法制審議会           被災関連借地借家・建物区分所有法制部会           第1回会議 議事録 第1 日 時  平成24年9月28日(金) 自 午後1時30分                       至 午後5時56分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  罹災都市借地借家臨時処理法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○岡山幹事 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の第1回会議を開会いたします。   本日は,御多用中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。私は,法務省民事局で参事官をしております岡山と申します。部会長の選出があるまで暫時議事の進行を務めさせていただきます。   議事に入ります前に,法制審議会及び部会について若干御説明申し上げます。   法制審議会は,法務大臣の諮問機関でございますが,その根拠法令である法制審議会令によれば,法制審議会に部会を置くことができることとなっております。この被災関連借地借家・建物区分所有法制部会は,今月7日に開催されました法制審議会第167回会議におきまして,法務大臣から罹災都市借地借家臨時処理法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する諮問第94号がされ,これを受けまして,その調査審議のために設置することが決定されたものであります。   法制審議会に諮問された事項は,今後想定される大規模な災害に備え,罹災都市借地借家臨時処理法を早急に見直して,同法を現代の社会によりふさわしいものにするとともに,被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法を早急に見直して,大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にする制度を整備する必要があると思われるので,それぞれその要綱を示されたいというものであります。   審議に先立ちまして,まず,臨時委員の深山民事局長より一言御挨拶申し上げます。 ○深山委員 民事局長の深山でございます。私,3日前に発令を受けたばかりですけれども,事務当局を代表いたしまして,一言御挨拶を申し上げます。   皆様には,それぞれ御多用の中,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。近年,首都直下地震や東南海・南海地震など大規模な地震が発生する危険性が指摘されるなどしており,今後発生が予想される大規模な災害に備えて,民事法上の観点から必要な法制を整備することは喫緊の課題であると考えられます。罹災都市借地借家臨時処理法,いわゆる罹災都市法は,大規模な災害が発生した場合に,被災した借地人及び借家人を保護するための特例措置を定めた法律であり,第二次世界大戦により住居を失った被災者の保護等を主たる目的として昭和21年に制定された応急的・時限的な法律でした。その後,政令で定める災害にも適用ができるように改正され,最近では阪神・淡路大震災や新潟県中越地震において適用されましたが,制定以来,全面的な見直しが行われていないため,必ずしも現代の社会にそぐわなくなってきていると考えられます。そこで,罹災都市法を早急に見直して,同法を現代の社会によりふさわしいものにする必要があると考えられます。   また,被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法,いわゆる被災マンション法は,災害により滅失した区分所有建物の再建等を容易にする特例措置を定めた法律であり,阪神・淡路大震災の後に制定され,同大震災に適用されました。   しかし,区分所有建物に関する現行法には,区分所有建物が重大な被害を受けた場合に,当該建物を取り壊すことについての特別な規定がございません。そのため,重大な被害を受けた区分所有建物を取り壊すためには,区分所有者全員の合意が必要となります。東日本大震災においては,区分所有者全員の合意により区分所有建物が取り壊された事例があったようですが,災害により区分所有建物が重大な被害を受けた場合に,その取壊しについて常に区分所有者全員の合意が必要になるとすると,大多数の区分所有者が取壊しを望む場合であっても,取壊しに反対する区分所有者が1人でもいるときは取壊しができなくなり,ひいては被災した区分所有建物の管理が放棄されるような事態が生ずることも懸念されます。   そこで,被災マンション法を早急に見直して,大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にする制度を整備する必要があると考えられます。   以上を踏まえ,罹災都市法及び被災マンション法の見直しについて法制審議会で御検討いただくべく,今回の諮問をさせていただいた次第でございます。皆様には,短期間のうちに集中的に罹災都市法及び被災マンション法の見直しに関して御検討をお願いすることになりますが,よりよき被災時の法制を構築するため,御尽力賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。   以上でございます。    (委員等の自己紹介につき省略)    (部会長に山田委員が互選され,法制審議会会長から部会長に指名された。) ○山田部会長 ただいま野村法制審議会長より当部会長に御指名を頂きました山田誠一でございます。一言御挨拶を申し上げます。   重責ではございますが,最善を尽くしたいと存じます。委員,幹事,関係官の皆様には何とぞよろしくお力添えを頂戴いたしますようお願いを申し上げます。   議事の進行に戻りたいと思います。   当部会におきましては,先ほど民事局長からお話がありましたところでございますが,罹災都市法と被災マンション法という二つの法律を早急に見直すことが求められております。そのため,審議のスケジュールがタイトなものとなる可能性もあると考えます。部会長である私が会議に出席することがかなわない事態が生じないとも限りません。法制審議会令によりますと,部会長に事故があるときには,その職務を代行するものをあらかじめ部会長が指名しておくこととされておりますので,ここでその指名を行っておきたいと思います。   先ほど私は鎌野委員から御推薦を頂きましたところでございますが,鎌野委員もまた民事法の分野における優れた御業績,御経歴をお持ちであられます。そこで,鎌野委員を部会長代行に指名したいと存じます。鎌野委員,よろしゅうございますでしょうか。 ○鎌野委員 引き受けさせていただきます。 ○山田部会長 誠にありがとうございます。   それでは,事務当局から配布資料の確認をお願いいたします。 ○岡山幹事 まず,配布資料目録,部会資料1,参考資料1及び2につきましては事前配布させていただいたところでございます。そのほか本日お手元には配布資料目録の差し替え版,部会資料2及び3,参考資料3から5までのほか,諮問事項,被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の日程(予定)と題するものを配布させていただいております。   まず,部会資料1でございますけれども,本日,主として御審議いただきたいと考えております「被災関連建物区分所有法制の見直しについて」と題するものでございます。次に,参考資料1「制度設計の概要」及び参考資料2「団地関係図」についても本日の御審議の際に使用する予定でございます。続いて,参考資料3は国土交通省作成の「東日本大震災によるマンションの被災状況」と題するものでございまして,後ほど資料の概要につきまして杉藤幹事から御説明を頂く予定でございます。また,参考資料4も国土交通省作成の「マンションの合意形成に関する居住状況の実態」と題するものでございまして,後ほど審議の中で御紹介があるものと思います。   なお,罹災都市法に関する資料としまして,部会資料2及び3,参考資料5を本日机上配布させていただきました。罹災都市法につきましては,法制審議会における審議に先立ち,罹災都市法の見直しについて検討しておりました罹災都市借地借家臨時処理法改正研究会における研究会報告書を踏まえて,担当者素案を作成し,これを公表して,8月1日から8月31日までの間パブリックコメントを行っております。部会資料2がパブリックコメントに付した担当者素案,部会資料3が補足説明でございます。参考資料5が先ほど申し上げました研究会報告書でございます。後ほどスケジュールについて御説明させていただきますが,罹災都市法に関しましては,被災マンション法に関する中間的な取りまとめをした後に御議論いただきたいと考えており,本日はこれらの資料は使用いたしません。今後の審議に備えまして,あらかじめ配布させていただいたものでございます。   配布資料の説明は以上でございます。 ○山田部会長 よろしゅうございますでしょうか。   次に,当部会の今後のスケジュールについて事務当局から説明をしていただきます。 ○岡山幹事 席上に配布しております被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の日程(予定)というものを御覧ください。   本日の第1回部会から1月29日まで,おおむね半月に一度のペースで合計9回,予備日を含めますと合計10回の部会開催を現時点では予定しております。もとより当部会におきましては,必要な議論を尽くしていただくことが肝要ではございますけれども,今後発生することが想定される大規模な災害に備えるという観点からいたしますと,事務当局といたしましては,来年2月の法制審議会総会における答申を目指したいというふうに考えております。したがいまして,このような日程を御提案しているものでございます。   具体的なスケジュールについて申し上げますと,罹災都市法につきましては,担当者素案についてパブリックコメントを行っておりますが,被災マンション法につきましては,このような手続を行っておりません。そのため,まずは被災マンション法に関する制度設計の概要について御議論いただいた後,第3回部会をめどとして中間的な取りまとめを行いたいというふうに考えております。中間的な取りまとめができましたら,これをパブリックコメントに付し,その結果を踏まえた上で,予定では第7回部会以降に更に審議をお願いしたいというふうに考えております。   被災マンション法の中間的な取りまとめをパブリックコメントに付している期間,予定では第4回から第6回までの計3回の部会におきまして,罹災都市法に関し,本日お配りしている担当者素案等を使用しながら御議論いただければというふうに考えております。最終的には第9回の部会において罹災都市法及び被災マンション法の要綱案をそれぞれ取りまとめることを予定しております。御提案しているスケジュールは,飽くまでも現時点の案でございまして,被災マンション法に関する中間的な取りまとめにどの程度の時間が必要かなど当部会における審議の状況も踏まえながら,適宜御提案したいというふうに考えております。   審議スケジュールの説明は以上でございます。 ○山田部会長 ただいまの岡山幹事の説明につきまして,御質問,御意見がございましたらお伺いしたいと存じます。いかがでございましょうか。   特に御質問,御意見がないようでございますので,審議スケジュールにつきましては,先ほどの説明のとおり,すなわち審議の状況も踏まえながら適宜提案が事務当局からなされるということでいたしたいと思います。   審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者の取扱いについてお諮りしたいと存じます。   まず,現在の法制審議会での議事録の作成方法について事務当局から説明してもらいます。 ○岡山幹事 それでは,法制審議会の議事録における発言者名の取扱いについて御説明いたします。   法制審議会での部会での議事録における発言者名の取扱いにつきましては,平成23年6月6日に開催されました法制審議会の総会におきまして,次のような決定がされております。すなわち,部会における議事録につきましては,法務省のホームページで公開することになりますが,公開に当たっては,原則として発言者名等を明らかにした議事録を公開することといたします。ただし,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに部会長において部会委員の意見を聴いた上で,審議事項の内容等のほか発言者等の権利利益を保護するため,当該氏名を公にしないことの必要性,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無を考慮して,発言者名等を公開するのが相当でないと認める場合には,議事録の公開に当たって発言者名等を明らかにしないこととすることができるというものでございます。   したがいまして,当部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものを作成することになりますが,部会長から皆様に御意見をお聞きし,ただいま申し上げたような諸要素を考慮して発言者名等を公表するのが相当でないと認められる場合には,これを明らかにしないこととすることができることとなります。   以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。ただいま事務当局から顕名の議事録を作成するものの,審議事項の内容,発言者等の権利利益を保護するため,氏名を公にしないことの必要性,率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれの有無を考慮した上で,場合により発言者名等を明らかにしないで公開することができるという説明がございました。この事務当局からの説明内容につきまして,まず御質問ございませんでしょうか。   それでは,部会委員の意見を聴いた上で議事録の公開範囲を決定するとのことでございますので,何か御意見がありましたらお願いを申し上げます。   御意見がないようでございますので,当部会につきましては,部会長の私といたしましては,諮問事項の内容等に鑑みて,発言者名を明らかにした議事録を公開することにしてはどうかと考えますが,いかがでございましょうか。   ありがとうございます。それでは,当部会につきましては,発言者名を明らかにした議事録を公開することといたします。   審議に入る前の事務的な手続が以上でございまして,ここから本日の審議に入りたいと存じます。   まず,配布資料に基づき,事務当局に説明していただきます。 ○遠藤関係官 それでは,部会資料1につきまして,まずは資料の全体像を御説明いたします。   部会資料1は,「第1 総論」として,被災建物区分所有法制に関して,本部会において新たに創設する必要があると考えられる制度,それから,それぞれの制度の関係について制度設計の概略を検討するものでございます。その検討を踏まえまして,第2以下において新たに創設する必要があると考えられる制度の各論的検討を行うと,このような構成になっております。なお,先ほど御確認を頂いた審議スケジュールに照らしますと,本部会における検討の時間はかなり限られている状況にございます。そこで,第1回目の部会から充実した御議論を頂くという観点から,部会での調査審議に先立ち,事務当局としてある程度具体性を持った検討を行い,その結果を議論のたたき台として提示させていただいております。   それでは,御審議いただく「第1 総論」について御説明をいたします。   第1は,大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にするためにどのような制度が必要か,その制度設計の概要を検討するものでございます。本文の「例えば」以下でお示ししている概要については,参考資料1として本日概要図を準備しております。この参考資料1では,区分所有法,それから被災マンション法において既に特例が設けられているものを緑の色で,それから,本部会で新たな制度の創設を検討する必要があると考えられるものをオレンジの色でお示ししておりますので,以後の御説明につきましては,こちらのほうも御参照いただきながらお聞きいただければと存じます。   まず,大規模な災害が発生して区分所有建物が重大な被害を受けた場合に,区分所有者が採り得る選択肢としましては,区分所有法上,建物の滅失した部分の原状回復を行う復旧,そのほか建替えに関する規定を設けております。もっとも建物が重大な被害を受けた場合の中には,復旧について多額の費用を要することから,多くの区分所有者が復旧を断念するといったことについては合意が得られていますけれども,他方で,建替えをするということも資金の面であるだとか建替え計画の準備等の観点から困難であると,そういった事態が生じることが予想されるところでございます。このような場合,区分所有者としましては,まずはその建物を取り壊した上で,その後,敷地上に建物を再建するのか,それから,再建を諦めて敷地を売却するのか,そういった選択肢について時間を掛けて検討するという選択肢を採ることが考えられるところでございます。しかしながら,このような選択肢,つまりまずは建物を取り壊すという選択肢につきましては,現行法上,特段の規定がございませんので,全員の同意が必要になるというふうに考えられるところでございます。   なお,東日本大震災で被害を受けた区分所有建物の中には,先ほど御案内ありましたとおり,全員合意によって建物を取り壊すこととしたものが見られたところでございます。   このように建物の取壊しに全員の合意が得られればよいのですが,一人でも取壊しに反対する区分所有者がいますと取壊しができませんと,そういった事態になるとすれば費用負担等の問題から復旧も難しい,それから,建替えも難しいということで,建物が重大な被害を受けたままの状態で放置されると,そういった望ましくない事態が生ずるおそれも考えられるところでございます。   そこで,本文の①では,災害により大規模な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にする制度としまして,全員の合意によらずに建物の取壊しを可能とするための制度,ここでは取壊し決議制度という名称を付しておりますけれども,取壊し決議制度を設けることを提案しております。  また,取壊し決議制度と関連しまして,決議に基づき取り壊された後の敷地の取扱いについても検討をしております。すなわち区分所有建物の敷地については,通常区分所有者の共有になっているケースが多いものと思われます。このような場合,取壊し決議制度を設けることとして,その決議に基づき建物が取り壊されますと,敷地についての共有関係だけが残ることになります。しかしながら,そのような共有関係にある敷地の利用処分の方針としては,敷地上に新たに区分所有建物を再建するか,敷地を売却して代金を精算するという選択肢が考えられるところではございますが,このような共有関係にある敷地上に新たな建物を再建することは,民法上の共有物の変更に当たると考えられますし,敷地を売却することにつきましては,共有物の処分に当たるというふうに考えられますので,いずれにつきましても,全員の同意が必要となってまいります。   このように再建や敷地の売却に全員の同意が必要であるとしますと,再建や売却をすることは容易ではなく,全員の同意が得られないまま敷地について適切な管理がされずに放置されると,そのような事態が生じるおそれがあると考えられます。そして,このような状態になる見通しがありますと,ひいては建物を取り壊すか否かを検討する際においても,建物の被害状況のみから考えれば多くの区分所有者が取壊しを望むと,そういった場合につきましても,その後の取壊し後の敷地についての利用処分の方針を決することが困難であるといった事情から取壊しをちゅうちょすると,そういった事態も考えられます。そうしますと,先ほど本文の①で御提案をしております取壊し決議制度を設けることの意義にも影響が及ぶということにもなりかねないというふうに考えられるところでございます。   また,大規模な災害時であることを考えますと,区分所有者の方たちにとっては,どのように生活を再建するかについて早期に見通しを立てる必要があるということが考えられます。そうしますと,取壊し後の敷地利用の処分の方針についても,生活の再建を早期に見通しを立てるという観点から,こちらについても早期に決める必要性が大きいというふうに考えられます。   それから,取壊し後の敷地について利用処分の方針が決まらないまま敷地が長期間放置されてしまうといったことは,被災地全体の復興という観点からも望ましいものではないのではないかというふうに考えられます。   以上のような観点を踏まえますと,取壊し後の敷地の利用,処分の方針として合理的な選択肢であると考えられます敷地の売却,それから,敷地上の新たな建物の再建を用意にするという観点から,これらについて全員の合意によらずに実現することができる制度を設ける必要性があるというふうに考えられるところでございます。   なお,敷地の売却につきましては,敷地共有者は自らの持分を売却処分することは法律上妨げられておりませんので,それから,共有物分割請求により共有関係から離脱するということも可能でございますので,全員の合意によらずに敷地を売却する制度を設ける必要性はないのではないかとの指摘も考えられるところでございます。もっとも区分所有建物の敷地については,元々区分所有者の方が共有しているということがありますので,かなり持分が細分化されているということが多いものと思われます。そうしますと,実際上,個々の敷地共有者がその持分を売却するということは困難なのではないかという事態も想定されるところでございます。   また,共有物分割請求訴訟がされた場合にも,共有物分割訴訟は共有者全員が当事者となる訴訟類型,いわゆる固有必要的共同訴訟とされておりますので,訴訟手続にはかなりの時間を要することが予想されますので,なかなか解決に至るということにつきましても,早期に処分について方針を決めるというような観点からは難しいことになるのではないかという指摘も考えられるところでございます。これらの点を考慮しますと,個々の持分を売却することが可能であることや,共有物分割請求が可能であるといった事情を考慮しましても,全員の合意によらずに敷地を売却することを可能とする制度の必要性はなお失われないのではないかと考えられるところでございます。   これらを踏まえまして,本文の②では,取壊し決議に基づき,建物が取り壊された後の敷地について,敷地の売却と再建,それぞれ全員の合意によらずに実現することができる制度としまして,敷地売却決議制度及び再建の決議制度を設けることを提案しております。   続きまして,本文の(注)についても若干の補足を差し上げます。   本文の(注1)は,新設することを検討している取壊し決議制度,それから,敷地売却決議制度の関係について確認するものでございます。本文では,まず建物を取り壊し,取り壊した後の敷地については,取り壊した後に時間を掛けて改めて検討すると,そういったケースを想定しておりますけれども,建物を取り壊すかどうかを検討している際に,当該敷地について買い手が現れると,そういったことも場合によってはあり得るのではないかと考えられるところでございます。その場合に,区分所有者の多くがその相手方に土地を売ることについて同意しているといった場合に,まずは取壊し決議を行って,その後,別途の機会に敷地売却決議を行うという二段階の手続を踏むということは,迂遠ではないかとも思われます。そこで,(注1)では,取壊し決議制度と敷地売却決議制度を別個の制度として設けるということを前提に先ほど御説明したような場合,すなわち取壊しを検討する際に,既に敷地に買い手が現れているような場合につきましては,取壊し決議と敷地売却決議を同一の機会に行うことは妨げられないという旨を記述しております。   なお,取壊し決議と再建の決議と同一の機会に行うことにつきましては,これは区分所有法上の建替え決議によって実現することが可能ですので,この点については触れておりません。   続きまして,本文(注2)でございますけれども,こちらは大規模な災害により区分所有建物が全部滅失した場合についての記述でございます。現行被災マンション法では,大規模な災害により区分所有建物が全部滅失した場合について敷地共有者の多数決による再建の決議制度が設けられております。他方で,敷地売却決議制度に類する制度は設けられておりません。