法制審議会第133回会議 議事録 第1 日 時  平成13年2月16日(金)  自 午後1時30分                        至 午後3時33分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  担保権及びその執行手続等に関する諮問第49号について         区分所有等に関する法律の見直しに関する諮問第50号について         生殖補助医療技術によって出生した子の民法上の親子関係を規律するための         法整備に関する諮問第51号について         共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)について 第4 議 事 (次のとおり)               議         事 (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。) ● 法制審議会第133回会議の開会に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。  本日は,委員・幹事の皆様方におかれましては,公私ともに御多用のところ,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。  当法制審議会におきましては,委員・幹事の皆様方の御尽力によりまして,既に多くの重要な案件について答申をいただき,また,現在も多数の諮問事項について,それぞれ調査審議をいただいているところでございますが,この機会に,皆様方の御労苦に対しまして厚く御礼を申し上げます。  さて,本日御審議をお願いいたします議題の一つは,担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号,建物区分所有法の見直しに関する諮問第50号及び生殖補助医療技術により出生した子の民法上の親子関係の法整備に関する諮問第51号であります。  第1に,担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号ですが,担保権に関する法制は,取引社会の実態に適応した利便性と実効性のあるものであることが必要であるところ,近時の社会・経済情勢の変化は著しく,現行の法制はさまざまな面で実務に適応しなくなっている点があるとの指摘があります。特に,主要な担保権である抵当権につきましては,平成11年の最高裁判決において,その効力に関する重要な判例変更が行われるなど,体系的な見直しが要請されているところであります。  このような情勢にかんがみれば,早急に担保権及びその実行としての執行手続等に関する法制を見直し,そのための民法,民事執行法その他の法律の整備を行う必要があると考えます。  第2に,建物区分所有法の見直しに関する諮問第50号ですが,この法律は,昭和37年に制定され,その後,昭和58年の抜本的な改正を経て現在に至っております。この間,都市部を中心にして,いわゆる分譲マンションが急増し,その管理等をめぐる紛争が増加するとともに,初期のころに建設されたマンションの老朽化が進み,その建替えをめぐる紛争の発生が現実問題となってきているとして,区分所有建物の管理の適正化,その建替えの実施の円滑化を図る観点から,その見直しの必要性が指摘されているところであります。  このような情勢にかんがみれば,早急に建物の区分所有等に関する法律の見直しを行う必要があると考えます。  第3に,生殖補助医療技術により出生した子の民法上の親子関係の法整備に関する諮問第51号ですが,第三者が提供する配偶子等による生殖補助医療の在り方については,制度の整備に向けた検討が関係方面において進められているところ,その法整備の一環として,第三者が提供する配偶子等による人工授精,体外受精等の生殖補助医療技術によって出生した子についての民法上の親子関係を適切に規律する必要があるとの指摘があります。  このような情勢にかんがみれば,生殖補助医療技術によって出生した子の民法上の親子関係について,早急に法整備を行う必要があると考えます。  これら緊急を要する案件につきまして,よろしく御審議の上,御答申をいただけますようお願いいたしたいのであります。  私といたしましては,特に諮問第49号,第50号は,経済構造改革に関連する基本法整備の中の重要な項目として,来年以降のできるだけ早い時期に答申に基づく法案を国会に提出したいと考えております。  次に,御審議をお願いいたします議題は,法人制度に関する諮問第46号についてであります。  この度,共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)が答申案として決定され,本日,その結果を報告されると承知しておりますが,非公益かつ非営利目的の団体に法人格を付与するための法整備の必要性は,かねてから指摘されているところでありますので,今通常国会には法案を提出できますよう,できる限り速やかに答申をいただきたいと思います。  それでは,これらの議題につきまして,どうぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。  これをもちまして,私のあいさつといたします。 (法務大臣の退席後,委員の異動につき紹介し,引き続き,本日の議題について次のように審議が進められた。) ● それでは,審議に入らせていただきます。  本日の審議事項は,大きく分けまして二つございます。最初の議題は,ただいまの法務大臣のごあいさつにもございましたように,本日,新たに諮問のございました担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号,建物区分所有法の見直しに関する諮問第50号及び生殖補助医療技術により出生した子の民法上の親子関係の法整備に関する諮問第51号についてであります。  第2の議題は,法人制度に関する諮問第46号についてでございます。これにつきましては,法人制度部会から調査審議の結果が提出されておりますので,後ほど御審議願いたいと思っております。  以上,両議題につきまして,十分御審議いただきたいと存じますが,まず新たな諮問事項につきまして御審議をお願いし,休憩を挟んで法人制度に関する諮問第46号の御審議をお願いするという順で議事を進めさせていただければと存じておりますので,よろしくお願いいたします。  それでは,最初の議題であります新たな諮問事項につきまして御審議をお願いしたいと存じます。  初めに,諮問第49号,第50号及び第51号につきまして,事務当局に諮問事項を朗読していただきます。 ● ○○でございます。諮問事項を朗読させていただきます。 諮問第49号  社会・経済情勢の変化への対応等の観点から,抵当権その他の担保権及びその実行としての執行手続等に関する法制の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。 諮問第50号  区分所有建物の管理の適正化,その建替えの実施の円滑化等の観点から,建物の区分所有等に関する法律を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。 諮問第51号  第三者が提供する配偶子等による生殖補助医療技術によって出生した子についての民法上の親子関係を規律するための法整備を早急に行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。  以上でございます。 ● それでは,続きましてこれらの諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ● 幹事の○○でございます。私の方から諮問第49号,第50号,第51号について,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等について御説明申し上げます。  第1に,担保・執行法制の見直しに関する諮問第49号でございます。  民法には,担保物権として抵当権,質権,先取特権及び留置権に関する規定が設けられておりますが,これらの規定につきましては,昭和46年に根抵当制度に関する改正がされた後は,大幅な見直しがされたことはございません。また,担保に関する特別法として,企業担保法,それから仮登記担保契約に関する法律等が制定されておりますが,これらについても,制定されてから相当の年月が経過しているわけでございます。この間の経済取引の発展に伴い,担保取引の重要性はますます高まっているところでございますが,近時の社会・経済情勢の変化は著しく,現行の担保法制にはさまざまな面で複雑化,多様化した現代の経済取引の実務に適応しなくなっている点があるとの指摘がございます。  特に,主要な担保権である抵当権につきましては,平成11年2月の経済戦略会議の答申や,平成12年12月の規制改革委員会の「規制改革についての見解」において,不動産競売制度の活性化等の観点から,短期賃貸借の保護の制度の見直しの必要性が指摘されているほか,平成11年11月の最高裁判所判決において,抵当権の効力に関する従前の判例が変更され,抵当権者が抵当物件の不法占有者に対して,直接その明渡しを求めることを認める旨の判断が示されたことなどを契機として,その効力等についての見直しの論議が高まっており,制度の体系的な見直しが要請される状況にございます。  このような情勢にかんがみれば,抵当権を初めとする担保権及びその実効としての執行手続等に関する法制について,社会・経済情勢の変化への対応等の観点から,早急に見直しを行い,そのための民法,民事執行法その他の法律の整備を行う必要があると考えられ,諮問案記載の事項に関して法制審議会の意見を聴取する必要があると考えております。  続きまして,第2の建物の区分所有等に関する法律の見直しに関する諮問第50号についてでございます。  