法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会 第1作業分科会(第5回) 第1 日 時  平成25年7月24日(水)   自 午前10時01分                         至 午後 0時28分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  時代に即した新たな刑事司法制度の在り方について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○吉川幹事 ただいまから法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会第1作業分科会の第5回会議を開催いたします。 ○井上分科会長 御多用中のところを御参集いただきましてありがとうございます。   本日は,お手元の議事次第のとおり,配布資料の説明の後,通信傍受の合理化・効率化に関し,通信事業者の方々からのヒアリングを行い,その後,通信傍受の対象犯罪の拡大について議論を行うことにしたいと思います。   議論に入ります前に,当部会の構成員の変更と本日の出席者について御説明します。   警察庁における異動に伴い,島根悟さんが特別部会の幹事を退任されまして,新たに警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長に就任された坂口拓也さんが特別部会の幹事に任命され,それにより分科会の構成員も変更されることになりました。これまで第2作業分科会の構成員であった露木幹事が当分科会の構成員となり,坂口幹事が第2作業分科会の構成員となることになりました。   ただ,本日は,あらかじめお申出がありましたので,露木幹事に代わって,坂口幹事に御出席いただくことといたします。また,同様のお申し出により,小坂井幹事に代わって,神幹事に御出席いただくことといたします。   それでは,本日の配布資料について,事務当局から説明していただきます。 ○吉川幹事 御説明いたします。配布資料6は,本日議論が予定されております通信傍受の「対象犯罪の拡大」について,「考えられる制度の概要」と「検討課題」を整理したものです。これは,特別部会の第20回会議における配布資料をベースにして,特別部会での議論を踏まえるとともに,当分科会で更に具体的な検討を進めることに資するよう,事務当局において加筆,修正を行ったものです。この内容につきましては,後ほど議論に際して説明があります。   なお,「立会い,封印等の手続の合理化」と,「該当性判断のための傍受の合理化」につきましては,本日はヒアリングを行うのみで,議論はいたしませんが,ヒアリングの際の便宜として,特別部会の第20回会議での配布資料のうち,該当箇所を抜粋したものを再配布しております。さらに,当分科会の第1回会議において,警察庁の技官の方からヒアリングを行った際に使用された書面も再配布しております。   また,参考資料といたしまして,本日のヒアリングの際に使用するものとして通信事業者の方々から提出のあった書面及び通信傍受に関する参照条文をお配りしております。さらに,通信傍受の対象犯罪の拡大に関して,神幹事から資料が提出されておりますので,これもお配りしております。   資料の御説明は以上でございます。 ○井上分科会長 それでは,早速,通信傍受の合理化・効率化に関するヒアリングを行いたいと思います。   通信傍受の合理化・効率化に関しましては,「立会い,封印等の手続の合理化」として,暗号技術等を活用した仕組みによって,通信事業者の立会い等なしに捜査機関の施設において傍受を行えるようにすることや,「該当性判断のための傍受の合理化」として,通信を一旦記録しておき,事後的にスポット傍受を行えるようにすることについて検討を行っているところであります。   これらの事項について更に検討を進める上では,先の特別部会におきましても通信事業者の方々のヒアリングを行うべきであるという御意見がありましたとおり,通信事業者の方々が現行制度の下で負っている負担がどのようなものであるのか,また,新たな仕組みを導入することによって,その負担がどのようなものになるのかについて御意見を伺い,認識を共有する必要があろうかと思われます。   そこで,今回,事務当局を通じて,事業規模の大きい通信事業者を中心にヒアリングの打診をいたしましたところ,株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ,KDDI株式会社,ソフトバンクモバイル株式会社,東日本電信電話株式会社,西日本電信電話株式会社の5社からこれに応じていただけるとの回答を得ましたので,本日,参考人として御関係の方々にお越しいただいております。   参考人の皆様におかれましては,御多忙のところ,当分科会に御協力いただきまして,誠にありがとうございます。   参考人の皆様には,既に事務当局を通じて,新たな仕組みの検討状況やその内容について御説明させていただいておりますので,本日はそれを踏まえた上で,主に三つの点について御意見を頂こうと思います。1点目は,通信傍受の実施に当たり,現行制度の下でどのような負担が現に生じているのかということです。2点目は,今検討中の新たな仕組みの導入により,その負担はどのようになっていくのかということです。3点目は,その他,今回の通信傍受の見直しに関する事項について御意見があれば伺いたいということでございます。   ヒアリングの実施方法としましては,1社当たり10分程度で,順次,御意見を頂きまして,その上で,まとめて質疑応答を行うこととさせていただきたいと思います。   なお,ソフトバンクモバイル株式会社からは,グループ会社である株式会社ウィルコムの御意見をも踏まえた御意見を頂けると伺っております。また,東日本電信電話株式会社と西日本電信電話株式会社におかれましては,東日本電信電話の方から,まとめて両社の御意見を頂き,質疑応答には両社の方に適宜御対応いただけると伺っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。   それでは,早速,ヒアリングを始めさせていただきます。   まず株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの方から御意見を伺いたいと思います。本日は吉澤和弘さんと藤田英行さんのお2人にお出でいただいております。   それでは,早速ですが,御意見をお願いいたします。 ○株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(吉澤氏) 今,分科会長からお話がありましたとおり,三つの論点ということで,私の方から御説明をさせていただきたいと思います。あらかじめ御提出させていただいた資料に基づいて御説明させていただければと思いますので,御覧いただければと思います。   まず,現行制度下でどのような負担が現に生じているのかということでございますけれども,そこにございますように,通信傍受に対応するための稼働ということで,いわゆる立会人と運用担当者,2人の稼働があるわけです。つまり,立会いということと,実際に運用する者として,傍受対象の番号登録とか削除,あるいは,発着信番号の確認,当然,監視制御装置に入り込むためのコマンドを打つとかいった稼働がございまして,そういったものが生じているということでございます。   それから,新システムが導入されて負担はどうなるのかということでございますけれども,御承知のとおり立会いは要らなくなるということでございます。ただ,運用担当者につきましては,同じように傍受対象番号の登録・削除とか発着信の番号確認といったものについては必要になりますし,あとは,新システムに移行されるということで,そのシステムに対する開発,あるいは,運用,維持ということが新たに必要になるということでございます。   次の「3. その他」に関しましては,特に新たなシステムにつきまして,概要等についてはお聞きしておりますけれども,実際の仕様そのものが明確でないということもございますけれども,仕様の検討期間も含めまして,開発についての準備は相当期間が掛かるものと思っております。   あと,新システムになるということですので,開発に伴う設備の責任区分をどこで引くかという,常に分界点みたいなものは議論になるわけですけれども,基本的には通信事業者が持つべき範囲をしっかり決めていただくというか,そういった制度,システム構築を検討していただきたいということでございます。システムの仕様によっては費用負担が大きくなるということが想定されますので,その場合の事業者の負担の軽減については是非考慮いただきたいということでございます。録音してそれを送信するということになるのではないかと思っていますけれども,そういったシステム装置の開発,あるいは,設備構築といったものにはそれなりのコストが掛かるというふうに想定しております。   あと,傍受件数の増加ということですが,これも対象犯罪の拡大に伴いまして,通信傍受件数の増加が想定されるということで,実際にはどうなるかちょっと分かりませんけれども,仮に件数が増加した場合には,それに対応した設備の増設,あるいは,構築といったものが掛かるということでございまして,これについてもどんどん件数が増えるから,それに対応して設備の増加の負担を通信事業者側で全て持つということについては,その辺は少し考慮いただければと思っております。   最後に,システム上,これは最初の方に書いてございますけれども,我々も設備の点検・保守とか,あるいは,システムの切替えとか,ソフトウエアの切替えが生じる場合がございまして,そういったときに一時的に例えば保守に伴う瞬断が生じる,本当に短い時間ですけれども,そのときに瞬間だけ傍受ができないということか出てくる可能性があるということ。それから,これは最初に言うべきだったかと思いますけれども,私ども通信事業者といたしましては,通信の秘密の確保というものが,利用者が我々を信頼していただいているという根本でございますので,今回のこの辺の論議に当たりましては,傍受範囲の拡大とか,あるいは,件数の増大というものがありますので,通信の秘密ということに関しましては問題がないかということを,是非議論をしっかりいただければなと希望しております。   以上でございます。 ○井上分科会長 非常に簡潔に御意見を述べていただき,ありがとうございました。   それでは,次にKDDI株式会社の方から御意見を伺います。本日は,藤田元さん,谷原秀彦さんのお2人にお出でいただいております。   それでは,早速ですが,よろしくお願いします。 ○KDDI株式会社(藤田氏) 本日はこのような説明の機会を設けていただきまして,本当に感謝しております。我々の運用の現状につきまして御説明して,御要望等について,資料に沿って御説明させていただきます。   表紙をめくりまして,まず最初に「現行の通信傍受における当社負担」ということで,主に4点書いてございます。設備構成そのものは,ドコモさん,ソフトバンクモバイルさんと非常に似通っていて,同じような問題が出てくるとは思いますが,かいつまんで御説明させていただきます。   まず1点目は,通信設備の傍受対応機能の開発というのは,我々携帯事業者はその都度設備が変わっておりまして,第一世代,第二世代,アナログからデジタル,デジタルからまた最近はLTEというようなものがございますが,その都度対応する設備を更改する,設備投資をするということが発生するというのが第1点でございまして,その辺を御理解いただきたい。   2点目はそれに伴う運用の人ですね。「要員の拠出」と書いてございますが,通信傍受実施中常時2名要員を配置しておりまして,1名は立会人,1名は設備監視等の対応というような構成になっております。1日を2班で交互に対応しておりますので,予備要員も含めて1日4~5名掛かっているというような感じでございます。かつ,16条探査の場合には,捜査員の方と発着番号を確認する,これはドコモさんの資料にもございましたが,そういうような対応をしております。   3点目は場所でございます。今は弊社の局舎内でやっておりまして,専用スペース,駐車場,共用施設等を提供しています。   4点目は傍受実施のための運用ということで,通信傍受開始から終了及びその中で起こる諸々の設備設定。先ほどドコモさんはコマンドを投入するということがございましたが,そういうような設定作業の発生。それから,我々は期間中に通信設備を更改する,計画的に工事することがありまして,それが傍受のときに当たると工事自粛等の問題がございます。これもドコモさんのお話にもありましたとおりですが,そういうものについて我々は考慮していただいているというのが現状でございます。   めくりまして,2枚目に,御質問の新システムについて,それから,今後の通信傍受の見直し等についての意見をまとめております。   