本文では,区分所有建物が重大な被害を受けた場合について取壊し決議制度を設けるとともに,関連してその決議に基づき建物が取り壊された後の敷地について敷地売却決議制度,再建の決議制度を設けることを提案しておりますが,取壊し決議に基づき建物が取り壊された場合と,災害により建物が全部滅失した場合とで敷地をめぐる法律関係が大きく異なることは望ましくないと考えられます。そこで,(注2)では災害により建物が全部滅失した場合についても,敷地売却決議制度を設けることを提案しております。   それから,(注3)でございますけれども,こちらは検討の順序に関するものでございまして,団地についての検討は敷地上の建物が1棟のみである単棟の場合についての検討を終えた後にすることとしている旨を記述しております。団地内にはA棟,B棟など複数の建物がございますので,A棟が,新たに新設される制度,取壊し決議制度や敷地売却決議制度等について検討するという場合には,他の棟との関係も検討しなければなりません。こういった点から,単棟の区分所有建物とは異なる考慮が団地については必要になってまいります。そこで,まずは単棟の場合について御議論を頂き,団地については,その御議論を踏まえて,改めて御議論を頂くということを考えております。   長くなりましたが,第1についての説明は以上になります。 ○山田部会長 ありがとうございます。ただいまの事務当局からの説明に関連しまして,東日本大震災におけるマンションの被害状況について,国土交通省から参考資料3に基づいて御説明いただけるとのことでございます。 ○杉藤幹事 それでは,私--国土交通省の杉藤と申します--のほうから参考資料3に基づきまして,御説明をさせていただきます。   私どものところで建築基準法でございますとか,あるいはまちづくりやマンションといった被災地復興も含めたまちづくり事業を所管しているという関係から,この場に資するのではないかということでこの御説明の機会を頂くということでございます。ありがとうございます。   参考資料3でございますが,今回の大震災におけるマンションの被災状況ということでございます。これは社団法人高層住宅管理業協会が既に公表した資料で,一定の調査を行ってございます。ここの表の上にございますように,マンション管理事業者の建築士等の技術職員が日本建築学会の被災度区分に従って判定を大破,中破,小破,軽微などとしたものということでございます。   ここで少し補足をさせていただきたいんですが,この日本建築学会の被災度区分といいますのは,主として技術的観点から倒壊等のおそれがどの程度あるのかといった安全性の観点から判定区分を定めておるものでございまして,よく報道などで全壊とか半壊といったものがございます。これは別途自治体が罹災証明書の発行でありますとか,あるいは被災者生活再建支援制度の適用などに関連して,主として財産被害がどの程度かといった観点から全壊あるいは半壊といった被災度区分を設けるもの,この二通りがございます。この二つは大きく違ってございまして,ここで御紹介しておりますのは,技術的な危険性に着目した建築学会に基づく被災度区分ということでございます。   書いてございませんが,これよりも悪い区分として倒壊というのがございまして,そういったものは今回ございません。大破というのは倒壊に至らないけれども,かなり倒壊に近い状態になっているというものでございます。それで,ただ,この資料は協会の公表資料をそのまま転用しておりますので,若干正確に補足させていただきますと,大破のところに建替えが必要とございますが,これは少し分かりやすくコメントを入れられたというものでございまして,(注1)にございますように,学会の判定区分ではこのような定義にはなってございません。飽くまでも倒壊についてどの程度近づいているのかといった危険性の観点からの区分でございます。   この区分によりますと,東北6県では,大破はゼロ,中破が26棟というふうになってございます。ちなみに調査対象は1,642棟となってございます。さらに1都6県も含めましたものの合計ですと,全体調査が4万6,365棟に対しまして,大破がゼロ,中破が44棟というふうになってございます。ただ,一部他の民間調査によれば,(注3)にございますように,仙台市で大破が1件という報告もございます。それから,その資料の下でございますけれども,では大破していなければ解体をしていないかというと,現在の実態を御報告させていただきますと,私どもが把握した限りでは,仙台市によりますと,マンションの解体事例が現時点で5事例把握されてございます。実質的に解体されたものが4件,それから建替え決議を行って解体を目指しているものが1件という,解体といいますか,これは建替えを目指しているものが1件という現状でございます。   それから,少し補足をさせていただきます。これを御覧いただきますと,今回マグニチュード9という割には,余り建物被害が大きくないのではないかというような印象も持たれるかも分かりませんけれども,例えば地震の震度階で最も強い区分である震度7の地震というのは,最近でいいますと3回ございます。阪神・淡路大震災,中越地震,そして今回の東日本大震災でございます。この中で建物にとって最も過酷な揺れだったのは阪神・淡路大震災でございます。このときは御案内のとおり6,400名ほどの方が亡くなられまして,その大半は建物の圧死,もちろんこれは老朽戸建て住宅もございますが,鉄筋の建物もございます。   特に耐震性につきましては,昭和56年,1981年にいわゆる新耐震基準というのを導入いたしまして,この基準に適合して建てているものにつきましては,阪神・淡路大震災でも大きな被害が出てございませんが,それより前のいわゆる旧耐震基準で建てられたものというのは,かなりの被害が出てございます。阪神・淡路大震災の場合は,確か大破以上のものが3割ほど生じてございます。ということで,地震による被害といいますのは,同じ震度6強とか7の中でも更に地震の周期とかそういったものによってかなり被害が大きくなる可能性がございまして,直近で言うと阪神・淡路大震災が最も被害が大きかったということでございますが,今回マグニチュード9でもこの程度だったから,それほど被害が生じないのではないかというのは間違いでございまして,科学的には我が国の中で大地震というのはどこでも起こり得ます。   また,首都直下地震でありますとか南海トラフの巨大地震といったことが最近大きく話題になってございますけれども,こういったものが発生した場合に,今回以上の大きな被害が生ずるといったことは,残念ながら科学的にはそういう可能性はあると言わざるを得ないということでございます。   簡単でございますけれども,私のほうからは以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。それでは,今,二つの説明を続けていただきましたが,それを参考にしながら大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取壊しを容易にするという観点から,どのような制度設計が考えられるかという点について委員,幹事,関係官どなたからでも結構ですので,御自由に御発言を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○鎌野委員 どなたもまずはいらっしゃらないので,口火を切る意味で。今御説明があった1ページの(注1)のところでございますけれども,取壊し決議と敷地売却決議を同一の機会に行うことは妨げられないと,上の御説明の①と②を同時にということで,これはよく御説明で分かりましたけれども,例えば取壊し決議をしないで,いきなり建物と敷地を一括して売却する決議と。現行法では多分全員同意になると思うんですけれども,今回の今の見直しの御提案では,その点は特に省略をするというか検討しないのか,あるいはそういった建物と敷地を一括して売却すると。すなわち仮にそういうケースがどれだけあるか分かりませんけれども,売却の相手方,すなわち買主のほうで建物も取り壊しましょうということで,そういうものが現れたというときに区分所有者の側で,全員一致ではなくて多数決議でそういったことを行うという点はどう考えるのかということで,今のところの御意見というか検討を予定しているのか,あるいはその点はもう今回は検討しないのか,その点をちょっとお聞かせいただければと思います。 ○遠藤関係官 すみません,今の点について,(注1)で書いておりますのは,正に今,鎌野委員からお話のあった2番目といいますか,建物を買い取った人が壊しましょうというケースを念頭に置いております。1番目のケース,既に建物が現状有姿のまま,ただ重大な被害を受けた状況ではあるけれども,それを敷地と併せて買い取りましょうといったケースについても特段排除している趣旨ではございません。ただ,これも後ほど各論の中で検討していきますけれども,建物が重大な被害を受けたという一定の要件をかけるということが今回の検討の対象になろうかなというふうに考えておるところですが,そういったかなり壊れた,重大な被害を受けた建物について買い手が現れるという事例がどれほどあるのかというところも踏まえた検討が必要になろうかなと思います。   また,そういったケースにつきましても,仮に取壊し決議制度,それから敷地売却決議制度,これら両方の制度を設けた場合には,同時に決議をするということによって事実上同一の法律効果が得られるというような解釈論も成り立ち得るところだと思います。そういった点も踏まえて御議論を頂ければ,というふうに考えておるところでございます。 ○鎌野委員 はい,分かりました。 ○山田部会長 ほかにいかがでございましょうか。 ○津久井幹事 先ほど国交省のほうからの御報告を頂きまして,ちょっと記載の趣旨から疑問に思いましたので質問をさせていただきます。五つの解体事例のうち,Eマンションは,全員がマンション解体に同意したという記載がありません。これは事情が不明ということなのか,あるいは全員の同意が得られなかったということなのかをお聞きしたいです。二つ目なんですが,問題の立法事実といいますか,東日本大震災で多数決であれば解体ができたのに全員同意が得られなかったがためにマンションの解体が進まなかったというような事例が現実にあったのか,もし御存じの方がいらっしゃったら情報として教えていただけないか。国交省だけではなく,東北マンション管理組合のほうで把握されていることがありましたら教えていただきたいです。 ○山田部会長 では,まず杉藤さんからEマンションはどういう状況ですかという質問に対して,御説明ください。 ○杉藤幹事 これは御指摘のとおり,事実関係を把握していないということで,もう少し言いますと,現場を見に行ったところ解体が行われていたものを確認したというようなことから,恐らく同意を取られたんだろうと推定されますが,その事実を確認していないので記載していないということでございます。 ○山田部会長 二つ目のほうについても杉藤さん,もし御存じでしたら。 ○杉藤幹事 今,それはもう少し,今日はちょっとまだお答えできるレベルの材料を持ち合わせていないんですが,調べてございます。調査中でございます。既に解体されているものにつきましても,聞き及ぶところによりますと,区分所有者が不在であるとか海外に行かれている等々の理由で全員合意を得るまでにかなりの労力を掛けられたというようなことがあるということまでは伺ってございまして,この背後に類似する検討をされているが,進んでいないというようなものが残されている可能性もございます。引き続きちょっと調査をしたいというふうに考えてございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。お名前が挙がったので,よろしゅうございますか。佐藤さん,お願いいたします。 ○佐藤(正)委員 まず,このEマンションなんですけれども,これはちょっと私が把握しているところによると,具体的な名前はやめますが,あるゼネコンが対応した物件かと思います。というのは,周り的には余り壊れていないんですけれども,このマンションだけがひどくやられていたところがありまして,いつの間にか解体に入っていたという事例なんですね。なので,これはゼネコンが恐らくデベロッパーかもしれませんけれども,解体費を出したのではないかと。建て替えるような話,これは表に出てきていないのでちょっと分かりませんが,そういう事例ではないかと思います。具体的に名前も大体分かるんですけれども,ここでは差し控えておきます。   それと,全員合意が難しくて解体できなかったというのは,やはり聞いているのは,これから解体にいくかどうかはあれなんですけれども,やはり営業されている方がいて,そのマンションに。それで,たまたまそこのマンションの1階で営業されている方がいて,その方が反対してできないという事例があったというふうに聞いています。実際にマンションとしては,ほぼやられているんですが,1階の営業には差し支えないわけであって,その人の反対で解体できないという事例はあったというふうに聞いております。ほかにも水面下にはあろうかと思いますが,私の把握している情報では今申し上げたところでございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○根本委員 すみません,頭の整理のためにちょっと教えていただきたいんですが,まず,国土交通省のほうから倒壊というカテゴリーが安全上ございますというお話がございました。それに類するような建築物につきましては,危険度が高いということで,この今回検討するカテゴリーのものの以前に何らかの権力によって取り壊されるということが前置されているという理解でよろしいでしょうかと。要するに危険度の高い建物というのは,今回の検討の範囲に入りませんという理解でよろしいでしょうかということ,それとあと,借地上にあるマンションのお話は,この後の検討でどういうふうに考えたらよろしいのかを教えていただけたらと思います。 ○遠藤関係官 まず,1点目,危険な建物については今回の検討の対象に入るかということでございますけれども,これは我々の所管ではないのでどこまで適切なお話を差し上げられるかどうか分かりませんけれども,一応建築基準法上,御案内のとおり除却命令という制度がございますので,究極的にはそういった制度は一応用意されているということでございます。   ただ,殊更に建物が危険なものは今回の検討の対象にはならないという趣旨ではございませんで,その建物の被害状況を受けて区分所有者の皆さんがこの建物をちょっと残しておくのは危なっかしいというような御判断で取壊しに向けた合意形成を図るといった事例も考えられるのではないかなというふうに考えております。   それから,借地上の区分所有建物についてでございますけれども,まず,建物を取り壊すということにつきましては,これは借地上にあるか,それとも敷地利用権が所有権であるかということによっては,建物の処遇の話でございますので,理屈上は,一応整理は付けられるのかなと。別のものとして整理が付けられるのかなというふうに考えております。   それから,本文の②のほうの再建と売却と二つございますけれども,これは再建につきましても,元々の借地権というのがまだなお残っているというふうに考えられますので,その借地権に基づき建物を再建するという選択肢はあろうかと思います。売却につきましては,これは借地権者が敷地を直接売るというわけにはいかないと思いますので,その場合には,後ほど若干触れますけれども,借地権自体を売るという選択肢になろうかというふうに考えております。   以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○杉藤幹事 少し今の点,国土交通省が建築基準法を所管しておりますので,補足させていただきますと,地震で大きく,倒壊すればこれはもう倒壊しているということでございますが,倒壊に至らない大破といったような状況で,どのぐらい危険なところのものが対象になるかということでございますけれども,通常建築基準法を守って建てたけれども,基準に適合していない状態になったというものは,建築基準法上,既存不適格建築物といいまして,違法ではないけれども基準に合っていないという状況になります。この場合に,建築基準法10条に基づきまして,著しく保安上危険であるというふうに行政庁が認定した場合には,除却等の命令を出すことができるというふうに規定されております。ただ,実態上は著しく保安上危険という認定が実務上もかなり難しくて,例えば阪神・淡路大震災のときに傾いて,もう余震で今にも倒れそうだと,こういったかなり切迫した危険性があるものにつきまして除却命令を出したというような事例はございますけれども,傾いているんだけれども,今度また大地震が来たら危ないのかなと。ただ,すぐに倒れる状況ではないといったようなレベルのものもございます。こういったものにつきましては,先ほど申し上げたこの10条の要件に当たるかどうかということで,実務上は一定のハードルがございまして,現実には命令を行って除却しているものというのは,かなり少数にとどまるというのが実態でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○森田委員 今日の部会資料が規律を設けることを提案している対象は大規模一部滅失ということですが,直前に既に御質問がありましたけれども,そうでないいわゆる全部滅失の場合にはどのような規律が適用されるということなのでしょうか。全部滅失の場合に除却命令ができるかどうかというのは別の観点だとしまして,私法上の扱いとしては,全部滅失に当たる場合には,例えば,管理組合が各区分所有者の同意を取らずに建物を取り壊すことができる,大破に当たるような場合,仮に全部滅失に当たると判断されると,建物の解体は,取壊し決議はなくともそれはできるという整理になっているかどうかということです。その前提として,この大破,中破,小破,軽微,それから倒壊という概念と,全部滅失,大規模一部滅失というのは,その辺りの対応関係というのはどういう概念規定が前提となっているのか。4ページのところの補足説明には,現行の区分所有法の61条の5項,1項が参照と書いてあるわけでありますけれども,その点の概念規定はどうなっているのか。その延長で出てくる問題は,建物の損傷の程度が一部滅失なのか全部滅失なのかという点について,関係者に評価の争いがあるといった場合が生ずることが想定されるのか,それともそうでないのかというのが今の点に関わってくると思いますけれども,それらについてもう少し御説明いただければと思います。 ○遠藤関係官 まず,この国土交通省の参考資料3にあるような大破,中破,小破,軽微,それから,区分所有法上の大規模一部滅失,全部滅失との対応関係ということでございますけれども,これはそれぞれ基本的には別のものであるというふうに考えております。この大破,中破,小破は,私も詳細について把握しているわけではございませんが,日本建築学会のほうで独自の判定基準,建物の危険性等を判断するに当たっての判断基準を用いているということかと思います。他方で,区分所有法上の全部滅失というのは,ものが正に滅失したという,そういった評価の関係でございますので,これらは基本的には別のものであろうと。ただ,このように一定の権威のある学会でそのような評価がされたというようなことも滅失等の判断の一要素になっているというような関係にあるのではないかというふうに考えられるところでございます。   それから,続きまして,全部滅失した場合に,全部滅失といっても必ずきれいになくなるというわけではございませんで,必ず建物のがれき等がその土地の上には残っているであろうという御指摘だったかと思いますが,この点につきましては,必ずしも明確に整理をされたような文献等はちょっとまだ見当たっていないんですけれども,基本的には建物自体はもうなくなっていると。ただ,その建物を構成していた柱であるだとか壁だとかの残ったがれきにつきましては,それらは元の区分所有者の全員が純粋に民法上の共有の関係にあるのではないかというふうに考えられるところでございます。そういったがれきの処理につきましては,これも民法上の共有に従った判断になろうかと思いますが,がれきを処分しなければならないというような場合につきましては,例えば保存行為であるだとか管理行為であるだとか,一定の処分をするというような対応をすることが考えられるのではないかと思われます。   それから,最後に大規模一部滅失,それから全部滅失ということで,これは後ほどの資料で一応事務当局として大規模一部滅失というのを一つのメルクマールということで御提案をさせていただいているところではございますけれども,この両者の違いについて争いが生じ得るのではないかという御指摘がありましたが,これは確かにおっしゃるとおりではございます。ただ,両者について明確な線を引くというのは,なかなか法律上難しいといったところもありまして,一応現行法上にある概念の中から基準になりそうなものということで,大規模一部滅失ということをこの資料の中では一つの基準として考えているということで,議論のたたき台としていただければということでございます。   以上でございます。 ○山田部会長 ほかにいかがでございましょうか。御発言のない方も,それから一度発言された方も,その後の議論で更にとか,あるいは別のところとかというのがありましたら,是非御遠慮なく御発言ください。 ○森田委員 少し制度全体についての自分の考えを述べることになるかもしれませんけれども,従前の建替え決議もそうなのですけれども,区分所有建物というのは,ある建物が効用を全うする間は,その区分所有という団体的関係が存続することが前提となっていて,各区分所有者はそれに制約される関係があるわけですが,ただ,それは未来永劫ではなくて,一定の事由が生じたときには,もはやその関係を維持するのが合理的ではないということで既存の建物区分所有関係を終了させることができるということになっております。終了させた後どうするかというのは,敷地利用権の共有関係が残るので,建替えの場合には,この残った敷地利用権を利用して新たな建物を建てるという次のフェーズに進むわけです。そして,既存の区分所有関係がどのような事由が生じたときに終了させるのが適当なのかというのは,従来は建替え決議という,つまり修繕をしながら区分所有関係を続けていくことが,建替えをするのと比べて経済的に見て不合理だと言えるような状態になって,5分の4の人たちがそのような判断をするに至ったという場合には終了させてよいという規律が実定法としてあったわけです。   今回は,それ以外の事由に基づいて既存の建物区分所有関係を終了させるということがどういう場合に認められるのかというのと,それから,なぜそれが正当化できるのかというのが問題となっているということができます。ただ,このような現行法の理解に立ちますと,全部滅失に当たる場合には,客観的事由によって既存の建物区分所有関係は当然に終了するということができます。民法の共有に戻るというのは,敷地の共有関係に戻るということなのか,あるいは従来の区分所有者の団体に当たるものが区分所有関係は終了するけれども,ある種の清算上のといいますか,倒壊した建物を撤去するまでは従来の建物区分所有関係がこれを清算するための団体として存続していると捉えるのか,そこは両方の考え方があり得ると思いますけれども,一応客観的な事由が生ずれば,ここで提案されている取壊し決議なくして当然に既存の区分所有関係は消滅するということになるのではないかと思います。それは全部滅失に当たるということであれば,そのことからして当然にということだと思うのですが,一部滅失の場合には,一部ということの概念規定によっては,半分ぐらいの人はまだ使えるが,半分の人は使えなくなっているという状態のときに建物区分所有関係を終了させるのがなぜ正当化されるのかということと,そのときの決議要件がなぜ5分の4なのかという辺りをどういうふうに説明すると,一般の人にも分かりやすく,こういうふうに考えてこのような制度を作りましたという説明になるのか,という辺りの制度設計の基本的な考え方についてもう少しお聞かせいただけると,先ほどの両者をどう区別するかというのは,その応用問題のようなところがございますので,根本の考え方というのはどういうものとして説明できるのかという辺りについて,もう少しお聞かせいただければ幸いです。 ○遠藤関係官 今,二つの要件,大規模一部滅失という要件,それから5分の4という要件の二つについて御指摘があったものと思います。   まず,大規模一部滅失という要件があった場合に,なぜその建物を取り壊して従前の区分所有関係を終了させることができるのかという御質問であったかと思いますけれども,区分所有法上の大規模一部滅失というのは,区分所有法の61条の1項と5項の関係になりますけれども,1項が建物の価格の2分の1を超えない部分が滅失した場合と。これは特に法律上の用語ではないんですが,講学上というか一般的に小規模一部滅失というふうに言われているものでございます。これにつきましては,基本的には今回の検討の対象から外していないと。他方で,大規模一部滅失というのは,建物の価格の2分の1を超えた部分が滅失した場合ということになります。