法制審議会第136回会議 議事録 第1 日 時   平成14年2月13日(水)  自 午後1時30分                        至 午後3時58分 第2 場 所   法曹会館「高砂の間」 第3 議 題   会社法制の見直しに関する諮問第47号について          株券の不発行制度等に関する諮問第55号について          会社法制の現代化に関する諮問第56号について          証券の間接保有の準拠法に関する諮問第57号について          「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」の締結等に伴う          法整備についての報告 第4 議 事   (次のとおり)               議         事  (開会宣言の後,次のように法務大臣あいさつを法務副大臣が代読した。)  法制審議会第136回会議の開催に当たり,一言ごあいさつを申し上げます。  委員・幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。  当審議会におきましては,皆様の御尽力により,既に多くの重要な案件について答申をいただき,また,現在も多数の諮問事項について調査審議をいただいているところでございます。この機会に,皆様方の御労苦に対し厚く御礼申し上げます。  さて,本日御審議をお願いする議題の第1は,会社法制の見直しに関する諮問第47号でございます。  本諮問については,既に前回の第135回会議において,ストック・オプション制度の改善,株主総会のIT化等に関する部分についての改正要綱を御答申いただいたところですが,その後も会社法部会において,会社法制の大幅見直しに関するその他の検討課題についての調査審議が継続されてきました。その結果,会社の経営手段の多様化,経営の合理化を図る等の観点から,大規模会社について監督と執行を分離した委員会等設置会社(仮称)制度を採用できるようにすることを始めとして,機関,株式,計算など,株式会社法制の全般にわたり,多数の事項についての改正を内容とする「商法等の一部を改正する法律案要綱案」が決定され,本日,報告されると承知しております。現在の我が国を取り巻く社会・経済情勢にかんがみますと,会社法制の大幅な改善を早急に行う必要がありますので,今通常国会に法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第2は,株券の不発行制度等に関する諮問第55号,会社法制の現代化に関する諮問第56号及び証券の間接保有の準拠法に関する諮問第57号についてでございます。  第1の株券の不発行制度等に関する諮問第55号は,会社の選択により株券を発行しないこと及び株式会社の公告を電子的に行うことを認める法改正の要否等について御検討をお願いするものでございます。  第2の会社法制の現代化に関する諮問第56号は,片仮名の文語体で表記されている商法等につき,利用者に分かりやすい平仮名の口語体に改めるとともに,会社法制全体を現代社会に対応したものにする必要があり,そのために留意すべき事項について御検討をお願いするものです。  第3の証券の間接保有の準拠法に関する諮問第57号は,現在,ヘーグ国際私法会議において審議が行われている間接保有に係る証券の準拠法に関する条約の内容,その批准の必要性等について御検討をお願いするものです。  それでは,これらの議題につきまして,どうぞよろしく御審議をお願いいたします。  (法務副大臣の退席後,委員の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた。) ● 初めに,本日の議事とその進行予定の大筋を私の方から申し上げておきたいと思います。  先ほどの法務大臣のごあいさつにもございましたように,本日の議題は「会社法制の見直しに関する諮問第47号」,並びに「株券の不発行制度等に関する諮問第55号」,「会社法制の現代化に関する諮問第56号」及び「証券の間接保有の準拠法に関する諮問第57号」についてでございます。  以上,四つの事項につきまして十分御審議いただきたいと存じますが,審議に入ります前に,事務当局から,司法制度改革の進ちょく状況についての説明がございます。その後,会社法制の見直しに関する諮問第47号について御審議をお願いし,それに続いて新たに諮問のございました諮問第55号,諮問第56号及び諮問第57号につきまして御審議をお願いするという順に議事を進めさせていただければと存じます。  また,最後に事務当局から,「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」の締結等に伴う法整備についての報告がございますので,よろしくお願いいたします。  それでは,まず司法制度改革の進ちょく状況についての御説明をお願いいたします。 ● お手元にございます「司法制度改革の進ちょく状況」と題します資料に基づきまして,司法制度改革の進ちょく状況について御説明申し上げます。  昨年6月に2年間の審議を終えた司法制度改革審議会は,「人的基盤の拡充」,「制度的基盤の整備」,「国民的基盤の確立」を改革の三つの柱とする最終意見を内閣に提出いたしまして,これを受けて政府は,司法制度改革審議会意見,いわゆる「改革審意見」を最大限尊重するとの閣議決定を行いました。  改革審意見に盛り込まれております,民事訴訟法,人事訴訟手続法,民事執行制度の見直しにつきましては,既に当法制審議会に諮問がなされ,現在,民事・人事訴訟法部会及び担保・執行法制部会において,それぞれ調査審議が進められているところであります。  その後,改革審意見の趣旨にのっとって行われる司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するため,内閣に「司法制度改革推進本部」を設置することなどを内容とする司法制度改革推進法が12月1日から施行されました。  司法制度改革推進本部,これにつきましては資料1を御覧いただきたいのですが,これにありますように,内閣総理大臣を本部長,内閣官房長官及び法務大臣を副本部長といたしまして,全閣僚をもって構成される組織であります。昨年12月4日には,首相官邸におきまして,第1回本部会合も開催されました。  資料1の下の方で枠囲みされている部分がございますが,これは本部設置に伴いまして,前法務省民事局長の山崎潮さんを事務局長といたしまして,事務局次長2名,参事官9名,参事官補佐以下29名の合計41名という体制で推進本部事務局も発足いたしました。事務局は,発足後,逐次増員されておりまして,最終的には50名を超える陣容とされる予定です。  また,資料1の推進本部と本部長との間に,横に顧問会議というラインが書いてあります。改革審意見の趣旨にのっとった改革の推進につきまして,大所高所からの御意見を伺うという趣旨で,司法制度改革推進本部令に基づきまして,顧問会議が設置されております。顧問には,資料2にございますように,各界を代表する8名の方々にお願いしております。1月18日には,首相官邸におきまして第1回の顧問会議が開催され,当法制審議会委員でもあります佐藤幸治顧問が座長に選任されました。  今後,司法制度改革を実現するため,推進本部におきましては,年度内にも司法制度改革推進計画を策定いたしまして,閣議決定を経た上で,これに基づいて関連法案の立案作業等を進め,3年内を目途にその成立を目指すことになります。推進計画におきましては,司法制度改革に関し政府が講ずべき措置につきまして,その内容,時期,担当府省等が明らかにされる予定と伺っております。  具体的な立案作業等に当たりましては,テーマごとに,学者,実務家,有識者等からなる検討会が設置されまして,意見交換を行いつつ,事務局と一体となって検討を進めていくこととされております。  資料3は,「検討会の開催について」というペーパーでありますが,ここにありますように,労働関係事件への総合的な対応強化等を検討する労働検討会,裁判所へのアクセスの拡充等を検討する司法アクセス検討会,裁判外の紛争解決手段,いわゆるADRの拡充・活性化等を検討するADR検討会,仲裁法制の整備等を検討する仲裁検討会,司法の行政に対するチェック機能の強化等を検討する行政訴訟検討会,刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入,刑事裁判の充実・迅速化等を検討する裁判員制度・刑事検討会,公的弁護制度の導入及び整備等を検討する公的弁護制度検討会,国際化への対応等を検討する国際化検討会,法曹養成制度の改革等を検討する法曹養成検討会,弁護士・検察官・裁判官制度の改革等を検討する法曹制度検討会の合計10の検討会が設置されました。現在,全検討会の委員が確定しておりまして,既に六つの検討会が実際に動き始めております。検討会委員の方々は,資料4の名簿に記載されているとおりです。  そして,資料5にありますとおり,2月末までにはすべての検討会において第1回の会合が開催される予定となっております。  改革審意見で提言されているそれぞれの具体的施策につきまして,どの時期に関係法案の提出を目指すこととするかは,年度内に閣議決定される司法制度改革推進計画において示されることになりますが,いずれにいたしましても,3年以内には関係法案の成立を期することとされておりまして,遅くとも平成16年通常国会までには,所要の関係法案がすべて提出されることになるものと考えられます。  まず,その第一弾といたしまして,関係府省におきまして立案作業が進められております,司法書士,弁理士に一定の範囲で訴訟代理権等を付与すること等を内容といたします司法書士法の改正案,及び弁理士法の改正案が今国会に提出される予定です。  司法制度改革の進ちょく状況につきましては,今後とも,折に触れて当法制審議会に御報告申し上げることといたしたいと存じます。  以上をもちまして,司法制度改革の進ちょく状況についての御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。 ● それでは,ただいま御説明いただきました司法制度改革の進ちょく状況につきまして,御質問がございましたら伺いたいと存じますが,いかがでしょうか。 ● 二つ質問です。一つは,7の公的弁護制度検討会というものですけれども,これに関係あるかどうか分からないのですけれども,アメリカ政府の国務省の人権レポートというのが毎年各国すべて出るのですが,日本については2点,いつも何か欠陥というか,向上が望まれるみたいな記載があるのですが,一つは少数民族の取扱いについて,もう一つは,これは司法に直接関係ないのですが,警察で容疑者を押さえておくというか,それについて自供を強制するような,自白を強制するようなことが非常にあって,人権侵害だというので人権レポートにすごく強く出ているのですね。これについては,そういうようなことは公的弁護制度検討会で検討しておるのかというのが一つの質問です。  それからもう一つは,実際的な面ですが,大学ロー・スクールというものをつくるということになったようですが,実際にやっている人の兼任というか何かでしっかりと教えるという制度をつくるという場合,民法とか商法というのはすぐできるような気もする,それも時間がなくて,給料が安いから来ないのじゃないかという気もするのですが,刑法について,検察庁とかそういうところから本当に実際担当している方が兼任で教えるだけの第一時間があるか,ついしゃべってまずいことにならないか,それから人数がそもそもいないのに,そんなことができるのかという質問があります。以上です。 ● ただいまの御質問,どなたからお答えいただいたらよろしいでしょうか。 ● 事務当局の方から。お答えになっていないかもしれませんが。  まず,第1点につきましては,ここで御説明した公的弁護制度検討会,この意見書の方で御案内のとおり,公的刑事弁護制度についての導入を整備すべしと,こういったことがありますので,それを具体化するための検討を行うということでございます。