法制審議会           少年法部会第4回会議議事録 第1 日 時  平成25年1月28日(月) 自 午後3時59分                       至 午後5時23分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  少年法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○佐藤(剛)幹事 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会少年法部会の第4回会議を開催いたします。   では,よろしくお願いします。 ○川端部会長 本日は御多忙中のところお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。   なお,本日,植村委員は遅れて御出席との連絡を頂いており,また,藤本幹事は所用により欠席されております。   それでは早速ですが,諮問事項についての審議に入りたいと思います。   本日は,前回お諮りしましたとおり,まず,「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」について,第2巡目の審議を行った上で,諮問全体についてのまとめの審議を行い,さらにその後,議論が終結したようであれば採決を行いたいと思います。   まず,「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」について第2巡目の審議を行いたいと思います。御意見のある方,どうぞよろしくお願いいたします。 ○山﨑幹事 本日,意見書を配布していただいているかと思います。須納瀬委員と私で提出させていただいたものです。これに基づいて簡潔に意見を述べたいと思います。   私たちは,要綱(骨子)の第二については反対の意見でございます。   まず,不定期刑・無期緩和刑の上限の引上げの趣旨について疑問を持っております。   当局からは,少年による凶悪重大事件犯罪で5年以上10年以下の不定期刑では軽すぎるという事案,あるいは少年と成人との共犯事件で,裁判所が適正な量刑を行うことの困難な事案が存在するという御説明がありました。しかしながら,そもそも少年法は,少年に対し刑を言い渡す場合に,情状として年齢要素も加味した上で選択される処断刑を,健全育成・更生の観点から更に修正し,必要的に軽い刑をもって臨むという考え方をとっており,また,量刑での処遇に弾力性を持たせるため,不定期刑を原則としております。   このように,少年法が定める少年刑は,成人に対する刑とは異なる趣旨を有していると思います。したがって,少年に対し言い渡される刑について,同様の事案で成人に対し言い渡されるであろう刑を念頭に置いて,これを軽すぎると評価することや,成人共犯者との間で事件への関与度合いと刑期の長短が逆転するという場合につき,「裁判所が適正な量刑を行うことが困難な事案」と評価すること自体,いずれも相当ではないと考えます。   現行法は,成人に対する刑とは大きな差が生じることを前提としつつも,なお不定期刑の上限を「5年以上10年以下」と規定し,今日までの長きにわたって支持されてきました。要綱(骨子)は,このような現行法の立法趣旨を十分に踏まえた上で検討の必要性を吟味したものとはいえず,賛成することはできません。   少年による凶悪犯罪は年々減少しており,一般予防的な見地から少年刑を重罰化する必要性が存在しないということは明らかです。また,従来とは質的に異なるような凶悪事件が近時新たに発生している状況にもありません。今回の提案は,従来から見られた事案についての量刑の評価が異なってきているということを前提とするものと理解されますが,私たちは現行法の刑期を引き上げなければならないほどの量刑に対する評価の変化が存在しているとはいえないと考えております。仮にそのような変化の兆しがあるとしても,刑期の引上げについては,少年法の刑事裁判に関する規定の趣旨を十分に踏まえ,量刑に関する評価の変化の有無を相当期間見極めた上で慎重に議論すべきであろうと思われます。   次に,上限の引上げがもたらす弊害・問題点があるということについてです。   要綱(骨子)では,不定期刑の長期の上限を10年から15年に,短期の上限を5年から10年に引き上げるとともに,無期緩和刑の上限を15年から20年に引き上げるとしています。   しかし,現行法は,可塑性に富み,教育による改善更生が期待できるという少年の特性に基づき,処遇に弾力性を持たせるという不定期刑の趣旨を踏まえ,改善更生の観点から,可能な限り早期の社会復帰が図れるよう,短期の上限を5年とし,他方,少年に対する10年を超える刑には教育的効果を期待することが難しいということから,長期の上限を10年としたものと考えられます。にもかかわらず,これらをそれぞれ10年と15年にまで引き上げる場合には,教育的配慮に基づく不定期刑の趣旨そのものとの間に深刻な矛盾が生じることとなります。   