建物の価格の2分の1を超える部分が滅失したということになりますと,基本的にはかなり復旧に相当の多額の費用を要するということが考えられます。そうしますと,区分所有者の人たちが建物の存続を前提として復旧をしなければならないと。あるいは復旧はしなくてもよいけれども,建替えをするという選択肢もございますけれども,建替えについても当然復旧と同等又はそれ以上に費用が掛かるということが通常でございますので,そういった選択肢もあるけれども,いずれについてもかなりの費用を要するという点では変わりませんので,その両者については,なかなか復旧も建替えも難しいといった事態が生じることが想定されるということでございます。   そういった場合に,復旧と建替えという二つの選択肢,現行法上,二つの選択肢しかないという状況になりますと,そこで復旧も建替えもされないまま,もうデッドロック状態になってしまうということになろうかと思います。そういった状態になりますと,個々の区分所有者にとっても不幸なことだろうと思いますし,被災地のその地域の状況に鑑みますと,そういった建物というのがずっと長期間残り続けたままこうちゃく状態に陥るということも余り望ましくないであろうということが言えると思います。そういったことから,少なくとも大規模一部滅失したような,相当の費用を要するようなものについては取壊しという道を認めてもそれなりの合理性があるのではないかというふうにこちらとしては考えているということでございます。   ただ,今の説明も,もちろん客観的な要件をどのように考えるかというところとも関わってございますので,後の各論的な検討のところでいろいろとまた御意見を伺えればというふうに考えております。   それから,二つ目の多数決要件の5分の4というところでございますけれども,これにつきましても,後ほど各論,第2以下で検討するということになろうかと思いますが,差し当たりその建物を壊すと,正に区分所有関係を終了させてしまうという意味で,建替え決議と同様の法律効果といいますか,区分所有者に与える影響というのはそれなりのインパクトがあろうかということでございますので,まずは仮置きといいますか,建替え決議の決議要件を参考にしまして5分の4という整理をしているということでございます。 ○住本幹事 住本でございます。今回の課題について確認させていただきます。地震などの災害によって大きな損傷をマンションが受け,住んでいる方々の大部分の方々がこれはもう解体をしたほうがよいといった場合に,現在全員同意でないと解体ができないのが現行法ですが,それだと住んでいる方々が解体を希望する際に非常に困っているということがまず第1点でございますね。   それから,第2点でございますが,先ほど杉藤のほうから,専門的な説明をさせていただきました。ここにございます例えば小破の中でもよくよく調べてみると,相当ひどい被害を受けているというものが多数あったということもございます。今法務省さんのほうでお考えになっている損傷を受けた被害というものの理解について我々からは違和感があります。民法上の言葉なんでしょうけれども,大規模一部滅失という言葉は非常に分かりづらいと思います。損傷とか大規模損傷とか大規模被害というのはあるんですけれども,一部滅失は一体何を意味するのか。建物で滅失,消えるなんていうことがあるのかと誤解を生じるのではないでしょうか。一般の方にも分かりやすくする工夫についての御配慮をお願いしたいと思います。   以上でございます。 ○佐藤(正)委員 今回の解体事例が出ていますけれども,その解体に大きく寄与したものが解体費の公費援助というのがありまして,正確に言えば,マンションとの地上部分を公費で解体するという制度がございました。仙台市においては9月28日,本日1回延長になりまして,締め切りでございます。この制度によりますと,これは今,確認したんですけれども,マンションにおいては半壊以上,いわゆる災害救助法で言う半壊以上の建物において,今民法で全員合意が必要ですと,それにおいては合意ができれば公費負担で解体しますよという制度がございました。今区分所有法の一部滅失とかというのは,一般の人には非常に分かりにくいです。ですので,こういった今まで行ってきた公費の解体等を踏まえて,もう少し一般の人に分かりやすい表現,例えば半壊とか大規模半壊とかいうふうにしたほうがよりしっくりくるのではないかという現場を見た人間として思いました。   以上です。 ○山野目委員 部会資料の1,「第1 総論」のところで御提案いただいている内容について,事務当局の説明等を承って感じたところを意見として申し上げさせていただきます。   まず,①として提案しておられる取壊し決議の制度の検討を進めることがよろしいのではないかというふうに感じます。杉藤幹事から参考資料を用いて御紹介があった実態と,佐藤正芳委員から被災地について生じている状況の御紹介等を承りますと,このような制度を設けることについての政策的な合理性はあるものであろうと感じます。森田委員から御注意がありましたように,検討を始めるといっても,この後に検討されるほかの要件の細部の組合せを見た上で見通しを改めなければならない事項は出てくるかもしれません。取りあえずこの①の方向で検討するということは,しかし,あり得るものであろうと考えます。   その上で②は,これは①の派生的ないし発展的な問題として課題となることでありますけれども,これもこの後のその検討において,また見通しを改めなければならない可能性があることを留保して,あってよい,検討されてよい制度ではないかと感じます。   関連して,(注2)で御提案いただいている事項は,一種,関連法制の整備という側面がありますが,これも①や②のような制度を設けるのであるとすれば,このような方向での法制整備が行われることが適切であると感じます。(注1)に関して,鎌野委員が御指摘になったことは,なるほどというふうに伺っていて感じましたとともに,恐らくそのお話は,区分所有関係の解消というものを議論する一般的地平と関わってくる部分があって,この後の検討でそのことに関わりのある問題が出てくる可能性もありますし,あるいはこの部会ではさばき切れないサイズを持った事項なのかもしれません。いずれにしても,引き続き検討されていくべきであろうというふうに感じますが,①,②とも今後の第2以下の検討に依存している部分が多くて,既にお話を伺っておりますと,第2以下の提案がもう先取りされて審議の対象になっていますから,第1のところについてひとまず必要であろうなというふうな見通しを立てた上で,第2以下についてやはり議論してみないと分からない部分が大きいと感じました。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○鎌野委員 今,山野目先生に整理していただいたことで私も同感なんですが,あえてちょっとこれまでの議論について私の意見を簡単に述べさせていただきますと,基本的にこの①,②ということの検討ということは大いに意義があろうと。その上で,これは事務当局からの御説明,先ほどの森田委員に対する遠藤局付の御説明で尽きていると思いまして,私もそれに全く賛成なんですけれども,ちょっと言葉を足しますと,いわゆる大規模一部滅失,これは現行の区分所有法の概念で物理的に滅失したとかではなくて,飽くまでも財産的に従前と比べてどうなったかと。2分の1を超えている価値になった。これ自体非常に難しい問題なんですけれども,ここまで問題にすると,区分所有法全体の立て付けを直さなくちゃいけないという大変な作業になろうかと思いますので,それはまた果たしてそこまでやるかどうかという問題で,当面現行では大規模一部滅失と,言葉のネーミングの問題は工夫しなければいけませんけれども。   そうすると,この場合,先ほど説明がありましたように,復旧できればよいんですけれども,なかなか復旧できないと,建替えもなかなか難しいと,主に費用負担の問題で。そうすると,2点,2方向から問題になると。一つは復旧されないまま区分所有建物が放置されると。それは区分所有者にとっては,以後管理もできないわけですね。復旧されないというその前提がない以上,そこに言わば維持して管理を行っていくというのがなかなか難しくなると。そうすると,区分所有者の財産というのが言わば塩漬け状態になって,そのまま放置されると,こういう財産の在り方はよろしいのかどうかと。そこでもう一つ風穴を空けるというか,取壊しという選択肢も認めようと。そして,これは他方では,やはり公共的にこういった建物が永続的に存在するということは非常に公共的にも問題であると。恐らくこの最初の総論ということの限定あるいはこの制度趣旨の御提案というのは,そのようなものと私は理解をしております。   その上で1点だけ申し上げたいのは,これは本質的な問題ではないんですけれども,例えば補足説明などに加えられればということかもしれませんけれども,やはり私の考えるところ,一方では公費解体というようなことで,そちらの補助もあるけれども,他方では,できるだけやはり復旧というのができるものなら,可能であればそちらが望ましいのかなと。余り取壊しの方向というのは,後々いろいろなコストの問題あるいはその他合意形成の問題ということで難しい問題が出てこようかと思いますので,これは飽くまでも政策的な問題ですけれども,復旧ということがまず第一だと。その点の誤解を与えないようにやはりこういった制度設計をする必要があるのかなということで,ちょっとこれまでの意見を踏まえて私の今のところの意見を申し上げておきました。 ○津久井幹事 阪神・淡路大震災の被災地でありました兵庫県で法律実務を扱っている立場から意見を申し上げたいと思います。   今,総論としてこのような法制の審議をすることの是非が問われているわけですが,是非御検討いただきたい。元々この区分所有建物の様々な矛盾であることとか,法制の不備といったものが阪神・淡路大震災をきっかけに露呈したという経過があります。現実にその阪神・淡路大震災の被災建物の中には,この区分所有法の定めるスキームに乗っからないがために,いろいろな岐路をたどったマンションがあります。例えば,公費解体の期限に合わせて無理やりに合意形成をして,全員合意で取り壊さざるを得なかったと。これは復旧が原則で建替えという方法があるという選択肢も何もかも検討する間もなく迫られていったんだと思いますが,例えば取壊しという選択肢があったならば,正常な法律のスキームの中で取壊しができたのではないかと反省される事例です。   また,二つ目に建替えのスキームというのはほとんど使われなかった。それが阪神・淡路の結果です。今,数字は御報告できませんけれども,建替えが成功した事例の多くは,デベロッパーなどが全て買い受けて建て替えた上で,また元の区分所有者の方々に提供し直すという形を採っていまして,正にこの総論の①,②を組み合わせたような格好で再建をなし遂げました。言わば区分所有法のスキームを迂回して,別のルートで実現したということです。これも民事法制からはちょっと残念に思うところです。   3点目として,阪神・淡路大震災の頃はマンションの需要というのも非常に大きかったので,建て替えるということも社会的合理性があったと思いますが,マンションや空き戸数が多くなってだぶついている社会情勢の中で,復旧と建替えしか選択肢がないということが本当に住宅政策上正しいのだろうかということです。これに対する民事法制としての答えが余りにも貧弱ではないかと思います。そういった意味で,細かい一つ一つの要件はこれから各論で御検討いただくとして,是非こういった法制を御検討いただきたいと思います。意見でした。 ○山田部会長 ありがとうございます。第1の総論については,まだ御発言をお願いすると,なお出てくるのではないかと思いますが,御発言いただいた中では,この①と②について検討するというのではよいのではないかと,あるいはそれよりももう少しよく検討してほしいという御意見も複数出てきたところでございます。この①,②の中に含まれている細かな問題は,その第2,第3でそれぞれもう一度改めて詳しい説明を受けた上で立ち入った議論をするということをしなければなりません。そのように考えますと,ここのところは,第1についてはこのような①,②を,この部会でこれから検討するということで御了解いただき,先に進めることにしたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは,各論に入ってまいりたいと思います。第2の取壊し決議制度について事務当局から資料の説明をしてもらいます。 ○川副関係官 それでは,「第2 取壊し決議制度」について御説明申し上げます。   第2では,取壊し決議制度を設けた場合の具体的規律についてお諮りしております。資料は1から5まで個別の論点ごとに項目を立てて記載しておりますけれども,制度全体のイメージを踏まえて御議論いただくほうがよいと思いますので,説明としては第2の1から5まで,ちょっと長くなりますが,まとめて説明させていただきます。   まず,第2の1は,取壊し決議制度を適用する対象となる建物について,災害により大規模一部滅した区分所有建物とすることを提案しているところでございます。大規模一部滅失という概念は,先ほども話に出ておりましたが,区分所有法上,61条の復旧の規定を参考に第1項と第5項の区別を参考にしております。建物の価格の2分の1を超える部分に相当する部分が滅失した場合というのを考えるということを前提にして,こちらは記載してございます。   このような基準を掲げさせていただいた理由については,先ほど遠藤が述べておりましたし,鎌野委員にも補足していただいたとおりでございます。取壊し決議の重大性からしますと,建物を取り壊す必要性が大きい場合に限るというのが相当だと思われますし,被災地にある建物であっても,別に何も被害を受けていない建物といったものや小規模な被害を受けたにとどまるという建物については,通常の区分所有法における手続によって復旧,建替えなどそれらを決定していってもらえばよいということになりますので,被災地の特例を設ける必要性は乏しいのではないかというふうに考えられます。   具体的にどのような場合に限るのかということについて,大規模一部滅失した場合ということを提案しております。これは,先ほどの説明のとおり,建物が大規模一部滅失した場合には復旧に多額の費用を要するということから,それを維持していくことが経済的合理性の観点から見て合理性が乏しい,建物を維持していくことはちょっと困難ではないかというように考えられる場合があるのではないかと,このような考えからこのような提案をさせていただいております。   ちょっと先ほど分かりにくいという御指摘を頂いたところなので,提案するのもあれなんですけれども,なかなかほかに具体的な基準となるようなものが考え付かないということで,事務当局としましてはこのような提案をさせていただいているところでございます。   続いて,「2 多数決要件」について御説明申し上げます。   ここでは,取壊し決議の多数決要件を区分所有者の頭数,それから,区分所有者の床面積割合による議決権の各5分の4以上の多数とすることを提案しております。取壊し決議は重大な結果を生じさせる制度ですので,要件については厳格にするということの必要があるというふうに考えられます。   具体的な基準ですけれども,先ほど遠藤からもありましたとおり,取りあえずここで5分の4と掲げさせていただいたのは,区分所有法上の建替え決議を参考にさせていただいております。建替え決議というのは,現在ある建物を取り壊した上で,その後,その敷地上に区分所有建物を再度建築すると,そういう内容になっておりますので,この今申し上げました建替え決議の前半部分,区分所有建物を取り壊すという部分のみを切り出した形で規定しますと,取壊し決議になるのかなというふうに考えられるところでございます。   また,その決議に反対した区分所有者の立場からしてみますと,取壊しがされるという場合であっても建替えがされるという場合であっても,いずれにしても,その決議に反対した反対者というのは,その自己の持っている権利を自分の意思には基づかずにほかに譲渡しなければならなくなるという点では,財産権の制約という点では同様に考えることができるのではないかと。そうだとすると,多数決の要件については建替え決議と同様と考えるのが相当ではないかというふうな考えを基に,現在この5分の4以上というのを提案させていただいているところでございます。   続きまして,3の決議事項ですけれども,この第2の3の決議事項につきましては,建替え決議を参考にして,その建替え決議のうち建物の取壊しに関する事項のみを決議事項とするということを提案してございます。   続きまして,「4 期間制限」というところでございますけれども,取壊し決議制度というのは,災害によって重大な被害を受けた区分所有建物が長期間放置されるということを防止するという制度であるということ,それから,早期の復興を促すという観点からしますと,取壊しをすることが合理的だというふうに考えられるような区分所有建物は,それを早期に取壊しを実現していくことが望ましいものというふうに考えられると思います。そこで,資料ではその取壊し決議制度ができる期間を一定期間制限するものとして,その期間を政令の施行の日から1年間とすることを提案してございます。確認にすぎないのですが,この政令施行の日というのが現行の被災マンション法で政令で定める災害について,現行被災マンション法を適用するというふうにされておりますので,この災害指定の政令の日から起算して1年ということをここでは提案させていただいております。   最後,「5 その他」というところについて御説明申し上げます。   ここでは,これまで述べました1から4までで述べた以外の事項についてですけれども,建替え決議に関する同様の規律を参考にして,取壊し決議においても規律を設けるということを一応提案させていただいております。  まず,(1)というのが取壊し決議を会議の目的とする集会に関する手続です。6ページ目の2の本文(1)についてというところに記載がございますけれども,区分所有法上では,通常区分所有者の集会を招集する通知というのは,少なくとも集会の1週間前に発送すればよいということになっております。しかし,建替え決議をしますと,そういう集会を招集するときなどには,建替え決議をしますという集会に関する手続につきましては,特別な規律が設けられております。すなわち,その場合の集会は,招集通知は開催の2か月前までに発送しなければならないとか,その通知には建替えを必要とする理由とか建替えをせずに建物の効用を維持,回復するのに要する費用の額内訳,建物の修繕計画や修繕積立金の額といったそういう細かいことを通知しなければならないというふうにされております。また,集会の少なくとも1か月前までに説明会というものを開催することも要件とされております。   このような手続が設けられているのは,建替えをするかどうかという重大な判断をするための十分な機会を確保して,判断の前提となる情報が区分所有者に十分に提供されるようにその機会を確保した規定と考えられます。   他方,現在の被災マンション法における再建の決議,災害によって建物が全て滅失してしまった後に再建をするという決議をする場合ですけれども,その再建の決議の場合には,建替え決議で規定されているような特別な集会手続というのは求められておりません。これは,再建の決議が大規模な災害により建物が滅失したという緊急事態の下で行われるものであるということから,可能な限り迅速な手続を定めたもの,そのような事情によるものと考えられております。   これらの事情を踏まえますと,一応取壊し決議というのは,その区分所有権が最終的に消滅するという効果をもたらすという,そういう内容としての重大性があるということを重視すれば,建替え決議と同様の手続とすべきとも考えられますし,大規模一部滅失した建物ということ,もしも対象がそういうふうになるのであれば,そういう建物を対象とするということで,緊急事態であって早期に取壊しを実現することを可能とする手続を設けるべきと,そういう点を重視すれば,特別の手続を設けないで,再建の手続と同様のようにするということも考えられるところでございます。どちらのほうに考えたほうがよいのかということもこれから御審議いただきたいというふうに考えております。   次に,3の本文(2)というところですけれども,これは取壊し決議の反対者等に対する取扱いについてのところでございます。   これについては,建替え決議の反対者の取扱いを参考に規律を設けることを一応提案させていただいております。建替え決議の反対者の取扱いについては,建替えに参加するか否かを催告した上で,参加しないというふうになった区分所有者に対して,建替えに賛成した区分所有者などから区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すように請求することができるというふうにされております。そこで,その取壊し決議においても,これと同様の規律を設けるということを提案しております。   具体的な流れにつきましては,まず,取壊し決議が行われた場合には,その決議に賛成しなかった者に対して,取壊しに参加するかどうか回答すべき旨を催告すると。その結果,取壊しに参加しませんと回答した区分所有者や回答がなくて参加しないというふうにみなされた区分所有者に対しては,取壊し決議に賛成した区分所有者など,賛成者などから区分所有権,それから敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができるということになります。そのように賛成者等が取壊しに参加しない区分所有者に対して権利を売り渡すべきことを請求することによって,取壊しに参加しない者から賛成者等に区分所有権及び敷地利用権が移転することになって,取壊しに参加しない区分所有者はその区分所有関係から離脱するということになります。   そして,その次の本文の(3)のところに記述をしておりますけれども,賛成者等というのが取壊し決議の内容により取壊しを行う旨の合意をしたというふうにみなされますので,取壊し決議の目的である建物の区分所有権を有するもの全員が取壊しを行う旨の合意をした状態で,当該区分所有建物の取壊しが実施されるということになるものと考えられます。   なお,補足説明にも記載しておりますが,このような売渡しを求めるという制度を設けることとした場合には,反対者が建物の明渡しをする際に期限の許与を認めるかといったことや,取壊し決議成立後,一定期間取壊しが実行されない場合の再売渡し請求の制度を設けるかといったちょっと細かい点も今後問題になることが考えられております。   最後に,4の本文(3)については先ほど申し上げました取壊し決議に参加することとなった区分所有者やその承継人などについては,取壊し決議の内容により取壊しを行う旨の合意をしたものとみなすという規律を設けることを提案しております。実際の取壊しは建物の区分所有者全員がこのような合意をしたものとみなされた状態で行われるということになります。   第2の説明については以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。部会資料でいうところの「第2 取壊し決議制度」の全体についてただいま事務当局から説明をしてもらいました。相互に連関しておりますので,ただいまの説明は一体としてお話しいただきましたが,これからの審議については,できれば1,2,3,4,5と順に区切って進めたほうが審議に参加する皆様,私も含めてですが,見通しが立てやすいのではないかと思います。ただ,どうしても連関してまいりますので,そこは後ろに回して,後ろから前に言及するか,あるいは前から後ろのほうに,説明はもう既になされておりますので,手元にも資料がございますから,共通のものがありますので,後ろのほうに言及しながら御発言いただくこと,どちらもあり得るべしとしつつ,しかし,1,2,3,4,5の順番で進めてまいりたいと思います。   そこで,部会資料でいいますと3ページの下のほうですが,1でございます。適用の対象となる建物について御質問,御意見がありましたらどうぞ御発言をお願い申し上げます。 ○細谷委員 この大規模一部滅失した区分所有建物ということなんですけれども,もうちょっと具体的な基準というか,説明を頂けませんでしょうか。 ○川副関係官 大規模一部滅失というのは,先ほどもありましたけれども,区分所有法の復旧のところを参考にしております。一応こちらで考えている基準としましては,建物の価格の2分の1を超える部分に相当する部分が滅失した場合ということで,災害によって一部滅失した建物について,その価値を考えて,建物の価格の2分の1を超える部分が滅失してしまっているというところを前提にして考えているところでございます。 ○岡山幹事 もう少し分かりやすく補足して申し上げますと,災害が起きる前のマンションの価格というのは,恐らく築年数等々からして推測できると思うんですね。