法制審議会           被災関連借地借家・建物区分所有法制部会           第8回会議 議事録 第1 日 時  平成25年1月8日(火) 自 午後1時30分                      至 午後4時45分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  罹災都市借地借家臨時処理法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会被災関連借地借家・建物区分所有法制部会第8回会議を開会いたします。   まずは冒頭に,新年,明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。   本日は御多用の中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,事務当局から配布資料の説明をお願いいたします。 ○岡山幹事 配布資料の説明をさせていただきます。事前に配布資料目録,部会資料12を郵送させていただきました。部会資料12は,「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案のたたき台(その2)」と題するものです。本日の御審議は,この部会資料12に基づき,進めていただきたいと存じます。なお,部会資料12においては,前回の御議論を踏まえた補足説明を付しておりますが,最終的な要綱案はゴシックで記載しております本文のみを御決定いただくことになります。そこで,補足説明の記載内容についても御意見があれば賜りたいと存じますが,特にゴシックの本文について,このような記載でよいかどうかという観点から御議論いただきたいと存じます。 ○山田部会長 それでは,本日の審議に入りたいと存じます。本日は,部会資料12に基づいて御審議をお願いいたします。   最初に,「第1 区分所有建物が大規模一部滅失した場合における特例」の「1 取壊し決議制度」について事務当局から資料の説明をしてもらいます。 ○川副関係官 それでは,第1の「1 取壊し決議制度」について部会資料11,前回の部会で使いました資料から変更した点を中心に御説明を申し上げます。   まず,「(1)多数決要件」につきましては特段,変更はございません。   次に,「(2)決議事項」につきましては,本文のゴシック部分には変更はございません。①の1として取壊し費用の分担に関する事項を決議事項とし,本文②としてその分担に関する事項については,各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならないという規定を設けることを提案させていただいております。   この点については,前回の部会におきまして,取壊し費用の分担の基準を定める際に考慮する事情として,どのようなものが考えられるのかということについて,説明の仕方を工夫する必要があるのではないかというような御指摘を頂いておりました。今回の補足説明では,前回の部会で議題に出ました取壊し費用の分担基準として,通常は専有部分の床面積割合や共用部分の共有持分割合によることが衡平にかなうものと考えられるというところは変更しておりません。そのほかに,個別の事情を考慮要素として分担基準を定めることが合理的だと考えられるような場合の例としまして,共用部分に関する費用負担について従前から共有持分割合と異なる基準を規約により定めているというような場合には,規約の定めのほうに従うことが合理的な場合も多いのではないかというようなことを挙げております。   そのほか,いわゆるげた履きマンションと言われるような店舗部分が下の階にあるようなマンションにおいて,1階部分は営業を続けられるというような損傷状況であった場合には,その専有部分にまだ財産的価値が残っているというような事実を一定程度考慮して,取壊し費用の分担に関する基準というのを調整することも合理性があると考えられる場合もあるのではないかということで,例示させていただいております。先ほど説明がありましたように,補足説明自体は要綱案にはならないということですけれども,このような考えに基づいて,このような本文の提案をさせていただいているというところでございます。   また,衡平を害するような分担基準とは,具体的にどのような場合かということですけれども,これについては,合理的理由もなく特定の区分所有者のみが取壊し費用を多く負担するとか,少なく負担するというような,そういうような定め方をするというようなものであって,衡平の観点から見て合理的な範囲を逸脱するような基準が定められた場合ということが考えられるのではないかということを挙げさせていただいております。   次に,(3)の「集会の手続」についてですけれども,これについてはゴシック本文の部分を一部,変更しております。前回の部会においては,復旧や建替えをしない理由を説明するだけではなく,取壊しをすることの必要性を積極的に通知事項や説明事項とするべきではないかというような御指摘等を頂いたと認識しております。そのような御意見等を踏まえて検討いたしまして,今回の部会資料12では本文②のイとして,取壊しを必要とする理由を通知,説明事項とすることを提案させていただいております。本文②のアのところでは,復旧や建替えをしない理由というのを前回と同様,掲げておりまして,そちらのほうで従来の区分所有関係を維持することを断念する理由について説明をしていただくということが求められるものと考えられます。こちらで復旧も建替えもしない理由というのを説明していただいた上で,それに加えて,本文②のイの取壊しについて必要とする理由というのを説明していただくということを提案させていただいているということでございます。   前回の部会で,建替えをしない理由と将来的な再建の予定の関係はどうなるのかという御質問もあったものと認識しておりますが,今回の補足説明の2の部分にも若干,記載しております。建替えをしない理由というのは,将来にわたって再建は一切しませんと,そういうようなことを意味するのではなくて,取壊し決議を行うその時点において,建替え決議や全員同意による建替えをしないことが合理的だと考えられるような理由を説明していただくということを考えております。   また,本文②のウのところでは,復旧に要する費用は通知事項としておりますが,建替えに要する費用の見込額までは通知事項としておりませんが,その趣旨としましては,前回の部会でも御指摘がございましたけれども,見込額といってしまうと,かなり細かく,踏み込んだ計画に基づいた額が示される必要があるようになってしまうと考えられますので,細かい再建計画なしにそれを求めるのは困難であろうという配慮から,それを求めることはしておりません。しかし,建替えをしない理由というものの中で,その説明の中で同様の建物を再建する場合,一般的な費用はこの程度ですというようなものが示された上で,建替えをしないと判断することが合理的であるということを示していただくと。その中で触れることが多くなるであろうというようなことを考えております。   その上で,今回,追加しましたイの「取壊しを必要とする理由」というところでは,従来の区分所有関係を維持することを断念するということを前提に,集会の招集者が取壊しをしなければならない,他の選択肢ではなく取壊しをするのが合理的であると考える理由について,具体的事実を示して説明をすることが求められると考えられます。   補足説明の中で例として挙げておりますのは,建物の損傷状況や復旧に要する費用,取壊し費用の分担基準などを踏まえて,早期にまず取壊しをするのが合理的だと考えられるというようなことや,それから,例えば他の選択肢ではなく,まず,取壊しをするのが合理的であると考える理由ということで,将来的には再建をしたいけれども,現在のところ,計画,それから,資金等が間に合わないといったような事情であったり,最終的には売却をしたいと思っているけれども,現状では買主が現れていないというようなことであったり,具体的な事情を示していただいて,現在,取壊しをするのが合理的だと考える理由を説明していただくということをイメージして,提案させていただいております。   次ですけれども,(4)の「決議に賛成しなかった区分所有者の取扱い」についてでございます。この部分につきましては,ゴシックについては特段,変更はしておりません。補足説明の中では,明渡しの期限の許与に関する規律を設けないという提案をさせていただいておりますが,その理由としまして,取壊し決議制度が政令で定める災害により,大規模一部滅失した建物について適用されるものであるということを前提としますと,区分所有法第63条第5項に規定する明渡しの期限の許与の要件を満たすような場合が一般的,類型的に想定し難いと考えられること,それから,大規模災害が発生した場合に建物が放置されたままになるというのは,復興の観点から見て政策的に相当ではないのではないかという理由から,このような規律を設けないということを提案するという説明をさせていただいております。   続いて,(5)の「取壊しに関する合意」については,特段の変更はございません。   それから,「(6)期間制限」ですけれども,この部分につきましても,ゴシック本文については部会資料11から変更しておりません。期間としては現在,1年とした上で,本日も括弧を付けさせていただいております。この期間については前回の部会におきまして,1年では短いのではないかという御指摘を多数,頂いたところだと認識しております。確かに政令で定めるような大規模な災害が発生した直後に取壊し,それから,この後に出てまいります建物と敷地の売却というような決議を行うことは,難しいこともあろうと思いますし,決議までには相当な期間を要するということも考えられるところだと思っております。   ただ,前回の部会でも若干触れましたけれども,阪神・淡路大震災のときに,政令の施行から1年間という期間で建替え決議まで行っていたというような事例もあるということを考えますと,これを,例えば倍の2年とすべき必要性が本当にあるのか,1年間よりも長期間が必要だということについて何らか根拠を示すことが必要だろうと考えておりまして,前回の部会においては,集会の招集手続等が整備されたというような御事情について,御指摘いただいたと思いますけれども,再度,提案としては1年とさせていただいております。これを更に長い期間とすべきと考えられる理由がございましたら,是非,また,委員・幹事の皆様からも御意見を頂ければと思っております。 ○山田部会長 資料の説明をありがとうございます。   それでは,御質問,御意見がございましたら,どうぞ,御発言くださいますよう,お願いいたします。(1)から(6)までをまとめての説明をいただきましたので,(1)から(6)まで,まとめての御質問,御意見を伺いたいと思っております。どこからでも結構ですので,どうぞ,御発言をお願いいたします。 ○沖野委員 とてもささいな点なのですけれども,2ページの(3)の「集会の手続」の②の通知事由です。取壊しを必要とする理由という,正に取壊しの決議を提案していくので,これを正面から出す必要があるということで,そうしますと,アとイの関係というのが問題になりそうにも思われるのですけれども,考え方として次のようなことでよいかということと,もう一つは,順番を変えたほうがよくないかという点をお伺いしたいと思います。取壊しを必要とする理由というのは,正にこれを提案するということなので,正面からその理由を示すということとともに,しかし,そのための検討の資料として他の選択肢について検討結果といいますか,それを示すという趣旨でアが置かれる,そういうアとイの関係の理解でよろしいのでしょうかというのが一点です。もう一つは,取壊しのほうが決議として正面に出るものであるならば,順番はこちらのほうが先にくるのではないかという気がいたします。同じような話は以降の全部にわたって同様に出てくるのですが。ささやかなことですけれども,どうでしょうかという趣旨です。 ○山田部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。 ○川副関係官 通知事項のアとイの関係というところでございますけれども,実際の場面ではアの「復旧又は建替えをしない理由」とイの「取壊しを必要とする理由」というのは,説明する部分が重なってくる部分が多くあると思っております。先ほどの説明では,「復旧又は建替えをしない理由」のほうから説明させていただきましたけれども,正にこれまでの区分所有関係を断念して,では,どうして取壊しをするのかというようなことを,取壊しを必要とする理由の中で言っていただくということになると思っています。こちらの「取壊しを必要とする理由」だけではなく,「復旧又は建替えをしない理由」についても挙げさせていただいているのは,取壊しがこういう意味で必要ですという積極的な事情だけではなくて,既存の制度であります復旧や建替えをせずに,区分所有関係を維持することを断念しますよということが合理的だという理由についても,必ず説明をしてもらいたいということで,濫用防止の観点からも,なぜ,建替え等をせずに現在,まず,取壊しをするのかということは必ず説明をしなければならないと考えられますので,それで,今回,アとイを両方,通知事項とするのが必要ではないかと考えています。 ○山田部会長 二つ目の順序についてはいかがですか。 ○川副関係官 順序については正におっしゃるとおりで,まずは「取壊しを必要とする理由」がくるとも考えられるかなと思っておりますので,順序については法制化する際にも更に検討したいと思っております。確かに「取壊しを必要とする理由」のほうが先にくるというほうがいいかもしれませんので,それを踏まえて検討したいと思っております。 ○鎌野委員 その点なのですけれども,今回,「取壊しを必要とする理由」というのが入ったので,そういう問題が出てきて,そして,私はこれ自体,「取壊しを必要とする理由」というのを入れていただいたということには賛成でございます。   それで,その上でなんですけれども,今,沖野委員のおっしゃったことももちろんなんですが,これを入れたら,当然,そういう問題が起こってきて,どちらかというと並びというか,論理的にも入れ替えたほうがいいのではないかという御意見ももっともなんですけれども,他方,私の意見なんですけれども,大規模一部滅失の場合に一つの思想というか,考え方としてまずは復旧だということで,それはそれぞれの管理組合の合意形成というか,そういったことで決めざるを得ないのですけれども,この法制の基本姿勢というのは復旧があり,もちろん,現行では建替えという制度もありますが,その上で,制度的には必ず復旧決議をしなさいというわけではないんですけれども,被災の特別法としては,それでも駄目なら言わば管理が不全になったような状態だから,取壊しという多分,そういう流れなのかなと。そうすると,そういう考え方,そういうメッセージを盛り込むとすれば,この御提案のようにアとイでよろしいのかなと。   それから,参考のために一つ申し上げますと,外国の立法例,ドイツやフランスなどでは,まずは日本流にいうと復旧決議をしなさいと。それが不成立の場合に解消決議という順番になっているんですね。だから,そういう外国の立法例というか,まずはそういった意味では復旧ありきというような,そういう考え方をあえて盛り込むということを考えた場合には,この順番でいいのかなと考えております。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ゴシックの本文のところは,次回,どういうものを用意したらよいかということを今日の議論に基づいて,事務当局が準備をしていただくところであります。その点から考えますと,今,鎌野さんは今の順番でよいと,そして,沖野さんは順番を入れ替えてはどうかという,それぞれの御発言を頂いたところであります。お二人の御意見を踏まえて,次回までにもう一度,事務当局で検討するということでよろしいですか。   では,沖野さんが発言してくださった二つ目のほうは,今のように受け止めさせていただくとして,一つ目のほうも川副さんの説明でよろしいですか。分かりました。ただ,この点は,前回は複数の方から御発言いただいたところでありますので,前回,御発言された方でも,されなかった方でも,今のアとイを順序はともかく二つを並べた形で,この部会の考え方として要綱案としてまとめようとする方向に,今,進めているわけですけれども,この点についてはいかがでしょうか。 ○山下幹事 すみません,私にはよく分からない。