また,長期受刑者については,受刑期間中の社会情勢の変化が著しく,出所後の日常生活に支障を来す,また受刑生活が受動的であるため,社会において自律的で計画的な生活をすることが困難となるといった弊害が指摘されているところであり,10年を超える長期の受刑生活というものが,成長発達の途中にある少年にとって,その弊害がより深刻に生じることは明らかであると思います。少年にとって長期受刑後の社会復帰は,成人の場合以上に困難となるおそれが大きく,それが再犯のリスクを高めることにもなりかねません。   子どもの権利条約を始めとする国際準則も,「自由の剥奪の利用は,調和のとれた子どもの発達にとって極めて重大な帰結をもたらすとともに,社会への子どもの再統合を深刻に阻害する」としています。そして子どもの事案では,「公共の安全及び制裁の必要性に関する考慮」よりも「子どもの福祉及び最善の利益を保護し,かつその再統合を促進する必要性が重視されなければならない」とするなど,早期の社会復帰を図るべき方向性を示しております。このような中で,我が国が少年に対する刑罰を長期化させることは,国際的な流れにも逆行し,国際準則にも適合しないものと言わざるを得ません。   最後に,仮釈放についても一言意見を述べさせていただきます。   近年,少年に対する仮釈放の時期は年々遅くなり,刑の執行率は著しく上昇しています。このような現状のまま更に刑期の引上げを行えば,極めて長期間にわたって社会に復帰できない少年が増加することとなり,健全な育成を図る観点から早期の社会復帰を図るという少年法の理念に逆行する事態がより一層進行しかねません。   少年に対する不定期刑は,仮釈放を弾力的に行い得なければ,その趣旨が実現され得ないものです。実際には長期を基準とした仮釈放しか認められていない現状は,速やかに改善される必要があります。   事務局試案では,不定期刑の短期の下限に関し処断刑による制限を緩和するとしていますが,その趣旨を実質化するためにも,短期を基準とした仮釈放が現実に行い得なければなりません。   よって,少年が不定期刑を言い渡された場合については,短期を基準とした仮釈放が現実に認められるよう,仮釈放の弾力的運用が図られる必要があり,そのためには,成人の定期刑受刑者とは異なる仮釈放基準の設定等,必要な規定などを早急に整備すべきであると考える次第です。   また,無期緩和刑の仮釈放に関する現行法の規定は,たとえ極めて凶悪重大な犯罪を犯した少年であっても,3年を経過すれば改善更生を遂げて仮釈放が可能となり得るということを前提としたものであり,少年法の健全育成目的を量刑の面で確認する規定として極めて重要であると考えます。この規定を「その刑の3分の1」に改めることは,成人の場合と同様に刑法の原則に従うことを意味し,量刑の面における健全育成目的を後退させるものと言わざるを得ず,賛同することができません。   以上のような理由により,要綱(骨子)第二には反対する次第です。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。   須納瀬委員,何か御発言がございますでしょうか。よろしいですか。 ○須納瀬委員 いえ,ございません。 ○川端部会長 ただいま山﨑幹事から御意見が出されました。これに対して御質問,御意見がございましたらよろしくお願いいたします。本日が最終回になる見込みですので,どうぞ御自由に活発な御議論をお願いしたいと思います。 ○小木曽委員 今の御意見について質問ですけれども,51条1項の,「死刑をもつて処断すべきときは,無期刑を科する」という,この無期刑は残るわけだと思いますけれども,この無期刑についてはどのようにお考えかお聞かせいただけるでしょうか。 ○山﨑幹事 これは全く個人的な意見ということになりますけれども,少年の場合は不定期刑が原則とされていて,原則は,従来であれば最長10年までの不定期刑である。ただし,やはり死刑という刑に相当するような重大な事案の場合に,飽くまで例外的に無期刑というのが定められている。その有期刑である不定期刑と無期刑との間には,ある意味の断絶があって,やはりそこを認めつつ不定期刑原則との間の整合をとっていると理解しております。 ○小木曽委員 そうすると,死刑に替わる無期刑というのと有期の懲役,禁錮というのはケースとして別であるというような理解をされているということでしょうか。 ○山﨑幹事 そのようなことになると思います。 ○佐伯委員 先ほど山﨑幹事がおっしゃられたこと,少年に対する刑罰と成人に対する刑罰を単純に比較することはできないですとか,あるいは仮釈放の弾力的運用が必要であるというようなことには全く同感なのですけれども,現行少年法も死刑を緩和する場合の無期刑,あるいは無期刑を緩和する場合には15年までの刑を科することができるとしていて,少年に対する刑罰であるから,必ず10年まででなければならないということにはならないのではないかと思います。不定期刑の上限は,少年の特性を考慮し,教育刑であることを重視したとしても,成人に対する自由刑の上限が引き上げられたことを考慮して設定する必要がやはりあるのではないかと考える次第です。 ○須納瀬委員 山﨑幹事の述べたことと重なるんですけれども,やはり少年法は,基本的には教育刑という観点から不定期刑を原則的に採用していると考えます。健全育成という観点からその役割を果たせるものとして不定期刑を考えている。