それと,復旧工事に要する費用を比較して,どちらが2分の1を超えているか,超えていないかという,そういう基準でもって大規模一部滅失したかどうかということを判断するというのが恐らく実際的な場面になろうかなと思います。 ○山田部会長 最初の細谷さんの質問がそこにありましたので,ちょっと私からも一言申し上げたいことがあります。第1の御議論でお二人か,もしかすると3人いらっしゃったかもしれませんが,大規模一部滅失というこの概念を使うことについて消極的な御意見があったかと思います。ただ,鎌野委員からも御説明があったところかと思いますが,現在の我が国のマンションに関する法制がありまして,建物区分所有法と被災マンション法でございますが,それらが大規模一部滅失あるいはそれと連関する概念を前提にして組み立てられておりますので,それに対するある種の特別法を作ろうと,あるいは一定の手直しを加えようということですので,既存の概念との連関は必ず図らなければならないと思います。その上で新しい概念をこの局面では必要だということであれば,二つの概念相互間の関係は付けながら議論をしていくということになるのではないかと思います。   したがって,事務当局は大規模一部滅失という概念を用いて用意してこられましたので,何度でも大規模一部滅失とは何なのかということはお聞きになっていただいて,ただ,それとは違う全壊,半壊で議論しようとか,大破,中破のほうがよいのではないかというのですと,現行法と関係を付けないといけませんので,大規模一部滅失をまずは軸にして御議論を頂けるのがよいのではないかと思います。これが私からの意見です。   その上で,事務当局と,それから国土交通省からたくさんの方が参加してくださっていますので,お願いでございますが,冒頭の国土交通省からの御説明にもありましたように,災害救助法等では全壊,半壊,一部損壊という系列があり,そして,今日資料を用意いただいたものでは,それとはまた別の安全性の観点から倒壊,大破,中破というのがございました。それと直前に川副さんが御説明くださった大規模一部滅失とは建物の価格の2分の1超に相当する部分が価値の上で滅失したというのとは,恐らく1対1には対応していかないでしょうけれども,大体どういう例だと民事法上の概念ではこれに当たるけれども,安全性の観念ではこれに当たると,あるいは災害救助法ではこれに当たると,何かそういうものの関係がもしできるならば,この場での議論を進めていくために手元に共通して持てると,少しずつイメージが具体的になっていくのではないかなと思います。ですので,「第1 総論」のところでは,大規模一部滅失について消極的な御意見がありましたが,まずはこの概念を使いながら,そして,この概念をよりクリアにしていくということで進めていってはどうかと考えております。 ○住本幹事 すみません,おっしゃるとおり概念は置きまして,具体的な中身,御説明が初め局付からあったんですが,その後は岡山参事官が言われて何となく分かった感じはするんですが,現場を預かる省庁としまして,現場で明確な基準でないとやはり困ってしまうと。したがって,概念といいますか,基準ですね。基準として先ほどの御説明ですと,補修費用と何かを比べているのか,一番初めのもう政令である建物の価格の2分の1超に相当する部分というのは,分かりづらい表現ではないでしょうか。大規模な損傷があれば2分の1どころかもうほとんどゼロに近い評価額にしかならないでしょうか。基準としてどういう基準なのかを再度お教えいただけませんでしょうか。 ○岡山幹事 一応繰り返し申し上げますと,当然これは災害が起きた後の価格で決めるわけにはいきませんので,災害が起きる直前の建物の価格,それは恐らく築年数等々で大体鑑定すれば分かるのではないかなと思うんですけれども,そういう価格と,それと復旧に要する費用を比較して,それはどちらが高いかどうか,それは要するに2分の1を超えるか超えていないかということで判断するということが実際的にはなるのではないかと思っております。 ○垣内幹事 今の点に関連しまして,確認のための御質問なんですけれども,大規模一部滅失に該当するかどうかという点,これは先ほど森田委員の御発言でもあった点かと思いますが,これは第一次的には区分所有者等がしかるべく鑑定を依頼するなど,復旧にどれぐらい費用が掛かるかという点についての鑑定を依頼するなどして,自ら判断をすると,そういうことで,別の方法といいますか,別にこれが公的に何か判断されるというようなことはないわけですね。個々に区分所有者が第一次的に判断し,後でそれが問題になるとすれば,それに基づいた取壊し決議とか再建決議といったものの有効性の問題として争われることになると,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○川副関係官 そのとおりです。 ○垣内幹事 ありがとうございます。 ○森田委員 これは確認なのですが,「取壊し決議の適用の対象となる」というのは,これはいわゆるある種の取壊し決議の客観的要件として機能するものではないという前提であると理解してよろしいでしょうか,つまり。大規模一部滅失に当たるかどうかというのは,それ自体が直前の建物の価値と復旧に要する費用とを比較して合理性がないと判断された場合のことを言うのであって,大規模一部滅失に当たるかどうかについては区分所有者がみんなで判断しましょうということであって,それ自体が客観的要件で,取壊し決議はあったけれども,決議に反対した一部の区分所有者が大規模一部滅失に当たらないから,そもそも決議は無効だという訴訟が起きることは想定していない,そう考えないと不合理な事態が生ずるように思いますけれども,そういう前提でよろしいでしょうか。 ○岡山幹事 すみません,確認なんですけれども,森田委員が言われた客観要件というのがちょっと私の中では今理解ができなかったんですが,私が今,垣内幹事とやり取りさせていただいたイメージとして申し上げますのは,大規模一部滅失に当たるかどうかというのが取壊しをするかどうかの一つの要件になっているというふうに理解しておりまして,もしその大規模一部滅失に当たらないにもかかわらず,その取壊し決議あるいは再建決議がされたということであれば,その決議について瑕疵を帯びるというふうなイメージでおったという次第でございます。 ○森田委員 そうすると,大規模一部滅失に当たらないから決議は無効だという訴訟は,これは区分所有者が1人でも提起することはできますよね。その間は建物の取壊しは止まるのでしょうか。そうすると,先般の建物区分所有法の改正のときに問題となって削除された,いわゆる過分の費用というのと同じ機能をもつことになる客観的要件をここでは課すということになるわけですけれども,私の先ほど理解したところはそうではなくて,要するにこのまま取り壊さないのがよいのか,それとも費用を掛けて復旧して,それによって効用を回復するのが適当なのかどうか,そのオプションがある場合に,その合理性を5分の4の多数で判断すれば,もう取り壊してよいのであって,そうだとすると,大規模一部滅失に当たるかは区分所有者自身が判断する対象であると考えるべきではないかということです。そもそも客観的に見てオプションがない,つまりおよそ復旧の可能性がないという場合には先ほどの全部滅失に当たるので,取壊し決議をするまでもないわけですが,他方で,その判断も微妙である場合がある。このような場合に,部会資料1の4ページの説明にあるように,「その復旧には多額の費用が掛かることが想定され,経済的合理性の観点から建物を維持するのが困難である場合」には取壊しを認めてはどうかということではないのか。そういう観点から見ますと,多数決要件とは別に,大規模一部滅失に当たるかどうかという要件が課されていて,それは当事者が判断することではなくて,裁判所が客観的に要件充足を判断することになる客観的要件であるということにはならないのではないかと思ったのですが,先ほどのお答えでは,客観的要件であって,やはり別個に要件充足を争うことができるという前提でお考えということでしょうか。 ○岡山幹事 繰り返しになりますが,大規模一部滅失に当たるかどうかというものは,その取壊し決議をするかどうかの要件の一つだというふうに私どもは理解しております。先ほどの御説明の中で,この震災によって損傷を受け,その区分所有建物について経済的合理性の観点から建物を維持することができないというのは,すなわち大規模一部滅失に当たる建物については,ほぼそういうふうなことは言い切れるであろうと。ただ,その大規模一部滅失した区分所有建物について,現行法上は復旧というものか,あるいは建替えというものしかないけれども,もう一つ今回は取壊し決議というものを設けることによって,その一つの選択肢を増やそうという意味です。ですので,大規模一部滅失に当たるかどうかということを十分吟味しないで取壊しをしたということになれば,その決議そのものについては争うことができるということになるでしょうし,実際その争っている過程でそれを止めるんですかということで今,森田委員からお話がありましたけれども,それを実際決議無効確認訴訟をしている間については,仮処分等で工事を止めるということになるのではないかと思われます。 ○山野目委員 この大規模一部滅失という概念が分かりにくいという御指摘が前の論点のときから頂いておりますし,住本幹事から,現場も預かることから,どうしたらよいか,というふうに言われれば,それはごもっともなお叱りであるとも感じます。私のほうから,大規模一部滅失の概念の理論的な性質について私の理解するところと,それから,実際上の運用について自分がイメージしているところを少し申し上げてみたいと考えます。   理論的な性質から申し上げますと,一つ前の論点で鎌野委員が御指摘になったように,これはその建物が物理的にどのような状況になったかということを示そうとしている概念ではなくて,財産的価値の観点からどのような状況になったかということを指し示そうとしている概念であると思います。そうしますと,現場にいる関係者の間で大規模滅失に当たる,当たらないということについて大きな争いがなければ,その理解で進めていって実際上よろしいと考えますが,疑義が生ずるのであれば,それは財産的価値の判定の問題でありますから,不動産の鑑定評価に関する法律に基づいて,一番精密にするときには不動産鑑定士に経済的価値の判定を依頼することになるものであろうと想像されます。そこまで厳格な手順を採るか,そうでないかということは事例によると思いますし,その辺りについての関係区分所有者の間の議論というものは,川副関係官から紹介がありましたとおり,恐らくこの取壊し決議の法制整備の中で,集会の前に説明会を催したり,それから,いろいろな資料を提示しなければいけないということになっていくでしょうから,そこでのディスカッションの積み重ねの中で,もう不動産鑑定士に頼んでみてもらわなければ困りますという意見があれば,そういう手順を採るでしょうし,そういう声がなければ関係者の了解の上に話を進めるということになるのであろうと思います。   いずれにしても,この大規模一部滅失に当たる場合に限って取壊し決議ができるという趣旨の提案を今頂いていると私は理解いたしました。   そうしますと,これは現場の関係者の5分の4が賛成したから大規模一部滅失に当たるというふうな理解になるのではなくて,5分の4の賛成があったかどうかとは別の問題として大規模滅失に当たるかどうかが判断されるということになりますから,民事の事件を扱う裁判所に出訴されて,大規模滅失に当たらないから取壊し決議がされたけれども,あれは効力がないということの確認請求訴訟を起こされれば,それは訴訟としては理論的には成り立つと考えます。もっとも,その種類のことは,この種の制度には常に訴訟を起こして最高裁判所まで争って,その判断があるまで事業が止まってしまうかもしれないという話はあるものでありまして,それはそれで,もし深刻な問題であるとすれば,別な観点から引き続き検討されるべきであると考えます。   それから,実際上のこの概念の運用について自分が感じているところですが,これは既に事務当局から御紹介があったように,現行法の61条で既に用いられている概念でありまして,61条を前提に阪神・淡路大震災のときの現場での事案処理がなされたものでありますから,現実に使われてきている概念であって,実務上ワークしない概念ではございません。津久井幹事から,よりつまびらかに状況を御存じでいらしたら,場合によっては補足いただきたいと感じますが,私があのときの神戸を見ていた感じでは,あの震度7が来てガタガタッとなって,かなり壊れたよというときには,大破のときはもちろん中破,小破も含めて,軽微のときを除いては,大抵は大規模一部滅失であろうと感じます。部会長から半壊,全壊とか大破,中破,小破と無理に対応させることはできないが,何とかしてみよという指図があったので今一所懸命してみるところですけれども,大抵は大規模一部滅失に地震の打撃の場合にはなるという理解で,神戸の現場は運用してきたのではないかというふうにイメージしておりますし,この概念の当事者の理解がもめて,それを神戸地方裁判所に訴訟が起こされてひっくり返ったという例は見たことがありません。理論的にはひっくり返すことができるのですけれども,それはそのようななことにはならないような運用が少なくとも過去の事例ではされてきたものであろうと思います。   補足ですけれども,この,建物の価格の2分の1超,2分の1以下という分け方は,マンションの問題を初めて御覧になる方にとっては,初めて見るよというふうな印象をお感じになるかもしれませんけれども,日本で運用されてきた概念でありますし,加えて外国法制もこういう区分を用いて,この場における概念整理をしているものという例は見られるところでありますから,それほど奇異なものではないということも申し添えさせていただきます。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○鎌野委員 今との関連で私も山野目委員と同じような認識を持っていて,ちょっと確認をしたいんですが,補足ですけれども,多分阪神・淡路大震災の後は,これは中城先生あるいは津久井先生から補足を頂ければと思うんですけれども,不動産鑑定協会でしたかね,カウンセラー協会でしたかね,それが簡易認定というようなことで実務上はかなりそれが役に立って,そういった方々の判断で余り事前に紛争は生じなかったと。それで,過分の費用というのが裁判で争われたけれども,これが大規模一部滅失なのか小規模一部滅失なのかあるいはそれにも至っていないというようなことで,恐らく混乱はなかったのではないかと。それから,仮に裁判所に行ったとしても,そういう裁判例が実際にあったかどうかちょっと私の記憶が定かではないんですけれども,過分の費用の場合もそうでしたけれども,裁判所のこれは傾向で理論ではありませんけれども,5分の4というそういった重みというのはかなり事実上尊重されるというような判断が過分の費用の判断ではなされたと思います。もし津久井先生あるいは中城先生からその辺り,何かその当時のことで補足していただければと思います。 ○山田部会長 鎌野さんから御発言のあった中で過分の費用が何度も使われましたが,これは改正前の建物区分所有法の建替えのためのいわゆる客観要件と言われたものでございますね。 ○鎌野委員 そういうことです。 ○山田部会長 津久井さん,それから中城さん,いかがでしょうか。もしございましたら。 ○中城委員 それでは私のほうから。阪神・淡路のときには地震動による被害が大きかったものですから,御指摘のとおりだと思っておりますし,それゆえに簡易な評価でも判定がついたと,こんなふうに思います。鎌野委員御指摘のとおりだと思います。   ただ,これからのマンションのことを考えますと,先ほどどなたかの委員もおっしゃっていましたけれども,空き家が多くなっていて,その区分所有関係から離脱をしたいという潜在的な思い。たまたま震災に遭って,それほど重大なケースではないけれども,この2分の1を奇貨として,そういうふうな方向に動こうということがなくもないと考えられますので,不動産鑑定の観点からしても,建物の価格のところはもう少し明確にしたほうがよいのではないかなと思います。先ほどの御指摘ですと,従前のマンションの価格とおっしゃられましたので,区分所有権と,それと一体となっている共用部分の共有持分と敷地利用権一体,と通常は理解するんですが,建物というふうに国土交通省的に理解をすると,建物そのものとしての値段ということになりますから,そこら辺りで意見の齟齬がありますと,従前のマンションの価格の中の一部としての建物部分の値段なのかというような解釈も成り立つ余地がありますので,その辺りは少し明確にしたほうがよいのではないかなと思います。 ○津久井幹事 先ほど来御指摘のとおり,阪神・淡路大震災でこの2分の1超か否かという点は,講学上いろいろ議論はされたものの,現場ではそれほど多く問題になったという印象はございません。過分の費用という客観要件と異なり,この2分の1が問題であるというような議論もほとんどなかったという記憶でございます。   一方,その概念が複雑であるというのは,この私法の中で生じている問題ではないと思います。私の理解では,五つほど壊れ方について評価概念があって,一番通有しているのは,各地方自治体が認定する全壊,半壊等。これは自治体が行政処理のために使う概念です。それから,先ほど出た大破,小破という被災度区分判定と,あと応急危険度判定という発災直後に行う赤紙,青紙,黄色紙を張るものは建築学的な保安上,安全上の概念でありまして,価格うんぬん入ってこない評価基準だと理解をしております。   それから,保険が適用されるときに,全損,半損,一部損というのがあって,飽くまでも保険契約に基づく保険金の発生要件として考えられる問題で,全壊,半壊によく似ているんですが視点が違う。そこにこの私法上の概念が出てくるわけです。滅失しているかどうかは,被災地の中ではかなりマイナーな分類になるので,なじみにくいことですが,先ほど出たように,保険会社が決めたとか,自治体が判断をしたとか,建築学上の判断で適否が決まるというのは,やはり個々の私有財産である区分所有権の帰すうを決するときには適当な判断でないだろうと思いますので,やはり別の概念を置くことは,法律実務家からすれば違和感もありませんし,自然なことではないかと思います。それらの対応関係が複雑で問題だということは,それぞれの場面で同じようなことが言われていて,これはこの場で検討するというよりも,やはり災害法制全体の中で考えていくべき問題だと思います。山野目委員の繰り返しになりますが,阪神・淡路大震災には少なからず先例があって,それを踏まえて法制を検討するということであれば,大規模一部滅失という概念を軸にして新しい法制を考えるというのが私は好ましいと思います。 ○住本幹事 ちょっとしつこいようですけれども,マンションの補修,それから建替えにつきましては,私経験から交渉時にもめたのが積算費用なんですね。まず,補修方法をめぐってもめますし,それから,その積算見積もりはいかにも積算資料があって客観的に出てくるように見えますが,相当幅があります。したがいまして,先ほどの基準,岡山参事官のほうから修補費用が2分の1を超えるというのは,非常に文書上,法律上はきれいなように見えますが,実際上は幅があり,それをめぐって激しい争いになるような経験もしました。また,不動産価格についても,不動産鑑定士を所管している国土交通省として言うのもなんですが,当然のことながら一定の幅が出てきますので,そこをめぐっても争いがあります。ただ,それを前提にして恐らくここを先ほど岡山参事官のお話があったのは,ある意味,濫用を防ぐという意味での基準なんだろうと思います。先ほどお話がありましたこの大規模一部滅失を客観的に2分の1を復旧費用が超える場合というのは,ある程度の損傷があれば比較的多くの場合対象になると思われます。それを前提にしますと,実際に取壊しをする際には,この2分の1どころか3分の2とか4分の3ぐらいを超えるような場合に,実際には決議に掛けるのではないかと。そうしますと,ここにありますのは,相当基準として2分の1ということをおっしゃっていますけれども,それは飽くまで歯止めといいますか,濫用を防ぐという意味での効果としてお置きになったのかなと思ったんですが,もし岡山参事官,お答えいただけるのであればお答えいただいて,もし不都合であれば結構でございます。 ○岡山幹事 基本発想はちょっと固いかもしれませんけれども,やはり大規模一部滅失に至らない区分所有建物については,やはり区分所有法の根本の概念としては,建物として区分所有建物として一つの管理組合も結成して,建物がある限りにおいては,それを維持管理していくというのが基本思想としてあるんでしょうと。ですので,基本的に大規模一部滅失に至らないものについては,復旧は原則でしょうと。ただ,大きく壊れたもの,あえて大きくというふうに言わせていただきますが,大きく壊れたものについて,ではどうするんだという話になりますと,一応今の現行区分所有法でもやはり復旧という原則が出てきて,それから建替えというメニューが出てきます。そこで実際紛争になる場面,ちょっと違うことを言ってきますけれども,紛争になるときに今,住本さんがおっしゃるように,私も裁判所で執行事件をやっていましたので,非常にいろいろ不動産鑑定理論も含めてあるでしょうし,復旧の見積もり費用というものも業者さんによっては違うでしょうし,工法によっても違うと思います。そこは鎌野委員がおっしゃったことと重複するかもしれませんけれども,本当の意味で紛争になったときに,きちんと復旧に要する見積費用あるいは鑑定士さんに見ていただいた簡易鑑定の結果を踏まえて,それを5分の4という賛成が実際得られているということについて,一連の手続が踏まれているのであれば,それを裁判官としてひっくり返すというのは事実上,私は困難ではないかなと思いますし,やはりその重みはあるんだろうと思います。そういったことも実際しないで,いきなり見た感じで,もうこの建物は壊すぞというような話では実際困るのではないのかなと。それはやはり区分所有法の元々持っている建物を維持管理していくという理念から外れるのではないかと。そういった意味で濫用を防ぐというふうに平たく言えば,そういうふうになるのかもしれません。 ○山田部会長 いかがでございますか。違った話をさせてください。会議開始から2時間が経過いたしましたので,休憩に入りたいと思いますが,いかがでございましょうか。   それでは,休憩を取らせていただきます。           (休     憩) ○山田部会長 それでは,審議を再開したいと思います。   空気も入れ替えていただきましたので,ちょっとリフレッシュしたかと思います。   それでは,「1 適用の対象となる建物」については,相当御議論いただきましたので,「2 多数決要件」について御質問,御意見を頂戴したいと思います。   国土交通省の方から参考資料4に関連して御発言がおありでしょうか。 ○杉藤幹事 それでは,多数決要件の議論に資していただくということで,参考資料4でございますけれども,これは,本来は例えば今回の大震災における解体等の検討されているマンションについてこの合意形成がどのぐらい同意が得られるあるいはなかなか困難だというデータが直接採れればよかったんですが,残念ながらちょっとまだ把握し切れておりませんので,間接的でございますけれども,私どものほうでマンション総合調査というのをやっておりまして,その中で特に空き家率と賃貸化の率につきましてデータがございますので,御紹介をさせていただきます。   グラフの左側でございますけれども,分譲マンション内の空き家率ということで,特に年数がたっていきますと,だんだん空き家が増えてくるというような傾向がございまして,例えば昭和45年以前という欄を御覧いただきますと,これは調査時点でもう築40年近くという状況になりますが,例えば赤いところを見ていただきますと,赤の部分が空き家率が2割から5割,それから,更にその右の部分が5割以上が空き家というものでございまして,例えば2割以上空き家になっているものが全体の24%,4分の1近くあるというのが実態でございます。当然新しいものほど空き家は少ないということでございます。   それから,右側でございますけれども,同じく分譲マンションの賃貸化,借家化ということで,当初入居者が代替わりされるとか,老朽化が進んでしまったとか諸般の事情で,古いものですと賃貸化が進行していくということで,例えばこれも同じく昭和45年以前にできたマンションを御覧いただきますと,この赤と濃い茶色っぽい部分ですね。2割以上が賃貸化しているというストックが25%,これもやはり4分の1ぐらいということになってございます。仮にこういった,また,古いマンションほど一般に地震があった場合に被災の程度も大きいであろうと推定されるわけでございまして,こういったマンションが実際に被災してしまった場合に,空き家なり賃貸化していれば必ず連絡がつかないかというと,そういうわけではありませんけれども,間接的に考慮すべき数字として,今このような実態にあるということでございます。   