まず,要員の拠出というのは,現行体制と比較しまして立会人は不要になるということで,ほぼそれが半減するのかなと,1日2名体制でいけるのではないかと考えております。   当然のことながら,場所の提供は弊社局内ではございませんので,不要になります。ただ,運用方法,通信コマンドの設定等につきましては従来と変わらないのかなと。それから,先ほど申しましたが,工事自粛も従来と変わらず配慮していただきたいということでございます。   新システム導入に関する影響ということでございますが,どういう形でやるのかという仕様が詳細に詰まりませんと,確実な費用の積算ができないわけです。それに掛かる費用につきましては,先ほどドコモさんからも御説明があったとおりで,我々は法にのっとった対応が必要になってくると思うのですが,その辺の配慮は是非していただきたいということが(4)に書いてございます。   最後に,弊社の意見としましては,立会人コストの負担,場所等負担の軽減が実現することが望ましいと思っておりますが,一番大きな問題は要員確保,かなりの部隊でやっているのですが,その問題,それから,新しい設備の開発の負担が懸念されます。   それから,対象罪種の拡大等によりまして,作業,それから,24時間ということになると,体制の拡大が懸念されますので,その辺の御配慮,それから,先ほどから何回も繰り返しておりますが,工事自粛等の拡大による影響というものが懸念されるのかなと思っております。   以上でございます。 ○井上分科会長 ありがとうございました。   引き続いて,ソフトバンクモバイル株式会社の方から御意見を頂きたいと思います。本日は,菊地麻緒子さん,大井淳さんのお2人にお出でいただいております。   それでは,お願いいたします。 ○ソフトバンクモバイル株式会社(菊地氏) 今回の通信傍受法の改正につきましては,私どもの社としましては大賛成でございます。是非お願いしたいと思っております。基本的な御意見はエヌ・ティ・ティ・ドコモ様,KDDI様と同じなのですけれども,私どもの資料の3ページですが,負担としては立会人の確保が大変であると。かつては管理職でグルグル回していたのですが,管理職だけでは足りなく,今は管理職以外の者も立会いしていますので,残業代も掛かる,コスト削減の折り,これもなかなかの負担になっている。また,時間も日中とは限らないということで,従業員の健康上の問題もあるということで,是非ここは何とかしていただきたい。我々の方で一度,公の機関に応援をお願いしたこともございますが,これは何とか自社でしてくれということで断られたという経験もございます。   もう一つは場所の確保ということで,通信傍受はいつ起きるか分かりませんので,一つの場所を確保しなければならず,警察の方々もかなり大勢でいらっしゃることが普通ですので,相当の大きさの場所,かつ,機密性の高い場所の確保をしなければならないという負担もございます。   これが大体のところの大きな負担なのですが,さらに私が疑問に思ったのは,立会人がいること自体が,捜査の秘密性とか通信の秘密の観点からして,全然捜査に関係ない一般の人が立会人でいるのはどうかと。そんなことはないかもしれませんが,万が一にもその犯罪に関係している人がいたりしたらいけないということもありますし,そういう観点からしても,逆に立会人はいない方が良いのではないかなと思っております。   ただ,新システムについての懸念点ということになりますと,5ページ目に書いてあると思うのですが,新しいシステムを開発することに伴い多大な費用負担を生じることになりますと,法律で費用負担まで決められているということになれば別なのかもしれませんが,会社内での同意をなかなか取り付けにくい。そこで費用負担については是非国の方で負担いただけるようにお願いしたいと思っております。   また,令状の執行の時点になるかと思いますが,傍受対象番号の登録などに当たりましては,立会人がいなくなることも含め,間違いがないように捜査機関の方にもお立会いいただいて執行し,登録作業をするなどの対応を講じていただきたいと思っております。   さらに,これは付加的なことですが,どのような犯罪について傍受の対象とするかということは,国民的な合意の下でなさっていただきたいということですけれども,スポット傍受は本当に必要なのかなと非常に疑問を感じます。捜査の方々にとっては多大な手間ですし,それによって,せっかくわざわざ通信傍受していただいても重要な情報を逃される場合もあるかに聞きますし,かつ,通信の秘密ということであれば,令状を出す時点できちんと必要性を吟味していただき,期間などを限定することも十分可能かと思いますので,スポット傍受の辺りも今後は是非検討を,これは通信事業者というよりも,業務に関わっての感想なのですが,前向きに御検討をお願いしたいと思っております。   以上です。 ○井上分科会長 ありがとうございました。   次に,東日本電信電話株式会社の方から御意見を伺いたいと思います。本日は,東日本電信電話株式会社からは髙橋正行さん,田俊宏さんのお2人に,また,西日本電信電話株式会社からは福元秀典さん,林広行さんのお2人にお出でいただいております。   それでは,お願いします。 ○東日本電信電話株式会社(髙橋氏) 本日は,通信傍受の依頼があった場合に,実際に対応させていただくセクションの代表としてお邪魔させていただいております。冒頭,分科会長からもお話がありましたように,我々は専ら固定系事業者として,東西ほぼやる内容は同じでございますので,東日本の方から代表して内容について御説明させていただきたいと思います。   3ページを御覧下さい。現行の通信傍受の対応状況でございますが,分かりやすいようにということで下に絵を描いてございます。左側に傍受対象となるお客さま宅,真ん中が使用している交換局です。これまで我々としては傍受の実績はございませんので,仮に令状等があって対応する場合に,どういう対応をするかということで描かせていただいております。   絵でいきますと,①になりますが,傍受対象回線を収容している交換局へ我が社員,作業員を派遣いたしまして,傍受実施に係る事前準備を行います。   具体的には,絵でいきますと②でございますが,お客さまの回線を収容している端子盤から,割り込み接続を行いまして,相手方に傍受が分からないように注意を払いながら回線を引き出しまして,③で描いてございます通信傍受用の部屋を準備いたしまして,そこへ回線を引き込むということをやることになります。別室を用意したり,別室がない場合にはパーテーション等で隔離されたスペースを確保するということになります。   その上で,傍受実施中は常に社員を立会人として配置いたします。これが④の部分になります。傍受実施後には,傍受記録・原記録の封印等という作業が必要になります。これが⑤になります。交換局は全国に相当数のビルがございますが,それ以外に小規模の収容局もございますので,そういったところに対しても,そこに傍受対象者がいれば立会いを派遣するということになります。   4ページにまいりまして,今回御提案いただいた遠隔傍受の方式を導入した場合,それがどうなるかということでございます。下の方の絵にございますように,改めて交換局から回線を引き出して,遠隔傍受施設まで装置が伸びるということかと想定しておりますが,この場合に,先ほど各社さんからございましたように,傍受作業における立会い,それから,きちんとした通信傍受室の設置,傍受後の傍受記録・原記録の封印等に関わる作業は基本的に不要になると考えております。しかしながら,交換局へ作業員を派遣いたしまして,端子盤のところに,②にあるような接続作業は不変で残ります。そういう意味で作業員を派遣することについては今後も必要になります。それを考えますと,稼働としては大きな軽減にならないと想定しております。   あわせて,③に送信装置に対するセキュリティを有する場所の確保及び監視が必要と書いてございますが,交換局,お客さまを収容しているMDFがあるところは,日々,お客さまの開通工事等でかなり頻繁に作業員が入る場所になります。したがいまして,立会いを付けないにしても,そこから回線を引き込まれているものに対してある程度監視をする必要があるだろうと考えておりまして,これが従前どおりの立会いでやるのか,遠隔のカメラの監視によるのかといったことについては,検討が必要と考えております。   それから,仮に当社で交換局から右の遠隔傍受施設まで装置並びに回線を引き込む場合には,新たな作業ということになりますし,その伝送区間に対するセキュリティ確保がまた必要になると考えています。また,回線を準備するに当たりましては,数日掛かる場合もございますので,即時性ということについては少し欠けるのかなと想定しております。   5ページですが,これを踏まえまして,今回の通信傍受の見直しについてどうかということでございます。今御説明させていただきましたように,一部,立会い等不要になるものはございますけれども,回線設定等々新たな作業も生じてまいりますので,全体としては負担は大きく軽減されないと考えております。   なお,以下三つの点を考慮していただきたい事項として書かせていただいております。   まず1点目でございますが,私ども通信事業者といたしましては,通信の秘密を確保するということも使命として持っておりますので,今回の通信傍受法を改正して対象犯罪を広げたり,現行の方式を変更するということにつきましては,私どもは法にのっとって対応するものと思いますけれども,片方では通信の秘密との関係でも問題がないこと等,十分に国民的議論を経ていくことが必要ではないかと考えております。   2点目は,各社さんからもありましたように,新たに出てくる費用等もございます。こういった費用に対する考慮も必要であると考えておりますし,遠隔で回線を伸ばすことによって,通信被傍受者に対して,傍受されていることが,例えば雑音等が入って分かるといったことのないようなシステムの検討,技術的な検討も必要ではないかと考えております。   3点目は,我々キャリアはいろいろと新しいサービスを出してまいります。従前のアナログのものからIP化してまいります。そうしますと,通信傍受に対する対応方法についても,そのサービス,技術に合わせた検討が必要になってまいります。そういった場合には,それにまた相当規模の費用が必要になってまいりますので,そういった費用の負担につきましても併せて検討していただくことが必要ではないかということを付け加えさせていただきます。   以上でございます。 ○井上分科会長 ありがとうございました。   それぞれの通信事業者の方々からの御意見をお伺いしましたので,これに基づきまして,引き続き質疑応答を行わせていただきたいと思います。   なお,質問をされる場合は,いずれの方に対する質問なのかということを明確にして御質問いただければと思います。また,議事録を作成する関係から,参考人の方々におかれましては,お答えいただく際に,最初に社名とお名前をおっしゃっていただければ幸いです。   それでは,御質問のある方は御発言をお願いします。 ○上野幹事 本日はヒアリングに御参加いただきまして,誠にありがとうございました。本当は事務当局は余り発言すべきではないのかもしれませんけれども,単純な質問ですので,私の方から一つお伺いさせていただきたいと思います。   KDDIさんの資料の中で,通信傍受実施中は常時2名の要員を確保し,1名は立会人,1名は設備監視等の対応という記載がございますが,設備監視等の対応というのは具体的にはどういったことをされておられるのでしょうか。私どもの今までの議論では立会人を出していただいているという議論はよくあったのですが,設備監視等の対応という話は私自身余り聞いていなかったので,この辺りを御説明いただければ有り難いと思います。 ○KDDI株式会社(藤田氏) KDDIの藤田でございます。先ほども口頭で申し上げましたが,立会人のほかに必要なこと,これは捜査のやり方も関わるので深い御説明は差し控えますが,我々は,コマンド投入と言いましたのは,通信傍受の際には発着番号の確認,それから,コマンドを入れませんと,携帯のシステムは結構複雑になっておりまして,いろいろございます。そのために要員を1名必ず配置して,実務的なオペレーション,具体的にはコマンドを打ったり表示させたりという者を常駐させております。 ○岩尾幹事 同じような趣旨の質問ですけれども,エヌ・ティ・ティ・ドコモさんの資料の2ページにもそういった記載がございます。稼働負担として立会人が行う立会業務と運用担当者が行うと思われる傍受対象番号の登録・削除や発着信番号確認等の業務が記載されておりますが,立会いの方はほかの業務は何もできずに,傍受用の設備の前にずっと張り付いておられるのだろうと思うのですね。他方,運用担当者が行う業務というのは,最初の登録などをきちんとやれば,常時そこに張り付いている必要性はなさそうな感じがいたしますが,立会人の負担と運用担当者の負担というものは同じようなものと理解すべきなのかどうかという点を教えていただければと思います。 ○株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(吉澤氏) エヌ・ティ・ティ・ドコモの吉澤でございます。立会いは傍受をする捜査担当者の対応も当然ございますので,そういう意味で言うとかなり張り付いているということでございます。そういった意味で言うと,運用担当者は,基本的に,今おっしゃったとおり,登録をしたりコマンドを打ったりして,そこで一度体制が整うと,その場所から別室に行ってほかの作業をすることもありますけれども,必要な場合はすぐにまた電話等,あるいは,すぐ行って呼び戻して,そこでやるということですので,そこにずっといるということではございません。 ○井上分科会長 東日本電信電話さんの4ページの絵で,新しいシステムになった場合,交換局から回線を警察等に引いてというか確保して伝送するということになっています。これはその都度回線を確保するというイメージのように受け取ったのですが,そうではなく,基地局から常設的に警察の施設等に回線を確保しておいて,交換局から基地局に傍受対象の通信を流して,常設的な回線に乗せることにするのも技術的に可能だと思うのですけれども,そういうシステムにした場合と,その都度アドホックに回線を確保してやっていくという場合とでは,人的なコストも含めてコスト面で,どれだけの差があるのかということを伺いたいと思います。   また,携帯電話の場合,今度のシステムになると,携帯電話の傍受対象の通信については,それを有線の回線を使って警察等の施設に流すということになると思うのですけども,それは独自の回線を確保するということなのか,それとも既設のNTTさんなどの有線の方に流していくということになるのか。後者ですと,そこから先は二つないし三つぐらいの会社が関わってくると思うのですけれども,そういうところで問題は生じないのかということなのですが,どなたにお答えいただいても結構です。 ○東日本電信電話株式会社(髙橋氏) 東日本の髙橋でございます。まず,どこか1箇所でNTT側でまとめて,そこから警察の傍受施設へ持っていけないかという御質問かと思います。まず,現行の方式でいきますと,傍受回線に対する音声の抽出というのは収容局側で実施するという方式を採っております。したがいまして,そこの傍受対象回線が増えた場合は,その収容局ごとに,場合によっては専用線を引いてこの施設まで回線を伸ばすということを想定しています。   仮に分科会長から御質問がございましたようなことをやるとしますと,仕組みとして全くないわけではないのですが,遠隔の方から耳で聞くということは,保守とか工事とかで使っているものがございますが,それは対象とする回線にかなり限りがございまして,そういったものを使おうとすると,それに対する仕組みの改善が必要になってくるかと思います。それに掛かるところの費用を私どもはまだ算出しておりませんが,システム検討から含めて時間と費用負担がかなり掛かるのではないかと思っております。 ○西日本電信電話株式会社(福元氏) 西日本の福元でございます。補足説明をさせていただきます。   あらかじめ捜査機関等に回線を伸ばしておくということと,必要なときに回線を伸ばしていくというやり方の二つの議論かと思いますが,私どもの交換局は,西日本の管内だけでも4,000ぐらいの数になっております。また,4ページの右下の絵でいうと,小さなものまで入れますと,1万箇所以上になるということで,そういった数の施設から捜査当局に回線を全て伸ばしていくと。これとの比較をとっておりますけれども,これは現実的ではないのではないかなと。費用面を考えますと,その時々に必要なところから伸ばしていくと。数の議論が私どもの場合は一つの大きな判断のポイントかなと思っております。 ○株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(吉澤氏) エヌ・ティ・ティ・ドコモの吉澤でございます。これは必ずしも各社さんと同じかどうか分かりませんけれども,ドコモの場合は,今は限られた場所でそれをやっております。そこから各警察,県警とかにどういうふうに伸ばすかということだと思います。今の「110番」とかについては,各地域ごとに県警の回線が出ていると理解いただければよろしいのですけれども,限られた場所から全ての県警に専用線を張るということになると,専用線は膨大になりますので,どこかに集約していただいて,それを更に分散していただくとか,そこについては,正にシステムの作り方というのは今から議論になるのではないかと思います。私どもはそういうふうな考えでございます。 ○KDDI株式会社(藤田氏) KDDIの藤田でございます。確かに今,ドコモさんがおっしゃるとおりで,私どものある所から各県警さんに常時回線を張るというのは現実的かどうかという議論があると思います。それに加えてセキュリティの確保をどう見るかという議論が非常に大きい。オープン系のネットワークにつなぎ込んでよいのかという議論があるはずですので。例えば,どこかの警察のポイントに行くと,その中でクローズドのネットワークにつながるというような。ただ,セキュリティをどういうものを入れるかによってこれはいろいろ問題があるとは思いますが。そういう感じがいたします。 ○坂口幹事 キャリア各社におかれましては,いつも捜査に御協力いただいているところでもあり,また,本日は大変貴重な御意見を聞かせていただいてありがとうございます。   今,分科会長から御質問のあった点でございますが,システム設計の問題として今後,警察とキャリアさんの方でよく詰めさせていただきたいと思っておりますけれども,警察は,分科会長御指摘のとおり,組織内部でセキュリティの高いネットワークを既に持っておりますので,キャリアさんの方から全国の警察署に恒常的なネットワークを新たに張るというのは,もちろん現実的でもありませんし,必要もないと考えておりますので,その辺はセキュリティも確保できて,一番効率が良くて,設備投資も少なくて済む方法というものを,今後御相談させていただきたいと思っております。   併せまして,御参考ですけれども,東日本電信電話株式会社さんからお話があった点ですけれども,現行通信傍受法ができます前は,刑訴法の検証令状によりまして通信傍受をやっていた時代があったわけです。私も現場でやっておりました。当時,会社は違ったかもしれませんが,交換局にお邪魔して音を出していただいて。ただ,当時は刑訴法でやりましたので,立会いは消防の方にお願いをしました。電話会社の方も,もちろんシステム監視のために待機していただいておりましたけれども,時間帯を問わず常時張り付いていなければならない立会いは,消防にお願いしたわけです。その負担というのはものすごいものがございまして,一定の日数やりましたけれども,非常に御負担をおかけしたところです。   ところで,今回,冒頭のプレゼンの中で全体としての負担軽減には必ずしもならないのではないかという御意見がありましたが,立会いの負担はものすごいものがあると私どもも承知しておりまして,この点を考慮するとまた御判断も変わるのかなと。これは感想でございますが。 ○川出幹事 最初に質問があった点に戻りますが,KDDIさんの御説明の中で,新システムを導入しても,設備監視等を行う要員1名は必要だという前提で,「通信傍受が24時間実施となると,要員確保のための体制拡大が懸念される」というお話がありました。ここで言う設備監視等を担う要員の方というのは,新システムを導入された場合,常時システムを見て監視しているということになるのか,そうではなくて,例えば,何時間に1回か見て,きちんと作動しているかどうかを確認するということになるのか,どのような作業のイメージになるのでしょうか。 ○KDDI株式会社(谷原氏) KDDIの谷原でございます。ただいまの御質問ですが,確かに常時監視のために人が張り付いているという状況ではありませんが,ただ,何かあったときにはすぐその現場に行かなければいけないということで,結果として要員を拘束するという負担は,新システムになっても変わらないと考えております。 ○後藤委員 エヌ・ティ・ティ・ドコモさんの資料2ページ目で新システムの費用のことに言及されていて,「これに代わるシステム開発」と書かれています。この「システム」とは具体的にどういうものをイメージされているのか御説明いただけますか。 ○株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(吉澤氏) ドコモの吉澤でございます。今の御質問ですけれども,具体的な装置そのものがどうなるかというのは,細かくは今からだと思いますけれども,最後の資料の中に本当に簡単なポンチ絵を描かせていただいたのですけれども,今回は傍受をしたものをためておく,録音をする,そして,それを送信するというシステムというか,そういったものが一つ新たに必要になるのかなということで,ここの辺のものは今は全くございませんので,それの開発,構築というものが必要になるのと,監視制御装置との接続が必要になりますので,そこのところは通信事業者側がある程度構築すると我々としては考えておりますけれども。 ○神幹事 先ほどソフトバンクさんの方から,最後のページですが,実施時の登録の確認について,捜査機関側による確認ということで,警察の方で間違いなく確認するようにしてほしいということをおっしゃられたのですが,現状では恐らく捜査機関側と事業者側でこの番号で間違いがないかという確認をしていると思うのですけど,新しいシステムになった場合は,それは捜査機関側に全部任せてしまうという判断で,そういうふうなことをおっしゃられたのですか。 ○ソフトバンクモバイル株式会社(菊地氏) ソフトバンクモバイルの菊地です。そういうことではございませんで,場所が警察の方で行うことになったとしても,仕掛けの方はこれまでどおり警察と通信事業者と共同の確認によってやっていただいて,我々が勝手に掛けたみたいなことで,誤りが起こったりすると大変なことになってしまいますので,そこのところでございます。 ○神幹事 それから,こういう装置を作った場合,その装置が警察の傍受室の方で適切に稼働しているということは,場合によっては故障が生じたりいろいろなことがあると思うのですが,そういうことについて私どもはある種のチェックシステムが必要ではないかと考えているので,その点についてどのようにお考えでしょうか。それぞれ各社からお話しいただければ幸いです。 ○東日本電信電話株式会社(髙橋氏) 東日本の髙橋でございます。お答えになるかどうか分からないのですけれども,私どもの資料の4ページを見ていただきたいと思います。総括でも書かせていただいたのですが,交換局の真ん中ぐらいにあります端子盤から回線を引き込みまして,差込口,その先に送信装置を付けて傍受施設まで持っていくと。ここの部分を,先ほども御質問がありましたが,仮に私どもが提供するとした場合に,どこの部分をどう保守の責任を持ってやるかということについて,システムの検討の中できちんと議論させていただいて,どこの装置の切り分けはどこがやって,その場合の故障対応に向けて,常時,保守者を捜査機関の方に置くのかどうかということも含めて,今後の議論が必要ではないかと考えております。 ○ソフトバンクモバイル株式会社(大井氏) 基本的には東日本さんの言われたとおりでして,ここは,この話が持ち上がったときに警察庁さんとの議論になるところでして,多分各社さんそこは是非とも何らかの手立てと。ただ,今,余りにもシステムの概要で詳細なところは分かっておりませんので,そこを何とかお互いにクリアしましょうね,お互いに協力しましょうねということで,今後解決していくテーマだと理解しております。 ○KDDI株式会社(藤田氏) KDDIの藤田でございます。ソフトバンクさん,それから,NTT東日本さんの考え方と同じなのですが,切り分けは当然必要ですし,手順をどういう形でやるかというのが見えませんと,抽象的な議論になってしまいがちだと思うのですね。それをまず決めるということと,切り分け試験というのは事業者間では当然のこととしてやりますので,そこのところは非常に重要かなと思っております。 ○株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(吉澤氏) 同じ意見でございます。 ○後藤委員 KDDIさんの御指摘の特徴の一つは,16条の相手方番号の探知について指摘されているところだと思います。確かにその問題があると思います。これは現実に珍しいことなのか,それとも,かなり頻繁に行われて問題になるのかという辺りはいかがでしょうか。 ○KDDI株式会社(藤田氏) KDDIの藤田でございます。先ほども坂口幹事からお話があったとおりで,捜査員の方がピッと音で感知するわけですが,それが発番がどうで着番がどうだという細かい手順,そこからが我々とのやり取りになって,捜査員の方との手順になると思うのですね。 ○KDDI株式会社(谷原氏) KDDIの谷原でございます。弊社の場合,相手側の番号の探知につきましては,発信があった場合,あるいは着信があった場合,いずれにしてもシステムの方で一覧で画面で表示させる機能を備えておりまして,その画面を,傍受を実施するスペースにパソコンを置きまして,そのパソコンに転送して都道府県警の方に御覧いただくという方式を採っております。 ○後藤委員 それは必要な都度見せるということですか。いつも見せているということですか。 ○KDDI株式会社(谷原氏) いつもです。 ○後藤委員 ということは,警察の方が来てそこで傍受されているとすると,事実上全ての会話について相手方の番号が分かるということですか。 ○KDDI株式会社(谷原氏) 傍受対象の電話番号にかかる会話のみでございます。 ○坂口幹事 今の後藤委員の御質問ではなくて,その前の後藤委員の御質問の関係で,ドコモさんからシステムについて御説明がございましたが,もしかしたら誤解されているのかもしれませんが,録音をする場合につきましては,事業者さんで録音をしていただいて,それを警察側に送っていただくのではなくて,録音は警察側でさせていただくことも可能というか,むしろ私どもはそう思っておりまして,事業者さんはリアルタイムで今までと同じように音だけ送っていただければと思っております。それは技術的にどちらでも可能な話でもありますということを補足させていただきます。   ところで,これまで特別部会なり,あるいは,この分科会の席なりで,事業者さんの立会人の方の負担は絶大なものがあるということを警察の方から各委員・幹事の皆様に御説明をしたところです。ただ,現場を直接御覧いただいているわけではなくて,口でお伝えしているだけですから,本当に負担のほどというのがお伝えできているかどうかというのが若干不安なところがありまして,本日は,事業者さんにおいでいただきましたので,大変な実情について,もう少しお話しいただければと思います。 ○ソフトバンクモバイル株式会社(大井氏) ソフトバンクモバイルの大井です。それは本当に大変でして,若干補足させていただきますと,私どもの立会人については,老若男女,管理職のみならず20代前半の女性においても深夜の立会いをお願いしております。女性を深夜に立会いさせる必要はないではないかということなのですけれども,立会いというのは捜査に関わるものですから,ある一定のお客さまの情報,あるいは,通信の秘密に関わるというセキュリティ感覚,それから,遵法精神を一定程度保った社員のみにお願いするということですと,我々1万人ぐらいおりますけれども,やたらなところにお願いできない。となると,当然,限られた部署,いわゆる遵法精神の高い部門にお願いするということですので,あまりに頻度が増えますと,枯渇する。現状のままでも立会いが増えると別の部署にもお願いしなければいけない。我々は今ある一定レベルの立会人を投入していますけれども,これが増えると立会人の質が下がった場合,「ここで聞いたことを口外すると法律で罰せられますよ」とは書いてありますけれども,今後,本当に口外しないのか,あるいは,立会人の幅を広げた場合に,通信傍受を主管する部署として,捜査内容を口外しないかということで,ある意味非常に不安に思っている日々でございます。今後,単純に増えた場合ですね。   それから,繰り返しになりますけれども,女性の労務管理の観点からも問題がありますし,また,管理職の場合はその間拘束されて,人件費以外に,その管理職がいないために業務が滞ってしまうと。実際に他部署からクレームがありまして,「もうお前のところに協力しない」というふうな気運も一時期ありまして,警察庁さんからお願いされて,「残念ですけれども,こう頻繁にやられるともう無理です」ということで,お断りさせていただいた事例も実際にはあります。大変な負担だというのは,ソフトバンクだけなのかもしれませんけれども,御理解いただければと思います。 ○髙橋幹事 その御負担というのは,時間的に拘束された上,その間は自分のほかの仕事はできないということですか。また,先ほどのお話の中で,公的機関にお願いしたことがあったけれども,断られたというようなお話でしたが,どのように断られたのですか。 ○ソフトバンクモバイル株式会社(菊地氏) ソフトバンクモバイルの菊地ですが,私どもでも立会人の拠出が続いておりましたので,これ以上の拠出は不可能だということで,公の機関の立会いをお願いしてくれませんかと,地方公共団体に聞いていただいたのですけれども,結局無理だと,何とかしてくれということで,致し方なく立会人を出しました。先ほど大井の方から遵法精神の高い人を選んでいるということがありましたけれども,それだけではなくて,営業部隊とか技術部隊は無理ですので,必然的に立会いできる部門は限られてきてしまいます。そこで時短とかどうしても立会いできない人も出てきますので,重複感が出てきて,社内的に音を上げている,これ以上増えたら協力できませんよと,限界に来ているという感じでございます。 ○井上分科会長 誤解を避けるために一言申し上げたいのですけれども,こういう制度を作るときに携わった一人なのですが,立会いの場合は,処分対象者の権利を保護するために,原則としては処分対象者に立ち会っていただく。それができない場合に,通常の捜索差押えですと,近隣の人か地方公共団体の職員に立ち会ってもらうことになっているのですが,こちらの方は公正・適正に手続が行われているかを監視するというのがその趣旨です。通信傍受の場合は,通信事業者は処分対象者でもあり,設備とか施設に一定の侵害を加えるというところがあるからなのですね。また,通信事業者の方は背後にいる利用者の利益,権利を擁護すべき立場にもありますので,二重の意味で,原則として通信事業者の方に立ち会っていただくこととしているわけです。手続が公正に行われるかを監視するのと同時に,自分のあるいは利用者の権利・利益を護るということです。ただ,現実的に見ると,それが過剰な負担になっているため,それをいかに合理化するのかというのが目下の課題なのだと思うのです。そういうふうに御理解いただきたく,一方的に迷惑を被っているというふうに受け取っていただかないでいただければと思います。 ○ソフトバンクモバイル株式会社(菊地氏) その点ですけれども,確かに設備の保守という部分はありますけれども,そこは先ほどからKDDI様とかドコモ様がおっしゃっているように,設備監視等をしている者がおりまして,その者は確かに立会人のようにひっ付いているわけではないですけれども,何かトラブルがあったら出て行くとか,チェックを随時している。ただ,その人は1人工丸々とられるわけではないので,そういう方がいることは必要と感じているのですけれども,立会人というのは,通信事業者ではなくてもよいということで,今回の新システムの御提案にも見られるように立会人を置く必要もないということで。もちろん,私どもとしても通信設備の保守等のために監視等をすることの必要性は十分理解しております。 ○井上分科会長 今回はその二つの機能を分離することによって合理的なものにしていこうというアイデアだと思うのです。 ○神幹事 今の議論の中で,各社それぞれいろいろな御意見をいただいたのですが,特に今の立会人の厳しさと言いますか,大変さというのは非常によく分かりました。恐らくそれは東日本さんや西日本さんでも同じだと思うのですが,東日本さんのまとめの部分については,それでも多分負担は全体として減らないとおっしゃっておられるので,それがなくなった場合に,現在の対象犯罪のままだったらどのぐらい負担が減るのか。半分ぐらい減るのか,それとも,それほど多くないのか。その辺りの感覚はどうですかね。これから対象犯罪は増えますので,そういう意味で全然負担減らないのだということであれば,そういう意見を言っていただいて結構なのですが。 ○東日本電信電話株式会社(髙橋氏) 東日本の髙橋でございます。先ほど御説明させていただきましたように,近年,私どもとしては通信傍受の実績がございません。したがいまして,携帯系と比較したときには,立会人を立てることによる稼働の大きな負担が実質生じているわけではないというのが実態だと思います。ただ,実際起きた場合には,各社様おっしゃるようにずっとそこに我が社の社員を,先ほど分科会長がおっしゃいましたように,基本的には通信の秘密の保護ということを踏まえますと,通信キャリアの社員がやることが前提だと思っております。   全体的に増えないのではないかというのは,遠隔の回線に対するセキュリティ確保とか,それに対する監視,それから,私どもでいきますと,交換局の中で音声信号として警察側回線に渡すということを考えますと,先ほど言ったように人の出入りがあるので,立会人を付けない代わりにどういうふうにその辺のセキュリティ,監視をすべきなのかということを考えていくと,感覚論で申し訳ないのですけれども,大きな負担減になるのかというのはいかがなものかということで書かせていただいております。 ○坂口幹事 今,御説明のあった点ですけれども,そこはいずれにしても詳しい設計をいろいろやって,今後御相談だと思っておりますが,新システムを導入すると,現行のやり方がなくなるわけではございません。現行のやり方も選択肢の一つとして新システムと併存することとなるでしょうが,固定電話の場合は特に交換局は全国に多数ありますから,警察施設のすぐそばにある場合も多いので,あえて新システムを使うメリットは警察側には乏しく,現行のやり方による方が事業者さんの負担が軽いということであれば,現行のやり方を続けるという選択もまたあるということでございます。 ○井上分科会長 そろそろ予定の時刻ですので,特にもう一つということがあればお伺いしますけれども,よろしいですか。   それでは,通信事業者の方々のヒアリングはここまでとさせていただきます。   本日は,お忙しい中お出で下さり,これでまたこの時間,本来の業務ができなかったということになるのかもしれませんけれども,大変有益な御意見を伺うことができました。技術的な事項など,私どもは素人なものですから,的外れな質問もあったかもしれませんが,本当にありがとうございました。本日伺った御意見は,今後の検討において貴重な参考情報とさせていただきたいと思います。   通信傍受の合理化・効率化に関する「立会い,封印等の手続の合理化」及び「該当性判断のための傍受の合理化」については,本日伺ったヒアリングの内容をも踏まえまして,今後更に具体的に検討を進めることにいたしたいと思います。   本日はどうもありがとうございました。           (参考人 退室) ○井上分科会長 ここで,休憩を取りたいと思います。           (休     憩) ○井上分科会長 それでは,再開いたします。   次に,通信傍受の「対象犯罪の拡大」についての議論に入りたいと思います。   まず,配布資料の内容を事務当局から説明してもらいます。 ○上野幹事 資料6を御覧ください。これは,特別部会の第20回会議での配布資料をベースに,その際の御議論を踏まえるとともに,当分科会で更に具体的な検討を進めることに資するようにするという観点から,検討課題について加筆,修正を行ったものです。変更部分を中心に内容を御説明します。   まず,「検討課題」の「①」と「③」については,いずれも,「罪名に加えて何らかの限定要件を付すことの要否・当否」の後の括弧内に,「通信傍受の有用性を損なわない形で組織性の要件を規定することが可能か,具体的にどのようなものが考えられるか」を追加して記載しています。これは,部会の第20回会議でも,これらの犯罪については組織性の要件を付加すべきであるとの御意見が示されるとともに,組織性の要件についてのイメージ案の御紹介もあった一方で,仮に組織性の要件を付加した場合には,通信傍受を有効に活用することが事実上不可能となり,その有用性を生かすことができなくなるとの懸念が引き続き強く示されていることから,この点について,実際の規定ぶりを具体的に想定しつつ,更に詰めた議論を行っていただく必要があるのではないかとの観点から,このように記載したものです。   次に,検討課題の「④」については,各犯罪類型の後に,具体的に想定される罪名又は法律名を追加しています。この「④」に掲げている犯罪類型は,当分科会の第4回会議で警察庁の島根前幹事が御提案されたものですが,対象犯罪への追加の要否・当否を御検討いただくに当たっては,個別の罪名や法律名を念頭に置いて御議論いただく方が,より具体的な検討に資するのではないかと思われたことから,島根前幹事の御発言を踏まえ,考えられる罪名や法律名を記載いたしました。   なお,刑法犯については罪名を,特別法犯については法律名をそれぞれ記載しています。   御説明は以上です。 ○井上分科会長 それでは,ただいま事務当局から説明があった資料に沿って議論を進めさせていただきたいと思います。   議論の進め方としましては,今説明のあった「考えられる制度の概要」や,「検討課題」に「①」から「④」として記載された犯罪のグループのうち,まず「①」から「③」までを一括して議論することといたします。