法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会           第12回会議 議事録 第1 日 時  平成24年7月31日(火)   自 午後 2時35分                         至 午後 5時45分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  時代に即した新たな刑事司法制度の在り方について 第4 議 事  (次のとおり)           議        事 ○吉川幹事 それでは,ただいまから法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の第12回会議を開催いたします。 ○本田部会長 皆様,本日も大変お忙しい中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日の議事は,お手元の議事次第のとおり,配布資料の説明の後,前回に引き続きまして論点大項目4の「公判段階の手続の在り方」に関する議論を行い,その後に大項目5の「捜査・公判段階を通じての手続の在り方」,大項目6の「刑事実体法の在り方」,大項目7の「その他」に関する議論を順次行うこととしたいと思います。そして,全論点につきましての一巡目の議論を終えました後,今後の議論の進め方につきまして御提示させていただきたいと考えております。   それでは,まず本日の配布資料につきまして,事務当局から説明をお願いします。 ○吉川幹事 それでは,配布資料について御説明いたします。   まず,資料36の「第11回会議の概要」は,前回の御議論の概要をまとめたものです。   資料37-1の「各国における公判廷での偽証・虚偽供述等に関する法制度の概要」と題する資料,資料37-2の「各国における司法作用を妨害する行為に関する法制度の概要」と題する資料は,公判廷での偽証等やその他司法作用を妨害する行為への対処に関する我が国や諸外国の制度を整理したものです。これらの内容につきましては,後ほど「公判において真実の証言・供述を得られやすくするための諸方策」の議論に際して説明があります。   資料38の「逮捕・勾留・保釈の運用状況(平成22年)」と題する資料は,我が国における身柄拘束の運用に関する統計資料です。   また,資料39-1の「被疑者国選弁護制度の概要」と題する資料,資料39-2の「被疑者国選弁護制度の統計資料」と題する資料は,被疑者国選弁護制度の概要や導入経緯,運用状況等を整理したものです。これらの内容については,後ほど「被疑者・被告人の身柄拘束と国選弁護の在り方」の議論に際して説明があります。   資料40-1の「刑事手続における犯罪被害者・証人等の保護に関する最近の主な立法の概要」と題する資料,資料40-2の「犯罪被害者関連諸制度の実施状況」と題する資料は,犯罪被害者や証人等の保護に関する立法の概要やその運用状況を整理したものです。これらの内容につきましては,後ほど「犯罪被害者・証人等の支援・保護の在り方」の議論に際して説明があります。   また,本日も議事進行の便宜のために,「進行イメージ」をお配りしております。これは前回の「進行イメージ」に引き続いて作成したものですが,若干の変更事項と追加事項がございますので,御説明いたします。   まず,変更事項といたしましては,論点4の小項目3の「公判において真実の証言・供述を得られやすくするための諸方策」に関しまして,「(2)司法の機能を妨害する行為に対する制裁の在り方」を追加いたしました。この事項は,論点6の「刑事実体法の在り方」にも位置付けられると思われますが,論点整理における委員,幹事の方々の御意見を踏まえると,そこでの議論と先ほどの論点4の小項目3の「(1)被告人・証人の虚偽供述等への対処の在り方」における議論とは,内容が関連又は重複することが予想され,これらを併せて御議論いただくのが円滑な議論に資すると考えられました。そこで,論点4の小項目3に,(2)として先ほどの事項を追加いたしました。   そして,論点5の「捜査・公判段階を通じての手続の在り方」,論点6の「刑事実体法の在り方」,論点7の「その他」につきましては,これまでの御意見を踏まえ本日議論されることが予想される主たる事項をそれぞれ新たに記載いたしました。 ○本田部会長 それでは,前回に引き続きまして,論点4の「公判段階の手続の在り方」に関する議論を行いたいと思います。   本日は,「進行イメージ」に沿い,二つ目の小項目であります「公判準備及び公判審理の在り方」に関しまして,「(2)供述調書による立証の在り方」についての議論から始めたいと思います。この点に関しましては,前々回の会議におきまして,既に検察官調書の証拠能力に関する規定の在り方についての議論がなされたところでございますが,この点も含めまして更に御意見がありましたら御発言をいただきたいと思います。 ○但木委員 供述調書の問題ですが,私は,今まで日本の裁判手続が調書中心に過ぎたということは反省しなければならないと思っております。したがって,公判廷での証言あるいは被告人の供述というのが最も大事なわけですが,それでは捜査段階での供述調書が要らないかということになると,やはり供述調書がないと,まず明らかに困ってしまうのは,参考人が公判廷で供述するまでに死亡した場合,あるいは国内にいなくなってしまった場合,これは全く再現不可能になってしまいますので,そういう意味では供述調書そのものの価値がないということはあり得ないということが一つ。   それからもう一つは,捜査段階の捜査はラフでいいのではないかという考え方がありますけれども,二つの点で全くそうではないだろうと思います。一つは,逮捕・勾留あるいは起訴される不利益というのは,やはり否定し難いところでありますから,それらの段階できちっとした捜査がなされて,罪を犯したと疑うに足りる相当な理由とか,あるいは有罪を勝ち取れる確信とか,そういうものが必要なだけの捜査がきちっとなされなければならないであろうと思っております。その上で,公判における証言を中心にすることがこれから重要となってくるということに全く異存がないんですけれども,ただ,常に公判で証人が本当のことを言ってくれるかというと,やはりそうはいかないというのが現実であると思います。私の経験によりましても,例えば,選挙違反で被告人が候補者の場合というのは,出てくる証人,出てくる証人,捜査段階で被告人に不利益な供述をしていても,公判では,被告人に不利益な供述をしたがらない。やはり村に帰ればみんな仲間である人たちが,公判に来て,その仲間の一人を指弾するということは難しいという面があることも否定し難いところであります。旧来のように,それではすぐに2号書面として出しましょうということで証人尋問を打ち切るというような文化はなくすべきでありますが,しかし最後まで本当のことを言ってくれないということは十分にあり得るわけで,その場合にはやはり公判廷で,今日言っていることが本当か,捜査段階で言っていることが特に信用すべき情況として認められるかということは,公判廷での証人尋問で明らかにしなければいけない。特に検察官はその義務があって,検察官の義務が果たせなければ調書は採用されないということで正しいと思います。   それは,実は現在の刑事訴訟法の321条1項2号書面というのは,そういうふうなものだということで規定されている条文なのであります。皆さん御存じのとおり,新刑訴になったときに公判中心主義ということはうたわれておりまして,そのための規定なわけです。なぜ,それなのに現在調書に依存するような捜査あるいは公判になっているかと言えば,運用がどんどんそちらの方向に特殊化していったからです。私は,そういう意味では運用が条文と乖離し過ぎたというように思っております。したがって,法文を変えるのか,明らかに現在の運用は条文と乖離しているから条文どおりにやりなさいという運用の問題にするのか,この点については,是非皆さんでどこかの時点できちっと整理をしていただきたいと思っております。 ○大久保委員 供述調書に過度に依存しないという方向性につきましては,正に納得しておりますけれども,例えば供述調書が不要であるとか,あるいは公判での供述調書の利用を制限しようというような意見に対しましては反対です。   理由の一つは,供述調書の利用は被害者の負担軽減に役立っているからです。被害者は,刑事司法が真犯人をきちんと検挙,処罰してくれるということを信じていますので,捜査に協力をして,必要なときには証言もしています。ただ,事件から受けたショックが大きいため,日常生活や社会生活など様々な影響を受けて苦しみ続けている。そのような状況の中で捜査に協力をして,供述調書作成に協力するだけではなくて,法廷で証言もしているのですが,証言台に立つときには,再び事件に向き合ってその内容を細かく思い出して話をしなければならないために,フラッシュバックが起きたりして精神症状が悪化することもありますので,例えば,自白事件などで供述調書による立証ができるようであれば,できれば証人尋問は避けていただきたいというのが被害者の本音でもあります。また,公開の法廷で,被告人のみならず,今は裁判員や傍聴人などの前で証言をするということ自体,非常に緊張することでもありますし,時には恐怖さえ感じることもあります。さらに,これは被害者の心情の特徴の一つだと思うんですけれども,司法制度が分からないがゆえに,裁判官や検察官などの心証を悪くしてしまうと,もしかしたら犯人の処罰が軽くされてしまうかもしれないなどということを考えてしまって,あえて立派な人としての姿を裁判の場では見せなければいけないと考えてしまいます。そのために公判で,本心では大変怒りを持っていても,その気持ちを言葉にすることができないということがあります。むしろ,時間を掛けてしっかりと聞いてもらえたことで話すことができた調書に述べられている内容や心情が,被害者の本心ですので,供述調書を証拠とする方が,事件の内容や被害者の心情等については,より正確に理解してもらえると思います。   もう一つの理由は,事案を解明するためには,捜査段階での供述を公判で利用しなければいけないという場面もあるのではないかということです。例えば,被告人も,捜査段階では話をしていても,先ほど但木委員のお話の中にもありましたように,実際に裁判になれば刑罰のことが不安になったり,あるいは傍聴している家族や関係者の目が気になったりして,自分に都合の良いうそを供述するということもあり得るのではないかと思います。   また,被告人の関係者であれば,捜査段階では本当のことを話していても,被告人の目前でとなりますと,やはり被告人に不利なことは証言しづらいために,違う話をしたり意味を変えたりというようなうその証言をするということも十分にあり得ることだと思います。また,共犯者や関係者でなくても,被告人や関係者からの報復を恐れて,公判廷においては真実を証言できないという場合もあるのではないでしょうか。北九州への視察に行ったときに,証人が証言を拒否したというような新聞記事も読みましたけれども,正にそういうことがあるのだと思います。   ですから,公判で必ずしも真実が話されるとは限らない以上は,捜査段階で作られた供述調書を一切公判で利用しないとか,極めて限定的にしか利用できないとなってしまいますと,事案の解明というものが難しくなってしまうと思いますので,真実を知りたいという被害者にとっては,やはり納得のできないことです。そのために,捜査段階での供述も適切に証拠とされた上で,その供述内容が信用できるのかどうなのかということを十分に吟味をして,しっかりと事実認定がされるべきものだと思っています。   以上のことから,供述調書への過度の依存はもちろん改めつつも,供述調書の証拠としての利用を過度に制限するのではなくて,やはりこれを適切に活用していくことが重要なことなのではないかと考えています。 ○村木委員 公判廷で必ずしもいつも真実が述べられるとは限らないというお話がありました。そういうケースもあろうかと思います。それと同じように,供述調書はいつも真実が書かれているとは限らないということでございます。調書というのは非常に作文をしやすい。これは,この会議でも何回も申し上げたと思います。また,そういう調書に被疑者や被告人がサインを拒否するというのは,普通に考えている以上に,やはり難しいことだと思っております。そういうことがあるので,実際問題,非常に事実と異なる調書が,あえて言わせていただければ量産をされているというのが今の状態だと思います。   供述調書を一切証拠として採用するなとまで言うのは難しいかもしれません。さっき大久保委員が言われたように適正に作られた調書で,例えば被害者の方が公判廷で証言をするのは難しいので調書でというようなこともあろうかと思います。そういったものまで否定をするつもりはありませんが,証拠として使われる調書は適正に作成をされたものかどうかというのを必ず検証できるようにしていただきたい。そういう検証ができるものだけを証拠として使っていただくようにしていただきたい。これはもう是非そのように制度を見直していただきたいとお願いを申し上げます。 ○周防委員 一般論というか,私自身の経験から申し上げますが,密室で取られた供述調書に証拠能力を認めているということが,まずもって僕は最初不思議でした。私自身,仕事柄よくインタビューを受けて,そのインタビューは記者によってまとめられ,インタビュー記事として雑誌や新聞に掲載されるわけです。多くの記者はほとんど私に好意的に接してくれて,何とか私の言葉を理解しようとして,そして書いてくれる例が多いんですが,それでも私の真意とずれていたり,基本的な事実関係の間違いも必ずあります。ですから,不適切な言葉遣いやニュアンスの違いであったり,なかなか自分の言っていることが相手に伝わらないということを何度も経験してきました。ですから,基本的には自分でチェックできない限り,私は取材を受けないことにしています。新聞などのインタビューでは,後でチェックすることができないという場合お断りすることもあるぐらいです。それほどに,何とか相手の言っていることを理解しようとして記事を作成したって,なかなか本当のことは伝わらないんだなというのは経験上すごくよく分かっています。   それが取調室という中で,ほとんど取調官がある疑いを持って質問をし,いわゆる真実というものを引き出そうとして作られたものが,被疑者の言葉をきちんと正確に取ったものであるとどうして言えるのかが全く理解できませんでした。ですから,そういった密室での取調べで作られた調書を正確に録取されたものだと認定すること自体が,僕にとっては理解不能です。   せめて密室での取調べの全過程が録音・録画されるようになれば,まだ少しはその調書の任意性とか事実関係をある程度は検証できるようにはなると思いますが,今の形での調書がこれほど今まで重きをなしてきたというのは,私にとっては理解できないことで,そこら辺は本当に,今までそうしてきたから,皆さんごく当たり前のように調書について考えられていると思いますが,基本的にそういったものに信頼が置けるのかどうかということは,もう考え直した方がいいと思います。 ○小坂井幹事 村木委員,周防委員の言われたことと同質のことを述べることになろうかと思います。2回ほど前の会議で,供述調書に過度に依存する刑事司法を改めるには,調書を廃絶する方向をこの部会で何とか打ち出すべきではないかというお話をさせていただきました。   但木委員は,調書が残っていないと死亡した場合や国外に行かれた場合に困るということをおっしゃっていましたが,必ずしもそうでもなくて,正にそこは2回ほど前に議論したことですけれども,取調べの全過程を録画・録音するという制度が確立されれば,それはそれとして捜査段階の供述は証拠として保全されるわけです。