それから,今回の具体的なデータはまだちょっと今調べておりますけれども,やはり定性的に伺っておりますのは,相続人が不明であるとか,あるいは特に現所有者が亡くなったりあるいは行方不明になっているといった場合,あるいは遠隔地,外国にいらっしゃる場合,それから,被災後避難所や遠方に疎開とか避難をされている場合,こういった場合も少なからずあるというふうに伺っておりまして,平時と異なりまして,大規模地震の後というのはかなり特殊な状況に置かれるのかなというのが実態でございまして,御議論に当たりましては,こういった事情も踏まえて御意見を頂くとよろしいかなと思います。   以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。ほかにございませんでしょうか。「2 多数決要件」についての御意見,御質問。 ○垣内幹事 今の御説明について1点御質問させていただければと思うんですけれども,この頂いた表,グラフですと,建築時期別に四つのグループに分けていらっしゃるわけですが,これは各グループのそれぞれのボリュームというか戸数がどの程度あるのかというのはお分かりになりますでしょうか。 ○杉藤幹事 ちょっと全てはあれなんですけれども,例えば昭和55年以前というのがございます。これはたまたま新耐震基準か旧耐震基準かの分かれ目にも一致しているんですけれども,今マンションが全国で579万戸とちょっと前で推計しておりまして,そのうちこの旧耐震のものが106万戸ぐらいじゃないかというようなことで,ボリューム感としてはそういった形になろうかと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。多数決要件について,いかがでございましょうか。 ○根本委員 先ほど来の御議論とのつながりもあるんですけれども,非常時における復旧・復興を早くしましょうという趣旨が法律にあるとすれば,当然に平時の要件である5分の4を下回るような率を設定しておくことがスピードを速めることにつながるというふうに考えます。したがって,通常の建替え要件よりも低く設定するのが妥当なのではないかという感覚を持っておりますけれども,それではいかんという御議論があれば是非私を説得していただく御議論を頂ければと思うんですが。 ○山田部会長 いかがでしょうか。5分の4が適切だろうというお考えの方でなければならないわけではないのですが,今,根本さんからちょっとお求めもありましたので,もし御発言を頂ければと思います。事務当局からは重ねての説明になるかもしれませんが,5分の4ということで準備された理由を端的に説明していただくと,どうなりますか。 ○川副関係官 5分の4ということで提案させていただいた理由としては,先ほど述べたとおり,建替えと同じような場合と考えられるのではないかということで,元々取壊しというものは全員合意ということが原則になっておりますので,その上で災害が起こった場合で,しかも,大規模一部滅失というようなそういう取り壊すことに一定程度合理性があるような建物ということなのであれば,その全員合意を若干緩和するという,要件を緩和していくということも可能なのではないかということを考えまして,そして,具体的なところを考えてみたところ,現行の区分所有法上では5分の4の建替えというものや,先ほどありました大規模一部滅失の復旧というのは4分の3で,さらに3分の2や2分の1というもろもろの要件が一応あるわけですけれども,やはり現行の区分所有法上の多数決要件と整合性を持たせるということも必要だろうというふうに考えておりまして,その中では先ほど言った全員合意を緩めていくんだとすれば,まずは5分の4なのかなということを考えております。   先ほど申し上げましたとおり,反対した区分所有者に対してどのような対応をとるかということとも関連いたしますけれども,決議に反対した区分所有者の財産権を一定程度制約するというところからすると,建替えの場合と一番近いのではないかということが一番大きな理由でございます。 ○山野目委員 2点申し上げます。1点目は民事の法制の在り方としてここで問題となっている取壊し決議の制度を入れるとすれば,一体どのような多数決が望ましいのかという観点から抱く意見を申し上げますと,ただいま川副関係官から御説明があったことは誠にごもっともで,本来全員一致であるべきものを被災という非常事態に鑑み,緩和しようというお話でありますから,本来は全員一致であるというのなら私は10分の9ということは大いにあり得るのではないかというふうにも個人としては考えています。   ただし,既存の建物区分所有法制の建付けとの整合性等もありますから,10分の9という数字を今後の中間取りまとめ等に反映して入れてくださいというところまで強く提案申し上げるつもりはなく,参考として申し上げるのにとどまりますが,そこまで言わないとすれば5分の4とすることが穏当なところではないかと感じます。被災の場合でない局面での現行区分所有法62条の建替え決議の制度は,敷地の売却に発展する可能性が想定されていない局面で5分の4という多数決要件を掲げているものでありますけれども,ここで議論しているこの制度は,必ず敷地売却にいくというふうには決まっておりませんけれども,可能性としてはそれに発展する可能性があるものでありまして,ここの多数決要件はきちんと組んでおかなければ,財産権の在り方にとって非常に深刻な事態になるということが危惧されるところでありますから,慎重に御審議いただきたいと望みます。   それから,もう1点申し上げます。10分の9にせよ5分の4にするにせよ,あるいは5分の4を下回るものにせよ,いずれにしても反対者がいるときにたとえ極めて僅かであっても,その反対者の意思を押し切って取壊しをするということは非常に社会的な摩擦の,しかも,被災地における社会的摩擦の要因になって深刻な事態を招くであろうと思います。民事の法制としては,しかし,そういうことについてはもう手当てをすることはできませんけれども,恐らく今般,ここの部会で審議しているこの法制が整備された暁には,これと併行して,もう少し事業法的な色彩というふうに言ったらよいでしょうか,適切な表現が少し思い浮かびませんけれども,5分の4であれ何であれ,それぞれのマンションの合意形成が円滑に運ぶようなノウハウとかマニュアルを提供するような法制の整備が図られるとよいと感じます。現在の法制の状況を確認しますと,建替えの円滑化のためには法制整備が用意されているものでございますけれども,あのようなアングルをもう少し拡げていっていただくようなアイデアがあってもよいのであろうと感じます。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○根本委員 こだわるつもりはございませんけれども,今回の東日本大震災の中でマンションのケースとは違いますけれども,多くの場所において合意形成の遅れのために復旧・復興が進まないという事例が現存し,今日もそれが継続をしております。それは非常に厳しい合意形成の要件が前置されているからだというふうに理解をしております。こういうところで,当然今の法体系の中でこの数字が出てくるということは理解はできるんですけれども,非常時において早く物事を進めるという視点を失ったままでよいのかということは常に問いかけざるを得ない状況が今あると思います。この後訪れるであろうものに対応するものでございますので,東日本大震災よりもはるかに大きな規模で物事が襲ってくるということが予想されますので,そこを早くくぐり抜けるための制度を作らなければいけないだろうというふうに考えます。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○津久井幹事 最終的にどの数がよいのかというのは政策的な判断によるものだと思いますが,ただ,早期の復興を図る上でも,やはり多数決要件は少し重めに設定しておいたほうがよいということを申し上げます。   まず,反対者はどういう方かというと,別に変わった方ではなく,価格の2分の1というのが大規模一部滅失の要件ですので,実際住める住戸が対象になることはたくさんあると思いますが,阪神・淡路のときにも,住めるのになぜ建替えをするのだというようなことを訴えて4件ほど峻烈な争いを繰り広げたマンションがありました。やはり多数決というのは,法律の最終的な決定要件であるんですが,なるべく全員合意に近い形でやらないと,事業というのは成り立たないというのが阪神・淡路のときの感覚でありまして,多数決というのはもう本当に最後の最後だという姿勢で取り組んだマンションは,最終的にうまくいったのに対し,逆に多数決に早期に踏み切ったマンションが長期間の法廷紛争を繰り広げたということがあります。   やはり多数決の重みというのは,数が多いほうが重みがあるので,住むことが可能なのに壊すだけでとにかく建替えもしないし復旧もしないで単に失うだけという決議をするに当たっては,やはり居住する方の利益を相当程度重く見ないといけないのではないか。そういう観点からすると,先ほど10分の9という数字も出ましたが,重い目の要件にしたほうが説得力があるんだろうと思います。   なるべく早い目に決着を付けたいということで多数決を緩和すると,それだけ争う人たちの数も増えていくことになるので,やはり私は5分の4というのは阪神・淡路のときから見ても,無理な数字でもないと思いますし,また,現実的な数字だと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○住本幹事 罹災都市法と同じように考えまして,今,東京直下型,それから南海トラフの問題がクローズアップされていまして,耐震化によって数千人から数万人助かるというもう公式発表が出ておりますので,耐震化も進めなければいけないという中で,復旧をともかく急がなければいけないという今回の目的からしますと,ともかくスピードアップだと。これは皆さん一致しているところだと思うんですが,2点申し上げたいのは,一つは先ほど岡山参事官にちょっとしつこく聞いてしまって大変恐縮だったんですが,1の要件とのバランスなんだろうなと。要は1の要件が非常にハードルが低いのであれば,2でバランスを取るんだろうと理解しています。   二つ目は,実務上,実際に私,強制収用なども担当していたときに,実際に御案内のように,収用を裁決する大部分が相続争いか不在者に対するもののために収用裁決を得て供託をするための裁決でした。裁判官の方々は御案内かもしれませんが。そうしますと,この場合であっても災害が起きますと,やはり不在者の方々若しくは亡くなったために相続人が多数になって,相続人が不明になるというケースが相当出てまいります。特に直下型になればなるほど。そうしますと,その場合の手続ですね。   例えばこれは逆に教えていただきたいのは,例えば普通の会議であれば,不在者が見付からないときは出席のうちの何分の1とか,この5分の4というのが全員の5分の4なのか,不在者を除いて5分の4でもよいではないか,それとも,若しくはこれも手続法の話になりますが,不在者がいた場合の手続を迅速化するというような工夫をしていただけると,スピードアップが図られるのではないかと。もちろん決議要件の緩和ということは,1とのバランスがあろうかと思います。それとのバランスと,もう一つは今言った手続的に決議のやり方若しくは手続の迅速化ということで工夫できないのかということを申し上げたいと思います。   以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。多数決要件,いかがでしょうか。 ○鎌野委員 私はちょっと違った観点から意見を申し上げたいと思いますけれども,これは建替えにもひょっとすると共通するのか分かりませんけれども,ここではその話はさておいて,やはりこういった事業が円滑に進むか,復興が円滑に進むかという点は,余り多数決とは関係ないのではないかと。やはりこの被災の方の金銭的な問題に関わるだろうと。ですから,例えば公費解体というようなことが大幅に取り入れられれば,もう放っておいてもある意味ではかなり集まるだろうし,それから,不在者あるいは空き家というような問題は確かにあるんですけれども,それはある意味では日常的な問題で,それは今後に向けてかなりその辺りの対応というのを工夫することによって解決するということも可能であろうと。そうすると,やはり一番大きいのは金銭的な問題で,5分の4を4分の3に下げたからといって,必ずしも円滑にそれだけではならないし,それは主要な要因ではないのではないかと。それからまた,金銭の問題と絡みますけれども,これはこれからの議論ですけれども,恐らく4分の3にした場合,5分の4の場合も同じですけれども,そういった取壊し決議に参加するものがそれに賛成しないものに対しての金銭補償というのが問題になってこようと。それを考えると,5分の4の人で5分の1の金銭負担に応ずる場合と,それから,4分の3の人で4分の1の人の金銭負担ということを考えれば,必ずしも当然に4分の3のほうが円滑に進むということにはならないし,今言ったようなやはり金銭負担を考えたような場合に,余り多数決で現行の建替えの場合の5分の4という制度があり,それなりの財産権の重みということを考える際に円滑な復興ということで要件を言わば緩和するというか,むしろ団体的な強制を弱めるというのは望ましくてはないのではないかというふうに考えます。 ○山田部会長 いかがでしょうか。 ○沖野委員 お教えいただきたいことですけれども,取壊しと再建をセットにすれば建替え決議と同じ実質を担えるという点があります。ここから考えると,これと並ぶということが基準となった上で,しかし,それを緊急時ということで今緩和しようとしているならば,むしろ基準はそれよりも緩和すべきではないかという御議論も考え得るとは思うんですけれども,しかし,山野目委員がおっしゃいましたように,単純な取壊しと再建のセットではなくて,敷地の売却という完全な解消をもたらしかねない,その見通しが分からない中で,その可能性も大きくあるというのを同じにしてよいかというふうに考えますと,現行の法制とバランスをとった形でどちらにいくかというのは,この両者をどう考えるかという点が関わるのではないかと思います。   それで,伺っておりまして,反対者の意思に反して強行するという点は非常に問題だと思うのですが,先ほど来指摘されておりますのは,反対者というより不在者といいますか,掌握困難者といいますか,そういうものが多いという中でどうなのかという問題だと思われます。その問題をどう考えるのかですが,意見も聴いてもらえずにそのようになってしまう人たちというように考えるのか,それとも積極的に反対しているわけではない人たちというように評価するのか,これも評価は両方あり得る感じがするところです。そこでお伺いしたい点,教えていただければと思う点ですけれども,大規模な災害の場合には,区分所有者の把握が困難であるということが一つあってという点を言われたのですけれども,他方で,ここで前提としておりますのは,大規模とは言っても一部滅失であり,しかも,それは危険性というよりも財産的な価値で評価する場合であって,なお居住可能であるというような場合ではないかと想定しています。そうすると,例えば災害に遭って亡くなられてしまってとか,あるいはもう所在が全然分からないという事情ですが,この対象とするマンションの場面などからすると,必ずしもそういう事情が多いわけではないというふうには言えないのだろうかということが一つです。大規模とはいえ,一部滅失というような場合には,一般的な災害地の状況における人の把握の困難さと違う面がありはしないかと言えるのかというのが1点目です。もう1点は,しばしば合意の取付けに困難を来し今回もそうであると言われるその合意の取付けの困難の実際です。これも先ほど伺ったところですと,掌握困難よりもむしろ意見の対立が深刻なようにうかがいました。なお居住可能なものであるという面もあるだけに,1階部分での営業の利益を有する方ともっと上層階での居住者の間で,建て直したほうがよいとか,いや,とにかくは取り壊して次に進もうという,そういう意見の対立があって進まないということであるのか,そもそも人が分からなくて連絡もとれなくて合意も何もあったものではないというほうが問題になっているのか,もしその実情について何らかのデータや情報があれば教えていただくと参考になるのではないかと思います。 ○山田部会長 実情,いかがでございましょうか。ただ,実情といっても東日本大震災の実情はどなたかに聞けば分かるかもしれませんし,どうにかすれば入手できるかもしれませんが,多分今後起きる災害は千差万別なんだろうと思うんですね。ですから,それぞれ御意見をおっしゃっている方々,どうぞ。 ○西海関係官 国土交通省のマンション政策の西海です。   私自身,住宅局に来る前に復興とか救出,救助とかをやっていましたので,その感覚から,現場の感覚から申し上げますと,時間帯によってはマンションと違う場所で被災します。例えば津波があった場合には,沿岸部に例えば仕事とか行っていた方は,その関係で被災しますので,行方不明者が出るということは当然あり得ると思います。まずそれが1点ですね。   マンションが例えば先ほどの御意見ですと,一部残っていて,住めるかもしれない方がいらっしゃるということをおっしゃったんですけれども,時間帯によって皆様お仕事とかいろいろな形でそこのマンションから不在で,その違う場所で被災いたしますので,その方が行方不明になることは十分あり得る話で,実際私どもが救助をやっているときも当然,別にマンションとか住宅の近くに救助したわけじゃなくて,いろいろなところにいらっしゃってそこで被災しているということになりますので,そういうことも考慮した上で行方不明者の掌握困難者の取扱いについては慎重に御議論いただければなと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。実情をお話しいただきました。ほかにいかがでしょうか。 ○住本幹事 すみません,岡山参事官に質問なんですが,今の関連で。使用可能で住んでいられるのではないかということの御指摘を今頂いたんですが,この場合の大規模一部滅失の場合のイメージとして,余震が来たら危ないのでみんなで避難していようかというイメージの建物かと思っていたんですが,その辺はいかがでしょうか。 ○岡山幹事 大規模一部滅失という概念は,繰り返しですけれども,建物の2分の1以上が滅失という概念ですので,そういった面では今御指摘いただいている危険で住めないというマンションは当然含まれるんでしょうが,それ以上に概念的には広いのではないかなと思います。危険で実際上そこに住めないマンションというのがほとんど解体していくというのが現実的な区分所有者の多数の方が採るべき合理的行動だろうと思いますけれども,今回やはり大規模一部滅失という概念を導入してしまう以上は,それに限らない,実際客観的には住めるのかもしれないけれども,かなりの程度壊れているので,これを機会に壊すというふうなことももし区分所有者の5分の4以上の--仮に5分の4にいたしますね--大多数の人たちがそういう意思で動くということであるならば,それも是としようというふうには思っている次第でございます。 ○山野目委員 2点申し上げます。   1点目は今,住本幹事から御質問のあったことについて,私も自分の経験で少し申し上げますと,1995年の神戸の際に,神戸市内に限らず阪神間のいろいろなマンションを訪ねましたが,大規模一部滅失であると皆が思っていて復旧か建替えかを議論しているマンションでも住んでいるところはありましたね。ヒアリングのためにそこに入っていかなければならなくて,集会室に来てくださいと言われ,ややヒヤヒヤはしましたけれども,そこの皆さんきちんと水道と電気はまだつながっていて生活していましたね。そういうところもあるし,そうでないところもあるであろうと思います。   それからもう1点は,部会長に少し議論の整理をお願いしたいというふうに感ずる部分があります。今この多数決要件の議論をしている際に,確かに沖野委員の言葉で言うと,掌握困難者というのですか,集会における意思形成との関係でその人の意見や議決権行使の状況について注意を払わなければいけない問題があるという指摘はよく分かりましたし,もう一つ付け加えますと,行方不明のみでなく,被災の場合には死亡する人が出ますから,共同相続が多発して,相続の関係がどうなっているのかの把握が困難で,やはり似たような困った意思形成上の問題が起きます。中間取りまとめを練っていく過程で,これら部会資料では用意していないけれども,なるほど被災時に問題だね,というようなことは幾つかあると思うものですから,それは事務当局で整理していただければよろしいと思いますが,そのことと今議題にしている多数決要件との関係は,別に論理的に直結しないということは沖野委員が適切に指摘いただいたとおりですから,その辺りは,今後少し事務当局に今日は原案が出ていないから検討してよ,とお願いする事項と,今議論している事項をそれとして審議していただきたいということと,これらを何か区別して整理していただくのが望ましいのではないかと感じます。 ○山田部会長 ありがとうございます。多数決をどういうふうにすべきかということを事務当局から説明していいただきましたが,これまでの議論で,ここで必ずしも視野に入れていなかった,あるいは視野に入れていることをきちんと説明できていないということが出てきたということかと思います。パブリックコメントをするまでにできるだけ議論を深める,進める必要があろうかと思いますが,今日出たところは次回また整理して,事務当局から説明をさせていただくということとしたいと思います。しかし,なお多数決要件については,それぞれ御意見があろうかと思いますので,いかがでしょうか。これまで出てきた観点以外からの意見,あるいは重なるけれども,自分はこう思うという方がいらっしゃいましたら御発言いただければと思います。   よろしいですか。次回までに事務当局から国土交通省に直接問合せをして,情報を頂けたら頂くという方法もあるかと思いますが,私から一つ,杉藤さんにお尋ねをさせて下さい。五つのケースを最初にお話しいただきましたが,その裏には合意調達があれば取壊しになるけれども,そこに至っていないというものもあろうかと思いますが,先ほど一つ例を挙げていただきましたけれども,何かここで御紹介いただけるようなタイプがありますでしょうか。 ○杉藤幹事 ちょっと今日,本来間に合うようにもう少し調べられればと思ったんですが,申し訳ありません。もう少しお時間を頂ければと思います。ちょっと今日のところは御紹介したところまでということで。 ○山田部会長 分かりました。ありがとうございます。そういたしますと,山野目さんから御示唆があったところでございますけれども,大規模災害ということに伴って,通常とは異なる合意形成の困難さという問題としてどういうことが考えられるのか。それをこの制度に何を反映させ,どういうふうに具体化していくのかというような観点から,多数決要件についての議論を次回進める際の準備をそういう方向でしていただくといたします。今日は5分の4が適切だという御意見がございましたし,5分の4よりも小さな特別多数決で取壊し決議ができると,すべきではないかという御意見も承ったところでございますので,そういう状態でこの2については次回に持ち越したいと思います。   それでは,「3 決議事項」についていかがでございましょうか。少し技術的なことになってまいりますので,では,3は御意見がなかったということではなく,また戻ってくることをあり得るべしとして,「4 期間制限」についていかがでございましょうか。 ○山野目委員 4の期間制限について,基本は部会資料で示されている制度構想がよろしいであろうという意見を述べさせていただきます。その意見を述べさせていただくに当たって,自分の理解するところを一つ,二つ補足して申し上げさせていただきますけれども,一つは政令施行の日から起算して1年でありまして,いつ政令を制定して,この災害を指定するかは,その災害ごとに政府が臨機に,恐らく適切に判断するものであろうというふうに想像,想定しています。したがって,例えば先般の震災で言うと,3月11日から1年が経ってしまうと,もう駄目になるという趣旨の提案がされているのではないということは理解した上で,この提案を評価する必要があるであろうと思います。   その政令指定が災害発災から1,2か月でされるのか,6か月ぐらい経過するのか辺りも災害の性格によるのではないかと感じます。今般の大震災のときに法務大臣が罹災法と被災マンション法を適用しないと表明したのも,十分に熟慮の時間をお取りになったからであったと記憶します。   それから,しかし,そうであっても1年というのが被災地のリズムとして適切なのかどうかは,やや分からない部分があるであろうと思います。