私の日本語の感覚の問題なのかもしれないのですけれども,「復旧又は建替えをしない理由」で「又は」でつないであるんですが,ここの意味は,復旧を断念する理由及び現時点では建替えまでいかないということを,「復旧又は建替え」という形で意味しているんだと思うんですが,ちょっと分かりにくいのではないかというのが私の感覚なのと,あと,もう一つは,先ほどの鎌野先生の御説明とも関係するんだと思うんですが,復旧を断念するという理由という意味ではアとウがセットになっていて,その上で建替えはしないんだけれども,取壊しは必要であるというのがもう一つの多分,説明事項なのではないかと考えますと,その案のところで復旧と建替えを並列して,しかも,それを「又は」でつなぐという,その書きぶりがかえって何か混乱を招くのではないかという気がするのですが,いかがでしょうか。 ○山田部会長 ありがとうございます。   それでは,まず,アのところの意味の確認からお答えいただいて,その後で山下さんが整理されたような形での組合せについての御意見がありましたら,事務当局から頂けたらと思いますが。 ○川副関係官 最初の「復旧又は建替え」というところは,正におっしゃっていただいたとおり,復旧か,建替えかというのではなく,復旧も建替えもしない理由を説明していただくというのが実質的に考えていることです。ですから,「及び」となるのかもしれませんが,復旧と建替えと両方をしない理由を説明していただくというふうなことを考えております。その文言自体は,法制的にどれが一番ふさわしいのか,条文の中には「又は」でつなぎつつ,両方を言うといったものもありますから,どれがふさわしいのかというのは,検討させていただきたいとは思っておりますが,内容はそのように考えています。   その中で,先ほどおっしゃっていただいたとおり,ウの復旧に要する費用の見込額は,正にアを説明するところで実際に入ってくるものだと思っておりますけれども,これにつきましても,どのような分け方で,どのような規定ぶりとするのが,現行の建替え決議と見比べても,一番,説明がつくのかというところで,最終的には決めさせていただければと思っているところですけれども。 ○山田部会長 ゴシック本文をどうするかという問題が一つ,まだ,残っているかもしれませんが,その前に山下さんがおっしゃった,ア,イ,ウの山下さんなりのつなぎ方というのでしょうか,それについてはどうでしょうか。つまり,復旧をしない理由で,そして,そのためにウの費用の見込額が関わってくると,そして,その上で建替えをしないけれども,取壊しだけはする理由ということのように思うが,そういう考え方はどうか,そう理解しているけれども,どうかという点についてはいかがでしょうか。 ○川副関係官 そのような理解ということで,こちらも考えてはおります。 ○山田部会長 ほかにはいかがでしょうか。もう少し,実質的な今の山下さんがおっしゃってくださったような点がありましたら出していただきたいと思います。アとイの順番以外のところでこの3項目をこう挙げることでどうかというのが,今日の段階の事務当局の案ですけれども,それに対して別の本文ゴシック部分についての考えがあるかどうかということをお伺いしたいと思います。実質的なところ,どういうことを通知しなければならないか,それはどういう趣旨なのかという点について,なお,御議論がありましたら御発言を頂ければと思います。 ○鎌野委員 これも私としては細かなことだと思うので,結論的には事務当局にお任せしますが,先に述べた順番の問題も含めて,今,山下委員がおっしゃったことも含めてですけれども,一つの考え方としては山下委員の御意見を踏まえれば,私の意見ですが,実際上,あるいは法制の立て付けとしても,区分所有法制全体から見れば基本は復旧だろうと,そういうメッセージを盛り込むとすればイとウを入れ替えると,先ほど言ったようにアとイを入れ替えるのは私は賛成しませんけれども,アの後の復旧「及び」になるかは分かりませんし,「又は」になるか分かりませんけれども,それをしない理由と,そして,その後に,それならば復旧をするならば,その費用はどれぐらいかと。ここでは,いずれにしてもそういったことはしないという,そういう説明会ですから,そして,一番最後にしたからということで,重要ではないということではなくて,むしろ,重要性を高めるというか,そういう意味で最後に,それならばこういうことで取壊しをするんですよという,何か,そういう並びのほうがいいのかなという気もしまして,そして,先ほど申し上げたように,御説明もあって前回からですね,建替えの費用についてはここでは載せないと,それはそれで賛成でございますので,そうすると,ア,それから,ウ,イの順序というのも一つ考えられるのではないかということでございます。 ○山田部会長 分かりました。ありがとうございます。順序についてもう一つ,御提案というか,お考えを御紹介いただきました。   3項目についてはよろしいですか。順序のところだけがまだ残っておりますが,よろしいでしょうか。そして,順序についてはアとイを入れ替えたらどうかというものと,イとウを入れ替えたらどうかというものと,発言されない方は今のままでもいいのではないかと思っている方もいるのではないかと思いますので,順序についてもう一度,事務当局で今頂いた発言を基に検討するということでよろしいですか。   また,お気付きでありましたら戻っていただいて結構ですけれども,「(3)集会の手続」の②については,ひとまず,これで議論が落ち着いたように思いますので,その他のところはいかがでしょうか。 ○津久井幹事 期間制限の1年について意見を兼ねた質問をさせていただきます。1年を2年にするのか,1年半にするのか,その辺りについて,その理由,補足説明に当たる部分の書き方をお尋ねします。もともと,配布資料11では建替えに比べれば,取壊しは再建する費用の検討が要らないので,決断は早くできるというような御説明があったかと思います。建替えが二つの工程をするのに対して,一工程で済むわけですから決断が早いと。   しかし,今の御議論を聞いて,理論的にはそうではないということが何となく分かりました。フランスの法制でいけば,まず,復旧や建替えについて判断をし,その方向を断念した後に初めて取壊しを考えるという順番になるわけですから,今,選択肢として三つを同列に並べて,どれかを選ぶというスキームになっていますが,理屈の上では区分所有関係を維持するということを断念するというプロセスがあって,初めて取壊しができるというのが正しいとすると,建替えが1年でいいのだから,それより短くていいという議論は当たらないし,あるいは1年と平仄を合わせるというのも違うような気がします。   実際,被災地で起こり得るシナリオとして,例えば復旧か,建替えかということについて激しい議論があって,神戸のときでもその両者をめぐって両方とも法定特別多数決に至らず,半々で割れてしまって終わってしまったと。その後,どうしようかということで,取りあえず取り壊そうとなる。こういうプロセスを経ることもあり得るのではないかと思うんですけれども,その場合,復旧か,建替えかで1年を使い切ってしまって,取壊しができないということになってしまうと,本来,あるべき区分所有法のシナリオからするとちょっと窮屈だと思いました。   質問は,建替えの1年にどうしても合わせないといけないものなのでしょうかと。その辺りについては補足意見ではどういう御説明をすることを今のところ,お考えなのかというのを聞かせていただきたいと思います。 ○川副関係官 取壊しについて今,1年というのが一定の期間ではないかと考えられていると申し上げておりますのは,被災マンション法で相互の買取り請求,これが発生するまでの期間が通常であると6か月というところが,政令で定める災害により大規模一部滅失した場合には,相互の買取り請求が発生するのが1年と長くなっているということを前提にしております。ですので,取壊し決議が設けられた場合には,相互の買取り請求が発生するまでの間に,取壊し決議も成立しないというような要件が加わるということですので,その期間とそろえるということは,法制的にはそのようにすべきであろうと考えております。   今回の(後注3)の7ページのところに若干,記載がございますけれども,結局,取壊し決議や建物敷地売却決議制度の新設に伴って,その期間も所要の整備が必要になると考えておりますので,もしも,それが具体的な理由をもって1年というのでは足りないということになれば,当然,こちらも整備をするというようなことになるのであろうとは考えているところなんですけれども,実際上,正に津久井幹事におっしゃっていただいたように,阪神・淡路大震災のときに1年で建替え決議ということまでできたということからすると,もちろん,先ほどおっしゃっていただいたように,復旧,建替えかというのがなかなか決まらなくて,その後に取壊しがくるということだと,必ずしも取壊しが先というわけではないのかもしれませんけれども,それよりも長く必要だというふうなことは,なかなか説明しにくいというのが事務当局としては考えていたことでして,理由が説明できて長い期間が必要だということになれば,当然,1年というのは延ばすことになりますけれども,現状としては1年というのが一応,基準となるのではないかということを考えているということでございます。 ○岡山幹事 若干,補足させていただきますと,61条12項の特例を定めた被災マンション法第5条でございますけれども,現状では建替えあるいは復旧の決議がされなければ,61条12項による区分所有者間の相互の買取り請求というものがされるということになっております。津久井先生は阪神・淡路大震災で,正にそういう現場も御覧になられたと思いますけれども,被災マンション法第5条の規定というものが,阪神・淡路大震災の経験を踏まえて不都合あるいは適正ではなかったと,要するに期間の問題として,そういう御指摘があるのであれば,ここで御指摘いただきたいと思っております。 ○津久井幹事 そこまではないです。私の理解や知識では,そこまでの意見があったというのは存じ上げないので,むしろ,伺いたいところです。 ○山田部会長 津久井さんに御存じだったら教えていただきたいのですが,阪神・淡路のときに建物区分所有法に基づく建替え決議が行われた区分所有建物が何棟あるか,正確には分からないかもしれませんが,大体,このぐらいの数というのは知られているのではないかなと思うのです。そして,それらの区分所有建物において,いつ,区分所有法に定められている決議が行われたかというのについては,今から一つ一つ調べていたらとても大変なことだと思うのですけれども,ある段階での何か資料に,そういう数字が掲載されて発表されているというようなものは,思い当たるものはありますか。 ○津久井幹事 すみません,私はそういうものは存じ上げません。むしろ,建替え決議に沿った建替えよりかは,全員合意でやる建替えのほうが一般的だったという印象で,決議にまで至ってしまうと終わりであるというようなことを一生懸命,説いて回っていたのが実務だったので,建替え件数などはありますが,この決議に基づくものということについては,私は存じません。 ○山田部会長 分かりました。ありがとうございます。   (6)の「期間制限」について,今,津久井さんから御発言がありました。事務当局からもまた,それに対して回答いたしましたが,ほかにこの期間制限についてございますでしょうか。 ○山谷委員 従前,私は1年では短いという,そういう立場から発言していましたので,改めて補足的なことを申し上げますと,阪神・淡路との対比でどうかという,そういう発想は大事なんですが,今回,東日本大震災と阪神・淡路と何が違うのかというところも,念頭に置いたほうがよろしいかと思います。今回は津波が特徴的でしたし,阪神・淡路のときよりも広域にわたっているということでいろいろな不都合が出てきたと,一つは復旧に当たっても,どういう資材をどういうルートで調達するか,あるいは業者をどういう形で手当てするかということに全面的に影響が及んでいると,現実に震災後,1年10か月が過ぎましたけれども,現状を見る限りではやっと復興が始まったという,そういう段階の地域もありますので,ですから,阪神・淡路との違いというものを念頭に置いたほうがよろしいかというのは,補足的にお話ししたほうがよろしいかと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。   いかがでしょうか。東日本大震災も視野に入れながら考えなければならないという点は,山谷さんのおっしゃったとおりだと思うのですが,何か,1年10か月がたったところで,あるいは2年がたったところで,区分所有建物についてこういう事情があるというようなのが示せると,恐らく括弧内の1年を別の数字に変えることについての重要な手掛かりになってくると思うのですけれども,その点はいかがでしょうか。 ○山谷委員 今のところはこれといったデータを今日は持ち合わせていないんですが,一般の報道とか,我々が現地に行っていろいろな相談を受け,そういう感触というものをベースにする場合には,まだまだ,これからどういうふうな形で復興するのかというのがまだルートとして上がっていない,上がり始めたという時期というのは否めないところで,ただ,マンションについてどうかというのは,私としては持ち合わせていないので,お役に立てるデータは申し上げられない。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。期間制限でございますが,同じような災害が起こるということは,全然,保証されておりませんで,我々がこの十八,九年間の間に経験した二つの大きな震災とはまた違ったタイプの,また,規模も違ったものに出会う,経験するということについても想像力を膨らませて考え,そして,その上で,それに対応できるような制度を作るというのがここでの課題だろうと思います。ただ,それも大体,こんな感じだというのだけでは,なかなか,こういう作業は結論とすることができないようでありまして,何か具体的な根拠というのですか,エビデンスというのでしょうか,そういうものが出てくると,今,括弧内の1の数字を大きなほうの数字に変える可能性が出てくるのだろうと思います。知恵を集めていかがかと思うのですけれども,あるいはこの場では手元にないけれども,次の部会までにはこういうことを調べて紹介してくださることができそうだというようなことがありましたら,また,それをお願いしたいと思うのですけれども,いかがでしょうか。 ○山野目委員 12項の買取り請求の特例の期間として定められている1年というものを考慮して,法制的な説明をしていかなければならないという事務当局のお立場を考え,それから,部会が要綱案をまとめるまでの時間の制約等も考えますと,1年よりも長い期間について説得的な何らかの説明が用意されないと,なかなか,難しい仕事をお願いすることになるのではないかと感じます。   ただいま,部会長がおっしゃったように,これから起こる災害がどのような規模の,どういう様相のものになるのかということに大きく依存することになるのが当然でありまして,しかし,それは誰も分からないものですから,そこを1年よりも長い期間のこの期間が正しいということを積極的に論証していくことは難しいだろうと思います。災害の規模によって異なると言ったときに,何が異なるかということをもう少し細かに見たときの変数が幾つかあって,どの変数も見通しが立ちませんけれども,私が思い付く範囲で,今,気付いた変数としては,1,2,ありまして,一つは政令施行が,いつ,どういうタイミングで行われるのかという問題があるであろうと思います。   1995年の阪神・淡路大震災の際には1月に発災して,3月に政令が出ています。それから,東日本大震災のときには3月に発災して,秋口に政令指定をしないという政府の態度表明がありました。しかし,いずれも参考になる例はありますが,今後の事例も似たタイミングで推移するかということは分かりません。それから,もう一つは取壊しに要する費用を国,都道府県,市区町村が負担するという特例が設けられるときのその制度の概要や,そのことについての態度決定をしてくださいということの期限というのもよく分かりません。しかし,恐らくその期限がこの問題について実務上,極めて重要な意味を持つと考えます。阪神・淡路大震災のときの例はありますが,あれと同じような制度になるという保障もないと感じます。分からない変数がたくさんありすぎて,その中で1年よりも更に長い期間について,一定の積極的な説明を論証責任を負ってしていかなければならない事務当局のお立場ということを考えると,難儀であろうと感じます。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。期間制限について私も発言をさせていただいておりますが,複数の発言を頂いております。それでは,また,期間制限を改めて御議論いただくことは歓迎でございますが,「1 取壊し決議制度」のほかの項目について御意見,また,御質問でも結構です,ございましたらお願いをいたします。よろしいですか。   