建物の区分所有等に関する法律は,我が国に中高層ビル形式の区分所有建物が出現するようになっていまだ歴史が浅い時期でありました昭和37年に制定され,その後,昭和58年の抜本的な改正を経て現在に至っております。この間,人口の都市集中等に伴い,都市部を中心にして土地の高度利用の一類型としての分譲マンションが急増し,マンションが主要な住居所有形態の一つとなり,マンション生活が一般化してまいりました。それに伴って,マンションの管理をめぐる紛争,その他の種々多様な紛争が増加するとともに,初期のころに建設されたマンションの老朽化が進み,その建替えをめぐる紛争の発生が現実問題となってきているとして,その管理の適正化,その建替えの実施の円滑化等を図る観点から,建物の区分所有等に関する法律についてもその見直しの必要性が指摘されております。  特に,阪神・淡路大震災によるマンションの倒壊事例の発生等を契機として,建替えの実施の円滑化を図る観点からの見直しの必要性の指摘が強まっているところでございます。  このような情勢にかんがみれば,早急に建物の区分所有等に関する法律の見直しを行う必要があると考えられ,諮問案記載の事項に関して,法制審議会の意見を聴取する必要があると考えております。  第3に,生殖補助医療技術によって出生した子についての民法上の親子関係を規律するための法整備に関する諮問第51号についてでございます。  第三者が提供する精子・卵子等のいわゆる配偶子等による生殖補助医療の在り方については,旧厚生省の厚生科学審議会先端医療技術評価部会のもとに設置された「生殖補助医療技術に関する専門委員会」において,平成10年10月から検討が行われ,平成12年12月に最終報告がまとめられました。この報告書においては,生殖補助医療を実施するための制度的枠組みについての提案がされており,具体的な制度の整備については3年以内に行うことが求められております。そして,生殖補助医療を実施するための条件整備の一環として,生殖補助医療によって出生した子についての親子関係の確定に関する法的な整備を行う必要性についても言及されているところであります。  すなわち,第三者の提供する精子による生殖補助医療技術によって出生した子については,精子を提供した者と,その子を分娩した者と夫婦関係にある者のいずれとの間に父子関係が認められるのであるか,また第三者が提供する卵子による生殖補助医療技術によって出生した子については,卵子を提供した者と,その子を分娩した者のいずれとの間に法律上の母子関係が認められるのかといった問題については,民法上明らかとはされておりません。このため,生殖補助医療技術によって出生した子の法的地位が不安定なものとなることから,その出生した子の法律上の親子関係を規律するための適切な法整備をする必要があると指摘されているところであります。実際に,第三者が提供する精子による人工授精が夫の同意を得ずに実施された場合に,それによって出生した子の法的地位について判断した裁判例も近時見られるなど,生殖補助医療技術によって出生した子をめぐる親子関係についての法的な問題が顕在化してきております。  このような情勢にかんがみれば,生殖補助医療技術によって出生した子の民法上の親子関係について,早急に法整備を行う必要があると考えられることから,諮問案記載の事項に関して,法制審議会の意見を聴取する必要があると考えております。  御説明は以上のとおりでございます。よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● それでは,ただいま説明のありました諮問事項を始め,全般的な点につきまして御質問がございましたら伺いたいと存じます。どなたでも結構でございますが,何か御質問がございますでしょうか。  特に御質問がございませんようでございますので,それでは次に,これらの諮問事項の審議の進め方について,御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● これらの諮問事項につきましては,かなり専門的,技術的な事項が含まれておりますので,新たに部会を設置いたしまして調査審議をしていただき,その結果の報告を受けて,更にこの総会で審議をするというのが適切ではないかと考えます。 ● ただいま○○委員から,部会設置の御提案がございましたが,これにつきまして何か御意見がほかの委員の皆様方の中でございますでしょうか。 ● ただいまの○○委員の御提案に賛成でございます。 ● 諮問第49号,第50号というのは,やはり経済の,あるいは取引の実態と合致していないような状況だと思われますので,これは早急に法制度の見直しをしなければいけないと思います。  それから,諮問第51号については,生殖医療に関する新しい分野の法律の問題だと思います。  いずれにしても,この3件とも各部会を設置して,高度な,専門的な角度から論議すべき問題だと考えます。 ● どうもありがとうございました。  ただいま,○○委員,○○委員からも,部会設置をして,そちらでまず調査審議をしていただき,その結果をこの審議会に提出していただいて審議を続ける,そういう方法がよろしいのではないかという御意見が出されましたが,ほかに御意見がございますでしょうか。  それでは,ほかに御意見もないようでございますので,これらの諮問事項をあらかじめ調査審議する部会を設けることに決定したいと思います。  次に,これらの部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事の指名でございますが,大変僭越でございますけれども,この点につきましては会長に御一任願いたいと存ずるのでございますけれども,それでよろしゅうございましょうか。何か御意見があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。--よろしゅうございますか。  もちろん,委員の皆様方の御意見,御希望等も十分勘案させていただきまして,事務当局と相談の上,決定したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは,そういう意味でこの点は会長に御一任願うということにいたしまして,次はこれらの部会の名称のことでございますが,諮問事項との関連から,事務当局と相談をいたしまして,それぞれ次のような案を考えてみました。  諮問第49号につきましては,「担保・執行法制部会」。それから,諮問第50号につきましては,「建物区分所有法部会」。諮問第51号につきましては,「生殖補助医療関連親子法制部会」。そう呼ぶことにしてはいかがかというのが原案でございますが,いかがでございましょうか。諮問51号についての部会の名称は,いささか長くて,「生殖補助医療関連親子法制部会」ということでございますが,どうもこれ以上短くすることも難しいかというのでこういう原案でございますが,何か御意見ございましたらお聞かせください。--よろしゅうございますか。  それでは,そのようにさせていただきたいと思います。  これらの諮問事項を部会であらかじめ調査審議するに当たりまして,本日,御欠席の○○委員から,お手元にお配りいたしましたような意見書をお預かりしておりますので御紹介申し上げます。  総会委員として,諮問事項の内容について,他に御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか,内容的な点でございますが。--特にございませんか。  特に御意見もございませんようですので,それではこれらの諮問事項につきましては,部会で御審議いただき,それに基づいて総会において更に御審議を願うということにしたいと存じます。特に諮問第49号,第50号につきましては,先ほどの法務大臣の御諮問の中にもございましたし,ただいま○○委員からの御発言もございましたので,部会の委員・幹事の皆様には大変御苦労をおかけするかと思いますけれども,できるだけ早急に調査審議をして,総会の方にその結果を御提出願うことにしたいと思います。  それでは,以上で第1の議題を終えまして,先ほど,この後休憩をとって,それから第2の議題であります諮問第46号について御審議をお願いする予定であると申し上げたのでございますけれども,審議の進行がかなり早いものでございますから,ちょっと休憩にいたすのも早過ぎるかと存じまして,予定を急に変更して恐縮でございますが,第2議題の諮問第46号についての御審議に入らせていただきたいと思います。  まず,法人制度部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長でもいらっしゃいます○○委員から,御報告を伺うことにしたいと思います。 ● 法人制度部会長の○○でございます。よろしくお願い申し上げます。  諮問第46号につきましては,本年の1月30日,法人制度部会の第2回会議におきまして,「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)」を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の内容につきまして御報告申し上げます。  まず,審議の経過等から御報告申し上げたいと思います。  本日,御審議いただきますのは,お手元に資料が参っているかと思いますが,「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)」でございますが,これは公益に関せず,かつ,営利を目的しない団体について,準則主義による法人格の取得を可能とするため,新たな法人制度といたしまして,共同法人(仮称)制度を設けようとするものであります。  まず,このような制度を設けようとする理由は,これから申し上げるとおりでございます。  現行法上,公益に関する社団又は財団であって,営利を目的としないものは,民法第34条の規定に基づきまして,主務官庁の許可を得て公益法人となることができます。また,営利を目的とする社団は,商法又は有限会社法の規定に従いまして株式会社・有限会社等の営利法人になることができます。