ですから,この辺りはもちろん事務局提案は,1年と決め付けているのではなくて,こういうイメージでパブリックコメントに付して,出された意見に基づいて時間の感覚をまた考えようという御趣旨であろうということも理解いたしました。   あと,最後に細かなことですけれども,ゴシックのほうが「政令施行の日から起算して」になっておりまして,補足説明の最後は「政令施行の日から1年以内」ですが,事務当局への苦言として,こういうのはそろえていただかないと困ります。被災地の時間のリズム管理というのは,この部会の主題にとって重要なことで,たった1日の違いでしかないかもしれませんけれども,御留意を頂ければと思います。 ○山田部会長 ありがとうございました。特に最後の点,ありがとうございました。 ○住本幹事 この場合は,更新は可能かどうかをお聞きしたいと思います。我々建築規制を掛けていて,結局更新を可能にするためには法律改正まで必要になりましたので,やはり先ほど山野目先生がおっしゃったように,状況によっては,そのときは1年以内と言っていたんですが,復興が遅れて再度延ばしたいという場合に延ばせるような意図があるかどうかの御確認をお願いしたいと思います。 ○山田部会長 現時点でどうお考えですか。 ○川副関係官 事務当局として,現時点としてそこまで決めるということは取りあえず考えてはおりません。ただ,その必要性の御意見次第というふうなことになるかと思います。その場合には,そのような規定を設ける必要があるようになると思いますけれども。 ○森田委員 すみません。期間制限をそもそも設けることの意味はどこにあるのかですが,部会資料1の説明では,「災害により重大な被害を受けた区分所有建物が長期間放置されることを防止し」とあります。しかし,1年の期間制限を課すと,1年経ってしまったら,取壊し決議より厳格なといいますか,建替え決議をしないと建物を取り壊せないということになって,かえってより長期間放置されるおそれが高まるように思います。そうすると,このような理由からなぜ期間制限を設けることになるのかというのが今一つしっくりと理解できないのですが,そこはどういう説明になるのでしょうか。 ○川副関係官 ちょっと余りきちんとはつながっている感じがしないかもしれません。申し訳ございません。期間制限を設けるというふうなことを提案させていただいているのは,まず,この被災時の特例という立法であるということ,そういうことからしますと,一定の期間の間に取壊しというのを実現していく,被災時の特例であるということから一般の通常時の区分所有の場合とは違っていて,災害によって重大な被害を受けた区分所有建物について考える制度であるということ。それから,正におっしゃっていただいたように,確かに期限を過ぎてしまうと成立しにくくなっていってしまうのではないかということですけれども,その期限を決めずにいつでもできるということになりますと,かえって意思合意形成というのが図られないというか,このときまでにやはり取壊しをすべきかどうかきちんと決めていくということが必要になるのではないかというふうにも考えています。 ○岡山幹事 補足いたしますと,おっしゃるとおり私には,森田先生の観点はなかったんですが,今,川副が申したとおり,一定期間までにやらないと全員合意になってしまいますと。なので,やはり早く合意形成をしないと困ることになるのではないですかという,そういう目標を見せることによって私どもは早く取壊し決議ができるのではないかという発想でいたわけです。ですから,おっしゃるように,その期間を過ぎたら全員合意なんてなおさら塩漬け状態になるのではないかという,そういう観点は少し今頂いたことで,ああ,なるほど,そういうお考えもあるのかなというふうに思った次第です。 ○垣内幹事 今の点とも若干関連するかもしれませんけれども,この期間制限の関係でどの程度の期間が実際合理的なのかという問題は,先ほど来議論になっておりました多数決要件をどの程度厳格に解するのか,どの程度合意形成が短期間で期待できるものであるのか,ということと関係するところがあるかと思いますので,その辺りも考慮に入れて検討する必要があるのかなという感じを持ちました。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○森田委員 今の答えは,そうすると,もう少し検討してみるということなのでしょうか。 ○岡山幹事 今ちょっと思い付きなんですけれども,正しいかどうか分かりませんが,後で議論いたしますけれども,一定期間復旧決議がされない場合の61条の何項でしたかね,相互の買取り請求ができる規定があったと思いますけれども,その期間制限との関係もありまして,やはりその並びで考えるのであれば,ある程度の期間制限を掛けないといけないのではないかという法制的な理由というのももう一つ裏側にはあるのではないかと思います。もう少し検討はしてみますけれども。 ○津久井幹事 被災地で取壊しのインセンティブになるのは,この法律ができてもそれ以上に公費解体のほうがずっと大きいんだろうと思います。公費解体の期限が皆さんの合意形成の事実上の期限になるわけです。今回もそうですが,自治体によってその期限の延長なりが区々になるわけです。それは自治体の財政事情やらマンションの有無などいろいろな事情によって違いがあるんだと思いますが,むしろこうして民事法制で1年というのを決めて,それに併せて公費解体の期限なども定めてもらったほうが市民にとっては分かりやすい仕組みになるんではなかろうかと思います。   ちょっと違うことを申し上げます。期限が1年で短いのではないかという懸念は確かにあるんですけれども,それは起こってみないと分からないと。東京で起きたら,それはもうどうしようもないのかもしれませんけれども,そういったことについては,特定非常災害の権利保全特措法というのがあって,同法は民事法であれ民訴法であれ,破産法だとかいろいろな期間制限について期間の延期をする特別法で,いろいろな分野のものを全部ひっくるめてやっています。もしそういった我々の想定を超えるような災害を念頭に置いて,その期間の延長なり何なり議論するのであれば,そちらのほうでしたほうがきれいなのではないかと思います。 ○山野目委員 森田委員がおっしゃったところの,1年経ってしまったら,かえってまずいのではないですか,というお話は,伺ってなるほどと感じた面と,1年と切ったほうが被災地に,1年が短すぎるかもしれませんけれども,何年かというふうに切ったほうが被災地にカレンダーを与える機能があるのかもしれないなというふうに感ずる部分と両面あって,実際的機能は何か少し評価が分かれて難しいと感ずる部分があります。それとは別に岡山幹事がおっしゃったこととして法制的な整合性の面ということは,それとは別の性質の問題として考えなければならなくて,御指摘になった61条12項の買取り請求との整合性と,それからもう一つ追加して申し上げますと,これ,災害発生時後に区分所有建物の専有部分の特定承継人になった者もこの制度の下に置かれますから,例えば今から見て阪神・淡路の1995年のときに,これは大規模滅失していたんだよ,ということになって,昨日マンションを買った人が5分の4で取り壊せるんだよ,ということを受け容れなければならない展開になることは,不動産取引の適切,円滑という見地から見ると問題がありますから,森田委員の御指摘はごもっともな部分と共に,併せて法制面のことも含めて引き続き御検討いただければというふうに感じます。 ○森田委員 期間を切ったときにそれが合理的であるというのは,取壊し決議をやろうと思えばできたけれども,期間制限がないとその間にそのような努力しないという場合には合理性を持ち得ますけれども,取壊し決議をするのが客観的に難しい状況にあった場合に期間を切ってしまうとこれは切り捨てになります。したがって,その前提状況によるというのが一つですね。   それから,この議論はやはり繰り返し出てきている取壊し決議の対象をどのように捉えるか,どういう建物を想定するかによっても異なってきて,大規模一部滅失の中にも,そのまま放置しておくと危険である建物というのも入ってくるし,一部は十分住めるのも入ってくる。いろいろなものが入ってくると,どれを念頭に置くかによって期間制限のイメージも違ってくるわけですけれども,その対象にどういうものが入ってくるかという,その大規模一部滅失という概念で仕切ることから始まって,そこが十分共有されているのかどうかという点の視点のずれがこの問題を含めて,全ての問題にかぶってくると思います。その辺りも含めて御検討いただければと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。期間制限についてはよろしゅうございますでしょうか。 ○沖野委員 時間を取って申し訳ございません。御議論を伺っていてということで2点申し上げたいのです。一つは,そもそも期間制限の要否あるいはそこでの考え方です。これに限らず全部を貫くものとして,なぜ災害時のときにこういう特殊な規律を設けようとするのかというところの根本がいろいろなところで問われるように思われまして,冒頭の御説明の中では,被災のときの特殊性として,対応について,そもそもいろいろなところで壊滅的な被害があるときに,最後の再建まで全部決めてしまうのは非常に困難であるということと,公費の援助等の期間の関係で,とにかく解体だけは速やかにやらなければいけないという点が示されました。取壊しまでは急いでやって,その後どちらでいくかはもう少しじっくり考えようという,そういう制度の導入が必要だとすると,この取壊しというのは比較的速やかに決議をすることが正に必要だということも一つの特殊事情としてあるのではないかと先ほど来伺って聞いておりました。   そうすると,一定の期間制限というのは,その制度趣旨に合っており,そうではないような利用の仕方のための制度ではないことを明確にするためにも,期間制限を設けると,そういう理由も考えられると思ったところです。   もう一点はその場合の期間の置き方です。これも様々な御意見が出たのですが,一律1年というような置き方がよろしいのか,更新というのも出ましたが,更新ではなく延長というようなことも考えられます。当然に1年とかではなくて,更に必要な期間があるとき,特別な事情があるときは更に延長する,それを政令を定めることができるとか,あるいは1年を最低とする合理的な期間という定め方ですとか,災害の規模に応じたメニュー方式で,1年,2年,3年の間で決めるとか,合理的な期間の決め方は工夫がいろいろあって,それはこれまでのデータと,そして,これからの可能性に応じて考えていくことになるわけで,こちらの定め方はいろいろなバリエーションがなお考えられるところではないかと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。大分いろいろなアイデアを出していただきましたので,また次回までにということで,ありがとうございます。   それでは,期間制限は以上とさせていただきたいと思います。   「5 その他」でございますが,(1),(2),(3)を併せて御議論を頂きたいと思います。御質問,御意見,いかがでございましょうか。 ○鎌野委員 (1)に関するもので,6ページの補足説明の「2 本文(1)について」の(2)のところでございますけれども,意見を申し上げたいと思います。   それで,ここの補足説明の御説明,ある意味ではもっともなんですけれども,被災マンション法で全部滅失のときに説明会というのを要件としていないと。そして,その理由が述べられている。これはこれで一つの理屈としては通ると思うんですけれども,私の理解としては,被災マンション法は1995年,阪神・淡路大震災の直後に作られ,そして,この説明会の開催という要件が入れられたのは,区分所有法の2002年改正ですので,ですから,被災マンション法制定当時はこういう説明会の開催という制度がなかったというようなこともあるのかなというふうに私は理解をしています。その上で,そういう前提の上で今回の法制審議会で被災マンション法の恐らく全部滅失の場合も検討する必要があろうかというふうにこの後のほうでは書いてあると思いますけれども,そうすると,全部滅失の場合にも従来の再建だけではなくて,土地の売却という選択肢もあるだろうと。そうすると,やはり全部滅失の場合にも説明会というのが必要になると。必要かどうかというのをやはり検討する必要があるのではないかということで,これはずっとこれまで議論してきた大規模一部滅失の取壊し決議の点ではございませんけれども,ちょっと忘れないうちにここの6ページの(2)のところにこういう説明がございましたので,私の意見として申し上げておきたいと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。ただいまの集会の手続でも結構ですし,あるいは(2),(3)に進んでいただいても結構ですので,いかがでしょうか。 ○吉政幹事 では,(2)について1点お伺いします。反対者に対する売渡し請求の御説明で,区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求できるという制度の導入を提案されています。この時価の算定をどのようにお考えなのかということを教えていただきたいということです。区分所有法の63条の4項及びそれを準用しているところの被災マンション法の3条との異同を教えていただければと思います。 ○川副関係官 時価につきましては,被災地の時価ということで若干難しいところがあるかもしれないとは思いますけれども,一応取壊しが実現した場合の状態の建物及び敷地の価格というようなことが考えられます。具体的には,大規模一部滅失した建物ということをもしも制度の前提とするのであれば,建物自体の価格というのは大分なくなってしまっているようなのが実情ではないかということでして,そうしますと,区分所有権と敷地利用権の価格といっても大きくは敷地の価格が占めるような形になると思います。そうしますと,どちらかというと建物が取り壊された後に敷地の価格が更地になって上がるのかもしれませんけれども,実際に区分所有建物が取り壊された後の敷地の価格から取壊しの費用を引いたような額が大まかには時価というようなものとしてイメージできるのかなというようなことを一応考えてはおります。 ○山田部会長 事務当局の考え方は今のとおりでございますが。 ○住本幹事 これは後ほど御検討を頂きたいんですが,先ほどから出ています補助金の部分をどう考えるのかという問題です。公共団体によっても違うんですが,この費用の部分の決議の提案事項の中に補助金の部分をどういうふうに入れていくんだということを想定しておいた方が良いと思います。補助金の交付も含めた具体的な手続のイメージはお考えになっておいていただきたいと思います。   以上です。 ○山田部会長 考えていただきたいということで,受けたようです。ほかにいかがでしょうか。 ○森田委員 2点について申し上げます。   まず,5の(1)の集会に関する手続要件ですが,この点は,先の建替え決議に関する改正の際に,多数決要件に加えて手続要件を入れたということの意味は,単に決議で多数を採ればよいというわけではなくて,多数決による判断が合理的であることを担保することにあったわけです。建替え決議の場合には,一定の費用を掛けて修繕をして区分所有建物を維持するのが適当なのか,それとも建替えをしたほうが合理的なのかについて判断をするわけですが,その点についての一定の合理性を担保するためには,単に多数決を採ればよいという形でなくて,その決議をする前の段階でその判断の基礎となるデータというのを説明会できちんと示したうえで判断を求めることが必要であるということです。説明会で判断の基礎となるデータをきちんと示していない場合には,決議の瑕疵になるということですから,合意形成の在り方としてもその点が望ましいということを法文上に示すことになります。そのような問題は,取壊し決議についても,先ほど多数決要件について議論された内容からいくと,部会資料の説明にもありましたように,経済的合理性の観点から,復旧するよりも取り壊したほうがよいという判断を区分所有者の5分の4の人がしているというその判断を支える基礎となるデータがきちんと示されていて,それに基づいて判断したということが5分の4の多数決の合理性を支える上でも重要なことであると思います。それから,先ほどの1の大規模一部滅失が客観的要件かどうかという議論がありましたけれども,そのように考えても実際に問題は生じないだろうという見方は,多数決がなされれば,その客観的要件を満たすということが事実上推認されるだろうということが前提とされていたわけですが,それが言えるためには,その点についての客観的なデータが説明会で示されていて,それに基づいて判断したということがあって,初めてそのような関係が成り立つのではないかと思います。したがって,集会の手続要件というのは,いろいろなところで支えている重要な要件だと思いますので,この点は是非入れる方向で考えていただきたいと思います。   今回の部会資料1では,まだ「建替え決議制度に関する同様の規律を参考にして」という頭出し的な記述にとどまっていて,具体的にいかなる規律が入ってくるのかは示されていませんが,この点は結局,経済的合理性の観点から建物を維持するのが困難であるというのは,一体いかなるデータを提示して,何を判断することになるのかという問題ですが,取壊し決議というのはどのような判断をするかということを法文上に示すのがこの手続要件の部分だと思いますので,その中身をもう少し入れた上で更に議論をしていただければと思います。   それに付言しまして,6ページの先ほどの(2)の再建の決議をする場合について現行の被災マンション法上は集会の手続は要件となっていないということについては,これは時期的な関係でそういう発想がない時期になされた立法であったという説明が一つだと思いますけれども,もう一つ理論的な性格の違いがあろうかと思います。再建の決議の場合には,既存の区分所有関係を終了させるのが適当かどうかという建替え決議と同じような問題というのは,既に建物の全部滅失によってクリアしていて,敷地の利用権だけが残っていて,それをどう利用するかという次のフェーズだけが問題になっているので,再建の決議については建替え決議や取壊し決議とは異なる考え方を持ち込むということも理論的にはあり得ると思います。したがって,再建の決議との比較でもって取壊し決議について説明会は不要だという理屈は,理屈として適当でないのではないかと思います。以上が(1)の関係であります。   (2)の反対者等に対する売渡し請求の関係でよく分からないのは,取壊し費用というのは誰が負担するのかという点です。先ほどの説明でいきますと,賛成者だけが費用を負担するかのようなお話だったのですが,ただ,この売渡し請求の中で先ほどの説明によりますと,敷地利用権の時価から取壊しに掛かる費用は控除するということですので,これは取壊し決議に賛成しようが反対しようが,結局全員が持つという前提で考えておられるのでしょうか。ただ,これも放っておくと危険だという場合には,そもそも建物の効用がなくて,それで一部滅失に当たるかどうかという問題もありますけれども,建物の価値はゼロと考えてもよさそうですが,他方で,そういう場合ではなくて,一部については住めるという場合には,その人にとってみれば,建物の価値はゼロではないという表現も使われておりましたので,そうすると,そのような場合に建物の価値がそもそもゼロでなくて,取壊しを前提とした費用をそこから引くというのも何かどういう算定になるのかなというのが必ずしもよく分からないところがありました。結局何をお聞きしたいかといいますと,取壊し費用というのは,一体ここで描かれている制度のイメージでいくと,どのような負担になるということになっているのかという点について,いくつか少し矛盾するような御説明が含まれたように感じたものですから,その辺りをまとめて分かりやすく説明していただければと思います。 ○川副関係官 実際に取壊し費用というのを負担する者というのは,最終的にその取壊しが実施される場面の区分所有者ということになるかとは思います。そうしますと,先ほどちょっと売渡し請求のところでありましたけれども,最初に決議に反対した方や催告で参加しないとなった,その参加しないといった方については,その前にその権利を売り渡すことによって離脱していくということになるので,そこのところで取壊し費用を持ってくださいみたいなことにはならないわけで,最終的にはその賛成者等が持つことになるのですけれども,先ほどの先生からのお話がありましたが,こちらで今考えていましたのは時価というところ,売渡し請求をした際に財産的な相当な対価をもらって反対者の方,取壊しに参加しない方が離脱する際の時価の算定のところでは,実際にその取壊しが実現された,すみません,先ほど言いましたように,一応取壊しの費用を引いた額というのを概念的にいうのではないかというふうに考えていまして,そうしますと,結局建物の区分所有者皆さんが場面時点は違うものの,平等に持つというような形にはなるかとは思います。 ○森田委員 そうしますと,取壊し決議に反対をして売渡し請求するメリットはどこにあるのでしょうか。つまり取壊し費用を負担したくなければ反対して売渡し請求すればよいというのであれば,取壊し費用を負担したくない人は反対することになるわけですが,反対しても売渡し請求の際に取壊し費用がそこから引かれるわけですから,結局費用は負担するわけですね。そうすると,取壊しの次の敷地売却とか再建とかの段階で離脱することにして,そちらの決議に加わる可能性は残しておいたほうが得であるような気もするのですが,そうすると,取壊し決議がなされたときにこの時点で売渡し請求をするというのはどういう場合なのでしょうか。 ○山田部会長 売渡し請求をするのは,多数のほうからですよね。 ○森田委員 はい。 ○川副関係官 売渡し請求は賛成者のほうから反対者のほうにするという形ですね。 ○森田委員 そうですね。取壊し決議後に,取壊しに賛成して参加するということはせずに,売渡し請求に応じるということですね。 ○川副関係官 そうですね。催告の段階で決議に賛成しなかった方に対して,一定の日までに催告をして,その間にやはり僕,参加しますというふうになって変わる方もいらっしゃるでしょうし,やはり参加しませんという態度決定をされますと,基本的には取壊しに賛成している人たちから反対している人に対して,参加しない人に対して売渡し請求をする。 ○森田委員 参加するか否かの意思決定をするときには,どういう場合には参加しないということになるのかというと,取壊し費用を負担したくないという理由では駄目だということですね。 ○川副関係官 そうですね。そこをちょっと認めてしまうと,やはりお金の関係で反対したほうが得だということで,どちらかというと取壊しの合意形成が図られにくくなっていくと思いますので,そこの差を付けるのは相当ではないのではないかなというふうに考えております。 ○垣内幹事 すみません,今の御議論に関して幾つか確認の質問をさせていただければと思うんですが,議論の対象となっていたのは,建物の時価,区分所有権の時価の算定についてでしょうか。それとも敷地利用権も含めてのことなのか。敷地利用権の価値は別だということになれば,費用を控除して区分所有権はゼロだとしても敷地利用権の部分は残りますよね。その点が一つと,それから,今の川副関係官からの御説明の中で,建物の時価から取壊し費用を控除するという御説明だったように伺ったのですが,建物の時価を考える場合には,建物を存続させていく場合にどういう価値があるかということを考えることになるというのがむしろ自然ではないかとも思われまして,そうだとすると,その控除すべき費用というのは,取壊し費用ではなくて修補の費用でしょうか,あるいは住み続けるために必要になる費用があれば,それは控除することになるのではないかとも思うのですが,あるいは私,その辺り,専門でないので誤解しているかもしれませんので,ちょっと御確認だけお願いできればと思います。 ○川副関係官 今御質問にありました前半の部分ですけれども,すみません,先ほどの私の説明がはっきりしていなかったのかもしれませんが,一応こちらで考えている時価での売渡し請求というものは,区分所有権というものだけではなくて敷地利用権も含めて,一体のものとして売渡し請求をするべき,そういう制度を設けるべきではないかと思っております。   それに伴いまして,その時価というときには,その建物の価格,区分所有権の価格,それと敷地利用権の価格一体のものの合わせたものを時価で売り渡すべきことを請求するという形になるのかなと。その場合の先ほど申しました時価というのが区分所有権と敷地利用権の合わせた価格から建物の取壊しをする費用を差し引いたような額というのが一応時価としては考えられるのではないかというようなことを一応申し上げております。 ○山野目委員 部会資料に(2)は区分所有法63条参照と書いてありまして,恐らく事務当局のお考えとしては,現在の区分所有法63条の制度の基本的なイメージを取壊し決議の局面にも入れようとしておられるものであろうと思いますし,それは考え方の筋道としては自然なことであると感じます。   