それでは,私の理解をしているところですと,「1 取壊し決議制度」につきましては,(3)の②のア,イ,ウの順番についてもう一度,決議の趣旨,それから,関連する制度との関連を踏まえて考えてほしいということ,これを事務当局の宿題としていただくこと,それから,(6)については,なお,現段階でできることとしての作業を進めて1年のままとするのか,あるいはこれよりも長い年数,月数を考えるための根拠となることはないかという点についても考えていただくという点を除いて,ゴシックの本文で次回の部会には要綱案の案として,用意をしていただくということにしてよいのではないかと思うのですが,そういうふうに1の「取壊し決議制度」のところについては,今日の段階では御了解をいただくことができますでしょうか。 ○佐藤(正)委員 順番について一言なんですけれども,この順番でいいと思うんですけれども,実際,考えるときは,まず,復旧に要する見込額と考えるのが最初だと思うんですね,実務上を考えれば。ただ,しかし,現地においては見積りをとるにしても,震災後というのは非常に困難を極めるということが実情であります。ですので,大体概算ということも含めて見積りをとるのも困難だ,業者も集まらないということも含めて,復旧又は建替えをしない理由ということが始まって,その次に取壊しを必要とする理由でいいのではないかと思いますので,まず,実務上,考えるのは金の問題だということでは,御参考までに申し上げておきます。 ○山田部会長 ありがとうございます。   それでは,ほかにはございませんか,ご了承いただけますでしょうか。よろしゅうございますか。 ○川副関係官 先ほどの通知事項の順番についてなんですけれども,本日,伺った御意見を踏まえて検討はさせていただくんですが,最終的に法制的なことにならざるを得ない可能性がございまして,御趣旨はこちらでもちろん賜って検討させていただきますが,どのような形になるかということが,法制的にどうかということに係る可能性もあるということを念頭に置いていただけると有り難いなと思っております。次回の要綱案について,要綱案の考え方として一番,その考えがきちんと出るような形でということは検討させていただきますけれども,その留保が付くかもしれないということがございますので申し訳ございません。 ○山田部会長 (3)の「集会の手続」の②について事務当局から最後,法律案にするときには,この要綱の考え方をいかしてということではあるけれども,文言については,その段階で必要な作業をせざるを得ないという趣旨の御発言を頂きました。この点は一般的なことでございましょうかと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   では,その上で2点,「(3)集会の手続」の②の順番については,要綱案としてその考え方がよりよく表れるような順番を実現すべく,次回までに事務当局でもう一度,考えるということと,それから,期間制限については先ほどお話ししたことのとおりであり,事務当局の宿題としていただきますが,その他の点については本文,いわゆるゴシックの部分について次回部会に要綱案の案として提出するのは,この内容で今日の段階で皆さん方の御了解が得られたということに基づいて準備をしてもらいたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   それでは,次に進みたいと思います。部会資料12の4ページでございます。「2 建物敷地売却決議制度」でございます。事務当局から説明をお願いいたします。 ○遠藤関係官 それでは,第1の「2 建物敷地売却決議制度」について御説明をいたしますが,まず,説明に先立ちまして前回の部会において問題提起がされた幾つかの論点があったかと存じますけれども,そのうち,決議が成立した後,建物と敷地の売却がどのような法律関係の下に実現されることになるのかにつきまして,若干,御説明を差し上げたいと存じます。   決議が成立した場合ですけれども,決議に賛成しなかった区分所有者に対する売渡し請求がされまして,これにより,売却に参加する者の下に区分所有権及び敷地利用権が集約されるということが考えられております。前回の部会では,このように売却参加者の下に権利が集約されたことを前提としまして,相手方との間でどのような売買契約が締結されるのか,特に契約の個数が1個なのか,複数なのかといったところを明らかにする必要があるのではないかという問題提起がされたものと理解しております。   この点につきまして法律で明文上,何らか縛りをかけるということを考えているわけではございませんけれども,例えば次のような契約が結ばれるということが想定されるのではないかと考えております。つまり,売却合意者が区分所有権及び敷地利用権の全てを所有する状態となった段階で,各売却合意者が相手方との間で同一の機会におきまして,それぞれ売買契約を締結するというような契約の在り方が考えられようかと思います。このような契約が結ばれた場合,各売却合意者はそれぞれ所有権を有する区分所有権及び敷地利用権を売買の目的物として契約を締結しているというように考えられますので,契約の個数としては法律上,詰めて考えていきますと,複数,区分所有権及び敷地利用権の数,あるいは売却合意者の数だけ成立していると見ることもできるのではないかと考えられます。   他方で,買主となろうとする者にとっては,全ての区分所有権等について権利を取得しなければ,全体として建物と敷地を買い取るという売買の目的を達成できないと考えるのが,相手方の意識としては通常であろうかと思いますので,このように考える相手方としましては,全体として建物と敷地の権利を取得するということを契約上担保するために,区分所有権等の全てについて権利移転義務の履行の提供がなければ代金を支払わなくてもよいというような内容の特約を結ぶということが考えられるところでございます。   従来,第1の2で取り上げてきた決議につきましては,建物敷地一括売却決議と,一括という言葉を用いてまいったわけでございますけれども,ただいま御説明を申し上げたような法律関係によって建物と敷地が売却された場合につきましては,各売却合意者と相手方との間で締結される売買契約は,相互に関連性を有するということは言えようかとは思いますけれども,飽くまで各売却合意者ごとに独立して成立するのだというような見方もできるのではないかと考えられます。そうしますと,一括という言葉を用いることによって,異なるイメージを持たれるのではないかというような指摘があるというように考えられるところでございます。事務当局としましては,このようなことを考えまして,この部会資料12におきましては建物敷地一括売却決議という名称を改めまして,一括という文言をとって単に建物敷地売却決議という名称を付したということでございます。   なお,先ほど御説明を申し上げましたような売買契約が締結された場合におきまして,一部の売却合意者が所有する区分所有権等について,権利移転義務を履行しないというような事態も想定されるところでございます。このような場合,買主としては個々の売却合意者を相手に訴訟を提起するということになろうかと思います。また,登記手続との関係におきましても,個々の区分所有権等が売買の目的物となっているということが前提となっておりますので,売買を登記原因とする所有権移転登記をするということにつきましては,特段の障害は生じないのではないかと考えております。更に前回の部会におきましては,建物の中に規約共用部分とされている部分があるという場合につきましても御指摘を頂いておりましたが,買主が全ての区分所有権等を取得した場合には,当然,規約共用部分についての権利も買主に帰属するということになろうかと思いますので,規約共用部分があるということが建物敷地売却決議の実行にとって障害になるということはないのではないかと考えておるところでございます。   以上が,建物と敷地の売却がどのような法律関係によって実現されるかについての御説明でございます。   引き続きまして,前回部会資料との変更点を中心に,第1の「2 建物敷地売却決議制度」について部会資料の内容を御説明いたします。   まず,柱書きにつきましては,建物敷地一括売却決議の一括という文言がとれたことに伴いまして,ここでも一括という言葉をとっております。   (1)の「多数決要件」につきましては,前回部会資料と変更はございません。   「(2)決議事項」についても,ゴシックの記載内容としましては前回部会資料と変更はございません。なお,代金の分配に関する事項を決議事項とした趣旨としましては,売却の相手方が建物及び敷地を買い取るに当たって,全体として支払われる額が定まるというような場合におきましては,改めて売却合意者間で協議をするというようなプロセスを踏むことなしに,各人が取得すべき金額が定まるということを決議において取り決めていただくという必要があるという趣旨で,このような代金の分配に関する事項を決議事項としておるところでございます。   この点,「代金の分配に関する事項」という表現ぶりにつきまして,先ほど御説明を申し上げましたような法律関係が具体の売却の実現において,そのような契約が結ばれるという場合には,必ずしも「代金の分配に関する事項」という表現が適切ではないのではないかというような御指摘もあろうかと存じます。この点につきましては,法制上の観点からも適切な表現ぶりについて,なお,検討させていただく所存ではございますけれども,趣旨としましては先ほど申し上げたところでございますので,その点を御了解いただければと存じます。   それから,(3)の「集会の手続」につきましては,前回の部会における御議論も踏まえまして,②のイで「建物及び敷地の売却を必要とする理由」という事項を集会の招集の際の通知事項,それから,説明会の説明事項という位置付けとして追加をしております。この「建物及び敷地の売却を必要とする理由」が説明事項として加えられたことによりまして,積極的に建物と敷地の売却が合理的な選択肢であるというように提案者が考える理由について説明をするということが求められるということになろうかと思います。この点を「建物及び敷地の売却を必要とする理由」という事項を掲げることによって,明確にしたいということでございます。   また,相手方がどのような目的で,建物及び敷地を買おうとしているのか,それから,その目的を踏まえまして,相手方が敷地や建物をどのように評価しているのかというようなことにつきましては,通常,売却の交渉の過程でそのようなことが相手方のほうから提案なり,説明なりがされると存じますので,そのような説明が決議事項としましては,売却による代金の見込額というような事項にも,影響を与えるということになろうかと思います。この点は,ひいては相手方に売却することが合理的かどうかということにも関わってこようかと思われますので,このような観点から建物及び敷地の売却を必要とする理由ということを説明する中で触れられることになろうかというように考えております。   それから,(4)の「決議に参加しなかった区分所有者の取扱い」につきましては,再売渡し請求の発生要件に関しまして,「決議に基づく建物及び敷地の売買契約が成立しなかったとき」としておりましたところを,「建物敷地売却決議に基づく売買契約による建物及び敷地に関する権利の移転がなかったとき」というように改めております。これにより,売買契約が締結されるにとどまっており,決議に従った売却が現実に権利の移転まで実行されていないというような場合には,なお,売渡し請求を受けました区分所有者の側から,再売渡し請求をするということが認められることになろうかと考えております。   「(5)建物と敷地の売却に関する合意」,それから,「(6)期間制限」については,前回の部会資料から変更はございません。期間制限の1年に括弧が付いている趣旨は,先ほど「取壊し決議」のところで御説明を差し上げたところと同様でございます。 ○山田部会長 ありがとうございます。   「2 建物敷地売却決議制度」につきまして,(1)から(6)までございますけれども,全体,どこからでもよろしいところから,御質問,御意見がありましたら,御発言を頂きたいと思います。いかがでございましょうか。 ○山野目委員 部会資料12,第1のただいま御説明を頂いた2のところが扱っております制度の名称が建物敷地売却決議制度とされており,初めて登場する呼称であると見られます。また,その制度の内容として建物及び敷地を売却する旨の決議をするという考え方が提示されており,これも新しい提案であるとお見受けします。この後の細目の論点に関する御説明を承ってみなければならない事項が残されていると感じますけれども,今般の御提案が無理のない法律構成により,かつ的確な運用を可及的に確保することができる制度として,育くんでいく余地はあるものと感じます。 ○山田部会長 ありがとうございます。   (1)から(6)に入る前に,全体についてのお考えをおっしゃっていただくことでも結構ですし,それはまた,後にあるとしても,(1)から(6)のいずれかについての御意見又は御質問でも結構です。いかがでございましょうか。 ○垣内幹事 この売却決議制度にかかる決議が実施された場合に,締結される売買契約の内容について,先ほど御説明があった点についてですが,先ほど売主の側の義務の不履行の場合の訴訟について御説明を頂いたかと思います。御説明いただいた法律構成からすると,そういう形になるのではないかと今のところ,感じているところですけれども,逆の事例で,買主の側の代金債務の不履行が仮にあると,代金が払われないという場合に関しまして代金請求の訴えに関しては,売買契約が区分所有者ごとだといたしますと,個々の区分所有者が自己の売買代金債権の支払いを求めるということになり,その場合の代金の金額というのは,決議において定められた見込額の分配の仕方に応じて定まる,そういう債権を個々の売主が取得することになるという,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○遠藤関係官 御指摘のように考えております。売却のプロセスの在り方は一様ではないというところではございまして,まず,全体として幾らというのを買主が見込額として提示をし,それを内部的にどのように割り付けるかというプロセスを経て,各人が取得する金額が決まるという場合もあろうかと思います。その場合,先ほどのような法律構成にのっとった場合には,そのようにみんなで決めた額に従って,個別の売買契約の額が決まるというようなことになろうかと思っております。 ○垣内幹事 そうしますと,代金をどう分配するかということについては,決議事項としてかなり一義的に定まるような形で,あらかじめ決めておくということになるということでしょうか。あるいは,それもいろいろなやり方があって,決議事項としてはかなり抽象的な基準なのだけれども,後で何らかの形で決まればよいということになるのか,その辺りについては,前提となる法律構成との関係でどうなるのかというところはいかがでしょうか。 ○遠藤関係官 個別の売却合意者,売却に参加する者が取得する金銭の額が,1円単位まで精密に決議において決まっているということまでは考えているわけではございませんが,ただ,他方で全体の額が決まった後,決まった場合におきましては機械的な計算といいますか,改めて売却合意者の間で何らか協議をしないと,個々人の額が決まらないというようなことでは,決議の分配に関する事項の定め方としては足りないのではないかということを考えております。 ○森田委員 今の点ですが,先ほど法律構成と言われたのは,例えばこういう法律構成があり得るのではないかということであって,全ての場合に,建物敷地売却決議に基づく売買契約が結ばれた場合には,先ほど言われたような法律構成で規律されるという考え方を示されたものではないと私は理解しております。   売買契約が複数成立するという場合には,そもそも,それぞれの売買契約において代金が定まっているということが通常は契約の成立要件となるのではないかと思います。この売買契約と建物敷地売却決議との関係は,前回までの議論から明らかなように,決議というのはこれに従って相手方に売買契約の申込みをするということが予定されるだけであって,申込みの内容はその後,決議の内容とはずれてくることが当然想定されているがゆえに見込額と書かれているわけであります。したがって,決議の内容を幾ら精緻に定めたとしても,それからその後成立する契約の内容が一義的に定まるということは,論理的にはあり得ないことでありますので,売買契約が成立しているかどうか,それが複数成立しているかどうかというのは,契約の一般原則に照らして,それぞれが別個の契約として成立しているのか,それとも,複数の者が自分たちが所有している物を一括して相手方に移転し,それらを包括した代金を定めるというようなタイプの一個の契約が成立しているのかが判断されることになるのではないかと思います。後者のタイプの契約の場合には,売主である複数の区分所有者が負う債務というのは,講学上は合手的債務といわれますが,複数の者が同時に相手方に各自の債務を履行しなければいけない,全員がお互いにそろって履行するということを約するという法律関係になりますが,そのような法律関係が成立することは一般に認められているわけでありますから,そのような場合には全体で包括的に一個の売買契約が結ばれるということもあり得るわけでありまして,法律構成は様々であると私は理解いたしました。   