次に,対象犯罪への追加の要否・当否という点から議論する必要があると思われます「④」に記載された犯罪について,一つ目の「○組織を背景とした犯罪」,次いで二つ目の「○暴力団関連犯罪」を順次議論し,その上で,最後に,三つ目と四つ目の「○テロ関連犯罪」と「○その他」をまとめて議論する,こういう順序で議論を進めていきたいと思います。   それでは,まず「①」から「③」までの犯罪について,御意見のある方は,御発言をお願いしたいと思います。 ○神幹事 本日私名義のペーパーを出しておりますけれども,日弁連は,通信傍受そのものについてはかねてから反対をしてきたという関係もありまして,対象犯罪を拡大することについてもかなり消極的であります。ただ,部会でいろいろな議論をしてきた中で,作業分科会として何らかの作業をしなければならないとした場合,どういうことが考えられるかということで用意させていただいたものがこのペーパーであります。   対象犯罪の拡大を考える場合,一つには,「検討の視点」にありますように,犯罪の重大性と,捜査手法としての通信傍受の必要性・有用性という観点からどうするかという視点を除いて議論することは適当ではないと思っています。少なくとも通信傍受が検証によって行われた際の最高裁判例がありますので,部会の中で議論が一番沸騰した,いわゆる振り込め詐欺とか窃盗団による窃盗といったものについては,困っているという捜査側のいろいろな声があったので,その視点を入れて作ってみたものがこのペーパーであります。   ただ,「②」,「③」以上に,「①」に関して,強盗はともかくとして窃盗,詐欺,恐喝が重大な犯罪なのかどうかということについて私は非常に疑問に思っております。いろいろな形で重大犯罪に対する立法が行われました。そのときは基本的に法定刑を中心として行ってきたという経過があったと思います。そういう観点から言った場合,通信傍受が簡単に財産犯に及んでしまうことは,それ以外の犯罪にも容易に及んでしまう可能性があるという意味では,かなり慎重であるべきだと考えています。そのために,犯罪の重大性という観点からの限定と,二つ目としての組織的な要件を何らかの形で入れるということとの2点の制約要件を入れることを考えた次第です。   私は組織要件を入れる場合にどのようなものを入れるかということで,部会では徒党を組んでうんぬんなどということを申し上げましたが,それはとても条文にならないことでありますし,幾つかの観点から考えて,もし可能であるならば組織的殺人とか組織的詐欺とか組織的窃盗という形の特別な構成要件を作ることが一番良いのですけれども,恐らくそれはいろいろな形の態様があるので,それを網羅する構成要件を作ることは不可能だという意見があり,私もそのように考えます。だとすると,傍受要件の中で組織要件を考えていくという方法があるのではないかと思って作ったものが,このペーパーの2枚目以降であります。   条文の形で「4」に挙げてあるのがその一つであります。こういう結論に至ったのは,一つはいわゆる組織的犯罪処罰法の犯罪は,団体要件が非常に厳しくてなかなか疎明が難しいために使い勝手が悪くて,現行法で認められている組織的殺人ではなかなか傍受ができなかったということを伺っています。そのために,ここでは組織的な団体要件を構成要件的なものから下の傍受要件の方に移して,「疑うに足りる十分な理由」ということではなくて,「疑うに足りる状況があるとき」ということで疎明の程度を一段下げるという形で行ったらどうかと考えたのであります。   かねがね,組織犯罪については,反復継続性とかいろいろなものがあったり,団体はどのような団体なのかということについてよくよく考えてみると,組織的犯罪処罰法の2条とか3条の条文を見ますと,この言葉をそのまま使うことによってある程度の歯止めができるのではないかと考えたのがこの案であります。皆様の御意見を伺って,こういうものが作れたらと思っておりますので,私の意見として述べさせていただきます。 ○井上分科会長 御質問なのですが,重大なものに限るべきだということですけれども,それと組織性の要件は論理的にどう連関するのでしょうか。もう一つ,重大犯罪に限るという観点から,振り込め詐欺については本当に重大なのか疑問があるとおっしゃりながら,それを入れるためには組織性と重大性という要件をかけるのだと言われた。それは矛盾していないのか。今伺っていて,そこのところが整理されていないのではないかと思うのですが。 ○神幹事 整理されていないかもしれませんが,私の頭の中にあることだけ申し上げます。実際問題,組織的窃盗というパターンについては,いわゆる有名宝石店を襲って被害額が甚大になるというパターンが結構あるのですが,振り込め詐欺は個々的には数百万という被害金額の事件が集まりに集まって何億円の被害になるというパターンが多いと思うので,そのような振り込め詐欺のような形になるようなものであれば傍受の対象となり得るものとし,少なくとも1回限りの犯行ではこの対象の中に入れることができないかなと思っています。しかし,この条文でよいかどうかについてはまだ若干の問題があるかもしれません。 ○井上分科会長 重大という場合に,何をどういう視点から重大と見るかということだと思うのですね。振り込め詐欺などは社会的に非常に深刻な問題になっていて広がりも大きい。そういう目からみれば重大と言えるようにも思うのですね。ところが,法定刑という面から見るとそうでもない。だから,法定刑で切るのか,社会的な要請という観点から見る重大性で切るのかで,切り方は違うと思うのです。しかも,そこに組織性というものがどう絡んでくるのか。更に難しい問題だと思うのですね。 ○神幹事 法定刑で切るかということになると,そこは現行の法定刑の中で考えた場合に,法定刑で切ってしまったら入らなくなってしまうということになるので,それ以外の要因で被害額が少ないとか,行為態様がものすごく単純であるとか,いろいろなものを考慮して,軽微なものは除いたらどうかという観点ですね。 ○井上分科会長 いろいろな視点を総合してということでしょうか。 ○神幹事 はい,総合してです。そして,ある種の相当性判断の中でそういうことを判断して,この場合はどちらか分からないのだから,ちょっと難しいという場合は傍受の対象にしないという形のものは考えられないかなということです。 ○後藤委員 今の分科会長の問題提起について,私なりの理解を申し上げます。重大性について,法定刑はもちろん一つの重要な指標だと思います。けれども,それだけではなくて,現時点でその種の犯罪が大きな社会的脅威として感じられているかどうかという観点も入り得るのだと思います。組織によって反復して行われるという要素は,それが大きな社会的な脅威になるという意味で,犯罪の重大性に組織性が関連する,と同時に,傍受の有用性の部分で組織的に行われる犯罪だったら通信が使われることも多いのではないかという考え方があると思います。現行の通信傍受法でもそういう考え方が背景になって対象犯罪が選ばれているのではないでしょうか。つまり,組織性は,重大性の要素と有用性の要素の両方に関係しているのではないでしょうか。 ○髙橋幹事 神幹事の提案された1号規定に基づいて意見を述べたいのですが。まず,神幹事もおっしゃったとおり,実体法で特別の構成要件を定めて,それを対象犯罪とするのはなかなか困難が伴うのではないかという点については,同じような感触を持っています。とは言え,限定をかけずに詐欺罪あるいは窃盗罪をそのまま対象として通信傍受可能としてしまうのも,問題なので,通信傍受の要件の中にうまく組み込めればよいのではないかというのは,一つの考え方としてあり得ると思います。   次に,神幹事のペーパーの2ページの1号規定の案の括弧に書いてある(その行為の内容及び被害の程度・重大性を考慮し,軽微な事件は除く)という要件については,令状を発付する側の立場で考えますと,捜査の初期段階でその事件が軽微なのか重大なのかというのはなかなか判断しづらいのではないかと思います。むしろ神幹事の提案にある,組織により行われたというような要件がうまく盛り込めれば,組織的な振り込め詐欺とかあるいは,組織的な窃盗団,強盗団による窃盗・強盗と,それ以外の犯罪との区別がつくので,無理して重大性の要件を盛り込むことまで必要ないのではないかと,そういう疑問は持っております。 ○井上分科会長 今の点ですけれども,対象犯罪を限定する場合の視点なのか,それとも,要件としてそのような要件を立てるべきかどうかという場合の視点なのか,そのどちらの問題なのでしょうか。結果としては,要件のところで絞るのも,結局対象とする犯罪が絞られるということにはなるのですけれども,観点としてはちょっと違ってき得るのではないかという感じがするのです。重大性というものを仮に要件とした場合には,髙橋幹事が今おっしゃったように,個々の事案で,社会的にどのぐらい重大かということを裁判官が判断しろと言われても,それは困りますよね。でも,対象犯罪を最初に列挙するときの選別基準にはなり得ると思うのです。そういうふうに罪種を限定しておけば,裁判官は,それに当たるか否かを認定すればよいわけですから。   もう一つの組織性の要件については,先ほど後藤委員が言われた有用性という意味ではそうかもしれないのですけれども,それは要件の問題なのかという疑問があります。ターゲットとしてそういうものについて特に通信傍受が必要だということと,要件としてそれを掲げることの間に必ずしも論理的なつながりはないようにも思うのです。   つまり,対象犯罪を限定するときの基準としては,通信傍受という手段が最も必要かつ有用なのは組織的な犯罪だという意味で,組織性というものが一つの基準になるのだけれども,前に部会でも指摘があったように,その組織性を明らかにしていくためにこそ通信傍受が必要なのに,要件として組織性ということを求めてしまうと自縄自縛になってしまうわけで,そういう点から要件として立てるのが合理的かどうか,適切かどうかという検討をする必要があると思うのです。そこは質ないし段階が異なる問題であり,専ら限定するということだけで考えれば同じように見えるかもしれないですけれども,議論のレベルとしては区別して考えなければならない問題なのではないかと思われます。 ○岩尾幹事 今,分科会長が言われたことと重なる部分もあるのですが,結局,組織的犯罪処罰法の組織的詐欺は,類型的に刑を加重する必要があるという観点から組織性が要求されているわけで,傍受要件に組織性を持ってくるという必然性は必ずしもないように思います。今回の提案は,通信傍受法3条を修正することによって,対象犯罪は組織的詐欺としない形で何らかの妥当な限定をしようとされているのですが,結果においては対象犯罪自体を組織的詐欺にしているのと何ら異ならない,つまり,その嫌疑の程度が疑うに足りる状況か,疑うに足りる十分な理由かというところが違うだけであって,基本的にはこれは対象犯罪を組織的詐欺に限定するという方法と変わっていないのです。   実際に振り込め詐欺を捜査するときに,どういう情報に基づいて捜査が進んでいくのかということを考えると,まずは被害申告から進むわけですね。その被害申告からは,電話がかかってきた,何人か役割の違う人から電話がかかってきたようだということで,数人関与しているのが分かる。さらに,受取りに来る人物がまた別途いるかもしれない。あるいは,口座に振り込めと言われて口座が判明する。そうすると,その口座の捜査から口座の名義人が分かる。ただ,その名義人は多分実在しないような,実体を反映しない名義人であると。防犯カメラ等である程度の容姿が分かる場合もある。それからさらに電話を通じたやり取りにより,携帯電話番号が分かり,その携帯電話を契約している名義人の氏名が分かる。この名義も実体は反映されていないということになるわけですね。   そういった情報を総合して,その段階での要件該当性を考えると,数人共謀して,それぞれの役割を果たしているというのは分かるのですけれども,それを組織的犯罪処罰法の団体要件に当てはめたときに,疑うに足りる状況という疎明の程度でもよいとしたからといって,これらの要件を疎明できるかというと,ほとんどできていないに等しいのだと思うのです。それは,一般的に振り込め詐欺の類型に当たりそうだということから推測されるというのでは疎明としては不十分であり,組織的犯罪処罰法で言うところの団体要件,その団体の中における組織の要件,さらには団体の活動としてという要件が要求されるわけですね。   まず,団体で言うと,振り込め詐欺の実行という共同の目的を有する継続的な集団が存在するということが求められるのではなかろうかと思いますし,その集団の中に組織があること,その組織というのは,定義されているように,指揮命令に基づきあらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体であるということ,それからまた,振り込め詐欺集団の目的・意思を実現する行為の全部又は一部がその組織により反復して行われることも疎明しなければいけない。   