法制審議会第135回会議 議事録 第1 日 時  平成13年9月5日(水)  自 午後1時30分                       至 午後3時46分 第2 場 所  法曹会館「高砂の間」 第3 議 題  会社法制の見直しに関する諮問第47号について         自動車運転による死傷事故に対する罰則の整備に関する諮問第54号について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事  (開会宣言の後,次のように法務大臣あいさつを法務副大臣が代読した。)  法制審議会第135回会議の開催に当たりまして,一言ごあいさつ申し上げます。  本日は,委員・幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用中のところ,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。  当法制審議会におきましては,皆様の御尽力によりまして,既に多くの重要な案件について答申をいただき,また,現在も多数の諮問事項についてそれぞれ調査審議をいただいているところでございます。皆様方の御労苦に対しまして厚く御礼申し上げます。  さて,本日御審議をお願いいたします議題の第1は,会社法制の見直しに関する諮問第47号です。  本諮問につきましては,企業間の国際的な競争の激化,コンピュータ・ネットワークの普及,IT革命の進展,新規企業の資金調達の需要の増大,企業活動の国際化等会社を取り巻く社会・経済情勢の変化に対応するため,会社法制の大幅な見直しを行う必要があるとされたことから,会社法部会において調査審議が続けられ,ストック・オプション制度の改善,株主総会のIT化等に関する部分につき,「商法等の一部を改正する法律案要綱案」が決定され,本日その結果が報告されると承知しております。現在の我が国の社会・経済情勢にかんがみますと,これらの事項についての法整備を早急に行う必要がありますので,今秋に臨時国会が開かれる場合には,同国会に法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  第2は,自動車運転による死傷事故に対する罰則の整備に関する諮問第54号です。  本諮問につきましては,刑事法(自動車運転による死傷事犯関係)部会において,種々の角度から議論がなされ,本日その結果が報告されると承知しております。近時,飲酒運転や著しい高速度運転などの無謀な運転による悪質・危険な死傷事犯が後を絶たず,その量刑や法定刑の見直しを求める国民の声が高まっている実情等にかんがみますと,自動車運転による死傷事犯に対し,事案の実態に即した処分と科刑が可能となるよう,罰則を整備することが喫緊の課題でありますので,今秋に臨時国会が開かれる場合には,同国会に法案を提出できますよう,できる限り速やかに御答申をいただきたいと存じます。  それでは,これらの議題につきまして,どうぞよろしく御審議をお願いいたします。  はなはだ簡単ではございますが,これをもちまして私のあいさつといたします。  以上でございます。よろしくお願い申し上げます。  (法務副大臣の退席後,委員の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた。) ● それでは,早速,本日予定をしております議題の審議に入らせていただきます。  ただいまの法務大臣あいさつにもございましたように,本日の議題は,会社法制の見直しに関する諮問第47号,及び自動車運転による死傷事故に対する罰則の整備に関する諮問第54号についてでございます。  本日の議事のおおよその順序の予定でございますが,それをまず申し上げさせていただきたいと思います。  最初に,民事関係の諮問でございます会社法制の見直しに関する諮問第47号につきまして御審議をお願いし,続いて刑事関係の諮問事項である自動車運転による死傷事故に対する罰則の整備に関する諮問第54号について御審議をお願いするという順に議事を進めてまいりたいと考えております。また,最後に事務当局から,裁判の執行に係る調査権限に関する刑事訴訟法改正についての報告がございますので,よろしくお願いいたします。  それでは,第1の議題であります会社法制の見直しに関する諮問第47号について,御審議を願いたいと存じます。  ただいまの法務大臣のごあいさつにもございましたし,既に御承知のとおりでございますが,本年1月12日開催の第132回総会で,法務大臣より「企業統治の実効性の確保,高度情報化社会への対応,資金調達手段の改善及び企業活動の国際化への対応の観点から会社法制を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」という諮問をいただきました。そして,この総会におきまして,この諮問に対する審議の方法につきましては,まず会社法部会を設置いたしまして,そちらで調査審議をしていただき,その結果の御報告を受けてこの総会で審議をするということが決定されたところでございます。そこで,会社法部会の方でこれまで御審議を願ってまいりました結果を本日御報告願い,それに基づき,皆様に御審議をお願いしたいということでございます。  まず,会社法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長でもいらっしゃいます○○委員から御報告をお願いいたします。 ● 諮問第47号につきまして,本年8月22日,会社法部会の第9回会議におきまして,資料1の「商法等の一部を改正する法律案要綱(案)」を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の内容について御報告申し上げます。  まず,要綱案の決定に至る審議の経過等について御報告申し上げます。  本日,御審議いただきます「商法等の一部を改正する法律案要綱(案)」は,諮問第47号に対する答申のための要綱案でございます。  会社法の改正につきましては,昭和50年以来,その全面的な見直し作業が行われてまいりましたが,平成12年の会社分割法制の導入を内容とする商法改正により,一応の作業を終えたところであります。しかしながら,その間にも会社を取り巻く社会経済情勢は大きく変化し,会社法制につきましても新たな改正要望が各方面から寄せられてまいりました。また,事前規制型社会から事後監視型社会への移行に対応するため,経済活動にかかわる基本法制の早急な整備が求められております。  このような状況のもとで,本年1月12日,法務大臣から,「企業統治の実効性の確保,高度情報化社会への対応,資金調達手段の改善及び企業活動の国際化への対応の観点から会社法制を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」との諮問第47号がございました。  この諮問を受けまして,会社法部会では直ちに要綱案を作成するための検討を開始し,4月18日には資料2の「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」を決定いたしました。この中間試案につきましては,法務省において裁判所,弁護士会,大学,経済団体等約300の団体,機関等に個別に意見照会を行うとともに,広く一般に意見を求めました。その結果を取りまとめたものが,資料3の「会社法制の大幅な見直しに関する各界意見の分析」でございます。  会社法部会では,中間試案に対して寄せられた意見を踏まえまして,更に検討を行い,8月22日,中間試案に掲げられた検討事項のうち,特に早急に立法をすべきであるとの要望が強いストック・オプション制度の改善,種類株式制度の弾力化等を内容とする株式制度の見直し並びに高度情報化社会に対応する会社運営のIT化を可能とするための会社関係書類の電子化等を盛り込んだ「商法等の一部を改正する法律案要綱(案)」を決定するに至ったものであります。  なお,中間試案に掲げられた事項のうち,今回の要綱案で取り上げられなかったものにつきましては更に検討を続け,来年の通常国会への法案提出に間に合うように要綱案を作成したいと考えております。  次に,要綱案の概要について申し上げます。  要綱案は,大きく株式制度の見直しに関する事項と,会社関係書類の電子化等に関する事項とに分かれます。要綱案の第一から第六までが株式制度の見直しに関するもので,第七及び第八が会社関係書類の電子化等に関するものであります。  第1は,新株発行規制等の見直しに関するものであります。いずれも,新株発行に関する過剰な規制を緩和し,株式会社の資金調達の円滑化を図ろうというものであります。  第2は,種類株式制度の見直しに関するものであります。  その1は,株式の種類として新たに議決権を行使することができる事項につき,内容の異なる株式を発行することができることとするものであります。現行法が,配当優先株式に限って議決権がないものとすることができるとしている点を改めまして,配当優先株式以外の株式であっても,議決権のない株式とすることができるものとするほか,例えば会社の合併,利益処分等の一定の事項についてのみ議決権を有する株式をも発行することができるとするものであります。  その2は,このような議決権を行使することができる事項につき,制限のある種類の株式につきまして,その利用可能性が現行の無議決権優先株式より広がることを考慮しまして,現行の無議決権優先株式が発行済株式総数の3分の1までしか発行できないとされているのを改め,新たに認めた議決権を行使することができる事項について,制限のある種類の株式については,発行済株式総数の2分の1まで発行できることとしたものであります。  その3は,利益の配当に関して内容の異なる種類の株式につきましては,定款でその上限額その他算定の基準の要綱を定めることで足り,具体的に配当すべき額につきましては,取締役会等の発行決議において定めることができることとして,種類株式の起動的な発行を可能にしたものであります。  