そのような理解でよいかということと,そうだとしますと,そこから先の話についてはどういう前提に立つかという様々なバリエーションを各事案に即して具体的に織り込んでいって,その中で,どういうアクションがとれるかという形で議論をしていかないといけないはずであって,部会資料12でゴシックで書かれているところから具体的な法律関係についての解釈論的な帰結が一義的に導かれるかというと,そうではないのではないかと私は思います。 ○遠藤関係官 冒頭で申し上げました法律構成の在り方として,御説明を差し上げた点の趣旨としましては,今,森田委員のほうから御指摘があったように,考えられる法律構成の一つであるということでございまして,法律でそのような契約を必ず結びなさいというところまで含んでいるわけではございませんということを若干,補足させていただきます。 ○山田部会長 その前に森田さんがおっしゃった,複数の契約が成立しているという考え方を採ると,あるいはそうして実際の売却が行われたとすると,売買代金というのは一つ一つの契約について定まっているのだろうと,それに基づく支払を求める権利と観念するのだろうと森田さんは御発言されたと思いますが,それが垣内さんの質問に対する森田さんとしての考え方からの説明になるという趣旨だと思いますが,それについては,遠藤さん,いかがですか。 ○遠藤関係官 最終的に個々の売買契約を結ぶということになりますれば,当然,通常の売買契約の解釈といいますかということからして,代金額は決まっているということが要素になっているのではないかと考えております。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○山野目委員 今の話ではないことを話題にしてよろしいですか。 ○山田部会長 構いませんが,今の話に続けて是非という方がいらっしゃいましたら,先に御発言いただいたらいいだろうというのが,山野目さんの今の私に対する質問の趣旨だと思いますので,よろしいですか,また,戻っていただいても結構ですが,では,一応,垣内さんから始まって森田さんにお答えいただいた点は一休止として,山野目さん,どうぞ。 ○山野目委員 ありがとうございます。部会資料の5ページ,「(3)集会の手続」,②のところで集会の議案事項,それから,説明会の説明事項として提示されるべき内容について,新規の御提案を含む問題提起がされています。ここの場所と,それから,次の6ページの(4)のところに登場してくる売渡し請求に係る時価の問題とを関連させて,提案の御趣旨についてお尋ねしてみたいと考えていることがございます。これから私が申し上げることは,第6回会議及び第7回会議において沖野委員から問題提起を頂いていたことと,内容的に全くぴったり一致するものではないし,沖野委員は異なるお言葉遣いでおっしゃったかもしれませんけれども,私としては問題意識がかなり共通している部分があると感じている,そういう事柄についてのお尋ねでございます。   ここの議案事項及び説明事項としてイでございますが,「建物及び敷地の売却を必要とする理由」というものが掲げられております。説明会においてこれに相当する事柄が説明される場合に,例えばでございますけれども,売却の相手方になる人が買い取った後,将来において建物を再建するという計画が示されるといったようなことがあり得るのではないかと感じます。それはそれでお示しいただいてもよろしいですが,そういう計画が示された途端に,それが6ページの売渡し請求のところで出てくる時価の問題と関連付けられてしまって,その時価からは売却の相手方の手元で行われる再建に要する費用を控除した額にされてしまうというふうな計算が想定されているものでしょうか。   その部分をお尋ねするとともに,しかし,もし仮にそういうふうな控除の計算をするということになってしまうのであるとするならば,それは実現するかどうか定かでない再建の費用を反対者など不参加者に転嫁しつつ,それらの人が有している区分所有権を収奪するという結果になるものでございまして,それは許されないのではないかと考えます。そうしますと,この説明会における説明の在り方のこととも関連しまして,一体,6ページの2(4)のところに出てくる売渡し請求の時価なる概念は,どのような考え方に基づいて算定されるかということも,併せて問題となってこざるを得ません。これらの点について,それはここでの委員・幹事が皆で考えることかもしれませんけれども,少なくとも部会資料を作成されたお立場として,何か見通し,御所見をお持ちでいらっしゃるのであるならば,趣旨として伺っておきたいと考えます。 ○遠藤関係官 今,御質問の中心は,(4)の「決議に賛成しなかった区分所有者の取扱い」の売渡し請求が行使された場合における時価の算定が,どのようにされることになるのかという点についての御質問だと承りました。この点につきましては,従前の部会でも御説明を差し上げてきたところと,若干,重複をするのかもしれませんが,相手方がどのように建物及び敷地を利用するのかということを,決議の内容としてそれを縛るとか,縛らないとかということでは考えておりません。説明の中でそういったことが説明されるということは,通常,想定されるところではございますけれども,どのような具体の再建計画がその説明会で示されたからといって,相手方が必ずそれを実行するということを義務として負うというようなことは考えておりません。   そういった前提に立って時価というものを考えた場合には,売渡し請求が行使されたときの時価というのは,その当時における客観的な取引価格ということになろうかと思いますけれども,売却決議自体は成立しておりますので,誰か,特定の者の下に建物と敷地の権利がいずれ集約していくということが,決議の内容の前提になっているということになろうかと思います。そうしますと,その人が建物と敷地をいかようにでも処分できるという立場に置かれることになりますので,そのような状態のものとして時価というのは,幾らが適切かというように考えられるということになろうかと思います。   そのように考えた場合には,具体的には建物が大規模一部滅失しているという前提になっておりますので,通常,取り壊して更地としたものが一番,建物及び敷地を全体として一人が所有しているという状態の下にあっては,適正な評価であると考えることが多くあろうかと思います。そのように考えられる場合には,敷地の更地価格から取壊し費用を控除するというような額が,売渡し請求を行使された時点における時価ということになろうかと考えております。 ○山田部会長 山野目さん,今の答えでよろしいですか。   ほかにいかがでしょうか,今の点について沖野さんの名前が挙がりましたが,いかがでしょうか,今の回答を受けて。 ○沖野委員 この点については結構ですけれども,他の細目があります。これにつきましては,後ほど伺えればと思います。 ○山田部会長 分かりました。   二つの項目に関わるという山野目さんの最初の説明から入りましたが,遠藤さんの答えにもありましたように,(4)のゴシックのところには時価という言葉はないのですが,区分所有法63条4項に規定する時価の解釈についての質問と,それから,回答を頂いたところですが,その点について考えていたところがあると,質問したいことがあるという人がいましたら,まず,ここで重ねてというのが進行の観点からは適切かと思いますので,いかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,ここもまた,改めて戻っていただいても結構ですが,時価についての意見の交換は差し当たり,以上といたしまして,ほかの項目についてございましたら,いかがでしょうか。 ○沖野委員 また細目で非常に恐縮ですけれども,御説明いただいた売買契約のメカニズムについて,共同して売却するというようなこともあり得るけれども,基本的には個別の売買契約であるというときに,この規律の下でどうなるかということを確認させていただきたいと思います。   それは,再売渡し請求の6ページの(4)なんですけれども,当該決議に基づく売買契約による建物及び敷地に関する権利の移転を基準として,時期を画するということになっておりますけれども,先ほどの御説明の形になりますと,個々に分かれる可能性が出てくるように思います。この基準は一部でも移転があればなのか,全部なのか,あるいは当該部分ということがあるのか分かりませんけれども,もし,最初に御説明になったようなメカニズムが採られたときには,どこがもはや引き返すことのできない点として,構想されることになるのかというのを少し説明していただければ,その後の問題が少なくなるのではないかと思います。それが一つです。   もう一つ,再売渡し請求のところで補足説明の箇所です。飽くまで時的限界は決議に基づく,決議の趣旨に沿ったということだとは思いますけれども,それに基づく売買契約によるものであって,そうとは認められない法律関係によって移転したということだとしても,妨げられないということです。考え方はこのとおりだと思うのですけれどもそうしますと,そうではないというのが一体,決議による範囲がどこまでを許しているのかいうこととも絡んでくるのですが,権利が移転しているとなりますとどうなるのかということでして,補足説明で示されたように再売渡し請求は妨げられないということになりますと,元の区分所有者に対して再売渡し請求をするということになるのでしょうか。それとも,売買契約自体が無効であるとか,何か,効力が違ってくるのか,この補足説明の下でこの後どうなるのかという点を教えていただければと思います。   最後に,もう1点です。先ほど来の説明会の通知事項ですけれども,先ほど鎌野委員が御説明くださって制度の在り方との関係でその記載ですとか,並びが非常に重要な意味を持ってくるということがよく分かりました。私が最初に出したのは,一般的な決議のための通知事項として,本来の決議事項が最初にくるべきではないかという論理的な関係から考えただけでしたので,区分所有としてどうあるべきかという法制度の重要性の順番が決まるならば,そのほうがよろしいと思っています。その説明を聞く前に素朴な疑問として5ページに,今や大規模一部滅失がありますと復旧や建替えという区分所有法が想定するもののほか,一旦,取壊しをして,もう少しじっくり考え,再建をするかどうかというのを考えていくという選択肢と,そして,この際,売ってしまおうという,言わば四つの選択肢が出てくるわけで,その中で集会の手続通知で通知すべきものは三つとされているわけですね。   それで,最初の疑問は他の選択肢も検討した上で,これこそが一番適切であると,それを「必要」と,補足説明の「合理的である」ということのほうがしっくりはくるんですけれども,必要という言葉でそれを表しているんだとしますと,取壊しというのは,一旦,解消するけれども,まだ,最終的にどうするかという選択肢は残しているというタイプの選択肢も考えた上で,これにしているんだということが必要なのかどうかということでして,もちろん,全ては必要とする理由に全部,ここで組み込むということも考えられるのですが,しかし,先ほどの鎌野委員の御説明を踏まえますと,区分所有はまずは復旧ないし建替えであると。それに対して,その道が難しいというときに,もう一つの選択肢として浮上してくるものだということだとしますと,取壊しと売却というのは位置付けとしては,その次の段階で出てくる選択肢であって,しかし,本来はこれであるというような優先関係は全くないので,したがって,この通知事項には掲げられていないと,そういうような説明になるのかなと思います。意外に重要な並びかなという感じもするんですけれども,そのような理解でよろしいかというのを3点目としてお伺いできればと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。   大きく二つに分かれると思います。決議に賛成しなかった区分所有者の取扱いの再売渡し請求に係る二つと,それから,「集会の手続」の②の特にイを中心とした②に関する質問です。順番はどちらでも結構ですが,二つに分けて御説明いただけたらと思います。 ○遠藤関係官 まず,再売渡し請求に関連する二つの御質問があったかと思います。1点目は,売買契約による建物及び敷地に関する権利の移転というのが一部でも権利の移転があれば,その段階で再売渡し請求ができなくなるのか否かということについて,どのように考えているかということを御質問いただいたものと思っておりますが,この点につきましては,基本的に個々の売買契約で区分所有権等が売却されるというような場合におきましても,契約としては法律上は一個と見るのかもしれませんが,いずれにしても,それぞれ相互に関連する契約であるということは疑いがないのではないかなと考えております。そのように考えますと,決議の内容が最終的に現実に実現されたという段階としましては,全ての区分所有権及び敷地利用権というものが,契約に基づいて権利が移転されたときということが考えられますので,その段階が再売渡し請求ができなくなる時点であると考えておりました。それが1点目でございます。   それから,2点目の再売渡し請求の行使の相手方がどうなるのかということに関して,法律関係の整理について御質問があったかと思いますけれども,この点につきましては区分所有法上も再売渡し請求というのは,その後,転々,区分所有権等が権利移転されている場合におきましても,現に区分所有権及び敷地利用権を有している人が相手方になるということが考えられておりますので,ここでも再売渡し請求を行使する時点において,元々,自分が持っていた区分所有権及び敷地利用権を持っている人が相手方になるというように考えております。   それから,もう一つ,集会の通知事項,5ページの(3)でございますけれども,基本的にこの提案をした趣旨といいますのは,前回,復旧又は建替えをしない理由というのは,区分所有法で認められている通常の方策,復旧や建替えをしないということをまず説明をしていただいた上で,決議をしていただくということを基本的に考えていました,という御説明を差し上げたかと思います。それを踏まえて,今回,「建物及び敷地の売却を必要とする理由」というのが別途,掲げられたことになりますけれども,その必要とする理由というのは,正にここも表現が,必要という言葉が適切かどうかという問題は,また別途,あろうかと思いますけれども,具体的には売却が合理的な理由について御説明をしていただくと。その過程におきましては,当然,ほかの選択肢として取壊し決議というものがあって,一旦,建物を取り壊した上で改めてどうするか,もうちょっと時間をかけて考えたいという選択肢もあるというのは御指摘のとおりかと思いますので,その点についても,そういった選択肢があるということも踏まえまして,売却というのが今,この相手方に売却するというのが合理的な選択肢として提案者は考えているということを御説明していただくということを,この「必要とする理由」の中で考えておりました。 ○山田部会長 いかがですか。よろしいですか。 ○沖野委員 結構です。 ○山田部会長 最初の二つの御質問についての遠藤さんからのお答えについても,どうなのかなと思っているところについて,事務当局の考え方は示されたと思うんですが,それについての当否についてご意見がありましたら,沖野さんあるいは沖野さんに限らず,御発言を頂けると有り難いと思います。   一つ目のほうは,ゴシックからは沖野さんの御疑問のように両方あり得るところですが,事務当局としては,そこははっきりと考え方は持っているようであります。全部が買主に渡らない限り,どの売渡し請求について行使された売主も再売渡し請求ができるというものです。二つ目は区分所有法63条の6項でしょうか,そこに現在有する者に対して再売渡し請求ができると書かれていて,それと同じであるということで,すなわち,売渡し請求の当事者とは限らないということですから,売渡し請求によってそこに成立する売買契約またはそれと類似の法律関係について,何か,無効になったり,解除になったりするわけではなくて,同じ当事者間であっても反対向きの契約売買またはそれと類似の法律関係が生ずるし,同じ当事者でなくても,現に所有している人に対して再売渡し請求ができるというのが建替えのところの規律なので,それをそのまま,ここにスライドさせることを考えているということと理解しました。 ○沖野委員 当否に関しまして,1点目は考え方はいずれもあり得るのかもしれません。一部でも既に権利が移転していたならば,最終局面に入っているのでという考え方もあれば,しかし,これは「一括」は外されましたけれども,全部移転して,そして,確か前回,森田委員から,いつ,区分所有関係が解消される,消滅されると考えるのかということを基準として考える必要があるのではないかという御指摘もあったと思うんですけれども,全部が完了するまでは正にこの制度に従って解消しないというかと考えるならば完了したときで,かつ,相手方というのが現在,有している者を相手としてできるのであれば,完了するまではという考え方は,それなりに理由があるのかなとは思います。   