ですから,そういう使い方もあり得るだろうと思います。仮に供述調書が直ちにはなくならない,残すんだとしてもやはり同じことで,全過程を録画・録音することによって初めて捜査段階の供述調書を公判廷で使えるんですよと,そういう適格性を初めてその段階で与えるという制度に,今こそ見直すべきときだと思います。そうでなければ,供述調書に過度に依存する刑事司法を改めることはできないし,先ほどから議論が出ている作文調書が改まることもないです。ですから,これは絶対に必要だと思います。   もちろん規定の仕方は,それを任意性の問題にするのか,あるいは参考人であれば特信性の問題にするのか,あるいは供述録取というレベルの問題で対応できるのか,規定の仕方が非常に難しいということは2回ほど前の議論でもあったことです。けれども,やはりそこは全過程を録画・録音するという制度によってこの問題については決着をつけるべきだと思います。単なる運用の問題ではなくて,ちゃんと制度としてそれを確立すべきだと思います。 ○後藤委員 法廷で証言するからこそ,かえって真実が語られないという場合も確かにあり得ると思います。しかし,現在の我々の刑事訴訟法は,人の供述を証拠とするときには法廷で語ってもらうことを明らかな原則としています。その理由については,いろいろな説明があるでしょうけれど,一番の基礎には,公開の法廷でみんなが見ている前で,しかも被告人の目の前で堂々と語るということに信頼性の根拠があるという考え方があるのだと思います。そのことは,裁判の透明性あるいは公明正大さという要請から考えても,理由があることなので,その基本は忘れてはいけないと思います。 ○本田部会長 それでは,「供述調書による立証の在り方」に限らず,「公判準備及び公判審理の在り方」に関しまして御意見がありましたら,ご発言をお願いいたします。 ○井上委員 「供述調書による立証の在り方」について,議論の整理のために発言させていただきますと,皆さんの御発言を聞いていますと,最初は2号書面,つまり参考人の供述調書の話をされていたのに,いつの間にか被疑者の供述調書の話が紛れ込んでいるところがありましたので,その辺を本当に一律に議論してよいものかどうか,議論するときに考える必要があるように思います。また,その点に関して小坂井幹事は「廃絶」と言われたのですけれども,全部可視化すればそれを直接証拠として使うこともできるではないかという含みの発言を今度はされた。しかし,その前提として,参考人に関しては,全部についてそういうことをするのは現実的には非常に難しいだろうということもこれまで議論されたはずですので,そういうことを考えても,二つの取扱いは違ってくるはずだと思います。   もう一つ,両方向の議論があったのですけれども,基本的には,公判廷中心で,そこでできるだけ真実の供述をしてもらう。これが基本であるということは,どちらの立場の方も一致して言われているので,そこは崩れていないと思うのです。だから,そういうふうにこれまでなっていなかったのかどうか。なっていないとすれば,それはどこに問題があるのかということで,但木委員が言われたように法規あるいは制度の問題なのか,運用の問題なのかという話になると思います。調書への過度の依存というのは,制度が改まらなければ改まるわけがないと小坂井幹事は言われたのですが,過度の断定だと思います。また,毎日のように量産されると村木委員が言われたのも,これは過度だと思うのですね。これまで調書裁判と言われてきたことの実態が,326条に基づく弁護側の同意により調書が採用されていたものと,321条1項2号などで採っていたものとが仕分けされないで議論されているところがあるのですけれども,2号,特に2号後段依存というのがどの程度のものであったのか。本当にどんどん出てくるということだったら,どこに問題があるからそうなっているのか。法規定の要件の定め方に問題があるのか,それとも運用に問題があるのか,これから中身の議論に入っていくときには,やはりその辺をきちっと仕分けをしてかからないといけないと思います。   周防委員の言われた点は,御存知だと思うんですけれども,一応制度の作りとしては,供述調書の内容の正確性は,供述者本人に読み聞かせてそれを確認してもらい,署名をさせるということで担保しようとしている。恐らく,それで十分かどうかという問題だと思うんです。その辺も余り最初から断定しないで,やはり緻密に議論をしていった方が良いのではないかと思います。 ○本田部会長 ありがとうございました。それでは,次の論点4の三つ目の小項目である「公判において真実の証言・供述を得られやすくするための諸方策」に入りたいと思います。   この点につきましては,進行イメージに記載したとおり,「(1)被告人・証人の虚偽供述等への対処の在り方」に加えまして,「(2)司法の機能を妨害する行為に対する制裁の在り方」につきましても併せて御議論いただきたいと思います。   まず事務当局の方から,これらの事項に関します我が国の制度や諸外国の制度等につきまして,配布資料に沿って説明をしていただきたいと思います。 ○保坂幹事 御説明いたします。配布資料37-1と37-2でございます。   まず,37-1を御覧ください。「各国における公判廷での偽証・虚偽供述等に関する法制度の概要」について,当方で把握しているところを御説明させていただきます。   我が国におきましては,刑法169条に偽証の罪が定められており,法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは,3月以上10年以下の懲役に処すると規定されております。また,正当な理由のない証人の不出頭や宣誓又は証言の拒絶については,刑事訴訟法の規定により,10万円以下の罰金又は拘留に処し,情状により罰金及び拘留を併科することができるものとされております。これらはいずれも証人に対する罰則であり,被告人の偽証等を処罰する規定はございません。   アメリカの連邦,イギリス,フランス,ドイツ及び韓国においても,それぞれ資料にお示ししたとおり,偽証を処罰する規定がございます。このうち,アメリカの連邦とイギリスにおきましては我が国と異なり,被告人も供述をする場合は宣誓の下で行うこととされており,資料にお示しした偽証や虚偽供述の規定は,被告人が宣誓の上で虚偽の供述をした場合にも適用されるということです。   また,各国におきましては,証人の不出頭や宣誓又は証言の拒絶に対して,資料にお示ししたとおり,刑罰等の制裁が定められています。このほか,イギリスにおきましては,一定の場合に被疑者・被告人の黙秘などから適当と認める推論を行うことができる旨の規定も設けられています。   次に,資料37-2を御覧下さい。先ほど御説明した偽証等以外で,「各国における司法作用を妨害する行為に関する法制度の概要」について,当方で把握しているところを御説明させていただきます。   まず,我が国におきましては,刑法第2編第7章に,資料に条文をお示しした刑法103条の犯人蔵匿等の罪,104条の証拠隠滅等の罪及び105条の2の証人等威迫の罪が定められており,①犯人蔵匿等の罪は,罰金以上の刑に当たる罪を犯した者等を蔵匿し,又は隠避させた場合に,2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する,②証拠隠滅等の罪は,他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し,偽造し,若しくは変造し,又は偽造若しくは変造の証拠を使用した場合に,2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する,③証人威迫等の罪は,自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し,当該事件に関して,正当な理由がないのに面会を強請し,又は強談威迫の行為をした場合に,1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処すると規定され,また,「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」においては,組織的な犯罪についての犯人蔵匿や証拠隠滅等の行為をした場合に,刑法よりも重い3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処すると規定されています。   アメリカの連邦,イギリス,フランス,ドイツ及び韓国におきましては,それぞれ資料にお示しした犯罪が定められております。   アメリカの連邦には司法妨害罪の規定がありまして,例えば,不正に又は暴行,脅迫等を用いて司法の適正な運営を妨げるなどの行為は,10年以下の拘禁刑若しくは罰金又はそれらの併科により処罰されるものとされております。   イギリスにおきましても,判例法によりまして司法妨害が犯罪として処罰されるものとされており,法定刑の定めはございませんが,文献によりますと,通常の量刑は,証人への威迫・干渉の場合は,4か月から24か月の拘禁刑,証拠隠滅の場合は4か月から18か月の拘禁刑であり,重大な犯罪についての証拠隠滅の場合は,より重い刑もあり得るということです。   フランスには,犯人隠匿や証拠の隠匿等を処罰する規定があるほか,証人等の買収を処罰する規定があり,それぞれ3年の拘禁刑及び4万5000ユーロの罰金により処罰するなどと規定されております。   ドイツにおいては,他人の刑罰等を免れさせる行為を処罰する旨の刑の免脱の罪があり,5年以下の自由刑又は罰金により処罰するものとされているほか,虚偽の陳述の唆しの罪について,6月以下の自由刑などの刑が定められております。   韓国においては,犯人隠匿や証拠隠滅等の規定があり,犯人隠匿については3年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金,証拠隠滅等につきましては5年以下の懲役又は700万ウォン以下の罰金に処するものとされております。 ○本田部会長 以上の説明を踏まえまして,進行イメージの「(1)被告人・証人の虚偽供述等への対処の在り方」及び「(2)司法の機能を妨害する行為に対する制裁の在り方」につきまして,併せて御議論をいただきたいと思います。 ○大野委員 被告人の虚偽供述に対する制裁の必要性ということについて申し上げたいと思います。   これまでの公判について振り返ってみますと,証人については偽証罪の制裁があるのに,被告人については虚偽の供述をしても制裁がなく,供述の真実性を担保する仕組みがありませんでした。そのため,立場によりそれぞれ意見はあるかもしれませんけれども,検察官の立場から見ますと,被告人が法廷でいかに荒唐無稽なうその供述をしようとも,そしてそれによっていかに審理が遅延し,被害者を含む事件関係者に心理的・物理的負担を掛けようとも,その歯止めはなかったと言ってもいいのではないかと思います。   しかし,今後供述調書に過度に依存せず,公判審理をより一層充実したものとするためには,公判でなされる供述が真実であることが重要になってきます。そうすると,被告人についても,証人と同じように公判での虚偽供述を処罰できるような仕組みを設けることが検討されるべきであると考えます。このような仕組みを設けたからといって,被告人が検察官の主張や立証を争ったり本当の反証を提示することは何ら妨げられませんので,それにより被告人の防御権が不当に制約されることにはならないと考えます。 ○大久保委員 私は,被告人の虚偽供述に対する制裁措置の導入は当然のことと考えております。被害者は法廷で宣誓をさせられて,うそを言えば偽証罪に問われる。その一方で,被告人は法廷で幾らうそを言っても,あるいは,責任逃れや被害者への責任転嫁をしたとしても,何の制裁もない現状というのは,やはり極めて不公平で納得のできるものではありません。被告人には黙秘権が保障されているといっても,それはうそをついてもよいという権利ではないはずです。被告人は法廷で言い分を主張するのであれば,事実を堂々と主張すべきではないでしょうか。言い逃れのためのうそを許容している司法制度というのは,被害者を傷つけるだけではなくて,実は被告人の更生の機会をも奪っている不合理な制度だと言っても過言ではないのだと思います。   第10回部会で但木委員がこうおっしゃっていました。被疑者が自白をしてしまうことが弁護士にとって非常に不利だという感じ方をされている弁護士も大分おられ,しかし被疑者が自分から自白したい,あるいは被害者に謝りたい,自分の人生をこれからやり直したい,そういう意思が自立的に生じている場合に,弁護士さんがそれを封じて黙秘しろと言うのは全然正しくないと思う。それは刑事司法の機能そのものがおかしい。弁護士が本来果たすべき役割はそういう役割なんだと考えるのはおかしいのではないか。このようにおっしゃっていらっしゃいました。この意見は,新しい刑事司法制度を考える上で大変重要な視点の一つだと私自身は思っています。黙秘せず,うそを言わず,真実を話すことが基本的な考えになったとき,それはえん罪防止にも大変役に立つものだと思います。   また,被疑者・被告人以外の人が証拠を隠滅したり,あるいは虚偽の証拠を作ったりして捜査機関や裁判所に提出した場合と,被疑者・被告人が自分の事件に関して同様の行為をした場合とで,真実をゆがめて捜査機関や裁判所の事実認定を誤らせる度合いに何ら違いがないのにもかかわらず,被疑者・被告人の行為には制裁がないというのでは,やはり明らかに不公平であり,納得できません。したがって,被疑者・被告人が証拠を隠滅したり虚偽の証拠を作るなどの行為についても,それはやはり処罰の対象とすべきなのではないかと考えます。 ○酒巻委員 今,被告人が公判廷でうそを言った場合には処罰しようという話題になっておりますけれども,先ほどは,我が国の公判廷では必ずしも真実が語られないというフレーズがしばしば出ておりました。しかし,私の知る限り,少なくとも建前としては,文明諸国では,法廷は真実が語られなければならない場だというのが普通の人の常識であり,後藤委員が先ほど供述は公判廷で語るのが本筋であるとおっしゃったのも,法廷がそのような場と想定されていることの現れでしょう。   日本の場合は,これまで,被告人が証人となって,うそを言えば偽証罪に問われるという運用はしておりませんが,先ほど紹介されたとおり,アメリカ,イギリスでは,被告人が公判廷でしゃべる場合には,証人になってしゃべる。黙秘権があることと公判でうその供述をすることとは別のことですから,黙っていることはできますけれども,もししゃべるんだったら証人になり偽証罪の制裁の下で真実を語れという国もあるわけです。日本がアメリカやイギリスと違うやり方をしているのはなぜか,すなわち当然のように被告人には証人適格がないとされている理由は,実はよく分からないところでして,現在,被告人が証人にもなれるということを司法試験の答案で書くと,ペケをつける先生が普通かもしれませんけれども,しかし,私は,実はそんなに根拠のあることではないと思っています。   そこで,一つの可能性としては,公判廷でしゃべってうそを言った場合に処罰するという筋もあるかもしれませんけれども,被告人も証人になれます,しかし,なった場合,うそを言ったらほかの証人と同じように偽証罪になりますと,そういう法の組み立て方もあり得るのではないか,これも論点となろうかと思います。   それからもう一点,司法機能妨害に対する制裁という点についても併せて申してよろしいでしょうか。非常に大ざっぱな話になりますけれども,やはりどこの国でも裁判の場で真実を解明するということは非常に重要なことであるから,その機能を阻害する行為というのは,基本的には重大かつ破廉恥な犯罪であると考えられている。