それに対して,極めて例外的な事犯で健全育成を考慮することが困難なケースについて,例外的な刑罰として,18歳以上であれば死刑を科すこともできると,あるいは無期刑というものが定められているということで,先ほど山﨑幹事が,死刑と無期刑は例外であると申しましたけれども,そういった観点で,原則である不定期刑と,死刑,無期というのは,断絶されたものとして考慮されていると考えるべきではないかと考えます。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。今の点に関しまして,ほかにいかがでしょうか。 ○堀江幹事 佐伯委員の御発言と重なりますが,少し確認させてください。須納瀬委員の御発言では,死刑と無期は例外的で,不定期刑と断絶しているのだとおっしゃいましたけれども,その無期を緩和した場合の刑の上限は,現行法でも15年になっているわけです。不定期刑の長期の上限を10年から15年に引き上げることに対して,早期の社会復帰が困難になるということなどを反対の理由として挙げられていますけれども,現行法でも15年はあり得るということとの関係をどのように考えておられるのか。無期の緩和刑としての15年の刑についても,やはりそれは例外的というお考えなのか。質問といいますか,確認させてください。 ○川端部会長 ただいまの御質問に対して,お願いいたします。 ○山﨑幹事 私は,無期緩和刑も飽くまで例外としてのものであって,不定期刑とは断絶をしていると考えるべきではないかと思っています。不定期刑に関して言いますと,先ほどから申し上げているとおり,少年にとってどこまでが教育的な効果を上げ得るものかという意味では,やはりおのずと一定の限界があると考えていますので,成人に対する刑が引き上げられたために,直ちにそれも引き上げられるということにはならないのではないかと考えております。 ○堀江幹事 重ねて質問させていただきますが,無期の緩和刑の上限を15年から20年に上げるということの理由付けについては,前に議論がありましたけれども,事務当局の御説明のように,不定期刑を上げることに伴って,こちらの方も上げるというような説明の仕方のほかに,考え方としては,不定期刑をどうするかとは別に,無期の緩和刑それ自体として捉えて,そして例えば,現在上限15年になっているのは刑法の有期刑の法定刑の上限に合わせていたんだけれども,それが刑法の方が上がったためにずれが生じたところを,こちらの方も上げるといった説明の仕方もあり得るのではないかというようなことが以前の会議で議論になったと思います。その上でですが,もし今おっしゃったように,無期の緩和刑は不定期刑とは断絶していて,例外的なものだと位置づけた場合に,その例外的なものとしての無期の緩和刑それ自体について,その上限を15年から20年に上げるということに関してはどのようにお考えでしょうか。 ○川端部会長 どうぞ,今の御質問に対してお願いいたします。 ○須納瀬委員 例外ではありましても,やはりそこは少年ということを踏まえて緩和しているという刑ですから,それについては少年法の中での例外です。という意味では,成人の刑を引き上げたから,直ちに少年の刑も引き上げなければいけないと,そういう関係にはないだろうと思います。 ○川端部会長 ほかにいかがでしょうか。御意見がございましたら,お願いいたします。 ○武委員 不定期刑が軽すぎるからとか,成人の刑が上がったから,それに伴って今回刑を上げるという,一つの大きな理由ではあると思うんですが,私たちが思うのは,今まで少年が罪を犯しても,罪に見合った罰ではなかったということが私たちは一番大きいことです。   もう一ついえば,少年が,例えば不定期刑15年になります。そして,上限が15年,下限が10年です。それを,例えば少年が罪を犯した場合に,全てが15年に合わすようなイメージを作られるのはおかしいと思うんです。その範囲が広がっただけであって,みんなが長くなるイメージを付けてはほしくないです。そして,たとえ不定期刑になって15年,例えば少年刑務所,年齢が上がれば刑務所に入ったとします。それを理由に社会に出たときに,それが弊害になるという理由にするのは私はおかしいと思います。それは刑を与えられたからではなく,本人が,厳しい社会で,どう生きていくかであって,その問題は教育の問題でもあると思うんです。少年刑務所での教育,それから刑務所に行ったときにどんなことが行われる,そういうことをもう少し考えるべきだし,それを社会のせいにしてはいけないと私は思っています。   なぜかというと,長い刑,15年までを加害少年に与えたとします。その事件というのはそれだけの事件なんです,凶悪犯罪なんです。多分,被害者がいます。私はいつも思います。被害者,その残された被害者遺族は,その15年間どんなふうに生きているんでしょうか。ほとんど被害者が支援もなく,自分の力でとても冷たい社会の中で生きる人が多いんです。だから,それを考えたときに,少年が社会に出たときに弊害があるからという大きな理由にされるのはとても私たちは納得がいかないんです。やはりそこには必ず泣いている,心細く,本当につらく生きている被害者遺族がいるからです。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   今,日弁連の方からの御意見に対する意見を求めた形になっておりますが,それにこだわらずに別個に,刑に関する御意見を賜りたいと思っております。   