また,例えば不履行があって請求中であるとか,権利移転が代金の支払ですとか,登記の移転とか,そういうものと連動させられていると,実際には完全な実現に向けて請求しているような場合に,2年がたつというようなこともあり得るのかもしれないとは思います。  けれども,事務当局から示された考え方について,異論があるというわけではありません。考え方は理解しました。 ○垣内幹事 沖野委員の第2の御質問に対するお答えとの関係で,若干,確認をさせていただければと思います。問題となる事例というのは決議があって,その後,売買契約がされるわけですけれども,その売買契約が当該決議に基づくものとはいえないような場合,こういう場合だろうと思います。その場合に,再売渡し請求は妨げられないということになる,権利が移転していても妨げられないということになるんだということなのですけれども,その前提として決議がされて売買契約がされると,しかしながら,その売買契約の内容は決議とは大幅に異なっていて,決議に基づくとはいえないような売買契約であるという場合に,まず,第一に,決議に大幅に違背しているということは,売買契約の効力に影響を及ぼすことはないと理解してよろしいのかということが第1点であります。第2点ですが,相手方との間の売買契約の効力の有無と関連するかもしれませんけれども,売買をする前提として売渡し請求をしているわけですけれども,この売渡し請求に基づく売渡しの効果についても,決議と実際に成立した売買契約とが大幅に異なるということによって,影響を受けることはないということでよろしいのかということ,この二つを確認のために教えていただければと思います。 ○遠藤関係官 まず,売渡し請求のほうから御説明を差し上げますけれども,売渡し請求のほうは基本的にはというか,影響はしないということでございます。売渡し請求を行使されたことによって,賛成者の側のほうに権利が移転するということが,後の法律関係の前提になっているということでよろしいかと思います。その上で再売渡し請求をしたときに,転々流通した決議の内容となっていない,全然関係ない人との売買契約がどのようになるのかという趣旨の御質問であったかと思いますけれども,この点につきましては,それによって全体として契約の目的が達成できないというような場合には,解除事由をもたらすということもあり得るのではないかと考えております。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。そうしますと,決議に反対した者の立場から見ますと,その者の地位というのは,第一次的には再売渡し請求の形である種の保護というものが考えられていて,その結果,売買契約が目的を達成できなくなるとか,そういった問題が生じることはあるけれども,決議に反するからといって,当然に売買契約そのものにダイレクトに影響が生じるものではないと,まずは再売渡し請求が出発点となると,そういうことと理解いたしました。どうもありがとうございます。 ○山田部会長 いかがでしょうか。 ○森田委員 2点それぞれ別のことですが,まず一つは,先ほど売買契約の個数という議論をされましたけれども,その後のお答えから見ますと,仮に売買契約の個数は複数と考えるとしてもそれぞれの売買契約は相互に密接に関連していると説明され,また最初の御説明では,相手方である買主としては,個々の売買契約だけが履行されても困るので,その場合は全体について権利を取得しなければ個々の契約の代金を支払わないという内容の特約を入れて防御することになるだろうということでしたが,その特約というのが,たとえ明示の特約がなかったとしても,建物敷地売却決議に基づく売買契約が締結された場合には,そのことにより当然に個々の売買契約が相互に関連するということが客観的に前提とされているということだとしますと,合理的な意思解釈として複数の契約が相互に関連している関係に立つことになろうかと思います。   この点に関連する問題としては,複合契約の場合において一つの契約の不履行によって他の契約が解除できるかについて,この場合に,契約の個数は1個なのか,複数なのかということ自体について学説上議論があるところですけれども,契約を締結した目的全体との関係で一部に当たる部分について不履行がある場合であれば,契約の個数は全体で1個とされようが,複数の契約とされようが,結論は同じであると考えれば,先ほどの(4)の再売渡し請求の可否についても,これは,特約があろうがなかろうが,当該決議に基づく売買契約全体を基準にして判断されるということですので,契約の個数論というのは,それほど拘泥しなくてよいのではないかということを指摘しておきたいと思います。   それから,二点目ですが,直前の垣内幹事の御質問との関係で,決議に反対した者については再売渡し請求によって救済されるということでしたが,決議に賛成した者のうち,一人が決議に反して勝手に自分の区分所有権だけを第三者に売ってしまったという場合には,何らかの救済手段があるのでしょうか。この場合には,全部を相手方が取得できないということになって,区分所有者の一人に売られてしまえば手出しができないということだとすると,決議には賛成しておいて,その後に造反すれば幾らでも決議を潰せるということになって,法制上は手当てがないということになるのか,そのときは決議に賛成した区分所有者間には(5)の「取壊しに関する合意」というのがあって,これをてこに何らかの救済を考えていくということになるのか。   そうだとしますと,各区分所有権について個々の売買契約が締結されるといっても,それは自分の物だから各人が勝手に処分してよいという関係ではなくて,それは言わば決議全体の目的を達成するために,各区分所有者は決議内容に従って売らなくてはいけないという拘束がかかっていて,それに違反したときには何らかの救済を解釈論的に構成していくということも考えないと,決議は筒抜けになるのではないかと思います。そうしますと,先ほどの売買契約の個数論というのも,仮に複数の契約と考えるとしても,そういった決議との関係でその内容に制約が付されていると考えていかなければいけないのではないか。   この点は,現行の建替え決議の場合についても,建替え決議に賛成しておいて,その後に造反した場合にはどうなるかという問題が提起されていて,解釈論的な対応というものも提案されているかと思いますけれども,それと同じ問題がここでも生ずると考えられ,むしろ,そちらのほうが決議反対者の救済よりもややデリケートな問題を含むように思います。この点を考えますと,(5)の合意をしたものとみなすというのは,区分所有者間にそのような内容の合意があるだけで,それとは全く別個独立に各区分所有者と相手方との間に売買契約が締結されると考えると,各人が自分の物を売ることを合意しても,その効力自体については決議内容は何の意味も持たないということになりますが,そうではなくて,ここの合意というのはもう少し中身があるということが今の点に関わってくるような気がします。少し長くなりましたが,そのような議論の前提として決議に賛成した者の救済については,何かご検討されましたでしょうか。 ○遠藤関係官 今,森田委員からの御指摘もありましたとおり,基本的には決議に賛成した者は(5)のところでみなし合意が成立するという関係にあります。ですので,決議の内容に反するような行動をとるということは,この合意の内容に背くということになりますので,このみなし合意に基づいて,ほかの賛成者の人たちが協力するようにという請求をすることができるというように考えております。転売をしてしまって,当初の決議の賛成者とは違う人が権利を取得したという場合にも,その承継人にみなし合意の拘束力は及ぶと考えられますので,仮にそのようなことがあったとしても,(5)のみなし合意をてこにして,ほかの賛成者は協力を求めていくということを考えておりました。 ○山田部会長 森田さんが発言された前半のほうは御意見かと思いますが,何か遠藤さんからはありますか。お答えいただきたいということではなかったように思いますけれども,特にありませんか。 ○遠藤関係官 御指摘のとおりだと思います。 ○山田部会長 御指摘のとおりと。ありがとうございます。   いろいろなところを議論を深めていただいております。ありがとうございます。ほかにございませんでしょうか。 ○鎌野委員 これは,こういう理解でよろしいかということですけれども,こういった建物敷地売却決議制度ということで,遠藤関係官から契約の個数などの御説明があり,それで,森田委員などからその法律構成についての御意見があって,また,それについての関係官からのお答えがあってということで,そうすると,要綱案,ここの段階では特に法律構成について示す必要はなくて,ですが,基本的な一つの考え方としては,それから,恐らく私はその考え方が一応の基本になろうかと思うんです。   それで,そうすると実際にこの制度が,ここからが私のこういう理解でよろしいかということなんですが,実際にはどう活用されるかということを想定してみた場合,恐らく個々の賛成した区分所有者が個別に買主との間で,その数だけ売買契約をするのではなくて,恐らく各売却の合意者の側が現行の区分所有法,先ほどの御説明で,(4)の中で引かれている63条第4項のいわゆる買受指定者に当たるような人が,恐らく売渡し請求の関係で出現してくることが多いであろうと。   そうすると,例えばそういった買受指定者などが言わば代理人となって,個々の売却合意をした区分所有者の,これは飽くまでも法的には任意でありますけれども,代理権の授与を得て,全員からそういったものを得て,主導的にその人が相手方である買主との間で売買契約を締結すると,そういう形で運用することが実務上,一般には想定しているのではないかと私は考えているんですけれども,そういう理解でよろしいかということでございます。 ○遠藤関係官 今,御指摘のあった点につきましては,そのような運用がされるということも当然あり得るであろうと考えておりました。 ○山田部会長 ほかにいかがでしょうか。(6)の「期間制限」については先ほど御議論いただきましたので,そのことをそのまま反映してよいだろうと思いますが,特に建物敷地売却決議であるがゆえに,別の考え方あるいは追加した考え方があり得るということでありましたら,御発言を頂ければと思います。   それから,(3)の「集会の手続」の②の先ほども議論になりましたところの別の側面ですが,②のア,イ,ウの順番については,これも「取壊し決議制度」のところでの「集会の手続」の②の通知事項の順番については,もう一度,要綱案としてどういう順番で最後にまとめるかという点について検討していただくのと併せて,こちらも連動することだろうということはあろうかと思いますが,それら以外に何かございますでしょうか。 ○山野目委員 細かなことではなくて,部会資料の第1の2で御提案を頂いている建物敷地売却決議制度に関する全般的な感想として,私が思い描いたところについてコメントをさせていただきたいと考えます。新しく提案されているこの建物敷地売却決議制度は,それに参加しないで財産権を手放すことになる人たちに対し,建物及び敷地が最も有効に利用される状態を前提として算定される価格による補償がされるものとして調えられ,また,どうしても不確実さが伴う建物の従後の姿について,区分所有者らの間の情報交換や認識共有の可能性が可及的に高められたものとして工夫されている部分があり,更に売却の相手方への財産権の移転など売買契約の円滑な履行に関して,全体を一個の売買契約として無理に説明しようとする方向が放棄されたことにより,おおむね理論的説明に困難がないものになったのではないかと感じます。   この制度につきましては,なお,その適切な実際的機能を確保することを慮る見地からは,研究を要する課題があるとも見られますが,その中には,取壊しや敷地売却の決議の制度と共通する課題もあります。そのような観点も含めて,部会が要綱案を採択する段階までの間に私も更に勉強を重ねて,もし,参考になる意見を述べることができるのでありますならば述べさせていただきたいと考えております。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。前回と比較して,売買契約の個数は最終的には余り重要な問題ではないという森田さんの意見もございまして,それもなるほどもっともだと私は個人として思いますけれども,それに関わることが今日,大分,事務当局からも説明がありましたし,更に委員・幹事の皆さんからの御発言があり,それに対して回答するということで,一層,深まったように思います。そういったこの場での作業が,このような方向で法律が最終的にできるとしますと,不幸なことですけれども,大規模な災害が起きたときに実際に行われるいろいろな事柄について,適切な手掛かりを与えてくれるのだろうと思いますので,なお,お気付きの点がありましたら,すぐに事務当局から,今日,答えられるかどうか分からないところもありますが,次回,もう一度,あるいは予備も入れますと機会がありますので,御発言があればと思います。いかがでしょうか。   それでは,よろしいですか。ここのところは,今日のなかで,多分,私が予想したところでは一番重い部分であろうかと思いますが,また,本日,閉会するまでにお気付きの点がありましたら,御発言を是非,お願いをしたいと思います。資料の順序に従って進めております議事としては,ここでひとまず次のようにさせていただきたいと思います。   2の「建物敷地売却決議制度」につきましては,最後のほうで私が申し上げた(3)の「集会の手続」②のア,イ,ウの順番については,もう一度,事務当局で考えると,それから,(6)の「期間制限」についても同様と,いずれも1の「取壊し決議制度」について先ほど宿題にしたのと同じ趣旨で,それと整合させるということを除いてゴシックの本文の部分,ここについて次回の部会には要綱案の案として,この会議に事務当局から提出するものの基礎というか,字句についての気が付いた訂正とかはあるかもしれませんが,基本的にはこのようにして要綱案の案を提出したいと事務当局は考えておるようですが,それでよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   それでは,先に進めたいと思います。部会資料12の7ページから後注が三つあります。これは「第1 区分所有建物が大規模一部滅失した場合における特例」全体の後注です。ここについて事務当局から説明をしていただきます。 ○遠藤関係官 それでは,第1の三つの後注について御説明を差し上げます。後注の記載自体につきましては,三つ,いずれも前回との変更はございません。   (後注2)について若干,補足説明を付しましたので,この点について御説明をいたします。集会の招集通知は,原則として区分所有者の所在する場所にあててするということが考えられますが,区分所有法35条3項は,集会の招集の通知に関しまして,区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知した場合はその場所に,管理者に対してそのような通知をしない場合には,その区分所有者が所有する専有部分が所在する場所にあてて通知すれば足りるという規律を設けております。また,区分所有法35条4項は,規約に特別の定めがある場合におきまして,建物内の見やすい場所に掲示することをもって通知に代えることができるという内容の規律を設けておるところでございます。   他方,(後注2)につきましては,大規模な災害により区分所有建物が大規模一部滅失した場合におきまして,集会の招集通知の特例を定めておるものでございます。このような(後注2)のような規律が設けられた場合には,区分所有法35条3項,それから,4項との規定との関係が問題になろうかと存じます。この点につきましては,区分所有法35条3項及び4項は,大規模な災害により大規模一部滅失した場合に,そのまま適用することは相当ではないのではないかという考え方を前提としまして,これらの規定の適用を排除しまして,原則として区分所有者の所在する場所にあてて通知をするということとした上で,調査を尽くしても所在を知ることができない区分所有者がいる場合につきまして,掲示をもって通知にかえることができるという規律を設けるというのが,(後注2)の提案の趣旨でございます。   また,補足説明では記載しておりませんけれども,前回の部会において大規模な災害によって大規模一部滅失した区分所有建物にありましては,建物内に掲示するということ自体が困難な場合があるのではないかという御指摘も頂きました。この点につきましては(後注2)の提案の趣旨として,必ず建物内に掲示しなければならないということまでを考えているわけではございませんで,そのような危険な建物であるだとか,そういった事情があることによって,建物内に掲示することが困難であるというような場合につきましては,建物の敷地内に掲示すると,建物内に相当するといいますか,いずれにしても区分所有者の人が建物あるいはその周辺で分かりやすい,見やすいところに掲示をしていただくということで,差し支えないのではないかというように考えております。   