抽象的にはそういうことになりまして,具体的にどういったことが議論されるかというのは,これから決まってくることではないかと思います。  先ほど,簡単に御説明しましたが,検討会といいますのは,司法制度改革審議会の意見書を実現するために司法制度改革推進本部と一体となって検討していくというものでございます。どういった課題を検討していくかということにつきましても,基本的にはこの改革審の意見書に盛り込まれていることになろうと。その他の周辺付随事項といいますか,その他のことにつきましても,基本はこの意見書に沿った実現に必要な事項について検討するということになろうかと思います。  第2の点でございますが,これにつきましてもどのようにして実務家が教員になり得るかということについては,今後この9番目の法曹養成検討会でも検討されることになるのではないかと思います。いずれにいたしましても,この検討会,改革審の意見書を実現するために多くの方々の御協力を得て,いろいろ知恵を出し合い,意見を交換し,実現していくというものですので,今後それぞれの検討会でどういったことを検討していくのかをお決めになると思われます。 ● 検討会の何番ですか。 ● 法曹養成,ロー・スクールの中で,どういった教育を施していくかというようなことになると思います。 ● 御質問の第1点につきまして,多少私も司法制度改革審議会におりました関係で補足的に申し上げますと,御質問がございました刑事被疑者の取調べの適正化といいますか,適正性の保障という問題につきましては,一つはおっしゃるように公的弁護制度の問題として審議会でも議論されましたし,またもう一方では刑事訴訟手続の改革の一環としても議論されておりました。ですから,この検討会で申しますと,6の裁判員制度・刑事検討会というところと,それから7の公的弁護制度検討会,両方で恐らく議論されることになるのではないかと考えております。よろしゅうございますか。 ● 被疑者のは。 ● その問題は,審議会の意見書の中でも被疑者の取調べの透明化ということについて幾つかの提案をしておりますので,私ども意見書の作成に関与した者といたしましては,これらの検討会でその問題も取り上げられるものと考えております。  なお,ほかの委員の方から御質問ございますか。--よろしゅうございますか。  それでは,ほかに御質問もございませんようですので,審議に入らせていただきたいと思います。  それでは,第1の議題であります,会社法制の見直しに関する諮問第47号について,御審議をお願いしたいと存じます。  まず,会社法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長をしておられます,○○委員から御報告をお願いいたします。 ● 会社法部会長の○○でございます。  諮問第47号につきまして,本年1月16日,会社法部会の第16回会議におきまして,「商法等の一部を改正する法律案要綱案」を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の内容について御報告申し上げます。  まず,要綱案の決定に至る審議の経過等について御報告いたします。  本日,御審議いただきます「商法等の一部を改正する法律案要綱案」は,諮問第47号に対する答申のための要綱案でございます。この諮問は,昨年1月12日にされましたもので,「企業統治の実効性の確保,高度情報化社会への対応,資金調達手段の改善及び企業活動の国際化への対応の観点から,会社法制を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものでございます。  この諮問を受けまして,会社法部会では,直ちに要綱案作成のための検討を開始し,昨年4月18日には,「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」を決定しまして,事務当局である民事局参事官室においてこれを公表し,関係各界及び一般国民に広く意見照会をいたしました。  その後,会社法部会では,中間試案に対して寄せられました意見を踏まえて,更に検討を続けたのでありますが,その検討に当たっては,特に早急な立法をすべきであるとの要望が強かった事項,すなわちストック・オプション制度の改善,種類株式制度の弾力化,会社関係書類の電子化等についての検討を優先して行いまして,その結果を要綱案として取りまとめまして,昨年9月5日開催の前回の総会に御報告し,同総会におきまして要綱として採択していただいたところでございます。  なお,この総会で採択していただきました要綱に基づく「商法等の一部を改正する法律案」は,昨年秋の臨時国会に提出されて,法律として成立し,本年4月1日に施行されることとなっております。  このように,諮問第47号についての会社法部会の審議は,その対象事項の一部の審議を優先させるという形になったのでありますが,前回の総会で,その要綱を採択いただきました後,引き続き残りの検討課題の審議を鋭意進めまして,この度,「商法等の一部を改正する法律案要綱案」を決定するに至ったのであります。  次に,要綱案の概要を御説明いたします。  要綱案は,株式関係,機関関係,計算関係,その他関係に大別されております。そこからもお分かりのとおり,会社法制の全般にわたり,その改善を図ろうとするものであります。その中では,機関関係の改正が要綱案に占める分量も多く,内容的にも大きな改正を含んでおりますが,要綱案の配列に従いまして株式関係から順次御説明いたします。  「第一 種類株主の取締役等の選解任権」は,新たな種類株式として種類株主総会における取締役又は監査役の選解任についての内容の異なる株式の発行を可能にするというものであります。これは,ジョイント・ベンチャーやベンチャー・キャピタルによる投資を行いやすくして,新規事業を行おうとする会社の資金調達を容易にしようとするものであります。例えば,A社が6割,B社が4割出資して合弁会社を設立しようとする場合に,現行の商法のもとでは,6割を出資するA社が全役員を選任することになりますが,4割を出資するB社としましては,出資に見合った役員を送りたいというニーズがございます。ところで,例えば今の事例でいいますと,取締役の員数を5人とした場合に,3人を選任することができるA種類株式と,2人を選任することができるB種類株式とを発行しまして,A種類株式をA社に,B種類株式をB社に割り当てれば,B社のニーズを充たすことができることになります。そこで,取締役等を株主総会ではなくて,種類株主総会で選任することができるものとしまして,このような種類株式の発行の仕方や,当該種類株式が発行された場合における取締役等の選解任権の手続についての規定を設けることとしたものであります。  なお,このような種類株式を一般投資家が株主となる公開会社に認めることは,濫用のおそれも危ぐされますことから,一の1のただし書におきまして,取締役等の選解任権について内容の異なる種類株式を発行することができるのは,商法204条第1項ただし書の株式譲渡制限がなされている会社に限ることにしております。  「第二 株券失効制度の創設」に移ります。株主等が株券を喪失した場合,現在は手形や小切手を喪失した場合と同様に,裁判所に公示催告手続を申し立てなければならないこととされております。しかし,公示催告手続には費用と手間がかかる上,裁判所による公示催告手続と,発行会社における名義書換え等の手続との間には,何の連携関係もないために,公示催告された株券が流通して,これを善意取得した者が名義書換えをしたとしても,公示催告手続はそのまま進行しておりまして,裁判所に権利の届出をしませんと,除権判決がなされて,当該株券は失効してしまう,公示催告手続を申し立てた者に新株券が交付されるというような事態が生じてしまうという問題もございます。そこで,株券につきましては,名義書換制度を通じて発行会社に情報が集まる,そういう特性があることに着目しまして,発行会社が,これまでの裁判所の役割に近い役割を果たす,そういう株券失効制度を新たに設けまして,株券を公示催告手続,これまでの手続の対象から除外することとしたものであります。  この新たな制度における手続の流れを御説明しますと,まず,株券を喪失した者は,そのことを証する所要の書類を添付しまして,発行会社に株券喪失登録の申請をいたします。発行会社は,申請書に添付された書類が整っていれば,株券喪失登録をします。当該登録がなされた日の翌日から起算して1年の間に,株券を所持する者が登録異議の申請をしなければ,喪失登録がなされた株券は無効となりまして,発行会社が喪失登録をした者に新株券を交付するということになります。  なお,喪失登録から株券の失効までに1年間の期間を設けておりますのは,1年に一度は定時株主総会が開催されますことから,1年の期間を設けておけば,株券を取得した者は,通常名義書換えを請求することになり,その際に要綱の三によりまして,発行会社から喪失登録がなされているということを,その株券取得者が通知を受けることになりますので,これによって喪失登録がなされていることを知って,登録異議の申請をし,自己の権利を保全することができるということからでございます。  また,株主名簿の名義株主が株券を所持しているにもかかわらず,その名義株主が知らないうちに当該株券が失効してしまうという事態が生じないようにするために,二の2におきまして,発行会社に対し,名義株主以外の者の申請により喪失登録をした場合には,名義株主に対する通知を義務づけております。  更に,異議登録の申請がなされた場合の取扱いについて,三の4及び5におきまして,発行会社は,株券を預かった上で,その旨を喪失登録者に通知をし,通知後2週間が経過した時点で喪失登録を抹消することとしております。そのため,通知を受けた喪失登録者は,登録異議を申請した者が善意取得者でないと考える場合には,その期間内に当該株券について占有移転禁止の仮処分を取得した上で,訴訟提起して,株券の返還を求めることができるとということになるわけでございます。  「第三 所在不明株主の株式売却制度等の創設」に入らせていただきます。  所在不明株主についての管理コストを,他の株主の負担に帰せしめるのは相当ではないということから,所在不明株主の株式の売却を可能にするというものであります。ただし,この制度は,会社が,株主の意思にかかわらず,その株式を売却して現金に変えるというものでありますので,所在不明株主の要件としては,商法224条ノ2第1項が規定しております通知・催告が5年以上継続して到達しないという要件だけではなくて,当該株主が5年以上継続して利益配当等を受領していないということも要件に加えております。また,売却に先立って,公告と個別通知をしなければならないこととしまして,当該株主に所在不明者でないことを主張する最後の機会を与えるということにしております。  「第四 端株等の買増制度」でございますが,これは端株主の便宜のための制度でありますが,同時に,昨年の通常国会における金庫株解禁等の商法改正により,自己株式の処分を新株発行の方式によって行わなければならないこととされたことに伴いまして,それまでは自己株式の処分の一方法として,実務上行われていた端株等の売渡しができなくなってしまいましたことから,これを再び可能にするというための規定を設けるものでございます。  次に,機関関係に移ります。  まず,「第五 株主提案権の行使期限の繰上げ等」は,株主の議題等提案権や少数株主の総会招集権を行使すべき時期につきまして,現行法が定める6週間では,会社側の実務対応が困難でありますことから,これを8週間に改めるというものでございます。  「第六」のうち,株主総会の特別決議の定足数の緩和は,個人株主の増加や持合いの解消に伴う安定株主の減少によりまして,議決権総数の過半数という特別決議の定足数を確保することが困難な状況になってきておりますことから,定款によりまして議決権総数の3分の1まで緩和することを認めるというものでございます。