ほかに御意見がございませんようですので,「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」についての第2巡目の議論をこれで終えたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは次に,諮問全体についてのまとめの審議を行いたいと思います。諮問事項全体についての御意見でございますので,自由に御発言をお願いしたいと思います。 ○須納瀬委員 まとめ的な発言になってしまいますので,もう少し御自由な御発言が出てからと思ったのですけれども,どなたからも御発言がないようですので,若干全般についての意見を述べさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。 ○川端部会長 はい,どうぞ。むしろ有り難いと思いますので,どうぞよろしくお願いします。 ○須納瀬委員 まず,要綱(骨子)の第一の一についてでございますけれども,これは国選付添人制度の対象事件を,被疑者国選弁護制度の対象事件と同一の範囲まで拡大することを内容とするものであり,弁護士付添人が少年審判における適正な事実認定及び適正な処遇決定のため,更には少年の再犯防止のための環境調整に果たす役割の重要性から,その対象事件を拡大すると提案されております。そして,この点について多くの委員から賛成の意見が述べられ,基本的に反対の御意見は出されなかったことは,国選付添人の重要性を御理解いただけたものと感謝いたしております。   日弁連としては,既に述べておりますとおり,対象事件を観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件まで拡大すること,裁判所の裁量のみならず少年保護者の請求による選任を認めることを提言しておりますが,今回の提案は,その全てを満たすものではないものの,少年の権利保障にとって大きな前進であると評価できますので,賛成したいと思います。   今回,財政状況等の関係から身体拘束事件全件までの拡大は困難とされたわけですが,将来的には更に検討課題としていただきたいと希望いたします。   要綱(骨子)の第一の二で検察官関与対象事件も国選付添人制度の対象事件と同一の範囲まで拡大する点については,予断排除の原則や伝聞法則の適用がない少年審判に検察官が関与することにより,少年を著しく不利な地位に置くのではないかと考えられ,適正な事実認定の観点からも問題があるとの懸念があります。そもそも少年審判に検察官が関与することは,少年の健全育成の理念に反するのではないかという懸念も指摘されております。裁判所にとって,検察官関与が事実認定のために便利である場合があるとしても,このような懸念がある以上,検察官関与の拡大については慎重に考えるべきであります。   日弁連は,このような考えから,少年審判への検察官関与には一貫して反対してきたところであり,現在もその点に変更はありません。したがって,検察官関与対象事件の拡大それ自体には賛成できません。しかしながら,今回,付添人制度の対象事件の拡大と,検察官関与制度の拡大を一体として提案される中では,国選付添人制度の拡大が少年の権利擁護の拡大に貢献することを評価し,賛成したいと思います。   なお,検察官関与の対象事件が拡大されるとしても,先に述べたような懸念もあることから,裁判所は検察官関与決定を行うに際しては,その要件及び必要性を慎重に吟味し,謙抑的に判断すべきであり,検察官は少年の健全な育成を目的とする少年法の理念を損なうことなく,また,少年が真実を発言できるように配慮して審判に関与すべきであると考えます。   要綱(骨子)第二については,先ほど山﨑幹事が詳細に述べたとおりであり,全体としては反対の意見であります。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。ただいまの御意見に対する御意見がありますとか,それとは別に御意見があります方は,どうぞ御発言をお願いいたします。   武委員は,先ほど要綱(骨子)第二について御発言されましたが,総括としてはいかがでしょうか。全体に対して御意見がございましたら,お願いいたします。 ○武委員 まずは検察官関与のことで少し話をしたいと思います。   私たちが望んできましたのは,重大犯罪は原則検察官を関与させてほしいということでした。なぜなら,裁判官の裁量で考えられてしまうと,付けるか付けないか,事件によってその裁判所,そしてまた裁判官によって差が出るから,それは私たち遺族にとってはとても残念なことだし,不安なことなので,本当は原則にしてほしかったです。私たちが以前から,会を作った頃から言っていました,「事実認定をしっかりしてください」と。そのためには検察官関与が必要だったからです。それが今回盛り込まれなかったのはとても残念です。ただ,範囲が広がったということで,少し一歩前進かなと思っています。   だから,私はここで,最高裁の方にお願いしたいです。