しかしながら,公益に関せず,かつ,営利を目的としない団体が法人になるというための一般的な法制度は存在いたしません。これは,民法のいわば間隙,隙間でありまして,これを埋める制度を創設する必要があるとかねてから指摘されてきたところであります。  なお,このように創設の必要性が指摘されてきました法人制度は,その対象となる団体が,公益にも関せず,かつ,営利をも目的としない,いわば中間的な領域に属することから,これまで「中間法人制度」と通称されてきたところであります。  この中間法人制度の創設の必要性は,公益法人制度の在り方との関係でも,従前から指摘を受けてきた問題であります。すなわち,積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的としない団体に対してまでも公益法人としての設立許可が与えられ,結果として公益法人制度に対する社会的非難を招くに至っているというもので,そういう指摘を受けてきた問題がそういうものでございます。中間法人制度が存在せず,公益法人制度以外に法人格を取得する道がないということに原因の一つがある,という観点から,いろいろな指摘がございました。例えば,行政監察結果に基づく勧告,与党行政改革プロジェクト・チームによる提言等におきまして,中間法人制度の創設の必要性が指摘されてまいりました。  こういう問題状況を踏まえまして,法制審議会民法部会は,平成11年9月,中間法人制度を審議事項とし,同部会のもとに設置された「法人制度分科会」においてその審議を行うことを決定いたしました。同分科会は,その制度の在り方についての具体的な検討を進めまして,平成12年2月,中間法人(仮称)制度の創設に関する要綱中間試案の分科会案を取りまとめ,民法部会は,同年3月,この案を中間試案として公表し,関係各界に対する意見照会を行うことを了承いたしました。  この意見照会は,平成12年4月から6月まで行われましたけれども,これに対しまして合計28団体から意見が提出されました。また,同じ時期にインターネットを利用いたしまして,法務省のホームページにおいて中間試案に対するパブリック・コメントの募集が行われましたところ,電子メール等によりまして合計53件の意見が寄せられたわけでございます。  法人制度分科会は,平成12年9月から審議を再開いたしまして,これらの意見を踏まえて検討を続けておりましたが,平成13年1月からは法制審議会の機構が改められたのに伴いまして,新たに法制審議会法人制度部会を設置いたしまして,この部会がその検討を引き継ぐことにいたしまして,同月30日,先ほど申しましたように「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)」を取りまとめるに至った次第でございます。  なお,中間試案では,創設される法人の名称として,その位置づけについての従来の講学上の呼称に従いまして,「中間法人」という仮称を用いてまいりましたが,要綱案では,創設される法人の特質をより積極的に表現するために,「共同法人」という仮称を用いております。以下,一々「仮称」というのをつけますとお耳障りかと思いますので,便宜上仮称である旨のお断りを省略をいたしまして,これからは単に「共同法人」と呼ばせていただくことにいたします。  続きまして,要綱案の内容について御説明を申し上げます。お手元の資料を参照になりながらお聞きいただければ有り難いと思います。  まず,要綱案の基本的な枠組みにつきまして簡単に御説明を申し上げます。  共同法人制度の対象となる団体の範囲の定め方につきまして申し上げますと,新たに法人格取得の道を与えるべきだという団体の例として挙げられることが多いのは,業界団体とか同窓会,親睦団体等の団体でありますが,これらの団体がその構成員に共通する利益を図ることを目的とするという点において特徴を有することに着目をいたしまして,このような団体に対して法人格を取得する道を開くのが最も必要であり,かつ,現実的であるというふうに考えられます。そこで,これにふさわしい法人制度を創設する方向で検討を行うことにいたしました。  このような観点から,共同法人とは「社員に共通する利益を図ることを目的とし,かつ,剰余金を社員に分配することを目的としない社団」を言うものと定義することにしております。これは一の1というところでございます。  それから,法人の設立につきましては,準則主義を採用いたしまして,主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立するものといたしまして,主務官庁の許認可を要しないものとしております。そのほかの場面につきましても,公的関与は商事会社におけるのと同程度に必要最小限度にとどめるということとしております。  創設する法人類型の種類につきましては,中間試案では,差し当たり典型的なものとして有限社員のみで構成される法人類型だけについての案を示しておりました。しかし,この制度の対象とすべき団体には,多種多様の性格のものが考えられるということにかんがみまして,さまざまな需要に対応することができるようにするために,ある程度詳細な規律が求められる有限責任社員のみで構成される法人類型,これを「有限共同法人」というふうに呼んでおります。このほかに,簡易な設立及び運営が可能となる法人類型として,無限責任社員のみで構成される類型,これを「無限共同法人」と呼んでおりますが,これを設けるものとしております。一の2と3がそれについて規定しているところであります。  それから,社員の法人に対する出資及び持分につきましては,営利法人と適用対象を異にする制度であるということにかんがみまして,共同法人の非営利性を徹底する見地から,社員は出資を行わず,法人の資産に対する持分を有せず,かつ,法人に対する剰余金分配請求権及び退社のときの財産払戻請求権を有しないものとしております。共同法人において,社員が法人の資産に対する持分を有するものとすべきか否かというのは,法人の性格から当然に導かれるわけのものではございませんけれども,社員が法人に対して出資を行い,法人の資産に対して出資に応じた持分を有するものというふうにいたしますと,持分の経済的価値の増加も実質的な利益の分配と見ることができるために,共同法人の非営利性に反するのではないかという懸念が生ずるわけでありますので,このような規律とすることにしたわけであります。  そのほか,総則的事項として,法人の住所,権利能力,解散命令,登記,名称,会計帳簿等につきまして,所要の規定を整備するものとしております。  次に,要綱案の定める2種類の法人類型のそれぞれについて御説明申し上げます。  これは,第二のところを御覧いただければと思いますけれども,まず無限共同法人でございますが,これは,法人の財産をもってその債務を完済することができないときは,社員が連帯してその債務を弁済する責任を負うものとしております。この類型の利用対象として想定されますのは,比較的小規模で,人的結合関係の強い団体であり,その点で合名会社と共通する面があると言えますので,その規定の実質は,おおむね商法における合名会社についての規律に準じたものとしております。  その概略を申し上げますと,無限共同法人を設立するには,社員になろうとする者が共同して定款を作成するものとしております。第二の一の1でございます。また,社員は,原則としていつでも退社することができるものとしておりますほか,死亡,破産,除名等を法定退社事由として定めております。  法人の運営につきましては,原則として社員の多数決により業務の執行を決し,各社員が業務執行権及び代表権を有するものとしつつ,定款により別段の定めをすることができるものとしております。  合名会社についての規律と異なりますのは,先ほど申し上げましたとおり,社員は出資を行わず,法人に対して剰余金分配請求権及び退社時の財産払戻請求権を有しないものと定めていることのほか,社員は,定款の定めるところによりまして,法人に対し,経費を支払う義務を負うものとしていることでございます。また,法人が解散した場合の残余財産の帰属につきましては,定款又は総社員の同意により定めるものとしまして,これらによりまして定まらない場合には国庫に帰属するものとしているわけでございます。これは,六の2の(一)に規定されております。  社員が,経費支払義務を負うものとしているのはどういう理由かと申しますと,共同法人が社員に共通する利益を図ることを目的とするというものであることからいたしますと,その活動に必要な費用は,社員が負担するのが原則的な形態であると考えられるからであります。残余財産の帰属について,さきに申し上げましたような規律をしておりますのは,社員にその出捐に応じた残余財産分配請求権を法律上保障するといたしますと,共同法人の非営利性が徹底されないことにつながりますので,そのような規律とすることは相当でないというふうに思われることを理由とするものであります。また,共同法人が社員に共通する利益を図ることを目的とするものであることからしますと,法人の債権者に対する債務を完済した後の残余財産の帰属につきましては,社員らの自治にゆだねるのが相当であると思われることによるものであります。  そのほか,定款記載事項,登記事項,社員の除名,事業譲渡,定款の変更,解散,清算,設立の無効及び取消しの訴え等につきまして,所要の規定を整備するものとしております。  次に,第三に入りまして,有限共同法人についてであります。  この類型では,社員は,定款の定めるところによりまして,法人に対し,経費を支払う義務を負うのみでありまして,対外的な責任は負わないものとしております。相当多数の構成員からなり,かつ構成員同士の結びつきがさほど密接ではない団体につきまして,その全部又は一部の構成員が無限責任を負うものとすることは,必ずしも合理的ではないと考えるところによりますが,そのような団体につきましても法人格取得の道を開くべき社会的必要性は大きいと考えられますので,有限責任社員のみで構成される類型を設けるものとしたものであります。  