また,社債権者集会の特別決議につきましても,その定足数を確保することが極めて困難な状況にありますので,株主総会の場合と同様に緩和することとしております。ただし,その方法につきましては,社債権者に関する事項を株主の自治によって決するのは相当ではありませんので,その定足数につきましては,商法自体に総社債権者の議決権の3分の1以上を有する社債権者の出席が要求されるという旨を規定することとしております。  「第七 株主総会手続の簡素化」は,中小企業を中心とする有限会社並みの簡素な株主総会手続を許容するというものでありまして,既に有限会社法において認められているものと同種の取扱いを株主総会手続についても導入するものであります。  「第八 取締役の報酬規制」。これは,最近の株式実務におきましては,業績連動型報酬など,確定額ではなく支払われる報酬が導入されるケースが増えておりますので,このような様々な報酬を定めることができることと,その場合に何を定めるべきかということを規定上明確にするというものでございます。  「第九 重要財産等委員会(仮称)制度」は,商法特例法上の大会社で,取締役が10人以上であるものにつきまして,取締役会の頻繁な開催が困難でありますことから,その会社が社外取締役を選任することによって,取締役会の監督機能の強化を図っているというものである場合には,現行法上の取締役会専決事項のうち,商法260条2項第1号及び第2号が規定しております重要な財産の処分,譲受けと,多額の借財につきまして,それが取り分け迅速な決定を必要とする場合が多いということにかんがみまして,取締役会が3人以上の取締役をメンバーとする重要財産等委員会に対しまして,これらの事項の決定権限を委譲することを許容するというものであります。重要財産等委員会は,実務上行われております常務会に相当するものでありますが,これを商法特例法上の正規の機関として認知し,ただいま申し上げましたような事項についての業務決定権限を認める一方で,これを取締役会の監督と監査役の監督に服せしめるということでございます。  「第十 大会社以外の株式会社における会計監査人による監査」でございますが,これは大会社以外の会社であっても,公開会社など,公認会計士監査を受けている会社がありますことから,このような会社について商法特例法上も会計監査人による監査を受けるという取扱いを可能にするものであります。このことによりまして,商法特例法上の大会社並みのメリットを享受することができるようにするものであります。商法特例法上の大会社のメリットとしましては,16条によりまして貸借対照表や損益計算書を取締役会限りで確定させることができること,先ほどの重要財産等委員会への決定権限委譲が可能になること,更に,次に申し上げます委員会等設置会社になり得ることが挙げられます。  次に,「第十一 委員会等設置会社(仮称)に関する特例」は,商法特例法上の大会社がアメリカ型の機関制度を選択することができるようにするものであります。我が国におきましては,大会社についての機関制度は,これまで取締役会と監査役会という二元的な監視機関制度を採ってきたのでありますが,このような形態のコーポレート・ガバナンスのシステムは,比較法的にみましても少数でありますばかりか,現行制度につきましても,様々な批判や指摘がなされております。  まず,現行商法におきましては,取締役会専決事項が多岐にわたっておりますが,取締役の員数が多く,外国で勤務する取締役もいるような大会社の場合には,頻繁に取締役会を開催することは困難であります。そのことから,現在のような世界的な大競争の時代におきましては,国際的な競争力を確保する方策として,取締役会専決事項を減少させ,業務を担当する役員による迅速・果敢な業務決定を可能にすべきであるとの指摘がございます。しかしながら,現行の取締役会制度は,業務執行と監督の分離が十分ではなく,業務執行する取締役自らが,自らを監督する取締役会のメンバーとなっているばかりか,取締役の人選や各取締役の報酬の決定権限が,事実上代表取締役に集中していることが多くなっております。そのため,他の取締役が代表取締役に対して十分な監視機能を果たすことが困難であるとの指摘がなされております。このような現行の取締役会制度を前提とする限りは,先ほどの「第九」の「重要財産等委員会」で御説明しました内容の権限委譲を行うのが限度であり,新株発行とか社債発行なども含めた業務決定権限の大幅な委譲を可能ならしめるためには,取締役会の監督機能の大幅な強化を伴う必要があるというふうに考えられるのであります。  また,監査役制度につきましては,これまでの度重なる改正によるその機能の強化が図られてきたところでございますが,これが世界的に見ますと,余り例を見ない制度であるといいうだけではなくて,監査役は,適法性の観点からの意見を述べることができるのみで,議決権を有しないものでありますため,監査役による監査によって,適正なガバナンスを実現することには限界があるのではないかという問題もございます。そこで,新株発行や社債の発行の決定も含めた取締役会専決事項を大幅に業務執行役員に委譲することを可能にしつつ,業務執行役員に対する十分な監督を実現することができるための機関制度としまして,委員会等設置会社の制度を設けることとしたものでございます。  この委員会等設置会社におきましては,まず取締役会の監督機能の強化という観点から,取締役の中にいずれも社外取締役がメンバーの過半数を占める指名委員会,監査委員会,及び報酬委員会の3委員会を設けることとしております。取締役会において議決権を有し,かつ,社外取締役が過半数を占める取締役によって組織される監査委員会が監査役に代わって監査を行うこととするとともに,同じように社外取締役が過半数を占める指名委員会が,取締役候補者の人選をし,報酬委員会が個人別の役員報酬を決定することによりまして,取締役会の代表役員からの独立性が確保され,その監督機能が格段に強化されることになるものであります。  次に,執行と監督の分離という観点から,業務執行を担当する役員として執行役を置くこととしまして,監督機能の強化が図られる取締役会が,執行役に業務決定権限を大幅に委譲することを認めることとしております。また,監査委員会を設けることに伴い,監査役を置かないこととしております。更に,取締役及び執行役の責任につきましても,執行と監督とを分離し,十分な監督が行われる体制を確保することとしたことに伴い,その責任を合理的なものにすることとしております。委員会等設置会社におきましては,取締役会による十分な監督を期待することができますことから,利益配当につきましても取締役会限りで確定することを認めることとしまして,その代わりに取締役の任期を1年としまして,毎年株主の信任を得なければならないこととしております。  なお,この制度を現行制度と選択的なものとしておりますのは,この制度がこれまでの機関制度と大きく異なるものでありますことから,現時点では,その導入をちゅうちょする会社も少なくないことや,社外取締役の供給源の問題もあることによるものであります。  ところで,前回の総会におきまして,○○委員から,機関関係の問題として,委員会等設置会社の監査委員会を組織する取締役や,現行の監査役などの中に労働者の代表を入れることを検討してほしいという御意見が出されました。そこで,この御意見につきまして,会社法部会で議論いたしましたが,我が国の会社法の体系の中に労働者代表を役員に加えるべきものの規定を置くことは相当ではないというのが,会社法部会の委員・幹事の一致した意見でありました。このような次第で,今要綱案には,○○委員の御提言は取り入れておりませんので,御了解賜りたいと存じます。  「計算関係」に移らせていただきます。  「第十二 計算関係規定の省令委任」は,会計基準の変更への迅速な対応を可能にし,商法会計と証券取引法会計との整合性を確保し続けるために,財産価額の評価方法等についての規定を法務省令で定めることとするものであります。  「第十三 連結計算書類制度の導入」は,公開会社等の一定の会社につきましては,証券取引法により有価証券報告書の添付書類として,連結計算書類の作成と財務局への提出が義務付けられておりますが,グループ企業全体の財務内容がどのような状況にあるかは,株主にとりましても重要な情報でありますので,株主に対する情報開示の充実を図るため,商法特例法上の大会社のうち,当面有価証券報告書を提出すべき会社について,連結計算書類の作成と定時株主総会での株主への報告を義務付けるものとするものであります。  「その他関係」のうち,「第十四 現物出資,財産引受及び事後設立の目的たる財産の価格の証明」でありますが,現行法では現物出資等を行う場合には,原則として裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならないこととされており,不動産に限って不動産鑑定士の鑑定評価つきの弁護士の証明による代替が認められております。これを,目的財産の種類を問わず,弁護士等の専門家による財産の価格の証明を受ければ,検査役の調査を受けなくてもよいというようにするものであります。検査役の調査につきましては,これが終わる時期が会社側には分からないために,開業時期等のスケジュールを立てることができないといった問題がありますことから,これを解消しようというものであります。専門家の証明に誤りがあった場合には,発起人や取締役が財産価額のてん補責任を負いますほか,専門家自身も証明に誤りがあったことにつき,過失がなかったことを立証することができない限り,会社に対する財産価額のてん補責任と,第三者に対する損害賠償責任を負わなければならないものとすることによりまして,専門家の証明の適正を確保することとしております。  「第十五 資本減少手続の合理化」は,現行の商法におきましては資本減少や法定準備金の減少の決議を行う場合の決議事項についての規定が簡略に過ぎるため,決議事項の全体像が規定上不明確かつ不十分でありますし,また債権者保護手続における公告及び通知事項も規定上明確ではなく,債権者の利益保護の観点から問題がありました。そこで,その決議事項や公告事項等を明確にし,株主及び債権者の利益が確保されるような決議,公告等がなされるようにするというものでございます。  最後に,「第十六 外国会社」は,現行法の下では日本で継続的取引をしようとするすべての外国会社につきまして,取引開始に先立って,日本国内の営業所を設けることが義務づけられております。この規制に対しましては,かねてより参入障壁であるとの指摘がありましたほか,最近はダイレクトメールでの取引やインターネットでの取引などが急速に進展し,営業所の設置を要求することが相当でなくなってきております。そこで,米国などに倣って,営業所設置義務を撤廃するというものであります。また,これに伴い,日本国内の債権者の利益保護の観点から,株式会社に相当する外国会社には,株式会社と同様に,日本国内での計算書類の公告義務を課し,また外国会社が日本から撤退する場合には,債権者保護手続を行わなければならないこととしております。  以上,要綱案の要点を御説明いたしました。  今回の審議におきましては,社会・経済情勢の変化の速度に対応した迅速な検討が強く要請されておりましたために,会社法部会といたしましては,非常に限られた期間の中で多数の項目についての審議を尽くすために,頻繁に会議を開催し,中身の濃い検討を行ってまいりました。会社法部会の委員・幹事の皆様には多大の御負担をおかけいたしました。また,法務省民事局参事官室の担当官におきましても,連日深夜にわたる作業をしてくださったのであります。そのような方たちの御尽力によりまして,本日の総会にこのような大規模な改正を内容とする本要綱案を提出することができましたことを御紹介申し上げまして,私の御報告を終わらせていただきます。  よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● どうもありがとうございました。大変重要な改正を含む要綱案について,意を尽くした御説明を伺いました。  それでは,ただいまの○○委員の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら御質問から伺いたいと思いますので,御発言をお願いいたします。 ● 「雪印」が何か事件を起こして,外国の企業が「雪印」を,株もどんどん落ちるし,買っちゃおうかなというのがいっぱい出てきたと思うのですが,行政サイドの方か議会サイドの方か分からないけれども,そうならないように頑張ろうというのが出ているのですね。それが酪農業界とか,農水省とか,どこから出ているのか分からないのですが,議論されておったときに,そんなの考えられましたか。 ● それは,会社法の規定とは直接に関係ないもので,いずれも会社法の枠内でやられていることだろうというふうに理解しておりますが,いかがでしょうか。 ● 何だか分からないのですが。外国のニュースでは,ちゃんと出ておりましたね。そういう行政指導みたいなものが出たことについて,小さな驚きがあったみたいなニュースが出ていましたけれども。だから,商法改正のときに,重要な決定権といいますか,そういう事態に直面したときにも,余り全部とられないようにするみたいな感じにしたのかなと思いまして,質問しているのです。 ● そういうことは一切ございません。  恐らく,今の問題は農業問題等と絡み合う問題であると思いますので,そっちの方からの議論だろうというふうに私は理解しております。 ● でも,会社ですよ,「雪印」は。 ● もちろんそうですけれども,それが外国企業に乗っ取られないようにするという希望がどういうところから出てくるかということが問題だと思いますけれども。 ● だから,業界から出てくるでしょうし,担当の行政サイドからも出てくるでしょうし,それから,族議員みたいな議会指導者からも出てくるでしょう。外国のニュースにも出ているというわけです。 ● 恐らく,酪農業界からも出ているのではないかと。 ● 全部出ていると思うのですが,ただそういうこととは関係なく,これからもっと起こり得る事態なので,会社法を改正するときに,商法を改正するときにそういうことをどんなふうに議論されたかと伺いたいということです。 ● それは,「雪印株式会社」も商法上の株式会社の一つでありますので,その枠内でなされるのである限り,会社法はそれにはタッチしないということだろうと思います。 ● 私は,議論の取りまとめ役でございますけれども,○○委員のお答えの御趣旨は,外資云々の話は会社制度そのものの問題ではなくて,それ以外の行政の問題とか,あるいはそういう業界団体等の問題なのではないかという御趣旨だと思うのです。もし御質問の趣旨が,それ以前にある特定の会社の業務執行が法に違反するような形で行われたという点を問題にされるのだとすると,本日のコーポレート・ガバナンスの問題とも関係はしてくるのではないかと思いますけれども,恐らく会社法部会での御議論は,特定の具体的なケースを取り上げて,それに対処するためにどういう制度的枠組みにするかというような,そういう議論の仕方をしているわけではないという御趣旨かと思いますが。 ● それに関連するのですけれども,結局経営状態が悪くなると,合併するみたいなところが多くなって,決定する・・・,何といいますか,権威といいますか,影響力といいますか,そういうものが同様であるというようなときにもたもたするのだと思うので,その場合でも外資であろうが関係なく,そういうようなことについてはどんなふうにされているのかなと思いまして。  例えば,6対4ぐらいの資本力を持っていて,6の人が買ったから全部政権を変えるみたいにするというのがいいのか,比例配分的にやるのがいいのかという問題とかかわっていて,外資である必要は何もないのですが,これからごちょごちょあることになるわけで,それについて伺いたいと思うのです。 ● 会社法制は,基本的には資本多数決が働きますので,事項によっては単純多数か3分の2の多数かということはありますけれども,基本的にはそういう多数決原理で処理されるということでございます。 ● 今回の改正は,特にそれについては関係ないのですが。単純多数決か3分の2とか,そういうことには関係なかったのですか。 ● それには関係ありません。ただ,定足数について緩和したという改正は,今回含まれております。しかし,多数決かどうかということについては関係ございません。 ● 定足数についての改正というのは,どういう考慮から出てきたのですか。 ● これは,株主総会の特別決議は,総株主の議決権の過半数で出席株主の議決権の3分の2ということになっているわけでありますが,その総株主の過半数ということ,定足数を確保することが,最近のいろいろな事情,外国株主が多くなったとか,あるいは株式の持合いが解消されて株が散らばっているというようなことから困難になってきたということから,実務界からはかねてからこの要件は緩和すべきだと,その御意見の根拠として議決権を行使しようとしない人の意向をそれほど重視する必要もないのではないかというようなこともありまして,定足数は定款で減らすことができると。定款でもって減らすことができる,しかし総株主の議決権の3分の1未満にしてはならない,そういう制約のもとに緩和したということでございます。 ● どうもありがとうございました。 ● ただいまの○○委員の御発言に対して感じることを申し上げるわけですけれども,やはり社会的にいろいろな問題が最近起こってまいりまして,そういう例外的なことと,この会社法制,法的な理論的な御検討とは別だと思うのですね。今,お答えの中にもありましたけれども,「雪印」の問題というのはすぐれて日本の農業問題と関連があって,政治家の先生方始め皆さん方から出ている問題で,もっと言えば,もっとスケールの大きな問題で今アメリカのエンロンの問題が起こっておりまして,ああいうものを取り上げますと,社外取締役というのは一体何だという議論になるわけでして,世の中非常に特殊な問題が起こりますので,そのことと,この清々粛々と行っておられます議論とは別だと思いますね。 ● ほかに御質問ございますでしょうか。 ● 十一の委員会等設置会社に関することですが,○○委員の御説明によりますと,現行商法の機関制度をそのまま置く場合と,これを採用する場合とは選択的になっているのだ,こういう御説明だったわけですね。立法政策の上から見た場合には,法務省等はこの十一の新しい特例が立法政策としてよりベターなものだというふうにお考えになっておられるのでしょうか。 ● 法制的にこれは選択という形にしているわけでございまして,先ほど○○委員からも報告がございましたように,取締役会決議事項を減らして,業務を執行する役員,ここでは「執行役」と呼んでいますけれども,そこに権限を委譲したいという会社はこういう形をお選びくださいと,そうでない会社の場合には,重要財産等委員会とか別の形でやっていただくと。ここは,先般の臨時国会で社外監査役制度の充実を含む監査役制度の充実が図られたところで,これからそれが施行されるという状況でもございますので,フランスも2種類の会社,同じ株式会社で2種類の会社を認めておりますが,そのように当面は両方の行き方を見て,その運用状況を見ながら更に検討を続けたいというふうに考えているところでございます。 ● 私なんかが関係している関西の会社は,商法特例法上の大会社とはいうものの,実体は非常に中小企業で,いわば創業者グループが代表権を握ってやっているわけですね。その場合に,こういう委員会等設置会社ということになると,社長の手足をくくってしまうような格好になる。こういうことをそう簡単に採用するであろうか,非常にメニューが詳細にでき上がっているけれども,実際に具体的な会社が出てくるであろうかということをちょっと心配するわけですが。何か,干渉するような手立てはお考えになっておられるのでしょうか。 ● 今,○○委員からお話がありましたように,この委員会等設置会社といいますものは,今までの会社の組織からしますとかなり思想的なといいますか,考え方の変更を伴うものでございますので,会社法部会で御議論いただきましたときにも,当初から大会社の多くがこれを直ちに採用されるというふうにはどなたもお考えではなくて,どちらかというと国際的な活動をしている会社の一部からまずは取り組まれるところが出てくるのではなかろうかという,そういう議論でございました。  もちろん,法律が無事できましたら,私ども所要の周知徹底の措置を講ずることになりますけれども,特段干渉するとか,行政指導のような,そんなことは私どもする立場でございませんので,そういうことは考えておりません。 ● ただ,先ほど申し上げたように,立法政策上よりベターなものがこっちだというふうにお考えになっているのなら,転換する猶予期間を十分とっておいて,例えば5年間の間にそっちに移れというふうな立法政策もあり得るのじゃなかろうかと思うのですが,そういうことはお考えにならない。 ● ですから,その点は監査役制度の強化というものが先般図られたばかりでございますので,監査役を置いた会社のガバナンスが今後どうなっていくかということ,それからこの委員会等設置会社について,どのぐらいの会社が採用され,その運用状況はどうなのかというようなことを見た上で,更に必要があればどちらかに収れんさせるというようなことを検討するということになるのではないかというふうに考えております。 ● ほかに,御質問ございませんか。  ほかに御質問ございませんでしたら,次に御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 同じことを発言してしつこいようですが,先ほど,会社法部会でコーポレート・ガバナンスに関しまして従業員代表を監査役会に入れてほしいという私の前回の意見に対して,真しに御議論いただきまして,議論が展開されたことについてはお礼を申し上げたいと思います。ただ,私の意見ではありますけれども,支持者がいなかったということでございますので,その結論には従わなければいけないというふうに思いますので,この提案については委員としては賛成をしたいと思います。  ただ,どうも議論の中身を伺っていますと,私どもの考えているのは企業というものは株主だけではなくて,従業員や労働組合関係者等々も構成をしている組織体だというふうに考えておりまして,その背景に何やら労働組合や従業員代表というのは企業行動に対する反する行動をするのではないかという潜在的な疑義があるのであれば問題だと,こういうふうに思っておりますし,日本の企業風土やあるいは労使関係のことを考えてまいりますと,従業員代表が入ることについて決して邪魔になるものではない,もう少し前向きに考えるべきではないかというふうに,今でも考えております。  ただ,会社法制上,法的になじまないということについて,私どもは理論的な反論を持ち得ないわけでありますけれども,ヨーロッパ諸国の法制においては従業員代表が監査役会を構成している,しかも3分の1の比率,ドイツなんかそうですが,そういう事例もございますので,この件に関しては,いわば企業というものをどう考えるかということと,企業の行動に対して,さっきの「雪印」の話で,もし従業員代表が入っていたらチェックできたかというと,そうはならなかっただろうとは思いますけれども,そうしたコーポレート・ガバナンスという問題を基本的に考えていただくということが重要でありまして,その点について一言だけ申し上げておきたいと思います。  また,後ほどちょっと別の時間に,もし時間がございましたら申し上げたいことがあるのですが,そういう中でも従業員代表と事業主との間での労使協議について,もう少し積極的に考えていく必要があるのじゃないか,こういうふうに思っているところでございまして,事業所における労働者代表というか,従業員代表と,事業主が経営方針について協議する場をつくるというような法制化も是非今後御検討いただければと,こういうふうに思っております。 ● 今回のこの商法改正要綱案につきまして,経済界に籍を置いております者として,若干の感想と意見を申し上げたいと存じております。  御承知のように,昨今の企業経営を取り巻く環境は,内外ともに激しく動いておりまして,かつまたその変化のスピードが著しく加速しておるわけでございます。経済のグローバル化に伴い,企業の国際的な再編成が急速に進展しておりまして,また我が国内部におきましても,金融の構造変革の中で,持合株式の放出が進み,外国人株主の比率が相当に高まってまいってきております。このような状況の中で,我が国の企業は国際競争力の強化と経営効率の向上のために選択と集中によるリストラ企業再編に取り組んでおる最中でございます。  昨年,議員立法を含め3度の商法改正が行われましたことは,率直に申し上げますと,やや表現がオーバーで恐縮ですが,正に旧来の法制がこうした環境変化に耐えられないほど疲弊・陳腐化していることのあらわれであります。したがいまして,今回の会社法の大幅な改正作業は,一刻の猶予も許されないとの認識のもとにつくられたものと受け止めております。極めて短い期間に,膨大な要綱案をおまとめいただきました○○委員を始めとする会社法部会の関係者の皆様の後尽力に対しまして,改めて心からの敬意と感謝を申し上げるわけでございます。  次に,要綱案の内容につきまして若干の感想を申し上げます。  要綱案を拝見いたしますと,多くの点で時代の要請に沿った改正が含まれております。例えば,株主総会の運営については,先ほどもございましたように株主提案権の行使期限を総会の6週間前から8週間前に繰り上げますことによって,外国人株主等の遠隔地の株主への招集通知の発送を早めることができ,適切な議決権行使を促すことができます。  また,株主総会の特別決議の定足数を2分の1から3分の1に引き下げることができるようになりました。このところ,組織の再編や定款変更など,特別決議要件を必要とする議案が著しく増加しておりまして,この点は御配慮があったものと思料しておるところでございます。  そのほか,証券取引法の財務諸表と商法の計算書類の統合,株券失効制度の創設,所在不明株主の株式売却制度等,私ども経済界の長らくの要望が本改正要綱の中で実現しておりまして,経済界としては大いに歓迎し,感謝しているところでございます。  一方,取締役会の改革につきましては,昨年4月の段階で法務省から示されました中間試案において,社外取締役1名の選任を義務付けるという提案がなされておりまして,この点につきまして経団連としては強く反対を申し上げました。今回の要綱案では,社外取締役の一律義務化は見送られまして,ガバナンスの在り方については選択が可能な制度となっております。しかし,新しいタイプの会社組織におきましては,社外取締役を置いた会社ほど従来型の組織に比べてガバナンスが行き届いており,権限委譲ができるという,そういう仕組みになっておるように思います。しかしながら,会社組織の形態のみによってガバナンスの善し悪しを決めることには,実務上相当の疑問もございますし,是非再検討していただきたいと考えております。今回の改正案に盛り込むことは困難であることは十分承知しておりますが,今後の課題として,特に株主総会決議事項の簡素化は,いずれの形態の会社においても行えるよう,法務省側の引き続きの御検討をよろしくお願いいたします。  また,この関連で,日本監査役協会では,要綱案にある監査委員会制度を現行の監査役制度に代替する場合についての意見をまとめられまして,このほど私ども経団連に連絡がございました。内容は至極もっともなことでございますので,ここで紹介させていただきます。ポイントは二つございます。  第1に,新しい制度としての監査委員会の監査は,その仕組み上,一部自己監査となるわけでございまして,監査の客観性と信頼性を低下する懸念がありますので,そうしたことのないように,高い精神的独立性を保ち,厳正な監査を務めなければならないことを周知徹底すべきである。こういう意見であります。  第2に,常勤制を敷いております現行の監査役制度に加えまして,新しい制度での常勤の取締役を置かないことのできる監査委員会の情報収集力が薄くなりまして,監査品質の低下する懸念があるというものであります。そこで,取締役会が決定する監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして,法務省令で定める事項,要綱案十一の三の1の(2)でございますけれども,これが監査委員会の情報収集を充実させるものとなるよう,法務省令の策定に当たりまして是非御留意願いたいというものでございます。この点につきまして,法務省側においてよろしく御高配をお願いいたします。  重ねて,これほどの短期間に膨大な要綱案をおまとめいただきました会社法部会の委員の方々の御努力に敬意を表しますとともに,国際的なメガコンペティション時代に生き残りをかけている私たち経済界の実情についても,今後とも格別の御配慮をお願い申し上げたく存じます。ありがとうございました。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 意見ではありません,今回の会社法改正の中身は大変評価しております。大変な御苦労だったと思います。  その上でお願いが少しあります。今度は50年ぶりの大改正ということですけれども,今,○○委員のお話にもありましたように,余りに変化が激しいですから,これで一段落ということにしないで,毎年でも見直していただきたいなと思います。よく,大きい改正をすればするほど,その成果を見てからというようなことでしばらくまた放置されるということになりますので,そういうことのないように是非お願いしたいと思います。  あと,ここでせっかくこういうふうに決められたコーポレート・ガバナンスが機能するように,ほかの制度にもなるべく働きかけていただきたいなと思います。一つは,国立大学の教官が社外監査役はできるのですけれども社外取締役はできない。私も社外監査役をやっていますけれども,社外監査役と社外取締役がどう違うのか,どう考えてもよく分からないのですね。商法も変わることですから,是非そこをはっきりして,そういう理不尽な区別がないように働きかけていただきたいと思います。  それから,先ほど「雪印」の問題が出ていまして,これはもちろん会社法の問題でもありませんし,農業という非常に特殊な分野の問題で,これも○○委員のおっしゃるとおり個別の問題だと思います。ただ,今のコーポレート・ガバナンスがこれだけ言われる時代に,あれほど株主不在のことがまだ平気でまかり通るというのは,やはりショックを受けるのですね。法律にも何も書いていないことで,経営者が最適な判断ができない。では株主は,経営責任はだれを追及すればいいのか。つまり,資本参加する企業の選択に当たって株主というのは,一体だれをどう追及すればいいのかすら分からないということがありますので,やはり法制審議会としても余りに目に余る事例が出たときは,それなりに行動といいますか,発言をしていただけると有り難いと思います。 ● 今後の検討の参考にさせていただきます。 ● 専門的知識を持っているわけではありませんが,この要綱の委員会等設置会社についての感想を申し上げたいと思います。  この要綱によりますと,要するに会社の所有者である株主,それから経営執行,それから監視というそれぞれの職務の,あるいは分離の確立ということは明確になされているのじゃないかと思います。もともとこれは,商法の求める理念といいますか,そういうものだと思うのですけれども,そういうはっきりした分離を確立することによって,経営の透明化とか監視機能を強化する,そういう意味では非常に重要な制度ではないかと思います。そして,いろいろ皆さんもおっしゃるように,今後の企業はどうあるべきかという観点でとらえていきますと,選択制ではありますけれども,非常に現実的な会社法制ではないかというふうに評価できるのではないかと思っております。  ただ問題は,形として制度をきちんとされたとしても,選択制でありますから,それを採用した場合にどういうふうな運用をしていくかということについて考えていかないと,先ほどもありましたようにアメリカのエンロンみたいな形の企業のああいう結末になるのじゃないかというおそれがあるし,それから日本の会社の中で,まだまだそれに取り組んでいく,あるいは導入していくということは非常に難しい問題があろうかと思うのです。部外者でありますのでよく分かりませんが,やはり時間をかけていい方向に持っていってほしい,そういう広がりを期待しております。感想です。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。どうぞ,御遠慮なく御発言いただきたいと思いますが。  特に,ほかに御意見がございませんようでしたら,原案につきまして採決に移りたいと思いますが,よろしゅうございますか。  それでは,特に御異議もないようでございますので採決に移ることにしたいと思います。  会社法部会から報告されました「商法等の一部を改正する法律案要綱案」のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。       (賛 成 者 挙 手) ● どうもありがとうございました。  念のため,反対の方の挙手もお願いいたします。--ございませんか。どうもありがとうございました。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  原案に賛成の委員は15名でございます。議長を除くただいまの出席委員も15名でございます。 ● お聞きいただきましたように,採決の結果,全員賛成でございますので,会社法部会から報告されました「商法等の一部を改正する法律案要綱案」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき,採択されました要綱につきましては,この総会の終了後,直ちに法務大臣に答申することといたしたいと思います。どうも,熱心な御審議,ありがとうございました。  なお,何人かの委員から御発言がございましたように,これだけ大規模な改正で,多くの重要な問題を含む要綱案をおまとめくださいました○○委員始め会社法部会の委員・幹事の皆様,あるいは法務省の事務当局の皆さんに心から御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければ幸いでございますので,よろしくお願いいたします。  次に,第2の議題であります新たな諮問事項につきまして御審議をお願いしたいと存じます。  まず初めに,諮問第55号,諮問第56号及び諮問第57号につきまして,事務当局に諮問事項を朗読してもらいます。 ● 朗読させていただきます。   諮問第55号     会社法制に関する次の事項につき,改正の要否及び改正を要するとした場合にはその要綱を示されたい。    一 会社の選択により,株券を発行しないことができるものとすること。    二 株式会社の行う公告を電子的に行うことができるものとすること。   諮問第56号     会社法制に関する商法,有限会社法等の現代化を図る上で留意すべき事項につき,御意見を承りたい。   諮問第57号     ヘーグ国際私法会議において作成のための審議が行われている間接保有に係る証券の準拠法に関する条約の内容,その批准の要否,批准を要するとした場合には国内法整備の要否及び整備を要するとした場合には整備すべき事項の骨子につき,御意見を承りたい。 ● 続きまして,これらの諮問の内容,それから諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ● それでは,株券の不発行制度等に関します諮問第55号,会社法制の現代化に関します諮問第56号,証券の間接保有の準拠法に関します諮問第57号につきまして,提案に至りました経緯,それから諮問の趣旨等について説明をさせていただきます。  