その4は,株式会社が種類株式を発行した場合には,株主総会の決議事項とされているもののうち,種類株主がその利益を保護するために必要と考える事項につきまして,全体の株主総会の決議のほかに,定款をもってその種類株主の総会の決議を要すると定めることによって,その種類株主の利益を保護しようというものであります。  第3は,株式の転換に関するものであります。  その1は,今回,会社から一斉転換ができる「強制転換条項付株式」を設けることとしたことから,これと区別するため,従来の転換株式を「転換予約権付株式」と呼ぶことにしたものであります。この転換予約権付株式につきましては,株主名簿閉鎖期間中であっても転換請求ができるものとするなどの改正をすることとしております。  その2は,新たに会社から強制的に転換をすることができる強制転換条項付株式を認めることとするものであります。例えば,資金調達のために優先株式を発行した会社が,優先配当の負担を免れるため,一定期間経過後に普通株式に転換するような場合が考えられます。  第四から第六までは,新株予約権に関するものであります。  新株予約権とは,あらかじめ定めた価額で会社の株式を取得することができる権利でありまして,現行法の新株引受権付社債の「新株引受権」がこれに当たります。今回,その法的性質に着目して,「新株予約権」と呼ぶことにしております。  新株予約権につきましては,従来,新株引受権付社債として社債と一緒でなければ発行できないとされていましたが,今回の改正により新株予約権の単独発行を認めることとしましたことから,新株の発行の規定に倣って,発行,譲渡,登記,新株予約権原簿等につきまして手当てをすることといたしました。そのため,本要綱案も,この新株予約権に関する部分がかなりの分量を占めております。ここでは,各項目についての御説明は省略させていただきまして,特に改正のポイントに絞って御説明をさせていただきます。  改正のポイントの第1は,ただいま申し上げましたとおり新株予約権の単独発行を認めることにしたことであります。現行法は,社債を発行し,債務を負担しなければ新株引受権を発行できないこととしておりますが,この点につきましては,過剰な規制であるとの指摘があったところであります。また,新株引受権について,社債のいわば付属物として扱われているため,その新株引受権自体が幾らの価値を有するものなのか,その価値はどのようにして算定されたのか等につきまして,取締役会の決議事項とされず,また適切な開示もなされておりませんでした。改正法は,新株予約権につき,その単独発行を認めることとして,一方で過剰な規制を廃止すると同時に,その発行価額及び権利行使価額を取締役会で決議すべきこととし,またその算定根拠等についても公告等をすべきこととし,開示についても適切な規制を及ぼすこととしております。このように,新株予約権の単独発行を認めることにより,これをストック・オプションにも利用できますし,例えば社債以外にも,融資を受ける際に貸主に新株予約権を付与することにより,融資の条件を有利なものとすることができることになります。  改正のポイントの第2は,これまでストック・オプションとして格別に規定を置いていたものにつきまして,新株予約権の有利発行として整理することにしたことであります。現行法は,新株引受権につきまして格別に規定を設け,正当の理由がある場合に限って会社の取締役及び従業員に新株引受権を無償で付与できることとし,これを会社の実務上又は講学上,「ストック・オプション」と呼んでおりましたが,要綱におけるこれは新株予約権の有利発行そのものであります。しかも,このように新株予約権の有利発行と構成すれば,その発行について,現行法と同様に株主総会の特別決議による授権は必要になりますが,付与対象者をその会社の取締役又は従業員以外にも拡大できますし,株主総会では有利発行する新株予約権の目的となる株式の種類及び数を定めておけば足りるので,これまでのように株主総会でストック・オプションを付与される者の氏名,各人に付与される株式の種類及び数等につき,決議を得る必要がなくなります。また,今回の改正で,付与できる株式数及び権利行使期間についての制限も廃止いたしました。もともとこれらの制限は,自己株式の取得及び保有を制限し,ストック・オプションとして付与するために,例外的に自己株式の取得及び保有を認めることとしていた先の通常国会における商法改正前の規制のもとで,自己株式の取得及び保有制限の潜脱を防止するための規制であったものでありますが,自己株式の取得及び保有制限が廃止されたことにより,規制の意味を失っていたものであり,今回の改正により,これらの規制を廃止しようとするものであります。  改正のポイントの第3は,新株予約権の単独発行を認めることにしたことに伴い,現行法の転換社債及び新株引受権付社債に相当するものについての規定を整備することにしたことであります。すなわち,転換社債は,新株予約権を付した社債,いわゆる新株予約権付社債であって,新株予約権の分離譲渡ができず,社債の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額とを同額とした上で,新株予約権を行使するときは,必ず社債が償還されて,社債の償還額が新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の払込みに当てられるものとして規定を整備することができます。また,新株引受権付社債のうち,分離型の新株引受権付社債は,会社が社債と新株予約権とを同時に募集し,両者を同時に割り当てるものでありますので,社債の規定と新株予約権の規定が同時に適用されるものと位置づけ,格別の規定は置かないこととしております。また,非分離型の新株引受権付社債は,新株予約権付社債であって,新株予約権を分離して譲渡することができないものとして規定を整理することとしております。  改正のポイントの第4は,株式交換及び株式移転の場合に,完全子会社なる会社の発行した新株予約権を,完全親会社となる会社が承継できることとしたことであります。商法は,会社の分割及び合併の場合には,承継会社又は存続会社が分割会社又は消滅会社から権利義務を承継することを認めており,したがって分割会社又は消滅会社が発行した新株予約権につきましても,承継会社又は存続会社等がこれを承継することができますが,株式交換等におきましては,完全子会社となる会社の権利義務を,完全親会社となる会社が承継する旨の規定がなく,完全子会社となる会社の発行した新株予約権を完全親会社となる会社が承継することは認められておりませんでした。そのため,株式交換後に完全子会社となる会社の発行した新株予約権が行使されますと,完全親会社関係が崩れることになり,制度利用の目的を達成できない事態が生ずるおそれがあるとの指摘がありました。また,完全子会社の株式は原則として流通しないため,そのような会社の発行した新株予約権の行使によっては,権利行使価額と株式の時価との差額分を取得することができなくなるおそれがあるとの指摘もありました。要綱案は,株式交換等の場合にも,完全子会社となる会社の発行した新株予約権を,完全親会社となる会社が承継できることとして,そのための手続を定めております。  第七は,会社関係書類の電子化等に関するものであります。  高度情報化社会の到来に対応するため,会社関係書類の電子化を可能にすることにより,会社運営の合理化を図り,株主の権利行使の機会を確保しようとするものであります。  要綱案では,会社関係書類の電子化が問題となる場合を幾つかの類型に分類して,その規定ぶりを示しております。  これにより,例えば会社が株主総会の招集通知をインターネットを利用して行うことが可能になりますし,他方で,株主が議決権の行使を同様にインターネットを利用して行うこともできることになります。  これについても,幾つかのポイントに絞って御説明いたします。  第1に,会社が招集通知を電磁的方法により送付するときは,株主の個別の承諾を要することとしております。一方,株主が電磁的方法により議決権を行使する場合にも,その会社の承諾を要することとしておりますが,その株主が,会社から受ける株主総会の招集通知について電磁的方法によることの承諾をした者であるときは,会社は,正当の事由がない限り,その株主から受ける請求等について電磁的方法によることの承諾を拒むことができないものとしております。ここで,正当の理由に当たる事由としては,株主の申し出た電磁的方法が会社側で対応できないものである場合等を想定しております。  第2に,書面に署名が要求される場合に,これを電磁的記録で作成するときは,電子署名を付すべきこととしております。  第3に,書面の閲覧又は謄抄本の交付請求をすることができる場合については,電磁的記録に記録された情報の内容を,例えば出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの閲覧の請求や,電磁的記録に記録された情報の内容を記載した書面の交付の請求ができることとしております。  第4に,株主総会において議決権を電磁的方法により行使できることとする前提として,株主総会における議決権の行使を書面によってすることができることとしております。  第八は,計算書類の公開に関するものであります。  会社は,取締役会の決議をもって,貸借対照表又はその要旨の公告に代えて,貸借対照表に記載され又は記録された情報を,5年間,電磁的方法により開示する措置をとることができることとしております。  商法は,株主が有限責任しか負わないことから,貸借対照表の公告を義務づけて,会社と取引をする者の保護を図ることとしておりますが,要綱案は,現在の公告の制度に加えて,会社が自らのホームページ等を利用して計算書類を開示することを認めることにより,会社の負担を軽減し,かつ,開示の実効性を高めようとするものであります。  以上,要綱案の要点について御説明申し上げました。社会・経済情勢の変化の速度に対応して,会社法部会としてもここ数年間,非常に限られた時間内での迅速な審議を余儀なくされております。今回の要綱案の審議に当たりましても,会社法部会の委員及び幹事の方々には,夏季休暇中にも御審議をいただくなど,多大の御負担をおかけいたしました。