さらには,振り込め詐欺がその振り込め詐欺集団の意思決定に基づく行為であって,その効果又はこれによる利益がその集団に帰属し,この詐欺がこれを実行するための組織により行われたことが求められます。こういうふうに分析的に考えると,団体要件,組織要件,団体の活動としての要件と,それらが全てあてはまらないと疎明したことにならないということからすると,この御提案の要件では,疑うに足りる状況があると修正したとしても,これを活用して有効な捜査をするのは難しいのではなかろうかと思います。 ○後藤委員 現在の通信傍受法自体が元々組織的な犯罪に対する対策としてできたものです。1条の目的を見てもそういう書きぶりになっています。それ自体を変えようとする意見があるのでしょうか。そこまでは皆さん考えていないように思うのですが。つまり,通信傍受法の目的から見て,組織的犯罪を標的として作るべきものだということは了解されていると理解してよいですか。それとも,組織性はなくして,数人共謀という,つまり有用性だけを要件にしてしまおうと,大胆な発想があるのでしょうか。 ○上冨幹事 一言申し上げます。平たい日本語としての「組織的な犯罪」というものと,現行の組織的犯罪処罰法で加重の対象となっている「組織的な○○罪」とは必ずしも一致していないわけです。通信傍受法が組織的な形態を持った犯罪を摘発することを主要な目的として想定していることはそのとおりだと思いますが,そのことにより,実体法上の加重要件が通信傍受法上も必要となる訳ではないのは,現行法上,当然の前提とされているものと思います。 ○後藤委員 確かにイコールではないのですけれども,現在の条文に挙がっている対象犯罪は,組織的殺人はもちろん,そのほかのものも,主要なものは薬物犯罪ですが,それらも組織的に行われるだろうという推定が元々働いていて,これを拾い上げていると私は理解します。しかし,対象犯罪を配布資料で挙げられているような一般刑法犯に広げていくとすると,罪名だけではその組織性の推定は,恐らくできないですね。 ○井上分科会長 私は,通信傍受法を作るときの議論に参加していたのですけれども,対象犯罪は,今,上冨幹事が言われたような社会的に見て,あるいは,平たく言って組織的に行われ得るものが念頭に置かれており,当時の法制審議会のまとめとしては,現行の通信傍受法に掲げられているものよりずっと広かったわけです。罪名としては一般犯罪,例えば,殺人なども入っていたのであり,それらも組織的に行われ得るし,現に行われていたから対象とすることにしたわけです。それを,その後のいろいろな経緯で限定したのが,現行法なので,そういうことに照らすと,一般的な罪名だからといって,組織的に行われるものと推定できないという議論は成り立たないように思います。実際に,そういう罪名の犯罪も組織的にも行われているわけですから,一般罪名だから従来の趣旨から外れるという議論には恐らくならないだろうと思います。 ○髙橋幹事 確認にもなるのですけれども,今回の立法事実としては,組織的な振り込め詐欺だとか,外国人を含む窃盗団,強盗団による犯罪を的確に把握して訴追するために,通信傍受の利用が必要なのだと,そういう要請があるから法を改正しましょうというところからすると,追加する対象となっている犯罪は,飽くまでも組織的な振り込め詐欺あるいは集団窃盗,強盗というところに一定のターゲットを絞り込んでいくものだと思っているのです。   ただ,組織的な振り込め詐欺といっても,それが全て組織的犯罪処罰法の対象になるかというと,実際の裁判でも立証が難しくて,最終的な構成要件としては組織的犯罪処罰法上の組織的詐欺罪には当たらないものもあるので,更に外延を広げてそこも補足した上で今回通信傍受の対象にしようと,そのようなイメージなのですけれども,それは違うのですかね。それとも,それでよろしいのですかね。 ○井上分科会長 現行法の対象犯罪に限定するということではなく,それを広げていこうとするものであることは間違いないと思います。御質問の趣旨がよく分からなかったのですけれども。 ○髙橋幹事 懸念しているのが,仮に今の通信傍受法をそのままにして,別表で詐欺罪,窃盗罪というものを入れて,その別表の犯罪について通信傍受の対象になるとした場合,つまり何らかの絞り込みをかけておかないとすると,実際,運用ではそうしないと捜査機関の方はおっしゃるかもしれないのですが,今,ターゲットとしようとしている一定の組織性のある振り込め詐欺以外の詐欺事案,あるいは窃盗団によるものでない窃盗事案でも,法律上は通信傍受は可能になってしまうということで,それが果たして相当なのかということなのです。 ○井上分科会長 いろいろな要件が掛かっていますけれども,それを掛けたとしても広がるのではないか,それが相当かどうかという御意見ないし御疑問だということですね。 ○髙橋幹事 はい。 ○後藤委員 神幹事の案に触発されて,発言します。この案の括弧書きの「重大性」の部分についてです。今の通信傍受拡大の議論は,振り込め詐欺的な犯罪がきっかけになっています。そういう犯罪が大きな脅威として感じられるというのは,一人一人の被害額が非常に大きいということより,多くの人々が同じような被害を受けるからでしょう。そのために現在,重大な問題だと考えられているのだと思います。そうであれば,重大性要件をそういう観点から絞れないでしょうか。例えば,「同様の態様で反復・継続して行われたと疑うに足りる相当な理由」であるとかです。特に「①」のところで,神幹事案の「被害の程度,重大性」という括弧書きに代わる表現として。 ○岩尾幹事 今言われた反復・継続性というのは「組織により行われた」という要件の代わりになるという理解ですか。 ○後藤委員 いや,代わりにではなくて,それとはまた別の話です。 ○岩尾幹事 「組織により行われた」という要件にプラスして反復・継続性を要求するということですか。 ○後藤委員 「組織により行われた」という要件をどう表現するかは,もう一つ問題だと思いますが。 ○岩尾幹事 反復・継続性については,「組織により行われた」自体でそれはもう満たされているのではないかということになりませんか。 ○後藤委員 そうでしょうか。 ○川出幹事 今の点に関して,私も,「組織により行われた」ことを要件とするのは,先ほど岩尾幹事が御指摘になったとおり,それを疎明するのが難しく,妥当でないと思います。その上で,実際の適用を,そのような犯罪に限定できるような要件を立てるとすれば,今問題になりました反復性・継続性ということが考えられるのではないでしょうか。そのような場合には,組織によって行われているということがある程度推認できるという意味で,対象犯罪を限定するという機能が果たされるのではないかと思います。 ○井上分科会長 その場合にも同一人あるいは同一グループによって同種の犯罪が反復して実行されているということを疎明しないといけないですよね。社会現象として似たような振り込め詐欺がいろいろなところで発生しているとまでは言える。しかし,それだけで,同一人ないし同一グループの犯行であると疑われるということが疎明されたと言えるのでしょうか。 ○川出幹事 確かに,それだけでは無理だと思いますので,捜査でどの辺りまで明らかにできるかですね。ある集団の組織構造や,その集団の活動として特定の犯罪を行っているというところまで明らかにはできなくとも,ある集団が同じようなことを繰り返しやっているというところまで明らかにすることはできないのか。それもやはり無理だというのであれば,結局同じことになるので駄目ですが,仮にそこに違いがあるとすれば,組織性を直接に要求しないで,実質的にそれを満たしうる要件として,反復性・継続性というのがあり得るかと思ったということです。 ○井上分科会長 漠然と見たときにそう言えるというのと,裁判所に持っていって認定してもらえるかということとの間には,かなり落差があるように思うのです。またそうでないとおかしいわけでしょう,法律問題としては。 ○川出幹事 それはおっしゃるとおりで,反復性・継続性という要件であっても,結局疎明できないということであれば,通信傍受は機能しませんので,そのような要件は立てるべきではないということになると思います。 ○坂口幹事 捜査実務を考えますと,先ほど岩尾幹事から的確な御説明がありましたけれども,捜査というのは,通常,振り込め詐欺であれば被害申告から始まるわけであります。同一の被疑者があちらでもやっている,こちらでもやっているということを最終的に疎明するとなると,ある被害申告から捜査が始まった事件,それはどこかの県警のどこかの署なのかもしれませんが,振り込め詐欺というのは,犯人は同じところでばかりやらないというか,むしろ全国的にあちこちでやるのが特徴ですので,全然違う県警の違う警察署に被害届が出てきた事件が同一の被疑者によるものなのですという疎明を傍受令状の請求段階ですることは恐らく無理ではないかというのが実務感覚でございます。 ○川出幹事 主体を,同一の被疑者ということではなく,同一のグループにまで広げても,やはり疎明は無理だという印象をお持ちでしょうか。 ○坂口幹事 相当困難だと思います。 ○岩尾幹事 実態に関する質問なのですけれども,例えば,同一グループの場合には,振込先の口座が同一になるのか,あるいは,同一のグループでも非常にたくさん口座を持っていて分散していて,振込先はいろいろな箇所があって,必ずしも振込先から同一グループだということも認定しにくいということですか。 ○坂口幹事 そのとおりで,認定は極めて困難です。というのは,実態としまして,犯人グループは一回成功すると,成功したとき使った口座や携帯電話は二度と使わないというのが実態だからです。 ○後藤委員 反復・継続にしても組織性にしても,疎明が難しいという話ですけれども,逆に,それが示せないで,しかし傍受の有用性は示せるでしょうか。 ○井上分科会長 それは要件の問題なのか,対象犯罪の選別の問題なのかです。そこを分けて考えないと混乱した議論になってしまいます。 ○岩尾幹事 基本的に補充性要件と絡んだ犯行態様によるのだと思うのですね。例えば,電話しか分からなくて,組織の実態が全く解明できていないと。しかし,一般的な手口からすれば,常識的には反復・継続しているに違いないと。今,社会的に起こっている振り込め詐欺的なものとか,あるいは,投資詐欺のようなものは,組織的な背景も全くなく1人を対象にして一回だけやるということは常識的には少ないのだろうと思います。そういった場合に,犯行態様からして,かつ,補充性が認められた上でございますけれども,有用な犯罪は絞られてくる。逆に言うと,1回だけの寸借詐欺的なものが数人共謀によるものであったとしても,令状要件からして補充性が認まるはずもないと思いますし,そういったものを傍受という手間暇掛けた仕組みを使って捜査するということも考えにくいのではないかということだと思います。 ○坂口幹事 捜査機関側からも一言お願い申し上げたいと思います。非常に疎明が困難であって,実際に令状請求ができないというような改正ではあっては,せっかく通信傍受法を改正していただいたとしましても,何のために改正したのか分からないと。現行,組織的殺人ということになってしまっているがために,結局,使い物にはならなかったと。その結果,凶悪な犯罪が極めて多発していて,市民は不安におののいているという北部九州のような事態を踏まえれば,是非この轍を踏んではならないということをもう一回お願いしたい次第でございます。   他方,実務的な感覚から申しますと,改正の弊害としてこういうことが起こり得るのではないかという御心配はもちろん理解しますが,ちょっと技巧に過ぎるというか,捜査経済を考えますと,令状請求というのは非常に大変なことであり,かつ,執行する,傍受をするというのは,先ほど事業者からのヒアリングにもありましたように,捜査機関にとっても負担がものすごく重い捜査手法でありますので,これがいたずらに広がるという懸念は現実的ではないということを申し上げさせていただきたいと思います。 ○井上分科会長 「①」から「③」までの議論については,ひとまずこのぐらいにさせていただければと思います。   今までの議論で,この「①」から「③」までについては,通信傍受の範囲が広がり過ぎるのを防ぐという見地から,「犯罪の重大性」という絞りを掛けた上で,通信傍受法3条の要件に組織性等の要件を付加するという御提案がありました。   これに対して,そういう規定では,要件の疎明自体が非常に困難になり,結果として通信傍受法の有用性が損なわれるのではないかという御意見,あるいは,現行の通信傍受法において,「数人の共謀によるもの」であるという共謀要件とか,補充性が要件とされていることから十分絞られているので,こういう新たな要件を設けなくても,過度に通信傍受が利用されたり乱用されるおそれは,実質的には生じないのではないかという御意見も示されたところであります。   