ただ,その旨を条文上,明らかにしたほうがよいかどうかということにつきましては,先ほどの現行区分所有法35条4項にも,場面は異なりますけれども,建物内に掲示をするということをもって通知にかえるという制度がございまして,ここで,先ほど申し上げたような趣旨のことを条文上,明らかにするということになりますと,35条4項の解釈にも影響が及ぶという可能性があろうかと思います。このような観点も踏まえながら,法制的にどのような条文の表現ぶりとするかにつきましては,検討を進めていきたいと考えております。 ○山田部会長 ありがとうございます。   それでは,(後注1)から(後注3)まで,どの点でも結構ですので,御質問,御意見がございましたら御発言をお願いいたします。 ○鎌野委員 最後の点でございますけれども,今,御説明していただいたというようなことで,前回,私が意見を述べさせていただいたことも,考慮していただいているんだということが分かりました。   それでなお,法制上の問題というか,特に現行の区分所有法の規定に影響を与えるのではないかという点でございますが,もっともな御説明だと思いますけれども,とはいえ,こういった大規模一部滅失の場合,そして,大規模一部滅失といっても様々で,もちろん,2分の1を超えているということなんですけれども,極限は全部滅失一歩手前と,非常に危険な建物だということがあり得るので,そういった場合に建物内の見やすい場所ということに縛られまして,仮にそうでなくて建物内に掲示していなかったというようなことで,招集通知を欠くために当該決議が無効だというような紛争が後日,起こることも考えられる。   ですから,これは特例法というようなことで,一般の区分所有の規定とは別に,ここでは例えば建物の見やすい場所,ただし書きなのか,括弧書きなのかは分かりませんけれども,(建物の見やすい場所に掲示することができないときは敷地内の見やすい場所)とかいうようなことで,何らかの工夫があったのがいいのではないかなと考えております。 ○遠藤関係官 絶対にこの文言にするということにこだわっているわけではございませんので,引き続き,考えたいと思います。 ○山谷委員 今の点の関連ですが,大震災のときは避難所にまず避難して,その後,仮設に移ってという,そういうパターンが考えられますので,その辺り,例えば今回の大震災もそうでしたけれども,いろいろな通知の方法があると考えられます。その中で,避難所に掲示するということも結構,いろいろな情報が伝達の方法としてありましたし,あと,仮設のしかるべき場所に掲示して通知するという方法もあり得る話だと思いますので,その点も念頭に置いていただければというのが私の意見です。 ○遠藤関係官 そのようなことも考えられるのではないかということで,検討の中では考えておりました。ただ,法律上,法制上,そのことが書き切れるかといいますと,なかなか,避難所といいましても何か明確な定義があるというわけではなかろうかと思いますので,制度として,それを正面から取り上げるということは難しいかなと考えております。ただ,実際に招集通知を区分所有法に周知するプロセスとして,そのような方法が採られるということは望ましいことであろうと思いますし,そのようなことが尽くされると,そのような方法によって,なるべく多くの人に集会が開かれるということが周知できるような手当てをされるということが望ましいことは,間違いないのではないかと思っております。 ○山田部会長 通知の掲示場所について,あるいは掲示方法についてお二人の方から御意見を頂きましたが,その点に関連して何かございますでしょうか。   ほかに(後注1)から(後注3)まで,御意見,御質問はございませんでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。   私から,事務当局に前提となる枠組みについてお伺いしたいのですが,後注はゴシックになっておりませんが,これは要綱案の案には載らない方向ですか。そうすると,ここに書かれていることは補足説明の中に,ここでの議論をいかしていこうということになりますでしょうか。 ○遠藤関係官 (後注2)と(後注3)の間に補足説明というのを記載しておりまして,ここは後注全体との記載ぶりが変わっていないので,分かりづらくなってはいるとは思うんですけれども,補足説明を要綱案に掲げる予定はございませんが,(後注1),(後注2),(後注3)につきましては要綱案の中に掲げるということを考えておりました。 ○山田部会長 分かりました。では,今までゴシックと言っていましたが,ゴシックでないところも要綱案の案に残るということで,失礼いたしました。   ほかにいかがでしょうか。それでは,(後注2)についてはもう一度,考え直してみるということになりますか。 ○遠藤関係官 もしかしたら法制的な手当ての問題として,お任せいただくということがあり得るかもしれませんが,まだ,次回までに間がありますので検討はしたいと思います。 ○山田部会長 では,(後注2)については,鎌野さん,山谷さんから頂いた御発言を基に,なお,検討すると,その結果を次回の部会にお示しをするということとさせていただき,その他の点については,この後注の内容で次回の要綱案の案を準備していただくということで御異論はございませんでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。           (休     憩) ○山田部会長 それでは,休憩後の議事を再開いたします。   それでは,先ほどの続きになりますが,部会資料12の8ページでございます。「第2 滅失又は取壊し後の建物の敷地についての特例」でございます。この第2全体,1から4までございますが,まとめて事務当局からは説明していただきます。よろしくお願いします。 ○遠藤関係官 それでは,第2につきまして御説明をいたします。第2の各項目につきましては,前回の部会におきまして特段,御指摘を頂かなかったものと存じておりますので,前回部会資料からの変更点を中心に,簡単に御説明を差し上げるということにさせていただきたいと存じます。   まず,第2の「1 敷地共有者による敷地の管理に関する規律」につきましては,前回の部会資料から変更はございません。   続きまして,第2の「2 敷地売却決議制度」でございますけれども,これにつきましては2点ほど,前回部会資料から変更点がございます。   まず,「(3)集会の手続」につきまして,取壊し決議,それから,建物敷地売却決議で先ほど御議論をいただきましたけれども,これらの決議と同様に敷地の売却を必要とする理由というものを通知事項及び説明事項とする旨を②で記載をしております。それから,(4)の「決議に賛成しなかった敷地共有者の取扱い」に関しましても,再売渡し請求の発生要件につきまして建物敷地売却決議と同様,決議に基づく売買契約による権利の移転がなかったときというように改めております。このような変更を行った趣旨は,先ほど建物敷地売却決議について御説明したところと同様でございます。第2の2のその余の点につきましては,前回部会資料との変更はございません。   第2の「3 取壊し後の敷地についての再建の決議制度」につきましては,これまで御説明を差し上げました取壊し決議,それから,建物敷地売却決議,敷地売却決議の三つの決議と同様に,ここでも再建を必要とする理由を集会の招集の通知事項,それから,説明会における説明事項として追加をしております。それ以外の点につきましては,前回の部会資料と変更はございません。   続きまして,第2の4でございますけれども,この第2の「4 共有物分割請求の制限」につきましては,前回部会資料から変更しているところはございません。 ○山田部会長 ありがとうございます。   第2についてはただいまのとおり,1から4まで4項目があり,説明はまとめてお話を頂きましたが,これは分けて御審議をいただくのが適当であろうと思いますので,1から4まで項目を分けて御議論をいただきたいと存じます。ただ,それでも複数にまたがるところがありましたら,前のほうでも構いませんし,後のほうに残していただいて,そこででも結構ですので,どうぞ,御自由に御発言ください。   それでは,最初に「1 敷地共有者による敷地の管理に関する規律」について,御質問,御意見がございましたら,御発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。説明も前回のとおりということでありましたので,事務当局のほうからは特に御意見をこの点について,是非,伺いたいという点はないことのようでございます。しかし,委員・幹事の方々からお気付きの点,お考えがありましたら,どうぞ,御質問,御意見をお願いいたします。よろしいですか。   それでは,「1 敷地共有者による敷地の管理に関する規律」は,今回のこの資料の内容で次回の部会に用意します要綱案の案とさせていただきたいと思います。先ほど申し上げたとおりですが,ゴシックの部分,ゴシックの部分と申し上げましたが,ここですと(注1)(注2)も含めてということでございます。ありがとうございます。   それでは,「2 敷地売却決議制度」でございます。ここは一つ下の項目として,(1)から(6)までございますが,ここはまとめて御発言を伺いたいと思います。御質問,御意見がありましたら,どうぞ,どの項目からでも結構ですので御発言をくださいますようお願いいたします。本日の資料,そして,本日の審議では3回目になるわけですが,「集会の手続」のところの②で敷地の売却を必要とする理由を通知するというのが,これまでの議論と対応するところかと思います。そして,(4)の「決議に賛成しなかった敷地共有者の取扱い」のところの再売渡しの発生要件について,権利の移転がなかったときとするということも建物敷地売却決議を取り上げた際に,ここについて御説明し,御審議をいただいたところに対応する点であり,それぞれ変更点でございますが,これらの点も含めてお願いをいたします。 ○垣内幹事 細かい点で恐縮なのですが,敷地売却決議制度に関する集会の手続の通知の内容について,追加を頂いている点に関連してなんですけれども,広い意味では敷地の売却を必要とする理由というものの中に,内容的には含まれてくることになるかと思うのですけれども,この場合,建物はなくなっているということで,選択肢としては再建をするか,それとも土地を売るかということになるかと思います。   どちらかといえば,再建ということのほうが従前の関係からすると連続的なものであって,敷地の売却というのは,そのような区分所有関係をも,確定的に解消するということにつながるということかと思われますけれども,そうすると,通知の内容として,敷地の売却を必要とする理由を通知するということはよろしいかと思うんですけれども,それに加えて,再建をしない理由というものを別に挙げるかどうかという点も,一つ,考慮に値するところかなとも感じたのですが,その辺りについてはどのようなお考えでしょうか。 ○遠藤関係官 正に,ここで敷地の売却を必要とする理由の中身として考えられる典型例としましては,再建するということが余り現実的な選択肢ではないだろうという趣旨のことを,この必要とする理由という文言の中に読み込むということを考えておりました。   積極的に再建をしない理由ということを正面から取り上げるかどうかということにつきましては,復旧又は建替えをしない理由というケースは,正に建物が大規模一部滅失しているとはいえ,まだなお,区分所有関係が現に存在している状況におきまして,区分所有法の普通の規律とは違う規律の適用を,区分所有法の規律のない決議をするということで,特にそれを掲げているという趣旨でございまして,ここでの再建をしない理由というのがそこに類比するかというと,必ずしもそうではないのではないかと,建物敷地売却決議制度におきましても,取壊しをしない理由というのを正面から取り上げていないのと同じ理由でございまして,両者を並列してどちらが合理的かということを御説明をしていただくという発想なのかなというように考えておりました。そういった観点から,特に再建をしない理由ということは正面から取り上げてはおりませんけれども,それも説明をされることが期待されると考えております。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございますか。よろしいですか。 ○鎌野委員 今の点でございますけれども,垣内幹事の疑問というか,そういったことも一面ではもっともというか,現場でこういった既に建物が取り壊されて,いわゆる更地というか,敷地になった。そして,そのうちの選択肢は売却か,再建ということだということなんですけれども,他面,別の見方をすれば,ここではいわゆる建物は取り壊して,従前の区分所有関係というのは解消されているという状態なので,そうすると敷地だけで,それを売るかどうかということで,再建というのはもう一つ,新たなものをそういった敷地の上に作り出すという特別な作業というようなことですので,そういった意味では,敷地の売却と再建というのは,選択肢として原理的にというか,理論的には並ぶものではないだろうと。従前の区分所有建物がある段階で建替えをするというのは,一つの実質的な区分所有関係の継続ということで意味があるかも分からないですけれども,もはや,建物を解体して取り壊して,敷地だけになったという段階では,売却と再建というのは理論的に考えれば並ぶものではないのではないかと。   ですから,ここでのゴシックの御提案のように,敷地売却決議においては敷地の売却を必要とする理由,それから,次の10ページの再建の決議においては再建を必要とする理由というようなことでよろしいのではないかと。もちろん,先ほど遠藤関係官がおっしゃったように,ここでは事実上は再建をしない理由というのが説明されることが多いであろうし,それはそれでいいと思いますけれども,ここの書きぶりというか,要綱案においては,この御提案のとおりでいいのではないかと私は考えております。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございますか。 ○吉政幹事 今まで出てきた制度についても,同様の問題があるかと思うんですけれども,御提案では一貫して,復旧,建替え,取壊し,売却,再建というもろもろの選択肢を全て並列に並べた上で,区分所有者が望ましいと考える方法を選ぶという考え方が採用されているのだと御説明を聞いていて理解しました。そうだとしますと,先ほど議論となったア,イ,ウの並び方とかも関係するところですけれども,何々を「必要とする理由」という文言が果たして適切なのか検討の余地があるように感じます。ここでも「敷地の売却が相当である理由」とか,「合理的である理由」とか,ちらっと沖野先生が御指摘になったことかと思うんですけれども,そういった形で規定するほうが御提案の趣旨に沿っているのかなと思いました。これまでの制度についても同様の問題があったのかと思いますが,敷地の売却については問題が顕在化するように感じます。   現在の御提案は,区分所有法62条の建替え決議に合わせた文言を採用しておられるんだと思うんですが,建替え決議の場合は言うまでもなく建て替えないのがデフォルトであって,かなり厳格な要件の下で建て替えるという特別の決議を行うわけですので,「必要とする理由」という文言でいいのだと思います。これに対して,御提案になっている制度の組み方の下で区分所有法62条に倣う必要があるのかよく分からないところがあります。倣ってよくないとも思いませんけれども,今一度,御検討いただければいいのではないかと感じました。 ○遠藤関係官 先ほど建物敷地売却決議と同様の項目の御説明の際にも若干申し上げたところではございますが,ここで必要とする理由というのは,正に今,御指摘がありましたとおり,既存の制度と並べて書いているということでございますが,実質的な内容は今,吉政幹事からも御指摘がありましたとおり,このような選択肢が合理的なものであるということを積極的に説明していただくということを考えております。それを条文上,表現するのに適切な文言として,必要とする理由というのが妥当ではないのではないかという御意見だったかと思いますけれども,そういった点も含めまして,具体的な条文化作業に当たっては適切な表現となるように,努力をしていきたいと思います。ただ,具体的にこの表現であればいけそうだというようなところがまだ,大変恐縮ではございますけれども,現時点であるわけではございませんので,一応,現時点では仮に既存の制度の横並びとして,似たような文言を取りあえず,ここで掲げさせていただいているということでございます。 ○山田部会長 ほかにいかがでしょうか。