制度として構成し,その催告後に占有者の入れ替わりがあった場合にも,承継執行文の付与を受けることを要しないで,不動産明渡しの強制執行をすることができるものとしております。  4では,不動産執行妨害排除のためのその他の方策として,民事執行に関する罰則を強化することとしております。  次に,第二の二では,「強制執行の実効性の確保」のための方策を取り上げております。  1の「間接強制の適用範囲の拡張」は,物の引渡債務及び代替的な作為債務又は不作為債務について,間接強制の方法による強制執行を認めるものでございます。債務を履行しない債務者に金銭的負担を課すことによりその自発的履行を促すという間接強制の方法は,直接強制又は代替執行によることができる場合でも,迅速な執行目的の達成のために効果的な場合があるため,その適用範囲を拡張するものでございます。  2の「財産開示手続」は,金銭債権についての債務名義を有する債権者等の申立てにより,裁判所が,債務者に対し,財産の開示を命ずる手続を創設するものであります。現行制度では,執行の対象となる債務者の財産については,債権者自身がどこにどのようなものがあるかを探さなければならず,債権者が勝訴判決を得ても,その強制的実現ができないことがあるため,要綱案では,裁判所の命令により債務者が非公開の財産開示の期日に出頭し,宣誓をした上,自己の財産状況を開示する手続を創設することとしております。  3は,「少額定期給付債務の履行確保」に関するものでございます。ここでは,子の養育費などの扶養等の義務に係る定期金債権の強制執行について,少額の定期金についての強制執行を反復して行わざるを得ないという不都合を解消するため,弁済期到来前における差押えを例外的に許容する等の特則を設けることとしております。  続きまして,第二の三は民事執行法制についてのその他の見直しを取り上げております。  そのうちの1は,動産を目的とする担保権の実行としての競売について,現行法が目的動産の任意提出等を手続開始の要件としているところを改め,執行裁判所の許可がされた場合にも,手続を開始することができるものとし,その場合には,執行官が目的動産の捜索を行うことができるようにするものでございます。  2は,「差押禁止財産の見直し」に関するものでございます。(一)では,差押禁止金銭等の額に関し,民事執行法の委任を受けて政令で定められている金額を,必要生計費の推移等を踏まえて引き上げるものとしております。  (二)では,差押禁止金銭の範囲を必要生計費の1か月分から2か月分に拡大し,差押えが禁止される食料及び燃料の範囲を2か月分から1か月分に縮小するものとしております。  以上,簡単ではございますが,要綱案の概要につきまして説明させていただきました。よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● どうもありがとうございました。  それでは,ただいまの○○部会長の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。  御質問がございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと存じます。――御意見,ございませんでしょうか。  それでは,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしいでしょうか。御異議ございませんでしょうか。  特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,担保・執行法制部会から報告されました「担保・執行法制の見直しに関する要綱案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,御反対の方の挙手をお願いしたいと思いますが。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は14名でございます。議長を除くただいまの出席委員は14名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,担保・執行法制部会から報告されました「担保・執行法制の見直しに関する要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。  続きまして,本日の第2の議題であります民事訴訟法及び人事訴訟手続法の改正に関する諮問第52号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,民事・人事訴訟法部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもあります○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 民事・人事訴訟法部会の部会長の○○でございます。  諮問第52号につきまして,本年1月24日,民事・人事訴訟法部会の第15回会議におきまして,「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」及び「人事訴訟法案要綱案」を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の内容につきまして御報告申し上げます。  まず,要綱案の決定に至る審議の経過でございますが,諮問第52号は平成13年6月18日にされたものでございまして,その内容は,「民事裁判を充実・迅速化し,専門的知見を要する事件への対応を強化するとともに,家庭裁判所,簡易裁判所の機能の充実を図ることにより,民事司法制度をより国民に利用しやすいものにするという観点から,民事訴訟法及び人事訴訟手続法を改正する必要があると思われるので,それぞれについて要綱を示されたい。」というものでございます。  この時期に,なぜこのような諮問がなされたかと考えてみますと,その直前,すなわち平成13年6月12日に取りまとめられました司法制度改革審議会の意見書におきまして,我が国において司法の役割の重要性が増大していることを踏まえ,司法制度の機能を充実・強化することが喫緊の課題であると指摘され,民事司法制度の改革についても種々の提言がなされました。それらは,いずれも民事司法制度に係る基本法上の問題であり,意見書において具体的な方向性が示されましたことから,適切な制度の実現に向けた検討を開始する必要があると考えられ,この諮問第52号が発せられるに至ったものと了解しております。  この諮問を受けまして,法制審議会に民事・人事訴訟法部会が設けられ,更に同部会では,その下に人事訴訟法分科会を設けまして,平成13年9月14日の第1回会議を皮切りに,鋭意検討を続けてまいりました。昨年6月及び8月には,それぞれ「民事訴訟法改正要綱中間試案」,「人事訴訟手続の見直し等に関する要綱中間試案」を決定し,事務当局であります民事局参事官室においてこれを公表し,パブリックコメントを実施いたしました。  その後,民事・人事訴訟法部会では,さらに検討を続け,冒頭に述べましたように,去る1月24日に開催されました第15回会議におきまして,これら中間試案に対して寄せられた意見を踏まえて二つの要綱案を決定するに至ったものでございます。  それでは,次に要綱案の概要を御説明いたします。お手元に二つの要綱案がございますが,最初に「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」について御説明いたします。資料番号「民2」の資料でございます。  主要な項目は,第1から第4まででございますので,この配列に従って御説明をいたします。  まず,1ページの「第一 計画審理」でございます。現在の民事訴訟法におきましては,平成8年の民事訴訟法の制定後,審理の充実・迅速化という点において十分見るべき成果が上がっておりますけれども,事実関係に争いがあること等から,証人尋問等を行う事件,特に公害訴訟のような大規模訴訟,あるいは医事関係事件のように専門的知見を要する事件におきましては,現在より更に一層の審理の充実・迅速化を図る必要があるとの指摘が各方面からされております。そのためには,訴訟手続の計画的進行を図る計画審理の推進が重要であると考えられます。そこで,要綱案では,1ページの二にございますように,大規模訴訟のような複雑な事件等におきましては,裁判所は,当事者との協議の結果を踏まえて,審理の終期を見通した審理計画を策定しなければならないものとするなどの手当てをしております。この審理計画には,争点整理を行う期間,人証調べを行う期間,口頭弁論の終結及び判決の言渡しの予定時期までをも定めるものとしており,これによって計画に従った充実し,かつ,迅速な審理が行われるようにしようとするものでございます。  次に,2ページの終わりから2行目,「第二 証拠収集等の手続の拡充」でございます。ここでは,訴訟の早い段階から,充実し,かつ,迅速な審理を行うことができるようにするため,訴えの提起前に当事者が証拠や必要な情報を収集することができる方法を拡充することとしております。  具体的には,訴えを提起しようとする者は,その相手方となるべき者に対して,訴えの提起を予告する書面による通知,すなわち提訴予告通知をした場合には,一定の証拠収集等の手続を利用することができるというものでございます。また,この通知を受けた相手方も,その通知に対する回答をすることによりまして,同様にこの手続を利用することができるものとしております。  利用できる証拠収集等の手続の内容でございますが,一つは,3ページの終わりから2行目にあります訴えの提起前における相手方に対する一定の事項の照会でございます。もう一つは,次のページの三にございます,裁判所に対する文書の送付の嘱託等の処分の申立てでございます。  この提訴前の証拠収集等の手続につきましては,他方では証拠の所持者の利益を害することがないように,また濫用的な手続の利用がされることがないように手当てをする必要があると考えられます。そのために,要綱案では,その手当てといたしまして,3ページの真ん中辺の3にございますが,この手続を利用することができる期間を,提訴予告通知がされた日から4か月以内に限定するとともに,4ページの3行目以下にありますように,相手方に照会する場合にも,一定の事項の照会は許されないものとし,また4ページの終わりから5行目以下でございますが,裁判所に申し立てることができる処分の内容につきましても,一定の限定を付するなどいたしまして,濫用防止の手当てをしております。  次に,5ページに行きまして最後の行の「第三 専門訴訟への対応の強化」でございますが,次のページの最初の行,「一 専門委員」について御説明いたします。  審理において専門的知見が必要となる事件,例えば医療関係事件や建築関係事件等につきましては,現在でもなお審理に長期間を要する傾向にございます。このような事件では,最終的な争点について,証拠調べとしての鑑定が行われることがございますけれども,その審理の充実・迅速化のためには,もっと早い段階から専門的な知識,経験を有する専門家が訴訟手続に関与いたしまして,裁判官を補助する制度の必要性が指摘されております。例えば,このような事件では,争点を整理する段階でも専門的知見が必要となり,その段階で相当の時間を要していることから,そのような場面でも専門家の関与を得ることが必要であると考えられます。そこで,要綱案では,6ページの2行目の1にございますように,裁判所が争点又は証拠の整理,訴訟の進行の協議,人証調べ,和解といった手続の各局面におきまして専門家の説明を聴くことができるという,専門委員制度を設けることとしております。  