裁判官の裁量にとても左右されますので,裁判官の方にやはりなるべく検察官を入れない方がいいとか,逆送にしない方がいいとか,そう考えられている裁判官がまだまだいると思うんです。だから,そこを徹底して変えていただきたいと思います。せめて重大犯罪は検察官を入れて事実認定をしてほしいです。お願いします。   それと,少年に国選弁護人が付く範囲が広がるということなんですが,私たち被害者にはそういう制度がありません。とても心細い思いをしている遺族の人,被害者の人が圧倒的に多いです。だから,これからやはり考えていただきたいことです。   例えば,加害者側に弁護士が付いて被害者側に連絡が入ったりすると,とても戸惑いますし,とても不安を抱えてしまいます。例えば示談の話になると,それを受けてよいものなのかどうなのか,それがどんなふうな影響があるのか全く分かりません。だから,そんなときに,やはり被害者側にも付き添う弁護士が必要なんです。それをこれからやはり考えていただきたいです。   私はいつも思います。これは法律ではないかもしれないんですが,私たち遺族は突然事件に遭います。とても不安で怖いんです。それを国の法律で守ってくれると思いました。でも,守ってはくれなかったです。今もそうです。自分たちの力で生きるしかないんです。だから,できたら被害者のことをもっと考えてほしい,例えば検察官関与でもそうですが,きちんと少年法の中に盛り込んでいただきたいんです。きちんと国の法律で被害者を,被害者の権利をきちんと作っていただきたいと思っています。それが私たち遺族がこれから先生きていくために必要なことなんです。   最近では被害者支援のことが言われるようになりました。でも,それでは駄目なんです。被害者支援の前に,国がきちんと法律であなたたちを守りますよ,事件のことはきちんとしますよと,きちんと事実認定をして,きちんとそれに見合った罰を与えますよと,あなたの子どもはそれだけの命だったんですよということを示していただきたいです。それがないことで国にも見放されたようでみんなとてもつらく心細く,力をなくし小さくなって生きている遺族の人が今もたくさんいるからです。私はそれを見る度にとても腹が立つし,悲しい思いをしています。ですから,今回盛り込まれなくても,これからも是非改正を続けていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。今具体的に最高裁の名前が挙がりましたのですが,豊澤委員,もし差し支えございませんようでしたら,御発言をお願いします。 ○豊澤委員 ここでの審議の中で様々な御意見が出されましたし,この部会での取りまとめを踏まえて法制審の方で採択され,これが立法化された暁には,その立法の趣旨に従って運用していくと,そういったことで各裁判所には周知を図っていきたいと思っております。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   まだ植村委員が御出席されておりませんので,休憩をとりまして,再開の上,最後の取りまとめに入っていきたいと思っております。 (休    憩) ○川端部会長 再開いたします。   先ほど来,全般についての御意見を承りたいということで時間を設定しておりますので,どうぞ,御自由に御発言をお願いいたします。   これまでかなり濃密な御議論をしていただきましたので,もう発言することはないという御感想をお持ちかもしれませんが,更にこの際はっきり述べておきたいということがございましたら,お願いいたします。 ○望月委員 これはもう感想になってしまうかもしれないのですが,今日もこの少年法部会に出席するために都民センターから出掛けてまいりました。センター相談員は現在数件の裁判員裁判付添など,様々な責任を担って支援活動をしていますが,センターに残っている相談員から「是非頑張ってきてほしい。」という言葉で送り出されました。それは,私たちが身のすくむような重大な被害を受けた被害者に日々接する中で,法律とか制度によって被害者が傷つけられたり,武さんがお話しされたような,取り残された環境の中でその後の人生を暮らしていかなければならないという事例を数々見ているからです。ですから,私は法律の専門家ではないのですが,個々の被害者に,国や地域によって支えられているという思いを少しでも持っていただくために直接被害者に関わる支援者がこの部会に参加する意義があるのかなと感じています。法律や制度を変えていくのは本当に大変なことだと思いますが,ここに参加している皆様には,是非被害者一人一人の実情をより多く知っていただきたいと思います。私たち支援者は日頃接している被害者の実情と,被害者のための法律や制度がすんなり結びつかない歯がゆさを感じています。被害者のための法律や制度を血の通ったものにしていただきたいと思います。量刑が10年から20年になっても取り返しがつかない,そんなことでは納得がいかないという被害者も少なくありませんので,そういう被害者の声をたくさん聞いていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。 ○武委員 私は今回,この法制審議会で委員に入れていただいたことを本当に心から感謝をしています。私は専門家ではありません。ただ,少年犯罪で子どもを亡くした家族の集まりをしている会の代表だということで呼んでいただいているんだと思います。