今の吉政さんの御意見に対する遠藤さんの御説明,吉政さん,一応,御了解いただいたようなボディアクションをとってくださいましたが,私から吉政さんに趣旨について伺いたいと思うのですけれども,この敷地売却決議制度のところで一番はっきりしたとおっしゃられたと思うのですが,今の必要とする理由というのが言葉としてやや実質から離れているかもしれないという御意見は,これまで,今日,取り上げた取壊しと敷地売却決議と再建,再建はまだ先かもしれませんが,いずれにも共通しますか,それとも,建物区分所有法の建替えはそれでいいとおっしゃられて,今,敷地の売却については,ここが実質を必ずしもうまく表現できていないとお話しいただきました。そうすると,あと三つあるわけですが,あとの三つについては敷地の売却と少し違うところはあるけれども,基本的に同じ位置付けになりますでしょうか。吉政さんの今のお考え方に従うといかがでしょうか。 ○吉政幹事 自信はありませんが,両方があり得ると思います。ですが,第1のほうは,これはまだ,区分所有法関係がある段階ですので,区分所有法に倣うということにも,それなりの合理性があるのかと考えた次第です。 ○山田部会長 ありがとうございます。 ○山野目委員 今,話題になった論点に関してですが,比べるものは四つあると考えます。取壊し,建物敷地売却,敷地売却そして再建であり,必要とする理由になっているものが部会資料の原案では,これら四つが全部,「必要とする」で大丈夫かということについての大枠の問題提起を吉政幹事がされたと受け止めます。吉政幹事から仮にバトンを受け取って申し上げるとすると,一番変なのは再建であると考えます。   再建を必要とする理由というものは,何だそれは,ということになるものでありまして,東日本大震災の際にも被災地の人たちは,お気持ちでは再建したかったものであろうと想像します。でも再建はできなかったという事例があり,再建ができないとか,相当でないとかというような言葉が飛び交う中で,取壊しの決議の制度を入れてほしいというお気持ちだったのではないでしょうか。そのような実情経過を受け止めて,再建を必要とする理由という最後の四つ目は絶対におかしいと感じます。   それから,最初の取壊しは,ひょっとすると取壊しを必要とする理由というのはあるのかもしれないと感じますが,必要という表現がぴったりしない部分が少し建替えに比べてあるかもしれません。ですから,四つ並んでいるものについて濃淡があって,必要とする理由のままでもよいというものと,かなり不自然であるというものと,その中間でどちらもあり得るというものとがあって,そこは事務当局が次回までに要綱案を仕組む中で御検討いただくことが可能な限り,なさっていただくのがよろしいと考えます。最終的には法制事項かもしれませんけれども,しかし,我々の意見としても,それは何かあったら申し上げたほうがよいと考えます。   そこで,申し上げますと,必要とする理由でなければ,相当とする理由とか,あるいは相当,必要と言わないで,何々する理由とかとすることも考えられます。区分所有法62条はmustないしshouldですけれども,それをdoとかにするということです。canにするのは変かもれませんけれども,何か,そういうものに置き換えて,それぞれのところについて適切な文言を模索していただくと,よろしいと感じます。 ○山田部会長 ありがとうございます。   事務当局の作業を進める上で,山野目さんがおっしゃったことについて,一つ,山野目さんに質問させていただきたいのですが,四つ,濃淡があるとお話し下さいました。最初の取壊しについては比較的,はっきりおっしゃってくださり,四つ目の再建についてもはっきりおっしゃっていただいた。真ん中にある二つ,この二つにも濃淡がありますか,そして,濃淡がある,なしにかかわらず,1のほうに近いのでしょうか,それとも,4のほうに近いのでしょうか,それとも,真ん中で第三グループができるのか,どんな感じでしょうか。 ○山野目委員 自信のないことを述べないという発言のテクニックを身に付けていたつもりですが,今のようにお尋ねを受けると,そういうことですから非常に困るものでありまして,自信がありませんけれども,論理的な説明はできませんが,直感から言うと,建物敷地売却と敷地売却も,必要というのは,少し変であろうというふうな感覚を抱いていて,どちらかというと,後ろの再建のほうに近いのではないかという感触はもちますけれども,余りきちんとした理論的な裏付けはありません。 ○山田部会長 ありがとうございます。   今の山野目さんの発言を受けて,吉政さん,追加して御発言いただくこととかありますか。よろしいですか。ありがとうございます。吉政さんの発言を機縁にして,議論が深まることになったと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○森田委員 今の点ですが,私自身は積極的にというよりは消極的な理由で,全ての場合について「必要とする理由」ということでよいのではないかと思っています。その理由は,理論的な観点からすると,ここで並んでいる後二者は,いずれも共有物分割請求に対する特則という位置付けになっていると思いますが,規定上も,建物が滅失し,または取り壊されて敷地の共有関係になっているとすれば,既に建物の区分所有関係は解消しているので,民法の一般原則によれば,裁判所に共有物分割請求をすることになります。その場合に,裁判所による形式的競売によって売却代金を分割するのか,それとも全面的な価格賠償の方法による分割でやるのか,これが一般法を適用した場合の帰結ですが,敷地売却決議制度というのは,その特則として裁判所が売却するのではなくて,自分たちで買手を見付けてきて敷地を売ったほうが合理的だという場合には,その人たちに敷地の共有持分権を集中させて売却するという方法を認めるものであると説明することができます。   それから,建物再建決議制度というのも,建物の再建を必要とするというよりは,再建をしたいので,そのためにはこの土地が敷地として必要であるとして,自分たちにこの土地を全体として帰属させるものであって,この決議がなくても,次善の策としては民法の一般原則に従って,全面的な価格賠償の方法によって離脱する人に対しては価格賠償という形で敷地全体を取得して再建するという方法を取ることができると思いますが,この再建決議の要件を明確に満たせば,裁判所に行かなくてもそれと同じことができるという意味での特則であると,理論的には位置付けることができます。   このように考えていきますと,敷地の共有物分割請求において,ある人たちにその敷地を帰属させる場合に,それをどういう言葉で表現すべきなのかを考えていくというのが,理論的に見て相当だとは思いますが,ただ,そう言ったからといって,例えば,全面的価格賠償の方法による分割が認められる場合の判例の基準に従って文言をそろえていくと,それほど単純にはいかなくて,結局,「必要とする理由」ということぐらいに落ち着くのではないかという観測を持っています。したがって,理論的な性格については説明等で明らかにしていただければよく,あるいは既にゴシックの内容の構成から見ても,そうなっているかとは思いますけれども,それ以上に濃淡とかいうのを付け始めますと,かえって趣旨が不分明になることを私は危惧いたします。そういう意味で,消極的な理由で,文言上は「必要とする理由」ということでそろっているけれども,これは別に同じ意味ではなくて,他に適切な言葉がないことからこういう形で法制上そろえたにすぎず,それ以上の意味はないと理解しておけばよいのではないかと思います。 ○山田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○津久井幹事 理論的にどうかということと,あるいは分かりやすさということでどうかということで,いろいろバリエーションがあることはよく分かりました。そういう観点からすると,期間制限はもう少し,いろいろ考えることができないかということを質問したいと思います。   元々,デフォルトは,復旧と建替えは6か月です。大規模一部滅失があって,被災マンション法を使って1年になるわけですが,その1年を原則として,今回,取壊しと建物敷地売却は1年ということになっていたんですが,今の再建と,それから,取壊し後の敷地売却は3年ということになっていて,6か月と1年と3年の三つのバリエーションがあることになります。理論的には何となく共有物分割の特則ですから,再建も売却も3年でよく分かったんですが,ただ,実際に作業として考える場合,売却に比べれば再建のほうがよほど事業としては大変なわけで,その決議までに必要とされる期間が1年なり,3年となっているんですが,決議を作り込む作業としては,売却という作業に比べると,再建という作業の決議案を作る作業の方がかなり重たいと思われます。   復旧と建替えについては,壊して作り変えるという作業と,直すだけの作業が同じ6か月になっているという元々の区分所有法のやり方が正しいのかどうか,私はよく分かりませんが,この1年や3年という単位に合わせなければならない理由は,法制上の分かりやすさを優先するのか,それとも作業の大変さ,困難さは考慮しないのか,考慮した上でこういう結論なのか,その辺りのお考えを聞かせていただけないでしょうか。 ○遠藤関係官 売却と再建を比較した場合に,再建のほうが恐らく大変であろうということを踏まえて,3年という年限でよいのかどうなのかという御趣旨かとお聞きしました。3年という期間は,これも現行の被災マンション法が3年という期間を区切っているところでございます。その理由はもちろん再建までに要する作業というのが,それなりに時間を要するものであろうというのが考慮要素の一方にあることだと思います。他方で,今,津久井幹事のほうからも御指摘がありましたけれども,これは共有物の分割請求を制限するという規律を同時に伴っている制度でございますので,そのような共有物分割請求の制限をどこまで課すことができるのかというのが,他方の考慮要素としてあろうかと思います。それらの両者のバランスとして,現行の被災マンション法は,3年という選択を一度しているということでございます。   これも先ほどと同じような御説明を差し上げることになってしまうんですが,被災マンション法の再建の決議が3年と,期間が限定されていることによって,この法律は阪神・淡路大震災でしか適用がありませんでしたので,その例からしますと,その3年で何か大きな問題が生じたということは,情報としてこちらとしては接していないというのが現状ということでございます。それを踏まえますと,3年という年限を今回,見直すことができるのかどうかということにつきましては,それなりの理由というものが必要になってくるのではないかなと考えておると。それらを踏まえまして,今の提案としては3年という年限を区切っているということでございます。 ○山田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   ただいまの津久井さんの御発言の3年という期間制限については,2の(6)の3年と,そして,この資料には書き込まれていませんが,被災マンション法3条5項にある3年という期間制限を「取壊し後の敷地についての再建の決議制度」の中に,そのまま取り込もうとしているので,3年というものを事務当局は,今,用意しているということです。その理由を御説明いただいたわけですが,まずはよろしいですか。 ○津久井幹事 それでいいのかという質問だっただけです。いろいろなことをバランスを考えた上で,そういう結論だということがよく分かりました。 ○山田部会長 ほかにいかがでしょうか。   津久井さんの御意見としては,3年をより長くすることを考えてほしいということになりますか。 ○津久井幹事 いいえ。私は3年でよろしいかと思っております。先ほど出た1年のほうをもう少し延ばせないかということを考えているわけですが,ただ,建物敷地一括売却だと1年で,一旦,壊してからだと3年になるというスキームの時的な落差が,何となく現場からすると奇異に映るかもしれないなと思った次第です。 ○山田部会長 その二者の比較というところにフォーカスを当てると,更に遠藤さんから何か御説明はありますか。 ○遠藤関係官 現行の建物が建っている状況の61条12項,それから,被災マンション法の特例で,5条で延ばしている期間が適切なのかという御趣旨,今の3年という期間自体ではなく,それとのバランスを顧みたときに,それが適切なのかという御趣旨と承りました。区分所有法61条の大規模一部滅失した場合の発想としましては,基本的にはそのままでは,建物としては使えない状態に全体としてはなっているであろうという評価が,まず前提としてありまして,そうである以上は何らかの処置,復旧なり,建替えなりというのを採ってもらわないと,建物全体として不合理な状態というのが続いてしまうということが,基本的な発想にあろうかと思います。   そういった観点から年限を区切って,区分所有法上は6か月ということになっておりますけれども,被災マンション法はそれを1年に延ばしているということで,更地になった状態と大規模一部滅失した建物が今,目の前にある状態というところでは,その点が若干違うのかなと考えております。御指摘も踏まえて,ここのところは先ほど取壊し決議,それから,建物敷地売却決議で御議論いただいたところも踏まえて,また,考えたいと思っております。 ○山田部会長 ほかにございますでしょうか。   それでは,2の「敷地売却決議制度」についてはここまでの御議論で,津久井さんの御発言も,ここの期間制限についてというのではなくて,ここを3年にすることが前の1年に跳ね返るだろうという御趣旨だと思いますので,ここについての御意見ではありませんね。よろしいですか。   それでは,ここまでで出てきたのは,必要とする理由というのをもう一度,4か所あるところをしっかり考えてほしいということであったかと思いますので,それを次回までにもう一度,考えていただくということで,敷地売却決議制度のところで出てきましたが,他の3か所についても,今,併せて宿題としていただくということになろうと思いますが,そのほかについて2の「敷地売却決議制度」で特に御意見がありませんでしたら,この内容で次回の部会資料として用意する要綱案の案としてもらいたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。   それでは,既に少し入りましたが,3の「取壊し後の敷地についての再建の決議制度」,これについていかがでしょうか。ございませんか。特に御発言を頂くことがないようですが,よろしいでしょうか。   それでは,3の「取壊し後の敷地についての再建の決議制度」については,本日のこの資料の内容で次回の資料となる要綱案の案として準備をしていただくことといたします。ありがとうございます。   それでは,説明を頂いた部分で残っている最後ですが,4の「共有物分割請求の制限」でございます。内容は前回のとおりであるという御説明が先ほどありましたが,いかがでしょうか。よろしいですか。先を急いではおりませんけれども,御発言がありませんでしたら,全員で黙っている時間を長く続けても仕方がありませんので,先に進みたいと思いますが,よろしいですか。   それでは,4の「共有物分割請求の制限」について,本日,用意した資料で次回の資料となる要綱案の案を準備していただこうと思います。ありがとうございます。   それでは,11ページの「第3 団地の特例」が最後に資料としては残っております。ここについて事務当局から説明をしていただきます。 ○石渡関係官 それでは,第3の「団地の特例」について御説明いたします。第3の「団地の特例」につきましては,全体に前回から実質的な変更はございません。なお,前回の部会資料において記載していた説明的な記載や取壊し決議制度は設けないものとする,あるいは後注として記載していた団地の敷地の分割を容易にする制度は設けないものとすると,こういった記載につきましては,今般の見直しにおいて,積極的に制度を設けることを提案するというものではないということから記載をしておりませんが,そのような考え方自体には変更はございません。 ○山田部会長 「団地の特例」についていかがでございましょうか。御質問,御意見がございましたら,御発言をお願いいたします。 ○鎌野委員 本来ならば,前回,申し上げるべきことだったんでしょうけれども,前回,気が付きませんで,ですから,ここの1,2に関することではなくて,御判断は事務当局にお任せをしますけれども,まずは質問をさせていただいて,場合によっては意見になるかも分かりませんけれども,ここで「団地」のところで申し上げるのが適切だと考えて,8ページのところの第2の1の「敷地共有者による敷地の管理に関する規律」ということです。このことが団地の場合はどうなのかということで,数棟の建物が団地内にあって,それまでは敷地を共有するために敷地についていわゆる団地建物所有者全員で管理をしていた。   そういう場合に1棟だけが大規模一部滅失をして取壊しをしたという段階で,その1棟内部の規律については第2の1の規律を設けるというか,集会決議などがあるというようなことなんですけれども,それと団地全体との関係です。