ただ,いずれの立場においても,通信傍受が必要とされる事案については,その有用性を損なうことなく,適切に対処できる制度にしなければならないというレベルでは御意見はそう大きく違わないようにも思われます。根本的に反対という御意見はあるとしても,この分科会での議論としてそういうところでは基本的に認識は一致しているのかなと思います。そういうことで,本日のそれぞれの御意見を踏まえまして,どのような規定とするのが適切なのかについて,今後議論をより深めていくこととするべきではないかと思っております。   次に,「④」の犯罪ですが,このうち「組織を背景とした犯罪」についての議論に入りたいと思います。この類型に関しまして,対象犯罪への追加が考えられる犯罪については,当分科会の第4回会議において,島根前幹事から御意見を頂いたところであり,本日の再配布資料には,その御意見を踏まえ,具体的な法律名等が記載されております。更に具体的に突っ込んで検討を行うためには,法律名だけではなくて,その法律名の下でも具体的にいずれの犯罪の追加を検討するべきなのかについてイメージを共有しておくことが必要ではないかと思われます。   そこで,議論を始めるに際し,坂口幹事から,配布資料に記載された法律の犯罪のうち,具体的にどの犯罪を追加することが考えられるのか,また,配布資料に明記された法律以外にも,対象犯罪に追加すべき犯罪があるのか,あるとすればそれはどういうものなのかについて,御意見ないし御説明を頂ければと思います。 ○坂口幹事 まず,「組織を背景とした犯罪」というふうに柱立てをしておりますけれども,私どもの方で御提案しているのは,私どもの実際の捜査経験,検挙した事件の中で傍受をしていれば極めて有用であっただろうという実体験に基づいての御提案でございますので,必ずしも網羅的・体系的ではないかもしれません。逆に,実例に基づいているということでありますので,やや虫食い的に罰条を列挙させていただくような形になるのかもしれませんが,そういったものだと御理解ください。   具体的には児童ポルノ,ヤミ金,人身取引事犯ということで御提案申し上げておりますが,これらはいずれも多くの場合はグループにより行われるものでありまして,当然,連絡手段には電話が使用されているというものであります。さらに外国のグループとも通じるということで,組織の活動が多様化かつ巧妙化していることによりまして,通常の捜査活動のみで突き上げ捜査を行ったり,組織の実態把握をすることが十分にできているとは言えない犯罪について,通信傍受が可能となれば捜査は非常に有効であるということでございます。   最初の「児童ポルノ関連犯罪」につきましては,具体的には児童ポルノの製造販売というものを想定しておりまして,具体的罪名としては,児童ポルノ法の不特定多数の者への児童ポルノ提供,不特定多数の者への提供を目的とした児童ポルノ製造等が該当すると考えております。   次に,「ヤミ金関連犯罪」でありますけれども,出資法の高金利や貸金業法の無登録営業を想定しております。ちなみに,貸金業法の無登録営業につきましては,平成18年の法改正により罰則が法定刑長期5年から10年へ引き上げられるなどしたところでありまして,ヤミ金事犯取締りに対する社会的要請は極めて高いのは御案内のとおりであります。   最後に,「人身取引関連犯罪」でありますが,具体的には刑法の人身売買罪,売春防止法の管理売春を想定しております。刑法の人身売買罪と申しますのは,平成17年の法改正により新設された罪であるのは十分御案内のとおりでありまして,これは非常に国際的な要請が強いということもありますし,我が国におきましては,平成21年,犯罪対策閣僚会議におきまして,「人身取引対策行動計画2009」を策定して,全政府的に対策に取り組んでいる社会的な問題であるというふうに承知しております。 ○井上分科会長 それでは,ただいまの坂口幹事の御発言を踏まえつつ,「組織を背景とした犯罪」について,御意見のある方は御発言をお願いしたいと思います。 ○神幹事 私は,「④」については一切対象犯罪にすべきではないというのが基本的スタンスであります。要するに,今,坂口幹事から話がありましたけれども,具体的にイメージが湧かないのですね。個別のこの犯罪については有用だという有用性は分かるのだけれども,こういう場面でこういう形で傍受がなされることがあるのに,それがやれないために,それができなかったということが感覚として分からないのですよね。それと同時に,これについても重大犯罪といった場合に法定刑が10年以下の犯罪でよいのかとか,5年以下,7年以下の犯罪でよいのかという問題もあると思うので,私としては納得ができないということで,これについて対案はございません。 ○坂口幹事 今の神幹事のお考えに対して,それではどういう御説明をしたら御理解が得られるのかなというのがよく分からないのですが。例えば,覚醒剤の密売についてはイメージがお湧きになるということであるならば,禁制品のようなものであるという意味においては,児童ポルノもそうですし,人身売買の話も,人間ではありますけれども,大きな組織が調達する,あるいは,製造する,どこかにこっそり隠し持つ,あるいは,監禁する,それを密売するなり,客を集めてきてサービスを提供させるなりということで役割分担をしていて,禁制品のようなものによって効用を得て,それによって多大な利得を得るという犯罪であるという点においては,似ていると言ったら厳密には不正確かもしれませんが,イメージとしては覚醒剤であるのか,児童ポルノであるのか,あるいは,生身の人間であるのかということによる違いはありますが,犯行態様としては非常に近いものがあって,捜査手法的にも似ている点がある,また,社会的な害悪の程度という点においてもいずれも劣るものではない,どれがどうというものでもないだろうと思っていただくと,イメージは湧きませんでしょうか。 ○神幹事 確かにその似たようなものというところは分からないでもないという感じがします。でも,それだけでは納得できないと思っています。 ○井上分科会長 神幹事がぴんとこないとおっしゃるのは,覚醒剤の場合は弁護活動などでも触れていて,社会現象としても分かるけれども,今挙げられたようなものは余り身近に感じられないという御趣旨なのでしょうか。それとも,身近には感じるのだけれども,通信傍受が必要かどうかが分からないということなのですか。 ○神幹事 両方あるのですけれども,後者については,今お話された薬物と同じ禁制品と考えればイメージ湧かないですかと言われると,そうかなという感じはしているということです。前者の方は,薬物に関しては,法定刑はもっと重いですよね。もっと軽いものも入っていますけれども,実際上使われているのはもっと重いものですよね,現に通信傍受が行われているのは。それとの比較でどうなのかということです。 ○井上分科会長 そこは法定刑を基準に重大性を判断するという御意見のようなのですが,先ほどの振り込め詐欺についてと同じような,社会的に見て需要かどうかという視点に立つとどうなのですか。社会的に見た問題性,しかも,特に児童ポルノとか人身売買といった犯罪になってくると,国際社会的な拡がりという要素も入ってくるのだろうと思うのですけれども,そういう点から見てもそれほど重大とは言えないということなのでしょうか。 ○神幹事 そうですね。要するに,私たちの感覚の中に,重大性と言った場合には,生命身体にどういう形の影響を与えるかというところが意味合いとしてかなり強いので,それと違ったところでなされる犯罪は,社会的にもっと大きなものでないとなかなか認め難いのかなという感じです。自己矛盾か何かよく分かりませんが。 ○井上分科会長 弁護士会の中にもこういう犯罪に取り組んでおられる方がいて,恐らくそういう方は意見が違うのでしょうね。それぞれの経験や立場で違うということなのかもしれません。  ○後藤委員 確認ですけれども,児童ポルノのところは,7条の何号と何号とおっしゃいましたか。5号はおっしゃいましたね。 ○坂口幹事 申し上げましたのは,児童ポルノの「不特定多数の者への児童ポルノ提供」と,「不特定多数の者への提供を目的とした児童ポルノ製造等」です。 ○後藤委員 4号と5号と理解してよいですか。確かにこれらは組織的な背景で行われることもあるのでしょう。けれども4号だと公然陳列も入ります。公然陳列に,普通,組織的背景がありますか。 ○井上分科会長 そこはもっと細かな問題になりますね。現段階での議論の前提とするイメージとしては,おおよそ言われたような犯罪を対象にしてということなので,細かなところにこだわるのではなく,今言われたようなものを念頭に置いて議論すればよいのではないでしょうか。さらに技術的に外すべきだというところがあれば,もう少し先で議論することになると思います。後藤委員は,児童ポルノ製造とか頒布については,組織が関わらない,あるいは,組織はそれほど関わらないというイメージですか。 ○後藤委員 その方が割と多いようなイメージです。 ○井上分科会長 児童ポルノについては,個人的な犯罪である場合もあるでしょうが,製造や頒布となると,国境をまたいでは作られたり流されたりするというのが実態だと思うのですが。 ○坂口幹事 おっしゃるとおりでございまして,児童ポルノというのは,児童ですけれども,生身の人間を商品化するわけですから,人一人管理してというような犯行態様を個人でやるというのは困難な場合が多いのではないかと思います。現に摘発例を見ましても,共犯関係である者が非常に多いというものでございます。 ○井上分科会長 ほかにこの点について御意見等は特にございませんか。   それでは,もう一つ先に進ませていただきたいと思います。次に,「④」のうちの「暴力団関連犯罪」についての議論に入りたいと思います。この類型に関しても,具体的にどういう罪を追加することが考えられるのかについて,坂口幹事の方から御意見を頂ければと思います。 ○坂口幹事 「暴力団関連犯罪」ということで柱を立てていただいておりますけれども,暴力団の犯罪というのは組織犯罪の最たるものであります。先ほど申しましたけれども,近年,特に北部九州を中心として頻発しております,暴力団による一般市民を狙った襲撃事件につきましては,皆様にも期日外視察ということで御覧いただいたところでもありますし,報道でも度々大きく取り上げられているところであります。地元住民のみならず,国民全体に大きな不安を与えているという状況であります。   彼らの卑劣な行為は,組織の指示や決定によるものでありまして,指示・伝達,あるいは意思決定に電話が使用されるのは当然予想されるところであります。暴力団は完全に統制された組織でありますから,情報管理が徹底しており,また,これも組織の指示によりまして,犯行の痕跡を犯行現場に極力残さないという手段を採るために,通常の捜査活動のみでは事件の解決,突き上げ捜査,組織の実態把握が非常な困難に直面しているところでございます。   また,暴力団は賭博等の資金獲得犯罪,あるいは,犯罪収益のマネー・ロンダリングによる不法行為を敢行しておりまして,近年こうした活動が多様化・不透明化を極め,通常の捜査活動では突き上げ捜査,組織の実態把握が非常に困難であるというのが実情でございます。したがって,通信傍受が可能となれば極めて有用でありますし,暴力団の資金力の低下にも非常に有効であるということでございます。   まず,資料の中で「暴力団関連犯罪」の中の「一般国民が標的となり得る犯罪」と書かれている部分でありますが,暴力団が市民,特に暴力団排除活動を推進しておられる方々に対して,刃物で切り付けることで傷害を負わせるという事件が起こっております。北九州の暴力団が立ち入るようなスナックが「暴力団の立ち入りはお断りです」という標章を貼りましたところ,その店の経営者あるいはママさんの顔を刃物で切る,何人も切るというような事件が発生しております。それから,みかじめ料の要求を断った事業者の自宅あるいは店舗にガソリンをまくなどして放火したり,火炎瓶や手榴弾を投げ込んだりするといった襲撃事件があったのは,これまた皆様御存じだと思います。   したがって,具体的な罪名としましては,刑法の放火罪,傷害罪,爆発物取締罰則の爆発物使用,火炎びんの使用等の処罰に関する法律の火炎びん所持等が該当してくると考えております。   もちろん,暴力団が一般市民を襲撃する行為に該当する罪名としましては,今申し上げたものが全てではありません。例えば,執拗な嫌がらせ電話をかけるとか,店舗の外壁や窓ガラス,外階段,倉庫等を損壊するというようなものも実例として多発しているところでございます。先般,露木幹事からも御紹介させていただきましたとおり,福岡県,福岡市,北九州市といった自治体からも,こうした事件の解決や捜査手法の導入について切なる御要望を頂いているところであります。また,暴力団排除条例の制定,施行に伴って,暴力団排除の気運,暴力団事件の検挙・解決,暴力団組織の壊滅に対する社会的要請は極めて高まっているところでもあります。したがって,様々な犯行態様に対応できるよう,広く対象としていただくことをお願いしたいと思っております。   