ただ,この専門委員の説明は,その性質上,当事者の主張や証人の陳述の趣旨を明確にするなどのためになされるものでありまして,その説明が直ちに裁判の証拠となるというものではございません。また,専門委員を手続に関与させるためには,当事者の意見を聴く,場合によっては当事者の同意を得ることを要件とするなど,当事者の意向に配慮するものとしております。  さらに,専門委員の公正さを確保するために,7ページの後ろから8行目にございますように,除斥及び忌避の制度を設けることとしております。  次に,8ページの「二 鑑定」でございます。これは,鑑定に対する質問の在り方を見直そうとするものであります。現在は,鑑定人に対する尋問は,証人尋問と同様の手続でされておりますが,要綱案では,8ページの真ん中の2にございますように,鑑定人に質問をするときは,まず鑑定人に意見を述べさせて,その後,裁判所,各当事者の順で質問をすることとするなどの手当てをしております。これにより,専門家である鑑定人が十分に自分の意見を述べやすいようにしようとするものであります。  次に,9ページの4行目,「三 知的財産権関係訴訟の管轄の特例等」でございますが,特許権,実用新案権等の知的財産権関係訴訟への対応をより強化するとの観点から,9ページの(一)でございますが,特許権等に関する訴えの第一審につきまして,東京地方裁判所又は大阪地方裁判所の専属管轄,その裁判所だけに管轄があるという専属管轄に属するものとしております。ただ同時に,9ページの最後の行から10ページにかけてでございますけれども,一定の要件のもとでは,東京,大阪両地方裁判所からそれ以外の裁判所へ訴訟を移送することができる仕組みをもあわせて設けております。  次に,10ページの8行目の(二)でございます。これは,控訴審の管轄の問題でございますが,控訴審段階での専門的処理体制をより強化するために,東京高等裁判所のみに専属させることとしております。  次に,11ページの最初の行の2でございますが,これは特許権とか実用新案権ほどには専門性が高いとは言えない意匠権,商標権等に関する訴えにつきましても,通常の管轄裁判所のほかに,これらの事件を数多く取り扱っている東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも訴えを提起することができるものとする,いわゆる「競合管轄」とする手当てをしております。  次に,11ページの終わりから4行目でございますが,「第四 簡易裁判所の機能の充実」でございますが,その「一 少額訴訟に関する特則」について御説明いたします。  少額訴訟手続は,平成8年の民事訴訟法によって創設されたものでございますが,現在,簡易裁判所の取り扱う事件の中で,30万円以下の金銭の支払を目的とする訴えにつきまして,この手続による審理を受けることが可能となっております。この手続は,本人による訴訟を念頭におきまして,原則として1回の審理で終え,即日判決を言い渡すこととされておりまして,簡易・迅速な手続として利用者から高い評価を受け,国民の間に定着してきております。そこで要綱案では,国民がこの手続をより一層多く利用することができるように,少額訴訟の上限額を30万円から60万円に引き上げることとしております。  次に,12ページの最初の行,「二 和解に代わる決定」でございます。簡易裁判所における金銭請求の事件におきまして,裁判所は,分割払を内容とする和解に代わる決定をすることができることとし,被告が裁判所に出頭しない事件でも,判決だけでなく,決定により,より事案に即した柔軟な解決をしやすくしております。  以上が「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」の主要な項目の説明でございます。  続きまして,「人事訴訟法案要綱案」について御説明をさせていただきます。資料番号「民3」の資料でございます。  この要綱案につきましても,主要項目は第一から第五までの5項目でありますので,その順序に従って御説明をいたします。  まず,1ページの「第一 定義」でございますが,この要綱案における「人事訴訟」等の用語の意義を明らかにするのがこの第一でございます。  同じページの終わりから2行目,「人事訴訟の家庭裁判所への移管等」でございますが,ここでは,人事訴訟の第一審の管轄を地方裁判所から家庭裁判所に移管することとしております。現在,離婚等の身分関係に関する争いにつきましては,調停前置主義の建前によりまして,まず家庭裁判所に家事調停を申し立てることになりますが,調停が成立しなかったときは,地方裁判所に訴訟を提起することとされております。また,離婚の際の財産分与,養育費の負担等に関する争いは,これは家事審判事項として家庭裁判所が審理・裁判することとされている一方で,離婚訴訟に付随している限りは,これは地方裁判所で審理・裁判をすることができることとされております。このように,手続が家庭裁判所と地方裁判所に分かれていることは,煩雑で,利用者たる国民に分かりにくいとの指摘がされているところでございます。  今,私が申しました家事調停,家事審判,人事訴訟という三つの手続は,それぞれ全く別の手続でございます。家事調停は,御存じのとおり調停委員会が両当事者の言い分を聞いて調停案を提示し,両当事者がこれを受諾すれば,そこで調停が成立して争いが解決されるという手続でございます。これに対しまして家事審判は,もちろん裁判の一種でございますが,離婚に伴う財産分与とか,子の親権者の指定とか,養育費の負担等の,これは裁判所の裁量が非常に広い事件でございますが,こういう問題につきまして家庭裁判所が,審判という,より柔軟あるいは迅速な形式の裁判をする手続でございます。これに対しまして,人事訴訟は,離婚あるいは婚姻の取消しというような事件につきまして,訴訟の提起から判決に至るまでの通常の裁判の手続,厳格な裁判の手続であります。そして現在は,この三つの手続のうちの家事調停と家事審判は家庭裁判所において行われるわけでございますが,人事訴訟だけは,これは訴訟であるという理由から,地方裁判所の管轄とされているわけでございます。こういう体制は,家庭裁判所発足以来のシステムでございます。  また,家庭裁判所には心理学等の専門家であります家庭裁判所調査官が配置され,子の親権者の指定等の問題でその専門的知見を活用した調査がされております。ところが,地方裁判所にはそのような機関,スタッフはございません。そこで要綱案では,人事訴訟の第一審の裁判権を地方裁判所から家庭裁判所に移管し,もって家庭裁判所の機能を充実・拡充することにより,人事訴訟の審理をより充実したものにするというものでございます。  2ページの3にございます人事訴訟の家庭裁判所への移管とともに,それに付随する損害賠償事件,例えば離婚の原因である事実によって生じた慰謝料請求等の事件も,家庭裁判所で離婚訴訟と併合して審理・裁判をすることができることとしております。  次に,3ページに移りますが,「第三 家庭裁判所調査官による事実の調査の拡充等及び同時解決の申立てに関する人事訴訟手続の見直し等」の項目でございますが,ここでは離婚訴訟等に伴う子の親権者の指定,養育費や財産分与の申立て等につきましても,裁判所は,家庭裁判所調査官の調査等の方法によって事実の調査をすることができることとしております。この趣旨は,現在家事審判の局面でのみ用いられております家庭裁判所調査官による,その専門的知見を生かした調査を,人事訴訟に伴う子の親権者の指定等の局面でも活用することができることとし,よりきめの細かな審理を行うことを可能にしようというものでございます。  4ページの2行目の2の事項は,訴訟記録の閲覧の問題でございます。訴訟記録のうち,事実の調査に係る部分の開示の在り方につきましては,その調査の対象,例えば親権者の指定等の問題の性質上,通常の訴訟記録の閲覧等と異なりまして,一定の制約を課することとしております。ただ,当事者本人からの申立てにつきましては,その手続保障の観点から,原則として閲覧等を認めることとし,ただ例外として,当事者に閲覧等をさせることによって子の利益を害するおそれ等,後ろの方にア,イ,ウというような項目がありますが,こういう一定のおそれがある部分については閲覧を認めないことができるという,かなりきめ細かな対応をしようとしております。  次に,6ページの4行目に飛びますが,「第四 参与員制度の拡充」でございます。  現在,家庭裁判所におきまして,家事審判をするに当たりましては原則として参与員の意見を聴くことができるとされております。これは,家事審判に一般国民の良識が反映されるようにするという趣旨でございますが,人事訴訟の家庭裁判所への移管に伴いまして,離婚等の人事訴訟においても同様の趣旨から,参与員の関与を認めることにしようというものでございます。  7ページ以下の「第五 人事訴訟手続の見直し」は,人事訴訟手続全般について見直しをしようというものでございます。この項目はかなりたくさんの内容が含まれておりますので,主要な項目ごとに御説明させていただきます。  まず,「一 管轄」でございますが,ここでは家事調停を経た人事訴訟のいわゆる自庁処理を認めることとしております。これは,例えば離婚調停をした家庭裁判所が,仮に離婚訴訟について管轄を持たない場合でありましても,そこに訴えが提起された場合に,特に必要があると認めるときは,その訴訟について自ら審理及び裁判をすることができることとするものであります。これによりまして,調停をした裁判所と人事訴訟をする裁判所との連続性が保たれ,より当事者に利用しやすい制度になるものと考えられるわけでございます。  次に,8ページの終わりから6行目でございます「利害関係人の人事訴訟への参加の特例」というところでございますが,例えば認知の事件で本来被告となるべき父が死亡している場合のように,人事訴訟におきましては一定の場合には検察官が被告となることがございます。要綱案では,このような場合に,実際にその事件に利害関係を持っている第三者を訴訟に参加させて,検察官とともに訴訟を追行させた方がより適切な審理の実現が図られるというようなときには,裁判所が,その利害関係人を訴訟に参加させることができることとしております。  次に,大分飛びますけれども12ページの5行目の3の「当事者尋問等の公開停止」でございます。既に新聞等で報ぜられているところでございますが,人事訴訟における審理の公開停止について規定を設けることとしております。現在でも,憲法第82条第2項で,裁判所が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には,審理を公開しないで行うことができると規定されておりますが,このような抽象的な規定のみでは,どのような場合に公開停止が認められるのか分かりにくいとの指摘がされております。また,人事訴訟におきましては,その性質上,当事者や証人の私生活上の重大な秘密が問題になるケースが多いという事情がございます。そこで,要綱案では,ここに掲げておりますように,人事訴訟において審理の公開停止をすることができる場合に必要な手続についての規定を設けております。  この内容は,あくまでも憲法が規定する範囲内で憲法上審理を公開しないで行うことが認められる要件及び手続を明らかにしたものでございます。  具体的には,12ページの6行目以下にございますような要件が必要であるものとしております。このように,ここでは,例えば夫婦間の著しく異常な性生活でありますとか,養子が養親から異常な性的虐待を受けていたとか,そのような限定的な事項を想定しておりまして,公開停止をここで定めたからといって,これが歯止めなく他の一般の場合に広がるということはないというふうに考えております。  