有限共同法人を設立するには,社員になろうとする者が共同して定款を作成するものとしている点におきましては,無限共同法人と同様であります。社員は,原則としていつでも退社することができるものとしていること,及び死亡,除名等を法定退社事由として定めていることについても,無限共同法人と大筋で同様でございます。これは一の2とか3を御覧になればお分かりだと思います。  準則主義によって設立され,かつ,社員が有限責任を享受する,そういう法人につきましては,債権者保護及び有限責任制度の濫用防止という必要が生じてまいります。一定の財産的基盤の確保と,債権者に対する情報開示の充実を求めるということが不可欠であるというふうに考えられるわけでございます。そこで,有限共同法人におきましては,法人の設立に当たり,有限会社における最低資本金額と同額である300万円以上の財産が現実に拠出されることを要するものといたしました。一の5がそうでございます。そして,保険業法における相互会社の基金の制度におおむね準じた規律を設けるものとしております。ただし,基金の返還に係る債権につきましては,保険業法におけるのと異なりまして,共同法人の非営利性を反映する必要があるということから,利息を付することができないものとしております。  法人の管理につきましては,法人の必置の機関として,社員総会,理事及び監事を置くものといたしまして,社員総会は法定の事項及び定款で定めた事項に限り決議することができ,理事が法人の業務の決定及び執行に当たるものとしております。また,債権者等に対する情報開示の制度といたしまして,定款及び社員名簿の備置き,並びに計算書類の公示について,有限会社法における有限会社についての規律に準じた規定を設けるもとのしております。その他の点における有限共同法人についての規律の実質も,おおむね有限会社についての規律に準じたものとしております。  有限会社についての規律と異なりますのは,先ほど申し上げましたとおり,社員は出資を行わず,法人に対し,剰余金分配請求権及び退社時の財産払戻請求権を有しないものといたしまして,社員は定款の定めるところにより,法人に対し経費を支払う義務を負うものとしている点であります。このほか,法人が解散した場合の残余財産の帰属については,定款又は社員総会の決議により定めるものとし,これらにより定まらない場合には,国庫に帰属するものとしていることなどであります。  社員の経費支払義務及び残余財産の帰属についての規律の趣旨は,先ほど無限共同法人について述べたのと同様でございます。  このほか,定款記載事項,定款の認証,変態設立事項,登記,社員の除名,事業譲渡,定款の変更,解散,清算,設立の無効及び取消しの訴え等につき,所要の規定を整備するものとしております。  次に,第四の合併についての規律の概要でございます。  この合併につきましては,共同法人と他の共同法人とが合併することができるということを定めまして,無限共同法人と無限共同法人との合併では無限共同法人が,有限共同法人と有限共同法人との合併,又は無限共同法人と有限共同法人との合併では有限法人が,それぞれ存続法人又は新設法人となるべきこととするほか,所要の規定を整備するものとしております。  以上,簡単でございますが,要綱案の要点につきまして御説明させていただきました。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ● 大変精力的に調査審議をしていただいて,その結果を総会の方に提出していただき,今また,部会長から要を得た御説明をいただきました。  本来,御説明をいただいたのに引き続いて御質問を伺うのが議事の流れかと思いますが,冒頭に申しましたように,第1議題と第2議題の間で多少休憩の時間をとった方がよろしいかと思いますので,ここで休憩にしたいと思いますが,よろしゅうございますか。  若干ゆっくり目に休憩をとりまして,2時35分再開ということでよろしゅうございましょうか。  それでは休憩にいたします。           (休     憩) ● それでは,定めました時間になりましたので審議を再開したいと思います。  先ほどの○○委員の御報告及び要綱案の全般的な点につきまして,まず御質問がございましたらお伺いをしたいと思います。どうぞ,どなたからでも御発言をお願いいたします。 ● 先ほど,共通の利益ということをおっしゃったわけですが,共通の利益というのは漠としていますのでよく分からないので,例えばどんなものがあるかということでございます。  それから,剰余金を分配することを目的としないということがございますけれども,剰余金を分配しなければ,営利を目的として構わないということでございましょうか。そのように理解してよろしいわけでございますか。 ● 共通の利益とは何かということですが,これは一般的な用語でございますから正にその内容は一つの解釈問題だと思いますが,共通の利益ということを念頭に置きましたのは,同窓会のような場合,同窓会員相互間の親睦を図るとか,同窓会館を運営して会費の一部に充てるというようなことを考えて,この構成員の共通の利益になっていくことを念頭に置きました。したがいまして,同窓会とか業界団体とか,そういうようなものの団体を念頭に置いて生まれてきた用語だというふうに御理解をいただければと思います。  それから,剰余金を分配しないというのは,非営利ということの意味でございます。そもそも営利か非営利かという言葉は非常に多義的でありまして,利益を上げるような事業を営めば,それは営利ではないかというような議論さえあるわけでございますけれども,審議の過程で営利か非営利かの意味をはっきりさせようということになりまして,非営利とはその団体の活動で得た利益について分配をしないというのが非営利の象徴的なものだろうというふうに考えました。したがいまして,それさえ守られておりますと,例えば実際上利益を上げるような事業を付随的に営むというような場合は,別にこれによって否定されていないというふうに考えております。 ● こういう図をいただいているのでございますけれども,例えば農業協同組合というのは,現在既に特別法によっていわゆる中間法人とされているのでございますけれども,こういうような農業協同組合というのは営利行為をしていると思ったわけです。ただそれは,分配はしないということ。そういうことで,農業協同組合のようなものでなくて特別法がない場合に,こういうものをどんどんつくって構わないというふうに理解してよろしいわけでございますか。 ● 農業協同組合は,これは中間法人ではございません。特別法によって認められておりますので,それはカテゴリーではないかと思いますが。 ● それに似たようなものということでございますね。 ● そうですね,共通の利益を目的として設立された法人であって,この要件に当てはまるような剰余金についての分配請求権を持たない法人であれば,それはここで言う共同法人,仮称でございますから,そういう意味ではそれの要件に当てはまる限りは法人として法人格が認められる可能性はあるということでございます。  農業協同組合もそうかと言われますと,これまた法律でいろいろな目的がありまして,政策的な目的があるものですから……。 ● 現在ある法人ですね,いわゆる中間法人の一つとして農業協同組合がちょっと頭に浮かんだものですから。ああいうような形。 ● 同窓会などをお考えいただければ一番いいのじゃないだろうかと思います。非常にたくさんの同窓生を擁しております同窓会で,ある程度の例えば財産などがありまして,それが法人格を取得しないがゆえにだれかの名義でたまたま登記されているというような場合,しかし活動の実態は同窓生の福利厚生のために,例えば結婚相談に応じるとか,そういうようなことをしているというような場合に,そういうものが法人格を取得する道はこれまでなかったわけですが,これによってそういう団体は法人格を取得する道が開けるというふうにイメージをしていただければよろしいかと思っております。 ● まだ,具体的にどういう形で濫用が起きるのかというのは,私は分からないのでございますけれども,その危険性がないのかというようなことをちょっと疑問に思ったものですから伺ったわけでございます。どうもありがとうございました。 ● 関連して御質問したいと思いますけれども。  この,「かつ」以下の部分ですね。ここは「営利を目的としない社団」という表現で足りるのではないかという気持ちを私は持っているのですけれども,しかし考えてみれば,非営利ということについて,あるいは営利ということについて,非常に多義的であると,あるいは抽象的で分かりにくいという問題があるのはそうだと思うのです。したがって,このように「剰余金を社員に分配することを目的としない」というふうに具体的に書かれているということは,あいまいな部分といいますか,多義的で抽象的な部分を厳格に明確化する,こういう趣旨でこういう表現になったのでしょうか。御質問します。 ● おっしゃるとおりでございます。中間法人と申しますのは,営利を目的とせず,かつ,公益も目的としないという法人で,その法人一般に対して,一般を規定する法律をつくるとなりますと,法技術的にこれは大変難しいわけです。例えば,公益を目的としないといいましても,しないという消極的なことを法文の上で書けるか,公益を目的とするというのですと,何が公益かどうかという形で規定は可能なわけですが,しないということはどうして書けるのか,こういう問題があります。  それから,特にこの法人はいわゆる準則主義でありまして,登記をすれば当然に設立するわけでありますから,例えば公益の判断は,現在の公益法人では主務官庁の許可にかかっておりますけれども,そういうこともない。したがいまして,その内容を明確にするためには,もっと積極的な定義の仕方が必要だろうということで,さまざまな中間法人のうちで社員に共通する利益を図ることを目的とするという積極的な定義を置きまして,ですから中間法人一般は,これに当たらないものは排除されるという可能性はこの定義は持っているわけです。