言うまでもないことなんですけれども,現行の区分所有法でいわゆる団地管理,敷地について団地で管理をするというのは,その建物があることが前提というか,建物所有者が敷地を共有しているということが前提です。そういった場合には民法の共有物の管理や変更に関する定めが修正されて,変更なども全員の合意ではなく,多数決で行うということなんですけれども,団地内の一部の建物について建物が取り壊されてしまった場合はどうなるのか。   そうすると,建物所有者ではないわけで,このままですと民法上の共有ということになり,従前の建物所有者を含めた団地内の敷地の共有ですから複雑な関係になるというか,民法上は飽くまでも団地建物所有者,建物が残っているところだけは区分所有法の適用が働き,多数決などで敷地などの変更もできるけれども,新たにこういう状態になった,建物が取り壊された敷地の共有持分権者については,その規律が当てはまらないということになると,その部分については民法上の共有ということになりそうなんですけれども,そういう理解でよいか。そして,その点については先ほど最初に言いましたように,今の段階でということは申し上げにくいんですけれども,新たに何かこの団地の特例のところに付け加える必要があるのではないかということでございます。 ○石渡関係官 前提につきましては,鎌野委員から御発言があったとおりと考えております。区分所有法の団地の集会の構成員は,団地建物所有者でございますので,滅失した建物に係る敷地共有者は当然にはこの団地の集会の構成員に含まれるものではないと考えております。そういった場合に再建承認決議とか,再建を含む一括建替え決議というものをどのように行っていくのかということが問題になりますけれども,こちらにつきましては,団地建物所有者及び滅失した建物に係る敷地共有者による集会の規律を置くということを考えております。   具体的には第2の1の団地バージョンのような制度を設けるということを検討しております。法制上,これをどのように表現するのが一番分かりやすいか,適切かというところがなかなか難しい問題があろうかなと思っておりますが,前提といたしましては,そういった団地の集会ないし必要な規律を設けるということを考えております。 ○鎌野委員 再度,確認ですけれども,ですから,具体的な例を出したほうがよろしいかと思うんですけれども,第3の1の「再建承認決議制度」とか,2の「再建を含む一括建替え決議制度」ではなくて,いわゆる一般の管理,すなわち,団地全体の従前,行ってきた管理,具体的にはその団地の敷地を変更したいと,何が変更に当たるかというところは,個別には議論があるかもしれませんけれども,それまで植栽がなされていたところを駐車場にすると,仮にこれが変更だということになると,全員が団地建物所有者で,団地で管理するということになると,そういった変更のような場合には,4分の3以上でできるのですが,団地建物所有者の共有している土地ではないということになると,その規律が当てはまらなくなる。   ですから,このままだと,今,言ったような問題が起こるので,団地の特例において再建承認とか一括建替え以外のいわゆる従前の団地全体の敷地の管理ということについて何らかの規律,一つの在り方としては,それについては特に規律を設けないということなのか,もう一つは言わば簡単に言ってしまえば,そういった従前の管理に関することについては,取り壊した建物の敷地の共有者も従前の建物区分所有者とみなすとか,そういう方向で持っていくのかという,いずれにしても,その点,何らかの定めが必要になろうかと考えております。 ○石渡関係官 ありがとうございます。   再建承認決議の集会にとどまらず,団地の敷地をどうやって管理していくかということも含めまして,第2の1と同様の規律を設けるという方向で,今のところ,考えております。 ○鎌野委員 分かりました。それならよろしいです。 ○山田部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。「第3 団地の特例」について御意見がございましたら,よろしくお願いをいたします。   それでは,「第3 団地の特例」につきましては,本日,部会資料12で御用意していただいている内容で,要綱案の案を進めるということについて,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   そうしますと,部会資料12は全体について数項目,次回の部会までに事務当局でなお検討をしてほしいという点が残りましたが,全体について本日の審議を終えることとなります。しかし,うまく発言する箇所を見定めているうちに先に進んでしまったとか,改めて発言をしたいということがありましたら,何か,お気付きの点ということで結構ですので,御発言はありますでしょうか。お願いいたします。 ○佐藤(正)委員 山田部会長から,当初に想像力を持ってとか考えていただきたいということをおっしゃられていたと思うんですけれども,今から申し上げることは,今までも全く想定されていないことだと思うんですけれども,今,そこにある危機ということで,要綱案に反映させるかどうかは抜きにしてお考えいただきたいことなんですが,私どもの上位団体のNPO法人全国マンション管理組合連合会からメッセージを預かっておりますので,読み上げます。   法制審議会被災関連借地借家・建物区分所有法制部会の委員,幹事,関係官の皆様へということで,この度は被災マンション法の改正に関し,お忙しい中,御審議をいただき,ありがとうございます。ところで,法制審議会のメンバーの皆様に想像力を持って伺いたいことがございます。それは関東地方の千葉県,東京都,神奈川県,静岡県の沿岸部にマンションが建設され,相当数,存在すると認識しております。ちなみに宮城県にはこういうマンションは1軒もございません。沿岸部といっても,マンションの前が道路を挟んで砂浜であったりとか,あるいはマンションそのものが海に面しているがけに建てられているというマンションもございます。具体的な地名を言うと,議事録に残って差し障りがあるということで申し上げませんが,それは多くはリゾートマンションということで,いわゆる海の見えるマンションということで,それなりの需要と資産価値を有している物件でございます。   それらのマンションに対して,2011年3月11日に福島第一原子力発電所を襲った高さ15メーターほどの津波,連動型地震の場合は高さが20メーター超を想定されておりますけれども,それぐらいの津波がマンションに直撃した場合,建物が倒壊し,海中に没してしまうかもしれません。マンションは安く土地を買って高くという経済的原則からすれば,それほどくいを打ち込んではおりません。   その際,マンションの敷地が津波により崩落あるいは地震による地盤沈下,液状化等で海面下となって滅失した場合,不動産登記法第42条に土地の滅失という項目がございまして,そこに関する文献によれば,秋分の日,春分の日の大潮の満潮時に水没するものは,いわゆる土地とならないというか,そうなると思うんですけれども,いわゆる登記上は土地が存在しているんですが,実際は土地として存在していない,そういうふうな事態になった場合には,現在,諮問案を審議中の被災マンション法で法律関係を処理できるのでしょうかということで,そういうことを御覧になったことがあるでしょうかということなので,グーグルマップとか,ストリートビューで見れば,今,そこにある危機というのが分かっていただけると思いますので,こういうメッセージを預かっていましたので,この改正に特に影響を与えるものではございませんけれども,想定外のことが今後,起きないでほしいんですけれども,そこにある危機ということで申し上げました。 ○山田部会長 ありがとうございます。   岡山さんから何かありますか。 ○岡山幹事 今現在,検討しております被災マンション法の規律といいますのは,飽くまでも敷地というものが残っていて,その上に建物が全部滅失したか,あるいは一部残っているかということを前提として,議論をさせていただいていることと思います。ですから,直接的なお話で申し上げれば,土地が滅失している状態ということになりますと,被災マンション法の規律ということを前提とすれば,それは範囲外ということにならざるを得ないのではないかと思います。それで,結論として妥当かどうかということはまた別論かもしれませんが,今の検討している範囲内かどうかという点については,先ほど述べたとおりになろうかと思います。 ○山野目委員 今,佐藤委員が問題提起をされた事柄というのは,岡山幹事もお話になったように,この部会で審議しております被災マンション法の改正問題とは直接関係がないことであるとともに,その建物が区分所有建物でなくても,同じ構図で問題が起こる可能性がある事柄なのではないかと感じます。そのような意味では,佐藤委員が御心配になったサイズそのもので,今後,検討していかなければならない課題であると同時に,関東地方の沿岸部においておっしゃったような海の水に関わる大きな災害が起きたときには,もっと広いサイズで考えなければならない奥行きも持っているであろうと感じます。   昨年12月15日に,岩手,宮城,福島の被災三県の建物の復旧調査に当たった土地家屋調査士の方々が,仙台市で研究集会を行いました。建物のいろいろな被災事例がそこでスライド写真付きで紹介されたのを私は見ましたけれども,衝撃的な写真がありまして,海が津波のために広がってきて,従来,陸地であった建物があったところに浸入してきて水が引かない個所があります。ほぼ恒常的に海であると認められる状態になってしまいました。今,佐藤委員がおっしゃったのと同じ状況です。ただし,佐藤委員が御指摘になったように,区分所有建物については被害の実績がなくて,そこで,私が写真で見たものも非区分の建物でした。しかし,区分か,非区分かが問題なのではなくて,そのような状況になった建物をどう受け止めるべきかという,不動産登記制度の運用上,悩ましい問題があると感じます。   従来の漠とした不動産登記制度の運用の常識論からいいますと,おっしゃるとおり,春分の日のところを基準にして常時,海水に覆われる状態になった土地は,土地として滅失したと考えざるを得ない。問題はそのときのその上にある建物はどうなるのかということですが,そのスライドの写真は衝撃的なことに,建物として少なくとも外から見た感じではまだ使うことができる状況でした。あそこに人が住んでいるとは思えませんが,使おうとすれば使えなくはなくて,それが敷地が海没したから,建物としての効用も機械的に失われたと判断してしまってよいのかということを考えると,不動産登記制度の普通の運用指針でいえば,そのようなことになるのかもしれません。   それで,建物の滅失の登記と同時に,土地の滅失の登記も併せて問題になりますというふうな議論がされるものですが,私は,そこで立ち止まって考えなければいけないということを併せて感じたのは,まず,建物の効用に全く問題がないのであるとすれば,その場合は,建物が滅失したと考えることはできないでしょう。建物として存在し,もし敷地が土地としての性格を失っているとすれば,最も近くの沿岸の土地の地番を参照して「何番地先」にある建物として認識されるのではないか考えます。   また,その建造物の当の敷地についても,本当に土地でなくなったか,については,たとえ海水に常時覆われる状態になっても,従来,建物の所有や,その他,何らかの人間の活動が行われてきた土地は,海水が覆われたという一事によっては,土地性が失われないということを示唆した最高裁判所の判例があるものでありまして,あの判例法理自体は徳川時代以来の経緯が関わる少し特殊な事例でしたが,そこで示唆されたような考え方がスライドで紹介された事例で,何らか関わってくる可能性はあるものでありまして,今後,そういうことを精密に考えていかなければならないということを感じました。   宿題があると思っていて,いろいろ悩んでいましたが,今,佐藤委員からお話を頂き,マンションに視野を集中させた形で御指摘を頂きましたけれども,そのことを更に考えなければならないと痛感しました。それは,この部会の審議事項であるというよりも,むしろ,もう少し大きなサイズで土地に関わる権利の公示,関連して表示に関する登記の制度をどう運用するかという側面から,次なる大きな規模の災害が起きるまでに考えておかなければならない宿題であって,今の御発言は,その宿題の確認をいただいたものであるとお聞きしていて感じました。 ○山田部会長 ありがとうございます。佐藤さんと山野目さん,御発言をありがとうございます。   ほかにございますか。全体について,ここで発言をお願いします。 ○中城委員 今回の議論は,迅速な復興というふうなことを前提に,いろいろ議論をいただいていると思います。期間制限で1年ですとか,いろいろ意見が出ましたけれども,今回の解体にせよ,取壊しにせよ,建物敷地の売却にせよ,一般の老朽化した区分所有建物の建替えと違うのは,ある日,突然,そういう状況になる。それにどう対応するかというところが背景として違うと思うんですね。   そういう意味で,この部会のテーマではないとは認識してはしておりますけれども,例えば1年という迅速な期間の中で,所定の対応をしていくことを実行させるためには,例えば取り壊すことについての,あるいは売ることについての抵当権者の問題でありますとか,それから,借家人の問題でありますとか,同時に広範囲にわたって,同程度の被害を受けて,住宅不足になっていて,住めるからには住みたいという借家人のニーズも一方ではある。しかし,区分所有者としては解体なり,再建なりの判断をせざるを得ないということの,しかも1年という制約があることについて,他の法制も含めて,どこかでその手当てをしたほうがいいのかなと思っておりますので,発言させていただきました。 ○岡山幹事 今回の被災区分所有建物の改正案の中では,御指摘をいただいた全ての問題について解決できるものではなく,住宅政策のなかで解決をしていかなければならない問題が含まれているものと思います。ですので,ご指摘を頂いた問題については,国交省の協力を得ながら,引き続き検討していきたいと思っております。 ○山田部会長 中城さん,ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,数項目の宿題が残りました。それらを申し上げますと,通知事項の順序について宿題として考えるという点,期間制限の1年としているところについて2か所ございましたが,考えるという点,それから,要綱案として最後にどういう表現にするかという観点から,必要とする理由というのが4か所に使われておりますが,その一部又は全部について別の表現にするかという点,ここは必要とする理由という表現でよいのだという御意見も頂きましたので,それも併せて参考にしながら検討をもう一度やっていただくことになり,そして,掲示場所,この四つではないかと思いますが,ほかに私が各項目のところで,ここは宿題として除きますと申し上げたところがありましたら,そちらのほうを優先させていただくということで,今,申し上げた四つのグループを例として,それら以外については,今日,用意した部会資料12の補足説明を除いた部分でよろしいだろうというふうな御意見を頂けたところでありますので,本日はそのようにまとめたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。   それでは,本日の審議はこの程度といたしたいと思います。誠にありがとうございます。   事務当局に次回の議事日程等について説明をしていただきます。 ○岡山幹事 次回の議事日程等について御連絡いたします。次回の日程は,日時は平成25年1月29日,火曜日でございます。午後1時30分から午後6時までの間を予定しております。場所はこちらと同じく法務省大会議室でございます。次回の部会では,被災マンション法の見直しに関する要綱案の案を作成し,それを御審議いただきたいと思います。また,併せて本日は取り上げませんでしたが,罹災都市法の見直しに関する要綱案の案についても,お諮りしたいと存じます。部会資料は1週間前頃をめどに発送させていただきますので,よろしくお願いいたします。   なお,従前から平成25年2月4日,月曜日について部会の予備日とすることをお伝えしておりましたが,この日に部会を開催する必要があるかどうかについては,次回の御議論次第ということでございますので,誠に申し訳ないですけれども,委員・幹事の皆様におかれましては,なお,日程を確保していただけますようお願い申し上げます。 ○山田部会長 今後のスケジュールについて,ただいま,岡山さんから御説明があったところについて何か御質問はございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,法制審議会被災関連借地借家・建物区分所有法制部会を閉会させていただきます。本日も誠に御熱心な御審議を賜りました。ありがとうございます。 -了-