第1に,諮問第55号,株券の不発行制度等に関する諮問についてでございます。  従来から,株式の譲渡が制限されております会社については,株式の移転がほとんど行われないために,株券の不発行を許容してほしいという要望があったところでございます。また,公開会社におきましても,株主が株券を交付して株式を譲渡するということは極めてまれでありまして,現実に多くの投資家が証券会社に株券の保護預かり,あるいは株券の保管振替制度を利用することによって,現実に株券を所持せず,これを交付しないで株式の譲渡が行われております。そこで,会社が株券を発行する費用を節減するとともに,株主自らが株券を管理することによる喪失等の危険や,譲渡の際の株券引渡しに伴う危険を解消するために,会社の選択によりまして株券を発行しないことを認めるとともに,その場合の株式の譲渡の仕組みについて検討すべきである,こういう御意見があります。  また,株式会社が行う公告の手段といたしましては,現行法上官報又は日刊新聞紙によることが認められておりますが,高度情報化社会に対応し,公告の実効性を高めるという観点から,株主,債権者の利益に配慮しつつ,電磁的方法による公告を認める必要があるという意見もあるところであります。  このような状況にかんがみまして,諮問事項に関しまして,当審議会の御意見を伺う必要があるというふうに考えております。  第2は,諮問第56号,会社法制の現代化に関する諮問であります。  会社法制を規定いたします現行商法典は,明治32年に制定された法律でありまして,片仮名の文語体で表記されておりますほか,現在は使われていない用語が多く用いられている,このために利用者に分かりやすい平仮名の口語体に改めるべきであるという指摘がされているところでございます。また,商法の中核をなします会社法制につきましては,商法本体に合名会社,合資会社,株式会社についての規定が置かれ,有限会社については個別の単行法が設けられているほか,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律において大規模会社や小規模会社についての商法の特例規定が置かれているために,利用者にとって分かりにくいものになっているという指摘があります。  さらに,近時,先ほどもお話がありましたように,経済情勢の変化の早さに対応いたしまして,短期間に多数回にわたり商法の改正が行われたため,会社法全体の整合性を図るという観点から,これを全面的に見直す必要があるという指摘も強まっているところでございます。そこで,このような会社法制の現代化を行うに当たり留意すべき事項につきまして,当審議会の御意見を伺う必要があるというふうに考えております。  第3は,諮問第57号,証券の間接保有の準拠法に関する諮問であります。  株式あるいは社債といったような有価証券に表章される権利につきましては,投資家が自ら証券を所持するのではなくて,株券等保管振替法などに基づく口座簿に所要の記載を受けることにより,間接的に保有する制度が広範に利用されているところでございます。このような証券の間接保有の制度が,証券取引のグローバル化によりまして各国に普及いたしますと,間接保有に係る証券の国際取引が増加し,各国においてこれらの取引に適用されるルールの透明性及び統一性が求められるようになるというふうに予想されます。こうした状況を踏まえまして,現在,ヘーグ国際私法会議において,間接保有に係る証券の準拠法に関し,統一的な条約を作成するための審議が行われておりまして,その進ちょく状況によりましては,本年中に条約が採択されるということも見込まれておりますが,その審議の内容は,我が国の関連法制に影響を与えるものというふうに思われます。  以上のような内外の情勢にかんがみますと,この条約の審議に積極的に関与するとともに,条約が成立した場合の批准の必要性,そのための国内法の整備の要否等につきまして検討する必要があり,そのため,諮問事項に関しまして当審議会の御意見をお伺いする必要があるというふうに考えております。以上でございます。 ● ただいま,諮問第55号,第56号及び第57号につきまして,その朗読と背景,経緯,理由等について御説明をいただきました。この諮問事項につきまして,どの諮問に関するものでも結構でございます。御質問がございましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。  それでは,特に御質問がないようでございますので,次に,これらの諮問事項の審議の進め方について御意見がございましたら伺いたいと思います。どのように審議を進めていったらよろしいでしょうか。 ● 今日,ここに示されました諮問は,いずれも高度に専門的,技術的な事項にかかわっているものだというふうに思われます。もっとも,真ん中の諮問,56号はやや茫漠としておりまして,ほかの諮問ほど特定的ではないような印象を受けますけれども,今の御説明を伺いましたところでは,口語化と,それから会社法制全体の整合性を図るという観点から見直すという趣旨の諮問というふうに考えております。口語化と申しますと,単に現在ある条文を口語化にすればいいという問題ではもちろんありませんで,現行商法の各条文の解釈,運用という高度な専門的知識を要求するわけでございますから,この諮問第56号もやはりある意味では最も専門的,技術的な事項にかかわるものであるというふうに考えられます。  従来,法制審議会はそういう事項にかかわります審議につきましては,部会を設けて,部会で十分に御審議をいただき,その成果をまってここで議論をするということを例としてまいりました。今回,特にそういう例と違って処理をすべき事由はないように思いますので,従来の例に従いまして,部会を設けて審議していただくのが適切であるというふうに考えております。 ● ただいま,○○委員の方から,それぞれの諮問事項につきまして部会を設置して,まずそちらで専門的な観点からの御審議をお願いし,その審議結果を総会に報告していただいて,その上で総会で審議をするというのがよろしいのではないかという御提案をいただきました。この点について,ほかに御意見ございますでしょうか。--よろしゅうございますか。  これまでも,今,○○委員の御説明にもございましたが,法制審議会では大体そういう審議の仕方をしてまいりましたので,この三つの諮問についてもそのようにお願いすることにしたいと思います。  それでは,諮問第55号,第56号及び第57号につきましては,新たに調査審議をする部会を設けて,調査審議をするということに決定いたします。  次に,新たな部会に属すべき総会委員,臨時委員,及び幹事の指名に関しましては,これまでと同様に,恐縮でございますけれども会長に御一任願いたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。御異議ございませんか。  それでは,ただいまの点は会長に御一任願うということにいたしまして,次いでこれらの部会の名称のことでございますが,諮問事項との関係から,諮問第55号につきましては,会社法に関係いたしますので,「会社法部会」という名称を残しながら,その内容を少し具体化するという意味で,「会社法(株券の不発行等関係)部会」という,そういう名称にしてはいかがかと考えております。  また,諮問第56号につきましては,これも同じく会社法で,しかも全体的な問題にかかわるものでございますので,「会社法部会」という名称を残しながら,その後に「現代化関係」という言葉を挿入させていただくということにし,更に諮問第57号につきましては,「間接保有証券準拠法部会」という名称にしてはいかがかと,事務当局と相談をしまして考えましたが,いかがでしょうか。  「会社法部会」の間に,括弧を入れて,内容を特定するという名称のつけ方は,さきに刑事法で粗暴な運転等による業務上過失致死罪関係の諮問事項がございましたときに採用させていただきました方法でございます。それに準じて,今回の諮問第55号,56号についても,先ほど申しましたような名称にさせていただくということにしたいと思います。  特に,御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきたいと思います。  総会委員として,諮問事項の内容につきまして他に御意見がございましたら,この際,御発言を願いたいと思いますが,いかがでしょうか。部会の方で調査審議をしていただきますが,それに先だってもし御意見があれば,承りたいと思います。--特にございませんか。  それでは,いずれまた部会の審議結果が当総会に報告されましたときに,御意見を賜れればと思います。  これらの諮問事項につきましては,部会で御審議をいただいて,それに基づいて総会において更に御審議を願うということにいたしたいと思います。 ● 会社法関係というわけではありませんが,今の実態を御説明して,是非今後何らかの形の御検討をいただきたいのですが。  実は,民事再生法の問題でございます。最近,平成12年の4月に施行されました民事再生法でございますが,東京地裁の管轄だけでも旧和議法の6倍の申立てがございます。平成11年の申立件数についても,更生法は23件,民事再生法は4月から施行されたのですが551件ということでございまして,会社更生法の24倍にも平成11年のケースで当たっているわけでございまして,しかも地裁における申請の約2割が大企業からの申請でございます。いわば,会社法で言う大会社の関係でございます。  民事再生法の議論のときに,法制審議会といたしましても議論をされておりますが,法制度としては中小企業の利用を念頭に置いているというふうに私どもは認識をしているわけでございますが,法制度における労働組合の通知が義務付けられているにもかかわらず,それがなされていないケースや,従業員を全員解雇するというような企業再生案も通ってしまうというようになっております。いわば,再生の名前を借りた清算用途の悪用だというふうに考えざるを得ないようなケースが多いわけでございまして,体のいいリストラで整理解雇に使われているケースが多いというふうに私ども認識しているわけでございまして,例えば約2割が大企業というのは,例を挙げれば「そごう」だとか「寿屋」のような例がそうでございまして,どうも法制度の悪用が多いように感じられてならないわけでございます。  問題点といたしまして幾つかございますが,再生法自身が申立て後15日で決定を出されるということでございまして,裁判所が再建の見込みがあるかどうかというものの調査が15日で本当にできるのかということでございますし,今までの事例からいいますと基本的に全部受け入れているわけでございまして,再建できればそれでいいし,そうでなかったらそれまでよと,こういうケースが目立っているような気がいたしまして,裁判所が監督委員を選任して,監督委員の同意のもとで手続を進めるわけでございますが,現在の経営者が自分の都合のいい経営をしても,既成事実をつくってしまうというケースが目立っておりまして,損害の拡大防止をするためには明白な不法行為でもない限り,監督委員は事後承認せざるを得なくなるというようなことが実情でございまして,裁判所としてその点についてコントロールしているかどうか,いわば民事再生法という一つの法律をつくったわけでありますが,認定の方法が安易であるということ,それから裁判所の関与が十分でないということ,あるいは労働組合の関与についても法律には規定されているのですけれどもほとんど実体的にはなされていないということが非常に問題があるというふうに思います。  今のようなリストラのような状況のときに,確かに民事再生法が現経営者の経営のもとで企業再建ができる有効な手段であればいいのですけれども,逆に有効な手段というものが従業員を解雇することによって有効性を保つというのは,どうも社会的な問題からいって問題があるのじゃないかと,私どもは強く認識しているところでございまして,法律では労働組合が関与できる手続が7項目あるのでありますが,単に意見を聴取するという形式だけ整えるというケースが多くて,労働組合が意見を言ってもそれがなかなか実効性を欠くというようなことが出ております。  