それで諸外国では,偽証罪等,刑罰の制裁という形で,できる限り法廷で本当のことを言ってもらう,そういう仕掛けはあるわけです。そこで,御意見の中には,例えば,偽証罪をもっと働かせようとか,虚偽供述に対する制裁を重くしようとか,証拠隠滅罪をもっと重くしようとか,いろいろそういうアイデアはあると思います。確かに刑罰を重くするのは象徴的意味があるとは思います。しかし,刑罰を用いることの最大の問題は,それが果たして的確に作動し使えるかという点にあります。実際に刑罰ということになりますと,これをまた捜査して起訴しなければいけない。例えば,偽証したかどうかまた取り調べて,調書を作って訴追の準備をしなければならない。本体の犯罪の立証とは別に次々と虚偽供述に関する捜査訴追公判をしないといけなくなる。   このように刑罰を作るだけでは実際は動きにくいという場合が想像できる。被告人がうそを言ったからといって,またその被告人の起訴されている罪についてとは別に,うそを言ったということについて捜査をして起訴をするなどということは,考えただけでものすごく面倒くさくて大変なことになります。確かに,象徴的に刑罰を上げるというのは一つの手だとは思いますけれども,そのほかに,アメリカ,イギリスにはもう少し動かしやすいコンテンプト・オブ・コート,法廷侮辱というのがありますね。先ほどの紹介で出ていたのは刑事犯罪としての法廷侮辱罪ですけれども,アメリカ,イギリスには犯罪として起訴はしない,しかし裁判所というのは大変な権威を持ったところですので,裁判所の判断と命令で,司法妨害的な行為をする者については直ちに身柄拘束や制裁金を科す仕組みがありますので,そういうものも我が国の国情に本当になじまないのかどうか,導入するについて何か根本的な問題点があるのかどうか,論点として検討する必要があろうかと思います。刑罰を上げるだけではなくて,刑罰より使い勝手のいい司法妨害的な行為を抑止する,あるいは制裁する制度も考えた方がいいのではないかと思います。 ○青木委員 被告人が証人になれるかどうかという点について,実は私自身も非常に迷うところがあります。それは布川事件での経験からなんですけれども,布川事件では,被告人が公判廷で自分はやっていないと言ったことについては信用してもらえなかったわけですね。それがもし宣誓した上で証人として発言していたら信用してもらえたということなのであれば,証人になれた方がよかったのではないかという気持ちも一方であります。   しかし,被告人の言い分は,実際には信用してもらえず,それは虚偽だということにされてしまったわけで,もし偽証罪の適用があったとして,偽証ということになってしまえば,二重に濡れ衣を着せられたということになってしまったのではないかとも思うのです。   一方で,被告人と全く反対のことを言った,宣誓をした上での証人がいまして,その証言は実は虚偽だったということが再審段階ではっきりしたわけです。偽証罪というのがあることによって真実性が必ず担保されるということではもちろんないわけです。偽証罪が意味がないということを言うつもりもないですけれども,実際に信念を持って虚偽のことをしゃべる人というのは,偽証罪の制裁があってもそうやって虚偽のことをしゃべるわけですし,思い込んだまま虚偽のことをしゃべっている人というのも,やはり同じように宣誓をした上で証人として証言台に立ったとしても,必ずしも真実のことをしゃべるとは限らないわけですね。   そういう状況を踏まえて,被告人に証人適格を認めるとどうなるかというと,それで本当に真実性が担保されるのかということについてはどうなんだろうかという疑問が相当程度ありますし,一方でそうやって偽証罪にさらされるということになると,やはりそれは無罪方向のことを言った場合に,それは言い逃れだと捉えられて,実際に偽証罪になるかどうかは別としましても,そういう形で嫌疑を掛けられるということは防御権の妨げになるのではないかというふうにも思いますので,迷いつつも,やはり認めない方がいいのではないかなというのが今の私の意見です。 ○井上委員 お二人の発言に関連してですけれども,日本の現行の被告人質問に対する陳述ないし供述という制度は,ちょっと中途半端な性格のものなのです。当事者の主張,弁論としての性格を持つ部分もあれば,証言と同じように証拠にもなり得る面がある。この二つがごっちゃになっていることから生じてきているのではないかと思うのです。ごっちゃになっているので,自分に有利な方向の防御上の主張をしようとしても,うそだと言われて偽証罪に問われるとすると,萎縮しちゃって思うように主張できないではないかという反論が出てくるのだと思うのです。しかし,防御上の主張として何を主張するかということと,証拠として採用してもらうために正しい供述をするということとは,一応分けて考えられるのではないかと私は思っていまして,それを徹底するとすれば,英米のように,被告人にも証人適格を認めて,その代わり,被告人も証人として宣誓の上証言するのでなければ,何を言っても,それは証拠としては扱われないとすることも考えられます。   つまり,弁護人の主張と同じで,防御上の主張としては聞いてもらえるのだけれども,それを支える証拠とするためには,証人として宣誓の上,証言しなければならない。その場合には黙秘権を放棄しますので,検察官の反対尋問も受けないといけない。偽証罪の制裁も受ける。多分,そのように検察官の反対尋問を受けるという点も一つの規制作用を営むことになるのだろうと思います。それが,まさに英米の制度なのですね。   英米では,被告人の権利保障を非常に厚くしていますけれども,当事者主義というのは反面そういう厳しい面を持っていて,当事者としての主張と証拠としての供述とは手続上もはっきり区別するという考え方なのですね。それに対して,ヨーロッパ大陸の方は,当事者は証人と本来性質が異なるから,証人にはなり得ないということが出発点にありますので,被告人の証人適格は否定されている。その代わり,被告人尋問という特別の手続があって,尋問という言葉が使われているように,日本の被告人質問よりはちょっときつめの制度の作り方になっているのです。もちろん黙秘権はあるのですけれど,我が国の被告人質問のように,被告人が嫌だと思えば,質問を受けること自体をトータルに否定できるということではなく,尋問は受けなければならないのです。我が国の被告人質問は,そのどちらでもない,何とも性格のはっきりしない制度になっているので,今言ったような問題が出てくるように思うのです。   酒巻委員の御意見とは違って,司法試験の答案に被告人証人適格があると書いたら,多分バツだと私は思います。通説というか長年そう考えられてきたので,現時点ではそうなると思うのです。しかし,原理的におかしい,できないという話ではなく,立法すれば被告人の証人適格を認めることは可能だと思いますので,そこは一度詰めて議論をしてみる必要があるのではないかと思います。制裁の問題ともそこは関連してくるのだろうと思うのです。結論として,被告人の証人適格を認めるのが良いとまで現段階で言うつもりはありませんが,論点としては,その証人適格の問題も詰めて議論した上でないと,十分でないのではないかと思っています。 ○川出幹事 私も,今,井上委員がおっしゃったことと同意見で,仮に,被告人の虚偽供述を処罰するということであれば,現在の偽証罪との並びからして,被告人の証人適格という点を考えざるを得ないだろうと思います。その上での話なんですが,仮にそれを処罰するということにした場合,先ほど大久保委員が言及されたことですが,被告人が自分の事件についての証拠を偽造したり,隠滅したりする行為について処罰するべきなのかどうかということも問題になってくるだろうと思います。現在の刑法では,他人の刑事事件に関する証拠の隠滅等しか処罰されませんけれども,被告人の虚偽供述が処罰されるのであれば,例えば,自分に有利になるように証拠を偽造した行為についても処罰すべきでないかという議論が当然出てくるからです。その場合には,現行法が,証拠隠滅罪の対象を他人の刑事事件に限っていることの合理性にまで遡った上で,虚偽供述の場合との差異を説明できるのかということを検討する必要があります。   それから,それ以外の司法作用を妨害する行為に関する罪について言いますと,外国の制度と比較した場合,一つには,証人の不出頭とか宣誓・証言拒絶に関する制裁が非常に弱いというのが日本の制度の特色だと思います。もちろん,酒巻委員から御指摘があったとおり,処罰規定があっても,それが実際に適用されるのかという問題はありますが,そうだとしても,刑罰は,それが実際に適用された場合に,威嚇効果を持つものでなければ意味がないと思います。その観点から見ますと,例えば証人の不出頭の場合,現行法では刑罰は10万円以下の罰金又は拘留となっており,これで,果たして刑罰としての威嚇効果があるのかどうかは問題になり得るだろうと思います。   同じことは,証拠隠滅罪の罰則についてもいえますので,これについても,その対象を自己の刑事事件にまで拡大するかどうかとは別に,罰則の引き上げを検討すべきだろうと思います。   それから,最後に,もう一つ,外国の制度と比較した場合,証人等の買収の罪というのが,日本にはありません。これについては,国際組織犯罪防止条約との関係で,それを処罰する法案が出ていたと思いますが,司法作用を妨害する行為に対する処罰を強化するという枠組みの中で,改めて検討する必要があるだろうと思います。 ○小野委員 被告人の供述が虚偽であるのか否かという問題は,そもそもまず被告人自身のその裁判における事実認定の問題自体になっているわけです。そういうことで言うと,その判断というのは,裁判全体の事実認定そのものになってくるわけですね。他方でプラス偽証だということになると,結局のところ,裁判でこういう判断がされましたと,被告人の言っていることは信用できませんと。信用されないという判断がされると,イコール偽証だという格好になってきている。実際に被告人がそういった虚偽を述べたと判断されたときには,多くの例では,例えば被告人は反省をしていない,反省が足りない,あるいは更生可能性が少ないなどといった判断が加わって量刑が重くなっていくと,こういうのが実情であるわけです。そこに更に偽証ということになりますと,結局のところその裁判自体で刑が重くなった上に,それにプラス偽証罪がついてくるというような実情になってしまう。これは運用の問題なのかもしれませんけれども,現状はそうなっているということを十分に考えた上で,ではこの制度をどうするのがいいのかということも検討されるべきだろうと思います。 ○後藤委員 これまでの議論とは,少し違う観点から申し上げます。いろいろな裁判例を見ていますと,しばしば捜査官が捜査の過程,特に取調べの経過などについて法廷で証言する事例があります。その上で,裁判所からその証言が信用できないと言われている例が時々あります。その中には,どう見ても善意で間違えたと思えない,もし事実と違うのであれば,意識的に虚偽を語ったとしか思えない事例があります。そういう事例を見ると,捜査官の中に,自分たちの捜査の結果を守るためにはうそを言うことも許されるというような意識があるように,私は感じます。   しかし,捜査官は最も偽証をしてはならない立場であるはずです。仕事として刑事司法に関わっているわけですから。そういう責任の意識が弱い面があるのではないかと,私は感じます。ですから,捜査官が自分の関わった事件の経過について偽証することを特別の犯罪類型として定める,それを付審判請求の対象として認める,そういった法改正をして捜査官の意識を覚醒させることが必要ではないかと考えます。 ○山口委員 先ほど川出幹事が言われたことに関連して,一言発言しておきたいと思います。   被告人の虚偽供述を処罰するかどうかということとの関連で,証拠偽造の問題が関連して出てくるということをおっしゃいました。それは確かにそうなんですけれども,しかしながら今,被告人の公判廷での虚偽供述を処罰するかどうかということが問題になっているのに対して,証拠隠滅,証拠偽造は捜査段階それ以前の行為も当然に問題になるわけでして,これをやはり同一に論じることはできないというのは留意する必要があるだろうと思います。現行法の解釈としては,要するに他人の刑事事件に関してしか証拠偽造,隠滅は問題になりませんので,被疑者自身がうそを言っても処罰されるということはないわけでございますけれども,参考人等の場合には現行法の解釈としても問題があるわけでありまして,この点については慎重に検討していく必要があるだろうと思っております。 ○神幹事 先ほど来の話の中で,まず一つは,日本の証人不出頭等については他国と比べて若干刑が軽いのではないかという御指摘がありました。これは軽いということだけで,いわゆる外国と肩を並べるという理屈にはならないと思うので,実際これから9月には何班かに分かれて各国の視察をしてまいりますので,その辺りはどういう形の運用をされているのかも研究してきた上で検討されるべきではないかと考えます。   それから,先ほど川出幹事の方から証人買収罪の関係について出てきましたけれども,これについては,組織犯罪処罰の関係で,越境組織犯罪防止条約の批准ということで共謀罪と併せてこの犯罪が提案されたんですが,この証人買収罪については,どのような対象犯罪にするのかとか,あるいは越境的な犯罪に限るべきなのかとか,それから正に犯罪組織そのものに関わるものにするのかどうかといったような要件を,かなりきちんとした議論をしなければならないと思います。そういう意味でにわかに賛成はできないということだけ述べておきたいと思います。 ○本田部会長 それでは,まだ御意見もあろうかと思いますけれども,時間の都合もございますので,「公判において真実の証言・供述を得られやすくするための諸方策」に関する一巡目の議論は,ひとまずここまでとさせていただきたいと思います。   次に,論点5の「捜査・公判段階を通じての手続の在り方」の議論に入らせていただきたいと思います。   まずは,一つ目の小項目でございます「被疑者・被告人の身柄拘束と国選弁護の在り方」に関して御議論をいただきたいと思います。これに先立ちまして事務当局から,我が国での身柄拘束に関する統計や被疑者国選弁護制度の概要,またその利用実態等につきまして,配布資料に沿って説明してもらいます。 ○保坂幹事 御説明いたします。平成22年におきます「逮捕・勾留・保釈の運用状況」に関する統計を御説明いたします。資料38を御覧いただきたいと思います。   まず,起訴前の身柄拘束につきましては,資料の「1 被疑者の逮捕・勾留人員」を御覧いただきますと,平成22年に全国の検察庁で既済となった事件,これは自動車による過失致死傷や道路交通法違反を除きますが,その人員41万3064人のうち,逮捕された者の割合というのは32%,逮捕された者のうち勾留状が発せられた者の割合は86.6%,勾留状が発せられた者のうち勾留中に公判請求された者の割合は51.2%でした。起訴前の勾留期間につきましては,右側の円グラフに割合を示してあるとおりです。   続きまして,起訴後の身柄拘束につきましては,資料の「2 通常第一審における勾留・保釈人員」を御覧いただきますと,平成22年の全国の地方裁判所の通常第一審の新受人員8万6386人のうち,勾留状が発付された者の割合は64.8%,勾留状が発付された者のうち終局前に保釈が許可された者の割合は19.3%でした。なお,平成22年中に保釈が取り消された人員は50人でした。起訴後の勾留期間につきましては,右側の円グラフに同様に割合等を示してあるとおりです。 ○坂口幹事 続きまして,被疑者国選弁護制度の概要について御説明いたします。資料39-1を御参照ください。   