おかげさまで会社法部会としては,課せられた責務を果たすことができ,本日の法制審議会総会に本要綱案を提出することができました。  最後に,本要綱案の作成につきましては,会社法部会の委員及び幹事の皆様方の絶大なる御尽力があったことを御紹介申し上げて,私の御報告を終わらせていただきます。よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● どうもありがとうございました。  会社法部会におかれましては,大変精力的に御審議をいただいたようでございまして,誠にありがとうございました。  それでは,ただいまの○○委員の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたらお伺いしたいと思います。どうぞ,どなたからでも御発言願いたいと思います。 ● 御質問をしたいと思います。  今日の御説明にありましたように,今回の法律案要綱案で企業を取り巻く社会経済環境の変化や国際化という中で,ストック・オプションの発行手続を簡素化をする,あるいは付与対象者の範囲を拡充するということについては,時代の要請であろうと思いますので,そのものについて異議を唱えるとか御質問するわけではありませんが,私どもとしては,これまでストック・オプション制度が発効して以降,ストック・オプションというのが給与やあるいは一時金の代替として支給されることによって,従業員の地位や退職金の権利が侵される懸念が出てはいけない,こういうふうに考えておりまして,ちょうどその点に関しては平成9年の当時の労働省の労働基準局長の通達がございまして,労働基準法との関係についてはそのときの改正商法によるストック・オプション制度では,権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か,また権利行使するとした場合においても,その時期や,株式売却時期をいつにするかは労働者が決定しているということから,この制度から得られる利益は,それが発生する時期及び額ともに労働者の判断にゆだねられている,このように理解をしております。そして,労働の対象ではなく,労働基準法第11条の賃金に当たらないというふうに労働省からの通達が出ております。  したがいまして,そこでは改正商法におけるストック・オプションの付与・行使等に当たり,それを就業規則等にあらかじめ定められた賃金の一部として取り扱うことは,労働基準法第24条に違反するものであるということでありますし,なお改正商法によるストック・オプション制度から得られる利益は,労働基準法第11条に規定する賃金ではないが,労働者に付与されたストック・オプションは,労働条件の一部であり,また労働者に対して当該制度を創設した場合,労働基準法第89条第1項第10号の適用を受けるものとすると。  この89条は,御承知のとおりでありますが,就業規則の項目でございます。その他の項目で第10号が適用される定めにおいては,これに関する事項について就業規則に載せなければいけない,こういうふうに書いてございます規定でございますが,こうした発令が出ているわけでありますが,今回,対象者が拡充する,あるいは手続が簡素化するということになりますので,私どもの懸念が懸念で終わるのであればよろしいわけでありますが,本来私どもとしては,これは意見になってしまいますが,従業員に対してストック・オプションを付与する場合には,給与の代替として付与してはならないという規定を商法上に設けるべきではないかというふうに考えるわけでありますが,この点に関して平成9年の労働省の通達についての関係を再確認をしたいということでございまして,これからが質問なんですが,これは当該主管官庁であります新しい厚生労働省との合議が行われたのかどうか,その際にどのような見解が示されたのかということについてお伺いしたい,こういうことでございます。 ● それでは,事務当局の方からお願いいたします。 ● 質問と御意見ということでございました。  大きく2点ございまして,一つはストック・オプションといいますか,今回新株予約権の有利発行という形で会社の従業員に付与されるものが,労働基準法上の賃金に当たるかどうか,それについて厚生労働省と何らかの交渉をしたかという点がまず第1点でございます。  まず,この点について厚生労働省と正式に折衝若しくは話合いということはしておりません。ただ,先ほど○○委員の方からも御紹介がございましたが,現在,厚生労働省でストック・オプションについて,これが賃金ではないと考える根拠が,その発生する時期及びその額が,ともに従業員の判断にゆだねられているため,労働の対価ではない,こういう説明ぶりになっておりまして,今回の新株予約権の有利付与についても,この点は中身が変わるものではございません。したがって,我々としては,それは賃金に当たらないと考えておりますが,この点また厚生労働省ともお話をしていきたいと思っております。これが第1点でございます。  それから,御意見ということで,商法中にストック・オプションを給与の代替として付与してはならないという規定を設けるべきだということでございますが,これは御承知のとおり,商法自体は商取引の基本原則とか取引の主体となる会社について,例えば株主の利益が保護されるように,また株主と債権者等との利害が適切に調整されるというような観点から規定を置くというものでございまして,我が国の私法体系では,労働者の保護については商法とは別に,労働関係法規によって規定されているということでございますので,商法中に規定を置くということは考えておりません。 ● 大体お答えはいただいたと思います。意見の方はそうした意見はあるのですが,その解釈が変わらないですねという確認をしたかったわけでございます。 ● それでは,ほかに御質問ございませんでしょうか。 ● 第8の計算書類の公開について,質問したいと思います。  この改正要綱案では,電磁的方法,つまりインターネットによる会社の計算書類の公開を認めているのですが,これに対しまして,日本新聞協会の広告委員会では反対意見を表明しておりますね。この中で新聞協会は,今求められているのは,現行法の厳格な運用である,したがって改正要綱案では計算書類の公開の機運をむしろ後退させるものではないか,そういう疑念を持つのだ,こういうふうな内容の反対意見ですね。  そこで,この部会では,この問題についてどのような意見があり,どのように審議されたのか,その点についてお聞きしたいと思います。特に,情報格差といいますか,デジタル・ディバイドと言われている問題について,確かにインターネットの利用については高齢者と若い人というような世代間の格差もあるし,それから地域的な格差もあるし,さらには大企業と中小企業との格差の問題がある。こういった情報格差の問題について,どういうふうにお考えになっていたのか,この点についてお伺いしたいと思います。 ● それでは,事務当局からお答えをお願いいたします。 ● まず,現状の会社の計算書類,特に貸借対照表の公告について,必ずしも十分に遵守されていないということで,これを厳格に運用して遵守されるようにすべきではないかという御指摘がある,これは従前からそういう御指摘があることは我々も承知しておりますし,会社法部会でもそれを前提に議論はさせていただきました。  今回,会社の計算関係を開示すべき必要性が高いということについては,会社法部会でも異論はないのですが,問題はそれをいかにして特に中小企業を中心にやりやすいような形で実現していくかという方法論だと思います。これを,現在会社の計算書類を公告しなかった場合には100万円の過料を科すという規定があるわけですけれども,それを厳格に運用して,残らず捕そくして過料を科していくというやり方は,もちろん一つあるとは思います。そういうやり方をここであえて進めていくのがいいのか,それとも開示がよりしやすい選択肢を増やすことによって,中小企業等を中心にこれを自らの意思で開示していくという方法を選ぶのかという点が一つの問題点,争点になったわけでございます。  この点につきましては,特に中小企業団体等とも話をいたしまして,後者の方法,中小企業が積極的に自らやりやすい,そういう選択肢を増やしていくということで進めていきたいということにいたしました。  今回,インターネット開示を認めますと,では開示の実効性が高まるかという点でございますが,このインターネットによる開示を認めますと,これは費用が格段に安くなります。現在の日刊新聞紙による公告等をやりますと,貸借対照表の要旨の公告でも100万ぐらいのお金がかかる。インターネットでやりますと,既にホームページを立ち上げているところであれば特段の費用が要りませんし,ホームページでこれから開示するというときも,それほど高い費用がかかるわけではないということが一つです。  それから,日刊新聞紙とか官報でありますと,スペースの確保の問題も生じます。インターネットでやりますとこれも解決される。さらに開示内容も充実されていくということで,全体としてこの方向で開示の実効性が高まるだろうと考えているところでございます。  それから,こういう方法の選択肢を増やすということにつきましては,中小企業団体,中小企業庁等もこれを受けて,できるだけ中小企業の啓もう活動をしていただくということをお約束いただいておりますので,最初の御質問については,これで中小企業等を中心に開示の実効性が高まっていく,こういうことになろうかと思います。  それから,もう一つはインターネットにアクセスできない者が十分に情報を得ることができないのではないかという御指摘でございました。これは,もう既に○○委員の方からもお話がありましたとおり,現在のインターネットの普及率を見ますと,2000年3月末現在で既にインターネット登録者数が二千数百万という数字がございます。一方,官報の発行部数が約5万部ぐらいだったと思いますし,例えば最も決算公告が一般的に行われている日経新聞で購読部数が約300万部ということで,まず部数,それから登録者数を比較するとインターネットの方が格段に大きいわけでございますし,今後の登録者数の伸びを考えますと,これは民間のある会社の試算でございますけれども,来年の3月末までにはインターネットへの登録者数,これは携帯電話も含めてでございますが,約7,000万人に達するという見込みも示されております。