したがいまして,運用の改善でございますが,すべてを認定するということが,確かに15日の間では認定せざるを得ないということになるのはやむを得ないことだというふうに思いますけれども,裁判所がそれについて再生法の趣旨に従って十分な関与をするということが必要でありましょうし,もともと法律でも手続規定が出ているわけでありますから,労働組合なり従業員に対する説明責任ということを十分果たせるようなことをチェックしてもらわないと困る,こういうふうに思うわけでございまして,確かに再生法が簡単で迅速を最優先すると,再建確保のために必要があるということで施行されたわけでありますが,使いやすさから大企業でもそれを活用するというようなことになってございまして,中小企業で関係者が少ないからこの法律を使って再建をするというようなことがある程度予定をされていたにもかかわらず,大企業で,関係者が非常に多いにもかかわらず,15日で認定してしまうというようなことについては,必ずしも財務状況を正確に把握をした上で,再建の見込みがあるかどうかという認定がないままにこれが利用され,悪用されるということになっているというふうに私は思っているわけでございまして,裁判所の手続関与が監督委員の選任等,ごく一部に限られておりますので,しかも関与が認定決定日から3年間しかないということでございまして,今までの更生法なんかではある程度長い期間かかって更生をしたというケースがございますけれども,このやり方でいうと3年間しか裁判所が関与しないということについて,本当に再建の目的を達成できるかどうかということについて,非常に疑念を持っているわけでございます。  改めて言うまでもないのですが,労働組合の関与については,ここに記載しておりますが,「営業又は事業の全部又は重要な一部を譲渡するときの意見聴取」,42条の3であります。それから,「債権者集会期日の通知」,115条の3。それから,「財産状況報告集会で管財人の選任並びに再生債務者の業務及び財産の管理に関する事項についての意見陳述」,126条の3。「再生計画案及び修正後の再生計画案についての意見の聴取」,168条。5番目に,「再生計画案の可決後,それを認可すべきかどうかについての意見聴取」,174条の5などがありますけれども,民事再生法が清算ではなくて再生であるという,名前のとおり運用されているかどうかということについては,今の実態から言うとかけ離れているのじゃないかというふうに考えておりまして,この点についての会社に,例えば退職金原資がないことなどが分かっても,保全管理下では通常の場合よりも労働者債権に関する資産の確保が困難になるというような実態がございますので,私どもとしては,今の再生法の運用については非常に問題があるというふうに懸念をしているところでございまして,何らかの検討を是非法制審議会でも議論いただければ大変有り難いと。  時間がないところでこんなことを申し上げて,申し訳ありませんでした。 ● ただいまの御発言の多くは,民事再生法の実際上の運用の問題に関係するかと思いますが,ちょっとここで直接それについてお答えするということは困難かと思いますので,運用の在り方について御指摘いただいた問題点は,しかるべく関係方面にお伝えするということにしたいと存じます。  それから,民事再生法自体の考え方でございますが,これはどなたか・・・。 ● 民事再生法の立法の精神は,○○委員十分お分かりをいただけるところと思います。そこでは,かなり今の制度設計を組んでいるわけでございますが,それが立法の目的のとおりに運用されていないというところがあるとすれば,これは私ども法務省といたしましてはより制度の趣旨を更に徹底をして,PRに努めるということをまずいたしたいというふうに思っております。  この再生法が頻繁に利用されているというところから,逆に今御指摘のようないろいろな問題点が各般から指摘がございまして,それが運用上の問題なのかあるいは制度的な見直しが必要な問題なのか,その点の切り分けをするための準拠法収集に今努めておりまして,もし制度的な見直しが必要であるということであれば,当然のことながら当審議会で御審議をいただくということになろうか思います。 ● 今の○○関係官のお話で十分なのですが,○○委員がおっしゃったように,確かに運用の問題ではあるのですが,場合によると民事再生法を見直して,制度的な強化をするというようなことが必要になるということも考えられますので,是非その点については今,○○関係官がおっしゃったように,検証していただいて,法改正が必要で,そういう実効があるようなものになるのであれば,是非そうした議論をしていただきたいというのが今の発言の趣旨でございます。 ● 分かりました。そのように取り扱わせていただきたいと思います。  ほかに御意見ございますか。  それでは,ここで休憩にいたしたいと思います。           (休     憩) ● 会議を再開いたします。  最後になりましたが,事務当局から,「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」(仮称)の締結等に伴う法整備について,報告をしていただきます。 ● テロ資金防止条約等の条約締結などのために,その処罰法規を今国会に提出する必要が生じてまいりました。その概要について,ここで御報告をさせていただきたいと存じます。  御案内のとおり,昨年9月11日,アメリカでいわゆる同時多発テロ事件が発生したわけでございますが,これを受けまして,政府としては,昨年の10月18日,内閣に緊急テロ対策本部を設置して,総合的かつ効果的なテロ対策の推進に努めております。その重点推進事項の一つといたしまして,テロ資金監視の強化が掲げられており,いわゆるテロ資金供与防止条約等に係る国内法の整備作業が進められております。法務省におきましても,この条約などの的確な実施を確保するため,いわゆるテロ行為のための資金を提供し,あるいはこれを収集する行為の犯罪化などを内容とする,国内法の立案作業を進めております。  この,テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約につきましては,資料番号「刑1」と記載した資料がございますが,それに概要を記載しております。  この条約は,平成11年12月に国連総会で採択された国際条約で,いわゆるテロ防止関連条約の一つとされております。これは,いわゆる爆弾テロなど凶悪なテロ行為が相次いで発生しているという世界の状況を踏まえまして,国際的にテロ対策の強化が必要という声が高まり,そのための具体的措置の一つとしてテロリストの資金調達に対する対策が求められるようになったことが背景でございます。  平成8年7月には,先進8か国で採択されたテロに関する「25の勧告」というのもございますが,その勧告にもこの点が盛り込まれておりましたところ,更にグローバルな取組みが必要ということから,国連におきましてテロ資金対策のための国際条約を作成することとなり,本条約が採択されることに至ったものです。  ところで,テロ防止関連条約と言われます条約は,現在,ただいま申し上げた条約を含めまして12ございます。その概要は,資料番号「刑2」に記載したとおりでございます。その多くは,締約国に対して一定の行為を国内法で犯罪とし,国外犯についても裁判管轄権を設定することを求め,容疑者が国内に所在する場合には,裁判管轄権を有する他の締約国への引渡しか,あるいは自国内での訴追のための権限ある機関への付託を義務づける,そういう方法によりまして犯人の処罰を確保し,対象とする行為の防止を図るという枠組みが採用されております。テロ資金供与防止条約も,基本的にはこれらと同様の枠組みの条約でありますけれども,本条約では,一定の犯罪のために資金を提供し,又は収集する行為の犯罪化と国外犯処罰が求められており,これによりまして国際社会が協力して,いわゆるテロ犯罪の防止を図ろうとするものであります。  資金の提供又は収集の目的とする一定の犯罪は,この条約の上では第1に住民を威嚇あるいは政府等に対する強要を目的とする文民等の殺害又は重い傷害を与える行為。それから先ほど申し上げました資料2の②から⑨,及び⑪のいわゆるテロ防止関連条約の中の9本の条約の犯罪。これは,ハイジャックでありますとか,爆発物の使用とか,そういう行為を含むわけですが,その2類型が定められております。テロ防止関連9条約上の犯罪としては,ただいま申し上げましたようにハイジャック,あるいは航空機や空港施設の破壊,シージャック,国家代表等の身体等への侵害,人質をとる行為,核物質の散布,爆発物の爆発等が含まれております。  我が国では,これらの条約につきましては,いずれも締結済みでございます。そこで,本条約において資金の提供又は収集の目的とされている犯罪は,既に国内法上すべて犯罪とされているということとなります。したがって,例えばこのような犯罪のために資金を提供する行為は,目的とする犯罪が実行に着手されれば,少なくともその幇助犯ということにはなるわけでございますが,テロ資金防止条約は,その資金が実際に犯罪行為に使用されたかどうか,あるいは目的としております犯罪が,実行に着手されたかどうかを問わないで,資金提供行為自体を処罰することを求めております。また,同様に,資金を集める行為自体も,それ自体として処罰することを義務づけております。そこで,本条約を実施するためには,このような犯罪のための資金提供罪及び資金収集罪を設けますとともに,条約で求められております国外犯処罰を可能にするという罰則が必要になるわけでございます。  また,本条約は,提供された資金等の没収のための適当な措置をとることや,資金提供行為等の防止等のため,金融機関の顧客の身元確認,疑わしい取引の報告,取引記録の保存等を含む実行可能な措置をとることなどを同時に定めております。  この条約につきましては,採択後,平成12年7月の九州・沖縄サミットのコミュニケ等で締結が呼びかけられておりましたが,米国の同時多発テロ事件後,早期締結と早期実施が強く求められるようになりました。まず,昨年の9月20日に発出されたG8首脳声明におきまして,本条約を含むテロ防止関連12条約の可及的速やかな批准に向けての措置をとることが強く要請されました。また,同月28日の国連安保理決議1373号でも,できるだけ早期に,本条約を含め,テロリズムに係る関連国際条約等の締約国となることなどがすべての国に求められております。  さらに,従来,犯罪収益のマネー・ローンダリングの行為の規制を扱ってまいりました金融活動作業部会,FATFと略称されておりますが,これも昨年10月31日に「テロ資金供与に関するFATF特別勧告」を採択し,その中に,本条約を批准,完全履行するたの速やかな措置をとることを勧告しており,そのほか多数の国際フォーラムにおきまして,早期締結,早期実施が求められている状況でございます。  そこで,このような状況のもとで,本条約の署名国や締約国は著しく増えてまいりました。本年2月6日時点で,署名国は132,締約国は18となっております。これは,22か国が発効に必要な数でございますけれども,ただいま18に達しておりますので,間もなく発効すると考えられます。我が国におきましては,昨年10月30日,署名を済ませている状況です。  次に,先ほど触れました国連安保理決議1373号等について,若干御説明いたします。  この決議は,すべての国に対しましてテロ行為の防止及び抑圧を求めるとともに,自国民により,又は自国の領域内で手段のいかんを問わず,直接又は間接にテロ行為を実施するために資金が使用されることを意図して,又は資金が使用されることを知りながら故意に提供し,あるいはこれを受領する行為を犯罪化することなどを求めているものですが,安保理決議は,国連憲章に基づくもので,加盟国に対する拘束力を有するものでございます。