本制度の導入以前は,国選弁護制度の対象というのは被告人のみとされて,被疑者に対する公的弁護制度は存在しなかったところ,平成11年に内閣に置かれました司法制度改革審議会において議論がなされ,平成13年6月,同審議会が取りまとめた意見書において,被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保し,また,迅速で充実した刑事裁判の実現を可能とするという観点から,「被疑者に対する公的弁護制度を導入し,被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべきである」という提言がなされました。これを受けて,司法制度改革推進本部の事務局に設けられた公的弁護制度検討会において具体的な制度の検討がなされ,平成16年の刑事訴訟法改正により被疑者国選弁護制度が導入され,平成18年10月から施行されました。   その制度の概要ですが,刑事訴訟法第37条の2において,法定刑が死刑又は無期若しくは3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について,被疑者に対して勾留状が発せられている場合において,被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときには,裁判官はその請求により被疑者国選弁護人を付させなければならないとされております。   対象事件については,当初からその範囲を段階的に拡大することとされており,第1段階では,死刑,無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件とされておりましたが,平成21年5月から,死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件に拡大されました。これにより,従来は,殺人,現住建造物放火,傷害致死,強盗等の犯罪が対象とされていたものが,窃盗,傷害,詐欺,恐喝,横領等の犯罪も対象事件として含まれることになりました。   そして,資力に関する要件として,刑事訴訟法第37条の3において,被疑者が国選弁護人の選任を請求する場合には,資力申告書を作成・提出しなければならないとされ,その資力の基準額については,政令で50万円と定められています。そして,国選弁護人の選任に際しては,総合法律支援法において,裁判官が国選弁護人を付すべきと判断した場合,日本司法支援センターに対して国選弁護人候補を指名して通知するよう求めるものとされております。これを受けた同センターにおいて,同センターとの間で国選弁護人の事務を取り扱うことについて契約をしている弁護士,これを国選弁護人契約弁護士と呼びますが,その中から特定の弁護士を候補として指名し,これを裁判官に通知することとされております。そして,裁判官において国選弁護人を選任することとなります。   被疑者国選弁護に関する統計については,資料39-2を御覧ください。先ほど御説明しました対象事件の増加に伴い,国選弁護の選任人員が増加しているという状況がお分かりいただけると思います。 ○本田部会長 それでは,まず,「進行イメージ」の一番目の「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」につきまして御議論をいただきたいと思います。 ○安岡委員 被疑者・被告人の身柄拘束の在り方については,現状の刑事手続の中での状況を批判的に捉える立場から,人質司法という言葉がしばしば使われるのは皆さん御案内のとおりです。また,この人質司法という言葉が言い表す刑事司法の問題点と,当部会で検討する主要な課題になっている取調べ・供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方とが,コインの裏表の関係にあるということも広く論じられていると思います。私自身新聞記者をやっておりました当時に,人質司法などと指さされる実態はないという異論が,主に検察ないしは裁判所の方面からですけれども,そういう異論があるのを承知の上で,何度か「人質司法」という言葉を記事に使いました。その理由は,井上委員から過度の断定だと御批判を受けるかもしれませんけれども,私は,この人質司法と言われるような実態があると考えていたことに加えまして,以前のこの部会でも申し上げましたけれども,逮捕・勾留・身柄拘束をめぐる法制度,それから手続・運用がブラックボックス化していると感じていたからであります。   前回の会合で酒巻委員から御発言がありましたけれども,確かに手続法というものは複雑であり,技術的な規定を置かざるを得ない。それからまた,裁判実務を知らなければ理解できない規定を含まざるを得ないのは事実であります。ですから,刑事訴訟法全編を一般の国民が一読して理解,了解できるようにはできないものですし,またその必要もないと私も思います。しかし,逮捕・勾留・身柄拘束の刑事手続は,市民の権利を最大限侵襲する強制手続ですので,それに関わる規定は,一般国民に対して最大限透明性がなければならないと思います。   現状,ブラックボックス化していると申し上げましたけれども,その理由は大きく言って三つあると考えます。一つは,大原則が明文化されていない。大原則というのは,任意捜査が原則であるということ,それから何のために人身の自由を奪う身柄拘束を認めるのかと,身柄拘束の目的は何なのかということが,いずれも直截的な形で示されていないという意味で原則が明文化されていない。これが一つの理由だと思います。それからもう一つは,この部会の始めの方で発言させていただきましたけれども,刑事訴訟法の逮捕・勾留関係の手続を定めた条文が,旧刑訴法の尻尾を残して錯綜を極めていることです。第1編と第2編を行ったり来たりして読まなければいけない,それから多数の準用規定があると。それで以前のときに申し上げましたけれども,例えば起訴前の保釈を刑訴法の中で認めていないことを示した条文などは,これはもうほとんど一休さんのとんち問答の世界になっていると私は思います。三番目は,条文と運用が乖離している実態であります。身柄の拘束は限定的に行うべきだと条文には書かれていると思うんですけれども,実態はそうではない,人質司法と呼ばれるような運用が行われているということです。その乖離を生じさせる一番大きな原因は,身柄拘束を許す条件の一つである罪証隠滅を疑う相当な理由ということについての当てはめ,運用にあると思います。私も,実際の事件などを通じて,容疑内容,それから起訴内容を否認すると,それが罪証隠滅ないしは逃亡のおそれに直結して身柄拘束を続けられる運用は変だと思ってきたところであります。容疑内容,起訴内容を否認していることをもって,即そのまま罪証隠滅の疑いにつなげてはならない,解釈してはならないとする規定が必要かもしれません。   それからまた反面,罪証隠滅が本当に行われては困るわけでありますから,保釈条件に違反した場合に,罪証隠滅を疑わせる行為を禁じる保釈条件に違反した場合に刑罰を科すと,新しくこういう保釈条件違反というような罪を作って,保釈条件を保障するような制度も併せて考えるべきではないかと思います。 ○椎橋委員 今の御意見に対してですけれども,私は,身体の自由というのは非常に重要なものであると考えておりますし,憲法33条以下,それから刑事訴訟法も199条以下に非常に厳格な要件を定めて,不合理な身柄拘束がされないようにということに十分に配慮していると考えております。   それで,今,安岡委員が任意捜査の原則が書いていないとおっしゃいましたけれども,これは我々の間では刑事訴訟法197条が任意捜査の原則を定めており,強制捜査については非常に厳格な要件の下でしか認められないのだということが常識だと言っていいと思います。実際に逮捕の要件というのは厳格にされておりまして,安岡委員もおっしゃっておりましたけれども,犯罪を犯したと疑う相当な理由があって,それから罪証隠滅又は逃亡のおそれがあるという場合に身柄拘束が認められるということになっております。   しかも運用も慎重だと思います。先ほどの資料にも示されておりますように,逮捕された者が13万人程度ということになっております。これはほかの国に比べてみますと,欧米,特に英米については,一桁多いですね。それからヨーロッパでも少なくとも数倍,特に人口比にしてみればもうちょっとあると思います。それは,我が国の場合は相当な理由,通常令状による場合も相当な理由,それから緊急逮捕,現行犯逮捕になるともっと厳しい要件がありますけれども,通常逮捕の要件にしてみても,欧米の場合は日本よりも若干緩く考えられておりまして,我が国で言えば職務質問が許される不審事由に当たるような場合についてまでも身柄拘束が認められます。そのために逮捕の数が多くなっているという結果になっていると思います。そういう意味では我が国は非常に慎重な運用がされている。それから諸外国,特に英米では無令状逮捕というのが非常に多い。これは前の資料にも出されておりますけれども,無令状逮捕が多いということも,やはり逮捕が多くなっている原因だと思います。   それから,ヨーロッパ大陸の場合には,司法審査を受けた後,身柄拘束されたまま数か月にわたって,しかし五月雨式に取調べが行われるという実態もございます。そういうことから考えると,我が国の刑事司法が人質司法だという評価が当たっているのかどうかということについても疑問を持っております。 ○青木委員 先ほど安岡委員が言われたことと,ある意味同じことをまず申し上げますと,今回の諮問の取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査というのを支えてきたのが,身体拘束を自白獲得のために利用することを可能とする制度だったと思っております。身体拘束,特に代用監獄における身体拘束というのは,それ自体が圧力となって自白強要の手段となって,その結果虚偽の自白というものすら生み出されてきたということがあったと思います。それで,それを意図するにせよ,そうではないにせよ,身体拘束というのが取調べのために利用されて供述を強要する手段となるという状態があったことは間違いないわけで,それは変えていかなければならないのではないかと思います。   そもそも身体拘束というのが非常に重大な権利侵害であるからこそ,それ自体が非常に圧力になるのであって,それはできる限り避けるべきだということで,確かに建前は日本の法律もそうなっていると思いますけれども,それでは身体拘束が最後の手段だということが現実に貫かれているかといったらそうではないわけで,そういう意味で身体不拘束の原則ということを確立して貫けるような制度に変えていくということが必要なのではないかと思います。そのためには,まずなるべく身体拘束をしない。身体拘束をしたとしても,できるだけ早期に解放できるようにする。それから,それが続いたとしても,それは本来はあるべきではないということが貫かれる必要があると思います。   詳しく述べる時間は多分ないと思いますので,制度の細かいことということではなくて申し上げますけれども,まずは身体拘束がやむを得ないとされる要件,勾留要件,保釈要件等ですけれども,それについて今の法律の運用の問題なのか書き方の問題なのかというのはあるかと思いますけれども,実際には否認,黙秘がその理由になっているということが,数として多いかどうかは別としても現実にあるわけで,そういうことがないようするということがまず必要だと思います。それから,そのように厳格化されたとして,勾留要件に当てはまる場合であっても,身体拘束をせずに勾留と同様の目的を達するための,勾留といわゆる在宅の間のもの,そういう中間的な形態を取り入れるということも是非検討されるべきだと思います。それから,一旦勾留された場合であっても,その後は自動的に続いていくというようなことではなく,継続の必要があるのかどうかということを見直せるようにする実効性のある制度を設けるということも検討する必要があると思います。先ほども出ましたけれども,起訴前の保釈ということについても必要だと思います。   ちょっと補足しますと,勾留と在宅の中間的な形態としては,例えば住居の制限とか一定の人との接触禁止,特定の場所への立入禁止,逃亡防止のために毎日どこかに出頭していって確認してもらうとか,そういう命令を出すというようなことが考えられると思います。このような命令に違反したとき,あるいは命令を受けても従わないというときに限って勾留することができるということで,勾留を減らすということができるのではないかと思います。起訴前保釈というのも同じような機能を持つ可能性はありますけれども,これは一旦勾留決定がなされた後のことということになりますので,メニューは多い方がいいのではないかと考えております。韓国には拘束適否審査制度というのがありますけれども,日本の勾留取消しとも似たようなものかもしれませんが,そのような制度も考えるべきではないかと思います。   それから,直接的に今回の議論に関わるかどうかは分かりませんけれども,仮に身体拘束が継続した場合であっても,無罪推定の原則とか身体不拘束原則を貫くということであれば,未決勾留日数というのは全部の算入を必要的とすべきという考え方もあり得ると思います。韓国では憲法裁判所の判断で,実際には被告人の帰責事由の有無にかかわらず,全部が必要的に算入されていると聞いておりますので,韓国に今度視察に行かれる方については,是非そこら辺の議論も聞いていただければと考えております。 ○井上委員 これまでの議論の交通整理をさせていただくと,安岡委員が使われた人質司法という概念のカバーする範囲が,人によって狭かったり広かったりするものですから,その言葉を使われるならどういうことを指すのかを明確にした上で議論した方が良いと思います。従来,人質司法というのは,主に起訴後の勾留について保釈請求した場合,被告人が黙秘していたり否認していたりすると請求が却下されがちである。それは,身柄拘束を続けることによって罪を認めさせるという圧力になるのではないか,身柄を人質にしているようなものだという意味で使われていたと私などは理解しています。   今,青木委員から,起訴前の身体拘束自体が圧力になって供述をさせることになるのではないかと発言がありましたが,それは,従来的「人質司法」と言われていたことであるとは局面が違っていますし,問題の性質や関係する手続き等も異なりますので,身柄拘束が圧力になっているという青木委員の捉え方だと一貫はするのですけれども,より立ち入って検討する場合には,整理をしてかかる必要があるのではないかと思います。   もう一つ青木委員の言われたこととの関連で申しますと,それぞれの国において前提となっている身柄拘束の制度,在り方がかなり違っている。特に期間制限の点については,日本の場合,諸外国に比べてかなり特色のある制度になっていまして,英米でも大陸でも身柄拘束の期間が短く制限されるということには必ずしもなっていない。英米の場合,特にアメリカの場合などは「迅速な裁判」の保障との関係で一定の制限が別途掛かってくるのですけれども,身柄拘束自体は一旦開始されるとずっと続き得る制度になっている。それを前提に保釈という制度が組み込まれているのです。我が国の現行法の場合,保釈制度が認められていないのは,釈迦に説法ですけれども,逆に,それ自体として短いか長いかは人により評価が分かれるところですけれども,最大限でも23日,勾留だけですと20日が限度ということになっているので,そこに保釈を組み込むのは実際上難しい,恐らくそういう判断で起訴前の勾留については保釈ということを認めないこととされたのだろうと思います。その辺の前提となる身柄拘束の在り方がそれぞれの国によって異なっていますので,ある部分だけ見るのではなく,そこを含めて全体的に考えなければ,非常に変なことになるのではないかと思います。検討するとすれば,前提となる身柄拘束制度の在り方にまで立ち返って検討すべきだということです。 ○村木委員 理論的な整理が終わった後で実感をお話しするのはいささか気が引けるんですが,余り身柄拘束を経験された方はいらっしゃらないと思うので一言。   実際に自分が身柄拘束というのを受けてみると,これは非常に重い罰なんですね。正直,裁判すら始まっていないのに,何でこういう罰を今自分は受けているんだろうというのが当時の実感です。体調管理も難しいし,精神面で安定を保つのも難しいし,裁判の準備にとって非常に不利になるという恐怖感を感じました。これは正に過度なペナルティーだと思っています。私自身は保釈請求を何度も拒否をされていて,理由は,今皆さんがお話をされた逃亡のおそれがあるとか罪証隠滅のおそれがあるというものでした。保釈許可決定が出た後,準抗告が出て,その理由書を見るとこんなふうに書いてありました。被告人は本件への関与を全面的に否認し,不自然,不合理な弁解に終始している,したがって罪証隠滅のおそれがある。それからもう一つ,予想されるマスコミからの取材攻勢を踏まえれば,被告人が逃亡するおそれは格段に強いと。これはさすがに私も笑いました。笑っている場合かと思いながら笑ったんです。ただ,これを受けて保釈の決定は取り消されてしまいました。結局,否認していれば保釈はできないんだということをこのとき非常に実感しました。ああいう状況で逃亡はあり得ませんし,客観証拠なんかも全部押収をされて,もう要らないと思った証拠は返却されているという,くだんのフロッピーまで返却されていたのはどうかと思いますけれども,そういう時期で,関係者も特定をされていて,さっき青木委員が言われたように,そういう人との接触禁止を付ければ済むような状態でもなかなか保釈をされませんでした。関係者は,私以外は皆さん罪を認めておられたので,ほかの人は全員保釈をされて私だけが保釈をされないというのは,やはり否認しているから保釈されないということだったんだろうと思います。   一方で,実際に証明書を偽造した係長さんが,取調べでは事実に反する調書にサインをして保釈をされているんですが,とにかく勾留がこれ以上続くのが恐いから,本当にいけないことだけどそういう調書にサインをしたと,その間の苦悩を切々と被疑者ノートにつづっておられるんですね。そういうのを見ると,やはり身体拘束という非常に大きな基本的人権の制約が余りにも安易に,あるいは安易にというのが言い過ぎであれば,ルールが明確でないままに行われているのではないかと思います。実際,勾留が虚偽の自白や供述を得る道具として使われている事実があるということは明らかだと思います。こうしたことが起こらないように,是非ここはルールを改めていただきたいと思っております。 ○周防委員 村木委員の発言の後だと迫力に欠けてしまうんですが,私は,椎橋委員のおっしゃった認識と全くかけ離れている認識を持っていますので,それをお話しします。   刑事裁判の取材を始めてすぐ「人質司法」という言葉を耳にして,それがどういうものなのかということで,意外に早く腑に落ちた言葉でした。僕は,井上委員の御発言で,要するに起訴前の場合は人質司法と言わないと。では,それは何と言ったらいいのでしょうね。分からないんですけれども,僕は,正に起訴前も当然,人質司法に入るだろうと思いました。なぜかと言うと,僕は痴漢事件を始めとして割に軽微な事件の取材というのをかなりしたんですが,その被疑者の方たちの中で,やはり罪を認めるなら出してやると,要するに自白しないと,否認するなら勾留だと言われているケースがかなりありまして,捜査官が自由と引き換えに捜査機関の筋書きに沿った供述を被疑者に強要する,そういうふうに思われるケースがありました。   そこで僕は,実は,えん罪というのはよく大きな事件で社会問題として取り上げられていますが,もしかしたら軽微な事件でのえん罪というのはかなりあるのではないかと。それは,一つ一つ本当にそれがえん罪かどうかを調べるということは僕の力では無理でしたけれども,いろいろな方に取材しているのである程度の信憑性はあると思います。認めないと出してくれないということはサラリーマンにとっては強烈な打撃で,無断で会社をそうは休めないし,早目に出られれば会社にも内緒,もしかしたら家族にも内緒でいけるかもしれないと,そういうケースもあるので,やはり僕にとっては人質司法というのは,起訴前であっても十分人質司法と理解できるような行為が行われているのではないか,そういうふうに実感しています。ですから,椎橋委員の認識とこうもかけ離れるというのは,ちょっと現状の認識に差がありすぎるので,その差はどこから来るのかなと思います。 ○小野委員 先ほど事務当局の方から勾留人員の割合などの説明をいただきましたが,この資料で平成22年に勾留状が発せられた者11万4500人で,勾留中公判請求された者がその半分ですね,5万8000幾らと。これは検察統計年報と書いてありますが,残りの半分はどうなっているかということをちょっと見てみましたが,残りの半分のうち3割は釈放されているわけです。それから1割が勾留された状態で略式命令ですぐ出てしまうと,罰金で出るわけですね。それから家庭裁判所に送られているケースが7%ほどあるようです。だから,この数字だけで勾留が適正かどうかということを直ちに言えるわけではないんですけれども,かなりの人が釈放されているというのが実情のようです。   それから,同じ数字で下の方の司法統計年報では,新受人員が8万6000人あって,勾留状発布人員が5万5000人で64.8%が勾留されているんだと,これが平成22年の状況ですが,この司法統計年報の昔のやつをずっと遡って見てみたんですが,64.8%が平成22年のようですけれども,昭和40年代を見ますと,勾留率というのは64%では全然なくて,50%を切っているんですね。51%ぐらいのときもあるようですけれども,40年代後半辺りは47%とか,50年に入っても50%を切っている状態がずっと続いています。これが50%を超えてだんだん,だんだん勾留率が上がっていくのが平成に入ってからです。平成5年辺りから60%を超えて,その後は60%の半ばぐらいをずっと推移しています。なぜこうなっているのか私には全然分かりませんけれども,我々の実感としても,簡単な事件でも随分勾留されてしまうなというのはあります。   他方で,実刑率というのが同じように司法統計年報に出ていまして,これを比べることが適当なのかどうかもちょっとよく分かりませんけれども,実刑率というのは,昭和40年,50年,平成を通して40%前後なんですね。高いときは43~44%のときもあるようですけれども,現状では大体41~42%ということで,実刑率というのはそれほど大きな変化がない状態がずっと続いているように思われます。勾留率だけ上がっていると。   私がついこの間やった事件で,これはタクシーの運転手と客が夜中けんかになって,客がタクシーの運ちゃんの腕か何かをつかんで,けがというか,大したあれではないんですけれども,夜中に捕まってしまったんですね,そのお客さん。勾留もされてしまったんですが,それは自分はやっていないみたいなことを言っていたので勾留されてしまったんですけれども,最後,やはりその人も会社員だったものですから,いつまでもいるわけにいかないということで認めて,その上示談もして,それで6日間ぐらいで出てきたんですかね。示談の額も10万円で終わってしまったわけです。その程度の事件でも,割と安易に拘束しているというのが多いのではないかなと,最近増えてきているなというのが,私が実際に弁護士をやってきて思う体験です。安易に身体が拘束されてしまって,それはやはりその人にとっての社会的な生活にとって致命的であるということについての思いが少ないのではないか,軽いのではないかと。こういうのが実情になってきてしまって,それがこのところ定着してしまっているということがあるわけです。そういう実情なども背景として十分に考えていただきたいと思っています。 ○島根幹事 個別の事件のことでかなり強制,身体の自由の侵害的なことが行われているのではないかということもいろいろ御指摘はありましたけれども,警察としては,刑事訴訟法には直接書いておりませんが,犯罪捜査規範に基づき,なるべく任意捜査の方法によって行うということを基本にして捜査運営に当たっているところでございます。   それで,もちろん逮捕・勾留も,それぞれ令状によって,その要件の下で行っているわけですので,私どもそれに従って行っているわけですが,先ほど事務当局の方の資料にもございましたとおり,本当に逮捕され,勾留されて延長の満期までいく者という比率は,これを多いと見るか少ないと見るかというのは,評価はいろいろあろうかと思いますけれども,一つ私ども最近の傾向として感じておりますのは,例えば侵入窃盗とか振り込め詐欺のようなかなり件数的にも多い罪種のものについて,共犯等の形態がかなり増えていて,非常に裏付捜査などが複雑化してきているという実態があろうかと思います。   それから,取調べに過度に依存せずにということに関して言えば,供述以外の客観証拠というものもかなり重視して今取り組んでいるわけですけれども,当然ながらそういったものについての鑑定ですとかそういうことで,かなり捜査も長期化を余儀なくされているということも多くなっているということでありまして,私どもとしては不必要な身体拘束は行うべきでないと,それは当然と思っておりますけれども,その一方で,やはり捜査を難しくしているという状態もかなり出てきているということについては,御理解をいただければと思っております。 ○後藤委員 起訴されても,争っているとなかなか保釈がされないという現在の運用が生じている一つの大きな理由は,刑事訴訟法89条4号という条文です。つまり罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときには保釈しなくてよいという条文です。他方で,逃亡すると疑うに足りる相当な理由の方は,それは保釈保証金という担保によって一応対応できるという考え方で,保釈請求権の除外事由にはなっていません。したがって,そういう理由で保釈請求を拒むことはできない立て付けになっています。しかし,この二つの扱いの違いに整合性があるのかを考える必要があると思います。学生から,二つの勾留の理由の中で保釈の除外事由になるものとならないものという形で扱いが違う理由はなぜかと聞かれます。私なりに何とか考えて説明するのですけれども,私自身,それが説得的かどうか自信がありません。罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由についても,逃亡を疑うに足りる相当な理由と同じように保釈の条件を課すとか保釈保証金を課すことで対応が可能なのではないか。これを一律に権利保釈の除外事由にすることが合理的かどうか,検討が必要だと思います。 ○本田部会長 まだ御意見があろうかと存じますけれども,時間の関係がございますので,次に「進行イメージ」の「被疑者国選弁護制度の在り方」につきまして御議論いただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○宮﨑委員 前々回ですか,いわゆる録音・録画が進むことによって弁護人の援助が受けられない被疑者の取調べ状況がそのまま出るというのは,裁判員などに予断,偏見を抱かせないとかいう観点からも問題だと,申し上げたところでありますけれども,更にそういう予断,偏見以前の問題として,いわゆる刑事手続に明るくない被疑者が身柄拘束をされて弁護人が付かない。こういう状況で有効な防御活動ができないということは,防御権という意味で非常に問題があるということは御理解をいただけるのではないかと思います。特に最近は,取調べがどんどん,どんどん前倒しをされて,逮捕直後あるいは任意捜査の段階で集中的に行われると。これは身柄拘束時間を短くしてやろうという親心なら大変いいことではありますけれども,実際は弁護人が付く前にしっかり取調べをしようと,証拠固めをしようと,こういうことから本格的な取調べがどんどん,どんどん前倒しをされてくるわけであります。   ところが,防御権を行使できない状況で,そこに更に録音・録画がなされると,こういうことになりますと,村木委員は,密室の取調べは,プロボクサーとアマチュアのボクサーがレフリーもいない状況でボクシングをするみたいなものだと言いましたけれども,録音・録画をそれでされますと,可視化ということによってその一方的な状況が実況中継されている,テレビ中継されているようなものでありまして,そういう意味で,被疑者の正当な防御という点で極めて致命的な結果をもたらすのではないかと思います。防御権が極めて弱い状況の被疑者についての逮捕直後,取調べ前の弁護人の助力というものは非常に必要だと考えています。そういう意味で,私はできるだけ早期の弁護人,国選弁護制度の導入ということが必要だと考えています。   これは,何も我が国特有というのではなくて,むしろ我が国はそういう制度が遅れていると思うわけですね。アメリカは言うまでもなく,ヨーロッパにおいても最近,ヨーロッパ人権裁判所というところで,私はそれほど詳しくありませんけれども,ドイツなどに派遣した日弁連の調査団の調査報告などによりますと,弁護人の助言を得る前の自白というものについて証拠能力を否定的に扱うという人権裁判所の判断が定着しつつあるようで,それに伴って,ともかく逮捕直後,身柄拘束直後からの国選弁護人制度の導入というのがヨーロッパでは潮流になっていると聞いているところであります。取調べが前倒しになっている最近の状況を考えると早い段階での弁護士の助言を受ける制度というものを導入すべきではないかと考えています。   また,新しい制度を作るためのハードルもありますけれども,少なくともまずは,現在行われております被疑者国選のレベルを拡大すべきではないかと考えているところであります。現在は,長期3年を超える懲役あるいは禁錮に当たる事件ということで被疑者国選の制度が運用されているわけであります。先ほどの配布資料を見ますと,被疑者国選が約7万件,身柄拘束が勾留状が11~12万件,6割,7割。全ての被疑者国選が勾留状段階まで増えますと件数は増えるわけでありますけれども,制度的にもそれは非常に成熟しつつある制度でありますし,また弁護士の対応体制も十分それに対応できるような状況になってきていると思います。特に殺人等は,このごろ,死体遺棄から入って被疑者国選が付かない段階,あるいは住居侵入から捜査や身柄拘束が始まり被疑者国選が付かないような状況で前倒しの捜査が行われると,こういう状況でありますから,制度的にも定着している被疑者国選請求権の拡大,これが急務ではないかと考えているわけであります。 ○井上委員 今の御発言の御趣旨ですが,逮捕直後から弁護人を付けるべきで,特に取調べの前に助言を得ることが必要だということなのですけれども,現段階で,弁護人を付けない限り取調べをしてはいけないと,そこまで過激なことを主張されるわけではないのですよね。 ○宮﨑委員 いい質問をいただきましてありがとうございます。理想はそれに決まっているわけでありますけれども,そこへ行くまでの現実的な制度として,やはり一歩一歩それに近づく制度を導入したいと,このように考えております。 ○井上委員 宮﨑委員は非常に現実的な方だと存じていますが,現行の被疑者国選がなぜ勾留段階からかというのは,そうせざるを得ない現実的な事情があったからです。つまり,現行法では,国選弁護人というのは,無条件で当然に付けてもらえるものではなく,弁護人というのは本来は被告人が自ら選ぶべきものであるということを前提に,貧困には限らないけれども,自ら選ぶことができない事情があるという場合に初めて国選弁護人を付けてもらえるという考え方に立っています。従って,自ら選任することができないということを確認する手続を踏まなければならない。