そういう普及率,それから今後の向上の見込み,それからインターネットへのアクセスも最近はボタン一つでインターネットにアクセスできるような,非常に使い勝手のいい,家電感覚でアクセスできるような機能が付いたものが出てきておりますので,恐らくこれからデジタル・ディバイドという問題につきましても,徐々に解決されていく,若しくは使い勝手のいいものになっていく,こういうことが一つ考慮されております。  それから,特に先ほどお話のありました地方の,特に高齢者の方々が株式を持っている場合等の話がありましたが,既に株主となっておられる方々につきましては,もちろん本店・支店に計算書類が備え置かれていつでも閲覧できるという商法の仕組みになっておりますし,株主総会の招集通知にはこれらの謄本が添付されますので,既に株主となっておられる方はこういう形で対応ができるだろうと。それから,新たにこれから株式を購入しようとする場合には,証券会社等を通じて会社の状況について知ることができるものと思われます。  そういうことをいろいろ考えますと,これからは会社関係書類について,開示する選択肢としてインターネットを通じて行うということも適切な方法だろうというのが,会社法部会での統一的な見解であったということでございます。 ● いかがでしょうか,よろしゅうございますか。  それでは,さらにほかの委員の方々。 ● 私も,○○委員と同じところでデジタル・ディバイドの話を伺いたかったので,大変よく分かりました。  それに関連してですけれども,結局新聞協会の方からのを拝読すると,新聞が持っている客観性であるとか,あるいはそこに挙げてくる,それを新聞社の名において責任持ってという公正・中立・客観性のような,そのような形でのメディアの部分を主張されているというふうに思うのですが,これは時代の流れで,ネットワーク・ソサエティーになっていくというのはもうこれは流れだと思います。  伺いたいポイントは,そのデジタルの世界で,例えば情報が改ざんされた場合ですとか,あるいは企業活動,自社のホームページですのでそこに第三者が入っていくこともできるし,それから勝手な形でいい加減なことをやることももちろんできるわけですけれども,そういう形で,これを挙げた場合には,世界中のどこから,だれでも,いつでもアクセスが可能になるわけですから,そのネットワーク・ソサエティーである権利が侵されたり,あるいは侵害されたりといったときの法的な拘束力,あるいは担保するものというのはどういう形になっているか。大変基本的な質問で恐縮ですが,お教えください。 ● 改ざんの可能性,それは第三者による場合,それからもちろん開示をした会社自身が改ざんをするという場合という二つの場合がある,こういうことでございます。  まず,もちろん改ざん防止につきましては,一方でこれから技術的な観点からそういうものが改ざんされないような仕組みというものが,現在でももちろんありますし,そういうものが利用されていくと思いますが,今後もそういう技術は進歩していくだろうと思っておりますが,それは全く技術的な観点からの話でございます。  それから,法的な対応でございますけれども,特に会社が内容を変えるということになりますと,これは会社の取締役等の法的な責任が発生する,現在,商法中にこういう計算関係の情報の開示につきまして虚偽の開示をした場合に,これによって損害を被った者に対して取締役が責任を負うという規定がございます。したがいまして,そういうふうに意識的に,もし故意に改ざんをした場合には,当然その規定の適用がございます。それから,もちろん過料の規定もあります。  それから,第三者の改ざん。これは,そういう場合が絶対ないとは言い切れないと思いますが,これは当然会社として改ざんがされないような手当てを最大限講じる必要があると思いますし,改ざんされた場合には,速やかにその復旧を図る,若しくはそれに対して周知を図るということが当然要求されるわけでございます。今回の計算書類の開示につきましては,単発で1回限り開示すれば済むということにしておりませんで,5年間,継続してホームページ上に開示するということにしておりますので,当然開示内容については常時チェックをいたしまして,もし改ざんがされた場合にはそれについて適切に対応していただく,それを怠ったために損害が発生したということになれば,損害賠償責任の問題が発生する,こういうふうに考えているところでございます。 ● さらに,それをなぜ伺ったかと申しますと,これは情報の改ざんの世界だけではなく,例えば議決権の行使であるとか,企業活動全体においてインターネットが公に認められるかどうかという,大変重要な時代のターニングポイントを私ども審議しているのだと思います。そのときに,これはとりわけ決算書類などというのは改ざんされたら損害は自分のことだし,自分でうそを書いたら自分が損害を被るわけですから,その部分は大変小さな話という気がいたします。  伺いたいメインのポイントは,これは日本国の個人情報をめぐるインターネット上の権利の問題というところにもつながってくることだとは思うのですが,商法がインターネット上に公に歩き始めたときに,一つ一つの問題がデジタル上で個別対応していかなければならないと考えるのか,それとも日本国政府として,デジタルの以前の商法の部分で考えていたことをそのままおおむね適用させるということを前提にスタートするのかというのが,かなり大きなポイントになってくるのではないかと思いまして,その点に関しての見解を伺わせてください。 ● 先ほどは,一般的なホームページの開示の話ということで申し上げました。今,○○委員の方の御関心は,むしろ個別な,例えば最初に少しお話が出た株主の議決権行使のような場面は,正に御関心のあるところだと思います。したがいまして,その例に沿って少し御説明申し上げますと,この議決権行使をするときには,当然議決権行使をする人が本当にその会社の株主であるのかということが確認されないといけません。会社には,もちろん株主名簿等で株主を把握する手段があるわけですけれども,電子的なデータの送信がされたときに,コンピュータの向こう側にいる人が本当にその株主かどうかということを確認する。これは,今現在,商法の世界に限らず,送信された情報が特定の人によって発信されたものであるのか,それからその内容が途中で改ざんされていないのかということを確認する仕組みとして,電子署名という方法がございます。この電子署名に関する法律は既に成立しているわけでございますが,この電子署名を使うということは一つ考えられようかと思います。  それから,例えば会社,特に商法の世界に今度は限定していいますと,例えば会社としては議決権行使,株主総会の招集通知なり議決権行使書面若しくはそのデータを送る際に,一定のパスワードのようなものを株主に送る。それから会社のホームページ上に議決権行使のための画面を開きまして,それで議決権を行使するときには特定の人を特定するパスワード,若しくはその数字を打ち込んで,その人は間違いなく会社が把握している株主であるということを明らかにして議決権を行使させる,こういう方法もあろうかと思います。したがいまして,世の中一般に行われている電子的なデータの送信について間違いがないようにする仕組みが使われることもありますし,商法の世界に限っても,今申し上げたような工夫をすることによって対応が可能ではないかということでございます。 ● よろしゅうございますか。  ほかに御質問ございますでしょうか。 ● 新株予約権の発行という項目を拝見いたしましたが,現行の会社法には「株券の発行」,あるいは「株式の発行」という字句があると思いますけれども,株式の発行になればかなり観念的なものではあるかと思いますけれども,しかし何となく株券の発行というものと一体化してイメージするために,今まで違和感を持ったことがなかったのですが,新株予約権の発行という,純粋に権利の発行ということになりますと,権利というものは行使するとか与えるとかいうことにはなると思いますけれども,発行することにもなってよろしいのか,大げさに言えば,日本語の乱れを生ずるおそれはないかというあたりを伺いたいと思います。 ● 株式の発行というのは,おっしゃるように株式というのは株主の会社に対する権利ですから抽象的な権利であると。それと,新株予約権もそういう抽象的な権利であるということで,私どもとしては共通に考えたのですが。  ただ,株式の場合には,株券が発行されることが予定されている,新株予約権につきましても,新株予約権証券が発行されることが前提となっておりますので,その点でも両者対応しているというふうに考えております。株券につきましても,株券の発行をしない株式というのも,株券不所持制度が認められておりますし,新株予約権についても証券を発行しないという例外がありますけれども,その点も両方同じように考えて,そういう用語を使っているということで御了解いただきたいと思います。 ● よろしゅうございますか。  どうも今まで新株引受権というのが多少違う性質のものを同じ言葉であらわしていたというのを,はっきり区別がつくように,一方は新株予約権ということにする。基本的にはそういう考え方と理解してよろしいのでしょうか。 ● はい,そういうことでございます。 ● あと,ございますでしょうか。  なかなか難しい問題でございますので,それからまた,非常に現代的な社会関係とも絡んでおりますので,御関心の高いことかと思います。何人かの方から御質問がございましたけれども,どうぞさらに御質問があれば,御遠慮なくおっしゃってください。――よろしゅうございますか。  ほかに御質問がございませんようでしたら,次に御意見を承りたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 経済界の立場で,私から一言発言させていただきたいと思います。  まず,今回の改正は,昨年の法制審議会で,平成14年通常国会へ法案提出を目指して検討を開始されました全面改正の中で,経済界が特に前倒しの改正を要望いたしましたこの部分につきまして,お話がございましたように会社法部会での精力的な御審議を経て,半年早く,この秋の臨時国会に提出していただく運びとなったものでございます。