それから,非営利という意味を「剰余金を社員に分配することを目的としない」と,こういうふうに規定したわけでありまして,公益も営利も目的としないという定義では,ちょっと立法が不可能なものですから,このような形で定義をしたというわけでございます。 ● ほかに御質問ございますでしょうか。--特にございませんか。  御質問ございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと思います。 ● 質問よろしいですか。  公益を目的とする共同法人というのはあり得るのでしょうか。 ● 共同法人という意味は,ここで規定してありますように,公益を目的とするのは公益法人の問題でありまして,ここで言う共同法人というのは,公益を積極的に目的とするものではありません。 ● 消極的な目的ならよろしいのでしょうか。 ● ですから付随的に,それが例えば社員に共通の利益を図ることを目的とすることが社会公共の役に立つということは,これはあり得る場合があると思います。そういう場合には,公益法人と言ってもいいわけですが,しかしそれは,法律でのいわゆる公益法人,つまり主務官庁の許可を得て,公益を目的とするがゆえに主務官庁の許可を得るという,そういうものとは違うという趣旨です。 ● 勝手に立ち上げた公益目的の共同法人というのは,あり得ないでしょうか。  実は私,女性投資家の会という,女性の皆さんに経済や資産運用についてお勉強していただこうという活動を1年ちょっと前から始めておりまして,目的は公益なんです。全然私益でも何でもないし,仲間うちの利益だけでもないのです。経済に関して女性の理解を得ることによって,女性の視点を経済に取り込みたい,それから米国とかヨーロッパの一部の国々では,資産運用に対しての基礎知識を多くの人に学校で提供しているのですが,日本ではそういう形に全くなっていない。一方,こんなに低金利で,高齢化社会で,資産運用が非常に重要な生活の一部になっていますね。  それからもう一つは,なぜ投資家という名前をつけたかというと,日本では株式投資,株式市場に対する偏見が非常に強いのです。だから,家計をあずかる女性の皆さんが経済や資産運用を勉強するとともに,女性が株式投資,株式市場に関心を持つということをアピールすることによって,全体に株式市場や株式投資の役割,意義,経済的影響について御理解いただきたいという目的で勝手にやりまして,物すごい費用がかかっているのですが,私が私的に全部弁済しておりますけれども,そういうのをどうしたらいいのかと前から思っていたものですから……。  目的は完璧に公益なんです。もちろん,入ってくださった方たちは私益も得ています。共通の利益もあるのです。だけど,会の活動自体は公益を目的にやっているのです。だけど,主務官庁の認可をいただいたりというのはなかなかできないことでして,今は代表者である私が預金口座なんかのすべての名義人になっているのですけれども,そういうのはどう扱ったらよろしいのでしょうか。共同法人に入れるのだったらば,とても簡単なことになると思うのですが。 ● おっしゃるとおり,公益法人で主務官庁の許可を得るというのは大変に現在では難しいというふうに私も聞いております。しかし,そういう場合,難しくてそれはとれないけれども,なお団体として活動したい,例えば預金口座も一定の団体名義で預けるという方が,つまり権利義務関係をはっきりさせる方が望ましいというのが正にこういうためにあり得るのじゃないかというふうに思います。  今のは,教育を目的とされているということですから,それは教育のみ積極的に目的にするということならば,実際上は公益法人としてあるいは許可を得た方が望ましい場合かもしれません。かもしれませんが,それがなかなかできないということであれば,こういう道もあるのではないだろうかというのが,こういう法律をつくった趣旨であります。 ● では,やはり公益目的を持って共同法人になるということは可能だということでしょうか。 ● このルートに乗る限りは,それは可能だと思います。 ● どうも失礼いたしました。何かとても私的なことをお聞きしたという感じで申し訳ありません。 ● よろしゅうございますか。 ● はい,結構でございます。ありがとうございました。 ● 社員に共通する利益を図ることでもあるように伺いましたけれども。 ● そういう目的も持っているということです。 ● ほかに御質問ございますか。 ● 済みません,重ねてお聞きしていいでしょうか。  社員にとっては損失なんだけれども,公益に益するという可能性はあり得ますよね。社員といいますか,会員から集めた費用で公益目的の広報活動とか,そういうことをすると問題になるのでしょうか。 ● 問題になるというのは,どういう趣旨でしょうか。 ● 共通の利益じゃなくて。 ● それは,たまたま金銭的損失が生じるということであって,目的そのものは正に共通する利益を図っているわけですから,たまたまお金の面で損失が出るというだけのことではないかと思いますけれども。 ● どうも失礼いたしました。重ね重ね,本当に申し訳ございません。ありがとうございました。 ● ○○委員に伺いたかったのですが。それは,会員は女性だけでございますか。 ● 男性も入っています。 ● それならよろしゅうございますけれども,仮に男性だけとか女性だけとかというのはどうなのかなと,ちょっと思ったものですから。 ● 準会員に男性も受け入れたということです。 ● それでは,御質問がほかにございませんようでしたら,次に御意見を伺いたいと存じますが,いかがでしょうか。 ● 仮称でありますけれども,この共同法人という名称にどうも引っ掛かりを感じるわけです。総則一の,この共同法人の定義というのがありますね,これを幾ら読んでも,なぜ「共同」という名称をつけなければいけないのかという疑問なんです。率直に言って,「共同」という言葉の意味とかイメージというものが,どうもはっきりしない。私は素人ですけれども,分かりにくい印象を,この定義を読んだ限りではそう思います。  部会でも,適当な名称がないということで御苦労されたことはよく知っておりますが,この新たな法人制度が一般に理解されて,利用されていくのじゃないかという,そういう期待をして考えてみますと,やはり名称をどうするかということは単純なものではないと思うのです。非常に重要な問題だというふうに私は認識しております。法律用語として,厳密に考えますと必ずしも正確なものではないにしても,やはり一般に分かりやすいというのが名称をつけるときの基本ではないかというふうに私は思います。  先ほど御説明がありましたように,部会では途中まで「中間法人」という言葉が使用されておりましたね,確かに中間法人ということについていろいろ問題もあろうかと思いますが,ここに図がありますが,この図のように,目で見て,なるほど公益法人と,片一方は営利法人,その中間に位置づけられた法人という意味で,「中間法人」という言葉は非常に分かりやすい名称だと私は思います。いろいろな御異論はあるかと思いますが。しかも,語感の上からも,「中間法人」というのは非常に耳に入りやすい言葉だと思います。部会でも,共益法人とか共同利益法人とかいう御提案もあったようですけれども,むしろこの「共益」という言葉自体は,やはり一般的にはなじみにくい。語感としても,何か誤解を招くような,協同組合みたいなああいうふうなものと誤解されるような言葉ではないかと。ですから,やはり一般になじみやすくて,耳に入りやすくて,なるほど目で見ても耳で聞いてもそうだなというようなもの,そういう名称が望ましいのではないかと私は考えます。 ● 御意見の御趣旨は誠にごもっともで,やはり名称が一般の国民から見て理解しにくい,あるいはその名称を聞いたときと実体とが食い違っているというようなことは好ましくないというふうに私も考えるわけでございます。  ただ,これにつきましては,○○委員御自身がおっしゃいましたように,なかなか名称が難しくて,おっしゃるようにこれまでの議論の経過とか,それから日本の法人制度の大枠を御理解されている方には「中間法人」というのが,公益法人と営利法人の中間だということで分かりいいのかもしれないと思うし,私どもも従来そういうふうに言ってきたわけですけれども,そういう枠組みを御存じない方が聞かれたときに,中間というのは,では何と何の中間ですかという疑問もまた出てきそうなところから,恐らく「中間法人」という用語は避けられたのだろうと思うのですね。  ここは,部会の方でも仮称ということにされておられて,なお今後よく検討して最終的にお決めになりたいというか,今度はこちらで決めるということになるのかと思っておりますが……。  そうですね,○○委員の方からも御説明ください。 ● 名称の点は,今,会長がおっしゃいましたように,ここで決める,あるいは今後決める問題でございますので,部会がどうだったかということだけを申し上げて,御審議の参考に供したいと思います。  まず,「中間法人」という名称が望ましいということでございましたけれども,中間法人という名称は,何と何の中間かという普通の疑問を生じさせるほかに,法律家が見ましてもちょっと実体を反映していないのじゃないかという,意見と申しますか,そういう考え方が部会の中にありまして,それが当初「中間法人」という名称を使って意見照会を求めながら,後に変更した理由でございます。  それはどういうことかと申しますと,さっきの○○委員の御質問に関係するわけでございますけれども,この法人は公益法人と営利法人の中間の法人すべてをカバーするものではないわけです。営利でもない,公益でもないという形で法人の性質を定義するというのは,先ほど申しましたような理由で非常に難しい。そうすると,結局ありとあらゆる形態,つまり非営利と非公益の中間にあるありとあらゆる形態すべてをカバーするような定義は非常に難しいものですから,その中で社員に共通する利益,つまり例えば同窓会とか業界団体というのをイメージした法人,これが従来一番法人格が取りにくいとされていたわけですので,それを念頭に置いて法人を決めるというのが一番現実的であるのではないか,もしそうではなくて,およそ中間法人一般法にしますと,ありとあらゆる解釈問題がその中に入ってくるわけですね,従来の特別法によって設立された法人との関係はどうなのか等々,いろいろな問題が出てくる。