次に,資料で「賭博関連犯罪」と記載されている部分でありますが,暴力団の伝統的な資金獲得活動の一つとして位置付けられる賭博行為,ノミ行為を想定しております。法律で申しますと,刑法の常習賭博罪,あるいは,賭博場開張等図利の罪になろうかと思います。それから,特別法としましては,資料に競馬法を記載しておりますが,同様のものとしまして,自転車競技法,あるいは,小型自動車競走法,さらにモーターボート競走法等にノミ行為の罰条がございますので,そういったもののノミ行為が当たってくるかと思います。   最後に,「マネー・ロンダリング関連犯罪」と記載されておりますけれども,暴力団の資金源と目される犯罪収益のマネロン行為を想定しているところでございまして,法律としましては,組織的犯罪処罰法の犯罪収益隠匿罪,収受罪といったものが該当しようかと思います。   以上でございます。 ○井上分科会長 この点についても,今の御発言をも踏まえつつ,御意見のある方は御発言をお願いしたいと思います。 ○髙橋幹事 どちらかと言うと質問になるのですけれども,「一般国民が標的となり得る犯罪」として様々な犯罪類型か考えられるということで,ここに挙げられたのは「等」もついていますので,例示ということでよろしいのですかね。そうすると,先ほど挙げられた実際の例を罪名に当てはめてみると,業務妨害とか建造物損壊,あるいは,例にはなかったかもしれませんが,強要とか,いろいろな犯罪類型が考えられ得るとは思うのですが,その辺の線引きというのは何かイメージがあるのですかね。 ○坂口幹事 現時点で具体的なアイデアを御提案できなくて申し訳ないのですけれども,正に要望としましては,おっしゃるように罪名としては非常に幅広いものが当たってくると思われます。それは暴力団の実態がそうであるからです。ただ,法制的には裸で罪名を山ほど書くというのは,違う問題も生じてこようと思われますので,検討は必要であると思いますけれども,立法事実と申しますか,私どもの願いとしましては,暴力団が一般市民を標的にするような犯罪は幅広く拾えるような形で法整備をお願いできれば誠に有り難いというところでございます。私どもももちろん一生懸命考えたいと思いますが,いろいろ御指導いただければと思います。 ○髙橋幹事 そうしますと,大雑把にと言うと,どういう条文にするかと考えるときには,暴力団関係者等が関与していると思われるような犯罪という形で網を掛けるというイメージですか。 ○坂口幹事 散文的に申せばそういうことです。 ○後藤委員 今の点の確認です。確かに暴力団が市民に対して放火とか傷害する事例があって,それに対して新しい捜査手法が欲しいという声があることは理解します。しかし例えば,対象犯罪として放火・傷害一般をそのまま対象にして何ら傍受要件を付け加えないのでは,かなり飛躍があると思います。本当に暴力団対策を考えてもしこの改正をするのであれば,例えば「暴力団の構成員がその暴力団の利益のために行ったと疑うに足る相当な理由がある」といった条件付けが罪名の限定と同時に必要であろうと思います。 ○神幹事 私も同意見でして,先ほど組織要件と言いましたけれども,この場合には,暴力団要件のようなものをどこかに入れないと限定できないのではないかと思っています。 ○井上分科会長 通信傍受法3条の要件にするのか,対象犯罪のところでくくるのか,技術的には両様あり得ると思いますね。 ○川出幹事 ある犯罪が暴力団の構成員によって行われた疑いがあるという疎明は可能なわけですね。 ○坂口幹事 そうでございます。 ○井上分科会長 ほかに,この点について御意見ございますでしょうか。よろしいですか。   次に,「④」のうち,「テロ関連犯罪」と「その他」についての議論を行いたいと思います。これについても,坂口幹事から,具体的にどういうことを念頭に置いて議論をすればよいのかについて,御意見を頂きたいと思います。 ○坂口幹事 テロ行為というのもまた一般市民を危険にさらす卑劣で許し難い犯罪でございます。平成13年の米国の同時多発テロの事件から既に10年以上経っておりますけれども,当時の記憶はいまだに新しいものと思われます。この種の事件は決して過去のものではありませんで,例えば,平成17年の英国・ロンドンにおける地下鉄爆破テロ事件,あるいは,平成18年のインド・ムンバイにおける同時多発列車爆破テロ事件等,多くの尊い命がテロリストによって奪われた事件は枚挙に暇がございません。また,今年の5月,米国・ボストンでテロ事件が発生したということもあったばかりでございます。我が国におきましても,オウム真理教による地下鉄サリン事件が発生して多くの被害者を出したところでありますし,こうしたテロというのはいつ起こるか分かりません。イスラム過激派から我が国が度々テロの標的として名指しをされているというのも非常に深刻な状況と言えると思います。   こうしたテロの事件に対しましては,重大性から厳正に対処していかなければいけないわけですけれども,他方でテロというのは極めて秘匿性が高い犯罪でありまして,通常の情報収集活動や捜査活動のみでは,組織の実態解明は非常に困難であります。通信傍受が,非常に必要性が高く有用であるということについては御理解いただけると思います。   罪名でございますが,具体的には,テロリストによる刑法の内乱罪,外患誘致罪,ハイジャック法の航空機の強取,サリン法のサリン等の発散といったものを想定しているところでございます。また,テロの準備活動といたしまして,核兵器やミサイルといった貨物の不正輸出,あるいは,特定地域,北朝鮮でございますが,特定地域を仕向け地とした不正輸出などを想定しているところでありまして,具体的には外為法の無許可・無承認輸出,関税法の無許可輸出などが該当しようかと思います。   テロ行為やその準備行為は非常に多様なものがありまして,これもまた全部網を掛けるということになりますと,今申したものだけが全てではないということになりますが,現行法の政府原案において対象とされていた犯罪等も考慮しながら,今後,私どもも検討したいと考えているところでございます。  次に,「その他」について申し上げます。  現時点で具体的に想定しておりますのは,例えば,インターネットバンキングを対象とした不正アクセスなどの事件でありまして,具体的には刑法の不正指令電磁的記録作成,また,不正アクセス禁止法の不正アクセス禁止罪等が該当するかと思われます。ちなみに,不正アクセス禁止罪につきましては,インターネットバンキングを対象とした不正アクセスによる金銭的被害が極めて深刻な状況であるということに鑑みまして,平成24年の法改正により罰則が法定刑長期1年から3年に引き上げられました。また,不正指令電磁的記録作成罪については平成23年の法改正により新設されております。不正アクセス行為による被害の未然防止及び拡大防止に対する社会的要請は極めて大きいと考えております。   それから,もう一つの類型としまして,詐欺に準ずる犯罪類型,「利殖勧誘事犯」と警察では呼んでおりますけれども,罪名で言うと金商法の無登録営業,出資法の預り金の禁止といった罪名になります。金商法の無登録営業につきましては,無登録営業者による未公開株・社債の取引やファンドの募集に係る被害が非常に増加したという社会情勢に鑑みまして,平成23年の法改正により罰則が法定刑長期3年から5年へ引き上げられるなどしているところであり,これについても取締りに対する社会的な要請は極めて高いと考えております。   以上,取りあえず二つの類型を申し上げましたけれども,このほかにも捜査上の必要性も高く,取締りに対する社会的要請も非常に高い罪種はあり得ると思いますので,そういったものも,今後,実情に合わせて考えていただければと思っているところでございます。   以上でございます。 ○井上分科会長 それでは,「テロ関連犯罪」と「その他」について,今,坂口幹事から御発言がありましたが,それをも踏まえて御意見を伺いたいと思います。 ○神幹事 内乱,外患誘致とかいった犯罪は,非常に稀有な犯罪と言いますか,有事の場合の犯罪と言いますかね,そういう意味では,先ほど言っていたように各外国で起こっているテロ犯罪に対して何かの対応をしたいというのはよく分かります。しかし,今,私たちがミッションとしてやっているのは,基本的には供述に頼らないという形で捜査,公判をどう考えるかということで,その観点から考えた場合,これらの犯罪は,必ずしもこの部会が掌握するような形で拡大しなければならない対象犯罪ではないと考えます。ただ,必要性は分かりますし,有用性も分かります。 ○坂口幹事 今,神幹事がおっしゃったこの部会のミッションではないというのは,私にはよく理解できなかったのですが,もう少し教えていただけないでしょうか。 ○神幹事 実際上は取調べの録音・録画とかいろいろな制度を作る過程の中で,捜査手法をどうしましょうかという形で議論をしてきている。④の犯罪特にテロ犯罪等は,そういうものとバーターにも何もならないテーマです。つまり,ここで一般の有識者委員まで含めて有事の場合を想定して作らなければならないようなものは今回のミッションではないのではないか,ちょっと外れるのではないかということを申し上げているのです。 ○川出幹事 有事の場合の犯罪と言うかどうかはともかくとして,実際にこうした犯罪が起きた場合にどのような捜査が行われるのだろうかというのを考えた場合,これまでどおりの取調べを中心とした捜査を行うのか,それとも,通信傍受を含めて,新たな捜査手段を用いた捜査を行うのかという問題は,ここまで議論してきた他の犯罪と同様に生じますので,それを検討することが,部会のミッションではないということはないと思います。ですから,これを検討の対象とすること自体が問題であるとは思いません。 ○後藤委員 内乱とか外患誘致は確かに重大な犯罪ではあります。けれども,現実に我々はそれを大きな脅威として感じているのかという観点からみると,そういう状況ではないでしょう。それをここで一気に対象犯罪に入れてしまえというのは,やや乱暴ではないかと思います。 ○井上分科会長 ほかによろしいですか。では,このぐらいにさせていただきたいと思います。   「④」の犯罪については,対象犯罪に加えることが考えられる具体的な犯罪名を挙げていただきました。個々の犯罪については,現実感という意味で温度差もあるのかなと思われますが,それらの犯罪の多くについては組織的に敢行されることが現実に想定され,通信傍受を行うことが有用であろうということについては,大くくりで言うと共通の認識は得られたのではないかなと思います。   ただ,必要性については,通信傍受という手段がないことによって捜査に現実的な困難が生じているのか,また,そういうものが現実に一般の人に脅威になっているのかという点については疑問を呈する意見も示されました。   これに対して,それぞれの犯罪について,必要性があるということに関する一定程度の御説明もあったところです。   これらの点については,そもそも対象犯罪に加えるためにどの程度の必要性があればよいのか,つまり,具体的に捜査にどの程度の支障が生じている必要があるのかという点について,認識にずれがあるということと,さらに,これは部会での議論でも出ましたが,現在の捜査に対処することだけを考えるのか,あるいは,近い将来をも見通して検討しておくべきなのか,そういうところにも連なっていく問題領域だろうと思われます。したがって,今後は全体的なコンセプトのようなものについても引き続き議論をしつつ,個々の犯罪についてより立ち入って具体的な検討を進めていく必要があるのではないかというのが,感想でございます。   本日の議論につきましては,特別部会の報告を念頭に置いて,事務当局作成の配布資料に加筆をしつつ,整理をさせていただくということにしたいと思います。   次回の検討事項としましては,「刑の減免制度,捜査・公判協力型協議・合意制度,刑事免責制度」,「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」などが考えられますが,更に検討させていただき,事務当局を通じて,追って御連絡をさせていただきたいと思います。   予定していた事項は全て終了しましたので,これにて本日の議事を終了したいと思います。   なお,本日の議事につきましては,議事録において公表するのが相当でない部分があるのかについて,ヒアリングの中身を含めて検討させていただき,その上で発言者名を明らかにした議事録を公表することにさせていただきたいと思います。ヒアリングで使用された資料につきましても,同様の観点から検討させていただければと思っています。   また,議事録ができるまでの暫定的なものとして,事務当局において本日の議論の概要をまとめて,全委員・幹事に送付してもらうことにいたします。   次回の日程ですが,9月11日水曜日の午前10時から午後零時30分までを予定しております。場所については追って連絡をさせていただきます。   本日はこれで閉会といたしたいと思います。どうもありがとうございました。 -了-