ただし,63条が建替えのときに係る規定であるのに対して,こちらは取壊しでありますから,最終的には建物がなくなってしまうものであり,そのことから実際の運用において差異が生じてくる部分というものがあるであろうと思います。売渡し請求の時価について,建替えについて,今まで解釈論上行われてきた考え方を必要な修正を施してここに当てはめるとどうなるかといいますと,建物は取り壊してなくなってしまうということがプランとして提示されていますから,建物の値段というのはなくて,壊した後の更地になった状態の土地で,その更地の価格に対して建付減価はしないというふうに考えて,フルサイズの土地の値段が考えられて,そこから取壊し費用を引いた額が時価になるというのが現行の63条についての建替えのときの時価の考え方を平行移動したときの考え方であろうと考えます。   そのような時価の考え方とは別に,しかし,法制上の表現としては恐らく時価での区分所有権及び敷地利用権の売渡し請求をするというふうに書かざるを得ないというふうにも感じます。なぜかといいますと,売渡し請求の意思表示がなされる時点で,まだ建物は取り壊されておりませんで,建物と敷地についての明渡請求,そして移転登記請求と時価の支払を引換え給付にする判決主文を書いてもらわなければいけませんから,それを可能にするためには,やはり法制上の文言として,取り壊してなくなるのですけれども,建物と敷地利用権の売渡し請求を時価ですることになるという手続構成になるのではないかというふうに,この資料の理解として私は考えておりました。 ○中城委員 垣内委員の二つ目の質問について,私のほうから知る限りで補足をさせていただきたいと思います。鑑定理論上はおっしゃるとおり壊したくない,使い続ける価値があると思う人の価格ですので,それは今あるものを使い続けることによる価格を求めるべきです。それはコストアプローチもあれば,マーケットアプローチもあれば,インカムアプローチもあってでありますが,事務局の資料にもありますし,山野目委員からも補足がありましたのは,建替えに際しては,反対する人の区分所有権についても,建替え決議があるのであるから,あるいはそれが成立するのが蓋然であるから,であれば建物を解体した後の更地の値段の持分割合が当該区分所有者の価格であるという判例があるものですから,それを受けて先ほど山野目委員のような説明のとおりの実務が進んでいるということでございます。 ○垣内幹事 どうもありがとうございました。 ○中城委員 すみません,補足で,したがいまして,そのままがよいかどうか,本件についてもそれが妥当するかどうかは,鑑定理論も含めてなお検討の余地は十分あるというふうには思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○中城委員 続けてすみません。先ほどの取壊し決議に反対する人の区分所有権を時価で買い取ることが必要かということについて,私も同じような印象を持っています。つまり賛成する人は,先ほど鎌野委員が指摘されましたように,その部分を買い取るという出費が出ます。それから,解体という出費も合わせて出ます。まして解体しようとするマンションですから,基本的に住めない状態になっていて,どこかに仮住居をしているという非常に災害時独特の物入りといいますか,いろいろな緊急な状態にある中で,そういうお金を繰り返し出すというふうなことが妥当かどうか。つまりまずは解体の決議だけで,将来的に敷地を売って,その共有持分で精算するプロセスか再建のプロセスかどちらかを決定します。特に敷地売却のときの精算金で精算するという出口があるのであれば,あえてここで買い取るという前段の費用負担を賛成する人に負わせることが妥当かどうかというようなことについては,少し検討が必要かなという気はいたします。 ○森田委員 先ほどの疑問がもう少し自分の中ではっきりしてきましたので,付言して述べさせていただきます。建替え決議の場合には,既存の建物の区分所有関係を終了させるというのと,それから,その後に再び建物を建てるという二つのことがセットになって決議がなされているのを,今回の新たな提案では,建物の取壊し決議と再築の決議というふうに2つのステップを分けてそれぞれに決議をしていくものと捉えたときには,最初の建物の取壊し決議の段階で敷地利用権まで買い取るということが必然かというと,そうではないと思います。取壊し決議というのは,建物を取り壊すことができればその目的は達成されるわけですから,取り壊すために建物だけ買い取れば十分であって,敷地の利用関係はそのまま残るとしてもよいわけです。その敷地利用権をその次の段階においてどうするか,建物の再築に利用するか,敷地を売却するかは次のステップのときに考えればよいというのも,制度設計としてはあり得るところだと思います。そうすると,取壊し決議について建替え決議とのアナロジーでというのが敷地利用権の売渡し請求までセットで効いてくるのかというのは,別のオプションも十分にあり得るような感じがします。そうすると,建物の取壊しの段階では,建物を取り壊すだけであれば,反対者の区分所有権だけ買い取ればよくて,敷地利用権はそのままにしておいて,次のステップで敷地売却とか再築の決議に反対するときに初めて敷地利用権まで買い取る必要が出てくるわけですが,取壊し決議の段階では建物の区分所有権のみを売渡し請求の対象とするという別のオプションもあるのではないかという感じがいたします。 ○岡山幹事 それに関してなんですけれども,そういう考え方も一つの制度設計としてはあり得るんでしょうけれども,他方で現行区分所有法の建替え決議ということとの並びで考えますと,反対者というものを排除して全員合意の状態で建物を壊していくというプロセスがあるわけですので,そのアナロジーをどうしても私どもはイメージしています。あと,実際的な問題ということもこれは私どもが検討した中で大きいなというふうに思ったのがやはり取壊し決議時に反対している人たちの敷地利用権まで買い取るということは,やはりその後,解体決議をして更地状態になり,さらに敷地の売却決議まで考えていった場合に,結局更地価格あるいはその後の売却をした時点における時期的な利益の問題ですね。震災直後よりもどうしても敷地売却決議は成立したほうが被災地の経済状況も復興しておりますので,どうしても高く売れるだろうと。そういう売却益を反対した人に預からせるというと,より反対するインセンティブになりはしないかということもありますので,そういった面においても,やはり敷地利用権も併せて全部買い取るというふうなスキームにしないとワークしないのではないかというイメージでおりました。 ○山野目委員 森田委員の御指摘と中城委員の御指摘について1点ずつ感じたことがございます。   森田委員のおっしゃるように建物だけ買い取るということは,一つの魅力ある成立可能なアプローチであるというふうには感じましたけれども,理論面と政策面で考え込むところがありまして,理論面からいくと,まだ区分所有が終わっていないので分離処分禁止の原則からいって,建物だけ買い取るということは特別の工夫をしない限りあり得ない話であると思います。それから,政策的な合理性の面からいうと,これは岡山幹事がおっしゃったとおりなので繰り返しませんけれども,そういうふうに複雑にすると,どこで離脱したらよいかをめぐって,何かいろいろ計算をめぐらすと,どこかでルーレットから離脱するタイミングによって得をしたり得をしなかったりというようなことが起きそうで,被災現地に複雑な状況をもたらすのではないかということは,やや危惧されます。   それから,中城委員のお話を伺っていて感じたことですが,被災地で皆が被災をしている状況でお金を出す場面をたくさん作っていくことはいかがか,という御意見に接して,なるほどというふうに感じた部分がある半面で,やはりここで区分所有権と敷地利用権は取り上げられるものですから,どのように時価を計算するかはともかく,コンペンセートが全然ないということはあり得ないであろうと思います。それと同時に,被災地のファイナンスの問題を考えてごらん,という中城委員の御指摘はごもっともな部分がありますから,一つは民事法制で仕組むとすると,この時価の支払について,またこういうことを言うと事務当局に負担を増やしますが,代金の支払の猶予みたいなことは考えられないか,という論点は,最終的に無理だよというお話でも結構ですが,テイクノートしていただいてよい一つの論点であると感じますとともに,払われるべき代金の補助とか公的支援については,また国土交通省のほうで要件は何か整理してお考えいただくとよいということも併せて感じます。   以上でございます。 ○住本幹事 すみません,今の山野目先生の最後のところとちょっと絡むんですが,先ほど補助を全額公費負担ということを考えたときに,取壊しに係る費用の概算額はゼロなわけですね。そうすると,私がその所有者で早く離脱して,とにかくお金がほしいと思ったら,一人だけ反対して買取請求権を行使してもらって,しかも,取壊し費用はゼロですから,土地の代金だけ先に頂くことを選択することもあるのではないでしょうか。ただ,それは致し方がないというのであればしようがないんですが,その可能性はございますということをちょっと御指摘したいと思います。 ○津久井幹事 売渡請求権がないとなりますと,例えば5分の1の反対者の方々が全員居住している状態だとしますと,そのような状態のままで取壊しというのは現実的に実行不可能だと思います。決議がありますからといって議事録を見せても,それを引き受ける業者もいなければ,そもそも今の公費解体もきっと引受けはされない。ですから,やはり売渡請求権などによって全員が合意しているという状態にならないと,その決議だけあっても,それを実行することができないということになるので,やはりこの段階での売渡請求権というのは絶対必要だというふうには思います。 ○住本幹事 1点だけ,すみません。補助制度は変わりますので,それを前提に法制度を組むというのはちょっと逆のような気がしますし,この制度がもしできれば当然そういう交付金の要件も変わる可能性があります。補助制度は飽くまで予算制度でございますので,法律のほうが基本となるべきということはちょっと申し上げたいと思います。 ○佐藤(正)委員 午前中に国交省の方から電話を頂いたんですけれども,案件の説明で,今の御議論の中にプライバリーな話なんですけれども,管理費とか修繕積立金とか地震保険金とかという財産が管理組合にあるんですけれども,解体する場合はその費用を算定して財産を分割することになるんです,実際は。Aマンションという傾いたマンションも新聞に載ったBマンションというマンションもその辺も入れて分割していますので,今の御議論で確かに買取請求権は建物と敷地利用権に限るとなると,解体に回ったほうが得だというふうな誘導にならないかなとふと思ったりもしたんですけれども,実際は修繕積立金と保険金等もあるので,その辺を分割することになりますので,その辺を含めて議論しませんとと思いました,聞いていて。   以上です。 ○山田部会長 ありがとうございます。修繕積立金,管理費の帰すうが関連してくるという御指摘ですね。ありがとうございます。 ○中城委員 本論ではないかもしれませんが,先ほど国土交通省から説明を頂きました分譲マンションの賃貸化ですね。これで見ると,平成2年よりは賃貸率が相当進んでいるということがありますね。つまり借家人の立ち退きや対抗要件の問題もあります。修補には相当お金が掛かる,しかし,借家人は付いていて,それなりの家賃収入はまだあるという状況が考えられます。今回の仙台でもそうでしたけれども,地域全体が被災するものですから,住めるものには借家として住み続けたいというようなことがあって,借家人の立ち退きの問題も結構大変なんだろうと思います。この率を見ると,それが5分の4の残りの5分の1を超えている年代のものも多いわけでありまして,その辺りの手当ても何かどこかで考える必要があるのではないかなという気がいたしました。 ○山田部会長 今の点は事務当局で何かありますか。 ○岡山幹事 では,お答えします。これは私の印象なんですけれども,実際その賃貸に出されている建物について賃借人がいる場合に,区分所有建物が大規模一部滅失したということで考えますと,やはりその住めるようなマンションがほぼ解体されていくかというと,やはり冒頭の大規模一部滅失の要件とそれこそオーバーラップしてくるのかもしれませんけれども,まずやはり解体でその問題となるのは危険な建物なんでしょうと。となれば,そういった建物について借家人の方が住むというのは,ほぼ余り考えられないし,現実的に考えたとしても,借家人の人たちがそういう建物によって,では賃借料を払い続けるんですかという話にもまた逆の意味ではなりかねませんので,そういった面では,そういったマンションにはほぼ借家人の方というのはいらっしゃらないのではないかというふうに思っています。   ただ,問題は,2分の1ぐらいのかなり残っているようなものについてどうするかということなんでしょうけれども,そういったものについてある程度時間を掛けてお話をなさって,借家人ときちんと合意解除していくというプロセスをたどっていくほうが私は合理的ではないかなというふうには思っています。 ○山田部会長 ほかにいかがでしょうか。5のその他でございます。買取請求権については,時価をめぐって複数の参考になる御意見を頂けたと思いますので,それを反映させて次回になお議論を続ければよろしいのではないかなと思います。ほかにございましょうか。   それでは,「第2 取消し決議制度」については,今日頂戴しました議論を反映させたものを次回に用意して,また審議を続けていただくということにしたいと思います。   それでは,次の第3でございますか。滅失又は取壊し後の建物の敷地についての特例,既にここに関わることもこれまでの審議の中で,御発言で言及は頂戴しておりますが,そこに進みたいと思います。まず,遠藤さんからお願いいたします。 ○遠藤関係官 それでは,部会資料1の7ページ,「第3 滅失又は取壊し後の建物の敷地についての特例」について御説明をいたします。   まずは,第3の検討の前提として,あらかじめ御確認いただきたい点について,前注を二つ記載しております。(前注1)は,敷地共有者という用語についてでございます。第3の検討におきましては,敷地共有者という用語を用いていますが,これは区分所有法第2条第6項に敷地利用権でございまして,この敷地利用権というのは何かと申しますと,区分所有建物の専有部分を所有するための建物の敷地についての権利というふうに定義をされております。このような敷地利用権を有していたものについて敷地共有者という言葉を使っているということでございます。第3の検討では,タイトルにもありますとおり,建物が滅失し,又は取り壊されたということが前提となっておりますので,既に建物はなくなっているということでございますので,区分所有法上の敷地利用権というのは,専有部分を所有するための権利という位置付けではなくなっているとの考え方も成り立ち得るところでございますけれども,ここではかつて敷地利用権を有していた者が以下で検討いたします敷地売却決議であるだとか,再建の決議であるだとかの集会の構成員の主体となるという趣旨で,以下,敷地共有者という言葉を用いたいという趣旨で前注を記載しております。   なお,このような決議の主体の範囲につきましては,現行の被災マンション法で定めますと建物が全部滅失した場合の再建の決議においても同様となっております。また,まれではあろうと思いますけれども,元々の敷地に敷地利用権を有しない共有者というものがいらっしゃる場合も想定できるところでございます。この場合には,敷地利用権を有していない者は,敷地売却決議,再建の決議の主体には含まれないということになろうかと思いますので,このような場合についての法律関係については,民法の共有に関する規律に従うと,このような整理になろうかと考えております。   それから,(前注2)にございますけれども,これは特に敷地売却決議制度に関して,敷地利用権が土地の賃借権や地上権など所有権以外の権利であった場合について,注意的にその場合には敷地自体ではなくて,その当該権利,賃借権であるだとか地上権であるだとか,そういった権利を売却することができるという制度になるということを記載しております。   なお,この場合でもこれらの権利を売却する旨の決議というのは,賃借権であるだとか地上権であるだとかの権利の準共有者間で決議されるものでありますので,このような準共有者間の決議というのが当然に第三者の権利関係に影響を及ぼすということではないというふうに考えられるところでございます。   前注についての説明は以上でございます。   引き続きまして,第3の1につきまして御説明をいたします。第3の1は敷地売却決議制度でございます。   敷地売却決議制度は,政令で定める災害により区分所有建物が全部滅失した場合,それから,政令で定める災害により,先ほど議論があったところでございますけれども,災害により大規模一部滅失等の重大な被害を受けたことを前提として,その上で取壊し決議というものが検討されておりましたけれども,取壊し決議がされて建物が取り壊された場合につきまして,その取壊し後の敷地について,その敷地を売却する旨の決議をすることができるという制度として考えております。   御検討いただく必要があろうと考えられる論点について,(1)から(4)までに整理しておりますけれども,先ほど御議論いただきました取壊し決議制度と同様,制度の全体像を見ながら御議論いただくことがよいのではないかと思われますので,長くなりますが,(1)から(4)までをまとめて御説明いたします。   (1)は,敷地売却決議制度の多数決要件について検討するものでございます。   敷地の売却は,原則共有物の処分に当たりますので,民法上の共有関係で考えますと,全員の合意が必要とされております。そういった全員合意の原則につきまして,特例で多数決で敷地を売却することができるものとする場合であっても,決議の内容は当然,敷地共有者の権利関係に重大な影響を及ぼすものであるということは異論のないところだと思われます。そこで,本文では権利関係に重大な決議を及ぼすという点で,区分所有法上の建替え決議や被災マンション法上の再建の決議を参考にして,差し当たり敷地共有者の敷地についての持分割合の5分の4以上とすることを提案させていただいております。   続きまして,(2)決議事項について御説明いたします。   敷地売却決議においては,敷地共有者が決議の賛否を決めるに当たって必要な情報として,最低限決議が成立された場合実行されるであろう敷地の売却の概要が示される必要があろうかと考えられます。そこで,本文の①で,まず売却の相手方となるべき者,それから,売却により得られる金員,つまり売得金の見込み額ということになろうかと思いますけれども,この2点を決議事項としております。また,売得金につきましては,最終的には各敷地共有者に分配されて精算されることになろうかと思いますが,その分配の基準については,何らの規定も設けなければ基本的には各人の敷地共有持分の比率に従ったものになると考えられます。もっともここで敷地共有者が土地について有している持分は,元々は先ほど御説明しましたとおり,区分所有建物の敷地利用権であったことが想定されておりますので,各人の持分は細分化されていることが多いというふうに考えられます。   そうしますと,細分化されたものを逐一,持分割合に従ってきれいに精算するということまでする必要はないのではないかという考え方も成り立ち得るところです。   それから,売得金の分配に当たっては,それを全額直ちに敷地共有者に分配するのではなくて,売却に要する費用を精算するという取扱いをすることが便宜である場合も考えられます。そこで,売得金の分配につきましては,常に持分割合に忠実に配分しなければならないとするまでの必要はないというふうに考えておりまして,以上を踏まえて,本文①のウで売得金の分配に関する事項についても決議事項とした上で,ただ,そうは言いましても,余りにも共有持分とかけ離れた配分が多数決で決まるということになりますと,少数の区分所有者の権利を害するという事態が生じるおそれがございますので,分配に関する事項については,その衡平を害しないように定めなければならないということを本文の②で提案しております。   なお,この点につきましては,建替え決議に関する区分所有法第62条第3項などを参考としております。   引き続きまして,(3)の敷地売却決議の期間制限についての御説明に移ります。   敷地売却決議は災害時における特例措置として認められるものと位置付けておりますので,一定の期間制限を設けることが必要であろうと考えております。   なお,現行の被災マンション法上の再建の決議につきましても,このような期間制限が設けられているところでございます。そこで本文では,被災マンション法4条の規定を参考にしまして,政令の施行の日から起算しまして3年以内という期間制限を設けることを提案しております。   なお,ここで政令施行の日という政令とは,取壊し決議に基づき建物が取り壊された場合には,取壊し決議の前提となる重大な被害を受ける原因となった災害を指定する政令というものがあろうかと思いますけれども,その災害を指定する政令を指すことを前提としております。   第3の1の最後でございますけれども,その他について御説明いたします。   第3の1,(4)その他でございますけれども,これは敷地売却決議制度を設けるに当たって,先ほど取壊し決議制度でも同様の御議論を頂きましたけれども,決議を目的とする集会の手続に関する規律であるだとか,決議に反対したものをどのように取り扱うかといった(1)から(3)で御議論いただく事項以外にも様々な規律を設ける必要があると考えられるところです。この点につきましては,基本的には区分所有法上の建替え決議制度や被災マンション法上の再建の決議制度を参考にしながら検討するということが考えられるところでございます。もっとも,先ほど説明会の開催の要否について御議論もあったところでございますけれども,建替え決議制度と被災マンション法上の再建の決議制度というのは,必ずしも同一の規律がされているわけではございませんので,ここでも敷地売却制度について特有の検討が必要になるということも考えられますので,その点についても引き続き細部に至るところではございますけれども,なお検討する必要があろうかと思います。   資料第3の1,敷地売却決議制度についての説明は以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。7ページの第3から前注を二つ御説明いただきまして,8ページから敷地売却制度が始まり,(1),(2),(3),(4)と御説明を頂きました。直前まで議論しました取壊し決議制度ともちろん様々な面で違った解決をしなければならないところがあろうかと思います。しかし,大きな構造は同じような構造で今回御提案を差し上げておりますので,敷地売却制度については,もう分けずに(1)から(4)まで,その他まで御議論を頂きたいと思います。どうぞ御自由に御質問,御意見を頂戴できればと思います。 ○沖野委員 2点,こういうことでよろしいかというのをお伺いできればと思います。   一つは9ページの(2)決議事項の点の衡平を害しないようにという②の点です。御説明の中で機械的に常にやらなければいけないというわけではないというお話がありました。もっともここは金銭の分配で,かつ元々持分割合が決まっているとすると,基本的には機械的にではないかと思われ,ただ,端数などの処理が若干出るということだとすると,本当にこのような衡平を害しないように定めなければならないとするのが適切なのか,持分割合に応じて定めなければならないではなくて,衡平にする必要があるのか。あるとすると,どういうことが必要かというのを説明がもう少し要るのではないかと思いました。私なりに考えましたのが,これは金銭を分配するという限りで,しかも権利に応じてということであれば機械的にいけそうですけれども,それに先立って例えば取壊しの際の費用の分担ですとか,あるいは本日御指摘のありました各種の積極財産の分配をどうするかといった辺りで機械的な割付けが難しいようならば,衡平を害しないように定めるというような従前の経緯がありますと,従前の経緯なども考えた上で少し調整が必要になるようなものもあるので,こういう衡平を害しないという形で機械的平等ではないということを設ける事情があるんだろうかと思ったんですが,そんなことでよろしいのかどうか,想定されている,必要となる場面はどういうことだろうか,やはり説明が要るのではないかと思いましたので教えていただければと思います。それが1点目です。   もう1点目は,11ページの売渡し請求です。ここでも根はあるいは共通かもしれませんが,金銭を分配してしまうということだとしますと,この売渡し請求の価格といいますか,それと決議事項のところで出されている売得金の分配に関する事項とは中身が同じになるようにも思うんですけれども,やはりずれるという想定なのでしょうか。