次に,13ページの「五 和解並びに請求の放棄及び認諾」の項目でございますが,ここでは,離婚訴訟や離縁訴訟において,裁判上の和解により離婚又は離縁をすることを認めることとしております。現在は,例えば離婚訴訟では和解による離婚は認められておりませんから,例えば「協議離婚をすることとする」という趣旨の和解をして,その後に当事者がこの和解条項に従って改めて協議離婚の届出をするという例が多くございますが,今回の要綱案によりますと,離婚をする旨の裁判上の和解が成立した時点で離婚が成立することとなり,裁判上の和解による紛争解決がより実効的なものになることが期待されるところでございます。  最後に,現行の人事訴訟手続法は,明治31年に制定された法律でございまして,今回の見直しに当たりましては,新たに人事訴訟法という新法を制定し,規定を現代語化することとしております。これにより,離婚等,身近に起こり得る法律問題を規律する法律が,国民により分かりやすい法律になるわけであります。  以上,簡単ではございますけれども,二つの要綱案の主要な項目につきまして御説明をさせていただきました。よろしく御審議いただきたいと存じます。 ● どうもありがとうございました。  審議につきましては,まず「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」について御審議をお願いいたしまして,その後,「人事訴訟法案要綱案」についての御審議をお願いいたしたいと存じます。  それでは,ただいまの○○部会長の「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」に関する御報告及び同要綱案の全般的な点につきまして,御質問がございましたら御発言をお願いいたしたいと思います。 ● 素人の質問で恐縮ですけれども,審理の計画を立てるときに,計画的になさるというのは,それは大変もっともだと思うのですが,「予定時期を定めなければならないものとする」とございますが,この予定時期というのは,何といいますか常識的なものがあるものなのでしょうか。全く裁判官が自由に決められるものか,双方において相当にその期間について意見の対立があったときに,準拠するルールといいますか,原則といいますか,非常に常識的な範囲で裁判官がお決めになるものかどうかということが一つ。  それから,これは民事についての御審議なのでございますが,これが刑事訴訟の場合に,今話題の裁判において大変時間がかかっているということを国民から見まして納得がいかないといいますか,関係当事者が全部死に絶えても裁判は終わらないのじゃないかというような議論もあるような状況でございますけれども,刑事に関してはこういう御議論というのはどうなっているのかという2点について伺いたいと思います。 ● まず最初の計画の点でございますが,基準は特にここには書いてございませんが,御指摘のように訴訟に関係する裁判官あるいは弁護士の立場からしますと,この程度の主張でこの程度の証人が必要となればこの程度の期間というのは,おおむね共通の認識があるのが通常でございます。そういうことを踏まえて,初期の段階ではどの程度の事情があるかなかなか裁判所にも分かりにくいという面がございますので,ここに書いてありますように,当事者双方と協議をして,その当事者双方からその見通し等も伺った上で計画を立てて,常識的な範囲で工夫をしておさまるようにするということが期待されております。  また,事件の進展に伴って当初の見込みと異なってくる場合も当然ございますので,そういう場合には計画を変更できるという規定も設けることになっておりますので,その範囲でほぼ常識的な線の計画が立てられるのではないか,こう思っております。 ● 一定のルールはないと。ケースケースによって様々だということですね。 ● 基本的には,事件の規模とか複雑さによって,半年程度で終わるものもあれば,2年近くかかるものもあるだろうと思います。その中でも,特にここでは複雑という事情ですから,そう短いものはそもそも計画を立てなくても円滑にいくと思いますので,その性質に応じてほぼ必要な期間というのは,大体常識の線がございますし,今後またこの計画がそれぞれ立てられれば,それを踏まえてより円滑にいくと思いますが。  何か,最高裁の民事局長の方で補足する点があればお願いしたいと思いますが。 ● おっしゃるとおりで,特に補足すべき点はございません。 ● 刑事事件全体としましては,今,それほど長い時間はかかっていないだろうと。平均審理期間は非常に短いのでありますが,いかんせんオウム事件のように極端に長くかかっているものがございまして,それが国民の刑事司法に対する信頼を損ねているのじゃないかというようなことが,司法制度改革審議会のときから言われておりまして,今般も政府に置かれております司法制度改革推進本部の顧問会議でも,2年以内に民・刑事とも終わるようにするべきだということで,現在推進本部の方で法案の作成を手がけております。今国会に提出するつもりだというふうに聞いております。  今は民事の話でありましたけれども,刑事におきましても,結局は裁判員制度等を導入した場合に,そう時間をかけているわけにはいかないのでありまして,その解決方法としては,早く済ませるために民事の準備期間に相当するような争点整理の段階で,事前準備をじっくりとしまして,公判に入りましたらその争点に絞って審理ができるようにできないかということでございまして,それを裁判所,弁護士会と検察の方で,どういうような準備のシステムを作るかということで,現在一生懸命検討をしているところというところでございます。 ● ○○委員,よろしゅうございますでしょうか。 ● はい。ありがとうございました。 ● ほかに御質問はございませんでしょうか。 ● 今のにちょっと関連しているのですけれども。  普通,道路なんか考えますと,道路拡充というか,広くしたり,よくしたり,増やしたりしますと,大体交通渋滞はもっと激しくなる場合が多いというのがあるのですね。それで私が考えているのは,司法改革といいますか,法曹人口拡大ということ,供給拡大をねらっているというのは誠に正義をもたらすためにはいいことであり,そう頑張ってほしいのですが,そういった供給サイドの拡大ということに対して,この計画審理というのはどんなくらいの考慮を払っているのか。これから,例えば100年ということもないのだけれども,法曹人口が100倍ぐらいになるというときに,そんなスピードというのと関係――こういう改正でなるものかどうか,よく分からないというのが……。道路なんか考えると,便利になって広くなるというのはもう逆にもっと混みますからね。だからそういうのを考えると,すごく心配――心配ということはないけど,ちょっと何かそういうような現象が起こりやすいというお考えはあるのか。  特にアメリカみたいに,法曹人口がものすごく多いと,何というか,これはビジネスではないのですけれども,やはり自分の存在理由を明らかにするために頑張って,案件が増えるのですね。弁護士はもう何百倍いるのかもしれない。だから,そういうことはどんなふうに考えておられるのか。  前にも申し上げたのですけれども,刑務所に入っている人は――刑事ですけれども――日本は6万ぐらいで,あっちは120万はるかに超えている。人口2倍にしても,何か10倍ぐらい激しく違っている。だから,そういうのは必ずしも弁護士とか裁判官とか検事が多いと刑務所に入る人も増えるなどと言っているわけではないのですが,そういうような供給サイドを増やしたときに,スピードとどう関連するかということについて,何かそういうような,余りいい例じゃないかもしれないですが,何かダイナミクスみたいなのあると思うので,何かお考えがありましたら……。 ● おっしゃるように,訴訟を非常に使いやすく,しかも短期間で終わるようにするということで,逆にそれならということで訴訟を利用する人たちが増えてくるということはあり得るだろうとは思っています。ただそれは,本来そういう意味で言えば潜在的に訴訟に対する需要があったものが,現在の司法制度が抱えている問題のゆえに顕在化していなかった部分が顕在化するということですので,それに対応する体制を同時に整備していく,ですから計画審理とかそういう我々の努力によると同時に,例えば裁判官の員数であるとか,それを補助する職員の員数であるとか,そういったものをあわせて強化していくということによって,使いやすくすることによって,使いやすくなった手法を利用したいという国民の期待にこたえていくというのが正に今回司法制度改革が強調されているゆえんだろうと思うのです。  余り行き過ぎて,アメリカのようにあらゆる紛争を訴訟を利用して解決するのがいいかどうかというのは,これは遠い先にはあるかもしれませんが,当面日本とアメリカの大きさを考えますと,現段階においてはやはりできるだけ訴訟を使いやすいものにして,かつそれを利用しようとする国民の期待にこたえていくというのが司法の在り方だろうと思っております。 ● ほかに質問はございませんでしょうか。 ● 素人で本当に申し訳ないのですが,この審理の計画に従えなかった場合というのは書いてあるのですけれども,従わなかった場合ですね,やむを得ない理由があるというのは分かるのですが,やむを得ない理由がひょっとしたらないかもしれないというのは存在しないのでしょうか。  要するに,従わなかったときにどういうふうになるのかということと,それから,ちょっと長いじゃないかということをだれかほかの方がチェックする機構があるのかどうなのか,そこの点を伺いたいと思います。 ● 基本的には両当事者と協議をした上で計画を立て,それに従って計画を進めていくということでございますから,よほど特別な事情がない限りは円滑に進んでいくのではないかと思っております。ただ,ここに書いてありますように,具体的な特定の事項について,いつまでに提出をするというような期間を定めたのに,当事者がそれを守らない,遅くなってから提出してくるというような場合には,それを取り上げておりますとますます訴訟が延びてしまいますので,そういう場合には,それはもう主張させないということで手続を先に進めるという形で計画が実現できるようにということを考えております。そういう形でやりますので,基本的には両当事者との十分な協議を経て,実現可能な計画を立てて,それを協力しながら守っていただくということを考えております。 ● そうしますと,この計画に従っていないと思われたときの却下だとかいうことで,裁判所が責任を持つということでよろしいのですか。 ● 最終的には裁判所が訴訟進行については責任を持って遂行していくということでございますが,ただ当然それは両当事者の協力がないと円滑にいきませんので,そこは御協力をお願いするということになろうかと思います。 ● ほかに御質問ございませんか。  御質問がございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと思います。御意見のある方はどうぞ御発言ください。  御意見ございませんようですので,では原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。御異議ございませんか。  特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,民事・人事訴訟法部会から報告されました「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,御反対の方の挙手をお願いいたします。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は14名でございます。