そのために一定時間掛かるので,逮捕直後から国選弁護人を付するというのは無理があるということで,こういう制度にしたということです。これは現実的な問題なので,そこのところをうまくクリアできるものかどうかということも考えなければいけないだろうと思うのです。今は,弁護士会の方で尽力されて,逮捕直後の被疑者については当番弁護士という形で,要件いかんにかかわらず,求められれば派遣するということで補っているわけですけれども,その辺も含め現実的に何が可能か考える必要があると思います。   対象の拡大のところは,弁護士会としては対応できると自信を持っておっしゃったので,本当にそうなのか確認させていただきたいのですが。というのも,現行の被疑者国選も二段階で導入し,その一段階目の今よりずっと対象犯罪の範囲が限定されていたときには弁護士さんの方も十分対応できるだろうと見込まれたのですけれども,二段階目の対象範囲を拡大するにあたっては,実施直前まで自信を持って大丈夫だとは弁護士会の方でも言っていただけない状態だったからです。結果としては今のところうまくいっているのですけれども,それを更に拡大して大丈夫なのかどうかということです。 ○宮﨑委員 私の方からお答えいたしますと,法テラスの発足当時,確かに出足のところは井上委員も随分御心配されたかと思いますが,非常に定着してきていますし,それで何年もその制度が運用されてきて,しかも対応体制が困っているとか,あるいは対応体制に苦慮しているということはもうないわけなんですね。したがって,これから5割程度件数は増えますけれども,十分対応体制は可能だと考えています。新制度を導入しても,明日からすぐというわけではないので,もちろん準備段階はあるでしょうけれども,十分その間に対応体制は可能だと思います。 ○島根幹事 先ほど宮﨑委員から御発言のあった逮捕段階での国選弁護制度の導入との御意見に対して,警察の実務的な観点からちょっと意見を言わせていただきたいと思っております。   今は,被疑者国選弁護人は,勾留段階からという先ほどのような御説明で付けられているということですけれども,まず一つとして,やはり逮捕して,それから送致までの時間というのは極めて短いということは御理解いただければと思っております。法律上は送致までに,いわゆる警察側として持っている時間というのは48時間ですけれども,これは本当に上限の時間ですので,これよりかなり短い時間で送致するというのが実態です。特に,夜中に送致するということは実務上行い難いです。また,被疑者の方の観点から言いますと,当然ながら,被疑者の処遇ということを極めて重要な観点として,留置などの業務を行っておりますので,睡眠時間ですとか食事時間ですとか,そういった処遇については必ず一定の配慮をしなければいけませんので,送致までに被疑者取調べを行うことができる時間というのはかなり限られているというのが実態です。その上に更に国選弁護人選任のための手続を行うということになりますと,送致までに行う必要最小限の取調べすら困難になるということも懸念されるわけでありまして,そういった意味で捜査上,それから処遇上という意味での支障というものは決して無視し得ないものではないかと考えております。   それからもう一つの理由といたしましては,先ほどの事務当局の資料にもございましたけれども,逮捕後間もなく釈放される事案というのも決して少なくないわけでありまして,交通事件ですとか,最近数こそ減ってきておりますけれども入管法違反の65条渡しとか,そういった事案などもかなりあるわけでありますので,そういったものまで全て国選弁護の対象とするということにつきましては,コストの面から言っても必ずしも合理的とは言えないのではないかと考えております。 ○上冨幹事 国選弁護制度の対象事件をどの範囲に拡大するかという問題については,現在の制度を導入する際の司法制度改革審議会あるいは司法制度改革推進本部の中での議論でも,もちろん問題となったところでございます。その際にも,先ほど井上委員から御指摘のあった弁護人の体制の問題と併せて,実際には公的な資金,税金をもって対応するということになりますので,国民の負担をどの範囲で考えるべきかということも,議論における考慮の対象となっていたと承知しております。したがいまして,今後この問題について議論をされる際には,やはり当時の議論も踏まえつつ,更に先ほどのデータで言えば相当規模の拡大をすることについて,いろいろな観点からの検討が必要なのかなと感じております。 ○松木委員 いろいろな観点からの検討が必要だというところにつきましては,更に付け加えて,これからいろいろな,例えば司法取引だとか有罪答弁といった新しい仕組みを考えていくというようなことが議論されると思うんですけれども,やはりそういった新しい制度ができたときに,被疑者国選弁護制度の在り方はどうあるべきなのかということも視野に入れて議論をしていく必要があるのではないかということを付け加えさせていただきます。 ○本田部会長 それでは,まだ御意見もあろうかとは思いますけれども,時間の都合もございますので,「被疑者・被告人の身柄拘束と国選弁護の在り方」に関する一巡目の議論はひとまずここまでとさせていただきたいと思います。   それでは,一旦,休憩に入らせていただきます。           (休    憩) ○本田部会長 それでは,再開させていただきます。   次に,論点5の二つ目の小項目でございます「犯罪被害者・証人等の支援・保護の在り方」につきまして議論に入りたいと思います。   議論に入ります前に,事務当局の方から刑事手続における犯罪被害者・証人等の保護に関する最近の主な立法の内容等について,説明してもらいます。 ○保坂幹事 刑事手続における犯罪被害者や証人等の保護に関しまして,近年の立法によって設けられた制度について簡単に御説明いたします。資料40-1を御覧ください。   平成11年には,資料の「第1」にございますように,刑事訴訟法の改正により,証人等の保護に関する新たな規定が設けられ,証人等の身体,財産への加害行為等がなされるおそれがある場合,証人尋問において,証人等の住居や勤務先等が特定される事項についての尋問を制限したり,証拠開示に当たり,相手方に対し,証人の安全が脅かされることがないように配慮することを求めることができることとされました。   平成12年には,資料の「第2」にございますように,いわゆる犯罪被害者保護二法が成立し,刑事訴訟法の改正により,証人への付添い,証人の遮へい措置,ビデオリンク方式による証人尋問,被害者等の意見陳述等の規定が設けられました。また,「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」という新たな法律が制定され,被害者等による公判手続の優先傍聴や公判記録の閲覧及び謄写等の規定が設けられました。   平成18年には,資料の「第3」にございますように,没収・追徴を利用した被害回復制度が設けられ,犯罪被害財産について,一定の場合に没収・追徴を行い,これを用いて当該事件の被害者等に被害回復給付金を支給することができることとなりました。   そして平成19年には,資料の「第4」にございますように,「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立し,「1」の被害者参加,「2」の被害者の氏名等の情報の保護,「3」の損害賠償命令の各制度が創設されるとともに,「4」の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写の範囲が拡大されました。また,「5」の心情等の意見陳述ができる被害者等の範囲の拡大が行われました。   平成20年には,資料の「第5」にございますように,被害者参加人のための国選弁護制度が設けられ,平成20年12月の被害者参加制度の施行と同時に,被害者参加人のための国選弁護制度も施行されております。   次に,統計資料について御説明いたします。資料は40-2は,裁判所のウェブサイトで公表されている統計や司法統計に基づいて作成したものですが,証人尋問の際の付添い,遮へい及びビデオリンク,被害者の氏名等の情報保護,被害者等の意見陳述,被害者等による公判記録の閲覧・謄写,被害者参加等の各制度につきまして,制度施行以降の各年の実施件数等を示す統計です。   資料の説明は以上ですが,被害者保護関連施策に関して,現在の検討状況について簡単に御説明します。   先ほどの資料40-1の「第4」にございました被害者参加制度等につきましては,その改正法の附則により,改正法の施行から3年経過後に施行状況について検討を行い,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされており,現在法務省におきまして,これらの制度等の施行状況について検討を行っているところです。また,平成23年3月に閣議決定された「第2次犯罪被害者等基本計画」におきましては,法務省において,被害者参加人への旅費等の支給と,被害者参加人のための国選弁護制度における資力要件の緩和の二つについて検討することとされており,現在,この基本計画に従って,法務省において検討を行っているところです。 ○本田部会長 それでは,以上の説明も踏まえまして,「犯罪被害者・証人等の支援・保護の在り方」に関しまして御議論いただきたいと思います。   「進行イメージ」には,「(1)証人保護方策の在り方」と記載しておりますけれども,証人には犯罪被害者の方も含まれますので,この点の御議論は,「(2)犯罪被害者支援の在り方」の御議論と内容が関連することが予想されますので,これらを併せて御議論いただくのが円滑な議論に資するのではないかと考えます。そこで,「(1)証人保護方策の在り方」と「(2)犯罪被害者支援の在り方」について,併せて御議論をいただきたいと思います。 ○舟本委員 私の方からは,犯罪被害者の支援の在り方につきまして申し述べたいと思います。   犯罪に立ち向かう現場の捜査員の大きな原動力は,被害者やその家族の方々の無念を晴らすという思いであります。また,事件の解決のときに被害者から寄せられる率直な気持ち,あるいは職場,学校に復帰し元気で頑張っているといった被害者の方々の近況の報告に捜査員らも励まされ,それが次の事件に向かっていくエネルギーとなっているところであります。ある女性捜査員の携帯電話の待受画面は,自分が捜査に当たった事件の被害児童が描いてくれた女性捜査員の似顔絵でありました。彼女には,それが何よりの励みだと聞いたところであります。私は,大久保委員の御意見や御指摘を,そのようなことも思いながら,いつも身が引き締まる思いで伺っております。悲しい思い,つらい経験をされた被害者の方々がもう一度社会で希望を持って生きていくことができるような制度を構築していくことは,当然ですけれども,刑事司法の重要な役割であります。   今,事務当局の方からも話がありましたけれども,犯罪被害者等基本法に基づき,平成23年に策定されました「第2次犯罪被害者等基本計画」では,犯罪被害者団体,犯罪被害者支援団体の方々からの御要望も踏まえまして,刑事手続の関与の拡充に関しまして,例えば,刑事裁判への被害者参加のための旅費の支給等の検討,あるいは被害者参加のための国選弁護制度の資力要件の緩和の検討等々が記載をされておりまして,現在それぞれの立場で検討をしていると承知しています。警察としてやるべきことにつきましては,当然今後とも犯罪被害者などのニーズを踏まえたきめ細かな支援に努めてまいりたいと考えております。   加えまして,この場で,捜査・公判を通じた被害者支援方策として,具体的に私の方から二つ提案的なものをさせていただきたいと思います。   一つは,被害者の捜査段階での供述の録音・録画媒体の公判での活用ということであります。被害者の方々にとりましては,捜査と公判の二段階で刑事手続への協力を求められることは,大久保委員の方からも再三お話がありましたように大変大きな負担であると思います。私も現場にいまして,それは感じております。したがいまして,被害者から要望があった場合には,捜査段階で行った被害者の供述の録音・録画媒体を公判での証言に代えて用いることができれば,被害者の物理的あるいは精神的負担の軽減につながるのではないでしょうか。   二つ目ですけれども,ビデオリンク方式による証人尋問の拡充についてであります。現在の制度では,先ほどの資料の中にも記してありますけれども,ビデオリンク方式による証人尋問は,裁判官や被告人がいる法廷のある裁判所の建物に出向き,別室で尋問を受けることとされていますけれども,遠隔地に居住する被害者は,ケースによっては出頭が大変困難であるということもあるでしょうし,また,組織犯罪に関する証人は,裁判所に出入りすることによってそうした関係者に尾行されたり,あるいは報復を受けることが懸念をされます。そこで,そうした被害者等の居住地の最寄りの裁判所など,公判が行われる裁判所とは別のところに出向いてもらった上でビデオリンクを行うなど,ビデオリンク方式による証人尋問を拡充することができれば,これも被害者を含めた証人の物理的・精神的負担軽減になるのではないでしょうか。技術的にはそんなに難しい話ではないと思います。   いずれにしましても,当部会におきましても今後更に刑事司法の中で被害者の声を確実に反映し,かつ十分な支援ができるような制度を構築するための具体的な議論を一緒に進めていただきたいと考えております。 ○大野委員 証人保護方策の必要性ということについて申し上げたいと思います。   証人保護については,これまでも法改正によりましてその充実化が図られてきたところでありますけれども,新たな刑事司法制度において公判証言をより重視することとなる場合,証人に負担を掛けることなく,ありのままの証言をしてもらうことができるような仕組みをより一層充実化させる必要があると考えております。事務当局から説明がありましたように,これまでの累次の改正によって,一定の犯罪の被害者等について,被害者特定事項の秘匿などの仕組みが設けられているほか,一定の場合には同一構内に限ってビデオリンク方式の証人尋問が認められるなどしておりますけれども,なお証人保護のための方策が不十分な場面があると感じているところです。   具体的に言いますと,例えば重大な犯罪の目撃者などの証人について,公判廷で氏名が明らかにされることによって報復その他の不利益を受けるおそれがある場合であっても,現行法では証人の氏名を明らかにしないことができる,そういう仕組みがありません。また,犯罪組織から離脱して家族とともにひそかに別の場所に暮らしている者が,組織の幹部が関与した犯罪について証言する場合に,証拠開示によってその住居等を知られてしまうおそれがあるほか,公判が開かれる裁判所に出頭することによって,傍聴に来た組織関係者等に尾行されるなどして報復を受けるおそれがありますが,現行法では,どのような場合でも,公判が開かれる裁判所に証人が出頭しなければならないこととされています。舟本委員もおっしゃいましたように,そういうようなことで具体的な方策については更に検討する必要があると思いますけれども,例えば,被害者以外の証人であっても,一定の要件を満たせば公開の法廷でその氏名等を明らかにしないことができるようにすることとか,証拠開示に際して,一定の場合には,証人の住居についてこれに代えて適宜の連絡先を開示できるようにすることとか,先ほどの公判が開かれる裁判所以外の場所でのビデオリンク方式の証人尋問ができるようにすることとか,そういった方法が考えられるのではないかと考えています。   また,現在の制度では,性犯罪の被害者等は,事案によって警察,検察,裁判所で繰り返し被害状況を供述し,又は証言しなければなりません。これが二次被害を生んでいるという指摘もございます。