したがいまして,この安保理決議を履行するためにも,テロ行為のための資金提供等を犯罪化するための法整備を速やかに行う必要がある次第です。  そういう観点から,いわば担保法,実施法をつくるべく,法務省におきまして昨年の暮れごろから法整備の検討を進めてまいったわけでございますが,内容はただいま申し上げたことと重複することになりますけれども,一定の犯罪行為のための資金提供及び資金収集の罪を設ける,そういう処罰法規の新法をつくることを考えております。  また,それにあわせまして,マネー・ローンダリングあるいは没収等の対象とするため,組織的犯罪処罰法でマネー・ローンダリング規制の前提犯罪とするということをあわせて予定しております。これらは,法務省で現在立案作業中のものでございますが,先ほど申し上げましたように,その一方で金融機関での身元確認義務や,取引記録の保存,こういうふうな問題もございまして,これらについては現在金融庁その他の関係省庁で立案作業中でございます。  以上のような状況でございまして,今回の法律案につきましては,1点はテロ防止関連条約等の実施法でございまして,その基本的内容については,既に条約等で義務が定まっているもので,国内的に裁量の余地が非常に乏しいものでございます。それからまた,特定の目的,あるいは特定の重大犯罪について資金を提供するという,そういうかなり限られた場面の話の問題でございまして,必ずしも刑事法の基本法令とは言えないのではなかろうかと,さらに全体の作業のスケジュールといたしまして,金融機関等の身元確認等に関する法律,これらとテロ対策関連の法案として一括して提出される見込みがかなり強いものでございまして,そういう意味で歩調をほかのところとも合わせなければならない緊急の法整備が求められているものである,そういう事情を考慮いたしまして,法制審議会につきましては,恐縮ではございますけれども,ここでただいま申し上げたような御報告にとどめることとして,今国会に法案を提出したいと考えている次第でございます。よろしくお願いいたします。 ● ただいまの御報告につきまして,御質問がございましたら伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 法律は余り関係ないのですが,国連でコンベンションができてから,すごく日本で調印するのが遅くなっているのですが。というのは,G8といいますか,先進民主国の中では日本だけが2001年であって,しかも9月11日後以降にやっているのは日本だけなんです。ほかのはみんな2000年,1999年の12月,年明けて大体みんなすぐやっているのですが,これは何というかしようがないのでしょうが,いろいろな事情があるのでしょうけれども,そのおくれといいますか,何か嫌だというためのおくれなのか,調整によるできないののおくれなのか,あるいはそこらが非常に複雑に絡まっているのか,よく分からないのですが,ほかのアメリカとかフランスとかドイツとかイギリスとか,みんなG7は,ロシアも含めて,何だかロシアは分からないけれども,そういうのが2000年早々にやっているのですが,調印するのが日本だけG8の中では非常におくれておって,しかも9月11日以後にやっておるということについて,別に早くやったからいいというものじゃないのだけれども、急に早くやりたいという気になった,あるいはずっとおくれていてやっていたというのは,どういう理由なんですかね。 ● ちょっと誤解をされておられるのではないかと思うのですが。  まず,このテロ資金防止条約は昨年の時点で,これは締約国は4か国だったのです。それでG8の中ではイギリスだけでした。今年になりましても,G8では,現在までに入っているのは,イギリスのほかはフランスだけでございます。 ● 調印のところを見ているだけです。 ● 署名は,これはまた別な事情がございまして,主としてこれは署名するかどうかは外務省で決めることなのですが,外務省の方の基本的スタンスとして,1年程度で承認,締結の準備が整う見込みが立ったときに署名をするという状況があるようです。 ● 100年ぐらいですか。 ● 1年です。 ● 100年ぐらい前からそんな方針を持っているのですか。 ● いえ,署名というのは実はどういう意味を持つかということは結構いろいろあって,それほど特に深い意味を持っているわけではない,割合簡単に署名している国もあります。  署名しても,ずっとそのままという国もしばしばあるわけで。 ● だけど,それがこういう案件のときには国益にかなうかどうかということを知りたいのですね。何かよく分からないけれども,古いやり方をただぼうっとやっているというのだったら何かおかしいと思うから,おくれが悪いと言っているのじゃなくて,そういうふうにG8のその他に比べればおくれているということの理由が,そもそも正当化できるようなものなのかと聞いているのです。 ● 先ほど申し上げましたように,署名がどれだけ実質的な意味を持つのかという問題もあるわけでして。 ● それはまた別な問題なので。 ● それで,先ほど申し上げましたように,私,外務省の当局者ではないので断定的なことはなかなか申し上げにくいのですけれども,日本も比較的緩やかにそういうことで署名をしていた時期というのがずっとあったようです。ただ,どうもいろいろ伺っておりますと,署名をした以上は早く批准をするようにと,そういう見込みがないようなものならそう簡単に署名をするなという意見が一部に非常に強く出てきたようでございまして,そういうことから外務省の方で,早期に締結するということが,いわば外務省として確信ができないものについては,署名は見合わせるという,そういうような方針がどうもあるのではないか,そういうことでございます。 ● それでブッシュ政権が登場して,今度はやれということになって,ほら,早くやろうということになったのだと思うのですが,とりわけ大統領が来るということで,もう来週だか今週だか。そういうのも大変だなと,私は同情しているのですが。 ● 外務省からの話によりますと,この条約は署名期限が昨年の12月31日だったもので,12月31日までには署名をするということでやってきたようです。 ● でも,事件が起こってからだから,何か格好悪いのですよ。 ● 結局あの事件が起こったためにそれが目立ったということだろうと思うのですけれども,その前からそういう考えではいたと,そういうことです。ですから,外務省としては,要するに約1か月少々前倒しで署名の手続をとったという,そういうことと聞いております。 ● そこが,私はやはり法律を変えるときに,何か特定のようなことを念頭に置いてはいかんというのはよく分かりますが,大体法律というのは特定の事件が何か大きな意味を持つのじゃないかと考え直して,現行の法律が何かまずいところがあるのじゃないかというのでちょちょっと直そうということになるわけだから,ある程度特定の事件が上がったことに言及しながらディスカッションしてもいいわけで,何か分かりにくいですね。  ブッシュ政権が登場して,そのうちに何とか不審船とか金正男とか言われるような人が来たとか,ごちゃごちゃというのがあるのですが,そして財務省,中央銀行会議があってという,そんな感じを見ていると,何かこれ,やはり法律のつくり方がちょっともたもたしているのじゃないかと思うのですね。タイミングを2回も失っているし,やりたくないというなら全部やらなければいいと思うのだけれども,そういうわけにもいかなかったのだと思うのですけれども,何か大きなことについて考慮がちょっといかな過ぎて,ただ惰性が多過ぎるのじゃないかという気がして,そして外圧がやたらときくし,何かちょっとまずいのじゃないかなと私は思うのですね。 ● 弁解がましくなるかもしれませんが,先ほど申し上げましたとおり,実はこの条約は先進国の中でもイギリスしか加盟していなかったもので,ほかの国も,言ってみればどこもそれほど緊急な話とは必ずしも把握していなかったと思うのです。ただそれが,昨年のテロ以来,各国が認識を改めたということにもなろうかと思いますが。 ● だから,G7というか,日本以外は9月11日前に少なくとも調印はしている。 ● 署名の意味ということになろうかと思いますが,これは法務省の方では,責任を持ったお答えは非常にしにくい話で,外務省の判断ということになるわけですけれども。 ● そうだと思いますけれどもね。こういう事態ですから,調印とか批准とかという意味がすごく問題になると思うのですけれども,何かのろまな感じがしますね。 ● こういうことを言うと何ですけれども,一般的にかなりいろいろな条約があるわけですね,それをどういうふうに処理していくか,手順が結構難しいケースもあるわけで,そうするとある時点ではもう少し世界各国の足並みも見て,この時点では,まだもう少しゆとりがあるだろうというもの,それがいろいろなことで急きょ早くやるということにもなる。そうすると,その場合に今まで何をやっていたのだという,こういうような感じに受けとめられるところもあるのだろうと思うのです。ですから,条約ができたらすぐに右から左と処理をするということは,現実問題としてはいろいろな意味で大変難しいことですし,また実際どこの国でもそこまでのことはやっていないというのが実情と思います。 ● ただ,この印刷されたものを見ると本当に見栄えが悪いですね。とにかく,事件の前に全部一応調印はしているのです。それが何の意味であれ。日本だけ入っていない。後からばたばたとやっているのですね。何かおかしいと思いますし,また米国大統領が訪日するというので,また何かばたばたというのが,何かだらしがないなという感じがしますけれどもね。外からだけ見ていると。 ● 別にブッシュ大統領の訪日と直接これは関係のないことですので・・・。 ● 関係ないけれども,何となくそういう感じがするのですね。 ● 御指摘の御意見は十分伺いましたが,必ずしも法務省としてお答えできるような事情ばかりではないようでございますので,御理解願いたいと思います。  ほかに,御質問等ございますか。  特に御発言もないようでございますので,それではただいまの報告につきましては御了承いただいたと考えてよろしゅうございますか。--それでは,御了承いただいたということにいたします。  ほかに,この機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたします。本日の議題以外のものに関してでも結構でございます。 ● 中間法人,ずっと前に審議に上がったと思うのですが,4月から実施するのだけれども,東京都に問い合わせたら,まだマニュアルといいますか,どのように作ればいいかというのはできておらんということで,これももたもたしてよくないと思います。  中間法人として何か申請しようとしても,どういうものをつくっていけばいいのかというのが,東京都の関連部局に行ってもまだできてないというのですね。よくないと思います。 ● 中間法人法の施行に伴いますいろいろな実施細則,これにつきましては民事局の方で通達を発出しております。各法務局にはその情報が届いておりますので,法務局にお問い合わせいただければ,どういう手順で,どういう手続で中間法人を作るのかということは,お答えできる状況になっておりますので,そちらの方にお問い合わせいただければと思います。 ● どこですか。 ● 法務局です。全国の。 ● でも,東京都所管の中間法人で,それでは東京都に聞かなければだめじゃないのですか。 ● いや,中間法人につきましては所管庁というのはございませんので。 ● そうですか。法務局ですか。では,何で東京都庁はまだできていないと答えたのですかね,何かよく分からなかった。 ● 公益法人と違いまして,主務官庁というのがございません。 ● そうですか,分かりました。どうもありがとうございました。 ● ほかに特にございませんか。  それでは,本日の法制審議会はこれで閉会ということにいたします。大変熱心に御審議いただきましてありがとうございました。