議長を除くただいまの出席委員は14名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,民事・人事訴訟法部会から報告されました「民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申をすることにいたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。  続きまして,「人事訴訟法案要綱案」に関する御報告及び同要綱案の全般的な点につきまして,御質問がございましたら御発言をお願いいたしたいと思います。  御質問がございませんようですので,次に御意見を承りたいと存じます。  御意見がございませんようですので,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。  特に御異議がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,民事・人事訴訟法部会から報告されました「人事訴訟法案要綱案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,御反対の方の挙手をお願いいたします。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は14名でございます。議長を除くただいまの出席委員は14名でございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,民事・人事訴訟法部会から報告されました「人事訴訟法案要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申をすることにいたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題がございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただきますよう,お願いいたします。  続きまして,本日の第3の議題であります「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴う罰則等の整備に関する諮問第58号」につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会の部会長を務めました○○です。  私から,同部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  諮問第58号は,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の締結に伴う立法措置に関し,要綱(骨子)についての意見を求めるものでございましたが,当審議会が昨年9月3日開催の第137回会議におきまして,まず部会に検討させる旨の決定をなさいました。これを受けまして当部会が設けられ,当部会では9月18日,10月9日,11月1日,11月21日及び12月18日の5回にわたりまして,諮問に付された要綱に沿って審議を進め,各論点について議論し,その要綱(骨子)を一部修正の上,諮問第58号については,「諮問第58号に関する要綱(骨子)」のように罰則等を整備することが相当である旨,決定いたしました。  私を除く出席委員14名のうち,賛成13名,反対1名の賛成多数により,ただいま申し上げた結論に達したわけであります。  その要綱は,お手元に配布されている資料「刑1 諮問第58号に関する要綱(骨子)」として配布されているものであります。  それでは,当部会における議論の概要につきまして御説明申し上げます。  要綱(骨子)の第一,これは組織的な犯罪の共謀の罪を設けるというものであります。これは,条約が重大な犯罪を共謀すること,又は組織的な犯罪集団の活動に参加することの一方又は双方の犯罪化を義務付けていることに伴うものでありまして,前者,すなわち重大な犯罪の共謀を選択することとし,その処罰行為の要件やその法定刑について議論がなされました。  なお,条約上「重大な犯罪」とは,「長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重大な刑を科することができる犯罪」と定義されており,我が国では死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役あるいは禁錮に当たる罪がこれに該当いたします。  まず,そもそも条約は,一般に,性質上国際的なものであり,かつ組織的な犯罪集団が関与する犯罪に適用されるとされていますから,共謀の犯罪化に当たっても,性質上国際的なものに限定すべきである,こういう意見が出されましたが,共謀罪の犯罪化に当たっては各締約国の国内法において,国際的な性質とは関係なく定めると条約に明確に規定されている上,我が国の法益を侵害するおそれのある行為であるにも関わらず,国際的な性質があるものに限って処罰するとの立法政策は採り得ないといった意見が出され,犯罪化に当たっては国際的な性質とする要件は付されないことになりました。  処罰対象となる行為につき,当初案では,「共謀」とされていたのに対して,共謀共同正犯における共謀と同義とすべきではないなどといたしまして,「共同して謀議する」とすべきであるという修正意見が出されましたが,現行法上も「共謀」と表現されており,また判例上共謀共同正犯における共謀の概念が確立しているのであるから,「共謀」という用語を用いるのが適当であるという意見が大勢を占めたのであります。  次に,当初案は,条約上,「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を付することが許容されていることから,重大な犯罪の共謀を一般的に犯罪化するのではなく,現在の組織的犯罪処罰法において,組織的な犯罪の加重処罰等の特別の規制を行うために用いられている「団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるもの」又は「団体に不正権益を得させ,又は団体の不正権益を維持し,若しくは拡大する目的で行われるもの」という要件を付して,その成立範囲を違法性の高いものに限定することとされていました。これに対し,後者の不正権益関連の目的の要件については,必ずしも条約の義務ではないとし,更に共謀罪の成立範囲を限定すべきであるとの意見が出され,不正権益関連目的の共謀を設けるべきではないとの修正提案もなされましたが,不正権益関連目的の犯罪は,暴力団の縄張り等の維持・拡大等を目的とするものであって,組織的な犯罪集団の関与する典型的な犯罪であることなどから,これを要件とする共謀も処罰すべきであるという意見が大勢を占め,当初案どおりとすることが相当とされました。  なお,この点に関し,用語の意義を明確にするため,要綱(骨子)第一の中の「団体」,「団体の活動」,「組織」及び「不正権益」の用語の意義は,組織的犯罪処罰法におけると同様であることを要綱(骨子)に明記することとされました。  次に,共謀の犯罪化の範囲について,条約の文言に即し,「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的」で行われる場合に限定すべきであるとの意見が出され,その旨の修正提案もなされました。この提案に対しては,条約にいう「物質的利益」は,非常に広い概念である上,新設する共謀罪には先ほど述べたような組織的な犯罪集団の関与の要件が必要であるとされており,通常,条約が規定するような利益を得る目的も認められると考えられること,この組織犯要件は違法性が特に高い場合であるから,国内立法としては,仮に条約にいう目的のない場合であっても等しく処罰すべきであることから,当初案が相当であるとされたのであります。  また,条約は,犯罪遂行の合意だけで処罰することを原則としつつも,「合意を促進する行為」という要件を付加することを認めているから,処罰範囲を可能な限り限定すべく,謀議に加わった者が「犯罪行為の遂行のためにする行為を行った場合」という要件を付すべきであるという修正意見が出ました。これに対しては,そもそも条約が共謀の犯罪化に当たり「合意を促進する行為」という要件を付することを認めているのは,共謀罪の成立にいわゆるオーバート・アクトと呼ばれる行為を必要とする英米法系の国に配慮したものであると考えられ,我が国の法制にはなじまないこと,現行法上の共謀罪においては,一般に共謀に加えてこの種の行為が要件とされていないこと,当初案には組織的な犯罪集団の関与の要件がかけられており,その成立範囲は実行される危険が高いものに限定されており,処罰範囲が不当に広がるおそれはないこと等の理由に照らし,このような要件を付することは相当ではないとされたのであります。  次に,法定刑については,当初案では,死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる犯罪の共謀については5年以下の懲役又は禁錮とし,その他の犯罪の共謀については3年以下の懲役又は禁錮としていましたが,現行法上の組織的営利誘拐の予備罪の法定刑が2年以下の懲役であるのに対して,同じ組織的営利誘拐の共謀罪の法定刑が5年以下となるのは均衡を失するのではないかという意見や,刑の減軽は,刑の長期を基準にして行うのであるから,対象となる犯罪の刑の長期を基準に区分するのが適当であるとの意見が出された結果,修正案のように,死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪と,それ以外の罪に二分することとし,重い犯罪の共謀については5年以下の懲役又は禁錮,軽い方の犯罪の共謀については2年以下の懲役又は禁錮とすることになったのであります。  次に,要綱(骨子)第二は,条約が重大な犯罪や条約が犯罪化を求める犯罪に関する手続において,偽証させ,又は証言若しくは証拠の提出を妨害するため,不当な利益を供与することなどを処罰することを義務付けていることを踏まえて,証人等に対する買収行為を犯罪化するものであります。  処罰行為の要件に関し,「虚偽の証言をさせ又は証言若しくは証拠の提出を妨害するために」という条約の文言を用いて規定すべきであるとの修正意見が出されましたが,我が国の法制度を前提として,処罰の対象を明確に表現すべきであるとして,当初案どおりとすることが相当とされました。  また,要綱(骨子)第二の二は,証人等買収の対象となる刑事事件が,組織的な犯罪集団が関与するものである場合,組織的犯罪処罰法第7条が組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等を加重処罰しているのと同様,これを加重処罰するものであります。条約上の義務ではないから,加重処罰は必要ないとの意見が出され,これを要綱(骨子)から削除すべきであるとする修正提案もなされましたが,現行の組織的犯罪処罰法との整合性等を考慮し,当初案どおりとすることが相当とされました。  次に,要綱(骨子)の第三は,犯罪収益規制等の規定の整備であり,三つの事項が含まれます。  その一つは,犯罪収益の前提犯罪を拡大するものであり,条約が原則として重大な犯罪と条約が犯罪化を求める共謀罪,贈収賄罪,司法妨害罪を前提犯罪に含めることを義務付けていることに対応するものであります。  この点については,平成9年の組織的犯罪処罰法を立案する際の法制審議会刑事法部会においては,議論の結果,前提犯罪を選別して列挙する方式とすることとしたのであるから,今回も重大な犯罪を一律前提犯罪とするのではなく,列挙方式を維持すべきであるとの意見も出され,その旨の修正提案もなされました。