部会の委員の先生方並びに幹事の方々の御努力に対しまして,心から敬意を表しますとともに,厚く御礼を申し上げる次第でございます。  改正の具体的な内容としては,いわゆるストック・オプション,トラッキング・ストック,IT関連など,いずれも我が国の企業が今後の激しい国際競争の中で勝ち残っていくために必要なものでございまして,それぞれの項目に適切な手当てがなされることを大変喜ばしく,歓迎いたしております。  しかし,率直に申しまして,本日,御提案の改正案の内容について,経済界の立場から,ごく一部問題が残るような部分がございます。もちろん,専門家の先生方のそれぞれのお立場で真剣に検討された結論でございますので,私どもとしても尊重させていただくつもりでございますけれども,具体的にはストック・オプションについて,すべて株主総会特別決議になっている点について不本意でございます。この点に関連しては,次回の商法改正,すなわち来年度の通常国会で提案される法案の中で,株主総会の特別決議要件が変更される方向であると承っておりますので,とりあえずその中で問題が緩和されることを期待させていただいておるところでございます。  御承知のとおり,昨今のグローバルなメガ・コンペティションの中で,企業経営の環境変化は誠に著しく,またその変化のスピードもますますま加速してきております。こうした中で,商法を始めとする経済関連法規の見直しや改正の必要性がいろいろと出てまいると予測されますが,今後とも格別の御配慮をいただきたいと思っております。  今回の一部改正につきまして,経済界の立場から,重ねて心からの謝意を申し上げて,私の発言といたします。ありがとうございました。 ● ただいまの御発言に,何か部会長あるいは事務当局からございますか。 ● ストック・オプションにつきまして,株主総会の特別決議を要件としたということにつきましては,これは法制審議会会社法部会で最も議論したところでございまして,いろいろな紆余曲折を経て,結局これでいいと。場合によっては,株主総会の普通決議にして,しかし正当な事由がなく――その点が非常に議論がなされて,結局採用しないことになったわけでございますけれども,普通決議にして,しかし取締役の責任を問う,そういう形で要件を普通決議に緩和するということについてもいろいろ議論されましたけれども,その場合に,取締役の責任を追及する要件はどういうことになるのかというような,いろいろ紆余曲折を経まして,結局そういう問題を排除するために,有利発行の原則に従って特別決議にする,そういう結論に至ったわけでございますので,その点御理解いただきたいと思います。 ● よろしゅうございますか。  ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 会社法制の問題というのは,一般には大変難しい問題で,なかなか素人には分かりにくい問題でありますけれども,御説明にありましたように,この改正要綱案によるストック・オプションの規制緩和だとか,あるいは株式発行の多様化だとか,さらには事務手続の簡素化及び株主総会の運営,会社関係書類の電子化,こういった制度の見直し全体を見ますと,大変私は評価されるのじゃないかと思います。また,その法整備を急ぐべき問題かと思います。  ただ,先ほど申し上げましたようにIT化の問題については,確かに方向性はそうだし,私自身もそういう時代になってきているので,使いやすく,また公開費用も安いということになれば,そういうIT化の問題にどんどん進んでいくであろうということは予測してはいるのですが,現実に反対意見もあるわけですから,その点について,例えば運用上の問題で何とかする方法は考えられないか,そういうふうにも思うわけです。  また,御意見がありましたようにセキュリティーの問題が非常に大きな問題で,一歩間違えれば大変な影響を与える問題でありますので,この辺のところを十分に考えての運用というものが進められていくべきだ,こういうふうに思います。  そうした意見を述べまして,全体としては改正要綱案に賛成したいと思います。 ● ほかに御意見ございますか。 ● 先ほど伺いたかった商法の今まで培ってきた日本の中での商法と,それからバーチャルな世界での商取引が行われてきたときに,一体どういうふうに,個別にやはり対応していくしか,現実的にはスタートラインとしてそういうプロセスなんだと思うのですけれども,例えば官報というのが活字のメディアの時代で歴史を持ってきました。それに値するような,例えば決算であればIRでございますか,IRの官報版ではないですが,バーチャル・ソサエティーの中で法務省なり国が一つクレデビリティーの担保をするようなフォーラムですとか,そういう形で,新しいバーチャルの世界に日本の法律体系の何かというようなものを構築していこうというアイデアとか,そういうプロジェクトなり,そういうことはおありになりますか。 ● 実は,今の御質問に関連すると思いますが,商法中公告という規定が随所にございまして,今回は計算書類の開示方法としての公告の部分だけに手当てをしたということでございますね。といいますのは,計算書類の開示というのは,あくまでもこれはディスクロージャーの世界で,それ自体から直ちに何か法的効果が発生するというものではない,なるべく開示をしやすくして,誤ったものは修正できるような形でやっていこうということで,これだけは今回のホームページによる開示ということでもいいだろうと。  今,○○委員の方でお話のあった話に関連するのは,商法中は公告自体が法的効果に直結するものがございます。債権者保護手続であるとか,株式の併合であるとか,そういうのは公告がきちんとされないと法的効果が生まれない,こういうものがございまして,そういうものについての公告は官報又は定款で定めた日刊新聞紙で行うことになっております。  官報の世界につきましては,これは法務省が直接所管しているわけではございませんので確定的なことはもちろん申し上げるわけにはいきませんけれども,現在官報につきましては,我々が承知しているところでは,それを紙の官報の内容そのまま電子化したものが開示されているようです。それについて,更にセキュリティー面とかそういう点にきちんと手当てをして,電子官報というものにこれを高めていくという動き自体はあるというふうに我々も聞いておりますし,政府としてもそういう方向性をとっているということだと思います。  例えば,今,商法中の公告につきましては,そういうものがきちんと整備されてくれば,これを利用して公告をする,法的効果を伴う公告もできるということになっていくのではないかと考えております。 ● では意見を言わせていただきます。  今は,公報というパブリシティーの部分のことだったと思います。私の意見としては,ちょっと例が適当ではないかもしれませんが,いわゆる警察のいろいろな不祥事が出てくる,あるいはどこかの商社の不祥事が出てくる。そうすると,それが明らかになって,じゃこういう委員会をつくって,調査委員会でこういう手当てをしてこうやりますという,そのイメージがございます。それと同じような形で,インターネットという今まで20世紀に余りなじみのなかった新しい世界に対して,それはもう本当にアイデアと気がついた人がリーダーシップをとれる世界だと思います。これはもう,釈迦に説法でございますが。  それに対して日本の法務省が,何か起きたときに,法的にこうしますという形で,このあれを適用してこうしますというような形で手当てをしていくという姿勢をとっていただきたくないのです。そして,断固たる,これだけの力を持ち始めた新しい世界の中で,ビジネスがもっとボリュームを上げていくのは火を見るよりも明らかですから,それにおいて我が国政府は非常に勇気を持って,何か起こったときにこれを適用するとかという形ではなく,情報の公開について,あるいは改ざんとか権利が侵された場合,本当にお金,ビジネスというか,お金ですけれども,お金だって今までのマネーのパラダイムを超えて,ネットがつながることで税も逃れることもできれば何もという,そういう形に対してはきちんとしたプロジェクト・チームがあって,こういうものをやるとか,それでそのスタートとして非常に企業活動にとって必要な株主との間のコミュニケーションである議決権についても,電子でオーケーだという意味でスタートを切る。レントゲン検査についてもこうだ,そのかわりきちんとしたこういう部署があるとか何とかという,そういう形を是非この議決権と決算書類という大変大きなパラダイム転換のところにメッセージとして付け加えるぐらいの姿勢を是非とも……。  それは,世界に向けてやっておかなければならない,安保にも匹敵するような私は確固たる姿勢で臨むぞということを是非おっしゃっていただきたいなという気がいたします。官報のデジタル化なんて,そんな小さいことではなく,ということを思います。 ● 特にお答えということはよろしゅうございますね。 ● はい,くだらないというか,つまらないことを申しました。 ● 大変有益な御指摘,ありがとうございました。  ほかに御意見,特にございませんでしょうか。  ほかに御意見がございませんようでしたら,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしゅうございますか。  特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきたいと思います。  それでは,会社法部会から報告されました「商法等の一部を改正する法律案要綱(案)」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。 (賛 成 者 挙 手) ● ありがとうございました。  念のため,反対の方も挙手をお願いしたいと思います。 ● どうもありがとうございました。 ● 採決の結果を事務当局から報告申し上げます。  原案に賛成の委員は12名でございます。議長を除くただいまの出席委員も12名でございます。 ● それでは,採決の結果,全員賛成でございますので,会社法部会から報告されました「商法等の一部を改正する法律案要綱(案)」は,原案のとおり採択されたものと認めます。どうも大変熱心な御審議,ありがとうございました。  したがいまして,本日,御審議いただき採択されました要綱につきましては,この総会の終了後,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただければ幸いと存じますが,よろしゅうございますか。――それでは,御承認いただいたというふうに考えさせていただきます。  どうもありがとうございました。  それでは,続きまして第2の議題であります自動車運転による死傷事故に対する罰則の整備に関する諮問第54号につきまして,御審議をお願いしたいと存じます。  この諮問第54号は,本年6月18日開催の第134回総会で法務大臣よりいただいたものでございます。  この諮問につきましても,まず部会で調査審議をお願いし,その結果を御報告願ってこの総会で審議するということが決定されたところでございます。  そこで,刑事法(自動車運転による死傷事犯関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,報告をお願いしたいと存じます。  ただ,同部会の部会長でもいらっしゃいます○○委員が本日御欠席でございますので,同部会の部会長代理をお務めいただきました○○委員から御報告をお願いいたします。 ● ○○部会長が,本日,会議に出席できませんので,私から刑事法部会での審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  最初に,審議の結果について御報告申し上げます。  刑事法部会におきましては,諮問第54号については,要綱(骨子)のように罰則を整備することが相当である,この旨,決定されました。その要綱(骨子)は,お手元に配布してあるものでございますので御覧いただきたいと思います。  次に,その審議経過の概要を申し上げます。  諮問第54号は,自動車運転による死傷事故に対する罰則を整備するために,要綱についての意見を求めるものでございましたが,当審議会で,去る6月18日開催の第134回会議におきまして,まず刑事法部会に検討させる旨の決定をされました。これを受けまして刑事法部会では,6月28日,7月11日及び7月25日の3回にわたりまして,諮問に付された要綱(骨子)に沿って審議を進めまして,集中的に各論点について議論をいたしました。その結果,要綱を一部修正しまして,意見を取りまとめたのでございます。  それでは,刑事法部会における議論の内容につきまして御説明を申し上げます。  なお,諮問に付されました要綱(骨子)を「当初案」,それから修正後のものを「修正案」と略称して御説明申し上げますが,修正箇所の詳細につきましては,お手元に配布してございます対照表を適宜御参照いただきたいと存じます。  まず,一の規定でございますが,この規定は,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させるなど,故意に危険な運転行為をした結果,人を死傷させた者を,暴行によって人を死傷させた者に準じて処罰しようとするものでございます。  御案内のように,飲酒運転や著しい高速度運転などの無謀な運転による悪質・重大な死傷事犯が後を絶ちません。その結果,その量刑や法定刑の見直しを求める国民の声が高まっている実情にかんがみまして,故意に危険な運転行為をした結果,人を死傷させた者につきましては,これまでのように過失による死傷事犯,すなわち,単なる不注意による犯罪として処罰するのではなくして,故意に危険な運転行為をした結果であることを正面からとらえまして,事案の実態に即した刑罰の実現を可能にしようとしたものでございます。  そこで,一の規定でございますけれども,この規定の考え方,趣旨につきましては,特に異論がございませんでしたが,自動車運転による死傷事犯につきましては,これまで過失犯として処理されてきたこともありまして,犯罪の性質,つまり罪質をどのようにとらえるのか,あるいは危険な運転行為そのものについて処罰すべきではないか,更に危険な運転行為と結果との間の因果関係をどのように考えるかといったことなどにつきまして,激しい議論が交わされました。  まず,この犯罪の罪質についてでございますけれども,この罪は,故意の危険な運転行為を構成要件的な行為といたしまして,その結果人を死傷させる罪でありまして,故意の暴行に基づく致死傷の罪,すなわち暴行の結果的加重犯としての傷害罪や傷害致死罪に類似した犯罪の類型である,こういう考え方が確認されたところでございます。  次に,危険な運転行為そのものの処罰の要否につきまして議論されたのでございますが,酒酔い運転その他道路交通法違反として処罰が可能でありまして,死傷の結果が発生する前の段階の危険な行為を処罰できないという不都合はないことなどを考慮に入れまして,人の死傷という結果を生じさせていない危険な運転行為そのものの処罰規定は設けてございません。  また,因果関係につきましては,危険な運転行為をした結果,人の死傷という結果を生じたことが必要であって,自動車の直前への飛び出しによる事故など,結果の発生が運転行為の危険性とは関係のないものにつきましては,因果関係がないということが確認されました。  法定刑につきましては,まず致傷の場合には10年以下,致死の場合には有期懲役,すなわち法定刑の上限が15年以下となる点に関しまして,刑が重過ぎるのではないかといった点が議論されましたが,自動車運転という事柄の性質上,1回の事故で多数の死傷者の出る可能性があること,また暴行の故意に基づく傷害・傷害致死罪のいわば特別類型としての性質を持っていること,さらに,この犯罪が成立する場合には,それが同時に酒酔い運転等の道路交通法違反行為に該当いたしましても,その点はこの罪に吸収されまして,この犯罪だけが成立するというふうに考えられることを考慮いたしますと,法定刑の上限が傷害罪・傷害致死罪と同じ程度であるとされるべきであるということから,結論的に当初案どおりとするのが相当であるとされたものでございます。  他方,法定刑の下限に関しましては,本罪にも罰金刑を設けるべきかということが議論されましたが,この犯罪は極めて悪質・危険な事犯のみを対象としていますので,罰金刑を設けることは相当でないというふうに結論づけられました。  次に,処罰行為の類型に関する議論の概要を御報告申し上げます。  この点につきましては,故意に危険な運転行為をした結果,人を死傷させた者を,暴行により人を死傷させた者に準じて処罰しようという,こういう当初の案の基本的な構成につきましては異論はありませんでしたが,法定刑が10年ないし15年以下という重い刑にふさわしい行為,つまり処罰される行為が人の死傷の結果を生じさせる危険性の高い悪質な行為に絞られているか,またその趣旨がこの要綱で明確に表現されているかといった点が議論をされたところでございます。  まず,対照表を御覧いただきたいのですが,当初案の一の1の前段についてでございますけれども,その内容につきましては特に異論はございませんでしたが,当初案の「運転に必要な」というところに傍線が引いてありますけれども,運転に必要な技能を有しない」という表現につきましては,運転操作の技量が極めて未熟であるものに限られるという意味をはっきりさせるために,「自動車の進行を制御する技能を有しない」というように,修正案のように改めることにした次第でございます。  次に,当初案一の1の後段についてでございますが,「自動車の進行を制御することが困難な著しい高速度」,これはどのような速度を意味するのか,またそのような速度であるか否かを判断するに当たって,どこまで具体的な事情を考慮すべきなのかといった点につきまして相当議論がなされました。  これにつきましては,速度が速すぎるために自動車を進路に沿って走行させることが困難な速度,具体的に申しますと,当該速度での走行を続けますと,ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって自車を進路から逸脱させて,事故を発生させることになると認められるような,そういう速度を意味するというふうにされたところでございます。  また,このような速度であるかどうかの判断につきましては,主として具体的な道路の状況に照らしてなされるわけでございますが,これに加えて,車両の性能,貨物の積載状況等によってもおのずと異なってまいりますから,高速度の判断は,これらの具体的な事情に照らしてなされるものであるということが確認された次第でございます。  また,当該速度の意味がただいま申しましたような内容であるとしますと,「自動車の進行を制御することが困難な高速度」,こういうふうに表現すれば十分であって,「著しい」という文言は不要なのではないかとの指摘がなされまして,修正案のような表現に改められたところでございます。  次に,要綱(骨子)一の2につきましては,対象となる行為が悪質・危険なものに十分限定されているかという観点から種々の議論がありまして,当初案を絞り込む形で修正がございました。  まず,2の原案と修正案は規定ぶりが大きく変えられておりますが,前段は交通妨害型の危険行為,これを規定したものでありますが,他の通行を妨害することになることの認識があれば足りるというような原案にされていましたところ,何らかの事情でやむなく走行車線を変更し,他の車両の直前に進入したために衝突した事例もこの案では該当してしまうのではないかといった指摘もありまして,妨害の目的,すなわち妨害を積極的に意図することを要件とすることによりまして,処罰すべき行為の対象を絞り込んだものでございます。  次に,赤色信号無視につきましてですが,この行為の危険性は明らかでありますが,故意で赤色信号に従わない行為の中にも,例えば黄から赤への変わり際に行うもののように,危険性,悪質性が極めて高い行為とまでは言えないものもあるのではないかといった指摘がありました。議論の結果,修正案のように,構成要件的行為を赤色信号を殊更に無視する行為に改めることにされました。