そこで,こういうふうに積極的に定義できる団体だけについて法人格を与えようというふうにいたしました。  ということは,つまりおよそ公益でもない,営利でもない法人すべてについての一般法では,これはないわけですね。この要件に当てはまる法人についてだけ法人格を与えるというものでございますから,やはり中間法人というおよそ一般法をつくるというわけではないものですから,どうも「中間法人」というのはこの要綱案にはなじまないというふうに考えまして,後に至ってその名称を避けたわけでございます。  そうすると,何がいいか,これが大変問題でして,部会レベルの話を申し上げますと,実は「共同法人」という名前は部会の議論では余り評判がよくなかったものでございまして,いろいろな案があったわけでございますけれども,これはいろいろな状況をにらんで判断しなければならないということで,私としては一応部会長一任という形にさせていただきまして,仮称という形でここに提出させていただいたわけで,これからどうするかはここでの御議論じゃないかというふうに思っております。 ● 今の名前についてですけれども,公益法人と営利法人と,残ったのと,それから例として丸で挙げてあるのを見ると,必ずしも全部入れる必要はないと思うのですが,普通営利法人といったら,といいますか,自発結社とか,そういう感じだから,私は「自発共益法人」とか,「自発法人」とか「結社法人」ではおかしいけれども,何か……。「共同法人」だと建設会社のコンソーシアムみたいな感じで,何か変だと思いますね。やはり私は,自発結社とか,そういうボランタリー・アソシエーションの形の精神を生かしたものだけ入れるとか,そういうふうにしたら,もうちょっと……。  ところが,NPOという何だかわけの分からないものがあるのも気になるのですが,それはもうだれかやっちゃったのだからしようがないですが,私は自発結社という感じにして,「自発」というのが何か入るような言葉が,100年も前の日本人はがんがんつくっていたわけですから,「自発」「共益」を何とか一緒にするみたいなものとか,「結社」とか「会社」とか,何かできないかなと私は思います。 ● ただいま,さまざまな御意見ちょうだいいたしました。実は,部会においてもそうでございますし,今,この要綱の段階でもいろいろなところに御説明にあがっておりますけれども,さまざまな意見がございます。それで,正に仮称でございまして,一応これで御承認いただいて,もう一度最終的に,短時間で決断をせざるを得ないと思いますけれども,事務当局として落ち着きのいい,短い名称ということを考えさせていただきまして,決断して国会の方に提出をするというふうにしたいと思いますので,仮称のこのままで一応御了承いただければと思います。 ● いかがでしょうか,ただいま事務当局の苦しい胸のうちを御説明いただきました。今,○○委員,それから○○委員からお述べいただきました御意見も十分尊重させていただいて,最終的な名称を事務当局の方で決めたいと,こういうことでございますので,本日のところ,この法制審議会としては,「仮称」というのをつけた「共同法人」という名称で一応御了承いただければ大変有り難いと思うのでございますが。 ● 名称の点は,今おっしゃったことで今後御検討いただきたいと思います。  内容の点についてでございますが,私としてはこのような法人制度の創設ということは,是非必要ではないかと考えております。先ほど問題になったような業界団体,同窓会,親睦団体というような,いわゆる社団といいますか,人の集まりについて,先ほどの○○委員のおっしゃったのもその一つになるかと思いますけれども,従来はそういうものについて法人として認められていなかったので,権利能力なき社団として扱われていたのだろうと思いますが,しかしこの権利能力なき社団というものの法律関係というのは,これは法律に根拠がありませんので,いろいろ意見が錯綜しております。私も関心を持って勉強したこともありますけれども,いずれにしても権利義務関係がはっきりしないということは否定し得なかっただろうと思います。この法律ができたからといって,それが完全に解消するわけではありませんけれども,そういう問題を解消したいと思えば解消できるという,その受け皿がこの法律によってつくられたという点は,大いに評価すべきではないかと思います。  そういうことで,先ほど濫用の問題が出ましたが,恐らく無限共同法人の場合には,各構成員が無限責任を負うわけですから,これについて濫用ということは起こり得ないと思うのですが,問題なのは有限共同法人,これは法人の財産だけしか債権者に対して責任を負わない,そういう性質のものですので,濫用しようと思えばできる可能性があるのですけれども,このような有限責任法人というのは,先ほども御紹介がありましたように,営利法人としての株式会社,有限会社がそれに当たります。それにつきましては,今のような問題を解決するためにいろいろな規制を設けております。この有限共同法人という新たな法律が設けられることによって,そこに風穴があけられるということだと困る,濫用の可能性があるなというふうに感じていたのですけれども,今回のこの要綱案では,その点についても,これは基本的には有限会社の設立あるいは規制と同じといいますか,全く同じと言ってもよかろうと思います。例えば,9ページの8の「基金の拠出の手続等」で,基金の拠出の手続,理事,社員の担保責任等について所要の規定を整備すると。これは,恐らく有限会社と同じような規定を設けるというふうに理解しておりますけれども,そういうことですと有限責任に伴う濫用というのも防止できる。そういう意味で,極めて適切な内容のものではなかろうかと思いますので,この内容には賛成でございます。 ● ただいま○○委員から,この原案に賛成であるという趣旨の御意見を伺いましたが,ほかにいかがでしょうか。 ● 名称はともかくとして,こういうふうなことを御質問も兼ねてお聞きしたい,あるいは意見を述べたいのですけれども。  この法人制度の創設というのは,その背景に公益法人の現状を見直すという要素が非常に強いと思うのですね。そうしますと,公益法人としての実体が余りない団体,かなりいろいろあると思いますが,そういった団体はこの新たな法人に変わるというか,組織変更と言ってもいいのですが,そういうふうに変わるというようなことはあるのかないのか。そういう目で見ますと,この要綱案にはそういったことについての手当て,そういう部分というものは全く取り上げられていないのですが,この辺をどういうふうに考えたらいいのか,ちょっとお尋ねを含めて。 ● 今の点でございますが,この法人制度が議論されましてから,一番一般に関心を持たれるのは既存の法人,特に公益法人にかかわっておられる方から,今の自分の関係している法人はどうなるのか,こういうことでございました。私も外部からはそういう質問を度々受けました。  当初,この部会あるいは分科会では,既存の公益法人からこの中間法人ないし共同法人へ移行する手続についても検討すべきではないかという議論がありまして,その問題についても議論のテーマになったことはございます。しかし,いろいろ考えてみますと,現在の公益法人は御案内のとおり千差万別でございます。実体すらよく分からなくて,何か政府の方で調査をするとか,いろいろな議論が出ているわけでございますので,その千差万別の公益法人,しかもそれは形式的には主務官庁がいろいろな理由に基づいて許可をしているわけですから,それについてこちらの方に移行する手続をつくるということになりますと,極めて一般的な規定にならざるを得ません。結果的には移行措置の問題は一切ここから外しまして,これはあくまで新しい法人の権利義務関係,私法上の権利義務関係をどうするかという形で規定をするというふうに徹底をしてつくったというわけでございます。  今後,その移行措置について,例えば法律の規制をするか否かという問題が一般的には起こってくる可能性もないわけではないかと思いますし,あるいはそういう問題について諮問があるということもあるかもしれません。しかしそれは,私法上の権利義務関係というよりも,例えば移行するためにどういう誘因をつくると移行しやすくなるかとか,いろいろな行政的な仕組みを含んだ法律になって,私法上の権利義務関係を扱う我々の範囲じゃないのかもしれません。ともかく,将来そういう問題が起こる可能性はありますが,ここでは要するに実体法的な権利義務関係,これが今まで全然なかったものですから,まずそれをつくってみせて,そしてそれに移行するという場合にはこうなるぞということを示すのが第一ではないかというふうに考えまして,移行措置については一切触れずにこういう法律をつくった,こういうわけでございます。  先ほどの○○委員のお話のように,私も説明で申しましたけれども,こういう法律をつくるという議論の背景には,現在の公益法人の中には公益法人という名称を持っているが実体はそうじゃないのじゃないかと,そういうものをこれに移そうという意図があったことは確かだと思いますが,先ほど申しましたような理由から,あえてそういう問題には立ち入らなかったというのが我々の部会の態度でございます。 ● そうしますと,そういった移行措置がないとしますと,実際問題としては,既存のそういう公益法人を一度解散して,改めてこの新たな法人,これを設立する,こういう形になりますか。 ● 実は,どういう目的で,どういうふうな根拠で認めたかというのは,主務官庁にかかわる問題でございますね。私どもとしましては,今のところそれは個々の法人ごとに主務官庁が決すべき問題であるだろうと思います。ですから,恐らく一般論は非常にできにくいのではなかろうかと思いますし,それはこの部会の案の範囲ではございませんので,いろいろな議論はありましたけれども,ここではそういう問題には触れないという形にいたしました。