これに対しては,条約が原則としてすべての重大な犯罪を前提とすることを義務としており,国際機関の勧告にとどまっていた当時とは国際的な情勢が決定的に変化していることや,列挙方式ではなく,一般的に前提犯罪を規定しても,「財産上の不正な利益を得る目的」という要件が加えられていることから,具体的な案件における犯罪収益は適切な範囲に限定されることになるということなどを踏まえまして,当初案が相当であるとされたのであります。  要綱(骨子)第三の二,三に関しては,特段の異論はございませんでした。  最後に,要綱(骨子)の第四は,国外犯処罰規定の整備です。  条約は,重大な犯罪又は締約国に犯罪化を義務付けている犯罪であって,組織的な犯罪集団が関与するものを犯罪人引渡の対象犯罪とし,締約国が自国民であることを唯一の理由として引渡を行わない場合の裁判権設定義務を課しています。我が国は,いわゆる自国民不引渡の原則を採用していることから,引渡の対象犯罪につき,自国民を処罰できるよう,国外犯処罰規定の整備を行う必要がありますが,具体的には立案段階において関連する規定を精査し,条約上の義務を履行するため,必要な範囲内で国外犯処罰規定を整備することとされました。  また,現行刑法の贈賄罪には国外犯処罰規定がありませんが,交通が発達し,国際的な人の移動が日常化した今日,収賄の国外犯が処罰されることとの不均衡は否定し難く,国外における国民による贈賄行為の処罰は,条約の贈収賄の犯罪化の趣旨にも沿うものであることから,贈賄罪につき,国民の国外犯処罰規定を設けることが相当であるとされたのであります。  概略以上のような審議に基づき,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の締結に伴う罰則等の整備については,本日配布されております「諮問第58号に関する要綱(骨子)」のように罰則等の整備を行うことが相当である旨,賛成多数で決定されたことは先ほど申し上げたとおりであります。  以上で,刑事法部会における審議の経過及び結果の御報告を終わらせていただきます。 ● どうもありがとうございました。  それでは,ただいまの○○部会長の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。  御質問がございませんようですので,次に御意見を伺いたいと存じます。 ● 一番初めの共謀というのが何か分かりにくくて,いろいろな場合,意図を超えてそうなっていた場合なんていうのは結構ありまして,テロリズムに対する犯罪の活動なんかを見ますと,何となく,例えば日本の社会も共謀じゃないけれども同じ方向に行っている場合なんか結構ありまして,こういう点難しいかなと思うのですね。  それから,どういうふうにしたらいいかというの,何かもうちょっとエラブレイトな感じがあった方がいいかなと。  最近,カンボジアでは反対暴動みたいなものがありましたけれども,ああいう少数民族とか,あるいは経済的にあるいはその他でのさばっている少数グループに対して爆発するのは,昔からどこでもあるのですけれども,中東で,ロシアとか何かでユダヤ系に対するものすごい虐殺なんか,10年に一遍ぐらいありましたし,ベトナムで反中国系のビジネスのをまた虐殺するというの,10年か20年,結構でっかいのがいつも――いつもというか,20世紀でも何回もありましたし,今度もだからそういうふうな感じがある。ただそういうときは,共謀というような感じはしないし,組織といっても何だか分からないけれども,でも何かあるような感じがする場合も結構あって,何か要綱第一の「組織的な犯罪の共謀」ですけれども,この共謀というのは何か余りにも――余りにもというか,思いついたような例について考えると,何ともこれは当てはまらなくなってしまうので,余り人畜無害な第一の一になっているのじゃないかなという気もしないでもない。何だかよく分かりません。  これは質問になって済みません。 ● 共謀という概念は,確かに○○委員がおっしゃいましたように非常に多義的な言葉であるし,同時にまた我が国においては共謀共同正犯という概念が,条文にはなかったのですけれども,判例上次第に固まってきているわけですね。  それから,○○委員は生まれていらっしゃったかどうか分かりませんが,極東国際軍事裁判のときに,「共同謀議」という言葉がいきなり出てきて,日本人は戸惑ったなんていう経緯がいろいろあります。そういうことを踏まえて,事務局の方から御紹介していただければと思います。 ● ここで申しております共謀は,いわゆる日常用語としてお使いになる共謀ではございませんで,刑事法の関係で既に判例等で確立された概念として使用されているものでございます。したがいまして,特定の犯罪の実行というものについての具体的危険性と申しますか,そういった合意であるということを考えておるわけでございます。それにつけ加えまして,ここでの組織性と申しますのも,普通に日常用語で使います組織性ではなく,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の中にうたわれておる用語でございます。  また,不正権益につきましても,これだけ見ますとどういうものだろうかと思われるかもしれないのでございますが,これにつきましても,やくざの縄張りということを例で挙げさせていただいておりますけれども,同じ法律に定義規定が設けられておりまして,いずれもこのような厳格な要件のもとに共謀罪を設けるのが相当とされたということでございます。 ● ほかに御意見ございませんでしょうか。  御意見がございませんようですので,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますか。  特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,御反対の方,挙手をお願いいたします。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は13名でございます。反対の委員はいらっしゃいませんでした。議長を除くただいまの出席委員は,14名でございます。 ● 原案に賛成の委員が多数でございますので,刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申をすることといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただきますよう,お願いいたします。  続きまして,休憩前の最後の議題であります強制執行を妨害する犯罪等に対する罰則の整備に関する諮問第59号につきまして,御審議をお願いしたいと思います。  まず,刑事法(強制執行妨害犯罪等処罰関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもいらっしゃいます○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 部会長の○○でございます。私から,同部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  諮問第59号は,強制執行を妨害する犯罪等に関する罰則を整備するために刑法を改正する必要があると思われることから,要綱(骨子)についての意見を求めるというのでございましたが,当審議会が昨年9月3日開催の第137回会議におきまして,まず部会に検討させる旨の決定をされました。  これを受けまして,刑事法部会が設けられまして,当部会では,10月7日,11月18日,12月16日,そして本年の1月27日の4回にわたりまして,諮問に付されました要綱(骨子)に沿って審議を進め,各論点について議論をいたしました。  その結果,要綱(骨子)を一部修正の上,諮問第59号については要綱(骨子)のように刑法を改正することが相当である旨の決定をいたしますとともに,附帯決議のように組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律をも改正することが相当である旨を決定いたしました。要綱(骨子)及び附帯決議につきましては,いずれも全会一致でただいま申し上げました結論に達したものでありまして,その要綱(骨子)及び附帯決議は,お手元に配布されてあるものでございます。  それでは,当部会における議論の概要につきまして,配布されております要綱(骨子)を参照しながら話を進めさせていただきたいと存じます。  まず,要綱(骨子)一でございますが,当初案は「封印又は差押えの表示を無効にした」と規定しております現在の刑法第96条の封印等破棄罪の構成要件を,「封印の命令若しくは処分又は差押えを無効にした」と改めることによりまして,封印又は差押えの表示が違法に除去された後において妨害行為に及んだ者についても処罰できるようにしようとするものでありまして,その趣旨につきましては,当部会においても異論等はございませんでした。  しかし,現在の刑法第96条では,封印等を損壊する行為は,それ自体として処罰の対象になることが明らかな規定ぶりになっておりますのに対しまして,当初案の規定ぶりでは,封印等を損壊するという行為が封印の命令若しくは処分又は差押えを無効にする行為の例示のような体裁になっておりまして,封印等を損壊しても,それだけでは当然に処罰の対象にならないのではないか,そういう疑義が生ずるおそれがある,そういう意見が大勢でありましたことから,当初案の規定ぶりの一部を「封印又は差押えの表示を損壊し」という,現行法と同様に修正するほか,これに伴います技術的な修正を施すべきであるといたしまして,修正案を取りまとめた次第でございます。  次に,要綱(骨子)二の規定でございますが,当初案は,現在の刑法第96条の2の強制執行妨害罪における処罰の対象とされている財産の損壊,隠匿,仮装譲渡及び仮装債務負担の四つの行為類型に加えまして,(一)におきまして,占有屋が仮装の占有権原を主張しているものの,債務者との通謀等が認められないというような事案を,これを処罰対象に取り込むために,「仮装の債務を負担した」との文言を「債務の負担を仮装した」というように改めるとともに,(二)におきまして,廃棄物の搬入等によります強制執行の目的財産の物的状況を変化させることによりまして,その価値を減少させ,あるいは強制執行の費用を増大させる行為につきまして,また(三)におきましては,金銭債権の債務者等が強制執行の引当てとなるべき財産につき,無償又は低額で譲渡してしまう,こういう行為についてそれぞれ新たに処罰対象に取り込もうとするものでありました。  当部会での審議におきまして,当初案の方向性そのものにつきましては異論等はございませんでした。ただ,そのうち(二)につきましては当初案のとおりに決定されたのでございますけれども,処罰対象としてとらえようとする強制執行の進行を阻害する行為のうち,主として物に対して行われるものの範囲について,当初案ではまだ不足の部分があるのではないかという観点から議論が重ねられました。その結果,(一)につきましては,現行法の「仮装譲渡し」との文言につきまして,債務者との通謀等が認められない事案も処罰対象になることを明らかにするために,当初案の「債務の負担を仮装した」との規定ぶりに倣って,「その譲渡を仮装し」と改めるべきものとされました。また(三)につきましても,当初案のように,「譲渡」のみが処罰対象になっていますと,例えば金銭執行の引当財産になるべき債務者所有の一等地に,社会通念とはかけ離れたような低廉な地代で長期の存続期間の地上権を設定するなどして,その引当財産としての価値を減損してしまうような脱法行為が生ずる危険性が極めて高い,そこでそのような脱法行為の道をあらかじめ封じておく必要があるという意見が大勢でございました。