こうした被害者の負担を軽減する観点から,例えばイギリスや韓国にある同様の制度も参考にして,捜査段階での被害者の供述を録音・録画した記録媒体を主尋問に代えて用いると,こういうような制度も検討に値するのではないかと考えております。 ○大久保委員 今の舟本委員,大野委員の御意見,大変有り難く承りました。また,私が今からお話しさせていただく内容につきましては重なる部分もあるかと思いますが,御了解いただきたいと思います。   平成16年12月に制定されました犯罪被害者等基本法の第3条には,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」,「犯罪被害者等のための施策は,被害の状況及び原因,犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられる」,「再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間,必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう,講ぜられるものとする」と書かれています。しかし,被害者や被害者支援の立場から見ますと,今の刑事訴訟法では,被疑者・被告人の権利と国の捜査権,刑罰権のバランスを図るために,ところどころに被害者に配慮した「被害者等」というような条文がかいま見える程度です。被疑者・被告人の権利は憲法にも手厚く書かれていますが,被害者についてはいまだに何の記述もありません。確かに今回配布されました資料40-1のように,被害者等の意見陳述や被害者参加制度等は整備されてはきましたけれども,まだ被害者を支援する活動を促すような規定は刑事法の中にはほとんどありません。   ですから,被害者は法律が分からない上に,説明を受けても理解できるような精神状態ではなく,自分で判断できないために,制度はあってもなかなか履行できない被害者がまだ大多数なのだと思います。声を上げない,上げられない被害者が安心して制度を使えるためには,被害者の身近にいて様々な日常生活上あるいは法的な相談に乗ってくれる支援者の存在が欠かせません。支援者がいませんと,その苦しい中,一人で歩き続けるということはできません。ある被害者は,被害者支援員という一緒に伴走してくれる人がいたので,今自分はここで生きていることができますと,そのようにおっしゃっていました。   被害者支援を効果的に実施するための法令上の方策としては,都道府県の公安委員会指定の犯罪被害者等早期援助団体に対して警察が情報提供できる旨の規定がありますが,残念ながら検察庁や裁判所については何もありません。そのため,基本法にある「必要な支援等を途切れることなく受けることができる」ためには,検察庁や裁判所としましても支援を提供できるように,刑事訴訟法やその関連法で被害者支援活動ができる根拠を整えて,支援活動を保障する仕組みが必要なのだと思います。被害者は,自ら警察や検察,裁判所に電話をかけることも難しいほどに心身にダメージを受けていますので,支援者の方から働き掛けることによって支援を受けることができるような方策がどうしても必要なのです。また,裁判員裁判の場合や被害者参加制度を使う場合には,法的支援をする弁護士さんのサポートがなければ被害者は十分に司法に関わることができないために,後悔ばかりが残って被害回復もできません。   このような状況を改善するためには,先ほども法務省の方でももう既に進めているとおっしゃっていましたけれども,被害者国選弁護人制度の資力要件の緩和や旅費等の公費負担制度も併せて早期に実施することが必要です。この部会には,被疑者・被告人の権利獲得ですとか拡大に向けて大変な御努力をなさってきた弁護士さんがたくさんいらっしゃいますけれども,ちょっと立ち止まって,被疑者・被告人の対極にいる被害者にも目を向けて,被害者支援にも是非御協力をいただければ私は大変有り難いと思います。犯罪被害者が刑事裁判にしっかりと関わることができたということを実感できることが,被害回復のためにも大きな一歩になりますので,その刑事司法に関わるための精神的・経済的負担を少しでも軽くしていただけるよう,制度の構築や創設を検討してくださるように心からお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○露木幹事 私からは,警察で実施しております被害者の方々,そのほか捜査に協力していただいている方々の保護対策の現在の実施状況と,その上での課題について申し上げたいと思います。   私の担当しております暴力団犯罪について申し上げたいと思いますけれども,現在,被害者ですとかそのほか捜査に協力している方々について,全国で約2,000人ほど保護対象者として指定をして,全国の都道府県警察で所要の警戒態勢をとっております。被害者は,暴力団員の処罰を求めて警察に被害届を出した方々でありますけれども,暴力団側から見れば,これは敵ということになります。付きまとったり脅迫電話をかけてきたり,あるいは場合によっては自宅や会社に拳銃を撃ち込むと,こういった様々な卑劣な方法で報復をしたり牽制を仕掛けてくるというケースが少なくありません。   また,被害者ではありませんけれども,元々暴力団の組織に所属していた者が改悛をして離脱をする,それで警察の捜査に協力をするという者もおります。これは暴力団側から見れば裏切り者ということになりますので,場合によっては命も狙われるということもございます。   こうした方々は,捜査協力者として証人となるべき立場にもいらっしゃるわけですけれども,特に生命・身体に危害が加えられるおそれが強いであろうと認めて,私どもで24時間体制で身辺警戒をしている方々も全国で数十名いらっしゃいます。北九州の視察の際にも捜査員の方からそういう説明があったと思いますが,暴力団情勢が厳しくなっているということと関連しているのだと思いますけれども,最近はそういう方々の数が増えてきておりまして,常時警察官が3人ぐらい,その方々の身辺に張り付いて警戒をしていて,全国で数百名の警察官が今そういう仕事に専従しているという状況です。   保護対象者の方々は,いろいろな方々がいらっしゃいます。先祖代々その場所に住んでいるので離れられないという方もいらっしゃいますし,そこで事業などを営んでおられて,離れられないという方々もいらっしゃいますので,そういう方々には正に警察官が張り付いて警戒をするということになるわけでありますけれども,身辺に危害が及ぶおそれの強い,特に組織に所属していた者が離脱をして捜査に協力するという方々の場合には,福岡でも話がありましたとおり,やはり遠隔の地などの離れた場所で生活をしてもらう,仕事も変えてもらうという形によって,完全に警察の方でかくまうというような体制で保護をしなければならないという方も現にいらっしゃるわけです。   こういう方々がよく私どもにおっしゃいますのは,やはり自分の名前を変えられないという問題です。仕事をする上でもちろん住民登録をしなければなりませんし,そこでうその名前をもちろん語ることはできません。就職するには住民票などを提出しなければなりませんし,当然本名を名乗らないといけません。住所も正直に言わないといけないということでありますので,そこに,今の広域暴力団ですので,いかなる危害が及ぶかも分からないという不安におびえながら,私どもも精一杯保護はしておりますけれども,そういう生活を強いられているという方々が現にいらっしゃいます。ですので,様々な制度的な改善は図られてきてはおりますけれども,そういう方々の氏名などを変えることができるような,そういう制度が実現できないかということも一つの課題ではないかと思います。もちろん親子関係ですとか身分関係そのものを変えることはできないと思いますけれども,対外的に表示する氏名などの変更などができないかというような問題意識でございます。 ○小坂井幹事 捜査段階での被害者の方の負担を減らしていくという方策を採る検討は,私は必要だと思います。大野委員が言われたイギリスの例は,恐らく少年の虐待被害者などの司法面接のことを指していらっしゃるのではないのかと思うんですが,そういった研究を十分していって,捜査機関だけではなくて多方面の専門家が関わる形で,なるべく初期段階の一回限りの原初的な記録をちゃんと保全するというような方策自体は,私は今後採っていくべきだろうなと思っています。   ただ,それはもちろん全過程録画・録音が前提になるわけですけれども,では公判中心主義をすっ飛ばして,あるいは憲法37条2項の反対尋問権をすっ飛ばして,あるいは対質権を飛ばしてまで,そういうことができるかというと,それは憲法問題になってくる。無理なのではないかなと思っております。 ○岩井委員 性犯罪の被害者の保護のための方策を強化しようという御意見をいろいろ言っていただきましたので,私は余り言うことはないのですけれども,性犯罪の顕在化のために親告罪であること自体を廃止しようという要求を私どもはしております。2000年に,性犯罪について告訴期間の撤廃をしていただいて,性的虐待に遭った被害者なども,ある程度経ってから,告訴ができるようにはなっているのですけれども,公訴時効のところでも,性犯罪に対する公訴時効による制限というのがあるわけです。ですから,死刑該当事件についての公訴時効撤廃の審議の際,それも撤廃して欲しいという意見も出てきたのですけれども,そのときにはまた性犯罪の問題については総合的に検討するからというようなことで申し送りになったという記憶がございます。   しかし,そういうふうに性犯罪の告訴を容易にしましても,被害者の被る二次的被害が刑事裁判の中でもたらされたら,やはり告訴できないという問題が出てくると思われるわけです。ですから,できる限り被害者の訴えやすい状況といいますか,そして二次被害に遭わないような公判での取扱い,方策がこの際立てられるべきと考えております。 ○上冨幹事 今,岩井委員がおっしゃった性犯罪の関係でございますけれども,性犯罪について親告罪でなくすることを含めた強姦罪の見直しに関しましては,平成22年の12月に閣議決定されております「第3次男女共同参画基本計画」というものの中で,法務省において平成27年度末までに検討するということにされているところでございます。また,最近報道でも出ておりましたけれども,内閣府に設けられております「女性に対する暴力に関する専門調査会」において,性犯罪への厳正な対処などについての検討が行われておりまして,そこでの取りまとめられた報告書の中で,やはり強姦罪を親告罪でなくすることなどを含めた強姦罪の見直しに関する報告書が公表されております。この中でも,法務省において多様な論点を尽くした検討が行われることとなるとされておるところでございます。この問題につきましては強姦罪だけにとどまらず,ほかの性的自由に関する犯罪やそれ以外の犯罪類型との間での刑のバランスの問題,あるいは刑法の中での位置付けといったことも含めて検討が必要だと思っておりますので,今現在,私どもの方で様々な観点から慎重に検討を進めているところでございます。現状について御報告させていただきます。 ○舟本委員 小坂井幹事からの御意見がありましたので,一言だけ,別に反論でもないんですけれども,最初から駄目だと言われないで,是非そうした捜査段階での被害者の録音・録画というもの,それと例えば遠隔地でのビデオリンクというのを組み合わせて,それで公判の公開性を担保するとか,やはりいろいろ具体的な制度設計というのは考えていくべきであると思います。 ○本田部会長 それでは,まだ御意見もあろうかと思いますが,時間の都合もございますので,「犯罪被害者・証人等の支援・保護の在り方」に関する一巡目の議論はひとまずここまでとさせていただきたいと思います。   次に,論点6の「刑事実体法の在り方」の議論に入らせていただきたいと思います。ここでは,先ほど議論いたしました「司法の機能を妨害する行為に対する制裁の在り方」以外の刑事実体法の在り方について御議論をいただきたいと思います。   それでは,「進行イメージ」の「刑事実体法の在り方」について御発言がありましたらお願いしたいと思います。 ○佐藤委員 私としては,現在の日本の刑法を中心とする刑罰法令は,いろいろ課題を抱えた法典になっていると思います。それが捜査の実務上からいって非常に克明な捜査を求められる原因の一つになっているだろうと思います。しかし,それはそれで罪刑法定主義の観点に立ったときに,また別の意味で大変貴重な内容となっているという見方もあり得ると思います。そういう法典ではありますけれども,今回ここで論議の一つになっておりますところの取調べの全過程を録音・録画するというようなことを中心として,取調べが非常に難しくなっていくという方向に議論が具体化していくのだとすれば,私はそれは同時に刑法典についての改正も論議をしなければ一方に偏り過ぎているだろうと思います。したがって,この問題については,そういう議論の推移を見て,具体的な議論に上せるかどうかということを判断していく必要があると考えています。 ○安岡委員 意見というより質問なんですけれども,この議論をする上で材料を提供していただきたいという質問です。まず弁護人の方から見て,刑法の中で主観的な要件を立証するために供述強要が起きていると,被疑者・被告人あるいは参考人問わずですね,主観的な要件を立証するために必要だからということで無理な取調べ,供述強要,不適正な調書が作成されている例が間々見られる罪種は一体どういうものなのか。同じように検察の実務から見て,どうしても今ほど佐藤委員がおっしゃった克明な捜査が求められる罪種は何か,刑法の主観的な要件を立証するために克明な捜査,取調べが必要になっているのは,具体的にどういう犯罪なのかというのをそれぞれの委員の方から御紹介いただければと思います。 ○井上委員 主観的要件が大事だから供述強要につながっているという質問の仕方はちょっとニュートラルではないので,むしろ,供述がなければ主観的要件の立証について困る場合というのはどういう場合なのかという質問の仕方の方がよろしいのではないかと思いますが。 ○安岡委員 そうですね。 ○上冨幹事 必ずしも検察の経験が多いわけではないのですけれども,典型的によく言われますのは,共犯事件における共謀の内容をどのように立証していくかというような場合とか,例えば罪種で申し上げれば,贈収賄事件においてその交付された財物の趣旨がどのようなものであったかということについての当事者の認識がどのようなものであったかとか,それから先ほど別の話で出ていましたけれども,公職選挙法違反のような事件で多数の方が関与している事件であるとともに,その交付されるお金なりの趣旨が問題となるといったような事件というのは,一般的には当事者の認識が問われるということが多いものとして感じているのではないかと認識しております。 ○本田部会長 安岡委員,今のでよろしいですか。 ○安岡委員 弁護側から見てどうなんでしょうか。弁護側から言うと,今の井上委員の言葉を返すわけではございませんけれども,供述強要ということになると思うんですけれども,弁護側から見て,類型的にそういうことが起きがちな罪種はあるんでしょうか。 ○小野委員 私が話すのがいいのかどうか分かりませんが,今言われたような贈収賄種々の問題というのはあります。あるいは背任などの場合に図利加害目的というようなところが問われるとかそういうこともあります。ですから,各事件によってそれぞれであり,特にここがどうこうというのではないのかもしれませんけれども,客観的な状況だけでは足りないという今のようなケースというのはあるのではないでしょうか。 ○但木委員 例えば殺人についてですけれども,昔は割合に,例えばこの包丁で相手の腹を刺せば相手は死ぬと思いましたが刺しましたというような供述を取った時代というのもあるんです。