この「赤色信号を殊更に無視し」の意味については,赤色信号に従わない行為のうち,およそ赤色信号に従う意思のないものを意味する,信号の変わり際などの,赤色信号であることについての未必的な認識が認められるにすぎないような場合などは除外する趣旨でございます。  次に,要綱(骨子)の二の規定に関してでございますが,これは自動車を運転し,業務上過失傷害罪を犯したものにつきましては,傷害が軽いときには,情状によって刑を免除することができるというものでございます。  この点につきまして,自動車運転によるものに限定した理由は何かといった点が議論になりましたが,今日,自動車が広く普及して,国民の日常生活に不可欠なものとなり,自動車運転による業務上過失傷害事犯は多くの国民がその日常生活の過程で犯しかねない状況になっていること,さらに,交通事故につきましては,警察官への届出が法律上義務づけられておりまして,また保険金支払の手続上も事故の届出が必要とされているというような関係で,一般の犯罪であれば届出もなされないような軽微な事案でありましても,刑事事件として捜査処理がなされるものが多数含まれることなどの特殊性が認められることも確認されました。  次に,免除の対象となる事案は,現状においては起訴猶予処分とされているのでありますから,このような規定は不要ではないかという指摘もございましたが,自動車運転による業務上過失傷害の中には,処罰を要しないような軽微な事案が少なからず含まれているということを実体法上明らかにすることにこの免除規定の意味がある,またそのような事案についての捜査の合理化にも資するといったような意見が述べられまして,この規定を設けることとされた次第でございます。  概略,以上のような審議に基づきまして,修正案のように罰則を整備することが相当である旨,異議なく決定されたものでございます。今回の刑事法部会における審議では,当初案一,2の構成要件を暴行に準ずるとの評価に値する人の死傷の危険性の高い悪質な行為に絞り込むことができたと考えますし,また要綱の細かい表現につきましても,国民に誤解を与えないような,より明確な記述に心掛けた修正が施されるなど,実りのある審議ができたと思っておる次第でございます。  以上,刑事法部会における審議の経過及び結果の御報告を終わりにいたします。どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。  本来であれば,ただいま御報告いただきました内容につきまして,続いて御質問,御意見を伺うところでございますが,ここで15分ばかり休憩にいたしたいと思います。           (休     憩) ● 審議を再開いたします。  休憩前の○○委員の御報告,及び要綱(骨子)の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたら承りたいと思います。どうぞ,どなたからでも御発言をお願いいたします。 ● 今回の新しい罰則ができることによりまして,従来,刑法の業務上過失致死傷罪に道交法上の違反のものを上乗せする,併合罪的に上乗せするということがなされて,これは何か最高裁の1974年の判決とか,資料にそのようなことが書いてあったと思うのですが,すべて吸収されるというお話が先ほどございましたけれども,道交法による上乗せということは,今後はなくなるということと理解してよろしいわけでございますか。 ● 基本的にはそのように考えておりますが。 ● ということは,まだ例外的にはあり得ると。 ● 別罪が成立する場合ですね。つまり,今回の罪と関連ないような犯罪がありますと,道交法でも併合罪になってまいります。  しかし,例えば飲酒運転ですね,それによって死傷の結果が生じたという場合につきましては,この犯罪が成立しまして,その場合には飲酒運転につきましての道交法の違反の罪は問われない,吸収されてしまうということでございます。 ● 特別法ではなくて刑法の中に規定を設けるというようなお話もございますけれども,その場合,これは本当に技術的な話なのですが,どのような名前をおつけになるおつもりでしょうか。 ● あとの方は事務当局にお願いいたしまして,部会で議論になりましたときは,刑法の中に入れるべきであるという意見と,やはり刑法とちょっと異質なものではないかという議論と両論ございました。それについては結論を出しませんでしたが,異質なものという意味は,これは先ほども説明いたしましたけれども,例えばお酒を大量に飲んで猛スピードで運転をするわけですね,そういうのは道交法違反で処罰するわけですけれども,しかしこの犯罪ですと,それがいわば危険な運転なんですね。危険な運転によって結果が発生したわけですね。そうしますと,そういう場合は結果的加重犯という名前で言われ,暴行の結果けがをしたり,傷害で死んでしまったというような場合は結果的加重犯なんですが,この場合は暴行罪で処罰されるのですね。そして重い犯罪が生じますと,それが今度結び付きまして,重い犯罪の方で処罰されるわけですね。ところが,今回の場合は,危険運転行為は刑法では処罰しないのですね。結果が生じて初めて危険運転を処罰することになりまして,そうしますと従来の伝統的な刑法の考え方からみると異質なものかなというような――私自身はそういう考え方を持っておりますけれども,そうではなくて,もう国民一般だれでも犯すような犯罪なのだから,刑法で扱うべきだという意見もございました。 ● ただいま部会長代理からお話がありましたように,刑事法部会の中では立法形式をどうするかということについては両様の御意見があったわけです。ただ,事務当局としてはどのように考えているかと申し上げますと,確かに今までの刑法の中にはない類型をつくるものではございますが,やはり国民生活に非常に深いかかわりがある法律でございますので,一般的な犯罪について決めております刑法の中で,規定することが適当ではないかと思っております。  それともう1点,補足的に申し上げますと,先ほどのお尋ねの中で道交法違反は今後上乗せされない部分が出てくるということでございますが,実は上乗せしたよりもはるかに重い刑を定めてございますので,そういう意味で量刑上差があるというようなことはございません。そこは御理解いただきたいと思います。 ● 今のお話でございますけれども,特別法を設けるということになりますと,刑法で定められている罪の中で異質なものになるというお話がございましたけれども,私は,非常に国民生活に密接な関係がある罪でございますので,これは特別法にしてしまうと,むしろ一般の人は知りにくいということが起きるのではないかという気がするのでございます。ですから,刑法の中に入れられるものであるならば入れて,一般の人も,それから大学なんかで教えるときも,刑法の中で教えた方がいいのではないかなと,そういう気がいたしましたので,意見でございますけれども申し述べさせていただきました。 ● それと,先ほど御説明を落としましたけれども,罪名はどういうふうになるのかというお話もありましたが,差し当たって例えば「危険運転致死傷の罪」とか,そんなような罪名を考えているところでございます。 ● それでは,ほかに御質問ございますでしょうか。――特にございませんか。  特に御質問がございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 結論としまして,私はこの修正案に賛成でございます。前回の総会で,原案につきまして,一の1の「運転に必要な」という表現につきまして,若干読み方によっては私も入ってしまうのではないかということもありまして,抵抗感があるということを申し上げましたけれども,今度の表現ですと,幾ら何でも私は入らないだろうという感じがいたしますので,しかも全体にこのような表現で十分効果は発揮できるのではないかと理解しますので,賛成でございます。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。 ● 今との関連ですけれども,やはり構成要件がはっきりしたと思うのです。そういう意味で,この法律ができたときに使いやすいものになるのではないかなと私は思います。  それから,刑法か特別法かとかいろいろな問題があろうかと思いますが,やはり国民として,こういう交通犯罪に対する厳しい条文ができるのだということを認識させる上では,分かりやすさというものが一番大事だと思いますので,その点,表現の問題も十分お考えになって作業を進められた方がいいのではないかと思います。 ● 何か,今の点について御意見ございますか。 ● いろいろ御意見,ありがとうございました。大体このような考え方を踏まえて,できるだけ早くこれが立法化されますように,よろしくお願いしたいと思います。 ● なお御意見があれば承りますが……。――よろしゅうございますか。  御指摘のように,この一の1の方もそうですし,それから2の方も非常に前段と後段という形で分けられて,規定が明確になったように思います。  それでは,特に御意見がないようでございましたら,この総会との関係では答申案ということになりますが,部会から提出されました「要綱(骨子)」につきまして採決に入りたいと存じますが,よろしゅうございますか。  御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。  それでは,刑事法(自動車運転による死傷事犯関係)部会から報告されました要綱(骨子)のとおり答申することに,賛成の方は挙手をお願いいたします。 (賛 成 者 挙 手) ● ありがとうございました。  念のため,反対の方,おいでになりますでしょうか。 ● どうもありがとうございました。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。  修正案に賛成の委員は11名でございます。○○委員が私用で途中退席されておりますので,議長を除くただいまの出席委員も11名でございます。 ● お聞きいただきましたように,採決の結果,全員賛成でございますので,刑事法部会から報告されました要綱(骨子)は,そのとおり採択されたものと認めます。  