そこで,譲渡のほか,「権利の設定」が処罰の対象として新たに加えられましたが,その場合,問題になりますのは,当初案のような「無償又は低廉で」という対価の点だけではないと考えられますことから,これにつきましては「無償その他の不利益な条件で」と改め,これらに伴って技術的な修正を加えた上で,修正案を取りまとめた次第でございます。  次に,要綱(骨子)三の規定でございますが,当初案は,執行官や債権者など,人に対して向けられた強制執行の進行を阻害する行為を新たに処罰しようとするものでありまして,そのうち1は,「暴行又は脅迫」を要件とする刑法第95条の公務執行妨害罪等の規定では処罰できない,執行官等による強制執行の現場における執行行為に対して行われます「偽計又は威力」を手段とする妨害行為を,処罰対象に取り込もうとするものであります。  また2は,人の意思の自由を保護法益とする刑法第223条の強要罪などの規定で十分には処罰できないような,強制執行の申立てをさせない目的等により債権者等に対して暴行や脅迫を加える行為を処罰しようとするものでありました。  この当初案の方向性につきましても,当部会での審議におきましては異論がございませんでしたが,1につきましては,執行裁判所の裁判作用を保護対象としていないのはなぜか,また,「強制執行の行為」との規定ぶりで,執行官等による強制執行の現場における執行行為を指すものと理解できるかなどの論点につきまして議論が重ねられたところでございます。その結果,執行裁判所の裁判作用に対する妨害行為につきましては,強制執行妨害の問題とは別個に,司法妨害一般の問題として別途検討するのが相当であるとの当初案の考え方が支持されました。しかし,「強制執行の行為」との文言が,執行官等による強制執行の現場における執行行為を指すものとして,果たして十分であるかという点につきましては,当初案ではなお疑義なしとしないという意見がありましたために,この種行為の典型とも言えます「立入り」を例示として追加するとともに,判断の結果というニュアンスの用語であります「特定」という文言につきましても,これをより行為としての語義が明確な「確認」という文言に改めることとして,修正案を取りまとめた次第でございます。  一方,2につきましては,処罰対象となるのは当初案のように「暴行を用い,又は脅迫した」という行為だけで足りるのかという論点について議論が重ねられまして,これを「強談威迫の行為をした」,あるいは「偽計又は威力を用いた」というふうに拡張してはどうかという対案も検討されたところでございます。しかし,2の規定は,債権者と債務者との関係において適用される例が少なくないのではないかと思われることもございまして,処罰対象とする行為の手段についてはもっと限定すべきであるという意見が大勢を占めましたところから,結論といたしましては当初案を維持するということになった次第でございます。  次に,要綱(骨子)四の規定でございますが,これは現在の刑法第96条の3においては処罰できないものとされていた競売開始決定前における将来の競売手続の公正を害すべき行為を処罰対象に取り込むものでありますが,更に「競売又は入札」との現行法の規定では保護対象になるのか問題となり得るいわゆる特別売却,この特別売却も保護対象になることを明らかにするために,この文言を「売却」と改めるものでありまして,これにつきましては当部会の審議におきましても特段の異論等はありませんでした。  次に,要綱(骨子)五の規定でございますが,これは職業的な執行妨害勢力が行っております悪質執拗な執行妨害実態に照らしまして,この種の執行妨害につきましては加重処罰の対象にすべきであるとの趣旨によるものでありまして,そのような加重処罰をすることにつきましては,当部会での審議において異論はございませんでした。むしろ職業的な執行妨害という実態のとらえ方につきまして,当初案がそのような職業的勢力の利得の源泉という観点から,「報酬を得る目的」,「人の債務に関し」との要件を設けている点につきまして,主として債務者側から得られるものと考えられます報酬以外にも,この種勢力が利得の源泉としているものがあるのでありまして,このような場合にも加重処罰の対象にすべきではないかという点に議論が集中いたしました。しかし,報酬以外の利得の形態につきましては,職業的な妨害勢力による執行妨害以外の場合にも少なからず見受けられますし,あるいは加重処罰の要件となり得る法的な根拠づけにも難点がある,そうした観点から利得の源泉というとらえ方のもとで,当初案以上に加重処罰の範囲を拡張することは困難であるという意見が大勢を占めましたところから,当初案をそのまま採用した次第でございます。  次に,要綱(骨子)六の規定は,現在の刑法第96条の3の中から,強制執行に関するものが要綱(骨子)四に抜き出されましたために,それ以外の公共事業における競争入札など,契約を締結するための公の競売又は入札の公正を害すべき行為について,現行法の処罰範囲を維持するものでありまして,これにつきましても当部会での審議におきましては,特段の異論等はございませんでした。  最後に,附帯決議について御説明申し上げます。  要綱(骨子)五の加重処罰規定につきまして,当初案をそのまま採用しました経緯につきましては先ほど御説明申し上げたところでございますが,その一方,当部会での審議では,職業的な執行妨害勢力の実態につきましては,その利得の源泉という側面からのみならず,この種勢力が行います執行妨害行為の組織性という側面からとらえることも可能であって,そのような観点からの加重処罰規定も設けるべきではないかという意見が大勢を占めました。そこで,そのような組織性を加重処罰の要件とする,いわゆる組織的犯罪処罰法において,要綱(骨子)一から四の罪についても加重処罰すべきであるとの結論に至ったわけでございますが,諮問第59号は,改めて申すまでもなく刑法の改正についての答申を求めるものでございまして,いわゆる組織的犯罪処罰法の改正につきましては,諮問に対する答申の範囲を超える,そういう理由から,答申としての要綱(骨子)とは別に,附帯決議の形式で当部会の見解を取りまとめたものでございます。  概略以上のような審議に基づきまして,諮問第59号につきましては要綱(骨子)のように刑法を改正することが相当であるとともに,附帯決議のように組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律をも改正することが相当である旨,全会一致で決定されたものでございます。  以上で,簡単でございますが当部会における審議の経過及び結果の御報告を終わらせていただきます。 ● どうもありがとうございました。  それでは,ただいまの○○委員の御報告,要綱案及び附帯決議の全般的な点につきまして,御質問がございましたら御発言をお願いいたしたいと思います。 ● ただいまの御説明の附帯決議の扱い方がどうなるのか,これが内容的には熟しておるけれども,刑法の改正を諮問された諮問の範囲でないということでございましたら,諮問58号で組織犯罪処罰法の改正がされるのであれば,その中で一緒にやるとか,そういうふうなことが考えられているのか,それともこれはまた改めて別の機会を待って改正をしようという御趣旨なのか,そのあたりいかがでございましょうか。 ● この附帯決議の趣旨につきましては,○○委員から御説明があったとおりでございまして,内容的には固まっております。ただ,諮問自体が刑法の改正といったことであったがために附帯決議ということになったわけでございますが,今回の法改正につきましては,先ほどございました国連組織犯罪条約の関係での法改正が,組織的犯罪処罰法などの観点からなされることになりますので,その際,あわせてこの附帯決議に沿った立案作業をも進めさせていただきたいと考えております。 ● ほかに,何か御質問ございませんでしょうか。 ● 今の○○委員と同じ趣旨の質問ですが,これは新しい例だと思いますが,過去にこういう例があったのか,少なくとも法制審議会の改組があった以降は最初じゃないかというふうに私は思いますが,その点はいかがでございましょうか。 ● 本来,これは法制審議会の事務を担当しておられるところの方がお詳しいかと思われますが,改組されましてからは委員御指摘のとおり初めてでございますが,過去には例はあったと記憶しております。 ● 私の御質問は,これは諮問事項が具体化されまして,そしてその具体的な諮問事項に対してこたえるというのが新しい法制審議会の一つの基本的な立場で,その点が前と違った点であるというふうに考えますと,確かに諮問事項プラスアルファについてこの総会で決めているということは,その趣旨との関連で多少いかがなものかと。これは別個のルート,あるいは別個の問題として処理すべきなのではないかという気がちょっとしたものですから,そのような質問をしたわけでございまして,それでいいのだというふうな御趣旨で全委員の御意見がそうでありましたならば,私は全く異論を差し挟むことはないのですけれども,そういう諮問の趣旨とやや違うのじゃないかという気がちょっとしたものですから質問したわけです。 ● 特に刑事関係の諮問につきましては,諮問段階から要綱(骨子)を示させていただいて,なおかつ刑法であれば刑法という形で,その刑法の中における様々な用語の使い方でございますとか,整合性等も踏まえた上で御審議をいただきたいということがあるわけでございまして,どの法律をどのように変えることについての御意見という具体的な特定をいたしませんで諮問させていただきますと,恐らく○○委員がおっしゃっているような今回のような附帯決議の問題は生じてまいらないのかもしれませんが,このように要綱(骨子)という形で諮問の中に変えるべき点を具体的に法律名も特定した上で諮問させていただいたがために,こういう附帯決議をいただいたということでございます。これは部会におきます審議の結果として,刑法について諮問させていただきましても,それ以外関係する法律について必要な改正事項があるということで,附帯決議という形でお考えをお示しいただいたものと受けとめております。 ● よろしゅうございますか。 ● 分かりました。そうしますと,要綱案を示したという諮問についてはこういうものが必要になってくる,今回はその例であると,このように理解してよろしいわけですね。 ● これは,あくまで刑法と特定いたしました上で,なおかつ要綱案(骨子)という形で諮問させていただきましたので,立法形式としてそれを超える法律の部分についての改正について御意見をいただいたものですので,このような形とならざるを得なかったということでございます。 ● そういたしますと,こういう部会からの答申をいただいた中には,附帯決議という形,この法制審議会として決定いたしますときには,そのときも附帯決議なのか,それともこの趣旨を決議の中に本文と同じ扱いで入れるようなことになるのか,そのあたりはいかがでございましょうか。 ● まず,お答えになっているかどうか分かりませんが,今の附帯決議の取扱いについては,附帯決議が付せられた部会の御決定を総会として御承認いただくということになるのではないかと思います。  従来の例について参考までに申し上げますと,法制審議会において,もちろん組織改編後には例はないわけですが,これまで103件の答申がなされておりますが,そのうち8件の答申を行うに際して附帯決議といいましょうか,要望事項を併せてちょうだいしていることになっています。  これまでの附帯決議の内容は,いずれも,その後の関連法律の立案等に反映されたり,あるいは要望事項に関係する関係機関に法務省からお伝えしたり,案件に応じて様々な対応をとっているところでございます。 ● ほかに御質問ございませんでしょうか。  御質問がございませんようですので,次に御意見を伺いたいと存じますが,御意見ございませんでしょうか。  御意見がございませんようですので,採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。  