だけれども,それがだんだん裁判実務の中で,そうではなくて客観的な凶器と攻撃の態様によって殺意を認定しようという方向に裁判が動いてきているんですね。ただ,では全てが解決されているのかというとそうでもなくて,例えば覚醒剤の持込み,あるいは麻薬の持込みなどについては非常に難しい問題があって,外国の飛行場で知らない人から預かったものを持ち込んだんですが,その中身が麻薬であるとは知りませんでしたという弁解をされたときに,それが麻薬であるという認識があるのかないのかという非常に難しい問題が出てきて,最近,それに関して最高裁が無罪判決を出したものもある。そうすると,時代の流れの中でそういうものについてはどういうふうにして持込みを抑止できるのだろうか,あるいはそういう弁解を通さないようにするためには,出立する飛行場で誰か名前を知らない人から荷物を受け取ったことがありますかという申告をさせて,その申告が虚偽であるという虚偽申告罪とかそういう形で処罰しないと処罰できなくなるのかなどというように,主観的要素というのは結構難しい問題があります。これから先,取調べが捜査の中心的な位置から客観的な証拠にその位置を譲っていく場合に,具体的な構成要件の中でどの部分が難しくなるかというのは,一罪一罪全部やっていかなければならない作業で,どこまでが本委員会でやっていけるのかというのはちょっと難しいなと思います。   正直言うと,実体法の問題をやるとすれば,佐藤委員がおっしゃったように,全体について非常に問題があるところは問題がある。ただ,それを裁判実務で克服してきたものもあるし,克服できないものについては何か手立てをつけなければいけないんですが,それをどうするかというのは非常に大きな問題で,そう簡単にこうでありますとは一言では言い難いなという気がします。 ○山口委員 実体法の在り方について一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。   犯罪の成立要件というのは,それが実際にどの程度適用可能なのかということと離れて抽象的に考えることはもちろんできません。しかしながら,犯罪の成立要件それ自体が果たして適切なものかどうかということ自体,十分に意味を持つといいますか非常に大切なことであろうかと思います。主観的要素の問題がいろいろ先ほどから御議論されておりますけれども,主観的要素を仮にやめた場合にどうなるのだろうか。主観的要素をやめた場合に,一つは例えば責任主義といったような刑法の基本原理ですね,守られるべき基本原理の観点から何か問題が生じることはないのか。あるいは主観的要件などの要件を取り去った場合に,そこで生み出される犯罪の成立要件というものが,果たして広過ぎたり,あるいは逆に非常に狭過ぎたりして適切でないものになることはないだろうかといったような様々なことを考えた上で,一つ一つの犯罪ごとに検討していかなければいけない問題だろうと思います。   その意味では非常に大変な問題であろうかと思いますが,現段階ではこのことだけを申し上げさせていただきたいと思います。 ○川端委員 私も実体法の立場から参加しておりますので,一言だけ発言させていただきたいと思います。   先ほど佐藤委員と但木委員がおっしゃいましたように,今回の司法改革との関係で実体刑法をどうするかということが問題となりますから,できるだけ具体的な制度設計との絡みで実体法の対応を考えていきたいと思っております。先ほど但木委員から御説明がございましたように,主観的要素の立証の問題として考えた場合,新たな可視化問題とかいろいろな問題がリンクしたときに,どういう具合に刑法の中身を変えていくのかという議論になると思います。刑法というのは,国民,市民の基本法であり,生活に密着した,そして国民にとって納得のいく形での議論が展開される領域の問題です。それから,山口委員がおっしゃったように責任主義というのは,刑法の基本原理であり,やはり我々の重大な人間的な存在の根源に関わる問題ですので,そういった点も考慮しながら,できるだけ具体的な問題点として検討させていただきたいと思っております。そういうことで一言だけ発言させていただきました。 ○本田部会長 それでは,「刑事実体法の在り方」に関する一巡目の議論はひとまずここで終えて,論点7の「その他」,あるいは,これまでの御議論を踏まえて,御意見がございましたらお願いします。 ○大野委員 「その他」の論点として申し上げたいと思います。論点4の「3 公判廷で真実 の証言や供述を得られやすくするための方策」にも関連しますが,検察の現場の実情を踏ま え,証人の出廷を確保するための方策ということについて申し上げたいと思います。   今後公判廷で真実の証言を得ることがますます重要になるとして,それに当たっては必要な証人がきちんと出廷してくれることが大前提となります。しかしながら,実際には裁判所から召喚状が送付されても,予定された証人尋問期日に出頭しない証人がいるのが実情です。証人が出頭しないと,裁判員裁判のように連日開廷が予定されている場合には,特に審理計画に与える支障が大きく,裁判員にも余計な負担を掛けることにもなります。また,出廷した上で宣誓を拒否したり,証言拒絶権がないのに証言を拒絶する者もいます。今後,証人の出廷を確保するための措置を強化して,必要な証人にきちんと出頭してもらえるような環境を整備する必要があると思われ,その方法として一つだけ提案させていただきたいと思います。   それは,証人の勾引の要件を緩和するということです。現行法では,召喚状が送達され,それに応じない場合に初めて証人を勾引できることとされていますけれども,これでは召喚状を送達した上で,実際に指定した期日を迎え,証人が実際に出頭しなかった後でなければ勾引できないために,不出頭を確認するためだけの無駄な期日を費やしていることも少なからずあると聞いております。証人に出頭を求めるに当たっては,まずは召喚により任意の出頭を促すのが相当だとは思いますけれども,例えば召喚状を発しても証人がこれに応じないおそれがあることが事前に判明しているようなときには,被告人についての勾引の手続と同様に,選択肢の一つとして,召喚の手続を経ることなく証人を勾引できるようにするべきではないかと思っています。 ○青木委員 論点だけ申し上げますと,再審の規定について整備が必要だと思っております。特に証拠開示の点については是非検討していただきたいと思っております。 ○神幹事 既に第6回会議でも述べていますけれども,検察官上訴の在り方について,二重の危険の解釈については最高裁判例も出ていますけれども,ここではやはりもう一度最高裁判例の解釈で良いのかどうかを考えてみる必要があるのではないかということで問題提起をいたします。 ○但木委員 一つは一番最初に申し上げたことですが,これまで議論された論点の中には,運用の問題なのか法律の問題なのかということからまずは検討すべきものがいくつもあります。例えば,先ほど罪証隠滅のおそれというのを保釈要件としてどう考えるかという問題が提起されましたが,それは法律を改正しなければいけないのか,それとも,否認すればそれは罪証隠滅のおそれなんだという解釈や運用がむしろ問題視されるべきなのではないかということです。今後は,それぞれの論点について,これは運用の問題か,あるいは法律の問題かということを,どこかで区分けして考えていかなければいけないのだろうと思っています。   それからもう一点,裁判員裁判というのが導入されて環境が変わったところがあるので,そこは是非念頭に置いて議論していただきたい。例えば,被告人の虚偽供述は,プロに対して虚偽供述をするというのは,まあ,いいかと今までやってきたわけですけれども,今度は国民が直接裁判に携わってくるわけで,そのときに被告人が今までと同じように虚偽供述してもいいかというふうになるのか。やはりそこは裁判員制度というのができたことによって,いろいろなところが変わるのではないかというような気がしております。 ○神津委員 一通りの議論を通じて感じていることとして一つ申し上げたいんですけれども,コスト論とか,あるいは人が足りないということでもって議論を制約するということについては,私はいかがかなと。いや,いずれにしろ,そうは言っても,それが付きまとうことは認識した上でではありますけれども,まずはあるべき論をとことん追求した上で,そこに到達していくためにはコストの問題とか人が足りないとかいうことについてどのようにこれを克服していくのかという順番で頭を回していくことが重要なのではないのかなと思います。   私は以前,録音・録画に関する議論の中でも,コスト論ということがのっけから来るのはいかがかということを申し上げました。私自身,民間企業に籍を置く者でありますので,コストというのが大事だというのは身にしみて思っておりますし,また税金は,やはり無駄遣いはしてほしくないということはとことんあるわけでありますけれども,本部会で議論すべき目的としているところが,いわゆるえん罪をなくすとか真犯人を挙げるとか,あるいは人権を守るということで,そのような事柄との関係で言えば,やはりそういうことの本質をまずは大事にすべきなのではないかと思います。   先ほど国選弁護について,勾留前の適用の是非とか,あるいは対象事件の範囲についての議論もありましたけれども,私は,コスト論とか人の問題ということでまず議論に制約をかけるということについては,率直に言って違和感があります。ちょっと言い方はなんですけれども,取りようによっては貧乏人は我慢しなさいと,こういうふうにも思えてしまうので,そういうことではなくて,やはりあるべき論をまずは追求していくことが大事ではないかと思います。 ○井上委員 今の神津委員の御意見はごもっともですけれども,国選弁護人との関係で言いますと,私も今の制度を作るのに関与したのですが,権利としてここまで保障しますといったん制度化した場合,請求があれば必ず応えなければならないのです。しかし,それに応えられるだけの人的な整備がなされていない状況でそういう制度を発足させたとしますと,権利として請求されているのに応えようがないという大変なことになってしまうわけです。制度を作る際に,筋論としては,今,神津委員が言われたとおりの本質的な議論はしたつもりですけれども,その上で,現実的な取組み方として,すぐには対応できない状況にあることを考えて,限定した形で発足させざるを得ないということがあるわけでして,宮﨑委員などもそういう意味での提案をなさってきているのだろうと思います。そこは御理解いただきたいと思います。   もう一つ,再審については,これはそれ自体として非常に大きな問題でありまして,ピンポイントで証拠開示と言われたので,それに限って論点だけ出しておきますと,一般の証拠開示の問題とは性質が異なって,公判廷にも提出されなかった未提出記録の保存と開示の問題にむしろ重点があるというか,中心がある問題なのですね。従って,そちらとの関連で突っ込んだ議論をする必要があり,今までの証拠開示の問題とは違う性質のものだということだけ申し上げておきたいと思います。   検察官上訴については,最初にちょっと質問させていただいたのですけれども,御趣旨がどこにあるのかです。今日の先ほどの御発言では,二重の危険うんぬんという,かなり昔からの原理的な話が出たのですが,人によっては裁判員裁判との関係での議論がそこに混入してくることもあります。しかし,二つの問題というのは,やはり区別して議論しなければいけないものなので,そこのところは趣旨をはっきりさせていただく必要があると思います。しかも,そういう議論をする事実的基礎というか,こういうところが困っている,不都合があるということも示していただかないと,単に理論的にこうだと自分達は考えるから改めろと主張するだけでは済まないと思うのです。考え方の問題としても,少なくとも実際上解決済みの問題なので,それをもう一度,根本から覆そうとされるからには,そういうことを言われる事実的な基礎,こういうところに不都合があるということを示していただかないと,議論にならないように思います。 ○島根幹事 先ほどのコスト論の関係で一言だけ申し上げます。あるべき理念に対して,人が足りない,金が足りないというのがその理由としてどうなのかと,やや曲解して言うとそういうお話なんですけれども,私ども,もちろん現実に仕事として動かして,捜査を始めいろいろな警察活動をやっていく中で,当然ながら考えるべきファクターの一つとしてはそういった問題もあるということは,やはり念頭に置いて議論をする必要があるのだろうと考えておりますので,そこの具体的な話はまた今後させていただければと思います。 ○神津委員 しつこいようですけれども,ファクターの一つではあると思うんですけれども,やはり性格の違いとか次元の違いということは十分踏まえる必要があると思っています。使うべきお金は使うということは,私はむしろ国のお金だからこそ必要だということだとも思っています。 ○本田部会長 それでは,各論点につきましての一巡目の御議論は,ひとまずここまでとさせていただきたいと思います。   本日の議論につきましては,次の期日までにまた概要をまとめてお示ししたいと思います。   それでは,今後の議論の進め方につきまして,私の方から御提示をさせていただきたいと思います。   これまで第8回から今日の第12回までの5期日を掛けまして,刑事司法制度全体にわたり一巡目の御議論をいただきました。大変限られた時間ではございましたけれども,非常に活発な御意見,また御議論をいただいた結果といたしまして,今後重点的に議論すべき具体的な論点がやや見えてきたのではないかと思います。そしてその中には,制度化の具体的な在り方についての議論を進めるべきもの,あるいは,制度化の是非についても更に議論が必要なもの等が見えてきたのではないかと思います。   そこで,次回つまり9月に予定されています第13回から,12月に予定されております第17回までの5期日を掛けまして,こうした重点的に議論すべき具体的論点を中心として,より一層焦点を絞った議論を行っていきたいと思います。   そして,この言わば二巡目の議論を踏まえまして,できるだけ早い時期に部会として,その後の具体的な制度設計の指針としての「基本構想」をまとめていきたいと考えております。この「基本構想」の内容につきましては,二巡目の議論の状況次第で定まってくると考えますが,「基本構想」がより具体的かつ建設的なものとなるよう,皆様の御尽力,また御協力をお願いいたしたいと思います。   次回以降の具体的な議論の進め方につきましては,更に検討した上で,あらかじめ事務当局を通じてお知らせいたしますとともに,次回第13回会議におきまして御提案をさせていただきたいと思いますが,このような進め方でよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり)   それでは,御異論がないようでございますので,今お話ししましたスケジュールで今後の議論を進めさせていただきたいと思います。次回期日の議事を含めまして,二巡目の議論において,何をどのような順序で御議論をいただくかということにつきましては,本日までの御議論の結果を踏まえて更に検討した上で,追って事務当局を通じて御連絡させていただきたいと思います。   それでは,予定いたしておりました事項は全て終了いたしましたので,これにて本日の議事は終了いたしたいと思います。   なお,本日の会議につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表することにさせていただきたいと思います。   次回の日程でございますが,9月19日水曜日,午後1時30分から午後5時までを予定いたしております。場所は本日と同じこの会議室にお集まりいただきたいと思います。   それでは,本日はこれで閉会といたします。どうも長時間ありがとうございました。 -了-