ですから,恐らく実際的には,特定の法人について何かそういうような問題が起こるということは考えられる可能性はあるかと思います。 ● ちょっとその点につきまして,○○幹事の方から説明がございます。 ● この公益法人問題に関しましては,かなり今,与党の方でも議論をしているわけでございますけれども,現在,2万6,000ぐらいたしか公益法人がございますけれども,その中で本当に公益法人で残るものもあります。それから,あるいは独立行政法人に移行するもの,あるいは政府の中に取り込むもの,それから共同法人に行くもの,それから株式会社に行くものもあろろうかと思います。  その場合に,財産を全部そのまま承継させるべきか,させちゃいかんのかという議論がまず前提としてあります。ある部分の財産は持っていってもいいというものもあるかもしれません。これを全部一応の仕分けをしませんと,それをどういうふうに移行していくか,全部タイプが違ってくるわけでございまして,先ほど○○委員の方からもございましたように,共通の手続をつくるというのは至難の技でございます。もう少しこの問題は,これは受け皿を今回つくりまして,つくった後で公益法人をどうするかの仕分けをして,それに伴って必要な手続は別途つくるということにせざるを得ないのではないかと。現在の流れとしてはそういう流れで考えられているようでございます。そういうことで,今回は組織変更の規定はなしということで,今後の議論にゆだねたいというふうに思っているわけです。  これを全部やろうとしたら,公益法人は全部の省庁の所管でございますので,法務省で独自に決めるということはなかなか難しいということもございますので,御理解をいただきたいと思います。 ● 全体的なことでなくてもよろしゅうございますか。 ● はい,どうぞ。 ● ちょっと細かいことになるのかもしれませんが,有限共同法人の場合は300万円以上の基金が要るということですが,これはイメージする小さな同好会クラブとかそんなようなものの場合に,300万円というのは大きいのじゃないかなという感じがするのでございますが。それが一つ。  それから,議決権のところでございますね,社員は1個の議決権を有するけれども,定款で別段の定めをすることを妨げないとあるわけでございますけれども,例えばどのような別段の定めがあることを想定されているのかということ,御質問で申し訳ありませんけれども,よろしゅうございますでしょうか。 ● 300万円というのを最低金額といたしました点につきましては,部会の中でも大変議論がございました。非常に小規模な,例えば趣味の俳句の会みたいなものをやっている団体が法人格を取得するという場合に,非常に障害になるだろうとか,そういういろいろな議論がございました。  しかし,他方考えてみますと,これは準則主義,つまり当事者が登記をすれば直ちに設立できるという,そういう種類の法人でございますから,だれか許認可を与えるとか監督するというものでもございません。したがって,ありとあらゆる団体が法人格を取得するためにこれに入ってくる可能性があるわけですね。そうしますと,何かの歯どめを置かないと困るのではないだろうか,そして小規模なものについては全くこの要綱案は配慮していないわけではなくて,無限共同法人という形で小規模なものはこちらに行ってくださいという配慮もしている。そうなりますと,どういうような団体が,例えば何か税金をごまかすために団体をつくるとか,いろいろなことが考えられるわけです。そういう場合には,やはりある程度の歯どめを,少なくとも有限共同法人については置く必要があるのではないか,それは何かと考えますと,有限会社と同じ300万円というのが最低限の規律ではないかというふうに考えてこういう規定を置いたわけでございまして,小規模な,本当にたくさんの会員もいないような団体については,無限共同法人の道を選んでほしいというのがこの要綱案の考え方でございます。  それから,議決権の点ですが,これも実態が分からないのではっきりいたしませんけれども,会員はこうだとか,準会員は総会に出席できないとか,何かそういうようなことがあり得るのではないだろうか,そういう場合にもおよそ例えば1人1票というふうに決めてしまうのは適切ではないので,当事者の自治に任せて,定款でそれを決めた方がいいのではないかというふうにイメージしたというのが,さっきの規定の趣旨でございます。 ● ちょっと疑問に思いましたのは,この有限共同法人は2人以上でよろしいわけでございますね。人数は非常に少なくて,何か300万円というのが大きいなという感じがしたのが一つでございます。  たしか,NPOは,もちろん目的が違いますから同列には論じられませんけれども,10人以上いなければいけなかったか,そんなのではございませんでしたでしょうか。 ● そうだと思います。 ● ですから,そういう意味でちょっと人数の問題と,この金額の問題が少し私としては何となくピンと来なかったというのが一つございましたので伺ったことと,それから議決権の件は,これは任せればよろしいのでしょうけれども,民主的な運営とのかかわりで問題が起きることはないのであろうかとちょっと思ったわけでございまして,定款でどのように定めるかは自由だということであれば,それは致し方ないのかなと今伺ったわけではございますけれども,そんなふうに感じたものですから御質問したわけでございます。 ● 人数とアンバランスが出ないかということでございますけれども,人数の点は実際に最低の人数を決めるべきではないかという議論も当初あったわけですが,やはりいろいろなタイプがあるので,最低人数だけを決めるというのは問題があるのではなかろうか,濫用を防ぐということが大事なので,そうするといろいろなタイプの法人が入ってきてもいいということを考えますと,むしろ人数の制限はかなり緩くした方がいいのじゃないかという形でこれに落ち着いたわけでありまして,少数の人数であるから活動が小規模で影響力が少ないとも言い切れない場合もあるかと。とにかく予想がつかないわけですから,どういう団体が入ってくるか分からないわけですから,そう考えた次第です。  それから,議決権云々で民主主義に反するおそれがあるのじゃないかという御質問でございますが,これは少数の者の保護ということを一応図ってありますので,それは一般的なそういう処理として扱えばよろしいし,最終的には裁判所がその判断をすればいい,一般法にゆだねればいいのではないだろうかと,こういうふうに考えております。 ● ほかに御意見ございますか。  ほかに御意見がございませんようでしたら,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,よろしいでしょうか。  それでは,法人制度部会から報告をしていただきました「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いします。           (賛 成 者 挙 手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。  ただいま,議長を除く出席者は15名でございますけれども,全員の賛成ということでございます。 ● 採決の結果,全員賛成でございますので,法人制度部会から報告されました「共同法人(仮称)制度の創設に関する要綱(案)」は,原案のとおり採択されたものと認めます。したがいまして,本日御審議いただき採決されました要綱につきましては,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。どうもありがとうございました。  なお,要綱を今後条文にいたします場合には,立法技術上の問題もございますので,先ほど問題になりました法令名の面も含め,その表現ぶり等につきましては,事務当局に御一任いただければと存じますので,よろしくお願いいたします。  最後に,事務当局から報告がございます。 ● ○○でございます。法務省としまして,この国会に弁護士法の一部を改正する法律案を提出する予定で準備をしておりますので,この場をおかりしましてその概要について御報告申し上げます。  この法律案は,弁護士を社員として弁護士業務を行うことを目的とする法人,これを設立することを可能にするためのものであります。このことによりまして,弁護士業務の共同化を促進するとともに,その業務提供の基盤を拡大強化し,職務の質を向上させ,高度専門化した多様な法律サービスを安定的,かつ,より一層適正・迅速に供給することを可能にする,こういうことによりまして複雑・多様化する国民の法的需要に的確にこたえ,その利便性の向上に資することを目的としております。  法律案の具体的な内容ですが,まだ現時点で政府部内における協議中でありますので,変更の可能性があるということを御理解賜りたいと存じますが,その概要を説明いたしますと,まず第1に,この弁護士法人は,社員資格が弁護士に限定されるということ,それから設立につきましては,ただいま説明がありました共同法人と同じように,登記によって設立を認める準則主義を採用しております。名称として,「弁護士法人」という文字を使用しなければならないということも決めております。  第2に,法人の業務範囲ですが,基本的に自然人たる弁護士と同様の業務を行うということにしております。ただし,具体的な法廷活動,訴訟に出て,訴訟代理人あるいは弁護人として活動する,そういう行為につきましては,法人が受任主体とはなりますが,現実に具体的な法廷活動は,社員又は使用人である弁護士が行うということで,社員又は使用人である弁護士にこれを行わせる事務の委託を受けるという受任の形態をとることとしております。  第3に,法人の業務につきましては,原則として全社員が業務執行権限及び代表権限を有するものとしております。ただし,特定の事件について法人が業務を担当する社員を指定することができるものといたしまして,その指定がされた場合には,依頼者に通知することを要件として,指定を受けた社員のみが当該事件についての業務執行権限及び代表権限を有するということにしております。  