採決の方法でございますが,先ほどから議論になっております附帯決議につきましては,諮問に対する答申ということを超えて立法措置を求めるものでございますので,そのような立法措置を法制審議会として求めるかどうかということになります。そこで,答申と附帯決議は別個に採決を行いたいと存じますが,いかがでございましょうか。――御異議ございませんか。  特に御異議がないようでございますので,そのようにさせていただきます。  まず,要綱案につきまして採決を行いますが,よろしゅうございますか。  御異議はないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,刑事法(強制執行妨害犯罪等処罰関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 念のため,御反対の方の挙手をお願いいたします。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は13名でございます。議長を除くただいまの出席委員は13名でございます。 ● 採決の結果,出席者全員が賛成でいらっしゃいますので,刑事法(強制執行妨害犯罪等処罰関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申をすることといたします。  次に,附帯決議につきまして採決を行いたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。  御異議がないようでございますので,そのようにさせていただきます。  それでは,刑事法(強制執行妨害犯罪等処罰関係)部会において決定されました文案のとおり附帯決議をすることに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対の方はいらっしゃいませんでしょうか。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  附帯決議をすることに賛成の委員は13名でございます。議長を除くただいまの出席委員は13名でございます。 ● 採決の結果,出席者全員が賛成でございますので,この文案のとおり附帯決議することに決しました。  なお,今後要綱を条文にいたします場合には,立法技術などの問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただきますれば幸いでございます。よろしくお願いいたします。  今日は盛りだくさんの議事でございますが,ここまで本当に長時間にわたり御審議をいただきましたので,少し休憩をいたしたいと思います。             (休     憩) ● それでは,審議を再開いたします。  本日の第5の議題であります,日本国外において日本国民が被害者となった犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第60号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず,刑事法(国民に対する重大な犯罪に係る国外犯処罰規定整備関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもいらっしゃいます○○部会長から御報告をお願いいたしたいと思います。 ● 刑事法(国民に対する重大な犯罪に係る国外犯処罰規定整備関係)部会の部会長の○○でございます。同部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  諮問第60号は,日本国外において日本国民が被害者となった犯罪に対処するための,刑法の一部改正に関し,要綱(骨子)についての意見を求めるものでございましたが,当審議会が,昨年12月11日開催の第138回会議におきまして,まず,部会において検討させる旨の決定をされました。これを受けまして,当部会が設けられ,当部会では,1月15日及び1月24日の2回にわたり,諮問に付された要綱(骨子)について審議を進め,各論点について議論し,諮問第60号については刑法を要綱(骨子)のように改めることが相当である旨,決定いたしました。私を除く出席委員12名のうち,賛成10名,反対2名の賛成多数により,ただいま申し上げた結論に達しました。その要綱(骨子)は,お手元に配布資料「刑3 諮問第60号に関する要綱(骨子)」として配布されてあるものであります。  それでは,当部会における議論の概要につきまして,御説明申し上げます。  要綱(骨子)は,日本国民に対し,一定の重大な犯罪を犯した者に刑法を適用するとするものでございますが,日本国外で日本国民が犯罪の被害に遭った場合に,国民保護の見地から,我が国の刑法を適用するものとする刑法改正の必要性について,まず議論がなされました。  現行刑法の制定当時には,刑法第3条に第2項があり,国民の国外犯を規定する同条第1項に定められた罪につき,日本国外で日本国民に対してこれらの罪を犯した外国人についても刑法の適用を認める旨定めておりましたが,この第3条第2項は,昭和22年の刑法改正の際に削除されたという経緯がございます。  この点につきまして,当時の第3条第2項の削除の趣旨は国際主義にあり,現時点で国民保護主義に基づく国外犯処罰規定を設ける必要性があるかとの問題提起がなされました。しかし,昭和22年の刑法改正当時と現在とでは事情が異なり,日本国民の活動の場が国外に広がり,日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増大している現状にがんがみれば,国外にいる自国民を保護するという観点から,日本国外において日本国民が重大な犯罪の被害に遭った場合に適切に対処できるようにするため,刑法を改正して,その適用を認めるものとすることには十分な理由があるなどの意見が出され,国民保護の見地から,要綱(骨子)のように一定の重大な犯罪について刑法に国外犯処罰規定を設けることが相当とされました。  次に,要綱(骨子)には,日本国外において日本国民に対して犯した場合に刑法を適用するものとする対象犯罪として,強制わいせつ及び強姦の罪,殺人の罪,傷害の罪,逮捕及び監禁の罪,略取及び誘拐の罪,強盗の罪が掲げられております。これらの対象犯罪は,国民保護という本改正の趣旨から,個人的法益に対する罪に限ることとした上で,「個人の尊厳」の根幹である人の生命・身体並びにこれらに準じる身体活動等の自由及び性的自由を保護法益とする罪が,国民の国外犯を定める刑法第3条に規定する罪の範囲内で選択されております。これに対しましては,不同意堕胎の罪や保護責任者遺棄等の罪も対象犯罪とすべきではないかなどとの意見が出されましたが,本改正が国民保護の見地からの緊急の改正であることなども踏まえて,対象犯罪は要綱(骨子)のとおりとすることが相当とされました。  さらに,要綱(骨子)を前提とした上で,国際協調の精神を尊重することが不可欠であり,犯罪人の引渡請求を実効あるものとする趣旨から,次のような要件,すなわち,行為地法による処罰(その行為が行為地の法律によっても犯罪となるものであること。),軽い法の原則(行為地においてその行為に該当する罪について定めた刑を超えないものとすること。),死刑適用に関する特則(行為地においてその行為に該当する罪の刑について死刑が定められていないときは,死刑を適用しないものとすること。),二重処罰の禁止(外国において確定裁判を受けた者については,同一の行為で更に処罰されないものとすること。)の各要件を付すべきである旨の修正提案がなされました。  まず,「行為地法による処罰」の要件,いわゆる双罰性の要件ですが,これに対して,国民保護の観点からは,この要件は必ずしも必要ではないという意見や,要綱(骨子)では対象犯罪を普遍的な犯罪に限定することで双罰性への実質的配慮がなされているとも言えるので,それ以上に双罰性の要件を付する必要はないなどの意見が出され,このような要件を付することは相当ではないとされました。  次に,「軽い法の原則」の要件に対しては,理念上このような要件は必要ではないという意見や,このような要件を設けるとすると,外国の構成要件を解釈して法定刑を確定し,刑の軽重を判断することとなり,実務上の困難が危ぐされるなどの意見が出され,このような要件を付することは相当ではないとされました。  また,「死刑適用に関する特則」の要件に対しては,「軽い法の原則」に包摂されるものであるとの意見や,犯罪人の引渡請求を実効あるものとする趣旨といっても,刑法の適用が認められるすべての事件について犯罪人の引渡しを請求するわけではなく,刑法の適用範囲を定める国外犯処罰規定にこのような特則を設けるべきではないとの意見,さらに,死刑の存廃そのものにかかわるもので,国外犯処罰規定とは別の問題であるなどの意見が出され,このような要件を付することは相当ではないとされました。  最後に,「二重処罰の禁止」の要件に対しては,行為地国における現実の処罰が国際的に見ても容認し難い場合があるから,外国判決に一事不再理効を認めることには問題があるとの意見や,国際受刑者移送法においても外国判決と同一の行為につき,公訴の提起がなされ得ることを前提としており,これが国際主義に反するとは言えないなどの意見が出され,このような意見を付することは相当ではないとされました。  概略以上のような審議に基づき,日本国外において日本国民が被害者となった犯罪に対処するための刑法の一部改正については,本日配布いたしました諮問第60号に関する要綱(骨子)のように,刑法を改めることが相当である旨,賛成多数で決定されたものであります。  なお,本改正は,直ちに適用対象となる事例が多数あるという性質のものでは必ずしもないとはいえ,国民が国外で活動する場が飛躍的に拡大している状況のもとで,個々の国民を保護するという我が国の意思を示すという意味においても,十分な理由と必要性があると考えられるものであります。  また,先ほど御説明いたしました修正提案で示された点につきましては,刑法における国外犯処罰規定全体の在り方にかかわる問題であると思われますところ,事務当局の方からも,諸外国の法制や運用の実情等を含めて様々な観点から調査研究した上でその是非を検討すべき事柄であるとの認識を示されたものでございます。  以上で,刑事法部会における審議の経過及び結果の報告を終わります。よろしく御審議をお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。  それでは,ただいまの○○部会長の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いいたします。 ● 部会の採決の報告の中で,反対という意見の方があったというように先ほど伺いましたけれども,この全体的な改正については基本的には賛成をしている上で,修正提案をしたという形で受け取ってよろしいですか。  要するに,必ずしも真正面から反対ということではなくて,修正案を採用されなかったために反対の意思表示をしたのだというような形で私の方は報告を受けておるものですから。その点はいかがなんでしょうか。 ● 部会長報告としては,賛成10名,反対2名の賛成多数という結果の報告にとどめたいと思います。 ● もとの原案自体について,対案と申しますか,それを否定するという形ではなしに,修正提案という形で,ある意味でいわば条件を付するべきではないかという御提案でございましたので,私自身,その御提案なさった方の真意は分かりかねますけれども,○○委員おっしゃったような理解も当然できる御提案ではなかったかと思われます。 ● よろしゅうございますでしょうか。  