とても有り難いと思っています。   私は今回,貴重な時間を頂いて思ったことは,まだまだ犯罪被害者の置かれている現状を皆さん知らないなということです。どんなことかと言いますと,まず,犯罪被害者の人権そのものがまだまだ知られていないんです。私は最近では犯罪被害者の人権ということを耳にするようになりました。よく人権の担当の方がおっしゃいます,「ようやくですね」と。今まで人権の項目の中に,犯罪被害者という言葉はなく,この数年だということです。それで少しずつ認知されているんだなというのは思うんですが,それほど犯罪被害者というのはまだまだ考えられていないのです。誤解をされていたり,それからやはりまだまだ犯罪被害者は偏見を持たれるんです。どんな偏見かというと,被害に遭うだけで,もう普通の人でなくなるんです。ですから,私はいつも加害少年が社会に戻ったときに,社会になじめないとか,少年が挫折するのは,みんな社会のせいだといいます。でもそれは違うと思うんです。絶対に本人が自分で力を出さなければいけないんです。犯罪を犯した少年は,人より更に頑張らなければ社会にやはり認めてもらえないと思うんです。   私たち遺族は,先ほども言いましたように被害者の人権というのは余り考えられていなかったです。今も偏見を持たれる遺族がたくさんいます。まずは被害者も悪かった,その家族も悪かったと言われる人もいます。それからおもしろおかしく言われる人,職をなくす人もいるんです。病気になる人,亡くなった人も私は何人か見ています。それでも私たちは犯罪被害に遭ったことを理由にしていないんです。法律のことを訴えるときに,職がなくなったとか,自分たちがこうだからということを理由にしていないんです。なぜなら,やはりそういうことは自分で力を出すことだと思っているからです。でも,その頑張る力が出せないんです,それが法律なんです。法律がその力を奪っていると私は思っています。まずは法律をきちんと変えていただいて,それで遺族が厳しい社会の中で生きるための力を与えていただきたいんです。   繰り返しになりますが,私たちはこれからも社会のせいにしません。自分の力を出せないことがいけないと思います。だから,まずは法律で守っていただきたいんです。法律できちんと改正をし続けて,やはりもう少し,少しずつでもいいんです,被害者のことを考えていただきたいです。本当に泣いている被害者はたくさんいるんです。これがどうしても言いたかったです。本当に生きる力を頂きたいんです。ありがとうございました。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   植村委員,おいでになったばかりで申し訳ございませんが,植村委員が御到着されるまでに「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」及び諮問全体についての審議を一応終えておりますので,部会としての意見の取りまとめの前に御発言したいことがございましたら,お願いいたします。 ○植村委員 特段ありません。 ○川端部会長 そうですか。ほかにいかがでしょうか。これで全体についての審議も終えたということでよろしいでしょうか。取りまとめに入ってよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。   では,これから取りまとめに入らせていただきます。   諮問第95号は,「少年審判手続のより一層の適正化及び充実化並びに少年に対する刑事事件における科刑の適正化を図るため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。」というものであり,その別紙として要綱(骨子)が付されておりました。そして,本部会において要綱(骨子)の「第二 少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」については,事務局試案が示され,これに基づいて議論が行われました。   そこで,採決の方法でございますが,これまでの議論の状況に鑑みますと,要綱(骨子)の第一及び第二について,それぞれ採決することとし,第二については事務局試案について採決することにしてはどうかと考えております。このような方法でよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○川端部会長 どうもありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。   まず,要綱(骨子)第一の「国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲の拡大」について採決いたします。要綱(骨子)第一に賛成の委員の方は,挙手をお願いいたします。 (賛成者挙手) ○川端部会長 次に,反対の委員の方は,挙手をお願いいたします。 (反対者挙手) ○川端部会長 どうもありがとうございました。それでは,採決の結果を報告してください。 ○佐藤(剛)幹事 ただいまの採決の結果を御報告いたします。賛成の委員の方16名,反対の委員の方0名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。 ○川端部会長 ただいま御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第一の「国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲の拡大」につきましては,挙手されました委員全員の賛成で可決されたと認めます。   それでは,次に要綱(骨子)第二の「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」に関する事務局試案について採決いたします。賛成の委員の方は,挙手をお願いいたします。 (賛成者挙手) ○川端部会長 どうもありがとうございました。次に,反対の委員の方は,挙手をお願いいたします。 (反対者挙手) ○川端部会長 どうもありがとうございました。では,事務当局から採決の結果を報告してください。 ○佐藤(剛)幹事 ただいまの採決の結果を御報告いたします。賛成の委員の方15名,反対の委員の方1名でした。出席委員総数は,先ほどと同様でございます。 ○川端部会長 どうもありがとうございました。   ただいま御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第二の「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」に関する事務局試案につきましては,挙手されました委員の数で賛成多数となっておりますので,可決されたと認めます。どうもありがとうございました。   以上で全ての事項についての採決が終わり,諮問第95号につきましては,第一「国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲の拡大」については,諮問に付された要綱(骨子)を部会の意見として,第二「少年の刑事事件に関する処分の規定の見直し」については事務局試案を部会の意見として総会に報告することに決しました。   この決定につきましては,部会長から総会に報告いたしますが,部会長報告については,慣例として部会長に一任願っておりますが,今回もそのようにさせていただいてよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○川端部会長 どうもありがとうございます。それでは,そういう形で報告させていただきます。   本日予定しておりました議事はこれで全部終了したことになりますが,この際特に発言しておきたいという方がおられましたら,御発言をお願いします。 ○須納瀬委員 委員の須納瀬でございます。日弁連は,長年にわたり国選付添人制度の拡大に向けての取組を行ってきたところであり,本日,大幅な対象事件の拡大が皆様全員一致で賛成を頂いたということについて改めて感謝申し上げます。   今回の対象事件拡大の趣旨は,弁護士付添人が少年審判において適正な事実認定,適正な保護処分決定に果たす役割,そして少年の立ち直りを支援し,再非行,再犯を防止する役割が評価され期待されているものと受け止めさせていただきます。日弁連としては,このような期待を十分に認識し,拡大された国選付添人制度の下で,弁護士付添人がその期待に応え,少年法の理念と付添人の果たすべき役割を自覚して付添人活動ができるよう,対応体制の整備はもちろん,活動の質の確保向上を図る取組を進めてまいりたいと考えているところであります。どうもありがとうございました。 ○川端部会長 松尾関係官には毎回,この部会に御出席いただきましたが,もし何か御感想等ございましたら,よろしくお願いします。 ○松尾関係官 部会長のお許しがありましたので,手短に感想を述べさせていただこうと思います。   話が遡りますけれども,現行少年法が制定されましたのは昭和23年で,これは誠に大改正でありました。内容のみならず制定の手続におきましても,刑事訴訟法の場合は日本側とGHQ側との意見交換が綿密に行われ,十数回を重ねて協議会が開かれましたのに対し,少年法については,それに対応するような会議は全くなかったように思われます。アメリカ側のアイデアがそのままストレートに日本に持ち込まれたということになるのです。日本側で提案して採用された条項というのは,少年の年齢を20歳に引き上げるという点だけでありました。それが採択されたのですが,日本側としては提案の前提として大正時代の少年法の基本的な枠組みをそのまま維持しながら年齢だけを18歳から20歳に引き上げるという考えでありましたから,基本的な枠組みを変更し,全件送致主義をとった上で20歳に上げるということは全く予想外のことであったのです。それでも少年法は成立し,日本はそれを受け入れて家庭裁判所を新設し,年齢引上げだけは2年間猶予期間を置きましたものを,全ての改革を見事に取り込んで,その後の実務を作り上げていったわけであります。   ただ,先ほど申しましたような過程で少年法の改正が行われました結果,強い反発が出てくるのはむしろ当然であったと思われます。それが昭和40年代の少年法改正の問題になって表れたわけですが,そこでは何年も掛けて激しい議論の末に,御承知のとおり法制審議会は中間答申しか出せなかったわけですし,それもそのまま法律になったわけでもありませんでした。