額自体がずれるという想定なのか。一致するのだとすると,売渡し請求の意味は,例えば時期が早めにもらえるとか,そういう違いとなりそうですが,そのような理解でよろしいのかどうか。いずれもイメージの問題ですが,何か御説明を追加でお願いできればと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。2点頂きました。 ○遠藤関係官 まず1点目が決議事項の売得金の分配に関する事項について,衡平を害しないようにというのがどういう趣旨かという御説明でしたけれども,まず前提としまして,一応こちらで考えておった整理でございますけれども,先ほど来お話の出ております建物についての修繕積立金であるだとか管理費だとかが積み立てられていた場合,それらはどうなるのかと。あるいは建物取壊し費用についてはどうなるのかということでございますけれども,それについては,基本的には建物について積み立てられている修繕積立金であり,管理費であると。建物を取り壊すための費用であるということで,建物に関するものとしてあるということになっております。区分所有法は3条で建物や敷地を管理するための団体を構成するという整理になっておりますけれども,これが抽象的な議論になってしまうんですけれども,法律的には建物がなくなってしまいますと,その区分所有法上の団体というのはどうしても根拠付けるものの基礎がなくなってしまうということになりますので,そうすると,建物についてはそこで一旦終わってしまって,もう精算をしてしまうと。修繕積立金等についても全て精算してしまうと。そことはまた違うステージとして敷地についての処分については共有関係が残りますので,どうするのかということを考えるという整理でおりました。   それを前提にしまして,衡平を害するというのがなかなか想定し難いのではないかという御指摘だったと思うんですけれども,それほど重いことを考えていたというわけではなくて,正に端数が出たときにどうするかだとか,あるいは契約の費用であるだとか実費であるだとかはそこで一旦精算して,その上で配分するであるだとか,誰か一人が売却に向けてそれなりのリーダーシップなり何なりをとって苦労されたという方がいるのであれば,その人に若干多目に配分するであるだとか,その程度のことを考えておりました。ですので,余りあえて規定を設けるまでの必要はないのではないかという御指摘もあろうかと思います。基本的には正に持分割合で分配されるということになろうかと思います。   それから,2点目の売渡し請求のところでございますけれども,これは確かに御指摘のとおり,売渡し請求の時価というのはどうなるのかということが問題になろうかと思います。ここでは,これも理屈上の問題ではあろうかと思いますけれども,時価というのは一応客観的に決まっているはずであろうと。それは取引をされるに当たって,売買契約が具体的にどう定められたかということとは一応別の次元のものとして整理をされるという考え方も成り立ち得るところだと思います。ただ,実際に紛争になった場合には,恐らくよほど不合理な売却代金なりが決議事項として決められていない限りは,そういった認定をされるという運用も考えられるのではないかなというふうには思っております。   ただ,なぜ売渡し請求というものが必要になってくるのかということになりますと,やはり最終的に決議をしただけでは売買契約も成立しておりません。その後,実際に売却の相手方と決議をする前の段階で,下準備として交渉等をして,これだったら買うよという前提がないとなかなかこういう決議までは至らないんだとは思うんですけれども,そうはいっても最終的に契約をするという段階に至るまでは,決議が成立しただけでは直ちに売買契約が成立するということは相手方もあることなので難しかろうというふうに思っているところです。   そうしますと,これは建替えの場合でも同様かと思うんですけれども,やはり一旦は売却に賛成するという賛成者のところに全員一旦権利を集めて,その上で売却をするという手続がどうしても必要になってくるのかなというふうに考えておりまして,そうすると,迂遠なようではありますけれども,一旦は売渡し請求という制度をかませて,権利を賛成者といいますか,売却を実行する人たちの下に集めるという手続が必要になってくるのではないのかなというふうに考えております。   以上です。 ○山田部会長 いかがでしょうか。 ○森田委員 今の御説明の前半は,私もそのとおりだと思いますし,その点はここで確認しておく必要があると思います。取壊しの決議となる主体というのは,既存の区分所有建物についての3条の団体が行うわけですが,他方で,こちらの敷地売却決議は別個の主体が行うものであって,それゆえに頭数の決議要件も外れているという整理になっていると思います。この点は,現行の被災マンション法における再築の決議についてもそうです。したがって,既存の区分所有者の団体の精算は,ここの売却金の分配とは全く別のものとして行うことになりますし,敷地の売渡し先を探したりするなどの諸種の費用が掛かったとしても,既存の区分所有建物の管理組合のお金はそれに使うことができない,そういう整理になっているわけですね。   そうしますと,従来の区分所有法における建替え決議に関する規律がここにスライドしてくるというのは余り必然性がなく,要するに敷地の売却をその共有者間で行うにはどうしたらよいかということであって,敷地売却決議制度がなかったらどうなるかというと,敷地共有者の1人または数人が共有物分割請求をすれば,裁判所が敷地を売却して持分に応じた売却金の分配を得ることができます。そうした方法によるのか,それとも敷地売却決議制度というある種の任意売却の方法を設けて,そのどちらによるかというオプションには期間制限を設けて,一定期間であれば任意売却ができるけれども,しかし,その間は共有物分割請求はできないという立て付けになっていると理解することができます。したがって,期間が経過するまで待って共有物分割請求をして,そこで得られる売却金を分けるのか,それとも敷地売却制度を利用した任意売却に乗って売却金を分けるか,どちらが得かという判断をするということですね。   そうすると,先ほどの御説明のように,売渡し請求の場合の価格がこの売却の相手方から得られる金員に相当するということになるとすると,売却決議に反対しながら実際には任意売却に乗りながら先にその売却金をもらって出ていけることになります。ただ,反対者が余り多くなると,そもそも敷地売却決議による任意売却そのものができなくなりますが,そうでなければ敷地売却決議に反対したほうが有利になるとすると,何か非常に不合理なような気もします。そうではなく,敷地売却決議に反対した者は共有物分割請求を行ったとしたら得られるであろう売却金しか取れないということなのでしょうか。敷地売却決議と共有物分割請求という二つのオプションがあって,後者を選んで前者に反対した者はどう処遇されるかというその全体のつながりというのが今一つよく見えないのですが。 ○遠藤関係官 すみません,ちょっとその辺,一旦先ほどの御説明で誤っていたところもあるかもしれませんので,次回までに整理をして,具体的にどういう仕組みになって売渡し請求というのが機能するのかということを御確認いただきながら御議論いただければと思います。 ○山田部会長 森田さんが初めのほうでおっしゃったその間,共有物分割請求は制限されるのですねというところはそれでよろしいですね。 ○遠藤関係官 それにはついては,そうです。 ○山田部会長 まだ説明がそこまでいっておりませんが,資料の13ページ,4のところで用意しているところでございます。 ○津久井幹事 整理と確認のために(1)の多数決要件のところについてちょっとお尋ねします。   5分の4は何の5分の4かという問題です。その敷地共有者の持分の価格の5分の4というふうになっています。先ほど来,価格をどう考えるのかということについて非常にいろいろな複雑な問題があるということはよく理解できたところなんですけれども,その議決権も価格によるという形にするのはどうなんだろうかということです。御説明にもありますように,被災マンション法の条文のほうは,議決権というのが敷地権等の価格の割合によるというふうになっているので,それをスライドしてそうなっているということなんでしょうけれども,むしろ単純な敷地権になっているのであれば,共有持分と言い切ったほうが単純でいいような気もするのです。その被災マンション法のほうの要件をもっと簡単にしてしまったほうがよいのではないかと思ったんです。   ただ,これをわざわざ価格にしているのは,所有権と地上権などが混在しているとか,借地権と所有権のそれぞれの敷地権が複雑に絡み合っているような敷地もあるだろうから,単純に持分割合によるというわけにもいかないだろうということから,価格というふうにしているのかなというふうに私は理解していたんですが,そうであれば,この御説明のところも「持分の価格」から「持分等の価格」というふうに被災マンション法の言葉どおりに「持分等の価格」というふうにしたほうがいいような気もするんです。 ○遠藤関係官 すみません,一番後ろにあった「等」を付けたほうがよいのではないかということでございますけれども,この資料全体を通しまして,敷地共有者であるだとか共有持分であるだとかという言葉を余りきれいに切り分けて使っているというわけではなく,全て敷地共有者等であるだとか,共有持分等であるだとか,共有又は準共有だとかというようなことも敷地利用権が借地権であるだとか地上権である場合も考えますと,正確を期すとそういう表現が多用されることになってしまいます。そのことについて事前に前注か何かで断っておけば誤解を招かなくてよかったのかなと思うんですが,それについては一応全て敷地共有者といいますか,共有といいますか,敷地利用権が所有権であるということを念頭に置いて,基本的にはスライドできる議論だと思いますので,そういった整理をしているということでございます。   それから,価格,なぜ共有持分の価格なのかという御質問ですけれども,事務当局として深い考えがあったというわけではございませんで,実は民法が元々持分の価格という表現を使っております。252条,共有物の管理というところでございますけれども,共有物の管理に関する事項は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決するという条文がございます。恐らく被災マンション法等もここから引っ張ってきたのかなということだと思います。ただ,解釈としましては,当然敷地共有持分登記等で持分割合が明らかになっていると思いますので,基本的にはその持分割合に従うということが通常であろうし,ぎりぎり価格を詰めていけば認定できるのかもしれませんけれども,それと持分割合と価格が一致しないということになるのは,余り想定し難いなというふうに思っているところでございます。 ○山田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○住本幹事 総論のところで遠藤さんが1ページの(注1)のときでおっしゃったところを再度ちょっと確認させていただきたいんですが,これは意見になりますが,取消し決議と敷地売却決議を同一に行うことは妨げられない,要は排除していないということであれば,この災害時のときにわざわざ決議をして敷地売却をする方法と,ある程度公的主体がメーンになるかもしれませんが,そこにもうまとめて売ってしまうと。その公的セクターが壊して敷地利用していくというほうが非常に迅速な場合があるんですが,もちろん通常は,現行は全員同意で当然売却をしていただいてやっているわけでございますが,この敷地決議と敷地売却決議が5分の4で可能であれば,同じ状態で同一の機会でやるのであれば,最初から建物ごと--壊れた状態ですけれども--売るということを初めから5分の4の決議で可能にするということを入れたほうがよいと思うんですが,その点についてはいかがでしょうか。 ○遠藤関係官 その点につきましては,先ほども申し上げたところではございますけれども,今の段階でそういった議論を排除しているという趣旨ではございません。ただ,前提としましては,かなり壊れたマンションをどうするのかということが問題になっていますので,そうしますと,前提として壊れれば売れるという制度もちょっとおかしいかなと。実際にも壊れてしまったものを買うというのがどれだけの制度の説得性というのがあるのかというところもあろうかと思います。   それと,同一の機会にすることを妨げないというふうに書いておるところは,例えば敷地について買う人が建物についても買って,自分が取り壊すのでやりますよというようなことも,ここで二つの制度が設けられた暁には,実際の運用として可能になるという解釈も成り立ち得るのではないかというふうに考えているところでございます。 ○住本幹事 この制度の特徴として,被災を受けた区分所有から解放してあげること,特に被災者の方々を迅速に解放してさしあげることが大切です。できるだけ単独所有にしたほうが復旧という観点からは迅速化が図られるというふうに私は思っておりまして,そうしますと,今申し上げたようなシステム,要は全員同意なのか5分の4かは実際別の話なんですけれども,非常に大きい力,公的な復旧機関にまとめて売ってしまうと。それのほうが住んでいる方も,費用の額によるんですけれども,元々もらえる額がきちんともらえるのであれば早くもらって,早く出ていきたいというニーズにも応えられるのではないかと思いますので,是非御検討をお願いしたいと思います。 ○山田部会長 いかがでしょうか。 ○吉政幹事 多数決要件についてですけれども,従前の被災マンション法というのは,区分所有法上できたことが,建物が滅失してしまったがためにできなくなったので,同じようなことをできるようにしてあげようという作りだったと思います。しかし,これまでの取壊し等についてはその延長で説明することができると思うんですけれども,敷地の売却については,これは区分所有法上において認められていない新たな制度を導入するということですから,この多数決の要件につきましても,他の制度の要件をスライドさせてくるというよりは,財産権等の制約にならないか等,正面からこの制度にふさわしい多数決要件を考えるほうが望ましいのではないかという印象を持ちました。 ○山田部会長 ありがとうございます。何かありますか,今の段階で。 ○遠藤関係官 すみません,正に御指摘のとおりだと思っております。ここでは性質が全く違う決議であるということは重々承知でございます。ただ,議論の取っ掛かりとして似たようなものは何かということで,一番近いのはこれかなという程度のものでございます。そういったことも踏まえまして御意見を頂ければというふうに思っております。 ○山田部会長 敷地売却決議制度の最初のほうで森田さんの発言に対して,遠藤さんから次回までに用意してきたいということでお答えしたところが売渡し請求に関わることでございましたが,それはそれとして御用意いただくこととして,ここでは,敷地売却決議を行ない,その後,売渡し請求を使って,残った人たちは全員賛成で敷地を売れるという状態にするとして,その前段階として5分の4の多数決で敷地売却決議をすること,これは5分の4かどうかまた議論を頂く必要がありますが,多数決でそういう状態を可能にするという制度を御提案しています。そういう方法で敷地売却制度というものを導入してはどうか,そのために検討してはどうかということを今お諮りしているところでございますが,いかがでしょうか。   取壊しをして,その後こういう制度がないと取壊し自体についてもちゅうちょするおそれがあるのではないかというのが「第1 総論」で説明があったところですけれども,こういう制度について必要性がどうか,そして,必要だとしても,それを支える相当な仕組みとしてはどういうものが考えられるのか,2段階あるのだろうと思います。 ○根本委員 すみません,長く取らせるつもりはありませんが,ここの5分の4というのは,先ほどの5分の4の方々のうちの更に5分の4なので,比率は引き下がっているんだという事実関係が一つあるんだと思います。その上で,私が言いたいのはそこの部分じゃなくて,国土交通省さんのほうにも検討いただきたいんですけれども,売却となりますと,先ほど来出ておりますとおり,取壊し費用の部分については公共のお金の入るケースが増えてくるでしょうと。したがって,公共のお金を入れた部分を所有者が分割するということになりませんかということを非常に危惧しております。その辺り,政策論として御検討を頂くことも必要ではないかと。一律の制度を入れてしまうと,後でそこの部分の整合性が問われることになりませんかという気がいたします。   以上です。 ○山田部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。   それでは,敷地売却決議制度については以上といたしまして,もう少し時間がございますので,この部会資料を最後までは到達しないということは確定したようでありますが,11ページの「2 取壊し後の敷地についての再建の決議」,これについて事務局から御説明いただきたいと思います。 ○遠藤関係官 それでは,資料第3の「2 取壊し後の敷地についての再建の決議」について御説明をいたします。   現行の被災マンション法は,その第2条以下で,政令で定める災害により区分所有建物が全部滅失した場合について敷地共有者が再建の決議をすることができるという趣旨の規律を設けております。しかしながら,これは建物が全部滅失したことが前提となっておりますので,先ほど御検討いただきました取壊し決議制度に基づいて建物が取り壊された場合については,当然にはここでいう被災マンション法上の再建の決議制度の適用対象にはならないというふうに思われます。   そこで,取壊し決議制度が設けられることに伴いまして,決議に基づき建物が取り壊された場合についても,災害により直接建物が全部滅失した場合と同様に再建の決議をすることができるということとするための措置を講ずる必要があると考えられます。本文は,その趣旨を御提案するものでございます。   なお,再建の手続につきましては,今般新たに設けられます取壊し決議制度や敷地売却決議制度の手続に関する規律の検討と併せまして,必要な見直しをするというような議論をすることも十分に考えられるところかと思います。補足説明では,その旨も若干触れております。   第3の2の説明は以上でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。それでは,「2 取壊し後の敷地についての再建の決議」についていかがでございましょうか。 ○根本委員 これは申し上げておいたほうがよいと思うんですが,全部滅失と大規模一部滅失を分けることの意味がここまで来ると分からなくなってまいりまして,二つのルートを用意する必然性があるかどうか。被災者にとっては,方法は一つですと。一部滅失以上,2分の1以上失われたときにはこういうやり方ですよとやったほうが非常にシンプルなお話のような気がするんですが,二つを分けなければいけない理由を教えていただけると。 ○遠藤関係官 正におっしゃるとおり,被災者の目から見たら何だということもあろうかと思いますが,一応これも頭の固い話になってしまうんですけれども,建物がなお存続しているという場合と,法律上建物がもう既にそこにないと,滅失しているという場合では,やはり法律関係が異なってきてしまうと。建物がなくなってしまうと,あとはもう敷地についてどうするかという話になるということがありますので,一応条文で規律を設ける場合には別になるということになるのではないかなというふうに考えております。ただ,実態としてなるべく同じような法律関係にしたほうが望ましいということは御指摘のとおりかと思いますので,ここでは,2では同じようなことになるようにしましょうという趣旨で御提案を差し上げているということでございます。 ○山田部会長 ほかにいかがでございましょうか。 ○森田委員 今の説明でよく分からなくなったのですが,全部滅失と大規模一部滅失の区別というのは,大規模一部滅失の場合には建物の取壊し決議が必要で,その後に残る敷地利用権の共有関係に基づいて建物を再築することになるのに対し,全部滅失の場合には決議なくして建物を解体することができてその後に再築することになるという点にあるわけです。したがって,再築するという局面では一緒ということであって,全部滅失と一部滅失とを区別するというのは,前半で議論した取壊し決議が必要かどうかということですね。ただ,全部滅失と大規模一部滅失の境界が実際には曖昧な場合があり得るとすると,全部滅失に客観的に当たるような場合も含めて,5分の4以上で決議をしておけばこれは安全なわけですね。全部滅失に当たる場合には,結果として決議が要らなかったのかもしれないけれども,5分の4以上の区分所有者がそれでよいということで納得した上で取壊しを進める方向で一元的に運用するということもあるいはあり得るかもしれないので,入口で二つに分けるというのが実際どういう場合になるのかということです。つまり,これは決議が要らないといって進めていったところが全部滅失といえるか否かをめぐって後でもめるとか,その種の紛争が生じ得るのか--最初に申し上げたことですけれども--を具体的に想定しないと今の点ははっきりしないのではないかと思います。やはりそこは分かりにくいので,もう少し説明が必要であるように思います。 ○鎌野委員 私のイメージで,ですから,可能であれば補足説明のところでちょっと補っていただければと思うんですけれども,恐らくこの全体の制度設計はもう被災をしたと。それで全部滅失という場面はもちろんあるんですけれども,その場合は現行の再建決議という方向,それで,一部滅失の場合は当然建替えという制度はあるので,それは理由を問わずにですね。ですから,そのときにもうそういう建替えの決断ができれば,それはそれで建替えということで言わば復興が進むと。問題なのは,大規模一部滅失で取りあえずちょっと建物の具合もあるし,金銭的な問題もあるので復旧も無理だと。取壊しをしようと。そして,跡地利用については後日考えようと。恐らくメーンは多分一括売却の方向になると思うんですね。   そして,多分再建決議というのはどちらかというとまれな例で,実際に私の予想するところ,そうないとは思うんですけれども,ですけれども,全くないとは言えないし,場合によってはそこにうまい具合に公的団体なり民間のデベロッパーなりがそういう話を持ち込んで区分所有者,従前のそこの敷地の共有者の負担がそうなくて建物を建てるという場合も全くないとは言えないと。ですから,そういうのも排除しないと。もう取り壊したら一括売却しかないんですよという制度だと窮屈なので,そういう場合に対応できないだろうというようなことですので,ですから,補足説明のところでその辺り,どこまで法律論として書き込めるかどうかは分からないけれども,どちらかというと,そういう再建,ニュアンスとしては再建することも妨げないと,そういうイメージではないかなというふうに私は理解をしています。ちょっと私の理解を申し上げて,今言ったようなことで若干お役に立てばということで申し上げました。 ○山田部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。   それでは,今日の事務局からの説明に基づいて,「第1 総論」から始まりまして,第3の途中まで進むことができました。「2 取壊し後の敷地についての再建の決議」,最後のほうはちょっとはしょって皆様方が発言を自制していただいた方もいらっしゃるのではないかと心配をしておりますが,ここまで進みました。今日は,もう時間がまいりますので,ここで今日の議論は切り上げたいと思います。   それでは,事務当局に次回の議事日程等について説明をしていただきます。 ○岡山幹事 それでは,私のほうから御説明いたします。次回の議事日程等につきましては,日時は平成24年10月9日火曜日でございます。時間は午後1時30分から午後6時までです。場所はここと同じだと思いますが,法務省20階第1会議室でございます。   なお,資料につきましては,通常,会議1週間前には資料を送付するようにはいたしておりますけれども,次回までの時間まで余り間がないというふうな状況でございますので,若干遅れる可能性がございます。申し訳ございません。その点はよろしくお願いいたします。 ○山田部会長 それでは,本日第1回でございましたが,法制審議会被災関連借地借家・建物区分所有法制部会を閉会させていただきます。   本日は繰り返しで恐縮ですが,予定した部分を大分残して終わることになりまして,皆様におわびを申し上げます。その分,ちょっと次回,何らかの工夫をしてタイトなスケジュールをこなしていきたいと思いますので,御協力いただきますようどうぞよろしくお願いをいたします。   本日は御熱心な御審議を賜りまして,誠にありがとうございました。 -了-