ほかに御質問ございませんでしょうか。  御質問がそのほかにございませんようですので,次に御意見を伺いたいと存じます。  御意見がございませんようですので,原案につきまして採決に移りたいと存じますがよろしゅうございますでしょうか。御異議ございませんか。  御異議がございませんようですので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,刑事法(国民に対する重大な犯罪に係る国外犯処罰規定整備関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。             (賛 成 者 挙 手) ● 反対の方は挙手をお願いいたします。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は12名でございます。反対の委員はいらっしゃいませんでした。議長を除くただいまの出席委員は13名でございます。 ● 採決の結果,賛成者多数でございますので,刑事法(国民に対する重大な犯罪に係る国外犯処罰規定整備関係)部会から報告されました「要綱(骨子)」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採択されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただきますようお願いいたします。  それでは,本日の最後の議題であります国際私法の現代化に関する諮問第61号につきまして,御審議をお願いいたしたいと存じます。  まず初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● それでは,諮問第61号を朗読させていただきます。  諮問第61号    国際私法に関する法例の規定の現代化を図る上で留意すべき事項につき,御意見を承りたい。  以上でございます。 ● 続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由などにつきまして,事務当局から御説明願います。 ● それでは,私の方から諮問に関して御説明申し上げます。  渉外的な法律関係に適用します準拠法を指定するためのルールを定めております基本法である法例,これは明治31年に制定されて以来,平成元年に改正が行われた婚姻及び親子に関する部分を除きまして,本格的な見直しが行われていない状況にあります。  しかし,この100年の間の我が国を取り巻く社会経済情勢の変化には著しいものがあり,国境を越える取引や人の往来は,交通手段や情報通信手段の発達に伴い,その数が飛躍的に増加したのみならず,形態についても法例が制定された当時とは様相を異にするものになっております。例えば,近時は消費者契約や労働契約など,交渉力に差がある当事者間の法律行為について,特別な法制を持つ国が多くなっておりますが,法例は対等な当事者間における取引等を前提としており,そのような法制を念頭に置いたものにはなっておりません。  また,契約準拠法を定めるために,法例7条2項が用いている行為地概念は,とりわけ電子的な手段を用いてされる行為については有用とは言えないという問題も指摘されております。  さらに,債権譲渡の対抗要件に関する準拠法ルールを債務者住所地法とする法例12条の規定については,売掛債権等の国際的なバルクセールの障害になっているとの指摘もあり,政府の「規制改革3か年計画」において見直しを求められているところであります。  諸外国の立法動向を見ましても,まず契約準拠法の分野について,ヨーロッパ諸国は1980年にいわゆるローマ条約を締結し,これに合わせて各国の国際私法の改正を終えておりますし,他の分野についても相次いで準拠法ルールの整備を終えているところであります。また,2000年には韓国も世界的な動きを踏まえた新たな国際私法を制定するに至っております。このように,近年,諸外国において準拠法指定ルールの見直しが相次いだことから,我が国の準拠法指定ルールの中には,国際的な標準と整合しなくなっている部分が生じており,このまま放置すれば,渉外的法律関係の円滑と安全を確保するという目的を十分に果たし得なくなる可能性が懸念される状況になっております。  さらに,法例の規定は片仮名の文語体で表記されているため,国民に分かりにくいとの指摘もあります。  そこで,国際私法に関する法例の規定のすべてを国民に分かりやすい平仮名の口語体表記に改めるほか,その内容についても,渉外的法律関係をめぐる近時の状況及び諸外国の立法動向を踏まえ,平成元年において改正されなかった事項を中心に見直す必要があると考えられますので,このような国際私法に関する法例の規定の現代化を図る上で留意すべき事項について,法制審議会の御意見を伺う必要があると考えております。 ● それでは,ただいま御説明がありました諮問第61号につきまして,御質問がございましたら御発言ください。――御質問,ございませんでしょうか。  御質問がないようでございますので,次に諮問第61号の審議の進め方について,御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● ただいまの御説明を伺いましても,この諮問第61号につきましては,専門的,技術的な事項が大変多く含まれていると思いますので,新たに部会を設置して調査審議し,その結果を受けて更に総会で審議することにしてはいかがかと存じますが,いかがでしょうか。 ● ただいま,○○委員から,部会設置等の御提案がございましたが,これにつきまして御異議ございませんでしょうか。  御異議がないようでございますので,諮問第61号につきましては,新たに部会を設けて調査審議をすることに決定いたします。  次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事の指名に関しましては,会長に御一任願いたいと存じますが,御異議ございませんでしょうか。             (「異議なし」と呼ぶ者あり) ● それでは,この点は会長に御一任願うことといたします。  次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,「国際私法(現代化関係)部会」と呼ぶこととしたいと存じますが,いかがでございましょうか。――御異議ございませんか。  特に御異議がないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  総会委員として,諮問事項の中身について,ほかに御意見がございましたら御発言をお願いいたします。  それでは,この諮問につきましては部会で御審議をいただき,それに基づいて総会において更に御審議を願うということにいたしたいと存じます。  これで,本日御審議いただく事項は終了いたしました。  ここで,司法制度改革の進ちょく状況につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ● 私からは,現在開会中であります第156回国会に,司法制度改革推進本部から提出されることが予定されている法律案のうち,民事手続法に関連すると思われるもの3件について,この場で簡単に御報告させていただきます。  1点目は,いわゆる裁判迅速化法案についてでございます。本日,要綱が決定されました,民事訴訟法の一部を改正する法律案要綱及び人事訴訟法案要綱に関連する法整備と言えるものと思いますが,司法制度改革推進本部から2年以内の第一審訴訟手続の終局を目標とした裁判の迅速化のための新たな法律案を提出することが検討されております。  この法案の中身について,具体的には,まず審理期間の数値目標として,民事・刑事の訴訟手続について2年以内に第一審における手続を終了させることをうたっております。そして,この目標に従い,必要な制度の整備や体制の充実を図ることを基本的な考え方として掲げております。このような裁判所の手続の迅速化に関する国の責務,あるいは個別事件における裁判所や当事者等の責務についても規定することが予定されていると聞いております。  さらに,目標の達成をより確実に担保するため,裁判所における手続の迅速化に関する検証を最高裁判所が行うことなどの仕組みを設けることなどが検討されているところでございます。  2点目は,仲裁法制の整備でございます。皆様御承知のとおり,現在「公示催告及ビ仲裁手続ニ関スル法律」に定められております仲裁手続でございますが,これを現代社会のニーズに合わせるなどの観点から,この法律の全面的な見直しを行い,新たな仲裁の基本法を制定することが検討されております。  この法律案の立案の基本方針としては,国連総会の直属機関であります国際商取引法委員会が1985年に作成した「国際商事仲裁模範法」に沿った内容のものとすることが検討されております。例えば,新法においては,仲裁合意について,明確性確保のため,書面によってすべきものとすることなど,仲裁契約の方式,手続に関して所要の整備を行うことが検討されております。  なお,消費者保護,労働者保護の観点から,消費者及び労働者が仲裁契約を締結する場合について特例を設けることも検討されていると聞いております。  3点目は,いわゆる非常勤裁判官制度の創設についてでございます。これは,民事調停法及び家事審判法の改正により実現を図ろうとするものであって,民事調停,家事調停の分野において,いわゆる「非常勤裁判官制度」の創設を行おうとするものでございます。  御承知のとおり,現在,民事調停手続や家事調停手続は,裁判官が主宰するものとされておりますが,これに加え,一定の経験年数を有する弁護士の方々の中から,最高裁判所が非常勤の形態で任命した方にも,裁判官の権限と同等の権限を持って民事・家事の調停手続を主宰していただくことができるものとし,いわゆる弁護士任官を促進するための環境を整備することなどを目的とするものでございます。  これらにつきましては,いずれも民事基本法にかかわる法整備でありますことから,その具体的な内容につきましては,司法制度改革推進本部事務局から,今後,この法制審議会の場に御報告があろうかと思われます。したがいまして,本日は,この程度の簡単な御報告とさせていただきます。 ● ただいまの御説明につきまして,御質問がございますでしょうか。  では,ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたら伺いたいと存じます。本日の議題以外のことでも結構でございますが,ございませんでしょうか。 ● ちょっと手続問題で御質問したいわけでございます。  先ほど採決をしたときに,反対意見はなくて,しかし賛成意見にも加わらなかった票があるように――私は,どなたがそうだということを言うわけでは決してありませんので,その方についてどうこうと問題にしているわけでは全くございません。ですが,要するに賛成もしない,反対もしないという,そういう表明の態度というのは,今までの例であったかどうかということをちょっとお伺いしたいと思いまして。 ● 基本的に,部会・総会含めまして,御答申なり御決定いただきます際に,刑事関係では原則採決をしていただいておりますが,その際には棄権と申しますか,賛成にも反対にも挙手されない例というのが刑事関係では少なくないと承知しております。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● ありがとうございました。 ● ほかに何かございませんでしょうか。  それでは,本日はここまでということでよろしゅうございますでしょうか。  以上で本日の予定はすべて終了いたしました。長時間にわたりまして盛りだくさんの議題につき御審議,どうもありがとうございました。