第4に,社員の対外的責任ですが,これは法人の財産で債務を支払えない場合には,全社員がこの債務について無限連帯責任を負うということを原則としております。ただし,先ほど申し上げた指定がされた事件について,依頼者に対して負担することとなりました債務については,法人の財産で完済することができない場合には,指定を受けた社員のみが無限連帯責任を負うということとしております。これは,指定がなされますと,その他の社員はその事件に関して業務執行権限,代表権限を有していないということで,およそ関与できませんので,無限連帯責任を負わせるのは酷であろう,こういう考慮に基づくものであります。  第5に,弁護士法人は,従たる事務所を設けることができるということにしております。  それから第6に,弁護士法人は,自然人である弁護士と同様,弁護士会及び日本弁護士連合会の会員になるものとして,その指導監督を受ける。したがって,非違行為をした場合には,弁護士連合会から懲戒処分を受け,一番重い除名の処分を受けた場合には,法人が解散するということになっております。  この法案の立案に当たりましては,日本弁護士連合会と意見交換を重ねており,その意見も法案に反映させてきたものであります。日弁連においては,本年2月9日の臨時総会で,現在検討されておる法案の内容に沿う法律事務所の法人化に関する基本方針が承認されているところであります。  以上のような弁護士法の一部改正法案をこの国会に提出いたしたいと考えておりますので,引き続きよろしくお願いいたします。 ● ただいまの報告につきまして,何か御質問がございましたら伺いたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ● 今,事務当局から報告があったとおりですが,去る2月9日の日弁連の臨時総会で,この共同事務所の法人化の議案について,3時間以上の議論が重ねられたわけです。いわば,今まで弁護士が個人個人が責任を持つような形になっておりまして,法人が設立できなかった,だからそういう意味では前向きの問題だというふうに考えていいにもかかわらず,それだけ反対とか議論があったのはどういう点にあるかといいますと,やはり弁護士会は戦後ずっと弁護士自治を根幹とする一つの柱がありまして,その中には法務大臣による解散命令の請求という,そういう問題が実はあって,これがいわば外部からの介入を招くのではないかというふうな議論が非常にやかましくあったわけです。だから,現在の日弁連の執行部も随分そういうことについて配慮しながら討論を重ねてきたわけなので,今回の弁護士法の一部改正で法人ができるということになりましたら,そういう弁護士自治に対する配慮というものも法務省の方で十分お考えいただきたい,こういうふうに思っております。 ● ただいまの点について若干御説明申し上げますと,法人につきましては商法で,営利法人が準則主義をとられております関係上,法人格が濫用されているような場合に,裁判所に解散命令の請求ができるという規定がございます。これを,弁護士法人につきましても準則主義をとるということで基本的に準用をするということが,今回の法案の内容になっておりますが,その点について,ただいま○○委員から御指摘のような弁護士自治との関係を心配する声が上がりまして,法務省としてもその点を配慮いたしまして,法務大臣がこの解散命令の請求を裁判所に対してするに先立ちまして,日本弁護士連合会の意見を聞いた上で解散命令の請求をするという仕組みにしております。  また,現実にも,実際に解散請求をするような段階に至る前に,当然そのような非違行為があれば,懲戒に基づいて適切な処分がなされるであろうと考えておりますので,私たちとしては法律上はそういう準則主義との対応上準用することが必要だと考えておりますが,現実にそのような請求がされるということはないだろうと思っておりますし,そういう意味で弁護士自治についての配慮は今後も十分していきたいと思っております。 ● ほかに御質問ございますか。 ● 質問でなくて,ちょっと感想を。  これは,司法改革の中でもその弁護士制度を改革しなければいけないというようなところからこういう問題が起きたと私は認識しているのですけれども,やはり弁護士と国民の関係とか,司法に対する信頼度とか,それをよりよくするということからも,早くから期待をされたものですね。そういう意味でいいますと,私は歓迎いたします。  ただ問題は,この制度が十分に今後機能していくかどうかという問題があると思います。十分にこの制度が機能し,円滑に運営されるということになってまいりますと,確かに国民の多様なニーズにこたえられるとか,あるいは高度化,専門化された法的なサービスも提供できるのじゃないか,こういうことは確かにそうだと思います。それから,いつも大きな問題になっております弁護士の過疎化の問題についても,この内容からいきますと十分にこたえられる一歩になるかなということが言えるのじゃないかと思います。  ただ,今,お話がありましたように,一部の弁護士の中で必ずしも賛成論ばかりではなくて,反対論といいますか,消極論といいますか,そういうこともあることも事実のようでありますので,この弁護士事務所の法人化が,今後どういう範囲で,どういう方向をたどるのだろうかということは,ちょっと読みにくい部分もあろうかと思うのですね。しかし,この中で私は非常に関心を持っているのは,対外的な責任が明確になるという部分については非常に評価する部分ではなかうかと思っております。全体の中の一つでありますけれども。そういう意味で,先ほど申しましたようにこの制度が非常に機能していくというふうに,国民の期待に沿えるような形の制度になってほしいなと,こういうふうに考えます。感想です。 ● ほかに特に御質問あるいは御意見もございませんようでしたら,何かこの機会に,本日必ずしも議題とされたものに限らなくても結構でございますので,御意見を承りたいと思いますが,特に御発言ございますか。  決して強制する趣旨ではございませんけれども,新しくこの1月から以降,委員に御就任された方々から,何か特に御意見がおありになれば承りたいと思いますが。 ● 私がこのような場でどういうお役に立つことができるのだろうと,お話をちょうだいしたときにいろいろ考えたのですけれども,私には司法の専門知識もございませんし,それから守るべき団体も利益もございません。守るべきものといえば,11歳になる娘が一人だけということであってもよろしいのですかというふうにお話を申し上げましたら,生活者として--あるいは肩書きもジャーナリストで,ジャーナリストのもとはその日暮らしというのが語源でございまして,その日の生活感であるとか,そういった形の意味で,では肩書きを「お母さん」にしてください,「おばさん」でも結構ですと申し上げたのですけれども,そんなことが大変明治から伝わる非常に重要な会議の中で,私が果たすことのできるポジションかななどと思って参加をさせていただきました。  それで,今,会長からお話がありましたその視座から申しますと,司法制度の改革,あるいは弁護士会も含めて弁護士制度の在り方,さまざまな形で,今,戦後五十数年,日本丸が突っ走ってきた,そしてある意味で機能してきた制度というものが,いろいろなところで疲労を起こしたり,あるいは不適合を起こしている,それがベクトルの方向としてはどういうことになっているかというと,知らないでもよかったよという,例えば政治のある部分であるとか,あるいは弁護士先生たちのおやりになることというのが,庶民あるいは生活者,市民の目線にかなり密着した形で広く適用されないと,社会生活が,それは日本の中だけでなく,国際的な問題についても,お買い物,e-コマース,すべてそういう形での広がりとそれから速度と申しますか,そこが関心の分母も広げていっているという,その速さが非常なスピードで進んでいるという体感を持っております。  そうした中で,例えば福岡で起きている問題というのが,個人が資質として悪いやつやなというような,例えばワイドショーレベルの話でいくマスコミもございますけれども,ある意味においてはお白洲のところに引き出される農民あるいは町民が,裁かれる殿様と裁く,検査をしてくれる人たちが仲良ししちゃって,私たちはどうしたらいいのという,そういうようなイメージみたいなものも含めてかなり広く広がっている。司法,制度ということよりも,えっ,法律っていうことって私たちの生活にどのぐらいの距離感で,あるいは私たちはどういうふうにアクセスしていくことができるのといった,これは言い方を変えれば非常に庶民の関心が高まっているポイント,21世紀のスタートという気がいたします。ですので,できれば開かれた議論であるとか,あるいは今日初めて参加をさせていただいたのですけれども,できる限り分かりやすい平仮名で,そして目線としては日常生活の目線に届くということを軸にした審議の形を進めていただきたいし,起こったことというのは,逆手にとるという表現もおかしいですけれども,こうして例えば警察と検事というような問題が起きれば,それが全体性の問題としてどこを改めていこうとか,そういう形での発信が中央からも出ていくような,そんなチャンネルも例えばこういう審議会の中から出てくればいいなというふうに思います。  いらっしゃらなくなって申し訳ないのですが,先ほどの大臣のごあいさつなんかも,きっと大臣ではない方がお書きになったのだと思いますけれども,「かんがみるにしこうして」みたいなことっていうのは人類の会話ではないなという気がいたしますので,ああいうところもちょっとやさしく書いてみるとか,そんなことからしていただくと,とても身近になるような気がいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ● 貴重な御意見をありがとうございました。  ほかにございますか。  無理に御発言いただく趣旨ではございませんし,それからまたこれから何度でも機会があることでございますので。  それでは,本日は大変活発に御審議をいただきましてありがとうございました。これをもちまして本日の会議は閉会といたしたいと思います。どうもありがとうございました。