ですから,一見しますと非常に無駄なことをやったように見えますけれども,実のところ,その間の激しい議論の応酬というのは非常に有益なものであったと,今となっては考えられます。   比喩を用いることを許していただけますならば,昭和23年の少年法改正は,年末年始の飾りを,鏡餅を使ってやっていたのをやめて,クリスマスケーキに替えるというようなものでありました。昭和45年の改正提案も,クリスマスケーキをやめるとまでは言わないものの,ケーキのサイズを小さくして鏡餅も復活しようと,両方並べて年末年始を祝おうというような提案に等しいものでありました。しかし,改正案は成立いたしませず現在に至っているわけですが,少年法改正はなかなか手が付けられないタブーであるという雰囲気はずっと続いていたように思います。   しかし,平成に入りまして,特に平成10年代から状況がかなり変わってまいりまして,再び,三度,法制審議会に少年法部会が設置されるという経過をたどりました。そこで出された諮問あるいは要綱(骨子)というようなものには「検察官関与」などの字句がありまして,これがかつて非常に激しい論争を誘発したタームであったわけですけれども,しかし,その実態はもはや大きく変化しています。それは何といっても家庭裁判所50年あるいは60年の実績というものがあり,少年法の実務をしっかりと定着させてきていたということにかかっていると思われます。   再び比喩を申しますならば,平成になってからの改正は,クリスマスケーキのトッピングに字を書き加える程度のものでありました。書き加えられた字は「検察官関与」であったり「事実認定の適正化」であったりしたわけですけれども,しかし,それはケーキ自体を変質させるものでは全くありませんでした。私は今日の改正,4回の会議を経て,委員,幹事の皆様の熱心な御審議と部会長の適切な議事進行,事務当局の周到な準備等々が相まって今日の結論に至りましたわけで,非常に喜ばしいことであると思いますが,要綱(骨子)の第二については反対の御意見もございましたけれども,それは内容的にはごもっともとも思いますけれども,今後の運用の実態を予測いたしますと,少年に対して厳しい刑を予定したように見えますけれども,それはごく一部の本当に厳しく罰するべき事件にだけ適用されて,一般の事件は必ずしもそうならないという,言わば一種の切り分けが行われていくであろうと思われます。その辺のところが運用よろしければ御心配になることにはならないのではないかという気がいたしております。   いろいろ申しまして恐縮でございました。皆様本当に御苦労さまでございました。 ○川端部会長 松尾関係官,どうもありがとうございました。   事務当局から何かございますでしょうか。 ○稲田委員 刑事局長の稲田でございます。事務当局を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。   委員,幹事,関係官の皆様方には,御多忙中にもかかわらず今回の諮問につきまして毎回長時間にわたり大変御熱心な御審議を頂きまして,厚く御礼を申し上げます。また,部会長には,議事の進行,意見の取りまとめに格段の御尽力を賜り,誠にありがとうございました。   今,松尾特別顧問からもお話がございましたように,今回の少年法改正は,少年審判手続というものの極めて重要な部分についての一層の適正化,充実化ということで,国選付添人制度と検察官関与制度の対象事件の範囲の拡大ということを行うものでございますし,また第二につきましても,少年の刑事裁判における科刑の適正化を図るために,少年の刑事処分に関する規定の見直しを行うというものでございまして,いずれも私どもといたしましては,少年法制の中の極めて重要な部分であると,これを実施していくことは大変重要なことであると考えております。そこで,私ども法務省といたしましては,本日お取りまとめいただきました御意見に沿いまして,必要な法整備を速やかに実現していくべく努力する必要があるものと考えております。   今後のスケジュールにつきまして御参考までに申し上げますと,2月8日に法制審議会の総会が予定されておりますので,本日の部会におきます諮問第95号に関する御決定は,その法制審議会の総会の場で部会長から御報告を頂き,速やかに答申を頂戴するようにいたす所存でございます。その上で法案の立案作業を進めまして,国会情勢等もございますが,できる限り速やかに関連する法律案を国会に提出したいと考えております。委員,幹事,関係官の皆様方におかれましては,今後とも引き続き御支援,御協力のほどよろしくお願い申し上げます。本当にどうもありがとうございました。 ○川端部会長 皆様方の御協力によりまして採決に至ることができました。どうもありがとうございました。   最後に,本日の議事録の取扱いについてお諮りいたします。本日の会議につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を公表させていただくことといたします。よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。   それでは,これにて散会いたします。どうもありがとうございました。 -了-