本日,御審議いただき,採択されました要綱につきましては,総会終了後直ちに,先ほどの会社法制関係の要綱とあわせて法務大臣に対して答申することといたしたいと思います。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の観点もいろいろと加味しなければなりませんので,その表現ぶり等につきましては事務当局に御一任いただければ幸いでございますが,よろしゅうございますか。 (「異議なし」と呼ぶ者あり) ● どうもありがとうございました。それでは,そのようにさせていただきます。  それでは,最後になりましたが,事務当局から裁判の執行に係る調査権限に関する刑事訴訟法改正について報告がございます。 ● それでは,刑事訴訟法に規定する裁判の執行に関しまして調査権限の規定を新設するという改正を検討しておりますので,その点について御説明と御報告を申し上げたいと思います。  ただいま御審議をいただきました諮問第54号は,自動車運転による死傷事犯に対する罰則の整備を内容とするものでありますが,お手元にお配りしてあります資料1にございますように,平成12年におきましては,刑法犯・特別刑法犯の全地裁・簡裁におきます有罪の裁判の約9割は自動車運転に係る事犯が占めており,しかもその90%以上が罰金刑という実情でございます。  ところで,罰金その他の財産刑の執行につきましては,納付義務者が所在不明のときや,納付の督促に応じないときなど徴収金が納付されないときには,納付義務者の所在調査や資産調査を行う必要がございますが,現行の刑事訴訟法には,これら裁判の執行に関する調査権限の規定がございません。そこで,現実の調査におきましては,その相手方から,法的根拠がないことを理由に回答を拒まれ,財産刑の適正な執行ができないというふうな場合が生ずるなど,徴収事務の処理において困難が生じている例も少なくないという実情でございます。  また,罰金刑だけではなく,懲役刑その他の裁判の執行につきましても,刑の言渡しを受けた者が所在不明の場合など,その所在調査などを行う必要がございますが,これについても同様な問題がございます。  さらに,近時,個人情報保護の観点から,個人情報の提供につきまして法律上の根拠がないということを理由に,回答が拒否される例が次第に増えてきております。こういうことから,何らかの調査権限の規定を設ける必要性が一層高まってきている状況です。  実際にも資料2にございますように,繰越し分を除く平成12年度における徴収すべき罰金額は,約742億円であるのに対しまして,未済,つまり未徴収の金額が149億円に及んでおります。これを経年の変化で見ますと,ほぼ一貫して増加を続け,平成3年からの10年間で約2.5倍に増加しているという状況です。未済の金額がこのように多い原因は,もちろん様々な要素が考えられるところでございますけれども,先ほど申し上げましたように調査に関する権限がないため,刑の適正な執行に困難を来しているということもその一つと考えられるわけでございます。  このように,業務上過失致死傷罪等自動車運転に係る事犯が大部分を占めております裁判につきまして,その適正な執行が図られない状況を放置するということは,これらの犯罪に対する制裁としての刑そのものの感銘力を失わせるということにもなりますため,この度,自動車運転に係る死傷事犯について厳正に対処するとの観点から罰則を整備し,その機会に併せて裁判の執行に関する調査権限の規定を新設する法整備を図ることとした次第です。  ところで,裁判の執行に関する調査権限につきまして,平成2年9月に発出された諮問第38号後段の罰金を含む財産刑をめぐる基本問題に関して,引き続き検討の上,別途御意見を承りたいという諮問がございまして,この諮問につきまして,当時法制審議会刑事法部会の下に設けられました財産刑検討小委員会におきまして,財産刑をめぐる基本問題の検討という観点から,実務の実情を調査の上,その必要性の有無等につき検討がなされ,平成5年3月に開催されました刑事法部会に,その審議検討経過及び結果についての報告がなされております。そして,その同報告のうち,調査権限に関しまして,これは資料3を御覧いただきたいのでございますけれども,刑事訴訟法第7編「裁判の執行」という編がございますが,そこのしかるべきところに刑事訴訟法第197条第2項と同様の,いわゆる公私の団体に対する照会権限を定める規定を設けることにつきまして御議論いただいた結果,特に異論がなかったというものでございます。  したがいまして,このように刑事訴訟法の改正が必要であるという点につきましては,既に実質的な御議論をいただいたところでございますが,今回の諮問に関連いたしまして,去る7月25日に開催された部会におきましても御報告を申し上げ,異論なく御了承いただいているという経過がございます。  以上のことから,裁判の執行に関する調査権限の規定の整備が必要不可欠と考えられますことから,先ほど申し上げたとおり,裁判の執行の編のしかるべきところに,自由刑の執行を含めた裁判の執行に関する調査権限につきまして,第197条第2項と同様の,先ほど申し上げました規定を設けるということとするのが適当でありまして,今回の諮問第54号に係る自動車運転による死傷事犯に対する罰則の整備にあわせて,刑事訴訟法につきましても改正を図りたいと考えているところでございます。  以上,御報告申し上げます。よろしくお願いいたします。 ● ただいまの御報告につきまして,何か御質問があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。――特にございませんか。  特に御発言もないようでございますので,ただいまの御報告につきましては御了承いただいたと考えさせていただきます。  以上で,本日予定をいたしました議題はすべて審議終了になりましたが,この機会に何かほかに御発言いただけることがございましたら,お伺いしたいと思います。本日の議題以外でも何でも結構でございますが,いかがでしょうか。 ● 本日,商法改正のための要綱案が満場一致で採択されましたわけで,大変結構だと存じますが,その内容の中には,例えば書類の電子化という時代の最先端の問題が含まれております。そういうことと,商法の文体等が依然として片仮名で文語体であるということの間のギャップがだんだん大きくなってきているのではないかという感じをぬぐうことができません。  今回の改正のときに,そこまでいけるということは到底可能なことではございませんけれども,なるべく近い将来にその辺を御考慮いただいた方がよろしいのではないか,商法は特に活発に改正を重ねておられますので,枝番号なども非常に錯雑してきておりますようで,条文の番号を変えないというメリットをむしろ相殺して,分かりにくくなってきているのではないか,そういう点で御考慮を煩わしたいという気がするわけでございます。この機会に一言申し上げさせていただきます。 ● ただいま御指摘いただきました点,大変頭の痛い点でございます。この問題につきましては,現在現代語化の研究は続けております。非常に膨大な数に上りますので,まだ終わっていないところでございます。  いずれにいたしましても,これは民法も含めまして現代語化をしなければならないということは重々承知しております。現在,この間の通常国会,金庫株の問題の改正もございましたけれども,それから今回の問題,それから来年と三つ実質の改正が続きます。まずその実質改正を最優先にしたいと考えておりまして,それ以外の分野でも実質の法改正がめじろ押しでございます。まず内容的なものを,喫緊のものを仕上げまして,申し訳ございませんけれどもその後にさせていただきたいということで,考えてはおりますので,その点は忘れているわけではないということを御理解いただきたいと思います。 ● 私からも一言申し上げますが,民事法関係の者の間では,かねて民法も含めまして現代語化をする必要があるだろうということを検討し,また準備を始めているところでございます。それから,先ごろ,司法制度改革審議会の方の最終意見書でも,基本法整備として,国民に分かりやすい法文にする必要があるという指摘がなされているところでございますので,そのことも考慮に入れて,できるだけ早期に御期待にそえるようにしたいと考えております。  あと,ほかに。 ● せっかくの機会なので,ちょっと発言したいのですが。  今回,資料として商法の更にこれから検討を重ねる法律案の要綱の中間試案が出ておりますが,もちろん今後会社法部会において鋭意検討されますし,また分厚い「各界意見の分析」というのが出されておりまして,私たち連合の意見も入れていただいております。  ただ私ども,会社法部会に参加をしておりませんので,この機会に一言だけお願いを申し上げておきたいのですが,コーポレート・ガバナンスの問題について議論が進んでおります。私どもの立場から申しますと,経営委員会の設置など,会社の機関関係の大幅見直しの審議が進むというふうに伺っておりますが,この際,新しく導入されようとする監査委員会の中に,ヨーロッパ等で行われておりますような,参加する取締役のうち1名以上は労働組合代表あるいは従業員代表を加えるということ,また監査役会においても同様に,監査役のうち1名は労働組合代表若しくは従業員代表でなければならないということを我々は求めているところでございまして,コーポレート・ガバナンスという意味合いからいいますと,株主の意見反映はもちろん今まで以上に反映をされるようにしなければいけませんが,ステークホルダーとしての会社関係者であります組織された労働組合,あるいはない場合には従業員等の意見を反映させることが企業の社会的責任という意味から重要だと思います。  発言する機会が余りありませんので,この場をお借りして,是非御検討いただきたいということをお願いしておきます。 ● ○○部会長もおいでになりますし,それから事務当局もおりますので,ただいまの御意見の趣旨,十分検討させていただくことになると思います。  ほかに御意見ございますでしょうか。――特にございませんか。  それでは,ほかに御意見ございませんようですので,これをもちまして本日の会議は閉会といたします。どうも長時間,ありがとうございました。